リプレイ
レイラ・イグラーナ
モスクワでの戦いの帰結として、今後こういった光景はロマノフの各地へとさらに広がっていくことでしょう。
人民の皆様の生活をお助けすることは責務にして本懐。
必ずや果たしましょう。
本来ならば、私たちがおらずとも食料を生産できるようにするべきなのでしょうが、この状況ではそうもいってられません。
新宿島から持ち込んだ材料と調理道具を使い、温かいボルシチなどの料理を作り、【口福の伝道者】で皆様に行き渡るよう増やします。
また、干し肉などの保存食も同じく口福の伝道者で増やし、当座のお食事とできるように。
私たちは吸血貴族の支配に抗う者。皆様、私たちが王朝を打ち倒すその時まで……どうか今しばらくのご辛抱を。
風雪が運ぶは哀切であったかもしれない。
少なくとも東ポーランド地域の農村に満たされている空気というものは、大凡そうしたものであった。
農奴となった人々はやせ細っている。
彼等は一様に顔をしかめもしない。
頬を刺す風の痛みすら、もはや彼等には感じることができなかったかもしれない。
それほどまでに追い込まれているのだ。
そんな彼等の元にパラドクストレインから降り立ち、訪れたレイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)は瞳を伏せるのではなく、両の眼でしっかりと見据えていた。
これが吸血ロマノフ王朝にこれから伝播していく光景であると知っている。
己が人民の生活を助けることは責務にして本懐。
そうしなければならないという感情が復讐の炎と共にも燃え上がっていく。
「必ずや果たしましょう」
託されたものがある。どうか、と願われたことがある。
ヴァンパイアノーブルを打ち倒すこと。人民を救うこと。多くのことを彼女は考える。
「……あんたは」
農奴の一人がレイラの姿を認め、凍結した瞼を瞬かせる。
何か幻を見ているような気分であったのかも知れない。
そんな彼等にレイラは湯気立つ器を手渡す。それはボルシチだった。
レイラが新宿島から持ち込んだ材料と道具を使って細かく刻んだ野菜を煮込んだスープを残留効果である『口福の伝道者』でもって一気に増やしたものだった。
農奴たる彼等にとっては夢にまで見た光景であったことだろう。
「しょ、食糧……! う、ウソだろ、こんなに……!」
「いいえ、皆様に行き渡る量をご用意しております。慌てずとも。そして、動けぬ方々の分もどうぞ」
レイラの言葉に人々は次々と集まってくるだろう。
この寒さだ。温かなスープは身にしみることだろう。感謝の言葉が雨のようにレイラに降り注ぐ。
当座の食糧として保存食にした干し肉も残留効果でもって増やし、スープを受け取った人々に手渡していく。
本来ならば、自分たちの支援なく食糧を生産できるようになるのがよいのだろうし、そうすべきなのだろう。
だが、状況がそれを許さない。
「だ、だが、アンタは一体……」
農奴の疑問も最もだ。だからこそ、レイラは優雅にして瀟洒たる所作で一礼する。
「私達は吸血鬼族の支配に抗う者。。皆様、私達が王朝を打ち倒すその時まで……」
どうか、とレイラは告げる。
耐えてくれ、と。それがどんなに困難なことかを知るからこそ、レイラは今できることをと懸命に行うのだった。
大成功🔵🔵🔵
効果1【口福の伝道者】LV1が発生!
効果2【凌駕率アップ】LV1が発生!
黒白園・真雪
満足に食えねぇ水もねぇ苦しさってのは、オレもよく知ってる。
オレ達が行った事で苦しませちまってるんなら、せめて手の届く範囲は助けてやりてぇ。
残留効果も拝借しつつ、持てるだけの飲料水やら、直ぐに食べられるパンやらを運んでくるか。
相手のヴァンパイアノーブルに見つからねえよう、こっそりと。
凍えてる農民を見つけたら、なるべく目立たないよう気をつけながら
持ってきた分や【口福の伝道者】で増えた分を配っていく。
オレ達が一体何なのかは、気にすんな。
不条理にこんな状況を強いているあいつら吸血鬼を、
こんなヒデェ事をやりやがる吸血鬼を許せねぇ。
それだけだ。
レイ・シャルダン
戦争が及ぼす影響は一般の方々にも容赦無く襲いかかります。
ただでさえ過酷な生活を強いられるロマノフの方々の
ほんの僅かでも力になれれば…。
口福の伝道者、強化されて良かったですね。
これでより沢山の人々を助けられて、余った食料は保存出来て。
新宿島より持って来た調理器具、具材を使ってシチーとカーシャを作ります。
それと保存食用にドライフルーツ。
合わせて食事を行い【口福の伝道者】を使って沢山用意しましょう。
胃が弱っているかもしれません、なるべく多く噛んでゆっくり食べてください。
我慢してくれなんて言うのは無責任かな…。
今目の前に居る人達の救援と…、やがてやってくる脅威の排除
ボク達に出来る事、行動で示そう。
神那岐・修
相手が寒さでも支配でも
食わねば戦はできんだろう
戦以外で大したことはできぬが、下働きくらい何ほどのこともない
先行者が残留効果を出していると聞くし、食えるものを持って行って増やせば一時凌ぎにはなるな
口福の伝道者で日持ちする乾物などを増やす
恐らくその場で食す分は既に十分にあるはず
保存食は多分ドライフルーツとかもあったら安心じゃなかろうか
雪深い地では肉以上に野菜類も足りんだろう
他は大して何もできんが。力が必要な雑事がついでにあるならやっておく
動くのが難儀な人を背負うとか
※アドリブ歓迎
どれだけ頑強に肉体を鍛え上げたのだとしても、人の肉体は飢えや病には勝てない。
そういうものだ。
生命とは。
そうしたものである。うだるような暑さも、凍える寒さも、全てが無意味になる。故に吸血ロマノフ王朝の環境は人が生きるにはあまりにも過酷だった。
ディアボロスがパラドクストレインによって東ポーランド地域のある農村に降り立てば、その想いはさらに強くなることだろう。
クロノヴェーダであるヴァンパイアノーブルは『従属』を人々に強いる。それによって彼等は感情エネルギーを得ているのだ。そのために人々を過酷な環境において支配するということは効率的なことであっただろう。
赦してはおけない。
そういう思いを胸に宿すからこそ、ディアボロスたちはパラドクストレインから降り立ち、農村へと足を踏み入れる。
「私たちの戦いが及ぼす影響は、一般人の人々に容赦なく襲いかかります。ただでさえ、このディヴィジョンは過酷な生活を強いられて……」
「ああ、満足に食えねぇ水もねぇ苦しさってのは、オレもよく知ってる」
レイ・シャルダン(SKYRAIDER・g00999)と黒白園・真雪(怒りの天使を宿した者・g09418)、そして新宿島から物資をを残留効果で持てるだけ運び込んだ神那岐・修(紫天修羅・g08671)は農村の現状を憂う。
「相手が寒さでも支配でも、食わねば戦もできんだろう」
とはいえ、と修は己が戦い以外で大したことはできないと思っていた。
だからこそ、彼は多くの物資を残留効果の怪力無双に寄って一人で抱えて農村へと運び込む。
「私達の行いが少しでも……ほんの僅かでも力になれば……」
レイは運び込んだ調理器具と具材を修から受け取ってすぐに食事の用意を始める。
クロノヴェーダであるヴァンパイアノーブルの警備部隊の巡回にはまだ時間がある。その間に農村の農奴たちに食事を振る舞い、ディアボロスたちが去った後も食糧の蓄えとして支援ができればと思ったのだ。
「オレたちの戦いは、彼等の生活に直結している。それで余計に苦しませちまってるんなら、せめて手の届く範囲は助けてやりてぇ」
「それが人の情けというものだろう。先んじた仲間が残留効果を遺してくれている」
「口伝の伝道者、このタイミングで強化されていてよかったですね。これでよりたくさんの人々を助けられます。余ったのは保存食にしましょう」
レイの言葉に真雪は頷く。
修と共に飲料水やすぐに口に運べるであろうパン、それに自分たちが去った後に排斥力によって排除されない食糧を運び込む。
その姿に農村の人々は目を丸くするだろう。
先んじて農村の農奴たちと接触したディアボロスがいるのだとしても、彼等には己達の姿が奇異に映ったことだろう。
「さ、さっきからあんたは……いや、あんたたちは一体……」
「その食糧は……きっと大切なもののはずだ。あんたたちだって……」
必要なものだろう、と惜しげもなく食糧を自分たちにもたらすディアボロスたちに農奴たちは訝しむ。
当然だろう。
この過酷な環境にあって、他者に食糧をもたらす、という行いは確かに褒められた行いである。しかし、誰にも余裕があるわけではないのだ。
しかも、無償で。
彼等が警戒するのも無理なからぬことだ。
だからこそ、真雪は静かに告げる。
「オレたちが一体何なのかは、気にすんな」
「だ、だが……」
「はい、シチーとカーシャです。そばの実を使ったお粥……胃が弱っているはずですから、なるべく多く噛んで食べてください」
レイが真雪の言葉と共に農奴に湯気立つ粥の入った器を手渡す。
その香り。その暖かさ。
農奴たちの手に触れる、その疑いようのない熱に彼等の眦から溶け出すように涙が溢れる。
彼等にとって、まともな食事というのは久方ぶりであったからだ。
万年氷雪に覆われた大地。
それが吸血ロマノフ王朝だ。過酷そのもの。生きることすら難しい状況にあって、従属を強いられることが当然となっている。その中で触れたディアボロスたちの優しさというものに彼等の心の澱が溶け出すのだ。
「雪深い地では肉以上に野菜も足りんだろう」
修は農奴たちが食事を取る間に諸々の雑事や不足しているものを聞き出す。あとに続いて現れるディアボロス達が効率よく支援を行うことができるかもしれないと考えたからだ。
「慌てないでください。こちらにもたくさん食糧はあります。あっ、そんなに慌てて食べないで。ゆっくり、ゆっくり」
弱った胃を持つ農奴たちに一度にたくさん食事を与えるのは、逆効果だ。
だからこそ、レイはそばの実の粥で彼等の胃をまずは優しく起こすのだ。栄養源の補給はそれからでいい。
レイが忙しなく人々の世話を焼く姿を宮居rながら真雪は胸に湧き上がる怒りを抑える。
不条理な環境。
その状況を強いるヴァンパイアノーブルたち。許せるわけがない。
「こんなヒデェ事をやりやがる吸血鬼を許せねぇ」
それだけなのだ。
やせ細った農奴たち。寒さに凍えながらもまともな衣類すら与えられていない。如何に此処が吸血鬼ロマノフ王朝に置いて比較的温暖な気候だというのだとしても、万年雪に覆われていることに変わりはない。
「ああ……そのとおりだ。保存食の類は倉庫に運び込み、隠しておいた。ヴァンパイアノーブルの警備隊に見つからないように」
運び込んだ物資がヴァンパイアノーブルの目に止まり、見咎められては余計に農奴達の生活を圧迫する口実になってしまうことを修は憂う。
レイもまた同感だった。
保存食用のドライフルーツを残留効果で増やし、彼女は頷く。
「窮屈な生活を我慢してくれ、なんて言うのは無責任かな……」
でも、と彼女は頭を振る。
「どの道、避けては通れねぇ道だ。なら」
「ボク達に出来ること、行動で示そう」
レイは力強く頷く。
ディアボロスたちは、農奴達の久方ぶりのまともな食事によって一時であっても心安らぐ光景を目に焼き付ける。
これが奪われる。
どうあっても。
ならばこそ、彼等は戦うしかないのだ。奪われたものを奪い返すために。そのためにできることを、と一歩ずつ確実にに。
踏みしめた雪は固く。
けれど、その雪解けたる春が訪れることを信じるのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【光学迷彩】LV1が発生!
【口福の伝道者】がLV2になった!
【怪力無双】LV1が発生!
効果2【ダブル】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
金刺・鞆
【奴崎組】
『ウラジミール・ココツェフ』を討ったことで、苦しむ人々はたしかにいる。
なれど、われらでぃあぼろすとて支援はできる、のです。わずかずつではあっても、手が圧倒的に足りずとも……それは、やらぬ理由にはなり得ません。
でぃあぼろすの行動の結果を受け入れて、為せることを……為すべきを成すと、そう決めたのですから。
畑に【土壌改良】を施してから、わたくしも【口福の伝道者】で保存食の増産をお手伝いいたします。
なるべくおなかを空かせてきましたので、とにかくいっぱい食べますとも!
待っててくださいね。これからここに来るばんぱいあ・のーぶるもえいやと倒して、みなが安全に食事をできるようにしてみせますから!
