蜘蛛の巣の森の探索

 漂着した自動人形を魔女化している事件について、攻略旅団の調査で進展がありました。
 直接儀式を行っているジェネラル級が、『復権慈母』イザベル・ロメである事は判明していましたが、このイザベルを使って、事件を起こしている黒幕が、攻略旅団の調査によって、突き止める事が出来たのです。
 その黒幕は、ジェネラル級キマイラウィッチ『アリアドネ』で、ディヴィジョン東側の最終人類史との境界近くの森に巣を張る、蜘蛛の魔女です。
 アリアドネ拠点の森は、クロノ・オブジェクト化した蜘蛛糸によって事実上要塞のようになっているようです。
 森の各所には一般人が囚われているため、森ごと焼き払うことなども出来ません。魔女化儀式の黒幕『アリアドネ』の元へと向かうため、森を探索・制圧しつつ、一般人を救って下さい。

※期限延長  火刑戦旗ラ・ピュセル攻略旅団の提案により、攻略期限が2024/08/21朝から2024/09/21朝に延長されました。
アリアドネ
『復権慈母』イザベル・ロメ

祈れ、其処に神がいるのなら(作者 秋月きり
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 改竄世界史火刑戦旗ラ・ピュセルの闇は深い。
 東の森に建てられた洋館もまた、その一つであった。
「『復権慈母』イザベル・ロメが魔女化した自動人形が次々と倒されている……ね。……気に入らないわねぇ」
 部下から報告を聞き、ジェネラル級キマイラウィッチ『アリアドネ』は独り言ちる。
(「倒すだけならともかく、魔女化も解除されて、復讐心も失われているなんて……。魔女化した自動人形なんて、殺されて、その復讐心を私達キマイラウィッチに供給する位しか、使い道が無いというのに」)
 実の処、彼女に魔女化する自動人形への興味など無い。
 主を失った玩具など、壊れ行くのみ。
 廃品の有効活用くらいにしか、認識していないのだ。
 だからこそ、部下への言葉は、酷くあっけらかんとしたものであった。
「まぁ、良いわ。自動人形はまだまだ漂着するだろうから、また、繰り返せばよい。そうでしょう?」

 そして最終人類史新宿島新宿駅ターミナル。集まった復讐者達の表情を一瞥した後、時先案内人、マリー・アントワネット(人間のサウンドソルジャー・g09894)はぺこりと一礼した。
「ジェネラル級キマイラウィッチ『復権慈母』イザベル・ロメによって魔女化していた自動人形の魔女化を解除、撃破する作戦は上手く行ったようですわね」
 これも皆様のお力ですわ、とマリーは告げる。
 魔女化を解除したことで、倒した者達の復讐心が再び、キマイラウィッチ達に利用されることもないだろう、との言葉を添えて。
「ですが、再び別のクロノヴェーダが漂着した際、魔女化されない為にも事件を根本的に解決する必要がありますわ」
 そして、攻略旅団の調査により、イザベル・ロメが魔女化に利用していた『怨嗟の思念』を彼女に供給していた存在……つまり事件の黒幕が、改竄世界史東部の森にいるらしいことが判明したようだ。
 黒幕の名前はジェネラル級キマイラウィッチ『アリアドネ』。蜘蛛の巣の森を根城とする女怪――キマイラウィッチであった。
「皆様には、この『アリアドネ』の拠点である森を制圧し、彼女の居場所を突き止めて頂きますわ」
 此度、彼女の部下であるアヴァタール級キマイラウィッチ『白翼のセイレーン』を撃破すれば、作戦完了となる。制圧の為の一手を担って欲しいと、マリーは言う。
「黒幕のアリアドネを撃破してしまえば、イザベル・ロメも、作戦の遂行が不可能になるでしょうね」
 逆にアリアドネを撃破せず、イザベル・ロメを倒した場合、首をすげ替えて同様の事件が発生した可能性もある。
 故に、皆様が黒幕の存在を看過したのは僥倖でした、と賞賛の微笑が紡がれていた。

「さて、その蜘蛛の巣の森ですが、クロノ・オブジェクト化した蜘蛛の巣が巡らされており、その巣を利用した防衛網が構築されていますの」
 クロノ・オブジェクトである蜘蛛の巣の効果は、異常な粘着力によって侵入者の動きを奪うという物。尚、キマイラウィッチ等の歴史侵略者達はその限りではないようだ。
 よって、何らかの対策・対応をしなければ、不利な戦いを強いられることになるだろう。
「この蜘蛛の巣の防衛網を突破し、アリアドネ配下の部隊を撃破、蜘蛛の巣の森を制圧下さいませ」
 なお、蜘蛛の巣の森には、強い復讐心を持つ一般人が、蜘蛛の巣の牢に閉じ込められているようだ。
 牢自体は一般人が逃げられない程度の簡素な物なので、パラドクスで簡単に破壊出来る。彼らを救出すれば、その復讐心を利用するアリアドネの力を削ぐことも可能だろう。
「可能であれば、彼らの復讐心を和らげられると良いのですが……」
 だが、心情的には厳しいだろう。その上、排斥力の強化も彼らを蝕み、心を閉ざさせている。
 どうするかはお任せしますわ、とマリーは静かに告げる。

「蜘蛛の巣が張り巡らされている戦場を、無闇に動き回るのは得策ではありません。ですが、動かずに迎撃する、と言うのも非常に困難ですわよ」
 理想だけ言えば後者を採用するべきだが、敵もまた超人。決め手に欠ける。
「何かこう、足場を確保する手段とか在れば良いのですが……」
 憂慮の溜め息を零した後、時先案内人は復讐者達をパラドクストレインへと送り出すのだった。
「皆様の御武運、お祈りしていますわ」

「ああ、神よ。お許しください」
 蜘蛛の巣の牢。復讐に表情を歪めた男は、それでも天に祈る。
「俺は復讐の徒になります。村のみんな、妻、子、みんな良い奴でした。でも全て、こいつらに殺されたのです……」
 男は敬虔な信徒であった。神を信じ、善行を果たしてきた。
 しかし、そんな生き方ももう終わりだ。自身は悪逆を果たす悪魔となる。大切な皆を殺したキマイラウィッチ達に復讐を果たす。
 男の生きる道はそれしかなかった。
「仇討ちだ! お前達は、魔女達は絶対に殺してやる!! 俺を生かしておいたことを後悔させてやる!」
 牢の中の血反吐吐く男の叫びに、しかし、それを受け止めるトループス級自動人形『コンキスタ・ダイバーカスタム』は無表情を貫いたままだった。尤も、表情を浮かべる顔面が存在しないのだから、それは当然でもあった。
 故に、静かに首を振る。それが嘲笑の様にも見え、男は更なる咆哮を放った。
「必ず、お前達を、キマイラウィッチ達を皆殺しにしてやるッ!!」


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
1
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。【怪力無双】3LVまで併用可能。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【フライトドローン】
1
最高時速「効果LV×20km」で、人間大の生物1体を乗せて飛べるドローンが多数出現する。ディアボロスは、ドローンの1つに簡単な命令を出せる。
【罪縛りの鎖】
1
周囲に生き物のように動く「鎖つきの枷」が多数出現する。枷はディアボロスが命じれば指定した通常の生物を捕らえ、「効果LV×2時間」の間、移動と行動を封じる。
【託されし願い】
1
周囲に、ディアボロスに願いを託した人々の現在の様子が映像として映し出される。「効果LV×1回」、願いの強さに応じて判定が有利になる。
【友達催眠】
1
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【エアライド】
1
周囲が、ディアボロスが、空中で効果LV回までジャンプできる世界に変わる。地形に関わらず最適な移動経路を見出す事ができる。
【壁歩き】
1
周囲が、ディアボロスが平らな壁や天井を地上と変わらない速度で歩行できる世界に変わる。手をつないだ「効果LV×1人」までの対象にも効果を及ぼせる。
【建造物分解】
1
周囲の建造物が、ディアボロスが望めば1分間に「効果LV×1トン」まで分解され、利用可能な資源に変化するようになる。同意しない人間がいる建造物は分解されない。
【パラドクス通信】
3
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【通信障害】
1
ディアボロスから「効果LV×1,800m半径内」が、ディアボロスの望まない通信(送受信)及びアルタン・ウルク個体間の遠距離情報伝達が不可能な世界に変わる。
【水中適応】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」が、クロノヴェーダを除く全ての生物が水中で呼吸でき、水温や水圧の影響を受けずに会話や活動を行える世界に変わる。

