落日の挽歌(作者 坂本ピエロギ
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#TOKYOエゼキエル戦争  #第二次東京奪還戦(後編)  #第二次東京奪還戦  #区の支配者  #北区  #不滅侯フェネクス 

●TOKYOエゼキエル戦争 北区
 東京都北区王子、北とぴあ。
 同区でも頭抜けて高い建築ビルの屋上から地上を見下ろす、ひとりのアークデーモンがいた。

『イマジネイラめ。私が貸してやった兵を無為に浪費するとは……!』
 悪魔の名前は不滅侯フェネクス。ここ北区を支配するジェネラル級の悪魔だ。
 彼の心には、言いようのない焦燥があった。大同盟が瓦解し、目黒区と世田谷区が陥落。自分が支配する北区もまた、四度にわたるディアボロスの攻撃によって防衛網は崩壊し、拠点であるここ北とぴあの守りも今では丸裸同然なのだ。これで焦りの一つも覚えないとすれば只の阿呆でしかない。

『だが……無為に滅びを待つほど、私は愚かではない。せいぜい悪足掻きさせて貰おうか、ディアボロス』
 このまま北区を放棄して大天使に降れば命だけは助かるかもしれない。だが、そんな道をフェネクスは選ばなかった。
 嗜虐心の赴くまま人間を焼き殺し、心を破壊して狂わせる――あの心躍る光景が二度と見られないなど冗談ではない。
 思うが侭に生き、思うが侭に力を振るうことさえ許されぬ世界に生きること、それは彼にとって死と同義なのだ。

 アシュタロスを始めとする配下は未だ戻らず、力の源である畏怖は枯渇寸前。
 並の方法では勝負にならず負けることは明らか。もはや、手段を選んでいられる状況ではなかった。
 フェネクスは傍に仕えるアシュタロスの使徒たちを呼び寄せ、厳かな声で命じた。

『街の人間を片っ端から処刑しろ。十分に痛めつけた上で殺せ、この私への畏怖を思い出すように!』
 そう、力を得る方法は一つだけあった。北区に残る人間には、僅かとはいえ畏怖の心が残っている。
 配下に命じて奴らを殺して回れば、今よりも力を得ることが出来る。どのみち使い潰す命だ、今殺しても問題はあるまい。
 命令を受けた使徒たちが走り去る中、フェネクスは北区の街を見下ろしながら笑いだす。

『嗚呼、何と美しい街だろう。私だけの下僕、私だけの人間、私だけの世界……ディアボロスの手になぞ渡すものか!』
 アークデーモン大同盟の五区を巡る最後の決戦。
 そのひとつが、今、始まろうとしていた――。

●新宿駅グランドターミナル
「皆、お疲れ様。いよいよ第二次東京奪還戦も大詰めよ」
 東城・リリカ(デーモンのレジェンドウィザード・g01222)は、集合したディアボロスたちを前に語る。
 豊島区の奪還により、事実上瓦解したアークデーモン大同盟。その所属区に攻勢をかけたことで、区の支配者に決戦を挑む機会を得られたのだ。
「この作戦ですべきことは二つ。街の人たちを救出して、区の支配者を撃破することよ。……皆なら、出来ると信じてるわ」
 リリカが案内する先は、北区。
 豊島区の北東に位置するこのエリアは、『不滅侯フェネクス』というアークデーモンに支配されている。
 フェネクスは現在、ディアボロス迎撃の力を得るために配下のトループス級を街へ送り込んだようだ。目的は北区の住民を殺して回り、アークデーモンへの畏怖を蘇らせること。それとて破滅を先延ばしにする足掻きに過ぎないが、今のフェネクスはそれ程までに手段を選んでいられない状況なのだろう。
「勿論、そんな真似は許せないわ。幸い敵は、街の人たちを十分に恐怖させてから殺すように命じられているみたいだから、急いで駆けつければ虐殺を止めることは難しくない筈よ。北区の人たちを救うためにも、どうか力を貸して!」

 今回の作戦は、北区に残存するアークデーモン勢力を一掃することが目的だ。
 北区への侵攻は海から行うことになるが、先に行われた四度の前哨戦によって防衛戦力はほぼ壊滅している。警戒網も今や無きに等しく、潜入が敵に露見する恐れはない。上陸後は街中で住民を襲う『アシュタロスの使徒』を撃破し、敵拠点である北とぴあへ急行。首魁のフェネクスを倒せば作戦完了だ。
「フェネクスは、芸術を愛するアークデーモンよ。ただし彼が愛するのは絵画や彫刻じゃない。……人間の死よ」
 愚かな人間が藻掻き、苦しみ、為す術無く死んでいく姿。
 それを自らのパラドクスで『美しく』演出することを、最大の愉しみであり歓びとする悪魔なのだという。
 要は只のゲス野郎ね、とリリカは言った。もしここで奴が逃げ延びれば、何度でも同じことを繰り返すだろう、とも。
「けれど、奴に未来なんて必要ない。ゲスに相応しい死を、きっちり叩きつけてやって!」

 第二次東京奪還戦の対象となった区は、全部で五つ。
 それは即ち、この戦いにディアボロスが勝利すれば、アークデーモン大同盟が消滅するということでもある。
「そうなれば、TOKYOエゼキエル戦争に残る区は葛飾区、墨田区、荒川区の3区だけ。全域の奪還も夢じゃないわ」
 新たなジェネラル級の出現で情勢は今なお予断を許さないが、《七曜の戦》の前に大きな戦果を挙げる為にも、この戦いは確実に勝利しておきたいところだ。
「それじゃ出発するわよ。皆、頑張ってね!」
 信頼を込めたリリカの眼差しに頷きを返し、ディアボロスはパラドクストレインへと乗り込んでいく。
 西暦2015年、TOKYOエゼキエル戦争。
 不滅侯フェネクスを討ち、北区を奪還するために。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
7
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【悲劇感知】
1
「効果LV×1時間」以内に悲劇が発生する場合、発生する場所に、ディアボロスだけに聞こえる悲劇の内容を示唆する悲しみの歌が流れるようになる。
【一刀両断】
3
意志が刃として具現化する世界となり、ディアボロスが24時間に「効果LV×1回」だけ、建造物の薄い壁や扉などの斬りやすい部分を、一撃で切断できるようになる。
【照明】
1
ディアボロスの周囲「効果LV×20m」の空間が昼と同じ明るさに変化する。壁などで隔てられた場所にも効果が発揮される。
【託されし願い】
3
周囲に、ディアボロスに願いを託した人々の現在の様子が映像として映し出される。「効果LV×1回」、願いの強さに応じて判定が有利になる。
【勝利の凱歌】
2
周囲に、勇気を奮い起こす歌声が響き渡り、ディアボロスと一般人の心に勇気と希望が湧き上がる。効果LVが高ければ高い程、歌声は多くの人に届く。
【避難勧告】
2
周囲の危険な地域に、赤い光が明滅しサイレンが鳴り響く。範囲内の一般人は、その地域から脱出を始める。効果LVが高い程、避難が素早く完了する。
【プラチナチケット】
1
周囲の一般人が、ディアボロスを関係者であるかのように扱うようになる。効果LVが高い程、重要な関係者のように扱われる。
【エアライド】
1
周囲が、ディアボロスが、空中で効果LV回までジャンプできる世界に変わる。地形に関わらず最適な移動経路を見出す事ができる。
【トラップ生成】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の空間を、非殺傷性の罠が隠された罠地帯に変化させる。罠の種類は、自由に指定できる。
【熱波の支配者】
2
ディアボロスが熱波を自在に操る世界になり、「効果LV×1.4km半径内」の気温を、「効果LV×14度」まで上昇可能になる。解除すると気温は元に戻る。
【液体錬成】
1
周囲の通常の液体が、ディアボロスが望めば、8時間冷暗所で安置すると「効果LV×10倍」の量に増殖するようになる。
【建造物分解】
1
周囲の建造物が、ディアボロスが望めば1分間に「効果LV×1トン」まで分解され、利用可能な資源に変化するようになる。同意しない人間がいる建造物は分解されない。
【操作会得】
1
周囲の物品に、製作者の残留思念が宿り、ディアボロスの操作をサポートしてくれるようになる。効果LVが高い程、サポート効果が向上する。
【口福の伝道者】
1
周囲が、ディアボロスが食事を摂ると、同じ食事が食器と共に最大「効果LV×400人前」まで出現する世界に変わる。
【おいしくなあれ】
1
周囲の食べ物の味が向上する。栄養などはそのまま。効果LVが高いほど美味しくなる。
【パラドクス通信】
2
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【アイテムポケット】
2
周囲が、ディアボロスが2m×2m×2mまでの物体を収納できる「小さなポケット」を、「効果LV個」だけ所持できる世界に変わる。
【アイスクラフト】
1
周囲が、ディアボロスが、一辺が3mの「氷の立方体」を最大「効果LV×3個」まで組み合わせた壁を出現させられる世界に変わる。出現させた氷は通常の氷と同様に溶ける。
【水中適応】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」が、クロノヴェーダを除く全ての生物が水中で呼吸でき、水温や水圧の影響を受けずに会話や活動を行える世界に変わる。

効果2

【能力値アップ】LV1 / 【命中アップ】LV5(最大) / 【ダメージアップ】LV7 / 【ガードアップ】LV5 / 【凌駕率アップ】LV1 / 【フィニッシュ】LV1 / 【反撃アップ】LV3 / 【リザレクション】LV1 / 【先行率アップ】LV1 / 【ドレイン】LV1 / 【アヴォイド】LV2 / 【ダブル】LV2 / 【ロストエナジー】LV3 / 【グロリアス】LV2

●マスターより

坂本ピエロギ
 第二次東京奪還戦もいよいよ佳境。坂本ピエロギです。
 本シナリオでは奪還対象となる五区のうち、『北区』が対象となります。
 区の支配者である『不滅侯フェネクス』を撃破し、最終人類史に北区を奪還しましょう!

 攻略順は②→①&③。
 豊島区北側の海から北区へ上陸後、王子駅方面を目指して北上。駅周辺の街中が最初の戦場となります(②)。
 住民を襲おうとしているトループス級の群れを排除し、そのまま街を抜けて北とぴあへ向かいましょう。

 その後、北とぴあの屋上で待ち受けるフェネクスを倒してください(③)。
 空中戦が予想されますので、飛翔を発動していると良いかもしれません(なくても攻撃自体は可能です)。
 戦闘中の会話も可能ですが(①)、イマジネイラのそれを超える重要情報を得られる可能性は低いと思われます。

 五区合同での進行が予想されるため、採用宣言&公開は早めに行う予定です。
 また、成功数を大幅に超えそうな場合、採用数を制限する場合がございます。予めご了承くださいませ。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしています。
74

このシナリオは完結しました。



発言期間は終了しました。


リプレイ


 街は淀んだ空気に満ちていた。
 ディアボロスを迎撃せんとする不滅侯フェネクスの歪んだ決意と、住民の虐殺命令を受けたアシュタロスの使徒の殺意。
 それらが今、瘴気のごとき禍々しさを孕んで北区を包み込もうとしているのだ。

 ――事態は一刻を争う。急がねば。

 ディアボロスたちは豊島区境界線の海岸から上陸を果たすと、北区の王子駅を目指して走り続けた。
 前哨戦として仕掛けた四度の攻勢が奏功し、道中にアークデーモンの姿は見て取れない。
 残っていたであろう戦力も、恐らくはフェネクスが回収したに違いなかった。ディアボロスへ行う最後の抵抗に投入する、もはや数少ない兵力として。それは同時に、もうじき始まる戦いの激しさを予感させるものでもあった。

 そうして、ディアボロスが更に駆けること暫し。
 前方に広がる灰色のビル群に、緑の木々に覆われた小高い山が見えた。
 飛鳥山公園――王子駅の南にある自然公園だ。目的地は近い、そうディアボロスたちが思った矢先である。

『ガシャンガシャンガシャン』
『ウィーンウィーンウィーンウィーン』
『キュラキュラキュラキュラキュラキュラキュラ』

 山の向こう、王子駅の周辺から無機質な駆動音が響く。
 青色の甲冑に包まれた、機械とも悪魔ともつかない不気味なシルエットのトループス級。
 フェネクスの命令を受けて街に現れた、アシュタロスの使徒たちであった。

 このままでは北区の住民は使徒に殺され、搾り取られた畏怖は余さずフェネクスの力にされてしまうだろう。
 無論、そんな真似を許す気はない。
 戦場に飛び込んだディアボロスたちは先を争うように、人に害為すアークデーモンの群れへ突撃していった。
月鏡・サヨコ
アークデーモンはヤ・ウマトと交戦していた種族
今となっては、故郷も私の敵だけど……悪鬼への敵意は変わらない
これより北区を不当に占拠した敵軍を撃滅し、市民を解放する

海上を低空【飛翔】して北区に急行する
上陸後は王子駅への道中および駅周辺で敵と遭遇するたび交戦
偵察時は桂の視野や嗅覚も借りて、効率的に索敵しよう

極力側面や背後から襲いかかるが、市民を庇うためなら真正面に割って入るのも厭わない
接敵と同時に鞘を払い『月鏡流抜刀術・鎌鼬』を解き放つ
神速の抜刀から放つ回転斬撃で敵を一閃だ

混乱状態の市民には声かけを
あの方面は比較的安全だから、逃げて!
逃走経路を指で示したり、桂に先導させたりして駅から離れた方へ誘導を


ネリリ・ラヴラン
悪魔さん達だもの、いざとなったらこの位するよね…
でも、追い込んだのはわたし達だもの、仕方がないで済ませる気はないわ!

こっちに来るならそれはそれで皆が助かるし
多少目立ってしまうのは許容して
【飛翔】でお空から街の人を探して進むね

発見できたら即【高速詠唱】で蝙蝠爆弾を作り出すよ
待つ必要なんて無し、最高速で飛び込ませろー
二匹しか出せない魔法を選んでるけれど
この魔法なら街中にあるくらいの障害物なら避けて飛ばせるからね

起爆させて敵襲に驚いてる間に住民さん達との間に飛び込む
さすがにこの状況なら会話も通じるかしら?

あの悪魔達も、フェネクスさんもディアボロスが倒すからねっ
怖がるよりも応援をよろしくだよ!


