ギザのピラミッド神殿~『死者の書の間』へ

 ピラミッド神殿に広がる異空間を突破したことで、ギザのピラミッドの中枢である強力なクロノ・オブジェクト『死者の書の間』の存在と、その性質が判明しました。

 クロノ・オブジェクト『死者の書の間』は獣神王朝の死せる一般人の魂を自動的に呼び集め、その魂を加工した上で、各地に築かれた遺体保存施設『死者の家』に保存されている死体に戻す事で、リターナーを生み出しています。
 つまり『死者の書の間』を破壊すれば、「死者がリターナーとして蘇る」現象は発生しなくなり、獣神王朝エジプトに蔓延する、偽りの神々への信仰の根幹を打ち砕けるのです。
 そうなれば、排斥力なども大きく揺らぐはずです。

『死者の書の間』は、最深部の一面に壁画が描かれた広間として存在しています。
 破壊作戦として、まず『死者の書の間』を守るクロノヴェーダを排除します。

『死者の書の間』に至る途中には、復活を待つ死者(一般人)の魂が、幾つものかたまりになって漂っています。
 この一般人の魂は『死者の書の間』を守るクロノヴェーダを強化しており、激しい戦闘が予測されます。
 復活を待つ死者(一般人)の説得に成功すれば同様に条件を達成できますが、まだ信仰が揺らいでいない現状、こちらは極めて困難でしょう。

※補足
『死者の書の間』を破壊しても既にリターナーとして蘇った後の一般人に影響はないようです。
 また、リターナーのディアボロスにも影響はありません。
 既に活動中のディアボロスに影響がないのは勿論、これからも覚醒時にリターナーになったり、過去からディアボロスのリターナーが漂着することは起こりえます。

※期限延長
22/09/02 攻略旅団の『期限延長』により攻略期限が10/27朝に変更。

セ・アクの匣(作者 夕狩こあら
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#獣神王朝エジプト  #ギザのピラミッド神殿~『死者の書の間』へ  #ギザのピラミッド神殿  #アヌビス神  #死者の書の間 


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 その仄昏く冷やかな方形の間は、『死者の書の間』と呼ばれる。
 四方の壁には絵とヒエログリフが刻まれており、死者の霊魂が肉体を離れて冥界へ降る様子や、死後の世界で受ける裁きについて記される――謂わば死後の手引きが荘厳な筆致で描かれていた。
 そして壁画の周囲には、まさに死して肉体を離れた人々の魂が集まっており、行くあてもなく漂っている。
 救いを求めるように壁画に縋りつく魂の集合体は、エネルギーの渦を成して静かに揺れ動いていた。
 この広い空間に声を響かせたのは、壁画にも描かれる冥界の神「アヌビス神」である。

 ――復活を望む魂よ、永遠を望む魂よ、エンネアドを崇めよ、エンネアドに服従せよ。
 ――さすれば、汝はリターナーとして蘇り、永遠の命を得る事が出来るだろう。

 死者の魂に「信託」が降りたのだ。
 ここでアヌビス神に名を呼ばれた者は、大いなる渦流から抜け出て魂を運ばれ、リターナーとなって蘇る。
 つまり『死者の書の間』は、死者の魂をリターナーとして回生させる、空間自体がクロノ・オブジェクトなのであった。


 復讐者の活躍により、ギザのピラミッド神殿の探索は短期間で成果を上げる事が出来た。
 その迅速は、クロノヴェーダ勢に対策を練らせる猶予を与えなかったと、口元に小さく弧を描いたハネル・メリセシャト(と謎の獅身・g03346)は、それ故に間もなく神殿の中核『死者の書の間』に向かえると云う。
「死者の書の間は、謂わばリターナー製造場……部屋そのものが強力なクロノ・オブジェクトなのじゃ」
 非常に重要な場所にて、広間を守る守護者としてクロノヴェーダも居る。
 このクロノヴェーダは、重要地点を守る守護者としての矜持と、ピラミッド内に集められた「リターナーとなる前の無数の人間の魂」の力で強化されており、戦闘は熾烈を極める事が予想されている。
「守護者に力を与えている人々の魂に呼び掛ければ、戦わずして勝利を収められるかもしれないのじゃが……。信仰心の元に復活を望む人々を説得するのは至難の業。今は無理じゃろう」
 人々は魂の回生を自然のものと信じている。
 そして其を望んでもいる人々の魂に復活を諦めさせるのは、非常に困難な事だ。
「故に、ハネルは復讐者側の強化を提案してみるのじゃ」
 向こうが戦闘力を飛躍させているなら、此方もパワーアップすれば如何だろう。
 具体的には、パラドクストレインで出発する前に浜辺に立ち寄り、思いっきり海遊びをする事で心身をリフレッシュして、仲間との絆を深め、万全の状態で立ち向かうのだ。
「こうして何とか守護者をやっつけたなら、『死者の書の間』が帯びる守護の力を弱めていけると思うのじゃ」
 この戦いで勝利を積み重ねる事が出来れば、根幹としてある「死者がリターナーとして復活する」という現象を阻止する事ができる――そうなれば、獣神王朝エジプト全体に大きな影響を与える事が出来る筈だ。

「此度、『死者の書の間』を守護するのは、黄金喰いアポピスと配下のクリスタルスカル……巨大な毒蛇と髑髏の群れじゃ」
 特にアポピスは『死者の書の間』の力で大幅に強化されており、かなりの激戦になると思われる。
 アポピスと対峙した時に護衛の髑髏たちに邪魔されないよう、先に排除しておくのが良いだろうか。
 いずれにせよ、敵の攻撃に充分な対策を練った上で対処に当たって欲しいとハネルは念を押す。
「この時、復讐者が『死者の書の間』に到達しただけでは、壁画にパラドクスをぶつける等しても破壊は叶わぬ。この強力なクロノ・オブジェクトは非常に強固な守護の力を帯びており、信託も降りる不思議な空間になっておるのじゃ」
 人々の魂が聴く信託は、復讐者も聴く事が出来る。
 声の主は、ジェネラル級エンネアド『アヌビス神』だ。
「彼奴もまた人々の信仰を利用して自らの力とするエンネアド。この者が言う事など取り合う必要は無いが、強い呼びかけを行えば会話も出来るので、話し掛けてみるのも良いのじゃ」
 死者をリターナーにして復活させる事を、宗教的に是とするアヌビス神に反論する機会になろうか。
 姿を見る事は出来ないが、挑戦する価値はあると説明したハネルは、ここで再び語気を強める。

「――この時点で『大いなるトート』の撃破に成功しているのは僥倖じゃ。ここで勝利を重ねて『死者の書の間』を破壊する事が出来たなら、二度と修復は見込めまい」
 死者をリターナーとして復活させる『死者の書の間』は、クロノ・オブジェクトとしても規格外の能力に違いない。
 これを修復することは、大いなるトート以外には極めて困難だろうと脣を結んだハネルは、ぺこりと頭を下げ、
「獣神王朝エジプトの人々を根本から救う、大きな一歩……どうか踏み出す力を貸して欲しいのじゃ」
「にゃんご」
 と、隣する翼猫と共に協力を願うのだった。


 ギザのピラミッド神殿は、『死者の書の間』を守護すべく厳戒態勢が敷かれている。
 所々に置物のように配置された水晶髑髏らも強い使命感に溢れ、目玉なき眼窩に監視の目を光らせていた。
『カクカクカク、カクカクカク』
『――ふむ、侵入者が現れたと? 仲間の目が見たんだね』
 顎を動かして不審者の侵入を報せるクリスタルスカル。
 その不気味な紅い輝きを見る巨大な毒蛇、黄金喰いアポピスがチロと舌を出して云った。
『神殿に足を踏み入れる生者のなんと不届きなこと……ここがどんな力に満ちているか知らないのかい』
『カチカチ、カチカチ、カチン』
『ああ、守護の力に支えられた私達の士気は高く、復讐者などに負けよう筈も無い』
 自信いっぱいに侵入者の排撃を誓うアポピス。
 彼は守護者として戦闘力を飛躍しており、また配下の髑髏の生命力も十分で、一体をやっつけただけでは直ぐ再生する。
 一方の復讐者は何に護られているのかと、毒蛇はニタリと嗤って、
『余程の気力に溢れてなければ私達は倒せないよ。――そう、例えば浜辺に行って遊び尽くしてストレスをごっそり落とし、鋭気に満ちた状態でも無ければ……髑髏、お前達の顎で噛み砕いてお終いよ』
『カカッ、カカカッ!』
 復讐者などモヤシっ子同然と、高笑いを響かせるのだった。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【水源】
1
周囲に、清らかな川の流れを出現させる。この川からは、10秒間に「効果LVトン」の飲用可能な水をくみ上げる事が出来る。
【飛翔】
5
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。【怪力無双】3LVまで併用可能。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【狐変身】
1
周囲が、ディアボロスが狐に変身できる世界に変わる。変身した狐は通常の狐の「効果LV倍」までの重量のものを運べるが、変身中はパラドクスは使用できない。
【強運の加護】
1
幸運の加護により、周囲が黄金に輝きだす。運以外の要素が絡まない行動において、ディアボロスに悪い結果が出る可能性が「効果LVごとに半減」する。
【現の夢】
1
周囲に眠りを誘う歌声が流れ、通常の生物は全て夢現の状態となり、直近の「効果LV×1時間」までの現実に起きた現実を夢だと思い込む。
【一刀両断】
1
意志が刃として具現化する世界となり、ディアボロスが24時間に「効果LV×1回」だけ、建造物の薄い壁や扉などの斬りやすい部分を、一撃で切断できるようになる。
【フライトドローン】
1
最高時速「効果LV×20km」で、人間大の生物1体を乗せて飛べるドローンが多数出現する。ディアボロスは、ドローンの1つに簡単な命令を出せる。
【神速反応】
1
周囲が、ディアボロスの反応速度が上昇する世界に変わる。他の行動を行わず集中している間、反応に必要な時間が「効果LVごとに半減」する。
【勝利の凱歌】
1
周囲に、勇気を奮い起こす歌声が響き渡り、ディアボロスと一般人の心に勇気と希望が湧き上がる。効果LVが高ければ高い程、歌声は多くの人に届く。
【エアライド】
2
周囲が、ディアボロスが、空中で効果LV回までジャンプできる世界に変わる。地形に関わらず最適な移動経路を見出す事ができる。
【トラップ生成】
2
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の空間を、非殺傷性の罠が隠された罠地帯に変化させる。罠の種類は、自由に指定できる。
【モブオーラ】
1
ディアボロスの行動が周囲の耳目を集めないという世界法則を発生させる。注目されたり話しかけられる確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【活性治癒】
2
周囲が生命力溢れる世界に変わる。通常の生物の回復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」し、24時間内に回復する負傷は一瞬で完治するようになる。
【植物活性】
1
周囲が、ディアボロスが指定した通常の植物が「効果LV×20倍」の速度で成長し、成長に光や水、栄養を必要としない世界に変わる。
【クリーニング】
2
周囲が清潔を望む世界となり、ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の建造物や物品が、自動的に洗浄殺菌され、清潔な状態になる。
【建物復元】
1
周囲が破壊を拒む世界となり、ディアボロスから「効果LV×10m半径内」の建造物が破壊されにくくなり、「効果LV日」以内に破壊された建物は家財なども含め破壊される前の状態に戻る。

効果2

【命中アップ】LV5(最大) / 【ダメージアップ】LV1 / 【ガードアップ】LV4 / 【フィニッシュ】LV1 / 【ラストリベンジ】LV2 / 【先行率アップ】LV1 / 【ドレイン】LV5(最大) / 【アヴォイド】LV2 / 【ロストエナジー】LV1 / 【グロリアス】LV1

●マスターより

夕狩こあら
 オープニングをご覧下さりありがとうございます。
 はじめまして、または、こんにちは。夕狩(ゆうかり)こあらと申します。

 こちらは、ギザのピラミッド神殿の中枢『死者の書の間』を守る守護者の排除を目指すシナリオ(難易度:普通)です。

●現地の情報
 ①③④獣神王朝エジプト、ギザのピラミッド神殿。
 クロノ・オブジェクト『死者の書の間』に向かい、これを守護するクロノヴェーダと戦います。
 強化されている敵に対抗し、事前に水練(海水浴)を行って英気を養う事が出来ます。

 ②新宿島、江東区お台場海浜公園「おだいばビーチ」
 パラドクストレインで出発する前に、海でイキイキと遊びます。
 必ずしも立ち寄る場所ではありませんので、他の行動が選択された場合、②は省略されます。

