九鬼嘉隆の伊賀国圧政部隊

 デイアボロスは、伊賀国のカラクリ砦を攻略しただけでなく、攻略旅団の方針により周辺地域の平定を行った事で、伊賀国の人々を圧政から解放する事に成功しました。
『圧政』によって得られるエネルギーを糧とする、天魔武者にとっては由々しき事態です。

 ディアボロスに対抗する為、伊賀を支配下するジェネラル級天魔武者『九鬼嘉隆』は、伊賀国の民を再び圧政状態に引き戻す作戦を行う事を決断しました。
 圧政部隊は、農村を襲って略奪を行ない、更に働き手を『城の普請』の為にと連行して連れ去っているようです。
 襲撃から一般人を守り、連行された一般人を取り戻し、伊賀国の圧政から守り抜きましょう。

 圧政部隊を撃破できれば、戦力を失った『下山甲斐守城』に攻め込み、九鬼嘉隆に決戦を挑む事も可能になるでしょう。

九鬼嘉隆

雪割る花を散らすもの(作者 月夜野サクラ
12


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「伝令! 伝令!」
 ばたばたと廊下を走る慌ただしい足音が近づいてくる。なんとも嫌な予感がして、天魔武者・九鬼嘉隆は額に手をやった。そして予感は的中する。襖を開けて飛び込んできた末端の武者は嘉隆の御前に膝をつくと、恐れながらと前置き、続けた。
「伊勢の織田信雄様より伝令にございます」
「……申してみよ」
「は! えー、『近頃、伊賀の国の圧政が弱まっていること、とても不満である。九鬼嘉隆の武名を信じ、伊賀国を任せたというのに、これは信頼を裏切る行為ではあるまいか?』」
「…………」
「『このまま、伊賀国の圧政が弱まったままとなれば、その責任を問わねばならないと考える』」
「………………」
「『今すぐ、伊賀国の圧政を取り戻すべく粉骨砕身すべし』」
「……………………」
「……それがしが申し上げたわけではございませぬぞ!」
 長い沈黙の中に恨めしげな感情を察したのか、伝令の武者は慌てて釈明したが、そんなことは言われなくても分かっている。
「……信雄様は、この伊賀の重要性を理解してくださらなかったか」
 伊賀が制圧されれば、伊勢のみならず近江にまでも、『ディアボロス』が進出してしまう。それを防ぐためには七曜の戦に至るまで、何をおいてもこの下山甲斐守城で籠城し続ける必要があった。しかし信雄はそのための援軍を寄越すわけでもなく、籠城準備を無駄にせよと言う。
「……やむを得ん」
 いくら天井を仰いだところで、上司の無体が変わるわけでもなし。
「城内の天魔武者を周辺の農村に派遣するのだ。場所は、カラクリ砦とは関係ない地域に限定し、ディアボロスに気取られぬように配慮せよ」
「は!」
 直ちにと畏まって飛び出していく部下達を見送って、嘉隆は苦悩する。まったくあの男、平安鬼妖地獄変奪還戦で真っ先に逃走し、各方面に迷惑をかけた上に今度はこれか――そう思うとほとほと嫌気が差してくる。しかし悲しいかな、その直属の部下である以上、義孝には信雄に逆らうという選択肢はないのである。

●さきぶれ
 2023年1月、新宿駅グランドターミナル――。
「……伊賀国の情勢に、動きがあった」
 集まった復讐者達を前に、墨染・カラス(闇鴉・g08481)はごく率直に切り出した。年明けわずか十日あまりといえど、復讐者達の任務は基本的に休みなしである。
「伊賀国のじぇねらる級天魔武者……『九鬼嘉隆』が、伊勢の織田信雄の命令で、伊賀国の農村を襲っている。カラクリ砦の制圧と周辺の平定で弱まった圧政を、回復しようとしている……らしい」
 農村地域を襲う九鬼嘉隆配下の天魔武者達は、略奪を行ったり、働き手を連行したりして、激しい圧政を行っているようだ。カラクリ砦の周辺地域とはまた別の集落を襲っていると見られるが、場所がどこであれこれを放っておくわけには行かないだろう。
 そこで、と続けてカラスは言った。

「お前達には、天魔武者の襲撃を受けている村に向かってもらう」
 天魔武者達の圧政部隊は、村の襲撃を行う先兵達と、少し離れたところに陣を張る本隊とに分かれている。従って問題を解決するためには、まず今まさに村人達を襲っている先兵を撃破し、その足取りを辿って本隊の位置を突き止めて、根本を断つ必要があるだろう。
「敵の本陣には、村から徴用された働き手の若い男達が集められている。……が、あくまで働き手だからな。天魔武者がそれを攻撃したり、人質に取ることはないだろう。つまり……戦いを挑んで、勝てばいい」
 圧政が解消されれば、伊賀国の天魔武者達は今以上の苦境に追い込まれるだろう。徴用されていた人々を村へ帰してやり、村の復興を手伝うなどして襲撃の傷を癒すことができれば、それもまた敵への打撃につながるはずだ。
 そういえば、と思い出したように、カラスは紅い瞳を巡らせた。
「今時期の山では、蕗の薹が採れる。そういうものを振る舞ってやれば、喜ばれる……かもしれないな」

 今回の圧政部隊を撃破することができれば、伊賀国の城である『下山甲斐守城』の守りが弱まり、決戦を挑むことも可能になるかもしれない。
「下山甲斐守城を制圧できれば、隣接する若狭・伊勢・近江の三国への進出も可能になるはずだ。もし俺が敵の立場なら、下山甲斐守城の防衛に全力を尽くすだろう。だが……」
 いったい、誰が言い出した作戦なのやら。下策だなと斬り捨てて、忍びは続けた。
「カラクリ砦の周辺地域が平定されたことで、敵は明らかに動揺している。……この機を逃さないためにも、よろしく頼む」
 ごうという風圧を伴って、パラドクストレインがプラットフォームに進入する。続々と車内に乗り込んでいく復讐者達を見つめて、忍びは『あ』と惚けた声を上げた。
「……一つ、言い忘れていたが」
 その列車は、まず最終人類史の初詣会場に停まる――と、言った言葉は閉まる扉の向こう側に聞こえたか、聞こえなかったか。さて時間も場所も超えていく列車の行き着く先で、復讐者達はどんな景色に出逢うのだろう。

●序
「お、おやめください、お侍様!」
「どうかお慈悲を……! これ以上食糧を持っていかれては、皆飢え死にしてしまいます!」
「ええい、うるさい!」
 足下に縋りつく人々を情け容赦なく蹴り飛ばして、半人半馬の天魔武者達が村を往く。納屋の引き戸を破るだけでは飽き足らず、壁ごと壊して中の俵を仲間の背に積み上げながら、トループス級天魔武者『武田機射隊』の一体はぐるりと村人達を振り返った。
「そうだ。若い男どもを連れてこい。そんなに食い物に困るというのなら、我らが養ってやろう」
「そ、それは困ります! 男衆を連れて行かれては、残された女子どもが」
「やかましい! お前らが食うに困らんようにしてやろうと言うのだぞ! いいからさっさと連れてこい!」
 有無を言わさぬ迫力で四本の足を踏み鳴らし、鋼鉄の人馬は晴天に砲を打ち上げる。成す術のない村人達はただ彼らの指示に従い、震えるばかりである――。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
5
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。【怪力無双】3LVまで併用可能。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【狐変身】
1
周囲が、ディアボロスが狐に変身できる世界に変わる。変身した狐は通常の狐の「効果LV倍」までの重量のものを運べるが、変身中はパラドクスは使用できない。
【怪力無双】
3
周囲が、ディアボロスが怪力を発揮する世界に変わり、「効果LV×3トン」までの物品を持ち上げて運搬可能になる(ただし移動を伴う残留効果は特記なき限り併用できない)。
【未来予測】
2
周囲が、ディアボロスが通常の視界に加えて「効果LV×1秒」先までの未来を同時に見ることのできる世界に変わる。
【強運の加護】
2
幸運の加護により、周囲が黄金に輝きだす。運以外の要素が絡まない行動において、ディアボロスに悪い結果が出る可能性が「効果LVごとに半減」する。
【一刀両断】
1
意志が刃として具現化する世界となり、ディアボロスが24時間に「効果LV×1回」だけ、建造物の薄い壁や扉などの斬りやすい部分を、一撃で切断できるようになる。
【神速反応】
2
周囲が、ディアボロスの反応速度が上昇する世界に変わる。他の行動を行わず集中している間、反応に必要な時間が「効果LVごとに半減」する。
【浮遊】
1
周囲が、ディアボロスが浮遊できる世界に変わる。浮遊中は手を繋いだ「効果LV×3体」までの一般人を連れ、空中を歩く程度の速度で移動できる。
【託されし願い】
1
周囲に、ディアボロスに願いを託した人々の現在の様子が映像として映し出される。「効果LV×1回」、願いの強さに応じて判定が有利になる。
【避難勧告】
1
周囲の危険な地域に、赤い光が明滅しサイレンが鳴り響く。範囲内の一般人は、その地域から脱出を始める。効果LVが高い程、避難が素早く完了する。
【動物の友】
1
周囲の通常の動物がディアボロスになつき、意志の疎通が可能になる。効果LVが高い程、知能が高まり、友好的になる。
【友達催眠】
3
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【隔離眼】
1
ディアボロスが、目視した「効果LV×100kg」までの物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)を安全な異空間に隔離可能になる。解除すると、物品は元の場所に戻る。
【泥濘の地】
1
周囲の地面または水面が泥濘に変わり、ディアボロスは指定した「飛行できない対象」の移動速度を「効果LV×10%」低下させられるようになる。
【エアライド】
1
周囲が、ディアボロスが、空中で効果LV回までジャンプできる世界に変わる。地形に関わらず最適な移動経路を見出す事ができる。
【熱波の支配者】
2
ディアボロスが熱波を自在に操る世界になり、「効果LV×1.4km半径内」の気温を、「効果LV×14度」まで上昇可能になる。解除すると気温は元に戻る。
【冷気の支配者】
1
ディアボロスが冷気を自在に操る世界になり、「効果LV×1km半径内」の気温を、最大で「効果LV×10度」低下可能になる(解除すると気温は元に戻る)。ディアボロスが望む場合、クロノヴェーダ種族「アルタン・ウルク」の移動速度を「効果LV×10%」低下させると共に、「アルタン・ウルク」以外の生物に気温の低下による影響を及ぼさない。
【モブオーラ】
1
ディアボロスの行動が周囲の耳目を集めないという世界法則を発生させる。注目されたり話しかけられる確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【無鍵空間】
3
周囲が、ディアボロスが鍵やパスワードなどを「60÷効果LV」分をかければ自由に解除できる世界に変わる。
【活性治癒】
2
周囲が生命力溢れる世界に変わる。通常の生物の回復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」し、24時間内に回復する負傷は一瞬で完治するようになる。
【植物活性】
1
周囲が、ディアボロスが指定した通常の植物が「効果LV×20倍」の速度で成長し、成長に光や水、栄養を必要としない世界に変わる。
【土壌改良】
2
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の地面を、植物が育ちやすい土壌に変える。この変化はディアボロスが去った後も継続する。
【使い魔使役】
2
周囲が、ディアボロスが「効果LV×1体」の通常の動物を使い魔にして操れる世界に変わる。使い魔が見聞きした内容を知り、指示を出す事もできる。
【操作会得】
1
周囲の物品に、製作者の残留思念が宿り、ディアボロスの操作をサポートしてくれるようになる。効果LVが高い程、サポート効果が向上する。
【口福の伝道者】
3
周囲が、ディアボロスが食事を摂ると、同じ食事が食器と共に最大「効果LV×400人前」まで出現する世界に変わる。
【ハウスキーパー】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の建物に守護霊を宿らせる。守護霊が宿った建物では、「効果LV日」の間、外部条件に関わらず快適に生活できる。
【パラドクス通信】
1
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【アイテムポケット】
3
周囲が、ディアボロスが2m×2m×2mまでの物体を収納できる「小さなポケット」を、「効果LV個」だけ所持できる世界に変わる。
【防衛ライン】
1
戦場が、ディアボロスが地面や床に幅10cm、長さ「効果LV×10m」の白い直線を出現させられる世界に変わる。敵はこの直線を突破できず、上空を飛び越える場合、最低「効果LV」分を要する。直線は戦場で最初に出現した1本のみ有効。

効果2

【能力値アップ】LV10(最大) / 【命中アップ】LV4 / 【ダメージアップ】LV9 / 【ガードアップ】LV3 / 【凌駕率アップ】LV2 / 【フィニッシュ】LV1 / 【反撃アップ】LV2 / 【アクティベイト】LV3(最大) / 【ラストリベンジ】LV2 / 【先行率アップ】LV6 / 【ドレイン】LV2 / 【アヴォイド】LV1 / 【ダブル】LV1 / 【ロストエナジー】LV3 / 【グロリアス】LV1

●マスターより

月夜野サクラ
お世話になります、月夜野です。
遅れ馳せながら、今年もどうぞよろしくお願いいたします。
以下シナリオの補足となります。
==================
●選択肢について
 ②→③&④&⑤→①の順でプレイングを受付・執筆予定です。
 ②・①については採用数に制限を設けませんのでお気軽にご参加ください。

 ②のクリアは必須ではありません。所定の期限までにプレイングがなければスキップして進めます。
 ③~⑤は時系列的には③(村を襲うトループス級の撃破)→④&⑤(アヴァタール級と護衛の撃破)になりますが、受付は同時に行いつつ、足りないところが出ればサポートをお借りするなどしてクリアしていく予定です。
 ①はアヴァタール級撃破後を扱います。メインは村周辺の里山のフキノトウの採取、ならびに採取したフキノトウの調理・試食です。山での採取中には、雪を割って咲くフクジュソウの花を楽しむこともできるでしょう。

 全体的にゆっくり進行の予定でおりますので、ご承知おきいただけますと幸いです。

==================
●時間帯と場所
 舞台は伊賀国のとある農村地域。
 村の裏手に広がる里山は少し登ると雪が積もっています。
 時間帯は全編日中です。

==================
●諸注意
・選択肢③④⑤は、必要成功数を大幅に上回る場合はプレイングの内容に問題がなくても採用できない場合がございます。何卒ご容赦ください。
・採用形態について、①②は個別採用(予定)、③④⑤は未定です。特定の同行者以外の方との絡みがNGの場合は、お手数でもプレイング中でお知らせ下さい。
・プレイングの採用は先着順ではありません。受付状況については選択肢ごとにご案内いたしますので、MSページも合わせてご確認ください。

==================

それでは、皆様のご参加をお待ちしております!
151

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


鐘堂・棕櫚
【KB】
村に向かう前に初詣は済ませておきましょう
混雑が極力少なさそうな神社を探してお参りしてから行きますか
柏手打って、今年一年も頑張りますねと
神前ではゆるい抱負を声に出す
あはは、神様も昨今は逼迫したお願い事多くて大変そうですし
俺は適当でいいんですよ

骰さんは何をお祈りしたんですかとは
参道で配られる甘酒を頂戴しながらの質問
まあお互い願うことがあったら自分で何とかするタイプですもんね
今日の勝利も、頑張って掴みに行きましょう

ところで俺はこのぐらい自然な甘さの方が好きですが
骰さん甘酒にもガムシロップ入れたくなるんです?
次のお店のメニューなんかの提案を聞きつつ
新たに迎える一年も、いつも通りのペースのままに


鬼歯・骰
【KB】
新年初仕事の前に、人混み行って疲れるのも何だしな
拝殿の前で両手を合わせ、形だけはきちんと礼儀立たしく
…なんか横からすげえ大雑把な事言ってんの聞こえてくるな
笑ってる声も相変わらず緩いと呆れたように息吐いて

質問には胡乱な視線を向け
こういう願い事って人に言わない方が良いんじゃなかったか
まぁ、今年も五体満足でいれますように、だとかその辺
祈ったりなんだりって性に合わねぇんだよな
行事ものは嫌いじゃねぇけど
神頼みして手抜きじゃ笑えねぇしな

甘さ?別にこんぐらいでも悪くはないが
でも蜂蜜とか入れると美味いぞ
ツリガネも店で出す時に一回試してみるといいんじゃないか
今年も互いに変わりなくやれるようにやってこう


 グランドターミナルにほど近い、新宿区の一角。ビルの谷間に突如として現れる鳥居は、無機質なコンクリートの街並みに口を開けた異世界へのトンネルのように見える。
 白く色づく息を手に吐きかけながら、鐘堂・棕櫚(七十五日後・g00541)は言った。
「案外空いてるもんですね。場所柄でしょうか?」
「まあ、真っ昼間だしな」
 ぶっきらぼうに応じて、鬼歯・骰(狂乱索餌・g00299)は潜った鳥居の向こう側に続く街並みを振り返る。東京屈指の夜の街も、陽光の下で今は眠っているかのようだ。
「まあ、これくらいで丁度いいだろ。新年初仕事の前に人混み行って疲れるのもなんだしな」
 歩幅の広い二人なら、数歩歩けば端から端へ移動できてしまいそうな小さな社だが、社務所にはちゃんと人がいて、地元民らしい参拝客に甘酒を振る舞っている。漂う甘い酒粕の匂いにすんと鼻を嗅ぎ鳴らして、棕櫚は言った。
「……混んでなさそうなところを知ってるって言うからついてきましたけど。もしかして、あれが目当てじゃないですよね」
 そう言って棕櫚は骰を振り返ったが、単に聞こえなかったのかそれとも聞こえなかったフリか、鬼人は答えることなくぶらぶらと拝殿に向かっていく。前からここを知っていたなら、多分図星だ――と思いつつも、新年早々拳骨を喰らいたくはないのでそれ以上は口に出さないことにする。
 存外に礼儀正しく二礼二拍手をして両手を合わせた悪友の横に並んで柏手を打ち、棕櫚は朗らかに口にした。
「今年一年も、頑張りますね!」
「……すげえ大雑把なこと言ってんな」
「あはは、このところは神様も逼迫した願い事が多くて大変そうですし。俺は適当でいいんですよ」
「…………」
 緩く行きましょうと笑う顔と声がまた一段と緩くて、骰は呆れたように吐息した。今年も多分、この調子なのだろう――ただ、それを別に悪いこととも思わないのは、よくも悪くもこの壊れた世界に順応してきたということだろうか。
「骰さんは何をお祈りしたんですか」
 引き返す足で社務所へ立ち寄って振る舞いの甘酒を一杯もらい、棕櫚は背にした鬼人を振り返る。するとまだ熱い甘酒に息を吹きかけながら、骰はじろりと胡乱な視線を投げて返した。
「こういう願い事って人に言わない方がいいんじゃなかったか」
「そうでしたっけ?」
 悪びれた風もなく聞き返す棕櫚は、多分、本当になんとも思っていない。まあ、と一口甘酒を啜って酒粕の香を楽しんでから、骰は続けた。
「つまんねえ祈りだ。今年も五体満足でいれますように、だとか、そんなとこの」
「うーん、だいぶ大事なことですけどね? 手足の千切れた骰さんは、あんまり見たくないですし」
「縁起でもないこと言うな。……大体、祈ったりなんだりは性に合わねぇんだよな」
 行事としての初詣が嫌いなわけではないが――別に、甘酒にありつけるからとかそういうことではなく――神頼みして手を抜いて、それで失敗しては笑えない。違いないと頷いて、棕櫚は言った。
「お互い願うことがあったら自分で何とかするタイプですもんね。今日の勝利も、頑張って掴みに行きましょう――いった」
 軽いハイタッチのつもりで差し出した片手を想像の三倍くらいの力で叩き返されて、棕櫚は思わず短い悲鳴を零す。本当にいいのだか悪いのだか、こんなやり取りにも慣れたものだ。
「ところで俺はこのぐらい自然な甘さの方が好きなんですが。骰さんは甘酒にもガムシロップ入れたくなるんです?」
「別に、こんぐらいでも悪くはないが。でも蜂蜜とか入れると美味いぞ」
「……半分冗談で聞いたんですけど、甘過ぎません?」
「別に。店で出す時にでも、一回試してみるといいんじゃないか」
「隠し味程度になら、いけますかね……?」
 湯気立つ甘酒に舌鼓を打ちながら、悪友二人はつかず離れず並んで来た道を引き返していく。これから始まる一年もきっと、この非日常は変わることなく続いていくのだろう。そこに友の姿があることを、頼もしく思う――なんて、お互い口には出さないけれど。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【友達催眠】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
効果2【アクティベイト】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!

