リプレイ
桜・姫恋
アドリブ・絡み歓迎
【日記帳友の会】のみんなと。
ペンギンたちを元気付ければいいのね!
【動物の友】の効果を使いペンギンたちと仲良くなろうと会いに行く
あぁ、ペンギン可愛い!!
ペンギンたちと触れ合いながらペンギンたちのして欲しいこととかないかな?と聞いてみる
やれる範囲のことは何でもするわ!
ペンギンさんたちが悲しいと私も悲しいから不安を打ち消して楽しく過ごせるようになってほしいわね。
ある程度時間が経ったら仲良くなったペンギンさんたちとソラのライブを見に行き一緒にペンライトとかを振り振りしながら楽しむ。
あー、はしゃぎすぎて腕痛いわね。
ペンギンさんたちは楽しめたかしら?
少し休憩して何か食べる?
飼育員さんに聞いてみるわね?
飼育員さーん!この子達の餌とかないかしら?あれば一緒に食事休憩したいのだけど……
帰る時間が近づいたらみんなに合流しに行き名残惜しいけど最後にペンギンさんたち1羽1羽を抱きしめながらお別れをする
ナイン・スカーレット
【日記帳友の会】のメンバーと参加。
アドリブ&連携歓迎
ペンギンさん元気ない感じかな?動物さんは人間に判らない空気や音、雰囲気等を感じるって言うもんね。【動物の友】を使って様子や調子を見るよ。
そして元気がないなら、そんな時こそ!肉球セラピー!(てってれー)と肉球手袋(ぷにっぷに)を使って「活性治癒」を最大限活用しちゃうよ!
元気になったらごはんを上げて仲良しになったら更に一緒に泳いだりも出来るかな?出来たらいいなー(希望的観測)
基本的には【日記帳友の会】のメンバーの皆と行動しますが、他のディアボロスとも交流はしたいと思います。
折角の楽しい時間は皆で共有しないとだからね~
憂いのある人の顔を笑顔にするのもまたディアボロスのお仕事?活動?だからね!青年の名前は判らずとも、皆と楽しみながらわいわいわちゃわちゃ遊びます。
時間になったら名残惜しそうにペンギンさんに向かって手を振ってまたねーってします。
凍雲・雪那
【日記帳友の会】で参加
アドリブ連携歓迎
ん。ペンギンさんと触れ合えると聞いて。
これは期待せざるを得ない。
……ルリム君がいるだろって?いや、それとこれとは話が別……ああっ、拗ねないでルリム君。
一先ず、ルリム君をペンギンさん達と遊ばせて……あ、スタッフさん。
よかったら、お魚貰えますか?ほら、ご飯をあげれば、ちょっとは仲良くなれそうなので。
というわけで、【動物の友】発動。Lv10ともなれば、多分人間の子供くらいの知能はある筈。
遊んだり、ふれあったりしながら心を通わせ、ペンギンさんの不安を感じ取るよ。
うん。大丈夫。
ボクが、ボク達が君達の不安を打ち倒す。だから、安心して欲しい。
ペンギンさんが落ち込んでると、ボクらも悲しいから、さ。
しっかりペンギンさんと目を合わせて、真剣に、そして自信満々に言い張るよ。
あとは、たくさん遊ぼう。
元々水族館には、ペンギンさん達と遊べる道具、準備されてるだろうし。
危なくないように、柔らかいボールとか、その辺りで。
ほら、ルリム君も一緒にね?
アオイ・ダイアログ
【日記帳友の会】からー!
アドリブ・絡み歓迎
ペンギンと合法的に交流できるとかやるっきゃないですね!
眺めるだけのペンギン鑑賞はおしまいです🎵
【動物の友】で賢くして……ええと、毛並みが艶々してて綺麗ですねぇ。撫でてもいいですか?
触ったり撫でたりなんなら抱きしめたい!
でも拒否られたら大人しく引き下がりますよぅ
お腹空いてるなら飼育員さんから餌も貰えますしね。不安とかないよういっぱい遊びましょう🎵
【水中適応】や【寒冷適応】なんかもあるし、一緒に泳いだりも出来ますからね!
運命さん、親ペンですか?
形から入るのはアリだと思いますけど、リスペクトの仕方が間違ってるような……?
わぁ、ソラさんの生ライブですね!
サイリウム取り出して応援しちゃいますよ🎵
あ、サカハさん、そこのペンぐるみの人から衣装を分けて貰ったらどうですかね?
沢山遊んでペンギンたちも元気になったらお別れですかね
うう、もっと触れ合っていたかった
ペンギンたちを不安にさせるクロノヴェーダ許すまじ、ですよー!
ソラ・フルーリア
【日記帳友の会】の皆と一緒に!
※アドリブ歓迎します!
お客さんと触れ合えないせいでストレスが溜まってるだなんて、ペンギンさん達は本当に人が大好きなのね!
ふふん、ファンの皆は勿論、ペンギンさん達だって元気にしちゃうのが真のトップアイドルってものよ!
任せておいて!
というわけで【動物の友】を発動させつつ、ペンギンさん達に会いに行くわ!
わぁ、可愛いー!よちよち歩きも羽をパタパタさせるのも可愛い!(語彙力喪失)
でも、元気が無くなっているのなら勇気づけてあげるのがアイドルの使命!
ペンギンさん達、こんにちは!
なんだか暗い雰囲気で怖いのよね! でも大丈夫、アタシ達が絶対に皆を守ってみせるわ!
それに、誰でもリズムに乗って元気になれるのが音楽の力よ!
さ、皆もリズムに乗って羽をバタバタするのよ!
そうすれば、暗い雰囲気なんて1発で吹き飛んじゃうんだから!
披露するのはアタシの2ndシングル『サンSUN!チアリーダー!』!
どんな状況でも頑張る人を応援する応援歌で、皆に少しでも希望を与えられたら幸いね!!
音無・サカハ
アドリブ・連携歓迎
【日記帳友の会】で参加
あ、ペンギンだ、かわいい。うちの先輩の隣にもいるよね、ペンギン
こうやって近い見るのは初めてなのかもしれない、なでなでしたい…
でもなんだろ、こうして見るだけで幸せの感じがする、なんか癒される
「あ…いいな、これ」
あかん、癒される、最近は仕事と依頼ばっかりだから、こういうのもありだな。こういう癒しが
…なんか餌とかもらえないかな、写真とかとりたいし、色々やりたい――!すみません!飼育員さん!なんか、餌とかないですか?あとマスコットスーツとか、人形とか!そういうの結構欲しいので!是非!
安藤・優
【日記帳友の会】
…………。
ペンギンってさ、ただ眺めてるだけで楽しいんだよね……
心が無になる
特に何かする訳でもなく、ただ眺めるだけ
一応【動物の友】は使うけど……特に話す事も無いしな……
そういえばペンギンは人間の事を自分達よりちょっと大きいペンギンと認識してるって話を聞いた事があったな……まぁ、だからなんだって話なんだけども
時間になるまで自由に過ごしているペンギン達を眺めてる
――またペンギン達を見にここへ遊びに行くのもいいかも。
百鬼・運命
【日記帳友の会】で参加
アドリブ・絡み・ネタ歓迎
■心情
うーむ、ペンギンと触れ合って元気を出させろか…
勢いで参加したのは良いが、どうしたものか
いや、こういう時はヨアケのペンギンマスターを思い出せ
『ヨアケの星』どころか復讐者で最もペンギンに詳しいであろう漢の行動を思い返せばヒントがあるはずだ
■行動
というわけで巨大ペンギンの着ぐるみを着て参加だ
ヨアケのペンギンマスターはペンギンリスペクトで髪の毛をイワトビペンギンの様に染めていた
つまりはまず形から入ることが大事
しかしこの着ぐるみ、思った以上に動きにくいな…
おお、ペンギンが此方を見て腕をかわいらしくパタパタと振って…
あれ?これペンギンマスターが言うには警戒行動ではなかったか?
マテマテ、これは借り物故に突っつかれるのはいろいろとまずい
主にあとで修理費用で俺の懐にダメージが
む、足が滑って…・
イリヤ・レダ
※アドリブ・連携OKです
【日記帳友の会】で参加
うわぁ~ ペンギンかあ…!
小さい頃、動物園とか水族館には行けなかったし、動画なんかでちょこっと見ただけなんだよね
人懐こいなんて最高だなあ
【動物の友】で楽しく交流できるかなあ…?
やっぱり食べたり寝たり遊んだりが大事なのかな?
お魚や遊具を持っていったりして、お昼寝の時間は邪魔しないって感じになるかな オレの飛刀も軌道をいい感じに操作したら楽しんでくれたりするかなー?
一緒に歩いたりしても大丈夫かな
こんなにワクワクするの久しぶりかも!
まあ、ディアボロスの皆さんからはちょっと子供っぽいって思われてもいいからペンギンと一緒に楽しもうかな そもそもオレまだオトナって年でもないしね あ、それとかつての旧友と再会した時の為にも動画やスクショ保存して置いてあげたいなあ ペンギンが嫌がらないといいんだけれど…
あ、そういえば面識ある方ばかりでもないかもしれないしディアボロスの方々ともご挨拶くらいはしておきたいなあ これから他の戦場でご一緒するかもしれないしね!
