リプレイ
ゼキ・レヴニ
クソッ、なんて楽しs…悪趣味なレースなんだ!やるっきゃねえな!
乗りこなしはジョッキーが詳しかろうが
案外観客の方も全体を俯瞰で見れてるかも知らん
賭けを嗜んでそうな住民に話を聞いてみるぜ
あんたら景気の良さそうな顔して、競鮪?に詳しそうじゃねえか
おれも賭け事と聞くとじっとしてられねえ性分でよ
一発当ててやろうかと思って遥々来たんだが…
この素人に、心得を教えちゃくれねえか
まずはコースについて
全体の形や地形、勝負をかけられる直線の位置を聞いておきたいねえ
あとは脱落が多いポイントと、妨害の詳細についてだな
挑戦者を先行させんのはいつもの展開かい?
おれは派手に追い込むようなのが好きなんだが、どんなマグロがそのタイプかね
あんたなら獲り方も知ってたり?
為になったぜ、ありがとな
…おれか?おれは挑戦者の方に賭けるよ
何でって、熱い逆転劇が好きだからさ
あんたも勝負師なら詰まらねえ安牌よか、一発逆転狙ってみちゃどうだい
なあに、損はさせねえさ
(まァ賭け事は大体いつも負けてんだけどな!)
あ、マグロの名前はユッケで。
カルメン・リコリスラディアタ
アドリブOK!
味方と一般の人への呼称は老若男女問わず:(名前)ちゃん
死のナイルマグロレース?!
何それー?ナイルマグロに乗ってはちゃめちゃなレースするのか?
ヘンテコでくっそ悪趣味だけどめっちゃ面白そー!
でもレースで負けた選手を殺してるジェア・レムは
三枚おろしして焼いて香草で味付けてムニエルにして
可愛い使い魔カワウソ達のディナーにしてやるぜ!
現地の漁師に『冥土ノ料理宴術』で作った美味い魚料理を食わせ胃袋を掴み
対価としてでかくて生きのイイでけぇナイルマグロが釣れる場所と捕り方のコツと特性を教えてもらい
専用の釣竿を借りて食い付きのイイ餌を分けてもらって付けてマグロ釣りだー!
…よし、かかったな!
借りた【怪力無双】【水中適応】【水上走行】を使ってでも
早速ナイルマグロを何匹か釣り上げるぜ!
食べ応え…こほん、デスレース向きのなるべく体格がでかくて屈強で何事にも動じないタフガイでナイルマグロがイイ!
どのマグロにしようかなーコイツに決めた!
さーてあんたの名前は…テッカマキな!
ルーシド・アスィーム
アドリブ・連携歓迎
罪なき人を守る事に否やはありませんが、一言だけ
なぜマグロがナイルにいると信じたんです??
ナイル川に巨魚が群れるスペースはないですからね!本来小型魚しかいなかったでしょ思い出して!?ほら見てよ、水面にみっちりっすよマグロ!!
うわ目が合うんですけど。どういう密度なの……わたゆき、水面に近付かないでね食べられそうだから……!(興味津々な🐧を抱っこで遠ざけながら)
コレは人類史ハトメヒト神ガチギレ案件。名を騙られて巨大魚乗せられたら激おこですよ……
ツッコミ足りませんがそろそろ根回しへ
他の方々がマグロコースや捕まえ方の情報を集めてくれるそうなので、僕は一般人にマグロの習性や特質を確認しましょうか
野生と飼育個体が協力するなら、何か特別な騎手の指示の出し方があるかマグロの習性を利用していると思うんですよね
レースの話で盛り上がっている輪に【友達催眠】を使って入り込み、情報収集致します
賭け。そうっすね、レースには賭け事が付き物っすよね……何だろう、この尋常じゃない違うそうじゃない感……!
クィト・メリトモナカアイス
これが……死のナイルマグロレース……!
名前はアレだけど、やってることは悪なのでジェア・レムはしばき倒す。
それはそれとしてナイルマグロレースにも負けぬ。がんばるぞー。
釣り。それは魚と人との戦争。(たぶん)
そして戦争ということは、前準備が勝敗を分ける。(きっと)
この戦い、美味しい餌を準備できたものが勝つ。(そんな気がする)
というわけで。
釣り竿を手に、【水面走行】でナイル川の中ほどまで歩き、船で釣りをしてる人に話を聞こう。
汝もナイルマグロハンターと見た。
んむ、我も死のナイルマグロレースに参加する。
というわけで餌を求む。代わりに我のモナカアイスをあげる。
逃切タイプのナイルマグロがしゅつげんしやすくなる餌とかあると嬉しい。
物々交換で餌を手に入れたらそのまま釣りを始める。
ナイル川に当然泳いでいるナイルマグロを一本釣りしよう。ナイル川にマグロがいるのは当たり前。
んむむ、この引き……!来るかナイルマグロ……!
んむ、汝の名前はモナマグロ号。
一里塚・燐寧
うひゃあ、あたしが愛した古代エジプトがメチャクチャに……
ナイルマグロにはもう慣れたと思ってたけど、ちょっと自信がなくなってきたよぉ
んまぁ、これが最後ってんなら、お姉さんも一肌脱ぐしかないねぇ
まずは現地の人達に、理想に近いナイルマグロの獲り方を聞いてみよっか
今ねぇ、レースの為に兎に角おっきくて、パワーがあるマグロを探してるんだよぉ
多少暴れん坊だってかまわないの、そこは乗り手のあたしが何とかするからさ
ね、そーゆーデカブツがよく集まる穴場とか、あとは好かれやすい餌や釣り方って知らない?
情報と道具を集めたら釣り場にれっつごー
前に友達に釣りを教えてもらったから、それなりに対応できるつもりだよぉ
ただ本命のマグロは強者だろーから、油断せずに
【怪力無双】があれば借りて全力で引っ張り上げるよぉ
もし逃げられても、その時は【水中適応】で川に飛び込んで第二ラウンド開始っ!
羽交い絞めにしてでも連れて帰っちゃうんだから
こっからは地獄の殺人レース
……使うマグロくんも、そう簡単にリタイアしないタフボーイじゃないとねぇ
●古代エジプト人は津軽弁風味でお届けします
「いいぞー! そごだ! 差せ!」
「後ろがら来てらぞ! 逃げ切れぇぇぇ!」
砂漠に熱のこもった声が上がっている。
声を浴びているのは、大きなマグロに乗った半魚人――ナイルの巨大魚使い達だ。
マグロが、古代エジプトの砂漠の上を泳いでいる。
「うひゃあ」
パラドクストレインを降りた先でぶち当たったそんな光景に、一里塚・燐寧(粉骨砕身リビングデッド・g04979)の口から様々な種類の驚きが混ざった声が零れた。
他のディアボロス達にも少なからず衝撃を与えたのだろう。
「ほんとにナイルマグロに乗ってはちゃめちゃなレースしてる!? 何これー!?」
カルメン・リコリスラディアタ(彼岸花の女・g08648)も、驚きの声を上げる。
「これが……死のナイルマグロレース……!」
ナイルマグロがレースしている光景に、クィト・メリトモナカアイス(モナカアイスに愛されし守護者・g00885)も息を呑んでいた。ナイル川の中でと言うなら、まだわかる。だがコースは砂漠の上、乾いた空気の中を半魚人乗せたナイルマグロが泳いでいるのだ。
しかも今行われているのはおそらく、まだ死のマグロレースではない。
出場しているのが半魚人達だけなマグロレースなのだから、これ以上があると言う事になってしまうのだ。
「クソッ、なんて楽しs……悪趣味なレースなんだ! やるっきゃねえな!」
正直な口から本音が零れそうになったゼキ・レヴニ(Debaser・g04279)は、キリッと表情を引き締めて拳を握る。
「うん、色々ヘンテコでくっそ悪趣味だけど、めっちゃ面白そー!」
悪趣味、に同意するカルメン。
「ヘンテコなのは、レースだけじゃないですよ……」
と呻くように呟くルーシド・アスィーム(轍つ祈星・g01854)は、遠い目になっていた。
「あれ……」
とルーシドが力なく指差したのは、すぐ横を流れるナイル川。
ザパァンッ! ザパァンッ!
やけに大きな水音が響いているナイル川である。
野生のナイルマグロが元気に泳いでいるナイル川である。
「どうしてこんなことに……」
「あたしが愛した古代エジプトがメチャクチャに……」
ルーシドと燐寧が項垂れる。
2人とも、別にナイルマグロを見るのがこれが初めてと言うわけではない。むしろ何度も遭遇している。
「もう慣れたと思ってたけど、ちょっと自信がなくなってきたよぉ」
それでも過去を超えて来たトンチキっぷりに、遠い目になった燐寧の口から溜息が零れた。
見上げた空はギラギラした陽光がうるさい位に暑い、エジプトの空なのに。
「取り敢えず、ナイルマグロレースって名前はアレだけど、やってることは悪なのでジェア・レムはしばき倒す」
「だな。ジェア・レムは三枚おろしして焼いて香草で味付けてムニエルにして、可愛い使い魔カワウソ達のディナーにしてやるぜ!」
ふんす、とジェア・レムに対する決意を露わにするクィトに、カルメンも同意を示す。
ただのトンチキで終わってない辺りが、クロノヴェーダである。
「んまぁ、これが最後ってんなら、お姉さんも一肌脱ぐしかないねぇ」
ナイルマグロレースなんて、これがきっと最後で最後。案内人もそう言っていた。
それを信じて、燐寧は気を取り直す。
なお、巨大魚使い自体は、基準時間軸ではイスカンダルに移住していたりする。ナイルマグロそのものは、この先もまだディアボロス達の前に現れることはあるかもしれないので、そこはご了承頂きたい。
●なぜならナイル川下流域、エジプト北部
さて、マグロレースに出るためには、何を置いてもマグロが必要である。
その為には、マグロの情報が欲しい。ただのマグロではない。ナイルマグロの情報が。
「俺は観客の方に訊いてみらぁ。こういうのは案外観客の側も全体を俯瞰で見れてるかもしれんからな」
「僕も行きましょう」
ゼキとルーシドは、ナイル川横に作られた観戦スペースに向かう。後のピラミッドの部品になりそうな切り出した岩を並べただけだが、いわばスタンドだ。
「新魚戦はあど何回だ」
「あど5回だの」
「今年のナイル川は、ナイルマグロ豊漁だのぉ」
聞こえて来た声に、ルーシドの中で何かが溢れた。
「なぜマグロがナイルにいると信じたんです??」
例えナイルマグロの存在を受け入れていようが、罪なき人を守る事に否やはない。
その筈だったが、ルーシドはどうしてもその一言は、問わずにいられなかった。
「何しゃべっちゅんだ?」
「信ずるもなんも、ナイルマグロはおらの爺っちゃの生まぃる前がら、ずぅっと、ずぅっといるだよ」
しかし歴史改竄を受けれている人々にすれば、ルーシドの方が、お前は何を言っているんだ、となる。
「ナイル川に巨魚が群れるスペースはないですからね! 本来、小型魚しかいなかったでしょ思い出して!?」
逆に怪訝な目を向けられても、ルーシドはめげずに本来のナイルの姿を力強く語った。
ナイル川は大きな川だ。
大河と呼んでも良いだろう。
特にこの時代のナイル川は、最終人類史のナイル川より幅もある。
それでも――。
「ほら見てよ、水面にみっちりっすよマグロ!!」
ルーシドが指さしたナイル川の中では、ナイルマグロがほとんど隙間なく並んでいた。先ほどの様にトビウオも斯くやと元気に泳いでいるマグロもいるが、場所によってはこのようにナイルマグロが溜まっているのだ。ナイルマグロ、多すぎるんじゃなかろうか。
「うわ目が合うんですけど。どういう密度なの……」
「どっかの池の鯉よりすげえな……」
流石にこのおかしな密度は、ルーシドのみならずゼキも軽く引いていた。
「……」
「わたゆき、水面に近付かないでね食べられそうだから……!」
ナイルマグロに興味がありそうなダンジョンペンギンの『わたゆき』を、ルーシドは抱きかかえる。
3m越えてそうな大型個体も少なくない。落ちたらわたゆき、食べられかねない。
「ああ、あそこのナイルマグロはトラップ用だ」
「巨大魚使い様達が、あそごさ並んでレース中さ水さ噴くように餌付げすたんだよ」
そんな2人に、エジプト人の口からナイルマグロが溜まってる理由が語られた。
「餌付けされないで! 野生はどこに!!」
ルーシドのツッコミが止まらない。
「コレは人類史ハトメヒト神ガチギレ案件では。名を騙られて巨大魚乗せられたら激おこですよ……」
残念ながら、そんなハトメヒトはこの時空には存在しない。
こうなった原因であろうハトメヒトは、本来の獣神王朝エジプトで、とうに倒されてるし。
「へぇ、トラップかい。そこんとこ、詳しく聞かせちゃくれねえか」
ツッコミ疲れてそうなルーシドに変わって、ゼキが声をかける。
「なんで俺達に」
「あんたら景気の良さそうな顔してっからな。競鮪? に詳しそうじゃねえかとよ」
少し訝しんだ青年に、ゼキは笑って続ける。
「おれも賭け事と聞くとじっとしてられねえ性分でよ。一発当ててやろうかと思って遥々来たんだが……この素人に、心得を教えちゃくれねえか。こいつは奢りだ」
そう言って差し出したのは、途中で売ってるのを見つけた杯。
中身が古代のビールの様なものだと気づいたゼキは、それを手土産にしていた。口を軽くする術を良く知っている。
(「そうでした。根回ししませんとね」)
「ま、良いぜ」
「ちぃと詳しくなったくらいで稼げるほど、マグロレースは甘ぐねえ」
「しかも今日は、ナイルチャンピオンシップがあるからな」
「なもかも答えやるよ」
奢りで気を良くした所に、ルーシドも【友達催眠】で後押しすれば、男たちは何でも聞けと返して来た。
「じゃあ、まずコース教えてくれよ」
「あれが見えるな?」
「あの棒で囲まぃだのがコースだ」
ゼキに向かって示されたのは、ナイル川沿いの砂漠に等間隔に立っている棒だ。その間に縄の様なものを張っている。それが2列あり、間がコースなのだろう。幅は数十m程だ。
「……いやあれって……えぇ……」
ルーシドは気づいたようだが、ナイルマグロレースのコースを示すために砂漠に突き立てられているのは時計代わりの道具だし、コースロープ代わりになっているのは、測量用の縄である。
間違っても、こんなトンチキレースに使われた筈の道具ではない。
「スタートが川沿いの真ん中。そごがら上流さ向かって走り出して、左回りで曲がってまた直線になる」
「向こうの直線は砂漠の真ん中だ。下って登る、砂漠の谷間がある」
「そすて直線終わったっきゃまだ曲がって、川沿いに戻ってスタート地点がゴールだ」
そんなルーシドの葛藤を他所に、説明は進んでいく。
全長3キロほどの楕円形のコースを一周すると言う、形としてはシンプルなコースだ。
「それだけじゃ、ねぇんだろ? さっきトラップって言ったよな」
「ああ。最後の直線に入るカーブからがミソだ」
ゼキの言葉に、青年のひとりが頷く。
「ナイル川には魔物が住んでるだ。巨大魚使い様たちに餌付けされた、野生のナイルマグロがな」
「あいつら、たまに水を吐くだよ」
「この前も、先行してた挑戦者がそれでやられただ」
それを聞いたゼキが返す。
「挑戦者を先行させんのはいつもの展開かい?」
いつもの事なら、先行しているものを狙わせるように仕向けているのかもしれない。
「そうとも限らねえだ」
「後ろから狙う挑戦者もいただよ」
「どんなナイルマグロに乗るかは、挑戦者が選べるしなぁ」
どうやら、逃げ切りを狙ったからマグロの水を浴びせられる、と言うわけでもないらしい。
「ナイルマグロに、何か水を吐く習性とかあるんでしょうか?」
ルーシドが再び問いかける。
「野生と飼育個体が協力するなら、何か特別な騎手の指示の出し方がある筈です。それか、マグロの習性を利用しているか……」
「ああ、それならナイルマグロの狩りだべ」
「狩り」
おかしな言葉が返って来た。
「ナイルマグロがナイルトビウオを獲る時さ、水飛ばして落とすんだ」
「それを利用したとか、巨大魚使い様が言ってたべ」
「……」
(「ツッコんでたら埒が明かないですね……」)
またなんか変な魚が増えてる気がしたが、ルーシドはもうこれ以上のツッコミを諦めた。キリがない。
「なら逆はどうだい。こっちがマグロどうやって獲るか、知ってるかい? あとおれは派手に追い込むようなのが好きなんだが、どんなマグロがそのタイプかも、知りてえな」
「追い込みタイプだば、群れの前の方にいて、全体的さシュッどしたマグロはやめどげ。それは逃げだ」
ゼキが苦笑しつつ話題を変え、追込タイプのナイルマグロの情報を聞き出す。
「群れの後ろにいて、尾鰭がなるべぐでっけぇマグロ狙うんだよ」
「獲り方は、素手がい。摑み取りだ」
「そうだなぁ。釣りじゃマグロ傷つげぢまうんでよ」
「そうか。為になったぜ。ありがとな」
次々と出て来たナイルマグロの情報に礼を言って、ゼキは席を立った。
「おめえさんは、どっちに賭ける? やっぱ巨大魚使い様が? ジェア・レム様が?」
「……おれか? おれは勿論、挑戦者の方に賭けるよ」
去り際にかかった問いに、ゼキは口の端に笑みを浮かべて返す。
それを聞いた古代エジプト人達は、それはもう大層驚いた様子だった。
「悪い事は言わん、やめとげ」
「挑戦者が勝でた試しがねえ!」
「損するだけだべ」
こうして止めて来る彼らは、ゼキも出場する側だとは思ってないのだろう。
「おれは、熱い逆転劇が好きなんだ。あんたも勝負師なら詰まらねえ安牌よか、一発逆転狙ってみちゃどうだい? なあに、損はさせねえさ」
(「――まァ賭け事は大体いつも負けてんだけどな!」)
ゼキは不敵な笑みで、自分のギャンブル遍歴を隠して告げる。
「そこまで言うなら、賭けてみるか!」
「奢りの酒代くれえは稼がせでくれよな!」
去り行くゼキの背中に、古代エジプト人達が
「賭け。そうっすね、レースには賭け事が付き物っすよね……何だろう、この尋常じゃない違うそうじゃない感……!」
マグロレースがまるで健全なギャンブルの様になっている様子に、ルーシドはやっぱり突っ込まずにはいられなかった。
なお、ゼキは捕まえたマグロにユッケと名付けたそうである。
●トンチキでも古代エジプト
「ひとつ、どうだ?」
「お?」
カルメンが差し出した皿。そこから立ち昇る香に、ナイル川の畔に並べた小舟の周りにいた漁師と思しき人々が目を丸くした。
「へぇ……」
「こいつぁ……」
「美味いな」
反応は上々だった。
食材は、そこらで買った白身の魚だ。カルメンには種類が良くわからなかったが、現地の人々には珍しくもないものだろう。
けれど最終人類史から持ち込んだ調味料と調理器具で『冥土ノ料理宴術』も駆使すれば、それは食べ慣れた食材の食べた事ない美味な料理となる。
「その代わり、ナイルマグロが釣れる場所を教えてくれないか。とにかくでかくて、活きの良いのが釣れる場所が良い」
料理の対価として情報を求めたカルメンに、しかし漁師たちは驚いたように固まって顔を見合わせた。
(「何かしら、この反応」)
「今ねぇ、レースの為に兎に角おっきくて、パワーがあるマグロを探してるんだよぉ」
その様子を不思議に思いながらも、燐寧も話を合わせる。
「お前達、ナイルマグロレースさ出るつもりなのが」
「そうだ。俺達、レースに勝ちたいんだ。だからナイルマグロの特性も知ってたら教えてくれ」
「多少暴れん坊だってかまわないの、そこは乗り手のあたしが何とかするからさ。ね、そーゆーデカブツがよく集まる穴場とか、あとは好かれやすい餌や、釣り方って知らない?」
カルメンがナイルマグロの特性を、燐寧は釣り方を、教えて欲しいと頼み込む。
「ナイルマグロが好きなのは、ナイルイワシとナイルトビウオだべさ」
「大きくてパワーがある……となるど、後方の追込が差すタイプがいんでねが?」
「背鰭が尾鰭がでっかぇの探すといい」
「群れの先頭にいる逃げタイプは、全体的さシュッとしていてパワーはあんまりねマグロ多ぇぞ」
「んだんだ」
ナイルマグロの特性については、漁師たちも隠す事無く教えてくれた。
ただ――。
「でも釣りってのはなぁ」
何故か釣りの方は、漁師達が顔を見合わせて相談をはじめてしまった。
「やっぱ……」
「ああ……」
「「「釣るのは無理だべ」」」
「……えー!?」
「あ、あらぁ……?」
意を決したように声を揃えて返して来た漁師たちに、カルメンと燐寧の方が驚かされた。
「ナイルマグロを釣るのは、お勧めしねな」
「釣り針で腸を傷つけかねないしなぁ」
「何より、あんなでげえ魚、釣れる竿がねえよ」
漁師たちは口々に、釣りは無理だと告げて来る。
この時代のエジプトで、釣りが行われていなかったとかそう言う話ではない。釣りの概念はあった筈だと、最終人類史の史料にもある。ただし、相手がマグロとなると話は変わって来る。
マグロを釣れるような竿を作れる素材も無いと言うのもあるが、この時空ではナイルマグロは食用よりもレース用。だから釣りの対象とは見られていないのだろう。
「そっかぁ……前に友達に釣りを教えてもらったから、それなりに対応できるつもりだったんだけどねぇ」
釣りに多少なりとも自信があった燐寧だが、事はそういう問題ではなかった。
「え。じゃあ、ナイルマグロを獲る時は、どうやって捕まえてるんだ?」
釣り竿がないならどうなるのかと、カルメンが問い詰める。
「俺達は、網にかけで引っ張り上げるだげだな」
「巨大魚使い様だぢは、素手で捕まえでらなぁ」
「んだんだ」
「ナイルマグロも傷づげねえはんでな。出来るだら摑み取りが一番だ」
答えはまさかのパワープレイ。
だが、後に巨大ピラミッドを作る古代エジプト人である。
マグロくらい、数人の力を合わせれば引き上げられる素質はあったのだろう。多分。
「今までの挑戦者も、皆ナイル川でマグロつかみ取って来だんだ」
「おめさんたぢもやれば出来る。きっと出来る!」
一部、妙に暑苦しいのもいたが、このままだとカルメンも燐寧も、ナイルマグロ掴み取りチャレンジすることになる。
「大丈夫」
けれどそこで、成り行きを見守っていたクィトが声を上げた。
何か、長細い包みを持っている。
「釣り。それは魚と人との戦争」
(魚を)食うか(餌を)食われるか。
「そして戦争ということは、前準備が勝敗を分ける」
たぶん、きっと、そんな気がする、と根拠があるのかないのか怪しい事を言いながら、クィトは包みを開いた。
「だから我、準備してきた。釣り竿。予備もあるのでどうぞ」
クィトが持参したのは、新宿島で用意した釣り竿だ。カーボンやグラスソリッドと言った、最終人類史時代でマグロの様な大型魚に使われた素材のものである。
竿の問題は解決したが、釣りは竿だけあればいいと言うものではない。
エサだ。釣り針だけ水の中に入れても、それで釣れる魚はほとんどない。
「この戦い、美味しい餌を準備できたものが勝つ」
そんなエサを求めて、クィトは釣り竿を手に【水面走行】でナイル川の上をテクテクと歩いていった。
「話がある」
「ん? どうし――っ!?」
そして川の中程に浮かんでいた舟の上にいる、壮年の男に声をかけた。
「汝もナイルマグロハンターと見た」
「お前さん……ナイルマグロが欲しいのかい?」
男は水面に立つクィトに驚いたようだが、クィトの言葉には反応してくれた。
「んむ、我も死のナイルマグロレースに参加する」
「巨大魚使い様以外が出た瞬間、マグロレースは死のレースになる。それでも出るのかい?」
「んむ。参加は我だけではないから」
マグロレースの裏の目的を知っている男の言葉に、クィトは他の参加者もいるからと真っすぐ告げる。
「というわけで餌を求む。タダとは言わぬ。代わりに我のモナカアイスをあげる」
情報料代わりにと差し出したのは、クィトが最終人類史で出会った氷菓。自ら、モナカアイスに愛されし守護者と名乗るに至った、まさにクィトの人生を変えたと言っても過言ではないだろう一品。
最近では様々な味を持ち歩いているクィトだが、今回差し出したのはシンプルなバニラ味だ。
「何だこりゃ。パンでもなさそうだし……」
「溶ける前に食すべし」
不思議そうに見ていたモナカアイスを、クィトに言われ齧ってみる漁師。
「な、なんだこれは……!」
その瞬間、水面に立つクィトを見ても崩れなかった表情が驚愕でいっぱいになった。
「パンとはまるで違う、サクッとした歯応え。その後に来る、中に入っているこれはなんだ……この、冷たくて甘いものはなんだ? 知らない、知らないぞ、こんなもの……!」
冷たく甘いアイス。未知の食感と味に、漁師が目を丸くする。
「こんなもんを出されたら、何か返さないわけにはいかないな」
その効果は、大きかった。何でも訊いてくれと漁師が告げる。
「逃切タイプのナイルマグロがしゅつげんしやすくなる餌とかあると嬉しい」
「逃切か……なら、こいつが一番だ」
渡されたのは、アジュと呼ばれる小魚だ。
「こいつを群れの前の方にいる、全体的にシュッとしたナイルマグロを狙って投げてやれ。水面からだと背鰭が短いから、見逃さないように気を付けるんだ」
「感謝。それでは、我はマグロ釣ってみる」
男に礼を述べて、クィトは再びナイル川の上を歩いていった。
仕掛けに貰った魚をつけ、マグロの群れの先頭付近を狙って放り込む。
「さあ来い、ナイルマグ――ッ」
言い終わる前に、テグスがピンッと張って竿がググッと大きくしなった。ぐぉんっとクィトの上体が引っ張られそうな強い引き。
「んむむ、この引き……! 来るかナイルマグロ……!」
クィトは大きくしなる竿を、両手で支える。
まだ【怪力無双】を使うには早い。ここで使っても、糸が切れるか竿が折れるかしかねない。
「んむ。我慢比べといこう」
釣りは焦ったら負けだ。
「あー、成程。釣りだとああなるのか」
「【怪力無双】で一気に、とはいかないんだねぇ」
クィトのナイルマグロ釣りの様子を、カルメンと燐寧が川岸から眺めていた。
あれは時間がかかりそうだとも悟る。
漁師たちが、釣りは無理だと言うわけだ。
「そう言う事なら、摑み取りがんばっちゃおーかな」
呟きながら、燐寧がナイル川の中に入って行く。
元より、燐寧はそうなるかもしれないくらいには考えていた。釣りが確実ではない事は承知だ。
半魚人が乗れるくらいに、ナイルマグロは大きな魚だ。釣りの相手としては、間違いなく強者である。そうでなくとも、釣りが確実でないのは百も承知。
逃げられた時に川に飛び込むくらいの覚悟は決めてきた。
「羽交い絞めにしてでも連れて帰っちゃうんだから」
軽装になって、燐寧はナイル川に潜った。
(「 そう言えばいつかも、チェーンソーザウルスになって潜ったっけなぁ」)
少し懐かしさを感じながら、燐寧は今回は変身せず、川の中からナイルマグロを狙う。
(「こっから先は地獄の殺人レース……使うマグロくんも、そう簡単にリタイアしないタフボーイじゃないとねぇ」)
燐寧は群れの後方に回り込むと、群れの中でも一際大きな魚体と思えたマグロへと浮上していき、その尾鰭をむんずとつかみ取った。
「よし。俺もなるべく食べ応――デスレース向きの体格がでかいナイルマグロを探すか!」
カルメンも釣りを諦め、ナイル川の上を歩いてマグロの群れへを探しに向かった。
と言うかまあ、川に入ればそこら中にいるので、探すのは苦労しない
「選り取り見取りじゃんか……屈強で何事にも動じないタフガイなマグロがいいな」
カルメンは、敢えて水音を抑えずに川の上を歩いて向かった。
探しているのは近づても動じないでいて、むしろカルメンの動きを伺ってそうなくらいのマグロだ。
そう。今まさに、目が合ったような。
「コイツに決めた!」
川の中に手を突っ込んで、カルメンはマグロを引っ張り上げる。
「さーてあんたの名前は…テッカマキな!」
「名前決めるのぉ?」
掲げたナイルマグロにカルメンが早速名前を付けた所に、川の中から燐寧がナイルマグロを引っ張り上げて来る。
「んむ、汝の名前はモナマグロ号」
その頃には、クィトも狙い通りにシュッとしたナイルマグロを釣り上げていた。
3人とも、見事に3m前後の大物であった。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
効果1【水中適応】LV2が発生!
【口福の伝道者】LV1が発生!
【友達催眠】LV1が発生!
【水面走行】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【アクティベイト】LV1が発生!
【ダブル】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ大歓迎
相方のラズ(g01587)と協力を
残留効果を活用
久しぶりのローブ越しにエジプトの日差し
風が快い……
悠久のナイルの流れに挨拶をして……
マグロを獲ろう
ナイルマグロは食べ損ねたんだけど……今度は食べられるかな?
あ、うん、レースが先な
さあ、食材……いや、レース用マグロの確保だ
現地の人たちにコツの聞き込みに回ろう
大丈夫、バーナーとマヨネーズはもってきたよ
レースに嵌ってる漁師さんはいるかな?
愛好家視点で、捕まえ方のコツと……乗り方のコツを教えて
息を合わせて意思疎通!とか、スムーズな方向転換とかする方法
綱をかけたりするのかい……?(ツナだけに)
元気のいいマグロの見分け方はある? 赤身のしまったやつとか、脂ののったやつとか
……いや、バランス型か、追い上げる感じのが好みかな
ふふ、冗談だよ
いい勝負してくるから、俺に賭けるつもりでコツを教えて?
レクチャーを受けたらいざ水着でナイルへ
気持ちよくひと泳ぎしつつ、ダイナミックに怪力を使いマグロを確保しよう
ラズ、そっちの網もって!
名前?ツナマヨ号かな
ラズロル・ロンド
アドリブ連携歓迎
エトヴァ(g05705)と行動
死のナイルマグロレース!?
ナンダソレ!!トンチキ面白そうっ
情報収集大好きもあり楽しさ倍増で上機嫌に住民から話を聞くよー
心なしか表情変化の薄いエトヴァの目もキラキラ…ハッ…この目は喰う気満々だーっ
レース終わったらね
こういう話はプロに聞くのが一番
命懸けで鮪と死闘(漁)する屈強漁師に話を聞こう
きっと筋骨隆々で傷跡だらけな鉢巻縛った漢!
ホントに居たと思いつつも
鮪の特性と捕り方のコツを聞こう
僕は何事にも驚かない胆力のある鮪がいいなー
きっと壮絶な乱戦間違い無しだろうし
漁に向えば使える効果を使い
水中適応で川の中へ
エトヴァの網の片側を持ち
おう!捕まえるぞー
コツを参考に屈強で胆力のある鮪を…
ふと視線の合う鮪は物怖じしない瞳で網を突っ切る勢いの益荒男鮪
こいつ…いったい幾つの網を食い千切って来たんだ
やるなっ
だが千切られる前に怪力無双で一気に引き上げビチビチ腕の中
そこにはお互いを認め合う魂の絆が生まれるはず…きっと!
名前は…鮪…ユッケ丼だな
勝つぞユッケ丼!
