リプレイ
瀧夜盛・五月姫
【燐五】
ん、確かに。
ここまで、姫が知ってるクロノヴェーダ、すくなくとも、そこに“有る”場所、だった。
伝説でも“有る”島、だったらあるいは、だけど……そういうところ、見つからないで、行ける、のかな?
でも、予想を裏切ってきたのも、クロノヴェーダ。調べるからには、しっかりと、ね。
燐さんの背中につかまって、モーターボートでしゅっぱつしんこー。
け、けっこう、はやい速度で走るんだね。
ふふ、お魚さんたちも集まってきて、くれるかな。
ふぅん、たしか地中海とわかつ、海峡だから、位置を伝えるには、ずいぶんと手前でおおざっぱ、なんだね。
よし、【動物の友】展開して、この海のこと、きいてみようか。
ヘイ、そこのお魚さん? いかしたスポット、しってっかーい?
アトランティス。沈んでなくなった島、なんだね。
諸行無常、盛者必衰。なんだか親近感……ある気、する。
……ん、そうだね。案内人さん、おたからだって、いってた。
きっとすごいもの、みつかるかも、しれない。
よし、一番乗りは姫たち、だよ。
いこう、燐さんっ
一里塚・燐寧
【燐五】
仮に、この近くにアトランティスなんてのがあったとしたらさぁ、今頃あたし達の船追い返されてんじゃなぁい?
エルドラードのポルトガルと中南米を中継する拠点になって、絶対一人や二人どころじゃないジェネラル級が詰めてるっしょ
……ま、安全確認がてら、ゆったりマリンデートと洒落こもっか
五月姫ちゃんと二人でモーターボートに乗って探索に出るよぉ
窓に叩きつける水しぶきにワクワクしながら、だだっ広い大西洋を観察
プラトンの本だと、アトランティスの所在は「ヘラクレスの柱の向こう」にあること以外は明確じゃないんだよねぇ
つまり、ジブラルタル海峡の外側、大西洋のどこにあっても話は通るってワケで……あーもー、困っちゃうなぁ
他の復讐者チームと手分けして、なるべく広い範囲を探せるようにするよぉ
……と言いつつ、五月姫ちゃんと身を寄せ合ってイチャイチャするのがメインになっちゃうかも
あは。センチメンタルな気分になるのはちょっと早いよぉ
まだ海底調査が残ってるんだからねぇ
ほんとに波の下に都があったら、テンションバクアゲじゃん?
朧げな曲線も、霞む風景もない大海原。それこそが瀧夜盛・五月姫(失つし世《うつしよ》の滝夜叉姫・g00544)と一里塚・燐寧(粉骨砕身リビングデッド・g04979)を出迎えた、果てのない輝きだ。
波を切り裂くボートで、五月姫が燐寧の背部を頼りにする。そんな二人を揶揄うようにボートは揺れた。
「け、けっこう、はやいんだね……でも、きもちいい、かも……?」
まだ慣れぬ動きに五月姫が背中へ囁くものだから、くすぐったそうに燐寧が声を大きくする。
「ねえねえ、仮に、この近くにアトランティスなんてのがあったとしたらさぁ……」
空を眺めた燐寧につられて、五月姫も埋めていた顔をもたげる。
「今頃あたし達の船、追い返されてんじゃなぁい?」
寄港地代わりの中継拠点にも成り得そうだと、燐寧は思い巡らせていた。
「絶対、ジェネラル級がわんさかそこに詰めてるっしょ」
そんな海域で、クロノヴェーダの襲撃を警戒する必要が無いのなら、それはつまり――と常よりマイペースだからこそ、燐寧は波も揺れる景色も構わず、結論へ結びつける。
一通り聞いてから五月姫は顎を引いた。
「ん、確かに」
自分の知る範囲で、クロノヴェーダが居た舞台を思い返してみれば。
(「すくなくとも、そこに『有る』場所、だった」)
伝説上だとしても舞台が『有る』のなら。巡らせた思考は五月姫の指先を静かに冷やしていった。
(「でも、予想を裏切るのも……クロノヴェーダ、だから」)
胸の奥が掻き乱れる感覚へ沈むと、船へと叩きつける水飛沫が海へ誘い始める。潮の香りが手招くけれど、燐寧が片手を振ってバイバイしたのに合わせて、五月姫も同じ仕草を波へ贈る。
そういえば、と燐寧が口を開いたのはその時だ。
「プラトンの本だと『ヘラクレスの柱の向こう』にあること以外は明確じゃないんだよねぇ」
アトランティスの所在について話す声色はボート同様、波に弾む。
「つまりさぁ、ジブラルタル海峡の外側、大西洋のどこにあっても話は通るワケで……」
膨大な資料を読み漁るときの心地だ。果てが無い。
「あーもー、困っちゃうなぁ、ほんと!」
嬉々とした音が燐寧の感情を物語る。三日月を描く彼女の唇も知らず、五月姫がふぅんと唸った。
「たしか地中海とわかつ、海峡だから……位置を伝えるには、ずいぶんと手前でおおざっぱ、なんだね」
いつぞや目にした地図情報を想起して、ならばと魚たちへ問いかける。
「ヘイ、そこのお魚さん?」
続けていくうちに、うねる波の隙間から魚影が海面近くまで上昇してきた。
「いかしたスポット、しってっかーい?」
しかし魚影はふんわりした問いかけを読み取れぬまま、船の周りに取り付くだけ。
「燐さん、見て。集まってきて、くれた」
日中の海原を溶かしたような五月姫の瞳が、きらきらと眩しさを散らす。光爛漫な彼女の雰囲気を背中で感じ取り、燐寧も頬をふくりと持ち上げた。
直後、勢い余ってボートが跳ね上がった拍子に、わ、と二人の声も重なる。
「っとと。五月姫ちゃん大丈夫? しっかり掴まっててねぇ」
「う、ん。わかった」
船の思わぬ躍動を体験したおかげで、互いの隙間をも惜しむ程、五月姫が燐寧へ肌を寄せた。ずっと近かった筈なのに、より近く温度を感じて燐寧は喜びを呼気へ含む。
「やっぱり安全確認は大事だねぇ、あたしたちで先行しておいて正解だったかも」
探索における役目や必要な行動を採りながらも、燐寧自身、それらが名目めいたものに感じるのは屹度――五月姫との船旅が、想像以上に胸躍るものだから。
しかし一方で五月姫は。
「沈んでなくなった島、なんだね……アトランティス」
声が萎んでいた。史実を辿れなかった存在。伝承を他人事のように感じざるを得ない存在。諸行無常も盛者必衰も世の例だからこそ、からっぽな感覚が胸を焦がす。燐寧に掴まったままの五月姫の手に、きゅっと力が籠れば。
「五月姫ちゃん、センチメンタルな気分になるのはちょっと早いよぉ」
笑いかける燐寧の温もりが、俯きかけた五月姫を撫でた。
「まだ海底調査が残ってるんだからねぇ。今はマリンデートと洒落こも!」
振り向いた燐寧が片目を瞑ってみせると、五月姫も眦を和らげて。
「……ん、そうだね。案内人さん、おたからだって、いってた」
「そうそう。ほんとに波の下に都があったら、テンションバクアゲじゃん?」
燐寧が底抜けの明るさで引き揚げてくれるから、五月姫も胸の底まで息を吸う。
「出だしは好調、一番乗りは姫たち、だよ。いこう、燐さんっ」
昂る気持ちを二人で抱いて、煌めく波の向こう側へと船を進ませる。
彼女たちが切り開いた方角に何も無くても、ずっとずっと二人、離れずに海を満喫していった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【動物の友】LV1が発生!
【通信障害】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
レジーナ・ネイサン
《灰桜》
アドリブ◎
大海原に伝説の大陸
ロマンしかないね
そんな冒険に欠かせないのが頼れる相棒って事で
宜しくね、ルリラ
二人乗りのヨットに地図やコンパスを用意
海賊船から移って出発だ
多分、ヨットは初めて乗るなあ
ルリラは経験ある?じゃ、同じだ
風は確り吹いてる
早速帆を張って…あれ?もっと風を受けて膨らんでるモノじゃないっけ
わ、揺れてる
ルリラ気を付けてね
全然違う方に向かってるような…?
方向転換…ああ元の場所に戻っちゃう
結構難しいぞ
現れた黒兎の姿に笑んで
おや、ふふ
これは頼もしいな
ブラシと一緒にロープを引いてもらえる?
全員で試行錯誤
あ!ルリラ、今の良い感じだったんじゃ?
段々扱いも慣れ、
上手く帆も張るようになればルリラに向けて手を掲げて
ハイタッチ、の構え
高い音が響けば笑みも深まる
ブラシも自分も!とアピール
黒兎のムジカにもハイタッチ!
だね
この達成感はひとりじゃ得られなかった
落ち着いたら地図を開き
スーパーGPSを使う
どの陸地からも離れた辺り
未開の場所へ向かってみよう
ああ、心躍るね
どんな景色も見逃したりしないよ
ルリラ・ラプソディア
《灰桜》
アドリブ◎
アトランティス…
本でしか見たことのない名の大陸をさがしに…
夢がたくさんつまった冒険なの…
眸を輝かせながら、あなたの言葉に大きく頷く
ん、よろしく…ね。レジーナさん
ひょいっとヨットに乗り移り
物珍しさに帆を仰ぎながら
わたしも、初めての経験…
上手に進むといい、ね?
帆を操るロープを手に取り
えっと…こう…?…あ、別の方に帆が向いて…
風に煽られふらふら…ヨットが少し揺れる
…風をあやつる…むずかしい
悩んでいたら…ぴょこり
鞄から黒兎の人形が出てくる
手伝う~♪と手を振って
あら…じゃあ、お願いね?ムジカ
黒兎は了解!というように敬礼し
ブラシさんと仲良くロープを引く
!レジーナさん…みて…前へ進めてる
嬉しそうに綻び
同じように手を掲げると
ぱちんと手を鳴らす
もちろんブラシさんへも
黒兎も喜びのタッチ!
ふふ、楽しい…ね
冒険はやっぱり、ひとりより皆でするのが一番ね
開かれた地図を覗き込み
共にスーパーGPSを使う
ん。…どんな処へ、たどりつけるかしら…?
わくわくする、ね
目に映るものをしっかりと情報収集するの
ひょいとヨットへ飛び移ったルリラ・ラプソディア(Ⅻの子守歌・g00784)は、物珍しさに帆を仰ぐ。
「これが、ヨット……」
堂々と胸を広げた帆に気を取られるルリラの近くで、何にでも染まり、何からでも染まり直せるグレーを湛えた瞳のレジーナ・ネイサン(灰色キャンバス・g00801)が、大海を見渡した。
眠るロマンは果たしてどんな色をしているだろう。
伝説の手掛かりを追う昂ぶりを落ち着かせようと、レジーナは海のにおいを深く吸い込む。
けれどもヨットの操縦に関しては、初めてな者同士。好奇心と不安が綯い交ぜになりながらルリラはロープを握り、帆を上げていく。その張り具合と風音へ意識を傾けていたレジーナは、あれ、と瞬いだ。
「帆って、もっと膨らむモノじゃないっけ」
「えっと……それじゃあ、こう……?」
不慣れな操船にヨットも気張っているらしい。ふらつきながらもどうにか姿勢を保とうとしている。ざぶん、と波音が大きめに聞こえるほどヨットが海面を搔き乱す。
「わ、揺れてる、ルリラ気を付けて」
咄嗟に名を呼ぶレジーナの前で、ルリラがバランスを崩しかけた。右へ左へ靡く帆に引っ張られているルリラだが、それでも――手放したりはしない。
「む、むずかしい」
「あっ、思い切り旋回し……ああ戻っちゃう」
ヨットはスタート地点である海賊船の周りを、ぐるぐる回り続けた。
すると突然、ルリラの鞄からぴょこっと何かが顔を出す。黒兎の人形『Aimer Musica.』だ。手伝う手伝う、と前のめりに手をふりふりする仕草は、ルリラの目を見開かせた。
「あら……じゃあ、お願いね?」
くいっ。了解と応じるクルーのように、黒兎が敬礼する。
そんなやりとりを見ていたレジーナも、思わず笑みを溢す。
「おや、ふふ。これは頼もしいな。じゃあブラシ」
「きゅっ」
呼びかければモーラット・コミュのブラシが、顔をきりっとさせた。
「一緒にロープを引いてもらえる?」
「きゅ!」
ブラシが今度はどこか勇ましい鳴き声を発したから。
ルリラもそっとムジカへ囁く。
「ムジカ、ブラシさんと呼吸を合わせて……よく言うあれよ、阿吽の呼吸……ね?」
眞紅の宝石眼へ空と海の煌めきを宿して、ムジカはブラシと一緒にロープへしがみついた。愛らしいロープ飾りにも見えるふたりだが、しっかり奮闘してくれて。
「レジーナさん……みて……」
海面をヨットが滑っていく。船首も漸く方向を定めたらしい。
「今の良い感じだったんじゃ?」
レジーナが驚きに短く声を弾ませると、ルリラも頷く。
「ん。前へ、進めてる……」
言葉にして実感が沸いた。琥珀めいた艶肌を潮風が撫でる。拒まれている感覚はない。むしろヨットごと歓迎されている気分だ。
「ルリラ!」
名を紡ぐレジーナの声色さえも、掲げた片手も、波は攫えない。眩しげに笑みを綻ばせたルリラが彼女と手を叩く。高い音が鳴り響く頃になれば、ブラシとムジカも戻って来ていて。みんなでもう一回、ハイタッチを交わした。
揃って笑みを深めたところで、想像を超える楽しさにルリラが吐息で笑う。
「とても楽しい、ね。冒険、だからなの? やっぱり、ひとりより皆でするのが、一番」
「だね。この達成感は絶対ひとりじゃ得られなかった」
レジーナの胸の鼓動も、そう教えてくれている。海景は変わり映えせずとも、止まらない期待が膨らんでいく。
「そうだ、このまま陸地から離れた辺り……未開の場所へ向かってみよう」
レジーナが指差した先もまた、湛えた水が広がる世界。
いつもは架線下や壁を彩るレジーナも、今だけは大海原がキャンバスに見えていた。絵筆を向けて、幻の大陸が浮かぶ様を記憶へ描けたら――新発見という想い出も、自分たちの好きなように塗りたくれる。
「……ああ、心躍るね」
だから彼女は、潮風に遊ばれていた地図を開き直す。
そしてルリラを手招き、一緒に覗き込んだ。大雑把にではあるが現在位置を確かめて、こっちへ行ってみようと頷き合う。
「ん。……どんな処へ、たどりつけるかしら……?」
ルリラの胸も高鳴る。指先にまで熱が巡るのを感じた。
そんな彼女を後押しするようにレジーナが云う。
「辿り着けるよ。頼れる相棒がいるんだから。どこまでだって冒険できる」
「たよれる、相棒……」
甘い響きにルリラが頬へ喜びを咲かす。
「この後もよろしく、ね。相棒さん」
眼に映る総てを刻み付けようと意気込み、ルリラは空と海の境界線を見据えた。レジーナもまた、滲む果てへ視線を送る。
二人の双眸を揺るがす陸地は、現れなかったけれど。大航海時代を生き抜いた開拓者の気分で、レジーナたちは冒険譚を描き上げていった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【スーパーGPS】LV1が発生!
