若菜摘(作者 藍鳶カナン
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#天正大戦国  #九鬼嘉隆の伊賀国圧政部隊  #伊賀国  #九鬼嘉隆 

●落花
 時は戦国、天正9年。
 西暦1581年――天正大戦国は伊賀国の『下山甲斐守城』にて。
 松灰釉の色合いが渋味のある伊賀焼の花器に活けられていた紅色鮮やかな椿の花が、ほとりと落ちた。
 それは白銀に淡い靑藤や藤紫をかけたような色合いが清しい天魔武者が溜息を洩らしたときのこと。機械生命体たる彼らが実際に溜息をつくか否かは判らぬが、傍から見れば溜息を洩らしたとしか思えぬほどの落胆ぶりであった。
 落胆したというより、途方に暮れたというべきだろうか。このジェネラル級の天魔武者『九鬼嘉隆』の様子は。
『……やはり、信雄様にはおわかりいただけぬのだな……』
 項垂れつつ首を振る九鬼嘉隆の手にあるのは、伊勢の『織田信雄』からの書状。主に叱責が綴られていた。
 ――伊賀の国の圧政が弱まり、いまだ回復の兆しが見えぬこと、甚だ腹立たしく、甚だ遺憾なり。
 ――九鬼嘉隆の武名も地に堕ちたり。圧政の強化に粉骨砕身せよ、さもなくば腹でも切るがよい。
 もしや何度も書状が届いているのだろうか。しかも多少言い回しを変えただけの同じ内容の物が。傍から見てもそうとしか思えぬほどに肩を落とした九鬼義孝は、椿の花がもう一輪、ほとりと落ちたの機に腰をあげた。
 伊賀が制圧されればディアボロス達は伊勢のみならず近江にも進出してしまうだろう。
 この下山甲斐守城での籠城こそディアボロスの進出を阻む最善の策であったはずなのに、織田信雄の命はその籠城準備すら無駄にしてしまうもの。この調子では援軍も期待できぬようだと苦悩を深めつつ、九鬼嘉隆は城内の配下に命を下す。
 何処でも構わぬから村を襲撃せよ、と。
 但し、ディアボロス達に気取られぬよう、カラクリ砦とは無関係の地を選んで向かえ、と。

●時先の導
 凛と大気が澄み渡る冬の朝。
 伏した鹿の像が印象的な手水舎の水面にも時に氷が張る冬もなお緑豊かな境内に、鮮やかにしてあでやかな朱塗りの社殿が厳かに座する春日大社へ早朝に詣でたなら、原初の息吹をそのままに残すような緑に抱かれた神域で、ひときわ冷たく清冽に澄みきった水に胸も魂もすすがれる心地になれるだろう。神の御前で心ゆくまで己と向き合うのもよし、木彫りの鹿や陶器の白鹿がおみくじを咥えた鹿みくじを引いてみるのもよし。そうして初詣を終えたなら、
「あったかい七草粥なんてどうかしら! ってお話の前に、まず言わせてくださいね。明けましておめでとうございます!」
 ――今年もどうぞどうぞ、よろしくね!!
 新宿駅グランドターミナルにてディアボロスたちを迎え、クレメンティア・オランジュリー(オランジェット・g03616)は新たな年にまた皆と逢えた歓びに輝く笑みでそう述べた。今回のパラドクストレインがまず向かうのは、最終人類史の古都、奈良の春日大社だ。
 彼女が勧めるのは早朝の春日大社での初詣と、参道近くの茶屋で楽しめるあたたかな七草粥。
 美しい庭園を望める茶屋で饗される七草粥は、昆布出汁と白味噌仕立ての優しい味わいの逸品で、トッピング用の大和牛の時雨煮や、柚子胡椒ならぬ大和橘胡椒、奈良漬で味を変えつつ楽しむのもまた美味なのだとか。
 望めば南都諸白(なんともろはく)も味わえる。南都諸白とは、古くから奈良で造られてきた清酒のこと。
 この国の酒は元来どぶろくのような濁り酒であったが、透きとおる清酒が生まれたのがこの奈良の地、すなわち南都だ。
 時先案内人たるクレメンティアが初詣と七草粥を勧めるのは、折々の季節行事などを皆が刻逆前と変わらずに楽しむことが最終人類史の堅守に繋がることであるから。ゆえに年末に頑張った娘はこの年始も頑張った。それはもう頑張った。
「皆様どうぞどうぞ、私の分まで楽しんできてくださいね! な、泣かない! 泣きませんから……!!」
 春日大社で初詣して七草粥……!!
 ぷるぷるそう身を震わせつつも新宿島で栽培された春の七草を摘んだらしい若菜の籠をぎゅむっと抱いて何とか立ち直り、クレメンティアは言を継ぐ。本題はここからだ。初詣と七草粥の後、パラドクストレインは天正大戦国の伊賀国へと向かう。
「皆様には、伊賀国で人々への圧政を強めようとしている天魔武者達の部隊への対処をお願いしますっ!!」

 伊賀国におけるカラクリ砦の制圧、そして砦周辺の平定。
 この地でのディアボロス達の活躍により天魔武者達が必要とする『圧政』が弱まったため、ジェネラル級の天魔武者『九鬼嘉隆』が伊勢の『織田信雄』の命により、人々への圧政を強化するための部隊を派遣する策を採った。九鬼嘉隆自身は『下山甲斐守城』での籠城に努めるべしと考えていたようだが、彼とて『織田信雄』には逆らえぬということらしい。
 天魔武者の部隊は村を襲って略奪したり、労働力として村人を無理矢理に連行するなどで圧政強化を図っている。
「まずは圧政部隊に襲撃されている村に向かって、村の方々を捕えようとしている部隊を撃破してくださいっ!!」
 今回襲撃されているのは伊賀焼の窯がある村だ。
 既に食糧は略奪されて圧政部隊の拠点へ運ばれており、こちらが介入できるのはトループス級の天魔武者『鉢屋衆』達が、『若菜摘』と称して村人達を捕えて連行しようとしている最中のこと。あちらの排斥力の関係でどうしてもこのタイミングになってしまうのが歯痒いが、
「襲撃で村の窯や幾つかの家屋が破壊されたりもしていますが、これを元通りにするのも、略奪され拠点へ運ばれてしまった食糧を奪還するのも、皆様ならばっちり可能です! そのためにも『鉢屋衆』達をがっつり撃破しちゃってくださいっ!!」
 鉢屋衆達は村のあちこちに散っているが、手近な相手に攻撃を仕掛ければ、戦いの気配を察してすぐに集まってくる。
 こちらから探しに行くよりも集まってくる敵を皆で揃って迎え撃つほうが得策だろう。
 敵は村人達を労働力として連行するつもりであるため、村人達を攻撃したり人質にとるなどで戦いに巻き込むことはない。ならば為すべきことは全力で敵を殲滅すること。彼らの来た痕を辿れば敵の拠点へ向かうのも容易いことだ。
「圧政部隊の拠点には部隊の指揮官を護衛するトループス級の天魔武者『伊賀忍者』達がいます。この『伊賀忍者』達も撃破して、指揮官であるアヴァタール級の天魔武者『伊達成実』も撃破すれば、略奪された食糧も奪還できちゃいます!!」
 恙なく圧政部隊を壊滅させられたなら、奪還した食糧とともに伊賀焼の窯がある村へ凱旋を。
 食糧を村へ返すのは勿論だが、そればかりではなく、
「天魔武者達がこの村に齎した『圧政』の傷跡を癒してあげて欲しいんです」
 ある意味、これが今回で一番重要なお仕事です、と柔らかに眼差しを緩めてクレメンティアは微笑んだ。
 破壊された窯や家屋は誰か一人でも【建物復元】を持ち込んでくれれば瞬く間に元通り。だから力を注ぐべきは別のこと。
「ね、折角の縁ですし、新宿島から持ち込んだ食材で村の方々に七草粥を振舞うのなんてどうかしら?」
 中国から伝わった七種菜羹が七種の穀物で作った粥を食べる風習となり、古来よりの若菜摘の風習と結びついて生まれたと伝えられる七草粥。これがいつの頃に現在のかたちとなったのかは諸説あるし、何より現地は改竄世界史だ。村には七草粥の風習がない可能性もあるから、
「自分達のところで無病息災を祈って食べるものだ……って説明するのが早いかもしれません。初詣で召し上がった七草粥がお気に召したなら、村の方々にも昆布出汁と白味噌仕立ての七草粥を、どうぞどうぞ、振舞ってあげてくださいな!」
 あちらには現代にも伊賀の玉味噌として伝わる自家製の味噌があるようだから、豆腐や蒟蒻、里芋や生麩などを持ち込んで玉味噌での味噌田楽を作らせてもらうのも楽しいだろうし、南都諸白を持ち込むのも歓ばれそうだ。
「それに、歌や踊りに音楽や、その他にも! 村の方々に楽しい時間を贈ってあげられそうなことがあればぜひとも!!」
 お願いします、と笑み咲かせ、クレメンティアが話を結ぶ。

 圧政のことなど忘れてしまえるようなひとときを。明るく楽しい気持ちになって、元気づけられるようなひとときを。
 村人達に贈ることができたなら、天魔武者の力となる圧政を更に弱め、今後の戦いをいっそう有利にできるはずだから。
 そんな理由がなくたって、誰かに、皆に、笑ってもらえるなら、それだけで自分達はまた戦っていけるから。
 ――どうぞどうぞ、よろしくね!!

●若菜摘
 凛と大気が冴える真冬にあってもなお艶やかな緑の合間に咲き誇る、鮮やかな紅。
 椿の花々がふるりと震えたのは、山の斜面を利用して造られた穴窯が崩落した地響きのためだった。
 伊賀焼の村の穴窯が崩落したのは自然に崩れたわけでもなく、地震に遭ったわけでもなく、
『ほうれ、ぬしらの自慢の窯もこの通り崩れ落ちてしもうたわ!』
『最早ぬしらが土を捏ねる必要もありはせぬ、城にて土にまみれて働くがよい、九鬼様への御奉公じゃ!!』
 一重梅の扇をひらりひらりと舞わせて囃し立てる天魔武者、鉢屋衆どもが破壊したためだ。
『さあて、若菜摘といこうかの!』
『なあに、この麗しき萌黄の衣を被せれば、ほうれ、老いも若きもおのこもめのこもみぃんな若菜じゃ!!』
 櫨染の直垂めいた装甲を纏う鉢屋衆どもが愉しげに宙に舞わせるのは幾枚もの萌黄の衣。
 蔵を壊され食糧を略奪され、真冬のさなかに家屋を破られ、焼き物を生業とする者には最も神聖な場所たる窯を崩されて、逃げ惑う村人が次々と萌黄の衣を被せられ、摘まれていく。殺しはしない。傷つけはしない。村人達は城の普請で酷使して、長く『圧政』を味わってもらわねばならぬのだから。

 九鬼嘉隆が苦悩の末に派兵を決断した圧政部隊。
 この部隊は元々『下山甲斐守城』に詰めているべき戦力であった。
 すなわち、この部隊の撃破は城の護りを削ること。圧政部隊を潰していけば、いずれは下山甲斐守城へ攻め込んで――。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
13
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【怪力無双】
3
周囲が、ディアボロスが怪力を発揮する世界に変わる。全力で力仕事をするならば「効果LV×3トン」までの物品を持ち上げる事が可能になる。
【強運の加護】
1
幸運の加護により、周囲が黄金に輝きだす。運以外の要素が絡まない行動において、ディアボロスに悪い結果が出る可能性が「効果LVごとに半減」する。
【一刀両断】
2
意志が刃として具現化する世界となり、ディアボロスが24時間に「効果LV×1回」だけ、建造物の薄い壁や扉などの斬りやすい部分を、一撃で切断できるようになる。
【照明】
1
ディアボロスの周囲「効果LV×20m」の空間が昼と同じ明るさに変化する。壁などで隔てられた場所にも効果が発揮される。
【神速反応】
1
周囲が、ディアボロスの反応速度が上昇する世界に変わる。他の行動を行わず集中している間、反応に必要な時間が「効果LVごとに半減」する。
【腐食】
1
周囲が腐食の霧に包まれる。霧はディアボロスが指定した「効果LV×10kg」の物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)だけを急激に腐食させていく。
【浮遊】
1
周囲が、ディアボロスが浮遊できる世界に変わる。浮遊中は手を繋いだ「効果LV×3体」までの一般人を連れ、空中を歩く程度の速度で移動できる。
【勝利の凱歌】
3
周囲に、勇気を奮い起こす歌声が響き渡り、ディアボロスと一般人の心に勇気と希望が湧き上がる。効果LVが高ければ高い程、歌声は多くの人に届く。
【友達催眠】
1
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【プラチナチケット】
1
周囲の一般人が、ディアボロスを関係者であるかのように扱うようになる。効果LVが高い程、重要な関係者のように扱われる。
【泥濘の地】
2
周囲の地面または水面が泥濘に変わり、ディアボロスは指定した「飛行できない対象」の移動速度を「効果LV×10%」低下させられるようになる。
【熱波の支配者】
6
ディアボロスが熱波を自在に操る世界になり、「効果LV×1.4km半径内」の気温を、「効果LV×14度」まで上昇可能になる。解除すると気温は元に戻る。
【エイティーン】
1
周囲が、ディアボロスが18歳から「効果LV×6+18」歳までの、任意の年齢の姿に変身出来る世界に変わる。
【スーパーGPS】
2
周囲のディアボロスが見るあらゆる「地図」に、現在位置を表示する機能が追加される。効果LVが高ければ高い程、より詳細な位置を特定できる。
【無鍵空間】
1
周囲が、ディアボロスが鍵やパスワードなどを「60÷効果LV」分をかければ自由に解除できる世界に変わる。
【完全視界】
1
周囲が、ディアボロスの視界が暗闇や霧などで邪魔されない世界に変わる。自分と手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人にも効果を及ぼせる。
【活性治癒】
3
周囲が生命力溢れる世界に変わる。通常の生物の回復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」し、24時間内に回復する負傷は一瞬で完治するようになる。
【修復加速】
2
周囲が、破壊された建造物や物品の修復が容易に行える世界に変わる。修復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」する。
【植物活性】
1
周囲が、ディアボロスが指定した通常の植物が「効果LV×20倍」の速度で成長し、成長に光や水、栄養を必要としない世界に変わる。
【土壌改良】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の地面を、植物が育ちやすい土壌に変える。この変化はディアボロスが去った後も継続する。
【建造物分解】
1
周囲の建造物が、ディアボロスが望めば1分間に「効果LV×1トン」まで分解され、利用可能な資源に変化するようになる。同意しない人間がいる建造物は分解されない。
【使い魔使役】
1
周囲が、ディアボロスが「効果LV×1体」の通常の動物を使い魔にして操れる世界に変わる。使い魔が見聞きした内容を知り、指示を出す事もできる。
【操作会得】
1
周囲の物品に、製作者の残留思念が宿り、ディアボロスの操作をサポートしてくれるようになる。効果LVが高い程、サポート効果が向上する。
【書物解読】
1
周囲の書物に、執筆者の残留思念が宿り、読むディアボロスに書物の知識を伝えてくれるようになる。効果LVが高くなる程、書物に書かれていない関連知識も得られる。
【口福の伝道者】
4
周囲が、ディアボロスが食事を摂ると、同じ食事が食器と共に最大「効果LV×400人前」まで出現する世界に変わる。
【おいしくなあれ】
2
周囲の食べ物の味が向上する。栄養などはそのまま。効果LVが高いほど美味しくなる。
【ハウスキーパー】
2
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の建物に守護霊を宿らせる。守護霊が宿った建物では、「効果LV日」の間、外部条件に関わらず快適に生活できる。
【パラドクス通信】
4
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【クリーニング】
3
周囲が清潔を望む世界となり、ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の建造物や物品が、自動的に洗浄殺菌され、清潔な状態になる。
【建物復元】
5
周囲が破壊を拒む世界となり、ディアボロスから「効果LV×10m半径内」の建造物が破壊されにくくなり、「効果LV日」以内に破壊された建物は家財なども含め破壊される前の状態に戻る。
【アイテムポケット】
5
周囲が、ディアボロスが2m×2m×2mまでの物体を収納できる「小さなポケット」を、「効果LV個」だけ所持できる世界に変わる。

効果2

【能力値アップ】LV10(最大) / 【命中アップ】LV5(最大) / 【ダメージアップ】LV10(最大) / 【ガードアップ】LV6 / 【凌駕率アップ】LV1 / 【フィニッシュ】LV1 / 【反撃アップ】LV5(最大) / 【アクティベイト】LV1 / 【リザレクション】LV3(最大) / 【先行率アップ】LV6 / 【ドレイン】LV5(最大) / 【アヴォイド】LV2 / 【ロストエナジー】LV5 / 【グロリアス】LV5(最大)

●マスターより

藍鳶カナン
 明けましておめでとうございます。藍鳶カナンです。神社スキーです。
 初詣は春日大社への御案内です。お好みで七草粥もどうぞ。南都諸白(清酒)もあるよ!
 最終人類史堅守のお仕事(初詣)の後は天正大戦国の伊賀国でのお仕事をよろしくお願いいたします!

 ※当シナリオでは調査や情報収集は行えません。

●運営予定
 選択肢2→3→4→5→1の順にリプレイ執筆予定。
 進行状況については、マスターページも合わせてご確認いただければ幸いです。

 継続参加は勿論、途中参加や一点のみのスポット参加も大歓迎。
 いずれの選択肢も、判定・タイミング・状況次第では採用できない場合がある旨、ご了承いただけますと幸いです。

●選択肢2:春日大社で初詣
 初詣は春日大社への御案内です(他の神社や寺院へのお詣りは不採用です)。
 早朝、落ち着いた雰囲気でお詣りしたい方にぜひ。当シナリオでは縁日的な屋台や露店は【ありません】。
 参道近くのお茶屋で七草粥を楽しむこともできます。
 リプレイは、初詣のみの方は春日大社へお詣りする場面の描写、初詣+七草粥の方は『お茶屋で七草粥を楽しみつつ、春日大社に詣でた時のことを思い返す』『友人と七草粥を楽しみつつ、先程ひいた鹿みくじを見せあいっこする』等、七草粥の場面に初詣の描写を織り込むかたちになります。

 なお、実在のお店は出てきません。藍鳶が用意した架空の! 架空のお茶屋! に御案内させていただきます。
 七草粥は昆布出汁で白味噌仕立ての優しい味わい。そのままでも美味ですし、トッピング用の大和牛の時雨煮や、大和橘胡椒(柚子胡椒の柚子の代わりに橘を使ったもの)、奈良漬(念のため20歳以上限定)で味変して楽しむこともできます。
 ほうじ茶もついてきますが、南都諸白(清酒)も注文可能。

 ※全面的に禁煙でお願いします。お酒と奈良漬は、実年齢および外見が20歳以上の方のみOKです。

 ※この後の選択肢であるといいな、と思う残留効果をここで発生させておくのがおすすめです。【建物復元】とか!!

●選択肢3:👾一般人を襲うトループス級『鉢屋衆』
 👾『鉢屋衆』は村のあちこちに散っていますが、戦闘が始まればすぐに集まって来ますので、全て撃破してください。
 敵の襲撃の目的は『圧政を強め、その一環として村人を労働力として連行する』ことなので、村人を攻撃したり人質にとるようなことはありません(殺してしまうと圧政もできず、労働力にもできないので)。
 👾『鉢屋衆』を撃破すれば、敵拠点に向かうことができます(彼らの来た跡を辿って向かいます。プレイング不要)。

 ※この選択肢のリプレイの後に、敵拠点(当シナリオの部隊の拠点)についての追加リプレイを公開させていただきます。

●選択肢4:👾護衛するトループス級『伊賀忍者』
 選択肢3の後の追加リプレイを確認の上で挑んでいただければ幸いです。
 この選択肢をクリアせず👿『伊達成実』に挑んだ場合、👾『伊賀忍者』が👿『伊達成実』を援護するため、この選択肢で👾『伊賀忍者』を殲滅(選択肢クリア)しておくのが推奨です。

●選択肢5:👿アヴァタール級『伊達成実』
 選択肢4をクリアの上で挑んでいただくのが推奨です。
 👿『伊達成実』を撃破すれば、村から略奪された食料の奪還も自動的に成功(プレイング不要)となります。

 なお、当シナリオの完結はこの選択肢のクリアではなく、この次の選択肢1のクリアが必要となります。

●選択肢1:圧政部隊に襲われた村を救う
 敵拠点から奪い返した食料の村への運搬・村人への返却は自動成功(プレイング不要)。
 この選択肢では、破壊された家屋や窯の修復や、村人達へ新宿島から持ち込んだ食材で七草粥を振舞ったり、村の味噌+新宿島の食材で味噌田楽を一緒に楽しんだり、奈良から持ち込んだ南都諸白を呑み交わしたり、歌舞音曲で村人達を楽しませたり等で、村人達を元気づけてあげてください。
 上記以外にも「こんなことしてあげたい!」ということがあればお好みでどうぞ!

 当日の出来事なので、破壊された家屋や伊賀焼の窯は【建物復元】LV1があればさくっと元通りになります(【建物復元】は発動条件が限定的な分、非常に強力な効果です。効果発動と同時にさくっと元通りになりますので、修復作業などは必要ありません)。
 修復に関するプレイングは『【建物復元】を使う』のみでOK。
 プレイングのメインは、村人達を楽しませたり、一緒に楽しんだりでどうぞ!

 なお、伊賀焼の村ですが、陶芸体験などは【できません】(乾燥・焼成に時間がかかるため、器を作ったとしても完成品を手にするのが不可能なため)。予め御了承ください。

 皆様がこの選択肢に手を貸してくださればくださるほど、今後の伊賀国の戦いが有利になる可能性が高まります。皆様の手をお借りできれば幸いです!

 ※全面的に禁煙でお願いします。お酒は(持ち込むなら奈良漬も)、実年齢および外見が20歳以上の方のみOKです。

 ※この選択肢のクリアで、シナリオは成功完結となります。

 それでは、皆様の御参加をお待ちしております。
142

このシナリオは完結しました。



発言期間は終了しました。


リプレイ


空木・朱士
白味噌仕立ての七草粥かぁ。
元々が赤味噌文化育ちだし、白味噌の粥って新鮮に感じる。

いただきます……あ、うま。
優しくて朝食に丁度良いし、冷えた体に染みてホッとする。
味変は時雨煮にしてみよ。

初詣っていうと氏神に詣でるくらいで大きい神社まで態々出向いた事ってなかったし、去年はまだ初詣しようって心境になれなかったからなぁ。

歴史ある大社と思うからか朝の冴えた空気も相まって厳かな気持ちになるし、参拝すると世界を取り戻すために頑張ろうって改めてピリッと気持ちが引き締まる。
参道の途中で会った神鹿に新年の挨拶してみたりするのも楽しかったな。

あ、そうだ。
さっき買った木彫りの鹿みくじ見てみよ。
(結果はお任せします)


逢魔・荊
アドリブ可

へぇ…七草粥
これ食って無病息災…か
健康でいられるように、と
復讐者になる前は毎年よく食わされてもんさな
思い浮かべた日常が少し懐かしくなった――なんてな

初詣は萬屋にいる奴らの健康や安全を祈り
御籤も引てから結果は後にと茶屋に足運ぶ
1人静かな初詣
たまにゃこんな年始もありだろうよ

茶屋で七草粥をいただく
一口食べれは――ああ、優しく温まる味わいだ
折角だからトッピングの大和牛の時雨も一緒に頬張れば
また食べ応えもあるもんで
「美味ぇな」

…と
そーいや、御籤まだ見てなかったな
今年の運勢はこれいかに
良くも悪くも、多分結果にはからりと笑ってみせようか

七草粥をぺろりと残さず平らげて
さ、次なる場所へと赴こうか


秡木・紲
【星絆】
懐かしくて落ち着く味の七草粥だ
そういえば知ってる?
七草粥を食べて無病息災を願うんだって

レックスさん、初めての七草粥はどう?
味を変えたりも出来るらしいよ
試しに橘胡椒を添えて
あ、爽やかな香りがしない?

わたしが大人なら
南都諸白も楽しめたんだけど
……来年まで待ってくれるの?
じゃあ、約束ね

初詣、出来て良かったなあ
あ、やっぱり違うんだ?
今度レックスさんの国の挨拶も教えてね

そうだ、レックスさんは何を願ったの?
わたしは皆で楽しい一年を過ごせますように、って
じゃあ、願いは一緒だね
礼儀正しいレックスさんの願いだ
きっと叶うよ

運試しに鹿みくじも開けてみよう
じゃあ、せーの

※鹿みくじ結果お任せ
どんな結果でも前向き


レックス・ウェリタス
【星絆】

あたたかな七草粥を頂きながら
これが紲の好きな味なんだと緋を和らげ
無病息災を願うの解るなあ、味が優しいもんね
美味しいよ、とても
…あれ、なになに味変えたり出来るの?

南都諸白は来年のお前さんと一緒に
約束ねってほうじ茶を飲みながら約束ひとつ

思い出すのは初詣、はじめての文化
神様への挨拶
国が違うと作法が全然違うのも面白いね
寒かったけど身も心も引き締まる感じ
僕も楽しい一年を過ごせますようにと願ったよ
それから挨拶もしてみたんだ
礼儀と聞いたからね

あ、そうだ、鹿みくじ
面白い引き方だったよねアレ
ふふ、そういえば開封が未だだった
せーので開けてみる?
結果は――

※鹿みくじ結果お任せ、どんな内容もプラスで取る性格


咲樂・祇伐
🌸樂祇

わぁ!
熱々の七草粥にあがるのは歓声とお腹の音
顔を赤くして弁明しようとすれば紡がれるのは
春の七草の花言葉…?

何だかロマンチック
そう考えると尚更、食べるのが楽しみになっちゃう
春の祝ごと想いを頂けるようで

一口食べれば昆布出汁と白味噌の優しいお味が染み渡る
んー!美味しいです!時雨煮も添えてみるのも美味しくていくらでも食べられそうです!
お兄様も…え?…あーんは少し
恥かしい…けど

あなたがそんなふうに咲うから
…あーん
何故だか甘いのは気のせいかしら
お兄様…御籤が凶だったのそんなに気にして?
験担ぎですと、照れ隠し
兄の口に七草の祝を贈る

そんな事言うなんて
狡い
私もよ
倖に染った心を
世界中に分けてあげたいくらい


咲樂・神樂
⚰️樂祇

新春に春の七草を食べる……いい風習ね
熱々の七草粥と
妹のかぁいいお腹の音に笑みが溢れる

仏の座は輝く心
薺は私の全てを捧げます
はこべらは追憶
ゴギョウは無償の愛
芹は清廉で高潔
清白は潔白
すずなは慈愛

七つの願いごと祝を頂く身体にも優しいお粥
とっても美味しいわ
はい、祇伐…あーん!
照れちゃってかぁいい
じゃあたしにも頂戴
それだけで大吉なんだから!
…別に凶だったの気にしてる訳じゃないけど
本当よ?!

ひととせがまた巡る
隣で愛しい君が咲う
朱の社にあっていっとうに美しい私の唯一
一度は潰えた生命なのに
また
君の隣で咲っていられる
其れがどれ程に幸せな事か
君は、しっているだろうか

私はね
祇伐と共に居る今が一番…生を感じるよ


捌碁・秋果
ああ、七草粥と牛の時雨煮がとってもおいしい。

春日大社は麗らかでいて少し不思議な空気。神様のすむところって感じだった。

お願い事はいつもと同じ。
「世界中の美術館と絵画をひとつでも多く取り戻したい」
今年もどうか最終人類史に絵画を。

それとクリスマスからお正月まで美味しいものをたくさん食べ…すぎたから、
「余計なお肉はなるべくちょっとしかつけないでください」
だいぶ控えめなお願いにしたし、神様もきいてくれるでしょう。

帰りがけ。
通りかかったお茶屋。
クレメンティアちゃんの説明がよぎって…。

七草粥、おいしいなあ。
…神様にお願いもしたし。これは太らない。絶対。
あ、すみませんお代わりください。
今度は大和橘胡椒つきで!


花柳・細
紬(g01055)と

薄桃着物に空色道行羽織り
桃花帯飾りを揺らし鳴らし
初詣終えたご機嫌な爪先は
イー笑みの友が手招く先へ
白味噌の雑煮は馴染みあるけど
白味噌七草は初めてで楽しみ!

届くお粥のイー香りっ
甘いお味噌の風味がほっこりするー
味変もどれもうま〜
私アレ、大和橘胡椒が特に好きっ
ンー箸が止まんな……清酒歓迎〜っ!
乾杯しましょ、祈りましょっ!

そーそ、御神籤!
ね、鹿が咥えてんのも可愛いわ
一刀彫の温かみも
オッケ!せーので見ましょっ

私、中吉ー!紬、大吉?いーなー
――え、なんで?
あっは!何言ってんの
神の使いが伝える大吉よ
使い切るにはまーだまだ
あなたの一年
きっともっと彩られるわ

その幸運にあやからせてよ
なーんてね!


織乃・紬
花柳ちゃん(g07664)と

真赤和装に羽織揺らせば
戻る参道、茶屋に手招き
浮かぶ表情は満面笑み

初詣はバッチリ終えて
お待ち兼ねの七草粥だな
俺は白味噌も縁遠くあれど
絶対に美味エのは解るわ!

先ずはそのまま、から
とりどりと欲張りな味変
気になる御味はどお?
優しい風味がイイよな、うッま!
だけど奈良漬は酒欲しくなるね
清酒の乾杯で無病息災祈ろッか!

口実で味わい、微酔い
思い出すよに神籤出せば
ンふふ、鹿みくじッてカワイイ
ココで結果見ちまおうぜ?

せえので明かすは大吉
幸先良し!でもないかア
良い女に旨い粥
新年を飾るにゃ幸せ過ぎて
この幸運は今で尽きたろう
――本当に?そりゃイイね

そンじゃ、引ッ張ッたげる
中吉から大吉まで、君を


アンゼリカ・レンブラント
【博物館】
初詣。
シルに応え行こうといってミアの手を引く
緊張することは抑え
安心するような笑顔を向け

彼女と視線が合うと
自分でも分からないけど
体の熱さを感じ前を向き直して歩く

目を閉じて手を合わせ神様に報告と感謝を
記憶が戻り、大切なものは隣りに
そして願い事は…自分の手で叶える「アンゼリカ」なら言わない
でも今だけは陽菜として

新宿島での生活
復讐者の戦いは
ミアには苦しいこともあるでしょう
それを知りつつ元の歴史から連れ出したは私の我儘

彼女のこれから得る苦しみと悲しみを
どうか私にも与えてください
2人なら乗り越えられます
シルとなら、みんなとならさらに安心して乗り越えられます
1人だけで得ることのないように――どうか


ユーフェミア・フロンティア
【博物館】でお参りしますっ。
ディアボロスになって、初めての新年のお参りだねっ。
アンゼリカに手を引いてもらって、一緒に歩いていくよ。
引かれた時に、視線が合ったら微笑むように笑みを浮かべるよ
私はここにいるよ。

神様に祈りをささげるのは、感謝の言葉と誓いを。
皆さんに助けていただいて、こうして大切なアンゼリカと一緒の時を過ごすことができるようになりました。
これからは、一人の復讐者として、悲劇を起こさせないように頑張っていきます。

お祈りが終われば、二人に振り向いてこういいます。
アンゼリカたちに助けてもらわなかったら、こんなことをすることもできなかったんだね。
ここから先は、私が、私達が助ける番だよねっ!


シル・ウィンディア
ユーフェミアさん→ミアさんと呼んでいます

【博物館】でお参りだよ。
新しい年に変わって心機一転だね。
この静かな空気、気持ちが引き締まるよね。
それじゃ、お参りしていこうか?アンゼリカさん、ミアさん。

アンゼリカさんがミアさんの手を引く様子を見て
素敵な関係だなーって見ておくよ

神様にお願いするのは…。
奇跡を起こした二人の道が幸せでありますように…
自分たちでつかんだ、この奇跡の時間がずっと続きますように…
それが、相棒であるわたしの一つの願いだよ…。

お祈りが終わったら、目をあけて二人を見るよ
ふふ、何を願ったのかは、聞くのは野暮だよね。
二人とも、すごく晴れ晴れした顔しているから。
改めて今年もよろしくね、二人とも


野本・裕樹
※アドリブ・連携歓迎

泣きそうになるほどなのですか…!?
案内人さんの反応で逆に興味が湧いてきました。
春日大社にはまだお詣りした事がありませんし、是非参拝させていただきましょう。

御祭神は春日神…建御雷神もその内の一柱でしたね。
軍神であり剣神でもある神様です、私も刀を使いますしここは武運長久を願わせてもらいましょう。

もちろん七草粥もいただきます。
優しい味わいで美味しいですね、健康にも良さそう…おせち料理を沢山食べた胃には特に。
ご飯が美味し過ぎるのも考え物です、つい食べ過ぎてしまいます。
そうだ、鹿みくじも引いてました。
神様の使いである白鹿はどのような結果をもたらしてくれるでしょう?(結果お任せです)


永辿・ヤコウ
ラヴィデさん(g00694)

食めば
ふわりと漂う大地の香り
温かに沁み入る七草粥

飲めば
凛と冷えた清浄な雪に洗われるかのように
澄み渡る南都諸白

君がため春の野に出でて若菜つむ――
そんな歌の情景を体感する心地

手指と頬が染まるのは
初詣の清しい空気や水に悴んだのと
茶屋でほっと一息ついた温もりの所為

両手で椀を包んで指先を温めるのも
冬の、初春の、醍醐味という気がして
尚更に愛おしい

何だか安心する味わいですね
…あっ、でもこのトッピング達どれも魅力的…
粥の印象を変えてくるから匙を休める間がない――、

優雅に朝餉を頂くつもりが
あっという間に完食して
ふたり笑み咲く

先刻神社で引いた木彫りの鹿みくじ
せーので見せ合う時間も楽しい


ラヴィデ・ローズ
ヤコウくん(g04118)と

不思議なもので
寒ければ寒いほど神聖に感じるというか
ピリリと引き締まるかの厳粛な参拝、からの
ほっとあたたかな朝ごはんの落差がたまらない

七草……
ふふ
この前の百人一首で歌われてた葉っぱだったり?
今と昔の繋がりを感じて、なんだか胸にくる
体に良さそう!
という第一印象を裏切らない味わい
その昔道端の野草を食べることもあったけど
長い歴史で受け継がれてきた一品はやっぱり洗練されてるな

え、ヤコウくんどれから試す? オレ漬物~
トッピングもわくわく試して
食の楽しさを引き立ててくれるような、南都諸白をもう一口

ごちそうさまでした
手を合わせて感謝した後は
鹿みくじを見せ合う、お楽しみがまだまだ続く


ノスリ・アスターゼイン
清冽な水の冷たさも
凛と背筋を伸ばしてくれる神聖な空気も
呼気が雪めく白に染まる様も心地良く
冷え切った身に室内の温もりが有難く沁み入る

おはよう、ただいま

茶屋への挨拶は茶目っ気に満ちたもの
奈良や京都に訪れる度に
つい「ただいま」と言いたくなる

『まほろば』故にと自然に脳裏に浮かべば
故郷を忘れた己にとって
懐かしく迎えてくれるような場所が在ることが
嬉しく温かい

大地の恵みたる七草粥を食み
清らかな南都諸白を気の向くまま傾ける

時雨煮も大和橘胡椒も奈良漬も
甘く優しい七草粥を
肴に変化させる魔法みたいで
清酒をきりりと際立たせるから

おかわり

なんて
衒い無い素直さで差し出す粥椀

『我が家』に帰って来たみたいだと
和んでくれるかな


シャルロット・アミ
椿野さん(g02761)とご一緒に

春日大社厳かでしたね
朱色が鮮やかでとても綺麗でした

春日大社に詣でてから七草粥を
初めてのお味に勿論ドキドキ
一口食べればその味わいの深さにほっこりとして

椿野さんに美味しいお酒を味わってほしくて
ほうじ茶を飲みながら
お酒に強いという椿野さんを眺めてさらに幸せに
私もあと少しでご一緒できますね

それで、なんで七草粥って言うんですか?
(蘊蓄を期待する目)
蘊蓄を話す椿野さんはいつだっていきいきしていて
私は聞くのも見ているのも大好きなの

御神籤が鹿だったのにびっくりしました
私は白鹿みくじ
この白鹿さんも飾っておけるのは嬉しいわ

最後にこれからの武運を祈って
頭を撫でてくださると嬉しいな


椿野・燕
アミさん(g00467)とご一緒に

春日大社は良い神社でしたね
赤い見た目が煌びやかで美しい
それとシンボルは藤の花だそうで

アミさんに勧められるがまま清酒を頂きます
おぉ、これは美味しい
酔いすぎないようにしなければと気を付けながら飲み進めて
アミさんは今年は二十歳の誕生日ですからもうすぐ一緒に飲めますね、楽しみです

さてそれでは七草粥ですがと葉を一枚一枚箸でつまみ上げて説明を
春の七草と呼ばれる草を使っていて正月の豪勢な食事に疲れた胃を休めると言われています

御神籤は色々売ってましたね
鹿の御神籤はお土産になる良い御神籤です

では祈りを込めて頭を撫でます、この鹿の御神籤の
冗談です、とアミさんの頭を撫でて


竜城・陸
大社を詣でた時の事を思い返せば
清冽な空気に身が引き締まる思いで
水も、風も、そこにあるものすべてが
新しい年の自分を言祝いでくれていたような
不思議な感覚だった

参拝の後で、庭園を眺めながら茶屋で七草粥を楽しむよ
優しい味わいにはほっとした心地を覚えながら
時雨煮や大和橘胡椒で
少しずつ違う味を楽しんでみたり

穏やかな空気に浸りながら、ふと
同じ奈良の地で見た美しい光の海、誰かの心の故郷を思い出す
彼の地も、今日訪れた社も、こうして過ごせる時間も
取り戻せたのは弛まず皆と戦い続けてきた結実だと思えば
なんだか誇らしい気持ち

……こんな風に、いつかきっと
誰もの大切な場所を、穏やかな時間を
取り戻せるように頑張って行きたいな


八千草・実
春日大社はお久しゅうやね
ここも戻ってきたんやねぇ……今度の藤の花が楽しみやわ

お詣りはしっかりな
新年のご挨拶と、馴染みの地が戻ってきた御礼と
早う大地が戻りますように――て

お茶屋さんからお庭を眺め、初詣を思うて七草粥を堪能しますわ
お正月のご馳走はもちろん好きやけど
これ食べな、新年が始まらへん気ぃします
お米の粒に蕩ける出汁の味わい、新鮮な菜っ葉の青い味、解れる菘に蘿蔔
身体に優しゅうて、心も透き通ります
うちはこの白味噌のお味、好きやねぇ

せっかくやし、トッピングも楽しみましょ
奈良漬は楽しみ…歯応えがええんですわ
大和橘の胡椒も好みやねぇ
時雨煮もつけたら、えらいご馳走やなぁ
…お代わりある?

