天海の和平提案

《七曜の戦》の結果を受け、ディアボロスに対して、ジェネラル級天魔武者『天海』から和平の為の話し合いの呼びかけが行われました。
 天海の和平案は『相互不可侵』であるようです。
《七曜の戦》前は、ディアボロスが一方的に攻撃を仕掛けてきましたが、《七曜の戦》後は、関東の天魔武者による、最終人類史への侵攻が開始された為、取引が可能になったと考えているようです。
 天魔武者による最終人類史への侵攻自体を、ディアボロスの力で防ぐ事は可能ですが、帰還した一般人を危険に晒すのは、できれば避けたいところではあります。

 天海は、ディアボロスへの誠意を見せる為なのか単身での交渉を望んでいるようです。
 和平案を蹴った場合は、天海を撃破するチャンスとなります。和戦両様で、交渉の場に向かってください。



天海

学びて思わざればくらし(作者 秋月きり
20


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 改竄世界史天正大戦国、高野山。
 独り旅立つジェネラル級天魔武者に、追い縋るトループス級達の姿があった。ジェネラル級天魔武者『天海』とその配下、坊官衆である。
 否、今はもう只のジェネラル級と高野山に詰めるトループス級でしかない。既に配下の縁は途切れていた。少なくとも天海はそう考えていた。
 だが。
「天海様、お一人でディアボロスの前に出るなど、おやめください」
 坊官衆の一体の言葉に、天海は首を振る。全ては決めたことだった。
「天海様がお倒れになれば、天正大戦国の損失は計り知れません」
 必死の言葉を、しかし、天海は聞き入れない。聞き入れるわけにいかない。その事は彼が一番理解していた。
「《七曜の戦》にて、ディアボロスの実力を思い知ったであろう?」
 その主張は、以前より彼がしていたことだ。そして、それは恐るべき成果として為されていた。《七曜の戦》に於ける復讐者達の快進撃を知らぬ者はもはや、何処にもいなかった。
「ディアボロスとは戦ってはならぬ。そう主張したのが拙僧ならば、故に、此度の交渉に拙僧が出向かねばならん」
 その決意は固かった。坊官衆達が何を言おうとも、その決意を覆すつもりはない。天海の思いを受け止め、坊官衆達は嘆きの声を漏らす。
(「そう。交渉の糸口があるのならば、この命を掛けてでも、和平の道を模索する必要がある」)
 それが、天海の使命だからだ。
「信長様の力が、次代の断片の王へ受け継がれ、その力が十全となるまでは……」
 たとえ捨て石になろうとも構わない。その思いを受け、坊官衆達は呻き、或いは天を仰ぎ涙するのであった。

 そして、最終人類史新宿島新宿駅ターミナル。
 到着したパラドクストレインの前に、和やかな笑みと共に立つ少女の姿があった。シルシュ・エヌマエリシュ(ドラゴニアンのガジェッティア・g03182)。復讐者達を改竄世界史に導く時先案内人の一人である。
「皆様! 《七曜の戦》、お疲れ様でした!」
 無事、《七曜の戦》を乗り越え、最終人類史へ多くの大地を奪還した事を満面の笑顔で祝福するシルシュ。この勝利がとても大きな物であることは間違いなかった。
 だが、復讐者達の戦いはまだ終わっていない。俺達の戦いはこれからだ、と言う奴であった。
「《七曜の戦》が終わり、再び世界は各々のディヴィジョンに分割されました。虐げられる一般人を救い、大地を強奪したクロノヴェーダ達に復讐を果たす。それまで私達の戦いが終わる事はありません」
 神妙な台詞の後、それはともあれ、と話題を変える。実に彼女らしい切り返しであった。
「《七曜の戦》の後、各ディヴィジョンの状況は大きく変化しています。これからは、《七曜の戦》後の状況に合わせた作戦を展開していくことになるでしょう」
 勝って兜の緒を締めよ。その言葉を是とするように、キュッと何かを締める動作をしていた。
「それで、此度、皆様には天正大戦国の紀伊国に向かって頂きます」
 その先で待ち受ける物。其れは、ジェネラル級天魔武者『天海』のようだ。
「どうやら《七曜の戦》前に皆様と交流をもった高野山のジェネラル級天魔武者『天海』が、皆様へ和平を呼び掛けてきたようなのです」
 その天海だが、単身で高野山を降り、大和国との国境となる断崖絶壁の上で、復讐者達が来るのを待っているようだ。
「勿論、最終的に全てのクロノヴェーダを撃破し、大地を奪還するのが私達の目的です。ただ……一時的な休戦であれば、確かに交渉の余地はあるかも知れません」
 天海の呼び掛けに応え、彼と交渉を行う。これが彼女の提示する作戦であった。

「前回の交流と異なる点として、今回、《七曜の戦》の結果を受け、皆様が有利な状況での交渉を行える……と言うのが挙げられます」
 勿論、天海も無手で交渉に臨むわけではない。交渉材料として天正大戦国側が用いるのは。『最終人類史への侵攻の中止』のようだ。
「ですが、皆様もご承知の通り、最終人類史内での戦いはディアボロス側が圧倒的に有利です。このまま襲撃されても、全てを撃退することは難しくありません」
 ただ、外縁部の区民達には苦労を掛けることになるので、その点では交渉する理由になるかもしれない。
「後は、天正大戦国との戦線を減らす事で、他へ戦力を回せる、と言うメリットが考えられますね」
 どちらにしろ、本作戦のみで和平を結ぶことは叶わない。あくまで、此度は交渉の場。最終決定権は攻略旅団にあることを忘れてはいけない。
「ですから、もしも皆様が本気で和平を望むのであれば、此度の交渉、『天魔武者側からどれだけの条件を引き出せるか』が肝になりますね」
 天海に提示した条件を認めさせた後、その条件が攻略旅団で承認されれば、和平の成立となるだろう。
 勿論、攻略旅団の決定次第では此度作戦そのものが無為に帰す可能性があるが、それは致し方ない。
 そして、もう一つ、大事なことがあるとシルシュは声を潜める。大声では言えない、だが伝えておく必要があるとの気魄が、そこに在った。
「此度を機に、天海に決戦を挑み、撃破すると言う選択肢もあります」
 天海を撃破すれば、有力なジェネラル級天魔武者の始末が可能だ。天海は高野山の責任者だが、此度の交渉に当たって後釜を用意しているようなので、高野山そのものを落とす事に至りはしないが、それでも有力なジェネラル級を倒す、と言う利点は存在する。
 しかし、和平交渉に現れた使者をその場で殺害する、と言う行為は遺憾を遺すだろう。少なくとも、天正大戦国との戦いは激化する可能性が充分にある。
「皆様には和戦両様の立場で、交渉に臨んで頂きたいのです」
 使者となる皆に全てを託したい。
 シルシュはそう告げるのだった。

「繰り返しの話になりますが、《七曜の戦》におけるディアボロスの勝利は、クロノヴェーダに対して、大きな脅威となっています」
 その優位を失わないように、気を引き締めて活動する必要がある。
「とまあ、そんなわけで、正直に申しまして私達ディアボロス側に天正大戦国と和平を結ぶ理由は大きくありません。先の言葉通り、天正大戦国の侵攻はさほど脅威では無く、あるとすれば戦線を減らす事が出来る、と言うくらいでしょう。まあ、後者は戦略的な意味があるので、攻略旅団の考え次第、ではありますね」
 そして、天海側も自身が帰らなかった場合に備えての準備はしてある。もしも天海を撃破しても、天正大戦国側としてはジェネラル級を一体失うのみ。彼の改竄世界史が大きく揺らぐことはないだろう。精神的な処は兎も角、との但し書きが付く可能性はあるが。
「そうですね。これは、和平を餌に、可能な限りディアボロスに有利な情報を獲得するチャンス……と考えるのが良いかも知れませんね」
 斯くして、此度もまた、時先案内人はパラドクストレインへと復讐者達を送り出すのであった。

 改竄世界史天正大戦国、紀伊国。その断崖絶壁の上に天海は立っていた。
 視線の先に広がるのは大和国――ではなく、大和国だった改竄世界史の海だ。《七曜の戦》の結果を以て、大和国は海と化した。それ故、紀伊国との国境は2000mほどの切り立った断崖絶壁と化しているのだ。
 その前に敷物を敷いた天海は、ゆるりと茶を点てながら待ち人を待つ。
 待ち人の到来は果たして天海に吉を齎すのか。凶を齎すのか。今の天海には判らない。
 だが。
(「天正大戦国の為には、この和平は絶対に必要となるだろう。果たして、ディアボロスはどう出るか……」)
 それを見極め、和平を結ばなければ成らない。
 その思いも呑み込むよう、天海は点てたお茶を一気に飲み干し、大きな嘆息を零していた。


