破壊兵器内蔵型天魔武者を撃破せよ

 攻略旅団の方針により、相模国の攻略を開始する事になりました。
 相模国での現代兵器の工廠跡の調査からは既に4ヶ月以上が経過しており、天正大戦国側は技術の革新を推し進めていたようです。

 現在、相模国では『体内に現代技術を用いた破壊兵器を組み込むことに成功したアヴァタール級』率いる部隊が、最終人類史の『横須賀市』との境界付近に展開しています。
 TOKYOエゼキエル戦争から伝わった技術を元に造られた破壊兵器は、特殊なクロノ・オブジェクトではありませんでした。
 そのため、ディアボロスやクロノヴェーダには一切ダメージを与えられない上、使用すれば巻き込む予定の全員から反撃を受けてしまう、逆説連鎖戦では『無意味どころか使う側に有害』な兵器となっています。

 この問題を解決する為、アヴァタール級の体内に組み込まれた破壊兵器は『アヴァタール級の死亡を引き金に作動し、その発動が一般法則破壊で止められない』という形で、クロノ・オブジェクト技術が応用されています。
 つまり、アヴァタール級が死ぬと同時に、周囲数百メートルの建物が破壊され、一般人を死傷させる爆発が引き起こされるのです。
 現状では現代技術の最先端よりも効果範囲が狭く、威力も低いのですが、さらに研究が進めばトループス級にも搭載可能になったり、より強力な兵器を組み込むことが可能となったりすることも考えられます。

 もし、より強力になった大量破壊兵器を内蔵した天魔武者の大軍が、東京23区や横須賀市に攻め込む事になれば、甚大な被害は免れません。
 それを未然に阻止するためにも、横須賀市への侵入を目論む天魔武者を撃破しましょう。

白霧を待ち侘びて(作者 椎名遥
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「ふむ……今日も霧は見えず、か」
 相模国の横須賀海。
 木造の簡易拠点の内から部下と共に海を見つめ、アヴァタール級天魔武者『筑紫広門』は自身の胸に手を添える。
 その内にあるのは、他の地より得た技術を用いて作り出された新兵器。
 その性能は、未だ発展途上ではあるものの。
「完成には至らずとも、此度の役目を果たすにはこれで十分。さて――」
 くく、と。どこか楽しげに広門は笑みを海へと向ける。
 既にこの身の仕掛けは済んでいる。
 後は霧の――ディアボロスの本拠地へと攻め入ることが可能となる、境界の霧の発生を待つのみ。
「断片の王となられた家康様への祝いだ。この身を以って盛大な花火を上げさせてもらおう」


「みんな、集まってくれてありがとう!」
 新宿島のグランドターミナル。
 天正大戦国へと向かうパラドクストレインの前で集まったディアボロス達に手を振り、サルタディア・ウェンテスタ(人間のナイトブレイド・g08931)は笑顔で大きくお辞儀する。
「攻略旅団の相談の結果、天正大戦国の『相模国』への侵攻が決定したことは聞いているかな?」
 ジェネラル級天魔武者『北条氏政』が支配しているという相模国。
 史実においては関東の大半を支配する大大名であった北条氏だが、天正大戦国の世においては徳川家康とその配下が関東を割拠している為か、領国は相模一国に留まっている。
 その代わりなのか、TOKYOエゼキエル戦争由来の技術を取り込んだ大量破壊兵器の開発が進められているのが特色であり。
 この大量破壊兵器の技術を危険視した事と、最終人類史の東京23区の安全を確実にする事。それらを踏まえた結果、攻略旅団で侵攻を決定することになったのである。
「他のディヴィジョンの技術と言う事もあって、簡単に実用化できるものでもないけれど……部分的に実用化されるだけでも十分すぎるくらいに危険だからね」

 そう、こっくりと頷いて。サルタディアは現地の地図をディアボロス達へと示して見せる。
「攻略作戦の流れとしては……相模国の国境線を制圧した上で、本格的に相模への侵攻を開始するって形になるはず」
 その上で、今回の作戦はその第一歩。
 国境付近に展開している天魔武者の撃破が目的となる。
「予知できた情報だと、天魔武者達は横須賀市近くの海でディヴィジョン境界の霧が発生するのを待っているみたいだね」
 境界を揺らがせるための儀式などは行ってはおらず、あくまで自然発生を待っている様子であり。
 海岸線に観測部隊を広く展開して霧の発生を探り、その報告を受ければアヴァタール級が即座に現地へ向かい人類史へと攻め込むという手筈になっているのだろう。
「なので――まずは、観測部隊への対処からだね」
 観測部隊へと急襲を仕掛けた上で一部を逃がし、報告に戻ろうとする相手を追って本隊を見つけ出すか。
 あるいは、報告を上げる間を与えずに殲滅し、足跡などを辿って本隊へと急襲を仕掛けるか。
 砂地の多い海岸線だけあって相手の足跡を探ることは難しくは無く、どちらの作戦であっても本隊を見つけ出すことは十分に可能だろう。
 その上で、居場所を突き止めた本隊へと戦闘を仕掛け、指揮官であるアヴァタール級天魔武者を撃破すれば作戦は成功となるのだが……。
「一つ、みんなには直接的な問題になるわけじゃないけれど――突入してくる予定のアヴァタール級天魔武者は、開発された小型の大量破壊兵器を体内に搭載しているんだ」
 TOKYOエゼキエル戦争の技術を用いて作り出した、未だ発展途上にある破壊兵器。
 天魔武者の撃破と共に大爆発を巻き起こすその爆弾は、今の段階ではクロノ・オブジェクトではなく、爆発を受けてもディアボロスがダメージを受けることはない。
 だが、それ以外の存在……一般人にとっては話は異なる。
「今回の海岸線だと巻き込む人もいないけれど……この敵が最終人類史に侵入してきたら。もしくはそれ以外の場所でも、人々を巻き込むような動きを取られれば、間違いなく厄介なことになるはず」
 最終人類史の一般人に大きな被害が出れば、戦争時の人類応援度は下がるだろうし、悪くすれば最終人類史のディヴィジョン化などにも繋がるかもしれない。
 また、現地への被害が甚大になれば時代の奪還が叶わなくなる恐れもある。

 だから、と。サルタディアは背後のパラドクストレインを振り返り、ディアボロス達へと手を伸ばす。
「行こう、みんな」
 相模国での現代兵器の工廠跡の調査から、およそ4ヶ月。
 不完全であっても、相手は新たな技術を取り込み形にしてきている。
 これ以上の時間を与えれば、その技術はさらに加速度的に上昇していくだろう。
 だからこそ、そうなる前に――兵器を完成させる前に、有効な使い方を見出す前に、技術ごと撃破しなければならない。

「さあ――逆転劇を始めよう!」


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
1
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。【怪力無双】3LVまで併用可能。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【一刀両断】
2
意志が刃として具現化する世界となり、ディアボロスが24時間に「効果LV×1回」だけ、建造物の薄い壁や扉などの斬りやすい部分を、一撃で切断できるようになる。
【友達催眠】
1
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【トラップ生成】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の空間を、非殺傷性の罠が隠された罠地帯に変化させる。罠の種類は、自由に指定できる。
【活性治癒】
2
周囲が生命力溢れる世界に変わる。通常の生物の回復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」し、24時間内に回復する負傷は一瞬で完治するようになる。
【水面走行】
1
周囲の水面が凪ぎ、ディアボロスが地上と同様に走行や戦闘を行えるようになる。ディアボロスと手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人も同行可能。
【落下耐性】
1
周囲のディアボロスと、「効果LV×300m半径内」の通常の生物に、どんな高所から落下しても、落下時の衝撃を2mの高さから落下した程度に軽減する能力を与える。
【パラドクス通信】
1
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【防衛ライン】
1
戦場が、ディアボロスが地面や床に幅10cm、長さ「効果LV×10m」の白い直線を出現させられる世界に変わる。敵はこの直線を突破できず、上空を飛び越える場合、最低「効果LV」分を要する。直線は戦場で最初に出現した1本のみ有効。

