リプレイ
ジズ・ユルドゥルム
…不思議だな。
かつて対峙した時、お前は強大で冷徹な魔物に見えた。
だが、今は、まるでただの人間に見える。
あの時より、私が幾分かお前に近づいたからだろうか。
なぁ、ディヤーブ。
(地面に武器を突き立て、無手になる)
お前のアヴァタール級達と戦ったよ。
皆、我が身を顧みず「侵略者」と戦っていた。
彼らの目は揺らいでいなかった。今のお前と違って。
教えてくれないか。
お前には、何か、叶えたい願いがあるんじゃあないか。
私には、ある。
生きていた歴史を奪われた私の子と、彼が残した子供達を取り戻すため
私はここに立っている。
同情するためじゃない。
お前を斃した時、私が何を打ち砕くのか…
何を背負うのか知っておきたいんだ。
●願うものは同じ
やれるものならやってみろ。貴様は守護者足り得るのか、証明してみせろ。
そう告げるディヤーブに対し、この隠れ里の守り手は鋭い視線を返す。強大にして冷徹、相対するだけでも伝わる敵の気配に歯を食いしばりながら、打開の糸口を、勝機を見つけようと、懸命に。頬を伝う汗、細く震える吐息。けれどその次の瞬間、彼女は地面に武器を突き立てていた。
「……!?」
彼女の纏う雰囲気が変わったことに、ディヤーブもまた気付いていた。あえて武器を手放し無手となった彼女は、そう。この時代の『守り手』ではなく、宿縁を繋ぐパラドクストレインから転移したジズ・ユルドゥルム(守護者・g02140)だ。
「……不思議だな」
あの日の宿敵を前にして、彼女は小さくそう呟く。当時はおよそ及びもつかない怪物に見えていた相手だが、兜の奥の瞳を見据えれば、また違った姿が見えてくる。これが余裕の為せる業か、それとも――。
「なぁ、ディヤーブ」
――それとも、その心境を推し量れるほどに、自分が相手に近づいたゆえか。
「信じられないかも知れないが、私はお前の送ったアヴァタール級達と戦ったよ」
何を馬鹿な。ディヤーブがそう切って捨てられないのは、この世界への乱入者――パラドクストレインとディアボロス達の存在を察知したためだろう。
「皆、我が身を顧みず『侵略者』と戦っていた。彼らの目は揺らいでいなかったよ、今のお前と違ってな」
「戯言を。我が誓いが揺らぐことなど、ありはしない」
やはり、そうか。どこか確信めいた思いを胸に、ジズは改めてディヤーブに問うた。
「だったら教えてくれないか。お前の誓いを。叶えたい願いを」
答える義理などあるものか、と拒もうとする彼を遮って、ジズは言う。私は。
「生きていた歴史を奪われた私の子と、彼が残した子供達を取り戻すため、私はここに立っている」
この戦いに敗北し、後に復讐者となった彼女はそう告げる。名乗りにも似たその宣言に、歴史侵略者となったディヤーブは静かに応じた。
「我が民は一度滅びた。天よりの災いに呑まれたのだ。彼等は今、リターナーとして生きている」
遠征中に起きた悲劇。彼の街の人々は大半が死に、その大半がリターナーとして蘇り、また家族と共に暮らしている。
一度は守れなかった、ゆえに守護者は誓いを立てた。強く、強く。
「彼等の安寧こそが我が願い! 神々の作られる世界、彼等が今日を生きられるその世界を、我が身を賭して護り抜く!!」
その眼には些かの迷いも見えない。覚えのあるそれ、一度は自分の命を奪った気迫に、ジズは我が身が震えるのを感じる。けれど動く、あの時のように竦みはしない。
今なら言い当ててやれるだろう。先程まで見えていたディヤーブの揺らぎは、躊躇いは、守護者足ろうとするジズの言葉にかつての自分の姿を視たからだ。そしてそれが分かるのは、敗北と失意を経た『今のジズ』が、ディヤーブのそれと近しい状況にあるがゆえ。
彼等の願いはただひとつ。守護者の背負う、護るべきもの。互いのそれを見据えたことで、ようやくジズは敵に追い付いたことを感じる。渡り合うこともできるはずだと。
だからこそ、だろうか。先に動いたのは敵の側だった。
「――そのためならば」
大斧を手に守護者ディヤーブは言う。一歩を踏み出す。
そのためならば、他の全てを踏み躙っても構わない。私はどんな非道にも手を染めよう。
貴様はどうだ。
成功🔵🔵🔴
効果1【完全視界】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
カイス・ライル
誰しも、不当に脅かされるべきではない
誰かの都合を、奪う理由にしてはいけない
何より、ジズの大切なものは、俺も大切にしたい
ジズが、ジズの有り様に専念出来るよう、
隠れ里とひとびとは、必ず守ってみせる
『Asim』
靄めくジンの防衛幕を張り迎え撃つ
靄は触れれば急激に密度を増して敵を捕らえる
進退を許さないということは、ここで終いということだ
蟠るジンを獣爪に纏わせ、確実に生命を断ち切る
守るべきもの、護りたいものの為に尽くすのは、誰もに通る道理だろう
ジズの為になるのなら、無理も道理にしてみせるが
ひとりの敵も通さないよう、逃さないよう、戦況の把握と連携は意識的に
有用な残留効果は利用させてもらう
※連携、アドリブ歓迎
ケペシュ・ナージャ
ジズは彼らを守りたいんですよね
なら俺も手を貸しますよ
これだけ味方が揃ってるんだ、きっと何とかなるでしょう
なんて荒々しく傲慢で愚かな侵略者
砂に還りたくなければ退け
命を選別する権利なんて誰にも無いんだ
【防衛ライン】を張って立ち塞がりましょう
押し寄せる敵を迎え撃ち、『砂刃』で切り裂きます
生憎、剣を振るしか能が無いもので
斬って、薙いで
可能な限り数を減らすのが俺の役目です
志を同じくする戦友と駆ける戦場は、なんて楽しいものなんでしょう
纏めて来るがいい
決してここは通さない
※連携、アドリブ歓迎
ジズとカイス以外は名前+殿
アリア・パーハーツ
ねえ、大丈夫、約束する
ジズの大切な家族、絶対誰一人失わせないから
暴れたい、けど、今日は仕方ない
たまには人助けもしないとね
さあ武器商人のお通りなのだぜ
戦場の支配者に勝てると思うなよ、侵略者風情が
大砲も手榴弾も銃弾も豊富に抱えて援護しつつ周囲の警戒
【防衛ライン】を拝借、《地形の利用》《拠点構築》で境界線作り
味方と連携しながら誘導
【避難勧告】を使って赤い点滅を目印に
戦火の届かない場所へ少しでも早く
敵の手が伸びてくれば《高速詠唱》《罠使い》で妨害しつつ大きな独鈷杵をぶん回す
ボク様の間合いはそんな狭くないぞ
だァめ、ここから後ろは安全地帯
【PD通信】を利用して手薄な所には応援に行くのだ
▼
アドリブ、連携歓迎
ナディア・ベズヴィルド
故郷を奪われる苦しみを識っている。悲しみを識っている
だからこそジズさんの大切な人たちを傷つけはさせない
護りとおす!
有象無象湧いて出てくるな…
全てのクロノヴェーダは我が怨敵
先に進みたくば我らを倒してから往くがいい
――そうはさせぬがな…!貴様ら全て、滅してくれようぞ
【防衛ライン】を展開し、守護者たちの前に立つ
《風使い》《砂使い》で砂嵐を作り上げ、奴らの視界を閉ざし、行動を阻害させよう
足並みが乱れればそれだけ隙も大きくなる
大立ち回りをして奴らの注意を惹きつけよう
仲間と連携を取りながら『終焉の雷霆』を喰らわせてやる
反撃には【飛翔】で回避を試みて
【PD通信】を用いて敵の位置や陣形、動きを皆と情報共有する
●守護者達との対峙
ジズとディヤーブが対峙し、言葉を交わしているその頃、パラドクストレインを降りた他のディアボロス達は、隠れ里へと踏み込んでいた。
この場を司るクロノス級はそれに気付き、配下の者達に進軍の意思を伝えたのだろう、ジズとディヤーブの一騎打ちの結果を待たずして、彼等は里への侵攻を開始する。だが隊列を組み、槍を構えた『鋭槍の守護者』達の眼前に、俄かに砂嵐が巻き起こった。
「有象無象湧いて出てくるな……」
怨敵たるクロノヴェーダ、それに属する相手をそう断じ、ナディア・ベズヴィルド(黄昏のグランデヴィナ・g00246)が彼等の前に立ち塞がる。
「先に進みたくば我らを倒してから往くがいい」
故郷を奪われる苦しみを、そして悲しみを識るがゆえに、ナディアは決然たる意志を込めてそう告げた。
「どこの誰だか知らぬが、邪魔をするな」
「我等の前に立ち塞がるなら、お前達から打ち倒すまで……!」
この程度で怯みはしない。我等の守る世界のために。そう宣言した鋭槍の守護者達は、砂嵐を踏み越えるようにして、一斉に突撃を始めた。立ち上る砂煙と、その隙間で輝く槍の穂先、迫り来るそれらを、ケペシュ・ナージャ(砂蠍・g06831)が迎え撃つ。
「なんて荒々しく、傲慢で愚かな侵略者だ」
同時に、並び立つカイス・ライル(屍負い・g06804)がそれに頷く。誰しも、不当に脅かされるべきではない。誰かの都合を、奪う理由にしてはいけない。
二人の後方にあるのはジズの故郷であり、そこには彼女の守る子孫達が居る。ジズの大切なもののために、助力は辞さないと決めた彼等は、退くことなくその牙を振るった。
「隠れ里とひとびとは、必ず守ってみせる」
ジズの元に駆け付けることよりも、彼女が彼女の有り様に専念出来るよう、手を尽くす。
カイスの契約したジンによって、靄の幕がその場に広がる。人々の住まう里を敵の目から遮り、そして同時に、ここが行き止まりであると宣言するように。そして一方のケペシュは、その名の通りの刃を手にして前に出る。
「砂に還りたくなければ退け。命を選別する権利なんて誰にも無いんだ」
彼等の唱える『世界のために』という言葉を否定し、ケペシュの双剣の軌跡が青く輝く。次の瞬間、そこに生じた衝撃波が、近づく敵をまとめて薙ぎ払った。敵陣の只中で踊る彼は、先程の砂嵐を超える荒々しき風となって敵を切り裂く。
「盾を構えろ、押し返せ!」
とはいえディヤーブの尖兵達もそれだけで倒れるわけではない。盾と、そしてその鋭い槍を手に反撃に出た。
後方より疾走してきたマミーの突きが衝撃波を生み出し、その内一つがカイスを穿ち、吹き飛ばす。後退させられた彼が靄の中に消えるのを見て、敵はすかさずその後を追うが、その靄の中に一歩踏み込んだ途端、足が止まった。
「何だ……?」
突如密度を増した周囲の靄が、その身を包み、自由を奪う。一度それに囚われれば、進むも退くも儘ならない。進退窮まれば、残っているのは――。
「ここで終いということだ」
体の自由と視覚を奪われたマミーに、放たれた鬣犬の唸りが届く。蟠るジンを纏わせたカイスの獣爪が、その尖兵を一撃で屠った。
「怯むな、突破しろ!」
なおもカイスを打ち払い、靄の先を目指そうとする連中の前に、今度はアリア・パーハーツ(狂酔・g00278)が立ち塞がる。
「だァめ、ここから後ろは安全地帯」
靄を割って現れた彼女は、手にした独鈷杵を思い切り振り回し、迫る敵を一歩退かせる。
牽制の一振りと、仲間との連携。協力して場を整えながら、彼女は扱う商品をその場に広げた。
「さあ武器商人のお通りなのだぜ」
銃器に大砲、手榴弾、「我こそは戦場の支配者」と名乗らんばかりの品揃えを展開し、アリアは敵を近付けぬよう努める。
そうして進軍を阻まれ、侵攻速度と共に隊の動きが鈍ったそこに、影が差した。
「護りとおす、そのためならば――」
見上げたそこには、ナディアの呼んだ黒雲が広がっている。陽光を呑み込むような局所的な闇の中、光が走った。
「――貴様ら全て、滅してくれようぞ」
『終焉の雷霆』、ナディアの放つその力に応じて、上空に集まった黒雲から、雷光と言う名の鉄槌が振り下ろされる。次の瞬間、砂漠の地形を穿つような一撃が敵陣に大きな穴を開けた。
「やられるものか、我等はまだ戦える!」
後続の兵隊がそれを埋め、反撃に出る中、彼女は空中へと逃れていった。
その間隙を突くように踏み込んできた一体、盾を手にしたその突進に、ケペシュが応じる。盾をぶつけるという単純だが強力な一撃に対し、彼はそれを踏み台のように蹴り付け、衝撃を殺しながら後方へと跳んだ。手応えの無さに焦ったマミーが距離を詰めようと試みるが。
「――させない」
靄が追い打ちに来た敵を捕え、獣の爪が敵を切り裂く。さらにはアリアの援護射撃によって生じた衝撃波が、後続を断ち切った。
「ボク様の間合いはそんな狭くないぞ」
好き勝手出来ると思うな、と戦線全体に目を光らせながら彼女は言う。そうして薙ぎ倒された敵の上を、僅かに口の端を上げながらケペシュが駆けた。志を同じくする戦友と駆ける戦場は、かくも楽しいもの。疾走と共に放たれた鋭い剣閃が、敵を盾ごと両断する。
動揺の走る敵陣を見下ろすようにして、彼は言う。
「さあ、纏めて来るがいい」
「一人たりとも、ここは通さん」
「ま、約束しちゃったからね」
大丈夫、ジズの大切な家族は、絶対誰一人失わせない。ケペシュとカイスに続いて、アリアも得物を手に次なる敵を狙う。
まあ、本音のところで言うのなら、もっと自由に暴れたいが、たまには人助けも良いだろう。
彼女が憂いなく振舞えるように。そして、それを後悔させないために。覚悟を決めたディアボロス達は各々に戦い、最前線に越え難い壁を築いていった。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【防衛ライン】LV2が発生!