●情報源は漁師でギャンブラー
「久しぶりのエジプトの日差しだ。風が快い……」
ローブ越しにも感じる砂漠の日差しと、熱く乾いた風。そしてその日差しを浴びて水面が煌くナイル川に、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)が眩しそうに細めた目を向けた。
まさに悠久の大河。まあ煌いているのは水面だけではなくて、ナイルマグロもなのだけれど。
ザッパァンンッと、景気の良い水音を立てて川の中を跳ねてるナイルマグロもいるけれど。
「さあ、マグロを獲ろう」
「いつになくやる気だね」
あまり表情に出る方ではないエトヴァだが、今回はその目がキラキラしているのにラズロル・ロンド(デザートフォックス・g01587)は気づいていた。そして、その理由にも
「いつぞやはナイルマグロ食べ損ねたんだけど……今度は食べられるかな?」
(「ハッ……この目は喰う気満々だーっ」)
そう。エトヴァの目の輝きは、ナイルマグロに対する食欲から来ているのだ。
「レース終わったらね」
「あ、うん、レースが先な」
食欲を隠そうともしないエトヴァは、ラズロルの指摘に少し残念そうに頷いた。
「さあ、食材……いや、レース用マグロの確保だ」
気を取り直して――取り直しきれてない気もするけれど、エトヴァはラズロルとナイル川の畔に向かう。
ナイルの川岸には、幾つもの小舟が並んでいた。
エジプトはナイルの賜物と後に言われるだけあって、ナイル川で漁師をしている者は多そうだ。
「こういう話はプロに聞くのが一番」
ラズロルは周囲にいる漁師の中でも、特に屈強そうな姿を探して視線を巡らせる。例えばそう、そこにいるような筋骨隆々で、まさに丸太の様なと言える腕は傷跡だらけで、額に鉢巻の様に絞った布を巻いているような。
(「ホントに居たー!?」)
期待していた漁師の姿ほとんどそのままの人がいたことに内心驚きつつ、ラズロルはエトヴァに視線で示す。
「あの人にしよう。あの筋骨隆々な体つきに傷跡……命懸けでマグロと死闘を繰り広げた事がある、経験の豊富な漁師に違いない」
「成程。確かに強そうな人だな。マグロレースに嵌ってればなお良いんだけど」
エトヴァも頷いて、2人は漁師に声をかけた。
「ナイルマグロの捕まえ方のコツと……乗り方のコツを教えて欲しい」
「ナイルマグロの特性の見分け方とかも、知ってたら教えて」
「おめさん達、見ね顔だな。ナイルマグロ捕まえで、どうするんだ?」
2人の問いに、漁師は少し訝しむような視線を返して来た。或いは新参の漁師とでも思われたのだろうか。
「それは勿論、ナイルマグロレースに出場する為さ」
「大丈夫、バーナーとマヨネーズはもってきたよ」
そんな漁師にラズロルとエトヴァが返したのは、バラバラの答えだった。
今回のエトヴァはどうもおかしい。
「エトヴァ、だからそれはレースのあとで」
「そうだけど、どうせなら最後に美味しいマグロが良いじゃないか。赤身の締まったやつとか、脂の乗ったやつとか」
ラズロルのツッコミにも、エトヴァは表情を変えずに返す。
ナイルマグロレースなんてトンチキ面白そうと訪れたラズロルの方が、何でかツッコミ役に回っている。ナイルマグロには人を狂わせる何かがあるのだろうか。
「ふふ、冗談だよ。いい勝負してくるから、俺に賭けるつもりでコツを教えて?」
そう告げて微笑んだエトヴァに、漁師もふっと小さな笑みを浮かべる。
「良いだろう。ナイルマグロを獲ったこども、ナイルマグロレースで有り金すったごどもある儂が、知っている限りの事は教えでける」
(「思った以上に凄い人だったかも」)
再び内心驚くラズロルを他所に、漁師はゆっくりと口を開いた。
「まずナイルマグロを獲る手伝いはせぬぞ。ナイルマグロは、お前達自身で捕まえなければならない。儂が捕まえでお前達に渡しても、ナイルマグロは言う事を聞がねんだ」
それはジェア・レムも、他のディアボロスに語った事だ。ナイルマグロは、そんな大人しい魚ではないと。
「ナイルマグロを捕まえられず、巨大魚使い様に借りたナイルマグロでレースに挑んだものは皆、散ったよ」
「ナイルマグロを捕まえるのは最低条件か」
「トンチキレースのくせに、難易度高いなぁ」
滔々と語る漁師に、エトヴァもラズロルも感心したように頷く。
恐れのないその様子に何を感じたのか、漁師は他にも色々話してくれた。レース特性と身体特徴、鰭の長さの関係や、特にレース用のマグロなら素手で獲るのがベストだと言う事など。他のディアボロス達も別ルートで聞けた話ではあるが。
「元気のいいマグロの見分け方はある?」
「僕は何事にも驚かない胆力のある鮪がいいなー。きっと壮絶な乱戦間違い無しだろうし」
「マグロの活ぎを見でなら、石でも投げで脅がすてみろ。反応早ぇマグロが、良いマグロだ」
「捕まえた後は? 乗り方とか知ってる? 息を合わせたら意思疎通できたりする?」
「おいおい、ナイルマグロだぞ? 鳴ぎもしね魚だぞ? 人が意思疎通できる筈がねえべ」
エトヴァが訊ねれば、漁師は真顔で返して来た。
そんな事出来るのは、半魚人な巨大魚使い様たちだけだとも。
「え、じゃあスムーズな方向転換とかする方法とかないの? 綱をかけたりするのかい? ツナだけに」
「それ多分伝わらないぞ……?」
ツナと綱(つな)をかけたエトヴァに、ラズロルがツッコむ。
ちなみにツナの語源は、ギリシャ語にあるらしい。
「カーブはなぁ。巨大魚使い様たちの乗り方見てると、自分が体重かけてるぞ。右に曲がりたい時は、右に身体ば倒しての」
意外と普通だった。
一通り情報を得た二人は、濡れてもいい服装にと水着に着替えてからナイル川に入っていた。
「相変わらず、気持ちいいですね」
「こんな魚臭がする川じゃなかった筈だけどな、ナイルって」
しばし、ナイル川を泳ぐエトヴァとラズロル。
ラズロルは、懐かしさの中に混ざるおかしな香りに顔を顰めてもいるけれど。その原因をこれから獲るのだから、どうしようもない。
「さて。マグロを捕まえるとしようか。ラズ、そっちの網を持って!」
「おう! 捕まえるぞー」
そして泳いだのは、ただ遊んだだけではない。
網の両端を手に、2人は川の左右に広がる。そこにマグロが突っ込んで来れば、網にかかる筈。
そして川底で拾った石を、群れの中に投げ入れた。
驚いたマグロたちが、蜘蛛の子を散らすように広がる。
その内の数尾は、真っすぐ2人の方に向かってきていた。
「あいつ……」
ふと、ラズロルは群れの先頭のナイルマグロと目があった気がした。
網の事に気づいていないのか、スピードを落とすどころか、むしろ上げて突っ込んできた。
「くおっ!」
「っ!」
ナイルマグロが突っ込んできた瞬間、ラズロルとエトヴァの腕に強い負荷がかかる。
それでもナイルマグロは止まらなかった。
そんな網で止められるものかと、ぐんぐんと尾鰭を振り続けている。このまま網を突っ切る勢いだ。
「……いったい幾つの網を食い千切って来たんだ」
けれど、その記録も今日で止まる事になる。
ラズロルとエトヴァの手によって。
「やるなっ! エトヴァ!」
「ええ!」
2人は息を合わせて同時に【怪力無双】を発動、網が破られる前に一気に網を引き揚げた。
ざっぱぁんっ、と川の上に打ち上げられるナイルマグロ。
「捕まえた!」
ラズロルは落ちて来る3m近い巨体を受け止め、そのまましがみつく。
「おとなしく、しろっ!」
腕の中でビチビチ跳ねるマグロを、がっしりと掴むラズロル。
そのうちに、マグロがおとなしくなって来た。
「認めてくれたか」
「……」
ラズロルは、マグロとの間に魂の絆が生まれた気がした。
「鮪……お前はユッケ丼だな。勝つぞ、ユッケ丼!」
「お目当てを捕まえたみたいだね」
マグロを抱えて気合を入れるラズロルに、エトヴァが網を手に声をかける。
「次は俺のマグロも捕まえてくれ。狙うのは群れの後ろにいるマグロだ。名前はツナマヨ号にしようかな」
一度目でコツをつかんだか、2人がエトヴァ用の2尾目も同じ調子で捕まえるのは難しくなかった。
そこで、網が力尽きて破れたけれど。
たった2尾捕まえただけで、網が駄目になる。ナイルマグロのパワー、恐るべし。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【怪力無双】LV1が発生!
【動物の友】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
【命中アップ】LV1が発生!
ジズ・ユルドゥルム
照りつける太陽、そして漂ってくるこの魚の匂い…
ウッ、エジプトで魚を讃える歌をうたう羽目になった記憶が…やめよう、あれは封印すべき記憶だ。
しかし死のマグロレースとは。
一体誰だこんな阿呆な催しを考えたのは。
ジェア・レムだな、絶対そうに違いない(断言)
せっかくだ、奴の本体の顔を拝みに行っておくか。
頼もう!!ジェア・レム!貴様と勝負しに来た!!
レースに挑めと言うなら挑もう。ただし我らは自家用鮪(じかようまぐろ)を持っていない。マグロの獲り方を案内してもらおうか。
足…いや、尾びれ?の遅い魚をつかまされるおそれはあるが…
女神の名を冠した神聖なレースに駄魚を出走させはしないだろうな?と圧をかけておこう。
捕まえるマグロは、執念深い奴がいいな。
逃げる獲物の背後につき、どこまでも追い続け、最後には確実に狩るような…
鷹のようなマグロがいい。
む、あのマグロ…まるで猛禽のごとき目で小魚を追っている。え、普通の何考えてるかわからない魚の目に見える?そうか?
よし、こいつにしよう!
君の名前は…鮪嵐(つなあらし)だ!
クーガ・ゾハル
ジリジリ、ピカピカ、イソのかおり
ナルホド、秋の大ウンドウ会ってやつだな?
ゲンジツだぞ、タオ
そうか、ああいうのを、アホ、っていうのか
おれもカセイするぞ、ジズ
――ジカ用マグロ――
ギョーム用、ケータイ用もある、のかな
ケペシュが、ドトーのツッコミしょくにんだ……
じゃあ、ケータイ用はカンヅメだな
ところでジェア、おれも、マイマグロほしい
ピチピチでイキのいい、とびっきりのやつがいい
ショーブなら、全力で――そういうものだろう?
たのむ、最期(ゴハン)まで、めんどうみるから
マグロつかみどりのコツは
しっかりサイボーグメモリーにやきつけておぼえる
レースだから、コンジョーのあるやつがいい
ふかい河でもかがやく目、ツヤツヤのウロコ
ふまれても、けられても、イジワルされても
ムチうたれてドレイとよばれても、めげないや……つ……
(はっ)つまり……同志……?
なら、同じくらいコンジョー見せてつかまえるぞ、とうっ
おまえの名前は、今からツナホテプだ
かしこくて、つよそうだろう
……見分けつかないが、たのむぞアイボー
タヅナとか、いるかな
タオタオ・ザラ
タオのよく知らん文化だ
しょうがねえなタオには学なんてねえし
知らんがきっとあったんだろう、あったんじゃないかな
…………あってたまるかこんなトンチキ文化
これが現実とかやだぁ!
よーし難しいこと考えたら負けだ!
可愛い可愛いジェアちゃんに会えればそれでヨシ!
戸惑ったり躊躇ったり調子乗ってたりするジェアちゃん見られればそれでヨシ!
なーんだ簡単なお仕事じゃな!!(目的が迷子)
えっ、なに、違う?
まずはレース用のナイルマグロを得ろと、ふぅん?
いやでもわざわざ漁をする必要があるのかね
だって相手はあのジェアちゃんだぞ
血気盛んで戦闘中の笑顔が可愛い三度の飯より戦闘が好きそうな、あの
だから、いいレースのためならばマグロを1匹と言わず100匹くらい恵んでくれるじゃろ
そりゃあもう半魚人なんてばったばったと薙ぎ倒せるようなヤツを!
なァ、ジェアちゃーん? タオ信じてるんじゃけどー!!
ん? なんだもしかして怖いのか?
戦ってお前さんよりタオの方が強かったら泣いちゃうとか?
にゃははは!思った以上に可愛いところあるんじゃなーあ!
ケペシュ・ナージャ
駄目だ、俺がしっかり(ツッコミ)しないと……
自家用マグロってなんですか。一家に一台欠かせないんですか。
職場から支給されるマグロもなんか嫌ですし、そもそもマグロを使う業務って何です。
寿司屋ですか漁師ですかマグロトレーナーですか。
携帯用は……うぅん、案外非常食として良いかもしれない。
でもたぶん加工してから携帯した方が良いですよ。
……いや、違うんですよ。
別にツッコむために来た訳じゃなくて。
レースに出たいんです。
勿論目指すは優勝ですから、トップを狙うに相応しいマグロが欲しい。
ナイルマグロの獲り方を教えて貰えませんか?ジェア・レム。
いやぁ、さすがはジェアさん。なんて物知りなんだ。
ついでに騎乗したマグロを上手く操るコツもご存知なのでは?
……好意的な笑顔を浮かべ、おだてて褒めそやしながらマグロ情報を聞き出します。
教わった方法でマグロをゲットしましょう。
程よく身が引き締まってスピードが出そうなのが良いな。
え、名前とか付けるものなんですか?
それじゃあマグロパトラにします。
なんとなく愛着が湧いてきますね。
●ツッコミ役、足りない気しかしない
「照りつける太陽」
「ジリジリ、ピカピカだ」
暑さと眩しさに、ジズ・ユルドゥルム(砂上の轍・g02140)とクーガ・ゾハル(墓守・g05079)と目を細める。
どこか懐かしさもある砂漠の空気――。
「そして漂ってくるこの魚の匂い…」
「イソのかおりだ」
――には決してなかった筈の匂いが漂う、と言うか充満している。
その正体は、明らかだ。
ナイル川の畔の砂漠の上を、半魚人を乗せたナイルマグロの群れがぐるぐるしている。ナイル川の中にも、マグロの背鰭らしいものが幾つも幾つもにょきにょき生えているではないか。
「ナルホド、秋の大ウンドウ会ってやつだな?」
「タオのよく知らん文化だ」
自分に言い聞かせるようなクーガの呟きに、タオタオ・ザラ(大喰らい・g05073)がかぶりをふる。
「しょうがねえな、タオには学なんてねえし。知らんがきっとあったんだろう、あったんじゃないかな」
そうなってしまってるものはしょうがねえと受け入れた方が早い。
それは獣神王朝エジプトでの戦いの数々で、タオタオが悟った境地――。
「…………あってたまるかこんなトンチキ文化」
悟れてなかった。
「ゲンジツだぞ、タオ」
「これが現実とかやだぁ!」
クーガに肩ポンされ、タオタオは足元の砂を蹴り上げる。
「ウッ、エジプトで魚を讃える歌をうたう羽目になった記憶が……やめよう、あれは封印すべき記憶だ」
ジズはジズで、何かを思い出してナイルマグロの群れから目を逸らしていた。
「駄目だ、俺がしっかり(ツッコミ)しないと……」
そんな知人たちの様子に、ケペシュ・ナージャ(砂蠍・g06831)はひとり決意を握りしめる。
自分の立場(貴重なツッコミ役)が、ようくわかっておられるようで。
「っくしゅっ、っくしゅっ」
「ははぁ。ジズ。誰かに噂されたな?」
「さてな?」
急にくしゃみを2回したジズが、タオタオに弄られながら苦笑を返す。
理由はどうあれ、仕切り直すのに丁度良かった。
「しかし、死のマグロレースとはな。こんな阿呆な催し、ジェア・レムくらいしか考えないだろう。絶対そうに違いない」
表情を引き締めたジズが向ける視線の先は、レースしてるナイルマグロの群れから少し離れた所に作られた砂の高台。
その上に用意された席にいる、ジェア・レムだ。
「せっかくだ、奴の本体の顔を拝みに行っておくか」
「おれもカセイするぞ、ジズ」
「タオも行くぞ。可愛い可愛いジェアちゃんに会いに」
歩き出したジズのあとに、クーガとタオタオが続く。
「良いんですか、それで」
「だってこれ、難しいこと考えたら負けなやつだぜ。 戸惑ったり躊躇ったり調子乗ってたりするジェアちゃん見られればそれでヨシ! なーんだ。簡単なお仕事じゃな!!」
「レースに負けないでくださいね」
早くも思考放棄しつつあるタオタオにツッコミながら、ケペシュも3人の後に続く。
「頼もう!!」
そんな後ろのグダグダを聞き流しながら、ジズは高台を登って声を張り上げた。
「何者だツナ!」
「まあ、待て」
気づいて声を上げる傍仕えの半魚人――巨大魚使いを制して、ジェア・レムはジズに視線を向ける。
「ジェア・レム! 貴様と勝負しに来た!!」
「来たか!」
ジズの切った啖呵に、ジェア・レムは喜色を浮かべた。
「感じてたぞ! 強そうなナイルマグロ乗りが現れた気配ってのをなぁ!」
「なんですか、ナイルママグロ乗りの気配って」
「わかってるぜ。乗りに来たんだろう? ――ナイルマグロに」
早速ケペシュがツッコむが、ジェア・レムは話を聞かない。
「レースに挑めと言うなら挑もう。ただし我らは自家用鮪を持っていない。マグロの獲り方を案内してもらおうか」
「自家用マグロってなんですか。一家に一台、いや、一尾欠かせないんですか」
今度はジズにツッコむケペシュ。敵にも味方にもツッコまないといけないなんて。
「ジカ用マグロ――ギョーム用、ケータイ用もある、のかな」
「業務用マグロ……職場から支給されるマグロもなんか嫌ですし、そもそもマグロを使う業務って何です。寿司屋ですか漁師ですかマグロトレーナーですか。いやマグロトレーナーってなんですか」
首を傾げたクーガにツッコミつつ、流れで言ったマグロトレーナーにセルフでツッコむケペシュ。忙しい。
がんばっていただきたい。君が呑まれたら、この場のツッコミは不在になるんだぞ。
「ギョーム用はないか。ケータイ用は?」
「携帯用は……うぅん、案外非常食として良いかもしれない」
「じゃあ、ケータイ用はカンヅメだな」
「そうですね。たぶん加工してから携帯した方が良いですよ」
ツナ缶だ、と頷くクーガに返すケペシュ。
「ギョームヨウ? ケータイヨウ? おい、お前ら。あいつらの言ってることわかるか?」
「わからんツナ……」
「何語だツナ……」
ふと視線を向ければ、ジェア・レムと巨大魚使いが不思議そうに顔を見合わせていた。
「さては今回、半魚人もアホだな?」
「……前からあんなもんだった気がするぞ?」
巨大魚使いもアホ化してないかと言うタオタオに、ジズは少し考えて返す。まあ、ツナツナ言ってる半魚人だし。
「まあよくわからんが、とにかくお前らナイルマグロ持ってねーんだな?」
「だから、一家に一マグロが欠かせないみたいに言わないで下さいよ――いや、違うんですよ。別にツッコむために来た訳じゃなくて」
「そうなのか? きょうのケペシュは、ドトーのツッコミしょくにんだぞ」
ついにマグロが単位になり始めたケペシュの肩に、クーガの手がポンと置かれる。
「要するにお前ら、マグロレース出るんだろ? 出るよな?」
「そうですよ。レースに出たいんです」
出ないとは言わさない――そんな有無を言わさぬ空気を纏ったジェア・レムも、今のケペシュには軌道修正のチャンスでしかない。
「勿論目指すは優勝ですから、トップを狙うに相応しいマグロが欲しいんです。ナイルマグロの獲り方を教えて貰えませんか?」
「活きの良いので頼むぞ。女神の名を冠した神聖なレースに駄魚を出走させはしないだろうな?」
本題を切り出したケペシュに続ける形で、ジズが釘を刺す。
アホでもクロノヴェーダだ。本当の事を言うとは限らない。勝つために、足――と言うより尾びれと言うべきなのか――とにかく遅いマグロをつかまされる恐れもあるかもしれない。
「おれも、マイマグロほしい。ピチピチでイキのいい、とびっきりのやつがいい。ショーブなら、全力で――そういうものだろう?」
クーガもジェア・レムに頼み込む。
「たのむ、最期(ゴハン)まで、めんどうみるから」
「……それってツナマヨですか? ヅケですか、刺身ですか」
「ぜんぶ!」
何とも言えない視線でツッコむケペシュに、クーガがナイルマグロを食卓に並べそうな勢いで返す。
2人とも、思い出していたのは少し前の海辺の一コマだろう。
「良いだろう。お前らのナイルマグロにかける心意気はよーくわかった。お前らの挑戦、このジェア・レムが受ける」
けれどジェア・レムはそんなやり取りを気にするどころか、何でか食欲を心意気と感じ取ったようで、いたく感じ入ったように深々と何度も頷いていた。
●アヴァタール級がアホになる事もあるクロノス級がアホでない筈がない
「そこのナイル川で好きなナイルマグロを獲って来い! 特徴は教えてや――」
「えっ、なに? まずはレース用のナイルマグロを得ろと、ふぅん?」
しかしそこでジェア・レムを遮って異を唱えたのが、タオタオである。
「マグロ、獲って恵んでくれんかね?」
「「「タオ(殿
)……」」」
遠慮の欠片もない、どストレートな要求に、そこまで言うかとツッコミ役+2名の視線がタオタオに向けられる。
「だって相手はあのジェアちゃんだぞ。血気盛んで戦闘中の笑顔が可愛い三度の飯より戦闘が好きそうな、あのジェアちゃんだぞ」
確かにいつぞやのアヴァタール級はそうだったけれど。
「いいレースのためならばマグロを1匹と言わず100匹くらい恵んでくれるじゃろ。そりゃあもう半魚人なんてばったばったと薙ぎ倒せるようなヤツを! なァ、ジェアちゃーん? タオ信じてるんじゃけどー!!」
前半は仲間たちに、後半はジェア・レムに。
タオタオは悪びれもせずに言い放つ。
「そんなにマグロ貰えたとしても、どうするんですか」
「使えばいいじゃねーか。ナイルマグロレースに、マグロ1尾しか使っちゃいけねーなんてルールはねえんだ」
ケペシュのツッコミに返して来たのは、タオタオよりもジェア・レムの方が早かった。
「タオタオっつったか? お前、おもしれー男だな。だから見せてやるよ。ナイルマグロツインスタイルをな!」
「んお? なんだ、何が始まるん?」
ジェア・レムが何を言い出してるのかと、タオタオが目を丸くする。
「お前らァ! マグロだ、マグロを持ってこーい!」
「ギョッギョーッ!」
ケペシュもツッコミのタイミングが掴めないでいる内に、ジェア・レムの頭上にナイルマグロが2尾、連れて来られた。
「とうっ!」
ジェア・レムは砂を蹴って跳んだ。頭上のナイルマグロよりも高くへ。
そして空中でくるっと回って、2尾のナイルマグロに降り立つ。
「どうだ! 右足の下にナイルマグロ! 左足の下にもナイルマグロ! 両足で1尾ずつナイルマグロに乗る。これがアタシにしか出来ねぇ、ツインマグロスタイルだ!」
2尾のマグロの上で仁王立ちした立ち乗りに、ジェア・レムは誇らしげに声を上げる。
その直後。
片方のナイルマグロが、バビュンッと飛び出した。
「あ」
ジェア・レムはナイルマグロに片足ずつ乗せていただけだ。別に乗せた足を、マグロの上に固定とかしていない。その状態で片方のマグロだけが進んでしまえば、どうなるか。
プールに大きなフロートを2つ浮かべ、それぞれに片足乗せていて片方だけが流れた事態を想像してもらえれば、ジェア・レムの身に起きたことが判り易いだろうか。まあ要するに、如何にクロノヴェーダでも、これはバランスを保てる筈がないと言う事だ。
「あーっ」
ジェア・レムは落ちた。頭から落ちて砂漠に突き刺さった。
「「「ジェア・レム様ー
!?」」」
「出来てないじゃないですか!」
巨大魚使い達の慌てた声と、ケペシュのツッコミの声が響く。
「そうか、ああいうのを、アホ、っていうのか」
「違うぞクーガ。あれはただのアホじゃない。とてもアホだ」
「おもしれーのはどっちだよ」
しみじみと呟いたクーガにジズがため息交じりに返し、タオタオは笑い転げそうになるのを耐えて肩を震わせていた。
「うへー、口ん中ジャリジャリだ。っつーわけで、お前らもやっても良いぜ。ツインマグロスタイル。アタシが許す!」
砂まみれになった以外は何事もなく復活してきたジェア・レムが、4人に笑って告げる。
マグロから落ちても、ピンピンしていた。
まあ、マグロの上から落ちただけだ。
そこにパラドクスは介在せず、重力と言う一般法則に従って落ちただけなのだから、ダメージがある筈もない。それはディアボロスにとっても同じ事なのだが――やる意味がない。
「流石ジェア・レムさま」
「自分が出来ない技を人間達にやらせるとは!」
巨大魚使い達は何やら感心してる様子だが、ジェア・レムはそこまで考えてないだろう。ただのノリだ、あれは。
「ま、やるならナイルマグロのタイプは合わせとけ。見た目で判る」
ジェア・レム曰く、ナイルマグロのタイプは逃げ、先行、差し、追込の4種。
「逃げは全体的にシュッとしていて、群れの中の先頭によくいる。先行も群れでも前の方にいるが、逃げとの違いは胸鰭がシュッと長え。差しは群れの真ん中辺にいて、背鰭と腹鰭が長いな。追込は群れの最後尾辺りにいて、尾鰭が大きいぞ」
ジェア・レム、巨大魚使いとつるんでるだけあってか、ナイルマグロには詳しかった。
さっきのアホっぷりが嘘のような説明である。
「ツインマグロスタイルするなら、ナイルマグロのタイプを合わせねーと、さっきのアタシみたいになるぞ。ま、合わせてても、マグロごとに性格の違いはあるから、たまにああなるんだけどな」
どうしろと。
「いやぁ、さすがはジェアさん。なんて物知りなんだ」
ケペシュがついにツッコミを放棄した――と言うわけではない。
いちいちツッコむよりも、煽てて褒めそやした方が良いと思ったのだ。
「マグロの獲り方と、ついでに騎乗したマグロを上手く操るコツもご存知なのでは? ツインマグロ以外で!」
「ん? あぁ、そういや、マグロの獲り方から知りてーんだったか」
それを聞いたジェア・レムが、思い出したようにナイル川に入って行く。
「こう、背中に飛び乗って、あとは振り落とされんな。マグロが疲れるまで待て!」
そして、手近なナイルマグロに飛び乗るとがっしりとホールドした。
「あ、タオそいつでいーや。ジェアちゃん、そのマグロおくれ」
お手本に飛びつくタオタオ。
「あ? そーいうわけにゃぁいかねーのよ」
「なんだ、もしかして怖いのか? 戦ってお前さんよりタオの方が強かったら泣いちゃうとか?」
流石にジェア・レムに断られても、タオタオもめげない。
「にゃははは! 思った以上に可愛いところあるんじゃなーあ!」
「ははっ、ほんっとーにおもしれー男だなぁ」
むしろ煽って笑ってくるタオタオに、ジェア・レムも期待された好戦的な笑みを浮かべる。
「だがなぁ。こればっかりはアタシが獲ってやるわけにはいかねーよ。ナイルマグロは、譲られた相手を背中に乗せて素直に言う事を聞くような大人しい魚じゃねーからな。ナイルマグロに乗りたきゃ、自分で捕まえるしかねーんだよ」
「さっき落ちたのはそれが原因では……?」
「とてもアホ。なるほど」
ジェア・レムの言に、ジズとクーガは思わず顔を見合わせていた。
「まあやってみますか」
ナイルマグロを捕まえようと、ケペシュがナイル川に入っていく。
自分で捕まえるしかない――そのジェア・レムの言葉に裏はなさそうだったが、素直に信じるのも難しい。さりとて真偽を確かめているような時間もない。やるしかないのだ。
「レースだから、コンジョーのあるやつがいい」
クーガも自分に合いそうなナイルマグロを求め、ナイル川へ。
「ふかい河でもかがやく目、ツヤツヤのウロコ。ふまれても、けられても、イジワルされても、ムチうたれてドレイとよばれても、めげないや……つ……」
そこまで呟いたところで、クーガが不意にハッとした顔になった。
呟いたその境遇が、身に覚えがあり過ぎたのだ。
「つまり……同志……?」
「待ってください。何でマグロにシンパシー感じてるんですか」
呆然としたクーガの呟きに、思わずケペシュのツッコミが飛ぶ。
「執念深い奴がいいな。逃げる獲物の背後につき、どこまでも追い続け、最後には確実に狩るような……鷹のようなマグロがいい」
「それマグロですか?」
「お前、周り見るの得意だろ。そう言うやつには、追込か差しがいいぞ」
更に続けてナイル川に入って来たジズにもツッコむケペシュを見て、ジェア・レムから素でアドバイスが飛んできた。
「……ふむ。程よく身が引き締まってスピードが出そうなのが良いですね」
ケペシュは少し考えて、ナイルマグロの群れの後ろに回っていく。
ジェア・レムの言葉を、素直に聞いてみることにしたようだ。
「む、あのマグロ……まるで猛禽のごとき目で小魚を追っている」
一方、ジズもこれだと思うナイルマグロに目をつけていた。
「そーか? タオにゃ他のナイルマグロと変わらん目に見えるが」
「マグロ、目をみてもわからない」
「そうか。それでもいい。あいつにしよう!」
タオタオとクーガには普通の何考えてるかわからない魚の目に見えたようだが、ジズはあのマグロが良いと、正面から見つめ合ったままジリジリと歩み寄る。
「あのマグロ……」
更にクーガも、群れの中央にいるナイルマグロに目を付けた。他のマグロに揉まれながらも、押し返して自分の居場所を確保している。
「同じくらいコンジョー見せてつかまえるぞ、とうっ!」
そんなマグロへ、クーガが他のマグロを押し除け向かう。
そして――。
「よし、君の名前は…鮪嵐(つなあらし)だ!」
ジズが。
「おまえの名前は、今からツナホテプだ。かしこくて、つよそうだろう……見分けつかないが、たのむぞアイボー」
クーガが。
「え、名前とか付けるものなんですか? それじゃあマグロパトラにします」
ケペシュが、それぞれに、3m超の大物ナイルマグロの尾をがっちりと掴んで捕まえた。
「……しゃーねえ。やるかー」
それを見て、タオタオもようやっと重い腰を上げるのだった。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【動物の友】がLV2になった!
【口福の伝道者】がLV2になった!
【怪力無双】がLV2になった!
【アイテムポケット】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV2になった!
【凌駕率アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV3になった!
【反撃アップ】LV1が発生!
テクトラム・ギベリオ
【ヒラール】
ナイルマグロのレース…ナイルチャンピオンシップ
何故か心待ちにしていたような高揚感を感じる
蓋を開ければ敵側に断然有利な出来レースだ
一泡吹かすためにも奴らの馬…いや、マグロがどんなものか偵察に行こう、ナディア
ツナツナ言ってる奴らに接触し、マグロをどこで調達するか聞いてみるか
素直に話すだろうか?すこしふっかけてみるか
あたかも最強のレースマグロを持っているように語りかけ、情報を引き出していこう
あぁ、さすがナイルを代表する巨大魚使い。そしてハトメヒトの名を冠すレースに出る猛者たちだ
抱えるマグロも一級品と見た…しかし私のマグロの方が速いツナー
なんたってナイルの、えーと、そうあの川奥から仕入れたのだ。このレース頂いたも同然
ほう?余程自信があるようだ。そのマグロどこから入手した?
私のは…あれだ、一本釣りだ。もちろん捕獲にも気を使うのだろう?
はぁ…こんなマグロ話をしたのは初めてだ。
ともかく引き出した情報を元にマグロを調達しよう
うーむ。見た目は皆同じに見える。そもマグロなら味で勝負しろと言いたい
ナディア・ベズヴィルド
【ヒラール】
ナイルマグロを鈍器にしたり焼き魚にしたりした事はあれどもレースで乗るのは想像もつかなかった
ナイルマグロが絡んでいるならトンチキレースになること間違いなし
見てよ、此処に集まったトンチキ猛者たちを。面構えが違う
(ちらと隣を見て)…うん。テクトもだ。仲間!
ええ、どんな鮪がいるか見に行きましょう
自家鮪が無いから魚人共から捕獲の仕方、あと扱い方も魚人から(強制的に絞め上げて)教わるとしよう
敵に教えを請うのは痛恨の極みだがあの昔からの因縁ある狂犬(フェオ)もレースに挑むのだ、なりふり構っていられるか
レース途中うっかり事故で上手く消せないか…魚使い共を買収して妨害させるか(ぶつぶつ)
ナイルマグロにも個性があると…知れば知る程奥が深い
名前はツナの海よ
私は追い上げ型が性に合っている気がするわ
貴様の鮪を貸せ、代わりに今釣り上げた鮪を貸すわ
(と魚使いの鮪を強奪)
テクトの鮪も天下一品(等適当に話を合わせて魚使いを煽る)貴様らの鮪はどうだツナー
ふふ、勝負が終ってから味でも勝負しちゃう?捌くのは任せて
アリア・パーハーツ
【熱砂の狂騒】
うーん、トンチキだ…
ねえ、フェオの故郷ってなんでこんな愉快なイベント多いの??
ジズのせいか、ジズのせいだな(褒め言葉)
…え、マグロじゃなくてもいいの?
サメでもいいの?!
サメいる!?
なんでエジプトにいないのっ(ぎゃん泣き)
ていうかどうやってマグロを手懐けるのか…
ねぇジェア・レム教えてー…と思ったけど人気だな、やっぱ
魚人にも聞いてみよう、ねえ教えてー
(なお素直に教えてくれない奴はぼっこぼこに殴る、物理で解決しましょう)
ちょっとくらい気性荒くてもいいから早い子がいいな
タフなスピード重視
それに筋力あると身がしまってて美味しそうだし
……え、別に食べようだなんて思ってないツナー(醤油と山葵は持参、にっこにこ)
よし、お前にしよう
ツナシャーク号だ、ボク様の言う事聞かんかったら……一番痛い方法で捌いてやるからな
フェオはどの子にする?
大きい子とかどうだ、めっちゃ身がいっぱい食べれる、……コホン
乗りやすそうだし体当たりしやすそうじゃない?
フェオ・アンスール
【熱砂の狂騒】
さてな、それは時逆が見せる幻想であろう
何も気にすることもあるまい
特に、此度のような案件ならば
エジプトにもサメはいるぞ
ただ、北と東の海にしかいないだけであって
それにしても、盛大なレースになりそうだ
これならばあの女狐(ナディア)にも一杯食わせる事も出来るであろう
おまえのあの澄まし顔が悔し気に歪む顔が目に浮かぶようだ、く、ははは!
テクトラム殿には申し訳ないが、此処は積年の怨みを晴らさせて貰うとしよう
という訳で、ナイルの巨大魚使いを紹介してくれ、ジェア・レムよ
可能であれば後半で強い追い込みタイプの鮪が良い
尚、此処までに一切の脈絡は無し。真顔である
跳ね付けられるのは百も承知
なので以下商談となる
()内は発言しない
こそこそと耳打ちするように
俺はあそこにいる女狐に勝ちたいだけなのだ
万が一にも勝たれたら困るであろう?(勝たないとは言ってない)
それによく見よ、あの美貌が歪む様を、きっと(俺だけ)清々しい
これだけの参加者だ、間違いなく(死んでる)上からの評価もあがろう
さて、賢い選択は、わかるな?
