《七曜の戦》世界樹戦争　第7ターン結果

（→開始時の状況）

⑮プリンス・オブ・ウェールズ

　オーストラリア全域の強奪を目指して派遣された、冥海機ヤ・ウマトの侵攻艦隊はディアボロスとの激闘の末、随伴艦以外のクロノヴェーダの悉くが沈められていた。
　残されたのは、プリンス・オブ・ウェールズ直卒の旗艦艦隊のみ。

「妖精郷侵攻の大艦隊が全滅だと……。最大の大海戦となったエルドラードとのイースター海戦を上回る艦隊だったのだぞ？
　その大艦隊が、エルドラードですら無い、ディアボロスによって全滅させられるというのか……」
　プリンス・オブ・ウェールズは普段の優雅さを失い、愛用の茶器を叩き割る程に、この戦況に驚愕する。
　だが、この状況に追い込まれても尚、妖精郷侵攻艦隊に撤退という二文字は無かった。

「妖精郷侵攻艦隊に下された指令は、勝利か死か……である。
　あの空に浮く大陸『蛇亀宇宙リグ・ヴェーダ』、我ら冥海機ヤ・ウマトは、次の戦までに、アレに対抗する手段を得る必要があるのだ。
　その為には、このオーストラリアの強奪は、絶対に譲れはしない」
　プリンス・オブ・ウェールズは、彼女の目からは雲霞の如く湧いて出るようにも思えるディアボロスを前に、不退転の決意を示す。
「ヤ・ウマトの興亡、この一戦にあり！　総員、己の命を捨て、一体でも多くの敵を深海の底に引きずり込むのだっ！　冥海機ヤ・ウマトに勝利をっ！」
　死をも覚悟した、プリンス・オブ・ウェールズの言葉に、隷下の軍勢もまた、勇猛果敢にディアボロスを迎え撃つ。
　妖精郷を舞台にした、最後の戦いが始まろうとしていた。

「あれほど激しかった戦場も随分静かになったものです」
　戦闘海域に向かう、ハーリス・アルアビド(g04026)は、感慨深げにそう呟いた。
　プリンス・オブ・ウェールズ以外の全ての全ての戦場は既に制圧しており、ディアボロスは、この戦場に全戦力を投入しているのだ。
　冥海機も戦意は失っていないようだが、旗艦艦隊以外を全て失った冥海機の軍勢では、ディアボロス全軍とでは、戦力の差は歴然である。
　だが、それでも、勝利を諦めずに攻め寄せる冥海機たちは鬼気迫っていた。
　ハーリスは、その戦意に応えるように迎撃し、敵冥海機を海へと沈めていく。
「死ねっ、ディアボロス！！」
　いまも、致命傷を受け海に沈もうとする冥海機が、ハーリスを道連れにしようと攻撃を仕掛けて来る。だが、ハーリスは、ただ無心にそれを迎撃、撃破していった。
「神々よ、どうか倒れた全ての者達が正しく冥界へ迎えられんことを」
　深海に沈む冥海機の冥福を祈るハーリスは、何が彼女達をここまで駆り立てているのか疑問に思うも、完全な勝利を得る為に、揺るぐ事無く戦い続けるのだった。

　戦場の勝利は、もう揺るがない。
　それでも戦い続ける冥海機に、ハーリスと同様の思いを抱いたのは、イシュア・アルミゴス（g00954）であった。
「エルドラードの海賊は、いざとなれば逃げ出すというのに、冥海機は逃げないのですね。それはケジメの為なのかな？」
　イシュアは、ある意味、感心しながら、冥海機の決死の戦いを観測する。
　台湾の翔鶴、横須賀鎮守府の信濃などは、基地を放棄しての撤退を行っているので、このプリンス・オブ・ウェールズの徹底抗戦には、なんらかの意図があるのだろう。
　絶対に負けられない理由とは何か……。
　そんな疑問と共に、戦場に挑んだイシュアだが、図らずも、その疑問の答えを知るチャンスを得たのだった。

「やあ、はじめまして女帝様？」
　戦場で巡り合った、艦隊旗艦プリンス・オブ・ウェールズ。イシュアは、高みから見下ろす赤眼の美貌の持ち主に、そう言葉を駆けた。
「ディアボロス如きが、高貴なる私に語るべき言葉を持つというのか？」
　プリンス・オブ・ウェールズは、居丈高に言葉を返し、攻撃を放ってくる。
　その攻撃に、シルバーシリンダーに秘めれらた先祖の手を借りて対抗しつつ、イシュアは、プリンス・オブ・ウェールズに食い下がった。

