天海大僧正の交流提案

 八葉の峰を攻略して、高野山に至ったディアボロスですが、高野山の寺院は、クロノ・オブジェクト化した頑丈な石垣で囲まれ、難攻不落の拠点となっており、すぐさま決戦を挑むのは難しい状況です。
 攻め口も限られるため、少しづつ戦力を削り、決戦可能な状況まで持ち込むしかありません。《七曜の戦》までの攻略は不可能な状況です。

 この状況で高野山に動きがありました。高野山を支配するジェネラル級天魔武者『天海』が、ディアボロスに会談を申し入れてきたのです。

「《七曜の戦》が近い今、ここで相争っても意味はありますまい」
「であるならば、《七曜の戦》の後を見据え、じっくりと腰を落ち着けて話し合うのも一興では無いありませぬか」
「《七曜の戦》の結果如何では、昨日の敵が今日の友となる事もありえましょう」

 この会談の申し入れに対応し、ディアボロスは高野山に向かいます。


天海

思うて学ばざればあやうし(作者 秋月きり
13


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 改竄世界史天正大戦国。
 最終人類史では和歌山県北部と呼ぶべき場所に、その寺院はあった。
 高野山が寺院の一つ『天鼓雷音院』。そこには伽藍の前に座る高僧を中心に、幾多の坊官衆達が詰め寄せていた。
「さて。諸君。問答を行いたい」
 高僧――即ち、この場に於ける最上位のクロノヴェーダ、ジェネラル級天魔武者『天海』が重々しく口を開く。配下のクロノヴェーダ達は、その言葉に「はっ」と傅くのみであった。
「平安鬼妖地獄変の断片の王であった安倍晴明を滅ぼし、西国の旗頭であった山名宗全殿に、大和の松永弾正を討ったというディアボロス……。果たして、彼らは天正大戦国の真の敵であるのか?」
 問いに、坊官衆は顔を見合わせ、怪訝な表情を作る。そんな物、答えは決まっているではないか。
「恐れ多くも天海様! 我らの答えは一つです。ディアボロスは敵に決まっております」
 答えたのは坊官衆の一人であったが、残りの面々も同じ気持ちなのだろう。誰もが同じく敵と呼び、嫌悪を露わにしている。
 だが。
「果たしてそうか?」
 天海は坊官衆らを制すると、己の考えを口にした。
「《七曜の戦》の後は、世界の様相は激変するであろう。現在の敵が、未来の味方では無いと、何故言えようか?」
「そ、それは……」
 坊官衆に未来予知の能力は無い。ならば、幾多ある可能性を否定することは出来なかった。故に、彼らは「しかし……」と呻くのみ。だが、そんな坊官衆の反論を、天海は片手を伸ばし、封じていく。
「そもそも、あやつらは『ディアボロス』であるのだ。断片の王の戦いで雌雄を決めねばならない敵では無い。ならば……あの、ディアボロスを手に入れた者が、《七曜の戦》後の世界の鍵を握るかもしれない」
「まさか……そんな……」
 再度広がるざわめきに、しかし、天海は内心で嘆息する。
 彼らの心の内は判る。天海の意見を突飛と考え、受け入れられないのだ。それも致し方なし、と天海は頭を振って坊官衆を見やる。
「どちらにせよ、双方とも《七曜の戦》までに出来る事は無い。ならば、その間に腹を割って話をするのも、一興であろう」
 既に結論は出ていた。如何に坊官衆達が反対しようとも、天海の考えを曲げることは出来ない。クロノヴェーダとしての階位もあれば、彼の天魔武者の知識や知恵に、誰も追いつけないのだ。
「天海様がそう仰るのであれば……」
 ただ、不承不承と頷くのみ。それが主の機嫌を損ねない為に彼らが出来る、唯一の行動であった。

 所変わって最終人類史新宿島新宿駅ターミナル。到着したパラドクストレインの前では、いつもの通り、時先案内人シルシュ・エヌマエリシュ(ドラゴニアンのガジェッティア・g03182)が声を張り上げていた。
「高野山の八葉の峰を攻略したことで、改竄世界史天正大戦国の重要拠点である『高野山』へと侵攻が可能となりました!」
 そりゃもう、復讐者達の活躍を讃えるかのような満面の笑みだった。
 だが、その表情は一転して真摯な物に転じていく。祝福の時は終わり、次の作戦を告げるときが来た。紫色の瞳はそう語っていた。
「ですが、高野山は幾つもの防御拠点を連ねた階層構造をしていて、容易に攻略出来ないようなのです」
 ならば、時間を掛けて防御拠点の一つ一つを制圧していくしかない。地道な作業となるが、それを苦に思う復讐者達はいない。その事を承知した上で、シルシュは次の言葉を紡ぐ。
「そうですね。それは可能ですが、それを執り行う事により、《七曜の戦》までに高野山を攻略する事は、まず不可能となりましょう」
 8月に起こると言われる《七曜の戦》。一ヶ月程しかない期間で全てを終わらせるなど、火を見るより明らか、と言う事だった。
「ですが、その思いは私達だけでは無かったようですね」
 消沈しそうになった意気は、しかし、別口から切り拓かれる。その誘いは、ある意味、予想外の場所から投げ掛けられていた。
 その主こそ、高野山の大僧正の地位にあるジェネラル級天魔武者『天海』であった。
 彼はこの状況を見越したのか、高野山の入り口に『ディアボロスとの交流を望む』と言う伝言の立て札を立てたのだ。当然ながら、それは直ぐに時先案内人の知る事となり、故にこの場が設けられた、と言う事であった。
「天海もまた、《七曜の戦》までに高野山の攻略は、まず不可能と理解しているようです。ですが、その時間を無駄にしない為に、と交流を申し込んできたのでしょう」
 無論、この誘いに乗る理由は無い。だが、彼の天魔武者と交流する事によるデメリットも特に見受けられないのも事実だ。
「ですので、天海の申し出を受けるつもりがあれば、高野山に向かって下さい」
 鬼が出るか蛇が出るか。はたまた良き結果に繋がるのか。悪しき結果となってしまうのか。
 それはこの役目を担う復讐者達次第となるだろう。

