リプレイ
レイラ・イグラーナ
こんにちは。同志ロベスピエール。
「ロベスピエールと復讐者とで、オベリスクの共同調査を行う」。
先の約束を果たして頂きに参りました。
今後も良い関係を続けていくためにも、参りましょう。
言外に断ったり渋ったりすると同盟決裂と仄めかし、オベリスクへと共に向かいます。
我々が同志に求めるものは「革命淫魔らがパリ市民から奪い取ったエネルギーの提供」「淫魔のジェネラル級としての知識」です。後者に関しては適切な情報がないままに調査を進めると、逆にこの1793年の崩壊を招く危険もある……かもしれません。
そういったことがないよう、その英知をお借りしたく。
と、脅したり持ち上げたりしつつ協力を要請します。
●1793年、ノートルダムの地下遺跡
警備の革命淫魔に取り次ぎを頼み、地下へ。
レイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)を待っていたのは、思わぬ相手だった。
「ごきげんよう」
テロワーニュ・ド・メリクール。
愛の囁きの二つ名を持つ、ジェネラル級クロノヴェーダだ。
「あら、がっかりしちゃった?」
レイラの背後に回り、耳元に囁きかける声。
甘い吐息を含ませ、黒髪の女淫魔はふふっと嗤う。
「いえ……」
肩を抱かれて身を竦めつつも、レイラはあくまでも冷静を装った。
「ごめんなさいね。あの人、実は結構な恥ずかしがり屋さんなの」
「同志ロベスピエールが?」
まさかそんなはずはない。
先日の会談に懲りて、ディアボロスとの接触は極力避けたいとでもいうのか。
「安心して。おもてなしは存分にするよう、言われてるから」
落胆はさせないと、メリクールは豊満な肢体を押しつける。
「そうでしたか。では改めて……」
絡みつく腕をすり抜け、咳払いをひとつ。
「こんにちは、同志メリクール。先の約束を果たして頂きに参りました」
「約束、ね……で、私はオベリスクの調査に立ち会えばいいのかしら?」
「はい。今後も良い関係を続けていくためにも参りましょう」
穏やかに微笑んでみせながらも、レイラの目は笑っていない。
「その前に……」
先に立って案内しようとしたメリクールを呼び止める。
「此度の調査に当たって、我々からお願いしたいこと……要求があります」
革命淫魔がパリ市民から奪い取ったエネルギーの提供と、淫魔のジェネラル級としての知識。
「後者に関しては、適切な情報がないまま調査を進めると逆にこの1793年の崩壊を招く危険もあると考えてのことです」
「ふぅん」
何を考えているのか、何も考えていないのか。
思案するような素振りの後、メリクールはレイラを振り返った。
「あなたたちが許してくれれば、儀式をやってあげてもいいんだけど」
革命淫魔は『地獄変』のようなアイテムは有していない。
そのため、これまでも必要なときに必要な分だけ、エネルギーを集める儀式を執り行ってきたのだという。
だが、他に手がない訳ではなかった。
「自動人形が貯めていたエネルギーが少し残ってるらしいの。実験くらいなら、それでなんとかなるんじゃない?」
次の要求についてはノーコメント。
「いつか、ロベスピエールに会ったときにでも聞いてみて頂戴」
それきり話を打ち切り、メリクールは遺跡の奥へいざなった。
成功🔵🔵🔴
効果1【無鍵空間】LV1が発生!
効果2【ラストリベンジ】LV1が発生!
メリクールとともにオベリスクのある地点に移動したレイラの後を追い、地下遺跡へと赴くディアボロスたち。
同時に、1804年のノートルダム大聖堂に向かう者も。
彼らはそれぞれの場所で、探索と調査を開始する。
1793年の地下遺跡では、対ダブー戦でディアボロスの攻撃を受けた後、機能を停止したまま放置されたオベリスクを作動させる必要がある。
構造の似た他のオベリスクを参考にすることで、その機能を取り戻すことも出来るかもしれない。
1804年の地下遺跡には巨大な儀式場の跡のような場所があり、そこに足を踏み入れた者は、広場の中央に残された断頭台の存在に気づくだろう。
1793年のマリー・アントワネット王妃の処刑に使われていたものと、形状が酷似した断頭台。
果たして、そこにどんな秘密が隠されているのだろうか。
一里塚・燐寧
エジプトの遺産、オベリスク……
こいつが何をしてるか、何をできるかが争点だねぇ
港区のオベリスクに刻んだ文字の一部をメモして持ち込み
【無鍵空間】のレベルを上げ、文字の刻印や切削を行い、起動を目指すよぉ
メリクールには手元を見られないよう注意
ロベスピエールは「オベリスクにより、このディヴィジョンの多くの物がナポレオンによって奪われた」って言ってた
自動人形の行き来もオベリスクでやってたらしい
んじゃあ、今はグランダルメのどこと繋がってるんだろ?