【避難勧告】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【ダブル】LV2が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
穂村・夏輝
ディヤーブは死者の書の間で戦ったくらいでしかなかったけど、その時は正々堂々とした戦士のイメージだったんだよね。まさか、過去にこんなことをしていたなんてね。何か事情があったとしても、俺のやることは変わらないけどさ
「ここから先は通さないよ」
【アヌビスウィスプ】で先制して攻撃を仕掛け、気をひくよ。謎の勢力がジェネラル級のパラドクスを使用したのであれば、相手は混乱するか警戒するか……少なくともこちらを無視して里の人々に攻撃を加えようとはしないはず
「エンネアドはエジプトの民を守るものじゃなかったのかな?」
如月・友仁
ジズくんは凛々しくて格好良い自慢のお友達だけど
その力の源泉は、この子たち……なのかな
ま、僕はいつも通り彼らの遊び相手になってあげるだけさ
ジズくんのお喋りを邪魔させないようにね
遊撃メインでなるべく派手に立ち回るよ
【飛翔】で高く飛び上がり、大鎌の刃に輝く炎を潜らせて攻撃
僕と守護者くん達、お互いにお互いがよく視えるように
飛翔状態は極力維持
おいで、もっとこっちで遊ぼうよ
相手が地形を利用するなら、此方も地形の利用で対抗
突撃は大鎌の旋回で捌いて
砂煙が巻き起これば、光使いで目眩ししながら再度攻撃
高所で得た情報は皆へ共有
特に、はぐれて孤立した人・近くに復讐者がいない人を優先で探す
【パラドクス通信】があれば使用
ルーシド・アスィーム
…ジズさん、貴方の大切な人は僕達が守ります
だからどうか、前だけを見て
人命救助最優先に遊撃
慈悲はありません、滅びなさい
「カルガの黎明」にて悪しき魂滅ぼす舞を此処に!
討ち漏らした敵はジン、サディークに技能を駆使しての切り払いを依頼
併せて皆様の胸を借ります!
事前にジズさんに集落図を書いて頂き「スーパーGPS」「パラドクス通信」展開
皆様からの情報を元に防衛線以外からの侵入者や戦況を偵察し変化を逐一報告し、柔軟な戦闘態勢構築を留意
情報を制する者が戦場を制しますから
保護した人は一番大きな家へ誘導
周囲に「結界術」「拠点構築」「浄化」「光使い」で結界構築
阻めれば最良、無理でも時間稼ぎになれば
連携、アドリブ歓迎
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎
ジズさんの大切な家族、大切な縁、大切な場所
守り抜く為にここにいる
ジズさんの力となるために
理不尽な殺戮はここで阻止する
侵略者よ
俺達は、理不尽に負けはしない
前に出て率先し戦闘、敵を抑える
里の人々は仲間に任せ
俺は敵を近づけさせぬよう防衛
【飛翔】の機動力を活かし一体たりとも通さない
【防衛ライン・PD通信】があれば発動し連携を
戦況を偵察、観察
敵味方の位置を把握し、防衛線の穴を埋める
攻撃して敵の注意を惹きつけ
フリーな敵を優先して足止めし、味方と狙い合わせ着実に数を減らす
陣の要を看破し、撃ち崩そう
里へ抜ける敵は追跡し倒す
反撃には魔力障壁を展開し
陣形を観察し狙いを看破、飛翔とフェイントで回避を
●遊撃隊の攻防
隠れ里へと攻め来るディヤーブの尖兵達。その前衛から少し離れ、遊撃に回ったのであろう部隊の動きを察知し、穂村・夏輝(天使喰らいの復讐者・g02109)がそちらへ応戦に向かう。このまま住居の立ち並ぶ区画に入られれば、民間人に被害が出てしまう可能性が高いだろう。放っておくことはできない。
以前死者の書の間で戦った守護者ディヤーブ……アヴァタール級として現れた彼と戦った際には、正々堂々とした戦士のような印象を抱いた。しかしこの場、この時代での行いは、その印象からは思いがけないようなもので。
「まさか、過去にこんなことをしていたなんてね」
クロノヴェーダであるとは言え、何か事情があるのだろうか。自然とそちらに思考は向くが、それはそれ。
「……だとしても、俺のやることは変わらないけどさ」
夏輝はこの場で果たすべき使命のため、剣を構えた。
飛翔し、上空から敵の動きの把握に努めていた如月・友仁(ユアフレンド・g05963)とエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)、そしてルーシド・アスィーム(星轍・g01854)もそこに駆け付け、突撃陣形を取る敵を迎え撃つ。
「ジズくんは凛々しくて格好良い自慢のお友達だけど、その力の源泉は、あの子たち……なのかな」
背に守る里の家々をちらと振り返り、友仁が呟く。風を切り、敵の前へと舞い降りながら、エトヴァもそれに頷いた。
彼女の大切な家族、大切な縁、大切な場所、それらの一つたりとも踏み躙らせはしないという決意を胸に。
「ジズさんの力となるために――」
「……ジズさん、貴方の大切な人は僕達が守ります」
だから、どうか振り向くことなく、前だけを見て。そう祈りながら、ルーシドは敵の前へと踏み出した。
「慈悲はありません、滅びなさい」
悪しき魂を滅ぼすべく、舞に合わせてカルガの幻が浮かび上がる。描き出されるのは死者の悲嘆の冷気と、天陽の灼熱。
「この程度で、我等の歩みは止められんぞ」
氷と炎に責め苛まれながらも、鋭槍の守護者達は前へと進む。その侵攻を阻むため、続けて夏輝が剣を振るった。
「ここから先は通さないよ」
刀身から放たれた光が、霊的エネルギーとなってジャッカルの群れを形作る。彼の意に従い一斉に襲い掛かるそれは、ジェネラル級であったアヌビスの用いるパラドクスと同質のものだ。
「おのれ。よりによってアヌビス神を真似るとは」
「不敬な……!」
やはりそれは無視できるものではないのか、喰らいつくジャッカル達に足を止められ、苦々しい表情を浮かべた彼等は、怒りに燃える目で夏輝を睨む。
まぎれもなく本人の技なのだけどね、と呟きつつも、彼は首を横に振って応じた。
「エンネアドはエジプトの民を守るものじゃなかったのかな?」
「何を言っている? これは、そのための戦いだろう」
エンネアドの支配する『獣神王朝エジプト』、それを確立するための最終段階の時空に彼等は居る。反抗勢力、そして不要と断じた民を排することこそが彼等の使命だ。傷付きながらもジャッカルの群れを打ち払うようにして槍を振るい、鋭槍の守護者達は夏輝に反撃を加えた。
突撃を仕掛けたマミーの槍が眩く光を反射して、砂漠の風に鮮血が散る。しかし別の兵が追撃にかかる前に、エトヴァの放った銃弾がその頭を抑えた。
彼等がもたらそうとしている理不尽な殺戮、それはこの場で阻止するべきもの。それゆえに。
「侵略者よ、俺達は、理不尽に負けはしない」
宣言と共に風を切り、大型拳銃で敵を狙う。撃ち抜くべきは敵の陣形の要、攻撃の際に生まれる乱れを見出し、貫く。そうして敵の動きを阻害するようにしながら、彼は空を自由に舞い踊る。
「叩き落とせ!」
だが、使命に燃えるのは敵もまた同様、盾を構えた前衛の影から、後衛が衝撃波で天高く跳ぶエトヴァへと反撃し、その翼に傷を負わせた。
「おっと、僕とも遊んでおくれよ」
そんな彼等の元に差す影は、大鎌を掲げた友仁によるものだった。次の瞬間掲げられた刃に炎が生じ、燃え盛る赤が三日月を描く。突撃してくる敵の槍を、旋回する大鎌で捌き、砂煙と共にもう一つ高く飛び上がる。
敵の目を引けるよう派手に、そして華やかに。降下と共に弧を描く大鎌がマミーの一団をまとめて斬り裂き、焔の色に染め上げた。
「さあおいで、もっとこっちで遊ぼうよ」
砂塵の上で燃える月が、双方を眩く照らし出した。
ステージへと視線が集まれば、当然隠れ里から注意は逸れる。ひいてはジズの懸念も晴れるはず。彼女のお喋りにも、こうすれば邪魔は入るまい。
空を舞い、敵の動きを抑え込みながらも、エトヴァと友仁は周囲へ目を配ることを忘れない。
「今のところ、他に侵入してくる敵は居ないようだが……」
「はぐれたのかな、迷子が一人いるね」
彼等が空中から把握した情報は、余さずルーシドの元へと伝えられる。地図を広げた彼は、早速状況の把握にかかった。
事前に用意した地図には、スーパーGPSによる現在地が刻まれている。敵の侵攻に対する迎撃は今のところ問題ない。後の懸念は民間人の扱いになるだろうか。
「避難してもらえそうな場所は……」
ざっと視線を巡らせてみるが、それは所詮地形図だ。事前にジズから状況を聞き取ったものの、『敗北した』彼女はこの時の敵の全容までは知りえていない。外の状況もわからぬまま、子供や老人を含めた住民を、当てもなく外部に逃がすのは得策ではないだろう。
「……やはり、守れる場所に居てもらうべきですね」
幸い、彼等が里で一番大きな建物に身を寄せていることは上空からの観察でわかっている。
「逃げ遅れている方を拾ったら、そちらに連れて行ってください」
戦線維持に気を配り、応戦しながら、ルーシドは民間人の救助へ向かう味方へと連絡を取った。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【断末魔動画】LV1が発生!
【飛翔】LV2が発生!
【スーパーGPS】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV2になった!
【グロリアス】LV1が発生!
不知火・紘希
世界が悲しい黒い靄で溢れることは必ず止める。僕、もう誰も置いていかないって決めたんだ。
ジズさんの大切な人たちは奪わせない……!
仲間の残留効果を借りて、情報共有しながら素早い避難誘導を目指すよ。
トループスの敵が襲ってきたら、リピートベインで撃退。被害を減らすために注意を惹きつけるね!
それからあらかじめつけた目印や、描き出した皆の影(残像)を頼りに、協力して避難してもらうよう声がけして安全な方へ誘導するよ。
仲間とはよく連携して被害軽減と戦闘サポートを努めるよ。たとえ不安でも、ジズさんが心配でも勇気だして笑みは絶やさない。
ここから希望は始まるんだ。君たちの勝手で終わらせたりしないよ!
アドリブも歓迎◎
リドリー・バーディ
エジプト風の衣装を着て里へ
万一の場合に備えて下準備をね
皆、友達だよね?