→クリア済み選択肢の詳細を見る


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POW  穢土瀑布

技能:連撃/砂使い/風使い (各26LV)

大地の穢れを増幅させ、一帯に大爆発を起こす。 爆発により発生した膨大な量の砂礫は、あらゆる生命を呑み込み砕く。
(元パラドクス:サイクロンスラッシュ)

SPD  麒麟我来

技能:召喚/光使い/薙ぎ払い (各26LV)

霊獣麒麟の如き機体に変形し、強烈な光を放つ。 変形している間は俊敏な動きが可能であり、その光は敵の戦意を奪う。
(元パラドクス:クリスタルピラー)

WIZ  慈現結界

技能:罠使い/解体/結界術 (各26LV)

周囲を舞う球雷を基点とし、自在に結界を築く。 結界内の者はあらゆる苦痛を与えられ、その威力は心の弱さに比例する。
(元パラドクス:斬糸結界)

特殊ルール 【完結条件】この選択肢の🔵が👑に達すると、敵を倒し、シナリオは成功で完結する。ただし、この選択肢の🔴が🔵より先に👑に達すると、シナリオは失敗で完結する。
👑30

●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【託されし願い】
3
周囲に、ディアボロスに願いを託した人々の現在の様子が映像として映し出される。「効果LV×1回」、願いの強さに応じて判定が有利になる。
【友達催眠】
1
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【平穏結界】
1
ディアボロスから「効果LV×30m半径内」の空間が、外から把握されにくい空間に変化する。空間外から中の異常に気付く確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【エイティーン】
1
周囲が、ディアボロスが18歳から「18+効果LV」歳までの、任意の年齢の姿に変身出来る世界に変わる。
【活性治癒】
3
周囲が生命力溢れる世界に変わる。通常の生物の回復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」し、24時間内に回復する負傷は一瞬で完治するようになる。
【防衛ライン】
1
戦場が、ディアボロスが地面や床に幅10cm、長さ「効果LV×10m」の白い直線を出現させられる世界に変わる。敵はこの直線を突破できず、上空を飛び越える場合、最低「効果LV」分を要する。直線は戦場で最初に出現した1本のみ有効。

効果2

【能力値アップ】LV1 / 【命中アップ】LV2 / 【ダメージアップ】LV2 / 【ガードアップ】LV1 / 【反撃アップ】LV1 / 【リザレクション】LV1 / 【ドレイン】LV1 / 【アヴォイド】LV1

●マスターより

秋月きり
 お世話になります。秋月きりです。
 高野山に居を構えていたジェネラル級天魔武者『天海』が再度、皆様に接触してきたようです。このチャンスをどう生かすかどうか。それが此度の作戦になります。
 天海に対する対応は、今後の天正大戦国との関係にも関わってくる筈です。頑張って下さい!

 以下、補足です。
 確認をお願いします。

●選択肢について
①天海僧正との接触
 紀伊国で待ち受ける天海大僧正と接触して頂きます。この接触が今回の交渉に大きな影響を与える……可能性があります。(成否には影響与えません)
 そのため、「威圧的に接触する」でも「友好的に接触する」でも問題ありません。
 一番格好良いと思ったプレイングを採用させて頂こうと思います。

②ディアボロス側からの要求を突きつける
 ディアボロス側から要求を突き付けて下さい。天海は皆様が突き付けた要求に対して何らかの回答を出します。
 なお、後述しますが、②と③を交互に描写しますので、本選択肢に対する1回のプレイングで複数の要求を突き付けた場合、不採用となる可能性がありますので、ご注意下さい。
 また、どのプレイングを採用するかは、全体の傾向を把握した上で、その中で良いと思われるプレイングを選択したいと思います。

③天海の返答を聞き、疑問点を確認する
 ②の返答を受け、天海と会話することが出来ます。
 なお、④を行う場合、③をクリアしたら不可能になりますので、ご注意下さい。(③のクリアが【完結条件】の為)

④和平交渉の決裂『天海』
 有無を言わせず、天海と戦う選択肢です。
 この選択肢を選ぶこともまた、作戦の一つです。
 なお、④の選択肢を選ぶためには本選択肢への有効プレイングが10以上必要となります。なお、攻撃を止めるプレイングの場合、その分、攻撃を仕掛けるプレイング数が多く必要となりますので、交渉を望む方はそのような対応をすることも可能です。
(なお、此方でも全体のプレイングを見て判定しますので、場合によっては攻撃実行のプレイングを無効と判断する可能性がある旨、ご了承下さい)

●その他
・「前回の交流を経たことで、天海は多少皆様に気を許している感がありますが、とは言え、彼もまた天魔武者。天正大戦国の利益の為に動いている事は覚えていて下さい」
・「とは言え、天海がどのような条件を飲むかは判らないのですよね。無理難題を突き付けても、飲む可能性もありますし、否の可能性もあります。しかし、余り緩すぎると攻略旅団は納得感持ってくれないでしょうし、厳し過ぎる条件を提示してそれでも和平が結ばれなかった場合、気まずさは半端ないでしょうねー」
・「そんなわけで、皆様の思う通りに行動してみては如何でしょう? まあ、要求を突き付けたものの、難易度高すぎて『流石に呑めない』って返される可能性もありますしね」
・「交渉決裂はまあ、それも一つの作戦です。天海自身もその覚悟を持って交渉に挑んでいますし、ある意味、彼の望みを叶えることになります。……まあ、その後はちょっと大変になるかもしれませんが」
 以上、時先案内人からの助言です。参考にして頂ければ嬉しいです。
・本シナリオは(此度も)プレイングの採用が特殊な為、お早めの提出をご検討頂ければ、と思います。
・②③は交互に執筆いたします。リプレイの内容を踏まえ、次のプレイング、ないし会話をして頂ければ幸いです。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
 よろしくお願いします。
106

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


守都・幸児
特に構えるでもなく
歩いて天海の待つ断崖絶壁に向かう
これが天正大戦国側から見た境界の景色か
皆でこれだけの地を文字通り勝ち取ったわけだが、こうやって改めて見ると…すごいな
そんなことを考えながら

また会ったな
今日は、坊官衆たちを連れていないのか
まずは
七曜の戦では、大和を攻めずにいてくれたことを感謝する、と一礼

…俺たちの戦い、見てくれたか?
俺は関東で、徳川の軍の将と戦った
名は松平信康と言っていたな
天正大戦国にはまだまだ強い将が無数にいるみてえだが
俺の仲間たちも、強かっただろう

俺は、互いに譲れねえもんがあるなら、命を賭けてぶつかるのも
覚悟や誠意の形のだと思ってる
クロノヴェーダは敵だ
最後には必ず倒すべき存在だって思いも揺らがない
だが相手の覚悟には相応の覚悟をもって正面から受け止めたい
だから堂々と、対等に天海に向き合い胡坐で座る
俺のいた時代の行儀のいい座り方っていったらこれなんでな

俺は山育ちなもんで学のある方じゃねえが
あんたとの問答を考えるのは、嫌いじゃねえんだ
高野山も、いい山だった

さあ、何から話そうか


(「これが、天正大戦国側から見た境界の景色か」)
 改竄世界史天正大戦国、紀伊国国境。パラドクストレインから降り立った守都・幸児(祥雲・g03876)は大和国と紀伊国を隔てる断崖絶壁を一瞥し、感嘆の吐息を零す。
 断崖絶壁の向こうには改竄世界史の海が広がっている。当然だ。この断崖絶壁から先は全て、最終人類史なのだ。天正大戦国からは海しか見られない。
(「皆で、これだけの大地を文字通り勝ち取ったわけだ」)
 改めて見れば、「凄い」の一言に尽きる。それ以上の感想が思い浮かばないことに幸児は微苦笑を浮かべ、その足で断崖絶壁に向かい進んでいった。
 人を待たせている。だから、其処に向かう。
 幸児の考えは至ってシンプルであった。

