平安鬼妖地獄変奪還戦　第2ターン結果

（→開始時の状況）

●⑤『鬼馬軍団』付喪鬼将・阿修羅
　引き絞られた矢のように、新宿島に向けて放たれた、空飛ぶ妖怪船『鬼之鳥船旗艦・竜宮』。
　それは、敗残と言っても良い程に戦力を削られた『鬼馬軍団』による、そして命を懸けた最後の一矢であった。
　だが、
「凍てつきなさい、アイスエイジブリザード」
　有栖川宮・永遠（玲瓏のエテルネル・g00976）の凍てつく吹雪が戦場を凍らせ突破口を開くと、続くディアボロス達が、猛攻によって、その傷口を広げ暴れまわる。
　鬼馬軍団の武者たちは、その攻撃に脆弱な抵抗をするのみ。
　考えて見せれば、大江山から続く撤退戦から、ファーストアタックによるディアボロスの強襲に次ぐ強襲。
　かつては、天正大戦国のジェネラル級『山名宗全』と渡り合っていた『鬼馬軍団』も、その戦力は激減し、もはやまともに戦う力は残っていないのだ。

「オ前達ノ飛翔デハ、コノ高度ニハ辿リ着ケナイノデハ無カッタカ！」
　阿修羅は、六本の腕を叩きつけるようにして、目の前に現れたプターハ・カデューシアス（エジプトの龍人・g03560）と相対する。
　その力は怪力と言っても良い膂力であったが、プターハは、阿修羅の重量級の一撃を借上で受け止めながら、その【怪力無双】でもって押し戻した。
「ナントユウ膂力。コノ我ニモ匹敵スルダト……」
　今のプターハは【怪力無双】で３０トンのものすら持ち上げる。パラドクスの攻撃には影響は無くとも、戦いを有利にするための戦場のやり取りでは、如何なくその力を発揮する。
　特に、戦いの駆け引きで有利を取ろうとする相手に対しては、その効果は高い。

「この戦場において、渡し達ディアボロスは最大の力を発揮できるのです。飛翔しかり怪力しかり！」
　プターハはそう言うと、青白き隼を舞わせ阿修羅を打ち払った。

　プターハの一撃の後、戦いは、すぐに終盤戦へと突入した。
　それだけの戦力差が生じていたという事だ。

「コレ程ノ力ヲ隠シ、我ラヲ謀ッテイタノカ！」
　激高する付喪鬼将・阿修羅に、「騙したわけでは無いのですが」と、ウィズ・ホーリーブルーム（柊箒の魔法使い・g04982）は申し訳なさそうに肩を竦めた。
　これまでの戦いも自分達は全力で戦ってきたし、決して舐めプしていたわけでは無い。
　この力は『ディアボロスウォー』でのみ発揮できる力なのだから。

「ですが、僕達の力を認めてあきらめてくれると……、少しだけ嬉しいです」
　ウィズがそう尋ねれば、付喪鬼将・阿修羅は、断固として撤退を拒否した。

「戦場ノ趨勢ハ定マッタ。我ラ『騎馬軍団』ハ目的モ果タセズ、全滅スル。シカシ、コノ戦イハ決シテ無駄デハ無イ！」

　確かに鬼之鳥船による敵拠点突入は阻止されるだろう。
　だが、その為にディアボロスは多大な戦力を投入しているのは間違いない。
　であれば、他の戦場は手薄となっているおり、そこに、勝機を見出せるはずだ。

　そう確信した、付喪鬼将・阿修羅は、鬼面から怨霊を吐き出しつつ、ウィズ達ディアボロスに正対し戦い続ける。
　自分が戦い続ける一分一秒が、平安鬼妖地獄変の未来に繋がる事を信じて。