君と僕は『筒井筒』、知った仲だよね
里のまとめ役の人に大事な話をしに来たよ
ジズの手配でこの里を守りに来てる人達がいるんだけど、皆にも協力してほしいことがあるんだ
落ち着いて、一箇所にまとまって、指示に従ってくれること
守る人が守りやすいように、守られる人にしかできないことだよ
皆がそうして応援してくれたら、それが守る人の支えになるから
里の皆を一番大きな家に集めて、大人は子供達の相手をお願い
僕は異変があればすぐ移動させられるように戦況を見てくるね
防衛ラインを張る仲間の後ろから、友達面して挑発三昧の口撃
最後にわらうのは君達じゃあないよ
●隠れ里の人々
世界が悲しい黒い靄で溢れることは、必ず止めてみせる、もう、誰も置いていかないと決めたのだから。
そんな決意を胸に、不知火・紘希(幸福のリアライズペインター・g04512)は隠れ里の住居の方へと引き返す。ルーシドからの連絡を受けた彼は、一人はぐれたと思われる民間人の少年の元へと向かっていた。
「ジズさんの大切な人たちは、奪わせない……!」
『リピートベイン』、先程ケペシュの振るった剣閃をなぞり、斬撃が鋭く弧を描く。迫る鋭槍の守護者を切り裂いて、駆け抜けた紘希が見つけたのは、彼よりも背の低い少年だった。
「だ、だれ……?」
「ええっと――」
どう言えば通じる? 怯えた少年をどう落ち着かせるか、というところで、リドリー・バーディ(chitter-chatter・g08402)がその続きを引き継いだ。
「ジズの友達だよ。安心して」
ほら、これで君と僕も友達だ、仲良くしよう。友達催眠効果を活かしつつ握手を交わして、リドリーは早速その手を引いた。
「それじゃ、君も皆のところに避難しよう」
「こっちだよ!」
先行する紘希の案内に従って、彼等は隠れ里の中心部、一番大きな建物まで走っていく。里の長が住んでいるか、集会所として使われているか、はたまたその両方か――そんな風情の建物は、扉がきっちりと閉じられていた。
とりあえずノックでも、と近づいたリドリーは、その向こうの剣呑な気配を察知して足を止める。さすがに襲撃者が来ている状況だけに、かなり警戒されているようだ。
彼の目配せに頷いて、紘希が彼等に向かって声をかける。
「サフルくんを連れてきたよ、開けてもらえる?」
「さ、サフル!?」
扉、ではなく脇の方の窓から、母親らしき女性が顔を出した。
「ジズの手配でこの里を守りに来てるんだけど……この中にまとめ役の人っているかな?」
どうやら扉の方は裏から塞がれているらしい。サフル少年を窓から家の中に居れて、リドリーが問うと、イザと名乗る壮年の男が二人の前に姿を見せた。
「ここに集まってるのは誰かの指示かな?」
「ああ、大婆様が、自分戻ってくるまでは決して開けるなと」
「おおばあさま……」
その言葉の響きと見知った彼女を結びつけるのに少々時間はかかったが、言われてみれば男性の目元にはジズの面影があるような、と紘希が頷く。
何にせよ、そういうことならば話は早い。落ち着いてここに隠れているように、リドリーは彼等にそう伝えた。
しっかりとそれに頷いた後、それを確認して去ろうとしていた二人に、イザが声をかける。
「なあ、大婆様は……」
「うん、絶対大丈夫だよ」
余計な心配をかけないように、先回りして紘希が笑みで請け負い、リドリーもまた、明るく請け負って見せた。
「皆がそうして応援してくれたら、それが守る人の支えになるから」
だから信じて待っていてほしい。そう言い置いて、二人は戦場へと舞い戻る。
「――最後にわらうのは君達じゃあないよ」
「ここから希望は始まるんだ。君たちの勝手で終わらせたりしないよ!」
隊列を組んで攻め来る敵に抗い、二人はそれぞれ鋭槍の守護者達を迎え撃った。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【過去視の道案内】LV1が発生!
【友達催眠】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!
サアシャ・マルガリタ
連携・アドリブ歓迎
ふふり。ジズのためならひと肌でもふた肌でも脱ぎましょうです!
……故郷は大事、ですからねぇ
敵の足止めをするです
里の皆さんのところには行かせませんよう?
ここにいて下さいな!
大勢に対しては
言葉を乗せた強力な向かい風で行く手を阻むです
ひとりだってすり抜けさせはしませんよう
どこへも行かないで下さい。サアシャのそばに居て下さい。それがサアシャの願いですから
【未来予測】して
仲間の元へ単独の敵が迫っている時は警告するです
同時に、風塵魔術で目潰ししたり
敵の足元の砂をごっそり崩したりしてアシスト
卑怯だろうが何だろうが、大事なものを守るためならなんだってやりましょう
残留効果も利用させてもらいますね
タオタオ・ザラ
現場に乗り込んだら、大げさに得物を振るって斬りかかる
すこしはこちらを見てくれるかね?
にゃはははは!ご覧の通りタオは礼儀も教養もねぇからさ!悪いな!
言葉を交わしたいとは思わない
目的を知りたいとも思わない
でもな
ジズから聞いたことがあるんよ
消えてしまった家族の話を、それを取り戻したいことを
だから死んでくれ、ひとり残らず殺してやる
てのひらのなか、砕くは琥珀状の魔石
喚び出されたのは大蛇の姿をしたジンの分霊
シャムと名を呼んで額をそっと撫でて
サ、やろうか
アイツらぜぇんぶ、丸呑みだ
討ち逃したとしても、シャムが喰らってくれるだろ
ふはは、最高の気分だな!!
●
アドリブ・連携大歓迎
旅団【まのもの】以外の方は、名前+殿
一里塚・燐寧
エジプトでお世話になった仲間が、一世一代の決戦に挑むんだ
あたしも手を貸すよぉ。ジズちゃん、露払いは任せてぇっ!
安全確保は仲間が万全にやってくれてる
あたしは前線で敵を殺せるだけブッ殺していくよぉ
迫りくる守護者たちを迎え撃つべく≪DCブラスター≫を中腰の砲撃姿勢で構え
なるべく多くの敵を巻きこめるように、高速詠唱で隙を軽減しつつ『闇雷収束咆・怨響波』を放つ!
広く拡散する無数のプラズマ弾で、盾の護りを擦り抜け身を焼き尽すよぉ
ほーら、見てごらん、砂の海に沸き起こる灼熱の波をさ。ざばーんと飲み込まれちゃいなよぉ!
砲撃で敵を吹き飛ばし
反撃の陣形に穴を開けて威力を軽減
更に槍の攻撃を武器の刃部分で受けて防ぐよぉ
ゼキ・レヴニ
前にディヤーブの分体と対峙するジズを見た時
只ならねえ気迫だと思ったが――こういう事か
ならその願いを果たす勇姿を見逃す訳にゃいかねえよな
助太刀するぜ、ジズ!
『躯』を鉄条網に変じ腕に巻付け突撃*
派手に強打*し敵を引きつけるぜ
里への侵攻を遮るように【防衛ライン】を展開
他の使用者と合わせラインを広げ敵の突破を阻止しつつ
味方が範囲攻撃で討ち漏らした敵や瀕死のを狙ってく
近くに里人が居るなら、敵勢の展開状況を見て
安全な場所への避難呼びかけを判断
有用な効果は大いに利用し連携
今のジズの紡いだ縁
過去から繋いでいきたかったもんも
全部、無駄に出来るかよ
こいつら手早く片付て、手伝いに行かねえとな
*=技能
アドリブ連携歓迎
●露払い
攻め来る軍勢を押し留め、逃げ遅れた人々を避難させ、敵の頭数を削っていく。この地に駆け付けたディアボロスと、隠れ里を襲う鋭槍の守護者達との戦いは佳境を迎えていた。
「いつまで抑え込まれているつもりだ!」「続け、押し通るぞ!」
攻めあぐね、焦った敵が懸命の反撃に出たところを、ゼキ・レヴニ(Debaser・g04279)が受け止める。
「しぶてえな、邪魔するなよ!」
役割は勿論理解している、それでも敵将の前に居るであろうジズのところへ、早く助太刀に入りたいという思いは抑えられるものではない。以前ディヤーブの分体と戦った時の気迫を、彼もまた目にしているのだから。
「今回も見逃す訳にゃいかねえよな?」
「そういう動機ですか!?」
軽口にそんな反応を返して、サアシャ・マルガリタ(えいえいお!・g05223)が小さく笑う。不謹慎な物言いには違いないのだろうが、まあ。
「ジズのためならひと肌でもふた肌でも脱ぎましょうです!」
「あたしも手を貸すよぉ。ジズちゃん、露払いは任せてぇっ!」
気合が入っているのはこちらも変わらない。ゼキが押し留めるその敵陣へ、一里塚・燐寧(粉骨砕身リビングデッド・g04979)が牽制の砲撃を加える。その間に、サアシャは大きく息を吸い込んで。
「ここにいて下さいな!」
その言の葉に込めて魔術を放った。俄かに巻き起こる風は嵐となって、砂塵と共に敵陣へと吹き荒れる。さすがに敵をまとめて吹き飛ばす――というところまではいかないが、盾を構えて伏せた彼等は、自然と足を止めることになった。
彼女の狙いは勿論『侵攻の阻止』、ジズにとっても大事なはずの、故郷を守ることだ。
「里の皆さんのところには行かせませんよう?」
彼女の言葉に「そういうことだ」と頷いて、ゼキが大きく前に出る。敵にとっての向かい風は、彼にとっては追い風となる。背を押される形で前進した彼は、その場に『躯』を展開した。
「この防衛線、越えられると思うなよ」
鉄条網と化したそれを腕に巻きつけ、先程突っ込んできた前衛の兵を絡め捕る。敵もまた彼の迎撃に動こうとするが、吹き荒ぶ突風が止むことはなく。
「どこへも行かないで下さい。サアシャのそばに居て下さい。――それがサアシャの願いですから」
「知ったことか、貴様の願いなど――!」
叶えられるべきものはそれではない。そう断じ、風を貫くようにマミーの一人が槍を振るう。砂を蹴り付け踏み込むその一体の前に。
「ああ、それは同感だ!」
にゃはははは、とゆるい笑い声を響かせながら降り立ったタオタオ・ザラ(大喰らい・g05073)が、曲刀でその攻撃を受け流す。相手の言うそれには全く同感、言葉を交わしたいとも思わないし、目的を知りたいとも思わない。もちろん、敵の願いを聞いてやるなどもってのほかだ。
「ご覧の通りタオは礼儀も教養もねぇからさ! 悪いな!」
語る言葉と同様に、軽妙に敵をあしらって、タオタオは手の内で琥珀状の魔石を砕いた。
解き放たれ、喚び出されたジンの分霊、大蛇の姿をしたそれが、タオタオに侍り、鎌首をもたげる。
シャム、と名を呼んだ蛇の額を撫でてやりながら、彼は警戒して後退る敵を睥睨する。理解はしない。知ろうともしない。ゆえに同情もしない。思い出すのはジズから聞いた、消えてしまった家族の話だ。それを取り戻したいと彼女は言った。今はそれだけで良い。
「――だから死んでくれ、ひとり残らず殺してやる」
大蛇の齎す加護をその手に、彼は足を止められた敵陣へと切り込んでいった。
「サ、やろうか。アイツらぜぇんぶ、丸呑みだ」
強化された斬撃が、盾の上から敵のマミーを斬り伏せる。軽やかに舞う彼の隙を埋めるように、大蛇が牙を剥いて、彼を中心に、敵の隊列は大きく掻き乱されていく。
しかしながら敵もやられっぱなしではない。倒された味方を踏み越えるようにして、マミー達はタオタオを包囲しはじめた。
「待ってましたぁ! ダババーっていくよぉ!」
ついでに言うなら上手く避けてねぇ。そう告げて、燐寧が中腰に構えたDCブラスターの引き金を引いた。こうして敵が固まるタイミングを狙い、十分にチャージされたそれは、プラズマ弾を解き放つ。
エジプトで幾度も共に戦った仲間の、一世一代の決戦だ。熱く輝くこの弾丸は、それを彩るには丁度良いだろう。
『闇雷収束咆・怨響波』、波状に大きく広がるプラズマ弾は、構えられた盾をすり抜け敵を焦がす。それはさながら、砂の海に沸き起こる灼熱の大波。
「ざばーんと飲み込まれちゃいなよぉ!」
反撃の陣形を組むことすら許さず、燐寧の一撃は鋭槍の守護者達を呑み込んでいった。
「あとは殺せるだけブッ殺していくよぉ」
「ふはは、最高の気分だな!!」
炎の波が行き過ぎて、チェーンソーを掲げた女と、大蛇を従えた赤髪の男が敵を蹂躙していく。それらの勢いは、ここまでの戦いで数を減らした鋭槍の守護者達ではとても抑えきれないもので。
「このままでは、我等のみならずディヤーブまでも――」
「もう遅いんだよねぇ」
苦し紛れに振るわれた槍を、燐寧が銃身についた二本のチェーンソーで叩き切る。次の瞬間、砲口から再度の炎が迸り、抵抗を許さぬままにマミー達を焼き尽くした。
残る敵は僅か、だがリーダーであるクロノス級のためと、覚悟を決めた彼等の士気は高い。その最後の抵抗を断つように、再度の風が兵達の周りで渦を巻いた。
「おのれ……!」
風に巻かれた砂が舞う。目潰しと足元崩し、見方によっては周到とも姑息とも取れるその一手に、苦々しい呻きが漏れる。しかしそれを察してなお、サアシャは手を緩めなかった。
「――大事なものを守るためなら、なんだってやりましょう」
彼女にとって、手を尽くすとはそういうことだ。そうして撹乱されたそのトループス級を、ゼキが容赦なく叩き伏せた。
「こいつら手早く片付て、手伝いに行かねえとな」
ここに居る仲間も、彼等の振るう力も、今のジズの紡いだ縁だと彼は見ている。だからこそ、全て無駄にはできないのだと。
後は繋いだそれらが、失われた過去まで届くか否か。
それがわかる瞬間は、もう目の前まで来ているはずだ。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【未来予測】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
【罪縛りの鎖】LV1が発生!
【防衛ライン】がLV3になった!
効果2【ダメージアップ】がLV6になった!
【命中アップ】がLV3になった!
