リプレイ
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎
神像の沈む湖か……神秘的なのだが
どうしてもナセル湖を思い出してしまうな
可能性を秘めた実験だ。楽しんでいこう
ウェットスーツ、マスク、フィンを着用し湖の中へ
水中へ入る前に、上から敵影が偵察できれば、静かに入り不意打ちをかけよう
【水中適応】を仲間とともに使用し水中戦
仲間たちと声掛けやハンドサインで連携を取ろう
Ultimaに込めた塗料弾で、PD攻撃を仕掛ける
仲間と狙いを合わせ、一撃で倒せる敵>消耗した敵から倒していこう
囲まれないように、仲間の死角を狙う敵を優先していくよ
戦場を立体的に観察しつつ把握
味方の死角をカバーできるようにし、背中方向の死角がなるべく重なるように位置取って、敵の不意打ちを避ける
足元や頭上への警戒も怠らずに
……わ、ウミヘビみたいだ
ちょっと苦手な感じ
敵の攻撃には、高速回転からの軌道を予測しつつ、後脚の動きに注目し対処
水流の中で姿勢を保ちつつ、全身を守るように魔力障壁を展開
切り裂きを防ぐ
水流の異変や、素早い動きにも注意しよう
さあ、神像への道を開けてもらおうか
月下部・小雪
ふぅ、こ、こんな場所にも巨大神像が漂着、していたのですね。
壊れて修理できそうにないのは残念ですが、実験に使うバッテリーは回収できそうでよかった、です。
そ、それでは邪魔する巨獣さん達をやっつけていきましょう!
取り巻きさんではないみたいですが、邪魔されると危ないので先にパセイキスさんを倒します!
水中を泳いでる蛇……ウミヘビの巨獣さん、でしょうか? も、もしかしてウナギの巨獣さんかもしれません?
【水中適応】をお借りして水の中を進んでいきましょう。
戦闘が始まったら【水中高機動型モーラット・コミュ】になったコダマがお水の中をビュンビュンと泳ぎまわって、
パセイキスさんのお口の中に酸素魚雷を叩き込んでいきます!
お水の中なので反撃の水弾は少し見難いですが、直撃の前に「魔力障壁」を張って防御、です。
これで周りのトループス級は排除、できましたね。
あとはプレシバールスさんをやっつけて、巨大神像のバッテリーを回収です。
※アドリブ連携大歓迎
●
ゴンドワナの中でも、この湖ほどに緊張感と静寂に満ちた場所もそう多くは無い。
アヴァタールこと『プレシバールス』という縄張り主を恐れ周囲の生物が近寄ることのない湖のほとりには、いつの間にかこの地には存在しない筈の人の姿があった。
「神像の沈む湖か……神秘的なのだが、どうしてもナセル湖を思い出してしまうな」
そう呟くウェットスーツ姿のエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は水中の生物に存在を気取られないよう身を低くしながら、そっと湖の様子を窺う。
「こ、こんな場所にも巨大神像が漂着、していたのですね」
エトヴァに倣うように湖の底を見通そうと目を大きく見開く月下部・小雪(おどおどサマナーところころコダマ・g00930)の視線の先には、まだ目当ての神像の姿は見えない。
湖と一口に言っても20mを超す巨体が何体も生息しているような場所である。深さも広さも相応にあるのは間違いのないことで、陸上からちらと見た程度では神像も、まずの障害となっているクロノヴェーダたちも発見することは難しい。
(「壊れて修理できそうにないのは残念ですが」)
けれど、動力部は無事だという見込みである。そうであるならば、神像を未来へつなぐことはできる筈で。
「可能性を秘めた実験だ。楽しんでいこう」
そう呼びかけるエトヴァに、小雪はおずおずと小さく頷いて、けれどもはっきりとした意思を込めて言葉を作った。
「そ、それでは邪魔する巨獣さん達をやっつけていきましょう!」
●
身体を沈めた湖の中は、思ったよりも明るい。
自然そのままの環境が故に水が濁る要因が少ないことや差し込む光が豊富な環境がそうさせているのだろう。
極力目立たないように水没した木の枝等、身を隠せる場所を利用しながら、二人はまず湖の最深部へ到達。
順当に考えれば動かない神像は水底に転がっているだろう……という予測は外れておらず、湖の中央部へ進んでいくにつれ、ゴンドワナという場所にはそぐわない人工物の姿が次第に大きくなっていく。
そこまで見えてくると、目当ての前の障害についてもまた状況が分かるようになってくる。
まず目立つのは神像の周囲を泳ぎ回るプレシバールスだ。
前足で神像を小突くことでその陰に潜んでいる魚群を驚かせ、逃げるように飛び出た魚の胴へ狙い過たず食らいつく光景がそこにあった。
その暴食ぶりを示すように、彼に食い千切られたのであろう魚の残骸があちらこちらに散乱しており、トループス『パセイキス』たちはプレシバールスが暴れまわった結果弾き飛ばされた魚の肉片を奪い合うように喰らっていた。
しかしながらトループスとて体長20mを超すような巨体である。
おこぼれの魚だけではまだ足りないと探るように水中で舌を蠢かせ……不意に数体が、ディアボロスが潜む木の枝へ視線を向けた。
「……わ、ウミヘビみたいだ」
「そ、それかウナギの巨獣さんかもしれません?」
どっちにしてもちょっと苦手な感じだ……こちらを睨む視線にエトヴァがそんな感想を漏らしたところで、パセイキスたちは獲物を追い立てるように海水の塊を吐き出した。
