獣神王朝エジプト奪還戦　第8ターン結果

（→開始時の状況）

●⑬筋獣のゼグマアト
　獣神王朝エジプトにに最後に残されたジェネラル級筋獣のゼグマアトは、その名が示すように、まるで獣のように荒れ狂っていた。
「孤軍奮闘、いい加減、止まりなさい！！」
　瑚雛・凛櫻（滅びの箱庭、綻びの記憶・g00518）はIdentity Crisisに凍結魔弾を装填、冷気を封じたミサイルがゼグマアトへ向けて放たれる。

　だが、その一撃にゼグマアトは止まることなく、自らの身体に新たな聖句を刻みつける。
「我が熱く燃ゆる信仰心！　この程度で凍りつかせられるものかよ！！」
「理不尽……！？」
　逆にミサイルのような勢いで突っ込んできたゼグマアト。
　その豪腕が凛櫻をかすめただけで、寿命が縮んだかのようにすら感じる。
「……もう諦めよう。君の信じる神はもういない、クフ王ももう倒される」
「いいや、終わりはせぬ！　たとえ俺一人になろうとも。信じるものがいる限り……神は、滅びぬのだ！」
　ゼグマアトは全身から血を滴らせながら、イシュアを見た。
　そこに宿るのは狂信、あるいは盲信だろうか？
　だからこそ、純粋なものであるかのように、イシュアには感じられた。
「貴様らディアボロスを、セクメト様の神殿に捧げ、蘇りのための供物としよう」
「そんなことは不可能だよ」
「只人すら蘇生し、こうして力を得られる。神が蘇生できないなどあるものか！　貴様らを滅ぼし、その功績をもって、偉大なるクフ王の御力により、セクメト神の再臨を願う……！！」
　それは、信仰というよりも願いなのかもしれなかった。
　そして、叶わぬ望みだ。
　アヴァタール級やトループス級には外見の似た個体が現れることがあるが、それはあくまでも似た別の存在。
　もし、クフ王が再びセクメトの名を持つ存在を出現させたとしても、それはゼグマアトが信奉した神（エンネアド）とは別神に他ならい。

「だったら、その炎、その狂信、その想い、ここで断たせてもらう」
「『信仰』の力とは、恐ろしいものですね」
　藤原・東子(g08398)は、ゼグマアトの姿にそう感じずにはいられない。
　それこそが、クロノヴェーダ達が『信仰』をエネルギーを得られる感情の一つとしている所以なのかも知れない。
「ですが……」
　己の信仰を寄る辺とし、猛威を振るうゼグマアトの姿を、東子はしっかりと見つめた。
「敵であるものの滅びを見届け、勝鬨が恐ろしくないものになるよう……」
　克服していかねばならない。己の心を。決意と共に、両の眼を見開き、ゼグマアトの全身をくまなく観察する。
「わたくしは強い……強い！」
　言い聞かせるようにつぶやいた東子の指が、冷えた砂の上を滑走するゼグマアトへと符を放つ。
　ゼグマアトの体に刻まれた、その身を守る聖句を覆い隠すように張り付いた符へと指を突き出し、東子は告げる。
『天より落つるはめぐみの光』
　時ならぬ雷鳴が轟き、雷を受け、焼け焦げた姿となったゼグマアトが倒れ伏す。
「君の信じる心は間違っていなかったよ、相手は間違っていたけどね」
　イシュアの言葉と共に、ゼグマアトの肉体は燃え尽きた灰のように崩れ落ち、信奉する神を追うかのように風に乗って消えていった。

●④断片の王『クフ王』
　獣神王朝エジプト奪還戦は、戦争開始直後から『百門の都テーベ』を挟んで、断片の王『クフ王』の拠点『太陽の船』と、ディアボロスの本拠地『新宿島』が直接相対するという異例な状態で開始された。
　しかし、双方の本拠地が正面からぶつかり合うかと思われた戦いは、新宿島を護るバリアと、クフ王を護る守護によって膠着状態となり、戦禍は、日本の国土の40倍近い、広大なアフリカ大陸北部全域へと広がっていく……。
　この広大な戦場では、他勢力の介入もあって、敵味方が入り乱れる大乱戦となったが、ディアボロス達の的確な作戦によって、次第に、ディアボロスの優勢が確立されていく。
　そして遂に、獣神王朝エジプトに侵入してきた４つのディヴィジョンを撃退した葛葉・狐狛(g00840)達は、クフ王との決戦場である太陽の船へと大攻勢を開始した。

「さて、これが最後の攻撃だ」
　既に守護の力を失ない弱体化したクフ王の軍勢は散々に打ち据えられており、既に戦力は形骸化している。
　クフ王との決戦の為に『太陽の船』に乗り込んだ狐狛は、激しい戦いの痕跡の残る通路を通り抜けると、ほとんど抵抗を受けずに、クフ王の元へと向かった。
　立ちふさがるのは、最後までファラオを守護しようとするエンネアドの群れ。
　だが、その抵抗は決して強くはない。

「薄明の地に羽ばたく翼、疾く来たりて己が理を示せ。急々如律令」
　狐狛は、残存するエンネアド達に向けて敵を切り裂く光の呪術を放つと、その抵抗を排除し、クフ王に向かうディアボロス達を援護していく。

「ファラオに仇なすものに、死の制裁を」
「我らこそ、神の最後の盾なり」
　それでも必死に食らいつくエンネアド達だったが、その抵抗をも狐狛達が踏みつぶし、大将首たるクフ王への道を切り開いていく。
　遂に、戦いは最終局面に至ろうとしていた。

