大戦乱群蟲三国志奪還戦　第1ターン結果

（→開始時の状況）

●③弓腰姫・孫尚香
　断片の王『劉備』は、自らがこれまで温存して来た蜀軍を二手に分けた。
　ひとつは蜀を防衛する軍勢。
　もうひとつは、魏・呉の領土を戦火で包む軍勢だ。
　後者を任された蟲将の一人、劉備の后の名を持つ蟲将『弓腰姫・孫尚香』の率いる軍勢は、かつての呉の支配領域を東進しつつある。
　蟲将の軍勢の通った後に、生き残る人間はいない。
　長江の流れに沿って、人命のことごとくをその一部として飲み込みながら、戦火は広がっていく。

「……再び、呉が戦火に晒されるなんて」
　その軍勢の元を目指すパラドクストレインの窓から見えるのは、孫・リア(g03550)は思わず呻いた。
　呉の領土が荒れる光景は、彼女にとって辛いものだ。
　だが、彼女は同時に理解もしている。
　大戦乱群蟲三国志における死者の数は、今、魏と呉で起きている数を考慮しても、『本来の歴史』と比較すれば圧倒的に少ないのだろうと。
　樊城の戦いを境目として、大戦乱群蟲三国志での戦乱はクロノヴェーダとディアボロスの対決が主となっていた。ディアボロスは一般人を敵と見なすことはなく、赤壁などではエネルギー要員として囚われた人々の救出も行っている。歴史を圧縮したかのように幾度も戦いが起きているとはいえ、死者の数はそう多くはない。
　本来想定されていた魏呉蜀三国のクロノヴェーダ同士の戦いは、大量の人間を動員し、その死によって蟲将の強化と繁殖を図るものだったのだろう。邪悪ではあるが、どちらかといえばそちらの方が本来の歴史に近いのだ。
　もっとも、断片の王となった『昭烈帝・劉備』は即座に人間を使い尽くすよう命じている。
　仮に彼が生き延びれば、今後、どのような戦略を立てるか分かったものではない。
「ここで、止めなければ」
　そのためにも、叔母の名を取り戻すのだ。リアは密かに、しかし強く決意を新たにする。

　蜀の軍勢は、諸葛亮や錦馬超を中心として、既にパラドクストレインへの対策を講じている。
　ディアボロス達は、やや離れた位置でパラドクストレインから飛び降りると、そのまま一丸となって飛翔した。
「ディアボロス、今度は本気ってわけね。いいわ、相手をしてあげる！」
　時速900kmという高速で迫るディアボロスに対し、飛べる蟲将達が舞い上がり、迎撃にかかる。
「嫁さんがこんな前線に居るとはねェ……信頼の現れなのかそれとも……」
　そんなことを思いながら、眉立・人鳥(g02854)は銃槍バイビークを構えると、そのまま地表へと突っ込んでいく。
「あんたはきっといい嫁さんなんだろうな、だが俺も退けねぇ理由があんだ！　まずは目を潰す！」
　飛び降りざまに突き刺した地面から、雷の魔力を帯びた霧が広がり、蟲将達を撹乱する。
　敵をひるませ、一番槍の役割を果たした人鳥が飛び退くと、今度はソラス・マルファス(g00968)や捌碁・秋果(g06403)が飛び込んでいった。
「これ以上、テメェらの好きにはさせねぇよ」
「死んでもらいます」
　大剣やリボン、種々様々なディアボロスの武器が、三国志時代の武装で統一された蟲将達の軍勢を切り崩していく。
「くっ、劉備様からお預かりした軍勢が……！！」
　歯噛みしながらも、孫尚香は矢を五月雨の如く撃ち出していく。
　だが、その抵抗も虚しく、彼女は徐々に追い詰められていった。
　満身創痍でなお戦意を失わない孫尚香に、咲樂・祇伐（花祇ノ櫻禍・g00791）は問う。
「孫尚香さん、何故兄の元へ帰らなかったの？　私は兄の元を離れたくないのに」
「兄様よりも、劉備様の方が大切だからよ！　それ以外に何があるの？」
「そう……」
　その判断が、劉備の妻、蜀の蟲将としての与えられた立場ゆえのものなのか、あるいは愛情ゆえのものなのか、問うても仕方のないことなのだろう。いずれにせよ、相容れない相手。ならば互いの感情のまま戦うのみだ。
『彼は誰時に、花一匁。焔燐瞬く欺調べ、黄泉戀坂へおいでませ』
　童歌と共に、灼ける焔翼の幻より浄化の光が放たれていく。
　その光の中に熔けるようにして、孫尚香の姿は消えていくのだった。

