《七曜の戦》世界樹戦争　第1ターン結果

（→開始時の状況）

妖精郷、燃ゆ

　本来の歴史における第二次世界大戦では、幾度もの空襲が行われた。
　パブロ・ピカソの絵画『ゲルニカ』の題材となったドイツ空軍による無差別爆撃、日本では東京大空襲などが特に有名だろう。
　参戦国の一つであったオーストラリアも例外ではなく、軍施設周辺が日本軍による空襲の標的となっている。
　そんな史実におけるオーストラリア空襲を遥かに上回る規模で、冥海機ヤ・ウマトは妖精郷の森を焼いていた。

「台湾撤退を余儀なくされた翔鶴姉様の雪辱を果たすためにも、私がここで戦果をあげなければ」
『瑞鶴』の飛行甲板型海戦装から、航空機型エネルギーが発艦していく。
　彼女をはじめと３体の空母型ジェネラル級冥海機は、その配下達と共に航空機群で妖精郷の森を焼き、排斥力と森の魔力によって長遠方からの姿を隠されていた巨大クロノ・オブジェクト『世界樹』の姿を暴き出していた。
　世界樹はディアボロスが《七曜の戦》５日目の戦いで制圧した『バベルの塔』をも上回る、巨大なダンジョン型クロノ・オブジェクトだ。
　たちまち攻撃の対象となりながら、この７日目まで耐えていること自体が、この世界樹の頑強さを示していると言えただろう。だが、かつてのドラゴンの攻撃を受けた時以上に、激しく燃え盛っている。
　防御・再生機能が追いつかなくなっているのだ。

　そして《七曜の戦》最終日の朝、燃え盛る世界樹の横にこつ然と現れた新宿島を、フローラリアは驚きを以て迎え、そこから現れるディアボロス達の姿に一瞬の安堵を得る。
　それは一瞬の後に覆されるのだが。

②ダーナ

「ああ……やっとディアボロスが救援に来てくれましたか」
　世界樹の戦場で、フローラリアの断片の王ダーナが、安堵のため息を漏らす。
　冥海機ヤ・ウマトと、黄金海賊船エルドーラドの侵攻を受け、陥落寸前青色吐息のフローラリア勢力にとって、ディアボロスの来援は待ち望んでいた希望の光だったのだ。
　安堵したダーナが、余裕の表情を取り戻すと、彼女のバラのドレスも輝きを取り戻したようだ。
　心なしか食虫植物も元気になり、パクパクと口を開けている。

　さっそく、駆けつけてきたディアボロスを迎え入れたダーナは、
「まったく、ディアボロスにも困ったものです。海岸で防衛すると言っていたのに、その防衛に失敗するのですから」
　と、冗談めかして言うと、ディアボロスに手を差し伸べる。

「フローラリアとディアボロスが協力すれば、ドラゴンでさえ撃退できるのです。いわんや、船乗り程度……。
　こたびの戦いでは、我ら、フローラリアも力を尽くさせてもらいます。海岸の戦いで、ディアボロスにも被害が出たことでしょう。その戦場で重傷を負って、この戦いに参加できないディアボロスがいるのなら、すぐにでも譲ってください。
　世界樹の生贄砲はすぐにでも使えます。弾丸さえあれば、生贄砲を使って、攻め寄せる敵を、打ち払ってやりましょう」
　この後の戦の勝利の展望を語って見せた。

　その場に揃ったディアボロスは渋い顔をせざるを得ない。
　裏切りに見える行為に忸怩たるものはあっても、このダーナの精神性は、やはり共に歩むには相応しくないと確信できた。

「特に、海上に浮かぶ敵の船の一部は、クロノヴェーダでもクロノ・オブジェクトでも無いようです。生贄砲があれば、簡単に全滅させられるでしょう」
　自分の作戦が素晴らしいものと疑わないダーナが、笑顔で、ディアボロスに問いかける。
　だが、そのダーナの話を聞くディアボロスの表情は硬く、そして、敵対的であった。