●守護者達の誓い
――貴様はどうだ。そう問いかけたディヤーブに対して、ジズからの答えはない。
両者がさらなる言葉を交わすよりも、そして刃を交えるよりも早く、パラドクストレインを降りたディアボロス達が、里の人々に迫る尖兵達を殲滅したのだ。
「……余程の腕利きを集めたと見える」
一度は構えた大斧を引き、ディヤーブは散っていった仲間のために瞑目する。悠長にも見えるそれは、彼の覚悟のために必要な時間だったのかもしれない。
『守れなかった』という過去を持つ彼は、自分の力が万能ではないことをよく知っている。
「守護者達よ、我が同胞よ――今こそ、世界を護る誓いを果たさん」
だからこそ、最善を尽くすよう努めるのだ。たとえそれが非道の行いであろうとも。
「もう一度、立ち上がるのだ」
その呼びかけに、改竄世界史を護るために散った勇士達が応える。ディヤーブに近しき者達、その大半は、共に戦いこの隠れ里への侵攻にも加わっていた――つまりは、先程ディアボロスに討伐されたマミー達だ。
地の底より這い出た霊は、それぞれに戦い敗れた者達の肉体を引きずっていた。
「あア、守護者ディヤーブよ。我等はタタカウ」
「共に、征こう。たとえ魂マデ朽ち果てよウとも――」
剣で分かたれた体を接いで、銃撃で開けられた穴を誰かの破片で埋めて、炎と雷によって焼けた身体を引きずりながら、彼等はその身を立ち上がらせる。
その身体はどれも不完全で、ぐずぐずと朽ちかけていた。だがディヤーブと共に立ち、盾となり剣となるそのためには、肉体が必要なのだ。
頭部さえも朽ちかけた彼等は、肉体を得ると同時にまともな思考を失っていく。それゆえに、その口から零れ出すのは意味など持たぬただの音。いつかの誰かの繰り返し。
「俺タチの、家族。大切ナ、人達……」
「ワレ等の、希望は?」
「守り抜く。守り抜く為に……タタカえ!」
その身が滅びゆくことも厭わず、その身を爆ぜる武器と化すことも躊躇わず、『屑人兵』となり果てた彼等はディヤーブと共に戦線に立った。
「これが我等の天命であると心せよ。行くぞ、尊き世界の為に……!」
なおも守護者足ろうとするマミー達が、駆け付けたディアボロスの前に立ち塞がる。
カイス・ライル
大切なものを守ることが、天命だと言うのか
そうせよと命じられたのだとしても
そうすると定めたのは、お前達ではないのか
俺は、己の意志を以て、ジズを守ると決めた
お前達が、天の、神の、他者の意志に乗るならば、後れを取る道理がない
死して尚立ち上がる、立ち向かわせる闘志には敬意を払う
再び潰えるとも無駄ではない
最後まで守護者として在る誇りは、永劫のもの
『Alyal』
ゆえにこそ、這い上がらぬよう、追い縋らぬよう、深く昏い陥穽へ
ジズの邪魔はさせない
ジズを傷つけることは許さない
俺の血肉が代わりになるなら、易いものだ
果たせぬままジンに呑まれると良い
ジズを護り、道を開き、押し通る
成すべきは、それだけ
※ジズをディフェンス
ケペシュ・ナージャ
ジズ、無事で何よりです
しかし貴女にはまだ大事な役目がある
必ずやディヤーブの元まで送り出します
相手と同じく、こちらも志を同じくする者同士
負ける気はしませんね
不意打ちは元から考えていない
敵の名乗りに殺気を返し
真正面から行きます
貴様らの相手はこっちだ
ジズに手を出した奴から殺す
【砂刃】で纏めて切り捨ててくれる
言葉で挑発し、防衛ラインを使いながら敵の前に立ち塞がり
ジズや彼女に続く仲間達の道を切り拓きます
ジズ達の邪魔をする奴から優先して始末し、敵を食い止めてみせましょう
ジズ・ユルドゥルム
やってくれたか、皆。あの子達は無事なんだな。
…喜ぶのはまだ早いな。
もう少しだけ、私と一緒に戦ってくれるか。
そうだ。腕利きだとも。そうでなければ、お前達には勝てない。
お前達の思いを否定する言葉を、私は持たない。
私は、私の希望を取り戻す。
そのために進むだけだ。
ゆくぞ。
パラドクスを起動。ジンのエネルギーを脚部に集め、敵の集団を突っ切りディヤーブへ肉薄することに全力を尽くす。
敵に包囲させはしない。蹴り飛ばし、斧槍で薙ぎ払い、あるいは風の刃で手足を断ち、一矢報いようとする意志を粉砕する。
……生きてほしいと
ただ、それだけだ
ただそれだけの願いを叶える道程が
どうして、いつも、こんなに、死に満ちている
リドリー・バーディ
里の皆は無事だよ、安心して!
イザさんが立派に務めてくれてるから任せて大丈夫!
皆おおばあさまの帰還を信じて応援してくれてるよ!
守りたかった、守れなかった、そんなのよくあることだけど
今更なりふり構わないくらいなら、言えばよかったんだよ、ジズみたいに
手を貸してくれって、一緒に戦ってくれって
矜持を守って大事なものを取りこぼすなんて、そりゃあ死んでも死に切れない
『山嵐の憂鬱』な声が聞こえるね
似るほど、距離が近づくほど、傷つけ合う覚悟が必要
譲れないものがカチ合った時は決裂上等、それが自分を生きるってことでしょ
髪の矢で針山になりたくないなら道を開けなよ
振り返るのはいつだってできる!
いってらっしゃい、ジズ!
不知火・紘希
ジズさん、無事だったんだね……!
里のみんなは安全な所に避難してるよ。ちゃんとジズさんの言葉を信じて待ってる。
だから、行こう。少しでも多くの人が幸せになる未来へ。
どんなに言葉を紡いでも、希望を願っても、この結果しか選べなかったのかもしれないけど。
自分が願った幸せのために、誰かが悪夢を見る世界はあっちゃいけない。
仲間の言葉や行動を勇気の光に変えて、光をZitronengelbで光球にして放つよ
ベレヌスの聖域を展開--自爆のダメージをできるだけ抑える
酷かもしれないけど、君たちも少しでも最後に希望を見出して。
守りたいものに向き合うジズさんはカッコいいよ!
想い、めいっぱいぶつけてきてね!
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎
喜んで。道を拓く力となろう
ジズさんがその手で決着をつける道を
集団を突っ切るジズさんを援護・必要ならディフェンス
エンネアドの所業は嫌という程見てきたさ
マミーとして蘇る事を望んだリターナーが一体どれだけいたのか……
あなた方もまた身近なものを守るというならば、戦うのみ
だが世界を護る誓いとやらに、この里の人達は入っていないのかい?
……酷い世界だ
彼らは「生きている」んだ
【飛翔】し空中戦
偵察、観察し敵の動きの隙を看破
歌声に乗せ雷撃を放ち足止め
――一人じゃない
その背に声を届け
味方と通信で連携し、立ちはだかる敵を確実に撃破
反撃には魔力障壁を展開し防御
高速飛翔にフェイント交え、群れを散らし回避を
プターハ・カデューシアス
宿敵に刃が届くまで後一歩
貴女の信じる道を真っ直ぐに進んで下さい、ジズ様
お互い守るべきものを持っている
信念のぶつかり合い
しかし、これは偽神によって歪められた世界
世界に不要とは。
今を懸命に生きている、この命を踏みにじって良い理由にはならない!
そしてディヤーブ、何故気づかない?
蘇った者が「本当の安寧」等与えられない事に
信念の名の下に蘇った者達
これでは偽神に都合の良い兵器でしか無い
そこに彼らの魂は、心はあるのか
せめて苦しまぬよう引導を渡そう
飛翔し戦況を冷静に判断し
宿敵へ向う方達の邪魔するなら霊鳥で追尾攻撃し、援護
ジズ様が子孫の未来を掴み取れるよう願う
反撃は飛翔し回避
アドリブ・連携歓迎
一里塚・燐寧
あは。先に奪っておいてよく言うよぉ
きみ達が護ろうとした希望は結局、罪もない誰かから盗んだものなんだ
奪われたくないなら、最初から奪うなって話でしょ?
あたしはずっと、守護者じゃなくて破壊者の側にいるよ
邪魔するものは斬って、壊して、ここまで進んできたもん
それしか出来ないから──でも誰のために何を壊すかは、選べるっ
≪DCブラスター≫を槍のように構え直して吶喊!
今度は近接戦、それも真っ向から切り込むよぉ
屑人兵にチェーンソー刃を深々と突き込み、『呪式:襲風炸爆』を発動
体内を回転鋸で裂き、更に鬼火を爆破させ──今度こそ二度と蘇れないよう解体してやるっ
相手に自爆されるより先にねぇ
ジズちゃんの道、切り拓くよぉ!
●希望
ディヤーブの放った兵達を下し、殲滅し、合流した仲間達へ、ジズ・ユルドゥルム(守護者・g02140)が僅かに表情を綻ばせる。
「やってくれたか、皆」
そんな彼女の言葉に、直接『彼等』に会ってきた二人――不知火・紘希(幸福のリアライズペインター・g04512)とリドリー・バーディ(chitter-chatter・g08402)が頷いて返した。
「里のみんなは安全な所に避難してるよ。ちゃんとジズさんの言葉を信じて待ってる」
「イザさんが立派に務めてくれてるから任せて大丈夫! 皆おおばあさまの帰還を信じて応援してくれてるよ!」
わずかの間だけ瞑目し、ジズはその意味を嚙みしめる。あの日救えなかった彼等の、死の運命を覆すことができたのだと。
しかしながら、それもここで敗北すれば水泡に帰す。喜ぶのはまだ早い、そう自分を戒めて、ジズはもう一度表情を引き締めた。
「もう少しだけ、私と一緒に戦ってくれるか」
その頼みを断る者はここには居ない。仲間達と共に、彼女は前へと進む。
「――そうだ。腕利きだとも。そうでなければ、お前達には勝てない」
先程のディヤーブの言葉を受けてそう口にし、ジズは屑人と化した守護者達へと武器を向ける。彼等に対して言える言葉はそれくらいだ。言葉少なに、ジンをその身に纏う。僅かな風が砂を揺らした。
私は、私の希望を取り戻す。この時のために戦ってきたのだ。あとはただ、進むだけ。
「ゆくぞ」
強く地を蹴り、荒風と共に、ジズは敵陣へと飛び込んでいった。
吹き荒れる一陣の突風、翼を打ち振るうように前進するジズが、斧槍の一閃で眼前の敵を両断する。しかし地に伏したその上半身が、後続の者達が、共に腕を伸ばして彼女を捕らえんと試みる。行く手を阻み、その場へ留めようとする彼等に対し、カイス・ライル(屍負い・g06804)がその身を滑り込ませ、ジズに代わって相手取った。
我が身が崩れようと構わない、そんな人ならざる握力で掴みかかり、それでも足りぬとばかりにその歯を立てる。集団で襲い掛かる屑人達に対し、彼は一歩も退くことなく。
「ジズの邪魔は、させない」
この身の傷程度でそれが叶うなら安いもの、受け止めた敵の身体を引きずり、こちらに引き付けるようにしながら、カイスはジズのための道を確保する。
「ジズ、無事で何よりです」
同時にそこに駆け付けたケペシュ・ナージャ(砂蠍・g06831)が、急ぎ彼女に怪我が無いかを確認する。喜ばしいことではあるが、戦いはこれから。
「必ずや、ディヤーブの元まで送り出します」
そう宣言する彼に呼応し、カイスがジンを顕現させた。
「死して尚立ち上がる、立ち向かわせる闘志には敬意を払おう」
再び潰えるとも、それは無駄ではない。最後まで守護者として在る誇りは、永劫のものだと彼は告げる。そして、だからこそ這い上がらぬよう、追い縋らぬよう、徹底的にやる必要があるのだ。
「果たせぬまま、ジンに呑まれると良い」
深く昏い陥穽へ。闇色の顎がそこに開き、屑人達を捉え、噛み千切り、呑み込んでいく。攻撃に巻き込まれ、果てた骸はその大半が消失し、敵陣に一つ穴が開く。そこをジズが突破するのに合わせ、彼女を追おうとする者達に対しては、ケペシュの剣閃が応じた。
「貴様らの相手はこっちだ」
衝撃波が敵数体を薙ぎ払い、斬り飛ばされた首が、腕が、戦場の空を彩る。彼女に手を出した奴から切り捨ててくれる、と殺気を露にしながら立ち塞がる彼に、屑人達は構わず襲い掛かった。体を欠損し、歩みを止めた仲間を踏み越え、槍と盾だった金属の塊を振りかざし、『使命』のために殉ずる彼等に、ケペシュもまた怯むことなく正面から向き合う。
「相手と同じく、こちらも志を同じくする者同士――負ける気はしませんね」
数の多寡こそあれ、実力はこちらが上だろう。出鱈目に襲ってくる彼等を捌きながら言うケペシュに、カイスが頷いて返す。
「お前達は、天命と言ったな」
劣勢であるとわかっているのかいないのか、構わず向かってくる屑人達を見据え、カイスは言う。
大切なものを守る。そうせよと命じられたのだとしても、そうすると定めたのは彼等自身のはずだ。そう、自分が己の意思で選び、此処に立っているように。
「お前達が、天の、神の、他者の意志に乗るならば、後れを取る道理がない」
濁りゆく屑人等の頭にはもう、その言葉が届くことはないだろう。それでもなお、そう宣言したカイスは、敵を足止めするために、再度ジンの力を解き放つ。
喰い千切られ消える者、双剣に刻まれ倒れる者、そしてそれらに構わず戦う敵の姿に、リドリーは彼等の決意の一端を垣間見る。だが、守りたかった、守れなかった、そんなのはよくあることだ。
「今更なりふり構わないくらいなら、言えばよかったんだよ、ジズみたいに」
手を貸してくれ、一緒に戦ってくれ、そんな風に。
