かへりゆく途(作者 雨屋鳥
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#平安鬼妖地獄変  #地獄変第三幕『追儺の鬼』阻止作戦  #地獄変 


 騙された。
 そう気付いた時には、もうどうしようもなかった。救護施設、などとは程遠い牢に詰め込まれ、妖怪のような獣の毛皮を被せられる。
 何をされるのかは知らない。何が待っているのかも知らない。ただ、これでは罪人のようだと、焦りが恐怖を呼び起こしていた。
「助けてくれるんじゃなかったのか!!」
「陰陽寮の決定だ。多くの人々の為に必要なのだ」
 見回りの陰陽師に叫んでも、感情を押し殺したような冷ややかな声でそう返すだけ。毛皮の下で結ばれた縄を軋ませる。元々食うや食わずの生活に身を置いていた彼に縄を引き千切る様な力があるはずもなく、乾いた肌に血を滲ませるばかり。
「多くの人って、おれらは、じゃあ、同じじゃないのか!? その、人々ってやつと!」
 喉を涸らすように叫ぶ。涙も忘れ、理不尽が頭の中に石となってのしかかるような痛みが走るも、そうすることを止められない。
 止めた瞬間に何かを失うことを恐れているのだとは気付かないまま、彼は叫んでいる。陰陽師はそんな彼に視線を向けることもない。
「……違う」
 吐き捨てる。その言葉を聞いた時、不意に彼の中の何かが噛み合うような音がした。
「はは、なんだそれ」
 理由はどうあれ、経緯はどうあれ。たとえ、彼が誰かを助けようとしていたとしても、他でも無い己を見捨てようとしている。害そうとしている、殺そうとしている。身勝手に、悪辣に。そうに違いない。そうでなければいけない。
「死ね」
 声はその男の喉から出たものではなかった。同じ牢に入れられた誰か、他の牢に入れられた誰か。誰かの声が重なっていく。唾が溢れる。声を上げる度に乾いていく口を濡らすように。まだ呪い足りないと叫ぶように。
 矛先の陰陽師が握る拳の意味など知らない。


「追儺の儀式……それを行おうとしてる場所がまた一つ見つかったよ」
 春日宮・緋金(案内人・g03377)は、ディアボロスに告げる。
 都の人々に石を投げさせ、集めた貧民に宿すその憎悪を増幅させて鬼へと変じさせる儀式。それがまた行われようとしている。
「でも止めることが出来る。不運ではあっても、まだ悲劇にゃ足りない」
 そして足りさせるつもりもない。
「とっ捕まってる施設は、牢さえ破れば抜け出す事は難しくない」
 牢番も少なく、大した邪魔にはならないだろう。バラバラに逃げれば手は足りなくなる。
「まあ、抑えが効かなくなる程煽動するのは、厄を招くだろうからね。程々に元気づけてやっておくれ」
 それと、と緋金は続ける。
「逃げる宛は無い。けどね、一つは作る事が出来る」
 数日歩いた所に廃村がある。
「かつて妖怪に荒らされ無人となった村だ。掃いて捨てるほどに点在するうちの一つさ。鬼も妖怪もその全てを把握なんて七面倒なことはしてないだろうからね。一度に全員をここに寄せる事は危険だけど、ばらけさせた後山林に隠して移動させれば、まだ芽はある」
 上手く辿り着けるかは彼らの運と体力、気力次第。だが、ディアボロスが基盤をある程度回復させることで、辿り着きさえすればなんとか助け合う環境として彼らが活用することもできるはずだ。
「大半の残留効果やパラドクスによる改変事象は永続しない、だとしてもやり様はあるだろう?」
 作り出した岩は消えても、その岩が作った窪みは残る。それを望む結果に導けるかが鬼門ではあるが、結果を残すことは難しくはない。
「それと、村をどう再建するかも重要だね」
 手法ではなく、用途として。
 例えば、少数を隠れさせるか、より多く人を匿える生産性を取るか。そして、それを貧民たちへどう委ねるのか。時間は潤沢にはないとはいえ、一日弱の猶予はある。鬼が牢へと来るのが朝方、日が昇る頃。ディアボロスはその前日の正午前だろう。夜明けまでに村の再建、そして牢の貧民たちに接触して脱走の手順を整える。
 貧民たちは逃げる事に対して協力的、というよりも意欲的だ。行く先を示せば従ってくれるだろう。
「後はやってくる鬼を迎撃する。陰陽師連中も鬼が目の前で暴れてるとなれば混乱するだろう。その隙に貧民たちには逃げてもらう」

 緋金は作戦をまとめた後に腕を組み、ディアボロスに笑いかけた。
 勝気な笑みで。
「さて、呪いは返るもの。くそったれな儀式をぶち壊してやっておくれ」
 言い放った。