「ダーナって、本当に残念なんだねぇ」
　そんなディアボロスを代表するように、フルルズン・イスルーン（ザ・ゴーレムクラフター・g00240）が、ダーナの前に立った。
「この期に及んで、生贄砲を使用するとか、キミは、ディアボロスを仲間と言ってるのに、ディアボロスの命を軽視しすぎなんだよ」
　だから、ディアボロスの仲間にはなれなかったと、フルルズンはダーナを諭す。
「そのうえ、その生贄砲を使って、一般人を虐殺するって得意げに語るとか……。もう、ダメダメって感じなんだよ」
　ダーナに対して錬成したゴーレムをけしかけて来るフルルズンに、ダーナは困惑の表情を隠せない。

「お前は何を言ってるのですか？　重傷で使い途の無くなったディアボロスで構わないというのが、聞こえなかったのですか？」
　ダーナは、ディアボロス達が何か誤解をしているものと考えて、あたかも幼子に言い聞かせるように諭そうとする。だが残念ながら、そこに誤解は存在していなかった。
　ダーナの困惑をよそに、フルルズンをはじめとしたディアボロスが、一斉に攻撃を開始する。
「どういうことなのです！　誰か、説明しなさい！」
　そう叫んだ、ダーナに、正しく状況を説明できるフローラリアは存在していなかった。

　断片の王がいる敵の最終拠点『世界樹』に、初手から殴り込む事に成功したディアボロス。
　しかし、その戦いは、必ずしも優位とは言えなかった。
　援軍として周囲に兵を送ってはいても、そこは最終拠点。かなりの数のフローラリアが、断片の王の守護の為に、戦場に残っていたのだ。

「数だけは多いでございますが……あちきたちの敵じゃないのでございますぇ」
　そんな多数のフローラリアを、吉祥天・華瑞月（姫神 -ヒメガミ-・g02230）は、変幻自在の攻撃たるリピートベインで、次々と屠っていく。
　フローラリアは、他のディヴィジョンのクロノヴェーダに比べれば、与しやすい相手だ。
　更に、味方と思っていたディアボロスからの攻撃を受けたのだから、戦闘からいくばくも無く、総崩れの様相を示し始めた。

「これも戦故じゃな……」
　華瑞月の狐尾が戦場に揺れ、それが揺れる度に敵の数が減っていく……。
　華瑞月と相対した、フローラリアは「ダーナ様、お助けください」「我らはどうすれば……」と困惑するが、それに応える救いなど、存在しなかった。
「何れこうなることも考慮しての共闘だったしのう。来世にでも愚痴でも聞いてやるのじゃ……」
　少しだけ憐憫の情を示す華瑞月らの活躍で、ダーナを護る敵は壊滅し、遂に、ダーナとの決着をつける時が来たようだった。

　自分を護る配下が激減し、自らも大きなダメージを受けたダーナは、花弁をまき散らしながら、ディアボロスを強く睨みつける。
「ディアボロス風情が、この私を騙したというのですか！
　たかがディアボロスに、私自らが微笑みをあたえてあげたというのに、身の程知らずにも程がある！」
　ダーナは、そう叫ぶが、もはや勝敗の行方は明らかであった。

「背中を撃つ形になったのは、遺憾の意を表明させてもらいます。でもね、あなたも、微笑みだけで、ディアボロスを働かせようなんて、図々しいんじゃないかな？」
　ダーナが追い詰められた戦場で、相原・相真（銀腕・g01549）が不滅の意思が宿る腕をダーナに向け、ゆっくりと近づいていく。
　ダーナも、何故スマイル０円で命がけで戦って当然などと、思い込んだのであろうか？
　否、断片の王であれば、配下のフローラリアが、その微笑みの為に命を賭けるのは当然であったのかもしれない。

「あなた達とは、随分長い付き合いになりましたね。ですが、その腐れ縁も、ここで終わりです」
　相真は、そう言うと、訣別の意思を込めて名乗りをあげた。
「ディアボロス、相原・相真！　フローラリア、俺たちは貴方がたと敵対します！　そして、オーストラリアを最終人類史に奪還し、取り戻します！」

　その相真の名乗りの意味も、ダーナには、理解できなかったようだった。
「何を訳のわからぬことを。この大地は『妖精郷』であり、『おーすとらりあ』などでは決して無い。そして『妖精郷』の全ては、断片の王ダーナの所有物です！」
　この期に及んで、そう言い切るダーナは、やはり、断片の王としては不完全な情報しか持っていなかったのだろう。