「お前達には理解できぬのか、低能め。《七曜の戦》は、世界中のクロノヴェーダがその力を示す戦いだ。だが、戦いで勝利するだけが《七曜の戦》では無い。
《七曜の戦》で得た敵の情報を基に、来るべき戦いで勝利する為の準備を行う……。
　それが考えられないような勢力は、所詮は二流・三流に過ぎない」

　プリンス・オブ・ウェールズは、見下すようにイシュアを見やると、フンと鼻を鳴らした。
　イシュアは、その態度を不快に思うが今は口を挟まず、プリンス・オブ・ウェールズの言を待つ。

「そもそもお前達は、あの蛇亀宇宙リグ・ヴェーダを見ていないのか？　まさか、あの『蛇亀宇宙』を見た上で、なんの対策も考えずに漠然と戦っているのではあるまいな？」
　そう嘯く、プリンス・オブ・ウェールズに、イシュアはある程度の理解を示す。

（「海洋を主体とする、冥海機ヤ・ウマトでは『蛇亀宇宙』は不可能……だね。そして、その対策の為に、資源豊かなオーストラリアを狙った……のか？」）
　イシュアは、その疑問を問いただそうとするが、激化する戦いの中で距離が離れ、それ以上の接触を行う事は不可能となっていった。

　プリンス・オブ・ウェールズは、多くのディアボロスに囲まれて集中攻撃を受け、撃沈一歩手前まで追い詰められていた。
　だが、それでも彼女は、普段の優雅さをかなぐり捨ててでも、戦いを続行する。

「ヤ・ウマトの命運が掛かっているのだ！
　お前達全てを我一艦で相手取ろうと、絶対に沈みはせぬ！
　大英帝国海軍の誇り、とくと見るがいい！」

　そのプリンス・オブ・ウェールズの啖呵に、ヴィルジニー・フラムヴェールト（g09648）は（「そこは、大日本帝国じゃないのね」）などと思いつつも、ロザリオに祈りを捧げた。
【水面走行】を駆使して、プリンス・オブ・ウェールズの元へと向かう。

「もう随伴艦隊はいないわ。さあ、一気に乗り込むわよ！　」
　ヴィルジニーは、短くも壮絶な戦いで満身創痍となったプリンス・オブ・ウェールズを正面に捉えると、悪しき存在を抹消するべく祈りを捧げた。
　その祈りに応えるように、彼女の背後に十字架型の光がまばゆく輝いていく……。

「オーストラリアの美しい海は、最終人類史に取り戻すわ。決して、クロノヴェーダの手などには渡さない！」
　そのヴィルジニーの決意に呼応するように十字架が更に輝きを増し、その光はプリンス・オブ・ウェールズを貫かんとする。

「私はヤ・ウマト東洋艦隊旗艦にして、妖精郷侵攻艦隊総司令艦プリンス・オブ・ウェールズ、お前がたとえ、悪しき存在を滅ぼす使途であろうと、この私は倒れる事は無い。お前を倒し、その後、全てのディアボロスも倒し、冥海機ヤ・ウマトに、勝利の栄光を！」

　ヴィルジニーのセイクリッドクロスと、プリンス・オブ・ウェールズの海戦装の砲火が交差し、拮抗する。
　だが、その拮抗したセイクリッドクロスの光こそ、プリンス・オブ・ウェールズを鎮める、最後の藁の一本となったのだ。

　海戦装ごと光に貫かれたプリンス・オブ・ウェールズ。
　本体が力尽きると共に、ひび割れた鯨型海戦装が浸水し、ゆっくりと海底へ沈んでいく。
　プリンス・オブ・ウェールズは、最後に何かを掴もうと手を伸ばすが、その手は何も掴む事無く、深海へと消えていったのだった。

「彼女は最後に、何を掴もうとしたのかしら……」
　ヴィルジニーは、消え去るプリンス・オブ・ウェールズを見送ると、新宿島への帰途につく。

《七曜の戦》を勝利で飾ったディアボロス達を、新宿島を含めた最終人類史の人々は、熱烈に、そして暖かく迎えてくれることだろう。

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→⑮プリンス・オブ・ウェールズ（有力敵HP2336131→0 / 制圧完了！）
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