「また会ったな。今日は、坊官衆たちを連れていないのか」
 その言葉には呆れの色が混じっていた。発した己がそう感じているのだ。目の前のジェネラル級天魔武者『天海』はどう感じているのだろうか。
 相変わらず表情は読めなかったが、だが、何となく苦笑を浮かべている気がした。
「駆け引きをする暇はありません。単身です、とだけ」
「ま、そうだろうな」
 単身なのは時先案内人の予知からも理解している。それでも天海と遣り取りする事に意味があった。
「ともあれ、だ。まずは、《七曜の戦》では、大和を攻めずにいてくれたことを感謝する」
「……交流の礼だと申しておきましょう」
 若干、言葉が紡がれるまでに時間を有したのは、何かを思うが故か。
 だが、それを幸児に思案させる暇なく、天海はその場で頭を下げた。大仰な兜飾りが揺れるも、しかし、次の瞬間にはしゃんと背を伸ばし、幸児へと向き直る。そして言葉を口にした。
「拙僧からもまずは一つ。此度、拙僧の呼び掛けに応じて下さった心意気に感謝致します」
「お、おう」
 面と向かって言われると何やら気恥ずかしく、むむっと唸ってしまう。
(「互いに譲れねえもんがあるなら、命を賭けてぶつかるのも覚悟や誠意の形だからな」)
 クロノヴェーダは敵で、最後に必ず倒すべき存在だ。だが、天海が覚悟を持って自分たちに挑むならば、相応の覚悟を以て正面から受け止めたい。
 それが幸児の思いであった。
 そんな彼の心意気を知ってか知らずか、天海は視線を幸児に、そして彼と共に現れた復讐者達へと向ける。覚悟は決まっている。そう告げるかのような視線だった。
 故に思わず問うてしまった。
「……俺たちの戦い、見てくれたか?」
「生憎、千里眼は持ち合わせてはいません。風の噂に聞いた、と言った程度であれば」
 真意、真偽は分からず。だが、天海は是と頷く。流石に紀伊国から関東の様子を窺うことはジェネラル級天魔武者であっても無理なことであったか。
(「まあ、俺達も時先案内人がいなければ、関わっていない事件を知る事が出来ないけどな」)
 事件を報告書にまとめ、彼らに伝える存在を天海は知る由もあるまい。それだけを思い、頭を振る。
「俺は関東で徳川の将と戦った。名は松平信康と言っていたな。天正大戦国にはまだまだ強い将がいるみてえだが、俺の仲間達も強かった。そうだろう?」
「《七曜の戦》に於けるディアボロスの快進撃を思えば、それが誇大とも言いますまい」
 その強敵を前にして、しかし、天海は以前よりの態度を崩さない。
 何やら秘策があるわけでもあるまい。だが、何となく幸児は察してしまう。復讐者の脅威を知っても、否、知る天海であったとしても、おそらく自身の態度は末期まで崩さないだろう、と。
 それが吉となるのか凶となるのか。それはこれからの交渉に掛かっている。
「さあ、何から話そうか」
 そんな天海との問答は嫌いではない。
 故に、この場に来たと、幸児は彼へと笑いかけるのであった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【託されし願い】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!

無堂・理央
七曜の戦を越えて尚、天正大戦国の令制国制度の護りは硬いんだよね。
それこそ、戴冠の戦まで耐え抜けると考えても良いはずなのに。


敷物の上に座ってまずは一礼、交渉するにしてもここは礼を失する必要は無いよね。
「では、交渉を始めますが先の交流でお話ししたようにディアボロスは攻略旅団にて各ディヴィジョンの対応を決しますので、この交渉はあくまで攻略旅団に持ち込む案になる形となります」
この点は確認も兼ねて押さえておかないとね。
ボク達、交渉に臨む者達の自戒も兼ねて。


で、こちらから要求する事の中では多分かなり請け負いやすい要求をボクから。
『天正大戦国の断片の王と来月中に直接会談を行う』
決定権が天海僧正より上の存在だけど、護衛にジェネラル級を複数名連れたりディアボロス側の参加人数を絞るとかの警備はそちらのご自由にって形だよ。

会談するだけ、これは条件としては容易い事だと思ってる。
今の天正大戦国に断片の王が居れば、だけど。
断片の王が居ないなら、断片の王候補全員との会談でも別に良いけどさ。
二年後の八月の話もしたいし。


「では、交渉を始めさせて頂きます」
 敷物の上に座り、無堂・理央(現代の騎兵?娘・g00846)はぺこりと一礼する。これから先、天海がどの様な態度を取るかは判らない。だが、今は礼を失する必要が無い。それが理央の考えであった。
「先の交流でお話しした通り、ディアボロスは攻略旅団にて各ディヴィジョンの対応を決しますので、この交渉はあくまで攻略旅団に持ち込む案になる形となります」
 この和平交渉が全てでは無い。そう告げる彼女の言葉に、天海も了承と頷く。先の交流を全て踏まえるのは、彼も同じ認識の様だった。
「ボクからの要求事項を挙げます。それは『天正大戦国の断片の王と来月中に直接会談を行う』です」
 彼女なりに譲歩した要求のつもりだ。対するハードルは低い。そう考える彼女に、しかし、天海は首を振る。
「まず、純然たる事実だけを話ししましょう。片や、断片の王を抱かぬ敵国の者たち。片や、国の中枢と言っても過言ではない断片の王。今、正に争っている両者が和平の為、直接これらの会談の場を設ける。逆の立場ならば、貴殿等も是と言いますまい」
「まあ、それはそうだけど」
 天正大戦国は最大級の弱点を晒し、対する復讐者側は同じリスクを負わない。ならば、端から見れば、それが罠と見るのは当然だろう。
 だが、それを何とかするのが天海の仕事では無いか。そう口にしかけた理央は、己の言葉を呑み込む。天海は前置きした筈だ。『純然たる事実』と。
 まだ彼の言葉は終わっていないのだ。
「要求通り会談の場を設ける事は出来ましょう。だが、その結果、何が起きるか。その想像も貴殿等には容易い事でしょうな。まず、断片の王の身辺を慮る者は、それを阻止しようと躍起になるでしょう。その内の一人でも決起すれば、後は功名争いです。諸大名は元より、今現在、『出家』の立場にある者達も、復帰を断片の王に認められる為、決起に加わるでしょう。後に見えるはこの日の本を舞台とした、一大決戦の場でしょうな。拙僧はその事を望んでいませんが……しかし、そうなるのは目に見えております」
「……まあ、そうだろうね」
 如何に天海の影響力が甚大であろうとも、彼は断片の王ではない。全てのジェネラル級を抑える事は叶わず、一体でも彼の意向に反すれば、そこからは雪崩式だ。全てのジェネラル級が最終人類史に攻勢を唱え、其処に起こるのは天正大戦国に属する全てを巻き込んだ総力戦となるだろう。
 そこまで説明を口にした後、天海は「ですが」と言葉を句切る。つまり、ここからが和平を望む彼としての意見なのだろう。
「たとえば、休戦が結ばれた相手と会談する。そのこと自体に検討の余地があるとは、誰しもが考えるでしょう。そこに異を唱える者がいても、その流れであれば、拙僧にて抑え込む事は可能と考えます」
「休戦? 和平を結ぶのを攻略旅団が承認したら、と言う事?」
「いえ。それも必要ですが、そもそも休戦とは何か、と言うお話です。休戦とは互いに侵攻を停止した状態が数か月以上続く事。まずは、互いに攻勢を控える『緊張緩和』を行い、その後、互いに一切攻撃を行わない『停戦』期間を設け、その『停戦』が続く事で、『休戦』に繋げられましょう。それを鑑みて……互いに最大限の努力を行えば、年内に会談の機会を設けられる可能性は充分にある。拙僧はそう考えますが、如何ですか?」
 和平とは言え、無条件に全てを呑めるわけではない。だが、そこに至る迄の最良の道は提示できる。それが天海の意のようだ。
 此度、もしも断片の王との会談を望むならば、少なくとも年内いっぱいは互いに不可侵を貫く必要がある、と言う事だろうか。
 天海の言葉に、理央はむむっと唸っていた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【託されし願い】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!

金刺・鞆
先日ぶりにございますね、天海僧正。
(わたくしも同様に敷物へと座し、今しがた聞いた内容から確認すべきことなどをぴっくあっぷ、してゆきましょう)

停戦には段階がある……とのお話でございますが、各段階でそれぞれどこの手のものが攻勢を控えるようになるか、心当たりはございますか。

現在われらの押さえる地――民の住まう地に侵攻が行われております。
(ここにはすこし怒りも込めて。われらでぃあぼろすが民を思い守る集団であることは先日の交流時に天海も知るところのはず。遺憾の意、です)

あの程度の雑兵であれば撃退は造作もないとは言え、あれは徳川何某の独断と見てよろしいのでしょうか。
なれば、われらの怒りを買う行為を止められぬ程度の影響力しか持たぬ……そう考えられても仕方がない、です。そのような者に停戦を主導し……会談まで漕ぎつけるほどの力が本当にあるのでしょうか?