●敵の情報
 『クリスタルスカル』(集団戦)
 指揮官のアポピスを支援するトループス級クロノヴェーダ。虹色や七色に光る怪しげな水晶髑髏です。
 意思を持って動き、隙あらば色んな所に噛み付いてきます。
 1体~13体編成で迫来し、1体でも残すと再生する為、一気に残滅しましょう。

 『黄金喰いアポピス』(ボス戦)
 『死者の書の間』を守護するアヴァタール級クロノヴェーダ。光物に異常な執着心を持つ、硬い鱗を纏った巨大な毒蛇です。
 今回は強力なクロノ・オブジェクトを任されている為、戦意は高く、侵入者を必ず排除する覚悟で襲い掛かってきます。

 『アヌビス神』(声のみ)
 ピラミッドを守護するジェネラル級クロノヴェーダ。戦闘中、戦場に信託が響きます。
 強い呼びかけを行えば会話も可能なので、挑戦してみるのも良いかもしれません。

●シナリオ情報
 当シナリオは……②新宿島で海水浴した後にエジプトへ、①信託を聴きながら③集団戦、そして④ボス戦へ……という流れで進行する予定ですが、復讐者の選択によって変わる場合があります。②は他の選択肢が優先された時点で省略されます。

●シナリオ攻略のコツ
 守護者は死者の魂の力で大幅に強化されており、かなりの激戦が予想されます。
 敵のパラドクスにしっかりと対策を練ると成功に繋がるでしょう。

 以上が復讐者が任務を遂行する為に提供できる情報です。
 皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
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このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


十埼・竜
死者は、ちゃんと眠るべきだ。
ぼくたちはその世界法則を取り戻さなきゃいけない。
待ってろよ獣神王朝エジプト────

────だからめいいっぱい遊びにきました!
これも今から訪れる戦いのためだもんなー仕方ないよね!ねぇノイ!
(海を威嚇するモーラット)
ビーチにはゴキゲンな音楽が必要だと思わない!?
そこらのスピーカーを適度に【ハッキング】電波ジャック…お借りして
Radio-DINO出張放送!
ノリノリにアガるパーティー系からしっとりムーディー系までいろいろ揃えてるよ
これがぼく流の「遊び」ってやつ!

…ぼくも海入りたいな
ノイ、だめ?
(モーラットの強い否定)
だめか…ぼくヘッドホン外せないもんな…

※連携アドリブ歓迎!


 滄い海と蒼い空――。
 その疆界に挟まれる埋立の緑地と高層ビル群は随分と人工的だけれども、サンダルに踏む砂は夏の太陽をいっぱいに浴びて熱く、自然の逞しさを感じる。海に來たのだという実感をくれる。
 泡沫を躍らせる白濱に立った十埼・竜(スカイセンサー・g02268)は、小さな溜息を汐風に溶かすと、忽ち聲を張った。
「――全ては今から訪れる戰いのため。仕方ないよね! ねぇノイ!」
 線は細いが、佳脣を滑るは伸びやかなテノール。
 寄せては返す波に毛を逆立てるモーラット・コミュを隣に、ぱっと花顔を綻ばせた竜は、我が身を基地局の如くして周囲の電波を操ると、【MUSIC YELL】――輕妙なイントロで耳を引き付けるラジオ番組を配信し始めた。
「これから戰いに向かうなら士氣はアゲときたいし、ビーチにはゴキゲンな音樂が必要だと思わない?」
 DJはRadio-DINO! 今日は「おだいばビーチ」からの出張放送!
 ノリノリにアガるパーティー系からしっとりムーディー系まで、都会の渚に似合うナンバーを色々と揃えた竜は、テンポの良い語りに曲を繋いで電波に乗せ、聽く者のテンションをブチ上げていく。
 普段は儚い印象があるが、水を得た魚の如く活き活きとした竜は、場を同じくする仲間に呼び掛け、
「死者は、ちゃんと眠るべきだ。ぼくたちはその世界法則を取り戻さなきゃいけない」
 獸神王朝エジプトの人々は、歪な理によって魂と信仰を操られている。
 その連鎖を斷ち切れるのは、普く理に抗える復讐者しかいない。
「――だから。めいいっぱい遊ぼう!! 待ってろよ、獸神王朝エジプトのみんな!!」
 朗々と爽やかに、何より力強く云えば、浜辺に集まる仲間は一斉に拳を突き上げよう。
 ビーチ周辺の熱がアガッていくのを肌膚に感じた竜は、靑藍の麗瞳をスッと細めて呟いた。
「……ぼくも海、入りたいな」
 自分流の「遊び」を堪能すれば、視線は自ず海へ向かうのだが――。
「……だめ?」
 目下、視界を遮るように割り込んだノイが、フルフルと首を(躯を?)振って留める。
 強い否定を示す理由は、勿論、自分でも理解っている。
「だめか……ぼくヘッドホン外せないもんな……」
 白磁の繊指に触れる、大きな異形のヘッドホン。ノイズイーター。
 悪魔からの最初で最後の贈り物に触れた竜は、ノイに首肯ひとつ置くと、再び指先をミキサー卓へ、新たな曲を繋いで浜辺を盛り上げるのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【勝利の凱歌】LV1が発生!
効果2【ラストリベンジ】LV1が発生!

シアン・キャンベル
遊ぶ――戯れる。脳髄を傾げて観たならば成程、私は魂の解放、楽しみに溺れる事が『不足していた』か。それで――
隣人(オラトリオ)の持ってきた『木の棒』を持って疑問符。何、西瓜を割れと。拉げては食す際に難いのでは――そういう『もの』ではない???
公式ルールとやらを捲ると目隠しが不可欠らしい。あとその場で回転し――!?
待って。隣人(オラトリオ)待って。そんなに回す必要有るのかこの遊びはそんなあの蔓はなんだ聖花光臨、聖花光臨!

鎮座するスイカ
めちゃくちゃ喜んでいる隣人(オラトリオ)
ぶっ倒れてるシアン・キャンベル
リ・バース!
綺麗な空――

残留効果自由に使えるならクリーニングしよう


 波音に乗って流れる音樂は聽覺から、白浜に溢れる人々の笑顔は視覺から。其々インパルスとなり神経細胞を駆け疾る。
 サンダルを濡らす眞白の泡沫の感触と併せ、我が脳髄を刺激するモノを觀察したシアン・キャンベル(妖蟲・g01143)は、小首を傾げて幾許、これらの刺激が齎すものの言語化に成功した。
「遊ぶ――戯れる。成程、私は魂の解放、樂しみに溺れる事が『不足していた』か」
 噫、それで――と佳脣が囁こうとした矢先。
 眼路が、総論が、我が隣人と彼女の持つアオダモ素材の棍棒に遮られる。
「木の棒……。……何、あの西瓜を割れと?」
 促される儘に木の棒を受け取り、白磁の繊指が示す先、白砂に佇む西瓜に疑問符を添える。
 この棒で西瓜を叩き割る流れは特段の説明を必要としないが、問題は、然う――。
「拉げては食す際に難いのでは……そういう『もの』ではない???」
 單に刃を入れて食せば良いという訳では無いのだそう。
 公式に基づくなら目隱しが不可欠と、ルールを確認する間に視界を遮られたシアンは、その場で躯を回される。
 くるくる、クルクル、回流回流……と、果してどれだけ回されたろう。
「待って。隣人待って」
 待たぬ。魂を共有する隣人は寧ろ回轉を早める。
「そんなに回す必要有るのかこの遊びはそんなあの蔓はなんだ!」
 目尻を一瞬で過ぎる景色に言の葉は間に合わず、兎角は淨化だと重ね掛ける【聖花光臨】。
 浜辺の惨状を知らぬ蒼穹からは瀲灔と光花が降るが、その玲瓏を觀る事も叶わず目はぐるぐる、諸有る色彩を混ぜゆく。
「そんなに、そんな、これ程、どれだけ」
 黑縞を飛ばす緑球は西瓜として鎮座して。
 隣人はめちゃくちゃ喜んで主人を押し出して。
 主人は砂を摑むなりブッ倒れて。

 そして――リ・バース!

(「……噫、何て綺麗な空」)
 えれえれ、えれ、と。
 花脣より轉び出る虹は美しき穹窿を描いて砂地へ。而して己が抱き包まれるのも夢幻の虹。
 未だ視点の定まらぬシアンは、搖れ動く脳髄の片隅に「この後すぐクリーニング!」と留め置くのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【植物活性】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!

一角・實生
※軽装程度で水着にはなりません

水鉄砲を持ってきたからこれで遊んでみようか……
止めよう、構えもだけど自分の雰囲気が戦闘時のそれになった気がする

気を取り直してアイスクラフトで生み出した氷でかき氷を作ろう
食べることが好きだし結構食べるし
それに色んなシロップをかけたのをやってみたかったんだ
この日の為にふわふわ氷になるかき氷機を調達した
椅子を置いて、パラソルをさして
残った氷をそばに置けば多少涼しくなるかな

ああ、これから向かうディヴィジョンの人達にかき氷を食べて貰ったら驚くかもなあ
冷たくて美味しいって喜びそうだ

海を見ると漂着した時のことが蘇ったりもするけど
こうしていると悪い記憶ばかりでもないって思うよ


 射撃時の衝撃に耐えられるよう躯の重心をやや前にして立つ。
 構えた腕と銃身線を一直線に、ハイグリップで握るのが反動を抑えるコツと、基礎を振り返りながらトリガーに指を掛けた一角・實生(深潭鷲・g00995)は、ぴう、と飛び出す水飛沫に烱瞳を結ぶと、ゆるく首を振った。
「…………止めよう。新しい銃を持つと、こう、つい手に馴染ませようとする」
 まるで戰闘時の空氣だと、溜息しつつ水鉄砲の銃口を下げる。
 海遊びでリフレッシュする筈が、海上訓練で闘氣を練る人みたいになっていると自らを客觀視した實生は、気を取り直して荷物を開くと、アウトドア用の椅子を開き、ビーチパラソルを差して、第二の行動に取り掛かった。
「よし。かき氷を作ろう」
 食べるのは好きだし、結構食べるし。
 此度は制作過程そのものを樂しもうと準備を整えてきた實生は、純度の高い水からゆっくり凍結させ、層を帯びた透明の氷を生成する。これを鰹節のように削ると、舌触りの佳いフワフワとした氷が作れるのだ。
「一度、ふわふわに眞劍に向き合ってみようと思うんだ」
 フワフワは努力によって磨かれると、或る友人が言っていた。
 友の言を思い出しつつ氷の表面が柔かくなるのを待った彼は、この日の爲に調達したかき氷機(業務用)に氷をセットし、ゴリゴリゴリゴリゴリラゴリゴリ……とこんもり山型に削っていく。
 手動故に汗も搔くが、周囲に置いた氷柱がヒンヤリ冷気を漂わせているから丁度良かろう。
「えぇと……イチゴの次にマンゴー、レモンにメロン、そしてブルーハワイ……ハワイ?」
 氷の山が崩れぬよう、少しずつグラデーションを作る。
 甘く華やかなかき氷を作った後は、濃い目が渋い抹茶かき氷や、ビターなティラミスかき氷にも挑戰するつもりだ。
「――ああ、これから向かうディヴィジョンの人達に食べて貰ったら驚くかもなあ。冷たくて美味しいって喜びそうだ」
 自ず思い出すのは、暑い陽射の下で屈託無く笑う人達。
 一人一人の笑顔を浮かべれば勞苦も吹き飛ぶか、實生はハンドルをグルグル回してフワ氷を作っていく。
「……。……樂しくなってきた」
 此處に來た当初は新宿島に漂着した時の記憶が蘇ったものだが、こうしていると悪い記憶ばかりでもない――。
 引き結んだ花脣に淡く弧を描いた實生は、周囲の人達が業者と見紛う程のかき氷を作り、またモリモリと平らげてフワフワレベルを飛躍させるのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!

