リプレイ
フルルズン・イスルーン
さて、前に見た冬将軍の姿をしっかりと拝みに行こうか。
雪中行軍はもうみんなだいぶ慣れたろうし、今回は冬将軍に対抗する効果を高めてゆくのだ。
お披露目だよ、サーマル・ゴーレムくん。
まずは【熱源の支配者】で気温を上げる。
熱を使えるようになると錬金術さまさまという気分になるねぇ。
その上で、足回りの水の浸透を防いだゴーグル付きモコモコ防寒具に、アイススパイクシューズ。
そして吹雪の圧から体を支える杖と、簡単にエネルギー補給できるチョコで保温と耐風圧に備える。
【寒冷適応】と【完全視界】はしっかり借りて、足元に地割れがあったり、雪庇に乗っかったりしてないか常に気を付けよう。
吹っ飛ばされないように気を付けるのだ。
月見里・千隼
【旭日革命軍団】
※連携、アドリブ歓迎
CN:サトヤマ
使用出来る残留効果はフル活用
個別採用OK
冬将軍か、残留効果ですら完全にあの極寒の冷気を防げないほどとは…
【完全視界】【寒冷適応】【熱波の支配者】必ず使用
極寒地用コート防寒帽子アイゼン付き防寒ブーツ手袋等
対極寒地雪中戦迷彩装備を纏い強めのライトとトレッキングポールを持ちゴーグルとマスク付けて行くぞ
テント等の必要な道具と栄養価の高い携帯食は背嚢と【アイテムポケット】に詰め込む
行軍中は周囲の皆とはぐれないように【パラドクス通信】での連絡を密にしロープで繋げたり声かけなどで定期的に合図し慎重に焦らず消耗をなるべく減らし警戒しながら吹雪の中を進む
八雲・譲二
【旭日革命軍団】
アドリブ◎チーム外連携◎個別採用◎
コードネーム:シェフ
いやー冷えるねぇ!実家が雪国なんで寒さには慣れてるがこれはやべえな
【アイテムポケット】に熱々のスープを突っ込んできたから、終わったら帰りのトレインで皆で飲もうぜ
ブランデーやチョコレートなら直ぐ出せるから言ってくれ
さて…激戦になるんだろ?
皆に倣って【熱波の支配者】を重ね、温度を上げておこう
雪中戦用の防寒装備は一式着てくるとして、吹雪対策にゴーグルとアイゼンも履くぞ
雪中行軍て観点で、キャンプっつーか臨時拠点を立てれる雪中登山用テントと携帯暖房具一式も持ち込んでおくかな
基本はチームの皆と纏まってはぐれんように気を付けつつ立ち回ろう
リップ・ハップ
いっくら特別製の吹雪だからって心まで凍らせられっと思うなよ
とりま【寒冷適応、熱波の支配者、完全視界】を併用
想定に見合った防寒着は当然としてゴーグルも重要
完全視界あっても瞳が雪風に晒されんのは避けられんし、ファンで湿気逃がせて曇らん奴がいいね
栄養補給はねー私飲食NGの点滴暮らしなもんで
事前にTPN打ってく。中心静脈栄養、1週間以上経口摂取できねい患者向けの高カロリー輸液だ、それで持たす
集団行軍なら一列で、先頭ちょくちょく入れ替えてこ
後ろで少しでも楽に歩ける人増やしつつ回しつつで全体の消耗を軽減していね
逸って無理せんようペース維持も大切
この機会に辿り着くまでもじっくりやって来たんだ、焦らず行こーぜ
オルソニア・エリンジェミル
連携・アドリブ歓迎
…ああ、この寒さだ。
人を殴りつける様な慈悲の欠片も無いこの吹雪
…思い出したくも無い事を…思い出すな。
狩りに出よう、大きな狩りだ。
【寒冷適応】【熱波の支配者】を使用
防寒ジャケットを身に纏い、タクティカルブーツを履くなどして防寒対策を行う。
いいね、今と言う時代は、こんな暖かで軽い服装まであるのか。
向かう先が何となくでもわかるのは良いな。
後は、心を燃やして前に進むのみだ。
ああ、そうとも。
どれだけの寒気に晒されようと
我が復讐の炎は消えぬ
レイラ・イグラーナ
【旭日革命軍団】
個別採用OK
コードネーム:アサー
かつてシベリアで姿を見た相手……ここで討てればこの吸血ロマノフ王朝を解放する大きな一歩とできます。
「雪色のコート」を含む防水性、撥水性の高い防寒具とゴーグル、「スノーブーツ」を着用。
【完全視界】【寒冷適応】は常時発動。
先頭を歩いている時は滑落が起きないよう足元に気を付け、雪をかき分けて後続の負担を軽減。後続を歩いている時は先頭の代わりに周囲の警戒をしつつ隊列を組み先頭が雪をかき分けた道を歩くことで負担のないように。
負担が集中しないよう適宜先頭は代わりながら行軍します。
雪中を歩む上で1人でないというのは大きな利点です。上手く分担して行動しましょう。
安藤・優
【旭日革命軍団】個別採用可
※アドリブ連携歓迎
いつ来ても寒いけど吹雪の中を進んでいくのは寒いってレベルじゃ無さそうだよ。
防寒着はしっかり着込んで目がやられないようスノーゴーグルも着用、みんなでロープを繋いではぐれたりしないようにしておこうか
寒冷適応と完全視界、熱波の支配者も使わせてもらって吹雪の中を隊列を組んで進もう。
それでも体力は削られていくだろうから限界が近そうな人が居たらアイスクラフトを使って拠点構築、吹雪を凌げる場所を作って少し休もうか。
風が当たらないだけでも温度は変わるものだよ、熱波の支配者で温まりながら高カロリー食でも食べて少し休んだらまた出発、或いは開戦…かな?
ロザーリヤ・ユスポヴァ
「冬将軍」に擬せられるロシアの極寒は、ナポレオン1世の軍勢すら退却に至らしめた……
それでも、この足を止めるわけにはゆかんのだ
【寒冷適応】と【完全視界】は存在する前提で行動
防風・防水・断熱性に優れた服を多重に重ね着し
眼出し帽とゴーグルを着用し肌を一切露出しない
ブーツは雪上移動に優れ、極低温にも耐えられるものを使用
必要に応じて靴底にはクランポンを装着
ピッケルとアイスバイルを持ちこみ、雪が固まっている場合は砕く
氷壁に等しいほど高く積もっている場合は登攀のために使用
登攀し終えたらザイルで仲間を壁上へと引き上げる
【浮遊】は極度の不整地移動用や、滑落・転倒時の保険にしよう
常用するには風が強すぎるかもしれん
●
ああ、この寒さだ。
パラドクストレインを降りた直後、洗礼のように己の身を叩く弾丸が如き吹雪を前に、オルソニア・エリンジェミル(華羅血狂卿・g07314)は感傷に浸るようにそんなことを考える。
人を殴りつけるような慈悲の欠片もないこの吹雪。彼女がそれに何を見出すのか、周囲のディアボロスにそれは分からない。
「……狩りに出よう。大きな狩りだ」
けれど。華羅血狂卿がその瞳に宿したのは間違いなく、吹雪の向こうにいる敵へ向けての戦意。どれだけの寒気に晒されようとも消えない、ディアボロスをディアボロスたらしめる、復讐の炎。
彼女が世界に残留効果を刻む。それだけで、瞬く間に凍り付いていく体の感覚が書き換わる。一瞬で寒冷に適応した体は、人を殺すに十分すぎるほどの寒さを最早寒さと認識しない。
「お披露目だよ、サーマル・ゴーレムくん。熱を使えるようになると錬金術さまさまという気分になるねぇ」
続けて降り立ったフルルズン・イスルーン(ザ・ゴーレムクラフター・g00240)が従える球体のゴーレムが熱を帯び、周囲の気温を高めていく。
彼女だけではない。八雲・譲二(武闘派カフェマスター・g08603)、リップ・ハップ(Reaper Harper・g00122)らも続くように世界の法則を書き換える。
三人がかりで熱波の支配者となることで周囲の気温を30度ほど上昇させれば、『一般法則破壊』すらも通用しない環境下であれ流石に寒冷適応の範疇に気温は収まっていって。
それでも摂氏でマイナスを超える温度なのだからデタラメな現象だという他にないのだが、それでも行軍中に寒さで倒れるようなことはないはずだ。
「さて、前に見た冬将軍の姿をしっかりと拝みに行こうか。雪中行軍はもうみんなだいぶ慣れたろうけれど、もう一度装備は確かめないとだよ」
「ああ。しかし今と言う時代はいいね、こんな暖かで軽い服装まであるのか」
フルルズンの呼びかけに応えたオルソニアを始め、パラドクストレインから降り立つ面々は改めて自身の装備を再確認。
樺太の様子を見るためにシベリアを進んだ件から始まった冬将軍が絡んだ様々な事件を経て、ディアボロスの雪中行軍への経験値はかなり蓄積されている。
各々装備の種類に細かな違いはあれど、極寒の地に対応できる最新の防寒ギア、滑り止めが施されたブーツ、吹雪に目をやられないためのゴーグル……新宿島という環境で準備できるだけの物は皆一通り揃えていると言っていい。
「そろそろ出発しましょうか。かつてシベリアで姿を見た相手……ここで討てればこの吸血ロマノフ王朝を解放する大きな一歩とできます」
一同が装備の点検を終えたタイミングを見計らい、雪色のコートに身を纏うレイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)が呼びかけ、完全視界を発動させる。
吹雪が吹き込んでくる方角へ視線を向ける。吹き荒れる雪氷は活動の合切を認めないと言わんばかりの荒れ模様だ。
残留効果によって白の闇そのものに視界を奪われることは無いが、それでも降り続ける大粒の雪は気を抜けば隣にいる筈の味方の姿すらも白の中へ覆い隠してしまいそうなほど密度が濃い。
「残留効果ですら完全にあの極寒の冷気を防げないほどとは……」
「うん。みんなでロープを繋いではぐれたりしないようにしておこうか」
月見里・千隼(硝煙と魔弾の騎手/現代ラストジョッキー・g03438)と安藤・優(名も無き誰かの代表者・g00472)の呼びかけで、近場にいる者たち数人が丈夫なロープを腰に結わえ、一人が道を外れる事態を作らない準備も整った。
「ま。この機会に辿り着くまでもじっくりやって来たんだ、焦らず行こーぜ」
リップのその呼びかけに場のディアボロスたちは頷き、彼女とレイラが壁になるように前に出ると、残りの面々は体力を温存するようにその後ろに控えた。
(「いっくら特別製の吹雪だからって心まで凍らせられっと思うなよ」)
リップの内心の独白に応えるものはいない。けれど、大なり小なり吹雪の向こうに控えている存在へと向ける想いはきっと同じようなもののはずだ。
心に灯る炎の中へ、意志という燃料をくべて。
一同はそのまま、雪の中を一歩、また一歩と歩き始めた。
●
吹雪によって周囲の仲間たちとはぐれないように気を付ける必要こそあったが、それを除けば行軍はスムーズに進んだと言っていい。
先頭に出たレイラとリップが手本を示すように雪をかき分け道を作ることによって後列を進む者たちの負担を軽減し、それによって生まれた余裕で後列のメンバーは周辺を警戒。敵の姿は見えないが、自然が作り上げたトラップはそこら中に存在する。
「ちょっと左によけるのだ。そのまま進むと雪庇がありそうなのだ」
フルルズンの呼びかけにレイラは視線を上げる。周囲が純白に染まっているせいで分かりにくいが、いつの間にか雪によって積み上げられた山の上を歩いていたようだ。
