サイパン島決戦、特別攻撃を阻止せよ

 マリアナ諸島を制圧し、グアムを目指すディアボロスでしたが、サイパン海域において、ディアボロスを狙った『特別攻撃』が行われる事が予知されました。

 自爆特攻に特化した力を付与された冥海機による、海域に侵入したディアボロスへの特別攻撃は、戦闘に勝利したとしても、ディアボロスに多大な打撃を与え、重傷・死亡のリスクがあるようです。
 この力を付与しているジェネラル級冥海機『ヒューストン』は、音楽の力によって、配下の冥海機を強化する力を持っている事がわかっています。
 少人数による隠密作戦で、冥海機の自爆特攻を避けつつ、元凶であるヒューストンを撃破する作戦を実行してください。

ヒューストン

濛々たる楽想は群島に響きて(作者 月見月
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#冥海機ヤ・ウマト  #サイパン島決戦、特別攻撃を阻止せよ  #サイパン  #ヒューストン 


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●勇ましくも虚しき旋律
 サイパン島。史実においては旧軍が壮絶な最期を遂げた場所として、その名を知る者も多いだろう。そしてどうやら、その運命は改竄された歴史においても変わらなかったらしい。島の奥深くには不自然なほど厳重に壁で覆われている建物が見える。よほど重要な軍事施設なのか? その推測は半分正しい。重要なのは外からの襲撃ではなく、内部の『音』を外へ漏らさぬ事にあった。
「……ディアボロスは恐ろしい程の勢いで我ら冥海機の、ヤ・ウマトの海を侵略しつつある。数々の拠点が陥落し、ジェネラル級の同胞すら何人も海底を彩る鉄屑と化した。そんな敵に対し、我らは寡兵を以って迎撃しなければならない」
 建物内部は劇場やコンサートホールを思わせる形状をしている。その中心たる舞台上では純白の軍装に身を包んだジェネラル級冥海機、巡洋艦『ヒューストン』が周囲を取り巻くトループス級たちへと語りかけている。
 彼女の右腕を形容するならば、喇叭と言う言葉が相応しいか。一体化した鈍く輝く金管からは勇ましい軍楽が複雑な音色を奏でており、朗々たる演説も相まってそれを耳にするトループス級たちは一種のトランス状態に陥っているらしかった。
「それを成し遂げる為には、我らも出血を避ける事は不可能。己が命を捨て、滄海に散華する覚悟を持った真の冥海機が必要なのだ。諸君らはその先駆けとなり、後に続く同胞らの範となって貰う!」
 上命下服は軍隊の常。下は上に命令に従わざるをえないものだが、この度はその度合いが違った。トループス級の目は焦点を失い、ふらふらと躯体が左右に揺れ動く。口からは復唱するかの如く、自らの身命を賭して復讐者と刺し違える旨の呟きが垂れ流されている。
「グアムへの派兵、そしてマリアナ諸島へ潜ませた死守部隊により、既に我が方の戦力は払底していると言って良いだろう。だがこの時を凌げば、必ずや巻き返しの瞬間が来る! その為にいま、全てを賭して我々は挑まねばならないのだ!」
 玉の如く砕け散る、つまりは玉砕。彼女らに求められるのは正にその一字のみだ。命を投げ打つ、究極の献身。いくつかの点に目を瞑れば、それは美談とすら呼べるのだろう。
 尤も……それが戦略的な意味を既に喪失していなければ、だが。
 サイパン島の冥海機たちは知らない。フィリピンの劣勢はもはや覆しようがない状態であり、大反抗作戦の発動など既に不可能だという事を。その死に、意味が付与される日が決して来ないという事実を。
 勇壮なる調べはただ、空虚な旋律を孕みながら、悲哀を奏で続けるのであった。


「Gutentag、Kamerad! みんながマリアナ諸島を攻略したことで、冥海機の拠点である『サイパン島』の攻略が可能になったわ。此処を攻略すれば大反攻作戦の重要拠点『グアム』への直接攻撃が可能になるでしょうね」
 アーデルハイト・ベールケ(サイボーグの航空突撃兵・g03315)は新宿駅グランドターミナルへ集った仲間たちを出迎えながら、そう口火を切った。先日に完了したマリアナ諸島制圧作戦の成功を受け、『サイパン島』に対する攻略作戦が発動されようとしていた。
 既にフィリピンでの優勢により、肝心の大反攻作戦の発動自体は阻止できている。そういった意味では、当初よりも戦略的な攻略意義は薄れてしまったかもしれない。だがグアムは冥海機勢力の大本営と目される『ハワイ』を目指す上でも非常の重要な足掛かりとなるだろう。故にこそ、その前段階としてこの『サイパン島』は確実に落としておきたかった。
「サイパン島の海軍基地戦力は数だけを見れば貧弱よ。グアムへの増援やマリアナ諸島に死守部隊を置いたことで枯渇状態みたい。ただ、サイパン島の指揮官であるジェネラル級冥海機『ヒューストン』は捨て身の一計を案じた様なの」
 その恐るべき内容とは『自爆特攻』。『ヒューストン』の奏でる軍楽には催眠洗脳や強化の付与といった能力があるらしく、このジェネラル級の執り行う演奏儀式によって残存兵力の多くに『自爆特攻』能力が与えられつつある。
 もし、その作業が完了してしまえばサイパン島は正に『火薬庫』と化す。だが、その儀式はまだ実行途中の様だ。準備が整う前ならば被害を最小限に抑えられるだろう。
「警戒戦力の目を掻い潜って海軍基地へと潜入。儀式を行っている『ヒューストン』を討ち、サイパン島の制圧を目指すのが今回の作戦内容になるわ」

 『自爆特攻』を付与されたトループス級はある種の休眠状態となり、作戦が発動されるか敵に攻撃されるまでは自発的に行動しなくなるようだ。だが敵もそれを理解しており、あたかも基地を警備する歩哨かの如く各所へ配置されている。その一方、まだ『自爆特攻』を付与されていない覚醒状態の個体も居る為、事前にそれらを見分ける必要が出てくるだろう。
「万が一誤って攻撃してしまうとその時点で自爆し、異変を察知したトループス級が殺到してくるでしょうね。加えて、戦闘が始まれば相手も積極的に付近の『自爆特攻』付与済みの仲間を巻き込もうとしてくるから、それを防ぐ咄嗟の判断も必要になってくるわ」
 そうして警備の戦力を突破した後は、『ヒューストン』が儀式を行っている『防音区域』へと向かう事になる。基地の最奥部に存在するその場所は劇場を思わせる建物となっており、駆逐艦型の冥海機たちによってジェネラル級は守護されているようだ。
「この護衛はまだ『自爆特攻』を付与されてはいないようね。ただ、『ヒューストン』は自身の奏でる軍楽によって部下を強化する能力を持っているみたい。だから、そのままぶつかっても手古摺る可能性が高いわ……という訳で目には目を、音楽には音楽よ」
 『ヒューストン』の奏でる軍楽に対抗し、こちらも同様に何らかの音楽を奏でることで強化を相殺する事が可能だ。ただし、録音された物では意味が無い。その場での生演奏でのみ効果がある為、我こそはと自信のある者は挑んでみても良いだろう。最も、それが望めない場合は不利を覚悟で正面突破する事も困難だが不可能ではない。

「マリアナ諸島の各基地へ死守命令を出したのは『ヒューストン』だったみたいね。少ない戦力で私たちの侵攻を防ぐ苦肉の策だったのでしょうけど、部下を捨て駒にするような戦法は正直受け入れがたいわ……ただ、それだけ相手も追い詰められているという証左よ」
 最後まで手を緩めず、きっちり詰めていきましょう? そう説明を締めくくると、アーデルハイトは仲間たちを送り出すのであった。

●光明は見えず、ただ調べのみが耳朶を打ち
 深夜のサイパン島海軍基地。充実した港湾施設を持つこの場所は、豊富な戦力を擁する重要拠点であった。しかし、それもかつての話だ。今は方々に保有兵力を送り出した結果、往時と比べれば見劣りほどの戦力しか残されてはいない。
 軍港の周辺には転々と佇む人影と、時折その間を動き回る幾つかの小集団が見えるのみ。どちらも潜水艦型のトループス級冥海機だが、その様子は大きく趣を異にしている。動き回っている者らは通常と変わりないが、佇んでいる者らはまるで居眠りでもしているかの如くふらふらと身体を揺らめかせており、目の焦点も合っていなかった。
「マリアナ諸島の各基地から入るはずの定時報告が途絶えた……十中八九、陥落したとみて良いだろう。仮にディアボロスが侵入してきたとしても、我らだけで勝てると判断すべきではない」
「いまは休眠中だが、同胞らはヒューストン様の力によってディアボロスを屠る力を手に入れた。この力を最大限活用すべきだろう……彼らもディアボロスに一矢報いることが出来れば、きっと本望であるはずだ」
 ある者は棒立ちで、ある者は壁に身を預け、ある者は木箱に座り込み。そのどれもが、ジェネラル級によって『自爆特攻』を付与された個体たちだ。物言わず茫洋と沈黙する彼らから、明確な意思は感じ取れない。だが、事ここに至りて身命を惜しむものなどこのサイパン島には存在しなかった。
 彼らは待っているのだ。
 己が全てを打ち砕く覚悟を以って、来るべき復讐者たちとの戦いを。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
1
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。【怪力無双】3LVまで併用可能。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【怪力無双】
1
周囲が、ディアボロスが怪力を発揮する世界に変わり、「効果LV×3トン」までの物品を持ち上げて運搬可能になる(ただし移動を伴う残留効果は特記なき限り併用できない)。
【強運の加護】
1
幸運の加護により、周囲が黄金に輝きだす。運以外の要素が絡まない行動において、ディアボロスに悪い結果が出る可能性が「効果LVごとに半減」する。
【一刀両断】
2
意志が刃として具現化する世界となり、ディアボロスが24時間に「効果LV×1回」だけ、建造物の薄い壁や扉などの斬りやすい部分を、一撃で切断できるようになる。
【避難勧告】
1
周囲の危険な地域に、赤い光が明滅しサイレンが鳴り響く。範囲内の一般人は、その地域から脱出を始める。効果LVが高い程、避難が素早く完了する。
【光学迷彩】
2
隠れたディアボロスは発見困難という世界法則を発生させる。隠れたディアボロスが環境に合った迷彩模様で覆われ、発見される確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【モブオーラ】
1
ディアボロスの行動が周囲の耳目を集めないという世界法則を発生させる。注目されたり話しかけられる確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【スーパーGPS】
1
周囲のディアボロスが見るあらゆる「地図」に、現在位置を表示する機能が追加される。効果LVが高ければ高い程、より詳細な位置を特定できる。
【完全視界】
1
周囲が、ディアボロスの視界が暗闇や霧などで邪魔されない世界に変わる。自分と手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人にも効果を及ぼせる。
【修復加速】
1
周囲が、破壊された建造物や物品の修復が容易に行える世界に変わる。修復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」する。
【水面走行】
2
周囲の水面が凪ぎ、ディアボロスが地上と同様に走行や戦闘を行えるようになる。ディアボロスと手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人も同行可能。
【パラドクス通信】
1
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【アイテムポケット】
1
周囲が、ディアボロスが2m×2m×2mまでの物体を収納できる「小さなポケット」を、「効果LV個」だけ所持できる世界に変わる。
【水中適応】
2
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」が、クロノヴェーダを除く全ての生物が水中で呼吸でき、水温や水圧の影響を受けずに会話や活動を行える世界に変わる。

効果2

【命中アップ】LV3 / 【ダメージアップ】LV6 / 【ガードアップ】LV1 / 【リザレクション】LV2 / 【先行率アップ】LV2 / 【ドレイン】LV1 / 【アヴォイド】LV1 / 【ロストエナジー】LV2

●マスターより

月見月
 どうも皆様、月見月でございます。
 この度はマリアナ諸島制圧を受けてのサイパン島決戦となります。史実を思うと些か複雑な心持ちですが、それも末期戦の悲哀でしょうか。
 それでは以下補足です。

●シナリオ成功条件
 ジェネラル級冥海機『ヒューストン』の撃破

⚫︎攻略推奨順番
 ②>④>③=①>⑤

●シナリオ開始状況
 時刻は深夜、場所はサイパン沖。まずは夜闇に乗じて基地内部へ進入しつつ、敵状視察となります。基地内には警備中のトループス級の他に『自爆特攻』を付与された休眠状態の冥海機があちこちに配置されています。彼らはの攻撃に反応して自爆する為、不用意に手を出せば痛手を被る可能性が高いです。警備中のトループス級も積極的に彼らを戦闘に巻き込もうとする為、事前の判別と戦闘時の立ち回りに注意する必要があるでしょう。
 警備戦力を排除後は防音施設内に籠るジェネラル級『ヒューストン』及び護衛戦力との戦闘となります。『ヒューストン』と護衛のトループス級は奏でる軍楽によって強化されています。そのまま正面からぶつかれば手古摺る可能性は高いですが、こちらも音楽を演奏して相殺すれば強化を打ち消す事が可能です(なお、実際に存在する楽曲の歌詞等をプレイングに記載されている場合は採用不可となります)。

⚫︎採用について
 必要成功数+αが基準となります。出来るだけ採用したいと考えてはいますが、余りに過剰となる場合は不採用となる可能性もございますので、ご了承頂けますと幸いです。

それではどうぞよろしくお願い致します。
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このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


ラキア・ムーン
こうして敵の内情が見えてくると、思いの外冥海機どもが追い詰められている実情が分かるな
……よくよく考えてみれば、奴等の戦力は海戦で沈まなければ発生しない
七曜の戦のような大規模戦闘や、他所のディヴィジョンへ継続的にちょっかいを出せる状況でもなければ先細るのも道理……か
ならばこそ、攻められるうちに積極的に攻めるのが良手だな

水中適応で潜り、深夜のサイパン海軍基地へ接近しよう
なるべく深く潜り、服装も夜間迷彩柄の上着を羽織り少しでも見つかり辛くしよう
上陸したら慎重に進み、敵の影が見えたら1度停止
少しの間観察し、動きがあるかどうかを判断
動きがない個体に対しても小石等を事前に拾っておき、その敵影の手前に落ちるように軽く投げよう
休眠中であれば音には反応しないだろうし、通常の個体であれば音や飛んできた小石に反応するだろう
念には念を入れながら、基地内部へと潜入していこう

アドリブ連携等歓迎


麗・まほろば
いやー、まほろばは超々々々弩級戦艦だからなぁ!
そこにいるだけで目立っちゃうしなぁ。どうしよっかなぁ
なーんて、冗談。まほろばだって復讐者の端くれ、潜入くらいちゃーんとこなして見せるんだから! ふふーん
ダズル迷彩を塗って纏ってでも潜伏するよ!