効果2

【能力値アップ】LV1 / 【命中アップ】LV3 / 【ダメージアップ】LV1 / 【フィニッシュ】LV2 / 【先行率アップ】LV1 / 【ドレイン】LV2 / 【ダブル】LV1

●マスターより

椎名遥
 力と信念を真正面からぶつけ合い。
 敗北した暁には、決めポーズをとるライバルの背後で爆発四散するのはお約束。
 とは言え、しんみりした別れの後の大爆発は、雰囲気とかいろいろ台無しなので火薬の量には要注意。

 そんな感じでこんにちは。椎名遥です。
 TOKYOエゼキエル戦争から伝わった技術を研究していた相模国。
 開発された自爆兵器を搭載した天魔武者が新宿島に侵攻しようと目論んでいるので、それを事前に対処しようというシナリオとなります。

●選択肢
①クロノヴェーダとの対話
 主にアヴァタール級天魔武者と会話します。
 重要な情報は持っていないか、教えてくれない可能性が高いです。
 ※クリアしなくても、特にデメリットはありません。

②護衛するトループス級『天魔武者・抜刀剣客隊』
 ボスの取り巻きを相手にする、対集団戦です。
 無視してボスを殴りに行った場合、その戦いに乱入してくるためにボス戦の難易度が上がります。
 ※難易度は上がりますが、勝てなくなるわけではないです。

③作戦行動中のトループス『水陸両用機械化妖怪『甲海丸』』
 海岸線沿いに広がって霧の発生を探っているトループス級との戦闘となります。
 戦闘を仕掛けた場合、アヴァタール級の元へと報告に向かおうとします。
 後を追って本陣を見つけるもよし、包囲殲滅してからじっくり足跡を探すもよし。

④アヴァタール級との決戦『筑紫広門』
 ボスとの戦いになります。
 倒すことでシナリオは完結します。

 他所の技術を取り込んでの秘密兵器の開発には、いろいろとロマンはあるけれど。
 封じておくべき技術も、ちらほら中には紛れているもの。
 秘密兵器を秘密のままに終わらせられるように、頑張りましょう!
28

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


一騎塚・喜一
罪もない一般人を狙うなど卑劣極まりなく言語道断であることは間違いないのですが
敵とはいえ…体内に兵器を埋め込む事自体があってはならない事だと思うのです
目的のために手段を選ばなくなった成れの果て…あまりにも非道で悲しいじゃないですか
何としても、ここで止めなくてはいけませんね

先ずは観測舞部隊の様子をこっそり伺ってみます
カブトガニっぽい見た目に興味を惹かれますが…
なるほどキャタピラで移動しているのですね
確かに足跡を辿ることは容易そうです
全滅させた場合に備えて足跡をあまり消さないよう海に誘導します
【水面走行】で海上から近付きこちらに向かって前進してきたところを
その防御結界ごと打ち砕くつもりで【嶽崩】にて迎え撃ちます
敵に跳ね飛ばされた挙げ句囲まれないよう海上をダッシュで移動したり
可能であれば時には水中を泳いで移動するなどで致命傷は避けたいです

しかしキャタピラといった機械部分に妖力まで備えてるとは…
しかも見た目も格好良いカブトガニ
あまりにも欲張りすぎると思うんです
やはり天正大戦国の技術は侮れませんね


「ふむ、あれが……」
 波間に突き出た岩陰に身を隠し。
 砂浜を巡回する天魔兵の様子を窺って一騎塚・喜一(一騎刀閃・g04498)はそっと呟く。
 トループス級天魔武者『水陸両用機械化妖怪『甲海丸』』。
(「カブトガニっぽい見た目に興味を惹かれますが……それはそれとして」)
「なるほど、キャタピラで移動しているのですね。であれば確かに足跡を辿ることは容易そうです」
 視線を鋭くして遠目に動きを観察し、移動した後の砂浜に残す軌跡に喜一はくすりと笑みを零す。
 全滅させた上で足跡をたどって奇襲をかけるか。
 それとも、一部を逃がしてその後を追跡するか。
 指揮官である天魔武者を見つけ出す手段は、どちらでも問題は無いけれど、
「いずれにしても――まずは一当て、ですね」
 得物に手をかけ、抜き放ち。
 視線を鋭くすると岩陰から身を躍らせ、水面走行の力で以って喜一は海面を駆ける。
(「大量破壊兵器による自爆作戦、ですか……」)
 気付いた甲海丸達が迎撃態勢に入る姿を見据え――吐き出す息に混じるのは、僅かな悲しみ。
 それが、罪もない一般人を狙うような、卑劣極まりなく言語道断な策であることは間違いない。
 けれど……敵とは言え、体内に兵器を埋め込む事自体があってはならない事だと、そうも思わずにはいられない。
(「目的のために手段を選ばなくなった成れの果て……あまりにも非道で悲しいじゃないですか」)
 だからこそ、ここで止める。
 何としても、止めなくてはいけない。
「一騎塚・喜一、参ります!」
 甲海丸の放つ無数のミサイルを、左右に閃かせる『紫羅欄刀』の刃で切り落とし。
 その残骸が爆ぜるよりも早く、海面を蹴り抜き、さらに前へ。
「――ふっ!」
 次弾を放つ間を与えることなく、一息に敵の懐へと飛び込み。
 同時に放つ剣閃が、甲羅の隙間からその内側を切り裂いて。
 動きを止めた残骸を足場として海上へと飛び退きざまに、持ち替えた『梓月』に矢をつがえ。
「さて、こっちですよ」
 狙い定めて放つ矢が装甲を削り――続く二の矢を弾き返し、波を蹴立てる甲海丸が喜一へと迫るも。
 その突撃をかざした刀でそらし、波の動きに合わせて大きく飛び退き距離を取り。
「……よし、と。この場所なら足跡を消す心配も、囲まれる心配も無いですね」
 その動きのままに海面へと降り立つ喜一に、さらに追撃をかけんと甲海丸が駆ける。
『――』
 装甲の隙間から噴き出す妖力が巨体を包み込み。
 形成する防御結界自体を武器として、道を阻むもの全てを跳ね飛ばす甲海丸の『強行前進』。
 ――それを真正面から見据えて、喜一は刀を上段へと振りかぶる。
「鍛錬の成果をお見せしましょう」
 呼吸を整え、得物を握り。
 精神を集中し、闘気を全身に巡らせ。
 波に揺れる海面の動きすらも味方として、踵で地面を全力で踏み込んで。
「――嶽崩(ガクホウ)」
 腰から肩、腕へと伝わった全身の質量を闘気と共に切先へと束ね。
 放つ斬撃は、防御結界を――そして甲海丸の装甲をも切り砕き。
「……しかしキャタピラといった機械部分に妖力まで備えてるとは……」
 両断され、背後で海中に沈んでいく甲海丸の姿に、喜一は小さく苦笑を浮かべる。
 天魔武者であり、機械化兵であり、妖怪でもあり。
 しかも見た目も格好良いカブトガニである、水陸両用機械化妖怪『甲海丸』。
「あまりにも欲張りすぎると思うんです……やはり天正大戦国の技術は侮れませんね」

 そうして、一度息をつき。
 得物を握りなおす喜一が視線を巡らせれば、砂浜に残る天魔兵が逡巡するように左右に巨体を揺らがせる。
(「決めかねている、と言ったところでしょうか?」)
 ディアボロスを迎撃するには今の戦力では疑わしく。
 けれど、撤退を選択するにはまだ頭数がある。
 今の状況でも次に移れないわけではないけれど、確実を期すなら、
「もう一押し、ですかね」
超成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【水面走行】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!