「早く奴らを連れてってくれ」
 陰陽師が、貧民達を迎えに来た人物に昏い目を向ける。陰陽師の数は多くない。少数で拘束した貧民を閉じ込めている。疲弊がその表情に浮かぶ。だが、疲れだけなのだろうか。
「あれが都の穢れを負って死んでくれるんだろう? それで都が救われるなら一挙両得だ」
「へへっ、……あいよ」
 迎えの人物は――青鬼飛天童子は、そんな陰陽師の表情を舐るように見つめては、快活に応えた。己の正体を知らない陰陽師が見せる感情。両得と言ったか。得に何を数えているのかと問いかければどんな表情をしただろうか。溢れる笑いを抑えもせず彼は家屋へと踏み込んだ。
 牢に改造された間の戸を蹴り開けると青鬼飛天童子は、人々の怯える表情を一つ一つ眺めて牢の錠前を千切り、牢を開け放つ。
 理解できない、という表情の貧民達が彼を見上げる。
「あ、ぁ……?」
「このまま殺されたかねえだろ? あいつらお前らを人間とは思っちゃいねえよ」
 その言葉に、貧民達ははっとその謎の人物を見つめた。彼の言葉が真実だと、彼は信用できそうだと、歪んだ希望が浮かび上がる。
「いいか? 北……都に走るんだ、逃げてんだって分かり易くな。ここの追手が掛かるかもなあ、捕まりゃ問答無用で殺される。それくらい分かってる、そうだろ?」
 でも、お前らを捕まえてる陰陽師連中に一泡吹かせられる。逃げられたんだってな。もしかしたら陰陽師に捕まっただなんて知らない連中に匿ってもらえるかもな。そう言いながら、彼らの腕を縛る縄を解きもしない。腕も振れず、ただ走れると言うだけで逃げろという。
 だが、その指示が理に適わぬものだとして、彼らにそれを判断するだけの思考は残っていなかった。その行動が報復となると言われてしまえば、激情と場に倦んだ連帯感がそれ以外の道を暗闇に閉ざす。
「固まって逃げろよ、お前らに行く場所なんざねえんだ」
 退く宛も行く宛もない。
 その道の先に待つのが礫の雨とも知らず、彼らは家屋を飛び出していった。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【傀儡】
2
周囲に、ディアボロスのみが操作できる傀儡の糸を出現させる。この糸を操作する事で「効果LV×1体」の通常の生物の体を操ることが出来る。
【怪力無双】
1
周囲が、ディアボロスが怪力を発揮する世界に変わる。全力で力仕事をするならば「効果LV×3トン」までの物品を持ち上げる事が可能になる。
【一刀両断】
1
意志が刃として具現化する世界となり、ディアボロスが24時間に「効果LV×1回」だけ、建造物の薄い壁や扉などの斬りやすい部分を、一撃で切断できるようになる。
【罪縛りの鎖】
3
周囲に生き物のように動く「鎖つきの枷」が多数出現する。枷はディアボロスが命じれば指定した通常の生物を捕らえ、「効果LV×2時間」の間、移動と行動を封じる。
【勝利の凱歌】
2
周囲に、勇気を奮い起こす歌声が響き渡り、ディアボロスと一般人の心に勇気と希望が湧き上がる。効果LVが高ければ高い程、歌声は多くの人に届く。
【避難勧告】
1
周囲の危険な地域に、赤い光が明滅しサイレンが鳴り響く。範囲内の一般人は、その地域から脱出を始める。効果LVが高い程、避難が素早く完了する。
【トラップ生成】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の空間を、非殺傷性の罠が隠された罠地帯に変化させる。罠の種類は、自由に指定できる。
【修復加速】
2
周囲が、破壊された建造物や物品の修復が容易に行える世界に変わる。修復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」する。
【土壌改良】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の地面を、植物が育ちやすい土壌に変える。この変化はディアボロスが去った後も継続する。
【建造物分解】
1
周囲の建造物が、ディアボロスが望めば1分間に「効果LV×1トン」まで分解され、利用可能な資源に変化するようになる。同意しない人間がいる建造物は分解されない。

効果2

【能力値アップ】LV3 / 【命中アップ】LV1 / 【ダメージアップ】LV2 / 【ガードアップ】LV3 / 【反撃アップ】LV2 / 【ロストエナジー】LV4

●マスターより

雨屋鳥
 当シナリオを担当させていただく雨屋鳥です。
 人を妖怪へと貶める追儺の儀式を阻止するシナリオです。
 このシナリオが成功すれば、地獄変の第三幕『追儺の鬼』の必要成功数が減少します。

①囚われた牢からの脱出(👑7)
 牢に詰め込まれた貧民達と接触して、脱出の手筈を整えます。
 配属されている陰陽師は数人程度です。

②【攻略旅団】廃墟の村を再建しよう(👑3)
 逃亡した後に、分散した貧民達が集まれそうな廃村を修復します。
 プレイングの数などにもよりますが、最低数以上の採用も考えています。

③👿アヴァタール級との決戦『青鬼飛天童子』(👑11)
 貧民達を迎えに来る鬼との戦闘です。
 ディアボロスと出逢う入った瞬間から正体を明かし、戦闘に突入します。
 空中を蹴り飛ぶように戦います。

 それでは皆様の心躍るご活躍をお待ちしております。
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このシナリオは完結しました。



発言期間は終了しました。


リプレイ


冰室・冷桜
まーずは下準備の肉体労働、と
さって、どうしますかね……

とりあえずはまず雨風が凌げる場所を用意するのが大事よね
無人になった村ってゆーても更地になったり、破壊されたわけでもなし
まだ使える物とか家とかも残ってるでしょ
そーゆーのを見つけましょうかね
穴が空いた家でも他の住めなそうな家から板とか拝借できれば穴は塞げますし、ボロい布とか服とかでもないよりはマシでしょ
だいふくを【召喚】して手分けして、そーゆーのを探しつつ、一緒にでかい物とか運んでまとめて集めておきましょう

使える場所と物、そうでないのを仕分けしとくってー感じで作業を黙々と進めていくわね


野本・裕樹
※アドリブ・連携歓迎

都を脱出した後の生活の場になるでしょうから、できるだけ暮らしやすい環境にしておきたいですね。脱出後の心配を減らせるのは有難いです。

まず食べ物は持てるだけ準備をしておきましょう、流石に食べなければ生きていけませんから。
無人になっても生活していた場所ですし探せば農具は見つかるでしょうか?あったらこれも修理しておきます。修理するなら工具も準備しておいた方が良さそうですね。
【土壌改良】は私達が去った後でも効果が継続する筈ですから農地はちゃんと整備しましょう。

これで飢えて困る事は無くなるとは思うのですが…
後は妖怪に荒らされた部分は時間の許す限り掃除しておきたいですね。


守都・幸児
帰る場所を用意してやれるのか
やりてえ
やらせてくれ

俺は【怪力無双】で力仕事をする
廃村にある壊れた家屋を修繕するぞ
使えねえ瓦礫は砕いて薪代わりに
山林から使える木を伐り出して運んで
屋根や壁の穴を塞ぎ柱を補強して
一人でも多く寒さを凌げる場所を作る

それと井戸だ
枯れてようがなんだろうが
井戸を探して底を掘る
水が出るまで掘り続ける
もし水が出なくても深く深く掘っとけば
雨水を溜める水瓶代わり程度にはなるだろう

とにかく動く
寝泊まりできる場所と水と薪を重点的に確保してやりてえ
水があれば作物を作る気力も湧くかもしれねえ
雨風と寒さを凌げりゃ安らげるかもしれねえ
どう使うかは民次第だが
どうか
生き延びてくれ

※アドリブ、連携歓迎


エスト・リンフィールド
水源でできた川の跡には、枯れた沢が残り、土壌改良した土地には豊かさは残る
建造物分解しとけば、資材も残せる

すべてが、無駄になる訳じゃない
私は【修復加速】で、壊れたお家を直していこう
高いところは、怖くて震えがくるけど……慣れれば、結構見晴らしがいいかも

残った壁や屋根は極力活かし、壁や床に空いた穴やらは別の板で伏せたり、屋根の隙間には草を葺いたりして、当面の雨露を凌げるように

これから、もっと住みやすくしていくのは……ここに住むみんな
みんなが最低限暮らしたり、食事のための煮炊きとかできるように、竈やらも直したり、周囲に危険な動物が居るなら、少し数を減らしておこうかな

