リプレイ
瀧夜盛・五月姫
おーじさん?
そんな暗い顔、して、どうした、の?
空も街も、こんなに、明るいのに、もったいない、よ?
ねえ、よかったら、姫たちと一緒、あそばない?
街には、出店もあれば、陽気なピエロだっている。
座って、落ち込むより、楽しいこと、したほうがいいよ。
と、【怪力無双】で無理やり引っ張って、デート、誘おう、かな。
ノイン・クリーガー
・まず《現地服》を装備して休暇中の帝国兵士を装い接触する。
【演技】でいつもとは違う声色にしておこう。
それと酒を飲んで少し酔っておくよ。
・煙草を咥えて『火を貸してくれ』と頼もう。それを切っ掛けとする。
・自分もサイボーグ兵士であると告げてお互いの身の上話でもしよう。
天涯孤独で軍だけが自分を受け入れてくれた。
最近、何者かに戦友が殺られた。
もはや俺が死んでも誰も哀しまない。
それでも今日は良い日だ。こんな1日を過ごせることに感謝している。
自分からはそんな内容だが相手が話すなら聞き手に撤する。
・『アプフェルショーレでワインを割ると旨いぞ』と言ってワインが入ったスキットルを渡す。
『次に会った時に返してくれ』
飛鳥・遊里
『彼』と話す前に、作って持っていきたいものがある
そこいらのガラクタから、『からくり箱』を作る。パズル仕掛けの箱な。難易度は高めだけど、ゴツゴツの手でも問題なく解けるようには工夫しておく
『そこの退屈そうにしてる兄ちゃん、暇してるならちょっと助けてほしいんだけど、いいかい?』
からくり箱を見せて、こいつを開けられないかって話しかける。開けてもらえたら、中に入ってるモノはあげるよ。俺は中身を知りたいだけだからってな
『時間が無いなら、持って帰って試してくれても構わない。もし開くことができたらまたここで会おう』
中身は…コインを一枚。それに【操作会得】で、俺の想いを込めておくよ…必ずまた会おうな、約束だ
朔・璃央
双子の妹のレオ(g01286)と
レオが居なければ
彼のようになっていたかもですね
天使か悪魔の手先だなんて考えたくもないですが
そうなった未来を思うと
救いの手を欲しがってしまいそうです
観光に訪れた兄妹を装って
彼に接触を試みましょう
美味しい食べ物を聞き出せたら万々歳ですね
美味しそうなものを飲まれてますね
視線を合わせながら笑顔で声をかけて
買える場所やおすすめの食べ物を聞いてみましょう
すぐに買えるものがいいですね
お礼を兼ねて一緒に食べることにしましょうか
その地の人とその地の物を食べる
旅の醍醐味ですね
次に訪れた際に、また一緒に食べましょう
次のおすすめも期待してますね
それでは、また会いましょう
朔・麗央
双子の兄リオちゃん(g00493)と
1日のお休みを引き換えに死ねってことよね
やっぱりクロノヴェーダの考えることって非道
ゾルダートも元々は人だったんだもんね
道が違えばひょっとしたら私も……
ううん、今は被害が大きくならない様にすることを考えよ
観光に来た兄妹を装って笑顔で彼に話しかけてみるよ
お兄さん地元の人だよね?
本当だ、美味しそうな物飲んでいるね
私達も飲んでみたいなって思ったところなんだ
地元の人ならきっとその飲み物に合う美味しいものも知ってる?
っていう感じで話を広げられたらいいな
美味しい物が聞き出せたら一緒に買って、食べて
聞きたいな、お兄さんの話
別れ際に
またね!またお話聞かせてね
って伝えるね
シセラ・カドシュ
故国フランスの隣にある国だけれど
わたしが知っている事は多くはない
どんな国で、街なのか、とても興味があるよ
丁度いい所に、とゾルダートに声を掛け
この街の案内をしては貰えないかな、と
道に不慣れで困っているわたしを助けると思って、ね?
おいしい物や、楽しい場所
キミが知る範囲で構わないから、と少し強引に
此処は良い街だね
わたしの故郷は、花の都と呼ばれていたけれど
楽しい思い出はそれほど多くなくてね
一緒に遊ぶ友達もいなかった
今は、とても楽しいよ
此処で会ったのも何かの縁、
わたしと友達になってはくれないかな
難しければ、暇な時に
話相手になってくれるだけでも良い
またキミと話が出来たら嬉しいよ
わたしは、シセラ。キミは?
ノスリ・アスターゼイン
何それ、うーまそ!
ゾルダートが手にした飲み物へ興味津々
お馴染みヴルストとかも街で買えたら
何か飲み物だって欲しくなるじゃない
観光がてらの名目
お勧めの飲料やら場所やら
案内して貰いたいな
駄目?
だって兄サン暇そうだったし
いや、もしかして俺の方が年上?
さっき街角で擦れ違った子に
おじさんって呼ばれたんだけど、酷くない?
俺まだ20歳なんだけど
って、
ここ笑い飛ばして欲しいところだから!
頷かないで?!
なんて
あっけらかんと笑って
案内のお願い
景観を楽しみたいな、と
郊外へ誘導出来たら
被害を抑えられて安心かな
人もおおらかで
良い風景だ
あんた――名前何て言うの?
この街が好きかい?
また案内してくれるか
今度は麦酒で乾杯も良いな
エリザベータ・シゲトヴァール
●心情
私は祖国を信じて戦った。故郷の同胞達の為だと思って改造手術に志願した。兄さんや父さんの様に国に尽くしたかった。
そこに後悔なんて無かった。
……でもこの人は?
その祖国にすら裏切られ、目標とすべき肉親もおらず、本来守るべき同胞達を殺す為に送り出された……。
それって、あんまりな話じゃない。
●行動
基本的に相手の話を聴く。
辛かった?寂しかった?
もしかしたら、弱音を漏らす相手すら居なかったのかも。
全ては無理でも、少しだけでも良いから、吐き出してみて。
私は貴方を否定しない。
生まれた場所が違ったら、私は貴方と同じだったかも知れない。
生憎と気の利いた言葉の一つも言えないけど、少しでも彼の気が紛れれば。
鬼歯・骰
それ何?
ゾルダートが手にした瓶を指差し声かけて
カツアゲじゃねぇよと仏頂面
林檎の炭酸水か、まだ昼は暑さもあるし美味そうだ
ツリガネ(g00541)も店で出したら売れるんじゃないか
生憎と全然此処らの事詳しくねぇから
美味いもん教えてくれるなら助かる
物騒なばっかりの世の中で
うっかり死にぞこなったんじゃねぇかなって日頃から思ってるが
知り合った誰かだとか、覚えた事ってなんか残るんだよな
だからそのジュース見たらアンタの事をだとか
とぼけた面みたらツリガネの事を思い出すんじゃねぇかなって、イッテェな!
ああ、頼れる奴がいるとこっちも有り難いな
アンタがいいなら付き合ってくれ
無理強いはしねぇが
んじゃ、またな
鐘堂・棕櫚
すみませんいきなり
骰さん(g00299)みたいな強面に声掛けられたら驚きますよね
良かったらそれ、売ってる場所を教えて貰えません?
合いそうなお菓子類なんかも
俺はジュース屋やってて
こっちの骰さんは凄い甘党の人なんです
愛想良い笑顔を常時浮かべて
とぼけ顔と評した人の踵は蹴りますけどね
あなたも甘い物お好きですか
ドイツって美味しいもの多すぎますよね!等々
休日に相応しい他愛の無いお話をあれこれと
俺ら暫くこの街で過ごすんで、よければまた会いませんか?
あなたのお話をまだ聞いてみたいなあ、と
これから先への縁を繋ぐ持ちかけは
未来への心残りを作る意図
再会が叶ったとて
それは戦場でしょうけれど
おくびにも出さずにただ笑って
レント・オルトマン
アプフェルショーレか、あれは良いぞ
子供の時などよく飲んでいた
あのゾルダードに未練を与えれば良いのだったか
友人の弔いに来た、という体で接触しよう
友人、というほど長付き合いがあった訳ではない
ほんの少し話し、同じ飯を食べ、同じ戦場で戦い、奴だけ死んだ。それだけさ
身体の幾許かは無くなっていたが、識別できる程に残ったのは幸いだ
これが全部吹き飛んだとなれば、弔いようが無かった
友がいない?そんなもの勝手に名乗っておけばいい、死人に口無し、というやつだ
戦友よ、別離は我等の宿命ではないか
というフレーズもある
祖国のために死に行く者であれば皆友人と言っていい、俺は言う
何ならこいつで乾杯でもするか?そうすれば友人だ
ドナ・ゴーティエ
おや、同胞ですか?
己の改造部位を見せつつ話掛けます
この邂逅に感謝すると共に
折り入って御相談があります
…実は観光がてら街を歩いていましたら
つい燥いで…買い過ぎてしまいました
紙袋にはブラートヴルストやブロートヒェン…
キルシュクーヘンもあります
宜しければ共に如何ですかと勧めます
近くのベンチに腰掛け、それ等を堪能しつつ
街並みを――空を見る
今日は好い天気で良かった
明日も晴れますでしょうか?
世間話を交え、のんびりと
また御会いする事がありましたら
食事を一緒して頂けますと幸いです
…これでも結構楽しみなのですよ?
たとえ我が身に流れるそれが
血潮か、オイルか分らなくなったとして
心には、同じぬくもりを抱けるのですから
瑚雛・凛櫻
アドリブ大好き
なんだか気が重い話ね…
自爆して死ぬこと覚悟だなんて…敵ではあるけれどやるせないわ
心残りがあるゾルダートを少しでも増やすために私も助力するわ
まずは、気迫の無いゾルダート探して、その子を狙っていくわね
そうね…私、武器の扱いは得意なのメンテナンスしてもいいかしら?なんて体のいい常套句を言いながらお話を聞くわね
折角こんな素敵な武器をつけているのに巨大化して今後もう使えないだなんて勿体ないわ
だって…貴方にはもっと(改造する)可能性があるんですもの!!(機械オタク視点)
その可能性を一瞬で無に返すだなんてとんでもないわ
四葩・ショウ
ねえ、それ
美味しい?
彼が持つ瓶を指さし
『演技』に合わせ
衣装や髪は、少しみずぼらしく見えるよう汚し
男の子と見間違えられるなら話を合わせ
軍人になりにきたのに
迷子になるなんてね
この街の事を教えてくれない?と詰寄る
『おれ』はショウ、君は?
待って
追い払われてもついてくから!
『家族を奪われた』こと
あの人達は『おれ』を厄介者にするから
ここまで逃げてきたのだと
皆の為に戦って見返してやる
だから、だから軍人になるんだ
伏せた面をあげて
まっすぐに彼の瞳を見つめ
嬉しい
もうずっと、ひとりだったから
初めての友達だ
また、教えてよ
そうだ、明日
明日もここで待ってるから!
来なくても待ってる
約束だと
ブルーのリボンをその手に結ぼうと
●FOLGE 0: HINTER DER ECKE
機械化ドイツ帝国南部の小さな街。誰かの奏でるアコルデオンが柔らかく耳を撫でる街角で、一人の兵士が空を見上げていた。長いベンチが小さく見えるほどの巨躯にもかかわらず、その背はやけに狭く、寂しげに見える。
少し離れた建物の陰から武骨な兵士の後姿を覗き込み、エリザベータ・シゲトヴァール(聖イシュトヴァンの剣・g00490)は柳眉をひそめた。
「私は祖国を信じて戦ったわ。同胞達のためだと思って、改造手術にだって志願した。……兄さんや父さんのように、国に尽くしたかったから」
兵士を志したことに後悔はない。戦うことは彼女の誇りだ。けれども、まだほんの少女に過ぎない彼女が、改造手術の苦しみに耐えても強さを求め、戦う道を選んだのは、目指す人々の背中がそこにあったからだ――自らの力が、弱い人々の助けになると信じていたからだ。
「でも、……だったらあの人はどうなるの?」
目標とすべき友も肉親もなく、祖国には切り捨てられて、守るべき同胞を殺すために死ぬ。
あんまりな話じゃない、と唇を噛んだその手で、エリザベータは煉瓦の壁に白手袋の指先を立てる。吐き出すような言葉にじっと地面を見つめて、朔・麗央(白鉄の鉤・g01286)が言った。
「一日のお休みを引き換えに、死ね……ってことだもんね」
ぎゅっと握り込んだ指先が、スカートの裾に皺を寄せる。彼女がいたのとは場所も時代もまるで異なるこの世界だが、やはりクロノヴェーダのやり口は非道だ。普通の人間を改造して配下に仕立て上げるなど、考えただけで背筋が凍る。
(道が違えばひょっとしたら私も……)
悍ましい想像を払うように首を振ると、淡いブロンドがプラチナの波を打つ。口にはせずとも彼女が何を考えているのかは想像がついて、朔・璃央(黄鉄の鴉・g00493)も心密かに頷いた。
(レオが居なければ、俺も……)
彼のようになっていたのかもしれない。世界から切り取られたあの東京で、天使か悪魔の手先としてこき使われるなんて考えたくもないが、万が一そうなったらと想像すると堪らない気持ちになる。それこそ誰かの手で救われたいと願ったとしても、おかしくはないだろう。
「敵ではあるけど、やるせない話よね。せっかくあんな素敵な武器をつけてるのに――コホン。もとい、気が重いけどしっかりやらなくちゃ」
よし、と両手を打ち合わせ、瑚雛・凛櫻(滅びの箱庭、綻びの記憶・g00518)は重苦しい空気を切り替えるように言った。
「それじゃ、早速始めましょっか!」
哀しきゾルダートの最期の日に、ささやかな思い出を添えるため。無言のうちに視線を交わして、十余名のディアボロス達が街の人混みに紛れていく。
●FOLGE 1: AN DER BANK
振り返ってみれば本当に、なんでもない人生だったなと思う。
家族はいない。友達もいない。機械化手術に適合して脳改造を免れたのに、持って生まれた気の弱さがそのまま残ってしまった。上官には役立たずと詰られたし、同輩達には笑われた。全くもって、これを惨めと言わずしてなんと言おう?