朔・璃央
双子の妹のレオ(g01286)と

戦いに行く前に初詣だって
やっぱり新年最初だし
今年こそはいつものところにいきたよね

訪れたのは文京区の八幡さん
去年は来れなかった毎年訪れていたところ
慣れた足取りで住宅地の中を行けば
見慣れてはいるんだけれど
どこか懐かしい鳥居に頭を下げて境内へ

何度も登った階段は短く感じるし
手水舎の屋根もなんだか低く思えてしまう
狛犬たちの顔だって前より近く感じるね
成長したんだなぁって小さな実感

どっちが鈴鳴らすかで言い合ったのも懐かしいね
結局毎年二人で鳴らしていた緒を持ってカランカランと
あとは二礼二拍一礼
今年の祈願は勿論、また一つでも世界を取り戻すこと

それじゃあ早速果たしに行こうか


朔・麗央
双子の兄リオちゃん(g00493)と

やっぱり年初めにはお参りして
昨年一年間無事に過ごせたことを神様に報告しなくちゃね
そうだね、今年はいつものところ
去年は行けなかったけれど今年は行けるんだよね
今年は文京区があるんだーって少し嬉しい気持ち

いつも行っていた八幡宮へ自然と足が向いちゃうよね
2年ぶり?厳密には私たちのいた東京ではないから
ちょっと違うけれどそれでも懐かしい感じ

兄に倣って頭を下げつつ鳥居をくぐれば
時間が戻ったように感じるよね
私たちもすっかり背だって伸びたし
身体だけじゃなくて色々成長できているかな

リオちゃんが語る小さな頃の思い出に
思わずふふっと笑みが溢れちゃう
そうだったね、今年も一緒にならそう


 東京都・文京区。新宿区との区境にほど近い住宅街、緩やかな坂道の途中にどっしりとした石の鳥居がそびえている。周辺住民が親しみを込めて『八幡さん』と呼ぶその神社は、正式には正八幡神社と云う。
 見慣れた、けれどどこか懐かしい鳥居の下からその先に続く石段を見上げて、朔・麗央(瑞鏡・g01286)はほうっと白い息を吐いた。
「やっと、帰って来たんだねえ」
 一年前の今頃、文京区はまだ海であった。ほんの二十メートルそこそこの幅の川を挟んですぐ向こうにあるはずの故郷は――厳密には、故郷と同じ名前の、同じ姿の街に過ぎないのだが――なく、新宿の北の岸辺から在りし日を偲んで過ごしたことも少なからずあった。けれど新しい年を迎えて今日、新宿側から辿った道はここまで続いている。それが少し嬉しくて、唇は自然と柔らかな弧を描いた。
「二年ぶり――かな? 私達の東京とはちょっと違うけど……やっぱり、懐かしい感じだね」
「そうだね。初めて来るはずなのに、ずっと昔から知ってるみたいな……不思議な気分だけど」
 小さく頷いて妹の隣に肩を並べ、朔・璃央(昊鏡・g00493)が続けた。
「やっぱり、新年最初だし。去年お参りできなかった分も、今年こそはいつものところで、ね」
「うん! だって今年は、行けるんだもん」
 東京エゼキエル戦争という改竄世界史の文京区に生まれ育った二人にとって、最終人類史のそれは故郷とは似て非なる街だ。けれどそれでも二人は、目の前の道をどう辿ればこの社に辿り着くのか識っていた。広がる街並みは二人の知る東京そのものではないけれど、それでも馴染み深い『いつもの』場所なのである。
「行こうか、レオ」
「うん、リオちゃん」
 手袋の手をそっとつないで、双子は鏡合わせの仕草でぺこりと鳥居に頭を下げ、石段を登っていく。色々あってこの世界に辿り着くまでは、毎年、年が明ける度にこの小さな社を訪れて旧年中の息災を感謝したものだ。正にこれから戦いに赴くとても、この習慣ばかりは変えられない。否、寧ろ今だからこそ、仲間達の無事と勝利を祈るべきなのかもしれないが。
「なんだか、時間が戻ったみたいだね」
「分かる。でも――なんとなく、前より狭くなったような気がするかな」
 呟く麗央の言葉に応じて、璃央はこぢんまりとした境内を見回した。何度も登った階段は昔に比べて随分短く感じるし、手水舎の屋根も、石敷きの参道を挟んで向かい合う狛犬達の顔も、以前よりも低く、近く感じられる。それは多分、ここが違う世界だからではなくて、二人が成長したということなのだろう。
 路の先に佇む社殿をなんとはなしに見つめて、少年はぽつりと言った。
「……成長したんだなぁ」
「すっかり背だって伸びたしね。……身体だけじゃなくて、色々成長できてるといいんだけど」
 まあその話は置いとこうか、と、屈託なく麗央は笑った。少し時期が外れているせいか拝殿に先客はいないようだ。
「どっちが鈴鳴らすかで言い合ったのも懐かしいね」
「ふふっ、そういえばそうだったね」
 後ろの人の迷惑になるからよしなさい、なんて父母に叱られて。結局毎年、二人で一緒に慣らすことを選んだ。あの日から失ったものを数え上げればきりがないけれど、一番大切なものは今も確かにここにある。
 花と葉の双眸をしっかりと見合わせて、双子は鈴緒に手を掛けた。
「今年も、一緒に鳴らそう」
 せーので同時に縄を引けば、踊る本坪鈴がカランカランと鳴り渡る。二礼二拍して願うことはただ一つ――新たな一年に一つでも多く、奪われた世界を取り戻せますように。
 長い祈りを終えて顔を上げ、璃央は傍らの妹へ向き直った。
「それじゃあ早速、果たしに行こうか」
 差し出した手がつながっている限り、恐いものなど何もない。うんと元気よく頷いて、麗央は兄の手を取り、歩き出した。
 取って返して乗り込む列車の行く道は、遥か時を超え戦国時代へと続いている。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【エアライド】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!

ガーデニア・ラディーチェ
去年以来の、二度目の明治神宮ね
一年の平穏無事をお祈りしたら、広場の方へ

実は、してみたいことがあるの
今年初の食べ歩きと、目指せ屋台全制覇よ!

甘酒とお汁粉と
ねぇロズ、オゾーニって何かしら?
お餅と一緒に、象を煮て食べるの……?
ニホンの人達って、本当に何でも食べるのね

ロズ、貴方はよく本を読んでいたけれど
極東の島国のことなんて、知らなかったでしょう?
今じゃ、わたしの方が詳しいものね

貴方にまた「おはよう」って言える日が来た時の為にも
ニホンの事を色々教えられる様に、わたしが沢山憶えておかないといけないわね
ロズ、ハマヤって知っているかしら?
お正月に飾る矢のことで、他にカギヤとタマヤが――
(色々と間違っている)


 東京都心は渋谷区の広大な敷地に社を構える、
言わずと知れた初詣スポット――明治神宮。一月も中旬に入り、布敷の巨大な賽銭受けはさすがに撤去されたようだが、広い境内は未だ多くの初詣客で賑わっている。傍らの人形の腕をぐいと胸に抱き寄せて、ガーデニア・ラディーチェ(クチナシの花護り・g03839)は言った。
「ここへ来るのは去年以来ね」
 これも日本の正月ならではであろうか? 祭にも似た賑やかさと、神前の厳かな気配が共存する都心の杜の空気は、慣れないはずが不思議と好ましい。参拝客の列に並び、周囲の見様見真似で一年の平穏無事をきちんと祈り終えたら、ひとまずは目的達成だ――が。今日の彼女にはもう一つ、やってみたいことがある。
 広場の方へ歩いて引き返しながら、ガーデニアは再び人形の腕を取った。
「実は、してみたいことがあるの。今年初の食べ歩きと、目指せ屋台全制覇よ!」
 参拝客の行き交う境内には、カラフルな暖簾を掲げた屋台がずらりと並んでいる。中でも気になるのはやはり、日本の冬の伝統的な食べ物だ。筆文字の幟を掲げた甘酒や汁粉の屋台の並びを進む中、飛び交う呼び込みの中に気になる単語を聞き留めて、ガーデニアは足を止めた。
「ねぇロズ。オゾーニって何かしら……?」
 プラスチックの器によそわれた料理は、金色の透明なつゆの中に肉や野菜、餅を入れたもののように見える。だが、『オゾウニ』と言うからにはだ。紅い瞳をぐるりと巡らせて、少女は首を傾げた。
「お餅と一緒に、象を煮て食べるの……? ニホンの人達って、本当になんでも食べるのね」
 誰かしら日本人が耳にしたならその場で直ちに訂正をしたであろうが、生憎とここにいるのは彼女と彼の二人だけだ。淡く微笑む人形の腕に頬を寄せて、ガーデニアは懐かしむように言葉を継いだ。
「ロズ。貴方はよく本を読んでいたけれど、極東の島国のことなんて知らなかったでしょう? 今じゃ、わたしの方が詳しいものね」
 けれどまだ、足りない。この国のことをもっと知って、憶えて、自分の言葉で語りたい。すべてはいつの日かまた彼に、『おはよう』と言える日のために。
「ロズ、ハマヤって知っているかしら? お正月に飾る矢のことで、他にカギヤとタマヤが……」
 うきうきと声を弾ませながら、さも得意気に少女は語る。ちょっとくらい間違いがあっても、ご愛嬌――彼ならばきっと、笑って許してくれるだろう。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【植物活性】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】がLV2になった!

ノスリ・アスターゼイン
新年の抱負とやらを語るのは
己には大仰過ぎる気もするから
二礼二拍手一礼の形式のみの見様見真似で参拝

けれど
此の島の人々の
神々への敬意は忘れぬよう
礼は丁寧に

傍らに並んだ振袖女子達に
「これで合っている?」と
作法を確認するくらいの気安さと目の保養は
神サマもお年玉として許してくれるかな
なんて

一緒に組み紐付きの御籤も引いて
お守り代わりにあげるよ
赤の紐は恋愛成就、だって
叶いそうかい?
と揶揄いの笑みも添えよう

町の人々の
華やいだ笑い声も表情も嬉しくて
手を振り別れる背景の空が
いっそう澄んだ青に晴れ渡って感じるね

甘酒の温かな一杯を両手に包んで
揺らぐ湯気の向こうに見る青空もまた柔らかで良い

何て言うんだっけ
あぁ
――天晴!


 明治神宮。都心の只中に広大な敷地を誇るその社は全国有数の初詣スポットとされ、一月も半ばを過ぎた今もなお、訪れる人々は後を絶たない。
 未だ長い参拝の列に並び、ノスリ・アスターゼイン(共喰い・g01118)は青空を背にした本殿を仰いだ。落ち着いた緋色の社殿は美しくも厳かで、きりりと身の引き締まる思いがする。
(「新年の抱負、なんて、大仰なことを語るつもりもないけどね」)
 この手の行為は、気持ちと形だ。他の参拝客の見様見真似で二礼二拍手、敬意だけはしっかりと込めて一礼し、青年は背筋を伸ばした。じっと見つめる視線に気づいて振り返ると、艶やかな振袖姿の若い女性達が慌てて目を逸らすのが見えた。
「今ので合ってた?」
 悪戯に片目を瞑れば、まさか声を掛けられるとは思わなかったのだろう。頬を赤らめた娘達がしどろもどろに頷く姿は冬空の下に咲いた色とりどりの花のようで、ノスリは微笑ましげに目元を和らげる。神様の御前で不埒なことを考えるわけではないけれど、そうはない機会、少しばかり目の保養をしたところで許されると思いたい。
(「お年玉ってことで一つ、ね」)
 貰った分は返すから、と胸の内で弁明して、青年はもこもことした裏地の温かなジャケットから紅い組紐を引き出した。
「さっき、そこで引いたんだ」
 『大吉』の文字が踊るおみくじを口許に添えて、ノスリは言った。
「お守り代わりにあげるよ。赤の紐は恋愛成就、だって」
 叶うといいね、と、からかうように口にするその笑顔のなんと残酷なことか――何しろ振袖姿の花達がどんなに焦がれても、琥珀の翼の猛禽はするりと空へと舞い上がって還らない。じゃあねとひらり手を振って、ノスリは参道を取って返していく。開けた境内から眺める空はいつもよりずっと広く晴れ渡って、清々しい空気で全身が満たされていくような心地がする。それもこれも、新たな一年を迎えて華やぐ人々の声と笑顔のせいだろうか?
 立ち並ぶ出店の一角で仕入れた一杯の甘酒は、冷えた掌を温めてくれる。立ち昇る湯気は澄み切った空の青を少し淡く見せて、それもまた美しい。
「こういうの、なんて言うんだっけ? ……あぁ、そうだ」
 天晴。
 冷えた空に杯を掲げて、一口含めば甘く優しい熱が、身体中に染み渡る。さて世界は今年、どんな景色を見せてくれるのか――それが今から、楽しみでならなかった。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【強運の加護】LV1が発生!
効果2【グロリアス】LV1が発生!

秋津島・光希
戦って勝てばいいんだな
めっちゃわかりやすくて助か…え、あれ?戦場じゃねーの?
(最後の説明を見事に聞き逃した顔)

ここは…千代田区だな
そういや初詣まだだったし、行っとくか
靖国神社が近いはずだ

昔、婆ちゃんに教わった通りに二礼二拍手一礼してっと
今年もよろしくお願いします、と安らかに
内心で唱えるのはこの二つだけ

願い事なんざしねえよ
欲しい世界は自力で勝ち取りにいかねえとな

あ、でもお守りは欲しい
俺のじゃなくて
友人知人、それに今の家族の分だ

ご利益もいろいろだな
交通安全は時先案内人の皆に任せるとして…
病気平穏守
ん、これがいい
元気に過ごせりゃそれが一番だ

何重かに包んで貰って
ポーチの一番奥へしまう

さて、初仕事行くか


 圧縮空気の抜けていく音とともに、パラドクストレインの扉が開く。ためらいなく車外へ降り立つと、秋津島・光希(Dragonfly・g01409)はこきりと肩を鳴らした。
「戦って勝てばいいんだな。……分かりやすくていいじゃねえか」
 搦め手であれこれ頭を巡らせるのは、得意な人間に任せておけばいいのだ。長柄の爆撃槌を一振り肩に担いで、そして、少年はぱちりと瞬きした。乗降扉の外には、青い冬空と白い雲、きりりと冷えた空気の中にあってなおのどかな――大勢の参拝客で賑わう、神社の光景が広がっている。
「え……あれ? 戦場じゃねーの?」
 そういえば乗り込んだ列車の扉が閉まる前、時先案内人が何か言いかけていたような気がするが、実際のところは分からない。ただ周りにも復讐者らしき顔ぶれがあるのを見るに、恐らくは初詣会場に停まる列車であったのだろう。
「……そういや初詣まだだったな」
 道路を挟んで向かい側の正面には、『靖国神社』の文字を刻んだ石碑と大鳥居がそびえていた。物はついでだ――初仕事の成功を祈っていくのも悪くない。行っとくかと呟いて、少年は蜻蛉の翅をひと打ち、幅広の道路を飛び越える。大鳥居を潜って真っ直ぐに進み、中門鳥居の外まで続く参拝の列に並んで待つことしばらく、ようやく光希の順番が回ってきた。
(「えーっと……まず二礼、二拍手だったな」)
 昔祖母が教えてくれた参拝の儀礼を思い出しながら、少年は作法をなぞり、両手を合わせて瞳を閉じる。そこそこに切り上げて一礼すると、祈る時間の短さからか後ろで待っていた一般人が驚いたような顔をしたが、祈ることなどいくらもないのだ。今年もよろしくお願いしますと、胸の裡でただ一言唱えればそれでいい。
(「願い事なんざしねえよ」)
 欲しいものは、自力で勝ち取る。事実この一年、彼らはそうして世界を奪り返してきた。今更神に願うことなどない、というのが光希の持論である。が――それはそれとしてだ。
(「でも、お守りは欲しいな。……自分用じゃねえけど」)
 授与所の軒先を覗き込んで摘まみ上げたのは、『病気平穏守』と書かれた守り袋。包んでもらったそれをウエストポーチの底の方にしっかりとしまって、少年は顔を上げた。
「よし。そろそろ行くか」
 この空の向こうに、助けを待っている人々がいる。一時の平穏に別れを告げて、少年は時駆ける列車へと引き返していく。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!

霧宮・悠希
……すっかり遅くなってしまったけれど。

戦闘用の服装や装備を整え、しかし装備に関してはアイテムポケットに隠し持って初詣に向かう。
場所は千代田区、九段下の靖國神社。理由は有名だと聞いたので、何となく。

大鳥居を抜け、広場を通過し、手水舎で見様見真似で手と口を清めて、参拝に向かう。作法に関しては調べておくけれど、付け焼き刃なので不格好なのは仕方ない。

(海岸で拾った)硬貨をお賽銭として入れて、参拝。
すべてを取り戻せるように。奪い返せるように。奪ったやつらに復讐できるように。
……この神社で願うことではないのだろうけれど、それでも。願わずにはいられない。
まだ1年。もうすぐ2年。……早く、取り戻したいんだ。


「……これが、有名な靖国神社か……」
 道路に面した石の大鳥居を見上げて、霧宮・悠希(小さき復讐者・g02383)は誰にともなく口にした。千代田区・九段下、靖国神社――なんとなく足が向いてやってきた初詣会場は、多くの参拝客で賑わっている。初詣と意気込んで向かうには年明けから少々日が経ってしまった気はするが、それにしては十分過ぎる人手である。
(「すっかり遅くなってしまったけれど」)
 戦いを後に控えてのんびりするというのも気分的に難しいものがあるが、せっかくの機会だ。大鳥居を抜け、円形の広場を抜けて、少年はずんずんと境内を進んでいく。すると二つ目の鳥居の左手に、立派な手水舎があるのが見えた。
(「ええと……ここで、どうするんだっけ」)
 作法については簡単に調べたが、付け焼刃ゆえスムーズには知識が出てこない。周りの参拝客をさりげなく観察し、見様見真似でどうにか手と口を浄めると、少年はその足で真っ直ぐに拝殿へ向かう。そこでは既に多くの参拝客が列を成していたが、少し時期を外していることもあってか、十五分も待てば拝殿に辿り着けそうだ。
 参拝客達が打ち合わせる手の乾いた音が連綿と続く中、待つことしばらく。ようやく賽銭箱の前に辿り着くと、悠希はポケットから一枚の硬貨を取り出した。少し錆の目立つ赤銅の硬貨は、以前、島の岸辺で拾ったものだ。放物線を描いて飛んだコインは、賽銭箱の中でちゃりんと軽やかな音を立てた。
(「――すべてを取り戻せますように」)
 目を閉じ、手を合わせて祈ることは、他でもない。
 奪われたものを、奪い返せるように。
 奪った者達に、一矢報いることができるように。
 神に祈ることではないかもしれないけれど、さりとて彼にはそれ以外の願いなど思い付かなかった。
(「早く、取り戻したいんだ」)
 あれから一年。もうすぐ、二年。時計の針は今この瞬間も、絶えず時を刻み続けている。装備品を詰め込んだポケットをぎゅっと押さえて、少年は踵を返した。祈りは済ませた――後は、仕事をするだけだ。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【アイテムポケット】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!

