リプレイ

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「陳留へ向かった皆様が存分にその力を振るえるよう、こちらの兵は何としてでも抑えておきたいですね」
　一騎塚・喜一（一騎刀閃・g04498）は先回りし、手頃な木の後ろへ身を潜めた。
　そのまま隠れ、曹休軍の到来を待ち受ける。
　やがて遠方から馬蹄よりもなお重く激しい、地響きめいた無数の足音と、黒山のような多くの影が近づく。
　喜一はタイミングを計り――前方にある道のど真ん中へ、七つの残像を出現させた。
　突然現れた敵の姿と、周辺に張られた防衛ラインのダブルパンチで、さしものトループス級『魏軍虎衛兵』も、驚愕したようだ。
「個人的に興味を唆られる姿で、倒すのは惜しいのですが……」
　そこへめがけ、喜一は残像達に襲い掛からせる。その素早い動きに、敵は反応が間に合っていない。
「私情で目的を見誤っては、武士として失格です」
「何が起こっている！　敵だと！？　少々の犠牲など放っておけ、前へ進まんかぁ！」
　喜一はちらりと、わめきたてる曹休の姿を一瞥する。
「褒美に目が眩んで先走ったりするなども……ですね」
　その場から駆け出した。一瞬前まで隠れていた木が、大量の拳気を受けて破壊される。
　喜一は木々を遮蔽として細かな移動を繰り返しながら、奇襲攻撃を浴びせ続けたのであった――。


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「敵の虚を突くには機動力は重要だが……」
　夏候・錬晏（隻腕武人・g05657）は背の高い草や深い茂み、木陰へ身を隠しながら、曹休軍と並走するように追いかけていた。
「こうも隊列が間延びしていては、敵に隙を与えているようなものだ」
　ほどなくして前方で騒ぎが巻き起こり、曹休の戸惑ったような怒声が聞こえて来る。
　どうやら先回りしていた一騎塚・喜一（一騎刀閃・g04498）が、奇襲を仕掛けたらしい。
　錬晏はそれに合わせて、敵勢の中心部めがけて閃光弾を投げ入れる。
　最前線に続く後続の敵が、四方八方への強烈な光を浴びてたまらず足を止めた。
　横合いに小型のピラミッドが出現すると同時に、錬晏は偃月刀へ朱殷の闘気を纏わせる。
　龍頭を模した得物を構え、混乱に乗じて一気に切り込んだ。
　トループス級『魏軍虎衛兵』の甲殻のつなぎ目を狙い、強烈な一撃を浴びせていく。
　敵も錬晏に気が付いたか、次第にカウンターを狙う者が現れ始めた。
　闘気もろとも偃月刀を掴み、そのまま錬晏をも引き込もうというのだ。
「数の多さと膂力の組み合わせか……捕まれば痛いでは済まないな」
　錬晏は深追いせずに、周りの木々を斬り裂き、敵の集まっている方向へ蹴り倒して、隊列を乱す。
　さらには倒れた木そのものを盾や遮蔽として動き回り、直撃だけは避けながら、冷静に攻め続けるであった――。


