リプレイ
杏・紅花
洛陽もびっくりだったけど、長安もびっくりが潜んでいるかなあ
警戒が厳重なのには、どんな理由があるんだろう
街の人を逃がさないため?要人を守るため?情報を流さないため?
んんん、気になるう
まずは、無事に潜入するところからだよねっ
みんなの【平穏結界】に入れてもらいつつ、警戒しながら【壁歩き】で静かに登ってく
なるべく壁にぴたっと張り付いて、闇に紛れた方がいいよねえ
静かに登るのに集中してると、虫人間のこと疎かにしがちだから、管狐の「天」にも目になって警戒してもらう
何かあったら静かにしっぽで教えてねえ
【落下耐性】でさくっと降りて、入ったあおは明るくなるまで身をひそめられるところを探しつつ、街の様子もよく見とこ
平良・明
城壁といえば、守るためのものですが
この世界だと、そうとも限らないのかもしれません
囲われたまだ見ぬ都長安、興味津々です
高さは大したこと無いとはいえ、気がつかれずに乗り越えるのは大変です
新宿島からザイルやハーケンを持ち込んで、城壁クライミングを目指します
まずは【狐変身】して城壁の外周を偵察
警備が薄そうな地点、登攀が可能そうな地点を選定します
夜になれば動き時でしょうか
壁の上にいると、遠くは見えても足元は気にもしないもので
石組みや脆い部分に、静かにハーケンを滑り込ませつつ登っていきます
こそっと城壁の上はすり抜け
内側にはザイルを垂らし、懸垂降下して侵入
後片付けもしっかりして、証拠隠滅します
守都・幸児
長安の都の民は無事なんだな
蟲将どもの思惑はわからねえが、よかった
洛陽を見ちまったから
本当によかった、って思う
【平穏結界】を皆を包むように範囲に気をつけて展開するぞ
仲間の【壁歩き】【落下耐性】も借りながら音を出さねえように【忍び足】で城壁を越える
城壁の上の蟲将の動きをよく観察し
見つからねえ隙を狙うぞ
新宿島からロープくらいは持ち込めるかな
登るのに難儀してる仲間がいれば下から押したり、上から引っ張り上げたりして手伝うぞ
力仕事は得意だからな
万が一敵の警備が厳しくで皆が登る隙がなさそうなら
ちょいと単純な方法だが
潜入地点からなるべく遠いところに向けて、石を投げるぞ
敵が物音に気を取られてる隙に潜入しちまおう
光道・翔一
連携、アドリブ歓迎
…整備されてるどころか一般人が平和に暮らしてる、だと?
……明らかにきな臭いが、とりあえず上手いこと潜入しねぇことには何も始まらない、か。
比較的遠方から城壁やその警備を確認でき、かつ身を隠せる場所に潜伏して状況を観察し、城壁そのものや警備の巡回ルートから潜入に最適な経路を『看破』
タイミングを見計らって『忍び足』で城壁に接近した後、城壁をよじ登って潜入
基本的に所持品のグローブで握力を調整したのを使い素手で登るが、必要に応じて持ち込んだ登山用ロープや【壁歩き】も使用する
行動中は【平穏結界】を使い、敵に発見されるリスクを可能な限り減らすよう努める
孫・リア
平和に暮らしてる民……なんだろう飼われてる……的な……?いやとりあえず潜入して調べよう!
……それにディビジョンであっても長安に行けるなんて少しだけワクワクするし!
侵入なら夜よね!皆に合わせるけど夜行動を開始するわ
『黒衣』で阿黒にお願いして【偵察】して警備の動きを確認【完全視界】も駆使してね、動きと重点的に警戒してる場所、そして死角を確認できるだけ確認したいわ、侵入には情報がいるからね!
その後皆と【壁歩き】【忍び足】で城壁を登っていくよ、登りながらも警戒は怠らないように……ここでも阿黒にも【偵察】をお願いしてね
無事に潜入したら急いで身を隠しましょう…長安にはなにがあるのかな?
【アドリブ共闘歓迎】
喩・嘉
隠密行動には静かさと同様に、速さも重要になってくるな
仲間の張ってくれた【平穏結界】に入り、
紅花と共に【壁歩き】で静かに登っていく
俺は「偵察」も得意だからな
必要があれば先行して、蟲将の巡回の合間を見計らって皆が無事に越えられるようにしよう
城壁の内側は一層耳目が多くなるだろう
上に着いたら、今度は壁を伝って降りるのではなく、
【落下耐性】で下まで降りてしまおう
着地時に音を立てないようにさえ気をつければ、
これが一番速く目立たないはずだ
鳴・蛇
アドリブと連携はご自由に
【長安城の情報】
「漢代長安の平面図を持ってきましたぞ。」
「城壁の高さはもう知っていたが、城壁の幅は12~16メートルだぞ、しかも城壁の外側は幅40~50メートルくらいの堀があり、合計12の城門は全部门阙(展望塔のようなもの)あり」
「平面図からよると西北側は市場区、西南側は皇居末央宫、東南側は旧皇居长乐宫、東北側は神や仙や皇家の先祖を供養するための宮殿明光宫、防衛の厳密さから言えば北西側から潜ることをお勧めします。」
「堀は鄙人のパラドクスで橋を作る事ができるが、お堀から城壁までの差は30メートルほどがある、堀の幅を計算すれば…80メートル以上の【平穏結界】が必要ですな。」
八栄・玄才
何かに惹かれるように虎牢関からここまで来た
何に? それは自分でも分からない
フフッ、これじゃあまるでオレの方がが光に惹かれる虫みたいだ
この壁を越えたら、その何かが分かるのか──?
