リプレイ
秋津島・光希
※連携、アドリブOK
俺のダチ、記憶喪失なんだけど
この歴史から流れ着いたっぽいんだよな
そいつの為にも奪還を早めてやりてえ
勿論、現地で生きてる人も見過ごせねえしな
で、まずは復興支援だが
俺、直接役立ちそうな特技はねえんだよな
だから、陰陽師達と一緒に汗流す
防壁作りの一団を手伝うぞ
技能[情報収集、戦闘知識、観察、地形の利用、号令]
陰陽師の知る限りの敵の情報を教わって
自然の形も利用して
住民を守り抜ける堅牢な壁作りを目指すぞ
“ここにいれば大丈夫”って安心感は
有事の時に重要だからな
力仕事は率先してやる
【落下耐性】があれば高所も余裕だ
背中見せて、声掛けて
皆を勇気付けてやりてえ
陰陽師だって現地で生きてる人だからな
金刺・鞆
むん。復興も一日にして成らず、いちぱらどくすとれいんにして成らず、ですね。何度でも訪れて立派な都にしましょう。えい、おー、です!
ではともは、【水源】を用いて枯井戸という枯井戸に水を貯めますよ。現地の陰陽師さまに井戸の場所や、水場を用意したい場所を聞いてからぐるりと周ってゆきましょう。水で身体を浄めるだけでも病の予防に繋がりますし、水の確保は重要、です。頑張らなければ。
……そういえば、以前の作戦でお会いした若手の陰陽師も、ここにいらっしゃるのでしょうか?
排斥力で忘れられているやもしれませぬが、あのときは少々その、陥れるようなことをいたしましたゆえ。
お詫びしたい気持ちは働きにて返しましょう。むん!
三苫・麻緒
こつこつと頑張れるのは本当にすごいこと
陰陽師さんたちが頑張っているこそ私たちもこうして手伝える…のかもね
それじゃ、その頑張りに負けないくらいきりきり働きますかー!
私は家屋の作成を手伝おうかなー
雨風の心配をしないで安心して眠れる場所があるのは大切なこと
本当に、本当に眠れないのはしんどいからね…っ!
さっくり周囲を見回るか陰陽師さんたちに話を聞くかをして、壊れている箇所が少なめで比較的直しやすい建物があればそこから取り掛かるよ
【修復加速】を使って少しでも多くの建物を直せるようにしておくね
…どっちかというと私の得意分野は壊す方だから、修復作業そのものより物運びのお手伝いの方が中心になるかも
獅子堂・崇
アドリブ連携歓迎
前にも手伝いに来たが、この当たりはまだまだ復興の手が行き届いてないな。今回も出来る限りのことをするとしよう。
壊れた建物や瓦礫を【建造物分解】で資材に変えて家屋を作っていこう。
野ざらしじゃあ、雨でも降ったら体力を消耗するし、子供には辛いだろう。大勢が休めるようになるべく大きな建物から修理していくか。
力仕事なら任せておいてくれ。資材をどこに運べばいいかとかの指示は任せる。
スィーリ・ラウタヴァーラ
長岡京の復興支援、でございますか。
難民の方々に安心して過ごしていただくためにも頑張ると致しましょう。
手ぶらで来てしまいましたが、問題ございません。
なにせ、私はメイドでございますから。
『冥途の土産』
スカートの中の空間に仕舞った建材をプレゼントです。
それと井戸を掘り返すためのシャベルも。メイドは力仕事もこなせるんですよ?
…ふぅ。ご主人様(難民)方が健やかに暮らせるよう、少しでもお手伝いできていればよいのですが。
●復興
濃い水の香りに、獅子堂・崇(破界拳・g06749)はスンと鼻を鳴らす。
きっと近くまで川霧が漂ってきていたのだろう。肌で感じる一日の始まりの気配に、崇は大きく深呼吸をすると、ぐるりと周囲を見遣る。
骨組みばかりになっている家屋と野放図に生い茂る雑草が作る景色は、荒野との境が曖昧だ。
(「この辺りはまだ手付かずに近いな」)
長岡京を訪れるのは二度目になる崇は、肩にかけていたバックパックを降ろすと、上着の袖を肘上まで捲り上げる。
ちら、と視界に揺れたのは、バックパックにつけたキーホルダー型のお守りだ。トルコを旅行した時に貰った青ガラスは、崇に世界崩壊以前を思い出させる。
72の国を渡り歩き、人種も性別も、年齢も様々な友を得た。彼ら彼女らは、歴史改変の波に飲まれ、今は居ない。そして此処にも、其々の日常や、思い出があったはずだ。
(「――よし」)
「なあ、丸ごと壊して構わない建物はあるか?」
気合をひとつ胸に呟き、崇は幾らか年嵩のいった陰陽師へ尋ねる。
「壊して構わない?」
「ああ。基礎からまっさらにして構わないやつ」
崇の意図を酌みかねた陰陽師は僅かに首を傾げるが、まわりを眺めて数戸の廃墟を指し示す。
「あれと、あれと……あれと、それは更地にして大丈夫かと」
「そうか、ありがとう」
眼光は鋭いが、コミュニケーション力に優れた崇は歯を見せて笑うと、さっそく作業に取り掛かる。
思う事は少なくない。が、今回も出来る限りをするのが最良。然して崇は使い物にならない廃墟から、再利用可能な建材の生成を開始する。
ちなみに何が始まるのかと事の推移を見守った陰陽師は、魔法のような出来事に目を丸くした後、破顔したのだった。
柔らかな女性らしい見目に反し、三苫・麻緒(ミント☆ソウル・g01206)が得意とするのは、細やかな構築作業ではなく『壊す』ことだ。
念押すと、どちらかというと、というレベルの話ではあるが、組み立てを任されるよりは、資材の運搬に注力する方が、麻緒の本領は発揮されやすい。
「じゃあ、これはあっちに運べばいいんだね」
「ええ、助かります」
「了解了解っと」
白髪の女陰陽師の了承を得て、麻緒は手ごろな木材をひょいと両脇に抱え上げる。
これらを打ち直せば、骨組みがしっかりした家屋は、すぐにでも再利用可能になるだろう。
雨風の心配なく眠れる場所の大切さを、麻緒は身に染みて知っていた。
(「眠れないのは、本当に本当に……ほんっとーに、しんどいからねっ!」)
高さを増した太陽が注ぐ光が、麻緒のチョコレート色の髪を淡く梳く。匂い立つ薫風も爽やかだ――が、道と住居の区別をあやふやにしている雑草が香りの源なのは、少しばかり頂けない。
(「あとで草むしりもしなきゃだね。丸ごと掘り返せばいいから……あれ、もしかして私に向いてる作業って――」)
「あれ、どうしたの?」
新たな作業を発見した麻緒の足が、ふと止まる。爪先が向いた先には、どことなく申し訳なさげな金刺・鞆(虚氏の仔・g03964)の姿。そして鞆の目線の先には、この区画の復興をどう進めるか話し合う陰陽師たちがいる。
「知り合いでもいたの?」
「あ、いえ。知り合い、とまではゆかぬのですが……」
もごり、と歯切れ悪く言い淀む鞆の眼には、一人の青年陰陽師が映っていた。
名は確か梓と言ったろうか。かつて京で一悶着あった、心ある若人だ。
(「こちらへいらしておいででしたのですね」)
彼が如何な経緯を経て、長岡京に居るかを鞆は知らない。けれど、彼の心が澱に飲まれたかったことが、鞆は嬉しい。同時に、罪悪感に近いものが鞆の胸でうずうず疼く。
排斥力の影響だろう。梓は鞆を覚えていなかった。とは言え、彼を謀った――任務を遂行する上で必要なことだった――という後ろめたさを鞆は拭い切れない。
(「お、お詫びしたい気持ちは、今日の働きにてお返しいたしましょうっ」)
「むん!」
「あれ、気合入った?」
「はい。めいっぱいはいりました!」
くるくる変わる鞆の表情に、麻緒の目元が和ませる。
「復興は一日にして……いえ、いちぱらどくすとれいんにして成らず、ですね。ええ、ええ、何度でも訪れて立派な都にしましょう」
「そうだね。陰陽師さんたちの頑張りに負けないくらい、きりきり働きますかー!」
鞆の決意に、麻緒は笑顔のまましみじみと首肯した。
物事をこつこつと頑張り続けることは、決して容易くない。しかし陰陽師たちが自らの手で復興を始めたおかげで、今日の機会をディアボロスたちは得られたのだ。
「えい、おー、ですね」
「そうだね」
小さな拳を空へ掲げた鞆に倣い、麻緒も「えいえい、おー」と肩で――両手は建材で埋まっているから――天を突く。
