リプレイ
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎
通路を護るのも、セレウコスの精兵ならば油断はできないな
仲間と連携し打ち倒そう
【完全視界】を仲間に共有
敵の気配が遠ければ、遭遇までは通路の地形を偵察、把握しつつ
待ち伏せを受けぬように忍び足で接近
味方にはハンドサインで情報共有
近くに気配があれば、味方と機をあわせて接敵
分岐路や壁の凹みなど死角に警戒し、敵に先手を取らせない
戦闘時は通路が暗く、かつ周囲に明かりがあれば落として死角や暗闇の利用を試みる
狭所だとしてもお互い様か
仲間と狙いを合わせ、順に撃破していこう
二挺銃の連射で敵の盾を引き付け、守りの空いた箇所を狙う。フェイントかけつつ制圧射撃のPD攻撃
弾かれても、盾や注意を引きつけた隙を、仲間に突いてもらう
俺も、味方と交戦中の敵の注意の逸れた隙を突いて
攻撃を集中させ、素早く撃破していこう
敵の攻撃には魔力障壁で身を護り、投擲動作を観察し
盾の飛来軌道から飛びのいたり身をずらして直撃を回避
タワーシールドに掠めさせて防ぎ、受け流す
復路の攻撃には、横向き加減に捌こう
味方が危険時はディフェンス
凍雲・雪那
ふーん、これが秘密通路……で、此処を防衛してるのが、お前ら、と。
地の利は向こうに、数の利だって馬鹿に出来ない。
その上此方は急がないと、そのままセレウコスに逃げられる。
困ったものだね、泣けてくるよ。
……まあ、だから何だって話だけど。
その程度の苦難、鼻で笑って凍て付かせてやる。
退かなくていいよ、亜人共。全員此処で氷像になれ。
分断壁、窪み、分かれ道、待ち伏せ。
簡単に思い浮かぶのは、ざっとこんなもの?
邪魔な障害物ごと、奴らを撃破するなら……これだ。
氷食輪廻、起動。通路を埋め尽くし、吹き荒れろ凍て風。
限定された空間である通路内なら、普段よりも圧倒的に早く零下の風が蹂躙する。
万物を凍てつかせる冷気の前に、無様に屈せよ亜人共。
投擲される盾には集中的に冷気を叩き込み、勢いを殺して落下させるか、空中で凍り付かせて粉微塵に砕くよ。
ん。先を急ごう。
こんなところで、時間をかけてられないし。
アンティオキア王宮の秘密通路に、ふたつの人影が映し出される。
その源は、勝利王セレウコスを追跡する復讐者たち――エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)と凍雲・雪那(報仇雪恨の皓巫姫・g07783)だ。
ミノタウロス・オリジンが守る『玉座の間』を抜けた彼らの最初の目標は、トループス防衛ラインを突破すること。
即ち、セレウコスの退路を守る『亜人剣闘士』の一団を撃破することにあった。
「通路を護るのも、セレウコスの精兵ならば油断はできないな。よろしく頼む」
「こっちこそ。それにしても、これが秘密通路か……思ってたよりも普通だね」
エトヴァの言葉に頷きつつ、雪那は前方の景色を見遣りながら言った。
其処にあるのは、何処までも続く殺風景な石造りの道だ。最終人類史で例えるなら、駅の出口に向かう一本道の地下通路が一番近いイメージだろう。
戦場の構造を把握することは戦闘においても重要だ――そう思い、エトヴァは通路を更に注意深く見遣る。
「身を隠せそうな場所は無いな。俺たちも亜人も、奇襲の類は不可能と言う訳か」
その視線を天井に移せば、其処には照明を果たす光球が頑丈な籠に守られて、無数にはめ込まれていた。
この時代には本来存在しない筈の光源は、其れがクロノオブジェクトであることを示している。全てを破壊して周囲を暗闇に落とすことは、現実的とは言い難そうだった。
「……なかなかに面倒な戦いになりそうだな、これは」
「そうだね。地の利は向こうに、数の利だって馬鹿に出来ない。その上、急がないとセレウコスに逃げられる……」
泣けてくるよ、と雪那は苦笑する。
「まあ、だから何だって話だけど。その程度の苦難、鼻で笑って凍て付かせてやる」
多少の負傷など覚悟の上。そう無言で告げるように、雪那は追跡の足を速めるのだった。
かくして、秘密通路を更に進むこと暫し。
足音を殺して先頭を進むエトヴァが、後続の雪那に注意を促すハンドサインを送って来た。彼が指差す先の曲がり角、そこから漂って来るのは、大勢の亜人が放つ濃密な殺気である。
(「この先に居るようだ。雪那さん、準備はいいかな?」)
(「もちろん。さっさと片付けて、セレウコスの元へ急ごう」)
無言のまま頷きを交わし合い、角を曲がる二人。
果たして其の奥で待ち構えていたのは、バリケードを築いて迎撃態勢を取った亜人剣闘士の一団であった。
岐路も死角もない完全な一本道に、シンプルにしてオーソドックスな防衛ライン。それが戦場を構成する全てだ。
「地の利は向こうに、数の利だって馬鹿に出来ない……か」
雪那が見遣る前方、得物の大盾を構えた剣闘士たちが黙々と迎撃態勢を取る。
勇ましい鯨波も、鼓舞の叫びも無い。有るのは只、一秒でも復讐者を食い止める尋常ならざる気迫のみ。
そうして一糸乱れぬ動きで隊伍を組む剣闘士を前に、雪那は凍てつく声で死闘の幕開けを宣告した。
「退かなくていいよ、亜人共。――全員此処で氷像になれ」
剣闘士の一団が、無言で迎撃の盾を構える。
物言わぬ、そして統率された動きが、これより始まる戦闘の激烈さを静かに告げていた。
果たして防衛ラインに踏み込むと同時、復讐者を襲ったのは熾烈な迎撃の嵐だった。
重量を帯びた巨大な盾が、息つく間もなく襲い来る。その一撃一撃はトループス級とは思えぬほどに重く、強烈だ。
エトヴァは雪那のガードアップを頼りに、盾の応射に銃弾の嵐を返しながら前進していく。上手く敵の注意を引きつけて、雪那に隙をついて貰う――そんな甘きに過ぎる見込みは、開始早々に消し飛んでいた。
『く……!』
「雪那さん、今だ!」
「氷食輪廻、起動。通路を埋め尽くし、吹き荒れろ凍て風」
運良くと言っていいだろう。エトヴァの反撃を浴びて一体が怯んだ刹那を見逃さず、雪那はパラドクスを発動した。
全身から放出された極低温の冷気が、瞬く間に戦場に充満する。長時間触れれば細胞単位で氷に置換する、恐るべき威力を秘めた『氷食輪廻』。その一撃は間違いなく防衛ラインの剣闘士たちを捉え、そして、
『むん!』
剣闘士たちは一体の脱落者を出すことも無く攻撃を耐え抜き、即座に反撃を叩きつけてきた。
投擲された盾は冷気による落下も粉砕も叶わず、当然のように雪那の鳩尾にめり込み、その体を吹き飛ばす。
更なる追撃を浴びせんと盾を構える剣闘士たち。エトヴァは即座にバレットレインで銃撃の嵐を浴びせながら、飛んで来る盾の直撃を紙一重で免れつつ、被弾した雪那を振り返る。
「雪那さん、大事はないか?」
「何とか、ね……っ!」
態勢を整えようと息を吸い込み、雪那は全身を走る激痛に顔を歪めた。
なおも飛来する攻撃をエトヴァはディフェンスで庇いながら、敵の被害状況を観察する。
反撃を含め、一連の攻防で撃破出来た剣闘士は僅かに二体。バリケードを固める敵の数はいまだ数多く、防衛ラインの綻びは当然のように一切見えない。その強固な守りに、舌を巻かざるを得なかった。
「流石はセレウコスの精兵……トループスとは言え、伊達ではないな……」
二挺銃の連射で敵の盾を引きつけ、守りの空いた箇所を狙う――それがエトヴァが当初考えていた作戦であった。
碌に統制も取れない雑兵の寄せ集めなら、それも成功しただろう。或いは、敵味方の入り乱れる乱戦なら、雑兵でなくとも上手くいった可能性はあったかも知れない。
だが、この戦場は、その何方とも違う。
相手は防衛ラインを敷いて守りに徹しており、其れを行っているのはセレウコス直属の死兵と化した精兵だ。フェイントの一つや二つに易々と嵌まるような弱卒など此処には一体もいない。
強引に押し切るには火力が足りず、絡め手で行くには連携と工夫が足りず。嵐のごとく降り注ぐ猛攻の前に、二人の体には見る間にダメージが蓄積されていく。
「これ以上は危険だ。雪那さん、一旦下がろう」
「参ったね。そう簡単には通してくれないか……」
戦闘続行の危険を感じ取った二人は、敵の射程から辛くも離脱に成功した。
見遣った先、通路の奥に陣取る防衛ラインは未だ健在。こうしている間にもセレウコスは脱出を急いでいることだろう。
状況は一分一秒を争う。微かに込み上げる焦燥を押し殺し、復讐者は再度、攻撃の支度を整えていく。
これより挑む相手、その強大さを告げるように。
亜人剣闘士の部隊は未だ、復讐者の前に壁となって立ちはだかる――。
苦戦🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
クロエ・アルニティコス
一番の親友のエイレーネ(g08936)をディフェンスし、ともに戦います。
ミノタウロス・オリジンは撃破できました。
市街地の戦いはまだここからですが、まずはこの防衛ラインを突破しましょう。
えぇ、このアンティオキアの防備や砦には手古摺らされました。セレウコスに次は与えません……共に行きましょう。
防衛ラインを敷く敵から集中攻撃を受けないよう、エイレーネと同時に仕掛けます。
【ラミアー・ゲンチアナ】を使用し、ラミアーを象った植物の怪物を作り出し、防衛ラインを敷く敵へと接近させ、締め殺しましょう。
攻撃する敵はエイレーネと合わせ、1体ずつ確実に攻撃しやすい敵から攻撃、敵の連携を崩すことで防衛ラインを突破しましょう。
炎に対しては守護の青薔薇の結界術を展開、私とエイレーネへの被害を軽減します。
それでも私たちを止めようと言うのなら。
退けとは言いません。お前たちも、セレウコスも、逃さずここで殺します。
エイレーネ・エピケフィシア
無二の戦友クロエ様(g08917)をディフェンスし共闘します
蹂躙戦記イスカンダルの攻略開始から、間もなく一年……
その殆どの期間において、セレウコスの軍勢との戦いが続きました
そして遂に訪れた、かの暴君を葬り去る好機――共に勝利を成し遂げましょう!
敵が陣形の隙間を埋めるために隙を作ったり、仲間が敵陣の中に斬り込みやすくなるように
クロエ様と共に防衛線の一角を切り崩していくように戦いましょう
≪神護の長槍≫と≪神護の輝盾≫を構え、立ち塞がる敵と対峙
彼我の距離を中距離に保ったまま槍を突き出し、『光輝迸る浄化の刃』を放ちます!
切っ先が敵に触れずとも、解き放たれた浄化の閃光が最前列の敵を貫き
さらに背後に控えるもう1体まで巻き込んで、敵陣に穴を穿っていきます!
敵の放つ技に対してはこちらも力を込めて盾を構えます
盾同士を打ち合わせて防御し、大地を強く踏みしめて姿勢を崩さぬよう注力
我が身とクロエ様に大きな被害が及ぶことがないよう、耐え抜きましょう
此度の戦は、今日までの道のりの結実
ここで止まるなど罷りなりません!
アンティオキア王宮の秘密通路を照らす眩い光。
それは、エイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)の『神護の輝盾』が放つ煌々たる輝きであった。
得物である『神護の長槍』を輝盾と共に構え、彼女は今、亜人剣闘士の防衛ラインと距離を置いて対峙している。
(「蹂躙戦記イスカンダルの攻略開始から、間もなく一年……」)
見澄ました先、剣闘士との距離を詰めながらエイレーネは思う。
今までの一年間、その殆どの期間において戦い続けてきたセレウコスの軍勢――そんな彼らとの因縁に、ようやく終止符が打たれようとしている。この好機を逃す訳には、絶対に行かないと。
「遂に訪れた、かの暴君を葬り去る好機――共に勝利を成し遂げましょう!」
「えぇ。アンティオキアの防備や砦に手古摺らされた日々も、もう終わります」
エイレーネと足並みを揃え、クロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)が頷いた。
ミノタウロス・オリジンの撃破は為った。ポリュペルコンを相手取った市街地の戦いはこれからだが、決着を見るのもそう遠くは無いだろう。復讐心を燃やして研ぎ続けた刃は、ようやくセレウコスに届こうとしているのだ。
――セレウコスに『次』は与えない。
未だ相見えぬ勝利王への憎悪に胸を焦がしながら、クロエは深呼吸をひとつ。肩を並べる一番の親友へ、静かに告げる。
「共に行きましょう、エイレーネ」
「ええ。参りましょう、クロエ様」
いま自分たちが為すべきはひとつ。即ち、前方に築かれた防衛ラインの突破だ。
その胸に同じ想いを抱きながら、クロエとエイレーネは熾烈な戦場へと身を投じるのだった。
かくして再び、復讐者の攻撃は開始された。
敵の射程に踏み込むと同時、エイレーネとクロエを襲うのは亜人剣闘士たちの猛烈な迎撃だ。
パラドクスの力で距離を詰めて放たれる盾の殴打。猛獣を焼き殺す灼熱の業火。それらへ着実な反撃を浴びせながら、二人は彼我の距離を詰めていく。
「せいっ!」
『がは……っ!』
エイレーネの刺突に脇腹を穿たれ、剣闘士が悶絶する。
並のトループスなら絶命を免れぬ一撃にも、しかし敵は怯む気配を一切見せない。
当初は互いにディフェンスし合いながら進む作戦であった二人だが、互いに異なる属性で戦いに臨んでいたこともあって、有利に働いたとは言い難い状況だ。そうこうする間も、剣闘士の猛攻は容赦なく降り注ぐ。
「……っ」
クロエは守護の青薔薇の結界術を展開しながら進むが、パラドクスを介さぬ行動でそう簡単に被害を減らせる筈も無い。
剣闘士が浴びせる炎によって、たちまち彼女の全身は火傷に覆われていった。
これだけであれば、戦闘の結果は先程と同じに終わっていただろう。
だが、クロエとエイレーネが戦いの流れを変えるのは、まさに此処からであった。
今回の攻撃が、前回のそれと違った点は大きく二つある。
一つは、エイレーネとクロエの連携が綿密であり、且つ、狙う先を『防衛線の一角』と具体的に定めていたことだ。
果たして二人の眼が標的に定めたのは防衛ラインの右翼――エトヴァと雪那の攻撃で負傷した敵の居る一角である。
「多少の誤算はありましたが……仕掛けましょう、クロエ様」
「ええ。頃合いです、エイレーネ」
仕掛ける時は、同時。
息を合わせた二人の猛攻が、今、防衛ラインの一角へと襲い掛かる。
其れは、亜人剣闘士の堅固な防壁ラインを穿つ、まさに必殺の一撃であった。
「聖なる光よ、穢れし者どもを清めたまえ!」
エイレーネの突き出す槍が、『光輝迸る浄化の刃』を放つ。
パラドクスの力で敵前に瞬間移動、槍が放つ刺突と破壊光線は、最前列に並ぶ剣闘士を纏めて二体串刺しにした。
先陣の攻撃で負傷を重ねたところへエイレーネが追撃で放った一撃である。流石の精兵も耐えることは叶わずに絶命、消滅し、防衛線の一角が切り崩された。
そして――そこへ斬り込むのは、満を持してパラドクスを発動したクロエだ。
「種子に宿るは我が苦悩、芽吹け『ラミアー・ゲンチアナ』!」
防衛ラインの俄かに生じた綻びへ、リンドウの種が投げ込まれる。
魔力と尽きることのない苦悩を注がれた種は、瞬く間にラミア―を象った怪物へと変貌。直近の亜人へと牙を剥いた。
ゴキリと鈍い音を立て、頸骨が粉砕される。双眸を爛々と輝かせたまま絶命した剣闘士を振り捨て、クロエはエイレーネと共に防衛ラインの敵を葬っていく。
エイレーネとクロエの猛攻によって生じた防衛ラインの綻びは、今や目に見えて広がりつつあった。
二人のパラドクスを浴びた敵は、全員とは行かないにせよ多くが絶命を免れなかった。其の数は、エトヴァと雪那のそれに比べても明白に多い。
それこそが、前回の攻撃との相違点の二つ目。
攻撃可能な標的を絞る代わりに一撃の威力を高め、確殺できる率を上げたパラドクスで二人が臨んでいたことだ。
「此度の戦は、今日までの道のりの結実。ここで止まるなど罷りなりません!」
敵の放つシールドバッシュに、エイレーネは一歩も退かない。
大地を力強く踏みしめ、根を張ったかの如き不動の姿勢は、まるで大樹の如く。
パラドクスを介した攻撃の前に、盾だけでダメージの軽減は望めず――それでも尚、彼女は耐える。耐え続ける。
「退けとは言いません。お前たちも、セレウコスも、逃さずここで殺します」
負傷の度合いで言えば、クロエもまたエイレーネと同じ。
炎を浴びて全身を火傷に覆われながら、憎悪で痛みを塗り潰し、苦悩を余さず種へと込める。
肉を切らせて骨を断つ――二人の攻撃を端的に述べるなら、まさに其の言葉が相応しいと言えるだろう。勢いは尚も衰えを知らず、防衛ラインには屍がじわじわと増え始めた。
だが、
『調子に乗らないで貰おうか』
「く……っ!」
長槍の破壊光線を耐え抜いた剣闘士のシールドバッシュが、強かにエイレーネを打つ。
被弾を重ねたところに直撃を浴びて、膝をつくエイレーネ。それを見たクロエは、敵の執念深さに思わず唇を噛んだ。
二人の攻撃は火力が高い半面、多勢の敵を一掃する力を持たない。そして――精兵の剣闘士たちは当然のようにその弱点を見逃さなかった。残る戦力をかき集め、即座に防衛ラインを死守する構えを立て直していく。
「しぶといですね、まだ落ちないのですか……」
思わずそんな言葉が出るほどに、剣闘士たちの抵抗は熾烈だ。
最下級に過ぎぬトループス級でこの戦意と戦闘力。彼らを統率するセレウコスのそれは、果たして如何ほどなのか。
侮りをもって臨めば、甘い見込みで仕掛ければ、待つのは確実な返り討ち――そんな確信を誰もが得ざるを得なかった。
とは言え、剣闘士たちとて永遠に戦い続けることなど出来はしない。クロエとエイレーネの奮闘により防衛ラインに綻びが生じた今、決着は否応なく目前に迫っていた。
「もう一息……ですね」
「ええ、クロエ様。今こそ、最後の攻撃を行う時です!」
クロエとエイレーネが、傷だらけの体を叱咤する。
首の皮一枚で防衛ラインの崩壊を押し止め、なおも抵抗を続ける亜人剣闘士たち。
彼らと復讐者の決着の時はゆっくりと、しかし着実に近づいて来ていた――。
善戦🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【口福の伝道者】LV1が発生!
【避難勧告】LV1が発生!
効果2【凌駕率アップ】LV1が発生!
【先行率アップ】LV1が発生!
アンディア・ラムパデス
流石に敵も精兵……易々と突破はできないというわけか
だが、この程度で臆していては王の首には届くまいよ
亜人は殺す……必ずな!
先に向かった者たちを退けたようだが、それでも無傷ではない
確実に傷を負い、数を減らしている
ならば、その穴を無理矢理こじ開けさせてもらう……!
傷付いているとはいえ一網打尽とはいくまい
だが、一体ずつでも仕留めていけば徐々に綻びを埋めることは叶わなくなる筈
より傷ついた敵、戦力の薄まった防衛ラインを狙い、突撃
我一人ならば集中攻撃すればよいだろうが、こちらは一人ではない
我一人にかまければ、擦り減った戦力などすぐにまとめて狩られかねないことも分かるだろうよ
そのまま接敵できれば良し、できずとも味方の囮にはなる!
敵の攻撃は脚を止めぬよう槍と盾で払いながら進む、傷が大きくなろうと構わん
奴らの下に辿り着けるならばそれで良い
貴様らも盾を使うようだが……貴様らの蹂躙を振り撒くだけの盾、我が守護の盾で斬り捨ててくれるわ!!