(「お水の中で少し見難いですが……!」)
水中にもかかわらず陸上で放たれた時と変わらぬ速度で飛来する海水の塊を、けれど小雪の目はしっかりと捉えている。
眼前の枝を砕き、その衝撃で散弾銃のように飛び散った攻撃色の強い海水が自身を貫くよりも早く、少女は体内に渦巻く強大な魔力を表皮に顕現。
目と首元をかばうように両腕を盾にした姿勢で小さな体は軽々と吹き飛ばされていくが、派手な動きに反してダメージは小さい。その場から距離を取ることで海水の弾丸をやり過ごしていたエトヴァも、小雪の身体を受け止めると共にそれを確かめ、反撃に出るぞと視線に意志を宿した。
対するパセイキスは、獣の危機管理能力を食欲の前に鈍らせたか。
餌が一か所に集まったことを好機と見たようで、二体のパセイキスはそのまま二人を食らおうと突撃するが、その眼前に小さな毛玉のような存在が割って入った。
「コダマ!」
迫る巨体に臆することなく小雪が相方たるモーラット・コミュ『コダマ』に攪乱を命じ、それに応じて潜水服を身にまとうコダマは猛スピードでウミヘビ型の巨獣の周囲を泳ぎ回る。
目の前を跳び回るコダマを邪魔だと言わんばかりにパセイキスは牙を剥くが、コダマは水中活動に最適化されているはずの巨獣を弄ぶように次々と攻撃をすり抜けていく。
その中でやがて苛立ちも最高潮に達したか。瞳に明らかな不機嫌を宿したパセイキスは、コダマを丸呑みしようと二体同時に大口を開いたが……
「パセイキスさんのお口が開いた……今です!」
その瞬間こそ、小雪が待ち望んでいた好機であった。
主の命に即応したコダマは装備していた酸素魚雷を二体のパセイキスへ向けて発射。
そして大口を開けていたパセイキスたちは、反射的に飛来する魚雷へ食らいついてしまった。
「……!」
口腔内に広がる強烈な衝撃にパセイキスは大きく目を見開き、次いで悲鳴を上げるように大きくのけぞった。
……八つ裂きにしても気が済まない!
人の言葉を発することができたらそんなことを口にしていただろう。殺意にも似た怒りを宿した目でコダマを、そしてそれを操っている小雪を睨みつけるパセイキスは、そこでふと違和感。
獲物が一人、いない。
(「他のトループスは今の所仕掛けてこないようだな」)
コダマがパセイキスの気を引いている内に、エトヴァはすでに戦場を見下ろすことができる位置へと場所を変えていた。
敵が自身の不在を察して周囲を探る一瞬で周囲の状況を確かめるが、ひとまず相手にしなければいけない相手は眼前の二体のみで良さそうだ。
余計な茶々が入らないこの状況は悪くない……そんなことを考えながら、エトヴァは音もなくライフルを構えて。
「――Guck mal」
ヘイ見ろよ。揶揄するような言葉に上を取られていたことに気づいたパセイキスたちは、弾かれたように視線を上へ向ける。
その動きと全く同じタイミングで、黒塗り金彩色の銃身が湖の中へ弾丸という名の種をまいた。
水中を切り裂き進んでいく銃弾を追うように次々と花開いていく幻想的な光景は、本能にまみれた巨獣をしてその本能に逆らうように何らかの情動を植え付ける。
青の花模様に魅入られたように動きを止めた二体のパセイキス。故に飛来する弾丸に対して防御や回避のための行動は、最早何一つとることが出来ず――……
水の中で、弾丸が肉を抉る、軽く小さな音が響き渡る。
その音が、パセイキスたちの命を枯らしたのだと。
脳天を抉られ、ぐらりと力を失い水底へ倒れ伏せる二体の巨獣を見て、周囲の生物はそう判断した。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【水中適応】LV1が発生!
【操作会得】LV1が発生!
効果2【ダブル】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
●
周囲には、まだ何体かのパセイキスが遠巻きに様子を眺めていたが、ディアボロスたちが警戒するように周囲を見渡す動きを見せると、次々とその場から逃げ去っていく。
おそらくは、この小さな存在が縄張り主たるプレシバールスと同等以上の力を持つ存在であると。そんな風に判断したのだろう。
無暗に突っかかって返り討ちにあっては割に合わない……そんなことを考えたに違いない。
それはすなわち。
「ガァアアアアアアッッ!!!!!!!」
少し離れた場所でこの攻防を見ていたアヴァタールからすれば、自身の縄張りを荒らす敵が現れたということに他ならない。
激しい敵意を隠すことなくこちらへ向けて突撃してくるプレシバールスを迎撃すべく、ディアボロスたちは素早く身構える……!
クィト・メリトモナカアイス
おぉう、なんか……なんか怒ってる!
ん-むむ、黙ってみていればいいものを。
巨獣ってなんやかんや凶暴なのが多い。にくしょくけい?
んむ、我らの巨大神像ロボを取り戻すためにも。とりあえず追い払うべし。
追い払われぬというならばー。我のモナカが頑張る。
水中にふわりと浮遊球形ガジェット「モナカ」斬撃型を浮かべて戦闘。
ジャキンと伸ばす大きな刃での「斬撃のジェネッタ」でプレシオサウルス……ではなくプレシバールスを攻撃しよう。
大きな刃でヒレを狙って動きを阻害し、弱ってきたら胴体や細長い……いやサイズ考えると補足はないな……?