長い一日になりそうだったが、気持ちが折れる気はまったくなかった。
「――、っと」
「大丈夫ですか、でぃあぼろす殿っ」
「平気っす。あ、良かったら俺のことはで『殿』じゃなくて、光希って呼んでくれ――っす」
築いたばかりの土塀の上で、ふらりとバランスを崩した秋津島・光希(Dragonfly・g01409)は、自分の身を案じる陰陽師への口調を、不慣れなりに改める。
おそらく、近い年頃の陰陽師だ。彼の風貌に、光希はほうっておけない友の姿を重ねる。
記憶を失った友だが、出自は此処にあるのではないかと光希は思っている。
(「あいつの為にも、早くここを奪還してやりてえな」)
現在進行形でこの地に生きる人々の為にも、クロノヴェーダたちの暴挙は見過ごすことは出来ない。
「わ、わかりました。では、光希殿」
「いや、だから、そうじゃなくて……って、まあいいっす」
長岡京の復興を手伝われる陰陽師にとって、ディアボロスは生ける奇跡のようなものだ。微妙な尻の据わりの悪さを、乱暴に髪を掻き混ぜることで誤魔化して、光希は土塀の造営作業に意識を戻す。
一帯の区画を囲うように立てるつもりの土塀は、防衛壁だ。
クロノヴェーダの本気の前には、崩されてしまうかもしれない。けれど目に見える外界との隔たりは、内側に住む人々に『ここにいれば大丈夫』という安心感を与えるだろう。
心の安寧は、生活の安定の一歩であり、有事の際の支えにもなる。
「なぁ、高さはこれくらいあれば十分っすか?」
「十分も十分です! 私たちではこんな高い塀を築こうとも思いませんでした」
捏ねた土を放り投げてくる陰陽師へ、光希は内心の満足を隠して「了解っす」とシンプルに応えた。
おおよそ2メートルの高さで盛り続けている土塀は、光希としても納得の出来である。落下に耐性がある光希でも、上部に立つと、いつもと高さの異なる視界に、目が眩んだくらいだ。
力仕事が主の現場では、これといって光希に活かせる特技はない。それでも一緒になって――いや、率先して泥にまみれ、汗をかく光希の姿は、陰陽師たちの意欲と勇気に火を灯す。
「じゃあ、日暮れまでに伸ばせるだけ伸ばすとするっすか」
「この区画をぐるっと囲うのも夢じゃないですね! 土捏ねは任せてください」
四月も終わりが見えたこの時節。
さんさんと咲う陽光は、眩しいばかりではなく、相応の熱を持つ。朝から肉体労働に勤しめば、汗みずくになるのも時間の問題だ。
然して。
「……いやはや、手早いってものではないですな」
区画の中央の奥。ほぼ完成しかかっている大きな館を前に、汗で前髪を額にはりつけた陰陽師が感嘆を洩らした。
――大勢が休めるような、大きめの建物を優先して修理していくか。
提案したのは崇だ。確かに、小ぶりな家屋を一戸一戸修復していくより効率が良いし、何より大きな一棟はより多くが雨風を凌ぐのに役に立つ。
なれど骨組みだけに等しかった館が形を整えられたのには、頑張り以上の理由がある。
「えへへ、お役に立ててよかった」
草刈りを終え、慣れない手つきで板壁を張る麻緒が、照れくさそうにはにかむ。彼女がもたらした修復を加速させる効果は、復興現場において絶大な効力を発している。
更には、近代的な工具の存在が、作業の進みを恐ろしく加速させていた。
「お望みのものは、こちらに。ですが、扱いには注意してくださいませ」
またひとつ、ふわりとしたクラシカルなエプロンドレスのスカートの内側から、スィーリ・ラウタヴァーラ(銀翼の従者・g06897)は新たな工具を取り出し、陰陽師たちの手に握らせる。
(「見た目通りの手ぶらでなど参りません。なにせ、私はメイドでございますから」)
メイドだけに『冥途の土産』と洒落ているが――戦いにおいては真実、冥途の土産になり得る――、スィーリが操るパラドクスは問題解決に必要な物品を用意するのに持ってこいだ。
(「メイドはいかなる状況にも対応できなければなりませんから」)
僅かな裾の乱れをさっと整え、スィーリは背筋を伸ばす。
館はもう心配なさそうだ。周囲の家屋も、崇と麻緒でどうにかなる。と、なれば――。
「メイドは力仕事もこなせるんですよ?」
口振りと仕草は軽やかに、スィーリは埋まった井戸をシャベルで掘って、掘って、掘って、掘った。
陰陽師たちも手を貸してくれはした。それでもスィーリの作業量は、文字通りの百人力だ。
エプロンや随所にあしらわれたレースの白は、既に元の色から遠い。だがスィーリにとって洗濯はメイドのいろはの「い」も同然。汚れたなら洗えば良いだけの精神で、スィーリはここに住むことになるだろうご主人様――難民たちのことである――たちの為に作業に没頭した。
おかげで底が見えた井戸は二つ。
もちろん、一度埋まった井戸にすぐ水は戻らない。そこは鞆の出番だ。
「いぬ、のぞいていたら落ちてしまいます」
なみなみと水を湛えた井戸の縁を転がるモーラット・コミュを、鞆はそっと抱き上げる。
鞆が創り出した清水の奔流は、鞆の新宿島への帰還に伴い消え失せるが、溜めた水はその限りではない。つまり井戸を満たした水は、この場に残る。あとは湧水が使用分を補ってくれるはずだ。
「ほかにも水をためておける場所はございませぬか? 水で身体を浄めるだけで、病の予防に繋がるとききます」
ころころと懐くいぬを撫でつつ、鞆は陰陽師たちを見上げる。
「それでは、あちらの桶にもいいですか? 余り資材で作ってみたんです」
お願いします、と助力を求める陰陽師の名を、鞆は敢えて問わない。その代わり、満面の笑顔で駆け寄った。
「まあ、すばらしい。ともにも桶づくりをお手伝いさせてくださいませ」
夕刻までは、まだ幾らも猶予がある。
長岡京の南の外れは、陰陽師の誰もが予想だにしない速さで、人々が住める環境を取り戻しつつあった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【落下耐性】LV1が発生!
【水源】LV1が発生!
【修復加速】LV1が発生!
【建造物分解】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV2が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV2が発生!
クーガ・ゾハル
エン/g05162 と
キレイな水がないとツライよな
おれのいた所、あつかったからよくわかる
穴ほるのちょっとトクイだから
パラドクスの【建造物分解】もつかって
井戸うめてるモノ、バラしていこう
まわりも、がんじょうな石をつみあげて
つかいやすいように、しないとな
ケガしてるなら、あっちだぞ
ええと…それからついでに
ほりかえしてできた砂のうえに
枝のさきで、くるくるとエジプトでよく見たモヨウ
花とか雪みたいなやつで、井戸をかこむ
小さいやつら、少しでもゲンキ、出ればいい
これはええと、マジナイってやつだ
わるいことが、おこらないように
なんで笑ってるんだ、エン
……お別れのためじゃない穴
つくったのなんて、どれくらいぶりだろう
エンデ・トロイメライ
あれかな、強さこそが正義ってやつ?随分と極端な思考してるねぇ。
まっ、今はともかく復興支援を頑張りますか!
アタシは学園で習った医療の知識で病人や怪我人の治療をするよ。
と、言ってもアタシには傷を癒したり病気を治したりする力使えないから、ウエストポーチに入れてた治療道具や薬以外は現地調達。
使える薬草を集めて煎じて飲ませたり、傷口を煮沸して冷ました綺麗な水で洗い流し、薬草をすり潰して作った湿布薬で傷を塞ぐ。染みるけど我慢してね?
後は適切な処置の仕方とか必要な知識を教えて後で困らないようにする!
怪我や病気はすぐに良くなるとは限らないし、知識があれば自力で対処出来るからね。
それじゃ、お大事にね!
エンジュ・アルティオ
同行:クー(g05079)
ツレについて来てみれば
成る程、こりゃ確かに手は必要だね
力仕事は元気っ子に任せて分業といこう
ケガしてる人、いるかい
痛くしないかって?