あと、素材に使える木や竹を見つけよう


喩・嘉
人々の心情として故郷に勝ることはできないかも知れないが、
安全な「帰る場所」を作れるのなら全力で仕事にあたろう

初めから豊かさを目指すのは厳しいが
より多くの者が命をつなげられ、そして自分たちでも発展させていける基盤としての場所を作りたい

まずは「蓮弁散華脚」を使用。
辺りに蓮弁を散らし、【修復加速】で皆の作業を効率化する
廃村の広さや全体の状況を把握して、
使用する範囲なども獬豸書に事柄をまとめ、わかりやすいように共有
皆の担当する場所や、役割分担、手順などの指示も行う

※アドリブ、連携歓迎


コンスタンツ・トパロウル
壊れてどうしようもない家や納屋を、【建造物分解】で資材化しようか
それなりの人数が来るだろうし、戸建てよりも長屋とか言う集合住宅っぽいのが、資材の量的にも時間的にもいいかもしれない

もちろん、資材と時間が許すなら戸建てがいいと思うよ
そこは状況次第かな

廃寺とかあったら、資材にしたいところだけど……こういうのって、人々の心の拠り所でもあるんだよね
もし、資材が余ったら見かけだけでも直しておくか

資材を確保したら、仲間と一緒に建物を再建していこう
段取りがうまい人が居るなら、その人に従って、適度に休憩しつつ手際よくやらないとね

特に重い資材を扱う場合は、落としたりして壊したら大変
貴重な資材だから、大事に扱おう



 件の牢からディアボロスであれば数時間歩けば着く距離。そこにその山間の廃村はあった。湿った土を踏んで、饐えた匂いを忘れるように息を吐く。
 逃げたとて戻る者もいなかったのだろう。その村を訪れたディアボロスがはじめに手をつけたのは、かつての住民達を弔うことだった。
 とはいえ、無情を嘆く余裕もない。
「さーてっと」
 冰室・冷桜(ヒートビート・g00730)は気持ちを入れ替えるように明るい声を発して、荒れた村を見渡した。
「やることは、たんまりあるわけだし」喚び出したメーラーデーモン、だいふくの頭を掻きながら靴の爪先で地面を叩く。「使えそうなの、探してこっか」
 軽い探索の間に、使えそうなものも見かけていた。布、板。道具ともいえない状態で転がっているそれらも、今は重要な資材だ。
「それじゃあ、まずは村の状況を確認って事でいい?」
「私はね。他の皆もそれでいいなら」
 コンスタンツ・トパロウル(生き残りの撃竜騎士・g05674)の問い掛けに冷桜を初めとしたディアボロス達が肯定の声を返していき。
「ぇ、あ……わ、私も、それで大丈夫ですッ」
 最後に残り、視線を集めたエスト・リンフィールド(挙動不審エルフ吟遊詩人系・g05947)が慌てて同意して、各自散開する事となった。


 井戸は。
 守都・幸児(迷子鬼・g03876)の頭には真っ先にそう浮かんでいた。
 水。逸る脳裏に渇きの苦しみが過る。唾液が粘つく感覚も失せ、呼吸すら苦痛となるような。
 すぐ傍に川がある立地ではない。なら、水の確保をどうにかして行っていたはず。破壊された村の瓦礫の中からそれらしい跡がないか、探していく。
 幸児が瓦礫を排した場所に野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)は抱える程度の大きな包みをおく。
 時代に排斥されないような保存の利く食料、とはいえここに辿りついた人々ををそれだけで賄おうとすれば、もって十数日。
「……山から食料を得る間の繋ぎにはなりますよね」
 自らの不安を拭うように呟かれた裕樹の言葉に、エストは小さく頷いた。裕樹はそれに気付いてはいないが、エストに真剣な眼差しで次の行動に移った彼女に話しかけられはしなかった。
 ディアボロスとて、この場所を安全かつ快適な場所に作り変える事は至難の業だ。できる事をするしかない。ディアボロスの引き起こした現象が世界から塗り潰されようと全てが無駄になるわけではない。
 私達は、どれほどの影響を残せるのか。
 瓦礫の隙間に転がる簡素な玩具。精密とはいえない竹細工を手に取り、エストは周囲を見渡した。
 その視線の先。何かを見つけたように山に向かうコンスタンツへと足を向けていく。
 

