【《七曜の戦》ミウ・ウル防衛】ミウ・ウル防衛作戦

 このシナリオは《七曜の戦》に関連して発生する特別シナリオ人類史防衛戦の一つです。
 このシナリオでは、ディアボロスの移動拠点である巨大砂上船「ミウ・ウル」を破壊しようとする亜人の攻撃から、「ミウ・ウル」を防衛する、防衛作戦です。
 《七曜の戦》終了時点まで、散発的に攻撃を仕掛けてくる亜人の軍勢から「ミウ・ウル」を防衛し続けてください。
 《七曜の戦》終了時までに、作戦を成功させることが出来れば「ミウ・ウル」の防衛に成功し、《七曜の戦》終了後も移動拠点として使用する事が可能となります。
 作戦に失敗した場合は「ミウ・ウル」が破壊、或いは損傷してしまう為、再び稼働させるためには相応の修復作業が必要となります。
(破壊の程度が大きい場合は、修復が不可能となる場合があります)

※他の人類史防衛戦との違い

 ミウ・ウルでは先制攻撃は行われず、8/21朝までの間の防衛戦のみ行われます。

《七曜の戦》ミウ・ウル防衛~突撃戦車を食い止めよ(作者 長野聖夜
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『ウォー! ウォー! ウォー!』
 戦車に搭乗するゴブリン達の咆哮が、戦場に轟いている。
 ――既に彼等の脳裏には飽くなき欲望が渦巻いている。
 これから自分達の行う蹂躙によりて得られる悦楽とその先の幸福への悦楽が。
『もうすぐだ! もうすぐあいつら……ディアボロスの拠点が見つかる筈だ!』
 その戦車部隊の指揮官が欲望にたぎる部下達に発破を掛けた。
『さあ、拠点を破壊して、ディアボロス共を蹂躙するぞ! そうすれば後はバビロンの娼館に入り放題、俺達の思うがままだ! 行くぞ、お前達!』
 そのゴブリン戦車部隊の隊長のその撃に。
『ウォー! ウォー! ウォー!』
 欲望に目をぎらつかせた戦車に搭乗するゴブリン達の雄叫びがより一層の唸りが、戦場にて轟き響いた。


「……いよいよ始まろうとしているんだな、《七曜の戦》が」
 新宿駅グランドターミナルの片隅で。
 その情報を聞き取っていた西園寺・真哉(人間のカースブレイド・g03199)が何処か重々しく溜息を漏らした。
 それから目前にいるディアボロス達の方を見つめて、真哉は皆、と軽く唾を飲み込み言葉を続ける。
「《七曜の戦》。この戦の帰趨によって俺達ディアボロス、引いては、最終人類史のこれからの運命が決まっていく。敵の大勢力と戦う、歴史の奪還戦の相談はもう始まっている様だが……」
 ――けれども、それだけが。
「その歴史の奪還戦だけが《七曜の戦》じゃないんだ」
 《七曜の戦》の戦は数多の断片の王達が集い入り乱れて戦う正しく『戦争』
 であればこそ当然……。
「皆が奪還してきた、或いは皆が制圧してきたディヴィジョン地域に向けた敵の侵攻も当然予測されている。俺が皆に頼むのは、その敵の侵攻の1つを食い止めて貰うことだ」
 その場所……否、巨大砂上船の名は。
「皆もよく知っている、巨大砂上船『ミウ・ウル』。蹂躙戦記イスカンダルの攻略に欠かせないこれを、敵が破壊しようと攻め入ってくる」
 もし『ミウ・ウル』がこの《七曜の戦》に乗じて破壊されてしまえば、蹂躙戦記イスカンダルの攻略は難しいものとなってしまう。
「幸いにも、敵の攻撃自体は散発的なものではあるんだが、油断は出来ないし、放置しておけば間違いなく『ミウ・ウル』は破壊されてしまう。そんなことをさせない為にも、皆には《七曜の戦》が終わるその時まで、何としてでも『ミウ・ウル』の防衛を達成して欲しいんだ」
 真哉のその言葉を聞いて。
 ディアボロス達はそれぞれの表情でそれに応じるのであった。