 王子駅周辺の作戦区域は大きく二つに分けられる。
 石神井川を挟むようにして、飛鳥山のある南側エリア。駅前のある北側エリアである。
 そして今、南側のエリアを舞台に、最初の戦端が開かれようとしていた――。

「前方に住民を複数発見。アシュタロスの使徒が接近中」
 飛翔で地上の様子を伺っていた月鏡・サヨコ(水面に揺らぐ月影・g09883)が、幼さを残した声で告げた。
 零式英霊機の素体で指差した先には、北区住民の姿が十名ほど。
 そこから百メートルほど北側、駅の方向から向かって来るのはアシュタロスの使徒の群れであった。

『ガシャンガシャンガシャン』『キュラキュラキュラキュラキュラ』
「ひ、ひぃ……」「だ、誰か助けて……!」
 最初の標的を見つけたとばかり、抜刀する使徒たち。
 徐々に距離を詰めて来るアークデーモンの群れに、住民たちは怯えることしか出来ない。
 ネリリ・ラヴラン(★クソザコちゃーむ★・g04086)は召喚したコウモリたちを従えながら、サヨコに視線を送った。
「使徒は五体、伏兵は見えない。待つ必要も無さそうだし、ふたりで一気に仕留めるのはどう?」
「提案を受諾。これより北区を不当に占拠した敵軍を撃滅し、市民を解放する」
 本来であれば側面か背後から仕掛けるのが理想だったが、人々の命には代えられない。
 サヨコはパンツァーハウンドの桂に周囲の索敵を怠らぬよう告げると、ネリリと共に飛翔の速度を上げていった。

「それにしても住民の虐殺だなんて……悪魔さんだもの、いざとなったらこの位するよね」
 眼下に広がる王子駅周辺を凝視しながら、ネリリが呟く。
 使徒たちの冷酷な駆動音と、助けを求める人々の悲鳴。北区の街は夕日に照らされ、まるで鮮血に染まったよう。
 そんな紛うことなき破滅の光景から、ネリリはけして目を逸らさない。
「アークデーモンを追い込んだのは、わたしたちディアボロスだもの。仕方がないで済ませる気はないわ!」
「今となっては、故郷も私の敵だけど。……悪鬼への敵意は変わらない」
 ヤ・ウマト出身であるサヨコもまた、アークデーモン必滅という点において、この戦いに抱く想いは同じ。
 住民を庇うように割り込んだ彼女は、己が間合いに使徒たちが入ったことを確かめるや、即座に攻撃を開始した。

「『銀鉤』抜刀──斬り捨てる!」

 ブゥン――昆虫の羽音にも似た音が、戦場に木霊する。
 電気投擲鞘『斗號』の電磁誘導加速機構が、サヨコの対艦軍刀を射出する音だ。回転斬撃の一閃は、使徒の群れに回避さえ許さず、その身体を容赦なく撫で斬りにしていく。先頭の使徒が衝撃に耐え切れず爆散。盛大に飛び散った破片の中をサヨコはくるりと舞って着地すると、呆然とへたり込んだ住民たちを振り返り、叫ぶ。
「南の方は比較的安全だから、逃げて。桂、彼らの誘導を!」
「あ、ありがとうございます……!」
 パンツァーハウンドの桂に付き添われ、立ち上がる市民たち。
 前方にはいまだ数体の使徒が残っているが、そちらの方は問題なかった。
 ネリリの奏でる星なき夜の交響曲が、すでに決着を告げていたからだ。

「狙いはしっかり……ねっ!」

 生き残った二体の使徒めがけ、ネリリの周りを侍るコウモリが立て続けに飛び掛かる。
 魔法で作り出したコウモリ型魔法爆弾が、相次いで起爆。使徒を木っ端みじんに粉砕した。一太刀を浴びせることも許さず使徒たちを瞬殺すると、ネリリは住民を振り返って頷く。
「残った使徒たちも、フェネクスさんも、北区の悪魔はディアボロスが倒すからねっ。応援をよろしくだよ!」
「はい……ありがとうございます!」「がんばって下さい!」
 ネリリの言葉に、住民たちは口々に感謝の言葉で応じてきた。
 その様子に、フェネクスの歌で洗脳されている様子はない。奪還戦でディアボロスが畏怖を払い続けた成果であろう。
 避難していく住民を見送って程なく、誘導を終えた桂が戻って来ると、ふたりは再び北区の空へと飛翔する。
「他の仲間たちも戦闘を始めたみたいだね。見た感じ、市民の犠牲者も出てないみたい」
「戦況は良好と判断、行動を再開する」

 周囲を索敵しながら、ディアボロスたちは北とぴあとの距離を縮めていく。
 悪趣味な歌声で人々を操っていた、北区のアークデーモン『不滅侯フェネクス』。
 その終焉を、悪魔の断末魔で締めくくる為に――。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】LV2が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【グロリアス】LV1が発生!

月下部・小雪
北区、奪還の時です。
虐殺なんてさ、させません。街のみんなはボク達が守ります!
街のみんなを守って、僅かに残ったアクマに対する畏怖も吹き飛ばしてやり、ます!

北区に上陸したら、急いで虐殺の現場に向かって駆け出します。
アシュタロスの使徒を見つけたら、抱えていたコダマを解き放ちます。
【超高機動型モーラット・コミュ】になったコダマが住民のピンチに急行、です!

コダマがヒット&アウェイで牽制しているうちに住民さん達を安全な場所まで避難させます。
みなさん、安心してください。このまま、ボク達がフェネクスもやっつけてきます!!

※アドリブ連携大歓迎


秋風・稲穂
もう大同盟としての体裁は保てないね、これじゃあ
一斉奪還…ここまで仕込んだんだ、最大戦果を勝ち取ってやろうじゃん

上陸し、Burn the darkとL・デルフェスを抜刀
一般人を襲っているアシュタロスの使途を見かけたら戦端を開く!
パラドクス通信で味方と連絡を取り、敵の位置情報を共有
【ダッシュ】して距離を詰め一般人を守るよう位置取りして戦おう
雷波一閃を発動し、剣に雷を込める
そして大きく【薙ぎ払い】、アシュタロスの使途に攻撃しよう
なるべく此方に引き付けるように立ち回り殲滅していくよ

敵の攻撃は【斬撃】で斬り払い、体に直撃しないように逸らしてダメージをコントロール
前座で倒れる訳にはいかないからね!


エヴァ・フルトクヴィスト
東京の第二次奪還戦は新宿島の転移を必要としないとは、
私達も成長したということでしょうか。
北区の奪還、為しましょう!

まずは私達に抵抗する為、畏怖の感情を得ようと人々処刑されようとしている。
何としても阻止しないとですね!

アイスクラフトで障害物を生み出して襲われた人々の分断や特攻の動きを攪乱や制限。

これ以上は好き勝手にはさせませんよ!

相手の攻撃は精神を集中した観察と殺気から看破して、
氷像と共に駆けまわる事によるフェイントや残像によって回避を試みて。
そのまま残った氷像による浄化の力を込めた魔法の砲弾による弾幕や斬撃などを叩き込み、相手を吹き飛ばしますよ!

悪魔の畏怖の支配は今日この日で終わりにします!


 人口が密集する王子駅の北側へ向かうにつれ、戦いは激しさを増していった。
 あちこちで響く悲鳴と絶叫。それを塗り潰すように轟くのは、アシュタロスの使徒たちが奏でる駆動音だ。

『ガシャンガシャン』『ウィーンウィーン』『キュラキュラキュラ』
「ま、まずいです。敵はボクたちより、街の人たちを優先して狙ってるみたいです」
 月下部・小雪(おどおどサマナーところころコダマ・g00930)は、発見した敵の下へと急ぎながら仲間たちに告げた。
 先程から挑発も兼ねて上空を飛翔しているというのに、敵が小雪を狙ってくる気配はない。
 攻撃の好機に飛びつかないのは、虐殺を優先する気なのか、あるいは迎撃も出来ぬほど兵の数が足りないのか――。

「……恐らくは、両方でしょうね」
 エヴァ・フルトクヴィスト(星鏡のヴォルヴァ・g01561)はそう呟いて、唇を噛む。
 使徒は駅前に展開し、手当たり次第に人々を襲うつもりらしい。放置すれば死傷者が出るのは時間の問題だった。
「住民の方々の処刑、何としても阻止しないとですね。急ぎ敵を撃破しましょう」
「その為にも、チーム間の連絡は密に取りたいね」
 秋風・稲穂(剣鬼・g05426)はパラドクス通信を発動、連絡用の通信機を顕現させた。
 戦場は王子駅を中心とした半径数百メートル程度。通信可能な半径1kmには余裕で収まる範囲だ。
「ここまで仕込んだんだ、最大戦果を勝ち取ってやろうじゃん。行こう、皆!」
 アークデーモンには一片の慈悲も与えない。
 そんな決意に満ちた稲穂の言葉にエヴァと小雪もまた頷きを返し、使徒の下へと急行するのだった。

『ガシャンガシャン』『ガシャンガシャン』『ウィーンウィーン』『ウィーンウィーン』
 隊列を組んだ使徒の腰部キャノン砲が狙い定める先。
 そこに並べられた大勢の人々は、ただ訳も分からず涙を浮かべていた。
 なぜ、フェネクスに従ってしまったのだろう。どうして悪魔に抗うことが出来なかったのだろう……。
 そんな無念と後悔の涙を流す彼らに、悪魔の砲口がひとつ、またひとつと狙いを定め――。

「これ以上、好き勝手にはさせませんよ!」

 高らかな宣言と同時、戦場の大気が瞬時に凍り付いた。
 次いで、使徒の前を塞ぐように現れたのは大人ほどの巨大な氷塊。それらがパラドクスの輝きを放ちながらひとりでに姿を変え、術者のエヴァを象った氷像へと姿を変えていく。
 エヴァが駆使する魔術、氷像の復讐者だ。氷の刃を構えた氷像たちは、エヴァの号令一下、一斉に使徒へ斬り掛かる。
「識りなさい、美しくも散りし復讐者たちの氷像たち、その闘いを!」
 氷の斬撃が、使徒の戦列を蹂躙する。
 アイスクラフトを住民用のバリケードに設けながら、容赦なく使徒を切り刻むエヴァ。
 その後方では稲穂と小雪が人々を助け起こし、安全な場所へ逃げるよう指示を飛ばす。

「ネリリとサヨコに連絡が繋がった、避難経路は確保してくれているそうだ。
 ……住民の皆さん、アナタたちは区の南側へ避難して! 急いで!」
「大丈夫、安心してください。このまま、ボクたちがフェネクスもやっつけてきます!!」

 励ましを聞いた住民の眼に希望が灯るのを、稲穂と小雪は確かに見た。
 ふたりの言葉を証明するように、透き通ったバリケードを隔てた先では今なおエヴァが使徒相手に奮戦を続けている。
 北区の人々を一方的に踏み躙る恐怖の存在、アークデーモン。其れが討ち取られているという事実は、フェネクスの歌などより遥かに雄弁に人々の心へ訴えた。
 そして同時に、彼らは理解する。フェネクスが敷いた恐怖の日々に、ついに終わりが来たことを。

「助かった、ありがとう……!」「負けないでくれ、どうか!」
 感謝の言葉を送りながら、戦場を離れていく住民たち。
 そこへエヴァの攻撃から逃れた使徒が、刀を構えて斬りかかろうとした矢先、その視界が妙なものを捉えた。
 人間でもアークデーモンでもない、真っ白ふわふわな塊。小雪のモーラット・コミュ、コダマの姿を。
「きょ、今日のコダマは竜巻のような荒々しい動きで、行きます!」
 装着したスラスターで一気に体を推進。高出力ブースターで増幅加速したコダマが光のごとき速度で使徒へと迫る。
 バーニアで制御した姿勢で放つ高速機動の旋回式連装ビーム砲は、寸分たりとも狙いを過つことはない。
 全身をビームで串刺しにされ、爆発四散する使徒。戻って来たコダマをギュッと抱き締めて、小雪は決然と告げた。
「さ、させません、虐殺なんて。街のみんなはボクたちが守ります!」

 救援と避難と戦闘と、すべてを淀みなく遂行していくディアボロス。
 そんな彼女たちの猛攻の前に、アシュタロスの使徒はみるみる数を減らし、気づけば片手で数える程まで減っていた。
 稲穂はBurn the darkとL・デルフェスを構えながら、哀れみを込めた溜息を漏らして見せる。
「もう大同盟としての体裁は保てないね、これじゃあ。……まあ、もっとも――」
 残った四区も全部、私たちがディアボロス潰すんだけど。
 そう言い終えるが早いか、稲穂は必殺の構えを取った。
 剣に込めた雷をもって敵群を薙ぎ払う、雷波一閃のパラドクス。それをもって、戦場を睥睨するフェネクスの網膜にしかと焼きつけてやるのだ。
「力を込めて……薙ぎ払う!」
 それは、圧倒的かつ無慈悲な斬撃。
 稲穂が振るう二振りの剣が放つ雷の前に、使徒たちは脆くも直撃を浴びて砕け散るのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】がLV3になった!
【パラドクス通信】LV1が発生!
【アイスクラフト】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
【ダブル】LV1が発生!

園田・詠美
ここまで来て、市民の虐殺なんて許すわけにはいきません!
犠牲を出さずに勝利を掴ませていただきましょう!

一体でも撃ち漏らせば犠牲は必須
スピード勝負ですね……!
魔法発動デバイスに騎乗して【飛翔】
敵の目にもはっきりと見えるように高度を上げて、最大速度で敵の下へと向かいます!
ここでこんな手を打ってくる相手です、敵を見つけたら逃げ隠れてこっそり一般人を……なんてことより直接向かってくる筈!
姿を隠さず、目立つのも気にせずにいきますよ!

敵の攻撃は集中砲火が直撃し続けないよう動きを止めず、囲まれないように
なるべく固まった敵たちへと魔力砲を放ち、たくさんの敵を巻き込みながら攻撃です
業務、執行ー!


一ノ瀬・綾音
無差別殺人など、させてたまるものかっ!
どこまでも身勝手だねアークデーモンってのは!

敵と一般人の間に割るように入って破竜剣を構え【極星滅龍斬】を放つよ。
時間と威力との勝負だ!
同時に避難勧告も使用して一般人達に逃げるようにしてもらう。
とにかく一般人を守るのを最優先、少しばかり傷つくのは覚悟で動き回って一般人達を庇っていくよ。

フェネクス、こんなことをして一体何になる…!
歌といい今回のことといい、住民はフェネクスのオモチャじゃないんだぞ…!


曖明・昧
「人類のため、死んでくれ。よくわかんないけど。」
昧は赤い剣を振るう。
剣からは赤い妖精が召喚され、敵に襲い掛かる。
敵がもし接近してきたら、昧自身が赤い剣で斬る。
「ウィンウィンガシャンガシャンと……本当に生きているのか。こいつら。よくわかんないけど。」
敵を倒し土地を取り返す。それこそがディアボロスに与えられた役割。使命。
そのために、昧は剣を振り続ける。
もうすぐ、大きな戦だ。少しでも敵を減らしたい。


 飛鳥山から北上したディアボロスは、王子駅前に展開するトループス級との戦闘をさらに激化させていった。
 北区の住民たちを襲うのは、不滅侯フェネクスの差配を受けたアシュタロスの使徒たち。
 住民の処刑という手段を用いて畏怖を取り戻そうとするアークデーモンを阻止すべく、ディアボロスたちは臆することなく使徒の群れへ飛び込んでいく。

「ここまで来て、市民の虐殺なんて許すわけにはいきません!」
 園田・詠美(社畜(元)系魔法少女・g05827)は決意を胸に、駅の南口を目指して飛翔する。
 パラドクス通信機を介して、別行動中の仲間たちと分担エリアを取り決め――それから数分も要することなく、詠美たちは現場に着こうとしていた。
「王子駅の南口……石神井川に面したバスロータリーのある場所……見えたっ、あそこっ!」
「襲われてる人たちがいるし、間違いないね。よくわかんないけど」
 積み重なった飛翔の効果は、僅かなロスもディアボロスに与えることはない。
 一ノ瀬・綾音(星影の描き手・g00868)と曖明・昧(十星連・肆妖『無知蒙昧』・g06110)は言い終えるが早いか、放たれた矢のように突っ込んでいく。
 ロータリーの端で身を寄せ合う住民たち。それをじりじりと追い詰める使徒を見て、綾音の身体が怒りに震えた。