お兄さんに任せときな
メディックポーチから道具取り出して
[浄化]も使って消毒、患部の保護したりして
疾病のある人は、まずは横になれる所を探して
病状を診ていこうか
簡易小屋には【ハウスキーパー】がかかるようにして
復興作業のあいだ少しはケガ人が楽に過ごせるように
誰かを失くした人のそれだけは、幾ら時代が変わっても
僕なんて足元に及ばない名医にも癒せず仕舞い
なんて自嘲は隠しておこう
安全な水の確保と、向こうの子供…は
…ふ、あの調子ならどっちも心配なさそだね
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎
そう、少しでも早く支援の手を届けなければ
残留効果を相互に活用し、効率よく活動しよう
陰陽師達の姿に感じ入るものがある
ああ、手伝えるものならいくらでも
喫緊で必要な支援と傷病者の居場所を聞いて情報収集
情報は皆へ共有し、分担を
病を患っている方、怪我をしている方はどちらにいるだろうか
集まっている場所、それから動けない方のもとへ廻り歩いて
グラスフルートを奏で、【活性治癒】を行う
緊急の痛みや時間のかかりそうな症状には
手持ちの救急箱(Mitleid)で薬と怪我の手当てを
音色が少しでも心の慰めとなれば……
時間があれば、力仕事も率先して手伝う
住居の確保へ
身体を休めるにも、屋根のある場所は必要だろう
●さらに一歩
建て直しの進んだ家屋は、二桁にこそ及ばないが、何より大人数を収容可能な館の復旧が成った。
使えるようになった井戸は二つになり、さらにもう一つに手をつけている者もいる。
この区画を守る土塀も、日暮れより少し前には完成するだろう――で、あるなら。
「良宏さん、怪我人を優先した難民の受け入れを進めてもよいのではないか?」
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)の提案に、年嵩の陰陽師――良宏と名乗った――は暫しの逡巡の後に是を頷いた。
「ディアボロス様方のお陰で作業も捗りましたことですし、それも良いでしょう」
おそらくこの場を与る立場にあるだろう男の柔軟な思考に、エトヴァは目線で謝意を告げる。
人は組織への所属や、齢を重ねることで、物事を四角四面に考えがちだが、良宏は型通りではなかったらしい。或いは、そうでなければ長岡京の復興などに手を尽くすはずもなかった、ということか。
ふ、と。胸を温めるものを感じ、エトヴァは礼を取るように右手を心臓の上に当てる。我が身の危険を省みず、人々の為にと精を出す陰陽師たちの姿に感銘を受けたのだ。
「では、受け入れ準備を進めてくる」
然してエトヴァは長岡京の南の外れからさらに南へ、足を向ける。
――聴こえるだろうか。
西へと舵を切った太陽が麗らかな温もりを降らす野で、エトヴァは清澄なグラスフルートを奏で、光まとう風を吹かせた。
美しい調べに難民たちの顔から疲労が遠退いたのは、気のせいではない。活性治癒の効果が発動したのだ。
そして心落ち着かせた難民たちの中から、エトヴァは急を要する者の手を取る。
「この子をお願いします」
「大丈夫だ、直ぐにあなたも受け入れられる」
目を潤ませる母親から預かった幼子の重みが、エトヴァの両腕にずっしりと圧し掛かる。
叶うなら、今すぐにでも皆を受け入れたい。そうできないジレンマをエトヴァの表情から読み取ったのか、荒野に留まる難民たちからも非難の声は上がらなかった。
そうして急ぎ整え終えた館へ受け入れた難民の数は十名と少し。
(「成る程、こりゃ確かに手は必要だね」)
館の敷地内の土間にある井戸の修復に着手しているクーガ・ゾハル(墓守・g05079)へそっと投げていた視線を眼前に向け直したエンジュ・アルティオ(イロナシ・g05162)は、灰色の長い髪をきつく結い直す。
「みんな、無理に動こうとしなくていいからね。これからお兄さんが一人一人まわっていくから、待っていておくれ」
医師の経験のあるエンジュが最初に行ったのは、館に守護霊を宿すことだった。効果は一日限りだが、治療を施す間、館内がより過ごしやすい環境であるのに越したことはない。
「この子は衰弱がひどいね……ねえ、お粥は準備できるかい?」
「はい! 粥くらいでしたら」
「うん、まずはそれで十分。あとこまめにお水を飲ませてあげて」
傍らに添う陰陽師へ指示を出すのは、自分たちの帰還後に不都合が生じないようにするためだ。
「たくさん歩いたんだね、お疲れ様。もうゆっくりしていいよ」
「ありがたや、ありがたや」
「やだなぁ、そんなに拝まないで?」
傷だらけの足に処置を施した老婆に両手を合わされ、エンジュは青白い頬をかく。
治療を出来るのも、メディックポーチの中身を活用できるのも、彼ら彼女らが今日まで命を繋いできたおかげだ。
エンジュ自身は、一度ついえた身。こぼれ落ちる命を掬い上げる度に、黄泉返った己への違和感は増すが、だからといって救える者を取りこぼすつもりは微塵もない――とはいえ、そんなエンジュでも、名の知れた医者でも癒せぬ傷はある。
「すまん、すまん……すまん……」
痩せ細った四肢を小さく畳み、部屋の隅で背を丸め、訳もなく詫び続ける男の背は、撫でさするより他にない。
(「こればっかりは、ね」)
妻と娘を失ったのだという男に対しかける言葉を持たぬ自分を、エンジュは胸の裡で苦く哂った。
ざっざ、ざっざとクーガは穴を掘る。
穴を掘るのは、苦にならない。しかもかつて使われていたものだ。堆積した土砂はまだ柔らかく、積もった瓦礫に再利用の価値を与えるのも、クーガにとっては難しいことではない。
(「キレイな水が、ちかくにあるのは、とてもイイ」)
最初に此処に井戸を設けた者の思惑に心を重ね、クーガは光学素子の眸に柔らかな光を灯す。
此処はクーガが生まれ育った場所より、ずっと涼しいし、風が乾いていない。これならば、もっともっと住み易くできるはずだと思うと、作業の手は休み知らずでよく動く。
簡単に崩れないよう、縁には元より頑丈な石をたくさん積んだ。
足場が不安定にならないよう、平らな段差も作った。覗き込んだ子供が落ちないよう、口をほんのり窄めた形に仕上げたのは、クーガのオリジナルだ。
(「お別れのためじゃない穴つくったの……どれくらいぶりだろう」)
褐色の掌を、クーガはじっと見る。いつもより温かい気がしたら、もっとしたいことが出来た。
そして。
「……なにしてるの?」
「!?」
不意に自分に落ちた影にクーガは肩を跳ね上げ、そこに幼い子供の姿をみつけて、ふうと息を吐く。
確か、エンジュに怪我を治療されていた少年だ。足に巻かれた包帯の白さが眩しい。
「ええ、と……マジナイ?」
「おまじない?」
「そうだ。ミンナ、少しでもゲンキ、出ればいいとおもった」
「みんな、元気!」
じっとしていられなくなったのだろう幼子の笑顔に、エンジュの螺子足らずの貌も幾らか絆される。
「いっしょに、かくか?」
「うん!」
ペン代わりの細い枝を手に、くるくる描くのは、エジプトでよく見た模様。
二人で描けば、井戸の周囲はあっという間に、花や雪めく飾りでいっぱいになった。
「これでわるいこと、おきない」
「すごいすごい!」
「っ、はねるな。また痛くなるぞ」
「もう平気!!」
賑やかな幼子と、その幼子を気遣うクーガと。二人のやり取りは、疲弊した者たちにとって心の潤いとなり得るもの。
「――なんで笑ってるんだ、エン」
「いやあ、どっちも大丈夫そうって思っただけだよ」
思わず声に出して笑ってしまったエンジュをクーガが咎める遣り取りに、館の中には細波にも似た笑い声が広がった。
「こっちがドクダミ。揉んだり蒸すと、虫刺されとかにいいよ!」
刈られた雑草の中から、薬草として使えるものをより分けたエンデ・トロイメライ(エピローグ・g00705)は、陰陽師だけではなく難民たちにも、自分の知識を惜しみなく分け与える。
エンデ自身、まだ学ぶ身だ。命に直接影響が出そうな分野には手出しできない。でも、何事も大事なのは基本である。
「傷口は、一回沸騰させて冷ました水で洗うといいよ。もちろん、そこら辺の溜り水は駄目ね。長く貯めておくのもおススメしないよ」
実践は、何物にも代え難い教科書だ。
持参したガーゼに即席の傷薬を塗り、エンデは難民の少女と膝を突き合わす。
大人の腰くらいまで伸びた草むらを長く歩いたらしい彼女は、全身擦り傷だらけだった。
現代ならば軽傷の部類だが、衛生環境の整わない平安鬼妖地獄変では、いつ雑菌に侵されるともしれない。
「ちょっと滲みるけど我慢してね?」
「は、はい……ぃいいっ」
「はい、これでもう安心。ね、こんな感じだよ。大丈夫そう?」
にこやかに、朗らかに、エンデは難民たちへ声をかけてまわり、処置の仕方のポイントを教えていく。
(「知識があれば、自力で対処できることも増えるからね」)
ディアボロスの常駐は不可能だ。
明確な悲劇が察知されれば、今日のように手を貸すことも出来るが、日常的な病気や怪我はそうはいかない。
「それじゃ、お大事にね!」
「ありがとう、おねえちゃん」
ぽふりと頭を撫でた少女の顔が、ほろと綻んだことに、エンデの内側も満ちる。
この少女にも、他の人にも、死んでほしくない。一人でも多く、生きてほしい。生きていれば、いつかいいことがあるに違いないから。
(「そのためにも、鬼はきちんと倒しておかなきゃね」)
強くなければ、守れないものはある。なれど、強さは必ずしも正義ではない。
(「その極端な思考は、ぽっきり折らせてもらうんだから」)
「あとは我々だけの作業でも、数日中に本格的な難民受け入れを始められそうです」
良宏の礼と決意に、エトヴァは香るように笑み――茜色に染まり始めた空を見上げた。
長岡京の外には、まだ多くの難民がいる。彼ら彼女ら全てを守るには、ここからは迅速な対応が必要だ。
「俺たちはしばらく哨戒任務にあたる。今夜は安心して眠ってくれ」
不安を与えないよう、告げる言葉は最後まで柔らかに。
そうしてディアボロス達は、南を目指す。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【建造物分解】がLV2になった!