「『ミウ・ウル』は。多くの人々の避難や移住の支援が可能な上、移動拠点として離れた地域を攻略する際の起点にもなる、正しく俺達ディアボロスにとっての要だ。それこそ、広大な蹂躙戦記イスカンダルを攻略する為にはな」
 ――だからこそ。
「これから先の蹂躙戦記イスカンダルとの戦いの中でより多くの人々を守り、救う為にも、必ず『ミウ・ウル』を守り通してくれ」
 その真哉の言葉を背に受けて。
 ディアボロス達は、彼の背後に現れたパラドクストレインに搭乗し、戦地へと向かうのであった。


→クリア済み選択肢の詳細を見る


●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【水源】
1
周囲に、清らかな川の流れを出現させる。この川からは、10秒間に「効果LVトン」の飲用可能な水をくみ上げる事が出来る。
【怪力無双】
1
周囲が、ディアボロスが怪力を発揮する世界に変わり、「効果LV×3トン」までの物品を持ち上げて運搬可能になる(ただし移動を伴う残留効果は特記なき限り併用できない)。
【強運の加護】
1
幸運の加護により、周囲が黄金に輝きだす。運以外の要素が絡まない行動において、ディアボロスに悪い結果が出る可能性が「効果LVごとに半減」する。
【泥濘の地】
1
周囲の地面または水面が泥濘に変わり、ディアボロスは指定した「飛行できない対象」の移動速度を「効果LV×10%」低下させられるようになる。
【トラップ生成】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の空間を、非殺傷性の罠が隠された罠地帯に変化させる。罠の種類は、自由に指定できる。
【書物解読】
1
周囲の書物に、執筆者の残留思念が宿り、読むディアボロスに書物の知識を伝えてくれるようになる。効果LVが高くなる程、書物に書かれていない関連知識も得られる。

効果2

【能力値アップ】LV1 / 【ダメージアップ】LV3 / 【リザレクション】LV1 / 【アヴォイド】LV1

●マスターより

長野聖夜
 ――移動する砦を護る為に。
 いつも大変お世話になっております。
 長野聖夜です。
 『七曜の戦』の前哨戦が始まりましたね。
 このシナリオでは、元々獣神王朝エジプトのクロノ・オブジェクでありながらも、今はディアボロス達が使える様になった巨大砂上船『ミウ・ウル』を蹂躙戦記イスカンダル軍から防衛して頂きます。
 このシナリオでの敵部隊は、『ゴブリン戦車』部隊となります。
 取り敢えず、この敵部隊を撃破できればこのシナリオは解決となります。

 ――それでは、良き戦いを。
38

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


イロハ・アプリルシェルツ
【アドリブ&連携歓迎】

さぁ、七曜の戦の前哨戦だね。
ミウ・ウルは広大なイスカンダルの攻略には欠かせないからね。
ゴブリン達を華麗に返り討ちにしようか。

ミウ・ウルの構造は亜人達よりも良く知っているからね。
隠れられそうな構造物を【地形を利用】する様に活かして
潜伏し、他の皆とタイミングを合わせて強襲するよ。

敵の数は多いから包囲されない様に注意して
攻撃を捌きつつイロハの間合いに持ち込んで
主との【契約】がなされし『十戒』より力を引き出して
【ロンバルディアの聖王冠】を発動させようか。

そう『汝、姦淫するなかれ』なんだよ。
今まで犯してきたその罪をその身で罪を償う時。
逝くべきはバビロンではなく黄泉路だよ。


凍雲・雪那
ん。
ミウ・ウル。便利だよね。
単純に支援拠点としても使えるし、イスカンダルの地で体力を温存したまま移動する、足にもなる。
お前達が、狙ってくるのも分かるよ。
でも、うん。
黙って壊されるのを、見過ごす訳が無い。
破壊されるのは、お前達だ。

確かに、戦車の速度、かなり速い。
ちんたら対応しようとしたら、間に合わない、ね。
――でも、『声を出す』よりは、遅い。
凍え固まり、砕け散れ。
凍・告・絶・叫!!!

声を聞いて、ほんの一瞬、ほんの僅かでも硬直すれば、その瞬間に凍結させる。
音、だからね。何体いようと、関係ない。聞こえた全員、ボクの術中。
押す奴、指揮する奴。どっちも物言わぬゴミだけど。
……そんな戦車、勝手に転ぶね?