ラウム・マルファス
何か新種の掃除機っぽいよネ、アレ。
キャタピラ式かァ。お店の掃除に使えないカナー。

何はともあれ、戦うヨ。

まずは砂浜の適当な岩陰に隠れ、巡回ルートにパラドクスで落とし穴を生成。薄い木の蓋の上に砂浜の砂を乗せておけば、バレずに引っかかってくれるハズ。なるべく1匹残して全滅させたいけど、まぁ数匹残っても良いヤ。
反撃はナノマシンを棒状にして砂浜に立て、電気を受け流すヨ。

上手く攻撃出来たら敢えて姿を見せるヨ。
「最終人類史にも、このディヴィジョンの住民にも、危害を加えさせたりしないサ。ここで倒れてもらうヨ」
1人相手で逃げるか逡巡してたし、ボクの位置は砂浜内だから、逃げる方向は誰もいナイ。これなら、攻撃が上手くいけば逃げてくれるハズ。

逃げる敵へ向けパラドクス発動、体内に遠隔爆破できる爆弾兼発信機を生成。スマホで受信して追っかけ、他の敵と合流したらドカンとトドメを刺すヨ。

味方と敵の両方の視線が痛い気がしないでもないけど、目的が果たせればオッケーサ。


「何か新種の掃除機っぽいよネ、アレ」
 手頃な岩陰に身を隠し、浜辺を行き交う天魔兵の動きを観察して。
 ふむ、とラウム・マルファス(研究者にして発明家・g00862)は頷き、小さく笑みを零す。
 砂浜にキャタピラの足跡を残して行き来する天魔の兵――トループス級天魔武者『水陸両用機械化妖怪『甲海丸』』。
「キャタピラ式かァ。お店の掃除に使えないカナー」
 天魔武者と機械化兵と妖怪と。
 幾つもの特徴を束ねた姿を見ていると、何とはなしに創作意欲が刺激されたりするけれど。
「何はともあれ、戦うヨ――Rewriter、起動」
 それはそれ、と苦笑を浮かべて甲海丸達が進む先へと視線を走らせ。
 その視線に載せて放つのは、ラウムがかける眼鏡『Rewriter』の宿した悪魔の魔力。
「構造解析、分解、再構築。これなら、バレずに引っかかってくれるハズ」
 魔力と策と仕掛けを巡らせ、ふっと息をつくラウムの視線の先。
 そこには一見、何の変化も起こることは無く。
 けれど――、
「トラップ生成、落とし穴。嫌がらせは得意サ。なんてネ」
 くすり、と笑うラウムの視線の先で、仕掛けの上へと甲海丸達が踏み込み。
 ――瞬間、崩れ落ちる砂浜が巨大な大顎と化して天魔兵を飲み込み、埋め尽くす。
 事象を書き換え物質を変換する『Rewriter』の魔力によって、任意の罠を作り出すパラドクス『悪魔の悪戯(アクマノイタズラ)』。
 それを用いて、砂浜の下――薄板一枚分の蓋を残し、甲海丸の進むその先に作り出したのは無数の大きな落とし穴。
 ――そして、
「おっと、危ないネ」
 落とし穴の範囲外から、あるいは埋もれ切っていない砂の中から。
 残った甲海丸が振り回す触手に乗せて放つ電撃を、棒状に変化させたナノマシンで受け止め――砂浜へと突き立て、受け流し。
 その守りの裏から戦場へと視線を走らせ、ラウムは魔力とドローンを展開する。
「ちょっと残ったかナ? 一匹だけ残せたら最善だったけど……まぁ数匹くらいなら残っても良いヤ」
 続けざまに形成するナノマシンの柵で電撃を打ち払い、柵を踏み越える相手の突進を飛び退きかわし。
 同時に、飛び退きざまに形成する落とし穴で、追撃をかけんと迫る相手を砂の中へと飲み込んで。
 さらに、と左右に飛ばせるドローンで放たれる爆弾を迎撃すると共に、魔力を宿した視線が爆炎の先の天魔兵を見据える。
 このまま全滅させることも十分可能ではあるけれど、その上で――、
(「さて、どうすル? 1人相手で逃げるか逡巡してたし、ボクが居るのは砂浜内の海側。逃げる方向は誰もいナイヨ?」)
 幾つかの狙いをこめてラウムの放つ魔術とドローンが、甲海丸の電撃と爆弾と交錯し。
 衝撃を散らし、爆炎を巻き起こし。
 そうして――、
『――』
(「よし、かかっタ」)
 反転し、戦場から走り去る天魔兵のその姿にラウムが笑みを深める。
 トループス級たる天魔兵が、この場から逃走して向かう先など一つしかない。
「それじゃ、ここは十分。終わらせてもらおウ」
 逃げる天魔兵へと魔力をこめた視線を走らせると共に、縦横に走らせるナノマシンの柵で残る天魔兵が放つ電撃を受け流し。
 直後、ラウムがパチンと指を鳴らせば、戦いの中で仕掛けていた特大の落とし穴が一斉に顎を開き、その全てを地の底へと飲み込んで。
「案内してもらうヨ。キミ達のボスの居場所までネ」
 そのまま地を蹴り、ラウムは逃げる天魔兵の後を追う。
 気付かれぬように距離を取って――けれど、振り切られることは無いように。
「まぁ、さっき打ち込んだ発信機の反応を追っかければ、見失うことは無いけどネ」
 小さく笑って手元のスマホへと視線を走らせて。
 ――そのまま、追跡することしばし。
(「……ン? この音色ハ」)
 ふと、風に乗って聞こえてきた琵琶の音にラウムは首を傾げ。
 それと時を同じくして、先を行く黒影が足を止める。
 その場所は、浜辺から僅かに離れた林の入り口。
 木々の合間から海の彼方を見通す展望台。
『霧が出た――と言うわけではないようだな。何があった』
 その入り口で天魔兵が何かの合図を奥へと送れば、木々の中から一つの影が姿を見せる。
 それは、紅の鎧に身を包む一体の天魔武者。
 一見すれば、手にした琵琶へと眼が引かれ――されど、腰に佩く太刀が、その身に纏う赤雷が、彼の者が風流を好むだけの歌人ではないと伝えてくる。
 立花の縁者たる将の名を纏うアヴァタール級天魔武者『筑紫広門』。
『これは戦傷。ということは――』
「――うン、そういう事。案内ご苦労様」
 広門が紡ぐ言葉を引き取ってラウムが指を鳴らせば、天魔兵の内部に作り出す爆弾がその巨体を爆ぜ飛ばし。
 続け、形成する落とし穴の中へと残骸を飲み込んで――埋め固めた地面の上へと物陰から降り立ち、ラウムは広門と対峙する。
「見つけたヨ。爆弾抱えた天魔武者」
『お前は……いや、うむ……』
 若干何かを言いたげに広門が視線を向けて来るも、ラウムはそれを正面から受け止め胸を張って笑みを返す。
 大事なのは目的を果たすこと。人々を守ること。
 それさえ果たせるなら、敵味方から飛んでくるちょっとの視線の痛みは許容範囲内。

「最終人類史にも、このディヴィジョンの住民にも、危害を加えさせたりしないサ。ここで倒れてもらうヨ」
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【トラップ生成】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!

