リプレイ
括毘・漸
撤退軍ねぇ………ただ、逃げるだけならいいんですけど、情報を持ち帰られると面倒なんですよね。
霧で匂いも薄く、視界も不良、さらに敵は飛び回っている……いちいち追い回していたらキリがないですねぇ。
なれば感覚を研ぎ澄ますしかなさそうですね。
【猟犬肆肢・執黒妖犬】で身体を燃やしますか。
炎の揺らぎ、空気の動きを読み、身体ごと突っ込み雀どもを焼き尽くす。
暴れるな暴れるな、羽根を飛ばしてきたら、羽根を身に纏った炎で燃やしダメージを抑えましょう。
手で掴み、足で踏みつけ、口で噛みつき、投げ飛ばし、最後は炎で滅却です。
音羽・華楠
……厄介ですね。
この霧は、同様のものをグランダルメでも見てるから解りますが……【完全視界】でもほぼ見通せないんですよ。
実質視力が封じられてます……。
敵も同じなのが救いですけが。
この状況では攻撃の回避もままなりません。
【ガードアップ】で防御を高めます。
攻撃には《雷幻想・煉獄》を使用。
『マイクロ波で水分子を振動させ、灼熱を生む』ことを主眼とするこのパラドクスは、『敵が濡れている』という今の状況なら有効そうですし。
……多少狙いが危うくても、有効打になり易そうですし。
敵の居所の把握は、【風使い】で音や匂いを集めて少しでも補正を。
敵の反撃は無視で。
そもそも……失明させられても、状況的にほぼ変わりません。
金刺・鞆
天正大戦国……その改竄世界史ははたしてどこまで版図を広げているのでしょうか。もしかしたら、信濃も……。
もっとも、それを差引いても勢力合流を見過ごすわけには参りませぬ。
必ず勝利し、ぱらどくすとれいんを開通させなければなりませんね。
やりますよ、いぬ!
まずは有象無象の妖かしを蹴散らしましょう。いぬのぱらどくすで幻影武者を喚び、布陣させます。
この霧の中に軍勢の影を見たならば、目的の秀吉軍と勘違いするものもいるのでは……?
いえ、いえ。そこまで抜けているものは流石にいないでしょうが、先手必勝。敵の接近を察知でき次第、弓を持ち一斉射、です!
その両翼、打ち落として反撃もできないようにしてやりましょうとも!
日金・陽洋
随分と賑やかなこった
霧に困ってるところ悪いが…秀吉の所までは行かせねえよ
【完全視界】や、移動に使える効果・技能があれば有効活用
風使いで風を読み敵・仲間の位置の把握を試みつつ、敵が寄ってきたところを迎撃し確実に敵の数を減らしていく
風と砂での目眩ましや、統率が取れないなら攻撃を引き寄せて同士討ち、も狙えそうか
攻撃の回避にはジャンプ等を活用
可能ならば敵の羽根をサンドストームの風で吹き飛ばす
仲間とは連携
必要に応じて仲間の攻撃・回避の支援に回る
逃げたところでてめえらがどうするつもりなのか、知ったことじゃねえが…
秀吉の元で新宿島や歴史に何かしでかすつもりなら、ここできっちり片付けさせてもらう
アドリブ歓迎
如月・友仁
霧は、嫌いじゃないけれど
その先に新しいお友達が待っているとあらば、晴らしにいかない手はないよね
雀くんたち、はじめての道は不安かい?
