リプレイ
朔・璃央
双子の妹のレオ(g01286)と
街の人にもこちらにもwin-winとは言われても
勝手に持っていくってちょっと気が引けるよね
時代の違いによる価値観の違いなのかな
ご自由にお持ちくださいのコーナーだと思えばいいのかな
一応こそこそした方が良いよね
黒っぽい服で夜に紛れられるようにして
納屋に見張りが居ないかをこっそり観察
いるなら帰るまで様子を伺って
いないようならしーっと声を顰めてこそこそと潜入
納屋を埋め尽くす勢いの小麦におーっと驚きつつ
怪力無双を使いながら
移動の邪魔にならないぐらいの量を拝借しようかな
後は来た時みたいにこそこそと退散しよう
…人助けの為とは言え、
やっぱり何か気が引けるねコレ
朔・麗央
双子の兄リオちゃん(g00493)と
持っていってもらえれば喜ばれると聞いても
やっぱり勝手に持っていくのはちょっと悪いことしてるみたい
でも、やるんだけどね!
念の為、黒っぽい色の服で目立たない様にして
こっそりと行動しようね
一応見ている人がいないかどうか偵察と情報収集をするよ
大丈夫そうならこっそり潜入
埋め尽くさんばかりの小麦の山に思わず息を呑んじゃう
たくさん運び出したいところだけれど
私は背負える分だけ背負って行こうかなって思うよ
対してリオちゃんはいっぱい運べそうだね、とても心強いね
出ていく時も、声を顰めつつ
来た時同様にこっそり出ていくね
そうだね、ちょっと気が引けちゃう……けど
ベラさんたちのためだもの
りんりんと鳴く虫の声も、絶えて久しい冬の入り。マンチェスターの街を望む薮の中からよく似た顔が二つ、ぴょこんぴょこんと飛び出した。朔・璃央(昊鏡・g00493)と朔・麗央(瑞鏡・g01286)、顔貌だけを見ているとほとんど見分けがつかない双子の兄妹は色違いの双眸をしっかりと見合わせると、そそくさと薮から出て歩き出す。目立たないよう黒で揃えた服も今夜はなんだか落ち着かなくて、麗央は居心地悪そうに口を開いた。
「なんだか泥棒しにいくみたいだね……」
「まあ、『みたい』じゃなくて泥棒なんだけどね。お互いwin-winとは言われても、勝手に持っていくのはやっぱりちょっと気が引けるなあ」
妹の言葉に頷いて、璃央は少々不本意そうに吐息した。アイルランドへの支援物資でもあったマンチェスターの小麦は、海を越えて運ばれることなく街の中に滞留し、人々の生活を圧迫している。最初にそうと聞いた時は『そんなことある?』と思ったものだが、ここは改竄世界史だ――何が起きていても不思議ではないし、受け入れるしかない。しかないのだが、曲がりなりにも人の所有物を勝手に持っていくというのは――たとえそうした方が街の人には喜ばれるのだとしても――どうしても悪いことをしているような気分になってしまう。戸惑う二人の表情からは、善良さと育ちの良さが滲み出るようだ。
「まあ、でも、やるんだけどね! 」
迷いを振り切るように長い髪をふるふる振って、麗央は言った。
「ベラさん達があっちでお腹をすかせちゃったら可哀想だし」
「そうだね。『ご自由にお持ちください』のコーナーだと思って、割り切ろうか」
これも人助けのうちと苦笑して、璃央も応じた。運命に翻弄された花嫁ベラと、死なせたくないというだけの理由で彼女を助けた青年アレンのこれまでの苦難に報いるためならば、少しくらいは手も汚そう。
逸れないようしっかりと手をつないで、兄妹は土の小道に二対の翼の影を引き、建物のある方へ進んでいく。月も天頂を過ぎた夜半だけあって街はひっそりと静まり返っていたが、一応用心しておくに越したことはないだろう。
そそくさと影から影へ渡り歩いていくことしばらくすると、行く道の先に農家の作業場らしい質素な建物と、木造の納屋が見えた。
暗がりの中に目を凝らして、璃央が言った。
「あれ、小麦の入った納屋かな?」
納屋の周囲に見張りらしき人の気配はない。風に木戸がギィギィ揺れているところ見ると、見張りを立てるどころか扉に鍵さえ掛けていないようだ。不用心というよりも本当に、『誰かに取られてもいいや』という感覚なのかもしれない。