新城・橙花 (トレインチケット)



神薙・焔 (トレインチケット)



「さて……思うことはありますが」
「うん、まずはこいつらを片付けてから、だね」
 指揮官たるアヴァタール級天魔武者『筑紫広門』。
 その将を守るように布陣する天魔の兵を見据え、軽く息をつく新城・橙花(呪刀の裁定者・g01637)は刀へと手をかけて。
 それに頷きを返すと、神薙・焔(ガトリングガンスリンガー・g01121)もまた手にしたスマートガトリングガンと思考をリンクさせる。
 断片の王の代替わりによる天正大戦国の情勢の変化。
 他所のディヴィジョンから得ている技術と、それを用いた作戦。
 知りたいことも語りたいことも無いわけではないし、それを脇に置いても倒すべき敵がそこにいる。
 そして――どれを選ぶにしても、まずは取り巻きの兵を倒してから。
「それじゃ――いざ!」
「――参ります」
 得物を握り、呼吸を整え。
 強く気を吐く焔が引き金を引き――撃ち出される銃弾と共に、地を蹴る橙花が天魔兵へと刃を閃かせる。
「『――っ!』」
 橙花の握る大剣型呪刀【譲葉】と、天魔の白刃と。
 無数の残像を残し、切り結ぶ二つの刃が宙へと火花を散らし。
 ぶつかり合い、弾き合い――弾かれる勢いと重心移動を利用して身を翻し、逆から切り込む橙花の刃が敵を切り伏せて。
 続け、崩れ落ちる兵の脇をすり抜け先へと駆ける橙花の脚を、左右から切り込む新手の刃が阻み、退けるも――、
「焔さん」
「大丈夫、任せて!」
 追撃をかけんと迫る兵の刃を、焔の放つガトリングガンの弾幕が牽制し。
 僅かにその動きが乱れた隙を突き、大きく踏み込む橙花が呪刀の力を開放する。
「我は喚ぶ、諏訪が地の大蛇の魂を……」
 言葉を紡ぎ、呼び覚ますのは神代に滅ぼされた八首の大蛇の魂の欠片。
 その霊力を振り抜き放つ剣風に乗せて、走る霊力の鏃が天魔兵へと降りかかり。
 受け止め、切り払い――しかし防ぎきれずに退く兵を見据え、焔の握る銃が炎を纏う。
「逃がさない!」
 焔の胸の奥――心霊炉と置き換えられた心臓から湧き出るオルゴンエネルギーが、焔と化し。
 全身を巡る焔を銃身へと束ね、銃弾を形成し。
 撃ち出す炎の弾幕は続けざまに兵士へと突き刺さり、撃ち貫いて。
「まだ、まだ、まだだよ!」
「ええ……蹂躙だよっ!」
 そのまま手を止めることなく、より激しく胸の焔を燃え上がらせ。
 広範囲へと放つ焔の弾幕が天魔兵の動きを牽制するのに合わせ、さらに速く、鋭く、橙花が駆ける。
「貴方を終わりの旅へと誘いましょう……」
 精神を集中し、感覚を極限まで研ぎ澄まし。
 音すらも消えた世界の中で敵を見据え、
 影をも置き去りとして放つ一閃は――受け太刀を、装甲を、守りの全てを断ち切り、存在そのものを両断し。
 一瞬の間をおいて、残骸となった兵士が音も無く崩れ落ちれば。
 その機を逃さぬとばかりに、焔が身に宿す力を最大まで解放する。
「このまま押し切るよ!」
 溢れる胸の焔に、戦いの中でガントレットに保持してきた焔。
 さらに加えて、モーラット・コミュ『ゴンザレス』の放つ電撃をも重ねて束ね。
 眩く輝く雷焔の光にゴーグル越しに目を細め、狙いを定め――、
「Feierabend(終わりにしましょ)!」
 撃ち放つ全力の砲撃が、未だ残る無数の兵士を爆炎の中に飲み込み、荒れ狂い。
「これで――いや!」
「うん、まだだよっ!」
 ――爆煙が晴れるより早く、その中へと焔が追撃の銃弾を叩き込めば。
 それを切り払い炎を突っ切る天魔の刃が、同時に切り込む橙花の刃と火花を散らす。

 半ば以上の天魔兵は倒した。
 だが、全滅させるまでには至ってはいない。
 ――故にこそ、
「まだ、やれますか?」
「うん、もちろん!」
 視線と笑みを交わし、小さく息をついて呼吸を整え。
 続け駆ける橙花の刃が、焔の銃弾が。
 残る天魔兵の刃と交錯する。
善戦🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【防衛ライン】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【ダブル】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!

一騎塚・喜一
大量破壊兵器を搭載された『筑紫広門』に届くまであと少しですね
私もまだ戦えます
最終人類史を守るため、何としてもここを突破しなくてはなりません

この天魔武者は剣術使いなのですね
同じ剣術使いとしては個人的に興味もありますが…
貴方がたの剣術には得体のしれない恐ろしさのようなものを感じます
殺戮のみを目的とした凶刃
敵を倒す手段である以上、私が父から学んだ剣術と同じ……なのかもしれませんが
到底受け入れられない、いえ、受け入れたくない!
貴方がたの剣術は殺戮こそが目的、血に飢えたその剣ごと両断するのみです

使うパラドクスは一閃【朋】
乱された心を落ち着かせてくれるのは頼もしい幻影の姿
共に参りましょう
私達の剣で人々の安寧に繋がる道を拓くべく!
敵の突撃には【防衛ライン】で勢いを殺せないか試してみます
効果が無くとも幻影と共に刀で急所を防御致します
味方の活躍のおかげで敵も減っていますし
【命中アップ】と【ダメージアップ】で僅かでも上がった攻撃力で押し切っていきましょう
私達の剣に賭けて、ここで負ける訳にはいかないのです


 正面から、左右から。
 嵐の如き激しさで襲い来る天魔の刃を、更なる激しさで一騎塚・喜一(一騎刀閃・g04498)の刃が打ち払い。
 弾ける衝撃と火花の中、止まることなく地を蹴る二つの刃が交錯する。
(「大量破壊兵器を搭載された『筑紫広門』に届くまであと少しですね」)
 浜に展開していた『甲海丸』を撃破し、護衛を務める『抜刀剣客隊』もまた半ば以上を撃破済み。
 指揮官であるアヴァタール級天魔武者『筑紫広門』へと刃を届かせるまで、もう一歩。
 ――けれど、
「通してもらいます!」
 残像を残し、瞬きの間に左右へと閃く刃が天魔の首を断ち。
 その間をすり抜け、鋭い呼気と共に踏み込み放つ一太刀が正面の天魔兵を両断するも――、
「――っ!」
 残骸と化したその胴を貫く刺突が、咄嗟に飛び退く喜一を掠めて走り抜け。
 続く斬撃を捌きながらも、喜一は小さく眉をひそめて息をつく。
(「この天魔武者は剣術使いなのですね。同じ剣術使いとしては個人的に興味もありますが……貴方がたの剣術には得体のしれない恐ろしさのようなものを感じます」)
 『抜刀剣客隊』の振るう、殺戮白兵戦術の名を冠した天魔の剣術。
 それは、己が身を省みず、仲間の残骸を踏み砕き、敵を斬殺する――ただ、殺戮のみを目的とした凶刃を振るう術理。
 その殺意以外の全てを削ぎ落した刃の輝きに、喜一の首筋に冷たいものが走る。
「敵を倒す手段である以上、私が父から学んだ剣術と同じ……なのかもしれませんが」
 敵を切るために剣を振るう事は決して天魔武者だけの在り方ではなく、喜一が振るう剣も――親より受け継いだ剣術にもまた、天魔の剣と通じるものはあるけれど。
「到底受け入れられない、いえ、受け入れたくない!」
 止まることなく襲い来る天魔の剣を見据え、喜一が合わせる太刀が、その切先を弾き上げ。
 相手に刃を引き戻す間を与えることなく、大きく踏み込む喜一は太刀『紫羅欄刀』を閃かせる。
「貴方がたの剣術は殺戮こそが目的、血に飢えたその剣ごと両断するのみです」
 空を裂き、走り抜ける刃が天魔兵を断ち切り。
 続け、翻る切先から放つ剣風が地面へと刀傷を刻み込み、距離を詰めようとする兵の前へと『防衛ライン』の残留効果を発動させるも。
 その効果は『突破を阻む』もの。逆説連鎖戦において、同じ戦場で振るわれる刃を退けることは叶わない。
 ――だが、
(「効果は無し――いえ、一瞬でも鈍らせれば十分です」)
 半歩、踏み込みの乱れた天魔の刃を潜り抜け、喜一は手にした太刀を握りしめ。
 ――その刃を振るうよりも早く、傍らに現れる武士の幻影が同じ構えから太刀を走らせ、天魔兵を両断する。
「『――』」
 それは、今は会うことの叶わない、大切なあの人によく似た頼もしい幻影の武士。
 その佇まいが、太刀筋が、天魔の凶刃に乱された喜一の心を落ち着かせ。
「……ええ。いざ、参ります!」
 そっと、胸に溜まっていた凝りを息に乗せて吐き出して。
 刀を握り直し、敵を見据え――幻影へ笑みを送ると、喜一は地を蹴り戦場を駆ける。
「共に参りましょう、私達の剣で人々の安寧に繋がる道を拓くべく!」
 並び駆ける幻影の刃と共に、喜一の太刀が天魔兵の中を縦横に走り抜け。
 刃を交え、捌き、弾き、受け流し――そして、押し切り、両断し。
『――!』
「私達の剣に賭けて、ここで負ける訳にはいかないのです!」
 真正面から切り込む天魔の太刀――純粋な殺意だけをこめたその一太刀を。
 幾つもの思いと信念をこめて、幻影と共に振るう喜一の刃が兵もろともに十字に切り裂き。
 そうして――、

