《七曜の戦》巨竜共鳴　第3ターン結果

（→開始時の状況）

④纏骨竜キャルジニル

　無数の野生動物の骨が集まった、竜の墓場とも呼ぶべき土地。
　そこに住まっていた巨獣達は、ディアボロスの攻勢によってその数を大幅に減らしていた。墓場の主である巨獣、纏骨竜キャルジニルも、その劣勢を悟ったのか、最後のあがきとばかりに骨同士がぶつかり合うような咆哮を上げる。

『キャルルルルルッ！』

「汝ら心なき獣。汝らに恨みはない……こともなかった。エジプト荒らされたし」
　クィト・メリトモナカアイス(g00885)は獣神王朝エジプト奪還戦のことを思い返す。
　普通に獣神王朝エジプトを思いっきり
「しかし、このディヴィジョン、人おらぬようだが」
　大いなるトートが『人々は皆、踏みつぶされ、食い散らかされているようだ』とか言っていたなぁ、などと思い返す。
「……もしや、あの鳥頭、嘘混ぜた？」
　少なくとも、獣神王朝エジプトは巨獣大陸ゴンドワナと戦っていた。ディアボロスの意識を巨獣に向けるための虚偽か、あるいは巨獣が獣神王朝エジプト内に侵入した際の振る舞いからの推測情報だったのか。誤った情報だったと判明した今トートの意図は推測するしかない。
「あの時はペラペラ喋ってくれたと思ったが、面倒なやつ」
　なまじ他の情報が正しかっただけに、欺瞞情報を叩き込まれると真剣に分からない。
　モヤモヤを振り払うようにクィトは黄金猫拳打棒を振るった。『モナカ』の突撃を受けた巨獣達が、さらなるディアボロス達の攻撃を受けて次々と新たな墓の住人となる。

『キャルルルッ！？』

　周囲の仲間を失い、窮地に陥った纏骨竜キャルジニル。竜の墓場を奥に追い詰められた巨体は、どうやらかなり臆病なようにも見えた。だが、ここまで来て逃す道理もない。
　ディアボロス達の攻撃を受けて骨が砕けた先、現れるのは細長い体の、トカゲのような巨獣だ。
　骨の隙間に潜り込み、逃げようとするキャルジニル本体を、筧・勢理(g00706)が愛用のライフルでロックオン。
「でっかいの狙っちゃおうか！　当てるよー、めめちゃん」
　勢理の指が引き金を引く。
『めめちゃんライフル』の銃口から放たれた一条の光は、キャルジニルが撒き散らす骨をかいくぐって飛び、その本体へと突き刺さった。
　ついに力尽きた巨体が、骨の間で動きを止める。
「仕留めた！　やったね！」
　新しくデコらなきゃ、と思いつつ、勢理はガッツポーズを作るのだった。

⑥凍結氷河グレシラック

　凍結氷河グレシラックの戦場は、まだ多くの巨獣戦力が残っており、ディアボロスとの激闘が続いていた。
「敵は巨大な体躯を持つ巨獣の群れです、単独行動は控えて、必ず連携して戦ってくださーい」
　フィリス・ローラシア（夢現の竜使い・g04475）は、周囲にそう注意を促しつつ、彼女自身も、後方から仲間を援護していく。
　弱った敵を攻撃して確実に数を減らしつつ、傷を受けた仲間の援護や撤退支援など、状況に応じた的確なフィリスの援護は、ディアボロスの力となり、巨獣を追い詰めていく。

