鬼狩人の武士

 平安鬼妖地獄変ディヴィジョンの京の都を一歩出れば、鬼や妖怪達に多くの人々が虐げられている、地獄絵図が広がっています。
 その荒廃した都の外では、鬼や妖怪を狩る武士がいると噂されていますが、その武士に出会った事がある者など、殆ど存在もしていません。
 妖怪によって殺される人々を救う為、噂の中の鬼狩りの武士に成り代わり、ディアボロスの手で鬼や妖怪を撃ちとってください。

明日の夜を(作者 雨屋鳥
9


#平安鬼妖地獄変  #鬼狩人の武士  #鬼狩人 


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#平安鬼妖地獄変
🔒
#鬼狩人の武士
🔒
#鬼狩人


0




 夜闇のどこかで子どもの悲鳴が上がり、消える。方々に散った誰かが殺された。
「逃げよう。鬼狩人なんて迷信、信じちゃいないだろ?」
「……ッ、でも、アイツら……っ!」
「そうか、……残念だ」
 山の中。道なき道を逃げる。
 背後に迫る妖怪の気配。それから逃れる男は共に同じ方向へと走ってきた少年が足を止めたのを見て、即座に判断する。
 もう間に合わない。言外の言葉に少年は息を詰める。それでも、飲み込もうとしない少年に、男は背を向ける。
「……っ」
 その一瞬、少年は暗く沈んだ目に怒りを満たしながらも、寝食を共にした彼らを見捨てることを決めた。
「ごめん」
 駆け出そうとした瞬間、目の前を走っていた男が不意に倒れ込んだ。血潮が噴き上がる。傷が見えないほどの流血に即死を悟り、少年は、ゆらりと立つ黒い霞を見た。
 その目に最後に映ったのは、禍々しい気を発する妖刀。その煌めきだった。
「ああ」
 漸く終わる。飢えと渇きと悔いと恐れに満ちた夜を、もう過ごさなくていいのだと。
 切り裂かれる感覚に、少年はそう感じた。


「さ、始めようかね」
 春日宮・緋金(人間のバウンサー・g03377)は、ディアボロス達への説明を初めた。
「場所は京の南」
 荒れ果てた土地。そこで親を失ったか、捨てられたか。そんな子ども達が身を寄せる古小屋がある。
 襲撃にあうのは偶然だろう。ただ、たまたま気付かれた。その程度の理由だろう。だが、そこに暮らす少年少女にとっては、悲劇そのものだ。
「まあ、彼らにも希望はあるみたいだけどね」
 鬼狩人。
 鬼や妖怪を退治する武士が助けてくれる。まことしやかに囁かれる噂に、子ども達は希望を見出してはいるが、反面、その姿を見たものは彼らの中にはいない。
 口では信じているようなことを言いながらも、疑っている。
 そんな都合のいい存在が、都合よく助けてくれる。そんな訳はない。彼らはありもしない希望に縋ったまま死んでいくだけだと。
「だから、私達が助けてやろうじゃないか」
 それを見殺すアンタ達じゃないだろ? 緋金は確定事項を述べるように、そう問いかける。

「まあ、これでも、今回は切羽詰まった状況じゃあない」
 予知の再現まで時間はある。
 彼らの暮らしを手伝う事くらいは許されるだろうと、緋金は言う。
 食料の調達、小屋の修繕、守りの強化、小屋の隠蔽。やれる事は多い。
 腹を満たせば襲撃にいち早く気付くことも出来るだろうし、逃げ足もつく。守りがあれば、逃げる時間も稼げる。今回に限って言えば足止めし、ディアボロスの戦闘を、彼らを巻き込まない小屋から離れた場所で行うことも出来るだろう。
「まあ、警戒はされるだろうけどさ」
 彼らの見知らぬ者への排他的感情は強いだろう。だが、だといって手をこまねいている時間まではない。
「そのうち、クロノヴェーダが襲ってくる」
 後は簡単だ。人々を守り、クロノヴェーダを撃滅する。

 それにしても、と緋金は首をかしげる。
「鬼狩人の武士……いつからある噂なんだろうねえ」
 物憂げに思案し、気持ちを切り替えるように手を叩く。さながら邪気払いの火打ち石のような鋭い音とともに。
「よろしく頼むよ」
 ディアボロスにそう告げた。


 男が一人、崩れた家屋に手を合わせている。
 柱にこびり付いた血はまだ赤みを帯び、その下敷きになった骸が数日前までは生きていたのだろうと分かる。鬼の襲撃があったのだろう。京の都の外は、いつ妖怪や鬼に襲われてもおかしくはない、危険地域だ。
 それでも、人は生きている。そこで生きることを選んだ者、ここで生き残らざるを得なかった者。事情は様々なれど、その生命は等しく、軽々と気まぐれな息吹で散ってしまう。
「おい」
 目を閉じていた男に、背後から声が掛けられた。
 襤褸を纏う成長の未熟な拾五程の少年が、暗く落ち窪んだ目で男を見下ろしていた。剣呑さを見せながらも睨みつけるようなソレではない。
「もういいか?」
 だが、友好的とはとても言えない。旅の見知らぬ男への態度とすれば当然か。もし、首を横に振れば瞬く間に、その手に持ったくすんだ鋸で男の頭をかち割っていそうな陰鬱さを感じさせる。
 他者の生き死に、興味がないのだ。
「ああ、無理を言ったね」
「……」
 返答はなく、少年は鬼の襲撃で崩壊した家を改め始めた。支えになっていない木材を切り離し、中に何か残っていないかを探る。大人が来れば忽ちに除け者にされ、あとに残るのは解体された残骸だけ。
 喧騒が聞こえる。拳が肉を打つ音が聞こえる。誰かが瓦礫の所有権を争っているのか。死体が一つ増えるかもしれない。少年は舌打ちをした。声の近さに、大人がこの瓦礫に目をつける事を危惧したのか。
 そして、その危惧は、的中した。
 大人は強者で、子どもは弱者だ。誰もが自分のために生きている。
 暴力に晒され、手にしていた鉄の鋸すら奪われた少年を、男は少し離れた場所から眺めていた。林の中に隠れていたのか。幼い少年少女が、大人の去った後に飛び出してくる。
「……ごめん」少年少女が彼の身を案ずる中、彼は一言そう告げた。濁ったような怒りがただその瞳に滾っている。「ごめん」
 山中。岩陰に隠れるような古小屋で夜の雨風を凌いでいるらしい少年たちは、首を振る。
「ほら、食えそうな野草摘んできたんだぜ」「まだ、薪にできそうな端木がたくさんあるんだしさ」「きっとそのうち鬼狩人が現れてアイツラも殺してくれる」
 口々に励ます彼らに近づいて、男はそっとザルの中の草束を拾い上げる。節を折り、毒草の特徴を見て取って顔をしかめてみせた。
「これは腹を下すよ」
 それから男は力なく笑う。一晩、屋根を貸してくれないかと、握ることのない拳を震わせて、力なく笑う。
 知識を与えることはできるだろうと。
 そうして連れられた小屋は、近くの山間にあった。