ともかく相対的には細長い首を狙って攻撃しよう。
反撃の氷の砲弾は【水中適応】で水の中を泳ぎ、砲弾の直撃は防ぐ。避けきれぬぶんは黄金猫拳打棒でガード。砕けた氷の破片での切り裂き攻撃は当たりそうだけどせにはらはかえられぬ。
我はおさかなではないし、その像はおさかなの住処ではない。
巨大神像があればこの戦いも楽になりそうだし……今後のためにも。かくごー。
月下部・小雪
むむむっ、の、残りのパセイキスさんは逃げ出しましたが、プレシバールスさんはこっちに来て、しまいましたね。
巨大神像の動力部が欲しいだけですが、襲ってくるなら返り討ち、です!
プレシバールスさんは首長竜型の恐竜さん、ですか。
た、たしかに首がとっても長い、です。キリンさんみたいに高いところの餌をたべるために……というわけではなさそうですね。
【水中適応】を引き続き使ってお水の中で戦います!
プレシバールスさんは氷で身を守ってて固そう、ですね。
それならコダマが【螺旋工具装備型モーラット・コミュ】になって氷をがりがり削って攻撃します!
撒き散らされる氷の砲弾を避けながら一気に近づいて体に取りついたら、もきゅきゅーとドリルで削ります!
敵の反撃は間違って巨大神像に当たらないように注意、ですね。
ボクに飛んでくるのは「魔力障壁」を張りつつ耐えて、みせます。
ふぅ、湖のヌシさんをやっつけたらこれで邪魔してくるのはいなくなった、でしょうか?
これで安心して作業ができそうですね。
※アドリブ連携大歓迎
一里塚・燐寧
おっと、輪切りにしがいのある蛇くん達だったのに出遅れちゃった
でもまだアヴァタール級が残ってるみたいだねぇ?
ずっと楽しみにしてた巨大神像の調査なんだぁ。誰にも邪魔はさせないよぉ!
【水中適応】を借りた上で【寒冷適応】を発動
残留効果じゃパラドクスの冷気は直接防げないけど、その影響で水温の低下が続くなら役立つんじゃないかなぁ?
水中の三次元的な戦闘空間を泳ぎ、仲間の戦いに乗じて敵の死角の腹下に潜り込むのを狙おう
もしくは逆に、あたしに注目が集まってる時に仲間にいいポジションを取って貰うかだねぇ
敵に狙いをつけたら《DCブラスター》から『呪式:凄射必誅』を発射!
怨念に導かれて、水の抵抗を物ともせず湖中を進む徹甲弾をぶっ放すよぉ
首尾よく腹下に潜り込めてたらお腹を撃ち、体内で砲弾を爆発させちゃおう
逆に敵の正面に陣取るしかない状況なら、いっそ顔を狙って怯ませちゃえ!
反撃に対しては泳いで冷気の範囲から離脱
氷が邪魔なら得物の砲撃や回転鋸刃で壊すよぉ
よーし、これで調査を始められるねぇ
年甲斐もなくワクワクしてきたよぉ
●
「おぉう、なんか……なんか怒ってる!」
黙ってみていればいいものを……迫り来るプレシバールスの巨体がどんどんと大きくなっていくのを前に、クィト・メリトモナカアイス(モナカアイスに愛されし守護者・g00885)はそんなことを思わずにはいられない。
「おっと、出遅れちゃった」
その言葉と共に場に馳せ参じた一里塚・燐寧(粉骨砕身リビングデッド・g04979)は、今や遠くに逃げ去ったパセイキスの後姿へちらと視線をやって、輪切りにし甲斐がありそうだったのに……冗談めかしてそう呟く。
「でもまだアヴァタール級が残ってるみたいだねぇ?」
「は、はい。こちらとしては巨大神像の動力部が欲しいだけですが……」
逃げ去ったパセイキスのように、プレシバールスもこちらに干渉しないならば穏便に事は進んだのかもしれない。月下部・小雪(おどおどサマナーところころコダマ・g00930)は最早訪れることのないIFをちらと思い浮かべ、そして即座に意識を切り替える。
なんやかんやで凶暴な性質を持っているものが多いのが巨獣というものだ。今回の場合で言えば、加えて縄張りを荒らす存在を放置できないという事情もあるだろう。
が、それはこちらの知ったことではない。
「お、襲ってくるなら返り討ち、です!」
「んむ、我らの巨大神像ロボを取り戻すためにも。とりあえず追い払うべし」
「そういうこと! ずっと楽しみにしてた巨大神像の調査なんだぁ。誰にも邪魔はさせないよぉ!」
「ォオオオオオッッッ!!」
ディアボロスが臨戦態勢を取ったことを認め、プレシバールスは再度の咆哮。
殺意に塗れた怒号から小雪を守るように彼女のサーヴァントである『コダマ』が前に出て、その周囲にクィトが操る猫の耳と尾を持つガジェット『モナカ』が展開。
プレシバールスの接近に伴い、彼の体を覆う氷が周囲の水温を落ちていく。それに対抗して燐寧が周囲の世界法則を書き換え、低温による消耗が生じない環境を作り上げれば、これで仕込みは完了だ。
極限まで膨れ上がった緊張感が、今、爆ぜる。
●
三人のディアボロスは、まず敵との距離を取るように水を蹴って後退。
当然それを逃がしはしないとプレシバールスもヒレを動かし更に加速。ぐんと一息でディアボロスへ追いついてくるが、これでよい。
戦場が神像から離れれば離れるほど、神像への流れ弾が生じる可能性も低くなる。
更にクィトと小雪が浮遊する形で二手に分かれたディアボロスに対し、プレシバールスは数が多い方を先に潰してしまえと二人の方へまずの敵意を向けた。
ここまでは目論み通り……であるが、こちらを追って浮上してくるプレシバールスの全身を観察しながら、小雪は難儀そうだと口元をへの字に歪めて。
「プレシバールスさんは氷で身を守ってて固そう、ですね」