「此度の交流ですが、高野山の最初の拠点である『開敷華王院』で行われるようです」
 開敷華王院は、階層構造になっている高野山の入り口も入り口だ。流石に奥まで引き込むつもりはないようだ。これは当然と言えば当然だろう。
「ちなみに、最終人類史の和歌山県に『開敷華王院』なる寺院はありませんので、天正大戦国独自の建屋と言えるでしょう。建物自体は真言宗の寺院の様式を取っているようです」
 その寺院の中で、天海と配下の坊官衆が復讐者達を待っているようなのだ。
「皆様が寺院に向かえば、坊官衆の小坊主が、寺院まで案内してくれるようです」
 そこから交流が始まる事になる。
 ただ、一つ注意して欲しい、とシルシュは腕を組み、人差し指を立てて忠告を告げる。
 天海が『交流』と言っているように、この『交流』そのものに目的はないようなのだ。故に、何らかの約束事を決める、と言う事にはならないだろう。それが彼女の見解であった。
「《七曜の戦》後の選択肢を増やす為に、互いの理解を深めよう。此度の誘いの目的は、本当にただそれだけのようです」
 よって、交流の場で、復讐者達が天海らに嘘を吐いても何ら問題は無い。逆に本当の事を話したとしても、疑心暗鬼を誘う事が出来るだろう。よって、こちらも問題は無い。
 全て、交流に向かう復讐者達の腹づもり次第、と言う事になる。
「ともあれ、皆様に対する天海は今後の関係を考え、『嘘を吐かない』と言う方針ではあるようです。これを上手く利用して、交流の場に臨んで下さい」
 皆に全てを託す事態に案内人としての無力さを感じるのか。時先案内人はむふーと吐息を零した後、爪を噛むかの如く険しい表情を浮かべていた。

「そうですね。ともあれ高野山の攻略を目指すのであれば、時間が問題です。よって、攻略そのものを行うのであれば、《七曜の戦》の後となるでしょう」
 その時間制限がなく、他からの援軍がないのであれば、高野山の攻略自体は可能だ。それは復讐者達の実力を鑑みれば、問題無いとシルシュは太鼓判を押す。
「ですが、《七曜の戦》後、どうなるか状況は不明です。他に優先順位が高い物があれば、攻略を後回しにすることもありえるでしょうし、何か共通の目的が生まれたが故、天海と一時的に協力する可能性も……まあ、否定出来ない、と言う感じでしょうか」
 クロノヴェーダは敵だが、目に付いた敵全てを殲滅していける程、復讐者達も戦力に余裕があるわけではない。まして、一ヶ月先には《七曜の戦》が控えている。その戦の最中で、或いは、戦の後に何が起こるか等、誰も把握していないのだ。ならば、協力の可能性を0と断じることも出来ない。それが彼女の言い分だった。
「逆に《七曜の戦》を利用し、一気に高野山を攻略する……といった可能性もあります。今はなんとも言えないのが、正直なところですね」
 致し方有りません。最早口癖となった言葉を口にしたシルシュは、改めて復讐者達に声を掛けるのだった。
「ともあれ、先に申した通り、此度の交流に目的はありません。よって、気負わず参加して下さいませ」
 斯くして、時先案内人はパラドクストレインへと復讐者達を送り出すのであった。


→クリア済み選択肢の詳細を見る


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 ディアボロスの側から、交流の席を蹴って帰還します。
 ディアボロス側の不快感を強く示す事が出来るので、交渉の手段の一つとして使用することが出来るでしょう。
 口先の行動では無い為、『ディアボロスが席を蹴る程に不快に思う内容だったのだ』という事を、ある程度の信ぴょう性をもって伝えることが出来るかもしれません。

 詳しくは、オープニングやリプレイを確認してください。

※強制終了のプレイングの採用
 席を蹴るのも、立派な交流の一つとなります。
 全てのプレイングの中で、この選択肢のプレイングが最も優れていた場合に、採用されます。
 席を蹴る事で、どのような印象を相手に与えようとしているのか。席を蹴る時にどんなセリフを言って、どのような行動を行うか等、よく考えてプレイングを行ってください。



特殊ルール 【完結条件】この選択肢の🔵が👑に達すると、安全に撤退でき、シナリオは成功で完結する(作戦目的は一部未達成となる)。
👑2

●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【士気高揚】
1
ディアボロスの強い熱意が周囲に伝播しやすくなる。ディアボロスから「効果LV×10m半径内」の一般人が、勇気のある行動を取るようになる。
【飛翔】
1
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【悲劇感知】
1
「効果LV×1時間」以内に悲劇が発生する場合、発生する場所に、ディアボロスだけに聞こえる悲劇の内容を示唆する悲しみの歌が流れるようになる。
【未来予測】
2
周囲が、ディアボロスが通常の視界に加えて「効果LV×1秒」先までの未来を同時に見ることのできる世界に変わる。
【勝利の凱歌】
1
周囲に、勇気を奮い起こす歌声が響き渡り、ディアボロスと一般人の心に勇気と希望が湧き上がる。効果LVが高ければ高い程、歌声は多くの人に届く。
【友達催眠】
1
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【書物解読】
1
周囲の書物に、執筆者の残留思念が宿り、読むディアボロスに書物の知識を伝えてくれるようになる。効果LVが高くなる程、書物に書かれていない関連知識も得られる。
【クリーニング】
1
周囲が清潔を望む世界となり、ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の建造物や物品が、自動的に洗浄殺菌され、清潔な状態になる。

効果2

【能力値アップ】LV1 / 【命中アップ】LV2 / 【ダメージアップ】LV2 / 【ガードアップ】LV1 / 【反撃アップ】LV1 / 【アクティベイト】LV1 / 【ラストリベンジ】LV1

●マスターより

秋月きり
 お世話になります。秋月きりです。
 高野山を拠点とするジェネラル級天魔武者『天海』が皆様に接触してきたようです。この状況から生まれた交流が今後、どう役立つのか。それは皆様の行動次第となるでしょう。
 と言うわけで、今後の戦いを有利に進めるため、頑張って下さい!