「どうだ?」
 幾つかの家屋を解体して得た資材の上に書簡を広げた喩・嘉(瑞鳳・g01517)は、舞う蓮の葉の向こうから戻ってくる人影に声をかけた。
「枯れてない井戸があった。上だけ派手に壊れてるけど直せば使える、……んじゃねえかな」
 最後だけ自信なさげに幸児は視線を井戸のあるのだろう方向へと向ける。
 彼自身、水に口をつけてはいるのだろうが、安全確認という点において、ディアボロスの主観ほど当てにならないものはない。
 この廃村は――規模を見れば集落と言ったほうが正しいかもしれないが――恐らく、ある程度安定した暮らしを行えていたのだろう事が鑑みれる。
 獣と実りのある山。そこから得られる水。さすがに都の中などとは比べようもないが、嘉の見てきたこの窮する世界の中では恵まれているといえる。
 流民が一人も住み着いていないのは、まだ妖怪に襲われて間もないせいか。かしこに見える黒ずむ惨劇の痕が、ここが危険だと叫んでいるせいか。
 それだけ派手に、そして力任せに蹂躙されている。だが、それ故に。毒物が撒かれているような危険は少ないと見えた。毒の効果が発揮されるより前に、ある日突然に、この村は全滅している。
「石と木、あたりか?」
「んにゃ、石は再利用できそうだ。木材が足りねえ」
 嘉は幸児の表情からその修復に必要なものがありそうだと汲み取れば、彼はゆるりと首を横に振った。
「木材か」
 荒らされた村を見渡す。その家屋は殆どが全壊、もしくは半壊している。そこから建造物分解を行うにしても、支え骨に利用できるような木材は多くはない。
「集合住宅……ここじゃ長屋だっけ? それで作るにしても厳しめかな」
 コンスタンツが共に山に入ったエスナと目配せを交わす。
「少し山に入った所に建物があったんだ、多分お寺だと思う」
 それにエスナも同意するように頷いてみせた。そちらもやはり半壊してはいたが、集落のそれよりは丈夫な木が使われているのは確認できた。もし資材が余ったのなら修復しようと考えていたコンスタンツは、その考えを反転させる。
「心の拠所だったんだと思うから気が引けるけど……うん、資材にしちゃおう。それで井戸も足りると思う」
「ああ、助かる」
「助かります」
 幸児が礼を言うのと同じくして裕樹が頭を下げる。
「農具も殆ど壊されず残っていましたし、水があれば畑も機能してくれそうですね」
 彼女が見つけた農具は、その殆どが軽く補修すれば、十分使用に耐えるまま残っていた。壊されているものは恐らく住民が妖怪に立ち向かった際に武器として扱ったものだろう。
「土壌改良も施しておきました。作物さえあれば、育つまで周辺の食料で食い繋いではいけるはずです」
 残っていた作物では心許ないが、仕方ないだろう。もとより完全な自給自足を強いるつもりもないのだ。
「まとまった?」
 解体し終えた材木を転がして運んできた冷桜が集まった面々に問い掛ける。
 使えそうなものを片っ端から、使えないものは薪に、使えるものはそのまま、大きいものは解体して運搬し。と着々と作業を冷桜は、ふと自分の知らぬ素材が転がっていることに気付いた。
「竹?」
「う、うん……補強材に使える、かなと……」
「へえ、いーじゃん」
 玩具に始まり、農具や家の至る所に使われていたそれが、近くにあると踏んでエストが探していたものだ。冷桜は屈託もなく成果を賞賛する。
「住む奴らも取りにいけっかな、危なくなかった?」
「え、あの、熊とか犬も……いなかった。よ、妖怪が暴れたときに逃げたんじゃない、かな、多分……」
「いろいろ考えてるんだね」
 鹿やら猪は戻ってきているが、縄張り意識の強い肉食獣などは離れたままの状態。暫くは危険は少ないだろうと予測するエストに感心した冷桜は、集めた資材を見やり、そして、嘉のしたためた設計図に目を落とす。
「いけそ?」
「ああ、雨風は凌げる。簡素にはなるが、その分修理もし易い」
 長屋仕立ての掘っ立て小屋。竈や倉を共用とした低コストの家屋が描かれている。致命的な欠陥もなさそうだと頷きあう。
「そろそろ寝場所造りも始めようか」
 嘉の言葉に、それぞれが再び動き始めた。


 菫色の空。巨大な紫の花弁が空を覆うような夜の始まりが、そうして作り変えられた村を見下ろしていた。
 それは要塞のように閉ざされた村ではない。
 それは極楽のように快適を与える村でもない。
 だが、人として生きることのできる場所が作られていた。だが、そこに住まう者は誰もいない。途上も途上。人を救うには足りず、世を直すには程遠い。いや、たとえこの村で人が暮らすことが出来たとしてもそれはまだ到達点ではない。
 ディアボロスの姿は既に消え去っていた。
 この村だけで完結させてはいけないのだ。
 点として。
 いずれ巡り繋ぎ、そして還る点として。今は静かに、村は夜に沈んでいく。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【罪縛りの鎖】LV1が発生!
【土壌改良】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
【修復加速】LV2が発生!
【建造物分解】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV2が発生!
【能力値アップ】LV3が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!

守都・幸児
貧民たちを逃がす
そのために陰陽師と話す
陰陽師たちの前に姿を現して声をかけるぞ

「今から牢の中の民を逃す。迎えに来る輩も俺たちが倒す。
だからあんたたちには迷惑をかけねえ。いいな」
素直に聞いてくれるとは思っちゃいねえ
でも問いてえんだ
「本当にそれで都が救われると思ってるのか。正しいと思ってるのか」
あとは自分で考えろ
そのまま陰陽師を放って牢に向かう
止めようとするなら【罪縛りの鎖】で陰陽師の動きを封じて脅す
なあ、あんたら
…陰陽師なんだろう
それを忘れねえでくれ

貧民たちには助けに来たことを説明して村の場所を伝え
大丈夫そうなら【怪力無双】で牢を壊すぞ
老人子供に手を貸して
固まりすぎねえように少人数ずつ分けて逃がす


冰室・冷桜
正義の味方ぶるってー柄でもねーし、不意打ちでさくっといきましょ
物影に隠れながら、だいふくを【召喚】
見張りの気が逸れた瞬間に【罪縛りの鎖】で拘束
そのまんまだと逃げる時に貧民の人等が見つけたら、めんどーなことになりそうですし、適当な物影に押し込んだり、布とか被せたりして隠しておきますか
悪因悪果、ってー言葉も世の中にはあるらしいわよ……ま、アタシが言えた義理じゃねーけど
肩を竦めながら、そう一言だけ声を掛けるわ

牢についたら、助けに来たってーのと村の居場所を説明
寄り道せずに逃げるよう伝えながら、牢はだいふくにどかんと壊させましょう
逃げる時は女の人らに手ぇ貸しましょうかね
同性の方が安心できんでしょ


コンスタンツ・トパロウル
じゃあ、あたしは【避難勧告】使って、貧民達を誘導しようかな

「道が入り組んでるところがあるから、まとまって逃げるのは避けて、バラバラに逃げて」
「まずは、バラバラに逃げて、山や林に身を隠して」
「追手に捕まらないように隠れながら、再建させた村に向かって」
「村のそばで竹とか手に入るから、必要なら建物の修理や、籠なんかの材料に利用して」