安心してよ、僕たちだってはじめてなんだ
一緒に往こう……途中までね
【完全視界】で視界確保を試みる
川の水でうっかり足を取られないよう、足元にも注意を払いつつ
パラドクスを発動
ああ、こんな場所で鬼ごっこするのは危ないよ
地上にいる相手は、地面を這わせて絡め取って
視界を霧に阻まれたまま空中に逃れるようなら、
影を大きく広げて、霧の中に溶け込ませながら追跡
気付いた頃には手遅れになるように、死角からの不意打ちを狙おう
なるべく動きを鈍らせて、
味方の攻撃のお手伝いができたらいいな
●雀狩り
降り立った地点、ディアボロス達が得られたのは――川のにおい、土のにおい、そして一面の霧。目的もはっきりしているディアボロスにしてみれば、それに殊更の不安は無いが――。
「……厄介ですね」
周囲を警戒するように見つめ、音羽・華楠(赫雷の荼枳尼天女・g02883)がそっと零す。
彼女が真摯な声でささやくのは、しっとりと纏わり付く霧の冷たさゆえでなく、それの性質を思い起こしてのこと。
「同様のものをグランダルメでも見てるから解りますが……完全視界でも、ほぼ見通せないんですよ」
実質視力が封じられているようなものだと華楠は言う。
川辺ゆえの濃霧かと思えば、違和感も無いが――これは、ディヴィジョンの境界の『霧』であり――これはパラドクスの力をもっても完全には晴れぬものだ。
つまり、妖怪達も、ディアボロス達も、その境界に至っている、とも言えようか。
「天正大戦国……その改竄世界史ははたしてどこまで版図を広げているのでしょうか」
金刺・鞆(虚氏の仔・g03964)は未踏の地に思いを馳せるように、囁いた。
(「もしかしたら、信濃も……」)
彼の地まで続いているのではないか、という想像は。期待や焦燥のない交ぜになった感情を呼び起こす。なれど、今は。鞆は大きく頭を振った。
「必ず勝利し、ぱらどくすとれいんを開通させなければなりませんね。やりますよ、いぬ!」
そう彼女が声をかければ、相棒のモーラット・コミュは、きりりとした眼差しで「きゅ!」と応えた。
「霧は、嫌いじゃないけれど……」
如月・友仁(ユアフレンド・g05963)が呟く。指先すら霞ませる濃霧は、彼にとっては親しみ深い――無論、彼のとっておきとは、まったく別物であることは解っているが。
(「その先に新しいお友達が待っているとあらば――」)
より楽しそうな、霧の向こう側へと――微笑みを湛え、前を見据える。
霧に霞んだ視界の中で、チッチと声がして、ばさばさと羽撃く音もある。
それらはディアボロスの気配すら曖昧だ。混乱の儘に、目指せと言われた方角を見失わぬよう――見失いかけながら、ふらふら飛んでいる。
「撤退軍ねぇ………ただ、逃げるだけならいいんですけど」
括毘・漸(影歩む野良犬・g07394)が、霧によって、常より五感が阻害される感覚に眉を寄せつつ、嘆息まじりに呟く。
情報を持ち帰られると面倒なんですよね、その両手を地に向け、獣のように四肢をつきながら、漸が続ければ――腕組み、機を待っていた日金・陽洋(陽光・g05072)が、首を鳴らした。
「大した情報を持っちゃいなさそうだが、そうだな」
秀吉は既にディアボロスの戦い振りを見ている――それに勝る情報を……彷徨う彼らが持つことは無いだろうが。ただ素直に、逃せぬ。
チチチ、鳥のさえずりが再び近づいてくる。人の姿に、鳥の翼をもつ妖怪の陰影は、集うディアボロスの姿を見つけたのだろうか。
即座、何か閃いたかのように、鞆が声を発す。
「いぬ!」
呼びかけに応じ――いぬは、武者の幻影を作り出す。鞆が記憶する、抹消された歴史の……少なくとも、この時代に似た、鎧兜の武者達が弓を引き、夜雀を迎撃する構えをとる――。
(「この霧の中に軍勢の影を見たならば、目的の秀吉軍と勘違いするものもいるのでは……?」)
いやいや、流石にそこまで甘くはあるまい――と、鞆は気を抜かず、きりりと敵影を見ていた、が。
「チッチッチ!」
夜雀どもは、救いを得たとばかりに無防備に押し寄せ――刹那、幻影武者に射貫かれていく。
ぎゃあ、という無残な悲鳴と、舞い散る黒い羽の影を前に、鞆は少々でなく驚いた。
(「まさか、そこまで抜けているとは……!」)
軍師の策というには、陳腐やもという不安を、見事に打ち消してくれる――ただ、敵も困惑し、衰弱しているのかもしれぬ。
チチチチ!
