リプレイ
火刑戦旗ラ・ピュセル。
その名が示すように、バルセロナの一都市の広場には無数の薪が組み上げられ、いくつもの十字架の如き木材が突き立てられていた。
其の十字架に貼り付けられているのは、この都市に生きていた一般人達である。
彼らはクロノヴェーダ、キマイラウィッチによって制圧され、今まさに火刑に焚されているのである。
悲痛なる叫びが響き渡っている。
苦悶が渦巻いている。
それを嘲笑うかのように黒煙が風によって仰がれ、霧散していく。
クロノヴェーダ、キマイラウィッチが送り込んだ風だ。黒煙でもって磔刑に処した一般人が窒息死しないようにしているのだ。それは慈悲ではない。
ただ、少しでも長く生き存えさせ、ディアボロスが駆けつけてくるのを待ち構えるためだった。
彼らに慈悲はない。
あるのは復讐のみ。それも、逆恨みの如き感情であることをディアボロスたちは知っていただろう。
あまりにも醜悪なる火刑場を前にして緋月・リィンシュタート(紅蓮迅雷・g01772)とユエ・ゼアフォーレ(天上天下・g00244)は思わず顔をしかめたことだろう。
「……なんということを」
「このような蛮行を赦してはおけませんわ」
パラドクストレインによって都市の近場まで運ばれた彼女達は都市から上る黒煙に予想されていた光景を実際に目の当たりにし、その凄惨たる状況に、己達の胸に抱く炎が燃え上がるのを感じたことだろう。
赦してはおけない。
その共通認識がリィンシュタートとユエの中にあった。
一気に彼女達は駆け出す。
火刑場は確かにクロノヴェーダであるキマイラウィッチたちが取り囲んでいる。
だがしかし、彼らは動かない。
動けないのではない。これが罠であることはリィンシュタートもユエも理解していた。キマイラウィッチたちは一般人たちを火刑に処することでディアボロスが駆けつけることを知っているのだ。
それ故に、彼らは一般人を即座に殺し尽くすのではなく、焚き上げるようにして狼煙をあげたのだ。
此処だ、と。
まるで、ディアボロスの胸に抱く激情を嘲笑うかのように。
「確かに胸に燃えるものがある。だが、さりとて人命に変えられるものがあるわけでなし」
リィンシュタートは即座に組み上げられた薪の上へと欠けの檻、そのブレードの一閃でもって磔を切り裂く。
縄ではなく釘で打ち付けられた掌をみやり、顔をしかめる。
どれほどの痛みであっただろうか。それを思えば、リィンシュタートは彼らに治療を施すために即座に黒煙煙る火刑場を駆け抜けていく。
「こちらですわ! 皆様、お早く!」
ユエは貼り付けにされていない一般人たちをまとめるようにして彼らの背を守る。
クロノヴェーダはやはり攻撃してこない。
こちらを包囲することに注力しているのだろう。やはり自分たちを逃すつもりはないのだと知る。
けれど、それは今関係ない。
例え、己がどれだけ独尊たる心を持つのだとしても、それは誰かのためにあるものだ。銀河のように煌めく瞳は未来を見据えている。
例え、一般人達が凄惨たる火刑の惨状を目の当たりにし、心折れているのだとしても。
今より続く明日があることを知っている。
「生命あるのならば、生きてけますわ。斯様な状況に追いやられた心を理解できないとは言えません。また同時に理解しきることができるとも言えません。ですが」
それでも、とユエは人々の背中を押す。
走ることができないまでも、集団としてまとめることはできる。
黒煙が上がる。
炎が立ち上がり、組み上げられた薪が瓦解するのをリィンシュタートとユエは見ただろう。
「……なんとも言い難いな、これは」
「ええ、ですが、人々の生命は救えましたわ。もっと多く救えます」
「例え、この状況が罠だとしても」
そうだ、とユエは頷く。
罠だからなんだというのだ。己たちはディアボロス。
奪われた怒りを胸に宿して戦う者たちだ。ならばこそ、悪辣なるキマイラウィッチたちから、火刑に処されようとしていた人々を奪い返したのだ。
この後に続く状況がどれだけ苛烈なる運命であっても。
心折れた人々におのれ達の姿を見せることで、伝えられるものもあるはずだ。そう願わずにはおれず、二人は火刑場をひたむきに走る。
生命続く限り訪れる明日のために。
善戦🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
【書物解読】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV2が発生!
エトワール・ライトハウス
アドリブ連携◎
うーむ、地獄絵図
必要だからとこの景色を作れるのは一周回って尊敬……はできないね、うん
全く持ってあからさまな罠だが乗らないわけにもいかない
キマイラたちより、まず住民が大切だからね
転送位置から火刑場へ向け、無双馬レオンに乗り全速力で向かう
救出時点では邪魔しないと言うなら、ご厚意に甘えようじゃないか
現地についたら選択パラドクス『ピユーヴル』を発動
地面から機械腕を展開するのと同時に、残留効果の【水源】から水をくみ、自分と機械腕を濡らしていく
十字架で燃やされてる人々の拘束を機械腕で破壊し、どんどん救出していこう
同時に、動ける住民にはこの後守りやすいように火刑台の周りに集まるよう誘導
心が折れてる時に可哀想ではあるが、傷ついたそれを慮ってやるのはまだ生きてる人達を助けてからだ
一通りの救助が済んだならキマイラたちに向き直る
連中の関心はあくまで俺たちディアボロスにある
応急処置を試みる仲間のためにも、注意を俺たちに引き付けておこう
クロム・エリアル
……悪趣味
クロム達をおびき寄せる為に、民を餌にするのは実に不快
例えそれが罠であれども、罠と分かっているのなら踏み抜いて打ち砕く
困難である程、遣り甲斐は有り
救出任務開始
邪魔をして来ないというのであれば迅速にかつ速やかに移動
念の為「忍び足」で足音は殺し、密やかに行動
じろじろ見られながら入場するのも不気味、多少なりとも潜り込める余地があるのならば利用し火刑場へ
無いようであれば、堂々と突入
突入と同時に水源を使用
川の流れを生み出し、消化行動
火刑に掛けられている人で、まだ息のある者・助かる余地の十分ある者を捜索
救助し、脱出しやすいよう一カ所に集結
また動けそうな者には、水源より発した水で消化と負傷者の火傷の冷却を要請
クロム達が皆を救助する……が、ただ助けられるより出来る事をする事を推奨
その方が一人でも多く救助可能
奴等がなぶり苦しめる処刑を行っているなら、即死に至る程の火は出していないことが推測可能
であれば、早急な処置が必要
人数は正義
隣人を助ける事こそ、生還率向上の常
悲痛なる叫びが耳を撃つ。
痛みと苦しみ。
それらが炎と煙によって巻き上げられてるようであり、また人々の心を切り裂くような鋭さでもって精神を切り刻んでいく。
断頭革命グランダルメ。
そのバルセロナの都市の中央広場には篝火のごとく積み上げられた薪に火が付けられている。その薪のは山のように積み上がっており、そのいくつかの頂点には磔刑のごとく人々が貼り付けられていた。
「ぐ、ううう、ぁぁあ……!」
どれもが悲痛な、苦悶にあえぐ声だった。
黒煙が肺に入り込み、咳込み、酸素を取り込むことすらできない。いっそ、窒息死することができたのならば幸運だっただろう。
だが、この広場に人々を集めたクロノヴェーダ、キマイラウィッチたちは、ただ死することすら許さない。
黒煙でもって息ができないというのならば、適度に風を送って黒煙を晴らす。
それは救済ではない。
ただ、少しでも長く人間が生きていられるように、長く苦しむようにと処置しているだけに過ぎなかったのだ。
その光景を目の当たりにしたディアボロスたちは、正しく地獄絵図だと思ったことだろう。
「……悪趣味」
ただ一言、クロム・エリアル(近接銃士・g10214)は呟く。
そう、悪趣味だった。
キマイラウィッチたちは一般人を苦しめれば、確実にディアボロスたちがおびき寄せられるのだと知って、このような行いをしている。
不快。クロムの中にあるのはたったそれだけだった。
「必要だからとこの景色を作れるのは一周回って尊敬……はできないね、うん」
まったくもって、とエトワール・ライトハウス(Le cabotin・g00223)は息を吐き出し、あからさまな罠である火刑場を見据える。
とは言え、一般人たちを捨て置くことはできない。
すでに山積した死骸を見やれば、なおのことであろう。
此処に己達が来るまで、どれほどの人々を殺めたのだろうか。
「例え罠であろうとも、いえ、罠であるからこそ踏み抜いて打ち砕く。困難でも」
「ああ、そうだね。彼らを救い出すことが大切だ」
「救出任務開始」
クロムの言葉にエトワールが頷く。
同意だった。己達の胸には復讐の炎が揺らめく。キマイラウィッチたちもそうだろう。だが、決定的に違う存在であると知ることができただろう。
あれらは違う。
ただ、己達の復讐心を満たすためだけに仇敵たるディアボロスをおびき寄せんと人々を拷問めいた処刑でもって殺し、利用したのだ。
許せるわけがない。
「行こう、レオン」
エトワールは無双馬『レオン』にまたがり一気に都市の中心部へと躍り出る。
「これが君たちの罠だってことはわかっている。俺たちの邪魔をしないってことも。なら、そのご厚意に甘えようじゃないか」
彼の瞳がパラドクスに輝く。
まるで花が咲き誇るようにして、連れゆく残骸(ピユーヴル)たる機械腕が地面より展開し、さらに残留効果である水源によって川が生み出される。
その水でもってエトワールは己の柄体と機械腕を濡らし、一瞬で十字架のごとく焚されている人々へと取り付く。
「……ッ! これは……」
ひどい、とエトワールは思っただろう。磔刑によって燃やされていた人々は息も絶えそうである。だが、その手足は長く炎にまかれていたのだろう。
ひどい火傷だった。
「まだ息があるものは此方に」
傷口をみやり、息を呑むエトワールにクロムが呼びかける。
確かに彼女はヒルコの体躯であるが、ディアボロスだ。人を抱えることはできる。
ためらっている時間はない。
仮にキマイラウィッチたちが己たちを包囲するために何も仕掛けてこないのだとしても、時間は惜しい。
まだ息がある者。助かる余地のある者。
歯がゆいことだが、選別しなければならない。
「水源を手繰り寄せる。彼らに水を。息をつく暇もないなんてあってはならない」
エトワールの言葉に残留効果でもって出現させた川からクロムは次々と救出した人々に水を配る。
「大丈夫だよ。君たちは必ず助ける。だから」
「……――」
だが、救助した人々も、これから磔刑に欠けられようと集められていた人々も、其の瞳には生きる意志が感じられなかった。
ディアボロスが駆けつけても助かった、とは思っていないのだろう。
ただ、苦しみが長引くだけだと諦観しているようだった。
ぎ、と歯のこすれる音が響く。
それはエトワールのものだっただろうか、それともクロムのものだっただろうか。
もしくは両者のものであったのかもしれない。
人々の心が折れている。
それを慰撫する時間すら長く許されていない。可能ならば、その傷ついた心を慮ってあげたい。
「けど、まだ助けられる人がいるんだ。なら……!」
自分ができることはなんだ、とエトワールは無双馬『レオン』と共に火刑場を走る。
炭化した薪を蹴り、火を振り払い、多くの人々を磔から救い出す。ひとかたまりに人々を集めたものの、彼らは動かない。動けないのだろう。
「……ただ、助けられるより、できることをすることを推奨」
誰かに救われるのを待つのではなく、誰かを助けることができれば、多くが救われる。
人数は正義だ。
けれど、とクロムは気がつくだろう。
人々に生きる気力がないことに。
わかっていることだ。誰も彼もが同じように心が強くないことは。
己達ディアボロスは心に復讐という炎を持つ。故にクロノヴェーダに対する怒りこそが原動力。
されど、この場にいる一般人たちは違う。
助けられても、誰かを助ける行動を起こせない。それは、心に己達が持つ復讐の炎のような、篝火めいたものがないからだ。
「……なら」
その胸に篝火を灯さなければならない。エトワールとクロムは互いの顔を見やる。
応急処置を施す仲間たちも居る。
ならば、自分たちは何ができるだろうか。
無為に奪われた生命。それを目の当たりにした人々に、なんと言葉を届けることができるだろうか。
彼らの暗く閉ざされた心に、ディアボロスたちは篝火の如き何かを灯らせることができるだろうか。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【水源】LV2が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【命中アップ】がLV3になった!