→クリア済み選択肢の詳細を見る


→クリア済み選択肢の詳細を見る


→クリア済み選択肢の詳細を見る


→クリア済み選択肢の詳細を見る


●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
1
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。【怪力無双】3LVまで併用可能。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【怪力無双】
1
周囲が、ディアボロスが怪力を発揮する世界に変わり、「効果LV×3トン」までの物品を持ち上げて運搬可能になる(ただし移動を伴う残留効果は特記なき限り併用できない)。
【悲劇感知】
1
「効果LV×1時間」以内に悲劇が発生する場合、発生する場所に、ディアボロスだけに聞こえる悲劇の内容を示唆する悲しみの歌が流れるようになる。
【熱波の支配者】
1
ディアボロスが熱波を自在に操る世界になり、「効果LV×1.4km半径内」の気温を、「効果LV×14度」まで上昇可能になる。解除すると気温は元に戻る。
【断末魔動画】
1
原型の残った死体の周囲に、死ぬ直前の「効果LV×1分」に死者が見た情景が動画として表示される世界になる。この映像はディアボロスだけに見える。
【完全視界】
1
周囲が、ディアボロスの視界が暗闇や霧などで邪魔されない世界に変わる。自分と手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人にも効果を及ぼせる。
【活性治癒】
1
周囲が生命力溢れる世界に変わる。通常の生物の回復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」し、24時間内に回復する負傷は一瞬で完治するようになる。
【植物活性】
1
周囲が、ディアボロスが指定した通常の植物が「効果LV×20倍」の速度で成長し、成長に光や水、栄養を必要としない世界に変わる。
【建造物分解】
2
周囲の建造物が、ディアボロスが望めば1分間に「効果LV×1トン」まで分解され、利用可能な資源に変化するようになる。同意しない人間がいる建造物は分解されない。
【水面走行】
1
周囲の水面が凪ぎ、ディアボロスが地上と同様に走行や戦闘を行えるようになる。ディアボロスと手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人も同行可能。
【口福の伝道者】
1
周囲が、ディアボロスが食事を摂ると、同じ食事が食器と共に最大「効果LV×400人前」まで出現する世界に変わる。
【ハウスキーパー】
2
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の建物に守護霊を宿らせる。守護霊が宿った建物では、「効果LV日」の間、外部条件に関わらず快適に生活できる。
【パラドクス通信】
1
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。

効果2

【能力値アップ】LV3 / 【命中アップ】LV1 / 【ダメージアップ】LV2 / 【ガードアップ】LV2 / 【反撃アップ】LV1 / 【ドレイン】LV2 / 【アヴォイド】LV1 / 【ロストエナジー】LV3

●マスターより

雨屋鳥
 当シナリオを担当させていただく雨屋鳥です。
 復興支援をしたりうわさ話を聞いたりする話です。
 完結条件は『アヴァタール級との決戦『妖刀・縁斬り』』の決着です。

 舞台は、山の小屋が中心になります。

①有力な陰陽師の噂話

 少年たちの支援をしながら、有力な陰陽師の話を聞きます。
 少年たちは物資を集めながら情報も集めているので、ある程度の噂話は耳に入っています。
 男も旅をしているので同等の情報を与えてくれます。

②京南部の復興支援

 主に支援を行います。
 食料の補給や、小屋の修繕など。少年達の警戒心も和らいでくれます。
 戦闘時の少年たちの動きなどに影響があるかもしれないです。

③一般人を襲うトループス級『金棒鬼』

 金棒鬼との戦闘です。
 妖刀・縁斬りとは行動を共にはしませんが、弱者である少年たちを率先して襲います。

④アヴァタール級との決戦『妖刀・縁斬り』

 妖刀・縁斬りとの戦闘です。
 金棒鬼とは行動を共にしません。より生命力のある相手を狙います。
 この選択肢が達成されれば、当シナリオは完結します。


 
 それでは、皆様の心躍るご活躍お待ちしております。
84

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


無堂・理央
限られた資源を分け合って助け合うんじゃなくて、奪い合って攻め合う。
少年を退けた大人達も生きる為に必死なんだろうけど、何だか悲しいな。


無双馬『クロフサ』を呼び出して、如何にも旅人ですって感じで小屋の戸を叩こう。
「すいませーん。旅の者ですが、一晩、屋根をお借りしたいのですが」
一宿の恩じゃないけど、【活性治癒】で暴力に晒された少年を治療してあげる。
他の子達も体調不良とか無いか確認して、必要なら【活性治癒】で治療だね。
治療する術に突っ込みが来たら、昔に助けたお礼として外野の陰陽師に習ったて事にするよ。
情報収集するにしても、陰陽師に縁とか興味があると思わせた方が良いだろうしね。


神之蛇・幸人
故郷に少し似てる。山では、家では安心できた
この子たちだって、誰からも傷つけられない場所が要る

警戒心の緩和。いっそ軽く話してから式神を呼ぶのが早いかも
どうにかするつもりなら、隙を窺わずにもうやってる
……きみたちに酷いことしに来たんじゃない。鬼を狩りに来たんだ

小屋の隠蔽に使える植物を探す
彭候を連れて、隠蔽用や食用の植物が育つよう【植物活性】の加護
草丈があって成長が早いものを周囲に植えたらどうかな〈植物知識〉
蔦の類があれば少しは寒さをしのぐ役にも立つ
ついでに薪になりそうな枯れ枝集め

どの植物が何に使えるか。旅の人はきっと詳しいよ
他にも生きるために必要なこと聞いてごらん
知識はずっと残るし、誰にも奪えない


瀧川・大和
【料理】の技能で食糧を調理して振る舞おうか
【情報収集】と【看破】の技能で好みの味付けでも聞いてみるかな

【口福の伝道者】を使って俺も一緒に食事を摂れば人数を考えても充分な量が手に入るはずだ

襲撃において逃げるには体力をつけるのが一番だと思うし
ことが起こったら、離れれば離れてくれるほど戦いにおいては一般人を巻き込まなくて済む

それに満腹なら気力も充実して変な判断ミスも起こさないだろう

本当は様々な方面で支援したいところだが、まずは生き延びてもらうことを重点におこう


レント・オルトマン
俺も屋根を借りよう、軒先程度で構わん
多少のサバイバル知識はあるが、時代が合わない可能性もある
知識は任せ大の男手として、小屋の修繕や守りの強化に努めよう

こういった相手であれば、言葉より行動の方が信頼を得られるだろうか?
崩れた家屋で運ばれていない大物の木材や石材がないか探してみよう
そういった物資を【怪力無双】で持ち帰り、解体すれば小屋の補強に使えるやもしれん。
倒木や岩なども合わせて、小屋から離れた場所に積み上げれば即席の盾ともなろう。これでどうだ?

俺は鬼狩人、などと呼べる程できた存在ではない
ただ子供達が故郷の弟妹と重なったんだ
戦地に居た分あいつらにできた事は少なかったが
せめて目の届く範囲くらいはな


「分け合って助け合うんじゃなくて、奪い合って攻め合う、か」
 少女は黒い瞳に影を落とすように声を潜めた。
 無堂・理央(現代の騎兵?娘・g00846)は岩陰にひっそりと身を縮こませるようにして立つ古小屋を見つめて僅かに眉をしかめる。
「……雨を凌げる、ホントにそれだけって感じだ」
 子どもとはいえ数人の人間が暮らしているとは思えない、いや、子どもだからそう思いたくないような場所。
 そこが妖怪から隠れるためだけの場所ではない事は、想像に難くない。
 理央は召喚した無双馬――クロフサの胴体に手を添えると、ぶるると静かに嘶く振動に頷いた。
「うん、行こう……いいよね?」
 自分へ言い聞かせるように呟いてから、彼女は後ろを振り返った。
 数人のディアボロスが木々の陰に身を隠している。その一人が理央に静かに確認する。
「このいきなり四人で行けば、徒に恐怖を煽るだけでしょうから」
 瀧川・大和(丁寧な物腰デーモン・g01693)は柔和ながらも鋭い目線で、枝の切り払われた木立を示す。山の至るところに走りやすいように枝が払われている場所がある。逃亡ルートなのだろう。そして、考えられる目的はもう一つ。
「もう少し前へ出れば小屋から視線が通ります」
 警戒の為の視界確保。大和はそう考えた。レント・オルトマン(エンデクーゲル・g01439)もその言葉に肯定を示す。
 外敵をいち早く察知する。苛立つように息を吐く。もし、自分が余地で聞いた大人達のような立場であれば――住まいを把握し労働力として掌握する。
 そうなっていないのは、幸運か、大人もそこまでの余裕がないのか。
「恐らく、俺らみたいな大人は拒絶される。頼んだ」
「それなら、おれも、行って良いですかね」
 レントの理央への言葉に、別の声が上がる。小屋を睨むように見ている神之蛇・幸人(蛇蝎・g00182)は、静かに答えを待たずに腰を浮かせていた。
「……ああ」
 レントは大和と一瞬視線を合わせた後、慎重に頷いた。

