戦力、基地の上より:軍艦はイクラあっても困らない?(作者 桜井薫)
#冥海機ヤ・ウマト
#【《七曜の戦》沖縄離島防衛】本島海軍施設への襲撃
#《七曜の戦》
#人類史防衛戦『沖縄離島』
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●港湾を守る者たち、イクラかの不安
《七曜の戦》を控え、世界が慌ただしく動く。
冥海機ヤ・ウマトの海も例外なく戦いの予感にざわめき、数多の冥海機たちが水面を騒がせていた。
沖縄においては、離島へ向かう港がことさらに混み合い、ディアボロスたちに奪われた島々を獲り返すことへの執念をうかがわせた。
そんな中、沖縄本島のとある港湾地域では。
「イクラ離島の奪還が必要と言っても、本島に閑古鳥鳴かせちゃダメだろ」
「これじゃ開店キュー業だぜ」
残された軍艦たちが、ぼやきながら守りに就いている。
軍艦と言っても、冥海機の艦種的な意味ではない。
黒々とした海苔を巻いたような装甲に、つぶつぶの赤い魚卵めいた兵装。
そう、それはどう見ても、『軍艦(お寿司の方)』だった。
ついでに言えば、庶民のお財布に優しい方、でもあるだろう(頭のキュウリ状の装備的な意味で)。
「戦果は攻撃隊の奴らにお持ち帰りされて、万が一港湾部を奪われた日にゃあ、首がとびっこだろ?」
「ったくよー、こんなことばかりしてちゃ、自慢の『伊九羅』がしぼんじまう。やってらんねーぜ」
文句を言いつつも、軍艦たちは一応、回るレーンのように規則的なルートで哨戒任務を続けている。
量産機『守士(すし)』たちは、たとえ気が乗らなくとも手を抜いた仕事はしないのだ。
●取り戻すために、イクラでも
「みんな、集合ー! ウチらのホンキで、《七曜の戦》もバッチリ乗り切っちゃうよー!」
ディアボロス、それ以外の人々、最終人類史。
ほぼ世界全ての運命を決めるであろう戦いを前にしても、南井・未希(超アゲアゲ↑全力ガール・g03256)はいつも通りのテンション、いつも通りの笑顔で、ディアボロスたちに説明を始める。
「で、人類防衛戦の相談もう始まってるけど、今から話すのはそっちじゃなくてね。敵がディヴィジョン取り返しに攻めてくるのをガツーンと叩き返しちゃお、的なハナシなんだ」
最終人類史に奪還済みの地域や、既にディアボロスが制圧したディヴィジョンの地域に対し、予測されている敵の侵攻に対抗する。
未希はにぱっと笑顔を浮かべ、作戦目標となる地域の説明に入る。
「みんなに行ってもらいたいのは、ヤ・ウマトの沖縄本島! そこで冥海機の軍勢をがっつり叩いて、なんか敵の作戦をジャマしようZE! みたいな感じなんだー」
未希の話を要約すると、沖縄離島を奪還しようと沖縄本島にて部隊を再編している冥海機の軍勢を、《七曜の戦》の前に強襲してその侵攻意図を挫いて欲しい、とのことだ。
「沖縄離島ってさ。前にそこで頑張ったウチらの仲間がいるわけじゃん? それって、やっぱムダにしたくないし?」
この作戦を成功させれば、沖縄離島を最終人類史へと奪還することができるかも知れない。
だから是非とも頑張ってほしい、と未希は屈託のない笑顔でディアボロスたちを激励する。
「あ、そうそう」
場の空気が温まったところで、未希は思い出したように付け加える。
「ちなみに今回の敵、ほぼスシだから! やっぱヤバいよねー、ヤ・ウマトの謎技術って!」
は、スシ? っていうか『ほぼ』ってどゆこと? などなど、もろもろ当然のツッコミは発生する……が。
「ま、細かいことはいいっしょ! どんなヤツが相手でも、やることは変わんないし!」
未希が一点の曇りもなくあっけらかんと言い切ると、その場の空気はなんとなく『まあいいか』的なものに落ち着いていった。
ツッコんだら負けだという一種のあきらめモードだったのかも知れない。
「ってゆーかさ、みんなならゼッタイ大丈夫! これは、ホントのガチでマジだから」
周りのディアボロスたちを見渡す未希の目には、不安の影はひとかけらも見えない。
「だってさ。鬼ヤバの天魔武者とか色々乗り越えて、今の状況まで持ってきちゃったのって、ほんと凄いしかないから。こうやって沖縄本島に突っ込めるのも、ぜーんぶ今までの積み重ねっしょ?」
だからきっと、《七曜の戦》だってより良い形で乗り越えられる。
迷わず言い切って、未希はディアボロスたちを送り出すのだった。
リプレイ
南雲・葵
椿樹(g06911)と参加
軍艦はマグロの山掛けが一番好きです!