効果2

【命中アップ】LV2 / 【ダメージアップ】LV5 / 【フィニッシュ】LV1 / 【先行率アップ】LV2 / 【ダブル】LV1 / 【ロストエナジー】LV1 / 【グロリアス】LV1

●マスターより

秋月きり
 お世話になります。秋月きりです。この世界に神がいるかは不明ですが、そう、皆さんがいます。ディアボロスがいるのです!
 と言う訳で、皆さんのお力、お貸し下さい。
 本シナリオは攻略旅団提案の期限延長を受け、排斥力が強化されています。各々の選択肢の難易度が上昇していますので、ご注意ください。

 以下、補足です。
 ご確認ください。

●選択肢について
①蜘蛛の巣の牢に囚われた一般人
 男性一人、蜘蛛の巣の牢に囚われております。
 牢そのものの破壊はパラドクスで問題無く行えますので、助けて上げて下さい。
 復讐心を和らげる行動を取る場合、今後のチェインシナリオに影響があるようです。どちらを選んでも問題ありませんので、ご希望の展開を選択ください。

②護衛するトループス級『翼ある聖歌隊』
 ④を護衛するトループス級です。張り巡らされた蜘蛛の巣の中、飛び交いながら襲ってきます。

③蜘蛛の巣の森の戦い『コンキスタ・ダイバーカスタム』
 森で遭遇する魔女化した自動人形との戦いの選択肢です。

④アヴァタール級との決戦『白翼のセイレーン』
 本シナリオの敵将です。白翼のセイレーンを撃破すると、作戦完了となります。

推奨攻略順:③→①→②→④ ※最短攻略を行う場合、③と④のみの攻略でも問題ありません。

●その他
・「囚われた男性は敬虔な信徒。その上で復讐に心奪われている……ですか。もしも復讐心を和らげようと考えているのであれば、彼の信仰心を刺激するのも手かも知れませんわ。もっとも、近しき者全てをキマイラウィッチに虐殺されたようで、ただ信仰の道を説いても難しいやも知れません」
・「蜘蛛の巣は厄介ですわね。パラドクスで切り拓いても、いつの間にか修復されていますので、パラドクスを向けるならばやはり敵の方でしょうか」
・「ただの物品であれば、捕縛した上に粘着力を保持していましょう。ですが、それがクロノ・オブジェクトであれば……?」
・「あ、いえ。皆様の防具はクロノ・オブジェクトですし、それを脱いで足場にするとか格好いい――ではなく、そう言う手段もありますわね」
 以上、時先案内人からの助言でした。参考になれば幸いです。
・①の攻略時、復讐心を和らげるのであれば、🔵を多く取得する事をお奨めします。
・時先案内人の言葉を踏まえた上で、水着姿になると判定が有利になるようです。①ではなく、②~④の話です。

 それでは、暗雲漂うラ・ピュセルに皆様の威光を示す、そんなプレイングをお待ちしています。
 祈ります。ここに神はいなくとも、ディアボロスはいるのですから。

 よろしくお願いします。
109

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎

えーと…………脱ごうか。
美女でなくて申し訳ないのだが……
水着コンで英気を養った勢いで行きたいものだ

タマネギ式で行く
蜘蛛の巣に掛かった黒のローブを広げながら脱ぎ粘着させ足場に
同じ要領で、迷彩コートや防具をばらまき、足場にする
他の巣に引っ掛からない程度に、防具を飛び移ったリ、蹴ったりして移動
中は今年仕立てた新作水着だ
広いヴェールも、魔法の絨毯の如く役に立てばいい

戦況を観察しつつ、敵の動きを把握
敵の泳ぎ回る立体的な攻勢に注意しつつ、こちらも立体機動でPD攻撃
さあ、華麗に踊ろうじゃないか
飛ぶというより浮くや跳ねるだが
我が物顔で飛び込んできた獲物を魔力の糸に絡め
捕え返そう

仲間と狙い合わせ攻撃
基本は一撃で倒せる>消耗した敵から数を減らす
仲間の窮地や死角を狙う敵は優先し排除

敵の攻撃には、どこからでも魚雷が来ると思い
荊の魔力障壁で全身を包むようにガード
敵弾でも周囲の蜘蛛の巣を巻き込み、反撃に転じる空間を確保
シールドがあれば構えて爆発を防ぐ

天使の画家(男性部門1位)として負けられない


アッシュ・シレスティアル
※アドリブ、連携歓迎
まさか水着姿ご所望とはな。
本命共はまだ先みたいだし、ここは一旦普通にディアボロス活動をしつつ、ついでにご要望にもこたえておこう。

中に去年用意した水着を着た状態で悪魔装甲を着用。
森の広さ次第だが使い捨ての足場感覚で使えそうな【フライトドーン】も出せる用意はしつつ、基本は鎧をパージして足場にする予定。

会敵と同時に装備していた試作海戦装ブラスターをパージして足場に。
ミサイルポッドを開放しておいたら後は接近してくる相手に向けてパラドクスでミサイルを飛ばしていく方向でいこう。
足場にしつつ武器として使えそうってだけでここまで持ってきたが、まさか陸上で海戦装備同士でドンパチすることになるとはな。

相手からの攻撃は他の装備での迎撃をしつつ、足場の上から飛ばされないように気をつけたい。
足場から放り出されたら、武器か鎧の一部を足場にしてその場に着地。
元いた海戦装の上に戻って先ほど足場にした物をパラドクスの効果で相手にぶつけつつ回収を試みる。
覚悟はしてたが…やっぱ多少はネバネバしちまうよな。


 神は死んだ。
 正史に於ける19世紀の哲学者、フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェの言葉である。
 この文句には色々な解釈があり、一概にそう語れない。
 だが、彼がそう唱えたのは、最終人類史から見ても100年も昔のこと。
 故にこうも言える。
 神はいない。神などいない。ただ、いるのは――。

 にちゃり。
 森に張り巡らされた蜘蛛糸を見やり、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は嘆息した。
 聞きしに及んだ蜘蛛の糸の森だ。当然ながら、枝から枝へと張り巡らされた蜘蛛糸についても認識していた。だが、これほどの量とは。潔癖症なつもりはないが、それでもウンザリしてしまうな、と肩を竦める。
「まあ、覚悟しろ、と言う事だな」
 悪魔装甲の向こうから聞こえるくぐもった声は、アッシュ・シレスティアル(蒼破拳・g01219)によるもの。
 つまるところ、この男性復讐者二人が、此度、蜘蛛の森探索の任にあたったのだ。
 うむ。美女では無くて申し訳ない、とはエトヴァの弁。
 おそらくこの報告書を読む復讐者達は「いいってことよ」と気さくな返事をしてくれるだろう。……そうですわよね?
 ともあれ、とエトヴァは己が纏った黒のローブを脱ぐと、蜘蛛糸へと放り投げる。
 復讐者達が身に纏う装備は、クロノ・オブジェクトと呼ばれる代物だ。故に、同じクロノ・オブジェクトである蜘蛛糸とは相性が悪いはずも無かった。万物であれば、そのまま糸に囚われ同化するはずだが、黒ローブにその兆候は無い。その上ならば移動は出来そうだった。
「――ふむ。足場を今のうちに作っておくのだな?」
 アッシュの問いに是と応える。
 戦いになれば、足場を作りながら別の行動をするなど、器用な真似は出来ない。出来るかもしれないが、準備に越したことはない。何事も、段取り八分。事前準備を行って悪いことはあるまい。
「それに……流石に蜘蛛糸だけはある。もう、気付いたみたいだ」
 蜘蛛糸に伝わる微細な振動は、敵の接近を雄弁に語っていた。
 おそらく、敵にとっての蜘蛛糸は、足場や罠だけでなく、センサーの役割をも果たしているのだろう。そこに獲物――この場合、エトヴァの防具類だ――が引っかかった。ならば、彼奴らの到来も当然であった。
 エトヴァの言葉に、アッシュは小さく頷く。フルフェイスな仮面の奥底で、にぃっと笑みを浮かべた気がした。