ラヴィデ・ローズ
港区の愛宕神社に参拝
(不特定の神社でも歓迎)
主祭神は火の神だという
急勾配の石段を登った先の其処は
23区でも特別高い天然の山らしい

この身の炎が夢に背かぬように
願い、託すのは性分ではないから、胸に誓っただけ

貼り紙の作法通りに参拝を済ませた帰り
冬の空気を吸い込むと、豊かな緑の匂いがした
ベルにはペットお守りを手に入れたし(フラグ)
新年早々晴れやかな気分だなぁ
このすごい階段、今度は下ると思うと……だけど
眼下にはビル街。人々の営みが、日常が広がる
いい眺めだ
神様もだからここに祀られることにしたのかね
なんて呟き、返る声がある筈もなく
手にした紫の虹鈴守が澄んだ音を立てた

※虹鈴守=七色の種類がある開運厄除けの鈴


 東京都・港区。東京タワーにほど近いビル街の中に、愛宕山と言う名の小さな山がある。標高は23区随一にして、約26メートル――都心の高層ビルの只中にあってはせいぜいが丘といった風情ではあるが、鋭利で近未来的な虎ノ門辺りの街並みに枝を伸ばす緑の木々は、道行く人々の心にささやかな潤いを与えてくれる。
 そんな愛宕山の麓に、一人の復讐者の姿があった。広い道路に面してそびえる大鳥居をくぐり、ラヴィデ・ローズ(la-tta-ta・g00694)は思わず足を止める。白い石を敷いた道のすぐ先には、急勾配の石段が続いており、なるほどこれは確かに『山』というに相応しい高さである。
「案外、急だなあ」
 翼を広げて翔け上がってもよいのだが、何せ『出世の石段』というくらいだ。この階段を一歩一歩、自分の脚で登ることに意義があるのだろう。さぼらず行こうかと肩口の竜を一瞥して、青年は軽やかに歩みを進めていく。長く急な石段を登りきったその先に建つ石の鳥居の向こうには、鮮やかな丹塗りの門と、古めかしくも威厳のある社殿が覗いていた。
(「主祭神は火の神、なんだっけ」)
 貼り紙に記された作法に則って手水舎で手と口を浄め、参拝は他の客に混じって淡々と済ませた。誰かに願い、託すような性分ではないのだ。
 だから――こうあれかしと想うことは、ただ胸に誓うのみ。それは偏に、この身の炎が夢に背くことのなきように。
「……ふう。なんだか緊張しちゃったな」
 最後に深々と一礼して、ラヴィデはほっと息を吐いた。代わって肺腑を満たす空気は冷えてはいるが、新宿のビル街では得難い緑の匂いがする。社務所に寄って、相棒のミニドラゴンにペット用の――それが『ペット』用なのだと気付かれたら、ただでは済みそうにないが――お守りを買って片方の角に括ってやれば、ひとまずの目的は達成だ。清々しい気分で来た道を引き返していくと、来るときに登った断崖のような石段の向こうに、ビジネス街と行き交う人々の日常が広がっている。それが切り取られた世界の欠片に過ぎないということを忘れてしまいそうな、なんでもない日常だ。それをこそ、『神様』は愛おしんだのに違いない。
「だからここに祀られることにしたのかね」
 なんてね、と誰にともなく呟いて、青年は石段を下っていく。指先に引っ掛けた組紐を回してみれば、紫色の虹鈴守がちりんと揺れて澄み渡った。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】がLV3になった!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!

湯上・雪華
【奴崎組】
行き先∶江東区の富岡八幡宮

初詣、ちゃんと行くのはじめてですね
先勝祈願の所とお聞きしてますし、これからも勝ち続ける為にも、ですね

お詣りの作法は二礼二拍手一礼でしたっけ
お賽銭を……新円だとどうなるんでしょう?気持ちでいいのならそのまま
今年も無病息災で、人類史を取り戻せますように、とお願いしないと
おみくじは運試しっていいますし、ひとつひいてみましょうか
どんな結果でも楽しめればいいわけですし
甘酒、いいですよね
美味しいし、栄養価も高いし、温まるし、外で飲むとまた格別ですね


荒田・誠司
【奴崎組】
行き先∶江東区の富岡八幡宮
アドリブなど歓迎

(心情)
俺は少し忙しくて初詣とか行けてなかったから丁度良かったよ
今後も誰も欠けることなく勝ち続けられますようにっと
参り方は湯上ので良かったはずだ
甘酒って初めて貰ったけれどこんな味なのか、すっごいあったまるな

(行動)
お金はドイツの物と新円しか持っていないから新円でお参り
戦勝祈願していこう
今年も皆欠けることなく無事に戦い抜けますようにって祈るよ
あとは御神籤を引いていく
良くても悪くてもいい話のネタになるだろう
後は甘酒とかあれば一緒に来た仲間に配って一緒に飲む


リュウ・ターレン
【奴崎組】
行き先:江東区の富岡八幡宮
アドリブ・絡み歓迎

初詣……やね。
戦勝祈願といこやないの。この先も勝たなあかんものも多いし、戦争の神さんにお祈りしとこ。
お賽銭……新円でも問題ないんとちゃうかなあ。こういうのは気持ちやろしな。
……勝てますように。取り戻せますように。あの人たちを。
中にいるあいつが笑ってそうやけど知らん。
帰りは甘酒?ええやんええやん。のものも。


 八幡神とは、応神天皇に化身にしてかつて源氏の氏神としても信仰された武神であり、これを祀る社を八幡宮と呼ぶ。その数は全国で四万四千を数えるとされており、東京・江東区に位置する富岡八幡宮もその一つである。永代通りに面した真っ赤な大鳥居の先には整然とした正面参道が真っ直ぐに伸び、その先にはこれまた朱塗りの本殿がどっしりと構えている。
「初詣、ちゃんと行くのはじめてですね」
 参道の賑わいを視線で辿りながら、湯上・雪華(悪食も美食への道・g02423)が言った。年が明けてから少し経つが、境内は依然として多くの初詣客に溢れていた。行き交う人々の表情は一様に明るく、この壊れた世界にあってもたくましく生きようとしているさまが窺える。それが嬉しくも頼もしく思われて、荒田・誠司(雑草・g00115)は自然と笑みを浮かべた。
「ここのところ少し忙しくてな。行けてなかったから、丁度よかったよ」
「うんうん、それに戦争の神さんなんやろ? そやったらちゃーんとお祈りしとこ。この先も勝たなあかんものも多いしなあ」
 本殿へ続く参拝客の列を指差して、リュウ・ターレン(奪われた者。奪い返す者。・g07612)が後を継ぐ。古くより戦勝祈願の社として多くの武将達が祈りを捧げてきた八幡宮は、侵略者を討ち果たし、すべてを取り戻さんともがく復讐者達にとってこれ以上ない祈りの場であるのかもしれない。
 確かに、と笑顔で頷いて、雪華は同意した。
「今までの御礼と、これからも勝ち続けるために、ですね!」
 蒼海に帰した地球上には、未だ名前さえ掴めない未知のディヴィジョンが数多く存在するはずだ。オベリスクの漂着を受けて戦線の拡大も視野に入る中、戦いは烈しさを増すことはあっても、減じることはないだろう。その武運を神に祈ったとて、咎める者もありはすまい。
 参拝の列に並んで待つことしばらく、拝殿の前に辿り着いて雪華は首を傾げた。
「えっと……お詣りの作法は二礼二拍手一礼、でしたっけ? お賽銭は……新円だとどうなるんでしょう?」
「そういえば、お金はドイツの硬貨しか持ってないな。新円は電子通貨だし……」
「なんでも問題ないんとちゃうかなあ。こういうのは気持ちやろしな」
 ではそのまま、ということで、誠司とリュウも横に並び、心を込めて二礼二拍手する。
 今年も無病息災で、無事、人類史を取り戻せますように。
 誰一人として欠けることなく、勝利を重ねていけますように。
 祈る言葉は少しずつ違えど、懸ける願いは皆同じだ。ややあって顔を上げ深々と一礼して、さて、と雪華は友人達を振り返った。
「後はおみくじですね! 運試しっていいますし、一つ引いてみましょうか」
「いいな、おみくじ。結果がよくても悪くてもいい話のネタになる」
「そうですね。どんな結果でも、楽しめればいいわけですし!」
 行きましょうと足取りも軽く、青年は小走りに玉砂利の道を社務所の方へ駆けていく。後を追う誠司の背をしばし見送ってから、リュウはその場に立ち止まり、背にした拝殿をもう一度仰いだ。
(「……きっと、この戦いに勝てますように」)
 取り戻せますように――今は失われた、『あの人達』を。
 あの日喰らった悪魔は今もこの身の裡で、もがく自分を嗤っているのだろう。けれども、知ったことか――誰に嗤われようと、蔑まれようと、失くしたものはこの手で取り返すだけだ。
「リュウさん?」
 どうしたんですか、と雪華の声が遠く社務所の方から呼び掛ける。どこからか漂う甘い香はなんだろう? 歩み寄れば社務所で振る舞われたらしい飲み物のコップを手に、仲間達が手を振っていた。
「甘酒、配ってるみたいですよ。リュウさんもどうですか?」
「ええやんええやん。のものも」
「甘酒って初めてだけど、こんな味なのか……すっごいあったまるな」
 火傷しないよう慎重にコップの中身を口に含みながら、誠司はほっと息をついた。米麹の食感が残る甘酒はどろりとして腹持ちがよく、添えた生姜が冷えた身体を内側から温めてくれる。
 さて来年の今頃も、こんな風に杯を交わすことができるのか。
 それまでの一年で、彼らは何を得て、世界はどんな姿になるだろうか?
 多くの期待と少しの不安を胸に秘め、復讐者達は戦い続ける。その行く手に光の降ることを、今は静かに祈るのみだ。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【無鍵空間】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
【飛翔】がLV4になった!
効果2【ラストリベンジ】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV4になった!

斑夜・黒白
奈良の春日大社に

初詣、か
此方に漂着し初の正月故、現代風に過ごしてみるとしよう

奈良や京都の街並みは、矢張り懐かしいな
神社での礼儀作法は、我の時代とは変わったのか
参拝し、神籤を引くぞ

一通り済んだら、大社内を散策するとしよう
茶屋が気になった故、途中で立ち寄ろうか
正月らしい菓子を頼んで一服するぞ
然し……大社内の敷地に鹿が居るのだな?
鹿、か……
何とも不思議な光景で在るな?

よせ。此れは我の菓子だ。お主等にはやらぬ
後で鹿煎餅を買ってやる。其れで赦せ
余り執拗な奴には、云い聞かせてやろう
知っているか?
もみじ鍋は美味であるのだぞ
奈良には初めて訪れたが、鹿に支配されて居ると云う噂は誠で在ったか……


 朱塗りの鳥居を一つ抜け、二つ抜け、行く道は厳かな静謐に満ちている。
 奈良県・奈良公園内、春日大社。透かし編みの黒い衣被を軽やかな冬風になびかせて、斑夜・黒白(華面影・g08472)は無意識に口元を綻ばせた。
「……懐かしいな」
 見知らぬ世界の見知らぬ岸辺に流れ着いて迎える、初の正月だ。どうせならば当世のしきたりに則り『初詣』などをして過ごそうと思い立って来たものの、緑の木立に包まれた土の道と木造の社殿を眺めていると、郷愁に似た感情を禁じ得ない。流れ着いたばかりの頃と比べれば新宿島の無機質なビル街にも随分と慣れたが、それでもこうした素朴な風景は戦国生まれの少女の心を少なからず慰めてくれるのだ。
「さて、これからどうしたものかな」
 慣れない現代の礼儀作法ややたらと種類のある神籤には多少の戸惑いもあったが、一般の初詣客に混ざって無事参拝を終え、黒白は来た道を引き返していく。しかしこのまま帰るのも味気ない気がして、ふらふらと漫ろ歩いていると。
「ふむ。……茶屋もあるのか」
 来た時には気づかなかったが、参道の片隅に小さな茶屋が幟を掲げていた。丁度小腹も空いたところだと赤い毛氈を敷いた床几台に腰を下ろし、一月の今の時期にしか売らないという菓子を一皿と、抹茶を合わせて注文する。ほどなくして運ばれてきた菓子は梅の花と今年の干支であるウサギを模した二つセットの練り切りで――食べてしまうのが少々、惜しまれるような装いである。さて、どちらから食べようかと首を傾げていると――。
「……うん?」
 四方からじろじろと見つめる不躾な視線を感じて、黒白は辺りを見回した。しかし、人の姿は見当たらない。灌木の陰から黒目がちな瞳でじっとこちらを覗き込んでいるのは、他でもない。奈良公園名物・鹿である。
「なんとも不思議な光景であるな……? 鹿に支配されて居ると云う噂は、誠で在ったか」
 奈良公園の鹿は、ヤンキーと同じだ。目が合ったら絡まれる。膝に乗せた小皿の和菓子を切り分けていると、一頭のヤン――もとい鹿が、クンと彼女の袖を食んだ。
「……よせ。此れは我の菓子だ。お主等にはやらぬ。後で鹿煎餅を買ってやるから――……もみじ鍋は美味であるのだぞ」
 さらりと脅し文句を吐いて、黒白は鹿の鼻先が届かぬように小皿を頭の上に持ち上げる。取られる前にと口へ運んだ練り切りは、ほのかに梅の匂いがした。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【神速反応】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!

十野・樞
アドリブ連携歓迎

初詣、か
ならば、奈良の大神神社に詣でるかね
11月の酒祭りには奪還は間に合ったんだ、大杉玉の青さも楽しめるだろうよ

大神神社といやご祭神は大物主大神だが、
酒造りの神様としても名高い
三輪の枕詞は味酒、ってくらいだ
酒呑みの俺としては、
世に美酒を送り出してくれたことに対しあつく御礼申しあげると共に、
これからも美酒に出会えるようよくよくお願いしておきたいところ

……そして、これからの闘いに対する助力も願う

神々の目を掻い潜り神秘を究めようとする魔術師崩れの俺はいわば罰当たりだ、
助力を乞う立場じゃねえ

ただ、ひたむきに走り取り戻す為にあがき、より良い未来を得んと闘う仲間には、どうか力添えを、と


 大神神社。奈良県北部に位置するそれは、日本でも最古の部類に入るとされる歴史ある神社である。
 二の鳥居を潜って手水舎や授与所を道の傍らに見て真っ直ぐに行くことしばらく。参拝客の人混みの向こうに覗く拝殿の軒先を見上げて、十野・樞(division by zero・g03155)はにまりと口角を上げた。
「さすがにまだ青いな――大杉玉も」
 球状の竹籠に神木の杉の葉を差し込み、均一に刈り込んで仕上げた『杉玉』はその色で以て、仕込んだ酒の熟成具合を教えてくれる。酒造りの神様としても名高い大物主大神を祭神として祀るこの社では、毎年十一月に酒祭を開き、拝殿に巨大な杉玉を飾るのが恒例行事となっているのである。京都・奈良を奪還してまだ半年にも満たない日々ではあるが、青々とした杉の葉の色を見る限り、昨年はそれは盛大な酒祭りが開かれたのだろう。
 列に並んで待つことしばし、青い杉玉のほとんど真下までやってきて、樞は目を閉じ、両手を合わせた。
(「三輪の枕詞は味酒、ってくらいだ」)
 壊れた世界にあってなお変わらぬ美酒を送り出してくれたことについては、酒呑みとして篤く感謝せねばなるまい。ことさら味にうるさいわけでもなく、酒の高い安いにも取り立てて興味はないが、それだけに真に舌に馴染む銘柄は樞にとって得難いものなのだ。
(「これからも良い酒に出会わせてもらいたいね。……それから」)
 これからの闘いの日々に、どうか力を貸してほしい。
 開いた菫色の瞳ににわかに真摯な光を宿し、男は拝殿の天井を仰ぐ。彼は魔術師だ――否、魔術師『崩れ』とでも言った方が正しいかもしれないが――神々の目を掻い潜り、神秘を究めようとするその在り方が、冒涜的だと言われればそれを否定するつもりもない。神にしてみれば助力を乞う立場にすらなり得ない、猥雑で罰当たりな存在だろう。
 ただ、それでも。
(「俺には罰をくれていいからよ」)
 ひたむきに走り、取り戻そうとあがき、より良い未来を得んと今この時も戦い続ける――仲間達には、どうか力を貸してほしい。
 ぺこりと浅く一礼して、樞は羽織を翻す。青い夜に降り積もる蛍雪のようなその裾を、揺らす微風はやがて追い風へと変わって、その背中を押してくれるだろう。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【土壌改良】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!

ウルリク・ノルドクヴィスト
戦国の伊賀…ではないな
此処は、と瞬く

最終人類史の街並みも
来たばかりの頃に比べれば
ずっと馴染んだが
…社というものは
異国の風情が特に強くて
未だ、見る度に新鮮な心地になる

祈れば、神は願いを
…叶えてくれる、のだろうか
其れとも
聞き届け、見守るという方が近いのか

前者なら
誰か――護られるべき民や
此れから共に闘う者達の安全を祈り
後者なら
己の武運でも見届けて貰おう、なんて

思ったところで
いや…幾つも願いを掛けるのは反則?
一つに絞るべきか、しかし
…やはり作法がわからない
参詣へ踏み出すまで暫し悩んで

欲を重ねるのも罪深いものと
己を戒める気持ちはあれど
多くを為すにはまず多くを望むのが良いと
結局は、自分に言い聞かせた


「ここは……」
 乗降扉の向こうには、古都の街並みが続いていた。道を縁取る建物はどこか歴史の趣深さを感じさせるが、いかにも農村の茅葺き屋根といった造りではない。
「戦国の伊賀……ではないな」
 深いルビーの瞳をぱちりと一つ瞬かせて、ウルリク・ノルドクヴィスト(永訣・g00605)は辺りに視線を廻らせる。比較的低い建物が広がる通りとそう遠くない山の端を見るに、列車はどうやら最終人類史の京都・奈良のどこかに停まっているらしい。
(「初詣――とやらか」)
 一歩外へと踏み出せば振袖姿の若い女性が連れ立って歩く姿が目に留まった。行き交う人々の来し方と行く先を追ってみればその先には、巨大な朱塗りの鳥居がそびえている。
 あれから一年――今よりもずっと小さな島に過ぎなかった新宿の岸辺に辿り着いてから一年半、最終人類史の街並みにも随分と馴染んだものだが、この社というものは今もなお、竜域の騎士の目には新鮮に映る。異国の風情漂う美しくも厳かな鳥居を黙々と潜ってしばらく行くと、拝殿の前に参拝客が列を作っているのが見えた。この島国にあまねく存在するという八百万の神々に、人々は何を祈るのだろう。
(「祈れば、神は願いを――叶えてくれる、のだろうか」)
 それとも。
 自問しつつ、男は粛々と歩を進める。玉砂利を敷いた道は一歩踏み出すたびに、ざくざくと小気味のよい音を立てた。
(「聞き届け、見守るという方が近いのか?」)
 護られるべき民や共に闘う者達の安全を祈るべきか。あるいは己が武運を見届けてくれるよう、願うべきか。否そもそも、一人でいくつも願いを掛けるのは反則に当たろうか?
 この国の作法は、未だよく分からない。整えた顎髭を指の背で撫でて、ウルリクは小さく首を捻った。しかしそうこうする間にも、人々は着々と祈りを捧げ、拝殿が目の前にまで近づいてくる。
(「……多くを為すには、まず多くを望むべきなのだろう」)
 あれもこれもと欲を重ねるのは、罪深い。そう、自戒する想いもないではないが――望まなければ、始まらない。そうして掲げた願いを一つでも、二つでも確かなものとするために、これからの一年を紡いでいく。初詣という行事には、きっとそんな意味があるのだ。
 だから、これでいい。そう自分に言い聞かせながら、寡黙な竜はちらりと隣の参拝客を覗き見ると、その作法を真似て手を合わせた。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【使い魔使役】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!

野本・裕樹
※アドリブ・連携歓迎

京都の粟田神社の末社である鍛冶神社へ初詣を。
京都を奪還したからこそ行けるこの神社、たとえ見習いだとしても刀匠の端くれとしては是非とも参拝しておきたいです。

粟田神社の本殿へお参りした後に鍛冶神社へ。
名前の通り鍛冶神社は鍛冶に関する神様が御祭神の神社です、生前に有名な刀匠であった方もおられます。
いつか自分も立派な刀匠になれるように精進します、と決意表明をしておきましょう。

技術向上を願うのはなんだか違う気がしますね。
技術は自分で何とかしたいですから。
御祭神は刀剣の神様でもあるからして悪運を断ち良運を切り開くという勝ち運の神様でもありますから伊賀国での戦いの勝利を願いましょう。


 京都市は平安神宮前から水路を越えて南東へ数百メートルほど歩いたところに位置する粟田神社は、日本神話に名高いスサノオノミコトを主祭神に祀る厄除けの社である。一の鳥居から更に南下し、二の鳥居の先にある拝殿できちんと新年の挨拶を済ませてから、野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)は来た道を振り返った。
「さて、鍛冶神社は……あちらですね」
 来た道を少し引き返して二の鳥居の手前を右に折れたその先には、鍛冶神社と呼ばれる末社がある。師と分かたれて未だ見習いの身、とはいえ彼女も刀匠の端くれだ。その名の通り製鉄や鍛冶の神を祀るこの社を訪れない理由はなかった。
 菊紋をあしらった袴の裾を冷えた空気にひらり翻して、金毛の妖狐は機嫌よく、形のよい唇を綻ばせる。
「こちらへ詣でられるのも、京都を奪還したからこそですね」
 年季の入った木の鳥居の奥には、小さな社がぽつんと建っていた。見た目は随分とこぢんまりしているが、そこには有名な刀匠達もまた神として祀られている。作法に則って一礼してから吊られた鈴緒を掴んで鳴らし、裕樹は背筋を正して二礼二拍手すると両手を合わせた。
(「いつか自分も立派な刀匠になれるように――精進します」)
 心の中で唱える言葉は、願いではなく決意だ。技術向上を神に願うのは容易いが、たとえそれで御利益があったとして、それは彼女が真に願うものではないのである。
(「技術は、自分でなんとかしたいですからね」)
 鍛冶の道は、自ら切り拓くもの――神に頼っているようでは、まだまだ師には程遠い。
「……それはそれとして」
 一度顔を上げかけて再び合わせた両手に鼻先を添え、裕樹は続けた。
(「御祭神は刀剣の神様。悪運を断ち良運を切り開くという勝ち運の神様でもありますから、……伊賀国での戦いの勝利を願いましょう」)
 あくまでここは、通過点。長い祈りを終えて今度こそ顔を上げ、妖狐の娘は深々と一礼すると、踵を返し歩き出す。木立を抜けて吹く風はきりりと冷えて、身も心も引き締まるような思いがした。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【泥濘の地】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV4になった!

