リプレイ
守都・幸児
※連携、アドリブ歓迎
ここでも民は虐げられてるのか
…どこも変わらねえな
広場に向かう道すがら、周囲に【トラップ生成】で音が鳴る仕掛けを設置しておく
逃走時や戦いになったとき
敵の注意を逸らして撹乱するための準備だ
敵の接近も察知できるしな
夜闇に紛れて死刑囚にされた民に近付くぞ
縄を解く前に民に声をかける
驚かさねえように落ち着いてゆっくり話すぞ
助けにきた
俺たちは、あんたたちと志を同じにする者ってとこだ
今から戦いになるが、俺たちが守る
どうか離れず共に行動してほしい
いきなり信じてくれってのも無茶な話だろうが
賭けて、みねえか
聞き入れてもらえそうなら縄を解く
動けなければ肩を貸すし
万一聞き入れてくれねえ場合は抱えてく
金刺・鞆
とるーぷす級の到着まであまり猶予がない以上、下手に逃がして敵の分散を招くより近場で守るほうがよい、と。
その策、乗らせていただきます。
広場に向かうまでに【プラチナチケット】の効果をみなへ。これで死刑囚とも幾ばくか話しやすくなるかと。
わたくしどもは天魔武者の圧政に抗うもの。あなたがたを助けに参りました。
なれど、やつらはあなたがたの居場所を把握する能力を有しているらしく、あなたがたが散り散りに逃げたら守り抜くのが困難になる。
ゆえ、われらはここでやつらを斃します。その間、この場で己が恐怖に耐えていただきたい。
戦うものは異なれど、共に戦ってくださいませ。
最終手段は当て身などで気絶していただく他ない、か?
喩・嘉
※連携、アドリブ歓迎
どこの時代もどんな場所も、
公開処刑のやり方ってのはそう大きな違いがないもんだな
罪なき者の処刑など、到底見過ごせるものではない
捕まっている者たちの縄を解いて迎撃体制を整えるまでは敵に気づかれないに越したことはない
闇に紛れながらもさらに「五里霧計」を使用し、辺りに、そこにあるとも気づかれぬ深い霧を立ち込めさせよう
皆の行動の助けになるはずだ
助け出す者たちへの説明は簡潔に、しかししっかりと伝える
恐怖に負けず、正義を貫こうとしたお前たちと、俺たちの心は同じだと
一蝶・信志
ああ…。今日もジャン様ステキだった…。(うっとり)
いけないいけない、ちゃんとオシゴトしなくっちゃ!
魔法少女シンディに変身して死刑囚にされちゃった人たちを助けるわ
落ち着いて行動できるようにみんなが丁寧に説明してくれているから、
【友達催眠】を重ね掛けして、より聞いてもらいやすくしておきましょう
大丈夫よ。何が来たってワタシがこの身体で守ってあげる
何度だって助けにくる
ワタシのことを忘れてしまっても、それだけは覚えていて
もう諦めなくていいの
※
救出行動がより鮮明に人々の記憶に残るように心がけて行動する
魔法少女→本人的には「正体はナイショ♡」として行動する
平良・明
こんにちは、天正大戦国
これから踏み歩いていきます
政治は詳しくないのですが、圧政も政治の内なのでしょうか
ともかく、巷の人々がどんな顔をしているのかが気になります
逃げ出すのには心の準備も大事
気力を失いかけているということは、心も口も渇いた状態です
ひと口の水で息を吹き返すなんて事もあるかもしれません
仲間と縄を解いた後に、持ってきた水筒から清い水をわけて
またしっかり立ち上がれるように勇気づけします
皆が歩いてきた道は、続いていきます
ゼキ・レヴニ
金ピカ武将共に、抗う者の声は潰せねえってとこ
見せてやらねえとな
現地で目立たない村人風の装い
死刑囚用に応急手当道具や履物を用意
潜入時は【光学迷彩】で斥候を
敵兵の目がありそうな場所は身を隠し先行
安全そうなルートを探り迅速に死刑囚の元を目指すぜ
縄を解き一人一人の目を見て落ち着いた口調で話す
散れば追討されるが、一塊なら全員を守れる
圧制者に抗う志は勇気あるあんた達と一緒さ
少しの間その命預からせてくれ
皆が迎撃準備を整えている間
櫓など周囲を見渡せる位置で歩哨を
双眼鏡で砦方面や周囲を見張り
ついでに砦の構造や侵入口を見繕っておくか
敵勢に動きがあれば味方に合図を送るぜ
到達時の予測が出来てれば先攻で優位に立てるかね
●
月の輝く、小さな農村で。
「可哀そうに、いつまで晒しとくんじゃ」
「見な、砦の篝火が動き出した」
「じゃあ、もう……」
小さな農村で、人々の怯えた囁き声が交わされる。秋虫より小さなひそひそした声と視線の先には、棒に括られたまま放置された者たちがいた。
悔しさにすすり泣く女。怒りに唇を噛む男。長く息を吐いて諦観する老人……。
様々だが、その運命の行きつく先は一つだけ。
そう。
ここは天正大戦国。伊賀国。
圧政と絶望の支配する、鉄火の大名犇めく地……。
目指す砦とは反対の山麓に、土を踏みしめる足音が響く。
「こんにちは、天正大戦国。これから踏み歩いていきましょう」
静かに、しかしはっきりと平良・明(嶺渡・g03461)は告げる。新たな地、新たな時代へと踏み入ることを。彼の後ろに続くのは、共に行く復讐者たち。
「とるーぷす級の到着まであまり猶予がない以上、下手に逃がして敵の分散を招くより近場で守るほうがよい、と……そう言ってましたね」
金刺・鞆(虚氏の仔・g03964)が手筈を確認し、その策に乗ろう、と皆を見る。
「そうねぇ……今日もジャン様ステキだったわあ」
尤も、そう返した一蝶・信志(シンディ・g04443)は、別なことを思い出してうっとりしていたわけだが。
「……って! いけないいけない、ちゃんとオシゴトしなくっちゃ!」
苦笑したゼキ・レヴニ(Debaser・g04279)が、唇の片端を釣り上げたまま、麓を睨む。
「ああ。金ピカ武将共に、抗う者の声は潰せねえってとこ、見せてやらねえとな」
遠目にも伝わってくるのは、踏みにじられる人々の気配。押し殺した嘆き。
「ここでも民は虐げられてるのか……どこも変わらねえな」
守都・幸児(祥雲・g03876)は、深く暗い絶望を見透かしたようにそう呟く。喩・嘉(瑞鳳・g01517)が静かにうなずきを返した。
「そうだな……罪なき者の処刑など、到底見過ごせるものではない」
六人は麓の村へ向けて、足を踏み出す。
抗いようのない運命に潰されんとする人々を、救うために。
人々が家々に籠って怯える郷に、森の中からするすると霞が伸びてくる。棒に縛り付けられている囚人たちの姿が、揺らいでいく。
「少し肌寒くなってきたな……?」
命令でいやいや見張りを務めさせられていた二人ほどの村人が、首をひねる。離れた森の中に立つ人影のことは見えていない。
(「どこの時代もどんな場所も、公開処刑のやり方ってのはそう大きな違いがないもんだな」)
心中で呟きながら嘉は羽扇を振るって、見えぬ霞を送っていた。
更に。
「なにか音がしたぞ? 獣か?」
「こう暗くちゃ、何もわからんな……」
見張りたちは、石を投げて葉を揺らした音に釣られ、明後日の方向の茂みに向けて歩いていく。ゼキの、すぐ隣を過ぎ去って。
(「それでいい。ちょいと離れていてくれよ……」)
姿を現したゼキが、続く仲間たちへと合図を送る。
「現場は霧の結界で覆った。これで騒がれることもないだろう。迎撃体制を整えるまでは、敵にも里者にも気づかれないに越したことはない」
「ああ。見張りは無理矢理やらされてるんだろうが、騒がれたら黙らせなきゃいけなくなっちまうからな。ここは俺たちでサポートしようぜ」
平穏結界と光学迷彩が、続く仲間たちを覆い隠して、広場への道を拓く。最後に通った鞆が、二人に頭を下げて。
「当て身で気絶していただく他ないかと思っていました。助かります。お二人から、囚人たちへは……何か?」
「恐怖に負けず、正義を貫こうとしたお前たちと心は同じだと……そう伝えてくれ」
「俺も志は一緒だと、そう頼むぜ。見張りは任せな。敵の動きが予測できれば、優位を取れるからな」
二人は微笑んで、先へ行くよう仲間たちを促すのだった。
「……う」
囚人の男が、朦朧としながらもとんとんと身を叩く気配に気づく。霞む視界に映るのは、口元に指を立てた幸児の姿。
「驚かねえで聞いてくれ……助けにきた」
「だれ、だ……? 見張り、は?」
落ち着いてゆっくりと語る彼の後ろでは、他の復讐者たちが同じようにそれぞれ囚人たちに囁きかけている。
「わたくしどもは天魔武者の圧政に抗うもの。見張りの方は仲間が囮となって、遠ざけております」
鞆が周囲に聞こえる程度の声音で、語り掛ける。
「その仲間からも伝言だが……要するに、みんなあんたたちと志を同じくする者ってとこだ」
囚人たちは弱々しく視線を交わしあった。幸児の説明に、鞆のプラチナチケットも合わさって、他の郷で反抗を試みた者たちの集まりなのだろうと彼らは納得したようだ。そして。
「じゃあ、すぐに逃げろ……!」
息をするのも辛そうな声で、一人の囚人がそう言う。信志が、困ったように眉を寄せながらきつく縛る縄に指を掛ける。
「落ち着いて聞いて。説明してるでしょ? 助けに来たのよ?」
「駄目だ。アンタたちまで、殺されちまう……」
信志の友達催眠の効果か、元々の囚人たちの人格か。彼らは縄を解かれながらも、口々に自分たちを見捨ててここを離れろと語る。
よろめいた囚人を抱き留めながら、信志は白いドレスを翻し、精一杯の慈愛を込めて微笑む。
「諦めないで。大丈夫よ。必ず、助けるから。あ、でも、正体はナイショでね♪」
「ありがたいが……そんな格好じゃ、すぐ掴まっちまうよ」
違和を与えぬためか、魔法少女シンディの衣装は“目立つ格好”くらいの認識らしい。逃げたところで同じ結果になると思っている男を見て、信志と明がため息を落とす。
(「殺される点に疑問は持てないのね……根深い絶望を感じるわ」)
(「政治は詳しくないのですが、圧政も政治の内なのでしょうか。巷の人々がどんな顔をしているのかが気になっていましたが……」)
同志としての信頼を勝ち得ても、この絶望を振り払えないと彼らは自分たちを囮に自滅行為に走りかねない。そう判断し、明はまず持ち込んできた水筒を差し出す。
「逃げ出すにも心身の準備が大事です。心も口も渇いた状態では、歩くのもままなりませんよ。清水を持ってきました。これをどうぞ」
「み、水か……! ありがてえ!」
人々は、目を輝かせてそれを受け取った。晒し者にされていた数日の間、恐らくほとんど口に出来ていなかったのだろう。末期の水と思っているのか、泣き出す者もいる。
(「気力も体力も尽きかけていたのですね。ケアが出来てよかった。またしっかり立ち上がれるよう、勇気づけなければ」)
明は、へたり込みながら水を飲む人々に向けて、語り掛ける。
「聞いてください。皆が歩いてきた道は、私たちが必ず続かせます」
一息ついて、顔を上げる囚人たち。続けるのは、鞆。
「しかし天魔武者どもはあなたがたの居場所を把握できるらしく、散り散りに逃げても全員が掴まってしまうのです。ゆえに……われらがここでやつらを斃します」
その言葉に、人々は飲んでいた水をむせ返した。
「ほ、本気で言ってんのか?」
「ああ。今から闘いになるが、俺たちが守る。どうか離れず共に行動してほしい。いきなり信じてくれってのも無茶な話だろうが……」
幸児がにやりと笑って、最後を引き取った。
「賭けて、みねえか?」
と。
人々は、目をぱちぱちさせて互いに見つめ合う。今のが聞き間違いではないかを、確かめるように。
「その間、己が恐怖に耐えていただくこととなりますが」
「安心して。何が来たってワタシがこの身体で守ってあげる」
語り掛けてくる復讐者たちに、囚人たちは互いを見つめ合う。
その目には、まだ懐疑がある。
あるが。
「闘って……勝ち目があると、信じているの?」
一人の女性の問いに、力強く頷きを返す復讐者たち。囚人たちは、ごくりと唾を呑み込む。
それは、絶望への懐疑。
すなわち、希望の灯を意味するのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【トラップ生成】LV1が発生!
【プラチナチケット】LV1が発生!
【平穏結界】LV1が発生!
【友達催眠】LV1が発生!
【防衛ライン】LV1が発生!
【光学迷彩】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV2が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
【先行率アップ】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!