【水中適用】を借用、そして【完全視界】を展開!
可能ならば【光学迷彩】も欲しいところだけど、深海と夜の闇に乗じる作戦だ
待機中のクロノヴェーダにうっかり近づくなんてことを避けるのがモアベターでしょう!

仲間と連携しながら水に潜った潜水艦のように、極力慣性と水の流れに任せつつゆっくりと基地へ近づくよ!
上陸した後はまほろばはマッピングをする。抜き足差し足忍び足っと
最終人類史から持ち出したサイパン島の地図に仲間が確かめた休眠中のクロノヴェーダを相談しながらポイントしていく
サイパン島は東西15km、南北20km。面積だと大阪市や壱岐島よりも狭いくらいだ。きっと難しくはない
これをすることで、配置されている傾向やどこで戦闘を仕掛けてはいけないかが浮かび上がってくるはずさ!


●生きて眠り、死すべく目覚める
 深夜のサイパン島。かつて旧軍の兵士たちを散々に苦しめた熱帯性の気候に加え、もう本格的な夏に差し掛かろうかという季節も相まって、周囲一帯は酷く蒸し暑い。微かな潮風に僅かばかりの慰めを求めつつ、沖合へと到着したラキア・ムーン(月夜の残滓・g00195)はジッと宵闇に浮かぶ島影へと視線を走らせていた。
「こうして敵の内情が見えてくると、思いの外冥海機どもが追い詰められている実情が分かるな……よくよく考えてみれば、奴等の戦力は海戦で沈まなければ発生しない。七曜の戦のような大規模戦闘や、他所のディヴィジョンへ継続的にちょっかいを出せる状況でもなければ先細るのも道理、か」
 確かに、広大な海を支配しているというアドバンテージは大きい。戦争におけるシーレーンの重要性は今さら語るべくも無し。だが、クロノヴェーダにとって最も重要な資源である人間はそのほぼ全てが陸地に住んでいるのだ。わざわざ船に乗せ、その上で海戦により戦死させるのは他種族と比べてもかなりの手間と言える。
 加えて、復讐者たちが徹底して一般人に被害を出さないよう立ち回った事も大きいだろう。そうして補給が途絶えた果てに無謀な作戦を決行する。都合の良く改竄された歴史にも関わらず、史実と同じ末路を辿りつつあるのは皮肉と言うべきか。
「ならばこそ、攻められるうちに積極的に攻めるのが良手だな。窮鼠猫を噛む、とも言う。徒に時間を与えれば、次はいま以上の奇策を打って来るかも分からない。速やかに侵入したいところだが……」
「いやー、潜入かぁ。だけど、まほろばは超々々々弩級戦艦だからなぁ! そこにいるだけで目立っちゃうしなぁ。どうしよっかなぁ~!」
 敵の警戒網を前にどう立ち回るべきかと思案するラキアの横では、麗・まほろば(まほろばは超々々々弩級戦艦ですっ!・g09815)が小柄な体で精一杯胸を張っていた。だが、ふっと小さく息を吐くや一転、悪戯っぽく破顔してゆく。彼女の纏う白い軍服は、幾筋もの幾何学模様で染め上げられている。
「なーんて、冗談。まほろばだってディアボロスの端くれ、潜入くらいちゃーんとこなして見せるんだから! ふふーん! ダズル迷彩を塗って纏ってでも潜伏するよ!」
 ダズル迷彩とは艦影をぼやかす事で敵の照準精度を低下させる塗装の事だ。そんなまほろばに倣ってかラキアも夜間迷彩を施した上着を羽織りつつ、おもむろにその場で屈み込むと海中の様子を観察してゆく。
「幻惑迷彩か。それも一手だが、相手も海上警戒は厳としているだろう。一先ず、軍港に取りつくまでは水中から接近した方が良さそうだ。警戒のトループス級は潜水艦型とも聞く。であれば、出来る限り深くまで潜るべきか」
「オッケー! そもそも見つからないのが最善、待機中のクロノヴェーダにうっかり近づくなんてことを避けるのがモアベターでしょう!」
 二人は手早くどう動くかを打ち合わせるや、躊躇なく海中へと身を沈める。休眠状態のトループス級を利用するという戦術方針故か、幸いにも海中で警戒を行っている敵は居ないらしい。二人は特に危うげなく軍港まで辿り着くと、素早く岸壁をよじ登って上陸を果たす。
「……不自然なほど明かりが少ないな。残留効果のお陰で夜目は効くが、無ければトループス級のシルエットしか判別できなかっただろう」
「と言うより、事前情報的には寧ろそれが狙いなのかも?」
 復讐者たちが物陰に隠れながら周囲を窺うと、監視用の投光器は愚か在って然るべき照明の類すらも見当たらなかった。『完全視界』によって視界が完全に遮られる事は無いが、これでは肝心のトループス級とてこちらを見落としかねないとラキアは訝しむ。だが、敵は敢えてそういしているのではと、周囲を見渡しながらまほろばが呟きを漏らす。
「さっき、相手は潜水艦型って言ってたよね? ならきっと、目よりも耳の方が鋭いはず。だったらわざと周囲を暗くして、まほろばたちが休眠状態のトループス級を攻撃する様に仕向けているんじゃないかな?」
 彼女の言葉通り、よくよく目を凝らせば敵は二種類に大別できた。一定の間隔で決まった場所を歩き回る小集団と、一所に留まって決して動かない単独の者らだ。恐らく前者が通常のトループス級、後者が『自爆特攻』を付与された休眠状態の個体と見て間違いは無い。
「なるほど。休眠状態のトループス級はどれも敢えて隙だらけの場所や、建物の陰など不意に遭遇しやすい地点に配置されているらしい。あの状態でも聴覚が鋭敏なら、少しばかり厄介だが……試してみるか?」
 仲間の推測に数瞬思案した後、ラキアは地面に転がっていた小石を幾つか拾い上げ、休眠個体の前へと放り投げた。もしも些細な音にすら反応するのであれば、これほど厄介な存在もあるまい。だがそんな危惧とは裏腹に、相手は足元で小石が音を立てても視線すら向ける様子はなかった。
「動く気配は無し、と。過敏過ぎれば仲間の動きにも反応してしまうだろうし、流石にその程度の調整はされているらしい。となれば、動きの有無で『自爆特攻』付与済みの個体かを見分ける事が出来そうだな」
 判別方法自体はラキアの話す内容で問題は無いだろう。他に懸念があるとすれば、その区別を戦闘中の僅かな時間で咄嗟につけられるかどうかと言う点か。それに対して一計を案じたのはまほろばであった。彼女は持ち込んだサイパン島の地図を手元で広げると、今見つけた休眠個体の配置を書き込み始める。
「休眠中の敵が動かないなら、こっちから起こさない限り移動もしない筈……マッピングをすることで、配置されている傾向やどこで戦闘を仕掛けてはいけないかが浮かび上がってくるはずさ!」
 もしも予め敵の位置を把握出来ていれば誤射する可能性もグッと低くなるだろう。サイパン島は東西15km、南北20km。大阪市や壱岐島よりもやや狭いと言った面積である。二人で全てを虱潰しにするには些か広大だが、何も島全てが基地になっている訳でもなし。極論、『ヒューストン』が座す最奥部までのルートさえ確保できれば問題は無いのだ。
「念には念を入れながら進もう。万が一いま発見されれば、作戦の大前提が崩壊する事になる。慎重に、かつ迅速にだ」
「そうだね。抜き足差し足忍び足、っと!」
 二人は時間の許す限り、警戒の目を掻い潜って『自爆特攻』付与済みの休眠個体をポイントしてゆく。配置の濃淡から冥海機側がどこの守りに重きを置いているのか、配置する場合の傾向や活動状態のトループス級がどの様に動いているかなど、出来るだけの情報を掻き集める。
 斯くして仕掛ける為に必要な情報を収集し終えると、復讐者たちは次なる行動を起こすべく戦闘態勢を整え始めるのであった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【水中適応】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!

ラキア・ムーン
やり辛い……が、文句は言っていられんな
グアムを眼前に尻込みする訳にもいかん、それに此処を攻略するには十分な情報も揃った
後は防音施設を目指すのみだ

いつでも戦闘に移行できる態勢を取り基地を進もう
マッピングした休眠個体の位置を確認し、遭遇しても仕掛けないように注意
しっかりと配置を記憶しておき、急な敵との遭遇戦で反射的に休眠個体を巻き込まないようにしよう
また、休眠個体の密度が高いエリアでの戦闘を避ける為、多少遠回りでも密度の低いエリアから最奥を目指すか

敵と遭遇したら【Call:Flame_Gust】起動
炎の塊を形成しつつ敵へと接近
此方の動きに反応する敵を確実に狙い、突風で炎塊をUボートへぶつけていこう

敵の魚雷をジャケット越しに防御しつつ、余波などで近辺の休眠個体に影響が出ないよう立ち回りには注意
冷静に戦場の配置を頭に思い浮かべ、休眠個体からの距離は常に一定以上取る様に心掛けていこう

全く、敵を巻き込まないように戦うのは厄介だな
特別手当の一つでも欲しくなるさ

アドリブ連携等歓迎


●暗夜に灯火一つ
(あちこちに配置された『自爆特攻』付与済みのトループス級に、その間を巡回する哨戒部隊。まるで機雷の漂う海を征くようでやり辛い……が、文句は言っていられんな)
 ラキア・ムーン(月夜の残滓・g00195)はそっと物陰で息を潜めながら、周囲に点在している気配へと神経を研ぎ澄ませてゆく。先ほど仲間と共に敵の位置を把握したお陰で、不意の遭遇や反射的に攻撃してしまう可能性は抑えられている。
 だが、如何に戦力が払底していようとも冥海機の重要拠点である事に変わりはない。敵の密度が高い所は多少遠回りになっても迂回し避けていたのだが、基地の奥へ進むにつれそうもいかなくなってきた。休眠や覚醒を問わず、敵の数が如実に増え始めたのだ。これ以上は戦闘を回避出来そうにない。
(出来る限り戦闘を避けて防音施設を目指したかったが、流石にそうもいかないか。『自爆特攻』能力は厄介だが、グアムを眼前に尻込みする訳にもいかん。せめて先手を取らせて貰おう)
 進むべき経路とその道中に居る休眠個体の位置はしっかりと脳裏に叩き込まれている。問題はやはり、常に巡回しているトループス級の集団だろう。ただでさえ隠密性の高い潜水艦型である。打ち漏らせば姿を晦まし、死角から襲い掛かって来るであろう事は想像に難くない。更には『自爆特攻』の誘発までされた時には目も当てられぬ。
 である以上、狙うべきは先手必勝。何かしらの対応をされる前に打ち倒すのが最善だ。ラキアは黒鉄の突撃槍を音もなく取り出し、静かに魔力を巡らせてゆく。と同時に全身の感覚を研ぎ澄ませ、周囲一帯の気配へと神経を向ける。
(数は二、いや三。更にそのやや後方でも微かな気配……こちらは休眠個体、か? 戦闘の余波で目覚められては元も子もない。そちらとは距離を取りつつ、一気に仕留める)
 微かな足音、身じろぐ音、鉄と油の匂い。そうした僅かな情報から敵情を予測し終えると、ラキアは機を見て物陰から飛び出した。薄闇の中、先頭に居た潜水艦型と視線が交わる。目を剥く相手が何かを叫ぶ前に、復讐者は魔力を収束させた得物を繰り出してゆく。
「っ、まさかディアボロス!? 敵襲、てき……ッ!」
「させはしない……複合術式展開。Call、Flame_Gust」
 漆黒の帳を食い破るは赤々と燃え盛る灼熱の焔塊。強烈な旋風によって打ち出されたそれは目を剥く敵を呑む込み、更には背後に追従していた個体まで吹き飛ばす。普通であれば炎の発する光で暗順応を喪失しそうなものだが、残留効果のお陰でその心配は無い。だがもしそうでなかったとしても、戦場の配置図は全て彼女の頭の中に浮かび上がっていた。
(いまの軌道なら休眠中の個体を巻き込む恐れはない。だが、手応えが少しばかり軽かった……仕留め損ねたか。全く、敵を巻き込まないように戦うのは厄介だな)
 誘爆させぬよう意識したせいだろうか。どうやら最後尾に居た一体は沈黙させるまでに至らなったらしい。だが、ラキアに焦りの色は無い。敵はまだこちらが『自爆特攻』について把握している事実を知らず、そして物言わぬ同胞を利用した戦術を軸としている。となれば、次にどう動くかなど自ずと知れるものだ。
「例え、巻き添えを喰らう事になったとしても……ッ」
 果たして、咄嗟に亜空間へ潜行し難を逃れていたトループス級は復讐者目掛けて魚雷を発射しつつ、休眠状態の同胞を覚醒させるべくそちらへ駆け寄る。もしも、事前情報が無ければ起爆を許していただろう。だが、その行動は全て予想の範囲内であり――。
「やれやれ……この有り様では、特別手当の一つでも欲しくなるさ」
 至近距離で炸裂する雷撃に顔を顰めながらもラキアはダメージを最小限に抑えると、再びの焔塊を放つ。たまさか、自分たちの秘策を見切られているとは思ってもいなかったのだろう。無防備な背中に直撃を受けた潜水艦は敢え無く爆散してしまう。
 斯くして誘爆を許すことなく戦闘を終えたラキアだが、喜んでばかりもいられない。戦闘音を聞きつけた別部隊が駆けつけて来る気配を感じる。彼女は小さく嘆息しながら、次なる敵を迎え撃つべく得物を構えゆくのであった。
成功🔵​🔵​🔵​🔴​
効果1【避難勧告】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!