「無差別殺人など、させてたまるものかっ!」

 溢れんばかりの魔力を漲らせ、綾音が跳んだ。
 パラドクスを帯びて放つ縮地は狙いを過たず、使徒との間合いを一呼吸で詰める。
 住民を挽肉に変えようと使徒が放つ突撃。だがそれよりも刹那早く、綾音の身体が割り込んだ。
『ギギッ……!?』
「終わりにしよう。これで――全て!」
 ガードアップで被弾の勢いを殺し、返しざまに極星滅龍斬を一閃。
 義憤を帯びた斬撃は勇者の一撃がごとく、回避も抵抗も許さない。
 巨体を一刀両断されて爆発四散する使徒に目もくれず、綾音は住民の下へ駆け寄って叫ぶ。
「大丈夫? みんな、怪我はない!?」
「は、はい……」「ありがとうございます、ディアボロスさん!」
 住民たちは声を震わせながらも、綾音に感謝の言葉を口々に告げる。
 人々の洗脳が解けていることは別働チームからの連絡で把握していたが、それでも、彼らの姿は綾音の胸を熱くした。
 悪魔に支配され、ただ畏怖を搾取される住民たち。その苦しみを想えば、多少の傷など痛いとも思わない――。

「さあ、急いでここを離れて!」
 綾音が天高く手を翳すと、避難勧告で街中に出現したサイレンがけたたましく鳴り響き始めた。
 まるで見えない手に背中を押されるように、戦場から離脱を開始する住人たち。それを見た使徒たちはフェネクスの命令に殉じるように、なおも武装のキャノン砲を住民へ向けようとするが、
「まあ、無駄な足掻きだよね。――よくわかんないけど」
 昧の一言を合図に、使徒たちは狩られる立場へと一転した。
 刹那、キャノン砲を構える使徒の頭上から、赤色の妖精が群れを為して殺到する。
 昧が空中で振るう剣によって発動したフェアリーコンボだ。パラドクスの粒子を帯びた妖精たちは肉食魚のごとき獰猛さを帯びて、地上の使徒へ我先にと飛び掛かっていく。
「人類のため、死んでくれ。よくわかんないけど」
 妖精に翻弄される使徒を狙い、剣を振るう昧。
 一方の詠美は、そんな使徒たちが一体、二体と切り伏せられていく光景を見澄ましながら魔法陣を展開した。
「魔法単発、プログラム2番展開――」
 Code:"Erymanthian Boar"発動。コード展開によってパラドクスの粒子が凝縮され、巨大な魔力砲へと姿を変えた。
 残る敵はあと僅かだ、長引かせはしない。魔力を充填し、目標を狙い定め、詠美はすぐさま発射準備を完了する。
 そして――昧の剣が四体目の使徒を屠り去った、その刹那。

「業務、執行ー!」

 発射された魔力の奔流が最後に残った使徒を呑み込み、消し飛ばす。
 それは、人類の勝利を誓う戦いの号砲。
 目前に迫った奪還の時を北区全域に報せるように、詠美の砲撃はどこまでも高らかに響き渡るのだった。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​
効果1【飛翔】がLV4になった!
【避難勧告】LV1が発生!
【エアライド】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV3になった!
【ガードアップ】LV1が発生!

神田川・憐音
フェネクス……あたしは、アイツを知ってる
あたしと……弟の運命を狂わせたヤツ……リターナーになる前の記憶
あたし達だけじゃない、これ以上アイツの為に運命を狂わされた人間は出さねーし
だから虐殺とか絶対阻止するわ

何も出来ずに藻掻き苦しんで死ぬのはそっちの方だし?
って片っ端から敵を焼き払いに掛かるよ
炎は絶望の象徴じゃない
人を包む暖かい光とか未来を示す篝火とかそんな感じで
怯える一般人に希望を見せるよ
あたしだけじゃなく此処にいるディアボロスが皆そうだから
勿論フェネクスへの当てつけも込みね

避難は任せたけど怖い思いをした一般人のケアに暖かい飲み物でも振舞うわ
【おいしくなあれ】で美味しくしつつ落ち着いたら幸い?


リューロボロス・リンドラゴ
【避難勧告】発令よ。
周辺の人々に危機を知らせると共に素早く避難させてくれるわ!
無論人々が恐怖に駆られぬよう、我らの戦う姿で《激励》せねばの!

くははははは!
我が闘気砲で撃ち抜いてくれるわー!
街や人々に近い前に出ておる奴らから薙ぎ払っていくぞ!
人々を護るためでもあるが、近づいてこられたら怖がらせることになるであろうしの。
安心させてやらねばの!
万一近づかせてしまおうものなら人々をかばおうぞ!
集中砲火?
我が狙い撃ちにされるというのなら人々は安全よな。願ったり叶ったりよ!

……それにしてもアンデレめ、気負うておるな。
憐音にとっても譲れぬ戦いか。
無理のし時ではあろうが、ディフェンスを入れておこうかの。


ア・ンデレ
「がしゃんがしゃんとうるさいアークデーモンだ。
アンデレちゃんたちのために、ちょっとしずかになってくれ。」

アンデレちゃんは白のブレスを口から吐き出す。
白のブレスはシマエナガの群れ。
シマエナガのブレスは敵のガシャンガシャンを次々とついばみやっつけていくよ。

忌まわしきアークデーモンを滅ぼすため。
まだ名前を聞かないあのアークデーモンと戦うため。
必ず勝って、北区を取り戻す。


 王子駅前を巡る戦いは、すでにディアボロス側の優勢に傾きつつあった。
 飛翔で戦場の状況を把握し、パラドクス通信でチーム間の意思疎通を強化。更には避難勧告による住民避難の補助。
 十名を超えるディアボロスの連携プレーはまるで一つの生物にも似て、戦場を制圧しようとしていたのである。

「これは、いよいよフェネクスもおわりだね」
「そうね。ここで逃がす訳にはいかない、確実に討ち取ってやるわ」
 ア・ンデレ(すごいぞアンデレちゃん・g01601)の言葉に、神田川・憐音(天地を揺さぶる情動・g02680)は頷いた。
 彼女たちがいるのは、駅の北東にある王子駅前公園。土地の形から『三角公園』の名で知られる憩いの場だ。憐音は怯える住民たちを落ち着かせながら、公園の目と鼻の先にある北とぴあを、ちらと仰ぎ見る。

(「フェネクスの姿は、ここからは見えない。でも間違いない、奴はあそこにいる……!」)
 今すぐにでも駆け出したくなる衝動を堪え、憐音は拳を握りしめた。
 リターナーになる前の記憶が告げるのだ。自分と弟の運命を狂わせたのは、あのアークデーモンだと。
 いや、自分たちだけではない。この北区に暮らすどれだけの住民たちが、フェネクスに苦しめられたのだろう。今この瞬間に至るまでに積み重ねられた数多の悲劇を想えば、絶対に負ける訳にはいかなかった。

「……これ以上アイツの犠牲者は出させねーし。だから虐殺とか絶対阻止するわ」
「うむ。憐音、アンデレ! いざ、ひと暴れ行くぞ!」
 憐音の決意を、リューロボロス・リンドラゴ(ただ一匹の竜・g00654)は肯定する。
 ドラゴニアンの翼を広げ、竜へと姿を変えた彼女の眼に映るのは、公園を目指して向かってくる使徒の一団だ。
 集まった住民の存在を嗅ぎつけ、ディアボロスもろとも虐殺する気なのだろう。笑止千万だとリューロボロスは思う。

「くははははは! 我が闘気砲で撃ち抜いてくれるわー!」
 猛々しい竜の咆哮が、北区の空に木霊する。
 同時、闘気を帯びた双竜闘気砲が二重の螺旋を描きながら前列の使徒たちへ直撃。その体を木っ端みじんに粉砕した。
 お返しとばかり敵群の集中砲火がリューロボロスを呑み込むも、ガードアップを重ねた身にさしたる負傷は残らない。
「我が狙い撃ちにされるというのなら人々は安全よな。願ったり叶ったりよ!」
 己が力を誇示するように吼えるリューロボロスの姿は、住民たちを大いに鼓舞してみせた。
 もはやアークデーモンを恐れることはない――その事実を前に、人々は感じざるを得ない。自分たちの中に湧き上がる想いが、希望の二文字であることを。

「別働チームと連絡がついたわ。離脱経路は確保してくれたみたい」
「よーし、アンデレちゃんもがんばる!」
 サイレンの鳴り響く中、住民たちの誘導を開始する憐音。
 アンデレはなおも迫る使徒たちをジロリと睨むと、大きく息を吸い込んだ。
「いけ、シマエナガ、たいあたりだ!」
 そうして――吐息の代わりに飛び出て来たのは、シマエナガの大群だった。
 パラドクス『白のブレス』。アンデレの口から止め処なく溢れるシマエナガたちが、雪崩のごとく使徒の群れへ迫る。

『ピピピ!』『ピピピピ!』『ピピピピピー!』
『ガシャンガシャン!』『ガシャ……』『…………』

「うるさいアークデーモンだ。アンデレちゃんたちのために、ちょっとしずかになってくれ」
 悲鳴めいた鳴き声が途切れ、残骸となった使徒のボディを後に飛び去っていくシマエナガたち。
 永久に静かになっちゃったけどまあいいか、とアンデレは肩を竦め、後方に視線を向ける。
 すでに住民たちは避難準備を整え、戦闘さえ終われば逃げられる状況だ。後はただ、残った使徒を殲滅するのみだった。
「憐音ちゃん、まちのひとたちはだいじょうぶ?」
「オッケー。さ、とっとと終わらせるわよ!」
 憐音は戦列に復帰すると、敵に最後のとどめを刺すべく、鳳凰炎舞食譜大全を発動しながら叫ぶ。
 今もどこかで、この戦場を眺めているであろうフェネクスへ届くように。
 住民たちを恐怖させた炎が、人々の希望となるように。

「炎は絶望の象徴じゃない。人を包む暖かい光であり、未来を示す篝火なのよ!」
 憐音の背から顕現した悪魔の翼と炎が、最後に残った使徒たちを包んだ。
 それは破壊と再生を司るパラドクスの炎。
 破壊の力は使徒の肉体を跡形も無く溶かし、再生の力は天上の美味を創造する力となる。
 そうして使徒が残らず消滅した後、特級厨師である憐音の炎が生み出したのは、温かな生姜の香りであった。

「はい、これ。後でゆっくり飲んでね」
 そう言って憐音が住民たちに手渡したのは、温かな葛湯だ。
 おいしくなあれの効果を込めた彼女の一品は、飲む者の身と心を、芯から温かくしてくれることだろう。
「何から何まで、ありがとうございます……」「ディアボロスさん、頑張って!」
 受け取った人々はみな笑顔を浮かべ、お礼の言葉を残して避難していく。
 憐音はそれを見送った後、リューロボロスとアンデレを振り返り、頷く。
「二人とも、ありがと。もうすぐフェネクスとの決戦だね」
「うむ。彼らの為にも、負ける訳にはいかぬ!」
「アンデレちゃんがんばる! とってもがんばる! おー!」

 住民を処刑し、畏怖で力を増そうとした不滅侯フェネクス。
 その目論見はディアボロスたちの戦いによって、じきに挫かれるだろう。
 北区の支配者にして不死鳥の名を騙るアークデーモンの絶望する時は、着々と近づいていた。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​
効果1【おいしくなあれ】LV1が発生!
【避難勧告】がLV2になった!
【建造物分解】LV1が発生!
効果2【リザレクション】LV1が発生!
【先行率アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV2になった!

シル・ウィンディア
虐殺だなんてそんなの許せるわけないでしょっ!
畏怖の為だか何だか知らないけど、止めて、そしてあなたも討つっ!

飛翔で目立つように動くよ
こっちに意識が向くなら、他の人から意識は少し外れると思うしね。
目立つなら、目立つなりの戦いたかがあるっ!

飛翔移動しつつ、高速詠唱からの竜雪光風撃。
竜の息吹、遠慮せずにもってけーっ!

狙う敵は味方が攻撃した敵を中心に敵数を削ることを優先していくよ。
数が減れば、殲滅スピードも上がっていくしね。
敵数が減ってきたら、一旦着地してそのまま陸戦に切り替え。
地上でも動き回って、攪乱をしつつ攻撃を繰り返すよ

さて、不死鳥さん
畏怖を集めるのを阻止したよ。
次は、あなたの番だからっ!!


アンゼリカ・レンブラント
片っ端から処刑しろとかさぁ
北区出身の私を前に良く現れたね
きっちりやっつけるから覚悟しろ!

熱い心を胸に秘め頭は冷静だよ
仲間の残留効果で飛翔できるなら飛び敵と人々を確認
勇気を胸に、人々を悪魔から守るよう入りパラドクスで攻撃
「大丈夫!私達がいるよ!
フェネクスの歌が響くことはもうない!」

言葉を叫びながら仲間と動きを合わせ
人々を狙う敵個体を優先的に倒し、
必要あれば身を挺して庇い
敵数を減らすべく消耗の多い敵から倒していくよ

アシュタロスの使徒と戦うのも長いね
でもそろそろ終わりだよ
人々の安全を確保したら、殲滅を狙っていく

全力の《天輪輝星》を打ち込んでいくね
私の裁きの光よ、最大まで輝き故郷を汚す悪魔を滅ぼせっ!


 王子駅前に展開したアシュタロスの使徒は、ディアボロスの攻勢によって着々と数を減らし続けていた。
 一方で、アークデーモン勢力が処刑できた住民はいまだゼロ。
 ディアボロスの強さと執念を甘く見た代償は、いま悪魔たちにとって最悪の形で示されようとしていたのである――。

「別働隊から連絡だよっ。避難誘導の準備、出来たって!」
 パラドクス通信機から届いた報告を、シル・ウィンディア(虹霓の砂時計を携えし精霊術師・g01415)が告げた。
 その言葉が示すように、王子駅の周辺はほぼ無人。戦場のあちこちに転がる無残な骸は、どれも使徒のものばかりだ。
 シルは油断は禁物と自らに言い聞かせると、同行するアンゼリカ・レンブラント(光彩誓騎・g02672)に視線を送る。

「思い切り目立って戦おう! わたしたちに意識が向けば、注意も惹きつけられる筈だしねっ!」
「そうだね。後はここの人たちに逃げて貰えば、避難も完了かな」
 そう言ってアンゼリカは、地上で避難の準備を終えた住民たちを見下ろした。
 二人がいるのは、駅の北東に位置する柳田公園の上空。距離にして、北とぴあから東に200mほど離れた地点だ。
 そこから少し離れた路上には、北とぴあを背に公園を目指して進んで来る使徒の群れが見える。避難の安全を確保するためにも、彼らの排除は絶対条件だった。

「片っ端から処刑しろとかさぁ。北区出身の私を前に良く現れたね……!」
 刺すような眼光をアークデーモンの群れに向けて、アンゼリカは拳を握る。
 北区の前哨戦にも参加してきた一人であるだけに、奪還にかける思いは並々ならぬものがあった。
 積み重ねて来た勝利を、人々の想いを、ここで無にする訳には絶対にいかない。

「きっちりやっつけるから覚悟しろ!」
 その一言が、開始の合図となった。
 アンゼリカはシルに先んじて、使徒めがけて降下を開始する。
 住民の避難に仲間のフォローが見込める今、絡め手に頼る必要はない。一秒でも早く、あの敵を殲滅するのみだ。
「私の裁きの光よ、最大まで輝き故郷を汚す悪魔を滅ぼせっ!」
 アンゼリカの全身から輝く星々が放出され、地上へと降り注ぐ。
 勇気を結晶化した天輪輝星のパラドクスだ。裁きの光を帯びた星々は使徒たちを捉え、爆破の渦で飲み込んでいく。
 悲鳴めいた軋みを上げて千切れ飛ぶ使徒の群れ。アンゼリカはその光景を指さして、鼓舞の言葉を住民たちに贈る。

「大丈夫! 私達がいるよ! フェネクスの歌が響くことはもうない!」
 アンゼリカの激励に、割れんばかりの歓声が木霊した。
 これまでにも北区で人々を鼓舞してきた彼女の姿は、多くの者に目的されている。
 彼らのために戦ったアンゼリカを直に見た人々も、もしかすると、あの住民たちの中にいるのかも知れなかった。
「さて、決着と行こうか」
「うん。任せてっ!」
 アンゼリカの言葉に頷くと同時、シルの全身をパラドクスの光が包み込んだ。
 その背に顕現するのは1対の光翼。
 陽光にも似た癒しの波動が人々を優しく包み込む中、迫る使徒たちを、凍てつく吹雪が覆い尽くす。
「竜の息吹、遠慮せずにもってけーっ!」
『ガ……ガガ……』『……――!!』
 高速詠唱から放つ竜雪光風撃の一撃は、断末魔さえ許さずに使徒たちの肉体を無へと帰した。
 そうしてトループス級との戦いが幕を下ろし、住民たちが戦場を離れていく中、シルは北とぴあへ視線を向ける。
 畏怖を得ることに失敗し、もはや守る者もいなくなった北区の支配者――不滅侯フェネクスへと。

「さて、不死鳥さん。畏怖を集めるのを阻止したよ」
 果たして、そんなシルの言葉が聞こえてか否か。
 全身の炎を激しく立ち昇らせ、フェネクスはディアボロスに傲慢な笑みを投げつける。事ここに及んで見苦しい振舞いを見せないのは、敗残の将としての、せめてもの矜持なのだろう。
 アンゼリカはそんな敵を見て、深呼吸をひとつ。最後の決戦に向けて意識を研ぎ澄ませる。
「あいつを滅ぼせば、ついに北区が戻って来るんだね。……行こう!」
「うん。不滅侯フェネクス、次はあなたの番だからっ!!」

 アークデーモン大同盟の一角、北区を治める不滅侯フェネクス。
 真っ赤な夕陽で染まった領土を舞台に、最後の決戦が始まろうとしていた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】がLV5になった!
【照明】LV1が発生!
効果2【グロリアス】がLV2になった!
【ガードアップ】がLV2になった!