峰谷・恵
「クロノヴェーダっていうのはどの種族も悪趣味なようにできてるんだろうね」
可能な限り味方と強力、連携する。アドリブ歓迎。
士気高揚効果を使って死刑囚を勇気づけながら天魔武者に居場所を把握されて逃げても捕まって殺されること、勝手に逃げないでくれれば自分たちが追手の天魔武者を倒すと説得する。
聞き入れてくれたら拘束を解き、トラップ生成で『数人が身を隠せる大きさで内側にはしごが付いた落とし穴』を作って落とし穴の覆いを取って落とし穴の中に死刑囚の身を隠させて再び覆いをかぶせて死刑囚を隠し流れ弾で死刑囚がやられないようにする。
「ここで追ってくる足軽を全部迎え撃つ。戦いが終わるまで頭を出さないでね」
月隠・新月
可能であれば他の復讐者と連携します。
まずは死刑囚の救出ですね。
広場に着いたら、死刑囚の皆さんに事情を説明しておきましょう。敵が襲ってきた際に恐慌状態になってしまってはことですので。
最低でも、俺たちは皆さんを助けに来たということと、敵が襲ってきたときは俺たちの傍から離れないでほしいということは伝えておきたいですね。
死刑囚の皆さんはこのまま処刑を待つのではなく、俺たちと共に非道に抗う道を選ぶと信じていますよ。何しろ上に反抗する気骨のある方々ですから。
皆さんを少しでも守りやすくするために、死刑囚たちの特徴を把握しておきましょう。主には体力や怪我の有無ですね。自力でどの程度動けるかは重要ですので。
渦中・浪刃
※連携・アドリブ歓迎
このような非道、到底看過できません
【友達催眠】を使用
囚われた人々が少しでも安心できるよう、[伝承知識]に則った立ち振る舞いを心がける
広場に付いたら、人々へ落ち着いた声で「助けに参りました」と告げる
今すぐ逃げ出したい気持ちは分かりますが、敵は貴方達の居場所を把握しています
ですから暫し、我々と行動を共にして頂けますか
ここまで心折れずに戦い続けた貴方達を守らせて下さい
皆さんと手分けをして縄を解きます
それでも逃げようとする方は怪我をさせぬよう注意し、体を張って止めて説得します
取り戻す為に振るっていたこの力を、今は守る為に使えることが嬉しい
力を尽くしましょう
彼等がこれ以上奪われぬよう
伏見・萬
(連携アドリブ歓迎・残留効果はできるだけ利用)
なるほどな、えげつねぇ趣味してやがる
周囲のディアボロスと協力
死刑囚を助け出して迎撃準備
動けない者がいれば肩を貸す・背負う等して移動補助
声をかけて安心させるとか向いてねぇが
全部諦めるのは、もう少しばかり待ってくれ
くたばる前に、あの鎧どもが潰れるとこを見たくねぇか
俺ぁ、その為に来たんだ
助けたモンを守りつつ、追って来る奴を迎え撃つ
通路か何かあれば理想的だが
近くに良さそうな場所がなければ、死刑囚を守るように陣形を組んで
仲間と手分けして全方向警戒
自分の担当する位置・方向を決め、【防衛ライン】を張って立つ
今からここは、テメェらを捕って喰う罠だ。来やがれ鎧ども
●
時は、僅かに戻る。
月隠・新月(茫洋のポラリス・g02544)は、先行する六人の仲間と共に、見えぬ霞の中を駆けていた。
宵闇とパラドクス効果が、村人たちからもクロノヴェーダからも、復讐者たちの姿を隠してくれている。
「広場に着いたら、まずは事情を説明しておきましょう。敵が襲ってきた際に恐慌状態になってしまってはことですので」
「ええ。このような非道、到底看過できません」
渦中・浪刃(渦隠・g02250)が頷き、友達催眠のパラドクス効果を広げていく。
「こちらです。助けに参りました」
たどり着いた浪刃は、幸児や信志と共に囚人たちに語り掛ける。少しでも安心できるよう、礼儀正しく落ち着いた声音で。
だが囚われた縄を解く時の、囚人たちの絶望に陰る眼を見て、伏見・萬(錆びた鉄格子・g07071)は舌を打つ。
(「なるほどな、えげつねぇ趣味してやがる。声をかけて安心させるとか向いてねぇが、やるっきゃねぇか」)
勇気を出して反抗を示した彼らでさえ、己が死ぬことそのものは疑えなかった事実が、圧政によって人々の心が精魂尽き果てていた事実を映し出す。峰谷・恵(フェロモン強化実験体サキュバス・g01103)が、囚人たちの縄を解きながら、嘆息した。
(「クロノヴェーダっていうのはどの種族も悪趣味なようにできてるんだろうね。この人たちを、勇気づけないと」)
縄を解きながら、恵は仲間たちと共に囚人たちを説得する。自分たちを信じて恐慌状態に陥らないでいてくれれば、追手の天魔武者を倒して見せると。
「ほ、本気で言ってんのか?」
闘うことを聞いた囚人たちは、驚愕に顔を見合わせる。浪刃は重ねるように言い聞かせた。
「気持ちは分かります。しかし、皆が言うように、敵は貴方達の居場所を把握しています。ですから暫し、我々と行動を共にして頂けますか。ここまで心折れずに戦い続けた貴方達を、守らせて下さい」
人々はこちらの計画に驚愕しながらも、こちらが本気で闘う姿勢であるのを見て、絶望を疑い始める。
様々なパラドクス効果を重ねた迅速な説得によって、志を同じくする同志であることは伝わっている。新月と萬も、懐疑的ながらも彼らは誘導には従ってくれるだろうと見て取る。元々、反骨心は強い者たちなのだ。
とはいえ、このまま戦闘に雪崩れ込むわけにはいかない。
復讐者たちは頷き合う。
彼らを守り通すための更なる工夫と、敵を迎え撃つ布陣を整えるために。
「闘って……勝ち目があると、信じているの?」
一人の女性が、問いかける。頷きを返す仲間たちに続いて、新月が前に出た。
「もちろん信じています。皆さんのこともね。このまま処刑を待つのではなく、俺たちと共に非道に抗う道を選ぶと……何しろ上に反抗する気骨のある方々ですからね」
助けられた囚人の女性を始め、囚人たちは不安を抱えてはいるが反発はしない。
「でも。アタシたちには武器も力もないよ? 怪我人もいるんだ」
「先ほど皆がお話しした通り、皆さんには敵が襲ってきたときに、俺たちの傍から離れないでほしいんです。怪我をした方は、俺や仲間が状態を見ます」
「勝手に逃げないでくれれば大丈夫。天魔武者は、ボクたちが必ず倒すから。信じて」
信じていると言われれば、人は悪い気はしないもの。更に恵の士気高揚効果を受ければ、人々の目には希望に続いて、勇気が燃え始める。それを見計らって、腕を組んでいた萬がにやりと笑った。
「どうせくたばるなら、最後にあの鎧どもが潰れるとこを見たくねぇか? 俺ぁ、その為に来たんだ」
それは、やけっぱちにも聞こえる呼びかけだった。囚人たちはふっと苦笑いをこぼす。
「ひどい無謀に聞こえるけど……」
「命を張りたくなる博打だぜ」
「気に入ったよ、アンタたち」
恵と新月が、顔を見合わせて笑みを交わす。
囚人たちの体調を診終えた新月は、足を怪我して動けなかった老人を背負う。
「守りやすい地形と陣形を整えましょう。そちらの女性にも、手を貸してあげてください」
「連中は、あの山道から降りてくるつもりだ。森を動く篝火が見えた。もうすぐ来るぞ」
足を挫いていた女性に肩を貸しながら、萬が顔を上げる。
村を巻き込まないためには、広場の入り口で迎え撃つべきだろう。四人が到着した時には、すでに平穏結界や光学迷彩、トラップ生成で迎撃の準備が整えられつつあった。
「助けた人たち、ただ囲んでるだけじゃ危ないよね。流れ弾とかも考えられるし。この中に入ってもらったらどうかな」
先に幸児が用意していた鳴子のトラップの傍にいくつか落とし穴があるのを見つけて、恵がそれを指す。即席とはいえ、塹壕で守る方が確実だろう。
「……これでよし。みんなここに入って、覆いをかぶってて。ここで追ってくる足軽を全部迎え撃つから、戦いが終わるまで頭を出さないでね」
穴の中に潜り込み、緊張した面持ちで頷く囚人たち。しゃがみ込んだ浪刃が布をかけて、立ち上がる。
「取り戻す為に振るっていたこの力を、今は守る為に使えることが嬉しいです……力を尽くしましょう。彼等がこれ以上奪われぬよう」
居並んだ復讐者たちは互いに決意を確かめ合い、藪や物陰を利用して身を伏せていく。
「迅速に準備を整えられましたね」
「それほど動いてもいません。敵は囚人たちが逃げたとも思っていないかも」
「とすれば、完全に油断しきってやってくるかもね」
「助けたモンを守りつつ、追って来る奴を迎え撃つにゃ、理想的だな」
囁き合う仲間たちを背に、最後に正面に立った萬が、両手を広げる。
「さあ。今からここは、テメェらを捕って喰う罠だ。来やがれ、鎧ども……」
黒き獣が走るように、防衛ラインが伸びていく。
守るべきものを背負い、復讐者たちは身構えた。
森の暗がりに続く道の向こうから、無数の篝火が列を成して近づいてくる……。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【士気高揚】LV1が発生!
【強運の加護】LV1が発生!
【友達催眠】がLV2になった!
【防衛ライン】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!
【アヴォイド】がLV2になった!
【命中アップ】がLV2になった!
●
無言で伏せながら、復讐者たちは篝火の列を睨む。
『囚人どもが僅かに動いたように思えたが……』
『おかしいな。逃げていない。すぐ近くに反応がある』
最初から平穏結界や光学迷彩を利用して隠密行動に徹したこともあり、敵はこちらの暗躍に全く気付いていない様子だ。
『縄を解いたものの、逃げる力もなかったか』
『それで穴でも掘って隠れたと』
『居場所など、全て筒抜けだというのになァ』
そう語り、足軽たちは笑い声をあげた。散らばるような動きもなく、無造作に列を成したまま歩いてくる。
策は成った。
囚人たちの信頼を迅速に勝ち得て処置を施した結果、彼らは敵の声を聴いて息を呑みながらも、身を縮ませて耐えている。
急造ながらトラップや防衛ラインによる防備も整い、迎え撃つ布陣は万端。
復讐者たちはその列を挟み込むように身を伏せながら、足に力を込めた。
『それ。その辺りに隠れているだろう。愚か者め』
『見張りどもも後で一緒に、磔に……っ!?』
油断しきった敵兵は無造作に歩み寄り、先頭を歩く数名が落とし穴に滑り落ちた。
そのまま中に張ってあった糸が切れて、森の中に鳴子の音が響き渡る。
『な、なんだ?』
警戒状態であればまず引っかかることはないだろう単純なトラップに引っかかり、敵が周囲に気を散らしたその瞬間。
復讐者たちは大地を蹴っていた。
ディヴィジョン、天正大戦国。
その地を取り戻す闘いの、始まりだ……!
峰谷・恵
「今日ここで死ぬのはお前たちに変更になった」
可能な限り連携を取る。アドリブOK。
鳴子が鳴ったのに反応して飛翔で上昇し、上空から敵へ攻撃を仕掛け敵の注意を頭上に向けて一般人に攻撃を向けさせないようにする。
敵の直上から魔気裂空弾を撃ち込み上を向かせ、味方が地上から攻撃しやすい状況を作る。
敵の反撃は飛翔で距離を取りながら回避、避けられないものはLUSTオーラシールドで防ぐ。
破れかぶれになって一般人を攻撃しようとする敵が居たらそちらへ全速で突撃しながら魔気裂空弾で攻撃、割って入ってLUSTオーラシールドで防ぎ竜骸剣で押しのけて一般人を守る。
「今ボクらが居るここにお前たちが奪えるものは無い」
アルマース・ハーズィン
※アドリブ連携歓迎
死刑囚たちの救出は他のメンバーがある程度進めてくれているようだな。
それであれば私は護衛と雑兵の掃討に務めるとしよう。
まずは『chien de chasse』を持って、鳴子の鳴った先へ向かう。
トループス級たちのいる現場に着けたら、【幻兵魔術:封鎖戦場】を使用する。
兵士たちの幻影を生み出すと共に、結界に敵群を閉じ込める。
戦闘時は死刑囚たちに攻撃が向かわないことを優先だ。
《大声》でトループス級たちに声をかけ、注意を私に向かせる。
あとはマスケットの《砲撃》による攻撃を浴びせてやろう。
「鉛玉を喰らいたいものから、さっさと来るがいい。死刑囚たちには傷一つ負わせんぞ」
●
虫のさえずる、秋の月夜。
アルマース・ハーズィン(遺物使い・g04123)は、無言で駆ける。
(「死刑囚たちの救出は他のメンバーがある程度進めてくれているようだな。それであれば私は護衛と雑兵の掃討に務めるとしよう」)
古いマスケット銃を背から引き抜いて木々の間をくぐり抜けた時、前方より鳴子の音が響き渡る。
始まりを告げる祭囃子の一斉打に似た音色に、峰谷・恵(フェロモン強化実験体サキュバス・g01103)が藪の中から大地を蹴った。高く高く跳躍して眼下を見やる。
落とし穴に滑り落ちた敵の先頭は無様な姿勢を晒して隙を見せ、他の仲間たちはその背後の本隊を狙って身構えている。
ならば、狙うは……!