「然り。けれど我のモナカが頑張る」
きりさけー、とどこか気の抜けたクィトの声が響けば、それに応じて猫を模した球体ガジェットの内部から巨大な刃が出現。
どう見てもガジェット本体に収まるサイズではないが、場の誰も一々そんなことに突っ込みはしない。逆説連鎖戦においてはよくあることだ。
ぎゅるん、と水中の中で踊るように回り始めたガジェットの刃は一瞬でブレードが見えなくなる程の回転速度に達し、回転に伴い渦巻く水中の様子に警戒を強めたプレシバールス目掛けて飛び出した。
円弧を描く軌跡で飛来するガジェットはプレシバールスのヒレの付け根へ衝突し……けれど、小雪の見立ての通り、プレシバールスの表面を覆う氷が厚く、硬い。鎧の如き氷越しにプレシバールスに突き刺さった刃はそこで回転を止め、押すも引くもままならない状態に陥ってしまった。
「それならコダマのドリルで敵を貫き、ます! スーパーぐるぐるアタック、です!」
すかさず小雪が指示を出した。彼女の声に頷くような仕草を見せ、コダマはモーラットが抱えるには大きすぎるサイズの円錐ドリルを携え突撃。そのまま動きの止まったクィトのガジェットが突き刺さった地点へとドリルを振るった。
甲高いモーターの回転音と同時に高速回転を始めたドリルが削岩するように氷を砕いていけば、それが閊えになって動きを封じられていたガジェットが自由を取り戻す。
コダマから逃れるようにプレシバールスはヒレを振り回したが、それに構わず表皮に突き立てられたガジェットの刃は再度回転。
氷という鎧を失ったヒレを子猫の爪が容赦なく引き裂くと、肉を深々抉られ水中を血に染めたプレシバールスはたまらず悲鳴を上げた。
「グラァアアアッッ!!」
けれど、そこで怯んでいては縄張りの主などやってはいられないと。プレシバールスの悲鳴はすぐに怒りへ転じた。
未だに追撃の隙を伺うコダマと回転する刃を、プレシバールスは今度こそヒレを振るって払いのける。
続く挙動でギン、と鋭い視線を二人のディアボロスへ向けて……行け、とでも言ったのだろうか。倒すべき敵をプレシバールスが見定めた直後、彼の体表の氷が意志を持っているように剥離し、そのまま弾丸のように周辺へばら撒かれた。
音すら抜き去るような速度で飛んでくる弾丸を、クィトと小雪は散開してまず回避……するが、水中での動きはやはりプレシバールスの側が何枚も上手か。
一つ、二つ、三つ……徐々に増えていく氷の弾丸と、それらがあちこちに衝突することで飛来する氷の破片に二人は徐々に逃げ場を奪われていく。
飛び交う氷の破片を猫の手を模した棒で叩き落し、あるいは身体に巡らせた魔力障壁で受け止めダメージを減じてはいるが、これが続くと少し辛いか……そんな思いが二人の頭をよぎった。
その直後。
「二人とも、待たせたねぇ」
水底から声が響くと同時に、周囲を飛び交う氷の一つが撃ち落とされた。
●
一瞬、飛び交う氷の密度が減ったのをクィトも小雪も見逃さない。
すかさず破壊された氷があった空間を縫うように攻撃の包囲網から逃れた二人を他所に、プレシバールスは何が起きたかと思わず声のした方……すなわち、声が聞こえてきた己の腹下へと首を巡らせた。
プレシバールスの視界が捉える声の主は当然、一人水底へ残っていた燐寧である。
クィトと小雪がプレシバールスからの攻撃を耐え忍んでいる隙に、彼女はそっとプレシバールスの腹下へと潜り込んでいたのだ。
いくらディアボロスといえど、単純に水中での動きで言えばプレシオサウルス型の生物に軍配が上がる。
けれど、この距離で、腹の下というクリティカルな場所に陣取ることが出来れば、水中戦のハンデはもうあって無いようなもの。
「……!」
それを察したのはプレシバールスも同様だった。
水底を蹴って突撃してくる燐寧から距離を取るようにヒレを動かし、同時に全身から放出する凍気によって周囲の水を凍らせ盾を作ろうと試みる。
けれど、先に傷つけられたヒレへのダメージが見た目以上に大きいのか、逃げるも守るも万全の状態での挙動と比較すると、わずかに遅れがあった。
「逃げても怖いのが長引くだけだよぉ? さっさと受け容れなよぉ」
まとわりつくような笑みと共に、燐寧が二枚のチェーンソーを供えた巨砲のトリガーを引く。
外面からして物騒なその武器から放たれる弾丸が普通の物で済むかと言えば、当然そんなことは在り得ない。
弾丸に宿されたクロノヴェーダ憎しの念は、尚も逃げを打つプレシバールスを追うように水中を自在に泳ぎ回り、その弾丸が氷に閉ざされるよりも早く敵の腹部に突き刺さり……その体内で爆発。
「散々餌を食べ荒らして、太っちゃったのが良くなかったんじゃないのぉ?」
水底から投げかけれたからかい交じりの声は、炸裂する砲弾の爆音に紛れてプレシバールスには届かない。
代わりにアヴァタールが聞いたのは、徐々に近づいていく水中を切るような刃の音と騒々しい駆動音。
「……今後のためにも。かくごー」
「コダマ! ドリルでもきゅきゅーって!」
プレシバールスにとっては見なくても分かる。腹部に強烈な一撃を受けた瞬間を見計らい、モナカとコダマが追撃をかけている。
今度は首元にまとわりつくと同時に喉元へドリルを突き立てたコダマに、プレシバールスも流石に焦った様子を見せた。
首を乱暴に振り回すことで何とかモーラットを弾き飛ばしはするのだが、ドリルによる削岩で薄くなった氷は、一瞬遅れて飛来したガジェットの刃の回転を殺すことはできなかった。
