喝采(作者 藍鳶カナン
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#断頭革命グランダルメ  #ラ・ショー=ド=フォンの霧  #ラ・ショー=ド=フォン  #アロイス・フォン・レディンク  #スイス 

●ラ・ショー=ド=フォン
 ――電光石火の攻略だった。
 ――あまりにも鮮やかな電撃戦だった。
 これほどの短期間で『ル・ロックル』が陥落するとは大陸軍の誰ひとりとして予想だにしていなかっただろう。
『ディアボロスが、この『ラ・ショー=ド=フォン』に迫っているというのですか?』
 現代において『時計の帝都』と呼ばれるラ・ショー=ド=フォンの護りを担うジェネラル級クロノヴェーダにとってもこの状況は想定外。アロイス・フォン・レディンク――スイス史に名を遺す人物の名を冠した『彼女』は苦渋の決断を下す。
 改竄世界史においてクロノヴェーダの重要拠点となった地が正史とは異なる様相を呈するのは珍しいことではない。
 ここラ・ショー=ド=フォンの地にも正史には存在するはずのないものが築かれていた。
 決戦のため準備されていた秘匿兵器のひとつ、巨大なオベリスク型の時計塔だ。
 首都ベルンのオベリスクが完成していない現状では真価を発揮することは不可能、なれど背に腹は代えられぬとアロイスは技師達に兵器の起動を命じた。オベリスク技術の集大成たるこのラ・ショー=ド=フォンを決戦前に失うわけにはいかない。
『ラ・ショー=ド=フォンのオベリスク、時刻と方位を機械化ドイツ帝国滅亡時に合わせなさい。
 照準確定後、全オベリスク限定起動。
 彷徨える兵団を招集し、ディアボロスに対抗します』
 淀みひとつなく彼女の命に応じるのは自動人形の技師達だ。

『オベリスク限定起動準備』
『時刻合わせ良し』
『包囲確認良し』
『目標、機械化ドイツ帝国滅亡時点』
『キマイラウィッチプロトコル実行』
『境界の霧の発生を確認』
『オベリスク限定起動成功』

 淀みひとつなく秘匿兵器は限定起動に成功。
 然れど現段階での起動を余儀なくされた現状そのものが決戦までの整然たる流れを大きく狂わせかねない。
『起動成功を確認。これでディアボロスは、このラ・ショー=ド=フォンに近づくことは出来ないでしょう』
 己でそう口にはしたが、アロイス自身が事態を楽観視できずにいた。次いで零れた声音は小さく、なれどその言葉は。
 ――皇帝陛下が仰る通り、
 ――このディヴィジョンは捨てざるを得ないのかもしれませんね。

●時先の導
 ――電光石火の攻略だった。
 ――あまりにも鮮やかな電撃戦だった。
「ひゃあああ、ひゃあああ!! びっくりですびっくりです、皆様ほんとうにお疲れさまでした……!!」
 まさに電撃、まさに神速。
 僅か五日でスイスの都市ル・ロックルを制圧したディアボロス達はジェネラル級二体の早期撃破にも成功し、断片の王たる人形皇帝ナポレオンが拠点とするベルンへの進軍を再開した。だがその途上に位置する都市ラ・ショー=ド=フォン近郊で、
「更に皆様の御力をお借りできれば幸い! という事態が発生しました!!」
 怪しい霧が発生し、霧の中から現れたゾルダートが進軍中のディアボロス達へ攻撃を仕掛けてくるのだという。
 新宿駅で迎えたディアボロス達にそう語るのはクレメンティア・オランジュリー(オランジェット・g03616)、ショコラの瞳でまっすぐ仲間達を見つめた時先案内人は更に言を継ぐ。進軍中のディアボロス勢はラ・ショー=ド=フォンの近郊でこの霧とゾルダートの襲撃に行く手を阻まれている状態だが、
「今、霧の中から現れるゾルダート達の撃破を目的としてラ・ショー=ド=フォン近郊へ向かうパラドクストレインが幾つも新宿駅に現れているのは御存知のとおりです! 私からも皆様に、霧の中から現れるゾルダート達の撃破をお願いします!」
 この霧の発生と霧の中からのゾルダート出現は、自動人形の『決戦兵器』と呼ぶべきクロノ・オブジェクトのひとつによる現象であると推定されている。断頭革命グランダルメ奪還戦を前にしてその存在を暴けたこと自体が大きな成果だが、
 霧の中から現れるゾルダート達を撃破する任務を数多成功させてラ・ショー=ド=フォンへ向かい、この都市の決戦兵器を無力化しての攻略が叶えば、自動人形の防衛戦略を根本から覆すような結果を齎せるはずだ。
 困難ではあるだろう。
 だが、断頭革命グランダルメ奪還戦での勝利を確実に掴み獲るための軌跡を、またひとつ織り成していけるのなら。

 魔法的な霧で【完全視界】でも完全には見通せない。
 ラ・ショー=ド=フォン近郊で発生している霧はディヴィジョン境界の霧に似た性質を持っているものと思われる。
 事実、霧の中から現れるのは本来なら機械化ドイツ帝国のクロノヴェーダであるゾルダート達。
「それも、機械化ドイツ帝国奪還戦のあとに断頭革命グランダルメに漂着した――のではなくて、機械化ドイツ帝国の崩壊と運命を共にしたはずのゾルダート達だと思われます! それがラ・ショー=ド=フォンの決戦兵器の効果だとも!!」
 恐らくは『ディヴィジョン崩壊と運命を共にしたクロノヴェーダを招き寄せ、戦力化する』という効果なのだろう。
 霧の中から現れるゾルダート達はさながら復讐心に支配されたかのごとき状態であるという。
「ディアボロスへの復讐心、それに衝き動かされる彼らは強烈な復讐心ゆえにディアボロスの居場所を嗅ぎ当てることが可能であるらしく、こちらから索敵などを行う必要はありません! 彼らと邂逅する前でなく、邂逅した後のことに全力を!!」
 お願いします、と真摯な声音でクレメンティアは告げた。
 霧の中で邂逅することになるゾルダート達は復讐心によって戦闘力が高められており、そのまま戦うのであれば強敵相手の激戦は必至。だかそれはあくまで『そのまま戦うなら』だ。
「彼らの戦闘力を高めている復讐心は、彼ら自身が抱いたものではありません! これもまたラ・ショー=ド=フォンの決戦兵器の効果だと想定されていますが、この復讐心は『強制的に植え付けられたもの』であるみたいですっ!! この不自然な復讐心にゾルダート達自身が疑問を抱けば植え付けられた復讐心は消え、戦闘力の強化も解除されるはずですっ!!」
 彼らは、と言を継ぐクレメンティアの眼差しがふと和らいだ。
「今回皆様が出逢う彼らは、本来ならば強烈な復讐心を抱くようなゾルダート達ではないのですよね」
 機械化ドイツ帝国が奪還戦で敗北した折、敗北への憤りを抱くのではなく、
 敵ながら天晴――と勝利を掴み獲ったディアボロス達への喝采を贈りながら崩壊する帝国と運命を共にした。
 そんなゾルダート達であったとクレメンティアは語る。
 たとえ植え付けられた復讐心を消すことが叶ったとしても互いに敵同士であることには変わりない。自分達にとって彼らが斃すべき相手であることには変わりない。けれどきっと、互いを戦いぶりを称え合う好敵手同士のような戦いができるから。
 ――無理矢理に植え付けられた復讐心から彼らを解放してあげたい。
 ――どうぞどうぞ、そんな気持ちで向き合ってあげて。

「皆様のこころで、軌跡で、彼らを解放してあげてください」
 たとえば、以前は復讐のためだけに生きていたが、今では復讐よりも大切なものができた、とか。
 たとえば、仇敵といえる相手に戦いを挑んだとき、仇敵を斃したとき、自分はこんな気持ちだった、とか。
 たとえば、自分は過去にこのような目に遭ったが、その元凶に対して今はこういった想いを抱いている、とか。
 復讐はディアボロスにとって身近な存在だ。
 己が復讐について思うことや感じること、己の復讐に関わる軌跡やそれに伴う想いなどをゾルダート達に語りかけたなら、彼らに『自分達を衝き動かしている復讐心は何かおかしい、不自然なものだ』と疑問を持たせることが叶うかもしれない。
 そうして、好敵手同士のように戦いたい、と呼びかけたなら、きっと――。

 迫る断頭革命グランダルメ奪還戦、恐るべき効果を発揮する決戦兵器。
 強制的に植え付けられる復讐心はキマイラウィッチのものに似ていると思えるもの、ゆえに苛烈。
「今回の作戦もまた、奪還戦での勝利を確実に掴むためのものですっ! でもでも、どうぞどうぞ、邂逅するゾルダート達を植え付けられた復讐心から解放してあげるためにも、と、お願いさせてくださいね!!」
 だって、復讐心に支配されてしまうのは、きっと苦しいから。
 それが自らのものでないというなら、なおさら苦しいと思うから、と仲間達を見回して、クレメンティアは話を結んだ。
 ――どうぞどうぞ、よろしくね!!

●復讐
 ――唐突に意識が回復した。
 ――帝国の崩壊とともに消えたはずの意識が回復した。
 崩壊のさなかにも飛翔していた身は変わらず空を翔けていると感じたが、怪しげな霧による視界不良で周囲の様子は不明。
 ただ、機械化ドイツ帝国とは異なるディヴィジョンであることは察せられた。
 そう、我らが帝国は滅びの道を辿った。
『ああ、崩壊し、滅亡していった機械化ドイツ帝国よ……!!』
 帝国の崩壊と運命を共にしたあのとき、アヴァタール級ゾルダート『シャオシュピーラー・ローラント』は喝采を挙げた。
 敵ながら天晴! 見事な勝利であった、ディアボロスの諸君よ――!! と。
 然れど一瞬浮かびあがったその記憶は突如として彼の裡に燃え上がった復讐の炎に呑まれていく。
『ああ、崩壊し、滅亡していった機械化ドイツ帝国よ……!! おのれおのれディアボロスども!! 帝国を滅ぼした奴らを赦してなるものか!! 熱く滾るこの復讐の炎を見よ!! 熱く燃え盛るこの復讐の炎で灼き尽くしてくれよう!!』
 決して己のものではない復讐心、なれど『シャオシュピーラー・ローラント』はその不自然さに気づくことなく、
 苛烈な炎のごとき熱に浮かされたように復讐という言の葉を繰り返す。
『憎悪すべき敵、ディアボロスどもに復讐を!!』
『『復讐を!! 復讐を!!』』
 彼に従って霧の中を飛翔するトループス級ゾルダート『サンダーブリッツまたの名を双雷』たちもまた、上官と同様の熱に浮かされるように復讐を唱和し、繰り返し続けていく。復讐の炎を滾らせ、ディアボロスを見つけ次第叩きつけるために。
 だが、これは決して彼ら本来の姿ではないから。
 ――叶うなら、彼らに、解放を。
 ――叶うなら、彼らに、好敵手に喝采を贈る、本来の姿を。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
3
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【未来予測】
1
周囲が、ディアボロスが通常の視界に加えて「効果LV×1秒」先までの未来を同時に見ることのできる世界に変わる。
【一刀両断】
1
意志が刃として具現化する世界となり、ディアボロスが24時間に「効果LV×1回」だけ、建造物の薄い壁や扉などの斬りやすい部分を、一撃で切断できるようになる。
【腐食】
1
周囲が腐食の霧に包まれる。霧はディアボロスが指定した「効果LV×10kg」の物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)だけを急激に腐食させていく。
【罪縛りの鎖】
1
周囲に生き物のように動く「鎖つきの枷」が多数出現する。枷はディアボロスが命じれば指定した通常の生物を捕らえ、「効果LV×2時間」の間、移動と行動を封じる。
【勝利の凱歌】
2
周囲に、勇気を奮い起こす歌声が響き渡り、ディアボロスと一般人の心に勇気と希望が湧き上がる。効果LVが高ければ高い程、歌声は多くの人に届く。
【友達催眠】
1
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【プラチナチケット】
1
周囲の一般人が、ディアボロスを関係者であるかのように扱うようになる。効果LVが高い程、重要な関係者のように扱われる。
【断末魔動画】
1
原型の残った死体の周囲に、死ぬ直前の「効果LV×1分」に死者が見た情景が動画として表示される世界になる。この映像はディアボロスだけに見える。
【エイティーン】
1
周囲が、ディアボロスが18歳から「効果LV×6+18」歳までの、任意の年齢の姿に変身出来る世界に変わる。
【活性治癒】
1
周囲が生命力溢れる世界に変わる。通常の生物の回復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」し、24時間内に回復する負傷は一瞬で完治するようになる。
【植物活性】
1
周囲が、ディアボロスが指定した通常の植物が「効果LV×20倍」の速度で成長し、成長に光や水、栄養を必要としない世界に変わる。
【パラドクス通信】
1
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【通信障害】
2
ディアボロスから「効果LV×1,800m半径内」が、ディアボロスの望まない通信(送受信)及びアルタン・ウルク個体間の遠距離情報伝達が不可能な世界に変わる。

効果2

【能力値アップ】LV2 / 【命中アップ】LV3 / 【ダメージアップ】LV2 / 【ガードアップ】LV3 / 【リザレクション】LV1 / 【先行率アップ】LV1 / 【ドレイン】LV1 / 【ダブル】LV1 / 【ロストエナジー】LV1 / 【グロリアス】LV3

●マスターより

藍鳶カナン
 こんにちは、藍鳶カナンです。
 奪還戦の勝利を確実に掴み獲るために、どうぞどうぞ、皆様の力を、心を、軌跡を。
 思うところがある方は、諸々が疎かにならない範囲で心情などもがっつりどうぞ!!

 ※当シナリオでは、調査・情報収集などは行えません。

 ※リプレイは敵との邂逅直後からスタート。索敵などは不要です。

●運営予定
 選択肢1→2→3の順にリプレイ執筆予定。
 進行状況についてはマスターページも合わせてご確認いただければ幸いです。

 ※選択肢1の採用は少数名。
 選択肢がクリア可能な🔵を得られるプレイングが揃い次第(最速で20日8:30)、執筆開始予定です。
 22日8:30の時点で選択肢1に採用可能なプレイングがなかった場合、その時点から選択肢2のプレイング募集を開始します。

 ※以降の選択肢も場合によってはプレイング募集期間が短めになるかもしれません。

 継続参加は勿論、途中参加や一点のみのスポット参加も大歓迎。
 いずれの選択肢も、判定・タイミング・状況次第では採用できない場合がある旨、ご了承いただければ幸いです。
 また、すべて『纏めて採用・纏めてリプレイ』となります。特に戦闘選択肢はこの点を御理解いただいていると判断できるプレイングを優先的に採用させていただきます。

●霧について
 魔法的な霧が発生していますが、【当シナリオでは】敵との会話や戦闘に不利などは生じないものとして扱います(敵味方ともに霧による有利不利はないものとしますので、霧への対処などは不要です)。

●選択肢1:霧から現れるゾルダートとの会話
 採用は2~3名程度。超成功以上の判定が出た場合は1名採用でクリアするかもしれません。
 OPを参照の上、敵全体に語りかけるようなプレイングがおすすめです。
 特にアヴァタール級にかけてやりたい言葉があるといった場合は、上記の中に織り込む感じでどうぞ!

 ※OPのこの選択肢関連の描写は、あくまで【当シナリオで参照するもの】と考えてください。別のシナリオの参考にはならない旨、ご理解たまわれれば幸いです。

●選択肢2:👾ディアボロスを狙うトループス『サンダーブリッツまたの名を双雷』
 外見や能力などは情報欄を御確認ください。
 戦闘力が強化されています(戦闘判定が厳しめになります)が、選択肢1のクリアによって強化は解除されます。

●選択肢3:👿アヴァタール級との決戦『シャオシュピーラー・ローラント』
 外見や能力などは情報欄を御確認ください。
 戦闘力が強化されています(戦闘判定が厳しめになります)が、選択肢1のクリアによって強化は解除されます。

 ※選択肢1がクリアされていない場合は、どれほど優れたプレイングであっても『成功🔵🔵🔵🔴』以下となりますが、
 選択肢1がクリアされていれば『大成功🔵🔵🔵🔵』以上の判定も出るようになります。

 それでは、皆様の御参加をお待ちしております。
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このシナリオは完結しました。



発言期間は終了しました。


リプレイ


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
Brüder、同胞達よ
耳を傾けてほしい
俺は機械化ドイツ帝国のディアボロス、エトヴァという

俺はディアボロスとして復讐を抱いたが
その復讐は、貴殿らゾルダートに灰にされた仲間達の……無念の想いを、自らのものとした
俺自身が無力な俺を許せなかった
このままでは、いられないと
それがディアボロスとなり戦い始めた契機だ

祖国への理想を抱き、散っていった仲間達のように……戦う
理不尽を看過できず、抗い続けた仲間から継いだ火だ
理想の下、戦い続ける
ゾルダートの貴殿らにも、譲れぬ思いがあったのだろう
ゆえに俺達は戦ったんだ

機械化ドイツ帝国の地を奪還し……
この復讐から解き放たれた
仲間たちに、別れを告げた
祖国には、二度と戻れないのだと

今、俺が前線に立ち、戦い続けているのは
俺を受け入れてくれた、新たな仲間と故郷のため
今度は己に成せることを成すために
俺はもう復讐に囚われてはいない
ただ力として抱く
祖国を出て、長い道程だよ

今、貴殿らを眠りから呼び覚まし、手駒とした連中を討ちに行く途上だ
立ちはだかるなら、誇り高き戦士として対峙しよう


ソレイユ・クラーヴィア
ドイツ帝国の亡霊を呼び出した上に、復讐で意識を塗りつぶし尖兵とするとは、なんとも残酷な…
私もいわば亡霊の様な存在ではありますが
こんな風に弄ばれたとしたら嫌悪が勝ります
彼らの心を、どうにか取り戻したい

ゾルダート達よ、聞いてください
貴方達の復讐心は、本当に貴方達のものですか?
祖国を滅ぼされた苦しみは復讐心を抱くに値するでしょう
しかし、同時に貴方達は、技術の粋を集めた不滅の機械帝国を討ち果たした復讐者を認めてもいたのではないですか?

私も過去仇敵に殺され、亡霊の如く蘇ったディアボロスです
故郷の家族との縁と、未来を断ち切った者への復讐心が無いとは言いません
一発殴りたい、位の感情は当然あります

ですが、それだけでは、無いのです
人の抱く感情は、ひとつではない
彼が私を殺すに至った経緯も知りたいし
侵略者に存在を乗っ取られた禍への憐憫もあります

貴方達はドイツ帝国が滅んだ時、どう思いましたか?
貴方達の抱いた想いは復讐ひとつでは無い筈

私は祖国を愛し宿敵へも矜持を持って対する、誇り高きゾルダートとの再戦を希望します


四葩・ショウ
服の上から触れる
硝子軸の羽ペン
“嵐を齎すのは、もっとも静謐な言葉”

目蓋をひらいて
とびこむように躍り出て
かれらの目の前でレイピアを手放したなら
真摯に、心へまっすぐ届ける、演説を

どうかきいて――と
告げるためひらいた唇を
一度、とじたのは
胸がいっぱいになったから

……
ねぇ、どうしてかな
どうしようもなく
貴方のこと、思い出してる

……最期に、『わたし』の秘密を教えた
巨大化ゾルダートの『友達』がいるんだ

あの日
こう思ったの
彼の自爆を止めたい、助けたいって
はじめからわかってた
望む形で彼を助けることが叶わないって
それでも

生きて欲しかった
この手でいのちを奪った、今でも
ずっと彼を、憶えてる、わすれない

今だって、そうだよ
わたしは
奪われてしまった貴方達を、とり戻したい
ほんとうの貴方達に逢いたい

貴方のすべてを受け取って
わたしのすべてで――貫いてみせる

ねぇ――おしえて?
燃え盛り突き動かされる、その衝動は
焦がれるほどに熱い、その想いは
ほんとうに、貴方自身のもの?

思い出せる?
そんなにも激しい感情を擁いた
その理由を
貴方の、軌跡を


アンゼリカ・レンブラント
私達が行うは侵略者を前に敗北を許されない戦い
でも、それは彼らもそうだった

一度の邂逅、最後の朝を生涯最高の朝とした聖騎士エルネスト、
そして最後は私たちを認めたアーサー王
誇り高い敗者として好敵手に喝采を送った者の気高さ
私は心に強く刻んでいる知っている

なら!

ゾルダート達全体に語り掛けるよ
待って!私たちは貴方達の敵、
そして憎悪すべき者とされて当然だろう

けれど、その憎悪の想いは貴方たちの本当の心から来たものか?
帝国の崩壊を間近に見た貴方たちなら知っているだろう
皇帝ヴィルヘルムの偉大さと気高さを、
その意思受けたビスマルクが心のままに動く復讐ではなく
自分達の帝国を何者にも触れられざる存在としようとしたこと
「機械化ドイツ帝国よ、永遠なれ」!

