エルサレム防衛・残忍なる蛇后(作者 一二三四五六)
#蹂躙戦記イスカンダル
#【《七曜の戦》エルサレム防衛】アンティオキア遭遇戦
#《七曜の戦》
#人類史防衛戦『エルサレム』
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●蛇后の憂い
「しかし、エニューオーが敗れるとは……増長しがちな所はあれど、イスカンダル様によく仕える優秀な将だったのですが」
「ひ、ぐ……」
紀元前320年、エルサレム近辺の小さな街。アヴァタール級の女亜人『黒鱗の蛇后・オリュンピアス』は、嘆きと憐れみをもってため息をついた。
「ディアボロス……我々が知っている彼らは、非力な者達に過ぎませんでしたが。法正とやらの言うように、侮りがたしと言う事ですか」
「ひ、ぎ……おゆ……る、じ……を……」
仲間の死に心を痛め、胸を押さえるオリュンピアス。その姿は、心優しく柔和で慈悲深き者のように見える。
「かくなる上はこの私が。イスカンダルの母の名を持つ者として、彼女の仇を取りましょう。そして――」
「おりゅ……んぴあ……さ、ま……ぎゅっ――!?」
――見える、だけだ。
彼女の機嫌を損ねたウェアキャットが、蛇尾で戯れのように首を折られ、息絶える。それに一瞥すらせず、オリュンピアスは恍惚と微笑んだ。
「私が新たなジェネラル級となり、名実ともに、王母となるのです。ふふふふふっ!」
●新宿駅グランドターミナル
「さて、集まったようだね。そろそろ説明を始めようか」
西暦2023年、新宿駅。山崎・千鐘(反逆の弾丸・g09829)はやや芝居がかった、集まったディアボロス達を出迎える。
「今回は君達を、『人類史防衛戦』への路線に案内しよう。『蹂躙戦記イスカンダル』のアンティキオアに向かい、神像鎧を纏うアヴァタール級亜人を撃破して欲しい」
新宿断層碑文に刻まれていた《七曜の戦》が、間もなくに迫っている。敵の大勢力と戦う『歴史の奪還戦7連戦(ディアボロス・ウォー・セプテット)』の相談もすでに開始され、日々ディアボロス達は相談を重ねている。
だが、戦いはそれだけではない。最終人類史に奪還した地域やディアボロスが制圧したディヴィジョンの地域に向けた、敵の侵攻が予測されているのだ。
「亜人達の目的地はエルサレム。かつてジェネラル級亜人『破壊者エニューオー』が支配していたこの地は、ディアボロスの手によって解放された。アンティオキアにいたエニューオーの精鋭部隊が、エルサレム奪還のために迫っているようだ」
今回の作戦では彼らがエルサレムに向かう途上で、迎撃を行う事になる。差し向けられた精鋭部隊は個人主義ゆえに群れる事はないが、非常に強力だ。
標的であるアヴァタール級亜人『黒鱗の蛇后・オリュンピアス』も『神像鎧』を身に纏い、ディアボロスを迎え撃って来るだろう。
「『神像鎧』は非常に強力なクロノオブジェクトだ。まともに戦えば、苦戦は免れまい。だが同時に、その鎧の『神像』が弱点でもある。ここを狙えば、五分以上の戦いができるだろう」
もちろん相手も自身の弱点は把握しているため、簡単には狙わせてくれないだろう。上手く弱点を狙う工夫が必要となる。だが、ここでオリュンピアスを倒せば、エルサレムの危機はそれだけ遠ざかる事になる。
「ちなみに精鋭部隊は、闘技場のあるエルサレムでは有利に戦える性質があるようだ。敵に地の利を与えないためにも、ここで撃破してしまいたい所だな」
エルサレムは、歴史的に重要な都市だ。ここを守りきって最終人類史に奪還する事は、大きな成果となるだろう。決して、亜人どもに渡す訳にはいかない。
「七曜の戦の前の大事なファーストアタック。必ず成功させて欲しい。それでは、君たちに勝利のあらん事を!」
リプレイ
フルルズン・イスルーン
神像ねぇ。
初めて見たけどエジプトのと趣が違う鎧みたいなの。
なんかイスカンダルがもっと北の方遠征した時のディヴィジョンから獲得した技術だっけ?
