リプレイ
積商・和沙
ついにベルリン攻めね。
頑張っていきましょう。
この迷宮は銃眼があるのね。
自分は安全なところにいて私達を狙い撃ちにするなんて、いいご身分ね。
思いきり後悔させてやるわ。
銃眼が水平方向なのか垂直方向なのかを見極めないとね。
その逆の動きに銃眼は対処がしづらいのよ。
多分、通路だから水平方向でしょうね。
アンテナ、上下方向の動きで敵の照準を惑わせながら接近してワイファイスパークよ。
敵はわざわざ銃口という避雷針を出してくれるのよ。
あんたの電撃を当て放題じゃないの。
さて、私は敵の射線が反対側の銃眼のある側壁に向くように避けていくわね。
わざわざ、徹甲弾を撃ってくれるなんてありがたいわね。
神之蛇・幸人
時間をかけずに突破したい
怪我は覚悟。新宿島に帰るまでに治せばいい
暗くて行動に支障が出る場合のみネックライト使用
残留効果が使えるなら【完全視界】優先
神蝕呪刃。隔壁に刃を当て一部を【腐食】
仲間が通れる穴を空けるか、
攻撃で壊せる程度に脆くしたい
隔壁の破壊に専念して回避は度外視
隔壁突破後
敵の立つ地を腐食させ〈撹乱〉を狙う
一瞬の隙ができればいいから、
深さは10cm程度で残りは広さに回す
体勢を崩したら一度に二人を斬りに行く
長いこと、怖がらせたくないんだ
攻撃を防がれたら右腕を蹴るか
妖刀の剣圧を放って狙いを逸らす〈吹き飛ばし〉
負傷した味方は積極的にディフェンス
……大怪我したり、死ぬのを見るのは、嫌だよ
朔・璃央
双子の妹のレオ(g01286)と
迷宮の先には壁に壁に壁ですか
大事な何かがあるって判りやすいですね
一つ一つと打ち壊していって、
どんと暴いて差し上げましょうね
レオより前へと出て攻撃を引き受けましょう
両腕を固め盾代わりにし
飛んでくる銃弾を弾き防御しながら
こちらを狙う銃口への対応はレオへお任せ
いくらか攻撃が途絶えた頃を見計らって壁へと詰め寄り
固めた拳で思い切りぶん殴って破壊を狙いましょう
他の方々と力を合わせれば、
どんな壁でもきっと壊せるでしょうからね
壁の後ろには兵士さんがいますかね
此方も余さず殴り飛ばしてあげましょう
全部の壁を乗り越えるまで、何度でも何度でも
頑張ってここを切り抜けましょう
朔・麗央
双子の兄リオちゃん(g00493)と
この壁の先に進むには確かに骨が折れそうね
でも一つ一つ対処していけば頑張って進めそうかな
1人ではどうにもならなくったって力を合わせたらきっと!
私は先を進むリオちゃんの後ろから
側壁の銃眼をイグジストハッキングで無効にして行くね
そしてその隙にリオちゃんが進んで壁を破壊
進むリオちゃんを狙う銃口があれば優先的にハッキングして
進み易い様にサポートしたい所だな
その繰り返しで少しずつ前進していきたいね
勿論他の復讐者さんへも同じ様に進めるように後援するね
千里の道も一歩からだもんね
敵の兵士さんに会ったら
壁の銃口と同様にその身にもハッキングしてあげようね
頑張ってここを抜けないとね
鬼歯・骰
【KB】
人を万年腹ペコみたいな言い方をするな
しかしこんだけ守りを固めてりゃ
大事なもんありますって言ってるようなもんなのにな
無機物食いはしねぇが一枚ずつ引っぺがそう
銃眼の方は任せたと先行するツリガネのナイフに続いて走り
隔壁を鰐はめた腕でぶん殴って穴開けるか
多少の穴あきゃ指引っ掛けて引きちぎるかで破壊しよう
行動に支障が出そうな銃弾は払い落として
通れる穴を開けるのを最優先
他の奴とも連携して一点集中で迅速に
敵は救援を呼ぶ前にさっさと叩きのめしたい
こちらが動けなくなるような攻撃以外は無視で
殴って掴んでぶん投げて
静かになるまで暴れてやる
まだまだやる事沢山残ってんだ
こんな所で長々足止め食らっててたまるかよ
鐘堂・棕櫚
【KB】
流石中枢部への道と言うべきか
壁に壁に壁…ガッチガチですねえ
こんな不味そうなバームクーヘン骰さんだって食べませんよ
万年甘党には違いないでしょと
軽口叩くもお仕事は真面目に
復讐の刃で複数の投げナイフを具現化
銃眼めがけて投擲して敵を牽制、可能なら排除
銃眼から別の銃眼へと標的は随時変えて移動を行い
できる限り目立って敵の注意を引くのを目標にします
立ち止まらず動いて弾は可能な限り当たらぬよう努めますが
隔壁攻略組が狙われるなら肉壁やりますね
隔壁の向こうから敵が現れたらその殲滅を最優先
地の利では劣っていようとも
厚い守りの一点を穿たんとする執念では勝る自信ありますよ
復讐者って言われるぐらいですからね、俺ら
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎
残留効果は相互活用
【完全視界】使用
声を掛け、密に連携を取る
仕掛けは分担し対処
周囲の偵察・観察を怠らず
銃眼の位置や高さを確認
身を低める等かわして進むか
その余地がなければ
銃眼の斜線を測り、隔壁の前に安全地帯を確保するように潰すか中の敵ごと撃つ
隔壁破壊者を先へ通し
隔壁を突破次第、留まらず次の安全地帯の確保へ
隔壁の向こうに敵の気配を察知したら、その対処を優先
仲間に注意喚起
伏せる等で先制攻撃の射線から外れ
隔壁突破と同時に
①(皆に完全視界きけば)発霧弾投擲
②銃が有効なら制圧射撃し、仲間の攻撃に繋げる
③撹乱攻撃で吹き飛ばし隊列を崩す
以降狙いを揃えて敵数を減らす
動き回り狙いを分散
魔力障壁で防御
●DURCH DIE DUNKELHEIT
「ついにベルリン攻めね……」
長い通路の先の先、一見するとただの行き止まりにも思われる壁を遥かに見て、積商・和沙(四則演算の数秘術師・g02851)は呟いた。訪れた地下通路は厳かでありながら、一歩踏み出せば雪崩を打つように何かが始まりそうな、物々しい気配に包まれている。
重苦しい雰囲気を打ち払うように勝気な笑みを浮かべて、少女は背にした仲間達を振り返った。
「さ、頑張っていきましょ!」
「ええ、どうぞよろしく」
人当たりのよい笑みで、鐘堂・棕櫚(七十五日後・g00541)が応じた。真っ先に駆けつけたのは、全部で八人――一人は別行動だが、ここを突破してベルリン王宮強襲の口火を切り、その地下に秘められた情報を持ち帰るという目的は同じだ。
それにしてもと路の先を見やり、棕櫚は言った。