テクトラム・ギベリオ
【アドリブ連携歓迎】

ミウは我らの可愛い猫であり、この地を救う希望だ。
いいかゴブリンども。貴様らが触れて良いものではない。
ミウ・ウルを標的にした事をその小さき脳に刻み悔いよ、そして砂に沈め。

両手に曲刀を構えパラドクスで応戦。ゴブリンどもを薙ぎ倒す。
仲間たち位置に気を配り、ミウに一番近い敵から対応しよう。

数では圧倒されるだろうが、そもそも戦車は小回りが利かん。それに奴らが得意なのは突進だ。
敵の背後を取る動きで翻弄すれば隙は必ずできるはず。
隙を突いて一気に攻めに転じ、こちらに有利な状況を保ちたい。

仲間たちの状況や敵の多い場所を見極め、協力しながら殲滅に尽力する。
蹂躙が得意なのは貴様らだけではないぞ。


アンナ・ラークリーズ
アドリブ・連携歓迎

まだまだ未知の地域であり危険な亜人が跋扈する所で戦っていく為には確かな拠点と移動手段が必要だ。一族の長として重要性は良くわかる。確保にも苦労したらしいからね。守りぬかないと。

戦車で集団で突撃か。勢いは凄いだろうが、戦車ってのは急に方向転換できないだろう?突撃してくる敵軍を【精神集中】でしっかり狙って【高速詠唱】でマナナンの知恵を発動。そのまま一気に押し流してやろう。

ただ集団で突撃してくる分押し流しきれなくて戦車の突撃を喰らったら【残像】で致命傷を避けて砂漠に埋もれるのは避けたいね。

何より不慣れな地なので仲間と連携はなるべくとりたい。力不足は自覚してるので突出しないように。


緋詠・琥兎
こちらが必要不可欠としている移動手段且つ拠点があるなら
あちらにとっては確かな攻略の起点だろうな

だが、自分らディアボロスにとって
ミウ・ウルはそれ以上に思い入れもあるものなんだ
逆に蹂躙させてもらうぞ

力任せに突っ込んでくるなら
急には止まれないし曲がれないだろ

突っ込んでくる進路を見極め
走りながら臨機応変に立ち回る
(情報収集・観察・看破・精神集中・計略など


燈杜美と共に敵陣へ閃光による目晦ましを喰らわし
同時に早業で撃砲槌による大地の咆哮を使用
衝撃波で砂の津波を発生させ、一気に吹き飛ばす
更に泥濘の地で足止めだ
(高速詠唱・光使い・砂使い・時間稼ぎ・連撃、その他技能)

仲間から孤立しないように注意

アドリブ
連携歓迎


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎

イスカンダルの地に突入し、取り戻した偉大なる猫
ミウ・ウルの活躍はいまだ進化中だ
人々を救い、世を正す、動く道標を護り抜こう

周囲を偵察し双眼鏡で接近を確認
味方と連携し
敵が広範囲から来たら方面を手分けし迎撃

戦車の進路上に【トラップ生成】、落とし穴とワイヤーを張り巡らせ
いきり立った進軍の出鼻を挫き、味方の猛攻へ繋ぐ
車輪の片側を落として車体を跳ねさせ、進路をまげて横っ面を味方と集中し攻撃
ワイヤーに紛らせたPDの糸で切り刻む