「クロノヴェーダはディアボロスにとって、不倶戴天の敵。ですが、あなたの知識が不完全であったからこそ、束の間とはいえ、共に生きることが出来たのでしょう」
　相真は、悲し気にそう言いながら、パラドクスを使用する。
　これまでのフローラリアとの関りを思い出しながら……それでも、大地を奪還するというディアボロスの本懐を果たす為、正義を成す為に裂帛の気合を込める。
「フローラリアの断片の王ダーナが、何故、ディアボロス如きに……」
　相真の一撃で体の過半を削り取られたダーナは、最後まで結末を信じられないかのような表情で、その生を終えたのだった。
「あなたが、真に、人間と共存できる精神をもっていたなら……」
　相真は、少しだけ残念そうにそう言うと、戦場を後にした。

　フローラリアの断片の王は撃破した。
　しかし、まだ、世界樹戦争は始まったばかりなのだ。

③長老ダグザ

　冥海機ヤ・ウマトの侵攻から、妖精郷を護って獅子奮迅の働きを見せていたジェネラル級フローラリア『長老ダグザ』は、世界樹の異変を察して天を仰いだ。
「世界樹頂上で戦闘だと？　ならば……ディアボロスが裏切ったのか！？」
　長老ダグザは、悲しみのあまり自失し、膝をついた。
　ディアボロスが裏切ったのであれば、世界樹のダーナの命運は尽きた。そもそも、ディアボロスが救援してくれたとしても、勝利できるか判らない戦いだったのだから。
　そのディアボロスが敵にまわれば、フローラリアの滅亡は自明の理である。
　暫しの後、ダグザは自らが率いていたフローラリアの軍勢に指示を出す。

「フローラリアの敗北は避けえない。故に、これ以上の抗戦は無意味だ。
　お前達は、逃げても良いし、冥海機に降伏しても良い……。
　冥海機は、我らに勝ち目がないのだから降伏せよと勧告してきていた。
　ならば、降伏すれば生き延びる事も叶うだろう」
　それは、冥海機に全面降伏を行う為の指示であった。

　だが、その降伏すら、彼らには許されなかった。
「させないにゃぁ、長老ダグザくん！」
　ドラゴンオーラをまとったウェアキャット、シズ・ノウラ（深森の幻獣・g10049）が駆けつけて来る。
「ダグザくんたちが、妖精郷を護って最後まで冥海機と戦うんにゃらば、戦わずに済ませたかもしれないにゃ……だけど、冥海機なんかの手先ににゃって、人々を苦しめる片棒を担ぐにゃら容赦できないにゃ！」
　シズは、膝をついて戦意を失っていたダグザに魔術文字を宿した腕を突き付けて、そう宣告する。
「君の命と、君の軍勢は、ここで、私達ディアボロスが討たせてもらうのにゃ！」

「ディアボロス？　ディアボロスだとっ！」
　力なく膝をついていたダグザの瞳に炎が宿った。
　真っ白な灰のように燃え尽きていたダグザの戦意が、不死鳥のように燃え上がり、その闘志が漲っていく。
　もじゃもじゃのひげと髪が、怒髪天を衝くのたとえの如く、ハリガネのようにピンと立つと、ゆっくりと立ち上がり、そして、巨大な棍棒を振り上げた。
「ヴォォォォォオ！！」
　戦場に、ダグザの悲しみと怒りを込めた怒声が響き渡る。
「皆の者、降伏は無しだ！　卑怯にもダーナ様をだまし討ちにした、ディアボロスを殺し尽くせ！　冥海機など、放っておけ。全戦力を、ディアボロスにぶつけるのだ！」
　長老ダグザの激に応え、冥海機との戦いで消耗していたフローラリア軍が、ディアボロスに襲い掛かる。
　フローラリアの軍勢は、怒涛のようにディアボロスに殺到するが……。

「そうこなくっちゃにゃ。でも、君達じゃ全然実力不足なんにゃよ」
　この怒涛のフローラリアの攻勢は、シズをはじめとするディアボロスによって、受け止められ、そして、その戦力は磨り潰されていった……。

