リプレイ
音羽・華楠
……攻略旅団の提案でパルマ公国を支援することになって、改めて認識しましたけど……。
――ルドヴィカを倒しても、パルマ公国は最終人類史へ奪還出来てないんですね……。
その地域を支配してたジェネラル級を撃破しても、最終人類史へ奪還するにはまだ『何か』足りないということですか……。
今回の支援がその何かを埋める手助けになれば……。
……私たち陰陽師は、星を詠んで物事の吉兆を占うのも仕事です。
折角、こんな綺麗な星空が広がってるんですから、パルマ公国の今後について占ってみましょうか。
……パラドクスではない【魔術知識】のみの占いが、改竄世界史内の先行きをどれだけ見通せるか解りませんけど……。
――まぁ、気休めです。
ミシェル・ロメ
パルマは解放され、人々の悲願は成った
だけど本格的な復興には、まだやるべきことが残っている
それは、僕たちディアボロスがドイツを取り戻した時に分かっていたこと
人々にとっては、これからが「本当の戦い」なんだ
満天の星空を見上げ、想いを馳せる
優しい星明りに見守られていると、どんな暗闇も怖くないと思える
革命の嵐が吹き荒れる中でも、信仰の光と
神父様や孤児院の仲間たちと過ごした思い出があれば
希望を失わず耐えることが出来た
この暖かな灯は、今も僕の胸の内に燃えて
北の天蓋にいっとう輝く北極星のように
往くべき道を示している
生きよ、と
僕が受け取った愛という名の灯を灯すために
僕は、誰かの「導きの星」になれるだろうか
マリアラーラ・シルヴァ
諸々歓迎
星空綺麗だねー
あれはパパの星となりのがママの星
ちょっと離れてるのがマリアの星
マリアもパパママの近くが良いっておねだりしたら
パパママは神様が見守ってくれてる
良い子にしてたら神様が叶えてくれるってゆってたけど…
そんなの嘘
トキサカでパパママが居なくなって
マリアがどんなに良い子になっても頑張ってお祈りしても
神様は何にもしてくれなかったよ
周りのオトナや偉い人も優しくはしてくれるけどそれだけだったよ
だからマリアは現実を見たよ
お願いは自分で叶えるものだって
そしてマリアは夢を見るよ
みんなの分のお願いもマリアが叶えてあげる
パラドクスで流れ星を流すよ
足りないのなら何度だって流すよ
マリアもっともっと頑張るよ
●Astrologia
――淫魔宰相『夜奏のルドヴィカ』は撃破され、パルマ公国はクロノヴェーダの支配から解放されました。
――そうして二度と、クロノヴェーダに脅かされることはなかったのです。
――めでたし、めでたし。
ああ、そんな御伽噺のように幸福な結末を迎えていたなら、どんなに良かっただろう。
攻略旅団で提案された『パルマ公国拠点化計画』が現実化して初めて、音羽・華楠(赫雷の荼枳尼天女・g02883)はパルマ公国が最終人類史へ奪還されていないことを実感した。
「ルドヴィカを斃せば奪還できる、無意識にそう思い込んでいましたが……」
今にして思えばラキ火山の山頂部は比較的容易に奪還が叶ったが、機械化ドイツ帝国は断片の王を撃破しても奪還ならず、ディアボロス・ウォーを経ての奪還となった。状況によって奪還の必要条件が異なるのか、自分達がまだ奪還について正確に把握できていないのかは判らない。
振り仰ぐ夜空は美しかった。
天の涯ては艶やかな艶やかな漆黒の夜闇に沈み、惜しげもなく金砂銀砂を振り撒いたかのごとき満天の星々が煌く夜闇は、南の天頂にかけて漆黒から紺青や瑠璃へと光を透かしていく。
夜闇を光で透かすほどに、星々の河が――数多の星々が煌き流れるような、天の川が輝いているから。
星空を見上げればミシェル・ロメ(とわにひびくうた・g04569)は胸を締めつけられる心地がした。自分は優しい星明りに見守られていればどんな暗闇も怖くないと思えるけれど、パルマ公国の人々も同じ星を見上げ、同じことを思えるだろうか。
状況を正しく認識できていなかったとミシェルも改めて自覚する。胸に抱いた復興という言葉がそもそもそぐわない。
「僕は、人々にとってはこれからが『本当の戦い』なんだって思っていたけれど……戦うべきなのは人々じゃないんだね」
「ええ。パルマ公国が今も断頭革命グランダルメの一部であるのなら、戦うべきなのはこれからも私達ディアボロスです」
微かな苦さを孕んだミシェルの呟きに、華楠は己自身にも言い聞かせる想いでそう応えた。
淫魔宰相『夜奏のルドヴィカ』との決戦と勝利。
それがアルプスの向こうの『何処か』でのミュラ元帥の敗走と時期が重なっていたのが幸いだったのだ。仮に事態が違っていたならミュラ元帥のナポリ王国軍がパルマ公国制圧に動いた可能性もあっただろうし、パルマ公国が今もってなお断頭革命グランダルメの一部である以上、ナポリ王国軍や他の大陸軍が動く可能性が潰えたわけではない。
一般人が抗える相手でないのは明らかだ。
その気になれば、トループス級のクロノヴェーダ一体でパルマ公国の人々すべてを殺し尽くすことさえ可能なのだから。
「僕達の戦いは、まだ終わっていない――」
無意識に零れた言の葉は、これからも茨の道を歩み続ける誓い。
銀のロザリオを握りしめればミシェルはまた戦いの道へ足を踏み出すことができる。元より断頭革命グランダルメの時代に生まれ育った身、革命の嵐が吹き荒れる中でも、揺るがず輝く信仰の光と、捨て子だった自分を拾ってくれた神父様や一緒に育った同じ境遇の仲間達との思い出があればこそ、希望を見失うことなく耐えることができたから。
改めて振り仰ぐのは北天の星空。青玉の瞳でいっとう輝く星を、北極星を見出したなら、迷わない。
今もこの胸で暖かに燃え続ける灯火は、あの北極星のように往くべき道を示している。
生きよ、と。
僕が受け取った愛という名の灯火を燈すために戦いの道を進まねばならないのなら、歩んでいこう。そうしていつか、
――僕は、誰かの『導きの星』になれるだろうか。
凛、と澄んだ鈴の音とともに華楠も改めて星空を仰ぎ見た。
胸に複雑な想いを抱きはすれど、星を仰げば心が澄んでいくのは星詠みたる身には当然のこと。
「……私たち陰陽師は、星を読んで物事の吉凶を占うのも仕事ですから」
満天の星々の世界に心が攫われていく気さえしそうな、圧倒的なまでに美しい星空だ。今夜は星詠みの性(さが)のままにパルマ公国の今後について占ってみようかと、華楠はいっそう心を澄み渡らせて星々と対峙する。
魔術知識に長けた身ではあれど、パラドクスならぬ占いが――否、たとえパラドクスの力を持った占いであろうとも、改竄世界史の裡にある地の先行きをどれだけ見通せるかは判らない。あくまで気休めだと理解しながら星を読み、
導き出した結果は――。
「すべては、私達次第ということですか……」
「うん。その占い当たってるってマリアも思うよ。お願いは自分で叶えるものだって、マリアも気づいたもん」
当然といえば当然すぎるもの。
なれど、些か悲観的に傾いているらしい華楠の胸の裡を察して、マリアラーラ・シルヴァ(コキュバス・g02935)は彼女を励ます心地で無邪気な笑顔を咲かせてみせた。
時空を超える列車を降り立った途端、頭上に広がった遥かなる星空。
思わず息を呑むほどの美しさに青空の瞳を輝かせ、冴え冴えとした青い輝きを燈す星をパパの星、その隣でほんのり優しい薔薇色がかって輝く星をママの星、少し離れた、小さくともきらきら輝く星がマリアラーラ自身の星――と白い指先でひとつひとつ辿ってみた時に、胸に燈ったのは家族みんな一緒だった頃のこと。
マリアもパパママの近くが良い、とおねだりしたときに。
神様が見守ってくれてるから、良い子にしてたら神様が叶えてくれるよ、と二人は言っていたけれど。
――そんなの、嘘。
だって刻逆でパパもママもいなくなってしまったから、マリアラーラは必至に神様にお願いしたのだ。泣きたいのを堪えてずっとずっと良い子にしていたし、お祈りだって毎日欠かさず頑張った。なのに神様は何もしてくれなくて。
だから自分の両足で確り立って、まっすぐに現実を見た。
お願いは、自分で叶えるもの。
「でも、それだけじゃないの。マリアは夢を見るよ。みんなの分のお願いも、マリアが叶えてあげる!」
「わ、あ……! 流れ星が……!!」
夢魔の角を彩る青いリボンをひらりと揺らし、白い翼を羽ばたかせ、夜空へ【飛翔】で舞い上がったマリアラーラが小さな指先でついと夜風を撫でれば、少女のパラドクスが優しい虹色の輝きを秘めた流れ星を星空に生み出した。
可憐なフリルの裾を踊らせ振り返り、足りないのなら何度だって流すよと、ひときわ明るい笑みを咲かせたマリアラーラは星空に次々と星を流してみせる。幾つも、幾つも。
七色の星だって、どんな色の星だって、みんなの願いが叶うと確信できるまで。
「マリア、もっともっと頑張るよ。だから――」
「ええ、ええ。私も頑張ります。立ち止まってはいられませんものね!」
真実、流れ星を招き寄せたわけではなくて、少女のパラドクスが皆が仰ぐ星空に顕現させた流れ星であることは華楠だって理解している。けれど、それでも華楠は。
――それでも、私は。
きっとずっと、この夜に見た流れ星を、忘れない。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【ハウスキーパー】LV1が発生!
【強運の加護】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【グロリアス】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
朔・彗藍
【星明】
満天の星がまるでぜんぶ自分達のために
瞬いてくれてるような心地
手を伸ばしたら掴めちゃいそうですね
千景、もっと近くに行ってみませんか!
そうっと手を引いて、ぱたり羽根を動かして
飛翔も使って夜空へ舞い上がる
不思議ですね、遠くにあるのに
近くで寄り添ってくれるような
遮るものも無い星空散歩
いつもひとりで見上げたそれは
今は千景と一緒だから余計に
星が流れたら燥ぐように駆け出し追いかけて
ね、千景なら何を願いますか?
私……?其れなら簡単です
千景も咲ってくれたならきっと
……私は、大好きな人達が倖せでいて欲しい
ふふ、なんて。範囲が広くて神様に怒られちゃう?
そのときは、私がいつか星になれたら良いなって
思うのです
紫空・千景
【星明】
降り注いでいるのか
手招かれているのか
不思議な心地の星空だな
…ふふ、良いんじゃないか
今くらいふたり占めでも
掴めそうというのなら…
噫、近くへ
引かれた手について之けば
彗が残した効果が私をも誘うだろう
ふわり浮いて星空散歩の始まりだ
今日は掴める星なんだ、屹度
届かないのが美しく佳い事も有るが
彗、あんたと一緒の時は掴めるくらい近くがいいと思うんだ
散歩に想いを、鏤めて
星空の途を之く
流れた星を見遣れば隣の星が燥ぐから
共に駆けよう
空を
今を
私は、そうだな
彗に明日も明後日もずっと咲ってて欲しい
なに、怒られるものか
そんな優しい願いなら歓迎されるさ
星になりたいなんて健気な想いが
今ひとり、私を倖にした――なんてな?
レジーナ・ネイサン
【CANVAS】
よっし寝転がるか!
草原に身を預けて
すごい星空だ
スケールがでかすぎる……
飲み込まれそうで、恐怖すら感じる程に
闇に飲まれた事があるみたいな言い方
綺麗ならいいの?
まーたそういう事言う
記憶が無くとも
経験すると何となく解る
こんな星空も
柔らかな草の感触も
多分、私は初めてなんだな
ギィースは?
何でも屋さんの所には天の川が見たいなんて依頼は来ない?
依頼する人の可愛さって
ソレは大事なの?
あっそう
よし
ギィース、手を
【飛翔】で星空の中へと翔けていく
ははッ当たり前だけど
少し空を飛んだ位じゃ全然、星に届きそうにないね
んー…ギィースは実際取りそうな気がするけど
やめておくわ
本当に星空に飲まれちゃったら困るしさ
ギィース・エレクレ
【CANVAS】
レジーナちゃん!一緒に寝っ転がろ!
草の上って気持ちいいね!
本当に綺麗な星空だね
なるほど飲み込まれる、良い表現!
綺麗の中に飲まれるなら
真っ暗な闇じゃ無いもの
ふふっ、どうだろうねぇ
レジーナちゃんになら飲まれたいなぁ
へぇー、レジーナちゃんは初めてなんだ
嬉しいな、初めてを一緒に出来て
ん?そうだねぇ
天の川が見たいなんて可愛い依頼なら喜んで頑張るだろうけど
依頼する人は可愛くないもん!
当然!モチベーションだよ!
ん?手??
わぁー、一緒に飛んでる
確かに届かないね
レジーナちゃんに依頼されたら俺は頑張って取りに行くよ
俺の心配してくれてるの?嬉しいな
でも飲まれそうになったら引っ張ってくれそう
●Felice
夜空に祝福されている心地がした。
夏夜の風にも瑞々しく香る夏草の原へと二人で解き放たれたなら、振り仰いだ満天の星がまるですべて自分達のためだけに瞬いてくれているかのよう。無窮の闇に鏤められた数多の星々があまりにも綺麗で、降り注いでくるとも手招かれているとも思える不思議な感覚が心に高揚を呼んでくれる。
それは何処か、旅立ち前の心地にも似て。
自分達のためだけに、と感じた朔・彗藍(ベガ・g00192)に、紫空・千景(暁の切り札・g01765)が今くらい二人占めでもいいんじゃないかと笑ってくれるから、手を伸ばしたら掴めちゃいそうですね、と笑みを咲かせた天使はそうっと剣士の手を引いて、
「千景、もっと近くに行ってみませんか!」
「掴めそうというのなら……噫、近くへ」
純白の小さな翼をぱたり羽ばたかせ、二人ふわりと夜空へ舞い上がった。
引いて引かれる互いの手、その手首には紫水晶の夜と朱瑪瑙の朝を繋ぐ金鎖の星々が煌くけれど、今夜は新たな星を。
実のところ一等星の魔女が携えてきた術は【飛翔】とは別の効果を齎す術だったのだけれど、幸いにも今夜は多くの仲間が世界に【飛翔】の効果を燈してくれている。ゆえに何ひとつ憂いなく、星々の海をめざして。
大地から解き放たれて、夜空へ、星空へ。
涼やかな水流を昇る心地で夜風を昇り、夜風の流れのままに空を渡っても、星々の姿がまったく変わらないのは、それだけ星々が遥かなる彼方、この星を遠く離れた宇宙で輝いているから。
けれど、
「不思議ですね、遠くにあるのに、近くで寄り添ってくれるような……」
「届かないのが美しく佳い事も有るが――彗、あんたと一緒の時は掴めるくらい近くがいいと思うんだ」
星々の瞬きがすぐ傍で語りかけてくれるように慕わしくて、夢見るような眼差しで彗藍が星々へ手を伸ばせば、今日の星はきっと掴める星なんだ、と目許を和らげた千景が友の手を届かせるよう己の手を添えて。
星空へ二人の想いをも鏤めるように、指先が一等星の煌きに触れた、と思えた、そのとき。
鮮やかに煌き流れる、星ひとつ。
「千景! 流れ星が!!」
「ああ、行こう。彗」
夜空を翔ける星、それを独りではなく二人で見つけられたことが嬉しくて、はしゃいだ声をあげて流れ星を追いかけ始めた彗藍とともに千景も夜空を翔ける。この星空散歩のひとときも、あの流れ星も、今は自分達だけのもの。
ともに翔ける空、ともに翔ける今。
同じ星を追って翔ければまるで心までひとつに重なり合っていくかのよう。
ね、千景なら何を願いますか? 弾む声音で傍らの一等星にそう訊かれたなら、暁の剣士は迷いなく笑み返し、
「私は、そうだな。彗に明日も明後日もずっと咲ってて欲しい」
「私……? 其れなら簡単に叶います。千景も咲ってくれたなら、きっと」
心にまっすぐ届いた声音に瞬きひとつ、胸に初々しい幸せの花が咲いた心地で彗藍は微笑んで。
――私は、大好きな人達が倖せでいて欲しい。
「ふふ、なんて。範囲が広くて神様に怒られちゃう?」
「なに、怒られるものか。そんな優しい願いなら歓迎されるさ」
真摯な願いに夜風を擽るような笑みでそう付け加えれば、晴れやかな笑みを咲かせた千景が断言してみせた。改めて自然に手を取れば、互いの手首を彩る夜と朝の彩が揺れる。二つを繋ぐ星の金鎖がしゃらり鳴るように、囁き合い、微笑みあう。
――そのときは、私がいつか星になれたら良いなって、思うのです。
――星になりたいなんて健気な想いが、今ひとり、私を倖せにした……なんてな?
満天に鏤められた煌きは想像を遥かに超えていく。
確かに大地から星空を仰ぎ見ているというのに、まるで宇宙の星雲の中へ放り出されたかのよう。然れど、
「レジーナちゃん! 一緒に寝っ転がろ!」
「よっし寝転がるか!」
何時もと変わらずに愉しげな笑顔と声音のギィース・エレクレ(誘惑の道化師・g02447)に誘われるまま、気合いっぱいでレジーナ・ネイサン(灰色キャンバス・g00801)が夏草の草原にぽふんと背を預ければ、ふわり溢れた緑の匂いが夢のような光景に現実感を添えてくれた。
けれど、それでも。
夏草の褥に寝転べば瞳だけでなく全身で星空と相対する心地。漆黒の夜闇は涯てなく思えて、夜闇を澄んだ紺青や瑠璃へと透かすほどに輝く星の河も、遥か彼方へ己を連れ去ってしまうかに思えて。
無窮の星空、その圧倒的なスケールと美しさに、
「呑み込まれそうで怖いくらい……『空恐ろしいほど綺麗だ』って、こういうのを言うんだろうな」
「なるほど呑み込まれる、良い表現! 綺麗の中に飲まれるなら真っ暗な闇じゃ無いもの」
背筋と魂が震えるような心地でレジーナが呟けば、ひときわ愉しげに笑ったギィースがそう紡ぐ。彼の言葉に引っかかりを覚えれば思わず星空から瞳を離して隣を向いて、
「闇に飲まれた事があるみたいな言い方するね。綺麗ならいいの?」
「ふふっ、どうだろうねぇ。レジーナちゃんになら呑まれたいなぁ」
訊けば猫みたいな笑みで御約束とばかりにはぐらかされたけれど、まーたそういう事言う、と彼の鼻をぴんと指で弾けば、先程までの星空に圧倒されるような畏怖が不思議と綺麗に消えていた。
洗い流されたみたいにまっさらになってしまった過去の記憶。
けれど身体が、感覚が、それを伝えてくれるのだろう。こんな星空を仰ぐのも、全身で草の柔らかさを感じるのも、多分、私は初めてなんだな――そんなレジーナの呟きが耳に届けば、彼女の初めての体験を共有できる嬉しさがギィースの指先まで光になって満ちていく心地。
「ギィースは? 何でも屋さんの所には天の川が見たいなんて依頼は来ない?」
「天の川が見たいなんて可愛い依頼なら喜んで頑張るだろうけど、依頼してくる人は可愛くないもん!」
「依頼人の可愛さって、ソレは大事なの?」
「当然! モチベーションだよ!!」
彼女が訊いてくれるからこそ正直に答えて力説すれば、あっそう、と軽く流されてしまったけれど、撓やかな身体の発条を活かして勢いよく身を起こしたレジーナが、
「よし。ギィース、手を」
「ん? 手??」
反射的にギィースが差し出した手を取り魔力の翼で羽ばたくから、わぁ、星空散歩に誘ってくれるの!? と満面の笑みで彼も夢魔の翼で羽ばたいた。【飛翔】で一気に翔け上がる星の空、然れど勿論、満天の星にも南天を割るよう輝く星の河にもまったく近づけた気がしなくて、
「ははッ。当たり前だけど、少し空を飛んだ位じゃ全然星に届きそうにないね」
「確かに届かないね。でもレジーナちゃんに依頼されたら、俺は頑張って取りに行くよ」
それでも屈託なく楽しげな笑みをレジーナが咲かせるから、半ば本気でギィースが言ってみれば、彼女は微かに眼を瞠り、
「ん~……ギィースなら取れそうな気もするけど、やめておくわ。本当に星空に呑まれちゃったら困るしさ」
「俺の心配してくれてるの? 嬉しいな」
僅かな思案を挟んでそう冗談めかしたけれど、確かなことがひとつ。
――もしもギィースが星空に呑まれそうになっても、
――絶対にレジーナが、その手を掴んで引き戻してくれるのだ。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【使い魔使役】LV1が発生!
【光学迷彩】LV1が発生!
【飛翔】がLV2になった!
【現の夢】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!
【ダブル】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!
空木・朱士
【箱家】
いやー、実はキャンプって初めてなんだよなぁ。
すっげーワクワクする!
葵の手際の良さに驚きつつ、見よう見真似で自分でもテントの設営頑張ってみる。
指ライターしなくても俺、喫煙者だから普通にライター持ってんだけどなぁと内心思いつつも、折角のキャンプだし火起こしは珠に任せよう、うん。
夕飯にインスタントの袋ラーメン持ってきたから皆で食べようぜ。
食後は俺も珈琲で一息ついて。
ゴロリと草原に寝転がって星を眺める。
はっきりと見える天の川の美しさに息を呑む。
思えば、ゆっくり星空を眺めるなんて今までした事なかったかも。
自分で星座を作るとか面白い事考えるな。
あ、あれとか紅っぽくね?
で、あっちは梓の髪の花っぽい。
南雲・葵
【箱家】
残留効果の手伝いついでにキャンプできるって一石二鳥じゃん?
ゆっくり星座観察かー… ガキの頃思い出すな
キャンプ地を確保したら姉貴(オラトリオ)に頼んでタンブルウィード的な草を集めて貰う
テント張り慣れてるから珠の手伝おうか?
焚火の着火は紅に任せて大丈夫?
シェラカップ有るから珈琲か紅茶入れようか?
ここぞとばかりに張り切る田舎育ちのアウトドア好き
珠や朱士の手伝いをしたくてウズウズ
ひとしきりキャンプを楽しんでから改めて夜空を見上げ
座っている梓の隣で草の上に寝転がって満天の星空観賞
ガキの頃さ、自分で星座とか作らなかった?
昔姉貴と一緒にいろんな星座作ったなー……
支倉・珠
【箱家】
設営は正直不慣れな都会っ子なので、葵さんに頼りましょう。
パラドクスで着火も風情が無いし、キャンプ道具で楽しんでみようかと。
火がなかなか点かな…朱士さん指先ライターとかになってませんかね?
四苦八苦して点けた火でコーヒーを淹れ、スマホで星空を撮影しながら会話に挟まります。
星座作り?似たような感じの事なら…。
星座が見つからないから、無理矢理、柄杓とかW作って北斗七星とかカシオペア座とか。
ふと星空を眺めている男性二人に視線を動かし、ミニドラの紅さんにスマホを持たせ、梓さん含めた4人で映った写真をこっそり撮影してもらいましょう。
綺麗な星空も貴重ですが友人と一緒に映った写真も大事な思い出、宝物です
●Fiamma
星空を流れる風の匂いが違う。
草原を翔ける風の匂いが違う。
明日には任務へ向かうのだと解ってはいても、初めて訪れる大地の風を感じれば空木・朱士(Lost heart・g03720)の胸は弾むばかり。小旅行気分は勿論のこと、気の置けない仲間とのキャンプを思えば心が躍らぬわけがない。
「実は俺キャンプって初めてなんだよなぁ、すっげーワクワクする!」
「初めてなのか! よし、テント張りの手伝いなら俺に任せてくれ!」
「手伝いというか、私も朱士さんもテント設営の主役は葵さんだとばかり思ってたのですが」
新宿島では毎日がトレーラーハウスでのグランピング生活、なれど星空のもと草原でのキャンプとなれば南雲・葵(お気楽姉弟の弟の方。・g03227)もやはり腕が鳴るというもの。アウトドアの達人に期待する支倉・珠(赤盾・g04907)の眼差し、達人の手際を見倣わせてくれ的な朱士の眼差しを向けられればそれはもう、今こそ腕の見せどころ!
夜にテントを張るのは慣れた者でも中々の苦行だが、他の仲間が持ち込んでくれていた【完全視界】の力を借りれば葵には全く問題なし。あっと言う間に設置場所を確保すれば迷わず広げるインナーテント、ポールを挿し込み朱士と一緒にインナーテントを立ち上げ、さてペグ打ちを、というところで、
「そうだ姉貴、タンブルウィード的なアレ取ってきて!」
「えっ。それってアメリカの荒野とかを風に吹かれて転がる枯草の球みたいなやつですよね?」
「何? 西部劇ごっこでも始まんの? それはちょっとやんちゃすぎね?」
思い出したように声を上げれば、珠と朱士から上がる不思議そうな声。だってアレ、直径1mとかになるやつでしょ?
だが姉貴と呼ばれた葵のオラトリオは迷わず荒野からタンブルウィードを――ではなく、葵の荷物から卵サイズのタンブルウィードっぽい何かが幾つも入ったパッケージを取り出してきた。薄く細く削った木材を枯草の球みたいに丸めてオイルを染ませた着火剤だ。
実際のタンブルウィードはもっと乾燥した地域で夏の終わりから秋冬にかけて発生するものであるし、ただの枯草でも今の季節にこの草原で見つけるのは困難だろう。
「田舎育ちとしちゃ市販品に頼るってのは何だか負けた気分だけど、偶にはいいよな。着火は紅に任せて大丈夫?」
「いや、紅のブレスじゃ一瞬で燃え尽きますって。それに風情がないですし、私がこれで頑張ります」
焚き火台もシートもばっちり調えた葵が振り返れば、ふるふる首を振る紅色のミニドラゴンとファイヤースターターをその手に構えた珠の姿。マグネシウム棒を削って擦って、火花で着火! なんて都会っ子の珠も大いに浪漫を感じる処だけど、
銀色に煌くマグネシウム棒を削って! 擦って!
眩い火花で! 火花で! 火花、で……。
「なかなか着火しません……朱士さん、指先ライターとかになってませんかね……?」
「なってないんだよなぁ、頑張れ珠!」
もしかして動力炉の炎が指から出るの期待されてる? なんて思いつつ、喫煙者ゆえに普通のライターを持っていることは秘密にしたまま少女を応援する朱士(サイボーグ歴もうすぐ一年)。手伝いたくてウズウズしてしまう葵もぐっと堪えて珠の挑戦を見守ったなら、やがて、
一気に珠がストライカーで擦った瞬間、夜闇に眩く鮮やかに迸った火花がちっちゃなタンブルウィードを燃え上がらせた。
「「「着いたー!!」」」
三人揃って歓声を上げれば、オラトリオやミニドラゴンも一緒にハイタッチ!!