こちらへの侵攻が僧正の意図したものであるのならば、交渉を行う相手の心証を悪くするのは下策ではなくて?
(侵攻可能状態は取引材料にならぬ。そう暗に伝えましょう)


「先日ぶりにございますね、天海僧正」
 理央の言葉を引き継ぐよう、ずいっと前に出ては敷物に座す人物がいた。金刺・鞆(虚氏の仔・g03964)である。
 淑女としての礼を行った彼女は、そして、天海に問う。この時間は、先の要求の疑問を晴らす場。その意を以て投げる質問であった。
「停戦には段階がある……とのお話でございますが、各段階で、それぞれ何処の手の者が攻勢を控えるようになるか。それに心当たりはございますか?」
「ふむ?」
 対する天海は、己の顎を撫でると、鞆の言葉の先を促す。まずは全てを語らせる。そのつもりのようだ。
「現在われらの押さえる地――民の住まう地に侵攻が行われております。関東――貴方達の言う武蔵国南方で行われている行為、知らぬとは言いますまい?」
 その言葉には怒りが滲み出ていた。先日の交流で復讐者が民を慮る存在であることを天海は知っている筈だ。その上で尚、其れを見過ごすのであれば許し難い。それが彼女の思いだった。
「あの程度の雑兵であれば撃退は造作もないとは言え、あれは徳川何某の独断と見てよろしいのでしょうか。なれば、われらの怒りを買う行為を止められぬ程度の影響力しか持たぬ……そう考えられても仕方がない、です。そのような者に停戦を主導し……会談まで漕ぎつけるほどの力が本当にあるのでしょうか?」
 交渉相手の心証を悪くする下策をとる彼に、本当に和平を結び、断片の王との会談を取り付けるまでの力があるのか。
 そう問う鞆に、天海は「成る程」と呟く。
「質問を答える前に、2点、指摘しておきましょう。鞆殿。一つ。あくまで先の休戦の話は貴殿等の望む『断片の王との会談』の為の物。『緊張緩和』『停戦』『休戦』はその段階の話に過ぎません。年内と言う期間も、その会談の為、最小限必要な時間である、とご理解下さい」
 そして、もう一つ、と天海は言葉を続ける。
「今現在、あなた方ディアボロスと、我ら天正大戦国は敵対国だ。逆にあなた方は和泉国で侵攻やその為の活動を行っている。それもまた事実ですな? 和平を結びたいとの考えがあれど、その一方で、侵略者に対する対応に力を入れぬ訳に行かない。『和平を考えるから戦をやめよ』。その結果、何が起きるか。それを考えられぬ貴殿等ではあるますまい」
 和睦を装い、相手を謀殺する。そのような奇襲が、戦国時代の日本では一つの方法として用いられていた。天正大戦国の天魔武者が其処に思い至らぬ筈も無かった。
「お互い様、と言うつもりですか?」
 鞆の言葉に、しかし、天海は首を振る。
「そう申すつもりはございません。ただ、全てを総体的に見て欲しい、とは言いましょうか。己が領地に敵対ディヴィジョンとの境界の霧が発生していた。ならば、その先を獲りに行く。武蔵国での出来事を要約すれば、その当たり前の行為です。貴殿等はそれを行っていないと否定はしますまい」
 パラドクストレインが開通すれば、当然の如く、復讐者達はその先の調査を進め、場合によっては歴史侵略者を討っている。天海本人はパラドクストレインの存在を知らない筈だが、しかし、他の改竄世界史への干渉が何らかの形で行われている、とは認識しているようだ。
(「まあ、当然と言えば当然なのですが……」)
 そうでなければ、他の改竄世界史に復讐者達が現れる現状を説明出来ない。天海がそう思い当たらなければ、逆に嘘だろうと鞆は思う。
「ともあれ、和平の為にと、一方的に侵略を止める事は無いとの理解はして頂きたい。その上で、貴殿等が和平に応じると言って下さるならば、家康殿へ働きかけましょう。拙僧の進言にて、休戦に向けた条件は整えられる筈です」
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【防衛ライン】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!

守都・幸児
…沖縄
琉球とも呼ばれる地が南にある
天正大戦国ではなく、ヤ・ウマトの領域だ
俺は先日そこで島津を名乗る天魔武者たちと戦った
今も、沖縄では多くの仲間が島津と交戦している
島津が沖縄の地で民に行った『圧政』は
看過できるものじゃなかった
…俺たちは
民の命を何よりも重んじている

こいつは確認に近いが
ディヴィジョンの外で天魔武者とディアボロスが出会った場合は
不可侵の外の出来事、とすることを要求する

外で出会った場合お互いに容赦はしない
特に不利益のねえ提案だと思うが、どうだろう
ヤ・ウマトだけでなく
天正大戦国に隣接しているディヴィジョン、全てにおいてだ
だから、沖縄の制圧は止めねえ
先ほど言っていたな
『己が領地に敵対ディヴィジョンとの境界の霧が発生していた。ならば、その先を獲りに行く』
例え不可侵を結んだとしても
他のディヴィジョンの制圧までも、譲り合うわけにはいかねえだろう
なら正々堂々、新たな地では陣取り合戦を続けようじゃねえか

…実際のところ
家康とやらの軍はともかく、外部で交戦真っ最中の軍を引かせるのは、難しいだろう?


「……沖縄。琉球とも呼ばれる地が南にある」
 守都・幸児(祥雲・g03876)の切り出した言葉に、天海は目を細め、先を促す。どの様な要求が来るかは判らない。だがそれを楽しみにすらしている。そんな表情のように幸児には思えた。
「沖縄は天正大戦国ではなく、ヤ・ウマトの領域だ。俺は先日そこで島津を名乗る天魔武者たちと戦った。今も、沖縄では多くの仲間が島津と交戦している」
「成る程。『先日』と」
 意味ありげに頷いた後、天海はぽつりと零す。それは何故だか、愚痴の様にも感じた。
「島津の田舎武者共め」
 それは、明らかに怒気を孕む言葉であった。
 だが、流石は高野山の大僧正の地位にあった男である。次の瞬間には、その声は穏やかな物へと戻っていた。怒りを制する事は造作も無い事のようだ。
「申し訳ございません。続けて下さい」
「……あ、ああ。島津が沖縄の地で民に行った『圧政』は、看過できるものじゃなかった。……俺たちは民の命を何よりも重んじている」
「その認識はありますな。それで、幸児殿。貴方は和平の条件に何を求めるのです? 沖縄の民を助けることであれば、拙僧ら天正大戦国は、天正大戦国の外は関知致しませぬ。もしも島津……おそらく、島津豊久でしょうな。彼奴が天正大戦国の外で活動しているのであれば、関与する事はありませぬよ」
 だが、と天海は言葉を続ける。そこまでが和平の条件として譲れる場所なのだろう。
「もしも天正大戦国内の島津の首を……と言うのであれば、話は別です。相互不可侵である以上、大名の命を奪うことを、和平の条件には出来ないと思うて下さい。……まあ、これは、ディアボロスである貴殿等がその大名の命に匹敵する何かを差し出すのであれば、交渉の余地がある、とは申しておきますが」
「妙に大名の肩を持つんだな。天海」
「それが役割故に」
 幸児の問いに、天海は涼しげに返答する。
 その返答は確かに『出家』と言うシステムを任されたジェネラル級天魔武者の物だった。たとえ断片の王が殺せという命令を出したとしても、それを拒否する権限が与えられている、と豪語しただけはある。逆を言えば、何かに目が眩み、ジェネラル級の命を差し出す様では、その権威・権限は失墜してしまうだろう。それは充分に理解出来た。
「まあ、俺の要求は『ディヴィジョンの外で天魔武者とディアボロスが出会った場合は、不可侵の外の出来事とする』って事だけだがな」
「成る程」
 頷いた後、天海は言葉を続ける。
「協定が、互いのディヴィジョンに攻め込まないと言うものであれば、それは自ずとそうなるでしょうな」
「ああ。ディヴィジョンの外で出会った場合、お互いに容赦はしない。特に不利益のねえ提案だと思うが、どうだろう?」
 幸児の言葉に、しかし、と天海は首を振る。大筋は肯定する。だが、少しばかり自身の思いを言わせて欲しい。そう告げた天海は一つの言葉を口にする。
「ここからは拙僧の思いですが……出来れば、戦争前に話し合いを持ち、戦わずに調整できる事が望ましいと思いますな。条件によらば、我ら天正大戦国が戦わずに撤退する事も出来る筈です」
「……いや、それはそれで構わないが、それでいいのか?」
 拍子抜けした、と声を上げる幸児に、天海は微笑む。
「我らの圧政を嫌っているのは承知している、と言った筈ですが。無論、幸児殿の言う通り、互いに功名を争う可能性もありましょう。ですが、やらなくて良い戦を回避出来るならば、互いの疲弊を無くす事も出来る。それもまた、事実でしょう? まして、和平を結んでいる間柄であれば」
「まだ和平を結んでいるわけじゃねーけど……言いたいことは判った」
 天海の言葉に、幸児はふむ、と頷くのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【平穏結界】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!