天夜・理星
さあ【日記帳友の会】というのがあるわけだけど。
友と聞いたら黙ってられねえ。アタシも混ぜてくれ皆の衆。
動物の友の残留効果、アタシも借りよう。
落ち込んだ時には言葉が想いに力を注ぎ込んでくれるんだ。
ほら、ソラさんの歌もあるしさ、聞けばきっと気分も上に上がって元気になるよ。アタシも聴こっと。
みんなみんな、ペンギンさんたちが元気になるのを願ってる。
ほら、そこの運命さん……は何してんだアレ。すごいことするね。
とにかく、アタシも元気になってもらいたいんだ、それは本当。
しかし、姫恋さんったらまあ幸せそうな顔しちゃって……
ああ。元気も愛くるしさも、ぜんぶつまってるのはいいことだ。
白水・蛍
アドリブその他諸々歓迎
【日記帳友の会】
ペンギンさん可愛いですわよねえ。
一緒に遊びましょう?
【動物の友】使って、えーと……撫でていいか聞いたり、一緒に遊ぼうと誘ったりしましょう。
まあ、ペンギンさんに次第という事で一緒に遊べる子とだけ遊びましょう。
お腹空いてるなら飼育員さんから餌貰ってあげたり、【水中適応】や【寒冷適応】で一緒に泳いで遊びましょう。
踊りたければダンスもありますしね。一緒に踊って遊びましょう。
ほら、フローライト(サーヴァントのオラトリオ)も一緒に遊びましょう?
……あの、運命さん?何してるんです?あの、インパクト……大きいですね?
怖くないですからね。大丈夫ですからね。とペンギンさん達説得しておきましょう。
さて、遊び終わったら元気よくクロノヴェーダ討伐ですよ皆様!と元気よく柏手撃って皆に呼びかけつつ。
倒したらまた遊びに来ましょうね。
冰室・冷桜
なぜ、ペンギン……いや、理屈は分かる? 分かるか……? 分からんでもないですが
まー、ともあれ、こう、ひりついた感じじゃないお仕事も偶にはいいでしょってーことで
ペンギンと触れ合いタイムに洒落こみますかぁ
あるものは使わせてもらいましょうの気持ちで【動物の友】を発動させつつ、飼育員の人にも注意点とかそーゆーのも聞いておきますか
私らはよっぽどのことがなきゃ大丈夫でしょ、ペンギンの方はそうもいかないでしょうし、事故に気を付けるに越したこたぁないですわね
他にも来てる面々はいるみたいですし、私はそうね、特に元気がない子とか逸れてる系の子がいればそっちのお相手を優先しますか
はぁい、こんにちわー元気ぃ?
しゃがんで視線を合わせながら、話しかけて餌の魚とかあげてみましょ
慌てなくても逃げないからねぇー
……もっとのんびりできるようになったら、また来るのも悪くないかもね
フィーナ・ユグドラシア
※アドリブ、絡みok
水族館のペンギンさん達ですか。
言われてみれば確かに、気軽に移動させられるかというと難しいですね。
そういうことなら、喜んで協力しますよ。
厳密には違いますが、ユリウスというお仲間が居りますし、皆で一緒に遊ぶのも一手ですね。
何はともあれ、動物の友を利用して、ペンギンさん達との円滑なコミュニケーションは必須ですね。
後は、飼育員さん達に、ペンギンさん達がよく使う遊び道具も借りられるか聞いてみましょう。
お魚さんは、いきなり大物は難しいと思いますから、小型の魚が良いですかね。
ペンギンさん達に会ったら、まずは挨拶、それからユリウスも混ざって貰って触れ合いましょう。
いきなり触ったりするのは怖がられそうなので、最初は会話するか、ユリウスを介してモフモフして安心して貰いましょう。
此方に慣れてきて貰ったら、遊び道具を利用して思いっきり動いて貰い、気晴らしして貰いましょう。ユリウスもお願いしますね。
最後は魚を食べて貰って、お別れの挨拶ですね。
必要なら、退出前に部屋のクリーニングもしましょうか。
●一
夏の暑さも去り、潮風が涼しさを帯び始めた昼下がり。
パラドクストレインを下車した復讐者たちは、目的地の水族館へと向かい始めた。
大所帯の【日記帳友の会】を筆頭に参加者は全13名。彼らの目的は、水族館のペンギンたちを励ますことだ。
「ペンギンさんたちが不安と聞いたら、黙ってはいられません。頑張りましょうね、ユリウス」
フィーナ・ユグドラシア(望郷の探求者・g02439)は元気な笑顔を浮かべ、弾む足取りで先頭を進んでいた。
彼女のダンジョンペンギンも同様で、可愛くも威厳ある王冠を頭に載せて、ぴょこぴょこと隣について歩く。ペンギンたちとの触れ合いが、今から楽しみで仕方ないらしい。尤も、それは他の仲間たちも同じであった。
「動物の友も使えるし、思い切り仲良くしましょう! 皆でペンギンたちを元気づけるわよ!」
「ええ、ええ。これは全力でやるっきゃないですね!」
やる気満々の桜・姫恋(苺姫・g03043)に、アオイ・ダイアログ(響き合う言霊の繰り手・g02687)は首がもげそうな勢いで頷きを返す。期待に目を輝かせ、ペンギンとの触れ合いに早くもウズウズしている様子だ。
「ピョンピョン飛び跳ねる姿。パタパタ揺れる翼。そして、ぽよぽよの白いお腹! もう存在自体可愛いですよね!?
そんなペンギンたちと合法的にお友達になって、しかも一緒に遊べるなんて最高じゃないですか? 天国ですか!?」
気心の知れた仲間たちと一緒に、ペンギンと触れ合いながら仲良く過ごす――そんな素敵な時間が待ち遠しいと、アオイの全身から漂うオーラが雄弁に物語っている。
そんな彼女の隣で、友人の凍雲・雪那(報仇雪恨の皓巫姫・g07783)がボソッと呟いた。
「ん。ペンギンさんと触れ合えると聞いて。……これは期待せざるを得ない」
「えぇっ、雪那さんにはルリムくんがいるんじゃ?」
「いや、それとこれとは話が別……あぁっ、拗ねないでルリム君。一緒にペンギンさんと仲よくしよう、ね?」
抗議するように座り込んだダンジョンペンギンを抱きかかえ、優しく宥める雪那。
和気藹々とした空気が流れる仲間たちの様子を見て、ナイン・スカーレット(ねこの隣人・g07595)はうむうむと頷いた。あまり堅苦しい雰囲気では相手も緊張してしまう。この具合なら、きっと交流の方も上手く行くことだろう。
「賑やかな方がペンギンさんもきっと喜ぶしね! 一緒に行く皆も、今日は宜しくね!」
「こちらこそ。皆でペンギンさんを元気にするぞー!」
「おう、友と聞いたら黙ってられねえ。アタシも助太刀するぜ!」
ナインに首肯を返すのは、イリヤ・レダ(『緋』を封ずるモノ・g02308)と天夜・理星(復讐の王・g02264)だ。
最終人類史のことも冥海機のことも知らないペンギンたちにとっては、いわば水族館が世界のすべて。そこに観客が来なくなったというのは、きっと計り知れないストレスであろう。
そんな彼らを励ます為ならば、どんな努力も惜しむつもりは無かった。
「……っと、水族館が見えてきましたね。じゃ、ペンギンと触れ合いタイムに洒落こみますかぁ」
冰室・冷桜(ヒートビート・g00730)が飄々とした口調で言う。
自分たちが向かうことは、既に水族館へ連絡済みだ。必要な物があればいつでも言って欲しいとの返事も貰っているので、後は現地でペンギンと触れ合いながら考えるとしよう。
(「まー、こう、ひりついた感じじゃないお仕事も偶にはいいでしょってーことで」)
仲間たちの後を追うようにして、冷桜は入口目指して歩き出す。
何はともあれ、本番はここから始まるのであった。
雪那ら一行が水族館に着くと、園の職員たちは大歓迎で迎え入れてくれた。
《七曜の戦》を勝利に導いた英雄たちが来てくれるとは夢にも思わなかったのだろう。ナインを筆頭に復讐者たちは挨拶を交わすと、さっそく現地へと向かった。
「今日は宜しくお願いします、飼育員さん!」
「ペンギンさん、どんな様子なのかな……気になるね、ルリム君」
臨時休館とあって、館内は冷たい静寂に満ちていた。
人もいない、歓声も聞こえない、シンとした空気。そんな中をルリムと進みながら雪那は思う。こんな世界に置かれたら、きっと自分だって孤独を覚えるだろうと。同時に、改めて痛感せざるを得ない。この依頼が、クロノヴェーダの侵略によって苦しむ動物たちを助けるという、立派な復讐者の仕事であることを。
「あっ、着いたみたいですね」
