【平安鬼妖地獄変奪還戦】夏の夜も涼しかりけり月影は(作者 月夜野サクラ
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#平安鬼妖地獄変  #【平安鬼妖地獄変奪還戦】賀茂黎瞑  #平安鬼妖地獄変奪還戦  #ファーストアタック 

 西暦九七二年、平城京・朝堂院――。
 月光染み渡る内裏は、慌ただしい気配に包まれていた。廊下をどたどたと行ったり来たり走り回るのは、絵巻物から飛び出して来た墨絵のような動物達だ。
「黎瞑さまぁ、此度の戦について、各地の妖怪へはどのようなご指示をなさいますか」
「みな、浮足立っておりますれば、今こそ、黎瞑さまのお言葉を頂きたく」
 黎瞑さま、黎瞑さま。
 みな一様に困った顔をして、動物達はかしましく声を上げ続ける。
「何やら都の四方で怪しげな勢力が動いているとの報告も相次いでいるのです」
「河太郎翁からは『もはや助力無用。われらはわれらのできることをする』との伝言が……」
 黎瞑さま、黎瞑さま。
 呼び掛ける動物達の声を、聞いているのかいないのか。賀茂黎瞑と呼ばれた陰陽師は、淡々と――冷淡と思えるほどに抑揚のない声色で、応じた。
「全て命令通りに、速やかに行うように伝えるがいい」
「黎瞑さま……」
 そう言われましても、と、動物達は困り果てた様子で諸手を挙げた。命令通りにと言われても、彼らはその命令を未だもらえていないのだから。

●さきぶれ
「始まったな。歴史の奪還戦……今度は、キョートを取り返す戦いだ」
 迫り来る決戦の気配に氷晶の瞳をぎらつかせて、ハルトヴィヒ・レーヴェンブルク(殲滅のカノーネ・g03211)は言った。八月二十八日、歴史の奪還戦――新たな新宿断層碑文の出現に、新宿駅グランドターミナルの構内は俄かに色めき立っている。
「作戦の話をする前に、現状を確認するぞ。まず、今回のディヴィジョンだが……」
 『平安鬼妖地獄変』を支配する断片の王、『安倍晴明』は、自身のディヴィジョンを隣接するディヴィジョン『天正大戦国』の『織田信長』に売り渡そうとしているようだ。もしこれを許せば、平安鬼妖地獄変は天正大戦国に統合され、同ディヴィジョンが大幅に強化されることは避けられないだろう。勿論、京都や奈良の奪還が遠のくことは言うまでもない。したがって、そうなる前に安倍晴明を討ち、平安京と周辺地域を最終人類史に奪還する必要がある。
 平安京に元からいた鬼や妖怪達に加え、戦国の天魔武者達をも相手取る戦いは一筋縄ではいかないだろうが、これらの戦力を可能な限り事前に削っておくことで、戦争の機先を制することができるはずだ。
「お前らには、ジェネラル級クロノヴェーダの……『賀茂黎瞑』がいる、『朝堂院』に向かってもらう。近くにはセイメイがいる『大極殿』もあるらしい。……ただ、」
 知ってる奴もいるかもしれないが、と言い置いて、ハルトヴィヒは続けた。
「レイメイは、ディヴィジョンを売り渡すっていうセイメイの企みに気づいたせいで、首根っこを押さえられちまったらしい。今じゃ完全にセイメイの操り人形で、ろくに会話も成り立たないような状況だそうだ」
 彼の周りで雑用を働く妖かし達も不審には思っているものの、黎瞑の身に何が起こったかまでは理解していないようだ。今回の作戦ではこの黎瞑配下の妖かし達と交戦し、その戦力を削ぐことが目標となる。

「目的地は、敵陣のど真ん中だからな。当然、行くのも帰るのも危険がついて回る……くれぐれも、引き際を見誤るなよ」
 誰より引き際を理解していなさそうな顔で、少年は言った。その瞳には、今もなお消せない憤怒が燃えている。
「世界のどこだろうと関係ねえ――クロノヴェーダは一匹残らず、ぶっ潰す。ヘイアンキョウ、取り返しに行くぞ」
 あなうるはしき、千年の都。その歴史と尊厳を取り戻すための戦いが、始まろうとしている。


→クリア済み選択肢の詳細を見る


●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
3
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【怪力無双】
1
周囲が、ディアボロスが怪力を発揮する世界に変わる。全力で力仕事をするならば「効果LV×3トン」までの物品を持ち上げる事が可能になる。
【熱波の支配者】
1
ディアボロスが熱波を自在に操る世界になり、「効果LV×1.4km半径内」の気温を、「効果LV×14度」まで上昇可能になる。解除すると気温は元に戻る。
【モブオーラ】
1
ディアボロスの行動が周囲の耳目を集めないという世界法則を発生させる。注目されたり話しかけられる確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【壁歩き】
2
周囲が、ディアボロスが平らな壁や天井を地上と変わらない速度で歩行できる世界に変わる。手をつないだ「効果LV×1人」までの対象にも効果を及ぼせる。
【活性治癒】
1
周囲が生命力溢れる世界に変わる。通常の生物の回復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」し、24時間内に回復する負傷は一瞬で完治するようになる。
【使い魔使役】
1
周囲が、ディアボロスが「効果LV×1体」の通常の動物を使い魔にして操れる世界に変わる。使い魔が見聞きした内容を知り、指示を出す事もできる。
【操作会得】
1
周囲の物品に、製作者の残留思念が宿り、ディアボロスの操作をサポートしてくれるようになる。効果LVが高い程、サポート効果が向上する。