無堂・理央
天海も何とか天正大戦国側の条件や負担を少なくして不可侵条約結ぼうとしてる?
この辺は互いにどこまで取れるかって駆け引きなんだろうな~。


敵対国との境界が通れるなら通って活動をするのが当たり前と言うならこの要求はありかな?
「断片の王との直接会談には年内の休戦が必要と言うのは理解しました」
「なら、天正大戦国と最終人類史以外、共通の敵になり得る国に関する要求をしましょう」
『ディアボロスが天正大戦国より蝦夷地に突入及び攻略完了まで天正大戦国が蝦夷地の土地を取らずにディアボロスに全面協力する』
天海の立場的に額面通り通るとはまず無理、そこからどこまで協力できるかを天海の口から聞くのが目的だし、要求が完全に通るとは思ってない事はちゃんと伝えておく。
天海の譲歩を聞いた後で、突入の協力すら出来ないようなら天正大戦国の攻略を進めて排斥力を大きく落として蝦夷地から天正大戦国への侵略を許す状態にするのがディアボロスが蝦夷地に入って攻略を開始する方法の一つであり、個人的には最速の方法であると考えてる事も伝えておくよ。


「次、いいかな?」
 続く言葉を紡いだのは、無堂・理央(現代の騎兵?娘・g00846)であった。
「断片の王との直接会談には年内の休戦が必要と言うのは理解しました。なら、天正大戦国と最終人類史以外、共通の敵になり得る国に関する要求をしましょう。ボクからの要求は『ディアボロスが天正大戦国より蝦夷地に突入及び攻略完了まで天正大戦国が蝦夷地の土地を取らずにディアボロスに全面協力する』です」
「ふむ」
 理央の言葉に天海はしばし、思案を巡らせる。
 メリットとデメリットを天秤に掛けているのか。それともただ、彼女を焦らせているだけなのか。
 しばしの時を置き、天海は返答を口にした。
「まずは、全面協力との言葉を指摘しましょう。そもそも理央殿。貴殿の言う『全面協力』とは何を求めていますかな? それが我ら天魔武者全軍をディアボロスの弾避けに使う、などと言うのであれば、話になりますまい」
「いやー、そんなつもりは……」
 あるとも無いとも断言せず、理央は曖昧に言葉を濁す。そこに天海の更なる言葉が続いた。
「そう。『全面協力』との言葉は実にいい加減な文言です。『全面協力を約束した。だからどの様な協力もして貰う』と、要求への過激化は誰しもが危惧すること。拙僧は疎か他の大名も看過しますまい」
「まあ、そうだね」
 もしも何かの条件を飲ませるとするならば、曖昧な語句、拡大解釈可能な文句は宜しく無い。天海の言葉はそう言う事だ。
 ただの忖度がいつの間にか義務になる。その例を理央は知っている。むしろその手の難癖で滅ぼした敵の存在を認識している。天海が何処まで知っているかは不明だが、彼の警戒は重々正しい様に思えた。
 そして同時に理解する。少なくとも天海は、他の大名にケチを付けられない程度には条件を落とし込みたいのだろう、と。
(「先の会談の条件で何となく判っていたことだけど」)
 和平を結ぶのは天海の是のみでは無いのだろう。理央達の最終決定権が攻略旅団にあるように、天海の決定も、多くの大名を納得させるに落とし込むまでが要、と言う事なのだろうか。
「また、我らはディアボロスが他のディヴィジョンに攻め入ることを止めるつもりはありません。ですが、その戦いに協力する事は無い、とも申しておきましょう」
 つまり、蝦夷地――未開の北海道ディヴィジョンでの天魔武者と復讐者達による共闘作戦、と言う展開は無さそうだ。おそらくこれはアルタン・ウルク他、全ての改竄世界史に対しても同じだろう。少なくとも今は、かもしれないが。
 前回の交流時、『日の本の領域は全て強奪したいと思うのは当然のこと』と言っていたし、もしかしたら日本以外への興味は薄いのかもしれない。
「また、『天正大戦国より蝦夷地に突入』の文言は保留としましょう。ともあれ、貴殿等に取っての未開地の通過は、現状断らざるえません。これまでの貴殿等を鑑みるに、未知の領域を既知とすれば、現在の神出鬼没っぷりに拍車が掛かる。その危険は充分な警戒対象でしょう」
 では、その一方で既知――現在攻め入っている領域は、どうなのか。
 理央の疑問に天海はふむと頷く。
「そうですな。貴殿等が天正大戦国内に駐留する話であれば交渉の余地はありましょう。ですが、この場合、天正大戦国からも貴殿等のディヴィジョンに駐留軍を派遣させて頂きたい。持ち帰った資料にあった『大使館』と言う奴ですな」
「……大僧正は勉強がお好きなようで」
「うむ。ブラック企業、トラック、それと獅子。ライオンと呼ばれていましたが、彼の生き物が実在するとの話は実に衝撃的でした」
 おそらく異世界物の児童文学やライトノベルから新たな知見を得たのだろう、とだけは推測出来る文言だった。
苦戦🔵​🔴​🔴​🔴​

文月・雪人
率直な意見を申し上げます。
少なくとも私は現状、相互不可侵とする事に益を感じておりません。
東京の守りにしても、和泉国にいる河内国の難民達の支援にしても、攻め上り国を勝ち取る方が現実的に思えるからです。

その先には勿論、多くのジェネラル級天魔武者がいるでしょう。
豊臣秀吉、徳川家康、何方も断片の王の有力候補、力を得る前に早期に手を打つべきだと考えるのが普通です。
強敵に更なる成長が見込まれる。
そんな相手に時間を与える事自体が、私達にとっては大きなリスクなのです。

それも承知の上で待ったをかけるというのなら、相応の条件は必要です。
そこはご確認頂きたい。

しかし大僧正のお立場もあるでしょう。
納得出来る落とし所はあるか、此方もぎりぎりまで探るつもりです。

先に大僧正は、天正大戦国内にディアボロスが駐留する可能性について言及されました。
もし仮に、拠点設営や人々への支援活動を認めて頂くとした場合、千早城のある和泉国が有力候補地かと思われます。
ですがその件、和泉国の大名淀殿の了承は得られる見込みはあるのでしょうか?


「先に大僧正は、天正大戦国内にディアボロスが駐留する可能性について言及されました。もし仮に、拠点設営や人々への支援活動を認めて頂く場合、千早城のある和泉国が有力候補地かと思われます」
 そう切り出したのは、文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)であった。対する天海も是と頷く。
「確かにそうでしょうな」
 現在、復讐者達が攻略中の令制国は和泉、もしくは紀伊。仮に駐留軍を置くとすれば、有力な場所は千早城、即ち和泉国であろう。
「ですが、和泉国の大名、淀殿が了承するのでしょうか?」
「そのくらいならばどうとでもなりましょう」
 駆け引きも何もない即答だった。
「その場合、河内国側の和泉半国程度が、ディアボロスの活動範囲となるでしょう。和泉半国に相応する交換条件次第でしょうが、まあ、和泉国の半国支配は初めてではありません。淀殿も納得してくれましょう」
「これも交換条件次第ですか……」
 相応の交換条件があれば、淀殿も手を引く。天海の言葉は確かに正しいだろう。
(「淀殿も天魔武者だし、合理的な判断をするんだろう。……合理的?」)
 己の思考に引っかかりを覚え、雪人は再度、声を上げる。それはむしろ宣言であった。
「天海大僧正。率直な意見を申し上げます。少なくとも私は現状、相互不可侵とする事に益を感じておりません。東京の守りにしても、和泉国にいる河内国の難民達の支援にしても、そのまま攻め上り国を勝ち取る方が現実的に思えるからです」
「……」
 対する天海の返答は沈黙のみだった。
「その先には勿論、多くの天魔武者がいるでしょう。豊臣秀吉、徳川家康、何方も断片の王の有力候補。力を得る前、早期に手を打つべきだと考えるのが普通です。強敵達に更なる成長の時間を与える事。それ自体が、私達にとっては大きなリスクなのですから」
(「そして、あなたはそれを否定出来ない筈だ」)
 内心のみで言葉を繋げる。
 天海こそ、その時間を稼ごうとしている張本人だ。
「故に、和平には相応の条件が必要なのです。そこはご理解頂きたい」
 そして、その上で天海は誠実だった。復讐者達に対して嘘は吐かない。少なくとも雪人はそう信じている。沈黙なのはその証左なのだろう。
 だが、ここで睨み合っての自縄自縛は是と出来ない。よって、彼はもう一つ、言葉を続けた。
「しかし大僧正のお立場もあるでしょう? 納得出来る落とし所はあるか、此方もぎりぎりまで探るつもりです」
「それは感謝します。雪人殿。願わくば、此度の話し合いの中でそれが見つかると良いのですが」
 ようやくの天海の反応に、今度は雪人が沈黙する番だった。
 今の返答通り、天海もまた落とし所を探っている。では、これほど迄に会話が噛み合わないのは何故か。天海の回答の大半が『相応の条件次第』なのは何故なのか。
 雪人達はそれを『自陣営の利益を確保する行動』と判断していた。
 だが。
(「いや。待てよ」)
 先の交流も踏まえて認識した天海の性格を鑑みれば疑念が湧いてくる。
 果たして彼は利益欲しさに要求を吊り上げるタマだろうか? 天正大戦国の不利益にも関わらず、出家や《七曜の戦》の方針、令制国の情報を復讐者に伝えたのは彼だった。
 それは何故か?
(「俺達が情報を渡したからだ」)
 少なくとも天海は相応の情報を得たと判断し、その誠意に対する返答として情報を提供してくれた。
 天海は合理的だ。
 その彼が常に『相応の利益』と口にしているのだ。それは――。
(「つまり、和平そのものが相互に利益あるって判断なのか?」)
 ならば、先の雪人の宣言は利益享受のブラフや吹っ掛けと捉えている可能性が高いだろう。