エトワール・ライトハウス
アドリブ連携◎
扇動とか得意ではあるんだけどね
『統率』力とか『演技』力で『情熱』を押し付けちゃうの
今回必要なのはそういう熱病ではないな。大丈夫、分かってるさ
さて諸君、あの怪物たちに、或いは君たちやその大切な人が傷つけられる前に来れなかった俺たちでもいい
その胸に宿った怒りを大いに燃やしてくれ!
――とか言うつもりはないから安心してくれ
傷つき、虐げられ、失った君たちにとって、ただ立ち上がることがどれほど過酷で困難な道であるか……想像くらいはできる
あまりに唐突な蛮行に、自分が抱えてしまった嘆きを直視することすら難しいはずだ
結局のところ悲しみと向き合うのは自分のするべきことで、それを為すには時間が必要なんだよ
だから、俺が君たちに願うのは一つだけ……いやゴメン、三つあるわ
自分の痛み、悲しみに寄り添ってあげて欲しい
隣りにいる一人だけでいいから、同じように蹲ってる人が居ると目を向けて欲しい
そして、最後
君たちが、喪失と苦痛を見つめるための時間は俺たちが作るから
信じて欲しい、俺たちはその為に来たのだと
クロム・エリアル
鼓舞……は、難しい
けれども少しでも声が届くのなら、少しでも力になるのなら駄目元
やるだけやる
先ずは行動、パフォーマンス
救出した人達が磔にされていた十字架を持ってくる
そして銃撃して破壊
今此処に、人々を苦しめた十字架は破壊された
確かに先に希望を持てない事も肯定
深い絶望が皆を襲ったことも肯定
それでも皆は生きている、そして人々を苦しめた十字架はもう無い
苦しめる物が無いのに、何か絶望する理由がある?
あのクロノヴェーダも、これからクロム達に討伐される
確かに、犠牲が出てもう帰ってこない存在は居る
皆はその人達の分まで生きなければならない
生きる意味を失い、失意のまま過ごす事を彼らは望む?
生き残った命を捨てたとして、先に逝った彼らに胸を張って会いに行ける?
これは荒療治
けれども助かった命を捨てるのは失われた命への冒涜
そんな事は許さない
またこういう事が起こる可能性も肯定
けどそうなれば、またクロム達が来る
君達は誰にも見捨てられていない
誰かがきっと、不条理に抗う意思を持つ者が現れる
だから……クロム達を信じる事を推奨
奪われた生命は戻らない。
傷つけられた人の心も同様であろう。誰もが傷ついている。その傷の深さは伺い知れるものではなかった。
何故なら、人の心の内側を覗くことなど誰もできないからだ。
故に、人は理由を欲している。
明日を生きる理由を。
与えることはできる。容易にできる。時に統率という力であったり、時に情熱であったり。
多くの要因で持って人の心を突き動かすことができただろう。残留効果を手繰るディアボロスであれば、一時的にでも人の心を奮い立たせることは可能であった。
だが、それはディアボロスたちが傍らにあれば、の話だ。
ディアボロスたちが帰還すれば、その瞬間に胸に宿っていたであろう高揚や情熱、生きる希望というもの霧散してしまう。切っ掛けは己達が持つ炎であったとしても、それを灯す篝火に継火していくのは、他ならぬ人々自身なのだ。
「鼓舞……は難しい」
クロム・エリアル(近接銃士・g10214)は呻くようにして言葉を吐き出す。
自分に傷ついた心を持つ人々を奮い立たせる言葉があるとは思えなかった。けれど、彼女は逃げなかった。
この火刑場から戦いという場に踏み出すことは簡単だった。
けれど、彼女は己が難しいと感じることに踏み出す勇気を持っていた。ダメ元でもいい。少しでも声が届き、少しでも力になるのならば、やるだけやる。
彼女は小さな体躯でもって灰満ちる火刑場、人々を貼り付けにしていた十字架へと向かう。
それをみやり、エトワール・ライトハウス(Le cabotin・g00223)は助け出した人々の一団を前にして声を発する。
肺に取り込んだ空気は、燃え盛る火刑の残り火でもって嫌な香りを鼻腔に染み付かせた。
けれど、構わない。
今の一般人たちにとって必要なのは、即物的な情熱ではない。それはきっと熱病じみたものでしかないのだ。
「さて諸君。あの怪物たちに、或いは君たちやその大切な人が傷つけられる前に来れなかった俺たちでもいい。その胸に宿った怒りを大いに燃やしてくれ!」
その言葉に人々は顔を上げただろう。
誰も彼もが憔悴仕切っている。
エトワールの言葉に頷くことすらできなかった。
だが、次の瞬間エトワールが続けた言葉に人々は目を見開く。
「――とか言うつもりはないから安心してくれ」
彼の言葉は穏やかだった。
悲惨たる状況にあってなお、それでも穏やかな口調だった。
わかっているからだ。一般人達の心中を。
傷つき、虐げられ、あらゆるものを失った者たち。彼らに立ち上がれ、という方が無理である。どれだけ困難であるかなど容易に想像ができる。
眼の前にあった生命が消えていくのをただ見ていることしかできなかった無力。
自分が抱えてしまった嘆き。
直視できない現実。
鈍く重たい音が一般人の一団の前に響く。
それは十字架めいた角材であった。
声を上げる者だっていただろう。それは火刑場にて彼らを貼り付けにしていたものだったからだ。
そして、次の瞬間、それは銃撃によって破壊される。
「今此処に、人々を苦しめた十字架は破壊された」
クロムだった。
彼女は十字架を運び出し、人々の前で粉々に破壊してみせたのだ。
「たしかに先に希望を持てないことも肯定。深い絶望が皆を襲ったことも肯定。それでも、皆は生きている。そして、人々を苦しめた十字架はもうない」
今ここで自分が破壊したのだから、とクロムは告げる。
それは己の悲しみを、苦しみを直視する行為であったことだろう。
エトワールが続ける。
「結局のところ、悲しみと向井うのは自分のすべきことで、それを為すには時間が必要なんだ。わかっているよ」
「そう。皆を苦しめたものは、もうない。何も絶望する理由なんて無い」
けれど、それでも心に深く打ち込まれた絶望は消えないのだ。
だからこそ、クロムは言う。
犠牲となった者の生命を取り戻すことはできない。だが贖わせることはできる。クロムは力強く言葉を紡ぐ。
誰も彼もが復讐を抱くことはできない。
あの苛烈なる炎は、己達ディアボロスだけが抱えれば良い。
「皆は、今はもういない誰かのために、彼らのために生きなければならない。生きる意味を失い、失意のまま過ごすことを彼らは望む? 生き残った生命を捨てたとして、先に逝った彼らに胸を張ってあいに行ける?」
強烈な言葉だった。
きっとこれは荒療治というものだ。
背中を押しているだけに過ぎない。くたくたにくたびれた背中を押しているだけなのだ。
けれど、それでもクロムは思う。助かった生命を捨てることは、失われた者たちへの冒涜に他ならないと。
そんなことをさせてはならないと思うからこそ、クロムは強烈な言葉でもって人々の打ちひしがれた心の撃鉄を引くのだ。
「わかるよ。その悲しみも。苦しみも。通り越すような虚無感も。だから、俺が君たちに願うのは一つだけ……いや、ゴメン。三つあるわ」
エトワールは笑む。
こんな場でも笑顔を忘れてはいけないと思った。
「自分の痛み、悲しみに寄り添ってあげて欲しい。隣にいる一人だけでいいから、同じように蹲っている人が居ると目を向けて欲しい。そして、最後。君たちが喪失と苦痛を見つめるための時間は俺たちが作るから、信じて欲しい」
人の憂いに寄り添うことができるからこそ、優しさなのだ。
人は優しさを抱くことができる。
復讐抱く己達ディアボロスでも、キマイラウィッチでもなく、人こそが優しさを抱くことができる。
それが明日を生きる人の理由になるというのならば。
生命とはなんと輝かしいものであろうか。
「またこういうことが起こる可能性も肯定。けど、そうなれば、またクロム達が来る。君たちは誰にも見捨てられていない。誰かがきっと、不浄に抗う意志を持つ者が現れる。だから」
クロムは信じてほしいと思う。
願ってほしいと思う。
エトワールと同じように人々の心に篝火を。
優しさという篝火を灯すことができるのだと信じたい。
「俺たちはそのために着たんだ」
人が優しさという火でもって共に歩むことができるのだと証明するために。
そして、人々の顔を二人は見るだろう。
煤に塗れ、絶望に打ちのめされ、涙の跡すらこびりつく顔。
けど、その瞳に宿る確かな輝きは、きっと己達でも、キマイラウィッチでも潰すことができないものだと知る。
「……クロムたちは征く」
「ああ、君たちを此処から逃す」
二人は見据える。
己達を逃さぬと包囲するキマイラウィッチたちの姿を。
トループス級『トータスナイト』は、火刑を逃れた人々という枷をディアボロスに嵌め、そして囲う。
「それは為し得ないことと知ってもらおう。我等が復讐の糧となることを誇りに思うが良いディアボロス。貴様らの五体全てを引裂き、臓腑を撒き散らし、その首を槍に掲げて、さらなる我等の復讐の炎に乾く喉を潤す滋味となることを知るがいい!」
周囲を取り囲む咆哮。
その大気を震わせる強大であり、膨大な敵意を前にディアボロスたちは、これを突破しなければならないのだと、覚悟を決めるのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【託されし願い】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV2が発生!