こくりと無言で頷き合って、双子は揺れる木戸の隙間から素早く納屋の中へ潜り込んだ。
「お邪魔しま――うわあ」
丸太を組んだ納屋の中は、異様な様相を呈していた。倉庫のように整然と積み上げられた小麦袋の山を想定していたが、目の前のそれはどちらかというと石垣のようだった。重ねた袋に隙間さえあれば別の袋を捩じ込んでいるようで、不規則、かつギチギチに噛み合っているために、一袋引っ張り出すだけでも苦労しそうだ。
「これは……凄いね」
「うん……適当に引っ張り出したら、そこから雪崩が起きちゃいそう」
思わず変な声が出た璃央の隣で、麗央はまじまじと麻袋の壁を観察する。任務半ばで小麦に埋もれてリタイア――などということになっては目も当てられないので、二人は慎重に場所を選びながら小麦の袋を抜き取っていく。それはさながら、小さな頃に遊んだゲームのようだ。
ぎっしりと詰まった小麦の袋を細腕で重たげもなく持ち上げながら、璃央はぼそりと言った。
「でも――やっぱり何か気が引けるね、コレ」
「気持ちはわかるけど――うーん、気にしない気にしない! これもベラさん達のためだもん」
新天地へと向かう二人のための、ささやかな生活資本なのだ。余った小麦を少しばかり拝借するだけならば、神様もきっと許してくれるだろう――うん、そうに違いない。そうと決めたら、長居は無用だ。
「行こうか。俺達が船に乗り遅れるわけにいかないからね」
「そうだね! それじゃ、急ごう」
持てるだけの麻袋を持って、双子はこそこそと納屋を出た。その姿を見咎める者は、月の他には誰もない。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【怪力無双】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ◎
膨らませるゴムボートを持込み
海岸が遠ければ陸路の馬の手配を
二人の旅立ちを、見届けられるなら感無量だな
や、こんにちは
お久しぶりだ。ベラさん、アレンさん
彼女達の表情に、きっと安堵する
手土産に、草苺のジャムを一瓶渡し
その後、恙無く過ごせていただろうか?
近況を尋ね
――約束通り、迎えに来た
行き先は海の向こう、アイルランドのベルファスト
亡命船が近くへ来ているので、案内しよう
二人とも、心の準備は良いかい?
荷造りを手伝おう
船まで二人を送り届ける
周囲を偵察し安全確認
徒歩か馬で海岸へ
不安定な足場や海上は【浮遊】で手を繋ぎ、歩こう
ボートは荷物乗せ牽き
灯りは同行者に託す
微笑み問う
優しい意味は見つかった?
犬神・百合
連携アドリブ歓迎
ベラ様のお顔を見ればなんだか嬉しくなってくる
傍にはアレン様もいらっしゃるから
わたくしも
荷造りや移動に必要な手配をお手伝い
お久しぶりです、ベラ様
またお逢いするのにお時間がかかってしまったのですけれど
ふふ、あの日からね?
ベラ様が少しでも幸せになってくれていればって願ってましたの
わたくしからも無事とお二人の幸せを願って
野苺をあしらった小さなお守りを二人分お土産に
道中ほんの少しでもお喋りしたいわ
ね、ベラ様
心穏やかになれる人と一緒に過ごす日々って
やっぱり素敵だったでしょう?
あの時の笑顔と全然違うのだもの
辺りをしっかり確認
一秒先でも先が視えれば安心できるかしら
きっと大丈夫
無事に船まで送るわ
草も木も寝静まった深夜のことである。
コンコンと木の鳴るような小さな音に気づいて、黒髪の娘は薄らと目を開けた。隣のベッドでは同居人が彼女に背を向けてぐうすかと眠っている。そしてこの家の中には、彼以外の人間がいるはずもなかった。
(「気のせいかしら……」)
きっと風の音だろう。そう思い直して寝返りを打つと、再び――コンコンと音がした。
「!?」
やはり、気のせいではない。だがこんな時間にこんな場所を訪ねてくる者があるだろうか?