【怪力無双】LV1が発生!
【ハウスキーパー】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
【能力値アップ】がLV4になった!
【ドレイン】LV1が発生!
●誰が為の強さ
あと幾らか行けば長岡京が見えてくるはずだ。
それは弱い人間が集まる場所――そう思っていた星熊童子は不機嫌そうに首を捻った。
研ぎ澄ました五感には、人の群れの気配が触れている。
だが絶望や不安といった弱さの波動が、予想よりもかなり乏しい。
「……なれど、やるべきことはひとつ」
自分の拳の前では無力な人間なぞ、星熊童子にとっては取るに足らない存在。生きる価値のない者。幾らか気に満たされていようが、踏み潰してしまうことに変わりはない。
「征け、我が兵よ。悉く、蹂躙するのだ」
高らかに響く残酷な号令に、血を朱に染めんと数多の鬼が走り出す。
*** ***
星熊童子とその配下『僧兵鬼』は、長岡京の南で受け入れを待つ難民たちを狙う。
その動きは恩讐と欲に任せたもので、隊列などは成していない。十と少しの僧兵鬼は、ディアボロスであれば各個撃破も容易であろう。
だが星熊童子も僧兵鬼の中にいる。配下を先行させて、後方に構えているわけではない。つまり僧兵鬼か、星熊童子の何れかに集中してしまえば、その間にどちらかがディアボロスの迎撃網を抜け、難民たちの元へ辿り着いてしまうおそれがあるということ。
戦場は、見晴らしのよい荒れ地。遮るものはなにもない。
狙うは同時討伐、もしくは将たる星熊童子のみの速攻撃破(残った僧兵鬼は怖れを為して四方へ散る)。
手の割き具合か、はたまた策か。
勝敗と運命の分かれ目は、如何に。
神宮寺・琴
京の出の陰陽師、神宮寺・琴と申します。
皆さまの助力となりますよう
我が神宮寺家の術、振るわせていただきます。
他者の妨害になるようなことは致しませぬ。
所持パラドクスの効果を求められる場合は積極的に参加。
公序良俗に反する行為はいたしませぬ。
連携歓迎いたします。
一人称の通常時は「わたくし」ですが
情報収集などで一般人に声をかけるときは「わたし」
他の方を呼ぶ際には名前+さま
名前がわからない場合は役職+さま、ご老人、姫さまなど
(晴明さま、保憲さまなど京の有名人は前者)
人の名前は表記どおり(カタカナも使用)
他の外来語などはひらがなで記載(でぃあぼろす、くろのべーだなど)
スィーリ・ラウタヴァーラ
連携、アドリブは歓迎です
本丸狙いか、雑兵狙いか。
悩ましいところではありますが、私はあくまでメイド。
大将首はご主人様(他の復讐者)にお譲りしましょう。影として支えるのがお仕事ですから。
鬼が僧などとはお笑い草ですね。
いったい魂をどこへ導けるというのか。あなたたちは地獄の門番がお似合いですよ。
筋肉のこわばり、血流の増大。あぁ、私と踊りたいのですね?
ですが、あなたでは私の相手を務めるには相応しくないようです。
なぜならば、こうも簡単に隙を晒してしまうのですから。
『Made in Blood』
懐から仕込みナイフを取り出して、1度、2度、何度でも切り刻んでみせましょう。あなたの息が絶える、そのときまで。
●自負と献身
「京の陰陽師、神宮寺が嗣子の琴、まかりこしました」
淑やかな重袿の裾をすっと捌き、戦場に相応しく凛と構えた神宮寺・琴(見鬼の孫・g01070)は素早く手印を結ぶ。
夕暮れは迫れども、視界は良好。天地を隔てるものもない。
「雷光招来急急如律令」
腹の底から張るでなく、それでいて荒野に澄んで響く琴の声は、雷神の加護を招く祝詞。
時が止まったかの如き静寂は一瞬。ぴんと空気が張り詰め、風もないのに琴の美しい黒髪が翼のように広がる。
そして、雷撃が降った。
「ぎゃっ」
「ぐぁあ」
「っちい」
地をも揺るがす轟音を連れた金色に打たれた僧兵鬼の数は三。先を制された鬼たちの足は止まる――が、その身が頽れるまでは至らない。
「なんの、これしきっ」
うち一体が、いち早く態勢を整え直し、琴を目掛けてだんっと力強く地を蹴った。
だが僧兵鬼の手が琴の胸倉に届く前に、スィーリ・ラウタヴァーラ(銀翼の従者・g06897)が二者の間に割って入る。
「鬼が僧などとはお笑い草ですね」
ふ、と。スィーリは口元に冷たい笑みを浮かべ、僧兵鬼の拳を踊るようにいなす。
その動きに、花開くように甘やかなレースのパニエが躍る。けれど少女らしい軽やかさに虚を突かれたなら、導かれるのは三途の岸辺。
「魂を導けそうにもないあなた達には、地獄の門番がお似合いですよ」
永久凍土にも似た青い目は、的確に僧兵鬼の筋肉の動きを見て取る。
厳めしい顔を強張らせる鬼は、まさに『雑兵』と呼ぶに相応しい手合。とうてい『本丸』とは呼べない。
僧兵鬼と星熊童子。何れも難民たちを害そうとする輩。迫られた二者択一は、悩ましくなかったわけではない。
そんな時に、スィーリの標となるのはメイド自負。
(「私は、あくまでメイド。影として支えるのがお仕事。大将首はご主人様方へお譲り致しましょう」)
「あぁ、私と踊りたいのですね?」
「なっ!?」
半歩の距離を踏み込んで、スィーリは僧兵鬼との間合いを詰めた。
近くなった分だけ、僧兵鬼の皮膚の凹凸、内に流れる血の動きが鮮明になる。
「ですが申し訳ありません。あなたでは私の相手を務めるには相応しくないようです」
僅かに膝を折って、重心を落とし。僧兵鬼の眼球がぶれたのを見定め、スィーリは手首を翻す。
「なぜならば、こうも簡単に隙を晒してしまうのですから」
――終わりを迎えるまで、踊り続けましょう。
おそらく僧兵鬼の目には、スィーリが懐からナイフを取り出す所作が見えなかったはずだ。それほどの速さでスィーリは舞う。
隠密性に優れるが故、小型の刃は殺傷能力には乏しい。なれど疾き斬撃は幾度となく繰り返される。
一体の僧兵鬼が、スィーリの足元にゆっくりと沈んで逝く。
だがこれは終わりではなく、戦いの始まり。
「次が参ります!」
急いたように琴は言の葉を紡ぎ、宙に躍った二体の存在をスィーリへ報せ、再び神宮寺家に伝わる術を結ぶ。
琴もまた、大果は望まず。一陰陽師として、皆の助力になろうと献身を尽くす。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
【神速反応】LV1が発生!