　だが、その覚悟にも限度がある。
　幾多のディアボロスの攻撃を受け、遂に、阿修羅の命運が尽きようとしていた。

　ウィズは、獅子奮迅の阿修羅の戦いに気圧されつつも、魔法使いの箒杖を振るって、健気に戦い付喪鬼将・阿修羅を追い詰めていく。
　ウィズは、この戦いに阿修羅が思うような意義が無い事、ディアボロスに勝利したとしても、安倍晴明の降伏により、平安鬼妖地獄変のディヴィジョンが失われる事は確定している事を知っていた。
　だが、その事を阿修羅に伝える事はせず、その優しさから、彼の誇りを守る事を選んだ。

「誇り高き付喪鬼将・阿修羅さん。あなたの覚悟、僕の魔法でお相手します」
「良カロウ、本懐デアル」
　ウィズが呼び出した大きな釜と、阿修羅の六腕の剣が衝突する。
「煮えろ沸き立て　魔女の釜　狼に蛇　蝦蟇　元の食材　なんであれ　美味しく煮込む　魔女の釜」
　ウィズの詠唱と共に、釜からは魔力の腕が伸び、その腕と阿修羅の六がぶつかりあう。
　激しい攻防。
　だが、そのぶつかり合いを制したのは、ウィズのStewshであった。

「あなたの強い意志は、僕が受け取りました。阿修羅さん、あなたの誇りは忘れません」
　ウィズの大釜に既に大半が煮溶かされ、勝敗を決した。
　その攻撃によって屠られた阿修羅は、しかし、自らの士に意味がある事を信じて、その死を受け入れ満足そうに逝ったのだった。

「……安倍晴明さん、あなたは、許せないよ」
　そんな阿修羅の死にざまを看取ったウィズは、彼のような武士の献身を嘲弄するが如き安倍晴明の姦計に、憤りを隠すことが出来なかった。

●⑥『鬼馬将軍』源頼剛
「お初にお目にかかります。 革命家、レイラ・イグラーナと申します。 縁も恨みもございませんが……成すべきことを成すため、お命頂戴いたします」
　騎馬軍団が守る空中戦艦『鬼之鳥船』に乗り込んだレイラ・イグラーナ（メイドの針仕事・g07156）は、甲板に降り立つと同時に、周囲の騎馬軍団に躍りかかり、その心臓を貫いた。レイラに続いて、多数のディアボロスも攻撃を開始する。

「ディアボロスを止めろ！」
「ここで止められねば、我らの死に意味が無くなるぞ！」
　騎馬軍団の武士達は、誇りであろう鬼馬から下馬し、徒歩の兵卒としてディアボロスの攻撃に耐え、必死に抗い続ける。

「あなた達は、何故倒れないのですか？」
　レイラは、戦力をボロボロにされた筈の鬼馬軍団の兵士達の士気が旺盛な事に驚くが、それもむべなるかな。
　鬼之鳥船をディアボロスの本拠地たる新宿島に突撃させるという戦術は、成功すればディアボロスに多大なダメージを与える事ができる。
　だが、それだけで本拠地を制圧する事は不可能なのだ。
　つまり『鬼馬軍団』は、作戦が成功したとしても、死ぬまで戦って最後には全滅する決死隊としか言えない。
　決死隊である『鬼馬軍団』は死を恐れない。
　だが、自らの死が『無意味』となる事は絶対に許せない。
　だから戦う。
　彼我の戦力差が如何ほどであろうと、心折れる事無く戦い続ける。
　レイラを先頭に、鬼之鳥船に乗り込んだディアボロス達は良く戦い、船の制圧を進めていくが、必死に抵抗する敵に辟易せざるを得ない。

「一矢報いようって覚悟は見事だが、めんどくせー。こういう時は頭狙いだな」
　神山・刹那（梟雄・g00162）は、そう言って、敵地の奥へ奥へと切り進み、戦いの指揮を取る、『鬼馬将軍』源頼剛の元の前へと飛び込んだ。

