🚊宿縁を断ち切る戦い

 クロノス級クロノヴェーダは「自分の存在を保ったまま、その時代に転移してくる」事が多いですが、稀に「その時代の生物や概念などに寄生して転生する」事もあるようです。
 後者の場合、一定期間、転生した生物として成長し、充分に成長した所で覚醒する事で、対象の能力などを奪い、より強い力を得るようです。

 この事件では、上記の方法でクロノス級に覚醒したクロノス級クロノヴェーダと戦い、決着をつける事になります。
 そのため、宿敵であるクロノス級クロノヴェーダは、自分、或いは、自分に意志を託してくれた過去の時代のディアボロスの血縁者や恋人など、親しい相手の姿をしています。

 クロノス級クロノヴェーダは、覚醒時に『悲劇的な事件を引き起こす』事で、より強い力を得られるため、様々な悲劇を引き起こします。
 ですが、覚醒する前の人格に訴えかける事で、行動を制限したり、クロノヴェーダ撃破後に寄生された対象を救出したりできるかもしれません。

星をつかむオリオン(作者 鏡水面
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#宿縁邂逅  #🚊宿縁を断ち切る戦い 


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#宿縁邂逅
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#🚊宿縁を断ち切る戦い


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●星が喰われた夜
 星が綺麗な夜だった。
 ガンビア要塞は犠牲者を一人も出さず、ハウエル・デイヴィスの手中に収まりつつあった。
「この砦は既に俺が支配下に置きました。民衆を集めなさい。彼らにもこの件を知らせなくては」
 総督を見事降伏させた彼は、一般の民衆も呼ぶよう指示を出す。
 ハウエルは部下の何人かを使いに送った後、傍に残した一人の男――『彼』へと目線を向けた。
「リゲル。お前には、俺の演説を特等席で聞かせてあげましょう。ついて来なさい」
 あぁ、毎度お決まりのアレか。
 自分と同じ長髪を風に靡かせるハウエルを、彼は少し後ろから追う。
 道行くハウエルの足取りに迷いはない。要塞に入ってそう時間は経っていないが、既に熟知し己の庭としているかのようだ。
 腰に二丁の銃を提げ、ハウエルは悠々と先を歩く。
 ――その背は、船乗りを導く星の輝きだ。その輝きはあまりにも美しく、時折奪いたい衝動に駆られる。
 波と風の音が心地よい。ハウエルの演説は、今夜も冴え渡ることだろう。
 耳触りの良い虚言、其処に真実を織り交ぜた言の葉は、今夜も人々を魅了する。
 彼はそう信じて疑わなかった。だが、信じた彼の耳に届く声は、聴衆の歓声ではなかったのだ。

 星空は、巻き上がる黒煙と炎で見えない。
「いやあぁっ、助けて、殺さないで!!」
「お頭っ、一体どうしちま、ガアアァッ!?」
 カトラスが振るわれる。血が飛び散る。銃弾が飛ぶ。血が飛び散る。
 鮫の頭をした怪物が人々を襲い斬り殺す。海賊も、海賊でない者も、一様に斬り捌く。
 そして、彼らに命令をするのが――。
「このタイミングで狩り尽くしましょう。命も財宝も容易く奪い取れますからねえ!」
 ハウエルの声が喜々と響き渡る。髪はイカの触手のように変化し、背後からは巨大な鯨類の尻尾が姿を覗かせていた。
 紡がれたのは人々を魅了する演説ではなく、呪詛の言葉と蹂躙の惨劇であった。ハウエルは広間に火を付け、黒煙を舞い上がらせる。夜闇を覆う炎の赤が、視界を埋め尽くす。
 無力な彼には、その惨劇を見つめることしかできない。
 鳥肌が立つほどに美しく鮮烈な焔に眩暈がする。これは悪い夢か? 現実を受け止め切れず、脳が理解を拒む。
「リゲル、炎はお好きでしょう? どうですか。特等席で人々が燃える様を見るのは」
 素敵でしょう? とハウエルは微笑んだ。星の輝きなど容易く呑み込む深海の眼差しが、彼を視る。
 彼は悟った――星は輝きを失い、存在を穢されたのだと。
 金縛りにあったように動けない彼の足元に、ハウエルの転がした銃がカツンと当たる。
「最期に少しゲームをしましょう。……さあ、リゲル。銃を取れ。俺を撃ち殺してみせろ」
 奪ってみせろとハウエルは笑う。結末が決まっているゲームだ。そう理解しながらも、彼は銃を取るしかなかった。
 震える手で引き金を引く。放たれた弾丸は、虚しく空を切り――――。

●現在と過去を繋ぐ羅針盤
 それは一人の男が弄ぶように甚振られ、最終的に海に沈められるという事象を示す予知であった。
 フロラン・フォンテーヌ(天使のリアライズペインター・g03446)はパラドクストレインの前に立ち、ディアボロスたちを凛と見据える。
「……確かに一度、星は深海に呑み込まれた。けれど、この事象は今から変えることができる。一度は起きてしまった事象を、過去の時代に向かうことで覆すんだ」
 今回出現した特殊なパラドクストレインに乗り込むことで、過去の時代に向かい、クロノス級と決着をつけることができるのだ。このトレインは、クロノス級がこの時代で覚醒する最初の事件に介入することが可能になっている。
 今回の敵は、クロノス級アビスローバーの『ハウエル・デイヴィス』。リゲル・アンティキティラ(一つ星・g10843)の宿敵だ。

「このパラドクストレインで現地に向かうことで、『アビスローバーになったハウエルが虐殺を始める直前』に、歴史に介入することができる」
 つまり、ハウエルが演説と偽って広間に入ったタイミングだ。配下のトループス級『下っ端鮫・シャークパイレーツ』も、この時点で周囲に潜伏し、襲撃の号令を待ち構えている。
「ちなみに、リゲル君がこの歴史に介入した場合、過去のリゲル君は消え、過去のリゲル君がいた場所に入れ替わるようにして今のリゲル君が現れる。ハウエルも、ディアボロスが歴史に介入した時点でその存在に気付くだろうね」
 その点も頭に入れておいて、と告げたフロランはさらに続ける。
「クロノス級に存在を奪われた者が、クロノヴェーダに覚醒してしまうのを止めることはできない。だけど、その魂に呼びかけることで、クロノス級の行動を阻害することが出来るかもしれないよ」
 ハウエルは本来、義賊的な性質を持っている。命乞いをした相手は見逃し、奴隷への暴力を咎める。歪んだ正義感から生まれた復讐心こそが、本来の彼の根源なのだ。それらを揺さぶることで本来の彼を僅かでも呼び戻すことができれば、クロノヴェーダの力を弱めることができるかもしれない。

「人類の歴史は略奪の歴史でもある。それは決してクロノヴェーダが手を出していいものじゃない。奪われたものを奪い返し、過去の因縁に決着を付けてきてくれ」
 羅針盤は進むべき方向を指し示した。目指すはハウエル・デイヴィスの心臓である。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【士気高揚】
1
ディアボロスの強い熱意が周囲に伝播しやすくなる。ディアボロスから「効果LV×10m半径内」の一般人が、勇気のある行動を取るようになる。
【傀儡】
1
周囲に、ディアボロスのみが操作できる傀儡の糸を出現させる。この糸を操作する事で「効果LV×1体」の通常の生物の体を操ることが出来る。
【未来予測】
1
周囲が、ディアボロスが通常の視界に加えて「効果LV×1秒」先までの未来を同時に見ることのできる世界に変わる。
【一刀両断】
3
意志が刃として具現化する世界となり、ディアボロスが24時間に「効果LV×1回」だけ、建造物の薄い壁や扉などの斬りやすい部分を、一撃で切断できるようになる。
【照明】
1
ディアボロスの周囲「効果LV×20m」の空間が昼と同じ明るさに変化する。壁などで隔てられた場所にも効果が発揮される。
【神速反応】
3
周囲が、ディアボロスの反応速度が上昇する世界に変わる。他の行動を行わず集中している間、反応に必要な時間が「効果LVごとに半減」する。
【動物の友】
1
周囲の通常の動物がディアボロスになつき、意志の疎通が可能になる。効果LVが高い程、知能が高まり、友好的になる。
【友達催眠】
1
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【プラチナチケット】
1
周囲の一般人が、ディアボロスを関係者であるかのように扱うようになる。効果LVが高い程、重要な関係者のように扱われる。
【エアライド】
1
周囲が、ディアボロスが、空中で効果LV回までジャンプできる世界に変わる。地形に関わらず最適な移動経路を見出す事ができる。
【熱波の支配者】
2
ディアボロスが熱波を自在に操る世界になり、「効果LV×1.4km半径内」の気温を、「効果LV×14度」まで上昇可能になる。解除すると気温は元に戻る。
【モブオーラ】
2
ディアボロスの行動が周囲の耳目を集めないという世界法則を発生させる。注目されたり話しかけられる確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【壁歩き】
1
周囲が、ディアボロスが平らな壁や天井を地上と変わらない速度で歩行できる世界に変わる。手をつないだ「効果LV×1人」までの対象にも効果を及ぼせる。
【完全視界】
1
周囲が、ディアボロスの視界が暗闇や霧などで邪魔されない世界に変わる。自分と手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人にも効果を及ぼせる。
【建造物分解】
1
周囲の建造物が、ディアボロスが望めば1分間に「効果LV×1トン」まで分解され、利用可能な資源に変化するようになる。同意しない人間がいる建造物は分解されない。
【水面走行】
2
周囲の水面が凪ぎ、ディアボロスが地上と同様に走行や戦闘を行えるようになる。ディアボロスと手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人も同行可能。
【温熱適応】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」が、クロノヴェーダを除く全ての生物が、気温摂氏80度までの暑さなら快適に過ごせる世界に変わる。
【使い魔使役】
2
周囲が、ディアボロスが「効果LV×1体」の通常の動物を使い魔にして操れる世界に変わる。使い魔が見聞きした内容を知り、指示を出す事もできる。
【パラドクス通信】
2
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【クリーニング】
1
周囲が清潔を望む世界となり、ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の建造物や物品が、自動的に洗浄殺菌され、清潔な状態になる。
【通信障害】
2
ディアボロスから「効果LV×1,800m半径内」が、ディアボロスの望まない通信(送受信)及びアルタン・ウルク個体間の遠距離情報伝達が不可能な世界に変わる。
【アイテムポケット】
3
周囲が、ディアボロスが2m×2m×2mまでの物体を収納できる「小さなポケット」を、「効果LV個」だけ所持できる世界に変わる。
【寒冷適応】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」が、クロノヴェーダを除く全ての生物が、摂氏マイナス80度までの寒さならば快適に過ごせる世界に変わる。
【コウモリ変身】
1
周囲が、ディアボロスが小型のコウモリに変身できる世界に変わる。変身したコウモリは最高時速「効果LV×50km」で飛行できるが、変身中はパラドクスは使用できない。
【アイスクラフト】
1
周囲が、ディアボロスが、一辺が3mの「氷の立方体」を最大「効果LV×3個」まで組み合わせた壁を出現させられる世界に変わる。出現させた氷は通常の氷と同様に溶ける。
【防衛ライン】
1
戦場が、ディアボロスが地面や床に幅10cm、長さ「効果LV×10m」の白い直線を出現させられる世界に変わる。敵はこの直線を突破できず、上空を飛び越える場合、最低「効果LV」分を要する。直線は戦場で最初に出現した1本のみ有効。
【防空体制】
1
周囲が、飛行する存在を察知しやすい世界に変わる。ディアボロスが屋外を飛行中の敵を発見するまでに必要な時間が、「効果LVごとに半減」する。

効果2

【命中アップ】LV5(最大) / 【ダメージアップ】LV9 / 【ガードアップ】LV3 / 【フィニッシュ】LV3(最大) / 【反撃アップ】LV3 / 【先行率アップ】LV6 / 【ダブル】LV2 / 【ロストエナジー】LV3 / 【グロリアス】LV3

●マスターより

鏡水面
 こんにちは、鏡水面です。このシナリオは、リゲル・アンティキティラ(一つ星・g10843)さんの宿敵『ハウエル・デイヴィス』を撃破する宿縁邂逅シナリオとなります。
 多くのMSの中から私を選んでくださり、心より感謝申し上げます。

 ●基本的な方針
 ①→②→③の流れが一番シンプルですが、①については、③をクリアする前であれば、どのタイミングでも構いません。
 ①を後回しにする場合、ハウエルが虐殺の号令を掛けたところで戦闘を仕掛ける流れになるでしょう。
 今回の一般人は、ディアボロスが戦っている間に勝手に逃げてくれるので、避難や救助は気にしなくてOKです。

 ①覚醒前の人格に呼びかける
 クロノヴェーダに乗っ取られ、眠っているであろう覚醒前の人格に呼びかける選択肢です。
 宿敵主様専用の選択肢となります。

 ②護衛するトループス級『下っ端鮫・シャークパイレーツ』
 ハウエルの忠実な配下たちです。
 ハウエルの号令があれば飛び出し、まずは邪魔者であるディアボロスたちを殺しに掛かるでしょう。

 ③クロノス級決戦『ハウエル・デイヴィス』
 乗っ取ったハウエルの記憶を悪用して、リゲルさんを散々煽ってくることでしょう。
 ついでにリゲルさんのお友達も煽るかもしれません。ぶっ飛ばしましょう。

 ※
 クロノス級は、敵ディヴィジョンの情報を持っていない上、非常に知性が高いため、会話から情報を収集することはできません。

 ※
 参加人数に制限は設けませんが、プレイング内容やタイミングによっては採用できない場合もあります。
 
 その他詳細については、OPや各選択肢の説明をご確認ください。 
 プレイングの採用状況については雑記に記載しますので、ご確認いただけますと事故が減ります。
 ここまで読んでいただきありがとうございます。それでは、宿縁を乗り越える物語、出航いたしましょう。
35

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


リゲル・アンティキティラ
懐かしいとは言えない感覚だ
あの海岸で目覚めてから、季節はまだ一巡りしていない
…なのに。お前の声を忘れかけていたよ。ハウエル。
俺がここに居る理由、聡いお前になら分かるだろう?お前がこれから、俺に何をしようとするか。俺は知ってる

『お話』はまた後で聞いてやろう
こっちも土産話は沢山あるけど
まずは、そこで大人しく見ているといい――

――さあ、野郎共!
派手に暴れようじゃないか!

そこらの人間はさっさと逃げたまえよ!でなけりゃ“ついで”に食われるぜ!
飯の時間だ、白波!【命中アップ】を付与、的確に喰らって行こうじゃないか!
借りられる残留効果はすべてこの体へ!

鮫も小魚も変わらない――片っ端から喰らい尽くしてやろう
雑な太刀筋は『鯨骨』と『消波』で往なす!…力任せなやり方は好みだよ、昔からね

…さあて せっかくの宴を台無しにされる気分は如何かな!
こいつらより歯応えがなきゃ 俺たちは満足しないよ
それとも 大人しく降伏して、命乞いでもするかい?ははは!

…お互い、それが出来ていたら。こんな事にはなっていないのだけれどね


ワシリーサ・ヴォレシア
アレンジ連携歓迎

心情
うん、私自身、クロノヴェーダに乗っ取られた事のある身だけど……その人の意思、誇りを歪めて非道を行うクロノヴェーダは本っ当に禄でもないし……しっかり止めないと、だね
乗っ取られてるだろう彼の為にも、其の背中を見てきたリゲルさんの為にも、ね!

残留効果の〇モブオーラを使い子供の振りをして合図を待つ
合図が来れば戦闘開始
民間人を護りつつ敵に〇指定したパラドクスを用い鎖舵輪や錨、氷結輪等己の持つ全てを叩き込む

攻撃の優先順位は一般人を襲っている奴>自分に攻撃してくる奴>味方を攻撃してくる奴>他の順
敵が一般人の避難経路を塞いでいれば其れを攻撃して道を開けるし一般人が攻撃されそうなら庇う


アイアイキャプテン!

という訳で今回限りになるかもだけどキャプテンリゲルによるアンティキティラ海賊団による襲撃の始まりだよー

こんな風に乗っ取られた人の誇りを踏み躙る行いは許せないからね
此の手が届く限り誰も死なせないよ!

貴方達は此処で退場
海の平穏を乱す事はもうさせないんだから!

此れが私の全力1
くらええええっ!


水上・鏡夜
アドリブ、連携歓迎
雪路(g0412)のみ呼び捨て
リゲル殿(g10843)を同類と呼ぶこともある、今回はキャプテン呼び

あの奥にいるのが例の……
キャプテンが憧れて、焦がれた、ただ一人、か
確かに顔は良いね。顔は
どうしてもと願うのもわかる
ま、それはそれだ。同類が良き終わりを迎えられるように
手助けするだけさ

モブオーラで潜伏していようか
号令がかかるまでは、ね

派手にってのは苦手なんだけど、
暗がりであればボクはやりやすいからありがたいよ
外野が多くてはいけないからね
早々にご退場願おうか
孤立してるのや手傷を負っているのを優先して仕留めていこう
足元に影がある限り、ボクから逃げられないよ

反撃には鉄扇でいなそう
出鱈目であれ、こちらを斬るつもりならある程度予想はつくからね
致命傷、足への攻撃を避けれればそれでいい

綺麗に平らげられたね
あとはメインディッシュの時間、ってことだろ
キャプテンの心のままに
星を掴みに行きな

最期を届けてやるんだろ?


左雨・雪路
アドリブ、連携歓迎
名前呼び

「モブオーラ」と変装スキルを駆使して混乱している現地の海賊に成りすまし期を伺おう


『そこらの人間はさっさと逃げたまえよ!』
リゲルの声を合図に逃げ惑う海賊の振りをして、下っ端鮫・シャークパイレーツの背後から強襲、リゲル達と挟撃する形に持っていけるといいな。

アイアイ、キャプテン。
せいぜい派手に台無しにしてやろう。


「沫雪」を使って、交戦中や負傷している敵を優先して攻撃し、敵を撹乱してやろう。

 他のディアボロスと連携して戦える場合は、可能ならば、援護するよ。

相手の攻撃は手甲でいなしてクナイを捩じ込んであげよう。

あっはっはっは!
盛り上がってきたねクロノヴェーダ。せいぜい海賊らしく愉しんでおくれよ、ヨーホーってね


イリヤ・レダ
※連携、アドリブ歓迎です
※呼称は「さん」付けで

渇望に魅入られたか…、魂を売り渡したか…?アウトローである彼らには守るべき法も無いのは知ってる。

けれど、アウトローにも掲げる掟はあるだろうに、彼らはそれすらも無くしてしまったみたいだ…。

きっとリゲルさんもこんな彼を見たく無かっただろうね。けれど、起きてしまった…。覆す機会が得られたなら、為すべきだよね。

リゲルさん、貴方が旗印だ。
貴方が身命を賭す場所まで、オレ達が届けるから、貴方らしく在るといい。
さあ、号令が開戦の火蓋となる。


パラドクスは「掃乱の双射」を。
遮蔽物を利用しての射撃戦で機先を制しよう。
刻印銃と刀身射出モードにした緋刀の二丁で弾幕を張り牽制。こっそり投擲した飛刀で後背を脅かそう。一人くらいは、彼らの狂騒の外にいてもいいよね?
さあ、刃を抜いたんだ。覚悟の有無等問わずに葬ろう。逃げる暇すら与えないように仲間と連携して追い込み、屠る。
まずは、対面の機会を作らないとね。


アリア・パーハーツ
▼連携アドリブ歓迎
※名前+さん付け/娑婆蔵のみ組長さん

キャプテンの号令が聞こえるまでは大人しくしていよう
澄ました顔をして、そっと息を潜めて
隠れる時は味方の残留効果を使わせてもらう

アイアイ、キャプテン!

派手な開幕を合図に死角を探して戦場を駆ける
敵の気を逸らすように背後から、味方の援護をするようにあえて近くで
ホホジロザメを模した魚雷型エネルギーを放ち爆発させる
殺傷力は大きさ次第

何処からともなく現れて暴れまわるならば、同じように死角からお前達の命を狙おう

おいで、ボク様の可愛い子たち
反撃にもサメを利用、体当たりして弾いて乱戦といこうじゃないか
味方には当てないように気を付けるけども

派手さが足りない? なら花火でも打ち上げようか!
音と色で攪乱重視の手榴弾をバラまいて逃げる人間たちの隙を作ろう

こんだけ多いと【グロリアス】で疲れも吹っ飛ぶかな?

味方と連携しつつ、彼が、彼の望む未来を得られる手助けをしよう
何より海賊は良い商売相手だ
未来のお得意様になるかもしれないんだ、失うわけにはいかないのだぜ


ソラ・フルーリア
※アドリブ歓迎します!

憧れと羨望、アイドルに通じるものがあるわね。
そんな思いを彼に覚えていたのなら、素敵な人だったのだろうけど。
アビスローバーになってしまったのなら、止めるしか無いわよね!
助太刀するわよ、リゲル!

アイアイ、キャプテン!
派手なパフォーマンスはアイドルの十八番!
アナタ達の思い通りにはさせないわ!

戦場内を大きく動き回り、サメ達の気を引いていくわ!
注目が集まったら、【白熱と灼熱の気焔万丈!】よ!
アタシや仲間に注目しているなら、下からの攻撃は気づきにくいんじゃないかしら!
仲間と連携しながら弱った敵狙いでパラドクスを打ち込むわ!
焼き鮫にしてあげる!

敵の噛みつきはアイスシールドを使って防御!
頭突きはギリギリまで引き付けて、ダンスで鍛えたターンで受け流すわ!
ふふん、そんなもので怯んでちゃアイドル失格なのよ!