効果2【ダブル】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
ディアナ・レーヴェ
【ガチレン】
アドリブ連携歓迎
「(唇尖らせ)だーからっ、軍師は本来指揮官にはならな…もー!いいわ、指揮も支援も全部任せてっ!」
火砲を手に後方から戦場制御/嫌がらせ
敵が仲間を抜こうとすれば[砲撃]で制し、距離を取れば足に散弾、跳躍すれば頭に炸裂弾
皆が背を狙われず、敵を囲み、弱った部位に気づくよう[大声]で声掛け・誘導
私に反撃してくるなら、それってむしろ好機よね?
「背中がガラ空き。…獅子堂、冬子っ!今よ!」
それで予め自分の周囲に仕込んだ罠に引っ掛ければ【歩くと痛いの計】は成る
隠し持った本命の短剣で怯ませ[一撃離脱]、誰かに連携を繋ぐわ!
強くても弱くても、あなたは勝てない
私達にも――この地の人々にも!
柊・冬子
連携・アドリブ歓迎
旅団タグ【ガチレン】で共闘
友達が頑張った成果を無駄にするわけにはいきません!
でも、これまた特上級のクズが居たもんですね…。
腕っぷしが強かったらなんだって話ですよ。
でも、今回はそちらの流儀で戦わせてもらいます!雑魚に生きる価値なし、とっとと死ねや!
獅子堂さん!一撃食らわしてやりましょう!
ディアナさん!後ろは任せます!
戦いになったら弱さの証って奴を刻んであげます。
両角折れの鬼なんて格好つかないの典型ですよね。バッキリ折って自分が弱者だってこと分からせます!
獅子堂・崇
アドリブ連携歓迎
【ガチレン】で共闘
皆の力でここまで復興させることが出来たんだ。あんな奴に邪魔をさせるわけにはいかないな
。
ディアナ、指揮と戦況の把握は頼んだぞ。
冬子、同時に攻めるぞ。
俺たちの強さをあいつに見せつけてやるとしよう。
敵が正面から堂々と来るのなら、俺も逃げ隠れするつもりはない。真っ向勝負で正面から打ち合う。敵の最大の技が正拳突きなら、その間合いの内側に入って威力を殺す。
援護は二人に任せて、隙ができたら逃さず最大の一撃を叩き込む。
星熊童子、お前の強さは俺たちには及ばないぞ。
●ガチレン征く
獅子堂・崇(破界拳・g06749)からざっと聞いた事の推移に、パシリ気質の柊・冬子($箱入り不良娘・g06303)の脳内までもが勝負師の赤に染まった。
「これまた特上級のクズが居たもんですね……」
黒いマスク越しに、熱を帯びた冬子の吐息が洩れる。無意識な上目遣いには、鍛え上げられた肉体をひけらかすような鬼の姿が捉えられていた。
「腕っぷしが強かったらなんだって話ですよ」
「冬子、出張るな。同時に攻めるぞ!」
「分かってます! ええ、ええ、分かりました。分かりましたとも。今回はそっちの流儀で戦わせてもらいます! 雑魚に生きる価値なし、とっとと死ねや!!」
息巻きながらも、崇の声はきちんと届いているのだろう。素振り的には一目散なのに、すぐに追いつける速度の冬子の背中に、崇は口角を吊り上げた。
冬子の怒りは、腐れ外道に対するものであると同時に、友人である崇の頑張りの成果を踏み躙られようとしているところにもある。
(「ああ、そうだな。あんな奴に邪魔させるわけにはいかない」)
背後にあるはずの気配に、崇は気を引き締め直す。
修復を進めた長岡京も、安寧の地を求める難民たちも、志ある陰陽師たちも。誰も、誰も、殺させたりはしない。
「ディアナ、指揮と戦況の把握は頼んだぞ」
振り返ることなく、崇もまた走り出す――が、置き土産みたいに託されたディアナ・レーヴェ(銀弾全弾雨霰・g05579)は唇を尖らせた。
「だーからっ、軍師は本来指揮官にはならな……」
訂正を求める訴えは、夕刻を連れてくる風に攫われ消える。自称軍師のディアナは、黙れば気高き軍服美女、喋れば中身はお子様ランチだ。つまり、諸々の面倒は放り投げる。
崇も冬子も、言って聞くようなタマではない。ならば、任されたものは引き受けるに限る。
「いいわ、もう指揮も支援も全部任せてっ!」
やけっぱち気味の気勢を吐いて、ディアナは手持ち式の重ハンドキャノンを構えた。
砲身も反動も大きい為、ディアナには「ギリギリ携行用」だが、携行できている時点で問題ない。
「距離よし、方角よし。まずは一発お見舞いよ!」
衝撃を殺す為に腰を落とし、ディアナは崇たちの先の先――ディアボロスの陣へ我先にと突っ込んで来る星熊童子めがけてハンドキャノンを火吹かせた。
パラドクスの力を乗せない一撃に、クロノヴェーダを傷付ける力はない。なれど、目くらましとしては十分。
「足止めにもならんっ!」
「獅子堂、冬子っ! そのまま直進!!」
濛々とあがる土煙の中に響いた哄笑を耳に、ディアナは指示を飛ばしながら、素早く次手を編む。
相手は、力こそ正義を信条としている。ということは、見つけた獲物は、取り敢えず殴ろうとするはず。
(「狙いは、足元」)
足音を頼りに、ディアナは罠を敷く。パラドクス製だ、距離など関係ない。
「ここなら、あなたたちの好きにはさせないっ!」
雷管と爆薬を組み合わせただけの、シンプルなトラップだ。それでも踏み抜けば、機動力は削げる。
「――今よ。冬子、獅子堂!!」
いつもなら、起爆に足が乱れた敵へ砲撃を加えるところだ。しかしその局面をディアナは友人たちへ任せる為に、呼びかけた。
「馬鹿め!!」
その呼び掛けを星熊童子が頼りにするのは必然だ。誰が誰だか知れぬが、混乱に乗じて二人が来ると分かるのだから。
でも、それさえもディアナの術中。
「アンタ、間抜けだな!」
「は!?」
纏った修羅の覇気で、土埃を四散させた星熊童子は瞠目する。予想に反し、自らに飛び掛かってきていたのは青髪の不遜な女のみ。
「せっかくだ、左角も折ってやる! あの世までブッ飛んで死に晒せクソガキー!!」
敵が欺きに伸るか反るかは、ひとつの賭け。当然、負ける気はさらさらない冬子は、大勝利の予感に全霊を躍らせ、ほぼゼロ距離の間合いで前蹴りを繰り出した。
シンプルながら、鋭い蹴りが星熊童子の鳩尾に入る。冬子の体格からはおおよそあり得ないレベルの威力に、屈強なクロノヴェーダが身体をくの字にして吹き飛ぶ。
そこへ崇が回り込むまでがディアナの計略であり、熟した機を見逃す崇でもない。
「獅子堂さん! 一撃食らわしてやってください!!」
「ああ、任せろ――、っ」
両足で地を踏み締めた崇の息が不意に詰まる。無防備に宙を滑るだけなはずの星熊童子が無理やり打った拳撃に見舞われたのだ。
「してやられたままの我だと、思うなよっ」
「大丈夫だ、そんなこと端から思ってないぜ!」
未だ体を整えきれないままの鬼が獰猛に吼え、浮いていた足の爪先が土を掻く。そこに崇は合わせた。
力頼りの敵であり、正面から来る相手だ。真っ向勝負には真っ向勝負で返すのが、崇の礼儀。
一方的に遣り込めるとは最初から考えていない。浴びて『隙』を確定できるなら、肺腑を焼かれるような痛みも安いものだ。
「一撃必殺だ。止められるもんなら止めてみろ!」
二足歩行の生き物は、立ち上がりの瞬間は他が疎かになる。その一点に、崇はあらゆる武術の基礎を学んだ末に編み出した、粗削りながらも自身絶対の一打を放つ。
震脚の地揺れを星熊童子が耐えたのは、流石だと思った。下からの肘打ちに、頭突きで対抗しようとする気迫にも、畏れ入りかけた。
(「なら、ここだ」)
左角も折ってやる――という冬子の科白を耳奥に蘇らせ、崇は星熊童子の片角へ肘を加速させる。
両折れ角の鬼など、格好つくまい。弱者の刻印そのものだ。
「星熊童子、お前の強さは俺たちには及ばないぞ」
崇の――いや、崇、冬子、そしてディアナの連携の果てに、星熊童子の角は折られた。
とは言え、敵はアヴァルタール級。同じ策に二度は嵌らない。三人の実力を、正しく計ったのだ。
けれどこの地に在るディアボロスは、三人だけに非ず。決定打は与えられずとも、三人の継戦は他の誰かの好機に繋がる。
「強くても弱くても、あなたは勝てない。私達にも――この地の人々にも!」
三度目のトラップを仕掛けるディアナの一声こそ、この戦いの行く末にある未来。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【トラップ生成】LV1が発生!