●ヒラール&熱砂の狂騒
その背中に半魚人を乗せたマグロ達が、砂漠のコースの上を疾走――と言うか飛んでいる。
ただ飛んでいるわけではないのは、有利な内側を取ろうとぶつかり合う事も辞さずに互いにコースを争いながらカーブを曲がっていくマグロ達の様子から明らかだった。
これはレースだ。マグロ達のレースだ。
「これがナイルマグロのレース……」
「ナイルマグロを鈍器にしたり焼き魚にしたりした事はあったけれども、まさか乗ってレースに出ようとする日が来るとは想像もつかなかったわ」
感心したように呟くテクトラム・ギベリオ(砂漠の少数民族・g01318)の隣で、ナディア・ベズヴィルド(黄昏のグランデヴィナ・g00246)が肩を竦める。
「想像つく方がどうかしてる
大丈夫。こんなの、想像ついてた、と言い出す方がおかしい。
「いいぞー! そごだ! 差せ!」
「後ろがら来てらぞ! 逃げ切れぇぇぇ!」
半魚人――巨大魚使いだけのマグロレースを観戦する人々も多いようで、盛り上がっている歓声も聞こえて来る。
「うーん、トンチキだ。ねえ、フェオの故郷って、なんでこんな愉快なイベント多いの??」
「さてな」
マグロレースで盛り上がる古代エジプト人達をアリア・パーハーツ(狂騒・g00278)が愉快と称したのも無理のない事だが、フェオ・アンスール(熱砂・g04703)が少し困ったように返したのも仕方のない事だろう。
「これは刻逆が見せる幻想であろう。何も気にすることもあるまい。特に、此度のような案件ならば」
フェオの言う通り、全ては歴史改竄が悪い。
クロノヴェーダのせいだ。
「じゃあ、ジズのせいか。うん、ジズのせいだな」
けれど何故か、この愉快な古代エジプトはジズのせいになりそうだった。
とんだ風評被害――でもないか。アリアの中ではこれは悪評でもなんでもなく、褒めてるくらいなのだし。尤も今頃、当の本人はジェア・レムの前でくしゃみしているかもしれないが。
「それにしても、あそこに俺達も加わるのか。盛大なレースになりそうだ」
「そうね。ナイルマグロが絡んでるのなら、盛大なトンチキレースになること間違いなし」
ともに次が始まったマグロレースに視線を向けたまま、フェオとナディアが互いの言葉を首肯する。
腐れ縁な2人だけあって、意見も合って――。
「今回集まったトンチキ猛者たちなら、何が起きても大丈夫でしょう。面構えが違うもの」
「何が起きても……か。まるで何かが起きると言っているようなものだな」
合っている、のだろうか。
と言うより、2人の間には、妙な迫力があった。
(「このレースならば、この女狐にも一杯食わせる事も出来るであろう」)
(「この狂犬、レースに乗じて何か企んでるわね。どうしたものか……」)
腐れ縁、と一口に言っても色々だ。単純に仲が良い間ばかりとは限らない。その逆もまた、腐れ縁である。
(「テクトラム殿には申し訳ないが、此処は積年の怨みを晴らさせて貰うとしよう。あの澄まし顔が悔し気に歪む顔が、今から目に浮かぶようだ」)
(「レース途中うっかり事故で上手く消せないか……魚使い共を買収して妨害させるか……」)
何やら昔からの深い因縁があるようで、2人ともまだレースも始まってもいないのに、内心で既に互いを蹴落とす策を巡らせている。
「く、ははは!」
「ふふふふ」
しまいには、どっちも目が笑ってない笑顔で視線をぶつけ合い始めた。
「あーあ。2人とも悪い顔になっちゃってまぁ。いいの?」
止めなくていいのか――とアリアがテクトラムに訊ねる。
「実はな……何故か感じているのだ。ナイルマグロのレースに、そしてナイルチャンピオンシップと言うものを、心待ちにしていたような高揚感と言うものをな」
「……うん。テクトもトンチキ猛者だ。仲間!」
実はこの状況で心弾んでたのを隠さなくなったテクトラムに、ナディアが張り詰めていた空気を霧散させた。
「とは言え、実態は敵に断然有利な出来レースだ。一泡吹かすためにも奴らの馬……いや、マグロがどんなものか偵察に行こう」
「ええ、そうね。見に行きましょう」
ふざけていても敵地であることを忘れていないテクトラムに、ナディアも視線をぶつけるのをやめる。
そして4人は、巨大魚使いを探してレース場と思しき方へ向かっていった。
●それぞれの思惑
「……いたな」
「探すまでもなくいるわね」
ナイルマグロと同じ回数見た半魚人が、すぐに見つかった。
テクトラムとナディアにとっては、少し前のお盆の時期にも見た、段々見慣れて来たかもしれないそのツラがずらっと並んでいる。
「どうやってマグロ手懐けるのか……ジェア・レムに訊きたいとこだけど、ジズ達かな? 人気だな」
「そのようだな。ジェア・レムにナイルの巨大魚使いを紹介して貰えれば、話が早いかと思ったが」
巨大魚使いしかいないかと、アリアとフェオが軽く嘆息する。
「取り敢えず半魚人に聞いてみよう。ねえ、マグロのこと教えてー」
いないものは仕方ないと、アリアは巨大魚使いに近づいていく。
「む? 何者ツナか」
「ここはマグロレースに出場しない者は立ち入り禁止区域ツナ!」
相も変わらず、ツナツナ五月蠅い半魚人である。
「そのマグロレースに出るために来たのだ」
「だけど自家用鮪持ってないのよ。捕獲の仕方、あと扱い方とか教えて欲しいのだけど」
テクトラムとナディアも、巨大魚使いにマグロの情報を求めてみた。
「マグロレースに?」
「お前達がツナか?」
突然現れマグロレースに出たいと言う人間達の登場に、巨大魚使い達は顔を見合わせヒソヒソと密談をはじめた。
「素直に話すだろうか?」
そんな様子に、テクトラムが小声で呟く。
あれでもクロノヴェーダなのだ。素直に話す保証などない。
「話さなかったら締め上げましょう」
「うん。素直に教えてくれないなら、ぼっこぼこにしちゃる」
けれどナディアとアリアは、わざと声を抑えずに言い放った。
2人とも、答えないなら物理で解決する気満々だった。
(「敵に教えを請うなんて痛恨の極みだけど――あの狂犬もレースに挑むとなっては負けられない」)
特にナディアには、なりふり構ってられないフェオと言う事情が、すぐそこにいるわけで。
「ナイルマグロに乗りたいなら、ナイル川で捕まえて来ればいいツナ」
「だが、お前たちにナイルマグロを捕まえらえるかなツナ?」
「難しかったら、ナイルパーチにでも乗ってろツナ!」
「あまり舐めてくれるなよ?」
女相手と見られたか、挑発的に返して来る半魚人達にナディアが目を細める。
「……え、マグロじゃなくてもいいの?」
けれどその言葉に、アリアが驚いた。
「サメでもいいの?! サメいる!?」
「サメはいないツナァ!?」
なんでも良いならサメでも良いかと、急に詰め寄ってきたアリアに、半魚人達が(多分)驚いて目を見開きながら返す。
「なーんでー! なんでエジプトにいないのーっ!」
「エジプトにもサメはいるぞ。ただ、北と東の海にしかいないだけであって」
ぎゃんぎゃんと駄々をこね始めたアリアを、フェオが宥めにかかった。
「その男の言う通りツナ」
「サメはいないツナ」
「海にいるサメがナイル川にいる筈ないツナ」
「お前は何を言っているんだツナ?」
何故かフェオの言葉に便乗する形で、巨大魚使い達は揃って頷いていた。
「「「「……」」」」
ナイル川にマグロ放流しといて、何を言っているんだコイツら。
そんな4つの視線が、半魚人達に目線が向けられる。
「何でナイルマグロ放流した連中に正論言われてんだろうな、ハハハ」
「やっぱり締め上げましょう」
このままだと、アリアとナディアが物理に訴えそうだ。
「まあ待て、2人とも。私に少し時間をくれないか。レース前に事を荒立てる事もないだろう」
アリア達を制して、テクトラムは巨大魚使いに向き直る。
策はある。少し吹っ掛けてみるのだ。
「あぁ、お前達。良いナイルマグロを持っているな。一級品と見た。さすがナイルを代表する巨大魚使い。そしてハトメヒトの名を冠すレースに出る猛者たちだ」
まずは冷静に、テクトラムは巨大魚使い達のナイルマグロを褒めて煽てる。
「ほほう、我らのナイルマグロの良さがわかるツナか」
「人間にしては見所があるやつツナ」
「しかし私のマグロの方が速い――ツナー」
まんまと乗って来た巨大魚使い達に、テクトラムはあたかも『更にその上をいく最強のレースマグロを持っている』ように返してみた。
思い出したように、同じツナ語尾を付け足しながら。
「ふ――テクトの鮪は天下一品。貴様らの鮪はどうだ、ツナー」
「なんだと!?」
「そいつは聞き捨てならんツナ!」
「我らとジェア・レム様のマグロ以上に速いナイルマグロなどいる筈が――」
テクトラムの意を察したナディアも話を合わせて煽ってみれば、巨大魚使い達は元々丸い目を多分更に丸く見開いて色めき立つ。
「ほう? 余程自信があるようだ。私のは……あれだ、なんたってナイルの、えーと、そうあの川奥から仕入れたのだ。一本釣りで。このレース頂いたも同然」
「川奥……?」
「どこツナか?」
「我らの知らぬナイルマグロの生息地があるツナか?」
適当にまくしたてるテクトラムに、困惑する巨大魚使い達。
よく見なくてもテクトラム、マグロすら持ってないのだけれどな。
「そのマグロどこから入手した? もちろん捕獲にも気を使うのだろう? 私は……あれだ。一本釣りだ」
「釣り?」
「それはダメツナ。ナイルマグロの腸を痛める可能性があるツナ」
「捕獲はもちろん素手ツナ。摑み取りツナ」
まんまとテクトラムの話術に乗って、ぽろぽろと口を滑らす半魚人達。
「まさかの手掴みだよ」
「……まあ、この時代に手に入る素材でマグロを釣れるような竿を作るのは難しかろう」
アリアとフェオは、後ろで成り行きを見守っている。
「さてはお前、マグロビギナーツナ?」
「ならば、これは知らんだろうツナ」
「ナイルマグロにはレース特性があるツナ!」
更に巨大魚使い達が口走ったそれこそが、4人が最も聞きたかった情報である。
「逃げ、先行、差し、追込の4タイプだツナ」
「逃げのナイルマグロは、全体的にシュッとしてるツナ」
「あと群れの先頭にいる事が多いツナ」
「先行は、胸鰭がシュッと長いツナ」
「群れの中の前方にいる事が多いツナ」
「差しは背鰭と腹鰭が長いツナ」
「群れの中では真ん中から後ろにいる事が多いツナ」
「追込は尾鰭が大きいツナ」
「群れの最後尾辺りにいるのが多いツナ」
「ほう。それは確かに知らなかったな……ツナー」
「ナイルマグロにも個性があると……知れば知る程奥が深い、ツナー」
「そうだろうツナ」
感心するテクトラムとナディアに、ドヤ顔で返す巨大魚使い達。
「でも、それ本当? 確かめさせて貰えないと、信じられないよ」
「なら、確かめて来い」
俄かには信じられないとアリアが更に情報を引き出そうとしたそこに、新たな声が響く。
「アタシが許す。好きなだけ、ナイルマグロ獲って来い。今さっきもそこでナイルマグロレースに出るやつらにマグロ獲らせてきたんだ。何人増えようが、構いやしねえよ」
ナイルマグロ漁の許可を出したのは、何故かところどころ砂まみれのジェア・レムだった。
「はぁ……こんなマグロ話をしたのは初めてだ」
「お疲れ様。立派なマグロ使いね」
会話を頑張った疲れが見えるテクトラムを労いながら、ナディアは2人でナイル川へ向かう。
本番は、ある意味これからだ。
「そうだな。まずはナイルマグロを調達するとしよう」
テクトラムの目に、すべて同じマグロに見えていたのはさっきまでの話。
巨大魚使いから聞き出した情報を合わせれば、なるほど、確かに背鰭が伸びていたり、胸鰭が長かったりと、それぞれのマグロの身体特徴の違いが見える様になっていた。
更によく見れば、背鰭が伸びてるタイプの中でもその長さや形は一定ではないのもわかる。
同じナイルマグロは、一尾もいないのだ。多分。
まあ、それでも全部マグロなのは違いないのであって。
「そもマグロなら味で勝負しろと言いたい」
「ふふ、勝負が終ってから味でも勝負しちゃう? 捌くのは任せて」
いつかのナイルマグロの炙りたたきを思い出してそうなテクトラムに、ナディアはナイルマグロを物色しながら微笑み返す。
「筋力あるマグロだと身がしまってて、美味しそうだよね」
アリアもナイルマグロを食べる気があった。
荷物の中には、持ち込んだ醤油と山葵がこっそり忍ばせていたりする。
「お前ら、レースに出る気あるツナよね?」
「……別に食べようだなんて思ってないツナー」
巨大魚使いに訝しまれてもさらっと流して、アリアは隣のフェオに視線を向けた。
「フェオはどの子にする? ボク、ちょっとくらい気性荒くてもいいから早い子がいいな。タフなスピード重視」
「そうだな。可能であれば後半で強い追い込みタイプの鮪が良いのだが……」
アリアとフェオの会話に、ナディアの狐耳がぴくりと動いた。
(「狂犬も追い込み狙いか……」)
自分に合っていると思っていたのと同じタイプのマグロをフェオが狙っていると知って、ナディアは内心穏やかでなくなる。
「大きい子とかどうだ、めっちゃ身がいっぱい食べれる、……コホン。乗り易そうだし、体当たりし易そうじゃない?」
「それもいいのだが……」
それに気づいたフェオは、アリアに一寸商談してくると告げ、ジェア・レムに近づいた。
「後半に強いナイルマグロの一番良いの貰えぬか?」
ナディアに聞かれないよう耳打ちで、直球勝負に出た。
「自分で獲らねーのかよ」
あっさりと跳ね付けられるがは、それはフェオの想定内だ。
「俺はあそこにいる女狐に勝ちたいだけなのだ」
小声で続けながら、ナディアをこっそり指して。
「あれは何をしてくるかわからん。万が一にも勝たれたら困るであろう?」
ともにナディアが勝つのを阻止しよう――と聞こえるようなフェオの物言いだが、彼自身が勝たないとは一言も言っていない。
「それによく見よ、あの美貌が歪む様を、きっと清々しい」
一番清々しいと思えるのは、フェオ自身。
「これだけの参加者だ、間違いなく上からの評価もあがろう」
その上はとっくに死んでるのをおくびにも出さずに。
「さて、賢い選択は――わかるな?」
滔々と畳みかけたフェオが、ジェア・レムに答えを求める。
「いんや? わからん」
「――な」
しかしジェア・レムはあっけらかんと、端的に、しかしフェオの期待から外れた答えを返して来た。
「アタシは誰が勝とうが負けようが構わねーよ。お前らの誰かが勝ったら、そいつを叩き潰すって楽しみが増えるだけだからなぁ。上? 知るか!」
「……」
「フェオ、フェオ」
続くジェア・レムの言葉に驚くフェオを連れて、アリアがジェア・レムと距離を取る。
「今思い出したんだけど――あいつ多分、アホだぞ! 前に戦ったアヴァタール級、すっごい間抜けで単細胞だったぞ!」
「……そうか……」
もうちょっと早く聞きたかったと、フェオが溜息を零す。
「でもまあ、教えるだけは、教えてやるよ。そこの群れの最後尾から前3尾目のマグロが、良さそうだぜ。多分な」
「おい待て、声がでかい――」
「ま、捕まえるのは自分でな。さっきさっき他の奴にも言ったがなぁ、ナイルマグロは、譲られた相手を背中に乗せるような大人しい魚じゃねェんだ。ナイルマグロに乗りたきゃ、自分で捕まえるしかねーんだよ」
「なん……だと……」
ジェア・レムの言葉に、色々と当てが外れたフェオが臍を噛む。
一方その頃。
「貴様の鮪を貸せ、代わりに今釣り上げた鮪を貸すわ」
「ナイルマグロは自分で捕まえないとダメだツナ。誰かに貰ったナイルマグロじゃ、言う事をほとんど聞かないツナよ」
「なん……だと……」
此方は巨大魚使い相手にマグロを強奪しようとしていたナディアも、全く同じ反応を返していた。
「獲った、ぞー!」
一方で、テクトラムは大きな3m越えのナイルマグロを誇らしげに掲げている。
「よし、お前にしよう。ツナシャーク号だ、ボク様の言う事聞かんかったら……一番痛い方法で捌いてやるからな?」
アリアもまた、マグロを脅して手懐けるのに成功していた。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【泥濘の地】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
【熱波の支配者】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV5になった!
【ドレイン】LV1が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!
月見里・千隼
※連携、アドリブ歓迎
(仏頂面で寡黙だけど大変感情豊かな現役騎手です)
死のナイルマグロレース…
ハトメヒト賞ナイルチャンピオンシップ…!
トンチキ好きとして現役騎手として何と魅力的なレースなんだ!
競馬だろうが競鮪だろうがレースである事に変わりない
現役騎手だからこそ負けるわけにはいかない…必ず優勝するぞ。
まずはマイマグロの捕獲方法だがマグロ使いの魚人どもに要求するのが手っ取り早い。
脅してでも捕獲現場へ連行してマグロの個性を見極めてもらうぞ。
俺的にはチャンディラム(刻逆前は競走馬、現在は千隼の無双馬)が差しと追い込みの中間…
この2つの性質に慣れてるのでな。
差しか追い込み向きの大きく生き生きしたナイルマグロがいいので厳選しよう。
マイマグロを入手したら味方達が集めた情報を頭に叩き込みまずは慣らす為の練習だ。
現役騎手と言えども馬とマグロでは騎乗した時の感覚とかが違う。
役に立つか分からんが余裕があればレースに参加する味方達に現役騎手のノウハウを伝授するつもりだ。
マグロの名前か…ツキジマルと名付けようかな。
●馬は馬、マグロはマグロである
「アタシが許す。好きなだけ、ナイルマグロ獲って来い。今さっきもそこでナイルマグロレースに出るやつらにマグロ獲らせてきたんだ。何人増えようが、構いやしねえよ」
他のディアボロス達と巨大魚使い達のやり取りの末、その場に現れたジェア・レムからナイルマグロ漁の許可が出た。
(「必要とあらば巨大魚使いを脅してでも……と思っていたが、その必要はなさそうだな」)
その様子を眺め、月見里・千隼(硝煙と魔弾の騎手/現代ラストジョッキー・g03438)は胸中で呟いていた。
力に訴える必要がないのなら、それに越した事はない。
「……俺もマグロを貰うぞ」
一言告げて、千隼もナイル川に入っていく。
(「チャンディラムの様な差しか追込なら、群れの後方で背鰭か尾鰭の大きな個体だな」)
他のディアボロス達によって引き出された、身体特徴とレース特性の情報を反芻しながら、千隼は群れの後方へ向かう。
チャンディラム。
かつては千隼が騎手として多く鞍上を務めた競走馬の名であり、現在は無双馬の名でもあるその脚質が、差しと追込の中間なのだ。少しでも慣れている要素のあるマグロを狙うべきだろう。
(「馬体……いや、この場合は魚体、か? とにかく大きく生き生きしたナイルマグロがいい」)
千隼は当たりを付けた群れの後方の中から、一際大きなマグロに目をつけると、そっと忍び寄って――両手で掴みかかった。
「ツキジマルと名付けようかな」
千隼が捕まえてそう名付けた3m超のマグロは、差し寄りのナイルマグロなのだろう。
背鰭と腹鰭が大きく、しかし尾鰭も少し大きい――気がする。
(「まずは乗ってみるか」)
千隼は早速、その背中に跨ろうとして――。
「……わかってはいたが、これは邪魔だな」
いきなり、問題にぶつかった。
マグロの背鰭である。当然だが、馬に背鰭なぞある筈がなく未経験。これがものすごく、邪魔だった。
「……」
腰を浮かせて前のめりになる、いわゆるモンキー乗りならば背鰭にぶつからずに乗る事は出来る。
だがそうなると、今度はバランスが取りにくいと言う問題が出て来た。
何しろ、鐙も手綱も無いのだ。マグロ用の鞍やハミなどある筈もない。
元々、モンキー乗りは両足でバランスを取る必要があるため、普通の馬の乗り方としても簡単なものではない。それがマグロでとなると、難易度が更に上がる。
しかも、ナイルマグロがマグロであるのも、問題に拍車をかけていた。
馬は走る動物だが、マグロは魚だ。泳ぐのだ。空中だろうが砂の上だろうが、マグロなんだから泳ぐのだ。泳ぐと言う事はつまり、マグロが進もうとすれば尾鰭が左右に振られるのだ。
結果、マグロの背中の上も左右に揺れる。
逆に馬の様な上下の揺れは、ほとんど感じられない。
「これは……思った以上に苦労しそうだな」
馬とマグロは違う。わかっていた事だが、千隼は改めて痛感していた。
騎乗した時の感覚以前に、生物として何もかもが違い過ぎると。
何故なら哺乳類と魚類。生物学的と言うか進化論的と言うか、とにかく、馬とマグロの共通点って、動物である、くらいしかないんじゃないですかね?
(「もしかしたら、チャンディラムに乗った方が良かったのか
……?」)
そんな考えが千隼の脳裏をよぎるが、今からマグロの騎乗を諦めるのは騎手として負けた気がする。
「意地でも乗りこなしてやるぞ、ツキジマル」
レースにさえなれば、騎手としての経験、培ったノウハウを活かせる場面もきっとあるだろう。ある筈だ。あるといいな。
千隼は巨大魚使いのマグロの乗り方も参考にしながら、最適なマグロの乗り方を模索していく。
そして――。
「成程。こうか。背鰭は我慢するしかなさそうだが――掴んだぞ」
普通に座って背鰭を掴むか、前傾姿勢で胸鰭を掴むか。
数十分後もすれば、そのどちらでもナイルマグロを乗りこなしてる千隼の姿があった。
成功🔵🔵🔵🔴
効果1【強運の加護】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
●ハトメヒト賞ナイルチャンピオンシップ、開幕
「見ろよ。あいつら、どんどんナイルマグロ捕まえてんじゃねーか。やっぱ強いマグロ乗りだな」
それぞれのナイルマグロをゲットしたディアボロス達は、ジェア・レムに一級のマグロ乗りと認められた。
「お前たちも、あいつらと同じ数、出ろ」
故に、ジェア・レムは配下の巨大魚使いに、同じ数の出泳を命じる。
「そんでもって、アタシも出る!」
命じるだけで、我慢できる筈がなかった。
「出ないでくださいツナ!」
「いやだ! あんな強いやつらが来たのに、見てるだけなんて我慢できねー!」
「こんな妨害上等のレースに出たら、どさくさに紛れて何されるかわからないツナ!」
「か、監督! ジェア・レム様は監督だツナ!」
「そうツナ! 我らを勝利に導く司令塔ツナ!」
「司令塔か……それは悪くねーな」
闘志を隠そうともせず、自分もマグロレースに出ると言い張るジェア・レムを、巨大魚使い達は必死で出泳させまいとする。
その心は、一つであった。
(「「「「だってジェア・レム様、マグロ乗るの別に上手くないツナ
……」」」」)
そんな出来事が裏で起こりつつ、新たな問題も発生した。
ディアボロスと同数の巨大魚使いも出泳するには、今までのコースではコース幅が狭すぎたのだ。
急遽、砂漠の職人を集めてコース拡張工事が行われる事になった。
そんな作業、周囲の人々に隠せる筈もない。ジェア・レム達も隠す気もなかった。
故に、噂が砂漠を駆け巡る。
「なあ、聞いだが?」
「ナイルチャンピオンスップの話だびょん?」
「今回は他所がら来だマグロ乗りが、何人も出泳するらすい」
「見だ見だ! ナイル川でナイルマグロ獲ってだ!」
「すかも、3m前後のナイルマグロさ乗る猛者ばっかだど」
「ジェア・レム様もそれに合わへで、巨大魚使い様達さ出泳させるんだど」
「今までにねえ、史上最高のマグロレースになるって噂だど!」
ナイルマグロレースに、多くのマグロ乗りが参加する。
そんな噂はナイルマグロの存在を受け入れてしまった人々の間に、あっという間に広まった。
そして――。
予定より3時間ほど遅れて、ハトメヒト賞を冠した最高峰のナイルマグロレース、ナイルチャンピオンシップが始まる。
==========================================
いよいよナイルマグロレース本番です。
【コースについて】
・ナイル川沿いに設定コースは全長3キロ強、3400くらいの長距離コース。
・鮪場は砂。でもナイルマグロに乗ってたら多分関係ない筈。
・いわゆる小判型な角丸長方形で左回り。(反時計回り)
・ナイル川前をスタート、直線の後に第1、第2コーナーを回り、長い直線の後で第3、4コーナーを経て最後の直線、ゴール。
・4コーナー後半からナイル川沿いに戻って来る。そこに、魔物(餌付けされたナイルマグロ)が棲んでいる。
・野生のナイルマグロはナイルトビウオを獲る時に水を飛ばす習性があるらしい。(トラップ)
・スタートゲートなんてある筈ないので、砂の上に棒で引いたライン上に並んでよーいドン。スタート兼ゴール。
・ゲートはないけど番号はあります。内側から1番。なお、早い者勝ち=プレイングで指定OK。
【ルール】
・妨害自由。パラドクスでも残留効果でも。
・騎乗はナイルマグロのみ。折角捕まえたんです。乗ってあげて。
・ただしマグロの数に制限はありません。
・ジェア・レムがやってみせた(そして失敗した)ツインマグロスタイルもルール上、問題なし!
・サーヴァントの相乗りはOK。一心同体だから、とかで押し通せる。今回の敵アホぞろいだから。
・2人乗りはどうしましょう。敵は言いくるめられそな気がするんですが、あまりメリットなくないですかね?
【出走ならぬ出泳数】
・最終的なディアボロスの出泳者数と同数の巨大魚使いが出泳します
・なので多分、ナイルマグロ30尾を越えるわちゃわちゃレースになります。
・昔は競馬も20頭立てとかあったらしいので、まあ何とかなるだろ。
・出泳せず支援(妨害)に徹するのも可です。
なお、コース拡張で遅れた3時間が発生しました。
皆さんはその3時間、ナイルマグロのトレーニングに使えました。
どう使ったかはプレイングでどうぞ。あとはレース中の行動などを書いていただければと。
最終的に誰かが優勝すれば良いので、まあ誰が勝っても良い状況にすれば良いわけですよ。
==========================================
ゼキ・レヴニ
よぉし、頼むぜユッケ改め中トロ号
辛かったあの日の特訓を思い出すんだ…!
【動物の友】で存在しねえ記憶を押し付けて
予定通り追い込み作戦で行くぜ
おれたちの誰かが優勝すりゃいいんだろ、そんなら支援に回るぜ
レース中は【パラドクス通信】をつなげ、後方から俯瞰して逐一状況を共有する
魚使いのコース取りやら仕掛けてくるタイミングやら見逃さねえように…
ン?誰だ酒落とした奴。おっスルメイカまでありがてえ
…これ飲酒運転になるやつ?
敵味方…や、主に味方のえげつねえ妨害を避ける為にも
4コーナー後半は【水中適応】で川ん中から攻めるぜ
復讐者を邪魔立てする魚使いは雷の矢で流鏑馬…流鏑魚?で射落としてやる
…この時点でゼキさん真面目に支援してんじゃんパネェやっぱ頼りになるなァ〜なんて思われてることだろう!
そうやって油断させといて、最後の直線で一気に仕掛ける!!
アッ、あんなところにナイルピンクイルカが!!
パラドクス通信越しに叫び、よそ見した奴(いるのか?)を追い抜いて優勝を狙うぜ
って皆それどころじゃねえって?あっ、ハイ。
クーガ・ゾハル
キリッとゴーグル装着
胸ビレつかんで、らいだースタイル
おちて、はたかれて、しずんで(おれが)の
ノーミツな3じかんで、つむいだキズナ
見せどころだぞ、ツナホテプ
ところでおまえ、何型だっけ……?
まあいい、おれたちはジンバ・イッタイってやつだ
まずはアレだな【強運の加護】――手をあわせる
なんとなく、とくに、ケペシュには負けられない
ミサ……え?
とっておきのパラドクス、からの
おれがつまみ食い×【口福の伝道者】で
ヒトにも、マグロにもうまいオヤツ・バラマキ大サクセンだ
ナマアジ、スルメイカ、チョコに酒ビン
動きのにぶったところを【トラップ生成】
ビリビリ・デンキ玉をくらえ
あわわ、これ、お、おれにもとどく――
うう、つめたいし、セカイが虹……何色だかわからないし、
キラキラした剣も見えた気がする
ええい、さいごはマグロにしがみついたまま、体当たりだ
ねばれ、ねばれ
まけるか、おれとこいつは、コンジョーがとりえだ
見えるハズだ、ショーリへの道
ピンクイルカ!?――あとで!!
行けツナホテプ、トロフィーと、イタマエがおまえを待ってるぞ
月見里・千隼
※連携、アドリブ歓迎
(千隼本人は現役騎手として真剣にレースに挑むがノリの良さは相変わらず、トンチキカオス展開OK)
ツキジマル、お前はエジプトで1番屈強で速い勇敢なナイルマグロだ。
3時間の猛特訓の成果の見せどころだ。
ハトメヒト賞、必ず勝ち獲ろうな。
騎手として競馬の勝負服
(2022年11月14日納品DCの衣装)を纏い乗馬鞭を持ち騎乗していざ出泳。
妨害OKの勝てば官軍なデスレースだが差しの立場を利用して逃げと先行を背後から…
なんて妨害は現役騎手としてなるべくしたくは無いな。
他者の妨害にも屈せず常に精神集中し冷静に対処するが
妨害されれば『寝覚月』で召喚した雷のチェーンソーノコギリザメ達に襲撃させ
火の粉を払うどころか容赦なく何倍にして仕返し程度はする。
残留効果での妨害には同じ残留効果を使って意趣返しを。
序盤はスタミナを温存しながらもいい位置取りをし先行に追走してチャンスをうかがい
中盤に逃げと先行がバテてきたであろう終盤にかけて
徐々にダッシュしてスピードを上げて一気に勝負を仕掛け次々と追い抜くぞ!
ケペシュ・ナージャ
ジェア・レムでも成せなかったツインスタイルを俺がモノにしてみせる
可愛いマグロたちを紹介しましょう
マグロパトラと…こっちはミサイルです
どちらもタイプは追い込み
3時間使ってみっちり上下関係を教え込んで…もとい絆を深めておきました
大丈夫ですよ、取って食ったりしませんから
きっちりゴールまで泳ぎきってくれるなら
ふふ、俺も負けませんよクーガ
俺も貰っておきますか【強運の加護】
レース序盤から中盤は後方でスタミナを温存しながら、レース全体を観察します
ツッコミどころも見逃さない
パラドクスでの妨害は敵味方関係なく
冷凍マグロになれ
あくまで巻き込んでしまっただけですとも、ええ
手薄なルートを割り出し、終盤一気に追い込みをかけます
ミサイルには合図に合わせて真っ直ぐ前に突き進んでいくよう仕込んでおきました
最後の直線で合図を送ったら自分はマグロパトラに乗り換えて
先行くミサイルに道を切り開いてもらいながら、後を追うようにライバル達を抜いていきます
もしかしなくてもイタマエって俺のことですよね
勝利のツナマヨですか、いいでしょう
クィト・メリトモナカアイス
アドリブ・トンチキ歓迎。
復讐者相手でもガンガン妨害してガンガン妨害したい。
ぺーぺけぺぺーぺけぺぺーぺっぺっぺー(ふぁんふぁーれ)
一番内回りの1番はもらったー。我はかしこい。
【動物の友】で絆を深めたモナマグロ号は、この3時間で食べさせたナイルイワシによりパワーアップしている。たぶん。おそらく。きっと。
というわけでスタート。
作戦通り&モナマグロの特性に合わせた逃げスタイル。
そーしーてー。我のじしょに容赦という言葉はない。
最初の直線で前に出たらモナカ突撃型を後ろに放ち、「突撃のキンカロー」。これぞひっさつのモナカスパーク。
ナイルマグロには被害がでない不思議な電撃で後ろに続く巨大魚使いをまとめて感電させる。我の後ろに立つのが悪いんだぞ。
他の復讐者が巻き込まれたら……我が勝つのでヨシということで。汝のぎせいはむだにせぬ。
4コーナー後半の魔のナイルマグロゾーンは黄金猫拳打棒でのブロックでモナマグロ号には負担をかけぬように。
これぞ我とモナマグロ号のこんびねーしょん。
このまま逃げ切るぞモナマグロ号ー。
一里塚・燐寧
おっと、そーいや名前をつけてないや
んー、タフな子だからタフ坊……から、ちょっと捻ってター坊にしよっと
「ターボ」みたいな響きで縁起がいいじゃん?
よろしくねぇ、ター坊くん
トレーニング中は軽く泳がせて調子を整えるよぉ
本番を前にお疲れモードじゃ困っちゃうから飽くまで軽め
スタート直後【泥濘の地】を発動
んふふ、強化されたてホヤホヤの残留効果の力、見せたげる
水上にいる「ター坊以外のマグロ」の速度を低下
有利な走り出しを決めちゃうよぉ
一度見せたら他も使ってトントンになるけど、初手でトップに躍り出られれば十分!
「最初から前にいてスタミナとパワーで好位置を譲らない」ことで逃げ・先行の優位を崩す
更にパラドクスで砂塵を飛び散らせ、視界まで潰しちゃうんだから
あとはこのままゴールまで悠々っ、ばいばーい♪
……ま、こんな戦い方してたらヘイト買いすぎちゃうかもねぇ
負けそうな時は奥の手
巨大恐竜型ネメシスに変貌し、口にマグロを咥えて自分で泳ぐよぉ
扁平な尾で水をかき分け猛スパート!
あはは、チェーンソーザウルスを止められるかなぁ?