等と、具体的な流れを伝える

可能なら、統率を活かして、家族を基本に数人程度に分かれて貰い、身寄りのない子どもや老人もうまく逃げられるよう、頼れそうな大人が居る班に入って貰おう

若い者は体力があるし、老人には経験がある
一緒に逃げた縁で、これからも助け合ってくれれば最高だけどね


エスト・リンフィールド
【勝利の凱歌】で、牢に囚われた人達を勇気づけ、負の感情に塗り潰されそうな心を……少しでも前向きにしたいね

みんなが、今日を生きるだけでも大変なのはわかってる
明日のことなんて……考える余裕もないことも

だけど、だからこそ……みんなで協力して、今日よりもいい明日にしたいね

もし、人々が逃げる先に柵とかあって、遠回りしないといけないようなら……【怪力無双】で柵を持ち上げて、通路を確保するね

人を押し退けないで、順番に潜っていこうね
先を競って押し合い圧し合いしてたら、余計に時間も掛かって、怪我したりするから

小さい子やお年寄りには、手を貸して貰えると嬉しいね

大丈夫
悪い奴らが追っ掛けてきたら、私達が食い止めるから



 夜闇に紛れて忍び込む。警備は殆ど無いようなものだった。逃げないようにという形だけの監視。いや、もしかしたら逃げるのなら逃げてくれればいいとでも考えていた誰かがそうしたのか。
「まあ、知んねーけどさ」
 冰室・冷桜(ヒートビート・g00730)は蹲る体勢で相手の顔を少し見上げた。鎖の付いた枷に拘束された陰陽師が恐怖に引きつった顔で睨みつけてくる。冷桜はただそれに小さく溜息を返していた。
 別に、彼に対して何か特別な感情があるわけでもない。怒りも憐れみもない。まあ、運が悪かったんだろう程度はあるのかもしれない。ただ、あるのかもしれない程度でしかない事は確かだ。
「悪因悪果、ってー言葉も、世の中にはあるらしいわよ」
 立ち上がり、言い捨てる。陰陽師から視線を外してから、拘束した陰陽師を物陰に押し込めるなんて悪行を行っている自分が言えることでもないかと、失笑が漏れ出た。
 あとは適当に布でも被せて、部屋の戸を閉めれば逃げだす人々に見つかることも無いだろう。牢に閉じ込められていた彼らがこの陰陽師達を見つければ、きっと良くないことが起こる。
 いや、おそらくこの陰陽師達が人々の眼前に立つ事自体が、澱を、濁りを生み出す。
「正義の味方ぶるって柄でもないし」
 目覚めが悪い事が嫌なだけだ。どうせなら、嫌な想像が浮かばない方が良い。
「私は、ね」
「……」
 だが、それに異を唱える者はいた。いや、異を唱えてはいない。ただ、行動が、その視線がそうじゃないと告げていた。
 冷桜は牢へと急ぐ。その横で陰陽師の前にしゃがみこんだ男がいた。守都・幸児(迷子鬼・g03876)は背中で彼女を見送った。
 幸児は彼らを拘束する前に会話を試みていた。牢の人々を逃がし、迎えを排除すると伝えた。彼らは迎えに来る者が妖怪だとは知らないのだろうと、後になって理解した。陰陽師達が即座に幸児を叩きのめそうと仕掛けてきた所を、物陰から見ていた冷桜と共に拘束し、今に至る。
「あの儀式で都が救われると思ってるのか。それが正しいと、思ってるのか」
 一人の口枷を外し、問いかける。
「貴様こそ、正しいとでも思っているのか」
 返る声は憎悪が籠もる。問いに一瞬喉が詰まる。肯定しなければいけないと即断しながらも、本当に救えているのかなど断じることはできなかった。絞り出す。
「……ああ」
「はっ。狂人の妄信か、迂愚なものだ。……分かるか、貴様らの愚行が都の者達を殺すのだ」
 違う、と幸児は首を振る。否定する。拒絶する。間違っているのは己ではないと。間違っていないはずだ。間違っては。
「なあ、あんたら……陰陽師なんだろう」
 言いながらに、疑問を覚える。俺の言う陰陽師ってのは、なんだったろうか。彼らとて人を救おうとはしている。その事は理解していた。してしまっていた。
 罪縛りの鎖に命じる。
 枷がその口を閉ざす。動きを封じる。邪魔されないように。


 篝火が照らす牢に、侵入者達の影が揺れた。見回りの陰陽師ではない。そう気付いた牢の人々は剣呑な視線を彼女達に向けていた。
「なんだあんた」
「え、っと……あの……こ、怖くないですよー?」
「……」
「……ひぅ」
 エスト・リンフィールド(挙動不審エルフ吟遊詩人系・g05947)が警戒されているのだろうと友好を示すように言えば、突き刺すような視線が返って思わず尻込みをしてしまう。
 そんな彼女に代わり、一歩、冷桜が踏み出して眼光を受け流す。
「私らは助けに来たんだよ、――あんたらを」
「俺たちを、助け……?」
「そ。まあ、あんた達が信じてくれるならだけど」
 コンスタンツ・トパロウル(生き残りの撃竜騎士・g05674)が、訝しむ声も当然だろうと信を問う。その答えがどうだろうと彼らを解放するつもりではあったが、数秒のざわめきの後返ってきたのは、話を聞きたい。という返事だった。
「ここにいたって、どうせ訳が分からず利用されるだけだ」
 陰陽師が護っている牢の中より、妖怪の跋扈する外のほうがマシだと。どうにも生じている軋轢は相当なものらしいと感じながらも、ある意味では助かっている現状に少し呆れを浮かべる。
「まずは、バラバラに逃げて、山や林に身を隠して」
 まとまって逃げることは避けさせる。全容を話すことはしない。無駄に不安を煽りはせず、行動だけを述べていく。
 追手を警戒するように隠れながら、再建した村への方角や目印を伝える。存在の確信もない休憩を挟み隠れながらの行軍とすれば、ディアボロス達が数時間足らずで踏破した距離も確かに数日はかかるだろう。
「別に身を寄せれそうな所があるなら気にしなくていいよ」
 ただ、助け合ってほしいと。
「みんなが、今日を生きるだけでも大変なのは分かってる。明日のことなんて……考える余裕もないことも……」
「そうかよ、そりゃあ良い」
 コンスタンツの説明が一通り終わった辺りで、エストがぼそりと語りかける。何がいけなかったのか。コンスタンツの言葉を聞いていた時より棘のある言葉に面食らいながらも、それでもエストは声を振り絞った。
「だけど、だからこそ……みんなで協力して、今日よりもいい明日にしたいね」
 震える声は、しかし、不思議と彼らの耳に歌声のように響く。僅かな沈黙のなかで域を吸い込み吐き出す音に、エストは逸らしていた視線を上げる。何かを堪え、腹に押し込むような仕草。肩を怒らせながらも、その怒声を飲み込んだらしい男性の視線に貫かれる。
「ああ、そうだな」
 彼はそう吐き捨てると、もう一度。同じ言葉を続けた。ああ、そうだな。と。二度目の言葉は少し語尾が和らいでいた。ように感じた。
 湧いた勇気と希望によって、感情を抑える余裕が出てきたのだろう。とはいえ、エストには向けられる視線にそこまで考える余裕はなかった。
 幸児と、冷桜のメーラーデーモンのだいふくが牢の鍵を壊していく。
「家族がいるなら集まって、数人に分かれてくれる?」
「急ぐ必要はねーからさ」
 背を屈めないと出れない牢の扉に、冷桜が手を引きながら誘導する。狭い牢ではなく、何にも使われていないらしい広間で組分けを行っていく。
 ここまで出てくればどうやら陰陽師達は既にいないのだと考えてくれたらしく、彼らも何かを探すような素振りは欠片もなかった。
「悪い奴らは、……私達が、食い止めるから」
 エストは、施設の裏へと向かう人々を勇気づけるように言う。追手があると告げている。だけども、その不安を取り除けるのならと。
「だから、大丈夫」
「驚くなってのは……厳しいかな。それじゃ、無事を祈ってるよ」
 コンスタンツが言うと同時に、赤い光が明滅する。屋敷の中にサイレンが響き渡る。不安を煽る光と音。人々は恐怖に駆られるようにして逃げ出していく。
 それでも直前に決めた纏まりで駆け出してくれたようだ。
「一緒に逃げた縁で、これからも助け合ってくれれば最高だけどね」
 そう言ってコンスタンツは屋敷の正面へと足を向けた。人々が逃げていった方角とは逆。都を向く方角。
「……少し早まりそうか」
 幸児は来るクロノヴェーダへと考えを向ける。
 隠密には向かないが、陰陽師達は拘束している。異常を察知してクロノヴェーダが飛んでくるとしても問題はない。もう空は明け始めている。迎えの妖怪もすぐそこにまで来ている時間だ。
 逃げる準備を整える時間は少なかったが、具体的に指示は出してある。うまく逃げてくれることを祈るばかりだ。
「気にしてばかりもいられないかな」
 コンスタンツは気持ちを切り替えるように、息を吐く。白む空に陽はまだ上らず。地面は山影が覆い尽くしている。
 故にそれは影も見せず現れた。土砂を巻き上げ、降り立つ鬼。
「ああ、畜生が。……気に食わねえ面しかねえじゃねえか」
 待ち構えるディアボロス達に、飛天童子は舌打ちを一つ盛大に放った。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【罪縛りの鎖】がLV3になった!
【避難勧告】LV1が発生!
【勝利の凱歌】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】がLV4になった!
【ダメージアップ】がLV2になった!
【ガードアップ】LV1が発生!