 現れたそれは、無言のままエトヴァとアッシュに魚雷を浴びせかけた。
 トループス級自動人形『コンキスタ・ダイバーカスタム』。魔女化した彼ら、或いは彼女達は最早、復讐者に語る言葉は無いとばかりに、出会い頭に砲撃してきたのだ。
「まあ、奴さんは語る口を持っていないのだが」
「それな」
 エトヴァの独白に、アッシュの肯定が重なる。
 続けざまの爆発に視線を交わす暇は無かったが、何となくアッシュの両人差し指がエトヴァに向けられていた気がした。
 ともあれ。
「ふんはっ!」
 爆発に煽られたか、それとも自ら飛び上がったのか。
 宙高く舞ったアッシュは、裂帛の気合いと共に、己が外装甲、即ち全身装甲を切り離し、周囲へとばら撒く。それらは一瞬にして蜘蛛糸に張り付くものの、しかし、それ以上絡め取られることはない。これもまたクロノ・オブジェクトなのだ。
 そして、それらを足場に八艘飛び宜しく飛ぶアッシュの姿は軽装――と言うよりも、半裸であった。
 腰から膝まで隠すパンツと、前を開けたシャツと言う身軽な姿は、普段の彼を知る者がいれば、二度見三度見くらいはするだろうか。ともあれ、その格好はいわゆる水着姿であった。
「水着姿がご所望なんだろう? さあ、要望に応えてやったぜ」
 誰に向かっての台詞かは判らなかったが、その言い回しに黄色い悲鳴が重なった気がした。
 無論、水着姿になったのは、サービスカットの為ではない。
「まさか陸上でドンパチすることになるとはな」
 パラドクスにはパラドクス。ミサイルにはミサイルを、だ。
 正確に言えばアッシュの攻撃は念力による飛来物で、自動人形のそれは宙を進む魚雷群であったが、細かいことはいいんだよ、とばかりにアッシュは更なるパラドクスを重ねる。
 蜘蛛の巣の森に爆発が木霊する。それに巻き込まれた自動人形達が数体、足場の蜘蛛糸と共に焼けては地面へと落ちていく。
「さあ、華麗に踊ろうじゃないか」
 エトヴァもまた、負けじとパラドクスを紡いだ。
 彼が放ったそれは、蜘蛛糸に勝るとも劣らない極細の銀糸で、それが自動人形達に絡みつき、その機動力を奪っていく。
「糸はお前達の専売特許じゃ無いぞ?」
 無論、パラドクスによって生み出された糸はエトヴァの足場になる事は無い。だが、敵の攻撃に使えれば今は充分と、彼は糸を繰りながら自動人形達を斬り裂き、或いは捕縛していった。
 だが、そんな彼に再び、パラドクスの雨嵐が吹き荒れる。
 空を飛ぶ魚雷群が降り注ぐのは、エトヴァもまた同じだったのだ
「おっとっ」
 残りの防具――即ち身につけていた防具を放り投げ、エトヴァは魚雷の爆風から己が身を守る。魔法の煙だか自然の煙だか判らない何かが周囲を取り巻くが、それも幸いと、彼は最後の防具を脱ぎ去ると、次の銀糸を叩き込むべく、その場に身構えた。
 やがて土煙が晴れる。
 そこに現れたのは、アッシュ同様、水着姿に転じたエトヴァであった。悉くを捉え、捕らえ返さんとばかりの意気込みが強く表情に表れていた。

 そう。ここに神はいない。神などいない。
 いるのは、半裸の男達二人と共に踊る自動人形達だけであった。

「次の予定が詰まっている。お前達と遊んでいる暇はない」
 静かにアッシュは言い放ち、再度、念力による投擲を行う。それらをまともに受けた自動人形達は、そのまま、弾き飛ばされ、体内から硬質の破片を噴き出すのみであった。
「――潜み、描いて、網と成れ。……如何に不利であろうと、負けるつもりはない」
 己には矜持があると、エトヴァは銀糸を振る。
 それは力なき民を助ける復讐者としての矜持であり、歴史侵略者に反骨すると言う革命家としての矜持であり、そして、水着コンテスト2024『天使・男性ランキング』第一位の矜持であった。
 その圧に圧されたのか、それともパラドクスによる破壊に耐えられなくなったのか。
 物言わぬ自動人形達はそのまま斬り裂かれ、砕かれ、そして、バラバラとその破片を大地へと降り注いでいった。

「……ちっ。覚悟していたが、やはり多少はネバネバしてしまうよな」
 防具を回収するアッシュから零れた愚痴に、エトヴァも是と頷く。
 とは言え、これもクロノ・オブジェクト。改竄世界史火刑戦旗ラ・ピュセルだからこそ存在出来るオーバーテクノロジーみたいなものだ。
 新宿島に持って帰れば、最終人類史の排斥力によって消滅するだろう。……多分。
「何と言うか、呪いのような物だ。嫌な呪いだ」
「キマイラウィッチの呪いか。言い得て妙だな」
 実際にありそうだから困る、とエトヴァは笑う。
 アッシュもまた、皮肉めいた笑みを浮かべた後、先を進もうかと、彼を促すのであった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】LV1が発生!
【フライトドローン】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!

エリシア・ランヴェルト
アドリブ、連携ともに◯
出遅れてしまいましたからすぐ合流しないとですね。
それにしてもこの衣服で足場代わりにできるとは少々目から鱗ですが…ウェットスーツに軍服は流石に暑いですね。
ってレイニー離れちゃダメですよ…あ、引っかかっちゃった。

蜘蛛の糸はセンサーも兼ねているそうなので相手が来る前に身を隠し、足場確保のために上着などはすぐ脱げるようにしておきましょう。

何体か目視できたらレイニーの召喚を解除。獲物が消えてあしがとまったりしたら、魔導銃を取り出して不意打ちからの先制攻撃。
獲物が引っかかったからと油断して来ましたね?