程なくしてアオイら13人が通されたのは、ペンギンたちが遊ぶエリアだ。
普段であれば、ここで彼らの遊ぶ姿を、水族館を訪れた観客たちが眺めるのだろう。
そんな場所の片隅、水場に面した陸地でペンギンたちは群れて固まっていた。しょんぼり項垂れた彼らは素人目にも元気がなく、時折不安そうな声を洩らしている。
「んんん……ペンギンさん元気ない感じかな?」
「ああ。やっぱり皆、相当不安みたいだ」
心配そうに言うナインへ、音無・サカハ(過去を探す旅人・g10149)は相槌を打つと、ペンギンたちに手を振った。
「よう。今日はよろしくな」
いきなり近寄ることはせず、最初にサカハは少しペンギンを観察することにした。
向こうもサカハの存在を認識しているようだが、近寄るのを躊躇をしているようだった。警戒しているというよりも、不安でどうしたらいいか分からない――そんな様子だ。サカハの隣で、ナインは消沈したペンギンたちの姿を見て、憂いの溜息を洩らす。罪のない動物たちの辛そうな姿を見るのは、自分にとっても辛い。
「動物さんは人間に判らない空気や音、雰囲気を感じるって言うし……怖かったろうね」
「ああ。けど、俺たちが来たからにはもう安心だ。皆、準備は済んだか?」
そう言ってサカハが振り返ると、仲間たちの全員が頷きを返した。
クロノヴェーダに怯える者の不安を取り除くのは復讐者の仕事だ。相手がペンギンでも、そこに隔てはない。
「じゃ、始めよう」
「うんうん。動物の友……」
「――発動!」
サカハとナイン、そして姫恋の言葉を合図に、全員が動物の友を発動する。
動物に知性を授け、復讐者との友好を深めることが出来るよう、世界の理が書き換えられていく。
程なくして――ペンギンたちは一羽、また一羽と、好意の視線を復讐者たちに向け始めるのであった。
●二
発動が完了する動物の友。
知性を宿したつぶらな瞳で、ペタペタと歩き始めるペンギンたち。
両手を広げて迎え入れる復讐者たちの元へ、彼らは先を争うようにして寄って行った。その姿はまるで、心細かった子供が親の元へ飛び込んでいくようだ。
『だあれ?』『オキャクサン、かな?』『わあ、本当だ!』
「はぅっ……」
「か、かかか可愛い……!」
感激のあまり、姫恋とソラ・フルーリア(歌って踊れる銀の星・g00896)の口から声にならぬ悲鳴が漏れた。
彼女たちの周りにいるのは、数羽のペンギンであった。いずれも好奇心に満ちた眼で二人のことを伺っている。動物の友を発動したことで、いまやソラや姫恋には彼らの交わす言葉が全て聞こえていた。感極まって漏れそうになる悲鳴を噛み殺し、二人は膝をついてペンギンたちと目線を合わせる。
間近に見るペンギンは、まさに『可愛い』以外に形容のしようが無かった。
首を傾げる者、クワクワと軽快な声で鳴く者ペタペタとリズムを刻んで足踏みする者――そんな彼らに共通しているのは、触れ合いを求めてウズウズしているオーラであった。円らな瞳は期待でキラキラと輝き、一緒に遊ぼうと無言のうちに二人へ語り掛けて来る。あまりに可愛すぎた。可愛い以外の語彙は、どこかへ飛んでいた。
「かっ……可愛い。ペンギン可愛い!!」
「よちよち歩きも羽をパタパタさせるのも可愛い! なんかもう可愛くて可愛い!!」
姫恋とソラは深呼吸をひとつ、気を取り直してペンギンたちへ挨拶を送った。
自分たちは任務でここへ来ているのだ。可愛さのあまり、意識していないとついつい忘れそうになってしまう。
「……おほん。ねえ、して欲しいこととかないかな?」
「何でも言ってみて! わたしたち、今日は皆と触れ合いに来たんだよ!」
問いを向ける姫恋。そこにナインも加わって語り掛けると、ペンギンたちは互いに顔を見合わせた。
【動物の友】の効果があるとはいえ、やはり初対面の人間相手では多少の緊張もあるのだろう。
そんな中、二羽のペンギンたちが進み出ると、三人の足元にそっと寄り掛かり、体重を預けた。
『んしょ』『うんしょ』
「……えっ? こ、これはもしや……」
ソラは戸惑いを浮かべつつ、まさかと思う。
これは、まさか。触っても良いということか?
「い、いいの? 本当にいいの、ペンギンさん!?」
拒絶の言葉は返ってこない。
どうやら、本当の本当に良いようだ。
三人は顔を見合わせて頷きを交わし合うと、覚悟を決めた。
「じゃ、じゃあ遠慮なく……!」
ペンギンのお腹にそっと手を伸ばす姫恋。その指は、緊張と興奮で微かに震えていた。
「……あぁぁぁぁ……!!」
指先が、白くてふわふわのお腹をそっとなぞる。
柔らかくて温かい感触に、思わず姫恋の頬が緩んだ。羽毛が生え換わって間もないのだろうか、その触り心地は天国としか形容のしようがない。ナインとソラも感激の吐息を漏らしながら、純白の羽毛の感触に目じりを緩ませた。
「ふわふわ……ふわふわだよ、お腹の羽毛……!」
「あ……すごすぎ……これは人を駄目にする……!!」
一方それを見た他のペンギンたちも、復讐者が遊びに来てくれたのだと分かったらしい。
今までの不安から解き放たれたように寄って来る彼らを、復讐者は喜びと共に受け入れるのだった。
姫恋らの触れ合いを切欠に、ペンギンたちは今や誰も遠慮すること無く復讐者へと集まって行った。
動物の友の効果もあってか、その懐きぶりは凄まじく、復讐者たちの周りで押しくらまんじゅうでもしているかのようだ。目の前に本物のペンギンがいる――その事実に、イリヤはただ感嘆の声を洩らすばかりであった。
「うわぁ~、ペンギンだあ……!」
小さい頃、動画で僅かに見ただけのペンギンたち。
何だかんだで動物園や水族館には行けず仕舞いで、触る機会などいつ来るかと思っていたが――。
「人懐こいなんて最高だなあ。もう少し、触ってみてもいい?」
「ええと、毛並みが艶々してて綺麗ですねぇ。ここはぜひ私も便乗して……撫でてもいいですか?」
いずれ旧友と再会した時の為にと、動画を撮影しつつ恐る恐る問うイリヤ。そこへアオイも声を掛けると、ペンギンたちは遠慮するなとばかり二人に体を寄せてきた。
心地よい重さを感じながら、イリヤがそっと手を伸ばしたのは黒い羽根が集まる背中である。
その手触りはとても滑らかで、どこか魚の鱗を連想させた。水中を泳ぎやすいよう、進化の過程で得たものなのだろう。
「握手……してみてもいいかな?」
『握手? いいよ、はい!』
イリヤが接するペンギンはとびきり人懐こいらしく、人間とのふれ合いにも怖気づくところが全くない。
最大レベルで発動した動物の友によって知性を得たこともあって、イリヤの言葉を正確に把握していた。
身体を捻り、差し出されたのはフリッパーと呼ばれる翼。ヨットの帆にも似たそれを、イリヤは震える手でそっと撫でる。次は記念のハイタッチ。イリヤが掲げた手を、フリッパーが元気に叩いた。
『イェーイ!』
「いっ……いぇーい!」
パァンという軽快な音と共に、イリヤの手が衝撃に痺れた。
手加減してくれたのは感じたが、それでも叩く力は相当なものだ。目にするもの、触るもの、すべてが鮮烈な記憶となって彼の脳裏に焼き付いた。
「ふわわ……おお……これは、最高です……!」
一方のアオイは、先程から声にならない喜びの言葉を漏らしつつ、ペンギンたちを撫でまわしていた。
触って、撫でて、抱き締めて。そうして得られる感動に、こちらも語彙はすっかり消し飛んでいる。
これが幸せと言うことか――込み上げる温かい感情をじっくり噛み締めていると、いつの間にか二人の周りはペンギンたちにぎっしりと囲まれていた。
『よしよしして……』『わたしも』『ぼくも撫でていいよ?』
そんなペンギンたちに嫌も応も無く頷き返し、イリヤとアオイは彼らを抱きしめる。
不安に沈んでいた彼らに、幸せを少しでも分けてあげられればいい――そんなことを考えながら。
「ああ……ペンギン、かわいいな……」
目の前にいる生き物たちのあまりの可愛さに、サカハは感嘆の息を漏らした。
ふわふわのお腹、丸みを帯びたシルエットの身体、好奇心にきらめく目。そして何より、ぺたぺたと歩く可愛らしい姿。
猫や犬とはまるで別種の可愛さを持つペンギンたちを、サカハは息の届きそうな距離からじっと見つめる。
