リプレイ
ノスリ・アスターゼイン
あっは
良いねぇ、不殺のヒーロー!
ジャンマリオ氏や皆と弁当を食べたりで油断を見せておき
場を離れて野盗を誘おうか
砦を見に行きたいな
崩れた石壁、石畳
植物達が褥となって砦を永い眠りへ誘う
時が止まったかのひととき
ねぇ
どんな夢を見ていると思う?
近付く野盗へ
肩越しに笑みを向け
とん!
壁を蹴ってジャンプし
眼前へ降り立つ
陽を負う身は影を纏うも
野盗を見下ろす眼差しは琥珀の灯火に照る
天へ掲げる手と声で招くのは
疾風迅雷
蒼天が嵐に呑まれ
「穿て」の呟きと共に
局所豪雨と雷が石畳を撃つ
閃光と爆音で
肌がひりつくかもしれないけれど
翼で、背で、砕け散る岩から野盗を守ろう
彼らの腰が砕けているのは、まぁ
仕置き料ってことで
無問題、だよね?
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎
ラズ(g01587)と
ラズと佇む砦を巡って眺めつつ
眺めの良い場所でピクニックしよう
ラズは廃墟好きだなあ
廃墟か……
人の営みがあった証を、風が、植物が、自然に浸していく……
石造のひやりとした気配に、歳月を感じる
厳かだ……照る陽射しも美しい
近隣住民の若者達か……
ある意味、歴史侵略者の被害者なのか
野盗が現れたら
はい、今助けるよ
と応じ、改心を願いつつ脅かそう
野盗とは感心しないな?
当てないように塗料弾を連射して、大地に炸裂させ
辺り一面を花畑に塗り替える
魔法使いにでも見えるかな?
人から物を奪うような、殺伐とした気持ちごと浄化できるよう
ラズの砂の手に合わせ
咲き誇るような幻想の色彩の世界を描こう
ソレイユ・クラーヴィア
連携アドリブ歓迎
淫魔に接収されていたのは、この前の学園だけでは無かったのですね
ジャンマリオも苦労が多いようで…
ええ、野盗退治はどうぞお任せを
まずは誘き出しですね
花の街道は見目麗しく
自然と頬が綻んで
こんな穏やかな景色の中で軽食を取れば
きっと普段より数段美味に感じるに違いないでしょうね
ジャンマリオ特製弁当は期待しても?
なんて笑いつつ
野盗が現れたら鍵盤を奏でます
春の陽気に誘われて喚び出すのは動物たちの大行進
獅子や白鳥など
この辺りでは見かけない動物を差し向け
間近で雄々しく咆哮させたり
大きな翼で上空から急降下させ驚かせます
脅して金品を得るなど、人の風上にも置けぬ行為
獣に食われても、文句は言えませんよね?
永辿・ヤコウ
ジャンマリオさんも
お元…狡猾そうで(?)何よりです
同行してくださるなら護衛もお任せください
学園の様子や温泉地のお話を聞きつつ
春の街道をお散歩気分
咲き誇る花のもとで
皆に稲荷寿司やお茶を振る舞いたいな
ジャンマリオさんは初めて食べる味わいでしょうか
狼藉者の登場には
ジャンマリオさんを背に庇い
指一本も触れさせない
野盗の威嚇声を撫でるかに
静かに告げる葵襲
ひゅっと風切る音が耳に届いたのち
驟雨の如く幾千幾万
針の雨の幻想が降る
勿論ひとつとして当てはしないけれど
身動きを取る間も与えず
野盗たちの直ぐ足元を、傍らを、
針の檻に鎖して差し上げる
彼らが巡らす視線の先で目が合ったなら
野盗の標本を作るのも悪くないですね、と嫣然
シル・ウィンディア
パルマも大分復興してきたけど、まだまだ大変だね。
さて、せっかくだからのんびりお散歩をしてみようかな?
温泉温泉っ♪とっても楽しみだよねっ!ふふ、最近大変だったからのんびりできるのはいいよね~。
温泉に心を喜ばせて、うきうき気分で歩いていくよっ♪
あ、荷物はわかりやすく両手で抱えて持っていくよ。ほとんど着替えだけど。
野盗さんが現れたら、ちょっとだけ怯えたふりをして、優越感に浸ってもらおうかな?
少しだけだけど。
しばらくしたら、にっこり笑顔を浮かべて
野盗さん、人を襲ったらね…
痛い目あうからね?
といいつつ、詠唱開始。
廃墟に向って、七芒星精霊収束砲(全力魔法付)
ね?こうなりたくないなら、迷惑かけたらだめだよ?
ユーフェミア・フロンティア
【約束】
綺麗な景色だよね。
ほっとするよね。
うん、こんないい景色のなかだし、お弁当を楽しもうねっ!
私はおにぎりにお漬物、卵焼きにほうれん草のおひたしなど食べやすく、彩もいいものを作っていきますね。
アンゼリカ、お肉ばっかりだよ。もうちょっとお野菜食べないとだめだよ?
そういいつつ、一緒にお弁当を食べます。
一緒になる人、かぁ。素敵な人に出会えたらいいね。
…あれ?アンゼリカ、どうしたの?お箸止まってるよ??
顔を覗き込んで不思議そうにするよ
野盗が現れたら、少し後ろに下がって庇われますけど
…でも、私も守られるばかりじゃないからっ!
神火収束砲を大岩めがけて撃ちます
これで反省してくださいね?
温泉楽しみだねっ!
竜城・陸
きっとそうでもしなければ生きられなかったのだろう
苦難の時が長いほど降ってわいた希望を信じられなくなることも
痛いほどにわかる
――それを解決する狡猾な策があるのだけれど
どうだろうジャンマリオさん、一枚噛んで戴けないかな?
なんて申し上げてご同道を願う
勿論、御身はしっかりお守り申し上げるよ
春の彩に溢れた街道をのんびり進もう
休憩時にはチーズケーキを振る舞おうかな
……いや、俺、まだこれしか作れなくてね
野盗の方々がお越しになったら
己が光から創り出した剣を
彼らの体を掠りはしない程度に
地へ幾重と突き立てる
他者を害して生きれば、いつか相応の報いがあるものだよ
取り返しがつかなくなる前に
やり直す機を掴む気はないかい?
星邑・雪穂
かつてご縁があった方の困りごとですからね
楽しい思いもさせていただいたことですし、可能な限りお力になれればと
野盗が出るまでは暫し、観光をさせていただきましょう
この時代の砦などを見る機会も中々ないでしょうし…スケッチでもしてみましょうか
まぁ…絵心とは無縁ですけどね、此処は雰囲気と言うことで
野盗が現れたのなら、私の騎士達でお相手しましょう
…と言っても怪我をさせてはいけないので手近な大岩や壁などがあればそちらに
見た目とは裏腹に彼らは狂暴ですからね
騎士道精神とは無縁に多勢で目標を狙いますから…
狙われたくなければこれ以上悪さはしないことです…と言ったところでしょうか、凄みとしては
ウルリク・ノルドクヴィスト
待つ間は皆と逸れぬよう
花見の賑わいも見守りつつ
廃墟の趣を観て
朽ちた砦に、嘗ての人々の痕跡を探して
襲撃は得物の槍で流し
されど野盗の身は刃では狙わず
まじない唱え、凍て風を手繰り
ひとときだけの冬を呼び
鋭い氷柱を地から迫り上げ
近くの砦の瓦礫を穿って見せよう
ただ槍で貫くよりはまだ映える
俺が、誰か
知らずに居られる幸運のうちに去れ
さもなくば君もこうなるか
或いは
此の槍が、涯まで追おうか
脅かすつもりで囁く
彼らの境遇に
馳せる心もあればこそ
手を緩めては未来に響きそうだから
皆の演出や煽る恐怖心は
排斥力に打ち克つことを願うが
俺が嘯いた台詞には
上手く靄が掛かったり…
しないか、など思ううちは
未だ百騎長の器には遠いのだろうな
セレスティア・リュミエール
アドリブOKです
なるほど、野党が?ふふ、ではちょっと懲らしめてあげましょうか
春の花を観に来た、良いところのお嬢様風に辺りをうろうろ
世間知らずなお上りさんな感じにしたら寄ってくるでしょうか
襲われたら、お待ちしておりましたわ、とにっこり
リオンを召喚し火炎弾を大岩へどっかん
大きい火柱でも上げれば、きっと驚くでしょう?
さて、罪を償って改心するのなら、見逃してあげますよ?とくすくす笑って
もし、まだやるのなら……?なんて火柱を指さしちょっぴり脅かし
ちょ、ちょっと、やりすぎちゃったかしら……?
貴方はどう思う?リオン
リオンはよくわかっていない様子だけれど、大丈夫、きっと。
……トラウマに、なってないといいけれど
ラズロル・ロンド
アドリブ連携歓迎
エトヴァ(g05705)と
うきうきワクワク
エトヴァと廃城ピクニックを楽しみ野盗を誘い出そう
廃墟大好き大興奮ご機嫌狐
廃れた人口物が自然に吞まれて行くの…イイ
野盗が来たら笑顔でご挨拶
知ってたよ風にこんにちは
野盗?コワイなぁ~
わー助けてーと棒読みしとこう
でも…こんなお仕事しちゃう人はお仕置きな!
笑顔で後ろ後ろと指差せば大きな影
砂の手が指の間に野盗と僕を入れるようにドバァーンと地面を叩く
自分で仕向けて…大迫力
後は野盗を砂の掌の上でコロコロしたり
エトヴァと合わせれば満開の花の砂の手かな!
一般人に攻撃は絶対しないように
十分ビビったら真っ当な仕事しろよーと野盗を見送ろう
さ、ピクニックの続き
アンゼリカ・レンブラント
【約束】
春の緑に彩られた街道沿いで
お弁当を広げよっか
私はスタミナのつくような食材で揃えたよっ
ミアのお弁当は昔から本当に彩り素敵!
栄養バランスも考えられたりで本当に
君と一緒になるひとは幸せだね~
軽口にほんのり胸がちくりとするのは
自分の言葉である人を思い出したから。
ミアの幼馴染の少年
――ミアと一緒になる人は……
ミアが顔を覗き込むのがわかると「なんでもないよ!」
と笑顔を作るね
野盗が現れたら楽しい2人のピクニックも終わりかぁ
ミアを守るように前に立ち
……心の中のわずかなもやもやを
叩きつけるように《光獅子闘拳》ッ!
大岩を拳1つで砕いたところを見せれば驚いてくれるかな?
さ、花々を望める温泉に2人でいこっか♪
●Buon appettito!
翔ける風さえ輝く季節がやってくる。
麗しき中世の街並みを残すパルマ中心部、その市街を抜けて街道へと出たなら、青き空に春の緑と春の花に彩られた光景が蒼穹と黄昏の眼差しの前に一気に開けた。まるで世界が春に祝福されているかのよう。
自然と頬を緩めたソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)が、パラドクストレインから降りて最初に訪れたディアボロス=ジャンマリオ記念学園の様子を思い起こせば更に深まる笑み。冬に皆と開校準備に尽力した学園も春に祝福されたかのごとき光景だった。
可憐な噴水の周りには陽色のプリムラや空色のビオラとともに桃色のリナリアが咲き満ちて、中庭の大きな月桂樹も常緑の緑の合間から陽色の花々を咲き零れさせていて、何よりも、それこそ花咲くような子供達の笑顔と歓声に満ちていて。
――それにしても、
「淫魔に接収されていたのが学園になったあの館だけではなかったとは……ジャンマリオも苦難の連続だったのですね」
「けれど苦難の日々も過去のこと、ですよね? 今日もジャンマリオさんはお元気もとい狡猾そうで(?)何よりです」
嘗て淫魔達が好き放題に振舞っていただろう日々へ想いを馳せつつソレイユがジャンマリオを労わってやり、過去の苦難を払拭するように華やぐ笑顔で永辿・ヤコウ(繕い屋・g04118)も彼の歓びそうな言い回しで言葉を添えたなら、たちまち氏の顔に広がるのは感激の面持ち。
「おお……! ソレイユ君もヤコウ君も、私のこれまでの苦難とこの健気な狡猾さを解ってくれるのだね……!!」
「俺にも解るよ。これまでのジャンマリオさんのことも、野盗になってしまった若者達のことも」
健気な狡猾さって何だろう、と胸に過ぎったことはおくびにも出さず、竜城・陸(蒼海番長・g01002)も柔く目蓋を伏せて微笑した。何にせよ氏の『狡猾』は良い結果を齎すものだと識っているから、先行きに明るい光を見出せなくなったのだろう若者達に、彼とともに手を伸ばそう。
涯てなき苦難の迷宮、あるいは底無し沼。そうとしか思えぬ深みに一度嵌まってしまったなら、降ってわいた希望を素直に信じることさえも困難になるのだと、己も痛いほどに識っているから。
――野盗達のそれを解決する狡猾な策があるのだけれど、
――どうだろうジャンマリオさん、一枚噛んでいただけないかな?