※アドリブ連携歓迎


●旺光韶景
 凛と澄みきった大気が、清らな光に染まった。
 古都の街と春日の神奈備の境を示す一之鳥居を潜れば、真冬にあってなお深い緑を湛えた樹々に抱かれた参道を冴ゆる風が吹き抜ける。冷たく清冽で、それでいて大いなる存在が神域に迎え入れてくれるのだと感じさせてくれる曙風に誘われるようユーフェミア・フロンティア(光彩聖姫・g09068)が緑豊かな参道の彼方を見霽かせば、樹々の合間から射す朝の光が大気も曙風も清らな輝きに染めていく様が樺色の瞳に映った。
 遥か光の先で、遠く高く、長い余韻を連れて響いた鹿の声。
 遠いその鳴き声が誰かを呼び求めているように聴こえたと思えば、同じ想いが胸に萌したらしいアンゼリカ・レンブラント(光彩誓騎・g02672)にそっと手を握られて、
「ふふっ。遠くにもいるみたいだけど、ここにもいるね、鹿さん達!」
「あっ! ここにも、あそこにも……! みんな可愛いねっ!!」
「ほんとだ、まだ眠そうな子もいる! 朝早いから起きたばかりかな、ひなたぼっこにも見えるけど」
 二人の様子に微笑ましげに目許を緩めたシル・ウィンディア(虹霓の砂時計を携えし精霊術師・g01415)が笑みを零せば、参道を抱く樹々の合間から顔を覗かせる鹿達の姿。早朝の陽だまりのなかで寄り添い合うよう座って双眸を細める二頭の姿に気づけば、私はここにいるよ、と眼差しと温もりで伝える心地でユーフェミアは、大切に触れてくれるアンゼリカの手を握り返して微笑みかけた。
 天の光映す己の瞳がユーフェミアの暖かなそれをまっすぐに映したなら、アンゼリカは己が身体の裡から熱が花開く心地を覚えたけれど、今はその理由を追うことなく、私もここにいるよ、と彼女を安心させるよう手を握り直し、改めて前を向く。
 深い緑と朝の光が厳かな神域を彩る参道を歩み、二之鳥居を潜った先の手水所を護るような伏鹿の像に三人で歓声咲かせ、清らな水で手と口を浄めれば、再び相棒とその大切なひとが手を繋ぎ合う様にシルの笑みは深まっていくばかり。
 だって、相棒たるアンゼリカと、その大切なひとであるユーフェミアがこの最終人類史で手を取り合えていること。それが彼女達と自分達で掴み獲った希望の未来、輝く約束と眩い歓喜を取り戻した――奇跡の結晶だと、識っているから。
 基準時間軸よりも過去のTOKYOエゼキエル戦争へ向かうパラドクストレインで時空を超えて、
 過去の時空ひとつを統べるクロノス級アークデーモンを、生まれる前からユーフェミアに寄生し、嘗て一度はアンゼリカが敗れた悪魔を滅ぼして、皆で全ての悲劇を覆して救い出したユーフェミアが、ディアボロスに覚醒して今ここにいる。時空を超えて再び二人が同じ時間を歩んでいけることが、シルにとっても我が事のように嬉しいから、
「さあ、確りお詣りしてこようね、アンゼリカさん、ミアさんっ!」
「うん、シルの言うとおり神様に確り報告と感謝をしてこなきゃ! いこう、ミア!!」
「私はディアボロスになって初めてのお詣りだから、確り挨拶しなきゃだよね。初めてが二人と一緒でとっても嬉しい!」
 満開に笑みを咲かせて二人を誘うのは朝の空に鮮やかな朱が映える春日大社の南門。威風堂々たる楼門を潜れば幣殿の奥にあるもうひとつの楼門の美しさにユーフェミアもアンゼリカも息を呑んだ。幣殿から参拝することもできるけれど、始まりの挨拶をもう少し神様の近くでしたくて、ディアボロス達を歓迎するべく早朝から開かれていた特別参拝の入口を通れば、
 神域を吹き渡る風が、ひときわ凛と透きとおった。
「――……自然と背筋が伸びちゃう、ね」
「だね。呼吸するたびに胸の奥まで透きとおっていく気がする」
 聖女エウフェミアに由来する名を持ち、奇蹟使いとして覚醒したユーフェミアにはその気配がいっそう際やかに感じられているのだろう。然れど彼女が緊張しているわけではないとアンゼリカには解るから、自然体のまま深呼吸してみれば、胸裡が何処までも澄み渡っていく。
「気持ちが引き締まるよね……新しい年に変わって心機一転、二人の最初の一歩にはぴったりかもっ!」
 一段と清浄な大気を胸に満たしてシルが囁きかければ、三人の間に優しい笑みが弾けて咲いた。
 華麗な御廊を翼のごとく広げた唐破風の楼門、中門から望む御本殿は、神様の息遣いさえ感じられそうに思える至近距離。眼を閉じて意識を澄み渡らせ、ユーフェミアが捧げる祈りは、感謝と祈りの言葉。
 ――皆さんに助けていただいて、こうして大切なアンゼリカと一緒の時を過ごすことができるようになりました。
 ――これからは、ディアボロスのひとりとして、悲劇を起こさせないように頑張っていきます。
 大切な彼女の気配をすぐ隣に感じながら、アンゼリカも眼を閉じて手を合わせ、胸の裡で神様に感謝と報告を。
 真白になっていた過去の記憶は今や鮮やかな色彩を取り戻して、輝く約束を結んだ大切な相手とも同じ時を歩んでいける。本来ならその感謝と報告を告げればアンゼリカの胸は満たされていたはずだったけれど、今このときばかりは、もうひとつを望む。
 願い事は自分の手で叶えるのが、アンゼリカ・レンブラント。
 然れど今だけは、幼い日からユーフェミアと一緒にすごしてきた陸堂陽菜として、神様に、願いを。
 故郷たる時空を離れた新宿島での生活も、これから身を投じることになるディアボロスとしての戦いも、ユーフェミアには戸惑いのみならず苦しみを齎すこともあるだろう。嘗て一度は悪魔に敗れて新宿島に流れ着いたアンゼリカこそ肌身でそれを識っているのに、解っていてなお彼女を元の歴史から連れ出したのは、
 私の、我儘だから。
 ――ミアがこれから得る苦しみと悲しみを、どうか私にも与えてください。
 ――二人なら乗り越えられます。二人では難しくても、相棒のシルや、皆と一緒なら、きっと、必ず。
 だからどうか、ミアがひとりで苦しんだり、悲しんだりすることがいように。
 真摯に祈り、真摯に願う二人の傍で、シルもまっすぐな心で神様と向き合った。
 新宿島に流れ着いてからずっと、アンゼリカの相棒として翔け続けてきた己が今日この日に神様へ願うのは、
 ――奇跡を起こした二人の道が幸せでありますように……。
 ――自分達で掴んだ、この奇跡の時間がずっと続きますように……。
 相棒と、その大切なひとの、永き幸い。
 閉じていた目蓋を開けば青空の瞳が映すのは、幸いを願った二人の姿。
「ふふ、二人が何を願ったのかは、聞くのは野暮だよね」
「うん。シルにはきっとお見通しかなって」
「間違いなくお見通し! って気がする!」
 優しく見守るようなシルの微笑みと言の葉にアンゼリカはユーフェミアとはにかむよう笑み交わし、改めてユーフェミアは大切なひととその相棒に向き合った。彼女達やその仲間達に助けてもらわなければ、二度と叶わなかっただろう初詣。奇跡を掴んで今ここに自分はいるから、
「ここから先は、私が、私達が、誰かを助ける番だよねっ!」
 一片の曇りもない笑顔を咲かせて両手を差し伸べれば、
「まだまだ終わりじゃないもんね、一緒に頑張っていこっか! 改めて今年もよろしくね、二人とも!!」
「勿論、立ち止まるつもりはないよ! だから今年も、その先も!!」
 溌剌たる笑みで応えてシルが差し伸べるのも両方の手、晴れやかな笑みを咲かせてアンゼリカも両手を伸べ、三人で一緒に揃って手を取り合ったなら、いっそう明るい笑みを弾けるように咲かせて、
 ――めいっぱい、よろしくね!!
 二十年に一度、式年造替で甦る春日の社。
 最終人類史では直近の式年造替からはまだ十年足らず、中門から望んだ本殿の朱塗りの深く鮮やかな色合いを思い返して、八千草・実(温室の管理者・g05182)は万感胸に迫る想いで陶然たる吐息を零す。
 お久しゅう、と神前で紡いだ時には、それだけで柔い熱が込み上げてくる心地になった。
 新年の御挨拶と懐かしい地の奪還が叶った御礼と、
 早う大地が戻りますように――と願いをかけた春日詣の帰り道、お茶屋めざして辿る参道で想い馳せて語るのは、神奈備が新緑と花々で彩られる季節の話。
「今度の藤の花が楽しみやわぁ。有名なんは砂ずりの藤やけど、浮雲峰遥拝所んとこの山藤も神さびて麗しゅうてなぁ……」
「武甕槌命が白鹿に乗って降りて来られた浮雲峰に参拝できる、あそこですよね。美しい光景が目に浮かぶようです……!」
 ――時先案内人さんが泣きそうになるほどだなんて……!!
 新宿駅グランドターミナルで眼にした案内人の様子で俄然興味が湧き、平安鬼妖地獄変に生きていた往時には叶わなかった春日詣に訪れた野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)が、奈良に馴染み深い実と偶々行き合えたのは実に幸運だった。
 愛しく懐かしむ声音で実が春日大社を語ってくれるから、初めての春日詣を終えたばかりの裕樹にもこの神の社がひときわ慕わしく思えてくる。春日神と称される四神の一柱、軍神にして剣神たる武甕槌命はディアボロスとしても刀匠としても日々研鑽に励む身としては是非とも詣でたい神であったから、
 本殿よりもなおいっそう武甕槌命の息吹を感じられた遥拝所のあたりが藤花で彩られる様を想えばことさらに胸が弾んだ。
 自然な流れのままに茶屋で相席したのは、荘厳な欅の一枚板で造られた卓。
 松の緑と椿の花が美しく、柔らかに苔生す地に降りた霜が朝の光に煌く様が心に染み入るような庭園を眺めているうちに、あたたかな湯気を柔らかにくゆらせる七草粥が二人のもとへ運ばれてくる。
 優しさに満ちていた。その彩りも、味わいも。
 黒塗りの盆、黒釉の器に映える柔らかな鳥の子色の粥を、緑鮮やかな七草達が彩って、漆塗りの匙で優しい彩も熱も掬って口に含めば、何よりもまず愛おしいぬくもりと滋味が裕樹の裡へ染み渡っていく。昆布出汁の旨味と白味噌の風味と、粥そのもののほのかな甘味が美味となって花開くのは、滋味に続いてのこと。
 ふうわり咲いた、芹の香気。
 春日大社で武運長久を願い、今この茶屋で無病息災を願って味わう七草粥は、
「優しい味わいで美味しいですね。健康にも良さそう……おせち料理を沢山食べた胃には特に」
「ああ、平安の頃にはまだ『七草粥』やなかったいう話やねぇ。うちはこれ食べな、新年が始まらへん気ぃします」
 お正月のご馳走も勿論好きなんやけどね、と実の桔梗の眼差しが緩めば、おせちも七草粥も美味しすぎると食べすぎるから考えものですよね、と裕樹の萌黄の眼差しも緩んで、新春の柔風を擽るような笑みを零し合う。
 粥の米に柔く蕩けて染み入る昆布出汁の旨味、白味噌の風味と甘味。新鮮な青菜の清しい香気に、早春の風を身体の内へと招くように微かな苦味。菘(すずな)や蘿蔔(すずしろ)がやんわりほぐれていく様も優しくて、実の心まで透きとおらせてくれるよう。
 深い琥珀色艶めく奈良漬と合わせて食めば白瓜が歯応えよくぱきりと弾け、酒粕と熟成された香気が七草粥の滋味とともに鮮やかに立ち、大和橘胡椒と合わせて食めば、思わず眼を瞠るほどの橘の香気と、七草粥の滋味も旨味もいっそう際立たせる青唐辛子の辛味が心地好い。
 向いの実の眦も頬もいっそう緩む様に味変も美味しそうですね、と笑みを深め、そうだ、と思い出したように裕樹が懐から取り出したのは、可愛らしい陶器の白鹿。神様の使いが口に咥えたおみくじをそうっと引き抜き、開いてみたなら、神紋たる下り藤のもとに末吉の文字が踊る。
 願望――焦るべからず、精進が吉。
「ふふ、末吉の末は末広がりの末やていいますし、幸先ええ感じやね」
「ああ、言われてみればそうですね。今年もますます頑張っていけそうです」
 知らず花唇から零れたおみくじの結果が聴こえたらしい実が柔らかな声音でそう言ってくれるから、裕樹の胸の裡には光が射す心地。嬉しそうな少女の様子に笑み深め、実は瞳と同じ桔梗に染まる袖に彩られた手をそっと挙げた。
 ――次は時雨煮と一緒に、お代わりを。
 優しく柔らかな鳥の子色の粥に、時雨煮の醤油の彩と香りがじんわり滲み出す様にひときわ心が躍る。
 漆塗りの匙で合わせて掬って、はむりと含めば捌碁・秋果(見果てぬ秋・g06403)の口中で、醤油と味醂に生姜を利かせた甘辛い美味が花開いた。昆布出汁と白味噌が優しい味わい醸す粥に大和牛の旨味が滲む様も、微かに跳ねた清しい苦味は芹か御形か仏の座かと想いめぐらすのも楽しくて、
「ああ、とっても美味しい……!」
 心からの笑みを咲き綻ばせば、素直に零れる感嘆の声。
 鮮やかな七草の緑に先程詣でた春日大社を想えば、いっそう笑みが深まった。
 赤と緑の取り合わせを最も美しく感じるのはクリスマスだろうけれど、
 朱と緑の取り合わせを最も美しく感じるのは神の社に詣でた時だろう。
 春日大社の朱と緑の美しさはこの国に数多ある神社の中でも屈指のもの、明るい丹塗りの朱と連子窓の緑のコントラストは華麗な楼門でも回廊でも堪能できたし、だからこそ中門から望んだ御本殿の本朱塗りの深く鮮やかな色合いがひときわ秋果の心にあでやかに灼きついた。
 数多の神社を彩る明るい朱は鉛を含む丹塗りの朱なれど、春日大社の御本殿は純粋な水銀朱のみを使った本朱塗り。滅多にお目に掛かれぬ色彩を間近に望めば、もっと様々な色彩に、もっと様々な絵画に出逢いたいとの常からの望みがいっそう強く胸に萌したから、神の御前で願ったのは、
 ――世界中の美術館と絵画をひとつでも多く取り戻したい。
 今年もどうか、最終人類史に絵画を。
 いまだ涯てなき願いの道程、けれど必ずその踏破をと誓う心地で願ったけれど、目標への道程を脇目も振らずに邁進……とまでいかなかったのは御愛嬌。だってクリスマスからお正月にかけて美味しいものを沢山食べた、食べすぎちゃったから、
 ――余計なお肉はなるべくちょっとしかつけないでください。
 なんてお願いを付け足してしまったのは秋果だけの秘密だ。
 帰りがけにふと時先案内人のおすすめを思い出し、今もこうして新年ならではの美味を堪能してしまっているわけだけど。私は神様を信じる、お願いしたからこれは余計なお肉になったりしない、絶対、と春日の神々に全幅の信頼を寄せて秋果は、お代わりください、と朗らかな声を響かせた。
 ――今度は、大和橘胡椒つきで!!
 最も一般的な七草粥はやはり塩仕立てだろう。
 それに加えて、自身が元々赤味噌文化圏に育った空木・朱士(Lost heart・g03720)にとっては、白味噌仕立ての七草粥はひときわ新鮮に感じられるもの。いただきますと手を合わせ、初めての美味を匙で掬って口に運べば、
「……あ、うま」
 凛と冴えた早朝の神域の大気に馴染んだ身にじんわり染み渡っていく柔い熱と優しい滋味、そしてやんわり花開いた美味に朱士の顔にも柔らかな笑みが綻んでいく。昆布出汁に白味噌、白米の粥に、春の七草。余分なものは加えずに、豊かな自然の恵みのみで仕立てられた滋味には胸に愛おしい二つの面影をよぎらせずにはいられないけれど、
 募る寂しさを、いつか食べさせてやるんだと強気な笑みに変えられるほどには、今の己の心は前を向けている。
 ほんのり淡く優しい粥の甘味に柔らかに蕩ける白味噌の甘味、そこに大和牛の時雨煮の濃厚な甘辛さを重ねれば、七草粥の滋味もいっそう力強く息づくよう。しゃきりと鳴った芹の清しさに、お、と軽く瞬けば、明るい朱が輝くような春日大社の回廊を吹き渡った風が、今再び己の裡を吹き抜けた心地がした。
 幣殿から望むよりもやはり、中門から御本殿を間近に望んでの参拝がきりりと心を引き締めてくれた。
 全てを取り戻すために、今年も前へ進んでいく。
 復路の参道で出逢った優しい眼差しの神鹿、参道から見霽かした芝生の原、飛火野で霜の感触を楽しむように跳ねる仔鹿。鹿の子模様って夏毛だけなんだな、と冬の装いの鹿達の姿を思い起こせば朱士の手が伸びるのは、鮮やかな鹿の子模様が確り描かれた木彫りの鹿。
 意外にぎちぎちにおみくじを咥える鹿の力強さに笑って引き抜いて、籤を開いてみれば、下り藤のもとには中吉の文字。
 旅立――行く先に争ひ在り、幸ひも在り。
 確かにそうだろうなぁ、と相好を崩して。
 遥か時空の彼方を、見霽かす。
 森閑たる静けさは、厳粛な心持ちを胸に呼び込んでくれた。
 深い緑と朝の陽が清らな光陰を織り成す参道、その両端に数多の石灯籠が並ぶあたりへ差し掛かれば、深い緑と朝の光と、涯てなく続く石灯籠の路の先の、異世界へ呑み込まれていくかのよう。日常の世界と確かに切り離されたのだと思えば、凛と冴える早朝の寒さによりいっそうの神性を感じて、ラヴィデ・ローズ(la-tta-ta・g00694)は朝風も静謐も透徹なまでに澄みきった春日大社に身も心も引き締まる想いで詣でたけれど。
 暖かなぬくもりに満ちた茶屋の一席に腰を落ち着けて、ほっこりと優しい七草粥の滋味とあたたかさに身も心もゆるゆると緩んでいく心地好さも、先程の厳粛さと同じくらい好ましい。
「いいよね。ぴんと背筋を正して、ほっと緩んでの、この落差がたまらない……」
「めりはりがあると、いっそう人生が豊かになる気がしますよね」
 彼にとっては間違いなく新鮮だろう七草粥の滋味にも美味にも銀の眼差しが緩む様に、永辿・ヤコウ(繕い屋・g04118)も己が宵紫の眼差しを緩めて微笑んだ。
 冬と春のあわいの陽射しを湛えたような粥に、鮮やかな若菜の緑が鏤められて。
 漆塗りの匙で掬って食めば、柔い昆布出汁と白味噌の香りの奥からふわりと花開く春野の香り。あたたかな滋味をこころにからだに染み渡らせて、美味と若菜の息吹を花開かせる七草粥に黒狐の尾が揺れて、
 艶やかな飴釉のぐい呑みに透きとおって揺れる清らな酒を飲めば、香りは淡く唇に冷たく触れる、雪解け水めく滴が口中で咲かせる澄みきった酒香。凛と冷えた清らな雪に洗われる心地がすれば、次いでまろやかな旨味とあえかな酸味を花開かせる南都諸白に黒狐の耳も揺れ、
 君がため春の野に出でて若菜摘む――。
 早春の野辺を彩る若菜の萌黄と、真白な雪の六花が舞い降る歌の情景に己が融け込む心地にもなれば、
「待ってそれ百人一首にあったよね? この七草ってその若菜だったり?」
「ええ、百人一首の十五番です。その若菜……だと素敵ですよね」
 妖狐が口遊んだ歌にふと瞬いた竜人の声。いっそう柔らかに笑んで応えたヤコウの胸には、わが衣手に雪は降りつつ――と更に雅な情景が燈り、それが察せられたから、ラヴィデは己が胸に甦った聖なる夜の熾烈な百人一首バトルの光景をひそりと胸の奥底に仕舞い込む。
 あの夜の嵐を越えた新年、穏やかな心地で味わう七草粥のなんと優しいことか。
 連綿と繋がる歴史を味わっているのだと思えば胸裡に広がる深い感慨、薺(なずな)や繁縷(はこべら)などは幻想竜域に生きていた頃に食んだ道端の野草とそう変わりないはずなのに、洗練されていると感じるのは、ラヴィデが風味ばかりでなく文化をも味わっているからなのだろう。
 真冬の、初春の早朝。神域の何処までも凛と清冽な大気と手水の冷たさをまだ覚えている両手で七草粥の椀を包み込めば、柔い熱がじんわりと伝わって来るのもこの時季ならではの醍醐味と思えば、ヤコウの胸裡に募るのは愛おしさ。
 もう一匙、そのままの味わいを堪能して、
「何だか安心する味わいですね……あっ、でもこのトッピング達どれも魅力的……」
「どれも香りからしてもう美味しそうだよね~。ヤコウくんどれから試す? オレ漬物~!」
 雪白に艶めく白磁の器を彩る時雨煮や奈良漬、大和橘胡椒に眼差しを向ければ、新たな味わいへの期待にラヴィデの竜尾も楽しげに弾む。生姜の利いた濃厚な甘辛さが滲みだす時雨煮も、熟成された酒香と香気がぱきりと弾ける奈良漬も、大和橘の高雅な香りも青唐辛子の辛味も爽やかな大和橘胡椒も、ひときわ七草粥と南都諸白の相性を高めてくれるから、
 ごちそうさま、と竜人が手を合わせ、妖狐もそれに倣ったのは程無くしてからのこと。
 然れど席を立つにはまだ早い。二人の食後のお楽しみは鹿みくじの見せ合いっこ、木彫りの鹿を向かい合わせに並べ、鹿が咥えたおみくじをせーので同時に引き抜き、潔く広げてみたなら、
「僕のは中吉! でした!!」
「これ凶!? もしかして凶なの!?」
 神に遣わされた鹿が告げた妖狐と竜人の吉凶は明暗くっきり。
 商売――売りには吉在り、買いには心せよ。
 ふふりと笑んだヤコウがふむふむと余裕の表情で中吉の籤の文面を辿る様にむむと唸りながら、ラヴィデも凶の籤の文面を辿る。まあ凶はおみくじを引いた瞬間の運勢、それならその先の運勢は上向き一択だと思えば悪くない。
 旅立――行く手に波乱絶えず。
 一読すれば口許に広がるのは愉しげな笑み。波乱万丈どんと来い、波乱も逆境も制して乗り越えてやるさと嘯いて、
「ま、あの夜の百人一首バトル以上の逆境なんてそう無いだろうしね~!」
「ラヴィデさん相当慄いてましたものね……確かにそう無いと思います、間違いなく」
 これ以上ないほど真剣な顔つきになったヤコウが頷いたなら、二人悪戯な眼差し交わし、弾けるように笑い合った。
 一体どんな百人一首だったんだろう……。
 聴こえてきた妖狐と竜人の会話が気になりすぎたが、竜城・陸(蒼海番長・g01002)は萌した興味を香ばしい焙じ茶と共に己が裡へと呑んだ。そのうち訊いてみる機会があるかもしれない。
 飴釉の湯呑みに揺れる深い琥珀色、温かな焙じ茶が凛と冴える冷気に馴染んだ身の芯にやんわりと熱を燈せば、清冽な水を弦のごとくぴんと張ったような神域の大気に感じた神なる息吹が対照的に思い起こされる心地がする。
 一之鳥居を潜ったときにも、伏鹿の手水所の水に触れたときにも感じたけれど、特別参拝の入口を通ったときに感じた風の変化が最も際やかだったことが、陸の心に強い印象を残した。凛と清冽に、透徹に透きとおって、それでいて己が歓迎されているのだと確かに感じさせてくれる、神奈備からの風。
 故郷たる幻想竜域とは異なる神門、華麗な楼の中門から御本殿に詣でれば、身も心も引き締まり、清冽な水も風も、そこに在るものすべてが新たな年を迎えた己を言祝いでくれた気がして、胸の裡にまっさらな光が射し込めた心地さえもした。
 新たな年のはじめに生まれたばかりの、無垢なる曙光のような、ひかり。
 冬と春のあわいの陽射しを湛えたような七草粥を口にするのもまた、己の裡へと光を取り込むかのごとき心地。あたたかな粥に昆布出汁と白味噌が息づかせる優しい滋味、七草の早春の息吹とともに花開く上品な美味、身体ばかりでなく心までをもあたたかに寛がせてくれる味わいに陸は口許を綻ばせ、
 大地の力強さを添えてくれるような甘辛い時雨煮、天風の清しさを添えてくれるような香り高い大和橘胡椒、ほんの半匙を落とすだけでも鮮やかに変化する七草粥をいっそう楽しみながら、柔く緩めた黎明の眼差しをふと庭園へ向けれは、
 松の緑や椿の花の美しさよりも、
 柔らかに苔生す地に降りた霜が朝の光に煌く様に、蒼海の竜の心も眼差しも惹きつけられた。
 朝を迎えて曙光に煌く海の波間を見るかのよう。
 誰かの色違いの宝石を思わすあの眼差しなら、庭園の石灯籠を灯台と見立てるだろうか――と思えば、秋のまほろばの夜に観た、美しい光の海が胸の裡に花開いた。焔の祭典が観せてくれた、光の海。
 銀に輝く細波を咲かせた牡丹花火が飛沫の先に煌かせた青き光露は海の雫を思わせて、若草山から翻った暁の薔薇色めいた彩を映す煙が海の雫を受けとめて、暁色の煙の源で眩い白に金に輝く焔は、夜の海の彼方で夜闇を薙ぐ暁光を思わせた。
 誰かの心の故郷を観せてくれた、空に咲く花火と山を焼く焔。
 あの若草山焼きの焔は春日大社の御神火で燈されたのだと思い起こせば、ああ、と深い感慨が柔い声音になって零れ落ち、愛おしさが胸に萌せば、自ずと笑みは深まっていくばかり。この古都のまほろばを、この神奈備の社を取り戻せたのは、皆と弛むことなく戦い続けてきた日々の結実なのだと思えば、誇らしささえも胸の裡に咲く。
「……こんな風に、いつかきっと」
 ――誰もの大切な場所を、穏やかな時間を、
 ――取り戻せるよう、心も力も尽くしていこう。

●瑞祥新春
 深く艶めく黒釉の器を、柔らかな陽のひかりで満たしたかのよう。
 何処までも柔らかで優しい鳥の子色の粥に鮮やかな七草の緑を鏤めて、あたたかにくゆる湯気が昆布出汁と白味噌の香りをふうわり立ち昇らせる。初春の優しさそのものの七草粥を卓に迎えればたちまち桜彩に柘榴咲く瞳が輝いて、
「わぁ! なんて美味しそうなんでしょう、お兄さ」
 お兄様と続くはずだった咲樂・祇伐(花祇ノ櫻禍・g00791)の歓声が、きゅるるる~と鳴ったおなかの音に飲み込まれた。途端に桜龍の娘は頬に薔薇色を燈し、だって思った以上に一之鳥居から二之鳥居までが遠くて、おまけに鹿さん達が参拝客にもらった鹿せんべいを美味しそうにもぐもぐしていて! と弁明しようとしたけれど、
「ええ、本当に美味しそう! 新春に春の七草を食べるなんて……素敵な風習ね」
 新年を迎えてますますかぁいい妹のかぁいいおなかの音に笑みを零しつつ、咲樂・神樂(離一匁・g03059)は祇伐の可愛いそれに被せて誤魔化してやるように、あるいはそれを独り占めするように明るい声音を咲かせてみせた。そのまま唄うように続けて紡ぐのは、春の七草の花言葉。
 仏の座は、輝く心。
 なずなは、私の全てを捧げます。
 はこべらは、追憶。
 御形は、無償の愛。
 芹は、清廉で高潔。
 清白は、潔白。
 すずなは、慈愛。
 花言葉という概念が生まれた時代と国を考えれば、春の七草すべてが心に優しさ燈すような花言葉を抱くようになったのはきっと偶然のことなのだろうけれど、だからこそ、優しい熱と優しい味わいごと、優しい想いまでもいただく心地。
「七つの願いごと祝をいただいて――……ふふ、とっても美味しいわ!」
「春の祝ごと想いをいただけるなんて……何だかロマンティックですね、お兄様」
 柔らかに蕩ける粥は米の一粒一粒が昆布出汁の旨味と白味噌の風味を含んでゆるりと崩れていく様が心地好く、優しい熱と滋味がこころとからだにじんわり染み渡っていく様が得も言われぬ至福。滋味に次いで美味が、七草の早春の息吹が咲く様も幸せで、添えてみた大和牛の時雨煮がほろりとほぐれて甘辛い味わいと牛の旨味が粥に融けだしていく様も堪らなくて、
「んー! 美味しいです!! 時雨煮を添えても絶品で、いくらでも食べられそうです……!!」
「あらあら祇伐ったら。いくらでも食べられそうなら、はい、あーん」
 頬を押さえた祇伐が笑み崩れれば、眼の前に差し出される兄の匙。
 途端に目許を薔薇色に染めて、恥じらいに妹の眼差しが揺れれば、照れちゃってかぁいい、と神樂がこの上なく幸せそうに咲うから、彼のその笑顔にはどうしても抗えない祇伐は素直に桜唇を開いた。含ませてもらった七草粥は、何故か自身の器のそれよりも、甘い、気がして。
 目許がいっそう甘い熱を帯びた気がしたけれど、
「あたしも祇伐からのあーんが欲しいわ! それだけで大吉なんだから!」
 兄が幸せそうにそう声を弾ませれば、途端に妹の眼差しが同情の彩を帯びた。
「お兄様……あの白鹿ちゃんが咥えていたおみくじが凶だったの、そんなに気にして……?」
「気にしてないわ! だって祇伐が陶器の白鹿を気に入ってくれたもの、だから凶なんて気にしてないの、本当よ!?」
 白鹿のお鼻の金彩がキレイってだけで即決するんじゃなくて、もっとじっくり選べば良かったとか、いっそ木彫りのほうの鹿みくじにすれば良かったとか神樂は思っていないのだ、本当に。たぶんきっと。
「白鹿ちゃんは私がもらいましたから……それじゃあこれは験担ぎです、お兄様。はい、あーん」
 験担ぎだなんて理由づけが照れ隠しだなんて、きっと神樂にはお見通しなのだろう。だって、七草の祝を、あなたに――と祇伐が差し出した匙を口に含めば、彼の逢魔が時の眼差しが、何処までも甘やかに蕩けていったから。
 ――ひととせがまた巡る。
 ――隣で愛しい君が咲う。
 明るい丹塗りの朱と深く鮮やかな本朱に彩られた春日大社、華やかな朱の彩咲く社にあってもいっとう美しく咲いた神樂の唯一の桜。一度は命潰えた身なれどもこうしてまた君の隣で咲っていられることがどれほどの幸福であるのか、
 君は、しっているだろうか。
「私はね、祇伐と共に居る今が一番……生を感じるよ」
「そんなこと言うなんて……狡い」
 和らげた逢魔が時の双眸の奥、不意に神樂が『本当の彼』を覗かせるようそう口にするから、桜彩に燈る柘榴が甘さと熱を増す心地で瞳を揺らし、けれど祇伐も彼を見返して秘めやかに笑みを咲き綻ばせた。
 ――私もよ。
 ――倖に染った心を、世界中に分けてあげたいくらい。
 華やかな朱と緑に彩られた御廊を双翼のごとく広げた楼門は、然して神社に思い入れのない逢魔・荊(Dusk・g05721)さえ知らず息を呑んだほどに壮麗で、数多の釣灯籠に彩られた回廊を歩んで、凛と透きとおった風を感じるほどに胸が澄んでいく心地がした。
 壮麗な中門から御本殿を望み、掛けた願いは荊自身ではなく仲間達のこと。
 厳かな静謐の裡で、己の萬屋につどう面々の健康と安全を真摯に祈願し終えたなら、
 偶にゃこんな年始もありだろうよ、と何処か悪戯な少年を思わすいつもの笑み浮かべ、足を向けた先の茶屋の一席へと腰を落ち着ければ、ふと覚えた懐かしさに紅蓮の眼差しが緩む。
 無病息災を願って食む七草粥。
 健康長寿も一緒に願って――と新たな年が七日を数えるたび食べさせられていた日常も今は遠く、然れど今だけその欠片に手が届いた気がして口許を綻ばせれば、あたたかな湯気をくゆらせた黒釉の椀が黒塗りの盆に乗せられ運ばれてきた。
 黒釉の椀に満ちるのは、優しく、柔らかな、冬と春のあわいの陽のひかり。
 淡い陽射しを蕩かしたような彩に緑鮮やかな七草が鏤められた粥を一匙食めば、昆布出汁の旨味と白味噌の風味か懐かしい滋味とぬくもりを身体の芯から指先まで染み渡らせてくれる心地。はふ、と熱燈る呼気をつけば滋味の後から花開く美味と芹の清しさがふわりと広がる様も何とも心地好く、
 これは是非試さなきゃなと上機嫌で粥と一緒に頬張ったのは大和牛の時雨煮、ほろりほぐれる牛肉の裡でしゃきりと生姜の千切りが唄い、濃厚な甘辛さと生姜の風味が優しい味わいの七草粥にじんわり滲みだしていく様は、
「……美味ぇな」
 その一言に尽きて、増した食べ応えにも覚える満足感。
 傍らでことりと音が鳴れば春日の社で鹿みくじを引いたことを思い起こし、卓の上で倒れた木彫りの鹿を起こしてやれば、今年の運勢を見せてくれよな、と軽く鹿の鼻先を撫でてその口から御神籤を引き抜いた。勢いよく巻物を開くよう広げれば、下り藤のもとに躍るのは末吉の二文字。
 軽く眼を瞠って、面白がるよう笑って。
 願望――困難なれど、助け手在ればいずれは叶ふ。
「これくらいが丁度いい、簡単に叶っちまうよりは余程楽しめそうだ」
 なんてな、と何より眼を惹いた文面を指先で小さく弾いたなら、七草粥を綺麗に平らげて。ふと紅蓮の眼差し向けた庭園で椿の花がほとりと落ちる様に不敵に笑んだ。あの椿のように落ちるのは、自分達でなく天魔武者の首に違いない。
 ――さあ、今度は時空を超えて、
 ――次なる場所へと赴こうか。
 春日の神奈備で、春と夏のあわいに咲く花を幻視した。
 だからだろうか。黒釉に冬と春のあわいの陽のひかりを満たしたような七草粥を、懐かしくて落ち着く味と感じたのは。
 雪白の塩粥を七草の緑が彩るものが最も一般的なれども、春日大社の参道近くの茶屋で饗される七草粥は昆布出汁と白味噌仕立ての滋味に満ちた逸品。あたたかな旨味が滋味となって秡木・紲(選日・g07946)の芯から指先まで染み渡れば、
「そう言えばさっき聴いたよね、七草粥を食べて無病息災を願うんだって」
「無病息災を願うの解るなあ、味が優しいもんね」
 この国の美味の根幹を成す旨味と滋味に感じ入りながらもレックス・ウェリタス(Memento mori・g07184)は、これが紲の好きな味なんだと緋の眼差しを和らげて、七草粥をもう一匙。美味より先に花開く滋味を確り感じ取れるほどには新宿島での暮らしにも慣れたけれど、
「レックスさん、初めての七草粥はどう? 味を変えたりも出来るらしいよ」
「美味しいよ、とても……って、あれ。なになに味変えたり出来るの?」
 新年の七草粥はこれが初体験。紲が軽く匙で掬ってみせた大和橘胡椒にも興味津々で瞳を輝かせた、が。
 初詣の帰りがけの七草粥、これならばまあ問題はないけれど、任務に関する時先案内人からの情報を聞きのがせば致命的な失態に繋がる可能性がある。味変の話も事前に聴いていたと思い起こしたなら小さく苦笑し、驚くほど清しい大和橘の香気にレックスは改めて気を引き締めた。
 この朝にまず身も心も引き締まったのは、凛と冴ゆる早朝の神域の風を感じたときのこと。
 己の識る神殿とは何もかもが異なる神の社は華やかな朱と緑と金に彩られ、それでいて透徹な清らさと静謐に満ちていた。初めて詣でる大社、初めて縁を得た神々への挨拶。
「神様が違うんだから当然かもしれないけど、国が違うと作法が全然違うのも面白いね」
「あ、やっぱり違うんだ? 今度レックスさんの国の挨拶も教えてね」
 礼儀と聴いたから挨拶もしてみたんだ、と先程の初詣を思い返しながら彼が語るから、紲も桃花色の眼差しを緩めて初詣へ想いを馳せた。春と夏のあわいに藤花を咲き溢れさせる、春日大社。お詣りできてよかったと心からの笑みを咲かせて、
「そうそう、何かお願いはした? わたしは皆で楽しい一年を過ごせますように、って」
「僕も、楽しい一年を過ごせますようにと願ったよ」
 訊けば神々の御前で掛けた願いはほとんど同じ。礼儀正しいレックスさんの願いだ、きっと叶うよといっそう笑みを深め、大和橘胡椒を乗せた七草粥を口に運べば、清々しい爽やかさが溢れるような大和橘の香気が咲き、柑橘の微かな苦味と渋味が青唐辛子のぴりっとした辛味とともに柔らかな七草粥の滋味にも美味にも奥深さを添える。
 澄んだ清酒と一緒に味わえれば更に美味しいのかなと思えば、二十歳まであと数ヶ月の紲は思わず、わたしが大人だったらなぁ、と零したけれど、
「それじゃあ僕も、南都諸白は来年のお前さんとの楽しみにとっておこうかな」
「……来年まで待ってくれるの? じゃあ、約束ね」
 今年はこれで、と一回り年上の連れが焙じ茶の湯呑みを掲げてくれる様に瞳を輝かせ、来年の予行演習とばかりに焙じ茶で乾杯した。あたたかで香ばしい茶は酩酊こそくれずとも、心に柔らかな晴れやかさをくれるもの。
 来年は白鹿みくじにチャレンジしてみようかなと弾む心のまま紲が指先でつつくのは先程引いてきた木彫りの鹿みくじ、
「引くって言うか『選ぶ』のが面白かったね、鹿みくじ。せーので開けてみる?」
「運試しに開けてみようか。じゃあ、せーの!」
 御神籤を引くという言葉はもう慣用句のようなものだろうか、鹿みくじは授与所にずらりと並べられた鹿達から、これぞと思う鹿を自分で選びとる形式のもの。御神籤箱を振るよりいっそう直接的に己で掴み取った運勢に触れられる気がしたそれをレックスも楽しげに取り出してみせるから、紲の掛け声で二人揃って鹿の口から引き抜いた御神籤を開いてみれば、
 下がり藤のもとに踊った文字はどちらもひとつ、凶と吉。
 己の凶に瞬きひとつしたレックスは、
 病気――重けれど平癒す。
 ふと眼を惹かれた一文に、僕病気とかしてたっけ? と不思議そうに呟いた次の瞬間、緋の瞳を悪戯に煌かせた。
「わかった。これはつまり……七草粥をお代わりしてもっとしっかり無病息災をお願いしろっていう、神様の啓示だね!」
「あはは、いいねそれ! うん、それにきっと間違いないよ!!」
 一片の曇りもない彼の晴れやかなプラス思考に弾けるように笑って紲は、己の吉の籤に綴られていた一文を胸に燈した。
 願望――人の助け在りて叶ふ。
 皆で過ごす楽しい一年が、きっと、はじまるから。
 禁足地たる神奈備のもとで原初の緑に抱かれる春日大社は、清浄な神域に荘厳な華麗さを体現した美しさ。
 神奈備から吹き渡る風は凛と清らに透きとおり、華やかな朱と緑と金に彩られた社殿と回廊をいっそう浄めるように流れ、朝の光のなかで詣でれば、胸にも明るい光が射す心地がした。
「真冬の常盤緑に映える姿も美しかったですが、新緑の頃になれば更に美しいのでしょうね。藤の花が象徴だそうですから」
「藤の花……! 素敵ですね、朱の色も新緑にいっそう映えそうですし」
 黒き双眸を陶然と細めて、茶屋から神の社を見霽かすかのごとき風情で椿野・燕(詭弁家・g02761)が語れば、先程恋人と詣でたばかりの春日大社を想ってシャルロット・アミ(金糸雀の夢・g00467)も新緑の眼差しを夢見るように和らげる。漆黒の髪には藤花の簪がしゃらりと揺れて、
 黒釉の器に柔らかな陽のひかりを満たしたような七草粥が饗されたなら、初めて味わう初春の味に胸を高鳴らせつつ、一匙掬って花唇に含んでみた。優しい熱とともにじんわり広がるのは、昆布出汁の旨味と白味噌の風味が仄かな粥の甘味とともに蕩ける滋味、ゆるゆると白味噌の甘さが美味を花開かせたなら、しゃきりと鳴った、シャルロットの知らない青菜の清しさと香気が差して、
「ゆっくり、じっくり味わいたい美味しさですね……! ささ、椿野さんにはゆっくりお酒も味わって欲しいわ」
「それでは、遠慮なく。アミさんも春には二十歳ですし、そのとき一緒に呑めるのを楽しみにしていますよ」
 燕の蘊蓄に期待しながらもシャルロットはまず南都諸白を彼に勧め、飴釉のぐい呑みを傾けた彼が嬉しげに口許を綻ばせる姿にいっそう胸を高鳴らせる。彼氏の大人な姿に見惚れるのも乙女の特権、なんて彼女が想っているのを知ってか知らずか、杯からの香りは淡く、然れど口中に含めば澄みきった酒香がまろやかな甘味とあえかな酸味を豊かに咲かせる清酒を燕は再びゆるりと傾けて、
 彼が満足気な吐息を洩らした機を逃さずシャルロットは、瞳を輝かせて軽く身を乗り出した。
「それで、なんで七草粥って言うんですか?」
「春の七草と呼ばれる草を使っていて、正月の豪勢な食事に疲れた胃を休めると言われているんですよ」
 こちらが仏の座で、こちらが御形――と優しい鳥の子色の粥を彩る緑をひとつひとつ掬って燕が語り出せば、嬉しげに眦を緩めて聴き入るシャルロット。蘊蓄を語る彼はいつだっていきいきしていて、語る姿も語る言葉も彼女を魅了してやまない。
「菘(すずな)は蕪で、蘿蔔(蘿蔔)は大根ですから……ほら」
「まあ! 青菜だけかと思ったら、根菜も入ってるんですね……!!」
 思想家たる燕にとって己の語る言葉をいつだって幸せそうな笑顔で聴いてくれるシャルロットは可愛くてならない恋人で、漆塗りの匙で七草粥から淡い白に透ける蕪と大根を掬ってみせたなら、たちまち輝くような笑みが咲く様に燕の笑みも深まるばかり。
 お互いの幸福を深めながら味わう七草粥はいっそう美味で、惜しみながらも食べ終えれば、香ばしい焙じ茶を味わいながらシャルロットは至福の吐息をひとつ。七草粥は持ち帰れないけれど、
「この白鹿さんは持ち帰って飾っておけますものね。嬉しいわ」
「ええ、お土産になる良い御神籤ですよね」
 白鹿みくじの籤をここで開くか、帰宅してからにするか、欅の杢目が美しい卓に映える陶器の白鹿を指先で揺らし、はたと思い至ったようにシャルロットは顔を上げた。御神籤での運試しは帰宅して一人になってもできるから、
 ――最後にこれからの武運を祈って、
 ――頭を撫でてくださると嬉しいな。
 ほんの少しだけ甘えたい心地の上目遣いでおねだりすれば、燕からはこの上なく優しい微笑みが返り、
「それでは祈りを込めて撫でましょうか――この白鹿を」
「もう! 椿野さんったら!!」
 彼の長い指が白鹿の頭を撫でる様に思わずシャルロットの声音が跳ねたなら、冗談です、と楽しげに笑みを深めた燕の手が大切に彼女の頭を撫でた。髪越しに感じる大きな手の優しさ、あたたかさ。ふふ、と今日一番の至福に笑み崩れたなら、
 簪の藤花も、幸せな響きでしゃらりと唄った。
 春日大社の裡で、最も神奈備に近い場所。
 浮雲峰遥拝所にて遥かな峰を仰ぎ見れば、大地から神奈備の頂へと吹き上げる風が己が魂をも翔けぬけていく心地がして、ノスリ・アスターゼイン(共喰い・g01118)はどうしようもないほどの懐かしさと愛おしさを胸に募らせた。
 伏鹿の手水所の水の冷たさもまだ鮮やかな身をいっそう引き締めてくれるような、凛と背筋を伸ばしてくれるような神聖な空気も、呼気が雪めく白に染まり、曙光に柔く煌く様も好ましくて。だからこそ御本殿への参拝も終えて戻りきた参道の傍で開いた扉からふわりと溢れくる茶屋のぬくもりが、冷え切った身にじんわりと沁み入るのがありがたい。
 美しい杢目で柱や卓を彩る樹々の暖かみ、硝子越しに望む庭園の松の緑と椿の花の美しさ。
「――おはよう、ただいま」
「はい、おはよう、おかえり!!」
 蜜色の眼差しを和らげながらの挨拶は茶目っ気に満ちたもの、女将らしき女性が破顔して乗ってくれたのに釣られて相好を崩して、欅の杢目が見事な一枚板の卓の席に腰を落ち着けたなら、意識するまでもなく胸の裡に、ああ、帰ってきた、なんて言の葉が燈る。
 奈良や京都を訪れるたびつい「ただいま」と言いたくなるのは、これらの古都が『まほろば』なればこそ。
 脳裏に自然にそう浮かべば、故郷の記憶は砂塵の彼方かあるいは奥底に呑んだか呑まれてしまったか、それすら定かでない己にとって、懐かしく迎えてくれるような場所が在ることが唯、純粋に嬉しくてあたたかい。
 黒釉の器に満ちるのは冬と春のあわいの陽のひかり。
 然れど、あたたかにくゆる湯気に昆布出汁と白味噌香る柔らかな陽の彩は大地の恵みを湛えた七草粥、優しい滋味がまるで懐かしさのように、温かな美味がまるで愛おしさのように花開く様に眦を緩め、心赴くままに傾ける南都諸白が七草の早春の息吹を際立たせる様に舌鼓を打って。
 大和牛が甘辛くほぐれて生姜の香りとともに粥に蕩ける時雨煮、深く豊かに熟成された酒香が琥珀の白瓜とともにぱきりと弾ける奈良漬、高貴に香り立つ橘が微かな苦味も渋味も青唐辛子の辛味とともに上質な薬味に仕立てる大和橘胡椒、いずれもが優しい七草粥を肴に変化させる魔法みたいだから、
 雪解け水めいて澄みきった清酒の裡から咲く旨味と酸味がいっそう華やかに喉を擽る様にノスリは上機嫌で笑み深め、
 ――おかわり!
 ひとかけらの曇りも衒いもなく、素直に笑って黒釉の椀を差し出せば、何や息子が増えたみたいやわ、と弾けるよう笑った女将が、先よりも七草粥をたっぷりよそってくれた。
 黒釉の椀に満ちる、冬と春のあわいの陽のひかり。
 陽のひかりを彩る、早春の緑の息吹。
 新年の春日詣を終えれば長い参道を戻りゆく足取りも自然と御機嫌。華やかな朱に彩られた神の社に別れを告げ、深い緑と朝の光がが織り成す清らな光陰に真赤な和装の裾と墨染の羽織を揺らす織乃・紬(翌る紐・g01055)は、緑に抱かれた茶屋を見出せば満面の笑みで花柳・細(非花・g07664)を手招いて、
 こちらも御機嫌な細は新春に更なる春招く薄桃の着物に空色の道行羽織り、桃花咲く帯飾りを弾むよう揺らして鳴らして、たっぷり募らせた期待に紅玉の瞳を輝かせ、扉を開いてみたなら、見知った猛禽が初来店とは思えぬ顔で寛いでいた。
「まッ、我が家みたいな顔してまア寛いじゃッて! そンじゃ俺もただいまッて言わせてもらおッかな、なんて」
「それだけ居心地イーお茶屋ってことよね! 七草粥も相当イーお味と見たわ!!」
「あっは、おかえり! 居心地も味わいも、そりゃあもう当然――極上ってね!!」
 大仰に紬が驚いて見せれば細の声音も弾けて咲いて、返る言葉に三人揃って笑みを咲かす。世辞を口にするような相手ではないと解っているから、紬と細にいっそう募る七草粥への期待。
「白味噌の雑煮は馴染みあるけど、白味噌七草って初めてなのよね、楽しみ!」
「俺は白味噌も縁遠くあれど、絶対に美味エのは解るわ!」
 欅の一枚板の卓で席に腰を下ろしつつも細はわくわくそわそわ、紬も悪戯っぽくも興味津々に墨染の瞳を煌かせ、いよいよお待ちかねの昆布出汁と白味噌仕立ての七草粥が饗されれば、揃って感嘆の声をあげた。
 何処までも優しく、愛おしい味わいだった。
 美味よりもまずあたたかな滋味が花開くのが優しくも心憎い。昆布出汁の旨味と白味噌の風味がほのかな粥の甘味とともに柔くじんわり染み渡ったところに白味噌の甘味がやんわり咲き綻んで、七草の緑の清しさが程好く跳ねる。
 こりゃア寛いじゃうね、と笑み崩れながもいそいそと紬が匙を伸ばすのは深い琥珀色が艶めく奈良漬、甘いお味噌の風味がほっこりする~と眦も頬も緩めた細が心惹かれたのは大和橘胡椒で、甘辛い大和牛がほろりほどける時雨煮も絶品なれど、
 深い琥珀色に色づいた白瓜が小気味よくぱきりと弾けて、噛むほどに熟成された酒粕の芳香と風味を花開かせる奈良漬も、思わず眼を瞠る程鮮やかに香り立つ橘の微かな苦味と渋味が青唐辛子の辛味と渾然一体となってピリッと利く大和橘胡椒も、七草粥の滋味も美味も豊かに広げて深めていく。
 大和橘と青唐辛子をまろやかに纏めているのは塩糀で、
「だから七草粥との相性もイーわけね! 私この大和橘胡椒が特に好きっ!」
 味わうごとに奥深さを増す大和橘胡椒乗せの七草粥に細の笑みも満開に咲いて、濃厚な酒粕の風味を纏った白瓜の歯応えと味わいが躍るように弾む奈良漬乗せの七草粥に紬の機嫌も弾んで上向いていくばかり。
「そっちも旨いけど、奈良漬は特に酒欲しくなるね! 清酒の乾杯で無病息災祈ろッか!!」
「匙だけじゃなく杯もとまんなくなる予感だけど、清酒歓迎~っ! 乾杯しましょ、祈りましょっ!!」
 大義名分があれば酒はひときわ美味なもの、飴釉のぐい呑みに注がれた清らな南都諸白が二人には神々しくさえ見えるのも素晴らしき口実の賜物だ。飴釉の縁を軽やかに鳴らしてくいっと呷れば、香り淡く唇に優しく触れる雪解け水めいた清酒が、澄んだ酒香を、まろやかな旨味を、あえかな酸味を次々と咲かせ、酸味を喉に遊ばせ滑り落ちては酒精の熱を燈す。
 美味な粥、美味な酒。
 連れの明るい声音も朗らな笑顔も互いに肴にしつつ存分に美味を楽しめば、待ちくたびれたと言いたげに紬の懐からころり零れ落ちた木彫りの鹿みくじ。墨染の瞳に悪戯な光がきらり煌きを増し、
「ンふふ、鹿みくじッてカワイイ。ココで結果見ちまおうぜ?」
「ね、鹿が咥えてんのも可愛いわ。オッケ! せーので見ましょっ!」
 伝統工芸一刀彫を確り活かしている様も心憎い鹿みくじを細も取り出せば、こちらも紅玉の瞳がきらりと挑むよう煌いて、鹿の口からせーので引き抜きひらりと広げる御神籤二枚。下り藤のもとに躍った吉凶は、
「おッ、大吉とは幸先良し! ――でもないかア」
「私、中吉ー! 紬、大吉? いーなー……って、え、なんで?」
 紬の機嫌を頂点に至らせたと見えたのも僅か一瞬、彼ががっくりと肩を落とす様に不思議そうに細が瞬けば、だッてさ、と唇を尖らせる36歳。今年の運勢だと信じたいけれど、御神籤の運勢は籤を引いた瞬間の運勢だなんて話もあるわけで。
「良い女に旨い粥、新年を飾るにゃ幸せ過ぎて、この幸運は今で尽きたろう……なンて思ッちまッたわけよ」
「あっは! 何言ってんの、神の使いが伝える大吉よ。使い切るにはまーだまだ!!」
 何処か拗ねた口振りで紬が語る憂いを良い女こと細はあっけらかんと笑い飛ばし、景気付けよろしくその背を軽くぱしっと叩いたなら、あなたの一年、きっともっと彩られるわ、と秘密を明かすように瞳を輝かせた笑みで告げ、
「本当に? そりゃイイね」
 ひととき曇った紬の双眸に楽しげな光が戻れば、細はいっそう溌剌たる笑み咲かせ、最後にはまた弾けるよう笑い合う。
 ――その幸運にあやからせてよ、なーんてね!
 ――そンじゃ、引ッ張ッたげる。君を、中吉から大吉まで!!
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【建物復元】LV5が発生!
【アイテムポケット】LV3が発生!
【おいしくなあれ】LV1が発生!
【口福の伝道者】LV3が発生!
【飛翔】LV3が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
【熱波の支配者】LV1が発生!
【強運の加護】LV1が発生!
【プラチナチケット】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV3が発生!
【先行率アップ】LV2が発生!
【ガードアップ】LV3が発生!
【リザレクション】LV1が発生!
【凌駕率アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV4が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
【グロリアス】LV2が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!
【ドレイン】LV1が発生!