気になるから、オベリスクへの呼びかけは「きみが繋がる先の場所を示せ」
行き先を指定し直す実験を行う仲間より先に実施するよぉ
……案外、超重要な施設とリンクしてないかなぁ
レイラ・イグラーナ
タンプル塔でのことからメリクールは若い男性が好みと考えていましたが……流石は淫魔というべきでしょうか。
ロベスピエールがこの場にいないのは気になりますね。
悪い想像としては……メリクールが革命淫魔内での主導権を握ったか、今しかできない企みをしているか、でしょうか。
いずれにせよ、唯々諾々とこちらに従うつもりはないのは明らかです。
【通信障害】は使用しておき、私たちが行っている修復作業の内容や状況を革命淫魔にできる限り分からないように、また、メリクールの様子は注意深く伺いつつ、メリクール以外に隠れている存在がいないかも注意。
【無鍵空間】を使用して反応を見つつ、港区のオベリスクと同じような文字を刻みます。
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ◎
可能なら、事前にベルサイユに向かう復讐者へ
マリー王妃の厳重警護を伝えておく
【無鍵空間】でオベリスクの部分ごと鍵の開錠を試し
その間に他の作業し、メリクールから離れて背を向け細部秘匿
まずオベリスクを観察
サイズ、色や形、表面の文字、素材…
記録し、港区やルクソール神殿のオベリスクのデータと照合を
……1804年との空間を繋ぐ機能なら
霧が立ち込め、二つの世界が重なるか?
メリクールにも尋ねる
何か気づく事はあるか
淫魔として感じる変化は
貴女なら何をする?
港区の開錠方法をなぞり活性化を
王を讃える文言、仏語やヒエログリフを刻み、触れたり
高所は梯子で作業を
感情を籠め呼掛け
開け、断頭革命グランダルメへの扉
●1793年、オベリスク調査
石造りの通路を奥へと進む。
途中、幾度となく出くわしたのは、地崩れを起こして封鎖された場所や不自然な行き止まり。
今も残る破壊の跡は、レイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)に『不敗のダブー』との激しい戦いの記憶を思い出させた。
あのときにはまだ、革命淫魔と協力し、共にこの地の調査を行うことになろうとは夢にも思っていなかったけれど。
「革命淫魔といえば……」
ロベスピエールの姿が見えないのが、どうにも気にかかる。
「あまり悪い想像はしたくないのですが」
彼を追い落とした『愛の囁きメリクール』が、革命淫魔内での主導権を握ったとでもいうのか。
「それとも、どこかで今しかできない企みをしている……とか」
「……何か言った?」
前を歩いていたメリクールが、いぶかしげにレイラを見やる。
「いえ……」
ついと目を逸らしたレイラに、女淫魔は、あらそうと素っ気なく返した。
「意外ね。あなた、もっと私に聞きたいことがあるんじゃないかと思ってたんだけど。たとえば、ロベスピエールのこととか、ロベスピエールのこととか……」
「え……」
ふいに心の中を覗かれたような気がして、顔を上げる。
それを見たメルクールはパチリと音の出そうなウインクを飛ばし、ここでもまたふふっと嗤う。
「いろいろ勘ぐるのは勝手だけど、あまり深読みしすぎるのもどうかと思うの……なーんてね」
巨大な空洞内に設えられた螺旋階段を下り、地下遺跡よりもさらに深く潜ったその先で。
不気味にそびえ立つ方尖塔が、一里塚・燐寧(粉骨砕身リビングデッド・g04979)らを出迎える。
「エジプトの遺産、オベリスク……こいつが何をしてるか、何をできるかを知りたいねぇ」
レイラとの合流後、巨大なオベリスクを見上げて呟く燐寧。
すべての機能を停止し、すっかり輝きを失ったその姿からは、ダブーに加護を与えていた頃のような強大な力は感じられない。
錬金術師たちを閉じ込めていた監獄に人影はなく、手掛かりになりそうなものは何ひとつ残されていなかった。
「さて……」
早速調査に取りかかるべく、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)がオベリスクの台座へと近づく。
静まり返ったこの広場に、メリクール以外の革命淫魔は一人も見当たらない。
「とはいえ、何者かが潜んでいる可能性がないとも限りません」
慎重に慎重を重ね、レイラは注意深く辺りに目を光らせた。
と同時に、辺りを『ディアボロスの望まぬ通信が不可能な世界』に変えたのを、果たしてメリクールは気づいただろうか。
「ふむ……」
その間にも、念入りにオベリスクの観察を続けるエトヴァ。
形や素材、サイズに色も。
「表面に刻まれた文字も含め、やはりどれもが港区やルクソール神殿のそれとよく似ている気がするな」
それぞれのオベリスクのデータと照合し、確認する。
瓜二つとまではいかないまでも、ほぼ同様のものとみていいだろう。
ならば、以前に得た知識を駆使して作業を進めるまで……が、その前に。
「念のため、貴方にも意見を求めたい」
近くの岩に腰掛けて退屈そうにしていたメリクールに、エトヴァは問いを投げかける。
オベリスクを見て、何か気づいたことはあるか。
淫魔として感じる変化は?