サリナ・シーゲル
連携・アドリブ歓迎
復讐の為に無辜の人々を虐げるなど、言語道断。
これは全力で挫かねばならないであります。
しかし出遅れて既に包囲戦が始まってしまい、街の味方との合流は困難。
……ならば包囲戦中の敵の背後から一撃を与えて、内外からの挟撃と思わせ混乱を誘うであります。
現地に急行後【光学迷彩】で身を隠し、物陰伝いに慎重に接近。
射程まで接近したら、貫通後に街から脱出を図る方々を巻き込まない軌道の『ペネトレイトレーザー』でメリュジーヌを狙い撃つ。
その後は静から動へ。
【飛翔】で地表から少しだけ浮き、敵配下に囲まれないよう急速後退と再前進を交えて距離を取り、空中戦の技量を活かしスラスターと翼を使った速度の緩急と急な方向転換で複雑な回避軌道を取りつつ、粘り強くメリュジーヌへの攻撃を継続。
指揮に集中できなくして敵の統率を乱し、街の味方が脱出し易い状況を作る。
敵の攻撃に対しては誘導弾の技量でその軌道を読み、着弾直前に大きく動き敵弾の旋回が間に合わず掠るような角度で当たるようにして、魔力障壁で衝撃を逸らしつつ反撃。
『666』の数字が火刑によって燃える薪が撒き散らす黒煙の最中に走る。
それはサリナ・シーゲル(デビルフィッシュ・g10138)の大腿に刻まれた文字であった。鮮烈なる赤髪を揺らし、サリナは火刑戦旗ラ・ピュセルのクロノヴェーダ、キマイラウィッチたちの蛮行の痕を瞳に映す。
同じ復讐を持つ存在。
ディアボロスが奪われた怒りに復讐の炎を燃やすのならば、キマイラウィッチたちは己達自身によるマッチポンプでもってディアボロスに対する復讐心を灯す。
「ディアボロス! よくものこのこと!」
サリナが戦場へと飛び込んだ瞬間、アヴァタール級『メリュジーヌ』はディアボロス包囲網の後方から現れたサリナを視界に認め、その激情を発露させる。
作為たる復讐心。
されど、その復讐に彼女達は踊らされるようにしてサリナへと、その竜を模したかのような杖を掲げ、その憎悪によって生み出された魔法弾をパラドクスとして撃ち放つ。
弾丸は執拗にサリナを追い回し、彼女の体へと叩き込まれる。
爆煙が上がり、しかしサリナは健在だった。爆煙の向こう側で煌めくパラドクスの煌めきと共にサリナは告げる。
「復讐の為に無辜の人々を虐げるなど、言語道断。その目論見、全力で挫かせてもらうであります」
爆煙の向こう側から放たれるペネトレイトレーザーの一閃が『メリュジーヌ』の体を貫く。
だが、それで彼女が止まるわけがない。
サリナというディアボロを見つけ、己の中に溢れる憎悪のままに駆け出している。アヴァタール級である『メリュジーヌ』の力は強大そのものだった。
放つペネトレイトレーザーの光条でもって狙い撃つのだとしても、突進が止まらない。
なんたる意志。なんたる憎悪であろうか。
「ディアボロス――!!!」
強烈な憎悪を感じさせる叫びを肌で感じながらサリナは炎燃え盛る火刑場を駆け抜ける。
スラスターと翼を使った緩急の付けた回避軌道。
逆説連鎖戦においてパラドクスは必中。
だが、サリナの目的は別にあった。確かにキマイラウィッチによるディアボロス包囲網は強固。打ち破るには内側にあるディアボロス達の力を信じるしか無い。
けれど、敵の最大戦力であるアヴァタール級の視線をサリナは惹きつけ続ける。
内部に有るディアボロスたちが包囲を突破しやすくさせるためには、その状況を己が作り出さねばならない。
放たれる魔力団を受け止めながら、光条を解き放つ。
「くっ……流石に……! 強い……ですが!」
サリナは諦めない。
己が『メリュジーヌ』を引き付ければ、それだけ包囲網の指揮は滞る。共に戦場にあるディアボロスが人々を囲いから脱出させるために戦っているのだ。
「ここで自分が踏ん張らねば……!」
生まれ持った、そして父より受け継いだ軍人としての気質。
それをサリナは誇るように火刑場の炎と黒煙の最中をパラドクスの煌めきと共にたった一人で『メリュジーヌ』の視線を惹きつけ続けるのだった。
成功🔵🔵🔵🔴
効果1【光学迷彩】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
クロム・エリアル
……例え無茶でもクロム達は大言壮語を吐いた
成し得ないと赤っ恥
旅の恥は掻き捨て……と開き直るのは否定
罠は踏み抜くと決めた、だからこのまま血路を開く
双銃『Libra』を構える
住民達にはいつでも駆け出せるよう準備する事を指示
……ついでにトータスナイトが近寄って来たら、知らせてくれると更に良し
全ての亀の相手をする必要性は皆無
火刑場外輪部、逃走経路に陣取った相手のみ撃破
対象以外は、銃口を向け牽制はしても攻撃はせずに様子見
敵がまだ、此方をじわじわいたぶろうとしているなら活路有り
Ex.Bullet.Parabellum装填
進路上の敵に対して、銃撃開始
「連射」し、火力を集中
撃ち貫き、道を切り開く
距離を誤認させるのは戦術の常
亀の身体はその点を考慮すれば便利
ならばこそ、クロムは前進
敵が間合いを自在に変えるなら、その点への対処は放棄
駆け懐に潜り込み、手の内側に入る
1体はこれで、自分を掻く様に攻撃するしか無い
もう1体も味方ごとなら攻撃可能
逆説連鎖戦故、効果は薄い
けど、無いよりは善
少しでも鈍れば耐えるのは可能
己たちを包囲するキマイラウィッチ、トループス級『トータスナイト』たちは、憎悪溢れる表情と咆哮でもってクロム・エリアル(近接銃士・g10214)たちを迎える。
完全に包囲されている。
これは予想されていたことだ。
今更慌てるまでもない。そして、己達がたじろぐことがあれば、救出した人々に不安が生まれる。不安が生まれれば、容易く伝播し、人々は恐慌に呑まれてしまうだろう。
そうなってしまえば、もはや脱出はできない。
だからこそ、クロムは息を吐き出すことなく飲み込んだ。
そう、例え無茶であるのだとしても。
己たちは大言壮語を吐いたのだ。ここでなし得なければ、きっと赤っ恥だ。
言葉だけの偽物になってしまう。
確かに此処は己と縁のないディヴィジョンかもしれない。けれど、恥をかき捨てて良い場所ではない。開き直ってはならない。
「罠を踏み抜くと言ったのならば、決めたのならば、このまま血路を開くのみ」
クロムの瞳がパラドクスに輝く。
構えた双銃と共に彼女は包囲を狭める『トータスナイト』たちを見やる。
「ああっ!」
人々が悲鳴を上げた瞬間、『トータスナイト』たちは、その見た目に反するかのような剛腕を伸ばし、鋭い爪の一撃をクロムへと見舞う。
「ディアボロス、殺してやるぞ! この我等が胸に抱く復讐を! 憎悪を! 思い知るが良い!」
四方八方から迫るパラドクス。
強靭なる爪は容易く人の肉体を両断することだろう。
だが、クロムはわかっている。
すべての『トータスナイト』を相手取ることなど不可能であり、必要性はない。
見定めなければならないのは火刑場の外輪部。つまり、包囲網がどれだけ分厚いのかを見定めることだ。
己たちは逃げなければならない。
突破しなければならない。
ならば、その包囲網の層が薄い部分へと走らなければならないのだ。
だが、『トータスナイト』たちは胸に抱く憎悪に振り回されるようにしてディアボロスであるクロムを殺すことだけに注力している。
「やはり、ディアボロスであるクロムばかり狙っている」
そう、もしも『トータスナイト』達が見境がないというのならば、今のパラドクスで人々は蹂躙されていただろう。
だが、パラドクスのすべては自分に向けられている。
同時にどんなに惨たらしくディアボロスを殺してやろうかという意志さえ感じた。
「なら、そこに活路」
「逃すものか! ディアボロス!!」
満たされていく憎悪に戦場が揺れる。
クロムは恐れなかった。どれだけの憎悪が満たされるのだとしても、つまり、己はこれに対処できる。逆説連鎖戦であるがゆえに、一斉に放たれたパラドクスに対してEx.Bullet.Parabellum(エクスバレット・パラベラム)たる汎用モードへと切り替えた双銃は、反撃の一撃を叩き込むことができる。
時空を歪めるようなパラドクスの煌めきと共に放たれる弾丸。
吹き荒れる嵐のように『トータスナイト』を穿つ弾丸が彼らの剛腕を弾き、そしてクロムの体に無数の傷跡を刻み込む。
「っ、ぐっ……! でもっ、見えた」
そう、火刑場を取り巻く包囲の一角。
そこにはこのトループス級を指揮していたアヴァタール級が座していたはずだ。
だが、そのアヴァタール級は今や一人のディアボロスによって惹きつけられ、配置を離れている。
最も強いキマイラウィッチが座すが故に、その包囲網の一角だけがぽっかりと穴が空いた状態になっているのだ。
「活路」
クロムは、そこにこそ皆で生き延びる道を見出す。
進むしかない。
例え、足枷のごとき人々を己達がまとめなければならないのだとしても。
それを嘲笑うように迫りくる『トータスナイト』たちがいるのだとしても、だ。
成功🔵🔵🔵🔴
効果1【飛翔】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
ナディア・ベズヴィルド
仲間の残留効果を使用させて頂きます
鼻に据える臭いに眉を潜める
無辜の民を我らを誘き寄せる為に燃やし尽くそうというか!愚かな!