空木・朱士
※アドリブ連携OK

村人達を無理矢理連行して働かせるのも許せないけど遊びみたく『若菜摘』とか称してんのが洒落てるつもりでいるのかしんねぇが悪趣味で余計腹立つ!

到着次第、なるべく村の端にいる敵を他も爆発音で誘き寄せられてくるの狙いで金翅鳥で攻撃。

村人を巻き込まないと分かってても村のど真ん中で戦闘するのは憚れるからな、位置取りには留意する。

仲間とは声を掛け合って連携し、互いに孤立したりされたりしないよう、また死角など作らないように戦況を見ながら立ち回る。
場合によっては仲間のフォローへも積極的に。

若菜摘ってのは本来、大事な人の息災を願い想いながらするんだよ!
村人にとって災厄そのもののお前らが言うな!


ノスリ・アスターゼイン
復元出来るとはいえ
これ以上の損壊は村人にとって心労だろう
広い所で戦いたいものだね

あんたを摘んでしまえば
手っ取り早く場が空くかな

ねぇ、と鉢屋衆の傍らに降り立って
笑むのと同時に振るう刃

随分楽しそうだから
やってみたくなったんだよ
若菜摘
あんた達も野の色めいているし
丁度良いね

全体の戦況把握
通信や声掛けで皆と連携
死角を補い
カバーとフォローを心掛ける
ナイフで弾いてダメージ軽減の試み
積極的なディフェンスや
飛翔を駆使した翻弄で
鉢屋衆の拍子やペースを乱そうか

あんた達を若菜と呼んでは野の草花達に失礼だね
人々の暮らしを踏み荒らした罪咎
刈り取って根絶やしにしてしまおう


新年を寿ぐ前に
穢れを祓って来るよ
村人を励まし手を振る


永辿・ヤコウ
風雅な詞も
優美な衣も
使う者によって品が無くなりますね

煽る意図は無く率直な状況把握だけれど
崩落した窯や逃げ惑う村人達を想えば
鉢屋衆を見据える目は凛と鋭く

僕も若菜摘が得意です
萌黄野にお連れ致しましょう

途端に芽吹く春の幻
眠る間は僅かでも
生じさせた隙が皆の攻撃へ繋がる架け橋となる筈

此方もまた
敵の舞や鼓で生じる隙を埋め合うよう
ラヴィデさんや皆へパラドクス通信で声掛け
呼吸を合わせて反撃ごと摘み取ろう

戦況把握と連携を密にし
ディフェンスも果敢に取りに行く

機械の身は摘んでも食べられないもの
せめてその性根を春野の霞になるまで刻んで差し上げる

掃討後
村人を力づける笑みで

人々や品々を奪還して参ります
諦めずに居てください


ラヴィデ・ローズ
わあ。大層な弓だな
それで、使い手の方はどうかな?

『レゼル(長弓)』でひとつ、弓対決といこう
ヤコウくんが作り出した隙の活用もそうだけど
仲間との連携や声掛けを意識して、範囲攻撃とかで
削れた敵からパラドクスを叩き込んで、頭数を減らしていきたいね
少しでも早く、もう大丈夫だと救いを見出してほしいから

攻撃後は地形次第では飛翔も交えて
一撃離脱からの不意打ちをセットで考える
射手を探す一瞬も、多対多の戦場では隙になり得るし
同じ要領で射線を阻むディフェンスも意識
全員でこの場を取り返そう

追い立てられる側の恐怖、少しは味わえたかい?
それじゃ、もう退場してどうぞ

村人の無事が確かになれば内心安堵
任せて。オレたち、強いから


秡木・紲
【星絆】
誰かにとって大事な村が喪われていく事を
生かさず殺さずの扱いを受けるような無道を
見過ごすことはできないからね

村の人たちが笑顔で平穏な日々を過ごせるように
力を合わせて頑張ろう、レックスさん
頼りにしているよ

敵から距離を取りつつ
前を張ってくれる味方の死角を補おう
後ろからは戦況を見通しやすいはずだ

攻撃も怠らずに
霊符を一枚取り出して、術を念じて
思い浮かべるものは秡いの火
命ず、四象は秡火を生むべし、
秡火は、ええと、無法者を焼くべし、ってね

近寄られると出来る事が少ないからね
相手のペースに持ち込ませず
常にこちらから仕掛けていこう
でも、危ないときにはちゃんと庇って見せよう
結界術や杖術を少し嗜んでいるからさ


レックス・ウェリタス
【星絆】

人を物のように扱う、それも都合良くね
僕はその光景をよく知ってる
知ってるから見過ごせない

紲の言葉に頷き
僕も頼りにしているよと信頼の音を紡いで前を

他の復讐者と協力し
僕らは敵から距離を取っての支援中心
辺りをハッキングして敵の位置を情報収集し
パラドクス通信でみんなに共有

紲に合わせるように零すは
ミセテアゲナイの音にError音
敵を探って暴いて書き換えて
お前さんたちには
何も見えない
何も解らない
…さて、書き換わったかな?
同士討ち、足止め
何かに役立てたら御の字

僕も紲も近づかれると弱いから互いに庇う形で
ふたりで結界術を行使し軽減を試みよう
飛翔で空へ行くかは臨機応変に
お前さんたちのペースには持ち込ませない


ユーフェミア・フロンティア
皆さんみたいに強くはありませんが、それでも、助けたいと思う気持ちは負けませんからっ!できること、やれることを一つずつやっていくだけですっ!

パラドクス通信で情報を共有していきます。
私なりに気づいたことについてはしっかり情報伝達を行います。

攻撃時の狙いは、皆さんの攻撃が集中している敵に向けて攻撃ですね。
紅蓮石の聖杖を片手にもって、舞うようにして杖頭の宝石から炎を生み出して、神火奉演舞を使用します。
神に捧げる焔の舞を今ここに…

敵の攻撃は、ブルースターの加護の結界(ガードアップ)で軽減を図ります。
痛いですが、それでもこの村の人達を守れるなら、こんな痛みくらいはなんてことはないですよっ!


シル・ウィンディア
初詣で気合も入ったし、人と村を助けに行きましょうかっ!

飛翔で敵に高速接近して、高速詠唱での竜雪光風撃!
さぁさぁ、ディアボロスがあなた達を退治しに来たよっ!
わたし達の首、取れるものなら取って見なさいっ!

飛翔の効果を使って、上下の移動を心掛けつつ機動を行うよ。
高度を下げるときは、急降下しつつ世界樹の翼type.Bの誘導弾を連射して、当てないように敵の足元を撃っていくよ。
目くらましになればそれでいいから!

気づいたことはパラドクス通信でみんなに伝達。
特に孤立している敵などを見つけたら
上空から観察して敵を追い詰めるようにしていくね。

ディフェンスは積極的に行って、自身の反撃で敵を沈めるつもりで立ち回るよ。


アンゼリカ・レンブラント
さて元気もフルチャージ完了した
ここからは人助けの時間だよ!

パラドクス通信で仲間と情報共有
手近な鉢屋衆に攻撃を仕掛け
集まってきたところを皆で迎え撃とう
大丈夫だろうけどはぐれる仲間がいないよう注意

さぁ私たちがディアボロス
お前たちの圧政と暴虐を終わらせる者だよ!
村人にも勇気をあげられるような声になると嬉しい

堂々としつつもけして突出するような無茶はしない
飛翔し仲間と攻撃対象を合わせ、《光剣閃波》をお見舞い!
確実に敵を倒していくねっ

敵の数が減っていくなら徐々に包囲するよう動く
【泥濘の地】も敵の動きを鈍らせることができるなら使用

仲間へのディフェンスは積極的に行い仲間全体の消耗を抑え
反撃で敵を倒していくよ!


花柳・細
【紅柳】
人攫いを雅な言葉に変えてんじゃないわよ
皆の長寿と幸いの為そっちを摘んだげる!

知己の姿も幾人と頼もしーじゃん?
通信や声掛けで連携してくわ
イー花道頼んだわよ紬に天使ちゃんっ
前は任せてよ
いつひらな生き様で魅せたげる!

あっは!ご機嫌如何?
白と共に駆け隙付き敵へ肉薄し吹飛ばす
建物や人避けつつ他の敵を巻き込んだり
味方の補助や隙作るのにイーとこを選ぶわ
そっち飛ばすから気ーつけて、よ!

攻撃は武器で捌きつつ
多少の傷は無視して猛進
アンタら如きじゃ摘め無いわ
こちとら七草の滋と御籤の運がついてんの!
――大吉分もね!
あっは!紬もやるぅ!

但し顔への攻撃は
庇い避け鉄壁防御からの激怒
今顔狙ったヤツ、地獄見せたげるわ!


竜城・陸
人々の暮らしを脅かす痴れ者を
のさばらせておく道理はない
刈り取られるのはお前たちの方だよ

できる限り建物に損壊の出づらい場所を選んで戦おう
相手のペースに巻き込まれぬよう
【パラドクス通信】も利用して声を掛け合い
味方同士での連携を密にしていくね

光剣と氷剣は
切り結ぶも遠くの敵を投擲で狙うも自在
皆と標的を合わせるも
味方との間に割り込むも
臨機応変にその場の状況に合わせて

負担を分散できるよう
不意の一撃へは可能な限り割り込んでディフェンスに入る
その際は上手くこちらの反撃を合わせて自身の消耗を減らしつつ
相手へ痛手を与えられるよう努めるね

ひとつとて撃ち漏らさぬよう情報共有は密に
村人達の為、一つの憂いも残しはしないよ


織乃・紬
【紅柳】
人攫いに痛む情もないだろうに
態々託けて成そうとしやがッて
此方も倣わせて頂くか、若菜摘

知る顔あらば気も抜けまい
通信で声掛け、連携は怠らず
君の華やぐ武勇も楽しみだな
後ろから花道敷いてやンよ

花盛といこう、天使ちゃん!
敵を纏めて拘束し盾としたり
機を見計らい花蔓で手を引き
狙いを逸らし、律動を狂わせ
鉢屋衆が仲間を害さぬように
確実に攻撃通す隙を作り出す

ついでの伊達男付きッてね!
幸に彩が尽きぬなら
村人にも後で分けようか

回避は抜からず庇うは叶う限り
近くに踏み込まれたら刀で凌ぎ
曙光で隙作り、蹴って《斬撃》
“大根”役者が出しゃばンなよ
主役はアチラだから――あ、

女優の容狙ッちゃ不味いな
左様ならと、薄笑みで合掌


逢魔・荊
圧政なんざ何一つとして叶う事はないさね
できる事はやって見せるとすっか

パラドクス通信を利用
仲間と連携をする
主にはフォローにまわろうか
銃を使用
臨機応変に集まる敵数が一か所に纏まるよう誘導しよう

《嘆獄ノ火焔》
攻撃は弾丸に炎を纏わせ敵に貫通撃
それのみに止まると思うかい?
決して逃がす事はしねぇさ
オーラ操作で火炎を操作し敵を追跡
この炎は敵のみを焼く劫火

――圧政が為に芽吹く若菜は此処で燃やし尽くす
嗚呼、若菜摘が息災を願うものだってなら丁度いい
てめぇらを刈り取り、灰に還す事が厄払いになるってもんかねぇ?

村人達には笑いかけて
恐いと思う時間はすぐ終わらせてやんよ
もうちっとだけしんぼうしててくれ

アドリブ&連携歓迎だ


●一気呵成
 冬空に疾風が躍った。
 先陣を切る加護を齎す風を捉えたのは光も影も輝く猛禽の翼、復元可能とはいえ更なる損壊は村人に心労を齎すだろうかと思えば蜜色の双眸を剣呑に煌かせたノスリ・アスターゼイン(共喰い・g01118)は広い処で戦いたいねと一気に翔けて、
 ――あんたを摘んでしまえば、
 ――手っ取り早く場が空くかな。
「ねぇ」
 冬山から吹き降ろす颪よりも疾く【飛翔】で降り立ったのは戯れのごとく村人を追う鉢屋衆の直ぐ傍ら、機械の眼差しに己が不敵な笑みを映した刹那に猛禽の爪めく刃を一閃すれば、
『……!! 何処から、何処から嗅ぎつけて来おったのじゃ、ディアボロス!!』
「さあて、何処からかな。随分楽しそうだから、やってみたくなったんだよ、若菜摘。あんた達も野の色めいているしね」
「何処から嗅ぎつけたも何も、お前らの洒落めかした若菜摘ってのが悪目立ちしすぎるってだけの話だっての!!」
 櫨染の装甲の袖ごと深々と横腹を喰い破られた天魔武者が跳び退って大弓から矢を射かけてくるが、喉を狙うそれを短剣で弾けば反撃の一矢もノスリの腕を掠めるのみ。萌黄の衣を被せられ追われていた村人と敵との間に降り立ったならその途端に空木・朱士(Lost heart・g03720)は紅の双眸に怒りを燃え上がらせ、
「無理矢理連行ってのも許せないけど、余計に腹立つんだよ! 村のひと達を弄ぶお前らのやりかたが!!」
「わたし達が来た以上、村のひと達を摘めると思ったら大間違い! わたし達があなた達を摘んじゃうからねっ!!」
 鉢屋衆どもめがけて撃ち込むのは灼熱の焔で羽ばたく金翅鳥、派手な爆音で村中に散っている敵勢を誘き寄せんと焔の鳥を思うさま爆裂させれば爆炎に乗るがごとく襲いきて朱士を穿つ反撃の二矢、然れど手負いの一体は反撃と同時に潰え、爆炎に呑まれたもう一体と更なる敵を巻き込んた凍てつく吹雪が荒れ狂う。
 初詣で気合満点、真冬の厳風を【飛翔】で突き抜けたシル・ウィンディア(虹霓の砂時計を携えし精霊術師・g01415)は、早朝参拝で仲間が燈した命中強化も得た吹雪で鉢屋衆どもの反撃を捻じ伏せ一体を屠り、村中に響けとはかりに声を張った。
「さぁさぁ、ディアボロスがあなた達を退治しに来たよっ! わたし達の首、取れるものなら取ってみなさいっ!!」
『ふうむ、何とも勇ましき心意気よの! 出合え出合え同胞ども、ディアボロスどもの襲撃じゃ――!!』
 冬空に響き渡る声音と同時に激突したのは、一重梅の扇を広げて躍りかかった鉢屋衆の舞と青き精霊術師の苛烈な吹雪。
 時空を超えたパラドクストレインが停車したのは奇しくも麓の穴窯が破壊された山の裏手、山肌を撫でるが如き【飛翔】で駆けつけたディアボロス達が鉢屋衆どもを急襲したのは、崩落した穴窯の前に大きく開けた地でのことだった。
「出来る限り家屋に被害が及びにくい場所で――とは思っていたけれど、ここが丁度良さそうだってのも何だか皮肉だね」
「確かに! ならその皮肉の分も、あの絡繰どもの命で贖ってもらおうじゃないの!」
 南側から新たに駆けつけてくる鉢屋衆どもを黎明の眼差しで捉えた刹那には竜城・陸(蒼海番長・g01002)の両手に凛冽と灼熱の刃が顕現し、天翔けるノスリが上方から強襲するのに容易く呼吸を併せて蒼海の竜は地を馳せる。
 蒼銀と白金の煌きを連れて馳せる様は、宛ら一瞬で翔けぬける凍気と光輝の浚風。猛禽に喰い破られた一体の駆動を氷剣で永遠に停止させたなら、反撃に打ち込まれる一重梅の扇をも貫く勢いで陸は光剣を更なる敵の胸元へ突き立てた。
 ――ひとびとの暮らしを脅かす痴れ者を、のさばらせておく道理はない。
 ――摘み取られるのは、お前達のほうだよ。
 輝ける刃で急所を貫かれながらも辛うじて踏みとどまった鉢屋衆を仕留めたのは、仲間の攻撃が集中した敵を狙い澄まし、紅蓮に輝く紅玉を戴く杖から解き放たれた聖なる炎。
「東から四体! 来ます!! 行けるよね、アンゼリカ!?」
「勿論! ミアとシルと一緒に元気フルチャージ済みだしね、全力で人助けの時間といくよっ!!」
 命尽きる瞬間の鉢屋衆の反撃を薔薇ならぬ空色の星の花、ブルースターを咲かせるガーディアンローズを展開して軽減したユーフェミア・フロンティア(光彩聖姫・g09068)、舞いで神火を奉ずるがゆえに東の光景も見て取った彼女がインカム状の通信機を既に皆へと顕現させていた【パラドクス通信】で伝えると同時、掌中に光の剣を咲かせたアンゼリカ・レンブラント(光彩誓騎・g02672)が東からの新手を迎え撃った。心に咲かせた翼で捉えるのは先手を獲る加護を齎す風、
 瞬時の【飛翔】とともに迸るのは真冬に射し込める夏陽の輝きを思わす光の斬撃と衝撃波。
「さあ私達がディアボロス! お前達天魔武者どもの圧政と暴虐を終わらせる者だよ!!」
「……!!」
 一手で敵四体を薙ぎ払う光剣閃波(セイバーフラッシュ)が二体の反撃を捻じ伏せ二矢の反撃がアンゼリカへ襲い来るが、少し離れた家屋の陰に隠れ、身を縮めて震えていた村の子供が今の己の言の葉に勇気づけられたように顔を上げる様が視界の端に映ったから、
 ――この身を穿つ矢の痛みなど堪えて、
 ――強気な笑みを咲かせ続けてみせる。
 村の北に位置する穴窯を、破壊された穴窯を抱く山を背にすれば、意識すべきは東西と南。
「っと、西からも三体来るよ。あの様子だとまだまだいそうかな」
「わらわら生えてくる雑草みたいだね。雑草の分際で若菜摘しようなんて、滑稽な話だけど」
 たとえワールドハッカーといえども、辺りをハッキングして未確認の敵の位置を把握する――といった力は持ち得ないが、視野を広く保つよう意識し敵の早期発見に努めることなら当然可能だ。深緋の眼差しで捉えた敵とその様子から察した情報をレックス・ウェリタス(Memento mori・g07184)も【パラドクス通信】で皆に伝えれば、傍らで秡木・紲(選日・g07946)が気紛れな猫のように笑んだ。
 深緋と桃花の眼差し交わし、自分達は敵との距離を取って仲間の支援を、と思うが、彼我ともに己の周辺時空を歪めて戦う逆説連鎖戦では如何に距離を取ろうと戦場に安全地帯はないのだと改めて肝に銘じる。こちらから攻撃すれば反撃が返るが、
「まっかせて! 要は紲にもレックスにも眼がいかなくなるくらい、私が敵の気を惹きつければイーってことよね!!」
「さッすが花柳ちゃん! 今日もまア勇ましい華やぎだこと!!」
 即時の反射で放たれる反撃はともかく攻撃ならば、敵が二人を狙うことさえ忘れるほどに己が派手に立ち回ってみせる、と華やかに西側へ躍り込んだのは花柳・細(非花・g07664)。勿論すべて惹きつけるのが不可能であるのは承知の上、それでも山肌を蹄で強く蹴りつけた跳躍で真白な馬体を冬空へと躍らせた無双馬とともに夜明け色の装束翻し、あでやかに戦場へ躍り込んだ娘は螺鈿に秘められた紅引く花唇で笑んで愛馬を駆るから、
 歌舞伎の大向こうよろしく晴れやかに声音を張った織乃・紬(翌る紐・g01055)も傍らに朝顔で装うオラトリオを招来して今日の相方を追う。わざわざ若菜摘にかこつけて無体を働かんとする天魔武者どもをこちらこそが摘んでやろうという気概は互いに同じ、なれど摘まんとする『若菜』はどうにも瑞々しさに欠けるから、
「イー花道頼んだわよ紬に天使ちゃんっ! いつひらな生き様で魅せたげる!!」
「もッちろん、後ろから花道敷いてやンよ! 花盛といこうか、天使ちゃん!!」
 粋なお守りの言の葉を翻し、黒に金踊る身の丈以上の大剣をも翻して愛馬と吶喊する細を追い越す勢いで紬が奔らせるのは朝顔の蔓葉。緑成す蔓葉へ青に紫を飾る花々を咲かせるそれがいつかの美味のごとく華やかに鉢屋衆どもを縛めたなら、少女天使が解き放つ曙光めいた赫きとともに、紅玉の瞳を強気に煌かせた細が愛馬の勢いをも乗せた大剣の一閃で敵二体を派手に吹き飛ばした。
 なれど鉢屋衆どもはそれでも二人へ反撃の舞なり矢なりを見舞うが、
「ここが僕らの支援のしどころだね、紲」
「うん、細さん達が戦いやすいように、わたし達からも仕掛けていこう、レックスさん」
 反撃から攻勢に転じるだろう鉢屋衆どもの拍子を少しでも乱すべく、深緋の双眸を細めたレックスの指先が彼自身を王者と成すハッキングツールに躍る、遊ぶ。冬風へと翻った煌くハッキングコードが機械生命体たる鉢屋衆どもの内部機巧を冒して暴いて支配して書き換えたなら、紲の白き指が閃かすのは踆烏が羽ばたく霊符、術を念じればその刹那、悪しき者を秡う火が敵勢めがけて迸った。
 一方、東側でアンゼリカが迎撃した敵勢へ強襲をかけたのは黒き妖狐と紫闇の竜人、
「風雅な詞も優美な衣も、使う者によって品が無くなるものですね」
「弓もまた雅で御大層だけどね。それで、使い手の方はどうかな?」
 天魔武者どもを煽る意図はない率直な状況把握なれど、永辿・ヤコウ(繕い屋・g04118)にもまた鉢屋衆どもに萌黄の衣を村人達へ放って被せて巫山戯るような真似を許すつもりはないから、
 ――僕も若菜摘が得意です。
 ――萌黄野にお連れ致しましょう。
 凛然と冴ゆる宵紫の眼差しで敵勢を捉えれば冬の山辺へ途端に芽吹く春の萌黄。春陽のあたたかさえ招くかのごとき春野の幻が反撃の舞と交錯しながらも鉢屋衆どもを一瞬の眠りへ堕とせばその刹那、竜眼めいた宝玉が妖しくぎらつく長弓の弓弦をラヴィデ・ローズ(la-tta-ta・g00694)が引き絞る。
 極限まで研ぎ澄まされた精神集中なれば一瞬にすら満たぬ刹那を射抜くのさえも容易いこと、反射的に鉢屋衆どもが構えた若菜色の大弓の弦を断つとともに獲物の胸の芯を射抜く精密射撃、相手の反撃を許さぬ二射で天魔武者二体を屠れば、
「恐いと思う時間はすぐ終わらせてやんよ、もうちっとだけしんぼうしててくれ!!」
 ――もう二度と、圧政なんざに苦しめさせやしねぇから。
 先程アンゼリカの言葉に顔を上げた子供へ、そして他の村人達へも聴こえるように声を張り、逢魔・荊(Dusk・g05721)が憤怒の焔を眩いほどに凝らせた。銀鎖に通した二つの環を首元に躍らせながら翻すのは小型拳銃、続け様の連射が奔らす焔を纏った弾丸が鉢屋衆どもを貫通するが、その瞬間に躍り上がった焔が背から獲物達を呑み込んでいく。
 但しオーラ操作はこの焔には効かぬ。このパラドクスで焔の威を強める技能はオーラ操作ではなく火炎使いだと改めて荊が胸に刻んだ刹那には反撃の二矢が彼を射抜き、攻撃の機を掴んだ鉢屋衆の一体が跳躍で躍りかかる舞いで荊へと不意の一撃を叩き込まんとするが、
 途端に高速飛翔で飛び込んで来る青の少女。
「大丈夫! こっちで引き受けるからっ!!」
 ――竜の息吹よ、暁の光よ、凍てつく水よ、吹きすさぶ風よ、
 ――我が前の障害を凍てつかせよっ!!
 光の翼を背に咲かせたシルが迷わず荊の盾となると同時に織り上げた高速詠唱は、勿論敵に反撃を喰らわせるためのもの。輝ける暁光に凍てる水、そして荒ぶ風の精霊魔法が凝縮された刹那、凛然たる蒼銀に煌く吹雪が鉢屋衆を蹂躙して葬り去る。魔法に長けたシル自身の火力に仲間が燈した攻撃強化、そして自身と仲間で最大近くまで重ねた【グロリアス】が、今受けた敵攻撃の痛手などあっさり癒してのけた。
 当然それだけで満足するシルではないから、
 まだまだ行っちゃうからねと笑みを咲かせた青き精霊術師は、光の翼で再び冬空へと翔けあがる。

●旭日昇天
 昼には青き睡蓮、夜には白き睡蓮咲く、母なる大河のほとり。
 遥か時空の彼方たるその故郷で見たものか、あるいは新宿島へ流れ着いた後に数多翔けた時空で見たものか。誰かがひとを物のように、己の都合の良いように扱う光景をレックスはよく識っている。
 識っているから、見過ごせない。
 彼が見たものと同じ光景こそ識らずとも、誰かにとって大事な村が破壊の禍に見舞われるのを、無辜のひとびとが生かさず殺さずの扱いを受けるような無道を見過ごすことなど紲にだって出来ることではないから、
 村のひと達が笑顔で平穏な日々を過ごせるように、
「力を合わせて頑張ろう、レックスさん。頼りにしているよ」
「僕も頼りにしているよ、紲」
 ――命ず、四象は秡火を生むべし。
 ――Error. Error. あなたは権限を持っていません。
 迷わぬ信頼の響きを乗せた言の葉を交わせば、続け様に戦場へ織り成されるのは無道な天魔武者どもを誅するための音律。紲の詠唱とともに踆烏が羽ばたく霊符から飛び立つ式神は朱雀の姿をとり、連なる雪花めいて白く煌いたハッキングコードが鉢屋衆どもの内部機巧の支配権を奪い去り、
「秡火は、ええと、無法者を焼くべし、ってね」
「お前さん達には何も見えない、何も解らない。……さて、書き換わったかな?」
 然れども一瞬の時空歪曲で彼我の距離を殺して襲い来る反撃の威を咄嗟に展開した結界で鈍らせ、鮮やかな朱に燃え上がる紲の秡火が鉢屋衆三体を呑んでレックスに防御の権限を奪われた二体が鉄屑となって頽れて。【グロリアス】が彼を癒すが、
 秡火に灼かれながらも突如宙に躍り上がった一体が不意の攻撃を仕掛けてきた瞬間、レックスは己が身を紲の盾とした。
「大丈夫だよ、このくらいなら」
「レックスさん……!!」
 激突する一重梅の扇舞と反撃のハッキングコード、結界と仲間が積み上げてくれた防御強化で深手こそ免れたものの、紲の切迫した声音が響いたのは新手の敵がこちらめがけて大弓から連射を仕掛けてきたがゆえ。いざとなれば庇い合うつもりではいたが、敵のパラドクス攻撃から仲間を護るディフェンスは、護る側のほうに護られる側よりも高い能力が必要となる。
 紲をレックスが庇うことなら可能だが、その逆は現状では不可能だ。
 冬風を切り裂く鋭い弦音三連、一瞬で三連射された矢が逃れ得ぬ速度で襲い来るが、
「いざって時は任せてよ。レックスにだって誰にだって、攻撃を集中させたりはしないからさ」
「だね! ここでだってこの先の戦いでだって、絶対に誰ひとり倒れさせたりはしないよっ!」
 鮮烈な射線を遮るどころかこちらから連射に吶喊する勢いで翔けて二人の盾となったのは砂色の猛禽と光彩の誓騎。
 紲が後方から戦場を見渡して仲間の死角を補わんとするなら、桁外れの空中戦技能を活かす縦横無尽の飛翔で仲間の死角を補うのがノスリ、三矢のうち二矢を引き受けた猛禽は己と仲間が燈した反撃強化と短剣の一閃で二矢の威力を半減し、誰より仲間との共闘を強く意識しその状況把握を怠らないアンゼリカも仲間が重ねてくれた防御強化で軽減された痛手などではその勢いを鈍らせやしない。
 幻影の羽根が散るとともに天魔武者へ喰らいついたのはノスリが揮った猛禽の嘴爪のごとき反撃二閃とアンゼリカの反撃が迸らせた閃光と衝撃波、無論それらを喰らった鉢屋衆は鉄屑どころか粉微塵。跡形もなく崩れ去って、
「うわあ、すごいことになったね……って、南側から五体きたよっ!!」
「いやシルだっていつも砲撃魔法で似たようなことしてない? と、南了解!!」
「うんうん、景気よく撃滅してるよね! 南の新手もこの調子でいっちゃうよ!」
「あっは! 随分豪気な話してるじゃない。けど五体ってちょっと多いわよね、私も吶喊させてもらうわ!!」
 高空へと舞い上がっていたがゆえに逸早く新手に気づいたシルの声音が【パラドクス通信】越しに響けばすぐさまノスリもアンゼリカも南めがけて飛翔し、精鋭陣の会話に弾けるような笑みを咲かせた細も即座に馬首を南へめぐらせた。
「それじゃ! いきなりお邪魔します、っと!!」
 新手の襲来を仲間へ報せた直後に翻ったのは風妖精の外套、
 高速機動での攪乱を得手とするシルは誰かを見倣って身に着けた敵の意識を上下に揺さぶる機動で己の戦法を進化させて、高空からの全速急降下で一気に敵勢に迫りつつ白銀の銃から誘導弾を連射する。然れど乱舞する軌道で鉢屋衆どもでなくその足元の地を穿つ銃撃はあくまで目眩まし、
 刹那の間隙を掴んで叩き込まれた本命の苛烈な吹雪が反撃を捻じ伏せながら天魔武者二体を蹂躙すれば、凍てる吹雪の影を翔けぬける低空飛翔で一気に彼我の距離を殺したノスリが刃で斬り上げ一体を屠り、間髪を容れずに輝ける光剣を振りぬいたアンゼリカの一撃が閃光と衝撃波を奔らせ更に一体を斃して、それにとどまることなく鉢屋衆三体を薙ぎ払う。
 迸る閃光と衝撃波、それらごと敵勢の頭上を越えていくのは真白な馬体と華やぐ娘、勢いよく愛馬を跳躍させた細は獲物の背後を獲ると同時に馬首を返し、容赦なき吶喊で鉢屋衆どもへ襲いかかった。
 猛然と迫る無双馬の蹄、豪快な勢いで揮われる黒金の大剣、
 精鋭陣には届かずとも攻撃強化の加護は細の火力も底上げしているから、
「あっは! ご機嫌如何? なーんて、そっち飛ばすからよろしく、ね!!」
「そういうことなら、吹っ飛んでくんのをこっちでしっかり撃ち落としてやんよ!!」
 晴れやかな挨拶ともに鉢屋衆どもを直撃するのは爆発的な勢いで彼らを吹き飛ばす細逝(ササメユキ)、一体の反撃を捻じ伏せもう一体の反撃の一矢を大剣で捌いて胸から腿へと逸らして、思うさま細が宙に舞わせた二体を銃口に捉えて荊が不敵な笑みを覗かせる。反撃の矢と交錯する紅蓮の焔を纏わせた銃撃で撃墜すれば、焔は大地を焦がすことなく天魔武者どものみをすべて灼き尽くし、腿の矢傷にも構わず愛馬を駆る細の眼前には不意をついた鉢屋衆が躍り込んできたが、
「アンタらごときじゃ摘めないわ、こちとら七草の滋と御籤の運がついてんの! ――大吉分もね!!」
「はいよ、大吉の伊達男参上! 花柳ちゃんばッかを矢面? 扇面? に立たせとくわけにゃアいかない、ッてね!!」
 怯むものかといっそうあでやかに笑んだ細と鉢屋衆の間に強引に跳び込んだ紬が愉しげに笑ってみせた。今日の相方を背に庇い傾奇刀を噛ませて威を鈍らせながら引き受ける扇舞の一撃、顔色ひとつ変えぬ眼前の絡繰野郎に蹴りのひとつなり斬撃のひとつなりでも喰らわせてやりたいところだが、紬とて逆説連鎖戦の絶対の理を識らぬわけではない。
「たとえ斬撃の技能が千に届こうとも、パラドクスじゃなきゃ傷ひとつつけらンないンだよねエ。可愛げの無いことで!」
 ゆえに墨染の双眸を悪戯に煌かせて奔らせる反撃のパラドクスは朝顔の蔓花、鉢屋衆を捕えて地に叩きつけたところで少女天使が解き放つ曙光めいた浄化の赫きで敵を呑む――花は誰(カハタレ)。赫きの裡で相手が潰えたなら、
 続いて馳せるは新手の報せがあった東側。
 世界は既に幾重にも祝福されていた。仲間達が重ねて燈してくれた能力を高める祝福を始め、数多の加護が自分達の戦いの追い風となってくれている。然れど、逆説連鎖戦の理だけは不変のもの。
 銀の眼差しを鋭く眇めた刹那に研ぎ澄ます精神集中、紫黒の火矢を番えた長弓で針の穴さえ通すがごとき精密射撃を放った瞬間に離脱を図ってみるも、それで鉢屋衆どもの反撃がラヴィデを射抜かぬわけではない。
「一撃離脱からの不意打ちってのも、そうそう巧くいかないもんだねぇ」
 技能はあれど戦術に活かしきれていないのだろう、けれどそれならそれで別の戦い方を模索する楽しみがあるってもんさと口の端を擡げ、ラヴィデは竜翼を広げて弓弦を引き絞った。
 射手を探す一瞬も多対多の戦場では隙になり得るだろうと思うが、たとえ相手に己の存在を気取られる前に完全な死角から狙撃しようとも、余程の強撃を決めぬ限り、相手の反撃は索敵する必要さえもなく即座に攻撃手へ届く。それが逆説連鎖戦の絶対の理だ。
 だがしかし、敵の反撃でなく敵の攻撃となれば幾許か話は変わる。
 攻撃と反撃が別ちがたい一対ならばある程度の反撃を受けるのは割り切って、鋭い風切り音が交錯した刹那に紫闇の竜翼で大きく羽ばたき一気に冬空へ舞い上がった。反撃から攻勢へ移らんとした鉢屋衆どもが虚を衝かれた様にラヴィデを反射的に眼差しで追った瞬間、
「結局のところ、如何なる戦場、如何なる戦況においても有効なのは、仲間との連携だからね」
「やッぱ究極はそうなるよねエ! 思いッきり畳みかけていこッか!!」
「はいっ! 私もしっかり合わせていきますね……!!」
 紫闇の竜が不意打ちでなく敵の眼を惹きつけることを選んだのだと過たずに彼の意を汲んだ蒼海の竜が、凛冽と灼熱の刃を冬風に奔らせる。一瞬前までラヴィデがいた場所の遥か後方から陸が撃ち込んだ蒼銀の氷剣と白金の光剣は紫黒の火矢に胸を穿たれていた敵二体の腹を貫いて反撃を捻じ伏せて、紬が冬の陽射しに躍らせた朝顔の蔓花と少女天使の浄化が彼らを屠って更なる二体を呑み込んだなら、
 燃え上がるように鮮やかな紅玉の煌きとともに、神火の焔が迸った。
 今の己の力はこの場の仲間達の誰にも及ばないと的確に理解しているからこそ、ユーフェミアは真摯に戦況と向き合い皆と狙いを重ね、真摯な舞いを神に奉じて聖なる炎を敵勢へ躍らせる。数多の加護があれど己では反撃を捻じ伏せるのも難しいと識るから、神火に灼き尽くされる瞬間の敵の反撃を防御強化と護りの薔薇たる空色の星を咲かせて耐え抜いて、
 ――村のひと達を守れるなら、
 ――こんな痛みくらいはなんてことはないから……!!
 己を奮い立たせた少女は【グロリアス】にも助けられつつ、制服から造られた戦装束を翻して臆することなく戦場に舞う。
 冬空へ舞えばいっそう開ける視界、銀の双眸を僅かに細めて、
「おっと、また東から二体来るね。仕掛けていこうか」
「まだいんのかよ! ほんと雑草並みだな、徹底的に刈り尽くしていこうぜ!!」
 皆へ【パラドクス通信】へ伝えると同時に紫闇の竜翼が捉えたのは先手を獲る加護を齎す風、己が眼のみならず竜眼めいた長弓の宝玉でも鉢屋衆ども見据える心地でラヴィデが仕掛けた連射が敵二体を射抜いた刹那、上空へ反撃の一矢を射る彼らを朱士が地表すれすれを翔けさせるように放った焔の鳥が強襲した。
 朱金の焔が盛大に爆ぜれば一体の反撃も命も潰えたが、爆炎の裡からやはり反撃の一矢が翔けて朱士を穿ち、続け様に焔の輝きの奥から躍り上がった鉢屋衆が装甲の袖も一重梅の扇も大きく翻した一撃を彼に叩き込まんとしたが、
「ここは僕が『獲らせて』もらいますね」
 艶やかな漆黒が滑り込む。ラヴィデも仲間のディフェンスを意識していたが、ディフェンスを『獲りにいく』という気概で戦場を馳せるヤコウのほうが反応が速い。扇舞の一撃を果敢に己が身で受けた刹那に溢れさせた幻で敵を呑む彼の姿に竜人は微かに瞠目した。戦場を馳せる姿が以前とはまるで違う。
「随分変わったよね、ヤコウくん」
「ええ。頼もしい仲間達と幾つもの戦場を翔けて、僕の戦い方は変わりましたよ。とても、ね」
 懐には決して朽ちぬ花冠が今も咲き誇っているから。
 最早ヤコウにとってディフェンスは唯仲間を護るだけの守勢の戦術ではなく、仲間を護ると同時に反撃という己の攻め手を増やすための攻勢の戦術。ゆえに同じ意識を共有する仲間とともに積み上げた反撃強化と【グロリアス】を存分に活かして、威を増した萌黄野の幻で敵を呑み込み、永遠の眠りの淵に沈めて己の痛手を霧散させた。
 妖狐のかんばせに覗いたのは、彼の美貌を見慣れたラヴィデの背筋さえもぞくりと震わすほど凄艶な笑み。
 ――機械の身は摘んでも食べられないもの、
 ――せめてその性根を、春野の霞になるまで刻んで差し上げる。