先程の再会の折に陸が今回の支援について語れば『勿論だとも!!』と大いに乗り気な二つ返事が返って、御身はしっかりお守り申し上げるよと道中の安全も確約の上でのんびり歩む街道は、心が解き放たれていくようなひとときを齎してくれた。
街道の両脇には天をすらりと目指す糸杉が等間隔に植えられ、街道を抱く大地は春の緑と春の花に彩られ、ところどころで大きく枝葉を広げた春楡の大樹が夏の旅人には嬉しいだろう涼しげな木陰を提供している。
青い空を旅する白い雲。
自由に気侭にゆったり空をゆくそれが優しく大地へ落とす影を追い越して、春の緑がひときわ春の陽に輝く光景に出逢えば蜜色の眼差しが捉えたのは、春草の緑に桃色や乳白の真珠を振りまいたようなアリッサムの花々が咲き広がる光景。
「あははぁ、極上の春だね。ここらでそろそろお昼に、なんてどう?」
「こんな景色の中での食事は、普段より数段美味に感じるに違いないでしょうね。ジャンマリオ特製弁当は期待しても?」
「勿論、存分に期待してくれたまえ! とは言え、ジャンマリオ特製ではなく寧ろディアボロス印のランチであるがね!」
見晴らしのいいところなら野盗達の目にもとまりやすいデショ、と声音でなく片目を瞑ってみせる所作にその意を含ませたノスリ・アスターゼイン(共喰い・g01118)の言葉にも所作にも同意しつつ、悪戯っぽく微笑みながらソレイユが訊ねれば、ジャンマリオが胸を張った。
中身はお昼時のお楽しみ、と皆で手分けして持ってきたバスケットを開けば現れたのは素朴ながらも飛びきりの美味。
薔薇色を超えて深紅の艶めきを覗かせるプロシュットに、小振りの壺にたっぷり詰められたアヒル肉のリエット、柔らかなペコリーノを思わせる羊乳のチーズに、瑞々しいルッコラと軽くボイルされた旬のアスパラガス。
「もしかして、この生ハム豚じゃなくて猪のじゃないかな? それに、このアヒル肉のリエットに羊乳のチーズ……」
「ふふ、やっぱり他のものとの違いはしっかり判りますよね。あの村の恵みですから」
「ディアボロス印かぁ……嬉しいね、そんな風に言ってもらえるのも、思ってもらえるのもさ」
黎明の双眸を瞬かせた陸がふと目許を和ませれば、リエットとなったアヒルとの再会をほんのり切なく思いつつもヤコウはあの村の大地の恵みがパルマ中心部に今も届いていることに微笑んで、いのちの恵みへの感謝を改めて胸に燈したノスリは途切れることなき想いの連鎖に眦を緩めて。あの村こと絵本の世界みたいな農村での仲間達の話を聴けば、ソレイユの胸にもあたたかな光が燈る心地。
暖かな幸福感をも纏った美味を受けとめるのはピッツァ生地とクレープを掛け合わせたような薄くてまあるい平焼きパン、ピアディーナと呼ばれるそれに好きな食材を乗せ、ぽふんと二つ折りにして頬張る昼餉の始まりの前に、僕からもぜひ皆さんに振舞わせてくださいとヤコウがいそいそとお手製の稲荷寿司を広げてみせて、ふと見つけた仲間の姿に狐耳をぴんと立てた。
「良ければお昼を御一緒しませんか、ウルリクさん! 美味しいものいっぱいありますし、僕の稲荷寿司もぜひ!!」
「ああ。邪魔でなければ歓んで、御相伴に与ろう」
逸れぬ程度に距離を置きつつ仲間達の賑わいを見守る心づもりでいたウルリク・ノルドクヴィスト(永訣・g00605)だが、ここで昼餉を囲む面々を見れば彼を昼餉に誘わないなんて選択肢などはありえない者達ばかりで。おまけに稲荷寿司が余程の自信作なのかヤコウのふっさふさの狐尻尾がぱったんぱったん御機嫌に揺れる様があまりにも微笑ましくて、ウルリクも皆の環に入って腰をおろせば、
春林檎の果汁と仲間が燈した【アイスクラフト】の氷を削って持ち込んだ冷水で作った果実水で、
――乾杯!!
青空のもとで鮮やかに弾ける春林檎の甘酸っぱさは格別で、
「ううむ、何と素晴らしい狡猾日和なのだ……!」
「狡猾日和……この国にはそういうものがあるのだな」
「あっは、この国っていうかジャンマリオ氏の特別日和、ってね!」
乾した杯を満面の笑みで陽に掲げるジャンマリオの言葉を生真面目に受けとめたウルリクが感じ入ったように頷けば、彼の肩を軽くぽんと叩いてノスリはピアディーナに手を伸ばす。
深紅の艶めきを覗かせるプロシュットは一冬の熟成で猪肉の野趣を極上の旨味に昇華させ、胡麻を思わす風味にほろ苦さを覗かせるルッコラ、塩味の利いた濃厚なミルクキャラメルめく羊乳チーズを合わせて食めば、眩暈がしそうな美味が花開き、
香味野菜を利かせたアヒル肉のリエットは果汁弾ける春林檎のスライスを添えれば濃厚な滋味と淡白な脂の旨味を鮮やかに咲かせ、軽くボイルされたアスパラガスと合わせて食めばその春野菜の甘味と弾んで絡んで融けあっていく様が堪らなくて。
いずれも香ばしさとパリッとした食感が楽しいピアディーナに挟んで頬張れば、弾けるのは飛びきり心も弾ませる美味しさ楽しさ。その幸福に相好を崩したソレイユは、続いてヤコウの稲荷寿司を賞味させてもらおうと手を伸ばしかけて瞬きひとつ。
ふっくら美しく整ったかたちで並ぶそれはお馴染みの狐色と、もうひといろで、
「この狐色の稲荷寿司は新宿島でよく見かけますが、こちらのほんのり桜色がかった稲荷寿司は……?」
「春らしくて綺麗だよね。作り方をお聞きしてもいいかな、ヤコウさん」
「ええ、意外に簡単なんですよ。油揚げを煮含める時に薄口醤油と白だしを使って、紅生姜も一緒に煮るんです」
訊ねてみれば興味津々で頷いた陸も相乗りして、問われたヤコウが嬉しげに破顔してレシピを明かす。ジャンマリオさんも是非、と妖狐が勧めれば、美食の街の商人は未知なる異国の料理に瞳を輝かせ、嬉々として手を伸ばした。
「おお! これが東洋の神秘というものかね……!!」
頬張れば甘辛い油揚げの裡から溢れるのは涼やかな酢飯で、
艶やかな狐色の稲荷寿司の酢飯には優しい甘さのふわふわ卵そぼろと春めくほろ苦さの刻み菜の花が混ぜ込まれ、ほんのり桜色がかった稲荷寿司の酢飯には香ばしく炒った桜海老と爽やかに香る刻み三つ葉が混ぜ込まれ、ジャンマリオばかりでなく手を伸ばして頬張った誰もの顔に幸せな笑みを花開かせる。
たっぷり手間暇かけてたっぷり心も籠めた稲荷寿司、美味しい、と皆の歓声が弾ける様に笑みを零してヤコウがあたたかな湯気を魔法瓶からくゆらせれば、杯に注がれていくのは春めく萌黄色を湛えて清しく香る煎茶。春空のもと稲荷寿司と味わう煎茶もまた格別で、ゆったり存分に楽しんだなら、瞳を見交わしたノスリとウルリクが腰をあげた。
「折角の機会だしね、砦を見に行きたいなって思ってさ」
「俺もそのつもりだ。歴史の浪漫とやらに浸ってくるとしよう」
「うん、いってらっしゃい。これ良かったら、小腹が空いたときにでも」
油断している様子は野盗達にも十二分に見せられただろうから、各々で釣り出しにいってくる――と言外に匂わせた彼らの意を過たず汲み取って、手早く包んだ食後の甘味を陸が手渡せば、受け取った二人の手首に仲間が燈した【パラドクス通信】が簡素な腕輪と見える形状で顕現させた通信機がきらりと光る。
微かな笑みを交わした猛禽と槍騎は軽くこつりと拳を合わせた後、それぞれ街道の先の東へ西へ。
軽やかな足取りで街道を歩めば、
流れる風が大地に生み出した春緑の波。
春草の煌きが細波になって翔けていく様へと向けた天の光映す眼差しが、明るい桃色に陽色に優しい白、春の彩をまあるく愛らしくぽんぽんぽんと咲かせる花々に出逢えばアンゼリカ・レンブラント(光彩誓騎・g02672)が歓声を上げて、
「わ! あっち見てミア、可愛い花がいっぱいだよっ! あそこでお昼にしようか!!」
「雛菊、デイジーだよね。綺麗……! うん、折角の景色だもん、眺めもお弁当もめいっぱい楽しもうねっ!!」
たちまちユーフェミア・フロンティア(光彩聖姫・g09068)も紅樺色の瞳を輝かせ、二人で弾ける笑み咲かせれば、光風にふわり踊らせ春草の上に広げた春色コットンのアウトドアラグの上で、いざ開かれる宝箱もといお弁当。
蓋を開けばユーフェミアの手許に咲く華やぎは、
海苔も綺麗に巻かれたおにぎりに小茄子のお漬物、明るい陽色の卵焼きは芯に巻き込んだ明太子の薄紅を覗かせ、法蓮草のおひたしは深緑に黄色のコーンを飾られて、ミニトマトが艶やかな赤を添える、彩りの美しさも完璧なお弁当で。
蓋を開けばアンゼリカの手許に咲く力強さは、
こんがり狐色の唐揚げや深紅のトマトソースを纏ったミートボールと、濃厚なオイスターソースを絡めだ青椒肉絲。最後の砦だったかもしれないごはんも焼肉のタレで香ばしく焼きつけた肉巻きおにぎりで決めた、お肉完全武装なお弁当だった。
「ミアのお弁当は昔から本当に彩りが素敵だよね! 私はスタミナのつくような食材で揃えたよっ!」
「アンゼリカのお弁当はお肉ばっかりだね。もうちょっとお野菜食べないとだめだよ?」
大切な親友の手許を覗いて声を弾ますアンゼリカに返ったのは心配そうな声音と、青椒肉絲にはピーマンと筍入ってるよ、なんて言い訳では許してくれなさそうなユーフェミアの眼差し! 思わずうっと言葉に詰まったけれど、
はい、これ食べて? と卵焼きの陰に隠れていたアスパラのベーコン巻きを差し出されれば言葉の代わりに鼓動が跳ねて、言われるままにあーんと口を開けたアンゼリカは彼女の優しさをぱくり。軽い焦げ目が香ばしいベーコンもその裡から弾けるアスパラの甘さも確り味わって嚥下して、
「栄養バランスも考えられたりで本当に、君と一緒になるひとは幸せだね~」
「一緒になる人、かぁ。素敵な人に出逢えたらいいね」
跳ねた鼓動を誤魔化すような軽口を春風に乗せたなら、己自身の言の葉がアンゼリカの胸をちくりと刺した。小さな痛みにぱっと花開いた面影はユーフェミアの幼馴染の少年、元は悪ガキで、それでも、
――ミアと一緒になる人は……。
輝く約束、眩い歓喜とともに取り戻した希望の未来。開かれたその先はまだまだ未知数で、無限の可能性にふんわり想いを馳せつつ何気なく先の言葉を口にしたユーフェミアは、ふと落ちた沈黙に瞬きひとつ。
「……あれ? アンゼリカ、どうしたの? お箸止まってるよ???」
「! なんでもないよ!!」
大切な親友の胸に何が萌したのかには気づくこともなく、不思議そうにユーフェミアが覗き込めば、今度は鼓動だけでなくアンゼリカの声音も大きく跳ねたけれども、本当になんでもないのだと示すように飛びっきり明るい笑顔を咲かせてみせて。唐揚げとミニトマト一個とりかえっこしよ、なんてユーフェミアの巧妙なお野菜食べさせ作戦にしっかり嵌まりながら幸せな二人のひとときをすごしていたけれど、
背後から歩み寄ってくる複数の気配に、楽しいピクニックも終わりかぁ、と彼らに聴こえぬよう溜息ひとつ。
「お嬢ちゃん達、お寛ぎのところ悪いけど」
「痛い目見たくなかったら、荷物も金目のものも全部置いていきな」
「は、はい、命だけはお助けを……なんて言うとでも思ったら大間違いだよっ!!」
大変わかりやすい声を掛けてきた野盗達を振り向きざまに春草に埋もれさせていた黄金輝く大剣を引き抜いて立ち上がり、大切なひとを背に護りつつ啖呵を切ったアンゼリカは大剣に紅蓮の神焔を燃え上がらせると同時に力いっぱい跳躍した。
真っ先に思いついた光獅子闘拳が揮えないなら今揮える技を揮うまで!
黄金の輝きに突如重ねられた紅蓮の焔、熱い輝きにうわっと後ずさった野盗達の頭上を超える大きな跳躍で彼らの眼差しを惹きつければ、先程ちくりと胸を刺した痛みが齎したもやもやを思うさま叩きつける勢いで金彩の瞳を強気に輝かせ、
「神火よ、我が刃に宿りて悪しきものを断ち切れっ!!」
「うわああぁあっ!?」
漲る闘志とともに豪快に打ち込む技は神焔斬妖剣(シンエンザンヨウケン)、轟と生命の焔を燃え上がらせる大剣の一撃が野盗達の背後にあった大岩を真っ二つに砕いて焼き払い、
「私も守られるばかりじゃないからっ! 野盗さん達、私達を狙ったこと、反省してくださいねっ!!」
「うひいいぃいっ!?」
当たり前のように己を護らんとしてくれる親友の勇姿に笑み咲かせ、可憐ながらも芯の強さを秘めた響きの声音で野盗達の気を惹いたユーフェミアも紅蓮に輝く神火を春草の裡から掬い上げた聖杖に凝らせて、
眩く迸らせる浄化の炎、神火収束砲(シンカシュウソクホウ)で今アンゼリカが焼き払った大岩の更なる向こうに鎮座した大岩を派手に撃ち抜いて見せたなら、手にした剣を少女達に突きつけることさえ叶わずへたりこんだ野盗達は、身を寄せ合いぷるぷると震えることしかできなくなった模様。
相棒が世界に燈してくれていた【パラドクス通信】でジャンマリオと一緒にいる仲間達へ連絡したなら、
「これでばっちりだねっ! それじゃ場所変えて、陸が持たせてくれた食後の甘味でお茶にしよっか!」
「うん! 陸さんの甘味もこの先の温泉も、とっても楽しみだねっ♪」
青い空と同じくらい晴れやかになった心のままにアンゼリカは一片の曇りもない笑みを咲かせ、ユーフェミアも屈託のない笑みを花開かせて応えれば、何方からともなく自然に手を取り合って、青い空と春の緑に春の花で彩られた、街道の先へ!