効果2

【能力値アップ】LV3 / 【命中アップ】LV2 / 【ダメージアップ】LV1 / 【ガードアップ】LV1 / 【フィニッシュ】LV1 / 【反撃アップ】LV1 / 【ドレイン】LV1 / 【グロリアス】LV1

●マスターより

月夜野サクラ
お世話になっております、月夜野です。
以下依頼の補足となります。
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●選択肢について
 集団戦①のみのシナリオとなります。
 目的は賀茂黎瞑配下の『丑三つ刻の怪異・『墨』色の妖かし』の撃破ですが、敵の数が多く、すべてを倒すことは不可能なため、ある程度の損害を与えたら撤退してください。
 集団戦ではありますが、戦争の前哨戦ということで、平安京奪還にかける皆様の想いなどがあれば積極的に描写していきたいと思います。

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●時間帯と場所
 時間帯は夜半。
 場所は賀茂黎瞑のいる『朝堂院』の内部となります。

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●諸注意
・必要成功数を大幅に上回る場合、プレイングの内容に問題がなくても採用できない場合がございます。
・プレイングの受付状況については、MSページも合わせてご確認ください。
・基本的に「個別採用」を予定しています。が、まとめた方がよさそうだなと思ったらまとめる方向に転換するかもしれません。特定の同行者以外の方との絡みがNGの場合は、お手数でもプレイング中でお知らせ下さい。
・武器(アイテム)や技能のみで、パラドクスのような超常的な効果(敵へのダメージ、敵からの攻撃の回避を含む)は得られませんのでご注意ください。
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それでは、皆様のご参加をお待ちしております!
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このシナリオは完結しました。



発言期間は終了しました。


リプレイ


朔・璃央
双子の妹のレオ(g01286)と

京都かぁ…
修学旅行で行った事があるぐらいだっけ
舞台から飛び降りたりするんだよね
そんな気分でディヴィジョンを売り渡すみたいな話なのかな?

でも日本の一部を取り戻せるとなると
やっぱり気が引き締まる思いだよ
可愛らしい敵には申し訳ないけど
間引かせて貰わないとね

敵の数も多いし孤立してるやつを潰して回ろうか
夜半の建物なら身を隠す場所も多そうだしね
物陰に隠れながら少数の敵を探して
呼吸を合わせて奇襲をしかけよう

黒を塗りつぶすにはやっぱり白で
背中はレオに任せて前へ
白く固めた拳で一匹ずつぶん殴っていこう
倒し終えたらまたすぐ隠れて次を探そう

ある程度間引いたら撤退を
本番はまだ先だからね


朔・麗央
双子の兄リオちゃん(g00493)と

歴史の重みを感じる京都だけれど
こんな形で来ることになったのはちょっぴり不本意かな
きっちり取り戻した後、ちゃんとした形で来たいね
リオちゃん、舞台から飛び降りるのは京都と言っても清水だからね?
このお寺じゃないからね

鳥獣戯画が動いていると思うとちょっと可愛く思えちゃうけど
油断しちゃダメだよね
物陰に潜みつつ少数でいる個体を狙って確実に減らしたいね
敵を発見したら飛翔で距離を詰めて2人でせーので一緒に攻撃するね
リオちゃんが前に出た時は背中をカバーするよ