騙された怒りを鳴き声に籠めながら――傷つき、朱に濡れた夜雀どもは、腕の代わりの両翼を突き出した。
素早く飛翔する夜雀たちの姿は、線と消え。代わりに、無数の羽根が追いかけてくる。鞆は、仕込み扇で傍らを掠めていく羽から身を守りつつ、再度いぬに幻影武者を召喚させる。
「第二陣、構え――その両翼、打ち落として反撃もできないようにしてやりましょうとも!」
夜雀たちは矢を潜り抜けながら、空を駆けたが、不意に、見えぬ壁が現れたかのように何かにぶつかり――弾けた。
鋭い砂塵を巻き上げる突風が行く手を阻み、儘、その砂塵に磨り潰されたのだ。
「チッチ!?」
困惑の声に、砂嵐を操る陽洋は、小さく頭を振る。
「随分と賑やかなこった――霧に困ってるところ悪いが……秀吉の所までは行かせねえよ」
金の双眸で鋭く見据えるや、乾いた声音で、告げる。
恐慌に陥りながらも、夜雀どもは更に速く飛び回る。両翼より放たれた羽を、陽洋は飄々と躱す。こちらとしても視界には頼れないが、膚を掠めゆく痛みから判断し、安全な方角へと跳び退く。
彼のいた辺りの土を抉る羽の乱舞を、更なる砂塵を巻き上げ、蹴散らしながら。
「逃げたところでてめえらがどうするつもりなのか、知ったことじゃねえが――……秀吉の元で何かしでかすつもりなら、ここできっちり片付けさせてもらう」
敵の攻撃ごと、跳ね返す気概で、砂嵐を叩きつける。
チチチ……夜雀の声が、まとまり無く彼方此方で、絶え間なく続く。
それを鎮めるかのごとく。
パン、高らかな柏手が、鳴る。
しかし此度それを打ったのは、妖怪達の束ね役ではなかった。
大鎌を手に、幽玄と霧の只中に立つ青年が、双眸を月のように細めて、小首を傾いだ。昏迷の中に、同士を見出したかのような親しさで。
「雀くんたち、はじめての道は不安かい? 安心してよ、僕たちだってはじめてなんだ。そうだ、折角だし、一緒に往こう」
朗らかに、友仁は誘う。無論、如何に恐慌状態にある夜雀とて、それを信じるはずはない。彼もまた、信じて貰おうとも、思っていない。
「……途中までね」
秘密をささやくように言い、くるりと大鎌が弧を描く。それが、ぷつりと断ったのは、友仁の影――。
「いってらっしゃい」
彼が送り出した、彼の影が。
それが、自分たちを追尾する性質の力であると悟った夜雀は、散り散りに空へと散開していく。
その気配をきちんと把握して、くすりと笑んだ友仁が、
「ああ、こんな場所で鬼ごっこするのは危ないよ」
労るような声音で、告げるや。
すぅっと地を這うように進んだ影は。ふわっと膨れ上がり、霧に溶け込む。広がった網に搦め捕られた夜雀どもは、触れる影の冷たさに、震え上がる。
身体の芯から力を奪われ、力尽き落下していく仲間を横目に。何とか踏み止まった夜雀は、黒き羽を友仁に向け、放出する。
「おや」
黒い羽根に纏わり付かれても、友仁は焦らない。視界を闇に包まれようが――パラドクスが、完全視界の効果を上回るにせよ――次には『友達』が戻ってくると、知っている。
首根を狙う高速滑降、それを大鎌で庇いながら――腕を掠めゆく夜雀の姿に、微笑みを向ける。
「戻ってきてくれるなんて、嬉しいよ」
喩え一筋の朱線を、肩に走らせようとも。彼は読めぬ黒い瞳を細めた儘、再び大鎌を振るって、影を分離させる。
ヂッ、――高い断末魔が、響き渡る。
周囲の騒々しい気配にも、集中を切らさず。毒の羽矢を受け止めようとも、華楠は意に介さぬ。痛みはある。だが、この程度、恐れおののき身を竦めてしまうような脅威ではない。
一時の失明がなんだ――どうせ霧で視界は限られている。
華楠は、再び五行の印を切る。既に数体の夜雀を焼き払っている――むしろ怯えて、挙動が不確かになるのは、敵の方であった。
逃げ場など、与えません――彼女は裡で囁き、唱える。
「激しい大いなる怒りの姿をされる不動明王よ。迷いを打ち砕き給え、障りを除き給え、所願を成就せしめ給え……! 急急如律令!!」
迸るのは、現象の結果だ。猛火が突如と、夜雀を焼く。炎熱の痛みを感じた刹那には、炎に包まれている――。