目蓋を閉じればいつも胸の裡にこだまするのは波の音。
然れど今日の星邑・雪穂(氷華・g07563)の胸の裡には、美しい森と小鳥達が描かれたチェンバロで子供達と一緒に、友が奏でるヴァイオリンとともに織り成した題名に星が輝く歌が響いて満ちた。この街道へと出発する前に立ち寄ったあの学園で贈ってきた【アイスクラフト】の氷に、子供達がわあっと咲かせた歓声も。
楽しい想い出を作る縁を結んでくれたジャンマリオと困りごととあれば雪穂も手を貸すのに否やはなくて、学園で子供達と一緒に大はしゃぎした雪白のミニドラゴンも今は召喚せずに、たったひとりで廃墟の砦を訪れる不用心な娘を演じて野盗達を釣り出しにかかる。好奇心のまま街道を外れたように装い、小さな森を背にして佇む砦を、朽ちゆくその姿を振り仰いだ。
――星空を湛えるような瞳に映ったのは、静謐な美しさ。
砦を囲んでいた四つの塔はいずれも崩落で屋根を失い、二つは最早もとの半ば以下と思しき高さを残すのみ。
崩れゆく石造りの砦は乾いた薄鈍色と緋褪色に彩られ、基礎の辺りは森から溢れてきたようにも思える緑深いラズベリーの茂みに呑まれていた。嘗ては整然と積まれていただろう石組みも、時の洗礼に晒され砂の壁のごとく風化して。
この断頭革命の時代からも軽く五百年、あるいはそれ以上の時を遡れる砦だろう。現代ではもう崩れ果て、辛うじて痕跡が確認できる程度になっているのかもと思えば、胸に燈るのは滅多に出逢えぬ光景が眼前に広がっているのだという実感。
「絵心とは無縁ですけれど――」
仲間とジャンマリオが包んでくれたお昼と甘味は後のお楽しみにして、己の存在を野盗に報せるように胸の裡を声にしつつ雪穂は、手許に広げたスケッチブックに色鉛筆を踊らせた。巧く描くことはできずとも、瞳に映して心に燈した光景を己が手を通して画帳に溢れさせていくのは意外に面白くて、
「……こういう雰囲気を楽しむのも、なかなか趣深いものですね」
あながち嘘でもない言の葉を唇に乗せてみれば、
「へえ、お絵かきたぁ随分余裕があるじゃねえか」
「その様子じゃ懐にも余裕があるんだろ? 全部俺らに恵んでいってくれよ」
塔の後背、森から現れたのは剣やナイフをちらつかせる野盗達。
華奢で小柄な娘ひとりを脅すなど赤子の手をひねるようなもの、彼らがそう思っているのは明らかだったが、
「――お断りします」
眉ひとつ動かさぬ雪穂が閃かせたのは指先のみ、双眸を見開きもせぬ氷華の娘が開いたのは花唇のみ。
画帳に重ねられていた星々を希う魔導書の頁が躍ればたちまち溢れだしたのは凍てる氷雪の魔術、蒼銀に透きとおる氷像の騎士団が雪穂を背にしてずらり立ち並べば、冷たき身の裡に騎士道精神など持ち合わせぬ彼らは一気に野盗達へ突撃した。
「ひっ……!!」
「うわあっ!!」
凛然たる見た目を裏切る狂暴な吶喊。凍気と氷刃が荒ぶ嵐のごとき突撃は勿論野盗どもに傷を負わせはしなかったけれど、彼らの合間や周囲を轟と駆け抜けた凍てる騎士団の嵐は砦の壁を派手に突き崩し、轟音と共に崩落する石組みを背にくるりと野盗達を振り返る。
血の気を失った彼らに突きつけられる、氷の鋩。
「狙われたくなければ、これ以上悪さはしないことです」
「し、しないっ!!」
「許してくれ……!!」
淡々とした声音で雪穂が凄めば、その言の葉も氷の刃のごとく彼らの心を貫いて、剣やナイフを取り落とした野盗達はがくんとその場に膝をついた。悪事を働こうなんて気概も凍りつき、砕け散ってしまったに違いない。
幾つか点在する廃墟の砦のひとつで凍てる騎士団の嵐が吹き荒れた頃、
優しい光風が流れる街道で暖かな春の陽射しを受けた頬に白き繊手を添えた、碧き月の魔女がころりと笑みひとつ。
「境遇は気の毒ですけど、野盗に身を堕としてしまうとは……確かにちょっと懲らしめてあげる必要がありそうですね?」
「それもこれも、パルマに明るい未来を開くためっ! お互い頑張ってこようね、セレスさんっ♪」
紫水晶の瞳を意味深に煌かせたセレスティア・リュミエール(碧月のソルシエル・g05430)が微笑みかければ、青空の瞳を溌剌と煌かせたシル・ウィンディア(虹霓の砂時計を携えし精霊術師・g01415)が明るい笑みでそう応え、大切そうに荷物を抱えたまま手を振って足取り軽く街道を歩んでいく。彼女の背を見送ったセレスティアは花に誘われた風情で街道を外れて、ふわりと足を踏み出す春緑の大地。
二人の耳に煌いたのは耳飾りにしか見えぬ形状で顕現した【パラドクス通信】の通信機、シルが燈したそれは仲間達が広い範囲に散っている現状では常時全員と連絡を取ることはできないが、通信が届く範囲の仲間達を伝っての伝言ゲームのごとき形なら何かのときにも皆と連絡可能だろうと思えばいっそう安心感があるというもの。
仲間とジャンマリオが包んでくれたお昼をいつ開けようと考えるのも楽しくて、
時に花のかんばせを曇らせる愁いも今日は綺麗に隠し、青薔薇のドレスを軽やかに翻したセレスティアは、
「まあ、なんて綺麗な花……!!」
鮮やかなオペラピンクを咲かせる花々が咲き広がる光景に、心からの歓声を咲かせた。アグロステンマ、麦撫子と呼ばれるその花々は園芸種の花のような優美さこそ持ち合わせてはいないものの、野の花らしい力強さに愛らしさを併せ持つ魅力には惹きつけられずにはいられない。庭園の花々ばかりに囲まれた鳥籠から初めて野に解き放たれた、世間知らずの令嬢のごとく瞳を輝かせるけれど、元より貴族として生まれ育ったセレスティアにとってはこれもごく自然な振舞いだ。
ゆえにそれが演技だと気づくこともなく、
「護衛もなしとはまあ、何とも暢気なお嬢様だな」
「俺達にとっちゃ好都合だけどな。さて、金目のものを一切合切置いていってもらおうか、お嬢様」
まんまと釣り出された野盗達が背後から近付いてきたなら、
「ふふ。ようこそ野盗の皆様、お待ちしておりましたわ」
「へ?」
華やぐ笑顔で振り返ったセレスティアの掌上で羽ばたく蝶のごとく花開くのはまさしく月光蝶を封じた魔道書、青い輝きで舞う蝶達が溢れだしたと見えた刹那、世界に結晶するのは黄道十二宮の力を借りる占術魔法がひとつ、
――炎の鬣を燃え上がらせる獅子を顕現させる、le・signe・Lion(ル・スィーニュ・リオン)!!
獅子の咆哮とともに放たれた赫焉の炎、獰猛な赤き灼熱に輝く火炎弾が重厚な大岩を直撃し、大地を揺るがし盛大な火柱を上げたなら、野盗達は驚愕に眼を見開いて息を呑み、
「!!」
「……っ!?」
「さて、罪を償って改心するのなら、見逃してあげますよ?」
――もし、まだ罪を犯す気があるのなら……?
悪戯っぽい笑みを覗かせる碧き月の魔女の望むまま、炎の獅子が彼らの眼前で大きく顎門を開いて咆哮を轟かせた途端、
「「うぎゃあああぁあっ!?」」
恐怖のあまり絶叫した野盗達はそのまま気を失ってぱたぱたぱたり。
「ちょ、ちょっと、やりすぎちゃったかしら……? 貴方はどう思う? リオン」
春草の上に倒れた彼らの様子におろおろしつつセレスティアは訊いてみるけれど、主と野盗達を代わる代わる見てこてりと首を傾げた獅子はそのままあくびをひとつ。優しい光風が花々をそよがせていく世界に、溜息もひとつ零れてとけた。
――トラウマに、なってないといいけれど。
●Buon viaggio!
青い空のもと春の緑と春の花を孕んで流れる光風にふうわり甘い香りを含ませたのは、
綺麗にムラひとつなく焼き上がった狐色を丁寧に切り分けられ、甘やかなクリーム色の断面を覗かせたチーズケーキだ。
「調理は学び始めたところでね、まだこれしか作れないのだけれど……なかなか上手くできたと思うから」
是非皆に振舞わせて欲しくて、と陸が皆に勧めるのは基本的なレシピに忠実に焼き上げたベイクドチーズケーキ。味わえば濃厚でなめらかなクリームチーズの風味が口中に満ちて優しい甘味と軽やかな檸檬果汁の酸味を咲かせ、全粒粉ビスケットを砕いて作った台座の香ばしさがざくざく踊って、
「ええ、優しくてほっとする美味しさですね」
「流石は陸、いつも間違いがありませんよね」
如何なる事柄も真摯に学ぶ陸らしい、外連味のない堅実な美味しさにヤコウもソレイユも笑みを零したなら、煎茶と一緒に味わったジャンマリオも、素晴らしいドルチェを味わえて幸せだよ、と満面の笑み。良かった、と微笑んでひといきついた陸は、続いて黎明の双眸をすっと薄めた。
――野盗の方々がお越しになったよ。
素早く眼差しを交わせば、昼餉を終えて出立する素振りで立ち上がり、歩み寄って来る野盗達を偶々行き合った旅人達だと思って警戒していない風情を装えば、たちまち彼らが抜き放った剣が春の陽射しをぎらりと弾く。然れど、
「おっと、出発は待ってもらおうか」
「出発は金目のもん置い」
「――葵襲」
野盗達がこちらを脅しにかかる声音を撫でるよう紡がれたのは、すかさずジャンマリオを背に庇ったヤコウの静かな詠唱。金目のもん置いてってからだ、なんて野盗の言葉が続くのを許すはずもなく鋭い風切り音が響いた刹那、
薄青と紫の煌きを連れて天から降りそそぐのは幾千幾万の針の雨。
「ぎゃあ!?」
「針だ! 針が降って来る!!」
鋭い驟雨、幻想の針雨は勿論野盗に命中させやしないけれど、彼らがそう叫ぶよりも身を竦ませるよりも速く針雨は獲物を捕える檻を編むがごとく大地に突き立って、
「其方が剣で脅してくるなら、此方も剣でお返しするよ」
「ひいっ!?」
野盗達が身を竦ませた途端、己が本質たる光、奇跡そのものの輝きから剣を創出した陸も瞬時に翔ける輝ける刃を野盗達の足元至近の大地へ幾重にも突き立てたなら、春風に展開した光の鍵盤へと十指を躍らせるソレイユが奏でる楽曲は、歌い踊る数多の動物を召喚する幻想組曲「謝肉祭」(レ・カルナヴァル)。
真っ先に顕現した白鳥が大きな羽搏きで舞い上がれば、その陰から突如跳び出したかのごとく野盗達の眼前へ躍りかかった獅子が多しい咆哮を轟かせ、更には巨大な象が高らかな鳴き声を青空へと響き渡らせて、長い鼻も重厚な前脚も振り上げ勢いよく大地を踏みしめれば、野盗達の一団が揃って跳び上がるほどの震動が大地を揺るがした。
「う、うわああぁあっ!?」
「た、助けてくれえっ!!」
震えあがる彼らに全く悪意を見せぬ晴れやかな笑みでソレイユが、
「脅して金品を奪うなど、人の風上にも置けぬ行為。獣に食われても、文句は言えませんよね?」
「言えませんとも。ですが、どうしても喰われるのは嫌だと仰るならこの針で――野盗の標本を作って差し上げる」
「「…………!!」」
物騒な問いを向ければ、嫣然たる笑みを覗かせたヤコウが冷ややかな声音で宣告して、
「そう。他者を害して生きれば、いつか相応の報いがあるものだよ」
――取り返しがつかなくなる前に、やり直す機を掴む気はないかい?