【隔離眼】LV1が発生!
【建造物分解】がLV3になった!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【命中アップ】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV4になった!
秋津島・光希
※連携、アドリブOK
自分が強えと自負してんのに
やるべきことは弱い者虐めってか?
よーくわかったよ…テメェらは間違いなく、人類の敵だ
絶対、好きにさせねえ
技能[戦闘知識、観察、記憶術、一撃離脱、早業]
僧兵鬼を派手に蹴散らし撹乱
敵の注意を俺に引きつけ
仲間が動きやすい状況を作り出す
敵群をざっと観察
位置を記憶し、数体を狙い定めパラドクス発動
発動の際はわざと腕を空に高々と掲げ
落下物で攻撃する術に見せかける
幻影の形は…墓石なんてどうだろうな?
隙を見せた手近な敵から爆撃槌で殴り
即、次の一体を殴りに移行
記憶した敵の位置に従い
効率良くヒットアンドアウェイしてく
鬼さんよ、ヒトは強えんだ
強え理由はな…教えてやらねえよ!
エンデ・トロイメライ
いやぁ、善いコトすると気分いいねぇ……さてと。
――ここからは殺し合いの時間だ。
FLUGEL、機能制限解除。さあ、一人残らずここで消えてもらおうか。
銃型ユニットは上空からの掃射を。剣型ユニットは掃射から逃れて突破してきた敵をアタシと共に狙うよ。
ナノマシンを再構成したサブマシンガン二丁で脚を狙い機動力を奪い、動きが鈍ったところを剣型ユニットで刺し貫く。
炎は射程距離ギリギリまで近づいてあえて使わせ、後ろに飛び退き距離を取りつつ炎で視界が隠れた隙に回り込ませておいた剣型ユニットで切り裂き倒すよ。
キミたちみたいな命を大事にしないヤツ、アタシ嫌いなんだよねぇ。
命を大事にしないなら、自分の命もいらないよね?
●朱
西に大きく傾いた太陽に、エンデ・トロイメライ(エピローグ・g00705)の白い髪も朱色に染まる。
温かみのある色合いだ。同時に、煉獄を彷彿させる彩でもある。
鬼たちの訪れが夕刻になったのは、時間の妙だ。けれど鬼たちは、この地を朱に染める気だったであろう。
でも現実は違う。
「FLUGEL、機能制限解除」
――さあ、一人残らずここで消えてもらおうか。
平坦な口振りで無機質に言い切り、エンデは十機の飛行ユニットを空へと放つ。
銃型の五機は掃射を目的とし、剣型の五機はエンデに動きを合わせるもの。無論、目的は僧兵鬼たちの殲滅だ。
降り来る弾幕を止めたいのか、三体の僧兵鬼がエンデを包囲し、炎を練り上げる。
しかしエンデは僅かも怯まず、足を止めずにサブマシンガンを両手に構えた。
「アタシがキミたちに捕まると思ってるの?」
轟と迫る炎弾を躱すことは出来ない。分かっているからエンデは身を低くして駆け、自らひとつの炎に肉薄する。そして直撃の間際にバックステップを踏んだ。
「――ここからは殺し合いの時間だよ」
なびいたエンデの髪の先を熱で灼く距離で、炎と炎がぶつかる。躱せないなら、数を減らせばいいだけだ。答は至極シンプル。熱量が膨れ上がることなど、エンデは気に留めない。
動けないようなダメージにならないのなら、結果は一緒。むしろ爆ぜた風を加速に利用し、エンデは低空を滑るとサブマシンガンを火吹かせた。
「「「なっ」」」
「いやぁ、善いコトした後は気分がよくて体が軽いね!」
至近距離、かつ地を這う銃弾の嵐に僧兵鬼たちの挙動が乱れる。そこへエンデは剣型ユニットをけしかけた。
即死させるまでは行かないが、エンデのトリッキーな斬撃に僧兵鬼たちは浅くない傷を負い、見るからに動きを鈍らせている。
その只中を択んで、秋津島・光希(Dragonfly・g01409)は跳び込んだ。
「覚悟しやがれ!」
気迫を吼えて、光希は両腕を空へ高々と掲げる。まるでそこから、何かを降らせると予告するように。
「伏せろっ」
「いや、距離を取れ!!」
面白いように釣られる僧兵鬼の様子を、光希は内心で嗤う。
「弱い者虐めばっか考えてたら、まあ、そうもなるよな」
己の強さに自負の念があるくせに、それを弱者の虐げにしか使わぬ鬼たちの在り様は、決して光希にとって許せるものではなかった。
(「テメェらは間違いなく、人類の敵だ。絶対、好きにさせねえ」)
「イタズラやジョークもハッカーの専門領域……なんてな!」
この瞬間、光希の意識は現実を超えた次元に接続される。傍目には、無から有を生み出す奇跡。その真実は、質量を持つ幻影を創り出すハッキング技能。
どうせなら意趣返しになるものがいい――その咄嗟の判断で、光希は僧兵鬼たちの上向く視界を墓石で埋め尽くした。
「つ、つぶされるっ」
本能的にか、僧兵鬼たちが頭を抱える。そのせいで、鬼たちの足は止まってしまっていた。そこが光希の狙い目。
Hack and trick。降らせるものは、ただのフェイク。真髄は、その後に。
「ったく、鬼さんの覚悟はその程度かよ?」
爆撃槌を振り被りつつ、僧兵鬼の一体に肉薄する光希の表情は、苦く歪む。
思惑通りに運び過ぎる展開が、いっそ腹立たしいのだ。確かに光希は、僧兵鬼たちが頭上から襲われたばかりなことを利用した。そうであっても、こんな輩が強者を名乗り、難民を弱者と決めつけたことに、光希の腹の虫は治まらない。
「どうせここで死ぬんだ、覚えとけとは言わねえ。でも、聞け――」
背の翅を羽ばたかせ、体の傾きを限界まで調整し。足の踏ん張りではなく、筋肉のしなりで光希は大得物を一息に薙ぐ。
「ヒトは強えんだ。理由は教えてやらねえけどよ!」
打ち据えて、吹き飛ばす。
反動を活かして、振り返りざまにもう一打。
締めの一打は、二歩の距離を飛んでのフルスウィング。
「トドメは任せたっ」
「オーライ、オーライ!!」
我が身のコントロールを失った僧兵鬼たちは、自身が描く軌跡の先に待ち構える少女の姿を見た。そしてそれが、三体の僧兵鬼にとっての最期の記憶。
「アタシね、キミたちみたいな命を大事にしないヤツって嫌いなんだよね」
五と五。全ての飛行ユニットが、僧兵鬼の殲滅に躍動する。
「命を大事にしないなら、自分の命もいらないよね?」
銃声と剣戟が途絶えた時、文字通り全身を蜂の巣にされた僧兵鬼の骸が三つ、朱色の荒野に転がっていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【アイテムポケット】がLV2になった!
【操作会得】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
【ダブル】がLV2になった!
エンジュ・アルティオ
同行:クー(g05079)
こりゃ絵に描いたよな鬼だ
突っ込みすぎないでねクーちゃん
え、弱点? …えー…来年の話すると笑うらしいよ?