ある程度減らしたら無理はせずに撤退しようね
ちゃんと取り戻す為の準備の戦いなんだから
出すぎ無い様に気をつけないとだもんね


 大路を抜ける夜の風は、青竹のカラカラと擦れ合う音をどこからか運んでくる。厳かに聳え立つ社殿は偽りの歴史の中にあってもなお美しく、生まれ育ったこの国の歴史を否応なしに想わせる。
 朝堂院へと続く小道を踏み締めて、朔・璃央(昊鏡・g00493)は言った。
「京都かぁ……確か、修学旅行ぶりだっけ」
「うん。せっかくの京都だけど……こんな形で来ることになるなんてね」
 不本意そうに唇を尖らせて、朔・麗央(瑞鏡・g01286)が応じた。それはほんの数年前の出来事に過ぎないのに、もう随分と昔のことのように思われる。それはきっと、二人がこの一年と少しの間に目にし、耳にしてきたものが、それだけ多いということなのだろう。
「舞台から飛び降りたりするんだよね。そんな気分でディヴィジョンを売り渡すみたいな話なのかな?」
「なのかなあ…………うん? リオちゃん、それは清水寺の話だからね……? ここじゃないから、しないでね」
 冗談のような言葉を半ば真剣に付け加えて、麗央は数歩先を行く兄の背中を追いかける。広げた純白の翼は月虹に染まって、太陽の下で見るそれよりも随分と蒼く映った。
 分かってるよと手短に応じて、璃央はすっと背筋を伸ばした。
「特に馴染みがあるわけじゃないけど……日本の一部を取り戻せるかもってなると、やっぱり気が引き締まる思いだよ」
「うん。……きっちり取り戻したあと、今度はちゃんと来たいよね」
 たとえそれが、最終人類史という青海に浮かぶ小さな離れ小島でも。どちらからとなく差し出した拳をこつんと打ち合わせて、兄妹は道の先へ向き直った。砂の小道にぞろぞろと列を成して向かってくるのは、帽子をかぶった兎に袈裟をまとった蛙など、鳥獣戯画を彷彿とさせる墨絵の獣達だ。
「ちょっと可愛いけど、可愛いからって油断しちゃダメだよね!」
「そうだね。ここでしっかり間引かせてもらおう」
 せーのと声を掛け合って、広げた翼を二人同時に羽ばたかせる。夏も盛り、にもかかわらず肌寒いほどの夜気を裂いて、双子は一気に路を突き抜けた。その速さにどよめいて、列の先頭の獣達があたふたと身構える。
「こっちにもいたぞ!」
「でぃあぼろすだ!」
 口々に叫んでこちらを指差す動物達は、明らかに動揺しているようだった。指示を仰ぐべき相手が機能していないのだからそれも無理のない話だが、どんな姿でもクロノヴェーダはクロノヴェーダ――少々可哀想だが、ここで潰えてもらうとしよう。
 交わす言葉は多くなくとも、以心伝心。ちらりと視線を合わせたら、ショータイムの始まりだ。
 背中の翼を一打ち、ギュンと加速して、璃央は敵の戦列を飛び越えた。握り締めた右の拳は喰らい取り込んだ仇敵の力によって、白磁の如く凍っていく。
「黒を塗り潰すには、やっぱり白でしょう」
 敵の頭上で翼を畳み、自重を乗せて叩き込んだ拳撃は墨絵の獣を脳天から貫いた。一瞬、無防備になった背中を狙って数匹の獣が躍り掛かったが、言うまでもなく麗央がそれを許さない。輝く魔弾に撃ち抜かれた獣達がただの墨に還るのを見送って、璃央は深緑の混じる金髪を極めて無造作に背に流した。
「孤立してる奴から潰して回ろう。ここを抜かれても、他の人達だっているしね。ただし……」
「分かってる。出過ぎないように、でしょ?」
 何事か言いかけた兄の口許に人差指をぴたりと添えて、麗央は悪戯な笑みを浮かべた。無理は禁物、とはいえ気合はまだまだ十分――時に暗がりに身を潜め、時に月光の庭に躍り出て、二人きりの兄妹は墨絵の獣達を追っていく。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【怪力無双】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!

永辿・ヤコウ
僕は記憶を失くしてしまったから
長針を揮う度に呪いに蝕まれてしまうから
どの地が故郷なのか
思い出せないのだけれど

耳に尻尾持つ姿を見れば
ね、僕達、似た者同士ですね、と
仄かに笑みが浮かぶ

こんばんは
美しい月夜ですね

上空から降り立ち
長閑な挨拶

けれど油断はせず
動物達の動きを良く見て
囲まれないよう
常に留意

間を与えず詠唱
萌黄襲で春野の幻へ誘おう
いっときの眠りでも
戦庭での隙は命取りだと言わずと知れたこと
夢の中で果てるなら
戯画めくあなた達のそのお姿も
楽しい夢で閉じれるでしょうか

おやすみなさい

可能な限り殲滅を図るけれど
建物の場所や見取りを確認しながら
深追いはせず
新たな敵陣を呼ぶ気配で撤退
退路を断たれる前に去りましょう


田淵・あゆみ
なまじっか鋭かったために思考まで縛られちまうなんてなぁ…。
やってきた事を思えば、人を呪わば、ってやつだ。陰陽師なら良く知ってるだろーに

正面からではなく、少人数から狙う。気がついたらどんどん居なくなってるなんて、涼しくなって良いだろ?

【狂騒ダイバー】でコネクタあちこちに生やしてシールド延ばして移動、建物の影や屋根から攻撃
足や腕に絡めて吊り上げたり、首絞めたりとアサシンぽく動くよ
捉えた敵ごと振り回して攻撃したりも

反撃は壁歩きや飛翔など使って出来るだけ避ける様に動く
敵を盾にしたりもするよ

囲まれそうになったら移動に使える効果は全部使って脱出


藤永・えみり
平安の地……京都は日本文化を愛した母が最も好きだった土地です。
それを他のディビジョンへ売り渡すなど、許せるわけもありません!
絶対に取り戻りして見せます。

そのためにも、まずは前哨戦。少しでも多くの敵を打ち取らなくては。
『墨』色の妖かし、見た目はなんとも愛嬌がありますけれど、大分強力な呪いをまき散らせてくるようですね……でも、当たらなければどうという事はありません。
T.M.P-C007“Totentanz"。リミッター解除した全身義体のスピードに電磁加速ガジェット“迅雷”の加速を載せ、停止と急加速の緩急を織り交ぜて敵を引き付けては回避しつつ、“Drachenklaue R/L”の銃撃で仕留めます!