【使い魔使役】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV2になった!
【先行率アップ】LV1が発生!
伏見・逸
【秋逸】(アドリブ歓迎)
(アトランティスを探す、と誘われてついてきた
冒険に疼く心もないではない(捌碁のテンションにつられているところもある)が、どちらかといえば心配が先に立つ)
伝説だの幻だの…まあ、構わんが
はしゃいで船から落ちねえように気をつけろよ
食い物と水と…他に何か要るもんはあるかねえ
帆を張ったり漕いだりの力仕事はこっちに任せて、鳥だの陸だのを探してろ
運はいいらしいからな、大体なんとかなるだろう(【強運の加護】を上乗せ)
方向はきちんと定めはしないが
「予定の領域を外れて、敵がいる所に入り込まないように」程度にはコンパスを使用して方向確認
可能性は低いとはいうが、何か襲ってこないか海面と海の中を時々警戒しておく
何もねえし何も起きねえってんなら、俺も少し休憩して
スケッチでもするかねえ。海しかねえが
(貰い物の水彩絵の具セットを取り出す)
…なんでこう、俺が色を塗るとなんでも灰色になるんだろうな
植物の…スケッチ…?図鑑の絵みてえな?
(よくわからないが、捌碁が言うのならきっと凄いのだろう)
捌碁・秋果
【秋逸】(アドリブ歓迎)
幻のアトランティス、ロマンある響き!
さあ行きますよ伏見さん、新大陸の発見に!
持ち物は、おやつと画材と双眼鏡。それにコンパス!
冒険って感じの持ち物です。ムードが出ますね
それでは、2人乗りのヨットで海へ!
風があれば帆をはって移動、凪だったら手漕ぎで進みます。ディアボロスの体力ならいけるいける! ヨーソロー!
方向は決めず、双眼鏡で海鳥を見つけたらそれを追って進みたいな。鳥がいるならその巣がどこかにあるってことですからね。運が良ければ新大陸まで案内してくれるかも!
素敵な鳥との出会いを願い【強運の加護】を使用
もし進んでも進んでも鳥がいなかったら。広い海の真ん中でおやつを食べながらのんびり絵でも描こう
今日のおやつはとても固いビスケット。大航海時代の食料をイメージしたチョイスです
………そ、素朴な味ぃ…
ソフトパステルで海の絵を描く
ボタニカルアートって知ってます?
新しい植物を見つけた時にスケッチしたのが始まりだそうです
すっごい精密で…、伏見さんにも見せたいな
きっとびっくりしますよ
「さあ行きますよ伏見さん、まだ見ぬ新大陸へ!」
捌碁・秋果(見果てぬ秋・g06403)が指差した空と海のあわいに、伏見・逸(死にぞこないの禍竜・g00248)も一応視線を向ける。
滲んだ水平線を目指すにしても、ヨットからの距離は不明だ。どれぐらいの時間をかけて、かのアトランティス大陸とやらの影を掴むかも、分かってはいない。それでも。
「幻のアトランティス大陸! ロマンですよロマン、ねえ伏見さん!」
興奮を包み隠さず秋果が喉を開き、ヨットの帆を高々と掲げだすから。逸としては気が気でない。
「ああ、そうだな。構わんがはしゃいで船から落ちねえようにだけ、気をつけろよ」
注意を促す逸の心を知るや知らずや、秋果はふふんと自慢げに口端をもたげた。
「私のバランス感覚と帆の操り具合、見ていてください」
「や、見せびらかさなくていい。良い予感がしねえ。つか、力仕事は俺がやる」
強風で帆ごと煽られやしないか、とか。漕ぐにしたって何かが足りず、その場で船が旋回しないかとか。警戒とリスク管理の観点からも、秋果には探索に専念してほしいと逸は願う。
「そうですか? ではお願いします。全速前進、ヨーソロー!」
出航前から賑やかだったヨットが、元気に大西洋を滑っていく。
双眼鏡へ顔をくっつけたまま、秋果が首を傾ぐ。
「いないですね、海鳥。海の案内は鳥と相場が決まっていそうなのに」
運の良さとは関係なく、二人が今いる海域まで飛んでくることが無いのだろう。陸地からの遠さを、より感じさせる。
かれらが進んできた方角に、島らしき影も無いままだ。
帆も風向きも安定してきた頃、秋果が大荷物を広げたところへ思わず逸が問う。聴かずにはいられなかった。色鮮やかなソフトパステルのケースが、堂々たる姿を披露したのだから。
「双眼鏡とコンパス辺りはわかるが、やたら揃っているこの画材は何だ?」
「ソフトパステルです。冒険って感じの持ち物ですよ。ムードが出るでしょう?」
ムードとやらは兎も角、逸にも分かるのは目が痛むほどに揃った色合いだ。
「見事に揃ってんな。こんなにあるのか、色ってのは」
彼が知る水彩入門セットと比べても、色数は倍以上ある。
「たくさんありますよ。それにコレは、発色の良さが売りでもあるんです」
大西洋をキャンバスへ閉じ込めるのにも、丁度良い。
せっかくの機会だ。東西南北どこを見回しても海しかないこの場所で、秋果は絵を描き始める。ふんふんふん、と鼻歌か風かも曖昧な音と共にソフトパステルをキャンバスへ重ねていく。
そんな彼女の後姿を、逸は短い時間だけ見つめた。
(「……そりゃあ、海での冒険と聞いて、疼かないと言ったら嘘になるが」)
冒険心というものが、己にも残ってはいるのかもしれない。たとえ秋果に引きずられている一面があろうとも。けれど、どうしてか秋果の行動に関しては心配が先に立ってしまう。
(「何も起きねえってんなら……俺も休憩するか」)
徐に貰い物の水彩具セットを取り出せば、それを眼にした秋果がふくふくと頬を持ち上げる。
黙々と二人分の手が進む一方、コンパスも奇妙な動きを見せることなく、ただただ船の揺れに身を任せていた。
ザクッと秋果がビスケットを噛み砕く。長期間にわたる航海を前提として作られた保存食――ビスケットをイメージしたおやつだ。
「……そ、素朴な味ぃ……」
味わって眼が冴えた。海景を描いていた秋果は纏わりつく潮のにおいをくんと嗅いで、こう話し出す。
「……伏見さん。ボタニカルアートって知ってます?」
「いや? 見聞きしたことぐらいなら、あるかもしれねえが」
覚えがないと肩を竦めた逸へ、秋果はパステルのような柔らかさで紡ぐ。
「新しい植物を発見したときにスケッチしたのが、始まりだそうですよ」
「スケッチ……? 図鑑の絵みてえな?」
ボタニカルアートの姿かたちは思い描けなかったものの。それが世紀の大発見にしろ、世間から見向きもされない難解な分野での発見にしろ――名ができ、呼ばれるようになり、やがて人々の間で根差す流れは、逸も想像できる。
しかし想像が固まり切る前に逸の耳へと引っかかったのは、次に秋果が告げた音。
「一度見ただけでも分かるぐらいに、すっごい精密で……伏見さんにも見せたいな」
ささやかな願いが、春風に乗って響いてくる。
逸は手元へ視線を落とした。自分が描いたものは、どこまでいっても鈍色だ。秋果のつくりだす海とは、それこそ世界が違う。だからこそ逸は思う。
彼女が言うのだから、きっと「すごい」のだろうと。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【強運の加護】LV2が発生!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
【ダブル】LV1が発生!
逆叉・オルカ
【アストラ】
ルーシドと梅指と一緒に参加するよ。
アトランティス……! 夢があるよな。
大西洋で冒険ができると思わなかった。
ここは怪我のないように慎重に行こう……ん? その格好(水着にサングラス)はどう見ても浮かれているって?
ま、慎めと言う方が無理だしな!
みんなで一緒に浪漫を楽しもうか。
持ち物。ボート、望遠鏡、方位磁針に水着、孫にあげるお小遣い(?)……あ、アロハシャツもあるよ。着る?
ルーシドが脱ぐかもしれんとおもってな。爺ちゃんは孫が心配なんじゃよ。
まずはアトランティスのありそうな場所に当たりをつけて移動しようか。北西側なら海賊に追われることもなさそうだ。
モーラットのモ助と一緒に、新大陸はないか望遠鏡で探すよ。
遠くまで見えるよう【完全視界】
みんなは何か見つかったかい?
クラゲがデカいな?!
アトランティス、あるとしたら一体どんなものだろう?
と仲間とおしゃべりを楽しむ。
オーバーテクノロジーにはたまた宇宙か、それは面白い。
俺は禁断の兵器や文明の痕跡に期待してるよ。
ルーシドは基本、孫扱いで甘やかそう。
梅指・寿
【アストラ】
ルーくんとオルカさんとで参加するわ。
海に沈んだ幻の大陸なんて物悲しいけど浪漫があるわね。
よしっ、おばあちゃんはしゃいじゃうわよー(オルカさんに倣って水着姿でサングラスくいっ)
屋根付きのボートを持ち込んで野菜たっぷりツナサラダとてりやきチキンサンドイッチのお弁当と冷たいレモネードやスポーツドリンクに飲料水も用意して
え?このぽち袋は可愛い孫へのお年玉(20024年3月分)よ。
はいルーくん。(ポチ袋を渡そうとする)
海上での探索はマッピング係になろうかしら。方位磁石と動いた時間で大体の位置を割り出して地図にマッピング。
おばあちゃんはくらげを見つけたわ、ふわふわ海を漂って可愛いわね。(ボートサイズのくらげを見つけた人)
アトランティス…土偶みたいな服を着て生活していそうな気がするわ。
それで都市部は高層建築があって空には船が飛んでいるの。
アトランティス大陸は沈んだけどアトランティス人は宇宙に飛び出して今は火星で生活をしているとかどうかしら。
オルカさんはルーくん甘やかし隊仲間だと思ってるわ。
ルーシド・アスィーム
【アストラ】
オルカくんと寿おばあちゃんと参加
綺麗な海にロマンの塊古代都市……アガりますね、オルカくん……普段ストッパーしてくれてるのに楽しそうだ!?(同じく水着にサングラスな格好を主従でしながら)
おばあちゃん、お年玉はサブスクみたいに毎月発生する支払いじゃないっす!ていうか分厚っ!しまってしまって!?
お気持ちは美味しそうなご飯と探索グッズだけで充分ですから!
僕は【飛翔】し自前の魔道ゴーグルとおばあちゃんのマッピング、オルカくんの視界情報を合わせてまだ見ていない方角を中心に探索しましょうかね。わたゆきにも何か見つけたら教えてね!とお願いして違う方角を見てもらいます
あ、お話のすり合わせの為にもちまちま地上には戻ります!お二人と話もしたいし
うーん、アトランティスはあった場所も諸説あるだけあって、簡単には見つからなそうっすねぇ……土偶帝国みたいなやつだったりして……
あ、アロハシャツきまーす!でも普段はだかみ様を名乗る僕でもこれ以上脱ぎませんからね!?水着で脱いだらもう全裸っすよ……僕捕まるゥ!