 以下、補足です。確認をお願いします。

●選択肢について
①『開敷華王院』訪問と交流の開始
 交流前の軽い挨拶の選択肢になります。但し、挨拶でも情報を得る(或いは相手に渡す)可能性がありますので、その点は御認識下さい。天海が皆様に興味を示しているのは事実なので、色々と試してみても良いかも知れません。もしかしたら、皆様のアイデア次第で、面白い展開となるやもしれません。

②ディアボロスの立場などを天海に説明する
 ディアボロス側の自己紹介を行ったり、事情を説明する選択肢です。どの様な自己紹介や会話を行うかは全体の傾向を把握し、その中で良いと思われるプレイングを採用したく思います。
 尚、大多数が示す大雑把な方向性の中からプレイングを採用する可能性が高いため、相談所などを活用して方向性を揃えることをお奨めします。
 なお、本選択肢では3プレイングのみ、採用となります。予めご了承下さい。

③天海から天正大戦国についての話を聞く
 天海大僧正と会話する選択肢となります。②の自己紹介を踏まえ、上手く会話の流れが作れていると判断したプレイングを採用したいと思っています。
 こちらも3プレイングのみの採用となります。ご了承願います。

④席を蹴って、交流を強制終了させる
 ①の攻略後であれば、いつでも選ぶことが出来ます。
 この選択肢を選ぶこともまた、交渉術の一つです。その点はご認識願います。

 推奨攻略順は提示致しません。OPや説明文などから、皆様の思うとおりに進めてみて下さい。

●その他
・「そーですね。天海の知識は年代相応なので、現代知識無双とかすると、幾分かのマウントを取れるかも知れません。まあ、皆様が凄いことはもはや常識! な勢いで私は知っているのですが」
・「これまで多くの交流を見てきましたが、とりあえず、喧嘩を売るつもりが無いのであれば、礼節は重視した方が良いでしょう。マナーとか小煩い事は申しませんが、交流・交渉の第一歩は相手の立場を理解し、相応の態度を取る事です。其処はお忘れ無きように」
・「自己紹介では皆様がどういう目的を以て戦っているかを告げるのが良いと思います。ここでどの様な態度を取るのか。それが此度の交流の分水嶺になりそうですね」
・「ともあれ、今回、天海は別に皆様に何らかの譲歩している訳ではありません。交流の機会がその譲歩と言えるやもしれませんが……。と言うわけで、天海が楽しめる会話を行う事を優先した方が吉、とだけお伝えしましょう」
 以上、時先案内人からの助言でした。活用して頂ければ幸いです。
・本シナリオはプレイングの採用が特殊な為、お早めの提出をご検討頂ければ、と思います。
・②③は交互に採用しますので、リプレイの内容を踏まえて会話して頂けると幸いです。
・①④についても、必要数を遙かに超過するプレイングを採用する予定はありません。此方もご了承下さい。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
 よろしくお願いします。
107

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


イシュア・アルミゴス
こういう手合って碌な奴いないんだよな…
碌でもない分情報の質も頭も優秀なんだから厄介だよ
とはいえ絞れる時に絞るのは世の常。腹、探っていこうか

槍…は置いていこう。この場においては言葉が武器だ
礼節には礼節で、この時代の作法なんて知らないけど
堂々としていこう。舐められたらお仕舞いだしね

僕らはディアボロス。まずはこの場を開いて
頂いた事に感謝を。そちらも中々手広くやっているようで。
海の向こうで中々の活躍ぶり、聞き及んでいる。
優れた将が居るようで。

新宿から既製品の絹織物を土産として持参。
天魔武者とは武以外で対話した事は無い故このようなもので申し訳ない
さあ、話し合おう。僕らの未来を


梅指・寿
その一興、乗ったわ。
おばあちゃんこういう考え方をする人は好きよ。
被害を被った後でその考えに思いついた胆力、興味あるわ。
だから好奇心で交流を挑むわね。

開敷華王院へ向かう前に皆にクリーニング、さっぱりしましょ。
武器は持たずに、代わりに手土産を包んだ濃紫色の風呂敷を持つわ。
手土産は新宿島の和菓子屋さんが作った水無月。
七曜の戦いもあるし、暑気払いになったら嬉しいわ。

口調は柔らかく、相手の悪口や煽るような事は言わないわ。
出迎えの天魔武者には礼を尽くして案内に従い興味深げに見まわし。
お坊さん達が敵意や悪意を見せても微笑で返すわ。
殺し殺される間柄だもの…けど私以外の子に見せたり言ったりしちゃ駄目よ。


 改竄世界史天正大戦国、高野山、『開敷華王院』。
 階層構造となっている高野山の、最初の拠点こそがこの『開敷華王院』であった。
 其処に辿り着いた復讐者達は、門を潜り、そのままの寺院の中へと足を運ぶ。
「ほっほっほ。よくぞいらっしゃった。ディアボロスの皆様」
 坊官衆に囲まれた高僧、ジェネラル級天魔武者『天海』は、好々爺然とした表情で笑いながらも、復讐者達を出迎えるのであった。