「でもなんだろ、こうして見るだけで幸せの感じがする、なんか癒される」
心がほっと温かくなるのを感じながら、ふとサカハの心には一つの欲求が沸き上がった。
(「……なでなでしたい」)
その体を覆うふわふわの羽毛は、見ているだけで触りたくなってしまう。
ペンギンは本来野生の動物であり、人間が触ることは危険を伴うと聞いている。
だが、今回に限っては事情が全く別だ。元より人懐こいペンギンたちが更に友好的になり、自分から寄って来ているのだ。ここで触らないのは、却って彼らを傷つけないだろうか……そんな思いを巡らせつつ、意を決して問う。
「なでなで……しても、いいかな……?」
『いいよ?』『早く! 早く!』
むしろ、どうして撫でてくれないのかと問うような視線に、サカハは深呼吸をひとつ。
微かに震えながら伸ばした彼の手を迎え入れたのは、お腹のふんわりした羽毛だった。
「あ……いいな、これ」
嗚呼、癒される――。
可愛いペンギンのふわふわな羽毛に、サカハは深い深い感激の息をついた。
ここ最近は仕事と依頼ばかりだったから、こういうのもありだな――などと、温かな癒しに包まれながら思う。
(「ペンギンを癒して、癒されて……最高だな……そういえば、他の皆はどうしてるんだろう?」)
そう思い視線を向けた先では、ナインが新たな遊びを始めていた。
「元気がないなら、そんな時こそ! 肉球セラピー!」
てってれー、と効果音付きでナインが取り出したのは、肉球付きの手袋だ。
ペンギンたちがナインの肉球を突っつき、ナインも肉球でペンギンのお腹をぷにぷにと触る。何気ないやり取りの合間に、活性治癒で怪我や病気の治癒を行うことも忘れない。そんな心温まる働きかけもあって、ペンギンたちの緊張も徐々に解れ、元気を取り戻し始めていた。
「うん。良かった良かった」
「……だね」
どうやら、滑り出しは順調のようだ。
楽し気な鳴き声が響き始めた水族館で、ナインとサカハは静かに頷きを交わし合った。
「ペンギンさん可愛いですわよねえ。さ、一緒に遊びましょう?」
そう告げる白水・蛍(鼓舞する詩歌・g01398)の元にも、待ってましたとばかりにペンギンの一団がやってきた。
遊んでくれるかはペンギンさん次第、一緒に遊べる子とだけ……と最初こそ考えていた蛍であったが、幸いと言うべきか、遊ぶことを拒むペンギンは一羽もいないようだ。
円らな瞳が、視線を送って来る。早く撫でて欲しいと全身で語り掛けてくる彼らに、蛍は恐る恐る尋ねてみた。
「えーと……撫でても、いいでしょうか?」
蛍の言葉に、ペンギンたちの間から歓声があがった。
『わたし、頭の後ろがいい!』『胸の上の方を……』『僕はお腹がいい、かも』
「押してはいけませんよ。皆さん漏れなく撫でさせて貰……いえ、撫でてあげますからね」
つい漏れそうになる本音をそっと隠し、望まれた場所を蛍は存分に撫でまわす。
哺乳類の毛並みとは全く違う、柔らかくも官能的な手触りに、思わず感嘆の吐息を漏らす蛍。そんな彼女に撫でられるのが大層心地よいのだろう、ペンギンたちは遠慮なく体を預けて来る。見かけによらずズッシリした体重にも動じること無く全員を心行くまで撫でると、次に取り組んだのはペンギンたちの散歩であった。
「蛍さーん! 一緒に行きませんか?」
「ルリム君も歩く? よし、お供しようか」
見ればイリヤだけでなく、雪那の周りにも人だかり……ならぬペンギンだかりが出来ていた。
どうやら二人も、これから散歩をするところらしい。折角なら賑やかな方が良いと、蛍は二人と合流し、一緒にあちこちを歩き始めた。ルリムもすっかりペンギンと仲良くなったようで、群れに混じって雪那の横をぴょこぴょこ歩いている。
「皆、楽しく遊んでるね」
「ええ、本当に。元気も戻って来たようで何よりです」
弾む足取りで歩くペンギンたちの姿に、雪那と蛍は安堵の微笑みを浮かべるのだった。
●三
復讐者との交流を通じて、ペンギンたちは不安を払拭していった。
触れ合いを図った後は、散歩で体を温めて。水族館を覆う静寂を、さざめく歓声が取って代わり始めていた――。
「元気になってくれて良かった。あとは、たくさん遊ぼう。ほら、ルリム君も一緒にね?」
雪那は遊戯用の柔らかいボールを手に、ペンギンたちと遊び始めた。輪に加わるルリムも一段と楽しそうだ。
一方、フィーナの周りに集まるペンギンたちの視線は、ぴょんぴょん飛び跳ねるユリウスに向けられている。王冠と外套で着飾ったユリウスの姿は、彼らの好奇心を大いに刺激したらしい。物珍しい生物を見るように、ユリウスを主人のフィーナとちらちら見比べている。
「この子はユリウスです! 良かったらモフモフしてあげて下さい!」
『キラキラしてて綺麗!』『遊ぼう、遊ぼう!』
フィーナの呼びかけで、ペタペタと一斉に駆け寄って来るペンギンの群れ。
動物の友を発動したフィーナが直に呼びかけたことも大きかったのだろう、ペンギンたちは恐る恐るユリウスに触れた。
『わあ……!』『いい気持ち……』
ユリウスのモフモフに、ペンギンからも思わず感嘆を漏らす。
ある者は目を細め、あるものはじっと抱擁を交わし、またある者は喜びの声を静かに漏らす。大人気のようだ。
そんな様子をフィーナが微笑みと共に見守っていると、飼育員の青年が大きなバケツを幾つも運んで来るのが見えた。
恐らくは、食事用の魚を入れたものだろう。頃合いを見計らい持って来て貰うよう、姫恋が頼んでおいたものだった。
「よしよし、沢山遊んだわね。少し休憩して御飯でも食べる? ……って、あれ?」
バケツを運ぶ飼育員の方へ視線を向けて、ふと姫恋は息を呑んだ。
飼育員の後方に、2メートル近い巨大なペンギンが見えたからだ。無論、水族館のペンギンではない。その正体を、姫恋や仲間たちはすぐに理解した。
着ぐるみを被った百鬼・運命(ヨアケの魔法使い・g03078)であった。
「借りられたのはいいが、思った以上に動きにくいな……」
一体何処で調達したのか、運命は堂々たる姿でペンギンの群れに向かって行くと、ペンギンたちへアピールを始めた。
足をペチペチ、両手をバタバタ、其の姿はどう見ても本物そっくりだ。それを見て、真似をするように腕をパタパタと振り始めるペンギンたち。ややシュールな光景に、蛍とアオイがぽかんと口を開ける。
「……あの、運命さん? 何してるんです? あの、インパクト……大きいですね?」
「お、親ペンですか? 形から入るのはアリだと思いますけど……」
「ふふふ、カッコいいだろう。きっとこれで、俺もペンギンの人気者に……んんん?」
そこまで言って、ふと運命は思い出した。
確か、ペンギンたちが腕を振るのは……そう、相手を警戒する時の行動だった気が――。
ふと見れば運命はすっかりペンギンたちに取り囲まれ、四方八方からツンツン、ペシペシと叩かれ始めた。
『あやしいやつ!』『えい、えい!』
「ま、待ってくれ。俺は敵じゃない! 話し合おう、な?」
(「……何してんだアレ。すごいことするね」)
運命の姿を遠くから眺め、思わず溜息を漏らす理星。
そこから少し距離を置いた場所では、冷桜が散歩から帰ったペンギンと触れ合いを行っている所だった。何かあれば屈んで目線を合わせ、はきはきと語り掛ける姿は、さながら小学生を引率する先生のようだ。
「はぁい、こんにちわー元気ぃ? 慌てなくても逃げないからねぇー」
冷桜が言葉を話すたびに、ペンギンたちの翼が一斉にパタパタと動く。こちらは警戒では無く、冷桜の言葉に応える意図でやっているらしい。そんな彼らの様子を、冷桜は声掛けを絶やさずに見回りつつ、元気のないペンギンがいれば優先的に声をかけていった。
「はーい、大丈夫? どうしたの?」
『……人が来なくて、さみしくって……』
「ん、そりゃぁ辛かったね。でも安心、私たちが来たわよ」
肩を落としたペンギンをそっと抱きしめて、冷桜は励ましの言葉を送る。
外の事情を知らない彼らにとっては、閑散とした日々が続く今の状況は、いわば世界の異変にも等しい出来事なのだろう。そのストレスを少しでも取り除ければいいと思いながら、冷桜は周囲の環境を整えてやることにした。