 ディアボロスとクロノヴェーダは相容れない。
 誰かの言葉が脳内に木霊していた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
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効果2【ガードアップ】LV1が発生!

野本・裕樹
『相応の利益』……天海大僧正は和平を結ぶ事が天正大戦国と同じくらいディアボロスに利益があるとお考えなのですね。

先の交流でディアボロスが多くのディヴィジョンと敵対する事を知り、《七曜の戦》でディアボロスが多くの領土を獲得した結果、守りの為に時間を必要としていると、そう思われているのでしょうか。

確かに私達は《七曜の戦》で多くの大地を取り戻す事が出来ました。
ですが一つ情報を開示します。
現在世界全体で私達の領域に攻撃を仕掛けてきているのは関東のみです。(ヤ・ウマトの戦も東京湾ですし嘘ではない筈)
私達は守りに時間を割く必要がほとんどありません。

ですから『令制国の境界の護りの技術をディアボロスに提供する』というのはどうでしょうか?
もし私達では再現不可能という事であれば、代案として高野山の八葉の結界の技術を要求したいです。
相互不可侵となるなら天正大戦国にも不利益とはならないでしょう、そしてこの護りを構築するのにディアボロスも時を必要とするようになる。
これなら旅団の納得を得られる可能性があると思います。


「『相応の利益』……天海大僧正は和平を結ぶ事が天正大戦国と同じくらいディアボロスに利益があるとお考えなのですね」
 野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)の言葉に、天海は当然とばかりに頷く。
「先の交流でディアボロスが多くのディヴィジョンと敵対する事を知り、《七曜の戦》でディアボロスが多くの領土を獲得した結果、守りの為に時間を必要としていると、そう思われているのでしょうか」
「守りに時間を有しているかどうかは兎も角、数多のディヴィジョンに狙われ、守りも厳しかろう、とは思っておりますよ」
 クロノヴェーダに問われるのも癪だが、それが常識の判断だ。
 そういう意味では、天海の言葉は正しいのかもしれなかった。
 だが、と裕樹は首を振る。その事自体が誤りなのだ、と。
「確かに私達は《七曜の戦》で多くの大地を取り戻す事が出来ました。ですが一つ情報を開示します。現在、世界全体で私達の領域に攻撃を仕掛けてきているのは関東のみです」
 ディアボロスは守りに時間を割く必要が無い。その言葉に、天海は「ほう」と目を見開く。
 なお、関東に攻勢を仕掛けてきている改竄世界史は天正大戦国の他、冥海機ヤ・ウマトも存在しているし、他の改竄世界史では今まで通りの小競り合いの他、TOKYOエゼキエル戦争の残党である大天使やアークデーモン達の暗躍も見られる。だが、領域――最終人類史の領土のみに絞って話をすれば、その舞台は関東のみなので、裕樹の言葉に嘘は無かった。
「成る程。他のディヴィジョンは《七曜の戦》で余程疲弊したと思われますな。或いは……それどころでも無いほど、壊滅したか」
 例外は結果、力の温存となった天正大戦国ぐらいか。
 まあ他の改竄世界史が中国やドイツ、エジプトなどに食らいついてくる可能性もあるが、現状では仮定の話のみ。今、議題に挙げることではないのは事実だった。
「とは言え、未来永劫ずっと守りを弱めても良い、という話もないでしょう。そこでこう要求します。『令制国の境界の護りの技術をディアボロスに提供して欲しい』、と」
 守りの力であれば、たとえ相互不可侵になっても不利益とならないだろう。
 その提案に、天海は「成る程」と頷いた。
「もしもそれが私達に再現不可であれば、代案として『高野山の八葉の結界の技術』でも構いません。如何でしょう?」
「確かに、技術提供は吝かでは無い、と考えますな」
 資源が乏しく、しかし、技術で成り上がるのは何処の日本でも共通した考えか。
 鷹揚に頷いた天海は、ならば、と言葉を繋げた。
「互いの技術で互いの改竄世界史を発展させるのは、和睦交渉として良き方向ですな。是と言いましょう」
「そうですね! ……ん? 互いの技術……?」
 和やかな笑みのまま、裕樹は表情を曇らせる。確かに技術提供は吝かでは無いと言った。だが、その後の言葉に引っかかりを覚え、問いかける。
「ええ。天正大戦国の守りの力。そして、ディアボロスが神出鬼没に他ディヴィジョンに移動している技術。その双方が天正大戦国とディアボロスに備われば、相互にとって、停戦以上の更なる意義あるものとなるでしょう」
「……う、うん。ちょっと待って下さいね」
 技術を提供する。だからそちらも技術を提供して欲しい。互いにバーターであれ、と言うのは確かに、今まで一貫して天海が主張して来たことだ。
 裕樹の言葉を躱しているだけなのか、それとも本気で口にしているのかは判らなかったけれども。
 とんでもない要求が飛び込んできたことに、思わず嘆息する裕樹であった。
善戦🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【エイティーン】LV1が発生!
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守都・幸児
いよいよ大詰めだな
ちょいと無謀かもしれねえが勝負に出る
ここまでの問答を踏まえた上での
俺からの最後の要求だ

『和泉国のみを不可侵の外とする』
一見理不尽な要求に感じるかもしれねえが
ちゃんと根拠はある

千早城の存在だ

不可侵を結ぶのであれば、相互に利益があるべきだ
だが和泉国にある千早城の存在は、その均衡を崩してしまう

千早城を開け渡せば、ディアボロスの不利益
千早城にディアボロスが留まることは、天正大戦国の不利益となる
しかし千早城を得られれば
それは得た方の大きな利益となるだろう

故に和泉国に限っては、不可侵の外で城取合戦を決着させることに意味がある

和泉国の指揮は、これまで通り淀殿に一任すれば
大名の顔も立つだろう
千早城を取り戻せば、大手柄だ

だが俺は
ディアボロスが千早城を守り抜くと信じている
あんたはどうだ、天海
自陣営の力を信じるならば
これは互いに利益のある要求だ

…これまでの会話から感じた
天海が大名たちへ抱く思いと
俺たちディアボロスの力量をどう捉えているか
この要求はそれらを踏まえた上での、賭けだ
さあ
どう出る天海


文月・雪人
和泉国における千早城の確保と、圧政に苦しむ人々への支援活動
これは今の私達にとって必要最低限の条件です

しかしその対価の要求には応えられない
大僧正の仰られた大使館の案も
力を持たない人々の安全を脅かす事を考えると
攻略旅団の了承を得る事は難しいでしょう
つまりこのままでは、相互不可侵の協定を結ぶ事は出来そうにありません

ならばいっその事
『和泉国は相互不可侵の範囲外とする』のはいかがでしょうか

先程大僧正は、淀殿の了承はどうとでもなると仰いましたが
自分だけ不利益を被る形は不満も当然あるでしょう
元より淀殿は、千早城の漂着を好機と見ている様子
奪い返せば大きな功績となるのですから、戦国大名の判断としては当然です
難民抹殺の命と共に配下を差し向けられ、此方は防戦を強いられている