「せめてもの手向けだ、俺の全力で相手するぜ！」
　そう叫んだ刹那は、残像が残るような速度でフェイントをかけて、源頼剛の愛馬の懐に入り込んだ。
「鬼馬は確かに強力だが……懐に入れば、小回りが利かない無用の長物に過ぎない！」
　そう告げた刹那は高速斬撃で、頼剛を切りつける。
　だが、頼剛はギロリと刹那を睨むと、馬上より渾身の大太刀を振るって迎え撃ち叩き落とした。
（「さすがに強い。だが、決して敵わない相手では無い」）
　源頼剛の太刀を転がるように回避した刹那は、低い体勢から飛び込むように、頼剛の操る鬼馬の懐に再び入る。
　短期決戦を狙った刹那だったが、どうやら戦いはまだまだ続くようだった。

　だが、その長い戦いも終わりの時を迎える。
　他の戦場は短期でケリがついているようで、残るはこの戦場のみ。

「あなたを倒せば、鬼馬軍団は全滅だよ！　華麗倒して、士気をあげちゃんだから」
　最後の止めは、まっかせなさい！　とばかりに、リディル・ヴェント（ゲットレディ・g00550）が、フライトドローンを足場に頼剛にとびかかる。

「ほざくなディアボロス。我は、我が鬼馬軍団は永遠に不滅なのだ！」
　満身創痍の頼剛はだが、言葉の通り、その場で鬼馬を右回りに旋回させると、その勢いのまま体を投げ出すように反らせると、リディルを足元のフライトドローンごと大太刀の横凪で一閃してみせた。
　それはまさに、鬼馬一体の攻撃の真髄であったかもしれない。

「やるね、さすがは鬼馬軍団の将軍。そうこなくっちゃ」
　ダメージを負ったリディルは、だが、戦意を衰えさえる事無く頼剛を見やり、口角を上げた。

「小細工は通用しないようね。でも、それなら、正々堂々と戦うだけよ。さぁ『鬼馬将軍』源頼剛！　いざ、尋常に勝負ね！」
　その言葉と共に、リディルは跳躍して頼剛の上を取ると、旋風のように桜花絢爛を振るって、反対側に着地。
　そのまま、両手で桜花絢爛を持ち貫き通す矢のように突進する。
　頼剛は、リディルの動きに合わせて鬼馬を操り大太刀を振るうが、その変幻自在の動きに翻弄され始める。
「以前の戦いよりも、動きが段違いだ」
　頼剛は悪態をつくが、それでも、なんとか体を捻ってリディルの鋭鋒を避ける。

　だが、頼剛の敵はリディルだけでは無い。
　配下を倒し戦場を制圧したディアボロスが次々と攻撃を仕掛けてきた。
　その全てに反撃した頼剛は、肩で息をしつつ、リディルを睨みつけて怨霊と呪詛をまき散らす。
「正々堂々が聞いて呆れる！」
「何言ってるの。仲間と一緒に戦うのは、十分正攻法の半範疇よっと！」
　その悪態をリディルは軽く受け流すと、囲まれて防戦一方となった頼剛の隙を突き、自らの気を高めて、最高の一撃を放たんとする。

「いただいたわ！」
　狙いすませたリディルの一撃は頼剛の胸を貫き通し、その命を刈り取った。頼剛は呪詛の言葉と共に鬼馬から堕ち、そして、彼の愛馬と共に塵となって消え去った。

●⑦源頼光
「よし、一気呵成に鬼之鳥船を制圧するぞ！」
　『鬼馬軍団』の長である源頼光の戦場に攻め込んだ、衛守・長治（不確かなる赤竜武人・g03559）は、必勝の念と共に『鬼之鳥船旗艦・竜宮』に切り込んだ。
　この戦場だけでは無い。残る全ての戦場にも、同様にディアボロスが乗り込んでいる筈だ。
　『鬼馬軍団』の他の将達も、それぞれの戦闘で手一杯で、頼光を援護する戦力は無いだろう。

「敵も覚悟を決めているようだが、我らも想定し覚悟を決めている。甘く見るな」
　長治は迎撃して来た敵をカウンターで叩き潰すと、仲間のディアボロスは周囲の敵を打ち払いつつ、源頼光への道を切り開く。