以降は足場が必要になれば、脱ぐ暇のない靴を除いた衣服やクーラーボックスを脱ぎ捨てて確保し、多少は動き回りながら対処しましょう。
…なんかすごい格好になってる気がしますが、誰にも見られてないからセーフです。

相手からの反撃は魔力障壁越しに受けて衝撃を和らげつつ、空いてる手で相手のボディを掴みゼロ距離から魔導銃でパラドクスを行使しましょう。
そちらから近づいてきてくれて助かりました。


 蜘蛛の巣の森にまた一人、立ち入る物が居た。
「出遅れてしまいましたからすぐ合流しないとですね……」
 闇に染まる森を進みながら、エリシア・ランヴェルト(エルフのガジェッティア・g10107)は独白する。
 先行した二人は無事だろうか? まあ、おそらく無事だろう。確証はないが、確信はある。彼らがそう簡単に敗北する筈も無い。
 それにしても……と自身の姿を見下ろし、はぁと溜め息を吐く。
 暑かった。
 如何に蜘蛛の巣の森に対する対抗措置になるとは言え、ウェットスーツに軍服は過剰だったか、と汗を零しながら愚痴じみた内心を零してしまう。
「って。レイニー、離れちゃ駄目ですよ?」
 随伴するアクアスライムに、そう笑いかける。
 とは言え、蜘蛛の巣に引っかかれば、彼もまたただでは済まない。合わせて、蜘蛛の巣の性質上、自身の居場所をそのまま伝える結果になる。微苦笑ながら、笑い事で済ませる訳にも行かないのが正直な所だった。

(「……とまあ、予知と先行の二人のお陰ですが」)
 静かに、そして注意深く森を進み、敵影を発見する。
 エリシアの行動を要約すれば、それだけになる。
 だが、それを行えるのは、時先案内人の予知と、先達達が残してくれた記録のお陰。リアルタイムで報告書が作成される昨今だからこそ、可能な行動だったかもしれない。
 そして、そんな彼女の視線の先には、周囲を警戒する自動人形達の姿があった。
 トループス級自動人形『コンキスタ・ダイバーカスタム』は、ぎちぎちと周囲に視線を送りながら、油断なく哨戒を続けている。
「獲物が引っかかったからと油断していますね。……ですが……」
 レイニーの身体を消し、魔導銃を構える。
 ここからは臨戦態勢だ。
「エレキコート!」
 迸る弾丸は、電撃を纏って。
 三点バーストで放つ弾丸は、自動人形の数体を捕らえ、そのまま破壊に移っていく。
「っとっ。こっちです!」
 射撃の後、動きを止めない。当然ながら、動き回れば蜘蛛の巣が彼女を捕縛し、軽やかな動きを阻害するのは道理。
 だが、彼女が脱ぎ捨てた衣服は、蜘蛛の巣を覆い、彼女の為の足場へと転じていく。
「……なんかすごい格好になってる気がしますが、誰にも見られてないからセーフです」
 自動人形を破壊しながら、ペロリと舌を出す。
 今現在、森の中をウェットスーツ姿で駆ける彼女を見るのは、敵か、召喚を解除されたレイニーのみ。恵まれた体形のエリシアであったが、それを目撃する仲間は何処にもいないのだ。
 それを良しとするか、残念に思うか。
 ただ微笑を形成するエリシアの思考は、誰も読めないのであった。

 そして、周囲の自動人形を一掃したエリシアはそっと嘆息する。
 これで魔女化した自動人形達は一掃出来ただろうか。
「……さて、えーっと。この服、どうしましょう……」
 蜘蛛の巣に塗れ、ぐちゃぐちゃになった軍服を前に、ぐぬぬと唸るエリシア。そんな彼女を慰めるように傍らのレイニーが、うねうねと踊るような動きをしていた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【ダブル】LV1が発生!

神山・光
なんだい、復讐がしたいのかい?
別にあたしは止めやしないけどさ、あんた、復讐の先に何があるか知ってるのかい?
何にもありゃしないよ。空っぽさ。憎い相手を殺した充実感も達成感もありゃしない。何にも残りゃしないよ
私も両親は殺されて、双子の弟は実験材料にされて、そいつらへの復讐に燃えたよ
けどね、そいつらを殺したって、奪われたものは戻ってこないのさ。あとに残るのは空っぽの心と満たされない怒りと殺意だけ。やがてそれは復讐の相手じゃない、関係ない人達に向かっていく
なんであいつらは幸せそうに笑ってるのに自分はこんなに報われない。ってね
復讐に燃えた人間から殺人鬼が誕生するってわけだよ。だからね、あたしは止めない。復讐したいならすればいい。けどね、それは同時に人間を辞めて不幸を撒き散らす鬼に堕ちる道だってことを覚えておきな
そうなったら、あんたもあんたから大事なものを奪ったキマイラウィッチどもと同類さ。同じ様に誰かに復讐されるだろうね
もう一度聞くよ?奴らと同じ畜生に堕ちるしか道が無いとしても、復讐がしたいかい?


 蜘蛛の巣の牢は直ぐに見つかった。
 囚われた男が一人、その牢の中で叫んでいたからだ。
「やれやれ」
 真っ先にその場へ辿り着いた神山・光(銃神・g00638)は両肩を竦め、嘆息の後にパラドクスを振るう。
 異界から召喚された対の剣は、彼女の剣技も相俟って蜘蛛の巣を破壊。囚われの男を解放する。
「殺してやる……皆殺しにしてやるぞ、キマイラウィッチ……」
 口からは涎を零し、ギラギラとした目は虚空を見詰めている。
 一目で男が正気を失っているのは見て取れた。
「なんだい、復讐がしたいのかい?」
 些か不穏な空気を感じつつも、光は男に問う。
 それを止めるつもりは無いと前置きしつつ、彼女は彼に語った。
「あんた、復讐の先に何があるか知ってるのかい?」
 と。
 復讐の先には何もありはしない。そこに在るのは空虚のみだ。憎い相手を殺した充実感も復讐の達成感も何も無い。
 そう告げた光は、己の来歴を語った。両親を殺された事。弟を実験材料にされたこと。そして、己がその復讐に燃えたことを。
 だが、その先に何も残らなかった。奪われた物は戻ってこなかった。ただ、残されたのは空っぽの心と、満たされない怒り、そして殺意のみ。
 それが向かう先は復讐相手ではない。自身の復讐に全く関係無い人間だった。
 何故あいつらは幸せそうに笑っているんだ。何故自分はこんなにも報われないんだ。何故。何故。
「復讐に燃えた人間から殺人鬼が誕生するってわけだよ。だからね、あたしは止めない。復讐したいならすればいい。けどね、それは同時に人間を辞めて不幸を撒き散らす鬼に堕ちる道だってことを覚えておきな」
 そうなったら、お前もキマイラウィッチ共と同類。それは男から大事な物を奪った復讐鬼だ。同じ様に誰かに復讐されるだろう。
「もう一度聞くよ? 奴らと同じ畜生に堕ちるしか道が無いとしても、復讐がしたいかい?」
「……殺す。皆殺しにする。キマイラウィッチは皆殺しにする……。ああ、神様。俺に力を!」
 男が零す言葉はそれのみだった。ギラギラとした視線のまま、男は光に視線すら合わせず、そのまま森の中へと消えていく。
「やれやれ」
 今の言葉が届いたのかどうか。それすらも怪しかった。
(「もしも排斥力が強化されていなければ、話を聞くくらいはしてくれたのかね」)
 仮定の話をすればキリは無いが、排斥力の強化により、男は光の言葉に耳を貸しさえしなかった。おそらく【友達催眠】等の残留効果があっても、男は耳を貸さなかっただろう。排斥力が強化された中では、それらが上手く働かないのは復讐者達が実証済みだ。
(「或いは……天の使者を装えば、もしかしたらね」)
 歪んでしまった信仰心だが、全てを失っても男はそれを手放さなかったようだ。
 その道もあったかもしれない、と嘆息し、彼女もまた、蜘蛛の巣の森内部へと歩を進める。
 全ては仮定の話。今はもう、確認出来る話では無かった。
善戦🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【壁歩き】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV2になった!

アッシュ・シレスティアル
※アドリブ、連携歓迎
蜘蛛糸がセンサーの代わりにしてるみたいだったが随分と遅い到着だったな…って、こんな森の中でも相変わらずばるんばるん揺らしながら飛びやがる。
装備をも足場にして戦ってる俺に対する挑発か……ありがとうございます!

今回は双銃スコールエリュシオンを構えその場からて動き回らずに戦いつつ、動く時は鎧を一部パージしたり他の装備を足場にしながらポジションを変えて戦う。

兜内部のたゆライズが起動できてるからを今一度確認しつつ、その場にある水分を用いて放つパラドクスで一体ずつ確実にしばいていくぜ。
木々の間を縫って飛ぶテクニックは褒めてやるが、普段と比べて速度が出てないんじゃないか?
おかげで普段と比べて良く視えるぜ!