「すいませーん」
 理央は静まりかえる小屋の戸を叩いた。
「旅の者ですが、一晩、屋根をお借りしたいのですが」
 騙している、そんな自覚に震えそうな声を抑えて、できるだけ自然に息を吐いた。
 返事はない。
 もう一度戸を叩こうか。物音ひとつ無いというのに、小屋の向こうから感じる息遣いのような陰気な気配に、そう考えた理央を、幸人の声が止めた。
「きみたちに酷いことしに来たんじゃない」
 幸人はゆっくりと、確かに一音ずつ発するように口を動かした。
「鬼を狩りに来たんだ」
「……鬼狩……っ」
 幼い声がした。直後に口を抑えられたような沈黙。
 瞬間膨れ上がったのは、明確な殺気だった。戸を破いて槍でも突き出てきそうな雰囲気。
 そうして、戸が静かに開いた。向こうに覗くのは、男の目。二人の姿を見た後、憎悪にも似た淀みを見せたその男は、予想に反してその戸をゆっくりと開いた。
 奥にいた少年少女が、外光に照らされる。強い警戒、だが、即座に逃げることはなく互いに行動を読み合うような剣呑さだけが静かに留まっている。
「本当に旅の方らしい、都の方の装いだ」
 男が振り向いて彼らに告げた。その声で彼らが僅かな安堵に包まれるのを、理央は同じく安堵しながら見つめていた。

「怪我してる子、他にはいない?」
 理央は小さく威力を押さえたジャベリンを衝突させた余波で、大人になぶられていた少年を治療しながら周囲に声をかける。
 だが、誰も声を返さない。だが理央の目には咄嗟に腕を隠した少女の動きが見えていた。
「君、腕怪我してるよね。見せて」
 有無を言わせない口調で手招きをする。治癒の終わった少年がゆっくりと自分の体を確認しながら、少女に頷いて漸く理央の傍へと座り込んだ。
「不思議……」
「ああ、これ……旅してる陰陽師を助けた時に教わったんだ」
 でまかせだ。陰陽師についての情報を聞き出すのなら関わりがあるように見せておいた方がやり易いだろうという打算も込めている。
 だが、彼らには十分納得できる理由だったのだろう。それ以上に疑問を覚えることは無いようだった。
 二人を招き入れ、そして大和やレント達と合流も出来た。残りのディアボロスは外で其々に動いている。それでも警戒は――強い不信は蔓延っている、と。
 理央はそれをひしひしと感じ取っていた。

 言葉を重ねるほど、その信用は薄れていく。レントは行動によってその不信感を払拭しようと考えていた。
 単純な話、自分が見て考え、出した結論というものを優先するのが人情というものだ。
 情報を収集し、整理し、見えぬものを予測立てる事に慣れていないだろう少年達にとっては尚の事。
「残っていた瓦礫だ、ここなら解体する時間もあるだろう?」
 行動こそ雄弁。そして行動としてレントが選んだのは力仕事だった。
 子どもは勿論、大人ですら運び出せない瓦礫を軽々と運び上げていた。運搬を諦めた瓦礫故に、周囲にも大人はいなかった。一応警戒していたが、追けられてはいないだろう。
「あ、ああ……凄いな……」
 大人達から逃れながら。両手に抱えられる程度の資材しか得られない彼らのとって、それは正しく宝だろう。年上の子は驚き、幼い子は純粋にレントを称賛した。
「やっぱり、鬼狩人なの? だから、そんな力があるんだ!」
 瓦礫から軽い木材を剥がしながら、そんな憧れの目を向けられる。
 違う。レントは心中でそれを否定した。そんな出来た存在じゃあない。所詮は、兵士だ。
 そう考えながらも、それを口に出すことは出来なかった。浴びせかけられる不信の中の憧れ、期待。それを唾棄することなど出来ない。
 彼らを見ていると、故郷の弟妹が重なって見える。顔も名前も思い出せないが、それでも大切に思っていた、何者か達。
 戦地に出たせいで、あまりしてやれたことも無かったからか。レントは彼らの為になりたいと強く願っていた。
「これは、小屋の補強か……即席の盾にでも使えるか?」
 一部が燃えてひしゃげた木材、鋸の後があるが諦めたのだろうそれを折るように割りながら、レントは男に問い掛ける。
 時間は刻々と過ぎていく。

 ここは彼らにとっての、誰からも傷つけられない場所。安全地帯。俗に言う家というやつだ。
「家、ね」
 周囲を探る黒犬の群れ。その中心で幸人は埃の詰まったような喉で咳をした。成長の早い食用可能な草を野犬の群れ――彭候の加護で、成長させる様子を、遠巻きに眺める子どもに振り返る。
 背の高い草を小屋の傍に伸ばし、蔦が壁を徐々に延びていく様子を見ながら、幸人は群れの長の頭を撫でた。
 少年達を見ずに、それでも聞こえるように言葉を投げ掛ける。
「どの植物が何に使えるか。あの人はきっと詳しいよ」
 確信はない。顔を覚えていない。ではなく、そもそも顔を見ない故に人を覚えるのは不得手だ。
 とはいえ、あれが誰だろうと旅をして死んでいないのなら相応に知識はあるだろう。
「生きるために必要なこと――は聞いてるか」
 怪訝に睨みながらも採集を始めた彼らに、幸人は、手頃な落枝を拾いあげた。

「さて……」
 大和は、焚いた火の前で腕を組んだ。
 集まった食材は多くはない。野草と野兎が一羽。だが、その事には困ってはいない。一人分さえあれば百人までは賄える。
 考えているのは、そもそもの調理だ。聞けば、全部一緒くたに煮て食うという食事ばかりで、生きるためだけの食事。好みなど考えてすらいない。
「味は濃いと受け付けないだろう。臭みを取って、消化はよく……」
 口に出し、認識を改めながら整理する。時間は多くはない。夜に火を起こすことを少年達は厭がっているのは、話している様子から窺えた。
 だが、素材の少なさが幸いした。魔力を以て調理すれば、文字通り秒の間に調理は済ませられる。
「始めるか」
 赤らむ空に大和は呟き、その手を動かし始めた。
 早業。正しくその言葉通りの素早さと的確さで、調理は瞬く間に終わっていた。
 狭い家の中は、無言であった。もたらされた食事を、腹に流し込んでいく。「美味しい」などと声を発する間もない。
「食べ過ぎないようにしてくださいね」
 満腹なら良いが、生き物の腹は、正しい満腹以上に入るようになっている。そうすれば動きも思考も鈍る。過ぎたるは及ばざるが如し、というものだ。
「……まあ、こちらで調整しますか」
 聞く耳を持たない子ども達にあきらめたように呟く。
 大和としては、不十分な支援だ。だが、豊かになることが幸福とも限らない。殊この場においては、生き残る為になることを最善とするべきだ。
 逃げるにせよ、耐えるにせよ。体力は重要なのだから。
「……日が暮れる」
 空を見る。ゆっくりと陽は沈み始めていた。
 夜がやってくる。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【活性治癒】LV1が発生!
【植物活性】LV1が発生!
【口福の伝道者】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
【ガードアップ】LV2が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!

 掴まれた。その一瞬、触れた擦過して固くなった指先に。
 心臓が掴まれたように、締め付けられたのを感じた。
 振り返って、そいつの目を見て、すぐに力なく落ちた手を見て。
「ああ」
 首を横に振るように、頷いた。
樫谷・都黒
壊れた家屋の廃材を取りに来る人達から情報収集

こんな雑な形では持って帰っても使い道に困りませんか?
すこしお話を聞かせていただければ、もう少し良い形にして差し上げますけれど。

誰も住まない壊れた家屋に対して【建造物分解】を行う
鶴の恩返しよろしく解体風景は見ないように伝える
覗きに来た者に対してちょっと驚かしつつ、噂話を聞く
解体後は噂の真贋問わず、解体して整形した資材を分配する

力のある方のお名前は耳にしますけど、そういった方はやはり、都から出てこられない、などあるのでしょうか?
もしくは何か大きな妖を相手にしているなどでしょうか?