壁を登る間はどうしたって姿を隠すのには限界がある
"速さ"ことが肝要と見た
≪平穏結界≫に便乗
ロープを投げ上げて城壁上の出っ張りにでも引っ掛ける
そうしたら思い切り【ジャンプ】からの、ロープを【グラップル】して≪壁歩き≫も併用して一気に駆け上がる
虎牢関に比べれば大した高さじゃない
降りる時も思い切りだ
素早く城壁の上から飛び降り、≪落下耐性≫と受け身で着地の衝撃を殺して素早く【ダッシュ】し、建物の陰などに身を隠す
絡み・アドリブ歓迎
御守・樹
長安旅行!いや旅行じゃないけどあの長安だもんな、ある意味首都として現役なんだし楽しみだ。
可能なら夜間に乗り越えたいな。あとは出来るだけ凹凸がある部分。凹凸があれば隠す以上に影ができやすいし、その影に隠れたり紛れたりも出来ると思う。
時間帯にもよるだろうけど少しでも身を隠しやすい時間、場所を選んで身をかがめながら壁歩きで登っていこう。
夜間であれば完全視界で視界確保、あとはモブオーラで俺は壁になりきる事で見つかりにくくなればいいな。
上部まで行けたら人気が無い場所で一気に降りる。受け身は取るけど落下耐性で多少なりともダメージ軽減、あとは音消すように出来たらな。
●
夜闇に浮かぶ城壁は、なかなかに立派な造りをしていた。それでも少々物足りなさを感じるのは、巨大な虎牢関を突破してきたからだろうか。
(「……何かに惹かれるように、ここまで来た」)
その正体はまだ掴みかねていて、まるで光に惹かれる虫のようだと八栄・玄才(井の中の雷魔・g00563)は自嘲する。
「夜明けまで、どのくらいかしら」
独り言のように呟いて、孫・リア(勇武と炎を胸に秘めて・g03550)はひと際高い針葉樹を見上げた。樹上では鴉の阿黒が警戒に当たっている。暗闇に溶け込むような鴉の存在は、城壁を彩る心許ない松明の明かりだけでは気付けないだろう。
「そろそろ時間だよな」
「あ、明サン戻ってくると思うからちょっと待って~」
立ち上がろうとした御守・樹(諦念の珪化木・g05753)を、杏・紅花(金蚕蠱・g00365)が制止する。平良・明(ダイヤのK・g03461)が狐に変じて偵察に向かってから、程よく時間が経過している――、彼が向かった城壁を見やり、紅花は小首を傾げる。
「警戒が厳重なのには、どんな理由があるんだろう。要人を守るため?」
存在が確認出来ていない献帝。長安に居るとされる司馬懿。様々な可能性に考えを巡らせる彼女に、声が掛けられた。
「城壁といえば守るためのものですが、この世界だと、そうとも限らないのかもしれません」
偵察から戻った明だ。人の姿に戻り、軽くストレッチをしている。
「守る為じゃなかったら、街の人を逃がさないため? 情報を流さないため?」
「とりあえず上手いこと潜入しねぇことには何も始まらない、が。きな臭いのは確かだな」
整備されているどころか、平和に暮らしているなどと。光道・翔一(意気薄弱なりし復讐者・g01646)が眉を顰めれば、リアも同意を示す。
「なんだろう、その……飼われてる、的な……?」
「蟲将どもの思惑はわからねえ」
嫌な想像をしてしまったと瞳を伏せたリアの傍らで、守都・幸児(祥雲・g03876)は口元を緩めた。
「わからねえ、が。――よかった。洛陽を見ちまったから……本当によかった、って思う」
ただ、安堵する。それが仮初の幸せだとしても、生きているのなら手を差し伸べる事が出来るのだ。
「それで……いかがでしたかな」
鳴・蛇(不吉な龍蛇・g05934)が問えば、明は力強く頷いた。
「狐の視界で確認出来る範囲ですけどね。蛇さんの言った通りの位置に門がありましたよ」
「なら、予定通り行くとしようか」
喩・嘉(瑞鳳・g01517)に視線で促され、蛇が一枚の紙を広げる。そこに記された細かな字までがはっきりと読めるのは、偏に【完全視界】のおかげだ。
「これが……」
「ええ、漢代長安の平面図ですぞ」
●
歴史を改竄された結果、最終人類史に残された資料と食い違ってしまうという事は往々にしてあり、原型を留めていない事も珍しくない。蟲将の巣が屹立していた洛陽など、その典型と言える。
「門の位置が同じ。少なくとも、城壁は史実通り……って事で良いんだよな?」
「でも中は全然違う……って可能性もあるんじゃないの?」
樹と紅花の疑問を、喩嘉が両方とも肯定した。
「紅花の心配も尤もだが、まずは城壁を越えないといけないからな。資料が確実でないにしろ、闇雲に登るよりは良いだろう」
「全ての城門には闕……望楼、展望塔と言えばわかりやすいですかな。城壁の上を巡回する警備兵も当然居ますが、城門付近には見張りが常駐しているでしょう」
喩嘉の言葉を引き継いで、蛇が説明する。
「城門を避けて登るって事よね。登り易さより警備の薄い所から行きたいわね」
「門が十二もあるのか。その周辺を避けるとして……選定が難しいな」
リアと幸児が意見を交わす隣で、睨み付けるように図と向き合っていた翔一が一点を指した。
「――此処、か?」
「……同じ意見ですぞ。平面図の通りならばそこは市場が広がる区画。鄙人も北西側から潜ることをお勧めします」
「警備が厳しくなるであろう皇居周辺は避けたいからな、同感だ。……明、どうだった?」
蛇の所見を喩嘉が補足し、実際に偵察に向かった明に意見を求める。
「女墻(ひめがき)の合間に見えた人影、多くなさそうでしたよ」
「決まりだな。分かっていると思うが、ここからは――」
「『速さ』こそが肝要、かい?」
わかっている、と。玄才を始め、ディアボロス達は頷いた。行動開始だ。
●
夜陰に乗じて侵入すべきという意見が多数ではあったが、住民に接触するには夜が明けるまで警ら隊に見つからぬよう潜伏する必要がある。城壁の内側の様子が不明瞭な現段階では、それなりにリスクも伴う。そこでディアボロス達は暗闇に紛れ且つ城壁内での待機時間が短くなるように短期決戦――夜明け直前に潜入する事となった。
虫の声。風の音。ざあ、と鳴った梢のさざめきに足音を紛れ込ませ、まず翔一が城壁へと駆けた。石の壁に手を触れた瞬間、頭上でばちりと音がした。咄嗟に腕を水平に上げ、後方に続く仲間に制止を促す。沈黙。
ぱち、ぱち……、城壁の上で松明の火が大きく揺れ、火の粉が散った。
(「松明が爆ぜた音か」)