「矜持を守って大事なものを取りこぼすなんて、そりゃあ死んでも死に切れないよね」
一度は敗北を喫しながらも甦り、身体が崩れるのも関わらず戦場に立つ、そんな敵の有様を、彼はそのように解釈した。そして告げる、『山嵐の憂鬱』な声が聞こえるのだと。
似るほど、距離が近づくほど、傷つけ合う覚悟が必要なものだから。
「譲れないものがカチ合った時は決裂上等、それが自分を生きるってことでしょ」
半ば言葉を捨てている屑人達を相手に、構うことなくそう説いて、リドリーは悪魔の髪を蠢かせた。
「髪の矢で針山になりたくないなら、道を開けなよ」
どちらにせよ、敵はそれを斟酌するような状況にはない。無数の髪の矢に貫かれ、なおも崩れゆく身体を進ませ、屑人兵達は必ず反撃に出るだろう。
「振り返るのはいつだってできる! いってらっしゃい、ジズ!」
向かい来る彼等を相手取りながら、リドリーは彼女に届くよう声を上げた。
そう、道を拓かなくてはならない。彼女が宿敵に刃を届けるため、そしてその手で決着をつけるために。ジズの背を押す言葉に呼応し、プターハ・カデューシアス(エジプトの龍人・g03560)とエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)もまたその力を揮う。
「貴女の信じる道を真っ直ぐに進んで下さい、ジズ様」
プターハがそう告げれば、一人じゃない、その背に届けとエトヴァが歌う。そして歌声によって呼び覚まされた蒼雷が、ジズの行く手の敵を焼き焦がした。
そのまま飛翔し空中に逃れようとしたエトヴァだが、負傷に構わず迫る敵がその足を掴み、阻む。数に任せた原始的な咬合、責め苛まれる彼を救ったのは、プターハの顕現させた霊鳥だった。
青白い炎を纏うそれは屑人達を焼き焦がし、その爪で敵を強襲していく。とどめを刺され、炎の中へと消えていく骸、それを見下ろして、エトヴァが眉根を寄せる。
このディヴィジョンを攻略するにあたって、エンネアドの所業は嫌という程見てきた。人々はリターナーとしての蘇りを当たり前のものとして捉え、それを望んでいた。だがこうしてマミーとなることまで望んだ者が、一体どれだけいたのか、と彼は疑問を覚える。
彼等が守護者を名乗り、身近なものを守るというのならば、戦わざるを得ないのだろうが。
「だが世界を護る誓いとやらに、この里の人達は入っていないのかい?」
屑人と化した彼等がそれに答えることはないが、当然入っているわけがないだろう。だからこそこうして攻め入ってきたのだから。
「……酷い世界だ。彼らは「生きている」んだ」
残酷な誓いの実態に対し、エトヴァは決然とそう告げる。これを守るべきものを定めたゆえの、信念のぶつかり合いと捉えることもできるだろう。けれど、とそれについてはプターハが否定する。これは偽神によって歪められた世界なのだから。
「世界に不要、などと……今を懸命に生きている、この命を踏みにじって良い理由にはならない!」
ボロボロになった武器を手に襲い掛かる屑人達の攻撃を受け止め、プターハは言う。しかし光の無い彼等の瞳からは、理解が得られたかなどわかりようがなかった。そもそもこの言葉は聞こえているのか。これが信念の名の下に蘇った者達の末路だとすれば、何とも皮肉な話だ。
「ディヤーブは何故気づかない? 蘇った者が「本当の安寧」等与えられない事に……」
リターナーとして蘇ろうとも、いずれはマミーやエンネアドとして自意識を失う時が来るかもしれない。屑人と化した彼等もまた、これでは偽神に利するだけの都合の良い兵器である。そこに彼等の魂は、心はあるのか、プターハの疑念が尽きることはない。
だからせめて苦しまぬようにと願い、プターハは呼び戻した霊鳥に、彼等を死者の国へと送った。
なおも立ち塞がる敵を前に、二人はそれぞれの正道を胸に戦い続ける。しかしたとえそれを説いたところで、相手に届くはずもないことは、死者の書の間を見てきた者ならばすぐにわかることだろう。信仰、常識、そして実利。彼等の立場になって考えれば、他の選択をする理由などないに等しい。
希望を願っても、いや、希望を願うからこそ、この道を選ぶことしかできなかったのかもしれないが。
「それでも、自分が願った幸せのために、誰かが悪夢を見る世界はあっちゃいけない」
紘希はそう信じて、カービングナイフを掲げて見せる。仲間達の真摯な言葉や、献身的な行動、それらの全てを勇気に、そして光に変えて、その手に宿した。『ベレヌスの聖域』、眩く輝くそれは光の球を形作り、一帯を照らす。戦う仲間達に癒しの力を、そして彼女が、憂いなく進めるように。希望の先へ、少しでも多くの人が幸せになる未来へ。
「ヒカリ、を……眩しイ光……」
「アア、照らセ、我等ヲ!」
対する屑人達、既に正気を失っている彼等は、ただ光に反応するように紘希へと迫る。胸に抱いたのは赤い宝石、それが赤熱し、輝くのを彼は見た。
「――酷かもしれないけど、君たちも少しでも最後に希望を見出して」
紘希の放った光の玉が爆ぜて、白い光の中に敵を呑み込む。悪夢から目覚め、本当の光を、この力に込められた思いによるものか、彼等の瞳に思考の光が戻った、ように見えた。
「守ラ、なくテは」
「この身に、命に代えテも……!」
しかし、結局のところ彼等の決意は変わらない。紘希の攻撃を切り抜けた一体が彼へと迫り、爆ぜた。
炎と共に飛び散る赤、衝撃波と共に上がる砂塵、自らを爆薬とした特攻を果たし、その屑人は三度目の死を迎える。だが粉々に散った仲間に構うこともなく、後続の屑人達もまた自爆を狙って走り出した。
「あは。先に奪っておいてよく言うよぉ」
それを迎え撃ったのは、一里塚・燐寧(粉骨砕身リビングデッド・g04979)の回転鋸だ。護るだの希望だのとご大層に言ってはいるが、それは結局、罪もない誰かから盗んだものに過ぎないのだと、彼女はそう喝破する。
「奪われたくないなら、最初から奪うなって話でしょ?」
因果応報などと言うつもりはないだろうが、守護者ならぬ破壊者の立場を自負する彼女にしてみれば、相手のそれは奇妙な言い分に聞こえたことだろう。
彼女とて邪魔するものは斬って、壊して、ここまで進んできた。ただそれしか出来ないのだとしても。
「でも誰のために何を壊すかは、選べるっ」
今は、そう。仲間のために。先程使った砲の、今度はチェーンソー部分を派手に唸らせる。呪詛と怨念の顕現である紫の炎を宿らせて、彼女はそのまま真っ向から突っ込んでいった。
「──今度こそ二度と蘇れないよう解体してやるっ」
自爆させる暇など与えない。突き込まれた二本の刃は屑人の身を深々と貫いた。回転する刃は傷口を抉り続け、それの纏う炎が炙り、焦がし、そして敵の体内で爆ぜて燃え上がる。盛大な赤い花を咲かせながら、彼女は足を止めずに次の敵を屠りにかかった。
「ジズちゃんの道、切り拓くよぉ!」
「守りたいものに向き合うジズさんはカッコいいよ! 想い、めいっぱいぶつけてきてね!」
その背を紘希の光が照らし、敵へのダメージを生命力へと変えていく。多少無茶な突撃に見えても、そう簡単に彼等が潰れることはないだろう。
「……皆、ありがとう」
心強い仲間達、そして献身的な戦い。ジズは駆け付けてくれた皆に感謝し、この恵まれた縁を尊く思う。そして同時に、確信するのだ。
それは相手も同じなのだと。
「ジャマ、を、するナ」
「マもれ、ディヤーブ、を」
志を同じくし、共に手を汚すことも認め、死をも厭わず呼び声に応えた者達。そして、そんな仲間を死地へと送り出すのはどんな気分なのだろうか。
縋りつくようにする彼等、守護者の成れ果てを蹴り飛ばし、斧槍で薙ぎ払い、これ以上の抵抗が出来ぬよう腕を、足を断ち斬る。一矢報いることすら許さない。意思を粉砕し、前へと進むのだ。
皆と協力して切り拓いた希望への道、風と共に舞い降り、足を付いたそこは、赤く、黒く、泥濘んでいた。
砂の上の屍山血河、そこを歩む彼女の脳裏に「どうして」と言葉が過る。答えなど、もうわかっているのに。
生きてほしい。
願ったのは、ただそれだけ。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
効果1【完全視界】がLV2になった!
【防衛ライン】がLV4になった!
【未来予測】がLV2になった!
【飛翔】がLV4になった!
【クリーニング】LV1が発生!
【パラドクス通信】がLV2になった!
【フライトドローン】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV8になった!
【命中アップ】がLV5(最大)になった!
【先行率アップ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
【ドレイン】LV1が発生!
ルーシド・アスィーム
※連携アドリブ歓迎
ジズさん、貴女の大切な人達もご無事ですよ、後でお顔を見せてあげて
その為に、もう何体か仕留めねば
自爆が厄介ですね、動きを止めます
「バステトの託宣」朽ちた耳で聞くが良い
汝ら、罪深き命を神に捧げよ
首を断て
臓腑を抉れ
尚突き進む者は光紡ぐ結界術にて封じ、自爆の影響を下げつつ相棒のジンの風纏う斬撃にて屠ります
サディーク、無慈悲に頼みますよ
同情など致しません
僕は神官、神より賜りし大地の守護者
それを汚す者を屠る、血塗られた聖職者です
敵の屍なぞ幾らでも踏み越えて参りましょう
さあジズさん、道は開かれました
迷う事もありましょう
けれど、何より大事な人達が……その命が貴女の背をきっと押してくれる筈です
ナディア・ベズヴィルド
次の世代に生を託した者達よ、大切だと思うなら、守りたいというなら己が身を犠牲にすることはいけない
身体を失くせば悲しむ者がいるのだから
安寧の眠りが残された者の救い、願い
嗚呼…言葉を投げかけても無駄か
私たちが守りたい世界と貴様らが護ろうとする世界は相容れぬ
最期まで戦うというのなら戦おうではないか
ジズさんの駆ける先は邪魔させない
さあ、道を開けなさい屍人たち!
我が前に立ち塞がる者らに慈悲もなく駆逐するのみ
【泥濘の地】を展開し、屑人兵の行動を鈍らせ
【飛翔】を用いて、魔石が爆発する前に仲間と連携を取りパラドクスで攻撃を
沈め、地の底へ。冥府へ
今度こそオシリスの下へ導いてくれよう
――行ってらっしゃい、ジズさん
●裁き
ディアボロス達の手によって、迫り来る屑人達は次々と打ち払われていく。噛み付きや殴打のみならず、自爆という戦法を選び始めた敵に、ナディア・ベズヴィルド(黄昏のグランデヴィナ・g00246)が口を開く。
「次の世代に生を託した者達よ、大切だと思うなら、守りたいというなら己が身を犠牲にすることはいけない」
身体を失くせば残された者が悲しむだろう。安寧の眠りこそが彼等にとっての救い、そして願いになるはずなのだから。とはいえ、説いてはみたところでそれが届くことはあるまい。
「嗚呼……言葉を投げかけても無駄か」
そもそも、ディアボロス等の守りたい世界と彼等の護ろうとする世界は相容れない。彼女の言うところの『残された者』も然り。彼等が最期まで戦うというのなら、こちらもそれに対抗するまで。
「自爆が厄介ですね、動きを止めます」
狂ったように声を上げて走り来る者達へ、ルーシド・アスィーム(星轍・g01854)が託宣を告げる。
「朽ちた耳で聞くが良い。汝ら、罪深き命を神に捧げよ」
首を断て。臓腑を抉れ。パラドクスの力を受けた屑人達は、自らの首へ、腹へと腕を伸ばし、崩れかけの肉を引き裂き抉る。走ることも自爆することもままならず、先頭を走っていた彼等はその場に崩れ落ちた。
「さあ、道を開けなさい屍人たち!」
続けてナディアの術が展開され、大地を割るようにして巨大な爪が現れる。
我が前に立ち塞がる者らなど、慈悲もなく駆逐するのみ。そんな彼女の意に従い、巨大な爪が敵陣を真っ直ぐに引き裂いた。
「沈め、地の底へ。冥府へ。今度こそオシリスの下へ導いてくれよう」
魔性の爪は敵の数体を巻き込んで、そのまま割れた地の底へと引きずり込んでいった。
隊列も何もない屑人達の進撃は、こうして二人の手により掻き乱される。反撃に備えて相棒のジンを侍らせながら、ルーシドは崩れゆく敵の様子を静かに見下ろす。
同情はしない。神官であり、神より賜りし大地の守護者を自負する彼からすれば、この程度の光景で心を動かすことなどありえない。大地を汚す者を屠る、血塗られた聖職者――であればこそ。
「敵の屍なぞ、幾らでも踏み越えて参りましょう」
罪人達の骸、そしてそう呼ぶのさえ躊躇われる破片を残して、それでも道は開かれていく。
「さあ、ジズさん」
「いってらっしゃい、ジズさん」
進むべき道を二人は示す。きっと迷うことがあったとしても、彼女にとって本当に大事な人々、彼等の命が、きっと背を押してくれる筈だと信じて。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【罪縛りの鎖】がLV2になった!