帷・カラス
【鴉と姫】

桃ちゃんよ、あけおめだ
初詣は何処ともしれない小さくて落ち着いた神社でのんびりだ
境内の階段に腰掛けて
俺はカップ酒、桃ちゃんは甘酒で乾杯
そういうなって!
こういうのもたまにはいいだろ?
お姫様には、物足りないかね

俺は、ど派手な神社はちと苦手でね
俺にとっちゃ、主が神だ
参るべき社は主がいる場所だけだからな

空飛ぶ鴉を見上げる
正月には不吉かね
…そんな頑なな意地と
帰れないのかな…なんて
少しの寂しさとが滲む
俺らしくねぇ

え?桃ちゃんにもそんな思い出がね
意外だな…でもなんか嬉しいな
共通点があるってのは

はは!御籤ならあるぜ!
ほら、フォーチュンクッキー!大吉が出るまで食べ続けよう!
そしたらハッピーの確約がある!


上巳・桃々姫
【鴉と姫】

初詣にいこう──そう言われて張り切っておめかししたのですわ

……あけましておめでとうですわ

カラス殿の横でカップ甘酒をあおる
わたくし、こんな初詣は初めてですわ
もっと華やかなのを想像していましたの
縁日とか色々
カラス殿はいつもこんな初詣を?

…貴方は一途ですわね
そんな主が羨ましい
何処か切なげな寂しげな彼の横に寄る
鴉も新年を祝っておりますの
…かの鳥は神の遣いでしてよ
それにわたくし、生家近くの小さな社にもよく参っておりましたの
落ち着いていて…
悪くないのです

けれど、御籤があれば完璧─ありますの?!
ふふ!それでは必ず大吉になるではないですか

そうですわね
幸せの確約を頂きましょう

やっと笑いましたね
カラス殿


 古都・京都。その行政・観光の中心を担う京都市には、二千を超える神社仏閣が散在している。平安神宮、祇園の八坂神社などはその代表的な例であり、例年この時期は多くの初詣客で賑わうのだが――一方で、その頃。
 独特の開封音とともに漂う酒香が鼻先をくすぐった。名前も知らない、社務所すらない寂れた神社の石段に腰掛けて、帷・カラス(神遣・g08316)はカップ酒の蓋をビニール袋にしまい込む。その隣には、同じくカップの甘酒を手にした上巳・桃々姫(ひいな・g08464)がおめかしした着物の膝をちょこんと揃え、座っていた。
「桃ちゃんよ、あけおめだ」
「……あけましておめでとうですわ」
 乾杯と掲げる声とともに打ち合わせた厚手の瓶は、ごつんと鈍い音を立てた。有名所が人を集めてしまうせいもあるのだろうか、あるいは単に時期が少し外れたせいかもしれないが、京の都の片隅にある名もなき神社はがらんとして、二人の他には参拝客の姿も見えない。
 ぐい、と思い切りよく甘酒を呷って、桃々姫は言った。
「わたくし、こんな初詣は初めてですわ」
「こんなって?」
「もっと華やかなのを想像していましたの」
 食べ物を商う出店が並んでいたり、振袖袴の若者達が連れ立ち歩いていたり。だから張り切ってめかしこんで来たのだが、この境内の侘しさは少々、拍子抜けである。
 そう言うなってと苦笑して、カラスは言った。
「こういうのも、のんびりできてたまにはいいだろ? お姫様には物足りないかね」
「そうは申しませんけれど。カラス殿はいつもこんな初詣を?」
「はは、まあな。ど派手な神社はちと苦手でね」
 冬の弱い日差しが、カップ酒の容器を透かして石段にゆらゆらと光の帯を泳がせる。一息に半分ほど飲み下して、カラスは何を見るでもなく晴れ渡った空を仰いだ。
「俺にとっちゃ、主が神だ。参るべき社は主がいる場所だけだからな」
 呟くように口にしたその横顔は、いつになく孤独な、寂しい色を帯びている。彼の心はきっと今、ここに在ってここに在らず――冬空を渡る鴉のように、どこか遠くの還れぬ場所へ羽ばたいているのだろう。何をしてやれるわけでもない自分がもどかしく、またその瞳の見つめる先にいる人が羨ましくて、桃々姫は憂うように睫毛を伏せると拳一つ分の距離を詰めた。
「……貴方は一途ですわね」
「いやあ、意地みたいなもんさ。……俺らしくもねぇな」
 カァ、と鳴く声のする方へ視線を向けると、古びた社の屋根の上をぴょんぴょんと跳ねていく一羽の鴉が見えた。たちまちに飛び立つ黒い翼を見送って、同じ名をした青年は自嘲気味に続ける。
「正月には不吉かね」
「あら、そんなことはありませんわ。鴉も新年を祝っておりますの。かの鳥は神の遣いでしてよ」
 努めて明るい声色をつくって、娘は白桃色の瞳で傍らの青年を覗き込んだ。
「それに先程のお話ですけれど、わたくしも、生家近くの小さな社によく参っておりましたのよ。ですから、こういう場所も決して悪くないのです――まあ、これでおみくじがあれば完璧なのですけれど」
「はは! おみくじならあるぜ!」
「えっ?!」
 二人のささやかな共通点を見つけたことが嬉しかったのか。きらりと瞳を輝かせて、カラスは笑った。ありますの、と驚く桃々姫の前に取り出して見せた容器の中にあったのは――。
「ほら、フォーチュンクッキー! 大吉が出るまで食べ続けようぜ」
 そうしたら、絶対にハッピーになれる。自信たっぷりな言葉に呆れたと返して、桃々姫は続けた。
「それでは必ず大吉になるではないですか。まったくもう……ですが、そうですわね」
 新年の幸せの確約を、二人で頂くのも悪くはない。不思議な形のクッキーをそれぞれ手に取り視線を交わせば、いつもと変わらない笑顔がそこにあった。
「やっと笑いましたね、カラス殿」
 せめて傍らに在る時は、この瞳の翳ることがありませんように。願いを込めて齧った焼き菓子は、口の中で甘くほどけていく。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【未来予測】LV1が発生!
【アイテムポケット】がLV2になった!
効果2【先行率アップ】がLV2になった!
【反撃アップ】LV1が発生!

秋津島・光希
【暁光】

おう、アキ
そういやお前、戦国のこと気にかけてたもんな

アキも来るんなら、初詣一緒に行けたら良かったなー
あ、お前の分のお守り確保してきたわ。安産祈願のやつ
いや、待て。真に受けるな、本当の御利益は…
あーもう、さっさと仕事片付けて実物渡した方が早いな!

戦闘時は常に【飛翔】状態
速度を上げて接敵、翻弄し注意を引く

ついでに【泥濘の地】で敵さんの足を取ってやる
村人を庇うアキのとこまで通さねえのが理想だな

「テメェらの足は飾りかよ、バーカ!」
言葉での挑発もおまけ
俺の方狙ってくれりゃそれでいい
パラドクスで殴り返してやるけどな!

…後ろから何かカワイイのがついてきてるけど気にしない
おう、行くぞ。突撃ー(棒読み)


鉄・暁斗
【暁光】
コウ、来ちゃった(手を振り)
伊賀国だけでも気になるのに、更にコウが揃ったら放っておけない。俺的に
俺も戦うよ
村人達を守り、君の背中を守る為に

初詣行ってきたんだ
ちょっと遅かったか、一緒に行けなかったの残念
お守り購入してくれたんだね、ありがとう
元気な子を生むね(真顔でこくり)
本物のご利益?じゃあ、これ終わったら初詣の話と一緒に教えて

【飛翔】【神速反応】【未来予測】活用
村人が狙われていたら【怪力無双】で敵を止め、村人がその場を離れる時間を稼ぐ
コウが後ろを気にせずに敵に向かえるように

さあ、みんなの食料も自由も返して貰うよ
「熊猫忍者隊、光希隊長に続け!」
コウの攻撃で弱った敵を空の彼方まで吹き飛ばせ


 1581年、伊賀国某所。
 とある農村の裏手に広がる小高い山の中腹に、異質な列車が一編成、宙を裂いて停車する。地上数メートルの位置に口を開いた乗降扉から軽々と飛び下りて、秋津島・光希(Dragonfly・g01409)は周囲を見回した。雪化粧の斜面の下方に位置する村の方からは、天魔武者達の怒号と村人達の哀願の声が聞こえている。
「まずいな。急がねえと――」
「コウ」
「うわっ」
 突然背後から名を呼ばれ、少年は弾かれたように振り返った。思った以上に驚かれてきょとんと琥珀の瞳を瞬かせ、鉄・暁斗(鉄家長男・g07367)は抑揚のない声と顔で『やあ』と片手を挙げて見せる。
「来ちゃった」
「おう……びっくりした。そういやお前、戦国のこと気にかけてたもんな」
「伊賀国だけでも気になるのに、その上コウが揃ったら放っておけないよ」
「調子いいこと言うな」
 真顔の幼馴染に思わず吹き出して、光希は言った。だが戦いを前に強張った表情が一瞬でも弛んだならば、暁斗が彼を追って来た意味は十二分にあると言えるだろう。油断は禁物、しかし気負いもまた然りである。
「けど、どうせ来るんなら初詣も一緒に行けたらよかったな」
「ちょっと出遅れちゃったからね。同じ電車に乗れてたらよかったんだけど」
 どうやら二人が一番乗りではあるようだが、各地の初詣会場に立ち寄った他の仲間達も追って合流するだろう。
 視線を交わして頷き合い、二人は白い雪の斜面に身を躍らせた。滑り滑って向かう先には、ジオラマのような小さな村が見えている。
「そういやお前の分のお守り確保してきたわ。安産祈願のやつ」
「ありがとう。元気な子を生むね」
「いや待て真に受けるな。突っ込むとこだろそこは」
 どういう心境なんだよ、と逆に突っ込んで、光希は風を切り針葉樹の間を抜けていく。降り積もる雪を舞い上げて吹きつける風は冷たく、少年は眉をひそめた。
「本当の御利益は……って、のんびり話してる暇はなさそうだな」
 略奪の現場は、もう目の前にまで迫っている。こくりと小さく頷いて、暁斗は応じた。
「だね。じゃあ、これが終わったら初詣の話と一緒に教えて」
 さっさと仕事を片付けて、実物を見せた方がよっぽど早い。滑り降りる勢いのまま一段高い崖の上から飛び出して、二人は村の入り口へ一気にジャンプする。村人達を背に庇うように割って入れば、半人半馬の武者達のどよめく気配がした。何奴、と問う声が聞こえたが、答える義理も義務もない。
「さあ、みんなの食料も自由も返して貰うよ――熊猫忍者隊、光希隊長に続け!」
「おう、行くぞ。突撃ー」
 笹の葉につけた旗を一振り暁斗が号令をかけると、ポポポンと白い煙が巻き起こり、忍び服に身を包んだパンダ達が現れた。なんとも気の抜ける光景だがそこは気にしないことにして、光希は蜻蛉の翅を羽ばたかせる。目にも止まらぬ速さで突き抜けると、つい今しがたまで村人達を相手に威張り散らしていた武者達は面白いほどに狼狽した。
「テメェらの足は飾りかよ、バーカ!」
 敢えて放った荒い言葉は、万が一にも敵の攻撃が村人達のいる方へ向かないようにするためのもの。爆撃槌をくるりと半回転して握り直し、光希は大きく振り被る。来ないのならば、こちらから――渾身の力で振り抜いた槌は爆発とともに衝撃波を生み、細かな砂礫が朦々と舞い上がった。
「さあ、早く隠れて。巻き込まれないように」
 戸惑う村人達に退避を促して、暁斗は武者達と渡り合う友人を振り返る。彼が後ろを気にせず戦えるよう、その背を支える――それが友人としての、暁斗の役目なのだ。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【動物の友】LV1が発生!
【防衛ライン】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV5になった!
【命中アップ】がLV2になった!

ラルム・グリシーヌ
【白花】

村人達が大事に育んだ実りを
力尽くで奪うだけじゃなく
働き手まで連れ去るなんて赦せない!
きっちりお仕置きさせてもら…
ニ、ニイナだって怒ったら怖いんだからね!
捩じ切られてもしらないよ?

杖を掲げ生み出す色の漣は冱える藍
天に咲かせた揺らぎの花を
大地に還すように鋭い燦めきを降らせる
ニイナの焔は峻烈で綺麗でしょ?
俺からは氷槍の嵐をあげる

声掛け連携重視
弱った敵、孤立した敵を狙い各個撃破
村人や周囲に被害が及ばぬ様
敵の注意を惹き付ける様に立ち回る

冗句めいた彼の言葉に
俺だって食べないもん!
と拗ね乍らも
赫焉の刃を届かせる様に
敵の四肢を氷花で凍らせ機動力を奪う

…おやすみ
君達が春の彩りの始まりを
見る事は叶わないよ


篝・ニイナ
【白花】

食い物も働き手の男衆も
攫っていこうなんざまるで鬼のよう
ならその首、真の鬼が落としてやろうじゃねぇの
…あらあら、ラルムクンを怒らせたら怖いよ〜?
俺より強くておっかないんだから

灼けど匂うは溶けた鉄
せめてその馬体が血肉なら食糧になっただろうか
それでもさすがに食う気は起きない
村民達だって御免だろうよ
ラルムクンは、お馬さんだって食べちゃいそうだけど
なんて、冗談冗談

舞う氷花に
凍てついた四肢
随分と寒そうだね
焼け落ちる程温めてやろうか?

下肢が馬なら逃げ脚だけは疾いかねぇ
けど背に死神を乗せて
本隊まで案内してくれる先導の馬になってくれんなら、上々だ


情報共有、連携重視
残留効果を使用して移動や回避を行う


 辿り着いた農村は、既に混乱の只中にあった。仲間の復讐者に促されて逃げてくる人々と入れ違いに武者達との戦線に進み出て、篝・ニイナ(篝火・g01085)は冷やかな軽蔑を込めて呟いた。
「食い物も、働き手の男衆も攫っていこうなんざまるで鬼だな」
「村の人達が大事に育てた実りを……こんなの、絶対に許せないよ!」
 人の心を持たない天魔武者達の蛮行を目の当りにして、ラルム・グリシーヌ(ラメント・g01224)は憤る。怒りに燃えるペリドットに射抜かれた武者達が一瞬、怯むのを見て取り、鬼人はあらあらと聞こえよがしな声を上げた。
「ラルムクンを怒らせたら怖いよ~? こう見えて俺より強くておっかないんだから」
「へっ? えっ? あ――ニ、ニイナだって怒ったら怖いんだからね! 捩じ切られてもしらないよ!」
「どこで張り合うんだよ」
 これだから彼は見ていて飽きることがない。くつくつと耐え切れずに喉を鳴らして、ニイナは腰に佩いた刀を抜き放つ。軽やかな鞘走りと共に真っ赤な呪詛の花を散らすのは、握る手さえも焦がす灼熱の刃だ。
「そんじゃその首、真の鬼が落としてやろうじゃねぇの」
 村人達の姿も見えなくなった今、遠慮は無用。軽やかに地を蹴って切り掛かれば、夜に燃える篝火のような長い髪が宙を泳ぐ。瞬間――燃える刃に触れた人馬の胸はどろりと融けて、周囲一帯に焼けた鉄の匂いが立ち昇った。
「これがせめて血肉なら――なんて。それでもさすがに食う気は起きないか」
 言っておいてなんだが、村人達とて御免だろう。馬体に食い込んだ刃をそのままずばりと振り抜いて、鬼人は冗談交じりに続けた。
「ま、ラルムクンはお馬さんだって食べちゃいそうだけど?」
「なっ、俺だって食べないもん!」
「はは、冗談冗談」
 真に受けるなよとからり笑う声に思いきり拗ねて見せながら、ラルムは白藤の花咲く杖を振りかざす。紫紺に輝く宝珠に集めた魔力で咲かせるのは、藍に冴え渡る花の漣――万華鏡が如くに絶えず色を変え煌めくそれは、鋭い氷の刃に変わって人馬の脚を貫いていく。洋の青とも天の蒼とも似て非なる美しい色彩に瞳を細め、ニイナは言った。
「随分と寒そうだね」
 ならば焼け落ちるほどに、温めてやろうか。
 赫焉と耀く刃を頭上に高く振り上げて、鬼の唇はにわかに酷薄な笑みを刷く。悲しいかな、脚を奪われた馬を待つものはいつの世もただ死のみである。
「月、満つれば――」
 氷の槍に縫い留められた哀れな馬を、一閃。峻烈なる火焔の帯が斬り払う。どろどろに形を失っていく金属は呪炎の中で白い灰へと変わり、冬風に儚く吹き散らされていく。空に紛れたその軌跡を見送って、呟くようにラルムは言った。
「……おやすみ」
 これより芽吹く春の彩を、彼らが見ることは能わない。杖の先で地を突けば、わずかに残った人馬達はひいと慄いて、あらん限りの声を張った。
「退却! 退却――!」
 荒々しい蹄の音も、今はどこか滑稽にすら聞こえる。慌てふためき逃げていく武者達の背を見つめて、ニイナは呆れたような笑みを浮かべた。
「下肢が馬なら逃げ脚だけは疾いかねぇ。……でも」
 彼らが逃げれば逃げるほど、復讐者達の思う壺。その背に死神を乗せているとも気付かずに、はてさて彼らはどこへ向かうのだろう?
「先導の馬になってくれんなら、上々だ」
 狼藉者達を追い払って、終わりではない――この禍を根元から断ち落とすまで、彼らの戦は終わらない。
 逃がさないよと意気込むラルムの声を合図にして、復讐者達は逃げる人馬を追って走り出した。村を飛び出して行く先には、荒涼たる冬の野山が広がっている。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【活性治癒】LV1が発生!
【熱波の支配者】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
【反撃アップ】がLV2になった!

朔・璃央
双子の妹のレオ(g01286)と

新しい年になってもやることが変わらないね
年明けぐらいはゆっくりしようなんて思わないのかな
なんて言いつつ俺達もこうして戦いに来てるわけだから
お互いさまって事になるのかもね

しかし天魔武者に食糧が必要になるのかな
単なる嫌がらせなのかもしれないけど
燃料にでもするってことならそうだね
間引いて食糧問題を解決させてあげようか

それじゃあ確実に減らして行こう
此方に突撃する奴はレオのハッキングに任せて
俺が狙うのはレオを狙う不届きな奴
飛翔とエアライドで一気に距離を詰めて
新年最初のぶん殴りと洒落込もう

米俵を置いて本陣に逃げ帰るまで
どれくらい間引けば足りるかな
全部やっちゃうのが一番かなぁ


朔・麗央
双子の兄リオちゃん(g00493)と

そうだね、年明け早々ご苦労様なことだよねぇ
でもクロノヴェーダに新しい年をお祝いするだなんて心があるとも思えないかも
ともあれ、早く解決して村の人たちを早く安心させてあげたいところね

確かにね、なんで食料?天魔武者……カラクリなのにね?
彼らは絶望が力になるんだっけ?
ならリオちゃんが言うみたいにただの嫌がらせ?
うーん、でもやっつけちゃえば問題解決かな!