「さすがは中枢部への道と言うべきか。ガッチガチですねえ」
「ええ、本当に。要は、大事な何かがあるんでしょうね」
実に分かりやすいと、朔・璃央(黄鉄の鴉・g00493)は同意する。もっともこの地下迷宮の構造やそこに放たれていたゾルダート達自体が侵入者を排除する一つ目の防壁の役割を果たしていたわけで、彼らにははなから何も隠しているつもりはないのかもしれないが。
違いないと鼻で笑って、鬼歯・骰(狂乱索餌・g00299)が後を次いだ。
「こんだけ守りを固めてりゃな。……全く物騒な出迎えだこって」
足を止めた復讐者達の前方、左右の壁には無数の穴が開いていた。迷宮探索にはよくある話だ。不用意にそこを通過すればどんな目に遭うかは、まったく想像にかたくない。先のことを考えればダメージは最小限に抑えたいところだが、事が事だけに慎重にとばかりも言ってはいられないだろう。
「時間をかけずに突破したいな。……ちょっとくらい怪我しても、帰るまでに治せば」
「だめだよ、怪我するのを前提にしちゃ。確かに、先に進むのはちょっと骨が折れそうだけど……」
伏しがちな瞳で呟く神之蛇・幸人(黎明・g00182)に、朔・麗央(白鉄の鉤・g01286)は嗜めるように言った。
「一人ではどうにもならなくったって、みんなで力を合わせたら、きっと――」
言外に含めた思いに、幸人は一瞬きょとんと瞳を瞬かせる。そして、無意識に緊張していたのだろうその口許を和らげた。
「ごめん。……分かってるから、大丈夫」
差し迫った状況に多かれ少なかれ気が張っているのは、皆同じだ。しかし綺麗ごとではなく、この場を突破するのには全員の力が必要なのだ。だから――ただの一人も、欠けてはならない。
ぽん、と触れた手で妹の肩を撫でおろし、大丈夫と璃央は言った。
「一つ一つ打ち壊して、どんと暴いて差し上げましょう」
左右の壁に不規則に並ぶ銃眼は、概ね大人の腰から肩ほどの高さに集中している。身体を屈めて下を抜けられれば一番楽だったが、左右から狙われているとなるとそうもいかないだろう。素早く状況を見極めて、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)が言った。
「かわして進む余地はないな。……であれば、少々面倒ではあるが」
穴の向こうの敵ごと、潰していくしかない。先陣を切る者には危険も伴うが――。
行けるだろうかと目を向ければ、燃える火花を映した黒曜の手をぱきりと鳴らして、骰は口角を上げた。
「心配しなくても、最初っからそのつもりだ」
不安の芽は、摘み取っておくに越したことはない。行くぞと短く肯き合って、復讐者達が踏み出したその瞬間、無機質な通路にけたたましい警報音が鳴り渡る。
●GANG DES TODES
「そっちは任した」
「ええ、任されましょう」
今更、合図など必要ない。骰に先駆けて一歩、目の前の通路に大きく踏み込んだ棕櫚は、その手に生み出した復讐のナイフを左の壁の銃眼を目掛け投げつける。柄まで穴にはまった刃はそう易々とは抜けるまい。
パン、と乾いた音とともに踝を灼けるような痛みが掠めた。銃弾が床にめり込んでいく様を見送る刹那に、棕櫚は空色の瞳を曇らせる。
(「厭ですね」)
喪った痛みには未だ慣れないのに、荒事にばかり慣れてしまう。
撃たれたのと反対の足を軸にくるりと反転し、男は右側の銃眼に次の刃を突き立てる。返す手でまた次の穴へ狙いを定めると、ナイフを投げるよりも早く、穴の形がぐにゃりと歪んだ。ちらりと視線を流せば、麗央が頬に玉の汗を浮かべて、それでもしっかりと前を見据えている。
(「リオちゃん達が、ちょっとでも前に進みやすいように」)
千里の道も一歩から――彼らを狙う銃口は一つずつ、この手で歪めて押し通るまで。渦を巻くハッキングコードを身体に纏わせれば、睨む瞳の片隅を仲間達が駆けていく。しかし続く路には、未だ多くの銃眼が真っ黒な口を開けている。
壁の向こうで蠢くものの気配を感じ取って、和沙は不快感を露わに言った。
「自分だけ安全なところで私達を狙い撃ちにするなんて、いいご身分ね」
思いきり、後悔させてやるわ――そう、挑むように口にして、少女は肩に停まった白い毛玉に呼び掛ける。
「アンテナ!」
「もきゅ!」
おでこ? こめかみ? なんと称すればいいものかは分からないが、両目の上に二つ並んだ角のようなものをゆんゆんと動かして、モーラットが応じた。
「上下方向の動きで敵の照準を惑わせて。接近してワイファイスパークよ!」
「もきゅ?」
銃眼に対処をするうえで重要なのは向きだ。水平に撃つための銃眼ならばその逆、即ち縦方向の動きにはついて来られない。首、というよりも全身を傾げる小さな相棒に向けて、和沙はわざと焚きつけるように言った。
「敵はわざわざ銃口(ひらいしん)を出してくれるのよ。あんたの電撃を当て放題じゃないの」
「もきゅ!」
毛玉の頭上に、閃く電球が見えた気がした。元気よく主人の肩から飛び立つと、モーラットは天井付近と床すれすれを跳ねるように動き回りながら通路の中程にまで突っ込み、渦巻き印のほっぺたから強烈な電撃を放出する。
「今だ!」
壁の向こうで人が倒れる気配を悟り、エトヴァが叫んだ。通路を等間隔に縁取る誘導灯の明りで、視界は思ったほどには暗くない。しかし壁の穴の向こうの兵士は倒れても、行く手には冷たい隔壁が聳えている。
ジャケットの内側から取り出した呪符を左手にはらりと広げ、幸人は反対の手で背負った刀を抜いた。波打つ長い前髪の下、夜明けの海に似た三白眼で睨む壁は黒々と硬質な光沢を放っている。
「神蝕呪刃――」
ぼうと光芒を帯びた呪符を投げつけ、張り付いたそれを目掛けて一閃、振り下ろすのは呪われた刀。蘇芳色の呪を纏う刃は、触れたものを腐らせる。――けれど。
「だめ、か?」
隔壁の重さは、ゆうにトンを超えるだろう。個々の部品を狙えれば良いのだが、壁の構造を解析しているほどの余裕はない――ぐっと歯を食い縛り、幸人はいっそう刃に力を込める。ならば、正攻法で押し切るのみだ。
一閃、二閃、斬撃を重ねる度に穿つ傷は深くなる。代わりましょう、と口にして、璃央がその隣へ進み出た。
「皆さんとなら、どんな壁でも壊せるでしょうからね――」