アンディア・ラムパデス
自爆すら厭わぬ敵、か……
その覚悟は見事だが、我らとて負けるわけにはいかぬ
ここでその覚悟ごと踏み越えさせてもらう!

休眠状態の見極めが肝要か……
まずは先行した者の力を借り、【水中適応】【完全視界】を発動
自身でも【モブオーラ】を発動し、少しでも敵に気づかれない状態で接近できる距離を稼ぐ
身を隠せるものがあれば身を隠しつつ近づき、軍港周辺の敵影を確認
休眠状態の敵ならば大きな動きなどはできず、ほぼ止まっているようなものの筈……休眠状態の敵から離れている敵を狙い、攻撃を仕掛ける

戦闘では単体を狙った攻撃を使い、休眠状態の敵を巻き込まぬように戦う
だが、下手に及び腰になっては敵が直接休眠状態の敵を起こすために動くかもしれん
一気に畳みかけたい

正面に構えた盾で魚雷を受け止め、ダメージを抑えつつ、距離を取ろうとする敵に追い縋る
接近したら盾を叩き付け、距離を離されぬように接近戦を行う

貴様らを打ち倒し、必ずやグアムに攻め込まさせてもらう!


●防御こそ最大の攻撃
「なんだ……戦闘音、か? それにしては同胞が起爆した様子はなさそうだが」
「であれば、持ち場を離れるべきでは無いだろう。もしディアボロス相手なら、我が身と引き換えにでも刺し違えている筈だからな」
 別の場所で戦端が開かれた影響だろうか。軍港周辺を警備していたトループス級たちは空気の変化を敏感に感じ取っていた。だが速やかな処理に成功したお陰か、まだ警戒程度の危機感に留まっているらしい。
(自爆すら厭わぬ敵、か……その覚悟は敵ながら見事だが、我らとて負けるわけにはいかぬ。窮余の軍であろうとも、最後まで手を抜くつもりない。ここでその覚悟ごと踏み越えさせてもらう!)
 そんな敵群の様子を物陰より窺うのは、先行した仲間に続いてサイパン島へと到着していたアンディア・ラムパデス(砂塵の戦槍・g09007)である。彼女は気付かれぬように気配を殺し、周囲に展開しているトループス級の配置を観察してゆく。
(休眠状態の見極めが肝要か。その名の通り意識が無い為、基本的にはその場から動かないと聞いている。つまり、ほぼ止まっているようなものの筈だが……)
 仲間が割り出した判別方法は抜かりなくアンディアにも共有されていた。彼女はすぐに仕掛ける様な真似はせず、目に見える範囲の休眠個体の位置を把握。対して、一定の間隔と経路で巡回する通常のトループス級部隊の動きにも注意を払う。
(誘爆を防ぐ為にも一体ずつ仕留めたいが、そうならぬよう少数とは言え集団で行動している、と。加えて、やや警戒心も高まっている……ならば、せめて休眠個体から出来る限り離れたタイミングで挑むほかに無いか)
 一度動き始めたならば、一気呵成に押し切るが最上。もしも下手に及び腰となれば、死兵と化した敵兵が同胞も諸共に自爆するだろう。仮に致命を避けたとしても、爆発時の轟音が他のトループス級を招くことは想像に難くない。
 アンディアは右腕に嵌めた丸盾を前面に押し出しつつ、一振りの槍を左手で握り込む。そうして手近な哨戒部隊が完全にこちらへ背を向けた瞬間、最後尾の冥海機目掛けて襲い掛かった。
「我が盾、守るためだけに非ず……! 距離の不安があるというならば、無理やりにでも引き剥がしてやれば良いッ!」
「ッ、貴様はまさか、がァッ!?」
 殺気を感じ取った潜水艦が咄嗟に背後を振り向いた所で刻既に遅し。渾身の力を以て振り抜かれた盾の一撃が相手の矮躯へ叩き込まれ、躯体のフレームを歪ませながら吹き飛ばす。それに巻き込まれ、他の個体ももんどり打って倒れ込んでしまう。
「ディアボロスだと!? つまり、先程の戦闘音の正体は……!」
「ヒューストン様に伝えるべきか? 否、いま儀式を中断させる訳にはいかぬ!」
 混乱しながらも事態を把握した残りのトループス級たちは互いに素早く目配せし合うと、一体が復讐者目掛けて魚雷を放ちつつ、残るもう一体が亜空間へと潜行。休眠状態の同胞を覚醒させんと試みる。
 一方、アンディアは構えたままの盾ですぐさま防御へ移った。炸裂する雷撃の衝撃が全身を襲うも、強化された身体能力ならば耐え切れぬ程ではない。そのまま強引に吶喊し足止め役に当身を喰らわせ撃破するや、すぐさま反転。予め把握していた『自爆特攻』付与個体の元へと急行する。
(潜水艦の速力と我が脚力、どちらに軍配が上がるか……ッ)
 もし仮に肉薄した所で起爆阻止に失敗すれば、如何な猟兵とて無事では済まぬ。だが、同胞を覚醒させる為には潜航状態から浮上する必要がある筈。その一瞬の猶予に彼女は賭けたのだ。果たして、その結果は――。
「貴様らを打ち倒し、必ずやグアムに攻め込まさせてもらう!」
「まさか、我らの戦術が割れているとでも……!?」
 亜空間より飛び出し、相手が魚雷を発射せんとした刹那。間一髪間に合わせたアンディアは起爆よりはマシだと、至近距離で雷撃が早爆する事も構わずに盾を繰り出し沈黙させる。斯くして、彼女は幾ばくかの手傷を負いながらも『自爆特攻』の起爆を阻止する事に成功するのであった。
成功🔵​🔵​🔵​🔴​
効果1【モブオーラ】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!

麗・まほろば
戦闘は避けられるに越したことはない
【完全視界】【光学迷彩】を展開するよ!

きっとマッピングの傾向から、この辺に『ヒューストン』へとつながる入り口があるのだろう
だけどそういうところには――うん、いるよね。守衛のクロノヴェーダが
見つかれば自爆に巻き込もうとしてくるんだっけ?
だったら先制攻撃、あるのみだねぇ!

目標に【まほろばサーチライト】を照射!
すかさず【15.5センチまほろば砲】による砲撃を開始するよ!
仲間の動きと連動し、怪しげな動き、特に自爆を促そうとしているクロノヴェーダを発見次第、そちらにサーチライトを向けて早急に倒すべきであることを仲間に知らせるよ!
【まほろばの眼球測距儀】は優秀なんだから! ごまかされないよ!

魚雷からは【51センチまほろば砲】や【15.5センチまほろば砲】を盾にすることで極力致命傷を避ける
狙われるだけならまだいい。だけど『自爆特攻』のクロノヴェーダの方に誘導だけはされないように周囲を警戒するよ!

これでもまだまだ前段階作戦だ
さぁノックをして本番と行こうじゃないか!


●極光を以ても目覚めは許されず
(……事前マッピングの傾向から、この辺に『ヒューストン』の居る防音施設へ繋がる入り口があると予想はしていたけど。うん、そうなれば当然居るよね。守衛のクロノヴェーダがさ)
 先に戦端を開いた仲間たちのお陰で、麗・まほろば(まほろばは超々々々弩級戦艦ですっ!・g09815)は敵と戦闘すること無く基地の奥深くまで侵入する事に成功していた。休眠個体の配置分布からこの近辺に目標とするジェネラル級が居ると踏んでいたのだが、その推測は当たっていたらしい。
 分厚い壁で厳重に覆われた建物の前では、トループス級の一群が厳戒態勢を取っている。彼らの会話に耳を澄ませてみれば、切羽詰まった声音が漏れ伝わって来た。
「巡回部隊からの連絡が途絶えた……未だに同胞の自爆は確認されていないが、既にディアボロスに侵入されていると見るべきだ」
「ヒューストン様の直衛を除けば、残る覚醒状態の戦力は我々のみ。死守だ、絶対に死守せよ!」
 如何な寡兵とは言え、否、寡兵だからこそ兵力の増減には敏感なものだ。どうやら、既に『復讐者による襲撃中』という前提で動いているらしい。急いで引っ張って来たのか、事前情報には無かった『自爆特攻』付与個体が数体転がされているのも見える。
(確か、見つかれば自爆に巻き込もうとしてくるんだっけ? ただ、この状況で姿を隠し続けるのは流石に無理かな。だったら先制攻撃、あるのみだねぇ!)
 どのみち、こうなってしまえばもう交戦は避けられぬ。幸い、覚醒状態の敵自体はそこまで多くは無い。『自爆特攻』誘爆の危険を加味しても、先手を取れれば十分に殲滅は可能だろう。幸い、こうした夜間に打ってつけの一手も持ち合わせていた。
「まーほーろーばー……フラーッシュ!」
「ッ、ディアボロスだ! おのれ、もうこの場所を嗅ぎつけていたとはッ!?」
 まほろばはパッと警備部隊の前へ飛び出すや、両の人差し指で徐に前髪を捲り上げる。瞬間、露わになった額から強烈な光量が解き放たれ、トループス級たちの視界を白く塗り潰す。無論、相手は聴覚に重きを置く潜水艦だ。いまの叫びで復讐者の位置情報は露見してしまっただろう。
 だが、それよりも重要なのは数瞬でも休眠個体と接触させない事に在る。音だけを頼りに意識の無い彼らを攻撃に巻き込むのは至難の業だ。そうして敵が体勢を立て直す前に、復讐者は副砲の仰角を調整し終えると同時に砲撃を叩き込む。
(狙うべきは怪しげな動き、特に自爆を促そうとしているクロノヴェーダ! まほろばの眼球測距儀は優秀なんだから! ごまかされないよ!)
 残留効果も相まって、まほろばの視界は極めて良好だ。彼女は休眠個体を覚醒させそうな行動を取っている個体を投光器で炙り出すや、次々と砲弾を吹き飛ばす。
 しかし、そうなれば自ずと集中砲火を受けやすくなるものだ。白に光の中に幾条もの黒い影、即ち魚雷が復讐者目掛けて殺到してゆく。だが、こうなる事なぞ彼女とて百も承知。海戦装を盾代わりとする事で、少しでもダメージを抑え込もうと試みていた。
「誰でも良い、同胞らを覚醒させろ! 我ら諸共に吹き飛ばせばそれで事足りる!」
「おっと、狙われるだけならまだ良いけど、それは見逃せないかな!」
 個々の実力で劣り、頭数も心許ない中、頼みの綱である『自爆特攻』すらも起爆を許されないのだ。となればもう、警備のトループス級に抵抗手段など残されてはいまい。果たしてまほろばによる砲撃の嵐が止んだ時、後に残ったのは粉砕された冥海機の残骸だけだった。
「これでもまだまだ前段階作戦だ……さぁ、ノックをして本番と行こうじゃないか!」
 分厚い壁に覆われた巨大な建造物。この内部に目標であるジェネラル級冥海機『ヒューストン』が座しているのは間違いない。斯くしてまほろばは意気揚々と建物の扉を蹴り開けてゆくのであった。
成功🔵​🔵​🔵​🔴​
効果1【光学迷彩】LV1が発生!
効果2【リザレクション】LV1が発生!

●葬送の軍楽は勇ましくも
 扉を蹴破り、防音区画内へと雪崩れ込んだディアボロス達。その内部は数百人を余裕で収容できる程の広さがあり、劇場であれば観客席に相当する場所では特型駆逐艦のトループス級が警護しているのが見える。
 だが、それよりも印象深いのはやはり音だ。耳朶を打つ複雑な音色。技量的には多少粗削りな部分が在るものの、勇壮に鳴り響く調べは兵士たちの士気を鼓舞して足るものだろう。それを奏でし者は内部中央、正しく舞台と呼べる場所に佇んでいた。
「……如何に防音を施しているとは言え、私の付与した『自爆特攻』が発動すれば多少の衝撃程度は感じられる筈だ。それが無いというのは、つまりはそう言う事。マリアナ諸島の死守部隊を速やかに制圧した手腕といい、やはりげに恐ろしきはディアボロスか」
 ジェネラル級冥海機、ノーザンプトン級重巡洋艦五番艦『ヒューストン』。史実ではアジア艦隊の旗艦を務め、スラバヤ沖海戦やバタビア沖海戦を経験。決して勝利ばかりとはいかぬ戦いを演じた艦名を冠する冥海機は、奇しくもかつて敵対した敵国と同じ状況へと追い込まれていた。
「真っ当な手段では勝利出来ぬと選んだ一手だったが、それすらも上回れるとは。だが、我らが劣勢である事など始めから承知の上だ。今さら死を恐れ、命を惜しむ者などこの場には居ないと知れ」
 重巡の宣言と共に、右腕と一体化した管楽器型海戦装から鳴り響く音圧が勢いを増す。施設そのものが外に音を漏らさないばかりか、内部で反響する様に調整されているのか。木霊する様に内部を満たす軍楽がトループス級の全身へと染み渡り、心身を共に意気軒高と昂らせてゆく。『自爆特攻』の付与ではないが、それでも戦闘力の向上は単純に厄介である。
「来たる大反攻作戦は発動されれば、必ずや戦況は変わる。それまでの時間を稼げれば、例えこの島で斃れ果てるとなっても我らの勝利だ。さぁ、暫し私の演奏を聴いて貰おうか、ディアボロス……ッ!」
 最後の一兵まで抵抗し、将も含めて玉砕を覚悟している姿はある意味で敬意に値するだろう。だがその一方、重巡自身も果たして自らの吐く言葉にどれほどの実現性が伴っているのか、把握できているのか否か。
 だがなんにせよ、この場でジェネラル級を討たねば『自爆特攻』戦術が冥海機勢力全体に拡散する危険性も無いとは言い切れぬ。その様な戦術なぞ無意味である事を、きっちりと示さねばならない。
 さぁ、復讐者たちよ。決死の覚悟をいまこそ打ち砕くのだ。
麗・まほろば
勲さん(g10186)と連携――いや、アンサンブルだね!