一体ずつ確実に倒して数を減らしていこう
リオちゃんに突撃してくる敵に対しては
イグジストハッキングで牽制するように攻撃
こっちにビームを打ってくるやつはリオちゃんに任せるね

さてさて、お侍さん達
村の人たちも奪った食糧も返してね


 脱兎――この場合、脱馬の如く、と言うべきなのであろうか。土煙を巻き上げ逃げていく人馬型の武者達を追い飛び出して、朔・璃央(昊鏡・g00493)はぼそりと言った。
「まったく、新しい年になってもやることが変わらないね。年明けぐらいはゆっくりしようなんて思わないのかな?」
「ほんと、年始早々ご苦労様なことだよねぇ」
 辟易した様子の兄に頷いて応じ、しかしそれからふと疑問に思ったのか、朔・麗央(瑞鏡・g01286)は小さく首を傾げた。
「でも、クロノヴェーダに新しい年をお祝いするだなんて心があるとも思えないかも?」
「まあ、それを言うなら俺達も、人のことは言えないけどね」
 新年早々、戦いに身を投じるために時間も場所も飛び越えて遥か戦国までやってきたのは、ある意味お互い様と言えるのかもしれない。ワーカホリックニはなりたくないね、などと冗談めかして道の先へ向き直り、麗央は続けた。
「ともあれ、早く解決して村の人たちを安心させてあげたいところだね」
 後ろからは、他の仲間達も後を追ってきているはずだ。敵の行方を見失うわけにはいかないが、幸いと言うべきか――お粗末と言うべきか、四つ足の人馬が踏み荒らした草や土の跡はくっきりと、復讐者達に正しい道を教えてくれる。
 道なき道は、緩やかに登り、里山の中へと続いていた。淡く雪化粧を始めた木立ちを抜けながら、それにしてもと璃央は呟く。
「しかし――天魔武者に食糧が必要になるのかな」
「確かにね、なんで食料なんだろ? 機械なのにね」
 蓄えた粟や稗、種籾を、彼らが奪って活用するとも思えないがと麗央は頷く。だがこの時代の人々の絶望が天魔武者の力の源になっているということを考えると、そこには存外、理由などないのかもしれない。
「単なる嫌がらせ、なのかな」
「うーん、……どうだろ」
 分からないけどと首を捻って、しかし次の瞬間、少女はあっけらかんと口にした。
「でもやっつけちゃえば問題解決かな!」
「ふふ、そうだね。さすがレオ、冴えてる」
 意外と脳筋な発言も、天下のシスコン――もとい、妹想いの兄に掛かれば天才のそれである。それほどでも、と満更でもなさそうにプラチナブロンドの後ろ髪を掻く妹を微笑ましく見守りつつ、璃央は駆ける足を速める。そして流れるように飛び去っていく冬山の景色の中に一体、二体、俵を背負った敵の背中がはっきりと視えた。
「実際のところはどうだか分からないけど――燃料にでもするってことなら、そうだね」
 胸の前に構えた右腕が、ぱきりと乾いた音とともに白く硬く変わっていく。見据える翡翠の双眸に酷薄な光を宿して、少年は言った。
「間引いて食糧問題を解決させてあげようか」
「了解! 一体ずつ確実に倒してこう!」
 応じる麗央が指先に輝くハッキングコードをまとわせるのを横目に確かめて、璃央は天使の翼を大きく羽ばたかせる。その羽音に気付いたのか、前を行く武者のうち一人がこちらを振り返った。
「おい、奴ら追ってきてるぞ!」
「なんだと!?」
 焦りを露わに足を止め、二頭の人馬は急遽反転する。バズーカ状の砲を構えて破れかぶれに突進してくる敵を睨みつけ、麗央は朗々と告げた。
「さてさて、お侍さん達! 村の人たちも、奪った食糧も返してね!」
 鞭のようにしなるハッキングコードは霜の下りた地面を這い、敵の脚を掬い取った。放つビームは目標を違えてあらぬ方向へ迸り、その隙を目がけて璃央が飛び込んでいく。叩きつける手刀は槍の穂先の如くに鋭く、人馬の顔面を呆気なくも貫いた。そして次の瞬間――少年は『あ』と惚けた声を上げる。
「いけない。……全部倒しちゃった」
 敵の本陣まで案内してもらうはずが、しまった。引っぱたいても何をしても、物言わぬ金属塊に変わった武者達は口を利きそうにない。どうしたものか、と思いきや――。
「リオちゃん。あれ」
 上着の袖を引かれて傍らの妹を振り返り、璃央ははっと息を詰めた。指し示した麗央の手の先、生い茂る木立の向こう側には、ご丁寧に和紋を描いた紺地の陣幕が覗いている。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【怪力無双】がLV2になった!
【無鍵空間】がLV2になった!
効果2【能力値アップ】がLV6になった!

帷・カラス
【鴉と姫】

はは!食後の運動といくかね、桃ちゃんよ!
フォーチュンクッキーで腹ごしらえも万全だ
大吉を出したのは桃ちゃんだがな!
……厄祓い…そうだな
此奴らは、試練ではなくもう厄災だ
野放しにされた厄を祓うのも俺の仕事だ

銃を握り、気配を消すように空へ飛翔する
まずは…一目散に駆けるお姫様を、守らねぇとな!
俺は空からの強襲、忍ぶように弾丸の雨を降らせてやるってわけだ
桃ちゃんが斬り、俺が撃つ
闇魔法を込めた弾丸で不意打ちで目を狙い光を奪う
危ないときは撹乱するように狙撃して
よく敵の様子を観察して狙うべき急所を探りあてるぜ!

桃ちゃんの信に応えるまでだ!
ちゃんと守らねぇと、主に見せる顔がないからな!

それは此方の台詞だ


上巳・桃々姫
【鴉と姫】

無事に大吉も出たところで…さぁ!戦ですわよ、カラス殿!
新年早々、狼藉を働く下郎を斬り捨て厄祓いですわ!

鋭く睨むのは家老衆
先ずは護衛から打倒し、親玉との戦闘に備えるのです
あの甲冑ごと叩き斬り、斬殺してやりましょう
民へは手出しさせませぬ

フフ、彼奴も刀使いとは…面白いですわ
疾く駆け出して、ありったけの力を込めて斬撃を放つのです
神速反応の力も用い、ただ目前の敵を斬る事に集中いたしまする
大丈夫…わたくしの背は、頼もしいカラス殿が守ってくださいますもの!
浮遊で身を浮かせ、衝撃波と重ねて斬撃を放ち両断し──解体されるのは、お前ですわ!

カラス殿、いい狙いです!
貴方と共に戦える
その幸いに
胸が躍るのです


鬼歯・骰
【KB】
失敗してんのに同じような事もう一回するなんざ
俺が言うのもあれだがもうちっと頭使えよ
こっちとしては分かりやすい新年初仕事で助かるが
…先にツリガネを山に埋めたいような気持ちは少しあるな…

遠距離から狙われるのは宜しくねぇから
さっさと距離を詰めて鱶で頑丈そうな鎧ごと解体していこう
ツリガネに向かう奴を優先してぶん殴りつつ
真っ直ぐ飛んでくる攻撃なら横に跳んで躱す

今年も頑張るって言ったばっかりだろアンタも気合い入れてけよ
新年になっても変わらぬ気が抜けるような言葉には溜息飲み込み
憎まれ口を返しとく

アンタらにくれてやるもんなんざ
此処には小石一つとありゃしねぇ
大人しくその命と村の奴らをここに置いていきな


鐘堂・棕櫚
【KB】
ふは、骰さんに頭使えって言われるの相当やばいですよ!
なんて、敵と味方を同時に煽れる機会は見逃さず
ともあれ最早圧政通り越して略奪としか呼べない所業
精々抵抗しまくって困らせてあげましょう

距離を詰めようとする骰さんの援護目的で
遠距離からナイフ投げて敵の注意を此方が引いてみましょう
その代わりこっちに近接仕掛けてくる奴はお願いします
数の暴力であの鋸を抜けてくる敵が居たら
飛翔使って距離を取ることを試してみます

しかし迷いなく突っ込む黒スーツ姿ってほんと鉄砲玉じみてますね
ちゃんと五体満足で戻ってきてくださいねえ!と
軽口叩き合いながらも、刃を振る手は止めず

さて、今が正に年貢の納め時ってやつじゃないです?


 枯れ色に染まる冬の里山に、浮かび上がる異質な彩。紺地に白い紋様を染め抜いた陣幕の内側に、天魔武者達が控えていた。最奥には天魔武者・仙石秀久――全体的に縦に潰したようなフォルムが特徴的なアヴァタール級を囲むようにして、配下の家老衆が守っている。また陣幕の隅には、村から連れてこられたのだろう若い男達が縄につながれ、寄せ集められていた。
「帰ったか。して、首尾はどうであった――……!」
 ひらり、陣幕の入り口が揺れるのを認めて、群青の鈴武者は立ち上がる。次の瞬間、鈍く光る剣閃が紺色の陣幕を十文字に切り裂いた。
「!」
 バキバキと音を立てて倒れる陣幕を前に、侵略者達は瞠目する。朦々と舞う土煙の向こうには、鋸歯の刃を無造作に担いだ鬼歯・骰(狂乱索餌・g00299)の長身が覗いていた。そしてその後ろからは次々と、見慣れぬ衣の復讐者達が飛び込んでくる。
「ったく、懲りねえな。一度失敗してんのにまた同じような真似しやがって……」
「何奴!」
 招かれざる客の登場を受けて、武者達が一斉に殺気立つ。しかし怯むどころかむしろ暢気な調子で、男は続けた。
「俺が言うのもあれだが、もうちっと頭使えよ。こっちとしちゃ分かりやすい新年初仕事で助かるが――」
「ふは、骰さんに頭使えって言われるの相当やばいですよ!」
「なに高度な煽りしてくれてんだ。埋められてえのか?」
 ここぞとばかり敵と味方を同時に煽る鐘堂・棕櫚(七十五日後・g00541)をじろりと睨んで、骰はふんと鼻を鳴らした。まったくもって、口の減らない――天魔武者達の相手をする前にその辺に埋めてやりたいくらいだが、腐っても戦力のうちと思って堪えることにする。
「本業の人が『埋める』とか、シャレにならないんでやめてくださいね。不穏過ぎるんで」
 自分の発言は笑顔で棚に上げ、棕櫚は小ぶりのナイフを数本、両手に扇のように広げた。軽口同様、人好きのする笑顔にも変わりはないが、侵略者達を映したその瞬間、空色の瞳は冷やかな光を宿す。
「ともあれ、もはや圧政通り越して略奪としか呼べない所業は見過ごすわけにいきません」
 人という生き物が、黙って虐げられ続けると思っているのなら大間違い――ここは人間代表として、この世界の人々に代わって思い知らせてやろうではないか?
「ええい、斬れ! 斬れえい!」
 緊張感のない二人のやりとりがいっそう癇に障ったのか。一人の叫ぶ声に呼応して、無骨な甲冑の武者達はいきり立って刀を抜き放つ。一斉に動き出す一団を前に、帷・カラス(神遣・g08316)は挑むような笑みを浮かべた。
「はは! 食後の運動といくかね、桃ちゃんよ!」
「ええ、無事に大吉も出たことですし! 戦ですわよ、カラス殿!」
 結局、大吉を出したのは桃々姫だけであったが、延々食べたフォーチュンクッキーで腹ごしらえも万全だ。身の丈ほども、否、身の丈よりもあろうかという太刀を軽々と抜き放ち、上巳・桃々姫(ひいな・g08464)は言った。
「新年早々わけもなく民を苦しめるなど、為政者の風上にも置けません。これ以上、民へは手出しさせませぬ!」
 ぽっくり下駄をころりと鳴らし、飛び出した宙空より睨み据えるのは家老衆――味方の復讐者達を無傷で親玉の元へ届けるためにも、有象無象は彼女達が引き受けよう。
 幾重にも重なる衣を翻し、軽やかに宙を舞う姿はまるで風に吹かれる桃の花。細腕に見合わぬ怪力で叩きつけるひと太刀は、しかし光輝く二刀によって受け止められる。弾かれるまま空中でくるりと反転して、桃々姫は刀を握り直した。
「フフ、少しはやるようですわね。……面白い」
 甲冑ごと叩き斬ってやろうと思ったが、少しは骨のある使い手らしい。ならば、相手にとって不足はなしだ。
「狼藉を働く下郎どもは、疾く斬り捨てて厄祓いですわ!」
 側頭部に回した鬼の面をすいとずらし、顔に似合わぬ苛烈さでヒルコの姫は吼え猛る。厄祓い、とその言葉を繰り返して、カラスは一人得心したように頷いた。
(「こいつらは、試練ではなくもう、厄災だ」)
 野に放たれた厄を祓うのは、己が役目。二挺拳銃をくるくると回して両手に構え、青年は冬枯れの梢へ翔け上がる。殺到する敵の刃から愛らしくも勇ましい姫君を守るのも、また彼の役目だ。
 気配を殺して死角から狙い撃つ銃弾は、武者達の身体を的確に射抜いていく。手を触れるまでもなく倒れた骸を見下ろして、桃々姫は再び長大な太刀を構えた。すうと大きく息を吸い込み煌く切っ先を見据えれば、全身の感覚がみるみる研ぎ澄まされていく。
(「大丈夫――わたくしはただ、斬るだけ」)
 敵が何人いようと、どこから掛かってこようと、目の前の敵を斬り捨てるだけ。いちいち後ろを振り返らなくとも、彼女の背中は彼がきちんと守ってくれる。
「背中は任せますわよ!」
「おうとも、派手に決めちゃってくれ!」
 決して振り返りはしないまま、頼もしげに呼ぶ声に口角を上げて、カラスはにじり寄る武者達の足元へパラドクスの力を乗せた銃弾を撃ち込んでいく。桜色に輝く光の太刀から繰り出される斬撃は少なからぬ距離を飛び越え青年の肩を切り裂いたが、これしきのことはなんでもなかった。彼女が彼を信じ、真っ直ぐに前を見つめている以上、カラスはその信に応えなければならないのだ。
「ちゃんと守らねぇと、主に見せる顔がないからな!」
 娘の小さな背中に向けて、今にも振り下ろされんとしていた刃を闇色の弾丸が貫いた。その一瞬の怯みを、桃々姫は見逃がさない。甲冑の胴を振り返りざまに薙ぎ払ってようやく、小さな姫君は背にした青年へ目を向けた。
「いい狙いですわ、カラス殿!」
 白桃の果実を思わせる瞳には確かな信頼と、そして彼女自身、気付くか否かの憧憬が揺れていた。血腥い戦場の只中にあってさえ、彼がそこに居てくれるのなら――姫君の小さな胸は、その幸いに躍るのだ。
 一体、二体、また一体。翡翠の躯体を砕かれて、天魔武者が散っていく。
よろけた敵の背中を蹴って跳躍し、骰は飛び掛かった勢いのまま別の一体を斬り伏せた。遠くから狙い撃ちにされるくらいならば、いっそ敵の懐で――並み居る敵を手当たり次第に食い散らかしていく刃は、正に飢えた鮫そのものだ。
「しかし迷いなく突っ込む黒スーツ姿ってほんと鉄砲玉じみてますね」
「無駄口はいいから、アンタも気合い入れてけよ。今年も頑張るって言ったばっかりだろ」
「入れてますよ。骰さんほどじゃありませんけど」
「……やっぱ、さっき埋めときゃよかったか」
 へらへらと応じる声の気の抜けることといったら、年が明けてもまるで変わる気配もない。溜息代わりの不穏な言葉にまたまたそんなとおどけて見せて、棕櫚はその手に新たな刃を編み上げた。
「こちらも、やるべきことはやりますんで。ちゃんと五体満足で戻ってきてくださいねえ!」
 ヒュ、と風の鳴く声とともに、投げつけるナイフが武者の足元に突き刺さる。返す光刃は極めて疾く男の左腕を切り裂いたが、注意が逸れた刹那を突いて、骰は武者の背後へ回り込んだ。降り積もった枯れ葉へ落ちる黒々とした影に気付いても、その時にはもう遅い。
「アンタらにくれてやるもんなんざ、此処には小石一つとありゃしねぇんだよ」
 やけにゆっくりと振り返った天魔武者を見下ろして、鬼人は極めて冷徹に告げた。大人しく退け、とは言うまい――その命も、村人達も、ここにあるものはすべて彼らがもらい受ける。
 力任せに振り下ろす刃は、兜状の敵の頭部を真っ二つに叩き割った。お見事と手を打って、棕櫚は素早く辺りに目を配り、そして続けた。
「さて――これぞ正に、年貢の納め時ってやつじゃないです?」
 血気盛んに刀を振り翳していた家老衆達も、今は亡い。折り重なるように倒れた武者の骸が期せず作り出す道の先では、群青の天魔武者がただ一人、矛を手にこちらを見つめている。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【モブオーラ】LV1が発生!
【浮遊】LV1が発生!
【活性治癒】がLV2になった!
【操作会得】LV1が発生!
効果2【フィニッシュ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV6になった!
【ドレイン】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV7になった!

荒田・誠司
【奴崎組】
アドリブなど歓迎
仲間は基本的に名字で呼ぶ

(心情)
お前を見ていると故国のドイツを思い出す、人々を虐げるのは許さない
俺は援護に回る、2人は好きに攻撃してくれ

(行動)
俺は今回、仲間への援護を主に行う
最初は残留効果の飛翔を使いながら敵を観察、情報収集
相手の攻撃タイミングを掴めたら、それに合わせてパラドクスを使用
氷雪使いの技術を使い広範囲を凍らせる爆弾を敵に投擲する
凍らせてしまえば機械とはいえ鈴を用いた力を行使しにくくなるはず
相手の行動を妨害しながら攻撃する
必要なら忍耐力で耐えたりして臨機応変に対処する


湯上・雪華
【奴崎組】
絡み、アドリブ等完全受け入れ
重傷描写大歓迎


本丸に殴り込みましょう
これ以上、この土地で好き勝手させるわけにはいかないのです
渇望抱く伽藍、参ります


このパラドクスは一撃のみの業ですから、ここぞという所で狙ってきますよ
リュウさんとせーじさんが敵の動きを制限したところで懐に飛び込みましょう
敵の攻撃は喰らって、痛みは伽藍へ
どこまでも満たされぬこの器、強者によって満たされるのです、なんてね


リュウ・ターレン
【奴崎組】
アドリブ・タグ外連携等歓迎

っし。見た目どう考えても猪やな。突っ込んでくるだけなら怖くあるかい。
こっちも殴りこむで。
動き制限か。ほな先に崩しといた方がよりやりやすそうやな。トドメ任せた。
【飛翔】使用して、相手に吶喊。言葉で<挑発>しつつ、すれ違いざまにパラドクス発動。
――我、空に描く。乱・波。
乱れ飛ぶ波。波は刃に通じ、波は寄せては返し、沖へと連れ去る。
ほーらふっとべ!
パラドクスの効果で相手に刃飛ばしてふっ飛ばして相手の体勢を崩すで。
相手の反撃は、<オーラ操作>で装備で障壁作ってダメージ軽減狙う。
崩したところで凍らせて、更にトドメ。上手くいくように立ち回るで。


「おのれ、『ディアボロス』……!」
 陣幕が斬り払われてわずか数分にも満たぬ間に、取り巻きの家老衆達はほぼ壊滅の状態に追い込まれていた。わずかに残った数体も防戦の一方で、とても侵入者達を排斥できるような状況にはない。巨大な鉾の石突を冬山の湿気た地面に突き立てて、仙石秀久を名乗る天魔武者は憤る。倒れた配下を踏み越え向かってくるその姿に、荒田・誠司(雑草・g00115)は不快感を隠す気もなく眉を寄せた。
「なんだろうな。……お前を見ていると、故郷を思い出すよ」
 時代や場所が変わっても、クロノヴェーダのやることは同じだ。弱いものを利用し、平気な顔で踏みにじる。どこへ行っても彼らは、唾棄すべき侵略者達なのである。
「俺は援護に回る。二人は好きに攻撃してくれ」
「任されましょう。これ以上、この土地で好き勝手させるわけにはいかないのです」
 このうえ人々を虐げることは、絶対に許さない。夜空に輝く月のような瞳に挑発的な光を宿し、湯上・雪華(悪食も美食への道・g02423)は一振りの刀を抜き放つ。墨色の刀身は日の光を吸い込んで、黒々とした妖気を放っている。幾度も死線を越えてきた復讐者達の立ち居振る舞いに敬意を表してか、武者は朗々と名乗りを上げた。
「我が名は仙石秀久! 九鬼嘉隆殿の命により、この地の制圧を任された! 邪魔立てするとあらば容赦はせんぞ!」
 鳥のそれに似た三つ指の爪先で力強く土を削り、武将は矛を両手に走り出す。ずんぐりとした体形に反してその動きは、極めて機敏だ。
「っし。見た目どおりの猪やな。突っ込んでくるだけなら怖くあるかい」
 円いサングラスの裏側で、リュウ・ターレン(奪われた者。奪い返す者。・g07612)の紅い瞳が不敵に光る。グローブの手をぱしりと打ち合わせ、男は言った。
「そっちがその気なら、こっちも殴りこむで」
 合図の声は、必要ない。その手に得物を構えるや、復讐者達は阿吽の呼吸で散開する。まず仕掛けたのは、リュウだった。
「動き制限か。先に崩しといた方がよりやりやすそうやな――ほな行くで、猪武者!」
 落ち葉を蹴散らし飛び上がり、木立の中をぐるりと抜けるように一周して急加速。青い長髪を背に靡かせて、男はその身に輝く覇気をまとわせる。
「我、空に描く。乱・波!」
 さあ、吹き飛べ。波状に迸る覇気は刃に変わり、怒涛の如くに打ち寄せる。武将は手にした矛を一閃してその一部を薙ぎ払ったが、次々と襲い来る刃のすべてを斬り落とすことは叶わない。
「む……!」
 打ち払い損ねた刃が一つ、武者の身体を貫いた。肩に腹に埋まった鈴をシャンと鳴らして、敵がよろめけば好機。今だというように視線を送れば、戦場を見下ろす空の中で誠司が手製の爆弾を手に身構える。爆弾、と言ってもそれはただの爆弾にあらず――パラドクスで編み上げた、凍てつく嵐の引き金である。
「凍ってしまえ!」
 投擲したそれは狙いを違えず炸裂し、内包するさらに小さな爆弾で、触れれば凍る水の罠を敵の足元に張り巡らせる。そう長くはもつまいが、わずかでも動きが止まればそれでよかった。その刹那こそ、雪華が狙い澄ました瞬間であるからだ。
「渇望抱く伽藍、参ります!」
 死してこの世に甦った、細く脆いこの身体。膂力に自信はないけれど、たとえこの身が砕けても、今しか成せぬことがあるのならばためらいはしない。地面に足を取られた武者が急速に育った氷と格闘しているその隙に、雪華は黒刀を振り被る。二度三度とは振るえない――仲間のため、人々のため、いくさばに慣れぬ青年に穿てるただ一撃。それだけに、外すわけにはいかない。
「行きます! やぁっ!」
 勇ましく響く鬨の声は、聴く者達をも奮わせる。叩きつける全力の斬撃は、武者の躯体を確かに捉え、真一文字に薙ぎ払った。が――。
「っ!」
 確かに捉えたはずだった。しかし深々と食い込んだその刃は、硬く冷たい武者の身体を両断するには及ばない。明らかな苦悶の声を洩らしながらも、猪武者は腹に食い込んだ黒刀をその手で掴み、力任せに奪って投げ捨てる。そして間を置かず振るう矛は、華奢な青年の身体を真横から打ち据え、吹き飛ばした。ごほ、と思わず咳き込みながら、湯華は空中で体勢を立て直して着地する。
「一歩、及びませんか。……さすがです」
 末端のアヴァタール級とはいえ、名のある武将を騙るのだ。こうでなくては張り合いがない。記憶もない、理由もない、何も持たない伽藍洞の器は、ただ強者と切り結ぶことでしか満たされはしないのだ。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【冷気の支配者】LV1が発生!
【隔離眼】LV1が発生!
【避難勧告】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】がLV4になった!
【命中アップ】がLV3になった!