ミウの周囲を罠地帯に変え、死角には鳴子も加え接近を知らせ
ミウに近づく敵を優先しつつ狙い合わせ仕留める

反撃には魔力障壁を展開
戦車の動きを観察、大盾で身を護りつつ直撃を回避



 ――その砂漠の戦場にて。
「ミウ・ウル。此れはイスカンダルの地に突入し、俺達が取り戻した偉大なる猫」
 自分達の背後にある、かの移動要塞、ミウ・ウルの名を何処か静謐な響きと共に、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)が諳んじると。
「ああ、その通りだな、エトヴァ」
 その腰に帯びた双刀の柄に手を掛け乍ら、口の端に微かな笑みを浮かべて、テクトラム・ギベリオ(砂漠の少数民族・g01318)が首肯し言の葉を続ける。
「ミウは我等の可愛い猫。そして……」
 紡がれた言の葉に重ね合わせる様に。
「広大なイスカンダルを攻略に欠かさせない重要な拠点だよね」
 イロハ・アプリルシェルツ(神聖ならざる銀・g05555)が、三つ編みのツインテールを風に靡かせながら、何処か楽しそうにそう応えた。
「そうだね。まだまだ未知の地域であるだけでなく、危険な亜人達が跳梁跋扈する。そんな世界で戦っていくのに、確かな拠点と移動手段が如何に重要なものなのかは、一族の長としてはよく分かるしね」
 イロハのそれに、おっとりとした口調と共に穏やかな笑みを称えて返したのは、アンナ・ラークリーズ(清光のフィエリテ・g09972)である。
(「まあ、護り抜く戦いというのも、それはそれで楽しそうだけれどね……」)
 そんなアンナの内心の呟きは脇に置いて。
「全くだな」
 緋詠・琥兎(その身に潜むは破滅か。それとも朧げな標か・g00542)が呟くその隣では、燈杜美がフワフワと羽ばたいていた。
 花柄レースの目隠しでその目を覆った黒髪のオラトリオの様子は、まるで琥兎に寄り添っている様に他の者には映ったかも知れない。
 そんな燈杜美の様子を見て胸中に温かいものが灯るのを感じながら、琥兎が続けた。
「自分達にとって必要不可欠としている移動手段且つ拠点は、あちらからすれば、確かな攻略の起点になる。そう言う事だろう?」
 その、琥兎の問いかけには。
「……ん。そうだね、琥兎君」
 友達として、凍雲・雪那(報仇雪恨の皓巫姫・g07783)が短い首肯と共に返し、訥々と話を続けていく。
「ミウ・ウルは便利な拠点だから。あいつらが狙ってくるのも、分かるよ」
 ――けれども。
 そう……けれども。
「……うん。ボク達が黙って壊されるのを、見過ごすわけがないよね」
 ――ゴロゴロゴロゴロゴロ!
 雪那の言葉を掻き消さんばかりの勢いで、車輪の回転する音が鳴り響く。
『進め―! 進め―! 奴等の移動要塞を破壊するべく、進め―! 俺達の欲望を満たす為に、進め、お前達!』
 その隊列を戦車の上から高らかに指揮棒らしき物を振り回し、仲間のゴブリン達を叱咤激励しながら、戦車部隊を進軍させるゴブリン達を。
「人を救い、世を正す、動く道標を護り抜こう。俺達の、その手で」
 双眼鏡で捕らえてその姿を認めたエトヴァのその呟き。
 幸いにもミウ・ウルとゴブリン戦車部隊の中間とも言えるその場所に陣取ったからこそ、彼等の進軍速度がよく分かる。
 そんな、エトヴァの誓いを聞いて。
「勿論だよ。まっ、ミウ・ウルとこの周辺の構造はイロハ達の方がゴブリン達よりも遥かに分かっているからね。華麗に返り討ちにしてあげよう」
 イロハが笑って返しながら、手頃な建造物……否、奇襲の絶好の機会を図るその場所に身を隠すその間に。
「ふん……そうだな。ゴブリンども。穢れた貴様達ごときが、この地を救う希望に触れられるものか」
 鼻を鳴らして無慈悲な断罪の誓いを言の葉にして紡ぐテクトラムを隠れ蓑にする様に。
「凍え固まり、砕け散れ。キィャァァァァァァァァァー!」
 まるで、人の死を予告する御伽噺の精霊の様な怖気の走る、凍てつく様な凍える悲鳴を、雪那は解き放っていた。