穂村・夏輝
のんびり釣りを楽しむ。魚の釣れる釣れないは二の次。そして思考に耽る
「死者の書の間とアヌビス神か」
本来なら冥界の神として死者の魂を天秤で量り裁くってイメージだけど、ミイラを作った神様でもあるんだっけ?……みたいなことを考えてみたり
【書物解読】でエジプト神話関連の書籍を探れば色々と情報は得られるかもしれないけど、今回の本筋から離れた話になるかな?神話の本当の神様とエンネアドは同一じゃないし

釣果は二の次だけど釣れればやっぱり嬉しいので、魚が釣れれば、食べられるものは【アイスクラフト】の氷を敷き詰めたクーラーボックスに入れておきます
「さて、どう食べたものかな」


 汐風の心地好い遊歩道から磯浜へ向かい、錨と鎖のオブジェを眼路に置きながら準備に掛かる。
 聽けばマハゼやセイゴ等が釣れるようだが、魚の釣れる釣れないは二の次だと、随分リラックスした樣子で釣り竿を構えた穂村・夏輝(天使喰らいの復讐者・g02109)は、のんびりと釣りを――思考の時間を愉しむ事にした。
「……死者の書の間とアヌビス神か」
 波間に結ばれた絲を眺め、ぽつり、言つ。
 これより向かうギザのピラミッド神殿の中枢には、死者の書に描かれるような絵とヒエログリフを壁面に刻む広間があり、其處ではアヌビス神の信託が頭に響くと云う。
 汐風に搖れる前髪の奥、美し藤紫に縁取られる睫の間より金彩の双眸を覗かせた夏輝は、佳景を前にゆっくり交睫すると、輝かしき虹彩に波の光を瀲灔と映した。
「本來なら冥界神として死者の魂を天秤で量り裁くってイメージだけど、慥かミイラを作った神樣でもあるんだっけ?」
 専門は法學だが、最終人類史で語られるアヌビス神は知っている。
 かの神は死者の裁判で秤の目盛りを見るだけでなく、ミイラづくりの神として度々「死」と関連付けられる印象があるが、獸神王朝エジプトでは如何な存在となっているのだろう?
「――たとえば」
 譬えばエジプト神話関連の書籍に触れる事で更なる情報が得られるかもしれないが、神話で語られる本当の神とエンネアドは同一で無し、特に獸神が統べる古代エジプトは生死の疆が極めて搖らいでいる。リターナーの存在が然うだろう。
「……如何したものかな」
 困ったように溜息をひとつ。
 然し吐息を零した花脣が僅かにも弧を描いているのは、行き詰まってもない樣で――。
「、っと。掛かった」
 クンと傾く釣り竿が、ゆったりとした時間を一気に進める。
 手應えのある絲の先、魚の動きを見極めてリールを巻いた夏輝は、波間に覗く魚影を見るなり「フッコだ」と口を突く。
 抑も何が釣れたとして、魚が好きなのだ。
「釣果は二の次と思っていたけど、釣れればやっぱり嬉しいよね」
 黑銀の鱗を煌かせる一匹をクーラーボックスに迎え入れれば、氷を敷き詰めた冷所で鮮度は保たれよう。
 刺身、あらい、焼き魚……どう料理しても旨いのだと垂涎した夏輝は、
「――扨て、どう食べたものかな」
 と、塊麗の微笑を覗かせるのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】がLV2になった!
効果2【ガードアップ】がLV2になった!

テクトラム・ギベリオ
黄金喰い。奴がまた暴れているというのか。
奴の事も死者の書の事も気になるが、今は力を蓄えるのが先か。

サーヴァントの毛玉を喚び、一緒に砂浜を散策する。
最近戦闘続きだったからゆっくりしよう。ほら、カニが歩いているぞ。
こらそっちのクラゲは触れてはだめだ。

む、魚が食いたいだと?では釣りでもしようか…初挑戦だが。
釣り竿は貸出が近くにあったはず。【強運の加護】と【神速反応】で魚釣りだ。(釣果はお任せ)

適度に遊んだ後は、木陰のハンモックで休憩する。
一緒に水中散策もできればよかったが、お前は水が嫌いだからな…寝るほうが好きだろう。
腹の上に居る毛玉を撫でながら、波の音を聞きつつハンモックで微睡み英気を養おう。


 眞夏の陽光に煌く白浜を、まっしろなまんまるふわふわが歩く。
 毛玉か、いや。いいや、否。
 雪白の翼猫『毛玉』がほわほわ尻尾を搖らして浜辺を往けば、その愛らしい足調を和やかな視線に捺擦る主があった。
「濱歩きも悪くない。――ほら、カニが歩いているぞ」
 涼夜の如きテノール・バリトン。聲の主はテクトラム・ギベリオ(砂漠の少数民族・g01318)。
 ここ最近はずっとクロノヴェーダと戰闘していたものだから、この機会にゆっくりしようと魂の欠片を連れ立った訳だが、逃げるカニを追い掛ける毛玉の溌溂とした姿を見るに、來て良かったと思う。
「せめて毛玉の息抜きになればと思ったが……こら、そっちのクラゲは触れてはだめだ」
「なぁお」
 主の聲に止められ、好奇心に伸びた前脚をぴゅっと引っ込める毛玉。
 お利巧なスフィンクスなれば、煌々たる金瞳はじっと主を瞶て「代わりのものを」と一鳴きする。
「む、魚が食いたいだと?」
「にゃ」
「……釣るか。初挑戰だが」
 慥か道具も近場で調達できた筈と、直ぐに爪先が動くところに毛玉への愛情が窺えよう。
 あまり釣果を期待するなと前置きしつつ、慣れぬ手付きで釣り絲を沈めて幾許――僅かに動いた竿先に瞬時反應する。
「む、顕かな手應え」
「にゃっ」
 幸運の女神が微笑んだか。いや、此度強運をくれたのは、磯浜で寄り添う一人と一匹を見ていた自由の女神像か。
 絲に結ばれたマハゼが綺羅と蒼穹を躍った瞬間、美し金彩の瞳と、くりくりぴかぴかの金瞳が揃って魚影を追った。

「美味かったか」
「……にゃふ」
 浜を漫歩き、蟹と戯れ、魚を喰い。適度に遊んだ後は木陰で涼む。
 精悍の躯をハンモックに預けて休んだテクトラムは、チラと視線を海へ――水中散策も出來たら良かったと思いはしたが、ジタバタする毛玉を見るよりは、こうして腹の上で眠るのを撫でてやるのが宜しかろう。
 彼は毛玉が寝入った頃合に、掠めるほど小さく言ちて、
「……黄金喰い。奴がまた暴れているというのか」
 一人になると、かの毒蛇の巨影が脳裏に膨らむ。
 無論、彼奴が守護する『死者の書の間』も気になるが――今は力を蓄えるのが先か。
 幾許の懸念を波音に掻き消したテクトラムは、己も靜かに睫を伏せ、微睡の裡に英氣を養うのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【神速反応】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!


 充分に英氣を養った復讐者達が、パラドクストレインに乗り込む。
 行き先は、獸神王朝エジプト――ギザのピラミッド神殿だ。
 既に神殿に広がる異空間を突破している彼等は、中枢の座標も往き方も把握していよう。
 神殿の最深部、50m四方を壁画に囲んだ広間こそ『死者の書の間』――空間自体が強力なクロノ・オブジェクトであった。

『カカカカッ、カカカッ!』
『――嗚呼、來たようだね』
 広間の前方で復讐者を待ち受けるは、守護者たる『黄金喰いアポピス』と配下の『クリスタルスカル』。
 不気味に光を移ろわせる水晶髑髏がごろごろと転がって集合離散する中、堆く積んだ金銀財宝と髑髏の頭頂で巨大な毒蛇が鎌首を擡げている。戰闘態勢は整っているらしい。
 死の匂いの漂う異景は、靄状に渦巻く霊魂エネルギーの影響もあろうか。
 今も彼等は壁画に縋り、アヌビス神の信託を待っているように見える。
『死者の魂に話し掛けても無駄だよ。あの子達は私達に守護の力をくれるだけ』
『カウカクカク……カクカクカクカク……』
『お陰で随分とパワーアップしているんだ』
 無論、復讐者も理解している。
 今回は霊魂の集合体を説得する事も、守護者の強化に介入する事も出來ない。
 幸い、この幾つかの魂の渦は壁画周辺に集まっているので、彼等を守りながら戰うという配慮と工夫は必要なさそうだ。
 沈着を崩さぬ復讐者に気付いたか、アポピスは複眼の視線を一点に、滾々と漲る覇気を睨める。
『……可怪しい。神域に踏み入るほど愚かな者達が、これ程のパワーに溢れている……?』
『カックン。カックン』
『そんな豈夫(まさか)、浜辺に行って遊び尽くしてストレスをごっそり落として來た訳じゃ……!』
 焦った毒蛇が問い詰めるが、答える必要は無い。ただ示せば佳いのだ。
 守護者の命令によって一斉に水晶髑髏が動き出す中、復讐者もまた爪先を蹴るのだった。
シアン・キャンベル
先程から眩暈がひどいのだが、異厭、これで発散したと謂えるのか?
散らしてしまったのは事実だが、嗚呼、隣人の愉しそうな声が……?
待て。此度の『これ』は――成程、神託と謂うものか

神よ、嗚呼、神よ。私は現、醜態を晒してしまったが、聞いてほしい。死からの復活や永遠の命、それは素晴らしい光輝なのだろう。されど
何もかもが輪廻、回帰、上手く運ぶものではない。生前、やり直したいとも思えぬほど苦しんだ魂も数多、在るのだ
――彼等も救えると? 確かに

しかし神よ――貴様。涅槃、解脱の類は理解しているのか。流れから外れる事こそが安寧なのだと、咀嚼した事はないのか
脳髄が嗤っているのだが、果て、所以を訊いてくれ給え
……神よ!


十埼・竜
…うるさい、耳と頭に響いて気持ち悪い…
同じCMばっかり、クレームものだよな
話しかけてみて、ちょっとでも別のこと喋っててくれるんなら御の字!

死は確かに怖いし悲しいよ
もう一度会えたらって願いすらするし
二度と起こらないようにって、たくさんの研究と努力を世代で重ねて
それが今のぼくたちを作っている

何しても死ななくなるなら、鈍感になったぼくたちはきっと何もしなくなっていく
死を忘れてしまうわけにはいかない
人類の変化を、進化を、否定することだから

なあ、神様
あんたら別にぼくらを救いたいわけじゃないもんな
ぼくらの思考を奪って永遠の餌にする侵略者だ


穂村・夏輝
アヌビス神に言っておきたい事は色々とあるけど、1番言いたいのはマミー達の扱いかな
「エンネアドに服従すればリターナーとして蘇り、永遠の命を得ることができる。だが、その命を得た後にマミーとしての境遇はなんなのさ」
確かにマミーの中には神の恩恵を得られたかのような高貴さを持つ存在もいる。だが、明らかに異形となった存在や屑人兵のような見窄らしい姿のマミーだっている
「信仰の見返りとしてのリターナーであるならば、なぜ人々をあのような醜い化け物に変えるのかアレを人々の待ち望んだ姿であると言い張れるのか」
人の魂はアンタ達の玩具なんかじゃない!という感じ主張をぶつけてみる。


一角・實生
死からの復活、永遠の命――
まずは黙って頭の中に響く神託を聴こう

神様、信仰のない俺にも神託をありがとう

誰しも一度は蘇りや永遠の命に憧れを持ったことはあるだろう
死の気配を身近に感じる人なら尚更そうじゃないかな

でもさ、今まで戦ったマミー達を見て思うんだ
蘇るまでは確かに彼らには彼らの意志があったのだろう
蘇ってからはただの都合のいい尖兵、傀儡にしか見えないことの方が多かったよ
死という未知の恐怖と人々の信仰心を利用しているだけだよな

「肉体は蘇らせますがそれが元のあなたであるかは保証致しかねます」
「蘇った後は24時間365日フル勤務の肉体労働です」
「要するに体のいい駒です」
厳かな神託にこれも付け加えようよ



 斯くして復讐者は十全に整ったが、シアン・キャンベル(妖蟲・g01143)にその實感は無い。
 パラドクストレインが搖れたか、いや乗車前に酷く廻転[マワ]され散華[ちら]した佳人は、顳を抑えつつ神域を訪れた。
「未だ眩暈がするが……之で發散したと謂えるのか?」
 果して濱遊びに効果は在ったかと、隣するオラトリオを瞥る。
 嗚呼、魂を分ち合う隣人は吃々と愉悦げに哂っていて、彼女のみが充足を得たのではと訝しむが――。
「……異厭。待て」
 耳元に掠める嗤笑とは別に、脳髄へと響く聲が在る。
 自ず視野を広く『死者の書の間』を見渡したシアンは、凛然を萌すや聽覺を研ぎ澄ました。

 ――復活を望む魂よ、エンネアドを崇めよ。永遠を望むならばエンネアドに服従せよ。

「冥界神アヌビスの神託が、死者の魂を嚮導している……」
 死した霊魂にも響いているであろう聲に耳を澄ます、穂村・夏輝(天使喰らいの復讐者・g02109)。
 姿は見えないが、逆に云えば音聲と言葉で魂を操る事が出來るのかと、壁画に縋る霊魂の動きを注意深く觀察した麗人は、『死者の書の間』はアヌビス神あってこそのリターナー生成装置と、暫し佳脣を引き結ぶ。
(「死からの復活、永遠の命――信仰を説く聲が俺にも響く」)
 默した儘、冥界神の聲を聽くは一角・實生(深潭鷲・g00995)。
 獸神王朝エジプトの神との距離には常々驚かされるが、蘇りや永遠の命への憧れは誰しも一度は持つと理解を示した彼は、死の気配を身近に感じる人なら尚更そうだろうと、靄状に彷徨うエネルギー体に烱瞳を遣った。