はあ、と髑髏面の隙間から深い溜息をつき、両手で支えた緑の瓶を口元へ運ぶ。両親がまだ生きていた頃、休みの日に街へ出掛けると、決まって買ってくれたアプフェルショーレ――機械化された喉でも、その味と香りを変わることなく感じられるのは救いだった。これは特筆すべきことの何もない彼の人生の中の、数少ない良き思い出なのだから。
「悪いが、火を貸してくれないか」
「……え?」
不意に耳についた声が、よもや自分に向けられたものだとは思わなかった。林檎のラベルの小瓶を膝に置き、ゾルダートは顔を上げた。その先には、短い白髪を後ろへなでつけた壮年の男――ノイン・クリーガー(ゴースト・g00915)の姿が在った。咥えた煙草の先端を機械化された指の先でつついて見せ、男はもう一度言った。
「火を貸してくれ、と言った」
「火……って言われても」
僕、煙草吸わないからと、申し訳なさそうに兵士は言った。なんだ、と拍子抜けした様子で煙草をジャケットの胸ポケットに戻し、ノインはベンチの端に腰を下ろす。すると微かに匂った酒精に気づいて、兵士は隣に座る男の顔を覗き込んだ。
「お酒飲んだ?」
「……最近、戦友が殺られてな」
両肘をベンチの背もたれに置いて、男は天を仰いだ。そうなんだ、とぎこちなく相槌を打つゾルダートは凡そ話し慣れている風には見えなかったが、構わずに続ける。
「元々、天涯孤独の身だ。居場所は軍と戦場だけ――あいつが死んじまった今、俺が死んでも哀しむ奴なんていないだろうな」
「……あなたも、ゾルダート?」
「見れば分かるだろう。もっとも『休暇中』だが」
「休暇中……」
金属の指を動かして見せたノインに、ともすると自分と同じ境遇を感じ取ったのか。ゾルダートの声色が僅かに変わった。表情の見えない髑髏面を一瞥して、男は再び空へ目を戻す。
「だが、それでも今日はいい日だ。お前さんみたいなのにも会えたしな」
掃き溜めに暮らすような毎日でも、週に一度、いや月に一度でいい。何かが変わるような一日があると、もう少し生きてみようという気になれる。
さてと膝を打って立ち上がり、ノインは振り返りざま、銀のスキットルを放った。そしてゾルダートがあたふたとそれを受け取るのを見て、微かに口角を上げる。
「アプフェルショーレで割ると旨いぞ。……次に会ったら、返してくれ」
ひらりと背中越しに手を振って、壮年の兵士は去っていく。受け取ったスキットルと手中の瓶を見比べて、ゾルダートは小さく首を捻った。
「次……って言われても」
これから死にに行く彼に、『次』などないのは自明だ。困ったなあと見渡しても、白髪頭の後姿はもう、雑踏の中である。
仕方なく胸の装甲を開け、貰ったものを中にしまい込んでいる、また誰かが目の前に立つ気配がした。
「お。いいもの飲んでるじゃないか」
声を掛けてきたのは、これまた軍人風の男だった。やや癖のある短いブロンドにがっしりとした体格はいかにもゲルマン系だが、黒いズボンの裾から覗く黒光りする金属の脚は、彼もまたただの人間ではないことを物語っている。
「アプフェルショーレだろ? 子どもの時によく飲んでいた」
よく人に話しかけられる日だな、とゾルダートは思う。しかしこの男も一民間人という風体ではないから、もしかしたら話し掛け易い相手に見えたのかもしれない。
「ここへは任務で?」
「ああ、うん……そんなところ」
あなたはと聞き返すと、金髪の男――名を、レント・オルトマン(エンデクーゲル・g01439)と云う――は苦笑して、ベンチの隣に腰を下ろした。
「友人の弔いに来た」
膝の上で組んだ両手に顎を乗せ、レントは言った。特に驚きもしないが、なんと返せばよいかも分からずに、ゾルダートはもごもごと口にする。
「さっきも、そんな人と話したよ」
「そうか。それだけ戦火が広がってるってことだな」
便宜上、友人と言ったものの、それほど長い付き合いがあったかといえばそうではない。同じ釜の飯を食って同じ戦場で戦い、彼だけが死んだ。よくあることだ。なのにどうにもやり切れないのは、生前に交わしたたった二言三言の会話が、彼らをつないでいたからなのだろうか。
「……弔いかあ」
ぽつりと口にした言葉は、淡い憧憬をはらんでいた。視線は合わせぬまま空を見上げて、ゾルダートは呟くように言った。
「そういう友達がいるって、羨ましいな。……僕、友達いないから」
「友達がいない?」
聞き返すや、男はくっと喉を鳴らした。なんだよ、と咎めるように兵士が尋ねると、悪い悪いと苦笑いで返す。
「友達なんて、勝手に名乗っておけばいいんだよ。死人に口なしって奴だ。『戦友よ、別離は我等の宿命ではないか』――だろ?」
祖国のために死に行く者であれば誰でも、友人と言っていい。そう言って、レントは腰の鞄から同じアプフェルショーレの瓶を取り出した。
「故にグラスを取り、乾杯をしよう」
プロスト、と緑の瓶を打ち合わせて一口呷り、男は立ち上がった。
「じゃあな、友人。縁があればまた会おう」
「…………」
なんだったのだろう、と、ありもしない瞼を瞬かせてゾルダートは思う。友人、というものを持った試しがないから、これが正しいのかどうか分からないが――もしや自分には、友人ができたのだろうか?
(……変な日だな)
一日に二人も知らない人に声を掛けられて、しかも話ができるなんて。そんなことを考えていると、ああっと上ずった声がした。
「ねえ、そこの人! そこの兵隊さん!」
妙にはしゃいだその声は、人混みの中から聞こえて、まさかまた自分ではあるまいとぼけっと構えていると、そこのあなたよと呼ぶ声が近づいてくる。黒く長い髪を一つに結い、眼鏡をかけた少女――凛櫻である。
「ねえ、その武器とってもカッコいいわね! ちょっと見せて?」
「えっ? だ、だめだよ、触ったら!」
危ないよ、などとゾルダートらしからぬことを言って、兵士は近づいてくる少女を押しとどめる。しかし気にした風もなく、彼女は笑った。
「大丈夫よ、武器の扱いは得意なの! ね、ちょっとでいいから見せてよ」
「だから、だめだってば!」
なんならメンテをさせてくれても、とオーバル眼鏡を光らせるその姿に一種の恐怖を感じて、ゾルダートは慌ててベンチから立ち上がった。悲痛な声を上げて縋る少女の手をすり抜けて、そのまま人混みの中へ滑り出す。
「もったいないわ! だって貴方には、もっと可能性があるんですもの!」
「なに言ってるんだ、あの娘!?」
買い物客で賑わう通りを横切って、教会の鐘の鳴る方へ。時折背後を振り返りながら、兵士は街を駆け抜ける。
(やっぱり今日、変な日だ)
けれど、この時の彼は知らなかった。
彼に残された最後の、そして最高に奇妙な一日は、まだ始まったばかりなのだと。
●FOLGE 2: AM BRUNNEN
「ふう……」
ぐるりと辺りを一周して中央広場に戻ってきた時には、随分と息が切れていた。がしょがしょと重たげな足音を響かせて、兵士は広場の中心に設けられた噴水の縁に腰を下ろす。
(いったい、なんだったんだろう……)
近くのスタンドで買った新しいアプフェルショーレの瓶を開け、爽やかな林檎の香りを胸いっぱいに吸い込んで、ようやくひと心地つく。
少し落ち着こう。そもそも今日、ここへ来た目的はなんだ。最後の時間をゆったりと過ごすだけなら、この瓶一本あればよい。ぐいと大きな一口を呷ると、炭酸のぱちぱちした感触が喉の裏で弾け、そして――。
「それ何?」
「ごっふ」
突然、真横から覗き込んだ人の顔に驚いて、入ってはいけないところに炭酸水が入った。げほごほと激しく咳き込んでいると、『その成りでも噎せるのか』と若干失礼な声がする。けれど咎める余裕はなく、兵士はどうにか顔だけを上へ向けた。
「すみません、びっくりさせちゃいましたね」
声を掛けてきたのは、二人組の男だった。東洋人らしいが、どちらもなかなかの長身だ。そのうち眼鏡の方が、ごめんなさいねと重ねて詫びた。
「こんな強面に声掛けられたら驚きますよねえ」
「俺のせいかよ」
臆面もなく人を指差す眼鏡の男の隣で、顔に傷のある男が口を尖らせる。やっとのことで呼吸を整えて、ゾルダートは言った。
「あの、ええと……何の用?」
「別にカツアゲしようってんじゃねえよ。それ」
「これ?」
男の手が指差す先に気づいて、兵士は右手に持ったアプフェルショーレの瓶を見やる。それです、と笑って眼鏡の方が言った。
「それです。よかったらどこで売ってるのか教えてもらえません? あと合いそうなお菓子とかも」
男達は、どうやら観光客か何からしかった。どういう関係なのかはよく分からないが、眼鏡の方が鐘堂・棕櫚(七十五日後・g00541)、もう一人の方が鬼歯・骰(狂乱索餌・g00299)と云うらしい。目と鼻の先にある軽食スタンドを教えると、二人はのこのこと歩いて行き、そして二本のアプフェルショーレと、甘い菓子パンを手にまたのこのこと戻ってくる。なんで戻ってきたんだろう――と内心首を傾げる兵士の右隣に腰掛けて、旅人達は何やら話し始めた。
「炭酸が爽やかですね。それに匂いがいいです」
「これ、お前んとこの店で出したら売れるんじゃないか」
「店? ……あ」
うっかり聞き返してしまってから、ゾルダートは口に手を当てた。するとしてやったりといった様子で、棕櫚が笑い掛けてくる。
「俺はジュース屋やってて、骰さんは凄い甘党の人なんです」
あなたも甘い物お好きですか、と屈託なく尋ねられ、兵士は手元の瓶に視線を落とした。
「特別好きってわけじゃないけど……昔、両親がよく買ってくれたから」
思い出っていうのかな――と、口にした言葉は自分でも驚くほど柄でなくて、思わず目を泳がせる。
「そういうのって、なんか残るんだよな」
人と物の記憶は、存外深く結びついている。応じた骰の横顔は民間人というよりも、どちらかといえば『此方側』に近い印象を与えた。
「だからそのジュース見たらアンタをだとか、とぼけた面みたらツリガネを思い出――イッテェな!」
どうやら、棕櫚の爪先が骰の踵を蹴ったらしい。
「いやあ、それにしてもドイツは美味しいものが多すぎますね。俺らしばらくこの街で過ごすんで、よければまた会いませんか?」
「え」
彼の未来に『また』は存在しない。どう返したものか分からず口を聞けずにいると、棕櫚は構うことなく続けた。
「いいじゃないですか、またおすすめの食べ物でも教えて下さいよ、ねえ?」
「ああ、頼れる奴がいるとこっちも有り難いな」
食べきった菓子パンの包み紙をくしゃくしゃに丸めてポケットにしまい、二人組は噴水の縁から立ち上がる。それじゃあまた、と笑った二対の瞳は一瞬、親しみとは異なる感情を揺らしたが、それに気づけるほど彼は人付き合いに慣れてはいない。
「……どうしよう」
『また』なんてないのにな――そんなことを考えながら、アプフェルショーレを一口含む。何事にも執着のないゾルダートの胸の内に、これまでの人生で感じたことのなかった感情が俄かに渦巻き始めていた。尤もその正体に、彼はまだ気づいていないのだけれども。
「おーじさん」
「おじ……?」
幼い声に呼ばれて――しかし、少々気になるその呼び方に、ゾルダートは再び顔を上げる。するとそこには、雪のように白い長い髪をお下げに結った少女――瀧夜盛・五月姫(無自覚な復讐鬼・g00544)の姿があった。
「そんな暗い顔、して、どうした、の?」
「暗い顔……」
してたかな、と顔の側面に手を当てる兵士を覗き込み、白い少女はくすりと笑う。
「空も街も、こんなに、明るいのに……もったいない、よ?」
「もったいない……」
鸚鵡返しに口にして、髑髏面のゾルダートは考え込む。
もったいない、なんて、正直なところ考えたこともなかった。彼にとって空は青いものであり、街は賑わうものであったから、それを特別に思ったことがなかったのだ。しかし目の前の彼女は、それをもったいないという――。
ねえ、と和装の背中で手を組んで、少女はにっこりと人好きのする笑顔を浮かべた。
「よかったら、姫たちと一緒、あそばない?」
「遊ぶって……どこで?」
「どこでも。だって、ほら、ね? 出店も、あるし。大道芸の人だって、いるよ」
代り映えのしない、珍しい物なんて何もない街に見えたって、見方を変えれば発見はいくらでも転がっている。けれど今更それに気づいたところで、もう余命幾許もない身だ。
いや、と心なしか項垂れて、兵士は言った。
「……でも、僕……これから、行くところが――!?」
言葉を終えるよりも早く、両手を掴まれた。幼く、そうでなくてもか細い少女の手に、まさか引っ張り上げられるなどとは思いもせず、兵士は目を白黒させる。しかし驚く彼の手をさらに引いて、どこまでも無邪気に五月姫は言った。
「座って、落ち込むより、楽しいこと、したほうがいいよ」
異国の少女に連れられ往けば、街並みが飛ぶように後ろへ流れていく。息を切らして走りながら、兵士は自問する。
(なんなん、だろう)
今日はいったい、なんの日なのだろう?