 ――キィャァァァァァァァァァー!
 その凍てつく様な、雪那の悲鳴にも似た大音量は、ゴブリン戦車を繰り出すゴブリン達の耳朶を容赦なく殴打した。
 だが、同時にそれは、ゴブリン戦車部隊の報復を呼び起こす撃鉄の叫びともなる。
『女のディアボロスかっ! 前祝いだ! やっちまえ!』
 その指揮官の命令を耳にして。
 ゴブリン戦車が、尋常ではない速度で加速し、吶喊してくる。
 触れれば一瞬で弾き飛ばされ、轢き殺されかねない程の速度で突進してくるゴブリン達の様子に、エドヴァは思わず苦笑を零した。
「……雪那君の叫びのお蔭で、進路が読みやすくなったね。こういう手合いには、やはり単純な罠が、効果的だな」
 呟きと共に、素早く己が周囲に溶け込む様に張り巡らした極細の金属糸をくい、と軽く指で引き絞るエドヴァ。
 雪那の凍てつく悲鳴の前に周囲への警戒よりも欲望が勝って猛進してくるゴブリン達の戦車の幾つかが不意に姿を消した。
『な……何っ?!』
 別のゴブリンが何事かと言わんばかりに声を張り上げた瞬間には、既にそのゴブリン戦車も落とし穴に嵌っている。
 ……そこに。
 ――ビィンッ!
 と弦が鋭く張られるかの如き金属音が鳴り響いた。
 その鋭き音色を奏でたのは、極彩色の白銀糸。
 何時の間にか繭を描き出していた白銀糸の檻が、雪那の凍てつく叫びに気を逸らされたゴブリン戦車部隊を容赦なく切断した。
 その白銀糸の狙いは、片側の車輪と接続部の付根。
 叫びに続いて白銀糸の斬撃を受けて、ゴブリン戦車達の軌道が強引に変えられ、出来たその隙を見逃さぬ様に。
「ミウ・ウルは、自分達ディアボロスにとって、攻略の起点と言うだけじゃない。沢山の思い入れのある大切な……そう、テクトラム君の言葉を借りれば猫の様なものだ」
 そうエドヴァが微かに溜息を漏らしながら、ゴブリン達に囁きかける様に呟く。
 実際、ミウ・ウルに思い入れを抱いているディアボロス達は、数多い。
 そんな大事な要所にして、大切な『戦友』とでも言うべき其れを……。
「貴様達に蹂躙などさせてやるものか!」
 そう高らかに叫ぶと同時に大地を蹴って疾駆したのは琥兎。
 目標は雪那の凍てつく様な悲鳴と、エドヴァの白銀糸に斬り刻まれているゴブリン戦車部隊。
 琥兎の手に何時の間にか握られた禍津餓機・撃砲槌から、一発の砲弾が、雷鳴の様な速さで大地に放たれ……そして。
 ――轟!
 叩き付けられた砲弾の着弾音が激しき震動と共に砂塵を一斉に上空へと舞上げた。
 空へと舞い上がった星の数にも等しい砂粒達に、まるで煌びやかな輝きを纏わせるかの様に。
 燈杜美がその髪を彩る淡い蒼い光を放つムクゲとランプの飾り……蒼華の燈から、蒼き閃光の如き輝きを発すると。
 それが無数の砂粒と混ざり合ってガラスの様に光り輝く砂の津波を生み出し、怒濤の様にゴブリン戦車を襲った。
『怯むな! この程度、俺達ゴブリン戦車部隊の欲望の前には、悪あがきに過ぎない! 奴等を破壊し、蹂躙し、全てを俺達のものにするんだ!』
 荒れ狂うパラドクスによる連撃を受けて尚、生き延びたゴブリン指揮官が檄を飛ばす。
 飛ばされた檄に思わぬディアボロス達の連携に足並み乱れかけていたゴブリン達が士気を取り戻し……。
『おおおおおっ! 全ては俺達のバビロンのために!!!!!』