「貴女なら……何をする?」
「あらあら、随分とふんわりした質問だこと」
気だるげに言って、欠伸を洩らす。
なんでも聞いてみればいいってもんじゃないのよと肩を竦め、メリクールは足を組み替えた。
「そうね。淫魔として……私だったらいろいろ考えるのも面倒だし、いっそのことオベリスクを魅了して、自分から動いてくれるようになるクロノ・オブジェクトを作っちゃうかな」
冗談とも本気ともつかない口ぶり。
本当にそんなことが出来るのかと尋ねた燐寧に、にっこり頷いて。
「生贄をたくさん用意すれば、ね」
試してみるくらいは出来るかも……と返した。
「……ふむぅ」
淫魔の戯れ言は、それくらいにしておいて。
港区のオベリスクの再起動にも関わった燐寧は、エトヴァとともに当時の経験をもとに作業を始める。
「起動するためのエネルギーは、自動人形が集めてあったのが内部に残ってるって話だよねぇ」
ならば、あとは正しい手順を踏むのみだ。
メリクールの気が逸れるタイミングを見計らい、彼らは『無鍵空間』の効果を用いてオベリスクの『鍵』の開錠を試みた。
すべての機能を活性化させるには、それなりの時間と根気が必要になる。
表面に書かれた古の王を讃える文言の一部を削り、別の文言に置き換えて刻む。
そうして何かしら反応があれば、次の箇所へ……の繰り返し。
さらには直接手を触れ、言葉を尽くして。
「ロベスピエールが言ってたっけ。オベリスクにより、このディヴィジョンの多くの物がナポレオンに奪われたって」
オベリスクの力で自動人形の軍勢を送り込み、ディヴィジョンを行き来するのにも利用されていたと聞く。
だとしたら、今はグランダルメのどこに繋がっているのだろう……?
「きみが繋がる先の場所を示せ」
燐寧が呼びかけた声に反応するかのように、オベリスクはまた少し光を取り戻す。
起動までもうすぐ……あと、ひと押しといったところか。
「開け、断頭革命グランダルメへの扉」
エトヴァが高らかにそう命じると、辺りに白い霧が広がり始めた。
「あれは……」
霧の向こうに何かを見た気がして、レイラは目を凝らす。
「ひょっとしなくても、オベリスク……だよねぇ?」
「ああ、確かに」
見覚えのある街並み。
広場の中央で、天に向かって真っすぐに伸びる方尖塔。
燐寧もエトヴァも、そこがコンコルド広場だと気づくのにさして時間はかからなかった。
「あれがコンコルドだとすると……」
今、自分たちが見ているのは、1804年のパリの風景だということになる。
1793年と1804年。
立ち込めた霧の先で、ふたつのパリが重なり、繋がった。
自分の推測に誤りはなかったと、エトヴァが考えたその刹那──。
瞬時に映像が切り替わる。
「あれれ、今度はどこだろうねぇ」
燐寧が視認したのは、自分たちがいるのとよく似た場所だった。
だが、そこにオベリスクは存在しない。
雑然と荒れ果てた、がらんどうの地下空間。
ただひとつ残された断頭台らしき装置の周りを、よく見知った仲間──1804年のノートルダム大聖堂に向かったはずのディアボロスたちが、何やら調査している様子が映し出されていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【無鍵空間】がLV3になった!