相手の首狩り攻撃は装備越しにしっかり受けて相手の体に銃口を突きつけ、ゼロ距離で反撃を試みるぜ。
飛び回って遠くからちくちくしてれば良いところをわざわざ近づいてきてくれるんだから感謝しかないぜ!


神山・光
聖歌隊?
悪いね。今の私は虫の居所が悪いんだ。あんたらが形を残して死ねる保証はないよ
あぁ、そうさ。これはただの憂さ晴らし、八つ当たりに過ぎないよ?けどね、あたしは、人の心に土足で入り込んで、踏み躙る奴が大嫌いなんだよ!

聖歌隊の大鎌でこちらに近づいてきて斬ろうとするのなら、背後のデスホーラーを変形させて現れた超大型のレッドアイズ、ブルーアイズを模した銃にレッドアイズ、ブルーアイズを差し込み、砲弾並みの大きさの弾丸を連射し、弾幕を張り、近づいてくる者全てに雨霰の如く銃弾をお見舞いし、原型も残らぬほど、存在していた証拠を残さぬほど完膚なきまでに破壊し尽くす
「我を阻む者なし」


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎

今は一刻も速く、諸悪の根源の下へ辿りつくのみだ
いつまでも、キマイラウィッチの隙にはさせない

パラドクス通信で仲間と連携を
護衛から倒そう
すでに水着姿であるが
今ある足場を利用しつつ、手持ちの防具をまだまだ撒きながら、再び足場を作りつつ戦う

戦況を観察しつつ把握
相手が自在に動くので、不意打ちや死角には注意しあう
仲間と狙いを合わせ、両手の銃でPD攻撃
一撃で倒せる敵>消耗した敵を目安に、着実に倒していこう
凍てつく弾丸で動きを鈍らせ、撃ち抜く

敵の攻撃には、多方向からの聖歌に警戒しつつ、呪いの言葉に対抗し忍耐
魔力障壁でパラドクスの影響を緩和しつつ
耳のピアスの音色を聞き、意思を保ち耐えよう
ここに来たのは、戦うため
異種族さえ魔女に化かし、利用する
禍の根源を討ち果たすためだ

戦闘から注意は逸らさないが
今は、一刻も早く


森部・灯 (トレインチケット)



 神山・光(銃神・g00638)は蜘蛛の巣の森を征く。
 この先に事件の元凶、キマイラウィッチ共がいる筈なのだ。
 そいつらを許しておけない。その思いを抱き、彼女は昏き森を突き進んでいく。
 故に、その遭遇は必然であった。
 光の耳朶を打ったのは、バササと言う羽音。そして、狂気と殺意の満ち溢れた歌声であった。
「聖歌隊?」
 己の上空を取り囲む歴史侵略者を一瞥し、光はその文言のみを口にした。
 トループス級キマイラウィッチ『翼ある聖歌隊』。それが彼女達の名だ。天使にも、半人半鳥にも見える容姿は、端麗ながらも醜怪。まさしく変異した魔女そのものであった。
 無数のそれが、光を獲物に定めたのか、羽音と共に降り立ってくる。
「悪いね。今の私は虫の居所が悪いんだ。あんたらが形を残して死ねる保証はないよ」
 それに対峙すべく、光は静かに言い放ち、そしてパラドクスを起動した――。

「消し飛びな!」
 それは、怒りのままに放たれる砲撃であった。
 近付いてくる者全てを雨霰の如く撃ち砕き、原形を残さず、存在の証左すら残さない程の弾幕は、彼女に肉薄する聖歌隊の数体を消し飛ばしていく。
「あぁ、そうさ。これはただの憂さ晴らし、八つ当たりに過ぎないよ? けどね、あたしは、人の心に土足で入り込んで、踏み躙る奴が大嫌いなんだよ!」
 己の憤怒を自覚し、しかし、その勢いのまま光は咆哮した。
 その様相はまさしく修羅。
 全てを消し飛ばさんと放たれる弾丸の雨霰は、キマイラウィッチ達の肢体を貫き、血の霞を散布。木々の間に掛かる蜘蛛の巣を血で汚していく。
「我を阻む者な――」
 身体が動きを止めるのと、自身を襲う異変に光が気付くのはどちらが早かっただろうか。
 最初に動きを止めたのは足だった。進もうとし、しかし、がっちりと固定されているのを認識した。
 次に動きを止めたのは両腕。腕の動きを封じたのは重さでは無く拘束で、気がつけば両の腕に白い糸が絡みつき、その粘度を以て木々に張り付いていた。
「――ッ!」
 ここは蜘蛛の巣の森。異常な粘着力によって侵入者の動きを奪う魔の森だ。
 故に、その結果は当然であった。
 そして。
「シャアアアッ」
 視界に飛び込んできたのは、大鎌を振るう聖歌隊の姿だった。
 上段に鎌を構え、そのまま彼女を斬り裂かんと近付いてくる。
 応戦は間に合わない。如何に時間、空間、世界法則を書き換える逆説連鎖戦と言えど、絶対の世界律が存在する。排斥力の強化も然り。そして、クロノ・オブジェクトによる障害も然り、だ。
 煌めく程に磨かれた鋭い刃が光の首を刎ねるべく一閃する――。
 響き渡ったのは、肉と肉が断たれる音――ではなかった。
「ふん。こんな森の中でも相変わらずばるんばるん揺らしながら飛びやがる。装備をも足場にして戦ってる俺に対する挑発か……ありがとうございます!」
 響き渡ったのは金属音と、歓喜にも似た謝礼の言葉だった。
 聖歌隊の大鎌と光の間に飛び込んだアッシュ・シレスティアル(蒼破拳・g01219)が、己が双銃を以て、迫る凶刃を防いだのだ。
 彼の足下では、先程脱ぎ捨てたのだろう。蒼い鎧の一部が蜘蛛糸に絡まり、そのままアッシュの足場を形成していた。
「ええっと、要するに、助けに来たって事だよ」
 よいしょっと言う気合いの言葉と共に、光に絡みつく糸を剥がしながら、森部・灯(全力全開高気圧バール!・g03325)が言葉を向けてくる。
 その都度、両手を包むガントレットが蜘蛛糸に絡まれ、大変なことになっているが、灯はそれを気にした風もなく、光の救出を優先していた。
「……大丈夫。泣いてない!」
 少しだけ悲しい気持ちはあったが、それは内緒だ。
「まあ、見苦しくて大層申し訳ないが、一緒に戦おうじゃ無いか」
 これは、水着姿で同意を促すエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)の言葉だった。
 美丈夫な天使が蜘蛛の巣の張り巡らされた森に立つ姿はなかなかに絵になる様だったが、しかし、何故水着姿? と問いたくもなってくる。
「ああ、蜘蛛の巣の足場にしてな」
 クロノ・オブジェクトであれば絡め取られても足場に出来ることを利用した為、脱ぐしか無かったとは本人談。事実なのだから仕方ない。問題があるとすればこんな罠を作ったキマイラウィッチ側と、防具を足場にすれば何とかなる、と助言した時先案内人だろうか。
「諸悪の根源を叩く。いつまでも、キマイラウィッチの好きにはさせない」
 エトヴァは力強い言葉を放ち、双手の拳銃を天へと向けるのだった。