まっすぐ進んで安定していない雪を踏み抜いた結果、崖から真っ逆さま――など、笑い話だとしても勘弁してほしい物だ。
迂回するように少しだけ進路を変更し、ついでとばかりに隊列を入れ替える。続いて前に出たのはロザーリヤ・ユスポヴァ(“蒐集卿”・g07355)。
靴底に装着されたクランポンで足元をしっかりと踏みしめながら、レイラに倣って雪をかき分けながら進んでいく。
持ち込んでいたピッケルで時折出現する雪塊を砕き、そのままちょっとした壁となっているほどの高さにまで積み上がった雪をよじ登る。
あまりにも大きく迂回を強いられるようであれば浮遊も考えているが、今のところはまだ頼る状況とは考えなくてもいいだろう。
万一の滑落時には復帰の助けになることを考えれば備えはあって損はないだろうが、風が吹き荒れる中、踏ん張りの利かない空中に常にいるのは危険すぎる。
ままならないものだ。一分も肌を見せぬ厳戒の装備の下、ロザーリヤはそんなことを思う。
これまでであれば自然の脅威などいくらでも踏み倒せていたディアボロスですら、このロシアの極寒の前には思う通りの行動を許されない。
史実においてナポレオンをはじめとした多くの軍勢を退却に至らしめた現象を擬した存在が相手だ。それもやむを得ない。
(「それでも、この足を止める訳はいかんのだ」)
蒐集卿のその思考を読んだのか、彼女の後ろを歩いていた優は、そこで一同へ呼びかけるように声を上げた。
「足元が安定するところまで進んだら、少し休もうか」
呼びかけに、皆がはたと気付く。隊列を次々に変えながら、すでに結構な距離を歩いている。
ディアボロスという超常の存在であれ、その体力は無尽蔵ではない。この先の戦いを考えるならば、一度立ち止まることは決して間違った選択肢ではないだろう。
少しばかり移動し、足元が安定していることを確かめる。問題なしと判断するや、優が止む気配を見せない吹雪の方へと手をかざすと、突如彼の眼前に幅3m程の氷の立方体が現れる。アイスクラフトによって生み出された、風をしのぐための防壁だ。
同じ要領で左右にも氷の立方体を生成。コの字を描くように作り上げた氷の拠点は、ディアボロスの身体を吹きすさぶ風から守る即席の拠点としては十分だ。
「いやー冷えるねぇ! 実家が雪国なんで寒さには慣れてるがこれはやべえな」
千隼が用意したアイテムポケットを利用し、雪中登山で使うためのテントや携帯暖房具を組み立てながら譲二は愉快そうに笑った。
雪山の行軍で怖いのは衣服への浸水や吹き付ける風といった、体の温度が奪われる様々な要因だ。
優が生み出した氷の壁はその脅威を大きく減じてくれる。風さえ吹き込むことが無ければ快適に休憩の時間を取ることが出来るのだから、残留効果様様というものであろう。
「サトヤマ、飲むかい? 温まるぞ」
「ああ。少しだけもらおうか、シェフ」
互いをコードネームで呼び合いながら、譲二はアイテムポケットから取り出したブランデーの小瓶を千隼へ投げてよこす。
手渡されたブランデーを受け取り一口。か、と喉奥が熱くなる感覚に心地よさを覚えながら、高カロリーの携行食をかじる。
他の仲間たちが休息を取っている間も、二人は油断なく周囲へ警戒の視線を向けている。これまでの行軍の様子から考えれば向こうから打って出てくるようなことはないだろうが、それでも警戒に越したことはない。
「熱々のスープを用意しているから、終わったら帰りのトレインで皆で飲もうぜ。アイテムポケットに突っ込んできてるんだ」
気負いのない譲二の声と表情に、千隼はいつの間にか緊張で固まっていた肩を解す仕草と共に頷き返す。
極寒の環境ですらも変わらぬ彼の態度に、少し気持ちが解れた感触があった。
「変わるよ。お二人さんもちょっとテントの中で休んできなよ」
と。不意に横合いから呼びかけられた声に視線をやれば、先程までテントの中で小休止を取っていたリップが近づいてきていた。
もう少し行軍は続きそうだ。譲二と千隼は互いに顔を見合わせ、彼女の行為に甘えようと決める。
「ありがとな。ブランデー、お嬢さんも飲むかい?」
「お気持ちだけ、で。私まだ未成年だし、飲食NGの点滴暮らしなもんで」
二本目の小瓶を向けられたリップはひらりと手を振って固辞。そりゃすまなかった、と酒をしまい込む譲二の隣で、千隼は怪訝な表情を彼女へ向けて。
「酒はともかく飲食が駄目とは。この行軍、体力が持つのか?」
「事前に高カロリーの点滴打って来てるから大丈夫。持たせるよ」
「ふむ……」
人間、いろいろな生き方があるということだろう。それがディアボロスであればなおさらだ。
そう納得し、リップに警戒を引き継いだ二人はテントに戻る。
アイスクラフトによって作られた氷壁の向こうでは、相も変わらず容易に命を奪い去る規模の吹雪が暴れ狂っていた。
●
しばらくの休息を挟み、ディアボロスたちは再び冬将軍の下へ向かうべく、吹雪の中を歩き始めた。
安全地帯を作り休憩を挟みなが進んでいったことも手伝い、以降の行軍においてもディアボロスたちの足取りが重くなるような事態は起こらない。
これまでの行軍と同様に周辺の警戒を続けながらも雪の中を進んでいく中、不意に先頭を歩いていた者が足を止める。
生を閉ざす吹雪の中、それでも己の存在を誇示するように輝く黄金の鎧を、完全視界の助けを借りたディアボロスは見逃しはしない。
極寒吹雪の中を歩き続け、とうとう『黄金騎士団』たちのもとへ――そして、その様子を近くで見ているだろう、『冬将軍』の近くまでたどり着いたのだ。
こちらが黄金騎士団の姿を発見すると同時、相手方もこちらを認識したような気配を感じる。極寒に晒されながら警戒のための集中力を維持し続けられたのは流石と言ったところだろうか。
とはいえ、十分な休息を挟み気力も体力も満ちているこちらと、寒空の下待たされ続けていた相手とでは間違いなくこちらが有利だ。
戦いの瞬間は近い。けれど今はまだ、深刻に気負う必要はない。
寒さのためか生気のない表情の中で、それでも敵意は凍らせぬままこちらに近づいてくる黄金騎士団の面々を迎え撃つように、ディアボロスたちは各々の武器を構えるのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【熱波の支配者】LV3が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
【寒冷適応】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
【アイスクラフト】LV1が発生!
【浮遊】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV3が発生!
【先行率アップ】LV1が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
【ダブル】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
オルソニア・エリンジェミル
連携・アドリブ歓迎
ふぅ……中々の行軍だったぞ。
だが、まだ先程の休憩で体には熱が残っている。
であれば、早めに始めるか。
『.460DAHLIA_22』弾を『Discipline』の中へと込めて
パラドクスを発動し、そのトリガーを引こう。
この吹雪の中でも消せぬ炎がある。
『epitaph』の中に眠る我が臣民たちの遺灰
我が背に日輪があり、灰は再び命を取り戻す。
命を燃やし復讐の炎となりて、敵を悉くに撃ち滅ぼせ。
新たなる時代を我が切り開く…!『ノヴァエラ』
敵の攻撃は【アイスクラフト】による壁を生成し
一瞬でも侵攻を食い止めたならその間に防御体勢を整え
『血牙の煙剣』で防ぎ止めよう。
リップ・ハップ
この環境で金属鎧とか根性あんぜまったく
見てるこっちが寒ぃ、ちゃっちゃと退場してもらおうか
【寒冷適応、熱波の支配者、完全視界】は継続
……けど気温上昇は敵にも利が出る
復讐者側の行動に支障が出ねいとこまでに抑えんのも手かね
行軍中のケアと残留効果分こっちにアドがある
無理攻めする必要はねい
ハルバードは受け止めるもよし、側面弾いて逸らすもよし、あえて吹雪に煽られるようステップして躱すのもいい【臨機応変】
パラドクス使いながら着地に伯爵の斬撃見舞ってくよ
動けば動く程、打ち合えば打ち合う程私の体温は上がってく
一方こいつらはこの天候ん中飛び回って、さていつまで順調に動ける?
私はこっから本調子だぜ【肉体改造】
レイラ・イグラーナ
【旭日革命軍団】
個別採用OK
コードネーム:アサー
シベリアを一人で守護していたことから予測はしていましたが……冬将軍の冷気には部下も耐えることができないようですね。
【熱波の支配者】は今は【寒冷適応】で凌げる程度まで抑えておきます。
こちらにとっては適応できる寒さであっても、あちらにとっては堪えるでしょう。
【完全視界】で視界を確保。
雪色のコートの雪中迷彩で吹雪に身を隠して戦闘。黄金の稲妻や薙ぎ払いで雪が巻き上げられたならそれに乗じて接近。呪詛の針を突き立て【既製奉仕・炎】で焼き尽くします。
吹雪を抜けてきたのは冬将軍……貴方を討つため。
この程度の相手で止まるわけには参りません。
ガンドラ・ブラッディア
【旭日革命軍団】
連携・アドリブ・個別採用可
コードネーム:オーダー
この環境で、無対策とは。冬将軍の、実力故の慢心か。
我輩らには、好機でしかない。行くぞ……!
完全視界・寒冷適応、熱波の支配者は常時活用。
近場とはいえ視界などの環境は劣悪なので、残留効果や防寒・視界対策でいくらかマシな此方はそれに乗じて動いて回り、動きが鈍く隙を晒した個体を狙って呪炎剣で攻撃を行う。
この状況でも深追いせず一撃離脱で確実にダメージを与えていく方針。
敵の反撃は稲妻に向けて炎をぶつけたりするなどで少しでもダメージ軽減する努力をし、致命打は避ける。
寒い中、ご苦労だったな。我輩が、暖を取らせる。心身ともに、焼き散らす程のな……!
アウグスト・フェルニール
※アドリブ連携歓迎
いつもと違う防寒具を着込んだ格好なので、慎重に戦いたいですね…
残留効果は遠慮なくお借りします
最初は皆の後ろに控えて隙を伺います
吹雪が追い風になったタイミングで背に吹き付ける風を利用し一気に肉薄
『穿孔の魔術』を発動し、鎧を真っ直ぐに貫いていきましょう
どうも、騎士団の方々。冷えますね、僕が言うのも何ですが皆さん凄い顔色ですよ
ところでご存知ですか?極寒の環境下で死ぬと、腐敗菌が繁殖出来ない故に遺体はミイラ化するそうです
貴方達クロノヴェーダもそうなるんでしょうか?