振り被る腕は喰らった仇の魔力を編み上げて、白く硬く凍っていく。拳のただ一点に体重を乗せて突き入れれば、十二分に削られた壁は轟音と共に砕け散った。そしてその向こうには、また新たな壁が続いている。
乱れた横髪を耳に掛け直して、璃央は言った。
「壁の先には壁また壁、ですか」
「不味そうなバームクーヘンですねえ」
骰さんだって食べませんよ、とこの期に及んで嘯く棕櫚に、骰は渋い顔で眉を寄せる。
「人を万年腹ペコみたいに言うな」
「万年甘党には違いないでしょ」
仕事は、まだまだ終わらない。
任せて、と仲間達に目配せして、和沙は開けた路の先へ躍り出た。
「撃ちたかったら、撃ちなさい?」
挑むように銃眼を睨めば、先の尖った弾丸が少女を目掛け迫り来る。すいと上体を逸らしてかわせば、右の壁から飛び出した弾は左の壁にぶつかって、銃眼ごとそれを打ち砕いた。おばかさん、と琥珀色のツインテールを揺らして和沙は笑った。
「さあ、行って!」
新たな銃眼へ向かう仲間達のサポートを受けて、幸人らは通路を縫うように奔り、二枚目の壁へと辿り着く。黒革のグローブを嵌めた右手を振り被り、骰が言った。
「食いはしねぇが、一枚ずつ引っぺがそう」
壁が彼らの路を阻むなら、それが幾重に連なるとも。振り上げた拳は、めきめきと軋みながら異形化し、その凄まじい膂力で目の前の壁を打ち壊す。そして、その向こうには――。
「! 皆、伏せろ!」
エトヴァの鋭い一声に、緊張が走る。ある者は身を屈め、ある者は壁際に張り付いて応えると、その瞬間、無数の発砲音が鳴り響いた。
●DANN, TANZEN WIR
「思ったより数が多いわね……」
二枚目の壁の向こうには、複数の兵士達が待ち構えていた。これじゃ近づけないじゃないとぼやく和沙の隣で、体勢を低くエトヴァは応じる。
「まあ、だいぶ派手にやってきたからな」
敵が迎撃体勢を整えるだけの時間はあったし、それは当然、予想もしていた。だから勿論、手は考えてある。
ロングコートの内側に手を差し入れると、エトヴァは小さな瓶を取り出した。薬品のような液体を揺らすそれを弾の飛んでくる方向へ素早く投げつけると、硝子の割れる音と共に淀んだ霧が辺り一面に立ち昇り――砲声が止んだ。
「さあ、踊ろうか」
掲げた指先に生み出すのは、黄金に輝くローレルの冠。その光輝は、復讐者達の視界を煌々と照らし出す。これで深い霧の中にあっても、彼らの視界だけは妨げられることがない。顔を見合わせ頷き合って、復讐者達は動き出した。
パラドクスを伴わない攻撃は、クロノヴェーダには通用しない。何故なら、届く前に歪められてしまうからだ。霞む視界の中、予期せぬ方向から斬りつける金環に兵士達の隊列が乱れていく。霧に紛れてその背後に回り込み、幸人は呪刀の刃をなぞった。
「あんまり長いこと、怖がらせたくないんだ」
たとえそれがこの世のどこにも存在するべきでない命だとしても、終わりはせめて安らかであればいい。それが、幸人の信念だ。だから――やる時は一瞬で、片をつける。
背後から真一文字に払った刀は、二人の兵士をまとめて斬り伏せた。そして振り返るや否や機銃を構える敵の腕を蹴り、少年は再び霧に紛れる。
気づけば、境界線など失せていた。敵味方入り乱れての混戦の中、片や手にしたナイフで敵を裂き、もう片や目につくものを端から殴り、投げ飛ばして、棕櫚と骰は背を合わせる。まだ入り口にも辿り着いていないのに、大した守りだ――だが厚い守りの一点を、穿たんとする執念ならばこちらに一日の長がある。
「復讐者って言われるぐらいですからね、俺ら」
「復讐なんて執念以外の何もんでもねえからな」
この作戦は、あくまでも通過点。この先にある王宮だけではない、世界を取り戻そうというのだから、こんなところで立ち止まってはいられない。
壁の向こうへ飛び込んでものの一分も経たぬうちに、並んだ兵士達は数えるほどになっていた。固めた両腕を交差させて、璃央はつけ狙う銃口の前に自ら進み出る。射抜かれた脚が血に濡れても、構うものか――だってそこには、討つべき敵がいる。
「余さず殴り飛ばしてあげましょう」
叩きつける拳が、兵士の首を捻じ曲げた。その一歩後ろで、麗央は兄の行く道を守るべく、いつになく険しい表情でハッキングコードを編んでいく。
「とにかく、ここを切り抜けないと……!」
機械の身体を内側から狂わせ、破壊するコードは、殴り合うだけの力を持たない麗央にも戦う術を与えてくれる。彼女はもう、兄の背に守られているだけの少女ではないのだ。
潜り込むコードに神経回路を乗っ取られ、一人の兵士が動きを止めた。やるじゃないと笑って、和沙は悪魔の翼をはためかせ、モーラットに目配せする。煌々と輝く紅い魔力の翼には、無数の演算記号が浮かんでいた。
「アンテナ! ワイファイスパーク!」
「もきゅう!」
元気いっぱいに声を上げて、まんまるの身体をぎゅっと縮めたかと思うと、モーラットは全力の電撃を放った。くぐもった悲鳴がそちこちで上がり、兵士達が膝をついていく。が――漸うと晴れゆく霧の中、その後背より彼女を狙う銃口が一つ。
「!」
撃たれる、と思った。しかし咄嗟に振り返った青い瞳の中で、最後の兵士が独り崩れていく。その背後には、刀を構えた幸人の姿があった。
「……誰かが怪我したり、死ぬのを見るのは、嫌なんだ」
本当は敵でさえそうなのだから、いわんや仲間達の傷つくところなどもっての外。ぱちりと瞳を瞬かせて、和沙はありがとうの言葉の代わり、にっと口元を綻ばせた。
「だったら、あなたも自分を大切にしなきゃね」
「……うん」
そうだねと応じて、幸人は淡い笑みを浮かべた。しかし差し当っての勝利の余韻は、迫り来る新たな敵の足音を耳に消えていく。
「前線、報告せよ! 何が起きている!?」
老いと若きの混じり合う、異様な声音が響いた。見れば、ただの壁かと思われていたホールの側壁が白い蒸気を吐いて、パズルのように分割されて開いていく。そしてその穴から、将校らしき男と、周辺区画の警備に当たっていたのだろう数名の兵士達がその姿を現した。
「貴様ら……そうか。ネズミの正体はやはり――」
ディアボロスであったのかと、憎々しげに表情を歪めて男は言った。作戦は、ここからが本番だ。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
【腐食】LV1が発生!