『良き師、良き技だな。確と見せてもらったぞ、ディアボロスよ』
 最後の天魔兵を切り伏せ、消えゆく幻影を見送る喜一の背に琵琶の音が響く。
 それを紡ぐのは、この地における指揮官であり、その身に大量破壊兵器を宿すアヴァタール級天魔武者『筑紫広門』。
『状況が許すならば、しばし語らってみるのも一興ではあろうが――』
 弦を爪弾き、曲を奏で――しかし、その姿に切り込むべき隙は一片たりとも見せることなく。
 短い曲の終わりを告げるように、一度強く弾くバチが紅雷を奔らせれば。
 その光が消えるよりも早く、広門は腰に履いた大太刀を抜き放つ
『今は、こちらで語るべきだろうな』
「――っ!」
 雷光を纏う大太刀の切先より、吹き付ける殺気と闘志。
 天魔兵とは比べ物にならない程に鋭く強いその気迫に、喜一は僅かに息を呑み。
 ――しかし、
「ええ……そうでしょうね」
 一度、二度と息をついて呼吸を整え。
 刀を握りなおすと喜一は正面から相手を見据える。
 新宿島への攻撃を防ぐために、倒すべき敵はただ一体を残すのみ。
 無論、決して容易な相手ではなく、連戦の疲労も確かにあれど――同時に、仲間達と共に積み重ねてきた力もまた、ここにある。
 だから、まだ戦える
『では、始めるとしようか、ディアボロス』
「ええ、始めましょう。筑紫広門」

「『いざ――勝負!』」
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【一刀両断】LV1が発生!
効果2【フィニッシュ】LV1が発生!

エルフリーデ・ツファール (トレインチケット)



シャナオウ・ナラシャ (トレインチケット)



柳谷・凪 (トレインチケット)



 相模国の国境近く。
 浜辺を見下ろす高台で、ディアボロスと天魔武者はぶつかり合う。。
「「『――っ!』」」
 皇之覇気を纏うシャナオウ・ナラシャ(『-紗那皇-』・g02191)の拳が。
 舞うが如き動きから閃く柳谷・凪(お気楽極楽あーぱー娘・g00667)の脚が。
 そして、紅雷を宿して空を裂くアヴァタール級天魔武者『筑紫広門』の大太刀が。
 交錯する拳撃と蹴撃と斬撃が、幾つもの火花を散らし――打ち勝つのは雷光を纏う天魔の太刀。
「手緩いぞ、ディアボロス!」
 拳を、脚を、縦横に閃く刃が弾き返し。
 続け、大きく横薙ぎに放つ斬撃が、防御の上から二人の体を退かせるも。
「いや、そいつはどうかな」
 手にした煙草を宙へと躍らせ、エルフリーデ・ツファール(紫煙の魔術師・g00713)が紫煙の魔法陣を描き出し。
 そこより放つ焔の刃が、天魔の放つ追撃の剣風を焼き払えば、
「この程度で、我らを見切ったなど――」
「――そう思うのは、まだ早いよ!」
 渦巻く炎と風の残滓を突き抜ける広門の刃を、シャナオウが展開集束させる装甲版『デュナミス・デーヴァ』が盾となって受け止め。
 ――その守りを力尽くで押し切られるよりも早く、シャナオウの背を飛び越える凪の闘気を纏う飛び蹴りが広門を捉え、退かせ。
「我が手の炎よ、集い来たりて敵を焼き貫け――」
 飛び退き衝撃を殺す広門へと、エルフリーデが矢継ぎ早に放つ炎のナイフが牽制をかける中を。
 呼吸を整えより強く覇気を纏うシャナオウが、着地と同時に地を蹴る凪が。
 己が五体を武器として、天魔の武者とぶつかり合う。
『成程。勝負はここから、か』
「そう言うことだ!」
 縦横に閃く天魔の斬撃が炎を切り裂き――だが、その刃を見据えてシャナオウは怯むことなく前へと踏み込む。
 短い交錯でも相手の力は十分すぎる程にわかっている。
 ――それでも、
(「例え地獄の最果てだろうと挫けてはならない、諦めたり自分に負けてはならない」)
 覇気と闘気を集束させた拳が、雷光を収束させた刃が。
 交錯する拳と刃が、火花を散らして互いの胴に傷を刻み付け。
 僅かに、シャナオウの身が揺らぎ――しかし、気を吐き踏みとどまり。
「っ、だが、まだだ!」
 振り返りざまに放つ『氷結輪』『劔千本』の二つの刃が、追撃と踏み込む広門の肩へと突き立ち。
 続く『炎卍』の飛刃は寸前で飛び退く広門にかわされるも、作り出された隙間へとエルフリーデが手にした杖を突き付け魔力を展開する。
「【炎の閃光】Feuerblitz(フィーアブリッツ)」
 使い込まれた樫の杖を宙へと巡らせ、生み出す18の炎をナイフの形へと変化させ。
 撃ち放つその炎の刃は、寸前で引き戻す広門の刃に切り払われるも――、
『くっ、だが!』
「ああ、まだだとも――隙は作ったぞ」
「うん!」
 その炎に並走するように回り込む凪が、広門の側面から一息に距離を詰める。
「『――っ!』」
 飛び込む凪へと殺到する刃の嵐を、その中へと舞わせる飛天扇【天鈿女命】と身のこなしで受け流し。
 緩急をつけた動きから放つ回し蹴りは、しかし広門の呼び出す門柱に阻まれ、返す刃が凪の首を狙って閃くも――、
「今っ!」
 横薙ぎの刃を身を沈めてかわしざまに、足元へと放つ蹴撃が広門の脛を払い。
 続け、身を起こす動きと合わせた足刀が胸甲を捉えて退かせ――飛び退く広門の動きが、一瞬、何かに縛られたように乱れる。
「斬鋼糸【阿羅倶禰】。捕まえたよ」
 それを成したのは、打ち合いの中で凪が絡みつかせた鋼糸。
 神珍鉄を極限まで細く長く糸状に鍛えたとされる、鋼をも斬り裂く暗器であり――、
「鋼糸か――ああ、いいね。そいつでいこうか」
 その機を逃すことなく、エルフリーデが宙へと両の手を躍らせる。
「赫く灼き焦がす一条の糸、天を覆いて空を断裂せよ――」
 右の手だけでシガレットケースより取り出す【黒】の触媒煙草へと火を灯し。
 引き出される爆発的な魔力の反動に僅かに視線を鋭くしながらも、閃かせる左の手の先から赫の糸が空を渡り広門へと絡みつく。
 それは、斬糸の切断性に熱を加えることで苦手としていた金属切断を容易とする、ここにはいない友との合わせ技となるパラドクス。
「赫灼縷天(カクシャクルテン)」
 預かった斬糸を媒介として、顕現する赫灼の刃が広門を切り裂き、絡め捕り。
 動きを封じられた広門を見据え、シャナオウは纏う覇気の力を開放する。
「逃れられると思うな」
 その力の根源にあるのは、己が魂に宿す強い衝撃。
 刻逆でスベテヲ失った、怒り、悲しみ……そして、それでも太陽王として国を取り戻そうとする意志。
(「一寸は先は闇。だがその先には必ず……一条の光が埋もれている。光と闇は表裏一体。どちらも必要なモノだからな」)
 正と負と、二つの想い全てをエネルギーと変えて、両の掌の中へと集束させて――、
「其処が戦場だとしても太陽は常に平等に降り注ぐ。太陽王の裁きを受けよ」
 眩く輝く光の奔流が、斬糸を振り払う広門へと突き刺さり。
 受け止めようとする太刀を、そして広門自身の体を弾き飛ばし――なおも踏みとどまる相手を見据え、地を蹴る凪が全身へと闘気を爆発させて天高くへと飛翔する。
「必殺の一撃、いくよ!」
 呼吸に乗せて全身へと気を巡らせ。
 空中で身を翻し、羽衣『煌天翔空舞踏装束【蒼天輝風羽衣】』を宙へと舞い踊らせて。
 誘い集めた輝く風と共に、一陣の風となって凪は空を翔け――その勢いのままに、放つのは疾風の踵落とし。
「天翔閃光脚(テンショウセンコウキャク)!」
『――っ!』
 凪の渾身をこめた蹴撃と紅雷の刃が交錯し。
 地面へと降り立つ凪の肩口から血が奔るも――しかし、即座に身を翻し、
 広門を――胸甲に深々とヒビを走らせる広門を見据え、凪は笑みを浮かべる。
「うん、届いたよ」
 相手の力量は、自分達よりも数段上。
 一対一で戦うならば、万に一つの勝ち目も無いだろう。
 けれど――全力と連携を重ねれば、決して届かない敵ではない。
 ならば、全てを尽くして挑むのみ。