(「こういう手合いって、碌な奴がいないんだよな……。碌でもない分、情報の質も頭も優秀なんだから厄介だよ」)
 対峙した歴史侵略者を前に、イシュア・アルミゴス(守護星蟲・g00954)は内心で呟く。
 間違ってもおくびには出さない。悟られることは無いだろうが、それでも、腹を探ることを決めた以上、己の内心は捨て置くことにした。
「高僧自らがお出迎えとは、何と言いますか……」
 風呂敷包みを握った梅指・寿(不沈の香・g08851)は、所在なさげに周囲を見渡す。
 トループス級と思わしき坊官衆らの視線は痛い。だが、其処に籠もる敵意・悪意は予想してきた物だ。その一方で、全く読めないのが、目の前のジェネラル級の視線であった。柔らかく友好的にも思えれば、笑顔を以て威圧しているようにも見える。もっとも、天魔武者の表情であるが故、それが本当に笑顔かどうかは寿には確証が持てなかったが。
「こちらが貴殿等を呼びました故。この程度、当然と見て頂きたい」
 そして、しれっとそんな事を口にする。
 確かに立て看板を用いて復讐者達を呼びつけたのは、目の前にいる天海だ。だが、敵将自ら即座に表に出てくるとは思わなかった。
 それが驕りなのか、それとも彼が相応の実力者故なのか。それはまだ判らない。この交流を通し、推し量れればそれで重畳だとも思えた。
「僕らはディアボロス。まずはこの場を開いて頂いた事に感謝を」
 まずは礼儀から。
 イシュアの呼び掛けに、帰ってきたのは先程と同じく、ほっほっほとした軽快な笑い。そして。
「拙僧は天海と申します。ご承知の通り、天魔武者の中ではジェネラル級の地位を預かっていますが……まあ、しがない一介の僧です。ともあれ、お見知りおきを」
 合掌からの一礼は、天海もまた、復讐者達に敬意を示すが故か。
(「しがない僧って、冗談ーーーっ?!」)
 全身の毛穴が泡立つ感触に、寿は僅かに身動ぎする。武者震いに似たそれは、誰にも気付かれていないだろうか。おそらく是と捉え、自身もまた、微笑と共に頭を下げる。
「あ、それと、これはつまらない物ですが……」
「僕からも、だ。……天魔武者とは武以外で対話した事は無い故、このようなもので申し訳ない」
 紫の風呂敷包みと、変哲も無い紙袋。一つは寿が選定した和菓子、水無月で、もう一つはイシュアの選んだ絹織物である。
 持参した手土産を掲げる二人へ、受け取ろうと一歩踏み出した坊官衆は、しかし、次の瞬間、天海の手によって制されていた。
 坊官衆を制した彼は、そのまま歩み寄ると、恭しくイシュア、そして寿の手から手土産を受け取る。そこに何ら疑いを抱いていない。そう言いたげな態度は、本当に復讐者達との交流を望んでいるようにも思えた。無論、それが演技でなければ、との但し書きが着くのだが。
「……ほう。絹織物に菓子ですかな。有り難く頂戴致しましょう。……成る程成る程。これほど迄の逸物。この天正大戦国内に作れる物はまず居りますまい。これだけで貴殿等の心積もりと、ディアボロスの持つ文化の高さが窺えるようです。成る程成る程」
 頷く天海の目は、しかし、笑っているように見えなかった。
 二人の土産から新宿島の文化レベルを推し量っている、そうとも取れる発言に、思わずイシュアと寿は眉を顰めてしまう。
(「もしかして、あまり気に入られていないのかな?」)
(「流石に菓子と絹織物は天魔武者と縁が薄かったかしら……?」)
 戦国時代、大名同士の贈答物には何らかの意味が込められていた、という話もある。おそらく天海は二人の贈答物に何かを見出したが故、先の言葉を発したのだろう。
(「まあ、文化の違いを見せつけたと言う事で、及第点は貰えた、と思っていいのかしら?」)
(「多分、そうだと思うけど……」)
 ともあれ、友好的な空気を築く事が出来た。
 後はこれをどの様に活用するか。それが復讐者達の今後の課題だろう。
 斯くして、復讐者達は寺院の中へと招かれていくのであった。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【士気高揚】LV1が発生!
【クリーニング】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【ラストリベンジ】LV1が発生!

音羽・華楠
……天海と交流ですか。
まさかこんな展開になるとは……。
とはいえ、話してみても損は無いでしょう。
私も向かいます。

復讐者と歴史侵略者、将来的には殺し合う可能性が高くとも、今ここでギスギスする理由もありません。
こちらも今は友好的に交流したいと示す意味でも、手土産を持参します。
……天海は理知的で思慮深い御仁のようです。
そういう相手なら『本』が良いんじゃないでしょうか?

もっとも、最終人類史に関する情報を下手に与えたくありません。
新宿島で、幻想小説の類いを児童文学やライトノベルから見繕いましょう。
ノンフィクションや、フィクションでも最終人類史を舞台とした物語よりは安全なはずですから。


 そして、開敷華王院、本堂。
 通された空間の中、音羽・華楠(赫雷の荼枳尼天女・g02883)は緊張の面持ちで正座をしていた。
 対峙する天海は、しかし、彼女へ視線を向けていない。代わりに坊官衆達の敵意の視線が、痛いほど彼女に突き刺さっているが、それは仕方ない。天海以外、復讐者に明らかな敵意を持っているのは、時先案内人の予知の通りだ。
 予想外なのは天海の挙動であった。
 彼の視線は、手元に置かれた十を超える本達に注がれている。それは、華楠が持参した幻想小説――最終人類史ではライトノベルと呼ばれる類の本の数々であった。

 時間にして数分と言った処か。
 本を正面のみでなく、裏返したり背表紙を見たり、或いはパラパラと捲ったりと、天海の行動は忙しなかった。
「ほう。これは……素晴らしい」
 そして、零れたのは感嘆の溜め息だった。
「中身は後で読ませて頂きましょう。排斥力で何処まで保つかは判りませんが、まあ、この冊数で有れば読み仰せるでしょう」
「お気に召して何よりです」
 正座のまま、傅く華楠。目の前で読み耽られたらどうしようかと一瞬心配したが、此度の目的はあくまで交流。客を放置したまま知的好奇心を満たすつもりは無いようで、その点は少しばかり安心してしまう。流石に何時間も正座させらるなど、堪った物ではなかった。
「いやはや。内容を見る限り、歴史書や指南書の類ではなく娯楽書なのでしょう。表紙に大きく絵を用いる事で、大衆の興味を抱く手法も然る事ながら、その全てが紙と言うのも、それだけで恐ろしく感じますな。まして、中身の文は全て整えられ、活版印刷……否、それでは説明が出来ませんな。それ以上の製本技術が用いられている。成る程、成る程」
(「……うわ。其処まで見るんだ」)
 最終人類史の情報を下手に与えないよう、内容を吟味した華楠だったが、それでも本という媒体は数多くの情報を天海に与えてしまったようだ。
「ところで、何れの本の表紙も半裸の女性が描かれているのは、何の意味が……?」
「……知りません」
 そこは追求してくれるな、と首を振る。
 幸い、天海は相応の紳士であった。成る程、と頷くと華楠の手土産を部屋に運ぶように坊官衆へと指示する。先の言葉通り、交流の後に読むつもりなのだろう。
「さて、時間を取らせましたな。まずは召集に応じて下さった礼を言いましょう。ディアボロス殿」
 深々と頭を下げた後、交流の開始とばかりの言葉を口にするのであった。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【未来予測】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!