ルィツァーリ・ペルーンスィン
【奴崎組】
アレンジ連携歓迎
食えないってのは辛いからなあ……家の一族は幸い領民に餓死者は出さずに済んでるがひもじいって感覚は判るからなあ
食料も大事だが俺達が居なくなっても如何にかなる様にポーランドで取れる作物、ヤルムシュやビーツ、根セロリ、カラレバ辺りと……そうだな向日葵が良さそうだな
特に向日葵は種が保存しやすくて種のまま食べれるし
残留効果の〇アイテムポケットを用い向日葵等の作物の種や苗、干し肉等の排斥されない問題のない物を持ち込み
〇土壌改良した土地に作物、特に向日葵を植えて〇植物活性を行い自分達が居なくなった後も生活出来るように
其の後は残しておいたヒマワリの種や干し肉を〇口福の伝道者で増やす
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
【奴崎組】
連携アドリブ歓迎
こんな有様を見ていれば……
根幹が間違っていると、強く思うよ
【アイテムポケット】と鞄で持参
時代に適した保存のきく硬いパン、ドライフルーツや干し肉、ジャムなど保存食を少しずつ、医薬品、残りは薪を
近隣に木立があれば
装備のブレードで樹を伐採し担ぎ、アイテムポケットに収めるか荷車を借り往復、薪の備蓄を作る
目立たぬように
暖を取るにも煮炊きにも薪は必要だろう
保存食を【口福の伝道者】で増やし
薪と食料を配りながら
具合の悪い者に調子を尋ね、塗り薬や医薬を渡す
新宿だけの薬はその場で使う
……こんなやり方は間違っている
吸血貴族は従属を強いるだけで、あなた方を使い捨ての道具のように思っているんだ
アストリッド・ヴァルトシュタイン
【奴崎組】※アドリブや連携はお任せ歓迎
とりあえずは持ち込める糧食で急場は凌げると思いますが……。
住民同様に土地そのものが疲弊しているように見受けられます。
……後の事を考えて、備えておくことにしましょう。
わたし自身が持ち込めるものはそれほど多くない。
ならば、せめて美味しく快適に食事のとれる環境をご用意しましょう。
さあ、わたしの戦友たちよ。
このひとたちが落ち着いて過ごせる場所を作ってあげよう。
総員整列、状況開始!
持ち込んだ食材でアイントプフ(スープ)を振る舞いつつ、亡霊たちを使役し住居を掃除なり修繕なりで環境整備。
【ハウスキーパー】効果で人々が少しでも快適に食事と休息のとれるよう場を整えます。
アレクサンドラ・リーヴェン
【奴崎組】
アドリブ・連携歓迎
飢えに苦しむ農奴たち。
真のロマノフの財産をぞんざい扱う存在を許すわけにはいかないわね。
【アイテムポケット】を利用して食料を持ち込みましょう。
ただし、ロマノフでも珍しくないもの。黒パンなくず肉のスープを。
味に文句は言わせないわ。量だけは用意した。今はただ腹を膨らせ、解放の時を待ちなさい。
私が、私たちが。このロマノフを本来の持ち主へと取り戻すまで。
リゲル・ゼルテウス
【奴崎組】
アドリブ連携OK
……燃やす事しか能がない当機ですが、ロマノフであれば話は別
『熱を生む』。それ自体が、現地の方々の役に立つのですから
新宿島からの支援物資を運びましょう
料理は……その。まだ火加減が不得意なものでして
その分しっかり働きますのでご容赦を
戦闘に巻き込まぬよう、此処から移動させるのを考えないのであれば大規模な焚き火の1つや2つ熾したのですが……。
今はせめて、食事中の皆様が穏やかに食事できるように周囲の気温を【熱波の支配者】を使って上げるのみです
ついでに当機の炎剣も幾つか生成して周囲に突き刺し、暖房器具代わりに……え。ウッカリ触ると火傷するからダメ?
ご尤もですね……
吸血ロマノフ王朝においてクロノヴェーダ、ヴァンパイアノーブルたちが求めるのは『従属』たる感情エネルギーである。『従属』とは結局のところ、一般人を過酷な環境に起き、劣悪なる状況を受入れさせることでしかないのだろう。
そう思わせるほどの光景が東ポーランド地域の農村の一つには広がっていた。
パラドクストレインによって物資を運び込んだディアボロスたち。
彼等は先んじて多くの農奴たちに食糧を振る舞っていた。
強化された残留効果。それによって多くの食糧がもたらされているが、それで従前である、とはとてもいえない状況であったことだろう。
「真のロマノフの財産をぞんざいに扱う存在を許すわけにはいかないわね」
アレクサンドラ・リーヴェン(吸血姫・g09048)の言葉にエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)たちディアボロスの一団は頷く。
「こんな有様を見ていれば……根幹が間違っている、と強く思うよ」
「吸血宰相『ウラジミール・ココツェフ伯爵』を討ったことで、余計に内政がが開始、苦しむ人々が増える……なれど」
その言葉に金刺・鞆(虚氏の仔・g03964)はしかし、落ち込む暇はないというように力強く、むん、と頷く。
彼女の瞳は確かに農村の悲惨たる状況を見ていた。
けれど、これから何をしなければならないのか。何が必要とされているのかを理解していた。
多くの人々が惨たらしい環境で生きることを強いられている。
「われらでぃあぼろすとて支援はできる、のです。わずかずつであっても、手が圧倒的に足りずとも……それはやらぬ理由にはなり得ません」
「そうだな。そのとおりだ」
「とりあえずは、持ち込める糧食の類で急場はしのげると思いますが……」
アストリッド・ヴァルトシュタイン(Löwenzahn・g04015)はそれ以上に農奴共々土地そのものが疲弊しているように思える。
後々のことを考えるのならば、多くに備えなければならないだろう。
「本当にそうだよなぁ……食えないってのは辛いからなぁ……」
農村の荒れ具合をルィツァーリ・ペルーンスィン(騎士道少年・g00996)は見回す。物資を運び込む段取りを効率よく行っていたのだが、
アストリッドの言葉に同意するしかない。
それほどまでに農村の状況はよくないものだった。
残留効果であるアイテムポケットで多くの物資を運び込んだルィツァーリは新宿島より持ち込んだ作物の種、干し肉などの排斥力の影響を受けないものを持ち込む。
軽く足で雪に覆われた大地を蹴っても、少しも大地がみえない。
「ここまで土が固いっていうのは、やっぱり雪のせいか……これじゃあ、作物が育ちづらいだろう。備蓄するっていう意味でも俺達がいなくなってもどうにかなるようにしないと……ひとまず……」
「むん! 今耕されている土地を土壌改良にて生育しやすい環境にしておきましょう」
鞆がルィツァーリの言葉に残留効果を手繰り寄せる。
この残留効果の善いところは、ディアボロスたちがパラドクストレインで去った後も効果が継続する、ということだ。これによって、少しは食糧問題が改善に向かえばいいと思ったのだ。
さらにルィツァーリが残留効果を引き寄せる。
植物活性。それによって自分たちが指定した植物が急速に成長していく。これを元手に土地をうまく活用してくれれば、と思う。けれど、それは急場しのぎにしかならないだろう。
「土壌の改良も、押し寄せる内政の瓦解という脅威には押し流されてしまうかもしれない。この寒さを凌ぐための暖を取れるように薪も必要だろう」
エトヴァはリゲル・ゼルテウス(「生体炎熱兵器」検証実験用素体・第六号・g08313)と共に農村の周りにある木立へと向かい、樹を伐採しては担ぎ、薪の備蓄を作り出していく。
多くのディアボロスが食糧の備蓄や供給に手を割いてくれているからこそできることだった。
如何にディアボロスが残留効果を手繰り寄せることができるのだと言っても、多くのことを全てこなせるわけではない。
役割分担、というのならば、きっとこれがそうなのだろう。
「……燃やすことしか能がない当機ですが、このディヴィジョンであれば話は別」
リゲルはエトヴァと共に運び込んだ薪を組み上げ、焚き火を熾す。
温かな火は、この凍えるような寒さに見舞われる大地にあっては人の寄る辺となるだろう。折角の温かい食事であっても、外で食べるにはあまりにも外気が低すぎる。
故に彼女は残留効果を手繰り寄せる。
周囲の気温を引き上げる残留効果。熾した火による熱がリゲルによって上昇し、緩やかな暖かさを農奴達にもたらsうだろう。リゲルとしては大規模な焚き火の一つや二つを用意したいと思ったのだが、加減というものが未だ効きづらい。
「申し訳ない……まだ火加減が不得意なもので……それにこの後に控える戦いのことを思えば」
「十分だ。今は。温かい空気というのは何物にも代えがたいものがあるから」
「そう言って貰えると助かります」
リゲルは人々の表情が柔らかくなっていることに気がつく。
彼女の手繰り寄せた残留効果。
それによって人々は本当に寒さを忘れているようだった。ならば、と自身が炎剣を生成すれば、暖房器具代わりになるかもしれないと思ったが、うっかり農奴たちが触れて火傷でもしてはいけないと彼女は少し残念そうだった。
「しかし、このままでは彼等を戦いに巻き込んでしまう可能性があるのも事実……」
「ならば、わたしの戦友たちに任せましょう!」
アストリッドは農村にあった建物に残留効果であるハウスキーパーを用いて、守護霊を宿らせる。この中ならば農奴たちも快適に過ごせるはずだ。
かと言って範囲には限度がある。
そういう意味ではリゲルとエトヴァが用意した焚き火は寒さを凌ぐにはよいものであったことだろう。
「な、なあ……」
「何? 味に文句は言わせないわ」
アレクサンドラが食事を振る舞っていると農奴の一人がおずおずと言った風に近づいてくるのに対して、先んじて言葉を紡ぐ。
「いや、ちがう。そうなじゃない。そうじゃないんだ。その、すごく助かっている。食事も、焚き火も、多くのことも」
感謝の言葉を告げられることにアレクサンドルは頷く。
「いいの。今はただ腹を膨らませ、開放の時を待ちなさい」
「か、開放……?」
彼女の言葉に農奴の男は驚いたようだった。考えたこともなかったのだろう。
ただ従属することだけの日々。
自分たちが強いられている、という感覚すら危うくなってきているのだ。開放という言葉に首をかしげるのも仕方がない。それがヴァンパイアノーブルたちの求める『従属』だったからだ。
そのやり取りを見ていたエトヴァは改めて思う。
「……こんなやり方は間違っている」
そう、間違っていると思う。
確かにこの過酷な環境で生存するためには、ヴァンパイアノーブルたちに従う必要があるのだろう。けれど、それは起点が異なるからだ。
結局のところ、ヴァンパイアノーブルは人々の生き死に関心はない。
数が重要だということ、感情エネルギーを吸い上げることができるか否かにしか興味がない。
だから、こんな事ができる。
「調子の悪い者はいないか」
エトヴァは僅かでも救える者がいるのならば、と新宿島から持ち込んだ薬を惜しげもなく農奴たちに与えていく。自分たちが去った後には排斥力で失われる薬があるのならば、今のうちに使い切ろうというのだろう。
「どうして……ここまで良くしてくださるのですか」
その農奴の言葉にエトヴァは頭を振る。
「吸血鬼賊は従属を強いるだけで、あなた方を使い捨ての道具のように思っているんだ」
「それは人としての行き方ではないと、当機は思うのです」
リゲルが力強く頷く。彼等の言葉には熱があるように農奴たちは思っただろう。そんな風に考えることなんて、今までは在りもしなかったことだ。
けれど、と彼等は徐々に内側から暖められていく。
凍てつく心は、外からの熱によってほぐされる。食事は、生きるということへの渇望を思い出させるのだ。
「これが一時のことであっても、今は落ち着いて食べていていいのであります。そのためにわたしたちが来たのでありますから!」
アストリッドが笑む。
精一杯の笑顔だった。これからもっと過酷な状況に陥れられるのだとしても、胸に希望を宿すことができたのならば、きっと農奴たる彼等も乗り越えることができるかもしれないと思ったのだ。
ともすれば、それは食料支援以上に彼等の心を勇気づけるものであったことだろう。
「耕した畑の方も少しは良くなっているはずだ。でも、今日はお腹一杯食べて休んでくれ。そして、家屋から出てこないようにな」
ルィツァーリは農奴達に告げる。
これから此処に巡回として訪れるヴァンパイアノーブルたちが居る。
戦いになることは避けられないし、連中を撃破するために自分たちはやってきている。だが、農奴たちを巻き込むことは本意ではない。
だから、と鞆が元気善い声を上げる。
「待っててくださいね。これからここに来るこわいものは、えいやっと、ともたちがやっつけて、みながあんしんあんぜんに食事をできるようにしてみせますから!」
むん、と彼女は笑む。
それはどこか可愛らしくもあった。それに釣られるようにして、アレクサンドラは静かに瞳を伏せながら戸惑う農奴たちに告げる。
「いいのよ。言ったでしょう。今はただ腹を膨らませていないさい、と」
「だ、だが……」
不安なのだろう。わかっている。
これで払拭できた、とは思っていない。けれど、エトヴァも、ルゲルも、ルィツァーリも、アストリッドも鞆だってそうだ。
多くの不遇があった。
多くの悲惨たる状況があった。
多くの生命がこれからも失われてしまうだろう。
けれど、と失われるから何もしないわけにはいかない。手を差し伸べずにはいられない。ディアボロスとはそういうものなのだ。
心に復讐の炎を宿し、身を焦がすほどの熱を持ちながら、しかして、それを凍える誰かのために使うことが出来る者たちなのだ。
故にアレクサンドラは目を開き、まっすぐに農奴たちを見据えていうのだ。
「私が、私達が」
この地に訪れたディアボロスの全てがそうであるように、彼女は力強く言葉を紡ぐ。
「このロマノフを本来の持ち主へと取り戻すまで」
どうかその時まで、懸命に生きて欲しいと願う。
生きることを諦めないでほしいと願う。
そうした願いがより合わさって、より強い力へと変わっていく。残留効果が繋がるように。強固な鎖となってディアボロス達の背を押すように。
そうすることで彼等を開放する力になるのだと締めうようにアレクサンドラの言葉は農奴達の凍えた心に温かな春の風を感じさせるのであった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【土壌改良】LV1が発生!