【光学迷彩】を用いて接敵しメリュジ-ヌに一撃をくれてやろう
貴様らの思惑通り来てやったわよ――これで満足か?
ああ、よかった満足してくれたようね
敵の気をこちらに向けるように声を向けて
【パラドクス通信】で仲間と連携を取れるように立ち回ろうか
人々を安全に逃がす為に、不安を抑える為に、希望を胸に灯す為に。
不敵な笑み浮かべ、【泥濘の地】で怒りの化け物の動きを鈍化させその隙にアルバリで喰らってやろう
全てのクロノヴェーダは我が怨敵!
貴様らが我らに憎しみを抱くと同義、どちらか倒れるまで血を流し続けようか!
ふ、はは。全く胸糞悪いことだらけ。
焔と血と共に踊り狂う限り、貴様らに向ける憎悪は絶えることはないな
奴崎・娑婆蔵
おうおう、キマイラウィッチさんよぅ
お前さん方だきゃどえらい強いモンと評判じゃァありやせんか
手前、姓は奴崎名は娑婆蔵
人呼んで『八ツ裂き娑婆蔵』
一体全体どれッくらいやるのか、ちょいとあっしにも教えてやって下せえよ――なァ?
憎悪?悲哀?憤怒?
大いに結構
それで気合が入るなら、題目なんざァ好きなように唱えなせえ
但し――粋な喧嘩口上ならまだしも、聞くに絶えねえようなさもしい恨み文句でも並べてみなせえ
萎える口を利く舌は要らねえな
舌・喉・頸の順で八ツ裂きにしてやりまさァ
・妖刀『トンカラ刀』抜刀、敵を真っ向見据え突貫
・己の目の焦点を常に意識し、暗黒布が蛇化する瞬間と緩急とをむしろこちら主導で誘発することで、襲い来る蛇を迎え撃ち易いよう機を計り【両断】せん
・同時【イカロスウイング】発動
・己の体から周囲へ、意志持つ帯『ダイダロスベルト』を射出、メリュジーヌを全周から磨り潰すように射掛ける
・意志持つ帯の自律判断に照準させ攻撃することで、メリュジーヌの暗黒布に視線を反応させない――蛇の出現を抑止しつつ攻める企図
鼻の奥にぶつかるような匂いがあった。
それを知っている者もいるだろう。それは人が焼かれた匂いだ。嘆きと苦痛が満ちた匂い。長く苦しむように。長く炎にくべられるように。多く痛みを得るように。
そうして焼かれたものの匂いであった。
それはもうただのモノでしかないとわかっていても、心のなかに燃え上がるものがあった。
ディアボロスは、それを復讐と呼ぶ。
「無辜の民を我等を誘き寄せるために燃やしつくそうと言うか! 愚かな!」
激情迸るは、ナディア・ベズヴィルド(黄昏のグランデヴィナ・g00246)だった。
黒煙が満たされた火刑場を走る。
すでにディアボロス達によって今だ火刑に処される前の一般人たちは救出されている。だが、彼らを真に救い出すためにはクロノヴェーダ、キマイラウィッチの包囲網を破らねばならない。
その一角たるにして、もっとも分厚い壁として存在しているのがアヴァタール級『メリュジーヌ』であった。
先んじたディアボロスによって彼女は持ち場から引き離されている。
それはナディアにとっては幸いだった。
他のトループス級の姿がないわけではないが、しかし、単体で引き離された、というの僥倖そのもの。
「ディアボロス――!!!」
怨嗟の咆哮が轟く。
「おうおう、キマイラウィッチさんよぅ」
その叫びに応えるように奴崎・娑婆蔵(月下の剣鬼・g01933)はゆらりと姿を表す。
激情顕にする凄まじきパラドクスの煌めき。
暗黒の布がまるで生きた蛇のように娑婆蔵へと発せられ、宙を駆け抜ける。そのパラドクスの一撃をみやりながら彼は妖刀を抜刀する。
なんとも無粋なことであろうか。
粋というものをまるで解していない。キマイラウィッチとは逆恨みのごとき復讐でもって己達の強化をなし得ている。
その強靭さというものは、あまりにも強烈であった。
故に娑婆蔵は、その前評判というものが如何ほどのものであるのかを知りたいと願った。
「ハッ、あっしを見やれば目の色変わる。憎悪と怨恨の色でさぁな! 手前は、性は奴崎、名は娑婆蔵。人呼んで『八ツ裂き娑婆蔵』。一体全体どれッくらいやるのか、ちょいとあっしにも教えてやって下せえよ――なァ?」
迫る暗黒布を手にした妖刀が切り裂く。
だが、切り捨てられた布は空中で蛇へと変貌し、娑婆蔵の喉元に喰らいつかんと迫る。
翻した袖に遮られて、蛇の牙は彼の腕へと突き立てるに至る。
「知る必要など無い。貴様らディアボロスはすべて殺す。殺し尽くしても殺し尽くしても飽き足らない。貴様たちには死よりむごたらしい最期を与えねば、我等が恨みは晴らせぬ」
迸るようにして迫る暗黒布をかい潜り、娑婆蔵は踏み込む。
「喧嘩口上はぁ、イマイチでさぁね。ただの逆恨みじゃあございやせんか。萎える。ええ、萎えまさぁ。なら、その萎える口利く舌ぁ、要らねえな」
踏み込んだ妖刀の斬撃が暗黒布が変じた蛇を受け止め、火花を散らす。
「貴様らの思惑通りきてやったわよ――」
娑婆蔵の口上によって『メリュジーヌ』の視線は彼に惹きつけられていた。
それ故に彼女はナディアの接近に、パラドクスが煌めくまで察知することができなかった。だが、それは同時に共に戦う仲間たちにも知られることではなかったはずだ。
攻撃のタイミング。
手繰り寄せる残留効果によって黒煙にまぎれていたナディア。
当然、娑婆蔵にも見えなかったことだろう。その状態でどうやって、と『メリュジーヌ』は復讐に溢れる心、それをパラドクスによって怪物へと変貌させながら訝しむ。
訝しむことができる時点で、『メリュジーヌ』が強大なキマイラウィッチであることがうかがい知れよう。
けれど、ナディアたちディアボロスはこれまでも多くのクロノヴェーダを打倒してきた。
その要因の一つが残留効果である。
ディアボロスだけが引き寄せることのできる鎖のごとき強固な力の後押し。
ナディアはパラドクス通信によって娑婆蔵との攻撃の蓮消えを取っていた。
「これで満足か?」
「ディアボロス!!! 私の前に姿を現しておいて、無事に帰れると思うな……ッ!!!」
恐怖さえ感じさせる咆哮にナディアはいっそ安堵した。
「ああ、よかった。満足してくれたようね」
昏き影は音もなく這い寄る。
それは彼女のパラドクス。飲み込む者の守り星(アルバリ)は、彼女の瞳に輝く。
人々を救い出す。
それがディアボロスの目的だった。『メリュジーヌ』たちキマイラウィッチの撃破はおまけ程度でしかない。けれど、ここで彼女達を打倒することは、当然だった。
「すべてのクロノヴェーダは我等が怨敵! 貴様らが我等に憎しみを抱くと同義、どちらか倒れるまで血を流し続けようか!」
ナディアのパラドクスが巨大な爪となって大地を引き裂くようにして現れ、迫る怪物の拳を見据えながら、なおも彼女は前のめりに踏み出す。
互いにパラドクスは必中。
ならば、力の優劣はあれど、其処に籠められた感情は決して色褪せることはない。
彼女は見た。
周囲に転がる大小様々な炭化した亡骸を。
年老いたもの。年若いもの。生まれたばかりのもの。
多くが、彼女の激情に撃鉄を叩きつける。
「ふ、はは。全く胸糞悪いことだらけ」
「だからどうした。貴様らディアボロスを我等は許さぬ。我等の憎悪! 悲哀! 憤怒! それがこの様であると知るがよい!!」
巨大な爪が『メリュジーヌ』の体を引き裂き、ナディアの体を巨大な怪物の拳が打ち据える。
だが、ナディアは見ただろう。
踏み込むパラドクスの輝き宿す娑婆蔵の姿を。
手にした妖刀で暗黒布を振り払いながらダイダロスベルトが娑婆蔵から放たれる。
「憎悪? 悲哀? 憤怒? 大いに結構。それで気合が入るんなら、題目なんざァ好きなように唱えなせえ……ええ、ですが、その舌、喉、顎は」
彼のダイダロスべルトは全方位に走る。
無数のダイダロスベルトは鋭い一撃となって……いや、全方位からすりつぶすようにして『メリュジーヌ』を取り囲み、暗黒布ごと切り裂いて『メリュジーヌ』の体を切り裂く。
「八つ裂きがお似合いでさぁ!」
血潮が溢れ、『メリュジーヌ』の体が揺れる。
「焔と血と共に踊り狂う限り、貴様らに向ける憎悪は絶えることはないな」
ナディアは打ち込まれた拳の痛みを噛み殺す。
それは、共に復讐抱く者同士が如何にしても相容れぬものであることを示す。揺れる体を睨めつけ、ナディアと娑婆蔵はディアボロスを包囲する火刑場の一角に穴を穿つことを知らしめるのだった。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【泥濘の地】LV1が発生!
