リプレイ

●海からの贈り物は、アツアツバーベキュー！
　海の蛮族、アサヤケの民の所に、三人のディアボロスがやってきた。
「ある意味平和というかなんというか……まぁ、ドンパチやら荒っぽい仲裁とかしなくて済むんだからいいんだけどさ」
　なんだか、ちょっと調子が狂うなーと思っているのか、頭を掻きながらも、冰室・冷桜（ヒートビート・g00730）はうーんと考えつつも。
「で、アピールだっけ？　んー……海側のアピールしときますかね、今回のとこは」
「喧嘩したいわけじゃないだろうし、交流した方がメリットある、って思って貰うのがイイカナ」
　そう付け加えるように、ズレた眼鏡を直しながら、ラウム・マルファス（研究者にして発明家・g00862）は言う。そう平和に交流ができるのなら、より良いのだ。
「山のアピールと海のアピール……つまりは渓流釣りと海釣り、どちらかを選べってことだね。どちらもそれぞれに魅力があるから悩ましいけど」
　ん？　ちょっと論点がズレているようにも感じるが……最終的には海釣りに決めたらしい、穂村・夏輝（天使喰らいの復讐者・g02109）もまた、二人の後をついていく。

　さっそくアサヤケの民達と食材を確保することになった。
　ディアボロス達が考えたアピールは、海の幸を食べさせること。
「バーベキューなら、どう言う料理がいいかな？」
　夏輝はのんびりと、アサヤケの民達と海釣りをしながら、どんなバーベキューにするか考えている。
「あっ！　来た！」
　大きな当たりに夏輝は嬉しそうな笑みを浮かべて、竿を大きく振り上げる。糸の先には大きな生きのいい魚が釣れたのだった。

「ボク料理出来ないから、作業はキミに任せるネ」
「ええ、任せて」
　ラウムは、夏輝達が釣ってきた魚をさっそく、捌くのが得意なアサヤケの民の女性陣に頼んだ。
「こんな感じで良いかしら？」
　骨と皮を除いて切り身にしたものを見て、ラウムはにっこりとＧＯサインを見せたのだった。

「貝とか海藻とか、そこら辺はどうかしら？」
　冷桜は、貝や海藻を中心に食材を確保していく。途中、素潜りが得意な夏輝も加わり、かなりの数をそろえることが出来た。
「……海藻、取りすぎちゃったかしら」
「それなら、俺の方で何とかするよ」
　取りすぎた海藻は夏輝が持って行ってくれるらしい。食材を確保できた面々は、そのままさっそく、森の蛮族ヨアケの民がいる森へと向かったのであった。

　じゅううううう……！！
　森では海の幸満載のバーベキューが行われていた。ちなみにこの鉄板は、冷桜が新宿島から持ってきたものだ。
「こーゆー素材の良さ？　みたいなのは、シンプルなのが伝わりやすいでしょ」
　それともう一つ、新宿島から持ってきたものがある。そう、醤油だ。もちろん、アサヤケの民も醤油らしきものは持っていたが……ちょっと味が違うものだったので、新宿島のものを使うことにしたのだ。
「さぁさ、召し上がってねー」
　冷桜の用意したバーベキューも香ばしい醤油の香りのお陰か、盛況なようで、焼いた傍から次々と焼けたばかりの貝が、ヨアケの民の腹の中へと消えていった。
「ヤッホー、ラウムだヨ。海のお魚試食会だヨ」
　一方、ラウムの方は、イイ香りのする木材を分けてもらって燃料にし、切り身を網で塩焼きにしてみせた。燻製ほどではないが、微かな香りが鼻を喜ばせる。
「甘味の薄い果物と合わせて食べても美味しいヨ。それと、果物酒ともスッゴく合うんダ」
　そういって、ヨアケの民へと提供……だけでなく、ついてきたアサヤケの民にも味見させてあげていた。
「いつもと違う味もイイでショ？」
「うまいっ！！」
「美味しいな、コレ！！」
　美味しいお酒と合わせて、両者の民達も大興奮で食べている様子。
　一方、夏輝のところはというと……。
　じゅううっと、酒蒸しが出来上がった。お酒の効果で程よく焼けた貝が、これまた美味しい。それだけではない。
「うん、こんな感じかな……」
　余った魚のガラと大量の海藻を使って作った、あら汁ができあがったのだ。それだけでは寂しいかと思い、酒蒸しの貝も少しだけ入れてみたのだが、それまた美味しくできたようだ。ヨアケの民……だけでなく、アサヤケの民も並んで飲んでいた様子。
「どうやら……上手く行ったようダネ」
「ああ、盛況でなによりだ」
「喜んでもらえて、本当によかったわ」
　ラウムに夏輝、冷桜は、ヨアケとアサヤケの民と共に、こうして、美味しいバーベキューを楽しんだのだった。