澄んだ紫色に一瞬揺らめいて、暖かな赤橙に燃え立つ焔が夜闇を照らし出せば何だかもうクライマックスを迎えた気分にもなるけれど、ここからが本番だ。
珠が四苦八苦している間にテントの設営もばっちり完了、皆で焚き火を囲みつつの夕餉は朱士が持ち込んだ袋ラーメンで、星空のもと焚き火で調理すればびっくりするほどに美味しいそれで空腹を満たしたなら、続いて珠はパーコレーターを使って淹れる珈琲に挑む。
何度も挑んで珠が着火し、葵が巧みに組んだ薪にゆっくり燃える焔は、輝く赤橙の彩も薪の爆ぜる音もひときわ優しくて、葵が用意したシェラカップに珈琲が注がれる音さえも柔らかい。マグカップでもコーヒーカップでもなく、口の広いチタンのシェラカップで飲む珈琲は、焚き火の匂いも夏草の匂いも、夜風の匂いもその薫りに抱きこんでいくようで。
「何だろ、物凄く特別なことしてるってわけじゃないのに、すっげー楽しい。すっげー贅沢な気分だな……」
「だろ? だからやめられないんだよなぁ」
一口味わえば、ほっと零れる至福の吐息。
柔い笑みで朱士が呟いたなら、この上なく嬉しげに笑み崩れた葵がカップを掲げるから、珠も一緒になって掲げ、改めての乾杯を三人で。食後の珈琲を堪能したなら、このあとは皆それぞれ、思いのままに。
満ち足りた心地で草原に寝転がれば、頭上に輝く星の河の美しさに息を呑む。
遥か彼方で輝く無数の星々、その煌きが夜空に光の雲で帯を描くように湧き立つ様は、壮大な奇跡を目の当たりにするかに思えて瞬きも呼吸も忘れてしまう。
天の川どころか星空をゆっくり眺めることも初めてかも、と美しさに圧倒される心地で見入る朱士の様子に葵は眦を緩め、夏草の上にちょこんと座るオラトリオの隣で己も寝転んだ。
星々の煌きを全身で享けるようで、吸い込まれていくようで。
「ガキの頃さ、自分で星座とか作らなかった?」
「星座作り? 似たような感じのことなら……」
昔姉貴と一緒にいろんな星座作ったな、と遠い日々を懐かしむ葵は、そのとき傍らにいた姉がオラトリオの『姉貴』でないことは心の奥底に封印したまま気づくことはなかったけれど、その矛盾を指摘することなく珠が応え、星空に向けたスマホの向きを変えつつ片手で星をなぞってみる。お目当ての星座を見つけられなかった時は勝手に北斗七星の柄杓やカシオペア座のWを自分で作ってみたり。
葵の矛盾に触れはしないのは朱士も同様で、自分で星座を作るとか面白いこと考えるな、と笑って指さすのは、
「あ、あれとか紅っぽくね? で、あっちは梓の髪の花っぽい」
紅色のミニドラゴンに何処か似た色合いに輝く紅い星、実は『姉貴』ではなく『梓』という名があるオラトリオの髪に咲くオンシジウムの花のごとく明るい黄に輝く星。
こうして見ると色々な彩の星があるんですね、と珠は微笑んで、満足のいく星空が撮れたなら、手招きにぴょこりと跳ねて応じたミニドラゴンにスマホを手渡した。皆と己が映った写真をこっそり撮ってもらおう――と思ったけれど、いくら親しい相手でも勝手に撮るのは流石に失礼かと思い直す。
だからきちんとお願いを。
撮らせてくださいね。この夜の何気ないひとときを切り取りたいから、どうぞ、そのままで。
綺麗な星空の写真も貴重だけれど、
友人達と一緒に映った写真も、大事な思い出に――大切な宝物になるはずだから。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【アイテムポケット】LV1が発生!
【強運の加護】がLV2になった!
【トラップ生成】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!
【ガードアップ】がLV2になった!
印歌・良空
夜壱君(g00016)と珈琲を手に星空観賞です
ウチちゃんとした星空初めて見ました
こんなにも星が多くてキラキラしとるもんなんですね
なんや新宿島より星空が近い気がするわぁ
夜壱君が前に仰ってたプラネタリウムもこんな感じなんでしょうか
珈琲の薫りにほっとしながら星が見れるなんて幸せやわぁ
それにNOXさんの珈琲気になってたんで嬉しいです
ふふ、ウチ濃い目の珈琲好きなんで美味しいと思います
ミルク入れたやつも試してみたいんでいただきますね
星座は知りませんけど天の川や流れ星を眺めとるだけで圧倒されてしまいました
本当です?
やったら「また一緒にお出かけできますように」がいいです
夜壱君とも、皆さんとも沢山楽しみたいです
花塚・夜壱
良空(g05874)と一緒に、珈琲片手に星空観賞だ
言われてみれば、俺もゆっくり星を眺める事は無かったかもしれない
新宿島は建物が高いから…見える空が狭いのかもな
ここからの景色は格別だ
体感する暑さや風を加味すれば、プラネタリウムより感動的だと思う
それでも、俺はプラネタリウムも好きだが
Noxのブレンドコーヒーは、良空の口に合うだろうか
かなり個人的な好みに仕上げているから…
苦ければ言ってくれ、ミルクも砂糖もある
俺も、星については詳しくないが…
綺麗な星空を、良空と一緒に見られてよかった
流れ星が流れたら、何か良空の為に願い事をしよう
お出かけか、素敵な願い事だ
皆との楽しい思い出で、良空がいっぱいになるといい
ソレイユ・クラーヴィア
アドリブ歓迎
シャムス(g04075)と
パルマに持込み予定のチーズにパンとソーセージも出して
即席フォンデュを作ります
いつもシャムスにはお世話になっていますから
たまには私からもたっぷり甘やかさなくては
焚き火脇でフォンデュを囲み
のんびり語らいを
フォンデュはアルプス方面の郷土料理ですが
チーズもパンも故国の自慢です
不思議ですね
見慣れた故郷の星空の筈なのに
こんなにも鮮明で美しく見えるなんて
侵略者に奪われた世界も、空だけは変わらなくて
シャムスの故郷も、きっと星空の美しい所でしょうね
と、星空に流れる川のような髪色の友人を見る
名の由来を聞けば驚き
時空を超えて、名の繋がった友と出会えた奇跡に
あたたかい幸せを感じて
シャムス・ライラ
ソレイユ(g06482)と一緒に
星空の元、弟の様なソレイユとたき火を囲んで食事
いつもしっかり者の彼を甘やかしたいと思いつつ
本日も「ちーずふぉんでゅ」を振舞われ、甘やかされているのだった
これは、ソレイユの国の食べ物?
酸味があって美味しい
故国を誇る笑顔が可愛らしくも少し寂し気に映って
(そっと頭を撫でようと)
砂漠を渡る者にとっては星は道標
方角を見失わないよう星見は欠かせない技だ
しかし、純粋に瞬く星の美しさに
無聊を慰められる事もある
故郷にいた頃のソレイユも
星を見てものを想うことがあったのだろうか
空は場所も時代も越えて繋がっていると感じる
「ソレイユ」も私の名も同じ星を差しているのだから
アドリブ等歓迎
●Rilassamento
星空のもとで淹れた珈琲は格別な薫りがした。
炎が違う、風が違う。それだけでひときわ豊かに香る気がして、離れたテントのあたりから知己達の声が聴こえて来る様に微かに眦を緩めながら、花塚・夜壱(月下鬼人・g00016)は柔らかな湯気を夜風にくゆらすカップを手渡して。
「ここからの景色は格別だな、のんびり星空観賞といこうか」
「ありがとうございます、夜壱君。珈琲の薫りにほっとしながら星が見れるなんて幸せやわぁ」
大切に受け取ったカップから昇る薫りに印歌・良空(沙羅双樹の子護唄・g05874)はふわりと笑みを咲かせて、淡い湯気が夜風と遊ぶのを眼差しで追うように、星空を仰ぎ見た。
掬いあげられる心地がした。
大きな風の手に浚われていく心地がした。
遥か遠いはずの星々の世界に一瞬で放り出されたと錯覚するほどに圧倒的な満天の星、座敷牢という名の籠の中からは勿論見たことはなく、新宿島で見る星空とはまた違う。沢山という言葉でも到底足りぬと思えるほど瞬き煌く数多の星々は、宛ら生まれて初めて星空を観たような感覚さえも良空に贈ってくれる。
――これほどの星が、こんなにもキラキラしとるもんなんですね。
「なんや新宿島より星空が近い気がするわぁ」
「新宿島は建物が高いから……見える空が狭いのかもな」
満天の星、無窮の闇、何物にも遮られぬ全天の星空を仰ぎ見れば夜壱もまた、これまでゆっくり星を眺める機会に恵まれることがなかったのだと気づく。
「夜壱君が前に仰ってた、プラネタリウムもこんな感じなんでしょうか」
「体感する暑さや風を加味すれば、プラネタリウムより感動的だと思う」
夏の夜の艶めかしさ、風の心地好さ、夜風に撫ぜられる夏草の細波めいた音、瑞々しい緑の匂い。すべてがこの星の息吹を慕わしく感じさせ、遥かに遠く、なのに夜壱を抱きすくめてくれるような星々の世界との一体感さえ齎してくれるよう。
ああ、だけど。それでも。
星を愛する人々が創り出す闇に包まれれば不思議な浮遊感を覚えるだろう。星を愛する人々が映し出す星空、星のめぐり、この星の反対側で見られる星空までも一瞬で連れて行ってくれる、
――俺は、そんなプラネタリウムも好きだが。
彼が呟く声音の優しさに、良空も新たな夢を見る。いつかきっと、プラネタリウムにも。
笑みのままの唇にカップを寄せて味わう珈琲は、豊かな薫りも風味も良空の指先にまで暖かに染み渡らせてくれるよう。
「うちのブレンドコーヒーは、良空の口に合うだろうか。かなり個人的な好みに仕上げているから……」
「ふふ、ウチ濃い目の珈琲好きなんで美味しいと思います」
夜壱が営む雑貨喫茶の名を冠したNoxブレンドは、フルーティーな酸味ではなく深い奥行きとこくを齎す苦味を楽しむ構成だろうか。ミルクも砂糖もあると言われれば、苦味が柔らかさを咲かせる様も味わってみたくて注いでもらうミルクの流れ。
Via Lattea――。
英語でならミルキーウェイと呼ばれる天の川はイタリア語でもやはりミルク、こうして見上げると納得やわぁ、と柔らかに華やかにまろやかな苦味を咲かせた珈琲を味わいながら良空が仰ぎ見る星の河は、漆黒の夜闇を瑠璃に紺青に、時に美しい青紫に、皓々たる光で霞ませるほどに輝いて。
あまり星に詳しくはなくとも素直な感嘆が夜壱の胸にも満ちるから、この星空を良空と一緒に観られて良かったと、自然な言の葉が穏やかな声音になった。
「流れ星が流れたら、何か良空の為に願い事をしよう」
「本当です? やったら『また一緒にお出かけできますように』がいいです」
夜壱君とも、皆さんとも沢山楽しみたいです。そう続けた良空に幸せそうな笑みが咲く。宛ら天の川からの贈り物のように鮮やかな煌きひとつ、夜空に流れたなら一緒に願いをかけて。
――皆との楽しい思い出で、良空がいっぱいになるといい。
満天の星を仰げば心が澄み渡り、焚き火の焔を見れば心がほどけていくかのよう。
暖かに寛ぐ心に程好い重みを感じるのは、空恐ろしいほどに美しい星空にともすれば魂が呑まれかねないのを、心までも暖かに照らす焚き火とそれを一緒に囲む友の存在が大地へ優しくつなぎとめてくれているからなのだろう。
弟のようにも思う友を、いつもしっかり者の友を甘やかしたいとシャムス・ライラ(極夜・g04075)は思うけれど、
「いつもシャムスにはお世話になっていますから、たまには私からもたっぷり甘やかさなくては。さあどうぞ、召し上がれ」
「先手を取られてしまった……が、ありがたくいただこう。匂いからしてもう美味しそうだ」
気がつけば『いつもしっかり者』ソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)が『ちーずふぉんでゅ』を拵え、嬉しげな笑顔でとろり蕩けるチーズを纏ったパンを差し出してくれるものだから、今日も甘やかされることにする。
今夜の夕餉は明日パルマ市街に持ち込む予定のチーズにパン、そしてソーセージでの即席フォンデュ。
己自身があと五年ほど歳を重ねていたら白ワイン、それでなくてもミルクでチーズを伸ばしたいところだけれど、焚き火で溶かしたチーズをパンやソーセージに纏わせる即席の簡単なフォンデュもソレイユにはなかなか乙なもの。
――乙なものですが……これってもしかして、どちらかと言えばラクレットでは……?
なんて思ったりもするけれど、
「これは、ソレイユの国の食べ物? 熱々のところを頬張ると実に美味しいな」
「ええ。アルプス方面の郷土料理ですが、チーズもパンも故国の自慢です」
どちらでもその通りであるし、兄のような友が心からそう言って顔を綻ばせてくれるから、どちらだって構わない。この夜彼と味わうのが故郷で買い求めた品ではなく、新宿島の残留効果で増やされた輸入食材であっても。
故国はいまだ、歴史侵略者達の手に堕ちたまま。
「大丈夫ですよ。今すぐには無理でも、いずれすべて取り戻すのですから」
「……そうだな、そのとおりだ」
誇らしげに故国の美味を語るソレイユの笑顔が少しだけ寂し気に翳るから、気遣いつつシャムスが彼の金の髪を撫でれば、シャムスも同じでしょう? と奪われた者だけが識る痛みを呑んだ笑みが返る。記憶を失っても、己か現代ではない時空から新宿島に流れ着いたことは、シャムスもまた自覚するところ。
――断頭革命グランダルメ。
その時空に生まれ育ったソレイユにとってはパルマ郊外のこの草原で振り仰ぐ星空も、故国フランスと時空を共有する空。見慣れたはずの星空がこんなにも鮮明に美しく見えるのは、街から離れた場所だからという理由だけではないのだろう。
歴史侵略者に奪われた世界も、空だけは変わらない。
天の彩が移ろう様を映した魔力の翼を休め、双眸で見上げる夜空には、漆黒の夜闇をも玲瓏と輝かせる星の河が煌いて。
「シャムスの故郷も、きっと星空の美しい所でしょうね」
「砂漠を渡る者にとって星は道標だからな。方角を見失わないよう星見は欠かせない技だ」
星の河の輝きを湛えたような銀の髪の友にそう語りかければ、懐かしむような眼差しとともに返る声音。
個人的な思い出などの記憶はなくともそういった記憶はあるのが不思議だった。家族や友人などは思い出せやしないのに、砂漠の旅路の夜に見上げた空の、純粋に瞬く星の美しさに無聊を慰められた感覚は、何故か今もシャムスの胸に鮮やかだ。
あの星の美しさも、己の言葉で友に伝わっただろうか。
「だが、私の無聊を慰めてくれた星空も、ソレイユが見上げていた星空も、空はすべて」
場所も時代も超えて繋がっている、そう感じるのだと眼差しを和らげ、シャムスはこう続けた。
――『ソレイユ』も私の名も、同じ星を指しているのだから。
途端、ソレイユの胸の裡に陽のひかりが射した。
時空を超えて出逢った友、シャムスの名も己と同じく太陽を意味するのだと識れば、暖かな光が胸に満ちる。
刻逆にすべて奪われた先で、出逢えた奇跡。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【活性治癒】LV2が発生!
【飛翔】がLV3になった!
【フライトドローン】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV2が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
【先行率アップ】がLV2になった!
ウェズリー・ソーンレイ
【可惜夜】
火の番をしようと薪を軽く詰み、点そうとして思い留まる
まだ、いいか
皆そのままの星あかりを見たいだろうから
カケラ、パラドクストレインはどうだった
俺もはじめすごく……、大丈夫か、すりむいていない?
こんな風に星に満ちた宵の天蓋を仰ぐのは久しぶりのことだった
ほんとうに。随分、見ていなかったな
……いや。俺が年長なのだから、シッカリしなくては
ココロ、見たかった星はあった?
今ならどんな星でも見つかりそうだ
ルリジョウとガーデニアはどの星がスキだろうか
白鳥……星と星を結ぶ。なるほど
そらに絵を描いているみたいだな
オリヒメとヒコボシは、どれ?
会えていればいい
運河を隔てても、ふたりはそらで繋がっているのだから
天舞・翔樂
【可惜夜】
初めての
ぱらどくすとれいん
凄かった!
乗ってる時、ぱらどくすとれいんと
競走したくてうずうずしちゃったよ~!
ふふん、大丈夫だよこころ!
はしゃいでても
ボクは転んだりしなああああ!!?
(小さな穴に躓いて転ぶ)
ったた…えへへ、へーきへーき!
!わ、綺麗な星たち…!
あの星、十字になってて
鳥が翼を広げてるみたい!
『はくちょう座』って言うんだ…!
いいなぁ。ボクもあの星みたいに
翼を広げて飛べたら良かったのに
…きっと、大切な人だからこそ
どんな星の中からも
見つけられるんだよ!
(──パパやママがどんな大勢の中で迷子になっても必ず、ボクを見つけてくれたみたいに。)
…ん!皆が持ち寄ってくれた
お菓子おいしいっ!
ガーデニア・ラディーチェ
【可惜夜/5人】の皆さんと
意識して空を眺めることは少なかったのだけど
改めて見ると、本当に綺麗ね
翔樂さん、お怪我は無い?大丈夫かしら?
マシュマロもクッキーもポップコーンも、準備はバッチリよ!
さっそく……あら、焚き火はまだ、なのね?
じゃあ、時間になったら呼んでちょうだい?
お菓子の用意なら、お任せあれ、よ!
シンジュクとはまた違った星空が広がっているのね
点を結んだり、星の並びを何かに見立てたり
そうやって、昔の人は星座を作ってきたのかしら
……わたし?
わたし、は……そうね。あの青い星が気になるわ
Wの形に並んだ星の隣にアレよ
織姫と彦星も見えるわね
一年に一度と言わず、毎日逢いたいわ
……わたしだけかしら?
水上・瑠璃青
【可惜夜】
これが別世界の空
広くて明るくてとっても綺麗
つい何度も夜空を見上げてしまうよ
……わ。翔樂さん、大丈夫?
あたしは金平糖を持って来たんだ
翳せば星を摘んだような気分になるよ
焚火の音もきっと心地良いけれど
今はこの景色を、皆で堪能しよっか
ガーデニアさんのお菓子も後ほど戴くね!
流れる天ノ河に浮かぶ白い星々
夏の大三角……だったかな?
あたしはそれを眺めていたの
点同士を繋げば形になるんだって
ウェズリーさんも一緒に繋いでみる?
彦星様と織姫様
ふたりだけ確かなものがあるなら
うふふ、とっても素敵
今年も巡り逢えたかな?
こころさんのお話に耳を傾けて
もう一度星空を見上げよう
星を繋がりにして
皆さんで眺められて良かったね
夜茨・こころ
【可惜夜】
遥か彼方の輝きが際立つ宵の底
素敵な夜に魅力されて足取りも軽く
あ、翔樂、コケやんように――て、あらま
ニアと瑠璃青の持ち寄ってくれた甘味も魅力的
ウェズリーも、火の準備ありがとう
けど、まだ満天の星灯りを堪能したくて
手を止めてくれた優しさに甘えて、宵に溺れて
皆好きな星座も星もそれぞれやなぁ
私は天の川隔てた、織姫と彦星を見てたの
こんだけ星が沢山やと、
互いを見つけるの大変そうやけど、
きっと、見けられるんやろなぁ、って
愛重んじるニア天帝なら
こんな苦労しやんかったかもね
今日あの星たちを見つけたよに
沢山の人の中で皆と出会い、一緒にいる
この時間を、大事にしていけますように
…なんて、秘密裏に星に願い込めて
●Via Lattea
深く澄んだ夜気に夏草の緑が瑞々しく香る。
細波めいた夏草の音を連れた夜風が翔ければ心まで舞い上げられた気がして、夜茨・こころ(La nuit étoilée・g06390)は誘われるよう振り仰いだ星空に一目で魅了された。
星彩輝く光の河。
夜闇を澄んだ青紫に、瑠璃に、紺青に光で透かす星の河から、天涯の漆黒の夜闇まで星々が溢れだしていくかのよう。
何も赤道を超えて地球の反対側へ渡ったわけじゃない。星空そのものは新宿島で仰ぎ見るものと然して変わりはない。唯、星空のもとに広がる大地の姿が違う。街も村も離れた、夏草の草原のただなかで見上げるというだけで、
「こんなにも広く、こんなにも綺麗な星空が観られるんだね……」
初めて訪れる断頭革命グランダルメの大気を胸に満たした水上・瑠璃青(縹の疆界/・g00530)が感嘆の声音を洩らせば、星空から眼が離せないでいるらしい仲間の様子に微かに眦を緩め、ウェズリー・ソーンレイ(餞・g07086)は薪を組んだ中に仕込んだ粗くほぐした麻糸の焚きつけに火を点そうとしていた手をとめた。
――まだ、いいか。
――皆、そのままの星あかりを見たいだろうから。
親しい者だけが気づくような僅かな微笑で、
「カケラ、はじめてのパラドクストレインはどうだった?」
「凄かった! 乗ってる時、ぱらどくすとれいんと競走したくてうずうずしちゃったよ~!」
訊ねてみれば、地を翔ける脚自慢の天舞・翔樂(天翔龍如・g06480)が興奮さめやらぬ風情で夕陽色の瞳を輝かせる。
輝きが奔流のごとく車窓を翔け去っていく光景はもうすっかり翔樂のお気に入り、時空を超える列車から降り立っても鈴の音踊る足取りは弾んだままで、きらりきらりと彗星の尾が煌く翼を弾ませるように足取り軽いこころさえ、
「あ、翔樂、コケやんように――……て、あらま」
「ふふん、大丈夫だよこころ! はしゃいでてもボクは転んだりしなああああ!!??」
危なっかしい気がして一声かければその途端、小さなくぼみに躓いた翔樂が派手に夏草の大地へダイブした。
「……わ。翔樂さん、大丈夫?」
「大丈夫か、すりむいていない?」
「翔樂さん、お怪我は無い? 大丈夫かしら?」
瑠璃の双眸を心配そうに瞬く瑠璃青の声、そっと手を貸してくれるウェズリーの声。そして気遣わしげに覗き込んでくれるガーデニア・ラディーチェ(クチナシの花護り・g03839)の茜と夜空の双眸と眼差しが重なれば、へーきへーき、と屈託ない笑み咲かせ、元気いっぱいに身を起こした翔樂はその拍子に瞳に映った星々に素直な歓声も咲かせた。
「!! わ、綺麗な星達……!! あの星、十字になってて鳥が翼を広げてるみたい!!」
「ふふ、白鳥座やね。白鳥だけやないんよ、あっちには鷲座もおるんやから」
優雅な白鳥と勇壮な鷲が抱く一等星、デネブとアルタイル――織姫と彦星を仰ぎ見ていたこころが、夕焼けと朝焼けを映す飴玉めいた双眸を細めてひとつひとつ指さしてみれば、彼女の瞳と同じくらい甘く煌く金平糖を摘まんで、まるで夜空の星を摘まむように翳した瑠璃青が、デネブ、アルタイル、そして琴座のベガを甘い星で辿って。
「これが夏の大三角……だったかな? ウェズリーさんも一緒に繋いでみる?」
「……星と星を結ぶ、繋ぐ。なるほど、そらに絵を描いているみたいだな」
星遊びに誘うような笑みを覗かせた瑠璃青から掌に甘い星の煌きひとつ受け取って、ウェズリーも金平糖を夜空へと翳して数多煌く星々を辿ってみる。己へ降り注ぐようにも、己が吸い込まれるようにも思える、満天の星。
こんな風に星に満ちた夜の天蓋を仰ぐのは久方ぶりのこと。
ほんとうに。随分、見ていなかったな――と心が遠い過去へ馳せかけたなら、ふと耳に届いたのはガーデニアの声音。
星空観賞を意識して夜空を眺めた記憶はあまりなく、けれど、だからこそ、改めて識る美しさを素直に受けとめて。
「点を結んだり、星の並びを何かに見立てたり……そうやって、昔の人は星座を作ってきたのかしら」
「そうなんだろうな。きっと、ずっと。ガーデニアはどの星がスキだろうか?」
こちらも瑠璃青がそっと掌に乗せてくれた金平糖をガーデニアも翳して、茜と夜空の眼差しをゆるり天球にめぐらせれば、何気ない言葉に応えてくれたウェズリーにそう訊ねられたから、
「……わたし? わたし、は……そうね。あの青い星が気になるわ」
あのWに並んだ星の隣、と金平糖と一緒に摘まんでみせるように示す星は、微かに黄色がかって輝く北極星ではなく――。
「皆、好きな星座も星もそれぞれやなぁ」
「ボクはあの白鳥座が一番好きになったよ! いいなぁ。ボクもあの星みたいに、翼を広げて飛べたら良かったのに……」
夜空にも星、掌にも星。瑠璃青からの金平糖を分け合いながらこころが笑みを零せば、金平糖を白鳥座へと翳した翔樂が、焦がれるような声音とともに花の呪符咲く純白の竜翼を震わせる。
――大丈夫、飛んでいけるよ。
そう言う者はいなかった。
この夜には他の仲間達が幾つも【飛翔】を燈し、積み重ねてくれているから、ディアボロスであるならたとえ翼がいかなる状態であろうとも、翼そのものを持たずとも、呼吸するように自然にこの星空へ飛翔していけるのだけれども。
翔樂の望む飛翔は、それとはきっと違うものなのだろうから。
誰もがきっと胸に癒えない傷を抱いている。癒えない傷を抱いたまま、数多の時空を超えて戦う道を歩み続けている。
だからこそ、数えきれないほどに交錯する運命の軌跡のなか、こうして皆と出逢えた奇跡がここにあるから。
星彩輝く光の河。
天頂へと湧き立って、輝きの裡から数多の星々を溢れさせるかのごとき天の川を挟んで輝く織姫と彦星を、改めてこころは見つけだす。あの星々の物語に馴染みのない仲間のため、二人の年に一度の逢瀬を語って。
「こんだけ星が沢山やと、互いを見つけるの大変そうやけど、きっと、見けられるんやろなぁ、って」
「ふたりが確かに想いあっているからこそ見つけられるなら、うふふ、とっても素敵。今年も巡り逢えたかな?」
愛おしむような声音で語られるこころの言の葉、それに耳を傾けながら再び瑠璃青も星空を仰いで柔く笑み、
「逢えていればいい。星の河を隔てても、ふたりはそらで繋がっているのだから」
「大丈夫、逢えたに決まってる! きっと大切な人だからこそ、どんな星の中からも見つけられるんだよ!」
夏の大三角と一緒に教えられた織姫と彦星を己が眼差しで見定めたウェズリーがそう語れば、迷わず翔樂が声を弾ませる。
――パパやママが、どんな大勢の中で迷子になっても必ずボクを見つけてくれたみたいに。
逢えるのなら。逢えて想いを確かめ合えるなら。逢えないよりもずっといい。
然れど、
「一年に一度と言わず、毎日逢いたいわ。……わたしだけかしら?」
「織姫と彦星も同じやと思うんよ。天帝が二人の愛を解ってあげられるニアやったら、こんな苦労しやんかったかもね」
永遠の薔薇が輝く左手薬指にそっと右手を重ね、茜と夜空の瞳に織姫と彦星を映してガーデニアが想いを言の葉にすれば、心からのものと解るそれを優しく掬ってこころが微笑んで。
星を繋がりにして、皆さんで眺められて良かったね――と柔らかな笑みのまま瑠璃青が紡げば、ふと恋しくなってくるのが暖かに燃える焚き火で薪が爆ぜる音、そして、皆で語らいながら摘まむ数々のお菓子達。
「そろそろお茶の時間にするなら、火を焚いておこう」
「ん! 皆が持ち寄ってくれたお菓子、絶対に美味しいに決まってるんだよ! 楽しみ!!」
年長者らしくしっかりせねばと己を律するウェズリーが薪のもとへと戻るべく踵を返せば、真っ先に翔樂が追いかけて。鮮やかな朱金に輝く小さな炎を見れば、純白の裾と赤き薔薇を翻したガーデニアも焚き火の傍に駆けつけて、
「お菓子の用意ならお任せあれ、よ!」
「わ、ガーデニアさんのお菓子とってもいっぱい……!!」
期待に胸を弾ませる瑠璃青の眼の前で広げられた彼女のとっておきは、マシュマロにクッキーにポップコーン!!
暖かな赤橙の炎を燃え上がらせ、あたりを愛おしく照らし出す焚き火を囲んだ皆が、早く早くとこころを呼ぶ。
――今日あの星たちを見つけたよに、
――沢山の人の中で皆と出会い、一緒にいる。
この時間を、大事にしていけますように。秘めやかに星へそう願いをかけて、こころも駆け出した。
皆がいる、暖かなひかりのなかへ。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【熱波の支配者】LV1が発生!
【ハウスキーパー】がLV2になった!
【過去視の道案内】LV1が発生!
【冷気の支配者】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV3になった!
【ダメージアップ】がLV3になった!
【先行率アップ】がLV3になった!