　そして、ディアボロスが向かった先。
　史実では、頼光四天王という英雄達を率い、数々の武功をあげた源頼光は、この改竄歴史においては、女性型の鬼武者であった。

「源氏に歯向かう者悉く塵殺すべし！」
　自らに殺到するディアボロスを、愛刀「童子切安綱」で薙ぎ払う頼光。
　だが、多勢に無勢であれば、その力にも限界はあろう。
　既に戦いの趨勢は確定的に決まっており、ディアボロスの勝利は揺るがない。

　先陣として頼光の元に切り込んだリズ・オブザレイク（人間の妖精騎士・g00035）が、頼光に問う。
「源頼光、武士の棟梁であるあなたに、湖の騎士である私が問います。安倍晴明は、断片の王の誇りを捨て、天正大戦国に降伏して生き延びようとしています。あなたは、それでも戦うというのでしょうか？」
　この状況で何故戦うのか、安倍晴明の為に戦う理由など、彼女達には、もはや無い筈。リズはそう考えて問いかけたが……だが、頼光の戦意は衰えない。

「そのような戯言に惑わされると思ったか。安倍晴明は確かに胡散臭い奴だ。だが、奴は断片の王なのだ。この日ノ本の大海に漂う泡沫のような平安鬼妖地獄変を護る為に非情なる策を弄し、勝利への道筋を見出して見せた断片の王なのだ」
　頼光は、そう言うと、地獄の業火を童子切にまとわせてリズごと周囲のディアボロスを薙ぎ払った。

　平安鬼妖地獄変の領域は狭く、更に、四方を天正大戦国に攻められ危機的状況にあった。
　その平安鬼妖地獄変の四方を、玄武、道真公、将門公らを結界化して護り、残る一方を騎馬軍団の力で防ぐ態勢を造ったのが、安倍晴明である。
　更に、地獄変によって京の都の人間を全て生贄に捧げて強大な力を得るという逆転の策すら用意して見せたのである。頼光にとって、安倍晴明の後背を疑う理由は無いのだろう。

「あなたの、戦う理由、おかしいよ。安倍晴明はあなた達を裏切ってるよ。ホントなんだよ」
　晴明がなした様々な事柄は、自分を高く売り込む手段に過ぎなかったのだと、ノナメ・クロス（星の子・g00031）が話を引き継ぐが、頼光がそれを信じる事は無かった。
　敵であるディアボロスの言葉が信じられないというのも理由であるが、それ以上に、

「断片の王という立場は、それほど軽い物では無い。断片の王にとって、ディヴィジョンは自分の血肉そのもの。それを切り渡して敵に渡すなど、ありえる事では無い！」
　断片の王という立場への信頼が勝ったのだろう。

「それじゃしょうがあらいません。あなたを、やっつけるよ。それが、今の私の、戦う理由だから……」
　ノナメがそう宣言して、サザンクロスを閃かせると、頼光も童子切を大上段に構えた。

「この作戦を始めた時点で、平安鬼妖地獄変の未来の為に命を散らす覚悟など出来ている。今更だ」
「その覚悟に意味がなくなってるんだよ。分かんないかな！」
　そう言いつつ、ノナメが合図すると、周囲のディアボロスが頼光への一斉に攻撃を浴びせかける。
　いかに、ジェネラル級の頼光が強敵であろうとも、数の差は覆せない。

　その弾幕の中、それでも戦意を衰えさせない頼光に、ノナメのサザンクロスから呪いが解放され、頼光の体を伸縮していく。
「さよならなんだよ！」
　そのノナメの一撃は……「平安鬼妖地獄変に未来を……」　頼光の戦いの意志と共にその命を絶ち切った。