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　ラウム・マルファス（研究者にして発明家・g00862）は山へ分け入り、あちこちへトラップを仕掛けていた。
「……こんな感じかナ」
　敵部隊が通る道を中心に、目立たない茂みの奥や草、木陰など注視しなければ分かりにくい場所にも設置していく。
「この罠なら、部隊で動いてればすぐバレちゃうだろうけど、突出して周囲に味方がいなければどっちから来たかわからなくなるカモ」
　準備を終えて待っていると、敵軍が近づく音や気配が聞こえ――騒ぎが起き始めた。
　味方のディアボロス達による奇襲により、敵軍は混乱をきたしつつある様子。
　隊列は崩れ、小部隊へばらけて――その一部が、ラウムの仕掛けた罠地帯へ踏み込んで来た。
　トループス級『魏軍虎衛兵』は柔らかくなった土を思い切り踏み、膝下まで足を取られる。
　そこへめがけ、広がった網が敵を纏めて捕らえた。
　ラウムは網の先端を握り、思いきり走り回ってぐるぐると回転させる。
　網自体はすぐに引き裂かれるも、流石に何度も回されて方向感覚を失ってしまったか、敵はより散開していき、もはや統率は見る影もない。
　ラウムは道を外れて逃げながら、通りかかる木の中へ爆弾を生成していく。
　無論、敵も追いかけて来る。次々に強烈な拳気を放って来るが、そのいくらかは木へ着弾し、爆弾を炸裂させた。
　距離が近い者はそのままダメージを受け、離れた敵も突然の爆発を前に驚き警戒し、つい足を止めてしまう。
　その隙にラウムはさらに爆弾を埋め込みまくり、足元のふらつく敵を翻弄しながら、着実に撃破していくのであった――。
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　ディアボロス達の活躍により、トループス級『魏軍虎衛兵』は撃破された。
「わ、我が精強なる軍勢が、ぜ、全滅だと！　なんで！？」
　さしものアヴァタール級『曹休』も、この事態には青ざめ震えたものである。
「せ、せっかく陳留へ辿り着けても、増援総勢一名推参！　では確実に曹操様に怒られる……ッ！　なんて真似をしてくれたのだ！　おのれディアボロスどもめ～っ！」
　この期に及んでも手柄の事ばかり考えているのか、あまり危機感がない。
　むしろ普通にディアボロス達を返り討ちにし、陳留へ駆けつけられる気でいる傲慢ぶりだ。
　今こそ曹休を倒し、陳留を孤立させるのだ……！


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「では、陳留へ行くとするか……」
「あら、まだ陳留にたどり着けると思ってるのかしら！　大した自信じゃない！」
　陳留へ行きたがるアヴァタール級『曹休』の前に、ソラ・フルーリア（歌って踊れる銀の星・g00896）が腰に手を当てて立ちはだかる。
「それじゃ、そんな敵はこの場で倒しておかなきゃいけないわね！」
「やってみるがいい！　虎豹騎よ来いィ！」
　曹休は召喚した巨大甲虫に乗り、その背中を蹴り飛ばすと、甲虫はソラめがけて突進を開始したではないか。
　対するソラは、木立の奥へ駆け出す。
　木々を薙ぎ倒しながら、甲虫が追って来た。
「どうしたどうした！　逃げるばかりか！？」
　さらに曹休自身も矢を射かける。かなり正確な狙いであるその一射一射を、ソラは魔力障壁によって軽減しながらひた走った。
　するとどうだろう。突如として、甲虫の体勢が崩れたではないか。
　ソラが逃げながら作り出した穴に、足を取られたのだ。
「な、なにっ！　いつの間に……！」
「功を急がないことと、チャンスを見逃さないこと！」
　ソラはすかさず反転しながら、拡声杖『レゾネイト』を構える。
「――アイドルの世界では常識よ！」
　先端に生成された光刃を、すれ違いざまに叩き込む！
　その華麗な一撃は、無防備な甲虫を両断。
「ぐ、ぐあぁぁ……！」
　騎乗していた曹休の胴体にも、斜め一閃の傷を刻み込んだのであった――。