(「動物の友と活性治癒は、他の面々がやってくれたし……んじゃ、コイツを使いますかね」)
冷桜は周囲の温度を涼しく調整するため、冷気の支配者を発動した。
無論、施設の職員に影響が出ないように、寒冷適応を発動することも忘れない。細かな心遣いもあってか、リラックスした様子を見せ始めたペンギンたちに、冷桜は満足そうに頷く。
(「いい具合に安心してくれてる感じだわね。もう少ししたら、魚でお食事の時間といきましょうか」)
見たところ、ペンギンたちは魚を食べたがる様子をまだ見せていない。
体を動かせば、きっとお腹も減ることだろう。食事用の魚も届いたようだし、後少ししたら其方の方も始めよう――冷桜はそんなことを考えるのだった。
●四
程なくして――。
「うわあ……!」
目の前にズラリと並べられたペンギンの食事に、イリヤは思わず目を見開いた。
今にも跳ねだしそうな小魚をたっぷり詰めた大きなバケツが、希望者の人数分用意されている。ナイフのように輝く銀色の体表は、最高の鮮度の証。その姿はどこかイリヤの飛刀を連想させた。
「人間から見ても美味しそう。皆、喜んでくれるかな?」
「凄いな、これ。エサじゃなくて『食事』って感じだ。……あっ、俺のリクエスト! ありがとうございます!」
マスコットスーツと人形もしっかり用意してくれた飼育員にお礼を言って、サカハは三人分のバケツをナインと姫恋の所へ運んで行った。
「よーし、飯の時間だぞ、集まれー!」
「安心したらお腹も空くよね。さあ、皆おいで!」
「沢山あるから、安心してね!」
サカハとナイン、そして姫恋の呼びかけに、喜びの声があがる。
そこには、すっかり元気を取り戻したペンギンたちの姿があった。
「……うん。どうやら作戦は成功しそうだね……良かった」
そんな心暖まる光景を眺めつつ、安藤・優(名も無き誰かの代表者・g00472)は、ペンギンたちを一人で見守っていた。
静かだった水族館には、今やすっかり賑やかさが戻っている。復讐者と触れ合い、体を動かし、ペンギンたちの不安は払拭されたようだ。美味しい食事でお腹一杯になれば、きっと元気を取り戻すことだろう。
「うんうん、本当に良かった。……ん?」
『どこか具合、悪いの?』『ごはん食べないの?』
「平気だよ、ありがとう。俺はこうしてるのがいいんだ」
時折やって来るペンギンと触れ合いながら、優はゆっくりと流れる時間を静かに噛み締めていた。
動物の友を発動したことで、ペンギンたちは彼のことも友達と見ているようだ。積極的に働きかけることはしなかったが、拒むつもりは流石にない。寄って来たペンギンに礼を言って見送ると、優は彼らの素朴な優しさにふっと頬を綻ばせた。
「ペンギンの姿って、眺めてるだけで楽しいね……心が無になる」
どこで仕入れた知識だったか、ふと優はペンギンにまつわる話を思い出した。ペンギンたちは人間のことを、自分たちより少し大きな同族だと認識している――そんな話のことを。
「大きな仲間か……そう言えば、ペンギン姿の運命はどうしてるかな?」
『えいえい!』『このこの!』
「ややや、やめろやめろ! 頼むから!」
優が視線を向けた先、運命は相変わらずペンギンに囲まれ、バタバタと慌てていた。
尖ったくちばしに着ぐるみを突かれ、足元はグラグラと揺れている。突かれた程度で復讐者にダメージなどないが、借り物の着ぐるみは別だ。傷つけては拙いと、運命は俄かに慌て始めた。
「マテマテ、やめてくれ。修理費用で俺の懐にダメージが……あ」
ペンギンの囲いを抜けようとして、運命の体がぐらりと傾く。どうやら足を滑らせたらしい。だが次の瞬間には、前もって未来予測を発動した蛍と理星がすでに動いていた。
「ご飯ですよ、ペンギンさん!」
「おかわりも沢山あるよ! さあこっちだ!」
『本当!?』『腹減った、行こうぜ!』
と、一斉に踵を返して去っていくペンギンたち。着ぐるみ姿の運命は、そのままひとり回転して転がっていく。
彼を囲んでいたペンギンたちの向こう、泳ぐ者のいない水槽へと勢いよくダイブする運命。バシャァァンと派手な水飛沫が立ち上る中、蛍と理星は案ずる相手の元へ血相を変えて駆けて行った。
「怪我はありませんか? ……良かった! 大丈夫ですからね、怖くないですからね、ペンギンさん!」
「いや無事で何よりだ。怪我でもしたら大変だからね、ペンギンの皆が。さあ、沢山お食べ」
「……そうだな、無事でよかったよ……はは……ハクション!」
水中適応と水面走行を利用して地上へ這いあがると、運命は着替えを取りに休憩所へと走って行った。寒冷適応があるとはいえ、寒い中での濡れ鼠はさすがに堪える。
そんな一幕を挟みつつ、ご飯の時間がいよいよ始まった。
「さあ、ごはんだよ」
「遠慮しないで食べてねー!」
雪那とナインが改めて告げると、ペンギンたちは一斉に復讐者の元へとやって来た。
不安が無くなり、安堵したことで大いにお腹が空いたのだろう。差し出された魚を、喜びの声をあげながら平らげていく。そんな彼らの心暖まる姿を見ながら、イリヤは微笑みを浮かべて言った。
「やっぱり食べたり遊んだりが大事なんだね。よしよし、お昼寝の前に、もう少し遊ぼうか?」
「元気になったようで何よりです! ペンギンの皆さん、泳ぐ準備は良いですか?」
「やっほー! 皆、いい気持ちだねー!」
食事の後は軽い運動も外せない。アオイは蛍と一緒に水中へ飛び込むと、ペンギンと一緒に遊泳を始めた。そこへ加わった姫恋は、水の中を悠々と泳ぐペンギンたちの姿に、しばし見惚れて言葉を失う。
弾丸のような速度で水底へと潜り、海を『飛ぶ』ように滑らかに泳ぐその姿は、ぺたぺたと陸を歩く時とはまるで別の生物のようであった。美しささえ感じさせるペンギンたちを、アオイや蛍も静かに見入る。
「わたしが鬼です! 捕まえちゃいますよー!」
「さあ、ペンギンのみんなー! 逃げろ逃げろー!」
そうして始まった鬼ごっこで、鬼を務めるのはアオイであった。
ペンギンを追うようにアオイが泳ぐ中、水中を泳ぐ群れの先頭を銀色の光が走る。イリヤが持ち歩く飛刀である。
小魚の玩具に見立てたそれを追って、ペンギンの群れとアオイの追いかけっこが始まった。のびのび水中を泳ぐその姿に、不安に怯えていた姿はもうない。きっともう彼らは大丈夫――そんな確信を胸に抱き、復讐者たちは安堵の微笑を浮かべるのだった。
「お疲れ様です。ずいぶん泳ぎましたね」
「本当ですね。けどペンギンさんたち、まだ全然遊び足りない感じです。……凄いです」
暫くして地上に上がると、蛍とアオイは息を整えて立ち上がった。
周囲に目を向ければ、フィーナがユリウスに何かを手渡すのが見えた。光り輝く小さなペンライトと、それを翼に固定する為の小さなカバー。翼に装着し易いよう作られたそれらを、ユリウスが着ける。
『光ってる……何それ?』『振ればいいの? えい、えい!』
「そうです。良かったら、皆さんも着けてみますか?」
動物の友で知性を得ていたこともあって、ペンギンたちはさっそく興味を抱いたようだ。
ユリウスの真似をするように彼らがペンライトを着けると、そこに現れたのはソラであった。
チアリーダー姿に着替えた彼女は、拡声杖『レゾネイト』を手にペンギンたちへエールを送る。元気をあげて勇気づける、そんなアイドルの使命を今こそ果たす為に。
「ペンギンさんたち、こんにちは!」
ソラの呼びかけに、ペンギンたちが元気な声をもって応じた。
レゾネイトのそれに劣らぬ歓声。それを全身に浴びながらソラは思う。
「なんだか暗い雰囲気で怖かったわよね! でも大丈夫、アタシたちが絶対に皆を守ってみせるわ!」
元気を取り戻しただけではまだ足りない。自分たち復讐者が目指すのは、さらにその先だ。
人々と触れ合えずにストレスが溜まってしまうほど、人が大好きなペンギンたち。そんな彼らには、不安と言うマイナスを払拭し、触れ合いを通じてゼロに回復し、その先のプラスを突き抜けるような元気こそが相応しい。
「さ、皆もリズムに乗って歌って踊るのよ! そうすれば、暗い雰囲気なんて一発で吹き飛んじゃうんだから!」
気づけばそこには仲間たちだけではなく、施設の職員や飼育員たちの姿もあった。