「目の前にダーナ様を襲った仇がいるというのに、一矢も報いられぬというのかっ！」
　長老ダグザは、まだ、闘志を失っていなかった。
　残りの命を燃やし尽くすようにして、満身創痍の巨体で、ディアボロスの前に立ち続ける。
　世界樹の門番として、フローラリア全軍の盾の役割を果たしてきた長老ダグザは、風雨に耐えて生き残った大樹のように、ディアボロスの前に立ち塞がった。
　だが、その命脈は既に尽きている。

「ダーナが生贄砲に使うお代わりを要求した時点でこうなることは決まっていたわ」
　その言葉と共に放たれた、峰谷・恵（フェロモン強化実験体サキュバス・g01103）の濃密なフェロモンが、ダグザを覆い尽くし、その動きを止める。
「そこぉっ！！」
　動きを止めたダグザに、決別の一撃が放たれる。
　恵の神速の一閃は、ダグザの首の後ろにある神経の中枢を切り取った……。
「今日が、フローラリアの滅びの日よ」
　恵がフェロモンを収めると同時に、長老ダグザの体は、地響きを立てながら妖精郷の大地に倒れ……、
「ダーナ様、いま、御許に……」
　妖精郷の大地の一部に還っていったのだった。

④深眠のアダム・深愛のイヴ

　世界樹迷宮の地下、隠されし第零層で、一対の男女が睦まじく言葉を交わしていた。

「あら、このままだと、ダーナ死ぬんじゃない？」
　緑の髪と肌を持つ花冠の女が、番である青年に、そう告げるとホゥとため息をつく。

「まぁ、そうだねぇ。だから、世界樹に余所者を招くなと言ったのに」
　男の側も、そう答えて、女の言葉に同意する。
「アダムの言う事を聞かないから、ダーナ、死んじゃうんだよね」
「あぁ、そうだよ。僕のいう事を聞かないから、フローラリアはもう終わりなんだ」
　その男の言葉に、女は、驚いたように問い返す。
「なら、イブ達も死んじゃうの？」
　と。
　その女の言葉に、男は安心するよう髪を撫でると、首を横に振った。

「僕たちは大丈夫だよ。フライング・ダッチマンから誘いを受けているからね。僕たちは、この妖精郷の『最高の宝箱』らしいよ」
「ほんとう？　私たち、死なないの？」
　女は嬉しそうに、男を見やる。
　男もまた、幸せそうに女を見返した。

　この第零層は、さながら２人の世界であった。
　クロノ・オブジェクト『世界樹』を産み育てた、異端のジェネラル級『深眠のアダム・深愛のイヴ』。
　二人で一人の彼と彼女は、世界樹迷宮の地下で、新天地への夢を語り合う……。

「ちょっと、お待ちなさい！」
　そんな２人の世界に浸るアダムとイブの戦場に、割り込んできたのは、胸が大きいサキュバスなディアボロス、桜・姫恋（苺姫・g03043）であった。
　熟れたイチゴの実を思わせる肢体の姫恋は、独蝶の花びらと共に、アダムとイブの元への道を切り開いていく。
「アダムとイヴ？　直接会うのは初めましてだけど、私の事無視しないで頂戴よ。そもそも、『世界樹』を産み育てたなんて、危険なジェネラル級を野放しになんてさせられないわ！」
　姫恋は、当たると幸い、第零層の防衛フローラリアを、両手から大量の桜の花びらを生み出し幻覚を見せながらなぎ倒すと、アダムとイブの前へと駆けつける。

　だが、アダムは、姫恋の顔を軽く見やっただけで、すぐに、愛しいイブに視線を戻すと、力ある言葉で姫恋を拒絶してみせた。
「我らの楽園の邪魔をするな。我らの神域に踏み入るな。……ここは、僕たち２人の世界なんだ」
　そのアダムの言葉に、嬉しそうに微笑むイブ。
　姫恋は、拒絶の言葉により、第零層の植物壁に向けて弾き飛ばされつつも、２人を護る世界樹の結界を破るべく桜扇を振るった。