奴崎・娑婆蔵
●開戦まで
・戦闘開始はリゲルの号令を待つ
・【友達催眠】を用いて衆人に紛れ現地に潜む
・その間、この時空ではどのように認識されているのか、リゲルやハウエルの人なりについて周りへそれとなく訊く

方向性の違いで袂を分かち……ってなァ所でございやしょうか?
仔細存じ上げやせんが、マア安心なせえよアンティキティラの
あっしらがどちらに与するかは決まってまさァ

ってなわけで――アンティキティラのお頭ァ! 号令を頼みやすぜ!
そこの鮫頭どもをやっちまえばよござんすか! よござんすね! ヒャッハー陸の戦闘も悪かねえぜ!
全員吊るせ! 縛り首だ! 片ッ端から外壁に吊るし終えたらラム酒で乾杯でさァ!
(下っ端海賊みたいなノリ)


●戦闘
さて――剣を担いで目の前に出て来たのが運の尽きよ
全員あっしと斬り合って貰いやすぜ
『八ツ裂き娑婆蔵』、参る

・【トンカラ大王斬り】発動
・巨大怪人トンカラトン大王を【召喚】、敵陣目掛け攻め上らせ、剣を振り下ろさせる
・シャークパイレーツ達からの白兵戦は、大王の巨体を矢面に立て、敢えて食らい付かせ防御


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎
リゲルさんはキャプテン呼び
仲間の残留効果を活用

配下が紛れ込んでいるなら、場所を見つけられるよう探りつつこちらも潜む
合図にあわせハウエルの号令で配下が飛び出す機先を叩こう
アイアイ、キャプテン!

させる訳にはいかないな
……人の、絆は。穢していいものじゃない
ましてや、望まぬ殺戮など

人々との間側に壁となりつつ、射線を向けないように
崩壊に巻き込まれでもしては事だ
仲間達が思いきり暴れられるように

乱戦対策に【パラドクス通信】を皆の意思疎通の補助に
戦況を観察しつつ把握
仲間の死角を守るように立ち回り、両手の銃でPD攻撃
凍てつかせて止め、打ち砕く
狙いを合わせ、一撃で倒せる>消耗した敵を目安に、速やかに数を減らそう
仲間を死角から狙う敵は優先して攻撃対象に加え、牽制を兼ねる

敵の人海戦術には、仲間達と背中合わせに位置取り
魔力障壁で身を包むように護りつつ、正面をタワーシールドで守りつつ応戦

その凶刃、無辜の人に向けることなかれ
キャプテンが昔馴染みに再会しようというんだ
邪魔立ては無粋ってもんだろう


リコリス・ライブレス
※連携アドリブ大歓迎!
名前+さん付け
娑婆蔵のみ組長呼び

世話になっているリゲルさんが宿敵を断ち切るというので、少しでも協力できないかと思って来たのだが──
(時先案内人の説明を聞き、顔を曇らせる)
──そうか、尊敬する上司がアビスローバー化してしまった、のか。
悔しさは僕なんかが伺い知れないほど、だろうな。
……必ず、倒して帰ろう。

ミニドラゴンのバーンには、号令があるまで外に待機しているように指示。目立つ風貌だからな。
僕は狼変身して忍び込んでから、物陰で変身を解いておこう。
攻撃開始はリゲルさんの号令を待ってからだ。
アイアイ、キャプテン──!

攻撃には【炎怒の旋風】を使用。
僕の仲間の心を弄んでくれた怒りを、この炎に焦がされることで知れ!

反撃には愛刀で受けて立とう。
種類は違えど僕も刀剣使いだ、鮫共の生半可な剣技など必ず見切っていなしてやる。

──よし、露払いは済んだか。
リゲルさん、いや、キャプテン。
貴方という"星"を堕とした者を、その邪悪な志を持ったものを、断ち切りに行こう。


ヴェルチ・アリ
炎と聞いて。…いやまぁ、ここに火炎の匂いはしないんだけどさ。けど、綺麗な炎が見たいってんなら、仕方ありません。ちょっとした火遊びといきましょうか。火傷で済むと思わないでくれよ、こちとら、火炎に関してだけは、誰にも負けないんだからさぁ!!



【火炎使い】を使い、敵を容赦なく薙ぎ払い、炎をもって皆が、何より今回の主役が進む道を照らし上げ、染め上げる。


まずはしっかり号令があるまで待機。大人しく待っておこう。
号令が来れば、一気に飛び出す。炎の槍をもって敵を串刺しにし、無数の槍と炎をもってして道を作り上げよう。


自らにはない縁。復讐の心は未だこの機械の身体に浸透せず。怒りも、苦しみも、憎しみも、痛みも。その全てを識ってはいるくせに、「復讐者」のそれがどこまでも、自分より遠くに感じてしまう。それとも、識っているつもりのだけなのか。やはり自分は、何もない虚ろには、それはまるで違う世界なのか。


だとしても。そうで、あったとしても。

この炎を振るわない、理由にはならない。

アドリブ、絡みを歓迎します。


クローディア・ベネット
海賊ってのは強者に泡を吹かせてこそ面白い稼業だ
我が物顔で海をのし歩く列強の船が相手じゃなくたって、同じことさ
リゲル。あんたがずっと追いかけてきた背中を越えてやりな

リゲルの合図と同時に、仲間と共に一気に戦いの舞台に飛び込もう
アイアイ、キャプテン!今宵は血に酔おうじゃないか!

――『野郎ども、一気に雪崩れ込むぞ!』
カトラスとピストルで武装した海賊の霊達を率いて、一般人を襲う所に横槍を入れたり、割って入るように攻撃
常に敵1体に複数の海賊を割り当てて数の有利を取り、手強そうな奴は私自ら≪船長のサーベル≫を手に相手しよう
抵抗もできない奴らを殺したって、何のスリルもなくて面白くないだろ
だからな、私達があんたらの楽しみを増やしてやるよ。有難く受け取れ!

敵が振るうカトラスとはサーベルで打ち合って防御
力任せの剣が大暴れする前に受け流して、勢いのままに見当違いの所に切っ先を運ぶように仕向けよう
思いがけない動きを強いられた敵に隙が出来たら、すぐさま攻勢に転じて仕留めてやる

サメは在庫切れか。……ここからが本番だな


伏見・逸
(連携アドリブ歓迎)
(仲間は苗字呼び。今回は、アンティキティラ(以下「宿敵主」)の事はキャプテン呼び)
「宿敵主が思い通り動けるようにする」を最優先目標とする

…過去の後片付けは、俺もこの前済ませたところだからな
今度は俺が、道を切り開く番だ
…さあ、キャプテン。お前が満足できるように、納得いくように、悔いを残さねえように、今は好きなように俺を使え

戦闘開始のタイミングは、宿敵主の合図と仲間の動きに合わせ、それまでは身を潜めておく
仲間と声を掛け合い連携。仲間同士で互いの死角を減らす事と、敵の退路を塞ぐ事を意識する
必要に応じて【パラドクス通信】の力を借りて、敵の動きや残数の情報を共有し、敵の討ち漏らしを防ぐ

一般人を襲おうとしている敵(最優先)>撃破可能な敵>既に負傷している敵>他(敵の連携妨害)の順に優先して攻撃先を選び、効率よく敵の数を減らす事で被害を抑える
【禍竜の凶舞】使用。対複数向けの、足技と尻尾メインの喧嘩殺法
敵の攻撃は長ドスや尻尾、翼で受け流しにかかり、【ガードアップ】も乗せて消耗を抑える


括毘・漸
………宿した義侠心は何処へ。

まっ、これをどう判断し、想い、動かすのはリゲルさんですからね。
ここでは邪魔立てする奴らを片付けるとしましょうか。

事が始まるまでは、広間がよく見える高所に身を潜めておきましょう。

おや、号令が聞こえましたね。
ではでは、派手に白刃を打ち鳴らし、火薬を爆ぜさせましょうか。
―――アイアイ、キャプテン!

片手にサーベル、もう片手にリボルバーを握り、人々に襲い掛かる鮫の海賊達へと立ちふさがるように飛び降りますか。

貴方がたの暴虐、悪逆、略奪はここで終いで航海も終わり。
おっと、船の帆も畳んで仕舞い込んでも貰いましょうか。

サーベルとリボルバーに自身の血を纏わせて、振り下ろしたサーベルの斬撃とリボルバーからの射撃によって放たれた血を炎へと変える【瀉血法・血尽火滅】を発動させ、橙色の炎で灼き尽くす。

そらそら、もたもたしてたら炎が迫ってきますよぉ!

敵の攻撃に対しては、自分から手を口に突っ込み、流れ出た血を炎へと変え爆炎として爆ぜさせる。

そら、血と炎の味をもっと楽しんでいけよ。


ジェーン・コーネリアス
ディヴィジョンの過去か
まだどっちかというと慣れ親しんだ海……って感覚かな

右手にカトラス「Macha」、左手にピストル「Nemain」を持ってカチコミだ
敵船に一番に乗り込むのも僕の仕事……なんだが今回はその役目はリゲルに譲ろう
アイアイ、馬鹿騒ぎを始めよう!
開戦の狼煙だ、派手に頼むよ!

乗り込んだら跳び上がり『炸華流星』。着弾と同時に弾ける弾丸で派手にシャークパイレーツたちを吹き飛ばすよ
獲物はたくさん、仲間もたくさん
細かいことを考えるのはなしだ、僕も思いっきり暴れよう

敵の滅茶苦茶なカトラス捌きはこっちもカトラスで捌いて対応。捌いたところを近距離から『炸華流星』を撃ち込んでやろう
我流の粗い太刀と適当な太刀は別物なんだよ
死ぬ前にいい授業になったね

そら、まだまだ戦いは始まったばかりだ!
降伏か死か、どっちも選べないんなら無理やりにでも選ばせてあげるよ!


モリオン・スモーキー
アドリブ連携等その他諸々歓迎
※今回に限りリゲルさんはキャプテン呼び
その他参加PCは名前or苗字+様呼び

……アイアイ、キャプテン。
貴女の想いを遂げる為。目的を叶える為この力を振るいましょう。
我々はその為に此処に揃いました。
「いきましょう」。その言葉に思いを込めて。いざ、参ります。

キャプテンの号令を物陰や【モブオーラ】で紛れつつ息を潜めて隠れ、待ちます。
号令後に飛び出してパラドクスを発動しつつ駆け抜けます。
――ケアン、お願いしますね。闇の宝石、解放。
影を槍の様に変化させて多数の敵を巻き込みぶっさします。
反撃は武器を使用して、いなしつつ致命傷避けて反撃を。

さあ、キャプテン。背中を我々に任せてください。
前だけ見て。本懐を遂げてくださいね。


リューロボロス・リンドラゴ
海賊、か。
悪でありアウトローであり、物語でも残虐非道な敵役を務めることも多いが。
同時に海の任侠として味方になることや主役になることさえもある。
悪党としても、冒険者探検家としても、幼子心をくすぐる不思議な存在よな。

であらば我ら奴崎組、今はリゲルの海賊団としてここにあろうぞ!
アイアイキャプテン!
海賊が宝を奪われたままではおられぬよなあ!
リゲルだけではない、ヒトとしてのハウエル・デイヴィスも死んでも死にきれぬであろうよ!
海賊らしく、お宝頂戴する!

大津波だと?
それがどうした。
我は龍、我こそはドラゴン。
もとより津波は起こす側であるが……今は加えて海賊よ!
嵐の海を航海できぬわけがなかろうがあ!
押し寄せる鮫の波をさばきつつ、雷轟一閃!
ルゥオオオオオオオオオオ!
――六合よ、我が威を恐れよ。乾坤引き裂くは竜である。
我が混沌開闢ブレスで鮫共を一網打尽よ!
どうしたどうした!
海賊というのなら、稲妻の中の航海なぞ慣れっこであろう!
我が雷、超えてみせよ!
くははははははは!

幼子としてノリノリで海賊しておるのは内緒よ!


●海賊団、襲撃
 海岸に寄せる波の音が穏やかに耳を撫でる。要塞内には、ハウエル・デイヴィスの演説を聴くために多くの一般人が集められていた。
 彼らはその時を心待ちにしながら談笑している。その賑わいは、嵐の前の静けさでもある。
 ――パラドクストレインに乗り、彼らはやって来た。聴衆や海賊として溶け込み、彼らも『その時』を待つ。
 要塞は海の近くに在る。色濃い潮の香りを吸い込んで、ジェーン・コーネリアス(pirate code・g10814)は瞳をそっと細めた。
(「ディヴィジョンの過去か。まだどっちかというと慣れ親しんだ海……って感覚かな」)
 荒事の前だというのに、その心は凪のように静まっている。一方で、静黙を保ちつつも、心の内側に炎を燃やす者もいる。
(「炎と聞いて。……いやまぁ、ここに火炎の匂いはしないんだけどさ。けど、綺麗な炎が見たいってんなら、仕方ありません。ちょっとした火遊びといきましょうか」)
 夜空に炎はよく映えるだろうと、ヴェルチ・アリ(GE-■■・SOL■■×××・g03614)は口元に笑みを浮かべた。
 この地には多くの仲間が集い、内に秘める想いも様々だ。
 ハウエル・デイヴィス……その胸に宿していたはずの義侠心は何処へ行ったのかと、括毘・漸(影歩む野良犬・g07394)は一人思う。
(「……まっ、これをどう判断し、想い、動かすのはリゲルさんですからね。ここでは邪魔立てする奴らを片付けるとしましょうか」)
 ハウエルの姿が見え、聴衆たちから歓声が上がった。ハウエルの背後には、当然リゲル・アンティキティラ(一つ星・g10843)の姿も在る。
(「あの奥にいるのが例の……。キャプテンが憧れて、焦がれた、ただ一人、か。確かに顔は良いね。顔は」)
 水上・鏡夜(添星・g09629)は密かに思う。羨望を受けた星の輝きは、時に願う者の眼を焼くのだろう。しかし、それはそれ。同類が良き終わりを迎えられるように手助けするだけだ。
 海賊になりすました左雨・雪路(低血圧系忍者・g04126)も、悠々と歩くハウエルをひっそりと観察する。
(「これから大虐殺を引き起こす人間の顔とは思えない柔和な顔つきだ。よほど本心を隠すのが上手いと見える」)
 だが、我々は知っている。クロノヴェーダとしてのハウエルの企みを。
 せいぜい派手に台無しにしてやろうと、雪路は服の内側にクナイを忍ばせる。
 ……過去に一度成就したハウエルの企みは、多くの人々を死に追いやり、そしてリゲルに影響を及ぼした。
 その大きさは計り知れない。イリヤ・レダ(はぐれ天使刃傷派・g02308)は、きゅっと己の拳を堅く握り締める。
(「きっとリゲルさんもこんな彼を見たく無かっただろうね。けれど、起きてしまった……。覆す機会が得られたなら、為すべきだよね」)
 渇望に魅入られたか、魂を売り渡したか。真実は定かでないが、海賊の掟が破り捨てられたことは事実。
 ならば、それを取り戻そう。
 エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は全体へと視線を巡らせる。
(「虐殺などさせる訳にはいかないな。……人の、絆は。穢していいものじゃない。ましてや、望まぬ殺戮など」)
 信条に反した行いほど耐え難いものはない。悪しき手から絆を守ると、エトヴァは己の銃に誓う。
 リコリス・ライブレス(アイガナクテハイキテイケナイ・g11070)も身を潜めながら、リゲルの様子を窺い見る。
 ハウエルの後ろを歩くリゲルの表情は硬い。彼の様子に、リコリスは表情を引き締めた。
(「――尊敬する上司がアビスローバー化してしまったのだ。悔しさは僕なんかが伺い知れないほど、だろうな。……必ず、倒して帰ろう」)
 過去の清算には痛みが伴う。その痛みを肩代わりすることはできないが、痛む体を支えてやることならできる。
 リゲルが思い通り動けるよう、悔いを残さぬよう。必ず支えるのだと、伏見・逸(禍竜の生き先・g00248)の心は定まっている。
(「……過去の後片付けは、俺もこの前済ませたところだからな。今度は俺が、道を切り開く番だ」)
 炎に焼かれ、深海へと堕とされた星。凶星に変わり果てたハウエルを止めるべく、ソラ・フルーリア(歌って踊れる銀の星・g00896)も意気込む。
(「憧れと羨望、アイドルに通じるものがあるわね。そんな思いを彼に覚えていたのなら、素敵な人だったのだろうけど。アビスローバーになってしまったのなら、止めるしか無いわよね!」)
 人の意志と誇りを歪め為される非道。クロノヴェーダに乗っ取られるという悲劇。それはワシリーサ・ヴォレシア(船好き少女・g09690)にとっても他人事ではなかった。
(「しっかり止めないと、だね。乗っ取られてるだろう彼の為にも、其の背中を見てきたリゲルさんの為にも、ね!」)
 過去を覆し、新たな未来を生み出すために。
 物陰に潜むアリア・パーハーツ(狂騒・g00278)も、静かに号令を待っていた。
(「彼が、彼の望む未来を得られる手助けをしよう。何より海賊は良い商売相手だ。未来のお得意様になるかもしれないんだ、失うわけにはいかないのだぜ」)
 表面上は澄まし顔だが、彼女はド派手に魚雷を爆発させるつもりでいる。
 聴衆の存在は、ディアボロスたちの存在を覆い隠す。
 奴崎・娑婆蔵(月下の剣鬼・g01933)は人々と言葉を交わしながら、聴衆の中心へと歩を進めるハウエルとリゲルを見た。
(「方向性の違いで袂を分かち……ってなァ所でございやしょうか? 仔細存じ上げやせんが、マア安心なせえよアンティキティラの。あっしらがどちらに与するかは決まってまさァ」)
 どちらに与するかなど、皆最初から決まっている。この地に降り立つよりも遥か前から、仲間として巡り会った時点で、既に。
 海賊。それは悪であり、無法者であり、時に任侠者である。混沌たるロマンに満ち溢れた存在である。
 敵が海賊ならばこちらも海賊として殴り込むまでよと、リューロボロス・リンドラゴ(ただ一匹の竜・g00654)は心に決める。
(「我ら奴崎組、今はリゲルの海賊団としてここにあろうぞ。宝を奪い返す……唯その為に」)
 一つ星のもとに、『海賊』たちは集結した。彼らもまたそれぞれが違う色、違う輝きを持つ星々であろう。
 モリオン・スモーキー(存在奪われし魔術発明家・g05961)は思う。その星々は、もっとも価値のある宝石なのかもしれないと。
(「貴方の想いを遂げる為。目的を叶える為この力を振るいましょう。我々はその為に此処に揃いました」)
 ハウエルが壇上に上がる。――彼はリゲルを見ていない。見た目の変化はまだないが、内側はとうにクロノヴェーダに侵されているのだろう。
 彼がクロノヴェーダとしての真の姿を現すまで、あと僅か。
 クローディア・ベネット(黒き旗に矜持を掲げて・g10852)は、そっとサーベルの柄へと手をかける。
(「海賊ってのは強者に泡を吹かせてこそ面白い稼業だ。我が物顔で海をのし歩く列強の船が相手じゃなくたって、同じことさ。リゲル。あんたがずっと追いかけてきた背中を越えてやりな」)
 水面下で緊張が張り詰める中、ハウエルがよく通る声で、ゆったりと紡ぎ始める。
「皆さん、集まっていただきありがとうございます。ガンビア要塞ならびにこの島は、俺……ハウエル・デイヴィスの支配下となりました。皆さんはもう、卑しい商人や横暴な船長の御機嫌を取る必要はないのです」
 懐かしいとは言えない感覚だ。リゲルは思いを巡らせる。あの海岸で目覚めてから、季節はまだ一巡りしていない。だというのに、その声を忘れかけていた。
(「景色、風、潮の香り……それだけじゃない。この演説も、お前の声も……忘れかけていたものを、すべて思い出したよ。ハウエル」)
 甘い言葉を散々吐いたあとに、この男は言うのだ。御機嫌を取る必要はないが、血と悲鳴を捧げる必要はあると。
 ハウエルの体が、アビスローバーのそれへと変化し始める。さあ、時が来た。
「――ハウエル」
 力強く凛とした声。リゲルが紡いだその声に、ハウエルが振り向いた。深海の眼が驚きに見開かれる。
「……リゲル、お前は……」
 もし、演説前に一度でも振り返っていれば、リゲルの変化に気付けたかもしれない。
 今の彼は、甚振られるだけの無力な存在ではないと。
「俺がここに居る理由、聡いお前になら分かるだろう? お前がこれから、俺に何をしようとするか。俺は知ってる。……『お話』はまた後で聞いてやろう。こっちも土産話は沢山あるけど、まずは、そこで大人しく見ているといい――」
 すうっと息を大きく吸い込み、リゲルは高らかに宣言する。
「――さあ、野郎共! 派手に暴れようじゃないか! カワイイ鮫頭どもに、海賊の流儀ってやつを叩き込んでやれ!!」
 先程、『この地には多くの仲間が集い、内に秘める想いも様々だ』と言った。
 だが、ひとつ共通するものがある。
 ――彼らには、『リゲル船長』と共に血を流す『覚悟』がある。
 
「「「「「「「「「「「「「「「「アイアイ、キャプテン!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」