戦いが済んだら彼等の武器を墓石代わりに雪へ突き立てるぐらいはしてあげます
さて、極限状態でのジェネラル戦…頑張りましょう。
雪定・千草
百合さん(g05341)と
大分寒かったですが、皆さんの知恵で何とかいけそうです
残留効果お借りし確り厚着で挑みます
さあ、これから戦いでどんどん温まっていきましょうか
大事な機会を逃す訳にはいきませんから
寒い中お疲れ様
…俺達も寒いので、出来ればあんまり使いたくないのですが
嫌がる事をした方が効果ありそうです
寒くて堪らないのに更に寒くなったら…
きっと動きが鈍ってくれる筈
携行用火砲でパラドクスを使用します
綺麗な氷の花、見せてさしあげましょう
あぁ、お前達ではなくて…百合さんに、です
あの派手な金色はこの景色には合いませんから
反撃には武器で出来るだけ受け流せるように
他の仲間を巻き込まないよう位置取りに注意します
犬神・百合
千草ちゃん(g03137)と
残留効果を引き続きお借りして
服装も確りと防寒対策
皆様に感謝いたしますわ
本当!寒くって仕方がないでしょうに
安心なさって、それも感じぬように致しますから
生憎直ぐそうしてあげようなんて思いは無いですけど
冷えすぎておかしくなると逆に熱くなるように感じるそうですわね
立ち回りや反撃に気を付け
アイスクラフトとトラップ作成使用
氷の壁に雪に埋もれた落とし穴で足止め
千草ちゃんや他の皆様に合せてパラドクス発動
弱い部分を確りと結んで刎ねてしまいましょう
千草ちゃんのパラドクスとっても綺麗
ふふ、嬉しい
貴方様方にもお見せしたい程
けれど…だめよ「わたしの為」なの
見せてあげないわ、さようなら良い夢を
伏見・逸
(連携アドリブ歓迎・残留効果はできるだけ有効活用)
(寒いのは苦手。カイロを仕込んだマフラーを尻尾に巻いている
服装でも、動きづらくならないギリギリまできっちり防寒)
待たせたな…とか言っとくところかこれ?
てめえらが勝手に凍えるだけなら構いやしねえが、我慢比べなんざお断りだ
とっととぶちのめす
周囲のディアボロスと声を掛け合い、連携と情報共有を行う
死角ができないように立ち位置を調整
【ストリートストライク】で攻撃
雪を蹴り上げる・翼で吹き飛ばすなどして敵の視界を塞ぎ、蹴りや尻尾を叩き込む
敵の武器は長ドスで受け止める
倒せそうな敵を最優先
負傷は然程気にせず攻撃優先。手早い殲滅を目標に
●
トループス『黄金騎士団』は長時間吹雪の中に晒されながらこちらを待ち続けていたのだろう。
彼らの血色の悪い顔にそれを感じ取り、ガンドラ・ブラッディア(黒矛・g03101)は少しばかりの呆れを浮かべる。
(「この環境で、無対策とは」)
とはいえ、今回に限ればそれだけ冬将軍が規格外だと見た方がいいのかもしれない。
レイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)はガンドラの隣でそんなことを思うのだ。
(「シベリアを一人で守護していたことから予測はしていましたが……冬将軍の冷気には部下も耐えることができないようですね」)
今回のようなケースを除けば、クロノヴェーダに寒さへの備えを考える必要はない。
故に、無対策というよりは寒さへの対策を用意するという発想に至らない、というのが正しいのかもしれない。
だが、相手のコンディションの心配などしてやる義理も必要もない。
(「この状況、吾輩らには、好機でしかない。行くぞ……!」)
敵から一瞬も視線を外さないまま、ガンドラの身体から滲み出た紫炎がその手元に集約、瞬く間に剣の形を作り上げた。
●
ガンドラのその挙動を、どちらの側も開戦の合図と認識した。
止まない吹雪に負けぬ速さでディアボロスたちが散開。三方向から黄金騎士団へ攻め入れば、相手も凍える体に無理を強いながらも三手に分かれて迎撃の姿勢を取る。
(「この環境で金属鎧とか根性あんぜまったく。見てるこっちが寒ぃ」)
そんなことを思いながら、リップ・ハップ(Reaper Harper・g00122)はもう一度現状を整理する。
相手方は吹雪の中でずっとこちらを待ち続けていた。冷え切った体をそのままに戦闘に入るのだ、同然その身体の動きは鈍くなる。
翻ってこちらの状況は行軍中の体力の温存と残留効果の蓄積も相まってほぼ万全だと言っていい。
加えて事前に刻んだ残留効果も有効に働いている……が、気温上昇だけは相手にも有利に働く。
周囲の温度が上昇したとて冷え切った体と運動能力が一瞬で回復するようなことはないだろうが、それでも相手の利にもなる状況を維持する必要はない。
同じようなことは隣に立つレイラも感じていたようだ。ちらと確認するように互いが視線を交わし、熱波の支配者の出力を落とす。
塩梅はこちらが寒冷適用の力でこの冷気をしのげる程度まで。そう決めると瞬く間に周囲の温度が下がっていって。
「……貴様ら!」
レイラとリップ、二人の目配せの直後に起きた現象故、それをやったのがこの二人だと相手が察するのも早かった。
クロノヴェーダとて寒い物は寒い。周囲が更なる極寒に閉ざされていく状況に嫌そうな顔が浮かぶのも当然だ。
「寒くなるのが嫌か。ならば我輩が、暖を取らせる。心身ともに、焼き散らす程のな……!」
戦端を開く契機となった紫炎の剣を携え、この場で最初の攻防もまたガンドラによってもたらされた。
先頭に立っていた黄金騎士の一人を刃の射程に収めるや否や横薙ぎに振るわれる炎剣へ、黄金騎士の意識は鋭く反応。けれど、凍り切った体がそれについてこない。
平時であれば間違いなく受けられていた。ガンドラとしても鍔競り合いから次の動きへ組み立てるための布石として振るったつもりの一撃であるが、けれど体の動きを鈍らせた黄金騎士が武器を盾のように構えるよりも早く、紫炎は敵の胴を素早く裂いた。
黄金騎士の表情が痛みと苦悶に歪む。精神をも蝕む呪いの炎に苦しみながらも何とか放った稲妻をドラゴニアンの女が悠々と回避する光景に、別の個体が援護のため飛翔。
ガンドラへ斬りかからんと吹雪の中を飛翔するが、その進路上にリップが立ちはだかる。
「この天候ん中飛び回って、さていつまで順調に動ける?」
「貴様らを倒すまでだ! 黄金騎士団を舐めないでいただこう!!」
気焔を吐きながら猛進を続ける黄金騎士は、立ちふさがるリップをまずの敵と捉えた。
吹雪の中に身体を晒し、強風にコントロールを乱されながらも驚くべきスピードでマスクの女に肉薄。
けれど、ここでも冷え切った体が攻撃に染まる意志についていけない。振り下ろされたハルバードは敵と見なした女が横へ一つステップを踏むことであっさりとその破壊を殺される。
振り下ろした刃が雪面につく直前、黄金騎士の膂力が振り下ろしの勢いを御し即座に横薙ぎへシフト。リップはこれを更にバックステップを一つ刻み刃の軌道の外へ。
「逃げてばかりか!」
「機を窺ってると言って欲しいねい」
返された軽口に、黄金騎士は戦意だけをさらに燃やして飛翔の速度を上げ……直後、失策に気づく。
誘導されている。リップへ一直線に突っ込むこの軌道は真横から吹雪を受ける位置。吹き付ける横殴りの風に乱された体勢を補正する一瞬で、逆に女は距離を詰めてきていた。
「私はこっから本調子だぜ」
ややもすれば視界を失ってしまう程の吹雪の白とは違う、リップの身体から生まれる爆発的な熱が周囲の冷気とぶつかることによって生じる白煙が、黄金騎士の視界を更に白く染める。
熱く。もっと熱く己を燃え上がらせろ。
リップの構えた『伯爵』と銘された大鎌によって、彼女の身体を循環する血液は暴れまわり圧倒的な熱をその身体にもたらしていた。
念じて生まれた熱に付随する膨大なエネルギーによって、大鎌が振るわれる速度はさらに加速。
下から上へと斬り上げる軌跡の一撃は音を抜き去り黄金騎士に反応を許さない。
「か……!?」
自慢の黄金の鎧を容易に断ち切る威力に飛翔した体が踏ん張れない。
バランスを崩した黄金騎士はそのまま雪原へ墜落。顔面を覆う雪の冷たさにうめき声を漏らしつつ、緩慢な挙動でなお起き上がろうともがく。
リップはその様子を隙と見なすが、そちらへ向かって踏み込むよりも早く次の個体が飛来するのを視界の端に認め、即座に追撃を断念。迫る次の敵へ向けて武器を構えた。
振るわれるハルバードを、振りまかれる黄金の雷を、リップとガンドラは難なく捌いて一度的と敵との距離を取る。
状況は完全にディアボロスに有利である。無理をする必要はない、という認識は二人が共通で抱いているものだ。
その根拠は攻めるも守るも思うように行えていない敵の現状から見た客観的な事実がそうであるし、何よりも、吹き荒れる白の中に立っている敵がリップとガンドラの二人だけだと認識しているのが致命的だ。
「魔道の罪、外道の罰。慄く狂乱が十字を焙る」
不意に響く横合いからの声。ぎょっとした表情で黄金騎士の一人が声の方へ向くのと、その首筋に小さな痛みが走るのは同時。
勘で声のした方角へ向けて闇雲に雷をまき散らす。疾駆する稲妻が吹雪を裂いて一瞬開けた視界の中、いた。雪色のコートに身を纏い白の闇へその身を溶け込ませたレイラの姿。
おそらくリップやガンドラとの交戦の余波で雪が巻き上げられた瞬間にその身体を吹雪の中に隠していたのだろう。
さながら暗殺者のような音もなき動きに、黄金騎士は憎々し気にレイラがいた方角を睨み、直後、自身の身体が急激に熱くなっていくのを感じる。
「な……これは!? うぉおおおおお!!?」
レイラが接近と共に黄金騎士へ与えた痛みは、燃焼の呪詛が込められた針によるものだ。
刺された箇所から発火し敵を焼き尽くす呪いは鎧の中から黄金騎士を焼いていき、別の個体が助けに入るよりも早く命すらも燃やし尽くしていって。
突如発生した炎によって仲間が倒れたことに黄金騎士団は警戒の視線をレイラに向けるが、狙いを一人だけには定めさせないとリップとガンドラが再度攻勢に出る。
「吹雪を抜けてきたのは冬将軍を討つため。この程度の相手で止まるわけにはまいりません」
焼けただれた体をそのままに雪の中へ倒れ込む黄金騎士に一瞥すらくれず、レイラは更に苛烈に敵を攻め立てる二人を援護するべく吹雪の中に気配を紛れさせた。
●
他方。レイラたちとは別方角から黄金騎士団へ攻め入る者たちへ視線を向ける。
「待たせたな……とか言っとくところかこれ?」
「さて、な。先程休憩を挟んだことを考えれば待たせたのは事実ではあるが。何にせよ、こちらの身体に熱が残っているうちに、早めに始めるか」
身構える黄金騎士団の前で言葉を交わし合うのは伏見・逸(死にぞこないの禍竜・g00248)とオルソニア・エリンジェミル(華羅血狂卿・g07314)の二人。
吹雪の中を歩いてきたにしては消耗の気配が見られない二人の様子を、黄金騎士団たちは身体を震わせながら忌々し気に睨んだ。
せめて意志だけは凍らせぬように、と言わんばかりにこちらを睨んでくる視線に気づいたか、逸は「ハン」と小さく鼻で息を漏らして。
「てめえらが勝手に凍えるだけなら構いやしねえが、我慢比べなんざお断りだ」