って宣言は置いといて、プチッと潰しちゃう?
イクラだけに
七曜の戦の前哨戦にキッチリと沖縄本島防衛しないと
それと、椿樹の初依頼のフォローも、ね!
飛び散るイクラ汁は【クリーニング】で綺麗にするとして
取り敢えず、上陸してきた敵を片っ端から殴っていくか
姉貴(オラトリオ)は少し離れて、上陸してくる敵を見張っててね!
うぁー、イクラが潰れる感触が手に気持ち悪い
敵のフォルムもアレだし、これ、暫くイクラの寿司は食べられなくなるね…
姉貴、他の人達のフォローもお願い!
オラトリオフラワーで敵の視界を塞いで邪魔してね!
他の仲間と共闘して、少しでも数を減らすね
東雲・椿樹
葵(g03227)と参加
アドリブ歓迎
この寿司?守士?をやればいいと。了解。ここで勝って勢いづけておくってのは大事だな。
つーか俺、軍艦だったらイクラ1番好きなんだけど?マッチョな手足が生えたイクラのオッサン…マジで嫌だな(ド直球)
まだ俺は強くないし初めての依頼だから、葵や他の味方の指示には従っていこう。
味方とも連携をとりつつ、俺は狙いやすいように空中から陸に上がってきた奴らを狙撃していこう。
ほら、毛玉もいくぞ。不味そうだから間違っても食うなよ?
あー、あそこに敵がいる。ちょうどいいや毛玉潰してこい(ぶん投げ)
随分ベトベトになって戻ってきたな。怒るなよ終わったらシャンプーしてやるから。
洪・小鈴
ヤ・ウマトってイカツイお船と海の生き物のクロノヴェーダが出てくるとこだよね?
えっと、そう軍艦とか~。って、そっちの軍艦か~い!
イクラって確か鮭のタマゴだよねぇ…う~ん
ま、いっか!(思考放棄)
んふふ、陸上でなら私もイクラかは戦えるんだよ!
待って、素敵な無添加素材をそんなにポンポン投げるのは駄目なんだよ?
食材(?)は大切に扱うんだよ!そう、こ~んな感じでね!
お料理パラドクスの【愛ト炎】で攻撃していくよ
上に乗ってるのがイクラじゃなくてサーモンだったらいい感じに炙れたかもなんだけど
なんかごめんね?
一斉起爆はめちゃんこ怖いから中華鍋でガードしておくよ
私一人じゃよわよわだから周りの人と連携もしたいんだよ!
宝心・ライラ
アドリブ連携歓迎
前哨戦、気合い入れていくわよー!
そして、ついに出会ってしまったわね軍艦マン……
「ネタの鮮度なら負けないわよっ!見よこの鯛や鮃も真っ青のカレイな踊り!」
パラドクスを乗せた舞踊で軍艦マン達の心を惑わし、引き寄せる
そして引き寄せた所を手に持った高熱の光輪フープでバーンと艦パーンチ!
いくらは炙れば萎んで溶けるって寸法よ
とはいえ、少しは真面目に戦わないとね
機雷の攻撃はフープを投げてこちらに爆風が来ないうちに対処するわ
エトルリア・メイオール
連携、アドリブは歓迎だぜ
……んん!?前に見た軍艦と違うぞ?
こんな奴もいるのか!イカしてるなー!