ジズ・ユルドゥルム
ついにこの時が来たな、鮪嵐(つなあらし)
君とは長年の相棒のような気がしているよ。
(海辺でタイヤを引っ張ったり河川敷で殴り合った光景が脳内で流れる)
獲ろう。ふたりで、ハトメヒト賞を…!!
ジェアとは妙な縁で繋がっている気がするが
手加減は一切不要だと魚使い達に念を押しておこう
鮪嵐はきっと差しタイプだな。見ろ、この鋭い眼光を…!
まるで鷹のように、虎視眈々と獲物を狩る瞬間を見定めようとしている…!(個人の感想)
集団内での位置取りは彼女(鮪嵐)の野性の勘に任せる。
彼女は静かな狩人だ。集団の中で気配を消し、妨害の対象になりにくい位置取りをしようとするだろう。
そして皆が速度を出すであろう
4コーナー最後の直線で「ゲーミング砂嵐」を発動!!
皆の視界を1,680万色に虹色発光する砂嵐で包み、魚手とマグロ達を混乱に叩き落す!
自分達は平気なのかって?
フッ…この発光砂嵐の中を泳げるよう彼女と特訓したからな!!
さぁゆけ、鮪嵐!風は君に味方している!
エッ。ナイルピンクイルカ?なんだそれ見たい。どこだ、どこにいるんだ??
タオタオ・ザラ
ちぇー、ジェアちゃんのいけずぅ
でもタオは偉いのでちゃんと仲良くなれました、えっへん
ジェアちゃん褒めてー?
え、嘘じゃないぞ、ちゃんと仲良くなった
ちょっと気分にムラがあるが賢いヤツなんだ
…………タオが絆されてるだけ?そんなわけないだろう、いいな?
んで、えーと?番号?
内側のほうがいいんだろうがお前が好きなところに行け
レース結果も大事だが、楽しく泳いでくれるのがいちばんよ
なんとなーく追い込みっぽいから、後ろから追い迫る姿が見てえなあ
マ、お前なら出遅れたって勝てると信じてる
120億くらい紙屑にするような雰囲気もあるけど、信じてるからな
――……あ、こら、舌をしまいなさい舌を
そんなひとを舐めくさってそうなツラしたらダメでしょ、めっ!
おーらおら、いけいけ!
邪魔する奴らは誰であれタオが薙ぎ払う、だから泳げ!
妨害されれば容赦なく迷いなく黄金の宝剣を放つ、相手が死んでも構わん
――――あ゛?
五月蠅えな、タオに剣を抜かせたのはお前らだろう
なぁに気にすんな、お前はただただ前へ進め!
お前が泳ぐ道は黄金に輝いてるぞ!!
ナディア・ベズヴィルド
【W】
フェオの憎たらしい顔を歪ませるいい機会
いくわよ『ツナの海』(追い込み型)
あの男に勝つ為ならなんだってやってやる
まずは3時間の間にマグロを締め上げてしっかりと調教
言う事聞かないとびりびり痺れさせるわよ
どんなに先を走っていても勝負は最後まで分からない
狙い目は4コーナー辺り
出走前に【強運の加護】を
【動物の友】で餌付けされたナイルマグロにフェオの方に行けば餌が貰えるとマグロたちに囁き誘導させ
飛んでくる妨害物にはそこら辺泳いでいた鮪を【怪力無双】で掴み上げてぶん投げてやる
テクトありがとう!さすが3m級体当たりが強烈ぅ
恋人の援護ににっこり投げキッス
あはは、アリアさんも負けてない!手榴弾が炸裂して…わわっ!マグロが飛んできた!
二人とも頑張れ!
しぶとい狂犬め!いい加減観念して落ちろ!
くらえ『呪縛の影戯』!
問答無用でPDで攻撃だ、影の鎖で縛り付けてくれる
往生際の悪い男は嫌われるわよ!
貴様っ!!最後は思い切り物理攻撃か!(反撃に足蹴り)
ぐああ、目が!目がぁぁ!!ていうと思ったか!(サングラスをくいっ)
テクトラム・ギベリオ
【W】
名を付けているのか?では、はごろもフー…ハゴロモ号で
ツナを統べる者という意味だ、多分
鮪には猫と言う持論を展開したサーヴァント相乗りスタイル
鞭打つ代わりに毛玉がちくりと爪を立ててスパートをかける
ふん。そんな即席鮫に私が負けるものか
こいつは差しタイプのようだ
トレーニングは準備運動を兼ねた軽い走り込みを行った
3m級の巨体で直線は威圧し、コーナーは体当たりで蹴散らす戦法だ
ナディアの鮪は追い込みだから後方か…
フェオとの競争が捗るようたっぷり【トラップ生成】
今回は付かず離れずで並走し鮪場を盛り上げよう(罠で)
勿論彼女に勝って欲しい
トラップ生成で踏むと地面が進路方向へ加速する、マ○オカート的装置を作成
追い抜ける場を作る
さあナディア、ここだ 上位へ一気に追いつこう
前方にはライバルのアリア…先行型らしい
ふ、私のナディアだぞ。凄いに決まっている
と言うかついでだと?私には毛玉が居る事を忘れていないか
ここぞと言う場面で進路に【セルフクラフト】を作成し妨害
さあ毛玉、ツナシャークのフカヒレに噛り付いてやれ
アリア・パーハーツ
【W】
負けても怒らんが、言う事聞かんかったらマジその場で捌くからなお前
さあ、ツナシャーク号!立派なサメになるんだぞ!
(先行型、胸鰭がシュッとした子にサメっぽいヒレ等を取り付ける、この制作に費やした3時間)
1位は目指したいけど、フェオとナディアさんのレースが楽しそうすぎて気になる
いやあれバトルだな
おいライバル、君にだけは負けるものか
【アイテムポケット】で爆風だけの安全(?)手榴弾をランダム投擲
【トラップ生成】でゴムパッチンの要領で吹っ飛ばしてみたり妨害したり
とりあえず何かするときの標的目安はライバルであるテクトラムさん
あっはっは、引っかかってやんのー、へぶっ
落下しないようにしつつ自分も引っかかればやり返す、えぇい巻き返せ
うわなんかフェオの周りマグロだらけ、……あはは!ナディアさんの仕業か!
ライバル、君の恋人凄いな
だが邪魔だ、代わりに君が落ちろ!
(手助けする彼を見つけて思いきり体当たり)
毛玉ちゃんは狡いぞ!
(小さな金字塔を出現させてラストスパートの大暴れ、エジプトにはピラミッドが似合うだろ)
フェオ・アンスール
【W】
ジェア・レムが口にした鮪を確保して参戦
追込型の見事な鮪だ
その眼に宿した闘争心
"勝つわよ"と語り掛けて来る眼光
気にいった
おまえも勝ちたいのだろう?
俺も、勝ちに征くぞ
最初はあの女狐に一杯食わせるだけのつもりだったが
征くぞ、ハトメヒト!
女神の名はお前にこそ相応しい!
集団の後方を陣取り、レース全体を俯瞰
ナディアの差し金か、小賢しい
だが、好都合ではある、精々利用してやろう
【幸運】使用
ク、ハハ!ハトメヒトは良い鮪であろう!
お前達、彼女に路を拓け、女神のお通りである
ラインを作らせ、最終コーナーまで体力温存させる
アリア、手榴弾とは大盤振舞だ!
爆発に乗じて前に詰めさせて貰、ぐ、【結界術】発動!
テクトラム殿、そのトラップは凶悪過ぎだな
俺も混ぜて貰おうか
さて、ナディア追いついたぞ
味な真似をしてくれた
この礼、その身を以て味わうが良い!
技能【全力魔法】【捨て身の一撃】【高速詠唱】総動員してPD発動
全力でナディアを殴る
駄目だしに【光使い】で目潰し
レースというより騎乗戦だが構うまい
女狐には完膚なきまで勝つのだ!

カルメン・リコリスラディアタ
アドリブOK
仲間達は老若男女問わず:(名前)ちゃん
鉄火場なレースには闘争心がメラメラ燃え盛る鉄火肌気質のタフガイな鮪が1番!
そうだよな、テッカマキ!
俺達の友情は最強、目指すは優勝だぜ!
勝利の女神だけでなくハトメヒトも俺達に微笑んでるからな!
テッカマキはどうやら先行型らしいな?
競馬知らんけどびゅーんって泳がせればイイのかー?
ディアボロス側が勝てればジェア・レムに挑めるからマグロ使いどもは
【トラップ生成】や『血吸川の大神』の巨大使い魔オオカワウソの餌食にして片っ端から妨害してやるぜ!
ナイルマグロは使い魔オオカワウソの口に合ったのか
美味そうに喰ってるし他の鮪を野生含めて捕食しようとするし、
マグロ使いは不味かったのかめっちゃ八つ当たりしてら。
敵味方見境なくマグロ使いぶん投げて破壊光線しまくってるにゃー。
敵の妨害の筈が仲間巻き添えにしても気にしなーい
巻き込まれる方が悪い!
でも使い魔オオカワウソは俺の指示に忠実だからテッカマキだけは食べないぜ(涎を垂らしてテッカマキを見つめてるのをスルーしながら)
ラズロル・ロンド
アドリブ大歓迎
勝負けなんでもバッチ来いで
賞は頂くぞー!
3時間ナイルマグロには更なる胆力強化にパラドクスを放ち慣らし乗りこなし訓練
掛け声は常に名を呼ぶ!ほほ肉ステーキ!(名前はユッケ丼に続き鮪料理を列挙。きっと食べたいやつ。漬け丼、鮪山かけ、鮪カツ、兜煮、テールステーキetc)
きっとナイル鮪も慣れてくれる?
ラインに並べば熱り立つナイル鮪を太ももで抑えぽむぽむ
この勝負、風塵魔術師と鮪の本気を見せてやろう
いっけぇぇ!
スタートは普通に出泳
ナイル鮪の力量を信じ最初から全力疾走…もとい全力疾泳!
作戦は逃げ切り
持久力は自信が無い?
心配ご無用。策はある!
パラドクスを掻い潜り中盤順位でもヨシ
だって、そもそも砂漠の地形は我が手中にあり!だ
唸れ砂塵海嘯!へばり気味のポキ(ナイル鮪)を押し流せ
波乗りヒャッハー!だ
そして楔は敵の足止めと水鉄砲を撃ち落す!
砂漠には【完全視界】が必須ダヨネ
砂塵海嘯の楔を最大限活用し
敵味方蹴散らしコースに合わせ押し流し
最後の追い上げ兼妨害に放ち
押出し逃げ切りカマ塩焼き(ナイル鮪)だー!
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
絡みアドリブ大歓迎
3時間は動物の友で意思疎通と、操作練習だ
俺、優勝したらツナマヨ食べるんだ
あっ、おまえのことじゃないぞ
よーしよしツナマヨ号、いい子だ
飴と鞭ならぬツナとマヨ作戦だ
いっぱい頑張ったらマヨ………いや、ごはんをあげよう
番号はツナマヨに選ばせよう
前方は常に偵察し、トラップ類や妨害を看破していく
魚に乗って飛ぶなんて、気持ちいいな
俺も翼広げて、飛翔の力で推進力プラス
序盤は後方につけ妨害回避
妨害が来たら
空中戦は得意だ、加減速してフェイント、急旋回
高低差突撃や急速・鋭角ターンで翻弄しよう
さあー、巨大魚使いとバトルだー
今日は俺もマグロ使いになるんだ
ヴァイオリンを奏でつつ
傀儡でナイルマグロを突然旋回させたり、体当たりさせ進行方向を乱して、次から次へと一匹ずつ操り
ナイルマグロが通常の生物じゃなかったら? しょうがない攻撃だ
幻の魚娘に魅入らせよう
水鉄砲はバイザーで防ぎ
飛行する小魚は魔力障壁で守りつつ盾を前にかざして速度で突っ込む
俺達の邪魔はさせないよ
行けー、ツナマヨ
ラストはストレートで差すんだー
ルーシド・アスィーム
職人様達はお疲れ様でした、皆様の労力が報われますよう僕もネメシスで尽力致しましょう!
……ツッコミはどうした?もう正気でいる意味ある?(長大なコースを見て)
僕も3時間の間に捕まえた追い込み型マグロ「カマセ」にサディーク(ジン)と僕の背中に張り付いて貰ったわたゆきの3人乗りで挑みます!
スピードが落ちても構いません、妨害目的ですので。手数が重要!
前~中盤まではマグロ使い達の後ろに着けます
併せて「氷雪使い」で作った氷塊を3人で勢い良く騎手とマグロにぶつけ、泣いたり笑ったりレースに復帰出来ないようにします
わたゆき、良い調子です!サディーク!「俺はネタ担当じゃないんだが」みたいな顔しない!
普段涼やかなイケメンの僕の現状を見習って下さ……あ、妨害しようとする敵がいる!ぶぶ漬やなくて堪忍なァ、しねどす!!(間違い過ぎた京言葉責め)
中盤以降は同じく三時間の間に獲ったトビウオをマグロ使い達にぶん投げ、水鉄砲を浴びせて川に落としたり、「バステトの託宣」で妨害にカウンター
女神もしねどす!と仰っておられるどすぇ!
サアシャ・マルガリタ
ナイルマグロ! 乗りたいですー!
周りに頓着せず一心不乱に泳ぐ子にするです(逃げ型)
先頭をひた走るですよ、行きましょうマグ朗!
番号2番希望!
マグ朗には走ることに集中させ
サアシャは前方に潜む障害に警戒しつつ方向転換やスピード調整を
後ろ向きに乗せた銀シャリには後方の警戒を任せましょう
銀シャリはサアシャの胴に括り付けて落っこちないようにするです
気をつけるですよ銀シャリ!
障害各種は【水源】で目の前に川を作って瞬間的に潜ることで回避
水中適応がありますし、マグ朗にしっかり掴まっていればだいじょぶでしょう。たぶん
レース後半、パラドクスで自分たちより後方にナイルトビウオの群れを降らせるです
視界を埋め尽くすほどのトビウオで走りづらくするですよ
体力消耗した状態で好物が降ってきたら、
食べられずとも気が散ってマグロのスピードも落ちることでしょう
野生のマグロも反応するかもですし! 撃ち落として下さい、サアシャ以外を!
目指せ一等賞!
ナイルの明日はサアシャが掴むです!
……ナイルピンクイルカ!?
誰か写真撮っといて下さい!
●出泳者たち:ALL
砂漠に作られたマグロレース場。
急遽コース幅が広げられたそこに、それぞれのナイルマグロを携えた出泳者たちが姿を現した。
その数、ディアボロス17名に対して、巨大魚使いも17名。
なんと34尾立ての一大レースだ。
流石ハトメヒト賞ナイルチャンピオンシップ。
桁が違う。色んな意味で。
「一番内回りの1番はもらったー。我はかしこい」
まず最も内側の1番に付けたのは、クィト・メリトモナカアイス(モナカアイスに愛されし守護者・g00885)だ。内側からのスタートは最初のコーナーの内側、インを取り易く特に逃げタイプには有利とされている。
選んだ、もとい、釣り上げたナイルマグロはモナマグロ号と名付けた。
「この3時間で食べさせたナイルイワシによりパワーアップしている。たぶん。おそらく。きっと」
全体的にシュッとした逃げタイプのナイルマグロ特有の体形はそのまま。どれほどのパワーアップを遂げているかはこの後明らかになるとして、モナマグロとの関係は良好そうだ。
クィトが騎乗しているのを、モナマグロも当然の様に受け入れている。
――まあ、【動物の友】が効果を発揮しているだけだったりするのだが。
「遅ればせながら、サアシャも来ましたですよう! マグ朗と共に!」
その右隣、2番に付けたのはサアシャ・マルガリタ(えいえいお!・g05223)だ。
ダンジョンペンギンの『銀シャリ』と一緒にとっ捕まえたのは、周りに頓着せず一心不乱に泳いでいた、見るからにスピードのありそうなナイルマグロだ。
体形もシュッとしているから、逃げタイプだろう。
故にサアシャは、そのスピードを磨いてきた。
「先頭をひた走るですよ、行きましょうマグ朗!」
他のディアボロス達より少し特訓時間は短かったかもしれないが、銀シャリと共に騎乗できているのだ。
サアシャにも優勝の可能性は充分にある。
「ギョーッギョッギョッ! 内側を取ったくらいで勝てるつもりツナか?」
「マグロレースはそんな甘くないツナ」
「内側2つくらい、譲ってやるツナ」
「……そっくり返してやりたいなぁ」
何か勝手にいい気になってる巨大魚使い3体を挟んで、一里塚・燐寧(粉骨砕身リビングデッド・g04979)は6番に付いていた。
「よろしくねぇ、ター坊くん」
騎乗しているナイルマグロは、ター坊と名付けた。
タフな子だからタフ坊――からちょっと捻ってター坊になったそうだ。
「『ターボ』みたいな響きで縁起がいいじゃん?」
マグロが縁起の良さを感じ取れてるかはさておき、燐寧は敢えてトレーニングを控えめにしていた。
あまりハードなトレーニングをして、本番に疲れを引きずっても意味がないと。
その甲斐あって、ター坊はやる気十分と言った様子で元気に尾鰭をビチビチさせている。
「他の皆もだけど、ラズも仕上げて来たみたいだな」
「エトヴァもだろ?」
またまた巨大魚使い2体挟んで、9番10番に付いたのはラズロル・ロンド(デザートフォックス・g01587)とエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)だ。
「ああ、ハトメヒト賞は俺達がいただくぞ! ほほ肉ステーキ!」
とは言え、今回のレースは個人戦。何度も共に戦ってきた2人だが、この瞬間はライバル。
選んだマグロもラズロルが逃げで、エトヴァが追込と、体形もタイプも全く違う。
だからレース前の3時間も、それぞれに過ごして来た。
ラズロルの乗ったマグロは胆力強化と、とある秘策の為の特訓の結果、何やら砂まみれになっている。
「俺とツナマヨ号も負ける気はない」
逆にエトヴァの方は、こちらも特訓は控えめにしたのだろう。マグロに疲れた様子はない。
やはり【動物の友】で懐かせた上で、特にナイルマグロに自分の意志を伝える方法を模索してきた。
その成果が実を結ぶかは――ハトメヒトのみぞ知るか。
「俺、優勝したらツナマヨ食べるんだ。あっ、おまえのことじゃないぞ」
エトヴァの呟きに、マグロの背中がびくっと跳ねる。
そんな独り言も届いてしまうくらい、意思疎通はばっちり出来ているようだ。
「訓練の成果をみせてやろう、兜焼き!」
負けじとラズロルも闘志を燃やす。
けれどその、呼ぶ度に名前変わるのは何とかならなかったのだろうか。
一体、ラズロルにどんな食われ方されるのかと、ナイルマグロが内心穏やかでなさそうな気配を醸し出している気がしないでもないぞ。
「へへ……みんな、闘争心バチバチだな」
色々渦巻くスタート地点。
その空気に、マグロの上で笑みを浮かべるカルメン・リコリスラディアタ(彼岸花の女・g08648)は14番。エトヴァとの間に巨大魚使いが3体入っている。
けれど問題ないだろう。
「お前の闘争心も、燃えてるだろう? テッカマキ」
カルメンは、巨大魚使い達と競り合いの訓練を繰り返し、捕まえたマグロの中の闘争心を研いできた。
「鉄火場なレースには闘争心がメラメラ燃え盛る鉄火肌気質のタフガイな鮪が1番! そうだよな、テッカマキ!」
元々どうだったか知らないが、テッカマキと名付けられたカルメンのマグロはすっかり競り合いで燃える気質になっている。
「ツキジマル、3時間の猛特訓の成果の見せどころだ」
レースにかける想いと言う意味では、15番に付けた月見里・千隼(硝煙と魔弾の騎手/現代ラストジョッキー・g03438)は並々ならぬものがあるのだろう。
何しろ、わざわざ最終人類史から持ち込んだ、嘗てジョッキーとして着ていた赤を基調とした競馬の勝負服に身を包んでいる。
更には乗馬鞭まで携えていた。マグロに効果あるのだろうか。
とは言え、千隼の優勝にかける想いは、ツキジマルと名付けた差しタイプのマグロとの3時間にも詰め込まれていた。
みっちり猛特訓してきたのだ。
「ハトメヒト賞、必ず勝ち獲ろうな」
ジョッキーとして現役を自負する身として、千隼は負けられない。
例え騎乗するのが馬ではなく、マグロでも。
マグロの鞍上で、千隼が見据えるは優勝だ。
そこから巨大魚使いを2体挟んだ辺りは、ディアボロスが少し固まっていた。
「ところでおまえ、何型だっけ……?」
「追込型のおれのと違って胸鰭シュッとしてるから、先行じゃねえか?」
22番のクーガ・ゾハル(墓守・g05079)と、その右隣、23番に入っているゼキ・レヴニ(Debaser・g04279)が互いのマグロを見せていたりする。
その輪の中に――何か、ジェア・レムの姿もまざっていた。
「よしよし。獲ってるな、タオタオもナイルマグロ」
「獲ったぜ。ジェアちゃんがいけずだからなぁ」
声をかけて来たジェア・レムに、18番のタオタオ・ザラ(大喰らい・g05073)はマグロの上から皮肉を向ける。
「はっはっは! やりゃあ出来るじゃねえか」
「タオは偉いのでちゃんと仲良くなれました、えっへん」
皮肉が通じてないのか意識してなのか、とにかく笑い飛ばして来るジェア・レムにタオタオも笑みを返す。
「ジェアちゃん褒め――うぉっと」
なんていい気になってたら、急に立ち上がる様に反り返ったナイルマグロに、タオタオは振り落とされそうになった。
「……仲良い、か?」
隣の19番に入ったジズ・ユルドゥルム(砂上の轍・g02140)から、訝し気な視線が飛んでくる。
「え、嘘じゃないぞ、ちゃんと仲良くなった。ちょっと気分にムラがあるが賢いヤツなんだ」
「何だかんだ言ってた割に、すっかりマグロに絆されてません?」
落とされかけてもマグロを責めずに理解を示すタオタオの様子に、少し離れた20番についたケペシュ・ナージャ(砂蠍・g06831)からは、ツッコミが飛んできた。
「…………タオが絆されてる? そんなわけないだろう、いいな?」
――絆されてるなぁ。
とりあえずタオタオには分かったと頷く周囲の面々だが、その内心は共通していた。
「タオの事より、皆はどうなんよ?」
「私か? 鮪嵐(つなあらし)とは長年の相棒のような気がしているよ」
そう返すジズの脳裏には、海辺でマグロにタイヤを引っ張ったり、河川敷でマグロと殴り合った光景が流れては消えていった。
「思い出すなぁ、ユッケ改め中トロ号。辛かったあの日の特訓を……!」
ゼキの脳裏にも、急な階段を登ったりプールでトレーニングした光景が流れては消えていった。
絆とはつまり、関係の積み重ねだ。【動物の友】は動物が懐くようになる。その効果で、ありもしなかった過去の記憶が2人とナイルマグロとの間には作られたのだろう。なんだそれ。まあそんな事もあるんだろう。
「おちて、はたかれて、しずんでの、ノーミツな3じかんだった」
クーガも【動物の友】を使っているが、彼が語ったのは本当にあった事なのは明らかだ。
何故なら、クーガが砂まみれだから。
おちてはたかれて沈んだのは、クーガ自身の方だったのだろう。
「でも、キズナをつむいだおれとツナホテプは、ジンバ・イッタイってやつだ」
それを言うなら今回はマグロなので、人魚一体、或いは人鮪一体ではなかろうか。
と、本来ならばそう言うツッコミをする役であった筈のケペシュはと言うと――。
何かおかしなことになっていた。
「3時間使って、俺の可愛いマグロ達にみっちり上下関係を教え込んで……もとい絆を深めてきましたよ」
マグロ『達』。
何故か複数形。でもそれは間違いでも何でもない。
ケペシュはナイルマグロを2尾、連れているのだ。
「マグロパトラと……こっちはミサイルです」
「ミサ……え?」
ケペシュが乗っている方の名前のおかしさに、クーガの左目が点になる。
「ジェア・レムでも成せなかったツインマグロスタイルを、俺がモノにしてみせましょう」
「はっはっは! 良く言ったぁ! クーガだったか。やれるもんならやってみろ!」
「ダメだな今回……貴重なツッコミ役がおかしなこと言い出したぞ」
真顔で宣うケペシュをジェア・レムは笑って肩を力強く叩いてエールを込めてくれるが、ゼキは思わず天を仰いでいた。
「大丈夫ですよ、ツッコミ不在でも」
そんな声が、彼らの中から上がった。
「もう正気でいる意味あります?」
声の主は21番に付いているルーシド・アスィーム(轍つ祈星・g01854)――なのだが。その姿は、いつもと違っていた。普段よりも、妖狐としての特徴が色濃く出ているのだ。
「今回ばかりは本気です。職人の皆様の労力が報われますよう、僕もネメシスで尽力致しましょう!」
そう。ルーシドは、ネメシス形態になっているのだ。
それだけでも既に『誰がそこまでやれと言った』と言う感があるのだが、ルーシドが選んだ追込型のナイルマグロ『カマセ』に乗っているのは、ルーシド1人ではないのだ。
ルーシドの背中には、ダンジョンペンギンのわたゆきが張り付いている。そしてさらに後ろに、ジンのサディークも顕現していた。
まさかの3人騎乗スタイルである。
でもサーヴァントとジンなので、ルール的にはOK。
とは言え、そのツッコミどころ満載な姿を見れば、ルーシドが今回本気でツッコミ役を放棄してるのが見て取れる。
「こいつら大丈夫か……」
「色物来たツナ……」
「ハハハッ! おもしれーやつらだな」
その様子に周囲の巨大魚使いは目を丸くし、ジェア・レムは大笑いしている。
「どう思われようと構わんが、手加減は一切不要だ」
ジェア・レムとの妙な縁を感じながら、ジズはジェア・レムと巨大魚使い達をマグロの上からねめつけ言い放つ。
「見ろ、鮪嵐の鋭い眼光を……! まるで鷹のように、虎視眈々と獲物を狩る瞬間を見定めようとしているだろう……!」
「こ、こいつ……」
「目を見るだけで、ナイルマグロの事を理解できる領域に達しているツナか……」
「すごいマグロ使いが生まれたツナね」
ジズは念を押しただけだったのだが、何故か一部の巨大魚使いに尊敬の眼差しを向けられる事になっていた。
個人の感想なんですけどね、それ。
このマグロレース、誰も彼もが本気だ。
ディアボロスとして負けるわけには行かないのだから。
「いくわよ『ツナの海』」
けれども29番に付いたナディア・ベズヴィルド(黄昏のグランデヴィナ・g00246)の纏う空気は、他とは少し違った。
もっと個人的な意味で負けたくない相手がいる勝負なのだ。
だからだろうか。ナディアを乗せたナイルマグロ・ツナの海は、何処か緊張したように背鰭をピンッと張っている。
だってナディアってば、スパルタだったから。
「言う事聞かないとびりびり痺れさせるわよ」
それはもう、ナイルマグロにタタキにされるんじゃないかって危機感を抱かせるくらいに。スパルタだった。
(「フェオの憎たらしい顔を歪ませるいい機会。あの男に勝つ為ならなんだってやってやる」)
ツナの海、ナディアの手によって3時間きっちり調教済みである。
そのフェオ・アンスール(熱砂・g04703)はと言うと、ひとつ飛んだ左隣の27番にいた。
「流石、ジェア・レムが選んだ鮪だ。見事な鮪だ」
ジェア・レムが告げた『そこの群れの最後尾から前3尾目のマグロ』――周りに丸聞こえであっただろうそのマグロを、フェオは変えることなく選んでいた。
クロノヴェーダ相手ではあるが、マグロの目利きに関しては信用しても良いと思ったのがひとつ。
そしてもうひとつは、フェオ自身の目だ。
「お前も勝ちたいのだろう?」
フェオが問いかければ、肯定するような視線が返って来る。そうかあ?
「その眼に宿した闘争心。"勝つわよ"と語り掛けて来る眼光。気に入った」
まあどうあれ、フェオがそう感じたのならそうなのだ。
「征くぞ、ハトメヒト! 女神の名はお前にこそ相応しい!」
そしてフェオは、ふてぶてしくも魚の女神の名を付けたマグロに騎乗する。
「~♪」
そんな2人の間の28番で、アリア・パーハーツ(狂騒・g00278)は上機嫌だった。
その理由は、アリアのすぐ目の前にある。騎乗したマグロに、鮫と見紛うばかりのサメっぽい背鰭があるのだ。マグロなのに。
「ツナシャーク号! 立派なサメになるんだぞ!」
背鰭ばかりではなく、尾鰭も胸鰭もサメを思わせるデザインのパーツを上からかぶせていた。
ツナシャーク号の鰭でマグロのままなのは、ない。
そんなサメパーツの制作に、アリアは3時間ほぼ全部を費やした。
「負けても怒らんが、言う事聞かんかったらマジその場で捌くからなお前」
自分の立場をきっちりと教え込んだくらい。
そういう意味では調教済みだが、特訓不足な感はあるかもしれない。
それが吉と出るか、凶と出るか。
あまりトレーニングをしていないと言う意味では、ナディアの右隣、30番に付いたテクトラム・ギベリオ(砂漠の少数民族・g01318)もそうである。
トレーニングは準備運動を兼ねた軽い走り込み――泳ぎ込み?飛び?――まあとにかく、その程度。
消耗を抑えて仕上げて来た。
故にナイルマグロは疲れはない筈だ。3m近い巨体は、羽の様に軽く飛んでくれるだろう。
「皆、名を付けているのか?」
その背の上で、テクトラムは思案顔になっていた。他のディアボロス達がそれぞれの名前でナイルマグロを呼んでいるのを見て、そう言えば名前を付けていなかった、となっているのだ。
共に騎乗したスフィンクスの毛玉を手慰みにモフモフしながら、テクトラムはマグロの名前を今になって考える。
「羽の様に……では、はごろもf――ハゴロモ号で」
何か危ないことを言いかけた気もしたが、無事にテクトラムのマグロも命名された。
「ツナを統べる者という意味だ、多分」
何故ハゴロモなのか――そう問われたら、テクトラムはこう返しただろう。
●他で通じなくても許してね
以上が、くせ者ぞろいのディアボロス――いや、この時ばかりは復讐者ではない。
【動物の友】の効果も手伝って、皆、立派なナイルマグロ乗りだ。
そう――効果を発揮しているのである。ナイルマグロに。【動物の友】が。
通常の生き物かぁ、これ?
――通常の生き物である。少なくとも、この時空に於いては。
ナイルマグロはナイル川に普通に生息するものになってしまっているし、野生のナイルマグロもいるし、ナイルマグロを獲った事のある現地の漁師も少なくなかった。
つまりこの時空においては、ナイルマグロは通常の動物に含まれるのだ。
そう言う事にしておこうね。
何はともあれ、レースが始まる。
●レースはスタート前から始まっている:サアシャ、燐寧
「まずはアレだな――手をあわせる」
「ふふ、俺も貰っておきますか。負けませんよクーガ」
マグロの上で、クーガとケペシュが手を合わせる。
2人に倣うように、他のディアボロス達もそれぞれのナイルマグロの上で手を合わせていく。
するとマグロレースのコースが、【強運の加護】の証である黄金の輝きに包まれた。
運以外の要素が行動に絡まない場面、と言うものが果たしてマグロレースの中に在り得るのか疑問ではあるが、それはそれ。【強運の加護】をしておいても損する事もないだろう。
「ぺーぺけぺぺーぺけぺぺーぺっぺっぺーぺっぺっぺー」
手を合わせながら、クィトがなんだか気の抜けそうなファンファーレを口遊みだした。
スタートラインの横に、ジェア・レムが立って――。
「いきなりトラップとか、困りますからね」
スタート前に、サアシャが先手を打った。
スタートラインの向こう、目の前の直線を暫く緩やかな水の流れへと変えたのだ。
「ギョッーギョッギョッギョッ!」
「愚かツナ!」
「ナイルマグロが魚なのを忘れたツナか!」
「砂漠の上でも平気で飛べるナイルマグロだが、魚は魚ツナ!」
「やっぱり水の中が一番ツナ!」
それを見た巨大魚使い達は揃いも揃ってほくそ笑んで、ナイルマグロに乗ったまま水流の中に入る。
確かにマグロは魚だ。水の中が一番だと言うのも、そうなのだろう。
だが――ディアボロス達が誰1人水流に入ろうとしないでいるのを、彼らはもっと気にするべきだった。
レースはもう、始まってるのだから。
「ハトメヒト賞、ナイルチャンピオンシップ――スター」
「んふふ、泥濘の地」
ジェア・レムの開始の合図にやや被せる形で、燐寧が笑みを浮かべて告げる。
直後、燐寧の周囲が泥濘へと変化した。
砂漠も、水流もお構いなしに。
「ギョワー!?」
「なんじゃこりゃツナー!?」
「水がドロドロになったツナ!?