とっととぶちのめすぞ。オルソニアへそう呼びかけ、ずんずんと黄金騎士団へ向けて歩いていく逸の背を女はしばし見遣り、彼女は絡繰り仕掛けの銃を取り出して調子を確かめるように銃身を一つ撫でた。
そうしているうちに逸が足を速める速度が増していく。それを迎撃するように二体の黄金騎士がふわりと宙に浮いた瞬間、不死身と呼ばれていた男は強く雪面を踏み抜いた。
ぐんと加速する体を容赦なく叩いてくる強風の中、眼前の黄金騎士たちが滑るように宙を駆け、彼我の距離は瞬く間に詰まっていく。
(「猛吹雪の中よく飛んだもんだ」)
強風の中では姿勢制御も楽ではないだろうに。ご苦労さん、と内心で呟き、逸は自前の長ドスを抜き放った。
迎え撃つ黄金騎士たちは逸を武器の射程に収める直前に散開。左右からハルバードを振り下ろし一気に男を沈めようという意図を見せる。
対する逸は敵が散開の動きを見せた瞬間、迷うことなく右手側の敵へと飛び込んだ。
「ぬ……!?」
驚きに目を見開きながらも、ままよとハルバードを振り下ろす右手側。タイミングを逸した状態で振るわれた一撃を、逸は抜いた長ドスであえて受けた。
斬撃を受け止めた衝撃で、みしりと刀身と自身の骨とがきしむ音。それに構わず、彼はそのままもう一歩敵へ踏み込む。
相手の動きの鈍さも相まって、ダメージは浅い。であれば、攻撃優先と意識を定めるのも悪くない選択肢だ。
一度降りぬいたハルバードが構えなおされるよりも早く敵の懐までたどり着けば、相手が何か動きを見せるよりも早く振り上げた足がスタンプを押すように黄金の鎧へ蹴りを見舞う。
ゴ、とケンカキックの衝撃で鎧が歪な音を立て、突き込まれた蹴りの衝撃を逃がすことが出来ず黄金騎士の身体が後方へ吹き飛ばされて。
直後、左手側から逸を狙っていた個体が彼に追いついた。蹴りをぶち込んだ直後の硬直を狙い背後からハルバードを振り下ろさんとするが、そう動いてくるだろうことは織り込み済みだ。
ハルバードが振り下ろされる、その直前。周囲に銃声が一つ響いた。
「日輪が輝き、堕ちた愚者は立ち上がるだろう――『ノヴァエラ』」
言葉と共に体を貫く衝撃に、黄金騎士の身体は自然と雪の中へ落ちていた。
苦悶の表情と共に視線を声の方へ。銃口を向けたままの姿勢で、オルソニアが静かに黄金騎士を見下ろしていた。
吹雪の中でも消せぬ炎はある。それを証明するように、彼女が首に下げている赤の宝石がぎらりと怪しく輝いたように見えた。
それは宝石の中に眠っている、華羅血狂卿の臣民たちの命の輝き。
先程黄金騎士を貫いたのは、復讐せよと叫ぶ数多の命が絞り出した力を乗せた弾丸だ。黄金の鎧など、屁の突っ張りにもなりはしない。
「貴、様……!」
怒りに燃える瞳がぎょろりとオルソニアを睨み、弾丸に貫かれ悲鳴を上げる体を無視し猛然と彼女へ突撃していく。
それに対抗するように女が静かに手をかざせば、アイスクラフトによる氷塊が彼我を隔てるように出現、黄金騎士の行く手を阻む壁となる。
とはいえあくまで生まれた氷はパラドクスでもクロノ・オブジェクトでもない、ただの氷。万全の状態からは程遠いトループスが相手であっても、氷壁は盾としての役割を持てない。
「こんなもので防げると思ったか、女!!」
縦一文字に振るわれたハルバードが氷を左右に両断し、生まれた空間を塗って黄金騎士はオルソニアの喉元へ鉤爪を突き立てようと拳を振り上げる。
だが、氷を割る一瞬の時間が稼げればそれで十分だった。
己を含めた様々な存在の血を取り込み形成された片刃剣を抜き放ち、振るわれた鉤爪を受ける。
刃同士がぶつかり合い、しばしの鍔競り合い。黄金騎士の血走った目がこのまま膂力に任せ押し切ってしまえと叫んでいるのを、オルソニアは刃の向こうで静かに見据え。
「……貴様は、いささか視野が狭すぎるな」
「な、」
に、と続くはずだった言葉が、横合いからの衝撃に遮られる。
鎧にスタンプを刻んでやった個体を片付けた逸が戻ってきて、この個体にも強烈な蹴りを叩き込んだのだ。
蹴りの衝撃に耐えきれず破砕した黄金の鎧と一緒に、命もまた粉々に砕け散ったのだろう。両断した氷に激突した黄金騎士の身体は、雪原に崩れ落ちたきり二度と起き上がってくることはなかった。
●
更に視線を残った一方向から攻め入る者たちへ向けよう。
「大分寒かったですが、皆さんの知恵で何とか行けそうですね、百合さん」
「ええ。皆様に感謝いたしますわ」
雪定・千草(霞籠・g03137)と犬神・百合(ラストダンス・g05341)。寄り添う二人が徐々に近づいてくるにつれて、彼らを迎え撃つ黄金騎士団たちはその表情を露骨なまでに歪めてみせた。
イチャイチャしやがって……とまでは流石に言わないが、まるでこちらを見ていないような二人の挙動に苛立つ気持ちは、トループスにも確かに存在する。
その視線に気づいたか、千草と百合、二人は黄金騎士たちをちらと一瞥。
「ああ。寒い中お疲れ様」
「本当! 寒くって仕方がないでしょうに。安心なさって、それも感じぬように致しますから」
「ほざけ!!」
馬鹿にされている。向けられた態度はトループスたちの気持ちを逆撫でするには十分で。黄金騎士たちは声に確かな苛立ちを交え、手に持つハルバードを二人へ向けた。
三体の黄金騎士たちが突きつけるハルバードから、一斉に黄金色の電撃が放出される。
迫る稲妻を前に百合はアイスクラフトによって眼前に氷を生成。別所でオルソニアがやったように、それはクロノヴェーダ相手には盾とはなりえぬ存在ではあるが、砕かれた氷が一瞬彼我の視界を遮る中で、千草が百合を抱えて稲妻が奔る軌跡から逃れる猶予を生むには十分。
(「ただでさえ寒くて堪らないのに更に寒くなったら……」)
その動きは鈍るはずだと。破砕した氷の先に狙うべく二人の存在が見えないことに気づき周囲へ視線を走らせる黄金騎士団たちの様子を、薄藍の目は恋狂う少女を抱きながらしっかと捉えた。
「……俺達も寒いので、出来ればあんまり使いたくないのですが」
冷やしましょうか。そう宣言し黄金騎士団たちへ千草が向けた携行用の火砲に敵が気づくと同時、銃口から火花が吹き出たと同時に冷気の弾丸が吹雪の中を駆け抜ける。
火花のように弾ける氷の欠片が狙い過たず黄金騎士団が自慢とする金の鎧へ直撃し、それらを糧に氷を育んでいく。
「、ええい!!」
「冷えすぎておかしくなると逆に熱くなるように感じるそうですわね」
生み出されていく氷の媒介となる黄金の鎧を脱ぎ捨てる騎士たちへ、百合がどこかおかしそうに千草へ囁く。
放り出された黄金の鎧を種に育っていく冷気が更に黄金騎士たちの身体から熱を奪っていく様子に、彼女は目を細める。
「お気に召しましたか。綺麗な氷の花、見せてさしあげましょう」
「ふふ、嬉しい。千草ちゃんのパラドクス、とっても綺麗だもの」
「我々を馬鹿にするのも、大概にしろ!!」
尚も互いを見つめ合う二人に、黄金騎士団たちは完全にペースを乱された。
苛立ちと共に一体がもう一度雷を放とうとハルバードを二人へ向けようとするが、不意にその動きが止まる。
「見せてあげないわ」
抱きかかえられたままの百合が発した言葉に、黄金騎士はハルバードを持つ己の手へ視線を向ける。
いつの間に絡みついていたのだろう。百合の操る細い糸が手首に絡みつき、それが巻き上げられるように上へ向けられると、哀れ操り人形のごとく黄金騎士の腕は易々と上空へ向けられた。
「だめよ。『わたしの為』なの」
「そう。あの派手な金色はこの景色には合いませんから」
百合がわずかに手元を手繰り、黄金騎士に絡んだ糸を制御する。
その挙動だけで、いつの間にか全身を糸に絡めとられていた一体は容易に回れ右を強いられる。
まるで千草のパラドクスが生む現象を観てはいけないのだと言わんばかりの味方の挙動。動くことが出来ない他の個体の様子に構わず、千草はがら空きになったその背中に火砲を向けて。
「さようなら、良い夢を」
向けられた銃口が小さく火花を散らす。
鎧を脱ぎ捨てた背に突き刺さった弾丸から、今度こそ氷の華が咲いた。
瞬く間に育っていく氷の結晶が百合の視界を楽しませながら、違うことなく仲間の命を奪っていく光景に、残った黄金騎士たちは血の気を失わずにはいられない。
最早この戦線においても、場の流れはディアボロスへ傾いたと言っていい。
それに気付かないか、あるいは認めたくないのか。
残存する黄金騎士たちは尚も千草と百合へ武器を向けようとするのだが、それよりも早く、風上に感じた誰かの気配が彼らを跳ね飛ばすように吹雪の中へ吹き飛ばしていく方が早かった。
「お二人のおかげで、慎重に立ち回ることが出来ましたよ」
「お気になさらず。大事な機会を逃す訳にはいきませんから」
ひらりと振られた千草の手に小さく目礼を返し、黄金騎士を撥ねてのけたアウグスト・フェルニール(膝カックンで死にそう系呪術師・g08441)は自身が攻撃を仕掛けた黄金騎士へ視線を向ける。
呪われた杖に円錐状の刃が穿つような勢いで貫いた黄金の鎧は、追い風の吹雪を受けて速度を増したこともあり過つことなく貫かれる。
鎧を粉砕するほどの衝撃に耐えきれず、黄金騎士は目を見開いたままゆっくりと雪原の中に倒れていって。
吹きすさぶ多量の雪がすぐにその身体を覆っていくのを、アウグストは目隠しの奥でしばし見遣り、そして残った一体へ向けてもう一度杖を向けた。
「どうも、騎士団の方々。冷えますね、僕が言うのも何ですが皆さん凄い顔色ですよ」
「……何もかも貴様らの掌の上だろうに、何をいけしゃあしゃあと」
「ははは。ところでご存知ですか? 極寒の環境下で死ぬと、腐敗菌が繁殖出来ない故に遺体はミイラ化するそうです。貴方達クロノヴェーダもそうなるんでしょうか?」
「さて、なぁ!!」
もはやここまで、と黄金騎士は覚悟を決めた。しかしせめて一人だけでも道連れにせねばならないと飛翔、そのまま風下に立つアウグストへ向けて全力で距離を詰めていく。
状況から見て、それが破れかぶれの行動であると、呪術師の男は見抜いていた。
とはいえ、それに真正面からぶつかってやるのはせめてもの情けか。
杖にドリルが如き邪気を再度纏い、突っ込んでくる黄金騎士を迎え撃つように、手元で激しく回転を続ける呪力を射出。
「……どうぞ召し上がれ!」
吹雪の中で、黄金騎士と放たれた螺旋の衝撃が衝突する。
意地を見せるトループスが見せた根性がしばしの拮抗を見せたが、数秒後にはそれも終いだ。
「ぬ、ぉ、あぁああああああ!!!」
鎧の破砕音と共に、無念をにじませた黄金騎士の断末魔。
螺旋に体の勢いを持っていかれた黄金騎士はどこかへ吹き飛ばされ……吹雪の中でその行き先を誰もが見失う。
(「さて。ここからが極限状態でのジェネラル戦……頑張りましょう」)
最初に貫いた個体が取り落としたハルバードを拾い上げ、墓標の代わりにと彼が埋もれた辺りに突き立ててやりながら、アウグストは吹雪の向こうへ視線を向ける。
さらに勢いを増す吹雪の向こう、ゆっくりと近づいてくる老人の姿を、場の誰もが捉えていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【寒冷適応】がLV2になった!