【通信障害】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV2が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
八千草・実
乗りかかったお船ですわ
うちは断頭台と広場の儀式場を調べましょ
マリー王妃様を処刑してた儀式と仕組みはおんなじやないかなぁ
どんな儀式が行われてたか、調べましょ
断頭台はクロノ・オブジェクトですやろ…
金槌で叩いて壊せるかなぁ
刃に手を当てて切って、血を落として反応をみるよ
断頭台の露と消えて…歴史どおりやったんかな…
自動人形は、処刑からエネルギーを得るんやったねぇ…
マリー王妃様が断片の王の力を持ってたんなら、儀式の材料にされかけたん?
処刑のエネルギーを、どっかへ送ってた?
広場の床に何か描いてないかな…転送装置ぽいのとか
断頭台以外に、儀式に必要なクロノ・オブジェクトはないかなぁ
壊れた物は【修復加速】しましょ
トロワ・パルティシオン
全く、分岐点には断頭台が付き物なのかな。
ベルサイユ宮殿での処刑に乱入した頃を思い出すね。
傷や擦れ、血痕など、使った形跡があるか調べよう。
未使用なら、もう一度捕らえたマリー王妃を処刑するつもりだったんだろうね。
けど、どうしてこっち側にあるんだろう。
後で向こうに持ち込むつもりだった…いや、移動できるようには見えないな。
じゃあ王妃様をこっち側に連れてくるつもりだったのか…出来るのか?
ベルサイユ宮殿の時は、王妃様は時空の歪みを通れなかった。
だから『1793年』からは出られないと思ってたけど…オベリスクの力なら可能なのかもしれない。
逆に使用済みだったら、誰を処刑したんだろうね。もう一人のマリー王妃とか?
ソレイユ・クラーヴィア
ここに断頭台があるとは…
ウィーンの淫魔大樹を破壊した時は、大樹の意思に類するものは感じなかった
この断頭台で連れ去られた「淫魔大樹・マリーアントワネット」を処刑し
躰だけをエネルギー吸収機構として利用していた?
断片の王の意思は分離して「断片の王にならなかったマリー王妃」としてオベリスクを通して1793年に帰還させ、ヴェルサイユで再度処刑しようとした、とか…?
それがディヴィジョンを上書きする大儀式の概要でしょうか
装置や陣等、怪しい物が無いか断頭台周辺を調査
マリー王妃に関係する物品は残っていないでしょうか
念の為、断頭台に無鍵空間を使用を試します
オベリスクの調査に合わせて此方にも変化が無いかも確認します
●1804年、ノートルダムの秘密工場跡
自動人形の製造や開発を行う秘密工場と化した、ノートルダム大聖堂。
ジェネラル級クロノヴェーダ『A7Vメフィスト』が倒されたのと前後して、工場や地下の研究施設も破却された。
廃墟となった地下遺跡で、調査に出向いたディアボロスたちが目にしたものそれは──。
「断頭台がなぜここに……?」
予期せぬ発見に、ソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)が首を傾げる。
「全く、分岐点には断頭台が付き物なのかな」
ベルサイユ宮殿での処刑に乱入した頃を思い出すねと、トロワ・パルティシオン(迷子のコッペリア・g02982)。
後に救出されたマリー王妃は今、城塞化したベルサイユ宮殿でディアボロスの庇護下にある。
未来永劫、彼女がギロチンにかけられることはない……そう信じたいところだが。
「嫌な話だけど、自動人形たちが完全に諦めたとも思えないんだよね」
王妃を守り、隠された謎に近づくためにも。
まずは、あの断頭台が使用された形跡の有無を調べたい。
「もし未使用なら、彼らの企みもはっきりするだろうし」
言いながら、トロワは用心深く歩み寄った。
比較的、新しいもののように見える外観。
鈍く光る刃にも傷や擦れ、血痕などは見当たらない。
「やはりこれは、もう一度マリー王妃を処刑するために新しく用意された物な気がするな」