【怪力無双】LV2が発生!
【無鍵空間】LV1が発生!
【操作会得】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV5が発生!
クラーラ・シャーフ
悪趣味な光景ね
自ら望んだ姿じゃないのなら、クロノヴェーダと雖も哀れ
囚われ繋がれ使役される虚ろな悪夢はお仕舞いにしましょ
暗号は、それぞれのアルファベットから数字の分だけ後の文字を指しているんだと思うの
そうしたら、『L/I/E/B/E』
liebe……愛をパスワードにするような誰かがこの光景を作り上げたのなら、心底笑えない冗談ね
もしもこれで鍵が解けて、守護者が必要なくなったなら
私の手で断ち切ってあげても良くってよ
出来れば他の方に譲りたいけれど、そういかない場合には
渾身のデストロイスマッシュでさようなら
おやすみなさい、栄華に揺蕩う良い夢を
一方その頃、地下迷宮某所――。
壁一面にびっしりと並んだ真空管を、青い光が茫洋と照らし出す狭い部屋。通路の喧騒とは対照的な静寂に沈む室内を数歩進んで、クラーラ・シャーフ(白日夢の陥穽・g06521)は足を止めた。夜空に浮かぶ月のような金の瞳を苦々しげに細めたのは、見下ろす光景の異様さゆえだ。
「……悪趣味ね」
吐き捨てるように口にするのも、無理はなかった。無数の管で機械につながれた一体の兵士――否、兵士だったものと言うべきだろう。四肢を断たれ、語る言葉も持たない傀儡は、傍らの装置に触れようとすると、ただ機械的に繰り返す。
「そのデータへのアクセスは禁止されています。閲覧に必要なパスワードを提示してください」
「……クロノヴェーダといえども、哀れね」
見るに堪えずに視線を逸らし、クラーラは言った。
人の形を喪ってなお、囚われ、繋がれ、使役される。改造兵士といっても元は人間、終わり方さえ選べない未来を、自ら望んだわけでもあるまいに。
青いホログラムに浮かぶ文字は、『J2/H1/B3/A1/D1』――恐らくは、ここに格納されているデータを取り出すためのパスワードを示している。
(「これは多分、単純な暗号」)
それぞれのアルファベットから数字の分だけ後の文字。Jなら二つ後ろの文字はL。Hなら、一つ後ろの文字はI。その法則に従って文字をずらしていくと――。
「L/I/E/B/E――die Liebe」
愛。そう呟いて、クラーラはいっそう眉間の皺を深くした。愛をパスワードにするような誰かがこの非人道的な装置を造り上げたのなら、心底笑えない冗談だ。
白い指先がホログラムを叩くと、ピピッと軽やかな音と共に、いかつい装置はあっさりとデータを吐き出した。これを新宿島へ持ち帰れば、何らかの手掛かりが得られるはずだ。
けれど――その前に。
「データは頂いたわ。……もう、守護者は要らないでしょう」
断ち切ってあげると囁いて、女は右手に提げた爆撃槌を握り締める。そして一息に振り抜くと、傀儡の兵士と機械とをまとめて薙ぎ払った。
「虚ろな悪夢は、お仕舞いにしましょ」
栄華に揺蕩う、良い夢を。
次に彼が目を覚ます時、そこに在る世界が正しいものであればいいと祈りながら、クラーラは暗い小部屋を後にした。
大成功🔵🔵🔵
効果1【建造物分解】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携、アドリブ歓迎
同戦場の方と連携を
クラーラさん(g06521)をディフェンス
残留効果は相互活用
……あの頃、近づけなかった王宮に
迫っているのだな
それを、果たせる日が来るまで
ああ、何度でも
戦場を偵察・観察し、破壊対象施設を把握
P通信で情報共有し、密に連携
俺は敵との戦闘を主に
破壊担当が動きやすいように
敵を足止めし、そちらへ攻撃が抜けないよう前線を担う
守護天使を描き、セルフクラフトの防壁と共に味方への斜線を遮る
仲間と狙いを合わせ、確実に数を減らす
【飛翔】し、相手の遮蔽物を回りこんで機動的攻撃
隙を看破し攻撃を放つ
射程内に破壊する施設があれば、攻撃に巻き込みついでに破壊
魔力障壁で防御
飛翔速度と機動で回避
神之蛇・幸人
さっきの兵士より機械に近い。でも、改造を施されたサイボーグなんだよね
望んでこうなったとは思いたくない。望んでなかったならもっと酷い
おれが許せないのは、目の前の相手じゃなくて。その向こうにある理不尽だ
敵めがけて駆ける。相手をよく見て〈観察〉
轢かれる直前に跳躍。可能なら【飛翔】使用
懐に飛び込んで刃を胸に突き刺す
こうして近付いてしまえば相手は攻撃が難しそうだけど
仲間の亡骸を大事にするとは思えない
命を絶ったらすぐ次の敵に狙いを定める〈一撃離脱〉
無理には突っ走らない
仲間がいるから、息を合わせて隙を狙う
施設の本格的な破壊は兵士を倒してから
呪詛を込めて斬る。手早く、でも何も残さないように
クラーラ・シャーフ
不安だけど仲間がいるから大丈夫
情報共有と連携を心懸けて
態勢を整えられる前に急襲したい
先ず狙うのは床
敵の配置を確認し極力囲まれる可能性の低い場所
【飛翔】を活用して突撃、可能な限り周囲の床を破壊して接敵前に離脱
瓦礫や振動で敵の出足が鈍ると良いのだけど
床の次は壁ね
柱が判別出来ればそこから、わからなければ片っ端から
電気設備や機械があれば優先的に
私の【Hirtenstab】、爆破解体に打ってつけだと思わない?