『ララ……ラララ……♪』
 夕陽に照らされた北とぴあの屋上。
 自らの玉座に等しいこの場所で歌を紡ぎながら、不滅侯フェネクスは悠然と微笑みを浮かべた。

『ようこそディアボロス。私が不滅侯フェネクス、北区の支配者だ』
 屋上へと現れたディアボロスの一人一人へ、臆することなくフェネクスは告げる。
 住民の処刑に失敗し、畏怖による強化は叶わず、配下であるアシュタロスの使徒はことごとくが討死。
 そんな絶望的ともいえる状況にあって、しかしこのアークデーモンが勝利を諦めた様子は微塵もない。

『お前たちは素晴らしい。只の人間では湧かなかった芸術品のイメージが、次々と湧いて来ているよ。
 さあ、見せてくれ。聞かせてくれ。この私を満たす最高の「美」を、お前たちの命でな!!』

 夕焼けの照らす空へゆっくりと浮上しながら、どこまでも傲慢に言ってのけるフェネクス。
 そんな北区の主にディアボロスたちもまた、刃を突きつけることで答えとする。
 ここで止まる訳にはいかない。アークデーモン大同盟を崩壊させ、七曜の戦に備えるためにも。

 最後に響くのは、フェネクスの歌声か、あるいは人類の歓声か。
 北区を巡る、最後の、そして最大の戦いが始まろうとしていた。
神田川・憐音

【宿敵主】ね一応
聞き出すような秘密はないって話だし、宣戦布告がてら喧嘩売って来るよ
ついでに何かヒントになるような情報があればラッキー的な?


人の精神を虚ろにする歌とか、区全体まで及ぼすような範囲の権能をどこで拾ってきたか知らんけど
虐殺で畏怖を集めようとか思った時点で、歌を捨てたアンタは芸術家失格でしょ?

音楽で人間の自由と尊厳を奪う奴は赦せねーし
今ならわかる。アンタみたいな奴をブチのめすためにあたしはリターナーとして蘇って此処に還って来たんだって

エセ芸術家の作品に何てあたし「達」はなるつもりねーし。復讐者舐めんな!
あと北区の人間だってアンタの支配を逃れた奴だって居るから。人間も舐めんな!


 肌のひりつく熱気を、戦場の空気が帯びる。
 熱の源は、紅蓮の炎をまとう一体のアークデーモンだ。北区の支配者、不滅侯フェネクスその者であった。
 否、支配者という名は相応しくなかろう。畏怖も配下もすべてを失った今、彼には支配する民も土地もないのだから。
 だが、そんな死地に在って尚、このは勝利を諦めてはいなかった。

『さあ、私に見せてくれ。この私を満たす最高の「美」を、お前たちの命で!』
「なに言ってんだか。虐殺で畏怖を集めようとか思った時点で、アンタは芸術家失格でしょ?」
 神田川・憐音(天地を揺さぶる情動・g02680)が、刺すような視線を向け、告げる。
「不滅侯フェネクス。その下らない歌で、これ以上一人だって殺させない!」
 大同盟の主な情報は、イマジネイラから既に得た。
 情報収集に手間を割く気はない。会話で多少情報を得られれば儲けもの、その程度だ。
 故に憐音が投げるのは、純粋な挑発であり宣戦布告の言葉である。フェネクスの非道な振舞い――音楽で人間の自由と尊厳を奪い、弄んで殺すという行為は、彼女が絶対に赦せぬことであったから。

「今ならわかる。アンタみたいな奴をブチのめすために、あたしは蘇って此処に還って来たんだって」
『此処に還って来た、か。……ふふ、私が作品にし損ねた「誰か」だったかな?』
「今日ここでアンタは滅ぶ。教えてやれるのは、それだけ」
 憐音とフェネクス。
 お互いが言葉をぶつけ合うたび、戦場の熱気が増していく。
 決意、悲願、殺意、怒り。あらゆる感情がせめぎ合い、北区の空に満ちていく。
『強き意思を持つ者ほど、それが燃える時の悲鳴も美しい。……さあ、もう私に我慢をさせないでくれ』
 歓喜に身を震わせるフェネクスを、憐音は真正面から睨む。
 同盟の情報は得られなかったが、それは最初から想定していたこと。
 これから自分たちが為すべきは只ひとつ、フェネクスを完全に滅ぼすことのみだ。

「復讐者舐めんな! 人間舐めんな! アンタは今日で廃業だ、エセ芸術家!」
『良い眼だ、ディアボロス。嘆き、藻掻き、絶望しながら美しく死んで行け!』

 両者の投げたその言葉が、合図。
 戦場に駆けつけた復讐者たちは、今こそフェネクスを滅ぼさんと殺到していく。
 アークデーモンを駆逐し、北区を奪還し。そして、歪められた歴史に終止符を打つために!
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【プラチナチケット】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!

ヴェルチ・アリ
シエル(g01847)と共に参加。

悪いけど、シエルの言う通りだ。不滅を超えて、灰すら残さず燃やし尽くしてみせようか。

こんなに良い天気だ。清々しい、幕開けにして、幕引きの日だ。
そんな日に、それに似合わないお前のような奴は…。
地獄の業火で、焼かれるべきだ。

【火炎使い】を使い、相手の炎を呑み込みそして焼き熔かして反撃する。
【飛翔】と【エアライド】を使い、空中へ逃げる相手を逃がさず。
【パラドクス通信】を使い、連携し、声を掛け合い、幻惑に耐える。

で。何逃げようとしてるのかな。
堕ちるというならお前が墜ちろ。
見下してばかりなんだ、自分も地獄へ引きずりこまれてみないとね?

アドリブ、絡みを歓迎します。


シエルシーシャ・クリスタ
ヴェルチ(g03614)と参加
アドリブ・連携も歓迎

自称、死を演出する芸術家か。
理解も共感も一切できないし、評価にも及ばないけど。
ミカエルに降らず、命よりも自分を曲げない事を選んだことだけは芸術家っぽいね。
……もしかして、自分の最期を芸術的に彩って散るのがお望みかな。
だとしたらお生憎様。お前はただ散って、ろくに思い返されることなく消える。
お前には何も遺せない。私達が残させない。

呪詛の『手』を伸ばそう。何処まで舞い上がっても追い縋るように。
幻惑されようと、呪いに内から叩き起こされるだろうね。
私の心が弱った所で、かえって『手』は勢いを増すだけだけど。
どうあれお前は『手』から逃げられず、命を啜られる。


 アークデーモンと称されるクロノヴェーダが支配する区において、人間の扱いは様々だ。
 処刑ショーの生贄に利用される区があれば、極端な貧富で互いを憎悪し合う区もある。
 例は他区でも多々あるが、そこに共通するのは、人間は畏怖を得るモノとしてしか生きられないということ。それは無論、ここ北区においても例外ではない。

 北区の支配者、不滅侯フェネクス。
 芸術家を自称するこのアークデーモンにとって、人間はいわば”素材”である。
 自らの芸術を表現するため、洗脳の歌で畏怖を得るための、道具。それが北区の住民たちの置かれた状況だった。
「でも、それももうお終い。お前は今日、ここで私たちが滅ぼすから」
 シエルシーシャ・クリスタ(水妖の巫・g01847)は戦場を飛翔しながら、そう告げた。
 静寂の帳が降りた北区の上空では、ディアボロスを迎え撃たんとするフェネクスの姿が見える。
 不死鳥にも似た全身から立ち昇る炎は夕陽よりも紅く、禍々しい。いまだ圧倒的な存在感を放ちながら君臨する支配者――その眺めに、ヴェルチ・アリ(火喰らい・g03614)は万感の思いを込めて、呟く。
「良い天気だ。清々しい、幕開けにして、幕引きの日だ」
 北区を最終人類史に奪還することは、ヴェルチとシエルシーシャ、そして全てのディアボロスの悲願だ。
 大同盟の主たるイマジネイラさえ討った彼らに包囲された今、フェネクスの勝機は絶無。
 よしんば勝利しても、大天使か、あるいは七曜の戦で対峙する他勢力の前に、アークデーモンは敗北を免れないであろう。シエルシーシャはフェネクスとの距離を詰めながら、ふいに問いを投げた。

「……もしかして、自分の最期を芸術的に彩って散るのがお望みかな」
『想像にお任せするよ。尤も、鑑賞できない芸術など私にとっては無価値だがね』
 悠然と構えを崩さぬまま、フェネクスはそう返した。
『滅びにこそ美は宿る。お前たちが末期にどんな悲鳴を上げるか、今から楽しみだよ』
「……まだ、自分の置かれた状況が分からないんだね」
 いまだ勝利への執念を捨てようとしないフェネクスを見据え、シエルシーシャは淡々と告げた。
 自分たちは死なない。お前はこれから滅ぼされ、何者にも思い返されることなく消えるのだと。
「お前には何も遺せない。私たちが残させない」
「シエルの言う通りだ。不滅を超えて、灰すら残さず燃やし尽くしてみせようか」
 相容れぬ相手であることは最初から承知だ。
 語るべきことは最早ない。後は只、いずれかの死をもって終止符を打つのみ。
 シエルシーシャとヴェルチは互いに頷きを交わし合い、静寂のうちに決戦の火蓋を叩き切った。

「シエル、先攻は任せる。派手な奴をお見舞いしてやるといい」
「うん。分かった」
 短いやり取りを経て、シエルシーシャは飛翔の速度を上げた。
 距離が縮まるにつれ、フェネクスの肉体から放たれる凄まじい熱気が少女の肌を焼く。
 あの炎をまともに浴びれば、黒焦げは免れまい。装着した小型パラドクス通信機を介して伝わるヴェルチの息遣いに勇気を奮い立たせ、シエルシーシャはフェネクスを射程に捉え込んだ。
「ナックラヴィー、呪え、縋れ、啜れ」
 次の瞬間、無数の水溜まりが空中に顕現する。
 フェネクスを取り囲み、一斉に波打つ水面。それを突き破って現れたのは、大小無数の『手』だ。
 限定開封:水底の招き手――召喚された異形の手は先を争うようにフェネクスの身体を掴み、その生命を啜り取る。
「どれだけ逃げても無駄なこと。お前は『手』から逃げられず、命を啜られる」
『なるほど、水か。では私は、炎をもってお返ししよう!』
 フェネクスが悠然と手をかざすと、全身の熱波はみるみる勢いを増した。
 肉体を闇の炎に包まれ、幻影の見せる苦悶に身をよじるシエルシーシャ。フェネクスはその光景を悠然と眺め、告げる。
『鳳ヲ前二比翼ノ鳥ハ地ヘ墜ツ。さあ、どのような最期が見られるかな?』
「堕ちるというならお前が墜ちろ!」
 刹那である。上空に声を木霊させ、フェネクスめがけ急降下してくる者がいた。
 マッジョの炎剣を発動したヴェルチだ。
 炎の尾を引いて放つ加速突撃。パラドクスで圧縮した蒼炎の刃は、悪魔の紅炎をその肉体もろとも断ち、穿つ。
「見下してばかりなんだ、自分も地獄へ引きずりこまれてみないとね? ――焼き、斬る!」
『ぐ、おおぉ……っ!』
 苦痛の呻きを漏らすフェネクスの熱波をヴェルチはガードアップで防ぎながら、地上のシエルシーシャへ視線を向けた。
 幸いにして傷は浅いようだ。支障はないと伝える彼女の声に、通信機を手にしたヴェルチは安堵の息を漏らすのだった。

「良かった。本当に……」
「ありがと。……声、聞こえてたから」
 互いに短い言葉を交わし、二人は戦場を仰ぎ見る。
 いまや上空では、応援のディアボロスとフェネクスとの戦闘が新たに始まろうとしていた。
 大同盟の一つ、北区決戦。その死闘をディアボロスが制する未来を、先鋒を務めた二人は静かに願うのだった。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【熱波の支配者】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【ドレイン】LV1が発生!

伏見・逸
(連携アドリブ歓迎・残留効果はできるだけ有効活用)
生憎、芸術的云々はさっぱりわからねえ
俺なんぞ火にくべたところで、汚い花火にしかならんだろうが
てめえみてえなのを楽しませてやるのも癪だし、それはそれでいいか

他のディアボロスと連携して動く
【飛翔】し【狙い撃つ災禍】で攻撃
手持ちの武器や翼や尻尾で、当てるまで攻撃し続ける喧嘩殺法
出来る限り敵に張り付き、攻撃の手は緩めない

闇の炎とやらが意思を奪うってんなら、余計なもんから捨てて研ぎ澄ます
てめえをぶっ潰すって、それだけ残ればいい
生命力を奪うってんなら、使える力を全部戦いにつぎ込んで、動ける間にてめえを仕留める
禍に潰される前に、殺せるもんなら、殺してみろよ


ロキシア・グロスビーク
アドリブ連携ご自由に

迫る決戦に対して、支配者のやり方も三者三様かあ
畏怖稼ぎ。きみなりに考えてのことなんだろうけどさ
……正直言って、見苦しいよ
脱出に手を尽くしたイマジネイラのほうが、ずっと美しかった
“魔槍”の穂先を向けて

……ッ。流石にジェネラル級。術の阻害が強い、捉え切れない……
けど、諦めてあいつをほっとくなんて死んでも御免だ
ここで一番怖いのは、やり遂げられないこと!
槍を強く握り締め、
Moon-Childを両脚に集中・活性化し猛然と【ダッシュ】!
心裡より幻惑や炎を弾き飛ばすように障壁を展開
【エアライド】も使い勢いそのままに突撃、敵を貫く!
フェネクス!アートなら……きみの死に様でやってよねッ!