しかし真実を知る由もなく、困惑の兵士は導かれるままに石畳の街を駆け抜ける。
●FOLGE 3: AM DOM
「それでさ、ちょっと困ってるんだよ」
「えっと……そうなんだ……?」
中心街を少し離れて街の西に建つ聖堂の前。幅広のなだらかな階段に座り込んで、兵士は隣に座った作業着姿の青年の話に耳を傾けていた。というよりも、積極的に傾ける気がなくても彼が語り掛けてくるのであるが。
飛鳥・遊里(リサイクラー・g00512)と名乗った黒髪の青年はどうやらものづくりを生業としているようで、作業着の腰には多種多様の工具を下げている。『暇なら助けて欲しい』と言われて断り切れず今に至るのだが――果たして、役に立てることなのかどうかは未だ定かでない。
「こいつを開けて欲しいんだ。人からもらったものなんだけど、どうやっても開かなくてな」
「そんなこと言われても、僕そういうの得意じゃないし……」
「そう言わずに試してみてよ。何が入ってるのか、どうしても知りたいんだ」
な、と笑って、青年はそこそこ大きな箱――彼いわく、『からくり箱』だそうである――を兵士の手に押しつける。試しに顔の横で振ってみると、中は確かに空洞らしく、何かが動くからからという音がした。
「何か小さいものが入ってるような気がするけど……ん?」
気づくと、左隣に座っていたはずの青年の姿はなかった。慌てて辺りを見回すと、階段の下で尻尾髪の特徴的な後ろ姿が此方を振り返る。
「え、ちょっと、どこいくんだよ」
「用事を思い出したんだ。それ、中身が分かったら教えてくれよな」
もし開けることができたなら、また会おう――そう言い残して、勝手にやってきた青年は勝手に去っていく。なんなんだよ、と困惑していると、手元の箱が音を立てて開いた。
「……簡単に開くじゃん」
蓋の外れた箱の中から転がり出てきたのは、一枚の硬貨だった。なんだこれと放り捨てかけて、兵士ははたと動きを止める。
(……今じゃなきゃ、教えられないんだけどなあ)
どうにも憎めない青年の姿は、既に人混みの中だ。はあ、とまた一つ深い溜息をついて、兵士は胸部の収納にコインを一枚放り込む。
軍属となってこちら、一日中誰とも口を利かないことだって珍しくもない日々であったのに、今日に限ってこんなにあちこちで声を掛けられるなんてどういうことなのだろう――それも、よりによってこんな日に。
(でも……)
なんとなく、嫌ではなかった。やたらと話しかけてくる赤の他人達は、感じの悪い上司とも、人を厄介者扱いして憚らなかった親戚とも違っていた。もう少し早くああいう知り合いができていたらな、と切なくなっていると、足元の地面が不意に翳る。
「あなたは、この街の人?」
声を掛けてきたのは、一人の少女だった。違うと答えるよりも早く、少女は兵士の傍らに座り込む。
「わたしは、シセラ。キミは?」
「…………」
降り注ぐ陽射しのせいだろうか。微笑む顔が何やら妙に眩しくて、兵士は口ごもる。シセラ・カドシュ(Hiraeth・g01516)と云う少女は小さく首を傾げたが、しかし気にする様子はなく、続けた。
「此処は良い街だね」
「え? うん……そう……かな?」
「そうだよ。どんな国で、どんな街なのか、もっと知りたくなる」
「……きみは、遠くから来たの?」
尋ねると、少女は少し困ったように眉を寄せて、笑った。
「わたしの故郷は花の都と呼ばれていたけれど、楽しい思い出はそれほど多くなくてね。今は、とても楽しいけど――」
ここより西の地にあるというその街で、彼女がどんな風に生まれ育ち、暮らしたのかは分からない。けれど微かな憂いを帯びるその瞳が見てきたものは、必ずしも美しいものばかりではなかったのだろうと思う。
「昔は、一緒に遊ぶ友達もいなかった。……なんて言ったら、笑われちゃうかな」
少しだけ気恥ずかしそうに、少女は言った。その言葉に俄かに親近感を憶えて、兵士は応じる。
「別に、全然。……僕も、友達なんていなかったから」
「そうなんだ? じゃあ、似た者同士かもしれないね。わたし達」
そうだ、と両手を合わせて、シセラは言った。
「よかったら、この街を案内して貰えないかな」
「え――」
「おいしい物とか、楽しい場所とか。キミが知ってる範囲で構わないから、ね? 助けると思って」
悪戯っぽく片目を瞑り、少女は続ける。決して嫌な気はしない、けれどどうしたものかと困り果てて、兵士は硬く大きな手で頭を掻いた。
「そう言われても……僕もここには仕事で来てるだけで……」
あんまりよくは、としどろもどろに答えながら、なんだか申し訳ない気持ちになる。するとそこへ、また誰かがやってきた。
「失礼。折り入ってご相談があるのですが……おや」
そう言って、声の主は少しだけ驚いたように若葉色の瞳を円くした。黒衣を纏うすらりとした一人の青年は、両腕に抱えきれないほどの紙袋を抱えている。その爪先は硬い金属に覆われて、彼がただの人間ではないことを教えてくれた。
「同胞でしたか、奇遇ですね。今、おいしいもの、と聞こえたのですが……」
「え、うん」
してたけど、ともごもご返すと、青年――ドナ・ゴーティエ(雷公・g04485)と云うらしい――はほっとしたように口許を緩めて、続けた。
「実は、観光がてら街を歩いていましたら、つい……はしゃいで、色々と買い過ぎてしまいました」
両手に抱えた紙袋には、まだ温かいブラートヴルストや、それに合わせるブロートヒェンなどが、これでもかと詰まっている。これを一人で食べるつもりだったのかとあんぐり口を開けていると、お恥ずかしいとドナは笑った。
「宜しければ共に如何ですか。そちらの方も」
「いいの?」
嬉しい、と微笑むシセラにサクランボがぎっちり詰まったクーヘンをひと切れ差し出して、青年は兵士の反対隣に腰を下ろした。一瞬、二人が意味ありげに視線を合わせた気がしたが――多分気のせいだろう。
差し出されるブラートヴルストを戸惑いながらも受け取って、兵士はそれを口へ運んだ。街中を歩き回る間にいつの間にか腹が空いていたらしく、ジューシーなヴルストの旨味が鉄の胃の腑に染み渡る。その隣で同じくブラートヴルストをもぐもぐとやりながら、ドナが言った。
「今日は好い天気で良かった。明日も晴れますでしょうか?」
「え? う……うーん……」
空を仰ぐ青年に、どうだろうと兵士は語尾を濁した。明日の天気を気にしても、彼にとっては意味がない。それに――。
(……この街は)
明日にはもう、消えてなくなっているかもしれないんだよなあ。
そう思うと妙に気分が暗くなって、ゾルダートはいかつい顔を俯けた。巨大化して街を破壊するためにやってきたのに、おかしな話だ。慣れない会話にあてられでもしただろうか?
しばし黙ってヴルストを咀嚼していると、いったいどれほど早食いなのか。すっかり紙袋の中を空にして、ドナは立ち上がり、ズボンの裾を払った。
「手伝って頂いて、大変助かりました。また御会いすることがありましたら、ご一緒して頂きたいものですね。……あなたの同胞の一人として」
その身に流れるものが人の血か、油か分からなくなったとしても、心には同じ温もりを抱ける。それでは、と微笑みと共に手を振って、青年は去っていく。その背をしばし見送ってから、シセラもゆっくりと立ち上がった。
「わたしも、そろそろ行こうかな。……またキミと話が出来たら嬉しいよ」
さっきの話、覚えておいてね――そう言ってもう一度、花の咲くような笑みを投げ、少女もまた雑踏の中に消えていった。
●FOLGE 4: AN DER STRASSE
「その地の人と、その地の物を食べる。これぞ旅の醍醐味ですね」
「はあ……」
「あっ、このお菓子おいしい! お兄さんのおすすめ、大当たりだね!」
「どうも……」
そろそろ、自分が何をしているのかよく分からなくなってきた。ぼんやりとそんなことを思いながら、兵士は相変わらずもごもごと相槌を打つ。
アプフェルショーレの瓶を片手に固焼きの小さなブレッツェルをつまみながら談笑に興じる二人組は、璃央と麗央と云うらしい。双子なのだろうか? 顔立ちも名前もよく似た二人は観光でこの街へやってきたらしく、聖堂の前に座り込んでいた彼におすすめのグルメを教えて欲しいと頼んできたのだった。そして請われるままに食料品店のある区画まで取って返し、その後なんやかんやで今に至る。
(詳しいわけじゃないんだけどなあ)
元々あまり食にはこだわりのないたちだ。それに、そもそも答える義務はない。けれど邪険にする気にもなれずに世話を焼いてしまうのは、今日出会った多くの人々のせいだろうか。
(こんなだから出世できなかったんだろうなあ……)
吐く息は、回を重ねるたびに深く長くなっているような気がした。最後の一日を自由に楽しむこともできないなんて、要領が悪いとしか言いようがない。ただ――決して、嫌な気分ではないのだけれども。
「はあ、おいしかった! ね、リオちゃん、おいしかったね」
「そうだね、レオ。……信頼のおけるガイドに出会えて幸運でした」
口許を拭ったハンカチを綺麗に折り畳んでしまい込み、少年の方が言った。
「今日は行くところがあるので、この辺で失礼しますが……次のおすすめも期待していますね」
「え」
「だね! またお話聞かせてね、お兄さん」
白く細い手が二つ、ぽん、ぽんとリズムよく黒鉄の肩を叩いていく。バイバイ、と手を振る少女にうっかり手を振り返してから、兵士ははっとした。
(――本当に、何をやってるんだ僕は)
きょろきょろと辺りを見回すと、市庁舎の尖塔に掲げられた時計が目に入る。作戦開始まで、もうそれほど余裕はない。いい加減にどこかでのんびりしようと歩き出すと。
「ねえ」
くいっと、鋼の腕を引く手があった。またか――? まさかと思いながらぎこちなく身体を斜めにすると、いかにも労働階級の子どもらしい――こう言ってはなんだが、少々みすぼらしい風体の少年が一人、兵士の顔を見つめていた。
「それ、おいしい?」
「これ?」
差し示す指の先には、先ほどの双子に付き合って買った三本目のアプフェルショーレがあった。なんでまた、とやや辟易した気分で、兵士はこの短時間でいやというほど目にした林檎のラベルに目を落とす。
(流行ってるのかな、これ)
「ねえ、おいしい?」
頭一つ下の距離で、少年の金髪がさらりと揺れる。はあ、と何度目ともしれぬ溜息をついて、兵士は手にした瓶を差し出した。
「よかったら、あげるよ」
きょとんとして見つめる少年の手に緑の瓶を握らせて、そしてくるりと踵を返す。もうこれ以上、人と関わり合いになるのはよそう――そう思って歩く足を速めたのだが。
「待って! おれ、軍人になりにきたんだ!」
踏み出した足が、地面に縫い留められたように動かなくなる。それでも振り返らずにいると、少年は吐き出すように続けた。
「おれはショウ。あんた、兵士だろ? ……この街のこと、教えてくれない?」
「…………」
軍なんて入ったって、なんにもいいことないよ。
そう、喉まで出かかった言葉を飲み込んで、兵士は少年に向き直る。
「……なんで軍人になりたいの」
「……みんなのために戦って、見返してやるんだ」
四葩・ショウ(Leaden heart・g00878)。それが彼の名前だった。身なりは薄汚れているが、よく見れば顔立ちは整って少女のように美しい。落とした視線の先に転がる小石を蹴って、少年は言った。
「あの人達――おれを厄介者扱いするから」
それだけ聞けば十分だった。似たような境遇で育ったから、居場所を求めて逃げ出した継子の気持ちはよく分かる。そうかあ、とぼんやり言って、兵士は頷いた。
「僕も君くらいのとき、そんな感じだったなあ」
「……そうなの?」
花色の眸に微かな喜色が滲む。驚いて後退りする兵士の不気味な面にも臆することなく、少年は身を乗り出した。
「だったら色々、教えてよ」
どうやって兵士になったのか。どうすれば、今の日々から抜け出すことができるのか。もう行かなくちゃと諸手を上げて、兵士はやんわり断ったのだが――。
「忙しいなら、今日じゃなくてもいいから……そうだ、明日!」
そう言って、少年は服のポケットから一条の青いリボンを取り出した。
「これはジュースのお礼。……明日もここで待ってるから」
鉄の手首に勝手にリボンを結びつけて、じゃあね、と少年は笑った。その後ろ姿と手首のリボンを見比べて、兵士ははてと首を傾げる。
「……女の子だった、のかな?」
しばし呆然とその背中を見送って、はっとする。だから、こんなことをしている場合ではないのである。
道の向こうで振り返った少年が、まだ此方を見ていることには気づかぬまま、兵士は道を急ぎ始める。
(どうしようかな)
どこで『その時』を迎えようか。きょろきょろと辺りを見回していると――一人の男と目が合った。
「やあ。暇そうだね、兄サン」
銀色の短髪を軽やかに揺らして小首を傾げる、褐色の青年。またもや和やかに笑い掛けられれば、なんだかもう、なんでもいいかなという気持ちになって、兵士はその日、初めて自ら問いかけた。
「きみの名前は?」
●FOLGE 5: UND DANN...