敵ながら、本当に敬意を持つべき姿だったと――私は思っている

どうしてだろう、涙が零れる
あぁ敵にこうあってほしいと望むのは傲慢なんだろう

それでもただ私は今望みたい
今日のあなた達との邂逅を最良の日としたい
あなた達を今日出逢った最高の宿敵としたい

だから、どうか本来の心のままに


●邂逅
 ――嵐を齎すのは、もっとも静謐な言葉。
 ――目蓋を閉じて、懐に秘めた純白の羽根に硝子軸が煌く羽根ペンに触れたなら、贈り主の声音が胸裡に柔く響いた。
 当然ながら四葩・ショウ(After the Rain・g00878)が花の色の眼差しを閉ざしたのは僅か一瞬のこと。
 現代において『時計の帝都』と呼ばれるラ・ショー=ド=フォンから発生し、彼の街への道を閉ざすよう都市の近郊一帯を呑み込んだ魔法的な霧の中へ足を踏み入れ、霧を裂いて飛来する敵勢の気配を察した刹那にはもう、一瞬閉ざした目蓋を開き迷わず地を蹴っていた。歌劇の名を冠する靴で大地から解き放たれれば【飛翔】で躍り込むのは空中からこちら目掛け今にも襲いかからんとした軍人ながら洒落者の気配を感じさせる壮年男性と戦闘機めいた外観のゾルダート達の眼前、
 仲間が燈した先陣を切る加護を齎す風をも掴んだ燕の乙女は霧の裡にあっても凛と煌く硝子のレイピアを一閃し、
 敵勢の眼差しを惹きつけた美しき刃を――白き指から手離してみせた。
『『!!??』』
「どうか、わたし達の話をきいて――」
 熱く滾る復讐心のままにディアボロス達を強襲せんとした敵勢も流石に虚を衝かれたその一瞬に花唇から響き渡ったのは、歌唱と演説に長けた、誰もが思わず耳を傾けてしまうような声音。然れど凛と通る声音を響かせたショウの魂の芯から切なく懐かしく、涙が零れそうなほどに愛おしい想いが溢れてその胸を満たす。思わず声を詰まらせてしまうほどの。
 だって機械化ドイツ帝国を訪れたあの秋の日に、変容してしまったゾルダートの、『友』の前で同じことをした。
 緑の瓶の裡で金に弾けるアプフェルショーレと、千切れてしまった青きリボンに彩られた記憶。
 友と異なるそれとは言え『変容してしまったゾルダート』を間近にすれば胸いっぱいに満ちた想いに思わず花唇を震わせたけれど、頼もしき仲間達がともにあるからそれも隙になりはしない。燕の乙女が彼らの意識を惹きつけた機を逃さず活かし、彼女よりも更に演説に秀でた声音が霧の世界に朗と響き渡った。
「Brüder、同胞達よ」
 ――耳を傾けて欲しい。
 彼らと同じく機械化ドイツ帝国を故郷とするエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)も真っ向から同胞達と向き合うべく【飛翔】で大地を離れ、正面からゾルダート達に相対して言を継ぐ。
「俺は機械化ドイツ帝国のディアボロス、エトヴァという」
 蒼穹の瞳に映した同胞達に何ひとつ偽ることなく名乗りを上げれば、
『――!! 同胞でありながら帝国に反抗し、滅びに加担した輩か!! おのれおのれ、赦しはせぬぞ!!』
『『赦さない赦さない、赦してなるものか! 復讐を!! 復讐を!!』』
 途端に激昂した指揮官の壮年男性、アヴァタール級ゾルダート『シャオシュピーラー・ローラント』が蒼穹の天使を銃口で捉えるべく二丁拳銃を翻し、戦闘機めいた外観のトループス級ゾルダート『サンダーブリッツまたの名を双雷』達も復讐心を煽られたように己が両腕そのものの機銃で掃射せんとしたが、この霧から現れた他のゾルダート達と既に幾度も言葉を交わして来たエトヴァにとっては彼らの反応も想定のうち。
 なれど蒼穹の天使が言を継ぐより先に両者の間に跳び込んだのは霧の裡にあっても夏陽のごとく輝く金の軌跡、
 仲間達と同じく【飛翔】で翔けたアンゼリカ・レンブラント(光彩誓騎・g02672)が、
「待って! 私達は貴方達の敵、そして憎悪すべき者とされて当然だろう。だけど……!!」
『解っているではないか! ならば我らの復讐の炎を見よ、滾る復讐の炎で貴様らを焼き尽くしてくれよう!!』
『『今こそ滅びよ、我らが帝国を滅ぼしたディアボロスども!! 滅べ滅べ滅べ滅べ――!!』』
 ――私達が行うのは侵略者を前に敗北を許されない戦い。
 ――でも、それは彼らもそうだった……!!
 相容れずとも対等な相手と胸に敬意を抱いて言い募るけれど、彼らの復讐の炎は更に滾り煽られたように燃え上がり、
「聴いてください、ゾルダート達よ。貴方達の復讐心は、本当に貴方達のものですか?」
『何を言う! 我らが帝国を滅ぼした憎き敵相手に復讐心を抱かぬ者が何処にいる!?』
『『復讐を! 帝国を滅ぼしたディアボロスどもに復讐を!!』』
 己もまた彼らと真っ向から相対すべく【飛翔】で翔けたソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)も、眼の前のゾルダート達が本来のものではない復讐心に衝き動かされる様を目の当たりにして蒼穹と黄昏の眼差しに痛ましさを燈した。滅びゆくディヴィジョンと運命を共にしたはずのクロノヴェーダを呼び覚まし、狂気とも思えるほど苛烈な復讐心を植え付けて尖兵にするとは、なんと残酷な兵器、なんと残酷な作戦であることか。
 自動人形達が起動した決戦兵器たるクロノ・オブジェクト。その効果によって、
 偽りの復讐心に焼べられ(くべられ)続けている薪は、このゾルダート達の矜持と尊厳そのものなのだ。
 断頭革命グランダルメに生まれ育ち、淫魔の手により死して新宿島に漂着した我が身を顧みれば、そして西暦1793年のパリ近郊で箱庭めいた世界の壁となっていた境界を突き破って新宿島に漂着した経験をも思い起こせば、もしも己が新宿島に漂着せぬまま敵の兵器に囚われ彼らのような復讐心を植え付けられたら――と想像した途端に魂を貫いた悍ましさはあまりに鮮やかで、なればこそソレイユは時先案内人が語っていた彼ら本来の心を取り戻したいと胸を灼くほど強く希う。
「祖国を滅ぼされた苦しみは復讐心を抱くに値するでしょう、しかし!」
 更に激昂しかけたゾルダート達を制するよう腕を一閃、霧を薙いだ少年演奏家の袖口に煌くは陽を意匠したカフリンクス、金銀が高い技能を燈す高速詠唱の要領でソレイユは彼らが反駁するよりも速く言を継いで、
「同時に貴方達は、技術の粋を集めた不滅の機械帝国を討ち果たしたディアボロス達を認めてもいたのではないですか?」
「そう、私だって、私達だって思ったんだ! 敵ながら、本当に敬意を持つべき姿だった――とね!!」
 澄んだピアノの音色を霧の彼方まで、彼らの胸に燃え滾る復讐の炎の奥に呑まれた真なる想いにまで響かせるような心地で彼が語りかければ、天の光映す瞳に力強い同意を込めたアンゼリカが心からの賛嘆をまっすぐ口にした。
 機械化ドイツ帝国の終幕に見た皇帝ヴィルヘルム2世や空中要塞ビスマルクの在りようを胸の裡に甦らせれば、
 幻想竜域キングアーサーの終幕にまみえた聖騎士エルネストや王たるアーサー・ペンドラゴンの在りようも鮮やかに甦る。
 絶対不可侵であったはずの王城キャメロットを一気に切り崩したディアボロス達を高く評価して、対話に応じたばかりか、対価を要するとは言えこちらが望む情報を与えてくれたアーサー王。幻想竜域キングアーサー奪還戦では、恐らくはすべてを認めたわけではないのだろうが、それでも最期には、
 ――この先の戦でもまた、汝らの大義を、示してみせるがいい。
 餞とも受け取れる言の葉を遺して逝った、幻想竜域の王。
 湖水地方奪還軍集結阻止作戦にて相対した聖騎士エルネストとは唯一度きり、正しく一期一会の相対で、彼が麾下の軍勢に合流するのを阻んだ自分達との真っ向勝負に応じてくれた彼は、互いに全力で激突する戦いのなかでディアボロス達へ惜しみない称賛を贈り、光焔の大剣での豪快な斬撃でアンゼリカが彼の最期を飾れば、聖騎士は。
『――……!! 我の眼に曇りはなかった、やはり今朝こそが、我が生涯最高の朝となった……――!!』
 最高の敵との最高の戦いであったと彼が感じてくれたと確信できるほどに眩い称賛を遺して逝った。
 誇り高い敗者として好敵手に喝采を贈って逝った敵の気高さを、
 心に強く刻んでいるから、識っているから。
 願わくばすべての敵にそうあって欲しいと望むのは傲慢だと自覚しながらも、アンゼリカは希わずにはいられない。
 だって時先案内人の言うとおり、眼前のゾルダート達も本来はそうであるはずだから。
 揺るがぬ眼差しで彼らを見据え、
「改めて訊ねよう。その憎悪の想いは貴方達の本当の心から来たものか?」
 帝国の崩壊を間近に見た貴方達なら識っているだろう。
 散り逝くその瞬間でさえ金光の鬣を靡かせる雄獅子のようであった皇帝ヴィルヘルム2世の偉大さと気高さを、
 その遺志を受けた空中要塞ビスマルクが衝動のままに動く復讐ではなく、
 帝国全土を潔く時空の藻屑と化すことで、自分達の帝国を何者にも触れられざる存在としようとしたことを。
 ――『機械化ドイツ帝国よ、永遠なれ』!!
 アンゼリカが口にしたその言葉が霧の裡に響き渡ればローラントは、おお、と感極まって身を震わせたように見えた。
 相容れぬ敵同士であったとはいえ敬意を抱かずにはおれなかった彼らの在りよう。世辞などでは一切なく、あのとき感じた心からの賛嘆をすべて声音に乗せてアンゼリカが伝えた言の葉。
 然れど、
『その偉大にして気高きヴィルヘルム2世陛下を弑したのは誰だ! 貴様らディアボロスどもではないか!!』
『『陛下の遺志を果たさんとしたビスマルク閣下の高潔なる行動を無に帰したのも貴様らだ! 貴様らだ!!』』
 彼の身を震わせたのは感激ではなく憤激、サンダーブリッツ達もまた滾る憎悪のまま高らかに唱和を繰り返す。
 別のパラドクストレインに乗車した先で出逢ったゾルダート達ならば、植え付けられた復讐心を今の言葉で揺らがすことも叶っただろうか。然れど『このゾルダート達』に己の復讐心に疑問を持たせるためには如何なる言の葉が効果的であるのかは事前に時先案内人が明言しており、それは説得でもなければ機械化ドイツ帝国で眼にした敵の矜持を語ることでもない。
 今この地に立ち込める霧がクロノ・オブジェクトに由来する魔法的なものでなく自然のものであったなら、彼らの復讐心の熱で瞬時に霧すべてが消え果てただろうかとさえ思えるほど滾る復讐の炎に魂を炙られる心地になりながら、衣服越しに懐の羽根ペンに改めて触れつつショウは、淡やかに纏う透明なアクアノートの香りそのままに涼やかな声音で問いかけた。
 ねぇ――おしえて? 燃え盛り突き動かされる、その衝動は、
 焦がれるほど、相手を灼き尽くさんとするほどに熱い、その想いはほんとうに、貴方達自身のもの?
「思い出せる? そんなにも激しい感情を擁いたその理由を、貴方達の、軌跡を」
 最初に硝子のレイピアを手離し、少なくとも今はあなた達の敵ではないと鮮やかに印象づけた燕の乙女だからこそ、演説に長けた彼女だからこそ、心をより確かに『このゾルダート達』に届け、僅かながらもその復讐の炎の滾りを抑え込む。
 時先案内人が語っていた言葉を持たぬことは自覚の上。
 然れどそれでも居ても立ってもおられずパラドクストレインに飛び乗って彼らの眼前へと駆けつけたショウが、有効打とはなり得ぬことを識りながら今こう口にしたのは、軌跡という言の葉で仲間へ話を繋ぐため。仲間がきっとこのゾルダート達を解放する端緒となる言の葉を抱いている。

 たとえば、以前は復讐のためだけに生きていたが、今では復讐よりも大切なものができた、とか。
 たとえば、仇敵といえる相手に戦いを挑んだとき、仇敵を斃したとき、自分はこんな気持ちだった、とか。
 たとえば、自分は過去にこのような目に遭ったが、その元凶に対して今はこういった想いを抱いている、とか。

 己が復讐について思うことや感じること、己の復讐に関わる軌跡やそれに伴う想いなどをゾルダート達に語りかけたならと時先案内人が皆に願ったことを確と理解して、ゾルダート達へ自身の復讐心に疑問を抱かせるための言の葉を、蒼穹の天使と少年演奏家は己が胸に携えてきた。語るべきは敵の在りようではなく、自分自身の軌跡だ。
 復讐者。
 その異名を持つディアボロス達こそ、復讐が身近にある存在なのだから。
 花の色の眼差しを向けられれば蒼穹と黄昏の眼差しでショウを見返し頷いて、改めてゾルダート達に向き合ったソレイユは知らず微かに困ったような苦笑を浮かべつつ口を開いた。何せ初対面の相手に聴かせるような話ではないのだ。けれど眼前の彼らを、矜持も尊厳も大陸軍に弄ばれているゾルダート達を偽りの復讐心から解放するためなら、迷わない。
「私も、嘗て仇敵に殺され――亡霊のごとく蘇ったディアボロスです」
 言の葉を声音にすれば途端に胸の裡に燈ったのは、
 ――命尽きるがゆえに徐々に暗闇に侵蝕されていく己の視界に、
 ――最後まで鮮明に映っていた、月影を思わす髪から翡翠の瞳を覗かせる男の面影。

●軌跡
 夢の始まりの地で胸に抱いた、眩い光溢れる世界もが胸の裡に広がれば、どうしようもないほどに懐郷が募った。
 眩い光溢れる世界、己が目標とする音楽家としての境地。今でもその夢めざして歩んでいくこと自体は可能なのだろう。
 だが、何ひとつ曇りなき光を与え合うように家族を愛して家族に愛され、音楽の道へ迷いなく生涯を捧げて進みゆく未来を唐突にその可能性ごと断たれてしまった衝撃は、今も鮮やかな痛みでソレイユの胸を疼かせる。
 故郷との縁、家族との縁、そして未来をぶつりと断たれた魂の癒えぬ痛みを在りのままにゾルダート達へと語って、
「私の命も大切なものも奪った仇敵への復讐心が無いとは言いません。一発殴りたい、くらいの感情は当然あります」
 痛む胸の片隅に今この瞬間も確かに存在する己の復讐心に言及すれば、
『おお、おお! 一発でいいとは何たる度量の広さだ!!』
『『まるで聖人のようだ! 聖人のようではないか!!』』
 明らかにゾルダート達の反応が変わった。
 軽く瞠目した『シャオシュピーラー・ローラント』は冠する名そのままに舞台で朗々と響き渡るような声音で応え、驚嘆も露わな声音でサンダーブリッツ達も唱和する。そこに先程までの滾るような熱は少なくとも表立っては現れていなかった。
 祖国を滅ぼされた苦しみは復讐心を抱くに値するでしょう――と先程伝えた言葉だけでは、彼らに植え付けられた狂気とも思える復讐の炎で眩まされたその心には上辺だけのものに聴こえてしまったのかもしれない。然れど己自身の復讐について、それが作り話ではなく真実なのだと証する軌跡とともに語ることで今、彼らの復讐の炎の奥の心に触れられたと確信する。
 貴方達の復讐心は、本当に貴方達のものですか?
 先程そう訊ねた言葉は、往々にして『貴方達は間違っている』という意を含んで聴こえてしまうものだ。
 真実の感情から憎悪を滾らせている者でさえ反発心を抱く者が多数だろう。狂気と思える復讐心で心を眩ませている者ならなおさら負の方向に言葉を受け取ってしまい、激しく反発してしまうのだと今なら確かに理解して、間違いなく触れた彼らの心に寄り添うようにソレイユは言を継ぐ。激しくもなく、大きくもなく、けれど確かに真実のものである己の復讐心について語ることで、眼前のゾルダート達が『自分達の復讐心は何かおかしい』と自ら疑問を持ってくれるよう希う。
 己の命も大切なひとびととの縁も、未来の可能性までも断った仇敵への復讐心は確かにあると改めて語り、
 ――ですが、それだけでは、ないのです。
 ――ひとの抱く感情は、心を持つ存在が抱く感情は、ひとつではない。
 穏やかな声音で一節ずつ、ゾルダート達の復讐の炎の奥へ染み入るよう願って口にした言の葉に続けるのは、
 胸の裡に復讐心とともに同居する、こちらもまた嘘偽りのない真実の想い達。
「彼が私を殺すに至った経緯も知りたいし、侵略者に存在を乗っ取られるという禍に見舞われた彼への憐憫もあります」
『おお、おお!! そうだろうとも!! 愛憎が表裏一体であるように、心は様々な感情に彩られるものだからな!!』
 胸に抱く想いをソレイユが明かせば、だからこそ復讐劇というものがあるのだろう、と頷いたローラントは、それも復讐心ただ一色のものでなく、様々な感情の鬩ぎ合いに懊悩する物語のほうが魅力的だ――と無意識にか得々と語ったから、貴方の仰るとおりですね、と相槌を打ち、今が好機とばかりに少年演奏家はまっすぐな言の葉で斬り込んだ。
「貴方達は機械化ドイツ帝国が滅んだとき、どう思いましたか?」
 ――貴方達の抱いた想いは、
 ――復讐ひとつではないはず。
 心で心に触れて生まれる波紋。心の水面が奏でる音が美しい和音を響かせたような、そんな手応えがあった。
『どうと訊ねられれば、それは無論――! ……、……無論、復讐ひとつではない、よな?』
『……断言はいたしかねます。ただ、改めてそう問われると、何やら不可思議な混濁が意識に生じる、ような』
 無造作な様さえも洒落て見える髭に彩られた顎へと拳銃を持ったままの手をやったローラントが軽く首をひねる様は随分と人間臭くて、彼がふと投げた言葉に人間とはかなり遠い外観を持ったサンダーブリッツが困惑気味に応える様すら何処となく愛嬌が感じられ、蒼穹の天使は覚えず微かに眦を緩めた。
 思い起こすのは嘗てルール炭鉱で銃火を交えた相手のこと。
 あのとき、戦場を舞台と、戦闘を演目と称した『別の』『シャオシュピーラー・ローラント』。
 オリジナルたるクロノス級は勿論、数多生み出され過去から基準時間軸へ送り込まれてくるアヴァタール級達もそれぞれに別個の魂を持つ別人だ。然れども『この』『シャオシュピーラー・ローラント』が先程みせたのも『彼らしさ』だと思えば、己の言葉で彼らを復讐心から解き放てるはずだとエトヴァは読んだ。
 強く意識するのは透きとおるような鋼糸と、青き焔躍らす火炎放射器。無論『同胞』達に今これらを向ける気はない。
 今このとき、自分達が敵とするのは眼前のゾルタート達ではなく、彼らの尊厳を穢している偽りの復讐心そのものだ。
 だからこそ――これらに燈した演説の技能と、自身の軌跡そのものを武器に『敵』へと挑む。
「Brüder、同胞達よ」
 彼らに耳を傾けてくれる素地が生まれていると感じていたから、先程よりも穏やかな声音で、穏やかな眼差しで、同胞達へ語りかけるのは己のディアボロスとしての軌跡の始まり。
 ――俺はディアボロスとして、この身に、この胸に復讐を抱いたが、
 ――その復讐は、貴殿らゾルダートに灰にされた仲間達の……無念の想いを、自らのものとした。
 俺自身が無力な俺を許せなかった、と続ければ、胸元で空色を映す羽根飾りが己に何事かを囁きかけるよう微かに揺れて。
「このままでは、いられないと――それがディアボロスとして戦い始めた契機だ」
『おお、貴様は復讐心を抱いて始まり、我らは復讐心を抱いて一度は終わったわけか。何と皮肉な運命であることか……!』
 聴き入っていたローラントは自分達の境遇とエトヴァの境遇を比して、深い感嘆をその声音に響かせた。
 このまま語れば互いの復讐心をも両の掌に乗せて、比してみてくれるだろうか。そして――。
 蒼穹の天使の裡には状況を冷静に推し測る己もいるけれど、普段は奥深くに秘めた情熱も静かながら眩い輝きを覗かせる。そう、嘗ては確かに己も復讐の炎を抱いていた。だが今なら眼前のゾルタート達に、同胞達にこう言える。
「ゾルダートの貴殿らにも、譲れぬ思いがあったのだろう。ゆえに俺達は戦ったんだ」
 抱く理想は違えど、身を置く立場も違えど、互いに祖国を愛するがゆえに銃火を交えたのだと。
「祖国への理想を抱き、散っていった仲間達のように……戦った。理不尽を看過できず、抗い続けた仲間から継いだものだ」
 この俺の、復讐の炎は。
 ひときわ深い声音で嘗て鮮やかに情熱を燃え立たせたものをそう語れば、
『おお! 貴様が仲間から復讐の炎を継いだのなら、我らは――!!』
『『我らは……!!』』
 勢い込んで自らの復讐の炎を語らんとしたローラントとサンダーブリッツ達が不意に言葉を途切れさせた。
『無論、皇帝陛下から継いだわけではないな……。なら、我らは自らの意志で復讐心を抱いた……のか?』
『『ビスマルク閣下から継いだわけでもありません。我らは自らの意志で復讐心を抱いた……ので、しょうか』』
 顔を見合わせた彼らの口から零れたのは困惑の声音。エトヴァが語る軌跡に聴き入りつつ自然と己が復讐心を抱いた軌跡を辿るうち、そもそも『復讐心を抱いた』という記憶そのものが定かでないことに気づき始めてきたらしい。
 吐息で笑んだ。穏やかな笑みだった。今のエトヴァにとって、彼らはもはや憎むべき相手ではないから。
「俺達はあの戦争を『機械化ドイツ帝国奪還戦』と呼んでいる。帝国全土を奪還し……俺はこの復讐から解き放たれたよ」
 ――仲間達に、別れを告げた。
 ――祖国には、二度と戻れないのだと。
 嘗て帝国では夜の街に融け込みレジスタンスとして駆けていたこの身は、新宿島に漂着して得た蒼穹の翼を広げて青空にも融け込んで、今は数多の時空の戦場を翔けている。故郷の奪還を成し遂げてなお翔け続けているのは、
「今、俺が前線に立ち、戦い続けているのは、俺を受け入れてくれた、新たな仲間と故郷のため」
 帝国が正しい歴史を取り戻したなら、祖国への愛はそのまま、二度と戻れぬ祖国から巣立つように飛び立って、今度は己に成せることを成すために翔けて、力を揮い続けている。
「俺はもう復讐に囚われてはいない。ただ力として抱いている。――祖国を出て、長い道程だよ」
 愛おしく、懐かしむ、心からの想いを眼差しと声音に乗せて、万感をこめて己の軌跡を語り終えれば、
『待て。あれから、どのくらいの時が経っている?』
 夢から醒めたかのように瞬いたローラントが、訝しげに口を開いた。
 霧の中から現れるゾルタート達の記憶は機械化ドイツ帝国奪還戦で敗北したあたりで途切れているらしく、彼らの認識では滅びゆく帝国と運命を共にしていくうち気づけば霧の中にいた、という時系列になっているのだとは事前情報から察せられている。彼ら自身がその認識に、その感覚に疑問を持ったと見れば、淡く微笑してエトヴァは在りのままの真実を語った。
「Brüder、同胞達、兄弟達よ。あの戦争から、機械化ドイツ帝国奪還戦から……もうすぐ二年が経つ」
 沈黙が落ちた。
 先程までの彼らなら『おのれおのれ、そんな詭弁を弄して我らを陥れるつもりかディアボロス!』と激昂しただろうが、
 今の『シャオシュピーラー・ローラント』と『サンダーブリッツまたの名を双雷』達は、
『――……そう、か』
『『……そうでありましたか』』
 蒼穹の翼を得た同胞が語る言葉を、真実として静かに受け容れた。