月鏡・サヨコ
「只の人間」なんて言うけれど……
貴様こそ「只のアークデーモン」に過ぎない
偶然北区を支配していたから、今回の作戦目標になっただけ
特別などと思い上がらないで

炎の嵐に制圧され、弾を焼き尽されるぐらいなら、一気に懐に入るべきか
敵が巻き起こす炎の合間を【飛翔】で縫うように飛び進み、敵へと接近
肉薄すると共に鞘を払い、居合の斬撃を胴めがけて抜き放つ
──『月鏡流抜刀術・迅雷風烈』
神速の袈裟斬りを深々と刻み込み、両断を狙う

反撃の業火からは高速の【飛翔】で距離を取り
【エアライド】の跳躍も絡めて身を躱す
命中弾は≪海戦装用増設防盾≫で受け、本体の負傷を抑制
……私は兵士であり兵器だ
情愛など解さず、貴様に与える歓びもない


 改竄世界史のクロノヴェーダを悉く滅ぼし、奪われた世界を取り戻す――。
 それはディアボロスの心に刻まれた、本能にも等しい復讐心といえる。
 北区は北とぴあに集った復讐者の刃は、今、その心をこれ以上無く滾らせながら、フェネクスとの決戦に臨んでいた。

「畏怖稼ぎ。きみなりに考えてのことなんだろうけどさ……正直言って、見苦しいよ」
 ロキシア・グロスビーク(啄む嘴・g07258)は、魔槍の穂先をフェネクスに突きつけながら、告げた。
 歌の力が失われ、代わりに取った手段は住民の処刑。追い詰められてのこととは言え、その手口は醜悪だ。
 まだしも、脱出に手を尽くしたイマジネイラのほうが、ずっと美しかった――ロキシアはそう言い添える。
「『只の人間』なんて言うけれど……貴様こそ『只のアークデーモン』に過ぎない。特別などと思い上がらないで」
 追い打ちをかけるように告げるのは、月鏡・サヨコ(水面に揺らぐ月影・g09883)だ。
 その言葉に、フェネクスは明らかに感情を害した声で言う。
『私が平凡な存在だと? ……これは随分な侮辱だ』
「侮辱ではない、事実。貴様は偶然北区を支配していたから、今回の作戦目標になっただけ」
 淡々とした口調で紡がれる、否定の言葉。
 そうする間にも、彼女は仲間たちと上空を飛翔しながら、フェネクスとの間合いをじりじりと詰めていく。
 飛翔の効果は既に十分重ねられた。高度も、速度も、ジェネラル級たるフェネクス相手でも申し分ないだろう。

(「奴が使う炎の嵐は厄介。制圧され、弾を焼き尽されるぐらいなら、一気に懐に入るべきか」)
 そんなサヨコの考えは、多少の熱は覚悟の上で、距離を詰めて斬り合うというものだった。
 自分たちがすべきことは至極シンプルだ。あの悪魔を徹底的に叩きのめし、滅ぼす。それのみ。そんな戦いは却って自分に相応しいと、伏見・逸(死にぞこないの禍竜・g00248)は荒々しい鼻息を吐く。
「生憎、芸術的云々はさっぱりわからねえ」
 自分のような復讐者を火にくべたところで出来上がるのは汚い花火が精々だろうと、逸は思う。
 かといって、器用に攻めるようなスタイルは自分の流儀ではない。傷つけ合い殴り合った結果が花火だと言うのなら、その時はそれでいいかと、不敵に笑ってみせた。
「んじゃ、ひとつ暴れるか」
「行こう。北区を取り戻すために」
「月鏡・サヨコ、これより戦闘を開始する」
 逸とロキシア、そしてサヨコ。頷きを交わし合った三人の復讐者が、次々にフェネクスへと攻撃を開始する。

 先陣を切って仕掛けたのは、ロキシアとサヨコだった。
 戦場となるのは上空だ。飛翔の効果を重ねたことで、ディアボロスの飛行能力はもはやフェネクスに遅れを取らない。
 一方のフェネクスは復讐者を正面から迎撃する構え。全身の炎を激しく燃え上がらせ、先頭のロキシアを狙い定める。
『燃え尽きて地へ墜ちるといい。きっと素敵な悲鳴が聞こえる』
「怖れを知る者にこそ、勇気ある戦いを!」
 ロキシアの勇猛な雄叫びが、夕空に響いた。
 勇気の心を障壁に、魚雷のごとき突撃で敵を射貫くフィアレストーピード。だが次の瞬間、障壁で覆ったロキシアの体が、フェネクスの炎に包まれ始める。時空の理が捻じ曲がり、反撃の熱波が先んじて放たれたのだ。
「……ッ。流石にジェネラル級。術の阻害が強い、捉え切れない……けど!」
 全身を焼く炎に歯を食いしばって耐えながら、ロキシアは槍を強く握り締めた。
 ここで止まれば、己の槍はあの悪魔に届かない。Moon-Childを両脚に集中、更に速度を上げていく。
「諦めてあいつをほっとくなんて死んでも御免だ。ここで一番怖いのは、やり遂げられないこと!」
 ロキシアは障壁を更に増し、加速。
 燃え上がる闇の炎に包まれるのも構わず、悲鳴を上げる魂を叱咤してフェネクスめがけて突っ込んだ。
 逃がしはしない。北区の人々の為にも、共に戦う仲間のためにも、ここで止まる訳にはいかなかった。
「フェネクス! アートなら……きみの死に様でやってよねッ!」
 ロキシアの魔槍が、フェネクスの肉体を貫いた。
 フェネクスは血液めいた炎の飛沫を撒き散らしながら牽制の炎を放射するが、復讐心に燃えるディアボロスの前には意味をなさない。炎の合間を縫うように飛翔するサヨコが、湧き上がる衝動を速度に変えながら鞘を放つ。
「──月鏡流抜刀術・迅雷風烈」
『うぐおぉ……っ!!』
 居合いの斬撃がフェネクスの胴を裂いた。
 神速の袈裟斬りが悪魔の肉体を刻み、舞い散る炎の飛沫がますます激しく夕空を汚す。すぐさま反撃の炎が飛んで来るが、サヨコらが積み重ねたガードアップの効果は重く、危険な傷にはなり得ない。
「……私は兵士であり兵器だ。情愛など解さず、貴様に与える歓びもない」
 海戦装用増設防盾で炎の直撃を防ぎながら、淡々と告げるサヨコ。
 そこへ逸がロキシアと替わるようにフェネクスに張り付くと、仕留める好機を執念深く伺い始めた。

「面倒な小細工はいらねえ。殴って殴って殴って殴る、それだけだ」
 武装は端から言うに及ばず、逸の肉体はすべてが武器だ。
 腕、脚、尾、その他すべて――ひとつの例外もなくクロノヴェーダを滅ぼす為に存在する彼が、適切な武器を用いた攻撃の機を見出すのに、さほどの時間は要しなかった。
「殴るっつったら殴んだよ、それを違えた事はねえ」
 逸の尾が、うなりを上げてフェネクスを襲う。
 回転の勢いを乗せて放つ、洗練とは程遠い一撃。どこまでも純粋な執着を帯びた一打。
 それは一分の狙いも過たずフェネクスの肉体にめり込み、鈍い手応えと共に骨を砕いた。
「どうした。禍に潰される前に、殺せるもんなら、殺してみろよ」
 反撃の炎で焼け焦げようとも、逸はまるで頓着しない。
 拳が焦げようが、酸欠で視界が歪もうが、そんなものは構わない。
 目の前に殴る相手がいれば、それだけで十分。使える力を注ぎ込み、動ける間にフェネクスを仕留めればそれで良い!
「余計なもんは捨てて研ぎ澄ます。てめえをぶっ潰すって、それだけ残ればいい」
『この力……成程、イマジネイラを下した者共だけはある。だが、私とて大同盟の末席であることを忘れるな!』
 不快そうに眉を潜めつつも、フェネクスの顔には余裕が残っていた。
 アヴァタール級なら瀕死レベルのダメージを重ねながら、いまだ健在を保つ実力は流石ジェネラル級というべきか。
 だが、炎を帯びたその体にも、刻んだダメージが着実に蓄積されているのは、その場の誰もが感じ取っていた。

「さて。ここからが佳境……かな」
 ロキシアは、ディアボロスとフェネクスの戦いを観察しながら、そう呟いた。
 敵のパラドクスは強力だが、事前に積み重ねた残留効果の助けもあって、何とか対処可能な範囲だ。
 後続の仲間が効果を重ねれば、差はさらに開くだろう。勝利へのきざはしを築いた手応えを胸に、サヨコと逸は新たに駆けつけたディアボロスに視線を向ける。
「遠慮はいらねえ。全力でぶちのめしてやれや」
「後は、あなたたちに託す。……武運を」
 どれほど強大な存在にも、必ず終わりは訪れる。
 北区の支配者である悪魔の下にも、今、終焉の足音が着実に迫り始めていた――。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​
効果1【飛翔】がLV6になった!
【水中適応】LV1が発生!
【一刀両断】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】がLV2になった!
【ガードアップ】がLV3になった!
【反撃アップ】がLV2になった!

ライカ・ネイバー
連携アドリブ大歓迎

やっぱ芸術家気取りってロクなのいねぇな〜
只の人間じゃ湧かないって、発想が貧困て事じゃないですか
モデル頼りじゃ進歩ないですし、トループスからやり直しをお勧めしますよん

全速全開の飛翔で周囲360度を縦横無尽にかっ飛び撹乱
いつ何処から来てもおかしくないぜって思わせときましょ

わぁおー、火炎祭りとはやたら熱そうですねぇ
こっちだって火力なら自信がありますのよ
ピアニー・ブルを構え、炎を防ぎながら突撃〜!

ロケランにレールキャノン
おまけのショットガンを取っ替え引っ替えして〜の
一撃離脱戦法で重火器ラッシュをお見舞いしてやりましょうぞ

芸術品が欲しいって?
そんなら綺麗な穴あきチーズにしてやるぜ〜!


一里塚・燐寧
いやー、芸術はやる気だけで何とかなるもんじゃないねぇ
センスない奴には無理だってのが、きみを見てるとよくわかるよぉ

北区は友達の地元でさぁ
ピーヒャラうるさい小鳥くんに握られてるのはシャクなの
さくっと奪還させてもらうよぉ?

≪テンペスト・レイザー≫を手に全速力・高高度で【飛翔】
頭上を取ってから、仲間の攻撃直後のタイミングで急降下
畳みかけるように『屠竜技:真滅落陽斬』をブチこむよぉ!
位置エネルギーを乗せて、体ごと分厚い刀身を叩きつける捨て身の一撃で、地に墜とし、後続の攻撃に繋げよう
反撃の炎は【アイスクラフト】の氷を壁にしたり、得物の分厚い刀身を盾代わりにして耐えるよぉ
……ほんとの地獄は、こっからだよぉ!


曖明・昧
「残るは君だけだ。北区。返してもらうぞ。よくわかんないけど。」
昧は2メートルほどの巨大な鋏、天廻器『肆妖断』を構える。
「ダンに断てないものはない。君の芸術、断たせてもらう。ダン、暴れてもいいぞ。」
昧の言葉に応え、天廻器『肆妖断』(愛称ダン)は白く美しい姿から黒く禍々しい姿へと変貌する。
昧はダンを両手で構える。
星守者たちの羽織物をはためかせながら飛翔し、フェネクスに突撃する。
そして、フェネクスの体を直接断ちにいく。


 茜色の夕焼けが照らす北区。かつて都民の日常があったその地から、人々の平穏は絶えて久しい。
 奪われた歴史と、引き裂かれた命の慟哭。その無念を晴らす暗い歓喜を帯びた駆動音が、北とぴあの空に木霊した。
 一里塚・燐寧(粉骨砕身リビングデッド・g04979)の鎖鋸大剣、テンペスト・レイザーの唸り声であった。

「芸術はやる気だけで何とかなるもんじゃないねぇ。センスない奴には無理だってのが、きみを見てるとよくわかるよぉ」
 ディアボロスの旋律に乗せて、燐寧が準備運動とばかり回転刃をブンブンと振るう。
 彼女にとって、北区は友達の地元。
 色褪せぬ思い出が眠る土地であり、いわばホームグラウンドのひとつと言って良かった。
「そんな土地がさぁ、ピーヒャラうるさい小鳥くんに握られてるのはシャクなの。さくっと奪還させてもらうよぉ?」
『中々に口の回る女だな。どんな作品に仕上がるか、今から楽しみだ』
 余裕とも取れる燐寧の発言。だがフェネクスは、それを笑って流せる余裕をいまだ残している。
 炎に包まれた肉体のあちこちに走る生々しい傷跡は、軽くないダメージの蓄積を雄弁に物語るもの。しかし、そんな窮地を楽しむように、この悪魔は自身の勝利を疑っていないようだ。

「いやー、ほんと。やっぱ芸術家気取りってロクなのいねぇな〜」
「悪魔の芸術ごっこに付き合う気はない。北区は返してもらうぞ、よくわかんないけど」
 そんなフェネクスの余裕まじりの発言を平然と受け流し、二人の復讐者が得物を突きつける。
 グラインドシールド『ピアニー・ブル』を構えたライカ・ネイバー(ハイパーエクストリームお手伝い・g06433)、そして天廻器『肆妖断』を掲げた曖明・昧(十星連・肆妖『無知蒙昧』・g06110)だ。
 肆妖断は昧の愛用武器であり、ダンの愛称で呼ばれる大鋏。彼の背丈を超える大きさを誇る鋏は、今や昧の意思を帯びて、黒く禍々しい姿へと変貌している。
「不滅侯フェネクス。君の芸術、断たせてもらう」
「さーて全速全開! 追い切れるかな?」
「……ほんとの地獄は、こっからだよぉ!」
 態勢を立て直す時間など与えぬとばかり、昧がフェネクスへ肆妖断の刃を向ける。
 続けてピアニー・ブルを唸らせるライカが、チェーンソーを掲げる燐寧が、次々と飛翔を開始。
 孤立無援となったフェネクスめがけ、一斉攻撃を開始するのだった。

 先手を打った昧は、星守者たちの羽織物をはためかせながら突撃の速度を上げていく。
 彼が狙う先には迎撃態勢を取ったフェネクスの姿がある。幻惑の熱波をもって昧を撃ち落とそうと言うのだろう。昧は構うことなく、速度を最大まで上昇させた。
「ダン、暴れてもいいぞ」
 キィン――昧がフェネクスに突きつける肆妖断が、怜悧な歓喜の声をあげる。
 狙いを過つことはない。フェネクスの機動は、先行したライカの高速機動によって既に囚われている。かの悪魔はすでに、身動き叶わぬ籠の鳥に等しい。
「逃げ場はない。断ち切ってやるぞ。よくわかんないけど」
 パラドクスを帯びた勇猛果断の一撃は輝く光の矢にも似て、フェネクスに激突。人刃一体の一撃を叩き込んだ。
 しかしフェネクスとて易々と墜とされる気はない。脇腹に傷を刻まれた体で即座に態勢を立て直し、熱波と音波を放射しながら応酬を開始する。ダメージを重ねたとはいえジェネラル級の力は未だ健在、敗北などは有り得ない――そうフェネクスが告げようとした矢先であった。