　ドドォォン！

　地響きと共に、また一体の巨獣が倒れる。
　ただ巨大なだけで、知恵も連携も無く暴れまわる巨獣。対して仲間を思いやる心に、勇気と希望を湛えたディアボロスとでは、戦いの天秤がどちらに傾くかは自明だったのだろう。
　そんな、次々と巨獣が倒れていく凍てついた氷河の戦場に、澄んだ女性の歌が響き渡っていた。
　歌に秘められた魔力が、凍結した大地を覆い、氷河に遺棄された巨獣の骸からエネルギーを奪い取っていく。
『因果律演算、共振開始…我が祈り、我が願いを矜持にかけて。実現せしめる事を此処に約す。遍く力よ、我が誓いの元へ…！』
　アルラトゥ・クリム（現代の魔法使い・g05088）が、その意思を、誓いのアリアの歌に込める。
　その膨大なエネルギーは、凍結氷河グレシラックへと向かっていく。グラシラックは、このエネルギーを相殺しようと、氷河のエネルギーを収束させるも、それを打ち消すには至らない。
「……歴史蹂躙者を撲滅する！」
　そのアルラトゥの言葉と共に、相反するエネルギーは爆発するように拡散し、双方に大きな傷を与える。
『グルゥゥゥ』
　凍結氷河グレシラックは、小さなディアボロスが自分と互角の撃ち合いを繰り広げたことに、忌々し気に唸り声をあげた。そしてアルラトゥを踏みつぶそうと、その巨体を蠢動させる。
「させないんよっ！　クロフサ、お願い！」
　そのアルラトゥの危機に、黒馬の王子のように颯爽と駆けつけた、無堂・理央（現代の騎兵？娘・g00846）は、クロフサの鞍に足を駆けて体を馬上から乗り出すと、地面すれすれの位置で、アルラトゥを搔っ攫い、助け出してみせた。
「ボクは、クロフサと一緒なら、何処までだって行ける！」
　そう叫んだ理央は、アルラトゥを安全な場所に下ろすと、人馬一体の構えで突進する。
「君達巨獣には、直接の恨みは全く無いけれど、覚悟するんだね！」
　その言葉と共に、クロフサは、その場体ごと、グレシラックの巨体へと吶喊する。
「ボクとクロフサの戦技、戦騎疾駆を、受けてみろ！」
　クロフサと理央の体が、グレシラックの巨体に飲み込まれて消えた……と見えたのは一瞬。
　槍を掲げた理央が、冷気を撒き散らしながらグレシラックの巨体を貫通して飛び出してきた。
『ガグルガァァァ！』
　体の中核を貫かれ、えぐり取られたグレシラックの断末魔の叫びがあげる。
　ドドゥゥンと、その巨体を氷河に沈めていく。
「一番も～らった！　ってね♪」
　理央は、クロフサの首筋を優しくなぜると、槍を掲げて破顔するのだった。

②霹靂竜ボールス

　霹靂竜ボールスによる、新宿島を襲う雷撃は繰り返し続いていた。
　これまではディヴィジョン内での『信仰』と『裁き』を維持するために用いられていたが、方向性を変えれば敵拠点を葬り去るだけの威力は充分にある加護だ。
　対魔法能力が微妙で、一般人を大量に抱えている冥海機ヤ・ウマトの陸上施設などであれば、深刻な被害をもたらすことも出来ただろう。
　その雷撃を繰り返し用いても貫けない新宿島大結界の強固さは、元となっている獣神王朝エジプトのクロノ・オブジェクト『ラムセスの黄金アンク』の無敵性を改めて示していた。
　とはいえ、その欠点であるエネルギーを馬鹿食いするという特性は、規模を拡大したことでより顕著となっている。
「『肝試し』、やっといてよかったね」
　一角・實生(g00995)は妖刀『哭戒』を手に、ボールスと切り結びつつ思う。
　事前に大規模に『肝試し』を企画し、『地獄変』に溜め込んだエネルギーが無ければ、この戦いの時点で余剰エネルギーは尽きていたかも知れない。
　質の差こそあれ、人々の感情を力とするのは、ディアボロスもクロノヴェーダも同様だ。
「だからこそ、人々の信仰も情報もこれ以上渡さない……」
「くっ……！！」
　ボールスを斬り裂く實生を、霹靂竜の反撃の雷撃が襲った。ディアボロス達のパラドクスを浴び、高度を下げるボールスに、西院鬼・織久(g04529)は急接近する。
「ここで退くなどとは言うまいな。互いに死合おうではないか」
「退く機を逸したか！？　この私が！」
　ボールスの悉くを喰らい尽くさんとするかの如き勢いで、織久の闇器が血に濡れた白い鱗をさらに断ち割る。空を舞うドラゴンは既に満身創痍。ここまで戦い続け、なお無事でいるのはボールス自身の精強さもあるが、ディアボロス達のここで確実に倒すという意志の影響が大きかっただろう。