さては追っ手かと身構えつつ、ベラはそろそろと戸口に歩み寄る――すると。
「こんばんは、ベラさん。夜分にすまないが起きているかな」
扉越しに聞こえた柔らかな声には聞き覚えがあった。そしてなぜだか、扉を開けても問題ないという安心感もあった。
待ってと一声応じて錠を外し、がたつく木戸を押し開けると、そこには青い翼を背に引いた男が一人――エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)が立っていた。
「やあ、お久しぶりだ。ベラさん、アレンさんも元気かな」
「……あなた、確か……!」
驚きに瞳を見開いた娘の脳裏で、ぱちりと小さな火花が弾ける。雨上がりのキャメロットから逃げ出したあの日、背中を押してくれた人がいた。彼だけではない――多くの人に支えられ、一度ならず二度までも竜の御前から助け出された一連の記憶が、彼女の中ではっきりとした形を取り始める。どうしてここにと尋ねると、天使は安堵したような笑みを浮かべて、応じた。
「約束通り、迎えに来たんだ」
「約束……あっ」
『近く、アイルランドへの亡命ルートができる。いずれ必ず、迎えに来よう。……その日まで、希望を失くさぬよう――』
――そうだ。
あの日、確かに彼はそう言った。どうして今まで忘れていたのだろうと思いながら、ベラは弾かれたように動き出す。
「……アレン。アレン、起きて!」
アイルランドに行けるわよ――そう言って寝ている青年を揺り起こす娘の声は、以前のそれよりも明らかに張りがあり、弾んでいた。ひょこりと大柄な天使の背から顔を出し、犬神・百合(ラストダンス・g05341)は家の中を覗き込む。
「ふふ、お二人ともお元気そうで何よりね」
「ああ、感無量だな」
本当に今日まで色々なことがあったからと、エトヴァは振り返る。だが室内の様子を見る限り、二人がここで慎ましくも恙ない日々を送ってきたのは間違いなさそうだ。
寝ぼけ眼のアレンとベラはひとしきり何やら言い合っていたが、来訪者達の姿を目に留めてアレンもようやく記憶を取り戻したらしい。微笑ましげに見守る百合の姿に気付くと、ベラは再び驚いたように目を円くした。
「あなたも来てくれたの?」
「お久しぶりです、ベラ様」
ちょんとスカートの端を摘んで一礼し、百合はにこやかに笑った。彼女が『花嫁』ベラと最後に会ったのは、湖畔に設けられた『竜の花嫁の別荘』で夕食を共にした席のことだ。
「またお逢いするのにお時間がかかってしまったのですけれど――ふふ、あの日からね? ベラ様が少しでも幸せになってくれていればって願ってましたの」
言葉を交わすほど、その表情を間近に見るほど、不思議と嬉しい気持ちが膨らんでくる。だって、彼女はもう一人ではないのだ。生きていたって誰の役にも立てないと決め込んで、人生に意味を見出せずにいた『花嫁』ベラはもういない。そしてその代わりに、前を向いた娘の側には彼女を支えるアレンがいる――どちらかといえば血腥い復讐者達の日々の中で、こんなに嬉しいこともそうはないだろう。
「でも、どうやってアイルランドへ?」
「ベルファストに向かう船が近くまで来ているんだ。二人とも、心の準備は良いかい?」
「ええ、勿論!」
エトヴァの問いに、ベラは素早く、きっぱりと応じた。彼女達に迷いがないのなら、復讐者達にもためらいはない。荷造りの手伝いを申し出ればありがとうと笑うベラの姿は、以前とはまるで別人のようだ。
元々侘しい二人暮らしだけあって、ベラ達の荷物は多くはなかった。少しの食糧と衣服を箱に詰め、エトヴァの手土産の草苺のジャムを一瓶その上に載せて、蓋を閉めたら準備は完了だ。
二人の無事と幸せを祈る野苺のアミュレットを二つ、ベラの手に握らせて百合は言った。
「ね、ベラ様。心穏やかになれる人と一緒に過ごす日々って、やっぱり素敵だったでしょう?」
彼女の瞳を見ていれば、答えは敢えて聞くまでもない。はにかむような表情に釣られるように微笑してエトヴァは言った。
「優しい意味は、見つかったかな」
さあ行こう――夜の森と野を越えて、二人を運ぶ希望の船の待つ海へ。沖合までの道行きは必ずしも平坦ではないだろうが、それにつけても問題はあるまい。なぜなら旅立つ二人には、復讐者達がついているのだから。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【浮遊】LV1が発生!
【未来予測】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV2になった!