一瞬、場の全ての音が口を閉じたような錯覚。
回転する刃がプレシバールスの首元へ真一文字を刻む音に一瞬遅れ、深々と切り裂かれた首筋から吹き出る大量の血が、水中を真っ赤に染め上げた。
「ギュ、ル、ァアアアアアアッッッ!!?」
腹部に、首に。かつて受けたことのない痛みに混乱しているかのようにプレシバールスは本物の悲鳴を上げて……そしてそれが止むのもまた、早かった。
一度、二度とプレシバールスの身体が痙攣する。
それは縄張りの主として侵入者を迎え撃つ意志がまだ残っていたことの表れだったのかもしれないが、最早身体の方が付いてこないのは明白だ。
不意に、周囲の水温が少し上がったような感覚。
それは最早動く気配を見せないプレシバールスだった肉塊が冷気を放出する力を喪失した証拠であり、この場における戦いが終結したことを確かに示すものであった。
●
「ふぅ、湖のヌシさんをやっつけたらこれで邪魔してくるのはいなくなった、でしょうか?」
戻ってきたコダマを抱えるようにしながら、小雪がもう一度周囲を見渡す。
プレシバールスはもういない。そして、その現実を突きつけられてなおディアボロスにちょっかいを出せるトループスもいる筈がない。
少なくとも、今の時点でこちらを敵視する存在がいないことは確かである。
「よーし、これで調査を始められるねぇ」
「は、はい。これで安心して作業ができそうですね」
年甲斐もなくワクワクしてきた、と笑い声を漏らす燐寧の視線の先。
水底に横たわる巨大神像は何かを語る訳でも無く、ただそこに佇んでいる。
「んむ。ここからは作業の時間。巨大神像があればこの先の戦いも楽になりそうだし……」
クィトの呟きに一同は静かに頷く。けれど、この神像を利用して描く未来を実現するためにも、まずはきちんと動力を切り離して持ち帰るところから始めなければならない。
最後まで気を抜かないで行こうと。場のディアボロスは改めてそんなことを思うのであった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【水面走行】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
【寒冷適応】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV2が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
クィト・メリトモナカアイス
というわけで。
今からこの神像の心臓を取り出すわけだけれど。神像の心臓。
んんーむ、綺麗に取り出すにはどうするか……周りから切るのが良いかな。
引き続き【水中適応】で水中での動作を楽にしながら黄金猫拳打棒からにょきっと神聖な光を伸ばし「毒蛇食む断頭の爪」。
んむ、ちょっと神像がかわいそうだけれど。心臓を傷なく確保するためにはやむなし。ばらばらにしていこう。
一気に断ち切るのではなく、手術をするように内部構造を見ながら開いていく。アブ・シンベル神殿で見たコードとかは傷つけないようにまずは腕、脚などの先端から順に切り開こう。
切り開いたらコードとかは手で取り外し、外側から順に中心部に向かって分離させていく。
心臓部までパーツの取り外しが終わったらそのまま心臓もかぽっと取り外せるか試す。
難しそうなら心臓がどう神像にくっついてるか確認。スパッといけそうなら【一刀両断】で切り離し、パラドクスで切らねば難しそうなら心臓側を傷つけないようにパラドクスで断ち切ろう。
んむ、これぞ神像の心臓。汝の犠牲は無駄にせぬ。
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
以前、アブ・シンベル神殿で使った工具があれば持込み
最終人類史の工具も持参し、細部の作業補助に当てる
久しぶりに、創造主の大いなるトートの顔を思い出したよ
……三つあったけど
さあ、解体の時間だな
終始よく形状や仕組みを観察して、慎重に
作業はすべて動画と写真で記録、気づいた事はメモ
部品の用途を考えながら分解
潜水スーツと【水中適応】で湖中へ
パラドクスの糸で縛って解体、装備の高周波ブレードで切断、ねじ回しや細部の分離等は工具で使い分け
精密機械と扱おう
既知の動力部へ向けて、外側のパーツを分離し、縮めていくように解体する
まず四肢の関節を外して分離
次は、装甲や防具的な外装、装飾部位を丁寧に剥がす
精密部位に水気は駄目かもだし
持ち運べる重さになったら、水上へ【怪力無双】で引き上げて作業しよう
関節や接続部分の取り外しは慎重に
嵌めこみを見極め、留め具類は細やかに外し、ばらす
なるべく分離するが、絡まりや外せないコード等あれば記録して切断
心臓、胴、コックピット付近、頭部はより慎重に
部品を一個ずつ分解し
動力部を切り離そう
●
「というわけで」
しゃきーん。と。新宿島から持ち込んだ工具をかちかちやりながらクィト・メリトモナカアイス(モナカアイスに愛されし守護者・g00885)は眼下に佇む巨大神像を見下ろし、続いてエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)のセットするカメラへ向けて目線をやる。
「今からこの神像の心臓を取り出すわけだけれど。神像の心臓」