『ヒューストン』!
まずはじゃじゃーん! と演奏で勝負だ!

軍隊の士気と音楽は切っても切れないからねぇ
タクトを構えて、っと……ん? あはは、吹奏は苦手なんだよぅ
でもまほろばは聯合艦隊旗艦だったから、ね?
まほろばにだって指揮なら多少の心得があるんだよ!

選んだのはチャイコフスキー『作品49番 祝典序曲“1812”』! どどーんと、大砲付き!
これはねぇ、侵略者であるナポレオン軍を追い返したことを讃えた曲だ!
そう! まさにまほろばたちの未来を示すかのような曲だね?
くふふ。せっかくだから、ね!
勲さんにはおいしいところを演奏してもらおうかな?
それではお聞きいただきましょう! さん、はいっ!

向けられた視線にはウィンクでかえしつつ、勲さんと“ミニまほろば”たちには乱れのない演奏を指揮
【51センチまほろば砲】による堂々とした砲撃も合わせて!
ちゃーんと、記譜されてる楽器なんだからね!

さぁ、もうすぐカデンツ(終わり)だ
誰にも負けない音響で島を包み込むよぉ!


三間・勲
(連携アドリブ歓迎)

残念ながら、簡単にグアムには辿り着かせてくれないみたいですね…!
危険な戦いに挑む味方に降りかかる火の粉を払うべく、僕に精一杯出来る事を
救援機動力で麗さん(g09815)のもとに加勢、手持ちの信号ラッパを使って演奏勝負に加わります

"ミニまほろば"さん達も、よろしくお願いします!
出来る限りの技能をふるう事は勿論、楽曲に込められた歴史や物語を想像しながら心を込めて演奏します

麗さんの指揮に従い、アイコンタクトを取りつつ連携です
始まりは厳かに、兵の行進を表す場面は力強く堂々と、戦う味方を鼓舞するように…
進行と指揮に合わせ音の強弱にも気を付けます

時に麗さんや"ミニまほろば"さん達にも明るく笑いかけてみます
月並ですが"音"に"楽"しいと書いて"音楽"、一緒に演奏を楽しむ気持ちを忘れません
『ヒューストン』の音圧に負けない、心に響く音色を届けます!

それでは僭越ながら…とっておきの場面では、パラドクスで具現化させたトランペットも利用して、盛大に行きましょう!


●戦場音楽は喇叭と砲声に導かれ
「……成る程、軍隊の士気と音楽は切っても切れないからねぇ」
 意気揚々と防音施設内へと乗り込んだ麗・まほろば(まほろばは超々々々弩級戦艦ですっ!・g09815)は、全身を震わせる音圧に対し思わずそんな呟きを零していた。馴染みの薄い者にとっては意外に思われるかもしれないが、古来より戦争と音楽は密接な関りを持っている。突撃時に上げる鬨の声、戦場に鳴り響く銅鑼、傍らの友が倒れてもなお演奏を止めぬ鼓笛隊、チャルメラや喇叭の甘き死の音色。
 部隊間や兵同士の伝達技術が未発達な時代においては命令を共有する手段として、楽器は武器に勝るとも劣らぬ活躍をした時代もあった。況や、士気高揚についてなぞ今さら説明するまでも無いだろう。その確たる証拠が、いま正に眼前で展開されているのだから。
「例えこのサイパン島の劣勢を覆すことが不可能であろうと、我らの為すべき事は変わらない。惜しむらくは私の儀式が完了しなかった事だが、最期の瞬間まで我らの闘争を奏で切ってみせようか!」
 決して音質が良い訳では無い。技量もその道を究めた達人と比べれば見劣りはする。だがジェネラル級冥海機、重巡洋艦『ヒューストン』の奏でる軍楽はそれらを補って余りある気迫に満ちていた。それはまるで、蝋燭が放つ最後の灯火を思わせるものだ。旋律から滲み出る凄絶な覚悟を全身で感じ取り、駆けつけて来た三間・勲(漁火・g10186)は我知らず拳を握り込む。
「残念ながら、簡単にグアムには辿り着かせてくれないみたいですね……! 遅ればせながら皆さんに降りかかる火の粉を払うべく、精一杯僕に出来る事を果たさせて貰います!」
「つまり、勲さんと連携――いや、アンサンブルだね! 『ヒューストン』! まずはじゃじゃーん! と演奏で勝負だ!」
 手持ちの信号ラッパを取り出す少年に応じ、少女もまた握った指揮棒の先端をジェネラル級へと突き付ける。ヒューストンの奏でる音楽を無視して戦闘に入るという選択もあるにはあった。だが相手も不退転の決意を以て挑んできているのだ。なれば、こちらもそれに応じてやるのが情けと言うものだろう。
 そんなまほろばの足元では、小さな何かがトコトコと姿を見せた。それらはデフォルメされた彼女の人形だ。みな手に手に小さな楽器を抱えており、さながら小人の楽団と言った様相である。その様子を興味深そうに眺める仲間へ、少女は照れ笑いを浮かべゆく。
「……ん? あはは、吹奏は苦手なんだよぅ。でもまほろばは聯合艦隊旗艦だったから、ね? まほろばにだって指揮なら多少の心得があるんだよ!」
「いえ、小さくて可愛らしいなと思っただけですから。"ミニまほろば"さん達も、よろしくお願いします!」
 ともあれ、演奏の準備が整った。冥海機側も攻撃する隙なぞ幾らでもあっただろうに、手を出さなかったのは戦闘はともかく演奏ならば負けぬという自負か、妨害する事自体を怯懦と見られるのを嫌ったか。グッと、ヒューストンもまた右腕の管楽器型の海戦装を突き出して応じて見せた。
「頭数ではそちらが上だが、即興の連携が果たして上手くいくものか。試合に勝って勝負に負けた……勝ちに驕って慣れぬ分野に手を出せば、詰まらぬケチがつくぞ?」
「口では何とも言えるからね! せっかく周りにギャラリーも居るんだから、どっちが上手いか聞いて判断して貰おうじゃないか!」
 まほろばはチラと目線で仲間へ合図すると、勲もまたコクリと頷きラッパの拭き口へ唇を着ける。刹那、振り下ろされた少女の指揮棒を合図とし、両者が一斉に旋律を奏で始めた。音を反響させる内部構造も相まって、衝突した調べは幾重にも重なり合い反響してゆく。
「この曲は……随分と小洒落たものを! 『選曲』までもう勝った気でいるとはな!」
 曲がりなりにも音楽を齧っているが故だろう。ヒューストンは曲の出だしだけでそれが何なのかを見抜いたらしい。初めは厳かながらも、徐々に兵士の行軍を思わせる力強さを帯び始める変ホ長調。
 その曲が冠せし題名は『作品49番 祝典序曲“1812”』。かの名高きチャイコフスキーが描き上げた演奏会用序曲だ。歴史的失敗と評されるナポレオンのロシア遠征を、ロシア側の視点で表現した傑作である。
「その通り! これはねぇ、侵略者であるナポレオン軍を追い返したことを讃えた曲だ! そう! まさに『戦局』を決しつつあるまほろばたちの未来を示すかのような曲だね?」
 苦々しそうに叫ぶジェネラル級に対し、まほろばは飄々と言葉を返して見せる。随分と皮肉の効いたチョイスだが、それも曲を支える技量があってこそだ。これがもし拙く奏じられていれば重巡も鼻で嗤っただろうが、複雑に絡み合う各音に綻びなど見られない。
(出来る限りの技能をふるう事は勿論、楽曲に込められた歴史や物語を想像しながら、心を籠めて戦う味方を鼓舞するように……単調にならないよう、音の強弱にも気を配って。相手も全身全霊を尽くしている以上、こちらも同等以上の想いで当たらねば勝る事など出来ませんから)
 仲間が横で舌戦を交わす中、勲はただ己が得物を拭き鳴らす事に全神経を傾けてゆく。手を抜いて演じ勝てる相手では無い事は百も承知である。しかしその一方、時おりまほろばや小人たちへと目を向け、更には柔らかく笑みすら浮かべてみせた。
(月並ですが"音"に"楽"しいと書いて"音楽"、故に一緒に演奏を楽しむ気持ちを忘れません。気負い過ぎても良い音は出ず、適度に力を抜くのがコツです……『ヒューストン』の音圧に負けない、心に響く音色を届けましょう!)
「くふふ、調子が出て来たかな? よーし、せっかくだから、ね! 勲さんにはおいしいところを演奏してもらおうかな? それではお聞きいただきましょう! さん、はいっ!」
「それでは僭越ながら……盛大に行きましょう!」
 そんな少年の調子を感じ取った少女は、指揮棒を振って合図を出す。瞬間、ラッパはこれまで以上に高らかな音色で奏でられてゆく。ヒューストンも必死に対抗するも、焦れば焦るだけ曲調は乱れ、余裕が失われてしまう。それに伴い、どうやら軍楽に籠められた強化効果も効力を失いつつあるらしい。おろおろと狼狽え始めるトループス級を横目に、演奏はクライマックスへと突入する。
「馬鹿な、私が演奏で、後塵を拝すなど……!?」
「いよいよ第五部、最終章! 誰にも負けない音響で島を包み込むよぉ! 『コレ』もちゃーんと、記譜されてる楽器なんだからね!」
 勲からの締めは任せたという目線にウインクを返しつつ、まほろばの背負う海戦装が起動し始める。この曲最大の特徴、それは演奏楽器に『大砲』の砲声が含まれる点だ。その点で言えば、超々々々弩級の主砲ならばこれ以上ない程に適任であろう。
「さぁ! これで、カデンツ(終わり)だーーッ!」
 果たして、復讐者たちは戦艦主砲の大轟音を以て演奏を締め括ると共に、ヒューストンの軍楽が齎す強化効果を完全に打ち破る事に成功するのであった。
超成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【強運の加護】LV1が発生!
【スーパーGPS】LV1が発生!
効果2【リザレクション】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV2になった!

ラキア・ムーン
音楽は……出来ん
慣れん事はするべきでは無いな
故に、そちらは任せて周囲を削らせてもらう
そちらの覚悟、しかと見た
だが、それを打ち破り進ませてもらおう
グアムを眼前に、貴様らに足止めを喰らうわけにはいかんからな

《RE》Incarnationを構え、戦闘態勢
バフが掛かっている以上、油断は出来んな
敵の布陣を確認
攻撃後に囲まれないよう、外縁部の敵へと仕掛けよう
【Call:Flame_Edge】起動
槍の穂先へ炎の刃を展開
接近し、槍を振って『薙ぎ払い』
展開した炎の刃で特型駆逐娘へと攻撃を仕掛けよう
攻撃後は一端バックステップ
後方に跳びつつ、攻撃に備える

主砲の砲撃をジャケットでうけて耐えつつ、近寄ってくる敵を観察し迎撃
魚雷を槍で迎撃し直撃は回避しつつ、近接での爆風に備えダメージコントロール
攻撃を集中し、確実に数を減らし削っていこう

さて、邪魔をするなら倒させて貰おう
此処の制圧は急務だ
もとよりゆっくりとするつもりは無いのでな……勢いで仕掛けさせて貰うぞ!

アドリブ連携等歓迎


●炎刃、動揺を断つ
「馬鹿な……ヒューストン様の演奏が、ご加護が打ち消されるなど!?」
「だが、先程まで感じていた力が減衰している。これでは、もはや……ッ!」
 耳をつんざくような戦艦主砲の一撃は、文字通り敵の奏でる軍楽を打ち破った。頼みの綱であったジェネラル級による強化付与を打ち消され、右往左往する駆逐艦型トループル級たち。そんな哀れな様子を一瞥しながら、ラキア・ムーン(月夜の残滓・g00195)はチラと仲間たちへと視線を向けてゆく。
「音楽は……出来ん。あのジェネラル級の言では無いが、やはり慣れん事はするべきでは無いな。どうやら、その判断は正解だったらしい。ならば、こちらは周囲を削らせてもらう」
 弱体化に加え、演奏とは言え将が復讐者の後塵を拝したのだ。その心理的衝撃は決して小さくはない。である以上、持ち直される前に押し切るべきだろう。演奏終了まで控えていたラキアは黒鉄の突撃槍を再び握りしめると、その先端をコンクリートの床へと擦らせる。
「そちらの覚悟、しかと見た。一敗地に塗れたとは言え、その意志を貶める結果ではあるまい。だがその上で、それを打ち破り進ませてもらおう。グアムを眼前に、貴様らに足止めを喰らうわけにはいかんからな」
 散った火花を起点とし、赤々とした灼熱が刀身を形成。まるで槍ではなく巨大な大剣を思わせる姿と化した得物を手に悠然と前へ歩み出てゆく。外縁部に居た個体がそんな復讐者の姿を認め、咄嗟に迎撃せんと動くのだが、しかし。
「っ、不味い!? 砲撃を……ッ!」
「強化が付与されていれば、また話も違ったのだろうが……遅い」
 弾丸が砲口より放たれるよりも早く、ラキアの熱刃が一閃される。赤熱した切っ先はオニカサゴ型の海戦装ごと、不運な個体を両断して切り捨てた。油断なく彼女が飛び退くと同時に、装填されたままだった砲弾が誘爆し跡形もなく崩れ落ちた骸を吹き飛ばす。
「くっ、何を呆けている! やるべき事は変わらんのだ、撃て、撃て!」
「死なぞ始めから覚悟の上だろう! ヒューストン様をお守りするのだ!」
 そこで漸く我に返った他の駆逐艦たちもまた砲撃を開始。小口径ながらも射撃速度に秀でるそれらで復讐者を撹乱しつつ、別の部隊が肉薄雷撃を狙って砲弾の中へと吶喊してゆく。
 吹き荒れる爆発と鉄片の嵐がジャケットを貫通して肌身を切り裂き、焼ける様な痛みが走る。例えトループス級とは言え、ジェネラル級の警護を任される者たちだ。その練度が決して低くはない事を、ラキアもまた僅かな交戦で悟っていた。
(砲撃は飽くまでも牽制、本命は続く魚雷の一撃か。駆逐艦と言えど、直撃すれば巨艦も沈めかねない威力だ。本命がまだ残っている以上、余計なダメージは避けねばならんな)
 『自爆特攻』付与の警備を抜けてきたのも、敢えて演奏勝負に乗ったのも、全ては標的である重巡洋艦を討ち為。ここで足止めされている暇など無かった。復讐者は槍の如き長大な魚雷を抱えて吶喊して来た個体に対し、敢えて踏み込み距離を詰める。
 虚を突かれた敵目掛けて一手早く得物を繰り出し、魚雷ごと敵を穿ち貫くやすぐさま引き抜き身を翻す。果たして、背後で炸裂する爆薬の勢いを利用して離脱。手傷を最小限に抑えつつも、トループス級の漸減に成功した。
「……さて。御覧の通り、邪魔をするなら倒させて貰おう。此処の制圧は急務だ。もとよりゆっくりとするつもりは無いのでな。勢いで仕掛けさせて貰うぞ!」
「その侮りの代償、高くつくと知るが良いッ!」
 確実に、かつ迅速に。ラキアは己が目標を達すべく、トループス級たちと渡り合ってゆくのであった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【水面走行】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!