空も海も映し込んだような双眸で、逆叉・オルカ(オルキヌスの語り部・g00294)はアトランティス大陸を追う。船縁へ片足を掛けて果てを見据える今の彼は、いち冒険者。
「まさか大西洋で冒険できる日が来るとは。しかもアトランティスを求めて、なんて」
「うん、海に沈んだ幻の大陸って言うと物悲しいけど、浪漫があるわね」
此処にも冒険者が一人。梅指・寿(不沈の香・g08851)もサングラスをくいと押す。
もちろんルーシド・アスィーム(轍つ祈星・g01854)も同じ方角へ夢を見た。
「アガりますね、オルカくん。何せ綺麗な海にロマンの塊、古代都市……」
「ああ、夢があるよな。とはいえ海の真っ只中だ。怪我のないよう、慎重に行こう」
「ってすごく楽しそうだ!? オルカくん今日はストッパーお休み!?」
指摘役不在のまま進行するかと思われた船上で、ルーシドがやっとツッコミを果たす。
三人揃ってサングラス越しに世界を見渡すだけでなく、気合の入った水着姿。先ほど連ねていた冒険への直向きな想いたちとは裏腹に――否、あくまで彼らは『想いに沿って』準備をしてきたのだ。何ひとつズレてはいない。
「ま、これだけ浪漫をぶつけられて慎めと言う方が無理だしな!」
オルカがサングラスを頭へ押し上げて、望洋たる海へ微笑みかけていると。
「そうよね。よしっ、おばあちゃんはしゃいじゃうわよー」
寿は有言実行を形にした。ボートの屋根の下へランチセットを広げ始めたのだ。
「おお、すごい。たくさん持ってきましたね」
感嘆してルーシドが覗き込む。彩り野菜が鮮やかなツナサラダがこちらを見上げ、主菜となるてりやきチキンサンドのボリュームが視覚から食欲をつついてくる。
おかげでオルカも、うんうんと微笑ましそうに頷いて。
「腹が減っては何とやら。いただくとするか」
かれらは暫しの間、海上でのピクニックでリフレッシュした。
そこで寿がそっと、ルーシドへとあるものを差し出す。
「はいルーくん」
「え、あ、どうも……って何ですかコレ」
「三月分のお年玉よ」
給料袋を手渡しているような口振りだが、寿が向けるのは混じりけのない笑み。
「待っておばあちゃん、お年玉ですよね!? お年玉はサブスクみたいに毎月発生する支払じゃないっす!」
「足りないの? そうよね、ルーくんお年頃だし色々と掛かるものね」
「ちが、ってか分厚っ! しまってしまって!?」
ぎょっとしたルーシドは、サイズが全然ポチではないポチ袋を押し戻して必死に訴える。
まあまあ、と止めに入ったのはオルカだ。
「その辺にしといてやろうじゃないか、梅指」
助け舟にルーシドもホッとしたが、続く言葉に彼は震え上がった。
「あげる機会はいくらでもあるからね」
「! それもそうね」
「ひぇ……っ」
こうして平穏無事にランチタイムを終えたかれらは、北西に当たりをつけて移動する。いよいよ探索のときだ。
寿がマッピングに励み、オルカはモーラット・コミュのモ助と並んで望遠鏡を使った。
ルーシドも今度は、サングラスではなく魔導ゴーグルを装着。準備万端で。
「わたゆき、何か見つけたら教えてね」
「クァッ」
皆と違う方角へ意識を集わせたルーシドはやがて、ぺちぺち、と不意にわたゆきから足を叩かれて視線を戻す。
「どうしたのわたゆき、島でも見つけ……」
一生懸命わたゆきが示した海深く、魚群が船と並走するように泳いでいた。
「わたゆき」
「クォン」
「わたゆき、他には……」
「アォー?」
堂々巡りの気配を察し、ルーシドはぽんとわたゆきを撫でた。
同じ頃、オルカ側も難航していて。
「モ助、新大陸は見つかったかい?」
「きゅわ……」
途端にモ助がぺしょりと萎びた。どうやら陸は影も形もないらしい。
(「やはり難しいか……というより、むしろこれは」)
四方へ出発したはずの他のディアボロスからも、今のところ大陸発見の報せや兆しはない。伝説とされる『アトランティス大陸』の大きさを考えると――少なくとも、伝説上にあるような巨大大陸は――大西洋にはなさそうだと、オルカは察した。
(「大陸らしきものがない、と分かっただけでも上々だな」)
オルカがそう沈思していると、そこへ。
「えー、こほん。冷たいレモネード、スポーツドリンクに飲料水はいかが?」
マッピングの合間に、愛らしい声色で寿がドリンクを運んできた。鉄道パーサーならぬ船上パーサーだ。
「海の上だもの、水分補給は大事よ。ほら、こまめに飲んで」
「そうだな、休憩がてら情報共有といこう。俺の方角は収穫なしだった。みんなはどうだ?」
オルカが尋ねるや否や、寿が瞳を爛々とさせて話し出す。
「聞いてちょうだい。おばあちゃんはくらげっぽいものを見つけたわ」
嬉しそうに報告する寿へ、オルカたちもすぐに耳を傾けた。
「ふわふわ海を漂って可愛かったの。ふふ、大西洋って素敵ね」
そう語る寿の様子も、心なしかほわほわしている。
うーん、とルーシドが顎を撫でて呟く。
「こっちも手がかりなしです。存在した場所も諸説あるだけあって、簡単には見つからなそうっすねぇ」
「……なあ、あるとしたら一体どんなものだと思う? アトランティス」
オルカからの問いに、ルーシドはいの一番に思いついた光景を紡ぐ。
「もしかした、土偶帝国みたいなやつだったりして……」
「そうね、土偶みたいな服を着て生活していそう」
寿も、イマジネーションをこれでもかと膨らませていた。
「都市部に高層建築があって、空では船が飛んでいるの。大陸は沈んでも心は沈んでいないのよ、どうかしら」
彼女の想像は留まることを知らず、ほうほうと唸っていたオルカも身を乗り出す。
「面白いな。俺がイメージするアトランティスは……」
一拍、頭の中で想像を形にしてからオルカは紡ぎ出す。
「古に葬られた禁断の兵器、過去に忘れられた文明の痕跡。……そういうのに期待してるよ」
オルカが双眸へ夢色の光を灯した後、思い出したかのように手を打つ。
「あ。アロハシャツあるよ。気分転換に着てみる?」
「着ます着ます、アロハシャツきまーす!」
即座に手を挙げたルーシドの反応の速さと良さには、オルカもニッコリだ。
「ルーシドが脱ぐかもしれんとおもってな……爺ちゃんは孫が心配なんじゃよ」
「え!?」
連なった言葉に一驚したのは、言うまでも無くルーシドで。
「普段はだかみ様を名乗る僕でもこれ以上脱ぎませんよ! 見ての通り今水着なんで!」
全裸になるのは流石に躊躇われたらしい。
「あら。せっかくの機会に脱ぐのを諦めるなら、ここは……」
「そうだな、海という大舞台でチャンスを逃すというなら、ここで……」
「言いたいこと全部分かりました! お気持ちは美味しいご飯と探索グッズだけで充分です!」
隙あらば渡そうとしてくる『ルーシドを甘やかし隊』アタックを、当事者は直前で防ぎ切る。
三人はこうして、和気藹々とした船旅で想い出を築いていった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【完全視界】LV1が発生!
【水面走行】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV2になった!
水蓮寺・颯
實生さん(g00995)と
僕、ちょっとだけ調べてきたんですよ。アトランティスについて!
伝説の大陸と、神を祖とする王の治めた国の名前で…アテナイに負けて、大陸ごと沈んじゃったんですよね。
實生さんは信じます?
僕はあったら素敵だなって思います!知られざる歴史なんて、わくわくしますよね。
例え見つからなくても楽しそうです。
實生さんと一緒なら、とは口に出さないけど
思ったより速いですね、モーターボート!水切りの石になった気分です。
實生さん、立ってて大丈夫ですか?波が高く、わひゃっ!?
危ない、と彼の腰にしがみついたけど
…僕が支えてもあんまり意味なかったですね。
それ、最後はぼちゃんって沈むじゃないですか!
え、は、はい。
そのままぎゅっと腰に腕を回す
へっ!?あ、ボートに捕まってってことだったんですか!?す、すみません…!
暫く進めば刻の止まった海鳥の群れ
近くに島でもあるのかな
身を乗り出して、水平線に目を凝らします
はいっ!ありがとうございます。
さり気なく翼にくっついて
海の上で飲むコーヒー、なんだかいいものですね。
一角・實生
水蓮寺さん(g08972)と
実在したかどうかも分からない大陸だよな
俺も調べてみたけれど、沈んだのも神々の罰だとか
うーん。あったら面白いと思う
……境界が曖昧なものだって、そう悪くはないだろう?
この心地良い関係とか。それは口にはせずに
持ち込んだ小型のモータボートに乗り探索開始
操作会得の加護を得て大海原へ
外海は波が高いものな
しがみつく水蓮寺さんに笑いつつ
俺よりきみの方がいつの間にか水切りの石になって海にいそうだなあ
はは、そうなったらちゃんと助けるよ
しっかり捕まっていて
いや、俺自身でも構わないけどさ
……いいよ。そのままで
小さな手に己の手を重ねて
絶対に見つける気概でい続けると疲れるし、肩肘張らずに探索を楽しもう
海鳥……魚の群れが海面近くにいたのかもな
スピードを緩めて海鳥周辺を回る
っと、そんなに身を乗り出したら危ないよ
停泊し、双眼鏡でも大陸の手がかりを調査したら翼を広げ日向ぼっこ
水蓮寺さん。ひと休みしようか
水筒の温かいコーヒーを差し出し隣に手招き
うん
頷き、ぬくまった翼を水蓮寺さんに触れさせよう
形なき形へ焦がれるように、水蓮寺・颯(灼がて白く・g08972)は興奮気味に言い募っていた。調べてきたんですよ、と得意げな顔を知り、一角・實生(深い潭・g00995)も耳を傾けている。
「アトランティスって、伝説の大陸と、神を祖とする王の治めた国の名前で……」
「うん」
「アテナイに負けて、大陸ごと沈んじゃったんですよね」
「うん。俺が見たのにも、似たようなことが書いてあった」
神々の罰で沈んだという記述を思い返して、實生は颯に波長を寄せた。そうでしょうそうでしょう、と誇らしげに颯が胸を張る姿に吐息だけで笑っていると。
「實生さんは信じます?」
直球の問いが届く。じいっと見上げてくる眸の強さを前にして、實生はうーんと唸った。
「実在したかどうかも分からないなら……あったら面白いと思う」
面白い、という響きから颯は点と点を繋いでいく。
「ですよね。……僕も、あったら素敵だなって思うんです」
伝説、言い伝え、過去を綴った書物。そうした総てが颯の心を躍らせるから。
「知られざる歴史が眠っているって考えたら、わくわくします」
海の彼方を見つめる彼女の眼差しは、水面の煌めきよりもずっと眩しい。
實生は微かに目を細めて付け足す。
「そうだね。……境界が曖昧なものだって、そう悪くはないだろう?」
何を差すでもなく彼は告げ、ボートの舳先を大海原へ向けた。
操作を助けてくれる思念の加護を得て、荒波を突き進む。
突然、ひゃあ、と颯の悲鳴が波に紛れた。
「お、お、思ったより速いですね!」
転がらないよう船体を支えにしながら、彼女は激しい波音を聞く。
「水切りの石になった気分です……實生さん、立ってて大丈夫で……わひゃっ!?」
操船に集中する實生を気遣い、颯が彼の腰を支える。本人としては支えているつもりらしい。
「こっ、これで實生さんも大丈夫……あれ?」
当の實生は込み上げた笑いを堪えきれず、肩を震わせていた。
「俺よりきみの方が、いつの間にか水切りの石になって海にいそうだなあ」
「それ、最後はぼちゃんって沈むじゃないですか!」
唇を尖らせた颯に、實生も今度は「はは」と声に出して笑った。
「安心して。そうなったらちゃんと助けるよ」
「…………お願いします」
水切り石の末路を迎えたくはない気持ちと、實生を支えられなかった残念さが混ざり合い、颯の小さな肩を萎ませた。
「ほら、しっかり捕まっていて」
「え、は、はい!」
實生が促すや颯はガッシリとしがみつく。船ではなく實生の腰に、ぎゅううと渾身の力で。
言葉通りしっかりと回された腕と力の入り方は、實生の目を僅かに見開かせる。
「……俺になんだね」
「へっ!? あ、ボートに捕まってってことだったんですか!?」
すみません、と反射で離れようとした颯だったが、そんな行動すらお見通しだったのか、實生は先に彼女の手へ己のそれを重ねる。
「いいよ。そのままで」
優しさを湛えた声で告げられ、颯はホッと息を吐く。そこで思い出したように、波と水平線へ視線を向けた。目を凝らしても、空と海が触れ合うところは滲んでいて、何もない。かれらはずっと、触れ合えずにいるのだろうか。
「大陸どころか島も、この辺りにないのかもしれませんね」
海鳥の姿さえ見かけず、しょんぼりと颯が呟くから。
「……そうだ、水蓮寺さん。ひと休みしようか」
「え。でも……」
「肩肘張らずに楽しもう。絶対に見つける気概でい続けると疲れるし」
ボートに散々揺られた後でもある。實生の提案に颯が頷くまで、時間はかからなかった。
そしてコーヒーブレイクを取る場所は勿論、進むのをやめた流れる船の上。
手招く實生の広げた翼が、潮の香りと陽射しを纏わりつかせて輝く。差し出されたコーヒーを受け取り、颯はさり気なく、その美しい白との距離を詰める。
躊躇いなど實生には無かったのに、彼女が翼へくっついたことで一瞬の間を置いてから、ぬくまった翼をふぁさりと動かす。
触れ合うのは翼だけ。互いの狭間を、潮風と波音の名残が通り過ぎるのを實生は黙って見送った。融け合わぬ曖昧な境界線が、彼には視えていて。だからこそ、心地よい。
そして颯の方は。
(「見つからなくても、こういう何気ないことが……楽しい」)
大陸の手掛かりは掴めていないけれど。ふたりで渡った海だから。
「海の上で飲むコーヒー、なんだかいいものですね」
共有する時間を慈しむように呟く。
實生はただ一言、うん、としか紡げずに。
海を渡る春が、颯の髪で遊びながら翔けてゆく。それは季節の巡りを思わせる――あたたかな風だった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【水中適応】LV1が発生!
【操作会得】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV2になった!
イツカ・ユメ
【博物館】の皆と一緒に!
アトランティスを探して海の大冒険なんて、浪漫を感じるよねぇ。
リュックの中には、夢と希望とお弁当とおやつ、探索用の双眼鏡を詰め込んで。
さぁ、ヨットに乗っていざ出発!
天気も風も気持ち良いし、絶好の船旅日和だね。
キットももきゅもきゅご機嫌みたい。
空も海も、特に異常はなさそうかな。
お魚とか、海の生き物の姿は無いのかな?
華楠ちゃんが大物を釣り上げてくれれば、生態系の調査にも繋がるしご飯も豪華になるよね。頑張って!
お弁当やおやつを食べつつ、双眼鏡で周囲を見回して。
陸地とか、アトランティスに向かう船みたいな乗り物とか、何か怪しいものは見えるかな?
シルちゃーん、そっち側は何か見えたー?
シル・ウィンディア
【博物館】の皆と一緒に楽しみに来たよー。
あ、ちゃんと調査もするからね。
事前準備でアイテムポケットに
お弁当(おにぎり、たまご焼き、唐揚げ、ウインナー、菜の花のお浸し、お漬物)とクッキーと緑茶のポット、カセットコンロとお鍋を用意。
後、探索用に双眼鏡を用意だね。
ヨットをパラドクストレインに積み込んで、到着したらいざ出航っ!!
海風を感じながらのんびり船旅だね。
はぁ、風が気持ちいいー♪
風と太陽を感じながら、もちこんだお弁当を振舞っていくよっ♪
ふふ、こういう所で食べるお弁当はおいしいよねー。
華楠さん、お魚釣れた?釣れたらカセットコンロを持ってきたから、ここで焼いたりしちゃおうか?
一通り食べたりしたら…。
双眼鏡で先の様子を観察していくよ。
ん-、大陸っていうから何かしらの形跡があるかなぁ~。
んー、今のところは何も見えないなぁ…。
そっか、船とかもあればそれも観察すればいいんだね。島ばかりに気を取られてたや。
ん-…。あ、そっか。空の可能性もあるのか。
みんなでわいわい楽しく探索を行うよ。
月下部・小雪
【博物館】のみなさんとアトランティス大陸を探して大冒険、です!
コダマ、見てください! あれがボク達の乗るヨットみたいです! えへへ、かっこいいですね。
(パラドクストレインから海に下ろされるヨットを指さしている)
これはセーリングクルーザーというタイプのヨット、ですか?
乗り込んだら、船内の装備を確認してみましょう!
わわっ、すごいです。小さいですがキッチンなんかもあるみたいです。
【操作会得】で補助してもらいながら、帆で風を受けて大海原を進んでいきます!
せ、せっかくなのでなるべくエンジンを使わずにチャレンジしてみましょう。
風が吹いていない時はのんびり止まって、みなさんが持ち込んでくれたご飯を食べてゆっくりしていますね。
コダマももきゅもきゅとヨットの上で楽しそうにしていますが、マストの上にスルスルっと登っていきます。
コダマ、上から何か発見、できましたか?