だとしたら、なぜこちらの世界──1804年のノートルダムに存在するのか。
「もうちょっと詳しく調べてみる必要がありそうやね」
地下遺跡全体がそうであるように、断頭台もクロノ・オブジェクトだと推測する八千草・実(温室の管理者・g05182)の手には、新宿島から持ち込んだ金槌が握られている。
「行きますえ」
おもむろに振り上げたそれを、実は力いっぱい断頭台に打ちつけた。
「ひゃっ……」
腕が痺れるほど、跳ね返ってくる強い衝撃。
だが、肝心の断頭台はびくともしない。
次に自らの指先を刃で傷つけ、血の滴を垂らして反応を試してみたものの、明確な変異は現れなかった。
「クロノ・オブジェクトであれば、そこに秘められた『鍵』を解く必要があるのかもしれません」
そう考えたソレイユは、『無鍵空間』を発動させる。
入念に作業を行った結果、導き出した答えは──。
「この断頭台は、人の首を刎ねて殺害するのを鍵として動く仕組みのようです。自動人形たちは、これと酷似した断頭台でマリー王妃の処刑を行おうとしていました。つまり……」
王妃を処刑することで効果が発揮されるタイプのクロノ・オブジェクトに違いないと、ソレイユ。
「ただし、失敗作でなければ……の話ですけどね」
研究者たちが研究を重ねた末、作り上げた試作品。
動かしてみようにも、王妃の命が懸かっている以上、手立てはないに等しい。
「断頭台以外に、儀式に必要なクロノ・オブジェクトはないんかなぁ」
儀式の跡……たとえば、転送装置のようなものが残されてはいないだろうか。
手掛かりを求めて辺りを見回した実は、薄暗い床に大量の紙類が捨て置かれているのに気づく。
適当に紙片を拾い上げると、そこに書かれたドイツ語らしき文字に目を走らせた。
「断片の王『淫魔大樹マリー・アントワネット』は、1793年から連れ出した際に巨大樹木型クロノ・オブジェクトと化した……って、なんやのこれ」
読み上げた実に、ソレイユもトロワも注目する。
『1793年は、ナポレオン陛下がオベリスクで固定した可能性の存在でしかない。
そこを出た断片の王は、本来の姿を保つことが出来なかったと見える』
どうやら機械化ドイツ帝国の研究員が書き残した報告書の一部のようだ。
「そういや、ロベスピエールもそんなこと言うてたねぇ」
実も参加した緊急会談で、彼が語った内容ともおおよそ合致する。
あくまでも彼自身が知り得た情報の範疇ではあるが、ロベスピエールの話に偽りはなかったということか。
「んー……」
続けて実はその先も読み解こうとしたものの、文字が掠れたり紙が破れたりしていて判別出来ない。
元が失われていては、いくら『修復加速』を使おうとも修復不可能であった。
「報告書、ね……」
残りの紙を拾い集め、トロワも断片を繋ぎ合わせてみる。
試行錯誤の末に解読したのは、次のような文章だった。
『淫魔大樹は大淫魔都市ウィーンの礎として、人間からの感情エネルギーの搾取に利用されている。
だが、未だクロノヴェーダとしての意識も完全には失っていない。
その証拠として、人間の姿をしたマリー王妃が1793年に出現したとの報告があった。当然、すぐに捕縛したが。
淫魔大樹は王妃を依代に、1793年に復活しようとしているものと考えられる。
1793年に蘇ったあの女さえ処刑すれば、奴の目論見も潰えるだろう』
「なっ……」
思わず絶句する。
人間のマリー王妃は、淫魔大樹マリー・アントワネットが断片の王として返り咲くための依代だったというのか。
それは、トロワの動揺を誘うには充分な情報であった。
「ウィーンの淫魔大樹を破壊した時は、大樹の意思に類するものは何も感じなかったのですが」
あの中にまだクロノヴェーダだった頃の記憶や感情が残され、自らの意思を完全に取り戻そうと画策していたとは夢にも思わなかった。
他にも何かないかとソレイユは捜索を続け、見つけたボロボロの手帳を丁寧に捲る。
『1793年に出現したあの女、人間のマリー王妃が何度処刑しても蘇ってくる!