レイ・シャルダン
連携・アドリブ歓迎です。
先に挑んだ仲間達が傷だらけになって作ってくれた好機、決して逃しはしません。
敵は戦えば戦う程消耗します。
しかし、ボク達ディアボロスは仲間の残した想いを糧に、戦いを重ねる度に強くなる。
ここの道は開けて頂きます。
電脳ゴーグル型デバイス『Boeotia』を起動
≪ - 人機接続:Lynx of Boeotia - ≫
『Boeotia』と精神と全武装をリンクさせ
人と機械が互いを補い合い、相乗効果を発揮した『人機一体』の状態へ。
フライトデバイス『アクロヴァレリア』を起動
その推進力と【先行率アップ】の恩恵を持って敵に一気に肉薄します。
右の手には煌剣『シュトライフリヒト』
蒼く煌めく剣閃を残し横に一文字、
空と地を、生と死を、その境界線ごと断ち切る様な一閃を放ち攻撃を放ち
防衛ラインに残る敵を撃ち果たします。
攻撃後はすぐさま敵の反撃に備え、
『アルヴァーレ』から発生する防御壁の【結界術】と
『シャルダント』からの【結界術】を重ね緩衝材として使用し
盾の軌道をわずかにずらし、直撃を防ぎます。
セレウコス決戦の前哨戦であるトループス防衛ラインの戦いは、まさに佳境を迎えようとしていた。
復讐者の度重なる攻撃を退け続けた拳闘士たちは、じわじわと屍を積み上げ、今や防衛線は崩壊寸前である。
だが、それで尚――彼らの闘争心は衰えない。
生き残った兵をかき集め、斃れた同胞を一瞥もせず、決死の覚悟で防衛ラインの崩壊を押し留めている。最後の一兵、最後の一秒まで時間を稼ぐ心積もりなのだろう。
「流石にセレウコス直属の精兵……易々と突破はできないというわけか」
「ええ。けれど、先に挑んだ仲間たちが傷だらけになって作ってくれた好機です。決して逃しはしません!」
そんな敵を前に、新たに駆けつけた復讐者は二人。
アンディア・ラムパデス(砂塵の戦槍・g09007)と、レイ・シャルダン(SKYRAIDER・g00999)であった。
二人の前方に聳えるバリケード越しには、残り僅かとなった剣闘士が居座っている。先行した復讐者四人の攻撃に晒されて多くは手負いとなっていたが、戦意には些かの翳りも無い。
「命に代えても我らを足止めする……という心積もりのようだな」
これより戦う相手を見澄まして、アンディアが呟いた。
あの亜人たちは、ジェネラル級の命令だからではなく、本心からセレウコスの為に命を捨てている。今までの戦いぶりから見てもそれは明白だった。
人もクロノヴェーダも、こうなった兵は強い。瀕死の敵と侮っては、手痛い反撃を受けることは確実だ。
「だが、この程度で臆していては王の首には届くまいよ。亜人は殺す……必ずな!」
「ええ。ボクたちディアボロスの力、彼らに見せてやりましょう!」
敵に負けじと戦意を燃え立たせ、レイが言う。
電脳ゴーグル型デバイス『Boeotia』を起動し、精神と全武装のリンクを完了。
≪ - 人機接続:Lynx of Boeotia - ≫――人と機械を相互補完する人機一体の戦士へ、少女はいま形を変えた。
「行きましょう。アンティオキア解放のために!」
「ああ。そして、セレウコスの首級を上げるために!」
レイとアンディア。復讐心を胸に秘めた二人の戦士が、いま防衛ラインへと突撃していく。
戦闘開始と同時に戦場を覆い尽くしたのは、パラドクスを駆使した盾の応酬であった。
片方は、魔力で肉体を強化したアンディアが投擲する盾。そしてもう片方は、剣闘士が投擲する巨大盾だ。
「ここまで来たなら小細工など無用。力ずくで押し通るぞ!」
多少の負傷などものともせず、アンディアはじりじりと防衛ラインに肉薄していく。盾を駆使しての肉弾戦は、重装歩兵の彼女も得手とするところだ。
亜人の攻撃は未だ苛烈だが、戦死者の増加による火力低下はいかに精兵でも補いようがない。
クロエとエイレーネが前回の攻撃で穿った防衛ラインの綻び目掛け、アンディアは先陣を切って突っ込んで行く。
「その穴、こじ開けさせてもらう!」
勝負所を見誤らず、槍を構えて疾駆したアンディアの肉体が、砲弾めいて防衛ラインに直撃する。
秘密通路を覆う衝撃と振動。
同時、その後方から迫るのは、フライトデバイス『アクロヴァレリア』を起動したレイの突撃だ。
「今だ! 存分に暴れるぞ、レイ!」
「ええ、そうしましょう。――≪ - 接続開始 - ≫これより攻勢に出ます」
二人の復讐者による猛攻が、剣闘士たちの防衛ラインを突き破る。
エトヴァと雪那が削り、エイレーネとクロエが穿ち、そうして今、綻んだ穴を全力でこじ開けて。
『……撤退はせん。セレウコス様の為に……!』
自身の負傷にも構わず、なおも復讐者を迎撃してラインを建て直さんとする剣闘士たち。
だが、レイが振るう『人機一体:瞬断撃』の一撃は、その戦意もろともに亜人部隊の命脈を断ち切った。
「そこ!」
右手に構えた煌剣『シュトライフリヒト』が、蒼色の軌跡を横一文字に描く。
超加速で肉薄して放つパラドクスの斬撃は、標的に捉えた剣闘士が知覚するよりも速く、その首を叩き落とした。
空と地、生と死――その境界線ごと断ち切るような一閃に、骸となって斃れ伏す剣闘士。同時、生き残りが放つ反撃の投擲が胸部に命中、レイの体が宙を舞う。
だが、かすり傷だ。その程度で落ちる程、人機一体の彼女は柔ではない。
「……っ! まだ、まだです……!」
レイはなおも光の刃を振るいながら攻防を繰り返し、アンディアと共闘しながら剣闘士を葬って行った。
敵が残り僅かとなった今、一撃の威力を上げて着実に撃破する――そんな二人の方針が見事に奏功した形であった。
戦う度に傷つき、屍を積み重ねる剣闘士たち。彼らがクロノヴェーダである以上、それは当然の帰結と言えよう。
「でも……!」
でも、復讐者は違う――虫の息となった剣闘士を前に、レイはそう告げた。
仲間たちの想いを糧に、戦いを重ねるほどに強くなる。それこそが自分たちの真の強さだと。
「だから。ここの道は、開けて頂きます! アンディアさん!」
「任せろ。奴らの蹂躙を振り撒くだけの盾、我が守護の盾で斬り捨ててくれるわ!!」
アンディアは全身の筋肉に魔力を注ぎ込み、得物の盾を全力で振り被った。
魔力の源は、亜人への怒りと屈辱がもたらす復讐心。その感情がいま最高潮に高まり、アンディアに力を与えていた。
そして――長き死闘に終止符を打つ一撃が放たれる。パラドクスの力で魔力の刃を帯びた、盾の投擲が。
「引き裂け……飛盾斬!」
アンディアの一撃が、最後に残った剣闘士の喉笛を切り裂く。
致命傷を刻まれ、全身を真っ赤な血で汚しながら、剣闘士は己が王への言葉を吐き出した。
『セレウコス様――我等は……ここ、ま、で……』
最後の息を吐き終えた亜人の手から、主君のために在り続けた盾が落ちる。
静寂を取り戻した通路を叩くガランという音が、秘密通路を巡る前哨戦の戦いの終わりを告げていた。
かくして復讐者たちは、秘密通路の更なる奥を目指して駆けて行く。
防衛ラインを突き破り、亜人剣闘士の屍を踏み越えて。
いまや狙うはただ一つ――勝利王セレウコスの首級のみだ。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【猫変身】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
亜人剣闘士の守る防衛ラインを突破した復讐者たちは、秘密通路を走り続けた。
どこまでも、どこまでも、ひたすらに一本道を駆ける。追い求めた強敵を此処で討つ為にも立ち止まる訳には行かない。
そうして疾駆すること暫し――彼らはついに、追い求めた敵の背中を捉えた。
「見えた……!」
復讐者たちの前方に見えたのは、『ミノタウロスの狂戦士』の群れ。
そして、彼らに護衛されて脱出を急ぐ、一体の亜人であった。
輝く巨大な双角、無骨な甲冑、一振りの鋭い剣。そして、それらが霞むほどに圧倒的な『強者』のオーラ。
その亜人こそ復讐者が長く追い求めた、アンティオキアの主――『勝利王セレウコス』に間違いなかった。
疾駆の速度を上げて、復讐者が迫る。
追手を察知したのか、それを一瞥するセレウコスの眼には、何の感情も浮かんではいない。
だが、双角が俄かに帯びる雷光の輝きは、明白な殺意を帯びたものだ。
あの強敵を確実に仕留めるには、退路を断ったうえで撃破せねばならない。
護衛である狂戦士から仕留めるとしても、彼らが亜人剣闘士より弱いことは間違っても有り得ないだろう。無論、主であるセレウコスは言うに及ばずだ。
刻一刻と過ぎていく戦場の時間。
復讐者に語ることは無い――そう告げるかのように、セレウコスと護衛たちは疾駆の速度を上げようとしていた。
神山・刹那
ミノタウロスか
くくく、面白い。てめぇの戦斧と俺の刀、どっちが強いか、真っ向勝負と行こうじゃねぇか
悪いが、俺は負けるつもりはないぜ
タウロスランブルで斧を叩きつけてくるのなら、肉体改造で筋力を改造し、柔らかさをもったそれでも力を込めるとかなりの強度を持ち筋肉にし、相手の斧を真っ向から受け止め、あるいはいなし、相手の斧を地面に叩きつけたら足を乗せて残像を残す速さで一気に駆け抜けながら、すれ違いざまに斬り捨てる
「俺の相棒が軋むか。流石はミノタウロス。まさに暴虐の斧だ。が、力勝負で勝てなかったのは悔しいが、力が全てじゃない。ま、楽しかったよ」
秘密通路を駆ける亜人の一団を認めると同時、復讐者たちは疾駆の速度を一気に上げた。
見据える先には、長きに渡って追い求めた敵の背中が見える。
勝利王セレウコス。アンティオキアを治める王にして、イスカンダルより雷神の力の一部を授かりし猛将が。
――ついに、追いついた。
――奴を討てば、アンティオキアの戦いは終わる!
戦意を燃え立たせ、一直線にセレウコスへ殺到せんとする復讐者たち。
だが、その背中はすぐに分厚い肉壁で遮られた。護衛を務めるトループス級、『ミノタウロスの狂戦士』の一団である。
『王の元へは行かせぬ』
強靭な意思を帯びた声で、双斧を構えながら告げるミノタウロスたちへ、真っ直ぐに駆けて行く復讐者たち。
その中から一番乗りで飛び出したのは、一人の傾奇武者――神山・刹那(梟雄・g00162)であった。
「ミノタウロスか。くくく、面白い!」
不敵な笑い声を響かせて、刹那は見る間にミノタウロスたちとの距離を詰めていった。
その背中を押すように吹き荒れるのは、先行率アップのもたらす風である。
先手を取ると同時、刹那は愛刀の『覇龍』を構えながら、闘志を宿した双眸で不敵に笑う。
「悪いが、負けるつもりはないぜ。てめぇの戦斧と俺の刀、どっちが強いか、真っ向勝負と行こうじゃねぇか!」
刹那の挑発にも、しかし狂戦士が応じることはない。
無骨な双斧を無言のままに振り被り、迎撃の意思を示すのみだ。
そして――次の瞬間、戦いは開始された。
「奥義、朱雀」
パラドクスの力で高速移動する刹那が、二段構えの斬撃を叩き込む。
命中アップに導かれた一閃は、殿を行く狂戦士の二体を捉えるも、堅固な筋肉に阻まれ致命傷には至らない。
だが、この程度は刹那も想定の範囲内だ。反撃で繰り出されるタウロスランブルは、肉体改造で増強した筋力で真っ向から受け止める――それが彼の狙いであった。
しかし、
『ぬぅん!!』
「ぐおぉ……っ!?」
狂戦士の振るった斧は刹那のガードを容易く突き破り、玩具のように刹那の身体を後方へと吹き飛ばした。
パラドクスを行使する戦闘において、技能に依存した行動で有利を得ることは叶わない。逆説連鎖戦における定めが導く、これは言わば必然の結果である。
勝利王セレウコスは、断片の王に認められる程の実力者であり、その護衛たちとて侮れぬ精兵。
闇雲に攻めて一方的な展開を望めるほど、甘い相手ではない――厳然と突き付けられる事実を前に、刹那は唇を噛んだ。
「流石はミノタウロス……まさに暴虐の斧か……!」
手傷を負わせた狂戦士たちが、再び疾駆の速度を上げて駆けて行く。
一瞥もせずに次第に遠ざかっていく敵の背中を狙い、刹那は歯を食いしばると、傷だらけの身体に今一度力を込めた。
負傷した足が地面を踏みしめる度に嫌な音を立てたが、そんなことを気にしては居られなかった。
「俺は……! こんな所じゃ終われねぇんだよ!!」
全身全霊を込めた『朱雀』のパラドクスで、刹那がふたたび戦場を駆ける。
即座に接近を察知し、斧を構える狂戦士たち。そこへ二段構えの斬撃を再び叩きつけて、そして、
『ぐ……』
胴を袈裟に斬られた狂戦士が一体、血飛沫を撒き散らして絶命。その場に斃れ伏した。
同時、力を振り絞った刹那めがけて、残る一体の放ったタウロスランブルが直撃する。
再びその身体を吹き飛ばされ、精魂尽きたように膝をつく刹那。戦闘不能によるリタイアを免れたのは幸運にも――本当に幸運にも発動した凌駕率アップの賜物であった。
「すまねぇ。……あとは、頼んだぜ」
後続の仲間に後を託して、刹那が深い吐息を漏らす。
遠ざかっていく護衛たちの背中は未だ防御を崩すことなく、王たるセレウコスを守り続けていた。
苦戦🔵🔴🔴🔴
クロエ・アルニティコス
一番の親友のエイレーネ(g08936)をディフェンスし、ともに戦います。
のんびりとはしていられません。
ですが、復讐を成すのに焦りもまた禁物です。
これまでがそうであったように。確実に仕留めましょう。
【泥濘の地】を使用、撤退しようとする相手の足をぬかるみで鈍らせて追いつき、【タロース・オフリス】を使用。タロースを象った植物の巨人を作り出し、その両の腕でエイレーネの槍が貫いたミノタウロスを掴み、熱で焼き焦がします。
相手の方が数は上。ひとたび足を止めて反撃にでればこちらへの攻撃は苛烈になるでしょう。
ならば【先行率アップ】で先んじ、【ダメージアップ】に加えエイレーネの【命中アップ】も用いて攻め、エイレーネと標的を合わせ、早期に敵の数を減らすことで攻撃を弱めます。
反撃の血色の風はタロースを壁にし、守護の青薔薇の結界術で少しでも弱めます。
精鋭、影武者、宿将。どれだけの犠牲を払おうと逃げるつもりなのでしょう。
ですがこちらも同じことです。
お前がどれだけの犠牲を払おうと、逃すつもりはありません。
エイレーネ・エピケフィシア
無二の戦友クロエ様(g08917)をディフェンスし共闘します
セレウコスが精兵を選り抜いて近衛につけているのは、容易に想像できることです
過酷な戦は元より覚悟の上。侮りはなく、されど怯みもしません!
敵は護衛ではありますが、獲物を見れば荒々しく攻めかかってくる狂戦士と見えます
【先行率アップ】による素早い攻撃に【命中アップ】を重ねて急所を狙う精度を増し、出鼻を挫きましょう
そうすれば反撃の威力も抑えられ、身の安全にも繋がるでしょう
狙う敵はクロエ様と合わせ、火力を集中し確実に数を減らすように
≪神護の長槍≫と≪神護の輝盾≫を手に『敢然たる正義の猛撃』を敢行
1体目の標的を盾で押しやって2体目にぶつけた後、両方を長槍で貫きます
敵を突き飛ばす攻撃によって、至近距離に詰め寄る動きを掣肘
クロエ様が術を行使しやすい状況を維持しましょう
敵の技に対しては、盾で斧の柄や握り手を弾いて狙いを外させたり
≪神護の胸当て≫部分で受けて直撃を避けます
目の前に幾重の壁があろうと、我らは乗り越えます
苦境に立つ人々の希望となるために!
秘密通路を駆け抜けながら、復讐者たちは尚も敵の追跡を続行した。
初戦で一体は辛くも撃破したものの、残っている狂戦士はいまだ数多い。手負いとなった個体もすぐさま戦列へと復帰し、疾駆の速度は未だ衰えないままだ。
「……やはり、セレウコスは精兵を選り抜いて近衛につけているようですね。クロエ様」
「ええ、のんびりとはしていられません。ですが、復讐を成すのに焦りもまた禁物ですよ、エイレーネ」
そんな亜人の一団を新たに追いかけるのは、二人の復讐者。
エイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)とクロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)である。
セレウコスを逃さず討つべく、二人は今、護衛への攻撃を開始しようとしていた。
「これまでがそうであったように。確実に仕留めましょう」
「ええ、過酷な戦は元より覚悟の上。侮りはなく、されど怯みもしません!」
決意に満ちたクロエの声に、エイレーネが頼もしい笑顔で頷く。
彼女たちにとって、アンティオキアの解放はひとつの悲願と言って良い。
この戦いは単なる勝利では意味がない。人々を踏み躙った亜人を滅ぼし、勝利王セレウコスを討伐すること。それでやっと街は真の意味で解放される。
長かった完全勝利まで、後少し――その為の苦労を惜しむ気など、二人には一切なかった。
『……これは』
同刻、セレウコスを護衛する狂戦士たちは、戦場の異変を察知していた。
彼らの踏みしめる地面が泥濘に変じ、その足を捉え始めたのである。クロエが発動した泥濘の地の力であった。
速度を奪われ、失速していく狂戦士たち。振り返った後方からは、復讐者たちがじりじりと距離を詰めて来る。未だ泥濘に囚われていない君主を逃がす為、下すべき決断は一つだった。
『王よ。我等は此処までです』『ご一緒出来ず、申し訳ありません』
どこまでも淡々と告げられる言葉に、セレウコスもまた眉ひとつ動かすことは無く。
ただ前だけを見据えたまま、重い声で告げる。
『お前たちの忠義を、我は生涯忘れぬ』
『……はっ』
『将として最後の命令だ。――暴れてやれ。命尽きるまで、全力でだ』
彼らの別れは、それで済んだ。
出口を目指し、走り去って行くセレウコス。その背を守るように狂戦士たちは踵を返すと、荒れ狂う血を解き放った。
迫り来る二人の復讐者――エイレーネとクロエをこの場で迎え撃つために。
『『ぬおおおおおおオオオオオオオオッ!!!!』』
狂える戦士たちの咆哮が、秘密通路に木霊する。
それは殺すか殺されるか、復讐者と亜人の新たな死闘が始まったことを意味していた。
「……来ましたね、クロエ様」
「ええ、気をつけて。彼らもまた死兵です」
エイレーネとクロエの元へ、亜人の荒々しい足音が迫る。
泥濘の地に捉われた狂戦士たちは命を捨てて時間を稼ぐことを選んだのだろう。だが、この展開は二人とも想定の範囲内。エイレーネは蜂蘭の球根を握るクロエの前方に進み出ると、戦場に吹き荒れる風を背に、『神護の長槍』と『神護の輝盾』を構える。
死ぬ気など端からない。挑んで、勝って、一緒に戻る――この戦いは、二人にとってそういうものだ。
「では、参りましょう。セレウコスの首を取るためにも」
「頼りにしています、エイレーネ。……始めますよ」
球根に魔力と怒りを注ぎながら、クロエが頷いた。発動されたダメージアップが二人の心に怒りを灯す。
同時、長槍と輝盾を構えたエイレーネが、迫り来る狂戦士たちの群れ目掛けて突撃を開始した。盾での打撃と槍の刺突で痛打を与える、『敢然たる正義の猛撃』のパラドクスであった。
「無辜の民を害する者よ、伏して裁きを受けなさい!」
『オオオオオオオォッ!!』
盾と斧の激突する響きが、戦闘開始を告げる。
命中アップの光に導かれて叩き込んだ輝盾が、先頭を駆ける狂戦士の顔面を捉えた。態勢を崩した敵を突き飛ばし、続けて放つ長槍の刺突が、巻き込んだ狂戦士を諸共に穿ち貫く。
「……っ」
槍越しに伝わる手応えから、しかしエイレーネは僅かに顔をしかめた。
急所を狙って放った一撃が、僅かに狙いに届いていない。
ダメージアップも命中アップも一人分の効果で得られる補正は一割程、そこまで劇的な効果は期待できないということか。次の瞬間、狂戦士の斧が勢いよくエイレーネに激突する。膂力を込めて放つ、純粋な暴力。唸りを上げて振り下ろされた一撃に盾が悲鳴を上げ、衝撃でエイレーネの身体が壁面に叩きつけられる。
「が……はっ!」
『ガアアアアアアアアッ!!』
「種子に宿るは我が憤激、芽吹け『タロース・オフリス』!」
悶絶するエイレーネへ殺到する狂戦士たち。だが次の瞬間、彼らの眼前に緑の巨人が立ち塞がった。
ギリシャ神話の怪物『タロース』を象った植物の怪物、タロース・オフリスである。
クロエの魔力と怒りを球根に注がれて生成された怪物は、ズンズンと重々しい足音を響かせながら、すぐに標的となる敵を見定めた。盾と槍で負傷し、起き上がるエイレーネに追撃を浴びせんとする二体の狂戦士へと。
「さすがに精兵、苛烈な攻撃と言っておきましょう。ですが、それもここで終わりです」
同時、タロースの両腕が狂戦士たちの頭蓋を鷲掴んだ。
パラドクスで生成された怪物の両腕は植物に非ざる高熱を生み、狂戦士たちの頭をぶすぶすと焼き焦がす。断末魔の絶叫をあげて絶命していく狂戦士たち。阿吽の呼吸による連携で二体の敵を葬り去ったクロエは、鮮血色の風に全身を切り刻まれるのも構わず、親友の少女と共に更なる攻撃を続行していった。
それからも熾烈な戦いが続く中、エイレーネとクロエは一歩も退くことなく戦い続けた。
威力を上げた攻撃で共通の敵を集中攻撃、加えて攻撃時に有利となる残留効果を発動したことで、二人の息の合った猛攻によって狂戦士の集団はじわじわと頭数を減らしていく。
無論、降り注ぐ攻撃の嵐は、二人の復讐者をも無傷では居させてくれない。
全身が傷だらけになろうと構わない。彼女たちは互いの背中を守り合うようにして負傷を防ぎながら、着実に狂戦士たちを討ち取っていった。
「後に続く仲間たちの為、少しでも我らが――!」
「お前たち亜人を、残さず地獄に送る為に――!」
盾を振るい、槍を突き、怪物を駆り、二人は戦い続ける。
人々を蹂躙する亜人への怒りは尽きることがない。この戦いを勝利に導く為にも、敗北は許されない。
通路の先を睨み据えれば、セレウコスの背中は遠くへ去りつつあった。戦場を振り返ること無く脱出の道を急ぐ勝利王。その姿を見遣り、クロエは呟く。
「精鋭、影武者、宿将。どれだけの犠牲を払おうと逃げるつもりなのでしょう。ですが、其れはこちらも同じことです」
狂戦士たちを始末した後は、すぐに後を追いかける。
そうして、アンティオキアを支配した亜人を残らず地獄に送ってやろう。
揺るがぬ決意を胸に秘め、クロエは遠ざかりゆく勝利王の背中に告げた。激戦によって全身を血に染めて尚、些かも衰えることのない憎悪と共に。
「……お前がどれだけの犠牲を払おうと、逃すつもりはありません」
「ええ、目の前に幾重の壁があろうと、我らは乗り越えます。苦境に立つ人々の希望となるために!」
クロエの言葉に頷いて、エイレーネが盾を構えた。
だが、敵の数はいまだ多い。全てを葬るには二人は負傷を重ね過ぎている。
最早、風前の灯火に思われた二人の運命。応援の仲間が救援機動力で駆けつけたのは、正にその時であった――。
善戦🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【泥濘の地】LV1が発生!