泥濘に飲み込まれる形となった巨大魚使い達とナイルマグロは動揺し、ビチビチと跳ねて泥まみれになっていく。
「さ、ら、にぃ……よーいしょっ!!」
燐寧はやおら妖刀を抜くと、ター坊の上で器用にくるっと回りながら刃を振り抜いた。
呪式:荒漠怨砂――ヘクスアーツ・デューンブラスト。
妖刀に宿るクロノヴェーダ犠牲者の怨念を砂のような粒子とし、斬撃に乗せて放つパラドクス――なのだが、この砂漠のど真ん中で使えば怨念と言うか、普通に衝撃で砂塵を舞い上げる斬撃と化す。
要するに、目潰しである。
「目が、目がー!?」
「おのれ卑怯ツナー!」
泥に嵌ったところに燐寧が重ねたダメ押しで、数体の巨大魚使いが砂に目が入って藻掻き出した。
当然、その隙にディアボロス達はスタートを決めていた。
「行って、モナマグロ号」
「活きますよ、マグ朗!」
「最初から全開だ。いっけぇぇ! 鮪山かけ!」
1番につけたクィトとその隣のサアシャ、そして中よりからラズロル。
「ちぇー。皆は騙せないかぁ。まあいいやぁ。おさっきにぃ♪」
泥濘トラップに続けて目潰しまで仕掛けた分、燐寧はほんの少し遅れる形となったが3人の後ろにピタリとついて行っている。
全マグロ綺麗なスタートだが、特にこの4名が鮮やかなスタートでトップに躍り出た。
●マイペースさんたち:タオタオ、ゼキ
約2名、タオタオとゼキを除いては。
「――……あ、こら、舌をしまいなさい舌を。そんなひとを舐めくさってそうなツラしたらダメでしょ、めっ!」
タオタオはスタート直後に変顔をし出したマグロを宥めていて、思いっきり出遅れている。
「苦労してんなぁ」
「マ、コイツなら出遅れたって勝てると信じてるからな」
何故か横でニヤニヤしているゼキに、タオタオはマグロを撫でながら返す。
「円で120億くらい紙屑にするような雰囲気もあるけど、信じてるからな」
ちょっとプレッシャーも掛けておく。
「……んで、ゼキはなにしとんの?」
「おれたちの誰かが優勝すりゃいいんだろ? そんなら支援に回ろうと思ってな」
訝しむタオタオに、ゼキが笑って返す。
「ふーん? で、ホントは何企んでんだ?」
「企むなんて人聞きの悪い。支援に回ったゼキさんも頼りになるとこ、見せてやるよ」
2人がそんなやり取りしてる前で、泥を撒き散らしてマグロが飛び出して行った。
ナイルマグロは飛べるお魚だ。そう記してしまうと、魚なのか途端に怪しくなるが魚類だ。
大事な事は魚類か否かではなく、飛べると言う事。そう、飛行できる、のだ。
泥濘の地の効果は、飛行できない対象に発揮される。
飛べるナイルマグロには、一時の足止めにしかならない。
巨大魚使い達はすぐにレースに復帰していた。
「おっと。こうしちゃいられねぇな。俺らも行くぞ、中トロ号」
「楽しくいこうぜ。レースも大事だが、楽しく泳いでくれるのがいちばんよ」
そのすぐ後ろにピタリと付けて、タオタオとゼキもレースに加わるのだった。
●初手から必殺:クィト
先頭集団が、第1コーナーに入っていく。
現時点の先頭は、ラズロルだ。最初から全開――そう言い放った通りにナイルマグロを最大限に飛ばして大逃げを打っている。
スタミナが持つのだろうか。
「良い調子だぞ、漬け丼。持久力は心配するな。策はある、練習もしただろう?」
ラズロルも、そこは考えているらしい。
その後ろにはクィト、サアシャ、燐寧がほとんど差がなく続いている。
更に後ろを見てみると、先行に差しタイプのナイルマグロを選んだディアボロス達の多くが中団を形成していた。団子状態と言うか、まだ順位の入れ替わりが激しい状況だ。追込タイプはまた更にその後ろ。
そして多くの巨大魚使い達は、その追込タイプのディアボロス達の更に後方で、別の集団を形成している。
「くっそー! してやられたツナ!」
「前が塞がってるから大外しかないツナ!」
「これはまずい展開ツナ!」
そんな集団の中で、一部の巨大魚使いが強い焦りを露わにしていた。
第一コーナー突入に合わせて大外に向かっている。そこから捲って、前方集団をかわして前に出ようと言うのか。
彼らがそこまでしているのは、乗っているナイルマグロが全て、全体的にシュッとしている逃げ型だからだ。
スタートに失敗しディアボロスに先行を許したばかりか、差しや追込よりも後ろに入ってしまったのだ。これでは逃げのナイルマグロの持つポテンシャルを活かせない。
逃げタイプとしては絶望的な形を挽回すべく、最初のコーナーで大外勝負に出たのだ。
それでも、前にはまだ逃げのディアボロスたちがいる。
「こうなったらナイルマグロの水心で――」
「千尾の小魚で――」
さらに手段を選ばず、前をこじ開けようとする巨大魚使い達。
「しーかーしー。我のじしょに容赦という言葉はない」
迫る巨大魚使い達の気配に気づいたクィトは、第1コーナーに入る前に手を打つ事にした。
同じ逃げのナイルマグロを駆るライバルは、少ない方が良い。
「そい」
クィトは後ろを見ずに、【浮遊球形ガジェット『モナカ』突撃型】をぽーんっと放り投げる。
「ツナ?」
なんだこれはと、元々丸い目を更に丸くする半魚人達。
「ひっさつのモナカスパーク」
バチバチバチバチバチィッ!
「「ギョギョギョギョギョギョギョギョ!?」」
クィトが告げれば、『モナカ』突撃型が火花を散らし激しく放電し、電撃が巨大魚使い達を襲う。
突撃のキンカロー。
「我の後ろに立つのが悪いんだぞ」
ふんす、と第1コーナーを曲がっていくクィトの後方で、黒焦げになった巨大魚使いが倒れた。
「あのあの。他の人も巻き込まれそうになってる気がするんですが?」
「……我が勝つのでヨシということで。汝のぎせいはむだにせぬ」
すぐ後ろで知り合いの悲鳴を聞いた気がするサアシャの声に、クィトは前だけを見て、或いは後ろから目を逸らしながら返していた。
●カワウソはマグロを食べるか:カルメン
「あっぶねぇ……こりゃ、びゅーんって泳がせればイイってもんじゃなさそうだなー」
妨害アリのマグロレース。
スタート直後に斬撃、第1コーナー前には放電と、早々にパラドクス飛び交った光景に、先頭集団を追うカルメンはマグロの上で目を細めていた。
しかもさっきの放電は危なかった。
大外から前に出ようとした巨大魚使いを狙ったのだろうが、先行タイプのテッカマキを駆るカルメンも巻き込まれかけた。
「こうなりゃ、片っ端から妨害してやるぜ!」
これはそう言う勝負だと、火が付いたカルメンも妨害の一手を打つことにした。
「狂気面の大いなる獺の魔獣よ、川の狼の如き獰猛さで天敵を殲滅せよ」
血吸川の大神――ブラッディ・ギガントオッター。
マグロレースのコースは楕円形。アルファベットのO(オー)かローマ数字の0(ゼロ)の様な形だ。
その中心には空間がある。
そこに、現れた。
カルメンによって召喚された巨大なオオカワウソ使い魔が。
「あ、あれはなんだツナー!?」
「巨大な獣ツナ!?」
「どっかで見たことあるような気がするツナ……?」
その姿に、目を奪われる巨大魚使い達。
なお、古代エジプトにはカワウソ(に類する動物)は生息していたらしい。日光浴の際、太陽に向かって手を合わせるような仕草を取る事から、太陽神の眷族の様に扱われていたのではないか――と言うのが最終人類史での説だったそうな。
まあそれはさておき。
「え? もしかしてあれ、カワウソかツナ?」
「いやいやまっさかぁ。カワウソあんなにでっかくないツナ……」
「でも、なんかこっちを食べたそうに見てるツナ?」
巨大魚使い達が感じた危機感は、すぐに現実の事となった。
「ちょ待って食べないでツナァッ!?」
巨大なオオカワウソは、目を付けたナイルマグロを、巨大魚使いごとバクンッと豪快に一口にした。
――プッ、ぺちっ。
「ツナァ……」
しかし巨大魚使いだけが秒で吐き出され、前足で砂に叩きつけられる。
「ヴァーゥ!」
マグロだけもっと欲しかったのだろうか。
巨大オオカワウソの口から放たれた闇の魔力が、他の巨大魚使いへと降り注いだ。
「あー……マグロ使いは不味かったのか。めっちゃ八つ当たりしてら」
振り向いて様子を見ていたカルメンは胸中で手を合わせた。
●誇りより勝利を目指して:千隼
競馬の場合、一口に差しと言っても、位置取りは色々だ。
中団前方から差す場合もあるし、ほとんど追込と変わらないくらいの後方から差すこともある。
マグロも同じだ。
差しのツキジマルを駆る千隼は中団前方、逃げの背中も見えつつ先行を追走する形で進んでいた。
「妨害は現役騎手としてなるべくしたくは無い……と思っていたんだがな」
差しに適した位置からならば、畢竟、逃げや先行の背後を狙い易い形になる筈である。
だからこそ、千隼は積極的な妨害を考えてはいなかった。
けれどもそんな考えは吹き飛ばされた。
「い、今のは危なかった」
カルメンの召喚したオオカワウソが放った闇の光線の衝撃で、ふわっと浮かんだ空中で。
クィトの放電現象は大外だったのでまだ良かったが、マグロ狙いのオオカワウソの攻撃は、影響を受けない筈がない。
「どけどけツナー!」
「邪魔だツナ!」
「どかないならこうしてやるツナー!」
しかしそんな他のディアボロス達の妨害行為に合わないようにとツキジマルを抑えようにも、後ろからは巨大魚使い達の怒号が響き、ナイルマグロの口から放たれたであろう水も飛んでくるわけで。
「仕方がないよな。ああ、仕方がない。降りかかる火の粉は払わなければならないからな」
自分に言い聞かせるように呟きながら、千隼はスッと外にズレて後ろの巨大魚使いの進路を開ける。
「「「ツナツナツナー!」」」
それが罠だと気付かず突き進んでいく巨大魚使い達を見やりながら、千隼は銃を手に取った。
「目が醒めるようなサメの弾丸を喰らえ」
――寝覚月。
千隼が放った弾丸が巨大な雷のノコギリザメとなる。
「サメだー!」
それを見たアリアが声を弾ませる中、雷のサメは前方の巨大魚使い達と、ついでに巨大カワウソにも襲い掛かった。
負けじと、巨大カワウソも闇の光線を連発し始める。
「ギョギョッ!?」
「なんだこれはツナー!?」
前門の巨大カワウソ、後門の雷のノコギリザメ軍団。
2体の間に安全地帯などない。
うっかり前に出た巨大魚使い達は怪獣に挟まれたようなものだ。
挟まれた巨大魚使い達は、ロスを覚悟で大外から捲って逃げようと――。
「ツナ?」
だが、彼らを襲う異変はそこで終わらなかった。
●旋律の無自覚ツインマグラー:エトヴァ
「ラズ、随分と飛ばしているな。そんなに持久力のあるマグロだったのか」
ハナを進んでいる相方の姿を遠くに、エトヴァは後方集団の中で控えていた。
だから、安全に様子を見れていたのだ。
巨大なオオカワウソが現れるのも、雷のサメが現れるのも、そして怪獣大決戦状態になるのも。
「これはチャンスだな。利用させてもらう」
それを機と見たエトヴァは、ツナマヨ号の鰭から手を離して身を起こし、空色の翼を広げた。
足と翼だけでツナマヨ号の上でバランスを取りながら、エトヴァは鮪上でバイオリンを構える。
~~♪ ~~~♬
勇壮な旋律が、マグロレースの最中に響き出した。
マグロの上でバイオリンを弾いていると言うのに、エトヴァの奏でる音は少しのブレもなかった。エトヴァを乗せているツナマヨ号も、エトヴァの演奏の動きと音に慣れているのか、スピードを保ったまま泳ぎ続けている。
これがエトヴァの3時間の特訓の成果。
「よーしよしツナマヨ号、いい子だ。いっぱい頑張ったらマヨ………いや、ごはんをあげよう」
飴と鞭ならぬツナとマヨ作戦である。
そしてエトヴァはただ、マグロレースにBGMをつけていたわけではない。
ここで少しでも、巨大魚使いの数を減らすつもりだ。
Frucht der Laster――フルフト・デア・ラスター。
蕩けるような音色は、心臓を鷲掴みにする魅惑の幻を魅せる旋律――の一端。
旋律は繰糸となり、怪獣大戦争から逃れんと巨大魚使いのナイルマグロの尾に絡みついて、傀儡となす。
「今日は俺もマグロ使いになる」
などと言いながら、エトヴァはマグロに乗りながら旋律で敵のナイルマグロを操り始めた。
「そっちじゃないツナ! 言う事を聞け、お願いだから聞いて下さいツナー!!」
巨大魚使いの声も空しく、その下のナイルマグロはエトヴァの意のままに、他の巨大魚使いに体当たりしたり、進路を妨害するように旋回したりして逃げ道を封じ、カルメンと千隼による怪獣大決戦の被害を拡大させていく。
エトヴァは、気づいていたのだろうか。
手を使わずにナイルマグロを乗りこなしながら、別のナイルマグロを、しかも他の誰かが騎乗しているナイルマグロを操る。
それはジェア・レムがやってみせた(そして失敗した)それとは違う形で、ツインマグロスタイルと呼べるものであると。
マグロ使いどころの話ではない。
●野生のナイルマグロトラップ、不発に終わる
第2コーナーを抜け、向こう正面の直線に入る事には、巨大魚使いの数は半減していた。
逃げ・先行の巨大魚使いが、全て脱落したのだ。
だからだろうか。皆、ナイルマグロの体力を温存しているのか、大きな妨害がピタッと止まった。
まあ、虎視眈々とマグロを狙っているカルメンの巨大オオカワウソがまだいるので、目立つ行為を避けていると言うのもあるだろう。
そしてレースは大きな動きがないまま、第3コーナーへ。
「うぉっと」
「でこぼこだ」
そこで判明した砂地の変化に、それぞれのマグロの上でラズロルとクィトが驚いたように声を上げた。
第3とその先の第4コーナーの砂地は、上りと下りの緩やかな傾斜が続いているのだ。
「あー、そう言う事ねぇ」
合点がいって、燐寧が頷く。
野生のナイルマグロが水を吐くのは、ナイルトビウオを獲る習性を利用したのだとか。
そしてここから少し行けば、コース大外沿いにはナイル川が流れている。
つまり、トビウオの様な動きを無意識にさせ易いコースになっているのだ。
けれど今回は、今までのマグロレースとは何もかもが違う。
「川か……あそこいるんだよな、野生のナイルマグロ。よし、食ってきていいぞ!」
「ヴァゥー!」
カルメンの指示で、巨大オオカワウソがナイル川に突っ込んでいく。
残っている巨大魚使い達は、それを止めようとはしなかった。
野生のナイルマグロトラップが潰されるだけで自分たちが助かる可能性があるなら、安いものだ。
「ふーっ。これで最大のトラップ潰せたな」
やり切った顔のカルメンだが、実は誰よりも安堵していたのはカルメンかもしれない。
使い魔オオカワウソは彼女の指示に忠実な筈なのだが――涎ダリッダリのオオカワウソの視線がテッカマキにも向けられている気がしてならなかったのである。
●餌で釣る:サアシャ、クーガ
そして事態は再び動き出す。
第3コーナーになっても、先頭、ハナを行くのは以前ラズロルだった。
だが後ろのクィト、サアシャ、燐寧との差はかなり詰まっているし、さらに後ろからは、カルメンやクーガも迫っているし、千隼も差を詰めてきている。
更に後方の集団も、じわじわと上がり出している。
そろそろ、ラストを見据えた仕掛け所のひとつだ。
「む? 来てますか、銀シャリ」
落ちないようにと背中合わせに括りつけたダンジョンペンギン『銀シャリ』が、サアシャの横腹をぺちぺちと叩いて来る。
その合図で、サアシャは後ろを振り向きもせずに片手を開いて掌を天に掲げた。
「天より降りたるは雨のみにあらず!」
――本日は魚天なり。
マグロレースのコース中にほんのりと潮の香が混ざり、空に雲が立ち込める。
雲の中、何かが陽光を浴びてキラッと輝き――降って来たそれが、砂漠に突き刺さった。
シュッとした細身の、マグロに比べれば遥かに小さい魚。
特徴的なのは、まるで翼の様に大きく広がった胸鰭。
トビウオだ。
そこら辺のナイル川に泳いでいるのと同じナイルのトビウオが、無数に空から降って来るのだ。
「どうなってるツナ!?」
「トビウオだからって、空から飛んでくるんじゃないツナ!」
「ナイルにマグロ放流しといて、そう言う事言いますか?」
空からのトビウオに驚く巨大魚使い達に、ケペシュのツッコミが飛ぶ。
「トビウオですよー! 新鮮で活きの良いトビウオですよー!」
後ろでそんなやり取りがあったとは気づかずに、サアシャは声を張り上げ、降らせたのはトビウオだとアピールしていた。
ナイルマグロがナイル川のトビウオを食べていると言う情報は、この場の漁師に話を聞いたディアボロスを通じてサアシャも得ていた。
レースもそろそろ後半。良い感じに体力が消耗してきてるマグロ達の前に、好物が降って来ればどうなるか。
「サアシャのオサカナか」
ゴーグルをしたままトビウオを顔で受けていたクーガは、サアシャの意図を察して片手をマグロの胸鰭から離した。
「ならオヤツのジカンだな」
敵のマグロの胃袋を刺激する妨害を考えているのは、クーガも同じだったから。
――おやつのうた。
ナマアジ、スルメイカ、チョコに酒ビン――etc。
鼻歌混じりにクーガがポケットを叩けば、クーガが脳裏に描いた食材がポケットから次々と飛び出して来る。
「今度はなんだツナ!?」
「見たことない魚だツナ」
「ナイルアジに似てるような……?」
「だから食べるなツナー!」
増えた小魚に、ナイルマグロの食欲を抑えようと巨大魚使いの苦労が増える。
「こっちはなんだツナ?」
「知らんツナ……」
アジはともかくスルメイカを見たことなかったのか、巨大魚使い達が苦労の中に困惑も示していた。
●ツッコミ(物理)な2人:ルーシド、ケペシュ
「……これはまた……」
突然のトビウオの雨に、エトヴァは魔力障壁を展開して盾としてやり過ごす。
だが、そのような防御手段を用意していない者の顔には、容赦なくトビウオがビチビチと当たっていた。
「なあジズ。これ向けられると鬱陶しいな」
「ふ……私もまさか自分が魚を浴びる日が来るとは思ってなかった」
魚を降らせる術をサアシャに伝授したジズに、いつの間にか上がって来てたタオタオの視線が突き刺さる。
「ン? 誰だ酒落とした奴。おっスルメイカまで、ありがてえ」
その横では、ゼキがスルメイカと酒にホイホイされていた。
マグロの鞍上から落ちてるものを拾おうとすれば、中トロ号の身体を傾けるしかない。それで速度が落ちるのも構わずに、ゼキは酒とスルメイカを拾っていく。
「……これ飲酒運転になるやつ?」
「大丈夫じゃろ。タオが許す。のめのめ」
酒瓶を拾ったものの、呑んでいいのかと訝しむゼキの背中をタオタオが押していた。
とまあ、魚浴びつつもマイペースな面々もいる一方で、巨大魚使い達への妨害は過激化していた。
ナイルマグロが小魚に目を奪われ、進めなくなっているのだ。
この機を逃す手はない。
「しねどす!」
そんな物騒な京言葉と共に、氷が飛んだ。
ルーシドだ。
カマセの上でルーシドが作った氷の塊を、サディークとわたゆきの3人で手分けしてぶん投げているのだ。大丈夫?マグロの背中、冷えてない?
「痛いツナ!」
「冷たいツナ!」
「やめれツナー。冷えるとナイルマグロの動きが鈍るツナー!」
「泣いたり笑ったりレースに復帰出来ないようにしてやります!」
巨大魚使いに当たろうがマグロに当たろうがお構いなしに、ルーシド達は氷を投げ続ける。
うっかり味方にも飛んでってる気もするが、まあ今更だ。
「わたゆき、良い調子です!」
そして最も氷のコントロールが良いのは、わたゆきだった。
ダンジョンペンギンが元々、冷気を操る力を持っているからだろうか。わたゆきの氷の扱いは手慣れた様子で、主よりも良いコントロールで次々と氷を投げては巨大魚使いだけにぶつけていく。
「サディーク! 『俺はネタ担当じゃないんだが』みたいな顔しない!」
一方、狙いが甘いジンには、ルーシドの檄が飛んだ。
「普段涼やかなイケメンの僕の現状を見習って下さ……あ、妨害しようとする敵がいる!」
サディークに渡そうとしていた氷を、ルーシドはマグロの上で振りかぶる。
「ぶぶ漬やなくて堪忍なァ、しねどす!!」
現代の京都人がツッコまれそうな間違い過ぎたルーシドの京都弁と共に、氷が勢いよく投げられる。
ゴチンッとそれにぶつかった巨大魚使いが――凍り付いた。
「おや?」
首を傾げるルーシドの横を、わたゆきが投げた氷に隠れる様にして小さなミサイルが飛んで行く
「ギョキョーッ」
それが着弾と同時に冷気が広がり、巨大魚使いがマグロごと凍り付いた。
「冷凍マグロになれ」
ケペシュである。
しかもミサイルと名付けたナイルマグロに取り付けた『凍結弾精製装置』から放つ、フリージングミサイルだ。
冷気が爆ぜれば、冷気が広がり、ナイルマグロもナイルトビウオもまとめて凍り付かせていく。ナイルのお魚冷凍便か。
「こりゃたまらんツナ!」
巨大魚使いはナイルマグロをけしかけて、氷と冷気から逃げようと――した先に、クーガの罠地帯があった。
「ギョギョギョギョギョッ!?」
上を通ると電気がビリビリするトラップに見事に引っかかった巨大魚使いの動きが止まる。
「ヅナナナナナッ!?」
とは言え、敵味方全員が常に動いている状態では、罠地帯を特定の相手だけにかからせるのは難しい。
「あわわ、これ、お、おれにもとどく――」
「さっきのはあくまで巻き込んでしまっただけで――」
クーガ自身や、敵を追って上がって来たケペシュも巻き込まれていた。
●因縁の結末:ナディア、フェオ、テクトラム、アリア
トビウオ、ナマアジ、その他諸々。
食べ物作戦で魚群は乱れ、逃げ・先行が続く先頭集団と中盤の差は第3コーナーで大きく開いていた。
千隼などいち早く飛び出した差しの者もいるが、多くは巨大魚使いとディアボロスがごっちゃになっている。
そんな団子状態のまま、レースは第4コーナーへ。
そこは第3コーナー終わりから緩やかな上り坂になっていた。
急な坂ではないが、ここで最後の直線を見据えたスパートをかければ、スピードに乗ってコーナーを登り切った後で浮いてしまうだろう。そこを調教されたナイルマグロに狙われると言うわけだ。
そんな状況で――ナディアとフェオの仁義なき戦いが始まろうとしていた。
「ええい、色々邪魔ね!」
鞍上の巨大魚使いを失ってぽつねんとした顔でそれでも泳いでいたナイルマグロの尾を掴んで、ナディアは【怪力無双】でぶん回した。
トビウオとかアジとかスルメとか、マグロ浮いてるから踏みはしないけど邪魔なものを薙ぎ払う。
「飛んでけっ!」
更にナディアは、ぶん回した勢いそのままに、ナイルマグロをぶん投げる。
フェオの方へ向かって。
「マグロが――さてはナディアの差し金か」
当のフェオもナディアを警戒していたので、すぐに飛んでくるマグロに気づく。
その上で、フェオは何もしなかった。
『幸運』にも吹いた強風にマグロの魚体が流され、レースコースの外にマグロが突き刺さる。
「ちっ……そこの主を失ったマグロさんたち。あそこの胡散臭い狂犬の元へ行けば、餌が貰えるわよ」
ならばとナディアは、他にも誰も乗っていないマグロをフェオへとけしかけ出した。
――!
ナイルマグロ達の目がキョンッと丸くなり、フェオの方へ群がってく。
「うわなんかフェオの周りマグロだらけ、……あはは! ナディアさんの仕業か!」
その光景に、少し前を行きながらもチラチラ振り向いていたアリアが笑みを浮かべた。
「ライバル、君の恋人凄いな」
「ふ、私のナディアだぞ。凄いに決まっている」
すぐ後ろにいるテクトラムが、自信たっぷりにアリアに返す。
アリアもテクトラムも、フェオとナディアの勝負が気になって仕方がない様子だ。けれど差しのハゴロモ号に乗ってるテクトラムはともかく、アリアのツナシャーク号は先行タイプ。大分後方にいるが、大丈夫だろうか。
「次から次へと、小賢しい」
一方のフェオは、主なきナイルマグロに取り囲まれて眉根を寄せていた。
「だが、好都合ではあるか。精々利用してやろう」
フェオは周囲のマグロを一瞥し――。
「ク、ハハ! ハトメヒトは良い鮪であろう! お前達、彼女に路を拓け、女神のお通りである」
自信たっぷりに高笑いを響かせ告げれば、フェオの周囲に群がっていたナイルマグロ達はびしっと整列した。
あっちに行けば餌が貰える――そう告げられた先で、この自信たっぷりの態度である。
そうか、この人間の言う事を聞けば、餌が出るんだな。
マグロ達の脳内でそんな判断が下されたとしても、おかしな事ではないだろう。マグロの思考なんて知らんけど。
「なぁっ」
「ふっ」
驚くナディアに勝ち誇った笑みを向け、フェオはナイルマグロのラインの中を進んで――。
「私は彼女に勝って欲しいのでな。悪く思うなよ!」
そこにテクトラムが突っ込んできて、マグロの作ったコースを体当たりで崩しフェオの進路を妨害する。
「やってくれるな、テクトラム殿」
「テクトありがとう! さすが3m級、体当たりが強烈ぅ」
恋人の援護に、ナディアもにっこり投げキッス。
「おいライバル。君がそう来るなら、ボクも容赦せんぞ。君にだけは負けるものか」
そっちがそう来るならと、前方を行くアリアはポケットに忍ばせていた手榴弾を後ろに向けて放り投げた。
ドンッ!
ドドドンッ!
爆音が立て続けに響き、炎を伴わず、衝撃と風が吹き荒ぶだけの爆発が立て続けに起こる。いわば手榴弾の空砲。
けれどこの砂漠においては、それだけでも砂を巻き上げると言う効果が付いてくる。
「あはは、アリアさんも負けてない! 手榴弾が炸裂して…わわっ! トビウオが飛んできた!」
砂と一緒に舞い上がったトビウオが、ナディアの顔にべちんっと直撃。
「アリア、手榴弾とは大盤振舞だ! 爆発に乗じて前に詰めさせて貰、ぐ!」
反撃を狙っていたフェオも爆風と砂に呑まれかけ、溜まらず結界を展開する。
「ナディア、ここだ。ここで加速して、ライバルも抜いて上位へ一気に追いつこう」
そんな中、テクトラムはアリアの手榴弾をヒントに加速するトラップを生成し、一気に加速しようと――。
「テクトラム殿、そのトラップは凶悪過ぎだな。俺も混ぜて貰おうか」
だが、爆風を掻い潜ったフェオが、そうはさせじと追いついていた。
「さて、ナディア追いついたぞ。味な真似をしてくれた」
「しぶとい狂犬め! いい加減観念して落ちろ!」
「この礼、その身を以て味わうが良い!」
臍を噛むナディアに、フェオは愛用の杖を掲げた。
「堕ちよ堕ちよ死兆星、宙より来たりて崩壊を齎せ」
刻み描くルーンはハガル。
それは天高くより降り注ぎ風に渦巻く真白きもの。雹を意味する魔術文字に込められたその意味は――崩壊。
更にフェオが込めたありったけの呪力が、掲げた杖の先で輝きを放つ。
だがアリアとて、その術が完成するのを待つ筈がない。
「繋ぐ漆黒、囁く呪いは死を紡ぎ、四方を望む。生死の境を嘲笑い 顕れよ不浄の鎖!」
やや省略気味の詠唱で、影より呪縛の鎖を生み出す。
「往生際の悪い男は嫌われるわよ!」
「構うまい。もはやレースというより騎乗戦だが、女狐には完膚なきまで勝つのだ!」
呪縛の影戯――アスワド・ゾッラ。
秘された呪術・崩壊の星――ルーン・ガルドゥル・ハガル。
影より生じた呪縛の鎖が伸びて、フェオとそのナイルマグロ・ハトメヒトに絡みつく。
それは解ける事ない輪廻の呪縛の果て。足掻いた所で、抜け出せる筈がない――だがフェオは杖の先に集めて圧縮した呪力で以てその呪縛に対抗しつつ、強引に杖を振り下ろした。
杖は空を切り、ただ砂漠を叩いただけだったけれど。そこを起点に崩壊の呪力が一気に溢れ出す。
星が弾けたような衝撃が膨れ上がり、砂が崩れて消えていく。
陥没した砂漠に、すぐそこを流れるナイル川から水が流れ込んだ。
更にフェオはそれほどの衝撃の中に、光の呪力も込めていた。一帯は、まばゆい光に包まれていた。
「ギョバァッ!?」
「ツナァァァッ!」
浅はかにも2人が争ってる隙に抜こうとした巨大魚使いが、光の中で余波を浴びて消滅する。
「ぐああ、目が! 目がぁぁ!! ていうと思ったか!」
だがそれを読んでいたナディアは素早くサングラスを装着し、逆にフェオにげしっと蹴りを叩き込む。
「貴様っ!! 最後は思い切り物理攻撃か!」
「どの口が言う、女狐。先にマグロを投げると言う物理攻撃をしたのはどちらだ!」
そして光と衝撃が収まった砂漠で、2人は睨み合う。
――砂漠の上で。
「あら?」
「ん?」
ナディアもフェオも、砂漠の上に立っていた。
ツナの海とハトメヒト――2人が乗っていたナイルマグロの姿は、影も形もない。砂漠の一部を崩壊させ、地形を変えるほどの衝撃にナイルマグロが耐えられる筈がなかった。
「また命拾いしたようね」
「お互いにな」
ナディア、フェオ。それぞれのナイルマグロがグロッキーに付き、ここでレース終了。
「テクト! あとは頼んだわ!」
「アリア、任せたぞ」
――そして代理戦争、勃発。
と、途中退場となった2人であったが、この勝負は2人の預かり知らぬ所で思わぬ副次効果を生み出していたりする。
ナイル川の中で待機している野生のナイルマグロ達が、この戦いの衝撃を感じていた。
そして去来したのは――恐怖である。
●大地が弾んで:ラズロル
先頭集団は、いよいよ最終直線に入ろうとしていた。
最初にコーナーを回って来たのは――クィトだ。
すぐあとにサアシャ、燐寧が続いている。
大逃げを打ったラズロルは、遅れ出していた。テールステーキ(ナイルマグロ)が半分白目になっている。明らかにバテてるようで、尾鰭の動きも元気がない。後方からは、カルメンやクーガ、ジズや千隼と言った先行や差しのマグロに乗ったメンバーも迫ってきている。このまま魚群に飲まれて消えるか。
「まだだ。風塵魔術師と鮪の本気を見せてやろう!」
だが、ラズロルには秘策があった。
「砂漠の地形は我が手中にあり! 我が意のままに唸れ――砂塵海嘯!」
ラズロルの眼下で、砂が弾むように隆起した。
「波乗りヒャッハー! へばり気味のポキを押し流せ!」
海嘯――大波となって全てを押し流さんとする砂を、ラズロルはナイルマグロが疲れていても乗れるように足元で起こしたのだ。元より、ラズロル自身に有利な地形を作るためのパラドクス。こういう使い方も出来る。
そのまま砂の大波に乗って、敵も味方も押し流しながら先頭へ――。
いければ良かったのだが、最終直線まで策を隠していたのはラズロルだけではない。
「な、なんだぁ!?」
ラズロルの足元の砂が、突如7色に輝き始めた。
●古代魔術と現代技術の融合、そして飛ぶ黄金の刃:ジズ、タオタオ
「よし、ここだ――ゲーミング砂嵐、発動!」
前方で砂が隆起し地形が変わったのを見た直後、ジズも動いていた。
砂が海嘯となる中、新たに吹き荒れるは虹色に輝く砂嵐。
赤・橙・黃・緑・青・藍 ・紫――それらの間のグラデーションまで含めて、色は目まぐるしく入れ替わりながらピカピカと明滅する。
その1,680万色の輝きは、ジズが最終人類史で出会った現代技術。
元々、幸運の加護で黄金に輝いていたマグロレースコースが、ピカピカと明滅する虹色カラフルゲーミング空間へと変わっていく。
「うわ! 落ち着け、落ち着くんだ鮪カツ!」
その世界の変化の影響を最も受けているであろう1人は、ラズロルだった。
あまりにカラフル過ぎて、砂の波が一気に読み難くなっていた。
普通の砂漠で砂に乗る特訓はしていたが、こんな特訓はしていないだろう。出来る筈がない。
「隙ありー」
ガジェットで光に慣れているからか、その隙にクィトがしれっとハナに出た。
「目が、目がー!」
「チカチカするツナァ……」
一方、巨大魚使い達も初体験のカラフル眩しい空間に、視界をやられている。
「フッ……作戦通り!」
そんな中、ジズだけは平然と砂嵐に乗って鮪嵐を飛ばしていた。
「な、なんでお前のナイルマグロ、平気ツナ!」
「この発光砂嵐の中を泳げるよう彼女と特訓したからな!!」
困惑する巨大魚使いに高らかに告げて、ジズは巨大魚使い達を差し抜いて行く。
「そうか! あいつが術者ツナ!」
「止めるツナ!」
けれどそれでジズが術者と気づいた一部の巨大魚使いが、ジズを狙おうと――。
「タオのコレクションだ、その身に刻めよ」
「ギョブッ」
「ギョハッ」
飛来した黄金の宝剣に貫かれた。
「おーらおら、いけいけ! 邪魔する奴らは誰であれタオが薙ぎ払う、だから泳げ!」
――死せる黄金。
宝剣を飛ばしたのはタオタオだ。その周囲には今も、パラドクスによって具現化された宝剣が浮かんでいる。
残弾はたっぷりありそうだ。
「殺意たっかいツナね……」
「物騒な人間ツナ……」
「――あ゛? 五月蠅えな、タオに剣を抜かせたのはお前らだろう」
怯える巨大魚使いを、タオタオは一睨みで黙らせる。
楽しく泳いでくれるのが一番――なんて言っていたのが嘘のような殺気であった。
●猫頭女神は京言葉を話すだろうか:ルーシド
「アイツは危ないツナ」
「相手にしない方が良いツナ」
「あっちの曲乗りみたいになってるやつを狙うツナー!」
タオタオは危ないからと、巨大魚使い達は別のディアボロスを狙う。
その標的になったのは、ルーシドだ。
「しねどす!」
しかしルーシドも負けてない。何かされるより先に、トビウオをぶん投げて機先を制する。
「豊穣にして神罰の行使者たる月女神が御言葉である、不浄なる身を悔い潰せよ」
そして唱えるは、豊穣を司る猫頭の女神の権能を呼ぶ言葉。
――バステトの託宣。
それは女神バステトが持つもう一つの側面。
咎人を罰する神としての力を顕現するための言葉。
神力を帯びて発せられるルーシドの言葉は、敵の思想を狂わせ自ら滅びへと至らしめる。
つまり――。
「女神もしねどす! と仰っておられるどすぇ!」
「「「な、なんだってツナー
!?」」」
どんなおかしな言葉だろうが、バステト女神はそんなおかしな言葉遣いしない、と言うツッコミが来ることもないのである。
「何と言う事ツナ……」
「我らが間違っていたツナか……」
マグロの上で、がっくりと項垂れる巨大魚使い達。
「いっそ殺してくれツナ……ぐふっ」
その頭を、稲光が撃ち抜いた。
「今のは――」
驚くルーシドが光が飛んできた方に視線を向ければ、ゼキが手を振っていた。
●ナイル川の中で:ゼキ、燐寧
「やっぱ、最終直線ともなると、どいつもこいつも妨害がえげつなくなってんな」
濡れるのも構わずナイル川に入って、ゼキがぼやくように呟く。
ゼキが警戒しているのは、主に味方の妨害行為であった。こういう事になると熱くなる面子ばかり集まっているのだ。
現に、川の中から見る砂漠のコースは、砂が大波の様に隆起したかと思えば七色に輝き出し、更に黄金の剣が飛び交っている。
「取り敢えず敵がいなくなりゃ、皆もうちっと落ち着――いてくれっかねぇ」
自信なさそうに呟くゼキの腕は、すでに形を変えていた。
鉄塊が形を変えたそれは、弓。
それを形作る記憶は『雷』の字を持っていた、俊足の伝令卒。
雷の矢文――ブリッツシュネル。
「――あいつは矢のように走った! 銃弾だって奴にゃ追いつけなかったのさ」
ゼキの四肢の駆動エネルギーを集め放たれた雷光の矢は、音より早く飛んで空中で分かれ、ルーシドの言葉に打ちひしがれて放っておいても自死を選ばんとするであろう巨大魚使い達の頭を撃ち抜いた。
「やー、今頃きっと『ゼキさん真面目に支援してんじゃんパネェやっぱ頼りになるなァ~』なんて思われてる事だろう!」
ルーシドに手を振りながら、ゼキは独り言ちる。
そうかなぁ。気づいたのルーシドくらいだと思うけどなぁ。
「――と思わせて油断させといて、最後の直線で一気に仕掛けるって腹よぉ!」
しかしゼキもまだ、勝負を諦めていなかった。
ナイル川から飛び出し、再び中トロ号に騎乗する。
「もう何が何だかだよぉ! 仕方ない、奥の手だぁ!」
入れ替わりに、燐寧がマグロと一緒にナイル川に飛び込んできた。
このままではいつ、虹色の砂に押し流されるか判らない。だから燐寧はター坊の進路をぐるっと変え――すぐ横を流れるナイル川に、活路を求めた。
と言っても、マグロの水中性能を期待してではない。
燐寧の姿が、ナイル川の中で変わっていく。
「チェーンソーザウルスを止められるかなぁ? 止められるものなら止めてみなよぉ!」
尾がチェーンソーになったティラノの様な恐竜と言うネメシス形態になった燐寧は、その扁平な尾を水カキ代わりに、ナイルマグロは自分で加えてナイルの流れを遡っていくのだった。
●エジプトにはピラミッドと猫が良く似合う:アリア、テクトラム
「邪魔だ、君が落ちろ!」
「そうはいかん。ナディアに託されたのだ」
テクトラムとアリアの勝負は、最終直線にもつれ込んでいた。
「いでよ」
「うぉっとぉ!」
テクトラムがセルフクラフトで出現させた壁を、アリアはとっさに蹴りつけてマグロを守りながら回避する。
「えぇい巻き返せ!」
それで落ちたマグロの速度を上げさせようとするアリア。
「私には毛玉が居る事を忘れていないか。そんな即席鮫に私が負けるものか」
テクトラムの合図で、ぼーっとマグロに乗っているだけだった毛玉が猫の爪をにょきっと露わにする。
そして、背中にチクリと爪を立てれば、驚いたマグロが急加速。
「毛玉ちゃんは狡いぞ!」
「狡い? ルール上、問題ないそうだぞ。さあ毛玉、ツナシャークのフカヒレに噛り付いてやれ」
一気に距離を詰められたアリアの抗議をスルーして、テクトラムは毛玉をアリアのナイルマグロにけしかけようとする。
「そっちがそのつもりなら、ピラミッドでお相手だ!」
ガジガジと折角のサメパーツを齧られては、アリアも黙ってはいられなかった。
三角錐結界――ドーピング。
マグロレースの最終直線のそこかしこに、小さな金字塔――ピラミッドが幾つも乱立し始める。
その黄金の輝きを武器に取り込み力と為すのが、本来の使い方。
だが今回頑張っているのは、ナイルマグロだ。
だからアリアは、黄金の輝きの力の向ける先を変えた。ツナシャーク号に付けた、サメパーツに。
「く、眩しいな」
ピラミッドのパワーを得た作り物のサメの背鰭と尾鰭が、テクトラムが思わず眉を顰める程の黄金の輝きを放ち出す。
ただ眩しくなっただけではなく、それは毛玉の爪が通らない程の硬度を得ていた。
「さあ行くぞ、ゴールデンツナシャーク号!」
「行かせるか、ライバル」
黄金の尾鰭を揺らし突き進んでいくアリアのマグロを、テクトラムが追いかける。
そんな時、誰も乗っていないナイルマグロがまるでミサイルの様な勢いで突っ込んできた。
●もう1人のツインマグラー:ケペシュ
砂のコースが波打ったかと思えば、七色に輝いて、小さなピラミッドが乱立する。
最早ゴールラインが何処にあるのかもわからない様相になって来た。
「タイミング早いかもしれませんが……ミサイル、行きなさい!」
ケペシュは七色の輝きにも負けず、後ろに追走させてたマグロパトラに乗り換えると、ミサイルに合図を送る。
「ミサイルに道を切り開かせ、そこからライバルたちを抜いていく――これが俺のツインマグロスタイルです!」
ジェア・レムが失敗したツインマグロをアレンジした、ケペシュなりの答え。
マグロパトラも消耗してないわけではないが、誰も乗せずにここまで泳いでいただけだ。他のナイルマグロよりも、体力は残っている。ミサイルに突き進ませ、開いた空間を狙う。
ナイルマグロ2尾使う上で、これ以上はそうはない案だろう。
だが――ケペシュがミサイルに仕込んでいたのは『合図に合わせて真っ直ぐ前に突き進んでいくように』であった。
今この直線には、アリアによって小さなピラミッドが幾つも生えている。
そんなのは、流石にケペシュも予想していなかったのだろう。
ゴッ!