問題ない、と翔一がジェスチャーで伝えれば、偵察を買って出た喩嘉が【壁歩き】で先頭を行き、一人、また一人と壁を登り始める。壁歩きの難点は『歩行』程度の速度でしか移動出来ない事だが、元より残留効果のみに頼るつもりはない。各々が自力での登攀を念頭に置いている事で、より確実に遂行できるだろう。
いざという時に仲間を支えられるよう最後尾に就いた幸児が、【平穏結界】を展開する。
(「見つからねえように――」)
念には念を。たった十二メートルの距離が、非常に遠く感じる。
無音の行軍が順調に進んでいると思われたその時だった。あと少しで石垣に手が掛かるという所で喩嘉は乗り越えるのを止め、後続へ制止を伝えるなり壁へと張り付いた。巡回の警備兵だ。その姿を認めたのはほんの一瞬であったが、結界内、距離にして六十メートル以内。仲間へと注意を促す。
「使ってください」
「かたじけない」
急な制止ではあったが、慎重にハーケンを打ち込んでいた明の足場は安定していた。ザイルを垂らし、仲間の補助をする。蛇はザイルを掴むと、しばし思索に耽った。
(「城壁の高さはともかく、記録通りならば城壁の幅は十二から十六メートル。……登り切った後は時間との勝負ですな」)
もう行ったかな、と紅花が顔を出そうとすれば、クダギツネの『天』が彼女の顔をふわふわの尾で撫でた。
「ゎ」
天の視線の先を追ってみれば、巡回の兵を追いかけるように、蟲将がもう一人駆けてくるのが見えた。――まさか見つかったのだろうか。慌てて頭を下げれば、樹が小声で「こっちへ」と呼んだ。石壁の凹凸で上手く陰になる部分を見つけたらしい。身を隠し、警備兵の様子を伺う。
城壁に配された光源の位置には十分に気遣っているが、万が一にも夜目が利く者が見下ろせば、見つけられてしまうかもしれない。息を潜める時間がしばらく続き、ディアボロス達に微かな焦燥が生まれ始めた頃、パラドクスで阿黒と視界を共有していたリアが口を開いた。
「……行ったわ。見回りの交代の時間だったみたいね」
誰からともなく安堵の吐息が漏れる。だが落ち着いている時間は無い。壁面を蹴り、パルクールの要領で一気に城壁上へと上がった玄才が、仲間を引き上げるべく手を差し伸べた。
「夜明けが近い。急ごう」
●
侵入の痕跡を手早く消して、明は城壁の上を見回した。城門は避けたが、完全視界のような能力を持つ蟲将が物見台に居たら発見されるかもしれない。内側には懸垂下降するつもりで居たが、その時間すらも惜しい。
「城壁の内側は一層耳目が多くなるだろう。……着地時に音を立てないようにさえ気をつければ、これが一番速く目立たないはずだ」
壁を伝って降りるのではなく、【落下耐性】で飛び降りるという喩嘉の意見に納得し、明は登山用具を片付ける。仲間達が不安にならないよう、玄才はからりと笑い飛ばすと真っ先に駆け出した。
「思い切っていこう。なぁに……虎牢関に比べれば大した高さじゃない」
「タイミング的に次の警備が来るまで時間はあるはずだ。……が、ここは隠れる場所が少ない。早く降りるとしよう」
続いて翔一が城壁上を一気に駆け抜け、石垣をひらりと飛び越えていく。
「漢代平面図の通り下が市場の区画ならば、均されてはいても舗装されていない所も多い。お気を付けて」
蛇の声掛けに頷き、ディアボロス達が次々に飛び降りていく。
「下りたらまず明るくなるまで身をひそめられるところ探さなきゃね」
余裕があれば、街の様子もよく見ておこっと。そんな紅花の呟きに、幸児は少しだけ遠い目をした。
「身を潜める所……あるといいけどな」
この任に就いた者の中で一番高い背丈がネックだ。どうにもならない時は狐に変身するしかないかもしれないと思いつつ、石垣を越えた。
「――来たのね、長安に」
飛び降りる瞬間、リアは美しく整った街並みを見た。たとえ改竄世界史だとしても、心が躍るのは致し方ない事だろう。同じく樹も初めて足を踏み入れた街に、微かな期待があった。
(「旅行じゃないから観光ってわけにはいかないけど、あの長安だもんな。ある意味、首都として現役なんだし」)
着地。足が地に着くなり、ディアボロス達は一斉に地面を蹴った。身を隠す必要がある以上、全員で固まっているわけにはいかない。それに多少離れて行動したとしても、救援機動力で仲間の危機を察知して駆け付ける事は可能だ。
張られたままの天幕の下に転がり込む者、木箱の隙間に滑り込む者、生け垣の陰に伏せる者――、各々が城壁の上から死角になる場所を見つけ、息を殺す。また、街を巡回する警ら隊が来ないとも限らない。ディアボロス達にとって、夜明けまでの僅かな時間が、異様に長く思えた日だっただろう。
●
天幕。木箱。麻袋。辺りを見回して、蛇は着地点が市場である事を確信した。予測通り北西が市場という事は、長安は内部も史実とそう大きく乖離していない可能性が高そうだ。
(「ここは東西に分かれる市場区の……西市ですな」)
市場であれば一般人が集まってくる為、聞き込みをする相手には事欠かない。その上、流通する品々を見れば、住民がどういった暮らしをしているのかが調査出来るだろう。
(「少し見えただけだったけど、街並みキレイだったなあ……あれ?」)
朱塗りの柱に光沢のある装飾があしらわれ、戦乱の世を感じさせない豊かさがあった。建造物を思い返していた紅花は、ふと違和感を抱いた。
(「金とかじゃなくて、不思議な色をしていたような……見間違いかな?」)
明るい所で見ればまた違った印象を受けるのだろうか。街の中を探索する者が居れば、詳しく聞いてみても良いかもしれない。
(「こう、あからさまに異常な建造物はなさそうだ。……よかった」)
幸児はほっと胸を撫で下ろす。洛陽の蟲将の巣のように、遠目に見ても明らかにおかしな建造物というのは見受けられなかった。まだ辺りは暗く、一般人の姿を見ていないが、平和に暮らしているというのは本当なのかもしれない。
空が白み始める。まだ城壁が真っ黒なシルエットを浮かび上がらせる彼者誰時ではあったが、そこかしこで人が動く気配がした。間もなく人々が活動を始め、街の中が賑わう事だろう。
果たして攻略旅団で提案された『劉協(献帝)が居るか』の調査に加え、どういった情報をどのように集めるべきだろうか。時には情報を取捨選択し、目的を絞って探索する事も必要だ。
何処かで、鶏が朝の到来を告げた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【壁歩き】LV1が発生!