「悪いね、妙なこと頼んじゃって」
「ついでだからね……」
ノスリ・アスターゼイン(共喰い・g01118)と名乗った男もまた、異邦人であった。喉が渇いているというものだから、ジューススタンドでまたアプフェルショーレを勧めた。どれがいいかと聞かれたら、兵士はそれ以外の答えを持っていなかったから仕方がない。
左手に瓶を、右手にブラートヴルストを持って食べ歩きながら、男は存外気さくに話しかけてくる。
「さっき、擦れ違った子におじさんって呼ばれたんだけど、酷くない? 俺まだ二十歳なんだけど」
「奇遇だね……僕もさっき、言われた」
まだ二十なのに、とぼやくと、同い年だなと男は笑う。尤も、頭の天辺から爪の先までがちがちの鋼に覆われた見てくれで、おじさんもお兄さんもないのだろうけれど。
「お仲間だったか。笑い飛ばして欲しいとこだったんだけどな」
言葉の割にはそれほど気にした様子もなく、ノスリなる男はあっけらかんとして前を向く。どこか広いところに行きたいのだと彼は言った。特に行く当てもなく、しいて言えば街を見渡せるようなところへ行ければよいと思っていたから、兵士はそれに付き合うことにした。彼に請われたから、連れて行ってやるのだと――心の中で誰にともなく言い訳をして。
「人もおおらかだし、いいところだな。あんたも、この街が好きかい?」
「僕はよそ者だから」
「そうなんだ? そうは見えなかったけどな」
特に理由がなくても行動を共にして、特に理由はないけれど互いのことを気に掛ける。『友達』というのは多分、こんなものなのかもしれないなと兵士は思った。
「そう言えば、まだ聞いてなかったけど――あんた、名前何て言うの?」
「……僕は……」
言いかけて、兵士は口を噤んだ。
歩き、歩いて辿り着いた街の外れ。疎らになりつつある人家の陰に、人の気配がする。それも――一人や二人ではない。
「どうかした?」
それは、涼しげな女の声だった。はっとして声のした方を振り返ればいつの間にか、赤と白の眩しい軍服を身に纏った少女が一人、街路樹を背に此方を見詰めている。きみは、と問えば、エリザベータと淡々と名乗り、少女は複雑そうに唇を歪めた。
「……今日まで、辛かった? ……寂しかった?」
「…………」
弱音を漏らす相手すら、居なかったのでしょう。
言われてみればその通りで、兵士はすべてを悟り、自嘲する。
「……そういうことかあ」
そう――だからこそ、赤の他人のはずの人々との一期一会の会話が、楽しくて仕方なかったのだ。それは認めざるを得ない。友達の一人もいない自分にこんなに沢山の人が声を掛けてくれるなんて、今日に限っておかしい。確かにそう思っていたはずなのに、こうしてむざむざと街の外へ誘い寄せられているのだから。
「……私は貴方を否定しない」
大方、『組織』の工作を各地で邪魔しているという一団だろう。頭がいい方ではないが、それでもその程度は察しがつく。一対の拳銃を両手に構えて、エリザベータは言った。
「生まれた場所が違ったら、私は貴方と同じだったかも知れない……だから」
すべては無理でも、吐き出して欲しい。
不器用な唇は気の利いた言葉一つ紡げなくとも、銃口を向け合うことで分かり合える思いもある――そう、信じて。
「……友達か」
本当の友達が、いたらなあ。
ぽつりと寂しげに呟いて、兵士は黒く大きな頭を垂れた。その身体の継ぎ目から洩れる光は次第に目映い閃光となり、轟音と爆風が辺りを包み込む。
反射的に閉じた目を、恐る恐る開けた時、見える景色はもう、先程までのそれとは違っていた。『友達になった』人々の姿を眼下に見下ろしながら、哀しき兵士は緩やかに動き出す。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【怪力無双】LV3が発生!
【プラチナチケット】LV1が発生!
【操作会得】LV3が発生!
【エアライド】LV1が発生!
【飛翔】LV2が発生!
【モブオーラ】LV1が発生!
【フライトドローン】LV1が発生!
【断末魔動画】LV1が発生!
【託されし願い】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV4が発生!
【ダメージアップ】LV4が発生!
【先行率アップ】LV3が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
【フィニッシュ】LV1が発生!
【ドレイン】LV1が発生!
シセラ・カドシュ
随分と、大きくなったね
その高さから見える景色は、どんなものかな
結構、壮観だったりするのかもね
でも、そのままだと、案内してもらうことも
同じ景色を楽しむ事も出来ないから
悪いけれど、少し荒療治をしてみようか
巨大化しても、人とさほど構造が変わらないなら
わたしとしてはやりやすくはあるのだけれど
機械の身体だけあって、堅そうだ
飛翔して腕や脚の関節部を狙ってみようか
鋼糸で動きを制限するなり、短剣で傷をつけるなり
突かれて嫌がりそうな部分を狙って気を引き付けながら
味方が動き易いように
ほんとうに短い時間だったけれど、
また話がしたいというのは嘘ではないし
わたしは、諦めが悪くてね
前向きな返事を貰うまで、諦められないな
●DER SOLDAT
突如として翳った世界に、赤茶けた塵埃が舞い上がる。反射的に閉じた瞼をそろそろと持ち上げて、シセラ・カドシュ(Hiraeth・g01516)は瞠目した。見上げる先には午後の陽射しを遮って、黒い巨体が塔のように聳えている。
「随分と、大きくなったね」
器用そうには見えない武骨な手脚と、いかめしくもどこか寂しげな髑髏面はそのまま、ゾルダートは街を見下ろしていた。現代の基準で言えば、七、八階建てのビルくらいだろうか? 天を衝く巨躯の落ち窪んだ瞳に、赤い屋根の街並みはどんな風に映るのだろう。
(結構、壮観だったりするのかもね。……でも)
碧く澄み切った眼差しを巨兵へと向けて、少女はやるせなげに睫毛を伏せた。こんなに大きな身体では、並んで街を歩くことも、同じ視点で景色を楽しむこともできやしない。
だから――彼には悪いが、ここは一つ、荒療治といこう。
爆風にめくれ上がった地面を踏み切って、シセラは翔んだ。細い身体は空へ放たれた矢のように、黒光りする巨体の側面に沿って垂直に上昇していく。
(巨大化はしていても、身体の造りまでは変わっていないようだね)
なるほどと小さく頷いて、少女は朱色の鋼糸を手繰った。
(その方が、わたしとしてはやりやすい)
全身を金属で覆われた機械の身体は見た目に違わず硬そうだが、人の形をしている以上、狙うべき場所は決まっている。髑髏面の真横に顔を出し、シセラは巨兵へと呼び掛けた。
「どこに行くんだい」
風を切り宙を裂いた鋼糸が、黒鉄の肘に絡みついた。それを頼りに距離を縮めて腕の上に飛び乗るや、すかさず二振りの短剣を抜き放って少女は告げる。
「わたしは、諦めが悪くてね。ほんとうに短い時間だったけれど、また話がしたいというのは嘘ではないし――」
前向きな返事を貰うまで、諦められないな。
言葉を終えるか終えないかの刹那、振り下ろした短剣が金属の継ぎ目にぶつかり、ギィンと鋭い音を立てた。硬い鋼の表面に穿たれた瑕は糸のように細くとも、暗い眼窩を確かに引きつける。
大成功🔵🔵🔵
効果1【モブオーラ】がLV2になった!
効果2【フィニッシュ】がLV2になった!
飛鳥・遊里
よお、さっきぶりだな?箱、うまく開けられたのか確かめに戻ってきたんだけど…なんて有様だい
ああ、そうだな。今の状況見ればもう分かるよな。俺たちは君が何者なのか、何をするためにここに居るのか分かっていてここに集った。だからなんだ?俺たちが君に向けた言葉、行動の全てが嘘だって断じるのか?
…見損なうなよ。確かに、憐憫の情が全くないなんて俺は言えない。けど、この先にある避けられない未来を、せめて悲しみや虚しさだけのものにしたくないって、その願いは紛れもない『ホンモノ』だ
【操作会得】で、彼が持つコインの思念を増幅させる
言葉だけで信じられないというなら、俺やみんなの心の内も全部ぶちまけてやる。ああ、全部だ
ドナ・ゴーティエ
…既に手を血で染めていたとして
彼に「殺し」をさせる訳には参りません
我々の登場で彼の意識が此方へ向くならば
態と目前に飛翔…又はジャンプし、屋根伝いで接近
郊外への誘導の御助力を
民の危険にはダッシュで救助を試みます
――聞こえますか、親切な方
私の姿が、貴方の瞳に映っている事を願います
さて、何処か痛くはありませんか?
これ程の巨大化です
躯体に何かしら不具合が出ているやも知れません
然し困りました…これ程の巨体故
食物も、先程と同量では物足りぬでしょう
…否、ドイツの科学力があれば
巨大ヴルストすら作り上げられる筈
戯言を吐いている様に見えますか?
それとも絵空事?
いいえ、私は至って真面目です
――『約束』したでしょう?
ノスリ・アスターゼイン
林檎みたいな太陽を背に
炭酸みたいにすっきりと朗らかに
「よぅ!」と馴染みへ挨拶する様相で
片手を挙げて
名前を聞きそびれたな
あんたが自分や世界を諦めても
俺達は未だ
あんたのことを見捨てていない
見限っていない
集ったのは、その証でしょ
呼び掛けつつ飛翔し、気を引く
彼が
この街も人々も
傷付けていないうちに
終わらせてやりたいね
何だ
皆との「また」の約束を忘れてしまった?
つれないな
そんなに大きくちゃ
下からでは
あんたの顔も
声も
悲しみも
聞こえやしないんだよ
まだまだ見たい景色や
食いたいものもあったのに
知らない飲み物だって
もっと一杯あっただろう
そうして皆と
沢山の「また」を紡いだのでしょ
まだ味わい尽くせない
だから
遊ぼうぜ、
友よ
エリザベータ・シゲトヴァール
●心情
この人、本当なら兵士になるべきじゃなかった。
気の優しい人。こんな事になって、きっと自分自身が一番傷付いてる筈なのに……。
●行動
貴方が本当にしたかったのはこんな事?
壊して、燃やして、踏み潰して、そんな事がしたかったの?
……違うでしょ?銃声も、人々の悲鳴も、本当は嫌な筈よ。
貴方は優しい人よ。
たとえ身体は冷たい鉄の機械になってしまったとしても、心は血の通った人間でしょ!
その心が痛まない訳がないわ。
お願いだから止めて。
貴方が後戻り出来ないのは分かってるけど、
それでも貴方を『化け物』としては討ちたくないの。
朔・璃央
双子の妹のレオ(g01286)と
実に早い次の機会になりましたね
こうも背丈が伸びてしまうと節々が痛みそうですね
別の所が痛んでいるかもしれないですが
気軽に肩を叩けるぐらいの大きさに
戻って頂かないといけないですね
街の方へは戻らせないように、
それに話すならば正面切ってが良いでしょう
彼の前へと踏み出し手を振り気付いて頂きましょう
見上げる表情は一度別れたときと同じ笑顔で
こんにちはお兄さん
またご一緒にどうかと思いまして
私たちが出会った、最初の一日を
この街とあなたを、記憶に残す為に
そこで留まればまだ時間を作れるでしょうと
また一つ思い出を残しましょうと
出会った時と、何一つ態度を変えずに
真摯にと向き合って
朔・麗央
双子の兄リオちゃん(g00493)と
優しかった彼が今、どんな思いだろうかと想像したり
例え元の大きさに戻すことができても
訪れる近い未来を思うと胸が張り裂けそうに痛いよ
でも、そんな思いには一旦蓋をして声をかけるね
街の方向を背にして彼を向かわせない様に立つよ
ねぇお兄さん、どうしてそんなに大きくなっちゃったの?
そんな大きさだと私達の声、聞き取りづらいでしょ?
またお兄さんのお話聞かせてってお願いしたのを覚えてる?
お兄さんが色々教えてくれてとっても嬉しかったの
もっともっとおすすめ聞きたいし、一緒にまたお話したいよ
さっきのお兄さんとのお話は私にとって忘れ難い思い出になったよ
そう、思い出はずっと心に残るんだよ
瑚雛・凛櫻
アドリブ、絡みや連携大好き
さっきお話してみた感じ、なんだか他の殺意力の高いやからとは違う感じがするのよね…(武器が気になっていたけどそれに対して『危ない』とこちらに気を遣ってくれているのが何よりの証拠
ゾルダートらしくないなぁとか思ったけれど、それはそれでこの人の人柄って事よね
それなら…もしかしたら普通にお友達になれるのではないかしら…?
私、基本ぼっちなのだけれど良ければ貴方とお友達になってみたいわ
こんな風に巨大化して自爆されてしまったら、それもかなわないじゃない
さっきは嫌がられてしまったけれど、貴方の可能性を別の方面でもっと引き出してあげたいって思っているの
だから…元に戻ってくれないかしら?