「隙ありっ。ブチこむよぉ!」
 ふいに、フェネクスの頭上からチェーンソーの咆哮が轟いた。
 昧の攻撃に合わせた、屠竜技:真滅落陽斬の急降下突撃だ。命中アップの光に導かれた燐寧は飛翔で最大加速、天から降り注ぐ流星のごとく、パラドクスの光を噴射して翔ぶ。
「昼だろうが夜だろうが、あたしがいる時が逢魔が時だよぉ。きみの命も、地平線に沈めたげる!」
 いや、流星という言い方は適切ではない。
 燐寧のそれは分厚い刀身をもって叩き潰す一撃であり、さながら隕石と言うべきものだ。
 位置エネルギーを乗せた痛烈な突撃は呪詛と怨念を帯びて、超巨大な質量を伴って直撃。フェネクスの脇腹に大穴を穿つ。そこへ更なる追撃を加えるべく、ライカがロケットランチャー『シアン・ホエール』を構えた。
「わぁおー、火炎祭りとはやたら熱そうですねぇ。こっちだって火力なら自信がありますのよ!」
 発射されたロケット弾がフェネクスに着弾。凄まじい爆風が大気を弄ぶ。
 続けて放つはレールキャノン『ソルフェリノ・ディンゴ』のプラズマ弾。電磁加速砲で射出された光球が空気を斬り裂き、炸裂した。悶絶するフェネクスへと肉薄し、ソードオフショットガン『セラドン・グリズリー』を構え、発砲する。
「芸術品が欲しいって? そんなら綺麗な穴あきチーズにしてやるぜ〜!」
 三連続で放つ散弾が、フェネクスの肉体に穴を穿った。
 普通の人間が使えばかすり傷ひとつつかない通常兵器も、逆説連鎖戦が書き換えた空間ならば話は違う。
 ヘルファイアのパラドクスが支配する世界において、ライカの重火器は全てがクロノヴェーダを殺す凶器となるのだ。
「ド派手な超火力コンボってぇやつです! くらえ〜っ!」
 一撃離脱戦法で繰り出すライカの猛攻は猛攻はなおも終わらない。
 ランチャーロケットがから飛び出すたび、紅蓮の翼は衝撃で吹き飛ばされた。
 レールキャノンがプラズマ弾を発射すれば、尾羽の炎は景気よく消し飛んだ。
 そして、凶悪な威力を秘めたソードオフショットガンが弾丸をばら撒くたび、フェネクスの肉体には風穴が開いた。
「穴あきチーズが嫌なら、バーベキューにしてやるぜ! コンガリ焼けろ~!」
「どこにも逃がさないよ。よくわかんないけど」
「バラバラにしたげるよぉ! 覚悟しろー!」
 重火器と、大鋏と、チェーンソーと。
 三位一体となって襲い来るディアボロスの猛攻に、フェネクスは追い詰められていく。
 芸術家を称する悪魔の自負はいまだ揺るがず、しかし其の肉体は着実に限界へと近づきつつあった。

『ふふふ……まだだ、まだ私は死なんぞ! お前たちの死を、至高の美を! この目に焼き付けるまでは、断じて!!』
 どこまでも傲慢な願いを叫びながら、抵抗を続ける不滅侯フェネクス。
 だが、フェネクスは知らない。その願いが叶う瞬間は、けして訪れないということを。
 そのことを彼が理解するまで、あと僅かであった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【アイテムポケット】LV1が発生!
【飛翔】がLV7になった!
【一刀両断】がLV2になった!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
【反撃アップ】がLV3になった!
【命中アップ】がLV4になった!

エヴァ・フルトクヴィスト
貴方の歪んだ美しさを押し付ける北区の支配は今日この日、私達が終わらせますよ!

敵の攻撃には浄化の結界術を身体に沿って貼って、催眠を攪乱。
それでもだめな場合は身体を傷つけて痛みで覚醒を促して。
今度はこちらの番と言わんばかりに勇気を以って追跡。
光使いの知識や殺気から蜃気楼を看破。
飛翔やエアライドの動きと緩急を交えたフェイントで回避しつつ、
斬撃、そして連撃で貫通の一撃で吹き飛ばします!

人々から託された願い、恐怖から解放されたい、そして。
人々を弄ぶ、奪った報いをという想いを込めて!!!

この世に出て来たからには不滅な物などありはしません。
全ては移ろい、変わるもの。その中にこそ本当に美しさがああるのです!


ネリリ・ラヴラン
この世界のどこにも”只の人間”なんていないわ
感情を引き出そうとするのなら、彼等はひとりひとりが唯一のキャンパス
そこに何を描けるかは演者次第って思うの

上空に展開される魔法陣スピーカーから流れるBGMを
【勝利の凱歌】に乗せ、戦場を超えて街の遠くまで届けるよ
彼が死と悪魔への従属を歌うのなら、わたしは明日を生きる希望と自由を奏でる

音と音だから避けるって概念もなくて力業になってしまうけれど
こちら側は一人ではないからね
彼の歌の影響を少しでも抑えつけて皆の心が負けないように援護するわ

それに歌はやっぱり皆の笑顔を作る為に歌いたいね
貴方の芸術センスとはちょっと相容れないみたい?

アドリブや連携は歓迎だよ


月下部・小雪
み、みんなが北区の解放を願ってます。
みんなの想いがあるかぎり、お歌が下手っぴなフェネクスになんて負けません!

ボク達もみんなと一緒に【飛翔】で空中へ、さ、最終決戦です!
フェネクスの酷いお歌になんて負けません。こんな音楽は芸術なんかじゃありません!お歌はもっと素敵な物なのです!
コダマをぎゅっと抱きしめながら【託されし願い】で聞こえてくる微かな声に耳を傾けます。

懸命に耐えながら、みんなの想いをコダマに込めました
い、いきます。ひ、必殺の【コダマ・サンシャイン】です!
プラズマを纏ったコダマがフェネクスに向かって突貫です!

※アドリブ連携大歓迎


 ディアボロスと刃を交え続けたフェネクスの全身には、いまや隠せぬほどの傷跡が刻まれていた。
 支配者の座を追われ、手酷い傷を負ったその姿は、まさに敗軍の将という形容が相応しい。
 一切の逆転を許さぬ形勢にあって、しかしフェネクスは益々愉しげに力を振るい続ける。自身の芸術こそが唯一無二、そう満天下に示そうとするように――。

『ははは、ははははは! やはりお前たちは素晴らしいな、ディアボロス!』
 窮地に追い込まれるほどに、フェネクスの振るう力は冴えを増していった。
 戦場の空を満たす音波と業火。それを浴びて傷つく復讐者の姿は、彼にとってこれ以上ない創作のモチーフらしい。
『只の人間ではこうはいかん。もっとだ、もっと私を満足させろ、ディアボロス!』
 その宣告は、フェネクスという悪魔の在り様を雄弁に物語る言葉であった。
 人間も、復讐者も、すべては自分の道具。嗜虐心を満たし、歪な美を追求するための、ただの素材。
 だが――ネリリ・ラヴラン(★クソザコちゃーむ★・g04086)は、そんな悪魔の認識に異を唱える。
「違うわ、フェネクス。この世界のどこにも”只の人間”なんていない」
『ふむ? 単なる負け惜しみにも聞こえんが……どういう意味だ、それは?』
 不思議そうに首を傾げるフェネクスに、ネリリは静かな口調で続けた。
「感情を引き出そうとするのなら、彼等はひとりひとりが唯一のキャンパス。そこに何を描けるかは演者次第って思うの」
『下らん芸術が出来るのは、私が下らん芸術家だからだと言いたい訳か。ふん、口では何とでも言える』
「口だけではないわ。今から貴方に見せてあげる。……わたしたちが創り、描くものを」
 不愉快そうに顔をしかめるフェネクスにそう告げると、ネリリは準備を終えた二人の仲間――エヴァ・フルトクヴィスト(星鏡のヴォルヴァ・g01561)と月下部・小雪(おどおどサマナーところころコダマ・g00930)を振り返る。
 あの悪魔を真に敗北させるには、ただ滅ぼすだけでは意味がない。
 故に彼女たちは創り出すのだ。フェネクスの信ずる芸術を上回るそれを、ここに集う仲間たちと共に。

「エヴァちゃん、小雪ちゃん。始めるよ」
 ネリリの言葉に、エヴァと小雪が無言で頷きを返した。
 対するフェネクスには3人の意図が掴めない。奴らは一体何をする気だ――彼がそう思った、次の瞬間である。
『これは……歌?』
 彼の耳が捉えたのは、小さな歌声だった。
 無人である筈の戦場、そのあちこちから間違いなく歌が聞こえてくるのだ。
 人類の勝利を願い祈る歌。ディアボロスと北区の人々に勇気と希望をもたらす歌。ネリリが発動した勝利の凱歌が。
「貴方の歪んだ美しさも、北区の支配も。今日この日、私たちが終わらせますよ!」
「みんなの想いがあるかぎり、お歌が下手っぴなフェネクスになんて負けません!」
 続けてエヴァと小雪は、託されし願いを発動。
 ディアボロスの一人一人に寄り添って展開した映像が見せるのは、勝利を願う住民たちの姿だ。
 祈り、願い、歌う北区の人々。一人では小さな願いも、集まれば大きな力になる。洗脳の歌による畏怖では得られなかった力が、いま裁きの矛先となって、フェネクスへと突きつけられていた。
「歌はやっぱり皆の笑顔を作る為に歌いたいね。貴方の芸術センスとはちょっと相容れないみたい?」
『……下らん……下らんッッ!!』
 美麗な顔を歪ませ、フェネクスが吼える。
 それは自らの信ずる芸術を否定された憎悪か、あるいは、僅かでも心惹かれたことへの嫉妬があったのだろうか。
 そんな悲鳴にも似た咆哮をかき消すように、煌びやかな音色が戦場を包む。
 軽やかな電子音をバックに奏でるTechno-pop。ネリリの発動する『Fanatic Festa!』の旋律だった。

「月の灯りでハートをLightUp それが今夜のドレスコード Fanaticな夜を奏でましょ♪」

 北区の空を魔法陣の輝きが照らす。天高く響くネリリの歌声に、北区の人々が歓声をあげる。
 誰にも届くことのない悲痛な声で、フェネクスが絶叫する。
 パラドクスの旋律に苛まれ、芸術家の誇りを叩きのめされた屈辱の悲鳴。そこへネリリは高らかに告げた。
「これが、わたしたちの答え。小雪ちゃん、エヴァちゃん、お願い」
 ネリリの言葉に応じるように、二人は攻撃を開始した。
 小雪は先陣を切って飛翔しながら、託されし願いに映された住民たちの顔を見つめる。小雪たちが救出した人々も、新たに加わった人々も、その全員がディアボロスの勝利を願っていた。いまだ歌声は小さなものだが、それはさざ波のように周囲へ伝播しながら、着実に大きさを増している。
 遠からず歌声は北区すべてを包み、フェネクスを呑み込むだろう。
 小雪は腕の中にコダマを呼び寄せ、抱き締めた。伝わって来る歌声と祈りを、残らず注ぎ込むように。

「みんなの願いを一つに! ひ、必殺、コダマ・サンシャイン、です!」
 北区の人々と、仲間たち、そして小雪が託した願い。
 その全てを力に変えて、太陽となったコダマがフェネクスに迫る。敵を貫く必殺体当たり、コダマ・サンシャインだ。
 激突の衝撃で生じたプラズマの奔流はフェネクスを捉え、その肉体を容赦なく焼き焦がす。
『がッ……! ぐ、ぐうぅぅ……!!』
「あなたの音楽は芸術なんかじゃありません! お歌はもっと素敵な物なのです!」
 悶絶しながらフェネクスが発射した音波は、しかし小雪には届かない。託されし願いの呼び寄せた幸運が、その狙いを大きく逸らしたのだ。北区の人々を自らの道具としか見做さぬフェネクスと、共に歌い表現する仲間と見たディアボロス。両者の違いが招いた、これは必然の結果も言えたかもしれない。
 その様子を見下ろしながら、エヴァは告げる。
「全ては移ろい、変わるもの。その中にこそ本当に美しさがあるのです!」
 星鏡の魔杖に宿した意思が、眩い輝きを放ち始めた。
 勝利への願いと、恐怖からの解放を求める思い。そして、人々を弄び、奪った報いを求める想い。
 エヴァはそれら全てを魔杖に凝縮すると、勇気を奮い起こして突撃。全力で叩きつけたブレイブスマイトの一撃は、不滅侯の肉体を叩きのめし、地へと墜とす。
「この世に不滅な物などありはしません。不滅侯フェネクス、私たちがあなたを滅ぼします!」
 よろめく体で再び空へと舞い上がる敵を見下ろして、高らかに宣言するエヴァ。
 フェネクスは支配者の矜持を砕かれながら、なおもディアボロスたちへパラドクスを浴びせんとするが、それは劣勢を覆すには至らない。
 熱波と音波は守りの力に阻まれて、エヴァの体に僅かな焦げ跡を残すに留まった。ネリリを狙った洗脳の歌はアヴォイドの力にかき消され、傷ひとつさえ与えられずに終わる。北区を支配するこの悪魔の敗北が時間の問題であることは、もはや誰の目にも明らかだった。

「貴方が死と従属を歌うのなら、わたしたちは、明日を生きる希望と自由を奏でる。――お終いよ、フェネクス」
 ネリリの宣言の前に、満身創痍のフェネクスは沈黙するしかない。
 北区の奪還はもう目前。それを告げるように、勝利の凱歌はその大きさを益々増していくのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【託されし願い】LV2が発生!
【勝利の凱歌】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV5になった!
【ガードアップ】がLV4になった!

アンゼリカ・レンブラント
【双翼】

相棒と、他の仲間と動きを合わせ攻撃
挑むは飛翔して取りついて近接戦
光焔剣で斬りつけては反撃を堪え相手の死角を狙っていく

斬り込む以外にも動きは止めないよ
隙を作るよう左右に揺さぶっては
遠距離の仲間に攻撃を入れてもらい、
共に至近距離で戦う仲間とは挟むよう攻撃を意識

こんな炎で私達の愛や絆を朽ちさせると思ったのか
ここに居る復讐者の誰の命も、お前は奪えないとも
そう、屈しない!
お前の歌なんかよりも遥かに聞きたいものが待っているんだ

私たちが育った、思い出溢れる街に響く人々の歓声をさ!

最後は捨て身の覚悟と共に斬りこむ
絆の全てを焔に、想いの全てを光とし
最大まで輝け、《神焔収束斬》!
今こそ北区奪還の時だーっ!


シル・ウィンディア
【双翼】
フェネクス、待たせたね。
北区を開放する戦い始めるよっ!!

飛翔の効果で上空へ舞い上がり
相棒のアンゼリカさんが斬り込む前に七芒星精霊収束砲!
こっちにばっかり意識が行っていいのかな?
本命はあっちだよっ!
言葉でも攪乱を行うよ。

空中機動で上下左右に揺さぶってさらに攪乱を仕掛けていくよ

敵パラドクスは防げないから心を強く持って対抗
綺麗な歌だけど、そんなので人の心を支配できるとか…。
そんなの大間違いだからっ!
人は、あなたの為にある玩具じゃないんだっ!

叫んで、高速詠唱からの全力魔法の七芒星精霊収束砲。
相棒とパラドクス通信でタイミングを合わせて撃つよ。
これが、わたし達の全部だ
遠慮せずに持っていけーーっ!!


旗楽・清政
人の死を演出するのが芸術、と?
随分と趣味の悪いクロノヴェーダもいたものよ。
斯様な奴に名を騙られるは、本物のフェネクスにとっても心外でござろう。
それに、己が力を得るために虐殺を命じるも許し難し。
――よって、此処で貴様を討ち果たす!