【狐変身】LV1が発生!
【平穏結界】LV2が発生!
【完全視界】LV1が発生!
【落下耐性】LV2が発生!
【セルフクラフト】LV1が発生!
【モブオーラ】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV3が発生!
【フィニッシュ】LV2が発生!
【能力値アップ】LV2が発生!
喩・嘉
函谷関の建設に蟲将だけを使っていたのが気になっている
民がこれだけいるのであれば、この長安の者たちも土木工事に動員すれば良かったのだと思うのだ
それをしなかったのは何故なのか
何を企んでいるのか
普段着を着ていれば、町民に紛れることは容易い
街中を歩き、建物の様子など観察しながら人を探す
話しかける前は【友達催眠】を使用
下記のようなことを聞く
俺は長安に来たばかりなのだが、働き口はあるだろうか。兵役とか
ここで禁止されていることはあるか? どこかに近寄ってはいけないなど
外を見たことがあるか? ひどい荒れようだ
長安がこれだけ安定しているのは、やはり天子様がいらっしゃるからだろうな
八栄・玄才
や~っぱり気になんのは、司馬懿を筆頭に、どんな蟲将がいるかだよなぁ
とはいえ、クロノヴェーダの軍事事情は街の人は知らないだろうしな
発想を変えよう
街の少年達に「オレは修行の旅をしている拳士なんだけど、この都にいる強くてカッコいい武将を知らないかい?」「その武将はどんな蟲の姿をしているんだ?」「クワガタみたいな武将はいる? オレ好きなんどけど」と訊いてみる
長安の人々が蟲将に虐げられていないのなら、きっと少年達の間では蟲将は"強くてカッコいい蟲の武将さん"と認識されているハズ
男児は皆、カッコいい昆虫と武将が大好きだ!
噂話から敵戦力の情報を集めるぜ
会話中は《平穏結界》を使用し、敵に発見されるのを遅らせる
平良・明
人々や市場の様子も気になりますが
様子のおかしな建造物があるなら調べ得
作業着脱いで、町人風の姿で調査していきます
周囲の警戒は怠らず、【パラドクス通信】でしっかり連携します
わかった事は手帳に書き出して整理しましょう
バラバラの情報でも、見えてくるものがあるかも知れません
ざっと地図を書き出して【スーパーGPS】で居場所を確認できるようにしつつ
違和感のある建物に近づいて調査します
ヘンなものと言えば、クロノオブジェクト
簡単な判別方法は、傷つけてみるとか
なるべく安全にいきます
もしそうなら、なんのためのものなのでしょう
献帝が人の身でこの都にあるのだとすれば、それはそれだけの理由があると言うことです
守都・幸児
ここが長安かあ
どんな都だろう、楽しみだぞ
民が元気だったら嬉しいなあ
喩嘉に助言をもらいながら
町人に紛れられそうな衣を纏って潜入するぞ
俺は図体がでかくて目立つかもしれねえから
常に【モブオーラ】も使っとく
別れる前に【パラドクス通信】の通信機代わりに使える紙符を皆に渡しておくぞ
通信で皆の町民との会話を聞きながら
怪しい場所の情報があったら実際に近くを通ってさりげなく【情報収集】する
怪しい場所が特にねえなら、なるべく人の多い場所に行って
民の生活に違和感がねえか観察したり、世間話に耳を傾けるぞ
目立つ行動は避けて深追いや近付きすぎはしねえように心掛けるが
万が一怪しまれたら【狐変身】で小さくなって物陰に隠れるぞ
杏・紅花
不思議な色の建物、気になるなあ
あたしはそっちを調査したい
都会はひとが多いなあ
市場は紛れるにはうってつけ
街の人と同じような格好に変えて、【モブオーラ】を重ねて目立たず、怪しすぎず街を探索
食べ物、流通してんのかな
おばちゃま達の噂話に耳を傾けたり、【友達催眠】で子どもたちの遊びにまじったり
変わった建物があるなら、そっちへ「天」と一緒に偵察しに行こう
変わった色の建物、その素材も気になるなあ
忍び足で近づいて、よく確認したい
昼間も虫人間たちが警戒してるのかな
献帝を守ってるとして
献帝は、人間なのかな
献帝も虫人間だったら、何が捧げられるんだろう
……やな想像しちゃった
何かあったら、幸児サンのくれた紙符で皆に共有
孫・リア
さてと何がわかるかしら?