麗・まほろば
ふふーん! どうさ、まほろばたちの演奏は!
上手かっだろう、称賛してくれてもいいんだよ?
それとも……もしかしておこったかな?

もちろん、まほろばは砲撃戦もできちゃいます!
全門開花!
目標! トループス級クロノヴェーダ! 照準、合わせー!
終演後の演者に突撃してくるなんてだめだよぉ
ところでチケットはお持ちですか?
ロハでのうのうと鑑賞するだけだなんてずるいよねぇ
せめて、まほろばたちからの招待券は提示するべきだよ!
砲撃はじめ! 放てぇー!
クロノヴェーダが味方の攻撃のスキを突くようならば、まほろばがそこは砲撃で補うよ!

トループス級の砲雷撃には【51センチまほろば砲】と【15.5センチまほろば砲】を盾にして直撃を避けるよ!
『自爆特攻』を付与されたクロノヴェーダがこのどこかにまだいても可笑しくはない
誘導されないように、気を付けないとね!


●定められし終幕より逃れる術は無く
 ヒューストンによる加護が消えた今、護衛戦力の質は通常のトループス級と同等レベルにまで低下している。だがその一方、相手は自らの死を前提とした文字通り決死の抵抗を続けており、その粘り強さは驚嘆に値するだろう。
 だが、既に復讐者たちは将に王手を掛けているのだ。その手前で足踏みしている暇など無い。冥海機たちの抵抗を打ち砕くべく、演奏を終えた麗・まほろば(まほろばは超々々々弩級戦艦ですっ!・g09815)が敵軍の前へと歩み出た。
「ふふーん! どうさ、まほろばたちの演奏は! まぁ、結果は御覧の通りだ! 上手かっだろう、称賛してくれてもいいんだよ? それとも……もしかしておこったかな?」
 ジェネラル級の演奏を打ち破った者の片割れは、挑発的な物言いを駆逐艦へと投げ掛けてゆく。瞬間、ただでさえ血気に逸っていたトループス級たちの纏う雰囲気が、更なる鉄火の匂いを帯びた。安い挑発だが、沸点が低くなっている今の状況ではこれ以上なく効いたのだろう。ガクン、と。オニカサゴ型艤装に搭載された砲塔が、一斉にまほろばへ向けて照準を合わせる。
「……先の演奏、確かに見事だったと言わざるを得ん。ああ、そうだ。それは認めよう」
「である以上、鑑賞の代金は支払わねばな。遠慮するな、受け取れッ!」
 瞬間、残った護衛たちによる一斉砲撃が放たれた。各砲の威力は戦艦のそれと比べるべくも無いが、射撃速度はこちらの方が上だ。加えて、塵も積もれば何とやら。十、二十と重なれば決して無視できないダメージ量となってしまう。
「こんなおひねりは御免被るけどね。せめて、貰って嬉しいものを贈って欲しいんだけどな、っと!」
 だが、場数を踏んだ復讐者ならばこの程度の砲弾幕なぞ珍しくもない。周囲で炸裂する砲弾の衝撃を全身に浴びながらも、直撃弾のみに絞ってまほろばは攻撃を凌いでゆく。しかし、それらは飽くまでも目晦ましに過ぎぬ。本命は次、駆逐艦の十八番である魚雷の一撃だ。
 濛々と室内に立ち込める砲煙に紛れ、踏み込んできたトループス級たちが立て続けに飛び出す。如何な巨艦とて、どてっ腹に雷撃を喰らえば轟沈は免れないだろう。だがそんな状況でもなお、復讐者は笑みを浮かべたままだ。
「終演後の演者に突撃してくるなんてだめだよぉ。出待ちはマナー違反ってね……ところでチケットはお持ちですか? ロハでのうのうと鑑賞するだけだなんてずるいよねぇ。あ、勿論さっきのはノーカンだから。せめて、まほろばたちからの招待券は提示するべきだよ!」
「っ、まさか読まれて……!?」
 その理由を駆逐艦たちはすぐさま知る事になった。いつの間にか、少女の背後には巨大な艦首が虚空より突き出しており、まるで花が開くように展開していたのだ。巨大な砲門の内部では黒々としたエネルギーが収束し、解放の時を待ち侘びている。
「もちろん、まほろばは演奏だけじゃなくて砲撃戦もできちゃいます! 目標! トループス級クロノヴェーダ! 照準、合わせー!」
 この建物内部にも『自爆特攻』付与済みの個体が潜んでいてもおかしくはない。なれば、敵から仕掛けさせて一網打尽にしてやれば良いと考えたのだが、予想以上に上手くいったようだ。こうなってしまえばもう、逃れる余裕など有りはしなかった。
「砲撃はじめ! 放てぇー!」
「ヒューストン様、申しわけ……――!?」
 刹那、放たれし一撃は漆黒の柱を思わせ、戦場を一直線に貫いてゆく。それは射線上の個体は無論、その周囲に居た駆逐艦すらコアンダ効果で引きずり込む。果たしてエネルギーが掻き消えた時、もはや護衛の戦力は一隻残らず玉砕を果たすのであった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【修復加速】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!

ラキア・ムーン
さて、厄介な特殊能力も消えた
後は互いの武を競うだけ
ヒューストン……それでいて尚、強敵ではあるが指揮官としてはあまり褒められた判断が出来ているとは言い難い
兵力の増強が難しい冥海機において、貴重な兵力で自爆特攻をするのは浅慮だな
グアムへの行きがけの駄賃として、その首貰い受ける!
限定解除、形状変換……再誕の槍よ進化の先へ!
《RE》Incarnation:Extend、顕現!
槍を構えて突撃態勢
構え突き出し、『突撃』
【Call:0_0_0】起動
無限光の名の下に、遍く邪悪を滅ぼす光を!
魔力の槍を槍に重ねて展開
そのまま穿つ、『貫通撃』!
渾身の一撃で右手の海戦装ごと本体を貫こう

攻撃後もそのまま接近して近接戦闘
バルーンフィッシュの針をジャケットで受け、受けきれないものは槍で『薙ぎ払い』少しでも軽減
多少はアヴォイドもお守り程度には期待しておこう
退かずに距離を詰め続け、敵の視界と行動を制限
少しでも後に続く仲間の助けとなるように立ち振る舞っていこう

さて、先にも言ったが此処で足止めを喰らうわけにはいかん!


●無限なる極光、破裂する雷光
「……損耗を許容するのではない。そもそもが全兵力の死を前提とした文字通りの決死作戦だった。それがこの有り様とはな。怒りを通し越してもはや呆れるほどだ。だが部下の命じた手前、将が怖気づくなぞどうして出来ようか」
 なけなしの戦力を掻き集めてようやく形にした、狂気とも呼べる『自爆特攻』作戦。しかしいま、その作戦は指揮するジェネラル級ただ一隻を残して瓦解した。既にサイパン島に駐屯していた戦力は例外なく残骸と化している。
 既に戦況を覆す事はそれこそ神風でも吹かねば不可能だ。そんな状況にも関わらず、踏み止まって当初の作戦方針に殉じる姿は一定の評価に値するだろう。艤装を展開する冥海機に対し、ラキア・ムーン(月夜の残滓・g00195)は淡々とした調子で相対してゆく。
「さて、自爆や強化といった厄介な特殊能力も消えたな。後は互いの武を競うだけだ。重巡洋艦ヒューストン……飽くまで抗戦の意志を貫く点は将らしいと言えよう。だがそれでいて尚、強敵ではあるが指揮官としてはあまり褒められた判断が出来ているとは言い難い」
「なに……?」
 如何に敗軍の将とは言え、面と向かって戦略の不備を指摘されるのは屈辱以外の何ものでもない。俄かに濃密な怒気がヒューストンの全身より滲み出るも、今さらその程度の威圧に臆する復讐者に非ず。ラキアは意に介さずに先を続ける。
「兵力の増強が難しい冥海機において、貴重な戦力を自爆特攻ですり潰すのは浅慮だな。史実においては戦後数十年に渡って潜伏し、活動した者すら居たというのに……ともあれグアムへの行きがけの駄賃として、その首貰い受ける!」
 世界の七割は海だが、各勢力が奪い合うのはその残り三割だ。そして分断された改竄世界史は史実ほどシーレーンに依拠していない。そのギャップが冥海機の陥っている苦境の一因かもしれなかった。そして繰り返す通り、海戦で一般人の被害を避けた復讐者の成果とも言えるだろう。
「限定解除、形状変換……再誕の槍よ、進化の先へ! 《RE》Incarnation:Extend、顕現!」
 斯くして、まず先手を取ったのは復讐者側だった。吶喊するラキアの手の中で突撃槍が甲高い唸りを上げ始める。元々から重々しい穂先が目を惹く得物だったが、そのシルエットが大きく変貌してゆく。まるで騎兵槍の如き姿となったそれは、正に『再誕』の名に相応しかった。
「無限光の名の下に、遍く邪悪を滅ぼす光を! 我は世界を穿つ者也!」
 変化はそれだけに留まらぬ。穂先に魔力が収束し、更にその巨大さを増す。一切を焼き尽さんばかりの眩い輝きを纏わせながら、渾身の一撃を繰り出す乙女。対して、重巡はハリセンボンを思わせる機雷を散布。瞬時に膨れ上がるそれらを以て、突撃の勢いを殺さんと試みる。
「散っていった部下たちの手前、醜態を晒せるものかッ!」
 果たして、無限なる極光と機雷の閃光が防音施設内を塗り潰す。それらが消え去った後に浮かび上がるは交錯する二つの影。ラキアの全身にはそれこそ千に届かんばかりの大小様々な針が突き立っている。上着で防御こそしていたが焼け石に水。貫通した針先が皮膚を貫き、肉に食い込んだ傷口からは流血が滴っていた。
 だが一方、ヒューストンの手傷も浅くはない。直撃こそ避けたものの、右腕の喇叭型海戦装に深々と突撃槍が穿たれていた。もし僅かでも消耗していたら、本体ごと貫通されていてもおかしくは無かっただろう。余りの威力に目を剥くジェネラル級に対し、復讐者は素早く得物を引き抜いて構えを取り直す。その瞳には敵同様、揺るがない継戦の意志が浮かんでいる。
「さて、先にも言ったが此処で足止めを喰らうわけにはいかん! 早々にケリを着けさせて貰う!」
「行きがけの駄賃とふざけたことを宣ったのと良い、随分と見下してくれたものだな。ジェネラル級がそう簡単に沈むものか!」
 斯くして後に続く仲間の助けとすべく、ラキアは全身を襲う苦痛を押し殺しながらも距離を詰めての白兵戦を挑んでゆくのであった。
成功🔵​🔵​🔵​🔴​
効果1【光学迷彩】がLV2になった!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!

エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎

不倶戴天の相手でなければ……と思うは、詮無き事か
それがいい戦術とは思えない……

仲間達が切り拓いてきた航路
グアムへ突破する為、貴殿を討つ

こちらもまた仲間の演奏に鼓舞されるように
パラドクス通信を使用し仲間と連携を取ろう

戦況を観察しつつ把握
なるべくヒューストンを挟撃や包囲となるよう位置取ろう

戦闘は削りと援護を主眼に
緩急つけて銃撃を仕掛けて、一人に集中させない
PDの銃撃で惹きつけ、味方側に隙を作り
また仲間との攻防で敵が背を向けたり、隙が生まれれば過たず狙い撃とう

銃弾の狙いは肩口、脚の付け根と動きを鈍らせつつ、隙をみせた箇所は優先
また、敵の動きを妨害するよう、機先を制すように位置を変えつつ多角的な銃撃を
一瞬でも注意を散らせれば、仲間に好機を繋ごう

グレイト・ホーンの音色に対しては、直撃方向を避けつつ腕のタワーシールドを構えて音波自体を防ぎ
共鳴に対し魔力障壁を展開し緩衝
こちらも銃声をぶつけることで共鳴を乱して対処
反撃をもって音を破る

音楽は表現であれ
他者の意思を奪うなどもっての他だ……!