 ――お前達の魂が熟成すれば準備は整う。リターナーとなって蘇るのだ。

「……蒼蠅い、耳と頭に響いて気持ち悪い……」
 極めて聽覺が優れた十埼・竜(スカイセンサー・g02268)には、神託も只のノイズ。
 繰り返される異音に思わず繊躯を屈めた彼は、魂の一つ一つをこうして運ぶのか知らぬが、これがCMならクレームものだと頭を振ると、決然と細顎を持ち上げる。
「話し掛けてみて、ちょっとでも別のこと喋っててくれるんなら御の字!」
 強い呼び掛けに應えるなら、強くなった今が丁度佳い。
 群靑の麗瞳に烱光を燈した竜は、首肯を揃える仲間と共に深呼吸ひとつ、花脣を開いた。

  †

「神よ、嗚呼、神よ。私は現、醜態を晒してしまったが、どうか聞き給え」
 先程は虹を吐いたが、此度は神託を咀嚼したシアンが踏み出る。
 死からの復活も永遠の命も素晴らしい光輝なのだろうと舌に反芻した凄艶は、「されど」と逆説に言を継いだ。
「輪廻と回帰、全てが巧く運ぶものでは無い。生前、やり直したいとも思えぬほど苦しんだ魂も数多、在るのだ」
 苦役の涯に潰えた魂の数々を、射干玉の黑瞳は幾度と映したろう。
 彼等に再び苦難の轍を踏ませるのかと含ませれば、これに神託が降りた。

 ――やり直したいと思えぬ者がやり直さなくてはならぬなら、其は神が與えた罰にして試練。
 ――民はリターナーとなり、罰を受け、試練に挑む事で救われるのだ。

 復讐者には不当に見える罰も、人々が自ら望んだものだと云うのか。
 成程、数々の神話に窺える理不尽な神の姿だと口角を持ち上げたシアンは、從順かつ冒瀆的に言を返す。
「然し神よ――貴樣。涅槃、解脱の理は識らぬか。流れから外れる事こそが安寧と咀嚼した事はないのか」

 ――魂の回生を望むのは、他ならぬ民である。
 ――改竄前の世界では、彼等の信仰は虚偽と否定された。

「故に信仰を叶えたと? 聽けば聽くほど脳髄が嘲笑うが、果て、所以を訊いてくれ給え。……神よ!」
 シアンが美しく冷やかに嗤う傍ら、今の受け答えを靜かに聽いていた實生が紅脣を開く。
 彼が先ず口にしたのは、謝意だった。
「神樣、信仰のない俺にも神託をありがとう」
 お陰でエンネアドの立ち位置が見えたと、緑金の瞳を透徹と澄ませた彼は、嘗てその瞳に映った「魂の回生の成れの果て」を思い起こして云った。
「でもさ、今まで戰ったマミー達を見て思うんだ。蘇るまでは確かに彼等の意志があっただろうに、蘇ってからは只の都合の良い尖兵、傀儡にしか見えないことの方が多かったよ。要は死という未知の恐怖と人々の信仰心を利用しているだけだ」
 信仰の究極として死の淵を潜らされた者達。
 其處に敷かれた道は、果して彼等が望んだものであったかと――壁に記される獸頭の神を見て問えば、また神託が響く。

 ――魂の回生は獸神王朝エジプトにおける「常識」であり「事実」となっている。
 ――自由な生き方が叶わぬのは生前と同じ。復活を受け容れぬ者は居ない。

 餘りの儼然、まるで突き放したような物言いに胸がさざめくのは、其の理を信じぬ者だからこそ。
 神に代わって死骸達に安寧を届けて來た實生なれば、次いで口を突く言は堂々と核心を衝いた。

「肉体は蘇らせますが、元のあなたであるかは保証致しかねます」
「蘇った後は24時間365日フル勤務の肉体労働です」
「要するに体のいい駒です」

 言を繕う必要は無い。其こそ己が見た復活者の姿であり、事実なのだ。
「儼かな神託にこれも付け加えようよ」
 復活が常識なら、その後も常識にすれば良いとは皮肉が利いてよう。
 實生がキッパリと告げれば、同じくマミーの扱いに疑問を抱いていた夏輝が、こっくりと頷いて言を足した。
「そうだね、エンネアドに服從すればリターナーとして蘇り、永遠の命を得る事が出來るけれど、魂が輪転した後にマミーとして生かされる境遇はなんなのさ」
 アヌビス神に言っておきたい事は色々ある。
 その最たるはマミー達だと佳聲を滑らせた麗人は、彼等には神の恩恵を得られたかのような高貴さを持つ存在もいる一方、明らかに異形となった者や、屑人兵のような見窄らしい姿に成り果てた者も居ると、確かめるように語気を強めていく。
「アヌビス神よ、信仰の見返りとして魂を復活させるならば、なぜリターナーをあのような醜い化け物に変えるのか。アレを人々の待ち望んだ姿であると言い張れるのか」
 神に魂を操られ、尖兵と鎖がれた者達を、言を避けず「醜い」と云う。
 肌膚を枯らし肉を朽ちさせた姿は、人々が望んだもので無いと訴えれば、現体制に批判的な聲にもアヌビス神は答えた。

 ――魂の回生に美醜は無い。蘇る事そのものが「正しい」からだ。
 ――死者が蘇ると信じた民の願いを肯定した現ディヴィジョンこそ「正しい」。

「正しい? ……人の魂はアンタ達の玩具じゃない!」
 慥かに古代エジプトの民は死者が蘇ると信じていた。其が願いでもあった。
 だから魂が蘇るよう改竄すれば人々が滿足するとでも云うのか、世界を、人間の魂をいいように操作するクロノヴェーダの遣り方には、常は穩やかな夏輝も想いをぶつけるよう聲を大きくする。
 その主張はアヌビス神に届こうか。
 広間に響く神託は、全ては人間自身が考えた神の神威の範疇であると繰り返した。

 ――世界が改竄され、エンネアドに支配された民は幸福を得た。
 ――虚偽と否定された復活を事実のものと改竄した今、その信仰が叶えられたからだ。

 死に畢る世界が改竄されたのだから、人々は幸福であると確言するアヌビス神。
 民が望んだものと云って憚らぬ神託を聽き届けた竜は、それでも賛同は出來ないと、強く両脚を踏み込めた。
「……死は確かに怖いし悲しいよ。もう一度会えたらって願いもするし、二度と起こらないようにって、沢山の研究と努力を世代で重ねて、今のぼくたちを作っている」
 死を畏れるのは、何も古代エジプトの民だけでは無い。
 不安や恐怖が學びとなる――その究極に死があると、竜は凛然と花脣を開いた。
「何しても死なないなら、鈍感になったぼく達はきっと何もしなくなっていく。でも死を忘れてしまう訳にはいかないんだ。人類の変化を、進化を、否定することだから」
 死に打ち勝った筈のマミーが憐愍[あわれ]に見えるのも然うだ。
 一代で畢るからこそ脈々と繋いできた進化の連鎖がなければ、この通り歪みが生じるのだと、冷やかなる広間にテノールを澄み渡らせた竜は、己が呼び掛けにも澱みなく應じる神託を仰いだ。

 ――恐怖の先にある死を乗り越えた者は、信仰によって力を得る。而して救われる。
 ――お前達が哀れに思うものさえ、人間達自身が望んだ結果のものなのだ。

「……自画自賛、だね」
 己を正しいと信じる者が何より厄介と、竜は佳く理解っている。
 神託を聽いたシアンも、實生も、そして夏輝も。首を振ったり肩を竦めたりと気持ちは同じだろう。
 延々平行を辿る会話を溜息ひとつして終えた竜は、姿の見えぬ相手に向けて訣別を告げた。
「なあ、神樣。あんたら別にぼくらを救いたい訳じゃないもんな。ぼくらの思考を奪って永遠の餌にする――侵略者なんだ」
 畢竟、侵略者が何を語っても雑音。
 人々や死魂が縋る魂の回生は不要と、凛乎と睫を持ち上げた竜は、アヌビス神の撃破と『死者の書の間』の破壊に躊躇いは無いと、眞直ぐに射る視線に決意を示すのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【現の夢】LV1が発生!
【強運の加護】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
【エアライド】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
【グロリアス】LV1が発生!
【ドレイン】LV1が発生!
【命中アップ】がLV2になった!

エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎

守護の力だと、ものは言い様だ
はあ……大した詐欺師だな
嘘付きの神託と、本当の信仰さえ奪われた魂達……
歪んでいるよ
アヌビスが何を言っても、結局は人々を使い潰す……侵略者に都合のいい御託に過ぎない
そこは、歴史を奪われた人々の嘆きと怒りの山の上だ

仲間と声かけ連携を
【飛翔】し空中戦
戦況と各スカル達の様子を偵察、観察し把握
風を巻き起こし、敵の行動妨害しつつ
吹き飛ばしながら、1か所に集めていこう
満遍なくスカル達の体力を削っておき
好機には仲間と力を合わせ一掃しよう

反撃には神速反応で光の直視を避け
超常現象は魔力障壁を展開し防御、飛翔で飛び回り回避

信仰を騙った搾取の元凶
詐欺師どもの中枢を破壊しよう


ネリリ・ラヴラン
リターナーさんに生まれ変わる前に
正しい命の流れに戻してあげる
きっとはそれが今できること、なんだよね

それ以上を求めるだけの言葉を持てないのはわたし達の不足
迷って立ち止まっても魂さん達は救われないのだから
諦めずに今はできることをするしかないんだよ

一つづつ倒しても意味がないのは経験済だね
骸骨の頭が見えたらすぐに”爛れた輪舞”を【高速詠唱】
蝙蝠達を広めに展開させて一斉に飛び込ませるよ
一体づつに当たる数は減っちゃうけど【連続魔法】で途切れさせること無く弾幕を浴びせるわ
号令を出してしまえばあとは真っ直ぐ飛んでいくだけ
わたしの目が眩んでも、屋内なら逃げ場も多くは無いはずっ

アドリブや連携は歓迎だよ


テクトラム・ギベリオ
…なにやら無駄に察しが良いようだが。まぁいい。
貴様では本日一段と輝く我がサーヴァントを披露するには役不足だ。
粉々に砕いて砂の一部にしてやろう。

【飛翔】して敵の分散状況を確認する。
13体か。数が多いが仲間とタイミングを合わせて一気に叩きたい。
あの骸骨頭にどれだけ通じるか分からんが、挑発してこちらに来させよう。

クリスタルスカルと言えば冒険家の憧れ、秘宝と謳われるが実際はどうだ。
ただの硝子彫りではないか。
死者の書の間ではなく、土産屋の隅に並ぶほうがお似合いだ。
せいぜい七色に光って客を呼び込むのだな。

向かって来た所を「砂塵縛楼」で一気に砂に閉じ込めて蹂躙する。
砕けよ。そして砂に還れ。

アドリブ連携歓迎



 斯くして神託に向き合う者あれば、この空間に蠢く邪と向き合う者も居る。
 神域に踏み入る不敬者を排除せんと動き出す、水晶髑髏と戰う復讐者が然うだ。

「守護者を支援するのはクリスタルスカル……各個撃破しても意味が無いんだよね」
 過去の対戰を経験として積めるのも彼等ならでは。
 カタカタと顎を鳴らす髑髏の群れの前、怪光に白皙を照らすネリリ・ラヴラン(★クソザコちゃーむ★・g04086)は玲瓏と煌く緋瞳を眞直ぐ、妖し光源に射る。
「――噫、連中は常に13体を保つ。タイミングを合わせて一気に叩こう」
「にゃあにゃ」
 同時撃破が攻略の鑰とは、テクトラム・ギベリオ(砂漠の少数民族・g01318)も同意を示そう。
 隣する毛玉もまんまる御目々を烱々と、隙あらばふっくら尻尾に嚙み付かんとする顎を警戒しつつ首肯を添える。
「敵の配置を見るに広い視野を確保したい處だが、空中戰が望ましいか」
 連中に宙を飛ぶ術はあるまいと、颯と翼を広げるはエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)。
 手数は及ばぬものの、戰術では劣らぬと飛翔した麗人は、指環に魔力を注ぐや黄金の荊を模り、災いを禦がんとする。
 既に残留効果も積まれており、気力も充分――。
 復讐者達は次々と翔け上がり、間もなく烈風が吹き荒れた。