「それじゃ、続けようか。次はもっと深く撃ち抜くよ」
善戦🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【友達催眠】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
【落下耐性】LV1が発生!
効果2【フィニッシュ】がLV2になった!
【命中アップ】がLV2になった!
【能力値アップ】LV1が発生!

黄下・泉
アドリブ・連携歓迎

ああ、出遅れたな。加勢させてもらうよ。
……一対一じゃ明らかにそっちのが強いんだ、卑怯とは言わないよな?
ただ、互いに気合充実してた所に水を差したのはさすがに悪かった。
詫びさせてもらうよ。

まあ、水を差しついでに、というのはアレなんだけど、一つだけ聞いていいか?
その体内の兵器。大天使やアークデーモン連中の技術だよな。
アイツらの技術を使うのは分からなくはない。
でもなんで、アイツらじゃなくて、この天正大戦国の支配勢力の天魔武者が自爆するんだ?
そこがなんか、あたしとしては納得いかない。
機械の体ってだけならアイツらの中にもいたはずだしさ。
……いやまあ、それこそが誉れだ、外様の奴らになんぞ譲れるものか、っていうならもう言うことはないんだけど。
それならそういうものとして理解……は出来ないけど納得することにする。

そうか。
……うん。改めて、水を差して悪かった。
ここからは邪魔者なしの殺し合いだ。行くぞ!


「『――!』」
 炎に魔弾、雷光と斬撃。
 幾つもの技が交錯する中、爆ぜる火花を越えて切り込むディアボロスの連撃が広門を退かせるも。
『まだだ、これしき!』
 踏みとどまる広門の叫びが雷鳴を招き、大太刀へと紅雷を纏わせ。
 振り抜く切先から放つ雷刃がディアボロス達を退ける。
 ――だが、
「乗風則散――散らし、消す。拡散術式<出有入無>」
 そのまま先へと走る雷撃の波を、横合いから風に乗せて走る『変性』の力が『風に作り替え』て消し去り。
 続け、吹き抜ける微風が、僅かに残った雷の残滓を風へと散らしてゆき――、
『ほう、新手か』
「ああ、出遅れたな。加勢させてもらうよ」
 その風の中、黄下・泉(リターナーの符術士・g08097)は広門と対峙する。
「追加の援軍になるが……一対一じゃ明らかにそっちのが強いんだ、卑怯とは言わないよな?」
『無論。遠慮など要らん。伏兵でも策でも、いくらでも巡らせるといい』
 互いに得物を構え、相手から視線を逸らすことなく。
 泉が告げる言葉に、広門は躊躇うことなく頷きを返す。
 もとより相容れることの無い敵同士。
 相手を倒すために兵法術理の全てを用いるのは当たり前の間柄ではあるけれど、
「ただ、互いに気合充実してた所に水を差したのはさすがに悪かった。詫びさせてもらうよ」
『ふむ……であれば、その詫びは受け取らせてもらうとしよう』
 そっと、小さく頭を下げて泉が詫びをいれれば、広門は軽く笑ってそれを受け入れて、
「まあ、水を差しついでに、というのはアレなんだけど、一つだけ聞いていいか?」
『む?』
 僅かに緩んだ空気に息をつきつつ、泉はふと浮かんだ疑問を問うてみる。
「その体内の兵器。大天使やアークデーモン連中の技術だよな」
 相手の体に搭載されている小型の大量破壊兵器。
 その技術は、TOKYOエゼキエル戦争由来のものだというけれど――、
「アイツらの技術を使うのは分からなくはない……でもなんで、アイツらじゃなくて、この天正大戦国の支配勢力の天魔武者が自爆するんだ?」
 他のディヴィジョンの技術である以上、それに適しているのはそのディヴィジョンの住人である天使や悪魔のはず。
 それをなぜ、天魔武者に搭載する必要があるのか。そしてなぜ、自爆前提の使い捨てとしなければならないのか。
「そこがなんか、あたしとしては納得いかない。機械の体ってだけならアイツらの中にもいたはずだしさ」
『ふむ……』
 その問いかけに、広門は暫し考えを巡らせるように呟き、
『悪いが、アヴァタール級に過ぎん俺では、それに正しく答えることはできんな』
「……ああ、確かにね」
 そして、苦笑と共に首を振る相手に、泉もまた苦笑を返す。
 この場の指揮官ではあっても、広門は作戦全体の指揮を執っているわけではなく。
 理由まで含めた計画の全容を知ろうとするならば、問うべき相手は相模国の国主たる『北条氏政』か、あるいはそれ以上の立場にある者か……。
 いずれにしても、この場で天魔武者の組織としての答えを知ることは叶わないだろう。
 けれど、
「……なら、アンタ個人としてはどうなんだ?」
 さらにもう一歩踏み込み、泉は問いかける。
 説得の為ではなく、非難の為でもなく、相手の思いを知りたいと。
 敗残の兵ではなく自身の体に兵器を組み込まれ、自爆前提の作戦に向かうこと。
 そこには、きっと何かの思いがあるはずだから。
「……いやまあ、それこそが誉れだ、外様の奴らになんぞ譲れるものか、っていうならもう言うことはないんだけど……それならそういうものとして理解……は出来ないけど納得することにする」
『そう、だな……無論、誉とする思いはある。だが――俺として語るならば、むしろエゼキエルの奴らを使う方が納得しかねるな』
「それは……どういうことだ?」
 けげんな表情を浮かべる泉に、広門は自身の胸を――その奥の兵器を指差して見せる。
『知っているのだろう? これがどんなものなのかは』
「そりゃ、まあね」
 TOKYOエゼキエル戦争の技術を取り込んで作り上げ――しかし、クロノオブジェクトとしての完成には至ることはなく。
 逆説連鎖戦においては無力どころか、多数の相手を巻き込み反撃で袋叩きとなるだけの自爆武器。
 他のディヴィジョンに被害を出すことにしか使い道の無い、欠陥品と言わざるを得ない代物であり。
『天使や悪魔を使えば、あるいはより容易く完成に至れたかもしれん。だがそれでは、『我ら』が技術を得たとは言えまい?』
 エゼキエル戦争の技術をエゼキエル戦争の者で扱うならば、それは他所の技術をただそのまま流用しているだけでしかなく。
 効率が落ちるとしても、天魔武者で再現できて初めて天正大戦国が技術を得たと言える。
『故に、俺はこの作戦を良しとする。易きに流れて研鑽を軽視するならば、それこそ先は無いだろうからな』
「なるほどね」
『……とは言え、これは俺の考えで、上は上で別の考えを持っているだろうがな』
「そうだろうね。けど……ああ、アンタの考えを聞けてすっきりしたよ」
『そうか。なら、いい』
 そうして、泉は、広門は。
 笑みを交わし、武器を構えて対峙する。
 互いに相容れぬ、倒すべき相手。
 それでも、言葉を交わして考えを知ることはできた。
 だから――、
「……うん。改めて、水を差して悪かった」
『気にするな。いや――そう思うなら、全力で楽しませて見せろ』
 ディアボロスと天魔武者として――否。
 黄下・泉と筑紫広門として、