【飛翔】がLV3になった!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!
【アヴォイド】がLV2になった!
クロエ・アルニティコス
えぇ、来ましたよ。
お前たちがいるのなら、私たちはどこへでも行きましょう。
こんな下らないことをせずとも。
そうでしょう?
断片の王によって作られた、お前たちの下らない逆恨みとは違うんですよ。
私たちは、奪われ奪い返すために集った者。復讐者なんですから。
お前が私たちを逃がさないんじゃありません。
私たちが、お前を、逃さず殺しに来たんですよ。
【ヒュドラ・アマランサス】を使用。尽きぬ憎悪と魔力を種にくべ、ヒュドラを象った怪物を作り出します。
……助けられた後、一か所に固まっていてくれるのは幸いですね。
怪物同士の戦いに一般人が巻き込まれない位置取りを。
ヒュドラの多頭で縛り、毒の牙でかみつき、暴れまわる怪物たちを次々と殺していきましょう。
怪物を排除したならメリュジーヌをヒュドラの牙で食いちぎらせます。
お前の怒りよりも、この身を焼く憎悪の方が強い、それだけのことです。
お前たちには感謝しますよ。
こうしてお前たちと相対することで、自分の中の憎悪がくすんでいないか確認できる。
お前たちを滅ぼすまで、殺しつくしましょう。
エトワール・ライトハウス
アドリブ連携◎
さて、キマイラウィッチ
君たちの復讐心は本物だ
ジャンヌ・ダルクの自作自演で作られた傷だろうとも、君たち自身が苦しみ、悲しんだからこそ復讐を叫ぶのだろう
だから言っておく……ごめんね
パラドクス、『葬送の送り火』を発動する
メリュジーヌが本気で復讐を叫ぶのなら、彼女自身が抱える最大の苦痛であろう火刑の炎で戦わせてもらおう
冷静さを奪うにはこれが一番のはずだ、我ながら悪辣とは思うが
炎を纏った状態でレオンと共に戦場を駆ける
【命中アップ】が三重だ、何時もより回避重視で動いても銃弾は当てやすい
蛇を使うのならば、嗅覚と熱感知を狂わせるのにも炎は有効だろう
銃弾を当てれば、それに応じて炎は相手に燃え移る
それが成功すれば、こっちの炎の性質もバレるだろうね
クロノヴェーダ以外は燃やさない……そして、苦痛は与えない
謝ったのは、君の苦痛を踏み躙る事じゃない
踏み躙った上で、その憎悪を憐れむ不実をだ
俺が君に与えるのは穏やかな灼熱に呑み込まれる終幕だ
自分の復讐を叫ぶのなら、振り払って見せろ、クロノヴェーダ!
「ディアボロス、ディアボロス、ディアボロス、ディア……ボロスゥゥゥ
!!!!」
咆哮が黒煙と焔の中に荒ぶ。
それはアヴァタール級『メリュジーヌ』の咆哮であった。
怒りだ。憎悪だ。満ちるのはそれしかない。彼女にとって復讐とはすべてである。
この戦場もまた同様である。ディアボロスを誘き寄せるために人間を、一般人たちを燃やした。かつて己達がそうされたように。火刑を敢行した。
其のことに対して悪びれることはない。
何故なら、己たちは火刑に処されたのだから。
「私達の憎悪、憤怒、悲哀を受けるが良い!!!」
ディアボロスたちの姿を認めれば、彼女は包囲網に穴を開けてでも迫るだろう。
その激情迸る咆哮にクロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)は冷ややかに告げる。
「ええ、来ましたよ」
だが、彼女もまたディアボロス。
胸に復讐の炎を宿す者。
故に、彼女は告げるのだ。己の激情を心に宿しながら、無辜たる人々を焚した事実を瞳に宿す。
「お前たちがいるのなら、わたしたちは何処へでも行きましょう。こんな」
こんな、と黒焦げに炭化した躯が転がり、山積した広場を知る。
「下らないことをせずとも」
「くだらないだと! これを、私たちの憤怒を!」
『メリュジーヌ』のパラドクスが煌めく。
復讐の心を怪物へと変えるパラドクス。巨大なる体躯は、『メリュジーヌ』の中にある復讐の焔を具現化したかのような威容であった。振るい挙げられる拳。
その巨魁を前にしてもクロエは怯まない。
「そうでしょう? 断片の王によって造られた、お前たちのくだらない逆恨みとは違うんですよ。私達は、奪われ奪い返すために集った者。復讐者なんですから」
煌めくパラドクス。
己の中にもまた憎悪がある。
打ちのめされた過去が、己の中にある焔に巻きをくべる。燃え盛る焔は、魔力を得てアマランサスの種子を育てあげる。
生み出されるはヒュドラ・アマランサス。
忌まわしき怪物。
互いに復讐の焔で育てあげたパラドクスの煌めきが激突する。吹き荒れるようにしてパラドクスの余波たる衝撃波が『メリュジーヌ』とクロエを打ち据える。
その衝撃走る戦場を無双馬が駆け抜ける。
石畳を叩きつけ、音を響かせながら、疾風のように走るのだ。
「君たちの復讐心は本物だ。『ジャンヌ・ダルク』の自作自演で造られた傷だろうとも、君たち自身が苦しみ、悲しんだからこそ、復讐を叫ぶのだろう。だから言っておく……」
エトワール・ライトハウス(Le cabotin・g00223)は無双馬『レオン』にまたがり、黒煙荒ぶ最中を走り抜ける。
瞳が見据えるのは『メリュジーヌ』。
その憎悪と憤怒、悲哀に満たされた存在。
あれは、己達と同じ復讐を宿している。だが、決定的に違うのだ。
それを示すように無双馬『レオン』の体が炎に包まれる。絶えず盛る炎。そのゆらめきを視界に修めた『メリュジーヌ』の視界はフラッシュバックするように明滅したことだろう。
怒りが脳を塗りつぶしていく。
怒りが脈動する心臓を破裂させる。
怒りが。怒りだけが、満たしていく。
「ディアボロス! 殺す! 殺し尽くして!! いいや、それだけでは飽き足らない! 貴様たちの躯は、ただ炭化などさせぬ! 内蔵を焼き、すりつぶし、あらゆる痛みをもって貴様たちの存在の全てを否定してやる!! 一人たりとて逃すものか!!!」
咆哮。
迫る暗黒布が蛇へと変じ、『レオン』とエトワールの体に牙を突き立てる。
猛烈な痛みが走る。
けれど、葬送の送り火(ルー・トロワ)は止まらない。
ヒュドラーの多頭が成長するようにして『メリュジーヌ』の体へと絡みつく。
腕がひしゃげる音が響いた。さらに復讐心の怪物たちさえもクロエの手繰るヒュドラーによって食いちぎられていく。
「逃げる? お前が私達を逃さないんじゃありません。私達が、お前を、逃さず殺しに来たんです」
みなぎる殺意。
それは憎悪。己の身を焼く憎悪そのものだった。
己に向けられる怒りがどれほどのものであろうとも、己の胸に抱く憎悪が勝るのだとクロエは言う。
彼女は知るだろう。
己の中の憎悪を見つめるだろう。
此処に敵はあれど、彼女の意識は己の中の憎悪の炎に向けられている。
「お前たちには感謝しますよ。こうしてお前たちと相対することで、自分の中の憎悪がくすんでいないか確認できる」
ぎりぎりと締め上げていくヒュドラーの多頭。骨身が砕け、血潮が噴出しながらも己を睨めつける『メリュジーヌ』の視線を真っ向からクロエは見据える。
「お前たちを滅ぼすまで、殺し尽くしましょう」
「この炎は君にとっては苦痛そのものだろう。火刑の炎はキマイラウィッチである君にとって、最も苛むものであろうから」
我ながら悪辣な手だと思う。冷静さを喪わせる。
激情は確かに力へと変わるだろう。だが、それが常に引き出されるものではない。人の肉体が疲弊するように、心もまた疲弊するのだから。
故にエトワールは無双馬『レオン』と共に石畳を蹴って飛翔する。
纏う炎が吹き荒れるようにしてクロエのパラドクスによって拘束された『メリュジーヌ』へと迫る。
それはあまりにも焼き増しめいた光景であったことだろう。
『メリュジーヌ』にとっては二度目の火刑。磔刑。
ヒュドラの牙は釘。多頭は十字のように『メリュジーヌ』の体を抑えつけ、『レオン』の放つ炎は、彼女を焼く。
だが、痛みがない。
何故なら、それはエトワールのパラドクス。
攻撃はすれど、滅ぼせど、痛みは与えぬ。
苦痛なく敵を送るための力。
だが、『メリュジーヌ』の咆哮は轟く。
「一度ならずとも二度も、私を! 炎で滅ぼすか、ディアボロス!!」
「……ごめんね。謝ったのは、君の苦痛を踏みにじることじゃあない。君の苦痛を踏みにじった上で、その憎悪を憐れむ不実に、だ」
「ディアボロスゥゥゥ!!!」
迫る炎は、終幕の炎。
されど、『メリュジーヌ』は燃え盛る中、磔刑たる拘束を振り払いながら前に踏み出してくる。
「俺が君に与えるのは穏やかな灼熱にのここまれる終幕。自分の復讐を叫ぶのなら、振り払って見せろ、クロノヴェーダ!」
ごう、と吹き荒れる炎が上がる。
天を衝く炎。
火の粉が舞い上げられ、クロエは見ただろう。
怨嗟と憎悪が渦巻く炎の中、『メリュジーヌ』の体が炭化し、崩れていくのを。
「敵の一角を崩れました。ここからなら、包囲を食い破ることができます」
今だキマイラウィッチの包囲網は瓦解していない。されど、指揮を取る『メリュジーヌ』が己達に打倒されたことで、トループス級である『トータスナイト』たちの連携に乱れが生まれるだろう。
「そこを衝くためには」
さらなる戦いが幕を開ける。
生きていくことがどれだけ困難に満ちたものであることか。けれど、それでも自分たちは生きている。クロエとエトワールは、救うことのできる生命を取りこぼさぬために、宿怨の炎を振り払うように駆け出す。
己の手は届くのか、と。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【浮遊】LV1が発生!