恐らく、クロノス級がアヴァタール級を出現させるのと同じ原理だ。
バカな! これではキリがない!!』
雑に書き殴られた文字。
乱れた筆跡から、書き手の狼狽ぶりが伺える。
うっすらと確認出来る日付は、トロワが見つけた報告書よりも少し後のものであった。
『王妃を完全に滅ぼすには、専用の特殊な断頭台が必要。
今後は、処刑儀式のたびに断頭台を調整してみよう。
パンタグリュエル化と並行して、一刻も早く研究を進めなくては!』
手帳の走り書きは、ここで終わっている。
「驚きましたね、いや……本当に」
この地を訪れてからずっと驚かされることばかりだと、ソレイユは息を吐く。
が、その分、得られたものも大きい。
現在ディアボロスが保護しているマリー王妃は、1793年の断片の王が創造した依代に過ぎない。
詳しい原理は不明だが、歴史改竄によって依代は何度でも蘇る。
淫魔大樹の復活を阻むため、自動人形は王妃を捕縛しては処刑儀式を行っていた。
「しかし、淫魔大樹が大淫魔都市ウィーンでの決戦でディアボロスに滅ぼされたことにより……」
「マリー王妃がふたたび『断片の王』となる可能性は完全に潰えた、って訳やね」
トロワの呟きの先を、実が継いだそのとき──。
どこからともなく発生した霧が、静かに立ち込める。
妖しげな白霧の先に、実もトロワも垣間見た。
1793年のノートルダムにいる、仲間たちの姿を。
「ふたつのパリが繋がっ、た……?」
本来、1793年のオベリスクは、コンコルド広場のオベリスクと繋がっていたはずだとソレイユ。
それを研究員や自動人形が何らかの技術を用い、地下遺跡同士リンクさせたものと考えられる。
「自動人形の軍勢を送り込んだり、互いのディヴィジョンを行き来したりするのにも都合がよかったのでしょうね」
ただし1804年の地下遺跡には転送を制御するオベリスクが存在しないため、こちらからは操作を行うことは出来そうになかった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【修復加速】LV1が発生!
【書物解読】LV1が発生!
【無鍵空間】がLV4になった!
効果2【能力値アップ】がLV4になった!
【命中アップ】LV1が発生!
同じ頃、1793年の地下遺跡では、ディアボロスによるオベリスクの転送能力を確かめるための実験が行われようとしていた。
まず試しに小石を霧の中に投げ込んでみるが、どれだけ待っても変化は起こらない。
石ころはそのまま、いつまでもそこに存在し続けた。
僅かに落胆したディアボロスたちの前を、灰色の鼠が横切る。
「きゃぁっ!」
初心な少女のような声を上げるメリクール。
一直線に霧を突っ切ろうとした鼠は、声に驚いて立ち止まった。
そのまま留まること、数十秒。
レイラもエトヴァも期せずして現れた珍客に注目したが、やはり何も起こらない。
「石もダメ、鼠もダメとなるとぉ……」
あとは何が残っているだろうと、燐寧は考えあぐねる。
限定起動した新宿島のオベリスクは、ディアボロスを『巨獣大陸ゴンドワナ』へいざなった。
「あれが偶然でないとしたら、転送対象には何かしら条件が存在すると考えた方が自然かもしれないな」
「オベリスクをふたつの時代を行き来するために利用していたクロノヴェーダ、それにゴンドワナへの転移を成功させたディアボロスも」
エトヴァの推論に、そのどちらもが実験対象となり得るに違いないとレイラは頷いた。
検討の結果、次なる転送実験の被験者は『ディアボロス』と『革命淫魔』、さらに可能性のひとつとして『一般人』の中から選ぶことに決まった。
もちろん、自薦他薦は問わない。
トラブルが起こったときのことを考えると、とりあえず淫魔を選んでおくのが無難だが、敢えてディアボロス自身が立候補してみるのもいいだろう。
送り手側の1793年と、受け手側の1804年。
最低、双方に一人ずつディアボロスがいれば、実験は成立するものと思われる。
ソレイユ・クラーヴィア
「何度もマリー王妃を処刑した」にはそういう理由が…
大陸軍の行動を革命淫魔が時代を上書きする方法と捉えたのなら
彼らに1793年を1803年に上書きする手段は現状では存在しないのかもしれません
現実は誰に対しても等しく残酷ですね…
1804年側から時空を渡れるのか待ち受けます
白霧の際で人影が現れれば此方に手を引き誘えるよう構えて
声が聞こえるかの確認もかね、呼びかけます
もし無事に渡れたなら、特に一般人の精神状態や外見に変化が無いかを観察
必要あれば友情催眠を使用し
落ち着けるように声を掛けケア
一般人は現れないなら
オベリスクで移動できるのはパラドクスを扱える復讐者か侵略者、若しくはクロノ・オブジェクトのみかも
ヴォント・クライヴ
●心情
うーん、なんとも怪奇な事になっておりますが…。
なるほど、マリー王妃は…そうでしたか
複雑な物ですね
2人の断片の王により過去のパリが作られたなら…この世界で生まれた革命淫魔や一般人は、外に出るのは難しいのかなと予想しつつ
人が通れるのか試しましょう
…過去世界の人達は本当に人間なのか疑問ですが
●行動
って訳で
一般人をナンパしますね、ヒャッホィ!(友達催眠)
僕と手を繋いで向こう側へ向かいましょう
と1793年から1804年へ移動してみましょう
宜しければ麗しのメリクールさんも一緒に手を繋いでいかが?