陰陽木行、火行の術と不動明王火界咒にて。分子を奮い立たせて起こす熱。
華楠は方角を制御しているが、向けられる夜雀にしてみれば、突如一定範囲にいる同胞がぼっと燃え上がる。為す術も無く、焼けただれ、落ちていく。
更に――。
「猟犬の肆―――追い立てろ」
炎の獣が、躍る。赤い双眸が、爛々と、霧の中で輝く。
獲物は、黒い群れ。そこへ、獣は全身で突進する。
咄嗟に夜雀が差し向けた毒の黒羽は、獣の、夕暮れ色の炎に包まれ灼ける。
「暴れるな暴れるな」
獣――漸は、笑いながら、夜雀をむんずと掴み――地に叩きつけ、踏み抜き、首に噛みついた。弱り果てた夜雀どもは一様に彼の身体より伝わる炎に包まれ、物言わぬ炭と化す。
「さて、こんなものですか……」
身を起こした漸が辺りを見やる。あれほど煩かった雀のさえずりは、もう聞こえない。
そして残ったのは、多腕のシルエット――。
「なんてこと……!」
六欲天より降りし者『宝蔵天女』は、出くわしたディアボロス達を見つめて、険しい表情を浮かべた。
「或いは別の子達も流れ着くかもしれない。それを私は諦めない……」
彼女が見せた、刹那の逡巡、それは逃走の可否であっただろうか。否。
「ああ、だとしても、そう、――まずは仇を討ちましょう。貴方達の首ならば、十分過ぎる手土産になりましょう、喩え、収集に適さぬ、少々醜い状態となろうとも!」
宝蔵天女は覚悟を以て。
堂々と、ディアボロス達と対峙した――。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【フライトドローン】LV1が発生!
【口福の伝道者】LV1が発生!
【プラチナチケット】LV1が発生!
【土壌改良】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
括毘・漸
首を手土産?おいおい、ボクらの首はそう安いものではありませんよ。
まぁ、諦めないことは美徳ですが、退き際を見誤れば…命を落としますよ。
戦うにしても、腕が4本もあると厄介ですね。こっちは2本しかないのに。
ないものねだりしてもしょうがないので、斬り落としますか。
手数…いや腕数を減らせば、抵抗も減るでしょう。
二振りのナイフを持ち、サーベルを口に咥え、四肢を地に着け、猟犬の如く駆けて近づきます。
羽衣による妨害なんぞ、ナイフで防いでそのまま斬りかかる。
三振りの刃による滅多斬りで、腕を斬り落とす。
動けばどんどん傷が酷くなりますよ!!
日金・陽洋
仇討ち、か
それには真っ向から受けてやるが…
こっちも必死なんでな
風と砂を読み敵の動きや視界の悪さに少しでも対処
配下を呼ばれるのは厄介だが、近寄って来るならいっそ引き寄せたところで跳躍・撹乱し、一撃を叩き込む
出来るなら配下を天女まで吹き飛ばしやろうか…ちと荒業かね
厄介なのはあの腕、それに羽衣も武器になるのか
なら、後の為に隙を見て少しでも銀狼牙で裂く、或いは損傷させておこう
仲間とは連携
仲間の攻撃に追い討ちをかける、また重傷を負ったり倒れたり等、不利な状況に追い込まれないよう適時支援
秀吉の所へ逃げて、てめえらは何をするつもりだった?
こちとらとっくに多くを奪われてる
奪われたなら取り戻すだけだ
アドリブ歓迎
如月・友仁
感動したよ
君ってすごく友達想いなんだね!
影に潜むのには慣れてるんだ
視界の悪さを逆手に取りたいな
【完全視界】と、味方の戦闘音や光を頼りに
相手のいる位置、最低でも方向は常に把握
忍び足で接近してから攻撃を
どの程度目眩しになるか解らないけれど
僕の全身に死の霧を纏って、直接触れる勢いで突撃してみよう
相手の攻撃は、ジンの煙でデコイの残像を作って有効打を減らしつつ
重い一撃に絞って回避を試みる
君のお友達、沢山呼んでくれてありがとう
お礼に僕の相棒を紹介するよ
召喚した存在とは一心同体……それなら、
君のお友達が近付いてきて攻撃するタイミング……
その隙を突いて再び死の霧を浴びせれば、君を追いかける手間も省けるかな?