●開幕
 自分達自身のこころが、軌跡が、彼らを偽りの復讐心から解き放つための力になる。
 己が復讐について思うことや感じること、己の復讐に関わる軌跡やそれに伴う想いなどを語れば、ゾルタート達自身がその裡にある復讐心の不自然さに気づき、自ずと疑問を抱かせることが叶うかもしれない、と告げた時先案内人は、もうひとつ、彼らへ呼びかけるべき言の葉を口にしていた。
 好敵手同士のように戦いたい、と呼びかけたなら、きっと――と。
 己の復讐への想いやその軌跡を語ることに注力した少年演奏家と蒼穹の天使が抱いてきた呼びかけは、前者へと大きく心を砕いた分いささか熱量の弱いものであったが、逆に燕の乙女と光彩誓騎はその呼びかけにこそ己がこころを結晶させてきた。
 期せずして男性陣と女性陣は、互いを補い合うような言の葉を抱いてこのゾルダート達に相対していた。
 ――嵐を齎すのは、もっとも静謐な言葉。
 ――それなら彼らに、好敵手へ喝采の嵐をも贈るだろう、彼ら自身の本来の心を。
 ソレイユとエトヴァが眼前のゾルタート達に自身の復讐心への疑問を持たせてくれたから、機械化ドイツ帝国の崩壊と運命を共にしたときにディアボロス達へ喝采を贈った彼ら自身の本来の心を取り戻すのはきっと自分とアンゼリカの役目、自然とそう思えたショウは花の色の眼差しでまっすぐゾルタートを見つめつつ、胸の裡の想い出を大切に花開かせた。
 ねぇ、どうしてかな、なんて。もう……訊くまでもないよね。
 どうしようもなく、貴方のこと、思い出してる、そのわけを。
 胸の裡へ語りかける相手は、髑髏の面と厳めしい装甲の裡にやさしいこころを秘めた『友達』。
「……最期に、『わたし』の秘密を教えた、巨大化ゾルダートの『友達』がいるんだ」
 出逢いの際は『おれ』と自称する少年を装い、十分後に自爆するさだめの巨大化を経た彼と向き合った際『わたし』と素の己を見せて、巨大化という変容を仲間達とともに解除した上での、ディアボロスとしての使命を果たすための戦いの終わりに秘密を明かした。宝物を共有するように。それは愛するひと達、大切なひと達しか識らない、ショウのほんとうの――。
 表向きは帝国と無関係とされていた悪の組織が未完成のまま使用したゾルダート巨大化装置。
 国策の全容を知らされているわけではなかったろう眼前のゾルタート達がその存在や仔細を識っているかは判らなかった。だがゾルダートが更に非人道的な改造などを施される場合があることは識らぬでもなかったのだろう、彼らが話の先を促してくれていると感じて燕の乙女は、少しだけ白金の眉尻をさげて淡く笑んだ。
 あの秋の日、彼と逢うために時空を翔けたショウは、街で巨大化して暴れた果ての自爆というひとびとに甚大な被害を齎す事件の阻止という使命のみならず、巨大化を解除するため彼に心残りを持たせるという作戦のためのみならず、自分に友達がひとりでもいたら、と彼が胸に抱いた想いを叶えるために、彼のこころを救うために、己の心も力も尽くした。
 それはきっとショウだけでなく仲間達みながきっと同じで、
 然れどきっと全員がほんとうに望んでいただろうかたちで彼を救うことはできないと、はじめからわかっていて。
「それでも、生きて欲しかった」
 ――この手でいのちを奪った、今でも、
 ――ずっと彼を、憶えてる、わすれない。
 聖騎士エルネスト・フェルニールの最期を担ったのがアンゼリカであったように、
 フェストゥング・リーゼの、真の名をフリッツ・ドレッセルという彼の最期を担ったのがショウだった。
 巨大化して街の家並みをジオラマを壊すように踏み潰して、蟻の群れのように見えるだろう逃げ惑うひとびとを意に介することなく何もかも壊さんとする――そんな『ほんとうの彼』とは懸け離れた変容を遂げてしまった『友達』を本当の彼として仲間達とともに取り戻し、純白の棘で最期を齎した。きっと生涯、思い返すたびにこの胸は痛み続けていくだろうけれど、
 彼と『友達』になったこと、ほんとうの彼を取り戻した上で戦って、斃したことを、後悔だけはしない。
 涙の痕をぬぐったとき鼻にぬけたつんとした痛みさえも鮮やかに甦るけれど、今は瞳の奥に込み上げる熱を堪えてショウは眼前のゾルタート達へ改めて語りかける。変容させられた彼らのほんとうの心を、今もまた取り戻せると、信じて疑わない。
「今だって、そうだよ。わたしは、奪われてしまった貴方達を、とり戻したい。ほんとうの貴方達に逢いたい」
『……本当の、我らとは?』
 燕の乙女の言葉に問いを返したローラントに応えたのは、強い意志ごと拳を握りしめたアンゼリカ。
「相容れない敵であっても、好敵手と認めた相手に喝采を贈る、そんなあなた達だ」
『喝采――』
 仮に戦いの涯に敗者となるのが自分達のほうでも、心からの称賛とともに彼らへ喝采を贈りたい。
 然れど、偽りの復讐心に衝き動かされる彼ら相手ではそんな戦いはきっと望めないから、本当の彼ら相手ならそんな戦いがきっと望めるから、互いにとって最良のかたちで戦端を開きたいと強く込み上げる熱とともにアンゼリカはひたすらに希う。初めこそ彼らに呼び掛けるうちきっと涙が零れてしまうだろうと予感していたけれど、涙は零れなかった。
 決して相容れることはなく、譲れぬものは譲れぬと明言しつつも、自分達の気概を美しいと称賛してくれた敵。
 あの聖騎士のような敵であって欲しいと彼らに望むのは、己の傲慢などではないから。
 だって本当に、好敵手に喝采を贈る姿こそ彼ら本来の在りようだと、ソレイユとエトヴァの語りかけを聴く彼らの反応から察せられたから、傲慢だと己に引け目を感じることなくアンゼリカは、まっすぐこのゾルタート達に向き合った。
 今このときの語らいが如何なる結果を迎えようと、あの秋の日と同じく戦いは避けられない。ならば本来の彼らの心と懸け離れた復讐心に駆られた彼らではなく、本来の彼らとの戦いをショウもまた望む。本来の彼らに逢えるなら、
 硝子のレイピアを、わたしは再び手にしてみせる。
「ほんとうの貴方達に逢えるなら、貴方達のすべてを受け取って、わたしのすべてで――貫いてみせるから」
「今日のあなた達との邂逅を最良の日としたい。あなた達を今日出逢った最高の好敵手としたいんだ――!」
 だからどうか、
 ほんとうの、こころで。
 燕の乙女にも光彩誓騎にもここまで歩んできた軌跡が確かに息づいている。織り成してきた軌跡の輝きをこの霧のなかにも強く眩く結晶させるような心地で呼びかければ、剥落しきれずに纏わりついていた夢の名残を払うかのようにかぶりを振ったローラントが、不意に弾かれたように顔をあげた。
 霧越しに見てもなお晴れやかな笑みが、彼の顔に広がっていく。
『ああ、そうか、私はあのとき……敵ながら天晴! 見事な勝利であった、ディアボロスの諸君よ――!! と』
『『確かに! 言っておられました!!』』
 唱和するサンダーブリッツ達の機械的な声音も怨讐など振り払ったかのごとく明朗で。
 邂逅の折には轟々と復讐の炎が禍々しく燃え盛る音が聴こえるような気さえしていたのが、今や荘厳で晴れやかな交響曲が聴こえてくれかのごとき心地。心からの微笑みを浮かべつつソレイユもまた毅然とした声音で彼らに呼びかけた。
「私も、祖国を愛し敵へも矜持を持って対する、誇り高きゾルダート達との再戦を希望します」
 戦いが避けられぬことはエトヴァも承知の上。なればこそ偽りなく状況を明かし、敢えてこう続ける。
「Brüder、ここは断頭革命グランダルメ。俺達は今、貴殿らを眠りから呼び覚まし、手駒とした連中を討ちに行く途上だ」
 ――貴殿らが立ちはだかるなら、
 ――俺達も誇り高き戦士として対峙しよう。
 成程、あの復讐の炎は自動人形どもが何がしかの手段で我らに押し付けたものか、と即座に解したローラントに、
『貴兄には先程大変失礼をした。ディアボロスにして我らが同胞、エトヴァよ』
 貴様ではなく貴兄と、我らが同胞エトヴァと呼ばれ、謝罪と親しみを込めた笑みを向けられれば、
 ショコラの瞳の時先案内人の報告書に幾度も綴られてきた言葉を改めてエトヴァは実感した。
 魔法と呼ばれるものは数多存在するけれど、ひとの名前こそは最も根源的にして誰もが使える特別な魔法だ。
 彼の中でもはや己は『帝国に反抗したディアボロスのひとり』でなく『抱いた理想と身を置いた立場は違えど、同じ祖国を愛した同胞、エトヴァ』という鮮やかにして親近感を覚える面影を得た存在となったのだと感じ取った、そのとき。
 大きく、然れど優雅に霧を払うような所作で一礼した彼が、
『改めて名乗らせて貰おう、私は『シャオシュピーラー・ローラント』! 諸君らにはローラントと呼んで頂きたい!!』
 Schauspieler――シャオシュピーラー、即ち役者と己を称する男は其方でなく個人名で呼ばれることを舞台役者さながらに朗と響き渡る声音でディアボロス達へと望み、それを以て己が不自然な復讐の炎から解き放たれたことを証してみせる。
 立ちはだかるなら誇り高き戦士として対峙しよう、そう言ったな? と続ける笑みは何処か愉しげで、
『宜しい、ならば戦おう! 貴兄ら貴姉らとともに戦いと言う名の舞台に上がろうではないか、ディアボロス諸君!!』
 高らかな宣戦布告はまるで絢爛たる舞台へいざなうかのよう。
 事実、二丁拳銃を翻したローラントは眼前のディアボロス達ではなく霧に彩られた天をめがけて発砲した。
 響き渡った銃声が招くのは、
『さあこれが開幕のベル代わりだ! 真打ちたる私が出る前の前座を務めよ、サンダーブリッツ達――!!』
『『Jawohl,Herr Kommandant!!』』
 了解であります、指揮官殿!! 機械的ながらも明るい喜色を孕んだ声音のサンダーブリッツ達の唱和。
 彼らの魂が復讐心でなく好敵手と銃火を交える歓びに満ちているのは明らかだった。自分達の尊厳を冒して植え付けられた復讐心による戦闘力の強化は解除され、それでもなお彼らは全力で挑んでくるに違いない。
 だがそれは自分達の眼前にいるディアボロス達を滅ぼすためではない。
 自分達はあくまでクロノヴェーダ、即ち、たとえ種族が違おうとも、たとえ自分達の尊厳を穢した相手だろうとも、それが自分達より上位のクロノヴェーダであるなら相対した途端に己の意志に関わらず強制的に従わされてしまう存在だ。支配力で対抗できる上位のゾルダートの指揮下に入ることが叶わぬ以上、彼ら自身が大陸軍を討つことも叶わない。アヴァタール級へ強制的に復讐心を植え付けることさえ叶う作戦実行を主導した者など、ジェネラル級以上の存在に決まっているのだから。
 ゆえに、自分達を復讐心から解放してくれたディアボロス達にすべてを託すために戦うのだ。
『我らが同胞エトヴァの先程の言葉に偽りはあるまい。ならば失望させてくれるなよ、ディアボロス諸君!!』
 口ではそう言いながらもローラントの双眸は失望ではなく、挑むような希望に強く煌いていた。
 互いの命が尽きるまで、どちらかがどちらかを殲滅するまで戦うことなどディアボロス達のみならずこのゾルダート達とて確と理解している。それでもなおローラントは晴れやかな笑顔で、間違いなく好敵手となってくれる相手にこう告げた。

 ――我らに要らぬ復讐心を押し付けた輩を討ちにいくと言うのなら、
 ――諸君らにその力量があることを、改めて我らに証明して見せてくれ!!
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【通信障害】LV2が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【先行率アップ】LV1が発生!
【グロリアス】LV2が発生!

アンゼリカ・レンブラント
己の軌跡を語れなかった理由は知ってるよ

なぜなら偽りの名で戦う己が
誰かに誇りを取り戻すことを呼びかけるなど傲慢だと思い
願いと引け目の境界できっと涙が出ると

でも零れはしなかった
足りなかった言の葉は友と重ねる想いで昇華され
ゾルダートを動かせた

あぁならば
彼らにとってヴィルヘルムが
機械化ドイツ帝国の主君ただ1人であるように
ここにいる私も他の誰かでないなら

私の傍らに光彩聖姫が、己の全てを受け入れてくれた
愛する人がいるのなら

胸を張って彼らにこの名前を宣言しよう
「撃竜騎士が1人アンゼリカ!」

見舞うは最初期からのパラドクスの光剣

この剣と共に、数々の戦いを乗り越えてきた
それは、確かな私の軌跡であり誇りだ
好敵手達よ、紡いできた全てを今日は出し切る!

仲間の攻撃する相手を狙う
囲まれるのを避け立ち回るけど
1体攻撃ゆえ確実に落とす!

ディフェンスはPOWで積極的に取る
反撃の機を得れば必ず落とす!

勝利したら
ありがとうと、きっと声が出るよ
誇りをもって向き合った戦士達を送るに、涙は――失礼だね

やろうローラント、最高の戦いを!


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎

喝采、か
ローラント、双雷達、それが真の望みなら
同胞達よ。力を証明してみせよう
俺も二年の間、数多の戦場を翔けてきたのだから

PD通信で味方と連携
戦況、敵味方の位置は常に観察し把握
通信障害で敵の連携を妨害

【飛翔】し空中戦へ
包囲を避け、味方の死角を補いつつ陣を戦場外周側に維持するように
味方の側背面に回り込んでくる敵は迎撃、追尾し率先し撃ち落とす
味方が正面に集中できるよう援護
司令塔を看破すれば優先
他、一撃で倒せる敵>消耗した敵を狙う

急加減速に応じる間合いを維持し
垂直方向に攻め水平方向の味方へ誘い込む、その逆等
PDの魔力糸を軌道にのせて敵周囲に網を張り、時には自身の隙をフェイントに引き寄せて絡め取り斬り刻む

ミサイルは撹乱軌道で追尾をかわしつつ、荊の魔力障壁と腕のタワーシールドで直撃を防ぎ、爆風の勢いは後退し自然に減衰
反動を計算に入れた姿勢制御から反撃へ転じよう
天地いかなる姿勢でも攻撃を
WIZディフェンス交え、護りから相手の調子を乱し
観察し、相対位置で撹乱すべく変則軌道と緩急の速度調整


竜城・陸
クロノヴェーダたちが、在るべき世界を奪った
討ち果たさねば、全てを取り戻すことはできない

けれど、世界を奪ったそのことが許せなくとも――
彼らの己が世界への愛を、矜持を
俺達を認め、全霊で挑む気概を
それまでもを唾棄したことは一度もない

互いを認め合い、その成すべきを全力でぶつけ合った相手もいた
そう確かに憶えているから
今日この戦場に於いてだって同じ
彼らの全力を、矜持を、心を受け止める

「初めまして。俺の名前は竜城陸という」

なれば凜然と名乗り

「己が持てる全霊で、貴方たちを迎えよう」

決然と言い放つのが筋だろう

数の利がある相手は
隙をやすやすと生みはしない筈
上位者を特定して指揮系統を乱す
陣形を乱すように仕掛けるなど
崩しの動きも織り交ぜ
此方も【パラドクス通信】を利用し
死角や隙を作らぬよう連携を密に
攻撃も声を掛け合い調整

己が魂の成す剣はいっそう研ぎ澄ませ
反撃も捻じ伏せる気概で放つ
ディフェンスも積極的に

貴方の部下は皆、とても勇壮な戦士だった
彼らと戦えたことを誇りに思う

ローラント、貴方のことも
決して失望させはしないよ


ユーフェミア・フロンティア
機械化ドイツ帝国の時代は私はわかりませんが、熱い想いを持っている方達というのは、伝わってきますね。
私達の全力、それを伝えるのが礼儀というものですよね。
それでは、行かせていただきますね。

飛翔しながら歌うは約束の比翼。
聖杖をマイク代わりにして歌いますよ。
熱い思いにこたえるために、響け私の歌!
攻撃対象は味方と被らないような敵に対して攻撃を仕掛けていきます。

空中の複雑な機動は私には難しいですから、的にならないように移動を行いますね。

ディフェンスは積極的に行きます。
簡単に攻撃を通しませんよっ!

ダメージが蓄積して来たら、攻撃対象を皆さんと合わせて攻撃をしていくように切り替えますね。
ここで倒れるわけにはいきませんから。
何より、ここで脱落するようでしたら、ローラントさんへ伝わらないですからね、私達の熱い想いがっ。

サンダーブリッツさん達を倒したら
祈りを捧げます。
あなた達の想いは受け取りました。

ローラントさん、お待たせしました。
私達の熱さは受け取っていただけたでしょうか?
今度はその身で受け止めてくださいね。


シル・ウィンディア
こんなに素敵な言葉と想いを繋いてくれたんだ。
それに、こたえてくれた。
失望なんてさせないよ。
それじゃ、思いっ切りやろうかっ!

飛翔の効果も借りて思いっ切り空を舞っていくよ。
サンダーブリッツ、空戦型ならこちらもそれに応じるだけっ!!

高速詠唱からの時空精霊収束砲を撃っていくよ。
攻撃対象は、味方の攻撃した敵を中心にして少しでも早く倒していくよ。
味方の攻撃した対象者がいないのなら、手近なところの敵を中心にして攻撃を仕掛けていくよ。
急加速・急減速ならわたしもできるからっ!
空中戦での急加減速、上下への揺さぶりも仕掛けつつ翻弄していくね。
誘導弾はちょこっと控えつつ、世界樹の翼type.Bから魔力弾を連射しつつ、同時にパラドクスを発動。
無駄にならないように攪乱しつつ攻撃を入れていくよ。

ディフェンスは体力に余裕があるのなら積極的に獲りに行くよ。
三体攻撃のパラドクスだから反撃も多いしね。
でも、獲れる状態の体力なら思いっきりいくからっ!

さ、ローラント。
あなたの目にかなったかな?
それじゃ、熱い戦いをしましょうかっ!


ソレイユ・クラーヴィア
良い目になりましたね
偽りの復讐心に濁った瞳で挑むより、ずっと

言葉を受け入れたからといって、戦いを回避することが出来ないのは悲しい事ですが…
失望させるなと煽られては、此方も引き下がるわけにはいきません
ディアボロスが一人、ソレイユ
一曲、奏上致しましょう

飛翔し空中戦
宙に展開した鍵盤でヒロイックシンフォニーを演奏
有翼の英雄達を喚び、空中で斬り結べと指揮します

戦いより演奏の方が馴染み深い身ではありますが
共に競い合い、高め合う好敵手の存在は、技量を上げる何よりの劇薬
より精緻に、より華麗に、指の踊るまま、想いを乗せましょう

仲間と攻撃対象を揃え、体力の低い者から各個撃破
加減速を自在に操るなんて、面白い拍節を踊りますね
こうみえて、連弾は得意なんです
貴方のアドリブにいくらでも対応してみせましょう

相手の動きに翻弄されぬよう、動きをよく見て
パラドクス通信で仲間とタイミングを合わせ挟撃
反撃には魔力障壁を展開し、衝撃を軽減
仲間へのW技には積極的にディフェンス

さあ、お待たせしましたね
共に踊りましょうか、ローラント!