弱点抱えて戦うのってなにか欠陥があるような気もする。
あるいは拠点防衛捨てての侵攻用なんだろうかね。
じゃ、分析しようかファブリケイト・ゴーレム。
別に空を飛べるわけでもないだろう? なら【泥濘の地】だ。
シャワーのように分解元素を振りまくのだゴーレムくん!
操作能力というならば、操作の介在しない単純な物理法則に頼るものさ。
動きを鈍らせて、単なる遮蔽物では避けるのが難しい飽和攻撃で面制圧。
これで鎧を分解してあげようじゃないか。
目に見える所にあるのが悪いよー。
孫・リア
あえて弱点を見せるのが戦法なのかな?それともそれが起動条件……?んーまぁ私達は神像鎧は使わないし考えなくてもいいか
かの断片の王の母の名わ持つならジェネラル級になりたいわよね……だけだそうはさせないわ
側にいる蛇たちと一緒に踊るように攻撃……その踊り弱点を隠すのに適してそうね
敵の攻撃を見極めて避けながら観察、きっと無意識に弱点を隠すように踊るはず
弱点がわかったら反撃に転じるわ『一閃』で槍に合体させてその弱点目掛けて槍での一撃を食らわせるわ!
【アドリブ共闘歓迎】
エンデ・トロイメライ
厄介なもの身につけてるねぇ……ここは油断せず確実にいこうか。
FLUGEL、出力全開。高速飛行能力に【飛翔】の効果を上乗せして、機動力を活かし上空から神像を狙う。空に注意が向けば地上の仲間も動きやすくなるしね。
速度を活かし急接近、からの急旋回、死角へ回り込み牽制、と幾重にもフェイントを織り交ぜ敵を翻弄、撹乱し神像を狙う隙を作る。隙が出来たらナノマシン製の銃で狙い撃ち破壊するよ。
誰か1人でも神像を狙えればそれでいい。連携して互いの隙を埋めながら攻め立てる。
御守・樹
アドリブ連携歓迎
Mortaの一本をわらびに預けて反撃に使って貰う
神像鎧って結構存在してるっぽいけど、それってそれだけの「神様」がいるって事なんだろうか。それとも分霊とかそういう考え方なんだろうか?
どっちにしたって気分がいいもんじゃないな。
牽制のしつつ動きを観察して鎧の弱点、神像を探ろう。
自身の視界内か、もしくは視界外なら普段から隠れやすい翼の影か。
神像の位置がわかったらモブオーラとか忍足とか出来るだけ気配を消して、完全でなくても意識の外に一瞬でも外れれば。
そこからダッシュで近づいて奇襲のパラドクス攻撃。
俺はたいした威力も技量も持たないから、せめて奇襲で十分な威力のパラドクスを叩き込むだけだ。
ルーシド・アスィーム
アドリブ、連携歓迎
嘗て王に仕えた身として断言しましょう
気紛れに命を奪うだけの貴女に王母は務まらぬと
誘惑し、堕落せしめんとするなら此方は無慈悲なる氷搥を降す
舞うは【凍戯のサナム】
この地を凍土に変え、全てを凍てつかせ。大いなる巨人がその辣腕を振るう
併せて「氷雪使い」「風使い」の魔術で吹雪を起こし、「呪詛」による「精神攻撃」も間髪入れず叩き込みオリュンピアスの動きを妨害出来ないか試行
鎧の装着も阻害する事が出来れば上々ですが、多くは期待しません。相手はそれほど強いのですから
力ある貴女は故に深謀がない
命を奪うという行為が己の愉悦以外の意味を持たない
短慮で数多の意思を統べる等、絵物語でしかないと知るが良い
クロエ・アルニティコス
そうですか。
お前たちが欲にまみれているのは今に始まった話でも、お前に限った話でもありません。
何も特別なことがないなら……お前も殺す。それだけの話です。
【オルトロス・クロッカス】を使用。誘惑による頭痛に耐えながら、神像を狙いオルトロスの爪と牙による攻撃を仕掛けます。
あちらも弱点を理解している以上、そうそう当たるものではありませんが、【トラップ生成】で蛇尾を挟むように捕える罠を生成。一度きり、一瞬だけでも動きを止め、その一瞬で弱点を狙いオルトロスの爪で引き裂かせます。
魔術の女神ヘカテーよ。あなたを信じる者に目を掛けて頂けるなら、どうか私に、神を汚すものを引き裂く爪牙を!