【悲劇感知】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
レイ・シャルダン
連携・アドリブ歓迎です。
すごい存在感、近づく度にプレッシャーが増している感覚。
肌にビリビリ来ますね。
ですが、強者とは何度も渡りあってきた、今更それに怖気づく事はありません。
≪ - 人機接続:Lynx of Boeotia - ≫
人機一体の状態を継続して戦闘を開始
その超視覚による知覚で敵の動きを常に【観察】して戦い
敵の動き、敵の行動パターン、そして敵の弱点の【看破】を狙います。
パラドクス人機一体:電撃戦の一矢を発動
『ナノマギア』の配列を組み替えて『シュトライフリヒト』を機械魔導弓『ACRO』に形状変化
右手には蒼き魔力の灯火、必中の願を込めて術式を練り上げACROに番え引き絞り必殺の矢へと昇華して放ちます。
敵の動きは分かりやすい、しかし圧倒的に早い。
反撃は敵の攻撃態勢を看破して跳躍し、
『アルヴァーレ』から発生する【結界術】を発動
結界術と敵の攻撃のインパクトの瞬間に、姿勢制御用噴射装置【Leprechaun】を噴射
強烈なフラットスピンを慣行し、敵の攻撃をいなして受け流し斧による直撃を防ぎます。
凍雲・雪那
連携・アドリブ歓迎
あれが、勝利王!セレ――殺――抑えろッ!
今見るべきは、奴の護衛共。
無視して大将首、狙ったところで、手痛い反撃、喰らうのがオチ。
怒れ、憤れ。されどその瞳、曇らせるべからず。
冷徹に戦闘を進めろ……!
見れば解る。あれは、狂戦士。
苦痛や恐怖で、縛れる相手じゃない。
意志ではなく、肉体を砕け!
【万雪崩葬】、目晦ましの『CrystalEdge』を投擲しつつ詠唱し発動。
【先行率アップ】を活用して、先手を取って膨大な白雪を頭上から叩き込む。如何に屈強な肉体といえど、その衝撃と重量は脅威となり得る筈。
敵の反撃、鮮血色の斬風も雪崩れ落ちる大雪を完全に吹き飛ばす事は、大変だろうし。
此方に来る反撃は、まず【ドレイン】と【グロリアス】で前に受けた傷を癒し、『Snowflake』を大量に生成して斬撃を防ぐ壁とするよ。
勿論防ぎきれる訳が無いから、斬撃に対して角度をつけて配置し、壊れても良いから射線をズラす、いなす事を重点に。
お前達も、確かに強い。
だが、それでもボク達は、負けない。
邪魔を、するなッ!!!
白水・蛍
アドリブ歓迎
連携は密に
味方をWIZでディフェンス
敵には敬意を
さて、セレウコスを倒す前にその護衛を剝ぎましょう。
戦闘中に割り込まれたら厄介ですものね。
兵士も精鋭でしょうから一戦一戦集中して対応しましょう。
敵の動きを観察し、隙を看破し、その隙にパラドクスを発動させます。
――この一撃は全てを貫く一撃。その一撃を音を以て招く!!
敵の反撃はまともに受けるのは厳しいですわね。
出来れば致命傷を避けたいですわね。魔力付与で魔力障壁を装備の上にはって、ダメージを軽減するように立ち回ります。
他、相手の風を武器を以て薙ぎ払い、両断し、風に風使いで風をぶつけてみて相殺させてみたりと臨機応変に色々試してみて少しでもダメージを軽減させる試みを。
何せ体格差もありますからね。まともに喰らうと大変ですものね。
敵は追い払いました。後はあなただけですわ、セレウコス王。
お覚悟を。
「あれが、勝利王! セレ――殺――抑えろッ!」
戦場に駆けつけた凍雲・雪那(報仇雪恨の皓巫姫・g07783)の眼に映ったのは、遠ざかるセレウコスの背中であった。
こみ上げる殺意を懸命に抑え込み、その視線を半ば強引に眼前へと戻す。
復讐者を足止めすべく死兵となって戦い続ける、『ミノタウロスの狂戦士』の一団へと。
「今見るべきは、護衛共。無視して大将首、狙ったところで、手痛い反撃、喰らうのがオチ……!」
「ええ、戦闘中に割り込まれたら厄介ですものね」
真剣な面持ちで頷きを返し、白水・蛍(鼓舞する詩歌・g01398)は戦場を見渡した。
先行した仲間たちの奮闘によって頭数を減らしつつある狂戦士の群れ。二度に渡る戦闘で生き残っているのは、六割程度といったところか。
一方の復讐者は三人。並のトループスであれば圧勝は容易だが、そんな楽観的な見込みで臨んでいる者は一人もいない。
蛍は精神を研ぎ澄ましながら、共に戦う二人の仲間へ呼びかけた。
「相手は強敵です。集中して対応しましょう」
「そうしましょう。このプレッシャー……肌にビリビリ来ますね」
戦場を満たす闘気を直に感じて、レイ・シャルダン(SKYRAIDER・g00999)が眉を顰める。
死兵となった狂戦士たちは、最後の一兵まで復讐者を皆殺しにすべく戦い続ける――そのことが嫌でも判るからだ。
だが、レイとて強敵と渡り合ってきた経験は積んでいる。今更ここで怖気づくことはない。人機一体の状態を継続し、戦闘態勢。先陣を切って突撃を開始した。
「≪ - 人機接続:Lynx of Boeotia - ≫ ――行きましょう、皆さん」
レイの言葉を合図に、蛍が、雪那が、狂戦士の群れへと殺到していく。
これより始まるのは、華々しい戦いではない。
復讐者と亜人、両者の生き残りをかけた、慈悲なき死闘である――。
『ガアアアアァァァッ!!』
「先行します。弱った敵を着実に撃破しましょう!」
双斧を振りかざし、迫り来る狂戦士の群れ。そこへレイは一本の矢のごとく真っ直ぐに突撃を敢行する。
その右手に灯るは蒼き魔力の火。術式を練り上げ必殺の矢へと昇華させた灯火、それを番えるは機械魔導弓『ACRO』だ。
ナノマギアの配列変換によって変形した弓を引き絞り、パラドクスを発動。『人機一体:電撃戦の一矢』の一撃で、レイが今、必殺の矢を放つ。
「君は逃げられない。ボクが狙ったんだ、必ず貫くよ」
発射と同時に放つ眩い灯火が、迷宮を塗り潰した。
命中アップに導かれた一撃はパラドクスの力を帯びて、生物さながら縦横無尽に戦場を駆ける。
レイの手から放たれたが最後、矢は狙いを外さない。分厚い胸板に矢を浴びて、狂戦士が苦悶に呻く。
『グ――オオアアアッ!!』
負傷も構わず、突進する狂戦士。
叩きつけられるタウロスランブルの反撃に、身体が軋みを上げる。
激痛を訴える肉体の悲鳴を抑えながら、レイは狂戦士の負傷を冷静に観察した。傷口から流れ出る血は夥しく、床を赤く染めている。もう一撃を浴びせれば恐らく討ち取れることだろう。行動パターンや弱点についても看破を試みるも、此方は生憎と分からない。
「猛り狂えど、分かり易い情報を与える程、容易い敵ではない……ということですか」
「ん。問題ない、叩き潰せば万事解決。snow,fall,burial,――Avalanche!」
次の瞬間、狂戦士の頭上より大量の白雪が降り注ぐ。
雪那の駆使するパラドクス、『万雪崩葬』だ。生じた大雪が瞬く間に雪崩を引き起こし、敵群を呑み込む。
元より敵は命を捨てた死兵、苦痛や恐怖で縛れる相手ではない。ならば、砕くべきは意思ではなく肉体だ――そう判断した雪那の一撃はレイの矢を浴びた狂戦士を絶命せしめ、更なる一体に雪崩の衝撃を叩きつけていく。
『ォォォォォアアアアアアッ!!』
「……っ!」
即座に浴びせられる鮮血色の斬風が、雪那の身体を捉えた。
パラドクスを介した風は大雪の物量もまるで意に介さず、雪那を切り刻む。
その威力に全身を血に染める雪那の周囲が、ふいにパラドクスの輝きを放ち始めた。戦う復讐者を祝福し、治癒をもたらすグロリアスの残留効果。発動した雪那はレイと蛍に、親指を立てて呼びかける。
「これで少しは楽になる筈。……使って」
「助かります。――さあ、勝負は此処からですよ」
今こそ、一気呵成に攻める時。
蛍は戦場を舞いながら、己の妖力を高めていった。
三度目となる復讐者たちの攻撃は、クロエとエイレーネが取った戦法を踏襲したものとなった。
一撃の威力を高め、狙いを絞ったうえで、一体一体を葬り去る。
事前の戦いでクロエらが奮闘して敵群を削り取ったことに加えて、攻撃に用いる残留効果を二つ積み増したことも手伝い、戦闘はゆっくりと、そして少しずつ復讐者側の優勢に傾いていく。
「ここで止まる訳には行きません。邪魔をするなら退いて貰いましょう」
無尽蔵の体力で暴れ続ける狂戦士たちを前に、蛍の妖気は今や頂まで高まっていた。
敵の動きを観察し、隙の生じた一瞬を狙って放つ――そう目論んで臨んだ戦いであったが、狂戦士の怒涛のごとき猛攻は、悠長な観察など一切許さない。
『ルウウゥゥゥオオオオオオッ!!』
「流石に、そう都合よくは行きませんか。ならば……」
蛍は直ちに方針を切り替え、仲間が作った隙へと乗じた。
この戦いは守った方が負ける。であれば、此処は流れに任せて攻めるべきだ。
最高潮に妖力を高め『奪魂尾獣穿』を発動。狐の尾を槍と為して、伸縮自在の刺突を放つ。狙うは、雪那の雪崩で負傷した個体である。
「――この一撃は全てを貫く一撃。その一撃を音を以て招く!!」
鞭のようにしなる狐尾が、狂戦士の胸を穿つ。
ダメージアップを帯びた刺突は、しぶとく鼓動を続ける心臓を捉え、その動きを永久に止めた。
荒れ狂うタウロスサイクロンに晒されながら、再び舞いを踊り妖力を高めていく蛍。パラドクスを帯びた風に、魔力障壁が軋みを上げる中、切り刻まれた蛍の鮮血が風に舞い上げられて戦場を染める。受けた負傷は決して浅くないが、立ち止まる訳にはいかなかった。
「もう一息です。頑張りましょう、皆さん」
蛍が見澄ました先、三人の連携攻撃に晒された狂戦士の群れは、着実に数を減らしていた。
撃破まであと一歩。次なる狂戦士を貫く狐の尾を嚆矢に、雪那が、レイが、我先にと敵群へ猛攻を浴びせていく。
パラドクスが飛び交う戦場に、無傷の者は一人もいない。亜人も復讐者も、全員が傷だらけだ。レイの機械魔導弓が放った矢に頭蓋を射抜かれ、絶命した狂戦士が前のめりに斃れる。その屍を踏み越えて新手が叩きつけてくる双斧に、レイの身体が宙を踊り――。
「そう何度も、食らいはしません!」
姿勢制御用噴射装置『Leprechaun』の噴射で全身をスピンさせ、即座に着地する。
直撃すれば大怪我を免れぬ一撃は、グロリアスを発動して戦い続けていたこともあり、戦闘に支障が出る程ではない。
積み上げた残留効果が力を発揮し始めた実感を得ながら、レイは敵群を見遣る。復讐者たちの猛攻を前に、残る狂戦士は僅かに二体。いずれも蛍とレイの攻撃で深手を負った個体だった。
そこへ最後の一撃を浴びせんと、雪那は三節詠唱と共に己がパラドクスを高めていく。
『グ……ウウ……』
「認めよう。お前たちも、確かに強い。だが……」
長き激闘に幕を下ろすように、雪那が狂戦士たちへ告げる。
亜人への尽きぬ怒りを抱きながらも、その心は決して曇ってはいない。
氷のような瞳に憤怒と冷徹さを同居させ、必ずセレウコスを討つと近い、彼女は今、パラドクスを解き放つ。
「だが、それでもボクたちは、負けない。邪魔を、するなッ!!!」
轟音と共に叩きつける雪崩は狂戦士たちを圧し潰し、その生命を残らず奪い去る。そうして絶命する間際、狂戦士たちは微かに笑みを浮かべたように見えた。
護衛との死闘を制し、秘密通路に静寂の帳が降ろされる。
戦いの終結は、通路の先を行くセレウコスも聞き届けたことだろう。
かくして最後の戦いに向けて、復讐者たちは駆けて行く。最後の敵を、ここで討ち取るために。
「いよいよですね。……セレウコス王、お覚悟を」
先頭を駆ける蛍の前方から、一度は遠ざかった王の足音が響いて来る。
待ち受ける最後の戦いに臨むべく、蛍は仲間とともに疾駆の速度を上げた。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
効果1【防空体制】LV1が発生!
【飛翔】がLV2になった!
【狐変身】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV2になった!
【グロリアス】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV2になった!
ディアナ・レーヴェ
秘密通路の出口側から侵入
セレウコスの到着前、迎え撃つように道を真っ直ぐ駆けるわ!
進みながら、通路に罠や脱出支援の装置がないか等は【完全視界】も駆使して観察・看破。
怪しい所には【その辺の石】でも投げて確かめ、何かあれば密かに破壊しておくわ。
状況や互いの位置は【パラドクス通信】で共有。
セレウコスとの戦闘場所は極力隘路ね!
皆と並んで通路を塞ぎ、不都合な分岐路でも無い限りは戦線を押し上げるように戦いたいわ。
もし通路の背が想定より高く、かつ、地上の仲間が十分なら、回避性能落ちるの覚悟で私は【飛翔】して上部を塞いでもいい。
防衛ラインの張り方は皆に従う。これはきっと有効手――
…ただ後が無いセレウコスは、Lv分かけて強引に突破を試みる可能性も高いわね?
その場合、私は追いかけて組み付いてラインと敵の間に身体ねじ込んでPDも砲撃も【怪力無双、泥濘の地】も何でも使い、斬られようが感電しようが強引に引っ剥がして突破を中断させる!
みっともなくていい。最後は執念よ?
爪剥がれるまで縋り付いて――行かせない!!
老将ポリュペルコンが討死した場所より発見された、秘密通路の出口。
その奥に繋がる道を目指し、先陣を務める復讐者たちが次々と乗り込んでいく。
一番乗りで先頭を行くのはディアナ・レーヴェ(銀弾全弾雨霰・g05579)だ。彼女の役割は勝利王セレウコスの進路に先回りし、撤退を阻止すること――すなわち退路の遮断である。
「皆、ここまで頑張ったんだもの。必ず迎え撃ってみせましょう!」
前だけを真っすぐに見据え、凛とした声で告げるディアナ。
それは、彼女のみならず、この戦いに臨む全員の意思であったろう。
アンティオキアを巡る戦いに今こそ終止符を打たんと、通路の奥へ続く階段をディアナは駆け下りて行った。
階段を下りた先に広がっていたのは、大きな石造りの通路であった。
どこまでも続く殺風景な一本道。その道中を、ディアナは罠などが無いか確認しながら進んでいく。
「……大丈夫、怪しい仕掛けは無いわ。このまま進みましょう」
言いながら、ディアナの視線は周辺の構造を更に見遣った。
通路の幅は相応に広い。飛翔には少々難儀しそうな高さの天井には照明が灯されて、視界は十分に確保されている。試しに照明に小石を投げても、傷が付いた様子はない。いきなり現れた出口といい、恐らくはこの通路全体がクロノ・オブジェクトであるのだろう。
「普通の砦なら迷宮化とかでセレウコスを妨害することも出来たでしょうけど。……なかなか厄介だわね」
そう呟いてディアナは唇を噛んだ。
自分を含め最低2人、出来るなら3人。退路遮断の完了に必要な人数をそう見積もると、ディアナは背後を振り返る。
後続の仲間が到着するまでには、もう少し時間が要る。それまでの間、先発隊の一人として絶対に退路を死守せねば。
――たとえ、どんなにみっともなくても……いざと言う時は、セレウコスに縋り付いてでも止めるから!