●薄明航路
寄せては返す波の音にあわせて、洋上に大きな船影が揺れている。
月明かりを浴びて浮かび上がるのは、グレイスブリンガー――『竜の花嫁』という運命から解き放たれたかつての花嫁達を、新天地へと運ぶ恩寵の船だ。
復讐者達に連れられるままおっかなびっくり船の甲板へ乗り込んだ花嫁・ベラは物珍しそうに辺りを見回して、言った。
「この船で、アイルランドへ行くのね……」
船を出そう。西を目指そう。まだこの夜が、明けきらぬうちに。花嫁を探す竜達が、『彼女』の船出に気づかぬうちに。
月明かりの照らす海へゆっくりと滑り出した船上から東を振り仰げば、まだ眠りの底にある湖水地方を見下ろす空の端が微かに白み始めている。
鐘堂・棕櫚
【KB】
ベラさんとアレンさんで亡命ですか
竜達に蹂躙されるがままだった頃を思えば
幸せになろうと自ら動く姿のなんと頼もしい事でしょうか
恙無く出国を果たせるよう
微力ながら船上での警戒のお手伝いを
お久しぶりですと気安く声を掛けには行きますけどね
お元気そうで何よりです
そして今後もずっと元気でいられるよう陰ながら祈ってますよ
あ、うちの国では男女の門出に贈る祝言歌がありまして
高砂っていうんですけど一曲謡っ……あいた!
いやあ、長々とした祝辞より良いかと思ったんですがダメですか
骰さんどんどんオカンみたいになってきますね
ともあれ、未来に目を向けられたなら
其処にあるのは夜明けだけです
…頑張ってくださいね、お二人とも
鬼歯・骰
【KB】
諦め続けてるよりは随分良くなったんじゃないか
あの二人がきっちり亡命が完了するまで手を貸したいとこだ
海上の警戒をしながらも、ベラとアレンの姿を見たら挨拶をしに行こう
今まで慌ただしい状況ばっかりだったから
落ち着いて話すのも変な感じだな
若い奴にウザ絡みする酔っ払いじゃねぇんだからやめろ
余計な事を言い出す前にツリガネの頭は引っ叩いて黙らせよう
悪いな、コイツの言うことは無視しておいてくれ
ため息混じりに謝っ…なんで俺が謝らなきゃなんねぇんだ
誰がオカンだもう一回殴るぞ
まぁ、知らねぇ場所は大変だと思うが
一人じゃないならやってけるだろ
二人仲良く、笑って元気で過ごせよ
そんで今度こそ穏やかに暮らせるといいな
湖水地方西岸沖・洋上――。
「ベラさんとアレンさんで亡命ですか」
丸々とした月が示す光の道を、動き出した船がゆっくりと進んでいく。甲板の縁にもたれるようにして暗い海を覗き込み、鐘堂・棕櫚(七十五日後・g00541)はぽつりと言った。
「いやあ、今日まで色々ありましたねえ」
「だな。まあ、あのまま二人して諦め続けてるよりは随分マシになったんじゃないか」
こちらは太いマストに背を預けて、鬼歯・骰(狂乱索餌・g00299)がぶっきらぼうに応じる。あてどなく見渡す先には夜に黒々と沈んだ湖水地方の山野が広がっていた。初めてこの地を踏んだのはもう半年以上も前になるが、あの日のことはまるで昨日のことのように思い出せる。
「人間、変われば変わるもんだよな」
竜域の支配者たるドラゴン達にいいように利用されながら、それを運命と受け入れようとしていたベラとアレン――あの頃の二人からすれば、考えられない変化だ。見知らぬ土地で、それも二人で、新しい一歩を踏み出すのだと当時の彼らが知ったなら、どんな顔をするだろうか。
まったくと笑って、棕櫚は返した。
「アイルランドでの新生活は大変なこともあるでしょうけど、きっと上手く行きますよ。なんと言っても今度は、お二人が自分の力で幸せになろうと動いてるんですから」
「ああ。だけどきっちり亡命が完了するまでは、手を貸してやろう。最後の最後で邪魔が入っちゃ事だからな」
森の木々も、人々も、ドラゴンさえも夢の中にいるのだろう夜明け前。寄せる波と風の他には、何もない船の上。ぎしりと床板を踏む音に振り返って見るとそこには、見覚えのある姿があった。
「ベラさん」
「アレン」
二人が口々に名を呼ぶと、ベラはちらりと傍らの青年を見やり、はにかむような笑みを浮かべて会釈した。
「あなた達も、来てくれたの」
「ええ、勿論。お二人がつつがなく出国を果たせるよう、微力ながらお手伝いをと思いまして……お元気そうで、何よりです」