穏やかに微笑んでみせた陸が物柔らかにそう言い添えれば、野盗達の瞳に縋るような光が燈った。
後は深く頷くジャンマリオに任せれば、彼らの未来にも明るい光が射し込めるはず。
朽ちゆく砦の裡から溢るる緑が葡萄の蔓葉だと気づけば、
時に鮮血めいた彩を燈す槍騎士の双眸が、穏やかな緋に緩んだ。
仲間達と逸れぬように努めつつ廃墟の趣を観るつもりであったウルリクなれど、覚醒前から精鋭たる騎士であった身が纏う戦の匂いは恐らく皆より濃くて、改竄世界史の一般人に対して違和感を与えにくいというディアボロスの能力も『この世界にとって異質な存在だとは感じさせない』というもので、平々凡々でこれといった特徴の無い人物に見せかけるというものではないから、それならば己は廃墟の砦でひとりになってみせたほうが野盗達を釣り出しやすいだろうと思い立っての逍遥。
嘗ては存在しただろう巨大で重厚な扉が失われた正面口から覗けば、箍が錆び木板が朽ちて崩れた樽らしきものが柔らかな緑に苔生していて、往時は砦で葡萄酒の醸造も行われていたのだろうかと思えば、ここで確かに生きていたひとびとの息吹を感じて微笑する。彼らに敬意を抱きつつ足を踏み入れ、中庭と思しき辺りをゆるりめぐれば、崩れた砦の壁の裡に見えたのは武器庫と思しき空間。
奥の床で微かに煌く何かが、柄が朽ちて零れ落ちた槍の鋩だと気づけばウルリクは笑み深め、一礼して踵を返せば、元来た正面口を囲んだ野盗達が剣を突きつけて彼を待ち構えていた。
然れど、
「あんた、腕が立ちそうだけどさぁ」
「多勢に無勢じゃどうしようもないだろ?」
野盗達の言葉には黙したまま一閃する黒き槍で彼らの剣を弾き飛ばせば、口にするのは旧き遠き郷のことば。
――『此の冬は座標の彼方より来りて』、
――『氷霧を招き』、『凍て鋩は汝を穿つ』……。
地を打つ石突が半月を描けば途端にあたりを翔けるのは凛然と凍てつく風、大地から透徹な煌きが覗いたかと思えば瞬時に迫り上がる鋭い氷柱、氷塊の鋩が野盗達のすぐ鼻先を奔って砦正面口の石組みを突き崩せば、
「……!! う、うわ……」
「うわああぁあああっ!?」
迸ったのは彼らの叫び。
「俺が、誰か、知らずに居られる幸運のうちに悔い改めろ。さもなくば君達もこうなるか――」
後で必ず【建物復元】をと嘗て砦に生きたひとびとに胸裡で詫びつつ、野盗達には峻厳たる面持ちと声音を向ける。彼らの境遇に馳せる想いもあればこそ、ここで手を緩めれば彼らの未来も拓けはしないのだと己に言い聞かせ、
「或いは此の槍が、涯まで追おうか」
鋭く風切り音を鳴らして見せた黒き槍の鋩を突きつけて嘯けば、途端に彼らが悔い改める、改心する、と口々に許しを請う様にひっそりウルリクは安堵の吐息をついた。【パラドクス通信】を切っておいたことを確かめれば安堵をもうひとつ。
皆の演出やそれらが煽る恐怖はぜひとも排斥力に打ち克ってもらいたいが、
――俺が嘯いた台詞には、
――上手く靄が掛かったり……しないか。
胸の裡でそう呟けばふと思い起こしたのは幻想真珠の世界で馳せた宮殿の戦場。こんなことを思ううちは、未だ。
百騎長の器には遠いのだろうな。と、乾いた唇に微かな笑みを刷いた。
春を謳歌する世界に、静謐の滴が落とされたかのようだった。
陸のチーズケーキに舌鼓を打ちつつノスリが辿り来たのは春草に埋もれ大地の衣に覆われかけていた石畳、ジャンマリオの傍についていてくれる仲間を想えば彼の安全にはひとかけらの不安もなくて、春緑の大地に悠然たる影を落とす砦を仰ぎ見た猛禽は、胸に沁み入る感慨のままに蜜色の双眸を細めた。
鈍色の武骨な石で組み上げられた砦は四つの塔の三つまでが崩落し、
深緑に艶めく蔦が大地から這い上って廃墟の砦を呑み込まんとする。
緑の褥が廃墟の砦を誘う永い眠り、砦のすべてが緑に呑まれるまで十数年、あるいは数十年か。然れどそう思うとともに、この世界ではまるで時が止まっているかのごとく想えて、崩れた石壁が大地に落とす影の裡に身を置き、永遠のような一瞬の静謐に心をゆだねて。
深緑の蔦の合間にそっと咲く小さな夢見鳥。
夢見鳥、すなわち蝶に似た薄紫の花を咲かせる野生のスイートピーを見つければ微かに口許を綻ばせて、緑の褥に抱かれて眠るこの砦は、と独白めかして口遊み、
「ねぇ、どんな夢を見ていると思う?」
「っ!! あんた、気づいて……!?」
肩越しに不敵な笑みを向ける先は彼が油断していると思い込んで近づいて来ていた野盗達、砦の壁をとんと蹴りつければその途端に大きく跳躍し、降り立つ先は獲物の眼前。輝く陽を負ったノスリは影を纏いながらも琥珀の灯火めく強い煌き過ぎらす眼差しで野盗達を見下ろして、天へ手を翳せばその遥か高みに奔らせるのは疾風迅雷。
蒼天が一瞬で嵐に呑まれれば、
「――穿て」
天空に荒ぶのは天災ならぬ己の力だと証す呟きとともに大地へ振り落とすは激しい局所豪雨と眩い稲妻、既に仲間が世界に【建物復元】を燈してくれていると感じれば遠慮なく奔らせ荒れ狂わせる驟雨に雷撃、閃光と轟音が乱舞する嵐のなか、
「「ひ、ひいいぃぃいっ!!」」
「あっは! 殺しやしないって!!」
雷撃に砕けて散る石畳の破片を己が背とそこに大きく咲く光も影も耀く魄翼で庇ってやれば、こちらもまた永遠のような一瞬の嵐が消え去った後には石畳の惨状のみならずすっかり腰の砕けた野盗達の姿が残されていたけれど、
――彼らの腰が砕けているのは、まぁ。
――仕置き料ってことで、無問題、だよね?
無問題だと思いますっ! と【パラドクス通信】越しに答え、ぽんっと勢いをつけて立ち上がったのはシルだった。
春の光そのものを咲かせるようなカモミールの花園を眺めながらの昼餉、仲間とジャンマリオが包んでくれたお昼も食後の甘味もめいっぱい楽しんだなら、青き精霊術師は弾む足取りで再び街道を歩きだす。
忙しない日々はいつものことなれど、最近の情勢の激動ときたらまさに嵐、まさに怒涛。その嵐も怒涛も乗り越えのんびり温泉ですごせるとなれば足取りも心も弾まずにはいられない。野盗達を釣り出すためにもうきうき気分は隠さず進めば、
「そんなに大事に抱えてちゃあ、高価なものが入ってますって言ってるようなもんだぜ、お嬢ちゃん」
「可愛い顔に傷をつけたくなかったら、その荷物置いていくんだな」
たったひとりで両手に荷物を抱え、まるで無防備な様子で街道をゆく少女を野盗達が脅しつけてきた。
「そんな……まさか野盗さんに遭遇しちゃうなんて……!!」
ちょっとだけ優越感に浸らせてあげようかなっ、なんて優しさを発揮して、怯えた表情を作ってみせたシルが、これを渡すわけには、と言わんばかりに強く荷物を抱きしめれば、よっぽど高価なものなのかと野盗達は爛々と瞳を輝かせたけれど、
「おっ、相当なお宝っぽいな?」
「そうと解れば、ますます見逃すわけにはいかねえなぁ」
まさか大切そうに抱えられたその荷物が『温泉を満喫するための乙女のお着替えセット☆』だなんて、野盗達だって夢にも思うまい。ぎらりと光る剣を見せつけながら彼らが距離を詰めてきたなら怯えた表情を霧散させるがごとき輝く笑み咲かせ、
「野盗さん、人を襲ったらね……痛い目にあうからね?」
悪戯っぽい宣言に続けた詠唱でシルが織り成す術は、
――六芒星に集いし世界を司る6人の精霊達よ、過去と未来を繋ぎし時よ……。
――七芒星に集いて虹の輝きとなり、すべてを撃ち抜きし光となれっ!!
眩く花開いた精霊魔法陣から迸る七芒星精霊収束砲(ヘプタクロノス・エレメンタル・ブラスト)!!
膨大な魔力を収束させた凄まじい虹色の輝きが野盗達の間を突き抜けて、
「のわああぁぁあっ!?」
「ぴ、ぴぎゃああああっ!!」
野盗達は堪らず絶叫したけれど、背後からは彼らの叫びをも掻き消す轟音が響いて。恐る恐る振り返った彼らの瞳に映った光景は、虹色の魔力砲撃の直撃を受け、その余韻たる七色の煌きの裡でがらがらと崩れてゆく廃墟の砦。後で【建物復元】を使わせてもらうからこその全力魔法全開だ。
高火力砲撃の反動を抑える光の翼を咲かせたまま、シルは野盗達に宣告ひとつ。
「ね? ああなりたくないなら、迷惑かけたらだめだよ?」
無邪気な笑顔でそう告げられれば改めて、あの砦を破壊した魔力砲撃が自分達の至近を迸っていったのだと彼らは実感し、ふうっと意識を遠のかせた野盗達は大地へばったり仰向けに倒れ込んでしまった。
朽ちゆく砦、崩れゆく廃墟。
永い時を経て緑に埋もれ、自然に呑まれていくだろうその全景を紫水晶の瞳に映しつつおなかを満たせば、心までたっぷり幸福感に満ちた。大きく伸びをして腰を上げ、
「持たせてもらったお昼、美味しかったね~。特にあのほんのり桜色がかった稲荷寿司で春気分倍増って感じでさ!」
「ああ。食後のデザートにチーズケーキまで用意されているとは……思いがけないくらい豪華な行楽弁当だったよな」
御機嫌に狐尻尾を揺らしたラズロル・ロンド(デザートフォックス・g01587)が、それじゃ早速砦の傍まで行ってみよ、と勢い込んで声を弾ませるから、同じく昼餉を満喫したエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)も眦を緩め、ラズは廃墟好きだなあ、と気負いなく笑って、ゆうるり二人で向かう砦の間近。
頂から崩壊を始めている砦は褪せた灰銀と鳥の子色の石を取り混ぜて組まれ、
石組みの壁が崩れている箇所もあれば、風化で砂壁のごとき姿を晒している箇所もあった。
嘗て砦を囲んでいた石塀はほぼ基礎を残すのみで、厩舎と思しき小屋の屋根は好き放題に枝葉を茂らせたシカモアの樹々に取って代わられ、砦の壁を這い上る野生のクレマチスの蔓葉が、崩れた壁から、形の残る窓から砦の裡へと入り込んでいて、
「廃れた人工物が自然に吞まれて行くの……イイ!!」
「人の営みがあった証を、風が、植物が、自然に浸していくのだな……」
廃墟マニア魂が震えるままに陶然たる歓声を大興奮でラズロルが咲かせれば、蒼穹の双眸を細めたエトヴァも大切なひとが愛する美しさを愛でる想いであたりに眼差しをめぐらせる。
静寂に抱かれる石造りの古き建物から大気へと融け込んでいくような、ひんやりとした気配。降り積もるような永き歳月を肌身に感じ、厳かな心地をも覚えれば、照る陽射しが柔く大気を霞ませる崩れた石の砂塵を煌かせる様も、美しくて。
狐耳を嬉しげにぴんと立たせるラズロルの姿に、この楽しみぶりなら間違いなく釣り出せるだろう野盗達へ想いを馳せた。
近隣に住まう若者だという野盗達。
歴史が改竄されることがなければ彼らが職を失うこともなかっただろうと思えば、彼らもまた歴史侵略者の被害者なのだと改めて気づかされる想いもするけれど、だからこそ件の野盗達をこのままにはしておけない。エトヴァが気概を新たにした、そのとき。
光風に香るローズマリーの茂みに呑まれつつある井戸を覗き込んでいたラズロルが、人懐こい笑みでぱっと顔を上げた。
「こんにちは! もうすぐ待ちくたびれちゃうとこだったよ、僕らに用があるんだよね?」
「っ!! ……なんだ、気づいてたのか。それなら話が早い」
「何、難しいことじゃない。金も荷物も全部置いてここからさっさと失せな」
知ってたよと言わんばかりの楽しげな笑みの先には、剣やナイフを手に近づいて来ていた野盗達。一瞬驚いたものの彼らはすぐさま気を取り直し、刃を突きつけながらラズロルを脅しにかかったけれど、
「野盗? コワイなぁ~、わー助けてー」
「はい、今助けるよ」
悪戯っぽく瞳を煌かせつつの恋人の棒読みに迷わず応え、
「君達にも言い分はあるのだろうが、野盗とは感心しないな?」
「だよねー!? こんなお仕事しちゃう人達はお仕置きな!!」
告げるが早いかエトヴァが重厚に艶めくグレネードランチャーを翻せば野盗達の足元の大地へ連射されるのは魔力を秘めた塗料弾、爆ぜて大輪の星めくクレマチスの花々のごとくに色彩を弾けさせたそれは、アリッサムにデイジー、ローズマリーとエトヴァが今日観てきた春の小花達を一気に咲き溢れさせ、辺り一面を幻想の色彩咲き誇る花園へと塗り替えて、
「うわあ!? 何だこれ!?」
「まさか魔法!? 魔法なのか!?」
足元を凝視して蹈鞴を踏む野盗達に輝くような笑顔でラズロルが、後ろ後ろ! と彼らの背後を指し示して見せれば不意に頭上から落ちる大きな影。ラズロルの声や指に突然の影に釣られた野盗達が振り返ったなら、
「ぎゃああああぁあっ!?」
「何だこのでっかい手ええぇえっ!?」
迫り来るのは砂漠の狐が一瞬で織り成したデザートウォール(デザートウォール)、巨大なる砂の手が容赦なく倒れ込んで来て、地上の虫を潰さんばかりの勢いで大地を叩けば爆ぜる轟音と派手な地響き。勿論敢えて狙いを外された野盗達は巨大な砂の手の指の合間で無傷だけれども、ラズロル自身さえ思わず息を呑んだ大迫力に野盗達の気力が保つはずもなく、
衝撃で華やかに舞い上がった幻想の花々のなかで彼らはぺたりとへたりこんでしまった。
――勿論、彼らには当てないけれども、
――この楽園の花々の、浄化の輝きだけでも、殺伐とした彼らの気持ちに届いてくれたら。
そう願ってエトヴァが炸裂させたFarbenfrohe Blumenwiese(ファルベンフローエ・ブルーメンヴィーゼ)、舞い上がったその花々と光のなかでラズロルが、野盗なんかやめてまっとうな仕事しろよーと声を掛ければ、
……そうする……。
弱々しい声音でそう返ってきたから、妖狐と天使は思わず顔を見合わせて破顔した。
後は【パラドクス通信】で仲間を通してジャンマリオに伝え、彼に任せて廃墟ピクニックの続きと洒落込もうか。そうしてこの街道の先で皆を待つ、
――青空を背に真白に薄桃に咲き誇る希望の花、春彩の天蓋を織り成す花々のもとに、
――特上の、極上の煌きが湧きいづる、サルソマッジョーレへ!!