「実に早い『次の機会』になりましたね」
白金の長髪を風に流して、朔・璃央(黄鉄の鴉・g00493)は遥かな髑髏の面を仰ぐ。集まったディアボロス達が固唾を飲んで見守る中、巨兵は足を止めていた。巨大化に伴って恐らくは思考能力も鈍っているのだろうが、動きが鈍重なのは幸いである。もしもこの身体で普段通りに動き回れたなら、ほんの数百メートル先に広がる街など忽ちに踏み潰されてしまうだろう。
「さっきお話してみた感じ、あの人、他の殺意力の高いやからとはなんだか違う感じがするのよね……」
立てた人差し指で右頬を突いて、瑚雛・凛櫻(滅びの箱庭、綻びの記憶・g00518)は首を傾げる。未知の武器とテクノロジーを前にして先程はつい、はしゃぎ過ぎてしまったのであるが、彼はゾルダートでありながら、自らの装甲に触れようとした凛櫻を気遣ったのだ――『危ない』と。
(反射的に、そう言っただけなのかもしれないけれど)
もしそれが心にもない言葉だったのなら、咄嗟に出てくることはなかっただろう。
そうね、と言葉少なに頷いて、エリザベータ・シゲトヴァール(聖イシュトヴァンの剣・g00490)は苦い表情を浮かべた。
「気の優しい人なのね。……本当なら、兵士になんかなるべきじゃなかった」
頼る者も道標もなく、流され生きて、捨てられて。自分が一番傷ついているのだろうにそれでも自然と人を気遣ってしまう彼は、本来、善良な一市民に過ぎなかったのだろう。
ただ、生まれた場所と巡り合わせが悪かった。一つ間違えば彼のようになっていたかもしれない未来を想えばやるせなくて、エリザベータは奥歯を軋らせる。
短く同意を示して、凛櫻は言った。
「ゾルダートらしくないよね。普通にお友達になれたらいいんだけど……」
ほんの数秒に過ぎない沈黙は、何倍にも、何十倍にも長く感じられた。その場の誰もが彼女と同じ気持ちでありながら、それが叶わぬ願いであることを識っている。放っておけばどこまでも落ちていきそうな気持ちを切り替えるように、璃央はわざと大きく息をついた。
「ああも背丈が伸びてしまうと節々が痛みそうです。……気軽に肩を叩けるぐらいの大きさに戻って頂かないといけませんね」
尤も、痛んでいるのは別の所かもしれないけれど。
ちくりと胸を刺したものには気づかなかった振りをして、少年は傍らに立つ妹、朔・麗央(白鉄の鉤・g01286)へ目を向けた。二人の間に余計な言葉は必要ない。どちらからとなく頷き合って、二対の翼をはためかせ、兄妹は巨兵の進路へ割り入った。
「こんにちは、お兄さん。またご一緒にどうかと思いまして、来てしまいました」
少女に見まがうほどのたおやかな笑みで、璃央は緩やかに手を振った。話すのなら、真正面からぶつかった方がいいだろう――それに何より、彼をこれ以上街へ近づけるわけにはいかない。
「ねぇお兄さん、どうしてそんなに大きくなっちゃったの?」
白い両手を口元に添え、麗央は声を上げた。見上げる髑髏面からは何の感情も読み取ることはできないが、その裏に隠れた兵士の本心が硬く冷たいばかりのものでないことを、彼女達は知ってしまった。大勢の人を巻き添えにして、やぶれかぶれの内に自滅するなんて――他の誰でもない、彼だからこそ、そんなことをさせるわけにはいかないのだ。
「そんな大きさだと私達の声、聞き取りづらいでしょ? ねえ、せめて話を聞いてくれない?」
仮にこの声が届いても、彼の行く道に先はない。巨大化が解除され、元の姿に戻ったとしても、彼が人に戻れるわけではない。訪れる未来はどちらに転んでも残酷で、黒いブラウスの胸は張り裂けんばかりに痛んだ。しかしそれも、彼の受けた痛みに比べればどうというものでもないのだろう。
(ごめんね。……悲しいのは、お兄さんの方だよね)
『友達』を知らない彼にとって、『友達になろう』という他愛のない言葉がどれほどキラキラと輝いて見えたかは分からない。すべては自分を刈り取るためのものだったと知ったなら、その落胆がいかほどであったかは想像してもしきれない――ただ。
ブーツの爪先でしっかりと地面を踏み締めて、麗央は叫んだ。
「ねえ! またお兄さんのお話聞かせてって、お願いしたのを覚えてる? お兄さんが色々教えてくれて、私も、リオちゃんも、とっても嬉しかったの」
知らない街で、知らない人と。他愛もない会話を交わして過ごす旅のひと時を、彼は確かに与えてくれた。きっかけはどうあれ、楽しかった瞬間がそこに在ったことは嘘ではない。できることならもっと話をしたかったし、彼の案内で街を歩いてみたかった。それが二度とは叶わぬことも、痛いほど理解っているけれど。
「お兄さんとのお話は、私達にとって忘れられない思い出になったよ。思い出は、ずっと心に残るんだよ」
だからお願い、と薄ら瞳を潤ませて、少女は言った。
「お願いだから、止まって!」
彼らが出会った最初の一日を、この胸に刻んでおくために。
広がる街並と彼自身と共に、思い出までもが壊れてしまわぬように。
右手に填めた手袋をきちんと手首の上まで引き上げて、璃央は妹の後を引き受ける。
「ここで留まれば、まだ時間を作れるでしょう? また一つ、思い出を残しましょう」
その眼差し、その口ぶりは、街で言葉を交わした時と何も変わらない――ただ、旅先で縁を交わした一人の友として。
努めて真摯に、少年は言った。
「私達のことを忘れてしまったなら、思い出せるまでお付き合いしますから」
踏み出した巨大な一歩が、ズシンと地面を震わせる。それを合図とするかのように、復讐者達は一斉に動き出した。
「よお、さっきぶりだな? 箱、うまく開けられたのか確かめに戻ってきたんだけど……」
なんて有様だいと、飛鳥・遊里(リサイクラー・g00512)は苦笑した。髑髏面の真横まで飛び上がってみれば、落ち窪んだ黒い目がじろりと此方を見つめてくる。その眼差しがどうにも恨めしげに見えて、遊里は言った。
「ああ――そうだな。この状況見りゃもう分かるよな。俺達が何者で、何のためにここへ来たのか」
最初から全部、分かっていた。一人ぼっちの兵士が何をするためにこの街を訪れたのかも、その身体に何が仕込まれているのかも。
すべて分かった上で彼らは集い、友達になろうとそう言った。騙した、と言われてしまえばそれは本当にその通りで、弁明しようとは思わないけれど。
「だからなんだ? それで、俺達が君に向けた言葉がすべて嘘だって言えるのか?」
作り替えられてしまったその身体と、これから歩むはずだった未来を元に戻すことはできなくて。それでもこのまま逝かせてしまうのは余りに惨いと思ったから、彼らは今ここに居る。大破壊の瀬戸際にあるこの街をただ救えば良かったなら、他にいくらでもやりようはあったのだから。
見損なうなよ、と笑って、遊里は言った。
「この先にある避けられない未来を、せめて悲しみや虚しさだけのものにしたくないって。俺達のその願いは、紛れもない『ホンモノ』なんだよ」
信じられないというのなら、ここに集った皆の声を聞いていくといい。触れた肩に流し込む電撃は、巨兵の動きを俄かに鈍らせる。するとその隣へ、凛櫻がひょこりと顔を出した。
「ね、私、基本ぼっちなの。だからね、貴方とお友達になってみたいと思ったのは本当よ」
けれど巨大化の果てに自爆などされてしまったら、もうまともに言葉を交わすことさえ叶わない。
「だから――元に戻ってくれないかしら?」
さっきは距離を測り損なったから、今度こそはちゃんと。眼鏡の奥の瞳で真っすぐに兵士の横顔を見つめて、少女は言った。
「貴方の可能性を、もっと引き出してあげたいって思っているの。それに、遅すぎることなんてないんだから……っ!」
――ズシン。
重たげに持ち上げた脚がまた一歩、街に向かって前進する。しかし次の一歩を踏み出そうとしたその足元に、無数の銃弾が突き刺さった。
「貴方が本当にしたかったのはこんなこと?」
硝煙立ち昇る銃を手に巨兵の眼前へ滑り込んで、エリザベータは毅然と問い掛ける。
「壊して、燃やして、踏み潰して、そんな事がしたかったの? ……違うでしょ?」
戦場に鳴り渡る銃声と、けたたましい悲鳴。そんな恐ろしい音色とは、縁遠い世界で生きるはずだった優しい人。たとえその身体は鉄の機械と成り果てても、脳改造を免れた彼にはまだ『心』がある。無辜の人々を踏みにじるような行いに、血の通った人間の心が傷まぬはずもない。
だから、と吐き出すように少女は言った。
「お願いだからもうやめて」
引き金に掛けた指が微かに震える。しかし今、止めなければ、彼は心ならずも多くの人々を巻き添えにしてしまう。深く息を吸い、ゆっくりと瞬きしてエリザベータは言った。
「貴方が後戻りできないのは、分かってるけど――それでも、貴方を『化け物』としては討ちたくないの」
見据える紅茶色の瞳には、一分の迷いもない。間を置かず撃ち込む弾丸は、また一歩踏み出しかけた巨兵の脚をその場に押しとどめる。
「…………」
行く手を阻む少女をじろりと見て、巨兵はゆっくりと身体の向きを変えた。しかし右を向いても左を向いても、見知った顔の異邦人達はその視界に割り込んでくる。
「よぅ! 調子はどうだい」
注ぐ陽射しを遮って、黒い琥珀の煌めきが巨兵の視界を横切った。太陽を背に軽く片手を上げて、まるで昔からの顔馴染みに出会ったように、ノスリ・アスターゼイン(共喰い・g01118)は朗らかに笑う。
「さっきは名前を聞きそびれたけど――なあ、あんた」
聞こえているかいと尋ねる声に、巨兵はぎこちなく顔を背けた。意識があるのかないのか、混乱しているのかは定かでないが、応じるつもりはないらしい。無視するなよと苦笑して、ノスリは猛禽の翼を羽搏かせ、巨兵の肩口へと並ぶ。その表情は金に弾けるアプフェルショーレが如く、すっきりとして屈託がない。
ひらり、眩惑するように髑髏面の前を左右に揺れながら、諭すように男は言った。
「あんたが自分や世界を諦めても、俺達はまだあんたのことを見捨てていない。こうして集ったのは、その証でしょ」
ただ排除してしまえばいいのなら、数に任せて叩いてしまえば済む話だった。それにもかかわらず多くのディアボロス達が優しい茶番に付き合ったのは、街やそこに暮らす人々だけではなく、捨て駒の兵士にとっても最良の終わり方を模索したからに他ならない。それとも、とほんの少し眉を下げて、ノスリは微笑む。
「皆との『また』の約束を忘れてしまった? ……つれないな」
いかに気の優しい性根が残っていたとしても、彼とて兵士――ゾルダートだ。悪の組織の尖兵として過ごした日々の中には血染めの日常もあっただろう。鋼に覆われたその手は決して、無垢なものではないかもしれない。けれどそれでも、彼にこれ以上の『殺し』をさせるわけにはいかない。
警戒に当たっていた街の入り口から一路、巨兵の眼前へと翔け上がって、ドナ・ゴーティエ(雷公・g04485)は呼び掛けを重ねる。
「聞こえますか、親切な方。何処か、痛くはありませんか?」
両手に抱えきれないほどの食べ物を抱えて話し掛けた時の、彼の仕種が未だ鮮明に脳裏に浮かぶ。仮面の向こうの表情は見えないけれど、驚いたように武骨な肩を跳ね上げる姿は思った以上に人間臭くて、妙に親近感を覚えたものだ。
巨大化する、とは事前に聞いて知ってはいたが、想像以上の大きさだった。ここまで来ると躯体に何かしら不具合が出ていてもおかしくないし、落ち窪んだ両目は大きすぎてどこを見ているかもよく分からない。けれどそこに自らの姿が映っていることを願いながら、ドナは続ける。
「しかし困りましたね――これ程の巨体、食物も先程と同量では物足りぬでしょう。否、ドイツの科学力があれば巨大ヴルストすら夢ではないでしょうが」
語る言葉は、傍から見ればふざけているように聴こえたかもしれない。けれど、彼の真意は別にある。くすりと微かに笑みを零して、機械仕掛けの青年は言った。
「戯言を吐いているように見えますか? ……いいえ、私は至って真面目です」
時に他愛なく、時にくだらない言葉を吐き合って、笑い合うのが友人だ。巨大化しようがするまいが、ドナにとって彼は、『また』の機会を誓った友に相違ないのだから。
呼び掛ける声が聞こえているのか、いないのか。語らぬ巨兵は進路の正面へ向き直り、なおも踏み出そうとする。
「なあ、見えるだろ」
足元で声を張り上げる『友達』は、他にもまだ沢山いる。秋空を巨兵の元へ泳ぎ寄って、ノスリが言った。
「そんなに大きくちゃ、下からじゃあんたの顔も見えないし、声も聞こえやしないんだよ」
一緒に見たい景色がまだまだあって、食べたい物も、飲みたい物もいくらでもあった。『彼』一人、そうでなかったとは言わせない。
「そのために、皆と『また』を紡いだのでしょ。残りの時間じゃとても、味わい尽くせないだろうけど」
それでもまだ、彼の時間は尽きていない。
ならばその最後の瞬間まで、付き合うことが友の役目だ。
「だから、もう少し遊ぼうぜ」
どんなに嘆きもがいても、訪れる結末を変えられないのなら、せめて残された僅かな時間を思うさまに過ごせるよう。止まれないのなら、止めてやる――瞳に静かな決意を燃やして、復讐者達は巨兵の行く手に立ちはだかる。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【操作会得】がLV5になった!
【飛翔】がLV5になった!
【フライトドローン】がLV2になった!
【エアライド】がLV2になった!
効果2【先行率アップ】がLV6になった!
【アヴォイド】LV1が発生!
【ガードアップ】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV6になった!
鬼歯・骰
言っちまえば、まぁ運が無かったんだろう
けど当事者にしてみりゃそんなもん知るか糞食らえだよな
暴れたくなる気持ちも分からなくはない
でも同情はしねぇよ、されても腹立つだけだろ
街からこちらへ意識を持って来させるのを最優先で押しとどめに行こう
動きが鈍いのは有難いが踏まれちゃ危ねぇな
飛翔とエアライドでなるべく移動しての回避を心掛けとく
他の奴が攻撃したタイミングで別側から鱶でぶん殴る
あのデカさでどこまで通用すんのかは何も分んねぇけど
ツリガネ(g00541)と一緒に膝裏に思いっきり一撃入れて
地形の利用で、人や建物が無い方向へすっ転ばせればいいな
大人げ?知らねぇ言葉だな
一回動きが止まりゃちょっとは頭も冷えんだろ
鐘堂・棕櫚
恨まれても構いません、俺らは街を壊させる訳にはいかないので
けど、貴方がここを壊したくて仕方ないようには見えなかったんですよ
もう少し俺らと話していっては貰えないですか?
飛翔に加えて急な方向転換をする際はエアライドの活用を
どうにか彼とのサイズ差を補う為に飛び回りながら戦闘に入りましょう
彼の攻撃は食らったら遠くまで吹っ飛びそうなので
頑張って回避を試みますが
一般の人を巻き込みそうな方角に逃げ込むのはやめときます
主に足回りを狙って叩いて
どうにか街の中心部への移動は妨害したいものです
骰さん(g00299)膝カックンとか大人げなくないですか!