 積み上げられた資材に囲まれるように、少女が座していた。この時代に存在するはずのない鉄の塊がその腕を広げている。
「こんな雑な形では持って帰っても使い道に困りませんか?」 
 崩れた瓦礫から使えそうなものだけを運び込んでいく大人達に声を掛けたのは、華奢な少女だった。
 彼女、樫谷・都黒(臥し者は独り路に・g00233)は、奇異な視線に晒されながらも、しかし、飄々と立っている。どこから持ち出したか、その背後に整えられた角材を積み上げた状態で。
 誰に話しているのか判然としない。だが、その場の誰もが彼女の言動に吸い込まれるように注意を向けていた。その彼女が、たおやかな指をゆっくりと伸ばし、彼らが各々に解そうとしていた家を指差した。
「私なら、すぐ、このようにして差し上げますよ?」
「……」
 その場の誰もが作業を止めていた。上等な布を纏う少女だ。普通であれば、即座にその有価存在を略取に動くのだろう彼らは、ただ押し黙って見ていることしか出来なかった。
 彼女は、答えも待たずに離れた場所を示す。
「離れていてください。それと」
 それは羞じらう生娘のような言葉で、岩に風が通るような矛盾した無機質さを感じさせる。
「見ないでくださいね」
 ここら一帯、浚うので。そう告げた言葉の意味は分からない。それでも、彼らは互いに視線を合わせた後に怪訝そうにしながらも、その言に従っていく。
 その事こそ異様だと気付くこともなく――いや、誰もが目を背ける中、違和感に振り向いた男がいた。
「な……ぁ?」
 そこで彼は、動く鉄の怪物を目にしていた。少し正しく時を進めたなら世界に溢れる重機と呼ばれる車両が、家々を解体していく。
 不可思議な、それでいて妙に現実的な光景の中、ピタリと聞こえていたはずなのに一切気にならなかった轟音が止まった。
「ああ」
 悲しげに。それでいて残酷な冷たさを思わせる声色。重機を停止させた都黒は、己にその男の視線を注がせるようにして、ゆっくりと呟いた。
「見てはならぬと申し上げたでしょうに」
 一呼吸、拍を置いてから彼女は男と視線を合わせる。
 その目が蛇に睨まれた蛙のように動きを止めた男の怯えを映し、細く狭まり。
「冗談ですよ」
 くつくつと、都黒が座ったままに男を手招きすれば、彼は逆らえないと跪く。
「……あの」
「お話をお聞かせいただければ、お持ちいただいて構いませんよ」
 ぱちくりと彼は目を瞬いた。お話、というものの漠然としたものだ。
「と、いうと」
「そうですね。陰陽師の方……名の知れた方々のお話など」
「『安部清明』……のような?」
 ええ、と、仄かに微笑んだ都黒は先を促す。
「そういった方はやはり……都から出てこられない、などあるのでしょうか?」
「さあ、都の守護とかか? いや、俺は遭ったこともないから知らんが」
 それはそうだろう、都黒はおずおずと答える男に、頷いた。このような場所で都に詳しい方が怪しい。
「……陰陽寮に属して無い『蘆屋道満』とか言うのなら、そういう柵も無いかもしらんですが」
 故に、酷く大雑把な情報のみが残る。
 都黒は、材木を対価に、眉唾ものの情報の中から何かの手がかりになりそうな話を少しずつ拾い上げていく。
 人は人を呼び、ようやくその全ての材木が捌ける頃には、日が暮れ始めているのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【建造物分解】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!

守都・幸児
子供に話聞く前に
食える草の見分けかたを教えてやるよ
って声かける
警戒されたら無理に近付かねえ
そこで聞くだけでも構わねえよ、って言って
一方的に喋って見分けかた教えておく

俺は山育ちだから食える草を探すのには慣れてんだよ
口減らしで山に捨てられたもんでな
まあそれでも
こんだけでかくなれるもんだぞ
って笑ってやる

で、聞きてえことなんだが
「都のなんか強え陰陽師が妖怪の王と戦ったって噂知ってるか」
戦ったのが誰かと勝敗が知りてえな
「妖怪の王なんているのか?どこに棲んでるどんな奴なんだろうな」
妖怪の王のことならなんでも聞けりゃ有難え

話聞きながら
小屋に【ハウスキーパー】使っとく
効果が一日でも楽にすごせりゃ気が休まるだろ


「食える草の見分けかたを教えてやるよ」
 男に視線を送った守都・幸児(迷子鬼・g03876)は、僅かに眉を上げる。彼も食草を教えているようだったが、ようだったが教える人数が多いに越したことはないだろう。
 少しの間見ていた限り、鑑定の内容に大きな違いはないようだという事は分かっている。一人、二人。幸児の近くに歩み寄るが、それだけだった。残りは遠巻きに眺めるばかり。
 それでもいい。幸児は頷く。
 どうせ耳はそばだてている、少し声量を上げれば勝手に学んでくれるだろう。
「てなわけで、今お前が取りかけた奴は食えたもんじゃねえぞ」
 食えるのはこっち。と、鬱蒼と茂る中の草を指差した幸児に、少年が不服そうに口を尖らせた。
「何が違うんだよ」
「葉の裏がな、ちょっとだけ薄くなってんだ。あとは……」
 説明してもよく分かっていないらしい彼に、幸児はもっと分かりやすいのはと言いながら、その両方を引き抜いて根を見せた。
「食えねえ方は、根端に膨らみが出来る。ちなみに滅茶苦茶エグみがある」
「うぇあ」
 飲み込もうとしたら、胃の中全部ひっくり返す上に、二三日そのエグい味しかしない。そう追加で言ってやると、蛇蝎のごとくその草を睨んだ少年はそれを森に投げ捨てていた。
「なんでそんなに分かるの?」
 彼らとてある程度の知識はあるのだろう。運もあるだろが、でなければとっくに毒草でも口に入れて死んでいる。
 それでも幸児には敵わない。
「俺は山育ちだから食える草を探すのには慣れてんだ」
 は、と笑うように言い捨てる。
「口減らしで山に捨てられたもんでな」
 どこかで息を呑む音が聞こえた。方向は分からない、木々に囲まれて音の発生源が不明瞭ということではない。
 同時に複数の息遣いがあったのだ。
 彼らとて、捨てられた境遇の者もいるのだろう。その妙な空気に察しながらも幸児は、言葉の調子を崩さずに、言葉の続きを口にした。
「まあ、それでもこんだけでかくなれるもんだ」
 独りごちるように呟いた言葉に、誰も返事はしなかった。返事はなかったが、誰もが何かを言おうとして言葉を呑み込んだような数瞬があった。
 羨むような、訝しむような。
「そういえばよ」
 幸児は、そんな空気に飽きたように、表情を明るくさせて声をあげた。
 なんの意味もない沈黙より、意味のない声の方が気が紛れるだろう。何を言おうかと、声を上げてから考えた幸児は、「そういえば」の言葉通り、今しがた思い出した問い掛けを投げてみた。
「都のなんか強え陰陽師が妖怪の王と戦ったって噂知ってるか?」
「妖怪に王とかそういうのあるの?」
「さあな、俺も知らねえ」
 少年は、首を傾げて思案した後に、ゆるゆるとその口を自信なさげに開く。
「知らない、あ、でも『賀茂忠行』って人がなんか、偉大? だった、みたいな?」
 何が偉大かは知らないんだけど。という少年に、幸児はああ、と納得したような声を出した。
 賀茂。その名は幸児も朧げながらも知っていた。
 陰陽寮の重鎮の家。それがそんな名前だったはずだ。とそこまで考えた後、幸児はふと少年の言葉に引っかかった。
「……だった、って死んでんのか?」
「うん」
 あっけらかんと返ってきた肯定に、幸児は思わず脱力した。
「うんて、お前な」
 質問への返事は知らないで終わり、出てきた名前も既に故人となっているものの名前だ。
「まあ、何かしらの足がかりにゃあ、なるか」
 手応え、といえば手応えではあるが、まだまだ確信に迫るには遠いようだと、幸児は少年が千切った毒草を道端に投げ捨てた。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【ハウスキーパー】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!