ルクス・アクアボトル
陸(g01002)と
焚き火を囲んで腰を下ろし、夜空を見上げ
「……綺麗ね?」
と、くすり、笑って。
「――ふふ、ありがとう。言わせてしまった?」
発明品、なんていうと大袈裟だけど。愛用の、温度を保つ『魔法瓶』から、冷たい、果汁入りのレモネードを一口
飲む? なんて、差し出してみたりして
「ねえ」
「貴方は、どんな星空が好き?」
いざ星の下で聞くことでもないけれど
今はディヴィジョンの景色にただ浸るより、取り返したい海原の星空を思い返すより。そういう気分だったから
目を細めて、静かに、ただ静かに聞いて
最後の言葉には、少しだけ驚いて――でもやっぱり、静かに微笑んで
……たまにはオカの景色も悪くないわね、なんて、頭の中で
竜城・陸
◆ルクス(g00274)と
焚火の爆ぜる音を耳に、夜空を見上げる
「君の方が――と言うべき?」
小さく笑って返すけれど
どうしたって、彼女を意識してしまってるから
差し出されたそれを受け取る時は、動揺が表に出てしまう
「これといえるほど空を知らないけど――」
「昔憧れていたのは、世界の涯ての空」
海が流れ落ちて、大地が途切れた涯てに星が巡る空が見えて
それはとても綺麗だろうなって
天動説の罷り通る地に生まれて
本当の世界を見ることがなかった幼い俺は
世界に涯てがあると信じて、そう思ってた
「今は――そうだな」
一口、口を付けた器を置いて、彼女の手を取って
「多くの空は、まだ知らないけど」
「君とこうして見る星空は、好きだよ」
ノスリ・アスターゼイン
堅パンを炙ってチーズと蜂蜜を、とろり
燻製ハムをナイフで薄く削いで
乗せるのも絶品
噛む度に沁み渡る滋味
赤ワインも添えたら更に気分上々
寝転んでの星空鑑賞は
少し場を離れて
皆の声が遠い漣のように聞こえる所で
満天の宙は光の粒を蒔いたようで
星座を見つけ出すのは困難だ
星の瞬きも
耳に届く話し声も
優しく柔らかな音楽のよう
背を預ける草も毛布みたいだな
このまま眠ってしまいそうだと
緩やかに天へ手を伸べたところで
ひとつ、流れ星
やはり寝落ちるのは勿体無い
飛翔し
やんちゃな迷い星を掴まえに行こうか
星採り網は広げた両手に羽搏く翼
いやいや
星を追って一緒に翔けッこも面白い
あちらこちらで奔るひかりを見掛けて
右往左往するのもきっと楽しげ
永辿・ヤコウ
小麦粉と水、塩、油を練り込み
キャンプ用の鉄板、フライパン、或いは平たい石の上で
サクッと香ばしいクラッカーを焼き上げられるかな
一見は肴のようでも
チーズやドライフルーツ、ナッツ等を乗せれば
ボリュームも出て食事になりますね
とは言え
今宵は星空を眺めながら
お酒も味わいたいな
皆と語らい過ごす時間も
星の煌きに心誘われるまま
ふらりと草原を逍遥する時間も
穏やかで心安らぐ
星の天蓋を見上げたまま歩いて
こてんと躓き転んでしまっても
草の寝台はきっと優しくて
ふかふかに違いなく
秘めやかにあげた笑い声もまた
瞬く星みたいに擽ったい
狐になって存分に広野を駆けるのも楽しそうだけれど
翼無き身でも飛べるのだから
空を翔け回るのも悪くない
●Firmamento
暖かな赤橙から眩い金を輝かせ、焚き火の炎が夜闇に踊る。
穏やかな夜の静寂を彩るのは焚き火の薪が爆ぜる音。新宿島で日々をすごす間に遠くなっていた感覚が甦ってくる。そう、炎は天に昇る風を生むのだよね――と、黎明の眼差しを緩め、竜城・陸(蒼海番長・g01002)は熱く輝く吹雪みたいな火花が柔い煙とともに舞い上げられる様を追うように夜空を振り仰いだ。
美しかった。魂に沁み入るほどに。
遥か彼方に輝く無数の宝石、どれほどの大海賊であろうと決して手の届かない煌きであることを、帆柱越しの星空を眺めて育ったルクス・アクアボトル(片翼の白鯨・g00274)は肌身で理解している。たとえ夜間の航行中であろうと、どれほど船が進もうと、星が船につれて動くことはない。
それほどの彼方で輝く星々が、この草原から仰ぐ空にも満天に煌いて。
「……綺麗ね?」
「君の方が――と言うべき?」
ふわり、夜風より柔らかに星空から今夜の連れへ眼差しを移せば、焚き火の炎を映していっそう煌く藍と紅の宝玉。彼女の眼差しを受けとめ、小さく笑ってそう返せたのは我ながら上出来だった、と陸は密かに胸裡で己を称賛した。
こんな夜には後輩の瞳は殊更神秘的に煌いて、艶めくキャラメル色の肌は甘さを増す。夜風だけならばきっとそれほどでもなかっただろうに、焚き火から生まれる風が月光めいた銀の髪を踊らせるたび、涼やかに鈴蘭が香り――。
「ふふ、ありがとう。言わせてしまった?」
爆ぜて舞う火花を擽るように笑み、己が発明品たる『魔法瓶』からルクスが杯に注ぐのは、その清涼が夏の夜にはとびきり魅惑的に香る、瑞々しい果汁たっぷりの冷たいレモネード。
飲む? なんて、悪戯な笑みとともに差し出せば。
ああ、今夜もやっぱり、彼女はずるい。
そう思ってしまうのは己がルクスを意識しているからこそだと、陸が改めて自覚したなら、杯を受け取る際に微かに触れた指からも動揺が伝わってしまいそう。
けれどルクスは気づいているのかいないのか、
「ねえ」
「貴方は、どんな星空が好き?」
夢魔らしい蠱惑に、絵本の読み聞かせをねだる小さな少女のごとき無邪気さを覗かせて、柔く小さな間を挟んで彼に訊く。前者は単なる種族的な性(さが)で、後者は無自覚。だって駆け引きのつもりじゃない。
いざ星のもとで訊くことでもないかしら、と口にしてから思ったりもしたけれど。
今はこのディヴィジョンの景色に浸るより、取り戻したい海原の星空を思い返すより、唯、訊いてみたい気分だったから。
絵本の読み聞かせをねだる小さな少女、ルクスがそんな風情だったからだろうか。
「これといえるほど空を知らないけど――」
「昔憧れていたのは、世界の涯ての空」
微笑を挟んで己が続けた言の葉で、ふと陸の胸に浮かんだのは、天動説を表した絵図。
自身がその絵図を見て育ったわけではないけれど、天動説の罷り通る地に生まれて、屋外の焚き火でなく屋内の炉の炎しか識らず、本当の世界を見ることがなかった幼い頃の陸は、
世界に涯てがあると信じて、そう思っていた。
箱庭めいた平らな世界。蒼海の涯てで海は滝となって流れ落ち、大地が途切れた涯てには星がめぐる空が見えて。それは雄大で美しく、とても綺麗な光景なのだろうと憧れを募らせていた。
だがそれも、自分の眼で世界を見るまでのこと。
「今は――そうだな」
檸檬がひんやり香るレモネードをひとくち味わえば、まるで夢物語のごとき存在だった世界が、確かに現実の存在なのだと肌身で識ったあのときみたいな、魂がめざめるような心地がした。
傍らにそっと杯を置けば、陸が取るのはルクスの手。
「多くの空は、まだ知らないけど」
「君とこうして見る星空は、好きだよ」
彼が語る幼い日々の憧れに、藍と紅の双眸を細め、静かに、ただ静かに聴き入っていたルクスは、淡い一呼吸を挟んだ陸の言の葉に軽く眼を瞠る。己を映す彼の眼差し、傍らの焚き火の輝きも映り込んだなら、朝焼けの空がふと胸に浮かぶ。
花唇に言の葉を昇らせることなく、柔らかに咲く微笑みを返して。言の葉は胸の裡だけに落とした。
――たまにはオカの景色も、悪くないわね。
時には贅を凝らした豪奢な晩餐も思うさま堪能するけれど、
己の生命そのものを呼び覚ますような簡素な夕餉をも心から楽しめるのなら、それは生きる楽しみそのものを広げること。
余計なものは加えない。
ただ、小麦粉と水に塩と油を練り込んで、焚き火にかけた一人用のグリルプレート――だけでは足りない気がして、平らな石も焼いてそれらの上に薄く伸ばして切り分けた生地を永辿・ヤコウ(繕い屋・g04118)が乗せたなら、
面白いことやってるね、と、ふと耳に届いたのはノスリ・アスターゼイン(共喰い・g01118)の声音。
何とはなしに予感がして、焚き火の傍らから微笑んでヤコウが見上げれば、
「今宵は星空を眺めながら、お酒も味わいたいな……なんて気分になっていたところなのですが」
「赤ワインも添えたらきっと気分上々――って気にもなるよね、こんな星空のもとじゃさ」
悪戯な笑みを覗かせたノスリが軽くワインボトルを掲げて見せた。
星空のもとで乾杯できる相手がいるのも、悪くない。
鋳鉄のプレートで、灰銀色の石の上で、薄い生地は香ばしいクラッカーに焼き上がる。
宝石めいて煌くドライフルーツ、柔いクリーム色を覗かせるチーズに、滋味も風味も豊かなナッツ。食めばサクッと砕ける焼きたてクラッカーに味わいも食感も様々なそれらをたっぷり乗せれば十分な食事に、と思ったけれど、
「ああやっぱり。実際に食べたら、これを肴にお酒を、って心地になる気がしてたんですよね」
「夕餉と肴を切り分ける必要はないんじゃない? 美味しく楽しめればそれで良し、ってね!」
噛みしめるたびに生命そのものを賦活してくれるようなヤコウの夕餉は、ノスリがお裾分けしてくれた赤ワインでいっそう豊かな味わいを花開かせる。彼の焚き火を借りて堅パンを炙れば、ノスリは蜂蜜とチーズをとろりと落とし、
星の輝きも炎の輝きも煌き透かす、水晶の刃で燻製ハムを薄く削ぐ。
薔薇色ばはらり乗せられるのは勿論、蜂蜜とチーズで彩られた堅パンの上。こちらも噛むたび滋味が沁み渡る夕餉、味わい深まるほどに魂から余分なものが削ぎ落とされ、生命が力強さを増す心地。そこへ赤ワインを傾ければ――それはもう!!
決して豪華でなく、けれど極上のひとときを暫し分かち合えば、
自然に笑みを交わして、ひらり手を振り合って、それぞれの星の旅路を往く。
夜風にさざめく夏草の匂いに誘われるのは、狐としての性(さが)だろうか。
夜空にまたたく星々の煌きに誘われるのは、人としての性(さが)だろうか。
大きく豊かな黒狐の尾を夜風に遊ばせ、心誘われるままに草原を逍遥するヤコウが、宵紫の双眸に映しだすのは星の天蓋。胸は穏やかな安らぎと幸福感に満ちていて、そこへ満天に鏤められた星々の煌きも、と思ったところで不意に世界がくるりと回転、何かに躓いてこてんと転べば、夏草の褥がふかっと優しくヤコウを抱きとめてくれる。
そのまま足元を見遣れば、どうやら己の靴先が出逢った相手は先程プレート代わりにした石の同族だった模様。
秘めやかにあげた笑い声も星の瞬きみたいに擽ったくて、湧きあがる楽しさのまま仰向けになれば、数多の煌きで胸の裡をいっぱいにするほどの満天の星と全身で相対する心地になれた。
――狐に変身して存分に広野を駆けるのも楽しそうだけれど、
――翼無き身でも飛べるのだから、星空を翔け回るのも、悪くない。
夏草が夜風にそよげば近く、仲間達の声音が遠く、漣めいて聴こえる様が心地好い。
皆が其々に囲む焚き火のあかりも大地の星のように思いながら、草原に寝転んだノスリが蜜色の双眸だけでなく全身で望む宙は、満天に光の粒を蒔いたよう。天に湧き立つ光の帯、皓々と輝く星の河が絶えることなく光の粒を溢れさせているかにも思えて、星座を見つけ出すのも難しそうだと思うことさえも楽しくて。
星々の瞬きも、
漣めいて聴こえる話し声も、優しく柔らかな音楽のよう。
夏草の褥も預けた背を心地好く受けとめてくれるから、自然に双眸を細めれば、満天に蒔かれた星がノスリの視界で極細の光条を芽吹かせる。
――このまま眠ってしまいそうだ。
柔い吐息で笑って、緩やかに天へ手を伸べれば、その指先を掠めるように流れる、星ひとつ。
途端に意識が鮮やかに冴え渡り、跳ね起きる勢いで身を起こせば夜風に広がるのは、翳る黄金、光も影も孕んだ魔力の翼。黄昏に星を鏤めたような翼で【飛翔】して、夜空の流れ星に逢いにいく。
瞬く間に翔けあがる夜風の頂、星々の世界へ跳び込む心地で、広げた両手と羽ばたく翼を星採り網に、きらり、きらり、と涯てなき宙を翔ける星に誘われるまま空に遊んで。
――やんちゃな迷い星を掴まえに行こうか。
――いやいや、星を追って一緒に翔けッこも面白い。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【修復加速】LV1が発生!
【ハウスキーパー】がLV3になった!
【飛翔】がLV5になった!
効果2【能力値アップ】がLV5になった!
【グロリアス】がLV3になった!
シル・ウィンディア
星の煌きは、とっても綺麗で素敵。
そんな星の下で、わたしは…
アンゼリカさん(g02672)と一緒に過ごすよ
せっかく、こんなきれいな星空なんだから、地上から眺めるだけってもったいないよね。
飛翔の効果を使って、夜空に少しでも近づくように飛び上がるよ
もっと高く、もっと遠くへ…
手が届きそうって思うけど、やっぱりまだまだ高いところじゃないと届かないよね。
真っ白な記憶のわたし
新宿島で過ごした日々…。
過去の記憶がなくても、出会えたみんなのおかげで、わたしは歩いていけているんだ。
それは、アンゼリカさんもいるからだね。
どんな戦場でも、頼りになる相棒さんだから
…だから、立ち止まれない
歩き続けるよ、わたしはどこまでも
アンゼリカ・レンブラント
シル(g01415)と2人で
星よ、星よ
美しけれど掴むことは叶わない
でも照らしてくれるだけでいい
運命を拓くのはいつだって自分だから
相棒の飛翔の効果を受け、そして時にエアライドで跳ね
軽やかに夜空を駆ける
同い年で、過去のない境遇も同じ
笑顔がとっても元気な相棒
シルと多くの戦場を共に出来たのは幸せだ
新宿島で、冒険の中で
出会えたみんなは私の心の支え
シルもそうだよね
満点の夜空の星の煌きは、まるで出会った人々みたい
きらきらと、其々の輝きはみんな離れているけど
みんな綺麗なんだ
そっと上空でシルの手を取り
先日誕生日の彼女へ贈り物の香水をお渡し
夢幻遊戯の一夜など、彼女との冒険の日々は本当に素敵
これからも宜しくだよっ!
咲樂・神樂
⚰️樂祇
祇伐、星空サイクリングしましょ!
大丈夫よ
あたしの桜蘭号は空も飛べるの!
行くわよ!
妹が優しく飛翔を発動させてくれたのを感じる
ゆっくり落とさないよう空へペダルを漕ぎ出すわ
一つ一つ離れた星がこんなにも賑やかに見える
過去もまた今に導をくれるのかな
祇伐
あなたの忘却はあなたを守るためのもの
真実は優しいものとは限らない
取り戻した心はきっとあなたを傷つける
それでも…星に願うの?
『私』の記憶を
取り戻したいと…神様に逆らっても…
星空が煌めいてみえるな
嬉しくて
え?私に?
しっかり叶えるよ
どんな時もそばに居るから大丈夫
私の願いは叶ってる
今も祇伐が咲ってるから
星のように私達の煌めきも…遠い未来にだって
届けなきゃね
咲樂・祇伐
🌸樂祇
綺麗な星空ですね
お兄様!
星空のお散歩?て、桜蘭号で?
得意げに笑う兄の姿に心が解ける
いつものように後ろにのり背に腕をまわしてしっかり掴まり
密やかに発動させるのは飛翔
空飛ぶ自転車にのって星空を走るの
お兄様
星の瞬きは永遠で一瞬
遥か過去の光を観ている
お兄様
私は欠けた記憶を取り戻したいの
大切な何かを忘れたままでいるのはつらい
忘却の底に取り残した誰かを迎えにいかなきゃ
…私が忘れているのはきっと『あなた』のこと
落としてしまったのはきっと神様にも赦されない心
星に?違うわ
私が冀うのは星ではなくあなたに
お兄様の願いも私が叶えたい
怖くない
そばにいてくれるでしょ?
星に誓いを
あなたに願いを
星の瞬きは一瞬で、永遠
●Memoria
――祇伐、星空サイクリングしましょ!
――大丈夫よ、あたしの桜蘭号は空も飛べるの!!
綺麗な星空ですね、お兄様! と夏草を渡る夜風に紫烏の髪を遊ばす咲樂・祇伐(花祇ノ櫻禍・g00791)が笑みを咲かせて振り返れば、今日も今日とて愛用の自転車に意気揚々と跨った咲樂・神樂(離一匁・g03059)得意げな笑顔で妹を招く。
「星空のお散歩? て、桜蘭号で?」
「ええ勿論、さあ、行くわよ!」
自信たっぷりな神樂の笑みは星空サイクリングが愛する妹に楽しいひとときを贈るものだと確信しているからこそ。そんな兄の気持ちが嬉しくて、祇伐の心はふうわりほどけていくかのよう。いつものとおりに乗る桜蘭号の後ろ、背から腕を回して確り彼に掴まって、この夜に他の仲間達が燈した【飛翔】をまたひとつ祇伐が重ねれば、
星空に桜花が舞い上がる様が心に映るような妹の力を感じて、ゆうるりと、けれども確かな踏み込みで神樂がペダルを漕ぎ出したなら、夏草の草原から夜風の坂道を辿るみたいに、桜蘭号が星空めざして翔けあがった。
何ひとつ不思議なことはない。
神樂の桜蘭号は発明品、すなわち武器で、武器を装備したまま夜空へ【飛翔】することなんて、ディアボロスなら誰だって当たり前のこと。祇伐も桜蘭号の後ろに乗せてもらった状態のまま、自身の意志で【飛翔】しているのだけれど。
満天の星が輝く夜空を、二人を乗せた桜蘭号が翔ける様は、
幻想的な物語の世界に跳び込んでいったかのよう。
勿論、空を飛ぶ力を揮っているのは神樂と祇伐自身、然れども彼が巧みに桜蘭号を操るから、まるで空飛ぶ自転車で星空を翔けていく心地がする。満天に鏤められた星々は、この星からは無論、そのひとつひとつも遥かな距離を隔てているもの。
なのに今翔ける星空はこんなにも星々の煌きが賑やかだ。
遥かなる星々が光の帯となって湧き立つ星の河、漆黒のはずの夜闇を澄んだ青紫に光で霞ませるほどに溢れくると見える、数多の星々。
「星の瞬きは永遠で一瞬。私達は遥か過去の光を観ているのですよね、お兄様」
「……ええ。過去もまた今に導きをくれるのかな」
星彩の河を渡る心地でそう語れば、返る兄の声音がほんの少しだけ遠くなった気がして、祇伐は彼の肩にそっと自身の頬を押しつけるよう、背から回した腕に力をこめる。
「お兄様、私は欠けた記憶を取り戻したいの」
肩から、直接心へ響かせるような声音に。
一瞬、神樂の背が強張った気がした。
「――祇伐。あなたの忘却は、あなたを守るためのもの」
真実は優しいものとは限らない、取り戻した心はきっとあなたを傷つける、と彼は言うけれど。大切な何かを忘れたままでいるのはつらいから、忘却の底に取り残した誰かを迎えにいかなきゃ、と魂の芯で祇伐自身が叫ぶから。
――私が忘れているのは、きっと『あなた』のこと。
――落としてしまったのは、きっと神様にも赦されない心。
迷い子みたいに不安気で、なのに迷いなく紡がれた彼女の声音が、耳に、魂に届けば、
不意に神樂の視界で星空が煌きを増した。
星々のひとつひとつが極細の光条を芽吹かせるよう。魂の芯から熱く溢れだしてくる何かはこの夜も眦から溢れだすことはなく、然れど熱い何かを流すよう眦は歪むから、桜蘭号に二人乗りしていていてよかったと心から思う。ただ、ひたすらに、どうしようもなく嬉しくて。このまま祇伐と向き合えば、自分がどうなってしまうのか神樂にも判らない。
真実が、針となって心を刺しても。
取り戻した心が、祇伐自身を傷つけることになっても。
「それでも……星に願うの? 『私』の記憶を取り戻したいと……」
神様に逆らっても、と神樂が告げる。神様に逆らっても構わない、と口にしていいものか祇伐には判らなかったけれど。
唯ひとつ、確かなことは。
「星に? 違うわ。私が冀うのは星ではなく、あなたに」
「え? 私に? それなら確り叶えるよ」
明るく気丈な声音を祇伐が咲かせる。そのかんばせにも笑みが咲いたと肩から伝わったから、神樂も迷いを振り切るように笑ってそう言いきった。
「お兄様の願いも私が叶えたい。怖くないもの、そばにいてくれるでしょ?」
「私の願いは叶ってる、今も祇伐が咲っているから。だから大丈夫、どんな時もそばに居るよ」
はい、と満開に笑み咲かせ、返った応えが真実だと証してもらうよう、祇伐はより深く神樂の背に抱きついて。
星に誓いを、あなたに願いを。
――星の瞬きは一瞬で、永遠だから。
――星よ、星よ。
――たとえどれほど美しく煌いても、その光を掴むことは叶わない。
然れど、遥か彼方から照らしてくれるだけでいい。
運命を拓くのは、いつだって自分自身なのだから。
満天の星、星彩の輝きが皓々と流れる光の河。目を奪われるだけでなく魂まで奪われてしまいそうなほどの星空を仰いでも揺るがずに、アンゼリカ・レンブラント(黄金誓姫・g02672)は真っ向から星空の美しさを受けとめて笑みを咲かす。
隣で星空を振り仰いだシル・ウィンディア(虹色の精霊術士・g01415)も、とっても綺麗で素敵と声を弾ませて、
「せっかく、こんなきれいな星空なんだから、地上から眺めるだけってのももったいないよね!」
「うん! シルなら絶対そう言うと思ってたよ!!」
仲間のそれに迷わず重ねる【飛翔】、夏草の草原から相棒がふわり飛び立つ様にアンゼリカは笑みを満開にして、この夜に【エアライド】を燈して星空へと跳ねる、翔けあがる。
もっと高く、もっと遠くへ。
夜空いっぱいに鏤められた星々めざし、皓々たる輝きが白い光の帯とも雲とも思えるほどの星の河へ跳び込む勢いで、数多燈された【飛翔】の限界まで夜風を突き抜けてシルは翔けるけれど、それでも遥か彼方の星に近づけたように見えないのも、力の限りに手を伸ばしても届かないのも、勿論はじめから解っていたこと。
手が届きそうに思えても、届かない。
真白になった記憶の彼方で何かが揺さぶられれば、それが何なのかを思い出せずにもどかしさを感じることはあるけれど、新宿島へ流れ着いてから重ねた日々が胸の裡に確かな光を燈すから。
「過去の記憶がなくても、出会えたみんなのおかげで、わたしは歩いていけているんだ」
「新宿島で、冒険の中で、出会えたみんなは私の心の支え。シルもそうだよね」
軽やかに夜風を蹴る大きな跳躍で相棒に追いついて、眼差しを緩めてアンゼリカもそう口にする。同じ年頃、真白になった記憶、お揃いみたいな境遇の、笑顔がとっても元気な相棒のその気持ちは、黄金誓姫には手に取るように理解できるもの。
満天に鏤められた星々の煌きは、まるでこれまでに出逢ってきた人々のよう。
其々の輝きは実際には遠く離れているけれど、アンゼリカの胸の裡という夜空いっぱいに満ちてきらきらと輝いて。
みんなみんな、とても綺麗で。
勿論それは虹色の精霊術士も同様、そして、中でも相棒が特別なのも同様で、
「うん。みんなが支えなのは勿論だけど、アンゼリカさんもいてくれるからだね」
――どんな戦場でも、頼りになる相棒さんだから。
いつだってそう思ってる。きっと相手も、周りの皆もそれを知ってる。
けれど満天の星の煌きに抱かれるような空で改めて言の葉にしてみれば、まるでとっておきの秘密を明かすみたいで。
ほんのり照れまじりに、はにかむように笑んだなら、そっと手を取ったアンゼリカからもとっておきの言の葉が返る。
――誕生日おめでとう、シル!
両手で包み込むようにしてアンゼリカからシルに手渡されたのは、掌に収まるころりとした硝子瓶。
柑橘と花を甘く爽やかに、光と風をつれて香らせるような香水は、
「わ、ありがとう……! って、アンゼリカさん、これってもしかして……?」
「えへへ、シルが今想像したとおりだよっ!」
夏夜の夢幻でも確かに出逢えた相棒へ贈る、とっておき。
シルと多くの戦場をともに出来たのは幸せで、彼女とすごす日常も冒険も、すべてが掛け替えのない素敵な日々だから。
「これからも宜しくだよっ!」
「うん、わたしのほうこそ、よろしくねっ!」
満開の相棒の笑みと心をまっすぐ受け取って、シルも一片の曇りもない笑みを咲かせた。
――だから立ち止まれない、立ち止まらない。
――歩き続けるよ、わたしはどこまでも。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【飛翔】がLV7になった!
【エアライド】LV1が発生!
【光学迷彩】がLV2になった!
効果2【アヴォイド】がLV2になった!
【ガードアップ】がLV3になった!
【ダブル】がLV2になった!
【反撃アップ】がLV2になった!
アストライア・ノートン
【黎明】
夜空、野外、そしてキャンプ
ならばBBQは外せぬ!
とはいえ今宵は夜空が主役、ならばBBQのプロとして引立て役に徹しよう
焚火の火を借りて【火炎使い】で火の加減を調節、
新宿島から持ち込んだ赤身肉と野菜を一口サイズに切り揃え、アルミを敷いたコンロの上でじっくり、焼き加減を見極め皿に盛りつけて仲間たちと食そう
他にも余の店から塩漬け肉なども持ってきたのだが
フフフ、これは明日のお楽しみである…!
…しかし夜空を見上げて過ごすなどいつ以来であろう?
アラスカか、いやネバダ砂漠だったか?
などと昔を懐かしみながら過ごそう
BBQが終わったら隠し玉のマシュマロ登場である
焼きマシュマロ、これぞキャンプの醍醐味よ…!
レイ・シャルダン
【黎明】の皆さんと。
※刻逆に奪われた物=趣味(天体観測)で
自身の目には星の姿が映らないと言う設定
星が見えなくても、星に照らされた大地、空、
そして皆の楽しそうな顔を見ていたら
それがどれだけ綺麗な空なのか想像出来る。
だから、楽しい、良い星空だ。
焚き木を囲んでBBQ。
ドイツ人らしくソーセージを持参。
これも…口福の伝道者で増やせるかな?
アイテムポケットからお皿やらタレやらを取り出して御配りします。
米国風バーベキューを教わりましょう。
マシュマロを焼く…天才ですか…。
これは、ジビエジャーキーでしょうか。
あぁ…すっかりお酒を飲んじゃって…。
そう言えば以前エトヴァさんと一緒に歌った星の歌。
またここで一緒に。
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
【黎明】
連携アドリブ◎
食材と調理器具等は手分けし持込
液体錬成で、持参の赤ワインとオリーブ油、蜂蜜をテント内に仕込む
口福の伝道者も拝借
焚き火を囲み、皆で食事し語らう
星は、古くから旅人達を導いてきたのだろうと思う
闇の中に瞬き、存在を伝える光
きっと瞼を閉じても星空が映る
地上の光は焚き火と食事
どちらも贅沢だ
アストライアさん、良い手際だな
俺は飲み物配ろうか
レモン漬の蜂蜜を割ったレモネード、大人にはワイン
あ、美味し……いい焼き加減だ
星空の下、焼くマシュマロも嬉しくて
故郷の話も聞けるかな?
ジャーキーを御摘みに、長い夜の友
珍しい味も挑戦
猪や鹿はいそうだなあ
酒も進めば
星の歌を口の端にのせ
緩やかに更ける夜を楽しむ
ラズロル・ロンド
【黎明】に参加
星空の下皆でBBQを楽しみながら
相談したり歌を聞いたり話に花を咲かせよう
保存食といったら干し肉!
現地で食べられてそうなジャーキーを準備したよ
【口福の伝道者】で増やす目的の試食会
牛、豚、羊、猪、鹿…兎もありそう
鳥肉だと鶏、キジバト、ホロホロチョウ、ミミズクとか?
流石に新宿島には無いのもあるな…現地調達で増やせるかな?