無理はしませんが一応声を
とても可愛い方ですね
彼氏います?
1804年世界は初めて?
…さて、何が起こりますかね
八千草・実
驚きやねぇ…何度も蘇る王妃様な
そやけど、もう淫魔大樹がないんなら、今の王妃様はただ一人…
ええ未来を掴めたらて思います
実験開始やねぇ
危険がないか見つめて、すぐ手を貸せるように際で待ってます
武器も忘れずな
1804年側で待ち受けて…何が来ても構いませんわ
…わぁ、ほんまに来はる?
お仲間さんの頼みがあれば聞きましょ
淫魔さんならご挨拶して、お喋りしながら帰ってもらお
復讐者さんなら、どんな感じでした?て尋ねて労います
一般人さんは心配やねぇ
もし来られたら、問診から
大丈夫かな、お体に異常ない、変わりあらへん?
危険な実験やのに…ごめんなさいな…ありがとうさんです…
改竄世界史を渡れるんは、うちらがきっと特別なんよ…
●1793年、ノートルダムの地下遺跡
「なんとも怪奇な事になっておりますが……なるほど、マリー王妃は……ふむ、そうでしたか」
複雑なものですねと、神妙な顔つきで顎に手をやるヴォント・クライヴ(ウサギの盗賊・g06449)。
オベリスクを中心に渦巻く白霧を前にしたヴォントの隣には、ブロンドの髪の少女が立っている。
ヴォント曰く、『友達催眠』で『合法的に』ナンパしてきたパリのマドモアゼル……現地の一般人であった。
「せっかくの大実験なのに、一人じゃ寂しいでしょう? だから、お願いして一緒に来て頂く事にしたのですよ」
悪びれた風もなくそう言って、ヴォントは実験の被験者役を買って出た。
「さ、参りましょう」
パラドクスの効果でヴォントを親しい友人だと思い込んでいる少女の手を取り、一歩踏み出す。
だが、もう片方の空いた手が少々寂しい。
「あ、えーっと……」
辺りを見回したヴォントの赤い瞳が、黒髪の淫魔を捉える。
「おやこれは、麗しのメリクールさん。宜しければ僕とご一緒しませんか?」
「あら、いいオトコ!」
退屈そうに爪を磨いていた『愛の囁きメリクール』は、ヴォントと目が合うなり、弾かれたように立ち上がった。
いそいそと駆け寄り、腕を絡めて身を寄せる。
「あ、あの、お手を……」
「焦らないで、ね? 手も腕も……もっといっぱい、あれこれイロイロ繋いじゃいましょ」
「あはは、可愛い方ですね」
強引に押しつけてくる胸の感触に苦笑しつつ、メリクールとも手を繋ぐ。
「……さて、何が起こりますかね」
仲間のディアボロスたちが見守る中、二人の女性を伴い、ヴォントの姿は霧の向こうに消えた。
●ふたつの巴里、1793年から1804年へ
「実験開始やねぇ」
1804年の地下遺跡で。
八千草・実(温室の管理者・g05182)は、固唾を呑んで被験者を待ち受ける。
誰が来ても構わない。
今はただ、実験の成功を祈るのみであった。
「あ……」
断頭台の周りに立ち込めた霧の流れが変わる。
そこにぼんやりした人影が現れるのを、ソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)は見た。
「私の声が聞こえますか? ええ、そう、こちら……こちらです」
白霧の際に立ち、腕を伸ばす。
迷わぬよう、失わせぬように。
自分の声が届いている確証はなかったが、ソレイユは時空を越え来る者の道標になろうと務めた。
どれだけ時間が経っただろう。
霞がかった視界が晴れた瞬間、ヴォントは薄暗い広場に残された断頭台の傍に立っていた。
「ああ……」
霧に踏み入る前に垣間見た風景だと、安堵する。
グランダルメに転移することに成功したのだ。
「わぁ、ほんまに来はったんやね」
不測の事態に備えて武器を構えていた実も、一気に緊張が解けるのを感じて息を吐く。
「どんな感じやった? ねぇ、よかったら後でお話聞かせてくれはります?」
仲間の労をねぎらいつつも、つい嬉しくなってはしゃいでしまう。
ディアボロスがオベリスクを介して別のディヴィジョンに転移した例は、港区での調査でも報告されているのは周知の通り。
今回の実験は、それが偶然ではなかったのを証明したのみならず、実らに新たな希望と可能性をもたらした。
「淫魔大樹がおらんようになって、もう二度と蘇ることのなくなった王妃様も、もしディアボロスにならはったらきっと……」
時空を越えられるに違いない。