文月・雪人
復讐者への興味関心は持って貰えたみたいだね
続けて自己紹介を

お察しの通り、私達はこの地よりも遥か未来の世界から来ています
といっても私の出身地は平安鬼妖地獄変なのですが

私達の世界に人々を支配するクロノヴェーダは居ません
世界各地から集まったディアボロスが、自らの意志で活動しています

私達は皆、クロノヴェーダが都合よく改竄した歴史の中で大切な何かを奪われました
友であったり家族であったりその内容は様々だけど抱える怒りは皆深い
排斥力で故郷まで奪われて
それでも強い怒りを胸に未来へと集いました

奪われたものを取り戻す為に
クロノヴェーダの理不尽な支配から人々を解放する為に
大地と歴史の奪還を目指して戦いを続けています


 幾多の視線が突き刺さる。天海大僧正の好奇の視線もあれば、坊官衆達による敵意・害意の視線もある。
 そんな中、一人の復讐者が声を発した。
 物怖じせず、しかし、礼節を忘れず。
 彼の名は文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)と言った。

(「ともあれ、復讐者への興味関心は持って貰えたみたいだね」)
 機を逃す理由は無い。雪人は一呼吸の後、言葉を紡ぐ。つまるところ、それは自己紹介であった。
「お察しの通り、私達はこの地よりも遥か未来の世界から来ています。と言っても私の出身地は平安鬼妖地獄変なのですが」
「ほう」
 天海の反応は鷹揚とした相槌のみ。だが、彼のことだ。きっと、雪人の言葉だけで、復讐者達が最終人類史のみでなく、様々な改竄世界史を出自とすることを理解したのだろう。
「そして、私達の世界に人々を支配するクロノヴェーダは居ません。世界各地から集まったディアボロスが、自らの意志で活動しています」
「なんと?」
 目を見張り、ざわめく坊官衆達。彼らの常識――歴史侵略者が常識を語るなよ、とは正直思った――では、クロノヴェーダ、とりわけ断片の王の支配は絶対だ。階位が上の物には逆らえず、己の意志など有って泣きが如し。それが彼らの認識であった。
 それらを「静まりなさい」と制しながら、天海は雪人へ次の言葉を促す。認められない坊官衆と、事実をしかと認識する天海。その対比を興味深げに思いながらも、雪人は更なる言葉を重ねた。
「私達は皆、クロノヴェーダが都合よく改竄した歴史の中で大切な何かを奪われました。友であったり家族であったり、その内容は様々だけど抱える怒りは皆深い。排斥力で故郷まで奪われて、それでも強い怒りを胸に未来へと集いました」
「ほう。成る程」
 おそらくこの文言だけで、『怒りこそが復讐者達のエネルギー』と言う事が伝わるのだろう。雪人の思いを肯定するかのように天海は頷く。
「奪われたものを取り戻す為に。クロノヴェーダの理不尽な支配から人々を解放する為に。大地と歴史の奪還を目指して戦いを続けています」
 クロノヴェーダへの宣戦布告とも取れる言葉に、坊官衆達は沸き立ち、しかし。
「とても良い話を聞かせて貰った」
 天海の反応は、彼らと異なっていた。
「ここまで胸襟を開いてくれたのならば、こちらも誠意を見せねばなるまいて。さて、次は我らが語る番ですが……何か、聞きたいことはありますかな?」
 浮かべたそれは紛れもない微笑であった。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【未来予測】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!

守都・幸児
「守都の幸児だ
陰陽師に縁があり、平安鬼妖地獄変から来た」
俺なりにだが、礼儀をもって
背筋を正して自己紹介
「俺たちは、クロノヴェーダが常識として知ることを、何も知らない」
と話を切り出す

先だって俺たちは松永久秀を討ち、その残党を追う過程で高野山に辿り着いた
久秀は『出家』することを望み、この高野山へ逃げ延びることに最後まで執着していた
何故、松永久秀がそれほどまでにこの高野山に向かおうとしていたのかを知りたい

俺たちの歴史においての『出家』は世俗を捨てて修行に身を投じること、
つまり戦いから遠ざかることだ
だがそれでは、天魔武者の松永久秀が、あれほどまでに望むとは思えない
天正大戦国の『出家』とは一体、何なんだ