【泥濘の地】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV9になった!
サアシャ・マルガリタ
連携・アドリブ歓迎
……大切なものを守るためとはいえ
そんな姿になってまで戦わなきゃいけないですか
……いいえ、それならこちらも覚悟を決めましょう
一刻も早くマミーさん達にはお休み頂いて
ジズのための道を切り開きましょうです!
ジズをディフェンスしつつ戦うです
んむ。爆発されるのは厄介ですねぇ
それなら、仲間に近づく前にさようならです!
【未来予測】で敵の動きをみて優先順位をつけ
まとまっている敵には手榴弾をぽいぽい
単体でやってくる敵には
明らかに怪しい魔石を狙って銃火器を撃ちまくるです
爆煙の中でも【完全視界】で動き回るですよ
右も左も、どんどんばーん! ですよう!
ひとり残らず、とこしえにおやすみなさいーですです!
ゼキ・レヴニ
魂を棄てても守りたいモンがあったんだろう
大事な家族、平穏な日常
立場が反対なら、一片でも希望があったなら
おれも同じ事をしただろうさ
だからこそ死力を尽くして斃す
尊い筈の願いをハリボテの神の掌から叩き落とす為
『躯』を大盾に変じダッシュ*で突撃*
大盾でジズをディフェンスしつつ立ち塞がる敵は強打*
【トラップ生成】した落とし穴に突き落として道を開き
ディヤーブに向う仲間達の突破を補助するぜ
突破後は屍人兵に決戦の邪魔をさせねえ様大盾を展開
【防衛ライン】をディヤーブと屍人兵の間に築き分断
ここはおれたちに任せて、なんてベタ過ぎか
迷わず進めよ、ジズ
願いってのが何かを選ぶ行為なら
お前さんは既に選んだんだからな
*=技能
タオタオ・ザラ
死してなお、そういうの大好きだ!
おんなじ死に損ない同士仲良くやろうぜ?
……でもマ、それも今日限りだけどよ
言ったろ、殺してやるって
引き続き、大蛇のシャムと共に戦場を駆ける
理性もなければ、信念だってもうないんだろう
無様で生き汚くて、どうしようもねえなあ
だけど、好きだぞそういうところ
だって、ぜんぶぜぇーんぶ、お互い様だ
お互い譲る気なんてないんだ
勝てば官軍、負ければ賊軍!
理屈も、信念も、どうだっていいよ
最後まで立っていた奴が正義だ、そうだろう?
マ、勝つのはタオたちだがな!
お前らの総大将はジズが完膚なきまでに叩きのめしてくれるよ
安心して逝ってくれ
●
アドリブ・連携大歓迎
旅団【まのもの】以外の方は、名前+殿
アリア・パーハーツ
ジズの邪魔をしないで
唯一つの願いだけを思う彼女の前から退いて
お前たちにも大切な物はあるんだろうけど
でも、ねえ、それよりボク様はジズの方が大事
大好きな彼女の笑顔を曇らせるなら、お前たちは、いらない
光も闇も覆い尽くす程の濁流で飲み込んでやろう
軽やかなフィンガースナップで気を引いて
召喚した【青い柘榴】のピンを片っ端から抜いて爆破してゆく
爆音と共に溢れ出す水流でマミーの大掃除
魔石が起動する前に押し流し
爆発に間に合わなければ防壁のように水流を利用
味方をうまく水流に乗せれば【反撃アップ】
あ、これモーセっぽいな
頑張れジズ!
▼
アドリブ・連携歓迎
●闘争
切り裂かれ、焼かれ、時には自らその身を弾け飛ばさせながら敵は迫る。彼女を守り、道を開く、そのために戦っていたサアシャ・マルガリタ(えいえいお!・g05223)は、その敵の様相に率直な疑問を口にした。
「……大切なものを守るためとはいえ、そんな姿になってまで戦わなきゃいけないですか」
身を挺して、という言葉はあるが、屑人と化した彼等のそれはもはや捨て身に近い。そこまでしてしまっては、たとえ勝ったところで、もう。
「魂を棄てても、守りたいモンがあったんだろう」
それに対し、ゼキ・レヴニ(Debaser・g04279)は一定の理解を示す。前線に立つ兵士には多かれ少なかれ見られる動機だ。大事な家族、平穏な日常。立場が反対なら、一片でも希望があったなら――同じことをしたかもしれない。
「……それなら、こちらも覚悟を決めましょう」
サアシャがそう頷く。それに共感できるかは定かでないが、少なくとも、今更思いとどまるような相手ではないというのは明らかなのだから。
「一刻も早くマミーさん達にはお休み頂いて、ジズのための道を切り開きましょうです!」
「おう、その意気だ」
あの願いを貶めることはゼキには出来ない。ただ最悪なのは、彼等の願いの後ろ盾が、ハリボテの神であるというその一点。だからこそ死力を尽くして正面から斃すべきだと決断する。
前進すると共に、組み替えた『躯』を要塞の如く巨大な盾とし、ジズへと迫る敵を弾き飛ばし、地に叩きつける。ここが前線であると証明するように、立ち塞がったゼキは迫る屑人達を迎え撃った。作法も技術も忘れ、でたらめに振り下ろされる槍や盾、ただただ全力の重い攻撃を盾で受け止め、地を踏みしめて押し返す。たたらを踏んで体勢を崩した屑人達を、横合いから飛び込んできたタオタオ・ザラ(大喰らい・g05073)が曲刀で以て斬り捨てる。
胴を分かたれ倒れた敵は、なおも彼の方へと手を伸ばしていた。唸るようなその声に、恨めし気な色が見えたかどうか。
「おんなじ死に損ない同士仲良くやろうぜ?」
それに構わずとどめの一太刀を入れ、背後から迫る別の屑人にはジンの分霊、大蛇のシャムが喰らいつき、頭を振って彼方へ放り投げた。それでもなお怯むことなく襲い来る敵は、折れた槍を、ひしゃげた盾を彼に叩きつけていく。その目には既に理性の光はなく、ただ定められた目的のために動いているに過ぎないことを、タオタオは見て取った。
「――無様で生き汚くて、どうしようもねえなあ」
信念も、希望も、こうなってしまっては形無しだ。けれどそんな言葉に反し、タオタオの口は緩く弧を描いていた。
「だけど、好きだぞそういうところ」
反撃の刃と共に、屑人達のその様を肯定する。それもこれも、お互い様。自己を愛し肯定するのと同じように、彼はこの血と泥で塗れたこの戦場を認めた。
「お楽しみのとこ悪いんだけど」
「そっちいきますですよー」
アリア・パーハーツ(狂酔・g00278)とサアシャの声に飛び退くと、そこに手榴弾がいくつか、ピンを抜いた状態で降ってくる。
「爆ぜろ、満たせ、地の果てまで!」
「どんどんばーん! ですよう!」
アリアの『青い柘榴』に、サアシャがやりたい放題投げつけた手榴弾を加えて、炎の花が爆ぜた先から、水の魔法による水流が溢れ出した。
派手にやったなあ、と笑うタオタオの横で、彼女等は集団を吹っ飛ばすのに向いた武器をそれぞれに構える。瀑布も爆炎も、彼等の意思を挫くには足りないようだ。
「お前たちにも大切な物はあるんだろうけど――」
軽やかに指を鳴らすと同時に、アリアの手元に新たな手榴弾が現われる。先の一撃で出来た泥の溜まりを構わず駆ける敵を見据えて。
「でも、ねえ、それよりボク様はジズの方が大事」
邪魔をしないで。大好きな彼女の笑顔を曇らせるなら、お前たちは、いらない。改めてそう断じた。
「ああ、わかりやすくて良いな」
彼女の攻撃に先んじて、タオタオがその連中へと襲い掛かる。舞うように迫り、強化した膂力で力強い一撃を下す。
そう、これもまたお互い様。譲る気なんてどちらもないのだから、勝ったか負けたか、最後に残るのはそれだけだ。
「最後まで立っていた奴が正義だ、そうだろう?」
「身も蓋もないな」
修羅場にあって軽やかに笑う彼を、ゼキの盾がカバーする。
それは獣の論理だが、ある種自然の摂理でもある。食物連鎖、縄張り争い、大抵の場合願いを通すのは正しい方ではない。強い方だ。
「マ、勝つのはタオたちだがな!」
前線で力を揮う彼等に対し、屑人の数体が赤い光を胸に宿し始めるのを、アリアが発見した。
「あいつらさっき自爆してなかった?」
「んむ。爆発されるのは厄介ですねぇ」
頷いたサアシャが、早速そちらに狙いを定める。
「それなら、仲間に近づく前にさようならです!」
まとめて押し流してやるのだぜ、とそれに頷いて、アリアも同位置への攻撃に加わる。砂煙と爆煙、濁る光景を完全視界で見透かして、彼女等は敵集団を吹き飛ばした。
「あ、これモーセっぽいな。すごくない?」
ああ、すごいすごい、などと軽口を返しつつ、開いたその隙間をゼキが押し広げる。その間に、ジズがそちらへと飛び込んでいった。
「ここはおれたちに任せて、ってやつだな」
迷わず進め、と声を掛けて、ゼキがその背を守るように立ち塞がる。
「願いってのが何かを選ぶ行為なら、お前さんは既に選んだんだからな」
「頑張れジズ!」
大盾をさらに広く展開して、疑似的な壁を形作る。そしてそれ越しに睨んだ戦場では、サアシャとタオタオが後続を断つようにその武器を振るっていた。固まった敵に銃弾の雨が喰らいつき、散らした生き残りを曲刀の閃きが刈り取る。
「お前らの総大将はジズが完膚なきまでに叩きのめしてくれるよ。安心して逝ってくれ」
「ひとり残らず、とこしえにおやすみなさいーですです!」
趨勢は決した。最早彼等が後れを取ることはありえない。蘇った屑人達もまた、程なくディアボロス達によって殲滅されることになるだろう。
とはいえ今重要なのはこの一点。完全に拓いたその道へ、彼等は「進め」とジズに言う。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【操作会得】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
【怪力無双】がLV2になった!
【水源】LV1が発生!
効果2【ダブル】がLV3になった!
【ガードアップ】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV10(最大)になった!
【反撃アップ】がLV2になった!
ジズ・ユルドゥルム
皆が背中を押してくれる声が聞こえる
あの男はもう怪物ではないが
強いことに変わりはないし、侮る気もない
だが、何故だろうな
敗ける気がしない。
斧槍を構え「人鷹一体」を起動。
小細工は無しだ。初手から全身全霊で行く。負傷は厭わない。
ディヤーブ!!!
踏み躙れるかと問うたな!!
踏み躙るとも、必要ならばどんなものでも!!
いいや、既に踏み躙ってきた
家族にもう一度会いたいと願う、死者達の真摯な想いを
お前達が大切に想う人々の仮初の生命も、いずれ踏み躙るだろう
何度でも問うがいい、何度でも応えよう
仮初の生命、仮初の安寧だとしても
せめて今日は生きていて欲しいと
その祈りを踏み越えて進もうと言うのに、なぜ自分の命を惜しめる!!