『ちっ。馬鹿にしおって』
すり鉢状の落とし穴に滑り落ちた足軽たちが、膝を立てる。この程度、侵略者たちならば一足飛びに脱することが出来る。彼らは苛立たしげ頭上を見上げ、その目に映す。
「ああ。残念だったな。今日ここで死ぬのはお前たちに変更になった」
『……は?』
月を背負い、真っ逆さまに落ちてくる、恵を。
「まずはお前だ……裂き貫けッ!」
魅魔の翼が羽ばたくと同時に、渾身の魔弾を撃ち放つ。射出された魔力の徹甲弾が、足軽の笠にめり込み、金属音を立てながら鉄の頭蓋をひしゃげさせた。
『ご、おっ
……!?』
敵兵は壊れた人形のようにたたらを踏み、痺れるほどの魅了の力が電子回路に火花を散らす。
『な、なに!』
周囲の兵が驚愕に足をひいた時。落とし穴のふちから、アルマースの銃口が持ち上がった。
「我が遺物よ。嘗ての力を示せ。忠実なる兵と共に……」
敵兵たちが驚愕に振り返る間に、マスケットを構えた無数の歩兵の幻影が、列を成して銃を構える。前線を切り裂いた兵団が、敵の籠る塹壕を狙い撃つ時のように。
「我に害なすものを封じ込めよ……!」
一斉に火を吹く銃口。たたらを踏んでいた兵士が大地に打ちつけられ、周囲の兵隊たちは咄嗟に身を縮めて笠で受ける。
『こ、こいつら……ディアボロス!』
『すでに、ここまで!』
落とし穴の上からは、突撃を仕掛ける復讐者たちと足軽の本隊が激突する音が聞こえ始めていた。
敵軍への奇襲は成った。恵はそれを確認し、落とし穴から抜け出ようと足掻く敵先鋒に狙いを定める。アルマースが、視線で合図する。罠にはまったこの先鋒は、逆を言えば一番突出している敵。その始末こそ、自分達の役割だと。
『おのれえ! 出るぞ!』
斉射の合間を縫って、足軽はがむしゃらな突撃を敢行する。恵は即座に闘気を高め、その身を覆って。
「すでにボクらが居るここに、お前たちが奪えるものは無い」
足軽たちの突き出す槍に、恵の頬と肩から鮮血が舞う。胸ぐらを魔弾に撃ち抜かれた敵には、アルマースの幻兵が群がりとどめを刺した。
『ちっ! 放て!』
幻影の兵団に向けて、足軽たちの槍から稲妻が迸る。幻兵は次々に掻き消えて、土煙が吹き上がる。
だが。
「この程度か……」
土煙を羽ばたきで吹き飛ばした恵の横で、アルマースが身に負った火傷を振り払う。
「鉛玉を喰らいたいものから、さっさと来るがいい。死刑囚たちには傷一つ負わせんぞ」
『……ッ!』
身構える二人。その前には、罠にかかり、孤立し、突出した敵先鋒。揺らがぬ二人に気圧されながらも、残る敵は咆哮を上げて突進する。
闘いは、始まったばかりだ。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【飛翔】LV1が発生!
【ハウスキーパー】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV5になった!
【能力値アップ】LV1が発生!
喩・嘉
※連携、アドリブ歓迎
まず初手の策は成った
こうなれば、隠密に動く必要はない
突撃だ
羽扇を振るい、「幻鶴翼陣」を使用。
「敵は複数で囲み、逃さぬように撃破していけ」
幻影の兵士を召喚すると彼らを指揮し、
死刑囚達と敵兵の間に兵の壁を作るように動かす
【未来予測】を活用し、
敵の動きの先を読みながらその先手を取るように対応していく
杏・紅花
※連携、アドリブ歓迎
みんなが助けたこの国のひとたち、あたしも助けたい
どんな国でも、ひとが大事っ!
仲間の残留効果も活用させてもらいながら
民のみんなは守られているかな
敵を彼らに近づかせないために、あたしは前に出て敵を捕らえて切り裂く
「寸鉄の羂」でワイヤーソーを網状に展開
捕らえる端から鎧ごと切り裂いてゆく
その刃とあたしの鉄と力比べしちゃお
負けないんだからねっ
みんなが作ってくれた罠も大いに活かせそう
混乱した雑兵ほど捕らえやすいものはないぞおっ!
ゼキ・レヴニ
初手は上々ってとこかね
さ、この勢いで守りきろうぜ
【光学迷彩】で潜んでおき
敵が混乱してる間に味方とタイミング合わせ不意打ち*
又は見張り位置から行動できそうなら
他の味方とタイミングずらして横っ腹を叩き(フェイント*
更に混乱させるのもアリかね
相手は足軽、隊列の足並み揃えられっと厄介だからな
『躯』を鉄条網に変じて敵の足を絡げ取り
【防衛ライン】をより強固にするぜ
味方と連携して防衛線を固め
死刑囚の所に抜けようとしたり
応援を呼びに行く素振りの敵が居れば優先で狙ってく
近接戦になったら鉄条網を腕に巻きつけ敵を強打*
悪い子にゃ鉄拳制裁だ、文字通りの意味でな
その痛みはお前らが虐げた民の痛みだ、理解したかい?
*=技能
月隠・新月
死刑囚の皆さんは俺たちを信じてくださったのですから、それを裏切るわけにはいきません。
必ず守ります。
俺は【ストリートストライク】で敵を攻撃します。
戦場内には罠をあらかじめ用意してくれていますので、ありがたく使わせていただきましょう。敵を罠に誘い込むように立ち回り、敵の隙を作ったところに攻撃を加えたいですね。
突撃してくる敵を落とし穴に誘い込む等が有効でしょうか。
死刑囚の皆さんに敵を近づけないよう、【防衛ライン】で進行を食い止めましょう。
もし死刑囚に近づく敵がいれば、最優先で攻撃します。
他のディアボロスと連携し、可能であれば援護します。
また、他のディアボロスの不利になるような行動はとりません。
平良・明
※連携、アドリブ歓迎
天正大戦国に秋が来た
収穫の季節には歌いたくなります
せっせこため込んだその力を刈り取ってやりましょう
虫を掃う火を呼びこむのは風
夏に迷い秋に吹き下ろす嶺渡の音
秋の「山歩き」は実りと共に
木通や山葡萄の蔓などそこらにたくさん
油断すると脚を絡めとられて転んだりもして
動けなければ罠にかかる兎も同然です
もがいてパチパチ爆ぜたとして
秋の雨は雷も伴うものです
●
息を止め、伏していた復讐者たち。その眼前で鳴子の音が響き渡り、敵先鋒が落とし穴に滑り落ちる。油断はしつつも前に集中していた隊列の視界が、上に散る。
(「初手は成った。こうなれば、隠密に動く必要はない」)
見えぬ霧をまとっていた喩・嘉(瑞鳳・g01517)が立ち上がり、羽扇を掲げる。その周囲に、幻影の兵を出現させながら。
「展開せよ、歩兵部隊」
言い終わるよりも先に、敵先鋒が滑り落ちた落とし穴に二人が飛び込むのが見えた。
それを合図代わりに、復讐者たちは敵軍へと一斉に飛び掛かる。
「初手は上々ってとこかね。さ、この勢いで守りきろうぜ……!」
「ええ。皆さんは俺たちを信じてくださったのですから、それを裏切るわけにはいきません。必ず守ります」
ゼキ・レヴニ(Debaser・g04279)が狼狽える敵を正面から蹴倒し、振り返ろうとする足軽を月隠・新月(茫洋のポラリス・g02544)が突き飛ばして、開いた落とし穴に落とし込む。
「みんなが助けたこの国のひとたち、あたしも助けたい。どんな国でも、ひとが大事っ!」
「この地にも秋が来ていますね。収穫の季節には歌いたくなります。せっせこため込んだその力を、刈り取ってやりましょう」
混乱する敵陣に横から襲い掛かるのは、杏・紅花(金蚕蠱・g00365)と平良・明(嶺渡・g03461)。
『こいつら、ディアボロスか!』
前に出ていた敵は狼狽えるばかりで碌に身構えることも出来ていない。油断して長蛇の縦列になっていた敵軍は、落とし穴に引きずり込まれた先鋒と、混乱して隊列を乱す前列部、足を止めた後列に分断された。しかし。
『前方に敵襲だ!』
『態勢を立て直せ!』
『前へ出るぞ!』
その叫びに、五人はさっと視線を敵後方に移す。このままでは縦列の後方は陣を組みなおし、前列を救いに来るだろう。反撃を許すわけにはいかない。五人は、混沌の前列の隙間を駆け抜け、敵陣奥へと走り込む。
形勢を逆転させんとする、敵の主力を突き崩すために。
『行くぞ! 前列を助けろ!』
後列の足軽たちが槍を構えて突っ込んで来る。衝突までの微かな間に、紅花がちらりと背後を振り返って。
「思わず飛び出しちゃったけど、民のみんなは守られているかな」
「攻める先とタイミングずらして更に混乱させるのはアリだぜ。相手は足軽。隊列の足並み揃えられっと厄介だからな」
「ああ。前列は残りの仲間に任せる。ここから先、俺と兵は後列を阻む壁となろう」
ゼキが応じると同時に、その隣で頷くのは嘉。振るった羽扇に鬨の声が重なり、嘉が命じるのは。
「突撃だ。敵は複数で囲み、逃さぬように撃破していけ」
幻兵の群れが突進し、真っ先に突っ込んできた敵兵たちと激突する。咄嗟に突撃に移るしかなかった敵陣と、最高の機会を狙った幻鶴翼陣。その突撃力の違いは明らかで、数体の敵兵が押し倒されるように勢いを殺される。
『くっ! 奥の術師を撃て!』
更に後列より放たれる稲妻に、押し倒した敵を突き刺そうとしていた幻兵が引き裂かれた。羽扇でそれを弾く嘉の腕にも、熱と痺れが走る。
『今だ! 前へ出ろ!』
突っ込んで来る敵兵。しかし嘉の視線は、冷ややかに。
「無駄だ。策とは常に次へつなげるもの」
「その通り。壁の向こうってのはな。万国共通で関係者以外立ち入り禁止なんだぜ。知ってたか?」
結界の如く広がる鉄の茨を腕に絡みつかせながら、嘉の眼前に降り立ったのはゼキ。己が死守した、遠き日の血戦の記憶。それを守りの力……鉄条網へと変えて、幻影の兵団と共に防衛線を構築する。
『何!』
茨の鞭の如くしなった鉄条網の束が、突撃して来る敵兵の足を切り裂きながら絡め取った。悲鳴と共に転んだ先頭の兵を踏み越えて、後続の足軽が突っ込んで来る。ゼキは、防衛線を背に抱えたまま突進した。穂先がわき腹を抉るのも構わず、こぶしに鉄の茨を巻き付けて。
「こっから先へ行こうなんて悪い子にゃ、鉄拳制裁だぜ! 文字通りの意味でな!」
漢の拳と無数の棘が、鋼鉄の顔面を抉りぬく。稲妻と火花を吹き散らしながら足軽の首が弾け飛び、続く後続に向けてゼキは次々と拳を繰り出していく。
『こ、この……!』
「その痛みはお前らが虐げた民の痛みだ、理解したかい?」
『生意気を! 一斉に掛か……!』
「させませんよ」
起き上がろうとした敵兵の足に巻き付いていた鉄条網を引っ張るのは、新月。敵が無様に顔面から地べたにぶつかるのにも構わず、腰を落としてそのまま鉄の茨を振るう。敵兵を、絡めたままに。
(「罠も壁も、皆さんがあらかじめ用意してくれています。ありがたく使わせていただきましょう」)
『おおおぉぉぉ……ッ!』
間延びする悲鳴と共に、振り回された敵兵が投げ飛ばされた。鉄と鉄のぶつかる金切り音と共に、足軽は広がった鉄条網にぶつかって、蜘蛛の巣にかかった虫のように垂れ下がった。
『よくも貴様ァ!』
突進してくる足軽。突き出される槍の下を飛び込むように潜り抜けながら、新月は斃れた敵兵の槍を拾い上げる。
(「敵を誘い込み、隙を作って……貫く!」)
跳ね上がるばねの力を利用して、槍の穂先が敵兵の頭蓋を刺し貫いた。ゆらりと後ろに傾く足軽の死体を蹴りつけると、新月の背がどんとぶつかる。にやりと笑うゼキの背と、それを支える嘉の腕に。
「ありがとうございます。さあ、押し返しましょう」
「おう! 連携していくぜ!」
「側面援護は任せてもらおう」
嘉の幻兵を率いるように、二人は押し寄せる攻め手を受け止め、押し返していく。
『こやつら、思ったより……!』
『槍衾を組め! 陣で掛かるのだ!』
攻めあぐねた敵は、流れるような動きで陣形を組み始める。だがすでに、その頭上に跳び出す影があった。
「ようやく、出番! ここは任せたよー! 敵を彼らに近づかせないようにして! あたしは前に出て……!」
見上げた敵勢。回転する影の袖から伸びたワイヤーが、かまいたちのようにその顔面を切り裂いた。悲鳴を上げて、足軽たちが目を押さえる。敵勢の中心に着地するのは、紅花。
「……敵を切り裂くから!」
『ちっ、突出して来るとは、愚かな!』
辛うじてワイヤーを避けた敵兵が、一斉に彼女へ駆けようとする。
だが。
「虫を掃う火を呼びこむのは風。夏に迷い秋に吹き下ろす嶺渡の音。秋の“山歩き”は実りと共に……」
敵兵たちは槍を突き出した姿勢のまま、無様に転んだ。振り返れば、足元に絡みつくのは植物の蔓や根。いや、その幻影。
『これは……!』
「木通や山葡萄の蔓などそこらにたくさん。油断すると脚を絡めとられて転んだりもして。如何に屈強な兵も、動けなければ罠にかかる兎も同然です」
そう語るのは、明。草木の間を滑るように紅花の脇に立ち、二人は背を合わせる。二人で攪乱と攻撃を担うならば、その突出も無謀ではない。蔓に槍を絡め取られた敵兵が刀を振るうも、身を転がす紅花を掠めるのみ。金属の激突に火花が散れば、足軽の首の方が飛ぶ。
「力比べじゃ、負けないんだからねっ。混乱した雑兵ほど捕らえやすいものはないぞおっ!」
「ええ。もがいてパチパチ爆ぜたとしても、秋の雨は雷も伴うものですよ」
迸る稲妻を、明は伸び上がる蔓で受け止める。頬に走る紫電に構わず、伸びた根が機械の内側に潜り込み、回線を切断する。
『く、くそ! 負けるな、行け! 行け!』
足軽たちは一人、また一人と電子の魂が抜ける音を響かせながら、頽れていく……。
足軽天魔騎士の縦列……その後方に控えていた敵の主力は布陣を裂かれ、組織だった攻勢を封じられた。
「はっ! 流れは掴んだぜ!」
「概ね、こちらの戦場の推移は決まったようです」
「後は後方。囚人たちが無事か否か、だな」
敵の攻めを受け止めていた三人が、ちらりと後ろを振り返る。
自分たちが無視して飛び越えて来た敵前列と、防衛ラインのすぐ前に残してきた仲間たち。
その戦場は、果たして……。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
効果1【未来予測】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
【防衛ライン】がLV3になった!