『白金』を使って現地で「市井を生きる奥方」の服に着替えて【モブオーラ】【平穏結界】で目立たないようにして動こう
市場は【情報収集】にうってつけの場所、商人や客そしているなら兵士達の表情や動作や話している内容などを中心に【観察】あとは蟲将はいないと思うけど…それも注意してっと
【プラチナチケット】【友達催眠】を使って市井を生きる奥方を演じて交流していくわ、あと同じような奥方の方々とは是非話したいわね……だってここの暮らしの不満や愚痴もうっかり喋っちゃうだろうから
ある程度情報を集めたら重要そうな建物も調べましょう
何かあれば【パラドクス通信】で皆に共有するわよ
【アドリブ共闘歓迎】
鳴・蛇
「平面図から見ると長安の内部では、民家と市場が占める空間の合計は城中の3分の1にすぎない。貴族邸宅や皇室宮殿、そして政府機関と宗廟は城中の3分の2の空間を占拠した。つまり、もし城内も史実通りなったら、城の中にも大量な籠城できる拠点があるとよう事…」
「曹操はまだ生きているから、司馬懿は堂々と皇居に住むことは選ばないと思う。なら、鄙人は皇居である末央宫へ忍び込む、献帝の姿を探すか。」
【龍蛇山神変】を使って地中に潜り込み、【モブオーラ】と【平穏結界】と【完全視界】を利用して末央宫へ進む
もし皇居の地下と入口は何かの力で封じ込められたら直ぐに撤退し、【パラドクス通信】で仲間に「末央宫に何があると伝える」
御守・樹
どういう理由であれ、あの洛陽見たいでなけりゃ「今」の長安は悪くないとは思う。
人々に紛れ込めるよう変えらるなら服装を変えてモブオーラと平穏結界で目立たずすごそう。
特定の場所の調査ってよりは流し歩きして情報を集めるか。
まずは市場からそして市街地、そして足を延ばせるなら歓楽街へ。花街は情報が集まる場所だっていうから、こんな壁の中でもあればいいんだが。
位置については事前に見せて貰った地図を記憶術で思い出しやパラドクス通信で確認。絶えず聞き耳を立てて人々の話しから些細な事でも気になる事を情報収集してく。
機嫌が良けりゃうっかり口が滑る事もあるだろうしな。
光道・翔一
…潜入は無事に成功。とはいえ本題はこっから。
上手いこと良さげな情報を拾いたいとこだが…ここは、何気ない日常会話から情報を手に入れる方針で行きますかね。
必要なら服装も長安内に合わせて変え、市井の中に潜り込む
【モブオーラ】を展開し、不自然に思われない程度に目立たないように市井を回って散策
この時『精神集中』して人々の会話をさりげなく耳に入れ、何か情報が拾えないか探る
情報になりそうな会話が耳に入ったら【モブオーラ】に加え【友達催眠】を発動、ごく自然に会話に混じり会話の詳細を聞き、『記憶術』でしっかり内容を覚える
怪しまれない程度に上記の方法を繰り返して接触は切り上げ、【パラドクス通信】で情報共有を行う
安藤・優
長安に無事に潜入できたみたいだね…
友達催眠とプラチナチケットにモブオーラ、平穏結界も活用して情報収集だ。調べたい事は色々あるけど、攻略旅団で提案されてた事は他の人に任せてと、僕が一番知りたい事はやっぱり……
洛陽から流れて来た人達が居ないか、居るのだとしたらいまどこに居るのかをそれとなく尋ねていく、洛陽から来た人に会えたらここに来る前に何かあったのか尋ねてみるよ。
警ら隊が居たら人混みや物陰に隠れて光学迷彩も使用、出来る限り見つからないようにしつつ得られた情報はパラドクス通信で共有していくよ。
ここで得られる情報がどこまで本当かは分からないけどね。
●献帝の存在
がなり立てるような口上で品物を売る商人を横目に、御守・樹(諦念の珪化木・g05753)は市場の喧噪に身を委ねていた。大きな荷を抱えて道を開けろと叫ぶ者、白熱する値段交渉に唸る者。活気に満ちた様子には、戦乱に苦しむ民の気配は一切感じられなかった。
(「どういう理由であれ、『今』の長安は悪くないとは思う。……あの洛陽みたいでなけりゃ、それで」)
このディヴィジョンにおいては異常な状況だと言えるが、無辜の民の命を悪辣な陰謀に消費されるよりましだ。廃都を歩くよりも、樹の足取りはずっと軽い。
市場区を外れた樹は、そのまま人の流れに乗って街中を歩いていった。情報が集まる場所と言えば歓楽街だろうと足を向けた先で、彼は長椅子の並ぶ一角に目を留める。テーブルも無ければ肴らしい物も見当たらないが、長椅子に腰掛けてちびりちびりと器に口を付ける男の様子を見るに、恐らくは酒だろう。
(「酔って口が軽くなっていれば文句なしだ。機嫌が良けりゃうっかり口が滑る事もあるだろうしな」)
何気ない挨拶を交わす所から始めて、世間話に興じる。話し相手が出来て気分良く酒を飲んでいた男が、嬉しそうに言った。
「そうそう、皇帝劉協様は近々禅譲を行うらしいな」
「皇帝劉協。禅譲。間違いないんだな?」
【パラドクス通信】で樹から得た情報を光道・翔一(意気薄弱なりし復讐者・g01646)は小声で復唱し、人混みへと紛れた。禅譲ともなれば民にとって非常に大きな出来事ではなかろうか。きっと人々の口に上るだろう――、翔一は聞き耳を立てる。雑踏の中、「優れた治世だ」「劉協様は尊敬出来るお方だ」といった献帝を讃える会話をする者達を見つけ、そっと近付いた。
「禅譲を行うというのは本当か?」
その話の輪に入るのが当然という顔で【友達催眠】を発動し、翔一は尋ねる。住民達は特に疑う様子もなく、何処か誇らしげに答えた。
「らしいぞ。きっと一生に一度しか味わえない素晴らしい式典になるにちげえねえ!」
怪しまれないうちに切り上げたいが、もう少し献帝の情報に踏み込みたい――、住民の顔色を窺いつつ、翔一は「劉協様のお姿を拝見した事はあるか」と質問を重ねる。