「ですから、待てと言っているの。世界は、あなた達２人の為に回ってるんのではないわ！　蝶花〜桜舞〜！」
　姫恋のこの攻撃は、拒絶の結界を破壊し、アダムとイブに届き……。
　拒絶を侵された、アダムとイブは不快げに眉を顰めると、手をつなぎながらも戦闘態勢を取り始めたのだった。
「でも、世界が回るなんて、この人、あの人、頭大丈夫かな？」
「愚鈍なディアボロスの言葉なんて聞かなくていいよ、頭が悪くなるからね」
　心底呆れたような２人の言葉に、姫恋は静かにキレた。

　深眠のアダム・深愛のイヴ。２体で一体のジェネラル級フローラリアは、決して弱くはなかった。
　その力の多くを『世界樹を産みだす』という奇跡に費やしていたとしてもなお、侮る事の出来ない力を有している。だからこそ、
「貴方達フローラリアとは、仲間のディアボロスが交流をしていたと聞いている。でも……」
　天水・舞（おきつねさま・g09899）は、その決意と共に、少しだけ悲し気にバールのようなものをブルンと振るい、アダムとイブを追い詰めていく。

　名が体を示すのならば、黄金海賊船エルドラードは、冥海機ヤ・ウマトと同様、海洋を主戦場とするクロノヴェーダである筈。
　そのエルドラードが、地上部分に『世界樹』という拠点を築いてしまえば、どうなるだろうか。
　最悪の未来が、簡単に予測できてしまうだろう。

「あなた達フローラリアと縁を結んだディアボロス達のためにも、そのあなた達が、エルドラードのような海の悪魔に与して、悪をなすのは許すわけにはいかないの」
　強い決意と責任感から共に放たれたストリートストライクが、イブの腹部に突き刺さり、抉り潰す。
「キャァァァ！！」
「なんてことを、僕とイブが混ざり合い、世界樹を育む大切な場所をっ！」
　痛みのあまり叫ぶイブに、思わずアダムが激高する。
　だが、舞の攻撃はここで止まらなかった。

「せめて、２人仲良く、旅立ってください！」
　舞は、アダムの頭部を力強く殴打する。
　頭を叩き潰されたアダムの体は痛みに叫ぶイブの体に重なり、絶望の表情を浮かべたイブは、アダムが力尽きると共に、その生命を終えた。
　その死に様を見た舞は、最後まで命を共にした２人に黙とうを捧げる。
「あの２人の愛は、もしかしたら、本物であったかもしれませんね……」
　その言葉も、第零層が崩壊する轟音に紛れ、消えていった。
　ディアボロスは崩れる第零層から脱出し、次なる戦場へと向かい、走り出す。

⑥薔薇の戦士スカアハ

「どうして、どうして裏切ったのだ！」
　薔薇の戦士スカアハは、自分達の軍を攻撃してくるディアボロスに向かって慟哭する。
　ディアボロスとフローラリアは、確かに最初は敵対していた。
　だが、戦いの中で互いを知り、そして、少しづつ心を通わせる事が出来た……。
　共に手を携えてドラゴンと戦い、共に語り合い、飲み、食べ、訓練をし……そして仲間として受け入れあったはずでは無かったのか？

「あの日々は、全て嘘だったのか？　あの勇敢で気高く、素晴らしかったディアボロスは偽りだったのか！」
　血を吐くようなスカアハの叫びが、戦場にこだまする。
　諷和・もこ(g01739)もまた、スカアハと過ごした時間を思い出していた。ビーチバレーやスイカ割り、模擬戦の時のアドバイスから彼女自身、技も増えた。
「降伏して、貰えないかな……」
「私がそれを聞くとでも思うか？」
　怒りと絶望が綯い交ぜになったような表情でいうスカアハに、もこは首を横に振った。少なくとも、この女戦士がそれを受け入れるはずもないと、もこは分かっていた。
「不意打ちみたいで気が引けるけど、まあしょうがないね」
　白石・明日香(g02194)は決然と前に出る。
「一対一とはいかないけど、決着をつけに来たよスカアハ！」
　敵を葬る狩人として、スカアハへとパラドクスを繰り出していく明日香。その叫びを合図に、ディアボロス達は、フローラリアの軍勢に切り込んでいく。
　赤薙・夜明(g00805)も、武器を手にフローラリアの軍勢を蹴散らしながら、世の理を語るように言葉をかける。
「必ずしも、ここで決着を付ける必要は無いのですが、オーストラリアも人の住む土地です」
「今までのは、お前達を油断させて隙を作るために、交流を図っていたに過ぎないからな」
　カルメン・リコリスラディアタ(g08648)はそう告げる。