四葩・ショウ
ゆずれないものを擁いて
火花散らすショー・ダウン
きっと【飛翔】が相応しい
わたしは復讐者の、ショウ

孤立しないよう立ち回る
仲間に声をかけ連携を図って
傷付いた敵から各個撃破したいとこ
特に自身の傷がふかい時は
止めがさせる敵を優先して狙うよ

だけど貴方達の素晴らしい連携を
披露させるのは脅威そのもの
時には遊撃して、フリーの敵への牽制をするね
意図的な分断を狙われても
すぐ合流出来るよう意識しておく

困惑するばかりだった夏も
血に濡らした罪の掌で
妹とまた手を繋げるの?と
苦悩した日々も駆けてきた、それでも

必殺の一撃は
目で追って翻弄されない
だって落下地点になるのはわたし
白焔を目眩ますよに放って対処するよ

積極的に仲間をディフェンス
終盤は負傷が嵩む仲間に対象を絞って
わたしから奪えるとおもわないで

焔がもえる
わたし自身が誓って
たくさんの想いを託されて
魂は火にくべられてもう、後戻り出来ない

でもね、わかったんだ
同じ目に遭わせたいとか
ふかい苦しみを与えたいとかは、おもわない
わたしの熾火になった復讐(おもい)は
そういうものなんだって


●序幕
 ――ゆずれないものを擁いて、
 ――火花散らすショー・ダウン。
 魔法めいた霧は何処かそろりと魂を撫であげるような禍々しい白に淡い彩を幾重にも孕むかに思えたけれども、今相対する互いの魂に見る彩と輝きは霧などに阻まれることなく鮮やかだ。
 ラッサンブレ・サリュ。
 聴こえるはずのない試合前の掛け声が脳裏に花開いた心地がしたのは、自身が纏う透明なアクアノートがいつかの夏の朝のスウィート・ゲイルの香りの記憶を呼び覚ましたからだろうか。眼前のゾルタート達へ言の葉とこころを届けるべく大地から解き放たれた霧の空、そこで先の宣言どおり再び硝子のレイピアを手にした四葩・ショウ(After the Rain・g00878)は、
 己が誓いの結晶たる美しきフルーレを口許に引き寄せるよう眼前にまっすぐ立てて構えて、礼を執る。
「わたしは復讐者の、ショウ」
 彼女が慣れ親しんだフェンシングの競技台で覚える心地好い緊張感は、舞台で感じるそれと相通ずるものがあるのだろう。
「ローラントもサンダーブリッツ達も、良い気概になりましたね。偽りの復讐心に濁った気概で挑むより、ずっと」
 洒落者の壮年男性の容貌を備えた『シャオシュピーラー・ローラント』の眼差しからは炎の濁流のごとき濁りは消え、彼の指揮下にある戦闘機そのものの姿の『サンダーブリッツまたの名を双雷』達もその瞳こそ視認できずともその気概から濁りが消えたことは感じられたから、ソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)は微笑しながらも背筋が伸びる想いで己もまた戦いという名の舞台に上がる。彼らを偽りの復讐心から解き放っても戦いが避けられぬことを悲しく思うが、胸の裡に鮮やかな苦さで甦るのは嘗て目の当たりにした『愛の囁きメリクール』の唐突な変節。
 彼女の場合は特殊な状況でもあったが、眼前のゾルタート達もクロノヴェーダの本質的な理のうちにあるはずだ。
 たとえ再び偽りの復讐心を植え付けられることがないとしても、彼らはこの断頭革命グランダルメの時空に存在する以上、いずれ必ず上位のクロノヴェーダの支配力の影響を受けてしまう。しかし彼らがそれを良しとしていないのは明らかで、
 単に彼らの命を奪う戦いでなく、彼らが本来殉じるはずだった機械化ドイツ帝国の滅びへ、その尊厳と矜持を抱いたままに還してやるための葬送にして餞なのだと思えば、霧に満ちた空へ光の鍵盤を戦いのために咲かせることも厭わない。
「ディアボロスが一人、ソレイユ。この舞台へ一曲、奏上致しましょう。――役者も揃ったようですしね」
 蒼穹と黄昏の瞳を眼前のゾルタート達へまっすぐ向けつつそう言を継いだのは、翔け来る仲間達の気配を感じたがゆえ。
 霧の彼方から救援機動力と全速の【飛翔】で舞台へ飛び込んできたのは二条の青き軌跡と、一条の紅の軌跡。
 涼やかなれど何処か禍々しき霧を突き抜けた先、仲間達と敵影を黎明の眼差しに捉えれば竜城・陸(蒼海番長・g01002)は深藍の竜翼を一打ちして霧の空で停止し、誇りを識るゾルタート達へ一礼した。全ては報告書で把握済み。ゆえにまっすぐに彼らと相対して名乗りをあげる。まっすぐに彼らを見つめて宣言する。
「初めまして。俺の名前は竜城陸という」
 彼らの全力を、矜持を、心を受けとめるために、ここへ来た。
「己が持てる全霊で、貴方達を迎え撃とう」
 敵も味方も空中戦に臨む気概であるのなら、己もそうすべきだろう。この状況で地上に在れば孤立するだけだ。
 霧に満ちた空へ蒼海の竜の声音が凛と通ったなら、紅樺色と青空色の眼差しを交わしてユーフェミア・フロンティア(光彩聖姫・g09068)とシル・ウィンディア(虹を翔ける精霊術師・g01415)も頷き合う。自分達もまた誇りを識るゾルタート達へ礼儀を尽くしに来た。仲間達が名乗ったのなら、自分達もそれに倣わねば非礼にあたるだろうから、
「ユーフェミア・フロンティアです。私も全力で臨ませていただきますね」
 霧越しにも鮮やかな煌きを覗かせる紅玉を戴く聖杖を手に毅然とユーフェミアが己が名を響かせれば、
「わたしはシル・ウィンディア。あなた達を失望なんてさせないよ」
 ――それじゃ、思いっきりやろうかっ!!
 掌中の白銀の長杖を銃へと変化させつつシルが決然たる声音と眼差しで告げる。
 頼もしき仲間達ばかりでなく恋人と相棒の気配と声音を感じれば、アンゼリカ・レンブラント(光彩誓騎・g02672)の胸の裡に蟠っていた昏い澱みのごとき想いが晴れ渡った。事前の時先案内人の言を理解はしていても己が軌跡を語れなかったのはゆえあってのこと、今の己が名を名乗ることさえ後ろめたさを感じていたけれど、この名前の己とともに数多の時空と数多の戦場を翔けてくれた相棒が今この戦場もともに翔けてくれるのなら、そして、本来の己の名前を識りつつも今の名前の自分をすべて受け容れてくれた恋人が傍らにいてくれるのなら、胸を張って名乗りを上げる。
「撃竜騎士が一人、アンゼリカ! 私も全力で挑ませてもらうよ!!」
 最初に己がそうしたように、仲間達が次々と名乗りを上げていく様に蒼穹の天使は微笑した。
 眼前のゾルタート達はディアボロス達と再び銃火を交え、好敵手と認めた相手に喝采を贈りたいのだ。
 名も識らぬ相手にそうするより、相手の名を声高に呼びつつ喝采を贈るほうが遥かに晴れやかな心地になるに違いない。
「ローラント、双雷達、それが貴殿らの望みなら、同胞達よ。力を証明してみせよう」
 ――俺も二年の間、数多の戦場を翔けてきたのだから。
 揺るがぬ声音でエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)からも開幕を告げたなら、先よりいっそう晴れやかに笑んだローラントが朗々たる声音とともに霧の幕を切って落とすかのように片腕を一閃する。
『諸君らの礼節に感謝を! 礼賛を!! 諸君らと銃火を交えられることを光栄に思う!!』
『『我々が持つのは個人名でなく機体番号のみ、ゆえに名乗りをお返しできぬ無礼を御容赦頂ければ幸いであります!』』
 ――我らもまた、
 ――全力で挑ませていただく所存!!
 彼に続いてサンダーブリッツ達も高揚とともにそう唱和したなら、
 魔法めいた霧に満ちた空という戦場にして喝采の舞台へ、彼我の役者達が一斉に解き放たれた。
「まずは貴殿らの通信を妨害させてもらおうか」
 迷わず翔け上がった高空から蒼穹の眼差しで瞬時に戦場を見渡して、
 開戦と同時の【通信障害】展開、それを敢えて堂々と宣言したのは、通信の不能が偶然の機器の不調などではなく確固たる狙いあっての己の戦術のひとつであることを明言せんがため。それが編隊行動に長けた双雷達の連携を阻むためと見れば、
『成程、素晴らしい戦術眼だ! 我らが同胞エトヴァよ!!』
 後方で督戦ならぬ観戦を決め込む『シャオシュピーラー・ローラント』から上がったのは心からの称賛で、
『通信途絶! 通信途絶!! 肉声での伝達も不可能な場合は、各機個別に対応せよ!!』
『『Ja!!』』
 此度は上官たる『シャオシュピーラー・ローラント』の指揮も指示もない戦いとなるのはサンダーブリッツ達も承知の上、ゆえに霧の空にそう響き合うのはローラントではなくサンダーブリッツ同士の声音。だが個別にと言いつつ彼らは単独行動を取るのではなく、幾多の四機小隊から即座に数多の二機分隊に変じて一気に霧の空へ散開した。
 戦闘機内にパイロットが搭乗しているわけではなく、サンダーブリッツ達は彼ら自身が戦闘機そのもの。
 ゆえにコクピットの風防越しにではなく直接肉声を交わすことが可能、彼らにとって肉声での連携や臨機応変な対応が取り易いのだろう二機編隊への瞬時の移行にエトヴァは蒼穹の双眸へ感嘆の銀の煌き躍らせて、
「機器や機能の異常を想定して、あるいは此方の力を想定しての訓練も行われていたというわけか。流石だな」
「けれど万全の連携とはいかないはずだよ。それに、肉声で指示を飛ばすために声を張り上げてくれるのなら」
 ――司令塔となりうる存在の判別が容易になる。
 微かに口許を笑ませればインカム越しに陸とそう言い交わし、互いに翼で霧を打った刹那に全速の【飛翔】で翔けた。
 この【通信障害】は刻逆が起きた当初から存在する効果だ。ディアボロス達による通信の阻害を経験および認識し、それに対処せんとした者が機械化ドイツ帝国に存在していてもおかしくない。自分達はインカム状の通信機を現わした【パラドクス通信】で何者にも阻害されぬ即時の意思疎通を可能にして、変則軌道を描く降下とともに蒼穹の天使が躍らすのは霧の空ではほぼ不可視となるだろう極細の銀糸、
 狙い定めた標的が急加速せんとした一瞬の好機を看破したなら、
「戦場の変化に即応して的確な指示を出せる貴殿へ、心からの敬意を」
「敬意をもって、貴方達を撃墜させていただくよ」
『――貴兄らの敬意に感謝を! エトヴァ殿、リク殿!!』
 軽やかに十指を躍らすエトヴァが風を握り込むと見えた刹那、空間に張りめぐらせた魔力の銀糸が一気に収斂。通信途絶を確認した直後に個別対応の指示を肉声で響かせた機体を含む二機が幾重にも切断されて撃墜され、片翼を斬り飛ばされつつも辛うじて飛行能力を維持する一機とその僚機めがけて流星のごとき軌跡が閃いた。
 極天の静寂と天穹の光輝を綴じて剣と成す《魂源星装》(アストレイション)、己が裡から咲かせた光輝の神と氷溟の竜の魂を瞬時に研ぎ澄ませた陸の刃に真っ向から続けて断ち割られた二機が割れたまま蒼海の竜の両脇を翔け抜けた直後に爆発、煙で霧を彩りながらその底へ墜ちていくが、次の瞬間には遥か頭上で剣呑に煌く黒と金。
 同胞の爆発に紛れ一気に高空へ急上昇したサンダーブリッツが落雷そのもののごとく降り落ちてきたが、
「うん、そう来ると思った」
「だねっ! この身できっちり止めさせてもらうよっ!!」
『――御見事であります! ショウ殿! アンゼリカ殿!!』
 帝国の技術の粋を結晶させた機能を存分に活かして描く稲妻めいた軌跡、捕捉困難な速度と機動で蒼穹の天使と蒼海の竜を撃墜せんとしたサンダーブリッツ必殺の一撃めがけて翔け上がった燕の乙女と光彩誓騎が眩い白焔と光輝を炸裂させる。双雷必殺の一撃を仲間の盾となって引き受けつつショウとアンゼリカが打ち込んだ反撃、白き焔を鋩に躍らせた硝子のレイピアの鮮烈な刺突と巨大な光剣の豪快な一撃が黒金の稲妻となって吶喊してきたサンダーブリッツを撃墜すれば、
 三重に高められた【飛翔】を活かし敵勢より更なる高みへ舞い上がっていた青き精霊術師が、
「流石の空戦特化型だね、サンダーブリッツ! わたしも思いっきり空を舞わせてもらうからっ!!」
「戦いより演奏のほうが馴染み深い身ではありますが、お望みとあらば存分に戦場という舞台を翔けさせていただきます」
 高速詠唱で霧越しにも眩く輝く精霊魔法陣を咲かせた刹那、鮮烈に降りそそがせるのは火と水と風と土の魔力を収束させ、時を司る精霊の力をも重ねた三条の光。霧の上空からシルの魔力砲撃が命中強化の加護とともに双雷達へ襲いかかった瞬間、敵勢の下方を獲っていた少年演奏家が十指を光の鍵盤に奔らせた。
 魔楽器としての本体は光の鍵盤でなくソレイユの手を夜空の彩で覆う指ぬきグローブ、VR楽器たるそれを調整して普段ならピアノの音色を咲かせるそれで幾重もの管弦楽の音色を咲かせて雄々しき交響曲を奏でたなら、旋律に乗って翔け上がるのは翼持つ幻影の英雄。上空からの魔力砲撃が次々と同胞を撃墜していくさなかの下方からの強襲、既に燈されていた攻撃強化を二重に高めながら響き渡る音色とともに敵勢を突き上げるように揮われた英雄の剣が、サンダーブリッツ達の反撃も次撃をも捻じ伏せ彼らが本来辿った滅びへと還していく。
 機械化ドイツ帝国奪還戦の終焉まで健在であり、崩壊する帝国と運命をともにしたということは、
 眼前のゾルタート達はまず間違いなく、あの戦争を最期まで戦い抜いた精鋭達だ。
 無論、偽りの復讐心から解き放たれて戦闘力強化を解除された彼らと、機械化ドイツ帝国奪還戦以降も力を磨き続けてきたディアボロス達、しかも此方も精鋭揃いとなれば、純粋な戦闘力のみを見るなら当然自陣に軍配が上がるが、
「だからって、見縊ったり、しない。万全の状態でなくとも貴方達の連携はきっと素晴らしくて」
 ――この舞台で披露されたら脅威そのものになるって、
 ――ちゃんと解っているから。
 わたしは遊撃に回るね、と集中砲火での各個撃破を狙う仲間達へとインカム越しに告げたなら、花の色の眼差しを凛と冴え渡らせたショウが翔ける軌跡が霧の空へ鋭い旋回の軌跡を描いた。自陣の横合いを衝かんとしていた分隊の後背を獲ったなら迷わず解き放つは魂の花心より咲き誇る復讐の白焔、霧に優しく融けるアップルグリーンの彩、全速飛翔する燕の乙女の背に翼めいて強くはためくマントの彩を鮮やかに輝かせた白焔の嚆矢が迸ったなら、眩い灼熱が一瞬で尾翼を融解させつつ二機のサンダーブリッツ達に爆発を咲かせて散華させる。
 爆発の裡で確かに聴こえた賛嘆の声、敵わぬまでもせめて一矢と最期まで機首をめぐらせんとした双雷達の姿。
 機械化ドイツ帝国奪還戦をユーフェミアは識らない。
 基準時間軸より過去のTOKYOエゼキエル戦争の時空での奇跡を経て覚醒し、昨年の初めに最終人類史で生きることを決断した身には機械化ドイツ帝国の攻略も戦争も資料でしか触れることの叶わなかった軌跡なれども、先程の報告書で触れて今ここで目の当たりにした彼らの心や姿は聖女の名を授かりし少女の胸にも眩い熱を咲かせたから、
「熱い思いにこたえるために、響け私の歌!!」
 ――交わした約束 貴方の笑顔忘れない、
 ――二人なら絶望を振り切ってあの空へ!!
 紅樺色の瞳で新たな分隊を捉えたなら、紅玉戴く聖杖をマイク代わりに歌い上げるは約束の比翼(ヤクソクノヒヨク)。
 本来なら歌で勇気を奮い立たせて華麗な攻撃を繰り出すパラドクスなれど、霧の空という戦場にして喝采の舞台を翔けつつ銀の指輪の紅玉をも輝かせ、増幅させた魔力を一気に聖杖へ凝らせたユーフェミアは歌声そのものを攻撃として解き放つ。
 霧を柔らかに力強く震わせながら双雷達へ襲いかかる歌声の響き、それが間断なくソレイユが霧の空へ響き渡らせる勇壮な交響曲と重なる様に胸の奥で閃きが煌いたなら同時に【勝利の凱歌】をも咲き誇らせて、
 熱く荘厳な凱歌と交響曲が霧の空へ大きく花開けば、たちまちローラントのかんばせに輝く歓喜が咲き広がった。
『なんと! 壮麗な歌劇を見せてくれるというのだな、ディアボロス諸君よ――!!』
『『このような舞台で戦えることを、光栄に思うであります!!』』
「私も! あなた達と戦えることを、光栄に思うよ!!」
 彼に続いてサンダーブリッツ達も唱和する歓喜、それらに心からの笑みを咲かせてアンゼリカは、掌中から眩く噴き上げた輝きとともに力いっぱい跳躍した。霧に満ちた世界に響き渡るのは仲間の交響曲と恋人の歌声、
 ――私がさっき己の軌跡を語れなかったのは、
 ――偽りの名で戦う自分がそれを口にすることに引け目を感じてしまったから。
 そんな己が誰かに誇りを取り戻すことを呼びかけるなど傲慢だと思った。己の傲慢を痛感すれば願いと引け目の葛藤が涙となって溢れてくるだろうと思っていたけれど。実際に彼らと相対してみれば誇りを口にする必要はなく、仲間達がそれぞれの軌跡を武器として、彼らを穢す偽りの復讐の炎を霧散させてくれた。
 己が敗者となっても勝者へ惜しみなく喝采を贈ることができる誇り高き戦士、
 本来の在りようを取り戻した彼らが大陸軍に支配されることを良しとしないのなら、
 自分達の主君は未来永劫、他の誰でもない皇帝ヴィルヘルム2世なのだとその魂に忠誠が咲き続けるのなら。
 私を他の誰でもない私として全て受け容れてくれた恋人、光彩聖姫の歌声に彩られたこの空に再び名乗りを響かせよう。
「私はアンゼリカ・レンブラント! 好敵手達よ、私がこれまで紡いできた全てを今日は出し切らせてもらう!!」
 偽りの復讐心から彼らを解き放ち、戦闘力の強化を解除した以上、精鋭揃いの仲間と臨むこの戦いに敗北はありえない。
 だが単に火力の高さ、戦闘力の高さを見せつけるだけでは、己は彼らにとって強敵でしかなく、好敵手とはなりえない。
 魂から迸らんばかりの己の想いを強く意識するあまり、仲間たちに比すれば極めて単純な戦法しか思い描けなかったことに忸怩たるものが胸に広がるけれど。ただ力と想いを叩きつけるだけではきっと足りないのだろうけれど、それでも。
 ――それでも。
 眩い輝きが咲き誇らせるのは己の身の丈をも超える巨大なる光剣、新宿島に流れ着き、記憶のないままに憧れの英雄の名を名乗り、黄金誓姫を称していた頃から数多の時空をともに翔け、幾多の戦いを乗り越えてきた裁きと勇気の光。
 己自身の確かな軌跡にして、ディアボロスとして戦い続けてきた矜持の結晶――光剣収束斬(ジャッジメントセイバー)の鮮烈な輝きで戦場に満ちる霧さえ眩く発光させ、今は光彩誓騎となったアンゼリカは自陣最高火力たる猛撃を打ち下ろした。
 天へ伸びる光柱とも見えた巨大光剣が、直上からの豪快な一撃でサンダーブリッツを両断する。