「ねえなあ。お前あるか?」
「いいや、俺もねえわ」
その後も翔一は同様の手法で会話を繰り返したが、禅譲の噂を否定する者はなく、住民達はこぞって劉協を尊敬していると言うが、誰一人としてその姿を知る者は居なかった。翔一は訝しげに呟く。
「……『皇帝劉協』、本当は存在していない可能性もあるな」
●長安の中と外
無事に潜入した安藤・優(名も無き誰かの代表者・g00472)は、真っ直ぐに民家の並ぶ区画に足を運んだ。
(「調べたい事は色々あるけど、僕が一番知りたい事はやっぱり……」)
洛陽の惨状は嫌というほど目にしてきたが、彼らの身に何が起きたのかを知るには話を聞くほかない。優は残留効果を駆使しながら、それとなく洛陽から来た住民が居ないかと尋ねた。
「洛陽? あそこの家のおじいちゃんが洛陽出身って言ってたような……」
「そっか。ああいや、特に意味はないんだ。気にしないで」
洛陽がいつからあの状況なのか具体的な時期はわからないが、祖父母の代まで遡る事はないだろう。
優は巡回する警ら隊をやり過ごしながら、根気良く聞き込みを続けていく。時折洛陽の地名に反応する者はあったが、時期が一致する事も無く、ここ最近洛陽から来たという者は全く見当たらなかった。
(「出身が洛陽の住民も居ないわけではない……けど、洛陽の異変とは無関係な移住みたいだね」)
洛陽から流れてきた、つまり避難してきた者は『居ない』可能性が非常に高い。
(「……洛陽の生存者は……」)
資料によって差はあれど、百万を超えるとされた洛陽の民は。無意識のうちに握り込んでいた爪が掌に食い込んで、ひりひりとした痛みが残った。
(「函谷関の建設。何故蟲将だけを使っていたのか……」)
荷運びの逞しい男達を眺め、喩・嘉(瑞鳳・g01517)は眉間に皺を寄せた。これだけの民が居るのであれば、土木工事に動員する事も出来たはずだ。それをしなかった理由があるのではないかと考えた喩嘉は、雇用情勢を探るべく男達に「今、良いか」と声を掛ける。
「俺は長安に来たばかりなのだが、働き口はあるだろうか。――兵役とか」
残留効果もあり、彼らの態度は好意的に見える。だが。
「……余所者か?」
怪訝そうな表情。傍らの男が「旅人が長安で仕事を探してるなんて、聞いたことねえよ」と耳打ちするのが聞こえ、喩嘉は咄嗟に柔らかな笑みを浮かべた。
「ああ、いや。外を見たことがあるか? ひどい荒れようだ。それに引き換えこの長安の活気ときたら! これだけ安定しているのは、やはり天子様がいらっしゃるからだろうな」
献帝を、長安を持ち上げて有耶無耶にする。田舎は治安が悪いらしいなと言う男達はあまり長安の外に興味が無さそうで、この様子では函谷関の建設事業があった事すら知らない可能性が高い。笑顔の裏で考える喩嘉に、男は言った。
「どのみち長安に戸籍が無ければ無理だ。田舎者は素直に田舎で働きな」
喩嘉からの情報に、八栄・玄才(井の中の雷魔・g00563)は首を傾げる。これだけ大きな都に旅人が来ないなどあり得るのだろうか。疑問は残るが、余所者扱いで通報されてもまずい――、玄才は接触する対象を子供に絞り、極力親との接触を避ける事にした。
「オレ拳士でさ、やっぱり武将には憧れるわけよ! みんなは強くてカッコいい武将って誰だと思う?」
「洛陽に呂布将軍ってすげー豪傑がいるらしいぜ!」
「この街に居る武将だと誰だと思う?」
「長安は平和だもん。名のある武将は地方に行ってるよ」
「クワガタみたいな武将はいる? オレ好きなんだけど」
「クワガタ? 鎧が?」
微妙な噛み合わなさを感じながら、玄才は駄目で元々だと司馬懿の名を出してみれば、「司馬様?」と反応が返ってきた。軍師タイプの司馬懿は、残念ながら子供が思う「強くてカッコいい」のイメージからは外れるらしい。更にクワガタと司馬懿がどうにも結びつかないようで、『蟲将を人間だと認識している』と思われる言動も見られた。
「あれ? でも司馬様は長安じゃなくてー、普段はお城にいる事が多いって聞いたよ?」
「お城?」
「うん、お城!」
●長安に生きる人々の衣食住
井戸端会議をする女性の中に、孫・リア(勇武と炎を胸に秘めて・g03550)は自然に紛れ込んでいた。『市井に生きる奥方』と呼ぶには少々家柄が良すぎるが、元々リアは人妻である。【プラチナチケット】等の後押しもあり、首尾は上々だ。
(「ここの暮らしの不満や愚痴を、うっかり喋っちゃう……なんてのを期待してたのだけれど」)
家事育児と家庭内の諸問題は話題に上るものの、余程行き届いた統治がされているらしく、全くと言って良い程に不平不満が出てこない。
(「それもそうよね。これだけ街並みが整っていて、市場に活気があるなら食糧事情も悪くないでしょうし、衣服もシンプルだけど着心地の良さそうな――」)
そこでリアは、はっと息を呑んだ。周囲の奥方が身に着けている服の、日に当たった時の光沢は。
(「……絹?!」)
肌触りが良さそうなのは当然だ。さりげなくその場に居た全員の服を観察してみれば、皆等しく絹の服を纏っている。庶民に行き渡る程に養蚕が盛んなのだろうか。考えるリアの事はさして気にも留めず、奥方の一人が市場で購入したという服の話を始めた。
「素敵な外套だったのよぉ。また無駄遣いを、って主人に怒られちゃうかしら」
その時リアは、悲鳴を上げなかった自身を褒めてやりたいと思った。
――女性がごそごそと手元の袋から取り出した外套は、蝶の翅を張り合わせて作られていた。
「都会はひとが多いなあ」
新宿の雑踏とはまた違った賑やかさだと、杏・紅花(金蚕蠱・g00365)は独り言つ。何処も彼処も人が多い。だからこそ紛れるにはうってつけだとも言える。
(「昼間も虫人間たちが警戒してる」)