心地よい緊張感を感じながらソラは確信する。これは、最高のステージになると。
イントロからソラの歌声が流れ始める。
曲名は彼女の2ndシングル『サンSUN!チアリーダー!』。どんな状況でも頑張る人を応援する応援歌だ。
ペンギンたちとの触れ合いを締めくくる最後のイベントは、こうして幕を開けた。
ファンは勿論、ペンギンだって元気にする。
それが、ソラ・フルーリアという真のトップアイドルの矜持だ。
彼女の歌の素晴らしさは、ひとたび聞けばみんな元気になれること。人もペンギンも、そこに違いは無い。
『なんだか、音が輝いてるみたい!』『すっごく飛び跳ねたい気分!』
「わぁ、ソラさんの生ライブですね!」
「楽しいね。……ん、ルリム君も一緒に歌う?」
「一緒に踊って遊びましょう。ほら、フローライトも一緒にね?」
「いいなあ、最高の眺め……! そうだ、記念に撮っておこう!」
サイリウムを手にしたアオイが、元気いっぱいに手を振った。雪那に抱えられたルリムが、ペンギンと声を合わせて歌う。
その様子を見て、ペンギンたちもまた真似をして元気に飛び跳ねる。木霊する歓喜の鳴き声。スマホを持ったイリヤが動画を撮影するなか、軽やかに踊るのは蛍のオラトリオ『フローライト』だ。
ソラの歌で、復讐者も、ペンギンも、人も、サーヴァントも、ひとつになって踊る。ブレイドハープの旋律を奏でながら、蛍は微笑んだ。きっとこのひと時は、ペンギンたちにも忘れられない思い出となったに違いないと。
「憂いのある人の顔を笑顔にするのもまたディアボロスのお仕事? 活動? だからね!」
「まー、ここは全員揃って、って流れっぽいですし? 遠慮しないで歌っちゃいましょう」
ペンギンだけではない。ナインと冷桜が声を掛けた飼育員、そして水族館の職員たちも、皆が笑顔で歌い、踊っていた。
こんなに素敵な時間は皆で共有した方が楽しい。そう思っての心遣いである。
「うんうん。良かった良かった!」
「よし、俺たちも思いっきり踊ろう! 行こうぜ、皆!」
『おー!』『わーい!』
「良かった。ペンギンさんたちが楽しいと、私も楽しいわ!」
ナインと一緒にサカハが足を弾ませる。一緒に飛び跳ねるペンギンたちも満喫しているようだ。
そんな心暖まる光景を、姫恋もまたペンライトを全力で振りながら楽しんでいた。
ソラの歌を聞いて、仲間たちとともにペンギンと触れ合う時間を過ごし……最高のひと時だと誰もが実感する。
(「姫恋さん、まあ幸せそうな顔しちゃって……良いことだ」)
幸せな者の姿は、それを見る者の心も幸せにする。理星にとっても、それは例外ではない。
元気も愛くるしさも、全部詰まっているのは良いことだ。落ち込んだ時には言葉が想いに力を注ぎ込んでくれる。
ソラの歌に参加しながら、理星もまた今の幸せを噛み締めるのだった。
●五
そうしてソラの歌が終わり、大きな拍手が沸き起こる中。
お別れの挨拶を行う段になり、姫恋はペンギンたちとの別れを惜しむように、一羽一羽を抱きしめた。
「あー、はしゃぎすぎて腕痛いわ。どう、楽しかった?」
『楽しかった!』『今日はありがとう!』
「こっちこそ、ありがとう。……折角だし、最後に写真撮らない?」
集まった仲間たちと、ペンギンたち、そして水族館の人たち。
共に心を通わせた皆との一幕を写真に収め、姫恋は今一度ペンギンたちと抱擁を交わす。
「なんだか名残惜しいわ。またね、みんな」
姫恋だけではない。他の仲間たち全員が彼らとの別れを惜しみ、挨拶を交わしていた。
最後の挨拶で魚を食べて貰い、フィーナはクリーニングの効果を発動する。自分たちが去った後もペンギンたちが少しでも快適に過ごせるように。
「ボクが、ボクたちが、みんなの不安を打ち倒す。だから、安心して待っていて」
雪那はペンギンたちと目を合わせて、真剣な面持ちで宣言した。
そっと交わした抱擁を通じて伝わって来るペンギンの鼓動に、不安の色は最早ない。自分や仲間たちの心が通じたことが、何よりも嬉しかった。
『さようならー、お兄さん、お姉さん!』『元気でねー!』
そんな復讐者たちに、ペンギンたちもまた別れの挨拶を送る。
飼育員に付き添われ、翼を振って、ぴょんぴょんと跳ねて――そうして彼らは、遠からず水族館が開いた時、訪れた人々をまた笑顔にするのだろう。
「またねー!」
「……うう、もっと触れ合っていたかった」
ナインとアオイはペンギンたちに負けぬくらい元気に手を振って、別れの挨拶を済ませる。
名残惜しさは尽きないが、ここで立ち止まる訳には行かない。気を引き締めるように、蛍は元気よくパンと掌を打つ。
「さて、遊び終わったら元気よくクロノヴェーダ討伐ですよ皆様! ……倒したら、また遊びに来ましょうね」
「ペンギンたちを見に、だね。うん――いいかも」
蛍の言葉に、優は頷きを返す。その声には、ペンギンを守るという強い決意が滲んでいた。
アオイは打倒冥海機の決意を胸に、グッと拳を握る。水族館を守る為にも負けることは許されない。
「ペンギンたちを不安にさせるクロノヴェーダ許すまじ、ですよー!」
「ええ。では……行きましょうか、皆さん」
東京湾を目指し、歩き出す蛍たち。
その最後尾を歩きながら、冷桜は遠くなった水族館を見遣る。
(「……もっとのんびりできるようになったら、また来るのも悪くないかもね」)
ペンギンたちが脅かされない日が訪れるのは、果たしていつになるだろう。
答えを知る者は誰もいない。だが、これから始まる戦いに勝てば、その日が近づくのは間違いないだろう。
一日か、一週間か、或いは――その訪れが少しでも早いことを願い、冷桜は仲間たちを追いかけるように駆けて行く。
かくして、水族館での作戦は成功に終わり。
復讐者たちは、次なる戦いの場へと向かって行くのであった。
超成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【活性治癒】LV9が発生!
【友達催眠】LV2が発生!
【動物の友】LV1が発生!
【液体錬成】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV5(最大)が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV2が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
【フィニッシュ】LV1が発生!
水族館を後にしてから暫しの間を置いて、復讐者たちは東京湾へと向かった。
冥海機勢力の出現まで、あまり時間は無い。戦闘を前に気を引き締めて、飛翔や水面走行で周辺の索敵を開始する。
快晴の天気に、凪いだ海面。大規模な霧など発生する筈のない、それは普段と変わらぬ東京湾の眺めだった。
だが――そんな湾内の一角で、異変は突如として生じた。
何の前触れも無く濃霧が生じ、その向こうから人ならざる侵略者たちが現れる。
氷山空母機『ハバクック』と配下であるオクトリアの群れ。その発見から間を置かず、復讐者たちは霧の元へと急行した。
『あれ? あれあれ? ひょっとして待ち伏せですか? うーん、困りましたねぇ?』
呑気な声で復讐者たちを見回し、ハバクックが肩を竦める。
焦りも動揺も全く見せないその様子は、偏に強烈な自信から来るもの。
信濃から任を授かった自分が敗北するなどと、この冥海機は夢にも思っていない。
『まぁ良いです! ディアボロスを海に沈めて、さっさと東京湾を制圧しますよっ!』
『ピィ!』『ピイィ!!』
ペンギン型の使い魔たちを従えて、東京湾の彼方前方に見える沿岸をビシリと指さすハバクック。
その先に映るのは、先程まで復讐者たちが居た水族館であった。
ここで戦いに敗れれば、沿岸の一帯は焦土と化すだろう。そうなれば、水族館のペンギンたちに逃げ場はない。この冥海機たちは、確実にここで殲滅せねばならなかった。
『さて。――氷山空母機ハバクック、これより戦闘を開始します!』
最終人類史の地を、そして日常を守るため。
東京湾の海上を舞台に、いま、復讐者と冥海機の死闘が始まる……!