なんて相談しながら、ジャーキーを食べては増やし
エトヴァが作った赤ワインも頂いたりして
ソーセージに合うからしょうがない
本場のBBQの迫力におお、と感嘆しながら
焼いたマシュマロを食べればつい顔が綻ぶ
クッキーに挟んで食べるのも美味しいってね~
歌声を聞きながら星空を見上げよう
●Canzone,chanson
星彩が輝き流れる光の河。
天涯は何処までも深い漆黒の夜闇、それが天頂に向けて紺青に、瑠璃に、時には美しい青紫に光で霞んでいくと見えるのは夜空に湧き立つような天の川が皓々と輝いているからだ。
光の帯とも思える星の河から溢れるかのごとく満天に鏤められた星々、その煌きを硝子杯に融かしこんだような淡い金色の冷たいレモネードを皆で呷れば、予想を遥かに超えるほど美味な甘味も酸味も、全身のみなず魂まで染み渡っていく。
檸檬を浸けこんだ蜂蜜、冷たい水で割ったそれそのものが上質なのは勿論だが、それ以上に美味と感じる理由がある。
――事の起こりは、パラドクストレインから降り立った直後であった。
「流石にこれは……難しいか?」
夏草を柔らかに波打たせる夜の風。唯、髪や頬を撫でられるだけならば心地好いその風を感じて、微かに眉根を寄せたのはエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)。
今夜の間に【液体錬成】で赤ワインやオリーブオイル、蜂蜜を増やせば明日のパルマでは更に、と考えた彼の目の付け所は大変素晴らしかった。が、夜とはいえ流石に夏のテント内は【液体錬成】に必要な冷暗所とは成り得ない。
然れど、
「パルマ市街でなら地下のワインカーブで【液体錬成】が使えるだろうという話だったが……」
「あ、それじゃあさ。ここに穴掘ってみるってのはどう?」
思案気なエトヴァの呟きで閃いたラズロル・ロンド(デザートフォックス・g01587)の狐耳がぴこり。それです! と翠の瞳を輝かせたレイ・シャルダン(SKYRAIDER・g00999)が迷わぬ笑みを咲かせ、
「工夫すれば可能になるというなら、やらない手はありませんよね」
「うむ。労働の後のBBQはさぞや美味であろうからな、余も手を貸すぞ!」
アストライア・ノートン(アメリカ帝国皇帝・g04806)も即断即決。そうと決まれば間髪容れずに彼女の全環境型パワードアーマーが、遺憾なくその威を発揮する――!!
本来ならば夏の草原の只中で冷暗所を得るには相当な深さが必要であったろうが、他の仲間がこの夜に【冷気の支配者】を燈してくれているという僥倖にも恵まれた。併用できればそれなりの深さでも大丈夫そうで。
皆で協力して一気呵成に掘り進めた穴の底、ひんやりと冷気を感じるそこに赤ワインやオリーブオイル、蜂蜜を安置して、確りテントで覆って、笑い合って乾杯した冷たいレモネードは本当に、本当に美味だった。
赤橙に輝き、眩い金色を燃え上がらせる焚き火を囲めば、ほうと零れる安堵の吐息。
「何とかなったね。良かったね、エトヴァ」
「ああ、ラズもレイさんも、アストライアさんもありがとう。【冷気の支配者】を持って来てくださった方にも感謝だな」
自分達の歩む路には突発的なアクシデントがつきものだ。機嫌よく白狐の尾を揺らしたラズロルの言葉にエトヴァは改めて仲間の存在のありがたさを噛みしめて。
「空腹は最高の調味料って言いますしね。皆さんとわいわいしながらの穴掘りも楽しかったですし、これもいい思い出です」
「余も同感である、晩餐前の楽しい準備運動であったぞ。それではここから存分に、星空とBBQを楽しもうではないか!」
ディアボロスの身体能力を思えば当然ながら、全く疲労も見せずいそいそとレイが【アイテムポケット】から取り出すのはBBQソースと皆の分の食器、高らかにBBQ開始を宣言したアストライアが展開するは神聖なBBQ用コンロ、義肢の指ですいと夜風を撫でれば、火炎使いの技能で操った焚き火の炎でコンロに着火して、巧みに火加減を調節する。
夜空のもと焚き火のあかりに照らし出されるBBQ用コンロも、アルミを敷いたそれで極上の赤身肉と色鮮やかな夏野菜を見事に焼き上げていく自称アメリカ帝国皇帝にしてピットマスターも神々しく、
「これが本場の米国風バーベキュー……何だか感動です」
「おお、本場の迫力は流石だね……!!」
心からの感嘆の眼差しを向けるレイと素直な感嘆の声を上げるラズロルにアストライアは胸を張り、
「フフフ、余のBBQも今夜は星空の引き立て役であるからな。星空を楽しみながら味わうがよい」
「その心意気も手際も本当に見事だ、アストライアさん。早速いただかせてもらうな」
本来ならば厚切り肉や塊肉をじっくり焼き上げて切り分けたいところだが、今夜は星空観賞優先ゆえに、赤身肉も夏野菜も予め一口サイズに切り揃え済み。大人組に赤ワインの、十代組にレモネードの杯を配ったエトヴァも香ばしく焼き上げられた肉と野菜を手許の皿に受けとったなら、皆で改めて、
――乾杯!!
熱くて香ばしくて、弾けるように美味だった。
星空のもとでは香ばしさをひときわ豊かに感じるのは何故だろう。ドイツ出身のレイが持ち込んだソーセージも自称皇帝の美技で極上の焼き上がり、ラズロルが持ち込んだ様々なジャーキーを齧れば特に、大人組はワインがとまらない。
今夜は【口福の伝道者】の力は使わず、美味なる夕餉でたっぷり英気を養うことにした。
実のところラズロルはパルマのために今夜の間にジャーキーを増やしておきたかったのだけれど、【口福の伝道者】が齎す効果は、ディアボロスが食事を摂ると『同じ食事』が食器とともに出現するというものだ。
BBQを楽しみつつジャーキーも味わうならば当然、焼き加減ばっちりな肉と野菜もジャーキーと一緒に大量に出現する。食事の一部のみを増やすのは不可能であるし、夏まっさかりのこの時期、焼き加減ばっちりな肉と野菜が明日にはどうなっているかは言うまでもない。
「時先案内人さんが『保存食を食事に』『堅パンとチーズを食事に』って例を挙げていたのは、だからだったんですね」
「新宿島なら増やした料理を冷蔵なり冷凍なりで保存して、後で温めることもできるが……ここでは無理だしな」
苦笑を交わすレイとエトヴァ。可能ならレイのソーセージも増やしておきたかったところだ。
なれど実は解決策も見出し済み。
「何、明日の朝食をジャーキーとソーセージにすればよいのだ。栄養が偏るなどと不平を洩らす者はこの中にはおるまい」
「うん。今夜のジャーキーは味見くらいにしておいて、明日の朝いっぱい増やすよ」
無論パルマ公国でも【口福の伝道者】の効果は存分に活かす予定だが、あちらでは昼食を摂ることにし、出発前の朝食にも効果を利用する、と決まればアストライアも存分に腕を揮い、ラズロルは焼き加減ばっちりな肉と野菜を堪能しながら、その合間にジャーキーを摘まむ。
現地で干し肉が食べられていそうなもの――と新宿島から持ち込んだのは、牛に豚、羊に鶏。猪や鹿に兎なども何とか手に入れて、想い馳せるのは明日のこと。
「現地調達できるのもあるかなぁ」
「そうだな、猪や鹿ならいそうだが……」
食鳥の女王ことホロホロ鳥のジャーキーを分け合い、赤ワイン片手に相談するラズロルとエトヴァの言葉が耳に入れば、
「余の帝国ならバッファローのジャーキーもあるのだがな!」
「それはまた豪快ですね……!」
ふとアストライアの胸に燈ったのは自国の光景、北米大陸の豊かさに眼を瞠るレイに、うむ、と頷いて、自称皇帝は星空を振り仰ぐ。満天に鏤められた星々は、彼女でさえ素直に見事だと思える美しさ。星の河も豊かに輝き、それでいて心を星々の世界の透明な静寂へ連れていってくれるようで。
「……こうしてゆっくり夜空を見上げて過ごすなど、いつ以来であろう? アラスカか、いやネバダ砂漠だったか」
「どちらも綺麗な星空が観られそうだな。アラスカなら、オーロラも」
彼女の唇から紡がれるその故国の夜空に耳を傾け、エトヴァもこの地の星空を仰ぎ見る。
何処の大地であろうとも、星は、古くから旅人達を導いてきたのだろう。
闇の中に瞬き、存在を伝える光。
瞼を閉じても、きっと――と穏やかに己が語る言葉のままに瞼を落とせば、暖かな闇にも星々が瞬くから、自然と唇に歌が昇る。それはこの1803年ではなく、1793年の断頭革命グランダルメ、パリで歌った曲。柔らかに笑むレイも優しく声音を響き合わせるように、彼女とエトヴァの二人で歌った、星のうた。
星のきらめき、祈り。
何処までも優しく、それでいて明るくテンポよくアレンジされた、現代でも動揺として世界的に愛されている星のうたが、焚き火の暖かさとともに空へ昇っていく気がして、ラズロルも紫水晶の双眸を緩めて星空を仰ぎ見た。
飛びきり幸せな、星空の夜。
星のうたが終幕を迎えれば、優しい今夜の歌い手達を迎えたのは、これぞキャンプの醍醐味よ! とアストライアが炙った隠し玉の焼きマシュマロ。
「甘いものは声が伸びなくなると聞いたことがあるのでな、終わるまで待たせてもらったぞ。さあ、堪能するがよい!」
「マシュマロを焼く……これを考えた人は天才ですか……!!」
香ばしい焦げ目を纏った焼きマシュマロは、甘い匂いに焚き火の匂いをも纏って、カリッとした表面の裡でとろりと蕩ける幸福な熱と甘さでたちまちレイを魅了して、
「焼くだけでこんなに美味しくなるんだ……! グラハムクラッカーとかで挟んでも美味しいって話だよね~」
「チョコレートも挟んでスモアもいいな。だが、こんな夜には焼きマシュマロが本当に嬉しい」
一口で顔を綻ばせたラズロルも噛みしめれば満面の笑み、皆と囲む焚き火の暖かさをも一緒に味わう心地でエトヴァも柔く微笑して。穏やかに、緩やかに、夏の夜が更けていく。
実のところ。
幾度見上げても、目を凝らしても、レイの瞳に星の姿は映らない。
それが刻逆によって天体観測の趣味を奪われたことを直接の原因とするのか、あるいは刻逆で奪われたことによる精神的な影響に起因するものなのか、レイ自身にも判らないけれど。
それでも、星に照らされた夏草の草原を、星の河の輝きで夜闇が光に霞む空を、仲間達の楽しそうな笑顔を見ていたら、この夜の空がどれだけ綺麗な星に彩られているのか想像できるから。
――だから今夜は、とても楽しい、良い星空だ。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【口福の伝道者】LV2が発生!
【アイテムポケット】がLV2になった!
【液体錬成】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】がLV4になった!
【ダメージアップ】がLV4になった!
【反撃アップ】がLV3になった!
【凌駕率アップ】LV1が発生!
空木・朱士
ちょっとでもパルマの人達の助けになれれば良いけどなー。
折角持って来たのに排斥力でなかった事になったら勿体ないから、持ち込んでも大丈夫そうなもの頑張って出発前に俺なりに調べてみた。
先ずは【アイテムポケット】で運べるだけ穀類を持ち込む。大麦とかライ麦とか?
あとはリュックに瓶詰めの蜂蜜を持てるだけ持ってきてみた。大丈夫だと思うんだけどな、蜂蜜。それに栄養価高いし日持ちもするし。
蜂蜜って【液体錬成】使えんのかな。
使えれば増やせるんだけど。
無理っぽかったら、街に元からあるワインとか油とか錬成する事にしよ。
他にも街の人に何か困り事がないか聞いてみて俺に出来る事だったら対応したい。
何でも言ってくれな?
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
【黎明】
連携アドリブ歓迎
残留効果を活用
食材を追加持ち込み
液体錬成で昨夜増やしたワイン、油、蜂蜜、水もさらに増やし貯蔵
可能なら朝から現地のワインセラーや油屋に協力願い、貯蔵分を一気に増やそう
日持ちするパンやクラッカーに
酢漬けや油漬けの小魚、蜂蜜やジャム、チーズをのせサンドイッチで食事
お、サラミも頂こう
ラズの干し肉もどんどん挟もう
乾燥えんどう豆も摘み、塩胡椒も合いそうだ
甘味にはビスコッティ、ローストナッツ、チョコレート等
口福の伝道者をフル活用し増量
食事にしつつ
現地に合わないものはその場で提供
仲間たちの振る舞いを手伝う
塩漬けに燻製か
良いアイデアだな
増やしつつ現地の方と楽しむ
ふふ、ワインにも合いそうだ
レイ・シャルダン
【黎明】で参加です。
チーム外連携・アドリブ歓迎です。
残留効果を積極的に活用します。
事前にアイテムポケットの中身とか確認し合いましょう。
排斥力で消えちゃったらもったいないですものね。
ボクはね、(やっぱり)ソーセージですね。
水分を抜いてサラミの様にして、エトヴァさんのパンに挟んでサンドウィッチみたいに食べましょう。
絶品…!と言うわけでもないのですが、とても食べなれた味ですね♪
逆に今だけでも楽しんでもらいたいという気持ちも当然あるので
普通のソーセージでカリヴルストを作って皆さんに振舞いましょう。
やっぱり、お酒に合うんですよ♪(飲んだ事無いけど)
こういう交流は大切にしなきゃ。
さぁ、皆さん楽しみましょう
アストライア・ノートン
【黎明】
アドリブ連携OK
心情
パルマを活動拠点とする以上、パルマ民衆の支持を得なければならぬ
そして余はその第一歩がこの支援活動であると見た!
支援
持ち込んだ塩漬け肉を使い、民衆を集め保存食作り教室を開こう。
物資を備蓄する他にも自給の方法を教えておけば後々役に立つであろう。
無論実食用の完成品は【口福の伝導者】で用意済だ。
コツはよく水分を抜く事、そして火加減である
火は強すぎても弱すぎても駄目だ
チップを燃やさず、煙が立つ程度を保つのだ
そして塩漬け肉の外側はほぼ塩であるから捨てるようにな、間違っても食べないようにである
肉だけでなく魚、卵、チーズ等々燻し甲斐のあるものは少くない
可能な限り燻しまくるぞ!
ソレイユ・クラーヴィア
【賽】
連携アドリブ歓迎
パルマ市民の応援あってのルドヴィカ撃破まで漕ぎ着けたのですから
今度は私達が彼らを支援する番です
協力して下さる友人達にも感謝を
口福の伝道者、アイテムポケットを使用
新宿島からチーズを山程持ってきました
やはりチーズ無くして食は語れません
主に保存のきくハードチーズ
しかし、保存食ばかりでは味気ない
多少足は早くともパルマ解放へのお祝いも込めて
青カビと白カビの両チーズも少量持参
ハードは堅パンに乗せてシンプルに
青カビはドライフルーツや蜂蜜も添えて風味豊かに
白カビは熱で溶かして黒胡椒を少々振りパンの上へ
飲める方にはワインも添えて
皆さんと協力し出来るだけ美味しく食べてもらえるように尽力します
音羽・華楠
何よりもまず必要なのは食料ですよね。
それも保存が利く……。
……新宿島で生ハム、それも原木の物を見付けて持ち込みたいです。
生ハムは、原木のままならそれなりに保存が利きますし。
何より――
……史実のパルマは、古くから生ハムの名産地だと新宿島で聞きました。
グランダルメのパルマもそうであるなら、生ハムはパルマの人たちの心に根付いた食材ということになります。
それを食べてもらえば、パルマの人たちの心も奮い立つのではないかなと。
勿論、【口福の伝道者】で増やすつもりですが――
……げ、原木は、復讐者でも食べ切るのはつらい……かも?
えぇい、【勇気】と【情熱】を持って食べ切りますよ!
原木じゃないと保存性も悪いですし!
シャムス・ライラ
【賽】
仲間と情報共有、連携
パルマの困窮が現実のものにならぬよう
仲間達と協力し手を打っておこう
有効そうな残留効果は全て活用
現地の方々と友好的に接し
地形の利用、情報収集で
どの程度の食糧が必要かを割り出す
保存場所の確保も忘れずに
清潔で直射日光や高温多湿を割け
寒暖差が少ない場所が良いだろう
それが済んだら
口福の伝道者で保存食を増やし備蓄を
アイテムポケットで持ち込んだ
チーズや魚の燻製、干した果物等
液体錬成でワインも念の為
…役得だな(もぐもぐ)
フライトドローンも利用しつつ効率良く運搬、備蓄
保存食の管理は計画的に
後は、持続可能な食糧供給策についても検討が必要だ
飛翔で耕地の様子を確認しておこう
アドリブ等歓迎
夏候・錬晏
【賽】連携
アドリブ歓迎
市民の困窮は避けなければいけないな
俺にできることは手伝おう
そういう想いで友に呼応して参加
市民には友好的な態度で臨む
【口福の伝達者】で食事を増やせばいいんだな
チーズ、ソーセージ、水で食事を…と『わいん』のほうがいいのか?
ソレイユ殿に勧められるまま食べ進める
熟成肉や『くらっかー』とやらも日持ちするなら食べていこう
保存容器があるならそれに越したことはないが
ないなら保存方法を市民に聞きながら保管庫に運んだりしていく
量があっても分配方法がままならんなら意味がない
保存の管理者を選定して管理を依頼
戦で培った兵糧管理の<戦闘知識>で助言ができれば
ミシェル・ロメ
アドリブ連携歓迎
【アイテムポケット】に食料を詰めて
ライ麦や大麦を使った固焼きパンにオートミール
果物はドライフルーツやジャムや砂糖漬けに
キュウリやオリーブ等の野菜類は酢や油で漬けてピクルスに
パルミジャーノ・レッジャーノ等のハードチーズ、
パンチェッタ(豚肉の塩漬け)や生ハムも原木(塊)の状態なら
冷暗所で適切に保存すれば意外と日持ちすると聞きました
大切なのは高温多湿を避けること
ワインや油や蜂蜜は【液体錬成】で
食料は【口福の伝道者】で増やしましょう
固焼きパンはそのままでは味気ないけど
スープでふやかしたり、薄く切ってジャムやチーズや果物を乗せて
願いはひとつ
皆が幸せでいられるように
さあ、笑顔で食卓を囲もう
ラズロル・ロンド
【黎明】
困窮が予想出来て
対処出来るって素晴らしい事だね
よぉし、僕も頑張っちゃうぞ!
口福の伝道者で増やした干し肉は支給品として渡し
こちらで調達できる保存食を増やしていこう
新宿島からは持ってこられなかった干し肉を探し1食分食べて増やそう
何があるかな~と珍しいお肉を食べるのも楽しみだ
でも肉類は庶民の口に渡らない…なんて話も聞いたし
野菜や豆類を増やせるといいかな
食事として摂る必要があるか…
乾燥えんどう豆なんてそのまま食べていいし
良いんじゃないかな穀物は大事なエネルギー源
食事のつもりで一皿完食しよう
仲間のサンドイッチや塩漬け燻製も食べて増やすのを手伝う
塩分取り過ぎも良くないから仲間が増やした水も取ってね
●Ducato di Parma
――忘れてはならない。
――これは復興支援ではなく、『パルマ公国拠点化計画』であることを。
英雄の帰還だった。改めての凱旋とも思えた。
少なくともこの日パルマ公国の市民達は、再びこの地を訪れたディアボロス達を迎えて、確かにそう感じたのだ。
嘗て、そしてあの日エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)のチェロを聴いた人々が、ミシェル・ロメ(とわにひびくうた・g04569)の聖歌を聴いた人々が、ソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)のチェンバロを聴いた人々が、排斥力で失われた記憶をたちまち取り戻し、次々と笑みを咲かせて歓びの声をあげる。
それは純粋な再会の歓びによるもの。だが、
「皆さんの応援あってこそ私達はルドヴィカ撃破に漕ぎつけられたのですから、今度は私達に皆さんを支援させてください」
蒼穹と黄昏の眼差しで広く市民達を見渡したソレイユが、今回、自分達ディアボロスは人々に物資を提供するためにやって来たのだと語れば、細波のごときどよめきが広がった次の瞬間、爆発的な歓声が湧き上がった。
まだ困窮は始まっていない。まだ苦しんでいる者はいない。それでも漠然とした不安を皆が抱いていたのだろう。
彼方から迫りつつある暗雲のごとき不安、そこに今まさに希望の光が射したのだ。
「凄いね……本当に危ないところだったんだ。困窮が予測できて、事前に対処できるって、素晴らしいよね」
「だな、ほんとすげーよ。今から色々始めるとこだけどさ、俺も来てよかったって、めっちゃ思った。しみじみ思った」
この事態を予測できたのも攻略旅団でのエトヴァの提案あってこそ。ラズロル・ロンド(デザートフォックス・g01587)は彼の先見の明を我が事のように誇らしく思いつつ、僕も頑張っちゃうぞ! と気合を新たにして、紅き双眸を眩しげに細めた空木・朱士(Lost heart・g03720)も早速皆と広場に向かって【アイテムポケット】の荷解き開始。
これに限らず今回有効と思われた残留効果は相当に積み重ねられており、ディアボロス達の誰もが各々の予想以上に大きな効果を利用することができた。幾つもの小さなポケットから驚くほどの量の物資が取り出される様を見れば、市民達も即座に彼らが不思議な術を揮うことを理解して、
「ワインやオリーブオイル、蜂蜜などを増やすこともできる。地下のワインカーブなどに案内してもらえるだろうか」
「あ、俺も蜂蜜いっぱい持って来たんだ、一緒に行かせてくれ」
「ええ、勿論。今すぐに!」
昨夜の努力が無事に実を結び、確り十倍に増えたそれらを更に増やさんとするエトヴァは、自身が持ち込んだ品のみならず現時点でこの地に貯蔵されている酒や油、蜂蜜も増やすべく商売人達に手配を依頼する。己と朱士が新たに重ねた【液体錬成】で三十倍になるはずだ。
「なあ、ここ川があるみたいだけど、水も増やすのか?」
「ああ、現代日本の基準で飲用レベルに達してる水もあったほうがいいだろうからな」
出発前に色々下調べした朱士が訊けば新宿島から水も持ち込んだエトヴァがそう応え、
「【アイテムポケット】だけで足りないようなら、これも運搬の補助に使うといい」
彼らのやりとりを耳にしたシャムス・ライラ(極夜・g04075)が、即座に展開するのは【フライトドローン】。シャムスも錬晏も協力ありがとうございます、とソレイユが微笑んだなら、
「何処の国の民であろうと、無辜の人々が困窮するとあっては放っておけないしな」
「右に同じ、だな。予測が現実にならぬよう、力を尽くそう」
迷わず夏候・錬晏(隻腕武人・g05657)が笑み返し、シャムスも微笑み返す。誰からともなく手を掲げて三人高らかに打ち鳴らし、其々が己で為せることに力を尽くしていく様に、音羽・華楠(赫雷の荼枳尼天女・g02883)も奮い立った。
――私も力を尽くしましょう。
――パルマの人々を、勇気づけるために!!
広場に次々と並べられるのは新宿島から持ち込まれた数多の食料、朱士が持ち込んだ大麦とかライ麦などの穀類に、早朝の朝食でラズロルとレイ・シャルダン(SKYRAIDER・g00999)が仲間と【口福の伝道者】で増やした多種多様なジャーキーと、ソーセージ。そして、壮観だったのが、どどんと積み重ねられたホール状のハードチーズ達。
「やはりチーズ無くして食は語れませんからね」
「パルマでチーズと言えば、やっぱりパルミジャーノ・レッジャーノですよね」
力強く頷き合ったのはチーズ大国フランス出身のソレイユとミシェル、更にミシェルは、生ハム――プロシュット・ディ・パルマの原木や、現代日本でも広く知られるようになったパンチェッタも次々と取り出していく。
「冷暗所で適切に保存すれば意外と日持ちすると聞きましたので」
「成程な、冷暗所なら【液体錬成】にも使えるらしい地下の『わいんかーぶ』とやらが良さそうだ」
大戦乱群蟲三国志出身ゆえに西洋文化にはいまだ不慣れではあれど、錬晏は異郷の人々のためにも当然のように尽力する。昼食時に皆と【口福の伝道者】で増やすものを除き、穀類は一般的な倉庫へ、高温多湿を避けるべきものはワインカーブへ、市民達の協力も得ながら運び込んで。
錬晏と同様に動きながら、シャムスは思案をめぐらせた。
出来るならば物資の必要量を割り出すための情報収集を行ったり、【飛翔】で耕地の様子を確認しておきたかったが、
「……それが叶わないのが痛いところだな」
今回、パルマ公国での調査や情報収集は行えない――と事前に明示されていたことを失念するようなシャムスではない。
だが、調査や情報収集をせずとも明らかなことがあった。
仮に物資を必要とする人々の数を把握できたとしても、必要とする期間が判然としない以上、正確な必要量を割り出すのは不可能であるということ。そして、
仮に耕地に問題がなく、順調な収穫が見込めるとしても、軍隊に蹂躙されればすべてが水泡に帰すということだ。
たとえ物資が充足しても、
自分達ディアボロスがいなければ、クロノヴェーダに対抗できる武力が充足することはない。
●sale
「もしや! 物資が不足するということは、塩や香辛料も不足する可能性があるということではないか……!!??」
――と、パルマ公国で保存食作り教室を開催する準備をしていたアストライア・ノートン(アメリカ帝国皇帝・g04806)が出発前にそこに気づけたのは、まことに幸いなことであった。
地理的に海が遠いわけではないが、流通が途絶えているなら海塩が入ってこなくなる可能性があり、パルマ郊外のサルソ・マッジョーレで採れるであろう塩もどうなるかは判らない。
だが、仮に不足が見込まれるとしても、塩ならば一旦塩水を作って【液体錬成】で増やして煮詰めるという強引な手段での供給も可能だ。多くて困るものでもなし、と、早速レイとエトヴァで手配にかかる。
「基本的というか、シンプルなものだからこそ盲点でしたね……!」
「ああ、アストライアさんの保存食作り教室がなければ気づかなかったかもしれない。危なかったな」
「余の帝国は豊かであるからな。物資不足というのはなかなか想像が難しいのだが、塩漬け肉で気づけたぞ!」
誇らしげに応えてアストライアは、八時間かかる【液体錬成】を待つことなく新宿島から持ち込んだ塩を市民達に提供し、自作の塩漬け肉を使って威風堂々たる風情で保存食作り教室を開催した。
――パルマを活動拠点とする以上、パルマ民衆の支持を得なければならぬ。
――余はそれを確実にするための更なる一歩がこの支援活動であると見た!
物資のみならず、知識や技術も排斥力の影響を受ける。
この時代のパルマ公国に存在しない知識や技術を伝えても、ディアボロス達が帰還すればそれらは忘れ去られてしまうが、今回アストライアが市民達に教える塩漬け肉の製法や燻製の方法は排斥力の影響を受けないもの。
即ちそれは、この時代のこの地に既に存在している知識と技術であるということだが、
「何も全市民が保存食作りの達人というわけでもあるまい。技術を識る者は一人でも多い方が良かろう!」
自称皇帝は揺るがずに我が道をゆく。
塊肉の筋を切り、塩と胡椒を擦りこみ、出来ればハーブも使うよう伝え、寝かせることも塩抜きも教え。鍋に燻製チップとなる木片を入れ、網に燻製する食材を乗せて蓋をする簡単な燻製器を仕立てて見せて。
「火は強すぎても弱すぎても駄目だ。チップを燃やさず、煙が立つ程度を保つのだ」
「はーい! おぼえたよ、こーていへーか!!」
実食用に完成させてきた燻製を振舞いながら、燻したいものがあればどんどん持って来いと語れば特に子供達に大人気!
保存食作り教室の様子を眼にした華楠は、髪の鈴をちりりと鳴らし、ふるりと武者震いをした。
「ええ、やはり何よりもまず必要なのは食料ですよね。それも保存が利く……」
当然すぎるほど当然のこと。更に言えば、パルマの人々の心に根付いたものであれば申し分ないはずだ。その条件を満たす品に華楠は心当たりがあった。自分だけでなく、仲間も持ち込んでいた品。
だが勿論、多ければ多いほど良い。ゆえに【口福の伝道者】で増やすべく、華楠が己に言い聞かせるよう、皆に誓うよう、高々と生ハム――プロシュット・ディ・パルマの原木を両手で掲げて見せた、瞬間。
「これが私の今日の昼食です! 必ずや、食べきってみせます!!」
天頂に輝く太陽が生ハム原木を掲げる乙女を照らし出し、苦難の道に挑む乙女を祝福するよう、大聖堂の鐘が鳴り響いた。
そう。原木のままでなければ保存性が落ちると知ってのことだ。骨も込みとはいえ5kgとか7kgとかありそうな品だ。然れど勇気と情熱をもって食べきってみせると誓う華楠の姿は、崇高な美しささえ帯びて人々の胸を打った。
「おねーちゃん、かっこいい!」
「おねーちゃん、がんばって!」
子供達が声援を贈ってくれる。食事と一緒に食器も増えると聴きつけた恰幅の良い商人が銀の大皿を恭しく捧げ持つから、華楠はそこに生ハム原木を乗せた。――もう、後戻りはできない!!