ダジャレのような言葉にエトヴァは笑うような仕草を見せて、この神像の創造主であった大いなるトートの顔を思い浮かべる。
三面の彼が、この神像の状況を見たらどんな反応をしていただろうか……短い間ながらも言葉を交わした存在へそんな風に思いを馳せつつ、エトヴァもまた手元の工具の具合を確かめた。
以前アブ・シンベル神殿で回収したいくつかの専用工具だ。今回は修理と少し趣は異なるが、それでも作業の一助にはなるだろう。
「さあ、解体の時間だな」
「んんーむ、綺麗に取り出すにはどうするか……周りから切るのが良いかな」
最早作業の邪魔をする存在がいない湖の中、神像の周辺を泳ぎ回りクィトは思案顔。
過去の記録から、心臓部に動力部が組み込まれていることは分かっている。であれば、胸部に対する作業が行いやすいよう、仰向けにした上で邪魔なパーツを心臓部から遠い部分から削いでいくのがいいだろう。
その認識はエトヴァも同様のようで、少しの間彼と打ち合わせを行った後、クィトは自前の猫の手を模した棒からパラドクスによる光の爪を伸ばし、まずは神像の右肩口へその刃を走らせた。
(「んむ、ちょっと神像がかわいそうだけれど……」)
けれど、心臓部を傷なく確保するためにはやむを得ない。そう割り切ることにしてクィトが爪を振るうと、支えを一つ失ったためか水中の神像がバランスを崩した。
「おっと……クィトさん。支えているから、神像を仰向けに倒してもらえるかな」
すかさずエトヴァが両手の指全てに絡めた魔力の糸で残った左腕を支える。クロノ・オブジェクトといえど動くことがなければ【怪力無双】でその重量を支えることは何の不自由もない。
任せよー、と。クィトはエトヴァの指示に従って神像の左肩部分を押し出し、その巨大な体躯を横転させる。
ずん……と水底の砂煙を巻き上げながら仰向けに倒れ込む神像を見遣り、第一段階はクリアしたか。
そのまま仰向けにした神像の四肢、そして腹部を切除し、首と胸部だけになった神像を見遣り、
「精密部位に水気は駄目かもだし、一度水上へ引き上げて作業をしようか」
そう呼びかけるエトヴァに異論はない、とクィトも頷き返すと、怪力無双を頼りに二人は神像を陸上へと引き上げた。
●
その後は神像の表面に生い茂っていた水草をこそぎ落とすという地味な作業がしばしの間続いた。
「……ここ」
水草が剥がされ露出した胸部装甲、クィトが指し示す先には装甲同士の接合部があった。
位置を特定できるようにエトヴァが周囲の部位を含めて接合部を写真に収め、高周波ブレードで少し接合部を削り、梃子を隙間に差し入れる。
クィトが光の爪で接合部をさらに削る中、エトヴァが何度か梃子を押し込むと、周囲に鈍い音を響かせると共に胸部の装甲板は引きはがされた。
視線を剥がした装甲が隠していたスペースへ。
「んむ、これぞ神像の心臓」
「元が獣神王朝エジプトのクロノ・オブジェクトだ。ミイラを作る際に摘出した神像を模した物……なのだろうね」
二人の視線の先には、心臓のような形状をした、直径1m程の黒光りする金属の姿があった。水が入り込まないように作られていたのだろう。二人の視界に映る心臓部には浸水の気配は見られない。
これが心臓を模しているのであれば、そこから伸びるケーブルは血管を模しているのだろうか。おそらくエネルギーを全身に伝達する機能を担うケーブルの先端……肩口で切り落としたその断面に、アブ・シンベルから持ち出したサソリ型のエネルギーテスターを接続してみる。
(「どうやら、完全にエネルギーは抜けているらしい」)
全く光る様子を見せないサソリ型の工具を観察しつつ、エトヴァはそう判断。であれば、何かの弾みで部品が爆発するような事態は恐らく発生しないだろう。
心臓部から伸びるケーブルについては継ぎ目のような箇所があればそこを区切りとするのが一番であっただろうが、少なくとも心臓付近にそのような個所は見られない。
あるいは人体における血管のように、継ぎ目なく神像の全身に張り巡らされているのかもしれない。
ある程度はやむを得ないか。エトヴァが心臓周辺のケーブルの接続状況をカメラに収めた上で、クィトはある程度の長さを保ったままケーブルを一刀両断。
音もなく断ち切られたケーブルを持ち込んだ結束バンドでまとめれば、これで工事は完了だ。
「このサイズなら、パラドクストレインにも乗る筈だな」
「んむ」
小さな呟きと共に、そこでクィトは先程まで摘出作業を行っていた神像の胸部を一つ撫で、そして四肢が沈んだままになっている湖へと視線をやった。
「汝の犠牲は無駄にせぬ」
そう呼びかけるクィトに倣うように、エトヴァも引き上げた部位、そして湖へと順に視線を向けて一礼。
考え方を変えれば、この神像はディアボロスがここに現れるまでずっとこの動力部を守り続けてくれていた……と考えることもできるだろう。
それを無駄にしないために。
合切を未来へ繋いでいくためにも。
「……さあ。新宿島へ戻ろう」
エトヴァの呼びかけにクィトは頷きを返すと、二人は揃って心臓部を担ぎ上げ、極力衝撃を与えないよう、静かにこの場を去っていく。
パラドクストレインが時空を超えて走り去っていく光景を、引き上げられた神像の頭部は微動だにせず見つめ続けていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【一刀両断】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV2になった!