【強運の加護】がLV2になった!
【プラチナチケット】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV7になった!
【先行率アップ】がLV2になった!
【命中アップ】がLV3になった!
【アヴォイド】がLV3になった!
金刺・鞆
此度わたくしはそう大したことなどしておりませなんだが、策にかかる敵というのは如何なる世でも見ものにございますね。
とはいえど、不意の虚とていつまでも続くものにはございませぬ。いざ、開戦と参りましょう!
敵は想像以上に子細な位置把握を可能としている、のでしょうか。
【防衛ライン】、ありがたく使わせていただきます。守るもののある戦いに、まさにうってつけのちからであるかと。
わたくしが用いるは水の檻。敵の攻撃、得物を封じつつ戦いましょう。仕掛け扇の骨を軸にして受け流しなどの防御を固め、堅実な削り合いを。
われらはきさまらに抗い、打ち倒すもの!
人の意志はけして負けぬ。それはいつかこの世の王に届き得る刃である!
渦中・浪刃
※連携・アドリブ歓迎
皆さんがあらゆる策を弄してくれたお陰で、上手く敵の動揺を誘えたようですね
後は殲滅を目指すのみ
【防衛ライン】を活用させて頂きましょう
【未来予測】で一瞬でも早く敵の動きを察知
「我等が相手となりましょう。ここより先は通しません」と声を張る
隠れている人々の不安を軽くできるといいのですが
片影が敵の視界に入るよう[投擲]し、自分や仲間達が攻撃する隙を作る
殺傷能力はなくとも気を逸らせることが出来れば僥倖
―さあ、頼みますよ境鳥
戦いの気配ごと足軽共を吹き飛ばしてしまいましょう
隠れている人々に届かぬように
我等を飛び越え一般人を狙う者があれば、そちらを優先して攻撃
仲間にも注意喚起し情報を共有する
守都・幸児
※連携、アドリブ歓迎
賭けてくれた民のためにも
踏ん張らねえとなあ
【防衛ライン】は幾つあっても多すぎるってことはねえからな
使う面子で民の前に、幾重にも壁が出来るように布陣する
俺も展開するぞ
加えて、俺が使う技は「平」
近付く敵を一体一体、結界の壁で押し返し押し潰す
俺は皆の攻撃を生き延びた敵、突出してこっちに向かってくる敵を狙って確実に仕留めるぞ
一方向だけでなく、複数の経路に気を配る
敵が狭い道を通って来るならその道いっぱいに結界を張って押し返してやろう
敵の数が多ければ、俺を攻撃させて反撃で放つ
【捨て身の一撃】になるが身を捨てる気はねえ
俺が倒れたら防衛ラインを一つ突破されちまうからな
意地でも立ち続けてやる
孫・リア
罠に関わったわね!さぁ覚悟するのは貴殿達ってね!
クロノウェーダと保護した民の皆の間に彼らを守るように立って
『指定PD』で敵を囲むようにそして民の皆を守るように炎の蝶を呼び出して囲うよ
炎の蝶で敵を燃やすタイミングは皆と連携して的確にそして無理やりこっちに来そうな敵を優先的に燃やしていくわよ
……もしそれでも無理やり来て民の人達を殺そうとするなら……『あの人』の炎で後悔するように燃やしちゃおうかしら?
【アドリブ共闘歓迎】
伏見・萬
(連携アドリブ歓迎・残留効果はできるだけ利用する)
さてと…テメェらは罠にかかったんだよ、鎧ども
テメェらが見下してきた奴らの前で、無様に潰れて喰われろ
周囲のディアボロスと声を掛け合い、敵や戦況の情報を共有
救出した人々(以後「保護対象」)に、敵の攻撃やその余波が飛ばないように注意し、隙や死角ができないように立ち位置と動きを調整
【道阻む黒獣】使用、保護対象を守る防衛ラインを更に強化しつつ戦闘
保護対象を襲おうとする個体(最優先)>自分の攻撃で撃破可能な個体>その他、の順に優先して狙い攻撃
(保護対象に、動かないよう声をかける)
お前らのところまで、鎧どもは通さねえ
だから信じて見物してろ。途中退場はナシだぜ
●
落とし穴に嵌まり、二人の復讐者に刈り取られていく敵先鋒。
それを尻目に、後列の敵主力に向けて駆け抜けていく五人。
そして。
「罠に関わったわね! さぁ、覚悟するのは貴殿達ってね! 行くわよ!」
駆け出すのは、孫・リア(勇武と炎を胸に秘めて・g03550)。先を行く仲間の後を追うように走り、敵兵の目を引く。
『くそ! 後列に行かせるな! 追……ッ!』
振り返る敵兵。その背を蹴り飛ばす形で落とし穴に突っ込みながら、金刺・鞆(虚氏の仔・g03964)が敵陣に着地する。
「此度わたくしはそう大したことなどしておりませなんだが、策にかかる敵というのは如何なる世でも見ものにございますね」
「ええ。皆さんの策のお陰で、上手く敵の動揺を誘えたようです。後はただ、殲滅を目指すのみ」
風を纏う渦中・浪刃(渦隠・g02250)が、突き出される穂先を掻い潜るように敵陣を攪乱する。守都・幸児(祥雲・g03876)は後列に走る相棒の背を見送って、敵の顔面を殴り倒した。
「俺たちに賭けてくれた民のためにも、主力を討ちにいった仲間のためにも、踏ん張らねえとな」
敵の前列は罠にかかって隊列を乱し、防衛ラインに阻まれて前進もままならない。逆を言えば、大人数で壁を前に詰まった密集状態。こちらにとっても、敵の動きは読みにくい。
「望むところだ。テメェらは罠にかかったんだよ、鎧ども。テメェらが見下してきた奴らの前で……無様に潰れて喰われろ」
伏見・萬(錆びた鉄格子・g07071)が首をひねって槍を躱すと、蹴り倒して敵から距離を取る。
陣も何もなく、互いに周囲は敵だらけ。五人の復讐者たちは視線を交わすと、それぞれに身構える。
「不意の虚とていつまでも続くものにはございませぬ。いざ、開戦と参りましょう!」
鞆の叫びが告げる。敵味方の入り乱れる、乱戦の始まりを。
『目的は囚人どもの解放か!』
先頭の足軽たちが、防衛ラインに激突した。仕掛け扇を振り上げて延髄を叩こうとした鞆の一撃をさっと躱し、上から突きを打ち込んで来る。互いに牽制ながら、激しい一合。目を細めて、鞆と敵は互いの視線を追う。
(「敵は想像以上に子細な位置把握を可能としている、のでしょうか」)
互いに、意識は防衛ラインの向こう側。囚人たちの隠れる穴に向けられている。敵にとっても、人質に取れると考えているのだ。
「この壁、ありがたく使わせていただきます。守るもののある戦いに、まさにうってつけのちからであるかと」
『ならば飛び越えてくれよう!』
槍を構え、棒高跳びの要領で飛び越えようとする兵を睨み、鞆は扇を広げて振りぬいた。
「させはいたしませぬ。立ち伸び阻め、力ある水よ!」
舞の所作に合わせ、大地から立ち上った水が大蛇の如く敵兵を足から絡め取る。
『くっ、これは!』
水は槍ごとその身を巻き取り、敵兵を呑み込んで閉じ込めていく。足軽は咄嗟に刀を抜くと、水圧に潰される寸前で、それを投げ放った。振り下ろした仕掛け扇に火花が弾け、鞆の頬に緋の筋が走る。
『貴、様……!』
水の中で、敵は水圧に軋みながら恨みがましく手を伸ばす。構わず、鞆がぱちりと扇を閉じた時。水檻の中で敵兵は圧壊し、鈍い爆音と飛沫となって飛び散った。
「われらはきさまらに抗い、打ち倒すもの! 人の意志はけして負けぬ。それはいつかこの世の王に届き得る刃である!」
『ほざくな、チビが!』
水を舞わせ、鞆は防衛ラインを背に敵の攻撃をいなす。一人一人、確実、かつ堅実に。その水は敵兵を圧し潰していく。
ちらりと防衛ラインの内側を見れば、人々は目を丸くして穴からこちらを覗いていた。強大なクロノヴェーダを倒すことの出来る力を、彼らは初めてその目にしたのだ。
「お前らのところまで、鎧どもは通さねえ。だから信じて見物してろ。今、証拠を見せてやる……途中退場はナシだぜ」
突き出される槍を躱しながら、萬が敵兵の一人を蹴り倒す。目まぐるしく押し寄せる穂先の群れ。その一つを掴み、幸児が敵を殴り飛ばして防衛ラインに背をつける。
「ああ。結界は幾つあっても多すぎるってことはねえ。俺も展開するぞ。幾重にでも壁を張ってやろうぜ」
二人は、突き出される槍を捌いて左右に散った。一つ、二つと突きを躱す度に、増える切り傷。それにも構わず、にやりと笑みを交わして。
「こう周り中から攻められたんじゃ、狙いにくいよな。今、まとめてやるぜ」
幸児の掌から紙符が舞い飛び、瞬く間に壁を作り上げる。敵兵の槍がそれに突き刺さった。
『守りの術など、攻め立てて突き倒すのみよ!』
「ごめんだな。俺が倒れたら防衛ラインを一つ突破されちまう。意地でも立ち続けてやる。それに……」
敵が槍を引き抜こうとして、足を止めた。巻き取られ縫い留められるように壁に食い込んだまま、抜けはしない。それどころか、紙符は壁の厚みを増しながら、敵兵を引きずり込み始める。
『うっ、おおぉお!』
「これが護るだけの術だなんて、誰も言ってねえぜっ」
敵兵をへし折り潰しながら、幸児は結界の壁を構えたまま突進していく。攻め寄せる敵兵たちに激突しながら、押し返していく先は……。
「どん詰まりが向こうからやってくるとは、珍しいこともあるもんだな……まぁ、安心しろよ。どちらにしろ、ここがお前らの道の終わりだ」
膨れ上がる闘気と、身を覆う呪詛の塊。地獄の底で罪人たちを待ち受ける黒き獣の如き殺気に、押し返されてくる兵たちが「ひっ」と息を呑む。
「さあ、まとめた。あとは頼むぜ」
「任せろ……」
重く響く萬の声が、敵兵と共に紙符で覆われていく結界の中に閉じられる。あとはただ、その中から荒れ狂う獣の咆哮と、金属が切り裂かれる音が響くばかり。
水柱に包まれ、紙符に閉じ込められ、黒き獣に刈り取られて、斃れていく敵兵たち。元より混乱していた勢いは削がれ、後方からの援軍も来ない。
「なんなんだ、あの旦那方は。本当に……」
囚人たちは、自分たちの居場所を知られていることも忘れて、その光景に見入っている。
『ええい、殺せ! 奴らだけでも!』
その号令が、自棄に近い力を発揮したか。まだ生き延びていた敵兵たちが、前に出た三人との戦闘を放棄して、脇をすり抜ける。
「「……!」」
後ろから攻撃されることも構わず、敵兵たちは雄叫びと共に防衛ラインに突き進んだ。
『我ら死すとも!』
『カラクリに力を送るのだ!』
組み体操のように前を行く兵がしゃがみ込み、後ろの兵が槍を大地に突き刺しながら、その背を蹴る。雑技のような跳躍で、一か八かの結界越えを狙う腹だ。
しかし。
「身を捨ててまで民の人達を殺そうとする……なんてね。覚悟? それとも、狂気?」
「いずれにせよ、ここより先は通しません。我等が相手となりましょう」
その前に立ちはだかる、二つの人影。敵の動きを読み、後方の防衛ラインに張り付いていたのは、浪刃とリア。
跳躍する敵を前に、流れるように巻物が広がり、いざなう指先が紅き蝶を呼ぶ。
『構うな! 跳べ!』
リアが、敵兵に合わせるように跳躍する。蝶の群れを率いて。目前の敵兵は、刀を抜いて斬りかかった。
「来て、紅き蝶々。集まって民を守り、燃え猛ってあの人を呼んで。その炎を前に、人々に仇成す者たちが後悔するように……!」
瞬間、無数の蝶が立ち上った。全てを呑み込む、焔の波のように。息を呑んだ敵兵が、火柱の中に翅を震わす男の幻影を見る。刀と炎の剣が激突し、敵兵の意識を焼き裂いたのは、その直後。
『なっ!』
跳んだ兵たちが火に巻かれたのを見たのは、地面に残った敵兵たち。咄嗟に槍を構えて稲妻を放つ。
だが。
「……さあ、頼みますよ境鳥。戦いの気配ごと、この足軽共を吹き飛ばしてしまいましょう。あの人々に、決して届かせなどいたしません」
浪刃の巻物から飛び出したのは、木の葉天狗。扇を振るうと、立ち上った火柱が旋風に導かれていく。焔の竜巻と化した風は、放たれる稲妻を弾き飛ばしながら口を開いた。
『よ、吉継様、申し訳……ッ!」
悲鳴を上げる敵軍は、焔の旋風に切り裂かれながら、呑み込まれる。
一息ついた二人が顔を上げた時、戦場に立っていたのは三人。
微笑を以て頷き返す、鞆と幸児と萬だけだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【傀儡】LV1が発生!