今回の地形なら、戦闘に専念する仲間とは別に道を塞ぐ者がいるだけでも、ある程度は退路を断てるだろう。出来る限り、本格的な戦闘を始める前に遮断は完了させておきたいところだ。
決意を胸に重キャノンの『火砲』を手に取り、ディアナは先発隊の仲間たちと共に迎撃準備を開始した。
セレウコスは後が無い状況であり、強引に突破を試みる可能性は高い。出来る限り、戦線を押し上げるように戦えれば良いのだが……そう思った次の瞬間、
「――!」
彼方から、雷の弾ける音が轟いた。
何かが向かって来る――そう理解した彼女の前方、遅れて響いて来るのはズン、ズンという足音だ。
重々しく獰猛な響きを帯びた其れは、人間の足音ではあり得ない。追い求めた敵が目の前に迫っていることを、ディアナは本能で理解する。
「気をつけて……来るわ!!」
そう告げた、次の瞬間――突き進むような勢いで通路の奥から姿を現したのは、巨大な牛型の亜人であった。
距離を隔ててなお圧倒的な威圧感。ポリュペルコンを遥かに凌ぐ、紛れも無き強者のオーラ。
ジェネラル級亜人『勝利王セレウコス』――復讐者たちが追い求めるアンティオキアの王である。
足止めを担うため、武器を手にセレウコスへ向かう仲間たち。
彼らの後方、ディアナは眼前の敵へ宣戦布告の言葉を叩きつける。
「セレウコス! 此処から先は、行かせないわ!」
そう告げて発動した泥濘の地は、セレウコスの速度を僅かに落とすも止めるには到底至らない。
重キャノンの『火砲』を構え臨戦態勢に入るディアナ。退路の遮断が完了するまで一歩も下がらぬと誓う決意を胸に、彼女は自分の体を壁にして退路に立ち塞がる。
――どうか、みんな無事で。
セレウコスに向かう仲間たちの背中を見送って。
ディアナもまた、着々と戦いの準備を整え始めるのであった。
善戦🔵🔵🔴🔴
効果1【怪力無双】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
ジズ・ユルドゥルム
兵を死なせ、将を死なせ…勝利王は撤退に必死のようだ
「こんなところで死にたくない」というわけか
奴らが踏み躙った幾千の人々も、同じことを考えていただろう
ポリュペルコンの秘密の通路側から突入
退路遮断までの時間稼ぎと、撤退阻止の為に勝利王の足止めを試みる
可能ならば、玉座側通路から攻撃する仲間と挟撃を狙う
本来なら遅滞戦術を取りたいが…
戦術家でもない私の小細工が通用する相手とは思えない
全力で打ち込み、治癒効果(グロリアス)も合わせ
結果として時を稼げれば上々か
「泥濘の地」で敵の前進速度を落としながら
ジンの力で膂力を高め、槍を構え、疾走と追い風の勢いを乗せた刺突攻撃を見舞う
常に味方と挟撃する形になるよう位置を取り、
味方が近接攻撃を行うならば連携し波状攻撃を
遠距離攻撃ならば私が攻勢に出て隙を作り出したい
敵の雷撃に対しては、風を操り真空の壁を作り出し、真空遮断の要領で雷撃の威力軽減を試みる。
…肌が痺れる。これは…雷だけじゃない。奴の気迫か。
それでも、不思議と心は凪いでいる。
私も少しは、軟弱者から脱せたかな。
伏見・逸
(連携アドリブ歓迎)
必要に応じ、味方をディフェンス
退路塞ぎで通路に水が入っていれば、水中適応を使わせて貰い水中戦
(ポリュペルコンと戦ってきたところ。通路側から戦闘へ)
相手の行く手を塞ぐように、翼を広げて立ち、挑発する
てめえにとっての、禍が来たぞ
てめえはもう逃げられねえよ。あの爺(ポリュペルコン)みてえに、覚悟決めやがれ
…ああ。奴には、いい覚悟って奴を見せて貰った
てめえは奴のボスなんだろう、見苦しい真似はしねえよなあ?
周囲のディアボロスと声を掛け合い連携、敵の動きの特徴や消耗度合い等の情報を共有する
「敵を包囲し、進路を塞ぐ」「味方同士で隙や死角を塞ぐ」「消耗した味方を守る」ように、立ち位置を意識
敵に張り付き、攻撃優先で動く
長ドスを抜き、【禍竜の鋭刃】使用
腕でも脚でも、相手の攻撃や動きを阻害できそうな部位を斬り落としにかかる
敵の攻撃は長ドスや尻尾で受け流し、可能な限り直撃を避けるが、基本的には動ける限りは自分の負傷は気にしない
味方の攻撃時は、自分の攻撃と自分自身を囮に使い、敵の足止めにかかる
戦場の空気が怯えるように震える。
その彼方から地響きを立てて突き進んで来るのは、アンティオキアの支配者たる勝利王セレウコスの姿。
追い求めた首魁を前に、ジズ・ユルドゥルム(砂上の轍・g02140)は思わず息を呑んだ。
「……肌が痺れる。これは……雷だけじゃない。奴の気迫か」
彼女が対峙する先から、セレウコスが堂々とした足取りで迫る。
雄々しい角から雷を放ち、前だけを見据えて進む彼が放つ威厳は、敗軍の将となってなお失われていない。力持たぬ者ならば瞬時に立ち竦むような威圧感を前に、しかしジズの心は不思議と凪いでいた。
(「……ふむ。私も少しは、軟弱者から脱せたかな」)
戦う前から呑まれるようでは、これからの死闘を制することなど覚束ない。
退路の遮断が完了するまでの時間を稼ぐため、ジズは闘志を奮い立たせていく。
「他の仲間の到着には、もう少し時間が必要そうだな。玉座通路側の仲間と挟撃できれば最上だったが……」
「なに、戦いに不測の事態は付きもんだ。俺たちは俺たちで、仕事を果たすとしようや」
そう言ってジズの横で不敵に笑うのは、同じ先発隊の伏見・逸(死にぞこないの禍竜・g00248)だ。
当初、仲間の発動した水源で戦場を水没させる作戦を選択肢に入れていた彼であるが、此方は早々に不可能と判明したことですぐに方針を切り替えたのである。
「よお。てめえにとっての、禍が来たぞ」
逸は白鞘の『長ドス』を抜き放って告げると、セレウコスの行く手に堂々と立ち塞がる。
ドラゴニアンの翼を背中に広げ、投げるのは挑発の言葉だ。
敵の狙いを引き付けて戦闘に持ち込む――そうした意図の元に放たれたであろう言葉は、しかし全くの不発に終わった。
逸の言葉に、セレウコスは何も応えない。
怒りも焦りも無く、平然と距離を詰めて来るその姿に異様な気配を感じ取り、逸は即座に挑発の言葉を引き込めた。
『セレウコスは脱出に全力を尽くしており、挑発に応じることは一切無い』。出発の際に全ての復讐者へ伝えられていた情報を噛み締め、得物の長ドスを構えた次の刹那、
「ちっ――」
『退け』
簡潔な命令と共に、大上段からの一閃が無造作に振り下ろされる。
全身を熱い衝撃が走ったと逸が感じた次の瞬間――吹き出る鮮血が、逸の身体を真っ赤に染めた。
崩れ落ちそうになる体を叱咤して、即座に長ドスを振るう逸。セレウコスの脚へ反撃が命中した瞬間、刃先を介して逸の手に伝わってきたのは、巨大な岩を切ったような不穏な手応えだった。
「流石は、ポリュペルコンとオリジンを従えるジェネラル級ってか……!」
そう言ってセレウコスの脚部を見ても、さしたるダメージが入っていないのは明白だ。
逸は動く度に血液が失われていく体に活を入れながら、セレウコスと距離を詰めていく。元より負傷など気にしてはいない。指が一本でも動く限り、時間稼ぎと足止めに全精力を注ぐと決めている。
そんな彼の決意を意にも介さず、セレウコスの歩みは未だ止まらない。
敵に張り付く逸の反対側で、ジズは左右両脇から敵を挟むように位置を取ると、即座にパラドクスを展開していった。
「逸、動けるか?」
「なに、かすり傷だ。……挑発のタイミング、ちょいと早かったかもな」
「それだけ話せれば大丈夫だ。何としてでも、セレウコスの足を止めるぞ」
言い終えると同時、戦場を一陣の風が吹き抜ける。
それは、ジンの力で高めた膂力をもって刺突を見舞うジズの一撃だ。逸が攻撃を浴びせた反対側の脚を狙い定めて、得物の槍が真っすぐに突き出される。
「戦術家でもない私の小細工が通用する相手とは思えないが……!」
浅い手応えと同時、ジロリと一瞥を投げるセレウコスと、ジズの目が一瞬重なった。
次の瞬間、羽虫でも払うように放たれる雷はジズの操る風を易々と吹き飛ばし、その身を焦がす。飛びそうになる意識を必死に繋ぎ止めながら、ジズは敵の力を噛み締めた。
「これが、勝利王セレウコス……!」
攻めも守りもタフネスも、ポリュペルコンとはおよそ次元が違う相手だった。
更に恐るべきは、今の彼が脱出に力を注いでいるという事実。即ち『戦闘に全力を出していない』ということ。
ならば退路が塞がれれば、余った力はどこへ向かうのか――それを思えば、ここで苦戦に陥る訳にはいかなかった。
「……もう一度だ。やろう」
「おう、元よりそのつもりよ!」
逸と言葉を交わしあい、再攻撃の準備を整えながらジズは思う。
戦いに臨んだ当初、彼女は考えていた。兵を死なせ、将を死なせ、そうまでして必死に撤退するセレウコスは、余程こんなところで死にたくないらしい――と。
だが、一度刃を交えた今であれば、それが誤りだったと認めざるを得ない。
雷を放つ時、ジズを睨んだセレウコスの眼に宿る光。そこに在ったのは、死を恐れる者の怯えた輝きではなかった。
代わりに在ったのは強烈な渇望。全力で戦うことへの欲求と、それが叶わないことへの強烈な憤り、そして命よりも闘争を求める想いこそが、この亜人の心底にある芯であった。
「だが……私たちも、下がる訳にはいかない」
グロリアスの効果を重ね、ジズが槍を構える。
対するセレウコスは復讐者を一瞥もせず、なお突き進む。敵がいる筈のない場所で待ち伏せを受けた事実は、彼の足を今や一層早い者へと変えている。
脱出を急ぐ勝利王。退路を塞ぐディアナまでの距離は、すでに目前まで迫りつつあった。
「時間がねえ。行くぞ」
「ああ。どうやら、時間に余裕はなさそうだ」
同時、逸とジズの二人が死力を尽くして攻めかかる。
セレウコスの歩みは止めらない。双角の雷を光らせ、邪魔するものは残らず排除する構えである。
ディアナを睨みつけ、攻撃態勢を取ろうとするセレウコス。逸の長ドスが一閃したのは、まさにその瞬間だった。
「――真っ二つにしてやらあ」
邪念を排し、己の意思を「断ち切る」という一点に集約して斬りつける『禍竜の鋭刃』のパラドクスだ。
研ぎ澄まされた刃の一閃が、どこまでも鋭く、速く、セレウコスの脚を捉える。
『……む』
刃を介して伝わるのは、圧倒的な硬さ。
未だ目立つ傷を与えるには叶わない一撃。しかし――確かなダメージを物語るように、セレウコスの足が一瞬、止まる。
仕掛ける機は今。大上段からの刃で負った傷が開くのも構わず、逸は渾身の力を込めて叫んだ。
「ジズ!」
「心得た。……行こう、我らの願いのために」
同時、鷹のジン『ケレイ』がジズの体に宿る。
生命エネルギーの輝きを全身に漲らせて、槍を構えるジズ。そうして放つ『人鷹一体』の一撃は、捕捉も防御も叶わぬ奔放な風のように、増幅された膂力を込めた刺突となって敵の頑丈な脚に突き刺さった。
果たして――歩みを止めた脚の傷口から、赤い血が滲み出る。
それはまさに復讐者の刃が勝利王セレウコスに届いた瞬間であり、
「来たわ! 後続の仲間たちよ!」
逸とジズの時間稼ぎが、紙一重で奏功した瞬間でもあった。
通路に響くディアナの声。それと同時、駆け付けた応援の復讐者たちが、塞がれつつある退路を遮断にかかる。
「へっ……やったな」
「そうだな。だが、本番はここからだ……!」
仲間たちの足音が折り重なって響く中、傷だらけの逸とジズが微笑を浮かべる。
アンティオキアを収める勝利王の退路は間もなく塞がれ、最後の決戦が始まるだろう。
それが復讐者の勝利で終わる確信を抱きながら、手にした成功を二人は静かに嚙み締めるのだった。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【士気高揚】LV1が発生!
【一刀両断】LV1が発生!
効果2【グロリアス】がLV2になった!
【反撃アップ】LV1が発生!
一里塚・燐寧
アンティオキアの決戦……大好きな古代の歴史を取り戻すため、絶対外せない大勝負ってワケ
あの牛頭を八方塞がりにしてやって、ヘレニズム世界の華を奪い返そうじゃん!
≪テンペスト・レイザー≫を構え、敵の動きや周囲の様子を観察
万が一の話だけど、この秘密通路には隠された分岐路とか、天井から抜けられる場所があるかもしれない
そーゆーところから抜けだそうとする素振りがセレウコスにないか注視
それから【防衛ライン】を引くよぉ
基本は通路を横切って塞ぐ線
もし退路に分岐があるならその入り口に敵が到達できないよう引こう
敵が動くならパラドクスで足止めを
線を引きたい仲間とは、事前に方針をすり合わせておこっか
自分の策に拘りはないんで、よりよい方に乗るねぇ
どーもー、エジプトから来た燐寧ちゃんでーす
地元で暴れてたプトレマイオスって奴に友達がいるって聞いてさぁ
もう一度会わせてあげるために来たの
……勿論、あの世でねぇ
さ、マラソンの時間はもうおしまい
逃げるのはやめて覚悟を決めなよぉ
盗んできた歴史で勝利が手に入るか、試してみるんだねぇ!
クィト・メリトモナカアイス
んむ、皆が強敵相手に頑張ってくれたおかげ。
我もここからはもっと役に立つ。
ポリュペルコンと戦った仲間が傷を癒している間に、ポリュペルコンを撃破して出現した隠し通路の先、セレウコスの退路の出口を進む。
進んでたら真正面からたぶんセレウコスも来ると思う。
そこでばったり出くわしたら【防衛ライン】を我らの後ろに引こう。
こっちから来るのは我らだけではない。
我らがこっちから来たという事。
その意味を汝が分からぬことはないはず。
将として。汝の策は全て潰えた。
それでもなお生きるとするならば。
武人としてここを抜けるべし。
我は民の守護者。
かつて獣神王朝エジプトへと攻め入った亜人がそうだったように。
民を害し蹂躙する者は赦さぬ。
汝の名は語られず、刻まれず。
この町に民が生きる、その礎となって滅ぶべし。
勝利王セレウコスとの戦端が開かれた秘密通路へ、次々に向かっていく復讐者たち。
その中にあって疾駆の速度を一層早める二人の復讐者がいた。
退路の遮断に向かう、一里塚・燐寧(粉骨砕身リビングデッド・g04979)とクィト・メリトモナカアイス(モナカアイスに愛されし守護者・g00885)である。
「アンティオキアの決戦……大好きな古代の歴史を取り戻すため、絶対外せない大勝負ってワケ!」
鎖鋸剣『テンペスト・レイザー』を唸らせながら、燐寧が通路を駆ける。
表情こそ笑顔を浮かべているが、眼は全く笑っていない。そこに宿るのは剣呑な怒りの光だった。セレウコスの名を奪った亜人への憤りを胸に、この戦いを絶対に勝利で飾ると彼女は決めているのだ。
「あの牛頭を八方塞がりにしてやって、ヘレニズム世界の華を奪い返そうじゃん!」
「んむ、皆が強敵相手に頑張ってくれたおかげ。我もここからはもっと役に立つ」
愛用の『黄金猫拳打棒(ゴールデンねこぱんちぼう)』を手に、クィトもまた戦意旺盛の様子である。
獣神王朝エジプト出身の彼女にとって、かの地を荒らす亜人という存在は排除すべき敵に他ならない。
まして勝利王セレウコスは、エジプトの奪還戦で狼藉を働いたプトレマイオスの朋友だ。生かして返す理由はなかった。
「という訳で、ここを奴の墓場にするべし。ゆくぞー」
先行した仲間たちは、すでにセレウコスとの死闘を演じ始めている。
彼らが稼いだ時間を一分一秒も無駄にせず、速やかに退路を封じるため、二人は戦場へと駆けていく。
断片の王たるイスカンダルに命じられ、自らの生存を最優先に行動している勝利王セレウコス。
いまだ持てる力の多くを戦闘に注いでいない状況にあって、その勢いは正に圧倒的の一言に尽きた。
大剣を振り下ろすたび、双角から雷を放つたび、セレウコスの猛攻が戦場を蹂躙する。しかし、対峙する復讐者たちの奮闘による足止めは、退路の遮断に十分な時間をもたらしていた。
「二人とも! 間に合って良かった……!」
「お待たせぇ。さぁ、始めようかぁ!」
「んむ、この分ならラインも十分届きそう」
ディアナの元へ駆けつけた燐寧は、退路遮断の最後の一手を打つ準備を始めた。
道の両幅を目視し、発動が可能であることを確認するクィト。同時、二人の手によって引かれた防衛ラインが、退路の遮断完了を復讐者たちへ知らせる。
一見してただの一本の線にしか見えない其れは、クロノヴェーダの突破を防ぐ強力な残留効果だ。空を飛べないセレウコスにとって、突破には並ならぬ時間と労力を要する力が、通路を断ち切るように描かれる。それは同時に、今この瞬間、勝利王の命運が尽きたことを示すものでもあった。
『……あれは』
違和感を察したセレウコスが、脚を止めて防衛ラインを凝視する。
燐寧はそんな彼に飄々と手を振りながら、不敵極まりない笑顔を浮かべて言った。
「どーもー、エジプトから来た燐寧ちゃんでーす。地元で暴れてたプトレマイオスって奴に友達がいるって聞いてさぁ。
もう一度会わせてあげるために来たの……勿論、あの世でねぇ」
燐寧の口から出た朋友の名に、セレウコスの重厚な体が戦意で膨れ上がる。
いまだ無言を保ったままのセレウコスへ、燐寧の言葉を継いで語り掛けるのはクィトだ。
「こっちから来るのは我らだけではない。我らがこっちから来たということ。その意味を汝が分からぬことはないはず」
クィトは告げる。ディアナら先発隊が現れたのは決して偶然ではないと。
既にお前は袋の鼠であり、守る配下はもういない。
お前は既に、一人の民も持たない王に過ぎないのだと。
「将として。汝の策は全て潰えた。それでもなお生きるとするならば。武人としてここを抜けるべし」
そう、クィトが言い終えた次の瞬間。
セレウコスの口から洩れたのは、重々しい響きを帯びた唸り声であった。
『そうか。ポリュペルコンは敗れたのだな』
同時、双角に帯びた雷が、俄かに不吉な輝きを増した。
復讐者の目に映るセレウコスの巨躯――ただでさえ大きかった其れが、むくむくと膨らんでいく。
彼が懸命に抑え、今まさに解き放たれた戦意と闘気が、そう見せているのだ。
『もはや我に退路は無いという訳だ。ならばイスカンダル王より賜りし統治者の役目もこれまで!』
統治者ではない猛将としてのセレウコスの姿が、今初めて復讐者の目に刻まれる。
この亜人の眼に宿るのは、怒りでも憎しみでも、ましてや生への執着でもない。
オリジンを屠り、ポリュペルコンを討ち、同胞を殺した強者たちと戦うことへの純粋な歓喜。ただ其れだけがあった。
『ここからは一介の武人として貴様らを討つ。――来い、ディアボロス!』
「我は民の守護者。かつて獣神王朝エジプトへと攻め入った亜人がそうだったように。民を害し蹂躙する者は赦さぬ」
それを前に、クィトもまた口を開いた。
激戦の予感を誰もが確信する中、その声は、心は、凪いだ湖面のようにどこまでも静かだ。
「汝の名は語られず、刻まれず。この町に民が生きる、その礎となって滅ぶべし」
お前の存在は今日ここで終わらせると、クィトが告げる。
これまで復讐者たちが滅ぼしてきた数多くのクロノヴェーダと同じように。
同時に燐寧もまた、回転するテンペスト・レイザーの刃を突き付けながら、ニヤリと口の端を歪めて言う。
「ここからは、あたしたちも本気で相手したげるよぉ。盗んできた歴史で勝利が手に入るか、試してみるんだねぇ!」
『復讐者よ! このセレウコスの命、簡単に取れると思うな!』
武人たる亜人の雄たけびが戦場に木霊する。
其れは、最後に純粋な戦士として死ぬまで戦い続けると決意した、勝利王セレウコスの咆哮だ。
かくしてアンティオキア奪還を目指す復讐者たちの最後の決戦が、今ここに幕を開けるのであった。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【防衛ライン】LV2が発生!
効果2【反撃アップ】がLV2になった!
【ダブル】LV1が発生!
神山・刹那
ネメシスモード・いしはま絵師のDC参照
あれが勝利王か
なるほど。歴戦の強者のオーラを感じる
自分自身も武人たらんとしていたんだろうな
一介の兵士でいられればどれだけ気楽だったろうか。将の器を持っていただけに、縛られるのは辛かったろうよ
さぁ、一人の強者に戻る時だ。俺も、一人の武人として、敬意を持ってあんたに挑ませてもらう
いざ、死に生くを問わず、死力を尽くさん!