 選択肢①クリア:追加情報はありません。

 逃げて、そして山中で道連れが増えた。腹の立つ事に、陰陽師が連れた人々だ。
 あそこにいた奴らとは違う顔だが、それでも、ぶん殴ってやろうかと考えた。だけどやめた。
 やることが残っている。まだ、そんな事にかまけている暇はない。感情に揺さぶられている暇はない。
 だから頷いてやった。
 煮えたぎる怒りを抑えるだけの余裕はまだあった。
「遠回り……いつまで答えを出し渋っているつもりでしょうかね」
 その一段を連れていた陰陽師は、苦々しげに呟いた。その意味は知らない。ただ、その態度が気に入らなかったので、黙って歩けといえば自嘲げに笑いを返してくる。
 直した村とやらを見つけて、生きていける目処が立ったなら殴ってやろうと、そう決めた。
喩・嘉
飛天童子。実に「鬼」らしい鬼だ
戦い甲斐がある

飛んでくる暗器は麒麟蹄による蹴りと硬化した腕で弾いていく

なかなか良い身のこなしをする
だが、狙いを外さないのは俺も同じこと
お前のその角はどうやら雷を引き寄せるようだ

敵が物陰に身を潜めたら
「付和雷計」で雷を落として攻撃
天の怒りは逃げ隠れして凌げるようなものではないからな

※アドリブ、連携歓迎


守都・幸児
暗器使いの鬼か、面白え
暗器が飛んできた方向と喩嘉の雷から敵の位置を【看破】
浴びせられる暗器を食らおうが刺されようが構わずその方向へ突撃して
【捨て身の一撃】で反撃するぞ
「黙」を乗せた拳を敵に振るい
闇でその脚を【捕縛】する
これでちょこまかと逃げられねえだろう
一瞬でも捕えられれば
あとは皆に繋げられるはずだ

あの陰陽師たちに約束したんだ、一方的にだがよ
迎えを排除するってな
だから俺はてめえを倒す
陰陽師に命令も出させねえし
民も追わせねえ
あの陰陽師たちに何が正しいか問うたんだ
俺も正しいと思ったことを最後までやり遂げる
それしか出来ねえ

民は
村に辿り着けたかな
後を追って手助けも出来るといいんだが

※アドリブ、連携歓迎


野本・裕樹
※アドリブ・連携歓迎

ここであの鬼を止めます、止めねば儀式のやり直しをされるかもしれません。

まずは相手が何処にいるか見つけなければなりません。
飛んでくる暗器は[両断]で斬り落としながら身を潜めている場所を探し出しましょう。

[風使い]で周囲に風の流れを作り、[精神集中]で流れが違う場所を[看破]。
潜伏場所が特定できたら[オーラ操作][結界術]で身を守りながら接近します。

暗器使いならば正面での戦いはこちらに分がある筈、上手くこちらの土俵に引き込みたいですね。
【紅楓閃】、あなたに止められますか?

脱出した人達は順調に逃げてくれているでしょうか。
生き延びて欲しい、可能性を無くさない為にも負けられません。


エスト・リンフィールド
お前が……このくだらない石投げ遊びの元凶か
その青い顔を……恐怖でもっと青くさせてやろうか?

それとも……赤っ恥かいて赤くなってみたい?

とか挑発して、敵の注意を自分達に向け、逃げる人達が逃げやすいようにしよう

お前が恐怖を煽ろうとするなら……歌唱、伝承知識、高速詠唱等を活かし【勝利の凱歌】を乗せたレジェンダリースマイトを叩き込んでやる
どんな伝承でも……最後に悪は滅び、英雄達が勝利を収めるんだ

だから……逃げる人々には、指一本触れさせない
怖くて震えそうで、その場に踞りそうになっても、耐えろ……私

【勝利の凱歌】は、まだ終わってはいない
いや、今からが……はじまりなんだ

みんなに届け!
明日の夜明けを告げる凱歌よ


コンスタンツ・トパロウル
どうしたんだい旦那?
青い面して……悪いモンでも拾い食いしたのかい?