パラドクスを存分に使って確実な破壊活動に勤しむわ
相対する敵が単数なら立ち向かう
敵の攻撃は空中へ避けるよう努め、急降下突撃でお返し
敵ごと床へ突っ込めば一石二鳥
羊だって時には飛ぶのよ
甘く見ないで頂戴な
竜城・陸
これが、帝国の喉元に迫る為の一石であるのなら
ここは貫き通さなくてはね
友人に縁ある土地、でもあるし――
何よりも、侵略者共にいつまでも大きな顔をさせていたくは、ないからね
機動戦を行う皆の為、隙を生み出すことに注力しようか
【氷雪使い】の本領、全てを凍てつかせる氷雪を矢雨と為して
戦場の敵、特にその足を凍て付かせ、縫い留め、機動力を奪う
サイボーグ、とはいえど、低温の中にあれば動きも鈍るものだろう?
相手が遮蔽を取ろうと関係はない
生憎と、そういう戦い方は得意だからね
どう隠れたいのか、逆にそれを突破するにはどうすべきか
よく知っているよ
綻びを見逃さず、確実に敵の妨害を行えるよう注力するね
「殲滅せよ! 一匹たりとも生きてここから出すでないぞ!」
老獪な軍人の唸るような号令と共に、機械化兵達が動き出す。キュラキュラと無限軌道を鳴らして迫り来る姿は先程相対した兵士達よりもなお人間離れして見え、クラーラ・シャーフ(白日夢の陥穽・g06521)は緊張の面持ちで手にした杖を握り締める。
(「……ちっとも不安じゃない、と言ったら、嘘になるけど」)
戦場に立つことには、未だ慣れない。そしてその手にはまだ、今しがた『終わらせた』兵士の壊れる感触が残っている。とても気持ちのいいものではないが――だからと言って、背を向けるわけにはいかない。
キッと敵を睨んで天井近くまで跳躍し、クラーラは爆撃槌を振り被る。羊飼いの杖を模したそれは、青い誘導灯の光の中で冷ややかに光った。
「これ、爆破解体に打ってつけでしょ?」
ふ、と息を吐いて一息に叩きつければ、床がひび割れ、コンクリートの破片が舞い上がる。鉄のマスク越しに籠った声で兵士達は『やめろ』と叫んだが、言われてやめるくらいなら最初からここへ来ていない。
「やめろと言うのが聞こえないのか!」
業を煮やした兵士の一人が叫び、ギュウンとモーターの唸る音がした。しかし加速する兵士達の進路に突然、青い翼が滑り込む。敵の群れを冷ややかに見つめて、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は言った。
「彼女は仕事中だ」
邪魔をしないでもらおうかと不敵に笑んで、天使は右手の絵筆を宙に走らせる。何もない場所に描き出すのは、盾を携えた天使の像――金色に輝く彫像は見る間に実体を成して、復讐者達をその翼の陰に包み込む。
「クラーラさん」
「ええ、任せて」
交わした視線で素早く頷き合い、クラーラは再び天井付近へ舞い上がった。せっかくエトヴァが時間を稼いでいるのだ――この機に彼女がすべきことはただ一つ。壁も設備も、機械も何もかも、片っ端から壊すことだけだ。
「羊だって、時には飛ぶのよ」
甘く見ないで頂戴な――囁くように口にして、娘は聳える天使の肩をすり抜け、兵士の頭上から杖を振り下ろす。叩きつける先端は爆発を引き起こし、鉄仮面越しにくぐもる悲鳴が上がった。敵を吹き飛ばすついでに床をかち割れれば、一石二鳥というものだ。
「何をしている! それ以上通路を破壊させるな!」
指揮官の叫ぶ声がして、兵士達が動きを変える。復讐者達の行く手を阻むように列を成して迫るその姿は、言うなれば機械の壁だ。刀を手に道の只中に立ち、神之蛇・幸人(黎明・g00182)は表情を険しくする。
(「さっきの兵士より、機械に近い――けど」)
彼らもまた、改造を施されただけの人間なのだろう。今の彼らが自分の意志で動いているのか、そうでないのかは分からないが、望んでこんな姿になったとは思いたくない。そして事実、彼らが望んでいなかったのなら――こんなに酷いことも、他にはあるまい。
(「おれが許せないのは」)
腰を低く落として身構えれば、水平に掲げた刃の切っ先に呪焔が灯る。迫り来る敵を真っ直ぐに睨んで、少年は言った。
「おれが許せないのは、あんた達じゃないんだ」
この手で斬って焼き払いたいのは、目の前のサイボーグ崩れなどではない――その向こう側にある、もっと大きくて残酷な理不尽。だん、と音がするほど床を蹴り、幸人は一気に距離を詰める。そして迫る無限軌道が運動靴の爪先を巻き込む寸前、ぎりぎりの所で跳躍した。太く冷たい二本のアームの内側に飛び込んで、幸人は刀を握る右手に力を込める。
「っ――」
左の掌を擦る峰が、火傷しそうなほどに熱かった。しかし躊躇なく突き入れれば、ばちばちと火花を散らして一体の兵士が動きを止める。前のめりに崩れてくる身体を避けんとして、咄嗟に後ろへ飛び退くと――。
「!?」
別の兵士が、崩れた兵士の残骸に乗り上げた。仲間の屍を躊躇いなく踏み越えようとするその姿に、幸人は嫌悪に近い不快感を露わにする。
「それ――あんたの仲間だろ?」
聞こえているのか、いないのかは分からない。装甲に身を包んだ兵士はまるで耳を塞ぐかのように、背面に取り付けられた装置から防護壁を展開し、その内側に隠れてしまう。
その時――足を止めた少年の頬を、冷ややかな風がふわりと撫でた。
「ちょっと出遅れちゃったかな」
振り返ればそこには、青く輝く竜の翼を背に広げた竜城・陸(蒼海番長・g01002)の姿があった。きみは、と口にすればにこやかに笑んで、竜は手短に、しかし明快に応じる。
「手伝うよ」
黒いグローブの指先に誘われて、少年を取り巻く冷気は次第に勢いを増していく。吹き荒ぶ氷雪を身に纏って、夜明けの海に似た瞳は酷薄な光を宿した。