ダマスカスミキサーで突進しながら剣を振ってくるのなら、避けることなどできないと分かっているので最初からくらう覚悟を決め、真っ向勝負を仕掛け、神速反応で先手を取り、突進してくる相手に勇気を振り絞り恐れず真正面から相手の攻撃に自分の雲を裂き、大地よ砕けよと言わんばかりの渾身の一太刀を打ち込む
「チェェストォォォォォッ!」
退路の遮断に成功した地下通路を舞台に、セレウコスとの戦闘は再び開始された。
ほぼ間を置かず、戦況を変える出来事が復讐者たちに訪れる。
玉座側から向かっていたチームが、ついに戦場へ到着し始めたのだ。
「待たせたな。切り込み役は引き受けたぜ!」
先頭を行くのは神山・刹那(梟雄・g00162)である。
日本刀『覇龍』を抜き放った彼は、ネメシスモードの発動をもって今回の戦いに臨んでいた。
油断できる相手でないことなど承知。持てる全力で斬り合うと、彼は最初から決めている。
「あれが勝利王か。なるほど、歴戦の強者のオーラを感じる」
ネメシス化した肉体の両腕に力を込めながら、刹那が呟く。
セレウコスの全身から放たれる強烈な威圧感は、数十メートルの距離を隔てた距離からでも十分に感じ取ることが出来た。
その姿に刹那が覚えたのは打ち震える高揚。そして、微かな哀しみだ。
(「自分自身も武人たらんとしていたんだろうな。一介の兵士でいられればどれだけ気楽だったろうか」)
なまじ将器を持っていただけに、それに縛られたセレウコス。
だが、それも今日限りで終わる。
一直線に距離を詰めながら、刹那はセレウコスに語り掛けた。
「さぁ、一人の強者に戻る時だ。俺も、一人の武人として、敬意を持ってあんたに挑ませてもらう」
『良かろう。来い』
簡潔で、それでいて雄弁な言葉。
双角を掲げて取った迎撃態勢は、刹那に先手を譲るという意味だ。
それを前に、刹那もまた己の全てを込めた一撃で応じようと、パラドクスの輝きを戦場に解き放つ。
「いざ、死に生くを問わず、死力を尽くさん!」
右手に宿すは劫火、左手に宿すは雷。
その二つを日本刀へと集約した刹那が八相の構えを取る。
ネメシス形態時にのみ現れる劫火と雷をもって全力で叩きつける『雲耀の太刀・天晴』のパラドクスだ。
出し惜しみの一切無い、跳躍からの大上段による斬撃が、セレウコスの脳天めがけ叩きつけられる。
「雷火の顎よ、我が敵を討て! チェェストォォォォォッ!」
先手を取って放つ、刹那の全てを込めた渾身の一太刀。
大地が砕けんばかりの衝撃が空気を揺さぶり、轟音が地下通路に木霊する。
そして、
「――っ!?」
『なるほど、良い腕だ。だが……』
その一太刀は、セレウコスの拳に受け止められていた。ガードすら取らず――利き腕でさえない、右拳で。
驚愕に見開かれた刹那の眼が見下ろした先、僅かに腕から血を流したセレウコスが太い腕を無造作に払う。そして次の瞬間には、破城槌のごとき破壊力を帯びた突撃が刹那を捉えていた。
双角と大剣を持って敵を弾き飛ばす、ダマスカスミキサーの一撃である。
『ぬんっ!』
「ぐおおおっ!」
刹那は全身に力を籠めると、覚悟を決めて真正面から突撃を受け止める。
避けることなど出来ないのは百も承知。同時、轟と音を立てて激突した突進が、修羅のごとき気迫で立ちはだかる刹那の体を軽々と吹き飛ばした。
「は……はは……凄えな、こいつは……」
叩きつけられた地面から身を起こし、刹那は愉快そうに笑った。
動くたびに全身がバラバラになりそうな激痛は、彼が受けたダメージの激しさを物語る。そんな派手な負傷にも関わらず、身体の奥から込み上げてくるのは、強敵と戦ったことへの尽きること無き喜びだった。
ふと気づけば、戦場へ新たな仲間が駆けて来る姿が見える。どうやら、次にバトンを渡す時が来たようだ。
「気をつけろよ皆。あいつは強いぜ……!」
刹那は重傷を免れたことを伝えるように手を振り、これより戦う者たちへ激励を送る。
ジェネラル級亜人『勝利王セレウコス』――束縛より解き放たれた武人との戦いは、いまだ始まったばかりであった。
善戦🔵🔵🔴🔴
効果1【一刀両断】がLV2になった!
効果2【命中アップ】がLV3になった!
ハーリス・アルアビド
連携、アドリブ歓迎
ポリュペルコンは落ちました。これでセレウコスを確実に討てます。
彼等の命を擲つ事も躊躇わず、最期まで忠誠を尽くす様を見ればあなたが偉大な存在であったことは間違いないでしょう。
ですが、これで最期です。あなたを倒し蹂躙されてきた人々と歴史への餞とします。
豊穣の神にして軍人たるセベクよ、お力添えを。我等の前に立ち塞がる敵を倒すため、恐るべき牙をお授け下さい。
祈りを捧げ願うは共に戦う味方の幸運と戦の勝利。
先に【肉体改造】により両足をより強く地を踏みしめられるよう鋭い爪のある獣の足に【肉体変異】させます。
【残像】を生み出す速度で駆け抜け、舞い上がる戦塵を【砂使い】でより巧みに操り【残像】と合わせます。
電撃が宿る振り下ろしを【残像】に誘導し、かわしきれない時は腕を盾にしながら【一撃離脱】で衝撃をやわらげます。手足の一、二本程度構いません。この命さえあれば戦えます。
次の一撃の僅かな時間で構いません。【精神集中】を行い、【神速反応】をもって【捨て身の一撃】で【セベクへの請願】を放ちます。
熟練兵団を撃破し、老将ポリュペルコンを討ち、退路を断った。
完膚なきまでに追い詰められた勝利王セレウコスに、もはや逃げ場はない。だが――そのような窮地において尚、この亜人は従容と死を受け入れる道を選ばなかった。
セレウコスの雷が殺気を帯びて地下通路に轟く。
彼を縛る責務は最早ない。彼の目的は唯一つ、断片の王に仕える武人として一人でも多くの復讐者を地獄へ送ることだ。
「この圧倒的な威圧感……ポリュペルコンが死の瞬間まで忠誠を尽くしたのも頷けますね」
ハーリス・アルアビド(褪せる事を知らない愛・g04026)は、荒れ狂うセレウコスを前にそう呟いた。
彼の脳裏に去来するのは老将ポリュペルコンの最期である。セレウコスを逃すため最後の一秒まで敗北を拒み、戦い続けた亜人。その想いの一片が解った気がした。
「ですが、これで最期です。あなたを倒し、蹂躙されてきた人々と歴史への餞としましょう」
戦意を研ぎ澄まし、ハーリスは告げた。
距離をおいてなお肌を突き刺す闘気は、かの勝利王の誇る戦闘能力を雄弁に物語る。激戦の予感を確信しながら、彼の口が紡ぐのは神への祈りであった。
願わくば、あの勝利王を葬る牙を。仲間の幸運と戦の勝利を。
ハーリスの祈祷がパラドクスの輝きとなって彼の身体を包む。
「豊穣の神セベクに請い願う。どうか私たちに勝利を!」
『セベクへの請願』、発動。
逆説連鎖戦の開始と同時、パラドクスの力で瞬時にセレウコスとの距離を詰め、一撃を繰り出した。
彼が信奉するセベクは、豊穣の神にして軍神としての側面も持つ。象徴である鰐の如き力を授かり、鋭い牙で捉えたのは、セレウコスの太い腕だ。
鋼鉄程度は容易く食い千切る咬合力の噛みつきが、標的を寸分違わず捉え、そして――、
『……中々にやる。だが、手緩いな』
「……っ!」
止められた。
『これしきで――我を斃せると思うな!』
瞬間、ハーリスの視界を塗り潰すのは、稲妻の光。
電撃を宿した大剣による大上段からの一撃は、瞬時に構えたハーリスの腕によるガードを突き破り、深い傷を刻む。
残像への誘導、一撃離脱による衝撃の緩和、それらはさしたる意味を為さない。技能に頼った行動はパラドクスの前に無力――逆説連鎖戦における大原則に基づいて生じた、これは必然の帰結だ。
激痛を訴える身体に鞭を打ち、ハーリスは再び戦闘態勢を取った。
心が折れれば負ける――そう自らを叱咤し、倒すべき敵を睨む。
セレウコスの眼に灯るのは、燃え盛るような激情と氷のような冷徹さだ。退路を失い、生命を捨てていながら、この亜人は全く冷静さを失っていない。
「流石……というべきですか」
だが、とハーリスは思う。それは自分が戦うことを止める理由にはなり得ない。
ここでセレウコスを止めなければ更に多くの民が踏み躙られる。この亜人には、もう一人たりとも人を狩らせはしない。
動かす度に肉体から上がる悲鳴を無視し、ハーリスは獣爪籠手を構えた。
「其の為なら……手足の一、二本程度構いません。この命さえあれば戦えます」
『……ほう』
闘志を宿した目でハーリスがセレウコスを睨む。
たとえ傷を負っても心は折れぬとばかり、なおも攻めかかる彼の動きは戦塵のごとく熾烈だ。
牙で食らいつき、斬撃を浴び、凌駕率アップで立ち上がり……保身を排した猛攻に、セレウコスはいまだ不動のまま。だがハーリスがもたらした傷は、セレウコスの肉体へ確かに刻まれている。
『我が首、この程度でくれてやる訳にはいかん!』
ますます猛るように、吼え猛るセレウコス。
対するハーリスら復讐者の攻撃は僅かに、そして着実に――勝利王の命を削り始めていた。
苦戦🔵🔴🔴🔴
凍雲・雪那
……怒り。怒りの感情って、さ。
此処までくると、一周回って虚無感に至るんだね。
何様面で武人だなんだとほざいてるとか、影武者も老将も皆冥府に送ってやったとか、煽ってやろうと思ってたけど。
……うん。全てどうでもよくなった。
死ね。ただ死んでいけセレウコス。
貴様の生、その悉くを否定する――!
奴の咄嗟の回避を阻害するために、足元に【泥濘の地】を展開。
此方は足元を凍結させ、一時的な足場として運用する。
【能力値アップ】【ダメージアップ】【命中アップ】【先行率アップ】、使える残留効果は全て重ね掛け。
敵の雷は生成した大量の『Snowflake』を壁にして耐え忍ぶ。
その雷撃、永遠無尽に放ち続けられる訳じゃないでしょ?
ただでさえボク達との戦闘中、どれほどお前の戦闘技術が巧みであったとしても、一分の隙も見出せない、程ではない!
此方から意識の逸れた一瞬に、横合いから【万雪崩葬】を叩き込み、押し流し、圧し潰すッ!!!
さらばだ、勝利王。
散っていった影武者と老将に、詫びの一つでもくれてやるんだな。
勝利王セレウコスとの熾烈な攻防が続く中、戦場へ新たな復讐者が音もなく現れた。
名を、凍雲・雪那(報仇雪恨の皓巫姫・g07783)。
防衛ラインを突破し、敵の護衛を撃破し、決戦に臨む彼女の全身は、今や触れれば切れそうな程に鋭い殺気を纏っていた。
「……怒り。怒りの感情って、さ。此処までくると、一周回って虚無感に至るんだね」
セレウコスを見据える雪那の視線は、氷のように冷たい。
実際の所、この亜人に投げてやりたい言葉は一つや二つでは無かった。
何様面で武人だ何だとほざくのか、オリジンもポリュペルコンも皆冥府に送ってやった――そうした数々の煽り文句も此処に至ってはどうでも良いと彼女は思う。
「死ね。ただ死んでいけセレウコス。貴様の生、その悉くを否定する――!」
『我の首以外に興味なし、か。良かろう』
雪那の展開する『FrostAura』が周囲を凍結させていく。
凍てつく殺意を露に告げる彼女の言葉に、しかしセレウコスは微動だにしない。悠然と掲げた右腕に、夥しい光を放つ雷を凝縮させ、淡々と言う。
『来い』
「snow,fall,burial,――Avalanche!」
短い言葉が終わるよりも早く、『万雪崩葬』のパラドクスが戦場を覆う。
指図などは受けぬとばかり雪那が力を発動する中、音もなく降り注ぐ白雪が戦いの始まりを告げた。
戦いに臨むにあたり、雪那の描いた作戦とは即ち次のようなものであった。
いかにセレウコスの雷撃が強烈でも、永遠無尽に放ち続けられる訳ではない筈。
いかに戦闘技術が巧みであったとしても、一分の隙も見出せない程ではない筈。
ならば意識の逸れた一瞬の隙を突いて横合いからパラドクスの雪崩を叩きつけて圧し潰せばよい、と。
そして開始から1分が経つ頃、雪崩と雷撃の応酬を経て、雪那は自分の作戦に僅かな不安が生じるのを感じた。
2分が過ぎ、グロリアスの回復も到底追いつかないダメージを刻み込まれながら、雪那は明白な劣勢を悟った。
さらに数分。満身創痍となった雪那に、セレウコスは何の支障もなく五指に雷を凝縮させながら、重々しい声で告げた。
『我が都合よく隙を晒すなどと、甘い期待はせぬことだ。もっとも、隙を突いたところで結果は見えていただろうがな』
アヴァタール級程度の敵ならともかく、セレウコスはジェネラル級、それも断片の王から力を授かった存在である。
油断や慢心は無く、余力も残っている状態の彼に、一瞬程度の隙で致命打を浴びせられれば苦労は無い。それでも仮に雪那が仲間と綿密な連携を取っていれば、或いはネメシス形態で臨んでいれば、或いは負傷覚悟で勇猛果敢に挑んでいれば、結果が違っていた可能性は大いにあっただろう。
だが、雪那はそうした戦い方を選ばなかった。
そして――殆どが憶測に基づいた甘い戦いの代償を求められる時は、当然のようにやって来た。
「う……ぁ、っ!!」
壁にしようと展開した『Snowflake』は、パラドクスを駆使する攻撃の前にさしたる意味を持たなかった。
小細工など無意味――そう無言で告げるように電撃が雪那の全身を焦がす。息も絶え絶えに反撃を放ち、僅かに傷を与えた雪崩の名残は、次の瞬間にはセレウコスの全身から発される熱気で残らず溶かされていた。
『覚悟もなく、殺意ひとつで挑んで来たか。健気なことだ』
「く……っ!」
凌駕率アップの力で幸運にも戦闘不能を免れ、満身創痍となった雪那の身体で瞳だけは尚も戦意に輝いていた。
だが、想いだけで斃せるほど、セレウコスは容易な相手ではない。
勝利王、いまだ落ちず。パラドクスで幾許かのダメージを刻んだという結果をもって、復讐者の戦いは更に続く――。
苦戦🔵🔴🔴🔴
桜・姫恋
連携・アドリブ歓迎
単独参加も可
【ヨアケ】で参加
WIZで味方のディフェンスを行う
さて、後は貴方を倒すだけ。
退路は仲間が塞いでくれた。なら私は共に来た仲間たちを信じて全力で戦うのみよ。
薔薇の花を召喚しセレウコスへ。
少しでも惑わせられればいいのだけど……
【飛翔】を借り空中から【先行率アップ】にて先手必勝のごとく薔薇の花々を舞わせ散らしセレウコスを囲み《誘惑》し、捕らえようと攻撃しつつ《殺気》にてセレウコスの注意を惹き付け仲間たちが攻撃する隙を少しでも作り出していく
敵の攻撃は薔薇の花々を重ねて盾のようにしつつ【浮遊】で避けたり【反撃アップ】にて撃ち返しながら回避していく
勝利王セレウコス!!
流石その名を冠するだけはあるわ。
確かにあなたは強いけど、あなたはここで終わりよ!
勝利王の称号は私達がいただくわ。
フィーナ・ユグドラシア
※アドリブ、外部連携ok
【ヨアケ】同行
かの老将が命懸けで退路を守る訳です。
武人としては敬意を払えますが、貴方を逃がす道理はありません。
私達の持てる全力で参ります。お覚悟を。
まず『氷槍』を発動し精霊達の力を氷槍として具現化。
また、雪の衣を纏い、敵の攻撃に備えます。
退路を塞いだとはいえ、それは私達が残っていればの話。
事ここに至れば、どちらかが倒れるまでの総力戦です。
突破させず、引き返させず、敵をこの場に足止めします。
初手は他の味方と攻撃タイミングを合わせ氷槍を投擲。敵の注意を此方に引き付けます。
投擲後は、再度『氷槍』を手元に具現化しつつ突撃し刺突の一撃、そのまま接近戦に移行です。
接近戦の際、敵が力押しで来るなら此方はその動きを利用して受け流し、切り返して敵の体勢崩しを試みます。
また、大剣の持ち手を狙ったり、下半身を狙って突撃の邪魔をするなど、敵の攻撃動作を阻害、味方への隙を作る機会を誘発します。
敵の雷には、雪の衣や氷雪の膜で防御するか、氷槍を避雷針代わりにして地面に雷を誘導し、直撃回避です。
白水・蛍
【ヨアケ】
アドリブ歓迎
連携密に
単独参加可
味方をWIZでディフェンス
敵には敬意を
ネメシス発動。サーヴァントのオラトリオ、フローライトと合体。天使の姿に。
セレウコス王。戦える事に感謝を。
貴方ほどの強い相手と戦う事。
それで我々は更に強くなれる。その壁は乗り越えて。
我々はコマを一つ、進めさせてもらう。
我が名は白水・蛍。汝に挑む戦士!
味方が敵と戦っている間に、敵の隙を観察して見極め、看破し、その間に飛翔で飛び込む。
もし味方が敵を攻めあぐねているなら、無理やりにでも飛び込もう。
その間に味方が攻め入る事の出来る隙を私が作る。
パラドクスを発動。我が音は刃。我が音は汝を穿ち貫く刃の一撃!!
その身に武器を突き立てる一撃を放つ。
敵の反撃は残留効果で耐える。もしくは、防具で魔力の障壁を作ったりして致命傷だけ避けるように動く。。
致命傷さえ避けれれば立っていられる。立っていられるという事は戦えるという事だ。貴方を倒せるという事だ。
有難う。セレウコス王。貴方と戦えた事を私は誇りに思う。
お覚悟!!