●蹂躙
ディアボロス達へ啖呵を切った宝蔵天女は、既に戦意を滾らせている――。
それへ向け柔和な笑みを湛え、
「感動したよ。君ってすごく友達想いなんだね!」
如月・友仁(ユアフレンド・g05963)が言う。
その本意が、賞賛なのか皮肉なのかは――天女どころか、誰にも解らなかった。
「仇討ち、か――それには真っ向から受けてやるが……」
胡乱げに敵を見やり、日金・陽洋(陽光・g05072)は腰を落とし構える。
クロノヴェーダとて仲間意識のひとつやふたつはあろう。状況的に、戦力は一体でも多く確保したかろう。実力的に――単身で逃げられる天女が、敢えて、夜雀たちを纏めて逃がそうとしたのだ。それなりの義務感などは持ち合わせているのだろう。
だからといって、此方が譲歩する理由は何一つない。クロノヴェーダを倒すことに、罪悪感も躊躇も無い。
陽洋は冷ややかな声音で、続ける。
「こっちも必死なんでな」
恨むのは自由だが、恨まれる筋合いはない――そんな意を隠さぬ。
「首を手土産? おいおい、ボクらの首はそう安いものではありませんよ」
わざとらしい溜息をひとつ、括毘・漸(影歩む野良犬・g07394)が頭を振る。
「まぁ、諦めないことは美徳ですが、退き際を見誤れば……命を落としますよ」
そんな彼の言葉に、ふ、と天女は笑った。不敵な笑みを。
「惨めな逃避行――元より、命を賭けている!」
「そうか」
空気が動く。霧が揺れ、覚悟に応じる陽洋の声は、天女の傍らで響いた。
「一気に、決める。」
聖なる風を纏った陽洋は、銀髪躍らせ、宝蔵天女へと距離を詰める。
まずは拳、鋭い爪を備えた籠手で打ち据えることによる、膚を裂く音と、骨まで響く衝動を感じつつ、陽洋は即座に地を踏み切りながら横蹴りで畳みかける。その一挙一動は一呼吸で行われ、天女は顔をしかめ、痛みに耐える。
このまま押し切ると言わんばかりの激しい乱撃の合間、息を吐く隙を見出し、天女は叫んだ。
「来たれ、夜叉衆!」
彼女の力で顕現した夜叉衆は、雄叫びをあげながら陽洋へと躍り掛かる。
己の体躯よりも太い腕が真っ正面から迫ってくれば、流石に無策で前には進めぬ。夜叉の拳は存外鋭く、掠めた風が、膚を浅く切っていく。
ゆえに彼は横に退く。退いてそのまま距離をとりつつ、再度力を籠め直す。
「秀吉の所へ逃げて、てめえらは何をするつもりだった?」
陽洋の問い掛けは、問い掛けでありながら、回答を不要とするものであった。
どんな願いを持とうが、クロノヴェーダの存在を容認できぬ。
「こちとらとっくに多くを奪われてる――奪われたなら取り戻すだけだ」
言い放ち、拳を振り抜く。夜叉は霞のように消えゆくが――同時に、霧の中に、陽洋は天女を見失う。だが、慌てることはない。
「今更怖じ気づいた……ということではないよね?」
霧の中、じっと佇んでいた友仁が、敵へ微笑む。
はっ、と目を瞠る天女は、気付いただろうか。友仁が――別の霧を身に纏っていた事を。
「君のお友達、沢山呼んでくれてありがとう――お礼に僕の相棒を紹介するよ」
死の霧、彼がそう呼ぶ、不気味なそれは。
魔人の形となって、天女へと腕を伸ばす。
「お喋りしよう。君とは話が合う気がするんだ」
死の霧はがっちりと天女の腕を掴み、その耳元に顔を近づける。秘密の語り合いでもするかのように。
褐色の膚を持つ天女が――青ざめたと解るのは、触れる霧の冷たさだろう。
「……っ!」
思わず、息を呑む。
心の芯に触れる『死』の概念は、一時的に其れの心を蝕むゆえに。
「すっかり仲良しだね」
朗らかな声で言う友仁へ――その、心の読めぬ深淵の黒い瞳を、天女はきつく睨み、恐怖を振り払うように、夜叉を招く。
魔人が消え、夜叉も消える。だが、夜叉衆は死の霧を打ち破りながら、後ろにいる友仁まで拳を振るう。彼も無防備で受け止める気は無い。再び霧を纏いながら、ふわりと後ろへ飛び退いた。