障害物の事を考えていなかったミサイルは、その一つに頭から突っ込んでいった。
突っ込んでしまった。
そして――動かなくなった。
「ミサイル……君の犠牲は忘れません。あとで美味しく頂いてあげますね」
ケペシュはしれっとミサイルの屍を越えて進む。
「大丈夫ですよ、マグロパトラ」
残されたマグロパトラの胸鰭をしっかり掴んだまま、ケペシュは囁いた。
「君は取って食ったりしませんから。きっちりゴールまで泳ぎきってくれるなら」
――ひょっとすると、こういう状況になった時に残ったマグロを脅すのも、ケペシュのツインマグロスタイルの内だったのだろうか。
マグロパトラの心中や如何に。
●ラストスパート、そして――
「つめたかった……のはおわったけど、セカイが虹……何色だかわからないし、キラキラした剣も見えた気がするし、キラキラしてるピラミッド生えて来たし……」
最早訳の分からない世界になった最終直線。
ツナホテプの上で、クーガがポツポツと呟く。
「でもまけられない。とくに、なんとなく、ケペシュには」
額に上げたゴーグルは、凍ったり電気を浴びたりして半ばひび割れている。
それでも、クーガの根性はまだ燃えていた。
「さいごはマグロにしがみついたまま、体当たりだ」
どんなわけのわからない状況になっていても、クーガは諦める気などない。
「ねばれ、ねばれ! まけるか、おれたちは、コンジョーがとりえだ。見えるハズだ、ショーリへの道」
最後は根性勝負と、クーガはしっかりマグロの鰭を掴んで突き進む。
「カマ塩焼き、逃げ切りだー!」
事ここに至っては、ラズロルも砂塵海嘯を引っ込めていた。下手するとゴールラインまで押し流してしまいかねない。
あとはマグロ頼りだ。
レースの形である以上、最後の最後まで出来る小細工と言うのは、案外限られてくるものだ。
「さぁゆけ、鮪嵐! 風は君に味方している!」
ジズのゲーミング砂嵐は、その中のひとつであった。眩しいだけで、ゴールラインを消してしまう心配はない。
だが、他にもこの最終局面でも打てる手を残している者もいた。
「アッ、あんなところにナイルピンクイルカが!!」
パラドクス通信の通信機に向かって、そんな事を言い出したゼキだ。
「エッ。ナイルピンクイルカ? なんだそれ見たい。どこだ、どこにいるんだ??」
いい気になって風に乗っていたジズは、その言葉に反応してよそ見してしまう。
ゲーミング砂嵐の中では、ナイルピンクイルカなんていても、ナイルゲーミングイルカになるのに。
思わず反応してしまったんだろう。
「ピンクイルカ!? ――あとで!!」
「……ナイルピンクイルカ!? 誰か写真撮っといて下さい!」
ピンクイルカに反応したよそ見で失速したジズの前からサアシャが離れていき、逆にクーガが迫って来る。
「っ! しまったー!!!」
慌てて鮪嵐を飛ばして、風に乗るジズ。
それが、ゼキが油断を誘おうとした最後の一手の結果。
「……皆、それどころじゃねえってか」
通信機を取りすらしない者もいたなと、中トロ号の上でゼキは苦笑するしかない。
「ほら、正気な人の方が少ないでしょう?」
その肩を、ルーシドがぽんと叩いていた。
「サメだサメだー! ゴールデンツナシャーク号のお通りだーい!」
金ぴかサメパーツを纏ったナイルマグロを、アリアがご機嫌に進ませている。
「毛玉。もっとハゴロモ号をチクチクしてやるんだ」
それを後ろから追うテクトラムのナイルマグロは、毛玉の爪ちくりで全身が汗と赤にまみれていた。赤兎馬かな。
「行け、テッカマキ! 勝利の女神だけでなくハトメヒトも俺達に微笑んでるからな!」
先頭を狙って、カルメンがテッカマキを加速させる。
「獲ろう。ふたりで、ハトメヒト賞を…!!」
「ただただ前へ進め! お前が泳ぐ道は黄金どころか虹色に輝いてるぞ!!」
「目指せ一等賞! ナイルの明日はサアシャが掴むです!」
ジズの後方からはタオタオがぐんぐんと追い上げていて、逆に前方ではサアシャが逃げ切りを狙っている。
「カルパッチョー! あとちょっとだ、踏ん張れ!」
「行けー、ツナマヨ! ラストはストレートで差すんだー」
後ろから聞こえて来るエトヴァの声に、ラズロルもマグロ料理に最後の力を振り絞らせる。
そして、ゴールが近づく。
「あ、流石にばてたか? マ、しゃーねえ。お前はよく頑張ったよ」
タオタオの乗るマグロがスタミナ切れで遅れ出した。
「くっ、ナイルピンクイルカなどに惑わされなければ! おのれゼキ!」
ゼキの罠で最終直線で失速したのを取り戻そうとしたのが響いて、ジズの鮪嵐もスタミナ切れで先頭から離されていく。
「ここまでかな、ライバルよ」
「そのようだな」
アリアとテクトラムのマグロも、失速していた。フェオとナディアの地形が変わるほどのバトルに与しなければゴール争いに加われた可能性はあったのだが――2人とも満足そうであった。
一方の先頭争い。
「このまま逃げ切るぞモナマグロ号ー」
この最終段階、ハナに立っていたのはクィトだった。
「ツキジマル! お前はエジプトで1番屈強で速い勇敢なナイルマグロだ!」
差し切ろうと、千隼がバシッと乗馬鞭を尾鰭に入れてツキジマルを加速させる。
「いいや、俺達の友情が最強だ。そうだよな、テッカマキ!」
この直前に差されたカルメンだが、テッカマキが粘っていた。それでも――差し返すには届かない。
(「届くかなぁ!」)
更にナイル川の中からは、マグロ咥えたドラゴンこと燐寧がぐんぐんと追い上げている。
「行けツナホテプ、トロフィーと、イタマエがおまえを待ってるぞ」
「もしかしなくてもイタマエって俺のことですよね。勝利のツナマヨですか、いいでしょう」
クーガとケペシュも競り合っているが、前4尾には届きそうにないか。
千隼が差す、燐寧が伸びる。クィトも粘る。
そして、そして――。
「ゴォォォォォォル! 優勝は、モナマグロ号!!」
クィトの勝利を、ジェア・レムが大声で告げたのだった。
2着の千隼との差は、ほほ肉までもなかった。競馬で言うなら鼻差くらいか。3着の燐寧とでも、エラ差くらいだ。
序盤こそ大逃げを打たれて2~3番手に付いていたクィト。最終直線でハナを取れたのも勝因として大きかったが、途中で敵味方の激しいやり取りにほとんど巻き込まれる事が無かったのも大きかった。それぞれの思惑の絡んだ結果だ。そう言う点では、運が手伝った結果とも言えよう。
何はともあれ――ハトメヒト賞ナイルチャンピオンシップは、ここに決着した。
なお、最終着順に名を連ねた巨大魚使いは1人たりともいなかったのを付け加えておく。皆、砂漠に散ったのだ。
超成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【パラドクス通信】LV2が発生!
【口福の伝道者】がLV3になった!
【通信障害】LV1が発生!
【冷気の支配者】LV1が発生!
【泥濘の地】がLV2になった!
【現の夢】LV1が発生!
【強運の加護】がLV2になった!
【トラップ生成】がLV3になった!
【セルフクラフト】LV1が発生!
【悲劇感知】LV1が発生!
【友達催眠】がLV2になった!
【完全視界】LV1が発生!
【傀儡】LV1が発生!
【罪縛りの鎖】LV1が発生!
【水源】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV5(最大)になった!
【凌駕率アップ】がLV2になった!
【グロリアス】LV1が発生!
【ロストエナジー】がLV4になった!
【能力値アップ】がLV3になった!
【ダブル】がLV2になった!
【ドレイン】がLV3になった!
【反撃アップ】がLV3になった!
【ガードアップ】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV6になった!
●エキシビジョンマッチ的にマグロレース後に唐突に始まるクロノス級決戦
「やりやがった! やりやがったなぁ、お前ら! いやー、見てて滾る、すげえマグロレースだった! 手に汗握るってやつだな。ちくしょうめ、何でアタシは出泳しなかったんだ! マグロ使い達め。生きてたらシメてるぞ」
賞賛やら悔恨やらと口早に並べ立てながら、ジェア・レムが満面の笑みを浮かべて現れる。
「まあ何はともあれ、ハトメヒト賞はお前らのもんだ! 持ってけ!」
トロフィー代わりだろうか。
ジェア・レムは抱えていた黄金のマグロの彫像を、砂漠の上に乱雑に放り投げた。
代わりにその手は、斧の柄に伸びる。
「んでもって――アタシと闘ろうぜ!」
満面の笑みのまま、なんか言い始めた。
「マグロ使い達の仇とかじゃねぇよ。ただアタシが闘いてぇんだ。お前らのマグロレースのおかげで、もう闘る気が大噴火しそうなんだ! ナイルマグロをあれだけ乗りこなせる奴らが、弱い筈ねぇ! だから闘えよぉ! なぁ!」
マグロレースの熱にすっかり中てられて、かなり興奮しているようだ。
ジェア・レム。
魚神ハトメヒトの加護を受けていると言うマミーの女戦士。
アヴァタール級でも好戦的な個体が多かったそのクロノス級が、好戦的でない筈がない。強者を前に闘いを望まない筈がない。
或いは、マグロレースなんてトンチキな事をやらかしていたのも、マグロレースに負けない猛者を探しての事だったのかもしれない。
どうあれ、こうなってはもうジェア・レムは止まるまい。
ディアボロス達としても、このままトロフィーとナイルマグロだけ手土産に帰るわけには行かないのだ。
敵の方から闘いを望むのは、好都合と言うもの。
「あー……わかった! 闘ってくれたら、ナイルマグロ、好きなだけ食ってって良い! 何ならナイルイワシでもナイルトビウオでもナイルピンクイルカでも良い、サイドフィッシュもつけてやる! 一回で二度おいしいってやつだ!」
勝手に賞品扱いされたナイルマグロ他ナイルの魚類の心中や如何に。
==========================================
もう細かい説明は不要でしょう。
敵はジェア・レムのみ。巨大魚使いはもういません。
観客もナイルチャンピオンシップの払い戻し(あるのか)に行っているので、いません。
巻き添えとか気にしないでOK。
シンプルな強敵とシンプルに戦ってぶっ飛ばして帰りましょう。
プレイングはいつでもどうぞ。
==========================================
ジズ・ユルドゥルム
くっ…!行けると思ったんだがな。
悔しいが、入賞した3人と3尾の泳ぎは見事だった。
それもこれもナイルピンクイルカで惑わせたゼキの…、え、本当にいるのかナイルピンクイルカ??
ナイルマグロも一匹くらい獲って帰ろうと思っていたが…
(川のマグロ達を感慨深そうに見やる)
…情が湧いてしまった。
というわけで貴様とは無償で闘ってやる!
「守護者の戦斧」を構え、「人鷹一体」を起動。
奴の闘気に真正面から応えて、強化した膂力で正面から斬り結んでやろう。
ジェア・レムが跳躍後、空中にいる間に斧を投擲し、斬撃と炎で襲い落下の勢いを削ぐ。
振り下ろしまでに斧を手元に戻し、その後に続く攻撃を斧で迎え撃とう。
単純な斧と斧の斬撃のぶつけ合いだ。
ははっ。好きだろう、こういうの!私も嫌いじゃあない。
鮪嵐達は新宿には連れて行けないな…。川で繁殖でもしたら大変なことになる。
ここでお別れだ、鮪嵐。君達の勇姿は忘れないよ。
ナイル川の生態系を大変なことにしたのは許せんが
…正直これはこれで楽しかったな。
さて、帰って回転寿司で打ち上げでもするか。
クィト・メリトモナカアイス
トロフィーは貰う。あれは我とモナマグロ号のもの。
でも我のかわいいモナマグロ号を食べるとか……そんなかわいそうなこと我にはできぬ。禁止。
ナイルマグロのあんぜんをまもるため。
ゆくぞモナマグロ号!我らこそ、ナイル最速のチャンピオン。
パラドクスパワーでさらに強化されたモナマグロ号に乗って「突撃のモナマグロ号」。
空を【飛翔】して投げられた斧を華麗に回避し、斧を取りにきたついでに攻撃してくるジェア・レムに黄金猫拳打棒のいちげき。すれ違いながらモナマグロ号の速度も乗せてぶん殴る。
ジェア・レムを倒したらモナマグロ号とはお別れ。
沈む夕陽的な何かとナイル川に帰るモナマグロ号たちに手を振り別れよう。
汝はパラドクストレインでは連れていけぬ。
けれども、我と汝の友情は離れても変わらぬ。
汝こそこのナイル川最速のマグロ。誇りを持って生きるのだ。
達者で暮らせよー、モナマグロ号ー。
月見里・千隼
※連携、アドリブ歓迎
むうぅ…現役騎手として2着は悔しいもののマグロレースはとても楽しめたな。
さて、ジェア・レムはマグロの解体ショーみたいに天岑昌運による斬撃で捌いてしまおうか。
(久々にネメシス形態になる)
野蛮な敵にはあいつらを遥かに上回る戦闘民族(薩摩とか島津とかその辺り)から着想を得たパラドクスをぶつけるのが良い。
敵の跳躍に合わせたり【泥濘の地】で敵の動きを鈍らせた隙に
『紅蓮月』での抜即斬…猿叫と共に豪速のチェスト(【ダメージアップ】のバフ付き)だ!!
【パラドクス通信】で味方との連携もしっかりと。
反撃は天岑昌運で流れるように防ぎいなして急所から逸らし
なるべく受けるダメージを抑えていこうか。
戦う場所によってはもし必要ならば【水面走行】か【水中適応】も使うぞ。
ジェア・レム討伐後のツキジマルはナイル川にリリースしよう。
名残惜しいものの暫しのお別れだ。
だが俺は短くも共に過ごした時もツキジマルの勇姿も決して忘れない。
よくやった、よくやったぞツキジマル。
2着?それでも胸鰭をはって誇れる偉業だ。
ケペシュ・ナージャ
アドリブ・連携歓迎
白熱した良いレースでした
我が戦友、マグロパトラとミサイルの勇姿は忘れません
クーガとの決着はまた次の機会につけましょう
ついに武器を手にしての最終決戦ですね
レースよりこっちの方が得意なんですよ、俺は
打ち負かすついでに賞品もいただいていきましょう
ようやく思う存分ぶった斬れる
しかも相手も武を身に付けた者だなんて、こんなに心躍ることはありません
この瞬間を楽しみましょう
ツッコミどころ満載な敵だからといって手加減はしません
扱い慣れた得物と技でお相手します
味方と…ついでにナイルマグロ達とも息を合わせながら攻めましょう
素早い動きを活かして敵を翻弄し、隙を見せたらすかさず急所を狙います
ほらミサイル、突っ込みなさい!
汚名返上のチャンスですよ
ジェア・レム、刃を交えたその名を覚えておきます
楽しかったですよ、貴女との戦いは
戦いの後はマグロ達を自然に帰します
強く生きるんですよ
特に食欲旺盛な人間には近付かないように
次に会うのが皿の上でないことを祈っています
…さて、イタマエとして腕を振るってきますか
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
絡みアドリブ大歓迎
ツナツナマヨマヨ(よーしいいレースだった)
ツーナナマヨヨー(ご褒美におやつをあげよう)
動物の友で愛鮪を労う
漁師さんは…うむ
ジェア・レムの気風は気持ちがいいな
その勝負、受けて立つ
もう一戦いけるかい、ツナマヨ号
イエス、ツナ
ウィーアーマグロライダー
フルコース……いや、エジプトの平和のために
ラズ(g01587)の活性治癒に音色を添え鮪達を労おう
ツナマヨ号に乗り【飛翔】し空中戦(普通に飛翔も可)
俺はマグロ使いを極めよう
戦闘の残りか、野良のマグロを演奏にのせ傀儡で操りつつ攻撃
そうか、これがツインマグロスタイル
野良のほうは脅かし
本命はツナマヨアタックだ
突撃し体当たり
に見せかけた音楽攻撃
フルート奏で闘争心と破壊衝動をさらに掻き立てジェアの精神を惑わす
戦場を偵察、観察し把握
包囲の位置取りで、死角を作らずに連携
反撃の回転は、ツナマヨ号を駆って飛び回り回避
タワーシールドと魔力障壁で防御
戦いの後、鮪を撫でてリリース
ありがとう、ツナマヨ
君の雄姿は忘れない。達者でやれよ
あ、俺はツナマヨ巻きがいいな
ラズロル・ロンド
アドリブ歓迎
エトヴァ(g05705)と
白熱したいいレースだったねぇ
楽しかったーと満足するも
あ、屈強漁師さん今頃膝から崩れ落ちてるかね?
悪い事したな~と苦笑い
エトヴァはツナマヨライド?
手こね寿司(マイナイル鮪)は
白目剥くほど良く頑張ってくれたね
その勇姿、僕は忘れ無いよ。君は休んでて
【活性治癒】で少しでも回復してもらおう
でも…もし、天に召されたら…生春巻きなんだからねっ(クスン)
なんてナイル鮪を気遣っていれば、ジェア・レムがギャイギャイ言ってそう
もう、ちょっとは静かにして欲しいな
まったくー
なんてぼやくもナスィームリーシャの羽をジェアに見舞おう
反撃のぐるぐるテンション高いヤツは飛び退いて竜巻から遠退く
羽攻撃は刺激弱いかな?
いやいやこの羽ならブッスブス刺さってくはず
竜巻に乗って脳天にプスっとね
ブワっと舞い散らし
疲れたナイル鮪達には癒しを
戦いが終わればそれはナイル鮪と別れの時…
ああ、別れが寂しいよ
元気でな
かーぶーとーにーィィー!(マイナイル鮪)
出来る限り見送り
帰ったら鮪料理フルコースしよう!
ゼキ・レヴニ
ナイルピンクイルカいるもん、おれ見たもん!
ジェアよりジズパイセンにシバかれるのが怖いんで、ジェアサンはよピンクイルカ出して、なあ出してくれよお(強請る)
そんな訳で
身の潔白を証明するためにも頑張るとしようかね
あっちも戦る気満々なら都合がいい
愉しいエキシビションと行こうじゃねえの
…いや本番こっちだったか?まあいいか
おうおう見た目通りの脳筋なこって
そんなんで頭脳派(?)のおれに勝てるのかい
『躯』を鉄条網に変じ鉄線を戦場に巡らせて【罠使い】
ジェアが暴れる程食い込む様に仕掛ける
奴さんが跳躍する足を絡めて動きを鈍らせ、初撃回避の時間を作りつつ
着地地点に網のように鉄条網を張り締め上げてやる
血ぃ見てえんなら自分のでも見てな
避けきれなけりゃ機械の四肢で受けて流血を抑える
此方に集中すりゃ背中がお留守
その間に仲間がブスリと殺ってくれるだろうさ
にしても皆相棒マグロに愛着湧いてんなァ
もしやサーヴァント化フラグ?いやまさかな
何にせよこれでお前さんは自由だ、中トロ号
さて、おれも払い戻しに行くかねえ…当たってねえけど…
クーガ・ゾハル
すごいレースだったな
サカナつかいたち、おまえたちの事は……
ごめんな、あんまりおぼえてない……
おう、おれたちのトロフィーは、またこんどだ
次こそカレイに決めてみせるぞ
マグロだったけど
おまえこそカクゴはいいか、ジェア
砂のうえなら、おれたちだってずっと、歩いてきたんだ
マグロレースできたえた――ハズのレンケイ、みせてやる
仲間と<陣形>ととのえて、むかえうつ
レースできたえた、バレルろーるジャンプでカイヒ
抜け道探しできたえた目ヂカラで
動きの一瞬とまるときを<看破>だ
ちょっとくらいの血は、もうしょうがないだろ
今日のおれの血は、きっと砂がまじってるぞ
マグロには使わなかったデンキ・ショックをくらえ
にぶらせて、ジズの道をひらいてやる
ジェア・レム、おまえとレースのことは、わすれない
楽しかったぞ
ツナホテプ
おまえの丼、すごく気になるが……
……おまえはもう、おれの戦友だから
たべることなんて、できないな
ゲンキでやれよ、たくさんカゾクふやすんだぞ
ひと口もらえばよかったかな
ヨシ、かわりにイワシニギリにしよう
イタマエ~
カルメン・リコリスラディアタ
アドリブOK!
味方と一般の人への呼称は老若男女問わず:(名前)ちゃん
よしよし、イイ子だにゃー♪
めっちゃ頑張ったなテッカマキ!
レースで負傷して出来た怪我は【活性治癒】で…はい、治った♪
さーて残るはジェア・レムだっけ?
…って、うお!こーゆーのってベーゴマなんだろ?
最近、改造ベーゴマ流行ってるよにゃー
こんなにもぐるぐると回転しても目を回さねーの?
つーか魚のクロノヴェーダがぐるぐる回ったら回転寿司じゃん
今は諸事情でちゃーんと加熱処理したネタとか食べられる寿司は限られてるから
『曼珠沙華の日蝕砲』で火の花びらに炙られ焼かれながら闇の魔砲の餌食になりやがれ!!
【泥濘の地】で動きと回転の速度を落としたいかなー。
反撃は展開した氷襲花の護りの魔力の盾と【ガードアップ】で致命傷にならないよーに!
あははっジェア・レムとの戦いも終わったからテッカマキはもう自由の身だからな
新宿島に残るか分からないけど、マグロレースの思い出としてスマホでテッカマキとのツーショット記念撮影♪
じゃあなー達者でなー!
バイバイ、テッカマキ!
ナディア・ベズヴィルド
【W】
ふう、やっとゴールに付いた。フェオ?知らん
ちょっと蟻地獄を作ってそこに放り込んできた、そのうち何食わぬ顔して戻ってくると思うわ
楽しいレースも終わったし今度はみんなと腕試し?いいぞ、不完全燃焼だからいくらでも付き合ってやろう
母なるナイルをこんな面白おかしくしてくれたのだから、メッどころじゃないからな
何してくれとんねんと拳をグーにしてぼっこぼこにされてもおかしくないから歯ぁ食いしばれ
ふふ、皆もやる気満々ね。うまく連携を取るように行動を
私の砂嵐を弾き返せるかしら?
おっと、場外乱闘だ(アリアさんとテクトを見てけらけら笑う)あっ!私の尻尾は齧らないで!
テクト、サメちゃんをあまりいじめちゃ駄目よ
みんなそれぞれの鮪とお別れしている…ツナの海…気が付けば消えていた…(酷
終わった後はナイルマグロを遠慮なく頂きましょうか、捌くわよ
刺身、兜焼、テールステーキ
毛玉ちゃんには赤身が良いのかしら中トロ…?脂たっぷりでも平気?
ナイルイワシはオイル漬けにして食べたいわね
アリア・パーハーツ
【W】※3人参加
ツナシャークどこ行ったー!?(食い損ねたな。愛着とは)
あれ、フェオもいな、……んふっふ(蟻地獄で抜け出せなくて今回不参加の恋人に大笑い、後で救出しよう)
いいんだいいんだ、ボク様たちにはキミ達がいるもんね
砂漠を巨大な檻で包み、中に解き放つのは三匹のホホジロザメ
悠々と砂を泳ぎ空を舞うのを愛し気に眺めて手を振る
あいたたた…
ちょっとくらい齧られるのは御愛嬌、可愛いから許す
ジェア・レムの回転に突撃させつつ、弾かれた勢いで
ライバルであるテクトラムさんを強襲
敵よりもあっちを仕留めたいな
あっちいけ、あっち! ライバルを食え、キミ達!
毛玉ちゃんはだめだぞ、可愛いから
ナディアさんも齧っちゃだめ!可哀想でしょ!
ああほらライバル怒らせた!ええい、援軍おいで!奴を歯形だらけにしてしまえ!!
ジェア・レム邪魔!殴るぞ!(グーパンチ)みんなこいつ此処にいるぞ!(仲間に売り渡す)
(戦闘後、フェオをサメと一緒に蟻地獄から引っ張り出しつつ)
お腹減ったぁー…ねえマグロのレアカツも美味しいよ(油を用意)
テクトラム・ギベリオ
【W】※3人参加
ハゴロモ号は危ないのでリリース。毛玉がちくちくした傷は治した
紆余曲折極まったがようやく戦える
…ナイルイワシとトビウオは食べてみたい(真面目な顔でごくりと唾を飲み込み)
ふ。ナディアのメッはこの場合「滅ッ」だな
ともあれ奴の攻撃は不規則すぎてまともに相手せん方が良さそうだ
【斬糸結界】の糸を展開して切り刻むとしよう
ふむ、仲間の中にも網を展開する者がいるようだな
1本1本は脆くとも重なれば堅牢な檻になる
底引き網漁のごとく絡めとってやろう。今度は貴様がマグロになる番だ
何故こちらにサメが来る?…アリア、おまえか我がライバルッ
サメとて魚。捕獲してサメ革の大漁旗を翻してやる
その前にナディアの尻尾へ向かったサメは毛玉のおやつだ。奴だけは絶対逃すな、食らいつけ
くそ…援軍だと…おい、ジェア・レムこのサメ共をなんとかしろッ
(等と騒がしくしつつ、しっかり仲間に目配せ)
最後までトンチキだった…
大丈夫、ツナの海はハゴロモ号ときっと仲良くしている
無駄に暴れて腹が空いたな
毛玉と興味深くナディアの提案を聞き入る
一里塚・燐寧
鎖鋸の尾を持つ巨大恐竜型ネメシスを継続
ター坊を離して背後に逃がし、怒りの咆哮を上げるよぉ
よくもエジプトが誇るナイル川をメチャクチャにしてくれたねぇ?
きみのせいで獣神王朝の後半戦はマグロばっかだったし、外国にまで輸出されちゃったんだよぉ!
エジプト(を愛した外国)人代表として、絶対に赦さないんだから!
恐竜の体躯と【水中適応】で泳ぎ回るよぉ
巨体が巻き起こす激しい水流で敵の動きを乱した上で、尻尾で水を掻き一気に加速
突撃しながらの『捕食行動』を仕掛け、大口を開けて噛み付くよぉ
巨大な牙で骨も肉も容赦なく噛み砕いて、狙うは粉砕
決着をつけられないにしても、深い傷を負わせて大量出血させることで
仲間が血を見て敵の動きを読めるようにしちゃおう
【完全視界】があるから、血泡で見通しが悪くなることもないだろうしねぇ
戦闘後はター坊を食べるか迷って……んー、やっぱやめとこう
マグロばっかり食べてる怪獣って、びみょーな評価を受けるらしいからねぇ
怪獣はクールにナイルの深みに消えていくよぉ(※後でちゃんとトレインで帰りました)
タオタオ・ザラ
よーっしゃ、ジェアちゃん会いたかった!