残留効果を重ねて使ってはいるものの、いつ何処で見咎められるかわからない。歩き疲れて一休みするような素振りで紅花は死角になりそうな小道に入り、壁に凭れて屋根を見上げた。縁起が良いとされる朱塗りは他の都でも見かけるが、この街の中では軒飾りや柱にきらきらとした素材も使われている。見覚えがあるような気がするが、果たして何だっただろうか。
「螺鈿細工みたい。ね」
クダギツネの『天』に話し掛ければ、天は何かの気配を察知したようでひゅるりと引っ込んだ。直後、木の枝を持った小さな男の子が駆けてくる。通り過ぎる子供を微笑ましく眺め――、
「……え? ちょっ、ちょっと待って!」
呼び止める。小首を傾げる男の子の手に握られているのは木の枝ではなく、数十センチはあろうかという虫の触角だった。そこで紅花は気付く。
(「螺鈿細工? 違う、これ、この金属質な光沢は……玉虫の翅!」)
普通の玉虫を建物にあしらうとしたら何万匹も必要になるだろうが、もしも巨大昆虫であれば。紅花には美しい街並みが、急に恐ろしい何かに思えた。
(「ここが長安かあ。どんな都だろう、楽しみだぞ」)
かつて暮らしていた山と比べてしまえばうるさすぎるくらいの喧噪だったが、守都・幸児(祥雲・g03876)にはその賑やかさが好ましく思えた。残留効果に加え、喩嘉の助言で町人に扮した彼は、民の生活を見ようと人の多い場所を選んで練り歩いている最中である。
(「平穏な暮らしはこのディヴィジョンでは異常……理解は出来るが」)
民が元気ならば、それだけで喜ばしい事ではなかろうか。とはいえ情報収集任務である以上、ここの民の生活に違和感が無いかしっかりと見届ける必要はあるのだが――、幸児は市場の中でも特に人が集まっていた食材を取り扱う区画で、目を凝らす。
(「餓える者が居ないのは本当によかった。……ん?」)
木箱に収められているのは、蟹の脚ではなかろうか。海から離れているのに妙だと思い、引き寄せられるようにふらりと立ち寄った。
「……ッ!」
立ち尽くす幸児を客だと勘違いしたのか、店主は「美味しいよ、安くしとくよ」等と笑い、幸児は「後で寄らせて貰うよ」と適当な事を言って離れるのが精いっぱいだった。
――木箱に詰められていたのは、巨大な昆虫の脚だった。
(「よくよく見れば……」)
果物のように盛られているのは巨大な複眼で、山菜のように束ねられているのは太い触角だ。民は悍ましい『食材』を、至極当然なものとして売買している。
(「何が、平穏な暮らしだ」)
幸児の手の中で、紙符がくしゃりと鳴った。
●長安に巣食うもの
(「平面図で見る限り、民家と市場が占める空間の合計は城中の三分の一に過ぎない……」)
城壁内部も概ね史実通りである事を確認し、鳴・蛇(不吉な龍蛇・g05934)は南の区画を目指す。今の所、樹と翔一の調査結果から考えると、献帝の存在はかなり怪しい。ならば皇居の様子を伺ってこよう――、なかなか大胆な発想である。
(「司馬懿が堂々と皇居に住む事を選ぶとは思えませんしな」)
玄才が男児から得た情報では、『普段は長安でなくお城に居る事が多い』という。
(「城……もしや長安の西の? ……所詮は推測の域を出ないが」)
思索に耽るうちに、蛇は未央宮に向かう道に差し掛かる。だがそれ以上は進まずに、進行方向を変えた。
(「蟲将が警備していますな」)
城壁と同じく、皇居の周辺はトループス級の蟲将が目を光らせている。それなりに備えては来たが、単身で乗り込むにはリスクが大きすぎる。献帝の存在は確認出来なかったが、蟲将が警備しているというだけでも十分な情報だろう。
町人に扮した平良・明(ダイヤのK・g03461)は、人目を忍び手帳を取り出した。
(「バラバラの情報でも、見えてくるものがあるかも知れません」)
大まかに描いた地図は蛇が持参した資料とほぼ一致し、仲間の探索結果と照らし合わせても乖離している様子は無い。
(「皇居や城壁の警備も街の中の警らも、治安維持は全て蟲将が担っている。加えて衣食住は何らかの形で昆虫が関わっている、ですか……」)
蟲将の治世の下で幸せに生きる長安の民。『飼われてる』と表現したリアの言葉も、あながち間違いではないのかもしれない。物陰に身を隠したまま明が見つめる先では馬車に荷を積む作業が行われているが、御者台には当たり前のように蟲将が座っていた。
(「……あれは?」)
忙しなく働くトループス級達を、一人の女性型の蟲将が取り仕切っている。あらゆる差配が彼女の下に行われている上に、周囲は護衛と思しき蟲将が固めている。万が一にも発見されたら危険だと感じ、明はすぐにその場を離れた。
(「恐らく高い地位にある、内政を担う女性の蟲将……」)
蟲将達の姿が見えなくなった時、蛇から通信が入った。
『……敵に見つかったかもしれません』
警備が厳重な地区に赴いたのだ、無理もない。むしろこれだけ内部を探れたのだから十分だろう――、申し訳ないと言う蛇に、明は朗らかに応える。
「いえ、問題ありません。そろそろ頃合いでしょうし、警備隊の皆さんを蹴散らして帰還しましょうか」
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
効果1【友達催眠】LV1が発生!
【平穏結界】がLV3になった!
【スーパーGPS】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV2が発生!
【モブオーラ】がLV2になった!
【プラチナチケット】LV1が発生!
【セルフクラフト】がLV2になった!
【光学迷彩】LV2が発生!
効果2【アクティベイト】LV1が発生!
【ガードアップ】がLV5になった!