【防衛ライン】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】がLV2になった!
【ダブル】LV1が発生!
ナディア・ベズヴィルド
(ネメシスモード形態を開放)
敵の数が多くとも指揮する者が消えれば混乱は生じ、隙も生まれる
掻き乱しましょう、戦場を。
咲き乱れよ血の花よ、殺戮の始まりだ。
【パラドクス通信】で仲間と密に連絡を取り合い
包囲網が薄い箇所を見つけたら其処から突破口を開くように行動する
我らに復讐をと宣うがいいが、人々を虐げねば何もできぬような口先だけの輩に何が出来ようか
憎悪を思い知ればいいと言うなら小細工などせずさっさと挑みにこればよかろうに
そう敵に言葉を向け煽り、人々から注意を逸らし自分に集中させよう
【通信障害】を用いて敵同士の意思疎通を阻み全体行動に支障がでるようにしよう
我が雷は力なき民の怒りを代弁する
逃がしはしない、全てを灰燼と化すまで
敵の反撃には魔力障壁を展開しダメージの軽減を図る
脱出する道を切り開いたなら一般人を誘導し、この場から逃がす
その際は殿を務めましょう
いつまでもしつこく食いついてくる連中を食い止め、可能な限り倒す
後はタイミングを見てみんなと脱出よ
奴崎・娑婆蔵
●「指の包帯を僅かにほどく」という、サイキックオーラの出力がめちゃくちゃ上昇するネメシス形態解放
もしもし亀よ、亀さんよォ~
テメエらのカシラは今しがたあっちで斬られやしたぜ
だのに――カタギの衆をいびる真似、まァだ続けやがるんでござんすか?
もっとも、止めた所で生かして帰す気はハナからありやせんがね
だいぶん吊るしたみてえじゃァありやせんか
であればテメエらへのケジメの付け方も決まりやしたね
磔刑でさァ
殺人領域――『早贄山麓刀輪処』
・トータスナイトの攻撃手段は、飛び上がってから直接突っ込んで来るものと踏む
・パラドクス発動、剣の山に刀の林に刃の葉――己の周囲に刃群を具現し落ち掛かって来る敵勢に抗する
・相手の重量と効果速をも利して、地より煙突の如くそそり立たせた刃で、敵群を次々とブッ刺し貫きまくる迎撃を計る
・具現した刃群、その切っ先は、甲羅ではない部位――体こそを狙い射抜くよう立てる
・己の攻撃で倒せなかった個体の現在地は、そのまま【泥濘の地】の効果範囲内に呑み、他の味方の攻勢で仕留め切られるよう計らう
炎が煌々と燃え盛る。
それは復讐の炎宿すディアボロス。
そして、復讐の女神の名を冠する姿。ゆらりと踏み出すたびに包帯の白が炎に赤熱するようであり、また色を失うのではなく白という色を得るようにして炎の色を受けて揺らめく髪があった。
クロノヴェーダ、キマイラウィッチの包囲網は分厚く。そして決してディアボロスたちを逃さぬと言わんばかりである。
しかし、この包囲網を指揮していたアヴァタール級『メリュジーヌ』はディアボロスによって打倒された。
強すぎるディアボロスへの執着。
それを利用される形で彼女は惹きつけられ、撃破されていた。
指揮を取っていたアヴァタール級の不在。
それはトループス級『トータスナイト』達の統制が一気に喪われることを意味していた。
故に、今こそが正念場である。
「もしもし亀さん、亀さんよォ~……」
歌うように。
しかし、奴崎・娑婆蔵(月下の剣鬼・g01933)の指先の包帯はわずかに解かれていた。その包帯の下が如何なるようになっているのかを伺いしることはできなかった。
何故なら、彼の揺らめく力がほとばしっているからだ。
「テメエらのカシラは今しがたあっちで斬られやしたぜ」
「だからどうしたというのだ。我等が怨敵はディアボロス。ディアボロスがいるというのならば、殺さねばならない。殺し尽くさねばならない。ディアボロスは殺す。それだけのことよ!」
大地を揺らしながら『トータスナイト』たちが一斉に飛び立つ。
パラドクスの輝きが嵐のように上空で渦巻き、娑婆蔵目掛けて鉄槌の如く落下してくるのだ。
「ハッ、まァだ続けやがるでござんすか? もっとも――」
こちらとて止まるつもりはない。
ネメシスモードに至った娑婆蔵は己の眼前に山林の如く突き立てられた刀剣が出現するのを見やる。
これなるは、八つ裂き娑婆蔵の殺人芸――殺人領域「早贄山麓刀輪処」(ハヤニエサンロクトウリンショ)。
これより一歩でも前に進むというのならば、刃の餌食になることは必定である。
「止めたところで生かして帰す気はハナからありやせんがね」
「ディアボロスッ! 貴様らは殺す。必ず殺す! 我等キマイラウィッチはディアボロスを殺すために存在しているのだから!」
『トータスナイト』たちが落下してくるのに合わせて娑婆蔵は走る。
地面に突き立てられた刀を駆け抜けながらひっつかみ、迫る『トータスナイト』の体……即ち、甲冑のごとき甲羅ではない、その頭部へと突き立てる。
一閃。
血潮が溢れ、鮮血撒き散らしながら『トータスナイト』が落ちる様をナディア・ベズヴィルド(黄昏のグランデヴィナ・g00246)はまるで咲き乱れる血の花のようだと思った。
これより始まるのは殺戮。
かき乱さなければならない。己達がネメシスモードに至ったのは、敵を撃滅するためでもあるが、この戦力を前にしては現実的ではない。
だからこそ、包囲網を食い破る楔となるために己たちは踏み出したのだ。
「我等に復讐をと宣うがいいが、人々を敷いたがねば何もできぬような口先酒の輩に何ができようか」
白い髪。
揺れる瞳にあるのは、戦場となった火刑場に山積した黒き躯。
生命散った広場にありて、悲哀ばかりが満ちている。だが、その悲哀すらも塗り潰す逆恨みの如き憎悪が己達の肌をさすのをナディアは知る。
「憎悪を思い知ればいいと言うなら小細工などせず、さっさと挑みにこればようかろうに」
「貴様らディアボロスは一般人を護ろうとするだろう。我等は復讐したいのだ。それも貴様らが最も忌避するやり方で。だからこそよ!」
『トータスナイト』の前足と後ろ足が大地を踏みしめる。
瞬間、激震するように大地が揺れる。
凄まじい振動がナディアに迫る。
だが、ナディアの手にした杖が掲げられた瞬間、空を覆うは黒煙ではなく暗雲。そして、あらゆる昏き色を切り裂くようにして明滅するは、灰燼の霹靂(ラエド・ラマード)。
迸る雷撃が『トータスナイト』の体を穿ち、火花をちらしながら、その肉体を焼き滅ぼす。
ナディアはやはり、と思うだろう。
復讐の権化。
それがキマイラウィッチたちである。己達の姿を認めれば、他の一切合切が目に入らぬと言わんばかりに襲いかかってくる。
言葉でもって煽り、そしてナディアの視線の先にあるディアボロスと救出された一般人達から『トータスナイト』の注意を逸すことは成功している。
「憎い、許せぬと言いながら、やはり口先だけだな、キマイラウィッチ」
「そうでありやしょうや。結局、亀さん連中ってのは鈍足でさぁ」
ナディアの横を娑婆蔵が駆け抜ける。
周囲に着き足られた刀がまるで路のように突き立てられ、その一刀を手にした彼の斬撃が『トータスナイト』を切り裂く。
血風の最中、ナディアは残留効果を手繰る。
敵の指揮官であるアヴァタール級はディアボロスによって滅ぼされた。ならば、この場にいる『トータスナイト』に利するところは数以外ない。
アヴァタール級の損失は確かに彼らの指揮系統に甚大な被害を与えたが、時間を与えれば立て直すだろう。包囲網が完全に囲い込むことになれば、一般人という枷を持つディアボロスたちはジリジリとすり潰されてしまう。
「いつまでもしつこく食いついてくるなんて、許しはしないわ」
手繰るは残留効果。
通信障害によって『トータスナイト』たちは連携を封じられている。ぐるりと広場を囲い込んでいた包囲網を狭めるタイミングを逸するのならば、そこに隙が生まれるだろう。
「そんなら、あっしは!」
娑婆蔵が走る。
斬撃を生み出しながら、一般人達の塊の背後を泥濘へと変える。
「今でさぁ、逃げるんなら!」
「ええ、敵の連携は阻害し、味方との連携は密に」
ナディアが一般人たちを救出せんとするディアボロスたちにパラドクス通信を送る。
これこそがディアボロスとキマイラウィッチの相違。
共に復讐という感情を糧としながら、ディアボロスはつなぎ、つむぐ。
戦場に残された残留効果を鎖のように繋いで、次へと紡ぐのだ。その違いが戦場において、決定的な差を生み出すことは言うまでもない。
ナディアの通信によって一般人たちを包囲網から救出遷都するディアボロス達が動き出すのを認め、娑婆蔵は息を吸い込む。
「さあ、お逃げなせぇ! 生きて、生きて、生き続けりゃァ」
「ええ、この炎の先に」
きっと苦しみと悲しみ以外の何かが訪れるであろうと二人は復讐の炎をたぎらせながら、『トータスナイト』たちを食い止めるのだった。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【通信障害】LV1が発生!