キャメロットを脱出して、既に二月以上。人目を忍んで隠れ住む生活であったと聞いたからどうしているかと思ったが、二人は想像していたよりもずっと元気そうに見えて、棕櫚は無意識に安堵の吐息を零した。この分ならアイルランドへ渡ってからの生活にも、取り立てて不安はないだろう。
「なんか、こうして落ち着いて話すのも変な感じだな……」
悪いことではないはずなのにと思わず苦笑して、骰は言った。夜の別荘に忍び込んでみたり、ドラゴンの目の前から攫ってみたり、思えば今日まで慌ただしくすれ違ってばかりいたような気がするけれど、積み重ねてきたものは時間がすべてではない。
そうだ、と手を打って、棕櫚は言った。
「うちの国では男女の門出に贈る祝言歌がありまして」
「しゅ、祝言?」
友達というには深入りし過ぎて、けれど恋人と呼べるような関係でもなく、まして家族でもない。けれどそう思っているのは、実際のところ本人達くらいのものだろう。ベラを死なせたくない一心でしきたりに逆らうことを選んだアレンを、ベラ自身憎からず思っているということは二人を見ていれば誰にでも分かる。
「高砂っていうんですけど、ここで一曲謡っ……あいた!」
「若い奴にウザ絡みする酔っ払いじゃねぇんだからやめろ」
ふわふわとした栗色の頭を割と容赦なく引っぱたいて、骰は言った。余計なことを言い出す前に止めようと思ったのに、まったくよく口の回ることだ。
「悪いな、コイツの言うことは無視してくれ」
「いやあ、長々とした祝辞よりいいかと思ったんですがダメですか」
「だめに決まってんだろが」
なんで俺が謝らなきゃなんねぇんだと、零した骰の溜息が深い。寄り過ぎた眉間を揉むその姿をまじまじと見つめて、棕櫚はこてんと首を倒した。
「……骰さん、最近どんどんオカンみたいになってきてますね?」
「誰がオカンだもう一回殴るぞ」
「やめてくださいよ、普通に痛いんですから――いだっ」
反射的に後ろ頭を庇った棕櫚の額に、容赦のないデコピンがびしりと決まる。案の定、絶妙な空気の中で視線を合わせられずにいるベラとアレンを見やって、鬼人はやれやれと所在なさげに短髪を掻いた。
「まぁ、知らねぇ場所は大変だと思うが、一人じゃないならやってけるだろ。二人仲良く、笑って元気で過ごせよ」
今度こそ誰に脅かされることもなく、穏やかに。
はい、とやけに畏まって応じた娘の声は微妙に上擦っていた。けれど今はそれさえ微笑ましく、棕櫚は眼鏡の奥の瞳を和らげる。
(「未来に目を向けられたなら、そこにあるのは夜明けだけですからね」)
誰かの助けがなくとも彼女達はもう、自分の脚で歩いていけるはず。穏やかな海風を帆に受けて、船は静寂の海を渡っていく。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【口福の伝道者】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV3になった!
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
ラズ(g01587)と一緒に
ベラさん達に紹介したい
こちらは、ラズ
初めてお会いした時に、話していた……
俺に優しい意味をくれた人だ
己を想う大切な人と共に在り、過ごすことは……
俺にも特別な意味をくれたんだ
ラズと顔を見合わせはにかみ笑い
それは奇跡のように素敵なこと
それでもう、俺の願いは伝わるかな
ベルファストは活気ある街。そこから新しい生活が始まるだろう
ベラさん達のこれからに、幸多からん事を
平穏結界を張り、警護を兼ね朝焼けの甲板へ
広がる海原、希望の航路
潮風に吹かれ、二人で水平線の果てを眺めよう
ラズの腰へ腕を回して寄り添い、心から笑いあって
鳥や動物の姿を見つけられるかな
ああ。二人の旅路に、光溢れますように
ラズロル・ロンド
エトヴァ(g05705)に連れられ紹介を頂き
こんにちは、ベラ君。アレン君。…や、そんな紹介は照れるな。
ラズロルだよ。
亡命、適って良かったね。二人で力を合わせれば、どんな場所でだってやっていけるよ~。
僕もエトヴァが居れば怖い物無しなんだから~。ね!