●踏み込む覚悟
皆の声に背中を押されるようにして、ジズ・ユルドゥルム(守護者・g02140)はその一歩を踏み出した。
立ち塞がる屑人兵、マミー達を乗り越えた先、最後の守護者の眼前へ。
もはや彼が怪物に見えることはないが、それでも敵の実力は健在、決して侮れるものではないとわかっている。
――しかし、何故だろうか。敗ける気がしない。
「ディヤーブ!!!」
敵の名を呼ぶ。風を纏い、ジンと共に舞う。身体を捻じり、薙ぎ払うように振るった斧槍が、敵の構えた盾を打ち据えた。
「我が前に立つか。覚悟は、出来ているのだろうな?」
敵の状況に余裕はない。追い詰められていることもわかっているはずだ。仲間が屠られていくことへの忸怩たる思いと怒り、それらを押し込めたような低い声音に対して、ジズが吼えた。
「当然だ!!」
相手の姿にかつて敗北した自分を見る。意味合いは違えど、恐らくそれは向こうも同じ。幾重にも重なる鏡合わせのようなこれが、彼女の宿縁の有り様だった。
だからこそ、決断は敵に応じる形となる。
「踏み躙れるかと問うたな!! 踏み躙るとも、必要ならばどんなものでも!!」
死者の書の間を思い出す。甦りを信じ、家族にもう一度会いたいと願う死者達のことを。
そして、この道の先を思う。束の間にせよ第二の生を歩むリターナー達、そしてディヤーブの護る人々、このディヴィジョンに住まう彼等の人生もまた、いずれ踏み躙ることになるのだろう。
仮初の生命、仮初の安寧、そう切り捨てることは、リターナーである彼女にはどうしてもできなかった。それでもなお、応えなければ、決断しなければならない。
守護者を担う者にとって、願うとは、選ぶこと。
傲慢に命を選別し。護る対象とそれ以外を明確に線引きする。誰かの希望を奪うことになっても。それがどれだけ残酷であるか知っていても。
「何度でも問うがいい! 何度でも応えてみせよう!! お前の祈りを踏み越えて、私は進む!!!」
「――良いだろう、守護者よ」
今度こそ、対等の位置に追いついたと言って良いだろう。互いに背負うものを認識し、負けられないだけではなく、相手のそれを無に帰すことまでを見通した。どちらかが奪い、どちらかが奪われる、刃を付きつけ合うようなその関係は、何も変わらないけれど。
静かに張り詰めていた敵の気配が、そこで爆ぜる。
「だが思い上がるなよ小娘! その頭を斬り落とし、貴様の故郷に晒してくれる!!」
「やってみろ! 私の首はここだ!!」
迫りくる巨大な戦斧に、彼女は臆することなく真っ向から斧槍を叩き付ける。
――生きてほしい。護りたい。
抱いた思いが等しくとも、叶う願いはどちらかひとつ。
刃と刃がぶつかり合い、火花と共に軋みを上げる。
成功🔵🔵🔴
効果1【悲劇感知】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】がLV2になった!
ジズ・ユルドゥルム
奴と私の何が違った?
目の前にある「死」に、どうか覆ってくれと願い
それが獣神に届いたか、全く別の何かに届いたか
それだけの差じゃあないのか。
だが、奴の太刀筋には、微塵の迷いもない。
人であることを捨てれば、私もそんな風に強くなれるのか?
骨の軋みが、早鐘を打つ心臓がくそ煩い。
やっとこの男に追いつけた。いい所なんだ、静かにしててくれ。
仲間達の繋いでくれた機会を絶対に無駄にはしない。
この期に及んで負傷など些事。全身全霊をもって致命の一撃を叩き込み、この宿縁を終わらせる。
…そうだったな。
今はもう、ひとりじゃないんだった
私は…私に遺された最後の希望を。あの子達の未来を選ぶ。
さらばだ、守護者ディヤーブ。
カイス・ライル
ジズの全ては、ジズのもの
首も、誇りも、願いも、祈りも、何ひとつ失くさせはしない
守護者両名には敬意を払う
だが、ディヤーブには、ひとつ問いたい
首級を晒し、守られるべき民の望みを挫く行為に、自負はあるか
矜持や品位を持たないそれは、血に飢えた獣の所業と変わらない
獣であるなら、俺の相手だ
滴れ、『Kadhim』
毒宿る獣爪を叩き付け切り裂く
如何に反撃を受けようと、退かないし、斃れてもやらない
ジズに獣を近寄らせるわけにはいかないからな
守護者であると、そう在りたいと、確かに聞けるのなら譲るが
ジズ、存分に想いを誇ると良い
ジズの敵こそ俺の敵
ジズの願いを叶えることが、俺の覚悟だ
本懐を遂げる様、必ず皆と見届ける
ゼキ・レヴニ
追いついたか
意地と意地のぶつかり合い、聞こえてたぜ
お互い例え独りになろうと斃れる迄戦うんだろうが
ジズの方はそうはさせねえ
己の知る最高の”守護者”の記憶を顕した大盾を構え
敵の斧を押し返すように強打*
盾を砂に突き立て退かず守りを固め
仲間が破壊したりトラップを仕込んだ地形を利用*し正面から押し込む
分体の時とは違う、今度は真っ向から小細工ナシだ
怪我しようと構いやしない
守る為命を賭す覚悟の友の願いを叶えられなけりゃ
そいつが背負う事になる荷を分け合えねえようじゃ
この盾を使う資格なんか無え
そうだ、お前さんは独りじゃない
踏み越えて進む足は一人分じゃあない
人の心で願った希望ひとつ
人の手で掴んで見せてくれ
*=技能
タオタオ・ザラ
覚悟や信念ねえ、よく分からん
奪うことは大の得意だが、難しいことは苦手でな
なァ、守護者
お前の願いを砕いて希望を奪ったら、どんな顔すんの?
タオ、めちゃくちゃ見てみたぁい
媚びた猫撫で声でけらけら笑う
にゃっははは!
手ぇ痺れる!一撃おっもいなァ!
でも、ちょぉっと重すぎるんよ
ほら、もっと気軽に、身軽に、命の取り合いを楽しもうぜ
でないと足を取られるぞ
軽口を叩きつつ、寄る辺なき英雄の墓標
金銀財宝に隠れてトラップ生成で作った罠がそこかしこ
不意打ちが効かねえなら隙を作るまで
力比べで勝てると思ってないし、勝つつもりもねえ
嫌がらせが出来れば充分だ!
でも、まだ倒れてやんねえ
だってどんな顔するか見てねえもん、みーせてっ?
ルーシド・アスィーム
貴方は神敵にして友の仇敵
屍と同様、冥界へ誘うのみ
……嗚呼、けれども
貴方達は知っていたのですね
人の矮小さも、故に負う途方もない守る事の重さも
ならば敬意を以て示そう
刃を掲げよ、勇士
堅牢なる意志や佳し、しかしその命脈を僕らこそが踏み躙る!
地を踏み、装飾揺らし舞うは「セルケトの蠍槍」
業毒と神槍の数々で彼の肉体と周囲の地形を破壊
その歩みを鈍らせると共に、踏み込む仲間に併せ風と砂を交えた風塵魔術を極小範囲に展開
視界を奪います
ジズさん、彼の強靭さは仲間「しか」信じないが故のもの
有り得た未来を棄て得たもの
けれどそれは、血族に慕われる貴女には似合わない
ええ、決して独りじゃない
共に参りましょう、明日の更に先へと
サアシャ・マルガリタ
残すはおじーちゃんのみですね!
ジズの首は獲らせませんよう。それより自分の兜が脱がされる心配をなさったらいかがですー?
……べ、別にその兜、格好いいとか思ってるわけじゃないんですからね!
ちょっと欲しいなーとか思ってないんですから!
あとは、えーとえーと……やーい変なヒゲ!! ポニテおじーちゃん!!(精一杯の悪態をつく)
……さておき。ジズの補助に徹するですよう
敵にサンドストームをお見舞いして体力を消耗させるです
動きを鈍らせてジズが戦いやすいようにー!
敵がジズの急所を狙ってきたら向かい風を吹かせて砂まじりの風で目潰しするです
真剣勝負に横やり失礼ー?
でもでも、ジズもジズの家族も傷つけさせはしませんからね!
如月・友仁
……本当はね
獣神王朝の歪な実状を知った今でさえ
向こうへ旅立った友達にまた会える世界が、羨ましい
ジズくんとの縁だって、蘇りがあって得られたものだ
……彼も僕らも、始まりは同じ気持ちからだったのかもしれない
同じ願いを打ち砕く痛み
治してあげることはできないけど
僕も一緒に背負わせて
暖かい光がジズくんの下へも届くように
力の限り大きく眩い光の檻を生み出すよ
足止めして、皆が、ジズくんが、攻撃を叩き込みやすい状況へ繋ぎたいな
相手の斧の一撃は大鎌で真っ直ぐ受け止めよう
出会う場所が違っていたら、
僕たち気が合うお友達になれたかもね、なんて
……でも今は、目の前の大事な友達のために戦ってるんだ
躊躇なんかしてあげないよ
一里塚・燐寧
きみから生まれたアヴァタール級を、エジプトの戦いで何度も見て来たよぉ
どいつもこいつも、命を懸けて獣神王朝を護り抜こうとするやつだったねぇ
そんだけブレないってことは、守護者として完成されてる証だと思う
……きみは、ほんとに強かったよぉ
それでも──あたし達が背負ってる願いが、きみより軽いとは思わない
ジズちゃん。それを今から見せてあげてぇっ!
≪テンペスト・レイザー≫の切っ先を突き付けディヤーブに突撃!
『呪式:爛離骨廃』を発動しながら、胴体に深々と刃を抉り込むよぉ!
肉の内側まで沈み込んだ刃で敵を捕縛し
回転する刃で、体内を削り落としながら仲間が攻撃する時間を稼ぐっ
……覚悟の勝負? それなら、負けるもんか!
●刻む足跡
互いの首を狙った、剥き出しの牙のような刃がぶつかり合い、砂漠に重い音色を響かせる。耳朶を打つそれと腕の痺れ、血に塗れた風の匂いを感じながら、ジズ・ユルドゥルム(守護者・g02140)は敵の動きを注視する。次の動きを見切れ、打ち込むに足る場所を探せ、自らにそう命じながらも、頭の隅には一つの疑問が消えることなく貼り付いていた。
奴と私、その両者の間にある違いは何か。
きっと、始まりの時は同じ。目の前にある『死』に、どうか覆ってくれと願ったその時だ。その願いが獣頭の神に届いたか、全く別の何かに届いたか――結局のところそれだけの差ではないだかろうか。覚悟を決め、手を汚し、血みどろの道に踏み込んだ今、立場は互角のはずだった。
けれど、打ち込まれるこの刃の流れには、微塵の迷いも感じない。
打ち合った衝撃を逃がすように旋回し、返した刃で逆方向から次の一撃を狙う。それに対してディヤーブは、先の衝撃を力ずくで抑え込むように斧を握り、上から叩き潰すように振るってきた。二条の斬撃は同時に相手を捉え、肉を裂き、足元の泥濘に新たな赤を注ぐ。軋む身体、早鐘を打つ心臓、傷口の持つ熱が思考を焼く。
――やっとこの男に追いつけた。いい所なんだ、静かにしててくれ。
負傷など些事。そう断定し、ただ相手をねじ伏せるために、ふらつく身体を無理矢理操る。人鷹一体、膂力で足りぬならジンの力を借りて、風を纏いさらなる加速を。それでもなお、「届くのか」という疑問が拭えない。人であることを捨てれば、そんな風に強くなれるのか?