ウルリク・ノルドクヴィスト
ラヴィデ(g00694)と

神には武運を祈ったが
御利益の実証はまた今度
戦友との共闘なら
勝利を願うまでもなく、負ける気がしない

同じく、より速くを求め
此の槍にて其の鎧も打ち砕くべく、駆けよう
敵の攻撃は同技能にて修正の相殺試みる
猛者と相見えるのは光栄だが
踏み躙る攻め手は好きではないな

軽快な立ち回り、隙縫って矢を放つ技巧
八つ裂く竜爪の猛攻も
彼にしか成し得ぬ技
戦地でなければ見惚れていたかったが
此処でしか目に掛かれないのだから――
惜しいとも思えど
今は其れ以上に、背を預ける者としての信頼を捧げ

さて、ラヴィデ
まだ草臥れてはいないだろう?

鼓舞は自分へ向けたものでもある
君の先駆けとして
誇れる己であるように


ラヴィデ・ローズ
ウルリクさん(g00605)同行
※戦友的間柄

圧政などと浮かぬ事案であればあるほど
いやぁ、やっぱりカッコいい槍捌きだ
アナタと共に駆けられるとは
初詣並みに気が引き締まるってもんだよ

『レゼル(長弓)』使用
親玉も中々戦達者そうだ
攻防後の僅かな隙も補う意識で、援護中心に立ち回ろう
鈴音の引き裂きには
忍耐力と『ドラゴンオーラ』巡らす結界術も込みで弓に集中し続けたいね
似た芸ならオレにも出来るんだよな
射る矢が契機の八つ裂き
楽しもうじゃないか、最後の戦なんだ

――彼の
研ぎ澄まされた刃のような
燃え盛る炎のような
勇猛果敢な背に、遠い憧憬がふと重なる一瞬がある
おっと、
任せといて!
精々働きますよ。彼に、己に、恥じぬよう…ね


野本・裕樹
※アドリブ・連携歓迎

あの天魔武者が部隊の大将…戦意は衰えていないようですね、むしろ昂っているかのようです。
逆境で己を奮い立たせる…不撓不屈といった所でしょうか。
しかしそういう気概ではこちらも負ける気はありません。

《無窮自在》の剣舞…どれだけの戦闘能力増大であろうと尻尾を含めた三刀流でアナタが折れるまで舞わせてもらいますよ、鈴鳴りの天魔武者。

武器は妖刀『鐵喰』にそれを納めていた翡翠鞘『天蓋』、具現化した『狐の尾』。
舞ですからね、【エアライド】も含めた変則的な動きを織り交ぜあらゆる角度から斬撃を放ちます。

伊賀国はもう「圧政」状態にはさせません、攫ってきた人たちも奪ってきた食糧も返してもらいます。


 雲一つない冷えた冬空に、金色の長い髪が泳ぐ。一回、二回と音もなく宙を蹴って跳び上がり、復讐者が一人、野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)は朗々と告げた。
「アナタが折れるまで舞わせてもらいますよ! いざ、尋常に!」
 右手に刀、左手にはその鞘。身の丈をも超える長大な二振りを舞うが如くに取り回し、娘は妖気の狐尾を発条代わりにして群青の武者に躍り掛かる。しかしそこは、敵も然るもの――柄を握る手が痺れるほどに打ち合いを重ねて跳び退れば、翻る白い巫女服の袖はいつの間にか裂けていた。なるほど一筋縄で行かない相手であることは確からしい。
「どうした――これで終わりか!」
 斬り開かれた腹の傷をものともせず、猪武者は落ち葉の地面に槍を突いた。どっしりとした鉄の脚を踏み鳴らせばその度に、戦場には不釣り合いなほどに清浄な鈴の音がしゃらんしゃらんと鳴り渡る。ほう、と感心したように唸って、裕樹は言った。
「鈴鳴りの天魔武者……大したものですね。ここまで追い詰められても戦意が衰えるどころか、むしろ昂っているかのようです」
 わずかに残っていた配下達も、皆討ち果たされて今は孤軍。にもかかわらず逆境で己を奮い立たせる、不撓不屈の精神性には敵ながら敬意を表するべきであろう――が。
「ですが、そういう気概ではこちらも負ける気はありません」
 東京、ドイツ、平安、そしてエジプト。時には突破不能と思われたような苦境さえも跳ねのけて、彼女達はここまでやってきた。今までもこれからも、その芯がぶれることはない。しかし取り囲めばますます奮い立って、群青の武者は咆哮する。
「我が矛に抗う者は、誰ぞ他におらぬのか!」
「いるぞ!」
 武には武を以て応えるのみ。高らかに応じて、ウルリク・ノルドクヴィスト(永訣・g00605)は冬枯れの木立を突き抜ける。鈍い陽光を受けてそれでも輝く黒い槍は、音よりも疾く宙を裂いて武者の胸倉に突き刺さった。その柄を掬い取るように武者の矛が弾けば、戟音とともに両者が距離を取り直す。
 一分の隙もなく身構える戦友の傍らへ舞い降りて、黒翼の竜――ラヴィデ・ローズ(la-tta-ta・g00694)は言った。
「いやぁ、やっぱりカッコいい槍捌きだね」
「君にそう言われるのは、些か面映ゆいな」
「本音だって。圧政なんて、気分のいい話じゃないけどさ」
 それでも傍らに並び駆けるのが彼ならば、気乗りはせずともここまでやってきた甲斐はある。多くを語らぬその背の苛烈な勇ましさは、研ぎ澄まされた刃のように、あるいは燃え盛る紅蓮のように。妥協と諦観にはほど遠い、ありし日の憧憬を呼び覚ましてくれるから。
 買いかぶり過ぎだと首を振り、ウルリクは槍を握る手に力を込めた。猛者と相見えるのは武人の誉だ。踏み躙る攻め手は好きではないが、掌に残る痺れは否応なく、胸の淵に沈めた闘争心を昂らせる。
「神には武運を祈ったが、御利益の実証はまた今度だな」
「そうだね。だって、神様に願うまでもないんだから」
 背を預けるに足る友があれば、負ける気はしない。軽妙洒脱な返しは相変わらず、なのに同じことを考えているのだから不思議だ。
 精悍な横顔に頼もしげな笑みを滲ませて、ウルリクは敵を見据えたまま言った。
「まだ草臥れてはいないだろう、ラヴィデ」
「勿論。初詣並みに気が引き締まってるよ」
 垂れ目がちな銀の瞳をぱちりと瞑って、ラヴィデは異形の長弓に矢を番える。寄せられる信と期待に恥じぬ己であるために、素知らぬ顔で内心、自身を鼓舞している――そんなところまで、きっと二人はお互い様だ。
「ここまで来たからには精々働きますよ、っと!」
 限界まで引き絞って放つ鏃を、武者の矛が斬り払った。だがただ撃ち落としただけでは、見えざる竜爪は躱せない。青い躯体を引き裂くように削って走る爪痕に少なからぬ動揺を見せつつも、武者は後ろ跳びに距離を取ると、全身に埋め込まれた鈴を震わせる。一つ一つはさやかなその音色は共鳴することで巨大な音の波を生み、ラヴィデは片耳を塞ぎながら舌を巻いた。
「なかなか戦達者そうだね。けど、似た芸ならオレにもできるんだよ」
 悪いけどと口角を上げて、ラヴィデは二の矢を解き放つ。空に尾を引く呪焔を視線で追えば、ウルリクの双眸に紫紺の光が揺れた。
(「――惜しいな」)
 飄々として掴みどころのない立ち回り、わずかな隙を縫い矢を放つその技巧は、他ならぬ彼にしか成し得ぬ技だ。ここが戦場でないのなら、ただその鮮やかに見惚れていたいところだが――今は、この身の務めを果たすとしよう。
「その鎧、打ち砕く」
 より速く、より鋭く。その矛先を届けた者が、この戦いの機先を制する。ほんの一秒にも満たない差が、その後に続くすべてを変えてしまうのだ。
 捩じり込むように突き出した穂先が、天魔武者の矛を弾いた。くるくると回転しながら宙に踊る槍が、霜柱の地面に突き刺されば終い――得物を失した武者の背後に舞い降りて、妖狐の娘は毅然として告げる。
「伊賀国はもう『圧政』状態にはさせません。攫ってきた人たちも、奪ってきた食糧も……すべて返してもらいますよ」
「――無念」
 もはやこれまでかと俯いた武者の胴を、研ぎ澄まされた妖刀が撫で切った。ごとりと落ちた冷たい骸がもはや動かないことを確かめて、裕樹は静かに刀を下ろす。そして、慄き震えていた村の男衆へ向き直ると、娘は人好きのする顔でにっこりと呼び掛けた。
「さあ皆さん、帰りましょうか」
 閑かな山の裾野には、今この瞬間も彼らの帰りを待ち詫びている人々がいる。見上げれば山頂に向けて緩やかに登る斜面には、白い雪とその間から顔を出したフクジュソウの鮮やかな金が輝いている。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【託されし願い】LV1が発生!
【一刀両断】LV1が発生!
【狐変身】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV8になった!
【命中アップ】がLV4になった!

朔・璃央
双子の妹のレオ(g01286)と

幸先よく今年の目標にまた一つ前進だね
今年も良い一年になりそう…っていう前に
村の人たちもそう思えるようにしてあげないとだね
それじゃあふきのとう狩りも頑張っていこう

雪が残る冬の山に入る機会も少ないし
ふきのとうを採るなんて初めてのこと
そもそもどんな風に生えてるのかレオ知ってる?
あの雪から出てるのがそうなの?

これ花なのかぁと呟きながら
一つ摘んでは籠に乗せ一つ摘んでは籠に乗せ
レオが見つけたと声をあげれば流石ぁとこちらも声を上げちゃう

同じように雪の中から顔を出す福寿草も
寒さに負けないぞぉって力強さが感じられる
春が近づいてる証だっていうし
きっともうすぐ暖かな季節がくるのかな


朔・麗央
双子の兄リオちゃん(g00493)と

うんうん、今年最初の問題解決だねぇ
本当に幸先がいいね!今年もこの調子で頑張っていきたいね
リオちゃんが言う通り、村の人たちの士気を上げるためにも
頑張ってフキノトウを採ろうね

山菜取りをしたことはあるけど
フキノトウは採ったことも食べたことも無いよね
小さい時に学校で雪を割って顔を出すフキノトウは
春の訪れを告げる山菜なんだって習った記憶はあるよ
そう思うと村にとってもなんだが縁起がいい気がするね

でも探すのはちょっと骨が折れそうかな
注意深く足元を探すよ
途中、可愛い黄色い福寿草の花を見て
心が癒されるね、宝探し頑張れそう!
フキノトウを見つけた時はあったって思わず声を上げちゃう


「ふう。終わった終わった」
 やれやれというように肩を鳴らして、朔・璃央(昊鏡・g00493)は白い手にグローブをはめ直した。侵略者達の脅威を除いたせいだろうか、見上げる空は先ほどよりも清々しく晴れ渡っているように見える。
「幸先よく、今年の目標にまた一つ前進だね」
「うんうん、今年最初の問題解決だねぇ。この調子で頑張っていきたいね!」
 お疲れ様と兄を労って、朔・麗央(瑞鏡・g01286)は言った。復讐者として奪われたものを取り返す――一つ一つは極めて小さな一歩だが、それを積み重ねてゆくことで世界もまた少しずつ、形を変えてゆくのだろう。去年は一昨年よりいい年だったと言えるように、今年は去年よりもっといい一年になるに違いない。が――将来の展望を語る前に、彼らにはまだ一つ、やるべきことが残っている。
「それじゃあ、ふきのとう狩りも頑張っていこう。村の人たちも、みんながそう思えるようにしてあげないとだね」
 生かさず殺さず略取し、虐げる。天魔武者達の圧政下で、この村の人々もまた苦しい生活を余儀なくされていたはずだ。そんな彼らが明日に希望を見いだせるよう、支援するのもまた復讐者達の役目なのだ。
「よーし、村の人達のためにも頑張っちゃおう!」
 えいえいおうと握り拳を突き上げて、麗央は足取りも軽く冬の里山へ歩き出した。村人達の士気が上がれば、この伊賀国のクロノヴェーダ達にとっては大きな痛手になる――というのも勿論あるが、それ以前に人として、空腹に喘ぐ人々を見捨ててはおけるまい。
 武者達と刃を交えた山の中腹からさらに上方へ、登れそうな斜面を探して道なき道を辿ってゆくと、視界にはちらほらと眩しいほどの白が混じりだす。次第に濃く雪化粧をしていく地面を踏みながら、それにしてもと璃央は言った。
「そもそもふきのとうって、どんな風に生えてるんだろう。レオ知ってる?」
 東京は文京区、都心育ちの璃央にとって、雪が残る冬山は馴染み深いロケーションとは言い難い。双子の兄がそうなのだから当然、麗央にとっても同じことで、少女はこてんと首を傾げた。
「うーん……ちょっと分からないかなあ……山菜採りはしたことあるけど、フキノトウは採るのも食べるのも初めてだもんね」
 傾げた首に連れられて、頭の両側にちょこんと垂れた淡い金髪の二房が揺れる。でも、としばし思案して、麗央は続けた。
「いつだったかなあ。小さい時に、学校でね。雪を割って顔を出すフキノトウは、春の訪れを告げる山菜なんだ、って、習った気がするよ」
「雪を割って――じゃあ」
 あれかな、とわずかに首を捻りつつ、璃央はすらりと長い腕を伸べ、前方にそそり立つ斜面を指さした。陽光に煌めく雪の一部に穴が開き、露出した地面にちょこんと、丸く鮮やかな黄緑色が覗いている。
「! そう! あれだよ」
 探すのにはもっと骨が折れるかと思っていたが、存外真白の雪の中で春の彩は目立つものだ。嬉しそうに口元を綻ばせて、麗央は足早に斜面へ駆け寄ると、口を窄めたフキノトウを摘み上げる。
「お手柄だね、リオちゃん!」
「レオがちゃんと授業を憶えててくれたからだよ。……見せて」
 雪のように白い少女の掌にころりと転がったフキノトウは、いったいどんな味がするのだろう。見慣れないその塊を二本の指で取り上げて、璃央は言った。
「これって、花なんだっけ?」
「そうそう。フキの花の蕾なんだって。そう思うと、なんだが縁起がいい気がするね――あっ、あっちにもある!」
 寒い冬の終わりが近づく頃、春の足音を運んでくる小さな花。雪にも負けず芽吹こうとするその姿は苦しみに耐えて生き抜く人の姿にも似ている。一つ見つければまた一つ、次々にフキノトウを見つけては摘んでいく妹にさすがと賛辞を送りながら、璃央は自らもそれを採ろうと身を屈め――そして、あ、と小さな声を零した。
「これは……フキノトウじゃないよね」
 見つけたのは、濃い黄色の花弁が色鮮やかなフクジュソウ。同様に雪を割って咲く姿からは、溢れんばかりの生命力が伝わってくる。
「わ、可愛い! これは癒されるねえ」
「寒さに負けないぞぉって、言ってるみたいだね。これも春が近づいてるって証なのかな」
 小さな花達に負けぬよう、宝探しを頑張ろう。そう声を掛け合って、双子は冬山の奥へと歩き出す。吹きつける風は未だ氷のようだけれど、暖かな季節はきっともう、すぐそこにまで迫っている。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【怪力無双】がLV3になった!
【飛翔】がLV5になった!
効果2【能力値アップ】がLV8になった!
【ダメージアップ】がLV9になった!

鐘堂・棕櫚
【KB】
蕗の薹ですか?
山の中なら木陰になっててじめっとした所かな
一個見付けたらその辺にアホほどあると思います
子供の頃は苦味が気になって余り食べなかったなあ
山菜って良さが分かるの大人になってからじゃないです?
んじゃ子供さんも食べ易いよう味噌炒めとか作りますか

蕗の薹探しをする骰さんが楽しそうに見えて
記念にちょっと離れた所から思わず写真を一枚
タイトルは「冬眠明けの熊」ですかね
いえ何も言ってませんよ?沢山採って村に帰りましょうねえ!