【植物活性】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV2が発生!
【ハウスキーパー】LV1が発生!
【熱波の支配者】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!
【ダメージアップ】LV2が発生!
【ダブル】がLV2になった!
【先行率アップ】LV1が発生!
トループス級『国境警備吸血隊』たちは訝しむ。
「……どういうことだ?」
彼女たちの瞳に映るのは、これから巡回を行う農村であった。
だが、彼女たちが見たのは農奴たちの居ない耕作地帯。誰もいない。おかしい、と彼女たちは訝しむ。だが、答えを持ち得ていなかった。
「農奴どもが全て死んだか? いや、それはない。まだ余力はあったはずだ。この期間に一斉に死ぬなどありえない」
「ならば、隠れているのだろう。おおよそ検討がつく。この気候だ。どうせ弱音を吐いているのだろう。この寒さで作業ができないのだとな」
中隊指揮官『ヴァルトシュタイン中尉』がそう吐き捨てる。
この警備隊を率いているアヴァタール級である。彼は以前も似たような事例があったことを覚えていたのだろう。
あのときは、幾人かの農奴を見せしめに痛めつけて殺して見せた。
それだけで農奴たちは従順になったのだ。
「なるほど。今回もそれである、と」
「ああ。どうせ小屋の中にでも引きこもっているのだろう。男では……ダメだな。女子供にしておけ。それだけで連中は大人しくなる」
中隊指揮官『ヴァルトシュタイン中尉』は防護マスクの奥で表情も変えずに頷く。
効率だ。
全て効率だと彼は頷く。
農奴達につけあがる隙を与えてはならない。こういう反抗においては、初動が大切なのだ。
だが、彼等は知らない。
これがディアボロスたちが行った罠であると。
人々は食事を得て、今は家屋の中で温かな火によって眠りに落ちている。
故に彼等は外に出ていない。農村にて待ち伏せたディアボロスたちがヴァンパイアノーブルと戦っても目を覚ますことはないだろう。
ならばこそ、此処で彼等を撃破する。
農奴たちは今日とは違う、今までの過酷な環境で生きる日々をまた送ることだろう。
けれど、決定的に違うことがある。
それはヴァンパイアノーブルたちの不在。
そのためには、此処で『国境警備吸血隊』と中隊指揮官『ヴァルトシュタイン中尉』を叩かなければならないのだ。
黒白園・真雪
アドリブ連携歓迎。
警備部隊っつうからには大抵巡回してくる道だとか時間は決まってると考えていいか。
農村の近くに隠れて、相手の影が見えるまで待機。
確認でき次第、村とは反対方向に飛び出して声を上げる事で警備部隊の奴等の気を引く。
オレ達はディアボロス。易々と従属なんかしてやらねぇ、
テメェ等に『反乱』する者だ。
従属させてぇんなら、テメェ等が叩き潰される前に叩き伏せてみな。
十分に村から引き離した所で、一気に仕掛ける。
攻撃を当てる事を最優先し、致命傷以外の反撃は受けきる。
氷雪はオレも馴染みあるもんだ。どうってことねぇ。
武器なんざ、其処から拝借した道具一つでも十分だ。
此処に暮らすあいつらの為に…テメェを倒す。
レイ・シャルダン
連携・アドリブ歓迎です。
他の方達が農村の人達を家屋に導いてくれてよかった。
なら、遠慮なく戦えると言う物です。
彼らの受けて来た扱いに思いを馳せ、巡る怒りの感情を闘志に変え
ただ敵を討つ戦士へと心を切り替えましょう。
『Boeotia』を起動し、敵への航路を瞬間的に導きだし
『アクロヴァレリア』の点火による推進力で一気に肉薄し
煌剣『シュトライフリヒト』で一刀の元に斬り伏せます。
はぁぁぁあ!!!
速度はそのままに巧みな【空中戦】の機動をもって【一撃離脱】を行い敵の攻撃を回避
それでも避けきれない物は『シャルダント』による【結界術】で威力を緩和して防ぎます。
その後も攻勢を緩める事無く、吸血鬼達へ攻撃を続けます。
レイラ・イグラーナ
ココツェフはこの地で人民が生きていくには自分たちが必要だと言っていました。
それはある意味では真実であったでしょう。この地は人民が自分たちの力のみで生きていくには過酷に過ぎる。
ですが、吸血貴族たちにより人民の皆様が苦しめられている。それもまた真実です。貴女たちの存在により苦しむ人民がいる限り……この歩みに迷いはございません。
こちらを追跡しようとする国境警備吸血隊に対し、こちらから接近し攻撃を仕掛けていきます。
放つ魔砲弾を最低限の動きで避けながら接敵し、【手製奉仕・彗】。その胸に銀の針を突き立てます。
貴女たちを討ち、人民の皆様に自由と希望を。それが私たちの使命です。
東ポーランド地域の農村を巡るクロノヴェーダ、ヴァンパイアノーブルであるトループス級『国境警備吸血隊』たちが、ディアボロスたちが食料支援を行った農村にやってくるのは時間の問題だった。
とりわけ、ディアボロスたちが腐心したのは農奴たちが戦いに巻き込まれぬこと。
今も農奴たちは眠っている。
久方ぶりの温かな食事。
疲れ果てた心は、ディアボロス達の支援によって解されるようであった。
「警備部隊っつうからには巡回してくる道は決まってる」
黒白園・真雪(怒りの天使を宿した者・g09418)は巡回するヴァンパイアノーブルたちの姿を認めた瞬間、飛び出す。人影のない農村にて動く影があったのならば、『国境警備吸血隊』たちは、それが己達の求める者であると認識しただろう。
「そこに隠れていたか!」
「逃すな!」
彼女たちにとって農奴とは捕らえるに容易い者たちだった。
だからこそ、彼女たちは違和感に気がつく。
「……待てっ、こいつ、まさか……!」
「ええ、そうですよ!」
真雪が農村とは真逆の方向へと走り出したのを追った『国境警備吸血隊』たちは、漸くにして自分たちが嵌められたのだと理解するだろう。
迂闊にも飛び出してしまった。
全てのヴァンパイアノーブルが真雪に釣られたわけではなかったけれど、しかし、それで十分だとレイ・シャルダン(SKYRAIDER・g00999)は理解する。
ゴーグルデバイスに映し出される『国境警備吸血隊』たちの姿。
最速。
彼女が求めたのはそれだけだった。
心に宿るは怒り。
燃える激情があった。農奴たちの生活を彼女は見た。
悲惨にして過酷だった。
惨憺たる状況だった。それは許せるものではなかった。そして、その怒りは闘志へと変わっていく。
「はぁぁぁあ!!!」
点火したフライトデバイスより得られた推力がレイの体を空へと飛翔させる。
神経に接続されたデバイス。
彼女の身にまとう武装の尽くが彼女とリンクし、レイの手足の延長となって戦場に飛ぶ。その姿を『国境警備吸血隊』たちは見ただろう。
狙撃銃がレイに向けられる。
放たれたパラドクスの弾丸。それがレイの身を守る結界を貫き、彼女の身を撃つ。
だが、止まらない。
彼女の手にしたレイピアが閃光のようにパラドクスの輝きを解き放つ。
人機一体:瞬断撃(ホライゾンディバイド)。
一撃離脱の瞬撃。
その閃光に打たれる『国境警備吸血隊』へと肉薄する影があった。
「貴女たちを討ち、人民の皆様に自由と希望を」
レイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)の手にした針が見据える敵へと無数に放たれる。一瞬の連携。レイの斬撃とレイラの放った針によって『国境警備吸血隊』たちの初動は完全にくじかれた。
「貴様達はやはり……ディアボロス!」
「ああ、そうだ。テメェ等に『反乱』する者だ」
易易と従属などしてなるものかと真雪が機先を制され『国境警備吸血隊』の懐に飛び込む。すでに彼女たちの一群は農村から引き剥がした。
畳み掛けるのならば今しかないと彼は、そこらに転がっていた農具を蹴上げて手に取る。
彼は、運と閃光の武器調達者(ウェポンラック・アンダーグラウンド)。
何処に居るのだとしても、何が周囲にあるのだとしても、無手であったとしても、全ての環境が彼の味方になる。そうなるように技術を磨いてきたのだ。
それがパラドクスに昇華したからこそ、真雪は状況を物ともしない。
己の怒りが胸にある。
それを示す。
手にした農具の一撃が『国境警備吸血隊』の体をしたたかに打ち据え、折れる。けれど、真雪は構わない。例え、己の体が敵のパラドクスに寄って吹雪の中に閉じ込められるのだとしても、止まらない。
凍りつく手足。
「ちょうどいい。それにな、こんな氷雪程度、オレにとっては馴染みのあるものでしかねぇ……」
拳を握りしめれば、四肢にまとわりつく氷雪を砕く。
砕けた氷雪は鋭い。
故に彼は手にした氷雪の欠片を叩き込み、彼女たちの体から鮮血を噴出させる。
その血潮の最中を手製奉仕・彗(ハンドメイドサービス・コミェータ)が示すようにレイラの放つ無数の針が打ち込まれていく。
レイラに迷いはない。
「貴様ら……! 農奴たちの存在はこの大地に生きる奴等自身の生活を支えているのだぞ! 貴様たちがしていることは、奴等を尽きえ上がらせ、甘やかしているだけに過ぎない。我らはそれを管理しようというのだ!」
「それはある意味で真実であったでしょう。ココツェフが言ったように、この地は人民が自分たちの力のみで生きていくには過酷に過ぎる」
「ならば……!」
「ですが、吸血貴族たちにより、人民の皆さまが苦しめられている。それもまた事実です」
「管理と言いましたか。あれはそんなものじゃあなかった。そんなものであっていいわけがない!」
レイラの言葉に『国境警備吸血隊』たちは言い返す。
だが、レイは怒りを滲ませ叫ぶ。
剣閃が迸り、彼女の一撃が彼女たちの身を切り裂く。
「貴女たちの存在により苦しむ人民が居る限り……」
レイラは思う。
己の正しさを誰が肯定してくれるだろうかと。
真実は多面体であるというのならば、己の為すべきことが如何なることへ波及していくのかを知る。故に、嘗て対峙した存在の言葉が蘇る。
思いあれど、レイラに迷いはない。
「此処に暮らすあいつらの為に……テメェらを倒す」
真雪の氷雪握りしめた拳が敵を打ち倒す。剣閃と針が打ち込まれる戦場に氷雪と銃弾が飛び交う。
「私のこの歩みに迷いはございません」
故に打ち倒すのだ。従属を強いるクロノヴェーダ、ヴァンパイアノーブルの所業に対して反乱すると真雪が言ったように。レイラは迷いなく一歩を踏み出す。
苦しむ者がいるからこそ、手を差し伸べたいと思うのだ。
レイがそうであったように。
誰かの不遇に。
悲惨たる境遇に心を痛める想いがあるのならば、それに応えるのが己達のパラドクスであると示すように。
農村より引き離した『国境警備吸血隊』の一群を彼等は打倒したのだった。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
効果1【強運の加護】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
【スーパーGPS】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV4になった!
【反撃アップ】LV1が発生!
ルィツァーリ・ペルーンスィン
アレンジ連携歓迎
【奴崎組】
漸く来たか……
此れ以上貴様等に人々を虐げさせはしない
貴様等を打ち倒し、何れは断片の王も倒して此の地の人々に自由を取り戻して見せる!
お前達の吹雪など其れを上回る炎で掻き消してやる!
彼等の未来は護り抜いて見せる!