「俺達はクロノヴェーダが常識として知ることを、何も知らない」
 そう切り出したのは、守都・幸児(祥雲・g03876)であった。彼の言葉に、天海は「ほう」と頷く。
「先だって俺達はジェネラル級天魔武者『松永久秀』を討ち、その残党を追う過程で高野山に辿り着いた」
 そして幸児は語る。松永秀久が何を以てここを目指したのか。彼奴の望み、それは。
「『出家』することだった」
 最期まで『出家』を望み、高野山へ逃げ延びることに執着していた。それが、幸児の知る事実である。
 彼らの歴史――即ち、最終人類史での出家とは、世俗を捨てて修行に身を投じること。即ち、戦いからの離反だ。
 だが、そうだとしても松永久秀があれ程迄に望む物とは思えない。その思いを以て彼は天海に問う。
「天正大戦国の『出家』とは一体、何なんだ?」
 幸児の問いに対する天海の反応は、むしろ、鳩が豆鉄砲を食ったような、と表現するに相応しい表情であった。
「そんな事が知りたいのですかな?」
 くくりと笑むと、言葉を続ける。
「この高野山は、断片の王でさえも手を出さない聖域なのです。故に、国を奪われた松永久秀は、死を怖れたが故、高野山を目指すしかなかった。そう言うことです」
「それは建前の話だな?」
 幸児の言葉に天海は是と笑う。まるで勘の良い教え子を見守る教師の如き微笑であった。
「この失態を命で償う天魔武者の在り方は、全軍の規律と士気を高めています。しかし、欠点もあります」
「ああ。そうだな。何か失敗すれば命を落とす。それでは……」
「そう。有意の戦力であるジェネラル級が失われ、天正大戦国そのものの戦力の低下を招く。そこで、必要なのが、この高野山です。全体の士気を高く保ちつつも、戦力低下を最低限にする役割を担っています」
「つまり、この高野山には多くの処刑を免れたジェネラル級が落ち延び――いや、『出家』していると言う事か」
 言葉を肯定するように、天海は続きを紡いだ。
「そう。彼らは汚名返上の機会を待って、この高野山で鍛錬に明け暮れています。何れ、信長様に機会を与えられ、再び大名に返り咲くその日を夢見て……」
 其処まで呟いた天海は、悪戯めいた表情を浮かべる。
「高野山には、断片の王が殺せと命じても、拒否する権限が『断片の王より』与えられている。この意味を考えれば、これ以上は語るまでもないでしょう」
 謎めいた笑みと語句。それらを向けられ、幸児は言葉を飲み込むしかなかった。
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 随分と語ってくれる。
 それが復讐者達の抱いた感想だった。
 建前処か裏側の事情まで語ってくれたそれは、天海の好意、或いは興味の証しのように思えた。
 おそらく、先の挨拶はそれ程までに、彼の琴線に触れたのだろう。

 ならば、再びそれを繰り出せるのか。それとも今後は無難な挨拶や問いかけ――只の交流に終始してしまうのか。
 それは、これからの織り成す復讐者達の会話術に係っていた。
無堂・理央
次はこちらが話す番だね。


未来に集うディアボロス達は出身ディヴィジョンや戦いで得た縁により、七曜の戦や排斥力の低下等を待たずに直接ディヴィジョンに攻撃を掛け、情報も得ています。

日本では四つの市と沖縄、太平洋に浮かぶ島々を領域に持つ冥海機ヤ・ウマト。
関東の東京23区と狭い領域を更にボク等に8割程制圧されてなお侮れない戦力を持つTOKYOエゼキエル戦争。

大陸の北側大半を統べると言って良い程広大な凍土を持つ吸血ロマノフ王朝。
モンゴルや朝鮮半島で土地やクロノヴェーダを残さず貪るアルタン・ウルク。
そして、平安鬼妖地獄変と同様にディアボロスによる一大決戦の歴史の奪還戦で滅ぼした中華領域の大争乱群蟲三国志。


「次はボクの番でいいかな?」
 続いて声を上げたのは無堂・理央(現代の騎兵?娘・g00846)であった。ニパリと笑った彼女は、続いて自身の知りうるある情報を天海へと開示する。それは他の改竄世界史に纏わる話であった。
「未来に集うディアボロス達は、七曜の戦や排斥力の低下等を待たずに直接ディヴィジョンへ攻撃を仕掛け、情報も得ています」
 例えば、日本では四つの市と沖縄、太平洋に浮かぶ島々を領域に持つ冥海機ヤ・ウマト。
 例えば、関東の東京23区と狭い領域を持ち、復讐者達に8割程制圧されても尚、侮れない戦力を持つTOKYOエゼキエル戦争。
「日本以外もまた、同様です」
 一つ、大陸の北側大半を統べる程広大な凍土の吸血ロマノフ王朝。
 一つ、モンゴルや朝鮮半島で土地や歴史侵略者を残さず貪るアルタン・ウルク。
 そして、平安鬼妖地獄変と同様、復讐者達による一大決戦――歴史の奪還戦で滅ぼした中華領域の大争乱群蟲三国志。
 一頻り彼女の説明を聞いた天海は、成る程と唸る。
「ふむ。おそらくそれは良き情報なのでしょう。ですが、その前に拙僧も問うべき事があります。宜しいですかな?」
「……何でしょう?」
 理央の説明は先程までで終了だ。それ以上はどうすべきか。その思考を浮かべた刹那であった。
「では、二つ目の改竄世界史を問いましょう。とうきょう。漢字で書けば東の京でしょうか。その地名は果たして何処なのか。京――平安鬼妖地獄変の東を意味する物ではありますまい」
「あっ」
 その言葉に、理央は目を見開く。彼の言葉の意味を理解し、そして内心、頭を抱えてしまった。
 即ち。
(「地名が伝わっていない?」)
 この時代、当然ながら東京と言う地名は存在しない。天海の疑問はもっともであった。
 そう。復讐者の持つ『自動的に言動を伝える能力』――即ち、違和感を与えにくい能力の対象は、あくまで改竄世界史の一般人なのだ。対歴史侵略者には様々な工夫が必要なのは誰もが知る処。つまり、その工夫がなければ自動翻訳は働かないのであった。
「今度はその方針で話す、と言うわけですな。受けて立ちましょう」
(「ああっ?!」)
 そう言えばこの天海、問いかけと言うか謎かけが好きそうだった。
 思い至った思考に、理央は思わず唸ってしまう。
「貴殿等の言葉が嘘では無いのは間違いないようですので、それはそれで、思案の為所ですな。さて、何を問われますかな?」
 呵々と笑う姿は、児戯を楽しむ子供の様でもあった。
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金刺・鞆
むん。寛大なお言葉に感謝いたします、です。

なれば、こちらからもお尋ねいたします。
これから起こる七曜の戦にて、天正大戦国――いえ、断片の王、織田信長殿がどこを攻める腹積もりか、天海僧正はご存知でしょうか。