●旗幟鮮明
 紅色鮮やかな椿の花が、視界の片隅でほとりと落ちた。
 遠く離れた場所での落花に陸が気づいたのはその鮮やかさゆえ、距離はあれども戦いの余波で震わせたのだろうかと思えば胸によぎるものはあったが、なればこそ一刻も速く鉢屋衆すべてを討ち果たさんと、凛冽と灼熱を戦場に奔らせる。
 ひとつとて討ち洩らしはしない。
 村人達のために、憂いひとつとて残してなるものか。
 薄い桃色の一重梅、その彩を咲かせた鉢屋衆の扇と、薔薇色とも紅赤とも思える仲間の髪が翻るのを黎明の眼差しで捉えた刹那、迷わぬ跳躍で蒼海の竜は二者の間に割り込んだ。
「この国の舞踊にはあまり詳しくないのだけれどもね、君達の舞が無粋なものだというのは俺にも理解できるよ」
『やあれ、その生意気な性根をへし折ってやれぬのが口惜しや、口惜しや……!!』
 打ち込まれる衝撃すべてを殺せぬのは勿論承知、なれど氷の刃の一閃と反撃強化で扇舞の威力を半減させて、氷晶の欠片が煌く軌跡が消えぬうちに櫨染の喉元を光の刃で貫いたなら、天魔武者の命が尽きると同時に【グロリアス】が陸を癒す。
 然れど勿論彼が足をとめることはなく、再び両の手に凛冽と灼熱の刃を閃かせて新手の鉢屋衆どもに攻撃を仕掛ければ、
「ありがとうございます、陸さん! 私も早く皆さんに追いつけるよう頑張りま……頑張るねっ!!」
「きっとすぐのことだろうね。傍にアンゼリカとシルがいるなら、ミアもすぐにディアボロスの戦いのコツを掴むだろうし」
 今彼に護られたばかりのユーフェミアが陸が攻撃した敵を迷わぬ舞いで招来した神火で追撃するから、心からそう口にした蒼海の竜は眦を緩めて微笑し、いっそう鋭い剣閃を天魔武者どもに奔らせた。
 現にユーフェミアは戦いにおいて最も重要な、己の力量を的確に把握するという資質を既に開花させている。
 ただ戦闘能力が高いだけでは届かぬものがある。より確かな戦果を挙げ、より確かに勝利に貢献できるのは、驕ることなく的確に己の力量を見極め、同じ戦場を駆ける仲間と積極的に連携を図り、逆説連鎖戦の理を解して戦術に活かせる者だ。
「勿論そのつもりだけど、陸がああ言ってくれるならよりいっそう!」
「うんっ! もっともっとわたし達の戦いぶりを見せなきゃねっ!!」
 明るい笑みをめいっぱい咲かせたアンゼリカが臆することなく敵勢に迫って輝ける斬撃と衝撃波を叩き込んだなら、溌剌と咲かせた笑みで応えたシルが鉢屋衆どもの間に苛烈なる吹雪を花開かせる。いっそう勢いを得たように天魔武者どもを蹂躙していく少女二人とユーフェミアを紅蓮の双眸に映し、
「あの子、最近覚醒したばっかの駆け出しってわけか。それにしちゃ肝座ってるけど」
「そうそう、ミアが覚醒したのはつい最近だけどさ、あの二人と一緒に戦っていく気なら彼女きっとすぐ成長するよ」
「ええ、きっと。僕達も負けてはいられませんよね。もっとも、元より立ち止まる気もありませんけれど」
 何とはなしに荊が呟けば、愉しげな笑みを覗かせたノスリが、悪戯っぽく笑むヤコウが、左右からぽんぽんと軽く荊の肩を叩いて一気に敵勢へと翔けていく。己だけではなく彼女とも知った仲らしい二人が言うならそうなのだろうと納得し、荊も天魔武者どもを屠るため己が銃に焔を凝らせる。
 苛烈な旋風のごとき飛翔で鉢屋衆どもを翻弄しては喰い破るノスリに、真冬の山辺に夢幻のごとき萌黄野の幻を咲かせては鉢屋衆どもを眠りに堕とすヤコウ、彼らばかりでなく、少女達にも負けてはいられない。
「流石に敵の新手ももう尽きるかねぇ、集まってきたのが一か所に纏まるよう誘導しようかと思うんだけど、どうだい?」
「あ、それ助かる! 包囲していこう、みんなっ!!」
「ん。荊がそのつもりなら僕も同じように立ち回るよ」
 彼らの援護射撃とばかりに焔纏う弾丸の銃撃を放ちながら【パラドクス通信】越しに呼びかければ、打てば響くとばかりに返った声音はアンゼリカのもの、続いたのはレックスの声音で、俺よりレックスのほうが向いてそうだなと口の端を擡げた。
「そうかもね。それじゃあ、いくよ。ここの中央あたりでいいよね?」
「うん、一番村に被害がいきにくいところだし、中央でいいんじゃないかな」
 視野をより広くするために【飛翔】すれば、深緋の眼差しで捉えた獲物めがけてレックスが躍らすハッキングコードはその機巧を探って暴いて己自身の望むままに移動の機能を書き換えて、彼に頷いて桃花の眼差しを奔らせた紲も秡火を迸らせる。戦場の端を駆けながら銃撃から焔を躍らせ斬撃から衝撃波を放つ荊とアンゼリカとともに敵勢を戦場の中央へと追い立てて、
「んと、西からこっちに向かってくる二体で最後みたいっ!!」
「了解っ! 私と白でこっちの真ん中へ吹っ飛ばしにいくわ!」
 更なる高空から村を見渡したシルからの【パラドクス通信】越しの声音に嬉々と応えた細が白き無双馬を駆って迷わず西へ馳せる。操られ追い立てられ吹き飛ばされ、気づけば残った鉢屋衆どもすべて、彼らが破壊した穴窯の前にディアボロス達が描いた環の中だ。然れどこの鉢屋衆どもの往生際が良いはずもなく、
『ううむ、折角の若菜摘であったのに、よもやディアボロスの横槍が入ろうとはの……!』
「若菜摘ってのは本来、大事な人の息災を願いながらするんだよ! 村人にとって災厄そのもののお前らが言うな!!」
 大弓から射かけられる矢と交錯させるよう朱士が撃ち込んだ焔の鳥が吼え猛る彼の怒りそのまま激しく爆ぜれば、こちらも焔を揮う荊か憤怒の焔を閉じ込めたように双眸をぎらつかせ、鉢屋衆どもへ銃口を突きつける。
 ――圧政が為に芽吹く若菜は此処で燃やし尽くす。
「嗚呼、若菜摘が息災を願うものだってなら丁度いい。てめぇらを刈り取り、灰に還す事が厄払いになるってもんかねぇ?」
「いや、こいつらを若菜と呼ぶのは野の草花達に失礼かもよ? けれど、それでも」
 連射された銃撃が鉢屋衆どもを貫き紅蓮の炎に呑み込んで反撃ごとその命を灼き尽くせば、口許に笑みを敷きつつも蜜色の眼差しには戦端を開いた折のままの剣呑さを煌かせたノスリの刃が更なる一体の喉を喰い破った。
 ――人々の暮らしを踏み荒らしたその罪咎を、
 ――ここで刈り取って根絶やしにしてしまおうか。
 既に鉢屋衆どもに退路はなく、彼らに叶うのは破れかぶれで突破を図るか、せめて一矢報いんと足掻くのみ。先程勢いよく吹き飛ばされてきた鉢屋衆が渾身の射撃で紅玉の瞳を狙えば、冬風を貫いたその矢を反射的に揮った大剣で顔から肩へと矢を逸らした細のかんばせがたちまち怒りに染まった。
「……!! いくら悪足掻きったって! 顔狙うとか許さない、地獄見せたげるわ!!」
「――あ。女優の容狙ッちゃ不味いな、左様なら」
 墨染の双眸にちらり憐憫を過ぎらせつつも薄笑みで紬が合掌した刹那、一瞬で百里を駆けるがごとき凄まじい勢いで愛馬と吶喊した細の大剣の一撃が最後の鉢屋衆を盛大に宙へ吹き飛ばした。然れどこれで終わりではないと見て取れば、ラヴィデの銀の双眸と長弓の竜眼めく宝玉が憐れな獲物と冬空を映す。
「追い立てられる側の恐怖、少しは味わえたかい?」
 ――それじゃ、もう退場してどうぞ。
 最早二の矢は必要ない。
 確実に終焉を齎す彼の一射絶命(イッシャゼツメイ)が鉢屋衆の命を見事射抜いてその機械の躯を砕け散らせる様は、宛ら村人達に戦いの終わりを報せる花火のようだった。
 
 ――新年を寿ぐ前に、
 ――穢れを祓って来るよ。
 冬空で鉢屋衆が砕け散る様は多くの村人達に見えたのだろう。鉢屋衆どもの襲撃からずっと村中に響いていただろう喧騒が収まれば、恐る恐る穴窯の前に現れ、自分達には抗うすべのなかった天魔武者どもが斃されたと識ればたちまち顔中に精気を甦らせ、朗らかに笑んだノスリが圧政部隊丸ごと潰してくるからとひらり手を振れば、
「食糧が略奪されてしまっているのですよね? 必ず奪還して参りますから、どうか諦めずにいてください」
「任せて。オレたち、強いから」
 村の長と思しき男性の手をそっと取って穏やかに語りかけたヤコウが微笑んでみせ、内心で胸を撫で下ろしたラヴィデが、屈託も衒いもない笑みでやはりひらりと手を振ってみせる。
 襲撃の痕跡を辿り、今より向かう先は圧政部隊の拠点。
 部隊すべてを殲滅したなら村に帰還して、皆で新年の寿ぎを。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【熱波の支配者】がLV4になった!
【飛翔】がLV6になった!
【完全視界】LV1が発生!
【ハウスキーパー】LV1が発生!
【無鍵空間】LV1が発生!
【泥濘の地】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
【スーパーGPS】LV1が発生!
【植物活性】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】がLV3になった!
【反撃アップ】がLV2になった!
【グロリアス】がLV4になった!
【フィニッシュ】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV8になった!
【ダメージアップ】がLV5になった!
【ガードアップ】がLV4になった!

●胸中成竹
 真冬の寒風が清しさを増した。
 鉢屋衆どもを殲滅した伊賀焼の村から天魔武者どもの往来の痕跡を辿りゆけば、彼らの足跡や荷車と思しき轍の跡は冬にも清しく青々とした竹林へと続き、その痕跡を道形に追えば竹林が開けた先には打ち捨てられたと思しき廃寺を見出せた。
 恐らく現代には記録すら残っていない廃寺であろう。
 然れど天魔武者どもの痕跡が山門の内へと続いていくその廃寺はかなりの規模を備えたもの。それなりに距離を取ったまま山門の内を窺うだけでも本堂前に広い前庭があることが確認できた。トループス級の天魔武者『伊賀忍者』達の姿も。
 この廃寺が今回の圧政部隊の拠点であることは疑いようがない。
 村から略奪された食糧も本堂なり蔵なりに仕舞い込まれているだろう。
 無論、食糧奪還は敵すべてを殲滅したあとのことだ。

 鉢屋衆どもがそうであったように、この拠点にいる天魔武者どももまた、ディアボロス達の襲撃があるとは考えていない。カラクリ砦とは無関係の地であればディアボロスに気取られることなどなかろうと高をくくっているのだ。とは言え、境内に多数いると思しきトループス級が『伊賀忍者』である以上、様子を窺うなどで時間を費やせば察知される可能性が高い。
 こちらに気づかれていないという利を活かすなら速攻で急襲すべきだろう。
 山門に扉は無く、そのまま突入も可能。
 また、廃寺の広大な境内は、多少崩れかけているとはいえ土塀に囲まれているものの、【飛翔】が燈されている現状ならば何の障害にもなりはしない。
 境内ではなく敵を竹林へと誘き出しての戦いを好む者もいるかもしれないが、こちらは得策とは言い難い。無論、こちらを得策と成す妙案があるなら話は変わる。いかなる策を採るかはディアボロス達次第だ。
 唯ひとつ確実なのは、境内を急襲して戦うか、敵を竹林へ誘き出して戦うかのいずれを採るのかは、あらかじめ皆で意思を統一しておいたほうがより良い結果を得られるだろう、ということのみ。

 ――いずれを採るにせよ、速攻で仕掛けるならば、
 ――戦いの幕を開けるのは天魔武者どもではなく、こちら側だ。
 
アンゼリカ・レンブラント
急襲場所:境内
パラドクス通信で突入タイミングを合わせ、
みんなで仕掛けるよっ

≪山門班≫
私は地上戦を挑むね!
ダッシュで斬り込みパラドクスの閃光と衝撃波とで攻撃!
反撃を凌いだらすかさず一撃離脱、
違う角度から切り込んでいくと
足を使った左右に揺さぶる動きを意識し、
かく乱を狙いつつ攻撃していこう
低空での飛翔も駆使していくね

上下に動く空中組の仲間の動きと合わせれば、
敵軍の混乱も深くなると幸い
忍者たちはこんな動きはしないのかな?

仲間とはしっかりディフェンス
苦手属性を補いあい、長所で受け止め
そしてパワフルに反撃を狙う!
これがディアボロスの連携だよっ

さぁ、呼吸を整えめいっぱい力を溜め
《光剣閃波》で殲滅していくよ!


シル・ウィンディア
急襲場所:境内

さて、勢いをつけてこのまま行くよっ!
わたしは降下班で空中から境内へ急襲っ!
突入時、パラドクス通信でみんなと突入タイミングを合わせていくよ!
突入しつつ、敵を見つけたら高速詠唱からの裂空絶砲。

そのまま上空で戦場をよく見ていくね
気づいたことはパラドクス通信で情報共有
集団から離れたところの敵が味方を攻撃しようとしたら
そちらに向かってパラドクスを撃っていくよ
撃ちながら、みんなに注意を呼び掛けるね。
…倒してもいいんだよね?

ディフェンスは積極的に行って、攻撃手番を増やしていくよ

空中での機動は上下も意識して
猛禽の動きを取り入れて一撃離脱の強襲も行っていくよ
空中戦のいい先生もいるし、吸収しないとね


ユーフェミア・フロンティア
私は降下班で空から境内へ急襲を行います。
パラドクス通信での合図が入ったら
皆さんに遅れないように移動し空中から攻撃。
狙いは皆さんの攻撃した敵に向って神火破魔陣を使用します。

初撃を撃った後は地上で戦闘を行いますね。
狙う敵は、皆さんの攻撃が集中している相手を中心に狙います
少しでも数を減らして有利な状況を作らないとっ!
囲まれそうになったら飛翔の効果で上空に離脱
飛翔時は上下の移動をしっかり取り入れます。

ディフェンスで庇われたら、お礼を言って体勢を立て直しますね
まだ、庇うことは出来なくても…
それでも、出来ることはあるからっ!だから気持ちだけは負けないよっ!
パラドクス通信で気づいたことはしっかり情報共有です


ノスリ・アスターゼイン
急襲場所:境内

さぁ行こうか

飛翔し、降下
通信で他班とタイミングを合わせ
天地の二方向から突入
敵部隊の混乱を招く

陽を負う影を認めた時にはもう
猛禽の爪の餌食だ
鮮やかな一閃を目に焼き付けてあげよう
それとも引き裂かれる方が好み?

低空飛行や上昇を駆使し撹乱
空からの俯瞰も交え全体の戦況把握
死角を補い、カバーとフォロー
声掛けで皆と連携
霧ごと刃で散らして弾いてダメージ軽減

勿論ディフェンスも積極的に――獲りに行く気概、良いじゃないの!

仲間達と交わす眼差しには笑みを燈し
視線を合わさずとも知れる動きは培ってきた絆の証
共に畳み掛ける連撃は爽快なほど
文字通り霧散させよう

さぁて
指揮官殿のお出ましだ
あんたはどんな散り様を望む?


花柳・細
現地へは飛翔でちょっぱや!
突入は通信で機を合わせ
私は山門班で境内急襲っ

白に跨り踵と蹄をカツン
気ぃ抜けた忍者達驚かしに行くわよっ
GOを聞けば夙く疾く速攻!

あっは!お邪魔様ー!
忍ぶ暇無く押入られるってどんな心地?
伊賀者サンッ

声高く自身に意識向け隙作り
味方の死角や侵攻も補い助けるように
余所見厳禁よ
万華の桃花へ釘付けにしたげるッ

伊賀と聞けば甲賀、近江も浮かぶ
対な忍びと“そこ”は繋がるかも――と

鋭き眼光先見据え
切開くべく霧払い薙ぐ槍
流させた涙の分濁流の如く蹂躙するわ
村人への晴れ、我道の先
其の糧んなんなさいッ

連携やディフェンスも積極的に
庇わればっかは性に合わないのよッ
んっふ、天下無敵でしょ――見惚れた?


永辿・ヤコウ
急襲場所:境内

パラドクス通信の合図で別班とタイミングを合わせ
飛翔後、降下
混乱に惑う忍者達を針の雨糸で地に縫い付ける

さぁ、どうぞ
好機です

攻撃を繋ぎ、己もまた受け継いで
確実に倒していこう

長針で大振り小振りに威嚇し惑わしつつ針雨で穿ち
時に飛翔も交えて視野を広く
戦況把握と声掛けによる連携を密に
死角を補うなどフォローにも入ろう

ディフェンスも、そう、「獲りに行く」んです

霧をも晴れさせてしまえとばかりに笑み綻ぶ
共に学び成長しあえることが嬉しく誇らしい

此の場の誰もが春を呼ぶ使者のよう
華やかに朗らかに
大地を空を翔ける姿に
耀く生命力を感じるから

そして
『虫』も目覚める季節ですね

大将の姿へ
針先を
眼差しを
ひたりと向ける


ラヴィデ・ローズ
急襲場所:境内

オレは飛翔→降下して急襲側
パラドクス通信でタイミングを合わせ一気呵成に
『レゼル(長剣)』携え
飛び込みざまパラドクスと残像で掻き乱すとともに
先行率アップを重ねて、突入時の勢いで皆で畳み掛ける為の土台作りも、ね

以降は地を駆け斬り結ぼう
山門からの攻撃もあって、相手方も見る先が多くて大変なんじゃない?
こちらは通信の情報共有を密に敵数を減らそう
炎風伴う斬撃で霧を払う他
残留した完全視界が敵の霧にも活きるなら看破に活かすも
ここで全て片すのは同じこと
来る春の為
いずれにせよ、分身ごと斬り伏せる意気でいる

ディフェンスは『獲りにいく』んだったね?
反撃に繋げるのも
ヒトらしく、学び挑戦していこうじゃないか


空木・朱士
戦場は境内と定め、突入時は山門側と空中側の二班に分かれタイミングを合わせて急襲。

俺は山門から飛翔を低空で使用し一気に境内へ躍り込み
先ずは手近な敵をぶん殴り

お前らが持ち去った食糧は、村の人達の大事な日々の糧だ!返してもらうぜ!

パラドクス通信で常に情報共有し合い、現状把握。
互いにフォローし死角を補い、積極的にディフェンスし合う事を意識して動く。

飛翔を機動力と活かしフットワーク軽く、打てば響くの心意気で仲間と連携し駆け回る。

手裏剣には真っ向拳で迎え撃ち、霧に紛れたって空気が動けば必ず知れる。簡単には惑わされねぇよ。
何より俺達はお前らとは絆が違う!

百足なら冬眠の時期だぜ。
さっさと土に帰ってもらおうか?


織乃・紬
皆で駆けて、畳み掛ける
痺れちゃうねエ、こう云うの!

境内で急襲
機を合わすべく通信は確と
《飛翔》で低空飛行のまま
山門班として地上をゆこう
一塊で進み、直前で分かれ
声掛けで合わせ飛び込み
急襲+攪乱で畳み掛ける

大蛇の御届けでえ~す
サービスしてやッからさア
食糧と交換しようじゃない

不意打ちとばらまく折紙蛇
大蛇と目合う敵の動き止め
次に繋げるように、連携
隙有る敵は牙で喰らわせ
数次第では蛇身を絡ませ
数多の蛇で蹂躙してゆく

飛翔活かし、空へ回避しつ
ディフェンスは積極的に試み
己が間に合わずとも蛇で受け反撃
負担と消耗を抑え、隙を補い合う
――イイね、惚れ惚れしちまうよ!

蛇は百足の天敵ッつウけども?
俺達ゃ更に強敵よ、ッてね


逢魔・荊
急襲場所:境内
急襲は【パラドクス通信】で突入タイミングを合わせる
山門班として地上から往く

ハハッ、たしかに
急襲を受けて忍び不意を突く奴らがどんな顔すんのかは楽しみだ

合図出たら速攻を
【飛翔】使用し
低空飛行で一気に駆ける

驚く間も与えんよ?
忍者共を焦がさんと握った”魔晶剣「劫焔」”を振り下ろす
<嘆獄ノ火焔>斬撃と火炎使いを組み合わせ
焔が迸る剣先で敵を素早く穿つ!――燃え散れ

急襲後
素早く仲間のフォローに回る

臨機応変に炎手繰り
敵の反撃から味方のカバーに務める
引き続き戦場の情報共有し”連携&ディフェンス”は積極的に
少しでも敵に隙を作って仲間の攻撃の好機に繋げたい


レックス・ウェリタス
急襲場所:境内

現地までは飛翔で素早く、心地は電脳世界を奔るよう
タイミングを合わせての奇襲
僕は山門班のみんなと一緒に低空飛行で
境内へ失礼するよ

土塀は避けるか越えて通り
見えたものは凡て共有し
戦いの中で死角は作らせぬようにを意識

奇襲には目眩ましとして
レグルスと相棒を呼び、昔の音で頼み事
絆…隣のお前さんと同じ響きの耀
敵の精神を蝕む光だけど
仲間にはやさしい光であって欲しいな

僕自身も情報収集を元に計略を組み立て時間稼ぎを
耀に精神攻撃を重ねて
防御には完全視界で霧を抜けて結界術の展開
ディフェンスも前回を生かし無理なく立ち回ろう

陰陽師って格好良いね、紲
隣へ高揚を添える紡

踏み躙るなら踏み躙られる覚悟
――有るよね?


秡木・紲
現地までは飛翔で
通信でタイミングを合わせて
地上と空から境内へ一気に急襲だ
わたしは山門班の皆と地上から突入するよ

やあ、ちょっとお邪魔するよ
ここを通して貰うために…ね!
味方との連携密に、自分の得意属性で
味方の死角を補っていけるように
出来る所からちょっとずつ、ね

レックスさんとレグルスさんが敵を
攪乱する動きに合わせて
敵の隙を作り出せるよう
霊符と杖で遠近織り交ぜて攻撃
隙を見出したなら味方と呼吸を合わせて
一気に畳みかけるよ

言の葉に力を乗せて言の葉を現実に
紡ぐ言葉は敵を蝕み、死に至らしめる呪詛
わたしも、一応陰陽師の端くれだからさ
――レックスさんこそ、お見事

さあ、後は、取り返してさ
村に届けてあげよう


咲樂・祇伐
※連携歓迎
急襲場所:境内

皆を守ってと希む

飛翔し皆に続き
通信で山門班と連携を密に
タイミングを合わせ降下
空より急襲

朱夏

夏の季には遠い故
此度は春雷とでも
魔法を重ね連続で穿つ
どうぞ惑って

後は地上に降り
飛翔も織り交ぜ状況を観察
声掛けや通信にて連携を図りフォローも積極的に行い補い合う
連携を意識し攻撃を絆ぎ倒していく

人々の糧を取り戻し
涙が流されぬ様に
忍ぶ憂いを霧と消す

返る攻撃は結界と魔法で受け
吹き飛ばす勢いで力を重ねダメージの軽減を図り

ディフェンスも積極的に
守られる分
守りたい
力になりたいから

共に力を心を重ね
災に抗い挑むひとの姿は強く尊く
愛おしい
どうか識って
学ぼ
一緒に

立ち塞がる百足を
祓うわ
皆の心に春が咲く様に


竜城・陸
境内へ急襲ををかける
此方に気付く隙を与えないよう
時間は掛けずにいこう
最高速度を維持しつつ
【パラドクス通信】でタイミング合わせて突入

こちらは【飛翔】で空から
突入と同時、味方と息を合わせ標的揃え
手の中に生み出した光槍を一閃

どうしたんだい、間の抜けた顔をして
なにも不思議などないさ
“お天道様は見ている”と言うだろう?

投擲も近接戦も自由自在
光槍の特性生かし
空中からの俯瞰や狙撃も織り交ぜつつ
全体の援護を主に

相手の反撃を捻じ伏せる気概で
攻撃は研ぎ澄ませ

ディフェンスも積極的に、果敢に取りに行き
皆の負傷を防ぐばかりでなく
反撃で確りと痛打を重ねていくよ

ひとつとて取り逃さず
首魁との戦いに憂いなきよう

さ、覚悟はいいね


咲樂・神樂
※連携歓迎
急襲場所:境内

君が希むなら

山門班として飛翔による低空飛行を駆使し迅速に現場へ急行
孤立や足並みを乱し不利益になり得る行動をせぬよう認識齟齬は適宜臨機応変に対応修正

通信によりタイミングを合わせ突入

仕事の時間だ

天と地双方からの強襲による撹乱を狙い敵の殲滅を行う
以後
皆と通信連絡・フォロー・連携を密に行い状況把握と適切な補佐に務める

奪った糧は返して貰う
呪詛を込めた斬撃と共に放つは蝕
忍ぶ霧ごと残さず喰らえ
斬撃を重ね両断し衝撃波で霧払いを試みる
連携は特に意識し攻手を繋げ協力し各個撃破
積極的にディフェンスを行い守られたなら礼を
反撃は結界と斬撃で削ぎ軽減を図る

君が希むなら

憂いの元凶を断ち
春を咲かせねば


捌碁・秋果
急襲場所:境内

私は《山門班》。
パラドクス通信で連絡をとりあい、《降下班》とタイミングを合わせて襲撃。
パラドクスで生み出した幻影と一緒に突入し、槍で敵を薙ぎ払います。

戦いつつ仲間の様子は気にして、誰も孤立しないように立ち回る。
可能ならば仲間と連携して攻撃。

ディフェンスは同じ山門班の人達に対して行います。
相手を絞った分積極的に、しっかり守れるように。

敵の反撃は分身の術?
分身が霧に映った姿なら、よく観察すれば分かりそう。
僅かでも彩度が違えば、風で霧がゆらいで輪郭がぶれればきっと分かる。
――不確かなものの傍らには、確実なものを。
刺さりっぱなしの言葉を唱えて精神集中。惑わず看破してみせる。


●疾風迅雷
 ――どうか、皆を護って。
 ――君がそう、希むなら。
 凛と清冽な緑の現世、真冬の竹林を渡る寒風を救援機動力の導きで疾く突き抜けて、咲樂・祇伐(花祇ノ櫻禍・g00791)と咲樂・神樂(離一匁・g03059)が眼差しのみで意を交わすと同時、二人とともに翔ける捌碁・秋果(見果てぬ秋・g06403)が伊賀焼の村から天魔武者どもの痕跡を辿って先行していた仲間達の姿を捉えて笑みを咲かす。機を併せて皆で境内を急襲する策も既に【パラドクス通信】で共有されているから、
「お疲れ様です、私達もこのまま行けます!」
 意気込む秋果の声音が届いた瞬間に、華やぐ笑みと夜明け色の装束を躍らせた花柳・細(非花・g07664)の姿は愛馬の背、
「戦力増強、これで一段と怖い物なしねっ! それじゃ、気ぃ抜けた伊賀忍者達を驚かしに」
「ほんと、頼もしいことこの上ないね。驚かせて綺麗さっぱり殲滅しに――さぁ、行こうか」
 愉しげな笑みを燈したノスリ・アスターゼイン(共喰い・g01118)が【パラドクス通信】のインカム越しに告げた刹那、
 天地からの嵐が廃寺の境内を震撼させた。
 清閑たる竹林が開けた先に座するは広大なれど打ち捨てられて久しいと思しき廃寺、その上空と山門からの急襲はまさしく青天の霹靂。冬空に輝く陽を背に負う猛禽の影を機械の単眼が認めた時にはもう、
「喰い破られるのと引き裂かれるの、どっちが好み? なんて」
「あはは、応える暇もなかったねぇ。御愁傷様、忍者くん!!」
 蒼穹から天雷のごとき全速の【飛翔】で急降下した猛禽の爪の一閃が天を仰いだ伊賀忍者の単眼から後頭まで貫いていた。今この場で自陣最高火力を誇るノスリのAmmit(アメミット)が獲物の反撃も次撃も命さえ喰らい尽くして屠った瞬間には、紫闇の旋風さながらに冬空から敵勢へと飛び込んたラヴィデ・ローズ(la-tta-ta・g00694)が薙いだ長剣から迸った風と呪炎が彼の残像とともに乱舞して天魔武者どもへ襲いかかり、
「いいですね、問答無用の一気呵成と参りましょうか」
「うんっ! この勢いのまま一気に攻め落としちゃうよっ!!」
 青天に黒き狐尾を翻して針雨とともに急襲する永辿・ヤコウ(繕い屋・g04118)が黒風白雨を文字通りに体現したならば、朔風へと一瞬で魔法陣を咲き誇らせたシル・ウィンディア(虹霓の砂時計を携えし精霊術師・g01415)が数多の風の魔力弾を驟雨のごとく叩き込む。空から突如襲いかかった嵐が光も風も炎も雷も綯い交ぜに荒れ狂うが、それは上空と同時に山門から突入した嵐も同じこと。
 古色蒼然たる山門からは眩い夏陽の輝きが咲き溢れた。
「遠慮なし容赦なしで行かせてもらうよ! 私達はひとびとを虐げるお前達を赦さないっ!!」
「無辜のひとびとを思いのままにできると思ったのがお前さん達の間違いだよ。それを思い知ってもらおうか、レグルス」
 真冬の凍気すら払う輝きは瞬発力に優れたアンゼリカ・レンブラント(光彩誓騎・g02672)が山門を突き抜け境内の敵勢に斬り込むと同時に迸らせた苛烈な閃光と衝撃波、間髪を容れず更なる耀きの波濤で伊賀忍者どもを呑み込んだのはレックス・ウェリタス(Memento mori・g07184)が望むままに黒翼白翼のスフィンクスが解き放った惑乱の光で、
「あっは! お邪魔様ー! 忍ぶ暇も無く押入られるってどんな心地? 伊賀者サン達ッ!!」
「やあ、ちょっとお邪魔するよ。ここを通して貰うため、君達に斃れて貰うために……ね!!」
「大蛇の御届けでえ~す! サービスしてやッからさア、そッちが持ッてッた食糧と交換しようじゃない!!」
 鮮烈な二重の輝きの裡から爆ぜるような勢いで躍り込んだのは白き無双馬を駆り碧き綿津見の槍で伊賀忍者どもを薙ぐ細、真白と紺碧の荒波を思わす吶喊の左右からは数多の霊符と折紙が波飛沫か花吹雪のごとく舞い、秡木・紲(選日・g07946)が操る言霊のパラドクスを燈した霊符が細の槍に薙ぎ倒された一体を仕留めれば、戯言めかして織乃・紬(翌る紐・g01055)が笑むとともに折紙の蛇から生じた幻の大蛇達が忍者一体を丸呑みし、更なる三体に蛇身を絡みつかせては絞め上げ、山門から猛然と爆ぜた嵐もまた光も風も蛇も炎も輝ける金翅鳥の群れも綯い交ぜに荒れ狂う。
 機も意も全員で完璧に揃えきった天地からの急襲は、唯のひとつも反撃を許さなかった。
 瞬く間の蹂躙は廃寺の境内、本堂の前庭に詰めていた伊賀忍者どもの半数を一気に屠り、
『敵襲! 敵襲だ、ディアボロスどもを迎え撃て――!!』
『物見など要らぬとぬかしたのは誰だ! よもや拠点へ急襲を仕掛けて来ようとは、侮りがたし! ディアボロスども!!』
 天地から襲いかかった迅速にして苛烈な嵐が敵勢に混乱と動揺を齎した機を逃さずに、
「どうしたんだい、そんなに慌てふためいて。なにも不思議などないさ。『お天道様は見ている』と言うだろう?」
「ハハッ、いい見ものだな! てめぇらのそのでっけぇ眼が派手に明滅すんのはさ!!」
 青天からの急襲時に初撃で一体を葬り去った竜城・陸(蒼海番長・g01002)が再び掌中に咲かせたのは曙光の戦槍。危急も焦燥も露わに単眼を明滅させる機械の忍びが脚部から霧を放出する暇も与えず奔らす光の鋩が空色の装甲の胸を貫き反撃をも捻じ伏せれば、陸が撃ち込んだ光槍を追うよう翔けていた逢魔・荊(Dusk・g05721)が不敵な笑みとともに閃かせるのは紅く昏く輝く魔晶剣、先の戦いでは銃弾に凝らせていた憤怒の焔を此度は刃へ凝らせて、山門からの急襲時と同じく焔迸る剣閃で敵勢を薙いだ。
 だが敵は不意打ちや戦闘知識に長けた忍者達、瞬時に態勢を立て直したのか焔と交錯した反撃の手裏剣が荊の肩を左右から抉るも、それと同時に彼の焔は光槍に胸を貫かれていた忍者一体の首を飛ばす。一瞬強く光った単眼から輝きが失せる。機械生命体かつ単眼覆面の容貌たる伊賀忍者達、彼らの顔色や表情があからさまに変わることなどないのだろうけれど、この様を見られただけでも痛快な心地。
 逢魔が時の双眸に冷たい光を奔らせて、伊賀忍者どもが霧を放つならば霧ごと喰らえとばかりに黄昏の残照のごとき金色に輝く幻の金翅鳥の群れを一気に湧きあがらせるのは神樂、
「急な訪問で申し訳ないが、私達の用件は極めて単純でね。君達を殲滅して、奪った糧を返してもらうよ」
「そういうこった! お前らが持ち去った食糧は村の人達の大事な日々の糧だからな、返してもらうぜ!」
 真摯に任務に当たるならと鳴りを潜めた普段の主の華やぐ口調の代わりとばかりに艶やかに、然れど残酷に羽ばたく輝ける幻鳥の群れが焔に灼かれた一体を喰らい尽くせば鳥達と瞬時に交錯した霧に紛れた更なる敵が斬り込んでくるが、
 咄嗟に閃かせた血桜の太刀で神樂が忍者の反撃の威を鈍らせた刹那、真紅の籠手で覆った両拳に紅蓮の焔を燃え上がらせた空木・朱士(Lost heart・g03720)が命中強化の加護を得た強打で神樂と斬り結ぶ敵を反撃ごと地に叩きつけて仕留め、返す刀ならぬ返す拳で反撃の手裏剣ごと砕かんばかりの猛撃を更なる獲物へ叩き込めば、
『義侠でも気取るつもりかディアボロス! 無くてはならぬ糧だなどとは百も承知よ、なればこその略奪ゆえにな!!』
 反撃の機を逸した相手が間合いを取って攻勢に移らんと吼えたものの、先手を獲る加護を齎す風を掴んだレックスが翼猫を羽ばたかせるほうが速い。相棒が解き放つ惑乱の耀の眩さではなく今の忍者の言葉にこそ深緋の双眸を眇め、
「成程ね。お前さん達、天魔武者が飲み食いを必要とするのか否かは識らないけれど……少なくとも今回は」
 ――食糧が必要だから略奪したわけじゃなく、
 ――村人達に『圧政』を味わわせるため、それだけのために略奪したってわけだ。
 研ぎ澄ませた情報収集の技能でそう読み取った彼の呟きが【パラドクス通信】越しに耳へ届けば、
「……!! そんな! 自分達が食べるためならまだしも、ただ圧政を味わわせるためだけの略奪だなんて……!!」
「尚更許せませんっ! 村の方々の生きる糧も心の安寧も、絶対に取り戻させてもらいますからっ!!」
 誰よりも速く敏感に憤りの花を八重に千重に咲き誇らせたのは祇伐とユーフェミア・フロンティア(光彩聖姫・g09068)。冬空から鳴神の嵐と神火の陣とともに舞い降りての急襲を仕掛けた少女達は今それぞれ桜も鈴も咲く鍵杖と紅蓮の宝珠を戴く聖杖を手に境内の地を馳せて、各々が奉ずる神威を花開かせる。
 無論、略奪した食糧には城の普請で酷使する民草の糧食とするといった使途もあるのだろうが、それとて二の次、三の次。ただ純粋にひとびとを苦しめるためだけの略奪なのだと察すれば春の宝石めく二人の瞳にはより強い煌き燈り、祇伐が鍵杖を揮えば青天からは黄金の雷が忍者達を討つべく降りそそぎ、ユーフェミアが聖杖で薙げば紅蓮の神火が大地を奔って忍者達を滅すべく囲い込んだ。爆ぜる雷、燃ゆる焔、眩い神威の輝きの裡からは反撃の霧が溢れくるけれど、
 一気に視界が澄み渡る。
「こんなこともあろうかと――なんて、鉢屋衆戦で【完全視界】を燈しておいたよ。皆、使って!」
「わ、準備ばっちりだね! 私達は皆で戦うからこそより強くなれる。これがディアボロスの戦いだよ、伊賀忍者ども!!」
 敵勢が解き放つ霧はあくまでパラドクスを揮う瞬間のみの一過性のもの、戦場に長く留まり続けるものではないが、数多の忍者が霧の技を駆使するなら視界が霧に覆われる機会は少なくはなく。自然の霧ならざるパラドクスの霧なれば完全に見通すことこそ叶わないが、それでも、ラヴィデが燈した【完全視界】があるのとないのとでは戦いやすさがまるで違う。
 鳴神と神火、二連の神威に呑まれた忍者どもは反撃を放つと同時に斃れたと瞬時に見抜けば紫闇の竜は即座に新たな獲物を見定めて、己が重ねた先手を獲る加護を齎す風とともに地を蹴る跳躍ひとつで彼我の距離を殺した。先の戦いでは弓であった彼の呪われし『翼』は今この場では紫闇の刃に呪炎を纏う長剣として閃いて。
 爆ぜるよう溢れた霧が数多の敵影を映すも、
「惑いやしないよ、分身ごと斬り伏せるだけ」
 笑ってラヴィデが銀の双眸を細めたなら、巨竜の羽ばたきめいた剣閃が迸らせる紫黒の炎風が忍者三体をその霧と反撃ごと斬り飛ばし、息つく間も与えず横合いから強襲したアンゼリカが揮う光剣の斬撃が圧倒的な輝きと威力を孕む閃光と衝撃波で炎風に呑まれた三体を屠って、更にもう一体へと襲いかかった。先の戦いで積み上げられた数多の加護はこの戦いでいっそう高められ、自分達の更なる追い風となってくれるから、
 皆と翔ける心強さに光剣をひときわ強く輝かせ、光彩誓騎はより鮮烈な剣閃を迸らせる。
 鮮やかに地上で花開く相棒の輝きに上空で笑みを咲かせて、
「鐘楼の向こうから三体来るよっ! でもこの新手、こっちで倒しちゃってもいいんだよね?」
「あはは、頼もしい! どんどんやっちゃってください! もしもしぶとく生き延びる敵がいたなら」
「こっちで灼きつくしとくぜ! 援護するから思いきりぶちかましてやってくれ!!」
 打ち捨てられてなお緑鮮やかな松や柘植、それらに彩られた前庭を見下ろす青空の眼差しが新手の敵影を捉えたなら、皆へ即座に【パラドクス通信】で伝えたその途端にシルも魔法陣を花開かせた。高速詠唱とともに朔風を突き抜けながら連打する風の魔力弾、自身が重ねた命中強化と元来の高火力、それにいっそう高められた攻撃強化も相俟って、
 青天から忍者達三体を強襲した数多の風礫の驟雨が一体の急所を完璧に捉えて打ち倒せば、肩や胸を強かに打たれて反撃を捻じ伏せられた二体が攻勢に出るより速く秋果と荊が馳せる。爆ぜて風に還るシルの魔力弾、その余波が消えるより速く飛び込んだなら葡萄色の靄が秋果そのものの幻影を咲かせて、幻を囮に瞳と同じ藍色に染まる長柄を揮えば鈍色に煌く偃月の刃が忍者どもを薙ぎ払い、
 ――燃え散れ!!
 熾烈な焔を宿して輝く魔晶剣の一閃から迸らせた憤怒の焔を火炎使いで鞭のごとく撓らせて、冷たい朔風をも焦がしながら忍者どもを打ち据えれば命ごと彼らが燃え散るとともに、仲間が最大域まで重ねた【グロリアス】が荊の傷を癒してくれた。
 戦場に吹く追い風に乗るように蒼海の竜が上空へ舞い上がる。地を馳せるも天を翔けるも自在な陸の眼差しは常に視野広く的確に全体の戦況を見極めて、柘植の茂みに潜む敵を黎明の双眸が認めれば即座に光の鋩で狙い撃つ。
「本堂の裏手に蔵があるからね、其方や本堂の中からも増援が来ると思う」
「ええ。ならば此方でも全員釣り出して殲滅といきましょう」
 夜闇を貫く暁光のごとく研ぎ澄まされた光槍が命中強化も得て反撃ごと伊賀忍者を捻じ伏せたなら、陸の挙動で茂みの敵を見定めたヤコウが瞬時に降らしめた針雨で仕留め、【パラドクス通信】越しに笑みを交わせば再びそれぞれに天地を翔けて。鐘楼の奥から瘴気や霧とともに躍り込んで来る敵影を宵紫の眼差しで捉えれば妖狐は一気に跳んだ。
 荒ぶ瘴気は仲間達が重ねた敵勢を蝕む【ロストエナジー】、然れど霧は忍者どもが此方を惑わすためのものだから、瞬時に大きく溢れた霧が映す分身の敵影がシルと荊を囲い込んだ瞬間に斬り込んだなら、漆黒の妖狐とともに飛び込む紫闇の影、
「ディフェンスは『獲りにいく』んだったね?」
「そう、こうして攻めに出る勢いで『獲りにいく』んです」
 阿吽の呼吸と称するよりも容易く自然に機も息も合わせて、ヤコウとともに仲間の盾となったラヴィデが愉しげに口の端を擡げれば、霧さえ晴らさんばかりに咲き綻ぶ妖狐の笑み。数多の分身に紛れ打ち込まれる刀と交錯する長剣と長針、敵攻撃の威を反撃強化の加護で鈍らせた刹那には、剣先から炎風が躍り銀針が示すままに降る針雨と合わせて忍者の命を喰い破る。
 輝く【グロリアス】の栄光、この効果が対集団戦の様相を劇的に変化させたように、自分達の戦いはまだまだ変わる。己を磨くことを意識して戦場を翔ければよりいっそう研ぎ澄まされていくから、同じ戦場を馳せてともに学び成長しあえる歓びが誇らしさをもヤコウの胸の裡に花開かせて。
 苛烈な反撃の勢いのまま更なる獲物へ攻勢をかける二人へ本堂脇の陰に潜んでいた敵が巨大な手裏剣を打ち込んで来るが、冬空を翔ける猛禽がそれを見逃さない。一気に降下し鐘楼の石垣を蹴りつけて方向を転じた全速低空飛翔で刃を一閃すれば、
「獲りにいく気概、良いじゃないの! 護るも攻めるも意識次第、ってことなら」
「ははア、確かに攻め獲る気概でいくほうが気分もあがるッてモンだ!」
 同時に飛び込んできた紬が振りまく折紙から生じた大蛇が牙を剥く。敵の攻撃を喰い破らんばかりの猛禽の爪と大蛇の牙が最大域に達した反撃強化も重ねてそれぞれ手裏剣の威を半減し、勢いを増した反撃で瞬く間に敵を葬り去る。ディフェンスを守勢でなく攻勢の戦術と成すのはノスリにとっても既に馴染みの戦い方、魂の芯から湧きあがるようなこの爽快感を覚えれば紬も墨染の双眸を愉しげに煌かせ、新手の敵勢を認めればその瞬間に、先手を獲る加護を齎す風に数多の折紙を躍らせた。
「世には蛇喰鷲なンて猛禽もいるッて聴くけど、俺の大蛇は食べないでねノスリちゃん!」
「あっは、勿論! 大蛇と共闘する機会もなかなかないしね、ここは一緒に忍者達を喰い破るところ、ってね!」
 一気に地に満ちて鎌首を擡げる紬の大蛇達、交わす軽口の小気味よさに二人で笑えば迷わず敵勢に躍り込み、幾多の大蛇が強力に絞め上げた忍者四体のうち最も派手に装甲へ亀裂を咲かせた一体を蜜色の眼差しが見定めれば、鋭い嘴爪が獲物の首を引き裂いて。皆で幾重にも積み上げた数多の加護と、仲間達と互いに結び合う連携があるのなら、【グロリアス】の癒しのみならず【ドレイン】で敵の命を喰らって己の痛手を霧散させるのさえも容易いこと。