もちろん大前提として、マリー王妃に『覚醒に至るほどの強い怒り』を抱かせることが出来れば……の話ではあるけれど。
ますます心が弾むのを感じる一方で、実は一般人の少女を気遣うのも忘れなかった。
「そっちのお嬢ちゃんも大変やったね。お身体に異常ない? 変わりあらへん?」
少女の背に触れ、様子を確かめようとしてハッとする。
何かがおかしい。
金色の髪も白い肌も。
少女の形を成していたものすべてが空疎な存在となり、輪郭も曖昧になってぼやけ始めている。
まるでホログラム映像にでもなったかのようだ。
「どうかしました? お嬢さん……お嬢さん!?」
握った手の感触で、ヴォントも敏感に異変を察知する。
「まさかこんなこと……」
やはり、一般人はディヴィジョンを越えられないというのか──。
恐れていた事態に ソレイユもまた呆然と立ち尽くした。
そうしている間にも少女の姿は失われてゆく。
「待って、まっ……」
抱き留めようとしたヴォントの両腕に僅かな温もりだけを残し、少女は跡形もなく消え去った。
「改竄世界史を渡れるんは、うちらがやっぱり特別ってことなんやね……」
少女のいた場所を眺め、実が肩を落とす。
「危険な実験やと分かってたのに……ごめんなさいな。ほんま堪忍、堪忍やで……」
いくら詫びても少女には届かない。
ヴォントもソレイユも、残酷な現実に打ちのめされた。
「はうっ、あっ、あっ……」
突然、メリクールが苦しげに身悶える。
「やぁん……イタイいのぉ、あたま、いた、い……」
どこか艶っぽい響きを孕んだ呻き声を発し、激しく全身を痙攣させた。
「メリクールさんまでそんな……大丈夫? しっかりせなあかんよ」
明らかに変調をきたしたメリクールを落ち着かせるべく、差しのべた実の腕が乱暴に振り払われる。
メリクールは口の端を歪め、気だるげに髪を掻き上げた。
「……ねぇ」
舌ったらずな甘い声。
蠱惑的な表情でディアボロスたちを見返す。
「ここはどこ? 自動人形のディヴィジョン? それとも、あなたたちディアボロスのディヴィジョンだったりするのかしら」
なぜ、わざわざそんなことを聞くのか。
何か釈然としないものを感じてソレイユは考えを巡らせたが、別に隠す必要もないだろう。
「ここは、断頭革命グランダルメ……1804年のパリですよ」
安心させるように言って、笑顔をつくった。
「市の中心部にある凱旋門には『不滅のネイ』がいますが、彼らが目論むパリの機械化を阻止し、我々ディアボロスがこの街を解放するのも時間の問題かと思われます」
「あらあら……」
ソレイユの言葉に、ふふっと嗤う。
「不甲斐ないわね。でもあの方、ネイ元帥が健在なら……」
なんとかなるかしらと独りごち、メリクールはドレスの裾を翻した。
「あ、ちょっと……」
呼び止めようとする実の声に振り向きもせず、地下通路を軽やかに駆ける。
すぐさまディアボロスたちも後を追ったが、相手がジェネラル級ともなると、捕らえるのも容易ではない。
案の定、追いつくことすら叶わず、地上に出たところで見失ってしまった。
「いきなりこんなことになってしもうて……メリクールさん、どないしたんやろ」
不安げに眉を曇らせる実には、ネイの居場所を知った途端、メリクールが発作的に逃亡を図ったように見えた。
「だとすると、メリクールさんが目指された先は凱旋門……」
「ネイの元に向かったと考えるのが自然でしょうね」
ヴォントの呟きに、ソレイユが応える。
革命淫魔のメリクールが、ネイと合流して寝返るとは考えにくい。
だが、これまでにも自動人形の配下となったグランダルメの淫魔たちはみな、1793年の記憶を持ち合わせていなかったのを思うと──。
「1793年から移動してきた淫魔は、歴史改竄の影響を受けて記憶を書き換えられてしまうのかもしれません」
こうしてふたつのパリを舞台にした、オベリスク調査と転送実験は終了した。
放たれた火種。
それはやがて大きな焔となり、パリの街を焼き尽くそうとしているのだろうか。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【友達催眠】LV2が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV5になった!
【ドレイン】LV1が発生!