  †

 ネリリの黑翼は繊細で可憐だが、今は最高速度100km/hを自在に操る猛翼。
 颯となって敵を俯瞰した彼女は、迸る魔力で生成した無数の蝙蝠を周囲に群がらせた。
「なるべく広めに展開して、一斉に飛び込ませるよ!」
 羽音も立てぬ隱密に命じるは、【爛れた輪舞】(ルナティック・バレット)――13体の水晶髑髏に等しくダメージを與えんとすれば、號令に應じて数を分けた蝙蝠が其々に射線を結び、忽ち爆熱を閃かせる。
「一体に当たる数は減っちゃうけど、そこは回数でカバーすれば大丈夫っ」
 爆発の衝撃に銀灰の艶髪が捲き上がる中、花脣はまた蝙蝠を喚んで再突撃!
 朦々と吹き荒ぶ戰塵の中にチラつく妖光へ向けて彈幕を張り、髑髏をゴトゴトと轉がした。
『カクカクカクカクッ!』
 顎を動かして悲鳴を叫んだ邪が、13体同時にオーラを放つ。
 視界が白く浮き立った刹那、佳人の眼前に大海嘯が現れるが、彼女は其も無数の黑翼の羽搏きに掻き消して翔け抜けた。
「っ、立ち止まらないよ!」
 死者の魂がリターナーとして蘇る前に、正しい命の流れに戻してあげたい――。
 其が現時点で復讐者が出來る事と、頬を打つ飛沫を感じながら飛び続けるネリリ。
 双眸に映る壁画を次々と目尻に流して翔る佳人には、周囲に漾う霊魂も見えようか。人々が信仰する魂の回生、それ以上を求めるだけの言葉を持てぬのは復讐者の不足と繊手を握り込めた佳人は、強く羽搏いて加速した。
「わたし達が迷って立ち止まっても、魂さん達は救われない。だから、諦めずに今できる事をするしかないんだよっ」
 云って、黑翼の輪舞をもう一回!
 巖壁の如く聳り立つ波濤を蝙蝠の群れに突き破らせたネリリは、水底に隱れた水晶髑髏ら目掛けて幾重に衝撃を叩き付け、奥歯をガタガタいわしてやるのだった。

『ガタガタ!! ガタガタガタ!!』
『……不敬者が、守護の力を得た私達に匹敵している……!?』
 ゴロゴロと轉がる13体を複眼に捉え、大いに喫驚するアポピス。
 直ぐに指揮官として分散するよう命じるが、復讐者の迅速な連携が其を上回る。

「――守護の力か。ものは言い樣だな」
 冷艶なるテノール・バリトン。囁くはエトヴァ。
 死霊に力を得る守護者もとんだ詐欺師なら、神託も嘘に塗り込められ、本当の信仰さえ奪われた魂達が彷徨う――何もかも歪んでいると溜息した麗人は、天色を映す大翼を羽搏かせると、自ら風となり広間に流体を生んだ。
 彼が優艶を帯びるのは、仲間に呼び掛ける時のみ。
「アポピスの命で髑髏が散り始めたけど、出來る限り一箇所に集めていこう」
 聡き聽覺が音聲を拾い、優れた視覺で状況を確認する。
 情報を共有しながら戰術を提案すれば、是を示した仲間が動き出し、全体を把握したエトヴァも攻めに出た。
「全13体。滿遍なく、平等に削る」
 贔屓はすまいと紡がれるは、【Luftturbulenzen】――靑の魔力を込めた双翼が力強く羽搏くや乱気流を生み、踊り舞うように風を捲いて鋭刃に、個々に向かって斬撃を叩き付ける!
『カカカカッ! カカッ!!』
「一度で斬れなくても佳い。吹き飛ぶか轉がりでもして集まった機に一掃する」
 戰闘中、彼の耳にも神託が響くが、必要な情報なら既に選んでいよう。
 冥界の神が何を言っても、結局は人々を使い潰す――侵略者に都合の善い御託に過ぎぬと聽き流したエトヴァは、焦燥する毒蛇の前で天衣無縫の風刃を亂舞させた。
「そこは、歴史を奪われた人々の嘆きと怒りの山の上だ」
『ッ――!』
 災禍が集まるより速く髑髏を彈く。
 光が結ばれる座標を遁れた彼は、信仰を騙った搾取の元凶――詐欺師らの中枢を破壊せんと隼の如く翔けた。

『カクカクカク、カクンッ!』
『お前達……!!』
 水晶髑髏の損耗の度合から、既に復讐者が手を打って來たとはアポピスが察そう。
 毒蛇は目下、我が視界を過った二つの影を睨めた。
『これ程の気力……浜歩きに釣りをして更に昼寝でもしない限りは得られない筈……!!』

「無駄に察しが良いが、まぁいい。その骸骨頭では相手にならんと云う事だ」
 蛇邪に一瞥を呉れるは、浜歩きに釣りに、更にハンモックでお昼寝もしてきたテクトラム。
 充分に英氣を養った彼は、言も鋭く畳み掛け、
「無論、貴樣も本日一段と輝く我がサーヴァントを披露するには役不足」
『何ッ!』
「にゃふん」
 見よと視線に導く先、毛玉も胸を張って威容を見せる。
 陽光に沐われた白毛はふっくらと、主と色を同じくする金瞳はピカピカに、躯と合わせてまんっまる。
 チロリと出た舌の色も、ぷにぷに肉球のツヤも佳く、非の打ち處が無い愛らしさだ。
『カカカッ! カカカカッ!』
 蓋し水晶髑髏は怯まず、一斉に雹を浴びせるが、これほど完璧に仕上がった一人と一匹は捉えられまい。
 煌々と冱ゆる金瞳には、迫る氷塊も止まって見えようか。主が颯然たる身の科[こなし]で躱す中、隣する毛玉も光矢の如く空間を飛び回り、目に追うばかりの邪を翻弄する。
 而して髑髏が摑めるのは、腹立たしい言のみで、
「クリスタルスカルと言えば冒険家の憧れ、秘宝と謳われるが……実際は只の硝子彫り」
「にゃん」
『カカッ!? カカカ!!』
「陳腐な土産物は、店の隅に並んだ方がお似合いだ」
「なごなご」
『カクカク!! カクカク!!』
 おみやげレベルと云われた髑髏らが瞋って集まれば、敵の分散状況を確認していた主が好機に仕掛けた。
「精々、七色に光って客を呼び込むのだな。せめて多めに呉れて遣る」
 解き放たれるは【砂塵縛楼】――黄金色に煌く砂粒が風と結ばれ、丁度13体が集まった地点に壮麗な楼閣を模る。
 極限まで砂を圧縮した楼閣は、内部に髑髏達を閉じ込めると同時、砂塵を吹き荒んで蹂躙した。
「砕けよ。そして砂に還れ」
『――! ――ッ!』
 餘りの密度に悲鳴すら漏れぬ楼閣内、髑髏達が大いに悶えた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【クリーニング】LV1が発生!
【飛翔】がLV3になった!
【建物復元】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】がLV4になった!

一角・實生
1体から最大13体……それなら飛来する数を確実に把握することが重要かな
偵察能力は勿論、記憶術で個体数・差を覚えていくよ
どの敵にどれだけのダメージがいってるか、喋り方や行動の癖辺り
かき氷のおかげで英気に満ち満ちているし今なら骸骨鑑定士になれる

隙あらば噛みつくというのなら逆にそれを利用しよう
俺を目標に定めた敵がいれば仲間や俺がまとめて攻撃しやすい位置へと誘導

あ、翼はやめてほしい
日干ししてふわふわになったばかりなんだ

個体ごとのダメージの蓄積量把握を最優先に
仲間のパラドクスの発動に追随し俺も発動、討ち損じのないよう貫通撃を叩きこもう
紫のオーラはエアライドと飛翔を組み合わせて距離を取ることで回避したいな


『カカカ……カカ……ッ』
 水晶髑髏が意地を見せたのは、砂塵の獄で数を半減させた時。
 残る6体が1体を押し出し、何とか長らえたのだ。

「その1体から最大13体まで一気に再生するのか、それとも――」
 蓋し復讐者は沈着を崩さない。
 敵数から個体ごとのダメージ蓄積量まで聢と觀察していた一角・實生(深潭鷲・g00995)は、この髑髏は慥か嚙み癖が強い個体だったと記憶を洗うと、周囲を注意深く見渡しつつグラナトゥムを構えた。
「自分でも恐ろしいほど明確に区別できる……今なら骸骨鑑定士になれそうだ」
 頭蓋骨の形状や喋り方、色の帯び方――全て同じに見えるが、どの髑髏が残ったか瞬時に判別できるその道のプロ。
 僅かな違いを個性と捉えられるのは、水晶に似た氷晶と向き合ったからか、かき氷作りで極限まで集中力を研いた實生は、残る1体の靱性を見極めるよう靜かに銃爪を引いた。
「――本物の頭蓋骨は顳部が薄くなっているけど、どこまで寄せたかな」
 お陰樣で反應も反射も充分。会敵劈頭からゾーンに入っている。
 1体が轉び出た瞬間に被せるよう射撃すれば、急所を彈かれた髑髏がごうろり床を回った。
「被彈後は反撃に嚙み掛かる筈……。行動の癖を知れば回避できるし、逆手に取る事も出來る」
『カカッ!』
「おっと、翼はやめてほしい。日干ししてふわふわになったばかりなんだ」
 骸骨鑑定士は読み違えず、翩翻[ヒラリ]、艶々しく輝く白翼を飜して顎撃を躱す。
 間際を過ぎる髑髏が2体になっている事から、成程倍数で増えるのかと烱眼を鋭くした實生は、【ノクテムヴィアム】――床を蹴るや瞬時に舞い上がり、高高度から捉えた2点の座標へ冱彈を撃ち込んだ!
「再生力に繋がる生命力を奪われる訳にはいかない」
『ガガガッ!!』
「討ち損じはしないよ」
 不氣味な眼窩に紫のオーラが溢れた刹那、頭蓋に鐵彈を貫通させる。
 片や損耗は酷く、片や再生を始めたばかりの個体にて、どちらも数発の射撃で破砕しよう。
 2体が4体になるより速く仕留めた實生は、冷艶と冱ゆる翠瞳に指揮官アポピスを射るのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【エアライド】がLV2になった!
効果2【命中アップ】がLV3になった!


『カカ……カカカ……――』
 延々と爆熱が閃く中、舞踏する風に身を削られ、黄金の砂楼に囚われ。
 終始、再生に必要な生命力を奪えなかったクリスタルスカルが、遂に銃彈に斃れる。
 凄絶と吹き荒ぶ烈風が収まった時、守護者アポピスの複眼に映った光景は餘りに衝撃的だったろう。
『ッッ……私の配下が……ッ!』
 水晶の美しい光が消え、元の仄昏さを取り戻した広間に、数人の復讐者が立っている――。
 幾度と災禍を受けたであろう彼等は未だ旺然として、烱々と光を湛えた鋭眼を己に向けていた。

『……私は「死者の書の間」の守護を任された身。手勢を失った處で矜持は折れはしないよ』
 暫し默して復讐者を見た後、冷やかに言を染ませるアポピス。
 守護者としての使命に奮い立った毒蛇は、獸神王朝エジプトの爲、引いてはこのディヴィジョンの支配体制を覆させぬ爲、負けられぬ戰いがここにあると、復讐者を前に雄々しく鎌首を擡げた。
『神域に踏み入る不敬者ども、私が直々に裁いてやろう! 我が命を捨ててでも、此處は必ず守る!』
 死者の魂より力を注がれ、息詰まるほどの殺氣を迸る蛇邪。
 その威容は正しく守護者――『死者の書の間』の重要性を預る者の姿であった。
シアン・キャンベル
貴様――成程。覚悟を決めた化け物ほどに厄介な敵はない。目を回している暇などないか。しかし――軽く眼振した方が見つめなくて済むか?
いや、そんなトンチは隅に置いて強運の加護や勝利の凱歌を上手く利用する。重要なのは奴よりも強い『心』か。私は簡単には狂えないぞ。何せ最初から三半規管が狂っている
覚悟を決め、常に集中する輩は時に『疲れ易い』のが隙、息切れした刹那にエアライド、緑の崩壊を刺し込む。その肉、脳、丸焼きにするなど勿体ない。生の儘に寄越せ――私は腹が減ったのだ。つまりはドレインの類、漿液吸い尽くしてやろう

そう、腹が減る。中身が出てしまった。生きているのだよ、は、は、は――!