【未来予測】がLV2になった!
【防衛ライン】がLV5になった!
【温熱適応】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV8になった!
【命中アップ】がLV5(最大)になった!
【ロストエナジー】LV1が発生!
●
「し、信じられねえ」
囚人の老人が、口を開けたままそう呟く。
「本当に、アイツらを……」
女性は、すでに穴に身を隠していない。若い男は、防衛ラインの前まで出てきて膝をつく。
「やっちまいやがった」
結界の前に展開していた敵部隊は、五人の前に壊滅し、ひしゃげた鉄塊と化している。
敵の先鋒が引っかかった穴から出てくるのは、二人の復讐者。
後方の森の奥からは手を振ってこちらに来るのも、その仲間たちだけだ。
「とるーぷす級の追手は、全て掃いました」
「もう自由です。怪我を癒して、故郷へお戻りください」
「へへ、賭けはみんなの勝ちだぞ。礼はいいぜ」
囚人たちは泣き声を上げてやってくる復讐者たちを迎える。止めるのも構わず口々に礼を言いながらその手を取り、せめて出来ることは何かないか、と口にした。
「そうだな……俺たちのことを、覚えておいてくれ」
「ははっ! ついでに、吹聴もしてくれるとありがてェな」
排斥力は彼らから復讐者たちの記憶を奪うことはわかっている。それでも囚人たちは幾度も頷きながら必ずそうすることを固く約束した。持ってきた物資の残りを渡した時、囚人たちは言った。
「せめて……」
名を聞かせてくれ、と。
「いつかきっと、思い出して。ボクたちは……ディアボロス」
「また何かあっても、必ず助けに参ります」
「さ、もう行って。私たちには、まだすることがあるの」
こうして山麓の村での闘いは終わり、囚人たちは故郷への帰路についたのだった。
そして。
「さて、秋の山歩きは楽しめましたね」
「俺たちには、まだ残り物の掃除が残ってるだろ」
「罠いっぱいのカラクリ砦っ! だよね~?」
「そしてアヴァタール級だ。清算をしてもらうぞ」
山を登った復讐者たちは、夜の森から睨み据える。
煌々と燃える篝火に、その姿を浮かび上がらせる、厳めしい砦を。
すでに部隊を討ち払われた今、兵力という点ではもぬけの殻に等しく、残るは敵将のみ。
しかしこの地に仕込まれた忍カラクリは、一見して普通の砦であるこの城塞を、罠の犇めく死出の迷宮へと作り変えているという。
正面から挑み、敵将を狙うか。
裏から忍び、仕掛けを崩すか。
復讐者たちの決断は……。
峰谷・恵
「裏門封じていないのは罠で嵌め殺すためか、クロノ・オブジェクトのメンテナンスのためか…どっちかな?」
可能な限り連携を取る。アドリブOK。
パラドクス通信で他に砦裏手から潜入する味方と情報共有する。
未来予測と飛翔を使って内部を進み、重力方向変換は飛翔で、飛び出してくる罠は未来予測で察知して対処する。
忍カラクリには簡単に近寄られないようにしていると予想、通り難い方を選んで進む。
分かれ道を探るときは分岐点に持ち込んだ青クレヨンで既に探しに入った印をつけておく。分かれ道が行き止まりだったら分岐点に戻った際、印に隣接して行き止まりの印を付ける。
忍カラクリを見つけ次第パラドクスの電撃で破壊する。
伏見・萬
(連携アドリブ歓迎・利用可能な残留効果は利用)
カラクリか。なかなか面白ぇが
そんな暢気なモンでもなさそうだ
怪我は大して気にしねぇが、ここで消耗し過ぎてもまずいだろうし
慎重に、でも急ぐ、って奴かね
仲間と協力し、周囲を警戒・観察
声を掛け合って情報を共有しつつ、仕掛けを突破して進む
砦内の仕掛けや柱・梁に鋼糸を引っかけて、地面の罠を極力避けて移動
罠は、仕掛けの間に物を挟む等して発動を食い止める、
武器で破壊・受け止めて【腐食】させ破壊、などで対応
核を発見したら速やかに破壊する
仲間が罠にかかりそうな時や、核を発見したが自分の攻撃が届かない場合は
自分を踏み台代わりに仲間を押し出す・投げるなどでの移動補助も行う
金刺・鞆
忍カラクリ……先にこちらを破壊してしまったほうがよさそう、です。かなり大規模なカラクリ部屋となるようですし、このままあばたーる級に挑むのは厳しい、かと。
落とし穴には【飛翔】で対処し、【未来予測】に【エアライド】も用いて罠を避けつつ進みましょう。数秒先が視えていれば、かなり余裕を持って回避行動が取れるはず、です!
それに加えて【強運の加護】があれば、罠そのものへの遭遇頻度も減らせるやも……? いえ、いえ。それはさすがに高望みでしょうか。なれど、不運を軽減できるというのはおそらく心強いもの、かと!
重ねたちからが頼もしく。
中核に辿り着けたなら急ぎ破壊を。
大谷吉継……首を洗ってまっていろ、ですよ。むん!
月隠・新月
死刑囚の皆さんは助けることができましたし、これで一安心ですね。
アヴァタール級との戦いが残っているので気は抜けませんが。
まずは裏から忍び込んで仕掛けを崩しましょうか。敵にとって有利な状態で戦いたくはありませんから。
砦内の移動の際は【飛翔】で飛んで、床に足をつかないようにします。床にかかる重さを感知して作動する罠であれば、これで回避できるでしょう。そうでない罠に備えて【未来予測】でこれから発動する罠の確認もしておきます。
各人にかかる重力の向きが変化する仕掛けについても【未来予測】で対応したいですね。
“忍カラクリ”を見つけたら、即破壊しましょう。
可能であれば他のディアボロスと連携し、援護します。
●
月の照らす、砦の裏手。
塀から中を覗き込むのは、月隠・新月(茫洋のポラリス・g02544)。
「死刑囚の皆さんは助けることができましたし、これで一安心ですね。まずは裏から忍び込んで仕掛けを崩しましょうか」
復讐者たちは裏戸を開けて砦の敷地に入る。地下へ向けて口を開ける階段は、一見して地下牢か地下倉への入り口。最終人類史に残る本来のこの時代であれば、他に地下施設などあろうはずもない。
峰谷・恵(フェロモン強化実験体サキュバス・g01103)が、閂も掛かっていない扉に手をかける。
「裏門封じていないのは罠で嵌め殺すためか、クロノ・オブジェクトのメンテナンスのためか……どっちかな?」
だがその扉を開いて一歩敷居を跨いだ途端、眩暈が走った。足元がぐらつく感覚が、復讐者たちを酔いにいざなう。
頭を押さえて、金刺・鞆(虚氏の仔・g03964)が首を振った。土むき出しの廊下の先になぜかある襖が、ひとりでにするすると開いていく。その向こうに見えるのは、上下左右に歪みながらどこまでも続く、木造りの回廊だ。
「これが、忍カラクリの力……やはり、先にこちらを破壊してしまったほうがよさそう、です」
語り進む間にも感覚は歪み、伏見・萬(錆びた鉄格子・g07071)が一歩歩むたびに地面が回転していく。いや、重力が向きを変えているのだ。
「カラクリか。なかなか面白ぇが、そんな暢気なモンでもなさそうだ」
入口広間というべき部屋に入った際には、すでに上下左右の感覚は無い。通った入り口はすでに地面に開いた穴にしか見えず、どこまでも続くねじくれた回廊がこちらを手招いている。
だが、怖じる者は誰もいない。
忍カラクリは、この最奥に身を潜めているのだから。
一丸となって回廊を駆け抜ける復讐者たち。
後ろから落ちてくるのは、釣り天井。と言うより、上下左右から通路が挟み込むように塞がれながら追いかけてくる……というのが正しい。
先頭を走る萬が、通路の横に張り付いた木戸に気付いて、短刀を突き刺した。閂が腐食し始めると同時に蹴り破り、その内側に飛び込む。
「こっちだ、入れ」
と言っても、そこに飛び込むだけで他の面々には一苦労だ。恵にとってはそこは地面。鞆には壁。そして新月にとっては天井だ。
萬は走り込んで来る恵と鞆を見届けると、飛翔する新月に向けて鋼糸を伸ばした。新月がそれを掴むと同時に糸を引き上げると、寸前までいた通路が重たい釣り天井で塞がる。土煙が舞う中、新月を引っ張り込んだ萬が息を切らして服を掃う。
「ありがとうございます……しかしこの後に、アヴァタール級との闘いが残っているとなると気は抜けませんね」
「怪我は大して気にしねぇが、ここで消耗し過ぎてもまずいだろう。慎重に、でも急ぐ、って奴かね」
もしこの中で闘うとなれば、これほど敵に優位な状況もない。僅かでも油断すれば分断され、各個撃破されてしまうだろう。と言って、これらの罠で傷を負いすぎれば、やはり敵に有利になる。
萬の言う通り、互いに助け合うことで消耗を抑えながら進むしかない。
「さて、次は……」
瞬間、壁(別の者にとっては地面か天井)から槍が突き出した。咄嗟に鞆と新月が天井(?)に開いた穴に、恵と萬が床の襖に飛び込んでそれを避けると、回廊は槍で埋まっていく。通ることも出来ないほどに。
恵が咄嗟にパラドクス通信の端末を放り投げる。
「それを持って行って。話によると、どう進んでもゴールにはたどり着くみたいだけど……きっと、簡単に近寄ることが出来ない方、つまり罠が多い方が近道のはずだよ」
仲間と別れ、回廊を駆ける萬と恵。階段を上りながら、萬が尋ねる。
「それで……どっちが罠が多いんだ?」
恵は通信機を出すと、スイッチを入れた。壁や床を矢や槍が刺し貫く音や岩が落ちるような轟音と共に、走り抜ける音が響いてくる。
「この分だと向こうだよ。つまり、本命はあっち。でも最後に同じ場所にたどり着くなら、無意味な通路はないだろうから、連動している部分があるはず……」
かりかりと青いクレヨンで壁に目印の線を引きながら、恵はぴたりと足を止めた。壁を埋める桐箪笥に隙間がある。耳をそばだてれば、壁を隔てた向こうから二人分の足音と罠の作動音が近づいてくる。
「こっちはルートとしては遠回りだろうけれど、これできっと……!」
恵は翼を広げ、稲妻を解き放った。桐箪笥を吹き飛ばすと、その中に無数に仕掛けられていた弩の仕掛けが砕け散る。
「どう? 仕掛けは止まった?」
道にバツ印をつけながら、恵は通信端末にそう語った。
「ふう……助かりました。一息付けます」
飛んでくる矢が止まったのを確認して、鞆は通信端末を下げる。新月は息を吐いて、額をぬぐった。
「次から次へ、ですね」
再び駆け始める二人。
途端に、鞆の脳裏に数秒先の出来事が揺らめく。目の前で、床板が突然に口を開ける光景が。
「落とし穴です……!」
「ならば真っ直ぐ行くのみです」
新月の合図と共に、二人はわずかに床から飛翔して口を開けた落とし穴の上を飛びぬいた。
更に新月の脳裏に、今度は再び重力が回転して天井へ落ちそうになる光景が閃く。
「上下が反転します。床の槍に気を付けて」
「はい!」
二人は反転する重力に身を任せて落ちると、床から飛び出ていた槍の直前で飛翔して、ブレーキを掛ける。
「さすがに高望みですが、強運の加護があれば罠そのものへの遭遇頻度も減らせるやも……などと、思っていたのですが。この場合、逆でございましたね」
「偶然の分かれ道で正解を引ける確率は上がる……代わりに近道は罠が多い、ですか。これは不運なのか幸運なのか。考え方次第でしょうか」
二人は顔を見合わせて、唇の端でふっと苦笑を漏らす。
「なれど、近道を不運を軽減しつつ進めるのはおそらく心強いもの、かと! 重ねたちからが、頼もしいです」
「ええ。未来予測とパラドクス通信が、非常に便利ですね。仕掛けは消耗品のようですから、罠を越えるほど続く仲間を有利にできるでしょう」
頷き合う二人は、再び回廊を駆けていく。重力反転の為にあまり高く飛翔すると、互いにぶつかり合ったりしかねない。しかし、僅かに浮かんで足元の罠を避けて進むには有効だ。
「このまま連携して突き進み、敵の優位を崩してやりましょう」
「ええ! 大谷吉継……首を洗ってまっていろ、ですよ。むん!」
新月は壁から飛んでくる矢を掴んで放り投げ、鞆はジャンプで避けて進む。
やがて、行く先に口を開ける分かれ道。
上と下へと伸びる階段。再び、選択の時だ。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
【腐食】LV1が発生!