しかし私達も、黙って負ける気はありません
淀殿が千早城を奪ってディアボロスを追い出すのが先か
私達が攻め上って和泉国を勝ち取るのが先か
双方共に、相応の覚悟と野心を持って戦いを続けているのです
和泉国に関してはこのまま戦い、決着を付ける事を望みます


「和泉国における千早城の確保と、圧政に苦しむ人々への支援活動。それが今の私達にとって必要最低限の条件です」
 静かに、そして神妙に文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)は言葉を口にする。
 対する天海の言葉も静かだった。互いに徴発の意図は無く、ただ、落とし所を探っている。そんな会話に、守都・幸児(祥雲・g03876)はゴクリと唾を飲み込んでいた。
「だが、『圧政をやめろ』とは言うますまい? 拙僧が……否、我らが『ディアボロスは食事をやめろ』と要求するのと同じでしょう? それを飲めと言うのであれば、行き着く果ては、どちらかがどちらかを滅ぼすまで戦い続けるしかありません。よもや、それが貴殿等の望み、とは言うつもりもないでしょう?」
「ええ。少なくとも、今の天正大戦国にそれを振りかざせませんね」
 過去、とある改竄世界史に其れを強いたことで、結果、総力戦という暴動に陥った。彼の改竄世界史が弱小だった為、ディアボロスの圧勝という形で幕を引いたが、対天正大戦国ではそうも言えないだろう。もっとも――。
「もっとも、そのような条件を是と持ち帰れば、裏切り者として拙僧が責を取らされるのは目に見えておりますが」
「まあ、普通に売国奴と疑われるよなぁ」
 故に可能ならば天正大戦国有利、そうでなくても五分五分に見える条件を引き出す必要がある。それが天海に課せられた使命なのだろう、とは重々理解出来る、と幸児は頷く。
「千早城の確保は絶対です。ですが、その対価の要求は応えられません」
「ふむ」
 絞り出す様な雪人の言葉に、天海は片眉を動かし、頷く。それは疑問と言うよりも、確認の声にも感じられた。
「大僧正の仰った大使館の案も、力を持たない人々の安全を脅かす事を考えると攻略旅団の了承を得る事は難しいでしょう」
「それ故の不可侵。それ故の和平、和睦、と拙僧は思いますが……成る程。以前の交流を経て幾らか貴殿等を知り、貴殿等には拙僧を理解して頂けたと感じていましたが……まだ、相互の理解は拙僧の考えるほど深くは無い、とのようですな」
 残念ですが、と憮然な表情をする。それが雪人と幸児には何処か、微苦笑のようにも感じられた。
「例えば先の例で言う圧政。貴殿等は敵国のエネルギー搾取の手段では無く『人道的に』否を唱えます。ですが、逆の側面を見れば、こうも言える。住民達はエネルギーを提出しているが故、もっとも彼らが望まぬ事態――兵役からは免除されている、と」
「……まあ」
 言いたいことは判ると、雪人と幸児は頷く。圧政は圧政で看過出来ない問題でもあるが、その一方で盲目的に全てを否定するつもりも無かった。敵を知り己を知れば百戦危うからず。孫子の言葉は天正大戦国だろうと最終人類史だろうと、どの場所どの時代でも有効だ。
 天正大戦国の骨子である圧政だが、実の処、本来の戦国時代よりも人々の生存率は高い、と言う側面も備えている。また、天海の言う通り、兵役免除の実態は人々の生活基盤を安定したモノへと変えている。最終人類史の2023年代と比べれば、圧政そのものは確かに野蛮だが、しかし、2023年にも、ブラック企業等々、搾取とも呼ぶべき制度は残っている。そして、実際の元亀・天正の頃合いとは比べるまでも無い。
 天正大戦国の世界は、一般人に取ってみれば地獄かもしれない。だが、それ以上の地獄が歴史には存在し、その中を強かに生きていた人々も存在したのだ。
 ともあれ、と雪人は空咳を打つ。天海の言葉自体に思うところは幾らかあるが、しかし、今はその話を続ける理由は無かった。
「そこで提案です。ならばいっそ、『和泉国は相互不可侵の範囲外とする』のはいかがでしょうか?」
「……」
 返答は沈黙だった。
 相互不可侵を唱える天海にとって、雪人達の提案は受け入れがたい。そう言う事なのだろうか。
「『和泉国のみを不可侵の外とする』。一見理不尽な要求に感じるかもしれねえが、ちゃんと根拠はある」
 雪人の言葉を、幸児が補足する。彼の言う根拠。それは――。
「千早城の存在だ」
 千早城の存在は、双方に取って均衡を崩す要素だ。千早城を明け渡せば復讐者側が不利益を。だが、千早城の存在をまるまる認めれば天正大戦国側にとって不利益となりかねない。
 まして、《七曜の戦》が終わったばかりの現在。天正大戦国に於ける復讐者側の領土は全て最終人類史に還っており、そこまで千早城を動かすには叶わない。
(「千早城をパラドクストレインに載せる訳にいかないしな」)
 ならば、残された道は廃棄か、それとも放置か。或いは活用か。それを行うのが天正大戦国側か、それとも復讐者側か、という話だろう。
「先程、大僧正は淀殿の了承はどうとでもなると仰いましたが、自分だけ不利益を被る形になれば、不満も当然浮かび上がってくるでしょう。元より淀殿は、千早城の漂着を好機と見ている様子。奪い返せば大きな功績となるのですから、戦国大名の判断としては当然です」
 難民抹殺の命令と共に配下を差し向けられ、復讐者達は防戦を強いられている。その事態も事実だ。
 即ち、今や、千早城は獲るか獲られるか――幸児曰く、城獲りの様相を示している。それを継続させろ、と言う復讐者達の弁に、しかし、天海は。
「……曖昧な物言いでは了承しがたい。そう伝えた筈です」
 首を振り、そして、言葉を続けた。
「つまり、我ら天正大戦国――天魔武者が、千早城を制圧すれば、ディアボロスは和泉国から退去する。そう言う話ですな?」
「ああ。だが」
 幸児の言葉を、しかし天海は皆まで語らせない。片手でそれを制すると、更なる言葉を重ねた。
「貴殿等ディアボロスが岸和田城を制圧すれば、和泉国はディアボロスのもの。つまり、千早城を我々が獲るか、岸和田城を貴殿等が獲るか。その条件を提示している、と思って宜しいでしょうか?」
 文字通り、岸和田城と千早城の城獲りで和泉国の支配権を決める。その認識で良いか? そんな問いに、復讐者達は顔を見合わせる。

 さて。
 今や、復讐者達には幾らかの道が示されている。
 一つ。此度の天海の問いに答え、彼の反応を待つ道。
 一つ。今までの要求を再度天海にぶつけ、相応の条件を提示して和平へと進む道。
 一つ。和平提案を蹴り、天海を追い返すのみの道。
 そして、一つ。この場で全てを切り上げ、天海の命を奪う、修羅の如き道だ。
 無論、道は一つではない。選択肢の組み合わせで次第では、幾多の道を選べるだろう。その選択の権利を、復讐者達は有しているのだから。

 復讐者達が天海に示した道。それは――。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【活性治癒】LV2が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【ドレイン】LV1が発生!

音羽・華楠
不穏な空気を天海から感じます……が、シルシュさんも言ってました。

『皆様の思う通りに』

そうですね……ここに到ればもう思うままに。
正直な気持ちをぶつけてやります!


天海大僧正は千早城の前城主、河内国の大名であった於犬の方は当然ご存じですね?
私も彼女との決戦に参加しましたが、敵ながらご立派な方でした。
最期まで堂々と戦い抜いたお姿に、私を含め感じ入った復讐者は多いです。

――その於犬の方を、淀殿が犬ころ呼ばわりして侮辱したことはご存じで?

……それは、於犬の方を認める私たちも侮辱したということです。
千早城を譲れないのも事実。
河内国の難民たちや、和泉国の人々の苦しみを見過ごせないのも事実ですが――

――淀殿との戦は城や民や国だけでなく、名誉を懸けた戦いでもあるとご理解下さい。

……私たちが戦わずに千早城を明け渡せば、淀殿はさらに於犬の方の名誉を汚すでしょう。
それは決して許せないのです。

於犬の方の名誉を貶めてまで、天正大戦国と和平したいとは思いません。
だから、淀殿との決着がつくまでは、見守って頂けませんか?