周防寺・雨季
救援機動力で現場に急行します。
企みは潰したとは言え、ヒューストン自身の戦力も圧倒的です。雨季は戦闘支援を行います。

仲間と連携し、ヒューストンを包囲、逃走阻止出来る陣形を取ります。もっとも、逃走を図るとは思えませんが。
タイミングを組み合わせ、波状攻撃となる様にパラドクスを仕掛けます。
【連嵐】使用。霊能戦、開始します。
自身と敵の周囲に「念動力」の嵐を巻き起こします。
高圧の竜巻で敵の動きを拘束、「捕縛」。仲間の攻撃や防御を援護。
連携攻撃の間に合わせて、敵を包む竜巻の速度を加速させ、敵の体を捩じ切ります。

反撃の音波は竜巻で干渉、震動を散らしてその威力を減衰させて耐え抜きます。

部下に玉砕を命じるのなら、当然将たる身も同じ覚悟なのでしょう。
ジェネラル級の死兵。こちらも相応の覚悟を持って挑まねばなりませんね。
命をかけるのは常に前提であると雨季は考えます。その上で必ず全員で生還する。玉砕より数段上の覚悟を決めて、この戦況を潜り抜けましょう。


●勝ちて緩まず、窮して鈍せず
「ぐ、むぅ……ッ! 伊達に数多の同胞を屠った訳ではないらしいな。だが、端から無傷で終わろうなどとは思っていない。この程度の損傷ならば十分に継戦は可能だ」
 バチリ、と。ヒューストンの右腕に搭載された喇叭型海戦装から火花が散る。見た目こそ痛々しいが、機能そのものに問題は無いらしい。元より、この島に残った戦力はみな『玉砕』覚悟の死兵たち。無論、それはジェネラル級とて例外では無かった。
「もしも不倶戴天の相手でなければ……と思うのは、詮無き事か。他の者たちも告げただろうが、『それ』がいい戦術とは思えない。本来あるべき歴史が既にその無謬を示しているのだからな」
 一見すると勇ましい心意気だが、史実を知る者からすれば虚しき響きでしかないのだろう。増援に駆けつけたエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は首を振りながら小さくため息を零す。
 敵ながら戦いに臨む精神そのものは敬意に値する。しかし戦略的な意味から言えば、それはリソースの浪費と言う他ない。『畑から兵士が取れる』と揶揄される程の国力が無ければ、単なるジリ貧への転落でしかないと彼は知っていた。
「『自爆特攻』戦術によるディアボロスの撃退……企みは潰したとは言え、ヒューストン自身の戦力も圧倒的です。ジェネラル級は単騎でも戦局を覆し得る存在。最後の最後まで気を緩めずに挑むべきでしょう」
 一方、相手は腐っても戦略の要たる将の一隻。特異な能力を潰したとはいえ、トループス級やアヴァタール級とはそもそもの地力が段違いである。これまでの交戦経験からそうした点を身に染みているのか、同じように急行して来た周防寺・雨季(霊戦試挑体・g10969)の言葉に油断の色は無い。対して当の重巡洋艦は新たに姿を見せた復讐者たちを一瞥し、苦々し気に眉根を潜ませてゆく。
「こちらが戦力の工面に四苦八苦していたと言うのに、貴様らはこの場面でも戦力を温存できるだけの余裕があるとは。全く以て忌々しい……!」
「奇策や一発逆転の計略とは、得てして追い詰められた側が選ぶもの。優位な側に小細工は不要、ただ順当に戦力を投じれば事足りる……さて、仲間達が切り拓いてきた航路だ。グアムへ突破する為、貴殿を討つ」
 今回の作戦の最終目標は眼前のジェネラル級だが、復讐者たちからすればこのサイパン島も、断片の王が座すとされる最終目標『ハワイ』への足掛かりに過ぎない。故にこそ早々に攻略し、次へと歩を進めたいという心境なのだろう。
 相手の怨嗟を受け流しつつ、画家は両手に二挺の拳銃を握りしめる。その横では英霊機も背嚢状に格納していた海戦装を展開。主副砲塔や魚雷管を纏って戦闘準備を整えてゆく。その様子を見た冥海機もまた、右腕の喇叭型海戦装をこちらへと突き付けてきた。
「私がまだ立っていると言うのに、もう次の算段を立てているとはな。その傲慢さの報い、身を以て払うと良い」
(抗戦の意志は固い様ですね。この様子を見る限り逃走を図るとは思えませんが、戦場に絶対はありません。逃走阻止を念頭に置いて包囲陣形を取るべきでしょう)
 雨季はチラと仲間へ目配せすると、相手を挟み込む様にそれぞれ左右へと飛ぶ。繰り返すようだが相手はジェネラル級だ。直撃が即戦闘不能に繋がる恐れがある以上、敵の動きを牽制すると共に、的を絞らせないよう立ち回るのも重要である。
「まずは雨季から仕掛けます。霊能戦、開始……回せ!」
 斯くして、三者の中でまず先んじたのは雨季であった。彼女が一声叫んだ瞬間、不可視の力が文字通り渦を巻き始める。それらは瞬く間に二つの嵐と化し、荒れ狂う流れの中へとヒューストンを閉じ込めてゆく。常人ならば耐え切れずに身体を引き裂かれるであろう勢いだが、そこは相手も一軍の将だ。身動きを封じられながらも、右腕を跳ね上げて復讐者へと照準を合わせて見せた。
「演奏勝負には負けたが、単純な音圧だけならば戦艦の砲にも劣りはすまい!」
「ッ……!?」
 果たして、音と呼ぶには余りにも凶悪な衝撃が喇叭口より放たれた。それは分子結合すらも歪ませ、万物を崩壊させる共鳴砲。英霊機は咄嗟に横へ飛びつつ竜巻を更に加速させて相殺を狙うも、単純な質量弾と違って音波は拡散するものだ。避け切れなかった余波が彼女の躯体を軋ませ、不協和音を奏でゆく。
「む、仕留めきれなかったか。だが、もう一撃あれば……!」
「背面を晒すとは、思った以上に余裕が残っていると見える。軍艦の砲と比べれば些か見劣りするだろうが、お互いに人型同士なんだ。急所さえ撃ち抜けば有効打にはなるだろう?」
 更なる追撃を試みるジェネラル級だったが、そうはさせじとエトヴァがすかさずフォローに入る。敵の背へと立て続けに放たれる五発の銃弾に対し、ヒューストンは咄嗟に身を翻して防御。致命傷は避けられてしまうが、仲間への攻撃を阻止するという目的自体は達せられた。
(……今の一撃は確かに強力ではあるが、少しばかり違和感があった。もしや、先に受けた一撃で海戦装に不調を来たしているのか?)
 先行した仲間により、喇叭型海戦装には大きな傷跡が穿たれている。それによって本来の性能が発揮できていないのか。そんな疑念を裏付ける様に、反撃の大音声は些か狙いが甘い様にも感じられた。ならば、その弱点を狙い撃たぬ道理はない。
(だが、急いては事を仕損じるものだ。焦らず着実に隙を突く……!)
 常に動き回り、二挺拳銃のトリガーを間断なく引き絞る事でまずは肩口や足の付け根などを傷つけ、徐々に機動力を鈍らせてゆく。そうして下準備を整えた上で、必殺の一弾を叩き込むべく一歩前へと踏み込み、そして。
「……ふっ、言ったはずだぞ。傲慢さの報いを払わせるとな」
 クンッ、と。先程までとは打って変わった滑らかな動きで喇叭型海戦装が跳ね上がり、エトヴァの眼前へと突き付けられる。相手の不敵な笑みを目の当たりにし、そこでようやく彼はしてやられた事を悟った。
「ッ!? まさか、不調はこちらを誘う為のブラフか。ただでさえ余裕の無い状況で良くやるものだな……!」
 決して浅くはない手傷と引き換えに、確実な一撃を叩き込まんとしたのだろう。肉を切らせて骨を断つとは正にこの事だ。画家が咄嗟に塔盾と障壁を展開すると同時に、甲高い金属音が襲い掛かった。
 しかし、護りが耐えられたのはほんの数瞬。それらを吹き飛ばした超音圧が男の身体を崩壊へと導いてゆく。このままでは戦闘不能は免れぬという、寸前。
「なるほど。部下に玉砕を命じるのなら、当然将たる身も同じ覚悟なのでしょう。つまりはジェネラル級の死兵。改めてこちらも相応の覚悟を持って挑まねばなりませんね」
「むぅ! ええい、今度はそちらか……ッ」
 体勢を立て直し終えた雨季が先の借りを返すべく、仲間の窮地を救う。先ほどは押し負けたが、再び生み出された念動の双嵐は一つがエトヴァの盾となり、もう一つがヒューストンを押し留める。まるで噛み合う歯車の如き回転力は投射される音波を乱し、今度こそ敵の攻撃に抵抗していった。
「命をかけるのは常に前提であると雨季は考えます。その上で必ず全員で生還する。ディアボロスはまだ、其処まで追い詰められてはいません……玉砕より数段上の覚悟を決めて、この戦況を潜り抜けましょう」
「ああ、無論だ。覚悟と言えば、俺にも一家言あったな。音楽は表現であれ、他者の意思を奪うなどもっての他だ……!」
 敵と違い、こちらは頭数の差があるのだ。それを活かさぬ理由は無し。雨季の言葉に同意を示しつつ、エトヴァは改めて狙いをつけて引き金を押し込む。果たして、その一射はジェネラル級の関節部へと吸い込まれてゆくのであった。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!
【先行率アップ】LV1が発生!

白尾・真狐
ヒューストン?これもどこかの船の名前なのかなー、よくわかんないけど!
でも、クロノヴェーダなら倒すしかないよね!

演奏とかは既に他の皆が頑張ってくれてるみたいだから
あとは本体だけだね!皆で協力してたおしちゃおー!

僕の戦い方としては、ヒューストンが他の子達に気を取られてる隙に
【フォックスシール・ナインテイル】で拘束、
【レーザーライフル】でバーンと撃ち抜いちゃうよ!

反撃はどうせ避けらんないし武器とかで可能な限り逸らすようにして被害を軽減、
味方が戦うのを援護して、ヒューストンの気をそらすようにして戦うよ!

へいへーい、こっちだよー♪お姉さんいらっしゃーい♪
とどめさしたりとか倒したりは他の子がやってくれると思うし
僕は相手の消耗狙ったりとか、味方の損耗を減らすように戦うね!

味方との連携やアドリブも歓迎!
がーんばーるよー!いぇいいぇぃ♪


●決死の舞台で笑え
(継戦能力に問題は無かれど、ダメージは着実に蓄積しつつある、か……元より生きて帰る気も無し。ただ一分でも一秒でも時間を稼ぎ、以て大反攻作戦の発動へと繋げられさえすればッ!)
 関節部に入り込んだ弾丸が駆動系を寸断したのか、躯体の動作に違和感を覚える重巡洋艦『ヒューストン』。戦闘自体は続行可能だが、こうした損傷が積み重なればいずれ致命へと至るだろう。しかし、それでも構わないと考えていた。
 ジェネラル級四隻を投入した大反攻作戦。それが発動されれば戦況の劣勢を覆す事など容易いと信じ、それに殉じる覚悟を決めているのだ。尤も、作戦の要であった戦力は既にフィリピン海底に沈んでいる事を彼女は知らないのだが。
「んん~~、『ヒューストン』? これもどこかの船の名前なのかなー、よくわかんないけど! どんな覚悟があったとしても敵は敵。クロノヴェーダなら倒すしかないよね!」
 他方、知らぬと言うのならば新たに姿を見せた復讐者も同じ事か。防音施設内へと足を踏み入れた白尾・真狐(まったり狐娘・g05562)は、待ち構えし冥海機の姿をしげしげと眺めゆく。
 綺羅星の如く歴史に名を残す数多の者に物。元となった存在からの影響度合いは大小様々だが、歴史改竄者はその全てが例外なく簒奪者である事に変わりはない。敵ならば討つ。それさえ分かれば十分であろう。
「演奏とかは既に他の皆が頑張ってくれてるみたいだから、あとは本体だけだね! グアムにハワイとまだまだ攻略先も残ってるし、皆で協力してたおしちゃおー!」
「無自覚とは分かっているが、だからこそ随分と神経を逆撫でするものだなディアボロス!」
 真狐の言動に然したる悪意はないが、孤立無援のジェネラル級からすればその物言いは苛立つ事この上ない。故にこそ、冥海機が先手を取ったのもむべ為るかな。両肩部に搭載された近未来的な形状の砲が仰角を調整したかと思うや、眩い紫電が迸る。
 それは正しく電光石火の一撃。膨大な電圧によって加速された弾体は強い磁力を帯びており、一直線に飛翔しながらトループス級の残骸を吸着。瞬き一つの間に巨大な鉄塊へ変貌すると、復讐者へ文字通りに吸い込まれてゆく。
「っと、とと!? 元ネタは分からないけど、流石はジェネラル級ってことかな?」
 辛うじて戦闘不能を避けられたのは、重ねてきた経験の賜物か。得物である手斧や小太刀を磁力に引かれながらもその勢いを利用して身を捻り、直撃を回避。吹き荒れる鉄片の嵐に身を引き裂かれ、それらが食い込んだ傷口から激痛と共に血が滂沱と溢れるが、それでも真狐は笑みを浮かべて見せた。
「痛、い、けどぉッ! でも、がーんばーるよー! いぇいいぇぃ♪ へいへーい、こっちだよー♪ 鬼さん? お姉さん? 手の鳴る方にいらっしゃーい♪」
「虚勢を張りおって……ッ!」
 そのまま狙いをつけさせぬよう、敵の周囲を跳ね回りながら彼我の間合いを測ってゆく。対するヒューストンは次弾を装填すべく砲塔に動力を集中させてゆくのだが、その動作によってほんの一瞬だけ身動きが止まる。そんな隙を、復讐者は決して見逃さない。
「はい、ターッチ! つーかまーえたよ♪」
「ッ!?」
 真狐は一息の内に距離を詰めるや、魔力によって八本の尾を形成。それらでジェネラル級を拘束してしまう。そうして身動きが取れなくなった敵へと、復讐者は既にエネルギー充填済みのレーザーライフルを突き付ける。
「狙い撃つのはそっちだけの専売特許じゃないからね?」
「だが、これならば貴様も動けまい!」
「はっはっは! 反撃はどうせ避けらんないって、こっちも最初から覚悟の上だよ!」
 だが、ヒューストンも片方だけながら肩部の砲塔を強引に旋回。返す刀とばかりに砲門で狙いをつけてゆく。果たして次の瞬間、熱線と雷光がそれぞれの武器より放たれ、互いを撃ち貫いてゆくのであった。
成功🔵​🔵​🔵​🔴​
効果1【水中適応】がLV2になった!
効果2【ロストエナジー】がLV2になった!