今度は貴様が眩む番なのだ


陳・桂菓
使用武器は苗刀『飛竜』

猛毒の弾丸を【飛翔】【神速反応】【エアライド】を利して回避しつつ、可能な限りの速度で間合いに入って刺突を放つ。
鱗が堅牢らしいが、だとしたら有効に働く攻撃部位は口の中、舌、ないし目玉といったあたりだろうか。
敵にしてみてもそれは百も承知だろうから、易々と当てさせてはくれないかもしれないが、まあ速度と【命中アップ】で何とかなるだろう、という思考。
どうにも回避されるようなら、鱗の隙間を狙って斬撃。ある種ダメ元ではあるが、まるで刃が通じないということもあるまい。

まずは敵の攻撃を回避できるかが肝要。軌道が直線的では見切られるだろうから、空中ジャンプによる複雑な挙動が必須になるだろう。


『私は神域を護る者。此處に踏み入る者は何人も許さないよ』
 金銀財宝を組み敷いたアポピスが、冷嚴と鎌首を擡げる。
 数多の眼に復讐者を映した蛇邪は、迸る殺氣を腐蝕の毒彈に變えて放った。

「おっと、捕まる訳にはいかないな」
 タンッと爪先を蹴って飛躍し、宙空で軌道を變えながら命中を遁れる陳・桂菓(如蚩尤・g02534)。
 先ずは攻撃を回避するのが肝要と、複雑な挙動で毒彈を躱さんとする佳人には残留効果の支援があり、空中機動は俊敏に、繊翅は最高速度150km/hまでを自在に操って、己の代わり床を腐爛させる。
 超速に在りながら、紫彩の瞳は烱々と敵の樣態を探って、
「鱗が堅牢らしいが、だとしたら有効に働く攻撃部位は口の中、舌、ないし目玉と云ったあたりか」
「目玉、眼球。腦と繋がれる部位は殊更に旨いが、噫、眩暈する上に腹が空いてくるとは忙しない」
 擦れ違い樣に答えるはシアン・キャンベル(妖蟲・g01143)。
 目玉が良いとは個人的な嗜好は勿論、数を減らせば催眠術の威力も削れるかと、麗顔に歪な嗤笑を浮かべる。
 彼女も残留効果を感じようか、美し黑瞳はぐるり広間を巡って、
「不敬者と罵られたが、如何だ。幸運の加護が、勇壮な歌聲が不敬者に力を與えている」
 ぐうるりグルグル……いや目を回している暇は無い。
 翼を羽搏かせる隣人に合わせて兩翅を広げた麗人は、左右に分かれて的を増やした。

  †

「輕く眼振した方が瞶めなくて済むか――否、頓智でもあるまい」
 諧謔を囁く程には餘裕のあるシアンが、翩[ヒラ]、飄[ヒラ]、と繊躯を滑らせ邪眼を遁れる。
 まだ隣人に廻転された名残を感じるような、先の読めぬ動きで大広間を踊った彼女は、複眼をギョロギョロ動かして眩惑に掛かるアポピスを目尻に置くと、今度は眞劍に云った。
「覺悟を決めた化け物ほど厄介な敵は無い。畢竟、より強い『心』を持った者が克つ」
『ならば私には勝てないよ。背負う使命が違うのだから』
 呵々と嗤って眼力を高めるアポピス。
 眩惑の催氣が肌膚にも迫る中、妖蟲は気怠げに哂って返した。
「私は簡單には狂うまい。何せ端から三半規管が狂っているのだから」
『狂人か』
 問われれば微笑む程の正氣はある狂者が自嘲したのも一瞬。
 シアンは眼を動かし続けるのも疲れようと宙を翔け上がると、財宝の山に鎮座する巨邪に向けて刺を伸ばし、【緑の崩壊】(グラーキ)――数多ある眼球のひとつに刺撃を差し込んだ!
『ずァ!』
 疾ッと血汐を迸った目玉が、どうろり零れ落ちる。神威に淨われたのだ。
「覺悟を決め、極限まで集中する輩は『疲れ易い』。凝視する眼も、腦も、熱を帯びている事だろう」
『私が息切れする隙を狙ったと!? そんなモノ、ある筈が――唖唖ァア嗚呼!!』
 嚇怒した蛇邪が絶叫を叫んだのは、刺が更に深く沈んだから。
 成程、温度が上がっていると中を確かめた麗人は、貪欲を催すや刺より漿液を吸い出した。
「その肉、腦、丸焼きにしては勿体無い。生の儘に寄越せ」
『不敬者、め……!!』
 健啖は間もなく振り払われるが、突き刺さった狂氣は守護者の矜持を蝕もう。
「噫、中身が出てしまった。詰まりは生きているのだよ、は、は、は――!」
 次は貴樣が眩む番、と。
 艶めく紅脣が朏を描いた。

「直線的な動きでは見切られる。變則的にいこう」
 執拗に撃ち放たれる毒彈を極限の反射で避け、或いは苗刀『飛竜』に彈道を逸らしていた桂菓が、ここに動く。
 回避に集中している限り被彈は免れるが、問題は此方の命中精度――鱗以外の部位が狙われるのは百も承知している相手が易々と当てさせて呉れるかと思案していた佳人は、好機を見たりと、目も奪われるほど鮮やかな眞紅の闘氣を解き放った。
「――まぁ、見惚れる瞬間は無いけど」
 玲瓏なる花脣が口角を持ち上げた、正に須臾。
 兩の繊翅を強く羽搏かせ、限界まで速度を上げた桂菓は、太刀の鋩を進路に向けて【単駆突赴】(タンクトップ)!
 アポピスがシアンの刺撃に仰け反った瞬間、全き逆側から突撃を仕掛けて目玉を刺突したッ!
『ッッ、ぐ嗚嗚!!』
「沢山あるうちの一つ二つ、潰したって構わないだろ」
 其は一点に狙い澄ましたからこそ命中を得た冱撃。
 複眼ゆえ死角の殆ど無いアポピスを出し抜くに残留効果を、特に飛翔スピードを活かした桂菓は、赫々と熾ゆるオーラを帯と引いて懐へ侵襲し、流星の如き衝撃を眼部に突き立てたのだ。
『生意……気な……!!』
 濤と血飛沫を噴いた蛇邪が至近距離で毒彈を放つが、激痛に歪む反撃は幾筋が玉臂を掠める程度。
 己が流血より返り血を多く受け取った桂菓は、ぬらりと張り付く生血を手の甲に拭って云った。
「まるで刃が通じないという事もあるまいし、他も試させて貰う」
 次は鱗の隙間に斬撃を呉れようかと、戰神の末裔は實践的で挑戰的。
 刃撃を沈めて離れた武人は、黄金に耀ける空間に麗姿を際立たせていた――。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【クリーニング】がLV2になった!
【飛翔】がLV4になった!
効果2【ドレイン】がLV2になった!
【命中アップ】がLV4になった!

一角・實生
【鳥猫】
奴の命には魂達の力の分も含まれる
その事実に思うところはあるけれど、見据えるのは未来
死者の書の間の力を削ぐこと

俺の翼が普段よりふわツヤだと思わない?
英気満ち満ち状態だとこんなに違う
呪いの力も溢れ出まくりだ、この差は大きいよ

身に着けた光物周辺を銃撃し敵の感情を揺らして行こう
パラドクスでも光物と身体が触れている部位に呪詛を送り込む
瓦礫はエアライドと飛翔を併用し回避
神速反応で狙撃速度を更に上昇させ、財宝を貫通撃で破壊・粉砕しよう
ヴォロンテさんが身を隠す最低限の分だけ残すよ

今まで収集した光物が砕け散る様子に激昂するかな
視界が狭まっていいことだね
でも気をつけないと……牙も爪もひとつじゃないからさ


シャトン・ヴォロンテ
【鳥猫】
戦力の足シに援軍に来たンだガ…
『浜辺(中略)鋭気に満ちた状態じゃないから気をつけて』?
何言ってンのオマエ…

ッてデカ蛇も似たヨーな事言いやガル!?
……エ、オレが間違ってんノ…?

ソノ目を見ネー様に正面を避けル。
相手が巨体なノを利用しテちょこまか大回りし続けテ側面ヤ背後を狙う。
財宝が降って来るナラ寧ろソノ陰にも隠れるゼ、【アサシネイトキリング】ダ。

特にミショーの技は一種の吶喊、結果はドーあれ目立つ。
同時では無くタイミングをズラす連携攻撃。ソのパラドクスのインパクトの隙を狙うゼ。

二度目かラは、今度はオレからノ副撃への警戒ガ、ミショーの攻撃に対する隙ニもなるかもダシナ。
一体多は多が有利なモンだ。


 左右ひとつずつ眼球を失ったアポピスが血斑を躍らせ、残る邪眼で復讐者を睨める。
 怒れる蛇邪が黄金の雨を叩き付けんとしたその時、戞ッと金属の嚙み合う音が衝撃を往なした。

「――ヴォロンテさん、來てくれたのか」
「手数を増やス。少しは足シになるダロ」
 咄嗟に長銃を構えた一角・實生(深潭鷲・g00995)の前、シャトン・ヴォロンテ(enfant perdu・g04732)が礫撃を手折る。
 繊手に握れる短刃が次撃を禦がんとした刹那、急ぎ踏み出た實生が銃劍の鋩に“雨”を斷った。
「気をつけて。ヴォロンテさんは浜辺に行って遊び尽くしてストレスをごっそり落とし、鋭気を養った状態じゃない」
「浜辺……? 何言ってンのオマエ……」
 この靑年からウェイ染みた科白が出ようかと、片眉を上げるシャトン。
 怪訝な瞳が自ず本人に結ばれるが、視線は間もなく蛇邪に呼ばれて、
『ははは。潮音をBGMに夏を感じ、かき氷を貪り喰って來た訳でもない小娘が、私に敵おうものか』
「デカ蛇まで何言ってやガル!?」
 ニタリと嗤笑う蛇邪を二度見し、改めて實生を見る。
 視線に気付いた彼は、いつにも増してふわツヤな翼を肩越しに瞥ると、自信滿々に云った。
「ほら、英氣滿ち滿ち状態だとこんなに違う」
「えいきみちみち」
「呪いの力も溢れ出まくりだ、この差は大きいよ」
 ――この差とは。
 色々と間に合ってない気がした少女は、實生を侮れぬ相手と見据える蛇邪と、これで互角の戰いに持ち込めると凛然を萌す實生との間で、ちょっと迷ってくる。
「……エ? オレが間違ってんノ……?」
 若しか本当に實生より術に嵌るかもしれないと警戒したシャトンは、かの複眼を見ぬよう正面を避けて駆け出した。

「守護者の矜持は勿論、光物への執着も強い、と――」
「穢されタリ道具に使われタラ嫌がるだろーナ」
 天地に進路を別つ前、二・三言交した所感がそのまま二人の戰術となる。
 蛇邪が纏う光物を銃撃して感情を搖らさんとする實生に對し、颯然たる羽音の下、シャトンは自身の矮躯と敵の巨躯の差を活かしてちょこまかと動き回り、尾に向かって疾る。
 蛇邪が据わる山が再び鏘々とさざめいたのは、この時。
『人数を増やそうと無駄だよ』
 財宝を高みに上げ、忽焉と顕現させた瓦礫と交ぜて叩き落す!
 黄金色に煌めく礫撃が猛然と降り注ぐが、今や實生は最高速度200km/hを自在に操る翼力と、宙空で二度も進路を變えられる機動力を有し、シャトンもまた神速で感知して回避できる――幸運の加護を得ている。
 浜辺効果と残留効果を発揮して“暴雨”を遁れた二人は、先ずは實生が高高度から仕掛けた。

「この爲に蓄えた英氣(呪詛)だ。惜しみなく使おう」
 力強く羽撃くや、光矢の如く滑空する。
 瞬時に距離を詰める先、蛇邪は死霊に支えられており、その命には彼等より受けた力の分も含まれようが、ふわツヤの翼は思いを振り切り、未來を見据える力も與えてくれる。
「――今は唯だ『死者の書の間』の力を削ぐ。その爲に守護者を踏破する」
 その一歩が歩みとなろうと、紺靑の炎を迸った實生は【ヴェネフィックスペル】――接近しざま冱彈を放った!
『ッ、何をしてくれる!!』
 抜群の集中力で射抜いたのは、額部に飾る円環の冠。
 根元を撃たれた冠が宙を躍る中、装飾を失った部位に更に一撃を沈めて呪詛を送り込んだ撃手は、アポピスが組み敷く財宝を次々と撃って破壊していく。
『不敬者め! 私の財宝を……ッ!』
「粗雑に扱われれば憤ると思ったけど、その瞋恚は視野を狭める」
 不敬を罰せんと蛇邪が反撃に出るも、礫撃を見る瞳は至って冷靜。
 再び財宝が瓦礫と混ぜ合わさった瞬間、鴇色の佳脣は冷嚴と忠告を置いた。
「でも注意した方がいい。……牙も爪もひとつじゃないからさ」

「牙か爪か。とりあえず牙を喰ラって貰うゼ」
『――!』
 痛撃に傾いた額と眞逆、尾を楔打つは【アサシネイトキリング】――シャトンが握るl’amour。
 礫撃が降り注いだ瞬間に気配を斷った彼女は、財宝と瓦礫が作る翳陰に影を滑らせながら尾へ――ちょうど肋骨の途絶える部位に辿り着き、銃聲が響き渡った次の瞬間に刃撃を沈めた!
「ミショーの技は一種の吶喊、結果はドーあれ目立つ。タイミングをズラした方が効クと思ったんダ」
『ッッ……いつの間に……!!』
 實生が身を隱すだけの財宝を残してくれた事もあろう。
 刺撃の瞬間まで殺意を押し込めた少女は、今こそ暴く殺氣に硬鱗を穿ち、夥多しい血を噴かせる。
『ぁぁアア唖唖唖唖ッ!!』
「眼が多いのも有利ダガ、一対多も多が有利なモンだゼ」
 而して連携の妙が生きるのは二度目から――。
 己の副撃への警戒が實生の攻撃に對する隙にもなると、美し白皙を眞ッ赫に染めて咲った少女は、蛇邪が睨めた時には既に音も無く姿を消していた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】がLV5になった!
【モブオーラ】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】がLV2になった!
【フィニッシュ】LV1が発生!