まあ、手癖悪そうな面してるからねえ

等と挑発

怒り狂って、本体がぶっ飛んで来るように仕向ける
視界から消えるなら……塀や壁等が自身の背後や側面に来るよう位置取り、頭上や壁等がない側を警戒

更に罠使い、地形の利用を活かし、敵が来そうな場所に落とし穴や括り罠、ネット等を仕掛け、敵が急襲してきたら引っ掛かるように配置

敵が罠に引っ掛かった一瞬を狙い、竜滅戦技を叩き込む
敵が「罠があるかもしれない」と躊躇し、攻撃が鈍るように撹乱できたら、仲間への被害を抑えられそうだね

勿論、敵が逃げる人達を追うようなら、落とし穴や括り罠で捕まえ、背後から竜滅戦技だ



「石投げ遊びの次は……かくれんぼう?」
 エスト・リンフィールド(挙動不審エルフ吟遊詩人系・g05947)は、姿を失せさせた飛天童子に呼びかけた。地面を叩き砕き、砂塵を風と共に巻き上げた飛天童子はどこかに隠れている。修繕の際に使用され放置された資材、残骸、もしくは、岩陰、木々の間。隠れようと思えばいくらでも隠れ場所を見つけることが出来る。
「その青い顔を……恐怖でもっと青くさせてやろうか? それとも……赤っ恥かいて赤くなってみたい?」
 飛天童子が逃げる人々を追わぬよう、嘲りを込めるようにして慣れない挑発を繰り返し、周囲へと警戒を向けていた。
 大丈夫、飛天童子はまだここにいる。
 この時間で人々が襲われているかもしれない、という最悪を考える弱さを漂う瘴気の如き悪意に抑え込む。
「隠れ鬼、なんて可愛らしさはありませんけれど」
 野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)はエストと同様に――この場のディアボロスたちと同様に、飛天童子が逃げたわけではないと確信を抱いていた。肌を突き刺すような殺気が漂い続けている。確実に、ディアボロス達を屠らんとして息を潜めている。その爪を光らせている。
「ならば俺たちが鬼か……」
 鬼を追い詰めようというのに、鬼と呼ばれるというのは中々に滑稽なものだ。喩・嘉(瑞鳳・g01517)は肩を竦める。その両腕は弛緩し、力を抜いてしまっていた。気を張るエストとは対照的に、油断としか言いようのない姿勢。
 見せかけですらなかった。確かな無防備。この場にそぐわない、ゆえにその無防備はこう語っている。
「殺せはしまい」
 投げ放たれたその苦無は、確死の一撃たりえた。意識を周囲へと割くことすらしていなかった嘉の、そしてその傍にいた裕樹の死角でもある針の穴を突くような神業めいた投擲。風を切る。その音すら引き裂いた刃は。
「来ましたね」
 裕樹の振るった刃が弾き飛ばす。
 その瞬間。金属音が跳ねる刹那。裕樹は両足で地面を踏みしめ急速に集中力を高める。鉛の棒を垂直に水面へと叩き込むように。音もなく、しかし激しさを持って。
 風を聞いた。
 駆ける。
 狙うは岩。苦無が放たれた方向とは違うそこを裕樹は迷いなく切り裂く。
「一閃――」
 直前。頭上から降り注ぐ暗器が裕樹の体から溢れた紅色の妖気に歪み逸れて地面へと突き刺さる。一瞥すらせず、集中に飛びこんだままに裕樹は己の秘めた力を引き出す。
 刃が線を引く。瞳が妖気に染まる。鮮やかに緑から移ろい、その彩は。
「紅」
 岩を裂いた剣撃の先、傷を開かせた鬼が顔を歪めていた。


 逃げる。
 隠れる。絶対優位の姿勢を崩さぬように。
「させるとでも!?」
 コンスタンツ・トパロウル(生き残りの撃竜騎士・g05674)は肉薄する。突き上げる激槍が唸りあげる。地面を踏みつける。躱せ。躱してみせろ。切っ先が迫る。
「ぐ、のッ!」
「情けない動きだね! その青い顔色は拾い食いでもしてお腹下したせいかい!?」
 身を捩り体を折り曲げるように槍の一撃を避けた飛天童子へと、槍を回した石突の一撃が繰り出される。まるで踊るように、体を旋回させ跳躍。舞う影。頭上を過ぎていったそれに、槍を引き戻したコンスタンツは何かが破裂するような音に、罠の作動を確信する。
「これで……っ!」
 振り向き、そして土煙が上がるそこには千切られたワイヤーが踊り、影が舞う。罠の作動、そして、破られた跡に確信する。
 上。跳んだか。
 宙に、踊る砕けた枷。だが、そこに飛天童子の姿はなく。
 見上げたコンスタンツの喉へと鬼の拳が突き刺さる。
「かは、――ッ!?」
 首を起点に苦無を握り込んだ打撃が、強烈な推進力となって彼女の体が水平に吹き飛んでいく。弾丸の如く飛ぶコンスタンツをすら回り込んだ飛天童子が苦無を構える。
 今度こそ、その生命を断たんと。
「――っ」
 体勢を立て直せと脳が叫ぶが、喉を疲れた体は痺れて槍を取り落とさぬようにするのがやっと。風が体の動きを奪う。刃が振るわれた、その瞬間、飛び込む影が二つ。
 一つは飛天童子へと向かい、一つはコンスタンツの体を受け止めていた。
「大丈夫かっ」
「ええ……っ!」
 守都・幸児(迷子鬼・g03876)が飛天童子から目をそらす事なく問いかける。助けられたと考えるより先に、コンスタンツはその腕を払うように立ち上がる。
 声を張り上げ、疼痛を滲ませるように咳き込んだ。喉がひび割れたように痛む。それでも縋るように槍を握る。
「この程度で、怪我人扱いしないでね」
 手放すことは出来ない。