　幻想竜域キングアーサー攻略旅団で支持された対フローラリア方針は『将来の騙し討ちを準備する』というものだ。
　そこから《七曜の戦》までの数ヶ月間に、何度かフローラリアとの間により積極的な同盟を結ぶ案が出たこともあったが、それらが支持を得たことはない。ディアボロスの総意としては「いつか倒す」という決意があった。

「協力関係にあろうとフローラリアも簒奪者であることに変わりはありません。決着をつけましょう」
「良かろう。ならば我が魔槍にかかって死ぬがいい！」
　夜明の言葉に、スカアハの顔が怒りを乗せて引き締まる。
「そいつは無理だな。今からフローラリアどもは俺達によって伐採されるバッドエンドを迎える運命だぜ♪」
　カルメンの蝙蝠が、フローラリアの軍勢から、その樹液のような血と生命力を吸い尽くしていく。

「うん……それは、知ってる」
　ディアボロスと戦うスカアハの姿は、もこをはじめ、スカアハとの模擬戦に挑んだことのあるディアボロスであれば、よく知るものだった。
　訓練や模擬戦を含めれば、スカアハほどディアボロスと戦ったジェネラル級は存在しない。
　つまり、スカアハの手の内は、ディアボロス達にすっかり暴かれていた。
　そして、初めて合った時と比較して、スカアハよりもディアボロス達の方が遥かに成長の度合いは著しいのだ。

「赤枝の車輪を受けるがいい！」
「跪き穢した大地に頭を垂れよ」
　憤怒の表情で槍を繰り出すスカアハに、夜明は余裕をもって対応し、竜巻を叩きつけて主導権を握る。
　そして、この握った主導権をディアボロス側は失う事無く、スカアハを追い詰めていく。
「残念ですが、ここまでですね」
　追い詰められたスカアハに、夜明はとどめをさすべく、必殺の構えで迫る。
　スカアハは、逃れえない死の前に、観念したかのように目を閉じた。

　露払いに徹していたクィト・メリトモナカアイス(g00885)は、必殺の間合いのまま、攻撃を止める。
「最後に、何か言い残す事はあるか」
　それは、多くのディアボロスと縁をもった、スカアハに、遺言なり辞世の句を詠む機会を与える為であった。
「言い残す事など無い。裏切りを為す者は、いつか裏切られるものだ。裏切者のディアボロスども、永遠に呪われるがいい」
　言い残す事など無いといいつつ、ディアボロスへの恨み言を遺言としたスカアハへと、夜明の放った竜巻が襲い掛かる。地に叩き伏せられ、動きを止めたスカアハは、もはや動かない。

「裏切ったものは裏切られる……か。だが、別に、私たちは、フローラリアを裏切ったわけでは無い」
「貴方達が、ディアボロスを味方だと誤って認識していただけで、私たちにとって、クロノヴェーダであるフローラリアは、最初から最後まで、『敵』だった」
　明日香は地に突き刺さった槍を見つめる。
「汝の名を忘れぬ復讐者はきっと多い。 汝の名は語られ続ける。故に。汝の霊魂は滅びぬ」
　クィトは戦いに果てた女戦士に少しだけ黙祷を捧げると、次の戦場へと歩を進めたのだった。

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→有力敵一覧
→②ダーナ（有力敵HP1900000→0 / 制圧完了！）
→③長老ダグザ（有力敵HP1150000→0 / 制圧完了！）
→④深眠のアダム・深愛のイヴ（有力敵HP1000000→0 / 制圧完了！）
→⑥薔薇の戦士スカアハ（有力敵HP1500000→0 / 制圧完了！）
→⑧赤城（有力敵HP2400000→2380327 / 敵残存率100%→99%）
→⑨『冥海機の精華』羽黒（有力敵HP2450000→2442965 / 敵残存率100%→100%）
→⑫バスタードハリバット（有力敵HP2500000→2481055 / 敵残存率100%→99%）
→⑯海神のしもべ（有力敵HP2500000→1722727 / 敵残存率100%→34%）
→重傷復活者一覧