弔焼月・咲菜
本当、テメェら亜人は揃いも揃って全員脳みそまでカビているんだな。…まあ、なんでもいいか。クロノヴェーダは残らず惨殺すると決めている。…狩らせてもらうぞ。
まずは、その面倒くさい神像から砕くとしよう。
敵の攻撃及び反撃は基本的に全て無視。致命傷になり得る攻撃だけは避けるようにし、あとは敵の注意を自分に向ける目的もかねて全力で攻撃する。
関節部や装飾の多い部分を重点的に狙って攻撃を当て、敵の反応を見ながら弱点部を探す。
ジェネラル級になると言ったな。残念だが、テメェがジェネラルになる事はこの先一生ない。そもそもテメェの一生は、ここで尽きるんだからな。
ディアナ・レーヴェ
戦闘開始前、双眼鏡とか駆使して地形を調べておくわ!
荒野だからなーんにも無いとは思うけど、足元が不安定な所――例えば踏ん張りの効き辛そうで、回避行動取りにくそうな砂地くらいはあるかしら?
皆で囲んで、そういう場所に押し込めたら弱点を狙いやすいかなって!
で、私はまずは鎧の装飾派手な箇所を中心に弱点部の看破に注力を
分かったら皆にそっと伝えつつ、リスク承知で【飛翔】して、神像破壊を狙う地上の誰かと同時に飛び出すわ
パラドクスでは上方から広範囲に間断なく弾を降らせて、敵を圧迫する。
ダメージ目的というより、味方の神像狙いの動きに対して、逃さない&逸らさせない為の足止めをしたいのよ!
これが今回の私のお仕事っ!
「本当、テメェら亜人は揃いも揃って全員脳みそまでカビているんだな」
「現れましたか、ディアボロス。エルサレムに着く前に遭遇するのは、想定外ですが……」
エルサレムへの途上の荒野。遭遇するなり罵倒をぶつける弔焼月・咲菜(葬不送動の報復者・g01723)に対し、苦い顔を滲ませるオリュンピアス。だがすぐに気を取り直すと背負った神像を展開し、神像鎧としてその身に纏う。
「ここであなた方を首を挙げる事で、私がジェネラル級と――王母となるための踏み台になってもらいましょう!」
「嘗て王に仕えた身として断言しましょう。気紛れに命を奪うだけの貴女に王母は務まらぬと」
その高らかなる宣言に、ルーシド・アスィーム(星轍・g01854)はきっぱりと言い放つ。だがオリュンピアスは僅かたりとも動じず、嘲笑すら向けてくる。
「お前の仕えたと言うどこぞの馬の骨と、偉大なるイスカンダル王と。比する事すら畏れ多いと知りなさい」
「そうですね。お前たちが欲にまみれているのは今に始まった話でも、お前に限った話でもありません」
その言葉に頷くのは、クロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)。ルーシドの考える正しき王の姿など亜人にとっては何の価値もないと、彼女は良く知っている。
「何も特別なことがないなら……お前も殺す。それだけの話です」
「そうだな、お前の考えなどなんでもいい。クロノヴェーダは残らず惨殺すると決めている。……狩らせてもらうぞ」
そんなクロエの宣言に咲菜も同意し、戦闘態勢を整える。だがディアボロス達の殺気を受けても、オリュンピアスは笑みすら浮かべて。
「まったく愚かな……この神像鎧の力の前に、頭を垂れ、首を差し出さしなさい!」
そうして放たれる殺気は、ディアボロス全員の殺気を塗り潰して余り有る程だ。ジェネラル級にも匹敵しようかと言う、凄まじき力。だが同時にその姿を見れば、理解できる事もある。
「うーん……なんで弱点を見せるのかと思ったけど」
「これは、探すまでもないわね……」
神像鎧の弱点を探そうとした孫・リア(勇武と炎を胸に秘めて・g03550)やディアナ・レーヴェ(銀弾全弾雨霰・g05579)だが、その必要などない。