●森の楽しみと浜辺のアピール
　一方、森の蛮族ヨアケの民のアピールを手伝いに来たのは、【鳳】から来た７人のディアボロス達だ。
「森のよいとこアピールすればいいのねっ！」
　そう、目を輝かせて高らかに叫ぶのは、杏・紅花（金蚕蠱・g00365）だ。
「おう、そうだ！　森をあぴーるするぞーっ！！　でも、海も楽しいから海岸でもはしゃぐ俺だぞ！！」
　そう元気よく楽しそうに宣言するのは、守都・幸児（祥雲・g03876）。
「森も海もどちらも好きなので、特にどちらがどうというわけでもないんだが……せっかくだから、この機会に楽しませてもらおうか」
　喩・嘉（瑞鳳・g01517）は、扇をひらひらさせながら、楽しげな様子。
「あいにく記憶をどっかに落としてきたンで、海も山も馴染みはねぇんだが……それでも、こういうのは悪かねぇってのはわかる」
　静かにそう告げるのは、伏見・萬（錆びた鉄格子・g07071）。
「川があったら真っ先に川をアピールするんだけどなぁ。だけど森にも川は流れてるからね！」
　川が好きらしい孫・リア（勇武と炎を胸に秘めて・g03550）は、さっそく森に川が流れているのを見つけて、ちょっと興奮気味だ。
「おいしく楽しく過ごせて、交流にもなって丸っといい感じです」
　そう告げる平良・明（ダイヤのK・g03461）に。
「そうだね。こうして交流を深めるのも良いものだよ」
　シャムス・ライラ（極夜・g04075）も頷き、微笑んでいる。

　さっそく現地入りした一行は、アピールするために必要なものを集め始めた。
「じゃあ、お魚取ってくるわよっ！！」
　リアはさっそく川に入って、魚を取り始めた……ん？
「わあ、楽しーっ！！　つめたーい！！」
　いつの間にか、無双馬の星星と、黒衣（クロゴノゴトクアンヤクスル）で呼び出した鴉の阿黒と共に、川で遊んでいた。まあ、最終的にはたくさん魚を捕まえてきたので、よしとする。
「バーベキューは備えが大事……すみませーん！！」
　明は、ヨアケの民から、炊事用の炭や木材を分けてもらっていた。
　一方、幸児と萬は、二人で協力しながら食材調達を行っていた。
「これとこれで……いいんだよな？」
「ああ、バッチリだぜ！　けど、わざわざ聞きに来なくても……」
「俺の判断じゃ、雑になっていけねぇ」
　そういう萬の言葉に、幸児は思わず、苦笑する。
「お陰でこっちも大量だぞ！」
　どんと鹿や猪など、しっかりと獲物を取って来たらしい。
「……血抜きとかは済んでるよな？」
「……あっ」
　今度は萬が苦笑する番だ。
「獲物の解体なら、任せてくれ。守都は俺の取ってきた木の実の選別、頼めるか？」
「ああ、任せろ！！　それと、そっちは頼んだ！」
　二人は息を合わせて、作業を進めていくのであった。