相棒の無双馬に〇騎乗し戦場を〇ダッシュ、駆け廻りながら回避
更に敵の吹雪に対抗する様に敵の放つ吹雪ごと掻き消す様に敵へ向かって〇高速詠唱の〇連続魔法で〇焔矢をぶちかます
基本狙う敵は此方や味方に攻撃を放とうとした敵優先
次点で味方が攻撃しようとしている敵
連携重視で戦闘
複数の敵からの集中攻撃を喰らいそうな味方が居たら其方に向かって拾い相棒の無双馬に乗せて救助等も
アストリッド・ヴァルトシュタイン
【奴崎組】
巡回部隊が来るまでに迎撃準備を整えておきましょう。
相手が来ると分かっていて、準備まで出来るなら防衛側に分があります。
働き手に言う事を聞かせたい連中は、女子供を人質にしたいと考えていそうですね。
なら、わたしの矮躯はよく敵の目を引いてくれるハズ。
さて、貴女がたは機動力が自慢のようですが。
トラップだらけの氷雪地帯でその足回りが活かせますか?
動きが鈍ったならば、大量の銃火器にて押し潰します。
農夫の方々が目を覚ます前に片をつけましょう。
勘違いしていたら申し訳ないので、先に教えておいてあげますが……。
狩るのはそっちじゃない。こっちが狩りに来たんだ。
お前たちに朝を迎えさせてなどやらない。
金刺・鞆
【奴崎組】
来ましたね、ばんぱいあのーぶる……!
民のいのちは民自身のもの。きさまらの暴虐によって奪われてよいものではありませぬ。
きさまらは必ずやここで討つ。民らに手出しはさせませぬよ!
われらでぃあぼろすを無視して家屋に向かうとは思えませぬが、手を打っておくに越したことはなく。
【泥濘の地】を展開して、敵の動きを鈍らせましょう。機動力を削ぐのはいくさにおいても役に立つはず、です!
『アルカヘストシャワー』で攻撃する、ですが……えとえと、この液体でよいのでしたっけ……?
むむん、とりあえずなんでもかけてみちゃえ、ですよー!
防壁だってなんだって、とかしてしまえばよいのです。むん!
リューロボロス・リンドラゴ
【奴崎組】
ほう……?
子どもを、幼子達を見せしめにする、と。
ふん、なるほどな。
死ね。
我が尾にて幼子の敵を奈落へと落としてくれるわ。
我が牙は大地そのもの。
貴様達が踏み荒らし、村人達を酷使し耕させた大地が貴様達へと牙を剥くのだ。
是即ち民と大地の怒りと知れ!
液状化した大地は【泥濘の地】の地となり、アストの罠と合わせて奴らの進軍を阻もうぞ。
民達を人質にする等とさせるわけにもいかぬのでな。
思いもかけぬ奇襲で奴らは混乱しよう。
畳み掛け、冷静さを取り戻す余裕を与えぬよ。
吹雪だと?
竜を相手に?
決意だと?
虐げるばかりの貴様たちに?
くだらぬ、くだらぬよ。
我は龍、我こそはドラゴン。リューロボロス・リンドラゴ也!
奴崎・娑婆蔵
【奴崎組】
成る程、罠でハメた後にそこに砲火を射掛けェの、と――
カハハ、さすがアストリッドのお嬢だきゃァ手慣れておりやすねえ?
その地形戦のやりよう、見習わせて頂くと致しやしょう
アストリッドのお嬢に着いて歩くとしまさァ
あっしは剣をブン回すのが本業でござんしてね
もしも近場に寄せて来やがった敵あらば、妖刀『トンカラ刀』の錆にしてやりまさァ
・【影業「鳥」発動】、アストリッドと攻撃タイミング/照準を揃えて鳥の形を攻勢へ送り出し敵頭数を確実に削る
・この辺りの土地に生息している鳥のように見せ掛け強襲、敵群を引っ掻いたり啄んだりと暴れさせる
・鳥群を縦横無尽に操り、時に敵からの魔法弾に対し体当たりさせ相殺も見込む
モリオン・スモーキー
【奴崎組】
アドリブ・連携歓迎
SPDで周囲の味方をディフェンス。
……この地の民の命は民の物です。
他の誰かの物ではないです。
ですので、その身を全て……解体させていただきましょう。
パラドクス発動。クダギツネのケアンに魔力を委ねてこの身を獣と化し、ダッシュにて敵に接近しましょう。更にこの身を刃を成し、全てを喰らい解体しつくすまで、止まりません。
魔力弾を喰らおうとも、全て。全て。切り裂き、解体しきるまで。自分は、止まりません……!
リゲル・ゼルテウス
【奴崎組】
成程。防衛戦と一言で言っても、罠や地形に残留効果を合わせればコレほどに応用が効くのですね……
当機は【飛翔】にて空中戦を展開。脚部ジェットも点火し、機動力を上げます
とはいえ、普段通りに火力をフル活用した戦い方では現地の方々への流れ弾の危険性を拭えません
ですので、白兵戦で以て仕留めましょう
炎剣と炎盾を生成して準備を完了したら、更に大剣を生成
問題ない場所に突き刺し、それを起点に【熱波の支配者】を用います
上げ過ぎては現地の方々の体調に影響が出る可能性がありますので、上昇幅は程々に
しかしその「程々」でも、吹雪を弱めるには十分でしょう
後はジェットで吹雪を突き破り、刃にて仕留めるのみです
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
アドリブ、連携大歓迎
【奴崎組】
人としての生き方か
彼らが安堵を浮かべるのなら、二度と奪わせてはならない
この地の自然は確かに過酷だ……人々は肩を寄せ、知恵を絞り、助け合って生きていくのだろう
それすら都合よく奪うばかりでは、堂々巡りではないか
人々が、前に進むために……
俺達も、歩みを止めない
雪中迷彩服を纏い、村に戦闘の余波がいかない場所で待ち伏せ
周囲を偵察、観察し
味方とタイミング合わせ奇襲を
警備隊が罠にかかったら
羽搏きに乱気流を巻き起こし、敵を切り刻む
先手取り、味方に追い風を
狙いを合わせ倒しきる
仲間へ向かう雪と嵐を吹き飛ばすよう、パラドクスで応戦
反撃には魔力障壁を展開し
圧し潰しには盾を構え、嵐も防ごう
アレクサンドラ・リーヴェン
【奴崎組】
アドリブ・連携歓迎
のこのこと復讐者の顎の上にその身を捧げに来たわね。
違和感に気づけない三流役者には、さっさと退場してもらいましょう。
アストリッド達が罠を展開するみたいだし、便乗させてもらいましょうか。
『刻命魔術【氷精の吐息】』
生成した氷の矢で敵の魔弾を打ち落としながら、少しずつその気勢を削ってやりましょう。
寒さには慣れているでしょう?たっぷり喰らいなさい。
先行したディアボロス達の一群がトループス級『国境警備吸血隊』たちの一群を農村から引き離すようにして駆け出していくのをアストリッド・ヴァルトシュタイン(Löwenzahn・g04015)たちは見ただろう。
彼女たちは巡回するヴァンパイアノーブルの警備隊たちが、この農村に訪れるまでの時間に迎撃準備を整えていた。罠を張り巡らせた、と言って良い。
だが、それだけでトループス級である『国境警備吸血隊』たちを全て留められるとは思わなかった。
数の関係もある。
だが、先行したディアボロスたちが農村から一群を引き連れて撃滅してくれたお陰で彼女たちもまた動きやすくなっていた。
「作戦名、臥龍の牙(ドラッヘンツァーン)と参りましょう。敵の狙いは見せしめを得ること。ならば、わたしの矮躯はよく目を引いてくれるはずであります」
「ほう……?」
アストリッドの言葉にリューロボロス・リンドラゴ(ただ一匹の竜・g00654)の瞳に剣呑たる輝きが満たされる。
明らかに怒りを発露する輝き。
彼女に、リューロボロスにとって、それは許しがたいことであった。
だからこそ、彼女たちは前に出る。
『国境警備吸血隊』たちがおのれたちのような幼い女子供を見せしめに使おうというのならば、それこそ逆手に取るのだと。
「いたぞ、農奴の連中だ!」
「だが、ディアボロスが……!」
「構うな。奴等とて、女子供を人質に取れば手出しできまい!」
その言葉にルィツァーリ・ペルーンスィン(騎士道少年・g00996)と金刺・鞆(虚氏の仔・g03964)は戦場へと影から飛び出す。
「漸く来たか……」
「ゔぁんぱいあのーぶる……!」
彼等の姿は確かに見目には幼い子供そのものであったことだろう。
けれど、『国境警備吸血隊』たちは知る。彼等がディアボロスであり、そして自分たちが今まさに罠に嵌められたということを。
「此れ以上貴様らに人々を虐げさせはしない」
「子供が生意気なことを!」
魔法弾がパラドクスとなってルィツァーリたちに迫る。無双馬に騎乗した彼が戦場に飛び出す。それはしかし、機動力を傘に来て行う果敢にして無謀なる行為だったことだろう。
戦場を疾駆する彼の姿は標的。
『国境警備吸血隊』たちの視線を一手に惹きつけるものであった。
いや、そのとおりだ。惹きつけているのだ。ルィツァーリの果敢なる行動に彼女たちは一斉に攻撃を加えようとしてパラドクスを輝かせる。
同時に踏み出してもいた。
確実にルィツァーリを打ちのめすことができるように。けれど、これは逆説連鎖線である。己を狙って放たれた攻勢に対して即座に反撃を返す。
煌めくルィツァーリのパラドクス、ペルーン神の焔矢(ホムラヤ)。
誘導弾たる一撃が飛ぶ。
同時に『国境警備吸血隊』たちは知るだろう。己達の足元がぬかるんだことに。
「……!?」
「漸く気が付きましたか。ですが、それは遅きに失するというもの!」
それはアストリッドたちが用意した罠。
ただの罠ではクロノヴェーダを殺傷する力はない。けれど、足を止める、という目的を持ってなされたのならば別であろう。
鞆とリューロボスが残留効果を手繰り寄せる。
敵の機動力を奪うための力。大地はぬかるみ、『国境警備吸血隊』たちの動きが鈍る。だが、それだけだ。動きが鈍るのだとしても、パラドクスであるのならば彼女たちは迫る敵に反撃することができるだろう。
だから、無意味だと彼女たちは笑う。
しかし、その笑みが凍りつく。
「成る程、うまくハマっておりますな。カハハ、さすがはアストリッドのお嬢だきゃァ手慣れておりやすねえ?」
カハハ、と笑い声が『国境警備吸血隊』たちの笑みを塗りつぶす様に響く。
奴崎・娑婆蔵(月下の剣鬼・g01933)は妖刀を手にし、ぬかるんだ大地に足取られた『国境警備吸血隊』へと切っ先を示す。
「さあ、今でさァ!」
「のこのこと復讐者の顎の上にその身を捧げに来たわね、三流役者」
「集い、踊れ、青き風よ」
「拘束制御術式『プロメテウス』へ初號封印解除を申請……管制官不在の為、自己承認。『無名祭器』、出力0.00005%を確認。戦闘開始」
アレクサンドラ・リーヴェン(吸血姫・g09048)の言葉に応えるように、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)とリゲル・ゼルテウス(「生体炎熱兵器」検証実験用素体・第六号・g08313)が、その瞳をパラドクスの輝きでもって灯す。
青き翼が起こす風は乱気流のように凄まじい風力でもって荒び、その風を受けてリゲルは己の躯体を飛翔させる。炎熱する己の武装。
炎の剣と盾。
それを携え、彼女は熾した大剣の如き一撃を持って飛ぶのだ。
次々と明滅するパラドクスの輝き。
それは一声砲火と呼ぶにふさわしい猛襲であったことだろう。
アストリッドたちが己の身を囮にして『国境警備吸血隊』たちの視線を惹きつける。そして張り巡らせた罠によって彼女たちは足を止めた。
如何に逆説連鎖戦であるというのだとしても、超常たる戦いにおいて罠が一切役に立たぬことはないだろう。
己達のパラドクスを確実に打ち込むための方策。
それによって娑婆蔵たちは自らのパラドクスで持って戦場を横断するようにして『国境警備吸血隊』たちへと迫る。
「ケアン、全てを塗りつぶして構わない……闇ノ獣ハソノ身ヲ刃ト成シテ(ヤミノケモノハソノミヲヤイバトナシテ)」
モリオン・スモーキー(存在奪われし魔術発明家・g05961)もまた同様であった。
己のサーヴァントに魔力を委ねて、己の身を獣と化して一気に戦場を駆け抜ける。己の身を刃そのもへと変貌する。
あらゆるものを食らいつくし、解体するまで止まらない。
それが今の己の身であると示すようにモリオンは『国境警備吸血隊』へと肉薄する。
「こ、の……!」
モリオンの血肉を持って錬成された刃の一閃が彼女たちの体を切り裂く。だが、反撃の魔力弾が飛ぶ。
敵も苛烈であった。
如何に罠によってこちらが機先を制するのだとしても、総崩れにはならない。
良く練度されている、とも言えるだろう。
「だがまァ、あっしの『トンカラ刀』の錆になるってぇのは変わらねぇってことでさぁ! では、いざ、みやれや、影業「鳥」(バードストライク)! これが『八ツ裂き娑婆蔵』殺人技芸!」
娑婆蔵のパラドクスが影を操り、鳥の形へと成し、その突撃でもって敵を押し止める。
ついばみ、ひっかき、その猛攻を前に『国境警備吸血隊』たちはたじろぐだろう。さらにリゲルの熱波纏う躯体が飛翔しながら灰塵(ハイニカエレ)へと敵を帰さしめんとする一撃を叩き込む。