【熱波の支配者】がLV6になった!
【トラップ生成】LV2が発生!
【冷気の支配者】LV1が発生!
【強運の加護】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV2になった!
【ロストエナジー】がLV3になった!
【反撃アップ】がLV3になった!
【ダメージアップ】がLV4になった!
【ドレイン】LV1が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!
●
「ふぉっふぉ。大したもんじゃのう」
周囲に倒れ伏す黄金騎士たちをぐるりと見渡し、老人――ジェネラル、『冬将軍』は愉快そうに笑ってみせた。
「いやいや、思った以上に素晴らしい動きをするもんじゃ、ディアボロス。儂の配下が軒並み平らげられておるのも、偶然の類ではあるまい。認めざるを得んよ」
冬将軍の視線が、ディアボロスを向く。
その瞬間、周囲の吹雪の勢いがさらに増した。
完全視界を以てしても次の瞬間には敵の姿を見失ってしまいそうな吹雪を隔て、冬将軍はもう一度笑い声を漏らす。
「ふぉっふぉっふぉ。シベリアに戻ればまた当分は吹雪の中じゃ。少しばかり付き合ってもらおうかのう。ジジイは若者が頑張る様が好きなんじゃよ」
土産話に出来るくらいには頑張るのじゃぞ。その声に含まれた威圧感だけで、周囲の温度が更に下がったような錯覚。
吹き荒れる雪と風、冬将軍の世界。
生を営む何もかもを拒絶する寒さの中で、けれどディアボロスは屈することなく立ちふさがる敵の姿を確かに捉えている。
対する冷気の権化もまた、ディアボロスという敵を確かに認識した。浮かぶ穏やかな表情の中に敵が何をしでかしてくれるのかと期待するような色を交え、静かに眼前の敵を見据えている。
――決戦が、始まる。
リップ・ハップ
シベリア戻れば、ねえ
今は後の事は考えねい
この瞬間に全力を賭す
残留効果は引き続き
但し【熱波の支配者】は最大限に
やるこた単純、近づいて斬る
ここまで来たのと同じ事。これが今回最後の行軍、目的地はこいつの喉元だ
服や皮膚が凍ろうが内から筋肉で砕く【破壊、粉砕】
動き続ける限り芯まで凍るこたねい
視界が白に塗れようと向かう先は吹雪が教えてくれる
怪物を狩る為に、一歩ずつでも確実に、耐えて距離を詰めるよ
間合いに入るまではそれだけに専念だ【殺気、精神集中、忍耐力】
辿り着けば渾身のパラドクスを
伯爵の刃にありったけ熱込めて、ぶった斬る【捨て身の一撃】
目的地……辿り着いたぜ……
そしてここをお前の終着点にしてやん……よッ!
伏見・逸
(連携アドリブ歓迎・残留効果はできるだけ有効活用)
若者って歳でもねえよ。それとも、てめえからしてみりゃ似たようなもんなのかね
周囲のディアボロスと声を掛け合い、連携と情報共有
(オーロラは見た事がある。空いっぱい、怖いぐらいの
…飲まれたら楽になれるだろうか)
(でも、これはあの時見た「綺麗なもの」とは違う
見惚れて飲まれてなんかやらねえ、オーロラごとぶった斬る)
鈍りようがない程シンプルな判断
出し惜しみはしねえ
動ける限り進んで、敵を引き付けて、全力の【禍竜の鋭刃】
真っ二つにしてやるつもりで動くが、及ばずとも
他の奴が攻撃する為の隙を作れればそれでいい
頑張る若者、存分に見ろよ
見物料に、てめえの命を置いていけ
イオナ・ガルバローゼ
金属繊維の磁気シールド程度でパラドクスの磁気を軽減するのは厳しいでしょうね
攻撃も届くか分かりませんがパラドクスは一度放てば時間空間関係無く届く
力の差で無力化はあっても能力や属性の差でパラドクスが届かない事は無い、そのルールは変わらない筈
【寒冷適応】【熱波の支配者】【完全視界】を使用
【アイスクラフト】を瞬間的な風除けに
【トラップ生成】で作り出した物を確かな足場として利用
自分が凍り付いても技さえ敵に届くまで動ければいい
【Seiryu】夜空と蒼空のレイピア二本による攻撃を仕掛ける
身体に覚えた動きに速さも判断力は関係無い
冬将軍、気象現象に人は勝てない
でも私達はそんな極寒の地で生き延びてきたのですから!
●
冬が来る。
大粒と呼んでも足りない雪氷を周囲にまき散らしながら悠然と身構えるジェネラル級『冬将軍』。
どう動くべきか。あるいは相手がどう動くか。探るようにディアボロスたちはしばし目の前の老人を睨み続け、対する老人もまた、ディアボロスたちがどう出るかを窺うように動かない。
「冬将軍、気象現象に人は勝てない」
しばしの間続いた均衡を破るように、イオナ・ガルバローゼ(空染めの一輪・g07485)が口を開く。
あたかも気象の化身こと冬将軍に屈したような言葉。けれど彼の声色には、まぎれもなく冬将軍へ向けた敵意が存在する。
故に、冬将軍も瞳の奥を愉快そうに歪めて継がれるだろう言葉を待った。
「でも、私たちはそんな極寒の地で生き延びてきたのです! ここであなたに負ける道理はありません!」
宣言と共に、彼我をつなぐ直線距離、その周囲にアイスクラフトによって氷塊が、そして雪原の中に数多のトラップが生成される。
それらに冬将軍が視線をやると同時、イオナが雪原を蹴って走り出した。
周囲に生み出されたトラップは、互いに何の影響も及ぼさないようなちゃちな代物でしかないが、降り積もる雪を直接踏み抜くよりは有効な足場として機能してくれるだろう。
「お主らが生きることを否定はせんよ。人はただただ吹雪の中で身を寄せ合い、極限の中を生きておればよい。それが我らの糧になる」
迫るイオナの姿を前にこともなげに言葉を漏らすと、突如冬将軍の周囲に幻想的なオーロラが生まれた。
自身を迎え撃つように周囲を取り囲んだオーロラの強烈な磁気に、イオナの脳の奥で何かが歪んだような錯覚。金属繊維の磁器シールドを防寒具の下に仕込んではいるが、気休めにもなりはしない。
ぐらりと意識が遠のきかける。鈍化する判断力が右手奥にそびえる大樹を敵と認識してしまいそうになるのを歯を食いしばって耐え、そのままイオナはトラップの杭を足場に跳躍。
「氷に罠に、おぬしら何でもできるのう」
瞬間移動するような勢いでイオナが詰め切った距離。視線の先で、冬将軍は携えた杖をもってイオナを待ち受けていた。
パラドクスの攻防において距離という概念は存在せず、故に振るうと決めたパラドクスが届かないという道理はない。
それは正しい。
だが、あくまでこの吹雪は冬将軍の世界だ。
完全視界こそあれど、降り続ける大粒の雪が物理的に視界を遮り敵の姿を断片的にしか捉えられない状況下。すなわち仕掛けると決めた瞬間に敵が身構えているのか、隙を見せているのか、それを視覚的に読み取る難易度が増してしまうのだ。
夜空と蒼空、鋏の片刃のような二刀を以て振るわれるイオナの精密な斬撃の嵐は冬将軍の杖に受け止められ、空を染める一輪は雪の中で咲くことを許されない。
そのまま髭の老人は舗装された道路でも蹴るような軽いステップで後退、一度距離を取る。
「てめえが見たいって言ったんじゃねえか。頑張る若者、存分に見ろよ」
見物料は、てめえの命だ――そう吐き捨てて、イオナの行動を起点に伏見・逸(死にぞこないの禍竜・g00248)が退く冬将軍へ肉薄。そのまま追撃の刃を振るった。
真っ二つにしてやる。混じりけもなく、単純で。故に鋭さ以外の余地が入り込む隙間のない斬撃。
それも冬将軍は察知していた。逸が迫る方向へ素早く体を入れ替え、振るわれた刃を杖で受け止める。
「ふぉっふぉ。最前席よりも少し離れた場所の方がよく見えるもんじゃよ」
ぎちぎちと刃と杖とが押し合う中で、余裕を崩さないまま冬将軍が再度オーロラを展開。
周囲に生まれる美しい光景を前に、まるで子供のように禍竜の目が見開かれた。
(「オーロラは見たことがある」)
空一杯の、怖いくらいの、圧倒的な情景。
呑まれてしまえば楽になれるだろうか。周囲に浮かぶ、アルコールよりも強烈で、それでいて有無を言わさぬ酩酊感に似た感覚に、不死身の龍は。逸は――……
「……ほう」
冬将軍の唇から、感嘆の声。
叩き切ると念じた意志は、鈍化した判断力の中でも変わらない。
(「あの時見た『綺麗なもの』とは違う。見惚れて呑まれてなんかやらねえ」)
元より冬将軍へ逸が向けた意識は全力でぶった切る、それ以上のものはない。意識が混濁しようと惑うことのないシンプルかつ強い敵意は、下手な動きを見せれば杖ごとその髭面を両断してやると冬将軍に訴えていた。
その拮抗の中、冬将軍の視線が、不意に別の方向へ向けられた。
吹きすさぶ雪氷の中、冬将軍には見えていた。この攻防の中、迫る刺客はまだ、残っている。
「シベリア戻れば、ねえ」
大鎌を携え、イオナが設置した氷塊を風よけにして。一息で距離を詰めてくる刺客は、その名をリップ・ハップ(Reaper Harper・g00122)といった。
命を容易に奪い去る冷気に対抗するように熱波の支配者で周囲の気温を上げ、冬の権化たる怪物を狩らんと一瞬ごとに彼我の距離を詰めていく。
濃密な吹雪の中では冬将軍がどう身構えているか見極めるのが難しい。けれど、誰かが抑え込んでいれば少なくともその瞬間は、次の攻撃へ十分な備えが出来ているはずもない。
「……やれ、少し心臓に悪いぞ」
故に、そこで冬将軍は強引に逸が振るう刃を弾いた。
磁気を帯びたオーロラの魔力で逸が更なる追撃に出るのを防ぎながら、すかさずリップへ杖を向ける。
「!」