「ここなら安全だ、小屋から出てはいけない」
 確信があった。
 故に、留めさせた。逃げようと浮いた腰を下ろさせて、近づく音に震える身体を抑え込む。
「う、ぁ……ぁア……ぁ、ッ!」
 地響き。
 不安そうに身を寄せ合う子ども達は、極度の緊張状態にあった。
 音が近づく。妖怪が、鬼が暴れる音だ。
 心臓の音が、早鐘となって小屋の中で轟いているような錯覚がした。荒い息遣いが、息を吸う時を忘れたように連続する。
 ここにこうして子どもだけで助け合って生きている。そんなもの美談であろうはずもない。
 そうでなければ生きれない事情があるということだ。
 飢えて山に捨てられたものがいる。食料の肩にされ逃れてきたものもいる。そして、妖怪に故郷を襲われ、家族を失ったものもいる。
「うぁ、あああッああ!!」
 叫声。
 彼らの多くは、逃げ出して生存した者達だ。成功体験とは、薬であり、時に毒となる。
 甲高いそれは、幼い子供のもの。何が起こったのか、男は即座に見通していた。
 振り向くよりも先に声を荒げる。
「……ッ、戻れ!」
 恐怖に駆られたままに、数人の子どもが小屋の外へと逃げ出していったのだ。哄笑う鬼、外を覗き見ることなく理解する。彼らを追いかけるのだろう。
「く、そっ」
 苦々しく声を吐き出した。
 止める間もなく飛び出していった影に、誰もが目を見開いたままに己はどうするべきか選択に泳ぐ。誤れば死だ。一瞬、誰もが動けずにいる中、一人の少年が立ち上がった。
「連れ戻しに……」
 口走ろうとした少年の腕を、男が掴む。
 だが、引き止める鎖ではないと言うように指が離れた。立ち上がりはしないが、それ以上引き止めもしない。
 ただ純然に。事実を告げる。
「死ぬぞ」
「死にたくないよ」
 短い返事。
 そこに浮かぶ僅かな笑みに、男は痛々しげに眉を顰めてそれを見送った。もう手を伸ばして届かない。半端に閉じた掌を見つめて、そう思った。

 陽が沈む。
 山の向こうに日が落ちて、黒い赤が世界を包み込んでいく。
 ディアボロスが、小屋の外に立ちそれを見つめていた。状況が違えば、美しい景色だと嘆息していたのかもしれない。
 だが、今ここにあるのは凶兆めいた嫌悪感と胸騒ぎ。
 何かが来る。
 何かが起きる。
 肌がそう告げている。
 葉擦れが響いている。
 いや、轟音が近づいていた。
 静かな山。その木々を震わし、なぎ倒し。その音は次第に近づいてくる。
 そして。
 木々の間から、赤い鬼の肌が見えた。鬼は、ディアボロスを……その向こうにいる子どもたちを、その狂乱の目で射抜く。
「人の臭いだ」
「子がいる、ああ、子がいる」
「細い骨の砕けるいい音が聞こえる」
「潰す。ヒハハハ!! 全部叩き潰してやる!」
 耳障りな声が、静けさを食い破る。
 鬼の集団が正面から扇状に迫る。だが、異変はソレだけではなかった。
「……っ!」
 不意に聞こえたのは、鋭い風切り音。それは空を跳ぶ鳥のように空から響いていた。銀光が空を奔る。
 さながら流星のように地面へと突き立つのは一振りの刀。禍々しい靄が嵐の雲の如く荒々しく膨れ上がり、そして人の形をとりその柄を掴んだ。
 鬼とは真逆。
 子ども達に一切の注意も向けずに、ディアボロスのみを見定めている。
 その時。
「……ッ、戻れ!」
 まるでその音に弾かれるようにして、背にした小屋から声が上がる。男の声。それと共に、駆ける軽い足音が聞こえていた。

●追加情報

 ③一般人を襲うトループス級『金棒鬼』
  恐怖に駆られた数人の子ども達が、小屋から逃げ出しました。
  金棒鬼が『A:小屋を襲う鬼』と『B:森に逃げた子どもを追う鬼』に二分されました。
  金棒鬼より子どもを先に見つけて保護することで、助けることが出来ます。

   :①・②の結果より、森に向かった子どもは少数です。殆どの子ども達が恐怖に堪えてくれています。
   :逃げ出した子ども達は、不信・恐慌状態により、そのままだとディアボロスなどの声や存在に対しても回避を行おうとします。
   :瓦礫の盾により、子どもが隠れやすくなっています。
   :食事により、体力は十分な状態です。


 ④アヴァタール級との決戦『妖刀・縁斬り』
  ディアボロスを優先して狙いますが、③に集中した場合、小屋を積極的に狙います。


無堂・理央
遂に鬼達が来たね。
それじゃ、子供達を守る為に全力で行くよ!


無双馬『クロフサ』に乗って突撃ー!
他の人が子供達を救出して鬼を倒すまでの間、ボスの足止めを行うよ。
足止めだけど、やるからには倒すつもりで。
飛べる状態だけど、あえて地上戦で【ダッシュ】で間合いを詰めたら、馬上槍で一撃見舞った後に駆け抜ける形で【一撃離脱】。
駆け抜けたら、方向転換して【ダッシュ】&駆け抜け【一撃離脱】を繰り返してくよ。

敵の反撃は本命の斬撃限定だけど、戦場を駆け巡っての速度でかわすよ。
初撃で無重力状態になったら、【飛翔】でクロフサに天を駆けて貰う。
一度、飛んだら、空中も使った三次元戦闘に切り替えだよ。


藤宮・翡翠
恐慌に陥って森へ走った子どもを追うのは任せて、妖刀の前に立つ。

「アレは足止めしておきますので、子どもたちをよろしくお願いします」
(こんな小さな子たちを狙うなんて酷すぎる)
静かな怒りを術に籠めて、敵が子どもに手出しできないように全力で結界を張り攻撃します。


共闘大歓迎です。


樫谷・都黒
あなたの狙いはこちらでしょう?
ご心配なく、逃げも隠れもしませんよ。
珍しい骨董品ならば、なおさらに。

ここへ来るまでどれだけ人を殺しました?
非難はしますが咎めてはいませんよ。
あなたは刀なのですから。
でも、あなたの在り方を認めるわけにはいかないのです。

一般人に向けて被害が及ばないように自身に意識を向けさせる
パラドクスによるロストエナジー範囲で抑え他に向かわないようにする
残っている建築素材か周囲の壊して良さそうな物を【建造物破壊】で素材化し、【怪力無双】で行動範囲を狭める壁と作る

さぁ、あなたも叫びたいこともあるでしょうし、こちらにも唄いたい方々がいますので、いざ、存分に語り合ってくださいね。


フランク・アイゼンベルク (サポート)
おれはフランク。見てのとおりサイボーグだ。
こう見えて、おれが得意なのは地道な情報収集や、誰かの助けに回ることだ。

なにか調べる必要があるなら、現地の住民に話を聞いて回ったりして、わかったことを整理し、皆に共有しよう。昔、従軍記者だったころを思い出すな。この体躯と強面が怖がられることもあるが、根気強く穏やかに話せば、案外、話は聞かせてもらえるものだ。

闘いの場合は、この鋼の身体が役に立つ。頑丈さには自信があるから、負傷や反撃を恐れず積極的に前に出て戦おう。トループス級の露払いなら任せてくれ。全方位攻撃で焼き払ってやる。パンツァーハウンドのマルクスにも援護射撃をさせるぞ。