「吹き狂え――」
囁く声に連れられて、白い嵐が渦を巻く。雨注する氷の矢は次々と兵士達の足元に突き刺さり、無限軌道を固めていく。自慢ではないが、逃げ隠れする敵を相手取るのは得意な方だ――森の木陰に隠れる者達がなぜ、どのようにして隠れるのか、追う者はそれをどう見つけ、対処するべきなのかを、陸はよく知っている。戦場においても、考え方は同じことだ。
「生憎と、そういう戦い方は得意だからね」
凍てつき床に縫い留められた無限軌道は、もう動くことはない。その氷が解けるのを待ってやるつもりも、毛頭ない。肩の高さで刀を構えて、幸人は大きく息を吸い込んだ。
(「あんた達が、仲間の亡骸を大事にするとは思えない」)
たとえ抜け殻になっても、改竄世界史の中であっても、骸は人一人が生きた証だ。それを理由もなく踏み躙らせはしない。赤紫の呪を帯びた刃を水平に振り抜けば、また一体の兵士が崩れていく。ひゅ、と刀を一振りして、幸人は言った。
「何も残さないように、壊そう」
二度とここを拠点にしようなどとは思えぬよう、徹底的に。ええと力強く頷いて、クラーラは応じた。
「だって、そのつもりで来たんだもの」
エトヴァの築く防壁を盾にして、陸の吹雪に凍てついた設備を、クラーラの爆撃槌が砕いていく。つけ狙う兵士の砲門は、幸人の刃が断っていく。敵の喉元に迫るため、後に続く誰かの道を開くため――復讐者達はその手の得物を振るい続ける。
絶えず筆を走らせながら仲間達の背を見つめ、エトヴァは微かに眉を寄せた。
(「……あの頃、近づけなかった王宮に、迫っているのだな」)
そんな場合ではないと理解っているのに、込み上げる感傷を押さえきれない。そのつもりで来た、と言ったクラーラの言葉は、そのまま彼自身にも当てはまる。
(「そうだ、……そのために、ここまで来たんだ」)
何度打ちのめされても、立ち上がった。あの日の雪辱を晴らすため、散っていった人々の想いを果たすその日まで、諦めるわけにはいかないから。
ぐるりと戦況を見渡せば、青い竜と目が合った。陸はにこりと微笑んで、隣り合う青年の胸中を見透かしたように口を開く。
「帝国の喉元に迫るための一石だ。……ここは、なんとしても貫き通さなくてはね」
個人的な繋がりはないが、この地に縁のある友人は多い。それに何より、陸自身が思うのだ。
「だいたい、侵略者どもにいつまでも大きな顔をさせていたくはないんだよ」
「はは、……まったく同意見だな」
軽やかに笑ってみせて、エトヴァは絵筆に力を込める。来たるべき戦いの日のために、ここにあるすべてを打ち砕こう――将だけでなく兵も、この空間も、すべてを在るべき姿に還すのだ。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【セルフクラフト】LV1が発生!
【腐食】がLV2になった!
【飛翔】LV1が発生!
【使い魔使役】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV3になった!
【アヴォイド】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV6になった!
鬼歯・骰
【KB】
でけぇ鼠が入っちまうなんざ大した防犯だな
まぁ、ここをさっさと破壊して出て行ってやるから
その切り分けやすそうな顔、大人しく解体されてくれ
返事の代わりに地を蹴り距離を詰め鱶で斬り込む
宣言通りに顔面狙うフェイント混ぜこみ
ガードが薄くなった所をぶん殴ろう
なるべくこちらへ意識が向くように攻撃の手は休めず
距離は取らせないように畳み掛ける
逃すと厄介だ、確実に仕留めたい
ツリガネが攻撃したタイミングで真逆から刃を滑らせて
厄介そうな右腕や足をバラしていけたらいい
動けりゃ多少の傷なら我慢だ
武器だけ手放さぬよう確りと握り込んで
戦闘終わりゃさっさと撤退
上に攻め込む機会は近いうちにあるだろ
その時を楽しみにしとく
鐘堂・棕櫚
【KB】
可愛いじゃないですかネズミ
うちの国だと繁栄の象徴ですよ
まあでも、こちらでは病の運び手を担うのでしたか
俺達もあなた方に黒い死を運ぶ獣であれるよう、尽力しますね
鉄砲玉の役は任せますって、突っ込む骰さんの背中に声掛けつつ
先に切り結び始めたらその間に敵の背後や側面へ回り込み
死角からの攻撃を狙っていきましょう
銃が使い辛くなるように、間合いを詰めに詰めた近接戦を仕掛け
攻撃タイミングを味方と合わせてバールで解体のお手伝いを
それでもドリルや剣は痛そうですが
今更怪我の二つや三つ増えたところで、ですし
……良かったですね
装置に組み込まれても死ねなかった配下さんと違って
あなたは長く苦しまずとも逝けるんですから
朔・璃央
双子の妹のレオ(g01286)と
確実な足掛かりを作る必要がありますからね
その為にあの方をぼこぼこにする必要がある訳ですが…
身体の半分だけ地面に植えて
何年か放置してたらあんな感じになりそうな人ですね
地下暮らしの弊害とかでしょうか
かわいそうに
折角ちょうど半分こ出来そうですし
レオと狙う側を分けていきましょうか
私は老人側をぶん殴ってやりましょう
格闘術がお得意だそうですね
技術面では分が悪そうですし
自慢の忍耐力で耐えながら良く観察して
カウンターを狙える頃合いで
此方の拳を叩き込んであげましょう
敵が狙う側に気付き始めたら若者側も狙いましょうか
殴り心地の変化も楽しめそうです
二人で一つは此方の十八番ですからね
朔・麗央
双子の兄リオちゃん(g00493)と
地上部から増援が来る前に片付けなきゃだもんね!