【泥濘の地】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV5になった!
【能力値アップ】LV1が発生!
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎
残留効果は相互活用
復讐に踊る異形の魔女
悪辣な計画、逆恨みの憤怒
その獄炎は、すべて復讐者に向けるがいい
人々の前に、絶やさぬよう光を灯し続けよう
怯まずに、切り拓く
同時に盾となろう
包囲が崩れて最も薄い箇所を観察し看破
街へ潜入時の情報も合わせ
なるべく障害が少なく、最短距離で走れるルートを辿ろう
PD通信で連携をとり
【フライトドローン】を展開、仲間に手伝ってもらい走れない怪我人をのせ運搬を
こちらの人数分動かせれば重畳
味方と連携し包囲を突破
一般人を背に戦禍の及ばぬ程度に近寄りすぎないよう着いてくるように伝え
Nazarの盾で余波を防ぎながら、敵軍勢に一点突破を仕掛ける
導きや殿は仲間に託し、俺は突破役に専念
味方と狙い合わせ攻撃、包囲網に穴を穿つ
クロスボウで射抜き、連射で爆破
こちら側へ溢れた敵も確実に仕留めよう
泥濘の地で敵の動きを鈍らせ
後方から追う、側面から近づく敵には、使えたら防衛ラインで留め
周囲を観察し不意打ちを防ぐ
反撃には魔力障壁を張り
踏みしめる予備動作で盾を構え、振動波を防いで耐える
クロエ・アルニティコス
これだけの数がいては倒しきるのは不可能。
ですがこの程度の敵に彼らが負けることもまたあり得ません。
道を切り開くのは彼らに任せましょう。
一般人の前に立ち呼びかけを行います。
さぁ、行きましょうか。
そうですね、包囲を抜けるためといえど、一時的には敵に近づくことになります。
恐れることはない……などとは言いません。
ですが。
ここで縮こまり、私たちが敵を殲滅するのに賭けますか?
そうして私たちが負けた時、無残に殺されて納得ができますか?
あなたたちには足があり、未だ動くことができます。
あなたたちの命を救うのは私たちではありません。それができるのはあなたたちのみです。
立ちなさい、その足で。行きますよ。
一般人を立ち上がらせたら他の人たちが一点突破で開いた包囲をともに抜けます。
【泥濘の地】をさらに重ねて包囲しなおすのを遅らせ、【タロース・オフリス】で邪魔なトータスナイトに絞り撃破。
殿は任せ、一般人に最後まで付き従い脱出しましょう。
あなたたちはあなたたちの選択で命を掴み取った。
それだけでも、覚えておくことです。
サリナ・シーゲル
連携・アドリブ歓迎
敵の首魁は倒れたでありますね。仲間に感謝を。
ここからは人々を救い出すという最重要の目的を、死力を尽くし必ずや達成するであります。
(前回の行動から自分の位置は包囲網の外と想定)
届くなら【活性治癒】で一般人の傷や痛みを少しでも和らげる。
【パラドクス通信】で仲間と連絡を取り合い連携。
まずは脱出経路の敵に、敵の包囲の外から挟撃する形で「蛍雪の火」を撃ち込み、敵の混乱を誘い脱出口を切り拓く。
脱出開始後は一般人に矛先を向けようとする敵を最優先に(こちらに矛先を向ける事で、結果として一般人をディフェンスする形)、いなければ脱出経路を塞ぐ敵をより弱ってる者から倒し確実に数を減らす。
スラスターと翼を活用し敵に狙いを絞らせないよう動き、脱出の妨げにならない位置で敵の急降下突進を誘って脱出経路から引き離し、空中戦の技量(と反撃アップ)で敵の落下軌道を見切り確実に反撃を当てて勢いを削ぎ、魔力障壁で威力を減衰。
人々が脱出し十分に離れるまで粘り強く戦い、その後は全速低空【飛翔】で敵を引き離し撤退。
エトワール・ライトハウス
アドリブ連携◎
それじゃあ、後は逃げるだけなのだが
この場から逃げる意思は俺等が去った後で消えても問題ないだろう? というわけで遠慮なく使うよ、【避難勧告】!
ま、民衆の背を後押しすると思いましょうよ
とは言いつつも、包囲されたこの状況だ
安全な道は此方で用意しないとね
さて、レオンに騎乗する俺は目立つだろう
ついさっき、連中の首魁と戦ってたばかりだしね
しかも、キマイラウィッチにとって忌むものだろう炎での始末……大分ヘイト稼いでるんじゃない、俺!
というわけでね、槍を振り回して存在をアピっていきますよ
是非とも俺の首を狙って追い回して欲しいわけ
その分、住民の行く手を阻む敵が薄くなるからね
後は仲間が上手く一点突破で包囲を食い破ってくれることを祈りつつ、避難する住民の最後尾で俺も逃げましょう
逃げられる直前に不意打ちなんて食らったら堪らない
俺も不意打ちは得意だからね、逃げる俺たちに伸ばした腕が迫るなら……此方もパラドクスの衝撃波で迎撃だ!
ディアボロスへの復讐に燃えるクロノヴェーダ、キマイラウィッチ。
彼らの持つ感情の炎は自らたちによるマッチポンプであるように思えただろう。逆恨みも甚だしい。けれど、己達ディアボロスを誘き寄せるために一般人たちを火刑に処する行いは悪辣であり、非道であると言えるだろう。
山積した躯。
その何れもが長く苦しめられたものであることが伺い知れる。
炭化した真っ黒な遺骸。
こわばるように、ただれるように、それらは苦悶だけが満ちていた。
生きていた証など全てが炎の中に消えゆく。
そう言うかのようにトループス級『トータスナイト』たちは咆哮する。
「ディアボロス! 必ずや殺してくれる! 必ずや、その臓腑を! その肉を骨より削ぎ落とし、骨片の一欠片とて原型を留めさせはせぬ!」
彼らの咆哮を聞きながら獄炎の如き怨嗟をエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は受け止める。
悪辣なる計画。
その犠牲となった人々の躯は広場のあちこちに存在しているのを彼は見た。
「その獄炎は、全て復讐者に向けるがいい」
「当然、そのつもりである! 今更言われるまでもないが!」
激震が迸る。
『トータスナイト』たちの脚部が踏みしめられた瞬間、衝撃波がエトヴァを襲う。
パラドクスに寄る攻撃の余波に人々は大地が揺れ動く様に悲鳴を上げるだろう。だが、エトヴァは退くことはなかった。己の背には一般人たちがいる。
守らねばならない。救い出さなければならない。
そんな人々がいるのならば、己が怯むことは万に一つもない。
己は希望の光。そして、同時に盾なのだ。
身を撃つ衝撃の痛みに呻くながらもエトヴァは見ただろう、そして聞いただろう。残留効果を手繰り寄せ、パラドクス通信によって包囲網を突き崩したディアボロスの声を。
「敵の首魁は倒れたであります。ここからは!」
死力を尽くす。
そういうようにしてサリナ・シーゲル(デビルフィッシュ・g10138)とエトワール・ライトハウス(Le cabotin・g00223)は駆け出していた。
火刑に処されようとしていた一般人達。
彼らは大なり小なりの傷を負っている。すでに磔刑に処されていた人々の傷跡は残留効果の活性治癒でもって癒やしきれるものではないものであったが、しかし、それでもとサリナは思った。
彼らの傷の痛みは肉体的なものだけではない。
ディアボロスの言葉によって幾ばくかは希望の光をともしたかもしれない。
けれど、それでもまだなのだ。
希望を見せるだけではダメなのだ。道を照らす光は、人生において必要なものだ。
誰もが昏き道を征くことを恐れる。
だから、示さなければならない。
「君らの中にある希望は潰えない。消えない。だから、共に行こう」
無双馬『レオン』の馬上からエトワールは残留効果を手繰り寄せる。
赤い光が明滅し、サイレンが鳴り響く。
ディアボロス達が切り開いた道がある。トループス級である『トータスナイト』たちが如何に包囲網を狭めるのだとしても、その動きは遅かった。
初動が遅れたのは、先んじて仲間のディアボロス達が『トータスナイト』をかき回しているからだろう。
綱渡りのような戦いだ。
誰も彼もが生命を落としかねない状況だった。一般人であれば、なおのことだ。
けれど、彼らの心には希望という光が残っている。
この場から逃れて、明日を生きようという意志の光が残っている。エトワールの手繰り寄せた残留効果の光に導かれるようにして人々はディアボロスが切り開いた包囲網の穴を目掛けて駆け出していく。
しかし、それでも彼らの足取りが重たいことは言うまでもない。
崩れそうな足を必死に持ち上げ、生きるという意志だけで支えているのだ。
「逃すものか! 貴様らはディアボロスたちの足枷! ディアボロスを殺すためだけに存在しているのだ! ここより逃れても生命など長くは続くものか!」
『トータスナイト』たちの咆哮が恐ろしく響き渡る。
「恐れることはない……などとは言いません。ですが」
クロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)は静かな声色で人々を導く。