時先案内人は、その鎧の『神像』が弱点と告げた――ならば探すまでもなくその鎧の胸元を飾る女神の像こそ、神像鎧の弱点に他ならないだろう。
神像鎧はパワーソースの神像が近くに必要で、それを破壊されれば力を失う。護衛のトループス級もいない状態では、自分で守りやすいように身に着けるしかない、と言う話だ。
「神像ねぇ。初めて見たけどエジプトのと趣が違う鎧みたいなの」
フルルズン・イスルーン(ザ・ゴーレムクラフター・g00240)は芸術家として、そのギリシャめいた意匠に目を向ける。エジプトの物とも、この蹂躙戦記イスカンダルの物とも異なる、黄金の鎧。
「なんかイスカンダルが、もっと北の方遠征した時のディヴィジョンから獲得した技術だっけ?」
そのような報告書を、読んだ事がある気がする。事実その鎧は明らかに、半人半蛇の亜人が身に着けるようには作られていない。上半身はともかく、下半身は蛇尾に食い込んでいる。
他のディヴィジョンの物を奪った技術とは、納得のいく話だ。
「神像鎧って結構存在してるっぽいけど、それってそれだけの『神様』がいるって事なんだろうか」
それとも、いわゆる『分霊』の類なのか……どちらにせよ気分が悪いなと、御守・樹(諦念の珪化木・g05753)は眉を寄せる。まあ実際の所、その神様とやらば立派な物である保証はどこにもないのだが。
「厄介なもの身につけてるねぇ……ここは油断せず確実にいこうか」
ともあれ相手が何を纏っていようが、倒す他はない。エンデ・トロイメライ(エピローグ・g00705)はフライトデバイスで【飛翔】し、空中機動によって翻弄を図る。
だが、それを見上げたオリュンピアスは、軽く眉を跳ね上げつつ、侍らせた白蛇達と共に舞い踊り。
「その程度で私を仕留められると思っているなら、それを油断と言うのでは?」
「っ
……!!」
彼女の手にした鞭が唸りを上げれば、無数の衝撃波が周囲の全てを薙ぎ払う。改めて凄まじきは神像鎧の力、こちらの速度など、全く意に介さない。
「エニューオーは良いものを遺してくれました。この力で私は王母となるのです!」
「やはり神像をどうにかしないと、相手にするのは厳しいか……!」
とはいえそれは、クロノヴェーダの持つクロノ・オブジェクトだ。彼女の構えた銃など、何ら役には立たないだろう。逆説連鎖戦において意味を持つのは、パラドクスのみ。今の彼女ならば手にした白刃による斬撃だけが、有効打を与え得る。
「ならまず、近づく隙を作らないと……」
ディアナもまた【飛翔】して、隙を伺いながら、いかにして攻めるかを算段する。利用できる地形は見当たらないが、そもそもクロノヴェーダを砂地に追い込んだ所で、いったいどれほどの意味があるか。
相手は個人行動のアヴァタール級、他のファーストアタックと異なり【飛翔】にデメリットがないのは幸いか。だが、相手は明らかに、神像を守るように立ち回っている。攻め込むのは容易ではなさそうだ。
「じゃ、分析しようか、ファブリケイト・ゴーレム」
「っ
……!?」
それに対してフルルズンが召喚したゴーレムは、両腕から架空元素を散布する。シャワーのように面で降り注ぐその攻撃は、オリュンピアスの腕では防ぎ難い。
神像の表面がじわりと溶解すると、オリュンピアスから溢れる殺気が僅かに鈍る。加えて、周囲の大地も【泥濘の地】に変えていき、僅かながらその足を取る事で妨害を図って。
「これで鎧を分解してあげようじゃないか。目に見える所にあるのが悪いよー」
「小賢しい……このようなものは、通用しませんよ!」
対してオリュンピアスは、魅了の力をその身から解き放つ。無機物すら誘惑する魅了の対象は――フルルズンのゴーレム。
くるりと召喚者に向き直り、その両腕を突き出してくる。
「わー、ゴーレムくんタンマー! こっちじゃなーい! ぎゃー!」