「格好いいです、華楠さん……!!」
「熱いよな。そうだ、他にも生ハム原木あるんだろ? 俺も挑むぜ、女の子だけに無理はさせられるか!!」
華楠と同様生ハム原木を持ち込んだミシェルは感動に胸を震わせ、紅き双眸に不敵な光を宿した朱士も生ハム原木を昼食に決める。勇ましいな、と感嘆しつつもエトヴァは、
「生ハムだけ増やすわけにも行かないしな、俺達は食料の種類で貢献するとしようか」
「食事のバリエーションって大事だもんね。そうそう、街の人にノロジカの干し肉もらったんだ、これも増やそう!」
保存食を保存がきくまま【口福の伝道者】で増やすことが苦難の道であることをラズロルとともに再認識しつつ、市民達が広場に用意してくれたテーブルへ持ち込んだ品々を広げていく。
酢漬けや油漬けの小魚、蜂蜜やジャムは小振りの壺を食器の代わりにして、日持ちするパンやクラッカー、そしてチーズは普通の皿へ。その傍らにレイが並べる皿を彩るのは。
「ボクからはね、勿論ソーセージです。水分を抜いてサラミみたいにしてみました!」
「乾燥えんどう豆もそのまま食べていいよねー。あ、エトヴァの塩胡椒も小さな壺を食器代わりにするのはどう?」
食事のつもり――では【口福の伝道者】の効果は発揮されない。ゆえにラズロルも様々な食料を昼食に組み込み、市民達の今後の食卓がより豊かになるよう知恵を絞る。
予めサンドイッチを作ってしまえばサンドイッチが増えてしまうから、食べる直前に手許でパンに具材を挟むようにして。
「保存性を保ったまま保存食を増やすというのも、なかなか難しいな」
「傷んでしまうものを増やしても意味がないしな。だが、俺からしてみれば珍しい品ばかりで興味深い」
「それは良かった。保存食だけでなく、今すぐ市民の皆さんと楽しみたいものも増やしたいですから、ぜひどうぞ」
新宿島から持ち込んだ品ばかりでなく、市民達から提供された淡水魚・テンチの燻製の滋味をシャムスは噛みしめ、錬晏はパルミジャーノ・レッジャーノのアミノ酸の結晶が口中でしゃりっと砕ける様に軽く琥珀の双眸を瞠る。
嬉しげに微笑むソレイユが勧めるのは蜂蜜やドライフルーツで彩ったゴルゴンゾーラ。イタリアでは白カビチーズはあまり食べられていないと聴けば残念ではあるけれど、それならブルーチーズをその分パルマの皆に振舞いたくて。
皆で重ねた【口福の伝道者】は今、ディアボロス一人が食事をすれば七百人前が出現する状態。
たちまち辺りには保存食や日持ちのする食料が増えていく。それだけでなく、ディアボロス達が今この場でパルマの人々と一緒に楽しみたいと望んだ美味も。
今だけでも市民達に楽しんでもらいたくて、レイが作って増やして振舞うのは誰もの食欲を刺激するカリーヴルスト、
「とってもお酒に合うって大人達がよく言ってましたよ♪ さぁ、皆さん楽しみましょう!」
皆を安心させるように柔らかな笑顔でそう告げたなら、顔を見合わせた市民達がいそいそと持ち寄ったのは、伝統的な天然微発泡の赤ワイン、ランブルスコだ。勿論ディアボロス達にも振舞われ。
錫製のゴブレットに踊る真紅には星めく気泡が煌いて、
「……これはまさしく、役得だな」
「葡萄の酒にも色々あるのだな。『らんぶるすこ』……『すぱーくりんぐわいん』というやつか」
十代のソレイユには申し訳ない気もしつつ、シャムスと錬晏は上機嫌で乾杯を。
酒を嗜むには歳が足りない者達にはエトヴァがレモネードを振舞って、彼もまた、ラズロルや生ハム原木と格闘中の朱士とランブルスコの杯を掲げ合う。
「地元特産のワインを地元の食材と味わうのは……最高だな」
「だね! ノロジカって初めて食べたけどやっぱりこのワインと凄く合う感じ」
「当然っちゃ当然だけどさ、生ハムともばっちりだぜ!」
鹿よりも癖の少ないノロジカの干し肉、ソレイユから振舞われた蜂蜜とドライフルーツ添えゴルゴンゾーラ、朱士が削いだプロシュット・ディ・パルマ――瑞々しい酸味をもった微発泡の赤ワインはどれと合わせても絶品で。
仲間や市民の大人達が上機嫌で酒杯を掲げ合うのを羨ましく思いながら、ミシェルも自身が増やした品々を大盤振る舞い。
滋味豊かなライ麦や大麦を使った固焼きパンにオートミール、宝石めいて煌くドライフルーツやジャムに砂糖漬け、そして胡瓜やオリーブのピクルスは食器代わりに使って増やした小振りの壺のまま保存してもいいけれど、
「夏野菜とパンチェッタのスープは今召し上がってください。固焼きパンを浸して食べるのもいいですよね」
「あ、美味しそうですね♪ ボクも皆さんに振舞うの手伝いますよ!」
市民達に微笑んで勧めればレイが手を貸してくれる。願いはきっと仲間達全員が同じだから。
――皆が、幸せでいられるように。
日持ちのする甘味もあるといいよな、と更にエトヴァが増やしたのは、ビスコッティにローストナッツ、チョコレート。
然れど、僅か数十年。その数十年の差で、現代のチョコレートは排斥力の影響を受けてしまう。
現代の菓子としての固形チョコレートは、1828年のダッチプロセス開発や1847年のイーティングチョコレートの発明を経て誕生したもの。ゆえにディアボロスが帰還すれば排斥されてしまうが、それなら今すぐに楽しんでしまえばいいだけのこと。
この世界、断頭革命グランダルメの誰もまだ食べたことのない極上の甘味に、
子供達の飛びきり嬉しげな笑顔が、歓声が咲いた。咲き溢れて、咲き満ちて。
誰もにとって、幸せな、幸せな、昼餉になった。プロシュット・ディ・パルマ完食を成し遂げた華楠と朱士も、この上ない達成感に満たされて。
「なあ、何か困ってる事とかある? 何でも言ってくれな?」
今なら何でもできそうな心地でそう訊ねた朱士は、お父さんの狩りのお手伝いに行ったお兄ちゃんが怪我しちゃったの、と涙ぐむ少女のために【活性治癒】で世界に生命力を満たし、インクがなくなりそうで不安だというパルマ大学からの訴えに【液体錬成】を手配して、現時点ではまだ大事には至っていないという現状を改めて再確認し、皆で胸を撫で下ろす。
「だが、少し気になる話を耳にしたな」
顎に手をやりつつ呟いたのは錬晏、彼が聴いたのもあくまで個人的なものではあったのだけど。
流通が途絶し希少性が増した上質な蒸留酒をめぐり、普段からいがみあっていた酒場の亭主同士があやうく殴り合いになるところだったらしい――と聴いた途端、エトヴァの背筋を冷たい何かが滑り落ちた。
もしも、パルマ公国を解放するだけして放置していたら。
「物資不足によってパルマ公国の人々が暴徒化し、その混乱に乗じてクロノヴェーダがパルマ公国を再制圧する……といった事態も、充分に有り得たのだな……」
己の口をついた言の葉に、思わず手を口にやった。
本当に危ないところだったのだ。こうして未然に防げたことが奇跡とも思えるくらいに。
だがそれも、皆で掴み取った、奇跡。
「食料はかなり提供できたが、量があっても分配方法がままならんなら意味がない。信頼できる管理者が必要だろうな」
探るような眼差しで錬晏が思案をめぐらせる。自分達が選定するわけにはいかない。帰還すれば市民達はディアボロス達を忘れてしまうのだから、自分達が選定するのではそれこそ意味がない。
公証人のようなある程度社会的信用のありそうな人物を探し、市民達自身で管理者を選ぶ機会を設けるよう勧めるのが良いだろう。軍務の経験がある者も一人や二人ではないだろうから、兵糧管理の心得がある者がいるなら管理者の補佐に、とも。
錬晏とは別のことを考えていたらしいアストライアが、おもむろに口を開いた。
「改めて確認するが、此度は『パルマを活動拠点とする』ために、この国を訪れたのであるな?」
「そう……そのとおりだ、アストライアさん」
「……ええ。『パルマ公国拠点化計画』のためです」
己の指先が冷たくなっていくのをエトヴァは感じ取る。名状し難い不安が己の胸裡を彩っていくのをソレイユは感じとる。
計画そのものの首尾は上々だ。パルマの人々の困窮が始まる前に大量の食料を提供でき、ワインやオリーブオイルに蜂蜜もかなりの量を提供できるはず。市民達との友好関係も築けたから、彼らは今後ディアボロス達を支援してくれるだろう。
そう。
この『パルマ公国拠点化計画』は攻略旅団で『パルマ公国に、周辺地域攻略のため新たなディアボロスの拠点を構える』と提案されたとおり、周辺地域攻略に赴くディアボロス達がパルマ公国をたびたび訪れることを前提としたものだ。
ディアボロス達の訪れが絶えるという事態は想定されていない。
――もしもこの後、ディアボロス達の訪れが絶えたなら、どうなるかは、わからない。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【液体錬成】がLV3になった!
【アイテムポケット】がLV3になった!
【口福の伝道者】がLV7になった!
【活性治癒】がLV3になった!
【フライトドローン】がLV2になった!
効果2【反撃アップ】がLV5(最大)になった!
【ダメージアップ】がLV5になった!
【ガードアップ】がLV6になった!
【ドレイン】がLV3になった!
【先行率アップ】がLV4になった!
【凌駕率アップ】がLV3(最大)になった!
音羽・華楠
霧の中で峠道を辿り、水の気配を追っていくと海に到達するのはこれまでの調査で既に解ってますが――
『潮の匂い』を感じたという話があるんですよ。
……改竄世界史の境界の海は『真水』で構成されてます。
それは、ロマノフのカスピ海調査でも確認されました。
ここの海が『海水』を湛えてるなら、改竄世界史の境界じゃない……?
時間は限られてます。
《雷幻想・瞬動》で雷速の体動を得、迅速に霧内の海へ向かいましょう。
あの海が海水か真水か、確かめます。
海水なら、あの海が改竄世界史の境界という説は否定されます。
真水なら、潮の匂いの出所を探しましょう。
【呼吸法】を駆使し、【風使い】で空気を集め、【召喚】した妖精たちにも手伝いを。
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎
効果1活用
砦と軍を迂回しフランス国境地帯の調査
平穏結界を展開し、光学迷彩
飛翔、忍び足とダッシュを使い分け速やかに移動
地形の利用し道を選び
邪魔な小枝などはLiberで切り払う
これまでの情報通り、峠道を追い、水の気配を追い海へ直行だ
敵の気配に気づいたら迂回
時間と状況の許す限り、海岸の境界線を低空飛翔して追い、偵察し観察
境界が切り立った断崖なら、形も正確だろう
境界線の形状、角度、曲線など手掛かりを記憶術し紙に記録
「少しでも水辺の輪郭が知りたい」
速度を上げ海岸線を追えるだけ追い情報収集
出発点に目印を置き、帰りは同じく海岸線を辿り戻ろう
霧中、あらゆる感覚で性質と異変を感じ取る
味方と協力を
●al mare
――時間は限られている。
今回に限らず、アルプス山脈のフランス・イタリア国境地帯の調査では常にそうだった。主目的があるのなら全力でそれに集中せねば目的を果たす前に時間切れとなってしまう確率が高い。たとえばそれが、調査に協力してくれる動物を探すという行動であったとしても、それだけで終わってしまっては意味がないのだ。
ゆえに、
「迅速に霧の奥の海へ向かわなければ……!」
森の匂いをも色濃く包み込む深い霧に銀の髪と狐の尾を躍らせ、音羽・華楠(赫雷の荼枳尼天女・g02883)は雷速の勢いで霧の奥へ、奥へと脇目も振らずに駆けていく。涼やかな水の紗を突き抜けていく心地がするのはそれだけ霧が濃く、なおかつ華楠が爆発的な勢いで加速しているからだろう。
だが、世界で唯ひとり華楠のみが揮えるパラドクス、雷幻想・瞬動(ファンタズム・レギンレイヴ)が齎す雷速の体動は、あくまで戦闘時の効果を前提としたものだ。残留効果のように常時長時間での効力持続は望めず、ゆえに華楠は何度も何度も連続でパラドクスを揮うという消耗を強いられていたが、
「華楠さん、ここは【飛翔】に頼って消耗を抑えたほうがいいと思うが、どうだろう」
「エトヴァさん! ええ、そうですね。残留効果は私達ディアボロスの最大の強みですものね」
深い霧の中から不意に現れた蒼穹の彩、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)の言葉に頷いて、華楠もすぐさま彼と同じく低空での【飛翔】に切り替えた。星空散歩を楽しんだ仲間達が重ねてくれた【飛翔】は現状での最高時速350km、移動速度に不足はない。
二人が合流したのも偶然ではなく、華楠もエトヴァもともに先日の調査で海へ辿りつけることが確認された峠道を辿り水の気配を追っているがゆえの必然。合流によって彼女も己の【平穏結界】の裡に収めることで調査に横槍が入る確率を落とし、エトヴァは蒼穹の翼で翔けつつ霧の奥へと眼差しを向ける。
自然ならざる力を孕む霧は濃く深く、彼が活かす【完全視界】でも見通せないのはこれまでの調査と同じ。
然れど華楠が最も強く意識しているのは『匂い』だった。
改竄世界史の境界の海は『真水』で構成されている。最も記憶に新しいところでは吸血ロマノフ王朝のカスピ海以東調査、そこでも塩分を含むカスピ海の湖水がディヴィジョンの境界に至れば淡水となったことが確認された。
だが、先日のアルプス国境地帯、即ち此の地の調査報告書に『潮の匂い』を感じたという記述があったのだ。
もしもこの先の海が『海水』で構成されているなら、その海は改竄世界史の境界とは別のものなのだろうか。
「――と考えたのですが……潮の匂いは感じませんね。水の匂いと気配が強まっていく一方です」
「俺もその調査に参加していたが、もしかすると『海』という呼称で錯覚してしまった方がいらしたのかもしれないな」
高い練度まで呼吸法を究めた華楠でも胸に満たす大気や霧は何処までも『水の匂い』で、思い返せば自分自身は潮ではなく水の匂いを感じていたはずだとエトヴァは記憶の感覚を辿る。己がこの先の海へ至ったのはあの調査が初めてではないのだから、錯覚したのは恐らく別の誰かだったのだろう。
けれど匂いだけで決まるわけではない、と華楠は理解しているから。
――確かめに行きます。あの海の水が海水か真水であるかを!!
翔けるほどに水の匂いも気配も濃くなっていく。水の音が聴こえてくる。
霧を見通すことは叶わずとも一度ならず通った峠道を辿ることはエトヴァには難しくなく、やがて至るのは霧深い『海』。
ここだ、と告げるエトヴァに、ここが、と華楠は息を呑む。彼女がこの海へ至ったのは初めてのこと。
「俺は時間と状況が許す限り海岸線を追ってみるな。少しでも水辺の輪郭が知りたい」
「ええ、お気をつけて。私は……この海の水を、確認します」
深い霧の彼方は【完全視界】でも見通せなかったが、眼の前に広大な海が広がっていることは分かる。
だが華楠が風使いの技能で風を集めても、妖精達に手伝ってもらっても、少女を抱きすくめるのは水の匂いばかり。
呼び出した【フライトドローン】のひとつに目印代わりとしてこの場に留まるように命じたエトヴァが低空飛翔で海岸線を辿っていくのを見送って、華楠は陸地が消失して水面へと変わる境界でそっと手を伸ばす。指先を浸す。両の掌に水を掬う。
刻逆からまだ間もない折のこと、TOKYOエゼキエル戦争において海と化していた新宿へと文京区より探査船が出されたことがあったが、そのときには採取した水が消失してしまうという話もあった。この海もまた境界であるなら、水を持ち帰っての分析などは叶わないだろう。
ゆえに今ここで華楠自身が確かめることが肝心なのだ。
両手を唇に寄せて、掬った水をひとくち含めば、何処までも澄んだそれは。
――H2O。
脳裏に浮かんだのは、新宿島に流れ着いてから覚えた化学式。
真水だと感じられた。少なくとも『海水ではない』と『確認』できた。
「続いているはずの陸地が消失し、代わりに広がる『真水を湛えた海』……それならここはやはり」
別のディヴィジョンとの境界なのでしょうね、と華楠は迷わぬ声音で口にした。
何処まで海岸線を辿っても潮の匂いは一切感じられない――と確認しつつ蒼穹の翼の羽ばたきで霧を打ち、エトヴァは陸と海の境界を低空飛翔で翔けていく。カメラでの撮影が困難であるのは既に体感済みであるから、頼るものは究めた記憶術と、電子機器の精度を落とす霧も干渉できぬだろう、手書きで紙に記すという究極のアナログ手法。
練度の高い記憶術。
そして、覚醒する前より画家であり、今ではリアライズペインターでもあるエトヴァの画力をもってすれば、かなり詳細な海岸線の記録が得られると思われた。だが問題はやはり【完全視界】でも見通しきれぬ霧だろう。
「局所的なものはともかく、広範囲の海岸線となると完全な正確性は望めないだろうな……」
時間は有限であり、その間に辿れた海岸線が全体の何割程度であるのかを推し測るのも難しそうだ。然れど、己が書き記すものも決して無駄にはなるまいと強く意識して目を凝らす。
同時に己を取り巻く霧についても感覚を研ぎ澄ませてみるが、こちらは不思議な力が働いているのだろうという感覚以上の何かを得られることはなかった。
だが、潮の匂いが誰かの錯覚だと断定できるのとは逆に、基準時間軸から1793年に繋がった際の、時空の歪みと同じ感覚を覚えた――という、実際に両方を体感した華楠達の初期調査時の情報は信用できるものと感じられる。そう思い至ると同時、これ以上時間をかけるのは危険だと判断して、エトヴァは辿り来た海岸線を引き返し始めた。
現状ではこれ以上の調査結果を望むのは困難だろう。
だが、胸に燈るのはそればかりではなく、冒険心や知的好奇心を擽る、高揚感。口許には微かな笑みが浮かぶ。
――この地の調査では現状、これ以上の情報は得られないのかもしれないが、
――ここに限らず、刻逆やディヴィジョンというものについて、俺達が識るべきことはまだまだあるのだろうな。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【エイティーン】LV1が発生!
【平穏結界】LV1が発生!
効果2【リザレクション】LV1が発生!
【ガードアップ】がLV7になった!
ガーデニア・ラディーチェ
【可惜夜/5人】
あの悪趣味な人形達を全部壊せば良いのよね?
数が多いから、こちらも連携を意識して行きましょう
皆さんが攻撃に集中できる様に、ウェズリーさんや瑠璃青さんの負担を減らせる様に
敵を【撹乱】することを主眼に置いて攻撃しましょう
ロズ、行きましょうか
敵の連携や隊列を遮ることを目的に、白薔薇の雪嵐を【連射】するわ
場合によっては敵と味方を隔てる壁としても運用して、前衛をサポートできるように
こころさんやベガさんとも連携して
雪嵐を大きく派手に放つことを意識して、敵の意識を引き寄せられたら
敵の意識が逸れたのなら
畳み掛けるなら、今のうちよと皆さんに合図を
接近してきた敵は、思いきり雪嵐に巻き込みましょう
ウェズリー・ソーンレイ
【可惜夜】
戦う事は俺にとって、ただ生き残る為の手段でしかなかった
獣のような有様をみんなに見せる事が、怖い
……でも。今の俺は、守る為にここに在る
俺は前衛
皆に凶刃が届かぬよう細心の注意を払いながら戦おう
【ガード、凌駕率、反撃アップ】を駆使して守りに重きを置き
出来る限り庇えるよう、皆が傷つかないように
ココロやガーデニア、ベガの奇跡にも似た後押しを受けたなら
打ち据えられるばかりではない
此方に急接近してくる瞬間を狙い足元から【憤怨】の影伸ばして絡め取る
不意打ちのつもりだったろうけれど。俺はこの瞬間を待っていた
木偶人形の四肢を【腐食】させ鈍らせ
大剣を振り抜き【両断】し力任せに叩き折る
――ルリジョウ、斬れ!
雲母・ベガ
【可惜夜】
美しい星空も人々の安寧を取り戻す為にも
微力ながら皆様と砦への戦いへ赴きましょう
わたくしも絵筆にて援護いたします
戦場を見渡し
砦を護っている自動人形の総員を数え
…やはり数が多いのですね
堅牢な護りであるならば
こちらも連携を意識して声掛け合いなど
各個撃破や倒す敵の対象が決まったならば
白鳥の星を描くような
白い絵具で人形の姿を模倣し
鏡の如く敵を攻撃いたしましょう
星たちの加護もありますように、と
人形の、刃と化した両腕から
衝撃波が飛ぶこともあるようです
前衛を護るお二人も、皆様お気をつけください
近接が必要とあらば魔法剣でもお相手いたします
夜茨・こころ
【可惜夜】
物騒な心の読めやん人形
不気味で正直恐ろしいけど
皆が一緒に戦ってくれるなら
…ほら、怖さは泡沫みたく消えるから
中~後衛位置で広い範囲に応戦役
前は瑠璃青とウェズリーに任せるね
少し後ろから、けど心は常に一緒に
ばっちりサポートするから任せて
ぎゅっと魔法の杖握りしめて、気合十分
一緒に戦ってくれる皆が孤立しやんよに
翼で【飛翔】し、高い視点から広く戦況見据える
なるべく敵を分断するよに流星嵐を降らせよか
精一杯、沢山の魔力を込めて、削る
ニアの白薔薇やベガの絵が綺麗やから
つい見惚れてしまいそやけど…あかんね
人形も見惚れて気付いたら終いなったらええのに
――なんて訳にもいかへんから
最後の一人まで、確実に
水上・瑠璃青
【可惜夜】
見た事も無い敵さんだなあ
あれが、この世界の技術なのかな?
平安は勿論、新宿でも知らないもの。
どんな仕組みなのか気になるけれど……
今は、この場を凌がないとね。
あたしは勿論、前衛に立つよ。
後ろからの援護は皆さんに任せても良いかな?
前からの特攻は、あたしたちに任せて!
鍔から先が存在しない、あたしの刀擬き
その切っ先へと選ぶのは両刃造の太刀
別の奥義で纏めて一掃するのも良いけれど
皆さんを雨霰に巻き込むのは……ちょっと、ね?
あたしは兎も角、風邪を引いたら大変。
長い黒髪を結び終えたなら精神集中
――さ、一体ずつ的確に仕留めていこうか。
一刀両断、御覚悟どうぞ。
迅速に仕上げたら、楽しい時間を再開しようね。
ソレイユ・クラーヴィア
連携アドリブ歓迎
【賽】
次は砦攻めですね
しっかりと驚いて頂けるよう戦闘までは隠密に
フランス側から光学迷彩で回り込み強襲します
地上のシャムスとタイミングを合わせ挟撃
飛翔して上空からのご挨拶と致しましょう
宙に展開した鍵盤で「月虹」を演奏
喚び出した月の化身に命じて砦を攻撃させます
飛んだままでは良い的ですから
最初の一撃以降は高度を落とし、周囲の森の間を飛び回りながら演奏を継続
反撃の衝撃波は砦や木等の遮蔽物を利用して威力を削げれば僥倖
体力の削れた者から連携して確実に撃破していきます
シャムスの苦手属性はディフェンスに入ります
ここに陣を敷かれては、パルマの皆さんが安心して過ごせません
早急に片付けさせて頂きます
シャムス・ライラ
【賽】
仲間と情報共有、連携
光学迷彩も利用し木の間や物陰に潜み
と言って攻撃すれば向かってくるだろうから
敵周辺に罠生成で泥土を詰めた大小の落とし穴を複数作成
ソレイユが空中なら私は地上から
星の銀で無数の盾を生成し展開
シールドバッシュのように盾を打ち付け攻撃を
上下から挟撃される気分は如何?
敵の攻撃は罠で速度を減じ
遮蔽物や盾で弾き、ジャンプ、エアライドで間合いを取り可能な限り損害を減らす
ソレイユと息を合わせ、確実に一体ずつ倒す
敵の数が多ければ罠や盾で区切るようにして動きを押さえ
敵に囲まれる事なく少数殲滅を繰り返す
ソレイユの苦手能力はディフェンス
その他有効そうな残留効果は全て使用
アドリブ等歓迎
レイ・シャルダン
【黎明】で参加です。
チーム外連携・アドリブ歓迎です。
コードネーム:スカイレイダー
一旦砦を迂回しフランス側から砦を強襲
全身機械人形。
ドイツと言い、グランダルメと言い、
最終人類史が出来ない事をいとも簡単に。
少し…嫉妬してしまいますね??
ふっと微笑んで
右手にシュトライフリヒト、左手にシャルダントを構え
武装をAIサイバーゴーグル【Boeotia】に制御させパラドクスを発動
アクロヴァレリア "Einheit_02"を点火して突撃します。
敵の電光石火の一撃は見極めシャルダントで冷静に受けて流し
敵の守りの隙を縫う様に剣を通します。
仲間の援護を頼りに攻撃を加え
また、仲間が援護を必要としている時は手を貸します。
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
【黎明】
連携アドリブ歓迎
完全視界使用
【パラドクス通信】を共有し、全体の統率と意思疎通がとれるよう配慮を
積極的に情報共有
味方と砦を一旦迂回し、フランス側から
タイミング合わせ強襲
【飛翔】し空中戦
双眼鏡と使い魔使役で偵察、接近時にも敵味方の布陣を把握し伝達
初手は機動力で強襲、派手に砦にも攻撃を加え、混乱を広げよう
特に味方のいない方角へ注意惹き撹乱攻撃
初動を有利に
以降は、森や地形の利用して飛び回り
敵の集団行動を乱させ接近をかわし
飛び出した敵は森へ誘い込む
狙い合わせ数を減らし
突出はせず空中、地上の味方と連携
チーム問わず戦況を見て臨機応変に援護を
反撃は魔力障壁を展開、周囲を観察警戒、飛翔とエアライドで回避
ラズロル・ロンド
【黎明】
アドリブ歓迎
砦の襲撃はフランス側からだったね
僕は地上から敵の惹き付けを行おう
【モブオーラ】で森に潜むけど…砦強襲でモブオーラ頼りにツッコんだら囲まれた事があったから慎重に
砦内じゃモブにはなれないよね
草陰に見付からないよう隠れ忍び足も使い1体1体惹き込んで仕留めて行こう
風使いで音を立て覗き込んだ所をアサシネイトキリングで暗殺
物音や反撃に集まりだしたら草陰を移動し集まった敵を仲間と屠って行く
外に出て来ない場合は入口や窓から覗き込み
おーい!と声を掛けて森へ逃げよう
出て来た所を回り込んでアサシネイトキリングだ
空の仲間と連携し
P通信で敵の数、場所、地上の状況を情報共有
敵がわんさかこれば援護を頼む
アストライア・ノートン
【黎明】
アドリブ歓迎
方針
一旦砦を迂回しフランス側から砦を強襲する
拠点強襲は敵に気づかれず、迅速に終わらせることが肝要。
いわゆる潜入任務の趣があるゆえ、今回は拳のみで戦っていこう。
【情報収集】【地形の利用】で砦周辺の巡回兵をやり過ごしながら進み【グラップル】による登攀で忍びこむ
敵の集団と鉢合わせになったらすかさずパラドクスを発動し、コインが落ちきる前に【強打】の拳と【グラップル】からの投げ技、関節技でノックダウンしコインを回収。
砦の中をしらみつぶしに探索していこう。
人形と言えど人型、ならば様々な対人格闘術が試せそうであるな!フハハ……おっと高笑いは控えておこう。バレてはイカンしな。
アンゼリカ・レンブラント
砦を迂回しフランス側から砦を強襲だね
【完全視界】で可能な限り敵の動きを把握し、
皆とタイミングを合わせ仕掛けるよ!
【飛翔】して最大スピードで接近し、光剣で斬るっ!
敵ジャンプ力はあるようだけどね
空を高速で駆けまわる私をとらえきれるかなっ!
反撃もしっかり光剣とオーラで凌ぎ、致命打を防ぐよ
【活性治癒】の恩恵も受ければきっと大丈夫
宙でエアライドも駆使し跳ねトリッキーな動きで翻弄して
戦闘時は仲間と連携攻撃は勿論、
溜まっている残留効果を十分に生かしていこう
高めた能力と攻撃力を生かして敵を落とし数を減らす
仲間とディフェンスし合い互いの弱点をカバーするね
動きの弱った敵へ呼吸を整えた
《飛翔光剣斬》で切り捨てるよ!