それだけではない。
「氷よ、踊れ」
アレクサンドラのパラドクスが熱波を押しのけるようにして急激に冷やされた空気と共に魔力の矢を持って『国境警備吸血隊』たちの体を穿つ。
熱波と冷気。
それによって加速された一撃が容易く彼女たちの胴を撃ち抜くのだ。
「刻命魔術【氷精の吐息】(マギノクロフィア・レディナスティーラ)……三流役者には勿体なかったかしら。けれど、三流も良いところのあなた達はさっさと退場してもらいたいの」
「我らを三流役者だと
……!?」
「ええ、そうでしょう? 農村の様子がおかしいことに気がつけても、その本質には気がつけない。ああ、寒さには慣れているでしょう? ただで帰しはしないわ。たっぷり喰らいなさい」
アレクサンドラの言葉と共に冷気纏う矢が敵を穿つ。
「このようなことをして何になる……! 貴様らのやっていることは、この大地を徒にかき乱すだけだと何故わからぬ! 人間などというのは、なにかに従属している時こそが、獣から脱する方法なのだ!」
その言葉にエトヴァは頭を振る。
「人としての生き方だ。お前たちは知らないだろう。彼等が温かな食事と火を囲む時、安堵の笑顔を浮かべたことを。お前たちのしようとしていることは、それを奪おうということだ」
確かに、とエトヴァは理解している。
このディヴィジョンの環境は過酷そのものだ。どう足掻いても人は容易く死ぬ。
だが、人々は肩を寄せ合って、知恵を絞り、助け合って生きてく。
だから、尊いと思う。
己たちもそうであれたのならば善いと思うだろう。戦場に残された残留効果が手繰り寄せられる。鎖のように強固になっていく力。
「……この地の民の生命は民の物です。他の誰かの物ではないのです」
モリオンは言う。
彼は、ヴァンパイアノーブルが他者の生命を我が物と同じようにしている事が許せなかった。
エトヴァの言葉と同じだ。
「お前たちは、都合良く奪っているだけだ。堂々巡りに過ぎない。同じところをぐるぐるとまわっている。それを循環と呼び、機構と呼び、称するのならば」
「その全てを解体させていただきましょう」
蒼い翼が巻き起こす風と共にモリオンの体躯が刃纏う獣のように飛び出す。
斬撃は風に乗り、その一撃を叩き込む。
その氷雪の風を縫うようにしてリゲルの体躯が空に舞う。己に飛ぶ弾丸も受け止め、さらに果敢に彼女は生成した炎の大剣を打ち下ろし、敵の体躯を溶断してみせる。
「人は確かに寒さに弱いものです。だから、身を寄せ合う。体温を共有する。与え、与えられ、そうすることで生きて行ける」
だから、と彼女はそれを凍えさせる者を許さない。
「そんなことだから、容易く死ぬのだ! それを……!」
「その傲慢を熱じ斬る」
振るった炎の大剣の一撃が横薙ぎに振るわれ、『国境警備吸血隊』を両断する。
「ハッ、そういうのを手前勝手って言うんでさァ。何もこっちには響きやしねェってもんで!」
娑婆蔵の放つ影の鳥が宙を舞う。
まるで己たちを囲うようなパラドクスの猛襲に『国境警備吸血隊』たちはジリジリと後退していくしかなかっただろう。だが、後退などさせはしない。
「アストリッドのお嬢! 整いやしたぜ!」
「ええ、ならば征きましょう」
アストリッドたちが駆け出す。
囮と罠。そして足を止めた所にパラドクスの猛襲。それで確かに『国境警備吸血隊』たちは足並みが揃わず、たじろぐままに瓦解していくだろう。
だが、それで全ての敵が打ち倒せたわけではない。
さらにダメ押しの一撃を打ち込まねばならない。
後退などさせはしないとルィツァーリが無双馬『スヴェルカーニエ』と共に回り込む。
「お前たちは逃さない。この地に生きる彼等の未来は守り抜いて見せる」
彼のパラドクスが再び輝き、吹き荒れる炎のように誘導弾を放つ。
その誘導弾と共に鞆の瞳もまた敵を見据える。
「むむん! このばんのうようかいえき……でしたっけ……? これならばどんな防壁だって、とかしてしまえるのです!」
鞆の投げ放つアルカヘストシャワーが降り注ぎ、その万能溶解液の飛沫が飛ぶ。
その飛沫を受けては『国境警備吸血隊』の防壁など意味をなさぬだろう。
そこに竜の牙を模した巨大な罠が展開する。
これまでアストリッドたちが仕掛けた罠は、あくまで殺傷能力のない足を止める罠であった。
それは効率的に『国境警備吸血隊』たちの足を止め、パラドクスを確実に叩き込むための方策。
だが、今まさにアストリッドの瞳に輝くパラドクスは違う。
確実にクロノヴェーダを殺すための罠。
「なんだ、これは……竜の顎
……!?」
アレクサンドラは笑む。だから、言ったでしょう、と。
「お前たちはすでに竜の顎の上よ」
「勘違いしていたら申し訳ないので、先に教えておいてあげますが……狩るのはそちらじゃない。こちらが狩りに来たのであります。逃げれど死。立ち向かえど死。牙と銃弾、どちらがお好みでありますか?」
「何を……威勢のよいことを!!」
「お前たちに朝を迎えさせてなどやらない」
アストリッドの言葉と共に竜の顎を模した罠が起動し、一気に飲み込むようにして『国境警備吸血隊』たちを砕く。
だが、それでも彼女たちは這い出すようにして罠より逃れる。
まだ余力がある、というのは恐るべきことだ。それだけヴァンパイアノーブルの力が強大であることを示す事柄であっただろう。
「このまま、ただやられるわけには……!」
吹き荒れる氷雪。
全てを呑み込まんとする冷気。
されど、その冷気を踏み鳴らす音があった。
そう、踏み鳴らすは孤高の竜(リューロボロス・グランドシェイカー)。
「吹雪だと? この竜を相手に?」
見上げる先にあったのはリューロボロスのパラドクス輝く瞳であった。
踏み鳴らした大地は液状化し、『国境警備吸血隊』たちの体の足を、体を掴み引きずり込むようにして波達。
「虐げるばかりの貴様たちに、如何様な大義があろうか」
「ま、……ッ!!」
待て、という言葉をリューロボロスは待たなかった。
「くだらぬ、くだらぬよ。我は龍、我こそはドラゴン。リューロボロス・リンドラゴ也!」
踏みしめた大地が、虐げられた人々の涙と血を糧にするかのように蠢き『国境警備吸血隊』たちの体を飲み込んでいく。ディアボロス達の攻勢は一気呵成だった。
『国境警備吸血隊』たちの数は確かに多かった。
しかし、ディアボロスたちが一群を引き離し、割り、さらに足並み揃わぬ所に罠を仕掛けてさらに機先を制する。
そこに集中砲火するようにパラドクスを煌めかせ、打撃を与えた。
これで瓦解しないわけがない。
「運がなかった、とは言わぬさ。だが、お前たちが弄んだ人の生き方というものが、どれだけ尊いか」
「その代価を支払って頂きましょう」
エトヴァとモリオンが泥濘より這い上がろうとする『国境警備吸血隊』に止めを刺す。
無相馬の蹄が響き渡り、ルィツァーリは敵の断ち切る。
「後はお前だけだ!」
示す先にあるのは、この警備隊を率いるアヴァタール級。
「農夫の方々が目を覚ます前に片をつけましょう」
「それには賛成でさァ。こういうのは、ささっと終わらせるに限る」
退路を断たれたアヴァタール級、中隊指揮官『ヴァルトシュタイン中尉』は歯噛みする。彼にとって、これはあまりにも非効率だった。
「むん、そのとおりです。とも、たちは負けませんから」
鞆が一歩を踏み出す。
そう、ここでアヴァタール級を逃してはならない。
この作戦を成功させることで、守られるものが在る。その多くに手を伸ばすために、ヴァンパイアノーブルの従属強いる支配を振り払わなければならない。
「忌々しいことだ。あまりにも非効率だ。貴様たちはやはりわかっていない。如何にして農奴共が生きてきたのかを。ただ漫然と生きるだけの者など獣以下、畜生以下でしかない。我々は奴等を管理して、人にしたのだ。人とは従属してこそ真の意味で人なのだ」
その言葉をディアボロスたちは否定するだろう。
全ての言葉に意義を見せる必要など無い。何故なら、中隊指揮官『ヴァルトシュタイン中尉』の言葉に己達の胸に宿る復讐の炎が、炉に薪をくべるかのごとく燃え上がるさまを覚えたからだ。
奪うことを是とするのならば。
「奪い返すまでよ、ヴァンパイアノーブル」
アレクサンドラの言葉に苛立つ中隊指揮官『ヴァルトシュタイン中尉』は、鮮血帯びるかのようなサーベルを抜き払い、防護マスクの奥で憤怒の表情迸らせ、パラドクスの輝きを解き放つ。
此処に農村と農奴を巡る戦いは、今、最後の局面を迎えようとしていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【動物の友】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
【泥濘の地】LV2が発生!
【飛翔】がLV3になった!
【アイテムポケット】がLV3になった!
【クリーニング】LV1が発生!
【冷気の支配者】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【ドレイン】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV5になった!
【能力値アップ】がLV5になった!
【反撃アップ】がLV2になった!
【先行率アップ】がLV3になった!
珠々院・アンジュ
※連携・アドリブ可能です。
「敵ですね。敵である以上殺しましょう。楽に死ねると思うなよ」
無表情で淡々と喋りますが無口ではありません。
他の人とも連携やコミュニケーションは取れます。
敵に対しても淡々とした口調ですが内容が過激になります。
成功のため技能は惜しみ無く使います。
表情には出しませんが、相手を呪詛で侵食することに愉悦を感じています。
パラドクスは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。自身の怪我は疎く気にしません。
他のディアボロスに迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
「奪う、だと? 驕るなよ、ディアボロス!」
アヴァタール級中隊指揮官『ヴァルトシュタイン中尉』の防護マスクの奥で瞳がパラドクスの輝きを解き放った瞬間、彼の周囲には火砲がずらりと居並ぶ。
それはまるで、吸血ロマノフ王朝の大地に荒ぶ吹雪の如き濃密な弾幕であった。
珠々院・アンジュ(エントゾルグングフルーフ・g05860)は、その猛攻たる砲撃のパラドクスを受け止めながら、しかし、その瞳を持って見上げる。
「この弾幕の中を抜けることができるものか! 貴様たちは!」
「砲口を向ける。弾幕を放つ。気炎を上げる」
アンジュは猛攻の最中を冷静に見つめる。
確かに猛吹雪ように荒ぶ砲火は、弾幕として脅威であったことだろう。
だが、彼女の瞳はパラドクスに輝く。
「敵ですね。敵である以上殺しましょう」
「当然であろう、ディアボロス。貴様たちは我らが管理を脅かした。人間が効率的に従属するという機構を阻もうとしたのだ、ならば!」
「ええ、だから敵です」
砲火の中をアンジュは進む。
身を撃つ一撃。痛烈なる痛みが走るだろう。そのはずだ。そうでなければならない。
だが、中隊指揮官『ヴァルトシュタイン中尉』は見ただろう。放火の最中を厭わず最短距離で突っ切ってくるアンジュの姿を。
「楽に死ねると思う。それは自体が、甘いですね、チョコレートケーキに練乳ぶちまけるくらいスウィートですね」
彼女が手にしたのは大量の呪詛を孕んだ鞘。
そして、その鞘より解き放たれるは、妖刀。
されど、刃こぼれが刀身に多く刻まれるようにして流麗であったであろう嘗ての刀身を汚す。
アンジュは構わなかった。
曰く、『苦痛で殺すにはちょうどいい』……つまり、彼女のパラドクスは、その名、Bitter chocolate(ビターチョコレート)のように甘いようでいて甘くはない。
抜き払われた刃は、まるでノコギリのように『ヴァルトシュタイン中尉』の体へと叩きつけられる。
刀でありながら、切り裂く、ではない。
それは叩きつけられ、そして抉る、というのが正しかっただろう。
高速の抜刀術。
されど、切り裂くことを是としない斬撃と呼ぶにはあまりにも鈍ら。
「貴様……!」
「ええ、だから、これでいい。そうですね。お前らに呪いを。死しても終わらぬ永劫の呪いを」
その言葉と共にアンジュは己のパラドクスたる一撃を『ヴァルトシュタイン中尉』の体に耐え難い苦痛と淀んだ呪詛を齎し、風雪の最中に変わらぬ表情で絶叫を聞くのだった。
成功🔵🔵🔴
効果1【腐食】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV6になった!