●勇往邁進
 一瞬で境内を翔ける風となる。
 翔ける速度のままに視界の両端を流れる緑のひとつが沈丁花だと気づけば妖狐は艶めく笑みひとつ。廃寺の庭園にあってももうすぐ蕾をつけるだろうそれが春を告げるように、此の場を翔ける仲間の誰もが春を呼ぶ使者に想えるのはきっと気のせいではない。繋ぎ合う意志も結び合う連携も暖かで、華やかに朗らかに天地を翔ける皆の姿に輝く生命力を感じるから、
 機械の忍びなどに負ける気など微塵も覚えることなくヤコウは忍者の真っ向から己が身の丈をも超える銀針を繰り出した。単眼を狙った刺突は瞬時に噴出した霧とともに揮われた刀に防がれるが、正面からの刺突はあくまで囮、
「御存知ですか? 春の萌しのように言われる寒明けの雨も、雪や氷まじりのものが多いことを」
「あらま、永辿ちゃんてば風流なこッて! そういうことなら啓蟄の雨も識らぬままに逝ッてもらうとしよッか!」
 春を享受すべきは無辜のひとびとであり、天魔武者どもに訪れる春などないと証すよう冷たく微笑したなら、天から薄青と紫に煌く針の雨が降りそそいで反撃や次撃ごと忍者を大地へ縫い止めて。けらりと笑んだ紬の手が寒風を薙いだなら、折紙が振りまかれると同時に幾多の大蛇が顕現し、地に縫い止められた忍者はあっという間に大蛇の腹の中。然れど腹が膨れたのは一体のみとなれば大蛇の群れは更なる獲物を求めて敵勢へ襲いかかり、
「あなた達の悪意も圧政の冬もここで断たせていただきます! 破魔の力よ、炎に宿って浄化の力を……!!」
「うん、それでこそミアだねっ! 圧政の冬なんか私達で思いっきり吹き飛ばしちゃうよ!!」
「圧政の冬かぁ。確かにそんなもの、断ち切って吹き飛ばしちゃうに限るよね」
 蛇眼に射竦められるよう反撃の手を鈍らせた忍者達のうち二体を先手を獲る加護を齎す風とともに飛翔したユーフェミアが打ち下ろした神火が呑み込めば、他者の苦しみを我がことのように想う彼女の気質を誰よりも識るアンゼリカが強気な笑みを咲かせ、地を撫でるがごとき光剣の斬撃で閃光と衝撃波を巨大な扇のごとく花開かせた。
 神火に呑まれた忍者達を屠った輝きが更なる二体をも薙ぎ払ったなら、アンゼリカの衝撃波に乗るがごとき勢いで彼らへと肉薄したのは軽やかな笑みを口許に刷いたラヴィデ。敵は残像と精神集中の技に長けた伊賀忍者なれど、前者で優に、後者で遥かに紫闇の竜が勝るから、即座に視界いっぱいに広がった霧が数多の敵影を映せど一瞬たりとも惑わずに、
 笑みを深めると同時の剣閃から奔らせた紫黒の炎風で、伊賀忍者どもをその反撃と次撃ごと斬り飛ばした。
 次の瞬間、寒風が轟と唸りをあげたのは、
 それを斬り裂く手裏剣の巨大さと猛然たるその勢いのゆえ。
 然れど、神樂と祇伐を狙って寒風を裂いた強撃をめがけて紅蓮と夏陽の輝きが吶喊する。真紅の籠手に炎を纏わせた朱士の殴打と光剣に鍛え上げた膂力を乗せたアンゼリカの斬撃が真っ向から巨大手裏剣に叩き込まれてその威を鈍らせ、
「今の俺らが相手なら、何ひとつお前らの思い通りにはなりやしねぇよ!!」
「そういうこと! まさか反撃だけで自分が斃されるなんて思ってなかったよね、でも、そのまさかだよっ!!」
 反撃強化で勢いを、攻撃強化で威力を増した炎の拳と光の剣が手裏剣を打ち込んできた忍者を一気に斃してのけて。朱士達の勢いはそれに留まらず、左右に、とアンゼリカが【パラドクス通信】のみで届く小声で告げた刹那、迷わず全速低空飛翔で左右に割れた次の瞬間には石灯籠を蹴りつけて方向転換し、二人は更なる敵勢を凄まじい勢いの挟撃で地に沈めた。
 たった今自分達を護ってくれた仲間達の電光石火の攻勢が祇伐の胸を強く打つ。ただ同じ戦場を翔けるだけの同胞であればこれほど心に響くことはなかっただろう。なれど境内急襲という策を共有し、皆で連携を意識して結び合っているからこそ、力を心を重ねて禍に挑む仲間達の姿がより強く尊く、愛おしく瞳に映る。どうかあなたもこの気持ちを識って、と祈るような心地で神樂へ瞳を向ければ、返る微笑みで彼の胸の裡に萌したものを識るけれど、
 微笑み合うのも僅か一瞬のこと、二人もまた幾多の戦場を翔けてきた身なれば、迷わず敵勢を捉えて一気に馳せた。戦いが己の思うがままにはならぬことも承知の上、金翅鳥の群れを解き放つと同時に呪詛を込めた斬撃で忍者どもを斬り払えればと思いはすれど、
「たとえ斬撃の技能が千に届こうとも、パラドクスじゃなきゃ傷ひとつつけられない――だったね。まだまだ学ぶことは」
「ええ、沢山あります、お兄様! 一緒に学ぼ、そして一緒に、もっと広い世界を識っていくの……!!」
 鉢屋衆戦の報告書に綴られていた言の葉を、逆説連鎖戦の絶対の理を唇に乗せれば神樂は一瞬で意識を切り替えて、鮮紅の剣閃、血桜の太刀で敵ではなくその反撃の霧を斬り裂くと同時に霧の晴れ間から輝ける幻鳥の群れを忍者達へと殺到させる。間髪を容れず爆ぜた輝きは瞬時に魔力を織り上げた祇伐が招来した鳴神の嵐、命中強化を得た雷で敵勢の反撃も命も貫いて、
 ――この霧ごとひとびとの憂いを祓っていくの。
 ――誰も涙を流すことのないように、圧政の冬に苦しめられているひとびとの心に、春が咲くように。
 刹那、鋭く張られたユーフェミアの声音が【パラドクス通信】を通じて皆へと届いた。
「新手が来ますっ! 本堂の屋根の上から五体!!」
「忍者らしいと言えば忍者らしい、のかな? もっとも、好きにさせる気はないけれども、ね」
 眼差しを翻せばレックスが呼ばうままに、小さな王たる名を冠された翼猫が眩い耀を解き放つ。屋根を馳せ一気に前庭へと跳び込まんとした忍者どもが大きく傾いだのは放たれた光の眩さゆえでなく、翼猫の主が光に重ねた強力な精神攻撃で感覚を狂わされたがゆえ。だがこのパラドクスが一度に狙い撃てる敵は二体、然れど更なる三体を青き風が足元から強襲した。
 高速飛翔で本堂の軒下へと滑り込んだシルが前庭から本堂へ昇殿する階段を蹴り、突き上げるような上昇に転じると同時に花開かせた魔法陣から爆発的な勢いで風の魔力弾を叩き込む。完全に虚を衝かれた忍者どもを次々撃墜すれば青き精霊術師の笑みも鮮やかに花開いて。
「空中戦のいい先生もいるしね! 今回も色々吸収させてもらうよ、猛禽さんっ!!」
「流石はシル、強さに貪欲だね。けれど貪欲上等! 俺も攪乱上手の精霊術師サンに学ばせてもらおうじゃないの!!」
「いいなそれ、そうやって磨きあっていきゃあ何処までも天井知らずで強くなっていけそうじゃねぇか!!」
「ですね! 実力はまだまだだけど気持ちは負けないから、私もみんなからいっぱい学ばせてもらうねっ!」
 己が磨き上げた力を謙遜することなく、さりとて満足することもなく更なる高みをめざす。それこそが精鋭として最前線を翔け続けるシルの強さの所以。対ジェネラル戦でも数々の戦果を挙げ、先日も黒翼公パロミデスを撃墜したその実力は決して伊達でなく、彼女にそうまで言われてはノスリにもひときわ愉しげな笑みが燈るというもの。
 下方から瞬時に迫り上がる飛翔での攻勢は己の十八番、ならば高速機動と誘導弾の連射での攪乱や牽制が十八番たるシルに倣って猛禽も一気に翔けた。元よりノスリのAmmit(アメミット)は羽根散る幻影を伴う技、なれば幻影を刹那の目眩ましに嘴爪の一閃をより鮮烈に奔らせて、獲物の命を喰い破る。
 ただ敵を倒すだけでは得られぬ高揚が背筋を翔け昇っていく感覚に挑むような笑み覗かせ、荊は手負いの一体と屋根からの新手を見定めたなら紅く昏く輝く魔晶剣で思うさま斬り上げて、凝らせた憤怒の焔を迸らせた。手負いの忍者を灼き尽くした焔が新手の敵を呑めば、敵の反撃にも怯まず挑み続けるユーフェミアが即座に祈りと魔力を結晶させた聖杖の宝玉から翔ける神火が敵勢を囲い込んでいく。
 初詣の御神籤、当たってんな、と荊は知らず口の端を擡げた。
 ――困難なれど、助け手在ればいずれは叶ふ。
 ――己ひとりではなく、仲間達とともに翔けていけるのなら、きっと。
 廃寺の本堂正面の中央部には前庭から昇殿するための階段が設えられている。その両脇には暗い影、然れど影の裡に空色の煌きを捉えた刹那、黎明の双眸を眇めた蒼海の竜は一片の迷いも無く掌中に咲かせた光槍を撃ち込んでいた。
 空色の煌きは伊賀忍者の装甲のもの、命中強化を重ねた痛打で標的の反撃も次撃もその命ごと貫き捻じ伏せた手応えを陸は得ていたが、影の裡にいた敵は一体にあらず。階段の両脇、すなわち本堂の床下から爆ぜるような勢いで新手の敵勢が前庭へ跳び出して来たなら、
「成程、屋根上からと床下から仕掛けてくる算段とはね。あながち能がない訳でもなさそうだ」
「仮にも忍者を名乗るのならそうでなくっちゃ! 余所見厳禁よ伊賀者サン達、万華の桃花へ釘付けにしたげるッ!!」
 新たな光の鋩を結晶させた陸のみならず、白き無双馬を駆る細も敵勢を迎え撃つ。強気に笑んだ花唇を彩るのは桃花の紅、忍者どもを思う様惹きつけんとばかりに声高に宣言した時にはもう海の波を三つ又に結晶させたかのごとき槍を振りかざした細は愛馬とともに蹂躙の風となっていた。
 冷たい朔風を突き抜け、天魔武者どもが齎す圧政の冬さえも吹き散らさんとする白南風(シラハエ)、春さえ越えて夏空の鮮やかな晴れを招かんとする吶喊と槍の薙ぎ払いで反撃の霧ごと忍者どもを捻じ伏せて、それならばと即座に攻勢へと転じた敵が一瞬で溢れさせた霧とそれが映す分身が己ばかりでなく紲をも囲い込まんとする様を紅玉の瞳に捉えれば、
 させないわよッと更にあでやかな笑み咲かせ、迷わず愛馬を躍らす跳躍で紲の分まで忍者の刃をその身で受けた。なれども仲間が更に高めてくれた防御強化の加護もあれば笑みを深めて見せることさえも容易くて、二連の反撃で一気に敵を蹂躙して屠れば最大の威力を発揮する【グロリアス】が細を癒して満たす。
 漆黒の髪も藤花めく魔力の翼も風に躍らせた彼女が更に愛馬を駆るから、
「庇われるだけじゃ性に合わないのよッ! なぁんて、んっふ、天下無敵でしょ――見惚れた?」
「イイね、天下無敵の華やぎ! その気風の良さに惚れ惚れしちまうよ!」
「うん、すごく格好良かったよ、細さん!!」
 再び花吹雪めかして折紙を振りまく紬の機嫌も上々、顕現する数多の大蛇たちも勢いに乗るよう彼女の蹂躙に続いて、細に庇われた瞬間に横合いに跳んでいた紲は柘植の茂みを軽やかに蹴り、大蛇に絞め上げられた敵の頭上から杖を打ち下ろした。霊符と杖で遠近織り交ぜた攻撃を、と思いはすれど、パラドクスならぬ攻撃は彼我ともに傷ひとつつけられぬものだとは紲も承知。ゆえに瞬時に閃いた忍者の刀に杖撃を防がれた刹那の隙を衝き、
 ――残念、君の命もここまでだ。
 桃花色の双眸を細めて紡ぐは言霊で敵の命を蝕むパラドクス。
 途端に命尽きた敵が頽れる様に、やるねエ、と墨染の双眸を瞠って感嘆を口にした紬は霧とともに襲い来る敵の狙いが己と気づけば咄嗟に【飛翔】で回避せんとしたが、己が攻撃で強打を決めて相手の反撃を無にすることなら可能でも、パラドクス攻撃を己自身の能動的な行動のみで完全に回避することは不可能であるのもまた逆説連鎖戦の絶対の理だ。
 空に逃れんとする紬を忍者の霧と分身が追わんとするが、それらを叩き落とす勢いで跳び込む葡萄色の影、
「大丈夫です! 私が止めて見せます!」
「ッと!! あンがと、捌碁ちゃん!!」
 紬を護った秋果は風で霧が揺らげば輪郭のぶれで分身を見抜けるだろうかと考えていたが、彼我ともに時空を歪めつつ戦う逆説連鎖戦とはいえ自然に風が吹くのを待つのはあまりにも悠長な話。ゆえに葡萄色の靄たる変質ステンドグラスから変じた己の幻影を突撃させることで霧を揺らがせて、
 ――不確かなものの傍らには、確実なものを。
 心震わす煌きに出逢ったあの日から胸の芯に燈る光、稀代の画家が稀代の画家へ贈った言の葉を花開かせた瞬間に揮う槍、藍色の柄の先に偃月の刃を戴くそれで分身ならぬ真実の敵攻撃を受けて威力を軽減させて、秋果は確と見極めた忍者当人へと痛烈な反撃を叩き込んだ。

●意気衝天
 朔風とは北より吹く風のこと。
 廃寺の広大な境内をも吹き渡る冷たい朔風を白南風(シラハエ)となって斬り裂くたびに細の心の水面に浮かぶのは、この伊賀国の北に位置する近江国のこと。地形の改竄がなければ御斎峠を越えた先で至るのは甲賀の地、伊賀忍者と対のごとくに語られる忍びのことをも思わずにはおれぬが、攻略旅団提案による甲賀忍者の調査は既にこの伊賀国で行われている。
 然れど得られた情報は、甲賀に限らず史実上の忍者を名乗る者がいる可能性は高いということのみ。
 ――現地へ向かうことが叶えば、もっと詳しいことが解るのかしら?
 ――それなら尚更、この地の天魔武者どもを蹴散らして我道の先も拓くまで!!
 思い至れば紅玉の瞳にはひときわ鮮烈な光が煌いて、
「伊賀の皆に流させた涙の分まで濁流のごとく蹂躙してあげる! 村人への晴れ、我道の先、其の糧んなんなさいッ!!」
「ええ、村のひとびとがもう二度と圧政に涙することのないよう、あなた達を祓わせてもらうわ!!」
 猛然と駆る白馬の鞍上で碧き綿津見の槍を揮う細の吶喊はさながら荒波の波濤、砂塵をも呑み込み濁流となれども、彼女が白南風(シラハエ)となって駆け抜ければ夏空の青のごとき鮮やかな晴れが齎されるのだと感覚で理解し、祇伐は横合いから細を強襲せんとした忍者の眼前へ躍り込んだ。仲間が護ってくれるなら、己も仲間を護ってみせる。
 何故感覚的に察せられたかといえば、祇伐が揮う朱夏(シュカ)もまた夏を招くパラドクスであるから。
 瞬時で溢れくる霧に紛れて打ち込まれる一刀を虹の泡沫、春暁の桜華、結界術で凝らせたその輝きで鈍らせて、ただ結界を張るのではなくクロノ・オブジェクトたる装備を活かすことでより確実な防御が望めるのだと胸に刻みながら、輝きの裡から余花を溢れさせて夏燕を解き放つ。朱夏の化身たる夏燕が祇伐の望むままに反撃の雷で敵を打ち据えれば、
 先手を獲る加護を齎す風を捉えた荊が紅蓮の瞳で敵も捉えて焔の刃を振り下ろした。命中強化の加護も得た彼の憤怒の焔が雷に打たれた忍者をその反撃と命ごと貫いて、まっすぐ迸るままにもう一体をも貫いて反撃を捻じ伏せた。潰しきれなかった攻勢の機を掴んだ忍者が手裏剣を打ち込んでくるが、一撃で標的二体を捉えるそれがユーフェミアをも狙っていると気づけば荊は迷わず彼女の分まで手裏剣の刃をその身に受けて、
「ありがとうございます、荊さん! 私も援護させてもらいますねっ!!」
「ああ、なんてことないぜ、このくらい! 援護もありがとな、ユーフェミア!!」
 牙剥くように笑んだなら轟と燃え盛るのは反撃の焔、二撃を喰らえば反撃もまた二撃、連続で叩き込んだ焔で相手を屠って仲間達が最大まで重ねてくれた【グロリアス】で痛手を霧散させたなら、その瞬間には既に荊の背後から【飛翔】で軽く舞い上がっていたユーフェミアが、彼が叩き込んだ焔の先にいた更なる敵勢に輝ける神火を撃ち込んでいた。
 忍者どもの足元に触れると同時にいっそう鮮やかな紅蓮に燃え立ち、悪しき者どもを逃すまいと地を奔って敵勢を取り囲む浄化の炎、ユーフェミアが揮った神火に呑まれた忍者どもを墨染の双眸に映せば瞬時に紬は折紙を舞わせて、顕現した数多の大蛇を嗾ける。神火の陣に囲い込まれた獲物達の命をその牙で喰い破ってなお、大蛇達は更なる獲物達へと襲いかかり、
「皆で一丸となッて畳みかけるのッてイイよねエ。痺れちゃうねエ、こう云うの!!」
「分かります! 胸が震えるっていうか、魂が震えるっていうか、そんな感じですよね!!」
 巨大な蛇身に絞め上げられた忍者どもへと幻影とともに翔けた秋果が一気に躍りかかった。背筋を翔けぬけるような高揚を秋果も感じて笑みを花開かせる。分身での反撃を覚悟するも、分身に僅かでも彩度の違いがあるならと敵の落ち度に期待するまでもなく、己と仲間とで積み上げた命中強化の恩恵が忍者どもの反撃そのものを許さない。
 幻影を解いた瞬間の一閃で忍者二体をその反撃と命ごと斬り伏せたなら、秋果の傍らを黒翼白翼の翼猫が羽ばたいて翔け、爆ぜるような勢いで眩い光を解き放った。伊賀忍者どもの単眼を突き抜けて内部の回路を掻き乱さんばかりに狂わせるのは、翼猫の主たるレックスが磨き上げた精神攻撃の技量が惑乱の力を強めているがゆえ。
 桃花色の双眸で敵の姿も好機も確り捉えた紲が迷わず霊符を奔らせたのは【完全視界】の恩恵ゆえか、あるいはレックスが望むとおり、敵の精神を蝕む光でありながらも仲間には優しい光であるがゆえか。霊符が忍者へと触れたなら途端にその身を侵蝕していくのは紲が紡いだ言霊の呪詛。
 ――永遠に、その稼働を止めておいで。
 わたしも一応陰陽師の端くれだからさ、と淡く紲が笑んだなら、敵がその稼働も命も停止して頽れた。
「陰陽師って格好良いね、紲」
「ふふ、ありがとう。レックスさんとレグルスさんこそ、お見事」
 心からのレックスの賛嘆が紲の耳にも心にも優しく響くけれど、敵を蝕み死に至らしめる呪詛とはいえ、数多の加護がある現状でも己の力ではまだ一撃必殺には届かないと紲は紛うことなく理解している。だからこそ彼と、仲間達と力を重ねて敵に挑むのだ。ゆえにまだ足を止めはしない。すべての敵を皆で斃し尽くすまでは。
 絆を、傍らを翔ける彼女と同じ響きの耀で更なる敵勢を呑み込むべく、レックスは再び翼猫を舞いあがらせた。だが深緋の眼差しは相棒ではなく、ひとびとを圧政で苦しめる天魔武者どもを見据え、穏やかな声音が問いかけではなく宣告を紡ぐ。
 踏み躙るなら、踏み躙られる覚悟――有るよね?
 天地からの急襲で元より優勢を獲っていたのは此方のほう、ゆえに忍者どもの数が減れば減るほど加速度的に自陣の勢いは強まっていく。馳せて駆けて翔けて、最早覆せぬ劣勢を悟った忍者どもの足掻きも蹂躙して、それでも尽きぬ霧を溢れさせる敵の狙いが仲間へ向いていると察すれば、笑みを咲かせて神樂は自ら忍者の霧と数多の分身の裡へと跳び込んだ。
 妹ではない仲間を庇って己が身に受ける一閃、血桜の太刀のみならず結界術で前方へ集中させた赫桜の花吹雪で攻撃の威を半減させ、霧ごと敵を押し返す勢いで一気呵成に解き放つ金翅鳥の群れ。逢魔が時の狭間から湧き立つ数多の金の輝きが、
「さっきはありがと! 御礼ってわけじゃないけど、あたしも護らせてもらうわね、朱士!!」
「こっちこそありがとな、頼らせてもらうぜ、神樂!!」
 美しくも残酷な煌きで忍者を呑み込んだなら、金色の輝きに重なるのは熱い紅蓮の輝き。真紅の籠手に纏わせた拳で紅蓮の輝きの軌跡を描いて、華やぐ神樂の物言いに笑って朱士は迷わぬ業火の一撃で眼前の敵を焼き滅ぼした。
 今ともに戦場を翔ける仲間達の中にはこの任務で初めて顔を合わせた者も多い。然れども何ひとつ迷わず朱士は挑むような笑みで忍者どもへこう吼えた。
「解っちゃいると思うが、ここから逆転できると思うなよ。力が違う、勢いが違う、何より俺達はお前らとは絆が違う!!」
 胸の震えを現すよう、神樂の冷たい唇が僅かに震える。
 ――嗚呼、ひとという存在は、
 ――このようにして、絆を紡いでいくものなのか。
「お兄様……!!」
「わかるなぁ、その気持ち。こうやって世界は広がっていくんだよね」
 自分を溺愛してくれる兄だけれど、それでも彼が祇伐以外の存在を全く気にかけていないわけではないことは識っている。それでも神樂が祇伐でない仲間を身を挺して護った姿が嬉しくて、思わず声を詰まらせたなら柔らかに届いたのはラヴィデの言の葉。彼にも覚えがあることだ。見えない扉が次々と開かれて、優しい風がいっそう開けた世界へと翔けぬけていく心地になって。
 不思議なことに、自分自身ではなく大切なひとの世界が広がることでも、己の世界までもが広がっていくから。
 ――こうして生きて歩んでいくことを、
 ――やめられない。
 夏の雷を招く術なれど今は春雷を招く心地で祇伐が招来する鳴神の嵐が敵勢を打てば、ラヴィデも口許に笑みを刷いたまま鋭く奔らせる剣閃で敵勢を滅するための炎風を迸らせた。眩しげに細めた銀の双眸が映すのは、世界を広げた妖狐の背中。
 前庭から忍者どもが一掃されたが、
『伊達殿はどうぞ撤退を!!』
『ディアボロスどもは何としても我らがここで喰いとめて……!!』
 本堂の奥で慌ただしい声音が飛び交ったと思った途端に、奥から新手の敵勢が跳び出してきた。機械の表情こそ変わらねど単眼の強い輝きに決死の覚悟を燈し、爆ぜるような勢いで噴出させた霧とともに忍者どもが襲いかかってくるけれど、
 天地から翔けた青の軌跡が彼らの決死の一撃を真っ向から受けとめる。
「こんな攻撃、俺達がそう易々と通すはずがない――なんてこと」
「勿論ばっちり分かっててくれたよね、二人ともっ!!」
「うんっ! 二人なら格好良く決めてくれるって一瞬で察したよ!!」
「そりゃもう当然! 獲りにきてくれるって考えるまでもなく感じてたね!!」
 蒼海の竜が輝ける戦槍で忍者の刀と斬り結んで、青き精霊術師が瞬時に咲き誇らせた魔法陣から刀を弾き飛ばす勢いで風の魔力弾を撃ち放ち、反撃強化も得た陸とシルが忍者達の一撃の威を半減させれば二人に護られたアンゼリカとノスリが迷わず翔けた。二人なら反撃で仕留めるか仕留めきれずとも即座に攻勢へ繋いで確実に相手を仕留めると声音も眼差しも交わすことなく確信できるから、自分達は更なる獲物を仕留めにいく。
 言の葉も眼差しも交わす必要はない。たとえ目蓋を閉じたって仲間の動きは識れる。
 それは、花冠を編み上げるように紡いで培ってきた絆の証であるのみならず、
 あの日、天空の戦場でクロノス級アークデーモンと相対して、己が戦い続ける理由を互いの心に燈し合った証だから。
「伊達成実を撤退させるため……というなら、今跳び出してきた一団が最後の忍者達でしょうね」
「同感だね。一体残らず殲滅して、指揮官との決戦に持ち込もう」
 横殴りの雨のごとく軒先から本堂内へヤコウが降らしめる針の雨、薄青と紫に煌く驟雨と重ねるようにアンゼリカが光剣で迸らせた苛烈な閃光と衝撃波が針雨に床へ縫い付けられた一体を屠り三体を薙ぎ払っていく様に笑んで、陸が迷わず見定めた深手の忍者めがけて光の鋩を撃ち込めば、
 彼の一撃で斃れると確信した敵の脇を擦り抜ける飛翔でノスリが更なる獲物を捉えて喰い破る。当然彼らのみならず、皆で一丸となってかける猛攻勢が最後の敵勢を殲滅するのに要した時間は、極めて僅かだった。
 本堂の奥から、ずるり、ずるり、と聴こえてきた床を這いずる音。
 現れたのは壮麗な甲冑に身を包み、百足の下肢を持つその天魔武者がアヴァタール級の天魔武者『伊達成実』であることは一目で識れた。
『愚かな忍者どもよ。我のみが逃げ延びてなんとする』
 彼に忍者の進言を容れるつもりがないことも。
 悠然と前庭へ進み出んとする伊達成実を制することなく、全員が本堂から前庭へと戻る。
 本堂の内部よりも絶対的に戦いやすい前庭へ相手が降りてきてくれるというのであれば、阻むことなく迎え入れるだけだ。
「百足が冬眠から覚めるにゃまだ早いだろ。土に還るのを手伝ってやるぜ?」
「それとも、あなたも春の気配を感じていらした?」
 嘲るように朱士が笑えば、冷ややかな笑みとともにヤコウが眼差しと銀針の先をぴたりと突きつけて、
「蛇は百足の天敵ッつウけども? 俺達ゃ更に強敵よ、ッてね」
「さぁて、あんたはどんな散り様を望む?」
 お道化た素振りで紬が肩を竦めてみせ、不敵な笑みとともにノスリが訊ねれば、伊達成実は淡々とこう告げた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【泥濘の地】がLV2になった!
【飛翔】がLV10になった!
【活性治癒】がLV2になった!
【スーパーGPS】がLV2になった!
【アイテムポケット】がLV4になった!
【書物解読】LV1が発生!
【使い魔使役】LV1が発生!
【熱波の支配者】がLV5になった!
【照明】LV1が発生!
【パラドクス通信】がLV2になった!
【勝利の凱歌】LV1が発生!
【腐食】LV1が発生!
【神速反応】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV9になった!
【命中アップ】がLV3になった!
【ロストエナジー】がLV5になった!
【反撃アップ】がLV5(最大)になった!
【アヴォイド】LV1が発生!
【先行率アップ】がLV3になった!
【ドレイン】がLV2になった!
【アクティベイト】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV7になった!
【グロリアス】がLV5(最大)になった!
【ガードアップ】がLV5になった!

●不撓不屈
『貴様らのその様子では、我が主命を果たすのは極めて困難となったと言わざるを得まい』
 薄浅葱の光を燈す眼差しで廃寺の境内とディアボロス達を一瞥した伊達成実は、伊賀忍者ばかりでなく鉢屋衆までもが既に殲滅されているのだと察したらしかった。此方が数人であれば返り討ちにしてくれるとでも意気込んだやもしれぬが、眼前に居並ぶディアボロス達の姿を見れば分の悪さが理解できぬほど愚昧な武将でもなく。
 然れど、恐らくは不退転の象徴たる百足を模した様相を持つがゆえの矜持が、彼自身に退くことを赦さない。

 ――潔い散り際など望みはせぬ。無様に足掻いて足掻いて、足掻き抜いて見せようぞ。
 ――斯くなる上は、唯ひとりでも多く貴様らを斬り捨てることが叶えば、それで良い。

 抑揚のない声音で天魔武者はそう続けたが、薄浅葱の双眸の奥がぎらりと光る。
 不退転。不撓不屈。
 それで良いなどと口にしつつも、伊達成実が眼前のディアボロス全てを討ち果たすことを欠片たりとも諦めていないことは誰の眼にも火を見るより明らかなことだった。
花柳・細
不退転?イー心掛けだけど
そものやり方が腐ってんのッ
何より、不撓不屈の精神ッて
ココの皆にこそ似合いじゃない
最期まで存ッ分に魅せたげる

百足のアンタも見せてみなさいよ
イー逝き様をと言い捨て飛び込む懐
真っ向勝負上等よッ
正面からの光刃も受け返す気概は捨て身の勢いに乗せ
味方の撹乱や泥濘の地に鈍る足に隙も見出し
吹飛ばすは味方の追撃し易き先
地を這う次は、宙舞うのは如何?

あっは!出来るもんならッ
ひとりだって欠けさせやしないわ
死角補い合いディフェンスは逃さず“獲る”ッてね
私だって皆から教わってんの!

ったく
食べないのに盗ってんじゃ無いわよ
食糧は美味しく笑顔の種になってこそ!
ホラ、咲かせにいきましょ――お得意でしょ?


竜城・陸
悪いけれど、そちらの思い通りにさせはしない
ここで斃れるのはお前だけだ

やや距離を取って応戦し全体の戦況を逐次確認
逆説連鎖戦は常人の戦とは一線を画すけれど
敵の狙いは動きからある程度判断が叶うはず
相手の隙を逃さず
味方へつけ入る隙も与えぬよう
しっかり状況を共有し連携して臨むよ

自身の得手とする光線攻撃へは
積極的にディフェンスを獲りに行き
反撃で痛打を狙い全体の損傷を抑える

残留効果の恩恵で威を増した攻撃も
相手の反撃ごと捻じ伏せる心算で撃ち放つね
油断せず畳みかけるよ
人々に圧政を強いる者達になど明日はないと
その魂に刻んで差し上げるとも

奪還した糧は手分けして村へ持ち帰ろう
穢れを祓ったなら、新年を寿ぐ時間だものね


織乃・紬
御立派なコトを仰ッてるけどもさ
道を外れた者が内道の言葉を語るなよ
ンな信念は、さッさと折れちまいな

潔さだけは、認めて、倣い
此度は此の身でと刀を手に
踏み込むも躊躇なくゆけるのは
心強い皆サマの御陰ね

《飛翔》も活かしながら
地を駆けて、宙を蹴って
体勢整え、間合いを詰め
斬り込む隙は逃さず突く
一撃を重く、押し切るよう
衝撃も次の隙になればと

百足刃は刀で凌いで
此度は断つ勢いで反撃
落ちて散るのはソチラだぜ
百足らしく、頭も地を這えよ

信を置いて連携は一層に
繋げる追撃は全力で掴む
俺の鬣犬精神舐めンなよ?
ディフェンス、フォローだッて
積極的に獲りますとも

――ンはは!咲かすのは御任せあれだ
大吉分の幸、惜しみなく振りまこッか


空木・朱士
不撓不屈じゃ、こっちだって負けねぇよ。
譲れないもんの為に無様だろうが足掻いて見せるのだってお互い様だ。
ただし!最後まで立ってんのは『俺ら』だけどな!!

変わらず声掛け合い連携を心掛け、視野広く死角無くフォローし合って撹乱し、皆で攻撃を繋いでく。
反撃すら殴り返す心意気で、ディフェンスだって獲りにいく、ってな!

自分の力量が決定打に届かなくとも傍らの仲間達の力を信じてるから、微笑み更に深く踏み込む一歩に迷いなく。
解錠し思い切り振り抜いた拳に【怪力無双】も重ねて吹っ飛ばす!
隙だって作るもんだろ!?

取り返した食糧と共に。
さぁて、まだ終わりじゃないからな。
村の人達に歓んでもらうっていう大事な仕事が残ってる。


咲樂・祇伐
かの者に興味が?

不退転の意気は流石と云うべきかしら
私達のうちに怯む者等おりません
冬の睡りに鎖されるのはあなただけ

皆が一緒に居る
その信を胸に挑む

通信も用い連携は密に
油断せずに然りと戦況の把握
全力魔法に精神攻撃を編み放つ

光蜜ノ愛浄

新春の穢れを灼き祓うわ
私にもできる!

味方の撹乱や泥沼に一分の隙も見逃さず
飛翔も織り交ぜ空に地に駆け
心乱し惑わせては灼く光を放ち撃つ
フォローし合い死角を補い攻撃を繋げ
反撃の光線までも光で灼きる意気
ディフェンスも積極的に
得意を活かし苦手は頼り
獲るのはきっと信の証
私も、獲る

おやすみ、禍
あなたにも光蜜をあげる
咲いて頂戴

食料と一緒に希望も持ち帰るの
新春の祝を届けて
咲かせに行くのです


咲樂・神樂
不退転、不撓不屈…私の好きな言葉だ

勿論
怯み、退いたりした者は負けて
淘汰される
君、面白いね
でも駄目
君は望まれていない

させないよ
仮に百の足があろうとも
重なりあう信には敵わぬもの

集中
驕らず油断せず連携を意識

朱華・妖華爛漫

放つ斬撃に呪詛を宿し
衝撃波と成し薙ぎ祓う
泥濘の地の妨害も試み
脚も心も幾らでも斬り落とす心意気

隙を見逃さず穿ち
隙を穿たせない
死角を補う様通信や声掛けは欠かさず
フォローしあい戦況をみて臨機応変に動く
返る刃は朱華の斬撃でいなし軽減を試み
連携を絆ぎ反撃

ディフェンスも積極的に
守り守られるのは悪くない

人々の糧と明日を返して貰う
畳みかけ斬り堕す

糧はポケットで協力し持ち帰ろう
皆の笑顔もまた
咲くのかな


ラヴィデ・ローズ
ふうん
元来オレは勇士が好きでね
あちらさんも見上げた強者だが
彼らの方が、ずっと眩しくみえる

総て心あってこそ

憧れちゃうね、とレゼルで続く
一点から射るのみでなく時に飛翔交え
皆と上下に揺さぶろう
時折フェイントで見かけの同じ
パラドクスならぬただの矢も混ぜ本命惑わす試みも
尚も外れたって構わないとも
オレの矢は時間稼ぎでも
――ドカン、ってね
連携重視、繋ぐ機
夢のような輝きを見せてくれ

敵の力と覚悟は軽んじず
受ける刃と
花咲くSweetieの結界術で僅かでも軽減狙い
積極的に獲るディフェンスで消耗分散
皆で紡ぐ勝機
途切れさせず反撃で削りたい

塵は塵に
人の世に希望を返してもらう

凶の御籤など過去になるほど、晴々
さ、帰ろうか!