地上で戦えるならその方が良い、ナレてるからな
攻める際は力でオシて行くぜ
大斧を地面にタタキつけて振動波で敵を一網打尽だ
敵の弾丸に対しては、落石を大量にチラシてこっちに届く前に破壊するぜ
敵がスラッガーを操り始めたら、敵本体に地面から衝撃波を送り込んで操作を妨害するぜ
海中に機雷を見つけたら、先んじて海震を起こし機雷ごとマキ込んじまおう
全部倒すかサバききれねえ数が出てこられたらアガリだ
しかし勿体無えな
こいつらも敵のイイナリじゃなきゃ仲良くなれたかもしれねえのに
●イカした軍艦、その姿焼き
軍事基地の守備の任に就く、数多の軍艦。
この言葉を聞いて浮かぶ絵面は、潮風漂う戦場、威風堂々の大きな船体、鉄臭い砲撃兵器……おそらく個人差はあれど、男の子の夢が詰まったようなシリアスな何か、だろう。
「ヤ・ウマトってイカツイお船と海の生き物のクロノヴェーダが出てくるとこだよね? えっと、そう軍艦とか~」
「そうだな、今回の獲物は……んん!?」
だが、パラドクストレインから上陸した洪・小鈴(鳴らない鈴・g06481)とエトルリア・メイオール(ロストロード・g01211)を迎えた『軍艦』たち、その姿は。
「あいつら、前に見た軍艦と違うぞ? こんな奴もいるのか! イカしてるなー!」
「そうだよね、しっとり巻かれた黒い装甲はノリが良くて、つぶつぶの砲弾はイクラか赤く光って……って、そっちの軍艦か~い!」
無邪気に『イカした』敵を目で楽しむかのようなエトルリアへの小鈴のノリツッコミが、ガリを一口かじると染み出す甘酢のようにピリリと染み渡る。
基地の通路を回る冥海機たちは文字通りの意味で、まぎれもないお寿司の軍艦だった。
「ああ、ついに出会ってしまったわね、軍艦マン……」
その表情はうっとりとした喜びに彩られ、その声は待ち望んだ時を迎える気合に満ち満ちて。
宝心・ライラ(ミス・ハッピースタート・g01071)が呼んだその名は『軍艦マン』、すなわち軍艦と人型の融合を示唆するもの。
その名の通り、軍艦(寿司)のボディを支える駆動部は、締まった赤身を思わせるゴリゴリの筋肉に包まれた生足。
赤く透き通る大盛りの兵装から覗いているのは、冥海機の中でも明確に『濃い顔』にカテゴライズされるであろう顔面。
合体事故一丁上がり、としか言いようのないビジュアルの冥海機たちを平らげるのが、今回のディアボロスたちの使命であった。
「この寿司? 守士? をやればいいと」
「そうだね。七曜の戦の前哨戦、キッチリと沖縄本島防衛しないと」
建造物の影からそんな敵機をうかがう東雲・椿樹(デーモンのレジスタンス諜報員・g06911)に、南雲・葵(バールの人・g03227)が力づけるように応えを返す。敵が多少(?)トンチキだろうと、すべきことに変わりはない。旅団仲間でもある椿樹の初陣をサポートすべく、葵は愛用のバールのようなものをしっかりと握りしめた。
「了解。ここで勝って勢いづけておくってのは大事だな」
「さあ、前哨戦、気合い入れていくわよー!」
表情を引き締めた椿樹にうなずく仲間たちに、ライラの笑顔がひときわ輝く。
どんな経緯かは彼女のみぞ知るところだが、まんざら知らない顔でもない相手に、ライラのやる気もひとしおだ。
何をどうしたら手足の生えたマッチョなイクラ軍艦と道が交わるのかは置いといて、ディアボロスとクロノヴェーダの戦いは、常に運命と歴史を争う全力のせめぎ合いなのだから。
●カレイなる踊り食い
「……完全に地上で戦えるのは良かった、ナレてるからな」
「うん、陸上でなら私もイクラかは戦えるんだよ!」
エトルリアの見立て通り、軍艦マンたちはなれずしのように固まって基地の敷地内のみを哨戒しており、水上に出張る必要はなさそうだ。これなら、小鈴の得意な料理を生かした戦い方に不都合もないだろう。
「よし、上陸してくる敵を見張る必要がないなら、遠慮なく全力で数を減らすだけだね」
「分かった。少しでも皆と連携できるよう心がける」
敵の上陸戦に備えていた葵はその状況を見て、 オラトリオ『梓』にお願いする役割を、見張り中心から戦闘サポートへと切り替える。
考えてきた作戦を現場に合わせる、これが実戦というものか……などと実感しつつ、椿樹も空中からの狙撃よりは仲間と協力できる位置取り主体の動きを心に留めた。
「はぁ、自慢のネタが泣くぜ」
「まったくだ、こんなに新鮮だってのによ……」
そんな中、2隻の軍艦マンがぼやきつつディアボロスたちに近づいてきた。