ええ…いや、無茶振りでしょ…
しゃーない、気を取り直してサポートといこう
鳥型式神に変じる白と黒の符を放って
踏み出す巨躯の目元や足元へと[誘導弾]
焼かれる傍から式神を喚んでは纏わり付かせ
此方へ彼方への壁とし狙いをつけさせないように
ほらほら、燃やしきれるかな
油断してると――そら、山猫に食われちゃうよ
えー笑ってないよ~
まさか本当に話しにいくとは思わなかっただけで
…喪って
何も出来なかった
救えなかった無力感なんてもん味わうのは
分不相応にも命に手出した物好き達だけでいいんだよね
クーガ・ゾハル
エン/g05162 と
おう、わかってる
あいつ、でかくてつよそうだしな
エン、オニの弱点って、なんだ
……ん、よしわかった
きいたおれが、わるかったんだな
「キョウ」のヒトたちのところには、行かせない
カクゴはいいか
エン、いくぞ
エンのつくった目くらましのウズにまぎれて走る
つきだされるカタナは、ひくくダッシュしたり
ジャンプしてカイヒ
こんど会うときは、あの小さいやつも
またゲンキに、走りまわってるハズだからな
……笑わないのか、オニ
カタナだって、ふみつけて高くとんでやろう
少しくらい、かすってもいたくはない
上からおもいきり、うるさい剣をたたきつける
?
なんで、またおまえが笑ってるんだ
…もしかして、ウソだったのか
●来年の夢
琥珀色の眸はどこまでも真っ直ぐに、茜に移ろいかける空を背に立つ鬼たちを見ていた。
『突っ込みすぎないでね、クーちゃん』
『……おう、わかってる』
忠言への応えに一拍を要したクーガ・ゾハル(墓守・g05079)を、エンジュ・アルティオ(イロナシ・g05162)は横顔で笑う。
視線の通り、クーガの心は既に彼方へ走り出しているのだろう。それでもクーガはエンジュの存在も忘れていない。
(「ま、これなら大丈夫かな――ぁ」)
無意識に保護者めいてしまっていた自分に気付き、エンジュは夕嵐に遊ばれている灰の髪を指先で捉えた。
これだから、実年齢よりも老け込んでしまうのだ。
(「って、そうじゃなくて」)
脇に逸れたがる思考を正し、エンジュは内ポケットから取り出した眼鏡をかける。
猛烈な勢いで距離を詰めてくるクロノヴェーダの群れは、文字通り『絵に描いた』ような鬼たちだった。このまま放置すれば、碌な事にならないのは明々白々に過ぎて、片腹が痛い。
――と、その時。
『エン、オニの弱点って、なんだ』
てっきり前しか視野にないと思っていたクーガの問いに、エンジュは擦り減った青の目を僅かに見開いた。
陰陽の術を扱い、積み重ねた知識は少なくないが、エンジュは平安鬼妖地獄変に縁深いわけではない。だが頼りにされた以上、捻り出すべきものは捻り出したくもある。
『……えー…、えーと。来年の話すると笑うらしいよ?』
知識の出処はことわざだ。
『……ん、よしわかった』
けれどもクーガの反応は、遠い海のように塩からかった。
『きいたおれが、わるかったんだな』
『ええ……いや、いやいや?』
『いくぞ、エン。カクゴはいいな』
エンジュがとんだ無茶ぶりを訴えても、素気無く正面に戻されたクーガの目線はもう悠長な暇(いとま)へは戻らない。
そして掃討戦は始まった。
盾たる白に、矛たる黒。
エンジュが繰る二色の鳥型式神を目くらましに、クーガは僧兵鬼たちの間を器用に駆けまわる。
狙うのは、いち早くエンジュめがけて炎を放とうとしている僧兵鬼だ。
「油断してると――そら、山猫に食われちゃうよ」
「油断なぞするか!」
わかりやすいエンジュの挑発に乗った一体の間合いへ、クーガは一息に身を屈めて踏み込む。
(「コイツらは、ここで倒す」)
『キョウ』の出逢いは、既にクーガの胸に刻まれ、息衝いている。
(「あのヒトたちのところには、行かせない」)
「な!?」
不意に足元から生えた――ように見えただけだ――クーガに、僧兵鬼が息を飲む。しかしその間にも、クーガは高く跳ぶ。
「喰い荒らせ」
うるさく吼える駆動式刃を、クーガは重力をも味方につけて振り下ろす。
ぎぎぎぎ、と嫌な唸りが柄を握る手も痺れさせたが、さらにクーガは自重も剣に伝え、骨と筋と肉の抵抗を捻じ伏せた。
「ほらね、やっぱり食われちゃった」
「っ、エン!」
「ん?」
クーガの、めずらしく急いた口振りに、エンジュはゆっくりと首を傾げる。
一瞬前までエンジュの顔があった場所を炎弾が掠めたのは、その直後のこと。
余波に幾らか髪が炙られた。青白い皮膚にも赤みが差したが、それだけだ。
「残念、燃やしきれなかったね?」
軽薄に嘯いて、エンジュは二色の符を手首で翻す。
追撃のつもりだったらしい新たな炎は、白い鳥が翼で制した。その爆ぜる最中を黒が貫く。
「――、ぁ」
眉間を穿たれた僧兵鬼の断末魔は短く、呆気なく頽れる骸をエンジュは薄い硝子板越しに見つめる。
(「……喪って」)
何も出来なかったエンジュは、過去のものだ。
なれど、救えなかった無力感は、生々しく記憶にも語感にも残っている。
(「こんなもん味わうのは、分不相応に命に手出しした物好き達だけでいい」)
「ほら、クーちゃん。走って、走って!」
「え、あ。ああ」
忘れ得ぬ空虚さを冗句で上書き、エンジュはクーガと共に新たな悲劇の芽を摘み進める。
「しまった」
「どうしたの、クーちゃん」
「こんど会うときは、あの小さいやつもゲンキに走りまわってるハズだからってオニに言いそびれた……」
「へ?」
ふと何かを思い出したようなクーガの呟きに、眼鏡を懐にしまったエンジュはゆるく瞬く。
「……ライネンの話をしたら、オニは笑うんだろう?」
「え」
「……おまえ今、笑ったな?」
「え、え、笑ってないよ、笑ってない。うん、笑ってるはずないし!」
「いや、笑った。もしかして、ウソだったのか」
荒野に動く僧兵鬼はもういない。響くのはエンジュとクーガの他愛ない遣り取りと、唯一残った鬼を捻じ伏せるための剣戟。
それもそう長くは続かないことを、エンジュとクーガは確信していた。
来年のことなど、分かりはしない。
だがディアボロスたちが諦めなければ、幼子が野を駆け回れる未来も夢ではないだろう――。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【ハウスキーパー】がLV2になった!
【建造物分解】がLV4になった!
効果2【能力値アップ】がLV5になった!
【ダメージアップ】がLV5になった!
金刺・鞆
民らを受け入れ守るための復興作業でしたもの。民の襲撃などさせませぬ。
さて、次は鬼退治と参りましょう。われらのいくさ働き、陰陽師さまらにしかと示さねば。むん!
此度の将も後方に構えている手合いではない様子。なれば、牽制の意も込めて早々に立ち合いましょう。得物を持たぬ徒手の猛者、見通しよいこの戦場であれば見つけるのも難しくはない、かと。とるーぷす級との戦闘に紛れて偵察し、発見次第先制攻撃を狙います。いぬの電撃によるフェイントも交えれば、多少の虚もつけるはず。
反撃は胸部に来ると判っておりますゆえ、急所をかばいつつ上体を捩って直撃を避けたいところ。
弱きの死を望むなら、きさまが死するのも自業自得と心得よ。
三苫・麻緒
絶望に立ち止まらずに進もうとする強さを理解できないのは少しかわいそうかもね
強さを追い求めているのに、あの人たちの強さを得ることなく、腕っぷし以外は弱いままで終わっちゃうんだから
陰陽師さんたちの努力を潰そうとするやつは誰一人として通す気はないよ!
鬼の数的にすぐ居場所はわかるだろうし、ナイフを構えながら見つけたらすぐに地面を滑るように突撃するよ
腰か腕にナイフを突き立てながら勢いを殺さず後方へ≪吹き飛ばし≫ができたら完璧だね
攻撃を終えたらすぐに【飛翔】で上に回避
高く飛んで離脱しながら童子の姿を捉えられるように体勢を整えるよ
足場がない状態での拳なら、避け切れなくても最悪威力は下がっているはず…!