ナイルマグロに乗った甲斐があったってもんよ、にゃはは!
ネメシスで挑もうかねえ、ジェアちゃんにちょっとでも強いって思われたいし?そのほうがお互い楽しかろ?
タオも強いヤツだぁいすき
と、いう訳でヤろうぜ、ジェア・レム
タオはタオタオだ、お相手よろしく?
…………あ、そんで
この戦いでシリアスって最初からなかったと思うんじゃけどお!
タオはまたもや純粋な力勝負
打ち合いを楽しみ、笑って
合間に軽口もひとつふたつ
なんで戦うの好きなの、とか
ジェアちゃんの好きなタイプはどんなヤツ、とか聞いちゃう
いいじゃんよ、最後に教えてくれよ
ンー? はは、だって勝つのはタオたちだからよ
あー……、そうだよこう、こういうのだよ
楽しいにゃあ!?にゃはははは!
でも残念、そろそろお開きの時間だ
ジェアちゃんもタオの護る墓にご招待してやるよ
ふは、いい場所だろう!
打ち上げで回転寿司、なんか水族館でおなかへったっていうアレに似てるよな
まあでもタオもいっぱい動いておなかへったので寿司はタマゴとか食べたいです!
ルーシド・アスィーム
アドリブ、連携歓迎
ネメシス化維持
ワァ、優勝賞品はやっぱりマグロだァ……
そしてマジでいるの、ピンクイルカ?ゼキさんの言葉を混ぜっ返しただけでなく?ナイル川の生態系を更に愉快にしないで!シリアス戻ってきて!(返ってきたツッコミ)
カマセは一先ずジンに護衛して貰いましょう。今の時点で川に帰すと不慮の事故に遭いそうっす。サメも恐竜もいるからね
生態系的には事故った方が良いでしょうが、罪悪感が
はいサディーク「俺はいよいよシリアスから外されたか」って顔しない!(びちびち跳ねるマグロを胡乱な目で抱えるジン)
ジェアにあるだろう地の利は僕が塗り替えます
わたゆきと舞うは『凍戯のサナム』
周囲を凍土に変え、氷像「ぷりちーハニーわたゆき二号」を造り出して凸りましょう!一番可愛い海洋生物の威光、味わって下さいどすえ!!
相手の攻撃は『氷雪使い』『結界術』で作り出した氷楯の結界で軽減出来ないか試しましょう
目眩ましになれば上等、ジズさん始め近接戦を仕掛ける仲間の援護になれば
お、打ち上げ良いっすね!僕は炙りトロが食べたいな~!
●冷めやらぬマグロレースの余韻
「あー……わかった! 闘ってくれたら、ナイルマグロ、好きなだけ食ってって良い! 何ならナイルイワシでもナイルトビウオでもナイルピンクイルカでも良い。サイドフィッシュもつけてやる! 一回で二度おいしいってやつだぞ!」
どうにかしてディアボロス達を闘う気にさせようと、ジェア・レムが勝手にナイルマグロ以下、ナイル川の魚介類を出に使う。
「ふん。賞品などなくても、貴様とは無償で闘ってやる!」
「あれ? 食べないんですか、ナイルマグロ」
それにぴしゃりと返したジズ・ユルドゥルム(砂上の轍・g02140)の一言に、ルーシド・アスィーム(轍つ祈星・g01854)が少し意外そうな顔になった。
「……そのだな。ジェア・レムに言われんでも、ナイルマグロの一匹くらい獲って帰ろうと思っていたんだが……」
ジズの視線が、ナイル川の浅瀬で乾ききった身体を潤す鮪嵐に向けられる。
川の中には、マグロレースに関わらなかったナイルマグロの背鰭も見えていた。
「……情が湧いてしまった」
「ワァ」
ジズが本気で言ってるのが分かってしまって、ルーシドの口から乾いたツッコミの声が零れ出る。
「そう言うルーシドだって、ナイルマグロをサディークに大事そうに抱えさせているではないか」
「いや、あれはまだ今の時点で川に帰すと、不慮の事故に遭いそうな気がしてまして。恐竜もいますし」
ジンに抱えさせてるマグロを指摘するジズの返しに、ルーシドの目がちょっと泳いだ。ネメシス形態のままで普段のそれと色が違う狐の尻尾もフラフラと彷徨っている。
(「生態系を守ると言う観点からは、別に事故ったって問題ないと言うかその方が良いくらいなのに、何故サディークに護らせてしまっているのでしょうね」)
「恐竜はマグロ食べないよぉ」
なんてルーシドが自問していると、ナイル川の中から当の恐竜――同じくネメシス形態なチェーンソーザウルス姿のままの一里塚・燐寧(粉骨砕身リビングデッド・g04979)が返して来た。
「はいサディーク『俺はいよいよシリアスから外されたか』って顔しない!」
「いよいよも何も、今回、シリアスって最初からなかったと思うんじゃけどお!」
ビチビチしてるマグロを抱えさせられてる上に、川の中から恐竜が出てきて喋る。
そんなトンデモ光景にジンのサディークが胡乱な顔つきになってるのを見逃さず、ぴしゃりと告げたルーシドに、タオタオ・ザラ(大喰らい・g05073)から、ケラケラと笑いながらのツッコミが飛んできた。
まあシリアスの是非は置いておくとして、だ。
ナイルマグロに情が湧いたのは、何もジズに限った話ではない。
「我もできぬ。我のかわいいモナマグロ号を食べるとか……そんなかわいそうなこと我にはできぬ。禁止」
ナイルチャンピオンシップ優勝者、クィト・メリトモナカアイス(モナカアイスに愛されし守護者・g00885)も真顔で告げて来る。
「よしよし、イイ子だにゃー♪ めっちゃ頑張ったなテッカマキ!」
「ツナツナマヨマヨ(よーしいいレースだった)、ツーナナマヨヨー(ご褒美におやつをあげよう)」
カルメン・リコリスラディアタ(彼岸花の女・g08648)も共にマグロレースを終えたナイルマグロを撫でて労っているし、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)に至っては、謎のツナマヨ言語でツナマヨ号に語りかけていた。
【動物の友】のおかげで通じているようで、ツナマヨ号もまんざらでもなさそうにビチビチしている。
「エトヴァがすっかり、マグロ使いに……」
その姿に苦笑するラズロル・ロンド(デザートフォックス・g01587)だが、ラズロルも別にマグロを労う気持ちが無いわけではない。
ただ――。
「手こね寿司は白目剥くほど良く頑張ってくれたね。その勇姿、僕は忘れ無いよ」
相変わらず名前が定まらないラズロルのナイルマグロは、ピクリとも動いていないだけである。
白目剥いてると言うか、生気がない。砂の波に乗せて押し流すようなラストスパートは、かなり体力を消耗させたのだろう。だって本来、攻撃用パラドクスである。さもありなん。
「君は休んでて。そのまま天に召されたら……生春巻きなんだからねっ」
もう【活性治癒】でどうにかなる段階ではない気がするが、ラズロルはナイルマグロを身体を潤してる鮪嵐の隣にそっと横たえた。
【活性治癒】でどうにもならなそう、と言う点ではもう1匹。
ケペシュ・ナージャ(砂蠍・g06831)がツインマグロした先鋒、ミサイルである。ピラミッドに突っ込んだ時のダメージが思いの外、大きかった。叩いて締める手法も昔はあったくらいだ。あとでイタマエの糧になるしかないだろう。
「我が戦友、マグロパトラとミサイルの勇姿は忘れません」
マグロパトラも召されたようなケペシュの物言いだが、そっちはピンピンしている。
まだ何か考えているのか、ケペシュががっちりと尾鰭を掴んでいるだけだ。
「血は止まったようだな。ならばハゴロモ号よ。川へお帰り……」
一方、テクトラム・ギベリオ(砂漠の少数民族・g01318)がナイル川にリリースしたナイルマグロは、まだ【活性治癒】が効いていた。レース終盤は全身赤くなる程にスフィンクスの毛玉に爪でチクチクさせた傷は一応、塞がっている。
まあ、流した血までは戻ってないだろうけれど。
「え……ええ……なんだこの空気はよお」
多くのディアボロス達がそれぞれにナイルマグロを労う光景は、ジェア・レムを困惑させていた。
「お、お前ら! ナイルマグロばかり構ってねえで、アタシと闘えよな! ナイルマグロ食いたくねえのか? 美味いぞ?」
「わかったわかった。とりあえず、トロフィーは貰う。これは我とモナマグロ号のもの」
ジェア・レムに雑な相槌を打ちながら、クィトが黄金のマグロの彫像を拾い上げる。
「くっ……!」
「むうぅ……」
それを見た月見里・千隼(硝煙と魔弾の騎手/現代ラストジョッキー・g03438)やジズの口から、悔しそうな呻きが零れた。
「やはり2着は悔しいな」
騎手として現役を自負するからこそ、千隼の悔しさは一入だろう。
「まあマグロレース自体はとても楽しめたがな」
けれどだからこそ、わかってもいる筈だ。レースとはそう言うものだと。競馬だってそうだ。どんな名馬に名騎手が乗っても、必ず勝てるレースなどないのだから。それがマグロでも同じことだ。
「悔しいが、入賞した3人と3尾の泳ぎは見事だった」
「この巨大恐竜の姿になって何とかだからねえ、皆もすごかったよ」
ジズの言葉に、ナイル川の中から顔だけ出した燐寧が返す。
普段の燐寧だったら、多分笑って返しているのだろう。まだチェーンソーザウルスのままなので、表情が判り難いけれど。
「それでも勝ちは勝ちさ。私も行けると思ったんだがな……それもこれもナイルピンクイルカで惑わせたゼキの……」
(「やっべっ」)
悔しさが抜けきらないジズの矛先が自分に向きかけているのに気付いて、ゼキ・レヴニ(Debaser・g04279)の肩がびくりと跳ねた。
ナイルピンクイルカなんて言ったツケが、今更返って来るなんて。
(「あん時はイイ手だと思ったんだがなぁ」)
「ピンクイルカも食って良いんだろ? ジェアサンはよピンクイルカ出して、なあ出してくれよお」
内心の焦りを押し隠しつつ、ゼキはジェア・レムにナイルピンクイルカを出せと強請りにかかった。
中々の怖いもの知らずである。
「ピンクイルカァ? お前が知ってるんじゃねえのかよ、おっさん」
しかしジェア・レムから返って来たのは、そんな疑問と胡乱な視線。
「……お?」
予想外の反応に、ゼキの目が点になった。
「あんなところにナイルピンクイルカが――って言ってたの、確かお前だろぉ? あんなところって、何処だよ」
先程のマグロレース終盤、ゼキが仕掛けとして叫んだ言葉がジェア・レムの口から出て来た。
「ゼキさんの言葉を混ぜっ返しただけかと思ったら、まさか真に受けてたんですか?」
そう。ルーシドも気づいたように、ジェア・レムがナイルピンクイルカなんて言い出したのはゼキがそう言ったのを信じたから。
クロノヴェーダなんてその言葉は信用ならない者が大半だし、簡単に騙せる者の方が少ない。
まあ、何処にでも例外ってはいるもんである。
「うっそだろ、おい」
「ゼキ、あいつはな――すごいアホ、なんだぞ」
こんなクロノヴェーダもいるのかと絶句するゼキの肩を、クーガ・ゾハル(墓守・g05079)の掌がぽむっと叩いた。
けれど相手がアホだろうが何だろうが、ゼキが怖いのはジェア・レムよりもジズにシバかれる方。だから強請りにかかれたし、この流れでピンクイルカの事を追究されるのは何としても避けたいところである。
「ナイルピンクイルカいるもん、おれ見たもん!」
「イルカってのがよくわかんねえが、とにかくピンクなんだろ?」
あまりにも必死なゼキの様子に、ジェア・レムも腕を組んで考え込み出して――。
「ピンクピンクピンク……あ! もしかしてあいつらか? この辺にゃいなかった筈だが」
「え、本当にいるのかナイルピンクイルカ??」
「マジでいるんですか? ナイルピンクイルカ」
何か思い当たった様子のジェア・レムに、ジズとルーシドが思わず視線を向ける。
「ウーパ「その名前を口にするなぁ!」
けれど続いた言葉を、ジズがかなり食い気味に遮った。
「確かにアレは色はピンクだけれども! この場に増えたらどうしてくれる!」
「そうですよ。ナイル川の生態系を更に愉快にしないで! シリアス戻ってきて!」
ジズがジェア・レムの言葉を遮った理由を察して、ルーシドも援護のツッコミを飛ばす。マグロレースも終わって、お留守だったツッコミ魂がルーシドの中に戻ってきたようだ。
「戻って来るシリアスなんて、やっぱいなかったと思うんじゃけどなぁ」
「そんなことないですよ。先ほどのは、白熱した良いレースだったじゃないですか」
また横からツッコんだタオタオに、ケペシュが更に横からツッコミ返す。
「すごいレースだったな」
「白熱したいいレースだったねぇ。楽しかったー」
クーガとラズロルも、同意するように頷いた。
そもそも、マグロレースと言うそれ自体がツッコミどころなのではと言う話は、この際置いておくべきだろうか。
「ふう、やっとゴールに付いたわ」
そこに、ナディア・ベズヴィルド(黄昏のグランデヴィナ・g00246)が砂漠を歩いてやってきた。
「ナディアさん、おつか――あれ?」
「ちょっと蟻地獄を作ってそこに放り込んできた」
フェオは?とナディアと共にマグロレース途中脱落となった筈の恋人の姿がないと首を傾げるアリア・パーハーツ(狂騒・g00278)に、ナディアは事も無げに返す。
――この女狐がぁぁぁ!
そんな声が何処からか聞こえて来た。
「ほらね。そのうち何食わぬ顔して戻ってくると思うわ」
しれっと告げるナディアの浮かべる微笑には、どこか勝者の余裕が漂っていた。アリアも面白そうに笑みを零す。
ナディア達の腐れ縁のレース勝負、色々あって途中で痛み分けになったが、それでじゃあ引き分けね、と終わる筈がなかったようだ。
「……んふっふ」
あとで引っ張り出せばいいやとアリアも笑っているので、別に問題はないのだろう。
「しかしツナシャーク号も、どっかに行っちゃったんだよなぁ」
「……ツナの海も……気が付けば消えていたわね……」
レースに使ったナイルマグロがいないと2人揃って顔を見合わせる。
「大丈夫、ツナの海もツナシャーク号も、ナイル川の中でハゴロモ号ときっと仲良くしている」
そこにマグロをリリースして戻って来たテクトラムが告げる。
「そっかぁ……食い損ねたな」
「まあ、野生のがいるし、ね?」
それを聞いたアリアとナディアは、顔を見合わせたまま微笑み合う。
――まあ、誰もがナイルマグロに愛着を持つわけではない。
●戦いを好むもの
「だーめだぁ! もう闘る気が抑えらんねえ! そっちから来ないなら、アタシから行くぜ!」
ついにしびれを切らしたジェア・レムが、砂を蹴って高く跳び上がる。
「闘えつってんだろぉ!」
落下の勢いに乗って、振りかぶった斧を振り下ろす。その衝撃で、ジェア・レムの真下の砂が大量に舞い上がった。
「やー、わりぃわりぃ。別に焦らす気はなかったんじゃけどな」
舞った砂煙の中から、タオタオの声が上がる。
乾いた風が舞い上がった砂を吹き流せば、タオタオの背から生えた六つの蠍の脚爪がジェア・レムの斧を止めていた。
「おいおいおい、なんだよそれ! 誰だよおい!」
「そんなに変っとらんじゃろ? タオはタオタオだ、お相手よろしく? ヤろうぜ、ジェア・レム」
告げながら、タオタオが左腕を振り上げる。
赤い赤い蠍の爪と変化していた指先が、飛び退ったジェア・レムの頬を掠めた。
「はははっ! タオタオてめえ、そんなイイもん隠してやがったか!」
ネメシス形態となったタオタオの姿を見て、ジェア・レムの顔に喜色が浮かぶ。
そして、どちらからともなく同時に地を蹴った。
斧と蠍の爪がぶつかり、鈍い音を砂漠に響かせる。
「っ!」
背中の六爪に変生した左手。更に空いた右手に蠍の鋏角の一振りも構えれば手数はタオタオの方が遥かに多い。
「ふんんっ!」
けれどジェア・レムは一振りの斧とその膂力の一撃で、タオタオの手数を凌駕して来た。
「あー……、そうだよこう、こういうのだよ!」
何度もたたらを踏まされても、タオタオは打ち合いを楽しみ笑って前に出る。
「アタシと闘うのが、そんなに楽しいか!」
「にゃはははは! 楽しいにゃあ!」
「好イなぁお前! 笑って闘えるヤツは好イ! 強いしなぁ!」
「タオも強いヤツだぁいすき」
呵々と笑うジェア・レムと、けらけらと笑い飛ばすタオタオ。浮かべる表情は違えども、どちらもこの戦いを楽しんでいる。
「けどなぁ! アタシは欲張りなんだ! 1人じゃ物足りねえなぁ!」
ジェア・レムの視線は、タオタオの後ろに向けられる。
「だから来いよ!! 1人ずつなんてお行儀良いこと言ってねえで、全員で来いよ!」
纏めてかかって来いと、ジェア・レムが声を張り上げた。
「さあて、愉しいエキシビションと行こうじゃねえの。……いや本番こっちだったか? まあいいか」
「紆余曲折極まったが、ようやく戦えるな」
戦る気満々なジェア・レムの様子に、都合がいいとゼキが笑みを浮かべれば、テクトラムは淡々と曲刀の柄に手をかける。
「もう、ちょっとは静かにして欲しいな。まったくー」
いちいち声の大きいジェア・レムに、ラズロルは溜息を零した。
「そうか? あそこまでの気風はいっそ、気持ちがいいと思うぞ」
その隣で、エトヴァは笑みを浮かべる。目は笑っていないけれど。
「今度はみんなと腕試し? いいぞ、不完全燃焼だからいくらでも付き合ってやろう」
ナディアの浮かべた不敵な笑みに、日頃潜めたる激情が少し露わになる。
「母なるナイルをこんな面白おかしくしてくれたのだから、メッどころじゃないからな」
「ふ。ナディアのメッはこの場合『滅ッ』だな」
「そうね。テクト、上手い」
涼しい顔して物騒な表現をするテクトラムに、ナディアが微笑む。
ナディアもテクトラムも、砂漠に生きた者同士。ナイル川のこの惨状には思う所があったのだろう。
そんな2人よりも怒りをはっきりと表したのは、燐寧だ。
「――っ――っ!」
チェーンソーザウルスの咆哮が、空気を震わせる。
「よくもエジプトが誇るナイル川をメチャクチャにしてくれたねぇ? きみのせいで獣神王朝の後半戦はマグロばっかだったし、外国にまで輸出されちゃったんだよぉ!」
「は? 後半戦? 何言ってんだ? 獣神王朝はこれからだろうが!」
自分の知らない未来を語る燐寧に、ジェア・レムが言い返す。
この時空は獣神王朝の成立直前。ジェア・レムの中では、奪還戦など起きようはずもない事なのだから当然の反応だ。
「それよりも、お前! エジプト人だったのかよ! 怪獣になれるエジプト人がいたなんて知らなかったぞ!」
燐寧が意図的に省略した部分を素直に受け止め、ジェア・レムが吠え返す。
「斬り応えがありそうだな! どいつもこいつも、血を流す覚悟はいいかぁ!」
「今日のおれたちの血は、きっと砂がまじってるぞ」
牙を剥き出しに吠えるジェア・レムに、クーガが返す。
「それがどうした! 砂漠に生きてりゃ、砂の味なんざ常だろうが!」
「っ!」
ジェア・レムの返した言葉に、クーガの左眼がハッとしたように丸くなった。
(「そう、か……そうだった、な」)
その味と乾きは、クーガも識っている。かつてはクーガもそんな中に生きていた。
「おまえこそカクゴはいいか、ジェア」
眼帯を外しながら、クーガは告げる。
「砂のうえなら、おれたちだってずっと、歩いてきたんだ。マグロレースできたえた――ハズのレンケイ、みせてやる」
失った右眼の代わりにそこに在る機械眼から、雷光が迸る。
「――CODE、硬化、穿孔」
それはクーガの掌に収束し、槍となった。
磔葬――シュラ・ヴァラ。
「おおおお! なんかバチバチ言ってんなぁ! お前もすげーの持ってんじゃねえか!」
クーガの雷槍に、ジェア・レムは更に興奮を強めて声を上げる。
「打ち負かすついでに賞品もいただいていきましょうか。クーガとの決着はまた次の機会につけましょう」
「おう、おれたちのトロフィーは、またこんどだ。次こそカレイに決めてみせるぞ。マグロだったけど」
刃を忍ばせたケペシュに頷いて、クーガは同時に地を蹴った。
全員と同時に闘う事を望むジェア・レム。それはディアボロス達を侮っているからでも、ましてや油断や慢心からでもない。
ただ好きなものを全部食べたい――そんな単純な欲求に従っているだけだ。
「良いだろう」
何故だかそうとわかるから、わかってしまうから。
ジズはジェア・レムの闘志に素直に応じた。
「来い、ケレイ」
鷹のジン『ケレイ』を憑依させたジズの背に、黄金に輝く翼が顕れる。
――人鷹一体。
憑依させたジンの生命エネルギーで能力を大幅に高める強化術。強すぎるが故に、後の消耗も著しいとある意味諸刃の剣な術だが、ネメシス形態すら凌駕するクロノス級のジェア・レム相手なら、このくらいしなければ届くまい。
「望み通りに闘ってやる!」
「いいぞいいぞ! 来い!」
黄金の輝きを纏ったジズの振り下ろす漆黒の斧を、ジェア・レムも斧で迎え撃った。
狼の意匠が刻まれた片刃斧と、鰭の様な装飾が付いた両刃斧が2人の間で拮抗する。
「ジィィィズゥゥ! お前も良いパワーしてんじゃねえか!」
「ははっ。好きだろう、こういうの! 私も嫌いじゃあない」
「ああ、好きだぜ――っと」
視線を言葉を交わした直後、ジェア・レムがふっと力を抜いた。
「っ」
「ははっ!」
力を流され、つんのめったジズにジェア・レムは無造作に足を振り上げた。
「レースできたえた、バレルろーるジャンプ、みせてやる」
蹴り飛ばされたジズを、クーガが横回転を加えた跳躍で飛び越える。
「いま――じゃないな」
同時に雷槍を投げ放たんとしたクーガだが、投げられなかった。
「どうした? 投げねえのかよ!」
クーガが予想した以上に早く、ジェア・レムは再び身体に力を漲らせていた。そればかりか、対抗して斧を投げようと身構えている。
このまま投げても、よくて相打ちだろう。他のアホっぷりが嘘の様に、戦闘に関しては鼻が効くようだ。
「調子に乗るな。マグロの解体ショーみたいに捌いてやろうか」
その膠着状況に、千隼が割り込んだ。
その姿もまた、普段とは異なっている。
胸部から光が走った機械鎧の様な、サイボーグのようでもあるその姿は千隼のネメシス形態。
「おい、なんだそりゃ。その剣、折れてんじゃねえか」
けれどジェア・レムはその姿よりも、千隼の構えた『天岑昌運』の刃に注目していた。
別の改竄世界で戦い討伐した天魔武者の太刀。戦いの中で折れたその刃は、刀と言うものを知らなくても、戦士ならばわかるのだろう。もっと長いものであったと。
それが折れた鈍と思うような敵であればよかったのだが。
「折れてんのにわざわざ使ってんだ。良い剣なんだろうよ! もっと短くへし折ってやろうか!」
「やれるものならやってみろ」
ここでも鼻が利いたジェア・レムに短く返し、千隼は振り下ろされた斧をその刃で受け止める。
「ぬぐっ」
その衝撃の重さに千隼の膝が沈みかけ――。
「ほらマグロパトラ、突っ込みなさい! ミサイルの分も汚名返上のチャンスですよ」
そんなケペシュの声がした後に、横からナイルマグロが突っ込んできた。
「うぉっふ!」
流石にナイルマグロは予想外だったか、まともに喰らったジェア・レムが吹っ飛ばされる。
「ちっ、いつまでマグロレース気分――」
大した痛痒もなくすぐに身を起こしたジェア・レムだったが、何かを察してその言葉が止まった。
直後、背後から回された刃がその首元で閃く。
暗夜――ライラ。
気配を消し、己を殺し。標的の死角からその急所を狙うケペシュのパラドクス。
「ってぇ……なんだお前、暗殺者の類か」
「レースよりこっちの方が得意なんですよ、俺は」
それが、暗殺者としての技を昇華した類のものだと首元に付いた2つの傷で気づいたか。傷の片方を掌で押さえるジェア・レムの言葉と視線に、ケペシュは微笑を浮かべて返す。
「それにしても大した武ですね。咄嗟にずらすなんて」
そうとは表に出さないようにしながら、ケペシュは内心、舌を巻いていた。
ケペシュが忍ばせた刃を振るう一瞬早く、ジェア・レムは僅かに身体を動かし首の筋肉の暑い所を切らせていた。
流石に一撃で殺せるような相手とは思っていなかったが、ケペシュの予想以上だ。クロノス級のマミーは、特に神の恩寵を強く受けていると言う。そのお陰もあるにせよ、これがジェア・レムの強さだ。
「これほどの武を身に付けた者を思う存分ぶった斬れるだなんて、こんなに心躍ることはありません」
「ああ――そうかい。そう言う事か、だからケペシュなのか、お前は」
ケペシュが構えた鎌型の双剣。
それがケペシュ自身と同じ名を持つ剣だと、ジェア・レムは知っているのだろう。
「どいつもこいつも好イなぁ、お前ら! いつぶりだ!? アタシが血を流してるなんてよぉ!」
首の傷から流れたのを拭って指に付いた血を舐めて、ジェア・レムはニィっと笑う。
「こうでなくちゃあな。闘いはこうでなくちゃあなあ!」
「なんでそんなに戦うの好きなのさ」
自分の血で高揚するジェア・レムに、タオタオが問いと刃をぶつける。
「さあなあ?」
曖昧に笑って、ジェア・レムは肩を竦めた。
「好きなもんは好きなんだから、仕方ねえだろ。アタシって存在は多分、こうなる前から闘うのが好きなんだろうさ!」
ジェア・レムはマミーだ。
一度死んだ人間が、神の恩寵を得てクロノヴェーダとして蘇った存在だ。
かつて人間であった頃の記憶は、ジェア・レムの中にはもう無いのかもしれない。それでもきっと、身体が覚えているのだろう。かつて人として感じた闘いの高揚を。
「それにな。他の連中みたいに信仰だ何だと考えるのは、アタシの性に合わねえみてえだ。その代わり、闘いは好い。闘って闘って、勝ち続けてりゃ、ついてくるやつは勝手に増えてくからな」
それがジェア・レムなりの、尊敬の集め方。
「だからお前達みたいに強いヤツは好いんだよ。弱えのブチ転がしても、怖がられるだけだからな」
畏怖と恐怖は似て非なるもの。
斧一つで畏怖を集める――ジェア・レムが暴斧の二つ名を冠しているのは、それが故か。
「んじゃあ、ジェアちゃんの好きなタイプはどんなヤツ?」
「追込」
妙にシリアスになった空気にタオタオが軽口を叩けば、迷わずマグロな答えが返って来る。
「いや、マグロのタイプじゃなくて」
「ああ? つまんねぇこと訊くんじゃねえよ!」
「いいじゃんよ、最後に教えてくれよ」
わかっていてはぐらかしたらしきジェア・レムに、タオタオが刃と共に問いを重ねる。
「最後なんて言うなよ! もうへばったとか言わせねえぞ!」
「ンー? はは、そうじゃない」
最後。
その一言を額面通りに受け取ったジェア・レムを、タオタオは笑って否定した。
「勝つのはタオたちだからよ」
「はっ! はははっ! そうか、アタシに勝つ気かぁ!」
虚勢でも誇張でもなく当然の様に告げられて、ジェア・レムはますます楽しそうに笑い声を響かせる。
「だったら、証明してみせろ!」
簡単に負けるか――言外にそう告げるかのように、ジェア・レムが両手で斧を構えてぐるぐると回り始めた。
●止まらない、止まれない
回って回って、回り続ける。
ジェア・レムの回転の勢いは、回転する度にどんどん速く、鋭くなっていく。
ビュォウ、ヒュゴゥと斧が風を切る音が幾つか重なって鳴り響き、ジェア・レムを中心に渦巻く風に砂が巻き上げられる。
「行くぞオラァァッ!」
「うおっ!」
人間竜巻と化して突っ込んで来たジェア・レム。
偶々その進路上にいたカルメンは、慌てながらも大きく後ろに跳んで避けた。
けれど回転の影響だろうか。カルメンが避ける前にいた地点の遥か手前で、ジェア・レムは大きく曲がった。
「って、こっちかよぉ!」
急に進路を変えて突っ込んで行ったのは、ゼキの方。
避けるのは間に合わないと、ゼキは後ろに跳びながら機械の四肢を前に出す。
ガガガガンッと、ジェア・レムの斧がゼキの腕や脚を数回容赦なく叩いていった。
「っ……見た目通りの脳筋なこって。あんま激しいとあとのメンテが面倒だろうが!」
「あー? 聞こえねーよ!」
砂漠に叩きつけられたゼキの悪態を風で聞き流し、ジェア・レムは更に進んでいく。
「もう一戦いけるかい、ツナマヨ号?」
「エトヴァ、もう一回ツナマヨライド?」
そう問いかけながら答えを待たずにナイルマグロの背に乗り込むエトヴァに、ラズロルが声をかける。
本当に、アレにナイルマグロで対抗する気なのかと。
「イエス、ツナ。フルコース……いや、エジプトの平和のために、俺はマグロ使いを極めようと思う。ウィーアーマグロライダー」
ラズロルに返しながら、エトヴァは【傀儡】の糸を伸ばして野生のナイルマグロを一尾、ナイル川から出泳させる。
何がエトヴァにそこまでマグロを駆らせるのだろうか。
「ならせめて、ナイルマグロの疲れを癒すよ」
告げてラズロルが指を鳴らせば、周囲に青色が広がった。
「そよ風に舞い上がる羽よ 生命に祝福を 悪しき者に天罰を」
ナスィームリーシャ。
青い羽の幻影が混ざったそよ風を呼び起こす術。青い羽はラズロルが助けたいものには癒しの力となり、敵に対しては風を切って刺し穿つ鋭い矢と鳴る。
「ありがとう。これならツナマヨ号も、きっと頑張れる!」
告げて、そよ風に乗ってエトヴァはジェア・レムの方へ飛んで行く。
(「……癒す間すらなく、切り刻まれそうなんだけどなぁ。ナイルマグロ」)
その背中を見送って、ラズロルは胸中で呟いていた。
「見よ、ジェア・レム。これがツインマグロスタイルだ」
ツインマグロスタイル再び。
ツナマヨ号の隣に横づけした野生のナイルマグロ。その上に立って、エトヴァはぐるぐる回り続けるジェア・レムの前で告げた。
「んがっ! いやいや待て待て。今更アタシが出来なかったツインマグロスタイルくらいで悔しがると思ってんのかチクショウが!!」
強がりつつも悔しさを隠しきれていないジェア・レムの声が、回転のせいで変な風に砂漠に響く。
けれどそれで回転の勢いは落ちたりしなかった。
「ツインマグロ上等! 纏めて下ろしてやらぁ!」
「やってみなければわからないだろう?」
「マグロぶった切られても恨むなよ!」
突っ込んで来るエトヴァ達に、ジェア・レムはむしろ更に回転の勢いを上げた。
尤も、エトヴァも本気でナイルマグロでどうにか出来る局面だとは思っていない。先行させた野良ナイルマグロは勿論、適当な所で方向転換させてナイル川へ返しておく。
「行くぞ――ツナマヨアタック!」
そして自身は本命のナイルマグロに乗った突撃――と見せかけて、ジェア・レムのすぐ横を通り過ぎた。
花模様のガラスフルートを奏でながら。
Ruf der Nostalgie――ルーフ・デア・ノスタルギー。
そのの音色は清澄にして魔性。聴いた者の心にある『想い』を掻き立てる。
人の心ある者には、風誘う望郷の調べとなり限りなく優しく、希望や忘れ得ぬ記憶を呼び起こす。されどジェア・レムの様な戦闘狂には、その破壊衝動を高める音と鳴る。
すれ違い様にエトヴァが響かせた音は、ジェア・レムの耳に届いて脳に響いていた。
「なんかわかんねぇけど、燃えてきたぁぁぁぁあ!」
衝動のままに、ジェア・レムは更に回転の勢いを高めていく。
「まるで嵐ね。文字通りの」
ぐるぐると回りながら動き回るジェア・レムを、ナディアは距離を取って眺めていた。
嵐の様な――と人物に対してつける事があるが、まさに嵐となる者はそうはいない。と言うか普通出来ない。
「私の砂嵐を弾き返せるかしら?」
そんな普通ではないジェア・レムに、ナディアは妖艶な笑みを向けた。
杖を掲げ唱えるは、終わりを告げる風を喚ぶ言葉。
「歌うように空を裂き 奏でるように地を揺らす 砂礫は刃となり骸に刻まん!」
砂礫の終止符――サンドストーム。
肉を削る砂嵐が、ジェア・レムを包み込む。
「いっ、いでででっ! なんだこりゃぁっ!」
訳も分からずに全身を切り刻まれて、ジェア・レムが声を上げる。
「しかも頭にもなんか刺さってねえかぁ!? アタシに何が起きてやがんだ!」
更にラズロルの飛ばした青い羽の幻影は、ナディアの砂嵐やジェア・レム自身が起こした風に乗って舞い上がり、渦の中心――いわば台風の目に当たる中心から降り注いで、ジェア・レムの頭にブッスブスと刺さっていた。