地味な任務に若干腐りぎみのようだが、赤い『伊九羅』には濁りも曇りもなく、きちんと鮮度を保っているようだ。
「その新鮮さ、ご自慢のようね」
「ヘイらっしゃ……じゃねえ、なんだてめぇ!」
纏った衣装の上質なレースを揺らし、不意を突いて飛び出したのは、ライラだ。
軍艦マンは反射的に威勢よく返事をしたものの、すぐに彼女が招かれざる客であることを察したようだ。
「でも、ネタの鮮度なら負けないわよっ! 見よ、この鯛や鮃も真っ青のカレイな踊り!」
本日の演目は、海女色、もとい、亜麻色。
ライラのカレイなる目出タイ舞いによって、開演の火蓋が薄造りに切って落とされた。
「なんだァ、ヒラヒラして
……!?」
「一夜の夢に誘いましょう」
ライラの腕輪から展開された輝くフープが、獲物を誘う鮟鱇の提灯のように、蠱惑的な軌道を描き揺らぐ。
「……故郷の川のボウフラ、また喰わしてやりてぇなぁ」
「変だぜ、『伊九羅』を育んだ日々の存在しない幸せな記憶が……ぐあッ!」
意味の分からないうわごとを呟きながらふらふらと引き寄せられた軍艦マンたちに、日輪の如き熱を持ったフープがバーンと叩きつけられる。
渾身の艦パンチは、赤い兵装を炙り、触れた部分に大きな焦げ目を作った。
「こんちくしょー、いきなり焼くたぁ、ひでぇじゃねーか!」
「敵襲、敵襲ーーー!」
どうにか体勢を立て直した軍艦マンたちは、ハラコの底から声を張り上げ、基地に残る守士たちを招集する。
警告はたちまちあたりに響き渡り、昼時の回るレーンに次々と流される皿のように増援が集まり始めた。
「つーか俺、軍艦だったらイクラ一番好きなんだけど? この絵面……マジで嫌だな」
「俺の一押しはマグロの山掛けだけど……確かに、暫くイクラの寿司は食べられなくなりそうだね」
マッチョな手足が生えたイクラのオッサンが押し寄せる、控えめに言って地獄絵図としか言えない光景。
椿樹と葵でなくとも、ド直球でぼやきたくなるのが当然というものだ。
「迎撃だぜべらぼうめ、『伊九羅マイン』だ!」
「自慢の無添加素材、喰らってみやがれ!」
最初の一皿二貫たちは、ただ黙って増援を待ってはいない。
ムキムキの腕を山盛りの兵装に突っ込み、赤く光る機雷を掴む端からぽいぽいとディアボロスたちに投げ放ってきた。
「待って、素敵な無添加素材をそんなにポンポン投げるのは駄目なんだよ?」
料理にも、『美味しい』と喜んで食べてくれる人にも、そして食材そのものにも。
確かな愛情をもって台所に臨む小鈴にとって、軍艦マンの行為は許されざる蛮行だった。
「てやんでぇ、『伊九羅』は投げてこそ本来の味わいなんだぜ!」
「食材……なのかは微妙だけど、ちゃんと大切に扱うんだよ!」
強火の情熱で、小鈴の『愛ト炎』が燃え上がる。
「そう、こ~んな感じでね!」
火加減、ひと手間、食材への感謝……身に着けた愛用の調理器具たちを通じて、料理への愛情は高温の炎となり、軍艦マンの装甲と兵装に激しく迫ってゆく。
「炙り一丁……っ!」
「焼いても喰えるけど、おすすめは、やっぱり生……」
ライラと小鈴にダブルで炙られ、一皿目の軍艦たちはねっとりとした潮の匂いと香ばしい焼き海苔の芳香とともに崩れ去った。
「サーモンだったらまだいい感じに炙れたかもなんだけど……なんかごめんね?」
親とそのタマゴで炙りの合う合わないがだいぶ変わるなんて、料理はやっぱり奥深い……なんてことを頭の片隅で考えつつ、小鈴は『ま、いっか!』と、潔く余計な思考を放棄した。何しろこの状況、いちいちツッコんでいては色々と追い付かない。
「おっと、大盛りおかわりのご到着だ! このまま力でオシて、一気に行くぜ」
周りを見渡し、エトルリアが力強く『勇将の斧』を振り上げる。
ぎゅうぎゅう詰めの押し寿司のように迫るマッチョ軍艦の群れにも、エトルリアはひるむことなくどっしりと構え、撃破数の皿を積み上げる気満々だ。
そんな頼もしい彼女の笑顔に、こうなったら片付けられるだけ片付けようと、ディアボロスたちはきりっととした酢飯のように気を引き締めるのだった。
●こぼれイクラのたたき、炙りを添えて
「ただ喰われちゃ『守士』の名折れだ、もてなせー!」
「行けー、ソイヤッ、ソイヤッ、ソイヤあッ!!」
謎の気勢を上げて大量に迫りくる、マッスルとデリシャスの悪魔合体。
言ったそばから回れ右して帰りたくなる光景に、しかし、ディアボロスたちは一人として背を向けることなく、勇敢に立ち向かった。
「砕け! 壊せ! 竜の腕! 『伊九羅』なんざ、バラバラにチラシてやるぜ!」