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【強運の加護】LV1が発生!
【飛翔】LV3が発生!
【口福の伝道者】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
【クリーニング】LV1が発生!
【アイスクラフト】LV1が発生!
【使い魔使役】LV1が発生!
【熱波の支配者】LV2が発生!
【建物復元】LV1が発生!
効果2【グロリアス】LV1が発生!
【ガードアップ】LV3が発生!
【能力値アップ】LV2が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
【ドレイン】LV1が発生!
【ダブル】LV1が発生!
【反撃アップ】LV2が発生!
ノスリ・アスターゼイン
爽やかな風を感じながら
最高のリフレッシュ
アーモンドの天蓋を見上げつつ
舞う白へと手を伸ばす
重なる花の濃淡が
空の青をより鮮やかに魅せてくれる
花弁が湯に落ちる前に掴まえられたなら
持って帰れるかな
クレメンティアへの土産に
後で押し花にしてさ
本当は一緒に入れたら良かったけれど
水着姿も見たかったけど
おっと、隠す気も無い本音が零れた
なぁんて
茶目っ気を告げたら
怒るだろうか
逆に
水浴びする猛禽が見たいと
笑うだろうか
想像するだに肩が揺れる
益々上機嫌
ランブルスコで乾杯!
凍らせた果実を浮かべるのも良いね
サングリアみたいになるかな
苺や春林檎のスカッシュも美味そうだ
陽に透かせば果実も泡も煌いて
宝石を味わう心地
極上の春を寿ごう
永辿・ヤコウ
背に刻まれた一閃は
稲荷狐の朱化粧だと思えど
記憶が欠けた今は定かでは無く
一見は刃傷のようにも見えるから
人前に晒すことは滅多にない
でも
戦場を駆ける面々なれば
きっと気遣いは不要
何より
湯を堪能しないのは勿体無くて
隅の方で密やかに
麗らかな春陽
のんびり浸かる温泉
贅沢の極み
いいえ
極みの上をいく幸せ
皆の笑い声が水面を優しくさざめかせ
いっそう喜びをくれる
アイスクラフトで作ったジェラートも振る舞いたいな
凍らせた果実を砕いて散らし
食感の違いも楽しく
ランブルスコの爽やかな口当たりと
ジェラートのマリアージュ――これは、
大人のクリームソーダ!
スカッシュにもきっと合いますよ
嬉しい発見に益々綻んで
アーモンドの花々へ掲げる酒杯
色葉・しゃら
ソレイユ(g06482)さまと
今回の初任務を
湯につかりつつ思い返す
支援に慣れぬ私は
先達の方々の手際に感嘆するばかりでした
精進せねばなりません
そう…初任務
そして、こんな大きな湯殿も初めてにございます!
知らぬくにの建物も、桜に似て非なる花もみな、かがやいて
無作法にも狐尾をゆらゆら、湯にとろけ
菓子も気になり、いそいそ向かえば
華麗に任務をこなしていた金の髪の御仁がそこに
憧れの目を向けずにいられませぬ!
ご一緒!?こ、光栄にぞんじます!
じぇらーとを勢いよく口にして冷たさに驚き
次いで妙なる美味に頬がとろけ
目の前の御仁の笑みにもとろかされて
は、はい!精進いたします!
あの…お名前を伺って良いでしょうか、私は――
ソレイユ・クラーヴィア
しゃら(g07788)と
アーモンドの花が彩る宮殿は
浸かる前から心が蕩けるかの様
テルメの楽しみ方も慣れたもの
早速水着に着替えます
湯に浸かれば、芯から温まる心地
花の天蓋の向こうに晴天が覗き
この穏やかな世界が永遠に続けば良いのに、とさえ思ってしまう
程よく温もったなら、冷たいものでもと
ジェラートを頂きに
スカッシュも気になるので悩みますが…
ふと視線を感じ振り向けば小狐の少年と目があって
可愛らしくも真剣な眼差しに、眦を下げて
一緒に食べませんか?とお誘いを
見ていたと言われれば、こそばゆく
ふふっ、私ばかりが見られているのは不公平ですよ
今度は貴方の活躍も、見せてくださいね
と、微笑み
名を問われれば、返すのは勿論ー
ラズロル・ロンド
エトヴァ(g05705)と
温泉地を訪れれば
廃城とはまた違った趣に
おおおと感嘆
水着コンの悪魔風水着で
コウモリ羽マントにボロボロの腰巻
赤いラインが映える紺のサーフパンツ姿
ジャンマリオさんと仲間に一緒にお礼をして
花の方に視線を
見覚えがあると思ったら…
付き合い始める少し前に見たことがあった
変化の大きい1年だったとエトヴァを見上げてニッコリ
今はここの温泉を楽しもう
新たな思い出の1ページに
温泉に入れば身に沁み渡る心地良い温度
プカリと浮く体を漂わせてのんびり
お酒?いいねぇ~。乾杯!
フルーティな味わいのランブルスコにニコニコが止まらない
今日は一日中笑ってばっかな気がする
すっごく楽しい
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
ラズ(g01587)と
連携アドリブ歓迎
石造りの建築に親しみを感じ
おお、ロココ風とはまた……良い趣味だな
水着は白の天使風(昨年の水着)
ジャンマリオさんにご招待、仲間にランチの礼を伝えよう
アーモンドの花か……懐かしいな
故郷と偲ぶ街で見ていたな
身繕いして温泉に翼まで身を浸し
淡く色づく花の色彩に目を細め
空へ枝を伸ばし爛漫と咲く様を愛でよう
……疲れが癒えるな
先日散々負った傷の痛みの記憶も溶けて
うん……もう一年なのだな
温泉って気持ちいい………
浮かぶ彼に微笑んで、一緒にプカプカ浮かんでいよう
ラズとランブルスコで乾杯
体を温め健やかに、ほろ酔いで仰ぎ見る佳景
美酒に違いないな
ふふ、と笑顔解して
ひとときを心行くまで
シル・ウィンディア
楽しみの温泉タイムー♪
いそいそ水着に着替えて、温泉へっ!
白と青のセパレートタイプの水着で、パレオがフィッシュテール状になっているマーメイドな水着だよっ!
ふわぁ、あったまるぅ…。ほんとに、忙しかったからいい骨休めなの~。
なんか、お湯に溶けちゃいそうなくらいにふにゃぁってしちゃうかも。
あ、温泉に入りながら、スカッシュとかジェラート?
…ふふふ、そんなときめくもの、飛びつかないわけがないじゃないっ!
せっかくなので、ジェラートとスカッシュに舌鼓♪
はぁ、極楽ってこういうことを言うんだね~。
ジャンマリオさん、狡猾すぎる!
こんなの、幸せに堕ちちゃいそうだよ~。
後は、景色も堪能して英気を養って…
さ、気力十分っ!
ユーフェミア・フロンティア
【約束】
温泉、とっても楽しみだよねっ!
アンゼリカ、早く行こうっ!
温泉に入る前に水着に着替えます。
フリルが一杯ついている、白のワンピース型水着です。
シンプルだけどフリルがかわいいものです。
アンゼリカはスポーティーなんだね。とっても似合うよっ!
すごいなぁ、鍛えた体がすごいよね。
さぁ、今から温泉をいっぱい楽しもうねっ!
アーモンドの花をめでながら、アンゼリカとおしゃべり。
へぇ、出来立てジェラートだってっ!ね、せっかくだから食べない?
そういって、一つ頂くけど…。
…アンゼリカ、はいっ!
そういって、ジェラートの乗ったスプーンを差し出すよ。
こんな幸せな時間を過ごせるなんて思わなかったな。
ほんと、ありがとうね。
アンゼリカ・レンブラント
【約束】
うん、温泉とっても楽しみっ♪
昨年のコンテスト時の水着姿になるね
ミアの水着姿は……とても可愛いって思うけど
直視できないのはなんでだろう
いざ春林檎のスカッシュを手に
アーモンドの花を見つつ温泉を楽しむっ
『希望』とはよく言ったものだね
薄桃に咲き誇る花を見ると心に本当に希望が灯るかのよう
温泉で温まった後は尚美味な
ジェラートをシェアして食べよう
食べさせあいっこは恥ずかしいかな
大切なひとの言葉に笑顔を向け
私の心に希望があるのはミアと共に歩める「今」があるから
色々考えちゃう悩んじゃう私だけど
それも含めて幸せだって思う
だから私もありがとうだよ!
直視できなかった理由、自分では気づいているんだ
でも――まだ。
ウルリク・ノルドクヴィスト
髪は邪魔にならないよう結ぶ
翼や尾は
畳んだとて、嵩張るのに変わりはないが
温泉が広々としていて良かった
此れは、淫魔に感謝は――するべきか…?
【液体錬成】での支援が無事叶ったなら
ランブルスコを是非味わいたい、とは
やはり隠せぬ望みとなって
そう酔うこともない蟒蛇の上に
酒の質は嘗ては気にすることも無く
銘などはあの時代に有ったのかも
知らなかったのに
今は美酒となれば味を確かめたくなる
湯の熱も巡れば、快い酔いに浸されて
新宿に漂着してから此方側
舌が肥え始めているような
良いのか悪いのか――は
味わえば直ぐに、前者に傾いてしまう
遅咲きの淡い花々を仰いで
此処の平穏がもう
脅かされぬようにと願いながら
一時の贅沢を満喫しよう
雪定・千草
百合さん(g05341)と
去年着た水着を
透け感あるテックウェア上着に青いサーフパンツ
入る時は上着だけ脱ごうかな
温泉、久々で嬉しいです
しかもこんな素敵な景色を眺めながら
本当蕩けてしまいそう
夢見心地でぼんやり
手を取ってもらったら我に返り、さあ一緒に露天風呂へ
とっても癒されます…
寝ないようにしないと、と両頬ぺしぺし
久々に百合さんの水着姿も拝めて、寝てしまったら勿体ない
残留効果を活かして苺と春林檎のスカッシュで乾杯しましょう
百合さんはどちらが飲みたいですか?
迷ったら交換するのも手
お風呂で乾杯、何だかとっても良い気分
火照った身体に爽やかな苺の味が広がって、顔が緩みます
日頃頑張っている自分達のご褒美ですね
犬神・百合
千草ちゃん(g03137)と
うふふ、去年お仕立てしてもらった水着
胸元レースアップのワンピース
黒地に紅百合のワンポイント
とってもお気に入り、また着られるなんてとっても嬉しいわ
しかも、こんな素敵な景色のお風呂で…!
ああ、どうしましょ…
わたしお湯に浸かる前から蕩けちゃいそうよ千草ちゃん
何時もよりぼんやりさんな姿、様子を窺い
…どうかしたの?
手を取り問うてみる
握り返してくれれば微笑み返し露天風呂へ
癒やされちゃう…やっぱり蕩けちゃいそう
お湯もとっても良いからお肌もなめらか艶々
春林檎を選んで乾杯
勿論交換もしたいわ?
そう、自分達へのご褒美って大事!
ふと気付けば
手元で弾ける春林檎に希望がひとひら──
まるで天国ね
セレスティア・リュミエール
アドリブ、絡みOK
ふふ、お花を観ながら温泉なんて、なんて贅沢
人魚をイメージした青のビキニとパレオに着替え
ゆっくりと温泉につかれば今日の疲れもとれるようで
そっと上を見上げれば白の可愛い花が咲き誇る花の天蓋
あまりの綺麗さに、ほう、ため息が漏れて
まるで夢のよう
温泉につかりながらランブルコを一口
フルーティーな味わいが口にいっぱい広がって
ふふ、美味しい
ブルーベリーがあれば、浮かべてサングリアなんてのもいいかしら
ジェラートも作れるの?素敵……!