黒白園・真雪
アドリブ連携歓迎。
……管理する事で人にする?
くだらねぇ、吐き気がする。
厳しい環境なのは確かだろうよ。けどな、それを理由に人から自由を奪うな。
自分の足で、手で、支えてこその人の暮らしっつうもんだ。
猛吹雪みてぇな一斉射撃だろうと何だろうと、多少は隙間があるハズだ。
そこを狙って飛び込んでやる。
傷なんざ恐れやしねぇ。
それよりもテメェに、確実に叩き込む!
この速度はオレの怒りそのもの。
その傲慢な横ッ面、殴り飛ばしてやるよ。
管理されて、従属を強いられて。
そんな生き方はオレはもう真っ平だ。
此処に暮らすあいつらだって同じハズだ……
テメェ等に怯えず自由に過ごしてぇ、ってな。
レイラ・イグラーナ
да.
人民を効率的に従属させる機構、それはこの吸血ロマノフ王朝そのもの。
私は革命家。人民の自由を、尊厳を、希望を、生命を。脅かすのがこの国であれば……この国ごと打倒します。
ネメシス形態で、革命家としての姿に。
細剣「惨禍鬼哭血革針」を抜きます。
【天上奉仕・革命】を使用、多少の被弾は受け入れ、己の流した血を力に変えて弾幕の中を駆け抜けます。
吹雪のような弾幕を駆け抜けたら進行方向にいるゾルダートたちを切り伏せ、足を止めずにヴァルトシュタイン中尉へと接近、惨禍鬼哭血革針で貫きます。
私の流す血で、流れる人民の血が減るのであれば……いくらであろうと血を流しましょう。
それが私の歩む道です。
レイ・シャルダン
連携・アドリブ歓迎です。
…。
ゾルダート?
祖国から漏れ出た異物がこんな所にも?
ドイツを巡り、祖国の為に勤めを果たして散って行ったゾルダートの将は幾つも見てきました。
ですが、まさかこんな所に弱者をいたぶりのうのうと生きている奴がいるとはね。
これは…捨て置く事は出来ませんね…。
後衛にてサポート
手には蒼き魔力の灯火、機械魔導弓『ACRO』に番えパラドクスを発動。
前衛で戦っている味方の影から、背後から、側面から
必ず撃ち貫く魔術の矢が死角から敵を襲いかかります。
敵の反撃は『アルヴァーレ』と『シャルダント』による
二重構造の【結界術】で防ぎましょう。
これで、この農村に平和は戻ったのでしょうか。
神那岐・修
首魁か
挑ませてもらおう
無論正面から
武を以て挑むに小細工を弄するなど無作法というもの
統率は流石か
弾雨とはまさにこれ
が、恐れなど不要
押し寄せる弾幕へ自ら飛び込み幻陽にて撃つ
“纏”で刃とした拳足を“幻”にて振るい銃撃を正面から砕く
無傷など望めぬが、五体が遅滞なく動けば結構
動けるようにだけ己を書き換えつつ、砕いた破片も次弾へぶつけ弾雨を捌く一手とし致命とならぬよう
首魁へ肉薄したら離れず交戦
他へは目もくれず業を振るう
戦働きでしか役に立てぬ身だ
お前の業、是非とも残らず吐き出してくれ
無論俺も加減せぬ
文字通り五体全てがお前を撃つ
遠慮せず味わってくれ
※アドリブ・連携歓迎
絶叫が轟く。
それはディアボロスの放った斬撃。否、えぐり取るかのような凄まじきパラドクスの一撃に寄って引き起こされたものである。
無論、それがアヴァタール級中隊指揮官『ヴァルトシュタイン中尉』のものであることは言うまでもない。
「よくも、よくもよくもよくも! 貴様たちディアボロスはわかっているのか! これが! 貴様たちの行いは、機構を、辛うじて保たれていた均衡を崩すものであると!」
その言葉に、ダー、と頷く者がいた。
「人民を効率的に従属させる機構、それはこの吸血ロマノフ王朝そのもの」
怖気が走るほどの怒りが走る。
凍てつく大気に走る炎の如き激情を、その身に宿しながらしかし、レイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)は細剣の血の如き刀身を煌めかせる。
ネメシス。
復讐の女神の名を関する姿。それこそが彼女の姿を示すものであった。
「私は革命家」
「その革命が性急さを持つ時、それは滅びの引き金となるだろうことを何故理解しない!」
『ヴァルトシュタイン大尉』の防護マスクに隠された奥の瞳がパラドクスに輝く。
同時に居並ぶはゾルダート。
砲を携えた彼等が幻影となって放つは猛吹雪を思わせるかのような、苛烈なる砲撃の雨であった。
だが、その砲火を前にしてもたじろぐことのない者たちがいた。
「祖国から漏れ出た異物がこんなところにも……」
「だが、関係ない。挑ませてもらおう」
レイ・シャルダン(SKYRAIDER・g00999)は、『ヴァルトシュタイン中尉』のパラドクスに目を細めた。同時に神那岐・修(紫天修羅・g08671)が駆け出す。
レイは思う。戦いの日々を。
ドイツをめぐり、彼女もまた戦ってきた。
奪い返すために。そのために彼女は弓引き、多くを撃ち抜いてきた。
だが、と彼女は思うのだ。
「ゾルダートの将は確かに敵。されど、祖国のためにと務めを果たして散ったのです。ですが、まさかこんな所に弱者をいたぶりのうのうと生きている奴がいるとはね」
「よく喋るなディアボロス!」
「それはアンタもだろう」
「……なっ、あの砲火を……如何にして!」
「簡単な話だ。どれだけ打ちのめされようとも、武を以て挑むに小細工を弄するなど無作法もいいところ。故に。アンタが誇る砲火弾雨などに恐れは不要」
修の瞳がパラドクスにきらめいている。
あれだけの弾雨の中を一直線に駆け抜けてきたのだ。その身は確かにパラドクスの一撃に晒され傷を追っている。だが、関係ない。
無傷を望むことなどない。
ただ己の五体が滞りなく動けばいいとばかりに彼は『ヴァルトシュタイン中尉』へと迫っていた。
「管理という効率的な手段を我らは取っているだけに過ぎぬ。従属こそが人の在り方だ。そうでなければ……!」
「くだらねぇ、吐き気がする」
その言葉に『ヴァルトシュタイン中尉』は防護マスクの奥で目を見開く。
修だけではなかった。踏み込んできていたのは、彼だけではなかったのだ。煌めくパラドクスは二つ。
そう、其処に在ったのは、黒白園・真雪(怒りの天使を宿した者・g09418)の怒りに満ちた瞳だった。
「厳しい環境なのは確かだろうよ。けどな、それを理由に人から自由を奪うな。自分の足で、手で、支えてこその人の暮らしっつうもんだ」
天使の翼が生み出す推力。
それを後押しするのは彼の中に宿る怒りだ。
奪われた怒り。理不尽に奪われた生命があることを思えばこそ、真雪の心は燃え上がるようにして、その歩みを進める。一撃一退の極地(クイックターン・ハックスラッシュ)とも言うべき、圧倒的な踏み込み。
修の踏み込みが砲火を受けながらも進むものであったのならば、真雪の踏み込みは、その間隙を凄まじき速度で縫い込むようにして踏み入れる一撃。
「仲間のおかげで弾幕の隙間がみえた。傷を恐れねぇやつが居る。だから、オレはここにある」
「ああ、恐れなど不要」
修が体で受け止め、弾幕に隙間を生み出した。そして、その隙間を真雪は縫うようにして飛んだ。
共にありながら互いが異なる手段を持つからこそ生まれた連携。
「バカバカしいことを! 傷を、痛みを恐れぬだと! それが傲慢というものだ!」
『ヴァルトシュタイン中尉』が怒るようにして明滅する砲火をさらに放つ。
だが、その体を貫いたのは、電撃戦の一矢(ブリッツディゾルバー)であった。
「君は逃げられない、ボクが狙ったんだ、必ず当たるよ」
「……! 逃げるだと、この私が!」
レイのはなった矢。
魔術を織り込んだ矢は、彼女のデバイスから得られた視覚情報と周囲の環境データを計算し、そして、彼女の技量で持って放たれる。
そうした3つの力が織りなされた時、彼女の矢は『命中する』という結果を逆転させる。
「当たるから放ったんだ」
完全なる死角よりの一射。その一撃に『ヴァルトシュタイン中尉』の体が傾ぐ。
レイは思う。
この戦いに意味はあるのだろうかと。クロノヴェーダを排除したと言って、この吸血ロマノフ王朝の過酷な環境がすぐに変わることはない。むしろ、過酷さを増すだろう。
平和、と呼ぶには程遠いのかも知れない。
けれど、と彼女は信じる。
「信じなければ、平和なんてやってこないから。奪われたことも、奪い返すまで、きっと癒えることのない傷跡でしかないから」
だから、とレイのはなった矢は『ヴァルトシュタイン中尉』という奪ったものを穿つ。
そして、その左右から真雪の拳が脇腹を捉え、吹き飛ばす。だが、その体が吹き飛ぶことはなかった。
「お前の業、残らず吐き出すといい」
「吐き出すものなどあるものか!」
呻く『ヴァルトシュタイン中尉』に迫る修。その幻陽(ゲンヨウ)たる拳が迫りくるあらゆる砲火を撃ち落としながら、血潮溢れる拳を真雪の一撃によって吹き飛んだ彼の体を捉える。
「文字通り五体全てがお前を撃つ。遠慮せず味わってくれ」
瞬間に叩き込まれる打撃は戦いの化身の放つそれと同じ様に『ヴァルトシュタイン中尉』を打ち据える。
「あなたは人民の自由を、尊厳を、希望を、生命を脅かす者。そして、この国そのもの。であれば……」
「ディア、ボロスゥゥゥ
!!!!」
「……この国ごと打倒します」
レイラの瞳がパラドクスに輝く。
手にした細剣が煌めく。血の如き赤き刀身。それはこれまで己が流した血。そして、己以外の人民が流した血を思うからこそ、彼女の血は刀身を形成していく。
弾幕は既に真雪と修が切り裂いた。
開かれた道がある。
踏み出す。
阻むようにゾルダートの幻影が立ちふさがる。
それを切り裂きながら、足を止めることなく彼女は『ヴァルトシュタイン中尉』へと迫る。
「貴様ごときが!」
弾幕が再び煌めく。
だが、それは二度目の輝きを解き放つことはなかった。飛来する一射。電撃の如ききらめき放つ矢。レイのはなった一撃が、『ヴァルトシュタイン中尉』の肩に突き刺さる。
「管理されて、従属を強いられて。そんな生き方はオレはもう真っ平だ。此処に暮らすあいつらだって同じはずだ……これは!」
真雪が叫ぶ。
咆哮と言って良い。それはレイラの背中を押すだろう。
迫る幻影など物ともしない。
「テメェ等に怯えず自由に過ごしてぇって叫びだ!」
「流れた血は戻らない。失われた生命は戻らない。けれど、奪われたものは奪い返せる!」
レイの矢が宙を走る。言葉を載せ、その裂帛たる怒りを解き放つ。
「遠慮をするな」
味わえ、と修の拳が骨を砕く音を響かせる。
「私の流す血で、流れる人民の血が減るのであれば……いくらでも血を流しましょう」
天上奉仕・革命(メイドインヘブン・リヴォリャーツィヤ)。
レイラの戦いを示すもの。
血によって始まり、血によって成され、血によって終わる。それが彼女の歩む道。どれだけ血が流れる道であったとしても。
鋭く放たれる刺突の一撃が『ヴァルトシュタイン中尉』を貫く。
「それが私の歩む道です」
そして、それこそがディアボロスたちが求めたもの。
奪い返す。
奪われるだけでいいはずがないと。奪われないために力を振るうのだと言うように、多くの想いを繋ぎ、示してみせるのだった。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【飛翔】がLV6になった!
【傀儡】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】がLV4になった!
【反撃アップ】がLV3になった!
ルィツァーリ・ペルーンスィン
【奴崎組】
アレンジ連携歓迎
効率的?
貴様の其れは貴様等の利のみに基づいた物だろう?
虐げられる人々の苦しみも痛みも考慮になく、彼等の生すら必要なだけ生き残れば良いと度外視
多くを生かすは語る迄もない前提
民に利を齎し、生を楽しめる様な本当の意味での生を送れる様にするのは上に立つ者の最低条件!
まして貴様の其れは精神的に追い詰め寧ろ効率を下げてる有り様で論外が過ぎる!
其れに……アストさんを悲しそうな顔をさせてるのが気にくわん!
だから全力でぶちのめす!!