 船員総勢16名。数字の規模だけで言うならば少なく思えても、個々の力は強力だ。
 展開されるパラドクスのエネルギーが、偽りの平穏で偽装された要塞の空気をひっくり返す。
「――鮫ども、ディナーの前にお仕事です。侵入者どもをすべて掃除しなさい」
 騒乱に突き落とされながらも、ハウエルは冷静な声で配下へと命じた。ゾッとするほどに冷たい声だ。その顔に、先ほど見せた驚愕の色はもう無い。
「オカシラ! なんか強そうなのが来たなっ!」
「へへっ、ちょうどいいぜ。雑魚を蹴散らすだけじゃつまんねぇもんなァ!!」
 下っ端鮫・シャークパイレーツたちが、ざわつく聴衆の中から飛び出してくる。彼らはディアボロスたちへと狙いを定め、獰猛な瞳をギラつかせながらカトラスを構えた。
 かくして戦いの幕は上がった。殺気立つトループス級たち、対して戦意十分のディアボロスたち。両者は対峙し、戦の火花を咲かせる。
 忍ばせていたクナイを手のひらで遊ばせながら、雪路は感じたままの言葉を紡いだ。
「計画の邪魔をされたってのに、お相手さんも随分楽しそうだね。海賊の性ってやつかな?」
 くるくると回していたクナイを手の内へと堅くおさめる。闇に溶けるその色を瞳に映し込み、彼は薄く口角を上げた。
「……ま、せいぜい派手に台無しにしてやろう」
 深々と降り積もる雪が音を遮断するかの如く、沫雪が雪路の姿を覆い隠す。
 彼に襲い掛かろうとしていたシャークパイレーツが、足を止めてきょろきょろと周囲を見回した。
「ヒャッハアァ! かかれーッ……ってアレ? どこいった?」
 忍者は見つからない。その概念を形にしたパラドクスが、雪路を周囲へと溶け込ませ、気配を殺す。
 殺した気配を再び蘇らせるのは、彼の一刀が敵へと刻まれる時だ。
 風の音よりも小さい微かな音が、敵の耳に触れた刹那。クナイがシャークパイレーツの体へと捩じ込まれていた。
「痛ェっ!? 隠れてんじゃねェよコラァ!」
 傷付きながらも激昂する敵に、姿を見せた雪路は首を横に振ってみせる。
「隠れるなって言われても、忍者としての性分だしね」
「ふざけんな! 次はぜってーに見つけてやるッ!」
 シャークパイレーツは怒りながらもヤル気に満ち溢れた顔をしていた。そんな敵を、雪路は戦闘狂じみているなとしみじみ思う。
 要塞は熱狂に包まれていた。戦場を幅広く駆け巡り、ソラが拡声杖『レゾネイト』で呼び掛ける。
「このステージ、まだまだ盛り上げるわよ! さあみんな! 一緒に手を振って!」
 シャークパイレーツが彼女を訝しげに見た。思惑どおり彼らの目を引いて、ソラは満面の笑みを浮かべてみせる。
「派手なパフォーマンスはアイドルの十八番! アナタ達の思い通りにはさせないわ!」
「アイドル?」
「よくわかんねぇがそりゃ凄いやつか?!」
 アイドルとは何か、すぐに彼らは理解することになる。ソラはパラドクスを展開し、敵の足元へと魔法陣を出現させた。
 彼らが気づき反応する前に、大きな火柱が噴き上がる。煌めく炎は白熱と灼熱の赤。ライブステージの演出の如く立ち上る火柱が、シャークパイレーツたちを包み込んだ。
「涼しげな波音響くこのステージを、燃え上がるほどにアツくしてあげる! それがアイドルの役目よ!」
 こんがり美味しくはならないが、見事な焼き鮫が出来上がる。
「あちちちちッ!!!??!」
 炎を消そうと転げ回るシャークパイレーツ。彼らへと追い打ちを掛けるべく、ワシリーサはヴォストークの航海を発動する。
「こんな風に乗っ取られた人の誇りを踏み躙る行いは許せないからね。此の手が届く限り誰も死なせないよ! 貴方達は此処で退場。海の平穏を乱す事はもうさせないんだから!」
 自分が経験したからこそ、痛いほど理解できる。痛いほど理解できるからこそ、絶対に負けたくない。
 強い想いと共に、彼女は赤い瞳にパラドクスの光を宿した。
「ベリングスハウゼン提督が南極を見出した様に……勝利の道を見つけ出すよ!」
 戦いの知識、そして海の天候を見抜く眼力を宿す光が、敵陣形の弱点を即座に見抜く。
 鎖舵輪、錨、氷結輪――己が持つありとあらゆる武器を展開し、敵陣へと雨嵐のように打ち出した。
「此れが私の全力! くらええええっ!」
 衝撃がシャークパイレーツたちを襲い、その陣形を搔き乱す。
「ぐわあああっ!?」
「やってくれるじゃねぇか! 野郎ども、やっちまえっ!」
 彼らは反撃の鮫牙鈍頭を繰り出すべく、前のめりに突進してきた。
「真っ直ぐに突っ込んでくる。単調だけど威力は高そうだ」
 敵の動きを冷静に見極める雪路。ワシリーサは頷きつつも力強く返す。
「そうだね。でも、どんな攻撃が来たって耐えてみせるよ!」
 ソラも強気に微笑んで、迫るシャークパイレーツたちをしかと見据えた。
「鮫だけど猪みたいね! 今こそダンスで鍛えた技術の出番!」
 戦車のように突っ込んでくる彼らを、ディアボロスたちは待ち受ける。
 突き進む敵をギリギリまで引き付けて、接触する直前。ソラはひらりと突進を躱してみせた。
「ウオオオッ!?」
 シャークパイレーツたちは見事にすっ転び、壁際の樽に激突した。華やかな衣装をひらめかせながら、ソラはウィンクしてみせる。
「華麗なターン! ふふん、そんなもので怯んでちゃアイドル失格なのよ!」
 一方で、ワシリーサは鎖舵輪を構え、正面から敵の突進を受け止めた。足に力を入れて踏ん張り、衝撃を耐え凌ぐ。
「アンティキティラ海賊団の一員として、このくらいじゃ倒れないんだから!」
 武器越しにシャークパイレーツたちを鋭く睨み据える。絶対に倒れないと、その眼差しに確かな意志を宿して。
「チイッ」
 ワシリーサを押しきれず、シャークパイレーツが舌打ちした。
 ――押し切れないどころかカウンターを喰らっているのが、雪路へと当たりに行った鮫である。
「グエェッ……!」
 頭をクナイで刺し貫かれ、カエルが潰れたような声を上げる。そんな敵を見つめ、雪路は心底楽しそうに笑った。
「あっはっはっは! 盛り上がってきたねクロノヴェーダ。せいぜい海賊らしく愉しんでおくれよ、ヨーホーってね」
 突然始まった戦闘に、聴衆たちが逃げていく。
 逃げ去る人々の間を抜け、ヴェルチは自身の周囲に炎を渦巻かせる。眩い紅蓮が髪を揺らし、瞳を赤く染め上げた。
「戦場を鮮やかな赤で飾りましょう。決戦の舞台に相応しい、炎の天幕でね」
 紡がれるヴェルチの言葉に、漸が喜々と頷いてみせる。
「そいつはいい。せっかくの宴なんですから、盛大に灼き尽くしてやりましょう」
 片手にサーベル、もう片手にリボルバーを握り、漸は血気盛んなシャークパイレーツたちの眼前へと飛び降りた。
 立ち塞がる彼らへと、シャークパイレーツたちは好戦的な笑みを浮かべる。
「おうおうてめぇら。よくもオレたちを邪魔してくれたなァ」
「しばき倒してやるぜぇ、覚悟しな!」
 ヴェルチも炎の出力を上げ、にじり寄る敵群へと対峙した。
 ――炎は時に復讐の象徴として例えられるが、己の炎はそうではないと、ヴェルチは考えている。
 自らにはない縁。復讐の心は未だこの機械の身体に浸透せず。怒りも、苦しみも、憎しみも、痛みも。
 その全てを識ってはいるくせに、『復讐者』のそれがどこまでも、自分より遠くに感じてしまう。
(「それとも、識っているつもりのだけなのか。やはり自分は、何もない虚ろには、それはまるで違う世界なのか」)
 だとしても。そうで、あったとしても。この炎を振るわない、理由にはならない。
 マルツォの炎悪が、咆哮を上げた。
「……さあ、串焼きにしてやります! 骨の髄まで焼き上がれェ!!」
 無数の炎槍が炎の内より生じる。天に向かう炎槍は敵を貫き、神に捧げる供物とするかの如く燃え上がった。
 荒れ狂う炎は止まることを知らず。漸は己の武器に自身の血を纏わせた。周囲で上がる炎に照らされて、その血は鮮烈な色彩を滲ませる。
「貴方がたの暴虐、悪逆、略奪はここで終いで航海も終わり。おっと、船の帆も畳んで仕舞い込んで貰いましょうか」
「船の帆を畳むのはてめえらだ!」
 シャークパイレーツたちが大勢で斬り掛かってくる。漸は彼らに向けてサーベルを振り下ろし、リボルバーの引き金を引いた。
 解き放たれた血の斬撃は猟犬の爪となり、射撃は血に飢えた牙となる。
「なんだ!? 犬……!?」
「うおっ! 噛まれたアッあっちぃ!!」
 ぎゃあぎゃあと騒ぐシャークパイレーツたちへと、漸はからからと笑ってみせた。
「そらそら、もたもたしてたら炎が迫ってきますよぉ! 逃げ惑え、逃げ惑え!」
 血潮の滾りは橙色の炎へと姿を変えた。瀉血法・血尽火滅が、容赦なく敵陣を喰い荒らす。
 巻き起こる炎と刃を交える音の中で、娑婆蔵がハイテンションに紡いだ。
「そこの鮫頭どもをやっちまえばよござんすか! よござんすね! ヒャッハー陸の戦闘も悪かねえぜ! 全員吊るせ! 縛り首だ! 片ッ端から外壁に吊るし終えたらラム酒で乾杯でさァ!」
 まるで下っ端海賊のようなノリである。騒ぎ立てる娑婆蔵へと、率直な感想を口にするのはモリオンだ。
「ノリノリですね」
「お頭の晴れ舞台となっちゃァ、気持ちも昂るってもんよ!」
 陽気に返す娑婆蔵に、モリオンはこくりと頷いた。
「同感です。キャプテンが心置きなく戦えるように、敵陣を一掃しましょう」
 この熱気と喧騒の中でも、モリオンは変わらず物静かな雰囲気を保っている。だが、それはあくまで表面上のこと。その眼差しは他の仲間たちと同様に、『海賊』として戦う者の眼をしている。
「いきましょう。――ケアン、お願いしますね」
 力強い言葉に思いを込めて、彼はクダギツネの名を呼んだ。夜を閉じ込めた暗色の宝石が、炎の光を反射する。
「闇の宝石、解放。影よ。鋭き槍となりなさい。高波のように立ち塞がる敵を貫くのです」
 ケアンが影の中へと身を沈ませた。影は生き物のように揺れ動き、漆黒の槍を形成する。影から槍を引き抜き、モリオンは床を蹴る。
 炎に包まれる要塞を、風のように疾走した。目にも留まらぬ速さで敵陣へと肉薄し、闇から生まれた影槍で彼らの体を穿つ。
 正面から、あるいはすれ違いざまに。踊るように敵群の中を抜け、モリオンはシャークパイレーツの血を熱された空間へと散らせる。
「怯むな、かかれぇっ!」
「斬り刻んでやれっ!!」
 カトラスを振り上げながら迫り来る敵群をまっすぐに見据え、娑婆蔵はトンカラ刀を抜いた。
「――剣を担いで目の前に出て来たのが運の尽きよ。全員あっしと斬り合って貰いやすぜ」
 トンカラ刀に宿る呪詛を解放し、トンカラ大王斬りを発動する。
 呪いの包帯が刀から溢れ出した。包帯は円を描くように舞い上がり、急速に編み上あがってゆく。
 娑婆蔵の傍らに、全身包帯の大きなヒトガタ……巨大怪人『トンカラトン大王』が聳え立った。
「『八ツ裂き娑婆蔵』、参る」
 トンカラトンと申すが良い。呪文のように唱え刀を振れば、トンカラトン大王も剣を振り下ろす。
 巨大な大王の剣から繰り出される斬撃が、シャークパイレーツたちを斬り飛ばした。
 多くの仲間が斬られても、シャークパイレーツたちは怯まずディアボロスたちへと向かってくる。
 敵からの反撃に、待ってましたと言わんばかりに漸は拳を突き出した。鮫牙鈍頭に合わせ繰り出した拳を、敵の口へと強引に突っ込む。
「そら、血と炎の味をもっと楽しんでいけよ」
「モガッ……!?」
 鮫の牙が喰い込み、血が流れ落ちた。痛みが走るも、漸は笑みを崩さない。
「ん? まだ食べ足りない? 仕方ないですね。サービスしてあげます!」
 流れる血を炎へと変え、パラドクスの爆炎を敵の口内で炸裂させた。焦げ付く血肉の味は、漸のものか、敵のものか。間違いなく両方だ。
 煙を噴きながらシャークパイレーツが倒れる。死んだ者から、炎に呑み込まれる――。
 ヴェルチは炎の槍で反撃を受け止めながら、相対する敵へと問いかけた。
「今夜はとても気分が良い。ねえ、そう思いませんか?」
 業火は暗がりを照らし、虚ろを塗り潰す。今はそれでいい。
「ぬう、何を言ってる!?」
 シャークパイレーツたちには理解できないようだ。ヴェルチは軽く息をつく。
「わかりませんか。残念です」
 火炎が敵を容赦なく薙ぎ払った。要塞を包む熱気が、さらに増してゆく。
 ひりつくような熱と殺気を肌に感じながら、モリオンは敵の反撃を影の槍でいなす。
「そのように勢い任せの攻撃では、私に刃を届かせることなどできません」
 仮に届いたとしても、倒れるつもりは毛頭ないが。中途半端な覚悟で此処に来ているわけではないのだ。
 戦いはまだ始まったばかりとでも言うように、シャークパイレーツの群れが次から次へと現れる。
 夥しい数の敵に、娑婆蔵は焦るどころか嬉しそうに眼をギラつかせた。
「湧き水みてえに湧いてきやがる。こいつァまだまだ沢山斬り捌けそうでさァ!」
 シャークパイレーツたちの進撃を、トンカラトン大王の巨体を壁にすることで阻んだ。
 敵味方がぐちゃぐちゃに入り乱れ、戦場は乱戦を極める。
「手強い野郎どもだびゃっ!?」
 シャークパイレーツの横っ面を爆撃が襲った。吹き飛ばされながらも敵が視線を巡らせた先――ホホジロザメを模した魚雷型エネルギー体……アリアのサイレントハンターが、空中を泳いでいる。
「目には目を、サメにはサメをってね。ボク様のサメと遊んでもらおう。この子たちを見つけられるかな?」
 死角から迫り来る魚雷は敵の動揺を誘う。そして、視界の外から攻撃を放つのはアリアだけではない。
 深紅の刃が煌めき、彼らの背後から飛来した。眩い弾幕が炎に照らされた夜をさらに明るく彩る――イリヤの掃乱の双射である。
「狂騒の外からの弾幕に対応できるかな? ……刃を抜いたんだ。死ぬ覚悟はできてるよね」
 できていなくても葬り去るけどね。彼はそう付け加え、緋弾刻印銃と逢魔の緋刀から光弾を乱射する。
「この間合いで、好きにはさせない。逃げる暇だって与えないよ」
 リゲルが憂いなく宿敵ハウエルと対面できる機会を作るため、イリヤは全力を尽くす。
 アリアのホホジロザメが炎と光の中を縦横無尽に移動し、暴れまわるシャークパイレーツを叩いていく。その様はまさに海のハンターだ。此処に水は無いが、炎と光を海としてサメは泳ぎ回る。
「よしよし。よくできました、いい子だね」
 自分の傍に戻ってきたエネルギー体のサメを、アリアは優しく撫でてやる。彼女の所作に、爆撃を喰らってボロボロのシャークパイレーツが激昂した。
「てめぇらっ! 死角からコソコソとっ!」
 青筋を立てるシャークパイレーツに、アリアはわざとらしく首を傾げる。
「ん 派手さが足りなかったかな? なら花火でも打ち上げようか!」
 手品のように手榴弾を取り出せば、敵陣に向かって雨嵐の如くバラ撒いた。爆ぜる音と白煙が戦場に混ざり、さらなる混乱を引き起こす。
 そして爆ぜる炎の中を、イリヤの展開する光弾が生き物のように飛び交った。
「この要塞を包むのは炎だけじゃない。光に呑まれるといい」
 跳弾、曲射、不規則な弾道を交えた三次元的な弾幕が、シャークパイレーツを翻弄する。
「よくも兄弟を……死角から来るってんならオレっちも回り込んで……!」
 傷付いた仲間を目にしたシャークパイレーツたちが同様の手を目論むが、次の瞬間にそれは失敗に終わった。
 エトヴァの凍てつく銃弾が、敵の体へと撃ち込まれたからだ。
「死角がどうしたって?」
 両手に銃を構え、エトヴァは口元に笑みを浮かべる。シャークパイレーツたちの視線が彼へと集まった。
「この野郎……!」
 動きを妨害され、敵群が一斉にエトヴァを睨む。彼らを視界の中心に捉え、エトヴァは力強く紡いだ。
「俺の仲間の背後を狙うならば、俺がその敵を仕留める。手出しはさせない」
 彼の銃は敵を屠る役目を担うと同時に、仲間や無力な人々を護るためにもあるのだ。仲間たちが思いきり暴れられるように、人々が無事逃げられるように、彼は堅牢な壁となる。
「舐めやがって!」
「目にもの見せてやる!!」
 炎の向こう、逃げる聴衆の間。あらゆる場所からシャークパイレーツたちが姿を現す。
 大津波のように襲い来る彼らを、エトヴァは落ち着き払った眼差しで見つめる。
「まるで無秩序な荒波だな。四方八方から襲い来るとは、血気盛んなことだ」
 タワーシールドを手に、魔力障壁を展開するエトヴァ。敵群の大津波を眼前に、リューロボロスも悠然と構えている。
「……大津波だと? それがどうした」
 翼を広げ、彼女はその眼を燦然たる戦意に輝かせた。
「我は龍、我こそはドラゴン。もとより津波は起こす側であるが……今は加えて海賊よ! 嵐の海を航海できぬわけがなかろうがあ!」
 ルゥオオオオオオオオオオ! 
 龍の咆哮が、戦場を震わせる。なおも迫り来る混沌の津波――人海戦術へと、リューロボロスは威風堂々と紡いだ。
「――六合よ、我が威を恐れよ。乾坤引き裂くは竜である」
 彼女は大きく息を吸い込み、龍の力を解き放った。嵐の如く吹き荒ぶ吐息は霹靂の神雷竜王砲。
 天地創世とは破壊より生じるものだ。雷霆万鈞のブレスが、神が振り下ろす裁きの如くシャークパイレーツの波へと打ち込まれた。
 雷に打たれた大津波が、真っ二つに引き裂かれる。
「ギャアアアアッ!?」
「怖気づくなッ! 進め、すすめぇ!」
「どうしたどうした! 海賊というのなら、稲妻の中の航海なぞ慣れっこであろう! 我が雷、超えてみせよ! くははははははは!」
 リューロボロスは焚き附けるように笑い声を上げた。
 彼女は大津波を割ってみせたが、他のディアボロスたちも負けていない。
「おいで、ボク様の可愛い子たち。体当たりで迎え撃ってやれ!」
 パラドクスにより出現させたホホジロザメを敵群にぶつけることで、アリアは人海戦術の衝撃を凌ぎ切る。
 好き放題暴れたつもりのシャークパイレーツであったが、アリアに膝を付かせることすらできない。 
「なんで立ってる……!?」
 驚きに目を見開くシャークパイレーツに、アリアはニヤリと口端を上げてみせた。
「さあ? そっちの勢いが足りてないんじゃない? ふふ、次はボク様の番!」
 ホホジロザメのエネルギー体が再び射出され、敵の体を吹き飛ばす。
 絶え間なく続く爆撃を視界の端に捉えつつ、イリヤも己に向かってくる反撃の大津波へと立ち向かった。
 砲撃、剣撃……暴力的かつ無法な攻撃があらゆる方向から飛んでくるが、武器で受け止めることで耐え凌ぐ。
「オレ達の役目はリゲルさんが自由に立ち回れるようにすることだ。そのためなら、どんなに痛みだって怖くない」
 倒れる気配のないディアボロスに、シャークパイレーツが苛立った声を上げた。
「本当にうざってぇ! さっさとてめぇらを倒して、おカシラと一緒に人間どもを狩りたいぜぇ!」
 カトラスを振り上げ、銃をぶっ放し、彼らは次々に襲い来る。
 黄金に輝く障壁の向こう側、エトヴァはしかと瞳に敵群を映し、照準を合わせた。
「その凶刃、無辜の人に向けることなかれ。キャプテンが昔馴染みに再会しようというんだ。邪魔立ては無粋ってもんだろう」
 この鮫たちは、舞台に残り続けて良い存在ではない。Wunderfarber-γを再発動し、エトヴァは紡ぐ。
「――凍て、響き渡れ」
 凛と澄んだ声が炎に包まれた空間に響いた。青の弾丸は空を翔け、立て続けに敵の肉体へと刻み込まれる。
 撃ち抜かれた敵が凍り付き、反撃の勢いが弱まった。イリヤが刻印銃と緋刀に再びエネルギーを込める。
「反撃の勢いが緩んだ。もう一度こちらから畳み掛けよう」
 イリヤの言葉に、リューロボロスが意気揚々と返す。
「ふははは! 嵐の海を乗り切ったな!! これぞ海賊の醍醐味というものよ!!!」
 だが、まだ醍醐味は終わらない。敵を一匹残らず嵐の海に突き落とす『お楽しみ』が待っている。
 停滞する敵の波に、リューロボロスは満足げな表情をしてみせた。
 各所で同時に勃発した戦闘は、その場すべてを巻き込むように広がっていく。
 ――炎に照らされていても、戦場には無数の暗闇が点在する。強い炎光が創り出す暗闇へと、鏡夜は目を向けた。
(「派手にってのは苦手なんだけど、暗がりであればボクはやりやすいからありがたいよ」)
 時刻は夜。いくら炎が上がろうと、探せば樽や木箱、そして自分の影……障害物に遮られた暗がりは、いくらでもあるわけだ。
(「――むしろ、光が強いほど影は濃くなるものだ」)
 凍てつけ、凍えよ、熱を奪うは闇である。炎の熱を奪い取らんと、鏡夜は陰唄・冥によって自らの影を変化させる。
 広がる影はシャークパイレーツたちへと伸ばされ、その身を暗闇に呑み込んだ。
「ごぼっ……な、なんだ……!?」
 闇に溺れる敵へと、鏡夜は静かに告げる。
「外野が多くてはいけないからね。早々にご退場願おうか。足元に影がある限り、ボクから逃げられないよ」
 逃げ場を失うシャークパイレーツとは別に、一般人の聴衆たちは次々に要塞の外へと逃げていく。
 扉方向へと逃げる一般人とシャークパイレーツの間に立ち、逸はどっしりと構えていた。竜尾を大きく揺らし、彼は鋭い眼差しを敵群へと突き刺す。
「今の俺はキャプテンの手足みてえなもんだ。キャプテンが自由にできるよう、てめぇらを掃除させてもらうぜ」
 足技の体勢を取る――禍竜の凶舞は、足技と竜尾メインの喧嘩殺法だ。
 海賊相手にはちょうどいいだろう。……否、今はこちらも『海賊』だったなと、逸は口元に笑みを滲ませた。
「てめぇら、暴力は好きか? 好きだよな。……さあ、存分に踊ろうぜ」
 強烈な蹴りと共に、硬化させた竜尾を全力で振り回す。
 風を切り繰り出される暴力の舞踏が、掴み掛かろうとするシャークパイレーツたちを次々に弾いてゆく。
「ギャッ!」
「ぐええっ!?」
 鋭く重たい足技と竜尾に、シャークパイレーツたちは翻弄される。敵群へと、逸は挑発の言葉を投げつけた。
「もう終わりか? そんなわけねえよな。まだ踊れるだろう、鮫頭ども」
「くそがッ! ブッ殺す……!」
 月並な暴言を吐きながら飛び掛かる敵を、逸は容赦なく蹴り飛ばす。
 要塞に強襲を仕掛けたディアボロスは多数。だが、彼らよりも遥かにシャークパイレーツの数が多い。
 並み居る敵の軍勢を、リコリスはミニドラゴンのバーンと共に鋭く睨み据えた。
「行くぞ、バーン……我らの怒りの炎を、鮫共にしかと焼き付けよう」
「ガウッ!」
 リコリスの言葉に、彼女と合流したバーンが炎を吐いた。吐き出される炎に合わせ、無銘・狼牙斬龍刀を抜き放つ。
「僕の仲間の心を弄んでくれた怒り、この炎に焦がされることで知れ!」
 宙を斬るように刀を振り回し、炎怒の旋風を発動させた。バーンの炎と刀から溢れ出す怒りの炎が混ざり合い、蒼炎を渦巻かせる。
 蒼炎が獣のように猛威を振るう。蒼き爆風がシャークパイレーツたちへと襲い掛かり、彼らの体を燃え上がらせた。
「ギャアアアァッ!?」
「ほ、炎で前が見えねえ!」
 蒼炎に巻かれ喚く敵群を、リコリスは刃の如き眼差しで真っ直ぐに見つめた。
「どうだ、熱いだろう。その苦痛は仲間が感じた苦しみだ。とくと思い知りながら逝くといい」
 ディアボロスの猛攻に喚く敵もいれば、確かな強さに闘争心を刺激される者もいる。
「つよそーなてめぇら討ちとりゃ、褒美がたんまりだぜェ!」
 シャークパイレーツたちが、カトラスを打ち鳴らした。興奮する彼らへと狙いを付け、クローディアは船長のサーベルを構える。
「ははっ、威勢がいいじゃないか。やっぱり海賊ってのはこうでないとね!」
 弱き者を蹂躙するのではなく、戦いを望む強者と剣を交える――そちらの方が、ずっと気持ちが良い。
 眼前の敵群を獲物と定め、ジェーンはその眼を輝かせる。
「さあ、楽しい『略奪』の始まりだ! 馬鹿騒ぎを始めよう! 開戦の狼煙だ、派手に頼むよ!」
 略奪するのは海賊の矜持を穢したクロノヴェーダの命。言い換えれば、海賊としての誇りをかけた戦いとも言えよう。
 クローディアが力強く頷き、船長のサーベルを天高く振り上げる。
「ああ! 今宵は血に酔おうじゃないか! ――『野郎ども、一気に雪崩れ込むぞ!』」
 クローディアの周囲に無数の光が浮かび上がった。光は急速に人の形を取り、皆一様に武器を握る。
 カトラス、そしてピストルを手にする彼らは、道半ばで倒れた海賊たちの魂だ。彼らは雄叫びを上げながら、クローディアと共にシャークパイレーツへと突撃する。
 当然、シャークパイレーツ側も黙ってはいない。
「てめぇら迎え撃てッ! オオオオオォッ!!」
 雪崩れ込む海賊の霊たちとクローディアに対し、全力で応戦する。
 クローディアは応戦の指示を出した敵へと猛然と斬り掛かった。重たい一撃に、シャークパイレーツが耐え切れず斬り飛ばされる。
「ぐうっ……! やっぱ強ェな!!」
「抵抗もできない奴らを殺したって、何のスリルもなくて面白くないだろ。だからな、私達があんたらの楽しみを増やしてやるよ。有難く受け取れ!」
「この、クソったれが!」
 飛び交う弾丸、剣閃、罵る雑言と雄叫び。それらは海鳴りの音を掻き消して、要塞の外まで響き渡る。
 乱れきった戦場をさらに掻き混ぜるべく、ジェーンは右手のMachaと左手のNemainに力を込めた。
(「細かいことを考えるのはなしだ。今はただ目の前の獲物を、吹き飛ばす!」)
 高く跳躍し、鮫の大群を眼下に捉える。沢山の獲物に、彼女はニヤリと口端を上げた。
 敵群目がけてNemainから弾丸を発射する。敵陣に撃ち込まれた弾丸は炸裂し、衝撃波を発生させる。
「ぐわああっ!?」
 ポップコーンが勢いよく弾ける時のように、シャークパイレーツたちが吹き飛んだ。
「派手に飛んだね! 今夜はいい夜だ、上からの眺めはきっと最高だろうよ!」
 シャークパイレーツたちはズタボロになりながらも、荒々しく叫んだ。
「一方的にやられてばっかじゃいられねぇ!」
「野郎ども、かかれッ!」
 ウオオオォッ! と雄叫びを上げながら、シャークパイレーツたちがカトラスを振り上げる。
 滅茶苦茶に剣を振り回しながら迫る彼らを見据え、鏡夜は鉄扇を開いた。
「わかっちゃいたが、出鱈目な太刀筋だね」
 呟く彼女に、逸が言葉を返す。
「暴力には暴力で返すもんだしな」
 彼の言うとおり、シャークパイレーツたちの反撃は暴力そのものであった。無法者たちの乱暴な攻撃が、波のように押し寄せる。
「どんな攻撃だろうと、受けて立とう」
 リコリスは愛刀を手に、敵群の反撃を迎え撃つ。キャプテンが宿願を叶えるその時まで、決して倒れるわけにはいかない。
(「種類は違えど僕も刀剣使いだ、鮫共の生半可な剣技など必ず見切っていなしてやる」)
「死ねえぇえいっ!!!!」
 シャークパイレーツの斬撃がリコリスへと繰り出された。
 リコリスは反撃を見切ることに全神経を集中する。攻撃の軌道を瞬時に見極め、彼らの斬撃を逸らし躱してゆく。
 ――敵群が繰り出す斬撃。たとえ不規則で滅茶苦茶な軌道であっても、その内には唯一決まっている点がある。
 それは、『こちらを斬るつもりでいる』という点だ。殺意の気配を辿るように、鏡夜は鉄扇を動かした。
 敵の斬撃が、彼女の鉄扇によって阻まれる。
「おっと、そこには届かせないよ。思うように斬れると思ったら大間違いさ」
 ゆったりと告げ、カトラスを弾き返した。衝撃に仰け反った敵を、再び鏡夜の影が包み蝕む。
 反撃の舶刀斬撃を、逸も武器と体を駆使して受け流す。
 乱暴で雑多な太刀筋を時には翼で受け止め、長ドスで弾き飛ばし、竜尾で叩き伏せた。
 確かに敵の勢いは凄まじいが、その攻撃が逸に深刻なダメージを与えることはない。
「喧嘩に勢いは大事だが、それだけじゃ勝てないぜ」
 勢いだけでは、幾多の戦場を潜り抜けて来た者たちには勝てない。
 クローディアは敵が振るったカトラスをサーベルで受け流し、勢いをあらぬ方向へと逸らす。
「力任せに剣を振り回すだけじゃ、利用されて終わりだ――こうやってな!」
 がら空きになった急所を斬り捌けば、命を狩り取られた敵が倒れ伏した。
「一人沈んだね。次、死にたい奴から前に出な!」
 防御を攻勢に転じ、彼女は灰の瞳を鋭く光らせる。
 死ぬつもりは毛頭ないのだろう。それでもシャークパイレーツたちはディアボロスへと押し寄せる。
「殺せ、殺せ! 血祭りにしろっ!」
 滅茶苦茶に振り回されるカトラスの太刀筋を、ジェーンはMachaで難なく受け止めた。
「ぐうっ……届かねぇ……!」
「我流の粗い太刀と適当な太刀は別物なんだよ。死ぬ前にいい授業になったね」
 至近距離でNemainを突き付ければ、炸華流星が敵の頭を吹っ飛ばす。
 力を失い倒れかかる敵の体を蹴り倒し、ジェーンは残る敵群に向かって強烈に言い放った。
「そら、まだまだ戦いは始まったばかりだ! 降伏か死か、どっちも選べないんなら無理やりにでも選ばせてあげるよ!」
 ディアボロス――否、要塞に乗り込んだ海賊たちは、自由気ままに暴れ回る。仲間の戦いぶりに、リゲルは心底楽しげな笑みを浮かべてみせた。
「いい暴れっぷりだ! 俺もじっとしちゃあいられないな!」
 いくら仲間たちが率先して協力してくれるとはいえ、全部任せきりにするような男ではない。
 それに、と彼は思う。腹を割って話す前に、自分の力をハウエルに示すのだと。
「そこらの人間はさっさと逃げたまえよ! でなけりゃ“ついで”に食われるぜ! ――飯の時間だ、白波!」
 炎が立ち上る空に巨大な鯨の幻影が飛ぶ。水飛沫を身に纏い、鯨は敵陣へと突っ込んだ。
「片っ端から喰らい尽くせ! 奪い尽くせ! 今夜は大漁だ!」
 炎の海に水飛沫が上がる。小魚を捕食するように、鯨がシャークパイレーツの群れを呑み込んだ。
「喰われるのはてめぇらだああぁッ!!」
 全身傷だらけになりながらも、シャークパイレーツたちが強引に攻め入ってくる。
 繰り出されるカトラスを、リゲルは鯨骨で受け流し、消波の障壁で逸らす。
「力任せなやり方は好みだよ、昔からね!」
 シャークパイレーツたちが、一斉にリゲルへと殺気を向けた。
「船長だ! 船長をやれ!」
「船長の首を獲れ!!」
 リゲルへと攻め寄せようとする鮫の群れの行く手を、仲間たちが壁となり阻んだ。
 足技で敵陣を蹴り崩し、逸は鮫共を威圧する。
「言っただろう。今の俺はキャプテンの手足だと。キャプテンが満足できるように、納得いくように、悔いを残さねえように……ここは通さねえ」
 リコリスも愛刀を振るい、敵の進撃を喰い止めた。
「リゲルさん、いや、キャプテン。露払いは僕たちに任せてくれ」
 彼女は強く想う。『貴方という"星"を堕とした者を、その邪悪な志を持ったものを、断ち切りに行こう』と。
 リゲルを狙う敵の背後を取り、雪路がクナイを突き刺す。
「アンタらに邪魔はさせないよ。キャプテンにはこれから大事な話が待っているからね」
 捩じ込んだクナイを引き抜き、ふらつく敵へと告げた。
 足元をふらつかせる敵を影の闇で呑み込みながら、鏡夜がリゲルへと紡ぐ。
「キャプテンの心のままに星を掴みに行きな。最期を届けてやるんだろ?」
 鮫共はボクらが綺麗に平らげてやるさと、彼女は軽やかに笑ってみせた。
 雷轟一閃。稲妻で敵群を屠りながら、リューロボロスは鼓舞する。
「海賊が宝を奪われたままではおられぬよなあ! リゲルだけではない、ヒトとしてのハウエル・デイヴィスも死んでも死にきれぬであろうよ!」 
 漸も己の武器に血の炎を咲かせ、鮫の群れを焼いてゆく。
「宝を奪い返すためなら、いくらでも炎を燃やしましょう。派手に白刃を打ち鳴らし、火薬を爆ぜさせましょうか」
 爆ぜ、滾る炎は激情の如く。無数の炎槍で道を作り上げ、ヴェルチは上機嫌に微笑んだ。
「今宵は最高の宴となるでしょうね。この身の火炎を以て、進む道を彩りましょう」
 船長を狙う暇を与えぬよう、光弾を止め処なく降り注がせるイリヤ。彼はリゲルへと、大きな声で呼びかける。
「リゲルさん、貴方が旗印だ。貴方が身命を賭す場所まで、オレ達が届けるから、貴方らしく在るといい」
 鮫の群れを突き上げるように、豪快な火柱が上がった。火の粉が光の粒子のように、きらきらと舞い落ちる。
 レゾネイトを煌めかせながら、ソラが迷いの一切ない声で宣言した。
「アナタが星を掴むその時まで、アタシ達は何度だって立ち上がるわ! 絶対に倒れたりしないんだから!」
 ワシリーサも鎖舵輪を振り回し、敵を蹴散らしながら、敵の罵声に負けない大きな声で言い放つ。
「キャプテンリゲルによるアンティキティラ海賊団、ここに在り! キャプテンが居るかぎり、私たちは負けないよ!」
 今回限りの海賊団。だが、その絆は堅固。
「ボク様のサメは、まだまだ元気いっぱいだ。そこの鮫頭どもと違ってね」
 アリアの言葉に応えるように、ホホジロザメのエネルギー体が牙を剥く。敵へと噛み付く気満々だ。
 ジェーンがMachaに付いた敵の血を振り落としながら、リゲルとその先にいるハウエルを見やる。
「敵の船長も君をお待ちかねのようだ。残りの鮫は、僕たちが受け持とう」
 敵に深々と突き刺したサーベルを引き抜いて、クローディアもリゲルへと気さくに声をかけた。
「こいつらもじきに在庫切れだ。気にすることはないよ、キャプテン。行ってきな!」
 ケアンを宿した影の槍を振るい、モリオンもリゲルの行く手を阻む敵を散らす。
「さあ、キャプテン。背中を我々に任せてください。前だけ見て。本懐を遂げてくださいね」
 今宵、闇の宝石はキャプテンのために輝くのだ。
 トンカラトン大王を使役し敵を斬り刻みながらも、娑婆蔵はリゲルへと激励の言葉を伝える。
「相手は大物だ。けどあっしにとっちゃァお頭の方が輝いてみえやすぜ。ビシッと決めておくんなせェ」 
 リゲルに背後から斬り掛かろうとする敵の頭を、エトヴァが側面から銃で撃ち抜いた。
 即座に魔力を装填し次弾に備えながら、彼はリゲルへと確固たる意志の宿った眼差しを向ける。
「どのような結果になったとしても、俺たちが必ず支える……だから、伝えたいことをぶつけてきてくれ」
 仲間たちの意志、心が、リゲルの背中を押した。リゲルは前を見据え、決意に満ちた瞳を輝かせる。
「……ああ、行ってくる」
 彼の視線の先には、ハウエルがいる。
 ハウエルは無言のまま、静かにリゲルを見つめていた。その表情から感情は読めない。
 ――心臓が早鐘を打つ。痛いほどに鳴り響くそれは、宿敵と相対する昂揚感か、それとも。
 ハウエルの前に立つ。リゲルは狭く感じる肺に、空気を大きく吸い込んだ。
「……さあて せっかくの宴を台無しにされる気分は如何かな! こいつらより歯応えがなきゃ俺たちは満足しないよ。それとも大人しく降伏して、命乞いでもするかい? ははは!」
 大声で笑いながら、胸の奥をひとつの感情が締め付ける。お互いにそれが出来ていたら。このような事にはなっていない、と。
 大笑いするリゲルに対し、ハウエルは静けさを保ったまま、ゆっくりと口を開いた。
「……侵入者の気配は感じていましたが、まさかお前だったとは。それも大勢の部下を引き連れて。随分と偉くなったものですね」
 ハウエルはうっすらと微笑みを浮かべる。やはり、その表情から感情を読み取ることは難しい。
 リゲル・アンティキティラ、そしてハウエル・デイヴィス。決戦を前に、彼らは何を語り、何を想うのか。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【防衛ライン】LV1が発生!
【水面走行】LV1が発生!
【寒冷適応】LV1が発生!
【モブオーラ】LV1が発生!
【神速反応】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV2が発生!
【熱波の支配者】LV1が発生!
【友達催眠】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
【温熱適応】LV1が発生!
【防空体制】LV1が発生!
【未来予測】LV1が発生!
【照明】LV1が発生!
【建造物分解】LV1が発生!
【通信障害】LV2が発生!
効果2【命中アップ】LV2が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!
【フィニッシュ】LV1が発生!
【先行率アップ】LV4が発生!
【グロリアス】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV5が発生!
【反撃アップ】LV2が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!