【エアライド】LV1が発生!
【強運の加護】がLV3になった!
効果2【ダブル】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV9になった!
【ガードアップ】がLV2になった!
【アヴォイド】がLV4になった!
守都・幸児
はは、こいつは面白え
罠つきの屋敷なら平安でも見たことはあるが
こいつは規模が段違いだ
危ねえ仕掛けばっかりだろうが
どんな仕掛けも楽しみながら進むぞ
【未来予測】の力も借りて
罠にかかっても寸でのところで躱してやる
どっちに進めばいいかわからなくなったら
【強運の加護】で運任せ、なんてのも面白いかもしれねえな
つっても無闇に仕掛けに突っ込みはしねえぞ
先に仕掛けを【看破】出来たらそれに越したことはねえ
「執」で紙符の式の鳥を先に飛ばし
安全確認をしながら進む
式なら仕掛けにやられても紙符に戻るだけだからな
皆ともお互い助け会う
咄嗟の時は手を伸ばして仲間を引っ張り【飛翔】だ
『忍カラクリ』を見つけたら「執」で破壊を試みるぞ
渦中・浪刃
※連携・アドリブ歓迎
【飛翔】で移動
周囲を[観察]し[情報収集]
[伝承知識]で忍者やカラクリに関する知識があれば活用
【未来予測】も活かし、罠の性質や発動を[看破]
仲間に注意喚起し情報を共有
【飛翔】で避けきれないと判断した場合、【怪力無双】を活かし哭切で罠を叩き落としたり受け止める
仲間が罠に巻き込まれそうな場合も同様に動く
周囲の方と協力、効率よく中核を目指します
中核があるとしたら、罠の数が多い方向でしょうか
【強運の加護】の残留効果も使って進みましょう
しかし、このような仕掛けは初めて見ますね
これが伊賀のカラクリの技術ですか…興味深い
中核を見つけ次第、哭切で叩き斬る
―さて、これで憂いなく戦えそうですね
ゼキ・レヴニ
正面からブチのめしてやりてえのは山々だが
下地作りってのも大事だしな
仕上げの大舞台を整えてやろうじゃねえの
味方と連携
【光学迷彩】で隠密し裏手から潜入
移動時は【飛翔】で壁や床に近づかねえように飛んでく
砦内では【未来予測】で常に一歩先の罠を「看破」していくが
予測が困難なら【アイテムポケット】に入れといた石か何かを投げて安全確認
隠し扉や通路がねえか、壁や天井に周りと色や素材が違う部分が無いか観察
破壊できそうな罠、近道になりそうな壁があれば
パラドクスや【一刀両断】でブッ壊してとっとと進む
『忍カラクリ』は山刀で斬撃を飛ばし破壊
はあ、いい準備運動になったぜ
調子こいてアスレチックに挑んだおっさん並には疲れつつ
●
先に分かれた恵と萬の援護もあり、ここまでは順調。
先導する鞆と新月の前には、上下に向かって階段が伸びている。尤も、上向きの階段は天井の方に段がついているが。
「進みやすい方へ別れましょう」
「鞆たちはこっちです……!」
先を行く二人は、そこを上に向かって駆ける。上下が逆さまだから、彼女たちは下に下っているように見えているのだろうけれど。
守都・幸児(祥雲・g03876)と渦中・浪刃(渦隠・g02250)が、下り階段に飛び込みながら声をかける。
「よし、俺たちはこっちだな。さあ、どんな仕掛けも楽しんでやるぜっ」
「先行、助かりました。お二人もお気をつけて」
「元気だねえ。ま、野郎三人で仕上げの大舞台を整えてやろうじゃねえの」
ゼキ・レヴニ(Debaser・g04279)がそれを追いかけると、また重力が入れ替わって三人は天井へ着地した。それはそのまま坂になって、三人を奥へといざなっていく。
「はは、こいつは面白え。罠つきの屋敷なら平安でも見たことはあるが、こいつは規模が段違いだ」
「しかし、このような仕掛けは初めて見ますね。これが伊賀のカラクリの技術ですか……興味深い」
「正面からブチのめしてやりたかったが……本当に面倒くせえな、これ。下地作りが大事なわけだ」
滑り降りる先には、より凶悪な罠の気配が待ち構えている……。
もはや回廊の形も成さず、突起のない木造りの筒の中を三人は滑りおりる。
「滑り台か。確かにちょっと面白いじゃねーか。楽に進めるし……」
と、ゼキが言っているうちに、遥か前方にしゅっと刃が突き出した。滑り落ちてくる獲物を待ち構えるように。
「……前言撤回、ですね」
浪刃とゼキが、互いに足裏を蹴り合うように離れて、刃の脇を滑りぬける。
三人の脳裏に僅か先の未来が閃いた瞬間、先ゆく回廊に刃が次々と飛び出す。右か左か、屈むか跳ぶか。次から次へ選択を迫る死の滑り台というわけだ。
「くっ」
二人が舌を打った時、前に出たのは幸児。
「このまま突っ込むんじゃ、ただの運任せだ。ここは俺に任せろっ」
幸児は紙符を取り出すと、鳥の形に変化させて先へ放った。式神となった符は三人の前を先行し、ひらひらと回廊を舞っていく。元が紙だけあって、ふわふわと刃を避ける。
「あの後を追えば安全だぜ。それに、式なら仕掛けにやられても紙符に戻るだけだからな」
幸児の式の後を追い、三人は右へ左へと身を転がした。突き出す刃を避けて滑る内にどんどん速度が上がっていくが、幸児は楽し気に笑いながらその切っ先の間をすり抜ける。
だが。
「……ん?」
今度は刃が蜘蛛の巣状に飛び出して、先を行く式を寸断した。通り抜けられる隙間がなければ、流石の紙符もほんの一瞬で紙吹雪と散る。
「ハッ、結局、そう来るかよ。生きたまま抜けさせる気なんか、ありゃしねえってわけだ」
転がるように前に出るのは、ゼキ。山刀を構えて前を睨み、続く二人に「止まるなよ」と声を掛ける。
(「あの刃の前で止まろうモンなら、思うツボ……そうだろ?」)
罠を掛ける側で考えれば、あそこで咄嗟に止まろうとするのは読めているはず。飛翔などで足を止めた瞬間、周り中から槍が突き出してくる……未来予測なしでも思い浮かぶ光景だ。
(「でも、それなら……」)
滑る先を睨むゼキの目が、張り巡らされた刃の手前に小さな横穴が開いているのを捉えた。恐らく、刃物が一気に突き出してくる仕掛け。だが、大掛かりな仕掛けが埋め込まれているということは。
「そこに空間があるってことだ……! 馬鹿正直に進むかよ!」
山刀を振るって飛ばした見えぬ斬撃が、槍が飛び出す罠ごと床板を斬り飛ばした。ぽっかりと口を開けたのは、仕掛けを配置した細い通路。
「滑り込め!」
ゼキの合図に従って、三人は蜘蛛の巣状に張った刃の直前で通路の中へ転がり込む。だが身を回して着地した瞬間、体のどこかが糸に触れた感触がした。
「!」
息をつく間もなく、通路の奥で二メートル四方ほどの釣り天井が落ちた。いや、次々と落ちながら、通路全体が潰れながら迫ってくるのだ。
「……ったく、続けざまかよ! 走れ!」
ゼキの合図で、三人は駆け出した。さらに、横の壁からも矢が飛び交い始める。
「おおおい、マジかよ!」
「見ろ、出口だぜっ」
幸児とゼキが未来予測を頼りにしゃがみ、跳び、駆ける。先頭を行く浪刃の脳裏によぎるのは、予感。
(「先ほど通信があったように、中核があるとしたら罠の数が多い方向。恐らく、中枢は……」)
その時、遥か先に見える出口の光が、音を立てながらゆっくりと縮まり始めた。罠が作動し、出口の上に配置された岩戸が下り始めたようだ。
「閉じ込められるのは、まずいですね」
浪刃は、足に力を籠める。先にパラドクスを使った二人より、まだ余裕のある自分がこれを引き受けなければならない。飛翔の助けも借りて矢をすり抜け、降りてくる岩の下に滑り込む。
(「耐えてください哭切
……!」)
裂帛の息を吐いて哭切を背負い、大岩を受け止める。
「今のうちに。さあ……!」
凄まじい重さの岩を押し留めている浪刃の両脇を、跳ぶように二人が駆け抜ける。即座に浪刃が身を転がして二人を追った瞬間、通路は釣り天井と大岩に潰されて、土煙を吐いた。
三人は、息を切らして起き上がる。
「ここは……」
殺風景な一室だった。周囲には、何もありはしない。ただ一つ、部屋の中心にきらきらと光を放ちながら回転する多面体があることを除いて。
三人は顔を見合わせて頷き合い、武器を構える。
罠の中枢を、捉えたのだ。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【避難勧告】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
【一刀両断】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV10(最大)になった!