「諸行無常! 盛者必衰! 不滅などあり得ぬ!
不滅侯の二つ名も、フェネクスの名も、此処に置いて滅び逝け!」
【飛翔】にて急上昇しつつ、翠緑の疾風で全身全霊の突撃でござる。

敵の業火に対しては、【火炎使い】にて火勢を弱め、威力を可能な限り殺して耐えると致そう。
「それがし、炎の扱いには心得がある。この程度の炎で、焼き尽くされたりはせぬ!」

――所詮は、紛い物の不死鳥でござったな。


 勝利の凱歌が響く。住民の歌声が、祈りが、ディアボロスに祝福をもたらす。
 この世界に、もはやフェネクスの味方は一人もいない。
 歌声が刻一刻と強さを増していく中、夕焼けの街に不死鳥の炎が舞い、パラドクスが荒れ狂う。

「人の死を演出するのが芸術、と? 随分と趣味の悪いクロノヴェーダもいたものよ」
 旗楽・清政(知勇兼備の昼行灯・g08816)は飛翔で上空へと浮上しながら、フェネクスの姿を睨みつけた。
 不死鳥の名を冠するアークデーモンにして、北区を支配するジェネラル級。
 自らの力を得ようと住民の虐殺を命じた悪魔の行いに対し、清政は怒りも露わに言い放つ。
「その所業、許し難し。――よって、此処で貴様を討ち果たす!」
 戦場に集う仲間たちの心を代弁するように、高らかに告げる清政。
 その後方から、飛翔を発動したディアボロスが二人、フェネクスめがけて迫る。
 シル・ウィンディア(虹霓の砂時計を携えし精霊術師・g01415)とアンゼリカ・レンブラント(光彩誓騎・g02672)だ。

「フェネクス、待たせたね。北区を開放する戦い始めるよっ!!」
「奪われた大地は取り戻す。私達の手で、必ず!」
 人々の命と心を弄んできたアークデーモンを倒すため。故郷の北区を奪還するため。
 ディアボロスは各々の想いを胸に秘め、決戦へと挑む。
 凝視する先、見えるのは大空を舞うフェネクスの姿だ。
 その体は度重なる攻撃を浴びて傷を重ね、かつての美しい姿は見る影もない。だが、その瞳に宿る光がいまだ死んでいないことを、シルは見逃さなかった。
「最期まで、抵抗を諦める気はないみたいだね。……でも、負けられないのは、わたし達も同じ!」
『来い、ディアボロスども。その悲鳴を私に聞かせろ!』
 尾羽を燃え立たせ、迎撃態勢を取るフェネクス。
 その命を奪い取らんと、三人のディアボロスが次々と殺到していく――。

 間合いに飛び込むと同時、フェネクスとの壮絶な斬り合いを清政とアンゼリカは開始した。
 緑玉の片鎌槍で突撃を敢行する清政。光焔剣を変幻自在に振るうアンゼリカ。
 フェネクスは二人の攻撃を捌きつつ、本格的な反撃には未だ移れない。彼の動きを牽制するように、シルの展開する魔法陣が頭上から狙いを定めているからだ。
「こっちにばっかり意識が行っていいのかな? 本命はあっちだよっ!」
『……下らん揺さぶりを!』
 フェネクスの顔が、屈辱に歪んだ。
 シルの狙いがブラフであることは、彼とて十分に理解している。
 だが、待ちに徹して凌ぎ切れる程、三人の攻撃は甘いものではない。今までに受け続けた傷は数え切れず、どこかで攻めなければジリ貧での敗北は必定だ。故にフェネクスは動くしかない。攻めざるを得ない。そして、それこそまさに、シルたちの待ちわびた瞬間でもあった。
『燃え尽きろ、ディアボロス!』
「二人とも、今っ!!」
 フェネクスのパラドクスが、時空の理を書き換える。
 尾羽より巻き起こる反撃の業火は虹色の輝きを帯びて、アンゼリカと清政の攻撃に先んじて放たれた。
 全身を包み込む炎が二人の身と心を焦がす。人の情愛と絆を焼き尽くす、悪魔の炎で。
 しかし――次の瞬間。

『な……っ!?』

 アンゼリカを覆う虹色の炎が、光焔に呑まれて消し飛んだ。
 続けて、清政を包む炎もまた、翠緑色の風でかき消される。
 アヴォイドによるダメージ無効化だ。単体では一割に満たないそれを成功せしめた原因をフェネクスはすぐに理解する。
 二人の周りを守るように映し出された北区の人々。フェネクスにとって芸術の素材でしかなかった者共の祈りが、託されし願いとなって二人を守っていたのである。
「こんな炎で私達の愛や絆を朽ちさせると思ったのか。ここに居る復讐者の誰の命も、お前は奪えないとも」
「左様。この程度の炎で、焼き尽くされたりはせぬ!」
 エメラルド色の輝きが、まばゆく戦場を照らす。
 闘気を帯びた清政は緑玉の片鎌槍を構えると、神速の速度をもってフェネクスへ迫った。
 翠緑の疾風と化した彼を阻める者はいない。振るう槍は一切の慈悲なく、フェネクスの体に突き刺さる。

「諸行無常! 盛者必衰! 不滅などあり得ぬ!
 紛い物の不死鳥よ! 不滅侯の二つ名も、フェネクスの名も、此処に置いて滅び逝け!!」
『ぐ……おおおおっ!!』
 血の代わりに炎を撒き散らしながら、絶叫するフェネクス。
 その絶叫をかき消したのは、北区の人々とともにディアボロスたちが歌う、ひときわ高らかな勝利の凱歌だ。
 少女の全身から溢れる魔力とオーラを巨大な光剣に変えて、アンゼリカはフェネクスに告げた。
「そう、私たちは屈しない! お前の歌なんかよりも遥かに聞きたいものが待っているんだ。私たちが育った、思い出溢れる街に響く人々の歓声をさ!」
 北区に生きる人々の想いと、復讐を誓う仲間たちの決意と、そして捨て身の覚悟を込めて。
 いま、アンゼリカは斬りこむ。
 絆の全てを焔に、想いの全てを光とし、虹色の炎を呑み込む輝きを帯びた、神焔収束斬の一撃を――!

「裁きの光と共に輝け、生命の焔よ! 絆を力とし、未来への道を拓けぇーっ!」
 振り下ろす光の刃が、フェネクスの胸板を斬り裂いた。
 胴体もろとも翼の一部を削ぎ落とされ、鋭い絶叫を上げて悶え狂うフェネクス。その頭上から間を置かず、魔法の光が濁流となって押し寄せる。
 アンゼリカと息を合わせ、シルが発動した七芒星精霊収束砲の一撃であった。
「これが、わたし達の全部だ。遠慮せずに持っていけーーっ!!」
 属性を収束させた光柱が、巨大な杭さがならにフェネクスへ撃ち下ろされる。
 七芒星精霊収束砲――時の力を乗せて撃ち出す、超高出力型複合魔力砲撃だ。
 木霊する轟音。シルの膨大な魔力を浴びたフェネクスが全身から炎を飛び散らせ、北区の空に悲鳴を響かせる。
 もはや決着の時は間近だ。アンゼリカはシルと清政とサムズアップを交わすと、天高く拳を突き上げ、叫ぶ。
「みんな! 今こそ北区奪還の時だーっ!」

 凱歌と、祈りと、歓声と。
 人々の祈りはディアボロスの力となって、いまフェネクスの命に終止符を打たんとしていた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【一刀両断】がLV3になった!
【パラドクス通信】がLV2になった!
【アイテムポケット】がLV2になった!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV6になった!
【ロストエナジー】がLV2になった!

長内・ゆうき
【関係】
宿敵主の友達の為、駆けつけてきたよ!

【心情】
そんな下衆な趣味の為に…許せない!
友情や親愛は決して負けないわ
覚悟だけはわたし、できてる!

【行動】
憐音ちゃんが無茶しないように心配と援護を中心に動く
武器はライフルとハンドガンを中心に遠距離から、相手の隙を突いてパラドクスが使えたら御の字かな

【口調】
一人称 わたし
女の子、元気系だよ
お姉さんとして振る舞うこともあるわね
でも、てんぱると敬語になります
よろしくね


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎

実に。芸術家の片隅にも置けない
喝采の悲鳴は貴様に挙げてもらおうか

憐音さんのもとへ飛翔し馳せよう
観察しつつ戦況を把握
PD通信で連携を取り、飛んで空中の動きに対抗
友人の憐音さんと、仲間のサポートを

Wandervogelのヴァイオリンを演奏
セッションと行こうか
白毛の弓に描き出す物語は、人々が幸福に歩む未来への道導
――光を
敵の歌声もかき消すほどに、溢れる音色に黎明を描き
味方を鼓舞し、支援

反撃には魔力障壁を展開し防御
自陣の音色に集中しつつ、忍耐力と情熱で対応
音楽と芸術への情熱で従属を打ち破る
大丈夫さ。仲間の音色が聴こえるから

自己満足のための芸術か
果たして、そこに聴衆はいるのかい?


奴崎・娑婆蔵
ようよう、どうなすった神田川のお嬢よぅ
喧嘩でござんすか?
成る程、音楽性の違いでござんすね

であれば助太刀致しやしょう
新メンバーと楽しいギグやりやしょうぜェ?


・魔楽器『擬斧尊・譜雷印具武威』をベケベケ掻き鳴らしながらエントリー
・ギターを三味線用の撥で弾くとかいう謎の速弾き(演奏+早業)で、敵の催眠音波を邪魔する

・妖刀『トンカラ刀』を抜刀ざま【言葉縛り】発動

・生命力を奪われようとも、死せる身ながら動くリターナーの意地を見せてくれよう
・自由意志を奪い取られようとも、己を「『トンカラトンと言え』と命じ、言わなかった者を斬る」という【呪詛】を自動的に実行する存在へと化さしめることで斬り掛かってくれよう!


マティアス・シュトローマー
生憎芸術には疎いもので
けれども、人を虐げて死に追いやる事をそう呼ぶのは違うんじゃないかな

【飛翔】を使い空へ。七発の弾丸が狙うのは、仲間の攻撃で既に傷を負っている箇所やその機動力を支える翼
格上相手に少ないチャンスでダメージを与えられるよう、戦況をよく見て立ち回ろう

俺の友達が見せてくれたのは心を奮い立たせてくれるような音楽と料理だった
あの時のあたたかさに比べたら、この程度――
反撃の熱波は【飛翔】に【エアライド】を織り交ぜた動きで距離を取り威力の軽減を図る。催眠と闇の炎は前線でフェネクスに語り掛ける悪友の姿を見て断ち切ろう
だよな、憐音!

だからそれを証明するためにも俺は引かない
この区は奪還させて貰うよ


リューロボロス・リンドラゴ
不死鳥、か。
時に竜と並び語られる存在だが……貴様には荷が重かろう。
真体降臨!(ネメシス蒼炎の竜)
我は龍、我こそはドラゴン。憐音の友、リューロボロス・リンドラゴ也!
フェネクスよ、不滅が滅ぶ時が来た。

憐音ディフェンス。
【飛翔】しながら、フェネクスと戦うぞ。
ドラゴンVSフェニックスの空中決戦!
《空中戦》も《対空戦》も竜の十八番よ!
不死鳥の割にはそれらの技能に疎いのは、戦うではなく天より見下ろすばかりだったからであろうな。
言ったであろう、貴様には荷が重いと。
別てぬ、別てさせぬよ、我らが絆は。
我らが絆こそ不滅と示すためにも耐えきる!
目には目を。
炎には炎を!
我が炎より甦れるというのならやってみせるが良い!


神田川・憐音
作品にし損ねた誰か?違うね
死んでもアンタの支配は受けねーし作品にもならねーわって体現した人間だよ
ま、そりゃ結果論ってヤツで。死んで抗議するのは趣味じゃない
だからあの日、死んでアンタから逃れようとする弟に手を伸ばしたし
今は、あたしに手を伸ばしてくれる友達がいる
面識なくとも北区のため戦う人もいる
想いは一緒。アンタの炎も歌でも、繋いだ手を引き裂けるもんか

【飛翔】空の全てがステージ的な
歌は自由だから
ギターともヴァイオリンとも回転鋸とも剣琴ともセッションするし
悪友にもドラゴンにもお姉さんにも
アイツの歌を超えて、この場の全ての人を讃えるように響け

沈めよフェネクス
また昇る日は人間を照らすために輝く…ってコト


白水・蛍
アドリブ・連携歓迎
憐音さんディフェンス

憐音さん助太刀いたします。
貴女の思いを相手にぶつけてください。
我々はその背を守ります。

飛翔を使用して空へ。そして、奏でましょう。
我々の勝利の歌を。絶望を打ち消す希望の歌を此処に!
パラドクス発動。
――我が音に応えて来たれ。これ即ち全てに響き渡る音の一撃!
これが我々の勝利の歌。我々の希望の歌!
憐音さんの曲に合わせてドカンと一発祝砲打ち上げますわよ!


 満身創痍の傷を負ったフェネクスが、苦悶の呻きを夕空に漏らす。
 尾羽の業火に催眠の音波、そして魔力を帯びた歌声。数多の人間の命を奪い続けたパラドクスで抵抗を続けるも力及ばず、彼の命脈はまさに風前の灯火だ。
 逃走も抵抗も出来ず、不死鳥のごとく蘇ることも叶わない。そんなフェネクスの周囲を取り囲む復讐者の影は、七つ。
「実に――芸術家の片隅にも置けない。喝采の悲鳴は貴様に挙げてもらおうか」
 エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)が、どこまでも静かな口調で告げた。
 空舞うフェネクスの遥か頭上、すべてを俯瞰するように見下ろす彼の手には小型の通信機が握られている。戦場に集う仲間たちと繋がるパラドクス通信機。それを用いて、彼は戦闘のサポートに徹するつもりなのだ。
「生憎芸術には疎いもので。けれども、人を虐げて死に追いやる事をそう呼ぶのは違うんじゃないかな」
「そうだよ! 下衆な趣味の為に北区のみんなを……許せない!」
 続いて口を開いたのは、マティアス・シュトローマー(Trickster・g00097)と長内・ゆうき(名も無き王妃・g01491)。
 他の仲間たちと円陣を組むようにしてフェネクスを取り囲み、戦いの始まりを待っている。
 彼らもエトヴァと同様、援護に集中して動くと決めていた。この戦場に駆けつけた理由も、大事な友達がフェネクスと決着をつけるのを手伝うためだ。
「それにしても、北区の支配者か……やっぱり追い詰められてても威圧感が違うね、ジェネラル級は」
「が、頑張らないと。……友情や親愛は決して負けないわ!」
 ジェネラル級との戦いが初めてということもあってか、ゆうきは若干緊張気味の様子だ。
 足りない経験を覚悟で補おうと対物対人両用狙撃銃を手に、射殺さんばかりの視線をフェネクスに差し向けている。
 一方、彼女の属する旅団『奴崎組』の二人――奴崎・娑婆蔵(月下の剣鬼・g01933)と白水・蛍(鼓舞する詩歌・g01398)は、どちらも決戦を前に寛いだもので、いつでも命を懸けた殺し合いを始められる構えであった。
「ようよう、どうなすったお嬢よぅ。喧嘩でござんすか?」
「及ばずながら我々も助太刀いたします。いざ、参りましょう」
 娑婆蔵と蛍の二人は元より、この場に集った復讐者は手練ればかりである。アヴァタール級は言うに及ばず、ジェネラル級が相手でもそうそう遅れは取らぬ面子と言って良い。そんな彼らが集ったのは何のためか?
 北区奪還のため? 無論、それもある。
 フェネクス撃破のため? それもある。
 だが、それ以上に大事な理由が、彼らの中には確固として存在していた。