「いてえだろうが、コンチクショウ! もっと痛い目に合わせてやるからなぁ!」
けれどエトヴァの音で破壊衝動を高められたジェア・レムは止まらない。
――止まれない。
「こーゆーのってベーゴマみたいだな」
回転しながら動き回る様子と砂嵐の中でも止まらない重厚感からか、カルメンは独楽――特にベーゴマを連想していた。
「最近、改造ベーゴマ流行ってるよにゃー」
ベーゴマと言うには改造と比べてもあまりにも暴力的ではあるが、回転する動きはまさに人間独楽である。
「つーか魚のクロノヴェーダがぐるぐる回ったら回転寿司じゃん」
「回転寿司って、こういうのじゃないですからね? 寿司自体は回らないですからね!?」
魚が回るで回転寿司を連想したカルメンに、思わずルーシドからツッコミが飛ぶ。
「おいこら! アタシはハトメヒトの加護を持ってるだけで、魚じゃねーぞ!」
「って、聞こえてんじゃねーか!」
カルメンの呟きにはきっちり反論してきたジェア・レムには、ゼキからツッコミが飛んだ。
「聞こえてるし、見えてるんだな。目を回しそーな勢いでぐるぐると回転してっけど?」
「パラドクスだからな。目を回すことはないだろう――だが以前、ジェア・レムのアヴァタール級と戦った時は足元が見えてなかったな」
カルメンの素朴な疑問に、ジズが自らの経験を語る。
「成程、足元か……」
それを聞いたカルメンは、足元を突く策を思案する。
「【泥濘の地】で動きと回転の速度を落としたいかなー」
「そうだな。動きを鈍らせれば隙も生まれよう」
そしてカルメンが発した呟きを、同じことを思いついていた千隼が首肯した。
確かに地形を泥濘と変える残留効果ならば、この状態のジェア・レムの移動速度も落とすことは出来るだろう。
けれど――速度を落とす以上が出来るのなら、それに越したことはない。
「多分できますよ。回転を止めるの」
そこに手段があると、ルーシドが名乗りを上げた。
「砂漠と言う地の利を塗り替えてしまえばいいんです。いきますよ、わたゆき」
ダンジョンペンギン『わたゆき』の短い手(翼)を取って、ルーシドは砂を蹴って――舞い出した。
「いと高きに捧ぐは、自在にして不変なる我等が信奉。凍ても砕けもせぬ祈り」
唱えて紡ぐは神へ捧げる舞。
古代の舞に最終人類史で知った現代の氷上の舞のイメージも取り入れた自由な舞で、高次元存在の力を借り受ける神舞術。
――凍戯のサナム。
周囲の気温が一気に下がり、砂漠が冷たい凍土と変貌し始める。
「出でませい! 氷像『ぷりちーハニーわたゆき二号』!」
更に、砂漠に巨大な氷のペンギン像が出現した。
「な、なんだありゃぁ!」
驚くジェア・レムだが、凍土化は回転し続けるその足元にも既に及んでいた。氷の上で滑らない筈がない。
――つるっ。
「うおあっ!?」
盛大に滑ってジェア・レムのバランスが崩れるが、回転は急には止まらない。
ジェア・レムの斧が、凍った地面を叩いた。回転の勢いがたっぷり乗ったその衝撃で――すっ飛んだ。
「あー」
「またかー」
その光景を、いつかも似たようなの見たなとタオタオとジズが並んで眺めていた。
けれど今回は、それで終わらない。
「一番可愛い海洋生物の威光、味わって下さいどすえ!!」
ルーシドが頭上に掲げたわたゆきの動きに呼応するように、『ぷりちーハニーわたゆき二号』の氷の翼がジェア・レムをぺしんっと叩いてさらに吹っ飛ばした。
(「あ、チャンスだ」)
ナイル川の中から様子を伺っていた燐寧が、それを見て目を輝かせた。
本当はナイル川の中に引き摺り込んで水中戦を狙っていたが、これはこれで千載一遇の機会だろう。
「行くよぉ」
チェーンソーの尾を水かき代わりに大量の水を掻いて一気に加速。その勢いに乗って、ナイル川から飛び上がる。
要するにあれである。イルカショーでよく見る、高い所のボール突いたりする直線ジャンプである。
但し今回飛び上ったのはイルカでもないし、燐寧の先にあるのはボールなどではない。
「げ! やべっ!」
鋭い牙の並ぶ大口を開けて迫り来る怪獣――燐寧に気づいたジェア・レムが、空中でばたばたと暴れ出す。
「食われてたまるかよぉ!」
(「逃がさないよぉ!」)
逃れようと身を捩るジェア・レムの左腕が、 ばくんっ、と燐寧が閉じた巨大な口の中に消えた。バキッ、ゴリゴリ、グシャッと、骨が噛み砕かれる生々しい音がナイル川に降り注ぐ。
「!」
「ぐっ!」
更に燐寧は恐竜になりきって、咥えたままジェア・レムを振り回し、冷たい砂漠に放り投げた。
●戦いに生きる
「……痛えなあ、ああ、痛、え?」
右腕だけで掴んだ斧を支えに、ジェア・レムが立ちあが――ろうとして左にバランスを崩す。
原因を探してジェア・レムが己の左に視線を向ければ、燐寧に噛み砕かれた左腕は骨までぐちゃぐちゃに潰れて、血塗れになっていた。形が歪な上に、右腕と長さも変わっている。
「邪魔だ」
――ざんっ。
そんな左腕を、ジェア・レムは斧で無造作に切り落とした。
「片腕で勝てると?」
「あんな砕けて動かせねえ腕、バランスもとり難くいし邪魔なだけだからな」
千隼に訊かれ、ジェア・レムは迷わず返す。
「片腕くらいくれてやらあ。足だったら困るけどな、闘い難くなっちまうからよ」
動かない腕ならばいっそ、ない方が闘える――そう判断したのだろう。
残った全身にも砂嵐と青い羽で傷だらけになっているが、まだまだ余力はありそうだ。
「野蛮なだけではない、か」
その姿を見て、千隼はジェア・レムに対する認識を少し改める。
思っていた以上に、戦闘民族だと。
「だが、やはり戦闘民族から着想を得たパラドクスをぶつけるのが良さそうだな」
呟いて、天岑昌運を鞘に納める。
「なんだぁ? 何を狙ってやがる」
左で鞘を持ち、右は刀の柄を掴んだまま切っ先を前に向けた千隼の独特な構えに、ジェア・レムは斧を片手に身構える。
「……」
千隼はそれに答えぬまま、じりじりと両者の距離が縮まっていく。
そして――紅蓮の輝きが溢れた。
「紅蓮の月は、此処に満ちた!!」
抜き放った天岑昌運の刃は、闇と焔の魔力を纏って紅蓮に染まっている。
「オオォォォォォォォォッ!」
響く猿叫。
踏み込み、鞘内から抜き放つ同時に飛び上がった千隼の斬撃が紅の軌跡を描く。
――紅蓮月。
「ぐ、お……」
裂帛の気合と共に放たれた電光石火の斬撃を、ジェア・レムは寸での所で受け止めていた。
けれど反応できたと言うだけだ。
千隼がこのパラドクスの着想とした剣術は、一の太刀を疑わず、と言う必殺の精神を以て伝えられた技。抜即斬の雲耀の一閃、初見で容易く止められるものではない。
受け止めるには十分な体勢は取れず、今度はジェア・レムの方が大勢を崩されている。
「こ、の……っ!?」
そのまま千隼に押し切られる形でジェア・レムの斧が弾かれ、翻った紅蓮の刃がその胴を斬り裂いた。
「ぐっ……くそ、ますます痛え!」
斬られた傷を抑えようも片腕ではそうもいかず、ジェア・レムは一度大きく後ろに跳んで距離を取った。
「血が足りねえ気がするな……後でナイルマグロ食うか」
「それはだめ。不許可」
その呟きに、クィトが反応した。
「ナイルマグロのあんぜんは、我らが守る。ゆくぞモナマグロ号!」
クィトの声に応えて、ナイルマグロ・モナマグロ号が何処からともなく飛んでくる。ナイル川に帰したんじゃなかったのか。
「我らこそ、ナイル最速のチャンピオン」
「お! ナイルチャンピオンシップ優勝者の技か! こいつぁ見ものだな!」
モナマグロ号に飛び乗ったクィトを見て、ジェア・レムは斧を構えた右腕を引くように身構える。
そして――。
「モナマグロ号、突撃!」
「っらぁっ!」
クィトのモナマグロ号が飛び出すと同時に、ジェア・レムも斧を投げ放った。
――突撃のモナマグロ号。
「なんのこれしきー」
猛スピードで飛んでくる斧を、しかしクィトはモナマグロ号を少し傾けただけで勢いを落とさずに華麗に避けてみせた。
「避けたと思ったかぁ!」
だが、斧を追ってジェア・レムも走り出していた。
飛び道具と見せかけ、肉薄して蹴ったり殴ったり噛み付いたりする方が本命の業。けれどジェア・レムが唯一誤算だったのは、パラドクス化したことで強化されたクィトのナイルマグロの速度だろう。
「って、速っ」
「ふんっ!」
驚くジェア・レムの脇腹に、クィトがすれ違い様にフルスイングした黄金猫拳打棒の一撃が叩き込まれた。
「ぐふっ」
メキゴキッと肋骨の砕ける音が鳴って、ジェア・レムが吹っ飛ばされる。
「っ!」
その背中が何かに叩きつけられた。
●ここではナイルマグロがナイル川の頂点にいなければならなかった
「がはっ、げほっ……効いた……ぜ……って何だこりゃ」
クィトが脇腹に残した肉球型の打撃痕を押さえながら、ジェア・レムは自分の背後を振り返る。
吹っ飛ばされたのを止めたそれは、頑丈な鉄格子だ。
いつの間にか、戦場一帯を巨大な檻が包んでいた。
「ツナシャークがいなくたって、ボク様たちにはキミ達がいるもんね。おいで、おいで――」
ご飯の時間だよ、とアリアが呼ぶ声に応えて――檻の中にサメが現れる。
いわゆるヒトクイザメと呼ばれるサメの代表格、ホホジロザメが。
恐怖の水族館――スクアーロ・パラディーゾ。
「「これかぁー!」」
いつかも見た覚えがあるアリアのパラドクスに、ラズロルとエトヴァの声が重なった。
しかもいつかは檻の外側にいられたが、今回は2人とも檻の中である。
「これもまたか……」
「やると思ってたヨ」
檻の中経験者であるジズとタオタオは、なんだか諦め顔だった。まあいつかの事を思えば、そうもなる。
けれど今回、サメ達の視線は別の者に向けられた。
「……何故かこっちを見てます?」
「ん? 僕……じゃない? サディーク?」
「ふむ? 我の顔になにかついてる?」
代わりにサメの視線を感じて、ケペシュとルーシドとクィトが首を傾げた。けれど微妙に感じる視線がずれている。
「「「あ」」」
そして3人同時に気づいた。
「……しまった! ラズ、ツナマヨ号を隠さないと」
「ああそっか、サメだから」
同じ視線を感じたエトヴァもハッとなって、ラズロルの隣に降りて来る。
――そう。サメ達が見ていたのは、ナイルマグロ。
サメはマグロを食べるのだ。
マグロを釣ってたらサメに食われた、なんて言う話は海釣りする人の間では知られているとかなんとか。最終人類史なら、探せばそんな動画も見つかるかもしれない。
そしておそらくはこれこそが、ナイルサメがいなかった理由なのだろう。
サメまでナイル川に存在していたら、多分きっと食物連鎖でマグロの上に君臨してしまうだろうから。
「どうしようか。とりあえず埋める?」
「でも砂漠凍ってるよね……」
「しまった……解除しますか?」
「弱肉強食で仕方なし、とはなりませんかね?」
「モナマグロ号は、我が守る」
どうやってサメから自分たちのナイルマグロを隠すかと、5人は顔を突き合わせる羽目になった。
「やっぱサメだよ、サメ。しかも氷だから元気元気」
そんな相談に気づいているのかいないのか、アリアは悠々と泳ぐサメたちを愛し気に眺め、手まで振っている。
やがてサメ達が凍土化した砂漠の中に潜り込み、アリアの周りを回り出した。
ぐるぐると回るサメの背鰭の円が狭くなって、アリアの元に集まっていき――氷の中から飛び出した。
「あはは、相変わらず君達の甘噛みは痛いなぁ、あいたたた……」
がぶがぶとアリアに噛みつき出した。
甘噛みなのだろうか、それ。
「……なんだあ? あの魚。何故かみょーに親近感を感じるが……」
アリアがサメと戯れてる間に斧を拾ったジェア・レムも、その様子を不思議そうに眺めている。
そして――。
「よし、可愛いから許すけど、そろそろ敵に行ってこーい!!」
アリアがジェア・レムを指して告げれば、サメ達の姿が氷の中に再び消えた。
かと思えば数秒後に、SHRAAAAK!と氷の中から勢い良く飛び出したサメの牙が、ジェア・レムを襲う。
「痛! いてて、いてえっての!!」
氷の中から飛び出しては襲い掛かり、また氷に戻っては飛び出して来るアリアのサメ達。繰り返されるサメの猛攻を、ジェア・レムは何とか凌ごうとするが、その体に牙痕が刻まれていく。
「ぶっ飛ばすぞ!」
けれどついに、ジェア・レムの一撃がサメを吹っ飛ばした。
その先にいるのは――何故かテクトラムである。
「む? 何故こちらにサメが来る?」
気づいたテクトラムが後ろに跳んでも、サメは空中を泳いで向かってきた。
「あっちいけ、あっち!!」
その声の方に視線を向ければ、テクトラムの方を指差してるアリアの姿
「……アリア、おまえか我がライバルッ」
「しまったバレた!」
そりゃバレる。
「こうなったらあっちを仕留めたいな。ライバルを食え、キミ達!」
「サメとて魚。捕獲してサメ革の大漁旗を翻してやる」
開き直ってサメをけしかけて来たアリアに、テクトラムが曲刀を構える。
(「あれ地味に痛えんじゃよなぁ」)
サメに轢かれた経験のあるタオタオが、離れた所で合掌していた。
「おっと、場外乱闘だ。テクト、サメちゃんをあまりいじめちゃ駄目よ」
「なに? そうなると……サメ相手に素手か……」
ケラケラと笑ってるナディアの声で、テクトラムは少し困ったように刃を納め拳を構える。
「おらぁ、2匹目!」
その間に、ジェア・レムはもう1匹のサメを吹っ飛ばし――少し吹っ飛ばし過ぎたか、そのサメはナディアの背後に落ちた。
「……」
落ちたサメの両目が輝いたように見えたのは、氷で反射した光を浴びてか、それとも何か気になるものが見えたからか。
「あっ! 私の尻尾は齧らないで!」
飛び出したサメが、ナディアの尻尾の先を掠めていく。更にその先にいるのは、所在なさげに漂っていたテクトラムの毛玉だ。
「ナディアさんは齧っちゃだめ! 可哀想でしょ! 毛玉ちゃんもだめだぞ、可愛いから!」
アリアがサメに言い聞かせるが、それで止まるなら苦労はしないし、止まったとしても時すでに遅し。
「だめだ許さん。ナディアの尻尾へ向かったサメは毛玉のおやつだ。奴だけは絶対逃すな、食らいつけ」
サメに向けるテクトラムの視線に、殺気が籠る。
その意を受けて、毛玉も全身の毛を膨らませてさらに毛玉になっていた。
「ああほらライバル怒らせた! ええい、援軍おいで!」
それで焦ったアリアが、さらに追加でサメを喚びだす。
「奴を歯形だらけにしてしまえ!!」
「くそ……援軍だと……おい、ジェア・レム。このサメ共をなんとかしろっ」
「アタシも齧られてんの見て言えよなぁ!」
増えたサメが、テクトラムにもジェア・レムにも襲い掛かっていった。
●その名は記憶に刻まれた
「愉快な事になってんなぁ」
ゼキはその光景をニヤニヤ笑って眺めていた。
こんな手足ならサメも寄ってこないだろうと高を括っている。
「ジェアの動きを止めりゃ、勝手にサメに食われねえかね?」
サメは血の匂いに敏感だと言う。この場で既に最も血を流しているのは――ジェア・レムだ。
「身の潔白を証明するためにも頑張るとしようかね」
鉄塊『躯』を掲げ喚び出すは、恐怖と覚悟の記憶。
土煙に迫る軍靴、軍馬の悲鳴、鉄線に滴る赤、赤、赤――戦場に巡らされた血の防衛線。
それは誰を閉じ込めるためのものであったのか。
走狗の檻。
「ここが地獄だぜ」
『躯』が形を変えた鉄条網が、ゼキの意のままにジェア・レムの脚に絡みつき、締め上げる。
「ぬぐっ!」
鋭く尖った鉄の棘が、ジェア・レムの脚に幾つも突き刺さる。
「こんなもの……!」
「おっと。そんなんで頭脳派のおれに勝てるのかい」
力任せに抜け出そうとするジェア・レムを、ゼキが鉄条網を手繰り動きを封じる。
「ふむ、似たような技を持つ者がいるのだな」
それを見たテクトラムが、サメを押し除けながら少し驚いたような顔になる。
少し違うが、テクトラムもジェア・レムの動きを封じることを考えていたのだ。
「ならば合わせるか」
テクトラムの手から、極細の糸が広がっていく。
斬糸結界。
鋭い切れ味を持つ糸を、テクトラムは敢えて戦場全域には広げず、束ねた。その上で、ジェア・レムの脚に絡みついたゼキの鉄条網に重ねる様にていく。
「底引き網漁のごとく絡めとってやろう」
1本1本は細く脆い糸であろうとも、重なれば堅牢な檻になる。
「う、うごけねぇ……」
「今度は貴様がマグロになる番だ」
テクトラムが告げた時には、ジェア・レムはまさに水揚げされたマグロの様に動けなくなっていた。
「なめんな、こんなもんでアタシが――っ!」
満足に動けない隙を、暗殺者が見逃す筈がない。
音もなく忍び寄ったケペシュの双刃が、再びジェア・レムの首を裂く。
「さてはケペシュだなぁ!」
「残念、そろそろお開きの時間だ」
それでも倒れず、反撃か抜け出そうかともがくジェア・レムにタオタオの声と、墓標が降って来た。
寄る辺なき英雄の墓標――ヴィバルス・リルアバード。
「跪けとは言わねえ。ジェアちゃんもタオの護る墓にご招待してやるよ。ふは、いい場所だろう!」
墓標自体は粗末だが、金銀財宝で不釣り合いなほどに飾られた墳墓。
その威圧感が、目に見えない重さとなってジェア・レムに伸し掛かる。
ゼキの鉄条網とテクトラムの斬糸結界に脚を封じられた上に、タオタオの墓標の重量に押し潰される。
普通ならば、満足に動ける筈がない。
けれどジェア・レムは、普通ではなかった。邪魔だからと自分で自分の腕を切り落とすくらいには。
「この、てい、どで……アタシがあきら、めるかよぉ!」
ブチブチと足が削られるのも構わず、二重に絡みついたものから強引に抜け出していく。
「っアァァアァァアァァァッ!」
そして伸し掛かる重量を押し除ける様に声を張り上げ、ジェア・レムは跳んだ。
けれど墓標が消えたわけでなく、さらにその血塗れの両足では最初の様な高さも勢いも――もう無い。
「イキがわるくなったな」
そうだろうと見抜いて先に跳んでいたクーガに、頭上を取られる程に。
「マグロには使わなかったデンキ・ショックをくらえ」
「んがっ!?」
雷槍一閃。
刺し貫いた雷撃そのものが、ジェア・レムの身体を内側で駆け巡って灼き焦がしていく。
空中で痺れたジェア・レムを、カルメンが狙っていた。
「宵の刻を告げる漆黒の闇よ、陽を喰らい赫灼と咲く天界の花の真紅よ、全てを貫く力となれ」
カルメンの魔力そのものであるマフラーが、ひとりでにくるりと巻いて筒状の形を成す。
その中に、闇色の輝きが生まれた。
「火の花びらに炙られ焼かれながら闇の魔砲の餌食になりやがれ!!」
曼珠沙華の日蝕砲――ブラッディ・エクリプス。
カルメンが向けた砲から、炎と燃える赤い花弁を散らし闇の魔力が迸る。
太陽の光をも喰らいつくすような禍々しい闇の砲撃が、内から焼かれたジェア・レムを飲み込んで、その外側も焼き焦がしていく。
「ぐがっ!」
檻の天井にジェア・レムの身体が叩きつけられ――。
「なんてなぁ!」
「ああ、そうだろうな」
天井を蹴って地上へ跳んだジェア・レムへ、ジズが斧を投げていた。
ジンの力で炎を纏った一撃が、ジェア・レムの最後の勢いを殺す。
「ジェア・レム。お前とは妙な縁を感じる気もしていたが――これで終わりだ」
「ああ――そうかよ。畜生め、闘い足りねぇ」
投げた斧を空中で掴んだジズの一言に、ジェア・レムは歪な笑みを浮かべる。
「ジェア・レム、刃を交えたその名を覚えておきます。楽しかったですよ、貴女との戦いは」
「ジェア・レム、おまえとレースのことは、わすれない。楽しかったぞ」
「そうか。そんならまあ――悪くねえな」
「さらばだ」
ケペシュとクーガの言葉にジェア・レムは少し寂しそうに笑い――ジズの振り降ろした漆黒の刃が終わりを告げた。
●さらばナイルマグロ:Part1
戦いは終わった。
ジェア・レムが倒れた今、この空間は滅びの時を迎える。
それはつまり――ディアボロスとナイルマグロの、別れの時でもあった。
いつしか陽が傾いて、空の色が変わっていた。
「我と汝の友情は離れても変わらぬ」
夕陽の色に染まるナイル川に、クィトのモナマグロ号が帰っていく。
「名残惜しいものだな」
モナマグロ号と競ったツキジマルも、千隼に押されてナイル川の奥へ帰っていった。
「汝こそこのナイル川最速のマグロ。誇りを持って生きるのだ。達者で暮らせよー、モナマグロ号ー」
「2着でも胸鰭を張って誇れる偉業だ。よくやった、よくやったぞツキジマル。俺は決して忘れない。短くも共に過ごした時も、レース中のツキジマルの勇姿も」
ナイルチャンピオンシップ1着と2着のナイルマグロが、手を振るクィトと労う千隼の前から遠ざかっていく。
他のナイルマグロ達も、それぞれにディアボロスの手を離れていた。
「帰っていいぞー、テッカマキ。お前はもう自由の身だからな」
遠ざかるナイルマグロを、カルメンは笑顔で見送っていた。
「じゃあなー達者でなー! バイバイ、テッカマキ!」
カルメンの声に寂しさはない。記念に撮ったテッカマキとのツーショットと言う、マグロレースの思い出があるのだから。
「ありがとう、ツナマヨ号――そして名もなきマグロも」
ジェア・レムとの戦いまでも付き合わせたツナマヨ号をそっと撫でて、エトヴァはナイル川へ帰れと押し出した。傀儡で引っ張り出したナイルマグロの事も忘れずに。
「ああ、別れが寂しいよ」
その隣では、ラズロルが川岸に膝をついて遠くなっていくナイルマグロを見送っていた。
他のナイルマグロと違って、泳いでいるのではなく流されてるだけの様な気がしないでもないけれど。川の上に見えてるのアレ、背鰭じゃなくて開いてる胸鰭の様な気もするけれど。
「元気でな! かーぶーとーにーィィー!」
最後まで呼び名が定まらない、ラズロルである。
「ツナホテプ。おまえの丼、すごく気になるが……」
最期まで面倒みる。食材的な意味で。捕まえる前はそう言っていたクーガも今はこの通り。
「……おまえはもう、おれの戦友だから。たべることなんて、できないな」
マグロレースを経てジェア・レムとの戦いを終えた今、そんな気はなくなっていた。
「ゲンキでやれよ、たくさんカゾクふやすんだぞ」
見送るクーガの左目が少し潤んで見えるのは――夕陽の加減と言う事にしておこう。
「そうだな。家族を増やす……ナイルマグロが繁殖するのはきっと良い事だ。だから鮪嵐達は新宿には連れて行けない……あっちの川で繁殖でもしたら大変なことになるからな」
「いやまあマグロは本来川の魚じゃないですけどね。まあ強く生きて欲しいですね」
クーガの言葉に感慨深げに頷くジズにツッコミながら、ケペシュも最後の戦いまで付き合わせたマグロパトラをナイルに帰していく。
「だからここでお別れだ、鮪嵐。他のマグロも、君達の勇姿は忘れないよ」
遠ざかるナイルマグロを見送るジズの脳裏には、共にゲーミング空間を駆け抜けたり、白熱したレースの光景が流れていた。
「いやなんですかこれ!」
そんな多分きっと心温まるナイルマグロとの別れの場面の後ろで、ルーシドが我慢できずにツッコミの声を上げていた。
なお、サディークに護らせてたカマセは、戦いが終わったらさっさと解放している。
「何って、みんなそれぞれの鮪とお別れしているわね」
「そうですよね。ですから、なんで皆マグロとの別れ惜しんでるんですか! と」
そのまま告げて来るナディアに、ルーシドが再びツッコむ。
「何故か皆、相棒マグロに愛着湧いてんなァ」
「さっさと川に放しちまったタオの方が、おかしいんかね?」
ナイルマグロが離されていく様子にゼキは苦笑し、タオタオは肩を竦めている。
「そこで自信を失わないで!」
ツッコミに常識人枠の応援にと、ルーシドが忙しい。
「最後までトンチキだった……と言う事だな」
同じ光景をぼんやりと眺め、テクトラムがしみじみと呟いた。
最後の方のテクトラムなんて、アリアのサメと格闘してる内に気が付いたら終わってたくらいだ。
「まあ何にせよこれでお前さんは自由だ、中トロ号」
ゼキも周りに倣って、とっくに解放してたナイルマグロの名前を、ナイル川に向かって呟いてみた。
「あれー? ナイルマグロ食べないの?」
そこに、砂に埋もれかけていたフェオを救出したアリアが戻って来た。
「マグロのレアカツも美味しいよ。お腹へったぁー」
「まあお別れに水を差すのもなんだし……後で別に取って遠慮なく頂きましょうか、捌くわよ」
一人だけ運動量が多かったからか空腹を訴えるアリアに、ナディアは微笑を浮かべて囁き声で告げる。
「無駄に暴れて腹も空いている。マグロもだが……ナイルイワシとトビウオは食べてみたいな」
隣で聞いていたテクトラムが、真面目な顔で空腹を訴え、ゴクリと喉を鳴らした。
「そうね。ナイルイワシはオイル漬けにして……マグロは刺身、兜焼、テールステーキ。毛玉ちゃんには赤身が良いのかしら中トロ……? 脂たっぷりでも平気?」
「毛玉なら平気だろう。なあ?」
鮪一匹あれば色々作れるとナディアが並べ立てる料理に、テクトラムも毛玉も興味津々だ。
「ひと口もらえばよかったかな」
そのやり取りが聞こえていたクーガも、急に空腹感を感じていた。
「ヨシ、かわりにイワシニギリにしよう。イタマエ~」
「はいはい、イタマエとして腕を振るいますよ」
すっかりイタマエが定着してるのに、苦笑するケペシュ。
「イタマエも良いが皆疲れてるだろう。帰って回転寿司で打ち上げでもするか」
「お、打ち上げ良いっすね! 僕は炙りトロが食べたいな~!」
ジズの提案に、ルーシドがやっと笑顔を見せる。
「打ち上げで回転寿司、なんか水族館でおなかへったっていうアレに似てるよな。まあでもタオもいっぱい動いておなかへったので、寿司はタマゴとか食べたいです!」
「いやそこはマグロ食べてあげましょうよ」
鮪どころか魚介類から外して来たタオタオに、すかさずルーシドのツッコミが飛んだ。
「あ、俺はツナマヨ巻きがいいな」
「いっそ、鮪料理フルコースしようか!」
エトヴァとラズロルも、打ち上げの相談を始めている。
「さて。おれは打ち上げ前に、払い戻しにでも行くかねえ……当たってねえけど……」
一人パラドクストレインとは違う方へ歩いていくゼキの言葉に、ラズロルとエトヴァが思わず顔を見合わせた。
それで思い出したのだ。
「屈強漁師さん今頃膝から崩れ落ちてるかね? 悪い事したな~」
「漁師さんは……うん」
仕方ないな、と2人で頷き合い、パラドクストレインの方へ向かっていった。
「結局、皆もマグロは食べないんだねえ」
ナイル川から離れ帰路に付く他のディアボロス達を、まだ恐竜姿のままの燐寧が眺めていた。
「怪獣としても、マグロばっかり食べてる怪獣って、びみょーな評価を受けるらしいからねぇ」
実は本家もマグロ食べるらしいけどね――とツッコめる映画好きがいないのが残念だ。
とは言え最後の敵を倒し、ディアボロス達が帰路に付く。
いつもならば大体、話はここらで終わるものだ。
「さて。怪獣はクールにナイルの深みに消えていくよぉ」
(「ん? あれ?」)
けれども怪獣になりきってナイル川の中に沈んでいった燐寧が、何かに気づいた。
感じる違和感。何かが足りないような――。
(「ター坊? 他の子たちも――いない?」)
そうなのだ。ついさっき皆がナイル川に放していた筈のナイルマグロの姿が、ナイル川に潜った燐寧の見える範囲にいないのだ。
(「あれー?」)
普段の姿に戻るのも忘れ、燐寧は少し川の中を泳いでみる。
そして――見つけた。見つけてしまった。
「みんなー! ちょっと待って、大変、大変だよお!」
慌てて浮上して、燐寧は声を上げる。
「ナイルマグロが海に向かってる
!!!!」
続けた燐寧の声は、帰ろうとしていたディアボロス達の脚を止めるのに十分だった。
●さらばナイルマグロ:Part2
その異変は、ナイルチャンピオンシップの決着に地上が湧いていた頃から実は起きていた。
ナイル川の中の野生のナイルマグロ達は、一様にあるものを感じていたのだ。
それは――怯え。恐怖。
今まではなかった、カルメンによるオオカワウソの襲来や、フェオとナディアの地形が変わるほどのバトルの衝撃。その後に飛び込んできたのが、お魚咥えたチェーンソーザウルスな燐寧である。オオカワウソに続いての怪獣登場である。
――もうヤダこんなところ。
なんて思ったかは定かではない。
そしてジェア・レムとの戦いが終わり、それまで地上にいたナイルマグロ達が帰って来る。
マグロ同士で何かが伝えられたのだろうか。或いは戻って来た数の少なさに、外の厳しさを知ったのか。
なんにせよ、ナイルチャンピオンシップとその後のジェア・レムとの戦いを経験したナイルマグロ達の帰還が最後の切欠となって、ナイルマグロ達は一斉に大移動を始めた。
――海に向かって。
「爺ちゃん、見て、ナイルマグロが――」
「気づいたんじゃ。ナイルマグロにはナイル川でも狭すぎると……」
現地の人々の中にも、その様子に気づいている者がいるくらいの大移動である。
(「やっべぇぇぇ、これでピンクイルカ出て来なかったらやっべぇぇぇぇぇ」)
「お、おー。すげえなすげえ。さ、帰ろうぜ」
一人、ナイルマグロの大移動に心中穏やかではないゼキは足早に帰ろうとするが、他の多くはその光景に目を奪われていた。
「つまり獲ってくなら今しかない……?」
「行くか」
「うん、行こう!」
マグロをどう食べるか相談していたナディアとテクトラムとアリアなど、逆にナイル川に駆け出していく。
3人の目はマジだった。
「もう川に戻って来るんじゃないですよ。特に食欲旺盛な人間には近付かないように。次に会うのが皿の上でないことを祈っています」
「そうですよ! それでいいんです! マグロは海にいるべきなんです! 早よ海に帰れどすえ!」
そんな3人を止めるでもなく淡々とナイルマグロを見送るケペシュの横で、ルーシドが興奮のあまりおかしな京言葉に戻っている。
「……我ら、歴史が変わる瞬間を見ているのかもしれぬ?」
「おお! そう考えるとすげえ事な気がしてくるな!」
クィトの呟きに、カルメンが興奮した声を上げる。
とは言え、この大移動で何かが起こりなどしない。海に出たナイルマグロが連綿と続くマグロの歴史に繋がる様な事はない。他のディヴィジョンで、巨大魚使いがナイルマグロを振るわなくなることもない。
これはこの隔絶された空間だけの事。
マグロ達が海に辿り着こうが着くまいが、この空間は程なく消え去る。ナイルマグロと共に。
クィト達もそんな事はわかっている。
それでも――歴史的なものを感じさせる光景であった。
「ナイル川の生態系を大変なことにしたのは許せんが……最後にこんな光景も見れたのだ。正直これはこれで楽しかったな」
先程以上に感慨深そうにナイルマグロの大移動を見やり、ジズがしみじみと呟いた。
超成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【悲劇感知】がLV2になった!
【飛翔】がLV2になった!
【一刀両断】LV1が発生!
【モブオーラ】LV1が発生!
【活性治癒】LV2が発生!
【防衛ライン】LV1が発生!
【託されし願い】LV1が発生!
【クリーニング】LV1が発生!
【土壌改良】LV1が発生!
【ハウスキーパー】LV1が発生!
【トラップ生成】がLV5になった!
【建物復元】LV1が発生!
【アイスクラフト】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】がLV6になった!
【先行率アップ】LV2が発生!
【フィニッシュ】LV1が発生!
【ドレイン】がLV5(最大)になった!
【ダメージアップ】がLV9になった!
【能力値アップ】がLV4になった!
【ガードアップ】がLV3になった!
【ダブル】がLV3になった!
最終結果:成功 |
完成日 | 2023年12月02日 |
宿敵 |
『暴斧のジェア・レム』を撃破!
|