百鬼・運命
【ヨアケ】で参加
アドリブ絡み、外部連携歓迎
さてアンティオキア奪還も大詰め
今まで将としておのれに課してきた枷を外して武人として戦いにのぞむかセレウコス
老将も含めて見事な覚悟だな
そういうのは嫌いじゃあないが、亜人の倫理観は人とは相容れなさすぎるここで討ち取らせてもらうとしよう
脱出路の幅は限られる
そのままでは味方と連携するにはやや手狭だろう
故に味方の攻撃に遭わせて【飛翔】
そのまま壁面を疾駆して味方の頭上を飛び越えるように攻撃を
敵の耳目を集める【飛翔】の弱点をカバーするため、【飛翔】使用は攻撃直前
さらに【先行率アップ】も借りて先手をとり<不意打ち>する事で対応しよう
使用パラドクスは≪十束乃大太刀≫を用いた【不知火乃太刀】
敵が雷を放って迎撃するというならば、【反撃アップ】に<両断>の概念を乗せた一刀で雷切の如く雷を切り伏せ、返す刃でセレウコスに攻撃を
また攻撃の際には半歩分、攻撃の<殺気>を遅らせることで敵に攻撃のタイミングを読み違えさせ、【フィニッシュ】をのせた痛烈な一撃を叩きこもう
復讐者と勝利王セレウコス。アンティオキア地下通路を戦場に、両者が激しい激突の火花を散らす。
度重なる激戦を繰り返し、鋼の如きセレウコスの肉体には、いまや着実に傷が刻まれつつあった。だが、そのような窮地にあってさえ、彼の亜人としての闘争本能は微塵も衰えない。
目に映る全ての敵を打ち据えんと荒れ狂う勝利王。それを撃破すべく、復讐者もまた更なる攻撃を開始せんとしていた。
「さて。アンティオキア奪還も大詰めだな」
百鬼・運命(ヨアケの魔法使い・g03078)は神刀『十束乃大太刀』を手に、これより戦う相手を見遣った。
勝利王セレウコス。今や全ての配下を失い、退路を断たれ、命運が尽きつつあるアンティオキアの王へと。
『我を相手にここまで奮戦するとは、流石と言うべきか。だが、勝負はこれからだ』
「……将として己に課してきた枷を外して、武人として戦いに臨むか。老将も含めて見事な覚悟だな」
劣勢にありながら、勝利への執念を手放さずに告げるセレウコスに、運命は舌を巻いた。
死の間際まで武人として戦う――その在り様だけなら、運命も嫌いではない。
だが、同時に彼は理解している。セレウコスを始めとする亜人が、人々を蹂躙して力を得る存在であることを。その在り様は、運命ら復讐者とは根柢から相容れないのだ。
「だから。お前はここで討ち取らせてもらうとしよう」
真剣な眼差しで神刀を構え、運命が告げる。
間を置かず、セレウコスと対峙するように現れたのは、三人の復讐者たち。
その一人、桜・姫恋(苺姫・g03043)が堂々とした口調でセレウコスへ告げた。
「退路は仲間が塞いでくれた。後は貴方を倒すだけ」
ジェネラル級の亜人と比べ、復讐者一人一人が持つ力は微々たるもの。
だが、それは積み重なれば、時に断片の王さえも葬る強大な力となるのだ。
この戦いにおいて自分が果たす役割も、また同じ。桜花を象るマジックワンド『桜杖』を構える彼女の瞳には、勝利の礎となって戦う意志が宿っていた。
「私は――共に来た仲間たちを信じて戦うのみよ!」
手強い相手であることは百も承知だ。それで尚、姫恋は自分と仲間たちの勝利を疑ってはいない。
それが自分たち復讐者の戦いであり、今までの戦いにも、そうやって勝利を重ねて来たのだから。
(「……どうやら、敵は今まで以上に本気のようですね」)
運命たちの本気を感じ取ったのか、セレウコスが雷の力を高め始めた。
雄々しき双角が輝きを増す。戦場を満たすのは、瞼を閉じてなお網膜を焼くような閃光だ。その圧倒的な光景を前にして、フィーナ・ユグドラシア(望郷の探求者・g02439)は人知れず息を呑む。
「かの老将が命懸けで退路を守る訳です。武人としては敬意を払えますが……貴方を逃がす道理はありません!」
白銀の長杖『シュネーヴァイス』を構え、決然とそう告げた。
彼女もまた、運命と同様に理解しているのだ。亜人という種族と自分たちでは、決して解し合えない一線があることを。
未来に生じる悲劇の芽を摘むためにも、セレウコスを逃がす訳にはいかない。この戦場で、確実に仕留めねばならない。
「ですから、私たちの全力で参ります。お覚悟を」
その決意が本物であることを示すように、フィーナは杖の魔力を解放した。
雪の衣をまとい、精霊の力を高め、着々と攻撃の準備を整えながら彼女は思う。
これは復讐者と亜人、どちらかの死によってのみ幕引きが図られる総力戦。である以上、すべきことは一つしかない。
「突破させず、引き返させず、足止めします。……始めましょう、皆さん」
「ええ。全力で挑み、打ち倒す。我々に出来る精一杯のことをしましょう」
フィーナの言葉に、最後の一人――白水・蛍(鼓舞する詩歌・g01398)が決意を秘めた声で返した。
蒼翼のオラトリオ『スパーライト』と合体し、天使の如きネメシス形態へ変化した蛍。花々に覆い隠された顔の眼差しは、窺わずとも分かる程に強い意思を秘めたものだ。
「セレウコス王。戦える事に感謝を」
強敵である貴方を討ち倒し、そうして自分たちは更に強くなる――そう蛍は告げた。
屍を乗り越え、コマを一つ進める。貴方はその道程にある壁なのだと、傲慢にも告げて見せた。
「我が名は白水・蛍。汝に挑む戦士!」
『不遜なことだ。ならば示すが良い、戦士に相応しい力を!』
高らかな名乗りが、戦場に響く。
同時、地下通路に轟くのは、セレウコスの荒れ狂う雷だ。
鎬を削るように戦場を満たしていく両者のパラドクスが、死闘の幕開けを告げていた。
戦いは、復讐者による二方向からの挟撃で開始された。
玉座側の通路からは蛍。出口側の通路からは姫恋と運命、そしてフィーナ。
最初に仕掛けたのはフィーナと姫恋だ。セレウコスの注意を引き付けるフェイントにフィーナの氷槍が降り注ぐ中、姫恋はパラドクスの粒子を散布しながら薔薇の花々を召喚。心を蕩かす『マルメゾンローズ』の芳香をもって攻撃の嚆矢と為す。
「勝利王セレウコス……流石その名を冠するだけはあるわ、確かに貴方は強い。けど、それもここで終わりよ!」
並のクロノヴェーダが浴びれば、骨抜きにされても不思議ではない誘惑の香り。
それがセレウコスの全身を包み、命中したと思った次の瞬間、
『ぬぅおおぉっ!』
裂帛の気合を轟かせると同時、セレウコスの双角から雷光が迸った。
勝利王の力はいまだ健在――そう告げるかのように放つ反撃が、姫恋の全身を雷撃で焼き焦がす。
視界と思考が焼き切れそうになる衝撃を堪え、しかし姫恋は倒れない。この程度の負傷など元より覚悟の上だ。何よりも、彼女は一人で戦っている訳では無い。
「運命っ!」
「ああ、引き受けた!」
同時、仕掛けたのは運命だ。先行率アップの発動と共に、颯爽とした疾駆でセレウコスへ肉薄していく。
天井は飛翔に難儀する高さゆえ、足を用いての接近である。
対するセレウコスは、フィーナの氷槍をフェイントだと見抜いたか、その双眸は運命を凝視したままだ。
「我ガ太刀、映ラズ」
運命は神刀を構えると、パラドクスの輝きを帯びた全身から殺気を解放。
気配をずらした『不知火乃太刀』の斬撃を、セレウコスの巨体めがけて一閃させた。姫恋の攻撃に合わせて放った切先は、間違いなくセレウコスの巨体を捉え、そして、
『ぬん!』
武人の右手から放たれる雷が、運命の視界を光で塗り潰した。
常人なら消し炭と化すであろう電撃に耐えながら、運命は苦悶の呻きを噛み殺して膝をつく。
握りしめた神刀を見つめる運命の脳裏に去来するのは、斬撃を浴びせた時の異質な手応えだった。まるでゴムの塊を斬ったような硬く鈍い感触。刃こそ届いたが、致命傷には未だ至っていない。
(「なんて敵だ。まるで効いている気がしない……!」)
巌の如き不動を保ち、力を貯めるセレウコスを睨みながら、運命は唇を噛む。
同時に彼が理解したのは、連携にあった僅かな綻びだった。
どの仲間の、どの行動で生じた不意を打つか。
セレウコスだけではない、強敵相手の不意を狙う行動は、そこまで具体性を詰めてようやく現実味を帯びる。
無論、仲間の攻撃に合わせて先手を取った運命の連携も、闇雲に正面から攻めるよりは遥かに有効な戦法である。しかし、『致命傷を刻み込む』為には、それだけでは不十分なのだ。
(「大きな戦果は、ただ漠然と隙を狙うだけでは難しいということか……!」)
大打撃まで今一歩のところで及ばなかった想いを、ぐっと噛み締める運命。
間を置かず、手元に具現化した槍を構えたフィーナがセレウコスに肉薄し、渾身の刺突を繰り出した。
氷の精霊を槍へと変化させ、雪の精霊が導く一撃を放つ『白雪の氷槍・氷雪の騎士』のパラドクスだ。狙い済ました槍と、勝利王の雷光が激突し、激しくしのぎを削り合う。
「氷の精霊たち、雪の精霊たち、白雪姫の誓いの下、我と共に悪意を祓う力とならんことを……っ!」
決意を込めて槍を構えるフィーナの全身を、濁流の如き雷が荒れ狂う。
少しでも負傷を防がんと構えた氷雪の膜をすり抜けて、なおもセレウコスの反撃は止まらない。
武装を駆使して試みる防御も、十割の成功を保証するものでは無い。だがそれでも紙一重――まさに紙一重で直撃を避けたフィーナは、最後の力を振り絞るように叫んだ。
「蛍……さん! 今です!」
そして、気配を察知したセレウコスが振り返るのとほぼ同時。
彼の眼前に迫るのは、天使の如きネメシス形態を取って、攻撃準備を終えた蛍の姿であった。
「――我が音は刃。我が音は汝を穿ち貫く刃の一撃!!」
舞によって妖気を高めた狐の尾が、恐るべき威力を秘めてセレウコスへと迫る。
蛍が発動する『奪魂尾獣穿』のパラドクス。ダメージアップを乗せて繰り出す尋常ならざる猛攻に、セレウコスは初めて、本当の意味での『守勢』を強いられた。
詰め切れていない連携による攻撃という点では、蛍のそれは運命と左程変わらない。
だが、ネメシス形態で大幅に増幅された戦闘力、更にはフィーナと挟撃する形での攻撃という二つの要素は、連携の穴をも塞ぐ力をもってセレウコスを捉え、そして――。
「――とうとう捕まえましたよ。セレウコス王」
『……ほう』
蛍の放った狐尾の刺突は、分厚い脇腹を深く刺し貫いていた。
それは間違いなく、セレウコスを更に追い詰める一撃に他ならない。
次の瞬間、双角の放つ雷撃が蛍を捉える。全身の神経を焼き切るような激痛にも、しかし蛍は微笑みを浮かべたまま。死を告げる天使のように、セレウコスへ悠然と告げた。
「私たちは復讐者。致命傷さえ避けれれば立っていられる」
そう、立っているのは蛍だけではない。
運命が、姫恋が、フィーナが、その瞳に宿した戦意を一片も曇らせることなく、いまだ戦場に立ち続けている。
これが復讐者の戦い方だと、我が身をもって示すように。
「立っていられるということは戦えるということだ。貴方を倒せるということだ」
次なる仲間への礎となる一歩を、確かに残した蛍たち。
そんな彼女たちを前に、セレウコスは脇腹から流れた血を手で拭い、口の端を吊り上げる。
初めて見せる、戦士としての賞賛の笑みであった。
『見事だ。オリジンとポリュペルコンに、土産話が一つ出来たな』
「……有難う。セレウコス王。貴方と戦えたことを私は誇りに思う。お覚悟!!」
そう微笑む蛍も、仲間たちも、全員が満身創痍。
だが、セレウコスもまた、着実に追い込まれつつある。
敵とて不死身ではない、力尽きる時は必ず来る――そんな確信と共に、復讐者の戦いは後半戦を迎えようとしていた。
善戦🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
効果1【浮遊】LV1が発生!
【寒冷適応】LV1が発生!
【狐変身】がLV2になった!
【友達催眠】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】がLV3になった!
【命中アップ】がLV4になった!
【ダメージアップ】がLV4になった!
【フィニッシュ】LV1が発生!
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎
ディアナさん(g05579)と特に密に連携
貴様が統治者として虐げた人々の呪詛が聴こえるか?
ミノタウロスの忠義、ポリュペルコンの覚悟は見事だった
彼等が主と呼んだのは、戦に歓喜する一介の武人か
ならば武人よ、名も残さず散れ
玉座側から、退路を遮断するディアナ達と挟み撃ちに
仲間と【パラドクス通信】で連携を取り
ディアナをディフェンス、反撃も好機とする
敵の振る舞い、負傷度合、剣の構えなど全身を観察
動きの乱れや変化、わずかな隙も通信で共有
攻防一体に、片手にタワーシールドを構えつつ相対
PDの精確な射撃で、銃弾を連射
仲間が穿った傷に向け、銃弾を集中させて傷を広げ、動きを鈍らせ、味方へ繋ぐ
効果2を重ね、敵が健在なら利き腕か脚を優先に
真っ向から引き付けて味方の斬り込む隙を得、味方の作った好機には全弾で急所を撃ち貫く
雷撃には角や指、剣の予備動作を看破し、魔力障壁とラバースーツの防御に、直撃はタワーシールドを構えて防ぐ
盾が飛ばされても踏み留まり、即座に反撃を
ここが雌雄を決す場所。ならば一撃でも深く!
ディアナ・レーヴェ
傷の深い仲間はディフェンス
状況は皆とPD通信で共有しつつ、エトヴァ(g05705)とは特に動きを事前共有し密に連携を
引かれた防衛ラインの前に陣取り、火砲を構え【王道の計】
王座側から追うエトヴァ達とは挟撃の形ね!
もし敵がこちらに来るなら、私は退路を塞ぐ役である以上は回避は考えない。
退かず、かつ、可能な限り敵を釘付けにして隙を作る――地に打ち付けた火砲は避雷というより単なる支柱で、耐えて睨んで気魄と根性で押し止めて、というか攻撃と反撃の交錯の中で手さえ届けばPDの一連の動きとして掴みかかろうとすら考えてる!
私と遊んでくれるの?
なら仲間の一斉射撃を浴びる覚悟は十分って事ね!
あるいは皆が敵の隙をこじ開けたなら、
膝が笑おうが自分を叱咤して意地でPDを撃ち込んでいく
ただ執拗に、一撃でも多く
…産み落とすなら、好きな人との子供がいいわ
女なら誰だってそう思う
ねえ。分かる?
このテコでも動かない、知力体力全てを賭けて戦場を貫くこの身体――
これね、女の身体なのよ?
あなた達が散々食い物扱いしてる、女の身体なの!!
復讐者とセレウコス、両者の流した血が戦場を赤く染めていく。
手負いの獣さながらに雷を放ち、暴れ狂うセレウコス。
そこへ新たに襲い掛かったのは、玉座側、出口側の二方面から、更なる挟撃を仕掛ける復讐者たちであった。
「ここから先には一歩も通さないわ。覚悟しなさい!」
出口側の通路に引かれた防衛ラインを背に、火砲を構えたディアナ・レーヴェ(銀弾全弾雨霰・g05579)が告げた。
砲口で狙いをつけた先に見えるは、負傷したセレウコスの姿である。
着実に追い詰められつつある彼の肉体からは、しかし未だ手負いとは思えぬほどの闘気が満ち溢れていた。この亜人が勝利を諦めていないことを、ディアナは嫌でも痛感する。
「本当に死ぬまで戦う気みたいね……いいわ、付き合ってあげようじゃない!」
「そうだな。付け加えるなら、地獄に行くのは亜人だけで頼みたい」
一方、セレウコスを挟んだ反対側、玉座側の通路から駆けつけたエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は、対峙する勝利王を前に言う。
「ミノタウロスの忠義、ポリュペルコンの覚悟は見事だった。彼等が主と呼んだのは、戦に歓喜する一介の武人か」
そんな彼の言に、しかしセレウコスはかぶりを振った。
『違うな。我の本質が戦に歓喜する武人であることを知るからこそ、あれらは我を主と呼び、認めたのだ』
無論、彼らの心底は彼らのみ知るところだが――そう付け加えながら、確信を宿した瞳でセレウコスは言った。
亜人の世界では強い者が正しい。
いかに内政手腕に優れようとも、いかに広い領土を持とうとも、個としての力を持たぬ亜人が強き同胞を心服させることはできない。同時にそれは、セレウコスを始めとする有力な亜人にとって、虐げた弱き人々の呪詛などは、虫の鳴き声と大差がないことを物語るものでもあった。
『亜人と相容れぬ貴様らに、我らの心が分かる筈も無し。当然であろう』
「……そうか。ならば武人よ、名も残さず散れ」
オリジンやポリュペルコンとの間に自分が育んだ絆を真に解することは、復讐者であるお前には出来ない。
そう暗に告げるセレウコスに、エトヴァは銃を構えながら告げた。
元より自分は、決戦を挑みに此処へ来た。これより先は、力をもってこの亜人を討つのみだ。
戦闘開始と同時、銃声が戦場に響く。
音の源は、エトヴァの銃が浴びせる十字型連射だ。退路を遮断するディアナと挟撃を仕掛けんと、エトヴァが銃で狙うのはセレウコスの利き腕である左腕。『Sternenkreuz』のパラドクスで狙い澄まして放つ銃弾が、標的へ次々と放たれていく。
「さあ、始めよう。――結束を力と成せ」
パラドクス通信を介してディアナに声を伝えるエトヴァ。その手で放つ銃弾が勝利王の左腕に命中した。
銃弾はダメージを刻むことには成功したが、しかし目立った変化はない。いや、正確にはコンマ数秒に過ぎない刹那の間、挙動が遅れたことをエトヴァの眼は看破していた。
だが、通信機を介して攻撃の機を告げるには、それは余りに短すぎる猶予だ。ディアナと――無論、他の仲間たちとも――攻撃タイミングの詳細を合わせ切れていない現状、隙を突いた連携攻撃は不可能に近かった。
(「やはり……ジェネラル級クラスの相手には、この程度では通じないか……!」)
僅かに遅れて飛来するディアナの砲撃が、鉄壁の如きセレウコスの肉体を揺さぶる。
挟撃によって浴びせた一撃は、確かに通常よりも高い威力をもって傷を刻んだが――依然として、大打撃を与える域までは達していない。程なくして勝利王は指先に雷を宿しながら告げた。
『攻撃は、これで終わりか。ならば次は我の番だな』
無慈悲な宣告と同時、雷が相次いで放たれる。
雷を浴びて吹き飛んだエトヴァとディアナの体が、音を立てて床へと叩きつけられた。
それからの戦闘は、二人が有利を得られぬまま進んで行った。
銀色のタワーシールド『Hushed Audience』を構えて敵の攻撃を引きつけるエトヴァは、特に厳しい状況だ。
射撃で狙った傷口も思った程には広がらず、セレウコスの動きが鈍ることもない。
「……やれやれ、存外しぶといな」
そう言ってエトヴァは苦笑を漏らす。
敵を観察し、真っ向から引き付けて誘い、隙があれば仲間へ繋ぐ――彼が狙った諸々の行動は、いずれもあと一歩のところで実を結ばずに終わっているのだ。
最大の理由は、行動に割けるリソースが有限であることを、エトヴァが見落としていた点だろう。
戦闘では攻防一体で立ち回り、敵を真っ向から引き付けて誘い、更には一挙手一投足を予備動作レベルまで含め観察・看破する――これらは一つ一つが相応の集中力をもって初めて実を結ぶ行動であり、そう簡単に並行できる内容ではない。まして相手は手負いとなって暴れ狂うジェネラル級である。
それとて、エトヴァが大勲章を使えたら成功した目は大いにあった。或いはネメシス形態で臨んでいれば、大勲章ほどでは無くとも可能性はあった。それらが無くとも、一つの方針に集中して動いていれば、実を結んだ可能性は十分あったろう。
「ディアナ、平気か」
「もちろん! ……っ、このくらい全然!」
通信機から返るディアナの息は、既に切れかけていた。
彼女だけではない、気づけばエトヴァにも負傷は積み重なり全身が悲鳴を上げている。
戦える時間はもうあまり長くない。である以上、迷っている時間はなかった。
「俺の銃撃が合図だ。奴の左腕へ銃弾が命中するのに合わせて砲撃を頼む。上手く行くかは賭けになるが……」
「大丈夫。任せて」
即座に承諾を返すディアナ。攻撃方針はそれで決まった。
直後、エトヴァは銀色の盾を構えてセレウコスに突撃。敵の左腕を銃口で狙い定める。
同時、ディアナは地に打ち付けた火砲を支えに地を踏みしめ、気魄と執念と根性の籠った眼でセレウコスを睨みつけた。
「……産み落とすなら、好きな人との子供がいいわ。女なら誰だってそう思う」
知れず口から呟きを漏らしながら、ディアナがパラドクスを発動した。
『王道の計』。計略の基本に従い敵の弱点を突く、シンプルにしてスタンダードな攻撃。雷撃を浴び続けて笑う膝を叩いて強引に立たせ、萎えそうになる心を叱咤し、砲口をセレウコスへと向ける。
「ねえ。分かる? このテコでも動かない、知力体力全てを賭けて戦場を貫くこの身体――これね、女の身体なのよ?」
『死を覚悟したか……良かろう、受けて立つ。だが、まぐれの幸運など期待せぬことだ』
可愛げのないことに、セレウコスはこの状況でなおディアナへの警戒を解いていない。
とはいえ、その警戒にも僅かな綻びは作れる。今まさにエトヴァがセレウコスへ発射したパラドクスの弾丸がそれだ。
同時、ディアナは見た。砲口で狙い定める先、彼女を導くように現れる、分厚く束ねられた命中アップの光を。
戦闘開始の直後ならば、戦いは苦戦で終わった可能性が高かっただろう。
だが、先行した仲間たちが残した効果は、ディアナに着実な力をもたらした。
そして――次の瞬間。
「あなたたちが散々食い物扱いしてる、女の身体なの!!」
エトヴァの銃弾がセレウコスの左腕に命中した、コンマ数秒の刹那。
命中アップとダメージアップを乗せた砲弾が、分厚い背中に直撃する。
『ぬうっ……!』
痛打を浴びて、響き渡るセレウコスの呻き。
最後の最後、火砲の轟音は二人の執念の結実を物語るように、高らかに戦場に木霊するのだった――。
善戦🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
【書物解読】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV5になった!
【命中アップ】がLV5(最大)になった!
凍雲・雪那
――ぜ、ぇ。はぁ。
ああ、そうだな。そうだとも。
ボクが、甘ったれてた。
……だとして、も。
お前を、殺す。覚悟が無く、殺意だけ?