 人型を統べる妖刀。
 森を駆る鬼。
 遠ざかる足音。
 肺を引き抜き、骨を融かすかのような子どもの悲鳴。脳髄を逆撫でするその音に、奥歯をぎり、と軋ませる。
「ご安心なさい」
 ディアボロス達が其々に向かう先を決心するその一瞬、妖狐は迷わず揺らめく人型へと歩みを進めた。
 鋭く突きつける言葉は、目に見えぬ刃。藤宮・翡翠(妖狐の陰陽師・g04641)はその目に静かな怒りを仄かに灯して、結界を結んだ。
 彼岸と此岸、生死を隔てるが如く周囲を取り囲んだ式札によって世界が別たれる。
「置き去りになんてしない」
 ともすれば優しい言葉に、しかし、その鋭く澄んだ瞳が慈しみを感じさせる事はない。
 翡翠は相対する。人々の敵に――子ども達の敵に。
「手出しはさせません」
「ええ、ええ。そうですとも」
 翡翠に同意する声が上がる。
 妖刀を切り離した結界。それが成るより先に境界の中に留まったディアボロス。その一人が幸悦を滲ませ、唄うように声を上げた。
「ご心配なく、逃げも隠れもしませんよ。――それが珍しい骨董品ならば、なおさらに」
 蔑むがごとく樫谷・都黒(臥し者は独り路に・g00233)は、冷たい笑みを浮かべてみせた。
「でい、ッやあーっ!」
 縁切りが、動き出すその一瞬。先手を取ったのは縁切りではなかった。飛び出す人馬一体。無双馬、クロガネに股がった無堂・理央(現代の騎兵?娘・g00846)が、縁切りの初動を抑える。
 結界を越えようと思わせぬよう、残ったディアボロスに意識を食い止める。その為の一手だ。
 つまりは足止め優先。
「――でも!」
 なにも本気で戦わない訳じゃない。
 倒せるのなら、それが一番。
 クロガネとともに駆け、理央が馬上槍の突撃を叩き込む。
「……っ」
 だが、その手応えはあまりに薄かった。直前で身を捩った縁切りがそれを躱していた。過ぎる馬の体を裂こうする刃に、理央ではなくクロガネ自身が瞬時に飛び跳ね、待ち受けていた刃を回避する。
 さながら重力という鎖を引きちぎるかのような跳躍――空中をも蹴り飛ばす正しく天馬の如き動作で、絶命の刃を飛び抜けていた。
「ごめん、クロガネ。ありがと」
「ぬ、ぅんッ!!」
 クロガネの胴を撫でる理央の耳に、雄叫びめいた気合を響かせる声が飛び込んでくる。見れば、追撃を仕掛けようとしたらしい縁切りに、サイボーグの男性――フランク・アイゼンベルク(サイボーグの殲滅機兵・g03487)が己の鋼腕を叩きつけるようにして、動きを食い止めていた。
 鋭い斬撃。数合打ち合えば、その卓越した技量を確かに感じ取れるものだった。力では勝っているはずのフランクはその刀に、人型にさえ傷一つまともに付けられぬと言うのに、鋼の体には徐々に切り傷が刻まれていく。
 隙を与えれば、鋼すら切り裂くだろう、斬撃。とても一人では敵いはしない。
「立て直せ!」
「りょーかい!」
 理央もその劣勢を如実に感じ取っていた。宥めたクロガネを走らせる。結界の中は決して広くはない。だが、クロガネが駆け回るに不足する狭さでも無かった。
「クロガネ、行ける?」
 ブルルと震える唸り声が頼りがいを見せてくれる。唇に笑みを浮かべた理央は、頼れる相棒と共に縁切りへと突貫していく。

 切り結ぶ。切り裂く。傷を受けながらも縁切りの注意を自らへと向けさせるフランク。
「素晴らしい冴えですね」
 彼の体を盾にするようにして、その背後から一人の少女が飛び出した。フランクが刃を受けた瞬間に、脇差しの一振りを風になびかせるように、彼女は縁切りの手首を狙い銀光を閃かせる。
「どれだけ人を殺めました?」
 瘴気渦巻く中で、都黒は浅く笑みを湛えてみせた。
「その技も、貴方が殺させ、殺したなれ果ての誰かなのでしょう?」
 躱される。構わない。都黒が更に踏み込んでいけば、脇差しを弾いた縁切りが距離を取るように跳躍。見るやいなや、異形と化した腕で近くに転がっていた材木を強引に叩きつける。
「それを咎める気はありませんよ」
 貴方は刀ですもの。己が持つ脇差しを、蠢く呪詛の刀身を歪に輝かせ言う。
 刀は凶器だ。害するもの。殺すもの。
 言葉など聞く耳を持たないとばかりに、縁切りが都黒へと肉薄する。材木は未だ転がっている。距離を取って続けざまに叩き込まれては分が悪いと判断したのか。振り上げられる剣閃を脇差しではなく左の腕で弾いてみせる。それと同時に突きこんだ脇差しの切っ先が、引き戻された妖刀の柄を打てば、反発した呪詛が強烈な瘴気の火花と化して縁切りの身へと降りかかる。
 避けんとした縁切りを、翡翠の操る式神がその動きを阻む。
「――ッ」
 声なき苦悶。踊る人型。その瘴気の火花を舞うように躱した都黒は瞬間、空気が凍るような強烈な殺気を感じ取った。顔亡き呪詛の靄。人の輪郭をなぞっているだけのその顔面の向こうに、見開かれた目を見た。
 がぱりと顔面に手毬ほどの窪みが開く。それが口を模したものだと認識するよりも先に、都黒はその手を掲げ上げた。
 その手には、髑髏がかたかたと笑うように震えている。彼女は、それをぞんざいに差し伸べ。
「では、唄いましょうか」
 告げた。
 絶叫。呪詛を纏う叫びが、空気すら激震させながら広がっていく。
 舞う木の葉は瞬く間に砕かれ、式札がひび割れる。この世の悲嘆を風に押し込めたかのような叫喚がせめぎ合う。
 山一つ崩さんばかりの嵐。
「逃がさないよ!」
 それが去った瞬間に、理央が槍を突き付けて、それ以上の行動を起こさせまいとする。
 先程反撃を許した動きではない。空を駆け、地を翔ぶ盤外の騎馬が縁切りを攻め立てる。
「ええ、逃しは、しない」
 式神が弾けて散った。つなげていた指先が呪詛に溶けている。だとして翡翠は強い眼差しで結界を維持し続けていた。
 互いを削り合う戦い。その中でディアボロス達は逃げた子どもが無事であることを願いながら、出来る事に尽力し続けていく。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【飛翔】LV1が発生!
【ハウスキーパー】がLV2になった!
【悲劇感知】LV1が発生!
【熱波の支配者】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV3になった!
【ロストエナジー】LV2が発生!

神之蛇・幸人
小屋を襲う鬼を抑える。此処に残った子も、耐えてることに変わりはない
……大丈夫。守りきるから

膂力じゃ敵わない相手。それなら言葉で判断を狂わせる〈呪詛〉〈撹乱〉
反撃されるのが怖くて群れて
安全に勝てる相手しか狙わない
力があっても、きみは此処にいる誰より弱くて臆病だ
口縄禁呪。内側から、呪いで穿つ
薄暮でも見るのには困らない【完全視界】
影が差すなら鬼の影へ、完全に日が無ければ木々の側へ避ける
狙いを定めたり金棒を振るい難くなる筈
倒れた木か振るわれた金棒を足掛かりに駆け、妖刀の一閃〈両断〉

小屋に近い鬼から、視て、必死に斬りかかって
……鬼狩人には遠いだろうな
でも。守れるなら、格好悪くたっていいよ


レント・オルトマン
小屋からの声…おそらく逃げたか。しかしここも離れられん。
仲間に任せて小屋を防衛しよう。

小屋を背に前へ出て障害物に身を隠しつつ、鬼共をエルガゼーレで撃ち抜いていく
対機械を想定した銃だ、生身では些か堪えるぞ?
【砲撃】と【忍耐力】でもって押し返すが、群れで来られては撃ち漏らしの可能性が出てくる。
仲間の様子を見つつ必要に応じて移動、敵を逃さず狙えるポジションを取る。
膂力には自信があるようだが人の形を倣う以上、どれだけトレーニングを積もうとも鍛えにくい部位はある。
例えば内蔵だったり…その頭や目はどうだ?
近付いて来るなら狙いもつけやすくなるだろう、敵の顔を狙ってエルガゼーレを連射してやる


守都・幸児
森に逃げた子どもを追う鬼に応戦する

紙符を飛ばして【パラドクス通信】を皆が使えるようにしとく
連携して一人も子供を見落とさねえように
通信ついでに小屋の面子から逃げた子供の名前とか聞き出せねえかな
わかれば森で名前を呼んで警戒心を解く
ほら俺だ、さっき草取ってたでかい図体の奴
覚えててくれるといいんだが