●⑧曹真
　劉備から対応を命じられた、北からの侵略者……遼東半島に布陣する、吸血ロマノフ王朝の軍勢を完全に無視して、曹真は配下の軍勢の全ての力を、ディアボロスへと振り向けていた。
　明らかな命令無視。だが、それを非難するものは、曹真配下には存在しなかった。
「これは、曹操様の弔い合戦である。ディアボロスを一人でも多く地獄に引きずり落とすのだ」
　戦場に響き渡る曹真の檄に、彼に従う蟲将たちが、ガンガンと武器を打ち鳴らして呼応する。
　その様子は、まるで本物の三国志時代の戦場をみるかのようだった。
　三国志演義において、曹真は司馬懿の引き立て役のような扱いであったが、史実においては、曹真こそが諸葛亮を何度も敗退させた名将だとされている。
　曹操の救援こそならなかったが、彼は今度こそ、軍勢を率い自らディアボロスに立ち塞がっていた。

「これが曹真の統率力か。曹操の救援を防ぐため、お前の部隊とは何度も戦ったが、ここでケリをつけさせてもらうぞ！」
　獅子堂・崇（破界拳・g06749）はそう宣言すると、決戦の地へと駆けだしていく。
「両翼で包み込み押しつぶせっ！」
　迎え撃つ曹真の陣形は、いわゆる鶴翼の陣。
　曹真直卒の本陣でディアボロスの猛攻を受け止め、その間に左右の軍勢でディアボロスを包囲殲滅しようという陣だ。
　対するディアボロスの陣形は、敢えて言えば『鋒矢の陣』。
　突破力のある崇達前衛が楔となって敵陣を穿ち、その空いた穴にモリオン・スモーキー（存在奪われし魔術発明家・g05961）らが乗り込んで敵陣を食い破る、攻撃特化の突撃陣形だ。
「この土地は最終人類史である我々の物。この地に根付く全てのものは最終人類史に生きる我々の物。 必ず取り戻します。 モリオン・スモーキー、ジュエラー参ります」
　曹真がどんな陣形を用い、どんな策を弄したとしても……、その策ごと叩き潰せば良い。
　――抜刀！　の掛け声と共に宝石をはめ込んだ刀で敵を両断して強引に突破するオリオン。
　彼らの前に、曹操残党など物の数では無かった。
　いかに曹真が防御を固めようと、その防御を上回る攻撃をぶつければ、破れぬはずなど無いではないか。

「うぎゃぁ！」
「もうだめだぁ……曹操様を倒したディアボロスに我らが叶うはずがぁ……」
　かたきを討つという決意も虚しく、次々と屠られていく蟲将の軍勢。
　そして、遂に、曹真の本陣へとディアボロスは辿り着く。

「……漸く面合わせか。 ……アンタの動きをどうこう言う気はサラサラねぇ。ただ… …蟲将のスタンスと相容れることはまずなさそうなモンで」
　光道・翔一（意気薄弱なりし復讐者・g01646）が偃月刀を突き付けて、曹真を氷雪暴風領域に追い込むと、更に曹真の反撃を完全に回避して見せる。
「……一先ず、アンタの命運はここで断ち切る」」
　翔一の攻撃は、曹真の鎧は砕け、外骨格にさえ亀裂を入れる痛撃となり、曹真に片膝をつかせた。

「曹操の仇……か。曹操を倒したメンバーじゃなくても恨むのは仕方がない。だが、それはこちらも同じこと。ならば、どちらか倒れるまで戦うとしましょう」
　片膝をついた曹真と相対した四十万・八千代（悪食ハッカー・g00584）は、そのハッキング能力により曹真の存在をゆがめようとハッキングツールを駆る
「おのれ、ディアボロス。この俺が、むざむざやられはせぬ。戦陣俯瞰！」
　曹真は、伏兵を使って戦線を盾の層とするが、八千代の攻撃は防げない。
「イグジストハッキング」
「ぐぬぅ、見事な一撃なり。ディアボロス、名を聞いておこうか」
「俺の名は四十万・八千代。曹真の名を奪っただけのお前には、勿体無い名だが、覚えておくがいい」
「四十万・八千代か不思議な響きの名だ。まぁ良い、お前の死体から生まれた蟲将には、その名を与えよう。きっと、強い蟲将となる事だろう」
　そう言い合った八千代と曹真は、満身創痍ながらも距離を取り、再び対峙する。

「これが最後だ」
「あぁ、そうだな」
　そして放たれる２つの攻撃。
　曹真の重量級の巨体から放たれた攻撃が八千代を押しつぶさんとするが、八千代はその重圧に受け流し、ハッキングツールを操った。