どんなフルーツがいいかしら?いちごとか、リンゴとか……ふふ、贅沢の極みね
「希望」が満たされ始めたこの地の未来を夢見ながら
一時の贅沢、春の訪れを満喫しましょう
●Andiamo Alle Terme!
青い空に映える白い宮。
街道の先で至ったサルソマッジョーレの温泉のひとつ、嘗て美少女淫魔に接収されたという地には、青空のもとにふうわり光を燈したかのように優美な小宮殿めいた別荘が建てられていた。前時代の重厚な壮麗さを軽快な華麗さに昇華させた館は柔らかな光そのもののごとき白に繊細な金彩を踊らせて、
「おおお! 廃墟ピクニックの後にこういう建物観ると、一段と新鮮……!!」
「ロココ風といえば白と金にパステルカラーだが、成程、シェーンブルン・イエローか……良い趣味だな」
廃墟の浪漫とは趣を異にする美しさにラズロル・ロンド(デザートフォックス・g01587)が輝くような笑顔で感嘆すれば、白を基調とした館を金とともに彩る陽だまりめいた黄色にエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は慕わしさを覚えて微笑する。芸術の都で愛される色。件の美少女淫魔もオーストリアに縁深い者だったのかもしれない。
接収は不幸な出来事だったが、
「相手が品の良い美的感覚の持ち主だったのが不幸中の幸いだろうか。お招きに感謝する、ジャンマリオさん」
「うん、お招きありがとう、温泉楽しみ! これならタダで別荘建ててもらえてラッキー♪ って思っていいんじゃない?」
「御礼を言うのは私のほうだとも! 何しろ淫魔の置き土産でディアボロスさん達を歓待するという、飛びきり狡猾な機会を得られたのだからね……! ふむふむ、確かにこのまま別荘を使い続けるのも素晴らしく狡猾……!!」
不幸な日々もとうに過去のこと。野盗達も改心させ交易のための雇用で彼らの未来も拓けた今、心の錘のごとき澱も幾つか晴れた心地でエトヴァが招待への礼を伝えて、屈託のない笑顔でラズロルも悪戯っぽく言葉を添えつつ続いたなら、いっそう御機嫌な様子でジャンマリオの声音も弾む。
皆の笑声をいっそう楽しげに響かせるような明るい色彩と優美なロカイユ装飾で彩られた空間、居室やサロンばかりでなく巨大な地下食糧庫までもが同様で、たちまち【アイスクラフト】の氷を活かして地下を【液体錬成】のための優雅な冷暗所へ変身させたなら、全員総出で定番の支援を終えるまであっと言う間な心地。晩餐で【口福の伝道者】にも活躍してもらおうと笑い合いつつ温泉満喫の準備も万端整え、極上の煌きをめざせば、
青い空に春の彩が咲いた。
満開に咲き溢れる希望の花、淡やかな湯煙をもほんのり春の彩に染めるほどのアーモンドの花盛り。爽やかな光風が湯煙の紗をふうわり開けば春の青空も春の真白や薄桃を桜めいて咲かせる花々の彩もいっそう明るさ鮮やかさを増して、
「いいね、最高のリフレッシュになりそうじゃないの」
「ああ、素晴らしい保養になるだろうな」
陽に灼かれた肌を撫でていく光風の心地好さと青空に春彩の解放感にノスリ・アスターゼイン(共喰い・g01118)が笑みを深めたなら、光も影も耀く魄翼を悠々と広げる彼の姿にウルリク・ノルドクヴィスト(永訣・g00605)も微かに笑み、火煙が焔の輝きを抱くかのごとき彩の竜翼と尾を畳むことなく寛げた。
春の青空と花の天蓋を望める温泉は思った以上に広々としていて、白大理石で設えられた露天風呂を絶えず満たして溢れる湯が明るい空の青を映すような彩に揺らいで透きとおる様も更に解放感を齎してくれるから、髪は邪魔にならぬよう結んだが翼や尾は畳んでも嵩張るなと案じていたウルリクは畳む必要さえもなさそうな広さに緋の眼差しを緩め、
「此れは、淫魔に感謝は――するべきか……?」
「感謝はともかく、慧眼は認めてもいいかもな。正史ではサルソマッジョーレが温泉保養地になるのはまだ先の話だから」
「そういやジャンマリオさんも製塩事業のためにここを買ったって話だったよね? これはこれでプチ歴史改竄なわけだ」
ふと呟けば返ったのはこちらより深い歴史知識を持ち合わせているのだろうエトヴァの声。紫水晶の双眸を瞬くラズロルも加われば、白の天使と黒の悪魔を思わす二人の対成す水着の装いを微笑ましく思いつつ、なら淫魔の慧眼を称えるとしようと納得心地で口にしたウルリクの言葉が皆の柔らかな笑みを誘った。
春の青空を抱くかのごとき花の天蓋。
天蓋を織り成す花々を咲かせる樹々が何処までも続くかに想える光景は彼方を花霞で彩って、間近で青空へ溢れんばかりの春爛漫を見せてくれる。淫魔が魅了されるのも納得の優しさ華やかさ。
「アーモンドの花か……懐かしいな、故郷と偲ぶ街で見ていたよ」
「僕は、エトヴァと付き合い始める少し前に見て以来かな」
新宿島へ流れ着いてから随分と馴染んだ桜よりも大振りな花は、エトヴァに時空の彼方で過ごした芸術の都での日々を思い起こさせるもの。あのときのアーモンドの花も湯煙に彩られていたなぁと眦を緩めるラズロルの胸に咲くのは昨年の春の彩。
蒼穹の天使の翼が映える白に金色の陽を、夜空の悪魔めく蝙蝠羽のマントに銀色の月を。対成す夏の装いをあつらえる絆を結んだ、時空を超えての奇跡そのものの今を改めて実感しつつ二人が笑みを交わせば、
「ふふ、サトゥルニア温泉での花見からもう一年以上経つのですね」
「そうそう、あっちの花は濃いピンクだったよね~!」
邪魔にならない程度の挨拶代わりにと微笑みかけたソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)の言葉に明るいラズロルの笑みがぱっと咲いた。あのときがテルメ初体験、断頭革命出身ゆえに水着に抵抗があったソレイユも今ではテルメにも水着にも迷いはなく、明るい青を透かす湯にそっと浸かれば、柔らかな心地好さに頬も眦も緩むばかり。
蕩けるようだった。こころも、からだも。
春花に彩られた麗しの小宮殿、優美なこの別荘の姿を振り仰いだ時から心が蕩けそうな気持ちになっていたけれど、純白の大理石に満ちるがゆえに明るい空の青を映して透きとおる湯はとろりと柔らかにソレイユの身体も天の彩映す翼も包み込み、ほんのりぬるめと感じる湯にゆったりと浸かっていれば、身体の芯から指先までじんわりと温まっていく。
「ああ、なんて素晴らしい……」
心からの笑みで至福の吐息を溢れさせ、白大理石に背を預けて仰ぎ見れば、優しい真白や薄桃を重ね合わせて咲き誇る花の天蓋の向こうに広がる晴天の青。まさに希望を思わせる光景に蒼穹と黄昏の眼差しも緩めたなら、敬虔なカトリック教徒たるソレイユの胸の裡にはアーモンドに纏わる聖書の一節も思い浮かんだ。
導きの花。ヘブライ語では『めざめ』を意味するシャーケードという名で呼ばれる花。
己が身を神と並べるつもりはないけれど、パルマのひとびとには奇蹟と思えるだろう自分達の力で導いた今のこの平穏が、明るい春のごとくめざめさせた希望が満ちてゆくこの世界が、
――永遠に続けば良いのに、なんて、
――思ってしまう心を、とめられない。
春花の天蓋が細波めいてさぁんと唄う。
花々を波打たせる光風が彼方から流れ来て、淡やかな湯煙の紗を翻しながら希望の花吹雪を舞わせれば、春の光と花に心が攫われていきそうな心地。純白の大理石で設えられた露天風呂に満ちて溢れる湯は明るい空の青を映して透きとおり、春彩の花弁が数多浮かんで揺れる。
「久しぶりの温泉を、こんなに素敵な景色を眺めつつ楽しめるなんて……」
「うふふ、とっても嬉しいわよね……! 別荘は華麗で、眺めは綺麗で!」
軽やかに光を透かすような白のテックウェアを肩から落とせば雪定・千草(霞籠・g03137)が纏うサーフパンツの青が更に映えるよう。麗しき小宮殿めいた別荘は調度のひとつひとつまでも優美で華麗で、彼が上着を置いた純白のティーテーブルも美しいカブリオールレッグを備えた品。
乙女の蠱惑そのものの黒きレースアップに彩られた胸が高鳴るのを犬神・百合(ラストダンス・g05341)は白き手でそっと押さえるけれど、とってもお気に入りの水着を纏ってとっても愛しいひとと温泉を楽しむひとときに胸の高鳴りが鎮まるはずもなく、甘い鼓動に指先まで満たされればまるで己が砂糖菓子になってしまったような心地。
「ああ、どうしましょ……わたしお湯に浸かる前から蕩けちゃいそうよ千草ちゃん」
華奢な肢体をふるり震わせれば紅き夢魔の翼と尾もふるりと揺れて、雪肌を際立たせる黒きコルセットドレスめいた水着の腰に咲く紅百合に添えられた蕾も咲き初めるようで――なんて、百合自身はまったく意識していなかったのだけれど、
「……どうかしたの?」
「はっ。いけない、俺もお湯に浸かる前から夢見心地になってしまっていました」
明るい青空、美しい春花。それらが優しい湯煙に彩られる世界でひときわ魅惑的な姿の愛しいひとがすぐ傍にいるとなれば何時もぼんやり気味な千草がいっそう夢幻に心を蕩かしそうになってしまうのも無理からぬこと。然れど気遣わしげな漆黒の瞳に覗き込まれ、柔らかな手に己のそれを包み込まれれば藍の双眸をひとつ瞬き我に返って、彼女の手を大切に握り返した。
――さあ、ちゃんと温泉で蕩けにいきましょうか。
――ええ、きっと飛びきりの癒しが待っているわ。
青い空と春の花を望める温泉が楽しみすぎる気持ちが、小さな胸の裡から弾けてきそう。
華奢ながら今日も元気いっぱいな肢体を白と青のセパレート水着で彩って、青空と花々のもと白大理石の露天風呂に満ちて明るい青に煌く温泉めざして軽やかに足を踏み出すシル・ウィンディア(虹霓の砂時計を携えし精霊術師・g01415)の腰からふわり翻るのは、水の煌きに黎明の菫を光で映したようなフィッシュテールのパレオ。
春花を眺めながらの温泉という贅沢なひとときへの期待を募らせるのは彼女ばかりではなく、セレスティア・リュミエール(碧月のソルシエル・g05430)とて同じこと。儚げながらもすらりと優美な肢体を青のビキニで彩れば、左脚で白き脚線美を魅せつつ右脚に添わせる海色のロングパレオは波めくフリルを柔らかに踊らせて。
薄明と青空の眼差しが重なればセレスティアとシルに咲いたのは、
「あらあら、なんだかまるで……」
「ふふふ~。人魚の姉妹みたいだよねっ♪」
悪戯っぽく瞳を煌かせての笑みと、人魚の尾びれめいて揺れるパレオの花。
姉妹気分で手を取り合えば、ひとの足で初めて世界へ踏み出す人魚の心地で裸足の爪先から浸かる極上の温泉。話に聴いた塩分ばかりでなく天然ミネラルが色々たっぷりであるがゆえにとろりと肌を包み込んてくれる湯に肩まで浸かれば、
「ふわぁ、あったまるぅ……。最近ほんとに、ほんとに忙しかったから、いい骨休めなの~」
「ええ、最近の疲れも、今日の疲れも、すべてとけていきそう……」
優しくシルを抱きすくめてくれるのは飛びきり優しいぬくもり。肌から幸せがゆるゆる沁み入る心地がするのに、温泉の熱そのものは身体の芯からじんわり咲いていくかのよう。ふにゃあと笑み崩れて顎まで浸かる彼女の頬にあたたかな波が寄せ、ふわり湯に浮かんでいた花弁がぺたり貼りついたのを微笑みつつ指先で摘まみとり、セレスティアもあたたかな湯に深く身をゆだね、花の天蓋を仰ぎ見た。
極上の温泉にゆだねた身の柔い挙動、それに沿って肌を撫でてゆくのはとろりとあたたかな湯の限りないなめらかさ。その心地好さだけでも歓喜の吐息が溢れてしまいそうなのに、仰ぎ見た花の天蓋の美しさときたら、春の優しさ華やかさを此方の魂の芯にまで咲き溢れさせてくれるよう。
碧き月の魔女の花唇から零れるのは至福と感嘆の吐息ばかり。
ああ、何処までもこのひとときは、
まるで夢みたい。
――何から何まで、
――まこと夢のようにございます……!!