「ここからは邪魔者なしの殺し合いだ。行くぞ!」
超成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV3になった!

一騎塚・喜一
精鋭ディアボロス3人の連携を受けても、なお立っていられますか
やはり強敵ですね、筑紫広門

天魔武者、クロノヴェーダは不倶戴天の敵なのですから
こんな事を考えること自体が間違いなのかもしれません
それでもやはり何を考えているのか、その思いを直接聞くことができて「良かった」と思います
そしてエゼキエルの技術によりその体に埋め込まれた破壊兵器は使われること無く終わるべきです
いえ、終わらせましょう

雷切・写の特性を考えれば手を抜いて、技を鈍らせ
私が切り結んでいる間に味方に攻撃して頂くのが良い方法なのかもしれません
でも、ここはやはり全力でお相手致します
それがお望みなのでしょう?
雷より疾く、力強く!
既に齎されている【命中率アップ】【ダメージアップ】に【先行率アップ】も重ね
こちらが電撃と斬撃で大ダメージを負う前により多くのダメージを与えられれば僥倖
出し惜しみは致しません
ゆえに防御はこの際相手の斬撃は刀で受けて滑らせて流す程度に留め、蹴りなど体術も交えながら戦います
剣術も体術も、持てる全てを出し切って挑みます


黄下・泉
アドリブ、連携は歓迎

思ったより話せる奴だったのは少し意外だったな。
……それとも、あいつ自身も少しは語りたかったのか。
まあ、言葉は十分交わした。これ以上口を開くのは野暮って奴かな。

全身に強化の術を走らせ、四肢に術式を宿して接近戦。
剣術相手に格闘ってのは多少無茶かもしれないけど、一番の得手でね。
電撃は確かに恐ろしいけど、『分解』と『変性』で対応できなくはない。
撒き散らさずに刃に宿らせてくるなら、脅威は一つに絞られる。
威力はヤバいだろうけど、警戒・対処って意味じゃむしろシンプルでいい。

足を使って撹乱しつつ、腕は基本防御と牽制に。
機を見計らい、多少の傷は覚悟で一気に内懐に飛び込む。
刃を逸らし、弾いて。接近してからなら手元を止めて、の方が良いのは当然だけど。
――最悪、腕の一本は覚悟の内だ。これでも一回は死んだ身でね。
内懐に潜り込んだら、その勢いのままキツい一撃をお見舞いしてやる。
倒しきれなかったら至近距離で貼り付いて戦う。