 剣を握る。
「暁星遠く、灯火を掲げよ」
「寄って集って俺の相手で精一杯か?」
 エストは歌い上げ、紡ぎ上げ、刃を研ぎ澄ませる。その歌は誰かの為に歌うものではない。飛天童子の言葉に揺さぶられる自らを鼓舞するもの。自らを信じるためのまじない。
 そして人々が前に進んでくれることを願う祈り。
「其は獣に非ず、其は禍つに非ず。其は斯く説く」
「笑い種だな! 俺が一人で来るとでも思ってんのか!」
「……っ、夜を恐れるな」
 大丈夫だ。そう思いながらも、しかし手は震える。
 僅かな迷い、それを無理やり力で矯正するように刃を振るう。そうだ、他にも妖怪がいたのなら、ここにいない妖怪は、逃げた人々を追っている。逃走に気付いた飛天童子が手を打っているとすれば。
 仮定がエストの脳裏を過る。
「大丈夫に、決まってる!」
 その背を押すように、声が飛び込んできた。
「正しいだろ、救いになってやれるだろ。そうするって、約束したんだよ」
 障害となる敵を排除するとそう約束した。
 幸児はそれしか出来ないと邁進する。この腕、この体で放たれる針も刃も受け止め、弾いて。その横からコンスタンツが、切り裂くように突きを放つ。
「よくもやってくれたよね。小賢しい真似は随分と上手みたい、だけど!」
「それも、させません」
 囲まれては堪らないと身を翻そうとした飛天童子の動きを、刃を突きこんだ裕樹が遮っていた。四人が対敵する。だが、飛天童子は諦めはしない。いや、その表情には確かな自信すら垣間見える。 
 その時だった。
 天から一筋の光。浄罰の白。夜に紛れ空を覆っていた黒雲から降り注ぐ、雷撃。
「ガアッ、……!?」
 不意の一撃。飛天童子はコンスタンツとエストの挑発を混ぜた攻撃に意識を偏らされていた事に気付いた。もとより奇襲を得意とする鬼だ。真正面からぶつかり合うような状況での継戦能力に長けているわけではない。幸児と裕樹が隠遁を許さない。そんな眼前の驚異を排除する事へと注力しすぎたのだ。
「中々良い身のこなしをする」
 攻め立てる四人と対象的に、千載一遇の好機を探っていたもう一人への意識を薄れさせてしまった。
「だとして、天の怒りは避けられなかったようだ」
 嘉の雷撃が飛天童子の身を焼く。その隙に幸児が己の拳を地面へと叩きつけた。鬼人の腕が砕け、あふれるは夜の如き黒。星々を呑むような黒が地面を流れるように飛天童子の脚を縛りつける。
「行け!」
 ともすればどうにかできると、考えてしまった事。初めは思うように事を進められていたのだろう飛天童子が考えるのも無理はない。だが、奇襲を受けたことは偶発的であれど利用しない手はない。足掻け。己の傷も罠に変えて。戦う者であり続けろと。コンスタンツは、痛む喉で息を吸い、身構える。
 そうして、掴んだ最大の好機。
「追儺は止めます。あの人達を助けて、貴方を止めて」
 彼らは助からないかも知れない。これから先のいつか、命の危機に晒されてしまうかもしれない。それでもと、裕樹は力強く断言してみせる。
「それでも生き残ってくれる。その可能性を無くさない為に」
「……っ、クソ、が……ッ!」
 一斉に攻撃が放たれる。劣勢であった飛天童子にそれを堪えきれることもなく。
「ああ……っ、だから気に食わねえんだ」
 嫌悪とともに、青い鬼は倒れ伏した。


「なあ」
 辿り着いたそこで、俺は鍬を手に問いかけた。頼りない腕で、慣れた作業を繰り返す。
 繰り返す。生きるために繰り返す。
 そうして、再び壊される日を待っている。鬱屈した気分だ。泥が口の中を通って肺腑の底に重なっていく心地。苛立ってくる。一度は消えたはずの激情が返ってくる。
 あの日、確かに紛れもなく俺が陰陽師に向けた、あの感情。それが些細な諍いで噴き上がりかけた。
「どうすりゃいい」
「呪いは返るものだ」
 道中で出会ったそいつは、疲れたように呟いた。
「通る道すら穢し、淀ませる」
 何度目だろうか。互いに理解し合わないまま、視線を合わせず会話するのは。
「どうすればいいのだろうね」
 それは俺が聞いている事だ。溜息を吐く。
 苛立ちを口に出そうとしたその時、村の少年が声を掛けてきた。どうやら夕餉らしい。
 作物はまだ育たないが、獣の肉と僅かな干飯はある。
「……食ってる時と寝てる時は、人間喧嘩しないんだってさ」
 伝聞口調で言う少年に気勢を殺がれて、俺はもう一度溜息を吐いた。
 溜息が重なる。その意味は少し知っている気がした。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【傀儡】LV2が発生!
【一刀両断】LV1が発生!
【勝利の凱歌】がLV2になった!
【トラップ生成】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV2が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】がLV3になった!

最終結果:成功

完成日2022年03月01日

地獄変第三幕『追儺の鬼』阻止作戦

 地獄変の第三幕『追儺の鬼』の非道な儀式の遂行を阻止する為に行われる作戦です。
 この作戦は、攻略旅団の提案により実現しています。
 陰陽寮が管轄する施設の一つに集められた貧民達を、『追儺の鬼』の儀式が始まる前に救出する事で、事件を未然に防ぐことができるでしょう。

※ルールについて
 このシナリオタイプは、成功条件がありません。
 このシナリオタイプのシナリオが成功すると、1シナリオにつき1つ、地獄変の第三幕『追儺の鬼』の必要成功数が減少します。

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#平安鬼妖地獄変
🔒
#地獄変第三幕『追儺の鬼』阻止作戦
🔒
#地獄変


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選択肢『囚われた牢からの脱出』のルール

 牢などに囚われている一般人が脱出するための準備を行います。
 鍵を手に入れる、牢番を無力化する、怪我を治療する、必要な地図を手渡すなど、脱出に必要と思われる準備を整えましょう。
 準備が整っていれば、ディアボロスがクロノヴェーダと戦闘して撃破する混乱を利用して、自力で脱出してくれます。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『👿をクリアするまでに、この選択肢の🔵が👑に達すると、捕らえられた対象の救出は成功する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢『【攻略旅団】廃墟の村を再建しよう』のルール

 この選択肢は、ディヴィジョン攻略旅団からの依頼によって発生した、【調査・探索】選択肢です。
 都の外にある、廃墟となった村の一つを再建し、周辺住民が暮らせる拠点として整備します。
 当座の食料を用意する、井戸を掘る、畑を耕す、雨風を凌げる家を作る……など、やる事は多くありますが、これにより、救われる命がきっとある筈です。
 詳しくは、オープニングやリプレイを確認してください。

 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 なお、この選択肢には、特殊ルールはありません。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👿アヴァタール級との決戦『青鬼飛天童子』のルール

 事件の首魁である、アヴァタール級クロノヴェーダ(👿)と戦います。
 👿を撃破する事で、この事件を成功で完結させ、クロノヴェーダの作戦を阻止する事が可能です。
 敵指揮官を撃破した時点で、撃破していないクロノヴェーダは撤退してしまいます。
 また、救出対象などが設定されている場合も、シナリオ成功時までに救出している必要があるので、注意が必要です。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「1体」出現します。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『【完結条件】この選択肢の🔵が👑に達すると、敵を倒し、シナリオは成功で完結する。ただし、この選択肢の🔴が🔵より先に👑に達すると、シナリオは失敗で完結する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※このボスの宿敵主は「神和・煌」です。
※クロノヴェーダには、同じ外見を持つ複数の個体が存在しますが、それぞれ別々のクロノヴェーダで、他の個体の記憶などは持っておらず、個体ごとに性格なども異なっています。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。