空木・朱士
連携、アドリブOK
【箱家】
砦を迂回してフランス側からの強襲。
森から敵に気付かれないギリギリの距離まで近付いたら、仲間と初手のタイミングを合わせて態と砦に向けて金翅鳥を派手にぶっ放す!
出てきた敵を倒しつつ混乱に乗じて
はいはい、お邪魔しますよー。
と地上から砦に突入。
パラドクス通信で常に仲間同士で連絡を取り合い互いの位置や敵の動きなど情報共有しながら砦内の敵に対応。場合によっては危うい仲間のアシストに向かう。
珠の防衛に感謝しながらも女の子に守られるだけじゃカッコ悪いからな、攻撃は任せろ。
近距離はなるべく葵に任せて中遠距離の敵は金翅鳥でぶっ飛ばす!
南雲・葵
【箱家】アドリブ、連携歓迎
砦を攻略かー兵法とか詳しくないからなー
ここは二人に任せとこ。
こう数が多いと討ち漏らしが有るといけないよね
姉貴、紅と連携して死角のフォローと全体の把握頼む
さあて、いっちょやったりますかー!
使える残留効果は全部使って戦闘を有利に運ぼっか。
基本はバールのようなものをバットに見立てての攻撃や受け流し
なるべく複数の敵を巻き込んで手数で勝負
珠の防衛、マジで助かる!
オーライ、コッチに飛ばしてくれた奴は全部まとめて打ち返してやんよー!
降ってくる場所がわかンならフライの打ち上げは任せとけッ!
支倉・珠
【箱家】
朱士さんの先導で砦に接近。
どうやって侵入しましょう?開錠なら支倉におまk…え?ちょっと朱士さん?(うだうだ考えてるうちに金翅鳥で男開錠され)
…ともあれ、広げられた入口から来た敵に頭を切り替え戦闘に。
私は葵さん、朱士さんに迫る攻撃から護衛し、隙あらば盾で攻撃。
守りはお任せを。
こちらに迫る敵は盾の底で床を叩き注意を向け、大振りを誘います。
不自然に長い刃の腕での二足歩行はさぞバランスが悪いでしょう。
盾で刃を殴り、体勢を崩した所をシールドスマイトで。
朱士さんや葵さんの方向に吹き飛ばします。
「スマイトッ!これ、お願いしますっ!」
ミニドラの紅さんは哨戒。
増援や敵の逃走、砦の罠が見えたらお知らせで
シル・ウィンディア
さて、それじゃお仕事開始と行きましょうかっ!
砦を迂回して、フランス側から奇襲をかけるよ
移動時は、飛ばずに目立たないようにフード付き外套をかぶって移動だね。
エアライドで最適なルートを導き出して動くよ。
奇襲ポイントにたどり着いたら…
空中戦、解禁してもいいよね?
上空に舞い上がりすぎない程度に高度に注意して空中戦。
せっかくだから、珍しい魔法で行きますかっ!
敵陣に突っ込みすぎないように注意し、残像を生み出しつつ攪乱機動を行って、高速詠唱を開始。
敵を視界におさめたら、炎氷輪舞奏を開放っ!
さぁ、炎と氷のダンス、目いっぱい楽しんでいってねっ!
敵パラドクスにも反撃を行っていくよ
さぁ、本番まであと少しだねっ!
竜城・陸
砦を大きく迂回し、フランス側へ抜けてから接近
他のディアボロスと合流して協力したいね
襲撃のタイミングも、できるだけ合わせたい
【飛翔】の効果も併用し
相手の虚をつく速さで接近、奇襲をかけるよ
創出する盾で相手の放つ衝撃波を逸らしつつ
返す刃は中空、相手の眼前に創出した光の槍
避けられるものなら避けてみるといい
――逃がすつもりはないけれど
近づかれたなら創出した武具を以て近接戦で打ち払うよ
砦は守るほうが有利、とも言うからね
周囲のディアボロスとは必ず連携し合って戦闘を運ぶ
敵の陣容に応じて位置取りに気を配り
死角をカバーしあうのは勿論
標的を合わせたり、必要に応じ《ディフェンス》を行うなど
積極的に力を合わせたいな
●Chi ben comincia è a metà dell'opera.
森は深く、然れど例の霧は届かぬ地。
瑞々しい夏緑を深く茂らせた森の中は色濃い影に満ち、梢の合間から降る細い陽射しが痛いほど眩く煌いている。
だが樹高の高い森の樹々が不意に途切れて開ければ、そこに存在するのは木造の砦。急拵えと思しきそれは大して強固とは見えなかったが、複数の部隊を収容する前提の砦であるらしく、それなりの規模があった。外周には木造の防壁をめぐらせ、その裡には見張り台を備えた二つの塔を持つ砦。なれど、敵部隊の意識がイタリア方面へ向いているのに対して、大きく砦を迂回したディアボロス達は既に砦のフランス側だ。
森を切り拓いて築かれた砦の上に広がるのは鮮やかな青の空。
その夏空から、嵐が訪れた。
「――俺はまず、最高速度の【飛翔】で『砦そのもの』を強襲するつもりだ」
同様の方がいればタイミングを合わせたいと続けたエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)の声を皆へ届けたのは、【パラドクス通信】がディアボロス達の許へ出現させたインカム状の通信機。双眼鏡で見定めた砦の様子も伝えた直後、最高時速450kmに達した【飛翔】で幾つもの影が夏空を突き抜け防壁をも超えて、
蒼穹の天使が蒼き雷を砦へ撃ち込むと同時、炎と氷、そして光が叩き込まれる。
眩く爆ぜる蒼雷、紅炎、白氷に――何処までも純粋な、光の輝き。
「空中戦、解禁っ! 今回は炎と氷でめいっぱい暴れちゃうからねっ!!」
「初撃から全力全開っ! さあかかって来い、ヴォルティジュールドール達っ!!」
森に身を潜めての地上移動から一気に夏空へ解き放たれたシル・ウィンディア(虹色の精霊術士・g01415)は、まるで心の扉まで解き放たれた心地。燃ゆる炎と凍てる氷の魔力弾を二つの塔へと叩き込んだなら、背に咲かせた一対の光の翼で翔けたアンゼリカ・レンブラント(黄金誓姫・g02672)がエトヴァの蒼雷で屋上部が爆ぜた砦へ巨大な光剣を打ち下ろした。
凄まじい輝きの斬撃が斬り裂いた壁面と床の亀裂から何体も零れ落ちて来た自動人形達が事態を把握するより速く、誰かの月光と星々の輝きが外周の防壁を閉ざす門へと天地から喰らいついて、
「礼儀正しい訪問なんて柄じゃないしな、派手にお邪魔しますよ――っと!!」
地表すれすれの【飛翔】で一気に門へ迫った空木・朱士(Lost heart・g03720)の裡では動力炉が灼熱を燃え上がらせる。解き放つは烈火の翼で羽ばたく鳥、彼の金翅鳥(キンジチョウ)が崩壊した門を盛大な爆発で吹き飛ばせば、
『敵襲・敵襲!!』
『想定外・想定外!! パルマ公国方面ではなく・フランス側から・襲撃を・受けています!!』
漸く事態を把握したらしいヴォルティジュールドールが砦やイタリア側の防壁からわらわらと此方へ向かってきた。
「なんという男前な開門……! 紅さんは周囲の警戒お願いします!!」
「姉貴も死角のフォローとか頼むな! さあて、いっちょやったりますかー!!」
だが爆風で夏空に舞った巨大な閂(かんぬき)を見て男前な開門で正解だと悟った支倉・珠(赤盾・g04907)が即座に盾を構えて敵を迎え撃ち、楽しげに双眸を煌かせた南雲・葵(お気楽姉弟の弟の方。・g03227)もバールのようなものを手に朱士の突入とともに敵前へと躍り出る。左右に展開するのは紅色のミニドラゴンと黄の花を咲かせるオラトリオ。然れど、
「その姿での二足歩行はさぞバランスが悪いでしょう……って、ちょ、何ですかそのジャンプ!!」
両腕の長大な緋色の刃がアンバランスと見えた自動人形は一瞬で飛翔と見紛うばかりに大きく跳躍し、珠もミニドラゴンも予測しきれぬ機動で頭上から襲いかかってきた。だが、緋色の刃と激突したのは光の剣と黄金の輝き、
「この人形達ジャンプ力がすごいみたいだからね! 地に足をつけるのは一瞬だけ、みたいな機動もできると思うよ!!」
「纏まって掛かって来られると厄介だし、砦は守るほうが有利と言うからね。確り協力しあって速攻で殲滅をめざそうか」
全速の急降下でディフェンスに入ったアンゼリカ、事前の敵能力情報から的確にその特性を読み取っていた黄金誓姫が緋の刃を受けてその威力を軽減した光の剣で反撃を喰らわせた刹那、一瞬の間隙を狙った別の人形からの衝撃波を彼女に変わって引き受けた竜城・陸(蒼海番長・g01002)が穏やかな微笑でそう紡ぐ。
胸を斬り裂くはずだった衝撃波を肩へ逸らしたのは瞬時に陸が創出した光の盾、弾けたと思った光が即座に槍を形作って、敵の反応を一切許さぬ速度でその胸元に煌く金色の歯車を撃ち抜いたなら、
「成程、形は『人形』でも、人間とは異なる動きも可能だと思っておくべきですね。ありがとうございます!」
二人の僅かな攻防でこの敵との戦い方を学んだ珠が電光石火の勢いで襲い来た自動人形の一撃から今度こそ己の盾で仲間を護り抜く。真っ向から緋の刃を受けとめたのは赤き盾、それでも全身を貫かんばかりの衝撃を少女が堪えれば、
「さっすが珠! 学習能力高いっていうか呑み込み速いな!」
「っしゃ! この調子でどんどん倒していこうぜ、人形どもが態勢を整えちまう前にな!!」
一撃離脱とばかりに跳び退った敵を間髪容れずに追うのは珠に護られた葵、彼我の距離を殺した刹那に思うさま振り抜いた鉄梃で派手に自動人形を吹き飛ばしたなら、即座に朱士が夏風に羽ばたかせた火の鳥が爆発とともに獲物を撃墜した。
「あっ、でも突出しすぎないようにしたほうがいいと思うよ! 攪乱は任せてっ!!」
「軍属なら当然集団戦に長けているだろうしな、此方が孤立させられないようにしつつ掻き乱していこう」
爆炎も爆風も迷わず高速飛翔で突き抜けたシルの右手には紅蓮に輝く炎、左手には青白く煌く氷、鮮やかな急旋回で自身の残像の輪舞を宙に描いて自動人形達の視線を惑わして、一瞬で加速した低空飛翔で敵勢の合間を翔け抜けた虹色の精霊術士が灼熱と氷結の魔力弾を数多炸裂させれば、砦や防壁の瓦礫の合間を縫うがごとき飛翔で人形達を攪乱するエトヴァが眩い炎や氷が爆ぜた標的めがけて蒼き雷を奔らせる。
――ヴォルティジュールドール達は、事前情報のとおりそれなりに優れた偵察技能を備えている。
ならば『偵察される』ことを察知するのにも長けており、【使い魔使役】で操る動物の偵察であれば早々に露見して無辜の命を犠牲にしてしまう可能性が高いと見るべきだろう。ゆえに偵察は敵を遥かに凌ぐ技量を持つエトヴァが強襲前に双眼鏡で行ったのみ。然れど、それで十分であった。後は逐次【パラドクス通信】で戦況も情報も共有していけば良い。
突入する仲間がいる以上、敵は彼らの排除を最優先事項とするはずだ。
「状況的に敵を森へ誘い込むのは無理そうだ。君の暗殺術ならこちらでも冴えを見せるんじゃないか、ラズ?」
「了解。エトヴァにそこまで言われちゃ、応えないわけにはいかないよね」
戦況とともにそんな言葉がインカム越しに届けば、森に潜んで敵を待ち構えていたラズロル・ロンド(デザートフォックス・g01587)も吹き飛ばされた門から防壁内へと滑り込む。忍び足を使おうにも技能を持ち合わせない身にとっては、仲間達が敵勢に猛攻をかけるこちらのほうが却って動きやすい気さえした。
嘗て【モブオーラ】を頼りに潜入した敵地で、奇しくも今回の敵と同じヴォルティジュールドール達に囲まれた時の記憶が脳裏をよぎれば苦笑も零れたけれど。たとえ【モブオーラ】の効果を活かせずとも、心から信じられる相手との連携こそが、如何なる戦い、如何なる戦場でも確実に戦況を有利にしてくれる切り札なのだ。
夏空を翔ける蒼穹の天使が澄み渡る声音で皆への鼓舞を歌い上げる。
Es ist Zeit――dass wir zusammenstehen.
歌声が震わす大気から自動人形達めがけてエトヴァが振り注がせるのは激しい蒼雷、派手に爆ぜるその輝きと音に紛れつつ光と影の狭間をすり抜けて、彼が既に燈していた命中強化の加護を掴んで自動人形の背後を獲ったラズロルは、雷に灼かれた獲物を必殺の一撃で仕留めてのけた。瞬間、数体の敵の意識がラズロルへと向いたが、すかさずエトヴァの蒼雷と陸の光槍が迎え撃つ。
「避けられるものなら避けてみるといい」
――逃がすつもりはないけれど。
黎明の双眸が細められた刹那、陸の本質たる光が結晶したのは自動人形の真正面。恐らく敵は光り輝く鋩を認識する暇さえなかったろう。反撃も次撃も許さぬ光がヴォルティジュールドールの顔面を貫いた次の瞬間。
夏空から流星の嵐が降り注ぎ、
凍てる白薔薇の嵐が戦場を染めあげた。
●Batti il ferro quando è caldo.
巻き上がる炎の奥から獣が目を覚ます。燃え盛る焔の裡から咆哮する。
魂の芯に燈るその感覚が真実であるのか錯覚であるのかは判然としなかったが、ウェズリー・ソーンレイ(餞・g07086)はそれでも迷わず大切な仲間達の盾となるべく前線へと馳せる。嘗て剣闘士として生きた身にとって戦う事はただ生き残る為の手段でしかなく、獣のような有様を皆に見せる事を思えば心が怖れで凍えそうになるけれど、
「……でも。今の俺は、守る為にここに在る」
「うん、あたしも皆さんも頼りにしてる。援護は後ろの皆さんに任せるね、前からの特攻は、あたしたちに任せて!」
肩を並べて前線へ躍り出る水上・瑠璃青(縹の疆界/・g00530)のまっすぐな声音が怖れを霧散させてくれる。瑠璃と青で高く結った漆黒の髪を躍らせつつ馳せる瑠璃青の手には鍔から先が存在しない刀擬き、凛然たる詠唱とともに両刃造の太刀が顕現すれば、重厚なる一閃を放つ相手は、平安の世でも新宿島でも御目にかかったことのない不気味な自動人形(オートマタ)。
真珠色とも象牙色とも見える躯体を彩る金色の可動部、顔さえ大きな歯車を見せるのみの人形達はあまりにも得体が知れず夜茨・こころ(La nuit étoilée・g06390)の心を竦ませるけれど、暖かな光となってくれる仲間と一緒に戦えるなら、
――ほら、怖さは泡沫みたく消えるから。
「こっちも任せて! ばっちりサポートさせてもらうんよ!」
「ええ。あの悪趣味な人形達を全部壊せば良いのよね? ロズ、行きましょうか」
彗星の煌き滴る翼で舞い上がるは鮮やかに青い夏の空、然れど一瞬で戦場を見渡したこころが気合とともに握る惑星連なる魔法の杖、星々に輝く魔力を思うさま凝らせれば、遥か遠い彼方、壮大なる宇宙から、こころの魔法に呼応した星々が流星の嵐となって敵勢に降り注ぎ、
愛おしく触れ合わせた手からガーデニア・ラディーチェ(クチナシの花護り・g03839)が魔力を注ぐままに、麗しき青年の自律型人形が揮う凍てる純白の薔薇、白薔薇の雪嵐が冷たい花弁の刃でヴォルティジュールドール達を切り刻むように戦場を染めあげれば、白薔薇と同じく真白に煌く絵具が夏の陽射しに躍った。
「わたくしも援護いたします、星たちの加護もありますように……!」
夏空に白鳥の星を描くように雲母・ベガ(胡蝶の夢・g06232)が揮った絵筆が描きだしたのはヴォルティジュールドール、大きな緋色の刃で羽ばたくように翔けたベガの『作品』が瑠璃青とともに敵へ斬り込んでいく。
敵味方ともに時空を歪め物理法則も書き換えながら戦う逆説連鎖戦、ゆえに最前線で刃を揮う仲間がいても敵の刃は後衛や上空の仲間にも届き、敵からの攻撃は仲間がディフェンスしてくれるとしても、此方からの攻撃に対する反撃をディフェンスすることは叶わない。反撃の衝撃波に斬り裂かれつつも、ベガは気丈に前を向いた。
逆説連鎖戦の戦場に立つ以上、傷つくことは避けられない。
――それでも、パルマ公国の人々が安寧の中で美しい星空を見上げることができるよう、
――わたくしは、わたくし達は、戦い抜いてみせましょう。
「拠点強襲は敵に気づかれず、迅速に終わらせることが肝要……と余は心得ていたのだが、皆は違うようであるな?」
「ええ。時先案内人さんも皆さんも、強引に攻めるとか猛烈な勢いで襲撃するという意味で強襲と言っていると思います」
華やかに煌びやかに彩られ、敵味方の力が激突する戦場に、アストライア・ノートン(アメリカ帝国皇帝・g04806)も紅の髪を鮮やかに舞わせてその身を躍らせる。本来ならば砦に忍び込むつもりであったが、皆との認識違いに気づいて単身行動を避けたのは賢明な判断であった。
この砦を護るヴォルティジュールドールはトループス級であるが決して雑魚ではない。アストライアの攻撃から四割以上の確率で反撃側優勢を獲る敵であるから、単身で大勢の敵集団と遭遇していれば流石の彼女も勝ち抜けていたか判らない。
此方スカイレイダー、カイザーと合流しました――とインカム越しにフェーデルことエトヴァに伝えて、ふ、と微笑を零したレイ・シャルダン(SKYRAIDER・g00999)が蒼きサイバーゴーグル越しに見据えるのは全身が機械の自動人形達。
機械化ドイツ帝国といい、断頭革命グランダルメといい、
「最終人類史が出来ない事をいとも簡単に。少し……嫉妬してしまいますね?」
「何、最終人類史の技術とてそう捨てたものではあるまい」
羨望と憧憬を綯い交ぜにレイが呟いた次の瞬間、夏空にきらりと舞ったのはアストライアの指が弾いた1ドル銀貨、伝説の決斗を再演するための儀式が自称皇帝の身体能力を限界までも高めたなら、不敵な笑みとともに地を蹴った彼女の拳が間髪を容れずに強打したのはヴォルティジュールドールの横っ面。
流れるような投げ技で地へと叩きつけた自動人形にアームロックを決めるも、そのまま反撃を喰らわせてくる相手のKOは叶わず、然れど夏空に舞った銀貨が大地に跳ねると同時にアストライアから逃れて跳び退った標的をめがけ、漆黒のフライトデバイスから蒼炎を噴出させたレイが突撃する。
――制御は任せた! 人類の叡智を見せてやる!
パラドクスを発動した瞬間にレイの全武装はAIサイバーゴーグル【Boeotia】の自動制御下、鮮烈な輝きが激突したと見えた刹那には、白銀のガントレットが反撃を受け流して威力を軽減し、白銀のレイピアが敵の胸に煌く金色の歯車を貫いて。
命尽きた自動人形が、がしゃりとその場に頽れた。
白銀の剣閃が更なる敵一体を貫けば、続け様にその獲物へ襲いかかったのは月光と星々の輝き。
初撃では天地から防壁の門へ喰らいついたそれらは、ソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)が宙に展開した光の鍵盤で奏でる幻想ソナタが顕現させた月の化身の一撃と、シャムス・ライラ(極夜・g04075)が星の銀を生成し夜空の星々さながらに展開した無数の盾の打撃、煌きの裡でヴォルティジュールドールがまた一体崩れ落ちたなら、
彼方から跳び込んでくる幾つもの敵影を捉えたソレイユの声音が響いた瞬間に、
「砦の向こうから新手です、シャムス」
「了解。あの位置なら罠で一瞬足止めできると思うから、その隙に」
撓やかにシャムスの手許で踊る鞭、飛蛇めいたそれが地を打った途端、空中へと奔った幾重ものロープが自動人形達を絡め取った。【トラップ生成】で展開した罠地帯、最初に思いついた罠は落とし穴だったが、竜翼翔破並み、即ち飛翔と遜色ない跳躍が可能な相手ではほぼ意味を成さないと気づけば即座に落とし穴は切り捨てた。
勿論この罠でも自動人形達の動きを鈍らせることができるのは僅か一瞬、然れど二人にはその一瞬で十分すぎるほど。
高度を落とした飛翔で翔けるソレイユの両手の甲と掌を包むのは夜色の音楽の泉、白い指先が光の鍵盤に躍れば奏でられる旋律が穏やかながらも荒々しい月の化身を結晶させて、夏の風と陽射しを撫でたシャムスの陽に灼けた指先は次々と星の銀を結晶させていく。天地から月光と星々の輝きが自動人形達を挟撃すれば、ビブラフォンめいた美しい音色を響かせる星の銀の盾と幻想ソナタの旋律の協奏に思わず二人が笑み交わしたのは一瞬にも満たぬ僅かな間だけのこと。
月星の挟撃を辛くも凌ぎ切った敵一体が反撃に続け攻撃の衝撃波を撃ち込んで来れば、咄嗟に翔けたソレイユがシャムスの分まで受けとめて、鮮やかに爆ぜた己の血潮が透過していく光の鍵盤に十指を躍らせた。
――ここに陣を敷かれては、パルマの皆さんが安心して過ごせませんからね。
――迅速に早急に、片付けさせていただくとしましょうか。
●Dopo la tempesta viene il sereno.
派手に盛大に天地で荒ぶ嵐は、自動人形達に部隊としての態勢を整える隙を与えることなく蹂躙していく。
緋色の敵刃が夏風を一瞬で薙げば、迸るのは鋭くも烈しい衝撃波。然れども朱士めがけて奔るそれの射線に一片の躊躇いも無く赤き盾を構えた珠が跳び込んで、
「これも止めてみせます! 守りはお任せを!!」
「ありがとな、珠! 攻撃は任せろ!!」
真っ向から爆ぜた衝撃波、盾でも殺しきれぬその痛みを仲間達が幾重にも重ねた護りの加護で少女が抑え込んだなら、己を護ってくれた華奢な背の後方から跳び出した朱士が口の端を擡げ、紅き双眸で捉えた自動人形へ輝ける灼熱で襲いかかった。彼の気迫そのままに夏風を轟と焦がして翔ける炎の鳥と激突するのは猛然たる勢いで跳躍した人形の緋の刃。
苛烈な爆発を突き抜け爆ぜたパーツの煌きを振り撒きつつもヴォルティジュールドールは朱士に反撃の刃を振り下ろすが、その一瞬に好機を掴み獲った珠が赤き盾と共に吶喊する。妖精と小竜の力も籠められた盾ごと体当たりする勢いで渾身の力を乗せて、
「スマイトッ! これ、お願いしますっ!!」
「オーライ、コッチに飛ばしてくれた奴は全部まとめて打ち返してやんよー!!」
――場外まで吹っ飛びな!!
全身全霊で自動人形を吹き飛ばしたのは、バールのようなものを金属バットよろしく構えた葵の許、鮮やかな黄の花吹雪を舞わせるオラトリオの応援を背にした彼が迷わず鉄梃をフルスイングしたなら、夏空までも響き渡る心地好い打球音とともに炸裂したパラドクスは一発逆転本塁打(サヨナラホームラン)。
打たれた球もといヴォルティジュールドールは防壁のイタリア側を超えた上空で盛大に砕け散り、
「これはまた、見事な息の合い方だな」
「ええ。私達も負けていられませんね」
思わず眩しげに双眸を細めて見送ったシャムスとソレイユは今散り果てた自動人形と入れ替わるよう跳び込んできた敵勢を瞬時に空中で幾重にも交差したロープの罠で押しとどめて、他よりも一瞬速く罠を突き抜けて来た人形の電光石火の一撃を、闇に馴染む黒衣を翻したシャムスが弟のように想う友の盾となって受けとめた。
緋色の稲妻めいた剣閃の威を半減させたのは瞬時に展開した星銀の盾、痛烈な反撃をそのまま攻撃へと繋げて、次々と罠を突き抜けてきた人形達を星々の輝きが叩き伏せれば、流石です、と微笑したソレイユのもとから狂おしいほどに美しい音色で溢れだす幻想ソナタの旋律の奔流とともに月の化身が馳せる。
輝ける嵐の名前こそがディアボロス、月光と星々の輝きが自動人形達を呑み込み潰えさせていく様を夕焼けと朝焼けを甘い煌きに封じた眼差しで空から見定め、こころもまた流星の嵐を戦場に躍らせた。とめどなく降り注いでは人形達を削っていく涙星(ラルム)、星々の煌きと重なり合うように凍てる白薔薇の嵐が舞えば、
「いっそ人形達も、ニアの白薔薇やベガの絵に見惚れたまま終いなったらええのに……」
「ふふ。こころさんの流星も見惚れるくらい綺麗だと思うけれど、この人形達にそんな情緒は期待できなさそうよね」
「どうしたって分かり合えない、そんな相手なのですね……」
知らずこころの花唇から零れたのはそんな言の葉、茜と夜空の双眸を和らげたガーデニアが薬指に永遠の薔薇が咲く左手をそっと伸べれば、今は意志なき人形として添う彼女の愛しいひとが揃いの金の環きらめく左手を重ね、ひときわ凛冽に吹き荒ぶ白薔薇の雪嵐がヴォルティジュールドール達を呑み込んで翻弄する。
なれど荘厳なほど美しい白薔薇の雪嵐を突き抜けて来た自動人形達、その一体を艶やかに背に咲く黒揚羽の翅を震わせつつ真白な絵具で鏡像のごとくベガが描いた『作品』が迎え撃ち、疾風より速く電光石火の勢いで跳び込んできたもう一体の緋の稲妻のごとき一撃と焔色の瞳でまっすぐ敵を見据えたウェズリーの憤怨(ノロイ)の影が交錯した。
大切な仲間達の盾となって幾度も受けとめてきた人形達の攻撃、
「不意打ちのつもりだったろうけれど。俺はこの瞬間を待っていた」
――覚えている。何もかも。
然れと此度はただ受けとめるのではなく真っ向から立ち向かい、怨嗟のごとき呪詛を凝らせた影でウェズリーは自動人形の四肢を絡め取る。人形とはいえクロノヴェーダとして命を持つ相手に【腐食】は効かないが、その援けがなくとも竜は迷わず抜き放った大剣を一閃する。
当然ながらパラドクスでない攻撃では敵に傷ひとつ負わせられないから、憤怨(ノロイ)の怨嗟を、呪詛を、鈍くきらめく刃に乗せて振り抜いて、憤怨という名の激情のままにヴォルティジュールドールの両脚を叩き折れば、
「――ルリジョウ、斬れ!!」
「ええ。一刀両断、御覚悟どうぞ」
衝撃で仰向けに倒れ込んでいく自動人形めがけ、瑠璃青が高々と跳躍した。
――青の当主の名において、一の祈りを賜う。
――鉄紺の志と眠りし誉が刃よ、鋼の如き礎を水上の楔とし――今代の青に応えよ。
刃なき鍔から顕現するのは鋭利にして怜悧な両刃造の太刀、それそのものではなく、太刀を揮う瑠璃青の意志と覚悟の重さゆえに厳かで重厚なる一閃で真っ二つに断ち割られ、自動人形は永遠の終わりを迎えた。
嵐の彼方に晴れ間が見えて来る。
漆黒のフライトデバイスから蒼炎の軌跡を描きつつ戦場を翔け、自らも自動人形達を蹂躙する嵐となっていたレイは数多の敵影が大分まばらになってきた様子に透きとおるような翠の双眸を淡く和らげた。然れど勿論最後まで油断するはずもない。
だが、鋭く襲い来た衝撃波に白銀のガントレットを翳さんとした刹那、視界いっぱいに広がったのは深藍の竜翼。
「こういった機会にはやっぱり、先輩らしいところを見せておきたくてね」
「――陸さん! ありがとうございます!!」
後輩を迷わず背に庇った陸の穏やかな声音が届けばレイは輝くような笑み咲かせ、衝撃波の威を半減した彼の光盾が輝ける反撃の光槍となって翔ければ光を追う心地で夏の陽射しを突き抜けて。陸の光槍が自動人形の喉を貫通した次の瞬間、金色の歯車がきゅるりと廻ったその顔面に白銀のレイピアを突き立てれば、また一体の人形ががしゃりと頽れていく。
蒼穹の双眸を細めれば、微かに奔る煌きは銀の彩。
「どうやらこのまま押し切れそうだな。最後まで気を抜かずにいこう」
「だね、最後の一体まで確実に仕留めなきゃ!」
なれど歌声を空間に響かせるエトヴァが解き放つ苛烈な雷は何処までも眩く輝く蒼の彩、夏空を翔ける彼とインカム越しに言葉を交わしたラズロルは紫水晶の双眸を強く煌かせ、密やかに駆けた砦の瓦礫の陰からひらり跳び出せばそこはもう獲物のすぐ後ろ。蒼雷の直撃を受けた自動人形のうなじを貫けば相手は崩壊するようにがらがらと頽れて。
弾き飛ばした1ドル銀貨が夏空にきらきらくるくる躍れば、
「フハハ! 人形と言えど人型、様々な対人格闘術を試させてもらったこと、余は感謝しておるぞ!!」
隠密行動の必要がなくなったがゆえに心のままに高笑いを響かせるアストライアが、やはり蒼き雷に打ち据えられた人形を新たな実験台に抜擢。鮮やかにフェイスロックを決められたヴォルティジュールドールが力尽きれば、自称皇帝は満足気に笑んで、夏空から落ちて来た銀貨を片手で掴み獲った。
強い煌きが、逆光に躍る。
一瞬で遥か高みに至った跳躍から急降下する自動人形の鋭い突きはアンゼリカの脳天を狙ったものなれど、全速で翔けつつ不意に【エアライド】の空中跳躍で宙を跳び退れば、咄嗟に時空を歪めきれなかったらしい敵の刃が二の腕を掠めていった。
時空の理を超え物理法則まで書き換えながら戦う自分達ディアボロスは通常の生物とは異なる存在で、【活性治癒】がその傷を癒すことはないけれど、防御強化や反撃強化の加護が受ける痛手を軽減してくれる。敵を倒せば【グロリアス】が、敵の反撃も次撃も捻じ伏せる痛打を決めれば【ドレイン】が、痛手を回復してくれる。
皆で積み重ねた残留効果が追い風のように感じられれば、今日もいっそうアンゼリカの裡に勇気が漲る心地、迷わず翔けて一呼吸で己が息吹を調えれば掌中には身の丈を超える巨大な光剣が咲き誇った。
「追いかけっこもこれで終わりだね、斬り捨てさせてもらうよっ!!」
光の翼で思うさま加速して、打ち下ろす大いなる輝きが自動人形の肩から脇腹までを断ち割ったなら、空中分解した人形がばらばらと地に落ちて、煌きが跳ねる中を蒼き風のようにシルが翔けぬけていく。
――燃えさかる炎よ、凍てつく水よ……。
――混じりて力となり、我が前の敵を撃てっ!!