ゴーグルの中で見開かれたリップの視界の向こう。ご、という唸り声のような音と共に、向けられた杖の先から吹雪の渦が生まれた。
周囲に吹き荒れる吹雪すらも児戯に感じるような風圧、温度、雪氷。それに晒されたリップの身体が防寒具の上から見る見るうちに凍り付いていく。
(「今は後のことは考えねい」)
けれど、怪異殺しと呼ばれた少女は止まらなかった。
吹き付ける寒波が皮膚を凍らせようが、全身をめぐる血からの力が異常なまでの熱を生み、絶氷を破砕し足を動かすことを止めはしない。
「目的地……辿り着いたぜ……」
うめき声にも似た音が喉から発せられたと同時、リップが雪面を強く踏み抜き冬将軍の懐へ潜り込む。
「ここをお前の終着点にしてやん……よッ!」
瞬間、異常低温に一度包まれた身体が悲鳴を上げるのも無視し神速の一撃が振るわれた。
ありったけの熱を込められた『伯爵』を冠する大鎌はその刀身に白光を生むほどの超高熱を帯び、敵と定めた首を焼き切らんと迫る。
並のトループスやアヴァタールなら間違いなくそのまま首が飛んでいた。
そう確信できる速度の一撃を、しかし敵は凌いだ。
刃が喉元に至るまでの刹那にも満たない猶予の中で、けれど冬将軍は迷わず後ろへ飛び退り、強引な後退による勢いを殺すようにバク宙を一つ。そのまま三人のディアボロスと大きく距離を離して雪原に着地。
「……ほ、素晴らしい! 避けきったつもりだったんじゃがのう!!」
直後、己の喉元からどろりと血が流れ落ちる感触に、冬将軍は興奮したような声を漏らす。
斬ればきちんと刃は通る。それはここまでの攻防でひとまず証明された。
問題があるとすればそこに至るまでか。
首から滴る血を凍らせ血止めとしながら、冬将軍は尚も呵々と笑ってみせる。
それを前に即席の連携を組んだ三人は集結。次はどう動いたものか。動き方を頭の中で組み立てながら、各々の武器を静かに構えなおした。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
効果1【熱波の支配者】がLV7になった!
【一刀両断】LV1が発生!
【建物復元】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】がLV5(最大)になった!
【ダメージアップ】がLV5になった!
ガンドラ・ブラッディア
【旭日革命軍団】
連携・アドリブ・個別採用可
コードネーム:オーダー
熱波の支配者、寒冷適応、完全視界は常時活用
随分と、余裕だな。いや…実際、余裕なのだろう。
土産話が欲しくば、好きなだけ、くれてやる。
即ち――冥土の土産に、持っていけ、だ…!
動き回りつつ呪眼竜圧で冬将軍を睨み付け、圧し潰し切る。或いは動きをいくらかでも制限する。
カラーボールによる蛍光塗料が成功していれば、それを目印にして睨む。
捉えたならば視線は外さないまま投擲することで呪槍による攻撃を加える。
また動き制限狙い以外にも凍らせて塞いだ傷も開くよう狙う
我が視界、オーロラでも、吹雪でも、遮らせん。
お前を倒し、人々の冬を、終わらせてくれる……!
レイラ・イグラーナ
【旭日革命軍団】
個別採用OK
コードネーム:アサー
エトヴァ様(g05705)をディフェンス
……まだ余裕が見えますね。
ですが、あなたはいわば人民の皆様を苦しめるこの大地の過酷さの象徴。
この地に根差す支配者を地に墜とすため。討たせて頂きます。
【寒冷適応】に【完全視界】、今回は【熱波の支配者】も全力で使用。
雪色のコートに雪狼のコートも身にまとい、最後の雪中行軍へ挑みます。
エトヴァ様と【アイスクラフト】を使用。
氷のブロックを並べて駆けやすい道を作り、前方のエトヴァ様が炎の渦を放ったら入れ替わるようにして前へ出て【既製奉仕・炎】を。
この地と人民に安寧の春を齎すまで……この歩みは、決して止めはしません!
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
【旭日革命軍団】
レイラさん(g07156)をディフェンス・密に連携
個別OK
寒冷適応・熱波・完全視界を活用
耐寒服に錘、雪靴、ゴーグル着用
冬将軍との距離感を確認
頃合いで合図し、レイラさんの前方で盾となり行動
冬将軍まで【アイスクラフト】で直通の壁を建て、装備のハーケン銃を撃ってロープで駆け上がり、氷壁の上を足場にまっすぐ駆ける
仲間と壁を繋げ、道を伸ばし
不足はトラップ生成で足場を
馳せながらPDの炎の渦を冬将軍へ放ち
視界の吹雪を溶かし、炎で目くらましを返す
俺は囮。後方の仲間に託す
反撃は魔力障壁で耐久
オーロラは仲間達と見た
次は平和な大地で見ようと
――その一歩だ!
雪を溶かせ、極夜に黎明を、冬を晴らし春よ来れ
「随分と、余裕だな」
顎髭を撫でながらディアボロスたちへ視線をやる冬将軍を、ガンドラ・ブラッディア(黒矛・g03101)は静かに睨みつけた。
否。実際に余裕なのだろう。傷を与えたことは確かであるが、かといってそれはまだ軽傷もいい所の一太刀でしかない。
視線の先に立つ老人の余裕の態度を打ち崩すには何が必要なのか。相手方に圧倒的に有利な環境をひっくり返す手立ては今のところ、味方も含め打ち出せていない。
「……土産話が欲しいといったな。欲しくば、好きなだけ、くれてやる」
「ほう」
吹雪の向こうの冬将軍を睨む視線はそのままに、ガンドラは仲間たちから離れるような軌跡を描き走り始める。
「即ち――冥土の土産に、持っていけ、だ……!」
言葉を叩きつけ、大きく目を見開く。瞬間、冬将軍の周囲の雪原が、何かに圧雪されたかのようにいびつに歪んだ。
呪いにも似た破壊力を重圧に変換し敵の動きを縛る意図が込められた竜の圧力。突如自身にのしかかる重力が増したような感覚に冬将軍は少し驚いたような表情を浮かべて。
「ほっほ! そうでなくてはのう!」
周囲に響く愉悦を隠さぬ声。動き回るガンドラへ視線を返す冬将軍は、同時に緩やかに左手を上空へ掲げた。
重圧に軋む肉体に気づかぬとばかりの挙動に付随し、ガンドラの周囲へオーロラが生まれる。オーロラは動き回る竜の女の周囲を幽霊か何かのように寸分のずれもなく追い続け、彼女の視界の前で怪しく光りながらカーテンの裾を揺らす。
「……! だが、我が視界、オーロラでも吹雪でも遮らせん」
ちかりちかりと脳裏で星が瞬いた。気を抜けば動くことも敵を視ることすらも忘れてしまいそうな光景に包まれながら、けれどガンドラはどのどちらも止めることはない。
(「お前を倒し、人々の冬を、終わらせてくれる……!」)
その意思を、視線に込めて。
龍と呪いの重圧が、更に苛烈な圧と化して冬将軍の肉体を軋ませた。
(「オーダー」)
秩序を冠するコードネームで、ガンドラへ心の中で呼びかける。
いまだ冬将軍との攻防を続ける彼女へ続くように、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)とレイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)が冬将軍へと駆けだした。
(「……まだ余裕が見えますね」)
ガンドラの重圧に晒されながらもまだ余裕を感じさせる気配を吹雪の向こうに感じ取り、レイラは忌々し気に息を噛む。
けれど、冬将軍はロマノフにおける一つの象徴なのだと――人民を苦しめるロシアという大地の過酷さを分かりやすく表す存在であるのだと思えば、ここで引いてやる気にもならない。
行こう、と傍らのエトヴァが視線で合図し、レイラが頷き返し……直後、ぐりんと冬将軍の首が二人の方角を向く。吹雪の向こう、次はお前たちかと笑うような気配。
笑っていられるのも今の内だ。宣するようにエトヴァは吹雪の向こうにある冬将軍の姿へ向けて手を伸ばす。
直後、彼我の直線距離を結ぶように3m四方の氷塊が3つ、瞬時に生成。生まれたそれにエトヴァは迷うことなく飛び乗った。その背後につくようにレイラもそれに続く。
「成程、雪原を歩くのは少し疲れたかの。いやいや、本当に何でもできるのう、おぬしら」
だが……と。愉快そうに冬将軍が笑った気配。そして次の瞬間、一つ目の氷塊を渡り切るよりも早く、冬将軍に近い位置に置かれた二つの氷塊が粉微塵に破砕される光景が氷上の二人の視界に映る。
「楽はさせてくれないな」
「一度見ればそりゃあ、のう。敵の利になる物をいつまでも置いておくと思うか?」
ち、と小さく舌打ち。アイスクラフトで生まれる氷はあくまで大きいだけのただの氷。一般法則破壊の範疇に含まれる代物だ。ノータイムで向こうが破壊してくることもありえないことではない。
冬将軍の介入により、6m分の氷の道が砕かれ雪原を走ることを強いられるが、足を踏み出す先に次々と小さなトラップを生み出すことで雪に足を取られることを回避しながら距離を詰めていく。機動力の面は大きな問題ではない。
むしろ厄介なのはここから。向こうは確実にこちらの攻撃の出がかりを把握している。
その推測の証明とばかり、エトヴァがわずかに見せた攻め気に反応したか、彼の周囲に極厚のオーロラが展開。それだけで思考力は容易に蝕まれていき、次に踏み抜くべく足場を見失いそうになる。
「……オーロラは仲間たちと見た」
「それと比べて、儂のオーロラはどうじゃ? 綺麗だろう」
「冗談」
吐き捨て、エトヴァが力を練り上げる。それに注力することで周囲に浮かぶオーロラの影響を振り払い、
「次は平和な大地で見ようと皆で話した。――これはその一歩だ!」