回廊を進む萬の耳に、何かがひび割れるような音が響いた。
「……今の音、聞いたか?」
「うん。ほら、見て。周りが」
と、恵が言う間にも周囲の空間が歪み始める。崩れるように周囲が溶けていく中、天井から着地して来るのは、鞆と新月。
「あ、お二人とも、ご無事でしたか」
「どうやら成功したようですね」
どこまでも続く回廊であった周囲は、硝子のように砕けて縮み、最後に断末魔のように視界が割れ飛んだ。
目を開くと、最後までたどり着いた三人がため息をついているところだった。
「へへ……結構楽しめたな」
「こんなアスレチックはもうごめんだぜ……」
忍カラクリは砕け散った。周囲は、何もない地下室に変わっている。
「……さて、これで憂いなく戦えそうですね」
その言葉に、復讐者たちは頷き合う。
あとはただ、一人のみ……と。
●
砦の一室で、白面の天魔武者が静かに座禅を組んでいた。
『……忍カラクリが、砕けたか』
歪んでいた周囲の光景が、剝げて落ちるようにもとに戻っていく。無限に続く回廊の中心に浮いていたはずが、もはやただの広間に戻ってしまった。
『いや、構わぬ。足軽どもの帰りが遅いことから、うすうすわかっておった』
機人の面前で、砦の大扉がゆっくりと開いていく。その向こうに浮かび上がるのは、月と篝火に照らされた人影。
『待ち構えていたつもりだが、お前たちの速さは予測を上回ったようだ。見事と言っておこう』
閉じていた目に光を灯しながら、機人はゆっくりと浮かび上がる。その背後に人の顔を持つ機械の獣を従えながら。
『だが、この大谷吉継は信勝様のように逃げはせぬ。我が首……落とせるものなら、落としてみよ! ディアボロスどもよ!』
その身から暗い覇気を噴出させて、天魔武者の将は太刀を引き抜く。人面の機械獣が咆哮し、床板を引き千切った。
行灯が照らす暗き広間で、最後の闘いが幕を開ける……!
峰谷・恵
「地の利なくしてなお逃げないか。ならその白頭、もらい受ける」
可能な限り連携を取る。アドリブOK。
敢えて正面から攻撃を仕掛けて敵の注意を引き付け、味方が攻撃を仕掛けやすい状況を作る。
竜骸剣による極光撃を上段から叩きつけ、続けざまにLUSTクンフーブーツで敵を押しのけるように蹴って反動で離脱する。
敵の反撃は飛翔で全速で後退しながらLUSTビームマシンガンで引き撃ちして勢いを削ぎ、寸前で横に飛んで回避。避けきれないものはLUSTオーラシールドで防御。
その後は飛翔で敵の頭上を取り、味方の攻撃を受けてなお敵が健在な場合再度の極光撃を急降下とともに叩き込んでトドメを刺す。
「義将ごっこはそこまで」
杏・紅花
逃げないとこは、敵ながらあっぱれ!だねえ〜っ
じゃ、楽しく戦おっ
おわあ。顔は人間、体は機械のケモノ?ちょっと不気味かも
猛々しい勢いは、でも怖くない
ひとつ、ふかく、息をして
「鐘歩の深縹」
とん、とん、とーん
敵の攻撃の勢いは、それそのまま隙になる
踏み台にして【飛翔】
機械も生き物も、パーツの接続部分を壊せば動きは止まる
関節狙って力の限り蹴りをお見舞いだあ
ついでに破片はアヴァタールのニセモノ武将へ吹っ飛ばす
さ、今度はあなたの番だよお
アドリブ、連携歓迎っ
伏見・萬
(連携アドリブ歓迎・残留効果はできるだけ利用)
(ネメシスモード:胸の傷跡から黒い呪詛の靄が溢れ出る。呪詛は獣の形を成して萬の全身を飲み込む)
(なんだか眠い。敵の技のせいか、この溢れる黒い靄のせいか)
見せられる悪夢は、「死んでいた時」の感覚
(暗くて冷たい。仲間を置いて、またここに来ちまったか)
(いや、仲間…って、何だっけ…?)
(何もわからない。そこに「敵」がいる事以外は)
…そうだ…喰ってやルかラ、てめェも来イ
恨みも呪詛モ…全部溶ケて、同ジになレよ
仲間とはできるだけ連携、敵の動きを狭め退路を断つように動くが
基本的には黒い靄の獣として、自分の負傷に構わず本能のまま
【捕食者の追跡】を使用し、敵を喰らう
守都・幸児
※連携、アドリブ歓迎
ずいぶん堂々とした大将だな
気に入った…と言いてえところだが
てめえらが民にしてることは気に入らねえ
ここで終いにしてもらうぞ
俺の使う技は「晦」
武器の鉄骨にパラドクスを乗せて戦うぞ
機械の獣か
ずいぶん硬そうだが、山の獣より動きは読み易い
獣の動きを【看破】して
振り回した鉄骨でぶん殴り【粉砕】しながら
正面から一直線に進んでく
敵の注意を引いて、皆のための露払いをするんだ
大谷吉継に接近できたら
鉄骨を槍代わりに【突撃】して突き立ててやるぞ
逃げねえ覚悟ってのは立派なもんだ
だが逃げずにてめえらに立ち向かった民の覚悟のほうが
俺は気に入ってる
だからてめえは、ここで倒す
ああそうだ
カラクリ、楽しかったぞ
●
機械獣が床板を破砕する。その一撃には、例えこちらが疲弊していようとも、一切侮りはせぬという意志がこもっていた。
衝撃が砦を揺らす中、復讐者たちは飛び退いて。
「逃げないとこは、敵ながらあっぱれ! だねえ〜っ。じゃ、楽しく戦おっ」
杏・紅花(金蚕蠱・g00365)は壁を蹴り、峰谷・恵(フェロモン強化実験体サキュバス・g01103)は身を伏せながら、敵将を睨む。
「地の利なくしてなお、か。いいや……義将ごっこもここまで」
優位を失おうと、敵将の力はこちらを上回る。それでもなお、復讐者たちは揺らがない。
「ずいぶん堂々とした大将だな。気に入った……と言いてえところだが、てめえらが民にしてることは気に入らねえ」
鉄骨で飛んでくる破片を弾き、守都・幸児(祥雲・g03876)は敵将の正面に立って身構える。
その後ろで伏見・萬(錆びた鉄格子・g07071)が、胸元の傷から黒い呪詛を溢れさせて。
「こっちも面倒な道程踏んでここまで来たんだ。ケリをつけようぜ」
そうだ。彼らの圧政をこの目で見て、ここまで来た。人々を解放し、敵陣を喰い破り、仕掛けられた罠を掻い潜り、残すはただ一人。
砦を落とし、解放の狼煙を上げる時だ。
弾かれるのを耐えた幸児は、敵の正面にただ一人。白面の機人は、呪詛を纏い、獣を従え、蝶を背負って宙に舞う。
(「機械の獣か。ずいぶん硬そうだが、山の獣より動きは読み易い」)
『その力……見せてみよ』
挑発だ。わかっている。ここは乗らずに、仲間と同時に仕掛けるが常道。
だが。
「逃げねえ覚悟ってのは立派なもんだ。でも圧政とやらは、ここで終いにしてもらうぞ」
行くは敵の真正面。担うは先駆け。
敵将は采配を振るい、獅子か虎の如き鉄の怪物をけしかけた。
幸児は、駆けてくる獣たちの動きを細かく捉え、その重心や視線の向きを推し量る。
だがそれをするのは、白面の機人も同じこと。一人飛び出した幸児の動きが、後ろに続く復讐者たちがどう連携するのかの答えになる。冷徹な知将の目は、それを見逃しはしない。
「俺はな、逃げずにてめえらに立ち向かった民の覚悟のほうが気に入ってる」
だが幸児は、鬼の腕に満ちる力を鉄骨に伝えながら真っ直ぐに獣へ突っ込んだ。
「だから、俺も見せてやる。その覚悟をな……てめえは、ここで必ず倒す」
幸児は雄叫びを上げて獣を打ち飛ばす。その爪に肉を裂かれ、牙が食い込もうとも、足を止めない。
『むっ
……!?』
そう。この先駆けに、小細工は何もない。フェイントも、身を躱す技巧も、後に続く策も。ただ脇に携えた武骨な鉄の塊を槍の如く構え、突進あるのみ。
咄嗟に太刀を構えた敵将に、鉄骨が激突する。渾身を込めた一撃が、宙に浮かぶ敵将の身を弾き飛ばした。血を払い、幸児はふっと笑みを浮かべて。
「ああそうだ。カラクリ、楽しかったぞ」
追い縋る機械獣の群れと格闘しながら、彼はそう告げる。
(『正面から無策で来るか。ぬかったわ』)
機人が身を立て直そうと、浮遊した体を向き直した時だった。頭上より迫る、鋭利な殺気に気付いたのは。
「その白頭、もらい受ける」
振り下ろされるのは、竜骸剣。恵の剣閃が奔り、咄嗟に身を捻った機人の白面を裂いた。頬に亀裂を走らせながらも機人は太刀で恵と打ち合い、即座に采配を振るう。
『獣ども! そこの二人を始末しろ!』
即座に後ろへ飛んで、襲い掛かる機械獣をビームで銃撃する恵。横から盾に喰らいついた機獣の牙が、腕まで貫通してくる。構わず恵はその獣の頭蓋を撃ち抜き、幸児に飛び掛かる獣を撃ち抜いた。
「助かった。さあ、まだまだ行くぜ」
「手応えはあった。次こそ、あの首を落とす」
『容易く落とせる首と思うな……!』
押し包むように迫る獣の群れを迎え討つ二人。だが、機人のセンサーはすでにそちらを見ていない。
正面から攻めかかった二人に大半の獣たちが引き寄せられている中、背後から迫る影がある。
「おわあ。顔は人間、体は機械のケモノ? ちょっと不気味かも」
駆けてくるのは、紅花。敵将は咄嗟に、周囲に残った僅かな手勢を差し向けた。牙の生えた人面が、咆哮を上げながら紅花に迫る。
(「猛々しい勢い。でも怖くない……ひとつ、ふかく、息をして……とん、とん……とーん!」)
紅花は肺に巡る秋の空気を感じながら、一歩、また一歩とその気を巡らせる。果敢に機械獣を討ち払う二人と異なり、その足運びは軽やかに大地を、そして中空を踏みしめる。飛び掛かる獣の頭さえも足場にして、紅花は宙を舞った。
「敵の勢いは、それそのまま隙になる。そしてこのままー……!」
最後の一体。勢いよく喰らい付いてきた牙が紅花の脛を裂いた。だが、彼女の歩みは止まらない。それも全ては覚悟の上。高く上げた踵が落ちる先は、機械獣の頸椎。首をへし折りながら、紅花は蹴りぬく。
「機械も生き物も、パーツの接続部分を壊せば動きは止まる。力の限り、蹴りをお見舞いだあ!」
『なに……っ!』
「そう。アヴァタールのニセモノ武将さん……あなたの方に、ねっ!」
敵将の太刀がその躯体を両断しても、鉄の砲弾と化した機械獣は止まらない。敵の勢いこそ隙、という言葉の通りに、敵将の身を打ち据える。
(『信勝様を奔らせ。我が陣容を踏み越えて。なお
……!』)
大地に叩きつけられ、跳ね返りながら、白面の機人の脳裏によぎった危機感。しかしその試案は、得体の知れない殺気に途切れた。獣の群れを出し切る、瞬間。それを伺い続けた黒い獣が跳躍して来ていたから。
『させぬ!』
だがその爪よりも、白面の機人が咄嗟に光を解き放つ方が、速かった。獣の身を覆っていた黒い霞が一瞬だけ切り裂かれ、内に包まれていた萬の身を露にする。光に打たれた瞬間、その脳裏に呪詛が流れ込んだ。
『捉えた。まずは、一人!』
「ちっ」
仲間が萬の名を呼ぶ声が遠くなり、凄まじい眠気が彼を襲う。
辛うじて着地し、膝をついた萬の夢に浮かぶのは。
(「なんだ……ここ。暗くて冷たい。仲間を置いて、またここに来ちまったか……いや……仲間? 仲間って……なんだっけ?」)
心を冷たく包み込むのは、死の感覚。静かな苦悩に、友の存在さえもがほどけて消える。何もわからない。だが漆黒の闇の中に、一つだけ鮮烈に残るものがある。
(「……そうだ。てめェだけは、わかる。知っテいルぞ
……!」)
全てを凍てつかせようとする光の中、最後に残った獣の意志が、殺気を捉えた。そこにいる“敵”の存在を。
今にも首に太刀を振り下ろされようとしていた時。獣の目が、光る。
『……ぬ!?』
「あア、やレよ。恨みも呪詛モ……全部溶ケて、同ジになレ。てめェも……喰ってやルかラ!」
振り下ろされた太刀に向けて、萬の身が跳ね跳んだ。血飛沫と、機械油と、火花が舞う。瞬間の激突は両者の身を弾き飛ばし、胸倉を裂かれた萬が受け身を取る。
(『この勢い……! あの道程を経て、いささかも衰えぬというか!』)
膝をついた萬に仲間たちが駆けよる向こうで、白面の機人は砦の正門を打ち破って吹き飛んだ。機械獣の群れは、主人の危機を察知してその後を追う。
復讐者たちは荒れ果てた砦の中、篝火と月の照らす中庭を睨む。
敵将にとどめを、刺さなければ。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【エイティーン】LV1が発生!
【飛翔】がLV2になった!
【完全視界】LV1が発生!
【トラップ生成】がLV2になった!
効果2【リザレクション】LV1が発生!
【反撃アップ】がLV2になった!
金刺・鞆
きさまが、大谷吉継。圧政などと悪趣味な真似をする割には潔い態度、ですね。ええ、ええ。忍カラクリはわれらでぃあぼろすの手で破りました。ここから先は小細工なし、です。
この国の民のため、そのくび貰い受ける! いざ!