※アドリブ連携大歓迎
弔焼月・咲菜
【博物館】
本当に沈んでんのかねぇ。その…『あとらんてぃっくさーもん』とか言う美味そうな名前の都市は…。
まあ、名前なんてどうでも良いか。天気良し、風良し、湿り気無し、いい海日和ってやつだ。さっさと海に行かないと損ってもんだろ?
てな訳でパラドクストレインからヨットとか諸々取り出して、いざ抜錨!ハッハー!
華楠が釣り?おー、頑張れ頑張れ。こんな事もあろうかと炊飯器と米と出汁パック持ってきたから是非とも釣ってくれ。釣れなくてもおにぎりにするけど。(喰う気満々)
何もない時はひたすら海を眺めて潮の流れを見ている。仮に島が近くにあるなら潮の流れも変わるだろうし、いきなり海が荒れる…かもしれないから、何があってもすぐ舵を取れるようにその予兆とかを見逃さないようにする。
そもそも、本当に沈んでるのか?アトランティスなんてノアの方舟の話があったからこそ沈んだみたいなところあるし、あの大洪水が起こっていないなら沈んでいなくてもおかしくは無いんだよな。
音羽・華楠
【博物館】
アトランティスを探してヨットクルーズですか!
素敵ですねっ、浪漫ですね!
楽しんでいきましょー!
調査の一環として釣りをします。
アトランティスにしか居ない珍しい魚が釣れるかもしれませんし。
メガロドンとか!
……いえ、本当に、既に絶滅したはずの魚が釣れたら『何かある』可能性は高くなりますし……?
釣れた魚は、生食出来るものならお刺身にしましょう。
私の包丁捌き、お見せします。
焼き魚も良いですね、シルさん。
お醤油やわさび、ポン酢に柚子胡椒にチリソースとか、調味料も各種持ち込んでます。
色々な味付けを楽しみましょう。
……もしも坊主でも、シルさんがお弁当を用意してきてくれたので泣きません……。
イツカさんも慰めて下さい……。
――あ、この卵焼き美味しいー♪
双眼鏡を覗き込んで周りをぐるーっと見渡して――
……アトランティス大陸はやはり無いでしょうか?
海の底にも無かったとしても――もしかしたら歴史の奪還戦時の新宿島みたいに空に浮いてるかもしれません。
雲の上も双眼鏡でしっかり見ますよ!
エイレーネ・エピケフィシア
【博物館】
アトランティスの名が初めて語られたのは、故郷が誇る偉大な哲学者プラトン様の著作でのことです
「アトランティスの物語は寓話に過ぎず、実在しない」というのがわたしの見解ですが……
バベルの塔のように、伝説に語られる施設がディヴィジョン内に存在した例もあります
探してみるのも悪くはないと思いますよ
ヨットに乗り込み、双眼鏡を用いて周囲の探索を行っていきます
もしもアトランティスが洋上に実在しているなら、島の南側にあるという高い山々や、出入りする商船・軍艦の姿があって然るべきでしょう
真剣に、目を凝らして……おお、シル様。もうお食事の時間でしたか、ありがとうございます
故郷の賢人に纏わることと思うと、つい調査に熱が入ってしまいまして……
もう少し肩の力を抜くべきなのでしょうね
万が一アトランティスが実在し、そこが敵の拠点だった場合に備え【通信障害】は使っておきましょう
≪神護の長槍≫と≪神護の輝盾≫もすぐ手に取れる所に置いておきます
敵の視線を躱しつつ一旦島の位置情報を控えておき、再訪に備えて撤退しましょう
「めくるめく冒険の旅に、いざ出航っ!」
シル・ウィンディア(虹を翔ける精霊術師・g01415)が人差し指を突き出して声を張り上げた。船鐘代わりの合図だ。
するとイツカ・ユメ(いつかかなうゆめ・g02834)も呼応する。
「しゅっぱーつ! 狙うお宝はアトランティス! 大冒険の浪漫を感じるよねぇ」
旅情に浸る彼女の近くでは、弔焼月・咲菜(葬不送動の報復者・g01723)の気分が乗りに乗っていた。
「いざ抜錨! ハッハー!」
ヨットの出発によって波をより近くに感じたからこそ、咲菜はバランスを崩さずに立ったまま腕を広げ、大自然を浴びる。
「見てみろ、天気良し、風良し、湿り気なし! 海日和ってのは正にこのことだ」
「お天気が良い中での大冒険って、こんな感じなんですね」
えへへ、と月下部・小雪(おどおどサマナーところころコダマ・g00930)が控えめに笑う。
「あ、コダマ、コダマっ、あっち」
そしてモーラット・コミュのコダマをぎゅっとして、同じ方角を見つめた。他のディアボロスたちの姿が遠くに望めたのだ。
大勢で楽しむ大海。そんな光景に歓声を漏らした小雪の姿を、エイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)がそっと見守る。
「ヨットに乗る前からずっと弾んでいますね、小雪様」
ヨットをセットする際に小雪が見せた反応を、仲間たちは目に焼き付けていた。だから鮮明に思い出せる。「かっこいいですね」「コダマ見てくださいっ」と興奮していた元気な様相を。
「調査の一環でも、海ですからね。テンションも上がるものですよ」
音羽・華楠(赫雷の荼枳尼天女・g02883)が釣り竿を握り締めながら告げる。
調査、と改めて聞いてエイレーネは、まだ冷たい大西洋の風を浴びながら目を細めた。
(「本当に探しに行くのですね、アトランティスを」)
船の揺れを体験したおかげで、内から込み上げる感覚をエイレーネは知りつつある。
その間にも、イツカはもきゅもきゅ唄うモーラット・コミュのキットと並んで華楠へ声援を送っていた。
「大物釣りあげるの華楠ちゃん!? がんばって!」
「おー、頑張れ頑張れ」
咲菜も連ねる。そんな彼の手元には、炊飯器と米と出汁パックが揃い踏みだ。
「こんな事もあろうかと持ってきたからな、釣ってくれ。是非とも」
「よーし、目指すはメガロドン!」
期待を背負った華楠が、爛々とした目で宣言するも。
「「メガロドン??」」
きょとんとする博物館ご一行。華楠はコホンと咳払いで姿勢を整えた。
「サメなんですよ。仮に生息していたとしても釣れませんが、夢は大きくいきたいので」
釣り上げたら恐怖映画を彷彿とさせる展開が待っていそうだが、それよりも。
「サメが釣りたいのか。ま、目ぼしい魚が獲れなくても、おにぎりにするから安心してくれ」
楽しげに笑う咲菜の頭の中は、持ってきた米のことで一杯だった。
●旅
「せ、せっかくですから。エンジンに頼らず動かしてみたい、です」
操作の手助けを得ても、やはり自ら舵を切る醍醐味には代えられない。
だから小雪はコダマと一緒になって、追い風のタイミングでセイルを動かす。
海風の力を借りたヨットがぐんぐん水面を裂いていく。思い通りの方角へ、想像以上の速度で走る勇ましさ。それは小雪とコダマを喜びで跳ねさせ、持ち場に就いた仲間たちへ快さを贈るきっかけになった。
「はぁ、風が気持ちいいー♪」
今にも歌い出しそうな口振りでシルが身を乗り出す。傾く船上で海面へ腕を差し伸べたら、瞬く間に飛沫が掛かって歓迎してくれた。
イツカも胸弾むのを隠さない。
「うんうん、絶好の船旅日和だね」
「もきゅ~」
キットも、目を細くして潮風に身を委ねるばかり。
そこでシルとイツカは気付く。離れた場所で、海を眺めたまま座る咲菜に。
「何しているの?」
シルが尋ねれば、咲菜は振り向かずに唇を震わす。
「ああ、潮の流れを見ているんだ。島があるなら、流れも変わるだろうからな」
件のアトランティスがあるのなら、潮流を参考にして辿れるだろうと咲菜は考えていて。
「それにな、いきなり海が荒れる……かもしれないから」
そこまで話してから軽く頭を掻いた。
「って、さすがに警戒しすぎか?」
もどかしげな声音を耳にして、シルとイツカは顔を見合わせる。
遊びをもっと交えても良いとの一言が頭を過ぎった二人だが、ここは頷き合う。
「何が手掛かりになるかも分からないよね」
「だよね、ということだから、こっちはよろしくね咲菜くん」
一任された咲菜は、片手をひらりと上げて応じた後、再び海面へ視線を吸い込ませていく。時おり周囲を瞥見して。
(「他の奴らも探索してるけど、発見したような動きはないな」)
大陸と言われているだけあって、規模を考えればすぐ見つかりそうなものなのに。そう咲菜は思考を巡らせる。
どういたしました、とそのとき近くで声が舞う。双眼鏡をほぼ顔にくっつけていたエイレーネが、振り返って尋ねていたのだ。釣りに勤しむ華楠へと。
「……やはり無いのでしょうか、アトランティス大陸は」
ぽつりと華楠が呟いたのを見かけて、咲菜が顎を撫でて唸る。
「そもそも、本当に沈んでるのか? その『あとらんてぃっくさーもん』とか言うのは」
ぐう。誰かのお腹が鳴った。警鐘を鳴らすお腹をよそに、咲菜は続ける。
「本当に沈んでんなら、大洪水も起こったってことにならないか?」
咲菜は乗船前から引っかかっていた点を述べる。
「アトランティスなんて、ノアの方舟の話があったからこそ沈んだみたいなところあるしな」
それはそれで気になることが増えそうだと、息を吐いた。
――伝説に名高いアトランティス。
その名がはじめて語られたのは、偉大なる哲学者プラトンの著作でのことだと、エイレーネが紡ぐ。
「プラトン様の手で綴られた文明が存在すると言われれば、色めき立つものでしょう」
何故なら、それが伝説に語られる存在だから。
アトランティスの物語はあくまで寓話。かの大陸は実在しないと、エイレーネは考えている。けれど。
「バベルの塔、という例もディヴィジョンにはありますから」
改竄世界史において、何が実在し、実在しないのかを見定めるのは難しい。エイレーネは睫毛を震わせて言う。
「……ですので、探してみるのも悪くはないと思いますよ。想い出、にもなりますし」
少しばかり、その言葉を模るのをためらった。気恥ずかしさではなくただ、プラトン著であるという音色が――彼女を内側で叩いているから。
「もしも、のお話ですが」
そしてエイレーネは海の彼方を、穴が開くほど見つめる。
「洋上に実在しているなら、島の南側には高い山々があるといいます」
「山々……」
水面を凝視していた華楠が、顔を上げた。聳えていれば遠くからでも見えそうなものだが、気配すらない。
「それと、出入りする商船や軍艦の姿があって然るべきでしょう」
滅亡していなければ、とまではエイレーネも言葉にできなかった。
クロノヴェーダの居城になっている可能性も考えて眉根を寄せる。実在していたら喜ばしいこと。再び書へ目を通したい気持ちにも駆られよう。
けれど存在したとして、もし敵に自由に扱われていたら。憤るどころの話ではなくなりそうだと、エイレーネは瞼を伏せる。
そんな彼女の隣へ立ったシルが、そっか、とポンと手を打ち、渦巻く思考へ呑まれかけていたエイレーネを引き戻す。
「船。船かぁ。島ばかりに気を取られてたや」
「ええ、往来が今もあれば、ですが」
エイレーネが銀糸を揺らして頷いた直後、わあ、と小雪の声が船上を転がっていく。
「こ、コダマ、落ちないようにしましょうね」
「きゅ!」
皆で振り向けば、ふたりして船体にしがみつく姿が映る。
微笑ましさで溢れた光景もまた、エイレーネの口端へ笑みを灯し、そこへ。
乗客を楽しませるかのように、帆がばたばたと高らかに歌い出した。
●食
ランチにしようと言い出したシルが、海を映し込んだかのような青い瞳で釣り人を覗き込む。
「華楠さん、どう? お魚釣れた?」
「うぐっ」
何気ない質問が突き刺さる。崩れた華楠をよそに、エイレーネは目の疲れを感じつつシルを視界に捉えた。
「もうお食事の時間でしたか、瞬きの間ですね」
「食事……食事、そう、私の包丁捌きをご覧に入れたかったのです」
ぶつぶつと華楠が呟きだす。この一帯で、釣りやすい魚とは出会えなかったらしい。
平たく言うのなら、そう。坊主だ。
「天候は最高の船旅なんだ。いい気分で喰わなきゃ損ってもんだろ?」
思わず咲菜が呼びかけると、丸く萎んだ背中が答える。
「大丈夫です、泣きません……」
「任せて華楠さん、はいっ」
空腹という絶大なるピンチを救うべく、シルがお弁当を取り出した。いつ準備をしていたのかと皆も吃驚するぐらいに、大量の。
「シルさん、力がつきそうなお肉は……」
「あるよ!」
シルがすかさず、唐揚げの山と可愛らしく座ったウインナーたちを華楠へお披露目した。
「じゃあ、ふわふわの卵焼き……」
「ほいお待たせ!」
次から次へとシルが蓋を開け、全員の前へ広げだす。もちろん華楠も。
先ほどまでの落ち込みもどこへやら。華楠は頬をいっぱいにしていく。そして両頬へ幸せを詰め込んだのは、小雪も同じ。
「んん、おいひいれふ」
「……シル様。ありがとうございます。こんなに沢山頂けるだなんて」
量も然ることながら、彩りで視覚も豊かにしてくれるから、エイレーネが一礼した。
「船旅だと栄養バランスがより大事だからね、探索に備えてちゃんとお浸しやお漬物も食べるように」
まるで博物館メンバーの世話係であるかのように、シルが胸を張る。それから「ふふ」と吐息で笑うのだ。
「こういう所で食べるお弁当って、おいしいよね」
頬を上気させたシルの笑顔も、皆の心を満たしていく――。
●探
「さあて、美味しい卵焼きで英気を養いましたから! 見ますよ!」
華楠は意気込んで双眼鏡を構えた。
船縁の柵へ身を預けたシルも、双眼鏡を相棒に観察を始めて。
「大陸っていうぐらいだから、何かしらの形跡はありそうだよね~」
手分けして全方位を探していくも、やはり他のディアボロスたちがいるぐらいだ。陸地は影も形も無い。
ううん、と呻いた華楠が双眼鏡を大空へ向ける。
「もしかしたら空の上に! とも思ったのですが」
「そっか。空の可能性もあるのか……」
言い終えるより早く、シルも天高く意識を昇らせていく。
あっ、と華楠が不意に声をあげたものだから、皆が「なになに?」と顔を揃えた。
「皆さん上を見てください、あの雲……」
「雲?」
「お魚の形をしています! ほら、三つも並んでかわいいです!」
華楠の視線の先を見て、仲間たちが瞬ぐ。
大きな魚の後ろを、中ぐらいの魚、小魚がついて回っているような雲だ。
「……確かに魚だな」
咲菜もまじまじと見据えて感心した。そのとき。
「きゅきゅ、もきゅっ、きゅわ!」
頭上から零れ落ちてくる、なんとも愛らしい声。
吸い寄せられるように皆で見てみれば、マストを登っていったコダマがそこにはいて。
「コダマーっ、何か発見、できましたかー?」
両手を口許へ寄せて小雪が呼びかける。何か、とふわふわな言葉にコダマは首を傾いだ。そして。
「きゅ~~~っ」
強風にも負けじとマストの天辺を取った。豊かな毛並みがこれでもかと膨れ上がり、暴れている。
「船の守護神だな、ありゃ」
咲菜の例えの素晴らしさに、小雪がぱあっと笑みを咲かせた。
「そ、そうです。大冒険の守り神様、ですよ」
「守り神かぁ。でしたら、浪漫はまだまだ眠っていそうですね。楽しんでいきましょー!」
ぷかぷか浮かぶ魚型の雲を振り切って、華楠も果てなき大西洋へと意識を戻していった――。
「キット二等航海士! こちら異常なし!」
「きゅ!」
イツカとキットが敬礼し合う。そして小さく笑んでから、イツカは波間へ目をやった。
「もっと魚群だらけ、みたいな景色を想像していたけど、そうでもないんだね」
さくり。シルから貰ったクッキーと持参のおやつを交互に味わいながら、双眼鏡で世界を覗き込む。
「エイレーネちゃんが話していたアトランティスに向かう船っぽいのも、いないね」
船舶の行き来が無いとなると、ますます陸地の存在は怪しげだ。
少しばかり興奮を声色へ籠めて、エイレーネが口を開く。
「実在しないと考えてはいても、こうなりますと少々複雑ではあります」
「寂しい?」
イツカがこてりと首を傾けたら、エイレーネは顎も引かず、かぶりも振らずに。
「その……故郷の賢人に纏わることと思うと、つい。気になると申しますか」
調査に熱が入っている自覚はあった。あるのだが、かといって捨て置くこともできない。
「ご安心ください。望まぬ通信を阻む手段も持ち合わせていますので」
警戒を緩めるつもりはないと微笑みながらも、エイレーネは葛藤していた。
(「……もう少し肩の力を抜くべきなのでしょうね」)
エイレーネの、滲む朝陽を思わせる琥珀色が揺れる。
そんな彼女の肩をぽんと叩いた後、イツカが踊るような足取りで船上をゆく。
「シルちゃーん、そっち側はどうー?」
「んー、今のところは何も見えないなぁ……アトランティス大陸って、すごく大きいんだものね」
返る調査結果は、やはり同じだった。
けれどイツカは胸が満たされていた。仲間とこうして賑やかに、戦いへ赴くのではない旅ができている現実。ましてや未知なる大海を突き進む大冒険に浸かっていられる、このひとときこそ、これからも大事にしていきたいもので。
(「夢と希望とお弁当とおやつ、いっぱい詰め込んできてよかった!」)
食後の今となってはもう、リュックもすっかり軽くなっているけれど。次に詰め込むものは疾うに決まっていたから――想い出をしまうように、イツカは潮の香りをめいっぱい吸い込む。
黄金海賊船エルドラードのディヴィジョン内に、『伝説にあるようなアトランティス大陸』は存在しない。
それぞれの眼でこの事実を確認できた海上探索は、ディアボロスたちの想いを次へ――水底へ向けさせる。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【強運の加護】がLV3になった!