その先で、力と力がぶつかり――再び、白い霧が立ちこめる。
一時的に凪いだ空間を割るように、金色の影が、斬り込んできた。
天女が咄嗟に腕で身を庇いながら、身をかわせたのは、偶然に過ぎない。懐深くまで斬り込んできた漸は、薄く笑った。
「戦うにしても、腕が四本もあると厄介ですね。こっちは二本しかないのに」
減らせば、楽になりますかね――案じながら弧を描いた唇で、漸はサーベルを咥え、両手でナイフを構えている。その両腕を地に向け、だらりと下げながら。
「猟犬の参―――喰らい衝け」
念ずるや、走る。
獣のように、手をつき、四肢をもって跳躍し、斬りかかる。 刃に現れた犬の首が――天女の首を、狙い定めたように追う。
判断が遅れるのは、霧の所為だ。天女は、ディアボロス達全員を把握できぬまま、応戦するしかない。どこか直線的に退く動きを多用するのは、囲まれてはいけないという意識があるのだろう。だが。
デタラメの剣戟に見えるが、ゆえに躱しがたい。人らしい軌道を描かぬ彼の斬撃は、彼女の膚に次々朱線を走らせる。
回避が難しいならば、羽衣で絡めて止める――と考えたのだろう。差し出された其れを目に、漸の赤い瞳は、笑みに細められた。
邪魔をするなら裂けばいい、ナイフを思う儘に滑らせる。
「くっ――」
宝蔵天女は、顔をしかめる。斬撃は、守りを超えて、褐色の膚を苛んだ。とはいえ、羽衣は敵の武装――安易に破る事は叶わぬ。
痛みに耐えながら、彼女は硬質化させた羽衣を鋭く前へと放つ。
紅く変色した布槍は、漸の懐を穿つ。
だが、獣のように跳躍した彼は、そのまま前へと追い縋った。
「動けばどんどん傷が酷くなりますよ!!」
三つの刃の蹂躙に、天女は貌をしかめながら、大きく跳び退く。
されど、霧に紛れるには難しい濃い血の臭いが。辺りに充満して、いた――。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
効果1【平穏結界】LV1が発生!
【落下耐性】LV1が発生!
【腐食】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!
【ダメージアップ】がLV2になった!
音羽・華楠
……宝蔵天女。
自分を悲劇の主人公と錯覚して、一人で盛り上がらないでもらえます?
……とにかく、引き続き霧が厄介です。
敵の位置が認識し難い以上、攻撃の機会は少なくなってしまうでしょう……。
……その限られた攻撃の機会、宝蔵天女の位置を運良く捉えられた時に、確実により大きな手傷を与えないとなりません。
ならば使うべきは――《雷幻想・閃耀》!
私の現状最強のパラドクスで勝負です。
【呼吸法】で肺活量を高め、【風使い】で周辺の空気を集め、宝蔵天女の匂いから位置の捕捉を試みます。
精神侵蝕の後光を放つなら、逆にそれが目印になりませんかね?
後光の効果自体は【精神集中】して抵抗を。
霧に阻まれ、効果範囲は狭まってるかも?
金刺・鞆
仇とは。ずいぶんと義理堅いくろのべーだ、です。
その気概は厭うものではございませんが、なれらを見過ごす理由には成りえない。諦めよ。そして、覚悟を。われらのくびはそう易々ととれるものではありませぬ。
変わらず霧で視界が悪いならば、それを活かして攻撃いたしましょう。注意を引くための通常の矢を番え、目くらましとすべく射掛けます。
そして、その合間に氷の矢を交えれば――防ぐことは困難なはず。
後光差す多腕の……まるで神仏かのごとき。……いえ、いえ。矢を己の手脚に突き刺してでも正気を保て。これは敵、一介のくろのべーだに過ぎぬ。
父を、母を、兄を、皆を取り戻すため廃すべき、敵である!