アンゼリカ・レンブラント
ひとりでも多く斬り捨てると?それは叶わない
私達は誰1人欠けないからこそ強いんだ
誰も倒れず、勝つ

通信で仕掛ける機を合わせ
低空飛翔してのダッシュで間合いを詰め光剣で斬るよ
反撃も光のオーラでしっかり凌いで近接戦を維持
仲間との連携を意識し攻める

苦手属性をディフェンスし合い全体の消耗を抑え
そして反撃の機会を生かし斬る

隙を作り出して仲間に突いてもらったり
あるいは敵の生じた隙に鋭く光剣で攻撃
これが1人も欠けないからこその力だよ
仲間のラッシュに合わせ間合いを詰め

お前の光刃が「不退転」の象徴であるなら
私の光剣は友と共に全てを取り戻す為の標だ

勇気を最大まで灯し、限界まで力を溜めた
《光剣収束斬》の一刀で両断するよ!


永辿・ヤコウ
口上は終わりでしょうか
生きることの足掻きこそ潔いと僕は思うから
心根だけ覚えて居て差し上げる

けれどそれは
あなたへの餞ではない
圧政の中でも懸命に生きる伊賀の人々への餞です

驟雨の如く降らせる針で穿ち貫く
恵みを齎す慈雨ですとも
脅威を祓い
皆へ安らぎを沁み渡らせる為の

己の力量も成すべきことも
敵力の見縊りも見誤りもせず
視野を広く持ち戦況把握と判断を確かに

声掛けによる連携を密にし
死角を補う等のフォローや
積極的なディフェンスも

『泥濘の地』を活かせるならば重畳、と試みてみよう
味方の飛翔に撹乱や翻弄された僅かの隙をも見逃さない

畳み掛ける連撃
必ず呼吸を合わせてみせましょう

奪われた食糧をアイテムポケットに詰め
いざ帰路へ


ノスリ・アスターゼイン
捨て鉢でもない特攻でもない不屈の精神は好きだが
圧政で人々を苦しめる根本から相容れないしね
あんたの矜持に感心も慮りもしないよ
それを望んでも居ないだろう?

だから、

互いにぶつかり合うだけ、と
飛翔し
閃かせる刃はホルスの嘴爪

敵の体をも足場に蹴って急旋回
眼前で視界から消え背後を取るなど
低空・上昇飛行を駆使して翻弄

全体の戦況把握を常に念頭に
皆へ声掛け
死角を補い、カバーとフォロー
刃で弾いてダメージ軽減

ディフェンスも取ったもん勝ちデショ!の気概で翔ける
仲間との連携が快いばかり

冥界へ渡る為の脚は幾つ要る?

聞こえたのは最期のいらえではなく
安堵に舞い戻った鳥達の囀り

奪われた品々は
アイテムポケットで運べるかな

さぁ
凱旋だ


シル・ウィンディア
生きるために足掻くのはわたしも好きだけど、ここで退場してもらうよっ!

飛翔で上昇しながら七芒星精霊収束砲を撃つよ
さぁ、戦闘開始の号砲だーっ!

飛翔で飛び上から敵の動きを観察。
気づいたことや狙われそうな味方がいたらパラドクス通信で伝達。

ディフェンスは積極的に獲りに行くよ
簡単に通すと思ったら大間違いっ!
そして、反撃のプレゼントっ!

世界樹の翼type.Bからの誘導弾を敵へ向かって急降下しつつ足元に連射。

せっかくだから、これを試してみるかな?
高速詠唱を行いながら、創世の光剣で敵を剣で突き上げて、零距離から全力魔法の七芒星精霊収束砲!
わたしの全力全開、遠慮せずもってけーっ!

村の人達の笑顔が戻るといいねっ♪


ユーフェミア・フロンティア
貴方を倒せば村の人達を救うことができるんですね。
私達の力であなたを倒しますっ!一人では敵わなくても、皆さんと一緒ならっ!!

聖杖を両手で握って精神集中で気を落ち着けます。
パラドクスには距離は関係ないですが
それでも距離を取って対峙します。

離れたところで敵の動きを見て気づいたことはパラドクス通信で伝達ですね。
伝えると同時に神火収束砲で攻撃を行い私の方に注意を惹きつけます。
一瞬でも引き付けられたのなら、皆さんならきっとその隙をついてくれるはずですっ!

ディフェンスは獲りに行く、ですよねっ!しっかり獲りに行かせていただきますっ!!

ここぞという時には全力魔法の神火収束砲を撃ちます。
今、私にできる全力ですっ!


秡木・紲
諦めが悪いのは嫌いじゃないけれど
でも、君に退いてもらわない事には
奪われたものを取り戻すことも、
村を救う事もできないからね

強敵相手だ、油断せず
声掛け合いつつ死角を補い合って戦おう

苦手属性は無理せず味方を頼り
得意属性では積極的に結界と言霊の力を借りて受けよう
凌ぎきれはしなくても威力を抑えるように
一筋縄じゃいかないだろうけど、さ!

レックスさんや味方の攪乱に合わせて
紡ぐ言霊は、動きに制約を課すもの
全身を縛る事は叶わなくても
一瞬の隙だけでも作り出せるよう
皆、一瞬の隙を見逃したりはしないだろうから

奪われたものを取り返したら
アイテムポケットで持てるだけ持って
村に春を、おいしい七草粥を届けにいこう


レックス・ウェリタス
足掻けば良い
心意気だけ認めよう
生き様は忘れるだろうけど

僕たちは解り合えない
でもそれで良い
躊躇わずに済むから

返して貰うよ
緋色は冷ややかに
嗚呼、こんな顔は見られたくないけれど

慢心は捨て向き合う
死角を補い、連携は忘れず

死物狂いに通じるかは扨措き
展開する王者の領域
ナイルの水が侵し揺さぶる幻惑
知能が有るならより認識するかな
精神に干渉し撹乱させる罠
紲と生み出す計略に
ほら、溺れて
僅かでも目的忘れ足を止めたら
――隙だ
誰かの一撃へ繋ぐ

結界術で負傷を軽減を試み
不得手は頼り
得意は過信しないディフェンス
守れる範囲は零さず

勝ち取った物はアイテムポケットいっぱいに
紲の好きな味
教えて貰った優しい味を、僕は教えに行きたいんだ


捌碁・秋果
食べものをたべると満たされた気持ちになって、美味しいものなら幸せにもなれる。
それをまあ…。
持って行って食べないなんて勿体ないことしてるなら、返してもらいますからね。

仲間の皆と声をかけあって注意喚起や連携攻撃をします。
ディフェンスは得意属性は積極的に守りに行き、苦手な属性の攻撃からは守ってもらいます。

レースリボンテープを敵の足に引っ掛けたりして攪乱します。
使うのは捕縛することを重視したパラドクス。
攻撃のチャンスを作りますよ。
逃げようとしたってこの蔓はどこまでも追いますから!
声をかけて連携し、手痛い一撃を!

返してもらった食料はアイテムポケットへ。
これであの美味しい七草粥を…、ふふっ。


●百折不撓
 不退転。不撓不屈。
 薄浅葱の双眸の奥からぎらりと輝く眼光が、この天魔武者『伊達成実』の胸の裡を如実に示す。
 後退せず、前進あるのみ――この習性から蜻蛉と同じく『勝虫』の異名を持つ百足は毘沙門天の眷属ともされることから、史実上の伊達成実のみならず数多の武将に好まれてきた意匠だ。然れど相手が決して退かず此処で戦い抜くというのなら勿論こちらとて望むところ、先陣を切る加護を齎す風を掴んだシル・ウィンディア(虹霓の砂時計を携えし精霊術師・g01415)が即座に【飛翔】で蒼天へ舞い上がるとともに花開かせたのは四対の魔力の翼と輝ける精霊魔法陣、凄まじい魔力が収束して虹色に輝く大型砲撃魔法が迸るまでが一瞬にも満たぬ刹那のこと、
「生きるために足掻くのはわたしも好きだけど、あなたにはここで退場してもらうよ! あの世までねっ!!」
『ならば娘よ、貴様が先立って同胞どもに黄泉路を案内してやるが良い――!!』
 開戦の号砲が盛大に轟いた。
 蒼天から降り落ちる凄絶なる虹色の魔力砲撃、七芒星精霊収束砲(ヘプタクロノス・エレメンタル・ブラスト)と地上から撃ち放たれた伊達成実の反撃、毘沙門天閃光の膨大な輝きが激突して苛烈な眩さで爆ぜ、双方へと痛手を齎した次の瞬間には百足のごとき形状へと変じた光刃が上空のシルと地上のユーフェミア・フロンティア(光彩聖姫・g09068)めがけて閃いた。既に敵将と対峙している現状では少女の望み通り戦端が開かれる前に気持ちを落ち着けている余裕はなかったが、
 強大な剣閃を押し返す白と黒、
「あっは! 誰ひとりだって黄泉路の道案内にさせやしないっての! 仲間の護りもその首も、獲らせてもらうわ!!」
「戦国の天魔武者は鬣犬ッて御存知かねエ? 俺の鬣犬精神舐めンなよ、何処までも喰らいついて噛み砕いてやンぜ!」
 思うさま跳躍させた白き無双馬とともにシルの盾となった花柳・細(非花・g07664)が、黒き刀でユーフェミアへの剣閃を遮った織乃・紬(翌る紐・g01055)が、天地から猛然たる反撃で伊達成実に喰らいついた。幾重もの防御強化と既に最大域に達した反撃強化で威を鈍らせてなお盛大にこちらの血をしぶかせる剣閃は流石に鉢屋衆や伊賀忍者どもの技とは格が違うが、
「不退転の信念は御立派だけどもさ、道を外れた者が内道の言葉を語るなよ。ンな信念は、さッさと折れちまいな!」
「真っ向勝負上等! 百足のアンタも見せてみなさいよ、イー逝き様をねッ!!」
 熱く紅い飛沫を舐めて笑って一片の躊躇いもなく紬が強敵へと斬り込んでいけるのは、今日の相方ばかりではなく仲間達の誰をも頼もしく思うがゆえ。敵反撃にも怯まぬ彼の一刀に重ねるがごとき細と愛馬の吶喊、己が血潮よりもいっそう鮮やかに紅玉の瞳を煌かせつつ薙ぐ黒金の大剣が捨て身の勢いで敵将を吹き飛ばせば、反撃に続く二人の攻勢とシルの初撃で最大域に達した攻撃強化を乗せた夏陽の輝きが、こちらも真っ向から受けとめるよう天魔武者へと叩き込まれた。
 夏陽を思わす輝きを噴き上げる巨大な光剣、己が剣と天の光を映した金彩の双眸が気丈な煌きを燈して敵将に挑む。
「ひとりでも多く斬り捨てる? 唯のひとりだって斬り捨てることは叶わないよ! 私達は誰も倒れず、お前に勝つ!!」
「仮に百の足があろうとも、重なりあう信には敵わぬもの。無数の脚も不撓不屈の心も、幾らでも斬り落としてみせるよ」
 敵勢に気取られぬうちの急襲とは状況も異なる上に、此度の相手はアヴァタール級。機を併せて全員で先手を獲ることこそ叶わなくとも、積極的に連携を結ばんとする気概と勢いはこれまで以上に冴え渡るから、仲間達への揺るぎない信頼を最大の武器とするアンゼリカ・レンブラント(光彩誓騎・g02672)が命中強化も得た巨大光剣で反撃ごと伊達成実を捻じ伏せれば、先の戦いで胸に芽吹かせた皆への信頼をいっそう花開かせた咲樂・神樂(離一匁・g03059)が光剣の軌跡が消えるよりも速く血桜の太刀で朔風を薙いだ。
 鋭く奔る斬撃は空間ごと『存在』を断ち斬り、生命を喰らって咲き誇る術。斬り飛ばされた百足の武将の装甲や脚が朱華の桜を咲かせて舞い散る様に蜜色の瞳を笑ませ、刹那の桜吹雪を猛禽の魄翼で突き抜ける【飛翔】で瞬時に彼我の距離を殺して、
「あんたの矜持に感心も慮りもしないよ。それを望んでも居ないだろう?」
 ――だから、
 互いにぶつかり合うだけ、と剣呑な蜜色と薄浅葱の眼差しが交差した一瞬にノスリ・アスターゼイン(共喰い・g01118)が己がHorus(ホルス)の嘴爪を閃かせれば、言の葉のとおりに激突する嘴爪と光刃。然れども相手が確かに強敵であることを感じつつもその脅威を凌駕する仲間との連携の快さに笑みを深めたのはノスリのほう、輝きも装甲も裂いて抉る絡繰の体躯、反撃の光刃ごと胸元を喰い破られた伊達成実が、
『無論のことよ、貴様らの礼賛も忖度も無用。この仕儀と相成れば刃も武威も真っ向から交わすのみ』
「流石は将の意気と云うべきかしら。けれど、私達のうちに怯む者などおりません。冬の睡りに鎖されるのはあなただけ」
「ああ、無様だろうが譲れないもんのために足掻くのはお互い様、但し! 最後まで立ってんのは『俺ら』だけどな!!」
 猛然と双眸をぎらつかせると同時に再び刃の柄から光を噴き上げんとするが、咲樂・祇伐(花祇ノ櫻禍・g00791)が破邪の神器から変じた扇を翻すほうが速い。扇から羽ばたいた輝きは灼ける焔翼の幻、禍を灼き尽くさんとする圧倒的な浄化の光が敵将を呑んだ機を逃さず空木・朱士(Lost heart・g03720)が跳び込んで、己が裡の動力炉を全開稼働させた一瞬で爆発的に強化した膂力を乗せた拳の強打を叩き込んだなら、
「最後の時となるのは其方だけですよ、私達には為すべきことがありますから!」
「そうだね、其方の思い通りにさせはしない。ここで斃れるのはお前だけ、お前を斃して、俺達はその先へ往くよ」
 次々花開く皆の技と連携をめくるめく芸術のごとく感じながら捌碁・秋果(見果てぬ秋・g06403)が揮うのは新たな絵画を求める己の欲をパラドクスとして昇華した技、朔風に伸びて躍って天魔武者を絡めとった葡萄の蔓が艶やかな果実を実らせた刹那、何処までも眩く清冽な光の鋩を竜城・陸(蒼海番長・g01002)が撃ち込み反撃を捻じ伏せて、
 敵将を縛める葡萄蔓の合間を的確に貫きその胸を深々と穿つ神威の光槍、その輝きがまたひとつ防御強化の加護を燈した。最大域に達してもなお発動確率の枷を持つ反撃強化に対し、防御強化はこちらが受ける痛手のすべてを軽減してくれる。皆で強敵一体を相手取る戦いなれば攻撃より反撃を受ける機会が圧倒的に多いがゆえに、防御強化の重要性も跳ねあがるのだ。
 護りを固め、最大域に達した能力を高める祝福と命中強化に攻撃強化でディアボロス達が牙を剥く。
 皆で幾重にも積み上げた加護と波濤のごとき勢いの連携で敵将を圧倒する。だが自陣の猛攻勢の合間に爆ぜるよう放たれる反撃や攻撃の威力と、何より最大の攻撃強化を乗せたこちらの間断なき攻勢に晒されてもなお然したる消耗を窺わせぬ様子が部隊を率いる将たる伊達成実の強さの証左だ。なれど、
 ――あちらさんも見上げた強者だが、
 ――こちらの皆のほうが、ずっと眩しくみえる。
 強敵と刃を交える高揚よりも仲間と戦場を翔ける高揚にこそ勢いづく皆の姿の頼もしさ。憧れちゃうね、と眦を緩めつつもラヴィデ・ローズ(la-tta-ta・g00694)の手はとうに弓へと変じていた『翼』から矢を射ち込んでいた。
 敵将の装甲を矢が穿つと同時に不可視の竜爪もが獲物へ襲いかかる彼の塵は塵に(ブランフォンセ)、その視えざる竜爪が閃く刹那を見定めたかのごとく、永辿・ヤコウ(繕い屋・g04118)が仲間の燈していた【泥濘の地】を発動させる。
 瞬時に泥濘へと変じる廃寺の前庭の大地、対象の移動速度を低下させるこの泥濘は戦場を突破あるいは離脱せんとする敵の足を鈍らせたり、逆にこちらの撤退時に追っ手の足を鈍らせたりするのには効果的だが、時空を歪めて戦う逆説連鎖戦、即ちパラドクスの攻防に影響を及ぼすことは殆ど無い、のだけれども。
「あなたの技のうち――高速疾走がパラドクスそのものに組み込まれている技なら話は別、ですよね?」
「ああ、成程ねぇ。パラドクスの構成自体が仇になっちゃうわけだ」
『!! そう来るか、ディアボロスども……!!』
 戦闘知識でそう読んで、事前情報で『百足疾駆』というパラドクス名まで識れていることまでは明かさず微笑したヤコウが敵将めがけて降らしめるのは鋭き針の驟雨、然れど彼やラヴィデへの反撃たる百足疾駆の勢いは泥濘で鈍らされ、伊達成実は即座に別のパラドクスで攻勢に出た。爆ぜる勢いで撃ち放たれたのは強大な威力を孕んだ無数の閃光、
 だが、凄まじい輝きに曙光と神火が激突する。迷わずディフェンスを獲ったのは蒼海の竜と光彩聖姫、
「高速疾走の技以外のパラドクスや戦闘能力そのものが泥濘で鈍ることはないようだね。最後まで全力でいくとしようか」
「みたいですっ! けれど敵の技をひとつ鈍らせられただけでも私達がまたひとつ有利になったのも確かですよねっ!!」
 泥濘はあくまで移動速度を低下させるものにすぎず、高速疾走の技を鈍らせるのに巧く嵌まったのもあくまで偶然の賜物、それも『別の伊達成実』にも効果があるとは限らぬものだ。たとえば足を取られた敵に隙が生まれることを狙うというなら、もっと適した効果が別に存在する。パラドクス効果を拡大解釈して応用的な成果を狙うのは往々にして非常に分の悪い賭けであることを忘れてはならない。
 冷静にそう状況を見極めつつ、ここにいる皆が油断なんてするはずもないけれどね――と【パラドクス通信】越しの声音に笑みを乗せつつ陸が閃光の威力を半減させて奔らせた反撃の光槍が敵将の胸元を穿った刹那、両手に聖杖を握った一瞬の精神集中にて魔力を凝らせたユーフェミアが、防御強化で痛手を堪えながら浄化の炎で魔力砲撃を迸らせて。怯まぬ笑みを咲かせた少女が更なる神火を凝らせれば、陸も掌中に更なる光の鋩を顕現させた。間断なく爆ぜる彼我の輝き。
 冷たい朔風を突き抜けて伊達成実へと襲いかかる曙光と神火が数多の閃光と交錯した機を逃さず、戦場の空間を一気に塗り替えたのはレックス・ウェリタス(Memento mori・g07184)の指先。煌くハッキングコードが風に踊ったと見えた刹那、天魔武者の足元から腰へ、喉元へと這い寄りあっと言う間に蒼き波間へと呑み込む遥かなるナイルの流れ、
 王者の領域が齎す強力な幻惑は機械生命体たる天魔武者にも作用するが、相手がアヴァタール級ともなれば慢心は捨てる。己が魔力を惜しみなく、尽きぬナイルの流れのごとく王者の領域へと注ぎ込みながら、
「死物狂いの相手を長く惑わすのは無理だろうね、だけど【泥濘の地】では難しくても――」
「うん、レックスさんのパラドクスとわたしの言霊ならもっとしっかりした隙に繋げられると思う。たとえ一瞬でも」
 ――今ともに翔ける仲間達なら、
 ――強敵相手でも一瞬あればそれで十分!!
 彼が口にした言葉に頷くと同時に秡木・紲(選日・g07946)の胸裡には皆への確かな信頼が咲き誇る。嘗ては吉凶を示す霊託を齎したと云われる杖で敵将を示せば紲の花唇が、ほら、君はまだ水底で溺れたまま、と紡ぐ言霊が言の葉を現実に織り成すパラドクスとなって伊達成実を蝕み、二人へ反撃の閃光を放ちつつも敵将の体躯が大きく傾いだのは正に一瞬のこと、
 然れど、その一瞬に神樂が馳せた。
 不退転。不撓不屈。いずれも好きな言葉だ。怯んだ者、退いた者は負けて淘汰されるもの。絡繰でありながらもそれを魂で理解しているのだろうこの百足の武将に興味が無いとは言わないけれど、逢魔が時の双眸を眇めて神樂は、
「君、面白いね。でも駄目、君は望まれていない」
 呪を喰らい、邪を喰らう力を乗せいっそう妖しく輝く血桜の太刀を無防備な一瞬を晒した獲物めがけて振り抜いた。裡なる機巧へも届く深さで右胸から左肩への装甲を斬り裂き鋼の破片で朱華の桜を咲かせてその反撃をも捻じ伏せて、
 皆の猛攻勢へ、機を絆ぐ。

●耀武揚威
 冷たい朔風が廃寺の境内を変わらず吹き抜けていくが、戦場たるその地にはより鮮やかに逆巻く風が吹く。
 先手を獲る加護を齎す風を掴めば藍色の眼差しでまっすぐ敵将を捉えた秋果が躍らせるのは緻密かつ繊細な模様を咲かせるリバーレースのリボン、縛神帯とはいえパラドクスの乗らぬそれはあっさりと百足の尾に払い除けられるが当然こちらは囮、本命は相手が尾を揮った刹那にその横合いの泥濘に芽吹かせた緑だ。
 たちまち成長して数多の蔓を獲物へ奔らせる葡萄の樹、
「其方も足掻くでしょうけど、貪欲さでは負けませんよ! 逃げようとしたってこの蔓はどこまでも追いますから!!」
『逃げようとする? 片腹痛いことをぬかすな、誰に向かって物を言っている!!』
 だが敵は逃げるなり避けるなりしようとするだろうという彼女の読みは、不退転を矜持とする伊達成実が相手では的外れ。薄浅葱の双眸をいっそう烈しくぎらつかせた敵将が己を絡めとる葡萄蔓を避けるどころかその縛めを裡から力尽くで破って、猛然たる疾駆で襲い来る様に虚を衝かれたのは秋果のほう。本来ならば彼女の攻撃の威は半減され苛烈な反撃を喰らっていただろうが、何とか拮抗に持ち込めたのは皆が積み上げてくれた命中強化の賜物だ。戦況も敵の挙動も己の思惑通りになるものではないのだと胸に刻みつつ、やはり仲間が重ねてくれた防御強化で反撃を堪えれば、
 ――私ひとりで痛打を浴びせられるなんて思ってない。
 ――僅かでも隙を作って、仲間の攻撃に繋げられたなら……!!
 刹那、地から神火が迸り、天から幻焔が舞った。
 伊賀焼の村での戦いからこの決戦までの間に劇的な成長を遂げたユーフェミアを更に奮い立たせるのは、眼前の伊達成実を斃せば圧政の冬から村のひとびとを救えるという事実と、絆を結んでともに戦場を翔けられる仲間達の存在ゆえ。
「私達の力であなたを倒しますっ! ひとりでは敵わなくても、皆さんと一緒ならっ!!」
「ええ! 私達であなたごとすべて、新春の穢れを灼き祓わせてもらうわ!!」
 神火の光彩そのものを映して輝く双眸で敵将を見据えたなら、紅蓮の宝玉を戴く聖杖から迸るのは天賦の魔力と平和を望む心が発現した浄化の炎が燃え盛る魔力砲撃、流れるよう機を併せた祇伐が【飛翔】で翔ける天から神扇を打ち下ろすとともに灼ける焔翼の幻が翻り、主の紫烏の髪を躍らせつつこちらも浄化の輝きで民草の禍たる敵将を呑み込めば、眩い輝きが爆ぜて咲き誇る。少女達の神威に反撃を灼き尽くされた伊達成実が攻勢の光刃で斬撃を奔らせたが、
 輝ける斬撃に猛禽の嘴爪と真紅の籠手が喰らいついた。
「この一撃、もらっていくよ。ディフェンスも獲ったもん勝ちデショ!!」
「その感覚めっちゃ分かってきた、これもう勲章みたいなもんだよな!!」
 今ともにある仲間達と翔けるなら最早ディフェンスは獲り合うもの、これほど気持ちの好い戦いもそうあるまい。
 仲間を護りながら獲物を喰い破る、その機を獲る気概を誰よりも研ぎ澄ませて翔けたノスリが凄絶な火花を散らして斬撃を弾き、光刃をも殴り飛ばしてやると意気込んだ跳躍で飛び込んだ朱士とで二人ともに反撃強化も得て斬撃の威力を半減して、痛烈な反撃から猛然たる攻勢へと繋ぐ。
 己の痛烈な反撃、その反動で取った距離を即座に殺すのは地を掠めるがごとき低空飛翔、全速のそれから瞬時に迫り上がる急上昇に重ねて剣呑な笑み閃かせ、ノスリが鮮烈に奔らせた嘴爪は獲物の胸元から顎までをも深々と喰い破り、獰猛に笑って真っ向から吶喊した朱士は動力炉の唸りとともに跳ね上がった膂力に【怪力無双】を乗せて拳を打ち込んだ。然れど、敵将の腹部の装甲に大穴は空けどもそれはこの効果に関わりない純粋な攻撃の威によるもので、彼が思い描く通り吹き飛ばすことは叶わない。『重い物品を持ち上げる』ことを叶える効果ではあるものの、『クロノヴェーダを吹き飛ばす』ことを叶える効果ではないからだ。この効果による怪力がパラドクスの威力や勢いを高めることもない。
 パラドクス効果を拡大解釈して応用的な成果を狙うのは非常に分の悪い賭け、それを朱士が改めて肝に銘じると同時、
 眩い光の帯のごとき斬撃が迸った。
「出遅れたー! なんて思えちゃうのも贅沢の極みだよね、たとえ誰かを集中攻撃しようとしても無駄だよ、伊達成実!!」
「何とも頼もしー話よねッ! 不撓不屈の精神ッてこっちの皆にこそ似合いじゃない! 最期まで存ッ分に魅せたげる!!」
 己を含む仲間達の積極的なディフェンスが、誰かに痛手を偏らせるようなことは絶対にしない。
 揺るがぬその確信で強気な笑みを咲かせたアンゼリカが伊達成実へ叩き込んだのは己が身の丈をも超える巨大な光剣、天へ噴き上がる光柱のごとき輝きが鋼の体躯を大きく傾がせれば、間髪を容れず朔風に翻ったのは夜明けの装束と繊細なレースの花々が朝露めいたビーズの煌きを抱いたリボン。華やぐ装いと笑みで無双馬を駆る細がこちらも身の丈を超える黒金の大剣を思うさま揮って、轟と大気を唸らす渾身の一閃で敵将を吹き飛ばす。
 本来なら強敵相手の吹き飛ばしなどそうそう叶うものではないが、時空の理も世界法則も書き換えて覆すのがパラドクス。
 豪快なる吹き飛ばしが叶うのは細のパラドクスに『敵を吹き飛ばす』という事象が織り込まれており、使用技能がその威を強めているからこそ。先の戦いで数多の伊賀忍者を薙ぎ払ったアンゼリカの衝撃波や、数多の伊賀忍者を惑わしたレックスの精神攻撃も、それぞれ『斬撃とともに放つ閃光と衝撃波で敵を薙ぎ払う』『翼猫が放つ光で惑わし、感覚を狂わせる』というパラドクスの威を使用技能で高めたものだ。無論、パラドクスとて如何なる場合でも狙い通りになるわけではないけれど、
 この決戦でレックスが揮うパラドクスもまた標的の精神に干渉するもの。
 ――お前さんが足掻く心意気だけは認めよう。
 ――だがその生き様を記憶にとどめるつもりはない。
「僕達と彼らは解り合えない、でもそれで良い。躊躇わずに済むから」
「彼らもまた生き延びるのに必死であるのかもしれないけれど、俺達と解り合える日など来るはずもないしね」
 吹き飛ばされた天魔武者が着地する寸前に展開する王者の領域、遥かナイルの流れが伊達成実を溺れる錯覚で幻惑したならその瞬間に、王者の領域を神威の光槍が翔けた。天魔武者どもが圧政で力を得んとするのはディアボロスの侵攻を阻むため、あるいは七曜の戦に備えてのことではあるのだろうと陸は察するけれど、当然こちらが斟酌してやる必要などありはしない。
 黎明の眼差しでまっすぐ敵将を見据えて陸が撃ち込んだ光の鋩が伊達成実を泥濘に叩き落として反撃をも捻じ伏せた刹那、天より間髪容れずに降りそそぐのは薄紫と青の煌き翻る針の雨。ヤコウが招来した鋭い驟雨が獲物を穿ち貫けば、
「これとて恵みを齎す慈雨ですとも。脅威を祓い、伊賀のひとびとへ安らぎを沁み渡らせるための」
「彼に斃れてもらわなきゃ食糧の奪還も村のひとびとを安心させることも叶わないものね。言い得て妙だ」
 ――その針の雨、まだ抜けないよ。
 ――君を深々と貫いて、泥濘に縫いつけてくれるから。
 桃花の双眸を細めて笑んだ紲が天から地へ振り下ろす命繞の杖、その軌跡をヤコウの針に重ねるように花唇で紡いだ言霊がいっそう深く針を天魔武者の体躯に通らせ、その身を泥濘に縫いつけた次の瞬間、先に【飛翔】で天へ翔け上がっていた紬が獲物の真上から黒き一刀とともに降り落ちた。真赤な和装に墨染の羽織を躍らせるその姿は軽やかな戦舞を思わせて、然れどその手の傾奇刀は容赦なく敵将の首を落とさんとする。強敵たる相手の反撃をも叩き潰す痛撃。なれど、
「あらま、しぶといこッて。椿みたいにころりと落ちて散ればいいものを」
「それでも落花の椿ほどの風情はないかなぁ、何せ絡繰の武者の首だもの」
 伊達成実の首級を挙げるには至らず、反撃は叶わずとも渾身の力で天魔武者が跳ね起きた刹那には天から陽の輝きを負ってその背後へ降り立つ猛禽の影。軽口とは裏腹な鋭い嘴爪の一閃が敵将のうなじから背を反撃もろともに喰い破るが、ノスリの強撃に晒されてもなお伊達成実は斃れることなく、
『容易く我が首を獲れると思うな、貴様らの命という手土産もなく終わりはせぬ――!!』
 己が不撓不屈を証すがごとく毘沙門天閃光の輝きでもって攻勢に出た。
 泥濘さえも輝かせんばかりの苛烈な光、彼らへ無数に襲いかかる閃光へ果敢に飛び込んだのは桜龍の娘と青き精霊術師、
「こちらの光で灼ききる意気で、私も、獲ります……!!」
「うん、わたし達が獲るからね、簡単に通すと思ったら大間違いっ! 反撃だってプレゼントしちゃうからっ!!」
 最後まで皆と翔けて、圧政の冬の先に春を咲かせる。その一心と胸に咲く皆への信頼のままに翔けた祇伐が閃光を灼き祓う勢いで羽ばたかせた焔翼の幻、輝ける翼で朔風を突き抜ける全力急降下で飛び込むと同時にシルも精霊魔法陣を咲き誇らせ、防御強化と反撃強化の恩恵も享けつつ二人が爆ぜる勢いで撃ち放つ反撃は膨大なる浄化の輝きと絶大なる虹色の砲撃。
 続け様に眩く爆ぜるのも蜜のごとき焔の彩に、華麗な七色に輝く虹の彩。これらは無論敵に息つく間も与えず祇伐とシルが叩き込んだ攻撃なれど、自陣最高火力とそれに次ぐ強大な魔法の連打を浴びても伊達成実は輝きの裡でいまだ斃れずに在る。
「不退転。不撓不屈。成程、確かにそれを体現しているわけだ」
「だけど、不撓不屈を覆してみせるのが、オレ達の仕事だしね」
 だが流石に壮麗な甲冑にも百足の下肢にも無数の傷や亀裂が奔り、大きな穴や傷からは内部で爆ぜる火花が覗く。不退転を矜持とし不撓不屈の意気を抱けど決して不死ではない。血の通わぬ唇を微かに笑ませた神樂が血桜の太刀を手に地から敵将の懐へ躍り込めば、軽やかに泥濘を蹴って【飛翔】で天へ翔けたラヴィデが地上に朱華の桜吹雪を咲かせる神樂の斬撃に重ねて上空から己が矢を射ち込んだ。伊達成実の力も覚悟も軽んじはしない。
 瞬時に精神を研ぎ澄ませて放った一矢が相手を穿てば途端に閃く不可視の竜爪、
 傷から爆ぜる血潮でなく絡繰の破片を紫黒の呪炎が焦がせば、炎を消してしまうことなき針の驟雨が降りしきる。敵将の命を更に、確かに削りつつ、ヤコウは宵紫の眼差しで伊達成実を射抜いた。
「生きることの足掻きこそ潔いと僕は思うから、心根だけ覚えて居て差し上げる」
 ――けれどそれは、あなたへの餞ではない。
 ――圧政の中でも懸命に生きる、伊賀のひとびとへの餞です。