碧き月の魔女とは少しばかり異なる夢見心地で極上の温泉に身をゆだね、色葉・しゃら(言の葉あつめ・g07788)は知らず狐尻尾をゆらゆら、ゆらり。街道で派手に術や技を咲かせて野盗達の未来を拓いた先達の活躍を報告書で読んで心を躍らせた仔狐の少年は、初任務と勇んで飛び乗ったパラドクストレインが至った先、このサルソマッジョーレでの先達の仕事ぶりにも胸を震わせた。パルマ公国での任務に慣れた者を中心にあっという間に支援態勢が整えられていく様は圧巻で、
右も左も分からぬしゃらに誰もが温かく手を伸べ、作業を手伝わせてくれたけれど、特に強く印象に残ったのは――。
優しい光を胸の芯に燈す心地で、私も精進せねばなりません、と決意をすれば初任務の緊張も一段落。何せ大人びていても仔狐の少年はまだ齢ここのつ、むくむくと湧きあがってくる好奇心と知識欲のままに見知らぬ国の見知らぬ温泉を見渡して、
「こんな大きな湯殿も初めてにございます……!!」
歓びのまま咲かせる感嘆の声。大きさばかりでなく白大理石の湯殿を満たして溢れる湯が明るい青に透きとおって煌く様も初めて眼にするもので、桜に似て非なる優しさ華やかさを咲かせる花々も、青空を彩る様も仰ぎ見れば輝くようで、
もしやここは桃源郷では!?
なんて思い至ればしゃらのこころもからだも、ますます極上の温泉に蕩けていく心地。
眩い光が咲いたと見えたのは、きっと気のせいではないのだろう。
早く行こう、と満開の笑みで誘うユーフェミア・フロンティア(光彩聖姫・g09068)が纏うのは彼女らしく優しい白の彩、決して奇を衒わぬ水着は愛らしく可憐なフリルを咲かせるけれど、何故かアンゼリカ・レンブラント(光彩誓騎・g02672)は大切な親友の姿をまっすぐ見つめることができなくて、
「わわ、光の妖精かと思った……! ミアはやっぱり白が似合うね、可愛いっ!!」
「ふふ、妖精は褒めすぎ! アンゼリカの黒はきりっと格好いいね、スポーティーな感じがとっても似合うよっ!!」
眩さに幾度も瞬きをするふりで誤魔化しつつも心からの言葉を口にすれば、擽ったそうな笑みを零したユーフェミアが確り鍛えてるのも凄く格好いいね、と黒のツーピース水着の合間で綺麗に割れたアンゼリカ自慢の腹筋を褒めてくれるから、照れ混じりに笑って手を伸べれば当たり前のように重なる彼女の手。
苺と春林檎の甘酸っぱい香り弾けるスカッシュをそれぞれもう片手に取れば、せーので足を踏み入れる極上の温泉。純白の大理石の露天風呂に満ちて溢れる明るい青に透きとおる湯、舞い降りる春の彩が浮かべる花筏をそっと掻き分け湯に浸かればとろりと柔らかなぬくもりがとぷりとユーフェミアを包み込み、なめらかな湯に脚を伸ばせば温泉がアンゼリカの芯から咲かせる熱がじんわり指先まで広がって、
――乾杯!!
鮮やかな赤と淡やかな金にしゅわりと気泡が唄う硝子杯を鳴らして、春空からの光をも享ける心地で呷れば、湯で温まったアンゼリカの身体の隅々まで冷たい春林檎の甘酸っぱさが弾けるよう。そればかりでなく、振り仰いだ春の花々が青空を背に咲かせる真白も薄桃も弾ける輝きを花開かせているように見えて、
「見て、ミア! 『希望』とはよく言ったものだね……!!」
「ほんとだね、見れば見るほど笑顔になっちゃう花……!!」
春のめざめを告げるという希望の花、満開のアーモンドの天蓋にユーフェミアと揃って弾ける笑みを咲かせた。
花開く、希望の未来。
眩い歓喜と輝く約束そのままに、きらきら煌くような少女達の笑声には微笑まずにはいられない。
己が背を縦に奔る朱の一閃、永辿・ヤコウ(繕い屋・g04118)にとってそれは稲荷狐の朱化粧と思えるものなれど、過去の記憶そのものを己は失っているのだと自覚するたびに何故か強く意識せざるを得ない朱の真実は湯煙よりも真白な靄のなか。一見は刀傷とも見えるそれを人前に晒すことは滅多にないのだけれど、
――それでも、
――戦場を翔ける皆さんになら、
気遣いはきっと必要ない。だってこころにもからだも傷ひとつ負っていないディアボロスなんてきっといない。だから背の朱一閃を隠すことなく、さりとて誇示することもなく、青空と春花のもとに広がる開放的で解放感に満ちた露天風呂の隅で、音も無く妖狐は白大理石に明るい青を満たして溢れて透きとおる湯にひそりと身をゆだねたら、
「あっ」
極上の心地好さに思わず揺れた大きな狐尻尾がぱしゃりと湯を打つ音が響いたけれど勿論気にしない。己の尾に凭れかかる心地でゆるゆると沈めば、ほんのりぬるめで、とろりとなめらかな湯が撫でるようにヤコウを抱きすくめてくれる。
柔らかでなめらかな湯の心地好さに目蓋を閉じれば、そこに感じる春陽の麗らかなあたたかさ。温泉が己の裡から温もりを咲かせてくれる様に笑みを深めて目蓋を開けば、大きな狐尻尾に凭れかかって自然と空を仰ぐ体勢になっていた妖狐の宵菫の瞳いっぱいに広がった光景は、咲き溢れる春の真白に薄桃が織り成す花の天蓋と、晴れ渡る空の青。
「贅沢の極み……いいえ、極みの上をいく幸せですね」
満開に笑みを咲かせれば己を抱く湯が揺れるけれど、あちこちで咲く皆の笑声や歓声で生まれる水面のさざめきがより多く優しく寄せてくる様がヤコウにいっそうの歓びを齎してくれるよう。
あたたかでやわらかでなめらかな、
優しい湯の波とともに肌を擽る、希望のめざめの、花筏。
●Terme Di Salsomaggiore!
青い空に映える春の花。
桜とは異なり花柄がほとんどないアーモンドは、桜より大振りな花がふわりふわりと重なり合って咲き溢れるよう。真白に薄桃、花の彩が重なり織り成す優しい春色の濃淡が空の青をいっそう鮮やかに魅せてくれる様に蜜色の双眸を細めれば、あの花々の華やかさの理由にノスリはふと気づく。
ほんのり色づく花の芯からぱっと開く花糸が、まるで花火みたいで――、
「っと。あははぁ、春はこうして遊ぶんだ?」
『チュリッ!』
突如花が大きく見えたと思えば、花の天蓋と春の青空を仰ぎ見る彼の真上で花を啄んで遊んでいた駒鳥が落とした花一輪。難なく手で受ければ大きな猛禽は小さな鳴禽に笑いかけ、今度は小鳥の戯れでなく春風の戯れで舞う花や花弁に手を伸ばす。明るい空の青を映す湯に舞い降りて揺れる花弁も綺麗だけれど、
湯に落ちる前に掴まえた柔らかな春の彩。
これ、持って帰れるかな。クレメンティアへの土産に、後で押し花にしてさ。そう想えば口許が綻んだ。
本当は一緒に温泉に入れたら良かったけれど。水着姿も見たかったけれど。
――おっと、隠す気も無い本音が零れた。
なぁんて茶目っ気を彼女へと告げたら『ひゃあああ! せめて、せめて隠すふりだけでもお願いします……!!』みたいに軽く怒る気もしつつ、水浴びする猛禽さんを見たいと笑って間違いなく受けて立つ気もするものだから、
――猛禽の水浴びにつきあわない?
もしもそんな風に誘う機会があれば『翼になったお耳がぴるぴるするところを見せていただけるなら、歓んで!』と彼女は楽しげに笑み咲かせ、いそいそと着替えて来るのだろう。想像するより極めて自然にそう確信できて、ノスリの肩も楽しげに揺れればとろりとなめらかな湯と水面の花々も楽しげに肌を撫でていくから、
機嫌がますます上向きになるのも、無理からぬこと。
誰よりも大切なひと。
お互いにそう心を通わせたときから、蒼穹の天使と砂漠の狐がともにすごした日々が四季の環を描いた。
「変化の大きい一年だったよね~! 今はここの温泉を楽しんで、また新たな思い出の一頁を増やそっか」
「もう一年なのだな……。うん、密度の濃い一年だった。新たな一年も思い出の頁の厚い一年にしたいな」
こちらをまっすぐ見上げて飛びきりの笑みを咲かせてくれるラズロルの言葉に勿論エトヴァも否やはなくて、確り身繕いを終えれば白大理石の露天風呂を満たして溢れる、明るい空の青を映して透きとおる極上の温泉にゆうるり浸かる。
肌をとろりと撫でるほんのりぬるめの優しい湯に蒼穹の翼まで浸せば、天然ミネラルが羽根の一枚一枚まで行き渡るよう。仰ぎ見る花の天蓋は春の優しさ華やかさを淡い彩に息づかせ、青空へと伸ばした枝に爛漫と希望を咲かせる様にエトヴァが蒼穹の双眸を細めれば、傍らでひときわ大きく、けれど柔らかに温泉の水面が揺れる気配。
「これ気持ちいいよ~。こうやって見る空も花も綺麗だしさ」
「いいなそれ、なら俺も一緒に――……うん、温泉って気持ちいい……」
ほんのりぬるめと思える湯に浸かれば身体の芯からぽかぽかと温まってきたから、とろりと柔らかな湯にぷかりと己が身を浮かべてラズロルはのんびりゆらり。微笑むエトヴァに笑み返せば彼も一緒にぷかりと浮かぶから、くすくす笑みを零せばあたたかな水面に生まれるのはやわらかな波。
海水の十倍に達する塩分濃度を持つ死海ほどではないが、この温泉の浮力もなかなか、と思えばエトヴァの胸によぎるのは蹂躙戦記イスカンダルにおける大灯台への強襲降下作戦の折のこと。皆を突入させるため敵の意識も攻撃も一身に惹きつけ、己の蒼き羽根も紅き血潮も数多散らしたけれど、
――日頃の疲ればかりでなく、
――あの時の傷の痛みの記憶もとけていくようだ……。
「めいっぱい癒されてる感じだね、エトヴァ」
「ああ、物凄く癒されてるよ……そうだ、ランブルスコで乾杯しようか、ラズ」
蒼穹の天使の顔を覗き込めばそんなお誘いが返るから、いいね! と狐耳をぴんと立てた砂漠の狐は勇んで温泉の水面から跳ね起きた。いそいそと手を伸ばす硝子杯に躍らすのは深紅の紅玉を思わす豊かな煌き、涼やかに硝子の音色を響かせたなら花開く香りは薔薇や菫めいて、それでいて呷れば飛びきり瑞々しい果実感がラズロルの口中で咲き誇る。
微発泡がしゅわりと唄う気泡の刺激ごと浚っていく、辛口仕立てのキレの良さ。
温泉でじっくり温まった身には極上の幸福感、御機嫌な笑みをエトヴァと交わせば視界の端を黒き妖狐の姿がよぎり、
「ヤコウさんの稲荷寿司、美味しくいただいたよ。ありがとう」
「美味しかったよね~♪ ありがとう、御馳走様!」
硝子杯を掲げてエトヴァとラズロルが昼餉の礼を口にすれば、
「こちらこそ! 召し上がってくださって嬉しいです、今度はジェラートなんていかがですか?」
なんて更に魅惑的なお誘いが届いたものだから、恋人達は顔を見合わせ、弾けるような笑みを咲かせた。
ああ、何だか今日は本当に、
一日中笑ってばかりな気がする!!
飛び込んできた耳より情報に弾ける声音を咲かせたのは彼らばかりではなくて、希望の未来を抱く少女達も同じこと。
「今の聴いたアンゼリカ!? ヤコウさんのジェラートって……!!」
「ヤコウのお手製ってことだよね!? これは是非食べさせてもらわなきゃっ!!」
「ええ、ミアさんもアンゼリカさんも是非どうぞ!」
苺や春林檎のスカッシュも美味しかったけれど、先程よりもいっそうあたたまった少女達の身体は更に冷たい氷菓の幸せを欲している。隅の方で密やかに温泉を堪能したいと思いもしたけれど、己が手で皆の笑顔を咲かせたいという気持ちがそれに勝るから、ヤコウが硝子の器を華やかに彩って振舞うのは、【アイスクラフト】による氷ばかりではなく新宿島から持ち込んだ充電式ハンドブレンダーも存分に活かしたお手製ジェラート!