まあ合わせますけど、せめて膝をつかせる程度の勢いにしましょうよ
「ま――要は、運がなかったんだろうな」
広すぎる歩幅で一歩、また一歩と舗道を踏み砕き、黒鉄の兵士は前進する。その進路に相棒と二人並び立ち、鬼歯・骰(狂乱索餌・g00299)は誰にともなく言った。
「……つっても、当事者にしてみりゃあそんなもん糞食らえだろうけどよ」
生まれた場所が悪かった。境遇がよくなかった。だから仕方ないのだと、そうやって彼はあらゆる理不尽を呑み込んで来たのだろう。死を目前に、ひと暴れしたくなったとしても不思議はない。
でも、と加えて、骰は続けた。
「同情はしねぇよ。……されても腹立つだけだろ」
「ですね。俺なら御免です」
皮肉とも自嘲ともつかぬ笑みを浮かべて、鐘堂・棕櫚(七十五日後・g00541)は応じる。
だから――これから口にすることは憐れみではなく、あくまでも知人としての対等な意見だ。ねえ、と両腕を広げて、棕櫚は遥かな髑髏面を仰いだ。
「もう少し、俺らと話していっては貰えないですかね? 俺達はあの街を守らなきゃならないんで、そのためなら別に、貴方に恨まれたって構わないんですが」
それでも、意に沿わぬ行いで傷つこうとしている誰かを放っておくのは寝覚めが悪い。ねえ、と柔らかく微笑んで、棕櫚は言った。
「貴方がここを壊したくて仕方ないようには見えなかったんですよ」
このまま進み続ければ、巨兵はほどなく街へ到達する。呼び掛ける声が彼の心の奥底に届くまで後少し――もう少し、時を稼がなければ。
のろのろと持ち上げた脚が再び踏み下ろされる前に、二人、目配せを交わして大地を蹴る。彼の意識を街から逸らすためにも、まずは視界に入らなければ始まらない。髑髏面の見つめる高さまで飛翔して、骰が言った。
「羽虫にでもなったみてえな気分だ」
「虫からしたら俺らもこう見えてるんでしょうね」
けれど自身の数倍では凡そ足りない巨大な存在を前にしても、彼らは引き下がったりしない。
さて、と確かめるように白塗りのバールを掌に打ち付けて、棕櫚は言った。
「虫は虫らしく、果敢に行きましょ」
巨兵の視線を惹きつけるように宙を裂き、そこから一歩、空を蹴って躍び上がるや得物を振り被る。そこに照準を合わせるべく兵士は右腕の機銃を上向けたが、その緩慢な動き故に避けるのはさしたる苦ではない。脳天に振り下ろす一撃を加えてすぐさま離脱すれば、今居た場所を突き抜けてブドウ弾のような砲弾が空の彼方へ飛んでいった。
「あんなもの喰らったらどこまでも吹っ飛ばされそうですね」
「だな。かといって、下手に避けるのもまずい」
街を背にして回避しようものなら、巨大な砲弾は立ち並ぶ家々を直撃するだろう。進ませるわけにも、撃たせるわけにもいかない――となれば。
一瞬、顔を見合わせたかと思うと、骰はにっと口角を上げた。それはまるで、とっておきのイタズラを思いついた悪童のように。
「……骰さん? もしかして――」
巨大な銃口はまだ、空の彼方を向いている。何かを悟った棕櫚より僅かに早く旋回すると、骰はそのまま巨兵の膝裏へ回り込む。片刃の鋸を両手に握り直して、男は言った。
「こいつで、どこまで通用すんのかは分かんねぇけど、な――!」
勢いをつけて振り抜いた鋸の刃が、巨兵の脚を水平に捉える。念動力を乗せた一撃は分厚い鋼を切り裂くことこそ能わずも、軸足のバランスを崩すだけなら十分だった。
「あ」
頭上から、どこか間の抜けた声がした。バランスを取って体勢を立て直すには、その身体は大き過ぎる。前に偏った自重を支えきれずに、巨兵はどうと膝をつき、辺り一面に土埃を舞い上げる。
その傍らへ軽やかに降り立って、棕櫚は思わず苦笑した。
「膝カックンとか大人げなくないですか?」
「大人げ? ……知らねぇ言葉だな」
鋸の先を地面に突き立てて、悪びれた風もなく骰は答える。時間は作った――後は、話をするだけだ。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【建造物分解】LV1が発生!
【モブオーラ】がLV3になった!
効果2【ダメージアップ】がLV7になった!
【フィニッシュ】がLV3(最大)になった!
四葩・ショウ
(わかってる
わたしが望む形であの人を救うことは、もう)
――だめだよ
エアライドと飛翔で彼の元へ
レイピアを閃かせ
攻撃するように見せ
武器から手を放す
貴方が腕を振りかぶるなら
腕をひろげそれを受け入れよう
気丈に、微笑んで
壊させない
だいじょうぶ
今のわたしは、ちょっぴり頑丈だから
……ひどいな
もう、忘れちゃった?
これって貴方の、『やりたいこと』なの?
命令だから?
ひとりぼっちだから?
ちがう!
貴方は今、『どうしたい』?
ねえ
わたしは貴方に
死んでほしくない
(……無理だって
わかってる、だけど)
堪えきれず
ぱたりと涙溢し
鉄の手首に触れようと手を伸ばす
貴方がいなくなってかなしむ人が
誰もいないなんて、
……言わないで……!
鐘堂・棕櫚
胡散臭い再会で本当すみません
人となりを知りたかったのは本当ですよ
貴方は普通の、気のいい、一個人でした
同じ立場同士なら友人になれたと思う程
そんな貴方が兵器として消費されるのが悔しいですし
非道な道具に改造した組織が腹立たしいです
だからこそ、俺は貴方を惜しみながら貴方を命がけで止めてみます
後悔が無いよう生きるのが信条ですから
貴方も己に悔いのない選択を最後までして下さい
それがどんな選択であろうと
貴方の事はずっと忘れません
…まあ、でかかったなあと覚えておくのは不本意ですが
先の接触と変わらぬ態度で
俺の顔面にケチ付ける骰さん(g00299)の踵を蹴っ飛ばすのも変わらぬ内
大きな彼に届くよう
声量だけは上げますね
鬼歯・骰
随分な成長期だな
先ほどと変わらぬ調子で相手を見上げ
悪かったな、騙すような真似して
胡散臭いのはツリガネ(g00541)のツラだけで十分 イッテェ!
アンタは親御さんとの思い出みてぇに
誰かの中に自分がいたって事、何も残したくはねぇのか
全部潰されちゃ俺はジュースよりも瓦礫でアンタを覚えちまいそうだ
出来れば美味い記憶のままが、俺は良いんだが
そういうのも含めて全部、どうしても壊したいってなら
こっちも止めなきゃならねぇから喧嘩だな
俺は別にそっちでもいい
友達らしいってんなら、それもアリだろ
フリだって終わりまで貫いたのなら真実とそんな変わらねぇからな
最後ぐらいアンタ自身が何をしたいかを選んだってバチ当たんねぇよ
重々しい地響きが、未だ辺りの空気を震わせていた。舗道の中ほどに膝をついた巨兵を鋸の腹でごんと小突いて、鬼歯・骰(狂乱索餌・g00299)はぼやく。
「まったく……成長期にも程があんだろ」
「すみませんね、胡散臭い再会で」
「ああ、胡散臭いのはこいつのツラだけで十分――イッテェ!」
一言多い友人の踵に本日二度目の蹴りを入れて、鐘堂・棕櫚(七十五日後・g00541)は柔和な笑みを浮かべ、砂に塗れた装甲を叩く。強かに蹴りつけられた片足を一頻りぶらぶらとやってから、骰は少しだけ、ばつが悪そうに黒髪を掻いた。
「悪かったな、……騙すような真似して」
親しげに話し掛け、談笑して、また会おうとそう言った。別に嘘をついたつもりはないし、現に彼らはこうして再び、孤独な兵士と相対しているわけだが、彼が『騙された』と感じたとしてもそれは致し方ないことだろう。お互いに相容れない存在であることを承知の上で、復讐者達は彼に近づいたのだから。
でもね、と加えて、棕櫚が続けた。
「貴方の人となりを知りたかったのは本当ですよ」
「…………」
何気ない会話を通じて分かったのは、悪の組織のゾルダートの強さでもなければ怖さでもない。流されるまま兵士に身を窶し、機械化改造手術を重ねてなお失われなかった、彼の朴訥な人柄だけだ。
「貴方は普通の、気のいい一個人でした。同じ立場なら、友人になれたと思う程」
ジュースバーのカウンターで客を相手にするように、ぽつぽつと男は語る。そして黒鉄に触れた手に、ほんの少し力を込めた。
「そんな貴方が兵器として消費されるのが悔しいですし――非道な道具に改造した組織とやらが腹立たしいです」
だからこそ、止めてみせる。
彼を惜しみながら、それでも彼を止めることこそが、仇討ちになると信じたい。
「命がけですけどね、それでいいんです。後悔がないよう生きるのが信条ですから」
今、目の前で起きていることを見過ごしたとして、それで繋いだ命など死んでいるのも同じこと。
あくまで微笑みを絶やさぬ棕櫚の隣で、骰はじろりと髑髏面を睨んだ。
「親御さんとの思い出が、今もアンタの中に残ってるみてぇに……誰かの中に自分がいたってこと、残したくはねぇのか」
ここにいたことを、覚えておいて欲しくはないのか。
問えど巨兵は黙りこくったまま、何かを語る気配はない。けれど構うことなく、男は続けた。
「どうせ覚えておかれるなら、踏み潰された街よりか美味いジュースと一緒のが良いだろ。そういうのもひっくるめて、何もかも壊したいってんなら――喧嘩だが」
肩に担いだ鋸の刃が、午後の陽射しを受けてぎらりと光る。口元に不敵な笑みを刷いて、骰は言った。
「俺は別にそっちでもいい」
笑い合えば、喧嘩もするのが友達だ。らしいかどうかで言うなら、それも十分友達らしいと言えるだろう。最後の瞬間まで貫いたなら、嘘も演技も真実と大差はない。
さあ、と笑って、棕櫚はすらりと長い手を伸べた。
「貴方も己に悔いのない選択を最後までして下さい」
それがどんな選択であれ、彼らは忘れない。
断片の地球で、時流と境遇に翻弄された一人の兵士がいたことを――決して。
「……まあ、でかかったなあと覚えておくのは不本意ですけどね」
生まれ方も生き方も、何一つ自分で決めることの叶わなかった人生の終わり。どんな結末を迎えるかぐらい、彼には選び取る権利があるはずだ。
砂地の露わになった地面を、さくりと踏む音がした。硝子の細剣を片手に携えて、四葩・ショウ(Leaden heart・g00878)は巨兵の真正面に翔け上がる。
(――わかってる)
誰もが望む形で彼を救うことは、もうできない。そんなことは痛いほどに理解っている。細剣の切っ先をひゅ、と一振り髑髏面に突きつけて――ショウは、無言で剣を鞘に納めた。
「……何もしないよ」
攻撃される、と思ったのだろう。巨大な腕を軋ませながら、兵士は眼前の少年――否、少女に、機銃の照準を合わせる。けれどショウは微笑みを浮かべて、無抵抗に腕を広げるだけであった。
「だいじょうぶ、撃ってもいいよ。今のわたしは、ちょっぴり頑丈だから――それくらいじゃ、壊れない」
でも、と花色の瞳を微かに翳らせて、少女は続けた。
「これって貴方の、『やりたいこと』なの? 命令だから? ……ひとりぼっちだから?」
そんなはずがないと、知っている。
知っているけれど聞かずにはおれなくて、言い募る声は次第に吐き出すような響きを帯びる。絞り出すような声色で、違うでしょ、とショウは言った。
「貴方は今、『どうしたい』? わたしは――」
続く言葉を、形にすることはできなかった。
こんな風に彼を死なせたくない。頭では無理だと分かっていても、それでも生きていて欲しいと願ってしまう。黒鉄の手首に結んだリボンは千切れ、もう影も形も見えないけれど――また明日と望んだ気持ちに、嘘はなかったのだから。
「……貴方が、『やりたい』ようにすればいい。だけど」
堪え切れずに伏せた瞼の端から、一粒の涙がぽろりと落ちた。
「貴方がいなくなってかなしむ人が、誰もいないなんて――そんなこと、言わないで……!」
硝子玉のような雫が少女の白い頬を伝い、冷たい鋼の腕へ落ちる。そして目映い閃光が、再び復讐者達を包み込んだ。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【託されし願い】がLV2になった!
【操作会得】がLV6になった!
【強運の加護】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV8になった!
【能力値アップ】がLV5になった!
【アヴォイド】がLV2になった!
●TSCHUESS, LIEBER FREUND
――気づけば、彼は道の途中に立ち尽くしていた。
「……あれ」
きょとんとして視線を落とし、兵士は両掌を開閉する。
「…………まだ生きてる……」
巨大化した後どうなるのかなんて考えたことはなかったけれど、多分、何も考えられないまま爆発して死ぬのだろうと思っていたから、こんなことになるとは意外だった。
ぐるりと辺りを見回して、兵士は俯いた。巨大化装置は機能していたはずだ――それがどうして失敗したのか、理由は分かり切っている。一つ一つの呼び掛けに答えることはできなくても、何もかも全部聞こえていたから。
(逃げた方がいいのかな)
巨大化した自身を前にしても、彼らは怯む気配がなかった。この人数差でやり合えば、間違いなく彼は壊される。けれども。
逃げたところで、その先にいったい何がある?
「あのさ、……一つ、わがまま言ってもいいかな?」
それは、独りぼっちのままでは決してできなかったこと――友を得た今だからこそ、できること。
空を仰いでしばし逡巡し、兵士は言った。
「僕と、喧嘩してくれないかな?」
飛鳥・遊里
ああ、そうだな。友達らしく喧嘩しようか。最後まで後悔のないように
俺の雷電掌で、その機械の身体を、回路の一つたりとも残さず焼き切ってやるよ。その身体が、あの世まで着いていかないように、因果ごとな
小細工なんていらない、真っ向勝負だ
俺の名前は、飛鳥遊里。君の名前は?違う、君の『本当の名前』だ。友達の名前を覚えておくのなんて当然だろ?
渡したコインに、今まで積み重ねてきた【操作会得】で、ありったけの想いを込めておく。そのコインが必ず君と俺をまた引き合わせてくれるさ。どんなに時間がかかってもきっと。それは目印だ、大切に持っておいてくれよ?