●萌芽
 落雷が、迅雷が、撃雷が、魔法めいた霧に彩られた空という戦場にして舞台へ数多閃き躍る。
 機械の身の裡へ熱き矜持を抱いて翔け続ける戦闘機の姿の雷霆たる戦士達、二年という時を隔てて、その間にも弛まず己を磨き続けていた精鋭ディアボロス達の攻撃は双雷ことサンダーブリッツ達の反撃をほぼ完封していたが、戦闘力の強化こそは消え去っても彼らがその身に刻み込んだ戦術や技術までが消えたわけではない。
 揮うパラドクスのことごとくが『他の機体と共に』と解説されていたとおり、双雷達の連携攻撃は眼を瞠るほどのもの。
「万全の通信状態で四機編隊のままの自在な空中戦を許していたら、なかなか厳しいことになっていたかもしれないな」
「きっとそうですよね。最初にエトヴァさんが【通信障害】を展開してくれたの、ものすごく効果的だったと思う」
 落雷で、迅雷で、撃雷で、二機分隊であっても鋭い連携攻撃を仕掛けてくる彼らが最初の四機小隊のまま翔けていたなら、此方が携えてきたパラドクスの最大対象数が三体であると見抜くと同時、三機を決死の囮として吶喊させて作り出した好機を逃さず小隊長機が必殺の一撃を完璧に決めて、反撃も次撃も捻じ伏せたところへすかさず他の小隊からも集中砲火を浴びせる連携など、呼吸するよりも容易く披露してくれたことだろう。
 個対個の力量でディアボロスが勝っていても苦戦を強いられた可能性があった。
 無論【通信障害】がなくとも此方は何らかの手段で相手の連携を妨害する策を採っただろうが、確かなことは単純な火力や戦闘力の高低のみが勝敗を決するわけではないということだ。帝国の終焉に際して眼前のゾルタート達がディアボロス達へと喝采を贈ったのも、ただ戦闘力のみを称賛してのことではあるまい。
 決して平坦な道程ではなかった。
 然れどルール炭鉱で辛酸を嘗めても心折れることなく、驚異的な速度の攻略で強大な帝国を突き崩した、その気概と策をも含めてのディアボロス達への称賛であり、喝采であったはずだ。――ならば此度も、叶う限り最良の形で彼らに応えねば。
 遊撃を担うショウとインカム越しに言の葉交わせばエトヴァは、初夏の燕さながらの旋回で霧を斬り裂くショウをめがけて機首をめぐらさんとする双雷達を数多張りめぐらせた銀糸で絡めとる。飛びぬけて優れた桁違いの空中戦技能、徹底的に磨き上げたそれを十全に活かし、戦闘機そのもののサンダーブリッツ達さえも捕捉しきれぬ機動に乗せて咲かせた銀糸の網の花、
 羽の風を掴むようふわりと銀糸の端を十指で握り込めば途端に網は双雷達を呑み込む銀の繭と化し、
 収斂した無数の銀糸に斬り刻まれた機体達が爆散すればそれを追い風と成すがごとく燕の乙女が加速した。
 此方からの攻撃に対する反撃こそなかなか叶わぬものの、天空を翔ける雷霆たるサンダーブリッツ達は確固たる連携で以て侮れぬ攻勢を仕掛けてくる。落雷で、迅雷で、撃雷で、鮮烈に襲い来る彼らの攻勢を仲間達の誰よりも軽傷で翔けぬけるのが他ならぬショウだ。双雷達が己の技に活かす技能全てで彼らを凌駕し、その冴えをことごとく相殺して戦場という舞台に舞う燕の乙女は、赤き銃口を強く煌かせた敵機達の機銃掃射を防御強化の恩恵も享けつつ最小限の傷のみで突きぬけた。
 乙女を護る白樹の軽鎧の胸に咲くのは氷細工にも似た硝子のいばらと、四葩の花が彩るロゼット。
 刻逆発生時に新宿にいたことでそれまでの日常も家族も奪われ、困惑と混乱に呑まれてなお誓いとともに立ち上がり、
 ――血に濡らした罪の掌で、
 ――妹とまた手を繋げるの?
 硝子のレイピアを揮いつつもそんな懊悩を抱えて戦いの日々を翔けぬけて。
 生まれ育った街も愛する家族も取り戻してみれば、輝くような笑顔の妹から贈られたのは、優しい彩のロゼットに折り紙が愛らしいハートを咲かす飛びきりの勲章だった。だからこそショウは今もなお戦いの日々を翔け続けていける、復讐の女神の祝福たる刻印を輝かせ、魂の花芯から燃え盛る白き焔を燈した硝子のレイピアの反撃ならぬ攻撃で迷わず双雷達を貫いて。
『『なんと果敢な……!!』』
 眩い白焔を裡から一気に咲き誇らせた黒と金の機体が霧の底へ墜ちていけば、仲間が三重に高めてくれた【グロリアス】が燕の乙女の裡に強大な癒しを花開かせた。然れど同胞を撃墜する白焔の輝きが霧を彩った刹那を好機として掴み獲り、別隊の双雷達が一気に襲いかかってくる。二機の戦闘機達が牙となって喰らいつくかのごとき強襲、上方と下方から急加速とともに迫る彼らの真なる武器はミサイルランチャーから数多繰り出される雷のごとき誘導弾。
 だが、狙いはショウなれど一手で敵二体へ雨霰と襲いかかる無数のミサイルへ、霧を貫く青と金の軌跡が翔けた。
 派手な輝きが幾重にも霧の空を彩ったのは――数多のミサイルの半数が着弾前に爆散させられたから。
「排熱で残像を作りだすって、ほんと合理的な技だよね。けど、わたしは残像に惑わされたりしないからっ!!」
「相手の技が巧みであるほど、鎬を削るよう競い合える好敵手であるほど、技量を跳ね上げる劇薬となるものですよね」
 空中戦はお手の物とばかりに魔力の翼で流星のごとく飛び込んできたシルは高速詠唱で咲き誇らす精霊魔法陣から撃ち放つ砲撃魔法でミサイルを迎撃、サンダーブリッツ達の速度に合わせ交響曲の拍を奔らせたソレイユの旋律に乗って翔ける有翼の英雄もミサイル群を斬り払い、無数の雷撃のごとき『撃雷』の威力を半減すれば、残像の技能を備えた青空の眼差しも蒼穹と黄昏の眼差しも霧に映し出された残像でなく本体の双雷達を確と捉えて、それぞれ己だけでなくショウへの撃雷を引き受けた分まで放つ痛烈な反撃で相手を撃墜する。
 此度の戦場をともに翔ける仲間の三分の二が積極的にディフェンスを狙う敵攻撃が、この撃雷だ。
「このパラドクスへの護りは万全、って感じでしょうか……!」
 成功確率こそ低いものの狙う者が多いほどディフェンスの可能性は高まるものだが、
 仲間達の頼もしさゆえに己のディフェンスの出番がない程ならそれはユーフェミアにとっても喜ばしいことに違いない。
 ユーフェミア自身も精鋭と呼べる域まで己を磨き上げているが、今ともに戦場を翔けている仲間も頼もしき精鋭陣。複数の仲間が事前情報を活かし敵が有する技能も高めての技能修正まで確と調整してきている点も勘案すれば、己の最も得手とする能力でもディフェンスが叶う仲間はアンゼリカのみ。積極的にディフェンスを狙えどそれが可能な機会自体が多くない。
 そしてユーフェミア自身が反撃することの叶わぬ敵攻撃へのディフェンスをせねばならぬほど切迫した状況ではなく、
 仲間達がゾルタート達を復讐心から解放し、それが齎していた戦闘力の強化を解除した現状では、今後も切迫した状況に陥ることは――少なくとも今相対するサンダーブリッツ達との戦いでは、まずあるまい。
「なら、私はいっそう攻撃に集中させてもらいますねっ!!」
「ディフェンスが獲り合いになるほどの絆と積極性も俺達の強みだしね。彼らを失望させるような戦いは、しない」
 聖杖が戴く紅玉をそこに凝る膨大な魔力で強く煌かせつつユーフェミアが花開かせる歌声、優しい春の花が咲き綻ぶようでありながら希望の未来を力強く歌い上げるその響きが反撃のミサイルと激突し爆散させながらサンダーブリッツ達を呑み込む様を黎明の眼差しで捉えつつ、蒼海の竜は更なる敵勢へ斬り込んでいく。
 霧の空を不規則な機動で翔けるのは青き精霊術師、
「急加速や急減速ならわたしもできるからっ! 全力勝負させてもらうよっ!!」
「貴方がたの拍節は大変興味深いですね。こう見えて連弾は得意なんです、アドリブにも幾らだって対応して見せますよ」
 二機分隊ごとに翔ける彼らの合間を時に高空から、時に真っ向から突きぬけながら、急加速と急減速で戦闘機たる彼らでも捕捉を困難にする変幻自在の機動を描くシルが白銀の銃から撃ち放つのは自身の技量では彼らに劣る誘導弾ではなく、銃弾へ瞬時の魔力付与を施した魔力弾。牽制の銃撃と見せかけつつも銃口の先に一気に精霊魔法陣を花開かせてのパラドクス砲撃も続けざまに迸らせるシルの攻勢は砲撃魔法の直撃を受けるサンダーブリッツ達のみならず他の双雷達をも翻弄し、
 負けじと急加減速を駆使して襲い来る双雷達へ強気な微笑みを向けたソレイユは、
 ひときわ壮麗にひときわ華麗に、交響曲の旋律を鳴り響かせた。
 戦闘機達の急加減速が変奏曲を描き出す霧の空へ響かせるのは英雄の雄々しさをより鮮明に彩る即興の旋律、光の鍵盤へと踊る十指は少年演奏家の心のまま力強く弾み、それでいて精緻さを増しつつ劇的に展開する双雷達の変奏曲に合わせ交響曲を奏で響かせ華やかに圧倒して。相手の反撃に備えて魔力障壁を咲かせることも忘れないが、自らの交響曲を冴え渡らせる技能のみならず彼らが撃雷に活かす技能すべてでも相手を凌駕するソレイユは、ここまでサンダーブリッツ達の反撃をことごとく捻じ伏せてきた。
「――斬り結べ」
 翼で霧を裂いて翔けた幻影の英雄は反撃のミサイル群のすべてを斬り払い、その剣撃を受けとめんと咄嗟に双雷達が翻した機銃をも斬り飛ばせば返す刀で黒と金の機体にも鮮やかな剣閃を描きだし、劇的な彼らの変奏曲に終止符を打つ。
 こう見えて――と言うか、見るからに得意そうだよね、と考えるより先にそんな言の葉を胸によぎらせつつも陸はいっそう眼差しも意識も冴え渡らせて、撃墜され霧の底へ墜ちていくサンダーブリッツ三機を超えるよう翔けて、仲間が二重に燈してくれた命中強化の加護も得て、極天の静寂と天穹の光輝を綴じた刃を一閃した。
 凛冽な星光の軌跡めいて奔る剣閃で一機を撃墜すればその軌跡と勢いのまま剣を手放すように投擲、更なる一機のミサイルランチャーを貫き機体もろともに爆散させたなら、
『『まだまだ! 我ら最後の一機まで、全力でディアボロス諸氏に挑ませていただく所存であります!!』』
 同胞達がほぼ一撃で撃墜されていく様にも一切怯まず、ますます戦意を高揚させたサンダーブリッツ達が霧の空に舞う。
 自陣の仲間達が揮うパラドクスは一体、二体、三体を標的とするもの。二機分隊の両機ともに撃墜することもあれば分隊の片割れのみを墜とすこともあるが、僚機を失ったサンダーブリッツ達は即座に同じ境遇の味方と合流、新たな二機分隊として決して鋭さを鈍らすことなき連携で襲い来る。
「翻弄され、僚機を墜とされつつも、立て直しの速さは流石だね」
「ああ。訓練や鍛錬というものは、決して当人を裏切らないのだよな」
「そっか……。そうですよね、うん、わかる」
 当然ながらその動きは弛まぬ編隊飛行訓練の賜物に相違ない。インカム越しに短くも心からの言の葉を交わせば優秀にして勇壮な戦士達に敬意を表して陸は翔け来るミサイルごと彼らを斬り払う気概で迎え撃ち、排熱が霧に描き出す残像もろともに銀糸でサンダーブリッツ達を捕えたエトヴァも双雷達を侮れぬ敵だと評するがゆえに迷わずその機体を斬り刻み、改めて強く握り込んだ硝子のレイピアに新たな白焔を燈してショウは全速飛翔で霧を貫いた。
 刻逆以前からの日々の鍛錬、フェンシング選手としてのそれは、
 試合のときにも、ディアボロスとして戦場を翔けるときにも、決してショウを裏切ることはなかったから。
 霧の空での全速飛翔でも決して揺るがぬ雨雫のフルーレを繰り出して、咲き誇る白焔でサンダーブリッツ達を彼岸へ送る。
 ただ勝利するだけなら、ただ殲滅するだけなら、単純な力押しでも恐らくは叶うのだろう。
 然れどそれでは真の意味で『力量を証明する』ことにはならないと理解しているがゆえに、蒼穹の天使は己の戦力も知略も惜しみなく揮って同じ祖国を愛する同胞達と挑み合う天空の舞台を翔けた。
 逆説連鎖戦においては彼らの急加減速を駆使するパラドクスには間合いを意識するよりタイミングを看破して応じるほうが対処しやすいと体感すればエトヴァの眼差しも更に冴えを増し、数多飛来するミサイル群に黄金を咲かせ白銀を閃かす。荊を織りなす黄金の魔力障壁を展開し最上のタイミングで銀色の大盾を翳してミサイルの威を鈍らせ、爆ぜる瞬間に後方へ跳んで爆風の威も減衰させたが、あたかも衝撃に吹き飛ばされて反撃の機を逸したとでも言うように体勢を崩して見せたのは、
「貴殿らならこの隙を見逃すはずもないと思ったから、だ」
『『――……!! 貴兄の賛辞に感謝を、戦術に称賛を! エトヴァ殿!!』』
 勢いを駆って追撃を掛けんと襲い来たサンダーブリッツ達を魔法の銀糸の網に、繭に、より深くより確実に絡めとるため。
 銀糸に機体を斬り刻まれての爆散、そのなかでも確かに響き渡った彼らの声音に感じた、歓喜。
 爆ぜるような歓喜を受けて蒼穹の翼を羽ばたかせれば、霧に満ちた天空に蒼穹の天使が描き出すのは幾重にも波打つような変則軌道の軌跡。此方も急加減速の緩急を活かし、同じく不規則な機動と急加減速で敵勢を掻き乱さんとする青き精霊術師と合わせてサンダーブリッツ達を攪乱するが、
 攪乱され翻弄されつつも、双雷達は自分達に叶う最善の策を採る。
 数多のミサイルランチャーから射出された無数の撃雷が咄嗟に花開かせたユーフェミアの反撃の歌声と幾重にも激突した。
 相手は空中戦に特化したゾルタート達、仲間のほとんどは彼らを凌駕する空中戦技能を備えているものの、皆のような空中機動は自分には難しいとの自覚はあった。ならば標的にならないように移動をと思っていたのだけれど、
「考えが甘かったみたいですね……!」
 戦場にて如何なる状況でも自身の役割を果たすべく、兵士が訓練を重ねるように。
 舞台での如何なる肉体表現をも可能にすべく、役者がトレーニングに励むように。
 思い描いたとおりの動きを叶えるにはそれを可能とするだけの力量が必要だ。たとえ純然たる戦闘力の強化こそ解除されていようと事前情報で空中戦技能を有することも飛翔を前提としたパラドクスを揮うことも判明している戦闘機型ゾルタートを相手取る空中戦で、技能を持たぬ己がこれといった策もなくただ『標的にならないように移動する』と心がけるだけでそれを叶えられるはずもない。
 技能が必須なのではない。
 必要なのは、己の力量に見合った戦術や戦法なのだ。
「サンダーブリッツさん達が一番狙いやすいのは私でしょうから、私に意識が向いたときにそこを狙ってくださいっ!」
「ミア!!」
「大丈夫だよアンゼリカ、自分から積極的に囮になるわけじゃない。それに、絶対倒れたりなんか、しないからっ!!」
 倒れてしまえば双雷達もローラントも失望させてしまう。それだけは絶対にさせないと改めて強く意識する。
 決して自ら敵の標的になりに行くわけではない。ただ『敵が自分を狙ってくる可能性は高いだろう』という状況推測を皆に伝達したまでのことだ。標的にならないのが不可能であるのなら、標的となるのを前提として戦うまで。そもそも痛手が嵩む可能性は想定済み、それがディフェンスによるものでなく己自身への攻撃によるものであるだけのこと。
「俺たち皆がそうだけれど、ミアだってそう易々と撃墜されたりはしないよ」
「うん。そう簡単に撃墜されたりはしないだろうし、させやしない」
「これまでもだけど、ここからも全力で戦うまで! 最後までねっ!!」
 勿論仲間への集中砲火を看過する者などいるはずもなく、光彩聖姫の隙を埋めるべく翔けた陸が敢えて真っ向から双雷達へ斬り込んだなら、霧の空をひときわ鋭く旋回したショウが双雷達の側面を衝いて白焔の嚆矢を射ち込み、焔を踊らす硝子のレイピアを彼らの機体へ一閃して、敵勢の下方へ飛び込んでいたシルが強大な魔力で突き上げるよう砲撃魔法を撃ち放つ。
「――!! 火力や戦闘力だけがすべてじゃない、そういうことだよね!!」
 当然ながらアンゼリカもいっそう眩い輝きを噴き上げる巨大光剣で敵機を撃墜していくが、仲間達のように己が思い描いたとおりの立ち回りは叶わない。空中戦にも多少の覚えはあるが自分よりもサンダーブリッツ達のほうがその技能で勝る以上、空での機動は彼らに劣る。足りぬ技量も策や工夫で補うことはできるはずだが、それを怠ってしまったことに臍を噛む。
 囲まれるのを避けて立ち回る――と思い描くのは容易いが、この戦場で己が何の策も無くそれを為すのは困難だ。
 致命的な隙を作らずに済んでいるのは卓抜した空中戦や観察技能、そして攪乱や追跡技能を存分に活かしての戦況の把握と仲間の援護に努めるエトヴァ、得手の高速空中機動で敵勢の攪乱にかかるシル、蒼穹の天使と同様に仲間達の死角を補うべく翔ける陸、そして牽制のための遊撃に翔けるショウの尽力があってこそ。
 全てを出し切るつもりだった。然れど、それでも。
「私に足りないものがあっても、皆がいれば……!!」
 己のみでは彼らの望みに足りずとも、頼もしき仲間達とともに翔けるならばと信じてアンゼリカは、遥か高みから黒と金の稲妻となって襲い来るサンダーブリッツめがけ、全身全霊で巨大光剣を叩き込んだ。
 歴史侵略者への怒りを抱いて戦う力を得た存在がディアボロスであるからか、
 あるいは元より人類が闘争本能を備えた存在であるからか。
 戦闘においての、戦場においての行動や振舞いは、時に明確な言葉以上に雄弁に、当人の心境や本質を語るものだ。
 禍々しい白にけぶる霧の空に、鮮麗な蒼穹の彩が花開いた。
 蒼穹の翼で霧も風も自在に斬り裂き、変幻自在の撹乱軌道や変則軌道を描いて翔けるエトヴァが双雷達の十倍以上に達する桁外れの高みにまで空中戦技能を磨き上げてきたのは、今ここで挑み合う相手への敬意の現れのひとつ。
 戦闘機そのものの外観と飛翔を前提とした攻撃手段からして明らかに空中戦のために創り出されたゾルタート達、その名の通り天空を制する雷霆となるべく生み出された『サンダーブリッツまたの名を双雷』達を彼らの存在意義そのものの空中戦で徹底的、絶対的に圧倒して見せて、単純な火力や耐久力のみならず戦闘技術でも己が彼らの喝采を享けるに足る存在なのだと証明して見せるために他ならない。
 元より必中がパラドクスの理だがそれ以上に命中精度を高めるのだろうミサイル群の追尾性能を高速で波形の乱舞を描くが如き機動で振り切り、数を減らしてなお己を捉えたミサイルの直撃を黄金を咲かせ白銀を閃かせて凌いだなら、翼の一打ちで後方へ飛ぶと同時に十指へ絡めた銀糸を引き絞る。
 天空に描く飛翔の軌跡に張りめぐらせた極細の銀糸を収斂させて獲物を斬り刻む、Federtanz(フェーデルタンツ)。
 空間も飛翔も存分に活かした立体結界攻勢とも呼ぶべきパラドクスでエトヴァがこの戦いに臨んだのは、
『我らの空間戦闘能力に敬意を表してくださってのこととお見受けします!』
「そのとおりだ、Brüder、双雷達よ」
 天空を翔ける雷霆たるサンダーブリッツ達の空間を立体的に活かす能力を優れたものだと認識するがゆえ。
 堂々たる反撃で一機を撃墜すれば、縦横無尽の飛翔で霧の空にほぼ不可視の銀糸で立体的な幾何学模様めく網をめぐらせ、あらゆる方向から飛来して強襲せんとする彼らの空中戦技能を逆手にとって絡めとる。黒と金に幻のごとき極細の銀糸の煌き躍らせ、一瞬の収斂で双雷達の機体を霧の空に散らして、
『――……!! 貴兄に撃墜されることを誇りに思うであります! 我らが同胞、エトヴァ殿……!!』
 彼らの言の葉も心も確と受けとめながら、蒼穹の天使は胸に萌したものに淡く双眸を細めた。
 ――ああ、そうか。Brüder、同胞達、兄弟達よ。
 ――貴殿ら自身が気づいているかどうかは判らないが、貴殿らが真実望んでいることは、きっと。