 全力でガラガラガラと戦車を力任せに押し込んで、砂の津波を押しのける様にしながら戦車に取り付けられた槍を突き出した。
 その捨て身の一撃に、咄嗟に琥兎がバックステップ。
 ひらりと足取りも軽やかなそれだが、ゴブリン戦車の勢いは否応なし。
 戦車の先端の石槍衾に琥兎が貫かれようとした、正にその時。
「ミウ・ウルを標的にしたその報い、その小さき脳に刻み、悔いながら砂に沈め、ゴブリン共!」
 高らかな雄叫びと共に。
 砂嵐をかき分ける様に跳躍し、大上段に二振りの曲刀を構えていたテクトラムが、その双刃を振るった。
 左手に持つ怪しく光る鋸状の刃は、三日月の様な孤を描いて大上段から振り下ろされ。
 右手の鉤爪の様に湾曲した刀身持つそれは、猫の手の様な禍々しき軌跡を描いて、ゴブリン戦車を横一文字に襲う。
 次の瞬間、微かな砂塵を巻き起こして降り立ったテクトラムの前には、琥兎を貫かんとしていたゴブリン戦車の骸が晒され。
 ――それに続いて。
「全く、欲望の為にイロハ達を蹂躙しようとか、最悪だね。君達はそうやって自分達の欲望の為にどれだけの人々を犠牲にしてきたんだい?」
 そう飄々とした口調で問いかけながら。
「まあ、数えてなんかいないよね。だからこそ、我が『主』の『十戒』を破った罪深き君達は、その罪をその身で償うべき時が来たんだから」
 肩を竦めて、自らの預かる聖遺物に深き信仰の祈りを籠めて。
「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな……」
 神を賛美する祈りの歌にして神言……神との【契約】の証たる十戒を、イロハが解放。
 上空より罪深き者達を灼くかの様に、解放された聖なる白光は。
 テクトラムが横っ飛びにその場を離れた瞬間、彼を追撃し、同胞の仇を取らんとしたゴブリンを灼き払っていた。
「さて、今だよ!」
 そんなイロハの言葉に応じる様に。
「これもまた、守り抜くためだ。大いなるマナナンよ、私に力を貸しておくれ!」
 アンナが歌う様に術を紡ぎ上げると同時に、清光の竪琴剣を爪弾いた。
 使い込まれた古木に張られたハープの弦が捧げる音楽が、大いなる海の神マナナンへの祈りの魔力となりてその声を轟かせ。
 それが、イロハが己が主と【契約】した力から引き出した聖別の光と混じり合う様に大津波と化して、ゴブリン戦車部隊を押し流す。
 水嵐とでも言うべき大津波と、砂嵐の去ったその後には、ゴブリン戦車達の多くがその場に骸を曝け出していた。
 ――が、未だ。
『未だだ! 怯むな! 俺達のバビロンでの生活のためにも!』
 それでも尚、欲望に目をぎらつかせて残存の戦車部隊を結集させ、強引に突進してくる戦車部隊達を見て。
「……緒戦は私達の方が優勢か。だが、本当の戦いはこれからの様だな」
 鉤爪型の刀身持つ戦導者の曲刀を青眼に据え。
 怪しく光る鋸状の刃を持つ守護者の曲刀を上段に構えたテクトラムのそれに。
「ん、そうだね。でも、何体いようと、関係ない。ボクの『声』が聞こえた敵、全員が……」
 ――ボクの、術中に、嵌まるのだから。
 最後の言葉を心の内でだけそっと告げ。
 すう、と息を深く吸った雪那の。
「イヤァァァァァァァァァァーッ!」
 悲嘆と硬直――突然死を刻む、女霊の吹雪を思わせる咆哮が、再び戦場に轟いたのだった。