 どたどた。
 ばたばた。
「黎瞑さまは、いったいどうしてしまったんだろ」
「困ったなあ」
「困ったなあ」
 砂利を敷いた前庭を、墨絵の蛙やうさぎ達がぴょんこ、ぴょんこと跳ねていく。彼らは皆一様に首を傾げたり、両手を頭に当てたりして、何やら考えあぐねているらしい。前庭を縁取って延々と連なる壁の上からその様子を窺って、田淵・あゆみ(人間のサウンドソルジャー・g06882)は口を開いた。
「なまじっか鋭かったばっかりに、思考まで縛られちまうなんてなぁ……」
 哀れと言うべきか、なんと言うべきか。嗄れて掠れた歌い手の声は、平安の夜天に淋しく融ける。もっともクロノヴェーダのこれまでの行いを思えば同情の余地はないのだが、それが信じた味方からの仕打ちだということにいささか不憫を感じないこともない。
「人を呪わば、ってやつだ。陰陽師なら良く知ってるだろーに」
「……安倍晴明」
 ぎり、と奥歯を噛み締めて、藤永・えみり(ヴンダー・カンマー・g01322)はこの改竄世界史の元凶たる陰陽師の名を呼んだ。平安鬼妖地獄変――その主たる領域である京都は、日本という国の文化を好んだ彼女の母が最も愛した場所だ。偽りに歪められた世界とはいえ、それを他所に売り渡すなど許せるはずもない。
「絶対に取り戻してみせます……!」
 握り込んだ指の内側で、機械の身体がほのかな熱を帯びる。まずは前哨戦――復讐者達の勝利を確実なものにするためには、今日この場で少しでも多くの敵を討ち取らなくてはならない。整った眉をキッと吊り上げて、えみりは自らを鼓舞するように言った。
「見た目はなんとも愛嬌がありますけれど、容赦はしません!」
 誰からとなく頷き合って、復讐者達は動き出す。真白のシャツも小麦の膚も蒼く染め上げる月光の中で、あゆみはただ、広い前庭へ手を伸べた。
「――踊るぜ」
 墨絵の怪異が跋扈する、蒼き月下の百獣夜行。奪還の狼煙を上げるのに、これ以上のステージはない。指先より射出したコネクタを漆喰の壁に打ち込んで、月に尾を引く影から影へ――ワイヤーアクションの要領で飛び回り、男は建物の屋根に身を潜める。そして眼下に見る道を跳ねてゆく一匹の蛙の首に、伸縮自在のコネクタを絡ませた。
「グエッ!」
 潰れた蛙のような――否、蛙なのだが――声を上げて見悶えるその首を締め上げながら、あゆみは波打つ前髪の下、覗く瞳でニヤリと笑んだ。
「気がついたらどんどん居なくなってるなんて、涼しくなって良いだろ?」
 どうせ凉を求めるのなら、脅かされるより脅かす方がいい。限界を迎えた怪異が墨の滴に変わってぱしゃりと散れば、夥しい呪詛が舞い上がって男は反射的に距離を取る。しかしシャツの裾に撥ねた黒い染みは、炎の如く燃え立ちながら白い繊維を蝕んでいく。
 今の今までどこに潜んでいたのだか、木々や植え込みの暗がりからは次々と墨絵の獣達が飛び出してくる。舌打ち一つ燻る呪詛を揉み潰して、あゆみは次の獲物へと向き直った。
「数の少ないとこから狙ってくぞ」
「はいっ!」
 手短に、けれども力強く応じて深呼吸すると、えみりは全身を形作るシステムのリミッターを解除する。細くしなやかな肢体を中心に広がる電磁フィールドは、瞬きをする間もなく少女を獣達の只中へと連れていく。
「随分と強力な呪いを撒き散らしてくるようですが、当たらなければどうということはありません!」
 長く豊かな金髪を靡かせて、急加速したかと思えば急減速。緩急を織り交ぜ紡ぐ死の舞踏に、獣達は追従するだけでやっとのようだった。両の手に握った一対の銃剣は淀みなく、獣達の額を撃ち抜いていく。弾け飛んだ獣の残滓はそれだけで強力な呪をまとっているが、直撃さえ躱せば致命傷にはならないはずだ。
「曲者だ!」
「皆の者、黎瞑さまをお守りせよ――!?」
 大きな耳をそばだてて、墨絵の狐達が吼え立てる。群れる獣達を覆うように伸びた影には、彼らのそれより何倍も大きく、しかし形はよく似た獣の耳がついていた。やあ、と柔らかに呼び掛けたのは、永辿・ヤコウ(繕い屋・g04118)だ。
「こんばんは。美しい月夜ですね」
 真一文字に伸びた墨が一閃、足下を掬っても、安穏と語り掛ける声に棘はない。囲まれぬよう獣達の群れから飛び退いて壁上に登り、美しい狐は唇に淡い笑みを刷いた。
「ね、僕達――似た者同士ですね」
 吸い込まれそうな漆黒の毛並みに、ふさふさと膨らんだ長い尾。相対する獣はまるで違う世界の住人であるにもかかわらず、その姿にはどこか鏡の中の自身にも通じるところがあるような気がする。
(「どこから来て、どこへ行くのか――僕には思い出せないのだけれど」)
 長針を揮うたび、思い出すどころかいっそう深く忘れていく――そんな心地だ。記憶を蝕む呪いは、ヤコウから故郷の景色も、風の匂いをも奪い去ってしまった。的を射ない主君の指示に右往左往する動物達の姿は、帰る場所を知らずに見覚えのない街を逍遥する自分に重なって、少しばかり面映ゆい。
 けれど。
「おやすみなさい」
 季節外れの紅葉が、陽色に染めた薄衣が、くるりと緋い軌跡を描いた。紡ぎ出すのは、春宵の幻――穏やかな風に吹かれて揺れる野は、表萌黄に裏女郎花の色鮮やかな襲だ。辺りを満たす花の香は、獣達を心地よい眠りの中へ誘っていく。
(「たとえいっときの眠りでも、戦庭での隙は命取り……ですよ」)
 絵巻物の戯画のようなその姿が、夢の住人のそれであったならどんなにかよかったのに。少しだけ寂しそうに眦を下げて、青年は微笑した。
「夢の中で果てるなら、あなた達のそのお姿もきっと――」
 楽しい夢のまま、閉じられる。醒めない眠りへ落ちた獣達は融けるように形を失って、玉砂利の隙間に染み込んでいった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】がLV2になった!
【壁歩き】LV2が発生!
効果2【グロリアス】LV1が発生!
【命中アップ】LV2が発生!