「円卓の騎士『ボールス卿』！　湖の騎士リズのお相手願う！」
　湖水を思わせる青きマントとスカートを翻し、銀の鎧を輝かせてリズ・オブザレイク(g00035)がボールスへと飛ぶ。
「妖精たち、今一度力を貸して欲しい！　 妖精の剣〈ルックライク・エクスカリバー〉！」
「それでエクスカリバーを騙るか！」
　天環九星霹靂閃、ボールスの背後に回る雷の円環から、雷がリズへ次々と降り注ぐ。臨機応変な回避など許さない、面制圧じみた雷をリズは耐え凌ぐ。
「『信仰』を力とする。あなた達は、そのために人の自由を縛る……！」
「それがどうした！　人間など、放っておけば自分達同士で殺し合う存在だろう！」
『信仰』を力とするディヴィジョンは複数存在する。
　それらのディヴィジョンにおいては、信仰を得るために人間を活用することに重きが置かれている。
　クロノヴェーダの支配下に置かれ、人間同士の争いが起きない世界は、獣神王朝エジプトが主張するように、ある意味で本来の歴史よりも平和であると言えるのかもしれない。
　だが、それは他の信仰の一切を許さない、人の心を縛る行いであり、
「歴史を捻じ曲げておいて、自分達が正しいように騙らないで下さい！」
　リズの意志に、妖精達が力を貸す。
「雷ごと、貫けっ！！」
　叫びと共に、妖精の剣から伸びる光が雷を打ち破る。
　まっすぐに伸びた光に瞳を貫かれた霹靂竜ボールスの放っていた雷霆がかき消え、戦場の明るさが一段落ちたようにディアボロス達には感じられた。
　その変化は、円卓の騎士の片割れの撃破を告げるものであった。

③炎角竜ボールス

　赤い鱗に雄大な翼に青き炎。ウェールズの国旗にも描かれる『赤き竜』然としたボールスの姿は、孫・リア(g03550)にも見事と思わせる姿であった。
　だが、その配下の部隊は、既にディアボロスの攻撃を受け、もはや壊滅状態にある。
　それでもなお、勇戦していた炎角竜ボールスだが、霹靂竜ボールスの死は、新宿島を襲う雷撃の停止という形で彼にも直ちに伝わっていた。
「霹靂の！　あんたが引き際を見誤ってどうすんだ！」
　思わず口走る炎角竜ボールス。円卓の騎士が見せた動揺に八百陣・葵漆（勝利こそが正義・g01007）は軍配を振り上げた。
「ここで同時に撃破するよ！　新宿島の情報は持ち帰らせない！」
「まあ、外から見ているだけで大した秘密を掴めたとも思えませんがね」
　葵漆の号令を受け、平良・明（嶺渡・g03461）はさも当然のようにボールスの側に歩み寄る。
「掴んでいない秘密など脇に置いておいて、楽しい殴り合いに興じようではありませんか」
　明の距離感を狂わせる打撃が、ボールスの巨体を震わせる。
　猛然と燃え盛る炎と、巨体を生かした肉弾戦による猛攻でディアボロスを退けようとするが、既に完全勝利は見えている。
　さしもの円卓の騎士も、ディアボロスの勢いの前に、徐々に死へと近付いていく。
　そして、自撮り棒を片手に、ダンジョンペンギン『軍曹』を伴って飛ぶ鳴海・蒼葉(g09783)が、手にした爆弾を次々と赤きボールスへと次々に投げつけた。
「ウェ～イ♪　ばえ狙って突撃なんだぜ☆」
　湧き上がる爆煙の中で、ボールスの翼が大きく破れ、へし折れる。
「残念だけど、貴殿は王の命は果たす事は出来ないわよ！」
　リアの宣告は、勝利を確信するものだ。赤きボールスもまた、自身の敗北を受け入れた様子だった。苦渋に満ちた声が、竜の喉から迸る。
「すまねぇ王様！　アフリカの直接編入はできねぇ！　だから……来やがれ、『円卓の座』よ！」
　その言葉と共に炎角竜ボールスの前脚に現れたものに、蒼葉は思わずスマホのカメラを向けた。
「え、『椅子』？　てかドラゴンにサイズ合ってなくない？」
　どのような効果があるのかとディアボロス達が妨害するより早く、ボールスはその椅子を握り潰した。
「円卓の騎士ボールスが、巨獣大陸ゴンドワナの主に告げる！
　我らが王、アーサー・ペンドラゴンが元に馳せ参じろ！
　円卓、接続！　『この地もまた幻想の地なり』！」