「あなたは、きっと平安鬼妖地獄変の仇花だったんだよね」
　ノナメは、そう言い残すと、新たな戦いの場を求めて、戦場を後にしたのだった。

●⑮鬼女紅葉
　奈良の都、平城京。
　平安京の時代には既に農村になっていたとされる平城京だが、この平安鬼妖地獄変というディヴィジョンにおいては長岡京と共に、かつての都としての建築物などが多く残されている。
　だが、人間の都としての栄華などはそこにはなく、平城京は鬼や妖怪の集う魔都と化していた。

　パラドクストレインにより、平城京へ降り立ったディアボロス達は都を北上。
　都の北側に位置する『平城宮』へと迫っていた。
　それを阻止せんとするのは、都を埋め尽くしていた無数の鬼や妖怪といったクロノヴェーダの大群の姿だ。
　ジェネラル級の鬼『鬼女紅葉』が率いる軍勢は、しかしこれまでの戦いで大きく消耗していた。
「ハハハハハ！　来いよ、来いよディアボロスども！　私はここだぁ！！」
　信濃の戸隠山に伝わる伝説の鬼の名を持つ『鬼女紅葉』が、声に喜色を乗せ、舞い踊るようにアミリアス・ヴェルザンディ(g01902)へと鋭く伸びた爪を振るって躍りかかる。
「くっ、やるものだね。解剖用の検体になってもらおうか！」
「ケンタイ？　勝ったら好きにするがいいさ！」
　既にその体はこれまでの戦いで大きく傷つき、青い髪も鮮血に染まっている。
　だが、その勢いは体が傷つくにつれ、増しているかのようにさえアミリアス達には思えた。

　妖怪達もまた同様の気質の者たちが揃っているのだろう。
　劣勢も顧みず、酒気をはらんだ息を吐き出し、暴力への欲望もあらわにディアボロス達へと襲いかかってくる。

　だがそれでも、一方的と言って良い勢いで、ディアボロスは妖怪達を駆逐していた。
　ディアボロスや天魔武者達との戦いで精鋭の多くを失った現状、残存する妖怪たちの質があまり高いとはいえないのは一因だろう。
　それ以上に、ディアボロス達の勢いは鬼女紅葉をさえも圧倒していく。

「刻は満ちた。いま、終の鐘が鳴る」
　茜來・雪璃（朧夜ノ蝶華燈・g00793）が意識を鬼女紅葉へ集中させる。
　それと共に、死の舞いを踊る鬼女紅葉の周囲に、華やかな音色が響き渡った。
「ほう！？」
　目を丸くした音と共に舞い上がるのは、幻影を映す玻璃の花弁。
　一音ごとに映る景色を変える花弁は、紅葉が枯れ葉に変わるが如く、鬼女の身体を蝕み風化させていく。
「やるねぇ、だがあたしの舞いも御覧じろだ！」
　対する紅葉の周囲に、桜吹雪が舞い散る。
　その舞いが最高潮に伴う強烈な踏み込みは衝撃を伴う破壊の力と化してディアボロス達を襲うのだ。

　玻璃の花弁と桜の花弁、パラドクスの花弁同士が弾け飛び、干渉し、互いの勢いを削がんとしていく。
　そして玻璃の花弁が放つ最期の一音が弾けた時、紅葉は動いた。
「死、に、さ、ら、せ！！」
　強烈な踏み込みと共に、衝撃が玻璃の花弁を吹き散らして雪璃へ迫る。
　だが、
「外した！？　このあたしが！？」
　玻璃の花弁が映す幻影は、雪璃の現在位置をわずかにずらしていた。
　そして雪璃がいるのは、
「懐、もらった……！！」
　玻璃と桜の花弁に身を沈め、紅葉へと迫った雪璃は魔晶剣を薙ぐように振るう。
　散りゆく花弁がひときわ高い音を発すると共に、鬼女紅葉の体は腹部から両断されていた。
「酔っ払いが、あたし達の前に立つんじゃないよ」
「ひひ……そういうがあんたも復讐に酔ってるんじゃないか？　復讐ってやつにさ」
「……さっさと失せな」
　雪璃の言葉にやれやれといった様子で一笑し、鬼女紅葉の姿は消滅していくのだった。