「目に見える所に、そのようなものを置くのが悪いのです!」
背中を溶かされながら、慌てて逃げるフルルズン。だがともあれ僅かなりとも、神像にダメージは入った。この隙を逃す手などない。ルーシドは神へと捧ぐべく、奔放なる舞を披露する。
「誘惑し、堕落せしめんとするなら此方は無慈悲なる氷搥を降す――」
「くっ
……!?」
パラドクスの舞によって生じるのは、凍土。凍てつく冷気が神像鎧を凍らせ、脆く打ち砕かんとする。逆説連鎖戦において力となるのは、パラドクスのみ。ゆえにその舞に力の全てを注ぎ込み……そしてオリュンピアスのパラドクスが、強烈な魅了となって、彼の心を揺らす。
「っ……力ある貴女は故に深謀がない。命を奪うという行為が、己の愉悦以外の意味を持たない」
耐えても頭が、割れるように痛む。いや、本当に割れているのではないか……そう思えるほどの激痛。それでも屈する訳にはいかないと、懸命に耐えて舞を捧げ続ける。
「短慮で数多の意思を統べる等、絵物語でしかないと知るが良い」
「あなたに私の何が分かるのですか? わかった気で語られるのは不愉快です……!」
そんな彼の言葉に、苛立ちを顕にするオリュンピアス。さらなる魅了で、こちらにより強烈な激痛を与えんとして。
「魔術の女神ヘカテーよ。あなたを信じる者に目を掛けて頂けるなら、どうか私に、神を汚すものを引き裂く爪牙を!」
だがそれに先んじるように、クロエもまた攻撃を仕掛ける。クロッカスの種に焦燥を注ぎ、生み出されるのはオルトロスを模した植物の怪物。
当然彼女にも強烈な魅了が働きかけ、それに伴う頭痛が生じている。それを耐えるのはルーシド同様、強い信仰。どのみちクロノヴェーダは全て殺すのが彼女のあり方だが、特にギリシャの神々を利用する神像鎧に良い気はしない。
もちろん神像に閉じ込められた神々は、真に彼女の信ずる神とは別物ではあろうが――。
「引き裂いてあげます……!」
「ちっ、やらせるものですか……!」
【トラップ作成】で生み出したトラバサミで蛇尾を狙うも、所詮は残留効果、一瞬たりとも動きを止めるには至らない。だが、そちらに気を取られたほんの僅かな隙を突き、オルトロスは植物の爪を振り下ろす。
咄嗟に神像を守らんとするオリュンピアスだが、冷気で腕がかじかんでいる事も重なり、動きが遅れる。慌てて背中で神像を庇うが――そうなれば隙だらけの背中を、爪が深々と斬り明日。
「っ、がっ……し、つこいっ……ですねぇっ!」
「ジェネラル級になると言ったな。残念だが、テメェがジェネラルになる事はこの先、一生ない」
苛立ちと、僅かな焦りを顕にするオリュンピアスに対し、今度は咲菜が間合いを詰める。致命傷以外は全て享受するつもりの、捨て身の一撃。
「そもそもテメェの一生は、ここで尽きるんだからな!」
「そうですね、あなたはここで死ぬのですから……それを見る事は、永遠にありません!」
だが神像鎧で増幅されたオリュンピアスの攻撃は、全てが致命傷足り得る。立ちはだかる幻影の亜人を突破出来なければ、身一つ捨てようとも、刃が届く事はない。
「だったらっ!」
「くっ……鬱陶しいっ……!」
そんな仲間の道を切り開こうと、ディアナが空中から射撃を加える。悪魔の翼をはためかせながら、雨と霰と間断なく降り注ぐ軽機関銃の弾雨。
パラドクスに至るほどの連射なれど、神像を狙わぬ攻撃は、有効打足り得ない。……そんな事は、わかっている。
「邪魔ですよ、落ちなさいッ!」
「っ、きゃあああっ!?」
対価として飛びかかってきた二匹の白蛇に締め上げられ、地へと墜ちていくディアナ。だが、そうして敵の注意を引き付ける事こそが、彼女が己に課した役目。
地上から意識が逸れた隙を逃さず、亜軍の自爆を掻い潜りながら咲菜が迫る。