……この先にあるやも知れぬのだ。
●滅却
傷つきながら、宝蔵天女は迫り来るディアボロスを睨み据える。
「こんなことでは、皆に顔向けできませんね……しかし、まだ」
「……宝蔵天女。自分を悲劇の主人公と錯覚して、一人で盛り上がらないでもらえます?」
濃い霧の中、冷ややかな声が、天女を射貫く。
音羽・華楠(赫雷の荼枳尼天女・g02883)は凜然と血の香漂う方向を見つめ――なれど、周囲の状況に未だ注意を払っていた。
(「……この限られた攻撃の機会、宝蔵天女の位置を運良く捉えられた時に、確実により大きな手傷を――」)
見通せぬ霧は、つくづく厄介だ。
今更、天女が逃げるとは思わぬが、あまり時間は掛けたくない。華楠が敵影を探り、距離を測っていると知ってか知らずか。
同じ影を目で追いながら、弓を番えた金刺・鞆(虚氏の仔・g03964)は、ぽつりと零す。
「仇とは。ずいぶんと義理堅いくろのべーだ、です」
クロノヴェーダも様々だ。下位の者など、使い捨ての兵と見なしているものもいれば、こうして仇などというものもいる……しかし。
「その気概は厭うものではございませんが、なれらを見過ごす理由には成りえない……諦めよ――そして、覚悟を。われらのくびはそう易々ととれるものではありませぬ」
毅然と言い放つや、射る。
びぃんと弦を鳴らし、飛んだ矢は、天女の足元に刺さった。柔らかな土の音を聞き、鞆は次を射掛ける。
いずれも、パラドクスならぬ普通の矢であった。天女を釣り出し、注意をひく――いっそ安堵しながら仕掛けてくるならば、狙い通り。
多腕の、独特なシルエットが――矢が飛んできた方向を宛に、近づいてくる。臆さず、正面に弓を引き、鞆は両の眼で、しかと敵の姿を捉えた。
「……いま」
左手を解き放てば、すさまじい勢いで矢が飛ぶ。
「なんの、こんな矢で私が傷つけられると……」
今までの矢と同じような感覚で払い除けようとして、天女は驚愕する。腕を掠め、肩を貫いていた、氷の矢に。鋭利な冷たさと、痛みに、目を瞠る。
震えながら矢を握り、天女は鞆へと怒りを宿した笑みを向ける。
「ああ……やってくれましたね」
刹那、後光が差す――。
美貌をこれ以上無く神々しく魅せる、屈服の力。神仏に親しい鞆は――それを邪なるものと認識しながら、一時陶然と、見つめてしまう。
(「後光差す多腕の……まるで神仏かのごとき……」)
嘘でも、その美貌は慈しみを湛えているから。
否!
鞆は叫んで、頭を振った。
「……いえ、いえ! これは敵、一介のくろのべーだに過ぎぬ――父を、母を、兄を、皆を取り戻すため廃すべき、敵である!」
ぎゅっと鏃を握り締める。痛みが、正気を引き戻すや、すぐに彼女は矢を番う。再びのパラドクスの矢なれば。この距離から、外すことも無い。
同時、天女の背負う輝きは、霧の中で拡散し、更に力を増すようだ――。
両者の動きが、凍り付いたように止まる。
そこに、冷静な声音が響く――。
「ええ。一介のクロノヴェーダには、過ぎた光です」
後光を目印に、印を切り――術の安定と補助を担う妖精たちを傍らに、華楠が両手を前へと差し出す。
真摯な橙色の瞳は、今確かに、天女の横顔を捉えていた。
「ト ホ カ ミ エ ミ タ メ――汝、至高なる雷の神威を識れ……!!」
繊手より紡がれるは、凄まじき光線。
霧を灼くほどの雷電は、耳を劈く咆哮とともに、天女を呑む――。抵抗する腕も、羽衣も、何もかも。
「あああぁァ――!」
天女の絶叫ごと光は掻き消し――影も残さず、葬り去った。
戦いが過ぎれば。
さらさらと、川の流れる音が聞こえてきた。
相変わらず辺りは濃い霧に包まれた儘であるが――不意な違和感に駆られて、華楠は顔をあげた。
漂う気配が、少々異なる気がする。土の臭いのような……やはり、土地の持つ気配というべきだろう。
「あれは……」
いつの間にやら、踏み越えていたのか、ディアボロス達の視界に、大きな建造物のシルエットが浮かんでいた。らかに敵襲に備えたとシルエットだけでも解る堅城――。
(「……この先にあるやも知れぬのだ」)
鞆は、裡で囁く。
故郷が――まで続くかは、まだ解らぬ――だが、至るための道はあるだろう。
そんな心を嘲笑うかのような、厳めしい城を前に。
次はこれを乗り越えるのだと――帰路へ、つく。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【土壌改良】がLV2になった!
【寒冷適応】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】がLV2になった!
【命中アップ】LV1が発生!