【アイテムポケット】LV1が発生!
【操作会得】がLV2になった!
【水中適応】がLV2になった!
【水面走行】がLV2になった!
【通信障害】がLV2になった!
効果2【リザレクション】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV3になった!
【能力値アップ】がLV3になった!
【フィニッシュ】LV1が発生!
【命中アップ】がLV3になった!
【グロリアス】LV1が発生!
桜・姫恋
連携・アドリブ歓迎
【ヨアケ】
アトランティス探索なんて夢とロマンしかないわよね?
あるかどうかわからないのを探すのが楽しいのよね
【水中適応】【完全視界】にて海底探索はしやすくしつつ
【強運の加護】で少しでも見つけられる確率は上げておく
棒占いしながら進みつつ見逃さないように3人で全方位集中しながらゆっくりと探索していく
んー、中々見つからないかな?
少しでもなんかそれっぽいのとかあるといいのだけど……
ナインに運命なんか見つかった?
時間の許す限り可能な限り色んな方向を探索できたらいいのだけど
百鬼・運命
【ヨアケ】
🔳心情
ヨアケの星の知り合いとアトランティス探索だ
あるかどうかわからない。だがだからこそロマンがあるというものだ
🔳作戦
とはいえ何も当てのない状態だ
なにか目安になるものがあれば…
ふむ、【強運の加護】を使ってみよう
【水中適応】【完全視界】を借りて海底にたどりついたら【強運の加護】を発動
鉄の棒を持ち込んでおいて、チームメイトの桜さんにナインさんに協力してもらい、俺も含めた三人それぞれアトランティスを探して棒占い(地面(海底)に立てた棒を倒し、棒が倒れた方向へ進む)をして倒れた棒が多い方へ進んでみよう
棒占いなら運以外の要素が絡まないし、人数を増やして精度を上げれば何か見つかるんじゃないかな?
まあ上手くいくかは神のみぞ知ると言った所だが…一応神主見習いの身
占いにも多少の御利益はあるだろう
🔳行動
『極限環境戦用電動型動力甲冑』に水中探索用の『タイダルパック』『ソナードローン』『ハイドロスラスター』を装備して探索を
必要ならば仲間の曳航もするとしよう
さてアトランティスが見つかればいいんだが…
ナイン・スカーレット
アドリブ&連携歓迎
【ヨアケ】で参加
「アトランティスって聞いたことあるけど新宿島で調べた感じ海に沈んでるイメージ」
夢ロマが詰まった宝箱な感じ?
【水中適応】や【完全視界】を上手に活用して仲間のみんなと散策。
何が出るかな?物理的なお宝よりは、歴史的?発見な可能性がかなり強そう。
海の中って隠すにはうってつけだからねー見つけたらロマン溢れる土地?堪能もあり。
基本は仲間と散策、人海戦術も良さそうだけど、効率よく行きたい。
他のメンバーが有利になるように行動し、連携できそうなら、積極的に活動。
誰か見つければ、解決になるからかね。
運の作用も利用出来るものは利用してみんなで見つけよう!
基本行動はタグメンバーと行動を合わせます。
頑張っていきますー!
完全なる闇はない。少なくともディアボロスたちの目が届くところには。
光が届かない深海でも、桜・姫恋(苺姫・g03043)の艶やかな桜色は鈍らなかった。だからか彼女の髪を珊瑚か何かと勘違いしたのか、棲み処にしようと近寄る小さな生き物たちの姿も時おりあって。
姫恋が岩陰の向こうを覗くために動くと、そんな小さきものが一斉に散る。思わず彼女は肩を揺らして笑う。
同じように百鬼・運命(ヨアケの魔法使い・g03078)も欣然と探索に励んでいた。掴めぬ謎を紐解く心地は、言い得ぬ痺れを身に走らせてくれる。だからこそロマンを求め、手探りで茫々とした海底をゆく彼の身は、ずっと前のめりだ。
姫恋もまた、浮き立つ心に双眸を輝かせる。
「あのアトランティスを探索するだなんて、夢とロマンしかないわよね?」
うんうんと頷いたナイン・スカーレット(ねこの隣人・g07595)が、水の音を除けば静寂極まりない世界で辺りを見回す。
「アトランティスって……新宿島で調べた感じ、海に沈んでるイメージ」
幻の都市。秘された存在。要素を連ねて想像していくうち、ナインの脳内で構築される景色が確かにある。
「だとすると、夢ロマが詰まった宝箱な感じ? ん~、楽しみっ」
やる気をフル回転させたナインの死角で、確かに、と運命も顎を引く。
(「知り合いとアトランティス大陸を探せる。……こんなこと少し前まで信じられなかった」)
深海に満ちる真闇にも似た運命の瞳が、つ、と右へ左へ流れていった。
そして沈吟した運命は、ナインや姫恋と頷き合う。
「それこそ神頼みのようになるが……当てがないよりは良いだろう」
水圧を考慮し、この深き地で採ったのは、強運の加護を得る道。
黄金の輝きが海底を染め上げる光景は、運命たちから見ても美しく、希望に溢れていて。
そういえば、とナインが気付く。
「これだけドンドン探索しているのに、生き物とかに遊ばれたりしていない気がするにゃあ」
「成程、目星をつけられなくても、探索の難は減らせているのかもしれないな」
運命も納得したように呟く。
ディアボロスに悪さをするような可能性に阻まれず、探索がスムーズに進んでいるのは、もしかしたら強運の影響もあるのかもしれない。
そこまで聞いて運命は口端を上げた。
「ご利益が機嫌を損ねないうちに探索を済ませよう」
こうして三人は暫し単独での行動を選んだ。
海底の岩や石ころをも掻き混ぜる勢いで、どこまでも続く山をナインが駆けていく。
「海の中で山登りって、ヘンな感じにゃ」
けれど海の何処かに、歴史的発見と呼べる宝が眠っているのなら。
埋もれるロマンを貫こうとする真紅の眸が、岩の傾斜で隠れた向こう側を覗き込む。何が出るかな、と口遊んだナインは窪みへそっと近づいた。
「わ!」
思わぬ出会いに声を上げる。深海生物と正面から顔を合わせるはめになったのだ。
「お宝……は、持っていないかにゃ?」
驚かせてしまったからと笑顔をひとつ相手へ贈ってから、ナインは更に奥へ向かう。
そして道中、計り知れぬ大西洋の絶景を記憶へ焼き付けた。
水底へ閉じ込められた静謐なる山々。ひっそりと、しかし逞しく棲まう深海域の生物たち。偉観を誇るこの場所でぽつんと佇めば、より趣を感じ取れて。
「こういうとこ、隠すにはうってつけだねー」
北へ北へとナインは進む。
●ロマンを探せ
姫恋はううんと唸りながら人差し指で顎を叩いていた。
「大西洋ってかなーり広いのよね? どこまで行けるかなぁ」
時間が許す限り動きたいところだが、さすがに大西洋全域を隈なく探索はできない。
「もっとヒントがあったら探せたりした? ん-、でも……」
耳をそばだててロマンの在り処を聴くも、届くのは水が流れゆく音ばかり。
どこか落ち着く癒しの音楽ではあるけれど。目当てのお宝を思い浮かべた姫恋にとっては、今それでリラックスしたい心持ちでもない。それでも風景は美しく、姫恋の視覚を虜にしてくれる。
道中では、他のディアボロスたちの姿も幾らか視えた。それぞれ四方に散っているが、新発見の萌しは無さそうで。
姫恋は遠き海面を仰ぎ見るように寝転がった。
そして口にした響きは、静かね、というごく身近なもの。
(「こんな静かなところに、海底都市があるって考えたら……やっぱり面白そう」)
じっとしていられず、姫恋は思い切り伸びをして再び水底をゆく。
「ナインー、運命ーっ」
一先ず姫恋は仲間の元へ寄った。
「ねえねえ、なんか見つかった? あっちもとにかく海底山脈って感じなの」
変わり映えしない景色が続いていると、彼女は話す。
すると、運命の唇が浅い息を吐く。それは彼にとって、快哉を叫びたいぐらいのもの。
「……あるかどうかすら、分からない。いいな、すごく良い」
戦術や奇策を講じると言った、対クロノヴェーダのときとは違う緊張と興奮。それらをひしひしと感じながら、運命は強運の黄金色が踊る景色に佇む。
潜水型海戦装など装備も整えての冒険だ。専門家が揃い踏みで海底探索をするときのような物々しさで。厳重に進めていくものの、都市らしき影はなく。
願い逸る気持ちは今なお消えないけれど。
「そう簡単には見つかってくれないからこそ、ロマンがある」
「ね! あるかどうかわからないのを探すのって楽しいっ」
運命の一言に、姫恋もこくこく頷きながら同意した。
そこでナインが、あのね、と話し出す。
「けっこう奥まで行けたんだ、けど」
「「けど?」」
瞬ぐ運命と姫恋に促されたナインは、。自分の感覚を確かめるように紡ぐ。
「大西洋の北側は、エルドラードのディヴィジョンじゃなかったみたいにゃ」
だから引き返してきたのだとナインは言う。
「……大西洋の、北側」
運命が眉を寄せて思考に耽り、姫恋も「気になるね」と声を弾ませた。そのとき。
ぐごぐぐうぅぅ。
「な、何の音? まさか人食い深海魚とかいたりするの?」
一瞬で警戒態勢に入った姫恋と運命の前で、ナインが萎んだ笑みを浮かべる。
「えへへ。ずっと動き回ってたから、おなかぺこぺこで……」
そういえば食糧の当てもないのだと思い出し、顔を見合わせた三人は帰還の途に就いた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【水中適応】がLV3になった!
【強運の加護】がLV4になった!
【完全視界】がLV2になった!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【アヴォイド】がLV2になった!
【ロストエナジー】がLV2になった!
カラタチ・リッカ
【ふたり座】
海底都市アトランティスだってねぇ
海の底にある都ってどんなだろー?
サカナが街を守ってたりお姫様がいたり
…は、カメに連れられてく竜宮城かなぁ
あとは見えないバリアーで覆われてたり
中は城塞都市っぽかったりして
人魚も住んでそうだよねぇ
なんて想像も膨らませつつの
【水中適応】と【完全視界】で海底散歩へ〜
底に沈んでくってのも不思議な感覚で〜
そういえばミアちゃんは海って好き?
広くて大きいは怖かったりするよね
俺様は何とも思ってなかったんだけど
こうして面白い体験みたいなのしてると
ディアボロスだから出来る事だなぁて
思ったりする機会はあるよねぇ
いつもは河の果てって連れが居るのもあって
アケルナル、ってそう言う意味合いの
星の名前でもあるらしいんだけれど
流れていく先が海の底の方でも
暗くて景色も見えないような所でも
誰かと一緒にいるのなら
見つけられるものが在りそうだよね
なぁんて、折角だから
此処でしか見られないモノにでも
記念に名前でも付けてっちゃおうかぁ
からなるみあ岩以外にも
星のよう光るもの沢山見つかると良いねぇ
ミア・メア
【ふたり座】
海底都市アトランティス!ロマンですね
んふふーカラの予想はどちらもワクワクしますよう
玉手箱は開けない様にしなくてはっ
ミアは人魚達が住んでいるんじゃないかなと思ったり!