●⑰織田信雄
　平安鬼妖地獄変に隣接する、戦国時代日本のディヴィジョン『天正大戦国』。
　そのディヴィジョンから平安鬼妖地獄変に攻め入ったジェネラル級『織田信雄』の姿は、海岸線にあった。
　より正確には、いつでも平安鬼妖地獄変から逃げられるよう、ディヴィジョンの境界線にいたのである。
「安倍晴明を降伏せしめた拙者が、そうやすやすと討ち取られてはならぬだろう！」
　そう嘯く本人であるが、周囲の者たちは皆呆れた様子だ。
　もっとも、あえて苦言を呈する者もいない。
　アヴァタール級やトループス級は、ジェネラル級に逆らうことは出来ないのだ。
　そのジェネラル級も、断片の王に逆らうことはできないのだが。

　そんな信雄はディアボロス・ウォーが始まると同時に、周囲の者たちの命が流れ込むかのような急激な力の上昇を感じ、そして同時にこれが『危険な事態』ではないかという危惧にも襲われていた。
「これは晴明の秘術……ではない。ディアボロスの仕業か」
　不安のあまり、頭部の情報収集装置をくるくると回転させ、周囲をモノアイを動かして観察する信雄。
　落ち着きのない姿に、周囲の者たちは沈黙する。

　そして、信雄の元にもディアボロスの攻撃の手は迫る。
「来、来た！　来たぞ！　私を守れ、守るのだ！！」
「あれが敵将なんですか？　なんだか、調子狂いますね……」
　信雄が繰り出してくるパラドクスにイグジストハッキングで反撃しつつ、有珠川・いちご（ないしょのお嬢様・g02084）は首をかしげる。

　安倍晴明から、彼の計画を打ち砕いたディアボロスの恐ろしさを伝え聞かされていた信雄は、完全に逃げ腰であった。
「まあ、逃げるのがお得意なら今日のとこはさっさとお帰り願いますかね。はろーはろー、魔王の息子くん。来てもらって早速だけど、手ぶらで蜻蛉返りをお願いするわ。ごー、だいふく！　いい感じにぶちかましといてー！！」
　冰室・冷桜(g00730)の命令に従い、メーラーデーモンが天魔武者達の間で暴れまわる。
　やがて、ディアボロス達は退くが、信雄は身を震わせて軍配を振るい、指示を下す。
「ディアボロス……想像以上に恐ろしい相手やもしれぬ！　拙者は父上に報告せねば！　総員撤退だ！」
　ジェネラルの命令に従い、織田信雄の配下達は最初からそうすると決めていたかのように速やかに陣を畳み、整然と撤退していくのであった。

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→有力敵一覧
→③山名宗全（有力敵HP1366860→1217385 / 敵残存率25%→22%）
→⑤『鬼馬軍団』付喪鬼将・阿修羅（有力敵HP565142→0 / 制圧完了！）
→⑥『鬼馬将軍』源頼剛（有力敵HP1179649→0 / 制圧完了！）
→⑦源頼光（有力敵HP648663→0 / 制圧完了！）
→⑧宇治の橋姫（有力敵HP720565→572380 / 敵残存率46%→42%）
→⑨河太郎翁（有力敵HP690292→651385 / 敵残存率19%→19%）
→⑩玄武（有力敵HP803103→713041 / 敵残存率51%→49%）
→⑬菅原道真（有力敵HP1719078→1667988 / 敵残存率53%→52%）
→⑮鬼女紅葉（有力敵HP139778→0 / 制圧完了！）
→⑯賀茂黎瞑（有力敵HP1200000→1083921 / 敵残存率55%→53%）
→⑰織田信雄（有力敵HP850000→841778 / 敵残存率100%→99%）
→⑱安日長髄彦（有力敵HP1100000→1087874 / 敵残存率100%→97%）
→重傷復活者一覧