御森・白露
く、はは!
なんとまあ、右往左往の妖かし共よ。
ふむ、命が無くば動けぬと言うなら、我が令してやろうではないか。
――抗え、そして往ね。

夢幻を断つは我が繊月よ。五百重の波が、かそけき墨を飲み込み喰らう。
触れれば忽ち【両断】する、【斬撃】の波濤にて墨の妖を諸共掻き消す。
【呪詛】と【オーラ操作】の併用で攻撃範囲を拡張、より広く、より多くの敵を巻き込んでくれようぞ。
あまり深追いはせぬ。囲まれる前に退散せねばな。

うむ、今宵は良き月が浮かんでおるわ。
妖しく輝く桂月の、皓皓たる月光が実に見事よ。
主らも風情を嗜むだけの余裕を持たぬか?
なに、末期の一刻ぐらい自由にしてもよいじゃろて。


青天井・イカス
ディヴィジョンの譲渡ネぇ
ソンな大層ナ事考え付ク野郎ノ顔を拝みニ行きてェトコだガ、ソレぁ28日のお楽シミにシとクカ
先ズはソノための下準備しネェとナ

困惑しテル雑兵狩リ程楽ナ仕事はネぇナ
頭目ガ傀儡にナッちまッタのハ気の毒だガ、仕事は仕事ダ
掃除さセてもらウゼ
闇に乗ジて孤立シた奴ラから狩ッテいく戦法
アサシネイトキリングで不意打チ闇討チ奇襲上等デ、確実に
集団で一気に爆ゼられチャ面倒くセぇガ、1・2体ずツなラ被害抑えツツ減らシてイケるダロ
効率は良クねェが、何ヨリ『減らす』のガ目的だしナ
使エる時間ハ最大限使ッテ
孤立シテるのガいナけリャ、端のヤツかラ順ニ

一定数倒しタ、或いハ、自他の復讐者の被害率にヨッて撤退スる


「く、はは! なんとまあ、右往左往の妖かしどもよ」
 墨絵の獣達は数こそ多いものの、お世辞にも統率が取れているとは言えない。あちらで指示が出たと思えば、こちらですぐさま引っ繰り返る――混迷を極める敵陣営を一瞥して、御森・白露(放浪する転寝狐・g05193)は嗤った。その声に同意を示して、青天井・イカス(このうえなく・イカス・g02133)もまた冷やかに言い放つ。
「困惑しテル雑兵狩リ程楽ナ仕事はネぇナ」
 指示を仰ぐべき頭目が傀儡にされてしまったのは気の毒と言えなくもないが、同情して世話を焼くために遥々時を超えてやってきたわけでもない。クロノヴェーダと名指される者達は、例外なく敵だ。
「掃除さセてもらウゼ」
 挑むように言い放った顔の下半分は、不気味なマスクに隠れて見えない。けれども落ちかかる前髪の下に光る瞳は、確かに笑っていた。
「ディヴィジョンの譲渡ナンて、大層ナコト考え付ク野郎がイたモンだナ」
 クロノヴェーダの思考などは理解りたくもないが、本当に彼らのやること成すことは度し難い。やれやれとフードを引き下ろせば、裏地の鮮やかなパープルが青白い月光を反射して淡く艶めいた。
「今スグにデもソノ顔を拝みニ行きてェトコだガ、ソレぁ先のお楽シミにシとクカ」
 今日のところは下拵えまで――錆びたバールを肩の上でとんとんと跳ねさせたかと思うと、イカスは夜天を目がけ跳躍した。背に引いた外套の鍵裂きの裾は、夜を貫く蝙蝠の翼にも似ている。
「闇討チ、奇襲、上等ダロ」
 闇色の衣がひらり舞い、煌めく紫紺に獣達が気づいた時にはもう遅い。烏帽子を被ったウサギの首に屈曲したバールの先端を引っ掛け、捩じるようにして巻き取れば、圧迫されて歪んだ獣の身体が限界を超え、パンと弾けて墨色の液体を撒き散らす。袖を焦がしたその滴を振り払って、イカスは群れ成す獣達をじろりと睨んだ。
(「集団で一気に爆ゼられチャァ面倒くセぇナ」)
 玉砂利を染める漆黒は、精神を蝕む極めて強力な呪詛だ。一般人はおろか復讐者であっても、まともに受ければただでは済まないだろう。
 ならば一匹ずつ、着実に仕留める。効率こそよくないが、一匹でも多く敵の戦力を削ぐことが作戦の成功につながるのだ。
 追い立てられ散り散りになった獣達を追いかけて、黒ずくめの男は戦場を軽やかに跳ね回る――その一方。
「命がなくば動けぬと言うなら、我が令してやろうではないか」
 前庭の中心に堂々と立ち、白露は刀の鞘を払った。その刀身は、黒炎に似た禍々しい呪怨をまとっている。
「夢幻を断つは我が繊月よ――」
 胸の前に構えた刀身から、立ち昇るのは呪詛の刃。宵闇に爛々と輝く琥珀の瞳には、獲物を前にした狐の獰猛さが垣間見える。墨絵の獣達をぎろりと睨めつけて、真白の妖狐は吼えた。
「抗え――そして往ね!」
 ひらりと舞った長い袖が、月虹を照り返して幽かに光った。瞬間、幾重にも折り重なる呪刃の嵐が獣達を飲み込んでいく。その有り様のかそけきことは、水に融けた一筋の墨の如く――向かってくる獣達を次々と夜の闇に還し、狐は天頂を仰ぎ見た。
「今宵は良き月が浮かんでおるわ」
 皓々たる桂月の見事は、夜半のいくさ場を皮肉なほどに美しく、そして妖しく照らし出す。惑う獣達に憐憫とも冷嘲ともつかぬ笑みを向け、白露は言った。
「主らも風情を嗜むだけの余裕を持たぬか? ――なに、末期の一刻ぐらい自由にしてもよいじゃろて」
 墨絵のウサギの黒々とした瞳が、ぐるりと巡って天を仰ぐ。しかし月を捉えるより早く、儚い墨絵は夜露となって消えていった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【使い魔使役】LV1が発生!
【モブオーラ】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!
【フィニッシュ】LV1が発生!