「シャアアアッ!」
 聖歌隊の叫びが迸る。人から発せられた声と言うよりも獣じみた咆哮に聞こえる音は、キマイラウィッチという性質が如実に表れている為だろうか。
 共に繰り出されるのは大鎌の一撃、そして聖歌による破壊音波斯くやな歌声だった。
 それらが集まる復讐者に繰り出され、命を奪わんと振り抜かれる。
「ただの水だと思ったら痛い目を見るぜ!」
「――凍て、響き渡れ」
 だが、それを二人の男が良しとする訳も無かった。
 アッシュの放つ水弾は肉薄する聖歌隊を穿ち、エトヴァの青の弾丸は、その肉体を凍て付かせる。バサリと墜落する音にガシャンと砕ける音が入り交じったのは、彼のパラドクスによって終焉を迎えた敵がいたためであろう。
「木々の間を縫って飛ぶテクニックは褒めてやるが、普段と比べて速度が出てないんじゃないか? おかげで普段と比べて良く視えるぜ!」
 そして飛ぶのは復讐者達による砲声――ではなく、アッシュによる挑発であった。ちなみに何が普段と比べてよく視えているかは言及しない。彼の称号がたゆんスレイヤーであることから察して欲しい。
「そう。この世に神はいないかもしれない。でも、ディアボロスがいる。何より、たゆんスレイヤーがいる。たゆんを無視出来ず、放置出来ないと唱える彼がいるのだ!」
 以上、灯による解説であった。
 そう、戦闘、予知、仲間の援護に救出、そして解説と、マルチリンガルな彼女の本領発揮の場こそ、今であった。
 すなわち。
「と言う訳で、エトヴァさん。宜しくお願いします」
「……や、やりづらいな」
 昏い場の雰囲気を全て吹き飛ばすような溌剌な声に、エトヴァは一瞬だけ冷や汗を掻き、しかし、否と首を振る。
 何であれ、目指す結末は変わらない。ならば、自身とテンションが異なると言うだけで、二人を否定する理由は無かった。要は、敵を倒せば良いのだ。倒してしまえば。
「ここに来たのは、戦うため。異種族さえ魔女に化かし、利用する禍の根源を討ち果たすためだ」
 彼の宣言に呼応するように、きしゃあああと化鳥の声が響く。
 だが、それに臆する理由は無かった。故に凍て付く弾丸を放ち、その声の主を穿っていく。
「まあ、それに、俺と戦術は同じようだしな」
 その場に留まりながら射撃攻撃を重ねる事で、蜘蛛糸から受ける影響を最小限にまで削っていく。アッシュとエトヴァが選んだ戦術は、奇しくも同じで、ならば、そのフォローを行わない理由は無いと、エトヴァは首肯する。
「はっ。飛び回って遠くからちくちくしてれば良いところをわざわざ近付いて来てくれるんだから感謝しかないぜ!」
「……まあ、逆説連鎖戦なんだから、距離はあんまり関係無いんだけど……そういう理由じゃ無いよね」
 水弾を飛ばしながらのアッシュの笑みに、乾いた笑いを浮かべる灯。
 ちなみに彼我の距離が縮まれば、よく見えると言うのが感謝の理由だろう。何の話か判らない、と灯は愛想笑いを浮かべるしか無かった。
「今は一刻でも早く、敵を討ちたい。アッシュさん、灯さん、光さん。俺に力を貸してくれ」
 エトヴァの問いに、是との頷きが返る。
 同時に放たれたパラドクスは空を、蜘蛛糸を、そして聖歌隊を灼き、その身体を地面へと墜としていった――。
善戦🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【水中適応】LV1が発生!
【建造物分解】LV1が発生!
【パラドクス通信】がLV2になった!
【託されし願い】LV1が発生!
効果2【フィニッシュ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV3になった!
【先行率アップ】LV1が発生!

四葩・ショウ
救援機動力で駆けつける

家族を刻逆で奪われて
わたしも同じことを思った
どんなことをしてでも必ず、と

ぜんぶ魔女が自分たちの為に企てたこと
命も、想いも利用する貴女達を――ゆるさない

籠の鳥になる気はないんだ
案内人さんのアドバイス通り
まずは脱ぎ易く緩めておいたオートクチュールを足場に
あらわになるのは白サロペットとその下の水着
パラドクスのファッシネイト巡らせ、果敢に攻め込もう
さぁ――貴女の復讐を、頂戴
美しい白翼のレディ

ヒットアンドアウェイの要領で
ふわりと跳んで、セイレーンクロスを着地地点に
……ひどいな
本当にそんなこと、思ってる?
呪いの言葉はファッシネイトで妨害して
身を護るように肌を覆った
バトルマントを脱ぎ捨てた上に降り立つ

防具の足場を利用してフィールドを駆ける
いよいよ足りなければ白のサロペットを足元に
トロピカル柄の水着、似合うかな?
ふふ、全然興味なさそうだね

硝子の林檎を幾度となく貫いて
狂気に蝕まれたって立ち止まったりしない

憶えておいで、レディ
貴女達の企みすべてを灰にして
すべての魔女を、わたし達が、斃す


アヴィシア・ローゼンハイム
アドリブ、連携歓迎よ

なるほど、聞いてはいたけれど…糸が厄介ね。時先案内人の予知には感謝だわ
手持ちの防具を脱いで、糸に引っかけて足場にするわ
水着は下に着こんであるから、脱いでも気にならないし、可能な限り置きましょう
……後でクリーニングね、これは

エアライドと飛翔を併用し、三次元的に攻撃を仕掛けるわ
複数仕掛けた足場を乗り継ぎ、飛び跳ねるように、大鎌で切り付けましょう
敵の死角を攻めれたら僥倖ね
ロストエナジーも合わせて、ダメージを与えていくわ

飛べるのは、貴女だけの特権じゃないのよ?
さあ、踊りましょう。貴方と私で、どちらかが倒れるまで終わらないワルツを

進行方向にある邪魔な糸は、避けるかパラドクスで切り裂くわ
すぐに再生するでしょうけど、捕まらないことを最優先

連携可能であれば、パラドクス通信を使用
敵の攻撃の際に注意するように連絡したり、攻撃を合わせるのに利用するわ

ここを突破すれば、アリアドネにまた一歩近づく
貴女に構っている暇はないの、何が何でも、押し通らせて頂くわ
貴女の命の旅路は、ここまでよ


アッシュ・シレスティアル
※アドリブ、連携歓迎
来た当初に比べてだいぶ華のあるメンツになってきた事でロケーションの悪さが際立つな。

ネメシスモードは今回おやすみ。
兜以外のパージした鎧の一部や他の装備で足場を何個か作りながらポジションを変えて戦う。
顔だけ隠した水着男が宙を舞う事になるけど場の雰囲気を守りつつたゆんスレイヤーする以上致し方なし。

取り回しのきく撃剣スタンエッジに持ち変え、パラドクスの効果で刃のない剣に魔力刃を形成して前進。
連携取ることも意識して、攻撃役と誘導役を臨機応変に演じ分けつつ、ある程度近づいたら後は魔力刃を伸ばして叩っ切る。
ネメシス化はしないがお前の技を使わさせてもらうぜ!

相手の攻撃は武器で致命傷は防ぎつつ、後は意地で耐える。
攻撃を受けながら相手の位置を特定して斉射が終わったら、再び魔力刃を形成して反撃を試みる。
ある程度は受けとかないと復讐心あがってく一方だろうし、ここは一旦ヘイト調整しつつ。
とはいえ、やられっぱなしも面白くないよっ…な!