ロキシア・グロスビーク
アドリブ連携ご自由に

イイ音、出してるじゃんっ
救援機動力による高速。それをヒールで基地の床に噛ませ停止をかけ
お疲れ様です!ロキシア、現着!
さあ指揮官どの――

ラ ン フ ォ ル セ
さらに生き生きと。興行が佳境に入ったなら、
お互い最後まで奏でるのがプロってもんでしょ!戦ろうか!
《失黒刀》を構える

情報戦に負けた。策が空振った。奴さんに失敗を突き付けた所で
相手の戦闘能力が変わるわけじゃあない
役立つ残留効果を残し、着実に討伐に貢献するよ

同行者が居れば【パラドクス通信】。各々の策を勘案した配置につき
伝承、開放!
居合の構え、渾身の踏み込みで瞬時に距離を詰め
その豪奢、断たせてもらう!
対手の四方より展開したAutoscopy、電脳の影法師とともに
群翔ぶ鵤の如く、残留効果の重みを乗せ振るう刃で解体せしめる!

反撃に際してはMoon-Childを両腕に這わせ活性化
守りの構えを刀で取り、身体での素受けを避けるよ
敵へ向ける獰猛な莞爾は、戦傷による化粧がより引き立てて
やっぱり……重いね!こりゃお返しも気合入れないとだ!


月鏡・サヨコ
ヒューストン……工業と文化の両面が発達した、米国の都市の名を冠する重巡洋艦
工業力の全てを戦争に捧げ、市民の文化を統制するあなた達には、皮肉な名前なのかもしれないな
……生憎、私には演奏の心得はない。ここからは、純然たる戦闘の時間だ

部下を鼓舞する能力が特徴的とはいえ、本人の実力も侮れないはず
仲間達と敵を挟み囲むように戦い、異なる方向から次々と攻撃を叩きつけよう
元より一対一の真っ向勝負ではない
この世を終わりなき大戦から解放するためなら、袋叩きもまた善し、だ

攻防の合間に僅かな隙を見つけたなら、一気に敵の懐に飛び込み、鞘走る
――『月鏡流抜刀術・零之太刀』
鞘の機構により電磁加速された《対艦軍刀『銀鉤』》を振り抜く
【先行率アップ】の助けも借り、こちらの接近に対する敵の反応の出かかりを潰すように速い一閃を放とう

散布される針は、側面から来るものを左右一対の《海戦装用増設防盾》でガード
正面から来るものは軍刀の刀身で弾き、急所への命中を防ぐ
 
戦争の亡霊に起床喇叭を聞かせる必要はない
……波に抱かれて、静かに眠れ


●無機なる白、可憐なる黒
(……このままではジリ貧だな。全く、ディアボロスはこのサイパン島を攻略する為にどれ程の戦力を投入しているのだ? そろそろ打ち止め、と言うのは希望的観測に過ぎるか。せめて軍楽を打ち破られなければ、まだ立ち回り様があったものを)
 サイパン島を巡る戦いは佳境を迎えつつある。追い詰められたヒューストンは腐ってもジェネラル級と言うべきか、躯体に負傷を蓄積させながらも粘り強く持ち堪えていた。だが、限界が近い事は誰よりも己自身が分かっているのだろう。ジリジリと迫りつつある幕引きを少しでも引き伸ばさんと、重巡洋艦は己自身に活を入れてゆく。
 そんな中、新たな復讐者が防音施設の重々しい扉を蹴破りながら室内へと突入して来た。
「――随分とドンパチやってるみたいだね! イイ音、出してるじゃんっ! 防音施設の外にまで響いてきたよ!」
 キュッ、と。ヒールの踵を地面へ噛ませて急制動を掛けながら、女童と見紛う少年が戦場へと降り立つ。彼は優美な所作で装束の裾を摘まんで持ち上げ、慇懃に腰を折ってみせる。
「先行した皆様方、どうもお疲れ様です! ロキシア、ただいま現着!」
 そうして居直ったロキシア・グロスビーク(啄む嘴・g07258)の相貌に浮かびしは不敵な笑み。その立ち振る舞いは劇場じみた戦場も相まって、非常に映えるものだ。他方、その背後からそっと音もなく別の復讐者が続けて姿を現した。
「ノーザンプトン級五番艦『ヒューストン』……工業と文化の両面が発達した、米国の都市の名を冠する重巡洋艦。工業力の全てを戦争に捧げ、市民の文化を統制するあなた達には、皮肉な名前なのかもしれないな。その上、選んだ最後の策が『玉砕』であるなら猶更だ」
 傍らの仲間とは対照的な、淡々とした声音。月鏡・サヨコ(水面に揺らぐ月影・g09883)は友である軍犬を傍らに侍らせながら、傷だらけの将を一瞥する。米国の名を冠し、史実では帝国海軍と死闘を繰り広げた軍艦の選んだ策が『自爆特攻』なぞ、彼女の言う通り皮肉以外の何ものでもない。
 サヨコは追い詰められた者が皆一様に転げ落ちる破滅に戦争の無常さを覚えながら、スラリと身の丈ほどもある対艦用軍刀を鞘走らせる。そんな仲間の動きに応じるかの如く、ロキシアもまた漆黒の刀身を持つ太刀を構えゆく。
「……生憎、私には演奏の心得はない。ここからは、純然たる戦闘の時間だ」
「さあ指揮官どの――さらに生き生きと(ランフォルセ)。興行が佳境に入ったなら、お互い最後まで奏でるのがプロってもんでしょ! 幕が下りるまで戦(おど)ろうか!」
 無機なる白と可憐なる黒。二人の演者を前に、楽奏たる将もまた自らの海戦装を起動させる。戦場を照らす照明が如く膨張した針魚型機雷が浮かび上がり、肩部に搭載された巨砲からは紫電が迸りゆく。刹那、復讐者たちの誘いに対する答えが示された。
「良いだろう。我が奏でし軍楽を冥途の土産とするが良い。途中で眠ってくれるなよッ!」
 投じられた機雷群が眩い閃光と共に大小様々な針を撒き散らし、視界を奪った所で磁力を纏った砲弾が戦場を一直線に貫く。それらが襲い来ると同時に、復讐者たちはそれぞれ別方向へと飛び退き直撃を回避。狙いを分散させるようにそれぞれが立ち回る。
(部下を鼓舞する能力が特徴的とはいえ、本人の実力も侮れないと思っていたが……ジェネラル級の名は伊達ではないらしい。真正面から相対すれば苦戦は免れなかっただろう。だが、これは元より一対一の真っ向勝負ではない。この世を終わりなき大戦から解放するためなら、袋叩きもまた善し、だ)
 サヨコは降り注ぐ鋭い針を増設防盾で防ぎ、磁力によって追従して来た砲弾は手にした得物で切り捨てる。無論、完全に無傷とはいかぬ。急所以外の部分を針先が貫き、激痛が神経を苛む。だが、直撃した時を考えればまだ可愛いものだ。
 戦況は復讐者優位で進んでいるが、だからといって慢心するつもりなど毛頭なかった。そしてそれは、敵を挟んで反対側に位置するロキシアもまた同様らしい。間断なく襲い来る重巡洋艦の火力を凌ぎながら、彼もまた攻撃の隙を伺ってゆく。
(へぇ、やっぱり……重いね! 情報戦に負けた。策が空振った。時間が足りなかった。僕らが有利な理由なんて幾らでも並べられるだろう。だけど奴さんに失敗を突き付けた所で、相手の戦闘能力が変わるわけじゃあない……こりゃ、お返しも気合入れないとだ!)
 無防備に被弾するような事態は避けられた。ただ、磁力と言う特性が厄介だ。トループス級の残骸や吹き荒れる針が不可視の力によって引き寄せられた結果、守りを掻い潜ったそれらが少年の装いを乱し、滲んだ鮮血によって濡れ羽色へと染め上げゆく。
 傷口は激痛を叫び、滴る紅は刻一刻と生命力を消耗させる。だが、彼の相貌に浮かぶのは獰猛な莞爾。そっと肌を伝う雫を指先で掬うと、慣れた手つきで唇へと朱を差す。これほど熱烈な歓迎を受けたのだ。此方もそれに応えねば無作法と言うもの。チラと敵越しに視線を向ければ、どうやら少女もまた同じ考えらしかった。
「さて、それじゃあ……そろそろこっちの番だ! 伝承、開放!」
「多勢に無勢の挟撃、これも戦場の倣いだ。よもや、卑怯とは言わないだろうな?」
 斯くして、二人は回避から攻勢へと転ずる。その嚆矢となったのはサヨコの脇に控えていた軍犬だった。背面に装備された火砲の一撃は、ジェネラル級に手傷を負わせるには余りにもささやかな威力である。
「っ、何を企んでいる……!?」
 しかし、相手はこれまで散々に復讐者から煮え湯を飲まされてきたのだ。故に例え牽制と分かり切っていても、何か裏があるのではないかと警戒し対処せざるを得ない。それに費やされる時間はほんの刹那に過ぎぬ。だが、それだけあれば彼らにとっては十二分。
「――七天の黒は切断の極北。遍く現象、時空、概念、逆説も、我が手で斬れぬ理趣なし」
「戦争の亡霊に起床喇叭を聞かせる必要はない。ただ一閃の静寂を以て沈めるのみ……!」
 奇しくも、両者が取った構えは鏡写しの如く同じ姿。得物を鞘へと納刀した居合の姿勢である。片や、幻影の如く幾つものシルエットが少年と重なり合い。片や、白銀の鞘からは焼け付く様な電光が迸る。対するジェネラル級はどちらに対処すべきか僅かに判断を迷うも、その躊躇が命取りとなった。
「その豪奢、断たせてもらう!」
 渾身の踏み込みを以て、ロキシアが先を取る。尾を曳くように影法師たちは本体よりばらけ、一斉に冥海機へと襲い掛かってゆく。その様を表せばさながら群翔ぶ鵤だ。死力を尽くした無数の斬閃が鞘より音もなく抜き放たれた。
「波に抱かれて、静かに眠れ……――『月鏡流抜刀術・零之太刀』」
 そしてそれと同時に、サヨコもまた仕掛ける。陰陽の磁力による反発は音すらも置き去りにしながら、刃を敵目掛けて解き放つ。後から動き、先に断つ理外の業。紫電と化した切っ先は相手の如何なる反応も許さない。
(機雷で凌ぐか、被弾覚悟で砲撃するか? いや、どちらも間に合わない……ッ!?)
刺し違えてでも一矢報いるか。或いは、何を差し置いてでも生き足掻き時間を稼ぐか。どちらかに振り切ってさえいれば、何かしらの反応は出来ただろう。だが、なまじ踏み止まれてしまっていたが故に、貴重な一手番を失い、そして。
 ――黒白の双撃が、ヒューストンの身を深々と切り裂いてゆくのであった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【一刀両断】LV2が発生!
効果2【命中アップ】がLV2になった!
【先行率アップ】がLV2になった!

バトラ・ヘロス
若干此方が優勢。ですが、いつ覆されてもおかしくありません。
流れを変えられない様、攻め続けます。
無双馬に騎乗して、長槍サリッサと魔力盾スクトゥムを構えて騎馬突撃を仕掛けます。
仲間との連携が可能なら、多方向からの波状攻撃で敵の注意を集中させない様に。

【鉄床陣】使用。槍と盾の複製を無数に具現化し、周囲に展開します。
前方に盾を並べ立てたファランクス陣形を形成。突撃を敢行します。
突進の勢いを乗せた盾壁を真正面から叩き付けるシールドバッシュで体勢を崩し、盾の合間から繰り出す槍衾で刺し貫きます。これまでの仲間の攻撃で傷付いた箇所を狙っていきます。

反撃はいわゆる徹甲榴弾ですか。私達の世界には無い武器ですが、こちらに来てから学びました。
複数の盾群を重ねる様に並べて受け止めます。一枚目を貫かせ、二枚目に当てて炸裂させて防御します。
常に騎馬を駆けさせ、弾幕の集中を受けない様に位置取り。ファランクスの弱点である機動力の低さを、騎馬と連動させる事で解消。
なるべく被害を低く抑え、戦場に立ち続け仲間の攻撃に繋げます。