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携、アドリブ歓迎
……では、問おうか
強さとは何だ
彼らが弱いと誰が決めた?
星熊童子とやら。あなたが強いと誰が決めた?
……彼らはあんなにも
強く、生きようとしている、生きている
人として正しくあること
生きることも、生かすことも諦めない強さだと……
俺は感じた
味方と積極的に連携
戦場を偵察、観察し、敵味方の位置を把握
戦況が許せば敵の死角を取りに行き、味方と包囲か挟撃の形に
多方向から攻撃を仕掛けて、一対一にさせない
クロスボウで貫通撃を加えて牽制し足止め、味方への攻撃を妨害
隙を看破し、二射目で爆破
……力でも負けてやらないさ
それは誰が為の強さだ?
反撃には魔力障壁を展開し軽減、フェイントを交えて衝撃波の軌道をかわす
●勇の煌星
身体のあちこちが痛い。
どこかが切れているのだろう、汗が沁むような視界は先ほどから赤く染まっている。
(「こんなもの、きにかけるほどのものではありません……っ」)
星熊童子を打った手応えを手の甲に感じながら、金刺・鞆(虚氏の仔・g03964)は奥歯を噛み締めた。
(「民の襲撃など、させませぬ。われらのいくさ働き、陰陽師さまらにしかと示さねば」)
時の流れがゆるやかに感じる刹那に、鞆はぐっと目を見張り、星熊童子の反撃を見極める。
(「かならずや、悪しき鬼を討ちとってみせましょう」)
「いぬ、さがるのですっ」
主を守ろうと身を呈そうとするモーラット・コミュを一声で留め、鞆は鬼の性が顕わになった両腕を胸の前で組む。
力に自負のある鬼の攻撃は、ある意味においては単調だ――絶対的な自信があるからこそかもしれないが。合わせることは、難しくない。
――それに鞆は一人ではない。
「これで、堕ちろ!」
「ともは、おちませぬっ」
「堕とさせるわけがないだろう」
星熊童子の気迫と、鞆の気概。その交錯にエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)のストラテジーが差す。
クロスボウのトリガーが引かれたのは、立て続けの二度。
一射目に、夕焼け色だった一帯は金色が溢れ。目が眩んだところに、爆風を伴う炎が星熊童子の足元で薔薇と咲く。
「っ、これしきで我の足が止まると――」
「残念、止まっちゃうんだよ」
星熊童子の意識は、完全に己の間合いにあった。返していえば、間合いにしかなかった。つまり頭上は疎かであり、その頭上に三苫・麻緒(ミント☆ソウル・g01206)は機を賭けていた。
クリソベリルをあしらったナイフを突き出し、麻緒は魔力の翼を畳み、真っ逆さまに落ちて征く。
視線は、両の角とも折られた白髪の頭を捉えている。過ぎ行く景色は、走馬灯よりもなお早い。
後ろに控えることなく、僧兵鬼らと並び駆けていた星熊童子の発見に、難はなかった。また、僧兵鬼の掃討に専念してくれたディアボロスがいてくれたおかげで、戦場が混乱する事もなかった。
鞆、麻緒、エトヴァ、加えて三人。六人は、ひたすらに対星熊童子に専念し、集中できた。
開戦からそれほど時間は経っていまい。それでも密度の濃さに、息の上がらぬ者はいなかった。疲れもある。傷も多い。
だがそれは星熊童子も同じ。否、星熊童子の方が消耗は激しく、明らかに憔悴している。
「っ、何ゆえ価値なき弱者を護るっ」
荒い呼吸に混ぜて発した星熊童子の問いに、迷いはない。だからエトヴァは真っ直ぐに問い返した。
「では、問おうか。強さとはなんだ。彼らが弱いと、誰が決めた?」
――陰陽師たちも、難民たちも。皆が皆、エトヴァの目には、強く生きようとしているように映った。
事実、彼ら彼女らは過酷な環境に在っても、逞しく生きている。
「生きることも、生かすことも諦めない。それは強さだ」
麻緒の接近を許しながらも、星熊童子はエトヴァへ衝撃波を放っていた。その威力が明らかに落ちてきているのを、エトヴァは我が身を以て気付いている。
終わりは、近い。
言っておきたいことは、山とある。
「星熊童子とやら。あなたが強いと、誰が決めた?」
「愚弄するかっ!?」
「愚弄も何も、ホントのことでしょ?」
貫いた頭蓋からナイフを抜き去り、麻緒は再び高く翔ぶ。飛びながら、言葉の刃は降らせ続ける。
「私、ね。あなたのこと、少しかわいそうって思うんだよ。だって絶望に立ち止まらずに進もうとする強さを理解できないんでしょ?」
「黙れ!!」
麻緒を掴もうとした星熊童子の手が、虚しく空を掻く。その鼻先を敢えて掠めるよう急下降した麻緒は、地を踏む前に風のように水平に飛び退った。
「強さを追い求めているのに、あの人たちの強さを得ることなく、腕っぷし以外は弱いままで終わっちゃうんだから――やっぱり、かわいそう」
「黙れ黙れ黙れ!!」
星熊童子がディアボロス達の問いや憐みに応えることはない。が、臨界点を超えた激情をディアボロス達は見逃さない。
「いぬっ!」
狂気を叫ぶ鬼へ鞆はモーラット・コミュをけしかける。荒ぶる鬼は、いぬを鷲掴みにしようとした。けれど白い毛玉はまとった電撃で星熊童子を僅かにひるませ、そこへ鞆の手が伸びる。
熟れた鬼と、稚い鬼の邂逅。されど鬼は鬼。鞆は鬼人化した腕で星熊童子の手首を掴むと、凄まじい膂力によって巌が如き鬼を地面へ捻じ伏せた。
攻防に、濛々と土煙があがる。エトヴァはそこへ距離を詰めた。
「――Blühe.」
ほぼ近接の間合いで、クロスボウを放つ。視界のかすみは、エトヴァの妨げにはならなかった。
「あなたの骨を拾う者はいない」
引き寄せた未来を確信し、エトヴァは夕刻の荒野に鮮やかな絵画を描く。
黄金は朱金に。炎の大輪は、赤を超えて白く、白く。その色合いが見事であればあるほど、エトヴァは星熊童子の論ずる『強さ』の無益ぶりを思う。
自分が認めぬ者を倒して、斃して、その果てに何が残る? よしんば比類なき強さを得たとして、さすれば終いは孤独のみ。
「あ、ああ、あああ……ぁっ」
「まだだよっ」
起き上がり損ねた星熊童子は、身も心も髄まで焼けたはずだ。しかし麻緒は間髪入れずに追撃をしかける。
呻けるならば、息はある。強さの真の意味を識らぬ鬼だが、猛き者であるのは真実。終焉の瞬間まで、油断はしない。
「速く、風より速く。縛り付けようとする悪意は吹っ飛ばす!」
巨大化させた魔力翼で空を叩き、爽風を連れるナイフを一閃。肉を引き裂く感触を覚えた直後、麻緒は翼を薙いだ。
「――っ、よもや、これまで、かっ」
横っ面を巨人の掌に張られたかの如く、星熊童子は真横に吹き飛ぶ。
「ええ、そのとおりにございます」
そして待ち受ける地点に、鞆がいた。
質量差を考えると、些細なタイミングのずれも鞆には許されない。一瞬の遅れも、鞆自身を害するものとなる――そうと理解った上で、鞆は両足で荒野を踏み締めた。
「弱きの死を望むなら、きさまが死するのも自業自得と心得よ」
凛、と。鞆は気高く言い放ち、開いた両腕を一息に閉じる。
さながら二面の扇に挟み取られたかのような星熊童子には、再び立ち上がることはおろか、断末魔をあげる余力さえ残されてはいなかった。
「みて、一番星!」
夕映えが去りかけの空に見つけた輝きを、麻緒は指差す。
時に夜の標であり、慰めでもある星は、ディアボロスたちの目指す『強さ』にも似て。
「きっと明日も良い天気ですね」
蹂躙の脅威が去った野に静かに響くエトヴァの声は、誰の胸にも明日への期待を灯した。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【怪力無双】がLV2になった!
【飛翔】LV1が発生!
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効果2【能力値アップ】がLV6になった!
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