●証明
 輝ける光輝、冴ゆる凍気。
 己が裡から光輝の神と氷溟の竜の魂を励起させれば、二つの魂そのものとともに花開くのは停滞と浄化、晦冥の淵と光明の空、極天の静寂と天穹の光輝。相反した二者を綴じた純粋な力を凛冽な星光のごとく冴ゆる刃と成して揮うのが、蒼海の竜の《魂源星装》(アストレイション)だ。
 然れど今この天空で挑み合うサンダーブリッツ達へ陸が抱く戦意と敬意は、決して相反するものではなかった。
 ――クロノヴェーダ達が、在るべき世界を奪った。
 ――討ち果たさねば、全てを取り戻すことはできない。
 数多の時空を翔けるたびに胸の裡で強く光る誓いは今この時空で翔ける霧の空でも変わりない。だが歴史侵略者達が世界を奪ったことそのものを赦せる日は決して来ずとも、完全に相容れることは絶対に有り得ずとも、
 彼らの己が世界への愛を、矜持を。俺達を認め、全霊で挑む気概を。
 それまでもを唾棄したことは一度もない。
 礼節には礼節を、敬意には敬意を以て応じてきた。孤高のまま強く在ろうとした日々にも、皆とともに翔けて来た日々にも己が魂を憎悪や復讐に曇らすことなく律して、だからこそ敵として邂逅した相手の矜持も気概も真っ向から己が魂に映して。
 幻想竜域キングアーサー最後の夏、
 聖騎士エルネスト・フェルニールとの戦いを陸もまた確かに憶えている。
 蒼海の竜にとっては幻想竜域のドラゴンもその眷属たる竜鱗兵も決して赦せぬ敵なれど、譲れぬものがありながらも互いに認め合い、互いに為すべきもののため全身全霊を振り絞った力をぶつけ合った彼との戦いは、歴史侵略者達への怒りを気概の焔と成して聖騎士と相対した陸にも不思議と清冽な心地を覚えさせた。
 あのときの清々しさが今もこの胸に花開くような気がするから、
 今日この戦場においても、彼らゾルタート達の全力を、矜持を、心を受けとめる。
 魔法めく霧も撃雷たる数多のミサイル群も突き抜けて、あの日のように戦意も敬意も相反することなく胸の裡へと輝かせ、凛然と輝く刃を揮う。聖騎士と相対したのは眼前のゾルタート達が挑むことの叶わなかった《七曜の戦》の直前のこと、彼に勝利して皆で《七曜の戦》を乗り越え、そして――と一瞬で胸の裡によぎった軌跡にふと微笑して、
「機械化ドイツ帝国奪還戦の折に領土の強奪を目論んだ幻想竜域キングアーサーにもね、俺達は勝利したよ」
「そうっ! あっちも全部きっちりわたし達が奪還させてもらったからっ!!」
 何処までも凛冽な剣閃を奔らせながらも穏やかな声音で陸が告げ、インカム越しに聴こえた彼の言を継いでシルも溌剌たる声音を大きく晴れやかに霧の空へと響かせたなら、
『『おお! 何とも胸のすく御話に感謝を! リク殿!! シル殿!!』』
 極天の静寂と天穹の光輝を綴じて流星めいた軌跡を描く蒼海の竜の斬撃と、
 熱き炎と水の煌き、翔ける風と大地の豊かさを結晶させ、時の力を重ねて青き精霊術師が撃ち放つ、
 時空精霊収束砲(クロノ・エレメンタル・ブラスト)に撃墜されていくサンダーブリッツ達から歓喜の声が花開いた。
 ああ、と吐息で笑んで、柔らかに微笑したソレイユが十指をひときわ力強く光の鍵盤に沈めれば、今日は幾重もの管弦楽の響きで奏でられる交響曲が一段と壮麗な音色で天空の大気と霧を震わせる。己にもまた、彼らに告げるべき言葉がある。
「貴方がたの尊厳を穢す作戦を主導した者だけでなく――断頭革命グランダルメそのものも、必ずや私達が討ち果たします」
『『おお、それもまた望むところであります! ソレイユ殿!!』』
 どれほど抗おうとも階級によるクロノヴェーダの支配力は絶対だ。
 他国の断片の王やジェネラル級の走狗と成り果てることは勿論、断頭革命グランダルメ奪還戦にディアボロス達が勝利し、大地の奪還を成し遂げた際このディヴィジョンの消滅に殉じることも、他のディヴィジョンに流れ着くことも、彼らにとって屈辱以外の何物でもあるまい。ゆえに彼らは今ここでディアボロス達と銃火を交えることを望むのだ。
 誇り高き敗者として心から称賛できる好敵手に喝采を贈りながら滅ぶこと、
 今となってはそれが彼らにとって最も好ましい結末であるのなら、命を奪うことに胸が軋もうともその願いを叶えるまで。
 華麗な旋律を咲き誇らせる交響曲の音色に乗って翔ける英雄も、装填された全弾を惜しみなく解き放たれたミサイル群も、霧の空へと猛然と舞って激突して派手な爆炎と爆煙で戦場たる舞台を彩って、力と力の鬩ぎ合いを此度も少年演奏家の魔力が制したなら、ソレイユの心のままに剣を掲げた幻影の英雄が潔い一閃でサンダーブリッツ達を斬り伏せる。
 落雷が、迅雷が、撃雷が、魔法めいた霧に彩られた空という戦場にして舞台へなおも数多閃き躍るけれど、
 数で大きく勝っていた敵影も最早数えるほど。だが戦意も攻め手も一切緩めることなく蒼穹の天使は己が翼を翻した。
 霧の空の高みから全速で急降下するのは既に眼下の空間一帯に自身の魔力で撚り上げた銀糸を張りめぐらせているがゆえ、敢えて十指に絡めた銀糸の端を束と成して強く煌かせて見せつつ敵勢へと攻め込んで。機械化ドイツ帝国奪還戦の折に領土を強奪せんとしたのはグランダルメ勢も同じ、なればこの断頭革命グランダルメもまたディアボロス達との決戦を迎えるのだと察した眼前のゾルタート達の胸の裡に感慨が広がるのは理解できたから、
 それなら、と淡くエトヴァも微笑した。
「帝国の領土を強奪せんとしたのは吸血ロマノフ王朝も同じだな。ヴァンパイアノーブルにもいずれ必ず俺達が勝利しよう」
「うん! それも約束するよ! 絶対果たしてみせるからっ!!」
『『期待させていただくであります! エトヴァ殿!! アンゼリカ殿!!』』
 高空からの攻勢で双雷達が銀糸の空間に誘い込まれた刹那、黒と金の機体に幾重にも奔る鋭い軌跡。幾重もの銀閃が彼らを散華させ、運良く銀糸の網の範囲外へ降下したサンダーブリッツへは霧越しにも鮮烈に輝く巨大な光剣がアンゼリカの迷わぬ宣誓とともに打ち下ろされる。ああ、彼らの声音は機械的であるのに、
 爆散する彼らも、撃墜される彼らも、最期の言葉を響かせる声音はこんなにも晴れやかだ。
 双雷達の最期の声音がこんなにも晴れやかであるのなら、絶望を振り切って希望の未来へと羽ばたく歌を響き渡らせる己の歌声を翳らせるわけにはいかない。間近に迫るサンダーブリッツ達との戦いの終焉を前にユーフェミアは、喉の奥も魂の奥も全開に開く心地で、明るく輝くような歌声もそこへ乗せて解き放つ魔力も全身全霊で大きく咲き誇らせた。
「私達は必ず勝ってみせますから! これからも、絶対に!!」
『『その御言葉、確かに聴いたでありますよ! ユーフェミア殿!!』』
 無数の撃雷、数多のミサイルが希望の未来へと羽ばたく歌声と激突して、幾重もの爆発で霧を彩るなかでも不思議と両者の言の葉は確と響き渡って、反撃のミサイル群を捻じ伏せた歌声の魔力がサンダーブリッツ達を次々と撃墜していくけれど、
 最後の一機が霧の空の高みから聖女の名を授けられし少女めがけて吶喊してくる様を花の色の眼差しで捉えれば、ショウは迷わず高空へ己が身を躍らせた。一瞬で舞い上がる燕の飛翔、辺りの霧をも清冽に輝かせる白焔を硝子のレイピアに連れて。
「――わたしから奪えると、おもわないで」
 今この霧の空で相対するゾルタート達は自分達ディアボロスを滅ぼすために挑んできているわけではない。
 戦いの幕が開く前からそれは明らかで、ゆえに今ショウの花唇から零れたのも彼らに対する言葉ではなかった。
 もう、如何なるクロノヴェーダにも、如何なるディヴィジョンにも、何ひとつ奪わせやしないと誓いを口にする心地でそう紡いで、黒と金の稲妻と化した最後のサンダーブリッツの吶喊の威を半減させた燕の乙女は、眩いほどに燃え上がる白き焔を眼前の双雷へと打ち込んだ。
 前触れなく生じた未曽有の災禍、
 刻逆が己や皆から奪ったものを識った際に湧きあがったあの夏の日の怒りを火種に、魂の花心から咲き誇る白焔。
 わたし自身が誓って、たくさんの想いを託されて、
 魂は火にくべられて、後戻りは叶わない。硝子の花芯を幾重にも隠していた花のかたちも変わって。
 今にして思えば、あの頃のわたしはなんて純真無垢だったんだろう。
 ――そんな風に感じられる、
 ――刻逆が起きる前の、当たり前のようで掛け替えのない幸福な日々を送っていた頃の魂には、もう、戻れない。
 己の魂の花心に燈った焔は眼前のゾルタート達に植え付けられたような偽りのものでなく、間違いなくショウ自身が燈し、あるいは過去のディアボロスから受けとった想いによって燈した偽りなき火種であるけれど、奪われた愛しいひとびとを取り戻し、この腕に再び抱きしめた今ならわかる。
 同じ目に遭わせたいとも、
 ふかい苦しみを与えたいとも、おもわない。
 ――わたしの熾火になった復讐(おもい)は、そういうものなんだって。
 ――今もなお悲しみのなかにいるひとびとを照らすためにこそ、わたしの復讐(おもい)は燃えるものなんだって。
 眩く燃え上がる白き焔に抱きすくめられるようにして、最後のサンダーブリッツが改めて滅びの運命へと還る。
 天の光映す双眸でその光景を捉えれば瞳の奥に熱を感じたけれど、己自身の意志でアンゼリカはその熱を抑え込んだ。
「――ありがとう、誇りを以て向き合ってくれた戦士達」
「今度こそ、あなた達に安らかな眠りがありますように」
 だってきっと、彼らを送るのに涙はきっと、失礼だと思えたから。
 彼らは自分のことを好敵手だと思ってくれただろうか。自分は彼らの想いを受けとめることができただろうか。
 霧の空で自然と恋人と肩を並べ、彼女と同じ想いを双雷達へと馳せつつユーフェミアは祈りを捧ぐ。
 次の瞬間、霧に満ちた戦場という名の舞台へ響き渡ったのは、高らかに打ち鳴らされた拍手の音色。
『見事な勝利であった、ディアボロスの諸君よ! サンダーブリッツ達も歓喜とともに逝ったことだろう――!!』
 晴れ晴れとした笑顔で拍手と称賛を贈る『シャオシュピーラー・ローラント』へと改めて向き合えば、展開したままの光の鍵盤に己が手を翻して滑らせたソレイユは華やかなグリッサンドの音色で応え、
「さあ、お待たせしましたね。ともに踊りましょうか、ローラント!」
「あなたの目にかなったかな、ローラント? それじゃ、熱い戦いをしましょうかっ!!」
 真打たる彼と上がる舞台への意気込みを示してみせれば、強気な笑みを咲かせたシルも真っ向からローラントへと挑み。
 ――貴方の部下は皆、とても勇壮な戦士だった。
 ――彼らと戦えたことを誇りに思う。
 心からの言葉を真摯に伝えた陸もまた、確固たる自信を燈した黎明の眼差しで彼を見据えた。
「ローラント。貴方のことも、決して失望させはしないよ」
『おお、おお! 私も大いに期待しているとも、ディアボロスの諸君よ!!』
 挑むような希望に双眸を煌かせる彼は、己の真なる望みに気づいているだろうか。
 双雷達の言葉から察したものはあるだろうか。
 機械化ドイツ帝国が健在であれば当然彼らも帝国が地球全土に覇を唱えることを望んだだろうが、帝国が滅びの途を辿った今となっては他のディヴィジョンの滅びを特段に願っているわけではないだろう。双雷達との戦いで己の胸裡に萌したものに確信を得て、穏やかな、それでいて揺るぎなく通る声音でエトヴァは、この場に残る最後の同胞へ言の葉を向ける。
 己の尊厳を穢した相手をローラント自身の手で滅ぼすことは叶わない。
 だからこそディアボロス達にそれを託したいと彼も彼の部下達も思っただろう。だが、彼らの望みはその先にもある。
「機械化ドイツ帝国が滅んだのは帝国が脆弱なディヴィジョンであったからではない」
 蒼穹の眼差しが紅の双眸をまっすぐ捉えた。
「俺達ディアボロスが全身全霊で挑んだ結果、俺達が強大な帝国の力を上回ったのだ」
 断言すれば一拍の間をおいて、みるみるうちにローラントのかんばせに更なる歓喜が広がっていく。
『おお、おお! そう言ってくれるのだな! 同じ祖国を愛する、我らが同胞エトヴァよ!!』
 夢から醒めたような、それでいて、新たな夢を抱いて眠れそうだという希望を見出したような顔だった。
 祖国を愛するがゆえに、そして祖国の滅びの際にそれを齎したディアボロス達へ喝采を贈った身であるがゆえに、
 彼はたったいま見出した己の真なる望みを口にした。

 ――ならば私をも討ち果たして諸君らの力を見せてくれ、そして断頭革命グランダルメそのものにも勝利して、
 ――帝国の滅びは帝国の弱さゆえではなく、ディアボロスの強さゆえであったのだと『証明しつづけて』くれ……!!
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【エイティーン】LV1が発生!
【飛翔】がLV3になった!
【勝利の凱歌】LV1が発生!
【罪縛りの鎖】LV1が発生!
【プラチナチケット】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
効果2【リザレクション】LV1が発生!
【命中アップ】LV2が発生!
【グロリアス】がLV3になった!
【ガードアップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV2になった!
【ロストエナジー】LV1が発生!

エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎

ではBrüder、開演としよう
貴殿らの祖国を討った復讐者が、力を証明しつづけよう

戦いの中で散るを求めるならば
この舞台を踊り抜こう
俺の、役目だ

戦場を広く観察し、敵味方の位置取り、敵の動きを把握
【飛翔】し空中戦
PD通信で仲間と連携
仲間に合わせ、緩やかな挟撃や包囲を位置取り
隙あらば攻撃、味方との攻防を援護し一対一にさせない
敵が低位置なら高さを合わせる
X-MachinaでPD攻撃
浮力をまとう立ち回りに、刀身の受け流し
翼を打ち姿勢制御
宙を滑り馳せるように、翔けて斬り込み、退いて
踊るように舞い上がり、宙返り交え
上下も背後も、飛翔の緩急をつけあらゆる角度から斬り込む
消耗した、庇える仲間をディフェンス
舞台の上で、踊り明かそう

防御は魔力障壁で全身を護り、相手の飛翔に合わせ下部へ降り
上方へタワーシールドを掲げて銃の乱射を防ぐ
爪の振り回しは、正面に盾を構えて防ごう

ディアボロスと戦い抜いた、誇り高き敗者たれ
晴れやかに、俺からも彼らへ喝采を
グランダルメへの勝利をもって、貴殿らへの勲章と花輪となそう


ユーフェミア・フロンティア
先ほどの言葉をかなえるために。
約束をさせてもらったから、私にできることを全力で行います。
ローラントさん、行きますよっ。

空中戦技能はローラントや皆さんの方が上。
それならば、動き回るのではなく…。
固定砲台という形で立ち回りますよ。
大丈夫です。生半可な機動戦をするくらいなら、こちらの方が私らしく行けると考えてますから。

アマテラスを引き絞ってから、神焔収束砲を放ちます。
私の新しい力。
そして、これが今までの軌跡の積み重ねの一つの形…。

私にできることは、空戦機動に惑わされずしっかり撃ち抜く事。
そして…。
ローラントの攻撃に対してしっかり反撃を行うこと。
その二つをしっかりと行っていくだけです。

ディフェンスはWIZで反応を。
機会は少なくても、それでもチャンスを手にするには動かないとですね。

帝国の全盛期の時代を私は知りません。
でも…。
貴方をはじめ、先ほどのサンダーブリッツ達、そして、皆さんの奮闘の記録を見るだけでもわかることがあります。
…強いからこそ、驚異だからこそ、一番初めに相手にした。そう思いますよ。


シル・ウィンディア
ローラント、待たせたね。
わたし達の全力、あなたにぶつけるよ。
そして、乗り越えて、グランダルメをぶっ飛ばしに行くからっ!

世界樹の翼type.Aを握って、飛翔の効果で上空へ舞い上がっていくよ。
帝国の兵士たちは、みんな空中戦が強かった。
だけど、わたしも空では負けたくないからっ!!

包囲をすると見せかけて、誰かとの挟撃の位置を取れたら高速詠唱からの十芒星精霊収束砲!
挟撃や包囲することにこだわって、好機を逃す事はしないよ。
ローラントがほかのだれかに意識がいくタイミングでも撃ち抜くよっ!
真正面、それもいいけど、出来ることをやらずにそれはしたくないからね。
…それが、全力以上の事になると思うから。

ディフェンスはWIZで積極的に獲る!
そして、反撃もしっかり受け取ってねっ!

ローラント、あなた達を無理に起こしたグランダルメに何か言いたいことはある?
代わりに伝えるよ。
ないのなら…。
ナポレオンをぶん殴ることでいい?
…あなた達の誇り、そして、想いも持っていくから。

もう少しで決着の時だね。
…絶対にぶっ飛ばしてくるから!


ソレイユ・クラーヴィア
分かりました
それが貴方の望みなら…

私は武人でも兵士でも戦士でも無い
だから自分の負けた理由を相手に求める気持ちは、正しく理解できているとは言えない
私だったら、どんなに素晴らしい音楽を奏でる相手がいたとしても、いつかは越えたいと死ぬまで足掻くだろうから
けれど、何をどう足掻いても、自分の力ではどうにもしようがない境遇に陥ってしまったのなら、諦念の境地になるのだろうか…

いえ、思考は後に
今は目の前の相手を全力で倒す事を第一に

引き続き飛翔で空中戦を挑みます
宙に展開した鍵盤で「嵐」を演奏
周囲の砂礫を巻き上げ荒れ狂う嵐を喚び、正面からぶつけてやります
私の攻撃に気を取られた隙が、他の仲間が攻め込む好機になれば幸い
声を掛け合い、前後や上下で挟撃になるように位置取りましょう

反撃には魔力障壁を展開し凌ぎます
傷を受けようと、私の演奏は止まりません
仲間へのW技には積極的にディフェンスに入り
反転攻勢からのフィナーレへ繋ぎましょう

ナポレオンを倒し、故郷を奪還を奪還することは私の悲願です
勝利しますよ、必ず


竜城・陸
無論、証明し続けるとも
積み重ね、紡いできた
俺達ディアボロスの強さと絆で以て

俺は負けず嫌いだからよくわかるよ
自分を斃した相手には、強く在って欲しいというのはね
勿論、超えることを諦めもしないけれど
きっと彼も、己が国土を繋ぐ望みがあったなら
死に物狂いでそうしたろう
それが叶わぬから――せめて好敵手たちには強く在って欲しい
勝ち続けてほしいと願うのだろうね

【飛翔】用い空中戦を挑む
空中機動での攪乱を交えた近接戦闘や
投擲での遠隔攻撃を織り交ぜ
仲間たちと互いに意思疎通しあい連携
手中に生み出す光槍は研ぎ澄ませて
一撃一撃に、己の全霊を込めて臨むよ
望みを託されるに値すると認めてもらわなくてはね

侮れぬ実力の持ち主であることは疑うべくもない
爪撃は槍を以ていなし
射撃には投擲で応じ
直撃を避けるよう努め、負傷を軽減
己が最も得手とする類の攻撃へは
積極的にディフェンスに入り
反撃の好機あらば見逃さず
返礼の光槍で応じる

今日この時の誓いに違わず
いつまでも勝ち続けてみせるよ
君たちを利用したグランダルメにも
他の如何なる者たちにもね


四葩・ショウ
その願いに、報いるために
これが最後の学生服へと
披露する早替え
2年前の再演を、さぁ

霧ですべてを見通せなくても
わたし達の戦い方や
立回りや役割は
お見通しかもしれないよね

だったら、【飛翔】するまま
今度はまよわず最前線を翔けて貫く
ヒット・アンド・アウェイの空中戦をメインに
【パラドクス通信】で連携を繋いで
仲間が齎す隙を受けとって
即興劇めく彼の狙いや思惑の前に立ちはだかって
わたしをみてと
時にはその目を惹きつけ、攪乱を

体力の余力の、ギリギリまで
まよわず仲間をディフェンスする
先の戦いの負傷が残る仲間がいれば、特に優先するね

彼の攻撃の痛手から
護ってくれるのは、
紹介するよ
『アマンダ』とは帝国で出逢ったんだ

機械化ドイツ帝国があったことも
そこであったすべても
なにもかも
なかったことにはさせない、だから

約束するよ
証明し続けよと希う想いを
明日へ連れていく

ローラントさん
ほんとうの貴方と逢えてよかった

さよならの代わりに告ぐカーテンコール
誓いを、想いをすべて捧げて
フィナーレに贈りたいのは
打ち鳴らすスタンディング・オベーション


アンゼリカ・レンブラント
帝国は確かに強かった
2年前乗り越えることが出来たことを誉れとし
私達の強さを証明し続けよう

大丈夫、心の揺れはもうない
共に駆ける友がいる、隣に愛する人がいる
貴方へ最も強い自分を!