【先行率アップ】LV1が発生!
●
「お帰りなさい。ふむふむ。動力部に目立った傷も無し、水による劣化も特には……無いか。ほぼ完璧な状態で持ち帰れたみたいですね」
新宿島に戻ったディアボロスたちを出迎えたのは、神像の研究を行う有識者たちであった。
トレインに乗せて持ち帰った心臓を模した動力を研究者たちはしばし興味深げに観察していたが、今はそれをやっている場合ではないかと思い直したようですぐに運搬作業に入っていった。
「円卓の間の方はすでに準備が出来ています。後は円卓のエネルギーが充電できるかを確かめるだけですね。
とはいえ、運び込んだだけでは充電が始まらない……ということは十分に考えられます。もしよろしければ、現場の方で色々と試していただければありがたいです」
そう呼びかけると、研究者の男は慌ただしくその場を去っていった。
フルルズン・イスルーン
繋がれば即時充填! とはいかないだろうねぇ。
地獄変の恐怖と円卓の信仰は感情性の違いからエネルギーの共有できないし。
ただ、信仰なら相性は良いんじゃないかな。
前提条件を整理しよう。
巨大神像は搭乗者の昂揚で動いた。コレは過去の検証で実証済みだね。パッションがパワーだ!
なら心臓部に蓄えられるのもそのエネルギーの筈。
信仰もパッションではあるけど、まー齟齬がある分充填の不安はあるよね。無駄が生まれる懸念もあるし。
それを踏まえて。
1、取り出した心臓を信仰の対象にして円卓の機能に組み込む。特に懸念の解決はないけどシンプルな手法。心臓神殿を全国に報道だ!
2、神像の登場部を再現して心臓と接続。適当なディアボロスを載せてコンバータ扱いにすることで円卓のエネルギーを注がせてパッションをアゲアゲ! なお負担は未知数。
3、【操作会得】で心臓の受領する感情エネルギーの種類を変える。出来たら良いね。
ま、せっかく現物があるんだから色々解析していくのがよかろうなのだ。
んーむ、この心臓を使ったゴーレムは意思を持つのだろうか。
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎
神像の心臓……
心臓部の切り出しは上手くいったか……良かった
これでエネルギーチャージができれば
きっと新しい道が拓けるよ
円卓の間のエネルギーは『信仰』
巨大神像が創られていた獣神王朝エジプトも、本来信仰を糧とするディヴィジョンだった
相性は悪くないのではないだろうか……?
まずは円卓の間に持ち込み
心臓を円卓と単純接続でくっつけるか最寄りへ置き
切断されたケーブルを自身へ繋ぐように当て
俺は巨大神像の「起動」を試そう
最初のテストで起動したときのように
心臓部に、あるいは円卓と両方に手を触れてから
テンションアップし、自身と先に接続するように
神像の心臓をアクティブ状態にすれば、円卓とのリンクも可能になるのではないかな……?
初めて起動した時を思い出そう
エジプトの大地、砂の香り……その熱気
跳梁するエンネアド達の記憶
覚醒せよ――!
と臨戦態勢で叫ぼう
それで駄目なら
信仰エネルギーの活性化のために指を組み合わせて「祈る」
自身の信じるものに祈る
反応なければ、エンネアドとドラゴンを交互に思い浮かべるかな……
(「これで心臓部へのエネルギーチャージができれば、きっと新しい道が拓けるよ」)
神像の心臓を摘出した当人である、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)はそんなことを思いながら、円卓が安置されている一室の扉を開いた。
既に室内には黒い心臓を模したパーツが運び込まれており、フルルズン・イスルーン(ザ・ゴーレムクラフター・g00240)が心臓部につながるケーブルを円卓へと接続している。
「やあやあ。まずの成果として、ケーブルで円卓と接続してみただけではチャージは始まらないようだねぇ」
「ふむ。円卓の間のエネルギーは『信仰』で、そして巨大神像が創られていた獣神王朝エジプトも、本来信仰を糧とするディヴィジョンだった。相性は悪くないと思ったのだが……?」
「うん。相性は悪くないと思うよ。とはいえ、今の段階ではまあそんなもんだよね、ってのがボクの意見かな。
円卓の間に運び込んだだけ、ケーブルを繋いだだけで有無を言わさずチャージが始まったら、それはそれで問題だよねって」
こちらの都合を介さずにエネルギーが吸い上げられるのがあまりいいことではないのは確かだろう……そう頷くエトヴァを前に、前提条件を整理しよう、とフルルズンはピンと人差し指を立てて。
「巨大神像は搭乗者の昂揚で動いた。コレは過去の検証で実証済みだね。パッションがパワーだ!」
エトヴァもそこに異論はない。うん、ともう一度頷く彼にフルルズンは立てた指をくるくる。
「なら心臓部に蓄えられるのもそのエネルギーの筈。そういう意味では円卓が扱う信仰もパッションではあるし、相性が悪くないってのはそこにかかっている所だね」
細かな齟齬によるロスが無いとは言い切れないが、この場は動力部へエネルギーを充填出来るか否かを確かめる場である。効率化云々は後でもいい。
話を戻そう。
推論として、神像の動力部が受け入れるエネルギーと、円卓が扱うエネルギーの方向性は大きく異なりはしない。
けれど、物理的に円卓と動力部とを繋いだだけでは充填が始まらないのもまた事実だ。