「狩り、取って、やるっ……!」
「っ!? ぐぅぅぅっ……」
機構刀の一閃は、神像を守ろうとした相手の腕を、ばっさりと斬り裂いた。鮮血が噴き上がれば、緩んでいく防御。
それに合わせてさらに、樹が、背後からオリュンピアスに迫る。
「せめて、この一撃……!」
戦場で【モブオーラ】は意味を為さず、足音を消してもさして意味はない。戦場での奇襲は難しいが、代わりに、仲間の攻撃に合わせて敵の背後から突撃する。
奇襲とはなり得ないが、せめて対応の難しいタイミングでの一撃を。亜軍の迎撃を受けて身を削られながらも、背中に向けて繰り出した一撃。
相手は神像を庇う為に振り向く事が出来ず、ナイフがその背を深く切り裂く。
「ぐっ……! しつ、こいっ……!」
「神像を壊せればそれで良い――!」
さらにはエンデ。稲光のような速度で空中から迫り、ナノマシンの刃が神像を狙う。パラドクスの領域にまで至ったその突撃を、オリュンピアスは防ぎきれない。神像に傷がつき、その力が鈍り――。
「ぐっ……おの、れ、ディアボロス……!」
「今だ……いくよっ!!」
そこにまっすぐに突き出された、リアの槍。偃月刀と組み合わせて長槍となったその突きが、神像を真っ直ぐに狙う。防ごうとするオリュンピアスだが、すでにその腕は、防御するに至らず。
「これで、壊してあげるっ!」
「きゃああああっ!?」
その槍は神像を打ち砕き、その鎧を崩壊させた。
「私こそが王母となるのです。そのための力を、よくも……!」
憎々しげにディアボロスを睨みつけ、怒りに震えるオリュンピアス。まだ戦えるとばかりに力を振るうが――決着は、事実上ついた。
神像鎧を失ったオリュンピアスの力は、今までのそれとは比べ物にならないほどに弱い。それでもアヴァタール級相応の力は持っていたが――それは、この場に集まったディアボロスに勝利するには、あまりにも不足している。
「私は、国母の名を持つ偉大なる亜人なのです! それが、こんな所で――!」
「ならばゴーレムくん。その夢ごと溶かしてあげよう」
そうして、フルルズンのゴーレムが生み出す架空元素が、オリュンピアスの身体を溶解させていく。崩壊していく肉体。だが最期の瞬間まで、彼女がそれを認める事はなく。
「私は……私こそが、オリュンピアス! その名を讃えなさい、偉大なる王母として――!!」
そうして野望抱きし蛇后は、その夢を抱いたままに、消滅した。
無事、戦いに勝利したディアボロス。だが、神像鎧は凄まじい力を持っていた。
エニューオーの精鋭部隊たる彼女は、『勝利王セレウコス』の領都、アンティオキアから来たと言う。かの地にはまだ神像鎧が残っているのか、それとも今回の精鋭部隊達が持つ物が最後なのか。それはまだ分からない。
とはいえまあ、それを考えるのは戦後の事だ。いまはまず、エルサレムを守る事が先決。
人類史防衛戦は、まだ始まったばかりなのだから――。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
効果1【泥濘の地】LV1が発生!
【水中適応】LV1が発生!
【飛翔】LV2が発生!
【モブオーラ】LV1が発生!
【アイスクラフト】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
【隔離眼】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV3が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!
【ダブル】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!