「死者と生者が再び会える世界……正直に言うと 夢のようだと思った。だが、夢は夢のままであるべきだ 死人は死人に戻る時が来たのだ」
　弱体化したクフ王の姿を見つけたジズ・ユルドゥルム(g02140)が真っ先に飛び出すと、自らを囮として、不可視の煙状態でジンのケレンを顕現させる。
　そのジズの動きを捕らえ、クフ王は、その身に残る神の威光によってジズを打ち据えるが、ジズを撃破するには至らない。
「この世界に生きる仮初の生命を終わらせるため 持てる力の全てでクフ王に攻撃を」
　その攻撃に耐えたジズは、ケレンを巨大な蟻地獄に変身させると、クフ王を、よって立つ大地ごと攻撃してみせた。

　もはや、クフ王の勝利は無い。
　そう確信してのジズの攻撃であったが、クフ王は迫りくる滅びを前にしてもなお、毅然とした面持ちで、ディアボロス達に相対していた。

「余が、余こそが、全てのディヴィジョンを再統合し、人類の全てに君臨する神たるファラオ、クフ王である」
　透き通る様に青い肌から神々しい光を放ち、そう宣ずるクフ王は、まさに神の化身たるファラオに相応しい矜持であっただろう。

　だが、奪還戦開始直後は圧倒的な力を誇っていたクフ王であっても、全ての守護を喪失してからは、その力は大きく陰っている。
　坂登・悠日理(g04140)は、そのクフ王を投げ槍『Railgun』の射程に捕捉。

「クフ王、お前で最後だ。獣神王朝エジプトは奪還させてもらう！」
　悠日理は『Railgun』に雷を帯電させて投げつけ、電撃がクフ王の体を穿つ。
　だが、クフ王は、その攻撃に耐え、悠日理に逆に語り掛けた……。

「獣神王朝エジプトを奪還し、お前たちはどうするというのだ？」
「お前達では、このエジプトの民を他ディヴィジョンの侵略から護る事はできぬ」
「ディアボロスの力は見定めさせて貰った。お前達の力は攻撃に特化しており、守るための力は持たない」
「大いなるトートやラムセス2世のクロノ・オブジェクトを奪ってなお、僅かばかりの結界を張るのが関の山ではないか」

　立て続けに放たれたクフ王の問い。
　敗軍の将の捨て台詞とでも言うべき言葉を受け、悠日理は反駁する。
「それがどうした？　俺達が、来るべき《七曜の戦》で、全てのクロノヴェーダを倒せば問題ねいだろう！」
　そう言い返した悠日理の言葉を、クフ王は輝きと共に否定した。

「全てのクロノヴェーダを倒す？　お前達は《七曜の戦》の意味を知らぬようだな。無知であるとは、なんと罪深き事か」
「戦いの後に、お前達は知るだろう。お前達が守ろうとする人間という種を護る事が出来たのは、余の獣神王朝エジプトのみだったという事を」
　クフ王は、事実を事実として述べるように淡々と言葉を紡いだ。
　そのクフ王の言葉は真実では無いかもしれないが、嘘でもない……少なくとも、クフ王は何らかの確信を持ってそう言っているのだと、戦場で戦うディアボロス達は、感覚的に理解していた。
「お前は……何を知ってるんだ？」
　多くのディアボロスが感じた疑問を悠日理が問いかけると、クフ王は青く輝く口唇をわずかに開く。
「『断片の王』の知る事が許された全ての知識を、余は知っている。多くの『断片の王』は、その知識の一部しか理解できていないだろう。全てを知る事が出来たのは、余なればこそ」
　クフ王は、誇らしげにそう答えると、悠日理に対して攻撃の構えを見せる。

「『断片の王』が『許された知識』だと……！？　それは『断片の王』よりも上位の存在が居るという事か？　それは何者で、何を目的としている？」
「上位存在か、なるほど、そう考える事も可能であるか。だが、それは、『断片の王』に許されていない知識だな」
　クフ王は、自嘲気味にそう述べた。『断片の王』という名が、与えられたものでしかないというかのように……。
「さて、余興はここまでとしよう」
　急激に膨れ上がった戦意に反応したディアボロス達が、クフ王に対して一斉に攻撃を浴びせかける。
　既に守護を失っていたクフ王の体は、その攻撃に耐えかねたのか、光が失われて、神の加護を表していた部位が砂の様に崩れていく……。

「これで、決着だ！！」
　悠日理は、最後の止めとばかりに雷の力を集めた槍を致命の一撃としてクフ王に放つ。
　クフ王は、その一撃を受け止めると、敗北を認めるように目を伏せたのだった。

「神たるクフ王が、ディアボロスに滅ぼされるか……。だが、覚えておくが良い。ディアボロスが全てのクロノヴェーダを滅ぼしたとしても、先には、絶望しかないという事を……」
　クフ王は、悠日理らディアボロスにそう言い残すと、光を失い、完全に消滅していく。

　断片の王の死と共に、獣神王朝エジプトの大地が光を放つ。
　やがて光は、ディヴィジョンの全て、そして戦場に残ったディアボロス達とテーベ上空の新宿島をも呑み込んでいく。

　そして光が収まった時、ディアボロス達は最終人類史のアフリカの大地に立っていた。
　本来の位置に戻った新宿島から飛んできたパラドクストレインに乗り込むと、ディアボロス達は自分達を待つ人々の元へと帰還するのだった。

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→有力敵一覧
→④断片の王『クフ王』（有力敵HP489104→0 / 制圧完了！）
→⑬筋獣のゼグマアト（有力敵HP809860→0 / 制圧完了！）
→重傷復活者一覧