だから、さよならとは言わない、あえてこう言うよ
『また会おう、友よ』
エリザベータ・シゲトヴァール
●心情
『喧嘩』か……。子供の頃は、よく近所の男友達とも取っ組み合いをしては、父さんや母さんに叱られたものだったわね。
泣かせてしまう事もあったし、泣かされる事もあった。
でもこんな悲しい涙を流す『喧嘩』は、後にも先にもこれっきりでしょうね。
●行動
『喧嘩』なら武器を使うのは無しよね。
銃も爆撃槌もその場で投棄。使うのは互いの拳だけよ。
……女相手に殴れない、だなんて、紳士振るのは止めて。
本当に『友』だと言うなら、遠慮は無用だから。
●戦後
彼の亡骸を【怪力無双】と【飛翔】を併用して郊外まで空輸。
見晴らしの良い丘の上に埋葬して、彼のお墓を作ってあげたいの。
私は貴方を忘れない。
どうか魂だけでも安寧のあらん事を。
鐘堂・棕櫚
友人との喧嘩に重火器や鈍器や刃物はアリでしょうか
…骰さん的には(g00299)大アリですよねきっと
俺は普段はもうちょっと穏便ですよ、今日は全力でいきますが!
撃たれると痛いっちゃ痛いので遮蔽物があるなら隠れますが
無いようなら被弾覚悟で突っ込みましょう
彼の事を記憶に刻むのならば、せめて痛みと共に
得物を握る右腕だけ吹っ飛ばされなければ上々です
貴方はとても強い人だと思います
喧嘩相手としても勿論ですが、一人のひととしても
時代に、世界に流されて終わる兵士としてじゃなく
あなた自身としてここに居てくださるって凄い事ですよ
…会えて良かったです
笑顔はいつもみたいに上手く作れませんが
最期まで、彼から目は離しません
鬼歯・骰
随分ちっぽけなわがままだな
もうちょっと欲張ってもいいんじゃねぇの
まぁ了解、最後まで全力で付き合うよ
…友達だからって手ぇ抜く方が失礼じゃねえ?
ツリガネ(g00541)もそんな殊勝な精神してねぇだろ
真正面から打ち合うのは流石に力負けしそうだ
なるべく受け流すか躱してから鱶の一撃を叩き込もう
多少なら攻撃食らっても気にしない
喧嘩なんざどっちかがぶっ倒れるまで殴り合う方が面白ぇもんだしな
逃げずにやりたい事やんの、どんな気分だ?
意外と悪くないか、思ったよりつまんねぇか
ちっと遅いかも知れねぇが分からないままでいるよりはマシだろ多分
俺は喧嘩すんのも楽しかったよ
ちゃんと強い奴がいたなって覚えとく
じゃあな、おやすみ
朔・璃央
双子の妹のレオ(g01286)と
実に素敵なわがままですね
確かに相手がいないと出来ない事です
小さい頃は兄妹喧嘩もよくしたものですしね
私たちで良ければお相手しましょうか
ただ喧嘩には一日の長がありますからね
燃え尽きるほどに全力で
全てを出し切るほどにぶつかって来て頂かないと
相手にならないかもしれないですね
出会った時から一貫して態度は変えず
少しからかうような言葉を添えて
やりましょうかと拳を構えて相対しましょう
互いに授かりものの鉄拳同士
殴り合いと洒落込みましょう
眼前に立ちはだかって
よく観察して避けて耐えて
お返しとばかりに殴り返して
あぁ、良い拳でした
またいずれ何処かでやりましょうか
此処ではないどこかで、必ず
朔・麗央
双子の兄リオちゃん(g00493)と
お兄さんの最初で最後の喧嘩、お相手させてもらうね?
そうだね、喧嘩は1人じゃできないものね
私達も小さい頃はいっぱい喧嘩をしたよね、リオちゃん
手を抜いちゃ失礼だもん
私も全力で行かせてもらうよ
正面から殴り合いはリオちゃんに任せて
私は少し距離をとって双翼魔弾で援護するよ
多少攻撃をもらっても気にしない
こっちだってやり返してやるんだから
思い出はこの胸に
きっと忘れないよ
願わくば次にお兄さんが生まれ変わることがあれば
今とは違う道を歩いてたくさんの人に囲まれて寂しくない人生を歩んで欲しいな
そしてその時は今度は私達が色々お兄さんに教えるね
おやすみなさい
四葩・ショウ
つんとした痛みは残るけれど
頬をぐいと、拭って
いいよ
その勝負、受けて立ってあげる
とっくみあいの喧嘩だって
出来なくはないけれど
わたしが持てる限りの力で立ち向かう
鞘から硝子のレイピアをひき抜いて
たまにフェイントで翻弄しつつの貫通撃を軸に
ケガの大きな仲間を、ガードする
……つよいね
貴方は最後まで
戦士として頑張ったんだもの
ずっと、頑張ってきたんでしょ
えらかったね
彼をとらえたなら
【MaryMagdalene】を
そっと、彼にだけきこえる距離で教える秘密
わたしね
本当は硝子(しょうこ)って言うんだ
家族と友達しか知らないの
忘れちゃダメだから、ね
……うん
貴方のこと、覚えてるから
ノスリ・アスターゼイン
やぁ
お帰り
やっと俺達の許に戻って来たの
待ち草臥れたよ、なんてね
気安い口調のまま
手足首を回して準備運動
揮う拳は全力で
軽いステップで跳ねて躱して
かと思えば
息も吐かせぬ急襲
懐に踏み込み
機械との継ぎ目に手刀
忘れて欲しいと願われても
忘れてなんかあげないよ
最後まで我儘言いなよ
生きていたかった
忘れないでってさ
友を屠る無情な俺達に
これで良かったんだと
自分への言い訳なんかさせないでよ
名乗りが無いなら勝手に付けようか
また逢う日まで
お休み、フロイント
そのまんまだと笑うかい
沢山跳ねたもんだから
仕舞っていた炭酸の瓶がさ
再開栓したら大暴れ
あーあ
友に捧げようと思っていたのに
きらきら
降る雫は雨みたいで
頬に落ちたのもきっと、雨
ドナ・ゴーティエ
喧嘩…成程、喧嘩ですか
拳で語る事で分り合える友情もあると申します故
向かい合うならば真摯に、全力で
拳の連打――軌道を見定め
槌で吹き飛ばし、ヒットアンドアウェイに努める
忍耐力を頼みの綱に、戦闘知識を蓄えます
痛みも苦しみも気に留めず
動けるならば、何度でも彼に突撃致します
それが私がしてやれる唯一なのですから
最後の一撃は自らの拳で
骸骨の面を砕く勢いで参ります故、御覚悟を
…驚きましたか?
これでも力に多少の自信があるのですよ
痛いですか?
…痛いですね
何せ全力の喧嘩の最中なのですから
決して目を逸らしは致しません
最後まで戦士として――そして、友人として
彼の最期を見届けたい
…親切な方
貴方は、満足して下さいましたか?
シセラ・カドシュ
友達と喧嘩なんて、した事は無いけれど
してみたかった気持ちはあるから、わたしは構わないよ
武器を使うならそれでも良いし、徒手でもわたしは構わない
お互い心残りがないようにしようか
でも、喧嘩をする前に、二つ約束はしてほしいかな
喧嘩が終わるまでには、返事をくれること
喧嘩したら、仲直りをしてくれること
その二つだけで良い
返事は、別に、前向きな返事じゃなくても良いし
わたしは、友達と約束事が出来ただけで、十分満足だよ
出来ることなら、「いつか遊びに行く」
そんな約束も、してみたかったけれどね
攻撃を受け流して、隙を伺いながら
ここぞという時に、持ちうる最大の一撃を
さようならで終わるのは嫌いでね
また、何処かで
●TEIL 1
一枚の葉が風に運ばれて、舗道の上を転げていく。
居並ぶ復讐者達を見つめる髑髏面はどこかさっぱりとしたように見えて、ノスリ・アスターゼイン(共喰い・g01118)はふ、と形のよい唇を和らげる。
「お帰り。……なかなか帰ってこないものだから、待ち草臥れたよ」
慣らすように手首を回しながら、昔馴染に語り掛けるように気安い口ぶりで男は笑った。数分ぶりに『帰って』来た兵士は思いのほか落ち着いているように見えたが、復讐者達の胸中は穏やかではない。
「喧嘩……ね」
呟くように零したエリザベータ・シゲトヴァール(聖イシュトヴァンの剣・g00490)の眉根には、抑えようのない苦さが滲んでいた。子どもの頃はよく近所の男友達と取っ組み合いの喧嘩をして、両親に叱られたものだ。互いに手加減を知らない子ども同士、相手を泣かせてしまうこともあったし、逆に泣かされることもあった。ただ――。
「……こんな悲しい『喧嘩』は、後にも先にもこれっきりでしょうね」
そう言って深く嘆息し、航空兵は銃を納めた。
そんな重苦しい空気に抗うように、飛鳥・遊里(リサイクラー・g00512)は努めて明るく声を上げる。
「そうかもな。……だけど、君がそうしたいんなら俺達は付き合うよ」
彼のために、彼の友としてできる唯一のことがそれであるならば、最後まで後悔のないように。
荒れた地面を一歩前へと踏み出して、シセラ・カドシュ(Hiraeth・g01516)も同意する。
「わたしも構わないよ。友達と喧嘩なんて、したことはないけれど――してみたかった気持ちはあるから」
武器を使ってもいいし、徒手でも別に構わない。お互いに心残りがないようにできるなら、それでいい。
でも、と一言付け加えて、シセラは細い人差し指を立てた。
「喧嘩をする前に、二つ約束してほしいかな」
「……約束?」
「そう。また話をしようって言ったよね?」
首を傾げるゾルダートに、小さく頷いて少女は続けた。
「だから、喧嘩が終わるまでには返事をくれること。喧嘩したら、仲直りをしてくれること。……その二つだけでいいから」
別に、返事は前向きなものでなくても構わない。この世界が歪に在り続ける限り、彼に明日はやってこないのだ。それでも――誰かと交わした約束は希望になる。
涙の痕をぐいと拭って、四葩・ショウ(Leaden heart・g00878)は顔を上げた。鼻に抜けるつんとした痛みは鮮やかだが、成すべきことがはっきりした今、俯いていても何も始まらない。大きく深呼吸して、ショウは濡れた瞳を友へと向けた。
「いいよ。……その勝負、受けて立ってあげる」
「…………」
ありがとう、という声が聞こえた気がした。全身の金属の継ぎ目から白い蒸気を噴き出して、ゾルダートは両腕の機銃を構える。
「女相手に殴れない、だなんて、紳士振るのもなしよ」
やるなら本気で、手加減はなし。真正面から兵士を見据えて、エリザベータが言った。
「私達を本当に『友』だと認めるのなら、できるでしょう?」
対等な関係に遠慮は無用だ。それは彼なりに理解しているようで、分かってる、と兵士は応じる。
「……全力でいく」
兵士(ゾルダート)だからと続けた声には、一種の矜持のようなものが覗いていた。だからそちらも加減はするなと、光る銃口が告げている。
分かったと短く頷いて、ショウは硝子のレイピアを鞘から抜いた。
(とっくみあいの喧嘩だって、できなくはないけれど――それじゃ、多分)
多分、違うのだ。彼が全力でいくと言ったのだから、彼女達はそれに応えなければならない。持てる限りの力で立ち向かわなければ、真に彼を送り出すことなど叶わないのだから。
それぞれの胸に苦い思いを抱えながら、それでも、ディアボロス達は動き出す。淡い空を一瞬翳らせて、真っ先に切り込んだのは朔・璃央(黄鉄の鴉・g00493)だった。
「実に素敵なわがままですね。確かに相手がいないとできないことです」
純白の翼で兵士の頭上へ躍り出て、美しい少年は少しだけ、得意げに笑った。
「私たちでよければ、お相手しますよ。ただし喧嘩なら、こちらに一日の長がありますけどね」
微笑む翡翠の煌めきが、髑髏面をすり抜けて後方を見やる。そこにはいつの間に回り込んだのか、朔・麗央(白鉄の鉤・g01286)の姿があった。
「お兄さんの最初で最後の喧嘩、お相手させてもらうね?」
薄紅の口唇を弓なりにして、麗央は言った。二人きりの兄妹だけれど、小さい頃はよく喧嘩もしたものだ。顔を真っ赤にして泣いたり怒ったり、猫のように取っ組み合ったのに、ぷいと顔を背けた瞬間、ひどく寂しくなって。膝を抱えて蹲った背中を叩き、『ごめんね』と泣きそうな顔で謝ったのは果たしてどちらだっただろう。
原因は、今なら笑ってしまうくらい些細なことだったのだと思う。けれどそんなつまらない喧嘩が、誰しも一人で生きているのではないということを教えてくれる――だから、手加減はできない。
「燃え尽きるほど全力でいらしてください。でないと、相手にならないかもしれませんよ?」
家族も居場所も奪われて流れ着いたあの島で、育てた絆と力は甘くない。それは多かれ少なかれ、この場の誰もに通ずる思いであっただろう。
からかうように口角を上げて、璃央は両手を握り固める。大きく振り被ったその拳を反射的に視線で追った瞬間、兵士の背中で麗央の光弾が弾けた。
「……やったな」
「もちろん、真剣勝負だからね!」
双子の連携を見せてあげるとばかり、悪戯っぽく少女は笑う。しかし、彼女ばかりに構っている暇はなかった。なぜなら兵士の眼前には、彼女の兄が迫っているからだ。
「授かりものの鉄拳同士、殴り合いと洒落込みましょう」
行きますよ、と一言告げて、璃央は拳を突き上げる。顎の下に響いた衝撃で天を仰ぎながら、しかし兵士は、確かに笑っていたのだと思う――髑髏面の下にある、忘れられたその素顔で。
●TEIL 2
「成程、喧嘩ですか。拳で語ることで分り合える友情もあると申します故、止めはしますまい」
大きく仰け反った兵士の頭上を飛び越えて、ドナ・ゴーティエ(雷公・g04485)は右手の槌をくるりと回し、握り直す。向かい合うとひとたび決めたのならば、あくまで真摯に、全力で――それが、友人に対する礼儀というものだ。
「行きますよ」