●雲外蒼天
 朔風に幾度となく鮮血がしぶき、鋼と絡繰の破片が爆ぜて散る。
 強敵相手の逆説連鎖戦となれば自陣に無傷の者は皆無、なれど唯ひとりの敵たる伊達成実も既に満身創痍の様相だ。然れど彼の不退転の矜持にも不撓不屈の心根にも翳りは見えず、捨て鉢でも特攻でもない敵将の在りようにノスリは笑みひとつ。
「ああいう不屈の精神は好きだが、圧政で人々を苦しめて力を得るっていう存在の根本から相容れないしね」
「人々に圧政の世を強いる者達になど明日はないと、その魂に刻んで黄泉路へ送って差し上げるとしようか」
 獲物は強敵なれども唯ひとり、天から地から幾つもの眼差しが戦況と敵将を見定め、適宜情報の共有をも怠らぬ現状ならば自陣に死角が生じる隙などあろうはずもなく。悠然と苔生す厳めしい庭石を軽やかに蹴りつけた刹那の急旋回と急加速で敵の意表を突けば閃く猛禽の嘴爪に続くは神威の光槍、彼の一閃に難なく機を併せた陸が運命さえ穿ち貫く光の鋩を奔らせれば、反撃の閃光を爆ぜ散らした輝ける槍が猛禽の裂いた装甲から敵将の背まで突き抜けて、
「死角なし油断なしっ! あなたの不撓不屈の心意気がどれほど強くても、わたし達に負ける要素はないからねっ!!」
「これが私達の強さだよ! お前に何ひとつ奪わせない、仲間の誰ひとりをも欠けさせないからこその、皆の力だ!!」
 衝撃に堪らず天魔武者が体躯をくの字に折った刹那、上空からその足元をめがけて連射される誘導弾。敵将が反射的に顔を上げれば己の銃撃を追う勢いで急降下していたシルが彼の直上で精霊魔法陣を花開かせて、魂をも灼き尽くさんばかりに眩い虹色の砲撃を撃ち下ろし、七色の輝き越しに負けじと巨大な光剣を咲き誇らせたアンゼリカが相棒の砲撃に併せて吶喊する。
 一瞬で光剣を構築するとともに自身を護る光を総身に纏わせる光剣収束斬(ジャッジメントセイバー)、なれど仲間達との連携で完璧な機を掴んだこのアンゼリカの一撃は伊達成実の反撃ばかりか次撃をも捻じ伏せ、光で護る必要さえもなく奪った生命力で彼女の傷を癒した。湧きあがる活力にひときわ鮮やかに笑みも剣閃も花開く。
 部隊の将たるに相応しく、伊達成実の揮う技はことごとく鉢屋衆や伊賀忍者どもとは比較にならぬ威力を備えてはいたが、その攻撃は『百足疾駆』が泥濘に鈍らされるのを厭ってか『不退転斬り』『毘沙門天閃光』にほぼ絞られたため読みやすく、これらの技をディフェンスできる者達に若干負担が偏りがちにはなりはしたものの、最大の反撃強化と積み上げた防御強化が誰にも膝をつかせはしない。進化した【グロリアス】や連携と数多の加護で勝ち取る【ドレイン】、最大域に達したそれらの効果をこちらも最大の攻撃強化が後押ししてくれるから、ディアボロス達は誰ひとり倒れず怯まず敵将に挑み続ける。
 百足の武将は最後の最期まで不退転を貫く気概でいるだろう。
 斬り捨てんばかりの勢いで揮われる光刃、己が敵を圧倒せんばかりの苛烈さで迸らせる閃光。然れど相手は強敵なれども、戦況そのものは終始こちらが優勢、皆で一気呵成の猛攻勢をかければ不退転を貫く武将も大いに押され、
「彼は不退転の意気でも、このままだと本堂に押し込んでしまいそうだね」
「大丈夫だと思いますけれど、あんまり奥のほうで戦うと仕舞われている食糧に被害が及ぶかもしれないのでっ!」
 逆説連鎖戦は常人の戦いとは一線を画すもの、距離に戦闘そのものを有利にする意味はなくとも敢えて陸とユーフェミアが敵将と距離を取りつつ戦っていたのは逐次戦況把握に努めるがゆえ。【パラドクス通信】越しに皆へ伝えるとともに左右へと展開した蒼海の竜と光彩聖姫が横合いから神威の光槍と神火の砲撃を撃ち込めば、輝きが爆ぜる瞬間に大きく後方へ跳んだラヴィデが伊達成実の真正面で弓弦を引き絞った。
「了解、こっちで釣り出してみるよ」
 敵は泥濘で勢いを鈍らされる『百足疾駆』での攻撃を封じていたが、反撃となれば話は別だ。放つ矢が朔風を裂き不可視の竜爪と交錯する勢いで相手が泥濘に鈍らせられつつも高速疾走で斬り込んで来たなら、即座に弓から剣へと変じた紫闇の刃で斬撃を受けつつ一気に咲き誇らせる護りの薔薇。結界術でより強固にめぐらせたガーディアンローズで敵反撃の威を減じて、
 紫闇の竜翼を一打ち、仄甘く昏いダマスク・モダンの薫りを引いた【飛翔】で彼が青天へと逃れれば、
「さあ、最期の舞台まで連れてッてあげるッ! お天道様のもとで逝くとイーわ!!」
「そっちだって、本堂の奥とかで討ち取られるよりもいいよな!?」
『――! 否とは言わぬ。然れど、易々と討ち取られもせぬぞ!!』
 真打ち登場とばかりに炸裂する細逝(ササメユキ)。
 百足の武将の背後へと躍り込んでいた細が紅玉の瞳を挑戦的に煌かせて、白き愛馬との吶喊で揮う黒金の大剣で一瞬前までラヴィデがいたところを貫く勢いで敵将を吹き飛ばした。唸る動力炉、牙剥くような笑み、己自身が致命打を与えられずとも仲間に繋げればそれでいいと朱士が真紅の籠手に爆発的な膂力を乗せた殴打を喰らわせたなら、薄浅葱の双眸をぎらつかせた伊達成実が奔らせる反撃の光刃を殴り散らした拳が先程朱士自身が空けた敵腹部の大穴の、更なる奥を破砕する。
 砕け散った絡繰の破片が爆ぜるように朔風に舞う瞬間を、見逃しはしない。
 指先を躍らせ空間を支配下に置けば、いよいよ最期が見えてきた敵将を見据えるレックスの緋色の眼差しが冷ややかな光を帯びた。一気に展開される王者の領域に躍る波濤は獲物を深い水底へといざなう幻惑、
「お前さんの部隊が村から略奪したものを、返してもらうよ」
「君には彼岸まで退いてもらって、ね」
 ――その水底が、君の永遠の褥だ。
 青く冷たく百足の武者を侵して呑み込んでいくナイルの流れ、その幻惑に溺れゆく敵の姿を見据える己の今の顔を彼女には見せたくないと思えど、幸か不幸か、杖で標的を示し言霊の力を織り上げることに集中している紲の桃花の眼差しが今映しているのは伊達成実のみだ。命中強化も得ていっそう深く沈める幻惑の水底、
 どれほど結界術を究めようともパラドクスが相手となれば技能のみで張る結界の防御は何もしないよりはマシ程度のもの、先程ラヴィデがそうしたようにガーディアンローズなり魔力障壁なりのクロノ・オブジェクトの展開に活かすならより確かな護りとなろうが、生憎二人はそれに適した装備を持たず、然れど此度はひときわ強固な幻惑と言霊で敵の反撃を捻じ伏せて、仲間達の苛烈な猛攻勢へと繋ぐ。それでもなお奮然たる立ち回りでの攻防を見せ続ける敵将の胆力に感嘆しながらも、
 ――塵は塵に、
 ――人の世に希望を返してもらう。
 先手を獲る加護を齎す風を紫闇の竜翼に受けたラヴィデの眼差しは、皆で紡ぐ勝機をとうに捉えていた。夢のような輝きを見せてくれ。唄うような囁きは【パラドクス通信】越しに仲間達へ確と届いて、同時に射ち込む矢が決戦終幕の嚆矢となる。
 竜眼めく宝玉が妖しく煌く呪われし弓、そこから如何にも物々しく射ち込まれた矢は実のところパラドクスの乗らぬ通常の射撃、なれど連射の合間に紛れさせた本命の一矢が幾つもの矢を払う光刃の軌跡の合間を貫いて、
『……!!』
「あなたの不退転も不撓不屈も、灼き尽くさせてもらいますっ!!」
 己が胸の芯を深々と射抜いたパラドクスの矢を思わず百足の武者が凝視しした刹那、不可視の竜爪が閃くとともに神々しい紅蓮の輝きが戦場を染めた。眩い炎を迸らせるのは紅玉を戴く聖杖、決然たる眼差しで機を掴んだユーフェミアが全身全霊で撃ち放った神火の砲撃を追った猛禽が一気に翔けて熱の余韻を突き抜けて、
「冥界へ渡るための脚は幾つ要る?」
「黄泉路を転がり落ちるなら、それほど要りはしないかな?」
 ――ひとびとの糧と、明日を返してもらう。
 眩い神火が爆ぜた次の瞬間、伊達成実の眼前で不敵な笑みを見せた途端にその視界から掻き消える。敵の草摺を足場にした跳躍で天魔武者の頭上を越えたノスリがその背後を獲ると同時、彼と入れ替わるかのごとく敵将の眼前で微笑してみせたのは神火の輝きと猛禽の影に紛れるように馳せた神樂、二段構えで完全に獲物の虚を衝いてその正面と背後から閃く血桜の太刀と猛禽の嘴爪が伊達成実の左の腕を断ち落として、その勢いのまま百足の下半身の側面を削るように幾つもの脚をも斬り飛ばした。朱華の桜吹雪と敵将の肩越しに蜜色と逢魔が時の眼差しが重なれば、互いに何処か似た本性を見出した心地。
 敵の反撃をも斬り飛ばした二連の痛撃のうち、次撃さえも捻じ伏せたのは果たしてどちらであったのか。
『流石の腕前だと言っておこうか、ディアボロスどもよ――!!』
「まだ斃れないなら、繋がせてもらいますよ!!」
「ええ、僕達は決してあなたを見縊りはしない。だからこそ、畳みかけさせてもらいます」
 然れど左腕を失ってもなお戦意を失わぬ百足の武将、彼に体勢を整える間さえも与えはしないとばかりに瞬時に泥濘へ緑を芽吹かせたのは秋果、彼女の意のままに奔った葡萄の蔓が体勢を崩したままの敵将を絡めとって絞め上げた瞬間を見逃さずに長大な銀針を一閃すれば、ヤコウの描いた軌跡がたちまち天から数多の針の驟雨を招来する。
 薄青と紫に煌きながら苛烈な銀箭となって敵を穿ち貫く針の雨、それだけでは終わらないとばかりに右手の銃から誘導弾を連射しながら針雨と銃撃に重ねて空からシルが吶喊するけれど、強敵相手に同じ手がそう何度も通用するはずもないと歴戦の精鋭たる少女は肌身で理解しているから、
 敵将の足元狙いの誘導弾が爆ぜた泥濘を着地と同時に蹴りつけたシルが獲物めがけて左の手で突き上げるのは淡碧きらめく聖剣。なれどその刀身は剣技を揮うのではなく魔力を高める触媒としての役割を果たし、
「わたしの全力全開、遠慮はさせないよ! 輝き全部、ひとつ残らず持ってけーっ!!」
 一瞬の高速詠唱とともに伊達成実の胸そのものに灼きつけんばかりの零距離で精霊魔法陣を咲き誇らせた。防ぎようもなく爆ぜる凄絶な七色の輝き、魔力の翼を全開に広げつつもシル自身が歯を食いしばって堪えねばならぬほどの反動とともに迸る虹色の砲撃が至近の敵を突き抜けその胸元に大きな風穴を開けるが、薄浅葱の双眸から眼光が消えぬと見れば迷わず紬が跳ぶ。
 最早勝敗は見えている。覆しようもない結末は察しているだろうに、それでも屈さぬ相手のしぶとさに笑って、
「不退転も不撓不屈も十二分に見せてもらッたからさ、そろそろ百足らしく、頭も地を這えよ」
「お前の光刃が模る百足が不退転の象徴なら、私の光剣の輝きは友とともに全てを取り戻すための標だ!!」
 敵将の首元へと容赦なく叩き込む重い黒は傾奇刀の一撃、呼吸ひとつで渾身の力を凝らせ絶大なる光剣の輝きを噴き上げたアンゼリカも瞬時に彼我の距離を殺して、伊達成実の光刃がその輝きで百足を模るいとまも許さず振り落とした裁きの斬撃で彼の右の腕を断ち落とした。手の届くものすべてを取り戻す、光彩誓騎の決意に呼応するように凝るのは桜龍の娘の魔力、
「力を貸して、お兄様……!!」
「勿論。ひとびとに明日と希望を持ち帰るために」
 神扇を揮う祇伐の手に重なったのは神樂の手。
 今この場で自陣最高火力を誇るシルの七芒星精霊収束砲(ヘプタクロノス・エレメンタル・ブラスト)との差はごく僅か。こちらも圧倒的な火力を有する祇伐の光蜜ノ愛浄(カルラウタ)は神樂に贈られた、神樂とともに揮うのが最も自然な術だ。
 彼の唇が花一匁の童歌を紡げば青天のもとに広がる戦場に陽炎が揺らぎ、一気に黄昏の彩が広がって、祇伐の神扇とともに翻る焔翼の幻が蜜色に輝く膨大な光で敵将を呑み込んでいく。ひとびとの禍に他ならぬ天魔武者の魂をも解いて、光の花弁を咲かせていく、滅びを招くほどに清らな、浄化の光。
「おやすみ、禍。あなたにも光蜜をあげる」
 ――咲いて頂戴。
 決戦の終焉を彩ったのは、圧政の冬の終わりを思わす光の花。
 はらりはらりと咲いては儚くほどけていく光の花となって、伊達成実のすべては消え果てた。パラドクスで織り上げられた黄昏も消え、空が青さを取り戻せば、何処からともなく青天に舞った小鳥が廃寺の前庭を彩る松の木に舞い降りてくる。
 戦闘の気配も絡繰どもの気配も消えた境内へ降りてきたのは恐らく天魔武者どもが廃寺に陣取るまではここをねぐらにしていたのだろうジョウビタキ。小鳥を驚かさぬよう、蜜色の眼差しを緩めたノスリが穏やかに笑いかけたなら、
「――やあ、おかえり」
『ピィ!』
 愛らしく澄んだ声音が返ってきた。
 この国で冬をすごし、春の盛りには北へ旅立つ渡り鳥だ。いってらっしゃいとこの鳥が見送られる頃には、伊賀国の誰もに笑みが咲いているといい。皆の胸にそんな想いが萌せば、まずは先程の伊賀焼の村からと全員が動き出す。
「さぁて、まだ終わりじゃないからな。村の人達に歓んでもらうっていう大事な仕事、やり遂げにいこうぜ!」
「一番大事な仕事だもんね、張りきっていこう! ミア!!」
「うんっ! 一番大事なお仕事も全力でいこうね、アンゼリカ!!」
 何せ一番大事であると同時に一番楽しい仕事だ。晴れやかに笑って真っ先に朱士が本堂の奥をめざしたなら、たちまち瞳を輝かせて弾けるように笑み交わしたアンゼリカとユーフェミアが足取りも弾ませて彼のすぐ後に続く。本堂の奥や本堂裏手の蔵には米や雑穀がそれぞれたっぷり詰まった俵が山積みで、味噌樽や漬物樽まで幾つもあったから、こんなに略奪していったなんて、と改めて秋果は憤慨したけれど、
「これ持って帰ったらみんな歓ぶよね! 村の人達みんなに笑顔が戻るといいねっ♪」
「それはもう間違いなし! 私達であの美味しい七草粥を振舞ってあげられたら、もっと幸せな笑顔が見られるかも!」
 溌剌と声を弾ませたシルが屈託のない笑みを咲かせるから、思わず釣られた秋果にも満開の笑み。時先案内人の提案どおり新宿島から持ち込んだ食材で七草粥を振舞えたなら、村人達のいっそう幸せな笑顔を見ることも叶うだろう。
 美味しいものは、誰をも幸せにしてくれる魔法のひとつだから。
 大量の俵と幾つもの味噌樽や漬物樽はいずれも重量感たっぷりなれど、勿論ここで【怪力無双】が本領発揮。軽々と抱えて俵や樽を詰め込んでいく【アイテムポケット】もLV4が15人分、まったくもって不足なしだ。蔵がすっきりと空になればラヴィデの胸もすっきり晴れやか。
 たっぷり満ちた【アイテムポケット】とともに蔵から出れば振り仰ぐ空もいっそう晴れ晴れとしていて、
「これもう、御神籤の凶の運勢なんてもう過去になったってことでいいよね!」
「圧政部隊を斃して厄落としってことでいいんじゃないかな。厄も落として穢れも祓ったなら、新年を寿ぎにいかなきゃね」
「成程、厄落とし。運命が切り拓くものなら、運勢を切り拓くのもありでしょうしね」
 御機嫌なラヴィデの言葉に柔らかな笑みを零した陸がそう語れば、納得心地でヤコウも楽しげに狐の尾を揺らす。
 ったく、食べないのに盗ってんじゃ無いわよ――なんて細が憤然としたのは本堂の奥に積まれた食糧を眼にした時のこと。略奪者どもを一体残らず成敗し終えた今、取り戻した俵も樽も【アイテムポケット】に詰め込んで、
「食糧は美味しく笑顔の種になってこそ! ホラ、咲かせにいきましょ――お得意でしょ?」
「ンはは! 咲かすのは御任せあれだ。大吉分の幸、惜しみなく振りまこッか!」
 軽やかにぽんと紬の背を叩けば細のかんばせにも笑みの花。凶なら一瞬で過去にしてもいいが大吉なら今年いっぱい抱いて皆に振りまいていきたいところ、朝顔から皆の笑みの花まで何でもござれと磊落に笑って請け合う紬の声が耳に届けば、
「皆の笑顔も、咲くのかな……いや、私達で咲かせにいく、のだね」
「ええ! 食糧も希望も持ち帰って、新春の祝を届けて、咲かせにいくのです! そうですよね!?」
「そういうこと! めいっぱい咲かせにいくために――さぁ、凱旋だ」
 一旦口にした言葉を柔く笑んだ唇で言い換えた神樂の様子に祇伐が輝くような笑みを咲かせ、話を振られたノスリが相好を崩した。凱旋という言葉の響きが殊のほか胸を躍らせるから、レックスの笑みも知らず綻んで、軽やかな足取りで傍らをゆく紲がふとこちらを見上げてきたなら、ふと胸が疼いたけれど。
 王者の領域で空間を支配して、敵将を冷ややかな眼差しで見据えたときの彼の表情を見たのか見ていないのか、どちらともつかぬ風情で紲が笑みを咲かせる。むしろ見ていてもなお変わらず接してくれるのだと確信できるほど自然に笑って、
「村に春を、おいしい七草粥を届けにいこう」
「――そうだね、いこう。出来るだけ、速く」
 楽しげな声音でそう言ってくれるから、呼吸するよりも自然にレックスは微笑み返し、仲間達を最速の帰還手段に誘うよう軽やかに【飛翔】で飛び立った。村に春を届けにいこう。
 ――紲の好きな味、
 ――教えてもらった優しい味を、僕は教えに行きたいんだ。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【怪力無双】がLV3になった!
【勝利の凱歌】がLV2になった!
【建造物分解】LV1が発生!
【クリーニング】LV2が発生!
【一刀両断】LV2が発生!
【エイティーン】LV1が発生!
【飛翔】がLV11になった!
【活性治癒】がLV3になった!
【パラドクス通信】がLV4になった!
【友達催眠】LV1が発生!
【土壌改良】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV10(最大)になった!
【ガードアップ】がLV6になった!
【能力値アップ】がLV10(最大)になった!
【ドレイン】がLV5(最大)になった!
【命中アップ】がLV5(最大)になった!
【リザレクション】がLV2になった!
【アヴォイド】がLV2になった!

竜城・陸
皆の笑顔が見られたらいい
この先の日々に少しでも、希望を持って貰えたらいい
その為に力を尽くすよ

手分けして【建物復元】を行っていく
恐らくすぐに済むだろうから
他に修繕あるいは手助けが必要な箇所がないか村の方々に聞いて回ろう
建物の補修や、畑の手入れなんかもお任せあれ
学園で学んだことを存分に活かそう
調理もまだ練習中だけれど
少しくらいはお手伝いができると思う

配膳も積極的に手伝うよ
皆で集まって、一緒に食事にしよう
互いに笑顔を交わし合えば
きっと、温かな心地になる

歌や舞を披露するのなら
村の方にこちらの世界の楽器があればお借りしようかな
【操作会得】で不足なく演奏できるだろうから
伴奏は任せてね


ノスリ・アスターゼイン
建物復元でまっさらに癒した後は
歓声も耳に清々しく
でもまだまだ!
笑顔の花を咲かせようじゃあないの

持ち込んだ各種材料で祝宴の準備
七草粥の食材を切るのは俺も手伝えるよ
あと味見役もね!
匙も箸も足りないなら木彫りも任せて

伊賀焼の温かみのある器に
七草粥の素朴さ
いっそう優しく沁みる滋味

大人達とは南都諸白で乾杯
飲めない人には
小梅と昆布の茶を振る舞うのも良いね
昨年覚えた大福茶
ほっと安らぎを感じたから

伊賀焼の窯を見せて貰ったり
浮遊で連れたって窯の勇壮さを眺めて貰ったら
彼らの仕事が更に誇らしく胸に燈るかな

子供達と野に春を探しに行こうか
頬を擽る爽風には真冬とは違う柔らかさ
鳥の囀りには弾むような軽やかさ
芽吹く春を寿ごう


空木・朱士
【建物復元】で破壊された家屋や窯を手分けしてサクッと直したら

七草粥や味噌田楽は皆に任せて、新宿から持ち込んだ食材に伊賀の味噌を使って俺の生まれ故郷の料理を作ろうかなって思ってさ。

炊いたご飯を粒が残るくらいに潰したら割り箸に刺して小判型に整える。
少し焼いたら胡桃や煎り胡麻を使った特製味噌を塗って更に焦げ目が付くまで焼いたら出来上がりだ。
『五平餅』っていって昔は祝いの場で食べられたりもしたんだってさ。

あー、やっと南都諸白が呑めるー。
村人と呑みながら仲間達の歌や踊りを楽しみ手拍子や拍手を贈る。

沢山の咲く笑顔と口に含んだ豊かな香気に知らず口角が上がる。

行く先に争ひ在り、幸ひも在り。

……春は近いなぁ。


アンゼリカ・レンブラント
大切なミア(g09068)と
さぁ村に春を届けないとだね!

【建物復元】も駆使して村の破壊された家屋や
窯を戻していったら
新宿島の食材で味噌田楽を作ってみないかな
村人の想い籠る味噌と合わせればきっとおいしいよね!
料理は…ミアと違ってあまり自信ないけど、一緒に挑戦だ!

出来上がったらみんなと食べてきっと幸せな気持ちがシェア!
…食べる?とちょっと気おくれするけど
ミアに食べさせたりもするよ
私もお返しもらえるの?じゃあ喜んでっ
……なんで緊張するんだろ

さぁ、食べたら歌舞音曲をやってみようか
アイドルとしてミアと先日デビューしたばかり
人々の心に寄り添えればそれは私たちの本懐。
心を籠め時代に合う舞を踊れればうれしいね


シル・ウィンディア
ふぅ、こうして取り戻せたのはいいよね。
さぁ、ここからは村の人達のために頑張らないとねっ!!

まずは建物修復でお手伝い
手分けをしたらスムーズに終わるもんね
みんな頑張ろー♪

七草粥は初めて作るけど、みんなと一緒なら怖くないっ!
ふふふ、お料理はお勉強しているから、そこまで苦じゃないんだよっ♪

田楽は作ってくれているから、何か一品ほしいなぁ…。
大根を千切りにして、塩をもみ込んで簡単なお漬物を用意しておこっと
味変も大切っ♪

宴会が始まったら、みんなでいただきますっ!
みんなの歌とか舞を見ていると、わたしもやっぱりやりたくなる…

あ、わたしも一曲歌いますっ!
風のように爽やかな歌と身軽なダンスで魅せていくよ


ユーフェミア・フロンティア
大切なアンゼリカ(g02672)と一緒にがんばりますっ!

復元が出来たらお料理開始ですっ!
味噌田楽だと、こんにゃくもあるけど、生麩やお茄子、大根もおいしいからっ!
お酒とお砂糖をお味噌に加えて伸ばしていきます。
そして、新宿島から持ち込んだ食材に塗っていって、あとは焼くだけですね。

出来上がったら皆さんでいただきますっ!
アンゼリカ、食べさせてくれるの?
それじゃ…
あーんと口を開いて一口食べます。
ふふ、貰ってばかりだと悪いからお返しだよ
そういって差し出すけど、なんか様子が?
アンゼリカ、熱とかないよね?

神に捧げる舞は私にもできるから
それを人に捧げるだけだね。
アンゼリカと共に舞を踊って村の人を楽しませますね。


永辿・ヤコウ
復元した窯や家屋を見て回り
元に戻す以外に
焼成した品を並べる棚などの傾きや
保管庫の雨漏り箇所など
メンテナンスの必要な個所があれば
営繕も行いましょうか

七草粥作りでは
ラヴィデさんと過ごした茶屋での温もりのひとときを思い出し
凶を覆す凛々しい姿こそ不撓不屈と頼もしく
つい笑み綻んでしまったりも

けれど
笑顔はきっと、何よりの美味の魔法だから
粥を盛る器にふわりと咲く湯気の花が
その証

味噌田楽の香ばしさも是非味わいたいな
もっちりした生麩も蒟蒻も
南都諸白と相性抜群
耳も尻尾も嬉し気に揺れる

肴にぴったりですね

歌や音楽に手拍子を入れたり
伊賀の職人さん達や人々と語らう時間も楽しくて
進む酒杯に僅か染まる頬を
渡る風が擽る心地良さ


ラヴィデ・ローズ
調理場は……
よし!寧ろ邪魔になりそうだ、村を歩こう

修復加速で以前に壊れた物の修理もやり易いかな
支えの一つであろう、思い出の品等を直す一助が出来れば
これでも手先は器用な方でさ、ほんとほんと
持ち込んだツールキットや現地の道具を借り
思い出話に耳を傾けながら。ヤコウくんの修理の仕事ぶりを思い返しながら
実はね……カッコよくて憧れてたんだよ。ふふ

怪力無双も活用して力仕事も手伝って、と
戻ったら、宴の空気にふっと肩の荷が下りた心地
乾杯!
有難く味わう七草粥に味噌田楽
あぁ~よみがえる~
なんて年寄りじみた感嘆もつい
働いた後の宴は最高だし
皆の笑顔で更に、ね

歌や曲、声もが耳に心地好く
目を閉じ思う
今夜はいい夢が見れそうだ


咲樂・祇伐
🌸樂祇

咲かせましょう!
皆の心も笑顔も満開に
平穏がまた戻るように

建物復元は手分けして
道具等の壊れた物等も無いか声をかけていく
皆の衣類が住居が汚れていたらクリーニングでさっぱりと
清潔は大切です!

窯が直れば自然と笑みが咲く
素朴で力強い肌合の美しい伊賀焼がまたここから生まれるのも楽しみね
お兄様、お料理しましょ!
兄程では無いけど料理の心得はあるわ
祈りを込めた七草粥に、香ばしい味噌田楽
ほっと安らぐご飯を作り食べて
皆との会話も弾めば心に彩が宿る

お兄様の笛も披露しては?
私、大好きなの
あなたの笛の音

明日ありと思う心の仇桜
だからこそ
この一瞬が尊い
重ねる日常は彼等の歴史
迎春…春はここに目覚めたと
伝う風に頬を弛める


咲樂・神樂
⚰️樂祇

此度の圧政の冬は去り
春告の宴が如く
心に顏に笑みと希望を咲かせるの

協力し建物復元で住居も
大切な窯も元通りに

祇伐が清潔にしてくれるなら
あたしはおかえりと声をかける
修復加速で道具も直すわ
今後の生活に必要なものでしょ

次はお腹も満たさなきゃ
あたし料理好きなの
昆布出汁と白味噌仕立ての七草粥に
お好みで味変の具材も手際よく作り
祇伐と一緒に料理するのは楽しいわ
あたし達が持ってきた食材も加えれば
心も重なるようでより美味し
味噌田楽も召し上がれ
あなたはどれ食べる?

歌と踊りとは華やかね
私の笛も?
祇伐が願うならと披露する

笑顔が心地いい
こうして明日という希望は絆がれて
心がこんなにもあたたかいのは
春が目覚めた故にかな


秡木・紲
【星絆】

一軒一軒、復元に問題ない事を確認しよう
これで村の人たちも、また日常に戻れるかな
ほっと一息、安堵して

さあ、七草粥作りだ
新宿から持ち込んだ食材で
力を合わせて七草粥を作っていこう
お好みで大和橘胡椒もトッピングできるよう準備
おいしくなあれ、なんて聞こえたなら
そっと心のうちで念じて

出来たら温かいうちに村の人たちに振る舞おう
無病息災を祈って食べるんだ、なんて
教わった言葉を村の人たちに伝えて
とてもおいしかった大和橘胡椒の味変を
村の人たちにおすすめして

村の人たちに振る舞ったら皆の舞や歌を楽しみつつ
あ、おかわりしちゃう?神様の啓示もあったからね
それに、一緒に食べるごはんはおいしいんだ
いただきます


レックス・ウェリタス
【星絆】

辺りの復元が済んでるか確認して歩くよ
皆で取り返した物に安堵の息を零し
村人の日常をそっと願う

本番は七草粥で春のお届け
アイテムポケットに入れてきた新宿島の食材を出して
紲が作ってるのを真似ながら、一生懸命作ろう
隠し味は自分が食べたときにもそっと仕込んだ魔法の言葉
――おいしくなあれ

食べる時には教えて貰った無病息災や風習を伝え教えて
味変は自分のうっかりを塗り替えるように
今度こそ確りと
持ち込めてるなら大和牛の時雨煮からお勧めしようか

…僕たちも七草粥のお代わりしていいよね?
神様の啓示に肖ってさ
いただきます

ふと思い出すは優しい味に沈め過ぎた、喉の秘密
これが病で、もし治るなら
いつか話したいと緩く思うんだ


捌碁・秋果
新宿島から持ってきた食材で白味噌仕立ての七草粥を作るよ!
料理の腕は普通くらい?
家庭料理や簡単なお菓子なら作れます。

七草粥を作るのは初めてだけど、レシピは覚えてきたから安心してね。
料理をしつつ村の人に七草粥を説明。
無病息災を願う縁起物で、七種類の葉っぱや野菜が入っているんです。
でも…七草は言えるけど、どれがどれだか。
これがナズナ? え、ナズナとペンペン草って同じ?

仕上げに梅干を添えて、紅白で縁起よく。
皆に気に入ってもらえるかな…?

七草粥を食べたら、子供でも飲める米麹の甘酒を村の皆に出したいな。
食後の甘い物は格別。お腹が満ちて、心も満たされる。
村の皆にも、あのほっとする気持ちになってほしいな。


●一陽来復
 ――村のひとびと皆の笑顔が見られたなら、
 ――この先の日々に少しでも、彼らが希望を持ってくれたなら、
 俺達は未だ終わりの見えない戦いの日々を、この先もまた翔け続けていけるから。
 天魔武者どもを殲滅しての勝利より何よりも、苦しめられてきたひとびとの笑顔こそが竜城・陸(蒼海番長・g01002)の、そして伊賀焼の村から圧政部隊の拠点たる廃寺に至っての戦いを翔けてきたディアボロス達みんなが望むもの。
 然れど何をするまでもなく、青天を【飛翔】して凱旋してきたディアボロス達の姿そのものが伊賀焼の村のひとびとの顔に希望の輝きを燈した。湧きあがるよう咲いた村人達の歓声も笑顔も、皆が【アイテムポケット】から米や雑穀が詰まった俵に味噌樽や漬物樽など天魔武者どもから奪還してきた品々を次々と取り出して見せればいっそう明るく花開いて、
「略奪された食糧だけじゃないぜ、鉢屋衆どもに壊された家屋や穴窯も俺らで元通りにするからな!!」
「うんっ! みんな見ててっ! わたし達ならあっという間に元通りにできちゃうからっ!!」
 豪放磊落かつ自信たっぷりに笑った空木・朱士(Lost heart・g03720)をはじめとする面々で五重に燈した【建物復元】、発動条件が極めて限定的だからこそ絶大な力を発揮するこの効果を溌剌と笑み咲かせたシル・ウィンディア(虹霓の砂時計を携えし精霊術師・g01415)達みんなで村のあちこちに散って開花させたなら、
 たちまち奇跡が咲き誇った。
 破壊され瓦礫と木片の山となっていた数多の家屋も、崩落して崖崩れのごとき様相を見せていた穴窯も、鉢屋衆どもの暴虐そのものが夢か幻であったかのごとく瞬く間に元の姿を取り戻す。皆の凱旋と取り戻された食糧を眼にしたとき以上の勢いで村人達から爆ぜるように歓声が沸いて、誰しもの顔に飛びきりの驚きと歓びの笑みが輝いて。
「わあ、わあ! ほんとに元通りだ!!」
「正直途方に暮れとったが、助かったよ……!!」
「ありがたやありがたや、あんたらは神様じゃあ、仏様じゃあ……!!」
 好奇心いっぱいに瞳も輝かせる子供達の、安堵と感激で涙まじりになる大人達の笑顔と歓声、目にも耳にも幸せなそれらに相好を崩したノスリ・アスターゼイン(共喰い・g01118)が、
「どっちでもないけどまだまだこれから! ここから更に満開の笑顔の花を咲かせてみせようじゃないの!」
「ええ、ここからが本番ですよね! そういうことなら、一足早い春を皆様に御覧にいれてみせましょう!」
 感謝のあまりこちらを拝み始めるお年寄り達に悪戯っぽく笑って見せれば、彼の言葉に応えてふわり【飛翔】で村の中央へ翔けたのは咲樂・祇伐(花祇ノ櫻禍・g00791)、銀の鍵に花々と鈴の音が咲く杖を青天へと掲げたなら、一斉に溢れだすのは戯れめいて舞い踊る花吹雪。圧政の冬のさなかにあった村を春の彩へと染め変える桜の領域が、家屋の汚れも村人達の衣服の汚れも泡沫の夢のごとく消し去っていく。
 祇伐が花開かせた効果は、既に燈されていたものも合わせて三重の【クリーニング】。
 桜花の美しさに、清められる心地好さに、村人達がひときわ嬉しげな歓声を咲かせる様に、
「そっか。自分じゃ見慣れちゃってるけど、ここのひと達にはパラドクスも極上のエンターテインメントになるんだね」
 それなら私も、と桃花の瞳を楽しげに煌かせた秡木・紲(選日・g07946)の白き指の先から踆烏が羽ばたく霊符が舞えば、輝ける朱雀の姿で顕れた式神が青天に鮮やかな朱の焔を躍らせた。悪しき者を秡い善き者を援ける秡火が咲かせる力は戦いの折にも紲自身が燈した二重の【ハウスキーパー】。
 自分達が今日中に帰還しても、二日の間は村のひとびとに快適な生活を約束できる贈り物。
 ――神様でも仏様でもないなら、
 ――天女様なんじゃ!?
 桜花に朱焔にと彼女達が次々咲かせる華やかな彩と不思議な力、それらに沸く村人達の歓声にそんな声音が混じる様に、
「いいねぇ、確かにひっそりパラドクス効果を燈すだけっていうのも勿体ないのかも」
「ええ。折角だもの、使えるものは何だって有効活用していきましょ!」
 遊びを思いついた子供さながらの笑みを覗かせるラヴィデ・ローズ(la-tta-ta・g00694)の意を汲んだなら、咲樂・神樂(離一匁・g03059)も戯れを受けて立つように笑み返し、二人同時に地を蹴れば翔けあがる青天で刃を抜き放つ。
 剣舞めいて激突する紫闇の長剣と血桜の太刀、ラヴィデの刃が纏う紫黒の呪炎をも呑み込みながら輝く神樂の焔が不死鳥の羽根のごとく舞いながら桜花を咲かせれば、湧き立つ村人達の歓声とともに二人が世界へ燈した祝福は【修復加速】。
 家屋や穴窯を復元するのみならず、壊れた品々などもこの効果を活かして直せれば、と思ったのだけれど、
「あらすごい! 建造物だけじゃなく、その中のあれこれまで元通りにしちゃえるのね、【建物復元】って!!」
「ええ、効果絶大ですよね。内側の石組みも確りしていて、これなら補修の必要もなさそうです」
 先程元通りになったばかりの穴窯を覗いた神樂は、穴窯ばかりでなく窯の中に整然と並べられた焼成前の器の数々までもが傷ひとつない姿に復元されている様子に逢魔が時の双眸を瞠って、山の斜面を活かした穴窯の土壁を補強する石組みをそっと指先でなぞった永辿・ヤコウ(繕い屋・g04118)も石組みの堅牢さに笑みを咲き綻ばせた。この村は職人の村なのだ。
「粉々に潰れてた大根まで元通りになったよ。本当にすごいね、この効果」
 倒壊していた家屋を元通りにしてきたレックス・ウェリタス(Memento mori・g07184)も穏やかに微笑みながらそう語る。軒先に吊るされていたと思しき幾つもの干し大根達が屋根に押し潰されていたのだけれども、【建物復元】で家屋が元通りになれば干し大根達も何事もなかったように軒先に並んでいて、その様が村のひとびとの日常を確かに取り戻すことができたと実感させてくれたことが、胸にあたたかな光を燈してくれたから。
 建造物だけでなくそれに付随する家財などの品々も纏めて元に戻せるのが【建物復元】の真骨頂。だが、あくまで破壊前の状態に戻すのであって新築同然の状態にする効果ではないとヤコウは識るから、たとえば屋根の雨漏り、棚の傾きといった、この効果が及ばぬ時期から補修を必要としている箇所があるなら、と想い馳せたのは繕い屋たる身の性(さが)なれど、
 ――この村の方々なら、
 ――僕が手を貸す必要もなさそうですね。
 断頭革命グランダルメのパルマ公国、絵本の世界めいた農村へ赴いた際には、落雷で破壊された水車小屋を【建物復元】で元通りにしたついでに経年劣化の見られた水車板の差し替えなどで存分に腕を揮ったのだが、今回は【建物復元】があるなら修復作業は不要、注力すべきは別のこと――と事前に明言されていたとおり、この村では特に営繕の必要はないらしい。
 今回の任務の最重要事項は、村人達に圧政を忘れるような楽しい時間を贈ること。
 圧政のことなど忘れてしまえるようなひとときを。明るく楽しい気持ちになって、元気づけられるようなひとときを、この村のひとびとに贈るため、いっそう晴れやかに笑ったノスリが村人達にこう誘いかけたなら、
「実はさ、取り返して来た食糧とは別に美味しいものや美味しいお酒を持ってきたんだけど、皆で祝宴なんてどう?」
「張りきって調理しますよっ! 皆さんに美味しいものばっちり御馳走させていただきますからっ!」
「うんうん、私達で頑張るから楽しみにしててもらえると嬉しいな!!」
「わわ、二人とも頼もしい……! 私も腕を揮わせてもらいますから、いっぱい食べてくださいね!」
 勿論更なる歓声が咲いて、皆の様子にこちらも満開の笑みを咲かせたユーフェミア・フロンティア(光彩聖姫・g09068)がふわり朔風に踊らせて纏うのは可憐なフリルに彩られ幸せの魔法も籠められた愛用のエプロン。神火で鍛えられた万能包丁もその手にきらりと煌く大切なひとの勇姿にアンゼリカ・レンブラント(光彩誓騎・g02672)も元気いっぱい気合満点の笑顔で腕まくりをすれば、年下の少女達の意気込みに破顔した捌碁・秋果(見果てぬ秋・g06403)も村人達に屈託なく笑いかけた。
 神樂とシルを筆頭に、料理技能を持つ面々を含めた仲間達が祝宴の準備を担ってくれると見て取れば、
 ――よし!!
 ――オレが手を出すと寧ろ邪魔になりそうだ、村を回ってみよう!!
 謎の自信が胸に満ちたラヴィデは調理を皆に任せて村を見霽かす。五重の【建物復元】の効果が及ばぬ頃に壊れてしまった思い出の品、そんな品があるなら思い出を甦らせる一助になれればと思いはしたものの、妖狐の繕い屋の様子からすると、
「う~ん、【修復加速】を活かせるお手伝いは必要なさそうかな」
「新年を迎える前にってことで、修繕が必要なところは年の瀬のうちに済ませてしまったのかもしれないね」
 至るところはそんな結論、彼と同様に村を見霽かした陸も思案気に顎へ手をやりつつそう結論づけた。
 修復作業は必要ないと事前に明言されていたけれど、いざ現地に行ってみたら修復が必要なものがあった――なんて事態になるなら予知の意味がなく、修復作業は不要という事前情報を前提に様々な準備を調えてきた仲間達の立つ瀬もない。
 手先の器用さを自負するラヴィデだが、伊賀焼の村ともなれば村人達も皆それぞれに器用だろう。それなら別のことで皆の役に立とうかと紫闇の竜と蒼海の竜は笑み交わし、いってらっしゃいと手を振る仲間達に手を振り返して足を踏み出した。
 二人を送り出したなら神樂は桜咲く袖にきりりと襷(たすき)がけ、
「さあ祇伐、皆のお腹を満たしにかかるわよ!」
「はいお兄様! 心を籠めてお料理しましょ!」
 兄に倣って祇伐も白の祝衣に襷(たすき)をかけて、気合の入った互いの顔にふわりと笑みを咲かせ合う。
 村に美味を咲かせ、皆に笑顔と希望を咲かせて。
 圧政の冬を越えて迎える、幸せな春告げの宴を。

●和気致祥
 美しい金色に透きとおった滴が朔風に躍った。
 黒々と艶めく鉄釜は新宿島から持ち込まれ程好く研がれた白米を抱いて、たっぷりと注がれる金色に澄みきった昆布出汁を受けとめる。青天のもとに手早くもしっかりと組まれた即席の竃(かまど)へ鉄釜がかけられたなら、竃の薪に鮮やかな焔が燃え上がった。
 天上の美味を作り出すための炎を操るパラドクス――大火炎調理法の焔だ。
「炎の強さはこれくらいで大丈夫かな?」
「うん。最初は中火で、煮立ってきたら弱火にするんだ」
 術を揮ったのはレックスなれど、料理の心得があるのは紲のほう。竃を覗いて炎の輝きに双眸を細める彼女の言の葉を胸に書きとめれば、左右の竃からもお呼びがかかる。
「お、いい感じ! 俺のところも頼んでいいかな、七草粥とは別にごはん炊きたいんだよな」
「こっちにもお願いします! 天上の美味を作り出すための炎ってことなら、活かさない手はないですよねっ!」
「勿論。皆の役に立てるなら嬉しいよ」
 昆布出汁でなく水を注いだ鉄釜、中の白米はきっちり浸水済みのそれを竃にかけつつ朱士が笑いかけたなら、味噌田楽ならお茄子や大根も美味しいからと持ち込んできだ大根を昆布出汁で煮含めるというユーフェミアも飛びきりの焔を望む。
 二つ返事で微笑むレックスが新たな焔を躍らせれば、焔の輝きとともに暖かな熱もふわりと溢れて、けれどまだまだ冬色に彩られている山から吹き降ろしてくる風の冷たさ感じれば、ユーフェミアは【熱波の支配者】でふうわり寒さを和らげた。
 幾つもの火元を必要とし、十人超で祝宴の支度をするともなれば、民家の台所を借りるよりも屋外の開けた場所に調理場を設えてしまったほうが何かと便利。こちらも青空のもとに借り出してきた作業台では俎板の上で包丁の音色が軽快に唄う。
「ふふふ、お料理はお勉強しているから、こう見えてもなかなかの腕前なんだよっ♪」
「流石はシルさん、何事にも向上心いっぱいですね。浅漬けにするなら昆布も一緒にどうですか?」
 料理の技能は仲間達の中で筆頭、高速機動を得手とするシルは包丁捌きも高速軽快。とととととっ、と包丁がリズミカルに唄う彼女の手許から生まれる大根の千切りは味噌田楽とは別の一品にする浅漬けのためのものと聴けば、出汁に使った昆布を風味づけにと勧めつつヤコウは七草たる菘(すずな)と蘿蔔(すずしろ)の根菜部分、すなわち蕪と大根を手際よく刻んで、食めば優しくほどける柔らかさを目指して茹でていく。
 二人や皆の様子を見回したノスリは己が手のナイフを楽しげにくるり。
「食材を切る……のは手が足りてる? 味見役なら任せて! 木彫りで匙や箸を作るのとかもね!」
「ノスリの木彫りの腕が鳴るって感じだね! 匙も箸もありがたいし、田楽串もあると嬉しいかなっ!」
「あると嬉しいわよね田楽串! ほら、こんな形の串よ」
 彼の腕前は花冠の結婚式でばっちり目にしたところ、味噌田楽のための豆腐の水きりに挑んでいたアンゼリカがぱっと顔を上げて輝く笑みを咲かせたなら、蒟蒻に隠し包丁を入れていた神樂が新宿島で田楽のレシピを確認した際にスマートフォンに落とし込んで来た画像を披露する。
 平串の先端が二股に分かれた、食材をしっかり支えられる串。
「お団子とかも串に刺してあるのだといっそう美味しく感じますしね!」
「だよな! こっちにも田楽串もらえるかな、五平餅つくろうと思ってるからさ――って、あれ五平餅知らない?」
 優しくあたたかな昆布と米の香りをくゆらせる粥の様子を確認していた祇伐の笑みと声音も華やげば、相好を崩した朱士がはたと気づいたように皆へ訊ね、知らない、と応えるように幾人かがふるふると首を振った。
 五平餅は中部地方の郷土料理、江戸時代中期には既に食べられていたと聴くけれど、この国に馴染みが薄い者達ばかりではなく、平安や戦国出身のディアボロス達でも新宿島へと流れ着くまでは出逢う可能性さえもなかったかもしれないものだ。今ここにいる仲間達でも知らないひとが多いんだなと思えば、皆にも俺の故郷の味を是非と朱士の意気込みも増す。
 五平餅には割り箸を刺すつもりでいたけれど、串が使えるのならいっそう雰囲気も増すというもの。
 美味しいものがより美味しく楽しめるとなれば当然ノスリにも否やはなくて、
「いいね田楽串、大量生産了解! ね、何か良さそうな木とかある?」
「それなら椿かなぁ、きちんと仕上げれば手触りもいいんだこれが!」
 興味津々に集まってきていた村人達に訊けば即座に積み上がるのは程好く乾燥させられた椿の枝の山。木目に逆らわぬよう削り出せば生まれ来るのは優しく指に馴染む田楽串、その手触りの心地好さにノスリが蜜色の眼差しをひときわ和らげれば、親友の指南どおり里芋を茹でにかかるアンゼリカも更に意気揚々。
「素敵な田楽串も用意してもらえるしね、飛びきり美味しい味噌田楽を仕上げよう、ミア!」
「村の玉味噌も分けてもらえたから絶対美味しくなるよっ! これに砂糖を混ぜて、お酒で伸ばして……って、あれ?」
 己自身は決して料理に自信があるわけではないけれども、心得のあるミアと一緒に挑むのなら大丈夫、と確信に満ち充ちた天の光映す瞳を向けられたユーフェミアの手がふと止まる。
 自家製味噌を玉にして竃の上に吊るし、燻しながら熟成させたこの村の玉味噌。それに砂糖を加えてお酒で伸ばして、と、脳裏にはレシピの道筋が確り描き出されているけれど。14歳の身でお酒を扱うのは躊躇われた。
 飲むわけじゃない、料理に使うだけ。現代でも料理酒なら20歳未満でも購入可能で、火を入れれば酒精も飛ぶのだから、
 とは思うものの、それでも、やっぱり。
 ――今の自分がお酒を扱うのは控えるべきだろう。
 ――だってもう普通の女の子でもなければ、普通のディアボロスでもない。
「私達、アイドルとしてデビューしたばかりだもん。清廉潔白でいたいよね、アンゼリカ」
「うん。飲酒するわけじゃなくても、少しでも誤解される可能性があることは慎んだほうがいいよね」
 華やかな煌きに満ちたステージでデビューを飾った日の高揚を思い起こせば二人の未来を穢すようなことはできなかった。最終人類史のファン達が見ているわけでなくとも任務中の事象は報告書に記載されるもの。たとえ報告書がなくとも、たとえ自分達がアイドルでなくとも、それでもと少女達が真摯な眼差しを交わして頷き合えば、
「そうだ! ノンアルコールな米糀の甘酒持ってきてるんだけど、これ使ってみる?」
「……!! 是非使わせてくださいっ!!」
「わ、ありがとう秋果!! 良かったね、ミア!!」
 清冽な井戸水で七草を洗ってきたところで二人の様子と会話が目と耳に入った秋果がいそいそと【アイテムポケット】から米糀甘酒の1リットルパックを取り出した。酒精のあるお酒を使うのとはやはり異なる風味になるのだろうけれど、それでも輝く笑顔で歓喜を咲かせる二人を見れば、食後の甘味代わりにと沢山パック持ってきてて良かった、と秋果の笑みも深まって。
「素敵ね! あたし達にも米糀の甘酒、使わせてもらえるかしら?」
「勿論、好きなだけどうぞ! 神樂くんと祇伐ちゃんは何を作るの?」
「七草粥のトッピングです! レックスさんと紲さんが時雨煮と大和橘胡椒を用意されてるので、私達は桜でんぶを!」
 こちらも嬉しげに声を弾ます神樂が冷たい指先でほぐすのはほわりと茹であげた鱈の身、ふわり祇伐が降らせる紅花由来の食紅と砂糖に秋果の米糀甘酒で炒りつければ、肌理こまやかにほどけた鱈の白身が優しい甘さと桜の彩を咲かす。
 神樂がさらりとこのトッピングを思いついたのも磨いた料理の技能ゆえ、お兄様の腕には及ばないけれどとはにかみつつも自身も学んだ料理の心得を活かす祇伐と一緒に咲かせる春彩の美味、
「これはまた綺麗だね……!」
「ほんと、素敵な春の彩りだ」
 素直な笑みと感嘆を花開かせる紲の様子と桜でんぶの彩にレックスは緋色の眼差し緩め、鉄釜の昆布出汁が煮立つ竃の焔を彼女に教わったとおりに弱めたなら、杓子を手にした紲が鉄釜の底から米を掬い上げるように掻き混ぜた。
 華奢な手が大胆に、なれど丁寧に掬い上げて掻き混ぜる、その動きにそうっと重ねてレックスの唇が紡ぐのは、春日大社の茶屋で、そして先程この地で重ねた、飛びっきりの隠し味にして魔法の言葉。
 ――【おいしくなあれ】。
 このうえなく優しい響きの隠し味、
 彼の魔法の言葉が耳にも胸にも響けば紲は花唇を綻ばせ、桃花の瞳もひときわ和げて、心の裡で大切に想いを重ねた。
 ――あたたかな幸せ咲かせて、
 ――おいしくなあれ。
 粥を炊く間に掻き混ぜるのはこの一度きり。後は炊きあがってからのこと。
 私の料理の腕は普通くらいかな、と自己認識する秋果だけれど、シルに神樂に、祇伐にユーフェミアに紲といった、料理を確たる技能として会得した仲間達がいてくれるなら安心感は段違い。着々と調理が進みゆく様に胸を弾ませ、熱湯に躍らせた青菜の七草が緑をいっそう鮮やかにする様に笑み咲かせ、それなぁに? と好奇心に輝く瞳で覗き込んでくる子供達に、
「これは春の七草っていってね、菘(すずな)と蘿蔔(すずしろ)に……」
 確り説明をと思ったところで、七草の名前は挙げられるけれどもどれがどれだか判らない! と気づいてしまったが、
「あ! はこべらだ!」
「こっちはなずな!!」
「みんな詳しい……!」
 現代の街並みに馴染んだ自分よりこの村の子供達のほうが山野の草花に親しんでいるのも当然のこと。彼らが『なずな』という美しい名でこの草花に親しんでいるなら、わざわざ『ぺんぺん草』という名を口にすることもあるまい。同じ和菓子でも和菓子として饗されるより京菓子として饗されるほうが美味しく感じられることがあるように、情報も味わいのひとつ。
 より美味しいと想える名を胸に抱いていて欲しいと、秋果も思ったから。
 皆で和気藹々と励めば祝宴の支度もあっと言う間のこと、ふつふつと幸せな音色で唄う鉄釜で粥が炊きあがれば、
「ふわあ……! ばっちりいい感じに炊けたね!」
「ええほんと! それじゃ、仕上げもばっちりいい感じに決めていきましょ!」
 今この場での料理技能筆頭・シルと神樂で、新宿島から持ち込んだ白味噌を丁寧に溶いていく。ふうわりと溢れだす温かな昆布と粥の香りに白味噌の香りも花開き、冬と春のあわいの陽のひかり、このうえなく優しく柔らかな彩に二人が色づかせた粥に七草が混ぜ込まれたなら、抜かりなく味見役を買って出ていたノスリが自作の匙で掬って口へと運び、
「――……最高!!」
 確り味わって嚥下して、心からの至福の笑みを綻ばせれば、仲間達からも村人達からも歓声が咲き溢れた。
 冬と春のあわいの陽のひかり、柔らかな鳥の子色に鮮やかな緑を鏤められた七草粥からあたたかな湯気がふうわりくゆれば知らず宵紫の眼差しが緩み、ヤコウの胸裡には春日大社の茶屋でのひとときが甦る。凶の御神籤に愉しげな笑み燈し、波乱も逆境も制して乗り越えてやるさと嘯き確かに覆してみせたラヴィデの姿こそが不撓不屈と思えばひときわ笑みも綻んで、
 彼と陸に【パラドクス通信】で祝宴の始まりを報せようとしつつ、眼差しでも二人を探して村を見霽かせば、民家の屋根に二対の竜翼。補修や修繕が必要なところは無かったはずなのだけれど――。
 板葺き屋根に割り木を渡し、割り木の上に石を並べた石置き屋根。
 屋根上から見霽かす村の外には秋の稲刈りの後に蒔かれた冬小麦が育つ田に、蕪を植えられた畑が広がっていて、幸いにも天魔武者どもに踏み躙られることもなかった田畑の姿に陸は黎明の双眸を細めた。素朴ながらも、穏やかで美しい光景。
 19世紀初頭の断頭革命グランダルメ、パルマ公国の農村で触れた農産や畜産の様子は新宿島の『学園』で学んだ現代でのそれらに近かったが、16世紀後半の天正大戦国でのそれらは現代のものとはまた違う。酪農でなく農耕の為に飼われている黒牛に唐鋤を引かせての畑の土起こし、先程手伝わせてもらったそれは陸にとっても初めての経験で、
「深くて広くて、本当に面白いね。人類の歴史と文化というものは」
「だよね~! この屋根もほんと興味深い。幻想竜域じゃまず見なかったしね!」
 年若い同胞の言葉に笑って応え、ラヴィデは竜翼で羽ばたきながら屋根の置石をひょいひょいひょいと抱えていく。ここの石置き屋根というものは年に一度葺き板の表裏を返す必要があると聴いて、毎年春の種蒔きのあとに行っているというそれを早目に手伝わせてもらっているというわけだ。
 何せ自分達なら【飛翔】で難なく屋根にあがれる上、重い置石も【怪力無双】で碁石のごとく気軽に摘まんで抱え、片手で葺き板を返していける。男手が少なく難儀していたという家に陸とともに引っ張りだこになりつつ、
「確かに一般人には重労働だよね、強風に葺き板が飛ばされないように押さえている物を一旦除いて返すわけだから」
「そういや日本って、台風とか来る国だもんね~。物凄い嵐になるのかな、そうだ嵐と言えばさ……」
 ふとラヴィデが思い起こしたのは聖なる夜の嵐のごとき戦いのこと。
 紫闇の竜が語る熾烈にして壮絶なる戦場の様子は、いかなる戦場においても冷静さを失ったことのない蒼海の竜の心胆をも寒からしめるほどに凄まじいものであった。何それ怖い。怖すぎる。ああ、まさか今ここで、
 ――例の百人一首バトルの話を聴く機会に恵まれてしまうなんて……!!