赤色発光榴弾『伊九羅弾(塩分控えめ)』の弾幕には、大地をつかさどる竜の力を。
エトルリアは『地竜の剛腕』を落石の力に変え、丼から山盛りに溢れんばかりの『伊九羅』を撃ち落とす。
石と衝突した柔らかい表皮が衝撃で炸裂し、基地の舗装された地面には、どろりとした赤い液状の汁が広がっていく。
「うわあ、後で【クリーニング】しないと……でも今は、“掃除”が先だね。姉貴、お願い!」
見た目のくどさのみならず、牽制するたび手に伝わるぶにゅっとした感触の気持ち悪さに精神を削られながらも、葵は梓に心を繋ぎ『審判之聲』を懸命にぶつけていった。『偽りを映す眼を閉じ』『真実を告げる天使の導き』は、この状況だと微妙に意味深に取れなくもないが、内心はどうあれ梓は己の仕事を真摯に果たしているようだ。
「ほら、毛玉もいくぞ。不味そうだから間違っても食うなよ?」
友人とサーヴァントが息を合わせて動くのに揃え、椿樹もモーラット・コミュ『毛玉』と共に軍艦マンに対峙する。
「ひるむなー、『伊九羅マイン』一斉掃射、てーッ!」
椿樹の正面に並んだ軍艦たちは、ディアボロスらの猛攻に抗うべく一人前の折詰ぐらいの編隊を組み、揃って赤い機雷を構える。
「あー、あそこの奴がちょうどいいな。毛玉潰してこい」
「……!」
「一斉起爆に備えるよっ……て、投げるの!?」
掃射に備えて中華鍋で守りを固めていた小鈴が思わずツッコミを飛ばす。
椿樹は毛玉をむんずと掴んで迷わずぶん投げ、自身が放つ魔力の弾丸と合わせて軍艦マンらの真ん中に先んじて砲撃を浴びせる。
「あ痛ててっ!!」
「コラぁぁ、そいつぁシャリがネタを投げつけるようなもんだろ!」
不意を突かれて兵装に中破から大破程度の打撃を負った軍艦たちが悔しまぎれの非難を浴びせるが、有効打となったのは間違いない。
「やったな椿樹、このままプチッと潰しちゃおう」
初依頼の仲間の奮闘に、葵は大いにテンションを上げてさらにパラドクスに力を籠める。
「いいぞ、新人! この勢いでタタキつけて、一網打尽だ!」
ディアボロスたちの上がった士気をさらに高揚するように、エトルリアは豪快に大斧をぶん回し、大いなる竜の力を容赦なく軍艦マンの真上から叩きつけた。
「かはッ、俺たちゃ、タタキ向きじゃねぇ……」
「だから、生食可、って……」
勢いの乗った一撃は、狙われた軍艦たちを賞味期限寸前ものに弱らせるに十分な威力で振り抜かれた。
「タタキなら炙りを入れないとねっ」
「熱い一夜の夢の仕上げ、燃え上がらせていくわよー!」
どうやら、一夜の夢(どちらかと言えば高熱にうなされた時の夢寄り)の仕上げは、大粒のイクラも爆ぜるほどの熱い炎のようだ。
小鈴とライラは、崩れかかった守士たちに迫り、それぞれの炎を一気に完全燃焼で着火する。
「熱々に仕上げるね!」
「萎んで溶けるまで、燃やし尽くす……これが、演目のクライマックスよ!」
料理と食材への愛と、太陽の如き光を宿した情熱。
燃え盛る炎は盛大な熱源となって、軍艦たちを丸ごと炙る。
「ちくしょおぉぉぉ!!」
「タタキも炙りも、こりごりだーーー!」
盛大な寿司の断末魔は、爆炎と共に基地の一角を揺るがすのだった。
この辺りの軍艦マンをあらかた平らげた頃合いを見計らい、ディアボロスたちは急ぎ新宿島へと引き返す。
本番の《七曜の戦》に備えてやることは、イクラでもある。
「さて、ここらでアガリとしようか……しかし勿体無えな」
慌ただしい戦いを振り返り、エトルリアはふと思う。
(「こいつらも敵のイイナリじゃなきゃ、仲良くなれたかも知れねえのに」)
「そうね、軍艦マン……あなたたちのネタは、しばらく忘れないわ」
何かを思い出すように遠くを見つめるライラの呟きに、共に戦った仲間たちは心の中で半分だけうなずいた。
忘れないというか、あんなもの忘れられるか、と。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
効果1【クリーニング】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
【おいしくなあれ】LV1が発生!
【現の夢】LV1が発生!
【建造物分解】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV2が発生!
【リザレクション】LV1が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!