●技術と戦術
(っ、ぐぅ!? 油断していたつもりは無かったが、いまの一手で一気に均衡を崩された……! どうにか立て直さなければッ)
 ヒューストンの躯体に深々と刻まれた斬傷からは黒々とした油が流れ落ち、バチリと微かな火花が散る。先程までの戦況はジリジリと追い詰められながらも何とか踏み止まっている状況であった。
 だが、先の二人によって受けた損傷はそんな薄氷の均衡を崩して足るものだ。どうにか戦いの流れを変えねば詰む。どう立ち回るべきか脳内で思考を巡らせるジェネラル級だったが、無慈悲にも新たな復讐者が戦場へ姿を現す。
「……見た限り、戦況は若干此方が優勢。ですが相手はジェネラル級、いつ劣勢を覆されてもおかしくありません。流れを変えられない様、手を緩めず攻め続けるべきでしょう」
 鳴り響くは床を叩く蹄の音。青縞の名を冠する愛馬に跨って突入して来たのはバトラ・ヘロス(沼蛙・g09382)だ。手にする長槍と大盾はどちらも古代ギリシアで使用された重装歩兵用の武装に近しい。両手に得物を構え、手綱を用いる事無く騎馬を操る様は手慣れたものである。
 その姿からは驕りや慢心と言った気配は微塵にも感じられぬ。あるのはただ、敵の将を確実に仕留めんとする意志のみ。それを裏付けるかの如く、彼女は徐に槍を一閃してゆく。
「エクェス、ファランクス……!」
 瞬間、復讐者の周囲にバトラが持つ物と全く同じ槍と盾が無数に出現。それらは密集陣形を取って強固な防御体制を整えつつ、鋭い穂先をジェネラル級へと突き付けゆく。重巡洋艦の表情もまた、それが脅威である事を認めている。だが一方、その正体が紀元前に名を残す戦術である事が癪に障ったらしかった。
「軍事技術の粋を結集させた重巡洋艦型冥海機たる私に対し、槍と盾で挑むとはな。暗黒大陸で蛮族に負けた英国と同一視でもしているのならば、これ以上ない侮辱だぞ?」
「あたしの生まれた世界ではこれが一般的なのですけどね。そんなに技術力を誇るなら、是非とも見せて貰いましょうか」
 一方、出身地の文明レベル的に相手が何に怒っているのかいま一つ分からないのだろう。淡々とぶつけられた言葉を受け流しつつ、バトラは愛馬の腹を蹴って突撃を開始する。対して、ヒューストンは吶喊を躊躇させるべく無数の針魚型機雷をばら撒いてゆく。
(反撃は爆弾……と言うより、いわゆる徹甲榴弾ですか。私達の世界には無い武器ですが、こちらに来てから学びました。それらを防ぐ為には一工夫が必要と言う事も)
 だが、ここで勢いを殺したり進路を変えれば正に相手の思う壺だ。故に、復讐者は減速どころか寧ろ更に加速する。刹那、接近を感知した機雷群が一斉に起爆。無数の針で空間全てを埋め尽くす。
 しかしその直前、乙女は盾を幾重にも重ね準備を整えていた。一枚目を敢えて貫かせ、二枚目で炸裂を誘発し、三枚目でその余波を防ぐ。その戦術は功を奏し、複製した盾のほぼ全てと引き換えにダメージを最小限に抑える事に成功する。何本か抜けて人馬へと食い込み爆ぜたが、この程度ならば継戦に支障はない。
「抜けられた!? あの爆発の中を突っ切るとはッ」
「そちらから見れば古びた技術だろうと、あたしにとっては実戦で有効ならそれで充分。それにどうやら、あなたの時代にも剣と弓で戦った軍人が居たと聞きますから」
 よもや、真正面から突破されるとは思っていなかったのだろう。目を剥くヒューストンの顔面目掛け、バトラは突撃の勢いを乗せた盾撃を放つ。咄嗟に艤装で防ぐも態勢を崩された所へ、本命の槍衾が襲い掛かる。
 棍棒でも、銃でも、ミサイルであろうとも。相手を殺傷可能と言う点では同じだ。果たして、繰り出された無数の切っ先は重巡洋艦の守りを穿ち、装甲板へと突き立ってゆくのであった。
成功🔵​🔵​🔵​🔴​
効果1【飛翔】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV3になった!

麗・まほろば
レディース! エーンド! ジェントルメーン!
ボーイズ! エーンド! ガールズ!
カーテンコールの時間だよ、『ヒューストン』!
まぁもちろん? 緞帳の前にならぶのはまほろばたちだけなんだけどね!
お前の立ち位置は、あ、り、ま、せーん!

【超々々々弩級戦艦級海戦装『紀伊』】に接続!
戦場で堂々と立ち向かうよ!
もちろんただぼーっとつっ立ってるわけじゃない
すこしでも長くこの戦場に立ち、そして砲撃の雨で「まほろばは脅威だ」と思わせることができれば、きっと『ヒューストン』の隙をうむことができるはずさ!
【15.5センチまほろば砲】! そして【51センチまほろば砲】!
全門装填よーい! 砲撃開始!!

敵の攻撃には【15.5センチまほろば砲】を盾に致命傷を極力避ける
大見えを切って着底だなんて、かーっこ悪いからね!
だけど、こっちをみたね!
見たということはアンコールをご希望ということだ! ありがとう!
渾身の【51センチまほろば砲】で応えてあげるねぇ!
さぁ、奈落の底へ、沈んじゃえぇ!!!


三間・勲
(連携アドリブ歓迎)

演奏の時間も終わりですね
お互いの命と進退をかけた戦いと分かっていても楽しい一時でした
貴方との音楽対決も、こんな形でなければもっと良かったのでしょうけれど…

戦闘用意、目標『ヒューストン』…打ち方始め!
舞台上に標的を囲うように機械兵器群を出現させて攻撃
共に戦う味方が居れば後方から行動を援護します

状況を見て周囲のディアボロスの行動や生存に支障が出ない範囲であれば、本体と同時に周囲の床或いは天井を攻撃
防音設備を部分的に破壊して、音による攻撃の効果を弱められないか試してみます
危険が及ぶと判断すれば標的への攻撃にのみ集中です

反撃に対し兵器群を盾にしつつ信号ラッパを構え
先の演奏を思い出しながら音で抵抗、更に砲撃の衝撃波で音の共鳴を防ぐよう努めます

貴方達を自滅覚悟の作戦まで追い詰めてしまったのは、僕達ディアボロスです
しかし冥海機を放っておけば、一般人や他の誰かが犠牲になっていたはず
【ダメージアップ】を重ねて更に押し込みましょう
最後まで戦い抜いて、全部終わらせます!


●玉の如く砕け散り
「――まだだ。まだ、終わる訳にはいかない。この身がどの様になろうとも、大反攻作戦の発動まで、時間を稼がねば……ッ!」
 ジェネラル級冥海機、重巡洋艦『ヒューストン』。その命運はもはや風前の灯火と言って良かった。度重なる復讐者との交戦によって躯体はとっくに満身創痍であり、全身に刻まれた傷からは油が零れ落ち、時おり火花が散っている。
 だが、そんな状況にあっても尚立ち続けているのは、ひとえに己が役割に殉ぜんが為。尤も、頼みの綱であるフィリピン海の戦力は既に水泡へ帰している事を彼女は知らない。その事実を復讐者が告げていないのはせめてもの敬意か、それとも慈悲か。
「レディース! エーンド! ジェントルメーン! ボーイズ! エーンド! ガールズ! さぁ、そろそろカーテンコールの時間だよ、『ヒューストン』!」
 斯くしてサイパン島を巡る戦いに文字通り幕を引くべく、麗・まほろば(まほろばは超々々々弩級戦艦ですっ!・g09815)は仰々しい身振りで敵の前へと仁王立つ。ややもすれば傲岸不遜にも見せる態度は、音楽とは言え一度勝利した余裕の表れか。
「まぁもちろん? 緞帳の前にならぶのはまほろばたちだけなんだけどね! お前の立ち位置は、あ、り、ま、せーん! この戦いの主演(しょうしゃ)はまほろばたちなんだから!」
「とは言え、演奏も戦闘も相手が居なければ成り立たないもの。お互いの命と進退をかけた戦いと分かっていても楽しい一時でした……ですが、演奏の時間も終わりですね。貴方との音楽対決も、こんな形でなければもっと良かったのでしょうけれど」
 その傍らには戦艦と共に音楽対決に臨んだ三間・勲(漁火・g10186)の姿もあった。穏やかではあるが、少年の物言いも無自覚な優位が滲んでいると言えよう。相手からすれば持てるリソースを全て投じて挑んだと言うのに、彼はそれを『楽しい』と表せるのだから。
 そんな復讐者たちの纏う空気感を前にして、ヒューストンもまたこれが最後の戦闘になると本能的に理解する。もはや、次は無い。なればこそ、滅びゆく拠点の将として恥ずべき振る舞いなぞ出来ぬものだ。耐久限界を迎えつつある躯体を無理矢理稼働させ、ジェネラル級は敵手へと相対してゆく。
「良いだろう。重巡洋艦『ヒューストン』、真っ向から受けて立つ! だが忘れるなかれ。例えこの身が敗れようとも、それは我ら冥海機の勝利へと繋がる敗北であるとなッ!」
 後が残されていない以上、余力を出し惜しむ理由も無い。残弾全てを吐き出した針魚型機雷を散布しつつ、甲高い軋みを上げる喇叭型海戦を構える重巡洋艦。対して二人もまた宣言通り、小細工なしの真っ向勝負へと打って出る。
「超々々々弩級戦艦『紀伊』、接続! 全門装填よーい! 砲撃開始!!」
「戦闘用意、目標『ヒューストン』……撃ちぃ方、始めッ!」
 仁王立つまほろばは小さな体躯と比べれば不自然に感じるほど不釣り合いな超大型の海戦装を展開。体表面に魔方陣の如き制御用回路を浮かび上がらせながら、各主副砲塔から猛烈な砲撃を叩き込み始める。
 一方、勲もまた多数の機関砲や機銃、軽重迫撃砲を出現させると、半自律稼働させたそれらを操って弾幕を形成してゆく。大火力はまほろばに任せ、自らは彼女の手が回らぬ間隙を埋めようという意図か。大小様々な火砲群は相互にカバーし合い、連携による濃密な砲火力で防音施設内を埋め尽くす。
(戦場で堂々と立ち向かうけど、もちろんただぼーっとつっ立ってるわけじゃない……すこしでも長くこの戦場に立ち、そして砲撃の雨で『まほろばは脅威だ』と思わせることができれば、きっと『ヒューストン』の隙をうむことができるはずさ!)
 間断なく砲撃を継続しながらも、まほろばは注意深く彼我の間合いを注視していた。今こうしている間にも火力の壁を突破せんと夥しい数の針魚型機雷が迫っており、其処此処で誘爆の閃光と共に大小の針が撒き散らされている。
 それらを抜けた針が一本、彼女の頬を掠め紅の雫を伝わせてゆく。しかし、戦艦が動じる事は無い。最も警戒すべきは機雷の向こう側に居るジェネラル級、その右腕に装備されし喇叭型海戦装だ。
(この状況で最も厄介なのはやはり『音』……この施設を利用した大音声を放たれては、防御する事も難しいでしょう。そうなれば負けぬとはいかないまでも、痛手を負う事は必至です)
 勲もまた同じ結論に至っているらしい。純粋な技量では上回ったものの、相手は軍勢を鼓舞し得る軍楽の奏者である。自壊覚悟で全力の音圧を放たれた場合、防音施設の反響能力をも相まって如何な復讐者とて無傷では済むまい。
 だがその一方、今ならそれを無力化する方法が無い訳でもなかった。少年はそっと、防音施設の天井へと視線を巡らせる。音を漏らさぬ為、施設の壁や天井は軍事施設らしく分厚く頑丈だ。しかし、度重なる戦闘によって敵のみならず建物そのものにも損傷が蓄積しているはず。故に今ならば、或いは。
「重ね重ね、流石はディアボロスと言った所か。このままでは埒が明かんな。しかし、最後が尻すぼみと言うのも詰まらない話だろう? お望み通り、終幕は派手に行かせて貰うぞ!」
 と、そんな中。機を窺っていたヒューストンが動く。いつの間にか舞台上の中央、つまりは最も音を反響させやすい位置へと陣取るや、右腕の喇叭型海戦装を復讐者たちへと向けていた。もはや状況は待った無しである。
 幸い、敵の照準は主攻であるまほろばに重きが置かれているらしい。である以上、試してみる価値はある。勲は相手が音を響かせる直線、動員できる火線を全て敵の頭上へと投射していった。
「貴方達を自滅覚悟の作戦まで追い詰めてしまったのは、僕達ディアボロスです。しかし冥海機を放っておけば、多くの一般人や他の誰かが犠牲になっていたはず……それをいま此処で、全部終わらせます!」
「何処を狙って……ッゥ!?」
 見当はずれな方向に対する攻撃に何をしているのかと訝しむジェネラル級だったが、すぐさまその意図を知る事になる。がらり、と。銃撃に耐え切れず遂に崩壊を始めた天井が瓦礫と化して冥海機へ降り注ぐ。
 無論、幾ら手負いとは言えこの程度で手傷を負うほど重巡洋艦も軟ではない。構わず喇叭型海戦装を起動させて復讐者を薙ぎ払わんとするが、その威力が想定よりも小さかった。天井に空いた穴から音が漏れ、十分な反響を発生させられていないのだ。
「これが狙いかッ! だが、例え反響を利用できずとも元々の威力は十二分。直撃さえさせれば、消し飛ばす事とて不可能では……!」
「おーっと、こっちをみたね! 見たということはアンコールをご希望ということだ! ありがとう!」
 しかし、ここで中断しても事態は好転せぬ。音撃砲を浴びせかけるヒューストンだったが、まほろばは副砲塔でそれを遮りながら果敢にも相手へ向き直ってゆく。砲の勝負とあれば、弩級戦艦を名乗る以上は避けて通れぬ。
 彼女はビリビリと全身を震わせる超振動に耐えつつ、自身の保有する最大火力である51cm主砲を回頭。激痛に苛まれているであろうにも関わらず、不敵に笑みを浮かべて見せ、そして。
「さぁ、奈落の底へ、沈んじゃえぇ!!!」
 刹那、装薬の炸裂が、大気を散らす衝撃が、放たれた砲弾の唸りが。一拍の静寂の後に、ジェネラル級の放った大音圧を塗り潰す。真っ直ぐに飛翔する徹甲榴弾は狙い違わず、重巡洋艦へと吸い込まれ、そして。
「扶桑、日向、榛名、伊一六八。後は、頼んだぞ……――――」
 既にフィリピンの海へ沈んだ同胞らの名を口遊みながら、ヒューストンもまた遂に轟沈してゆくのであった。

 ――斯くして、此処に『サイパン島』を巡る決戦は復讐者の勝利によって幕と閉じた。
 これによりグアム、ひいては『断片の王』が座すと目されるハワイ攻略の足掛かりともなるだろう。
 かつて多くの命が玉の如く砕け散った悲劇の島は、いま再び無数の残骸にて彩られている。復讐者たちは戦争が齎す悲哀と無常を覚えながらも、勝利を手に帰還を果たすのであった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【水面走行】がLV2になった!
【アイテムポケット】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV6になった!

最終結果:成功

完成日2024年07月14日
宿敵 『ヒューストン』を撃破!