子供を保護したら物陰探して隠れさせて
俺は鬼の前に立ちはだかって引きつける

「納」で鬼を鳥籠に閉じ込めたら
【怪力無双】で籠ごと鬼をぶん投げて
文字通り子供から引き離してやるよ
砕けるのはてめえらの骨だ、鬼ども

それでも子供が狙われたら
俺の体を盾に庇う
伊達にでかい図体してるわけじゃねえ
なんとかなるもんだろ
って笑ってやる


 既に森に向かった鬼達から視線を切り離し、神之蛇・幸人(蛇蝎・g00182)は更に子どもを追おうとしたのだろう鬼へと刃を走らせた。急所を狙えば突き殺せたのかも知れないが、殺せば、より交戦を避けるだろう。幸人は一体の排除よりも、他の鬼へも背を向ければ斬るという脅威を植え付けることを優先した。
「どこ行くんだよ」
 声を聞け、こちらを見ろ。俯けた顔で言葉を並べる。
「怖いのか?」
「何ヲ……」
 背を裂かれた鬼が振り返る。他の鬼もその気迫に釣られるようにして幸人を睨んでいた。
 相手は幸人一人。囲めば、一方的に嬲り殺しに出来ると考えたのか。
 その判断が間違いだとは思わない。膂力は相当なものだろう、ましてや数の有利がある今、彼ら全員に正面からぶつかっていった所で幸人に勝ち目はありえないだろう。
「反撃されるのが怖くて群れて、安全に勝てる相手しか狙わない」
 それでも、戦えないという訳ではない。勝てない訳じゃない。
「力があっても、誰より弱くて臆病だ」
 嘲笑とともに、幸人は顔を上げた。その目で、鬼達を見つめて、睨む。
 時に。
 神、などと呼ばれる強大な存在と相対するとき、しばしば顔を上げてはいけないと、強く禁じられることがある。
 それは、圧倒的な力を持つ相手の気を損ねないように、と言う理由もあるのだろうが、大抵の場合はそれ以前の、相手の気分やらご機嫌とは前提の違う別の問題だ。つまり、その目を見る行為、そのものが危険なのである。
 視線を重ねる。それは普遍的な行為であり、それでいて、特別な行為である。相手を知り、己を見る。力の一端を共有する。繋がりが生まれてしまうのだ。形の無い結び目が作られるように。
 故に、互いの目を映しあったというのなら。
 それだけで、呪は結ばれる。
「なあ。おれを殺してよ」
 瞬間、幸人の瞳孔が細く縦に伸びたように見えた。それが夕闇のなせる幻か、ただの見間違えかは知らないが、その時、まるで大地の心臓が鼓動したかのような、轟きが響く。
 強靭な脚が、一斉に土を踏み叩く音。
「グォ……ぉおああ!!」
 駆け出した金棒鬼が、幸人へと迫る。そこに数秒前の鬼はいない。根拠の無い怒り。縁のない恨み。その魂を焼く呪いの激痛のまま、忘我の先に幸人を殺さんと迫る。
 このままでは轢き潰されて、肉塊と化すだろう。それでも、幸人は死なない。
 同時に迫る鬼。その一つが間合いに一歩踏み込む、寸前。鬼の頭が木っ端微塵に弾けとんだ。高速で泥の詰まった風船を壁に叩きつけるような鈍い音と共に、肉片がばらまかれていた。
 そもそも彼は、ここに一人で立っている訳ではないのだから。

「無茶はしてくれるなよ」
 レント・オルトマン(エンデクーゲル・g01439)は、幸人が鬼の気を引く間に位置取っていた射撃地点から、幸人へと群がる鬼を睨みつけていた。
 木材を積み上げた防柵。造りは単純なれど、ライフルの反動で紐が解けるようなやわな仕上げにはしていない。
 放つのは対機械想定の銃弾。分厚い装甲を突破し、守られた重要基幹を破壊するための弾丸だ。
「いくら石頭だろうと、些か堪えるぞ」
 薬莢を銃が吐き捨てるままに放置し、次弾を装填しながら管を巻いた。
 業を煮やしたか、金棒鬼が周囲を巻き込むのを構わず巨大化し、幸人を薙ぎ払わんとしている。引き金を引く。駆ける弾丸は音を軽く振り切り、水晶体を貫く。
「ぐ、ガぁ、アアああッ!!??」
 強化された肺活量からの天を震わせるような絶叫。膝を着いた鬼の喉笛に幸人の刀が突き刺さり、絶叫は泡吹く呻き声に変わって消える。少年は鬼の体を引き倒すようにして周囲に噴き上がる鮮血をばら撒いたかと思えば、それに目を潰された鬼へと斬りかかっていく。
 たとえば、洗練された武技のような鋭さはそこには無い。その場その場で見える勝ちの目を拾い集めるような戦い方。
 レントの、それを見る目は険しい。苛立ちすらも僅かに滲ませている。
 長い戦場であれば真っ先に死ぬだろう。活路と見せて爆弾を埋めるような手に絡め取られるのがありありと浮かんで見える。
 自分を信じている、というより無意識に自分を疑わないというような動き。
「……」
 仕方がない。引き金を引き続けながら、息を詰める。
 これだけ弾丸を放っていれば、どれほど愚鈍な思考をしていてもこちらの位置は知れているだろう。事実、レントへと矛先を変える金棒鬼も少なくはない。鬼に近寄られる頻度が加速度的に増えていく。あと数秒でこの防柵を殴られるだろう。一発で十分に崩壊するだろう。
 敵の殲滅、脱走への警戒に加えて、彼の補助の継続。全てこなすのは骨が折れるだろう。
 レントは肩から力を抜く。
「捨てるか」
 レントは幸人から視線を外し、引き金から指を上げた。
 
 森を駆ける。
 腰ほどまでは枝を払ってある道なき道を行く。子どもの背格好であれば、少し屈めば動きやすいのだろう。だが、守都・幸児(迷子鬼・g03876)ほどになれば、当然その恩恵は受けられない。
「クソ、どこだ」
 森の獣をやっていた時なら、もっと動けたのだろうか。下らない妄想に舌を打ちながら、幸児は眼球を突きそうになる枝を焦りをぶつけるように払いのける。
 坂で湿った土に足を取られたのだろう深い足跡が少し前にあった。方角は間違いない。ある程度、同じ方角に駆け出したはずだ。
「やさろう、さゆ、ならた、しろう! いるなら返事しろ!」
 小屋に飛ばした式神を通して、残った子どもに聞いた名前を叫ぶ。
「さっき草取ってたでかい図体のヤツだ!」
 返事はない。それでも耳を澄ませば、カツンと、音がした。自然な音ではない。何度も繰り返される音。
「……っ、こっちか」
 幸児が音を頼りに駆け寄れば、木根のウロに隠れた子どもが石で木を叩いている。大丈夫か。そう声をかける前に幸児の足に少年はしがみついてきた。
 硬直した不安の表情とパクパクと開閉だけする口に、返事の無かった理由が氷解した。
「もう、大丈夫だ」
 声が出せなくなっているのだろう。乱雑に頭を撫でくる幸児の耳が、草葉の擦れる音を聞いた。鬼にしては、その音は軽い。
「い、た……っ」
 そこには少女の手を引いた少年が、緊張に目を丸く開いて立っていた。嗚咽を漏らさぬように涙を溢す少女を掴まえて、幸児の声に近づいたらしい。
「一緒なら安全?」
「ああ」
 幸児は笑みとともに即答する。戸惑いを見せるなと、頭痛の鳴り止まない頭が告げている。
「声真似する妖怪だったらどうしようかと」
 安堵が見える冗談を口にしようとした少年の目が、森の奥を見つめた。
 言葉が途切れる。
 少年の口が開き何かを告げるよりも早く、幸児は鋭く後ろに振り向いていた。その後頭部に少年の声が追いつく。
「後っ、……ろ……?」
 木々の間。駆け出した金棒鬼。忍び寄ろうとした所を見つかり、急襲に切り替えたのだろう。
 だが、鬼の存在だけでは尻すぼみに消え入る少年の声の説明がつかない。だが、その答えはすぐに知れた。鬼が握る金棒の、その表面に滴る鮮やかな赤。ごく最近付いたのであろう、新しい血の色が。
「……、ぁ?」
 刹那に幸児の感情を、箍ごと焼き切っていた。
 気付けば、籠目に指を掛けていた。関節を丸めた鬼を畳み込んだ紙符の網、鳥籠が如き籠。
 幸児は、それを漲らせた怪力を以て、上空へと放つ。弾丸の如く空へと打ち上がった籠。それは木を越え、山をも越え。
「砕けろ」
 幸児は術を解いた。紙符は雲を流す風に遠く吹き散らかされ、残るは鬼の身体。抗うことは許されない。鬼の周囲に残る紙符の力が摂理に従えと、鬼に自由落下を強いる。風はそれを受け止めるにはあまりにもに軽く。鬼を受け入れるは、強大なる大地。
 上空から金棒鬼が叩きつけられる。土と鬼が混ざりあうような衝撃。
 その情景を幸児は、そして少年たちは見ることはない。
「……戻るぞ」
 少しだけ離れていた幸児が少年達に告げる。
 それは鬼が来た方角にあった。それで十分だ。幸児がやるべきことは、生き残った彼らを無事にあの小屋へと戻すという事だ。