敵の気迫を全身に浴びながら決着に至る道を探る……が、その一撃を彼女に代わり、カイス・ライル(屍負い・g06804)が受け止めた。
守護者の戦いに割り込んだ彼は、襲い来る衝撃とその重量に耐え、ジズを背にかばいながら口を開く。
「ひとつ問いたい」
敵を睨み、問い掛けたのは、先程の戦いの中でディヤーブの放った言葉に対して。
「首級を晒し、守られるべき民の望みを挫く行為に、自負はあるか」
矜持や品位を持たないそれは、血に飢えた獣の所業と変わらない。そう糾弾する彼に、ディヤーブは戦いの熱をそのままに盾を振るう。
「何を、今更――ならば貴様は五体を引き裂き、バラバラに捨ててやろう!」
「……獣が」
そうであるなら、相手取ることに迷いはない。壁がそのまま突っ込んでくるような重い一撃を受け止めながら、カイスは獣爪を用いて反撃に出た。
傷の深さに差はあれど、爪に滴る毒が敵を蝕む。倒れず、退かず、彼は抗う。彼女のすべては彼女のもの、首も誇りも、願いも祈りも、何一つ失わせはしないと決めて。
「ジズに獣を近寄らせるわけにはいかないからな」
相手を蔑むその言葉に続いて、サアシャ・マルガリタ(えいえいお!・g05223)がその力を振るう。
「ジズの首は獲らせませんよう。それより自分の兜が脱がされる心配をなさったらいかがですー?」
パラドクスによって巻き上げられた砂塵がディヤーブを包み、その肉体を抉ると共に、歩みを鈍らせる。足止めとしての効果はそれなりに見込めるだろう。それはともかく、敵としてしっかりこちらを睨んでくる敵に、カイスに倣って意を示しておきたいところだが。
「あとは、えーとえーと……やーい変なヒゲ!! ポニテおじーちゃん!!」
サアシャがどうにか引っ張り出したのは、その辺りの文句だった。
「この髭を愚弄したか、小娘!」
裂帛の気合と共に砂嵐が断ち切られ、刃が迫るのを目の当たりにして、サアシャは慌てて飛び退く。危ういところを戦斧が通り過ぎていったが、それよりも。
「お、怒られましたよ
……!?」
「よーしよし、とりあえず落ち着こうな」
「無理に貶す必要はないんだぞサアシャ」
愕然とする彼女をゼキ・レヴニ(Debaser・g04279)とタオタオ・ザラ(大喰らい・g05073)が宥める。相手の反応は馬鹿馬鹿しくも見えるが、あれは自らの戦意を鈍らせまいと努めてのことだろう。そもそも味方を死地に向かわせ、それを見届けた直後なのだ、笑う気分にはなれる奴はそういない。
「けど、兜を取っちまうってアイデアは悪くないな」
「でしょう! 別にあの兜格好いいなーとか、ちょっと欲しいなーとか思ってないですけど!」
うんうんそうだな、と頷きながら、タオタオはディヤーブへと挑発的な笑みを向ける。覚悟や信念やら、難しい話をする気がないのは彼も同じ。ただ、奪うことは大得意だという自負はある。
「そしたらお前の顔もよく見えるよなァ、守護者よ」
細めた瞳を相手に据えて、揶揄するように、寝かせた曲刀の刃で相手を指す。
「お前の願いを砕いて希望を奪ったら、どんな顔すんの? タオ、めちゃくちゃ見てみたぁい」
「試してみるが良い、やれるものならな!!」
地を穿つような重い踏み込み。唸る豪斧を踊る曲刀が絡めとり、危ういところで逸らしてみせる。
「にゃっははは! 手ぇ痺れる! 一撃おっもいなァ!」
ああ、でも重すぎる、と彼は笑う。タオタオにしてみれば、刃一つに色々なものを乗せすぎているように映るのだろう。重い刃は断ち切るのには向くだろうが、自由さは失われてしまうもの。軽やかに舞い、戦斧から逃れる彼に代わって、ゼキがそれに応じる。
「ま、『守護者』ってのはそういうタイプが多いのかもな」
ジズとの意地のぶつかり合いは彼もまた目にしている。自分の言葉で自分を縛り、決意と責任を力に変える――そういうところは誰かに似ているな、と思えば、『躯』は自然と大盾の形を成した。
「そうかぁ? じゃ、力比べの方はゼキに任せた」
タオタオの言葉に口の端を上げて、巨大な盾を地へと突き刺す。退かぬ覚悟の証明のようなそれで、ディヤーブの斧を迎え撃った。
「邪魔を、するな!!」
盾を穿たんばかりの衝撃に、歯を食いしばって耐えながらゼキが応じる。悪いが、そうはいかないのだと。
「お前さん達はお互い例え独りになろうと、斃れる迄戦うんだろうが――ジズの方はそうはさせねえ」
守る為、命を賭す覚悟というならそれは結構。だがそんな友を支えられないようでは、この盾を扱う資格はない。記憶の中のその姿に相応しいように、ゼキはその場に踏みとどまる。
「重いなぁ。ほら、もっと気軽に、身軽に、命の取り合いを楽しもうぜ」
重量級の両者の衝突を他所に、タオタオはからかうように反撃に出る。その言葉通り、重い踏み込みで動きの止まったディヤーブを斬り裂き、パラドクスを発動。
「――でないと、足を取られるぞ」
周囲の空間を塗り替え、いつかの誰かを祀った墳墓を出現させる。彼等を囲むのは煌びやかな金銀財宝、そしてそれを守るために配された幾重ものトラップだ。避ける場所を制限するようなそれを把握して、ゼキが姿勢を低く、腰を落とす。
「今回は、真っ向から行かせてもらうぜ」
先日とは違う、タオタオの言に倣うなら、力比べだ。盾を構えた彼は、そのまま叩きつけるように突進する。
「おのれ……!」
強靭な肉体を持つ両者がぶつかり合い、重い衝撃音を響かせる。反撃にも構わず突き進んだゼキは、敵をタオタオの罠へと押し込んでいった。
●願いを、共に
多数のディアボロスに囲まれてなお、ディヤーブに屈する様子はない。決して戦意を失うことなく居られるのは、護るものを確りと定めているからだろうか。天災という形で命を落としながらも、リターナーとして蘇ったという人々、そしてそれを成し得る世界。彼が存続を願うそれに思いを馳せると、如月・友仁(ユアフレンド・g05963)は今でさえ「羨ましい」と感じてしまうことがある。
獣神王朝、エンネアドに支配されたその歪な構造を知っていても、向こうへ旅立った友達にまた会える、そんな世界であったことに変わりはない。こうして共に戦うジズとの縁だって、蘇りがあって初めて得られたものだ。
「……彼も僕らも、始まりは同じ気持ちからだったのかもしれないね」
友人、家族、大事な人々。それらが消えてしまわぬようにと手を尽くすことを否定しては、復讐者とて立ち行かなくなるのではないか。
もしも、出会う場所が違っていたら、気が合う友達になれたかも――そんな、叶わぬ想像を振り払って、彼は敵の前に立った。
鬼気迫る殺意と共に振るわれる戦斧、その一撃を、大鎌で真っ直ぐに受け止める。
「そこを、退け!!」
両腕に走る衝撃と、大鎌を揺らす重い圧力。そこに込められた彼の痛みにさえ思いを巡らせながら、しかし友仁は屈することなく抗った。
「今は、目の前の大事な友達のために戦ってるんだ。躊躇なんかしてあげないよ」
打ち払うことは叶わない、しかしそれは相手も同じこと。負傷を避けて飛び退くと、彼は天から光を降らす。
『月下光芒』、光の柱が降り注ぎ、檻を成してディヤーブを捕らえる。この光が、ジズの行く道を照らすように、そんな願いを込めたそれは、一際強く、眩く輝いた。
彼女にとっては暖かに感じられても、ディヤーブにとっては責め苛む炎のようなその光、砂漠を青白く照らすそれの中を、敵は構わず突き進む。今更負傷を厭わないのは、敵もまた同じということだろう。
止まることなく彼は進む。邪魔するディアボロス達を打ち払い、ジズを仕留め、殺戮に手を染めるために。それは到底許せることではない、とルーシド・アスィーム(星轍・g01854)も対応に動く。
……嗚呼、けれども同時に実感してしまう。
彼等は知っているのだろう。人の矮小さも、故に負う途方もない守る事の重さも。楽観を許さず、手を汚すことを厭わず、それが守護者の役目であると。
「刃を掲げよ、勇士」
ならば敬意を以て、示すべきだろう。
「堅牢なる意志や佳し、しかしその命脈を僕らこそが踏み躙る!」
地を踏み、舞うは『セルケトの蠍槍』。装飾を揺らし、その音色が砂漠の風を揺らす。神へと捧げられた舞は、その神威たる毒の槍を齎した。
光の檻へと放たれたそれで敵を貫き、回る毒の影響と合わせてその歩みを鈍らせていく。足の止まり始めたそこへ切り込んだのは、一里塚・燐寧(粉骨砕身リビングデッド・g04979)だった。
「この程度で……立ち止まるわけにはいかんのだ……!」
燐寧の振るうチェーンソーの刃を持つ大剣を、ディヤーブはその盾で弾き飛ばす。力強い一撃、そして堅い意志を感じさせるその気配は、長くエジプトで戦ってきた燐寧には覚えのあるものだった。
彼から生まれ、ディヴィジョンへと送り込まれたアヴァタール級とは、それこそ何度も戦ってきた。それぞれ戦場によって差異はあれど、彼等はみな命を懸けて獣神王朝を護り抜こうとしていた。分体でさえもブレないのだから、それだけこの男は守護者として完成されているのだろう。
「……きみは、ほんとに強かったよぉ」
向けられる気迫、そしてこの殺意にさえも覚えがある。歴戦ゆえの実感のこもった呟きを落としながら、しかし彼女は真っ向からそれに抗った。
迷いの生まれるあの場で何度も戦い、分かったことが一つある。
「それでも──あたし達が背負ってる願いが、きみより軽いとは思わない」
覚悟の勝負ならば、決して負けない。その意思を込めて、燐寧は首を狙う大斧に回転鋸の刃を叩きつけた。
唸りを上げる凶悪な牙が喰らい付き、斧の刃の上で擦過音を響かせる。暴れる得物を取り落とすまいと両者が武器を握る間に。
「ジズちゃん。それを今から見せてあげてぇっ!」
燐寧の声に応えたジズが、飛翔し槍斧の穂先を突き込んだ。鋭い一撃は、しかしすんでのところで身を逸らしたディヤーブに躱されてしまう。続く一撃は盾で受けられ、返しの刃が彼女等へと向けられるが。
「これで終わりじゃないよっ」
それで体勢を崩した相手を押しやり、燐寧はテンペスト・レイザーを敵の胴へと突き刺した。
「……ッ!!!」
言葉にならないくぐもった声が漏れる。抉り込まれた刃は呪詛と共に回転し、敵の内部を掻き回す。足を止めたように見えたそこで、しかしディヤーブは無理矢理苦鳴を噛み殺し、さらに前へと進み出た。飛び散る赤を踏みしめ、振り上げられる刃。それが振り下ろされる前に止めたのは、再度の砂嵐だった。
向かい風で押さえるのではなく視界を阻む方向で、サアシャが一時の時間を稼ぐ。
「真剣勝負に横やり失礼ー?」
こういう場面で、他のメンバーならばしっかりと思いを口にするのだろう。敵に理解を示す者、否定する者、仲間への思い、自分の使命……それは人によって様々だけれど、彼女のシンプルなそれだって、決して劣るものではない。
「ジズもジズの家族も、傷つけさせはしませんからね!」
仲間を守るというそれに呼応し、カイスが爪を以て刃を抑え、ルーシドのさらなる風が敵の全身を阻む。
「ジズ、存分に想いを誇ると良い。ジズの敵こそ俺の敵。ジズの願いを叶えることが、俺の覚悟だ」
「ジズさん、彼の強靭さは仲間「しか」信じないが故のもの。有り得た未来を棄て得たものです」
けれどそれは、血族に慕われる貴女には似合わない。そう説いて、ルーシドはその行く手を指し示す。
「共に参りましょう、明日の更に先へと」
そこには天からの癒しの光、友仁の光柱が降り注いでいた。
――敵と己は鏡合わせで、同じ思いを打ち砕く痛みがあるとしても、それを治すことまではできない。けれど。
「僕も一緒に背負わせて」
共に歩むことは出来る。そう、踏み越えて進む足は、一人分ではないのだ。
「人の心で願った希望ひとつ、人の手で掴んで見せてくれ」
ゼキの大盾が正面から敵を打つ。その身を揺らがせ、攻撃を阻み、本命をそこへと送り出す。
「――さて、この状況でお前はどんな顔すんのかな?」
最後に一つ。不敵に、愉快気に笑うタオタオの一撃がディヤーブの盾を跳ね上げ、道は開けた。
「……みんな」
命のやり取りに強張ったジズの表情が、ほんの少しだけ緩む。そうだった、忘れてはいけない。
もう、私は一人ではないのだから。
どこか明瞭になった視界で敵を見据える。彼女にとって死の象徴たる大斧の動きが、不思議と鮮明に、ゆっくりと感じられた。
――この宿縁を、終わらせる。
迫る斧の柄を直前で打ち据え、制する。最後の一歩を強く踏み出す。そして全身全霊、風纏うジズの斧槍が、致命の一撃となって叩き込まれた。
●彼女の道行き
低い音色と共に戦斧が落ち、遅れて男の膝が折れる。アヌビス神を模したその兜は、先の一撃で叩き割られ、破片となって砂漠に散った。
「及ばぬ、か」
嗄れた、微かな呟きがディヤーブの唇から零れる。全力で戦い、その上で負けた。最後に戦った相手が『守護者』であったことも、その声に特別な色を乗せていた。
ああ、けれど。死してなお立ち上がった仲間達の献身を無為にし、故郷の者達を守る術も失った。ならば、納得も、諦めも、するわけにはいかないのだ。
忌まわしい、呪わしい。そう唱える彼の表情は、最期にあってなお、自制によって作られたものだった。
「私は……私に遺された最後の希望を。あの子達の未来を選ぶ」
膝を付いたクロノス級を見下ろして、ジズが口を開く。絡まる宿縁はここに一つの決着を迎えた。けれど、これは終わりではない。踏み込んだ道のその先を、彼女は見据える。そこには敗北者達の願いが横たわり、選ばれなかった誰かの骸が無数に転がっているのだろう。
「進むが良い」
死にゆく敗者の一人が言う。それは呪いか激励か。
どちらにせよジズは、踏み越え歩むことを選んだ。血と泥に塗れていようとも、この道の先は、眩い希望に繋がっているはずだから。
「さらばだ、守護者ディヤーブ」
新たに刻まれた足跡は、運命を覆し、護り抜いた彼等の待つ家へと続いていく。
砂上の轍を風が洗う。そこには、ただ割れた兜だけが残されていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【悲劇感知】がLV2になった!
【罪縛りの鎖】がLV3になった!
【トラップ生成】がLV3になった!
【腐食】LV1が発生!
【土壌改良】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
【泥濘の地】がLV2になった!
効果2【ロストエナジー】がLV5になった!
【ガードアップ】がLV4になった!
【ドレイン】がLV2になった!
最終結果:成功 |
完成日 | 2022年12月02日 |
宿敵 |
『守護者ディヤーブ』を撃破!
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