少女達の手許に、ひんやりなめらかで華やかなオレンジの彩が咲いた。
凍らせた果実を砕いて散らしたトッピングが極小の宝石めいて煌いて、
「はいアンゼリカ、あーんして?」
「う……うん。ありがとう、ミア」
銀色煌くスプーンでひとさじ掬ってユーフェミアが差し出せば、温泉の熱をほんのり燈していたアンゼリカの頬にいっそう鮮やかに咲く薔薇の彩。鼓動が逸るのを感じながら匙を含めば、アイスクリームよりも乳脂肪分が少ないがゆえに軽やかで、それゆえにオレンジの甘酸っぱさがひときわ濃密に咲く冷たい美味がなめらかに花開く。
極小の宝石めく凍った果実からしゃりっと弾ける酸味の、爽やかさ。
美味しい、と天の光映す瞳を輝かせ、今度はアンゼリカが、はい、あーん、とひとさじ掬った氷菓をユーフェミアの口許へ差し出せば、嬉しげに咲かせた笑みのまま彼女がぱくり。たちまち紅樺色の瞳に至福が満ち、美味しいねと笑み崩れてしまう頬を両手でユーフェミアは押さえるけれど、幸せを齎してくれるのは極上の温泉とジェラートだけでなく、大切なひとが傍にいてくれるからこそ。
己が強大なクロノス級アークデーモンに寄生されていると識ったときの絶望は忘れていない。
「こんな幸せな時間を過ごせるなんて思わなかったな。ほんと、ありがとうね、アンゼリカ」
大切なひとが眩い歓喜と輝く約束を取り戻してくれて、彼女と、彼女とともに翔けてくれた皆が希望の未来を拓いてくれたからこそユーフェミアは、今ここで心から笑えているから。
然れど、希望の未来を拓かれたのはアンゼリカも同じ。大切なひとが迷わず時空を超えて、最終人類史で同じ時間を歩んでくれる『今』があるから、たとえ日に日に募る想いが胸を掻き乱そうとも、様々な想いに悩んでしまうことがあっても、
「それも含めて幸せだって思う。だから私もありがとうだよ、ミア!」
幸せ満開の笑顔を見せてくれたユーフェミアに、心からの笑みをアンゼリカもまっすぐに返す。
先程、光の妖精みたいだと思った彼女をまっすぐ見つめることができなかった理由に、本当は気づいているけれど。
――今は、まだ、
――このままで。
魅惑のジェラートに咲く歓声が耳に届けば勿論気にはなるけれど、
今はまず、こちらも宝石めいて煌く苺と春林檎のスカッシュを存分に味わってみたい。
「ああ、癒やされちゃう……やっぱりわたし蕩けちゃいそうよ、千草ちゃん」
「とっても癒されますね……大丈夫です百合さん、俺も確り蕩けそうだから」
漆黒の瞳ばかりでなく声音まで甘やかに蕩けるのは、百合が極上の温泉にこころもからだもゆだねているがゆえ。ほんのりぬるめと感じる湯が身体の芯からじんわり熱を咲かせてくれるのも心地好いけれど、柔らかにとろりと肌を撫でてくれる湯のなめらかさがとびきりの幸福感を齎してくれる。
たっぷり含まれた天然ミネラルでお肌はもうなめらか艶々、だけど乙女には解るのだ。まるで肌から身の裡に沁みた幸せがゆうるり溢れてくるように、夜には一段と、朝には格段に、今よりもっとお肌がなめらか艶々になっていることが……!!
ほんのりぬるめで身体の裡からじんわりぽかぽかにしてくれる極上の温泉は、千草のこころとからだも勿論蕩かしてしまいそう。とろりとなめらかで柔らかな湯は何処までも優しい褥にも思えてくるけれど、寝ないようにしないと、と両頬を己が両の掌でぺしぺしした瞬間、千草の意識は一気に澄み渡った。
白大理石の露天風呂に満ちて溢れる、明るい空の青を映して透きとおる湯。透明なその青が百合の雪肌に波紋を描く様が、
「凄く綺麗です、百合さん……」
「もう、千草ちゃんったら!!」
そう、こんなにも綺麗だから。折角久しぶりに彼女の水着姿を拝める今この時、一瞬でも眠ってしまったらもったいない!
固い決意とともに、乾杯しましょう、と千草が望めば、百合が選びとったのは淡やかな金に煌く春林檎、鮮やかな赤に煌く苺のスカッシュを千草も手に取ったなら、しゅわりと唄う気泡より軽やかに、
――乾杯!!
後で交換して楽しむ味わいにも期待しながら、花の天蓋に細波を描いて流れる光風ごと飲む心地で硝子杯を呷ってみれば、胸をきゅうっと締めつけるような苺の甘酸っぱさが千草の口中にも胸にも満ち、やんわり火照る身体に気泡の刺激が冷たさを弾けさせてくれる心地。余韻の幸せに一瞬言葉を詰まらせ、
「……! 日頃頑張っている自分達のご褒美ですね」
「そう! 自分達へのご褒美って大事よね……!!」
頬が緩めば溢れてくるのは露天風呂での乾杯なんて飛びっきりの楽しみに大義名分を与えるとっておきの言の葉。だけれど春林檎スカッシュのどこか早春の風を思わせる冷たさ甘酸っぱさを己の裡に咲かせた百合が確り頷いて、どちらからともなく二人はこつりと額を合わせ、春風を擽るような笑みをくすくすと零し合う。
だってお互いが頑張っていることなんて、お互いが誰よりも識っているから。
笑み交わす眼差しの片隅にふわりと踊る春の彩、気づけば苺と春林檎の香りに気泡が唄う硝子杯に希望の花がひとひら舞い降りていて、先程の約束どおりにお互いの杯を交換したなら、花の天蓋のもとで希望も美味も分かち合う。
ねぇ、まるでもう、
天国に辿りついてしまったみたいね。
春の青空、花の天蓋。
美しい彩を仰ぎ、なめらかな湯にとろり抱かれて蕩けているのも幸せだけれど、ほんのりぬるめの湯がじんわりと身の芯に咲かせたぬくもりが指先にまで十二分に燈されれば、ひんやりとした涼やかさが恋しくなってくるのも当然のこと。
この国の氷菓と聴けば『じぇらーと』なる響きがしゃらの胸裡で宝石めいて煌くから、私も是非賞味させていただきたくと冷たい氷菓の煌きをめざせば、灰の瞳に不意に金の煌きが映った。
陽光めく煌きは先達のひとりの髪の彩、残留効果を燈すべく宙へと光の鍵盤を展開し、軽やかな旋律を奏でていたひとだと気づけば鼓動が跳ねる。吟遊詩人たる身が美しい旋律に惹かれるのは自然なこと、彼が街道での報告書にあった、幻想組曲で動物達を召喚していたひとだと閃けば、齢ここのつの少年が楽しい動物達の謝肉祭に興味を惹かれるのも自然なことで。
――憧れの目を向けずにいられませぬ!!
無邪気ゆえにまっすぐきらきらと煌く仔狐の瞳、憧れをぎゅうっと詰め込んだその熱視線は流石に背を向けていても当人に気づかれた。背中に、あるいは翼に、あるいは髪に感じた視線に振り返れば、ソレイユの蒼穹と黄昏の眼差しが見出したのは仔狐の少年の姿。真剣なその様子を可愛らしいと感じれば眦が緩んで、差し出してみるのはヤコウから受け取った彼のお手製ジェラート、新宿島から持ち込まれた春メロンで作られた、明るい萌黄の彩。
「一緒に食べませんか?」
「ご一緒!? こ、光栄にぞんじます!」
憧れのひとからの御誘いにぴょこんとしゃらはもふもふ耳とふわふわ尻尾を跳ねさせて、大切に受けとったひんやりと甘く香る明るい萌黄の氷菓を異国の匙で掬って含めば、その冷たさに思わず尻尾がぴんと立つ。次いで濃密ななめらかさとともに濃厚に蕩ける春メロンの甘さの幸せにほにゃりと笑み崩れれば、憧れのひとの微笑ましげな眼差しが嬉しくて。
彼が支援のために奏でた幻想ロンドに、報告書で読んだ幻想組曲での活躍に惹かれたのだと語れば、
「ふふっ、今度は貴方の活躍も、見せてくださいね」
「は、はい! 精進いたします!!」
明るい萌黄の氷菓を自身も楽しみながら、擽ったい心地で笑みを深めたソレイユがそう応え、しゃらは今度もぴょこんと、けれど改まる心地で背筋を正す。
あの……お名前を伺って良いでしょうか、私は――。
二人の間で交わされたのは、涼やかな響きの名前と、太陽を意味する名前。
新緑の合間から零れる木洩れ日の煌きを彼らの様子に思い浮かべたのは、少年達の瑞々しい若さを己がそう受けとめたからなのだろう。そう思えばウルリクの笑みも自然と深まって、とろりと柔くなめらかな湯に浸かりながら傾けるランブルスコにひときわ心が躍る。
優美な冷暗所となった地下食糧庫、己と仲間で燈した【液体錬成】が今呑む以上にそこを美酒を満たしてくれるから、
――ならば存分に、
――此の地の美酒を楽しませてもらうとしよう。
新宿島に流れ着いてから得た歴史知識を手繰れば、時代の古い説を採っても己の生きた時代の故郷で葡萄酒造りが始まっていたか否かは微妙なところ。改竄世界史となり、外界との往来が失われたことを思えば、欠けた記憶の日々で己が呷っていた酒は恐らく麦酒か蜂蜜酒であったのだろう。
確かなのは己がそう酔わぬうわばみであること、そして嘗ての日々では酒の質を気にしたこともなかったこと。
然れど今では、美酒と聴けば興味を惹かれずにはおれない己がいるのもまた事実。
この葡萄酒の華やかな香りを薔薇か菫かと感じるのも新宿島に流れ着いてから得た感覚、ゆるり杯を傾ければ繊細な気泡が唄う天然微発泡のランブルスコは優美な口当たりながら悪戯に小さく跳ねてウルリクの口腔を擽って、果実酒らしい瑞々しさを辛口で咲かせて爽快なキレで喉を滑り落ちていく。
極上の温泉で寛ぎながら楽しむには実に嬉しい酒だった。
柔くなめらかな湯が身の芯にじんわり咲かせてくれる熱に酒精が燈す熱も重なれば、快い酔いにも浸されていく心地。
このランブルスコが辛口のセッコと呼ばれるものと識ったのは、次にはやや甘口のアマービレをと勧められた時のこと。
「天然微発泡なランブルスコの口当たりとジェラートのマリアージュで、大人のクリームソーダ! なんていかがです?」
「湯に浸かりながらだと特に美味だろうな……勿論、いただこう」
新たな美味の発見に悪戯に瞳を煌かせつつそう語るヤコウの様子に眦を緩めつつ、ウルリクの胸も密やかに躍る。新宿島に流れ着いてから此の方、舌が肥え始めている気がするのは良いのか悪いのか、なんて。
美味に出逢えば簡単に、心の天秤は傾いてしまうもの。
甘い煌き、弾ける気泡、極上のときめきの気配を察知すればシルが飛びつかないわけがなく、
「あっあっ、大人のじゃなくていいので、わたしにもクリームソーダをくださいヤコウさん!!」
「ええ、スカッシュともきっと合いますよ!」
興味津々、好奇心いっぱいに輝く笑顔で望めばあっという間にヤコウの手許から生まれくるのは淡やかな金色に気泡が煌く春林檎のスカッシュに明るい萌黄の彩をひんやり冠らせた、春メロンのクリームソーダ!
とろり柔らかな湯にたっぷり浸かって、指先までじんわりぽかぽかな優しい熱を燈したまま頬張る春メロンのジェラート。濃密ななめらかさで濃厚なメロンの甘さを蕩かすそれを、春林檎の甘酸っぱさが冷たく弾けるスカッシュを呷って味わえば、
まるでこころもからだも甘さ弾けるひんやり幸せなシャワーを浴びたよう。
極楽ってこういうことを言うんだね、と心地好い幸福感にシルはふるふる身を震わせて、
「ヤコウさんもジャンマリオさんも、狡猾すぎる! こんなの、幸せに堕ちちゃいそうだよ~♪」
「む、シル君も私も狡猾さを解ってくれたようだね……というか! これに関してはヤコウ君の狡猾ぶりが断然上では!?」
心のままに歓喜の声を弾けさせれば大人のクリームソーダを手にしたジャンマリオも彼の最高の褒め言葉たる狡猾で妖狐を絶賛し、二人の様子にセレスティアも、まるで少女の頃に返ったように薄明の瞳をわくわくと煌かせた。
「もしかして、ブルーベリーも持って来ていたりしないかしら? サングリアみたいにして、クリームソーダにするの」
「あっは、いいねサングリアでクリームソーダ! やってみようじゃないの!!」
「ええ、勿論ありますよブルーベリー。ジェラートもブルーベリーでやってみましょうか」
薔薇やカシスを思わせる香りを咲かせるランブルスコ・アマービレは間違いなくブルーベリーとも好相性、碧き月の魔女の美味なるプランにすかさずノスリも乗ったなら、硝子杯に躍る深紅の葡萄酒の煌きに次々と果実が躍る。夜色のブルーベリーは勿論、真紅の苺に薔薇色のラズベリーに、夕陽色のオレンジに。
陽に透かせばきっと綺麗だから、と凍らせた果実も躍らせれば、美しくヤコウが冠らせる涼やかな紫は勿論ブルーベリーのジェラート。硝子杯ごと掲げれば、春の青空にも花の天蓋にも良く映えて。
――乾杯!!
晴れやかな声音を皆で咲かせ、杯を鳴らして傾ける大人のクリームソーダ。
華やかに溢れる薔薇とカシスを思わすランブルスコの香り、甘酸っぱいブルーベリーの風味がひんやりぎゅっとなめらかに凝ったジェラートと合わせて味わえば、セレスティアの口中に甘いベリーをそのまま頬張るような発泡葡萄酒と冷たいブルーベリージェラートの饗宴が花開く。
気泡を纏って煌く果実も食めば瑞々しい宝石を食む心地。希望の花の天蓋を仰いで、皆に幸せな声音を咲かせた。
――『希望』が満たされ始めたこの地の未来を夢見ながら、
――ひとときの贅沢、春の訪れを満喫しましょう。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【液体錬成】LV3が発生!
【アイテムポケット】LV2が発生!
【勝利の凱歌】LV1が発生!
【口福の伝道者】がLV4になった!
【アイスクラフト】がLV2になった!
【熱波の支配者】がLV5になった!
効果2【フィニッシュ】LV2が発生!
【反撃アップ】がLV5(最大)になった!
【ガードアップ】がLV4になった!
【ダメージアップ】がLV2になった!
【凌駕率アップ】LV3(最大)が発生!
【ダブル】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV3になった!