【飛翔】し真向から踏み込んで光焔剣を振るう
【パラドクス通信】も生かしての連携を意識
恋人が固定砲台を務めるなら私が迫る際援護の砲撃を頼み
友が挟撃を狙うなら挟み込んで斬りこむ

ローラントに張り付いて接近戦で戦っていくよ
プロと共に幾つも戦場を駆けたもの
空中戦も食らいつくっ!

ローラントが狙う対象を把握できたら通信で周知
消耗の多い仲間を狙うなら此方に注意を惹くよう攻撃する

ディフェンスはPOWで積極的に行う
特に消耗の多くなるであろうショウを優先に戦線維持を意識
反撃の機を得れば痛撃を叩き込む!

決着の時まで油断せず
最後は渾身の《神焔収束斬》で決着を狙う

ローラント、本当の貴方と会えたことは私の幸せだ
そして貴方達のそのありよう
決して忘れない

それに続くは
涙と共に放つ陽菜の惜別の言葉か
騎士としての断頭革命への勝利の誓いか
いずれにしろ心のままに


●戦舞
 ――私は武人でも兵士でも戦士でもない。
 ――だから自分の負けた理由を相手に求める気持ちは、正しく理解できているとは言えない。
 魔法めく霧に満ちた天空の戦場にして舞台へ咲かせたままの光の鍵盤が周囲の霧をも柔くほのかに輝かせるなか、陽光めく金の前髪の奥に覗く眉をソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)は僅かに曇らせた。
 私だったら、どんなに素晴らしい音楽を奏でる相手がいたとしても、いつかは越えたいと死ぬまで足掻くだろうから――と思えば胸に過ぎるのは月影めいた髪から翠玉の瞳を覗かす『あの男』。己の命を奪った仇敵ではあるが、今でも彼に抱く最も強い認識は演奏家としての好敵手。音楽を戦う力と成すすべを得た今もなお、演奏そのもので彼を超えたいと希っている。
 友が胸を痛めていることが感じられるからこそ、竜城・陸(蒼海番長・g01002)はまっすぐな声音とともに前を向いた。
 黎明の眼差しが霧越しにも確と捉えているのは『シャオシュピーラー・ローラント』。
「俺は負けず嫌いだからよくわかるよ。自分を斃した相手には、強く在って欲しいというのはね」
 勿論、超えることを諦めもしないけれど、
 ローラントもサンダーブリッツ達も、彼らの帝国を繋ぐ望みがあったなら死に物狂いでそうしたろう。
 間違いなくそう確信して、
「帝国が滅んだ以上、それは叶わぬから――せめて好敵手達には強く在って欲しい、勝ち続けて欲しいと願うのだろうね」
 負けた理由を相手に求めているわけではないと思うよ、と友の胸裡を掬ったように微笑して、こう言を継ぐ。
 きっとあれはローラントの、サンダーブリッツ達の、彼らなりのエールなんだ。俺達ディアボロスへの、ね。
 ――ああ、そうか。
 ――そうなのだな、Brüder、同胞達よ。
 穏やかさのなかにも揺るがぬ光を燈すがごとき陸の声音が【パラドクス通信】のインカム越しに耳へ届けば、万感胸に迫る想いでエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は僅か一瞬だけ固く眼を閉じた。然れども元より迷う心算はなく、彼らが来たる断頭革命グランダルメ奪還戦のみならず、その先のすべての戦いへと背を押してくれているのだと改めて感じたならなおのこと、力も心も全力で尽くすまで。
「ではBrüder、開演としよう。貴殿らの祖国を討った復讐者が、力を証明しつづけよう」
『宜しい! ならば私にとっては最後の、貴兄ら貴姉らにとっては未来へ続く演目の、開演を――!!』
 魔法めく霧に満ちた天空の戦場にして舞台へ改めて高らかに響き渡るのは【勝利の凱歌】、黒き高周波ブレードを抜き放ちその刀身に蒼き魔力光を奔らせつつエトヴァが振動剣を構えて礼を執るのと、敵意でなく期待と戦意に紅の瞳を輝かせて二丁拳銃を翻した『シャオシュピーラー・ローラント』が天頂めがけて再び開幕のベル代わりの銃声を響かせたのがほぼ同時。
 次の瞬間、先陣を切る加護を齎す風を掴み獲ったソレイユの十指が光の鍵盤に翔けて、
「それが貴方の望みであるのなら――行きますよ、ローラント!!」
 幾重もの荘厳な管弦楽の音色で響き渡らせる楽曲は、幻想ソナタ「嵐」(テンペスト)!!
 強大な威で魔法めく霧を激しく渦巻かせる様だけでも壮大な光景だが、荒ぶ嵐が霧の底から砂礫も瓦礫も数多舞い上げて、嵐が猛り狂うままに砂礫も瓦礫もローラントへ叩き込まれていく様は壮観、嵐の裡から弾幕が爆ぜて巨大な機械爪が乱舞する反撃と凄絶に交錯する様は圧巻で、暴威を揮う嵐の裡でも隙を生じさせることなき相手の姿は流石のもの、
『おおソレイユよ、なんと素晴らしき幕開けであることか――!!』
 挑むように笑んだ途端のローラントの銃撃連射が歓喜に満ちた声音ともに幾重もの爆裂で戦場を彩る光景は、苛烈で豪勢で盛大な花火のごとし。だが彼の攻撃で眩い爆炎と濃い爆煙が数多花開いても勿論ディアボロス達は誰ひとり怯むことなく、
「ローラントさん! その願いに報いるために、二年前の再演といかせてもらうね……!!」
「ショウ、その姿! うん、帝国は確かに強かった! 二年前に貴方達に勝利できたことを誉れとしつづけていくよ!!」
『来たまえショウよ!! アンゼリカよ!!』
 たとえ反撃は叶わずとも彼を上回るまで高めた技能を活かして四葩・ショウ(After the Rain・g00878)が最小限の痛手で爆発を突き抜けたなら、艶やかな黒の革靴で霧を蹴って【飛翔】で天空を翔ける燕の乙女はいつのまにか白樹の軽鎧でなく、凛と身を引き締めるようなブルーグレーのブレザーを纏っていた。
 端正なブルーグレーに品よく踊ったアイボリーホワイトは整然たるプリーツに彩られた短丈のスカート、
 首元のスカーフや革靴まで含めてそれはショウがこの春まで最も馴染んでいた都内某女子高の指定制服、機械化ドイツ帝国攻略当時にも身に着けていたそれは、あの頃は高校生であったショウの正式な礼服でもあったから。二年前の再演として礼を尽くした装いとともに攻め立てる硝子のレイピアは麗しい虹の奇跡を描いて彼女の心ごとローラントの胸へと届く。
 刹那、彼の頭上から叩き込まれた眩い輝きは巨大な輝きを噴き上げる光焔剣。
 先の銃撃連射をソレイユの分まで引き受けたアンゼリカ・レンブラント(光彩誓騎・g02672)が二連打の反撃を浴びせれば続けざまに振り上げた巨大な光剣は眩い黄金に更なる神焔を重ねて桜色に輝いて、思うさま攻撃の一閃を打ち下ろせば相手が防御に揮った翼めく巨大な機械爪と激突、機械爪も反撃の爆破も捻じ伏せながら彼に光焔の軌跡を描いたなら、
「約束をさせてもらったから、全力で行かせてもらいますよ! ローラントさん!!」
「わたし達の全力あなたにぶつけるよ、ローラント! そして乗り越えて、グランダルメをぶっ飛ばしに行くからっ!!」
 彼の十時方向下方で神名の弓を引き絞ったユーフェミア・フロンティア(光彩聖姫・g09068)が天空の霧を灼熱の陽射しが貫くがごとき神火の矢を射ち込んで、彼女とは完全に真逆の上空へと舞い上がっていたシル・ウィンディア(虹を翔ける精霊術師・g01415)が辺りの霧を眩い七色に発光させんばかりに輝く虹色の魔力砲撃を叩き込んだ。苛烈な挟撃に冴えを鈍らされつつも爆ぜるような銃撃連射と機械爪が乱舞するがごとき反撃が天空に躍るが、
「このまま包囲するよ――なんてねっ!!」
『なんと!!』
 一気に急旋回して彼の背後を獲ると見せかけたシルは前触れもなく自身の時間が急加速した機を逃さずローラントの意表を衝いて真っ向から吶喊。高速詠唱に長けた精鋭レジェンドウィザードたるシルが【ダブル】の恩恵を受ければほぼ無敵、
 ――世界を司る六界の精霊達よ、宇宙に集いし天体の守護者達よ、過去と未来を繋ぐ時よ、
 ――集いて力となり、全てを撃ち抜きし虹光となれっ!!
 刹那の高速詠唱は勿論、藍鉱石の蕾を花開かせた白銀の長杖の戦端に幾重もの魔法陣が咲き誇る様さえ流石のローラントも認識しきれなかっただろう。瞬く間に限界を超えて撃ち放たれた絶大なる虹色の砲撃は、自陣最高火力にして大型砲撃魔法を得手とするシルにとっても現状では限界を突破して到達した最大級の魔法、
 十芒星精霊収束砲(ペルフェクト・エレメンタル・ブラスト)!!
 霧が満ちる戦場にして舞台に迸った凄まじい七色の光の奔流は空間を満たす霧の粒子すべてを眩い虹色に煌かすよう。
 完全に意表を衝かれ超火力の痛撃を浴びつつも反撃を捻じ伏せられるだけで堪えたローラントも然る者なれど、当然ながら僅か一瞬の彼の隙を逃すことなく蒼穹の天使と蒼海の竜が襲いかかる。平面的な包囲で事足りる地上戦とは異なり、立体的な包囲を必要とする空中戦では一対七でも包囲は厳しいと見るからこそシルは包囲をフェイントにしたわけだが、
「とは言えBrüder、ローラント。貴殿が隙を見せれば包囲しての一斉放火も有り得るかもな」
「連携の巧みさは先程お見せしたとおりだからね、如何様にでも合わせられるよ。力も絆も紡ぎ続けてきた俺達だから」
『むむ! そう宣言されては確かに意識を乱されかねんな! ――面白い!!』
 凄絶な虹色の砲撃がローラントを直撃し爆ぜた瞬間に左右から強襲した二人、虹色に蒼き魔力光を紛らせ高周波ブレードで斬り込んだエトヴァと輝きに神威の光を紛らせ光槍を奔らせた陸が不敵な微笑で告げれば、斬撃と槍撃を機械爪で受けつつも捻じ伏せられた彼が朗々たる声音を舞台に響き渡らせた。
 たとえ反撃を捻じ伏せようとも苛烈な攻撃が襲い来るのは誰もが承知の上、
 勿論彼我の間に二年の時の隔たりがある以上は真実の意味で死闘となるほどではないが、決して侮れない相手であることも決して攻め手を緩められぬ戦いであることも全員が理解しているからこそ、誰もが息もつかせぬがごとき激闘に初手から全く躊躇うことなく全力を尽くす。斃れるのは論外としても、己が被弾することを覚悟していない者など誰もいない。
 熱い星屑めいて霧の空を埋め尽くす銃撃連射の弾幕、星屑の合間から襲いくる機械爪の乱舞、
「サンダーブリッツ達との戦いを観戦してた分、わたし達の戦い方、立ち回りや役割は、もうお見通しかもしれないよね」
「だとしても彼の読みどおりにはいかないと思うよ。何しろ俺達は、戦いを重ねるほどに強くなれる」
 一瞬でも油断すれば蹂躙されるだろう彼の猛攻を白皙の肌に鮮血の朱を散らしつつも急所を護り抜いたショウがまっすぐに翔けぬけたのは、先の戦いで遊撃を担い幾度も鋭い急旋回での強襲を見せたがゆえ。だが陸が語るとおりローラントへの皆の初撃で更に世界に花開いた残留効果が自分達の力を高めてくれている。己が麾下のサンダーブリッツ達の実力を誰より正確に識るのが他ならぬ彼である以上、先の戦いでこちらの実力も把握されているだろうが、
 世界に燈された二重に能力を高める祝福が、三重に跳ね上げられた命中強化と防御強化が、
 これまでに燈されてきた数多の加護と相俟って、ローラントの予想を超える力を自分達に発揮させてくれるはずだ。
 霧に紛れつつも透きとおるアクアノートから花咲むマグノリアの香り躍らせ、四葩の彩りで爪を彩り硝子の薔薇を咲かせた手で改めて雨雫のフルーレを握りしめれば、三重の命中強化と硝子の鋩がプリズムのごとく虹を煌かせ。
 ――さあ、
 ――わたしをみて。
 花の色の眼差しで彼を射抜く燕の乙女がそう紡いだ刹那、真正面からローラントの胸を突くと見えた硝子のレイピアが一瞬引かれた直後に鮮烈な虹の煌きで彼の顎下から喉を突き上げ、更には彼の下方へ跳び込んでいた蒼海の竜が掌中に結晶させた光が瞬時に極限まで研ぎ澄まされ、迷わず下方から突き上げるよう投擲された輝ける槍もまたローラントの鎖骨を砕けば、
『……!! なんと際どい、なんと美しい軌跡だ! ショウよ!! リクよ!!』
 衝撃に一瞬息を詰まらせつつも晴れやかな笑みでローラントが声を張った刹那、脚部フライトユニットが唸りを上げる。
 激しく霧が乱れたと見えた刹那に上空へと突き抜ける敵影、だが麾下のサンダーブリッツ達同様に高速飛翔戦闘に長けると思しき彼の急上昇に全速でアンゼリカが喰らいつき、追いつき様に下方から光焔の大剣で豪快に斬り上げて、
「こっちにも空中戦のプロはいるからね! 私もそんなプロ達と一緒に数多の戦場を翔けて来たんだっ!!」
「ええ。いかな高速機動で天空を翔ける相手であろうと、この嵐で呑み込んでみせましょう」
『なんと豪快! なんと壮大! 先程より更に力を増しているようではないか、アンゼリカよ!! ソレイユよ!!』
 懐の花冠に燈る絆を咲き誇らせるがごとく眩い斬撃を相手が二丁拳銃を翻すよりも速く刻み込んだなら、光の鍵盤に力強く弾ませたソレイユが響き渡らせる楽曲が光彩誓騎の光と焔で熱く輝く霧を轟と渦巻かせる嵐でローラントを呑み込んで、次の瞬間には数多の色彩が霧を輝かせた。
「そういうことっ! 空をあなた達の独壇場にはさせないよ、わたしだって負けないんだから!!」
「私自身が空中機動では叶わないとしても、あなたの機動に惑わされもしませんっ!!」
 嵐の只中を自在に翔けるよう、嵐の狂風に乗って舞い上がるよう、一瞬でローラントを超える高空に達したシルが世界樹の翼たる長杖を打ち下ろせば大中小の魔法陣が様々な彩光で花開き咲き誇り、絶大な虹色の砲撃を迸らせたなら、己の生半可な空中機動では却って不利になると覚悟を決めたユーフェミアが天空の固定砲台として神威の焔を射ち上げる。空中戦に長けたシルの砲撃と空中戦でなく対空戦技能を活かしたユーフェミアの焔矢がローラントを直撃した刹那、
 盛大に爆ぜた虹と焔の輝きの中心を蒼き光が翔け抜けた。
『全くもって諸君らには感服させられるばかりだ、シルよ!! ユーフェミアよ!! 我らが同胞エトヴァよ!!』
「光栄だよ。Brüder、ローラント」
 高空から虹色の砲撃を追って一気に急降下したエトヴァは蒼き魔力光奔る黒の刀身で反撃ごと彼を斬り伏せ、勢いのままに下方へ突きぬければ蒼穹の翼を一打ちして軽やかに身を翻して、
 ――Komm, heilige Melodei.
 派手な急旋回でシルとユーフェミアに、そしてエトヴァにと星屑めいた無数の銃弾を振りまき、機械爪を乱舞させて三人を蹂躙せんとするローラントの猛攻に反撃で挑む。黄金を咲かせ白銀を閃かせ、金の荊が輝く魔力障壁と上空からの銃撃連射へ翳した銀色の大盾で猛攻の威力を半減させたなら、蒼穹の天使は端的な祈りの詠唱とともに白銀の聖なる加護を纏って瞬時に舞い上がり、勢いよく霧を裂いて襲い来る長大な機械爪を白銀で受けて黒と青の煌きで跳ね上げて、
 熱き銃火も鋼の火花も眩く爆ぜ散る戦舞の裡でエトヴァは、痛烈にして鮮烈な反撃の蒼き一閃を奔らせた。
 ――貴殿が戦いの涯の散華を求めるならば、この舞台を踊り抜こう。
 ――それは間違いなく、俺の、役目だ。