と、彼を見上げてエッヘン顔
エトヴァはああ言うけど…僕もエトヴァが居るから頑張れるっていうのも大きいんだよ?今は僕の方が頼りにしてたりして
と内緒だよとこっそり話し
道中の不安も大丈夫と元気付けよう
甲板に警戒に出れば
【動物の友】で近くに動物が居ないかなと挨拶してみたり
朝焼けを二人で見つめ
二人の行く末も輝きに満ちてるといいね
とアレン君とベラ君の無事を願おう
沖へ出るに連れ次第に強まる海風を受けて、西へ、西へ。進むほどに小さくなる陸地は、やがて水平線の向こうへと姿を消してしまった。来し方を振り返ればまだ星の瞬く空の端が、淡い紫色に白んでいる。
「ベラさん、ちょっといいだろうか」
夜気に冷え切った甲板を踏み、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)が言った。その隣に立つ青年は初めて見る姿で、ベラは小さく首を傾げる。
「憶えているかな――初めてお会いした時に、話したこと」
自らの使命を果たすためになら、その身を投げうっても構わない。竜の花嫁と呼ばれていた頃の彼女のように、エトヴァ自身もそんな風に思っていた時期があった。けれど――そんな彼を変えてくれた人がいたのだと、あの夜、花嫁の別荘地で彼は語ったのだ。
記憶の糸を手繰りながら、ベラは静かに頷いた。にこりと唇の端を上げて、天使は続ける。
「こちらが、ラズ。俺に優しい意味をくれた人だ」
「や、そんな紹介は照れるなあ。こんにちは、ベラ君。アレン君」
そう言って、ラズロル・ロンド(デザートフォックス・g01587)は気さくに笑いかける。
「亡命、適って良かったね。二人で力を合わせれば、どんな場所でだってやっていけるよ」
「ありがとう。そう言ってもらえると……少し、安心するわ」
陸地を無事に離れて少し、気が緩んだのだろうか。先程よりも幾分か和らいだ表情で、ベラは応じる。うんうんと頷いて、ラズロルは続けた。
「僕もエトヴァが居れば怖い物なしなんだから~。ね! エトヴァ」
「だといいんだけどな」
得意気に胸を張ったラズロルと顔を見合せてはにかむように零し、エトヴァはきょとんとして見つめるベラとアレンを振り返った。その眼差しは、深い共感と安堵に満ちている。
「己を想う大切な人と共に在り、過ごすことは……俺にも特別な意味をくれた。きっと、ベラさん達にとってもそうだろう」
誰かに想い、想われるということは、ささやかなようでいて奇跡的なこと。簡単なようでいて難しく――そして何より、素敵なことだ。
「ベルファストは活気ある街だ。そこから新しい生活が始まるだろう……お二人のこれからに、幸多からんことを祈っている」
行こうかとラズロルを促して、エトヴァは船首に向けて歩いていく。すかさずその後を追い掛けて――から数歩引き返し、ラズロルは耳を貸すようベラを手招きすると、その耳元でこそりと言った。
「エトヴァはああ言うけど、僕もエトヴァが居るから頑張れるんだよ。今は、僕の方が頼りにしてたりして」
生きる意味を互いに与え合える人がいれば、人はいくらでも強くなれる。内緒だよと囁いて、ラズロルは甲板を駆けていく。どういう意味と問う声が聞こえたような気がするけれども、それは彼女達が考えることだ。
駆け寄るラズロルを傍らへ引き寄せて、エトヴァは吹きつける潮風の中、東の空と海を振り返った。
「もうすぐ、夜が明けるな」
ブリテン島を飲み込んだ水平線の先に、白い光が溢れ出す。暗くさざめくばかりの波間に宝石のような耀きが踊り出し、海を渡る鳥達の声が聞こえてくる。遮るもののない海原に朝焼けの光が生み出す海の道は、まさに希望の航路だ。
「二人の行く末も輝きに満ちてるといいね――こんな風にさ」
「ああ。二人の旅路に、光が溢れますように」
あの日生きることを諦めなくてよかったと、諦めさせなくてよかったと、いつかお互いに思えるように。
どちらからとなく笑い合って仰ぐ空はいつの間にか、鮮やかな明け色に染まっている。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【平穏結界】LV1が発生!
【動物の友】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】がLV2になった!
【命中アップ】LV1が発生!
朔・璃央
双子の妹のレオ(g01286)と
ベラさん、アレンさんこんにちは
お二人が互いに手を取り合ってきたからこそ
今のこの結果があるのだと思います
あー……小麦はお好きに頂いてください
勿論、お二人なら新天地でも頑張っていけると思います
アレンさんは自分の意思を貫いて行動する力がありますし
ベラさんはアレンさんを信じる力をお持ちですしね
そこに得意なことが加われば百人力ですね
レオの言う様に寂しさはありますけれど
此処からがお二人の新しい人生のスタートですからね
これから出来るであろうたくさんの新しい思い出の
その何処かの中に埋もれてしまうのも
それはそれで良い事なのかなとも思います
行ってらっしゃい、元気で頑張ってください
朔・麗央
双子の兄リオちゃん(g00493)と
ベラさん、アレンさんこんにちは
こんな風にお船に乗っていると
2人が諦めたかったから本当によかったねって思うな
頑張って小麦運んだ甲斐があった
初めのうちは別の土地で大変かもだけど
2人ならきっと頑張っていけるよ
リオちゃんもそう思うよね!