雪を溶かせ、極夜に黎明を、冬を晴らし春よ来れ。
そう念じ、冬の終わりを告げるように放たれた火炎。螺旋を描きながら冬将軍へ飛来するそれを迎撃すべく、老人は構えた杖の先からすかさず吹雪を放つ。
吹雪と炎熱。二つの相反する熱量は術者の中間で一瞬の拮抗……そして相殺しきれぬ熱の勢いは周囲の吹雪を溶かしながら冬将軍を捉えた。
「ほ! 見事じゃのう。押し返してくるか」
轟、と冬将軍を包み燃え盛る熱の勢いの中心で響く、感嘆の声。炎に包まれながらまだ余裕を崩さぬ声色。
「この地に根差す支配者を地に墜とすため。討たせて頂きます」
まずはそれを打ち崩さんと、冬将軍がまとわりつく炎を振り払った瞬間、レイラが距離を詰めきった。
エトヴァが様々に張り巡らせた準備、そして荒れ狂う炎。迫る火炎は冬将軍の視界を塞ぎ、後方で力を温存していたレイラにバトンを継ぐようにエトヴァがすかさず背後のレイラへ道を開ける。
「良い連携じゃ。だが、見えておる」
炎を振り払った冬将軍が突きつける杖の切っ先は、寸分の狂いもなくレイラへ突き付けられていた。
読まれていた。冬将軍の生んだ吹雪の中であろうと、おそらく彼には吹雪などないような視界が形成されている。
故に、エトヴァとの攻防の最中、彼の後ろに付き従うレイラの姿が左右に動く気配が見えなければ、炎を囮に真正面からの突破を図る――そんな風に動きを読むことだって不可能ではない。
見開かれたレイラの眼前、エトヴァが割って入るよりも早く杖の先端から冷気が解き放たれる。絶対零度を思わせる強烈な吹雪に晒され、レイラの顔が、意識が、瞬く間に凍り付いていって。
(「……この歩みは、決して止めはしません!」)
けれど、執念の一針は冬将軍を捉えた。
そのまま杖が横薙ぎに振るわれれば砕けて散っていただろう。そう思えるほどに全身を氷で侵食されたレイラはしかし、冬将軍が杖を振るうよりも早く、構えていた針を敵へと放った。
「……っと!」
咄嗟、冬将軍が胴をかばうように左腕で針を受ける。
呪詛がもたらす炎熱が腕を焼いていく感触を無視しレイラへ視線を向ければ、エトヴァが氷に包まれたレイラを回収し後退する姿が見える。
それを認めて、冬将軍はエトヴァとレイラへの追撃を断念、代わりに左腕に突き刺さった針を払い落とし、徐々に燃えていく炎を冷気の力で強引に鎮火。
「……恐ろしいくらいの執念じゃのう。何がお主らをそうするんじゃか」
黒く焼き焦げた腕部の衣服を軽く撫でて、冬将軍は興味深いとばかりに呟く。
その声色には、まだまだ余裕の色が見えた。
苦戦🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
リップ・ハップ
残留効果は先刻同様
敵を風上にして突撃
十分踏み込んで敵後方に【アイスクラフト】で壁設置
行軍時の要領で吹雪を遮り視界確保、風の抵抗無くして加速
間髪入れず牽制がてらに伯爵一振り、狙いは衝撃波による氷壁の破壊
更に一振りで風に乗る氷礫を粉砕、即席煙幕に【薙ぎ払い、衝撃波、解体、破壊、粉砕】
本命はこっちだから冬将軍に壊されても手順一つ繰り上げるだけ
残留効果由来の氷塵まで見通せっか?
有効なら吹雪が煙幕を払う迄の一瞬は【完全視界】分視界有利
斬撃の出所隠してパラドクスを見舞う
オーロラが判断力鈍らすなら「闘争の権化」たる身体に染みついた経験で動く
怪物を前にして狩人のやるこた一つなんだよ
私の歩いた道までは凍らせねぇ
エンデ・トロイメライ
ほんと、癪だねぇ……舐めるなよ。
寒冷適応、完全視界、熱波の支配者は常時最大発動。
極地用装備で防寒と雪原での機動力確保。赤外線ゴーグルで敵位置を把握。
【トラップ作成】で張り巡らしたワイヤーの上をFLUGELの推進力を瞬間的に使い渡って素早く接近。
接近中ナノマシン製の狙撃銃で牽制しつつ無作為に【アイスクラフト】で氷を作成、こちらの意図を読ませない。
実体のある攻撃は動きを読まれる、ならば。
FLUGEL出力最大、吹雪ごと地面に叩きつけ押し潰す。
勿論簡単に潰れるとは思わない。だが首の傷を開かせるくらいの力はある。
そして僅かでも動きを止めれば仲間の追撃がお前を殺す。
悪いけど、負けるつもりで来てないんだよ。
当然、ここでディアボロスの攻勢が終わるはずはない。
冬将軍もそれを承知していた。
故に周囲を見渡す冬将軍の視線は鋭く、そして雪原を疾駆するリップ・ハップ(Reaper Harper・g00122)とエンデ・トロイメライ(エピローグ・g00705)の姿を、見逃すことはなかった。
周囲に張り巡らされたワイヤーを伝いながら牽制のためにエンデが放つ銃撃を、直撃しそうな軌道のものだけ選んで弾き、冬将軍は二人を待ち受ける気配。
次は何をしてくれるのか。吹雪の向こうにうっすら見える姿からどこか楽しみにしているような色さえ感じる状況。
それを癪だ、と思う心はおそらく場のディアボロス全てに共通しているだろう。
(「舐めるなよ」)
内心で苦々しく吐き捨て、冬将軍の眼前に氷塊を一つ作成。
これを冬将軍は一般法則破壊に則り一瞬で粉砕。
その瞬間、リップとの目配せはすでに済んでいる。
直後、今度はリップが生み出した氷塊は冬将軍の背後にそびえ立つ。3mという高さの氷が冬将軍を守るように猛烈に吹き付ける吹雪への壁となり、すなわち風下から距離を詰める二人への吹雪の影響もまたわずかながら弱まった。
これも冬将軍は即座に破壊。あくまで大きいだけの氷が粉微塵に壊れた所で逆説連鎖戦における影響は彼我共に存在しない。
それでも傘のように生まれた氷が吹き付ける吹雪を一瞬弱めたことは確かで、その瞬間、風下を走る二人の視界には冬将軍の姿がはっきりと見えた。吹雪に悩まされ断片的にしか捉えられなかったこれまでとは違う、どんな表情をしているかまではっきりと見える一瞬。
ぐん、とリップが足に込めた力がさらに強まる。
「悪いけど、負けるつもりで来てないんだよ」
リップを迎え撃つように杖を両手に構える冬将軍に突きつけるようなエンデの宣戦布告。重力操作を可能とする銃と剣の切っ先を冬将軍に突きつけると同時、それらが司る重力は冬将軍の頭上で収束。
みしりと冬将軍の肉体がきしむ音が吹雪の中でも響く。高重力下、凍らせて塞いだ冬将軍の傷口が開き、溢れる血が周囲の冷気に晒されまた凍る。
一瞬のうちにそれが何度も繰り返され、けれど冬将軍が浮かべる愉快そうな表情は歪まない。
「生憎じゃが、儂も負けるつもりでお前さんらの前に現れたわけではないんじゃよ。ほれ、次は強烈じゃぞ」
その宣言の通り、生まれた光のカーテンは二重、三重と折り重なるような濃密さでエンデとリップを取り囲み、二人の脳内を無遠慮なくらいに蝕んでいく。
――目の前の老人は何者だっただろうか?
抗う意思を秒単位で塗り替えるように思考は鈍化。エンデが惰性で重圧を維持する中、視線の先で雪原を駆け抜けるリップもまた同様の思考に捉われたか、その足取りは次第に鈍っていって。
「……おやすみ、怪物」
けれど、冬将軍の前で足の動きが停止する直前。リップの唇から、うわごとのようにそんな言葉が紡がれた。
ひゅ、と吹き荒れる吹雪とは異なる何かが空気を切る音。一瞬遅れて、反射的に防御の体勢を取った冬将軍がリップの振り下ろした大鎌を杖で受けとめる音。
「……! 驚いたのう。もはや攻撃なんぞ出来ぬと思っておったが」
冬将軍が発したその声には、間違いなく驚きの色があった。
そのまま髭の老人は眼前の少女を改めて観察。生み出したオーロラは間違いなく彼女の判断力を奪っている。それはどこか虚ろに見えるその眼から確かだ。
けれど、闘争の権化たる身体までもが意識の制御化にあるかといえば、それは否としか言いようがなくて。
狩るべき怪物を前にして、狩人のやることなど一つしかない。
私の歩いた道までは凍らせねぇ――言葉を発することが出来たのならば、間違いなくリップはそんな風に嘯いただろう。
「後ろの娘も含め、見事じゃ。だが、しばらくは興奮で眠れそうもないわ、おやすみには早すぎるのう!」
本能のみで大鎌を操る腕の力を緩めないリップによって場に縫い留められながらも、冬将軍は満面に笑みを浮かべるのだった。
苦戦🔵🔵🔴🔴🔴🔴
一里塚・燐寧
ちっ、強すぎるでしょ……!
吹雪の中で戦う限り有利にはなんない、奇策に賭けるっきゃないかなぁ?
【寒冷適応】【完全視界】常時使用
発煙手榴弾を炸裂させて、敵の視界を塞ぐよぉ
煙幕は吹雪ですぐ吹き飛ばされるだろうけど
僅かでも味方の身を隠せれば、価値はあるはずっ!
煙幕の中で『呪式:腐朽腑滅』を発動
自壊の呪詛を乗せた≪テンペスト・レイザー≫を足元の積雪に突き付け
雪を掘りながらトンネルを作って進んでくよぉ
これなら吹雪の突風は関係ないよねぇ!
雪中に身を隠す間は【光学迷彩】
足音・戦闘音を頼りに敵の足元に到達したら、刀身を上に向けて飛び出し
刃で股下を突き上げて不意打ちをキメるよぉ!
どんなセコい手使ってでもブッ殺す!
ロキシア・グロスビーク
アドリブ連携ご自由に
【寒冷適応】【完全視界】【熱波の支配者】は常時使用
服装は極地用の防寒着で
みんなこんなに頑張ってるってのに……!
遠すぎる。強すぎる
どうすれば勝てる?せめて一太刀でも入れられれば
いや、そっか。方法は、ある!
Moon-Childを四肢に集中、活性化
一撃を入れるまで倒れないように!
極寒の寒さにこそ、逆に【精神集中】を促し
共に立つ仲間の存在に、【勇気】を奮わせ。突き進む!