だからなんだ。例え、ボクに殺意しかなくとも。
構うものか。その殺意だけで、お前の首を掻っ切ってやる。
ネメシス、起動。
満身創痍の身体を強引に立ち上げ、翼で飛翔し、吶喊。
この期に及んで、もう今更怪我がどうとか、言うつもりは、無い。
例え、重傷を負おうとも――今はただ、奴に一撃を。
味方と、連携……といっても、ボロボロのボクでは、邪魔になるだけ、かもね。
だから、ほぼほぼ陽動として。
防御は捨てた。とにかく真っ直ぐに、一直線に。
殺気を叩き込んで、隙を強制的に創り出し。
自滅覚悟で、ボクの最後の斬撃を――セレウコスに。
殺しきれなくても、ダメージは、それなりに与えられる、筈。
仮に届かなくても、皆の攻撃に繋がる、チャンスにはなる。
は、は。どうだ。猛き、雷の将。
これが、ボクの、殺意、だ。
『……何だ、貴様?』
二度目の挑戦となる凍雲・雪那(報仇雪恨の皓巫姫・g07783)に、それがセレウコスの投げた言葉だった。
貴様などに用はない。我の前から失せろ――そう無言で告げる勝利王の視線は、彼が雪那を敵と見做すに値せぬ存在と認識していることの証左であった。
「――ぜ、ぇ。はぁ。ああ、そうだな。そうだとも。ボクが、甘ったれてた」
対する雪那の息は、荒い。
今の彼女は、傍目に見ても万全からは程遠いコンディションだ。だが、そんな状態にあって尚、双眸に宿した復讐の意思は衰えていない。
「だとして、も。お前を、殺す。覚悟が無く、殺意だけ? だからなんだ。例え――」
『御託に興味はない。我の首が欲しくば口では無く、力で獲りに来い』
明白に感情を害したセレウコスの声と、それを上回る雷の轟きによって雪那の言は遮られた。
先の戦闘で雪那は不興を買っている。これ以上ふざけた真似を続けるなら容赦しない――そう、この亜人は告げていた。
『覚悟なき者よ。よもやこの期に及んで、無事に帰ろうなどと思ってはいまいな』
「ふざ、けるな……!」
同時、雪那の体がネメシス形態へと変貌する。
双翼で宙へと浮かび、戦闘態勢を取った彼女を見て、そこでセレウコスはようやく見る目を僅かに変えた。
だがそれでなお、この亜人は彼女を敵に値する存在と認めていない。彼の認識を変え得るものは『力』、それ以外には存在しないのだ。
『一度だ。貴様にやる猶予はそれだけと思え』
「十分、だ!」
そこから先は力次第と暗に告げるセレウコスへ、雪那はそう言い返した。
元より一撃に賭ける他にない状態であることは、彼女自身が知っている。
だが、それでも。このまま一矢報いず終わるなど容認できないことだった。
浮遊体勢のまま、雪那がセレウコスに吶喊する。
彼女は思う。怪我など今更どうでも良い。重傷を負おうと構わない。望むのは只一つ、あの亜人の命のみだと。
「いざ、天壌無窮の果てまでも――ぶった斬れろォ!!!」
防御を捨てて、己の体を矢と為して、『鏖滅弑䨩斬 ‐雷霆殺し‐』を発動。
殺気で強制的に隙を作り出し、吶喊。氷剣をもってあらゆる障害ごと敵を両断する、絶殺の魔剣であった。
世界の理を書き換える力、パラドクス。その力はしかし、望む全てを現実に変える万能の魔法ではあり得ない。
極論、『どんな強敵も絶対に殺せる』という必殺技を用いても、それは十割の実現を保証しない。能力差に開きがあれば、或いは条件が悪ければ、トループス級の敵すら殺せない。それがパラドクスのルールだ。
当然、このルールからは雪那とて逃れ得ない。
『隙を創り、敵を両断し、雷鳴すらも斬り捨てる』、彼女のパラドクスも同様である。
結論として、ネメシス形態の力が運良く奏功し、雪那は一瞬の隙を作ることには成功した。
そこへ残留効果を乗せて叩き込んだ蒼氷の剣で、傷を与えることにも成功した。そして同時に――その結果は他の復讐者が行使しているパラドクスのルールを超えることも無かった。
『貴様の一撃は受け取った。覚悟無き者という言葉は取り消してやる』
肩に傷を受けたセレウコスの五体は、いまだ繋がったまま地に立っていた。
およそ万全とは言えぬコンディションで事実上の単独挑戦を行った雪那の、それが得た結果であった。
『貴様を敵と認めよう』
直後、疲弊した体へ雷撃が直撃し――『凍雲・雪那(報仇雪恨の皓巫姫・g07783)は重傷を負った』。
「は、は。どうだ。猛き、雷の将。これが、ボクの、殺意……」
『良かろう、我が命のある限り覚えておいてやる。若きディアボロスよ』
狙った首は惜しくも獲れず、しかし確かな傷は刻み込み。
戦いは、いよいよ佳境に向かって動き出す。
善戦🔵🔵🔴🔴
効果1【友達催眠】がLV2になった!
効果2【フィニッシュ】がLV2になった!
一里塚・燐寧
あはっ、なーにちょっと清々しげな顔してんのさ
ふつーの人達を虐めまくった奴が今さら武人ヅラしたって、カッコいいですね、とはならないんだよぉ
あたしは復讐者として、きみの全てを否定する
何の抵抗も出来ず、何もかも奪われた人たちのためにねぇ!
大柄な亜人にも匹敵する体躯を持つ、禍々しい鎧武者型ネメシス形態に変貌
これはクロノヴェーダの犠牲者が現世に遺した、呪詛と怨念を纏った姿
更に手にした≪テンペスト・レイザー≫も巨大化させ、『絶技:生命穿つ巨刃』を放つよぉ!
【防衛ライン】で突破不能になった秘密通路の壁に敵を押し込み、逃げ場を封じて巨刃で圧し潰す!
刀身の重みと回転鋸刃の斬撃の合わせ技で、グチャグチャに粉砕してやろうじゃん!
敵が放つ雷撃に対しては、得物の分厚い刀身を盾代わりに受けたり
≪拒絶の呪力≫で弾いて軌道を曲げることにより、重篤な感電を防ぐよぉ
逃げ場のないどん詰まりで、粉々に打ち砕かれてく
この世界で生きる人達が、いつだって味わってる苦しみ
――よぉーく噛み締めてから、プトレマイオスに会いに行くんだねぇ!
「あはっ、なーにちょっと清々しげな顔してんのさ」
手負いの勝利王を前に、一里塚・燐寧(粉骨砕身リビングデッド・g04979)がケラケラと獰猛に笑う。
彼女の鎖鋸剣『テンペスト・レイザー』は今日も絶好調だ。自慢の鎖鋸刃であの亜人を斬り殺させろと、先程からエンジンを不服そうに唸らせている。
燐寧の心もまた、相棒の剣と同じだった。目の前の亜人に対して抱く想いは、およそ殺意以外に有り得ない。
「ふつーの人たちを虐めまくった奴が今さら武人ヅラしたって、カッコいいですね、とはならないんだよぉ!」
『成程、貴様はそう思うのだな。……ふっ』
そんな燐寧にセレウコスは、笑った。
憮然でもなく、憤慨でもなく、それは愉快そうに笑ったのだ。
死の足音が聞こえる筈の者が浮かべる其れとは到底思えない、晴れやかな笑顔だった。
『ふ……我としたことが。貴様から漂う暴力の気配があまりに純粋で、つい見惚れたわ』
「あはっ、あははは。なら存分に見て、ぜーんぶ味わって行きなよぉ!」
最大級の賛辞をもって送られたであろう言葉が、燐寧の燃え盛る憎悪に油となって注がれる。
爆発する復讐心は少女を禍々しい装甲で覆い、鎧武者型のネメシス形態へと変貌せしめた。その肉体は見る間にセレウコスと肩を並べる巨躯となり、鎖鋸剣もまた相応しい大きさへと変じる。
「あたしは復讐者として、きみの全てを否定する。何の抵抗も出来ず、何もかも奪われた人たちのためにねぇ!」
『良かろう、来い。貴様がそうであるように、我も貴様と早く戦いたい』
微塵も油断のない目で笑いながら、セレウコスが右手を掲げる。
瞬間、指に宿った雷の轟きが、鎖鋸剣の駆動音と鎬を削るように響き始めた。
『存分に否定し、存分に呪え。――討てたらな』
開始と同時、不気味な呻きが戦場を揺るがし始めた。
それはテンペスト・レイザーの周りを漂う怨念が上げる、無念の叫び。
燐寧の手にする其れを核に、鎖鋸剣が雪道を転がる雪達磨のように大きさを増していく。
「きみの命も、痛みも、苦しみも……全部貫いて、あたしは先に進んでやるっ!!」
パラドクス『絶技:生命穿つ巨刃』。地面に突き立つ超巨大鎖鋸剣を構えた燐寧が、巌の如き勢いで勝利王へ突進する。
いや、それは突進などという生易しいものでは無い。
ネメシスの強化と残留効果、更には彼女自身のダメージアップ。それら全てを注ぎ放つ、破城槌さながらの突撃だった。
そして――それこそが、長きに渡る戦況の拮抗を崩す、最後の一撃となった。
「圧して潰して刻んで! グチャグチャに粉砕してやろうじゃん!」
分厚く、重く、測ることさえ馬鹿馬鹿しい刃渡りの回転鋸が振動を伴いセレウコスに激突。
亜人の巨体が、音を立てて壁にめり込んだ。
刃を受けたセレウコスの巨体から溢れる膨大な血は、紛れもない致命傷を物語るもの。回転鋸を唸らせながら、装甲の隙間から漏れ出る燐寧の声は、さながら悪鬼のそれである。
「逃げ場のないどん詰まりで、粉々に打ち砕かれてく。この世界で生きる人達が、いつだって味わってる苦しみ――よぉーく噛み締めてから、プトレマイオスに会いに――」
『何と、凄まじき暴力か……見事だ!』
そして次の瞬間、攻撃を終えた燐寧の喉をセレウコスの右手が捉え、装甲越しに雷撃がねじ込まれた。
ネメシスの力は雷を弾くまでには至らず、肉の焦げる臭いが黒煙と共に立ち込める。
無論、この程度で止まる燐寧とセレウコスではない。刃と雷、振動と轟音は、なお激しさを増して戦場に響き続けた。
ひたすら純粋な暴力で圧殺するという、清々しささえ感じる正攻法。
怨念に唸る鎖鋸刃を振るう燐寧の、悪鬼めいた猛攻は、セレウコスを更なる死の縁へと追い詰めたのだ――!
成功🔵🔵🔵🔴
効果1【狐変身】がLV3になった!
効果2【ダメージアップ】がLV6になった!
クィト・メリトモナカアイス
他の復讐者との連携し、SPDでディフェンス。
これまでに。
かんたんな戦いなんてものはなく、それでも我らは勝ってきた。
今日も同じ。
我らは強いし、我らは負けぬ。
最初から本気もーど。ネメシス形態で神々しい光を纏う守護者の姿に。
かわいいモナカたちをお休みさせて「震わすは鬣なき獣」。黄金猫拳打棒での近接戦闘に全力を注ぐ。
足の速さを活かしたダッシュ、ジャンプで周囲を跳びまわり、セレウコスの側面や背面、頭上に回り込んで死角から攻撃するように立ち回り、他の復讐者が攻撃する機会を作るための注意を引く連撃と、チャンスを狙った大きく振りかぶっての強打を適宜使い分け。
反撃の突進は無理に受け止めようとせず、大剣と角を黄金猫拳打棒で受けて貫かれたり切り裂かれたりだけは防ぎつつ、跳ね飛ばされた後の着地、衝撃吸収に力を注いで大きなダメージは避ける。
神も、そして王も。
民を害してそこに在るならば。
我がそれを滅ぼし、民を護る。
レイ・シャルダン
連携・アドリブ歓迎です。
数々の想いが、怒りが、この戦場に渦巻いている。
その中で、縁が薄いボクはボクに出来る役割に徹しましょう。
そう、あくまで冷静にこの盤面で必要な所に立つ事を考えて。
≪ - 人機接続:Lynx of Boeotia - ≫
その超視覚による知覚で敵の動きを常に【観察】して戦い
敵の動き、敵と味方の行動パターンを【情報収集】します。
仲間の動きを死角として利用して
飛行ユニット『アクロヴァレリア』を瞬間点火
その推進力による加速で一瞬で肉薄してパラドクスを発動
煌剣『シュトライフリヒト』による貫通の一撃を放ち
そのまま速度を緩める事無く【一撃離脱】し、ヒット&アウェイを行います。
さらに剣の抜き際にこちらの魔力を敵に流し込んで内側から暴れさせましょう。
敵の反撃には『アルヴァーレ』と『シャルダント』から発生する【結界術】を
緩衝材として使用してわざと大きく弾き飛ばされ、
飛行ユニットと姿勢制御用噴射装置【Leprechaun】の噴射で
地面との激突を回避し継戦能力を高めて戦い続けましょう。
伏見・逸
(連携アドリブ歓迎)(ネメシスモード:背の翼が巨大な竜の腕に変形)
必要に応じ、味方をPOWでディフェンス
ああ。逃げ道も背負ってるもんもなくなったとこで
寧ろ戦いに専念できるって盛り上がるクチかよ
いいぜ、ナントカ王よりその方がよく似合ってる
俺としても正直、殴り合うならそっちの方が好みだ
存分にやり合おうじゃねえか
言っただろう、俺はてめえにとっての禍だ
そう簡単に振り払えると思うな
周囲の味方と声を掛け合い、敵の動きや味方の消耗状態等の情報を共有
味方同士の連携を重視して動き、互いの隙や死角をなるべく減らす
消耗した味方がいれば、該当の者と敵との間に立ち塞がるように意識し、更に声掛けで敵を挑発して、自分に引き付ける
基本的には「負傷を厭わず、動ける限りは攻撃し続ける」姿勢
【デストロイスマッシュ】使用
翼を竜の腕に変形させ、【ダメージアップ】をはじめとするありったけの残留効果を乗せて叩き込む
敵の攻撃は長ドスや尻尾で受け流すか、竜の腕で受け止めにかかる
敵の動きを一瞬でも止めて、味方が攻撃を当てる隙を作れれば僥倖
ジズ・ユルドゥルム
闘争のための命…。そうか、それが貴様の本質か。
その決意は見事。
だが、私は貴様の生を肯定する気は無い。
「祈りの樹」を起動
手足が多少焦げていても、祈ることはできる。
壁面や天井に沿うように幹と枝を伸ばし、仲間と勝利王を枝葉の屋根で覆う。
私と祈りの樹がこの場に居続ける限り、敵は生命力を失い続ける。
勝利王をこの場で確実に討つため、少しでも長い間戦場に居続けたい。
立てなくなったなら這いつくばってでも。
敵へは枝や根を柵のように張り巡らせて牽制し、
中~遠距離の間合いを保ちたい。
回避目的ではなく、距離を取って敵の動作や味方の状況を俯瞰し、通信で共有するためだ。
反撃の雷は、祈りによって結界を強め、更に伸ばした枝葉で防御を試みる。
さっきの雷撃…予備動作が殆ど無かった。
僅かに雷が奔る兆候でもあれば即座に防御に入る。
亜人にとって、一人の人間の生命は、
一切れの肉ほどの価値しかないのだろうな。
この樹はな。たったひとりの「一切れの肉」が、無事に生まれることを祈る想いで出来た樹だ。
簡単に倒せるかどうか、試してみるといい。
致命傷を受け、敗北の縁まで追い詰められた勝利王セレウコス。
そこへ息つく間もなく追撃に襲い掛かったのは、四人の復讐者たちであった。
(「数々の想いが、怒りが、この戦場に渦巻いている……」)
ただ一人、玉座側から駆けつけたレイ・シャルダン(SKYRAIDER・g00999)は、戦況が佳境であることを瞬時に見抜いた。
床や天井を汚す血。深手を負い全身を血に染めたセレウコス。そして何より――戦場を満たす重々しい空気。精神の細い者なら心潰されそうな、膨大な思念とでも言うべきもの。
それらを感じ取ると同時、レイは取るべき行動をおのずと決めていた。
(「ボクはボクに出来る役割に徹しましょう。この盤面で必要な所に立つことを考えて……!」)
獣は、追い詰められた時が最も凶暴という。
今の状況において、セレウコスがその例に漏れると考えるのは、楽観と言われても仕方あるまい。
最後の最後まで冷静さを失うことなく、自分はサポートに徹しよう。そう決めたレイは、即座に人機接続状態を発動、己が知覚を研ぎ澄ませていく。
「≪ - 人機接続:Lynx of Boeotia - ≫。――勝ちましょう、皆さん」
「んむ。これまでに。かんたんな戦いなんてものはなく、それでも我らは勝ってきた。今日も同じ」
神々しい光を纏ったクィト・メリトモナカアイス(モナカアイスに愛されし守護者・g00885)が、厳かな声で言う。
他の仲間たちがそうであるように、勝利への執念はクィトもまた並々ならぬものだ。守護者の姿を取ったネメシス形態と、手にした黄金猫拳打棒(ごーるでん・ねこぱんちぼう)は、彼女の決意を裏付けるもの。
「我らは強いし、我らは負けぬ。覚悟すべし」
『ふむ。貴様を含め、全員が全力で戦う気構えのようだな。……良き面構えだ』
対するセレウコスの声は、不思議と穏やかだった。
体中に刻まれた傷は数え切れず、満身創痍は傍目にも明らか、疲弊の色はもはや隠しようもない。
そんな彼に対して余力を残して勝つ選択肢を、復讐者たちは誰一人として選ばなかった。
あくまで真正面から叩き潰してやると四人の眼が、そして放つ気配が物語っている。その事実は、幾千の言葉よりも雄弁にセレウコスの闘志に火を点けた。
『ぬうおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!』
セレウコスが雄叫びを上げるや、膨大な雷が双角に凝縮されていく。
風前の灯火――誰が言わずとも連想する、まさにその光景が、復讐者たちの前に現れていた。
この亜人は僅かに残る命の一片までも戦いに注ぎ込む気なのだ。それを前に、ジズ・ユルドゥルム(砂上の轍・g02140)は静かな声で呟いた。
「闘争のための命……そうか、それが貴様の本質か」
最初に戦った時に感じた威圧感とは比較にならぬ其れは、セレウコスが紛れもない本気であることを示している。
同時に、ジズは自らの精神を限界まで研ぎ澄ました。目の前の亜人に、確実な『死』を齎すために。
「その決意は見事。だが、私は貴様の生を肯定する気は無い」
ジズたちは確かにセレウコスを追い詰めつつあるが、それでなお、状況は油断を許さない。
万が一にも苦戦よりも悪い結果が出れば、この作戦は失敗に終わる。負けられないのは復讐者たちもまた同じなのだ。その覚悟を示すように、伏見・逸(死にぞこないの禍竜・g00248)はネメシス形態を発動。異形の姿へと変貌する。
「へっ。逃げ道も背負ってるもんもなくなったとこで、寧ろ戦いに専念できるって盛り上がるクチかよ」
闘志溢れる眼でセレウコスを睨みつける逸。
彼が背負う竜翼は、今や巨大な竜の腕へと変わり、その矛先を倒すべき敵へと向けている。
力と力のぶつかり合いは亜人だけでなく、逸もまた得意とするところだった。
「俺としても正直、殴り合うならそっちの方が好みだ。――いいぜ、存分にやり合おうじゃねえか」
『望むところだ。我が力、その眼に焼き付けるが良い!!』
五感を蹂躙する衝撃となって、猛き雷が響き渡る。
それが、死闘の開始を告げる合図と為った。
高らかな雷鳴が鳴り響く中、復讐者たちの攻撃は開始された。
先陣を切ったのは出口側の二人――ジズとクィトだ。
先行率アップで先陣を切ったジズは、床に木の種を植え、幹と枝をパラドクスの力で育み始める。
(「勝利王をこの場で確実に討つため、少しでも長い間戦場に居続けねば」)
同時、種は瞬く間に爆発的な成長を遂げ、天井を枝葉の屋根で覆い尽くす。
成長した樹木の結界がセレウコスを包んだ直後、ジズに降り注ぐのは双角から迸る轟雷であった。
激しい衝撃が走った直後、肉と髪の焦げる臭いが立ち込める。全身から煙を立ち上らせる彼女に、更なる雷撃が浴びせられようとした矢先、黄金猫拳打棒を構えたクィトがセレウコスへ向かって行った。
「ゆくぞー。えい。とう」
パラドクスの輝きを帯びた黄金猫拳打棒が、唸りを上げて食らいつく。
強弱と緩急を巧みに、真横から頭上から放つ殴打はまさに変幻自在。ひょいひょいと無造作に振るう拳打棒が命中する度、空気を震わす衝撃が走る。ネメシス形態となったクィトの攻撃力は、残留効果による強化も相まって、いまや一撃一撃が兵器めいた威力を秘めているのだ。
『ぬおおおっ!!』
「んむっ」
刹那である。輝く角を掲げたセレウコスの突撃が、大剣もろともクィトの身体に音を立てて激突した。
直撃を浴びれば只では済まない突進も、しかしネメシス形態のクィトが一撃で倒れることは無い。後ろへ跳ね飛ばされたのも一瞬、猫拳打棒で直撃コースを逸らした彼女はなおも猫拳打棒をぶんぶん振り回しながら食い下がる。
「まだ勝負はこれから。んむむむむむむむ」