リゲル・アンティキティラ
やっぱり、言う事は本人とさほど変わらないな
よく擬態したね、褒めてやろう!

俺だって気恥ずかしいよ
キャプテンなんてね

…憧れだった。ずっと『貴方』の背を追いかけていた
目が眩むほど輝く星。それに手を伸ばすのは愚行だと
だから俺はこの晩、『お前』に殺された

今なら、この手が届く

言ってみろ
貴方が哀れみ怒り、恨んだものを
強欲な商人、高慢な軍人、暴虐な船長
それらを踏み退け 正しくあろうとしたのは誰だ
上っ面だけなら、なぞれるだろうな!

だが俺は、貴方の教導を覚えてる
鯨の群れは同じ歌を唄う
貴方に共鳴し集まった奴らの事を、忘れたとは言わせない

いや。『お前』が忘れていても
お前の中の『そいつ』は忘れちゃいないだろ
この声と姿、俺の名を
星の無い夜を歩いていた俺を、貴方が何と呼んだか
応えろ、ハウエル

――オリオンの最輝星。輝ける青
リゲル・メイナード
貴方が呼び、お前が殺すはずだった男の名だ


生憎『デッドエンド』はもう迎えていてね!
ここからはポストクレジット
俺という『鯨』の歌が終わるまで、付き合ってもらうよ
さあ。その魂、俺様に寄越せ


●暗い海の中で、星を見つけた
「……やっぱり、言う事は本人とさほど変わらないな。よく擬態したね、褒めてやろう!」
 朗らかに紡ぐリゲル・アンティキティラ(一つ星・g10843)。そんな彼へと、ハウエルは柔らかに返す。
「褒める? 本心ではないくせに。笑みが強張っていますよ」
 声は柔らかでも、言葉は突き刺すように。リゲルは笑みを消し、真剣な眼差しを向けた。
「本音での会話をお望みかい? いいだろう、最初からそのつもりだ……ハウエル」
 ハウエルはサッシュに挟んだ銃へと手を添えている。いつでも撃てるぞと、言外に示しているのだ。だが、それはリゲルも同じ。
「……憧れだった。ずっと『貴方』の背を追いかけていた。目が眩むほど輝く星。それに手を伸ばすのは愚行だと……だから俺はこの晩、『お前』に殺された。けれど、今なら、この手が届く」
 バイカラートルマリンの瞳が、深海の眼を貫く。
「言ってみろ。貴方が哀れみ怒り、恨んだものを。強欲な商人、高慢な軍人、暴虐な船長。それらを踏み退け、正しくあろうとしたのは誰だ」
 上っ面だけなら、なぞれるだろう。だが、望む答えはそんな薄っぺらいモノなんかじゃない。
「俺は、貴方の教導を覚えてる。――鯨の群れは同じ歌を唄う。貴方に共鳴し集まった奴らの事を、忘れたとは言わせない。……いや。『お前』が忘れていても、お前の中の『そいつ』は忘れちゃいないだろ」
 暗い海の中でも鯨の歌は共鳴し、多くの星々を集わせる。星。それは人々であり、意志である。
 リゲルは強く求める。ハウエルの答えを。ハウエルが持つ輝きを。
「この声と姿、俺の名を。星の無い夜を歩いていた俺を、貴方が何と呼んだか。応えろ、ハウエル。貴方が呼び、お前が殺すはずだった男の名を」
 刹那、停滞していた空気が揺れ動いた。天を裂く銃声が鳴り響く。目にも留まらぬ早撃ち――眼前の光景にリゲルは目を見開いた。
 ハウエルが自らの頭を撃ったのだ。青い珊瑚が張り付いた頬に赤い血が伝う。
「……オリオンの最輝星。輝ける青。星の無い夜を歩いていたお前が、夜の海を照らす星になろうとは」
 紡ぐハウエルの瞳には、一筋の光が灯っていた。
「……『貴方』、なのか」
 ハウエルは自身の頭に銃を突き付けたまま、ニヤリと不敵に笑った。その腕は抗うように震えている。
「知っているでしょう? 俺は愚かな権力者を許さない。そいつが何処に居ようと関係ない。改めないのであれば、撃ち殺すだけだ。……ですがこれ以上は……チッ、クソったれな侵入者め」
 悪態をつくその姿に、リゲルは息が詰まりそうになる。
「はは、っ……こんな時でも、貴方は貴方なんだな……」
 なんて言葉を掛ければいいのか、わからなくなりそうだ。だが、旧懐も束の間。ハウエルの言葉がリゲルを引き戻す。
「リゲル・メイナード。あとはお前に任せます。煮るなり焼くなり、好きにするといい」
 銃が下ろされた直後、その表情は不快の色に染まった。
「まったく、見上げた根性ですね、『ハウエル』。実に忌々しい……そして、お前も」
 リゲルを冷たい眼で見つめ、クロノヴェーダのハウエルは告げる。
「深海に光は届かない。星の光などもってのほかだ。お前も、その仲間も全員殺して、海底に沈めてやろう!」
 リゲルは銃を固く握り直す。その手はもう、昔のように震えなどしない。
「生憎『デッドエンド』はもう迎えていてね! ここからはポストクレジット。俺という『鯨』の歌が終わるまで、付き合ってもらうよ」
 ハウエルは好きにしろと言った。ならば自由にやらせてもらう。輝く星を、ハウエル・デイヴィスをこの手に掴み取る。
 財宝を狙う略奪者のように、リゲルは瞳を煌めかせた。
「さあ。その魂、俺様に寄越せ!」
超成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【アイテムポケット】がLV3になった!
効果2【ロストエナジー】がLV2になった!