フィーナ・ユグドラシア
※アドリブ、連携ok
ひとまず沿岸への被害は食い止められそうですね。
さて、念には念を。
防衛ラインを発動して敵のこれ以上の接近を阻止。
ラインは出来るだけ陸地から離れた所に引きます。
ただ、貴方達をこの先に行かせる気も逃がす気も全くありませんが。
機動力確保のため飛翔しますが、水面近くでの低空飛行に留めます。
また、戦況次第では水面走行や水中適応も利用します。
戦闘は『極光の波動』で射撃戦。
精霊達やユリウスの力を借りて波動を放ち、敵を纏めて薙ぎ払います。
波動を放つ際、他の味方まで巻き込まぬよう注意ですね。
出来れば陸地から離すように吹き飛ばしたい所ですが、水中に逃げられるのも問題です。ならば上空に打ち上げてみますか。
最優先は沿岸に接近を試みる敵、次いで弱った敵。
万一逃げる敵が居れば、其方も確実に追撃ですね。余計な情報は持ち帰らせません。
確実に敵を仕留め、数を減らして沿岸への被害を防ぎます。
敵の操る推定蛸足は、波動で迎撃して勢いを殺ぎ、回避出来るものは回避しますが、無理なら武器や障壁で防いで受け流します。
東京湾に出現した冥海機の群れ。その姿を、海上から伺う一人の復讐者が居た。
ペンギンたちを励まして、水族館から駆けつけたフィーナ・ユグドラシア(望郷の探求者・g02439)だ。
「ふむ。ひとまず水族館……沿岸への被害は食い止められそうですね」
フィーナは今、海面ぎりぎりを飛翔しながら敵の一団を見澄ましている。
青い瞳で凝視する先に展開するのは、トループス級『オクトリア』の群れであった。
冥海機の展開する一帯と沿岸部には十分な距離が開いており、陸地が戦闘に巻き込まれる恐れは無い。普段通りに戦えば、フィーナが負ける相手では無いのは明らかだった。
『ディアボロスの襲撃を確認。これより目標を撃破します』
対するオクトリアもフィーナを落とさんと動き出す。
どうやら、単騎と見て与しやすいと判断したようだ。頭数を武器に、確実に落としていく気なのだろう。
一方のフィーナはそんな敵の群れを見て、ふっと安堵の息を漏らした。
「……目標を撃破、ですか。それを聞いて安心しました」
オクトリアたちは、フィーナの撃破を最優先する気らしい。
それは即ち、フィーナが倒れない限り陸地は狙われないと言うこと。沿岸に接近される心配も無用と言うこと。つまりは、目の前の戦闘に全力で集中出来る――そう言うことだ。
「望むところです。行かせる気も、逃がす気もありません。……貴方たちを此処で倒します」
もし奴らを生かして帰せば、最終人類史の情報がヤ・ウマトに渡るだろう。それを許す訳には断じて行かない。
白銀の長杖『シュネーヴァイス』の先端、魔力を宿した宝玉の光がオクトリアの群れを照らす。それは決意を宿すフィーナの瞳の輝きにも似て、戦いの開始を冥海機たちに告げるのであった。
冥海機から東京湾を守る為、フィーナは海上を飛びながら長杖を振るう。
対するオクトリアの群れは、触手から生えた鋭牙を武器にわらわらと襲い掛かってきた。
『ヤ・ウマトの為に』『信濃様の為に』
「そうは行きません。精霊達よ、どうか、私に力を貸して……!」
海上を飛び、水面を駆け、ダンジョンペンギンのユリウスと一緒にフィーナは攻撃を加速させた。
召喚した精霊たちを従えて、縦横無尽に戦場を駆けるフィーナ。その動きは残留効果で極限にまで高められ、オクトリアに付け入る隙を与えない。
噛みつきはガードアップで受けた。それでも受けた僅かな傷は、敵を屠ればグロリアスの力で瞬時に回復した。フィーナが杖を振るうたび、オクトリアたちは櫛の歯が欠けるように落ちていき、気づけば二体を残すのみとなっていた。
「共に歌を紡ぎ、その想いをもって極光の導きと成し、我が敵を討ち果たせ……!」
最終人類史を脅かす者に、容赦はしない。
フィーナの精霊たちがオーロラの領域を発現。精霊とフィーナ、そしてユリウスの歌声が反響するなか、オーロラと混ざり合った魔力が七色の光へと変じた。そうして放つ精霊達の四重奏・極光の波動は、パラドクスの力でオクトリアたちを捉え、跡形も無く消滅させていく。
これで、残るはハバクックただ一機。
オクトリアの断末魔と、衝撃で生じた波飛沫が、決戦開始のゴングさながらに東京湾に響き渡った。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【飛翔】LV1が発生!
効果2【グロリアス】LV1が発生!
マヤ・フレイア
(トレインチケット)
東京湾の沿岸を攻撃せんと迫る氷山空母機『ハバクック』。その行く手を阻むように、一人の少年が立ちはだかった。
少年の名はマヤ・フレイア(自然の旋律・g01024)と言った。フィーナやアオイが所属する旅団『幻想武装博物館』の団員であり、ソラや雪那が属する『奴崎組』の団員でもある復讐者である。
「あれがハバクックですか……ずいぶん可愛い使い魔を連れていますね」
冥海機ヤ・ウマトというディヴィジョンからの刺客を、マヤは無言で見遣る。
その瞳に宿るのは冥海機への強烈な義憤だ。彼もまた復讐者の一人、作戦の参加は久々なれどクロノヴェーダへの復讐心は些かも衰えていない。
『ふふーん! 復讐者なんて、この私が軽く捻ってあげます!』
「容赦はしません。東京の地を踏み躙ると言うのなら!」
マヤはウィザードロッド『精霊樹の杖』を構え、水面走行で海上を疾駆。問答無用とばかり攻撃を開始した。
最終人類史の支援によって、戦闘力が強化された状態での交戦である。
マヤの猛攻は常のそれより強烈であったが、ハバクックもアヴァタール級とあって、その抵抗は中々にしぶとい。どころか海上で紅茶をすする余裕さえ見せている。
「さすがに、そう簡単には行きませんか……でも!」
マヤには負けられない理由があった。
最終人類史の人たちを守る目的も無論ある、だが、いま彼の心にあるのは、そんな中でも更に一握りの者たち。
彼が所属する旅団の仲間たちが、この作戦で心を通わせた相手だった。
「ペンギンさんたちも、水族館の方々も、旅団の皆さんに励まされたと聞いています……」
マヤは言う。仲間たちに励まされた者は、自分にとって既に他人ではないと。
そして続ける。復讐者である自分が、そんな皆を傷つけようとする冥海機の狼藉などを――。
「許せる訳がないでしょう! 覚悟して貰いますよ、ハバクック!」
マヤは勇猛な啖呵を切ると、杖に魔力を集中させた。
同時、一際大きな嵐が吹き荒れる。ダメージアップを帯びたアイスエイジブリザードのパラドクスだ。
吹き付ける嵐はマヤの冷たい怒りを帯びて、ハバクックを凍てつかせる。
『さささ、寒いですううう……こここ、紅茶が凍っちゃいますうぅぅぅ……!』
「貴方の目論見、ここで僕たちが止めます!」
ペンギンさんと水族館を、この手で必ず守るため。
不動の決意を帯びて放つマヤの一撃は、確かなダメージをハバクックに刻み込むのだった。
善戦🔵🔵🔴🔴
効果1【使い魔使役】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
ノスリ・アスターゼイン
(トレインチケット)
ペンギンの群れが乱れ飛ぶ、東京湾の空。
そんな中にふらりと現れたのは、何ものにも縛られぬ一羽のノスリであった。
「ほう。空を飛ぶのか、ヤ・ウマトのペンギンは」
冗談めいた口調で人語を話すそのノスリは、むろん猛禽であろう筈がない。
ノスリ・アスターゼイン(共喰い・g01118)――自らの名をそう称する、長身の青年であった。
束縛を嫌うノスリがこの地を訪れた理由は、彼のみぞ知るところだ。ただ一つ確かなのは、彼が復讐者であるということ。そして復讐者がクロノヴェーダと対峙した以上、始まるのは『戦い』以外にあり得ない。
『ふっふ~ん。私の使い魔さん、可愛いですよね~?』
「それは同感だ。尤も、触れ合うのは遠慮したいがな」
パタパタと音を立てて空を飛ぶペンギンたちもまた、ノスリ同様にペンギンとは異なる存在だ。
ハバクックのパラドクスで動く使い魔であり、標的を葬り去る冷酷なハンターなのである。その使い魔たちはノスリに狙いを定め、飛び掛かる気を伺っていた。対するノスリも、砂色の翼を広げて攻撃態勢を取る。
戦いが、始まろうとしていた。
数ある戦場の中でも、最終人類史のそれは他ディヴィジョンとは大きく異なる。
まず、全ての残留効果が自由に使えること。
次に、復讐者に集中攻撃を浴びせる敵が、多くの場合は存在しないことだ。
これらの事実はノスリにとって、実にありがたい恩恵だった。
具体的には――最高レベルの飛翔を、存分に駆使できるという面において。
「ふっ。はっははは……」
『むむ! 何が可笑しいんですか!?』
交戦の真っ最中だと言うのに愉快そうに笑いだすノスリを見て、怪訝そうな顔をするハバクック。
そんな相手の言葉に、ノスリは目尻の涙を拭って言った。
「いや失礼。こんなに伸び伸び飛びながら戦える機会は、そう無くてね。嬉しくてつい笑ってしまった。それに……」
ペンギン型の使い魔と空中戦を繰り返しながら、ノスリは更に何気ない口調で言った。
「気づいてるか? ……もう、俺の射程だ」
『え?』
刹那である。
ハバクックの眼前で、星降る幻影の光が盛大にはじけた。
標的の眼を眩ます『Sah』のパラドクス。続けて放つBlue Ravenの一矢が、頭上から降り注ぐ。
「戦闘中のお茶はマナー違反だろ?」
『いいい、痛ったぁ~!』
矢を浴びて、ティーカップを破壊されるハバクック。
その悲鳴を前にノスリは相変わらず飄々とした口調を向けると、快活な声で高らかに笑うのであった。
善戦🔵🔵🔴🔴
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!