●春風献上
 松灰釉に彩られた伊賀焼の器は素朴で力強く、裡に深く美しい煌きを秘めていた。
 炎と土の芸術。穴窯に焼べられた赤松の薪が炎と共に灰を躍らせ、焼成される陶土の器に降りかかった灰が高温に融かされ自然の釉薬となり、渋味のある苔色や緑灰色で器を彩るけれど、炎の躍動のままに融けて流れた松灰釉が厚く溜まった箇所は時に深い透明感を持つエメラルドグリーンの煌きを抱く。
 雪解け水めいて透きとおる南都諸白、最終人類史の奈良から持ち込んだ清らな酒をそそげば村のひとびとが提供してくれた器の彩りがひときわ瑞々しさを増したけれど、杯に満ちるのは酒のみにあらず。大人達と諸白で乾杯する前にノスリが更なる杯に淹れていくのは、こちらも最終人類史から持ち込んだ煎茶。
 南都諸白を呑めないひと達に――と淹れた明るい萌黄色の煎茶の底には小梅と結び昆布が揺れて、
「あっ! 大福茶(おおぶくちゃ)だっ!!」
「大福茶? すっごくおめでたい感じの名前だねっ!」
 手にしたそれに一目で気づいたアンゼリカが瞳も笑みも輝かせたなら、弾む親友の声音にユーフェミアも咲かせた笑みが、あたたかな煎茶の香りの奥からほんのり開く小梅の香りで更に花開く。
「そそ、これも迎春の縁起物だし、ほっと安らぐ感じが気に入ってさ」
「ほっこりするよねー! 小梅がカリッとするのも楽しいしっ♪」
「ああ、この小梅も食べていいんだ。昆布もかな? 一杯で色々と楽しめるのも嬉しいね」
 昨年の初詣でノスリが覚えたこの茶も新年を寿ぐもの、相棒と一緒にせーので小梅を齧った昨年の新春を思い起こせば勿論シルの笑みも咲き綻んで、興味深げに大福茶を覗き込んでいた陸の眼差しが仲間達の言葉で柔らかに緩んだ。
 明るい萌黄色の底に覗く紅の小梅、鶯色のリボンを思わす結び昆布。その雅な彩りに藍の眼差しを惹きつけられ、
「わあ、小梅も結び昆布も可愛い……!」
「ですよね! ふふ、今年もまた飲めるなんて、嬉しいサプライズです……!」
「あら! 祇伐もこのお茶飲んだことがあるの!?」
 心からの感嘆を咲かせた秋果に思いきり頷いた祇伐の声音が喜色に染まれば、花びら餅と一緒に! と昨年の想い出を語る妹の笑みに神樂が微笑んだ。あたしも一緒したかったと彼が胸の裡で叫ぶところまでが御約束。
 己の杯には南都諸白、なれど仲間の杯からくゆる香りに昨年体験した驚きの味を思い起こし、
「ふふ、こんな再会も嬉しいね。悪疫退散の逸話にあやかったおめでたいお茶だし」
「ええ、この大福茶も一年の無病息災と幸福を願うものですしね」
「ああ、空也上人の悪疫退散の話……! 成程ね、それがこのお茶の由来なんだ」
「ということは……七草粥とこの大福茶でより完璧な無病息災になれるのかな?」
 懐かしさにラヴィデの笑みが綻べば、思い返せば昨年の新春もひとびとの福の神になったのだとヤコウの胸の裡には感慨が満ちて、二人の話で紲が空也上人に思い至る。何せ紲は陰陽師、空也上人が病人に振舞った茶で疫病が鎮まったという故事を彼女が聴かせてくれればレックスのかんばせにはいっそう穏やかな笑みが燈り、
「おめでたいのもいいし、何より皆で一緒に乾杯できるのがいいよな!」
 村の大人達と南都諸白を酌み交わせても子供達とは叶わないのは勿論なれど、思えば仲間うちでも酒を呑めない者が多いと改めて気づけば朱士は安堵で晴れやかに笑って杯を掲げた。南都諸白と大福茶をそれぞれ手にした皆も杯を掲げたなら、
 ――乾杯!!
 戦国の世にはまだ伝わっていない習慣だが、単純であるがゆえに村人達に乾杯を教えるのも容易なこと。
 勿論自分達が帰還すれば彼らは乾杯を忘れてしまうだろうけれど、今だけは同じ晴れやかな気持ちを皆で揃って胸に燈し、笑顔で掲げた杯を軽やかに鳴らして幸福な心地で傾けた。松灰釉の彩を艶やかに揺らめかせる清らな酒、涼やかにひんやりと唇に触れる滴を含めばたちまち朱士の口中で澄みきった酒香が咲き誇り、
「ああ、やっと南都諸白が呑めた……!!」
「いいなあ南都諸白、初めてお目にかかったよ……!!」
 この村のひとびとと初呑みの味わいを分かち合いたくて春日大社の茶屋では我慢した身には、清らな酒の香りもまろやかな旨味もあえかな酸味も殊更深く沁み渡っていく。感激を満面の笑みに燈した村人と笑い合って頬張るのは焼き上げたばかりの五平餅。炊き立てごはんを適度に潰して小判型に整えて炙り、特製味噌を塗ってこんがり焦げ目がつくまで焼いたそれは、
 濃厚な玉味噌へ砂糖を加えた香ばしい甘辛さに胡桃と煎り胡麻の風味が懐かしく後を引いて、焦げ目のカリッとした食感の奥からごはんの粒々感と餅のもちもち感が花開く様が楽しい美味。持て成しや祝いの席で食べられてたって話もあるんだぜと朱士が上機嫌で語るから、
「あっは、それじゃあどんどん祝い尽くしでいっちゃおうじゃないの!」
「祝宴だものね、皆で一緒に美味しいものを食べて笑い合ったなら、いっそう幸せな心地になるはずだから」
「笑顔は何よりの美味の魔法ですからね、きっと際限なく美味しくなって、際限なく幸せになれますよ」
 清らな酒が更に味わいを豊かにする五平餅を一串平らげたノスリが松灰釉艶めく椀を手に取ったなら、任せてとばかりに微笑んだ陸が柔い鳥の子色に緑踊る七草粥を満たす。数多の伊賀焼の椀に優しい新春の彩りを次々とよそっていく陸から器を受けとって、ふうわりあたたかに咲く湯気の花に改めて目許を和ませたヤコウが村のひとびとへと新春の幸せを勧めていけば、
 松灰釉の椀に満ちる冬と春のあわいの陽のひかり、そこに木匙も添えつつ紲も村人達に七草粥を手渡して、
「熱いから気をつけて、だけど冷めないうちにどうぞ」
「さっきの大福茶もそうだけど、この七草粥も、無病息災を祈って食べる縁起物なんだ」
「へえ……! そりゃあ嬉しいねえ、ありがたくいただくよ!!」
 彼女の言を継ぎつつレックスからも勧めれば、何処か擽ったそうに笑み返した村人達が一匙掬って口に運ぶ。
 あたたかな粥に昆布出汁と白味噌が燈す優しい滋味、早春の息吹を抱いた七草が咲かせる上品な美味、そこに飛びっきりの隠し味にして魔法の言葉が加えられた逸品は勿論、
「――!! うわあ、何だか本当に、物凄く幸せな味……!!」
「何てこった、儂ゃあ極楽まで見えた気がする……!!」
 吃驚するほどの美味に眼を瞠って、あたたかな幸せに心を綻ばせた村人達に、弾けるような歓喜で顔をくしゃくしゃにせんばかりの笑みをも齎した。歓ぶひとびとの様子が嬉しくて、思わず顔を見合わせた紲とレックスにも飛びきりの笑みが咲く。仲間達と力を合わせて作った七草粥、春の花が次々咲いていくように、それが村人達の笑顔を次々と咲かせるから、
「良かった……! たっぷりありますから、めいっぱい食べてくださいね!!」
「遠慮はなしよ! おなかもこころもめいっぱい幸せで満たしてって頂戴!!」
 己が籠めた祈りも花開いた心地で祇伐も笑みと声音を弾ませ、香ばしく炙られた味噌田楽の串をずらり並べて神樂も村人を更なる美味へ誘う。この村の玉味噌と自分達が持ち込んだ食材で作りあげた味噌田楽を一緒に味わったなら、村のひとびとと心までも重なっていくかのよう。
 齧れば口中で香ばしさを咲かせる甘辛い田楽味噌の裡から熱くぷつりと弾ける蒟蒻、その楽しさをたっぷり堪能して、皆と幸せを分かちあえる歓びに二人で蒟蒻よりも楽しく弾けるように笑い合ったなら、
「……ミア、次は大根食べてみる?」
「いいの? じゃあアンゼリカはお茄子食べる? はい、あーん」
 ほんのり躊躇いつつもそっと大根の田楽串をアンゼリカが差し出して、ぱっと嬉しげな笑みを咲かせたユーフェミアからは茄子の田楽串のお返しを。歓んでと答えようとすれば大きく鼓動が跳ねたけれど、意を決してアンゼリカが唇を開けば艶めく幸せが届いて、迷わず素直にユーフェミアが唇を開けば優しい幸せが届く。
 濃厚な田楽味噌の裡から昆布の旨味を抱いた大根の優しい甘さが咲けば紅樺色の眼差しはふわり緩んだけれど、甘辛い田楽味噌の裡から薄く油を纏って炙られた茄子の熱く蕩ける甘さが弾ければ、金彩の双眸の目許に柔い薔薇色が咲いた。
「あれ? アンゼリカ、熱とかないよね?」
「だ、大丈夫だよ! 美味しくてテンションあがっちゃっただけ、だと思う……!」
 不思議そうに瞬きつつ、優しくおでこに触れてくれるユーフェミアの手の感触が、
 ――茄子田楽より、
 ――もっと、甘くて。
 二人の様子を微笑ましく思いつつ田楽串を手に取れば、
 深く艶めく田楽味噌が香ばしい焦げ目をも纏い、春めく蓬の緑とコントラストを織り成す様がヤコウの胸を躍らせる。眦を緩めて頬張れば濃厚な甘辛さを絡めつつもっちり弾ける蓬生麩の上品な旨味に頬も緩み、南都諸白を傾ければ凛と澄みきった冷たい酒気が熱い田楽の風味をいっそう花開かせた。此方も味噌と優しい白のコントラストが美しい里芋田楽をはむっと齧り、ねっとりほっくりな里芋と田楽味噌が渾然一体となったところで南都諸白を傾けたラヴィデがほにゃりと笑み崩れ、
「ああ~。いきかえる~よみがえる~」
「ふふ、ゆるゆるですね。お疲れ様です、存分によみがえってください」
 口中をさっぱりさせる大根の浅漬けを摘まんでは再び田楽に手を伸ばす永久運動に入りながら、何処か年寄りじみた至福の感嘆を洩らす。満足げな彼を労いつつ、どんなことをされて来たんですか、とヤコウが訊ねたなら、返るのは村の楽器の話や石置き屋根の話、そして。
「そうそう、金継ぎの練習もさせてもらったんだよね~」
「何ですって……!?」
 金繕いとも呼ばれる技法に妖狐の繕い屋の尾が大きく跳ねた。器の割れや欠けを漆で繕い、金や銀を蒔いて彩る金継ぎは、陶工でなく漆器職人が担うことが多く、現代で知られる形での金継ぎが確立するのはもう少し先の時代だとする説もあるが、歴史改竄の影響もあるのかこの村でもある程度は行われているらしい。
 村を回っているうちにラヴィデが出逢ったのは焼成中に割れた器を使った練習の機会。漆の硬化期間などで数か月がかりの金継ぎは二重の【修復加速】でも全行程の体験は勿論叶わず、そしてあくまで修復ではなく練習であったけれど、
 器の割れ目に麦粉と練った生漆を塗り、呼吸も忘れる精神集中ととも割れた器を継ぎ合わせた時の高揚は忘れない。
 ――雨漏り修繕から衣装の繕いまで何でもござれな妖狐の姿に、
 ――実はひっそり憧れていたから。
「あはは、興味あるなら後でそっちの兄ちゃんも見に来るかい?」
「是非お願いします……!!」
 二人のやりとりを面白がるように笑った村人に声を掛けられればヤコウは光の速さで前のめり。彼の口から次々語られる、絵付けをしない伊賀焼に波文様を描くヘラ、器を漆で継いだ割れ目の跡に蒔く金銀を磨く鯛の牙、己が手で触れたことのない道具の数々に妖狐は瞳を輝かせつつ想いを馳せて。
 興味深く聴き入らせてもらいながら秋果は自身が持ち込んだ梅干しを盛った器を卓へと並べた。昆布出汁と白味噌で柔い鳥の子色を燈す七草粥に紅い梅干しを乗せても、己が思い描いていたような縁起の良い紅白にはならないけれど、
「七草粥は美味しいけれど優しい味わいだから、少し変化が欲しくなったらこちらをどうぞ!」
 梅干しと米の相性はそもそも抜群、梅干しの鮮やかな塩気と酸味が七草粥の美味をいっそう引き立ててくれるはず!
「ふふ、こっちのは春みたいにふわっと優しい甘さよ!」
「こちらは肉を甘辛く煮つけたものでね、濃厚な味わいと一緒にほろりとほぐれて粥に混じる様が美味しいんだ」
「大和橘の爽やかな香りと、青唐辛子のピリッとした辛味が楽しめるこれもね、目が覚めるような美味しさだよ」
 華やぐ笑みを咲かせた神樂も桜でんぶを卓へと並べて、大和牛の時雨煮の器に木匙を添えつつ確り魅力を語るレックスと、自身も飛びきりのお気に入りになった大和橘胡椒を器に盛りながら笑みを覗かせた紲も卓にトッピングを揃えたなら、新たな美味の予感に村のひとびとは更に笑顔を輝かせ、
「わあ! 自分で選んで乗せていいの? 楽しそう……!!」
「こんなに美味いのに、いっそう美味くなるなんて……!!」
 互いに顔を見合わせ声を弾ませて、より鮮やかな美味を花開かせる幸せと自分で味わいを調整できる楽しさに夢中になって幾つもの味変わりを満喫していく。美味は勿論、滋味も深まる七草粥を味わえば味噌田楽達や五平餅にも手が伸びて、濃厚な味わいのそれらに皆が舌鼓を打ったなら、シルが用意した箸休めにぴったりな大根の浅漬けも大盛況。
 誰も彼もに笑顔が咲き溢れ、華やぐ賑わいが絶え間なく花開く。
 瞳を見交わしたアンゼリカとユーフェミアがそわそわしはじめれば、穏やかに笑みを深めた陸が【アイテムポケット】から取り出したのは、村を回っている間に出逢った楽琵琶と、細い拍板を幾つも束ねた楽器、びんざさら。圧政の一環だったのか祭りを禁じられてからずっと眠っていたというそれらは己が燈した【操作会得】を活かして絃合(おあわせ)や手入れをしておいたから、
「二人で舞うんだよね、このびんざさら使ってみる? 俺が楽琵琶で伴奏を引き受けるよ」
「わわ、流石だね陸! どっちもぜひ!! いこう、ミア!!」
「ありがとうございます! 【操作会得】があるならばっちりだよね、アンゼリカ!!」
 舞いとともに操って鳴らせる楽器、びんざさらを手にした少女達が明るい笑顔を咲かせてふわりと足を踏み出せば、そこが今日の二人の、デビューしたてのアイドルユニット・『Promiss』の煌きが花開くステージになる。
「陸さんが琵琶で伴奏されるなら、お兄様も笛でどうかしら!」
「いいわね! 御一緒させてもらっていいかしら!?」
 ――私、大好きなの。
 ――あなたの笛の音。
 桜彩に柘榴燈す瞳を輝かせた祇伐にそう望まれれば神樂に否やはなく、三人の声が勿論と揃えば、逢魔が時燈す銀の横笛を唇に添える。互いに演奏の技能を会得している陸と神樂なれば琵琶と横笛を即興で合わせることも容易くて、
 抱いた楽琵琶の覆手から撥を手に取れば初めて唄わす音色もたちまち陸のもの、軽やかに弦を奏で、撥の柄で軽く面を打つ響きを鼓代わりに拍子を取れば、祇伐から贈られた銀笛に愛しく注ぐ神樂の息吹が高く低く天地に遊ぶ風を思わせる澄んだ音色を織り成して、琵琶に踊る撥、銀笛に踊る指で響かせ合う二人の音色が、舞台を晴れやかな旋律で彩っていく。
 胸が躍る、心が弾む。
 居ても立ってもおられず一緒に笑み咲かせ、
「私に合わせてね、アンゼリカ!」
「うん、ミアに合わせるなら大丈夫っ!」
 流れるよう撓るびんざさらを天女の羽衣めかして躍らせて、琵琶と銀笛の音色にちゃらりしゃらりと拍子を重ねた少女達が華やかな舞いを咲き誇らせた。ユーフェミアが導くそれは己が元より馴染んでいる神への奉納舞にこの時代の民衆を意識した田楽舞を重ねて、より楽しく弾んで踊る舞。
 途端に沸いたひとびとの歓声の中で祇伐もいっそう瞳を輝かせ、胸に光咲くような咄嗟の閃きのまま、
「綺麗……! 折角の祝宴ですし、ちょっと演出させてくださいね!!」
「素敵ですね、祇伐さん! それなら僕も……!!」
 二人の頭上から舞い降りる桜吹雪のパラドクスで舞台を彩れば、笑みと声音に高揚を咲かせたヤコウが己のパラドクスで光溢れる萌黄の春野を二人の足元に咲かせ、今度は満面に笑みを花開かせたアンゼリカが大切なひとを導きながら舞う。舞台が最終人類史であれ改竄世界史であれ、ひとびとの心に寄り添いたいと願う少女達の気持ちはいつだって同じで。
 何て楽しい、何て幸せな春景色。
 村人達へ七草粥や味変わりを振舞うのも一段落、晴れやかな舞と音と春が彩る仲間達の舞台に紲が桃花の双眸を細めれば、緩めた視界で柔く眩さを増す景色。南都諸白は彼女との来年のお楽しみ、それゆえ今は幾杯目かの大福茶を口にして、煎茶の清々しさに小梅の爽やかさと結び昆布の旨味がふわりとけだす味わいに目許を和ませたなら、ふとレックスの胸裡に甦るのは紲と約束を結んだ茶屋でのやりとり。
「……僕たちも七草粥のお代わりしていいよね? 神様の啓示にあやかってさ」
「いいね、確り無病息災をお願いしちゃおう。何せ神様の啓示だからね」
 悪戯な秘密めかした誘いに紲の瞳も楽しげにきらり。七草粥の美味は折紙つきだけれど、それ以上に、気の置けない相手と一緒に食べるごはんの美味しさが心にあたたかな光を燈してくれるから、二人で冬と春のあわいの陽のひかりを椀に満たし、いただきますと改めて手を合わす。
 まるで優しい陽の彩と熱を食むかのよう。
 匙で一口含んだ七草粥から限りなく優しく溢れくる滋味と美味をゆうるり己に沁ませる心地で味わって、柔く嚥下すれば、嘗て毒に灼かれた喉の秘密の代わりのごとくにレックスの胸の奥底の泉へと浮かびあがってきた言の葉は、春日大社で引いた御神籤の文面。
 病気――重けれど平癒す。
 ほんとうは、その文面に、喉の秘密を思い起こしていたから。
 決意と呼べるほどの鮮やかさには遠く、然れど確かに萌した想いを緩く、柔らかに胸の芯へと燈した。
 ――これが病で、もし治るなら。
 ――いつか紲に、話したいと思うんだ。
 琵琶と銀笛の音色に花咲く二人の舞、湧きあがる歓声。
 天魔武者どもの圧政下にあってはハレの日を心から楽しむこともできなかっただろう。然れど今この村のひとびとは憂いを払われ美味と歌舞の祝宴を思うさま楽しんで、絶え間なく笑みを咲かす。家屋や穴窯の修復はあくまで前座、こうして楽しいひとときを贈ることこそが最も重要な任務。
 けれど任務だからというばかりでなく、青空のもとに咲く舞と音色に誘われシルの胸奥の蕾も開花しはじめたから、
「あ、わたしも一曲歌いますっ!」
「それじゃ交代だねっ!」
「はいっ、どうぞステージへ!!」
 アンゼリカとユーフェミアの舞が華やかなフィナーレを迎えればバトンタッチとばかりに明るくハイタッチをして、今度は青き歌い手が今日の舞台へ舞い上がる。皆と眼差し交わせば心得たように流れる琵琶と銀笛の音色、彼女に合わせてひときわ軽やかに響く旋律に乗せて舞い降りる桜吹雪に咲き広がる萌黄の春野に彩られ、風妖精の外套を躍らせて舞うシルが、
 ――空を舞う風のように、あなた達はもう自由♪
 ――圧政の冬は吹き飛ばされて、明るい幸せいっぱいの春がやってくる♪
 本来の詠唱を即興の歌詞に織り変え、風の爽やかさを抱くパラドクスの歌声を咲かせたなら、わあっと一斉に湧きあがった歓声とともに花開いた力は【勝利の凱歌】。
 皆の心に勇気と希望を咲き誇らせる、歌の力。
「そうか、この手があったね」
「いいね、このまま春の先の、明るい夏も望もうじゃないの!」
 決戦で【勝利の凱歌】を燈したのは陸自身。今シルも燈して重ねたその効果がより大きく花開いて、この楽しいひとときを満喫する誰しもの心に希望を輝かせる様に蒼海の竜が黎明の双眸を細めたなら、蜜色の双眸を煌かせた猛禽が、軽やかに舞うシルの足元へパラドクスで一気に睡蓮の花々を咲き溢れさせ、更なる歓声を招く。
 晴れやかに軽やかに青空へ翔ける歌声、睡蓮の瑞々しさも連れて軽快に溌剌に花開く舞いと笑み。
 歌唱やダンスに加えて宴会の技能も会得しているシルは持ち前の明るさで祝宴そのものもいっそう華やがせ、
「行く先に争ひ在り、幸ひも在り、か。……ほんとだなぁ」
「朱士くんの御神籤? ばっちり当たりだったみたいねぇ」
 誰もの顔にいきいきと輝く幸福感、いっそうまろやかな旨味を増す気がする清らな酒を傾けつつ紅の双眸を眩しげに細めた朱士の口許に満ち足りた笑みが浮かべば、皆や彼の様子にラヴィデはひときわ眦を緩め、銀の双眸を閉じつつ歌声に音色に、皆の歓声を胸の裡へと満たす。
 ――ああ、今夜はきっと、
 ――いい夢が見れそうだ。
 皆の心へ確かに輝き、咲き誇る明るい希望。
 幾重にも湧き立つ歓声とともにシルの歌舞もフィナーレを迎えたなら、自身も惜しみない拍手を贈った秋果がほんのり甘く香る柔らかな湯気をくゆらせる。冷たいままでも美味だけれど、より甘味を感じてもらえるようと軽くあたためたそれは、
「皆いっぱい食べたかな? 米糀の甘酒もあるよ、良かったら是非どうぞ!」
「甘酒もあるの!?」
「わあい、ちょうだいちょうだいー!!」
 柔い湯気とともに、とくとくとく、と唄って松灰釉の杯に優しくなめらかな白練色を満たしていく、酒精の無い米糀甘酒。庶民がこの甘味を気軽に楽しめるようになるのはもう少し先のことだろうか。だがいずれにせよ圧政下にあっては思うままに甘味を楽しむことも叶わなかっただろう、村の子供達は勿論、大人達もが童心に帰ったように瞳を輝かせて、一口味わっては幸せそうな笑みを燈す様が秋果の胸にもあかりを燈すよう。
 甘やかに柔らかに舌に踊って、懐かしい余韻をとろりと引くあたたかな幸せ。
 食後の甘い物はやっぱり格別、と改めて確信しつつ秋果が振舞う米糀甘酒で皆がほっと一息ついたなら、甘酒を乾した杯を瞳に映したノスリの胸に改めて興味が萌す。穴窯を見せて欲しいなと願えば、村のひとびとに新たな熱が沸きたった。
「よしきた!」
「それなら折角だ、今ここで火を入れちまおう!!」
 威勢よく声が上がれば促されるままに見せてもらった穴窯の中、既に整然と詰められた焼成前の器達が炎を待ちわびている気がして、興味津々に眼差しをめぐらせた面々で笑い合う。村人達へと頷けば、穴窯の麓に大きく開いていた焚き口が小さく閉じられ火が燈された。
 是非あんた達も薪を焼べてくれと望まれたなら、皆それぞれ赤松の薪を手に取って。眩い橙色を溢れさせる小さな焚き口へひとり、ひとりと薪を焼べていくたびに、紅き焔の輝きが咲いて煌く火の粉が爆ぜては躍り――、
 炎と土の芸術を育む揺籠、皆で甦らせた穴窯に、
 力強い炎と土の息吹が、伊賀焼のいのちが甦る。
「美しい伊賀焼がまたここから生まれるんですね、楽しみ……!」
「この赤松の灰があの彩を生むんだ。胸が震えるね」
 焔の輝きと熱を間近にして感極まった祇伐の歓声が咲けば、七草粥の滋味をいっそう優しくこころにからだに沁み入らせてくれた椀を想って感慨深げに笑んだノスリが、上から見てみる? と悪戯っぽく告げて、村のひとびとへ手を伸べる。
 不思議そうに彼の手を取ったひとびとは、睡蓮の花々で燈された【浮遊】で連れられ、ふうわり空中へといざなわれた。
 風を踏む、風に乗る。
 初めての感覚。大地から解き放たれる感覚に、普段は見上げるばかりの穴窯を空中から見下ろす感覚に、
「ええ……!? あんた達こんなこともできるのか、すごいな!!」
「もう何日か薪を焼べて火を強めていけばほらあそこ、穴窯の上の口から火柱があがるのが見られるんだけど!!」
「あっは、そりゃまた豪快じゃないの!!」
 思うさま高揚を咲かせたひとびとの声が眼下に穴窯を望めば誇らしげな響きも孕む。穴窯の上の口、煙突めいたそこから轟と燃え上がる火柱が昇る様を思い描けばノスリはその勇壮さに弾けるよう笑って、仲間達の手も借りて次々と村人達を空中散歩へ御招待。後年、斜面で階段状に造られる登り窯が広まるにつれて廃れていくことになる穴窯だけれど、穴窯だからこそ生まれる炎の流れ、松灰の舞いでなければ創りだせない彩がこの村にある。
 ――ほうれ、ぬしらの自慢の窯もこの通り崩れ落ちてしもうたわ!
 ――最早ぬしらが土を捏ねる必要もありはせぬ!!
 鉢屋衆どもが言い放ったそんな暴言も、大地から解き放たれるたび村人達の心から拭い去られていくかのよう。自慢の窯は破壊など夢であったかのように甦っていのちを取り戻し、村のひとびとの瞳には土を捏ねて新たなる器を創りだす日々を取り戻した歓喜と実感が輝いて、
「ふふ、オレ達にもまだ出来ることはあるみたいだね」
「ええ、僕達で皆さんの心を繕えるのならば、確りと」
 今回の任務で最も重要なのは村のひとびとに楽しい時間を贈ること、交わす眼差しでそう確かめ合ったラヴィデとヤコウも村人達の手を取り彼らをふうわり大地から解き放った。花開くのは明るい高揚が弾けるような歓声、村人達の足ばかりでなく心までもが解き放たれる様を感じ取ればラヴィデも改めて肩の荷が下りた心地で柔い吐息の笑みを零して、穴窯の上の口から柔らかに昇り始める煙を村人達が感慨深げに見つめる姿にヤコウも、誇りを踏み躙られた彼らの心を繕えたのだと胸の裡に歓喜の光を燈せば、二人の心もほどけたように、竜の尾と狐の尾がふうわり揺れて。
「確か伊賀焼の陶土って、太古の昔にこの辺りに生まれた古琵琶湖層から採れるんだよね」
「えっ!? 琵琶湖って昔はここにあったの……!?」
「うわ、そう聴くとすっげえ浪漫だな……! よし、空中から伊賀焼の浪漫を眺めてみるか!!」
 歴史知識を手繰り『学園』の授業で学んだ事柄も思い起こしながら陸が語れば、思わぬ話に秋果が藍の双眸を瞠り、大地の歴史から生まれる芸術なんだ、と感嘆とともに零れた彼女の言葉に朱士は胸を躍らせて、炎と土の浪漫を受け継いでいくこの村の子供達の手を取り空中へと連れ出せば、
 見下ろす穴窯にはしゃぐ子供達の声音に誘われたかのように、冬色に彩られた山から春の鳥が空へ羽ばたいた。
 青空に光を鏤めるような、雲雀のさえずり。
 村を越えて南へと向かう雲雀の声音の軽やかさに己も誘われる心地でノスリが蜜色の眼差しで追ったなら、頬を擽っていく爽風の柔らかさもが自分達を誘ってくれている気がしたから、
 ――ね、野に春を探しに行ってみない?
 雲雀の軽やかさと爽風の柔らかさのまま子供達へ呼びかけたなら、途端に弾ける『行きたい行きたいー!!』の大合唱。
 思わず零れた笑みのまま黎明の眼差しで雲雀を追えば、村を見霽かした陸の脳裏で先程屋根上から眺めた光景に植物知識が自然と重なった。村の南に広がる田畑の先には野が開け、澄んだ水がきらめく小川が流れていて、
「野では雪割草や少し気の早い雛菫の花が見られるかもしれないね。小川のほとりなら芹が摘めるんじゃないかな?」
「芹……! 摘みたてのはとっても香りが良さそうですねっ! 天ぷらやおひたしにしてみたいかもっ!!」
 彼が語る言の葉が清らなせせらぎに揺れる爽やかな芹の緑を胸の裡にぱっと花開かせてくれたから、笑みも声音も弾ませたユーフェミアがまだまだお料理しちゃいますよと意気込んで、
「あのね、お姉ちゃんも一緒に行ってくれる……?」
 おずおずと、けれど瞳に期待を燈して見上げてきた相手が鉢屋衆戦の折に己の言葉で勇気づけられた子供だと気づけば、
「うん、一緒に行こう! 春を探しにっ!!」
「ふふっ、何だかみんなでピクニックに行くみたいで楽しいねっ♪」
 胸の芯から爆ぜるような歓びのままにアンゼリカの笑顔も満開、相棒と一緒に子供達の手を取って、シルも楽しげな笑みを咲かせて雲雀を追いかける春探し。皆の様子に紲も陽だまりを見つけた猫みたいに笑って、
「天魔武者の戯れなんかじゃない、本当の若菜摘が楽しめるわけだ。わたし達も行ってみようか、レックスさん」
「いいね、初詣もはじめてだったけれど、若菜摘もはじめてだ。行こう、紲」
 淡藤の髪と占者の衣を柔く翻す彼女に誘われるままレックスも村の南へと靴先を向けた。互いの唇から零れるのは心からの安堵の吐息。明るい歓びと幸せに彩られた、こんなひとときが何時までもこの村で続くようにとそっと願って。
 ――明日ありと思う心の、仇桜。
 兄が日頃から己の魂に刻むよう口遊む和歌の句が不意に祇伐の胸裡へ萌したけれど、
 だからこそ一瞬ごとの刹那を桜龍の娘は己が魂に抱きしめる。
 圧政の冬を越えてこの村に咲かせた春、これからこの村のひとびとが重ねていく日々は彼らの歴史、彼ら自身の物語。その物語と自分達の物語が再び重なり合う機会があるなんて保証は何処にもないから、仲間達と村人達と皆で一緒になって笑みを咲かせるこのひとときの一瞬一瞬が尊くて堪らない。
「皆の笑顔が心地好いと感じるのは、明日という希望が絆がれて、心がこんなにもあたたかいと感じるのは……」
「ええ、迎春だからよ、お兄様。私達みんなで、春を招いて咲かせて、めざめさせることができたから」
 眩しげに逢魔が時の双眸を細めて神樂が見霽かすのは、誰より愛しい祇伐のみならず、仲間達も村人達も皆が一緒になって笑みを咲かせる世界。私達も行きましょうとふわり背に触れる手にいざなわれて、流れる風のままに踏み出した神樂は、ふと零した言の葉が妹のそれと綺麗に重なったことに笑みを深めた。
 ――春風献上。
 この国、豊葦原の瑞穂の国に数多ある、
 新春を言祝ぐ言の葉のうちの、ひとつ。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【操作会得】LV1が発生!
【浮遊】LV1が発生!
【アイテムポケット】がLV5になった!
【飛翔】がLV13になった!
【勝利の凱歌】がLV3になった!
【熱波の支配者】がLV6になった!
【修復加速】LV2が発生!
【クリーニング】がLV3になった!
【ハウスキーパー】がLV2になった!
【おいしくなあれ】がLV2になった!
【口福の伝道者】がLV4になった!
効果2【先行率アップ】がLV6になった!
【リザレクション】がLV3(最大)になった!

最終結果:成功

完成日2023年04月03日

九鬼嘉隆の伊賀国圧政部隊

 デイアボロスは、伊賀国のカラクリ砦を攻略しただけでなく、攻略旅団の方針により周辺地域の平定を行った事で、伊賀国の人々を圧政から解放する事に成功しました。
『圧政』によって得られるエネルギーを糧とする、天魔武者にとっては由々しき事態です。

 ディアボロスに対抗する為、伊賀を支配下するジェネラル級天魔武者『九鬼嘉隆』は、伊賀国の民を再び圧政状態に引き戻す作戦を行う事を決断しました。
 圧政部隊は、農村を襲って略奪を行ない、更に働き手を『城の普請』の為にと連行して連れ去っているようです。
 襲撃から一般人を守り、連行された一般人を取り戻し、伊賀国の圧政から守り抜きましょう。

 圧政部隊を撃破できれば、戦力を失った『下山甲斐守城』に攻め込み、九鬼嘉隆に決戦を挑む事も可能になるでしょう。

九鬼嘉隆


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#天正大戦国
🔒
#九鬼嘉隆の伊賀国圧政部隊
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#伊賀国
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#九鬼嘉隆


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選択肢『圧政部隊に襲われた村を救う』のルール

 ジェネラル級天魔武者『織田信雄』の命令によって、圧政状態にされた農村の救援を行います。
 連れ去られた働き手の帰還を手伝ったり、襲撃によって荒れた農地や破壊された建物の修復、圧政によって傷ついた村人のケアなどを行ったり、圧政を忘れるような楽しみを与えてあげると、良いでしょう。

 圧政の村の救援は最低限でかまいませんが、より多くの人々を圧政から救う事が出来れば、今後の伊賀国の戦いが有利になるかもしれません。
 詳しくは、オープニングやリプレイを確認してください。

 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『【完結条件】この選択肢の🔵が👑に達すると、シナリオは成功で完結する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢『【期間限定】最終人類史の初詣』のルール

 パラドクストレインで、事件を解決に出発する前に、最終人類史で初詣を行なう選択肢です。
 初詣は、東京都の『新宿区、港区、品川区、大田区、千代田区、渋谷区、江東区、江戸川区、文京区、台東区』および、京都・奈良の奪還した地域となります。
 京都・奈良にはパラドクストレインで往復可能です。
 全員が同じ神社に向かう必要はありませんので、初詣をする神社をプレイングで指定してください。
 初詣期間は、神社の境内に、屋台や露天などが並び、新しい年を祝っているようです。


 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 なお、この選択肢には、特殊ルールはありません。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👾一般人を襲うトループス級『鉢屋衆』のルール

 周囲の一般人を襲撃するトループス級クロノヴェーダ(👾)と戦闘を行います。
 放置すると村や町を破壊したり一般人を虐殺してしまうので、被害が拡大する恐れがあるでしょう。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「沢山」出現します(現れる敵の数は、オープニングの情報やリプレイの記述で提示されます)。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『この選択肢の🔵が👑に達すると、この敵集団を倒す。完結までにクリアしていない場合、この敵集団は撤退する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👾護衛するトループス級『伊賀忍者』のルール

 事件の首魁であるクロノヴェーダ(👿)を護衛するトループス級クロノヴェーダ(👾)と戦闘を行います。
 👾を撃破する前に👿と戦闘を行う場合は、👾が護衛指揮官を支援してくるので、対策を考える必要があるでしょう。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「沢山」出現します(現れる敵の数は、オープニングの情報やリプレイの記述で提示されます)。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『この選択肢の🔵が👑に達すると、この敵集団を倒す。完結までにクリアしていない場合、この敵集団は撤退する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👿アヴァタール級との戦闘『伊達成実』のルール

 事件解決の為に、アヴァタール級クロノヴェーダ(👿)と戦います。
 👿を撃破するだけでは事件を解決できないので、戦闘終了後、必要な行動を行ってください。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「1体」出現します。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 なお、この選択肢には、特殊ルールはありません。
※このボスの宿敵主は「シメオン・グランツ」です。
※クロノヴェーダには、同じ外見を持つ複数の個体が存在しますが、それぞれ別々のクロノヴェーダで、他の個体の記憶などは持っておらず、個体ごとに性格なども異なっています。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。