テクトラム・ギベリオ
(この殺気…なるほど予想以上に強化がされているか。)
貴様に披露するまでもないと言ったが、気が変わった。
まだ眼は残っているな?では我がサーヴァントを刮目せよ!

行くぞ毛玉。『ダンス』を踊る要領で【飛翔】して、奴を翻弄しろ。
でかい獲物だ、狙うのはどこでも良い。とにかく今は体力を削っていくのが先決だ。
ほらどうしたアポピス、私の毛玉と踊ってくれ。あぁ足が無いから踊れんか?

軽口で敵を注意散漫にさせる。小さいサーヴァントだ、少し目を離せば見失うぞ。
毛玉、奴の注意が逸れた瞬間一気に加速して眼を狙え。
幻惑が来るだろうが、奴の顎下に身を潜めてやり過ごし、そのまま『貫通撃』で思い切りぶっ叩いてやれ。

アドリブ連携歓迎


穂村・夏輝
「神域に踏み入るもの、ね。盗人猛々しいとはまさにこの事じゃないか」
勝手にこの時代のエジプトに侵略し、この時代の文化や人々の思考を改竄して、もともと自分達のものであったかのように振る舞う……見方を変えればそんなものだよ。

相手の眼をできるだけ見ないように立ち回る。どうせ攻撃するのは俺じゃない
「アンジェ、この時代を侵略した不届き者に裁きの光を!」
サーヴァントのアンジェローザに【浄化】の力を込めた【ジャッジメントレイ】を撃ち込む。アンジェはオラトリオの目隠しをしているから視線を合わせづらいだろうし、もし合ったとしても自律的に動く意思を持たないサーヴァントに催眠術は効かないはず


ナディア・ベズヴィルド
はっ!なにが神域だ。
不敬だと?偽りの信仰を尊ぶ場など神域などとは呼ばぬわ、愚か者め!
命を捨てるとは軽々しく言うものだ、その台詞は本体でいうべきだな。
まあ、よい己の守るべきものを守るために全力をもって挑むがいい!
我らも正しき歴史を記す為に全力で挑もうぞ

あの目が厄介だ。《砂使い》《風使い》を使用し、砂嵐を起こして奴の視界を遮ろう
こちらも狙うは奴の瞳。確実に一つずつ潰していこうではないか

どうした、大きな口を叩いた割にはたいしたこと無いな、随分と見掛け倒しだな。

挑発も加え、注意をこちらに向けて他の仲間が攻撃をする隙を作りながら
連携を取りながら確実に相手にダメージを与えて
苦手攻撃にはディフェンスに入る


十埼・竜
ぼくはラジオ屋だ、戦う力は大してない
…でも、【勝利の凱歌】が聴こえるせいかな
できることを、しようか!

みんなが派手に暴れててくれる間に〈観察〉〈情報収集〉する
財宝と瓦礫を上に投げ上げて落とす…二手いるんならぼくの〈ハッキング〉の方が早い!
【神速反応】でその攻撃の隙を見て『Jack'all』
さあ、あんたの脳波も神経信号もぜーんぶ、ぼくのものだ!
世界まるごとノイズに変換してあんたに流し込んで、ぼくの呪いと同じに堕とす
それ、ブッ壊れるほどうるさいもんなあ!!

〈時間稼ぎ〉しながらあんたの思考を盗んでしまえれば、それを〈号令〉でバラ撒こう。ラジオだからね!
決定打はみんなに任せたよ!


一里塚・燐寧
アポピス……エジプト神話に出てくる、混沌の大蛇と同じ名前だよぉ
だけどきみは、随分と可愛らしく飼いならされてるねぇ?

≪テンペスト・レイザー≫を手に、目の前の蛇を挑発するよぉ
相手の苛立ちを誘いながら、攻撃を仕掛ける隙を探り
仲間の攻撃に気を取られた後とか、「ここだっ!」てタイミングで仕掛けるねぇ

放つ技は『屠竜技:急嵐の型』──【残像】曳くほどの神速の踏み込みから繰り出す、全力の一閃
【両断】とまでは行かずとも、ながーい身体に深々と傷を刻むつもりで行くよぉ!
ごめんねぇ、ペットの蛇くん。あたし達は飼い主に用があるんだっ!

反撃の瓦礫は【ダンス】みたいに軽やかな体捌きで躱したり
得物を盾代わりに弾いたりするねぇ


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携、アドリブ歓迎

死者の間を破壊する……
ああ、何度でも挑もう
偽りの信仰を壊すまで――

敵の様子を偵察、観察しつつ
【飛翔】し空中戦を挑む
仲間とよく連携をとり
敵を射貫き、貫通撃で足止め
仲間の攻撃が当たりやすいようアシスト
二射目で盛大な爆破に巻き込もう

フライトドローンを浮かべて死角を多く作っておこう
仲間達の盾に、傘に、影に、一瞬でも動きを遅らせられればいい

反撃には魔力障壁を展開し防御しつつ
神速反応で構え、眼の直視を避け、エアライドで緊急回避
催眠術には意志の力と、己の手に矢を刺してでも耐える
放っておけ
偽りの信者に何を言われても、従う気になれないんだ

――魂達が、真に救われる日が来ることを祈り
俺は戦う


不知火・紘希
死者の書の間は、ほんとは魂さんたちを正しく導くために存在しなきゃいけないのに。
あまり戦いをみせたくないけど…、思いは込めて向き合うからね、アポピスくん!

目からの催眠術はなるべく避けたいから残留効果をフルに使って回避していくよ。その間は相手を観察して攻撃のタイミングを図る。
仲間とは連携して、狙えるタイミングになったらペイント箱とサンライズブレイザーに集めてある太陽光で光の鳥を描き出そう―
狙うのは敵の弱点。申し訳ないけど、魂さんたちが信じるべきはこのひとじゃない。死者の書に込められたほんとの生きてる人の思いが魂さんを安らかに導いてほしい

いけ……鳥さん!貫くんだ!

もしできるなら魂さんに声を…


 斯くして立て続けに冱撃を喰らった巨蛇が、斑爛と鮮血を躍らせる。
 怯懦に萎む処か嚇怒を募らせたアポピスは、残る眼に心火を燃して云った。
『ッッ……不敬者め! 神域に踏み入った無知を呪って死ぬが良い!』
 財宝を掲げて瓦礫と混ぜ、驟雨と叩き付ける。残る眼を動かし、眩惑の光を放射状に発する。
 死者の魂に支えられた守護者の力が、鞭の如き強靭を以て復讐者に叩き付けられた。

「はっ、何が神域だ! 僞りの信仰を尊ぶ場で誰が嘯く。我等が不敬者なら、貴樣は愚か者よ!」
 嘲[せせら]笑いつつ、漸う呶鳴るナディア・ベズヴィルド(黄昏のグランデヴィナ・g00246)。
 彼女なら轟然と降り注ぐ黄金の雨も嫋やかに舞って躱す事が出來たろうが、烈々と熾ゆる激情に兩脚を踏み込めた佳人は、致命傷を齎すものから旋風をぶつけて相殺し、柔肌を掠めるものはその儘、堂々と蛇邪に對峙する。
「本体でもあるまいに、命を捨てるとは輕々しく言うたものだ」
 懸ける命が違うと、花脣を滑る言はケペシュの如く鋭利い。
 復讐者とて覺悟を決めているとは、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)も行動で示そう。
 咄嗟に踏み出してフライトドローンを喚んだ彼は、降り注ぐ雨に傘を差すと同時、催眠の光を遮って影を作った。
「いかな守護者が置かれようと『死者の書の間』は破壊する」
『私を斃したとて、此處は壊せやしないよ』
「ならば何度でも挑もう。僞りの信仰を覆すまで俺は戰う」
『次は無い!』
 蛇邪が盾代わりのドローン群に礫撃を打擲ければ、罅割れた機体のひとつから黑影が轉び出て、穂村・夏輝(天使喰らいの復讐者・g02109)の煌々と光の帯を引いて疾る金瞳を暴く。
 彼は復讐者を不敬者扱いするアポピスに皮肉を囁いて、
「踏み入ったのは何方だろうね。盗人猛々しいとは正にこの事じゃないか」
 勝手にこの時代のエジプトに侵略し、自分達が支配し易いよう世界を改竄して、其が元々の理であるかの樣に振る舞う。
 エンネアドの遣り口とて見方を變えればそんなものだと、蛇邪が瞋るほど沈着を帯びる天使が、視線を躱して疾る、走る。

 複眼から放たれる催眠術を警戒するは、逆方向を駆ける不知火・紘希(幸福のリアライズペインター・g04512)も同じ。
 少年は瞳に映っては飛ぶように過ぎる壁画に翠眉を寄せ、
「……死者の書は、ほんとは魂さん達を正しく導くために存在しなきゃいけないのに」
 神聖文字に刻まれるのは、死後の脅威を避ける呪文や、復活を助ける祈禱文。つまり生者が死者を想い捧げたもの。
 然し目下の空間は、死者の安寧を願う生者さえ踏み躙っていると頭[かぶり]を振った紘希は、決然として云った。
「あまり戰いをみせたくないけど……、思いは込めて向き合うからね、アポピスくん!」
『アポピスくん……随分と親しげに呼んでくれるじゃないか』
 輕んじられたものだと、ギロリ睨めるや“雨脚”を強める蛇邪。
 礫が橫殴りに降り注ぐ中、一里塚・燐寧(粉骨砕身リビングデッド・g04979)は身丈に迫る鎖鋸大劍テンペスト・レイザーを盾代わりに彈きながら前へ、前へ、金絲雀の聲を届ける。
「ふぅん、アポピス……混沌の大蛇と同じ名前を持つきみは、随分と可愛らしく飼い慣されてるねぇ?」
 走狗の忠誠たるや殊勝。
 神話ではラーの最大の敵とされた巨邪が、甲斐甲斐しいものだと艶笑を零せば、数多の眼が一斉に燐寧に結ばれる。
 宝石を鏤めたような蛇眼は冷やかに光って、
『……どうもお前達は「死者の書の間の守護者」を理解ってない樣だね』
 如何して此處を神域と呼ぶか。何故に守護者を置くのか。
 蓋し蛇邪は諭さず、無知の儘に死ねと再び複眼を動かし、催眠術を高めていく。
 然れば強烈な眩惑が足を縺れさせ、尠くない復讐者が立ち止まった處に礫撃を浴び、冷たい床に血斑を落とした。

(「この殺氣……なるほど予想以上に強化がされている」)
 氣焔が肌膚を灼くようだと、五感を研ぎ澄ますテクトラム・ギベリオ(砂漠の少数民族・g01318)。
 魂を共有する毛玉も武者震いするか、ぶわりと逆立つ白毛を瞥た主は、クッと口角を持ち上げた。
「貴樣に披露するまでもないと言ったが、気が變わった」
「にゃあお」
 刃を交えるに相應しい手合と認め、片手を振り翳し毛玉を飛び立たせる。
 力強い翼が紡ぐ風を艶髪に受け取る彼の隣、十埼・竜(スカイセンサー・g02268)も血に滑る床を雄渾と踏み締めよう。
「……ストレートに“頑張れ”って歌が聽こえる。だからかな、“頑張ろう”って思える」
 ラジオ屋に大した力は無いと、暴雨の中で齒を喰い縛る竜。
 神託より遙かに奮い立つ凱歌を耳にした少年は、凛と持ち上げる長い睫、その間より覗く群靑の麗瞳に光を兆すと、仲間が躍動的に立ち回る戰陣の向こう、熾々と殺氣を滾らせる蛇邪を見据える。
「できることを、しようか!」
 頬に疾る裂傷が、グイと手の甲に拭われた。