『水中適応』と『完全視界』を使用して海底へ向かいましょう
海ですか?…ミア、実は以前は苦手でして
苦手というより怖い、でしょうか
あまりに広くて、圧倒されてしまうので
あ、でも今は大丈夫です!
カラの言う通りディアボロスならではの、
誰かとの楽しい体験を重ねているお陰ですかも
ナルちゃんさんの名の意味は、河の果て
なんと遥遥としたお名前でしょう
もしや以前ご一緒したプラネタリウムでも在りました?
そうですね
海とは数多の河の果てが集う所
その底には屹度沢山のステキも集まっている筈
けれどやはり暗くて広すぎるから
誰かと一緒に探したいなって
ミア、思います
カラ、それは名案ですよ…!
…!早速ご覧下さいまし
お魚?クラゲ?ピカピカ光ってます!
此方の岩の大きい事…!
何て名前を付けましょう
皆の名を合わせて…からなるみあ?(センス皆無)
まだ探検は続きますよっ
海の底では御伽噺が眠っている。
色とりどりの魚が都を守るように巡回し、お姫様の美しい歌声が住民を楽しませる。そんな海底都市には、きっとカメの導きでしか向かえない。普段は目に見えぬ防御結界で覆われていて、街の痕跡にすら外からの接触はできないのだ。
底へ底へと沈みながら、カラタチ・リッカ(空言・g05558)はそう綴った。
「竜宮城で盛大な宴が待っていそうだよねぇ」
「い、いただいた玉手箱は開けない様にしなくてはっ」
ミア・メア(璃々・g07746)が誘惑に呑まれまいと意を決する。決意したもののそわそわする心地は拭えぬまま、彼女の視線は四方を彷徨った。
そんな彼女へカラタチがそっと微笑みかける。
「俺様の話した物語、どうだった?」
「んふふー、たくさんワクワクしましたよう」
嬉しい反応を聞き、カラタチが少々いたずらっ子めいた色を眦へ乗せた。
「ミアちゃんの思う舞台設定は、どんなのなんだい?」
「ミアは人魚達が住んでいるんじゃないかな、と思ったり!」
陸の人間が与り知らぬ深海で、幻想的な人魚が気ままに暮らす様子をミアが紡いだ。いいねぇ、と聞き入っていたカラタチも思わず唸る出来栄えだ。
そうして互いが語り部となった頃、念願の水底へつま先が着く。
「そういえば、ミアちゃんは海って好き?」
「海、ですか?」
不意に問われてミアが瞬ぐ。
「ミア、実は……以前は苦手でして」
語り出した声は、ほんのり冷たい過去を帯びていて。
「苦手というより怖い、が近いのでしょうか。海はあまりに広くて……」
圧倒されてしまう。自分のちっぽけさを突きつけられている気がする。考えていくにつれミアが俯きかけるも、今は大丈夫ですよ、とすぐにカラタチへ笑みを向ける。
カラタチが何とも思っていなかったはずの海が、おかげで少し、違って見えてきた。
「こういう体験してると、ディアボロスだからできることだなぁ、って思うよ」
「そう、ですね。かけがえのない体験を、楽しく過ごせている気がします」
話していたカラタチの脳裏を、ふと過ぎるものがある。
「……いつもはね、河の果てって連れが居るのもあって」
「河の果て」
ミアが繰り返すものだから、カラタチは小さく笑って話を続ける。
「アケルナル。そういう意味合いの……星の名前、らしいんだけれど」
「まあ。ナルちゃんさん、なんと遥遥としたお名前でしょう」
しっかり覚えていますよと言う代わりの、ミアの反応があるから。
カラタチも、闇を知らぬ視界の中で言の葉を結んでいけた。
「流れていく先が海の底の方でも、暗くて景色も見えないような所でも……」
隣を見れば、確かに温もりを感じ取れる。
温もりが分かれば、心強く思える。
「誰かと一緒にいるのなら、見つけられるものが在りそうだよね」
そうですね、とミアはこてりと首を傾けた。
数多の『河の果て』が集う海の、どこよりも深い場所には。屹度想像だにしない沢山のステキも集まっているはずだと、ミアも信じて疑わない。
けれど深海も、況してや水底なんて、あまりに暗くて広すぎるから。
「誰かと一緒に探したいなって、ミア、思います」
応じた少女を瞳へ映して、カラタチは暫しまばたきを忘れた。
暗闇にも邪魔されない視界の中だから、わかる。
流れるような乳白色の髪。ミアをかたちづくる、柔らかな色。
それらを追いかけた眼差しを、ゆっくりかぶりを振ることで制止して、カラタチが次に口遊むのは、まるで内緒話のような響き。
「そうだ、記念に名前でも付けてっちゃおうかぁ。此処でしか見られないモノに」
「カラ、名案です……名付け大作戦、開始ですよ……!」
声を弾ませたミアは直ぐ後に深みでちらつくものを見かけて、カラタチの腕を引く。そこに腰を下ろしていたのは、起伏に富んだ海底でどっしりと構える岩。
大きさに驚くカラタチをよそに、ミアはぽんと手を叩くや唄うように告げる。
「こちらの岩のお名前、皆のを合わせてみましょうか」
「合わせる?」
「ええ、たとえばそう……からなるみあ?」
抜群のネーミングセンスを発揮したミアに、カラタチは肩を揺らす。いい名前だねぇ、と返す彼の声音も楽しげだ。
そしてカラタチはふと、夜空を飾る星明かりを思い起こして、海底から天を見上げた。仰ぎ見る間もミアは、ほらほらご覧くださいまし、と興奮冷めやらずに言い募っていく。
「お魚? クラゲでしょうか、ピカピカ光ってます!」
光も届かぬ地で、いつまでもその一等星は輝き続ける。
それこそまるで御伽噺のように。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【水中適応】がLV4になった!
【完全視界】がLV3になった!
効果2【ダブル】がLV2になった!
【フィニッシュ】がLV2になった!
花塚・夜壱
カフカ君(g00583)と
夢と希望、ロマン溢れる海底へ!
海底への冒険、ワクワクするな
カフカ君の意見、とてもよく分かる
黒く陰った水中も、逆に魅力的を感じるよな
あぁ勿論、本気で探そう
イルカ変身して、カフカ君とえだまめを乗せてグイグイ進もう
喋れなくても、カフカ君なら分かるはず
…分かってくれる、はず…!
カフカ君はえだまめ戦法か
無欲だからこそ掴めるものがある
さすがカフカ君、考えたな!
よし!それじゃあえだまめの示す方向へ進もう
時々旋回して、カフカ君を楽しませたり驚かせたりしようか
おぉ…!確かに面白かったり奇抜だったり、色んな魚が寄ってきているな
凄くファンタジーと言うか、メルヘンな風景だ
魚が海底都市を知っているなら、それは確かにロマンだが…
よし!じゃあ折角だし、都市の場所を聞いてみよう
…何語で?
しまった、俺は魚語もイルカ語も分からない…!
ふむ…追われている魚?言われみれば、確かに…?
よく気づいたなカフカ君
よし分かった、助けに行こう
勢いよく泳ぐぞ、しっかり捕まっててくれよ
そーれっ、体当たりだ!
本郷・夏深
夜壱兄ちゃん(g00016)
海底都市とロマンを求めて探索しましょう!
こういうのは全力で本気出して探し回るのが一番楽しいんですよね
カフカと偉人はいつでも本気で頑張る故に偉大なのは有名な話です
強運の加護を発動しながら、えだまめ(サーヴァント)が選んだ方向へ
水中適応と完全視界も拝借して探索しましょう
欲のない無垢なアニマルに選ばせた方が良い行き先を当ててくれそうです!
あと犬は方角がわかるらしいからコンパス代わりにもなります
この優れた応用力…やはりカフカは成し遂げるかも知れませんね
この海を、統べるという快挙を
イルカに乗ると早く広く探索できていいですねえ
何か気になるものはないか、しっかり確認しつつ進みます
うわ、動物の友を発動したら知らない魚がいっぱい来ましたよ!
…もしや魚なら海底都市の位置を知っているのでは!?
位置を尋ねたら案内してくれませんかね
…何やらあの魚、他の大きな魚に追われているように見えません?
こ、これはもしや浦島カフカでは!?
助けてあげると御礼に海底都市へ案内してくれるかもしれませんよ!
ワクワクするなと思いながら、花塚・夜壱(月下鬼人・g00016)は尾鰭を楽しげに靡かせる。
そう、今の彼はイルカ。夢と希望とロマンが沈む海底へ焦がれる、一匹のイルカになっていた。
(「黒く陰った水中も、逆に魅力的を感じるよな。……それに静かだ」)
こんなにも広大なのに、湛える静けさだけでも『海』という存在の器を夜壱に思い知らせてくる。深海で感じ入る彼に跨っているのは、本郷・夏深(逢魔が夏・g00583)とパンツァーハウンドのえだまめで。
「出番ですよえだまめ、好きな方角を選ぶといいです」
「わう! わふっ」
えだまめはしかし、指示を待つ姿勢を変えない。夏深とイルカの夜壱は、互いを覗き込むように顔を見合わせた。
「えだまめ、行きたいところはありませんか??」
夏深が再度尋ねても、イルカの上でブンブン尻尾を振るだけ。
ならばと夏深は、えだまめのおしりが向いていた方角を指差す。
北へ。彼が示す北へ夜壱は向かい始めた。その間にも。
「遺憾なく発揮される優れた応用力……やはりカフカは成し遂げるかも知れませんね」
見よ、とばかりに両腕を広げ、果てしない海底山脈を眼下に夏深が叫ぶ。
「この海を、統べるという快挙を……!!」
大西洋統一を謳い出したから、夜壱はぐるりと旋回して彼を応援してみる。うわ、と驚いた夏深がイルカ肌へしがみついたのも構わず、今度は速度を上げて深き海を堪能する。そして駆けながら思うのだ。
(「無欲というのは武器になるんだな。無欲だからこそ掴めるものがある」)
――さすがカフカ君、考えたな!
夜壱は感心した。感心していつも通り言葉で褒めるも、全てイルカの鳴き声で飛び出してしまう。甲高い声で意思疎通を図る夜壱に乗ったまま、夏深は得意げな顔で頷いた。
「分かっていますよ、カフカの思考と眼識の素晴らし……おっとと」
山脈の峰へ沿って突き進んだおかげで、緩慢だった動きに激しさが混じる。
やがて夏深が目を瞬き、声をあげた。
「あっ魚、魚がいましたよ! もしや海底都市を知っているのでは!?」
山肌を滑っていく深海魚というメルヘンな光景に、夜壱も一驚する。
(「そうか、魚が都への案内人になるというのもロマンだな」)
折角だから聞いてみようと気持ちが疼いた夜壱へ、衝撃の事実が襲い掛かる。
「キュオ!」
しまった、と夜壱が身を揺らす。イルカになったとて海棲生物の言葉など分からず、尋ねることができない。それを夏深へ伝えるべく声を発したが。
「キュキューン」
「こんな時にまでカフカを称えなくて良いと思いますよ、気持ちは分かりますが!」
自動翻訳が仕事をしなかったらしい。
(「カフカ君!? カフカ君!!?」)
キュワキュワァ。
通じなくても分かってくれると信じていた子は、通じぬまま「むむっ」と目を凝らす。
「夜壱兄ちゃん、何やらあの魚、追われているように見えません?」
促されて視線を移した夜壱も不穏な匂いを嗅ぎ、言われてみれば確かに、と考えて頷く。
小振りの魚が、明らかに大型の魚から付き纏われていた。
「このカフカが見間違うなどあり得ません。追われています、これはもしや……」
夏深の神妙な面持ちは、夜壱の頭を不思議そうにほんのり傾けさせる。
「浦島カフカの物語が、今ここに綴られようとしているのでは!?」
太郎から夏深へ、亀から魚へ。
伝承内容が変遷していく姿を、夜壱は目の当たりにした。海を統べるんじゃなかったのか、と浦島太郎の生涯と海の王との対比が夜壱の頭を過ぎりもしたが、こうなっては止まらない。
「助けてあげると、御礼に海底都市へ案内してくれるかもしれませんよ! そう、この浦島カフカをね!」
「キュゥゥッ」
しっかり捕まっていてくれよ、と体勢を整えながら夜壱が強めにひと鳴きすると。
「よく気づいたな流石だ偉大なるカフカ君と称賛しているのでしょう? わかりますよ」
少々盛ってはあるが大体を汲み取った彼が頷いたのを合図に、夜壱はフルスロットルで発進する。
「そこの魚、止まりなさーい! 通行の邪魔にならないよう端に停車しなさーい!」
だがしかし海流交通法違反魚は暴走し続けた。
そして二人は取り締まることに夢中になるあまり、気付けば北大西洋付近――エルドラードの領域の端近く――まで来ていた。
充分すぎるほど深海を満喫した夜壱イルカが、道中を振り返って気付く。
ここまでのエルドラードディヴィジョン内で、海底都市どころかその残骸や面影すら見かけなかったことに。
(「本気で探して、何処にも手がかりがないとは」)
落とす肩もなく、楽しかったがゆえに残念がるつもりもないが、イルカはとりあえず愛らしく鳴いてみせる。ちなみに浦島夏深が訪れる竜宮城もそこになかったのは言を俟たない。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【イルカ変身】LV1が発生!
【動物の友】がLV2になった!
効果2【先行率アップ】がLV2になった!
【命中アップ】がLV4になった!
獅子堂・崇
アドリブ連携歓迎
アトランティスか。映画とかではたまに見るが、まさか自分が探すことになるとはな。前にネッシー探索なんかもやったし、こういうのも面白いもんだ。やるからには本気で探さないとな。ディビジョンはなにがあるかわからないから、本当にアトランティスがあってもおかしくないからな。
【水中適応】と【完全視界】は自前がないから借りていこう。物理には詳しくないがこの水深だと道具のほうがもたないだろうから身一つで探した方がいいだろう。
最初は全力で海底を目指してそれから痕跡探しを始めよう。海底から少し上がったところを泳ぎなから探索する。
【完全視界】のお陰でこの深さでも周囲が見渡せるから探しやすいな。しかし、色々な場所を旅してきたつもりだったが、これはまた凄い景色だな。見たことのない生き物ばかりだ。
【動物の友】で話しかけたら答えてくれるだろうか。
海底にも山や谷があるというのも不思議な気分になるが、それも地球の一部と考えれば当然なのかもしれないな。
逆叉・オルカ
【アストラ】
がいたら合流していくよ。
よーし、次は海底探索だな!