リゲル・アンティキティラ
貴方の『教導』。確かに、受け取ったよ
ああ、同じ歌だ。ははは…
…ゆるしは得た 好きにしろと ならば俺は相応に、お前に引導を渡してやらなければね
彼の、代わりに。

…さあ。その銃口を俺へと向けろ。あの時のように、お前がこれからするつもりだった、その通りに

【ダメージアップ】【命中アップ】を頼りに
――『命乞いをしろ』。
従わないのであれは、俺のする事はただ一つ
…早撃ちは、貴方と同じく得意でね!
射抜いてみせろよ、俺を。…アルテミスならやってみせたが お前は、そうではないからなあ!

流水よ、消波よ、総てを流せ。卑怯だ何だと言っていられる場合ではないからね!

何が何でも この弾丸で、貫き通す
燃える赤。ベテルギウス、モウカの星。その心臓を!

――さあて。祝福しよう!お前はこの通り、俺以上に最悪な死を遂げる
分たれたお前が、俺に宣った呪詛だ

だがひとつ聞こう。これは、相応しい最期か?

お前が。いや。貴方が、そう思わないのなら。償い贖う必要なんてない

…ただ、そうだな
その時は、地獄で会おうぜ。愛する師よ


水上・鏡夜
アドリブ連携歓迎
雪路(g0412)のみ呼び捨て
リゲル殿(g10843)を同類と呼ぶ

あの時、聴いた唄、確かに聞き届けたよ
同じ唄を唄う者として、水底に沈んだ同類として、最後まで見届けよう

同類をディフェンス対象に
最期のその時に無様な姿でなんて見せられないだろ?
こういう時くらい素直に甘えておきなさい
追い続けていた唯一をその手に掴んでおいで

ボクがやるべきはただ一つ
同類が悔いを残すことなく、その望みを果たす事
その為にここに居るのだから

何もかも覆い隠す霧の中でなら、誰も邪魔できないだろう?
最期の時間くらい二人だけのものしてあげたいからさ
名付け親であり、焦がれ続けた焔
終わりを告げる音が響いたのなら幻を終わらせよう

この身を穿つ弾丸を受けてもいいと思うくらいには
名を騙る別人と言えど、同類が焦がれた焔の一欠けらだ
彼を知る為に
最低限、心臓に当たらない様にして、ね

再開の約束をしたのかい?
それはいい。きっといつか巡り合えるよ
同類が思うよりもこの世界は愉快にできているのだから

お疲れ様
望んだ星は手に入れられたかい?


六宮・フェリクス
遅れて見参!【天妖茶館】、義によって助太刀致す!なぁんてな?
ジェイ(g10376)にディフェンス!最後まで立って、奴の話を聞いてやれ!
んじゃ、キャープテンッ!ご命令をどーぞ!

つーかリゲルちゃぁん、もう派手にぶっ放し…アッ。あれご自分で?
中身まだ『居る』んだな。――分かったぜ
じゃ、リゲルとの約束通り!
ハウエルちゃんよぉ……そのお綺麗なツラに、一太刀!喰らわせてやらァ!!

精神集中。【命中アップ】で狙いを定め【ダメージアップ】で威力マシマシ!
今この時、総ては義のため。守るべき、お前たちのために
『絶閃』――断ち切る!!

どんな荒波でも掻い潜るぜ。今のオレ達になら、それが出来る。
海賊の流儀!キャプテンから教わってんだわ、普段からなァ!頼むぜ『閃光』、無茶させるが、やれるだけ受け流してやろう!
最後に立ててりゃそれでいい――アイツの晴れ姿見れりゃ満足だ!

ほら、掴み取ってこい。あの心臓を!
背ならいくらでも押してやる。この追い風、逃すんじゃねえぞ!


佐伯・啓志
【天妖茶館】として。
リゲル。お前の呼び声。鯨の歌を、おれたちは確かに聞き入れた
故に、共鳴し、唄おう。お前の唄を

…因果と因縁は聞き及んでいる。ハウエルがどういう人物だったか。お前の名を定めた男だということを。そしてクロノヴェーダと化した後の暴虐を。だが彼は、リゲルが焦がれる焔の一つだ
…彼の心臓はまだ燃えている。その焔、リゲルに引き渡してもらうよ

遍く照らそう。【命中アップ】をさらに付与。この光が、導きとなりますように。
日輪、形成――総てを、白日のもとへ。
この陽の光も、今ならお前にも届くのだろう?
暴こう、お前の本性を。クロノヴェーダが名乗るには、その名は重いということを識れ

――さあ。聞かせたまえ、美しい綺語を
この体と魂を、お前がどう感じるのか。ずっと、聞いてみたかったんだ。
受け入れてやろう。そして、否と答えてやる

リゲルは。海溝の底に堕ちてなお、輝き続けた
お前が閉ざそうとしたはずのくらやみを掻き分けて
肋骨の檻の中、脈打つお前の心臓を、虎視眈々と狙い続けている。

今に、夜明けが来るよ
身を任せるがいい


ワシリーサ・ヴォレシア
アレンジ連携歓迎

心情
未だ体の中で抗っているのなら後は助けるだけ、だね
体を乗っ取られて意識もなかった私でも大丈夫だったんだから銃をぶっ放せる程の意思の強さなら問題なし
後は体を乗っ取ってるクロノヴェーダをぶっ倒すだけだよ!

〇スヴォーロフの進軍を使用
其の戦術眼を以て敵の放つ大砲や支援攻撃の狙いが甘い部分、弾幕の薄い箇所を見抜いて掻い潜り味方の攻撃とタイミングを合わせ肉薄し己の全武装を叩き込む
其の後は速攻で敵から離れ敵の攻撃が自身に向かう様に誘いつつ攻撃を掻い潜って再度味方の攻撃とタイミングを合わせ攻撃、を繰り返す

此れは敵の意識が自分の攻撃に向く事で少しでも味方から意識が逸れ味方の攻撃が当てやすくなる事、自身が囮になり味方を動きやすくなる事が狙い

ヒュー流石リゲルさんの憧れ、やるー!

そんな意思の強さを見せられたら私も応えないと、だよね!

悪いけど、力以外の全てが貴方が勝手に体を使ってる人と格が違うよ?
偽物はとっとと本物に返さないと、ね!

残念!そんな攻撃当たらないよ

さあキャプテン、トドメは任せたよー!


伏見・逸
(連携アドリブ歓迎)
(仲間は苗字呼び、奴崎は「組長」。今回のみアンティキティラは「キャプテン」)
必要に応じ、仲間をディフェンス

(俺は、「変わっちまった」かつての自分のボスを、斬り捨てた
思うところも立ち位置も違うだろうが、重ねてしまうところはある
しかし…揺らがねえなキャプテン。お前が憧れた光も、お前も、俺には眩しい)

海賊の事は詳しくねえが、生き様は感じ取った
…さあ、キャプテン。お前はどうしたい?
どう転んでも、お前が納得がいくなら、きっとそれが正しい
成し遂げたい事の為に、盾でも囮でも踏み台でも、好きなように俺を使え

仲間と声を掛け合い連携
「キャプテンが納得のいく戦いができるように、彼を倒れさせない・行動の邪魔をしない」を最優先目標に、防御と援護に寄せた立ち回り
【禍竜の雷霆】使用、【エアライド】を交えた立体的な動きで敵の行動範囲を狭める。時には自分の身体を足場として使わせ、仲間の動きをフォロー
敵の攻撃は、翼を盾代わりにして受ける。自分の負傷は然程気にしない

トドメの一撃はキャプテンに任せ、見届ける


左雨・雪路
アドリブ、連携歓迎
名前呼び

お話は終わったみたいだね、それじゃあ奪われたモノを奪い返すとしようかい?キャープテン。
海賊らしくね。

残念ながら本物とは役者が違ったみたいだね、イカ頭。

今度は君が奪い尽くされる番が回ってきたよ、命乞いでもしてみるかい?

【ガードアップ】を活かしリゲル(g10843)をディフェンス。
残念、それは影法師。
そう簡単に船長を奪れると思うなよ?

影に隠れて死角から棒手裏剣を投げてハウエルを狙い、リゲルを援護。
キャプテンが思う存分戦えるようにサポートしよう。

誰を沈めるって?
ふざけた事言いやがって、お前が沈め。

さ、決着を付けておいでよリゲル。
君達の流儀見せてやれ。


ジェイ・スオウ
皆さんの一撃が粗方終わるマデ一服失礼。精神統一でもアル。

サテ、我らがリゲルを今宵の主人とし【天妖茶館】からジェイ・スオウが参る。
ディフェンス任せるゼ!付いて来いヨ?ダーリン。

煙草を消し息を潜める。集中。【迅速反応】で懐に飛び込む。
すかさず【命中アップ】で【半天妖】!ハウエルの身体を縛ル!

コンバンワ。初めマシテ。リゲルの想い人。
オマエのお話は沢山聞いているゼ?
リゲルちゃんとアンナコトやソンナコト、妬けるナァ?

お加減如何?
重たぁいガワが剥がれて来たんじゃネェカ?
オマエの声は気に入ったが内容は響かネエ。オレには帰る場所も大事な人達もイルからナ。
オレも言葉遊びは得意なんダ。オマエとは違う方法デ、礼法を以て心を込めてハウエル、オマエに詞を届けてヤルヨ。

オレ達を見ろ。仲間を思い、賑やかし、励ますこの在り方を。
オレ達が唄うこの唄はオマエの唄でもある。この唄が道標になるハスダ。
懐かしい、羨ましい、それとも‥、
少しでも未練が残っタのナラ。

茶館にオイデ?

床掃除からコキ使ってヤル!
ヨシ。リゲル!後は任せたゼ💜


ヴェルチ・アリ
俺は炎だ。相対するものを焼き尽くし、燃やし熔かす。
俺は焔だ。何もかも焼き尽くし、燃やし熔かす。

何も考えるな。何も迷うな。何も惑うな。何も想うな。
今この時だけは、俺はリゲルの武器、リゲルの炎。

…せいぜいうまく使ってくれよ、キャプテン。


【火炎使い】を使い、夜空の星より眩い宙の光熱をもって、相手を両断する。


さぁて、命乞いをしろ、だったっけか。…いいね、そんな感じで言う感じなんだ?
炎の刃を構える。日輪より届いたが如く、白く紅く白く輝く、宙を斬り裂く灼熱の具現。
…さぁ。命乞いをしろ。


目の前を焼き尽くす。誰かの大事な人の姿をした誰かを燃やし尽くす。
全て総てを燃やし熔かす。誰かと笑い合っていたはずの姿の誰かを焼き焦がす。


…悲しいのだろうか。悔しいのだろうか。辛いのだろうか。苦しいのだろうか。
この感情は果たして、「誰」のものなのだろうか。

全てを燃やし尽くすだけの火炎に。それは不要のはずなのに。


お前のそれは、持っていけない。
だけど、星の輝きなら。せめて、ここで魅せてやる。


アドリブ、絡みを歓迎します。


奴崎・娑婆蔵
自分で自分のドタマをブチ抜いてのけるたァ、なかなかどうして
見事な肝の据わりようじゃァありやせんか
動かせて腕一本、届く範囲にゃ銃一丁
まさにそれしか打つ手が無かったとして、それでもおいそれと出来るこっちゃァあるめえよ

成る程、あれがアンティキティラのの縁者の本来の――
どこの世にもいつの時代にも、傑物ってェのは居るモンでさァな

よござんしょ
斯様な覚悟を見せられたとあっちゃァ、おちおち遅れも取っていられねえ

ケリ付けて来なせえよ、お頭
周りはこちらに任せなせえ

始めやしょうぜ、海の無頼ども
その海賊旗、いっぺん八ツ裂きにしてやりまさァ


●戦闘
・海賊船の幻影相手に真っ向挑み、リゲルがハウエルに集中して相対出来るよう立ち回る
・『トンカラ刀』と『トンカラ大刀』の二振りを抜刀し敵船の甲板へ突貫、攻撃を被弾する度に【キラーズ・エイト】の分身を一体ずつ増やして見せつつ斬り掛かる
・分身の上限は8ではあるが、分身を1体ずつ増やすことで、敵に「こいつ攻撃すればするほど増殖してヤバイのでは?」と畏れでも抱かせられたならば御の字


クローディア・ベネット
海賊ってのは、何もかもを奪って飯の種にする人でなしの集まりだ
だがそんな連中にも、自分で用意しなければいけないものがたった一つだけある
それが一体何か……あんたは知ってるかい?

くそったれに聞かせる義理はないが、特別に教えてやる
――矜持。誰にも侵せない、魂の中の玉座さ

「ハウエル・ディヴィス」の矜持は、勝手に看板を掲げるクズを相手に黙ってはいなかったんだ
名前を盗んだだけの奴に勝ち目なんてある筈もない
……そうだろ、キャプテン・リゲル!

――『野郎ども、全ての砲門を開け!』
私自身、かつてキャプテンだった者としての誇りを胸を戦おうじゃないか
海賊の砲手達の霊と彼らが操る砲台を呼び出し、船を率いていた頃のように号令を下す
一糸乱れぬ一斉射撃で、逃げ場のない部屋の中に無数のぶどう弾をぶちまけてやろう!
飛び交う散弾の雨で敵の逃げ場を潰し、リゲルが引導を渡すまでの道を切り開くよ

いつから私の命を握ったつもりだい?あんたの船に積めるほど軽くはないよ
≪聖遺の護符≫の力を纏わせた≪船長のサーベル≫で、銃弾を弾いて身を護ろう


ジェーン・コーネリアス
ねぇ、海賊船の船長に必須の能力はなんだと思う?
強いこと?カリスマがあること?稼げること?
考えることは色々あるだろうが、僕に言わせてもらえば1つだけだ
「こいつになら従っていいと思わせること」
強さもカリスマも稼ぎも手段でしかない
いいキャプテンしてるじゃないか、君じゃない君も
ねぇ、キャプテン!

引き続き右手にカトラス「Macha」、左手にピストル「Nemain」を持って戦闘
広範囲に降り注ぐ砲撃を潜り抜けてハウエルへと接近、『祈弾迫撃』でピストル「Nemain」からの零距離射撃を撃ち込むよ
権力と支配に抗い、生まれ育った陸を捨てる非合理の塊が僕らだ
道理なんて知ったことか、好きにやらせてもらおうか

【ダメージアップ】を重ねて一撃の威力を積み上げたら邪魔をする周りの船員や大砲への対処へ向かい、リゲルへと託そう
こっちは任せてくれ。存分にやってくるといい


括毘・漸
ほほう、海賊としての矜持はまだ朽ちておらずのご様子ですね。
矜持は朽ちず、心も死なず。
なればその身体を取り返しましょうとも。
…さて、キャプテンの号令です。
張り切って斬り込みましょうか!

リゲルさんをディフェンス対象にしますね。
銀のサーベルと篭手を打ち鳴らし、刀身に熱を帯びさせる。
これは夕暮れの炎。
地へ沈み、海へと沈む夕暮れの色。
船を乗りこなす海賊にとっても見覚えのある色でしょう?
空に輝く星々の煌めきと同じくらいに。

だから落としましょう。
星々の煌めきがよく見えるように夕暮れは沈むのみです。

サーベルに橙色の炎を灯し、現れた海賊船の幻影を斬り裂くようにサーベルを振るい、橙色の軌道を残しながらサーベルを振り落とし、夕日が沈むような軌道を描く斬撃を放つ。


さぁ、日は沈みここからは夜の時間、星々の時間です。


海賊船の幻影から放たれる砲撃や船員たちの攻撃を食い止め、リゲルさんが足を止めないように援護しましょう。
キャプテン同士のご対面なんだ邪魔立てなんて野暮な事はさせませんよ。


龍胆・茜
【天妖茶館】としてお手伝いに来たよ。って出遅れちゃったかな?

ハウエルさんが自分の頭を撃ったのはリゲルさんの声が届いたから?
凄いね
声を届けたリゲルさんも、リゲルさんの声に応えたハウエルさんも
だからこそ、それを台無しにするクロノヴェーダは邪魔だな

茶館の皆が張り切っているし、無粋な邪魔が入らないよう余計なものは排除しないとね
茶館の皆とリゲルさんの邪魔はさせないよ
【蒼刃】咲夜で砲台と船員を攻撃
【未来予測】で出来る限り茶館の皆やリゲルさんの行動の邪魔になるようなものや
攻撃を排除して【ダブル】で再行動を狙っていきたいな
皆にはハウエルさんに集中して貰いたいから露払いはお任せってね
さぁ、行っておいでお前達。邪魔ものには早々にご退場頂こう
『クリムゾンレイブン』発動
重傷でもない限り怪我は気にしないで攻撃を続けるよ
勿論、魔力障壁は展開するけどね

リゲルさん、好きなように思いっきりやっちゃえ!
後ろの事は任せて、全力でサポートするから
リゲルさんには天妖茶館の皆がついているからね!


リューロボロス・リンドラゴ
くく、くくくく、くははははははははは!
魅せるではないか、ハウエル・デイヴィス!
流石はリゲルの憧れよ!
そうこなくてはの!
ぬしの筋の通っしぷり、ケジメのつけ方、確かに見届けたぞ!
ならば我も応えてやらねば竜が廃るというもの!
手向けだ、我が神剣をくれてやろう!
……水天よ、我に劔を。我の劔を。神剣宿すは竜である。
砲弾の嵐の中を羽撃き進もう。
惜しい話だ。
本来のハウエルによるものなら船員たちの士気ももっと高く、大砲の狙いも更に正確であったろうに!
掲げし旗も船も船員たちも貴様のものではないとあってはな!
海賊ともあろうものが宝の持ち腐れよ!
ハウエルという宝を隠せし簒奪者よ、骨となり宝の地図を遺すが良いわ!
ルゥゥゥオオオオオオオオオ!
海をも断ちし我が斬撃、船程度断てぬと思うてかあああ!
簒奪者の旗を掲げたままでは船も船員たちも浮かばれぬであろう!
リゲルの喉元に引っかかり続ける魚の骨にしてやるつもりはない。
簒奪者のついでとしてでなく誇り高きハウエルの船と船員として海戦での死をぬしらにもくれてやろう!


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎
リゲルさんはキャプテン呼び

ハウエル・デイヴィス……影(アヴァタール級)に会った時でさえ、そのカリスマの片鱗を感じたものだが
なるほど、貴方の追ったものの輝きは眩いな

簒奪者には到底、真似できないさ

リゲルさんの、仲間の一人として
道を拓こう
援護を主眼に行動
絵筆で宙に漆黒の巨狼を描き出し、PD攻撃
戦況とハウエルの出方を観察しつつ立ち回り
敵方の動きを縫い止めたり、攻撃の機先を妨害するように仕掛ける
必要に応じパラドクス通信を使用
仲間と連携を取り、地味に有効な援護となるように、多角的な攻撃を仕掛ける
キャプテンの望むものを支え、道を拓くため

反撃の虚言には、意志と忍耐力で耐える
周囲をみればわかる
そこにもっと輝けるものがあるさ
惑わされることはない
簒奪者の虚言も凌駕する輝き
何より、群れは群れであるのだから
止めはリゲルさんに
彼に共鳴した仲間として

キャプテンへ、仲間達とともに繋げる一撃を
貴方の行く道を照らせ


モリオン・スモーキー
アドリブ、連携歓迎
基本名前+様呼び。

お話し終わりましたか。宜しい。
後は奪還作業でございますね、キャプテン。

では露払いと参りましょう。パラドクス発動。
風の魔力で全てを薙ぎ払う魔力の矢でその動きを制限するように発射。
相手の動きを制限するのであれば、その間に味方もキャプテンも動きやすいでしょう。
残留効果も利用してこちらの有利に。敵には不利を。
戦闘の基本を活かして戦いましょう。
そしてキャプテンの本懐を遂げるのです。

反撃に関しては……打ち返しますか。こちらの攻撃と相手の攻撃をぶつけあって相殺しましょうかね。
後はガードアップ、反撃アップで耐えます。


ソラ・フルーリア
※連携アドリブ歓迎します!

驚いたわね、自分の頭撃っちゃうなんて!
本物のハウエルって人、予想以上に素敵な人だったのね!リゲルが憧れるのもわかるわ!
……だからこそ、此処で倒さなくちゃ海賊が廃るってものよね!