仕掛け扇を武器として構え、渾身の薙ぎ払いをお見舞いいたしましょう。
三年程度の呪詛がどうした。この世、この国に生きる民が受ける苦しみはその程度ではなかろう。ならば必ずや耐えきってみせ、反撃の一打を入れるまで!
屈するものか、屈してなるものか。呪詛を受けるだけ己が殺気を滾らせよ。悪夢も幻覚もすべてまやかし、現実のものではない。
わたくしひとり此処に在ることを誹るはずがなかろう、わたくしの、家族が!
渦中・浪刃
※連携・アドリブ歓迎
お褒め頂き光栄ですが
元より退かぬつもりの貴方にとっては、速いも遅いも些事でありましょう
お相手願いますよ大谷吉継殿…互いの首をかけて
【飛翔】を維持
大谷吉継の[伝承知識]、[観察][情報収集]
更に【未来予測】も合わせ敵の動きを読み、仲間に注意喚起
仲間が攻撃に集中できるよう対蝶の気を引きつつ、可能な限り距離を取る
避けられぬなら【怪力無双】を活かし哭切で弾き飛ばす
人々の苦しみに比べたら、この程度の毒は大したことではない
蝶は不滅の象徴
この弓で退治されたという妖怪と、どちらが上か…
いえ、必ずや打ち倒しましょう
人々を解放する為に
彼の者の首を射よ、雷上動嚆矢
最期まで退かぬその姿、お見事です
ゼキ・レヴニ
はあ、砦にポツンと将一人とは寂しいねえ
忠義がどうとかはおれにゃ理解できねえが
信念を貫きたいんなら手伝ってやるよ
蝶の鱗粉を将の周りで撒かれると近づけんで厄介そうだ
蝶を攻撃するフェイント*から【飛翔】で機械蝶を引きつけ
【トラップ生成】した捕縛網や壁のトリモチに叩きつけ
もしくは翅を斬撃*で破壊*し動き鈍らせるの試みようかね
蝶を将から十分引き離したら
飛翔の速度で一気に降下し将を叩く
【光学迷彩】で気配消しつつ
鉄爪に変じた『躯』で背後を狙ってくぜ
ヒット&アウェイを繰り返しつつ、味方と連携
注意を分散させて采配を振る暇なんざ与えねえ
抗う人々の声を侮り過ぎたな、武将さんよ
おれたちはそいつに呼ばれたんだぜ
*=技能
月隠・新月
この状況でも逃げ出さない辺り、話に聞いた通り忠義に厚いのか、あるいは俺たちを倒す自信があるのか……
まあどちらでも関係ありません。全力を以て討ち滅ぼすのみ。
敵の呪詛、この幻覚は敵に恨まれるとより酷くなるそうですが……まあ、ディアボロスである時点で恨まれていると考えた方がよさそうです。
……しかし、どれだけ悲惨な光景であっても、幻は幻。現実ではない。
全てはまやかし、【斬妖閃】で敵ごと斬り捨てましょう。
まやかし、とはいえ無事では済まないでしょうが、ここで膝を折るつもりはありません。人々がクロノヴェーダよって与えられた苦しみは決して幻ではないのですから、俺がここで倒れてはあまりに不甲斐ないでしょう。
●
身を庇うように転がって、敵将は膝をつく。
『ぐっ……』
砦からそれを追おうとする復讐者たち。敵将は咄嗟に采配を振るい、機械獣をけしかけた。
(『時間稼ぎにしかなるまいが……』)
月の照らす中庭では篝火がぱちぱちと音を立て、すでに四人の影が機人を囲んでいる。
「はあ、砦にポツンと将一人とは寂しいねえ。忠義がどうとかはおれにゃ理解できねえが、信念を貫きたいってんなら手伝ってやるよ。最後まで、キッチリとな……」
ゼキ・レヴニ(Debaser・g04279)の声が、月下の中庭に静かに響く。
『やはり、忍カラクリを破られたのが痛かったな。これほど、とは』
独り囁きながら起き上がる機人を、金刺・鞆(虚氏の仔・g03964)が指して。
「きさまが、大谷吉継……圧政などと悪趣味な真似をする割には潔い態度、ですね。ええ、ええ。すでにご存じの通り、忍カラクリはわれらでぃあぼろすの手で破りました。ここから先は小細工なし、です」
機人の胸から機械油が滴り落ちる。それでも機人は、身を退く姿勢を見せない。死守を命じられたアヴァタール級に撤退の自由はないが、あったとしてもこの敵はそうはしなかったろう。
『いくさは勢いを掴んだ者が勝つ……お前たちの士気と連携、見事なり』
月隠・新月(茫洋のポラリス・g02544)が、訝しむようにぽつりと漏らす。
「この状況でも逃げ出さない辺り、話に聞いた通り忠義に厚いのか、あるいは俺たちを倒す自信があるのか……まあ、どちらでも関係ありませんが」
自分たちは、全力を以て討ち滅ぼすのみ。その決意は、言葉にせずとも伝わっている。渦中・浪刃(渦隠・g02250)が、それを伝えるように弓に矢を番えて。
「お褒め頂き光栄ですが。貴方は元より死しても退かぬつもりのご様子。ならば彼我の力量差など、些事でありましょう。お相手願いますよ大谷吉継殿……互いの、首をかけて」
『無論よ。その勢い、このまま天正大戦国へ解き放つわけにはいかぬ』
跳躍と共に、敵将がその背に巨大な蝶を舞わせる。
秋の夜更け、最後の一幕の始まりだ。
放たれる機械蝶は、吹雪のように毒の鱗粉をまき散らす。風下の仲間たちが咄嗟に飛び退く中、鞆だけが敵将へ向けて切り込んだ。開かれる仕掛け扇を手に毒を吹き飛ばして、跳躍する。
「この国の民のため、そのくび貰い受ける! いざ!」
閃光の如き一撃が太刀と激突した時、敵将は禍々しくその瞳を光らせた。
『我が術に堕ちて、絶えよ!』
途端に、冷えた光が鞆の脳裏を穿つ。練り上げられた呪詛が、内に沁みとおり、暗闇の中に独り浮かぶような感覚にいざなう。
(「くっ……屈するものか。屈してなるものか! 呪詛を受けるだけ、己が殺気を滾らせよ。すべては悪夢に幻覚……現実のものではない」)
鞆は身に決意を集めて濃密な一瞬を耐える。三年程度の呪詛がどうした。このディヴィジョンに生きる民が受ける苦しみはその程度ではない、と。
だがその耳に、なぜお前だけが生きている、と、罵倒する誰かの声が響き始めた時、心の臓符を内から引き裂かれるような感覚が迸った。永い永い刹那に、感じるのは激痛と……そして。
鞆の目が、開く。
「わたくしひとり此処に在ることを誹るはずがなかろう……わたくしの、家族が!」
猛る心は氷となって血涙を振り払う。跳ねると同時に、扇が機人の脇腹に走る。全てを込めた渾身の一撃が深々と敵の胴体を抉り抜き、鞆は突っ伏すように大地に転がる。
『ぐう! この……燃え上がるような怒り、か。お前たちの力の源は』
致命傷だ。今、敵将の勝ち目は絶えた。火花散る身は、いつ誘爆するやもわからない。それでも敵は全身の魔力を燃やし、倒れた鞆へ向けて二匹の巨大な蝶を向かわせる。
『その火種、この吉継が踏み消してくれる。燎原の火となる前にな!』
倒れた鞆を毒で蝕もうとする一対の蝶。即座に、二人の人影がそれに激突して。
「なるほど。後のないことを悟っておられる……と。最初から、刺し違えてでもこちらの勢いを削る腹積もりでしたか」
「毒の鱗粉を撒かれると近づけんで厄介そうだ……と、思ってたんだがな。仲間がやられるのをただ眺めるのは、もうゴメンだぜ」
蝶を押し返すのは、黒き刃と、古き山刀。蝶を押し返す浪刃とゼキの視線が、死を前にした敵将の視線と絡んで、燃え上がる。
『それでよい。これでお前ら二人を同時に毒せる……腐り落ちよ! 我と共に!』
二人が蝶を押し返す間に、輝く鱗粉がまき散らされた。粉に触れたところが痣のように黒く染まり、灼ける痛みと壊死の冷えが身を蝕み始める。
(「こちらが仲間を助ければ、より被害を大きく出来る、か」)
(「狙撃手みたいな真似しやがって。キッチリえげつねえ……だがよ!」)
二人の視線が、交錯する。冷徹な思案と戦陣での直感は、同じ答えを導き出した。即座に二人は立ちはだかる蝶を押し戻す。更なる毒霧の中に突っ込むように。
『何だと?』
「采配を振る暇なんざ、与えねえ。頑丈さにモノ言わせて、このままブチ抜かせて貰うぜ!」
「この地の人々の苦しみに比べたらこの程度の毒、大したことではない。蝶は不滅の象徴だそうですが……果たして、どちらが上でしょう」
毒がこの身を朽ち果てさせるか。それともこちらの刃が敵に届くか。命を懸けた我慢比べ。痣から煙のような呪詛を噴き出しながら、二人は蝶を大地に突き倒し、敵将に肉薄する。
(『馬鹿な。こ奴らは、我が毒でさえ
……!』)
燃える心に、敵将が一瞬、気圧される。
「抗う人々の声を侮り過ぎたな、武将さんよ……おれたちはそいつに呼ばれたんだぜ」
「最期まで退かぬ姿勢は、お見事でした。彼の者の首を射よ、雷上動嚆矢……!」
瞬間、蛇の如く跳んだゼキの爪が奔り、浪刃の弓から二閃の矢が迸った。
咄嗟に跳び退った敵将。太刀がへし折れ、その両足が、宙に舞う。
『お、お……このような無様を、晒すとは!』
空を見上げながら、敵将は滑落していく。その目に映る、一人の女の影を睨んで、機人は吠える。
『敵の一人も討ち果たせずに敗れるわけにはいかぬ! 貴様だけでも、地獄に付き合え! ディアボロス!』
新月は静かに月を背負い、宙に刃を構えた。
(「敵の呪詛は恨まれるとより酷く、強くなるそうですが……まあ、ディアボロスに対する恨みは、最高潮と考えた方がよさそうですね」)
敵将の目がおどろおどろしく輝いて、新月の心を貫いた。放たれた呪詛は、一瞬を永遠の如き闇に引き伸ばす。稲妻のように閃く凄惨な光景が、失われた記憶なのか、あるいはどこかで在った出来事なのか。新月には、わからない。
だが。
(「……どれだけ悲惨な光景であっても、幻は幻。現実ではない。まやかしに、膝を折るわけにはいきません。俺がここで倒れてはあまりに不甲斐ないでしょう」)
心を引き裂かれる激痛の中、新月の閉じた目から血涙が一筋流れ落ちる。常人であれば脳を焼かれてそのまま倒れるだろう陰惨な責め苦を、彼女は水鏡の心地で受け流した。
「全てはまやかし。敵ごと斬り捨てるのみ」
そう囁いて、新月は目を開ける。
そうだ。惑わされるものか。何故なら。
「人々がクロノヴェーダよって与えられた苦しみは、決して幻ではないのですから」
『……ッ!』
黒い風と化して、彼女が刃を振るった時。その背後に敵将の胴体が滑落し、その隣に白面を纏った首がごとりと落ちた。ややあって、その全てが火花を散らして爆散する。
新月は、長く息を吐いて立ち上がる。
振り返れば、敵の機械獣は砦の中にいた仲間たちにすでに殲滅されていた。毒に膝をついていたゼキと浪刃も、鞆に引き起こされている。
砦の中庭は、静けさを取り戻したのだった……。
●
闘いは終わった。復讐者たちは、静かに天を仰ぐ。
月が輝かしくその勝利を照らし、篝火が風に煽られながら一つ、また一つと落ちていく。
「ねえ、あんたたち! あれ、見て!」
故郷の村へ向けて駆けていた囚人たちが、それを指して言った。
「尽きねえはずの砦の篝火が、消えていくぞ」
「まさか。まさか、旦那方ァ……本当に」
森の中で驚愕と感謝に膝をついた囚人たちの声は、復讐者の耳までは届かない。
だが、夜が明ける前に、周辺の村々の人々は気付くだろう。
彼らを支配し、抑圧してきた砦が、陥ちたこと。
例え復讐者の記憶が失われても、圧政に抵抗する何者かがそれを成した事実は刻まれる。
伊賀の里のカラクリ砦。その一つが、ここに陥落した。
天正大戦国という大いなる闇夜を照らす星明りが、やがて夜明けをもたらすのか。それとも再び闇に呑まれるのか。
未来は、復讐者たちの双肩にかかっている……。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【熱波の支配者】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
【修復加速】LV1が発生!
【一刀両断】がLV2になった!
効果2【反撃アップ】がLV3になった!
【ドレイン】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV2になった!