本命の冒険を楽しもう。
目的はもちろんアトランティス探し。
その為にも深海を目指して冒険しに行こう。
【強運の加護】と【完全視界】【水中適応】を使い海底へ降りていく。
深海は流石に寒いだろうか?
そう思ってサーヴァント用の可愛い衣装も用意し……あれ?モ助?(モーラット用の衣装に目もくれず海に飛び込むモ助を見た)
こほん。気を取り直して。
下へと向かいながら、【動物の友】で情報集め。
この辺りなら鯨や深海魚に会えるかな?
珍しいものや街が沈んでいないか聞き込もう。
普段見ない魚に触れ合えたら自然と笑ってしまう、
仲良くなれたら、アトランティスじゃなくとも、楽しい場所が見つかるかも知れないな。
教えてもらった場所に行ってみないか?
って仲間を誘って泳いでみるよ。
何があるかはお楽しみだな
アドリブ歓迎します
まるで手招くようにぽっかり口を開けた深海が、獅子堂・崇(破界拳・g06749)と逆叉・オルカ(オルキヌスの語り部・g00294)を誘っていた。
環境に適応した二人の前に、壮大な海底山脈が顔を出す。視界の難すら振り払った今、山脈の全貌とまではいかなくても雄大なる自然を目の当たりにできて、思わずオルカは唸った。
「冒険に相応しい舞台だな。……それにしても」
何もない。水温の影響を受けないとはいえ、浩蕩と連なる山肌に木々などが存在しない絶景は、異様に寒々しく感じて身震いをした。
「もきゅぅ……」
モーラット・コミュのモ助も、オルカと一緒にぷるぷるする。
「やっぱりモ助に衣装を着せておけばよかったか……絵にもなるし」
「きゅ?」
我先にと海中へ飛び込んだのもあり、お着替えの時間は取れなかったことをオルカはほんのり悔やみ始めた。そうして海底を眺め渡すオルカの耳へ、崇の呼び声が届く。
声を辿ってみると、山脈を見下ろすようにして泳ぐ彼を発見した。
「この辺は痕跡もなさそうだ、奥へ行くのが良い」
崇に促されたオルカとモ助が、奥、と示された方角へ視線を向ける。
その先もずっと静かな世界が広がっていた。人によっては延々と続く景色を恐れてしまうものだが、海が好きなオルカは双眸を爛々とさせる。
「これぞ海底探索の醍醐味だな」
そして言い終えるより早く底を蹴り、山沿いに海を渡っていく。
有事の際には協力できる距離を保ったまま泳ぐ崇も、アトランティスか、と思いを馳せていた。
「映画とかではたまに見るが、まさか自分が探すことになるとはな」
「本当に。しかも海の底を探索できるなんて、夢のまた夢だった。そうだろうモ助」
「うきゅっ」
崇の感想にオルカがうんうんと頷き、モ助と一緒に果てを目指す。
同じくロマンを胸に抱いて突き進む崇も、ふ、と浅めの吐息で笑って顔を上げる。
「探索と言えばネッシー探索なんかもそうだな。本気で探すのが面白いってもんだ」
「ああ、その通り……ん?」
ふとオルカが気付く。深海域に棲まう魚だろうか。海の上からの来訪者を警戒する生物を捉えたのだ。かれを驚かさないよう、大丈夫だ、とオルカが片手を差し伸べつつ近づく。
そろりそろりと間合いを縮めながら接すれば、向こうも逃げようとしなくなった。
オルカは崇と首肯でタイミングを合わせた後、魚へ問いかける。
「この辺で珍しいものや街を知らないか? 沈んでいると思うんだ」
ふよふよと浮かぶ魚の挙動に変化はない。
単に知らないだけなのか知能の関係かは分からず、崇もふむと顎を撫でて質問を付け足す。
「何かしらの痕跡とか、この海底にあるだろうか?」
近寄って来た深海魚は、崇の問いに傾げる首も持たず鰭を揺らすばかり。
そんな様子すらもどこか微笑ましくて、オルカがひとつ笑みを溢す。
「ふふ、じゃあこうしよう。あんたが思う楽しい場所に案内してくれるか?」
彼はアトランティスでなくても良いのだという気持ちを、前面に出した。逡巡するかのようにその場に留まった魚は、やがて空腹なのを思い出したかのように動き出す。
果たして案内してくれているのかは謎でも、闇雲に探すよりは面白そうだと考え、二人はそんな肴についていった。そこまで速くもない尾鰭を追いながら、オルカは機体で胸を膨らませる。
「何があるかはお楽しみ、だな」
「ああ、ディヴィジョンに何があるかわからないからな」
崇もほっと息を吐き、変わり映えのしない景色を眺めた。荷物を持たずあるがままで泳ぐ大海原は、思いのほか気持ちが良いもので。
(「出会えたはずの友だちが、もし海底の何処かにいるなら……探さない道は無いな」)
友だちという言葉の定義が広い崇の眼差しは、しかと未来を、まだ見ぬ友の姿を見据えている。
海底都市アトランティスという、未知の舞台を夢見て。
そうして二人はいつしか、大西洋の北側近くまでやってきた。途中で他のディアボロスを見かけることはあったが、人工物らしきは無い。けれど。
「……これでも色々な場所を旅してきたつもりだったが」
崇は、海底で横たわる山を望みながら改めて感心した。
「見たことのない生き物に、見たことのない景色……凄いものだな、海底は」
地球の一部に触れた感覚は、崇の手の中で熱を帯びる。
一方のオルカは、棲み処らしき窪みだらけの地を前にして、案内魚へ手を振り別れを告げていた。
「随分案内されたけど、アトランティスはなかったな」
この先にあるのだろうかと、曠然とした海の更に北側――エルドラードのディヴィジョンではないところ――をただただ見やるだけだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【アイテムポケット】がLV2になった!
【強運の加護】がLV5になった!
効果2【反撃アップ】がLV2になった!
【リザレクション】がLV2になった!
朔・彗藍
【雪星】
いつか見たかった海の底
探索できちゃうなんて、夢みたいです…!
海底都市が在ったなら、なんて
空想の物語も読んだことがありますし期待しちゃう!
昔から泳げなかったですし、潜るのはやっぱり少し…
怖いですけど雪璃がいてくれるから
それから水中適応と完全視界もばっちりだもの
ふふー、お宝、見つかると良いですよねっ
そっと手を攫って、いざ深海へ
遺跡や船の残骸なんかもあるでしょうか
深海の生き物なら私はメンダコちゃんと
幻のリュウグウノツカイに会ってみたいですね…!
雪璃は見てみたい子はいます?
海月も!ふわふわきっと可愛い気がします
……あ、見て、雪璃…!なんだか、少し明るい場所があります
――!あれは!チョウチンアンコウ、でしたっけ
ふふ、道標に後を追い掛けてみるのも楽しそう
あら?おじさんみたいな顔の魚さんが…
雪璃の後ろに……
隠れる雪璃が微笑ましくてくすくす笑っちゃう
地上にいる皆にも見せてあげたいけれど
此処で生きる皆は此処が故郷ですもんね
私の見つけた宝は雪璃と一緒に
この景色を見つけたことが一番なのですよ
茜來・雪璃
【雪星】
ほんと、夢みたいだねえ
海底を探索する機会があるなんて…思ってもみなかったよ
都市かあ
きっと陸と違う建物の街並みとか道具とかもあるんだろうなあ…
そんな風に想像して、ワクワク!
んー?彗?
大丈夫!私も一緒にいるよ!
それに潜ったら探検に夢中で、きっと気にならなくなるよ
あっは!だね!
何が見つかるかなあ!
不安そうだったキミが笑ってくれて一安心
沈没船とかはありそうだよねえ
お宝とか大陸への地図とか積んでたりしないかなあ?
私もメンダコ会ってみたいな…あとネオンみたいに光る海月!
もしリュウグウノツカイに着いてったら竜宮城行けるかな?なんて
ほんとだ!なんだろ…電球、じゃなくて
わお、ごっつい顔!
あのアンコウ、何処行くんだろうねえ?
え?後ろ?…ぎゃあ!?!?
び、びっくりしたあ…!!
思わず彗の後ろに隠れてぎゅっとくっついちゃう
せっかくだし、何か思い出に持って帰れたらー…
なんて思ったけど、やっぱ難しいかあ
…!
ふふふ、彗にそう言ってもらえてうれしい!!
私も!私も彗と探索して、色々見つけられたのが今回のたからもの!
水面から遠ざかるにつれ、朔・彗藍(ベガ・g00192)は息が止まる気分でいた。残留効果のおかげで心配せずとも良いのは、わかっている。それでも暗い世界へ潜っていく恐怖は、拭えない。
そんな彼女へ、茜來・雪璃(朧夜ノ蝶華燈・g00793)がすかさず声をかけた。
「んー? 彗? 大丈夫、私も一緒だから」
手と手を重ねて笑みを傾ける。心なしか彗藍の指は冷たかったから。
「未知の探検が待っているんだよ。きっと潜ったら気にならなくなるよ」
雪璃がそう呼びかけると、彗藍は深呼吸をして意を決する。一緒だと言ってくれた雪璃と目を合わせ、手のぬくもりへ意識を集わせれば、次第に鼓動も落ち着いていく。
「……お宝、見つかると良いですよねっ」
明るく振舞う彗藍に、雪璃も喉を開いて笑った。
「あっは! だね! 面白いもの見つかるかなあ!」
そして深海へと沈んでいくにつれ、微睡みにも似た穏やかな心地が二人を包み込む。
「大西洋の広さを考えたら、沈没船ぐらいはありそうだよねえ」
沈没船。不穏ながらもロマンに満ちた響きは、雪璃へほうと恍惚の吐息を零させる。
「持ち帰れなかったお宝とか、大陸への地図とか積んでたりしないかなあ?」
やまない願いを聞いて、夜と朝のあわいを宿した瞳が煌めく。
「メンダコちゃんと幻のリュウグウノツカイとか、会ってみたいですね……!」
「私も会ってみたいな……あとはね、ネオンみたいに光る海月!」
「いいですね、海月! ふわふわゆらゆらで、可愛い気がします」
想像だけで期待が膨らみ、雪璃もはち切れそうな喜びを灯した。
途中、漂うアンコウへ二人して手を振り、からだを斜めにして泳ぐ生物を彼方にぼんやりと見かけた。果たしてリュウグウノツカイかも判らぬまま、二人は更に深みへ向かう。
深海の中でも浅めのところを沈むうち、あら、と前触れもなく彗藍が驚き、目を丸くする。
「おじさんみたいな顔の魚さんが、ほら、雪璃の後ろに……」
「え、ぎゃあ!!?」
振り向くや悲鳴と共に跳ねる勢いで、雪璃が彗藍の背中へひっつく。彗藍がまばたきをする間の、一瞬の出来事だった。
そうして彗藍の背で守りを固めた雪璃は、ぶわっと尻尾を広げながら正体を恐る恐る確かめる。丸みを帯びた頭と体。大きな口は魚らしくも、おじさんとも言えそうな「へ」の字を模っていて。
「び、びび、びっくりしたあ……いつの間に」
得体が知れないのは相手も同じだったのだろう。安心で雪璃の力が抜けかけた隙に、姿を眩ませてしまう。一方、噛み殺すことのできなかった笑いを、彗藍が零していて。
もー、と気恥ずかしそうに頬を綻ばせて、雪璃は彼女の背中をぺしぺしと叩く。
こうして一頻り楽しんだ後、二人は急傾斜を下りていく。
やがて辿り着いたもっと深い海底を見渡し、彗藍はそこで繰り広げられる空想の物語を想起した。もちろん雪璃も、深呼吸で気持ちを整える。
「……ほんとに、海底にいるんだねえ」
まさか夢ではないだろうかと自らの頬をつまんで引っ張ってみるが、ちょっと痛いだけ。
「海底都市かあ。陸と違う建物とか沢山ありそうだなあ」
雪璃の頭の中で、次々と浮かび上がる街並み。想像した風景は美しく、しかも雪璃へ更なる興奮を齎す。けれど進んでも進んでも、都市と思しき影は発見できない。痕跡を掴めないのなら、いっそ。
「ねえ、せっかくだし、何か思い出に連れて帰れたら……」
言いかけた雪璃が、途中で音を途切れさせる。
「……なんて思ったけど、やっぱ難しいかあ」
すぐに切り替えた雪璃の傍で、こくん、と彗藍が頷く。
地上にいる皆にも、真闇を棲み処とするかれらを見せてあげたい。宝物を持ち帰りたい気持ちだけは、溢れんばかりに抱えているけれど。すぐに彗藍は思い至る。
「此処で生きる皆は、此処が故郷ですもんね」
ふるさとを遠く離れ、見知らぬ場所へ連れていかれるだなんて。そう考えながら、彗藍は静かな海底を見回した。延々と続く山脈。阻む者のいない静かな偉観。
まるで、二人だけの世界のようで。
「この景色を見つけたことが、一番なのですよ。他でもない雪璃と一緒に」
「! 私も……私も同じ!」
天にも昇る心地で、雪璃が声を弾ませた。
「彗にそう言ってもらえてうれしい!!」
そして他愛無いことを、当たり前のように話せる今このときを慈しむ。
「彗と探索して、色々見つけられたのが、今回の私のたからもの!」
ふたりへ鮮烈な印象を残した海中での探索。漠々たる水の底で刻んだ小さな想い出のひとつひとつが、海面へ戻る彼女たちの爪先を軽やかにさせた。
一緒に見て、聞いて、感じたものは二人のものでも。
みんなに話したいことは、山のようにある。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【水中適応】がLV5になった!
【完全視界】がLV4になった!
効果2【ロストエナジー】がLV3になった!
【フィニッシュ】がLV3(最大)になった!
水蓮寺・颯
實生さん(g00995)と
黒いダイバースーツ着用。貧相さを強調していて悲しい
…!
水中適応があるのは分かっていても反射的に息を止めてしまう
そうですよね息できますよね!つい…
いえその……あまり見ないでいただけると嬉しいです。
少し待っててください。
『其は―
―先行け、“椛貫酔衛門”』
仕込杖の酔衛門です。探しものが上手なんですよ。
と言っても得意なのは人探しなので…大陸探しにはあまり期待できませんけどね。
……あ、ちょっと怒ってるかも。
?なんですか、それ。
えっすごい!遠くまで見える…!変わった魚が沢山!