残留効果で〇飛翔し援護射撃対策に〇結界(術)で身を護りながら一か所に留まらない〇空中戦を展開
敵に距離を詰められない様にし〇高速詠唱の〇連続魔法で〇焔矢を放つ
アストリッド・ヴァルトシュタイン
【奴崎組】連携・アドリブ一任
漫然と生きるだけなら獣にも劣る。
その言葉自体には同意します。
しかし生き方を決めるのはその人自身。
もはや人でさえない貴方が、人のなんたるかを語るとは愚の骨頂。
今この瞬間を生きている誰かの想いは。
この凍て付く寒さにも、硬く冷たい鋼にも、止められはしない。
相手の一挙一動を【観察】し【情報収集】。
指揮官が突出するなら援護射撃を恐れる訳には参りません。
飛び交う銃弾砲弾を【念動力】にて逸し疾走。
握りしめたこの拳、刀刃掻い潜り懐に飛び込みブチ込んでやります。
あと何度、貴方を討てばいいんだろう。
けれども、わたしはこれしか知らないんだ。
見ないふりをしてやり過ごすなんて、無理だよ。
奴崎・娑婆蔵
【奴崎組】
ヴァルトシュタイン……アストリッドのお嬢と同じ姓ってか
全く、クロノヴェーダだのディヴィジョンだのを挟むと風変わりな喧嘩も起こり得るモンで
よう、あっしらは弁舌で引っ込むような手合いじゃァありやんぜ
であれば――始めやしょうぜ、中尉殿
その布陣、いっぺん八ツ裂きにしてやりまさァ
・中尉の部隊統率の手際、発声や挙措を観察
・敵ゾルダートの火砲の数や種類も見回し、己の有する砲撃/制圧射撃に関する見識を踏まえ、どれがどこにどう撃ち込まれ来るかといった向きを類推、射線を掻い潜るように突貫
・妖刀『トンカラ刀』抜刀――中尉目掛け【トンカラ斬り】一閃
・繁茂する呪いの包帯で締め上げ、統率に支障をきたさせる狙い
金刺・鞆
【奴崎組】
ヴァルトシュタイン……アストリッドさまとおなじ名、です?
見たところ、機械化ドイツ帝国より流れ着いたぞるだーとのようで。
……なんらかの因縁を感じますが、それをお聞きするのはまた今度といたしましょう。
今はただ、民の安寧のために目の前の敵を倒すのみ、です!
なんという巨大な砲……!
あれから幾重にも砲撃の雨あられが降るとなると……むん。仕掛ける場所は家屋や畑を巻き込まぬ地形を選ぶのが安全、でしょうか。
ひらけた場所にわたくしの影を写してから、即座に距離を詰め懐に入る、です!
小回りが利かぬというのなら、この距離まで近づけば満足に撃てぬのではないですか?
仕掛け扇で攻め立てて、隙を引き出しましょう!
アレクサンドラ・リーヴェン
【奴崎組】
連携・アドリブ歓迎
アストリッドの関係者、なんでしょうね。
けど、アンタは敵で。アストリッドにあんな顔をさせてる。
それだけで討つにには十分な理由だわ。
効率的に畜生以下の存在であるアンタを滅してあげる。このサーシャ様が。
【飛翔】を利用して高速の機動を。敵の弾幕は致命になるものだけを蛇腹剣で防いで。
『刻命魔術【闇精の羽搏き】』
至近から呪いの炎を撃ち込んでやりましょう。悶え、苦しんで朽ちなさい。
それとも効率的にすぐに逝く?まぁ、そう簡単に逝かせてあげないけど。
リューロボロス・リンドラゴ
【奴崎組】
ふん、愚かな。
効率とやらで納得するのなら復讐者等、この世にはおるまいよ。
ヒトならぬ貴様ら相手に人道を問答するつもりはない。
貴様にはその資格すらない。
簒奪者よ。貴様が、ヒトを語るな。
全く、竜を相手に氷の次は炎などと。
効率が聞いて呆れる。
腹立たしい。
何もかもが腹立たしい!
何度も、何度も、何度も、何度も子どもに父を殺させおって。
貴様がなんであれアストそう想うのなら、アストにとっては父なのだ。
子から父を奪うに飽き足らず、子に父を奪わせる。
クロノヴェーダよ。我は貴様たちのその在り方を許さぬ。
アストリッドよ。ぬしが拳を握るのなら、我も拳を握ろう。
ぬしの想いも、拳も我らが届けさせようぞ!(命中UP
リゲル・ゼルテウス
【奴崎組】
連携アドリブOK
効率、良いですよね。当機も好きですよ。燃焼効率が上がると楽しくなります
ですが、元中尉殿の言う「効率」は……幾分お粗末では?
ヒトにはヒトの効率の上げ方があります
元中尉殿のは、「機械」としてのソレを無理に当て嵌めた様に思えまして
【飛翔】にて、敵陣側面に陣取れるよう、敵火砲を掻い潜るか炎剣と炎盾で防ぎ逸しつつ上空から接近
無論、家屋や畑に敵や己の流れ弾が向かない角度で、です
位置についたら、大量召喚した火焔を刃型に成形し、爆裂するよう簡単な加圧のみ施して一気呵成に刃を投射
……可能ならば、コレで全て『平らに均し』たいものですが
「家族殺し」というのは、大変辛いものらしいですから
モリオン・スモーキー
【奴崎組】
アドリブ連携歓迎
SPDで周囲の味方をディフェンス
……アストリッド様の関係者でしょうか。
苗字は同じに見受けられますが。
効率とは各々が行うものであって他人にとっての効率ではない。
それで納得する人もしない人もいるのですよ。
故に我々は対立する。それだけですね。
パラドクス発動。
――闇の宝石、解放。影の槍が全てを貫く。
相手に影の槍を突き刺しましょう。
反撃で多数の味方を呼ばれようが全ての敵を貫いて差し上げます。
どれほど呼ぼうとも問題はございません。
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎
【奴崎組】
従属か……体のいい奴隷扱いではないのか?
その状態を人らしいと呼べるのかは、人に問うてみればよい
偵察、観察しつつ戦況を把握
戦闘時は【飛翔】し空中戦
戦場を翔け回り、緩急のフェイントかけつつ死角を抑えるように銃撃
小回りの効かない砲に対抗し動き回り、照準を定めさせない
同じく飛翔する味方と連携し、銃撃を浴びせかけ足止め
アストリッドさんと味方のサポートを
反撃には魔力障壁を展開し防御
射撃動作を観察、射撃方向を常に避けて移動し
直撃を回避しつつ、余波は盾で防ぐ
日々を懸命に生きる人たちへ……ただできる事があるのなら
それが戦いであれ、厭わない
見てみぬ振りが出来るのならば、どんなに善いだろうと思ったことがある。
アストリッド・ヴァルトシュタイン(Löwenzahn・g04015)は思う。
多くのことを思う。
幾度対峙しても尽きぬ問いかけが心に生まれる。何度。あと何度、貴方をと。
「漫然と生きるだけなら獣にも劣る」
「そうだ、そのとおりだ。人間というのは所詮そうした生き物だ。獣でしかない。ならば、人たらしめるのは理性ではない。従属だ。管理され、活用される。それだけが獣から人へと足らしめるものだ」
溢れる血潮。
身を穿つパラドクスに晒されながらアヴァタール級中隊指揮官『ヴァルトシュタイン中尉』は防護マスクの奥で血反吐咽返る匂いを吸い込み、言い放つ。
己の思考に。思想に過ちはないと言わんばかりであった。
アストリッドは頷く。
「その言葉自体には同意します。しかし、生き方を決めるのはその人自身。もはや人でさえない貴方が、人のなんたるかを語るとは愚の骨頂」
「私を愚かと言うか、ディアボロス!」
抜き払う赤熱する刀身。
その斬撃の軌跡をアストリッドは見ただろう。だが、彼女を阻むようにしてゾルダートの幻影が居並び、砲火を解き放つ。
凄まじい弾雨の如き弾幕。
猛吹雪と言えばいいだろうか。そう表現するしかないほどの苛烈なる砲撃が大地を穿つ。
「そこにどんな因縁があるのかを私は知らない」
アレクサンドラ・リーヴェン(吸血姫・g09048)は砲火の中を飛ぶ。
迫る弾幕は飛翔する彼女をしたたかに打ち据えるだろう。血がにじむ。けれど、手にした蛇腹剣を振るう。打ち払い、にじむ血潮が雪原を赤く染めるのだとしても、アレクサンドラは飛ぶ。
眼下にあるアストリッドの表情を見たからだ。
彼女の顔に浮かぶ感情を、どう言葉にすればいいだろうか。
「けど、アンタは敵で。あの子にあんな顔をさせてる。それだけで」
「ああ、それだけで十分だ!」
ルィツァーリ・ペルーンスィン(騎士道少年・g00996)は全力でぶちのめす、と叫ぶ。
気に食わない。
そう、気に食わないのだ。効率的だと『ヴァルトシュタイン中尉』は言った。
この地に生きる人々の従属を集めるために過酷な環境は、効率がよいのだと。
人の生死すら己の利とすることにしか考えられない。それがクロノヴェーダであるというのならば、ルィツァーリは怒りに満ちる瞳でもってパラドクスの輝きを解き放つ。
ペルーン神の焔矢(ホムラヤ)と刻命魔術【闇精の羽搏き】(マギノクロフィア・プロキリーナ)が戦場を切り裂くようにして走る。
炎の矢の如き一撃とアレクサンドラのにじむ血より放たれた火線。
その一撃が『ヴァルトシュタイン中尉』の体を穿つ。だが、それでも止まらない。手にした赤熱するサーベルを手に彼は叫ぶ。
「分からないのならば、貴様たちを滅ぼす。それだけのことだ!」
「虐げられる人々の苦しみも痛みも考慮にない! 彼等の生すら必要なだけ生き残れば善いと度外視する!」
「だからなんだという。それは正しいことだ。生存できぬ生命に価値などないだろう。だからこそ!」
『ヴァルトシュタイン中尉』の斬撃がルィツァーリの体を切り裂き、砲火がアレクサンドラを打ちのめす。
だが、彼等を庇うようにして飛び出す小さな体躯があった。
「ふん、愚かな。効率とやらを謳うだけで納得するのなら復讐者等、この世にはおるまいよ」
リューロボロス・リンドラゴ(ただ一匹の竜・g00654)だった。
彼女は煮えくり返るような激情を抱え、己の感情を爆発させる。
「ヒトならぬ貴様ら飽いてに人道を問答するつもりはない。貴様にはその資格すらない簒奪者であると知るがいい」
「人道など、獣に語る言葉か! ヒトとはな――……!」
「貴様が、ヒトを語るな!」
小さな体躯が走る。
己が拳に乗るのは、数多の歴史。
人の練磨。その紡ぎ、今に至るもの。その集大成とも言うべき拳が赤熱するサーベルと激突して火花を散らす。
爆竜拳(リン・ドラゴニック・ラースナックル)たる一撃に『ヴァルトシュタイン中尉』は吹き飛ばされるだろう。だが、その斬撃の一撃がリューロボロスの身を切り裂く。
痛みが走る。
だが、それ以上にリューロボロスは許しがたいと思ったのだ。
これは、結局のところ焼きましでしかないのだと。
「語るさ! 私こそがヒトだ。私の行いは全て、ヒトの行い。ヒトの局地たる行いであるよ。誰かを従属させたいと思わぬ者はないだろう。誰かヒトよりも優れたる者でありたいという自負があるだろう。他者を貶め、己を一段上の者であると思い込みたいだろう! そうでなくては!」
その言葉は矢のように戦場に降り注ぐ。
その一つ一つがアストリッドの胸を貫くものだった。
だからこそ、その言葉の矢を前に金刺・鞆(虚氏の仔・g03964)は立つ。
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)も、モリオン・スモーキー(存在奪われし魔術発明家・g05961)もそうだった。
「ヴァルトシュタイン……アストリッドのお嬢と」
同じ姓名、と奴崎・娑婆蔵(月下の剣鬼・g01933)は包帯に包まれた顔の下で如何なる表情を浮かべただろうか。
鞆もまた同じことを思っていた。見た所ゾルダート。機械科ドイツ帝国より流れ着いた存在であることはうかがい知れよう。
「ああ、まったく、クロノヴェーダだのディヴジョンだのを挟むと風変わりな喧嘩も起こり得るモンでさぁね」
「ディアボロス。貴様らの横槍がなければ、起こらぬ事象であろうが!」
苛烈なる砲火が荒ぶ。
ゾルダートの幻影が生み出す猛吹雪の如き弾幕。
さらに肉薄せんとするディアボロスたちを一網打尽にするかのように巨大なる砲撃の一撃が大地を揺らした。爆風が荒び、ディアボロスたちの体を撃つ。
「……でも、今はただ民の安寧のために……!」
巨大な砲の一撃を前に鞆は恐れを抱く。
けれど、彼女の心配事はそれではなかった。あの砲撃がもしも、田畑の中で戦うことをディアボロスが選んでいたのならば、と憂うのだ。
実際にそうならなかったのは、ディアボロスたちが敵を引き付け、『ヴァルトシュタイン中尉』たちを農村から引き剥がしたからだ。