ここを確実に落とすことで王宮を攻略する足がかりになるってことだよね?
不思議、半分お兄さんで半分おじさん?いやおじいちゃん?
それも機械化なの?
なるほど、リオちゃんと半分こね
了解、じゃあ私はまずお兄さん側を狙って攻撃しちゃうね
リオちゃんが拳を振るうタイミングに合わせて
イグジストハッキングで攻撃するね
やって来る小型飛行銃の軌道もハッキングで狂わせることができたら良いんだけど
そうだね、狙っている側に気づき始めてたら
おじいちゃん側からもハッキングしてあげようね
そっちが1人二役ならこっちはそっくりな2人で連携攻撃ですよー、と
積商・和沙
さて、あんたがここの親玉ね。
あんたを倒してベルリンへの道を切り開かせてもらうわ。
とはいえ、さすがにアヴァタール級ね。
隙が無いわね。
小型飛行銃の銃撃を躱しつつ【腐食】の霧を展開させていくわ。
これでその飛行銃や銃弾を溶かせればよかったんだけど、パラドクスで召喚したものは無理よね。
だから、私が溶かすものはここの照明よ。
まさか電球までがクロノオブジェクトとか言い出さないわよね?
もしそうなら、ドイツの財政力は世界一って褒めてあげるわ。
突然の暗闇になる前にみんなには【パラドクス通信】で【完全視界】を指示し、アンテナはこの隙に圏外襲撃よ。
帰りに【書物読解】でデータを少しでも解析できないかしら?
「さてと――あんたがここの親玉ね?」
兵士達の奥に控えた男をじろりと見て、積商・和沙(四則演算の数秘術師・g02851)は言った。一見してただの人間ではないと分かる異様な風体、そして何よりも隙のない佇まいは、その男がこの場の兵士達を束ねる存在であることを示していた。いかにもと肯いて鉄の脚を踏み鳴らし、『半分ずつ』の青年と老人は声を重ねる。
「我が名はロイ・フォン・ヘルマン! 機械化ドイツ帝国の御旗の下に、逆らう者は――」
「うーん、どっちがロイさんでどっちがヘルマンさん?」
「……何?」
名乗りの出鼻を挫かれて、男は訝るような声を上げた。純粋に、とても素直に首を傾げて、朔・麗央(白鉄の鉤・g01286)は続ける。
「それも機械化なの? 半分お兄さんで、半分おじさんなんて……あ、いや、おじいちゃん?」
「レオ、余りじろじろ見るものじゃないよ。……身体の半分だけ地面に植えて何年か放っといたら、ああなるんですかね?」
かわいそうに、地下暮らしの弊害とかでしょうか――などと口にしながら言葉ほどには同情している風もなく、朔・璃央(黄鉄の鴉・g00493)が続ける。一瞬、切れかけた緊張の糸をつないで、和沙は敵をびしりと指差した。
「とにかく、あんたを倒してベルリンへの道を切り開かせてもらうわ。覚悟なさい!」
「ええい、薄汚いネズミどもめ――」
苦々しさを隠そうともせず眉を寄せて、老人の顔が言った。おや、とその言葉におどけてみせて、鐘堂・棕櫚(七十五日後・g00541)が応える。
「とんだ言われようですねえ。可愛いじゃないですか、ネズミ? うちの国だと繁栄の象徴ですよ」
「また随分とでけぇネズミだがな。それをこう、易々と通しちまうとは」
大した防犯対策だと皮肉を込めて、鬼歯・骰(狂乱索餌・g00299)が後を継いだ。復讐者達がベルリン各地に残した爪痕は浅くない――それを今日まで放置したのだから、こういう結果を招いたのは当然と言えば当然だ。
ああ、と一人納得したように手を打って、棕櫚は微笑ったが。
「そういえばこちらでは、ネズミと言えば病の運び手でしたね」
眼鏡の奥に細めた青い瞳だけは、決して笑っていない。白いバールの先端はひび割れた床に当たると、カン、と硬質な音を立てた。
「それじゃあネズミはネズミらしく、死を運ぶとしましょうか」
この歪な帝国に、それを牛耳る侵略者達に黒い死を。鋸刃を手に踏み切る骰の背に向けて、棕櫚は素早く呼び掛ける。
「鉄砲玉役は任せますよ」
「ああ、任された」
地下を守るクロノヴェーダ達にとって、彼らは招かれざる客だ。それは重々理解しているから、何も膝を突き合わせて話し合おうなどと言う気はない。こちらの要求は、たった一つ。
「こんなとこ、さっさと壊して出てってやるから――」
革靴の底をダンと鳴らして、床を蹴り、距離を詰め、骰は鋸刃を振り上げる。
「その切り分けやすそうな顔、大人しく解体されてくれ」
に、と上げた口角に修羅が覗いた。真上から直角に振り下ろす腕と刃はしかし途中で向きを変え、斜めから軍人の横腹を目掛けて薙ぎ払う。異形の将校はくぐもった呻きと共に跳び退ったが、その背後には既に棕櫚が回り込んでいた。
「こっち側、お留守ですよ」
「!」
振り返り様、乱れたコードの隙間から色違いの双眸がぎろりと睨んだ。翻るペリースの下から突き出した銃口は火を噴いて、飛び出した弾丸が白いシャツの腕を裂く。けれど怯むことなく、棕櫚は言った。
「今更ケガの二つや三つ、どうってことないんですよ」
流れる血はいつか止まって、裂けた膚には薄皮が張る。埋まる気配もない心の穴に比べたら、こんな痛みなど苦でもない。
距離を取らせぬよう二方向から畳みかけるように、骰と棕櫚はコンビネーションを重ねていく。対する敵は防戦一方かと思われたが、そこは大将格――不気味な空気振動と共に凝集したエネルギーを乗せて、将校は左の拳を突き出した。
「うお!?」
重力を纏うその拳は自然の法則とは無関係に、骰の長身を弾き飛ばした。生まれた隙に二転、三転と宙返りしながら後退し、継ぎ接ぎの男は文字通り裂けた唇を歪める。そして――。
「おのれ、ディアボロス
……!?」
視界が霞んでいることに気づいたのは、その時だった。息つく間もない打ち合いの中で気に掛ける余地もなかったが、地下とはいえ、滞留する空気は明らかにいつもより煙っている。
「……霧?」
「ふふ、やっと気づいたのね」
でももう遅いわよ、と、その背で笑ったのは和沙だった。振り向きざまに撃ち出される飛行銃を紅い翼で軽やかにかわし、少女は続ける。
「ほんとは『これ』で、その銃弾も融かせたらよかったんだけど――」