  †

 復讐者の英氣は流血では削がれぬ。
 寧ろ昂ぶるか、硬鱗を赫々と染める蛇邪に笑みすら浮かべた復讐者は、死闘の中に冱撃を繋いだ。

「貴樣も守るべきものを守る爲に全力を以て挑むがいい! 我等も正しき歴史を記す爲に全力で挑もうぞ!」
 守護者の使命など知る由も無い。
 畢竟、意地の張り合いだと蛇邪を煽ったナディアは、玉臂を嫋やかに躍らせるや、ざわ、と影をさざめかせた。
「不淨の鎖よ、解ける事なく縛せ。奪いし者が代償を払うまで」
 云うや四方から幾丈に伸び出る鏈索こそ【呪縛の影戯】(アスワド・ゾッラ)。
 繊指が示す先、アポピスを交點にして結ばれた漆黑の鎖が巨躯を絡げ取り、絞り上げたのだ。
『!! 不敬者が私を戒めるか』
「どうした。大きな口を叩いた割に解かれぬとは、随分と見掛け倒しな事だ」
 足掻けば足搔くほど鎖が食い込み、硬鱗から血を滲ませる。
 蛇の蜿蜒たる機動を封じれば連携も取り易いと口角を持ち上げた凄艶は、美し金瞳を目尻に送ると、同じく連携を重視するエトヴァと犀利に言を交した。
「定点に留め置いても、あの目が厄介よね」
「噫、複眼を封じるまで死角を多く作っておきたい處だ」
「砂嵐を起こして視界を遮るわ」
「助かる。俺も皆の攻撃が当たり易いようアシストしよう」
 ナディアが砂と風と喚ぶ中、颯然たる羽音が語尾を掻き消す。
 ドローン群の残機を確認しつつ飛翔したエトヴァは、【Rosenschwur】――特注のクロスボウPaladiesvogel(極樂鳥)を構えるや魔力を籠めた塗料入りの鏃を放ッた!
「推進力の要を射る」
 最初の一射が精緻に尾を貫き、濤と血汐を繁噴かせる。
 次いで放たれた二射は、創痍を中心に撒かれた魔力媒体を燃料に黄金の炎を生み出すと、盛大な爆発を引き起こした!
『ッ、やって呉れるッッ……!!』
 爆炎を花葩と広げるその姿は、宛ら油彩画に咲き亂れる絢爛の薔薇。
 美しくも凄惨な焦熱に悶えた蛇邪は、齒切りしながら言を絞った。
『お前は死者の魂らが支える守護者を、この場で殺すと言うのかい』
 彼等が嘆きに沈むだろうとは、復讐者の弱点を衝く催眠術だが、エトヴァは三射目を己の手に刺す事で突き放す。
『!』
「放っておけ。僞りの信者に何を言われても、從う気になれないんだ」
 心は常に魂達が真に救われる日が來る事を祈っている。
 この手を休める訳には往かぬと、激痛に振り払った麗人は、血濡れた手で四射――! 尾に掲げられるアンクを破壊した。

『どこまでも抗う氣だね……!』
 戛ッと金属が砕ける音を聽いた蛇邪が、復讐者を捉えんと複眼を動かす。
 愈々毒氣が強まる中、繁く動く視線を巧みな機動で擦り抜けていた紘希が、ここに連鎖を継いだ。
「――申し訳ないけど、魂さん達が信じるべきはこのひとじゃない」
 大きな爆発が広間を白ませた瞬間、ペイント箱から絵筆を取り出す。
 顔料は黄金色に燿く太陽の光――己が昂ぶるほど彩度を増す聖劍サンライトブレイザーの光を操って筆を疾らせた少年は、仄昏い床に光の鳥を描き上げた。
「僕は、死者の書に込められたほんとの生きてる人の思いが、魂さん達を安らかに導いてほしいと思うんだ」
 花脣を滑る佳聲がどこまでも優しいのは、死者も生者も大切に思う故に。
 可能なら魂らに聲を届けたいと願った少年の想いは、美しき大鳥の形に結ばれて悠々と舞い上がる。
 その燦爛に佳顔を照らした紘希は、刻下、眞直ぐに巨邪を指差した。
「いけ……鳥さん! 貫くんだ!」
『――!』
「僕の思いを、全力を、ぶつける!」
 複眼を眩ませるは、鞍馬天狗の祕奥【金翅】(ゴールデンオーダー)。
 凄まじい光量を迸發[ほとばし]って翔けた鳥は、鋭い嘴で複眼の一つを潰し、白く浮き立つ視界に鮮烈な赫を躍らせた。
『ァァ嗚呼嗚呼アアッ!!』
 己の武器こそ己の弱点と知らされた蛇邪が激しく悶える。
 長躯を波打たせ、ギシ、と鎖と搖らす彼はまだ激痛と白光に視界を奪われていようか――視線を躱しつつ好機を窺っていた夏輝は、傍らに寄り添うオラトリオ『アンジェローザ』に流眄を注いだ。
「アンジェは目隱しをしているから視線を合わせ難いし、もし合ったとしても催眠術は効かない筈」
 決して敵のものにはならぬだろうとは、(うっかり)彼女を與えられた身に自覺と自負がある。
 此度は瞳を覆った彼女こそ適任と判斷した夏輝は、貰い物の力を使う事に躊躇ったか――否。
 このディヴィジョンに生きる者を救うには、彼女の力を借りるべきだと決意した彼は、凛呼と聲を張った。
「アンジェ、この時代を侵略した不届き者に裁きの光を!」
 雄渾を帯びるテノール・バリトンを聽き届けた天使が、目下、月白の四翼を広げる。
 万彩の薔薇を纏う麗姿に集められるは淨化の力か、玲瓏と煌めきを帯びたアンジェローザは、己と似た白翼を背負う夏輝が示す先、猛り狂う蛇邪に向けて幾丈の光を放った!
「歴史を改竄した罪は贖いようが無い。でも、罪の重さだけは身に受けてもらうよ」
『――!!』
 四翼が羽音を立てるや解き放たれる【ジャッジメントレイ】――紘希が描き出した光の鳥が突撃するに次で、その逆側から燦爛たる光条を放てば、激痛に蜿搏[のたう]った巨躯が『死者の書の間』を大いに搖さぶった。

「あは。不敬者と罵る相手に遣り込められるって悔しいよねぇ」
『私を蔑むのかい……ッ』
 激痛に染むソプラノ。聲の主は燐寧。
 誇り高き者ほど挑発が利くと、煽り方を佳く心得ている佳人は、襲い來る“雨滴”を牙牙牙牙牙ッと鎖鋸に嚙み砕きつつ、或いは舞踏染みた動きで輕妙に躱しつつ、常に佳聲が届く範囲を巧みに移動する。
 その機動は蛇邪も忌々しげに捉えていたろうが、連続して畳み掛けられる光撃に複眼が眩んだ刹那、影を見失った。
(「――ここだっ!」)
 光の波濤が収まる迄の数秒が燐寧の時間。
 火藥が爆ぜるような音を發し、繊躯が跳ね上がるほど力強く踏み込んだ少女は、【屠竜技:急嵐の型】(スレイヤーアーツ・ストームシーカー)――猛々しく轟音を叫ぶ鋸劍を蛇の長躯に沿って疾らせた!
『ギャァァアア嗚呼嗚呼!!』
「うぅん……尻尾が留められているから捌けると思ったけど、結構硬いねぇ……」
 死者の魂に支えられる躯は眞二つには裂けないが、硬鱗から肋骨、そして血肉を回転刃に掻き出された蛇邪が絶叫する。
 尾から頭にかけて電光石火、残像を引いて駆けた燐寧は、その柔らかな頬にベットリ血を張り付かせて邪の視界に入ると、艶麗かつ獰猛に哂って見せた。
「ごめんねぇ、ペットの蛇くん。あたし達は飼い主に用があるんだっ!」
 真に狩るべきは――。
 深紅に染まる花脣が弧を描いた。

 斯くして皆々が死闘を繰り広げる中、その全てを烱瞳に捕捉していた竜はもう気付いたろう。
「その黄金の雨。財宝と瓦礫を上に擲げて、落とす――段階を踏まないといけないようだね」
 一瞬で財宝と瓦礫を混ぜて叩き付ける事は出來ないのだと、僅かな遅滞[ラグ]を見極めた少年が凛然を兆す。
 整然と運行されるタイムラインにも、僅かに割り入る隙があると見切った竜は、蛇邪が反撃に出た瞬間を楔打った。
「二手要るんなら、ぼくの方が早い!」
 既に戰場に流れる波動は掌握済み。50m四方の大広間を己の放送圏[ナワバリ]にしている。
 如何な波もRadio-DINO仕樣にカスタマイズ出來ると咲んだ彼は、【Jack'all】(ジャッカル)――蛇邪を電波網に絡げ取った。
「さあ、あんたの腦波も神経信号もぜーんぶ、ぼくのものだ!」
『何を――』
 暴き、竊み、鹵掠[うば]う。
 不可視不感知の裡にハッキングを成功させた竜は、『死者の書の間』の空間全体をノイズに圧縮變換し、腦へ流し込んだ!
「あんたをぼくと同じ呪いに堕とす。――それ、ブッ壊れるほど蒼蠅いもんなあ!!」
『クッッ、唖唖唖……ッ!!』
 稲妻の如く神経回路を疾けたノイズが腦髄で爆発し、餘りの衝撃に意識を飛ばした蛇邪が複眼をグルグル動かす。
 更に竜は入出力を自在に操り、蛇邪が激痛の中で呼び起こす瞋恚や反撃の思考を「ラジオ」として域内に放送した。
 故に次手は催眠術が來ると判明っていよう。
「最後は任せたよ!」
「――心得た」
「にゃにゃん」
 若き灯台守が瞶る先、「應」と答える二筋の影が翔ける。テクトラムと毛玉だ。
 片や最高速度250km/hの神速に緩急をつけ、片や飜々と舞う如く飛んで邪視を翻弄した主從は、折に刃や爪を疾らせて傷口を広げていたのだが、複眼の視界が狭まってきた頃合に終焉を引き寄せる。
「まだ眼は残っているな? では我がサーヴァントを刮目せよ!」
『ッ生意気な口を……んん? ――うつくしい!!!!』
 刮目して視れば、完全無欠のツヤツヤ。其は黄金を纏い、宝石を飾り、更に死霊の力で硬鱗を輝かせたアポピス以上。
 蛇邪が喫驚したのも一瞬、浜辺で養った英氣を超パワーに變えた毛玉は、絶影の機動で誘惑の眼を置き去りにした。
「ほらどうした、私の毛玉と踊ってくれ」
『くっ……見失っ……』
「あぁ、足が無いから踊れんか?」
『不敬者がさがな口を……ッ!』
 テクトラムが輕口を叩いて注意力を下げれば、いざ視ようにも顎下に身を滑らせた毛玉は捉えられず――。
 畢竟、複眼とて死角があると冷靜に洞察した彼等が上手だったか、編髪の麗人は黒檀の杖の鋩を残る邪眼に結んだ。
「守護者の役目を畢らせて遣ろう」
「なぁご」
 ピカピカの光が一条を結ぶ――流星の如き突撃は【幻赫星穿】。
 神々しい燦然を纏った毛玉は、ほんの一瞬でアポピスの眼部に飛び込み、複眼を潰すと同時に頭部を穿った!
『……ぐッッ、あ嗚呼ッ……!』
「にゃんにゃんご」
 毛玉が一鳴きして逆側へ抜ける中、腦天から夥多しい血を噴いて斃れるアポピス。
 長大な躯が沈んだ反動で、組み敷いた財宝が鏘々と音を響かせて消える樣も虚しかろう。
 影も音も靜まった空間には、しとど返り血を浴びた復讐者だけが勇壮と立っているのだった――。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【狐変身】LV1が発生!
【水源】LV1が発生!
【トラップ生成】LV2が発生!
【一刀両断】LV1が発生!
【フライトドローン】LV1が発生!
【活性治癒】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【ラストリベンジ】がLV2になった!
【ドレイン】がLV5(最大)になった!
【命中アップ】がLV5(最大)になった!

最終結果:成功

完成日2022年08月31日