「そうともよ。さぁて……そろそろ始めようぜ、セレウコス?」
セレウコスの至近距離に張り付くクィトに続き、逸が変形した竜腕を構えて突撃する。
長ドスにダメージアップを乗せて繰り出す『デストロイスマッシュ』は凄まじい威力を秘めて、セレウコスの巨体へと叩きつけられた。すかさずセレウコスも大剣で斬り返す。幾度かの剣戟を繰り返しながら、勝利王は逸の心に宿した何かを察したように、その目を僅かに見開いた。
『……貴様……!』
「……そういうこった。命を捨てて戦ってるのは、てめえだけじゃねえよ」
『知らずのうちに侮っていたのは、我ということか。……これは、詫びと思うが良い!』
大上段の一撃が、逸の肉体を切り裂く。
およそ死にかけの者が放ったとは思えない斬撃の威力は、ネメシスの肉体をもってしても殺しきることは叶わない。強靭にして獰猛なる亜人のしぶとさを垣間見たように、逸は肩を竦めて苦笑した。
「ああ、畜生。やっぱり強えな、この野郎は。……ジズ、生きてるか」
「心配はいらない。手足が多少焦げていても、祈ることはできる」
傷だらけなのは逸だけではない。返事を寄越すジズは元より、クィトもまた全身に打撲と切傷を負いながら戦っていた。
そうして、次の瞬間――クィトと逸、ネメシス形態の二人が一気に攻撃の勢いを増していく。
「んむ。今こそ仕掛ける時」
「だな。……行くか」
『む? 貴様等……まさか!』
間を置かず二人の意図を悟ったのか、復讐者へ初めて見せる感情がセレウコスの顔に浮かぶ。
感情の名は、焦燥というものであった。
復讐者側の意図とは即ち、数人がかりの連携で大打撃を与えるというものであった。
この連携はいわば即席の拵えであり、洗練されたとは到底言えない程には粗が多い。
仮に戦いの序盤であれば、セレウコスは力でこれを捻じ伏せただろう。
だが、今はそうではない。
まずもって、連戦に次ぐ連戦で底をつきつつある彼自身の余力。
加えて、復讐者側には重なりに重なった残留効果の強化と、ネメシス形態の者が二名。
更には、結果的にではあるが――出口側と玉座側の二方向から行われる複数名の挟撃。
これら全ての不利を覆しきる力は、今のセレウコスには最早残っていなかった。
そして――人機一体となったレイが、いま突撃を開始する。
「一条の光がボクを導く、――見極めたよ、その守り……貫く!」
飛行ユニットのアクロヴァレリアを瞬間点火し、最大加速。
推進力を用いた突撃はダメージアップの力を更に積み増して、一直線にセレウコスへと肉薄を果たす。
自身の神経を『Boeotia』と接続して放つ煌剣シュトライフリヒトの一撃が、『人機一体:精閃縫い』のパラドクスとなってセレウコスの分厚い巨躯を突き刺した。
人間の知覚を超えた超視覚でレイの繰り出す刺突によって、流し込んだフォトンが巨躯の内部で暴れ狂う。体を崩壊させていく激痛に歯を食いしばって耐えながら、セレウコスはなおも倒れない。雷が宿った双角と大剣を突きつけて、速度を緩めず戦場を舞うレイへ砲弾のごとき勢いで突進した。
『ぬうあ!!』
「うぅ……っ!」
衝撃。激突をもろに浴びたレイが、玩具のように弾き飛ばされる。
地面に叩きつけられる刹那に空中で体勢を整え、奇跡的にも直撃は避けたが、それでなお受けたダメージは軽くない。
「まだ、まだ……負けません!」
全身が砕け散るような衝撃に耐えながらセレウコスを見遣るレイ。
勝利王の咆哮が、今まさに滅びゆく者の最後の足掻きを示すように、苦悶を帯びて響き渡る。
なおも激しさを増す戦闘の中を飛びながら、レイは仲間と共に懸命に戦い続けた。
先程から逸と剣戟を演じるセレウコスを観察している彼女だが、戦闘を有利に導くような情報は殆ど得られない。だが――そんな中にあって、確信をもって断言できる情報が一つあった。
「言っただろう、俺はてめえにとっての禍だ。そう簡単に振り払えると思うな」
『……むうう……!』
セレウコスが防戦に追い込まれているのだ。一時的にではなく、完全に。
それは今までの死闘で初めて目にする状況であり、セレウコスの紛れもない劣勢を示すものだった。
逸が長ドスを叩きつける度、セレウコスの巨躯には大きな傷が刻まれていく。ネメシス形態であることに加え、重ね続けた残留効果の威力が大いに威力を発揮しているのだ。
特に大きいのは、逸とレイ、そしてクィトが追加したダメージアップであろう。彼らが積み増した同効果のレベルは現時点で実に『9』。そこへネメシス形態の復讐者が二人とあっては、強大なジェネラル級のセレウコスであっても払いのけることは至難の業だった。
(「もう少し……もう少しで、勝てます!」)
けして広くはない戦場を巧みな機動で飛び回りながら、レイはそう判断する。
油断でも慢心でも、まして気の緩みでもなく、ただ純粋な事実としてそのことを確信する。
「貫きますよっ、シュトライフリヒト!」
『ぬおおっ!』
セレウコスが逸に斬撃を浴びせた直後、即座に加速したレイが煌剣を振るった。
反撃の突進に吹き飛ばされた体が地面に叩きつけられる刹那、『Leprechaun』の噴射で宙を滑るように激突を回避。軋みを上げる身体を叱咤して、彼女もまた戦い続ける。
慎重に大胆に、けして詰めを誤らぬよう、仲間が最後の一撃を叩き込めるように。
サポートに徹するという己に課した役割に忠実に、レイはなおも戦場を飛び続ける。
「ジズさん、大丈夫ですか?」
「何とかな。奴の最期を拝むまでは、手足が捥げたとて留まってみせるとも」
レイの問いに、ジズは淡々とした口調で言う。
他の仲間たちがそうであるように、激戦を続けた彼女もまた傷だらけ。満身創痍の体を引きずるようにして、気力を支えに立っているような状態だ。
牽制目的で柵のように張り巡らせた枝や根も、絶え間なく降り注ぐ雷によって焼き焦がされ、既に跡形も残っていない。
枝葉による防御も試みたのは戦闘開始の数分のみ。さしたる意味が無いと分かってからは、強化した攻撃とグロリアスの力で何とか戦場に立ち続けていた。
「……亜人にとって、一人の人間の生命は、一切れの肉ほどの価値しかないのだろうな」
いまだ荒れ狂い続けるセレウコスの暴威を見遣りながら、ジズは呟いた。
クロノヴェーダである彼らの力は、人間の其れを大きく凌ぐ。彼らの眼に、ジズたちは虫程度にしか映らないのだろう。
だが、同時に彼女は思う。どれほど非力な存在だろうと抗うことは出来る。それは集め束ねることで、強大な敵をも滅ぼす力となり得るのだと。
「大地に愛され、病を寄せず、どこまでも高く伸びますように」
『祈りの樹』のパラドクスで新たな種を蒔き、ジズが祈りを込める。
同時、祈りを聞き届けるように、種はまたも驚くべき勢いで成長を始めた。
根を下ろし、葉を茂らせ、通路の天井を埋め尽くすように成長したのは巨大なアカシアの樹だ。大樹に咲き誇る黄色の花々がパラドクスの光を放ち、瞬時に戦場を包む。すべての生命を肯定し、歴史改竄者を否定する結界は、太陽の如き力をもってセレウコスを焼き焦がし始めた。
「この樹はな。たったひとりの『一切れの肉』が、無事に生まれることを祈る想いで出来た樹だ」
『……ぐ、ぐうう……!』
苦悶の呻きを上げるセレウコスを睨み据え、ジズは言った。
「簡単に倒せるかどうか、試してみるといい」
剣先から発射される雷光が、ジズの肉体を貫く。
戦闘不能を免れぬダメージを受けて、しかしジズは倒れない。凌駕率アップの力で踏み止まり、鋭い視線と共にセレウコスへと告げる。
「言っただろう、最期を見届けるまでは倒れない。私も、そして、この樹もだ」
『それが、貴様の踏み止まる理由か。だが……我はまだ斃れはせぬ!』
「んむ。汝は残念かもだけど。お遊びはお終い」
パラドクスの力に全身を侵食されながら、なおも戦場に踏み止まって吼えるセレウコス。
そこへ割り込んだのは、黄金猫拳打棒を握りしめたクィトであった。ネメシス形態の力を込めて振るう猫拳打棒の乱打は、振るう度にセレウコスの体力を削って行く。
一撃、二撃、三撃。
『震わすは鬣なき獣』のパラドクスにクィトが込めるのは、民を虐げたセレウコスへの怒りであった。
「神も、そして王も。民を害してそこに在るならば。我がそれを滅ぼし、民を護る」
大きく振り被った黄金猫拳打棒を、クィトが叩きつける。
それは守護者の信念と矜持を秘めた、最後にして渾身の強打だ。
ゴルフクラブさながらに振り上げる黄金猫拳打棒は、黄金の輝きよりもなお眩しいパラドクスの光を帯びて、セレウコスの鳩尾に深々とめり込み、そして――。
『ぐ……ぐわあああああっ!!』
クィトの一撃は、けして倒れることの無かった勝利王を吹き飛ばし。
巨大な地響きと共に、その巨体を、ついに地面へと叩きつけた――!
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【託されし願い】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
【建造物分解】LV1が発生!
【クリーニング】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV9になった!
【ドレイン】がLV2になった!
エイレーネ・エピケフィシア
無二の戦友クロエ様(g08917)をディフェンスし共闘
セレウコス! 不遜にも、神の雷霆を得たりと嘯く者よ!
長き戦いの旅の中で、わたし達は苦難に喘ぐ数多の人々を目にしてきました
アンティオキアを彼らの安寧の地とするために――ここであなたを討ちます!
有翼の黄金鎧纏うネメシスを解放
≪神護の輝盾≫をクロエ様の側で構え、彼女と自身を共に護って戦います
二人で死角や攻撃時の隙をカバーし合い、可能な限り手傷を抑えましょう
攻撃時は『勝利齎す女神の威光』を発動
盾を構えて身を護りながら、もう一方の手に握る≪神護の長槍≫から光線を放出し続ける攻防一帯の構えを取ります
敵の技に対しては敢えて懐に踏み込み、盾を振るって拳や剣の柄を押しやります
これで剣の振り抜きから勢いを奪い、威力の抑制を
その後すぐ槍を再び突き付け、敵が消え去る瞬間まで光線を浴びせ続けます!
偽りの神威と奪った称号の下、暴虐を為す者が、勝利の女神の恩恵に浴すことは断じてありません
――真なる勝利の祝福は、我らにこそあり!
怪物の王よ、奈落の深淵へと墜ちなさい!
クロエ・アルニティコス
一番の親友のエイレーネ(g08936)をディフェンスし、ともに戦います。
ただの亜人を一匹殺しても、それは一匹分の価値でしかありません。
ですが、お前は違います。
お前をここで逃せば、それだけでアンティオキアに限らず人も都市も、多くのものが蹂躙されるでしょう。
お前は殺します。ここで、確実に。
エイレーネとはお互いを庇える位置に立ち、死角や隙を補います。
角による雷撃をディフェンスし、剣による攻撃はエイレーネに任せることで不得意なことをカバーしあいます。
攻撃は波状攻撃を意識し、エイレーネの攻撃後に畳みかけるように三相の杖に灯した【三界巡る冥府の火】を放ち攻撃し、お互いの攻撃がより通るように。
頑丈な相手ですから、攻撃後も反撃が来ることを意識し、すぐに防御やディフェンスの準備。
「守護の青薔薇」の防御結界と結界術で反撃の二本の角から放つ雷撃から身を守ります。
お前たちには冥府も不相応です。
冥府の女神にして魔術の女神ヘカテーを奉ずる魔女として――この炎でお前を奈落へと堕とします。
《七曜の戦》に勝利し、アンティオキアに到達し、包囲作戦の開始からおよそ四ヶ月半。
蹂躙戦記イスカンダル攻略を巡る大きな戦いが一つ、今ここに終わりを迎えようとしていた。
雷鳴轟かせるセレウコスの五体を、神々しい黄金の輝きが照らす。
それはネメシス形態を取るエイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)の、黄金鎧が放つ光だ。
「セレウコス! 不遜にも、神の雷霆を得たりと嘯く者よ! わたしたちが、ここであなたを討ちます!」
歴史を改竄し、罪なき人々を蹂躙する亜人たち――その存在を決して許すことは無いと、エイレーネは告げた。
そんな彼女を、セレウコスは無言でじっと睨み据える。
満身創痍を通り越し、死相すら浮かんだ顔の双眸は、しかし未だに死んではいない。
執念か、或いは全く別の何かか。爛々と輝く視線で復讐者を睨むセレウコスを、クロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)もまた睨み返し、告げた。
「ただの亜人を一匹殺しても、それは一匹分の価値でしかありません。ですが、お前は違います」
クロエは言う。お前をここで逃せば、それだけで人も都市も、多くのものが蹂躙されると。
全ての復讐者はおろか、セレウコス自身さえ異は唱えぬであろう指摘。それは同時に、彼が並の亜人とは一線を画する猛将であり、存在自体が危険に過ぎる者であることを物語っていた。
「故に、お前は殺します。ここで、確実に」
勝利が揺るがぬものとなって尚、クロエにもエイレーネにも油断する気は無い。
お前が指先一つ動かなくなるまで全力をもって完全に殺しきるという、それは決意の表明である。
「参りましょう。クロエ様」
クロエの傍でエイレーネが神護の輝盾を構えた。それは無二の戦友を護り、共に生還するという意思の現われであった。
そんな彼女を庇うように、クロエもまたエイレーネの死角を補うように立つ。一番の親友に示す、それは無言の信頼だ。
と――その時。セレウコスが、二人に向かって口を開く。
『我を殺し、貴様らは何とする?』
死にかけの者とは思えぬ重々しい声で、セレウコスは問うた。
自分はここで討たれる。だが、自分を討って、それでお前たち復讐者はどうする気なのかと。
武人とも統治者とも違う、『勝利王セレウコス』という亜人の魂そのものが放ったであろう問い。それに対して、クロエは敵意も露わに杖を構えて言う。
「知る必要はありません。お前はここで――」
「……良いでしょう。答えます」
クロエを目線で制し、エイレーネは真正面からセレウコスを見据えた。
敬意から来る行動では断じてない。この亜人に真の意味で引導を渡すには、ここで答えをはぐらかすことは許されないと、そう確信を抱いたからに他ならなかった。
「セレウコス。わたしたちが、この瞬間に至るまでの道程は、決して楽なものではありませんでした」
毅然とした口調でエイレーネが言う。
長き戦いの旅は苦難の連続だった。中でも彼女が心を痛めたのは、アンティオキアへの道中で幾度となく眼にした光景だ。
それは、亜人の蹂躙によって苦難に喘ぐ罪なき幾多の人々。弱いという只それだけで、全てを奪われ虐げられる人々。
そんな弱き者たちの為に自分たちは戦うのだと告げ、エイレーネは言い放つ。
「あなたを滅ぼし、わたしたちはアンティオキアを人々の安寧の地とします。それが答えです!」
「……殺すのはお前だけではありません。私たちは全ての亜人を殺し、滅ぼします。無論、イスカンダルも殺します」
『ふ、ふふふっ……ふははははははははは! はっはははははははははははははははははは!!』
エイレーネとクロエの言葉を聞いて、セレウコスは笑った。
こんなに笑える冗談は聞いたことが無いとでも言いたげな、心底愉快そうな笑いだった。
『良かろう! 我の最期の敵には相応しい!!』
大剣を構え、セレウコスが雷を漲らせる。
エイレーネとクロエもまた、無言のうちに得物を構え――かくして、最後の戦いは開始された。
「冥府の女神にして魔術の女神ヘカテーよ、あなたを信じる者に目をかけて頂けるなら、どうかこの杖に神話の灯火を!」
女神ヘカテーに捧げるクロエの祈りが、冥府の炎を灯す。
杖の先端から発射される『三界巡る冥府の火』の黒炎は、セレウコスの全身を瞬く間に焼き焦がしていった。
セレウコスは半ば炭化した両腕でなおも剣を握り、先端に雷を集める。それを嫌悪に満ちた眼で睨み、クロエは告げた。
「お前たちには冥府も不相応です。女神ヘカテーを奉ずる魔女として――この炎でお前を奈落へと堕とします」
『冥府がどうした! 奈落がどうした!! 弱き人間の作りし信仰の世界なぞ、神々もろとも我が蹂躙してくれるわ!!』
反撃の雷を浴びながら、クロエは背筋が冷えるのを感じた。
虚勢や強がりでは無く、この亜人は――自分ならばそれが出来ると本気で考えている。
大国を治め、数多の軍を率い、有力なジェネラル級を従えた勝利王セレウコス。並の亜人にあるまじき傑出した存在が持つ『個』の力は、こうも凄まじいものなのか。そして、こんな怪物さえも従える断片の王イスカンダルとは、果たしてどれ程の恐るべき相手なのだろう。
光の奔流と冥府の炎、そして轟く雷鳴。
パラドクスの応酬を経る毎に、エイレーネとクロエの攻撃は容赦なくセレウコスを抉り、焼いて行く。
もはや原型を失いつつある五体でなおも飛んで来る反撃は、斬撃と雷撃となって二人の復讐者を傷つける。
だが、先に力尽きるのがセレウコスであることは、もはや誰の目にも明らかであった。
「エイレーネ、好機です。……最後の一撃を」
「ええ。クロエ様」
二人の間に、多くの言葉は必要なかった。
エイレーネは長槍を構え、その穂先をセレウコスへ突きつける。
長き戦いに終止符を打つ、勝利王の心臓へ打ち込む楔となる、最後にして最大の一撃を放つ為に。
「偽りの神威と奪った称号の下、暴虐を為す者が、勝利の女神の恩恵に浴すことは断じてありません」
『ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!』
大剣を振り被ったセレウコスが、雄叫びを上げて迫る。
エイレーネの黄金鎧が輝きを増し、鎧から溢れる光の粒子が戦場を満たしていく。
そして――次の瞬間。少女の背を押すように、一陣の風が吹き荒れた。
「真なる勝利の祝福は、我らにこそあり! 怪物の王よ、奈落の深淵へと墜ちなさい!」
敬虔な信仰が生み出す加護の光明、『勝利齎す女神の威光』。
そうして長槍から溢れ出た光の奔流は、セレウコスの肉体を雷もろとも塗り潰し、
『……イスカンダル王よ……悔いはありませぬ……!』
敗れ去った勝利王の微かな声だけを遺して、戦いの終幕を告げる静寂が訪れる。
骨の一つ、肉片の一欠片さえ痕跡を残さない、完全な決着。
其れはまさに蹂躙戦記イスカンダルの巨星がひとつ、地へと墜ちた瞬間であった。
「……終わりましたね。クロエ様」
「ええ。お疲れ様です、エイレーネ」
エイレーネの手は無二の戦友へ。クロエは一番の親友の手を。
長き戦いに幕を下ろした二人が手を取り合って敢闘を称え合う中、復讐者たちの歓声が秘密通路に木霊する。
勝利王セレウコスは討たれ、亜人の支配は終わりを告げた。この都市が人々の賑わいで満ちるのも、きっと、そう遠い先の話ではないだろう。
出口を抜けた先、出迎えるのは晴れ渡る青空。
亜人の支配から解放された大都市アンティオキアに、勝利を祝う歓声はいつまでも響き続けるのであった。
🎖️🎖️🎖️🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【隔離眼】LV1が発生!
【罪縛りの鎖】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!
最終結果:成功 |
| 完成日 | 2024年01月08日 |
| 宿敵 |
『勝利王セレウコス』を撃破!
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