篝・ニイナ
【白花】

月浮かぶ夜に踊る絵巻の住人
戦場じゃなかったら酒のアテになったかも
己も鬼人といえど、過去の記憶はない
だからこの時代にそれほど特別な感情はないのだが
それでもこの千年の京を取り戻すために

絵みたいで良かったねぇ
きゃんきゃん吠える白い仔犬とかだったら斬れなかったかも
なんて白い少年を背に、軽い声音とは対照的に躊躇なく刀を振るう
角を齧るだなんて、ああこわいこわい

血は通わずとも茹だる墨があるのは都合がいい
ふつふつと、ふつふつと

朗々と響く少年の旋律
月夜に魔法と命の残滓が煌いて
…ああそうだ、今度和歌でも教えて
彼に詠んでもらおうかな

情報共有、連携重視
残留効果を使用して移動や回避を行う
引き際を見て撤退


ラルム・グリシーヌ
【白花】

墨色の動物達
可愛いくても容赦はしないよ
だって此処は彼の所縁ある場所かもしれない
そう思えば心は奮い立つ
奪われた分、必ず奪い返すから

背後から耳を擽る聲に
拗ねた様な色を纏わせた言を零す
仔犬だからって甘く見たら
その角、齧られちゃうよ!
…斯く言う俺も大きな黒猫の墨絵は戦い難いけど

指先を弦に絡め爪弾き
傍らの鬼人を鼓舞する唄を
此の地の穢れを拭う音律を
声高く奏でよう

君が望む音を響かせたいんだ
…恋物語はまだ無理だけど

灰すら残さず灼き尽くす
鬼人の刃の軌跡をなぞるように
熱の花を招き
閃く刀身に耀く花弁を映し乍ら
敵描く筆跡ごと呑み込む焔の花嵐を咲かせる

連携重視
回避には飛翔
各個撃破しつつ
退路確保危うくなる前に撤退


 風を鳴かせて落ちる刀が、墨絵の獣を両断する。儚く弾けた墨は点々と飛び散って辺りに呪詛を振り撒いたが、何――怨炎ならば負けはしない。
 玉砂利に燃える呪詛を草履の踵で踏み消して、篝・ニイナ(篝火・g01085)はくすりと笑んだ。
「月浮かぶ夜に踊る絵巻の住人、か。戦場じゃなかったら酒のアテになったかもな」
 宵闇に燃え立つような和装を翻す鬼人は、相も変わらず掴みどころなく飄々としていた。けれどもその声音には、いつもの彼にはない幽かな寂寥が漂うような気がして――ラルム・グリシーヌ(ラメント・g01224)は小さく息を呑んだ。煌々と照らす月明かりの中、ほとんど一つに重なった二つの影がくっきりとして、長い。
(「ここは彼に所縁ある場所……かもしれない」)
 本当のところは、何も分からない。記憶を失くした青年はただ鬼人であるというだけで、別にこの時代にも特別な思い入れはないのだと言った。けれどこの日出ずる国に生を受けた以上、まったくの無関係とも言えないのだろう。そう思えば、自ずと心は奮い立つ。――けれど。
「絵みたいでよかったねぇ」
「え?」
 思いのほかに呑気な声が、耳元をくすぐった。一瞬何を言われたのか分からずに、ラルムは前を向いたまま橄欖の瞳を瞬かせる。肩越しに見やれば『アレ』と墨絵の獣達を指差して、ニイナはニヤリと糸切り歯を覗かせた。
「きゃんきゃん吠える白い仔犬とかだったら、斬れなかったかも」
「――何を言うかと思えば」
 心配したのにと唇を尖らせて、ラルムは白藤の琴に指を掛けた。確かめるように爪弾けば、ポーンと深く柔らかい音色が平安の夜に鳴り渡る。
「仔犬だからって甘く見たら、その角、齧られちゃうよ!」
「齧られる? ああ――こわいこわい」