冴え渡る高速詠唱が瞬く間に術を織り上げればシルの両の掌に炎の輝きと氷の煌きが躍ったのは一瞬のこと、
「さぁ、最後の炎と氷のダンス、目いっぱい楽しんでねっ!!」
夏の陽射しに燃える輝きが踊る。凍てる煌きが踊る。数多連射される魔力弾が翔けて爆ぜて、ヴォルティジュールドールの最後の一体の終焉を派手に彩ったなら、辺りがしんと静まり返る一拍の静寂を置いて、
半壊した砦の内側から、光と冷気の魔力が爆ぜた。
凄まじい力だった。
足元から凍てつきそうな心地がした。
前者は純粋な魔力の濃さゆえだが、後者は恐らく冷気に瘴気が混じっているがゆえ。
冷気と瘴気を己が身の周りにきらり、きらりと舞わせ、アヴァタール級の淫魔『コルメール・雪華』が夏の陽射しのもとへゆるりと歩みだす。
彼女は部隊が殲滅させた様子を一瞥し、ディアボロス達を睥睨して、空恐ろしいほど美しい笑みを咲かせた。
『ああ、なんてことでしょう……一度にこんなにたくさん、わたくしの氷像コレクションが増やせるなんて!』
誘うように伸べられた淫魔の手に、更なる冷気の魔力が咲き誇らんとする。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
効果1【士気高揚】LV1が発生!
【腐食】LV1が発生!
【液体錬成】がLV4になった!
【完全視界】がLV2になった!
【一刀両断】LV1が発生!
【飛翔】がLV9になった!
【フライトドローン】がLV3になった!
【スーパーGPS】LV2が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
【モブオーラ】LV1が発生!
【勝利の凱歌】LV1が発生!
【熱波の支配者】がLV2になった!
【建造物分解】LV1が発生!
【トラップ生成】がLV2になった!
【活性治癒】がLV4になった!
効果2【ダメージアップ】がLV9になった!
【能力値アップ】がLV6になった!
【命中アップ】LV2が発生!
【グロリアス】がLV4になった!
【先行率アップ】がLV5になった!
【フィニッシュ】LV1が発生!
【ガードアップ】がLV9になった!
【ロストエナジー】がLV3になった!
【ドレイン】がLV4になった!
アンゼリカ・レンブラント
さぁあとはアヴァタール級だけ
コレクションになんてなるつもりはないからね
気合と共にネメシス!天使風の姿で挑むよっ
引き続き残留効果の恩恵をめいっぱい受けて
【飛翔】し高速でのパラドクスの攻撃を決めていく
相棒は勿論、仲間と連携も絶極的に行うよ!
苦手属性はディフェンスして
敵からの攻撃・反撃も痛いけど止まるつもりはないよ
こちらから強打を決めれば【ドレイン】で回復もできる、
溜まっているガードアップに、心の勇気を燃やして堪え
相手より上回っている技能も生かせれば嬉しい
敵を弱らせることが出来たら
――今こそやろう、シルっ!
天を翔ける連携パラドクスで決着を狙う
これが私達の切り札《天翼光輪舞》だよ、
存分に受け取れ―っ!
音羽・華楠
霧の向こうの、恐らくは未知の改竄世界史の正体を暴くには、攻略旅団でもっと本格的な調査隊の結成を訴えた方が良いかもしれませんね……。
――とにかく、この場の戦いにそろそろ終止符を打ちましょう。
淫魔……というより、雪女のようなアヴァタール級ですね。
冷気がお得意のようですが……その程度の冷気、私が吹き飛ばしてあげましょう!
――《雷幻想・閃耀》!!
魔術的荷電粒子砲の灼熱で、冷気も、雪華自体も蒸発させてあげます。
向こうの反撃の歌は、『名も無き鈴の髪飾り』に触れ、兄さんを想って抵抗を。
私が心から愛してほしい人はただ一人。
あなたの押し付けがましい愛は願い下げです!
残留効果も充分な中、そうそう効きませんよ!!
シル・ウィンディア
氷の魔力…。さすがロマノフってとこかな?
でも、氷のコレクションだなんて、お断りですっ!
そんなわけで、限界突破で抗わせてもらうよっ!!
ネメシスモード開放っ!
銀髪銀目の銀天使モードですっ!
飛翔で上空に舞い上がってから、空中戦機動!
残像を生み出して、攪乱しつつ移動するよ。
少しでも惑わせればいいんだけど…
WIZの低い味方にはディフェンスを
ガードアップでいつもより防げるしね!
反撃も積極的に行っていくよ。
パラドクス攻撃もしっかり行いつつ、敵が大きく弱ったら…
アンゼリカさん、合わせるよっ!!
飛翔の最高速度で接近しつつ高速詠唱。
全力魔法でコンビネーションアタックの天翼光輪舞!
わたし達の舞、じっくりご覧あれっ!
竜城・陸
自身に宿る神の権能
“光”の力を最大限に発揮するネメシス形態へ変じる
白金色の髪、淡い菫色の瞳、翼も尾も角もない姿
周囲の味方と連携して動き
一人に的を絞らせないように立ち回る
必要に応じ《ディフェンス》も行い味方全体の消耗を少しでも抑える
心を侵す歌へは、強い意思を以て抵抗
何もせずに得られる愛に価値なんて感じない
俺の欲しい愛はきっと、欲し続けて、追いかけた先にあるものだから
場に満ちた【反撃アップ】の恩恵も得て相手の動きを見極め
出来うる限り相手の攻撃を、此方の反撃の機に繋げたい
反撃も、能動的な攻撃も全て
残留効果の恩恵を得て確実にダメージを与えていくよ
決して諦めず、油断することなく
最後まで戦い抜いてみせる
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
【黎明】
連携、アドリブ歓迎
完全視界使用、パラドクス通信で仲間と連携を
気休めやもだが、熱波の支配者で適温にし
仲間の動きやすさを確保
えっコムラガエリ……
変わった名だな……あだ名かな……
趣味じゃないんだが
貴女が氷像になるなら考えてやってもいいな?
挑発を上乗せしつつ
引き続き【飛翔】し空中戦
戦況の偵察、観察を行い
包囲、挟撃の位置取りを意識
上空から銃撃し、仲間の援護を
開幕に射撃のせ
上空へ注意を惹きつつ、居場所を定めない
反撃には魔力障壁を展開し防御
攻撃後は距離をとり
相手の動作を観察、飛翔とエアライドで物理的にも正面を避け
情熱と意志で対抗しよう
独りよがりな歌に感じる所は何もないよ
幸福も間に合っているので結構だ
レイ・シャルダン
【黎明】
チーム外連携・アドリブ歓迎です。
コルメール・雪華ですよ。と仲間の訂正を。
(コルメールの)氷像いいじゃないですか。
水着コンテスト会場に飾れば暑い夏を凌ぐ涼になるかもしれません。
挑発する様に調子を合わせて。
『アクロヴァレリア "Einheit_02"』を点火して"飛翔"を
再び右手に『シュトライフリヒト』、左手に『シャルダント』を構え
航空突撃兵として"勇気"を持って突撃と"一撃離脱"を繰り返して"空中戦"を展開します。
護られてばかりは嫌です。
いつかはボクだって皆を護れる様に。
その背に追いつきたい…。
決意を持ってパラドクスを発動
敵の氷のミサイルを搔い潜り、或いは盾で弾き
この一閃をその身に…!
ラズロル・ロンド
【黎明】
ヒンヤリ涼しい…を通り越して寒いのはちょっとゴメンだなぁ〜。とブルリ
なんか脚が引きつりそうな名前なんだね。とコムラガエリを信じた狐
飛翔していく仲間に視線が向う間に【モブオーラ】で草陰に潜み他のディアボロスに紛れ死角に回り込む
ディアボロスに警戒してるだろうけど
これだけ居たら紛れ込めるんじゃないかな?
僕が狙うは、思わぬ一撃
不意打ちだ
仲間の連撃の合間に思わぬ所からアサシネイトキリング
反撃の檻は捕まらないよう動き回り回避を
捕まったら脱出するべく割り出よう
こんな寒い所ヤダよっ
仲間と息のあった連携と
次の攻撃を当てやすくするアシストを
空木・朱士
連携、アドリブOK
メネシス形態外見変化無し
【箱家】
(珠の「破廉恥アヴァタール」にぶはっと吹き出し)
ローキックは怖ぇなぁ、釣られないように気ぃ付けるよ。
俺らを氷像にしようなんて冗談にしても全然面白くないけど?
ここには大人しくお前のコレクションになる奴なんて1人もいねぇよ!
飛翔を空中戦というより機動力重視で使用。
常に動いて極力攻撃の的にならないように気を付けながら金翅鳥を撃ちまくる!
仲間の攻撃力には劣るかもだけど金翅鳥の変則的な動きを活かして兎に角攻撃を当てにいく。
反撃に対しては雪玉を籠手で薙ぎ払うなどして直撃を避ける。
特に光をまともに見ないよう警戒する。
戦いの場で一瞬でも隙作るのは怖いもんな。
ソレイユ・クラーヴィア
連携アドリブ歓迎
【賽】
かなり手痛く砦を攻めたつもりでしたが、この落ち着き…
油断せず行きましょう
宙に展開した鍵盤で「凱歌」を演奏
場上槍を構えた騎士を喚び、まずは正面からの突撃
駆け抜けたら、踵を返し更にもう一度
出来るだけ派手に動いて私の方へ注意を引き
潜伏するシャムスと連携して攻撃を重ねます
巨大な氷を削っているかの様にも錯覚しますが
地道な努力こそ、勝利へ至る唯一の標と思えば
幾らでも鍵盤に指を踊らせます
反撃の歌は己の演奏の音でかき消し、更に追撃
己の得意属性はディフェンスに入る
この地は戦略的に重要であると同時に
大切な思い出を新たに得た場所
煌めく陽を見れば
その事を何度でも思い出せるから
貴方の愛は届きません
南雲・葵
【箱家】他チームとのアドリブ、共闘歓迎
雪女?
東洋も西洋も似たような化け物が居るんだー
ローキックは勘弁!
それにあーゆー露出過多なのって好みじゃないんだよね。
◆戦闘時は姉貴(オラトリオ)に死角のフォローと戦闘域の全体を俯瞰して貰う。
氷像になってるヤツは…居ないな
全力でバール振り回しても問題ナッシング!
何とかのひとつ覚え、って言われそうだけど、雪玉投げてくるなら打ち返すしかないっしょ!
へいへい、ピッチャービビってるー!
使える残留効果は全部使って攻撃や防御、回避に備える。
バールを構え、ホームラン宣言後にPOW対決。
シャムス・ライラ
【賽】
仲間と情報共有、連携
地形の利用、情報収集で戦闘に有利な位置取り
光学迷彩、モブオーラ使用
建物もしくは樹木の影に潜み
機を伺い
ソレイユと息を合わせ攻撃
暁の一片で死角から敵を貫通撃
可能な限り光量を絞り、敵に触れた際、一気に光り弾けるように
隼を変則的な軌道で飛行させ攪乱
味方の攻撃に繋げる
氷の凍てつくきらめきよりも
太陽の輝きを
敵攻撃は、パルマの人々と共に戦う友を思う事で意思を強くし耐える
氷像になる事の幸福は私には理解できない
パルマの人々の笑顔と
星空の下語り合った友の眼差しが
物資を共に運んだ友の笑顔が
心に温もりをくれるから
ソレイユの苦手能力はディフェンス
その他有効そうな残留効果は全て使用
アドリブ等歓迎
ガーデニア・ラディーチェ
【可惜夜】
※左目夜空色、右目茜色の17歳程の姿のネメシス形態
そうね、こころ
わたし達、あなたに愛でられる趣味はないわ
それに。冬は……キライなの
彼が死んだ季節だから
雪玉は軌道を【観察】して割り出して、なるべく被弾しない様に
華嵐を放って自身の姿を隠しつつ、華嵐は敵に対する目眩しの【撹乱】としても
瑠璃青やウェズリーが攻撃する隙くらいは与えられるでしょう?
POWの能力値が低い味方には、ディフェンスを
彼以外はどうでも良いけど
まあ、護ってあげないこともないわ
眩い光は【完全視界】で対処して
隙を見つけたら、味方との【連撃】で接近して鎌を振り下ろしましょう
悪いけど
わたしの永遠は、ロズただ一人に捧げたもの
夜茨・こころ
【可惜夜】
青硝子のような夏空
日華が温かいはずなのに
やけに鋭い冷たさは、貴方?
凍てしまおなんて、だめ
ニア、ウェズリー、瑠璃青、他の復讐者
――皆と最後まで戦うために、
不思議な魔法の友人に助けて貰う
氷の檻・雪玉に気ぃつけて、
なるべく致命傷は避けるように
冷たい思いさせられた分、気合十分に
ディフェンスはここぞの有効な時狙って
守るちから、貴方を想って、
あかんよ、大事な仲間なの
何度言うたら分かるん?
太陽に照らされて、
揺れる漆黒の影の中
底無しの真っ暗闇泳ぐ
彷徨う鼬鮫の背鰭優しく撫で
其処へとご招待してまおと囁く
ほぉら、噛んで砕いて捉えて――
未だ見ぬ底の不思議な住民たち
もしかしたら、氷像より親しくなれるかもね?
水上・瑠璃青
【可惜夜】
身を刺すような冷気
まるで真冬に引き戻されたみたい
折角美しい景色を観に来たんだもの
最後には楽しかったね、って笑いたい
だから、あたしたちの行く道を開けてね
引き続き祖父の……
先々代の刀身を宿した刀を構える
ウェズリーさんの炎を戴けるかな?
了承を得たなら刀身に炎を纏わせよう
凍て付く氷は斬り捨てて行くよ
支援も忠告も有難いな
後方へと意識を向けつつ雪玉を刻もう
もう一度【精神集中】をして
向かって来る氷檻の攻撃を【斬撃】する
ガーデニアさん、こころさん
二人の身動きが取れやすいように、ね
まだまだあたしの歩みは始まったばかり
立ち止まっては居られない
全部終わったら、温かい飲み物を飲もう
ご褒美があってもいいよね?
ウェズリー・ソーンレイ
【可惜夜】
……力を持つものの嗜好は何処へ行っても変わらないな
ただ一人も連れて行かせるものか
我が氏族は守人、我が血潮は炎
お前の欲も。”あい”とやらも。全て、全て。灰燼へ還そう
【熱波の支配者】で周囲の気温を上げる
少しでも、皆が凍えないように
わかった、使ってくれ
【火炎使い】でルリジョウの支援
【ダメージ、ガードアップ】の恩恵交え
【葬送】にて向かってくる雪玉を溶かし
ココロやガーデニアまで氷の刃が少しでも届かぬように庇いながら
自らの喉を、骨を灼かれようとも炎の勢いはとどまらぬ、燃し尽くす
守りたい、取り戻したいと願うものがあるから
俺は。……今はまだ、歩みを止められない
――星よ、星よ
――友よ
どうか。今はただ、
支倉・珠
【箱家】
あと…残ったのはあの薄着の破廉恥アヴァタールですね。
防衛はお任せください。あと誘惑されたら支倉のローが唸りますので、釣られないように、です(ひゅんひゅんと下段蹴り練習)
■準備
ドラゴンオーラを纏い、耐熱或いは対氷結の温度変化に備える。
■戦闘
私は近隣の同行者、ディアボロス、サーヴァントのディフェンスを行い味方被害の軽減を頑張ります。
自分に向けた氷像化の拘束はドラゴンオーラを纏い、耐熱化。
その後、ミニドラブレスで敵諸共焼いて貰って、氷の檻を溶かしてみましょう。
あとは盾で防衛しつつ、他の同行者の攻撃後に合わせてペイント弾でマーキング、ミニドラブレスで追撃します。
「紅さん、ここにお願いします!」
マリアラーラ・シルヴァ
アドリブ共闘歓迎
山ん姥ベーダは氷のパラドクスが得意だって知ってるの
それならマリアは温泉パラドクスで対抗だよ!
マリアが氷像になるかベーダが湯あたりしちゃうか
どっちが先かの勝負なの!
そんな風にベーダの意識を逸らせてるうちに
あたり一面は温泉の湯気に包まれていくんだよ
そう森の霧のように
マリア達が森の奥で何をしてきたか気になる?
実は湯気に紛れて森から霧が溢れてきてたとしたら…
そうだね貴女がのんきに温泉楽しんでるせいで他の砦が危ないね
ダメだよ?ちゃんと100まで数えて温まってから上がってね
挑発して動揺を誘い怒らせる事で
マリアが凍るより早くベーダがのぼせちゃうように仕向けるね
お風呂で騒いだらいけないんだよ?
●Chi dice donna dice danno.
夏空の青のもと、真白き冷気の魔力が咲き誇らんとした刹那。森羅万象すべてを掻き乱すがごとき風が吹き荒れた。
先制の加護を齎す風を掴み獲り、既に戦闘態勢にある強敵から先手を獲ることが叶ったのは、即座にネメシス形態に変じて己が能力を高め、間髪を容れず戦闘に入った三名のみ。魂が内包する光の権能を最大限に開花させれば蒼海の竜は暁光の神を思わす姿を体現し、
「氷像として一方的に愛でられるだけの、何もせずに得られる愛に価値など感じないよ」
黎明に光を透かす淡き菫色の瞳でコルメール・雪華を見据えた途端に竜城・陸(蒼海番長・g01002)の本質たる光が輝ける鋩となって結晶する。神速で翔けるのは青から変じた白金の髪と同じ彩に輝く光槍、眩き鋩が淫魔の胸を貫いた瞬間、輝ける黄金と淡碧の剣閃が淫魔を強襲した。
「私達が大人しく氷像になると思ったら大間違い! コレクションになんてなるつもりはないからね!!」
「うん、氷像コレクションだなんて絶対にお断り! そんなわけで、限界突破で抗わせてもらうよっ!!」
夏空の青から高速で降り落ちたのは天使めいた純白の翼を咲かせた二人、三年ほど時を遡った姿ながらも迷いなく叩き込むアンゼリカ・レンブラント(黄金誓姫・g02672)の黄金の光剣は常より威力を増して、青空のそれから銀髪銀瞳へ彩を変じたシル・ウィンディア(虹色の精霊術士・g01415)が一閃する淡碧の光剣も常より冴え渡り――光剣の斬撃のみに留まらず、少女達は極大の火力を誇る魔力砲撃をも撃ち込んだ。
壮絶な光景だった。
斬撃も魔力砲撃も二人それぞれ二連続で叩き込んだのは、シルとアンゼリカが双方ともに、復讐の女神の名のもとに純白の翼を咲かせた姿で力を合わせる合体技のパラドクス、天翼光輪舞(シャイニング・フェザー・ロンド)で挑んでいるがゆえ。然れど勿論二人ともこれが幕開けにすぎないことを肌身で理解している。
相手はこの砦を任された指揮官、先程殲滅されたヴォルティジュールドール達の総力を唯ひとりで上回るアヴァタール級、
『ふふ。氷像の素体の意志などあってなきがごときもの、貴方達もすぐに氷像となる幸福とともに凍らせてあげましょう』
尋常ならざる威力で確かな痛手を齎した三人の強撃もコルメール・雪華の反撃を抑え込むには至らず、彼女が艶然と笑んだ途端に圧倒的魔力で心を捻じ伏せんとする歌声と、凄まじい光も冷気も凝縮された雪玉が夏空に翔けた。間断なく荒れ狂ったのは三人を纏めて呑まんとする数多の雪玉、なれど真っ向からアンゼリカが、続けてシルが爆ぜる光と冷気を突き抜ける。
「そっちの強さは承知の上! だからって、私達は!」
「止まったりなんかしないよ、絶対に!!」
反撃直後の攻撃を迷わず相棒の分まで引き受けたアンゼリカは篤い防御強化の加護に痛手を軽減され、敵をも上回る強打の技を活かして思うさま黄金の光剣を打ち下ろす。同時にシルの光剣も奔ったのは合体技の反撃ならでは。続け様に魔力砲撃の輝きが世界を染め抜いて――彼我ともに時間と空間を歪めながら戦う逆説連鎖戦ゆえに、ここまでの攻防は僅か十秒足らずの出来事であったが、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)の観察眼が肝要な点を見抜くのには十分すぎるほどだ。
あくまで『この』コルメール・雪華の冷気や瘴気がその周囲だけでなく戦場までも影響を及ぼすのはパラドクスが揮われた際の瞬間的なもので、足元から凍てつきそうな心地になるのも冷気に混じる瘴気が精神的に齎す作用が大きいがゆえ。
獲物を捕えて凍らせるという氷の檻も、一般人が逃れることこそ不可能だろうが、ディアボロスを捕えておけるのは攻防の一瞬のみと察せられたから、
「どうやら【熱波の支配者】を使うまでもないようだな」
「俺も【熱波の支配者】で気温を上げようと思っていたが、あなたの言うとおり、その必要はなさそうだ」
蒼穹の双眸を細めたエトヴァは【パラドクス通信】で皆に情報を共有し、ウェズリー・ソーンレイ(餞・g07086)の応えをインカム越しに聴きつつ夏空を【飛翔】で翔けた。夏空の青へと融け込みそうな高みから急降下するのはコルメール・雪華の眼を惹きつけんがため、
――趣味じゃないんだが、
――貴女が氷像になるなら考えてやってもいいな?
良く通る声音で挑発しながら漆黒と金彩を翻し両手の二挺で世界に躍らせる数多の銃声銃火と淫魔の歌声が空中で激突して翔けぬけ互いに痛手を齎すが、迷わず彼が展開した魔力障壁に威力を軽減されながらも彼女の反撃は涼やかで甘やかで、挑発の言葉を全く意に介していないことは明らかだった。
先程その唇で紡いだとおり、氷像の素体の意志などあってなきがごときもの、気に掛けることさえ無いというのだろう。
――力を持つものの嗜好や思考は、何処へ行っても変わらないな。
――唯ひとりも連れて行かせるものか。
鮮血がしぶくたびに闘技場を沸かせ震わす大歓声、嘗て剣闘士として生きた魂から湧きあがる苦さを飲み下しはせずに、
「我が氏族は守人、我が血潮は炎。お前の欲も。『あい』とやらも。全て、全て。灰燼へ還そう」
遠き日の血煙すら灼き尽くす勢いでウェズリーが迸らせるは灼熱に輝く炎の息吹。己が喉のみならず骨すらも灼く、自らを礎にした炎の奔流が命中強化の加護とともに敵へ躍りかかり、反撃の雪玉ごと氷雪の淫魔を呑み込んでいく。然れども数多の雪玉すべては殺しきれずに鮮烈な光と冷気か胸元で爆ぜたが、それでも怯みはせずに、これを仲間達に通してなるのものかとばかりに竜翼を広げ、苛烈さを増していく逆説連鎖戦へ果敢に挑む。
眩いほどの夏空の青、燦然と輝く日華の光。
夏のアルプスといえばそれらを心地好く堪能できる地とも思えるのに、淫魔が揮う魔力が齎す冷気や瘴気は瞬間的なもので行動を鈍らせるほどのものではないとはいえ決して快いものでなく、魔力そのものの強大さに気圧されそうにもなるけれど、
「貴方がいくら強くても、皆を凍てしまおなんて、だめ」
「そうね、こころ。わたし達、あなたに愛でられる趣味はないわ。それに」
頼もしき竜翼に護られるばかりではなく、毅然とコルメール・雪華を見据えた夜茨・こころ(La nuit étoilée・g06390)は夜の淵から茨を添わせて彩り咲かせる薔薇と友から贈られた花呪符の援けを得て、淫魔を呑み込む漆黒の結界を織り上げた。
遊影(オンブル)で魔法の友を招くことは叶わず、代わりに携えていた闇淵(テネブル)を咄嗟に揮ったことはおくびにも出さずに淫魔を堕とす底なし沼、漆黒から彼女へ襲いかかった当人が思い描く最も怖いものとは果たして何者であったのか。なれど淫魔は反撃を放つとともに勿論一瞬で漆黒を破るが、息をつかせる暇も与えず薔薇の華嵐が苛烈にコルメール・雪華を抱擁した。
――冬は……キライなの。
――だって、彼が死んだ季節だから。
ただ一瞬の冷気でも高貴な青年が儚くなった冬の日を思い起こさせるから、真夏に氷雪を招く淫魔へと容赦なく花々の嵐を解き放つはガーデニア・ラディーチェ(クチナシの花護り・g03839)。十五の少女は復讐の女神の名のもと十七の娘に変じて今は麗しき人形として添う青年とともに戦場に舞い、彼の魔銃の連射が華嵐に呑まれた敵へ幾多の魔弾を撃ち込むとともに、ふわりその背後へ降り立ったガーデニアは茜と夜空の瞳で捉えた淫魔へ花々が綻ぶ大鎌を振り下ろす。
雪玉の反撃ごと氷雪の女妖を斬り裂く弧の刃、
然れど反撃を潰された淫魔は『あら』と瞬いた直後、凛冽な煌きを爆ぜるような勢いで解き放った。
数多撃ち放たれた攻撃は極小の鳥籠めいた氷、極小のそれに極大の冷気を凝らせた氷の檻は凍てる爆撃にして極寒の冷気の渦へ獲物を呑み込む罠、仲間へ届かせるものかと瞬時に地を蹴ったウェズリーがこころを狙った氷を受けた刹那に彼自身を狙った氷もが襲い来るが、
「君ひとりで受ける必要はないよ。今ここにいるディアボロス全員が、一緒に戦っているんだからね」
「――そうか、そうだな。ありがとう」
誰かひとりに痛手を偏らせはしまいと立ち回る陸が彼への氷弾を引き受ける。途端に巨大化して獲物を呑み込んだ氷の檻、然れど防御強化の加護が追い風となるままにウェズリーと陸が氷を破砕して夏空のもとに舞い戻れば、同じく氷に呑まれたガーデニアも大鎌の一閃で凍てる煌きを砕け散らせ、
「うん。やっぱり頼もしいな、皆さん」
幾重にも舞い散る氷片の煌きを目眩ましがわりに水上・瑠璃青(縹の疆界/・g00530)が一瞬で敵の懐へ躍り込む。
氷の煌きに舞うは瑠璃と青で高く結い上げたままの漆黒の髪、鎺の先へと喚び起こす刃は祖父が生涯をともにした両刃造。
そして胸には大切なひと達とともに見上げた美しい星空が燈るから、
楽しかったねと皆で笑い合って帰還のパラドクストレインに乗り込みたいから。
「だから、あたしたちの行く道を開けてね」
この砦に攻め込んできたのは自分達のほうと理解しつつ敢えてそう口にして、瑠璃青は反撃に放たれ扉を開いた氷の檻から溢れる冷気を浴びながら、氷ごと迷わずコルメール・雪華を斬り裂いた。それでもなお、
「まだまだ相手は健在だからね! 攪乱していくよっ!」
「そういうことなら、わたしもお手伝いさせてもらうわ」
淫魔には然したる消耗は窺えなかったから、少しでも惑わせられたなら、なんて弱気を呑み込んだシルが全力で加速する。銀の乱気流のごとき高速機動で数多映すのは銀の髪に青薔薇を咲かせた少女の残像、天に地に鏤められた残像の裡からシルが黄金の相棒とともに斬りかかった次の瞬間、彼女達の魔力砲撃との波状攻撃とばかりにガーデニアが薔薇の華嵐を迸らせた。
翠玉の煌き波打つ髪を、華奢な四肢を彩る赤薔薇そのままに鮮やかな花々の嵐は僅かな間でも確かに敵の視界を奪うもの、
「好機ですね。此方スカイレイダー、打って出ます!」
「了解。此方も合わせる」
一瞬でインカム越しにレイ・シャルダン(SKYRAIDER・g00999)と言い交わした刹那にエトヴァも迷わず加速した。
敵を包囲できればと思いはすれども、無論ひとりでそれが叶うはずもなく、皆が思い思いに戦っている現状で指揮官ならぬ身が『指示』できるはずもない。親しい仲間だけでも包囲の意向を共有しておくべきだったかと思いもしたが――挟撃ならば即興の連携とエトヴァ自身の立ち回り次第で効果的に決められる。
――この空はボクのもの、機動戦の極致……見せてあげる!