伝承、開放!
《失黒刀》を抜き
七天の黒は、切断の極北!
ここで斬るのは――
距離!
吹雪で視界も最悪で、近づくことすら物理的に困難だってなら!
お姉ちゃんの刀、お姉ちゃんの技でっ!
この理不尽ごとお前を【両断】する!唸れ黒刀ぉ!
ぎちぎちと加えられ続ける大鎌と重力による圧を受け続ける冬将軍の足元に、不意に何かが転がってくる。
それはリップとエンデが冬将軍を場に縫い付けた隙をつき、一里塚・燐寧(粉骨砕身リビングデッド・g04979)が転がした発煙手榴弾。
この場が遮蔽物の存在しない雪原であり、そして強風吹き荒れる環境であれば、噴き出した煙は瞬く間に風に流れていきほぼ意味はなさない。
けれど、一瞬前まで後方で身構えていた燐寧の姿が消えた。その現象に冬将軍が思考を割くくらいの暇にはなる。
(「移動した、訳ではなさそうじゃが」)
リップの鎌を杖で受けたままの状態で油断なく周囲に視線を巡らせる。左右に移動したのならば、吹雪の中でも平時と変わらぬ景色を見通せる冬将軍の目が見逃すはずがない。同様に上空に逃れた気配もない。
であれば雪の中に潜ったか。そう推論し、冬将軍の視線は足元へ。
(「強すぎるでしょ……!」)
見通されている。冬将軍の推論通り煙に紛れ雪中に潜った燐寧は、潜り抜けた修羅場に由来する勘によって冬将軍が自身の動きを察知している気配を感じて思わず毒づく。
とはいえ、荒れ狂う吹雪の中で戦う限りディアボロスに有利の目はない。であれば、雪中を掘り進み強襲をかけるという奇策も縋るべき一手ではあると自身を奮い立たせ、そのまま彼女はチェーンソーを振るい雪の中を掘り進むように彼我の距離を詰めていく。
「悪くはない」
冬将軍は、燐寧の行動をそう評した。吹雪が邪魔ならばそれが無い所から攻め入ればよい。それは一つ正しいが、かと言えど冬将軍がそう来る可能性を察知した以上、完全に彼の意識外からの攻撃となることはもうないだろう。
光学迷彩はあくまで発見される確率を減じる物。居ると認識されていれば、地下からの強襲という選択肢において使おうか使うまいが結果に大きな変化はない。
ならば他のディアボロスと同様に出がかりを察知され攻撃をしのがれてしまうのか? それはまだ分からない。
何故か。リップやエンデの攻勢を継ぐように、ロキシア・グロスビーク(啄む嘴・g07258)が冬将軍へ向けて突き進んでいるからだ。
(「みんなこんなに頑張ってるってのに……!」)
防寒具の下で表情を歪ませる。
ディアボロスの猛攻は並の敵なら容易に吞み込めるほどの苛烈さを帯びたものだった。けれど吹雪の向こうの老人には遠すぎる。
打開の術は何か。せめて一太刀でも入れることが出来れば突破の足掛かりはあるかもしれないのに、けれど彼我を隔てる吹雪がその足掛かりの場所を掴ませてはくれない。
(「いや、」)
方法はあると。そう信じて。
冬将軍がリップの鎌を、そしてエンデの重圧を振り払う。
自由になった杖先から発せられる猛烈な吹雪に全身が凍り付いていく感触と体から熱が失せていく感覚に耐えながら、ロキシアは外甲殻として巡るナノマシンを活性化させる。
極寒の寒さにありながら精神を集中させ。この場を維持してくれた仲間の存在に勇気を奮わせて。
「伝承、解放!」
『失黒刀』と銘される刀が無造作に空間に線を刻む。その動きに伴い空間は断ち切られ、ぽっかりと空いた空間を強引につなげることで世界は整合を保ち続ける。
即ち、その一挙動で10歩の距離が1歩に縮まり。
「ほう!」
「お姉ちゃんの刀、お姉ちゃんの技でっ! この理不尽ごとお前を両断する!!」
成程そう来たか。一瞬を更に百へ分割したような暇で距離を詰め切ったロキシアの耳に、冬将軍の感嘆の声。
距離という概念が斬れるならば、物質として存在しているクロノヴェーダを両断できない道理はない。
その当然の帰結を求めて上段に構えた失黒刀が振り下ろされる一瞬、冬将軍は回避を選ぶ。
音すら抜き去る速度で振り下ろされた斬撃をサイドステップで避けるが、失黒刀の揮い手は見逃さない。
リップやエンデに縫い留められた状態からの復帰、それを継ぐ自身の連撃への強引な回避――ここまで積み重ねれば、流石に回避直後の瞬間を隙と見なせるほどに体勢が崩れている。
故に。
「どんなセコい手使ってでもブッ殺す!」
冬将軍の足元。戦闘音を頼りに雪の下を掘り進んだ燐寧が振るうチェーンソーへの対処が、遅れる。
燐寧が雪中に潜った、とは推測していた。故にいつか来ると備えてはいたし、この瞬間がその「いつか」の可能性は高いとは冬将軍も踏んでいた。
けれど、苦戦を重ねつつ積み上げられたディアボロス側の連撃が、今度ばかりは冬将軍に即応を許さない。
咄嗟、その場を退くように逃げる老人の動きを無視するように振り上げられた回転刃が雪原を蹴った右足を捉え、そのまま上半身へ向けて駆けあがる軌跡を描く。
一瞬が積み重なるごとに、退く冬将軍の身体は刃から離れていく。けれど、それまでの時間で切り裂いた肉の手ごたえは確かに燐寧の手にある。
「流石に痛かったのう、今のは!」
とはいえ、老いたように見えてもジェネラル級といったところか。
アヴァタールをはるかに凌駕する強烈なフィジカルは、強烈な斬撃を受けてなお痛みへ怯む気配を見せない。
肉体が完全に燐寧の刃から離れるや否や、彼女が更なる追撃を見せるよりも早く杖の先端から吹雪を放出。
全身を凍り付かせる程の圧倒的な冷気に晒され、瞬く間に凍り付いていく体が、燐寧に更なる攻勢に出るという選択肢を許してくれない。
「……だが見事じゃ。わしにここまでの傷をつける者など、そうはおらんと思っておった。ラスプーチンが警戒しておったのも分かった気がするわ」
ロキシアが庇うように燐寧を背に置いて己と対峙する姿勢を崩さない様子を見下ろしながら、冬将軍はもう一度愉快そうに笑った。
その笑顔が、そして刃越しに伝搬した燐寧の呪詛ごと凍っていく傷口が、まだ冬の終わりは遠いことを告げている。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【腐食】LV1が発生!
【一刀両断】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV6になった!
【命中アップ】がLV3になった!
八雲・譲二
※アドリブ連携歓迎
戦いの間は【熱波の支配者】発動キープを意識しつつ冬将軍を観察
ここらが潮時か…わかったわかった、爺さん。残念ながら俺達は撤退するアンタを見送るしかないらしい
しかしまあ、さっきの騎士サンらと戦った時はいけると思ってたんだがね
あんたの軍にしちゃ随分と貧弱だったんじゃねえか?
ん?ひょっとしてあんたの軍じゃなくてラスプーチンの軍か
奴も奴だな、軍もここに置いて俺達の対処もアンタに投げっぱなして『今頃どこで何やってんだか』。
距離を保って牽制しつつ可能な限り無難に撤退を見送る
よし、寒くて死にそうな奴はスープ配るから言ってくれ
悔しいが今回はここまでだ
次はしっかりと…調理法を解明してから、だな。
●
しばらくの間ディアボロスたちと冬将軍はにらみ合いを続けていたが、やがて冬将軍はゆるりと構えていた杖を下ろした。
何故か。無手のまま数歩こちらへ歩み寄る八雲・譲二(武闘派カフェマスター・g08603)の様子に、敵意を感じなかったからだ。
「ここらが潮時か……わかったわかった、爺さん。残念ながら俺達は撤退するアンタを見送るしかないらしい」
「ほっほ。そちらが武器を下ろすのならば、もう戦う理由もないじゃろう」
その宣言はいささか一方的なものではあったが、けれどディアボロスの側もこの場で目の前の敵を倒しきる道筋を見出せなかったことも事実。臨戦態勢を取り続ける他のディアボロスたちもまた、譲二に倣うように武器を下ろして。
「しかしまあ、さっきの騎士サンらと戦った時はいけると思ってたんだがね」
「寒さに震えるトループスと並べられるのは流石に心外じゃのう。ラスプーチンが寄越した精鋭とはいえ、我が吹雪の中に晒され続けておればああもなる」
「奴も奴だな、軍もここに置いて俺達の対処もアンタに投げっぱなして、今頃どこで何やってんだか」
「これこれ」
軽い物言いに少しばかり機嫌を損ねたか。そこでたしなめるような声と共に、吹雪の圧が強くなる。
「ふぉふぉふぉ、元気のよい子じゃ。だが、礼儀知らずだ。年寄りを敬う気持ちは大切じゃぞ。ラスプーチンも儂ほどでは無いが年寄りじゃからの。
儂は強くて礼儀正しい良い子が好きじゃ。相手の気を損ねない言葉の選び方は大事じゃぞ」
諭すようにそう告げ、冬将軍は顎髭を撫でると共に首筋に走る傷跡に触れた。
まさか傷つけられるとは思っていなかった――それは、髭の老人が抱いた紛れもない本音である。
この傷も、そして足元を抉る裂傷も、帰還の土産としては十分すぎる。
「……よかろう、ラスプーチンにも仕置きは必要じゃ。どこで何をやっておるか、少しだけ教えてやろう。
奴は儂の代わりに極東に行っておる。極東の南で、何やら異変が起こっていると言っておったわ。だが、そろそろ戻ってくる頃合いじゃろう」
そう告げて、冬将軍はディアボロスたちへ背を向ける。
「ラスプーチンがより有能な存在となるため、お主らにも期待しておるぞ。奴の試練となるよう、これからも励むのじゃぞ」
そうとだけ言い残し、冬将軍は吹雪の向こうへ次第にその姿を消していった。
●
「……よし、寒くて死にそうな奴はスープ配るから言ってくれ」
冬将軍の気配が周囲から消え、次第に吹雪が弱まっていく。その段階になって、譲二は周囲のディアボロスに呼びかけた。
去っていった冬将軍へ様々な思いをにじませる面々をなだめるようにアイテムポケットから取り出したスープを配りながら、けれど彼の視線もまた、鋭いままだった。
(「悔しいが今回はここまでだ」)
春告鳥は未だ来ず。そう嘲笑うように周囲にはまだ吹雪が吹き荒れている。
けれど、永遠に留まり続ける季節など存在しない。
「次はしっかりと……調理法を解明してから、だな」
ならば、次こそは。その思いを込めて、譲二はもう一度、冬将軍が去っていった方角を見遣るのだった。
成功🔵🔵🔴
効果1【アイテムポケット】がLV2になった!
効果2【ロストエナジー】がLV4になった!