おお、福寿草まで咲く季節ですか
お日様みたいな黄色は寒さも溶かすようで頼もしく映ります
どんなに寒くても芽吹く雪割りの花々みたいに
村の方々の日々にも、早く春が訪れるといいですね


鬼歯・骰
【KB】
蕗の薹、食ったことはあるが採るのは初めてだ
ツリガネこの前山育ちつってたよな、どうやって探すもんなんだ?
俺は逆に大人になってからしか食った事ねぇんだが
確かに子供の頃ならちと苦手になってた気ぃするわ

うっかり踏み潰したりしないように気をつけて収穫していこう
雪が残ってると寒さもあるが、見付けられると面白さのが勝つ
…ツリガネ、今なんか言ったか?
てかアンタもサボらずにちゃんと採れよ

あれは食えるのとは別か?
黄色い花を見かけたらまた尋ね
すらっと名前が出てくる事に詳しいなと素直に感心しとく
まだ冬の気配は強いが、少しずつ花の咲く季節に近づいていってるんだな
雪解けの頃には今よりずっと平和であたたかなら良い


「フキノトウか……」
 陽の光に少し融けかけた白い雪が、革靴の爪先でざくざくと音を立てる。雪化粧の里山の景色を見渡して、鬼歯・骰(狂乱索餌・g00299)はぽつりと言った。
「食ったことはあるが、採るのは初めてだな。どうやって探すもんなんだ? ――ツリガネ」
「え? フキノトウをですか?」
 呼べば数歩先を歩いていた鐘堂・棕櫚(七十五日後・g00541)が、きょとんとした顔で振り返る。その手には既に、コロコロとした黄緑色の花の蕾がいくつか転がっている。素早い、と呟く骰に人好きのする顔でそれほどでもと応じて、棕櫚は大きな木の根元で長身を屈めた。
「山の中なら木陰になっててじめっとしたところかな。一個見付けたら、その辺にアホほどあると思います」
「アホほど」
 どういう言い草だと思わず繰り返して、鬼人は悪友の視線を目で追ってみる。言うほど簡単な作業ではなさそうだが、山育ちを自称するだけあって棕櫚は随分と手慣れたものだ。
「やっぱ、子どもの頃から食うもんなのか。俺は逆に大人になってからしか食ったことねぇんだが」
「いやあ、そうでもないですよ。子どもの頃は苦味が気になって、あんまり食べなかったなあ。山菜って、良さが分かるの大人になってからじゃないです?」
「やっぱそうなのか。確かに、子どもの頃に食ってたらちと苦手になってた気ぃするわ」
 独特の香りとほろ苦い風味が特徴の山菜は、大人でも苦手という者もあるだろう。山育ちだってそんなもんですよ、と返して、棕櫚はまた新しいフキノトウを摘み上げる。
「んじゃ、子どもさんも食べ易いように味噌炒めとか作りますか」
「うまそうだな。その前に数を確保しねえとだが……」
 雪の中から顔を出した小さな春はともすればうっかり踏み潰してしまいそうで気を遣うが、一見、何もなさそうな雪面に鮮やかな黄緑色を見つけると、それが段々面白くなってくる。黒いスーツの背を屈めて歩く骰の姿は顔の割には楽しそうで、棕櫚は釣られるように目元を和らげた。ただ――その姿は何かに似ているような気がして。
 はて、と首を捻りつつ、棕櫚は取り出したスマホでぱしゃりと一枚、写真を撮った。ただの記念撮影――などと言ったら、なんの記念だと詰められそうだが――のつもりだったが、その画を見て男は一人得心する。
(「タイトルは『冬眠明けの熊』……ですかね?」)
「なんか言ったか」
「いえ、何も?」
 本当に何も言っていないのに、油断ならない。手にしたスマホをシュッとポケットに滑り込ませて、棕櫚は稀に見るいい笑顔で答えた。どうも胡散臭さが拭えないが、実際口には出していないので訝るように睨むしかない骰である。
「てかアンタもサボらずにちゃんと採れよ」
「サボってないですし、骰さんよりいっぱい採ってますよ?」
「ぐぬ」
 摘み取ったフキノトウで早くもいっぱいになりそうな籠を見せつけられると、それ以上は返す言葉もない。ふふっと少しだけ得意げな笑みを零して、棕櫚は上機嫌に言った。
「村の人達に行き渡るように、たくさん採って帰りましょうねえ!」
 言われなくても、採らいでか。いつも以上に楽しそうな棕櫚を背に、骰は地面に目を凝らしながら歩いていく。すると――じろりと睨むような鬼の瞳の中に、同じ色の花が一輪飛び込んできた。
「……? あれは、食えるのとはまた別か?」
「おお。フクジュソウですね。そうですか……もうそんな季節ですか」
「食えねえんだな?」
 すらすらと野の花の名が出てくる辺りはさすがに詳しい。そこは素直に感心しつつ、骰は近づいてくる足音の主に道を譲る。純白の雪に金色の影を落とす花の傍らへ屈みこんで、棕櫚は言った。
「まるでお日様みたいな黄色ですね。雪と一緒に、寒さも溶かすようで……頼もしいというか」
「……まあ、そうだな」
 寒さは今が底だろうか。冬の気配は未だ強い日々だけれども、冷たい風にも雪にも負けず咲く花達は、少しずつでも春に向かっていく季節の移ろいを教えてくれる。愛しむように金色の花弁をひと撫でして、棕櫚は続けた。
「あの村の方々の日々にも、早く春が訪れるといいですね」
 どんな寒さの中にあっても、芽吹く雪割りの花々のように。この雪がすべて解ける頃、伊賀国はどんな姿をしているのか――それが今よりもずっと暖かく平和な世界であればいいと祈りながら、行く道は春の息吹に溢れている。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【友達催眠】がLV2になった!
【ハウスキーパー】LV1が発生!
効果2【アクティベイト】がLV2になった!
【ダブル】LV1が発生!

秋津島・光希
【暁光】

アキと蕗の薹を探しに

釣りにはよく一緒に来てたけど
何気にこの時期の山って
しかも山菜取りって初めてだったか?
新鮮な気分だよな

さーて、蕗の薹は…って何だよ、アキ
え、お前それいつの間に作ったの?(雪うさぎを目視して困惑)

山での探し物はアキの方が得意なのかもな
似たような場所を探してみるか
お、見つけた

今後のことも考えて、収穫は適量に
自然の恵みは欲張って取るなって
昔、爺ちゃんにも教わったしな

そうだな、まずはあったかい物がいいと思う
村の皆、腹いっぱいにしてやりてえよな

アキ、料理は頼むな。お前の十八番だし
俺は雪うさぎ大量に作って
お前の周りを囲んでやるから
…あ、いいんだ。じゃあマジでやる
南天少し採ってくか


鉄・暁斗
【暁光】
蕗の薹を捜しにコウと山の中へ
そうだね、冬に山に入るのもそうだけど
山菜取りも初めてだ
雪の中にある緑は何だか元気が貰える気がするね

…ところでコウ、見てみて、これ(肩つんつん)
じゃーん。蕗の薹と雪うさぎの共演(蕗の薹を挟んで鎮座する親子雪うさぎが!)
丁度いいところに南天があったから、つい
村で作ったら子供達に喜んで貰えるかな
おっと、コウばかりに働かせちゃダメだね

収穫はほどほどにしなきゃいけないんだね
コウのお爺ちゃんはすごいな、何でも知ってる

村に戻ったら蕗の薹で何作ろうかな
体が温まる鍋とか味噌汁…定番の天ぷら?
うん、料理は得意だから任せて
わ、雪うさぎいっぱい作ってくれるの?囲まれたらやる気出そう


 葉の落ち切った木立の向こうに、澄んだ青空が覗いていた。深々と冷える空気の中で白い息を吐きながら、秋津島・光希(Dragonfly・g01409)は雪化粧の地面に身を屈める。
「釣りにはよく一緒に来てたけど、何気にこの時期の山って初めてだったか?」
「そうだね、冬に山に入るのもそうだけど……山菜取りも初めてだ」
 雪化粧の地面を注意深く観察しながら、鉄・暁斗(鉄家長男・g07367)が応じた。互いに切っても切れない昔馴染み、大人達に連れられて、あるいは二人きりでそれは色々なところを冒険してきたものだが、雪山というのは過去に例がなかった。身の引き締まるような寒さも、視界を次第に埋めていく輝くような白も、目に映る何もかもがここでは新鮮に感じられる。
「けど、見当たんねえな。フキノトウって、どんなとこに生えてんだ?」
「ねえコウ、見てみて」
「ん? なん――うおっ!?」
 つんつんと肩をつつかれて何の気なしに振り返り、蜻蛉の少年は思わず声を上ずらせた。振り向いたその瞬間、正にその目と鼻の先に、白くて丸くて赤い目をした生き物がでんと迫っていたからだ。否――生き物では、ない。
「……なんだコレ」
「雪うさぎ」
 丸く固めた雪に、タイミングよく見つけた南天の実で目をつけた大きな雪うさぎの後ろから、ひょこりと顔を出して暁斗は言った。その表情に色はなく口調も淡々としているが、光希には分かる――これは、浮かれて楽しんでいる顔である。一歩二歩と先を行き、その場にしゃがみ込んだかと思うと、暁斗は再び幼馴染を振り返った。
「じゃーん。フキノトウと雪うさぎの共演」
「じゃーんじゃねえよいつの間に作ったんだよ。やっぱ浮かれてんじゃねーか……ん?」
 フキノトウ、と繰り返して、光希はぱちりと三白眼を瞬かせる。よく見ればもう一体いる親子雪うさぎの間には、黄緑色の鮮やかな植物がちょこんと顔を覗かせている。
「フキノトウって、これか?」
「ふふ、雪の中にある緑は何だか元気が貰える気がするね」
 寒さにも負けず頑張る姿に、いじらしくもひたむきな生命力を感じるからだろうか。へえ、と素直な感嘆の声を洩らして、光希は言った。
「山での探し物はアキの方が得意なのかもな。俺も似たようなとこ探してみるか……お、意外とある」
 一つ見つければまた一つ、二つ。注意深く辺りを探ってみれば、初春の恵みは意外とそこかしこに芽吹いている。一緒に採るよと肩を並べてしゃがみ込んだ暁斗も加わって、少年達は雪中のフキノトウをせっせと摘み取っていく。
「だけど、根こそぎ採ったらダメなんだよな」
「? そうなんだ?」
「ああ。自然の恵みは欲張って取るなって。昔、爺ちゃんに教わった」
 すべて取りつくしてしまったら来年の収穫ができなくなってしまうからだ、と、在りし日の祖父は言っていた。確かにと頷いて、暁斗は応じる。
「何事もほどほどにってことだね。コウのお爺ちゃんはすごいな、なんでも知ってる」
「まあ、考えたら当たり前のことなんだけどな」
 その当たり前に考え至らぬ者が、それだけ多いということだろうか。数メートル間隔できちんと株を残しながら周囲一帯の収穫を終え、こんなものかと立ち上がって暁斗は言った。
「でも、これで何を作ろうか。鍋とか味噌汁……あとは、定番の天ぷらとか? あったかいものがいいよね」
「村の皆、腹いっぱいにしてやりてえよな。料理は頼むぜ、アキ」
 お前の十八番だし、と、光希は頼もしげに笑う。そう言われれば悪い気もしないもので、暁斗は感情の薄い唇に微かな笑みを浮かべた。
「うん、任せて。……雪うさぎも、村で作ったら子ども達に喜んで貰えるかな?」
「それは俺がやってやるよ。大量に作ってお前の周りを囲んでやるから」
「えっ、ほんと? 囲まれたら、もっとやる気出そう」
「……お前、本当冗談通じないよな」
 まあやるけど、と呟いて、光希は枯れ色の木立を見渡した。愛らしい雪うさぎには、赤い瞳が欠かせない――少し寄り道になるかもしれないけれど、帰る道々、どこかで南天の実を採っていくのもよいだろうか。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【アイテムポケット】がLV3になった!
【口福の伝道者】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】がLV5になった!
【ガードアップ】がLV3になった!

ラヴィデ・ローズ
ウルリクさん(g00605)と

旦那のおかげでパワーが有り余ってるよ~!
彼の戦いぶりを讃えつつ
オレはここ、山菜採りの戦場で輝くしかないよね
腕まくりを……さむっ!
すぐ戻しては

任せてくださいってば
西へ東へ、昔もよく道端の草やら花を食べたもんさ
割と多くが失敗談とは秘密で雪をかきわける
おっ、これじゃない?
白に若緑が映える可愛い蕾
どう食べるんだろ、喜ぶ顔が楽しみだな

写真?
いいね。貸してみて、とまず一枚
ウルリクさんと蕗の薹の記念撮影もバッチリ
うん。平和だねぇ

金の福寿草
オレのセンサーはこれも美味そうって言ってるけど、
ふふ。なんだかご利益ありそうだし、見逃してあげよう
今日の事が雪解けを早め
幸多き春に近付くといい


ウルリク・ノルドクヴィスト
ラヴィデ(g00694)と

君自身の働きも
勘定に入れるのを忘れるなよと
褒めて呉れるばかりのラヴィデへ言いつつ
二転三転弾む声が微笑ましいが
こうも身が軽いのはあの援けがあったから

道端の…そこまで食に困ることが…?
いや、確かに元々暮らしていた時代は
今より自然に親しかったが
其の秘密は知らぬ儘
…何となく相手の生活が気に掛かった
今はまともに食えているだろうか

芽吹く春の如き蕗の薹は
指差した先に見て初めて気付く
…そうだ
君の方が操作上手いよなと
携帯端末を取り出して見せた
写真を、撮りたい

導く声がみつけた福寿草の鮮やかさに
ああ、敵でもあるまい
摘まず散らさずの心が君らしく感じて
何処となくもう雪解けのような気分だ


「いやあ、それにしてもいーい戦いぶりだったねえ」
 火花を散らして切り結ぶ槍と槍、互いに一歩たりとも退かない攻防の鬼気迫る迫力には、緊迫した戦場の中にあってなお目を奪われる思いであった。そう振り返って、ラヴィデ・ローズ(la-tta-ta・g00694)は少年のように笑う。
「あまり褒めてくれるな。君自身の働きも、勘定に入れるのを忘れるなよ」
 思わず苦笑を返しつつ、ウルリク・ノルドクヴィスト(永訣・g00605)は言った。こういうのを、褒め殺しというのだろうか? 人好きのする笑顔の主に勿論、他意はないのだろうが、こうも手放しに讃えられるとこそばゆさは拭えない。
「こうも身が軽いのは、君の援けがあったからだ」
「いやいや、俺なんてまだまだ。旦那のおかげでパワーが有り余ってるよ~! こうなったらもう、山菜採りの戦場で輝くしかないよね――さむっ!」
 冗談めかしてコートの袖をまくり上げれば、雪の残る里山の冷えた空気が肌を刺した。笑ってみたり、悲鳴を上げてみたり、子どものようにくるくると表情を変える友の姿はなんとも微笑ましく、ウルリクはくつりと喉を鳴らす。結局まくった袖は早々に元に戻したが、それはそれとしてとラヴィデは続けた。
「まあ、任せてくださいって。食べるものを探して西へ東へってね、昔もよく道端の草やら花を食べたもんさ」
「そこまで食に困ることが……?」
 飄々として誰にでも分け隔てなく接する気のいい竜人は、しかし自身の過去についてはあまり多くを語らない。共に最終人類史の復讐者として力を振るいながら、遠く時を超えてやってきた者同士。思い返せば元々暮らしていた時代は今よりもずっと自然に親しかったとはいえ、彼の歩いてきた道のりは決して平坦ではなかったのに違いない。そうなるとふと気になるのは、今の生活のことで――ごく真顔で、ウルリクは尋ねる。
「……今はまともに食えているのか?」
「勿論。食べてないように見える?」
 昔はいっぱい失敗したけどね、と笑い飛ばして、ラヴィデは爪先で雪を分けていく。そして、おっ、と嬉しそうな声を上げた。
「フキノトウってこれじゃない?」
 指さしたのは、白い雪の中にぽつんと顔を出した若草色の鮮やかな蕾。よく見ようとその場に背を屈めて、ウルリクは紅蓮の瞳を柔らかに細めた。
「まるで芽吹く春、そのものだな」
「どうやって食べるんだろうねえ」
 まあ、その辺りはとにかく採って帰りさえすれば、料理の得意な仲間達がどうにかしてくれるだろう。興味津々の様子で、ラヴィデは摘み上げた花蕾を天に翳した。たくさん採って帰って振る舞ったら、村人達は喜んでくれるだろうか――その笑顔を思うと、胸がぽかぽかと温まるような心地がする。それこそ冷えて刺すような空気さえ、気にならないくらいだ。
「……そうだ」
「うん?」
「君の方が、操作が上手いよな」
 そう言ってごそりと懐を探り、ウルリクはじっと友を見た。大きな手の中で随分と小さく見えているのは、一台のスマートフォンである。
 なるほどと察しよく頷いて、ラヴィデは言った。
「写真ね。貸してみて」
 慣れた手つきでホーム画面からカメラのアイコンをタップして、太陽に翳したフキノトウに向けまず一枚。軽やかなシャッター音とともに切り取った春の恵みは、画面の中でも鮮やかな黄緑色に輝いている。
「オッケー、ばっちり。はいこれ、今度は旦那が持って」
「俺が?」
「そ。はい、笑ってー」
 彼と違って、笑えと言われて笑えるようにはできていないのだが、そこはご愛敬。フキノトウを手にしたウルリクの姿をしっかりと画面に収めて、平和だねえとラヴィデは言った。そして、ふと気づく――撮った写真の片隅に、フキノトウとは別の花が小さく映り込んでいることに。
「あれ? ……こっちにも花が咲いてる」
 画面から視線を外して向こう側を覗き見ると、焔の翼が背にした木立の中に金色の小さな花が咲いていた。屈みこんでその花弁をするりと撫で、綺麗だねとラヴィデは微笑む。
「オレのセンサーはこれも美味そうって言ってるけど……ふふ。なんだかご利益ありそうだし、見逃してあげよう」
「ああ、敵でもあるまい」
 花は愛でても、摘まず散らさず――それがいかにも、彼らしい。美しい金色に口元を和らげて、ウルリクは斜面の先に続く冷えた空を仰いだ。
「何処となくもう、雪解けのような気分だ」
 幸多き春は、もうすぐそこ。この地の人々が憂いなくその季節を迎えられるなら、ここへ来た甲斐もあるというものだ。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【熱波の支配者】がLV2になった!
【使い魔使役】がLV2になった!
効果2【ロストエナジー】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV9になった!

帷・カラス
【鴉と姫】

白い雪に冬の山…やる事は一つだ!!
桃ちゃんよ!
フキノトウを掘りまくるぜ!

え?
雪うさぎ?
桃ちゃん
雪うさぎは食えねぇよ?
フキノトウにしよう
天ぷらにすると美味いんだこれが!
成程ね
桃ちゃんの伝統ってわけだ

こうしよう!
一つ雪うさぎを作ったら
一つフキノトウを見つける

完璧
雪うさぎ牧場にしてフキノトウも大量に収穫
一石二鳥だ

桃ちゃんが雪を掘る辺りからフキノトウを探す
沢山作ったな…雪うさぎ
唱える言葉にハッと
そうか家族の…ごめん桃ちゃん
俺、天ぷらの事しか…
寂しいよな
近所の太郎誰だよという思いは伏せる

小さな掌の上の
カラス雪うさぎに
敵わないなと笑って
桃々姫うさぎを隣に乗せてやる

任せろ
美味しい天ぷらを作ってやる


上巳・桃々姫
【鴉と姫】

雪…
カラス殿!雪うさぎを作るのですわ!

え?
フキノトウ??

な、なぜ食べる前提ですの?!
雪とくれば雪うさぎ
目にも楽しい風流な雪遊びと決まっておりまする!
フキノトウの天ぷらは確かに美味ですわ
しかしわたくし、毎年雪が降ったら雪うさぎを

譲渡しているようでしていない折檻案ですがそれでいいですわ
わたくしも天ぷらを食べたいですし…

これが
父雪うさぎ…こちらが母雪うさぎ
じぃや雪うさぎと師匠雪うさぎ、近所の太郎雪うさぎ…
雪が降るときだけ再会出来る、今は亡き者たちですの


寂しくありませんわ
今は貴方もいて下さるもの

カラス雪うさぎも作って、並べずに手のひらの上に乗せる
桃うさぎに、笑い
天ぷらの方も、任せましたわ!