 心にもない言葉でおどけて見せて、ニイナは飛び掛かってくる獣を一匹、躊躇なく斬り捨てた。血は通わずともふつふつと、茹だり爆ぜる墨の色――それが見慣れたもののように映るのは凡て錯覚だということを、哀しいかな、彼はちゃんと識っている。
(「鬼人だ、というだけだ」)
 知り得る過去の記憶はない。実際に所縁はあるのかもしれないし、あるいはこの角も黒曜の腕も、誰かからの貰いものに過ぎないのかもしれない。けれど、それでも――この千年の京を取り戻すことが叶うならば。
 天頂に架かる月を目掛けて躍んだ姿は、まるで夜を泳ぐ緋鮒のよう。鮮やかな光景に思わず目を瞠り、ラルムは竪琴を抱く手に力を込めた。
(「奏でよう」)
 彼が望む音を。美しい鬼を鼓舞する唄を。獣の姿をした穢れを、拭い浄める音律を――この夜天に響かせたい。たとえ甘く切ない恋物語が、無垢な少年にとって未だ遠い世界の御伽噺に過ぎずとも。
 一つ一つの柔らかな音色とは裏腹に烈しい旋律に誘われて、舞い散る熱の花弁は墨絵の獣達を灼き尽くす。惑い跳ね回るその姿がいかに愛らしくても、容赦はしない――これは奪われたものを、奪い返すための戦いだ。どこかで見たような気がする黒猫は、それでも少々戦りにくいけれど。
 燃え立つ熱の花嵐が、夜半の社殿を赤々と照らし出す。その耀きを映す刃で、ニイナは踊るように舞うように、主を失した獣達を次々と薄墨の跡に還していく。
(「ああ、そうだ」)
 朗々と響くテノールに耳を傾けながら、鬼人は想う。
(「今度、和歌でも教えて詠んでもらおうかな」)
 散りゆく魔法と命の残滓が千々に煌めくこの夜を、彼ならばなんと詠むだろう? それが少し楽しみで、ニイナは小さく喉を鳴らした。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【熱波の支配者】LV1が発生!
【飛翔】がLV3になった!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!

鬼歯・骰
【KB】
こっちからしたら攻め時だろ
あっちが泣き言言おうが全力で削れるだけ削り切ってやる
…猫っぽいのがいたら真っ先に潰そう
後ろでもたつかれたら困る

気が抜ける見た目の敵だが油断なくいきてぇな
背中はツリガネに任せて目の前の敵に集中する
熱が無い炎は厄介だが、燃え広がる前に
消し飛ばすつもりで鱶で解体していく
取りこぼしの無いようにどの命も確り奪っていこう
遮蔽物も利用して大きく負傷することは避けるが
敵の数を減らすことを優先して多少の傷なら気にせず行く

親分に命令も碌にしてもらえねぇのは可哀想だが
統率が取れる前にここで死んでおいてくれ

暴れるだけ暴れたら囲まれる前にさっさと撤退
次に会うときは残らず潰してやる


鐘堂・棕櫚
【KB】
上役が調子悪い時に攻め込まれる下っ端妖さんには気の毒ですが
俺らも手心加えられるほど余裕がある訳ではないので
すみませんが全力で蹴散らします
…猫っぽいのはいませんね、よし
骰さんが空気の読める良い子で俺は嬉しいです

当たり前に骰さんに背中預けて
斧だの投槍だのと、当たり判定大きそうな武器を呼んで
敵が群がっている所を狙ってぶん投げますね
可能な限り数を減らすよう努めて
限界が見えたらさっさと退散しましょう

爆ぜ散る呪いは
曲がり角や柱に隠れられそうなら利用して避けますが
防戦に傾き過ぎるなら、被害已む無しで切り込みます
呪い勝負でもきっと負けませんよ
あらゆるものを奪われた人間達の怨嗟、存分に浴びてくださいね