　準備が整った一行は、さっそく、アサヤケの民がいる浜辺へと向かった。
「太陽は素晴らしい天からの恵みだが、過ぎれば毒ともなる。その点、森の中では日陰を探すことも容易い。木陰で涼みながら、葉の緑を透かす、木の間に差し込む光の様を眺めることの心地よさときたら」
　そういって、嘉は新宿島から持ち込んだ緑色のビーチパラソルを浜辺に差して、開くと。
「よかったら、ここで涼まないか？」
　嘉がアサヤケの民達に手渡すのは、新鮮な果実を絞ったジュースだ。これは幸児達が取ってきた実をあらかじめ絞ってきて冷やしたものだ。
「まあ、美味しい！」
「もっとちょうだい！！」
　婦人や子供達に大盛況な様子。
「安定した火種がたくさん手に入るのは、森の強み。清い炭火の力を味わうといいです」
　せっせと集めてきた炭や木材で火をおこすのは、明だ。次々と火をおこし、行うことといえばやっぱり。
「つまり、海岸でばーべきゅー、だあっ！！」
「森の恵みでばーべきゅー！！」
　幸児と紅花が声をそろえて、息ぴったりに叫んだ。
　しかし、バーベキューができるには、少々、時間がかかる。その間にと、アピールは続けられた。
「森も海もどちらも素晴らしいよ。水も緑もたくさんあるんだろう？　砂漠地方の出身者としてはどちらも得難いものだ」
　そう話しかけていくのは、シャムス。
「緑豊かな所にいると心がとても癒される。大地の豊かさ、実りを感じさせる色合いだ。木の実や果物が実り、居住地も地上の他、木の上という選択肢もありバリエーションに富む」
「森は生きもののおうち。鳥のねぐらや栗鼠のねぐら、狐や狸だって森に帰ってくる。森の生き物、かわいーぞおっ！」
　と、紅花も加わってきた。シャムスはそうだねと言葉を続ける。
「そして、モフモフと可愛らしい動物もいる……モフはとても大事！」
　森で仲良くなったリスを肩に乗せ、腕には可愛らしいうさぎもいた。と、シャムスははたと気づく。
「こ……この子たちは食べないでほしい」
　慌てて火の近くから遠ざけるシャムスから、可愛らしい子達を引き離そうとする者達は、流石にいなかった。
「できたよーー！！」
　紅花の、皆を呼ぶ大きな声が響いた。どうやら、美味しいバーベキューが出来たらしい。
「なんだっけ、どっちがいいかアピールしてたんだっけ？　おいしいものの前には張り合いなんて無意味だよね。冷めないうちに、ぜーんぶおいしく、いただきまーすっ！」
　自身もいっぱい配りながら、美味しいバーベキューにほんわか笑顔を見せている。
「キラキラする海を見ながら、美味しいもの食べるのって最高だねえ！」
　気が付けば、夕暮れ時になってきていた。薪の炎だけでなく、ランタンなどの明かりをともして、美味しいご飯タイムが始まった。
「で、森のイイ所か……隠れる所が多いとか……？」
　そうバーベキューを食べながら、萬は、それだけではまずいと思ったのだろう、言葉を更に重ねていく。
「……そうだな、肉も果物も集まる辺り、森ってのは確かにいいもんだな」
　と、そこで思い出した。すぐに仕込むことはできないが、新宿島で持ってきたものを取り出して。
「こればかりは、この場で作るにはちょいと時間が足りねぇからなァ。……そうか、酒の材料が調達できンのも、森のイイ所か。おめぇも飲むか」
　酒に釘付けになっている男達に声をかけると、彼らは喜んで、杯を手にやってきたのだった。
「川が流れてるなら、森でも川魚も捕まえられるし、きのみも動物もいる！　美味しくバランスよく食べれる！　とりあえず、美味しく海の魚も川の魚もきのみも獣の肉も皆でたくさん食べましょう！　食べたこと無いもの食べてみて、新しい発見があるかも？」
　リアは焼き立ての川魚を手渡しながら、そういって、バーベキューを勧めていた。
「うん、美味しい」
　そう笑顔で食べる嘉の様子に、幸児も嬉しそうだ。
「肉は美味いからな！　ほら、そっちにいる者もこっちに来いよ！　皆で食べようっ！！」
　なかなかバーベキューにたどり着けなかった者達も誘って、幸児も食べながら、バーベキューを楽しんでいる。
「そういえば、中原の森は紅葉するのかな？　俺の育った京の山は、秋は葉っぱが赤や黄色に綺麗に染まるんだ」
　少し懐かしい気持ちになりながら、アサヤケの民達へとアピールを重ねていったのだった。

　こうして、ディアボロス達のアピール合戦は幕を下ろした。
　今回は、森の良さをしっかりとアピールしていた、ヨアケの民達のアピールが評価されたようだ。
「今度、そっちの集落に遊びに行ってみたいな」
　そんな声が多かった様子。もちろん、アサヤケの民達が持ってきた海の幸も高評価で、ヨアケの民達の胃袋を掴むことが出来た。
　彼らはそれぞれの良さを感じながら、楽しいひと時を過ごしたのだった。

　と、パラソルの影ですやすや寝息を立てる者がいた。
「おやおや、寝ちゃいましたか」
　ほどよくバーベキューを楽しんで、満足した明は、嘉の用意したパラソルの下で気持ちよさそうに眠っていたのだった。

最終結果:成功
完成日	2022年09月12日