悪いけど、完成させる訳にはいかないから。
この兵器も『分解』させてもらうよ。


『轟け、雷鳴。我に応えよ!』
「乗風則散――散らし、消す」
 天を揺るがす咆哮と共に、『筑紫広門』の手にする大太刀が紅雷を纏い。
 同時に、黄下・泉(リターナーの符術士・g08097)のかざす掌へと『変性』の力を宿す風が渦を巻き。
(「思ったより話せる奴だったのは少し意外だったな……それとも、あいつ自身も少しは語りたかったのか」)
 意識を逸らすことなく、巡らせる術を乱すことなく。
 相手を見つめ、泉は胸中で小さく息をつく。
 意味のあることも、他愛のないことも。
 互いの関係が相容れぬものだとしても、語ろうと思えば語る言葉は幾つもある。
 それは、相手にとっても同じことなのかもしれないけれど。
(「まあ、言葉は十分交わした。これ以上口を開くのは野暮って奴かな」)
『……ふっ』
 この思いもまた、きっと同じこと。
 ――故に、
「いくよ、筑紫広門」
『ああ――いくぞ、ディアボロス!』
 笑みを交わし、闘志と気迫をぶつけ合い。
 放つ風術と雷撃が互いを喰らい相殺し――その余波を裂いて、駆ける一騎塚・喜一(一騎刀閃・g04498)が刀を握る。
(「天魔武者、クロノヴェーダは不倶戴天の敵なのですから、こんな事を考えること自体が間違いなのかもしれません。それでも――」)
 鋭く息を吐き、精神を集中して地を蹴り。
 隆起する無数の門柱の隙間を縫うように、足を止めることなく走り抜け――、
(「それでもやはり何を考えているのか、その思いを直接聞くことができて『良かった』と思います」)
 身を沈め、駆ける先へと放たれる刃を潜り抜けざまに、振り抜く一閃が左右の柱を切り飛ばし。
 残骸を飛び越え、切り込む刃がその先に立つ広門の刃と交錯する。
「『――っ!』」
 裂帛の気合を宿す斬撃と、紅雷を纏う斬撃と。
 力と思いをこめた二つの刃がぶつかり合い、弾き合い。
 続け、その側面より飛び込む泉の拳は、引き戻す大太刀に受け流され――しかし、
「このくらい!」
「――おおっ!」
 切り上げる刃に合わせて跳躍し、周囲の柱を足場として放つ泉の蹴撃が広門の身を揺らがせ。
 それに重ね、再度切り込む喜一の斬撃が、相手の刃を弾き退かせて、
『はっ、やるものだ』
「再編術式〈有為転変〉。剣術相手に格闘ってのは多少無茶かもしれないけど、一番の得手でね。あたしの全力で挑ませてもらうよ」
「そしてエゼキエルの技術によりその体に埋め込まれた破壊兵器は使われること無く終わるべきです――いえ、終わらせましょう」
 なおも止まることなく、気を緩ませることなく。
 全身に強化の術を走らせ、符を介して四肢に術式を宿し。着地と同時に地を蹴る泉が。
 太刀を構え、精神を集中し。相手を見据えて地を蹴る喜一が。
 速く、強く、戦場を駆ける。
「「『――!』」」
 拳打と蹴撃と、斬撃と刺突と雷光と。
 交錯するディアボロスの連携と天魔の雷刃が、無数の火花を散らし――、
「――っ!」
 縦横に閃く斬撃と雷撃を、符を張り重ねた両腕で受け流し。
 あるいは、残像を残す動きで攪乱して潜り抜け。
 吹き付ける天魔の気迫の中を、退くことなく泉は前へと踏み込む。
(「相手の動きをよく見ろ。電撃は確かに恐ろしいけど、『分解』と『変性』で対応できなくはない」)
 紅雷を纏う広門の斬撃は、その全てが致命の威力。
 けれど――泉にとっての勝機は、この至近の距離にこそ。
(「撒き散らさずに刃に宿らせてくるなら、脅威は一つに絞られる。威力はヤバいだろうけど――」)
「――警戒・対処って意味じゃむしろシンプルでいい!」
 切り下す雷刃へと手刀を合わせ、爆ぜる雷撃を腕に宿した『術式』で風へと散らし。
 掠める刃に、幾本かの髪を宙に舞わせ――同時に、その下を潜り抜けざまに放つ渾身の蹴撃が、広門を捉えてその身を退かせ。
「『――おおっ!』」
 一歩、退かせた距離を詰め、喜一が放つ渾身の一太刀が広門の肩甲を切り飛ばし。
 ――しかし、その間に体勢を立て直す広門の雷刃が、なおも切り込む喜一の刃を受け止め弾き返す。
(「これでもなお立っていられますか……やはり強敵ですね、筑紫広門」)
 刃を振るう手を、駆ける脚を止めることなく、喜一は胸中で感嘆の息をつく。
 精鋭のディアボロス達と刃を交え、さらに今、喜一と泉を相手取り。
 相手の消耗は決して軽いものではないはず――だが、その上でなお、紅雷の刃は二人がかりの連携を押し返すほどに鋭く、激しい。
(「これこそが『雷切・写』の真価と言うことなのでしょうか……」)
 自身の大太刀に電撃を宿らせ斬撃を放つ、広門の操る剣技『雷切・写』。
 その刃は、相手の剣術が優れていればいるほど、相手の技量に応じてより鋭く冴えわたるという。
 その特性から考えるならば――あるいは、あえて手を抜き、鈍らせた技を写させることで、仲間が切り込む隙を作るのも一つの攻略手段だろうけれど、
「――でも、ここはやはり全力でお相手致します」
(「貴方も、それがお望みなのでしょう?」)
 小さく苦笑し、喜一は刀を握り締める。
 奇策搦め手もまた兵法。決して恥じるものではないけれど。
 ――この相手は正面から乗り越えたいと、そう思ったから。
「お、ぉぉおおお――っ!!」
 気を吐き、相手を見据え、地を蹴り抜き。
 真正面から切り込む刃は大太刀に受けられるも――即座に身を翻し、反撃と突き込む切先に首筋を掠めさせながらも、喜一が返す刃が広門の装甲を浅く掠め。
 続く広門の切り下しを、一歩深く踏み込み刀で受け止め――同時に、放つ蹴撃が広門の足を払い。
 僅かに体勢を崩しながらも広門の振るう刃が、切り込む喜一の刃とぶつかり合い、火花を散らす。
 力においても技においても、相手は数段格上。
 全霊をこめて切り込む程に、鏡写しに激しさを増す刃が喜一へと襲い来る。
 ――けれど、
「こちらが電撃と斬撃で大ダメージを負う前により多くのダメージを与えられれば僥倖。出し惜しみは致しません――剣術も体術も、持てる全てを出し切って挑ませてもらいます!」
 弾ける火花に頬を焼かれながらも、止まることなく切り込む刃が、肘が、脚が、互いの身に幾つもの傷を刻み込み。
 ――なおも止まることなく、さらに速く、さらに鋭く。
「雷より疾く、力強く!」
 翻り襲い来る紅雷の刃を、刀で受け、滑らせ流す最小限の防御で凌ぎ。
 続け、踏み込み放つ一閃は、雷速で走る相手の刃よりもなお速く、広門の左の腕を捉えて切り飛ばす。
「その腕、貰いました!」
『っ、だが、まだだ!』
 腕を失い、しかし即座に飛び退き距離を取り。
 広門が続けざまに放つ雷撃と門柱が、追撃をかける喜一を阻むも。
「悪いが、立て直す時間はやらないよ」
 続け飛び込む泉の手刀が、雷撃を、門柱を、『分解』して風へと散らし。
 残骸を切り裂く刃を、飛び越えざまに放つ回し蹴りが広門を捉え――同時に、広門の放つ雷撃が泉の体を防御の上から弾き返し。
「っと、けどね」
「ええ、まだです!」
 続け、泉へと追撃をかけんと迫る雷撃を、入れ替わりに切り込む喜一が切り払い。
 その余波を切り裂く喜一の刃をかわす広門の飛び退く先へと、体勢を立て直す泉が再度駆ける。
(「刃を逸らし、弾いて。接近してからなら手元を止めて、の方が良いのは当然だけどね」)
 相手は深手を負っている。けれど、自分達もまた限界は近い。
 故にこそ――、
「見えたよ、そこだ」
 隻腕となった広門の構える紅雷の刃。
 その切先を見据え、より強く、より速く、地を蹴り抜き。
 踏み込む先は、最小限の回避の――さらに一歩内側。
「『――っ!』」
 紅雷を宿す斬撃が閃き、切り飛ばされた泉の左腕が宙を舞い。
 同時に――突き込む右腕は広門の紅の胸甲を貫いて。
『なっ!?』
「っ――腕の一本は覚悟の内だ。これでも一回は死んだ身でね」
 例え致命傷を受けようとも、戦う意思を失わない限りディアボロスが死を迎えることは無い。
 無論、その痛みが消えるわけではないけれど、
「悪いけど、完成させる訳にはいかないから。この兵器も『分解』させてもらうよ」
 驚愕の声をあげる広門に、痛みを堪えて笑みを見せながらも泉は腕に宿した術を開放する。
 再編術式〈有為転変〉。
 泉の修めた符術の中でも基礎となる術式の一つであり、その性質は『分解』と『変性』の二つ。
 基本的には四肢に術を宿し格闘戦の武器として用いているけれど、
「ホントは何にだって創り変えられる術なんだ。符が一番イメージしやすいってだけ」
 展開する術が、相手の鎧と、その内側の機構と――さらにその奥に組み込まれた『爆弾』へと干渉し、『分解』し。
 風へと『変性』させた広門の胴から腕を引き抜き、続く蹴撃で相手を退かせ。
 同時に、自身もまた蹴りの反動で飛び退く泉と入れ替わりに、地を蹴り駆ける喜一が太刀を握る。
 後一歩。後一太刀。
 故にこそ、全霊をこめて。
「一閃【燕】。全力でお相手致します。いざ!」
『ああ――いざ!』
 両手で握る太刀を大上段へと構え、呼吸を整え、気を巡らせ。
 そして――よろめきながらも踏みとどまる広門もまた、右腕のみで大太刀を鏡写しに構えて紅雷を宿らせる。
(「同じ術理の真っ向勝負――ええ、望むところ」)
 思うことはあれど、今は、ただ。
「『勝負!』」
 裂帛の気合と共に、飛燕の速度で閃く斬撃が。
 紅雷を従え、雷速で閃く斬撃が。
 空を裂く二つの斬撃が交錯し。
 喜一の肩から血が奔り。
 その背後で――刀を振り抜く体勢のまま、広門の体が音も無く崩れ落ちる。

「筑紫広門……乗り越えさせてもらいました」
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【一刀両断】がLV2になった!
【活性治癒】がLV2になった!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
【ドレイン】がLV2になった!

最終結果:成功

完成日2024年09月02日