先の平安鬼妖地獄変での大いくさの折、京と大和国の一部をわれらの世界に取り戻した。それはご存知、ですよね。
それらの土地にはすでに民が生活をしております。ゆえ、われらはそれを全力で守らねばなりませぬ。
でぃあぼろすは共通の目的はあれど、統一の意志はないのです。個を尊び、自己の覚悟で戦うのみ。
攻め滅ぼされたとあれば、みな天魔武者憎しの思いに傾くかと。

(侵攻されたら同盟は難しい。そう牽制できるでしょうか)


「なれば、こちらからもお尋ねいたします」
 話題を切り出したのは金刺・鞆(虚氏の仔・g03964)であった。聞きたいことは山程ある。だが、あくまで此度の交流の目的は『天正大戦国について聞き出す』だ。ならば、と彼女が口にした話題は、今後の事であった。
「これから起こる七曜の戦にて、天正大戦国――いえ、断片の王、織田信長殿がどこを攻める腹積もりか、天海僧正はご存知でしょうか?」
「ふむ」
 感心、と紡がれる相槌に鞆は少しだけホッとしてしまう。
「先の平安鬼妖地獄変での大いくさの折、京と大和国の一部をわれらの世界に取り戻した。それはご存知、ですよね?」
「是、ですな」
 伺うような鞆の言葉に、天海はこくりと頷いた。
「そして、それらの土地にはすでに民が生活をしております。ゆえ、われらはそれを全力で守らねばなりませぬ。でぃあぼろすは共通の目的はあれど、統一の意志はないのです。個を尊び、自己の覚悟で戦うのみ。攻め滅ぼされたとあれば、みな天魔武者憎しの思いに傾くかと」
「ほう。だが、それが戦国の世の習い。我ら天魔武者もまた令制国を、そして民をディアボロスに滅ぼされれば、怨敵憎しと声にする。誰もが同じでしょう?」
「そ、そうですが」
 牽制のつもりだったが、そっくり其の侭の言葉で返されてしまい、思わずたじろいでしまう。
「ともあれ、先の答えですが、その前に。……おい。すまんが先の菓子を頼む。童の口に収まれば、菓子も本懐と喜ぼう」
 坊官衆の一体に命じ、佇みを直す天海。しばし時が経過した後、気がつくと二人の前に、先の土産――水無月が置かれていた。
「?」
 事態を読めず、目を白黒する鞆。対し天海は、
「御持たせで申し訳ないが」
 との前口上の後、朗々とした独白を口にした。
「天正大戦国としては、日の本の領域は全て強奪したいと思うのは当然のこと。野心を持つ大名程、その思いが強いであろうが、天正大戦国の総力を挙げた決戦は望んでおらぬよ。大名達の役割は、いわば大物見と言えるでしょう」
「……?」
 そんな言葉を口にする天海の手の内で、水無月の角が切り取られては、天海の口へと収まっていく。まずは上方鋭角。次に下方鋭角。そして鈍角。角を失い、丸くなった水無月は、左右に割られると、そのまま彼の口へと吸い取られていった。
「さて、貴殿も食べなされ。中々の美味ですぞ?」
 そして、にこりと笑う。言葉の先の真意に気付けるか。そう問うかのような微笑であった。
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「ふむ。楽しき語らいを過ごさせて頂きましたが、そろそろお開きの時間のようですな」
 見れば、空に翳りが見え始めていた。
 天海の言葉通り、この語らいの場が終わる迄に、数刻も必要とあるまい。
「当初は貴殿等の事を聞かせて頂き、そして次に、貴殿等が興味を持つディヴィジョンの話を聞かせて頂きました」
 その礼にと、天海が語ったのは、己周りの事、即ち高野山の出家について、と、天正大戦国の動きについて、だ。
「語らいの時間も後少し。しかし、その時間で、もう少しだけでも相互の理解を深めたい。そう思うのは、拙僧がまだまだ青い証拠でしょうな」
 もっと復讐者について語って欲しい。
 天海は笑顔のまま、そう求めてくる。
「無論、貴殿等がここまでで充分、此度の目的は果たせたと判断するのであれば、それも致し方ない事なのでしょう」
 このままお茶を濁し、交流を終えるのも当然の権利だと、天海は語る。
 だが、もしもそれ以上の深い意見の交換を行いたいのであれば。
 復讐者達の持つ相応のチップをベットする他無い。悪戯げな微笑は、そう語るようでもあった。
「……」
 天海の言葉に、復讐者達は顔を見合わせる。
 リスクを承知で天正大戦国の情報入手に務めるか。それとも無難な道を選択するか。
 はたまた、ここで怒りにまかせて交流を打ち切る、と言う手も残されている。
 如何なる道を選択しても、天海はそれを是と受け止めるだろう。この短い時間で、それだけの言葉は交わしたつもりだ。
 故に。
「さて、交流の締めとなり得る今、貴殿等はどんな話を聞かせて下さるのでしょうな」
 全ての判断は、復讐者達に委ねられていた。
野本・裕樹
相互の理解を深めたい……確かに青いのかもしれません。
けれど、その青さを私は好ましく思います。

私個人の感想は置いておいて。

ディアボロスには立場の上下関係は基本的にありません。
しかしディアボロス全体が無秩序に行動している訳ではないのです。
全てのディアボロスはどのように行動するかを提案する権利があり、また同時に提案に対して支持を表明する権利があります。
多くの支持を得た提案が私達の方針となる、そうして私達はこれまで戦ってきました。

仮に高野山がディアボロスの集団だった場合、坊官の方々が私達は敵で会談は不要だと会談を支持しなければ天海殿がどれだけ高位の立場でも今回の会談は実現しなかったでしょう。


 天海の言葉に、復讐者達は互いに視線を巡らせる。
 そこにどの様な考えが巡ったのか。それは彼らにしか判らないだろう。
 そして、刹那とも永劫とも付かない時間の後、口を開いたのは一人の少女であった。