　詠唱と共に、ボールスの持っていた『円卓の座』が弾け飛び、光となって大地に溶けていく。

「何これ？」
「これは、まさか……」
『オーストラリア（妖精郷）が、何故か幻想竜域キングアーサーと境界なく同一のディヴィジョンになっている』現象。その原因が何であるのか、一部のディアボロスは察した。
　ボールスが使った『円卓の座』は『他のディヴィジョンと幻想竜域キングアーサーをつなげる』力を持つクロノ・オブジェクトなのだろう。端的にいえば、幻想竜域キングアーサーと、他のディヴィジョンの間の排斥力を一時的に弱めるだけのクロノ・オブジェクトだ。
「円卓の騎士の軍勢が、時々排斥されず、警戒にもかからずに他のディヴィジョンに侵入して来る原因は、ひょっとしてあれか……？」
　葵漆はそう推測する。
　通常であれば、円卓の騎士が他ディヴィジョンへ侵入する際、一時的に排斥力を弱めるために使われるのだろう。だが、断片の王同士の間で力量差が極端に大きかったり、あるいは『排斥力の低下に永続的に同意する』ような状況であれば、変化は永続的なものとなるのだろう。
　妖精郷もベディヴィアやラモラックという『円卓の騎士』が侵略を行っていた。同様の行為が行われていたと推測するのは、事件に関わっていたディアボロス達には難しくなかった。

「海を越え、ブリテン島に集いやがれ、巨獣ども！」

　そう叫んだボールスの目から光が消え、大地へ墜落していく。
　そちらに目を向けることもなく、影響を受けた巨獣達が動き出す。
　アフリカ大陸の再度の歴史改竄を防いだディアボロスだが、円卓の騎士の置き土産が《七曜の戦》後、さらなる波乱を招くことを誰もが確信していた。

　が、《七曜の戦》まで戦い続けて来たディアボロスの側も無策ではいない。
「『円卓の座』……『円卓』との繋がりがあるのか？」
「だとすれば、キャメロットにあるという『円卓』を破壊すれば効果を消せるのかもね」
《七曜の戦》後に巨獣がブリテン島へ渡り、合流すれば、ドラゴン達の勢力は強さを増すだろう。
　だが、完全なディヴィジョン併合を阻止できた以上、巨獣が詰んだ種族というのは変わらない上に、ディアボロスに追い詰められつつある幻想竜域キングアーサーがブリテン島を逃れ、アフリカに移転してくるようなことも出来ない。

　海を渡るのは、流石の巨獣も時間を要するだろう。
　移動中を襲うのは勿論だが、『キャメロットを攻める』『巨獣大陸ゴンドワナを制圧する』『円卓を破壊する』……ボールスによる『円卓の座』の使用を目の前で目撃できたことで、ディアボロスならば対策は幾つも考えられそうではあった。

　そして巨獣達を一掃したことで、戦場周辺は最終人類史の制圧地域となる。
　新たな奪還地を得て、ディアボロスは第四の戦場へ向かう準備を始めるのであった。

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→有力敵一覧
→②霹靂竜ボールス（有力敵HP489812→0 / 制圧完了！）
→③炎角竜ボールス（有力敵HP1401723→0 / 制圧完了！）
→④纏骨竜キャルジニル（有力敵HP267652→0 / 制圧完了！）
→⑥凍結氷河グレシラック（有力敵HP1341971→0 / 制圧完了！）
→重傷復活者一覧