扱うエネルギーの方向性が間違っていない、というのであれば、充填を始めるには開始の合図を送るスイッチのようなものが必要なのではないか……そんな風に考えるのが自然だろうか。
「ま、せっかく現物があるんだから色々解析していくのがよかろうなのだ」
●
前提を踏まえて、その後しばらく様々なアプローチが行われた。
「心臓神殿を全国に報道だ!」
「そこは実際に動いてから、でもいいかもしれないな」
まずは心臓部を信仰対象として扱うように祭壇を用意し、そこに心臓部を祀ってみることにした二人であったが、捧げものとして菓子や飲料物を供えてみても動力部へのチャージが始まる様子は見えない。
動力部を特定の環境に置く、という行為は少し的外れであっただろうか。様々な角度から心臓部を観察しながらメモに成果を書き落とすエトヴァの隣で、フルルズンは残留効果によるアプローチを試みる。
(「【操作会得】で心臓の受領する感情エネルギーの種類を変えられないかと思ったけれども……これもちょっと違いそうだねえ」)
扱うものがクロノ・オブジェクトだからなのか、あるいはそもそもエネルギーの質を変える行為は操作の範疇外であるからか、心臓部がフルルズンへ何か助け舟を出してくれるような素振りは見えなかった。
方向性が少しずれていただろうか。
今この場で求められているのはおそらく、環境の整備よりもチャージを始める切っ掛けとなり得る合図だ。
「で、あれば。巨大神像と同じように起動を試してみようか」
「成程。エネルギーがある状態で心臓をアクティブにする……ってことだね」
それによるディアボロスへの負担は未知数であるが、ここは新宿島である。例えぶっ倒れるような事態になったとしてもリスクは少ない。
お願いするよ、と呼びかけるフルルズンに応じるようにエトヴァは左手を伸ばし黒い心臓部へ触れると、静かに目を閉じた。
……思い起こす。
獣神王朝と呼ばれたエジプトの大地。風の味。砂の香りとその熱気。
決着のついた今ですらもありありと思い返せる、かつて偽りの歴史を跳梁していたエンネアド達の記憶。
それら全てを脳裏に浮かべ、エトヴァは黒き心臓へ強く念じる。
未来のために動いてくれと。今一度、力を蓄えてくれと。
「覚醒せよ――!」
か、と目を見開き、強く命じる。
その直後であった。
――どくん。
触れた左の指先。黒い心臓が息を吹き返したかのように一つ、音を立てた。
「……おぉ」
傍らで様子を見ていたフルルズンが、思わず感嘆の息を漏らす。
どくん、どくん、どくん。
生きる者が日々の営みを続け、自身の運命をまっとうしようとする限り、心臓は決して止まることなく鼓動を刻み続けるものだ。
だから、自身もまた次の役割のために息を吹き返したのだと。そう叫ぶように黒い心臓は静かに脈動を続けていく。
その行為に付随して円卓から心臓部へ力が少しずつ吸い上げられていることを、場のディアボロスははっきりと認識している。
今ここに、神像の動力部へのエネルギーチャージは成ったのだ。
●
「……なるほど。やっぱり必要だったのは命令だったみたいだね」
その後、いくつかの実験を経た後に、フルルズンはそんな風に結論付けた。
例えばガソリンスタンドで車に給油するならば、給油口へノズルを差し込んだ上で、ノズルのレバーを引く必要がある。
円卓というエネルギー源はあった。そしてそれを注ぐためのノズルも接続できていた。
その上で最後に必要だった、レバーを引くに相当する行為が――……
「心臓部に触れた上での呼びかけだった、ということだな」
その通り、とフルルズンは頷き、デモンストレーションとばかりに心臓部に触れて、充填の停止を命じる。
それに応じて一度動きを止めた心臓部を見遣り、エトヴァは得心いったとこの場の成果を紙に書き出した。
「んーむ、この心臓を使ったゴーレムは意思を持つのだろうか」
再度充填を始めるように命じられた心臓がエネルギーを蓄えていく様子を眺めながら、フルルズンはそう独り言ちる。
ここから先は活用方法を考えていくことになる。その一例として彼女は動力を組み込んだゴーレムをの姿を思い描き、そしてすぐにまだ皮算用ではあるか、と思い直す。
そう。
動力部へのエネルギーの充填は可能となった。
けれど、このままではまだ、この動力部は使いようがない。
得られたこれをどう活用するか……それを考えていく必要があるのだ。
例えば、この動力を他の巨大神像に組み込むことが出来れば。動力が同じなのだ、恐らく巨大神像は動き出すだろう。
あるいは、この動力を使って何か他のクロノ・オブジェクトを動かすことが可能となるかもしれない。
しかし、前者であれば、現状は動力の入れ替えには神像の破壊が伴うだろう。何かしら破壊を伴わない動力の入れ替え手段が必要となる。
後者であれば、神像のエネルギーを他のクロノ・オブジェクトへ移し替えるための手立てを探す必要がある。
この場で得られた成果は大きいが、まだまだ考えなければならない課題は山積みだ。
とはいえ、研究とはそういう物であろう。
成功を、あるいは失敗を一つずつ積み重ねながら、成果は未来へ光を灯していくものだ。
だから。この日灯った明かりが、戦いの果ての未来を輝かしいものにしてくれることを、願わずにはいられない。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【操作会得】がLV2になった!
【活性治癒】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!
【ドレイン】LV1が発生!