田淵・あゆみ
さて、お邪魔するよ。魔女達の企み全部、蜘蛛の巣ごと無くしてやろう
……もう間に合わないのは嫌なんだ、ここらで終わりの糸口にしたいね

足元ベッタベタだね、豪雨の田植えフェスじゃないんだから勘弁してくれー
何か敷物あれば良いみたいだし、とりあえずシャツ脱ぐよ。ブーツは紐緩めとこうか、足取られたら脱ぐ
インナーに去年の長袖ラッシュガード&タイツを着てきたから肌は見えないよ、安心だね☆

動けない、いや動かないんだなぁ
【金色スパーク】でコネクタを複数生やして、あっちこっちから電撃をお見舞いする
「コイツは何処でも生やせるからねー、ほらそこ、横に出てるよ?」
あえて見える所にコネクタを出し、意識を向けておいて本命の死角から電撃
反撃は喰らったらヤバい頭や体の中心部からズレるように腕や脚でカバー
弾数多いってことは、1個あたりの威力はそんな無い!……と思うようにしながら動く

パラドクス通信で連絡取り合い、タイミングを測る
いくら強くても、一人には限界がある
攻撃を避けようと飛ぶのなら、そこは他の誰かの正面だ

アドリブ連携歓迎


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎

場所が場所でなければ、妖精達の競演の如くだったろうに
ろくでもない仕掛けは、森の主の趣味なのだろう
これ以上の悲劇を起こさせないために……目の前の敵を、確実に仕留めよう

水着姿で参戦
先に撒いておいた防具を足場とし、蜘蛛の巣の影響を避けて戦う
仲間の防具も足場に活用させて頂く
ここに足場が必要、という時には予備のコートを広げて引っ掛け、面積を確保
相手は一体、蜘蛛の巣の環境を把握しつつ足場を飛び移り、動きをつけていこう

戦況を観察し、仲間たちと連携を取る
パラドクス通信で、目を向けずとも細部を伝え
危険やタイミングなど情報共有を
銃でPD攻撃
相手の動線の先を制するように狙い撃ち
飛ぶなら翼を狙い、バランスを取らせぬように
隙を作り、突きあうように複数方向からテンポずらした射撃
死角を取られないようにし、味方と死角をフォローしあえる立ち位置へ

恩讐の聖句には、忍耐力で凌駕したい苦しむ様子をみせ
復讐心を刺激せずにおく

まるで魔窟のようだ、ラ・ピュセルも、この森も
そこに人が住まうなら、俺達は前に進むのみだな


 ばさりと、羽音が響く。
 ふわりと風がなびき、歌のような響きが木霊する。
 それは、ともすれば幻想的な光景だった。現に、復讐者が一人、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は自身が見たその光景を後にこう物語っていた。
(「場所が場所でなければ、妖精達の競演の如くだったろうに」)
 舞台が蜘蛛の巣塗れの森で無ければ。
 降り立った者が醜悪なキマイラウィッチでなければ。
 そして、対峙する復讐者達が揃いも揃って水着姿でなければ。
(「俺は天使だが……この光景こそ、『天使の降臨』なのかも知れんな」)
 それが、アヴァタール級キマイラウィッチ『白翼のセイレーン』出現の光景であった。
「悪魔は救世主を装い騙ります。或いは天使の振りをして、やもしれません。まさしく、そんな光景ですね」
「そうだな。その通りと言わざる得ない」
 《救援機動力》で駆け付けてくれたアヴィシア・ローゼンハイム(Blue・Roses・g09882)も、エトヴァと同じ幻視をしたのか。零した吐息は感嘆と嫌悪の双方に塗れていた。
「だいぶ、ロケーションの悪さが目立つな」
 その言葉を口にしたのは、アッシュ・シレスティアル(蒼破拳・g01219)であった。だいぶ華のある面子が揃ったものの、と言う辺り、独白には賞賛の響きが籠もっていた。
 ちなみに、その彼も先のエトヴァが語った通り、水着姿である。拘りなのか、顔だけはフルフェイスの蒼い兜に覆われており、それが一層、独特の雰囲気を醸し出していた。
 そして、そんな彼らに応じる様に再度の歌声が響く。
 問答の暇は無し。
 ただセイレーンの瞳に宿るのは憎悪の光のみであった。
 復讐者を殺す。直ちに殺す。慈悲や躊躇いは一切存在しない。そう目で語る彼女は、後光を携え復讐者達へと肉薄する――。