そのためには、とっておきの下準備が必要よね!
一流のアイドルっていうのは、自分だけじゃなく他人を立てることも一流!
【情熱と氷結の清洌旋風!】で敵を氷漬けにしてこの場から逃さないわ!
此処まで来て船を降りるなんて言わないわよね!ま、アタシ達が許さないけど!

あら、素敵な演説ね!
だけど偽物が言ってると分かっていれば、こんなものどうってこと無いわ!
本物のハウエルやリゲルの覚悟を思い起こし、揺さぶりを振り切ってやるんだから!
リゲルをディフェンスして他の邪魔も入れさせないわ!

さぁキャプテン!文字通り舞台は整ったわね!
アナタの望む最高のステージを魅せてちょうだい!


リコリス・ライブレス
※連携アドリブ絡み大歓迎!
名前+さん付け
娑婆蔵は組長
リゲルさんはキャプテン

っ!?アビスローバーが自らを撃った……!?
……なるほど、元の人格の彼も、戦っているのか。
あれがハウエル……リゲルさんの憧れの星……
確かにこんなに格好いい上司なら、憧れてその光を追いたくなる。
──そんな存在が居たこと、ちょっと羨ましかったりして、な。
兎角、乗っ取られてしまった彼のためにも、善い終わりを届けてあげてくれ、キャプテン。

キャプテンが存分に戦えるよう、支援に徹しようと思う。
PD『狼と竜による威風堂々軍旗』で士気を高め、【グロリアス】による回復効果で支援しよう。
また、PDの【敵に恐怖による精神ダメージを与える】効果で、その舌鋒も少しでも封じられたら。
──我らの海賊旗、しかと目に焼き付けておくれよ。

さあ、キャプテン。引導を。
──お疲れ様だ。祝杯だね。
ああ、僕はもちろんジュースだよ。


イリヤ・レダ
アドリブ、共闘歓迎です。
呼称は基本、さん付けで。

オレはね、かつてとあるディアボロスさんの肉親との対峙に立ち会ったことがある。その時は、魅入られかけた魂を取り戻すことが出来た。

今回は…、難しいかもしれない。
けれどね、貴方が望むなら何処迄でも足掻いてみせるよ。
きっとこれが唯一の機会だろうからね…。

パラドクスは「緋封 解放」を。
どんな甘言でもこの耳に届く前に緋色の嵐で切り裂いてしまえばいい。
(一方で味方を巻き添えにしない様に気を付けていきたいな)

もう選んだ理由はある。
キャプテン。最高の舞台でお洒落さんの貴方がみすぼらしいナリじゃ引き立たないだろう?とびっきりの貴方を届けてあげるといい。
(クリーニング効果で綺麗に演出)

信条を抱いた者同士、どんな決着になろうとも驚きはしない。
ただ、貴方らしく。

(結果が示されれば)
己が全てを賭けて戦った二人に喝采を。
乗っ取られても、敗れ去っても。彼を貶す気持ちにはなれない。

ペンダントを握り締めて未だ成し遂げられない我が身を顧みるけれど、それでも笑顔で労いたい。


アリア・パーハーツ
連携アドリブ歓迎

名前+さん付け
娑婆蔵氏は組長
リゲル氏はキャプテン


わあお、凄い
自分の頭を撃ち抜いちゃった
引き金を引く勇気が見事

海賊は何人も見てきたけど、うん、やっぱり名を馳せる者は違う
圧倒的な武力も、信頼を集める快活さも、何事も出し抜く頭脳も…色々な矜持を持っている奴らだけど
そりゃ憧れちゃうよね、格好いいもの

さあ見惚れている場合じゃない

キャプテンの未来のために、君が笑顔で帰れるように

サメの旗印を持った騎兵隊を召喚
全てはキャプテンのために
邪魔をするものは薙ぎ払い、制圧射撃で威嚇
倒されても次々に召喚し道を作ろう
さすが名を馳せた海賊船、支援攻撃の威力はすごいね
だからって引いたりはしない