「それは幸いでした。むん。確かにその砲の一撃は苛烈にして強烈。ですが……この開けた場所ならば、わたくしの影は!」
彼女のパラドクスが煌めく。
手にした仕掛け扇が『ヴァルトシュタイン中尉』のサーベルとかち合う。鞆の動きは奇妙だった。
それに彼は気がついていたが、しかし余裕はなかった。
なにせ、彼を取り囲むディアボロスは、さらにその包囲を狭めるように動いていたからだ。苛烈に極まる動き。さらにアレクサンドラとエトヴァが飛翔し、パラドクスの弾丸と火線でもって、こちらの頭上を塞ぐようにして迫る。
「チッ……鬱陶しい真似を! だが!」
飛翔することにリスクは多い。
この砲火のパラドクスを前にしては、なおのことであっただろう。
エトヴァは理解する。これは敵を抑えるだけに終始しなければ、逆にこちらが撃ち落とされてしまうと。
「当機は思うのです。効率の良さというのは、確かに喜ばしいことでありましょう。燃焼効率が上がると嬉しくなりますし、楽しくなります。ですが」
リゲル・ゼルテウス(「生体炎熱兵器」検証実験用素体・第六号・g08313)はエトヴァとアレクサンドラの放つパラドクスの中を飛翔し、炎の盾でもって打ち込まれるパラドクスの痛みに耐えながら『ヴァルトシュタイン中尉』へと肉薄する。
すでに手にした炎の剣。
煌めくパラドクスによって生み出された大量の炎の剣。
互いに撃ち合うは、その弾幕。
皮肉なことに猛吹雪の如き弾幕と、炎を加圧した剣の弾幕は空中で激突し、空気を膨張させる。荒ぶ衝撃波。互いの体が吹き飛ぶも、リゲルはさらに踏み込む。
「元中尉殿の言う『効率』は……幾分お粗末では?」
「私にそれを語るか、ディアボロス。言うまでもなく、従属なきヒトは獣以下よ」
「そうですか? 元中尉殿、それは『機械』としてのソレを無理に当てはめた様に思えるのでありますが」
その言葉に『ヴァルトシュタイン中尉』は手にしたサーベルで持ってリゲルを吹き飛ばす。
「だったらどうだというのだ。効率よく『従属』を強いる。これ以上に求めるものなどあるはずもなし!」
「それは体の良い奴隷扱いと云うやつではないのか? その状態をヒトらしいと呼べるのかは、ヒトに問うべきではないのか」
銀の弾丸の嵐の最中にエトヴァは問う。
いや、違う。
これは己のへの問いかけだ。
この戦いの意味と意義。大義というものがあるのならば、生きるヒトのためと応えるだろう。
生きていることだけが目的であるのならば、たしかにそれでいい。
けれど、とエトヴァは思うのだ。
「日々を懸命に生きる人々がいる。そこに言葉を弄することでしか、定義できないというのならば……それは!」
「なんのために言葉を操る。それは、結局効率だ。言いくるめる、と言ってもいい。人は考えることを放棄すべきだ。思考がストレスを生む。懊悩が、人の心を痛めつける。それは、良くないことだとわかるだろう!」
「だから、あなたは己の律を『機械』として当てはめたのでありますね」
激突する炎の剣とサーベル。
弾丸が空中で激突しては、砕けて散る。
鞆が踏み込み、手にした扇が『ヴァルトシュタイン中尉』の体を打ち据え、傾がせる。
「それで納得する人もしない人もいるのですよ」
モリオンのパラドクスが煌めく。
生み出されるは、影の槍。
闇の宝石・暗影槍牙(ヤミノホウセキ・アンエイソウガ)たるそれは、サーヴァントと闇の宝石を取り込んで生み出される力。
これまでリゲルが、エトヴァが、鞆がこじ開けた『ヴァルトシュタイン中尉』の防御。
それを縫うようにしてモリオンの影の槍が放たれる。
モリオンは見ただろう。
己を狙う数多のゾルダートの幻影が持つ砲口を。けれど、彼は躊躇わなかった。どれだけ己の体が打ち据えられるのだとしても、どれだけ幻影が『ヴァルトシュタイン中尉』を守らんとするのだとしても、彼には己の手にした槍を放つこと以上に重要なことはないと知る。
己の仲間の顔を見た。
その感情を己の言葉で語るのは、あまりにも悲痛であった。
だからこそ、力を振るう。
己がすべきこと。
「故に我々は対立する」
「分からぬな、ディアボロス! 貴様たちは!」
壁のように生まれるゾルダートの幻影。だが、モリオンは構わずパラドクスの輝き灯す瞳で『ヴァルトシュタイン中尉』という敵を見据える。
放った槍の一撃が胴を穿つ。
穿たれた巨大な穴は、その体躯の臓器というものを一瞬で破壊していた。
「コレで全て『平らに均す』であります!」
リゲルの炎の剣が雨のように『ヴァルトシュタイン中尉』へと降り注ぐ。リゲルにとって、それはできることならば、そうしたいと思うことだった。
アストリッド。
彼女の顔を見た。彼女は言葉にしなかったけれど、その顔を見ればわかる。己には彼女と同じ経験がない。己の経験を彼女が成し得ないのと同じ様に。
けれど、思いを馳せることはできる。
これは『家族殺し』だ。
如何に名を奪われた存在であっても。
宿縁が此処にあるというのならば、それは、結局そういうものだ。辛いことだとリゲルは知るからこそ、せめて、その悲しみをと思う。
炎が全て均してしまえばいいと思う。
だが、吹き荒れるは吹雪の如き弾幕。
「この、程度で、私が!」
『ヴァルトシュタイン中尉』が胴を穿たれながらも咆哮する。
「戦いを厭わぬというのかい」
「そうだとも。貴様たちは言ったな。我らは相容れぬのだと」
「ええ、対立するだけです。それが奪ったものと奪われた者の間に横たわる甘えぬ溝であれば」
エトヴァの言葉に『ヴァルトシュタイン中尉』は防護マスクの内側にまみれた血に構わず叫ぶ。モリオンは手にした槍で迫りくる弾幕を払い除け、けれど、その身に弾丸が打ち込まれる痛みに表情を歪める。
いや、違う。
それは、その痛みは。
「だれかをおもう痛みなのです。これは、きっと!」
鞆が手にした扇を叩きつける。力では敵わない。吹き飛ばされ、その身をモリオンとエトヴァが受け止める。
誰だってそうだ。
多くのことを一人ではできない。
一人で生まれて来ることなどできない。確かに死ぬ時は一人で死ぬのだろう。誰とも死を共有することなどできない。
だから、とリューロボロスは怒り狂うように咆哮する。
「腹立たしい。何もかもが腹立たしい!」
「効率を語る畜生以下の存在であるアンタを滅ぼしてあげる。このサーシャ様が」
アレクサンドラは火線を解き放つ。呪いの炎。
その炎はリゲルの放った炎と混ざり合うようにして雪原を溶かし、『ヴァルトシュタイン中尉』を取り囲む。
「馬鹿げたことを。私を畜生以下と謗るか」
「ええ、効率のことばかり語るのならば、やはりそうでしょう? 究極的には死こそが最も効率高いとは思わない? すぐになたも逝かせてあげましょうか? いえ、でもダメね。これは」
アレクサンドラは息を吐き出す。
簡単には、ではない。
そう、これが因縁と宿縁とを撚り合わせた戦いの結果、いや、道程であるというのならば、簡単に終わらせるわけにはいかない。
火線荒ぶ最中にリューロボロスは走る。
「何度も、何度も、何度も、何度も子供に父を殺させおって!」
怒りにじむ瞳。叩き込まれる拳。炎が吹き荒れる。
「何を言っている。貴様は。ああ、そういうことか。見せしめの話だな」
「やァ、そういう話でもないんでさァね。ああ、でも、そうですなァ……あっしらはディアボロス。弁舌だけで事足りる、というのならば、端から戦う理由なんて、そうそうあるもんでもないですって」
故に、と娑婆蔵は己の瞳をパラドクスの輝きで満たす。
抜き払うは妖刀。
その刀身のきらめきは、呪詛を開放した輝き。
放たれる斬撃がリューロボロスの拳に寄ってよろめいた『ヴァルトシュタイン中尉』の体に刻まれる。瞬間、包帯が呪詛を帯びて彼の体を縫い留めるようにして動きを止める。
「トンカラトンと言え」
「……ッ、これは……!」
「ええ、その動きを封じさせていただきやした。布陣は八つ裂きに。そして、砲火は鳴り止み、最早かいくぐるでもないでありましょうや」
娑婆蔵は手にした妖刀を地面に突き立てる。
伸びる包帯。呪いを帯びたそれは妖刀の呪詛でもって満たされる。故に、『ヴァルトシュタイン中尉』の体はもがく。包帯を引きちぎり、なおも動こうとする体躯にルィツァーリは飛翔し、パラドクスの誘導弾を叩き込む。
「アストさんの悲しそうな顔を……そうさせているのが、貴様だということが気に食わん! だから!」
全力で、とルィツァーリはパラドクスを叩き込み、入れ替わるようにリューロボロスが拳を叩き込む。
エトヴァの弾丸が周囲を嵐のように包み込んでいる。
無数に打ち込まれた弾丸は、すでに『ヴァルトシュタイン中尉』の体を穿っている。
「貴様がなんであれ、アストがそう想うのなら、アストにとっては父なのだ。子から父を奪うに飽き足らず、子に父を奪わせる」
「だからなんだというのだ。人の生死に、そこまで入れ込むとはな!」
彼女の言葉に理解を示すことはないだろう。
クロノヴェーダとは、そういうものだ。アヴァタール級であること。そうした事実が並べ立てられるのだっとしても、リューロボロスには我慢がならない。
許せない。
許せるわけがない。それはこの戦場に集まった者たちの総意でもあったことだろう。
「でさァね。許せるわけがない」
「効率と嘯くからではないですよ。それだけでは」
モリオンは吐き出すように言葉を紡ぐ。手にした影の槍の一撃が躯体を穿つち、最後に残された弾幕放つ幻影を討ち滅ぼす。
そして、アストリッドは今、自由を想う。
己の思いの丈はリューロボロスが代弁してくれた。それを『ヴァルトシュタイン中尉』は欺瞞と嗤った。
けれど、アストリッドは想う。
今この瞬間を生きている誰かの想いがある。
それはきっと凍てつく寒さにも、固く冷たい鋼にも止めることはできやしないのだ。それをアストリッドは知っている。
己の胸に宿るのは奪われたことへの復讐心だけではない。
心に青空を。
平和を望む心がある。希求する心がある。嘗ていつかの誰かに教わったであろう平和を求める心こそが、今のアストリッドの心を突き動かす。
「恐れはありません」
青空に伸ばす拳(フリーデン・イン・デア・ファウスト)が此処にある。
そして、共に戦う仲間たちが拓いてくれた道がある。
弾幕も砲火も。
そして、赤熱するサーベルの剣閃も。
アストリッドには恐れにはならぬ。
振り抜く拳の一撃が『ヴァルトシュタイン中尉』の顎を捉え、打ち上げられる。
「ガッ、っ、――……! わたし、は……」
何を伝えようとしていたのかわからない。けれど、突き上げられた拳は曇天の先にある青空を知る。躯体砕け、ただの鋼、残骸へと変わる『ヴァルトシュタイン中尉』をアストリッドは見下ろす。
「あと何度、貴方を討てばいいんだろう」
呟く言葉は雪に解けていく。
届けたい言葉の先に、アストリッドが求める存在はいない。
「けれど、わたしはこれしか知らないんだ」
嫌なことがあれば逃げ出せば良い。真っ向から戦わなくて良い。見て見ぬふりをしたっていいのだ。
辛いのならば。
悲しいのならば。
「見ないふりをしてやり過ごすなんて」
アストリッドは誰にも聞こえないように呟く。
それは、『無理だよ』と。
崩れた躯体。
鋼の屍晒すクロノヴェーダは、最早動かない。そして、知る。
吸血ロマノフ王朝に従属強いる敵を討つことで、手繰り寄せられる未来があることを。
せめて、と想う。
地に流血おびただしい道があるのだとしても、見上げた先には青空があることを。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【動物の友】がLV2になった!
【建造物分解】LV2が発生!
【腐食】がLV2になった!
【液体錬成】LV1が発生!
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【アイテムポケット】がLV4になった!
【飛翔】がLV7になった!
効果2【命中アップ】がLV3になった!
【ダメージアップ】がLV10(最大)になった!
【反撃アップ】がLV4になった!
【先行率アップ】がLV4になった!
【グロリアス】LV1が発生!