「家族を『刻逆』で奪われ、私も同じ事を思った。どんなことをしてでも必ず、と」
 硝子製のレイピアを構え、四葩・ショウ(After the Rain・g00878)はぽつりと呟いた。
「あの人の嘆きも悲しみも、ぜんぶ魔女が自分たちの為に企てたこと。命も、想いも利用する貴女達を――許さない」
 心奪うパラドクスから流れる様に放たれた一刺しは、開戦の合図であり、そして、ショウの宣誓でもあった。必ずこの場で白翼のセイレーンを討ち滅ぼす。その気概の元、彼女は地を蹴り、肉薄するキマイラウィッチへ、真正面から突撃する。
「――ッ!」
 流石に真正面から迎撃の体勢を取るとは思っていなかったのだろうか。
 刺突を受けながらも羽ばたき、空で急停止したセイレーンは、その柔和な表情に歪な笑顔を宿らせていた。
 己の羽根にすら、多重に編まれた蜘蛛の巣が付着している。キマイラウィッチには束縛が働かないそれは、しかし、敵対する復讐者には恐るべき牙を剥く。
 それを思い知れと浮かべた笑みは、しかし、次の瞬間、凍り付く結果となった。
「籠の鳥になる気はないんだ」
 脱ぎ捨てたタキシードドレスを足場に、蜘蛛の巣の枝葉に立つショウが首を振る。
(「案内人さんのアドバイス通り、確かにクロノ・オブジェクトは足場になるようだね」)
 確かに武器だろうと防具だろうと道具だろうと、蜘蛛の巣は復讐者の持ち物であれば、等しく捕縛するだろう。だが、それ以上は捕縛出来ないことも、既に仲間達が試している。
 ならば、それを足場に戦うのみだ。
 防具を脱ぎ捨て、白サロペット姿になったショウは、再びパラドクスを行使。驚愕に染まる白翼のセイレーンの精神を、更に打ち砕いていく。
「さぁ――貴女の復讐を、頂戴。美しい白翼のレディ」
 そして、キマイラウィッチに対する攻撃は、彼女が紡ぐそれのみでは無かった。
「さて、お邪魔するよ。魔女達の企み全部、蜘蛛の巣ごと無くしてやろう。……もう間に合わないのは嫌なんだ。――輝き狂え!」
 ここらで終わりの糸口にしたいと、口にした後、田淵・あゆみ(人間のサウンドソルジャー・g06882)もまた、パラドクスを紡ぐ。
 浮かび上がるのは、大量のコネクタ。それらが一斉に電気を帯びたその刹那、雷の如き放電がセイレーンを貫いた。
「ぎゃあああ!」
 上がった悲鳴は、しかし、次の瞬間、直ぐに飲み込まれていた。
 セイレーンから零れ落ちた羽根が一斉に、あゆみの身体を狙う。機関銃の如き雨嵐の投擲に、しかし、あゆみは焦燥を浮かべる事は無い。
 敵の攻撃が如何なる物かは時先案内人から告げられている。そして、彼もショウ同様、周囲の状況も聞き及んでいる。ならば、後は冷静に対処するのみだ。
「何か敷物があればいいんだっけ?」
 脱ぎ捨てたシャツを足場に、あゆみは半歩移動。その真横を手裏剣と化した羽根群が通過し、地面を深く抉っていった。
 ちなみにあゆみが装備する防具のカテゴリーは現代服である。即ち、彼が纏う衣服はそのまま、彼にとっての防具であり、クロノ・オブジェクトであった。
「インナーに長袖ラッシュガード&タイツを着てきたから肌は見えないよ、安心だね☆」
 誰に対する解説かはさておき、その余裕綽々な態度に、セイレーンから怒気の籠もった悲鳴が迸る。
「おいおい。仲間ばかり相手するなよ」
 そこに肉薄したのはアッシュであった。
 手にした電光剣こと撃剣スタンエッジには、既に魔力の刃が付与済み。それを以て彼はセイレーンに己が一刀を叩き付ける。
「汝の力を認め、我が力の一端を開示する」
 逆袈裟の斬撃は修道服を模した法衣すら斬り裂き、その白い肌に血の跡を刻んでいった。
「――ちっ」
 まろび出る膨らみは案外大振りで、成る程、着痩せするタイプか、とアッシュことたゆんスレイヤーは納得の独白を口にした。
「まあ、ともあれ、たゆんだろうがたゆんじゃなかろうが、敵である以上倒させて貰うぜ」
 それはそれとしてたゆんスレイヤーの役割は果たさせて貰うと、二度、三度と斬撃を重ねていく。都度、真紅の血が周囲に飛び散り、切り落とされた衣服の切片が粉雪の様に舞い散っていった。
 斬撃に対する反撃にと、再び放たれる白羽の刃は、しかし、アッシュを縫い止めることは出来なかった。
 脱いだ鎧を足場に戦場を掛けるアッシュは、自身に飛来するそれを撃剣で弾くと、そのまま遙か高みへと跳躍する。
「さあ、踊りましょう。貴方と私で、どちらかが倒れるまで終わらないワルツを」
 飛べるのはセイレーンのみの特権では無いと、アッシュと入れ替わりに接近したアヴィシアが微笑を浮かべる。
「馬鹿な! この森で飛翔など――?!」
「お生憎様。対処法は全て仲間が学習、実践済みよ」
 無論、クロノ・オブジェクトによる足場造りを唱えたのは時先案内人だが、そこまで馬鹿正直に明かす理由は無い。死人に口なしとなるだろうが、万が一もある。それに――導入がどうあれ、対処済みだと言う現状は変わり無いのだから、それ以上を告げる理由は何処にもなかった。
「ここを突破すれば、アリアドネにまた一歩近づく。貴女に構っている暇はないの。何が何でも、押し通らせて頂くわ。……貴女の命の旅路は、ここまでよ」
「抜かせっ!!」
 踊る様に繰り出される大鎌の斬撃を受け、しかしとセイレーンは咆哮。共に呪われた狂気の聖句をアヴィシアへと叩き込んでいく。
 如何に復讐者であろうとも、精神の内側から破壊されれば無事では済まない。そんな思い溢れる呪詛は確かにアヴィシアを捉え、その精神を侵していく。
 ――侵した筈だった。
「何故止まらない!」
「止まる理由がないからよ」
 それでも尚、自身に繰り出される大鎌の連撃に、セイレーンは悲鳴じみた叫びを木霊させた。
 防具を脱ぎ捨て、それらを足場に蜘蛛糸を蹴り、幾渡とセイレーンに肉薄するアヴィシアの斬撃は鋭く、重く、そして痛かった。
 得物たる大鎌と相俟って、セイレーンはアヴィシアの姿に死神を幻視する。
 水着纏いの美しい死神が、夜の森を蹂躙する。字面だけでも悍ましげなそれに、セイレーンはただ戦慄するのみであった。
「まあ、それでも尚、と言う奴だな」
 パラドクスを受け、それで攻撃の手を休める者など此処には居ないと、エトヴァは断じる。
 断言と共に彼が放ったのは、十字型に並ぶ5つの弾丸であった。
 斬り裂かれた胸元に吸い込まれたそれは、奇しくもセイレーンに十字の跡を刻む。見ようによっては聖痕の類いにも取れるそれだが、当然、キマイラウィッチが是と喜ぶ筈も無い。
「――結束を力と成せ」
 だが、抗議も反論も受ける気は無いと、更に銃撃を重ねていく。
 その都度、銃声が響き、セイレーンの身体に十字跡が刻まれていった。
「何なのっ!? お前達!! そんな姿で、この暗い森を闊歩して!」
 怨讐の呪詛と共に放たれるそれは、むしろ悪態であった。
 投げつけられた言葉に、流石のエトヴァも苦笑を浮かべるしか無い。
 最初の想起通り、全員が全員、水着姿なのだ。此処が海辺やプールならまだしも、蜘蛛の巣が張り巡らされた魔の森であれば、場違いとの叫びは相応に納得するしか無い。
「とは言え、最初にこの罠を仕掛けたのは其方だしな。文句ならば上司のアリアドネに言ってくれないか? 俺達は魔窟であろうと、樹海であろうと人が住む以上、前に進む。それだけだ」
「いや、待って。その理屈はおか――」
 一瞬納得しかけたセイレーンは、首を振ると荒げた声を出す。
 蜘蛛の巣は全てを捕縛し、その対処まではセイレーンも理解を示していた。だが、だからと言って、水着姿は理解し難い。もっと他にあったのでは無いか。
 そんな抗議の声は、しかし、最後まで紡がれなかった。
「ふふ。おれたちの水着、全然興味なさそうだね」
 斬撃が迸った。
 ショウの硝子の一突きはセイレーンの正中線を穿ち、幾渡と紡がれた連撃は、その白い身体を幾度と無く貫いていく。
「狂気に蝕まれたって立ち止まったりしない。憶えておいで、レディ。貴女達の企みすべてを灰にして、すべての魔女を、わたし達が、斃す」
「がぁ」
 悲鳴と共に零れ落ちた聖句は、しかし、ショウの元へ届かない。届く暇を与えられることは無い。
 そこに数多のパラドクスが殺到したからだ。
 アッシュとアヴィシアによる斬撃はセイレーンの白い身体を斬り裂き、その傷口をあゆみの電撃が灼く。反撃を紡ごうとした手足を、そして顔をもエトヴァの銃弾が貫いていった。
「お、己。ディアボロス! 呪われよ呪われよ! アリアドネ様のみならず、幾多の同胞に蝕まれ、そして終焉を迎え――」
 言葉はそこで途切れた。
 如何に生命力の高いキマイラウィッチとは言え、心臓が穿たれ、首を落とされれば生きる術はない。もしかしたらは在るが、しかし、このセイレーンはそのような存在では無かったようだ。
 多重に叩き付けられたパラドクスを受け、事切れた彼女はそのまま地面へと落下する。
 その身体は蜘蛛の巣に絡め取られることは無く、ただ、地面に叩き付けられる鈍い音のみが、周囲に響き渡っていた。

「……ところでこれ、クリーニングで落ちるのかしら?」
 蜘蛛糸塗れになった自身の防具を回収しながら、アヴィシアがぽつりと呟く。
 生憎、試そうにもこの場に【クリーニング】は付与されていない。粘つく蜘蛛糸に触れないように何とか回収し、新宿島に帰宅する他、術はなかった。
「多分、大丈夫と思うが」
 蜘蛛糸の力の一端は、この改竄世界史火刑戦旗ラ・ピュセルを覆う排斥力に寄る物だ。ならば、新宿島では相応に弱まるだろう、と言うのがエトヴァの見解で、防具を回収したアッシュも是と頷く。
「ああ、そうか。『新宿島に戻るまで』この状態なのか……」
 嘆息と共に紡がれた言葉は、あゆみが零したものであった。同時に、彼の至った結論を想像してしまったのだろう。ショウがあっと声を上げた。
「水着姿でパラドクストレインに乗るのか……」
「せめて、海辺で降ろして貰おうか」
 復讐者達が集う新宿駅ターミナルに水着姿で降臨するとか、何の罰ゲームだと嘆く声は誰が零した物か。
 キマイラウィッチ達ですら満足しそうな悲哀交じりの溜め息が盛大に、暗い森の中に木霊していた。

 さて。果たして。
 彼らが最後、どの様な結末を辿ったのか。
 多くを語る必要は無い。報告書にはその文面が綴られ、そして。
「それは、ディアボロスの戦いが、とても激しく、劇的で、そして酷く辛い戦いだったことを示している――そんな帰還でしたわ」
 そんな文言が、その最後を飾っていた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【友達催眠】LV1が発生!
【エアライド】LV1が発生!
【罪縛りの鎖】LV1が発生!
【通信障害】LV1が発生!
【パラドクス通信】がLV3になった!
効果2【先行率アップ】がLV2になった!
【ロストエナジー】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV5になった!
【グロリアス】LV1が発生!

最終結果:成功

完成日2024年09月15日