「相互の理解を深めたい……確かに青いのかもしれません。けれど、その青さを私は好ましく思います」
 居住まいを正し、野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)はそんな言葉を口にする。
「ふむ」
 彼女の言葉を天海はどう取るのか。ただ、目を細め挙動を見守る様子に、復讐者達は彼の思惑を読み取ることは出来ない。それは裕樹自身も同様であった。
 しかし、言葉を発した以上、止める訳に行かない。それもまた道理だった。
「先の説明から推測しているかもしれませんが、ディアボロスに立場の上下関係は基本的にありません。しかしディアボロス全体が無秩序に行動している訳ではないのです」
 故に裕樹は言葉を続けた。それは攻略旅団の運営についてであった。
「全てのディアボロスは、自分達がどのように行動するかを提案する権利があり、また同時に、提案に対して支持を表明する権利があります」
 その中で多くの支持を得た提案が、復讐者達の行動方針となる。自分達は今までそうやって戦ってきた。そして、おそらくこれからも同様だろう。
 裕樹の言葉に、天海はほう、と頷く。
「自らの意志で活動する、との言葉でしたからな。政治は評議会制の様なもの、と認識しておりました。しかし、少々異なる様だ。ディアボロス全員が政治家であり、皆で国家運営を担っている、と言った処でしょうか」
「そうとも言えますね」
 理解の早さは流石であった。
「参考までにお聞かせ願いたい。その寄合を何と申すのですか?」
「寄合? 攻略旅団の事ですか?」
「ふむ。旅団、と」
 名称を尋ねた事に大して意味は無いと天海は笑う。おそらく会話の為の確認だったのだろう。
「それがディアボロスの社会単位なのでしょう。我々で言う村落、藩、或いは令政国。そのような意味かと見受けます。その集合体、或いは巨大なそれに『旅団』の名を与え、皆で運営している。成る程成る程」
 そしてぽつりと呟く。――その方面の問いならば、此方も同じくらいの誠意を見せる必要があるだろう、と。
 コホンと空咳の後、天海はさらりと言葉を紡ぐ。
「生活に根付いた興味深いお話でした。さて。それでは……」
 何を聞きますかな?
 人懐っこい笑みを零し、天海は最後となる問いを投げ掛けて来た。
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文月・雪人
時の流れとは本当に早いものですね
この会談を間もなく終えねばならない事、私も名残り惜しく感じます

愈々最後となりますが
天正大戦国というこのディビジョンを理解する為にとても重要な事をお聞きしたい
『令制国』とは一体どういうものなのですか?

先程は旅団に関する話の中で、社会単位の一つとして例に挙げられていましたが
大名による国土の分割統治も、城を中心とした国の護りも
この様な仕組みは他のディビジョンにはありません
まるで小さなディビジョンの様な…
断片の王である織田信長は、どういう意図でこの仕組みを作ったのでしょうか?

最後に天海大僧正へ
この貴重な場を設けて下さった事と
ここまでの誠実な対応に
心から感謝を伝えたいです


「とうとう最後になりますが、とても重要な事をお伺いしたい」
 その言葉は、文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)が発した物だった。
 先を促す天海に、彼は問う。『令制国』とは一体どういうものなのか、と。
「先程、社会単位の一つとして挙げられていましたが、大名による国土の分割統治も、城を中心とした国の護りも、この様な仕組みは他のディヴィジョンにはありません」
 まるでそれぞれが異なった改竄世界史のような。
 断片の王たる織田信長は、どの様な意図でこの仕組みを作ったのか。それが雪人が最後に問う文言であった。
「そう。令制国とは、天正大戦国の根幹となる制度です。そして、その意義は大きく分けて二つあります」
 返答は、これまでと同様だった。嘘偽りなく返答すると言う態度はここに来ても変わる事は無さそうだった。
「一つは天魔武者の力を引き上げること。令制国を与えられ大名となった天魔武者は、一所懸命の性質によって、より大きな力を発揮できるようになります」
 それが天正大戦国が多くのジェネラル級を抱く理由の一つなのだろう。
「そしてもう一つ。天正大戦国そのものの守りを固める事です」
 令制国を制圧しなければ、次の令制国に攻め入ることが出来ない。それは復讐者達が今現在、身を以て体験している事でもあった。
 その様に時間を稼げると言う事は、反撃の準備を整える暇を生み出せると言う事。それが、天正大戦国の戦い方、と言う事なのだろうか。
「そしてこれはボーナス……ですな。貴殿等に旅団の事を聞かせて貰った御礼となります」
 悪戯っぽく天海はにぃっと笑う。やはり、内情を伝える行為は、天海に相応の好感を抱かせる結果となったようだ。
「貴殿の言う通り、令制国は小さなディヴィジョンと言えましょう。何故ならば、令制国の統治を元に、大名達に『断片の王としての視点』を経験させる事もまた、隠された目的の一つで有るが故に」
 そして、天海はふと視線を遠くに向ける。そこに雪人は憂いの色を見た気がした。
「信長様は断片の王として、天正大戦国の天下を整え、数多のジェネラル級も用意した偉大な御方です。だが、信長様の力も無限では無い。いずれ、他の誰かが、断片の王としての地位を引き継ぐことになりましょう」
「ああ、成る程」
 つまり、令制国という制度そのものが、信長の後継者を育み、選び出すと言う役割の一端を担っているのだ。
 雪人の首肯を受け、天海は満足そうに微笑を形成した。
大成功🔵​🔵​🔵​
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効果2【命中アップ】がLV2になった!

 斯くして、天海大僧正と復讐者達による交流は終決する。
 其処で取り交わされた文言が二つの世界を――改竄世界史天正大戦国と最終人類史をどの様に変えていくのか。
 それは未だ、判らなかったけれども。
「ほっほっほ。拙僧としては有意義な時間を過ごさせて貰いましたぞ」
 礼を告げる復讐者達に頭を下げた天海は、そんな満足げな笑みを浮かべ、彼らを高野山の外へと、送り届けるのであった。

最終結果:成功

完成日2023年07月18日