ちなみに2人ってどんなことが得意なの?
その得意なことを活かして新天地でも頑張れたら素敵だなって思うよ
私達のこと忘れないでねって言いたい所だけれど
新宿島に私達が戻ったら記憶は消えちゃうのが
ちょっぴり寂しい……でも、悲しくないよ
だってこれがベラさんとアレンさんの門出だもん
私はきっと忘れないよ、2人のこと
行ってらっしゃい、元気で頑張ってね!
犬神・百合
*アドリブ歓迎
皆様のお話やお顔を見ていれば心が満ちていく
ああ、とてもいい日ね
それぞれの絆や想いがひとつになって今が在る
物語を世界を紡いでいる
ふふ、ねぇベラ様?
アレン様と二人できっと幸せになれるわ
お墨付きよ!
わたくし、素敵な未来と恋を占うのが得意なの
幸せにしてくれた素敵なお友達や
心から愛するひとと出逢えた
わたしからとっておきの魔法をお裾分け
夜が明ければ朝告げの鳥が鳴くわ
まるで今みたいに
どんなに暗い場所に居ても
わたし達は伸ばせるだけ手を伸ばしてその手を掴んで
愛や恋や想いに絆に明かりを灯したい
奪われ捕らわれそんな過去が明るく美しくあります様に
ただそれだけ──
さよならは言わない
きっとまた逢いましょう!
黄金の夜明けが瞬く間に飛び去って、数時間。寒々しくも高く明るい青空の下、船は順調に航海を続けている。
ベラとアレンを囲む甲板で他愛もない話に興じながら、朔・麗央(瑞鏡・g01286)は嬉しそうに口を開いた。
「こんな風にベラさんとアレンさんとお船に乗ってるなんて、なんだか夢みたいだよね」
彼女達を助けたい一心だった、とはいえ、がむしゃらにぶつかってきた間はこんな日がくるなんて思ってもみなかった。当てがあったわけでもないのに、なかなかの無茶をしたものだと少女はしみじみ振り返る。
そうだねと妹の言葉に頷いて、朔・璃央(昊鏡・g00493)が重ねた。
「お二人が互いに手を取り合ってきたからこそ、今のこの結果があるのだと思います」
「うんうん、それもこれも、二人が諦めなかったからだよね!」
麗央が満面の笑みで肯くと、ベラとアレンは照れ臭そうに、そして少しばつが悪そうに肩を竦めて、顔を見合わせた。
「そんな。あなた達がいてくれたから、私達は……」
「ううん、そんなことないよ。私達がいくら頑張ったって、二人にその気がなかったらきっとここまで来られなかったもの――頑張って小麦を運んだ甲斐があったよね!」
「小麦?」
「あー……」
首を傾げるベラに心なしか煮え切らない表情で、璃央は甲板の一角に目を向ける。そこには、出発前に双子がマンチェスターから拝借してきた小麦の麻袋が積み上げられていた。
「あの小麦はお好きに頂いてください。私達からのお祝いということで……出どころは聞かないで下さいね」
「はあ」
一瞬、ぱちりと瞳を瞬かせて、いいのかしらとベラは言った。しかしここで彼女達に使ってもらえなかったら、なんのために罪悪感を押してまで小麦を貰ってきたのだか分からない。
いいんだよ、と力一杯言い切って、麗央は続けた。
「初めのうちは別の土地で大変かもだけど、二人ならきっと頑張っていけるよ。ね、リオちゃんもそう思うよね!」
「ええ、お二人なら新天地でも頑張っていけると思います。アレンさんには、自分の意思を貫いて行動する力がありますし……ベラさんはアレンさんを信じる力をお持ちですしね」
「……………」
「ちょっとアレン、なに照れてるのよ……」
「君の方こそ」
顔が赤いよと指摘されると、ベラはわずかに頬を膨らせ、スカートの裾を握り締める。以前に比べるとその表情は、本当に豊かになったようだ。実によきかなと見守って、麗央は言った。
「ちなみに二人って、どんなことが得意なの?」
「俺は力仕事くらいしかできませんけど。ベラは、料理が上手なんですよ」
「ちょ――ちょっと、アレン!」
勝手なこと言わないでとベラは慌てて口にしたが、なるほど『誰の何の役にも立てない』という彼女の自己評価は、どうやら元々低過ぎただけなのかもしれない。なるほどと頷いて、双子は口々に応じた。
「そういうことなら百人力ですね。この小麦もお役に立ちそうですし」
「案外、レストランなんか開いちゃうのもいいかもね!」