兵士の眼前に降り立って、青年は告げるや否や長柄の槌を振り抜いた。遠心力を乗せて打ちつける暴風の如き一撃は黒鉄の横腹を確かに捉え、ガァンと激しい音が周囲一帯に響き渡る。けれど。
「!」
その身体は、僅かに傾ぐこともなかった。間合いを取ろうと後ろへ飛び退ったドナの腹を目掛けて、兵士は拳を突き入れる。武骨で鈍重な外見に反してその拳撃は、シンプルに疾い。
「く、」
離脱するだけの時間はなかった。咄嗟に戦槌を身体の前で斜めに構えて腰を落とせば、受け止める一撃、一撃がびりびりと黒衣の腕を痺れさせる。耐えるように奥歯を噛み合わせて、ドナは言った。
「なかなかの腕前、ですね」
生まれや境遇といったきっかけはどうあれ、彼は兵士だ。生来の生真面目な性格は、厳しい訓練の日々を経て彼を強くしたのだろう。単にクロノヴェーダとなったからというだけでなく、彼自身が強いのだ。
一瞬の機を狙って宙へ駆け上り、ドナは体勢を立て直す。打たれた腕が軋もうと、動けるならば関係ない――彼が向かってくる限り何度でも応じること、それが、今ドナにできる唯一のことなのだから。
「随分ちっぽけなわがままだな。もうちょっと欲張ってもいいんじゃねぇの」
今までろくに、したいこともしないで生きてきたのだろうから――言外にそう含ませて、鬼歯・骰(狂乱索餌・g00299)は呟く。その隣でバールの先端をなぞり、鐘堂・棕櫚(七十五日後・g00541)は窺うように友人の顔を見た。
「友人との喧嘩に重火器や鈍器や刃物はアリでしょうか。……骰さん的には大アリですよね、きっと」
「友達だからって手ぇ抜く方が失礼じゃねえ? 大体、アンタもそんな殊勝な精神してねぇだろ」
「俺は普段はもうちょっと穏便ですよ」
一緒にしないで下さいと嘯いて、男は笑った。とはいえ、後にも先にもこれっきりの喧嘩だ――不完全燃焼ではお互いに悔いが残ろうというもの。ならば、今日ばかりは全力で戦り抜くしかないだろう。
一筋の街道が疎らな建物の間を抜けていく街外れには、ろくに身を隠す場所もない。だが、この世界にやってきたその時から、多少の痛みは覚悟の上だ。
「では――始めるとしましょうかね」
「おう」
地面に突き立てた鋸を右手に持ち直して、骰が応じた。視線一つ交わすことなく、けれど示し合わせたように同時に、二人は動き出す。前に出たのは、骰であった。
「行くよ!」
律儀に告げて鉄の指を握り込み、兵士が動いた。拳圧に巻き起こる風は鋭く、骰は金色の瞳を見開く。咄嗟に顔をガードした左腕を痺れるような衝撃が襲い、踏み締めた革靴の踵が大きく土を削った。
「――っ、面白ぇ」
どちらかが起き上がれなくなるまで殴り合うのが、骰の流儀だ。そしてその相手が強ければ強いほど、死と隣り合わせの緊張は男の牙を研ぎ澄ませる。
唇に不敵な笑みを刷き、骰は再び兵士の懐へと切り込んだ。
(真正面から打ち合うのはうまくねえ)
巨大化が解除されたとはいえ、度重なる改造手術で作り替えられた兵士の身体は依然として大きい。純粋に腕力だけで勝負すれば、大柄な骰とて力負けしかねないだろう。ならばと打ち込まれる拳の雨をスライディングの要領でかわして、骰は兵士の背後へと回り込み、大ぶりの鋸をその額目掛けて振り下ろす。しかし刃は重ねた鉄の両腕に阻まれて、金属の打ち合う轟音を奏でるのみであった。
「逃げずにやりたいことやんの、どんな気分だ?」
「…………思ったより普通」
「そうかよ」
調子の狂う奴だなと笑って、骰は言った。
「でも、分かんねえままでいるよりはマシだろ」
気づくのは少し遅かったかもしれないけれど、自由の一つも知らずに散るよりずっといい。火花を散らして鋸刃と鋼腕が離れた――その瞬間。
「!」
不意に足元へ落ちた影に気づいて、兵士は背後を振り返る。掲げた機銃の砲身の先には、棕櫚の姿があった。
「つっ……!」
パララと軽やかな銃声が踊り、鉛玉が一つ二つ、青年の頬を裂き、肩を貫いていく。しかし一瞬しかめた顔は、すぐさま淡い笑みに変わった。
(この腕さえ吹っ飛ばされなければ、上々です)
燃えるような熱を帯びた傷口のその痛みごと、彼を覚えておく。姿勢を低く、機銃の射程の内側へと潜り込んで、棕櫚はバールを振り翳した。
「貴方はとても強い人だと思いますよ」
喧嘩相手としては勿論、一人の人間としても。
時代が悪い、世界が悪いと諦め、呪うことは容易いけれども、彼は兵士に身を窶しながら、彼自身のままここにいる。それがどれだけ稀有なことかは、これまで戦ってきた他のゾルダート達を思えば分かることだ。だから何の感情も見せないはずの髑髏面が、笑ったように見えたのが錯覚でなければいいと思う。
得物を叩きつける反動を生かして、棕櫚は大きく後ろへ跳び退いた。するとすかさず、距離を取った二人の間に琥珀の翼が舞い降りる――ノスリだ。
「俺とも遊んでよ。いいだろ?」
「……うん」
やろうかと応えて、兵士は両の拳を握り締め、ボクサーのような姿勢を取る。そうこなくちゃと笑って、ノスリは爪先を地面に下ろした。この喧嘩に翼は必要ないだろう。
ゆったりと宙を舞う肩布を目くらましに、繰り出される拳を軽やかに交わして兵士の間合いに入り込み、男は少しだけ複雑そうに口にした。
「これでよかった、なんて思ってない?」
「……え?」
瞬間、拳を振るうことを忘れて兵士は問う。伏しがちにした瞳に長い睫毛の影を落として、ノスリは言った。
「せっかくのチャンスなんだからさ――最後まで我儘言いなよ」
生きていたかった、って。
忘れないでいて欲しい、って。
この期に及んで遠慮をする必要なんて、どこにもない。すべてが終わって復讐者達が今日この瞬間を振り返る時、『あれでよかった』だなんて夢にも思えぬように、消えない傷を穿てばいい。
尤も、と寂しそうに笑って、ノスリは言った。
「忘れて欲しいと言われたって、俺達は忘れてなんかあげないけどね」
鋭く、振り下ろした手刀が金属の継ぎ目を打った。咄嗟に手を引っ込めた兵士の背に、シセラが、ドナが、音もなく肉薄する。その気配を察した兵士が腕の機銃と拳とを構える前に、復讐者達は攻勢に出た。
「そろそろ、返事は考えてくれたかな?」
ひゅ、と風を切り突き下ろしたシセラの短剣が、硬い装甲にかち合ってギィンと重たげな剣戟を鳴らした。すかさず掲げた機銃の砲身の向きを素早く見定めて、少女は宙を蹴り、その射線から離脱する。
「さようならで終わるのは嫌いでね」
だから叶わぬ願いだとしても、『次』の、『また』の、約束が欲しい。それでも未だ迷う様子の兵士の眼前に滑り込み、ドナは言った。
「女性をあまり待たせるものではないですよ」
「――でも」
守れない約束をするのは気が引ける、と、そう言っているようだった。溜息一つ、振り被った拳を疾風の如く髑髏の面に突き立てると、ぎゃ、と間の抜けた声がする。
「痛かったですか? まあ――痛いですね、すみません」
とはいえ全力の喧嘩ですのでと淡々と告げ、ドナは蹲った兵士を見下ろした。
生身の体から今に至るまで、彼がどれだけの改造手術を繰り返したのかは分からない。けれどなまじ脳を残しているばかりに、その過程には想像を絶する苦痛もあったことだろう。切り刻まれ、望まぬ力を得た彼にとって、機械の身体は人の心を閉じ込める檻のようなものだったに違いない。
「重そうだな、その身体」
奪うことしか許されないのならばせめて、彼の魂を冷たい檻から解放してやりたい。そう、遊里は想う。
「回路の一つたりとも残さず焼き切ってやるよ。その身体が、あの世まで着いていかないように、因果ごとな」
グローブの手にはめたガントレットは、『ヘパイストス』――もの作りを生業とする青年には相応しい名だ。その中を駆け巡る高圧の電流は青い火花となって、掲げた掌でバチバチと音を立てる。
「真っ向勝負と行こうぜ――だけどその前に一つだけ、教えてくれ」
君の名前は。
そう尋ねると、兵士は一瞬息を詰め、そしてしばし沈黙した。
「僕は、……フェストゥング・リーゼ」
「違う、君の『本当の名前』だ。……友達の名前を覚えておくのなんて当然だろ?」
「…………」
「因みに俺は、飛鳥遊里。……君の名前は?」
「…………」
亡き父と母が、つけてくれた名前。
階級でもない、コードネームでもない、彼だけに与えられた特別な名前。
もう随分と長い間忘れていたようなその名前を、兵士はぎこちなく口にする。
「フリッツ。……フリッツ・ドレッセル」
「――OK、フリッツ。さっき渡したコイン、大事に持っておいてくれよ?」
物に宿った想念がいつかどこかで、きっと彼らを引き合わせてくれると――そう信じて。
冷たく光る銃口の向こう、口を噤んだ髑髏面を真っ直ぐに見つめて、遊里は言った。
「また会おう、友よ」
銃声が響き、青い光が膨張する。明るさを増す光はやがて目映い白へと移り、そして――。
●TEIL 3
白い煙が幾筋も、秋空をめざし昇っていた。
身体中の継ぎ目という継ぎ目から消えゆく命を燻らせて、兵士は荒れた地面に長く大きな影を落とす。
ひしゃげた腕の砲身は、もう敵を狙えない。握った拳の強さは変わらずとも、腕がもう上がらない。跳ぶことも歩くことも自由にはならない身体を、けれど彼は二本の脚でまだしっかりと支えていた。
「……まだ立てるのか」
大した奴だよと、困ったように遊里は笑った。その隣に進み出て、ショウは細剣の切っ先を下ろす。
「貴方は……つよいね」
満身創痍、戦う力を失っても、決して膝はつかない。そこには、曲がりなりにも与えられた役割に真摯に向き合おうとした男の生き様が垣間見えるような気がした。もしここで誰かがもうやめようと言ったって――勿論、そんな生半可な覚悟の人間はこの場にはいないのだけれども――彼は、きっと取り合わなかっただろう。
「戦士として、ずっと頑張ってきたんでしょ。嫌なことも、辛いことも耐え抜いて」
えらかったねと囁いて、ショウはもう一歩、壊れかけの兵士に歩み寄る。そして目の前の彼にだけ聞こえるほどの細い声で続けた。
「……『わたし』ね、本当は硝子(しょうこ)っていうんだ」
「…………」
髑髏面の口元が、微かにその名をなぞるように動いた。こくりと小さく頷いて、少女は微笑う。
「家族と友達しか知らないの。……忘れちゃダメだから、ね」
そう言って、少女は汚れた鋼の胸に手を触れた。外開きの装甲の内側には、今日一日の思い出が詰まっている。銀のスキットル、一枚のコイン、アプフェルショーレの空の瓶、そして与え、貰った言葉のすべてがそこに在った。
「貴方のことも、ちゃんと覚えておくから」
だから安心して――お休みなさい。
囁く声を合図にして、純白の棘が兵士の身体を貫いた。一本、二本、棘の数が増えるたびに、緩やかに抱いた腕の中で人の形が喪われていく。甘くいとけない薔薇の香りは、刺し貫かれる身体の痛みを忘れさせてくれる。
淡く白んでいく意識の中で、兵士はゆっくりと周囲を見渡した。
「実に良い拳でした。またいずれ、どこかでお相手願いたいものですね」
「もう、リオちゃんったら。……私はね、お兄さんが生まれ変わることがあれば、今度はもっと、たくさんの人に囲まれた道を歩いて欲しいな」
微笑みを浮かべて寄り添った、天使と悪魔の兄妹と。
「貴方にお会いできてよかったですよ。美味しいジュースにも出会えましたしね」
「だな。俺は喧嘩すんのも楽しかったよ――ちゃんと強い奴がいたなって覚えとく」
笑みを絶やさぬ眼鏡の男と、ぶっきらぼうな男の二人組。
それから――それから。
人生最期の一日に得られたものは余りにも多すぎて、意識の端から零れて落ちてしまわぬよう、一人一人の顔をしっかりと目に焼き付ける。
「貴方は、満足して下さいましたか? ……親切な方」
薄れ始めた意識の中に、問いかけるドナの声がする。痺れゆく身体はもう声を出すことも自由にはならなかったが、兵士はゆっくりと――極めてゆっくりと、頷いた。
「……そう、ですか」
ならば宜しいと、ドナは微かに安堵の笑みを浮かべた。彼が今日を悔いることなく旅立てるなら、安心して最期まで見届けることができる。
その隣に並んで、シセラは少し寂しげに、けれど柔らかい声音で言った。
「返事は貰ったよ。……またいつか、何処かで」
もう一度頷くだけの力は、彼には残されていなかった。けれど、想いは伝わったのだと信じたい。崩れてゆく鋼の身体を見送って、ノスリは言った。
「お休み、Freund(フロイント)」
鉄と鋼の塊が、その場にがらがらと崩れていく。探った荷物から林檎のラベルが貼られた一本の瓶を取り出して、ノスリは躊躇いなくその蓋を取る。すると空気に触れた炭酸は、泉の如く秋の空に噴き上がった。
「あーあ。……沢山跳ねたもんだから、大暴れだ」
せっかく彼に捧げようと思ったのに、と、笑う男の端正な横顔に降り注ぐ甘い雫が跡を作る。落ちた髑髏面を拾い上げて、エリザベータは言った。
「……私は、貴方を忘れない」
それはこの場に集った誰しもにとって、きっと同じこと。せめて解き放たれた今、彼の魂が安らかでありますように――ささやかな祈りを捧げながら、復讐者達はしばらくの間、巨兵の影が消えた秋空を見上げていたのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【操作会得】がLV7になった!
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