仲間へのディフェンスのも使用

終わったら極上ワインと葡萄ジュース用意したからね!
おいしい乾杯をしよう


●深海を照らす星
 ガンビア要塞から聴衆たちは逃げ失せ、シャークパイレーツたちも皆、アンティキティラ海賊団によって討ち倒された。
 壁や天井が焼け落ちても未だ炎は燃え上がり、夜空を照らし続けている。
 だが、炎は夜空を覆い隠すが、星々を覆い隠せはしない――。
(「貴方の『教導』。確かに、受け取ったよ」)
 リゲル・アンティキティラ(一つ星・g10843)は、ハウエル・デイヴィスという星を確かに視た。魂へと響く鯨の歌を聴いた。
 同じだ、同じ歌だ。ハウエルの魂は、まだ輝いている!
「くく、くくくく、くははははははははは!」
 リューロボロス・リンドラゴ(ただ一匹の竜・g00654)が、大きな笑い声を上げ、称賛の言葉を紡ぐ。
「魅せるではないか、ハウエル・デイヴィス! 流石はリゲルの憧れよ! そうこなくてはの!」
 アリア・パーハーツ(狂騒・g00278)も目をぱちぱちと瞬かせ、驚きを露わにする。
「わあお、凄い。自分の頭を撃ち抜いちゃった。引き金を引く勇気が見事。海賊は何人も見てきたけど、うん、やっぱり名を馳せる者は違う」
 圧倒的な武力に、信頼を集める快活さ。何事も出し抜く頭脳――彼らには色々な矜持があった。そして、本物のハウエルにも。自分の頭を撃ち抜き、信条を示してみせた彼の姿を思い返し、アリアは楽しげに微笑む。
「そりゃ憧れちゃうよね、格好いいもの」
 ソラ・フルーリア(歌って踊れる銀の星・g00896)も驚くと同時に、あまりの大胆不敵さに瞳を輝かせる。
「驚いたわね、自分の頭撃っちゃうなんて! 本物のハウエルって人、予想以上に素敵な人だったのね! リゲルが憧れるのもわかるわ!」
 なんて鮮烈で、眩し過ぎる星なのだろう。
「自分で自分のドタマをブチ抜いてのけるたァ、なかなかどうして見事な肝の据わりようじゃァありやせんか」
 眼前で繰り広げられた狂気の沙汰に、奴崎・娑婆蔵(月下の剣鬼・g01933)は瞳の奥を光らせる。
 あれが縁者の本来の姿かと、彼は心底感心する。豪胆かつ激烈、相当な覚悟がなければ、あのようなマネはできまいと。
「動かせて腕一本、届く範囲にゃ銃一丁。まさにそれしか打つ手が無かったとして、それでもおいそれと出来るこっちゃァあるめえよ。どこの世にもいつの時代にも、傑物ってェのは居るモンでさァな」
 本物の意地に、ワシリーサ・ヴォレシア(船好き少女・g09690)が口笛を吹く。
「ヒュー流石リゲルさんの憧れ、やるー! そんな意思の強さを見せられたら私も応えないと、だよね!」
 まだ体の中で抗っているのなら、後は助けるだけだ。
 エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)も、同様に称賛の意を示す。
「ハウエル・デイヴィス……影……アヴァタール級に会った時でさえ、そのカリスマの片鱗を感じたものだが。なるほど、貴方の追ったものの輝きは眩いな」
 簒奪者には到底真似できないだろうとエトヴァは思う。乗っ取られているとはいえ自分の体を、しかも頭を撃ち抜くなど。
 リコリス・ライブレス(アイガナクテハイキテイケナイ・g11070)は最初こそ驚愕したが、なるほどと状況を理解する。
「……元の人格の彼も、戦っているのか。あれがハウエル……リゲルさんの憧れの星……確かにこんなに格好いい上司なら、憧れてその光を追いたくなる」
 憧れとする存在。そんな存在が居たことが、ちょっとだけ羨ましくもある。
「ほほう、海賊としての矜持はまだ朽ちておらずのご様子ですね。矜持は朽ちず、心も死なず。なればその身体を取り返しましょうとも」
 括毘・漸(影歩む野良犬・g07394)も感慨深げに言葉を紡ぎ、サーベルと篭手を打ち鳴らした。刀身へと熱を帯びさせれば、銀は橙に染まる。
 共鳴する鯨の歌は、まだ死んではいない。
「あの時、聴いた唄、確かに聞き届けたよ。同じ唄を唄う者として、水底に沈んだ同類として、最後まで見届けよう」
 いざという時は自分がリゲルを守ると、水上・鏡夜(添星・g09629)は心に決めている。彼が最期まで、理想とする海賊らしく戦えるようにと願っている。
 心に決め願うのは、イリヤ・レダ(はぐれ天使刃傷派・g02308)も同じだ。
「貴方が望むなら何処迄でも足掻いてみせるよ。きっとこれが唯一の機会だろうからね……」
 果たしてこの戦いの結末は。たとえどのような結果になったとしても、イリヤは己が全てを賭けて戦った二人に喝采を送るだろう。
「お話し終わりましたか。宜しい。後は奪還作業でございますね、キャプテン」
 モリオン・スモーキー(存在奪われし魔術発明家・g05961)も、リゲルとハウエルのやりとりを見届けた。あとはクロノヴェーダを倒し、すべてに決着を付けてもらうだけだと戦闘態勢に入る。
 左雨・雪路(低血圧系忍者・g04126)も棒手裏剣を手に構えつつ、リゲルへとニコッと微笑みかけた。
「それじゃあ奪われたモノを奪い返すとしようかい? キャープテン。海賊らしくね」
 アンティキティラ海賊団の船員は、トループス級戦を越えてさらに数を増している。
 六宮・フェリクス(An die Freude・g01325)が閃光を携えて、混沌渦巻く戦場へと飛び込んだ。
「遅れて見参! 【天妖茶館】、義によって助太刀致す! なぁんてな? んじゃ、キャープテンッ! ご命令をどーぞ……って」
 リゲルと、頭から血を流すハウエルを交互に見て、フェリクスは状況把握に努めた。
「リゲルちゃぁん、もう派手にぶっ放し……アッ。あれご自分で?」
 そう。覚悟が決まり過ぎた本物のハウエルがクロノヴェーダに対し、目に物見せてやるためにブチ込んだ。
 龍胆・茜(祈りのペンタス・g10438)も、目の前で繰り広げられた驚くべき出来事に心を打たれる。
「ハウエルさんが自分の頭を撃ったのはリゲルさんの声が届いたから? 凄いね。声を届けたリゲルさんも、リゲルさんの声に応えたハウエルさんも。だからこそ、それを台無しにするクロノヴェーダは邪魔だな」
 けれど、クロノヴェーダがいくら阻もうとも、共鳴する歌が止むことはない。佐伯・啓志(啓蒙の眼・g10396)は、確かにその歌を聞いたのだ。
「リゲル。お前の呼び声。鯨の歌を、おれたちは確かに聞き入れた。故に、共鳴し、唄おう。お前の唄を」
 赤く燃える戦場にも、鯨の歌は響き渡るのだ。ジェイ・スオウ(お茶友・g10376)は煙草に火を付け、静かに息を吐き出した。
 殺伐とした景色の中、その煙はゆったりと空に上ってゆく。
「サテ、我らがリゲルを今宵の主人とし【天妖茶館】からジェイ・スオウが参る」
 ヴェルチ・アリ(GE-■■・SOL■■×××・g03614)は炎を宿す聖剣を構え、凛と焼き払うべき敵を見据えた。
「俺はリゲルの武器、リゲルの炎だ。……せいぜいうまく使ってくれよ、キャプテン」
 リゲルと本物のハウエルのやりとりを目の当たりにし、伏見・逸(禍竜の生き先・g00248)は過去の自分を振り返る。
 ――彼は、変わってしまった、かつての自分のボスを斬り捨てた。今と状況が違うとしても、重ねてしまう。
 だが、それと同時に思うこともあった。
(「しかし……揺らがねえなキャプテン。お前が憧れた光も、お前も、俺には眩しい」)
 リゲルも、リゲルが憧れた光も、揺るぎない輝きに満ちていると。
「……さあ、キャプテン。お前はどうしたい? どう転んでも、お前が納得がいくなら、きっとそれが正しい。成し遂げたい事の為に、盾でも囮でも踏み台でも、好きなように俺を使え」
 ジェーン・コーネリアス(pirate code・g10814)の表情も、苛烈な戦場にもかかわらず晴れやかだ。
「ねぇ、海賊船の船長に必須の能力はなんだと思う? 強いこと? カリスマがあること? 稼げること? 考えることは色々あるだろうが、僕に言わせてもらえば1つだけだ」
 一息おいてから、はっきりと断言する。
「『こいつになら従っていいと思わせること』。強さもカリスマも稼ぎも手段でしかない。いいキャプテンしてるじゃないか、君じゃない君も。ねぇ、キャプテン!」
 クローディア・ベネット(黒き旗に矜持を掲げて・g10852)も、ハウエルへと静かに問いかける。
「海賊ってのは、何もかもを奪って飯の種にする人でなしの集まりだ。だがそんな連中にも、自分で用意しなければいけないものがたった一つだけある。それが一体何か……あんたは知ってるかい?」
 ハウエルはクローディアへと視線をやった。暗い深海の眼は、その答えを知らないようだ。
 クローディアは僅かに口端を上げ、言葉を続ける。
「くそったれに聞かせる義理はないが、特別に教えてやる。――矜持。誰にも侵せない、魂の中の玉座さ」
 だが、クロノヴェーダのハウエルにはそれがない。矜持も、玉座も、すべて他人から盗み取ったものだからだ。
「『ハウエル・デイヴィス』の矜持は、勝手に看板を掲げるクズを相手に黙ってはいなかったんだ。名前を盗んだだけの奴に勝ち目なんてある筈もない……そうだろ、キャプテン・リゲル!」
 リゲルは仲間たちの行動、そして言葉から力をもらい、自身の覚悟をより強固なものとする。
 ゆるしは得た。好きにしろと――ならば相応に、引導を渡してやらなければ。
 彼の、代わりに。
「ああ! 勝つのは俺たちだ! 必ずあのクズ野郎の皮を引き剥がし、奪い取る!」
 号令が響き渡り、最終決戦の幕が上がる。一斉に戦闘へ突入するディアボロスたちを、ハウエルは鋭く睨み据えた。
「――蹂躙せよ、領域への侵入者を排除しろ!」
 ハウエルが空へとピストルを打ち鳴らした瞬間、炎の中から巨大な海賊船が出現する。
 数多に並ぶ大砲、そして無数の船員たちが、幻影とは思えない迫力を以て戦場へと乱入した。
 その威容を、リゲルは瞳に焼き付ける。
「キング・ジェームズ号……」
 心を焦がす想いは、不安や躊躇いではない。今からあの力の象徴を乗り越え、輝く星を手にする高揚感だ。
 熱い眼差しを湛えるリゲルへと、仲間たちが声を掛ける。
 トンカラ刀とトンカラ大刀の二振りを抜刀し、娑婆蔵は敵船をまっすぐに見据えた。
「ケリ付けて来なせえよ、お頭。周りはこちらに任せなせえ」
 ジェーンも両手に彼女の武器を構え、強気に微笑んでみせる。
「存分にやってくるといい。この手の相手は慣れてるからね」
 リコリスもバーンと共に戦闘態勢に入り、リゲルへと声を掛けた。
「乗っ取られてしまった彼のためにも、善い終わりを届けてあげてくれ、キャプテン」
 仲間たちの言葉に、リゲルは前を見る。
「そっちは任せたぜ!」
 その眼差しが、ハウエルから逸らされることはない。
 任された、と漸は頷いて、赤熱するサーベルを敵へと差し向けた。
「……さて、キャプテンの号令です。張り切って斬り込みましょうか!」
「よござんしょ。斯様な覚悟を見せられたとあっちゃァ、おちおち遅れも取っていられねえ」
 迫る幻影の海賊船を獲物とし、娑婆蔵はトンカラ刀に宿る呪詛を解放した。キラーズ・エイトが、彼に分身を生み出す力を与える。
 ただし今回は、一度にまとめて己の分割存在を創造することはしない。
「始めやしょうぜ、海の無頼ども。その海賊旗、いっぺん八ツ裂きにしてやりまさァ」 
 敵船の甲板へ突貫すれば、気付いた海賊たちの幻影が娑婆蔵を斬り捌こうと襲ってきた。
 幻影の刃が体を裂いた。同時に、娑婆蔵は分割存在を一人編み上げる。
 もうひと斬り。途端、まるで分裂する生物のように、もう一人の娑婆蔵が現れる。
 奇妙な光景に、ハウエルが興味深げに瞳を細めた。
「斬れば斬るほど増える、か。どのような絡繰りで?」
「早々に種を明かしちゃァおもしろくねェ。そうは思いやせんか」
「明かす気はないと。まあ当然ですか」
 諦めたように軽く息を付くも束の間、ハウエルは再び幻影たちに強襲の指示を出す。
 雄叫びを上げ斬り掛かる幻影たちへと、娑婆蔵は威勢よく言い放った。
「さァ、どっからでも斬り掛かってきなァ! 八枚におろしてやらァ!」
 分身はついに最大数まで達し、それ以上増えることはなくなる。だが、『八ツ裂き娑婆蔵』の殺人技芸は此処からが本番だ。
 八人の娑婆蔵が最適化された〝殺戮経路〟を進み、幻影を斬り崩しながらハウエルを取り囲んだ。
 刹那の刺突斬撃に、ハウエルの体から大量の血が噴き上がる。
 それでも彼は倒れる気配すら見せず、毅然としてディアボロスたちを蹂躙しようとする。
 キング・ジェームズ号が撃ち出す大砲の音、そして船員たちの雄叫びに、ジェーンは瞳の奥を輝かせた。
「こいつはいい。陸に居ながら、船の上で戦ができるとはね」
 無数の砲撃。船から溢れ出し、波のように襲い来る船員たち。繰り出される剣撃を右手に閃くMachaを以て受け流し、砲弾を潜り抜けながら、彼女は船の甲板へと上がった。
 視線のすぐ先には敵の船長。ハウエルが暗い眼差しでジェーンを見ている。権力と支配に溺れた者の目だと、彼女は直感的に感じた。
「さあ、好きにやらせてもらおうか!」
 権力と支配に抗い、生まれ育った陸を捨てる非合理の塊が海賊である。道理なんて知ったことではない。
 膨大な怒りのエネルギーを左手に構えるNemainへと注ぎ込み、ハウエルへと肉薄した。
「いつもはお祈りを済ませたか聞くところだけれど、今回は例外だ」
 銃口をハウエルの体へと押し付け、ジェーンは悠然と紡ぐ。ハウエルは歪な笑みを浮かべてみせた。
「お祈り、なんてするとお思いですか」
 答えの代わりに、ジェーンは祈弾迫撃を発射した。クロノヴェーダとしての強靭な肉体へと、零距離による射撃が容赦なく撃ち込まれる。
「君が祈りを捧げる必要があるとすれば、その相手はリゲルだからね。まあ、そんなこと、端から期待してはいないけどね!」
 船長を守ろうとするかの如く、幻影の船員が迫った。彼らを斬り払い、撃ち殺し、ジェーンは蹂躙しか知らぬ海賊たちを消し払う。
 その姿は、海賊の掟を破った者たちを処罰する監視者の姿を彷彿とさせた。
 反撃を維持しながらも、ハウエルが急に頭を押さえる。先程本物のハウエルが撃ち込んだ頭の傷だ。
「クソッ、『ハウエル』……気狂いめが……!」
 たった一発。しかしその一発が、よほど効いていると見える。
 リューロボロスは本物へと呼び掛けるように、力強く言葉を紡いだ。
「ぬしの筋の通っしぷり、ケジメのつけ方、確かに見届けたぞ! ならば我も応えてやらねば竜が廃るというもの! 手向けだ、我が神剣をくれてやろう!」
 竜の力を結集し、リューロボロスは一刀の剣を創造する。
「……水天よ、我に劔を。我の劔を。神剣宿すは竜である」
 海賊船から無数の砲弾が撃ち出される。しかし、虚構に満ちた砲弾などに、竜の進撃は阻めない。
 巨大な剣をその手にしかと握り締め、リューロボロスは突き進む。たとえ弾が翼を掠めようと構うものか。
 砲弾の嵐を抜け、海賊船の上空へと舞い上がる。眼下にいるハウエルを、リューロボロスは緑玉の両眼に捉えた。
「惜しい話だ。本来のハウエルによるものなら船員たちの士気ももっと高く、大砲の狙いも更に正確であったろうに! 掲げし旗も船も船員たちも貴様のものではないとあってはな! 海賊ともあろうものが宝の持ち腐れよ!」
 リューロボロスの言葉は、まるで磨かれた刃のようだ。ハウエルが、瞳を不穏にギラつかせた。
「……宝剣ですか。是非ともコレクションに加えたいものですね!」
 荘厳な光を纏う剣を見て、彼は口端を吊り上げる。その発言を、リューロボロスは堂々と笑い飛ばした。
「クハハハハッ! ぬかしおる! 貴様には扱えぬ神剣よ! この一刀を以て、身の程を知るがいい!」
 手にした剣へとエネルギーを注ぎ込む。纏う光が、さらに輝きを増す。
「ハウエルという宝を隠せし簒奪者よ、骨となり宝の地図を遺すが良いわ!」
 ルゥゥゥオオオオオオオオオ!
 竜の咆哮が、要塞を突き抜け天まで轟く。振り上げられた神剣が、ハウエルと彼の海賊船へと振り下ろされる。
 ――神剣抜刀、奴重垣剣。
 リゲルの喉元に引っかかり続ける魚の骨にしてやるつもりはない。その一撃は、船も船員も全てを巻き込んで断ち切り、引き裂いてゆく。
 簒奪者の鎖から解き放ち、誇り高き海賊としての死を与えるように。
「いくら斬り捌こうとも、幻影などいくらでも出せます」
 幻影の海賊船を立て続けに召喚するハウエルの背後で、虚蝉の影が舞った。
 ハッとして振り返るハウエル。防御の体勢を取るが、それは無駄に終わった。雪路の棒手裏剣は振り向いた正面ではなく、背中へと突き刺さったからだ。
 深々と突き刺さるそれに、ハウエルが目を見開く。
「船長を奪れると思うなよ? お前の海賊団は所詮紛い物。俺の武器で簡単に捌ける」
 入り乱れる戦闘に乗じ、雪路は密かにハウエルへと距離を詰めていた。
 虚蝉により生み出した影法師は身代わりだ。本体は別方向から攻撃を仕掛け、敵の虚を突く。影で惑わし、影に潜む――忍の極意である。
 背に喰い込んだ凶器はそのままに、ハウエルは揶揄するように笑った。
「邪魔ですね。まるで羽虫のようだ」
 雪路はとくに腹を立てるわけでもなく、ただ呆れたように息をつく。
「それで煽ったつもり? もう少し煽り方を学んだ方がいいよ。まあ、学ぶ機会なんてもう巡ってこないけど」
 クロノヴェーダとしてのハウエルは、ここで死ぬ。リゲルによってその命を奪われるのだ。
 ふふ、と笑みをこぼしながら、雪路はハウエルを挑発する。
「残念ながら本物とは役者が違ったみたいだね、イカ頭。今度は君が奪い尽くされる番が回ってきたよ、命乞いでもしてみるかい?」
 ハウエルは血に塗れた顔に笑みを張りつけながら、その瞳に狂気の色を滲ませた。
「ははっ、ご冗談を。お前も、リゲルも、全員俺が沈めてやる。とくにリゲルは『懇切丁寧』にじっくり甚振って、最大の苦痛を与えてから沈めてやりましょう」
 海底に沈殿する泥のような瞳だ。恐怖の象徴が如き眼差しをまっすぐに受け止めながらも、雪路は恐れるどころか別の感情を湧き立たせる。
 感情、それは怒りだ。自分が馬鹿にされる分には何とも思わない。だが、リゲルのことを貶めるのであれば話が別だ。
 『ハウエル』の顔でそれを言うことの、なんと悍ましく罪深いことか。
「……誰を沈めるって? ふざけた事言いやがって、お前が沈め」
「あはははっ! 皆さん本当に『リゲル船長』のことが大好きなんですね!」
 愉しげに大笑いする姿は気に喰わないが、雪路は冷静さを欠くことはない。なぜなら、気付いているのだ。
「当然だろう。だからこそ、この場所に居て、お前の力を全力で削ってる。実際キツイだろ?」
 ハウエルの体からは多くの血が流れ落ちている。立っているのが不思議なくらいだ。
 モリオンは落ち着き払った灰の瞳でハウエルを見つめ、感じていることをそのまま口にする。
「本当は気付いているのではないですか。あなたの力は間違いなく弱まっている。この海賊団の幻影は確かに壮大ですが、やせ我慢しているのでは」
 体力が削れていないわけがないと、モリオンは確信している。何しろこの人数はジェネラル級決戦規模だ。
 ただでさえ、本物のハウエルが頭をブチ抜いたばかりなのだ。正直死んでいてもおかしくない。
 率直なモリオンの疑問を、クロノヴェーダのハウエルは撥ね付ける。
「お前の目は節穴ですか。そんなわけがないでしょう」
 モリオンはハウエルの様子をじっくりと観察するように見つめる。冷めきった声色。そしてそこに動揺や疲れの色は見えない。
(「気付いていないのか、気付いていながら取り繕っているのか。……まあ、どちらでも良いことです」)
 体内を巡る風の魔力を呼び覚まし、空中へと魔法陣を展開する。渦を巻く突風が、モリオンの髪を激しく揺らした。
 激しい風の中、彼は静かに言葉を紡ぎ出す。
「では露払いと参りましょう。――パラドクス発動」
 魔法陣が緑色に輝く。高純度に詠唱圧縮された『魔力の矢』が、魔法陣の内から姿を現した。
 淡々と、モリオンは魔力の矢へと命じる。
「魔力の矢よ、簒奪者を貫きなさい」 
 直後、矢は風の如き速度で射出された。マジックミサイルは立ち塞がる船員たちの幻影を掻き消しながら、まっすぐにハウエルへと飛んでゆく。
 魔力の矢がハウエルの体へと深く突き刺さった。ハウエルは表情を僅かに歪めながらも、反撃の大砲を撃ち放つ。
 迫る砲撃に、モリオンは魔力の矢を再構成した。
「――打ち返しなさい!」
 魔力の矢と黄金海岸への蹂躙の砲撃が衝突し、大爆発を起こす。
 爆風による衝撃がモリオンを吹き飛ばそうとするが、肉体を堅固にすることで耐え抜いた。
 砲撃と船員の雄叫びが戦場に響く中、リコリスはバーンへと強く語りかける。
「征こうか。炎の軍旗を天高く掲げよう」
 バーンがリコリスへと頷いた。二人は互いに力を合わせ、狼と竜による威風堂々軍旗を発動する。
 勇ましく鬨の声を上げ、復讐者の炎で形作られし軍旗を空に向かって掲げる。
「この旗の元に集え! 僕らの敵に戦いを挑もう! この旗こそ我らの海賊旗! 敵の目にしかと焼き付けよう!」
 炎の軍旗は燃え盛り、威風堂々と戦場の風にはためいた。
 軍旗から舞い散る火の粉は味方を癒す力となり、仲間たちへと温かに降り注ぐ。
「……鬱陶しい旗だ……」
 ハウエルが心底面倒くさそうに呟いた。彼によく見えるように、リコリスは軍旗を振りかざす。
「貴殿の幻影も舌鋒も、我らには通用しない! 威風堂々たる我らの前では無力と知れ!」
 これぞ我らの海賊旗。怒りと復讐心だけでなく、仲間たちとの絆を宿した勇猛なる炎旗なのだ。
 迫り来る船員の幻影を、旗を振り回すことで蹴散らし、リコリスは奮然として戦う。
(「キャプテンが存分に戦えるよう全力で支援する……彼が、ハウエルに引導を渡せるように!」)
 砲弾を受けようと、船員の剣が体を傷付けようと、彼女は倒れずに旗を振り続けた。
 その傷は仲間を助け支えるために受ける傷だ。彼女は想う。何も恐れることはないと。
 アリアもキング・ジェームズ号とそこに詰める船員たちを視界に捉え、パラドクスを展開する。
「見惚れる時間は終わり。仕上げのお仕事と行こうじゃないか」
 彼女が召喚するのは、マスケット銃とサーベルで武装した騎兵隊だ。彼らは皆アリアの操り人形であり、彼女の命じるままに動く。
 サメの描かれた旗印が、風に煽られて存在を主張していた。突き進めと命じれば、騎兵隊は海賊船へと馬を駆り突進する。
 騎兵隊の攻勢に反応し、船員の幻影たちがカトラスやピストルを振り翳して応戦してきた。
 交わる剣の音、立て続けに放たれる砲弾が、戦場を激しく揺らす。
「さすが名を馳せた海賊船、支援攻撃の威力はすごいね。だからって引いたりはしない」
 襲い来る船員を馬が蹴り飛ばし、騎乗する兵士たちが武器で薙ぎ払う。同時、騎兵隊はハウエルへとマスケット銃による射撃を行った。無数の銃弾が撃ち込まれ、ハウエルの体に穴を開ける。
「騎兵隊……軍隊、ですか……嫌なことを思い出しますね」
 呻くように呟くハウエルへと、アリアは瞳を細め、柔らかに紡ぐ。
「それも本物の記憶からの付け焼刃かな? 薄っぺらいね」
 彼女は騎兵隊を鼓舞するように、高らかに言い放った。
「全てはキャプテンのために! 邪魔するものたちを全て薙ぎ払い、未来への道を切り開こう!」
 キャプテンの未来のために、君が笑顔で帰れるように。
 ディアボロスの猛攻は止まることを知らない。海賊船の幻影に、鮮やかな橙色のラインが引かれる。
 燃える地平線の如く一直線に引かれた線は、船体を灼き斬り、その巨体を大きく抉り取った。
 僅かに傾く船体へと飛び乗って、漸は船上のハウエルへと語りかける。
「これは夕暮れの炎。地へ沈み、海へと沈む夕暮れの色。船を乗りこなす海賊にとっても見覚えのある色でしょう? 空に輝く星々の煌めきと同じくらいに」
 再び橙色の炎を灯したサーベルを振るい、船の幻影とハウエルを夕陽の刃で斬り裂いた。
 その衝撃に、船体がさらに傾く。
「だから落としましょう。星々の煌めきがよく見えるように夕暮れは沈むのみです」
 船を沈め、ハウエルを沈めるべく、彼は剣を振るう。唇を引き結ぶハウエルを見て、漸はわざとらしく首を傾げてみせた。
「おや、不機嫌そうな顔ですね。お気に召しませんでしたか? 折角、星の綺麗な夜ですのに」
 そう問われ、ハウエルは重たい口を開いた。
「配下を蹂躙されて、星が綺麗なんて言ってられませんよ。……元々興味もありませんがね」
 吐き捨てる彼を、漸は静かに見据える。ハウエルの暗い瞳は、眼前の夕暮れすら映さない。漸にはそう思えてならない。
(「光が届かない深海の瞳とはまさにこのこと……きっと、星の美しさも理解できないのでしょう」)
 現に、リゲルという眩い星がすぐ傍で輝いているというのに、クロノヴェーダのハウエルは――。
 そこまで考えて、漸はあることに気付く。
 ハウエルはリゲルという星を堕とそうとしている。執着がなければ、『懇切丁寧にじっくり甚振って殺す』などと言わない。
 星の美しさを理解できないのではなく、理解した上で認めたくないのでは。
(「……考えても仕方ないことですね。どうあれこちらの役目は決まっています」)
 リゲルが満足の行く決着を付けられるよう、邪魔立てが入らぬよう支援する。それが、リゲルという星の下に集まったディアボロスたちの役目だ。
 幻影の海賊団が暴れ回る中でも、ワシリーサは力強く宣言する。
「幻影なんかに邪魔はさせないんだから! スヴォーロフの進軍で蹴散らすよ!」
 身に纏う武装すべてを駆使し必ず蹂躙を乗り越えると、彼女は心に消えることのない炎を灯す。
(「リゲルさんのこと、本物のハウエルさんも絶対に待ってるはずだから!」)
 だから、絶対に邪魔はさせない! 自身の海戦装を展開し、ワシリーサは戦場を駆ける。
「スヴォーロフの様に迅速に、態勢を整える時間を与えず攻め立て追い詰める―――っ!」
「お前たち! 圧し潰せ!」
 ハウエルの号令に従い、幻影の海賊団が押し寄せた。
 駆け抜けながらワシリーサは己の戦闘知識を総動員し、思考を巡らせる。
 がむしゃらに進むだけでは、幻影たちに押し潰される。よって求められる動きは回避のための行動。
 幻影による支援攻撃、砲撃の薄い箇所を見極め、攻撃の隙間を縫うように走る。
 一人で完遂するには限界があっただろう。だが、仲間たちが一斉に攻撃を仕掛けている今だからこそ、敵の護りの薄い所がよく見えた。
「残念! そんな攻撃当たらないよ! 当たったとしても耐えてみせるけどね!」
 幻影の波を抜けて、ワシリーサはハウエルへと肉薄する。身構えるハウエルへと、氷結輪、鎖舵輪、射出式巨大錨――ありとあらゆる武装を叩き込んだ。
 周囲の炎や幻影すら吹き飛ばす一撃に、ハウエルが顔を歪めながら舌打ちする。
「チッ……」
「悪いけど、力以外の全てが貴方が勝手に体を使ってる人と格が違うよ? 偽物はとっとと本物に返さないと、ね!」
 自分の頭にピストルをぶっ放せる程の意思の強さ。その強さは、眼前のクロノヴェーダには存在しない強さだ。
 力に頼りきり、蹂躙に飢えた獣のように暴れる幻影たちを、茜は鋭い眼差しで見据えていた。
「本当に、邪魔だな。砲台も船員も、全部邪魔。クロノヴェーダって、本当に余計なことばかりするよね」
 彼女から湧き立つオーラは、鮮血の色をしている。それは敵意に満ちた強烈な色彩だ。
「中身がまだ『居る』ってんなら、やるべきことは決まってる。――さあ、頼むぜ。『閃光』」
 あいわかった、とフェリクスは閃光を抜き放つ。この刀でハウエルを支配するクロノヴェーダも捩じ伏せてくれよう。
 天妖茶館の一員として必ず助力してみせると、茜とフェリクスは各々のパラドクスを展開する。
「無粋な邪魔が入らないよう、余計なものは排除しないとね。茶館の皆とリゲルさんの邪魔はさせないよ」