●歌劇
 魔法めく霧に満ちた天空の戦場にして舞台で繰り広げられているのは荘厳にして苛烈な歌劇。
 壮麗な管弦楽の音色で響き渡る幻想ソナタは猛然たる嵐を渦巻かせ、二重に燈された凱歌はより高らかに天空へ響き渡る。然れど凱歌はあくまで舞台としての戦場に彩りを添えるためのもの、この【勝利の凱歌】は心に勇気と希望を湧き上がらせる効果を持つが、勇気も希望も眼前のローラントや双雷達を偽りの復讐心から解放したときには既に大きく咲き誇っていた。
 天空に満ちる霧が眩い爆炎と濃い爆煙で数多彩られ、銃撃ばかりか機械爪の斬撃もが霧を超高速で千々に爆ぜ散らしながら至近で躍り、熱い星屑めいた銃撃連射の弾幕と星屑の合間から襲いくる機械爪の乱舞がこちらを蹂躙せんとするけれど、
『さあ、私の眼に魂に、貴兄ら貴姉らの力量を灼きつけてくれたまえ! ディアボロス諸君よ――!!』
 勇猛果敢にして疾風迅雷の勢いで劇的な激戦を繰り広げるローラントからは決して自分達への称賛が消えないから。
 数多撃ち込まれる銃弾が過激な灼熱とともに爆裂する猛撃を最愛のひとの分まで己が身に受けることさえも、アンゼリカに更なる高揚を齎していくばかり。引け目も後ろめたさも霧散した今こそ完全にすべての力を出し切って、全力全開さえ超えて挑んでいけるから。誰より息を合わせられる相棒が、誰より心を添わせられる恋人が、一緒に挑んでくれるから。
 大丈夫、もう心は揺れたりなんかしない。
「援護砲撃よろしくね、ミア! 貴方に見せるよローラント、最も強い自分を! 証明しつづけるよ、強い私達を!!」
「任せてアンゼリカ! 私も私らしく、これまでに積み重ねてきた力をお見せします、ローラントさん!!」
 この決戦で仲間達が三重にまで高めてくれた防御強化と己自身で身に纏わせた光焔剣の輝きに護られながら、派手な爆炎も爆煙も豪快に斬り裂いてその威を半減させて突き抜ける。昨年の初めに覚醒して以降、驚異的なスピードで実戦経験を積んで精鋭の域まで翔けあがったユーフェミアの強みのひとつが仲間の活躍や自身の経験から真摯にまっすぐ学んで吸収する姿勢、先のサンダーブリッツ戦での経験も即座に活かし、天空の霧を大地のごとく確り踏みしめながら神威の焔を射ち放てば、
 霧を貫く神威の焔の輝きを巨大な光剣で掬い上げながらアンゼリカが焔矢の直撃とともに光焔剣の二連撃を反撃として彼に叩き込む。強打でも爆破でも捨て身の一撃でも貴方に勝るよと強気な笑み咲かせ、桜花に彩られた手首を翻したなら、
 続けざまの攻勢で豪快に一閃するのは自陣最高火力たるシルの十芒星精霊収束砲に僅差で次ぐ、
 ――神焔収束斬(ジャッジメントセイバー・ネクスト)!!
 眩くも強大な輝きが咲き誇ったならば僅かに体勢を崩したローラントの隙を衝くべく一気にその下方へと飛び込んだシルが数多の彩光で咲かせた多重魔法陣に収束させた魔力を一気に突き上げた。先程サンダーブリッツ達と、そして今ローラントと断頭革命グランダルメの天空を翔けめぐれば、胸に甦るのは機械化ドイツ帝国の天空を翔けめぐった戦いの日々のこと、
 ダイヤモンドはダイヤモンドでしか磨けない。
 あの戦いの日々も自分の空中戦を確かに磨き上げてくれた軌跡のひとつだから、
「帝国のゾルタート達は、みんな空中戦が強かった。だからこそ、わたしはあなた達を超えていくよっ!!」
「うん、わたしも覚えてるよ。帝国で戦ったあなた達の同胞達の強さ、この身に受けた、ヴィルヘルム2世のちからも」
『おお、おお! シルよ、ショウよ、すべてを覚えていてくれたまえ!!』
 真っ向からの正面勝負も心躍るけれど、相手の隙を見出し迷わず衝くことも己が全力を出し切ることだとシルは理解するがゆえに急降下からの鋭い反転で、ローラントの直下から膨大なる魔力を凝らせた虹色の輝きの奔流を突き上げる。眩い七色に輝く光柱のごとき砲撃にプリズムの虹色を眩ませて、一気に飛び込むショウも硝子のレイピアに奔る光沢のように己が想いを瞬時に鋩まで奔らせ、ローラントの喉元へ繰り出した。おぼえてる。初めて相対した断片の王の、極限のつよさを。
 熱い星屑めいた弾幕でシルに、超高速で揮う機械爪の斬撃でショウに、迷わぬ反撃を炸裂させながらもローラントの声音は好敵手達と銃火を交える歓喜とディアボロス達への敬意と称賛に満ちていて、それゆえに蒼穹の天使もいっそう軽やかに霧の天空に舞う。あらゆる角度からの斬り込みを可能にするHeiliger Glanz(ハイリガー・グランツ)、
「語るまでもなく、言い尽くせぬ幸福も、言い尽くせぬ悲嘆もあったよ。それらすべてが今の俺に繋がっている」
「貴方がたと祖国を同じくするエトヴァさんには勿論及ばないけれど、俺も帝国では戦いだけでない幸福な記憶もあるから」
『……!! 貴兄らに感謝を、我らが同胞エトヴァよ! リクよ!』
 ――軌跡は今に繋がって、そして未来にも繋がりつづけていくから。
 蒼穹の翼で生み出した浮力も遠心力も存分に活かしての剣舞のごときパラドクスで青き精霊術師と燕の乙女の丁度中間たる角度から相手の懐へ滑り込むよう翔ければエトヴァは襲い来る機械爪を高周波ブレードで跳ね上げつつ高く舞い上がり、青き後光を纏う翼で霧を打って宙返りを打った刹那の急降下で黒に青き光を奔らせる刃を揮った。桁違いの空中戦技能をはじめ、相手が有する技能すべてで己が勝るから。帝国の夜を馳せた過去も、数多の空を翔ける今も、すべて己を形作っているから。
 祖国の精鋭であった彼を、圧倒する。
 白き霧を冴える青に輝かせる一閃が、ローラントの背を斬り裂くとともに翼めく長大な機械爪のひとつを断ち落とした。
 彼の反撃と次撃を捻じ伏せた気配とともにエトヴァの裡に咲くのは二重の攻撃強化に威を高められた【ドレイン】の癒し、機を逃さずローラントの懐へと蒼海の竜が飛び込んだのは当然相手の意識が一瞬背後へ集中した隙を衝いてのこと、機械爪の蹂躙を輝ける光槍で斬り結ぶよう相殺すれば彼が二丁拳銃で弾幕を張るがごとき連射を放つよりも速く光の鋩で彼の胸を反撃ごと穿ち貫いて、懐の紺碧の鯨を意識すれば陸は胸の裡に咲いた記憶に黎明の双眸を微かに細めた。
 塩が煌くブレッツェル、木苺が煌くシュニット――。
 勇猛果敢にして疾風迅雷の勢いで攻め立ててくるローラントの攻勢を一手でも捻じ伏せれば戦場の流れが加速する。
 己が持てるすべてをもって全身全霊をかけて猛攻をかける仲間達の眼差しは翳ることなくまっすぐで、ふと皆と己の違いに気づけば思わずソレイユは蒼穹と黄昏の双眸で瞬きひとつ。
 機械化ドイツ帝国出身のエトヴァは勿論、幻想竜域キングアーサー出身の陸とシルも、
 TOKYOエゼキエル戦争出身のアンゼリカとユーフェミアも、現代地球出身のディアボロスとして覚醒したショウもまた、
 ――自身の故郷たる大地を歴史侵略者達の手から奪還してなお、
 ――世界すべてを取り戻すために翔けつづけている。
 断頭革命グランダルメに生まれ育った身としては絶対の悲願たる奪還戦を前にしているからこそ息苦しくなるような感傷を皆より強く覚えるのだろうか。来たる奪還戦で断頭革命グランダルメ全土奪還を成し遂げた先に、自分は――と胸裡に僅かな刹那よぎりはするけれど、今この瞬間に為すべきこと、今この瞬間に見据えるべき相手を間違えたりはしない。
 今は唯、眼前の『シャオシュピーラー・ローラント』を斃すことに全力を尽くすのみ。
 胸の裡に刹那の思考がよぎっても光の鍵盤に翔ける十指に一切の澱みがなかったのは演奏家としての日々の鍛錬の賜物だ。戦場たる舞台を幾重もの管弦楽の音色で荘厳に彩る音色にいっそう魔力を籠めたなら、天空に満ちる霧を轟とうねらせる嵐が霧の底から巻き上げた砂礫とともにローラントへ襲いかかり、熱き星屑めく数多の弾丸を放つ銃撃連射と激突する。
 太陽のごとく輝く紋章を咲かせる魔力障壁に威を減衰されてなお、熱き星屑がソレイユを穿つけれど、
「たとえ幾ら傷つこうとも、私の演奏は止まりません」
『おお、おお! 貴兄の演奏家としての矜持に敬意を、ソレイユよ!! ならばこそ――!!』
 三重の防御強化に威を鈍らされた機械爪が肩を抉るけれど、更に十指を力強く光の鍵盤に躍らせ嵐の暴威で彼を呑めば、
「ソレイユ! 来るよ、ラフィーニールト・タンツェン!!」
「任せて!! ――させない」
 途端にインカム越しに響いたのはアンゼリカとショウの声音、燕の乙女の後半の言の葉が詠唱だと気づいた瞬間、霧と砂礫荒れ狂う嵐の裡からローラントが凄まじい勢いで躍り出て来ると同時にソレイユに視界にホワイトブロンドとブルーグレーが飛び込んできた。少年演奏家の盾となるべく翔けたショウ、女子高の王子様であった身を霧越しにも凛と際立たせる制服纏う彼女を護るべく飛び出したホワイトブロンドのふわもこは、
 花の色のリボンでおめかしした、思いきり抱きしめられる大きさのテディベア!!
 黒くてつぶらな瞳にローラントを映したテディベアはふかふかの両腕を広げて守護人形としての役割を見事に果たし、
「紹介するよ。この『アマンダ』とは、帝国で出逢ったんだ」
『おお! 我らが機械化ドイツ帝国の製品は愛らしさも世界一……!!』
 彼女とともに超高速の銃撃と機械爪の斬撃の威を半減したなら痛烈な反撃として迷わずショウが繰り出したのは透きとおる鋩に虹を煌かせた硝子のレイピア。紅の双眸を大きく瞠ったローラントのかんばせにはプリズムの虹きらめく鋩が鳩尾に突き立ってなお嬉しげな笑みが広がったままで、
『ショウよ。願わくば貴姉の旅路にずっと、アマンダ嬢がともにあらんことを』
「――うん、そのつもり。ありがとう、ローラントさん」
 彼の言葉にほんの少し、ほんの少しだけ花色の瞳に熱を感じつつも燕の乙女は三重の命中強化の導きのまま彼に反撃の機を与えることなく攻撃の煌きを奔らせた。もう誰にも涙も血汐も流させないためのPrism(プリズム)が彼の胸を貫いて、
 熱い光が【ドレイン】の癒しとして己が裡に咲き誇るのを感じつつ、ショウは花唇を開いた。
 機械化ドイツ帝国があったことも、そこであったすべても、
 なにもかも、なかったことにはさせない。だから――。

●喝采
 荘厳にして苛烈な歌劇の終幕が近づいていることを誰もが察していた。
 満身創痍となってもなお魔法めく霧に満ちた天空の戦場にして舞台を高速で翔けるローラント自身も、また。
 然れど傷も痛手も嵩んでも機械爪を断ち落とされようとも彼の攻勢が鈍るはずもないこともまた誰もが理解していたから、この戦場の舞台に幕が下りるまで一切気を緩めることなく彼我ともに激しくぶつかり合う。熱い星屑めいた数多の弾丸が襲い来ても高速で閃く機械爪の斬撃に晒されても幾重もの眩い爆炎と濃い爆煙に呑まれても攻め手を緩めはしない。
 天空に『シャオシュピーラー・ローラント』を自在に翔けさせる脚部フライトユニットが猛然たるうなりを上げれば、霧に敵影が躍るとともに翻った二丁拳銃から爆ぜるのは数多の銃弾で霧に描き出される熱き星屑、無数のそれらが一瞬で伸長した機械爪とともに光彩誓騎と燕の乙女を蹂躙せんとした刹那、
 紅の軌跡が空間を超え、蒼の軌跡が霧を貫いた。
「――強い、ですよね。貴方は勿論、先程のサンダーブリッツ達さん達も。きっと本当に、帝国は脅威だったんですよね」
「ああ、本当に強大で脅威だった。だからこそ大勢のディアボロスが全力で立ち向かったんだ」
『おお、おお、そう言ってくれるか、機械化ドイツ帝国最大の脅威となった、ディアボロスの諸君よ――!!』
 熱き星屑めいた数多の銃弾と機械爪の乱舞からアンゼリカを護りながらユーフェミアがまっすぐローラントを見つめてそう口にすれば、蒼穹の翼で背に護ったショウを覆い隠しつつ白銀の大盾と黒と青きらめく高周波ブレードを翻して銃撃と斬撃の威力を半減したエトヴァも少女に応えつつローラントから眼差しを逸らさない。
 勿論大勢のディアボロスが全力で立ち向かうのはいずれのディヴィジョンも同じなれど、一度は辛酸を嘗めつつも驚異的な速度で帝国を突き崩した攻略は今でもなお特筆に値するだろう。帝国もまた《七曜の戦》に向けて戦力増強を図っていた以上時が経てば経つほどその脅威は増したに違いないのだから。
 己が直接相対したことはなくとも胸に強く確信を抱きつつ聖女の名を授けられし少女が射ち放つ神焔の矢、機械爪の蹂躙を鮮やかにいなし真っ向から黒き刀身で青き閃光描く剣舞で痛烈に斬り伏せる蒼穹の天使、二人の反撃が紅と青でローラントを彩った瞬間、高空へ舞い上がっていた蒼海の竜が輝ける槍を手に一気に急降下する。無論投擲で狙い撃つのも可能であったが終幕が近いのなら彼と間近で言葉を交わしたくて。
 そう、俺達は今だって貴方達を認めている。陸は心からそう口にすると同時に、
「だから貴方にも認めさせてみせるよ、望みを託すに値する好敵手だ――とね」
「ナポレオンを倒し、故郷を奪還を奪還することは私の悲願です。勝利しますよ、必ず」
『おお、おお! 貴兄ら貴姉らなら、必ずや――!!』
 猛然と揮われた機械爪を搔い潜って奔らせた光神の戦槍(ルーン)でローラントの胸から腰まで鮮やかに貫き通して反撃を捻じ伏せて、その隙を逃さずソレイユが彼の直下から強大なる嵐を巻き起こした。ローラントの下方を獲ったのは挟撃の嵐で彼を呑むだけではなく、この戦いを演目と、この戦場を舞台と呼ぶ『役者』を、霧の底の大地から湧きあがるように荘厳なる楽曲と音色で呑み込んでやりたかったから。
 ――さあ、フィナーレといきましょうか。
 幾重もの管弦楽の音色を重厚に華麗に響きせながら織り上げられる楽曲が天空の戦場にして舞台たる空間に満ちる霧すべて荒々しくうねらせ猛らせ渦巻かせ、無数の砂礫をも舞わせる嵐の裡へ高空から迷わず突入したのは青き精霊術師。
 両手で握りしめた世界樹の翼たる銀杖の風翼が魔力で花開き頂の藍鉱石の蕾が咲き綻べば、シルの右手首で青きオパールの雫が二粒揺れて、魔法の宝石の宝箱が開かれるように数多の彩に輝く幾つもの魔法陣が多重展開されたなら、
「ローラント、あなた達を無理に起こしたグランダルメに何か言いたいことはある? 代わりに伝えるよ」
『おお! ならばシルよ、こう伝えていただきたい! 『恥を知れ!!』――とな!!』
 強大な嵐の余韻に激しく逆巻く霧すべてを七色に発光させんばかりの虹色の輝きの奔流が星屑めく弾幕と激突して、
「うん! そう言ってぶん殴りにいくね! あなた達の誇り、そして、想いも持っていくから――!!」
 己には間違いなくその力があるからと証明するように熱き星屑のごとき弾幕を圧倒して捻じ伏せた砲撃魔法がローラントを直撃したなら、彼を突き抜けた虹色の輝きを遡るようにアンゼリカが全力で翔けた。全身全霊で振りかぶるのは勿論巨大なる光焔剣、夏陽のごとく眩い金に輝く光剣が神焔を孕んで桜色に輝く様はまるで祝福のようにも思えて、
「ローラント、本当の貴方と逢えたことは私の幸せだ。そして貴方達のそのありよう、決して忘れない――!!」
『おお、おお、私も心から幸福に思うとも! 涙は不要だアンゼリカ、勇猛なる撃竜騎士よ――!!』
 万感の想いとともに打ち下ろせば不意に己の裡から顔を覗かせた陸堂陽菜の心が惜別の熱を瞳の奥に昇らせたけれど、己が名乗る英雄の名をローラントが呼んでくれるのなら、騎士として称えてくれるのなら、熱が滴になるまえに抑え込んで、
「私も誓う、約束する! 必ず断頭革命グランダルメに勝利してみせよう!!」
 熱く迸る誓いのままに反撃ごと彼を斬り伏せる。大きく傾いだところへ迷わず燕の少女が飛び込んだ。
 花の色の瞳で彼を捉え、白い喉を震わせ歌い上げる聖歌の代わりに先程の言葉を繰り返して、
 機械化ドイツ帝国があったことも、そこであったすべても、
 なにもかも、なかったことにはさせない。だから――。
「約束するよ。証明しつづけよと希う想いを、明日へ連れていく」
『おお、おお! 未来までも証明しつづけてくれ、アマンダ嬢とともに翔けていってくれ、ショウよ!!』
 霧のなかでひときわ華やかに、ひときわ優しく煌いた虹の軌跡とともに、己が誓いの結晶たる硝子のレイピアを彼の胸へとうずめて――二年前の再演のため纏うことなく手にしていた魔法きらめく白と空の彩が翻るペリースをひらり舞わせ、蒼穹の天使の気配を感じるともにヒット・アンド・アウェイそのままに距離をとる。
 蒼穹の天使が舞い降りた。これが同胞とともに踊り明かした舞台の終幕。
 滑るよう彼の懐へ迫れば襲い来る機械爪をひときわ滑らかな軌跡と断面を生み出し斬り飛ばし、黒き黒き高周波ブレードにこの日もっとも美しい青の魔力光を奔らせて、蒼穹の双眸にまっすぐ同胞を映してエトヴァは、
「Brüder、ローラントよ。ディアボロスと戦い抜いた、誇り高き敗者たれ」
『――……! 我らが同胞エトヴァよ、素晴らしき賛辞に感謝を……!!』
 彼の体躯にこのうえなく滑らかな一閃を描きだした。
 深々と、滑らかに奔った傷から溢れるのは紅き血ではなく、青き光の余韻。
 誰もが心からのものと一目でわかる晴れ晴れとした笑顔で、ローラントは好敵手達に喝采を贈った。
『これを再び口にできることを嬉しく思う! 敵ながら天晴! 見事な勝利であった、ディアボロスの諸君よ――!!』
 ゆっくりのけぞりながら、彼が霧に満ちた空から墜ちていく。
 撃墜されていく彼を迷わず皆で霧の底まで追って、大地に降り立ったソレイユが感慨を込めた十指を光の鍵盤に躍らせた。荘厳に溢れ出す幾重もの管弦楽の音色にはパラドクスの魔力は一切なく、ただ彼の舞台の終幕を彩るために響き渡り、花開く交響曲の音色を万感とともに胸に満たしながら、彼らに、ここで相まみえた同胞達に、エトヴァも晴れやかに喝采を贈る。
「グランダルメへの勝利をもって、貴殿らへの勲章と花輪となそう」
「貴方達が認めて託してくれたのだから、今日このときの誓いに違わず、いつまでも勝ち続けてみせるよ」
『おお、おお! こうして好敵手達に約束とともに送りだされることの、何たる歓びか、何たる幸せか!!』
 晴れやかさを増した彼の笑顔を見れば、陸はローラントが最も望んでいるだろう言の葉を続けてはっきりと口にした。
 ――貴方達を利用したグランダルメにも、
 ――他の如何なる者たちにもね。
『……!! ありがたい、ありがとう、リクよ! ディアボロス諸君よ!!』
 証明しつづけよと希う想いを、明日へ連れていく――先に結んだショウの約束も、陸と同じもの。
 だから舞台の終わりに、さよならの代わりに告げるのはカーテンコール。
「ローラントさん。ほんとうの貴方と逢えてよかった」
『私も同じだ、ショウよ』
 荘厳に鳴り響く交響曲の音色のなかで、誓いを、想いをすべて捧げて、
 仲間達に花の色の眼差しを送って盛大に彼へ贈るのは、最大級の賛辞たるスタンディング・オベーション。
 感慨に浸るよう強く目蓋を閉じて、『シャオシュピーラー・ローラント』は最期の力を振り絞って高らかにこう口にした。
 ――未来永劫に不敗であれ!!
 ――我らが機械化ドイツ帝国に見事勝利した、ディアボロス諸君よ!!
 
超成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【友達催眠】LV1が発生!
【植物活性】LV1が発生!
【断末魔動画】LV1が発生!
【腐食】LV1が発生!
【勝利の凱歌】がLV2になった!
【未来予測】LV1が発生!
【一刀両断】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV2が発生!
【ダブル】LV1が発生!
【ガードアップ】がLV3になった!
【命中アップ】がLV3になった!
【ドレイン】LV1が発生!

最終結果:成功

完成日2024年04月21日

ラ・ショー=ド=フォンの霧

 国境の街『ル・ロックル』への電撃戦に勝利を収めたディアボロスは、断片の王ナポレオンのいるスイス首都『ベルン』に向けて進軍を再開しました。
 しかし、その途上、現在のスイスにおける時計産業代表都市である『ラ・ショー=ド=フォン』近郊で発生した霧により、行く手を阻まれてしまったのです。

 この霧は【完全視界】でも見通す事が出来ない魔法的な霧であり、ディヴィジョン境界の霧に似た性質を持っているようです。
 更に、この霧の中に足を踏み入れたディアボロスは、機械化ドイツ帝国のクロノヴェーダである『ゾルダート』による襲撃を受ける事となりました。

 この霧による現象は、ラ・ショー=ド=フォンを守るジェネラル級クロノヴェーダが、ディアボロスの進軍に対し、『対奪還戦用の秘匿兵器』のひとつを起動させたためであると推測されます。
『ゾルダート』の襲撃を撃退し、秘匿兵器があると思われる『ラ・ショー=ド=フォン』に向かい、奪還戦前に敵の秘匿兵器を破壊あるいは無効化してください。

アロイス・フォン・レディンク


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選択肢『霧から現れるゾルダートとの会話』のルール

 霧から現れるゾルダートとの会話を行います。
 霧から現れるゾルダートは、ディアボロスへの復讐心が植え付けられており、その復讐心により、ディアボロスと戦う際に、実力以上の力を発揮するようです。
 しかし、この復讐心は、ゾルダート本人のものでは無く、無理やり植え付けられたものにすぎません。
 ゾルダートと会話を行う事で、植え付けられた『復讐心』に疑問を持たせる事が出来れば、この効果を打ち消すことが出来るでしょう。
 詳しくは、オープニングやリプレイを確認してください。


 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、450文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★1個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は600文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 🎖🎖🎖 🔵🔵🔵🔵🔵
 超成功 🔵🔵🔵🔵🔵
 大成功 🔵🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔵🔴
 善戦 🔵🔵🔴🔴
 苦戦 🔵🔴🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『この選択肢の🔵が👑に達しない限り、👿のリプレイでは大成功🔵🔵🔵🔵以上が発生しない。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👾ディアボロスを狙うトループス『サンダーブリッツまたの名を双雷』のルール

 ディアボロスを発見した途端に、ディアボロスを狙って攻撃して来るトループス級クロノヴェーダ(👾)と戦闘を行います。
 ディアボロスに攻撃を仕掛けてくれるので、敵の捜索を行ったり、周囲の被害を減らす為の行動などは必要ありませんが、戦意が高い傾向にある為、油断は禁物でしょう。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「沢山」出現します(現れる敵の数は、オープニングの情報やリプレイの記述で提示されます)。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、450文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★1個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は600文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 🎖🎖🎖 🔵🔵🔵🔵🔵
 超成功 🔵🔵🔵🔵🔵
 大成功 🔵🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔵🔴
 善戦 🔵🔵🔴🔴
 苦戦 🔵🔴🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『この選択肢の🔵が👑に達すると、この敵集団を倒す。完結までにクリアしていない場合、この敵集団は撤退する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👿アヴァタール級との決戦『シャオシュピーラー・ローラント』のルール

 事件の首魁である、アヴァタール級クロノヴェーダ(👿)と戦います。
 👿を撃破する事で、この事件を成功で完結させ、クロノヴェーダの作戦を阻止する事が可能です。
 敵指揮官を撃破した時点で、撃破していないクロノヴェーダは撤退してしまいます。
 また、救出対象などが設定されている場合も、シナリオ成功時までに救出している必要があるので、注意が必要です。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「1体」出現します。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、450文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★1個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は600文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 🎖🎖🎖 🔵🔵🔵🔵🔵
 超成功 🔵🔵🔵🔵🔵
 大成功 🔵🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔵🔴
 善戦 🔵🔵🔴🔴
 苦戦 🔵🔴🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『【完結条件】この選択肢の🔵が👑に達すると、敵を倒し、シナリオは成功で完結する。ただし、この選択肢の🔴が🔵より先に👑に達すると、シナリオは失敗で完結する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※このボスの宿敵主は「アルメア・グラウプナー」です。
※クロノヴェーダには、同じ外見を持つ複数の個体が存在しますが、それぞれ別々のクロノヴェーダで、他の個体の記憶などは持っておらず、個体ごとに性格なども異なっています。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。