パラドクスで呼び出した物やクロノ・オブジェクトに対して、『これ』は効果を発揮しない。しかしそれ以外の物品に対してなら、話はまったく別だ。『これ』は――この霧は、復讐者達の意図したものを腐らせる。
「まさか電球までクロノ・オブジェクトだなんてこと、ないでしょう?」
暗くなるわよ、と、耳元に浮かべた通信機に囁いた瞬間、硝子の割れる音がした。火花と共に煙が昇り、照明が落ちて、辺りは一面の闇に包まれる。
「どうした!?」
何が起きたと将校は周囲を見渡したが、取り巻きの兵士達は他のディアボロス達を相手取るのに精いっぱいで、一人として応える者はない。あーあと揶揄うように舌を出して、和沙は言った。
「もしそうなら、ドイツの財政力は世界一って褒めてあげてたとこなのに」
アンテナ、と呼べば元気よく飛び出したモーラットが一匹、将校の背中を目掛けて突撃する。思わぬ方向からの一撃に腰を折り、異形の男は奥歯を軋らせた。暗くとも戦闘に支障はないが、一瞬とて隙を見せるべきではなかった――そのわずかな虚が、戦局を大きく変えてしまうこともある。そしてこの戦いがまさに、そうであった。
じりじりと暗闇の中を後退する男の姿を見据えて、骰が言った。
「逃すと厄介だ。確実に仕留めるぞ」
「ええ」
「勿論!」
応じる声が重なった。天使と悪魔の二対の翼を羽搏かせ、璃央と麗央は闇を裂く。この迷宮を速やかに掌握できれば、ベルリン攻略の足掛かりとなることは間違いない――敗けることはおろか、退くことすらも許されない戦いだ。
「地上部から増援が来る前に片付けなきゃだもんね!」
「そうだね、レオ。そのためには――」
あれをぼこぼこにする必要があるわけだけど、と、涼しい顔で璃央は言った。人形のように綺麗な顔をして、相変わらずクロノヴェーダには容赦がない。
「それじゃあ、俺は老人側を」
「! じゃあ、私はお兄さん側だね!」
了解と麗央が力強く頷いて、双子は左右に散開する。何しろ、生まれた時から隣り合い、すべてを分かち合って生きて来たのだ。二人で一つは彼らの十八番、『半分こ』には慣れたものである。
「格闘術がお得意だそうですね」
ぜひお相手願いましょうと微笑すれば、白い眉を憎々しげに寄せて老人の顔が言った。
「侮るなよ、小僧!」
「侮ってなどいませんよ」
応じた言葉に嘘はない。歪んだ歴史の中、どれほどの時間が紡がれて今に至るのかは知る由もないが、目の前の軍人はこの世界で少なからぬ歳月を戦い抜いてきたはずだ。技術の面でも、精神の面でも、戦場に身を置いて一年にも満たない璃央が侮って掛かれる相手ではない。だから凌いで、わずかな隙を狙うのだ――幸い、忍耐力には自信がある。
「そっちが一人二役なら、こっちは二人で一人の連携攻撃ですよーだ!」
一方で麗央は、老人の面が璃央に気を取られている間に青年の面の傍らへ回り込んでいた。間を置かず撃ち出される飛行銃の軌道をハッキングして逸らせば、的を見失った弾丸が背後の壁を砕く。一瞬どきりと心臓が跳ねたが、もう、この程度のことでは怯まない。
「リオちゃん!」
「ああ」
この世界にたった一人の片割れが、何を伝えたいかなんて聞くまでもなかった。麗央の紡ぐコードは機械化された男の身体にするすると入り込み、その動きを縛り付ける。離せともがく男を前に白く固めた拳を打ち合わせて、璃央は独り言のように言った。
「殴り心地の変化も楽しめそうですね」
「――やめ、」
重なり合った二人分の声は、最後まで紡がれることはなかった。鈍い音を伴って、少年の拳は異形の将校を真正面から叩き伏せる。他の仲間達が設備破壊に勤しんでいるのだろう、地下空間には絶えず轟音が響いていたが、立っている敵の姿はもはやどこにも見当たらなかった。
「……やれやれ」
ふう、と長い息をついてズボンの埃を払い、棕櫚は言った。
「良かったですね。装置に組み込まれても死ねなかった配下さんと違って、……あなたは長く苦しまずとも逝けるんですから」
ぴくりと、倒れた男の指先が動いた。戦う力は残っていないだろうに、それが矜持だとでも言うのだろうか。しぶといですねと顔をしかめて、璃央は言った。
「まだ足りないと言うのなら……?」
胸の前に掲げた少年の腕が、再び白く凍っていく。しかしその肩を押し返して、骰が前に進み出た。
「鬼歯さん?」
「子どもにやらせることじゃねえだろ」
きょとんとして見つめる翠の瞳に一抹の苦さを滲ませて、骰は鋸歯の刃を振り上げる。そして一息に、倒れた男の喉元へと叩きつけた――それが、最後だった。
「さっさと引き上げるぞ。……どうせまた近いうちに来ることになる」
「そうね。怪しげなデータも手に入ったことだし、今日のところは撤退だわ」
ほんとはここで少しでも中身を見てみたかったけど、と別働隊の仲間達の方を見やって、和沙は言った。収集したデータは新宿島に帰着後、然るべき専門家の手に委ねられることになるだろう。
ぞろぞろと来た道を引き返していく仲間達の背を追って、麗央ははたと足を止め、累々と折り重なる兵士達の跡を見た。
「レオ――どうかした?」
尋ねる兄の声にふるふると首を横に振って、なんでもないと少女は言った。
「あの人達もみんな、元に戻れるのかなあと思って」
この世界が、何もかも元に戻ったら。
どうだろうねと応じた兄の表情は、長い横髪に隠れて見えなかった。けれど――考えていることは、きっと同じだと信じている。
一条の希望を胸に抱き、復讐者達は地下迷宮を後にした。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【活性治癒】LV1が発生!
【モブオーラ】LV1が発生!
【怪力無双】がLV3になった!
【無鍵空間】がLV2になった!
【書物解読】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
【フィニッシュ】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV8になった!
【命中アップ】がLV2になった!