「貴女の思いを相手にぶつけてください。我々はその背を守ります――憐音さん」
 蛍の一言に、場の視線が一人の復讐者へと向けられる。
 神田川・憐音(天地を揺さぶる情動・g02680)。蛍たちの仲間であり友である、リターナーの少女へと。その言葉に憐音は頷きを返すと、討ち果たすべき悪魔を真っすぐに見据え、告げた。
「作品にし損ねた誰か? 違うね」
 戦いが始まる前にフェネクスが向けた言葉を、憐音はそう言って否定する。
「あたしはね、死んでもアンタの支配は受けねーし、作品にもならねーわって体現した人間だよ」
 クロノヴェーダによって歴史が改ざんされた、あの日。
 死んでフェネクスから逃れようとする弟に手を伸ばした時の光景を、今でも憐音は忘れない。
「今は、あたしに手を伸ばしてくれる友達がいる。面識なくとも北区のため戦う人もいる」
 友達だけではない。面識のない仲間だけではない。
 北区に生きる人々もまた、今、自分たちのために力を貸してくれているのだ。託されし願いで映し出された住民たちの顔を一人一人見つめ、勝利の凱歌に合わせて歌う声に耳を傾けながら、憐音は深呼吸をひとつ。復讐者の眼差しで、フェネクスをまっすぐに見遣る。
「想いは一緒。アンタの炎も歌でも、繋いだ手を引き裂けるもんか」
 かくして――最後の戦いが、幕を開けた。

「不死鳥、か。時に竜と並び語られる存在だが……貴様には荷が重かろう!」
 戦闘開始と同時、戦場に木霊するのはネメシス形態へと変身した復讐者の咆哮だった。
 リューロボロス・リンドラゴ(ただ一匹の竜・g00654)。小さな少女の肉体は蒼炎をまとう一頭の竜に変じ、フェネクスを狙い定めて突っ込んでいく。
「我は龍、我こそはドラゴン。憐音の友、リューロボロス・リンドラゴ也! フェネクスよ、不滅が滅ぶ時が来た!」
 北区の空に響く勇猛な雄叫び。
 リューロボロスは飛翔の勢いをそのままに赫焉の竜王極大弾を発動、灼熱ブレスを吐き出した。
 叩きつけるように浴びせる蒼炎のブレスは不滅侯のまとう紅炎を塗り潰し、その肉体を焦がす。
「目には目を。炎には炎を! 我が炎より甦れるというのならやってみせるが良い!」
『ぬ……ぬうううおおおぉぉっ!!』
 怒号とも悲鳴ともつかぬ叫びをあげ、フェネクスは這う這うの体で蒼炎を突き破った。
 お返しとばかり、熱傷にまみれた肉体から放つ尾羽の業火が、円弧を描いて襲い来る。
 それをリューロボロスは真正面から受けきると、己の存在を示すように豪快な咆哮を轟かせた。自分たちの絆こそが不滅の二文字に相応しい、そう告げるように。
「言ったであろう、貴様には荷が重いと。別てぬ、別てさせぬよ、我らが絆は!」
 仕留め損ねたフェネクスが屈辱の咆哮をあげた。リューロボロスは攻撃の勢いを更に増していく。
 のしかかる圧をものともせず、吹き付ける風を翼でねじ伏せ、戦場の空を庭同然に飛翔する姿はまさに竜そのものだ。
 フェネクスもまた支配者の威厳を見せつけんと羽ばたくが、ゆうきとマティアスの遠距離射撃はそれを許さない。
「力を貸して――装填!!!」
 継承の弾丸を発動しながら、ゆうきは呟いた。
 装填する弾丸は『水』の一字を刻んだもの。術者であるゆうきの力を込めた、彼女特製の魔道具である。
(「憐音ちゃん、無茶しないでね。わたしだって力になってみせるから……!」)
 緊張に強張った手付きでライフルに装弾。標的をスコープに収め、引鉄を引いた。
 決意を込めた銃弾は水の魔力を帯びて、フェネクスに勢いよく突き刺さる。燃え盛る肉体のあちこちから立ち昇る黒煙は、敵の余力が失われ始めている証拠だ。
 相手を追い詰めている確かな手応えに、ゆうきの吐息がフゥと漏れた。
「もう少し。もう少し……!」
『小賢しい真似を!』
 悪鬼の如き形相を浮かべるフェネクスの尾羽から、怒りの業火が迸った。
 放射状の軌跡を描いて飛来する炎の雨。ゆうきはそれをガードアップで防ぎながら、マティアスに視線を送る。
 意図を察したマティアスは狙いを紅蓮の翼に定めた。北区の人々から託されたすべての願いを、己が弾丸に込めて。
「一打ち七つ。……そこだ」
 ダッ、ダダダダダダッ!!
 直撃を浴びたフェネクスの体が七発の銃弾に弄ばれ、回転しながら宙を踊る。
 即座に飛来する反撃の熱波。マティアスはそれを全身に浴びながらも、顔には穏やかな笑みを浮かべていた。
 パラドクスの催眠と闇炎で生命を削られながらも、心には些かの乱れもない。彼の脳裏に去来するのは敵の幻覚よりもなお鮮烈な、友の言葉である。
 ――あたしの歌を聴くか飯を食え! そして感動しろ!
 そうだ。彼女の音楽と料理は、いつだって自分の心を奮い立たせてくれる。
 だから、どうということはない。あの時のあたたかさに比べたら、この程度――。

「だよな、憐音!」

 マティアスの声に導かれるように、戦場の空を荘厳な旋律が包み始めた。
 蛍と娑婆蔵とエトヴァの3名を筆頭に、戦場に集う仲間たちが自らの得物で、声で、歌を紡いでいるのだ。
「さぁて、新メンバーと楽しいギグやりやしょうぜェ?」
「――光を」
 娑婆蔵の魔楽器『擬斧尊・譜雷印具武威』とエトヴァのヴァイオリンが奏でる演奏に誘われるように、ハープソードの軽快な旋律と、チェーンソーの無骨な振動が、歓喜の音色となって加わる。ディアボロスだけではない。蛍が効果を重ねた勝利の凱歌に勇気づけられ、北区の人々もまたそこに加わっていく。
 復讐者も住民も、知己の仲間もそうでない者も、皆が心をひとつに歌を歌う。
 まるで北区すべてを舞台にしたようなセッション、その中心にいるのは音響増幅ユニットを介して演奏する憐音だ。
「空の全てがステージ。なんたって、歌は自由だから」
 戦場のあらゆる音色が憐音の意思に統一され、巨大な波となってフェネクスを包む。
 それは正にアークデーモンの支配が終わりを告げる瞬間であり、これより決戦が終着を迎える瞬間でもあった。

「響け。悪友にもドラゴンにもお姉さんにも。アイツの歌を超えて、この場の全ての人を讃えるように」
 憐音の言葉に突き動かされるように、歌声はいっそう高らかに響き始めた。いまや北区を飲み込むかと思われるような合唱の中、パラドクスを発動した蛍は最大高度まで飛翔。戦場にいる全ての者に告げる。
「奏でましょう。我々の勝利の歌を。絶望を打ち消す希望の歌を此処に!」
 魔力を帯びた音色が、蛍のパラドクスで増幅されていく。
 空気の振動は肌を叩く衝撃へと変じ、衝撃は魔力を帯びた凶悪な砲弾に姿を変える。蛍が発動した喚願響鳴砲音の一撃は、人類の勝利を告げる祝砲さながらに木霊して、フェネクスへと殺到した。
「これが我々の勝利の歌。我々の希望の歌!」
『……――!!』
 絶叫を上げることさえ許されず、直撃を浴びたフェネクスが宙を踊る。
 かすれる声で流す催眠の歌声。刹那、それをかき消すような勢いでギターの音色が響き始めた。
 娑婆蔵がかき鳴らす、擬斧尊・譜雷印具武威の旋律だ。ギターを三味線用の撥で弾くという謎の速弾きを披露し、続け様にトンカラ刀を抜刀。呪詛の言葉を紡ぎ出した。
「トンカラトンと言え」
『訳の、分からんことを……っ!』
 フェネクスが言い終わるのを待たず、娑婆蔵の妖刀が一閃する。
 音もなく放つ斬撃はダメージアップの力を帯びて、フェネクスの肉体を袈裟に斬り裂いた。
 傷口から夥しい炎を噴出させながら、その身体から炎がゆっくりと消え始めるのを見て、エトヴァは悟る。この悪魔にも、ついに最期の時が来たということを。
「自己満足のための芸術か。果たして、そこに聴衆はいるのかい?」
 若干の哀れみを込めて告げると、エトヴァはParadiesmelodieを発動。激しい旋律でフェネクスを包み込んでいく。
 芸術家を名乗る悪魔の耳目を、魂を、パラドクスの力で惹きつけ、曲の世界観へと捉え込む。
 逃げる術はない。抵抗する術もない。あらゆる抵抗の手段を封じられ、フェネクスの命が尽き行く中、戦いの終着を告げるように憐音の歌声が戦場に流れ始めた。
「一人の為の楽園なんて要らない。落日を超えた先にある未来は、皆を輝かせるものでしょ?」
 憐音が歌い上げるのは、未来への願いを込めた歌だ。
 『魔曲・黄昏の楽園を翔ける翼』。クロノヴェーダの理想とする世界を否定する旋律が、再生と破壊の魔力を帯びて、音響増幅ユニットを介して縦横無尽に響く。
 それはまさに、悪魔を葬送する落日の挽歌であった。
「沈めよフェネクス。また昇る日は人間を照らすために輝く……ってコト」
『何故だ……私は、まだまだ……人、間を……』
 憐音の歌声が最高潮を迎える中、フェネクスの声がふいに途切れ、紅蓮の炎がかき消える。
 塵のひとつも残すことなく空に散った不滅侯は、もはや二度と蘇ることはない。
 支配者を喪い時空が歪み始める夕空の下、ディアボロスの旋律は人々の歓声と共に、いつまでも響き続けるのだった。

 かくして戦いが終われば、ディアボロスたちが立っていたのは最終人類史の北区である。
 フェネクスの支配から解放された今、この土地に不滅侯の歌声が響くことは二度とない。
「これで、大同盟は残り3区……だね」
 マティアスは帰還した北区の空気を胸いっぱいに吸い込んで、達成の喜びを噛み締めた。
 いっぽう憐音は北とぴあの屋上に降り立つと、いまだ無人の王子駅周辺を見遣る。
 住民の帰還も早いうちに進めねばなるまい。七曜の戦が目前に控える今、すべきことは山のように在る――。
「すみませーん! 手の空いている人は手伝って下さーい!」
 そんな思考を打ち切ったのは、若干慌て気味になったゆうきの声だ。
 ふと視線を向ければゆうきを始めアンゼリカや小雪ら数人の仲間が、豊島区の方角から来た車輛を誘導するのが見える。
 ディアボロスの連絡を受けて、帰還準備のために集まってくれた周辺区の人たちだろう。
「成程。これは、アンコールが必要になるかな?」
 帰還する人々を迎える為には勝利の凱歌が欠かせない。有志の手伝いがあれば、多少は手間も省けることだろう。
 微笑みを浮かべ腰を上げるエトヴァに、仲間たちは頷きを返す。
 どうやら、勝って早々忙しくなりそうだ――そんな嬉しい予感に想いを馳せながら。

 悪魔の支配より解放された、西暦2023年の北区。
 夏空の下で口ずさむ歌声が、ひとつの戦いの終わりを告げていた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【操作会得】LV1が発生!
【液体錬成】LV1が発生!
【悲劇感知】LV1が発生!
【託されし願い】がLV3になった!
【熱波の支配者】がLV2になった!
【口福の伝道者】LV1が発生!
【勝利の凱歌】がLV2になった!
効果2【ダブル】がLV2になった!
【フィニッシュ】LV1が発生!
【命中アップ】がLV5(最大)になった!
【ダメージアップ】がLV7になった!
【ロストエナジー】がLV3になった!
【凌駕率アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】がLV5になった!

最終結果:成功

完成日2023年07月16日
宿敵 『不滅侯フェネクス』を撃破!

第二次東京奪還戦(後編)

 盟主である豊島区の『複素冥界』イマジネイラを失ったアークデーモン大同盟の5つの区、すなわち『足立区』『板橋区』『北区』『練馬区』『中野区』への攻撃は成功。
 各区の支配者に対し、一度に決戦を仕掛けて一気に奪還する、第二次東京奪還戦の実行が可能となりました。
 世田谷区奪還による混乱を利用する『目黒区』の奪還戦も同時に行う事で、アークデーモン大同盟に所属する全ての区を一気に奪還するチャンスとなったのです。

 各区は配下のジェネラル級率いる豊島区への増援部隊が未帰還となった事で戦力が低下しており、更にディアボロスの強襲により浮足立っています。
 この隙をついて各区の拠点を強襲し、区の支配者を撃破すると共に、アークデーモン大同盟を完膚なきまでに滅ぼしてしまいましょう。

魔導公爵・ムールムール

地獄の侯爵・エリゴス

不滅侯フェネクス

狂想のオセ

秘密を弄ぶ者プルソン


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#TOKYOエゼキエル戦争
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#北区
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選択肢『アークデーモン大同盟の区の支配者との会話』のルール

 アークデーモン大同盟の区の支配者との会話を行います。
 アークデーモン大同盟に関する重要と思われる情報は、盟主である豊島区の『複素冥界』イマジネイラから得ており、得るべき情報は少ないと思われますが、区の支配者の性質などを加味し、必要に応じて会話を行いましょう。

※補足
 イマジネイラは様々な情報を持っていましたが、他の区の支配者は『イマジネイラ程の情報を得ていない』と想定されます。
 その為、イマジネイラから得られた情報を前提とした会話を行っても、話が通じない事が多いと思われるので、その点は注意が必要でしょう。


 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『👿または👾で出現する敵との会話に専念する。戦闘行動は行わない。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👾一般人を襲うトループス級『アシュタロスの使徒』のルール

 周囲の一般人を襲撃するトループス級クロノヴェーダ(👾)と戦闘を行います。
 放置すると村や町を破壊したり一般人を虐殺してしまうので、被害が拡大する恐れがあるでしょう。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「沢山」出現します(現れる敵の数は、オープニングの情報やリプレイの記述で提示されます)。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『この選択肢の🔵が👑に達すると、この敵集団を倒す。完結までにクリアしていない場合、この敵集団は撤退する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👿決戦、アークデーモン大同盟『不滅侯フェネクス』のルール

 第二次東京奪還戦を行い、アークデーモン大同盟と雌雄を決します。
 アークデーモン大同盟が支配する区に向かい、区の支配者との決戦を行なって、アークデーモンに支配された区の奪還を行なってください。
 全ての決戦に勝利する事が出来れば、TOKYOエゼキエル戦争から、アークデーモン勢力を一掃することが出来るかもしれません。

 敵の戦闘能力などは、オープニングやリプレイの内容を確認してください。


 記載された敵が「1体」出現します。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『【撃破】【完結条件】この選択肢の🔵が👑に達すると、宿敵を完全に撃破し、シナリオは成功で完結する。ただし、この選択肢の🔴が🔵より先に👑に達すると、シナリオは失敗で完結する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※このボスの宿敵主は「神田川・憐音」です。
※クロノヴェーダには、同じ外見を持つ複数の個体が存在しますが、それぞれ別々のクロノヴェーダで、他の個体の記憶などは持っておらず、個体ごとに性格なども異なっています。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。