恐れることはない、と断言できるのならば、それは欺瞞でしかない。偽りだ。誰も彼もが恐れている。
生命を失うことを。
けれど、恐れとは希望の裏側に巣食うものだ。生命を惜しむということは、生きたいということの証明。故に、クロエは一般人たちを導きながら、言葉を届ける。
「ここで縮こまり、私達が敵を殲滅するのに賭けますか? そうして私達が負けた時、無惨に殺されて納得できますか?」
クロエは言う。
それは事実だった。
もしも、ディアボロスが包囲網のキマイラウィッチたちを滅ぼしてくれたのならば、どんなに楽だろうか。
心の平穏は訪れるだろう。
けれど、そうではないのだ。今日も、明日も、さらに続く未来も。
このディヴィジョンにおいてキマイラウィッチが存在している。その地獄めいた日々を生きるために必要なのは、力以上に意志なのだ。
どうあっても生きるという意志。
それを囲い、守ることがディアボロスにはできるが、灯すしたそれに薪をくべることができるのは彼ら自身なのだ。
「あなたたちには足があり、今だ動くことが出来ます。あなたたちの生命を救うのは私達ではありません。それができるのはあなたたちのみです」
だから、クロエは言葉に力を込める。
それは願いにも似た感情であったかも知れない。
「立ちなさい、その足で」
「その道先案内人は務めさせて頂くであります!」
サリナが飛び出す。
脱出経路はディアボロスたちの復讐の炎たるパラドクスで切り開かれている。
エトワールが残留効果でもって人々を導き、クロエの言葉が奮い立たせた。そして、立ち上がろうにも怪我をしている磔刑に処されていた人々をエトヴァのフライトドローンが運ぶ。
サリナはならば、自分の役割はなんだと自問する。
そう、己はディアボロス。
そして戦う者である。ならば、その力を発揮することが人々を守ることに繋がるのだとパラドクス煌めく瞳でもって『トータスナイト』たちを睨めつける。
「蛍雪の火……一斉射であります!」
放つパラドクス。
煌めく蛍火は球状となってほとばしり、『トータスナイト』たちの甲冑のごとき甲羅へと激突し、爆発する。
その爆発の最中を無双馬『レオン』が駆け抜ける。
「敵の注意を!」
「ああ、俺は目立つ。さっきまでの戦いを連中は見てるだろう。キマイラウィッチ、君らが忌むべき炎で君らの指揮官は俺たちが始末した。わかるだろう。火刑に処されたクロノヴェーダたち。君らの憎悪を煽り立てる者の姿が!」
エトワールは槍を振り回し、己へと『トータスナイト』たちの視線を釘付けにする。
それはあまりにも危険な行為であったことだろう。
彼に殺到するパラドクスの煌めき。
迫る『トータスナイト』たちの伸縮する剛腕より放たれる爪の一閃がエトワールの体をえぐるようにして放たれ、血潮が吹き荒れる。
だが、それでもエトワールは止まらない。
一般人達が逃げる背後に彼は立ち塞がる。逃げる彼らの背を貫かせはせぬと無双馬『レオン』と共に立ち塞がる。包囲網は徐々に後方からディアボロスたちを追い上げるようにして迫ってきている。
「逃げられる直前に不意打ちなんて喰らいたくはないんだよ。誰だってね。不意打ちが得意な俺だから言えることだけど……!」
槍を振るい、爪の一閃を受け止める。
骨身が軋む。
痛みが走る。
それでもエトワールは己が存在を誇示し続ける。
「すまない……殿は任せた」
エトヴァのパラドクス通信にエトワールとサリナは頷く。
一騎たりとて敵を通すつもりはないと二人の裂帛たる気合満ちるパラドクスが明滅するのを背にエトヴァは包囲網の穴を着き穿つ。
先んじたアヴァタール級の撃破。
そして、ネメシスモードによって敵を前方にてかき乱し続けたディアボロスたち。
その行動によってエトヴァが目指した前方の包囲網の層は限りなく薄くなっていた。
「ディアボロスゥゥゥ!!!」
迫る『トータスナイト』の鬼気迫る表情をエトヴァは見据える。確かに敵は苛烈なる感情で持って強化されているのだろう。強大なクロノヴェーダであると言える。
この包囲網も確実に己たちを殺すために用意されたものである。
だからこそ、穿つ。
「――Blühe.」
構えたクロスボウより放たれた一射が『トータスナイト』の甲冑めいた甲羅を貫き、さらにつがえた二射の魔力媒体が放たれ、咲き誇る黄金の薔薇を生み出すかのようだった。
包囲網をこじ開ける薔薇の油彩がめいたパラドクスの輝きを前に人々は希望を見ただろうか。
「このまま押し切る!」
殿で戦うディアボロスがいる。
包囲網の層を少しでも薄くしようと奮戦したディアボロスがいる。
全ては一般人たちを救出するためだ。そのために戦っている。ただ己達の復讐のためではない。誰かのために、奪い返さなければならないという感情を発露させるディアボロスであるからこそ、明日へと繋がる鎖を掴むことができる。
吹き荒れるパラドクスの輝きをエトヴァは見ただろう。
『トータスナイト』たちが一斉に足を踏み鳴らす。
衝撃波が荒び、エトヴァの構えた盾すら弾き飛ばす。痛みが走る。苦しいと感じる。激痛は体を蝕み、手足を痺れさせる。
だが、己が倒れることは許されない。
踏みとどまる。足に力を込める。己の足があるのは何のためだ。己の手があるのはなのためだ。
「生きるためだ」
歯を食いしばり、エトヴァは衝撃波が後方へと逸することがないようにと脚を生み出す。
「どうして、そんなに」
生きたいのだと、幼子の一人が思わず声を発する。
ディアボロスたちだけであったのならば、容易にこの包囲網を突破できただろう。
「それが自分たちディアボロスだからであります」
軍人であるから。そうであるから、と規定するのは簡単なことだろう。
サリナが蛍火と共に戦場を駆け抜けながら、幼子の問いかけに応える。救うと決めた。力無き者のために戦うと決めた。それが己という復讐者の原点であるというのならば、彼女は己の脳裏に父の背中を見ただろう。
戦う。
力を得て、そのために振るう。どれだけ傷を負うのだとしてもだ。
「今苦しいってことは生きてるってことだよ。苦しさと楽しさは表裏一体なんだ。だから、苦しいのなら生きることをやめてはダメなのさ。苦しみも、悲しみも、次に来るなにかのために得るべきものなんだから」
「黙れ、ディアボロス! 我等の復讐を!!」
「いやぁ、うるさいなぁ、君らは、本当に」
後方から迫る『トータスナイト』たちを前に、チック・タック・ロア(オルク)と振り抜いた槍寄り放たれる衝撃波が追いすがる彼らに打ち放たれ、吹き飛ばす。
殿を務めた二人は息を切らす。
それでも誰一人として犠牲にはしなかった。
誰もが苦しみ、もがくからこそ、希望は一層輝くのだ。
それを示すようにエトヴァの切り開いた包囲網。その穿つ一点へと人々は目指す。
しかし、その一点を塞ぐようにして『トータスナイト』たちが殺到する。
「ああ……ッ!」
悲鳴があがる。
だが、その悲鳴を塗り潰す言葉があった。
「あなたたちは、あなたたちの選択で生命を掴み取った」
クロエのパラドクスが煌めく。
希望が導く一点の穴すら許さぬというキマイラウィッチたちを眼前に現れるのは、クロエのはなった鈴蘭の球根。
魔力と復讐たる感情を注ぎ込まれたそれは――。
「種子に宿るは我が憤激、芽吹け『タロース・オフリス』!」
膨れ上がるようにして生み出されるは有翼の巨人。広場の石畳をえぐり、掴み上げるようにして巨人の怪物は一撃を『トータスナイト』へと叩い込み吹き飛ばす。
凄まじい衝撃が吹き荒れ、包囲網を穿つのだ。
後続からサリナとエトワールが駆けつけている。
「おのれ、おのれ、ディアボロス! ここまで来て
……!!」
「させはしません!」
「俺たちだけを君らは見ていれば良い。よそ見なんてもってのほかだからね」
怨嗟の声が響き渡る。
しかし、その声をクロエは聞かなかった。彼女が見据えたのは、人々。
己達が救出した炎に追い立てられる人々。
彼ら自身が選んだ道を征く一般人をクロエは言葉と共に送り出す。
この先にある未来がどんなに過酷なものであったとしても。
今日という日の選択が、必ず彼らを生かす。
「それだけは確かなこと。どんなに暴虐の炎があなたたちを負うのだとしても」
それでも、と彼女はエトヴァたちに見守られて征く人々の背に告げるのだ。
「それだけでも、覚えておくことです」
例え、己達が帰還した後でも。
それさえ忘れていなければ、生きていく事ができるのだと示すように。
ディアボロスたちは、キマイラウィッチの執拗な追跡を振り払い、人々を救出してみせるのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【フライトドローン】LV1が発生!
【泥濘の地】がLV3になった!
【活性治癒】LV1が発生!
【避難勧告】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV4になった!
【ダメージアップ】がLV6になった!
【ロストエナジー】LV1が発生!
【グロリアス】LV1が発生!