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　秋風・稲穂（剣鬼・g05426）は漆黒の刀身を持つ剣と、光の力を込められた剣をそれぞれ握った。
　陳留へ行きたそうなアヴァタール級『曹休』は、甲虫を呼び出して空中から飛び乗る。
「増援総勢一名推参！　は面白いから、ちょっとやってみて欲しいかな」
「そのためにも、そろそろ陳留へ行くのだ！」
　曹休は甲虫に蹴りを入れ、稲穂へ向けて猛スピードで突進させ始めた！
「……まあいいさ、騎乗した敵にだって対処法はある――」
　稲穂も構えを取り、剣へ雷を纏わせていく。
　――雷鳴連斬。得物を一気に振るえば、宿った雷が斬撃とともに迸った。
　それも二本の剣から次々と、弾幕よろしくぶっ放していく。
　曹休もまた矢の雨を降らせていた。稲穂は手を止める事なく、曹休を狙って雷刃を浴びせ続ける。
　いくつもの鋭い光が矢とぶつかり合い、相殺し合う。
　矢は稲穂の身をかすめ、細かな傷を刻んでいったが、幸いにも直撃だけはしていない。
　一方の曹休は、自らを狙い撃ちにする雷鳴連斬の波状攻撃を受け、体勢を崩していた。
「ぬ、ぬおおぉぉっ！？」
　甲虫の操縦も乱れ、稲穂を押し潰せる寸前で大きく右へ転回してしまい――木に激突。
　さらに弾かれ、中空へ吹っ飛ばされた。だが、この程度で倒れてくれる相手ではない。
「さあ、本気でやり合おうか」
　むくりと起き上がる曹休を前に、稲穂は再び構えを取るのだった――。




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「なんで！？　……って、ご自分の胸に手を当てて考えてみて欲しいですよ。これでは魏軍虎衛兵も浮かばれないですね」
　一騎塚・喜一（一騎刀閃・g04498）の突っ込みに、夏候・錬晏（隻腕武人・g05657）も呆れを押し殺し、答えを教えてやる。
「……突出しすぎた」
　アヴァタール級『曹休』。名声に目がくらみ、戦況が正しく理解できないようでは、どちらにせよ『曹操』と合流したところで、あまり役に立ちそうもない。
「おのれ～ッ！　貴様らさえ陳留行きを邪魔しなければこんな事には……！」
「ご安心下さい、貴方が曹操に怒られることはありませんよ」
　喜一は太刀へ手をかけながら告げた。
「――陳留には行かせませんから」
「その通り。いかに憐れでも見逃してやる気はない」
　錬晏も偃月刀を構える。石突側に朱殷の闘気が宿ると、柄の両方へ刃が形作られた。
「来いィ虎豹騎ッ！」
　甲虫を呼び出した曹休はその上へ乗り込み、一心にこちらへ突っ込んできた！
　繰り出されるは矢の雨。喜一も駆け出し、かいくぐるように肉薄する。
「無駄だ無駄だ！　単騎駆けした所で、貴様は猛将でもなんでもあるまい！」
「ここで私が倒れたとて……誰かが貴方を倒せば良いのです」
　喜一は地を蹴り、甲虫の上の曹休めがけて一閃を薙ぐ。
「私は目的を見誤りません……！」
　渾身の力で放たれたその一撃は、寸前で跳躍した曹休によって躱されていた。
「無駄だと言っておるのだ未熟な若造がァ！」
　刹那には曹休は、目に見えないほどの速度によって移動し、錬晏へ切迫。
　迫る曹休を、錬晏もまた跳躍する事で何とか回避してのけた。
　それでも身をかすめたか、肩口から鮮血が散る。
　だが動きを止める事なく、木々の間へ飛び込む事で視線を切った。
「ちィッ、どこだ！？」
　追って来る曹休と入れ替わるようにジャンプし、頭上を跳び越えながら背後を取る。
　羽交い絞めにする格好で偃月刀をねじ込み、龍頭の闘気を喰らいつかせてその場へ釘付けにした。
「長くは保たん……！」
　錬晏の声に応じ、駆けつけた喜一が再び刀を振るう。
「ええい、離せ！　離……ぐわああぁぁぁ！」
　斬月の一太刀は、今度こそ曹休へ命中。
　その身体を真っ二つに切り分け、撃破してのけたのであった――。

　ディアボロス達の活躍により、増援のクロノヴェーダは全て討ち取られた。
　この結末が曹操を大いにイラつかせているだろう事は、想像に難くない――。

最終結果:成功
完成日	2023年02月25日