「黎瞑さま! われらはどうすればよいのですか!」
「どうかご指示を! 黎瞑さま!」
 今にも泣き出しそうな情けない声で、墨絵の獣達は社殿の奥へと呼び掛ける。その様子は敵ながら少々哀れに見えないこともない――が。
「上役が調子悪い時に攻め込まれる下っ端さんには気の毒ですけどねえ……俺らも手心加えられるほど余裕があるわけではないので」
 やれやれと栗色の癖毛を掻いて、鐘堂・棕櫚(七十五日後・g00541)が言った。晴れ空に似たその瞳は、絶えず獣達の動向を追いかけている。
「……猫っぽいのはいませんね。ヨシ」
「何がヨシなんだ、何が」
 指差し確認する悪友を見つめ、鬼歯・骰(狂乱索餌・g00299)は多分に呆れの混じった声を上げた。そして同時に少し、安堵する。仮にここに猫の怪異が混じっていたとしたら、猫好きの棕櫚が何を言い出すか――。
「あっ。あれってもしかして、ね……」
 ドガッ、と、石畳を砕く鈍い音がした。めくれ上がった敷石にこびりついた黒い墨が元々どんな形をしていたのか、今となっては知る由もない。
 力任せに叩きつけた鋸歯を肩に担ぎ直して、骰は長い息を吐いた。
「後ろでもたつかれたら困るからな」
「はは、骰さんが空気の読める良い子で俺は嬉しいです。これなら心置きなく戦えそうですね!」
「良い子……とは……?」
 言いたいことは色々あるが、この場でいちいち突っ込んでいてもきりがない。次第に数を増す獣達の中心でごく自然に背を合わせ、骰はぼそりと口にした。
「こっちからしたら攻め時なのは間違いねえんだ。あいつらが泣き言言おうが何しようが、削れるだけ削り切ってやる――全力でな」
 低く付け加えた声音には、猛獣の唸るような響きがあった。怖い怖いとおどけて見せながら、棕櫚は笑顔で続ける。
「そうですね、でも限界が見えたらさっさと退散です。本番前にしくじるわけにはいきませんから」
 ドタドタとたどたどしい足取りで跳ね回る獣達はなんとも気の抜ける――もとい、愛嬌のある見た目だが、姿がどうあれクロノヴェーダであることには変わりない。
 呼び寄せるのは復讐の刃。油断するなよと告げる声には言われずともと減らず口で返して、棕櫚は大ぶりの斧を振り被った。
「でか……」
「当たり判定大きそうでしょう?」
 身長の割にひょろりとしたその腕の、どこにそんな力があるのだか。引き気味の反応は意にも介さず、人当たりのよさそうな青年は言った。
「呪い勝負でもきっと負けませんよ、俺達は」
 爆ぜ散る呪詛が今を生きる人々を害すのなら、愛し愛されたあらゆるものを奪われ、取り残された人間達の怨嗟――存分に、浴びせてやろう。勢いをつけて投げつけた巨大な斧の刃は、呪怨の獣達を二匹まとめて墨へと還した。これはまずいと察したのか獣達は後退を始めたが、それを黙って見過ごすほど復讐者達は甘くない。長い脚で大きく一歩を踏み込み距離を詰めると、骰は鋸刃を振り上げた。
「同情はするよ――親分に命令も碌にしてもらえねぇとはな」
 だがひとたび統率されれば、小さな獣達はきっと自分達の脅威になる。そうなる前にと再び長めに吐息して、鬼人は酷薄に告げた。
「悪いが、ここで死んでおいてくれ」
 一匹の蛙が音もなく夜に融け出した。墨に縁取られた身体は輪郭を失い、漆黒の帯が焔と化して鬼人の身体を取り巻いていく。しかしこれまでに越えた死線を思えば、焦るほどのことは何もない。
 舌打ち一つ、骰は無造作に右手を振るった。鋭く研ぎ澄まされたその剣圧は、すべてを焼き尽くす呪詛の炎をも軽々と消し飛ばしてしまう。
「ぎりぎりまで暴れてやるよ」
 そして次に会うときは、一匹残らず――潰してやる。来たるべき決戦の日のために、復讐者達はその牙で、その爪で、色のない獣達を引き裂いていく。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【活性治癒】LV1が発生!
【操作会得】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV3になった!

最終結果:成功

完成日2022年08月26日

【平安鬼妖地獄変奪還戦】賀茂黎瞑

 このシナリオは【平安鬼妖地獄変奪還戦】に関連する特別シナリオです。
 平安鬼妖地獄変のジェネラル級と、断片の王・安倍晴明の手引きで侵攻してきた、天魔武者の軍勢に、戦闘を仕掛けます。
 この戦闘によって、敵の戦力を削ることが出来ます。
 勝利したシナリオ数に応じて、対応する戦場の敵の数が減少し、戦いを有利に進めることが出来るようになります。

 このシナリオの攻撃対象は、平城京の中枢である『朝堂院』で全軍を統括し、陰陽師の長としても働いていたジェネラル級【賀茂黎瞑】です。
 本来ならば、戦争の準備の為に様々な策を動かしている筈の『賀茂黎瞑』ですが、現在は、安倍晴明からの指示を伝えるだけの存在となっているようです。
 彼の周りで雑用を働く『丑三つ刻の怪異・『墨』色の妖かし』達も不審に思っているようですが、その原因に心当たりは無いようです。
 『朝堂院』は、安倍晴明が籠る『大極殿』に近く、ここの戦力を減らすことが出来れば、安倍晴明撃破に一歩近づくことが出来るでしょう。
『丑三つ刻の怪異・『墨』色の妖かし』と戦闘を行います。
「成功したシナリオ数×5%」だけ、「賀茂黎瞑」の敵残存率を低下させます。


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#平安鬼妖地獄変
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#【平安鬼妖地獄変奪還戦】賀茂黎瞑
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#平安鬼妖地獄変奪還戦
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#ファーストアタック


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選択肢👾大群のトループス級『丑三つ刻の怪異・『墨』色の妖かし』のルール

 事件の首魁であるクロノヴェーダ(👿)配下のトループス級クロノヴェーダ(👾)の大群と戦闘を行います。
 敵の数が多いので、撃退するには時間が掛かるかもしれません。
 👾を撃破する前に👿と戦闘を行う場合は、👾が護衛指揮官を支援してくるので、対策を考える行う必要があるでしょう  詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「沢山」出現します(現れる敵の数は、オープニングの情報やリプレイの記述で提示されます)。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『この選択肢の🔵が👑に達すると、この敵集団を倒す。完結までにクリアしていない場合、この敵集団は撤退する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。