新しい土地での生活は、いつだって期待に溢れているものだ。注ぐ日差しの明るさも相まってかいっそう賑やかに言い交わす四人の会話を、犬神・百合(ラストダンス・g05341)はにこにこと微笑ましく見つめていた。思わず零れた笑い声に気付いて、ベラは甲板の縁に座った少女を見やる。
「どうかしたの?」
「いえ、どうもしないわ。ただね、とってもいい日だと思ったの」
竜の花嫁となる娘を助けたい。
彼女を死なせたくないと願う一人の青年の、力になりたい。
復讐者達一人一人のそんな想いが一つになって、絆に変わり、今が在る。それはきっと今日まで関わってきた人々が、誰一人欠けても成し遂げることはできなかった結果だ。そうして紡がれた物語が、今もなおこの世界に続いている。そう思うだけで、心は優しく豊かに満たされていくようだ。
ねえ、と膝頭を揃えて姿勢を正し、百合は言った。
「わたくしね、ベラ様。素敵な未来と恋を占うのが得意なの」
「……え?」
「ベラ様とアレン様なら、二人できっと幸せになれるわ。わたくしのお墨付きよ!」
「!! だ、だから私達は別に――」
そんな関係では、とベラは言うけれど、二人がお互いに憎からず思っているのならそれだけでもう十分なのだ。復讐者達に載せられてすっかり赤くなった二人を穏やかに見つめて、百合は花の綻ぶように微笑する。
「夜が明ければ朝告げの鳥が鳴くわ。……まるで今、この瞬間みたいに」
親愛なる友人達、そして心から愛する人。彼らが百合の世界を幸せに溢れたものに変えてくれたのと同じように、新天地を目指す二人にも、その時は遠からず訪れる。
「だからこれは、わたくしからのお裾分け。何物にも代えがたい人が傍にいてくれるのは、とっておきの魔法なのよ」
どんなに暗い場所に居たとしても、伸ばした手を握り返してくれる誰かはきっといる。そしてその手を掴んだなら、愛や、恋や、想いや――絆が、暗がりを暖かく照らしてくれるはず。奪われ、囚われるばかりの日々も、過去に変えていくことができるはずだ。
「あ――見て」
船の前方をふと見やって、ベラが声を上げた。青い波を掻き分けてゆく船の舳先には、ぼんやりとした陸地の影が浮かび上がっている。ベルファストまでの船旅も、徐々に終わりに近づいているようだ。
極めて不鮮明な海岸線を指差しては語らうベラとアレンの姿を見つめて、麗央は少しだけ複雑な想いに駆られていた。
(「私達のこと、忘れないでね……って、言いたいところだけれど」)
二人をベルファストまで送り届けたら、復讐者達の役目は終わりだ。新宿島へと帰投すれば、二人の記憶からは再び、復讐者達の存在は失われるだろう。分かっていたことではあるけれど、いざとなるとやはり寂しいものだ。
「レオ」
ぽんと細い肩を叩いて、璃央は妹の名を呼んだ。ただ呼んだ、それだけだけれど――璃央が麗央の胸中を見通しているのと同じように、麗央にとっても双子の兄の考えていることは手に取るように分かった。
「……大丈夫。ちょっぴり寂しいけど――でも、悲しくないよ」
これが二人の門出なら、笑って送り出せばいい。そして二人が彼女達を忘れても――彼女達が、覚えていればいいのだ。
そうだねと微かに口角を上げて、璃央は応じた。
「俺達は、手助けをしただけだからね。これからできる新しい思い出の中に埋もれてしまうのも――それはそれで、いいことなんじゃないかなって思うよ」
これからの二人にはきっと、今日までの陰鬱な日々や思い出を塗り替えるような素晴らしい時間が待っているはず。次第に鮮明な輪郭を取り始める海岸線を眺めて、百合は呟くように言った。
「きっとまた、逢いましょう」
次に会うのはこの世界の、この場所ではないかもしれないし、姿形は見えないかもしれない。けれど時に隔てられても、紡いだ絆はつながっている。だから――さよならは言わないのだ。
新天地までの旅路も、あとわずか。グレイスブリンガー号は波を分け、二人の若者達を未来へと運んでいく。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【怪力無双】がLV2になった!
【友達催眠】LV1が発生!
【士気高揚】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV4になった!
【ダメージアップ】がLV4になった!