「これで、最後だ」
　先の攻撃で亀裂の入っていた外骨格に向けて放たれた攻撃は、狙いたがわずに、曹真の体を貫き、その命を貫き通したのだった。

「曹魏最後の将、曹真、四十万・八千代が討ち取ったり！」

　大戦乱の地を席巻した曹の旗は倒れ、再び立つことは無いであろう。

●⑩慈愛の賢女『張春華』
　大戦乱群蟲三国志奪還戦の初手、無双馬と共に突貫する無堂・理央（現代の騎兵？娘・g00846）を先頭にして、ディアボロス達は兵馬俑坑に乗り込んだ。
　彼らは慌てふためく蟲将たちを蹴散らして、坑道の奥へと進軍していく。
「虎牢関が墜ちる前に、ディアボロスの軍勢が現れるとは思っていなかったよね。準備不足のところ、申し訳ないけどここは落とさせて貰うよ！」
　理央は、そう独り言ちつつも、兵馬俑坑の地下へと進んでいく。
　兵馬俑の戦力は、七曜の戦を見据えた精鋭であるが、実戦配備は出来ていなかった。
　そして、可能な限りの戦力を投入する為には、時間ギリギリまでの準備を行っていたのだろう。
　つまり、数時間程度の誤差であろうと、敵の虚を突く事で、有利を得られたという事だ。
　理央はその後も、多数の敵を撃破して、兵馬俑坑を進むディアボロスに道を指示していった。

　そして、地下の最奥。
　不本意な状況で戦闘に引きづり込まれた張春華は、愁眉を曇らせつつも、作戦指示の伝令を矢継ぎ早にして、どうにか戦線の立て直しを図るも、その動きよりもディアボロスが早い。
　張春華を狙って先行していた雅諒院・基経（天狗道からの使者・g00191）が、初期の奇襲効果を最後まで生かし切り、張春華の前に、颯爽と躍り出たのだ。

「張春華、司馬懿の正室の名を持つだけあり指揮能力は見事！　しかし汝らの計画は御破算、蟲将の命運は既に尽きているのだ！　悪鬼撃滅・金剛杵！」
　そう言って巨大化した独鈷所で張春華を穿とうとする基経。
　だが春華は、羽を閃かせて直撃を避けると、その言葉を拒絶した。
「いえ、まだです。蟲将の命運は尽きてなどいません。あの人が、仲達が断片の王となれば、まだ生き残る道がある筈です」
「ふん、あんたの史実の夫がどうすると？　今の断片の王は劉備のはずだが？」
「劉備ですか……。自ら戦わずして断片の王となったものに、価値などありません」
　張春華は唾棄すべきものとでもいうように続ける。
「断片の王になるのは目的では無い。断片の王となった上で、いかにして七曜の戦を勝ち抜くかが重要なのです。だというのに……」
　春華が口汚く劉備をののしるのを聞き、基経は「これは地雷だったか」と胸中毒づくが、貴重な情報だと話を合わせる。

「劉備には諸葛亮がついてるだろう？　そのあたりは諸葛亮が考えているだろうよ」
「劉備は、いざとなれば、自分だけ助かれば良いと考えて、他の蟲将を簡単に見捨てるでしょう。諸葛亮もそれを肯定するはず……でなければ、いくら断片の王の候補として脅威であったとしても、味方であった関羽を謀殺などするはずがありません」
　春華はその会話で基経の油断を誘っていたのか、不意を突いて攻撃を叩きこむ。
　この攻撃には、基経も不意を突かれて膝をつくことになった。

「卑怯だぞ、張春華！」
「戦場で会話に興じるなど油断でしかありませんよ」
　基経は春華を非難するも、正論で返されれては「そいつは、ごもっとも」と納得せざるをえなかった。

　基経の轍を踏まぬように、ディアボロス達は油断することなく春華を追い詰めていく。
　薄絹のような衣は裂け、羽は燃え、触角は切り裂かれ、それでも春華は勝利を諦めない。
　いや、少しでも、ディアボロスの足止めをする事を諦めない。

「ハァハァハァ。この異常な強化度合い……が、何の条件も無く行えるはずはありません。必ずや、時間制限がある筈。ならば、それまで、耐えてみせる」
　そう言って抗う春華にとどめをさすべく、理央がランスを構え、クロフサと共に突っ込んでいく。

「時間制限があるってのは、正解だよ。でも、そこまで君や司馬懿が耐える事は不可能だね、戦乱群蟲三国志は今日終わる！　『戦騎吶喊！』」
　理央の鋒先に捉えられた張春華の体が両断され、司馬懿の名を呼びながら息絶える。
　かくして、長安の東、司馬懿へ続く道が切り開かれたのだった。

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→有力敵一覧
→②麋竺（有力敵HP1100000→333146 / 敵残存率60%→39%）
→③弓腰姫・孫尚香（有力敵HP1300000→0 / 制圧完了！）
→⑧曹真（有力敵HP1700000→0 / 制圧完了！）
→⑨『五将軍』張郃（有力敵HP1600000→1462273 / 敵残存率65%→60%）
→⑩慈愛の賢女『張春華』（有力敵HP1400000→0 / 制圧完了！）
→重傷復活者一覧