好奇心を引き戻したのは触れた指先
!!あ、あの…うん、美味し……はい?
わ、あれ何でしょう?きれい……
長い鰭の美しい深海魚に夢中になり触れていた手が離れた途端、海流に流されはぐれてしまう
實生さん、どこにっ…
海の底、更に深い潭の暗い淀み。
……實生さん?
吸い寄せられるようにそちらへと歩を進め―
っ……實生さん!良かった、いた…!
腕を引かれるまましがみつく。あの暗い水底に、溶けてしまったかと思ったから。
一角・實生
水蓮寺さん(g08972)と
黒のダイバースーツ装備
水中適応と完全視界の残留効果を使い深海を目指そう
息を止めている水蓮寺さんに笑って
呼吸できるし会話もできるよ、ほら
……何だか動きが妙過ぎないかい
え、そんなものだろ。似合ってるし新鮮だよ
海中は視界一体が青で埋め尽くされていて、まるで空にいるかのような感覚に陥る
潜れるだけ深くまで潜ろう
次第に黒を纏う青は、俺の行使するちからの色によく似ている
水蓮寺さんのパラドクスの助けも借り幻の大陸を探索
はは、頼りにしているよ
双眼鏡を交替で使いながら探索兼日々の息抜きを
ゆらりと現れる深海魚は珍しい色、形、泳ぎ
そっと隣の小さな手に触れて
水蓮寺さん見て
この深海魚は何て名前だろう、食べたら美味しいかな
初めて肉眼で見る光景に興味は尽きず
隣にいる筈の姿がないことに漸く気付く
急ぎ探せば、海溝のふちに吸い寄せられる水蓮寺さんの姿
追いつき強く腕を引こう
ディアボロスだから大丈夫な筈のに、……けれど怖かった
うん、と彼女に頷いて
お互いを命綱で繋いでおこうか
……冗談めかして口にしそうだ
(「わかってはいました。わかってはいました」)
さめざめと泣く代わりに、水蓮寺・颯(灼がて白く・g08972)は睫毛を潮で揺らめかせる。彼女が俯いたのには理由がある。ダイバースーツによって描き上げられた体躯が、あまりにも心許なかった為だ。
嘆きを頬いっぱいに含んで、颯は水の世界へ飛び込んだ。反射的に目をぎゅっと瞑り、呼吸を止める。
そんな彼女を傍で目撃して、一角・實生(深い潭・g00995)は思わず小さく笑った。
「呼吸もできるし会話もできるよ、ほら」
促されて颯が瞼を押し上げる。普段と変わらぬ様子でいる實生を瞳に映して、漸く颯も呼吸ができた。
「そ、そうですよね息できますよね! つい……その……」
沈んでいく最中も、気になってしまう。同じダイバースーツだというのに、自身の姿かたちと實生との対比が貧相さを浮き彫りにさせていて。居ても立っても居られないとは正にこのこと。
「どうしたんだい? なんだか動きがぎこちなく……」
「あまり、見ないでいただけると……嬉しいです」
語尾は殆ど掠れて消えていた。しゅんとした彼女に、實生はきょとんとする。
「え、似合ってるし新鮮だよ」
「そっ……」
そうですか、とは素直に喜べなくて颯が言葉を喉奥に詰まらせる。しかし身体はともかく気持ちはいつまでも沈んでいられないと、颯は片手を光の射さぬ深みで翳した。
「其は――先行け、椛貫酔衛門」
彼女の呼び声が仕込杖へ出番を齎す。首を傾げていた實生を振り返り、少々気恥ずかしそうに笑んだ。
「探し物が上手なんですよ」
「へえ。専門家がいるのは心強いかな」
「といっても得意なのは人探しなので、アトランティス探しへの期待は薄く……あっ」
機嫌を損ねたらしい仕込杖が、持ち主を振り回す。おかげで颯は、ぴょんぴょん飛び跳ねる海老めいた動きをしていて。
可笑しさから實生の声も微かに上擦る。
「あ。水蓮寺さん、そっち深海魚がいるみたいだ。静かにしないと」
「ほんとですか、ちょっと待ってください」
どうにか治まったタイミングで、颯と實生は顔を揃えて深海魚を見つめる。
「なんて名前だろう」
「気になりますね、憶えられないぐらい長いお名前かもしれません」
何の変哲もないやりとりだが、颯のまばたきは多い。話も半分ほど耳から耳へ抜けていってしまうぐらいに上の空だ。それもこれも触れた指先のせいだというのに、實生は。
「焼いたら美味しいかな」
「はい、焼いたら……焼いたら!?」
「それとも煮付け向きかな」
魚の調理方法に意識が集中していた。真剣な面持ちで呟く彼の横顔に、颯は仄かな笑みを浮かべる。そこで視界の片隅をひらりと過ぎる、半透明の魚。
「わ、何でしょう、きれい……」
怖めず臆せず鰭に見入って颯が近づく。それに気づかぬまま實生は、別の深海魚の形から最適な料理の仕方を空想していた。
「肉眼で見ると思っていた以上に違うね、水蓮寺さん。……水蓮寺さん?」
隣に居るのが当たり前だった姿は、そこに在らず。はたと気付く。
辺りを満たしていた黒纏う青ではなく、黒に黒を混ぜた潮の流れが、颯に絡みついていた。抜け出せぬ潭へ、何処よりも暗い淀みへ連れ去ろうとしている。
弾かれるように、實生の身体が動いていた。
名を呼ぶ余裕すら無く、腕を伸ばしていた。
「っ……實生さん、實生さんっ」
颯が何度も呼んでは存在を確かめる。しがみついた腕の筋が張っているのを感じて、彼が力を籠めていると知ったら、颯の内で安心感が留まらず湧いていく。
「實生さん……っ」
言葉が出てこない。暗渠にでも閉じ込められたかのように身動きができなくなり、そのまま溶けてしまうのかと颯は凍えた。だから今は、その名を口にするので精一杯だ。
彼女の様子を目の当たりにした實生は、がつん、と後頭部を重たいもので殴られた心地になった。背筋から指先まで冷たさが伝う。
彼女を引きずり込もうとした、黒を帯びた青。
彼女を攫おうとした、見紛う筈のない色。
アトランティスや何がしかの力とは全くもって無縁の、ただの海流だというのに。思わず實生は眉を顰めた。
颯を奪おうとした力が、自分の色に、あまりにも似すぎていたから――まるで、自分が。
「うん。……うん」
呼びかけに實生が、ひとつずつゆっくりと頷いて。
「っ、よかった……」
微かな声を混ぜて、長い長い息を吐き出す。容易く呑まれはしないと理解していても、怖い、という感覚が實生の中で何よりも勝った瞬間だった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【完全視界】がLV5になった!
【通信障害】がLV3になった!
効果2【ダメージアップ】がLV5になった!
レジーナ・ネイサン
《灰桜》
アドリブ◎
【水中適応】と【完全視界】を使用し深い海の底へ
鮮やかな濃青の海から漆黒の世界へ
――懐かしい、と思うのは何故だろう
故を辿れる記憶もないってのにね…
ふわ、と
視界に入り、咲く笑顔に引き戻されて
こちらもと笑い返す心に偽りはない
うん、楽しみだ
ふふ。天使の輪の光、いつもより確り綺麗に見えるなあ
深海生物が光るのは仲間に此処にいるって教える為もあるのだとか
今日はルリラの輪が私達が逸れない為の導だね
十分だとも
しかし深海といっても色々と生物が居る
透明な生物やひょろりと細長い魚
見てよこの魚の形、面白い!
トゲトゲ?何処どこ?
クリオネって頭がパカッと割れるやつ?見てみたいな
何故彼らはこんな形をしているんだろう
うう~~ッ、此処に紙とペンがあればスケッチするのに!
ルリラも絵を描くんだっけ?
え、それは嬉しいことを知った
此処は難しいけど、今度スケッチ一緒にいく?
突然の地形の変化だとか、
海底の漂流物にも注意しつつ進もう
もしかしたら海底都市から流れて来たものがあるかも?なんて
冒険の痕跡!いいね、それも探そう
ルリラ・ラプソディア
《灰桜》
【水中適応】と【完全視界】を使用して
海底の探索の準備もばっちり
陽射しが遠ざかり深く深く続く海底の暗さに
すこしドキドキしているけれど
海底で臨めるかもしれない景色の出会いに好奇心は止められない
ふとあなたが何か思い出すような眼差しだった
漆黒は彼女の心に触れるものがあったよう
然し、そのまま黒に攫われぬように
ふわり…泳ぎ、レジーナさんの顔を覗き込む
たのしみ、ね
ほわり笑いかける
自らの天使の輪の光砂も心表すように海中に広がる
ふふ、逸れても迷子…ならない、かな?仄かな光でも
わぁっ…海底は、不思議なお魚いっぱい
おもしろい子はお顔もユニーク
砂を這うように泳ぐとげとげの真っ赤な子もいる
深海といえば…クリオネさんもいる、かな?
きょろきょろ見渡す
彼女のアート魂が奮い立っているの
ふふりと笑み
わたしも…スケッチ、してみたい
うん。絵を描くの…実は好きで
ほんとう…?レジーナさんがいいなら、ぜひ
嬉しそうに頷く
誰かが残した冒険の痕跡があれば
発見の鍵になる…?
深蒼が別れを告げている。陽射しを浴びた水面が、両手で作った輪っかに収まるぐらいに小さくなった。
鮮やかだった世界へ顔を向けたまま、ルリラ・ラプソディア(Ⅻの子守歌・g00784)とレジーナ・ネイサン(灰色キャンバス・g00801)は深みへ落ちていく。
明かりが届かぬ深度まで降りたら、視界の問題が無くても、そこが漆黒の世界であると認識できる。
煩わしさから離れた清閑な闇。それをレジーナは、懐かしいとさえ思っていた。どうして、と己へ尋ねたとて答えは返らない。知らず知らず睫毛は震え、遠くをぼんやり眺めた。
水へ身を委ねていたルリラはそれに気付き、潮の流れを蹴る。
ふわり。
浮かび上がってレジーナを覗き込んだ。そして何処かへ吸われていた視線を、ルリラ自身で遮る。
「たのしみ、ね」
ほわりと微笑みかけたルリラに、レジーナがぱちりと瞬いだ。
何を思い出していたの、なんて聞くつもりはルリラになかった。漆黒に心惹かれようと構わない。ただ、今の眼差しは、レジーナ自身が望まぬ黒に呑まれてしまいそうで。
だからか、天使の輪がさらさらと唄い出す。そうして光砂の輝きが輪郭を暈していくうち、レジーナもルリラの笑みへ同じ表情を返した。
「うん、楽しみだ」
共に咲いた笑みの花が、深海で綾を織る。いつからかレジーナの焦点もルリラに定まり、外れなくなっていて。ふふ、とどちらからともなく笑い出す。
「いつもより確り綺麗に見えるなあ。海の中だからかも」
光の輪の息を呑む美しさに、レジーナが呟くと。
「逸れても迷子……ならない、かな?」
ルリラも目を細めて応えた。そっか、とレジーナが顎を引く。仲間へ居場所を報せるための光を思い浮かべた。どんなに深い場所でも、この目映さが自分たちを結び付けてくれると思えたから。
「十分だとも」
レジーナはそう言い終えて、底へ近づく。
海底では広大な山脈が二人を受け入れた。そして冒険の痕跡を探す道中、いろいろな生き物に遭遇する。身の透けた魚、ひょろりと細長く伸びる生物。どれも興味を惹きつけるものでしかない。
「見てよルリラ、こんなのもいる!」
レジーナが指差した先では、ぷっくり膨れた何かが漂う。まるで水風船みたいだと、ルリラがころころ声を楽しげに転がした。
「深海だから、かな。お顔もかたちもユニーク……あっ」
瞬く間に逃げてしまい、まじまじと観賞することは叶わなかったが。生き物を発見した結果、二人の中でとある望みが芽生える。
「クリオネさん、いる……かな」
「クリオネって頭がパカッと割れるやつ? 見てみたいな」
揃って一帯を見渡すが、それらしき姿は見かけない。
肩を落としたレジーナの傍らで、ルリラが笑んだ。
「また見る機会、きっとある」
不思議な深海生物との邂逅は、彼女の唇へ好奇心を灯す。
「こういう出会い、あるから……探索も、楽しいのね」
ルリラが山から山へ渡るように跳ね、彼女の光をレジーナも追う。景色は代わり映えしないが、時おり視界に入る生き物が、二人を楽しませた。
そのため、うう~ッ、とレジーナが呻きだすのも必然で。
「すごく残念! 紙とペンがあればスケッチするのに!」
生物を目にするたび、後ろ髪を引かれる想いで立ち去って来たからか、耐え切れなくて叫んだ。すると。
「わたしも……スケッチ、してみたい」
ぽつりと音の紡ぎ手が願いを滴らせた。届いた呟きにレジーナが目を見開く。
「えっ、ルリラも描くんだっけ?」
「うん……実は好きで」
控えめに告げられた事実は、レジーナの胸を高鳴らせる。
「じゃあ、今度スケッチ一緒に……いく?」
「ほんとう……? レジーナさんがいいなら、ぜひ」
躊躇すらしなかったルリラに、ぱあっとレジーナの頬へ熱が巡っていく。
「嬉しいに決まっているよ。よかった、楽しみが増えたね」
話を弾ませた二色の輝きを、砂や岩たちは静かに見守る。
そして北へ足を運んだ二人はまもなく知る。
大西洋の北側がエルドラードのディヴィジョンではないことを。既に確かめていた、他のディアボロス同様に。
そうなると、海底都市アトランティスが存在するとしたら、『空想科学コーサノストラ』ということになるだろうと、二人も、そして他のディアボロスも結び付けつつあった。
「そっちの大西洋になら、アトランティス大陸とかいうのもあるのかな?」
レジーナが首を傾ぎ、ルリラも少しだけ考えてから顎を引く。
「手がかりも……つかめていない、けど。そうだったら、すてきね」
端緒は開けずとも、アトランティス大陸が存在する可能性は否定できないはずだ。
こうして探索を終えたディアボロスたちは、再び陽の下へと戻っていく。
海底を冒険してきた今となっては懐かしい、波の音に焦がれるように。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【完全視界】がLV6になった!
【水中適応】がLV6になった!
効果2【ロストエナジー】がLV4になった!
【ダブル】がLV3になった!