航空突撃兵の真骨頂とばかりに夏空を急旋回したレイが漆黒のフライトデバイスから蒼炎でなく紅の輝きを迸らせた刹那、現状の【飛翔】の最高時速550Kmさえも遥かに凌ぐ少女の高速機動が音の壁をも突き抜けた。レイ自身の残像のみならず即時召喚した学友達の幻影までもが世界を彩れば華嵐が晴れる瞬間に突如出現した光景に流石の淫魔も即応できず、
真正面から奔った白銀のレイピアが反撃さえも許さず彼女の胸の芯を貫いたなら、
――Sei frei.
蒼穹の翼で何処までも自由に翔け、コルメール・雪華の背後を獲ったエトヴァの銃撃がその反撃も次撃も捻じ伏せた。
●La sapienza è figliola dell’esperienza.
――さあ、凛と煌く麗しき氷の裡で、
――刹那の幸せを、永遠の至福にしてあげましょう。
夏風に翔ける音色と甘く涼やかに響き渡る歌声が戦場に鬩ぎ合って拮抗して音律の飽和を齎していく。氷蜜を思わす歌声で獲物の抵抗心を捻じ伏せんとするコルメール・雪華は数多負った痛手も物ともせぬような蕩ける笑みを覗かせて、
「先程の砦攻めも今も皆でかなり手痛く攻めているというのに、この余裕とは……油断せず行きましょう」
「油断禁物は同感だが、砦攻めも部隊を殲滅されたのも、今の攻勢も痛手には違いないと思う。どちらかと言えば――」
宙に展開した光の鍵盤に躍らせる指を更に奔らせたソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)が彼我の旋律に紛らせ紡げば、インカム越しに返るシャムス・ライラ(極夜・g04075)の声音が、気紛れな振舞いの一環に見える、と続けたから、成程と微笑したソレイユの指がいっそう強く鍵盤に翔けた。
途端に歌声を押し返さんばかりの勢いで迸った凱歌、明るくも激しくテンポを加速させた旋律に乗って馳せた幻想の騎士が真っ向から馬上槍の一撃を喰らわせた刹那、
「――来たれ、日の隼」
「流石に息ぴったりだね、僕も便乗させてもらうよ!」
半壊した砦の陰で音も無く翻ったのは闇にも影にも馴染む黒衣、端的な詠唱でシャムスの掌上へと結晶した暁の白光が隼の姿をとり、完全なる死角から淫魔を急襲する。背から胸を突き抜ける鮮烈な貫通撃、一気に光り弾けるよう羽ばたいた輝ける隼の翼が敵の視界を大きく掠めると同時、逆方向の瓦礫に身を潜めていた砂漠の狐が獲物へ襲いかかった。不意打ちの一撃を淫魔の喉元へ打ち込んだのはラズロル・ロンド(デザートフォックス・g01587)、藍玉と紫水晶の眼差しが重なった刹那に、死角からの攻撃を決めた者同士で声無き意を交わす。
――今回【モブオーラ】は、あってもなくても変わりなさそうだ。
数多の一般人が行き交う街中などでの隠密行動なら【モブオーラ】も本領を発揮するが、今回の戦場では意味を成さない。この効果はディアボロスの行動が周囲の耳目を集めないという『世界法則を発生させる』もの。すなわち、同じ任務に関わるディアボロスすべての注目される確率を減少させるものであるから、その場にいる全員がディアボロスであるなら、相対的に見れば、そして自分以外のすべてがディアボロスという状況にある敵からすれば、確率が50であれ25%であれ100%と変わりない。注目すべき、意識を集中すべき対象が、ディアボロスのみであるからだ。
特定のディアボロスを他のディアボロス達に紛れさせるような効力は【モブオーラ】には見込めない。ゆえに己自身がどう動くか、そして仲間とどう連携するのかが肝心なのだ。今こうして、連携攻撃を決めたように。
勿論これで倒れてくれる相手ではないと識るから、更に高らかに華やかにソレイユの旋律が戦場を翔けて、光と影の合間を疾風のごとく馳せるシャムスとラズロルも其々に新たな機を狙う。何せコルメール・雪華の笑顔はいまだ翳りを見せず、その力もいまだに消耗を見せていないのだから。
――敵に誘惑されたら支倉のローが唸りますので、釣られないように、です。
連れ達にそう念押ししつつ素振りよろしく下段蹴りをひゅんひゅんと唸らせてみたかった支倉・珠(赤盾・g04907)だが、強敵相手では流石にその余裕はすぐさま吹き飛んだ。仲間への敵攻撃をディフェンスするためにはその仲間よりも高い能力が必要になる。猛然たる勢いで叩き込まれた数多の雪玉から己より力で勝る連れ達を護ることは叶わず、珠は己に打ち込まれた雪玉から爆ぜる光と冷気を赤き盾と咄嗟に前方へ凝らせたドラゴンオーラで軽減するのが精一杯。
「強いですね、この破廉恥アヴァタール……!!」
「破廉恥アヴァタールって! 何か妙に語呂がいいなそれ!!」
雪玉の嵐に強襲された彼女とその連れ二人のうち反撃の機を掴み獲れたのは、外見上の変化はなくともネメシス形態で己の力を底上げしていた空木・朱士(Lost heart・g03720)のみ。真紅の籠手で雪玉の直撃を凌いだ彼は爆ぜる光も冷気も思わず噴き出した拍子に笑い飛ばし、一気に低空を加速した【飛翔】の勢いをも乗せた灼熱輝く炎の鳥を奔らせる。
「そう言いたくなる気持ちも分かりますが、あれでも淫魔の女性としてはかなり慎み深いほうだと思いますよ」
「うん。もっとえっちな格好の淫魔ベーダも、もっとえっちなこと考えてる淫魔ベーダもいっぱいいるもんね」
即興の演奏で幻想の騎士を援護に駆けさせたソレイユの言葉に力いっぱい頷いたのは、救援機動力にて勢いよく跳び込んで来たマリアラーラ・シルヴァ(コキュバス・g02935)、敵が氷雪のパラドクスを揮う淫魔であることは少女も把握済み、
――マリアが氷像になるかベーダが湯あたりしちゃうか、どっちが先かの勝負なの!!
強烈な反撃を浴びることさえ覚悟の上で高らかにマリアラーラが宣戦布告した途端、大地から突如として噴き上がったのは彼女のパラドクスが招来した熱き温泉とその湯気で、
「そーいやフルーティアとかは確かにもっとアレだったな。けど、どのみち露出過多って好みじゃないんだよね!」
雪玉から盛大に爆ぜた光と苛烈な冷気で反撃の機を奪われた南雲・葵(お気楽姉弟の弟の方。・g03227)は仲間達の攻勢の合間に攻撃の機を掴み、軽口を叩きながらも一気に敵へ肉薄した。流石にホームラン宣言している余裕はない。
戦場全体を俯瞰してくれとオラトリオに頼みはしたが、全てのサーヴァントは戦況を的確に把握できるような判断力を持ち合わせていない。己自身が意識を研ぎ澄ませていなければ無防備なのと変わりないのだと肝に銘じ、反撃の雪玉が爆ぜる中で力いっぱい振り抜いた鉄梃がコルメール・雪華を強打した次の瞬間、マーキングします、と閃かせた拳銃型の妖精剣から珠がペイント弾を撃ち込んだが、パラドクスならぬ攻撃は敵味方ともに無効化されるもの。
淫魔が纏う冷気に弾かれたペイント弾は彼女にもその衣装にも一滴も彩を届かせることなく散り果てたが、
「お願いします、紅さん!!」
珠の本命は紅色のミニドラゴンのブレス、相手の意識が一瞬ペイント弾へ向いた隙に、紅蓮に燃え盛る竜の息吹が淫魔へと躍りかかった。
世界に燈された攻めと護りの加護はこの決戦で最大の粋に達している。
最大の攻撃強化と防御強化、更には最大まで至らずとも数多の加護が幾重にも積み上げられており、それらを追い風に皆と挑めば決してこの強敵にも屈することなどないと確信できるから、煌々と輝く橄欖石の双眸で揺るがずにコルメール・雪華を見据えるウェズリーは己が息吹で炎の奔流を迸らせた。
吼えた分だけ、死は遠ざかる。己のそれも、大切な友人達のそれも。
「だから、俺は……!!」
雪礫の嵐のごとく襲い来る雪玉に己が身も翼も張って盾となり、喉も骨も灼かれても構わぬと咆哮のごとく迸らせる灼熱で抗い続けるが、それでも完全なる護りとなれぬことは痛い程に理解している。誰かを敵攻撃から護れるのはその誰かより高い能力を持つ者だけだ。何もかもを護れる力にはまだ届かぬのが口惜しくもあったが、己のみですべてを受ける必要がないことも、確とウェズリーは理解している。
「彼以外はどうでも良いけど、まあ、護ってあげないこともないわ」
「この歌は、うちに任せて。――あかんよ、大事な仲間なの。何度言うたら分かるん?」
時には麗しき人形とともに雪玉を押し返さんばかりの華嵐を解き放つガーデニアが盾となり、時には甘くも涼やかな歌声に淫魔のそれより甘く煌く双眸でまっすぐ挑むこころが痛手を引き受けて、
――堕ちやんように気ぃつけや。
大切な友の心を蝕まんとした歌を封じ込めるよう織り上げる反撃の漆黒、底無しの真っ暗闇へと敵を堕としたなら、淫魔が逃れるより速く瑠璃青の剣閃が奔る。
――ウェズリーさんの炎を戴けたなら、
――ルリジョウを火炎使いの技で支援できたなら、
彼の裡から息吹となって迸る灼熱の輝き、その炎を彼女の刃に纏わせて斬撃を揮えたのに……と思いはすれど、それは火炎使いの技で為せるものではなく、他の仲間達が揮っているような合体技のパラドクスを編みださねば叶わぬ域のもの。
だが、そもそもパラドクスの冷気や氷雪に対し炎が特別有効というわけではなく、己への攻撃への防御として武器を揮ってその威力を軽減することは可能でも、瑠璃青が思い描くように仲間を狙った攻撃に斬撃を揮ってそれを防ぐことは不可能だ。逆説連鎖戦において敵の攻撃から己の意志で仲間を護る手段は、ウェズリーが己が身を挺し続けているように、ディフェンス以外にはないのだから。
まだまだ学ぶことは多いなと感じたのまでが一瞬、刹那の精神集中で一気に研ぎ澄ませた剣閃で瑠璃青が漆黒の闇ごと敵を鮮やかに斬り裂けば、先の歌で刹那の幸せを永遠の至福にしてあげると嘯いた淫魔をひときわ激しい華嵐が呑み込んだ。
「悪いけど。わたしの永遠は、ロズただ一人に捧げたもの」
花唇からガーデニアがそう紡ぐと同時、彼女の『ただ一人』が歌わせたのは七つの銃声。華やかにして苛烈な大鎌の斬撃が重ねられたなら、何度だって底無しの闇に堕としてあげるんよと淫魔めがけて凝らせる魔力は星月夜から滴らせたこころの力、
「皆で戦いぬくんよ、最後まで!!」
「勿論! まだまだあたしの歩みは始まったばかり、立ち止まっては居られないもの!!」
顕現させた祖父の刃とともに馳せる瑠璃青も反撃の氷などでは止まらない、氷の檻も冷気も淫魔もろともに一閃して、全部終わったら温かい飲み物の御褒美なんて素敵だよね、と聴こえた瑠璃青の言葉にウェズリーは柔く眦を緩めて、それでもなお敵へは一片の容赦も無い灼熱を迸らせた。
守りたい、取り戻したいと願うものがあるから、
俺は。……今はまだ、歩みを止められない。
――星よ、星よ。
――友よ。
どうか。今はただ、
●Al cuore non si comanda.
――凍てつく氷の煌きよりも、太陽の輝きを。
天頂に君臨する夏陽に一瞬重なった暁光の隼が、氷雪の淫魔めがけて一気に急降下した。
深い夜闇を薙ぎ払う払暁の光さながらに閃いた刹那に敵の眼前で隼を旋回させ、その主たるシャムスの手が夏風を裂けば、彼の意のままに翔ける隼が貫いたのはコルメール・雪華のうなじ。
「今のはなかなか効いたと見える」
「ええ、痛撃を与えたと思います。私も――雷幻想・閃耀!!」
淫魔の唇からかはっと洩れた苦悶の喘ぎ、その様に呟かれたシャムスの言の葉が耳に届けば今回の任務に終止符を打つべく駆けつけた音羽・華楠(赫雷の荼枳尼天女・g02883)が敵を見据えたまま力強く頷いて。
あなたの冷気もあなた自身も吹き飛ばしてあげましょう、と迸らせるは亜光速で翔ける凄絶な輝き。高出力のそれの余波に煽られるのは金の鈴鳴る銀髪と巫女装束、なれど少女の手には妖精剣、陰陽木行たる雷の術に火行、土行、金行の術も重ね、妖精達の力も得た魔術的荷電粒子砲の灼熱が淫魔を直撃すれば、
「更に温泉追加しちゃうんだよ!」
機を掴んで大地から新たな温泉の湯気を噴き上がらせたのはマリアラーラ。弱冠七歳ながらも演技に長けた少女はふふっと笑んで、この湯気『例の霧』みたいだよね、と語りかけ、
「マリア達が霧の奥で何をしてきたか気になる? どうして今この砦を襲いにきたかわかる?」
『そんな、まさか……!!』
無邪気に輝く青の瞳で意味深に見つめながらそう続ければ、コルメール・雪華が初めて顔色を変えた。
気紛れな淫魔とはいえ仮にもナポリ王国軍の一部隊を指揮し砦を預かる存在だ。糅てて加えて、氷像の素体が何を思おうが気に掛けることさえも無い彼女相手に個人的な揶揄や侮辱などの挑発では全く効果は見込めなかったが、
『貴方達の襲撃は、陽動にすぎないものだというわけですの……!?』
「そうだね。貴女がのんきにマリア達の相手してるせいで、撤退してくる他の仲間とか他の砦が危ないね」
この地に展開している彼女の友軍に絡めたマリアラーラの挑発は覿面に効いた。怒らせることこそ叶わなかったが、相手は明らかに動揺している。数名でなくこの人数で派手に強襲をかけたことが、更に大規模な本隊が別途に動いているのだというコルメール・雪華の想像に信憑性をも与えて。
「へいへい、ピッチャー焦ってるー!?」
『焦ってなど……!!』
抜かりなく機を掴んだ葵が金属バットに見立てた鉄梃でびしりとホームラン宣言をしてのけたなら、途端に数多の雪玉が戦場を翔けた。広範囲に襲いかかる雪玉の嵐の中心は彼ではなくマリアラーラ、なれど、
「そうはいきませんっ! 支倉がお守りします!!」
自ら吶喊する勢いで射線に跳び込んだ珠と彼女が構えた赤き盾が完全に少女を隠して、光と冷気に耐え抜いた刹那、紅色の小竜が反撃の炎を迸らせ。何とかのひとつ覚えって言われそうだけど、と楽しげに笑った葵が、
「場外まで吹っ飛びな!!」
花吹雪を舞わせるオラトリオの応援を背に渾身のフルスイングで打つのは己へと向かってきた白球ならぬ白き雪玉。会心の手応えとともに打たれた真白は遠く高く夏空の青に映え、そこで光と冷気を溢れさせて、消えた。
彼我ともにパラドクス攻撃の完全回避が不可能であることは逆説連鎖戦の絶対の理だ。それにも関わらず、着弾の後に光と冷気を解き放つ雪玉をその解放より速く打ち返すことが叶ったのは、皆が積み重ねてくれていた【アヴォイド】が偶然齎した凄まじい幸運の恩恵に他ならない。
「こりゃ完全にこっちの流れになったかな? ってなわけで!!」
――ここには大人しくお前のコレクションになる奴なんて一人もいねぇよ!!
快哉を叫んでそう続ければ朱士の貌に燈るのは不敵な笑み、紅き双眸に更なる闘志をぎらつかせて、高揚に猛る動力炉から灼熱が迸るままに炎の鳥を解き放てば、真っ向から吶喊すると見せかけ不意に急旋回した彼の金翅鳥(キンジチョウ)が、横合いから淫魔を直撃して盛大な爆発を巻き起こした。
氷雪の淫魔たる強敵を相手取り幾度も幾度も攻め立てる様は、時に巨大な氷を削っているかのごとき錯覚も齎したけれど。
今は巨大な氷が融解あるいは崩壊を始める様が見えてきたような心地。
勝利へ至る唯一の標を辿り、確かに道の果てが見えてきたのだと思えば、光の鍵盤に躍るソレイユの指先にもいっそう熱が籠もるというものだ。涼やかに甘く煌く氷の蜜、僅かに音程を乱しながらなおも圧倒的な魔力で心を屈服させんとする淫魔の歌声が愛を注いであげましょうと嘯きながら広く響き渡るが、呑まれかけた朱士の分まで己が身にコルメール・雪華の魔力を引き受けつつ、ソレイユの指先はひときわ熱い音色を織り上げる。
絢爛と輝く幾重もの光にも似た重音で奏でる凱歌、敵の歌唱と真っ向から勝負するかのごとき友の演奏と強気なその笑みに微笑して、シャムスも己を呑み込まんとする淫魔の歌声に抗った。魔力の圧に打ち克ち、敢然と相手に告げる。
「氷像になる幸福は、私には理解できない」
――皆でパルマ公国を訪れた折に人々が咲かせた笑顔が、歓声が、
――物資をともに運び、ランブルスコで乾杯して笑い合った東洋の友の笑顔が、
――星空のもとで時空を隔てた互いの故郷を、時空を超えて出逢った奇跡を語りあった西洋の友の眼差しが、
心に、ぬくもりをくれるから。
言の葉にした途端、心に燈っていた優しい熱が眩く輝いた。そのままシャムスが顕現させた暁光の隼が瞬時に舞い上がった夏空から淫魔を急襲すれば、生まれたばかりの太陽の光の美しさにソレイユが蒼穹と黄昏の双眸を細めて。途端にいっそうと絢爛を奏でた凱歌に乗って駆けた幻想の騎士が擦れ違い様にコルメール・雪華に浴びせる痛烈な一撃、駆け抜けた直後に踵を返した騎士が間髪を容れず更なる突撃を仕掛けるのは仲間を護って反撃の手数を増やしたがゆえ。
刹那の幸せを永遠の至福にしてあげましょう、と幾度甘やかに歌いかけられても。
戦略的に重要であるこの地を落とさぬわけにはいかず、この地からも遠くないパルマ郊外の草原は、
――大切な思い出を新たに齎してくれた場所。
煌く陽を見れば何度だってそれを思い出せるから、彼の地に僅かなりとも危険が及ぶ可能性を残したくないから。
穏やかな微笑みでソレイユも、迷わず告げた。
「貴方の愛は、届きません」
●Finire a tarallucci e vino.
黄金の風が加速する。
強敵からの攻撃や反撃を幾度も浴びて負った傷も痛手も戦いが終幕に向かうほどに薄れていくのは、ここまでにも仲間達が積み重ねてくれていた【ドレイン】も決戦で最大の域に至っているがゆえ。効果覿面の挑発で齎された動揺も乱された挙動もなかなか立て直せずにいるコルメール・雪華には当然こちらから強打を決められる可能性も高まって、
「私達は止まらない、どころか加速するよっ! もっと、もっとね!!」
「それなら僕も止まってるわけにはいかないよね」
夏風に舞う黄金の髪にもまっすぐ敵を見据える黄金の眼差しにも勇気を漲らせる心地で夏空から吶喊するのはアンゼリカ、眩く苛烈に叩き込む黄金の光剣のみならず魔力砲撃で淫魔の反撃も次撃も捻じ伏せれば、己の裡に熱く満ちていくのは確かな生命力。空から襲いかかった彼女へ敵の意識が集中した隙に砂塵の風のごとく地を馳せたのは紫水晶の双眸を悪戯に煌かせたラズロル、相手の背中に奔らせるは鋭い一閃、反射的に振り返った淫魔が叩き込む反撃の氷の檻に呑まれても笑ってみせたのは、
彼女の後方に、夏空とは異なる蒼穹の彩を見つけたから。
「寒いか、ラズ?」
「寒いよ! すぐ跳び出してやるけどね!!」
輝く軌跡を描いて空を翔けるエトヴァの両手に翻った二挺の銃口にも閃く輝き、幾多の銃声を歌わせれば幾多の銃弾が敵を撃ち抜けば、インカム越しにそう言い交わしたラズロルが冷気渦巻く氷の檻を割り砕いて夏の陽射しへ身を躍らせた。
――さあ、凛と煌く麗しき氷の裡で、
――刹那の幸せを、永遠の至福にしてあげましょう。
そうして、貴方達にいつまでも愛を注いであげる、と攻防の果てに掴み獲った攻撃の機に歌い上げた淫魔の魔力から、咄嗟にシルがアンゼリカを、陸がレイを護り、自力で耐え抜く華楠が凛と鳴る鈴の髪飾りに触れる。少女の胸に燈った面影は刻逆に奪わた相手のもの。義理の家族のもとでの幸福な日々を奪われてもなお、義理の兄への淡い恋心は消えはしなかったから。
「私が心から愛してほしい人はただ一人。あなたの押し付けがましい愛は願い下げです!」
「同感っ! わたしもあなたからの愛はいらないよっ!!」
募る想いと反撃強化の加護に背を押される心地で撃ち放つのは雷幻想・閃耀(ファンタズム・ブリューナク)、淫魔へ眩く迸る灼熱の輝きに己の左手薬指に天使の翼を咲かせる指輪を煌かせ、シルもまたシル自身の『ただ一人』を胸に燈して淡碧の光剣とともに、氷像を求める淫魔へと翔けた。
「ああ、そうだね。欲しいとは思わない。だから、要らない」
焦がれて憧れて、そうして漸く己自身で世界に触れられた時の歓喜が今も鮮やかに陸の裡で息衝いているから、あの時から陸の魂は焦がれて求めるもののために、翔け続けずにはいられないのだろう。それは世界だけてなく愛だとて同じ。
――俺の欲しい愛はきっと、欲し続けて、追いかけた先にあるものだから。
ゆえに微かに細めた淡き菫色の双眸は淫魔の美女を映せど、ただ冷徹に敵だと断じるのみ。ゆえに歌声の魔力を半減させた光の盾も瞬きほどの間も必要とせず槍に変じ、輝ける鋩に反撃強化の加護の鋭さを添えて獲物の鳩尾を貫いた。
夏風に揺れる髪は青でなく白金、見慣れた青水晶の竜角も深藍の竜翼も竜尾も無いのに、確かに陸その人だと判る背中を蒼きサイバーゴーグル越しに翠の瞳に映し、レイは胸を詰まらせる想いに唇を引き結ぶ。護られるばかりではなくて、
――いつかはボクだって皆を護れるように、
――その背に追いつきたいと、希っているから。
今はまだディフェンスを己の戦術に組み込むには至っていないけれど、いつかきっと、と決意と勇気を胸に燈せば鮮やかに輝きながら漆黒のフライトデバイスから迸るのは紅き炎、一瞬で音の壁を突き抜けた凄まじい高速の勢いのままに左手の白銀のガントレットで反撃の氷を破砕した刹那に咲き誇るのは学友達の鮮明な幻影、希う未来へ学友達とともに翔けてい心地になれたなら自然とレイの貌に笑みが花開き、右手から迷わず奔る白銀のレイピアが淫魔を捉えて突き抜けた。
胸に燈した決意を、誓いという名の宝石に変える。
――いつか、きっと。
――必ず。
夏空を翔けるのは復讐の女神の名の許にのみ咲く純白の翼、
「今こそやろう、シルっ!!」
「アンゼリカさん、合わせるよっ!!」
二人が黄金と白銀の眼差しと言の葉交わしたのは一瞬のこと、好機を掴んで天を翔けた少女達が光刃の剣舞から流れるよう咲き誇らせたのはともに六芒星の精霊魔法陣。なれど眩く収束していくほどに威力を増していく輝きの質は其々異なるもの。
相棒から学んだ精霊魔法陣にアンゼリカが収束させていくのは裁きの光、遥か時空の彼方の騎士から闘竜を通し黄金誓姫へ繋がった奇跡の絆の証とも思える、終の光。
自らの術の結晶たる精霊魔法陣にシルが収束させていくのは六属性の精霊の力の彩すべて凝らせ苛烈なまでに純粋な輝きの力を創出する、虹色の精霊術士の到達点たる光。
眩さが臨界に達した刹那に迸った二条の魔力砲撃は、世界を染め抜かんばかりの輝きでコルメール・雪華を呑み込んだ。
然れど【完全視界】で見通す輝きの裡、頽れそうになりつつも踏みとどまる淫魔の姿を認めた瞬間にエトヴァの銃口に光が爆ぜる。時空の理を超える銃撃が彼女を撃ち抜いたなら、微かに開かれた唇からは言葉も歌声も零れることはなく、今度こそコルメール・雪華は地に頽れ、そのまま果てた。
最期に彼女が唇に乗せんとしたのは歌声であったように思えたから、胸の裡だけに言の葉を落とす。
――独りよがりな歌に感じるところは何もないよ。
――幸福も間に合っているので、結構だ。
任務完了ですねと華楠は笑み咲かせ、砦強襲の際に仲間が吹き飛ばした防壁の門、その先に広がる森の彼方を見霽かした。
微かに夕陽色の双眸を細めて想い馳せるのは、深い霧の向こうの海。
「恐らくは、未知の改竄世界史……その正体を暴くには」
攻略旅団で本格的な調査隊の結成を提案すべきでしょうか、と呟いた声音が、ふわりと夏風に浚われた。
――馳せた想いの行く先は、自分達の誰にも判らない。
――今は、まだ。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
効果1【建造物分解】がLV3になった!
【土壌改良】LV1が発生!
【クリーニング】LV2が発生!
【活性治癒】がLV6になった!
【飛翔】がLV11になった!
【モブオーラ】がLV2になった!
【熱波の支配者】がLV4になった!
【勝利の凱歌】がLV2になった!
【完全視界】がLV3になった!
【一刀両断】がLV2になった!
【浮遊】LV1が発生!
【水中適応】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV10(最大)になった!
【ロストエナジー】がLV7になった!
【ドレイン】がLV5(最大)になった!
【グロリアス】がLV5(最大)になった!
【フィニッシュ】がLV2になった!
【ガードアップ】がLV10(最大)になった!
【命中アップ】がLV3になった!
【能力値アップ】がLV7になった!
【ダブル】がLV3になった!