 茜の身に纏う鮮血のオーラが急速に形を変え、鳥型のエネルギー塊を創り出した。鮮血の鳥は茜の周囲で羽搏き、彼女の指示を待っている。
「さぁ、行っておいでお前達。邪魔ものには早々にご退場頂こう」
 茜の命令と同時、鳥たちは幻影の海賊船へと突撃した。その様は船上を飛ぶ海鳥のようであり、獲物を狩り取る猛禽類でもある。
 鳥たちは宙を舞い、鋭い両翼で幻影の船員たちを断ち切ってゆく。その両翼はハウエルにも届き、彼の体を深く斬り裂いた。
 フェリクスも強く大地を蹴り、敵陣に向かって駆ける。
「じゃ、リゲルとの約束通り! ハウエルちゃんよぉ……そのお綺麗なツラに、一太刀! 喰らわせてやらァ!!」
 たとえ無茶であっても、進まない理由などない。
 傷だらけになりながらも、ハウエルは鋭く叫んだ。
「その言葉、そっくりそのままお返しします。邪魔者はお前たちだ。そのキレーなツラどもに、砲弾をお見舞いしてやる!」
 無数の砲弾、猛る船員たちの猛攻が、茜とフェリクスに差し向けられる。
「どんな荒波でも掻い潜るぜ。今のオレ達になら、それが出来る!」
 普段から教わってきた海賊の流儀を、今こそ実践する時だ。
「そうだね。私達の本気、見せ付けてあげよう」
 茜へと頷き、フェリクスは幻影が撃ち放つ砲弾の嵐へと突き進む。彼だけに見える光の導きが、『此処を斬れ』と彼に告げるのだ。
 今この時、総ては義のため。守るべき、お前たちのために!
 義憤を一刀へと注ぎ込み、絶閃を発動する。砲弾の嵐を乗り越え、ハウエルへと肉薄した。
 ――断ち切る!! 
 強烈な一刀両断が、ハウエルへと打ち込まれる。
 一方で、茜も【蒼刃】咲夜を構えて黄金海岸への蹂躙を受け流す。魔力障壁も合わせ、襲い来る船員や砲弾から身を守った。
「このくらい、どうってことないよ。幻影が全部消えて無くなるまで、断ち切り続ける……!」
 蒼い魔力の刃が閃き、船員の剣を弾き飛ばす。弾き飛ばされた剣は弧を描き、ハウエルの足元へと突き刺さった。
 ハウエルは剣を蹴り飛ばし、力強く宣言する。
「お前たちの牙を削いでやりましょう。戦う気などなくなるように」
 ハウエルはガンビアの虚言を紡ぎ始めた。魅力と誘惑に満ちた虚言と演説が、まるで精神を侵す音色のように広がっていく。
 耳に届く甘言に、ソラは己の意志を強く抱く。
(「リゲルが憧れた人、彼にとっての一番星……だからこそ、星を騙る偽物は、此処で倒さなくちゃ海賊が廃るってものよね!」) 
 本物のハウエルやリゲルの覚悟を思い起こした。彼らの覚悟を想えば、クロノヴェーダの演説など取るに足らない。
 ソラは強気な笑みを浮かべ、揺さぶりを振り切ってみせた。
「あら、素敵な演説ね! だけど偽物が言ってると分かっていれば、こんなものどうってこと無いわ!」
 彼の言葉には心がない。表面だけは素敵だけれど中身がない。いくら演説が素晴らしくとも、人の心を動かす音色にはならない!
「あんなに強烈なシーンを魅せられたんだもの! 揺さぶりなんて効かないわよ!」
 水の魔力と風の魔力を束ね、爽やかな色彩の魔力塊を編み上げる。狙いをハウエルへと定め、ソラは魔力砲を撃ち出した。
「最高のクライマックスを迎えるための下準備が必要よね! 一流のアイドルっていうのは、自分だけじゃなく他人を立てることも一流!」
 青緑の奔流は雪の結晶を舞い散らせながらハウエルへと着弾した。きらめく結晶は情熱と氷結、二つの性質を併せ持つ。
 風の魔力が猛吹雪のように吹き付け、彼の体を芯まで凍り付かせた。
「此処まで来て船を降りるなんて言わないわよね! ま、アタシ達が許さないけど!」
 体に張り付いた氷を振り落とし、ハウエルは心底鬱陶しそうに返した。
「……お前たちの許しなど、最初から望んじゃいません」
 相当厳しい状況だろうに、ハウエルは決して折れない。そんな彼の様子を見つめながら、イリヤは過去の出来事へと想いを巡らせる。
 ――かつて、仲間の肉親との対峙に立ち会ったことがある。その時は、魅入られかけた魂を取り戻すことができた。
(「本来の魂の持ち主が、今も体の中で戦っているのなら……もしかしたら、取り戻せるのかもしれない」)
 そこにまだ望みがあるのならば。イリヤの白い髪が瞬く間に緋色へと染まった。それは刹那の発現だ。
 イリヤごと覆うように巻き上がる鮮やかな嵐が、周辺を緋色に染め上げる。
「キャプテン。最高の舞台でお洒落さんの貴方がより輝けるように、綺麗に演出してみせるよ。とびっきりの貴方を届けてあげるといい」
 『緋封 解放』の効果――クリーニングにより、戦いで血や埃を被った服が、洗い立てのように仕上がった。
 同時に、緋色の嵐はハウエルの虚言を風の音で掻き消してゆく。
「どんな甘言でもこの耳に届く前に緋色の嵐で切り裂いてしまえばいい」
 猛り狂う嵐の衝撃が、ハウエルの体を傷付けてゆく。体中から血を迸らせながらも、ハウエルは苦笑する。
「つれないですね。少しくらい聞いてくれても良いのでは?」
 ハウエルの言葉に、イリヤは拒むように首を横に振った。
「偽物に貸す耳はないよ。そこに『確かな信条』なんて、ありはしないんだからね」
 クロノヴェーダのハウエルに、輝ける信条はない。信条は彼の奥深く、囚われた本物のハウエルの中に在る。
 本物の彼は覚悟を決めている。どんな決着になったとしても受け入れるだろう。
(「オレも……信条を抱いた者同士、どんな決着になろうとも驚きはしない」)
 ディアボロスたちの苛烈な攻撃の中でも、ハウエルはガンビアの虚言を語り続けていた。
 他の仲間たちと同じく、エトヴァもハウエルの言葉を聞き流し、毅然と言い放つ。
「そのような虚言になど屈しない。周囲をみればわかる。そこにもっと輝けるものがあるさ」
 魅力と誘惑に満ちた虚言と演説も、ただの借り物だと思えば偽りの輝きは消え失せるものだ。
 よって、惑わされることなどない。簒奪者の虚言を凌駕する圧倒的な輝きが、すぐ傍らにあるのだから。
(「リゲルさんに共鳴した仲間として、道を拓こう」)
 エトヴァは絵筆を、炎と煙の隙間から見える夜空へと走らせた。宙を流れる色彩は黄金と漆黒。黄金の内で渦を巻く漆黒が、大きな巨狼を描き出す。
「――迸れ、闇の申し子よ。簒奪者へと猛る牙を届かせよ」
 巨狼が咆哮する。黄金の色彩を突き破りながら、漆黒の巨狼は戦場へと飛び込んだ。
 巨狼はハウエルへと飢えた猛獣の如く疾走し、その体に鋭い爪を喰い込ませた。簡単に逃げられぬよう鷲掴みにし、鋭い牙でイカの触手と化した髪を食い千切る。
「随分と大きな犬ですねえ……それも躾がなっていない駄犬だ」
 爪と牙による拘束を強引に振り解き、ハウエルは労わるように髪に触れた。触手が一本ボロリと地面に落ち、忌々しげに眉を寄せる。
 不快げなハウエルへと、エトヴァは断言する。
「その虚言も演説も、ただのノイズでしかない。俺たちの耳に届く音は、キャプテンリゲルの号令だけだ」
「はは、大した忠誠心です」
 低く、乾いた笑い声をこぼすハウエル。着実に追い詰めていると確信しつつ、エトヴァは再び絵筆を構え直す。
「キャプテンの望むものを支え、道を拓くため……何度でも筆を振るおう」
「ならば、その頭に叩き込まれるまで、俺の演説を聴かせてあげましょう!」
 ガンビアの虚言は未だ甘美な言葉と共に響き渡る。紡がれる言葉へと、啓志は耳を傾け続けた。
 ――さあ。聞かせたまえ、美しい綺語を。この体と魂を、お前がどう感じるのか。ずっと、聞いてみたかったんだ。
 受け入れてやろう。そして――。
「今からでも俺の配下になってみる気はありませんか? そうすれば、命だけは助けてあげましょう!」 
 啓志は、その眼に鋭い光を宿した。
「……しかと見たぞ、お前の本性を」
 因果と因縁は、リゲルからすべて聞いている。ハウエルがどういう人物だったか。リゲルに名を与えた男だということも。
 ――本物のハウエルは、捕えた捕虜を無理矢理仲間に引き入れることを嫌っていたという。
 しかし、クロノヴェーダのハウエルのそれは、ただの脅迫だ。本物のそれとは似ても似つかない。
 魅力と誘惑に満ちた虚言と演説は揺らいでいる。きっと、本物と同じように振る舞う余裕がなくなっているのだろう。
(「もっとも、完璧に本物を演じてみせたところで、結局は本物から盗み取ったものだ。上辺だけの信条を聞かされたところで、心には響かない」)
 リゲルが焦がれる焔の一つ。未だなお燃え続ける焔を、今こそ海底から引き上げる時だ。
「……彼の心臓はまだ燃えている。その焔、リゲルに引き渡してもらうよ」
 日輪、形成――総てを、白日のもとへ。詠唱と同時、炎に満ちた夜を暁光が照らした。
 ハウエルの頭上に出現した不完全な太陽が崩れ、膨大な熱量の光が溢れ出す。
 眩い旭光に容赦なく当てられ、ハウエルは堪らず瞳を細めた。どこか苦しげな彼へと、啓志は淡々と告げる。
「この陽の光も、今ならお前にも届くのだろう? 暴こう、お前の本性を。クロノヴェーダが名乗るには、その名は重いということを識れ」
「……海の底に光が届くとでも?」
 必ず届くとも。実際に、リゲルが証明してみせたではないか。確信に満ちた声で啓志は紡いだ。
「リゲルは。海溝の底に堕ちてなお、輝き続けた。お前が閉ざそうとしたはずのくらやみを掻き分けて、肋骨の檻の中、脈打つお前の心臓を、虎視眈々と狙い続けている」
 唐突に、フェリクスの大きな声が演説を遮った。
「おいおい!! 虚言だか妄言だか知らねえが、ジェイに変なモン聞かせんなよな!!!!」
 ジェイに向けられたガンビアの虚言を、代わりに受けたのだ。
 演説を遮られて苛付いたのだろう、ハウエルが心底不愉快そうに眉を寄せた。
 フェリクスのクソデカボイスに、ジェイはキラキラと瞳を輝かせてみせる。
「キレッキレのディフェンス、さすがダーリン! 冴えてルゥ!」
 ……と、愛しのダーリンを褒め称えた後、ガラリと表情を変えて、彼はハウエルへと向き直った。
 柔和で雅やか、それでいて裏に何かを隠し持っているかのような空気感。
「コンバンワ。初めマシテ。リゲルの想い人。オマエのお話は沢山聞いているゼ? リゲルちゃんとアンナコトやソンナコト、妬けるナァ?」
「これは随分と素敵なご挨拶ですね。礼儀についてよく勉強していると見える」 
 嫌味な返しだ。言葉にしたことすべてが嘘であることがよくわかる。ハウエルの露骨な発言に、ジェイは上品な微笑みを返した。
「フフッ、それほどデモ。お加減如何? 重たぁいガワが剥がれて来たんじゃネェカ?」
 煙草の煙が揺らぎ、消える。代わりに浮かび上がったのは、帯状のオーラだ。オーラはジェイの唇から織り上げられ、その表面に棘を創り出す。
「オマエの声は気に入ったが内容は響かネエ。オレには帰る場所も大事な人達もイルからナ。オレも言葉遊びは得意なんダ。オマエとは違う方法デ、礼法を以て心を込めてハウエル、オマエに詞を届けてヤルヨ」
 聖邪の言の葉が互いに絡み合い、無数の糸を束ねるように紡がれる。
「オレ達を見ろ。仲間を思い、賑やかし、励ますこの在り方を。オレ達が唄うこの唄はオマエの唄でもある。この唄が道標になるハスダ」
 半天妖――それは敵の肉体だけでなく、精神にも影響を及ぼす魔法である。
 精神を締め上げる言の葉の棘は、ハウエルにどのような感情を齎すのか? 懐かしいか? 羨ましいか? それとも……。
「少しでも未練が残っタのナラ。茶館にオイデ? 床掃除からコキ使ってヤル!」
 ジェイの言葉が、ハウエルの脳に衝撃を与えた。
 ハウエルはギョッと目を丸くして、その後、不愉快極まりないと言わんばかりにぐしゃりと表情を歪めてみせた。
「は? 床掃除? ふざけてるんですか? この俺がそんな雑用するわけないだろう!」
 手下に全部やらせておけばいい、それは下っ端の仕事だと吐き捨てる。その姿は、まるで暴虐な船長を彷彿とさせた。
「……はは、化けの皮が剥がれてきたのはいいが、同じ顔で好き勝手言い過ぎだ。聞くに堪えないな」
 解釈違いの言動に思わず笑ってしまうのは、相手が追い詰められていることがわかるせいだろう。
 笑みをこぼすリゲルへと、茜が笑顔でエールを送る。
「リゲルさん、好きなように思いっきりやっちゃえ! 後ろの事は任せて、全力でサポートするから! リゲルさんには天妖茶館の皆がついているからね!」
 最後まで必ず立ち続け、晴れ姿を見届ける……強い意志を胸に、フェリクスも叫ぶ。
「ほら、掴み取ってこい。あの心臓を! 背ならいくらでも押してやる。この追い風、逃すんじゃねえぞ!」
 同様に、啓志もリゲルへと力強く伝える。
「もうすぐ夜明けが来る。まっすぐに突き進め」
 エトヴァの描いた黄金の鎖が、同じく描かれた巨狼に破壊され、キラキラと金星の残滓を降らす。
「貴方の行く道を照らそう。深海の闇に閉ざされることのない、光の路を」
 モリオンのマジックミサイルが、黄金海岸への蹂躙により湧き出した船員を薙ぎ払った。
「邪魔するものはすべて排除します。ですから、キャプテンの本懐を遂げるのです」
 ソラも華やかな笑顔で、リゲルを送り出した。
「さぁキャプテン! 文字通り舞台は整ったわね! アナタの望む最高のステージを魅せてちょうだい!」
 ――情熱と氷結の清洌旋風! 炎の夜に、ソラのパラドクスが涼しさを運ぶ。
 カオスな戦場は、まるでパーティー会場のようだ。ワシリーサも全力で武器を振り回しながら、朗らかな声でリゲルへと言葉を掛けた。
「キャプテン、トドメは任せたよー! ガツンとブッ倒してあげて!」
「終わったら極上ワインと葡萄ジュースで乾杯しよう! ちゃんと用意してあるからね!」
 アリアも満面の笑みを湛えながら声を張り上げる。すべてが終われば愉快な宴会、おいしい乾杯が待っている。
 仲間たちへと、リゲルは海賊らしく凶悪な、それでいて陽気さを感じさせる笑顔を返してみせた。
「もちろん! 二度と浮き上がってこれないようにしてやるとも! すべてが終わったら宴会だ!」
 仲間へと向けていた視線をハウエルへと戻す。その瞳には、最輝星の輝きが宿る。
「……さあ。その銃口を俺へと向けろ。あの時のように、お前がこれからするつもりだった、その通りに」
 深海の瞳の奥。暗闇の中で、昏い焔が揺らめいた。
「……まだですよ。先にお前の仲間を殺す。お前は最期です。最期にじっくり殺してやる」
 ハウエルはピストルを構え、死刑を宣告する時のように紡いだ。
「……さあ、命乞いをしろ」
 残忍なる敵対者を葬り去る弾丸が、仲間たちへと撃ち放たれる。
 翼を盾代わりに弾丸を受け、逸は急所への直撃を避けた。鋭い痛みが翼に走るが、体が無事なら戦える。
「……威力は確かだが、問題ない。この体はまだ動く」
 翼に喰い込んだ弾丸を気にも留めず、逸は空中へとジャンプした。エアライドを駆使し、ハウエルの頭上へと高く飛び上がる。
「この程度負傷したくらいで、命乞いをする気にはなれねえな。それよりも――」
 翼を大きく広げれば、炎が揺れる空間の中に黒い影が生まれた。視界が狭まるように錯覚させる、大きな影が。
 逸は、鮮烈な赤い眼差しでハウエルを見下ろす。
「やられたならやり返さねえとな。砕けて裂けて、塵にでもなれ」
 禍竜の雷霆がハウエルへと振り下ろされた。頭上から全力で繰り出された蹴りが、ハウエルの頭から首にかけてを打ち据える。その衝撃は、ハウエルの体を激しく揺らした。
 ハウエルは血を散らしながらも、ニヤリと口端を吊り上げる。
「これはこれは、野蛮な一撃だ!」
「てめぇの自由にはさせねえよ。というか、人のこと言える立場じゃねえだろうが」
 大虐殺を企てた奴に言われる筋合いはねえ、と逸は吐き捨てる。もう一発蹴り付けてやろうか一瞬考えるが、追撃は入れずに距離を取った。
(「決めるのはキャプテンだからな。やり過ぎはよくねえ」)
 ヴェルチは聖剣を前に翳すことで弾丸をはじく。打ち返した衝撃で腕が痛むが、その痛みを表に出さぬようニヤリと口端を上げた。
「命乞いをしろ、か。……いいね、そんな感じで言う感じなんだ?」 
 空間を割るように、彼の頭上に日輪の如き輝きを放つ光が生まれ出でた。
 夜空の星を覆う、眩い宙の光熱――『GE-07・LIBRA-FL-BL』。光熱は天より落ち、ヴェルチが手に持つ剣へと降り注ぐ。
 魔剣としての側面を併せ持つ聖剣は、その刀身にすべてを両断する炎を宿した。巨大な炎剣を手に、彼は己に言い聞かせる。
 俺は炎だ。相対するものを焼き尽くし、燃やし熔かす。
 俺は焔だ。何もかも焼き尽くし、燃やし熔かす。
(「何も考えるな。何も迷うな。何も惑うな。何も想うな」)
 炎の刃を手にハウエルへと接近する。白と紅は灼熱の流星の色だ。ヴェルチは夜の闇を焼き払いながら、眼前の深海へと光熱を届かせる。
 間近に迫ったハウエルへと、ヴェルチは告げた。
「……さぁ。命乞いをしろ」
 目の前を焼き尽くす。誰かの大事な人の姿をした誰かを燃やし尽くす。
 全て総てを燃やし熔かす。誰かと笑い合っていたはずの姿の誰かを焼き焦がす。
 ハウエルだけでなく、ヴェルチの心も轟々と燃え盛っていた。この熱は歓喜か、安らぎか、それとも痛みか。
 悲しいのだろうか。悔しいのだろうか。辛いのだろうか。苦しいのだろうか。
(「この感情は果たして、『誰』のものなのだろうか」)
 炎に焼かれながらも、ハウエルが歪んだ笑みを浮かべる。
「俺の台詞を取らないでくださいよ。お前には『自分』がないのですか?」
「……他人の名を奪って、我が物顔で居る簒奪者にだけは言われたくない台詞だ」
 燃え滾る流星はそう紡ぎ、火炎の斬撃でハウエルを斬り払った。
(「お前のそれは、持っていけない。だけど、星の輝きなら。せめて、ここで魅せてやる」)
 炎を無理矢理に消し払い、ハウエルは叫ぶ。
「さすがに熱い……ですが! まだ俺は燃え落ちない!」
 『残忍なる敵対者』を撃ち殺す弾丸は未だ健在だ。
 聖遺の護符の力を船長のサーベルへと纏わせ、クローディアは飛来する銃弾を弾き飛ばす。
「いつから私の命を握ったつもりだい? あんたの船に積めるほど軽くはないよ」
 玉座を持たぬ海賊モドキの船になど積もうものなら、その重さで船が沈んでしまうに違いない。
 かつての懐かしき情景、海賊として大海原を航海した記憶が、鮮明に浮かび上がる。
(「全力で戦おうじゃないか。キャプテンだった者としての誇りを胸に!」)
 無数の魂の揺らめきが、クローディアのもとへと集結する。彼らは道半ばで倒れた海賊砲手たちの魂だ。
 船上で、或いは陸で、彼らの命の灯は尽きた。今ここに、再びその猛る命を再現する。
「――『野郎ども、全ての砲門を開け!』」
 海賊砲手たち、そして彼らの得意である大砲が、横一列にずらりと並んだ。
 ハウエルを指し示し、クローディアは高らかに号令を下す。
「ありったけのぶどう弾をあのクズにぶち込んでやりな! この要塞が奴の墓場だ!」
 一糸乱れぬ一斉射撃がハウエルを襲った。飛び交う散弾の雨が、彼の逃げ場を容赦なく潰す。
「矜持だの玉座だの、ゴチャゴチャと……!」
 全身穴だらけになりながら、ハウエルが悪態をついた。それでも体を動かし、彼はディアボロスたちへと弾丸を撃ち続ける。
 総攻撃を受け、本当は立っているのすら辛いはずだ。一体何が、彼をそのように突き動かすのか。
 ハウエルが放った弾丸を、鏡夜はその身に受ける。無論、急所は守っているが、それでもその弾丸は引き裂くような激痛を齎した。
(「この弾丸が……名を騙る別人と言えど、同類が焦がれた焔の一欠けら」)
 彼女は自ら進んで弾丸を受けたのだ。その技の性質から、ハウエルという男を知るために。
(「痛いのは当然として、もっと別の……激情めいたものを感じる、気がするね」)
 ベルベットに包まれた激情。それは一歩間踏み外せば狂気だ。『残忍なる敵対者』への容赦のなさだ。
 焼け付くような熱を感じながらも、鏡夜は凪いだ湖面の如き眼差しをハウエル、そしてリゲルへと向ける。
(「ボクがやるべきはただ一つ。同類が悔いを残すことなく、その望みを果たす事。その為にここに居るのだから」)
 静かに息を吸い込みながら、手にした煙管の吸い口へ、そっと唇を寄せる。ふうっ、と息を吐き出せば、先から白煙が上がった。
 煙唄・幻の白煙は霧へと変化し、ハウエルの周囲を白く取り囲んでゆく。
「……霧ですか、鬱陶しい……!」
 ハウエルが忌々しげに顔を顰めた。苛立ちを隠せなくなった彼へと、鏡夜は穏やかに紡ぐ。
「何もかも覆い隠す霧の中でなら、誰も邪魔できないだろう? 最期の時間くらい二人だけのものにしてあげたいからさ」
 同類が望んだ星を手に入れられるように、最大限のことはできた。あとは結末を待つだけだと、鏡夜は想う。
(「最期の決闘まで他人が手を出すのは野暮だろう……名付け親であり、焦がれ続けた焔との邂逅だ。終わりを告げる音が響いたのなら、幻を終わらせよう」)
 彼女は同類が良き結末へと向かえることを願い、はなむけの言葉を贈った。
「同類。追い続けていた唯一をその手に掴んでおいで」
 虚蝉と共に幻影を搔き乱しながら、雪路もリゲルを鼓舞する。
「さ、決着を付けておいでよリゲル。君達の流儀見せてやれ」
 リゲル、そして本物のハウエルの流儀をクソ野郎に見せ付ける時だ。
 炎の海賊旗を全力で翻しながら、リコリスもリゲルへと激励の言葉を紡ぐ。
「さあ、キャプテン。引導を! キャプテンなら必ず届けられるとも!」
 善き終わりを、必ず。イリヤもまっすぐに、想いを伝える。
「どうか成し遂げてきてほしい。ただ、貴方らしく」
 皆の想いを一身に受けて、リゲルはデッドエンドを握り締める。
 ――デッドエンド。それはかつての彼に終わりを与えたもの。愛する師が持つ得物の片割れ。
 だが、今からこのピストルが齎す結果は、行き止まりなどではない。そう、信じたい。
「今こそ掴んでやるとも!」
 その魂を、輝く星を! 
 彼が唄うは簒奪者の教導。奪えるものは奪う、海賊としての本能であり『師』の……ハウエル・デイヴィスの教え。
 その歌は歌劇場で聴くようなお上品なモノではない。だが、海賊たちの耳にその歌は、美しく刺激的なものとして届くはずだ。
 死の弾丸を愚かな侵入者へと刻むべく、リゲルは銃口をハウエルへと向ける。
「早撃ちは、貴方と同じく得意でね! 射抜いてみせろよ、俺を。……アルテミスならやってみせたが、お前は、そうではないからなあ!」
「ハウエルがいなきゃマトモに唄うこともできなかったヒヨっ子が! 偉そうにほざきますね!!」
「お前だってハウエルに寄生して依存してるじゃないか! 人のことを言える立場か!!」
 持ち得るすべての術を使い、激烈な銃弾を弾き、受け流す。掠める弾は気にも留めない。
 全身全霊の戦いに卑怯も何もあったものか。二つの星がぶつかり、激しく燃え上がる。
 何が何でも、この弾丸で、貫き通す。
 燃える赤。ベテルギウス、モウカの星。その心臓を!
 二人は寸分の狂いなく、お互いの心臓へと狙いを定め――。
「ハウエル!」
「リゲル……!」
 二人は同時に叫ぶ。デッドエンドが、火を噴いた。
「「――命乞いをしろ!」」
 二つの銃声が、天を斬り裂いた。混沌が入った鍋をひっくり返したような騒ぎが、しんと静まり返る。
 二人の世界を包んでいた霧は、いつの間にか晴れていた。夥しい血溜まりの中に、ハウエルが仰向けで倒れている。
 動けぬハウエルの傍に歩みより、リゲルはその無惨な姿に表情を歪ませた。だがそれも一瞬。すぐに顔を引き締め、口元に笑みを作る。
「――さあて。祝福しよう! お前はこの通り、俺以上に最悪な死を遂げる。分たれたお前が、俺に宣った呪詛だ。……だが、ひとつ聞こう」
 一息置いて、空気を吸い込む。ハウエルはそんなリゲルを虚ろな瞳で見上げていた。
 リゲルはゆっくりと、一言ずつ強調するように、ハウエルへと語りかける。
「これは、相応しい最期か? お前が。いや。貴方が、そう思わないのなら。償い贖う必要なんてない」
「……お前たちが力を示した時点で気付いていましたよ。逃げられもしなければ、敵うはずもないと……過剰戦力が過ぎるんですよ……」
 むしろよく持った方だ、とハウエルは苦笑して、そっと瞳を閉じた。相応しい最期かどうか。その答えは口にしなかった。
「このとおり、俺の体はもう動かない。俺を『殺す』がいい……殺した先で、『ハウエル』に直接聞いてみろ。もっとも、アイツも俺と一緒に死ぬかもしれませんがねぇ……ふふっ……」
「無理ならどのみち両方殺す気でいた。覚悟の上だ」
 リゲルは銃口を、ハウエルの心臓へと突き付ける。その一撃は確実に、ハウエルの命を奪うだろう。
 胸に当てられる硬い気配に、ハウエルは血の泡を吹きながら、無理やりに笑ってみせた。
「ゲホッ……これで、オサラバできる……眩し過ぎる光は、苦手なんです……」
 一つの銃声が、深海の底へと響き渡る。クロノヴェーダのハウエルが、ついに力尽きたのだ。
 ようやく終わった、とリゲルは心の内で呟く。季節はまだ一巡りしていないというのに、此処に至るまでが長い年月であったように感じた。
 リゲルはハウエルの死に顔を見る。心なしか、安らかな死に顔であった。
 悔いを残さぬよう、最後のお別れを――。
 血溜まりの中で眠るハウエル……の瞳が、ぱちりと開いた。
「え」
「おや、終わりましたか」
 むくりとハウエルが起き上がる。その瞳は深海の色ではなく、元のハウエルの色をしていた。本物のハウエルが、戻ってきたのだ。
「は……? い、生きてる……のか? その状態で!?」
 血で汚れていてわかりにくいが、よく見ると肉体が回復している。……とにかく、細かいことは考えない方がいい。
 クロノヴェーダをメチャクチャな戦力でぶん殴って存在を消し飛ばした。そしたら本物が体を取り戻した。OK?
「俺もびっくりです。まあ、そういうものなんでしょう。というか、何ですかその反応は。もっと喜びなさい」
「え、あ、……ああ、そ、そうだよな」
 嬉しい。すごく嬉しいのだが。いつものようにサラッと表現ができない。何しろ、てっきり死んだと思っていたのが、朝起きるノリで起き上がったので。
 リゲルの様子をハウエルはじーっと見つめていたが、ふっと柔らかな笑みをこぼした。
「とにかく。不法占拠していたクソ野郎が消えて清々しました。……それで、リゲル。他にも話があるのでしょう? 例えば、お前とその仲間たちが何処から来たのか、とか。俺に教えてくれませんか?」
「……!」
 地獄での再会を約束するまでもなかった。そう、彼は、ハウエルは海賊だ。まだ見ぬ世界が其処に広がっているならば……新宿島に、強い興味を示すに決まっていた。もっとも、ハウエルが最終的にどうするかは、リゲルの選択次第ではあるが。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【水面走行】がLV2になった!
【プラチナチケット】LV1が発生!
【一刀両断】LV3が発生!
【完全視界】LV1が発生!
【神速反応】がLV3になった!
【エアライド】LV1が発生!
【壁歩き】LV1が発生!
【傀儡】LV1が発生!
【モブオーラ】がLV2になった!
【動物の友】LV1が発生!
【コウモリ変身】LV1が発生!
【熱波の支配者】がLV2になった!
【使い魔使役】LV2が発生!
【パラドクス通信】がLV2になった!
【アイスクラフト】LV1が発生!
【士気高揚】LV1が発生!
【クリーニング】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV9になった!
【フィニッシュ】がLV3(最大)になった!
【命中アップ】がLV5(最大)になった!
【ガードアップ】がLV3になった!
【ロストエナジー】がLV3になった!
【反撃アップ】がLV3になった!
【ダブル】LV2が発生!
【先行率アップ】がLV6になった!
【グロリアス】がLV3になった!

最終結果:成功

完成日2024年09月14日
宿敵 『ハウエル・デイヴィス』を撃破!