フィーナ・ユグドラシア
※アドリブ、連携ok
配下は全て倒しました。後は指揮官を残すのみ。
最後まで油断せず、全力で参ります。
念のため防衛ラインを発動。
機動力確保のため飛翔しますが、水面近くでの低空飛行に留めます。
戦況次第では水面走行も利用します。
戦闘方針は『聖槍』を用いた接近戦と、敵の逃亡阻止。
万一にも逃亡されて、此方の情報を敵に共有されたくありません。
敵の作る氷山のこともありますし、とことん張り付いて行動を阻害します。
初手は『聖槍』を具現化、敵が氷山を作る前に投擲して出端を挫きます。
これで敵の目を引ければよし、無理でも牽制になるでしょう。
投擲後は再び『聖槍』を具現化し、今度は刺突に依る突撃を敵にお見舞い、そのまま接近戦に移行して敵に張り付きます。
冷却装置の場所が分かれば、そこを狙うのも良さそうですね。
後は敵の操る氷山ですが、無策で突っ込むのも危険ですね。
氷山生成前に接近出来れば良し、接近前に作られたら、氷の薄そうな上層を飛び越えて接敵です。
氷山の激突は、無理に受け止めずに回避するか、海流を逆用して受け流します。
音無・サカハ
※アドリブ、連携歓迎
さって、ペンギンさんとの癒しタイム終了、ちょっとだけ時間使いすぎたかもしれないが、ここからだよ、本番は
まずは【飛翔】を使い相手に接近、出来るだけ水面に近く、低空飛行にします、そして【パラドクス通信】を使用、この場に居る他の復讐者たちと対話し、連携を要請する。
作戦としては極めてシンプル、未来を繋ぐ無垢なる刃(プロミネンス・パニッシャー)の蒼炎バリア有効範囲内になるように接近し、すべてをかけている一撃を奴にぶっち放す。
【活性治癒】があるから、さすがに即リタイアはしないだろけど、重傷になるのはほぼ確定だろ、そのための連携だ
この一撃で倒したら万々歳、倒すことができないなら他の奴に任せる、簡単な話だ
「さぁ、蒼炎に焼かれて、無に帰れぇぇぇ!!」
『んも~っ! 何なんですかさっきから、私の邪魔ばっかりして!』
『ピピィ!』『ピィ!』
作戦を妨害する復讐者の猛攻に、ハバクックは怒りの叫びを上げた。
使い魔のペンギンと一緒にプンスカ抗議しながら、その手にはスペアのソーサーとティーカップが用意されている。こんな時でも紅茶は欠かさないらしい。
「後は指揮官のあなただけ。全力で参ります」
そんなハバクックに向かって、フィーナ・ユグドラシア(望郷の探求者・g02439)は凛と告げた。
フィーナの隣でユリウスはコクコク頷くと、ひょいと掲げたペンギンの翼で、東京湾の彼方をハバクックに示す。果たしてその先には、救援機動力で駆けつける新たな復讐者の姿が見えた。全ての配下を失い、手負いとなったハバクックと、決着をつけようと言うのであろう。
(「とはいえ、敵はまだ諦めていない様子。出来るなら防衛ラインを保険に使いたいところですが……」)
フィーナは凪いだ海面をちらりと見下ろし、無言でかぶりを振った。
防衛ラインの線を引ける対象は『地面や床』。海や空中といったエリアは対象外であり、効果も望めない。
こうなった以上は、万が一にも沿岸が攻撃されないよう、自分たちが頑張る他はあるまい――そう思い、フィーナは覚悟を胸に飛翔を発動。その両足を海から浮かせ、水面ギリギリの高度に保つ。
「さって、ペンギンさんとの癒しタイム終了。ここからだよ、本番は」
同時、ユリウスが指した方角から飛翔して来た仲間が一人、戦いに加わった。
フィーナと同じく水族館より駆けつけた、音無・サカハ(過去を探す旅人・g10149)である。
「お待たせ。ちょっと遅れたけど加勢するぜ!」
「宜しくお願いします。速攻で敵を撃破しましょう」
水族館からは距離があるとは言え、戦いが長引けばペンギンたちが恐怖を覚える可能性もゼロではない。それだけは絶対に許容できないことだった。
サカハとフィーナは挨拶もそこそこに、そのままハバクックめがけ突っ込んで行く。
方針は至ってシンプルだ。初手から全力攻撃を行い、早期決着を狙うのみ。残留効果の強力な支援が得られる最終人類史では多少の無茶も通る。まして敵が手負いとあっては、速攻を決断しない理由は無い。
「少し無茶するぜ。撃墜されたら……その時はその時だ!」
「これ以上、冥海機の横暴を許す訳には行きませんね。行きましょう、ユリウス」
『ふっふ~ん! まとめて氷漬けにしてあげますよ!』
勝利への誓いを胸に加速するサカハとフィーナ。一方のハバクックは冷気を撒き散らし、これを迎え撃つ態勢だ。
だが、多少の被弾など構いはしない。展開されていく迎撃網にも構わず、二人は一気呵成の突撃を敢行する。
復讐者側の作戦は、これ以上なくシンプルであった。
敵の行動を妨害しながら接近戦に持ち込み、火力で押し切る。これだけだ。
そして、最終人類史の残留効果による支援は、それを可能とするだけの力を二人にもたらした。
「いざ、参ります!」
先手を取ったフィーナが、まっすぐにハバクックへ向かって行く。
対するハバクックも、もはや後がないことは理解しているのだろう。パラドクスで立て続けに巨大氷山を生成すると、一斉にフィーナめがけ送り込んで来た。
『氷山迷宮結界、展開~っ!』
「させません!」
フィーナは具現化した光の槍をハバクックに振るい、もろともに氷山を砕いて出鼻を挫かんと奮戦する。
しかしハバクックの氷山はパラドクスを介して生成したもの。自然現象の氷なら、或いは大勲章を用いたなら容易に砕けたであろう氷山はビルの如き偉容を保ったまま、左右からフィーナを圧し潰さんと迫る。衝撃。すかさず発動したガードアップで肉体を硬化させ、フィーナは直撃を耐え凌ぐ。
「……この冥海機、しぶとい」
「ハバクック、俺と勝負だ!」
すかさずサカハは蒼炎のバリアを展開。一気に敵との距離を詰める。
氷山の隙間を縫うようにして接近すると、冷たい空気が肌を刻んだ。ハバクックが、冷却パイクリート式船体修復術を発動せんとしているのだ。
「させるか……! 全てをかけた一撃を、ぶっ放す!」
寒さで感覚の失われそうな全身を叱咤して、サカハは懐へ飛び込んだ。
この戦いは速攻の決着が肝であり、時間をかけるほど復讐者の消耗は大きくなる。
ハバクックの冷気が覆い切るのを待つことなく、サカハは己が炎を巨大な剣へと変えて斬り込んでいった。
衝撃。激突。斬撃。凍気。
一歩も譲らぬ意志を込め、復讐者と冥海機のパラドクスが東京湾でぶつかり合う。
フィーナは両腕の感覚を確かめるように拳を握りしめ、満身創痍のハバクックを見遣った。決着は近い。恐らく次の一撃が勝負になることを、その場の誰もが直感していた。
「早くやられて下さい……!」
『嫌ですう~!』
ハバクックは口を尖らせて、巨大氷山をなおも次々とフィーナに送り込んで来る。
その攻撃は執拗かつ熾烈で、とても死にかけの冥海機とは思えない。倒すなら、致命的な一撃を叩き込む他ないだろう。
(「パラドクスで造られた氷山は、飛翔で回避は出来ない。それなら……」)
幾度かの攻防を介して、フィーナは敵の攻撃に一定の間隔があることに気づいていた。
流石の敵も、無尽蔵に氷山を生成し続けられる訳では無いのだろう。
決めるなら一瞬だ。そして――それから幾度かの牽制を経て、復讐者たちはついに機を掴んだ。
「――今です!」
「ああ、行くぜ!」
天高く掲げるフィーナの手に、輝く光槍が顕現した。
魔力を糧として具現化された、『暁光の聖槍』のパラドクスである。
今、裁きを下すべく狙い定めたハバクックめがけ、フィーナは渾身の力を込めて投擲の構えを取った。
――皆で心を通わせた、ペンギンさんたちの為に。
――1日でも早く、平和な日々が水族館に戻ってくるように。
息を合わせ、大剣を構えたサカハがハバクックを狙う。
魂から響く叫びを胸に、己が力を炎に変えて、明日を繋ぐ剣と為して。
――この一撃で、終わらせる!
「暁光の審判をここに、苦難に癒やしを、悪意に裁きを……!」
「さぁ、蒼炎に焼かれて、無に帰れぇぇぇ!!」
投擲された光槍はダメージアップの力を帯びて、ハバクックに直撃。
そこへ続いて振り下ろすサカハの斬撃が、冥海機の肉体を海戦装の氷もろとも消し飛ばす。
『そ、そんな~!!』『ピイィ~!』
使い魔ともども可愛らしい悲鳴を残して、爆発四散するハバクック。
かくして激闘の終わった東京湾には、静寂だけが残されるのだった。
「ふ~~~……何とか重傷は免れたかな……」
飛翔で海上に留まりながら、サカハは安堵の吐息を深々と洩らした。
かなりの無茶だったこともあり最悪の事態も覚悟していたが、幸いにして其方は免れたらしい。
とはいえ、酷使した肉体は先程からズキズキと悲鳴を上げている。これは明日、筋肉痛かも……そんなことを考えながら、苦笑を浮かべる。
「まあ、東京も無事に守れたんだ。ペンギンさんたちも、これでひと安心だな」
「ええ。ユリウスもお疲れ様です」
フィーナは喜びに湧くユリウスを胸に抱き、沿岸へと戻って行く。
東京湾を巡るひとつの戦いは幕を下ろし、最終人類史は守られた。ペンギンたちの暮らす水族館にも、じきに日常の賑わいが戻って来ることだろう。
「また、彼らと遊べると良いですね」
「ああ、楽しみだ。……その時は、皆で賑やかに行きたいな」
秋の訪れを告げる十月初旬。
復讐者の勝利を祝うように、東京の空はどこまでも青く晴れ渡っていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【活性治癒】がLV10になった!
【未来予測】LV1が発生!