守都・幸児
ああ
岸和田城と千早城の城獲りで和泉国の支配権を決める
その認識でいい

まずはそう返答する
天海の反応と答えを聞いてから、残る疑問点を確認しよう
天正大戦国としては、相互不可侵をいつまで続けたい?
単刀直入に聞いてみる
どんなに話し合いを重ねたとして
俺たちはいずれ戦うことになるだろう
それはきっと変わらない
だからこそ小細工無しで率直に聞きたい
天正大戦国は…断片の王は、どれほどの時間を必要としている

もし天海の答えが年を跨ぐものなら
先ほど言っていた年内の会談の件も、検討よろしく頼むと伝えておく

それらを踏まえた上で
否決の可能性はおおいにあるが…と前置きしてから
攻略旅団に持ち帰る、と伝えよう

こいつは個人的に、だが…
出来れば今回の取り決めを「和平」とは、呼びたくねえな
俺たちが最終人類史を選び、
天魔武者がクロノヴェーダである限り
いつかは終わらせなくちゃならねえ取り決めだ
だから俺はなるべく「相互不可侵」と言う
いずれ戦うときに
堂々と挑み、受けて立ちたいからな

やっぱり、あんたとの問答は嫌いじゃねえ
坊官衆たちにもよろしくな


 天海と復讐者達の会談は、終始和やかに行われた――訳は無く。
 音羽・華楠(赫雷の荼枳尼天女・g02883)はそれを不穏な空気と称した。おそらく天海側は型通りに和平を持ちかけ、復讐者側がそれを不満に思っている。そのすれ違いが彼女の受け取る『重い空気』であったのならば、それは確かに是で在ったのだけれども。
 ともあれ、華楠は言葉を紡ぐ。自身の思いを口にしなければ始まらない。それは時先案内人の助言であったが、彼女もまた、その通りだと認識する内容だった。
「天海大僧正は千早城の前城主、河内国の大名であった於犬の方は当然ご存じですね?」
 敵ながら立派な相手だと華楠は評している。最期まで堂々と戦い抜いた姿に、感じるものがあったのは、華楠のみではなかった。
「その於犬の方を、淀殿が『犬ころ』呼ばわりして侮辱したことはご存じで?」
「ほう」
 彼女の問いに天海は何を思うのか。目を細め頷き、先を促す。故に、華楠は言葉を続ける。苛烈に、炎の如き怒りは彼女の中で強く燃焼していた。
「それは、於犬の方を認める私たちも侮辱したということです。淀殿との戦は城や民や国だけでなく、名誉を懸けた戦いでもあるとご理解下さい。私たちが戦わずに千早城を明け渡せば、淀殿はさらに於犬の方の名誉を汚すでしょう。それは決して許せないのです」
 於犬の方の名誉を貶めてまで、天正大戦国と和平したいと思わない。そう締めくくる華楠に、天海は問うた。
「つまり……於犬の方の事も踏まえ、和泉国の争奪戦――城獲りを認めろ。との話で良いのですかな?」
「ああ。岸和田城と千早城の城獲りで和泉国の支配権を決める。その認識でいい」
 要約の問いに、是と応えたのは守都・幸児(祥雲・g03876)であった。
「それではまずは其方に返しましょう。和平の条件としては些か奇妙ではありますが、悪い物ではありません。和泉国の支配権はその条件で受け入れましょう。拙僧としては淀殿の奮起を願うばかりですが」
 復讐者側の一方的な利では無く、天魔武者にも利はある。故に、彼的には問題無い、と言う事なのだろう。
「その上で申し上げますが、貴殿等は勘違いしている。我々天魔武者は仲良しこよしの集団ではありません。互いに反りの合わない者同士は、会えば罵り合う事もありましょうし、互いに蔑称を呼び合う者もいます。さて、その上で問いましょう。その『犬ころ』発言。それは対峙した中での面罵であったのでしょうか?」
「……ッ」
 天海の意図を認識し、華楠は唇を噛む。確かに『犬ころ』発言は淀殿が己の城で零した物だ。プライベートな場で零した愚痴を非難すること自体、責める話でも無い。
「そして、於犬の方は淀殿をどう思われていたのでしょうね。『女猿』や『猿の威を駆る女狐』『我が身可愛さに豊臣秀吉殿に取り入った売女』。彼女達の仲違いは認識しております。そのくらい発していても不思議は無いでしょう」
 一方的な物の見方、物言いは違うのでは? と静かに告げる天海の言葉に、華楠は言葉を呑むしか無かった。
「城獲りそのものは是としました。ですが、それを於犬の方の名誉の為との物言いはやめておきなさい、とは申しましょう。ならば、あれは於犬の方の物。天正大戦国の物だ。その意図は無いのでしょう?」
 そこに復讐者達が何を思うかは勝手だが、だが、それを冠にすると矛盾するぞ、との指摘にそれ以上の言葉は紡げない。
 華楠が刻んだ沈黙に、しかし、別の言葉が割り入ってくる。それは、幸児の問いであった。
「ところで天海。天正大戦国としては、相互不可侵をいつまで続けたい?」
 どんなに話し合いを重ねたところで、復讐者と歴史侵略者は水と油。何れ戦う事にはなるだろう。だから、と小細工抜きで問う。天正大戦国は……断片の王はどれ程時間を必要としているのか、と。
「いつまで……ですか。それは、どちらかの勢力が『最終的な勝利の為に、相手を攻撃すべきだ』となった時、この和平は崩れる事となりましょう。ですが、この休戦は双方に利益があります。故に、その期間は長い方が望ましいとは思いますが……むしろ問いたい。双方に利があることは認識されているのでしょう?」
「流石に其処を否と言うほど俺達も愚かでは無いよ」
 復讐者と歴史侵略者が手を取り合って同じ未来に進む事は不可能だろう。だが、刹那に不可侵を結ぶ事自体は否定しない。和泉国を除き、天正大戦国との戦線維持にコストを掛けないのであれば、その分、他の改竄世界史の攻略や、未知の北海道、北米などの調査に人員を割くことが可能だ。
 問題はその利益を是と享受するのか、それとも更なる利益を求めるのか。それとも、復讐者達が思う不利益がその利を遙かに上回るのか。
 故に、幸児はこの場で是と言えなかった。欲望は果てなく、そして、それを天正大戦国は無限に受け止めない。認めたく無いが、全て奪ってしまうのが一番手っ取り早い。そう考える復讐者もいるだろう。時間さえ許せば、との但し書きもある事はあるが、その気持ちも分からないでも無かった。
「どのみち年を跨ぐのであれば、先程言っていた会談の件、よろしく頼むよ」
「年内までに休戦の状況が整うのならば、間違いなく叶うことになりましょう」
 否決の可能性は大いにあるが、との言葉に、天海はただ、嘆息するのみだった。その事は当初、言及されている。そこに希望的観測を用いないのも天海らしいと言えば天海らしいなと、幸児は思った。

「さて。では、纏めましょう。拙僧からの和平提案に対し、ディアボロス側の要求は……」
 天海は復讐者達の挙げた要求を再度口にする。
「まずは『断片の王との会談』。これは『休戦』状態になれば叶いましょう。相互努力により早ければ年内と見ております」
 なお、年内の期限は『会談のため』に必要な期間だ。天海の望む和平の期間ではない事は、改めて記載しておこう。
「『双方の領地以外での衝突は相互不可侵の対象外とする』。先も言いましたがこれは互いに納得する文言ではあります」
 もしも衝突するならば、その場の武力で決めても良いが、可能ならば事前の話し合いを設けたい。それが天海の望みだった。それをどう捉えるかは復讐者次第、と言った所か。
「『蝦夷地への侵略の補助』。全面協力は行えませんが、『可能な限り』であるならば、その条件は持ち帰りましょう」
 可能な限りである故『まったく協力しない』の可能性もあるが、それは致し方ない。少なくとも、落とし所を探る事は可能だろう。
「それと、『互いの技術の交換する機会を設ける』でしたかな。まあ、ディアボロス側にも技術を提供しない自由があれば、それは天正大戦国側も同じです。そちらは追い追いとなりましょう」
 パラドクストレインの技術提供を否と思うならば、それはそれで構わない。対して天正大戦国も技術提供は不可と考えて欲しい。それが天海の言葉だろう。
「最後に『和泉国の支配権』。岸和田城をディアボロスが奪うか、千早城を天魔武者が奪うか。それはまあ、互いに頑張りましょう、と言うほかありませんな」
 以上が和平提案に対するディアボロス側の要求である。それを『和平が結ばれるなら』との前提はあるが、天海は了としていた。後は攻略旅団次第だろう。
「やっぱり、あんたとの問答は嫌いじゃねえ。坊官衆たちにもよろしくな」
 幸児の言葉を天海はどう受け止めたのか。ただ、天海はその言葉に、力強く頷くのみであった。
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最終結果:成功

完成日2023年09月11日