 ――凍・告・絶・叫!
 そう自らの胸中で己がパラドクスの名を歌う様に紡いだ雪那のバンシーの嘆きの如き悲鳴が戦場を震撼させる。
 指向性の持たされた悲嘆や憤怒、『亜人死すべし』と言う憎悪の籠められたそれが容赦なくゴブリン達の鼓膜を叩いた。
 それでも尚、自分達の欲望の為に、雪那達に群がらんと突進してくる。
 ……と、そのゴブリン戦車部隊の中の一部が、分隊する様な一瞬があった事を、エトヴァは見落とさない。
(「戦力が削られたこの状況で、敢えて分隊する……」)
 普通であれば逃げるつもりなのか、と思うだろう。
 だが、撤退するにしてはあまりにも歪な動きにエトヴァの冷静な青い瞳には見えている。
 つまり、それが意味する真実は。
「……そうか。戦力が削られたからこそ、敢えて分隊するか」
 その結論と、共に。
 エトヴァが左手に絡めていた透弦の糸を軽く引くと。
 ――カラン、カラン、カラン、カラン!
 その透弦に結びついていた鈴の様な形をした鳴子が激しい音を立てた。
 それをその鋭い耳で聞き取ったのは、『毛玉』
 グイ、と自分の胴衣を引く『毛玉』に気が付いて、テクトラムもまた、エトヴァが鳴り響かせた鳴子に気が付いた。
「そうか。琥兎君にアンナ君の呼び出した嵐と、イロハ君の聖別で敵の攻勢が急に弱まったと思ったが……そう言うことか」
 その場である決断を下し、イロハと琥兎へとアイコンタクトを送るテクトラム。
「やれやれ……ゴブリン達。君達が逝くべき場所は……バビロンでは無く、黄泉路だよ」
 そのテクトラムのアイコンタクトの意味を察し。
 尋常では無い速度で突進してくるゴブリン戦車の周囲の大地を抉る様に、聖別の光を解放したイロハが首を横に振る。
 そのイロハの挑発に、ゴブリン達は更なる欲望を滾らせて。
『ディアボロスの小娘が! 俺達の為に、お前には欲望の捌け口になって貰う!』
 そう叫び突進してくるゴブリンの側面を衝く様に、琥兎が戦場を疾駆。
「ふん……馬鹿な相手だ。イロハ君の挑発に易々と乗せられて、側面の守りを愚かにするとはな」
 そう軽く鼻を鳴らしながら。
 上空の燈杜美が発した蒼穹の閃光と、エトヴァの白銀糸の輝きを背にしてゴブリンの死角を作り上げた琥兎が、禍津餓機・撃砲槌の砲弾を大地に撃ち込んだ。
 瞬間、砲弾に抉られたガラスの如き煌めきを灯す砂粒達が砂の衝撃と化して上空から礫の波の如くゴブリン達に叩き付けられ。
 同時にその砂粒が齎す乱反射の光とマナナンの力を以て生み出した無数の残像達で自らの居場所を攪乱したアンナが。
「全くだね。まあでも、その分私達の仕事はやりやすくなったからそれでいい気もするね」
 ハシバミの杖を高らかと掲げ上げ、大いなるマナナンの力を借りて、琥兎の反対から全てを押し流す洪水を召喚する。
 召喚された洪水に飲み込まれたゴブリン戦車達が、ゴボゴボと泡を立てながら必死になって反撃せんと吶喊してくるのを。
「出来ると思っているのか?」
 そう、軽く問いかけながら。
 させぬとばかりに、エトヴァがぐい、と右手に巻き付けた『糸』を引いた瞬間。
 張り巡らされた無数の白銀糸が、ゴブリン戦車達を絡め取った。
 自分達の意志で勝手に突撃し、糸に切り刻まれていく残存のゴブリン達の無様な姿を見て。
「……押す奴、指揮する奴。どっちも物言わぬゴミだけど。……そんな奴等、エトヴァ君達の糸の力もあれば」
 ……勝手に転ぶね?
 その雪那の揶揄がまるで止めとなったかの様に。
 エトヴァ達の糸に絡みつかれたゴブリン達が、ある者は砂嵐と洪水に溺死し。
 ある者は、その全身を糸にズタズタに切り裂かれ散っていっていった。
 ――そして。
 そんな残存の仲間達を囮にして、最後の奇襲……ミウ・ウルへの特攻を行おうとしていたゴブリン戦車部隊は。
「もう少し早くこの手を使っていれば、貴様達の汚れた手でも、我等の可愛い猫、ミウに触れることが出来たかも知れないが……」
 ――遅かったな、と。
 小さく切り捨てる様に告げたテクトラムの猫の手の如く湾曲した鉤爪の刀身持つ刃と。
 鋸状の刀身持つ曲刀で切り刻み、文字通り『蹂躙』していく。
 アンナの呼び出したマナナンの残した力の残滓で、踊る様なステップを刻んでミウ・ウルと自らへの被害を最小限に抑え。
 エドヴァがミウ・ウルに展開した魔力障壁に織り込まれた白銀糸の罠に、ゴブリン戦車部隊達を追いやる様にしてやりながら。
「……私達は、1人では無いのだ。それに蹂躙が得意なのは、何も貴様等だけではないのだからな」
 不敵な笑みと共に、宣告の様に発されたテクトラムの言の葉は。
 ――ディアボロス達の勝利宣言以上の意味を、砂に沈んだゴブリン戦車部隊の前には、持たなかった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【書物解読】LV1が発生!
【強運の加護】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
【水源】LV1が発生!
【泥濘の地】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV3が発生!
【リザレクション】LV1が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!

最終結果:成功

完成日2023年08月12日