 弾丸が止む。
 途端に、攻撃の手が激しくなったのを幸人は如実に感じていた。崩れ落ちた鬼の体で死角を作り、懐に体を押し込むようにして攻撃を妨げるとその胸に刃を突き立てる。
「はッ、ふ」
 息が上がる。落ちる日が辛うじて狙いを逸してくれる。それでも足を止めてはいられない。レントがいた防壁が崩されるのを横目で見ながら、幸人は息を呑んだ。頭上に迫る金棒。
 這うように地面を転がって、そこに待ち受けていた別の鬼の脚が幸人を潰さんと迫り。
「……は」
 すごいな、と幸人は思う。
 銃声が響いたと思えば、既に鬼の脚は千切れとんでいた。
 木材の向こうを見るまで、いつ移動したかも分からなかった。隠れ場所を襲った鬼はもう撃ち殺されている。囮に使ったのか、と感心する暇もない。弾丸が脚をなくした鬼の胴体に飛び込んでいた。
 クロノヴェーダへの有効度でいえばそうは変わらないだろう。それでも、盤面を動かすという一面においては、圧倒的にレントが勝る。
 骨を通すより内蔵のほうが易いと、腹に穴を開けたのだと理解はできても、それを考え実行する場馴れは幸人には未だ無い。その視野の広さに舌を巻きながらも、少し安堵を感じていた。
 やはり、おれは語られる鬼狩人には遠いのだ、と。
 軋む関節から力を抜いた。
 後ろ。金棒を振り上げる鬼の胴体を振り返りざまに切り裂いて、幸人は少し気を楽に刀を振るっていく。
 そうして、鬼の数も少なくなる頃。吹き飛ぶ鬼の骸と共に、森の方から子ども達を連れた幸児が舞い戻る。硬化した腕を尚も固く握りしめ、怒りを奥底に滾らせる瞳を鬼へと向ける。
 彼が戦線に加わり、金棒鬼と復讐者の勝負はここに明確に決した。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【完全視界】LV1が発生!
【建造物分解】がLV2になった!
【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】がLV3になった!
【ダメージアップ】がLV2になった!
【命中アップ】LV1が発生!

 嫌だな。
 感じていた。
 両手を二人の手で塞ぎながら、その背を見上げた。
 きっと、その大人は見たんだろう。ならたの死体を。帰る、と、そう告げる言葉に迷いは無かったから。
 嫌だな、と。
 それしか、感じないでいた。
 日が暮れていく。暗く、沈んでいく。
 怖かっただろうか。痛かっただろうか。ならたは。それでも、少し羨ましい。両脇から聞こえる、こらえるような泣き声が、鬱陶しく思える。
 それでも縋るように、手を握っていた。
 夜がすぎれば、朝がくる。
 そうして、また、眠れぬ明日の夜がやってくるのだ。
樫谷・都黒
末路が不確かなままなら希望にはなるかもしれませんが、
この様な小さな所での迷子は後々危ないかもしれませんね。

戦闘はフォローに回る
敵味方問わず犠牲になった者の影絵にて、敵の攻撃を無駄打ちさせる

ここに映る方々はあなたの犠牲者ではないかもしれません。
でも、彼等の在った証としてここに影を示しましょう。

敵を倒したあと、残る刀身の破片が危なそうなら、歪み大金槌か聖剣で原形をとどめないまで破壊しておく

可能であれば【断末魔動画】にて目に見えぬところで犠牲になった人々を探して、人らしく埋葬する

独り路に臥せたままなのは、見過ごせませんからね。


レント・オルトマン
森で何かあったようだな
どうするにしても先ずは敵を片付けてからだ

演技には然程自信はないが、相手も余裕がある訳では無いだろう
上手く挑発しこちらの優位に持ち込む
なんでも、日本刀とは切れ味鋭く弾丸をも真っ二つにできるそうだな
俺も銃には自信がある、ここは一つ手合せ願おうか
こちらは動かず銃弾は相手の刀を狙い、切り落としたり弾きやすいようにする
どうした、貴様の持つ怨念とやらはその程度か?

敵がこちらに近付いて来た時が勝負だ
攻撃圏に入る直前にこちらから踏み込み【不意打ち】、エルガゼーレを身体ごと押し付けて体制を崩させる
隙を作り隠し持っていたドスで人型の首を掻き切る、刀は蹴り飛ばす
遠距離専門、という訳でもないさ


「……」
 何かがあったのだろう。森から戻ってきた仲間とその連れた子どもの様子に、レント・オルトマン(エンデクーゲル・g01439)はそれを感じ取っていた。
 だが、それにばかり気を取られている暇はない。金棒鬼を滅したとはいえ、まだ妖刀縁切りが残っている。
「手早く、済ませようか」
 見る限り、そっちを請け負ってくれたディアボロス達のお陰で随分と消耗しているようだ。ならば、仕掛けよう。
 鬼の撃退を見て取ったか結界が解除される。それと同時にレントが踏み出した。その瞬間に、樫谷・都黒(臥し者は独り路に・g00233)はフォローへと動いていた。レントの吐き出した弾丸が空を駆け、狙い過たず妖刀を撃ち抜く寸前。振るわれた斬撃。その鋭さは、むしろ弾道を変えることのないようなものだったが、纏う呪詛が道理を捻じ曲げるようにして弾丸を斬り飛ばしていた。
「来い」
 ライフルの運用としては至近に過ぎる距離で、しかし己へと向けられる敵意にレントは動じない。引き金を引く。弾丸の軌道を予め見ていたかのように避け、縁切りがレントへと肉薄する。
 都黒は、その様子を冷静に見つめていた。ライフルを持って敵前に姿を晒す意味。誘い出す為なのだろう。つまり、今レントに迫る縁切りは思惑通りに動いてくれている、ということだ。それを悟り、理央も翡翠も追撃をせずに備えている。
「さて」
 卓越した体捌き。先程までの間合いを一気に詰める技巧に攻めた縁切りへと、レントは引き金を引く――そう見せかけてレントからも間合いを詰めるように肉薄した。腕を振る刀は懐を斬ることはない。むしろ、刀を振ることができなくなる。
 故に縁切りは足を引き、間合いを調整する。はずだった。
「そろそろ、日暮も終わるでしょう」
 それを阻むは、実体を持つ影絵。はたして、縁ある死者か否かは知れず、しかし、それらは縁切りの足を掴み、腕を掴み。
「これで……っ」
 山間から溢れる光が瞬く。刹那、レントは隠し持っていた小刀を、縁切りの首へと走らせた。呪詛の靄に作られた人の形、だが、レントの腕には確かに何かを切り裂く感触が返る。
「終わりに」
「ええ、しましょうか」
 脱力する人型、すかさずにレントは刀を蹴り飛ばしたその先で、都黒が大金槌を手に待ち構えていた。
 鉄を砕く音が、夜の山並みに甲高く響き渡った。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【断末魔動画】LV1が発生!
【水面歩行】LV1が発生!
効果2【ドレイン】がLV2になった!
【反撃アップ】LV1が発生!

 鬼はもう残ってはいなかった。
 子ども達は感謝を述べていた。助けてくれたことへの感謝を。
 鬼に襲われて生きている。その事自体が正しく奇跡なのだと、分かっているから。
 手を合わせる。
 ディアボロス達が弔った小さな土塚。どうか安らかにと、願いを込めたそれに、祈る。
 目を開け、立ち上がる。
 空が白み始めている。
 もうすぐ、朝がやってくる。

最終結果:成功

完成日2021年10月09日