 里山の中腹から斜面を辿って登ることさらに行くと、足元はやがて銀色の雪に包まれる。葉の落ちた梢を透かして落ちる陽射しは雪化粧の木立を千々に煌めかせ、世界はまるで万華鏡のようだ。
「白い雪に、冬の山」
 ざらめ雪を踏み締めて、帷・カラス(神遣・g08316)は言った。ない眼鏡を押さえるように二本指を鼻梁に添え、見つめる紅色の瞳が木漏れ日を受けてきらりと光る。
「と、くればやることは一つだ! 桃ちゃんよ! フキノトウを掘りまく――」
「雪うさぎを作るのですわ!」
「えっ?」
 これをして出鼻を挫かれた、と言うのでなければなんと言えばいいのだろう。思いもよらない言葉で遮られて、カラスはかくんと膝を落とした。声の主――上巳・桃々姫(ひいな・g08464)は何もおかしなことを言ったつもりはないようで、きょとんとして聞き返す。
「え――フキノトウ?」
「いや――雪うさぎ?」
 お互い、訝るような眼差しで見つめ合い、鴉と姫は首を傾げる。どうやら、そもそもここへ来た前提条件に齟齬があるらしい。
「桃ちゃん……雪うさぎは食えねぇよ?」
「な、なぜ食べる前提ですの?!」
 まったく食い意地が張っているのですから、と、桃々姫はツンとそっぽを向いたが、さすがにここは引き下がれない。いやいやと首を振って、カラスは食い下がる。
「フキノトウを採って、持って帰ろうって話だったろ。天ぷらにすると美味いんだこれが!」
「フキノトウの天ぷらは確かに美味ですわ。ですが、雪とくれば雪うさぎ。目にも楽しい風流な雪遊びと決まっておりまする! わたくし、毎年雪が降ったら雪うさぎを――」
「あー、分かった。桃ちゃんの伝統ってわけね! だったらこうしよう!」
 思ったよりも雪うさぎに関して押しが強い桃々姫に、これ以上は平行線と踏んでカラスは議論を切る。びし、と両手の人差し指を立てて、青年は力強く続けた。
「一つ雪うさぎを作ったら、一つフキノトウを見つける! 完璧!」
 雪うさぎ牧場を作ってかつフキノトウも大量に収穫。一石二鳥だ。かなりのスピードが求められそうだが、まあそこはそれ、後で考えることにする。これでどうだと問い掛けると、桃花模様の姫は一段トーンを落とし、唇を尖らせながら応じた。
「譲歩しているようでしていないようですが……結構ですわ。わたくしも天ぷらを食べたいですし」
 交渉成立。よし、と小さくガッツポーズを作って、カラスは言った。
「そうと決まったらのんびりしちゃいられない。やるぜ桃ちゃん!」
「応ですわ!」
 桃々姫が降り積もった雪を掘り、カラスがその下に隠れたフキノトウを探す。掘っては作り、作っては掘りの繰り返しだが、しかしこの作戦、一点だけ欠陥がある。というのも。
「カラス殿! フキノトウがちっとも増えておりませんわよ!」
「いや、そうは言っても……たくさん作ったなあ桃ちゃん」
 雪はそこら中にいくらでもあるが、掘り返したからといってそこにフキノトウがあるとは限らないのである。ほらほらと青年を急き立てつつ、桃々姫は並べた雪うさぎを見渡し、むふんと得意げな笑みを浮かべた。
「ご覧なさいまし。こちらが父雪うさぎ。こちらが母雪うさぎ。じぃや雪うさぎと師匠雪うさぎ、それから近所の太郎雪うさぎと――」
(「いや、近所の太郎誰だよ」)
 思わず心の中で突っ込みながら、カラスは雪の下を探る。するとふと、背にした空気が変わったような気がした。
「……雪が降るときだけ再会できる、今は亡き者たちですの」
 続く言葉にはっとして振り返ると、年齢よりもずっと幼い娘の横顔がじっと雪うさぎ達を見つめていた。何かを手繰り寄せるようなその眼差しは憂うようにも見えて、カラスは声を萎ませる。
「……ごめん桃ちゃん。俺、天ぷらのことしか考えてなかった…………そりゃ寂しいよな」
「? 寂しくありませんわ。今は貴方もいて下さるもの」
「えっ?」
 この姫君、存外に強い。思った以上にあっけらかんと返されて、カラスは再び脱力する。桃々姫は気にした風もなく、また一つ新たな雪うさぎを掌に載せて笑った。
「そんなことよりほら、カラス雪うさぎですわよ」
「……敵わないなあ、桃ちゃんには」
 カラスなのだか、うさぎなのだか。お返しにと小さな桃々姫うさぎを手早く作って並べてやると、花の綻ぶような笑顔が咲いた。この借りは、おいしい天ぷらを作って返すとしよう。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【未来予測】がLV2になった!
【無鍵空間】がLV3になった!
効果2【先行率アップ】がLV6になった!
【ラストリベンジ】がLV2になった!

野本・裕樹
フクジュソウが咲いていますね。
漢字にすると福寿草、読んで字の如く「幸福」と「長寿」を招く縁起の良い花です。

雪を割り花咲く姿は厳しい圧政の中で懸命に生きるこのディヴィジョンの人たちとも重なって見えて…彼らの「幸福」や「長寿」を散らさずにすむ力になれたのなら何よりです。

フキも見付けました、フキノトウも採れそうです。
フクジュソウが早速「幸福」を運んでくれたのかもしれませんね。
料理は詳しい方にお任せしましょう、私は採取を頑張ることにします。
自然の恵みに感謝しつつ必要な分だけ採らせて貰います。
花が咲くと食べるのに適さなくなってしまいますが花は花で綺麗ですからね。
せめてものお礼に【土壌改良】を。


 一月の山野は枯れて物寂しいようでいて、その実、春の足音に溢れている。融け残った雪を割り、点々と顔を出すフキノトウもその一つだ。ざらめ状になった雪の間に覗く花の芽を一つ二つと摘み上げて籐の籠へ入れ、野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)は口角を上げた。こんなに寒々とした野山でも、草花は着々と次の季節に向かって変わり始めている――そう思うとわけもなく、暖かな気持ちが込み上げてくるようだ。
「思ったよりもたくさんありますね……おや?」
 真っ白な雪の間に、一輪の花が咲いていた。八重に咲き誇る金色の花は、名をフクジュソウという。慈しむように双眸を細めて、裕樹はその傍らへ屈みこんだ。
(「まだ、こんなに雪が残っているのに……一生懸命、咲いたんですね」)
 漢字にすると『福寿草』。読んで字の如く、『幸福』と『長寿』を招くとされ、古来より新春を祝う花として栽培されてきた縁起の良い花だ。雪を割り咲くその姿は、天魔武者たちの理不尽な圧政に苦しみながら、それでも懸命に生きようとするこの世界の人々にも重なって見え、娘はほっと安堵の笑みを浮かべた。これですべてが解決したわけではないけれど、少なくとも今日、彼女達が関与したことによって、麓の村の人々の幸福、そして長寿を散らさずに済んだのならば、こんなに嬉しいことも他にはない。
「村の皆さんに喜んでいただくためにも、たくさん、フキノトウを採って帰りたいですね。料理は、詳しい方にお任せするとして――あっ」
 フキノトウ、だけではない。まだかなり小さいが、食べられそうなフキもあるし、寒ウドもある――早春の山の恵みもまた、小さなフクジュソウが運んでくれた『幸福』の内なのかもしれない。
(「自然の恵みに感謝、ですね」)
 とはいえ採取するのは、食べる分を必要なだけ。フキノトウは咲くと食べるには適さなくなるが、花はその美しさを以て人々の目を楽しませ、また来年、おいしい蕾を実らせてくれるだろう。
 一通りの採取を終えて、裕樹は刀を少し鞘から引き出し、そして戻した。
「これは、せめてもの御礼ということで」
 ふわり、巻き起こった季節外れの春風は、この山に豊穣をもたらすだろう。その恵みが、この地に生きる人々の支えとなればいい――祈るような思いで、娘は雪の斜面に背を向けた。
大成功🔵​🔵​🔵​
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斑夜・黒白
我の郷里も山間に在る故、此の風景は懐かしく思えるな
一足早く訪れた春を楽しみつつ、散策するぞ

蕗の薹も福寿草も我にとっては親しみのある植物だ
雪を割って芽吹く光景を見ると、春の足音が間近に迫ったものなのだと思うな

新宿では見られぬ光景故、確りと此の眼に焼き付けておこうか
山間の自然は好きだが、今度はいつ触れ合えるか分からぬからな
願わくは、次は春や初夏の花で賑わう山の光景を此の目で見たいものだ
故郷への思い入れ等無いが、故郷周辺の自然や風景は恋しく思うぞ

蕗の薹は採取して調理するぞ
天麩羅が定番であるが、他に何か良い調理方法はあるのだろうか?
他の山菜も採れたら其れ等と併せて、少し早い春の味覚を楽しむとしよう


 一度融けかけて残った雪は、編み上げブーツの底でざくざくと小気味の良い音を立てる。白に埋もれた山間を縫うように歩きながら、斑夜・黒白(華面影・g08472)は木々の梢を仰いだ。葉の落ちた枝の間からは、透き通るような冬空が覗いている。
「……此処は、懐かしい気配がするな」
 山の風景にどことない郷愁を覚えるのは、彼女の郷里もまたこんな山間にあったからであろうか。それこそ幼い頃には、この時期にも咲く花達に随分と慰められたものだ。そして雪を割り芽吹くその健気な姿を目にするたび、春の足音が近づいてくるのを感じていた。山というものは一見、どっしりと構えて不変に見えながら、移ろう季節を何よりも早く教えてくれる。
 真白の雪と青空が織りなす色彩をより鮮やかに焼き付けておきたくて、黒白は小さな手で黒い被衣を除けた。
「……こればかりは、新宿では見られぬ光景だな」
 融けて陥没した雪の中に、ちょこんと顔を出した黄緑色のフキノトウ。そのすぐ傍に濃い金色の花弁を広げるフクジュソウ。いずれも山育ちの彼女にとっては親しみ深い存在だ。動物達が長い冬に眠った山で寒さにも負けず咲き誇るその姿は、見る者に一足早い春を連れてきてくれる。長いスカートの裾を引きずることがないよう、片手で押さえてしゃがみ込み、黒白は口を窄めたフキノトウに手を伸ばした。
(「願わくは、春や初夏の花で賑わう山の光景も此の目で見てみたいものだ」)
 山間の自然は好ましいが、何しろこうした状況だ。こんな機会でもなければ、次はいつ触れ合えるか分からない。故郷への思い入れなどないと言ってよい黒白だが、それはそれとして、東京都心のコンクリートジャングルなどに身を置いていると、美しい自然の織りなす風景が恋しくなることもある。もっともそこはそれ、春になればきっと、街中で花を見る好機もあるだろうが。
 白い袖に抱えるほどのフキノトウを摘み取って、少女は静かに立ち上がった。
「さて……では、そろそろ行くとしようか」
 麓の村では、村人達が腹を空かせている頃だろう。フキノトウは勿論、持ち帰った山菜をどう料理するか――それを考えるのも、また一つの楽しみである。
大成功🔵​🔵​🔵​
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湯上・雪華
【奴崎組】
アドリブ、連携大歓迎

憂いを絶ったら次は楽しいことです!
蕗の薹がたくさん採れるならお料理したいですね
あ、でも、この先の事も考えたら採りすぎるのも良くないですからね
来年も芽吹き、増える程度には残して採取です
他にも山菜が無いか探しつつ、ですね

採取が終わればお料理ですよー!
蕗の薹なら味噌に天婦羅が定番です
山菜は天婦羅にするのが美味しいですが、お浸しも捨て難いのです……
できたものは口福の伝道者で増やしますよ
みなさんにもお裾分けです


荒田・誠司
【奴崎組】
アドリブなど歓迎

(心情)
戦いが無事に終わって良かった
フキノトウは初春が旬だったか、もう春なんだな

(行動)
観察や情報収集でフキノトウがある場所をある程度予測してから摘んでいく
全て摘んでいくと村人達が来年食べられる分がなくなるから残しつつ摘んでいこう
一種類だけでもいいけれど、同時期に摘める山菜もあれば残しつつ持っていきたい
確か美味しい食べ方は天ぷらと和物だったかな?
機械の腕だから直接触らないように調理中は手袋を着けて行おう
ちょっと今の時代にそぐわないかもしれないがチーズと一緒に春巻きにしてもよさそうだ
1人で食べても味気ないし、口福の伝道者を使って仲間と一緒にお裾分けしよう


 ところ変わって、山麓の村――。
 雪化粧の里山を下った先に広がる村には、十数世帯あわせて五十人ほどが肩を寄せ合い暮らしている。山中に構えた敵の本陣から村の働き手達を連れ帰った復讐者達は、村人達から諸手を挙げて歓迎された。こと、夫や父親が帰ってきたとあって、女子どもの喜びようは一入である。
「と、そういうわけで……ひとまず、天魔武者達の脅威は去ったと思ってもらっていいだろう」
「ほ――本当に?」
「もう、食べ物を持ってかれたりしないだか!?」
 事の次第を説明する荒田・誠司(雑草・g00115)の言葉に、ある村人は歓喜し、ある村人は驚きの声を上げた。すぐには信じられないといった様子の者達も中にはいたが、詳しい状況が分かるにつれてその表情は次第に明るくなっていった。勿論これですべてが終わったわけではないが、人々が明日への希望を見いだせるようになったということは、この改竄世界史において非常に大きな意味を持つ。
 説明役の任を果たして仲間達の元へ戻り、ようやく肩の荷の下りた様子で誠司は言った。
「戦いが無事に終わって、よかったな」
「そうですね。皆さんの顔も随分明るくなりましたし」
 うんうんと頷いて、湯上・雪華(悪食も美食への道・g02423)も嬉しそうに応じた。フキノトウ探しの成果も上々で、採りつくしてしまわないように注意をしていても、冬山の山菜を十分な量仕入れることができた。腕に下げた籠いっぱいのフキノトウを覗き込んで、雪華はにんまりと笑みを深くする。
「さあて、憂いを断ったら次は楽しいことです。早速、お料理していきましょう!」
 村人の一人に頼んで家の台所を借り受け、雪華は慣れた手つきで料理の支度を開始する。灰汁の強いフキノトウをおいしく食べるためには、下拵えが肝心だ。一番外側の葉を取り除き、根元の茶褐色の部分を切り落として水にさらす――灰汁抜きをするかしないかは、水にさらす時間も含めて好みの問題のようだが、こうしておけばより苦みやえぐみが抜けて食べやすくなる。少し時間を置いてからしっかりと水気を切り、衣をつけて揚げる天麩羅は、フキノトウ料理の定番中の定番である。
「フキノトウは初春が旬だったか。こんなに寒くても、もう春なんだな」
 機械の右腕に粉がつかないよう手袋を嵌め、新宿島から持ち込んだ小麦粉を水に溶いて衣を作るのを手伝いながら誠司は呟く。
「天麩羅と……あとは和え物にするのがおいしいんだったかな?」
「そうですね! それからフキノトウ味噌なんかも定番です。あっ……でも、お浸しも捨てがたいですね」
「チーズと一緒に春巻きにしてもよさそうだ。まあ、この時代にはそぐわないかもしれないが……」
 幸い素材は山ほどあるので、作りたいだけ作っても足りなくなることはない。春巻きにしろ天麩羅にしろ、油を使った料理はまだ普及していないこの時代だが、その味わいはたとえ一時であっても圧政に疲弊した村人達を癒し、その舌を楽しませてくれることだろう。加えてお浸しや和え物ならば、復讐者達がここを去っても村人達自身の手で再現することができるはずだ。
「でき上がったら、皆さんにもお裾分けしましょうね」
「ああ、一人で食べても味気ないしな」
 一人より二人で、二人より皆で。分かち合えば新鮮な山の幸は、もっともっとおいしくなる。苦境を耐え抜いてきた村人達にとって、今日は忘れられない一日になることだろう。
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篝・ニイナ
【白花】

確かに誰かと食べる飯は美味い
美味そうによく食べる奴だと尚更ね

油の跳ねる音を聞きながら
花もちゃんと見つけてたんだ
食いしん坊だからてっきり
なんて笑んで揶揄いながらも
彼が花好きなのは良く知っている
俺は雪の帽子被ってる蕗の薹が
ラルムクンに似てるなあって思ってた
馴染みのある春の色
今も彼の頭を見ればふわりと白が揺れているから

彼の作ったかき揚げ
食べれば少しの苦味に玉ねぎの甘さが絡んで美味い
ん、合格、と上から目線に褒めてやりながら
こっそり、もう一つ…と手を伸ばす

細かく刻んで炒めた蕗の薹に調味料を絡め
味噌と混ぜればできる、蕗の薹味噌
多少保存が効いて酒のつまみにも丁度いい
さて男衆と料理酒で一杯…あ、だめ?


ラルム・グリシーヌ
【白花】

美味しい物は笑顔を呼ぶし
誰かと一緒に食べると幸せになれるよね

村人達の心を癒せる様に
アイテムポケットで持参した
調理器具や食材で子供でも食べ易い
蕗の薹と玉葱のかき揚げを沢山揚げるよ

揚げる音を重ね乍ら
ね、ニイナは見た?
雪の中に咲く福寿草の花色は
とても綺麗だったよ
きっと君の様に優しい幸せを招いてくれるね

蕗の薹と俺が似てる…
見た目が可愛いって事?
朱い瞳見上げ渾身のドヤ顔

味見と称してかき揚げ一つ頬張れば
独特のほろ苦さが美味しい!
ニイナに合格点貰えたら
口福の伝道者で増やして
皆に振る舞うよ

君は何作…だ、だめ!
一緒じゃなきゃ嫌だよ
子供じみた我儘零し片腕にくっつく
それにニイナの蕗の薹味噌
まだ食べてないもん


 火にかけた鉄鍋の中で、黄金色の油が煮えている。包丁で軽く潰したフキノトウとタマネギを合わせて衣につけ、作るのはかき揚げ――一塊にまとめた種を油にくぐらせると、軽やかな音を立てて細かな気泡が昇り始める。
「美味しい物は笑顔を呼ぶし……」
 泡立つかき揚げを油の中で泳がせながら、ラルム・グリシーヌ(ラメント・g01224)は言った。圧政に疲弊した村人達の心を癒すべく、新宿島から持ち込んだ機材と資材がここでは随分と役に立った。揚げ物はまだ普及していない時代ではあるが、揚げることでフキノトウ特有の苦みを抑えれば子ども達でも食べやすい味わいになるだろう。
「誰かと一緒に食べると、それだけで幸せになれるよね」
「確かに。美味そうによく食べる奴だと尚更ね」
 揚げ物に取り組む少年の傍ら、篝・ニイナ(篝火・g01085)は刻んだフキノトウを炒めながら、意味ありげな視線を送った。しかし当の本人は、彼が誰のことを言っているのかなどまるで分かっていない様子で、『そうかもね』なんて笑っている。シュワシュワとかき揚げの揚がっていく心地よい音色に耳を傾けながら、そういえば、と少年は言った。
「ね、ニイナは見た? 雪の中に咲いてた、フクジュソウ」
 まるで雪の中に零れ落ちた琥珀か宝石のような、濃く甘く、華やかな金色の花。その花色を瞼の裏に思い起こしながら、ラルムは振り返る。
「とっても綺麗だったんだよ。きっと、優しい幸せを招いてくれるんだろうね」
 君みたいに、と、花の綻ぶように少年ははにかむ。その邪気のない顔を見ているとつい魔が刺して、緋色の鬼人はわざとらしく意地悪気な声音で言った。
「へ~、花もちゃんと見つけてたんだ。食いしん坊のラルムクンのことだから、てっきり――」
「べ、別にフキノトウしか見てなかったわけじゃないよ?!」
「おやあ、まだ何も言ってないんだけど?」
 半分くらいは図星、というより、自覚があったらしい。にやにやと見つめればマシュマロのような頬を膨らせて、ラルムは揚げ油に向き直る。冗談だよと笑って、ニイナはその傍らで炒めたフキノトウに調味料を加え、味噌と併せて混ぜていく。反応見たさについからかってしまうのだけれど、彼が花好きであることは他でもないニイナが一番よく知っているのである。
「俺はさ」
「うん?」
「雪の帽子被ってるフキノトウが、ラルムクンに似てるなあって思ってた」
 真白の雪の中に顔を出した丸くて小さな黄緑色は、白い髪に飾られた橄欖の瞳によく似ていた。出逢ってからまだ二年に満たないけれど、隣にあるのが当たり前になった馴染み深い春の色だ。けれど、ラルムの方はやはりピンとこないようで――訝るように首を傾げたかと思うと、一転、得意げに小鼻を膨らませた。
「それって、見た目が可愛いってこと?」
「ちょっと図々しくなったよね、ラルムクン」
 違うよ、と釘は刺したけれど、本当はそれほど違わないというのはここだけの話。ここぞとばかりのドヤ顔に苦笑を返して、ニイナは言った。
「ほら、そろそろ上げないと焦げるよ」
「あっ、ほんとだ」
 きつね色に変わったかき揚げを網の上に取り上げて、味見と称し一口かじれば独特の食感とほろ苦さが舌に心地よい。そこにタマネギの甘みが加われば、正に絶品の一言だ。
「ん、合格」
「ほんと?」
 上から目線の合格判定にも構わず喜んでみせる少年は、やはり根が素直らしい。けれど、こっそりもう一つと伸ばした手は、かき揚げに触れる前にぺちんとはたいて落とされた。
「後はみんなで食べるんだから、つまみ食いしたらだめ」
「ちぇ」
 せっかく褒めてあげたのにと唇を尖らせながら、ニイナは揚げたてのかき揚げの横に卒なく作り上げたフキノトウ味噌を添えた。保存が利いて酒の肴にもなる、酒好きにはうってつけの一品である。
「さて、それじゃあ俺は男衆と料理酒で一杯……」
「だめ! 一緒じゃなきゃ嫌だよ」
 そそくさと台所を出ようとする腕をぐいと捕まえて、ラルムは言った。本当に我が強くなったなあと思うけれど、それが決して嫌いではない自分は確かにそこにいて、ニイナは困ったように笑う。
「ニイナのフキノトウ味噌、まだ食べてないもん」
「はいはい、分かりました」
 しょうがないなと口にして、けれどそれはお互い様。皆で食卓を囲んだなら、採りたての春の味覚は村人達にも二人にも、おいしい幸せを運んでくれるだろう。後はこの一時が、人々に心の安寧と明日への希望をもたらしてくれることを、ただ願うばかりである。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【強運の加護】がLV2になった!
【口福の伝道者】がLV3になった!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
【凌駕率アップ】がLV2になった!

最終結果:成功

完成日2023年02月04日