【ダメージアップ】がLV3になった!
【命中アップ】がLV3になった!
【フィニッシュ】がLV3(最大)になった!
【アヴォイド】LV1が発生!
【ダブル】LV1が発生!
鳴・蛇
アドリブと連携はご自由に
ネメシス形態に変化(水着姿参照、四翼大蛇の姿)
「長安の西と言ったらやはりあそこか、董卓の官邸で三国第一の砦「万歳坞」、別の名「郿坞」…こんな事を考える場合ではないのう」
周囲を見渡す
「うっかり蜘蛛の糸に触れてこんな事態になるとは、鄙人の失策だ」
「が、ジェネラル級はいないの包囲網で…漁網では蛇は捕まえられないぞ」
行動
敵の接近攻撃を受けながら民家のない場所へ突進
頭髪と毒の粒子は小出力の息吹で燃やす
「漢高祖劉邦は白帝子ー白蛇を切って、赤帝子として皇帝となった。汝らは彼の行為を真似したいか?身の程知れ!」大声で
民を傷つけない場所に着いたら反撃、怒鳴りながら追いかけてきた敵を燃やす
平良・明
それにしても、虫の肢……美味しいならちょっと気になるような
でも、食べ歩きはおあずけです
帰り道は忙しなくなるのも楽しいものです、大事になる前にいざ退散
最初に集まるような部隊は、とりあえず全滅させて、時間稼ぎです
「食歩き」の歩みは奔放に見えても、食指の向く先に正直です
集まる敵を指折り数えつつ、誰何の声はかかるでしょうか
黙って手を合わせて、呼び出すのは折り紙の蝙蝠の群れ
ばらばらになれば、市場の食材とも見分けがつかなくなりそうです
もちろん食べはしませんし、欠片も残らないくらいに昇華します
とんずらする道を万事押えて、壁に向かって走りつつ、歩きつつ
この箱の中の有事に、街全体がどう動くのかも見ものです
安藤・優
洛陽から流れてきた人は特に無し、か…まあ想像はしてた。
あれだけの死体が転がってたんだから。
さて、と…みんなと合流して戦闘準備でもするかな。
できるだけ人の居ない場所で戦えるようにするみたいだけど、もし見物人が居たりしたら巻き込む自信しか無いし【避難勧告】で遠ざけておくよ。
人は居なくとも今は建物もあまり巻き込みたくないから考え無しに爆焔を放つ事はできないけど…踏み込んでアッパーからの流れで下から打ち上げるように撃てば巻き込まないはず…!
喩・嘉
明やめろ、得体の知れないものに興味を示すな
実際ああして民に蟲を食わせて何をしようとしているのか
あとは集まってきた奴らを蹴散らして帰るだけだが
街の中で派手な物出して戦うわけにもいかないからな
被害は最小限に抑えるよう立ち回るか
羽扇を振るい、雲を指揮して「晴天炯計」を使用
眩すぎる光で敵の目を焼いて連携を崩し、その隙に逃げよう
隠密潜入よりかはこの方が楽かも知れないな
御守・樹
虫食う事にはほらあれ、イナゴの佃煮とかハチノコとかあるからとくには。イナゴは足が引っかかりやすいのが難点だがパリパリでうまいし。
でもここで食うのは黄泉戸喫っぽくてやだな。
……。
実際動き回って情報集めてみると長安は死んでないだけ「まだ」「比較的」マシなだけなんだなぁ…。
ダッシュとか利用した一撃離脱の攻撃を心掛ける。止まると檻に捕まりかねないし、もとから捕まらない方がいい。
あとは忍び足なども織り交ぜ緩急つけた動きで先読みさせない事か。隙をついて不意打ちでパラドクス無影で攻撃を。
あんまり突破力に長けてるわけじゃないから確実に一撃で行動不能に持ち込むように心がける。
守都・幸児
喩嘉と明のやり取りにちょっとほっこりした俺だぞ
南方の森で出会ったヨアケの民は、必要に迫られて昆虫を糧にしていたが
この都の民はそれとも違う感じがするんだよな
蟲を蟲だと認識できてねえのか…?
【パラドクス通信】で皆と連携しお互いの位置を把握
急いで合流だ
俺の使う技は「晦」
基本一目散に逃げるが
敵に回り込まれたりやむを得ず戦わなくちゃならねえ場合は
パラドクスを乗せた武器の藍鬼拐で敵を殴り飛ばして一点突破するぞ
逃走中は【トラップ生成】で音の出る仕掛けを皆の退路以外のあちこちに出現させ敵を【撹乱】
逃げやすいように【時間稼ぎ】もするぞ
移動するときはなるべく人の少ねえ道を選んで
一般人を巻き込まねえように気をつける
孫・リア
いやいや驚かなかった私偉い、人間に蟲を食べさせる……中から蟲が食い破って乗っ取る……なんては流石にないよね?だけど食べないほうがいいよ明殿
さてあとは逃げるだけ!みんなと合流して協力してみんなで逃げるわよー!あっ!勿論一般人には被害がでないようにね!
『一閃』で武器は槍に合体させて敵にあったら槍で一気に貫き倒したり【一撃離脱】して【ダッシュ】!
止まらないほうがいいと思うからね!クロノウェーダに捕まったディアボロスなんて絶対に嫌だし!
【アドリブ共闘歓迎】
杏・紅花
お腹減ってるなら、あとでおいしいごはん食べに行かなくちゃねえ
あたし達が虫人間と戦う姿は、街の人には役人にケンカふっかけてるみたいに見えるのかなあ、なんて
町の人の反応も少し気になるところ
いっぱいくる蜘蛛、髪の毛に捉えようとしてくるの、こわあ
ひかる蚕蛾喰らえーっ
蜘蛛の巣にひっかけられてもそれは幻
幻惑する間に逃げたいけど、それでも向かってくるやつには素早く肉薄して、足引っ掛けたり鉤爪で切り裂いたりして道をひらく
もう用はないもーん
気味の悪いものより、あたしはおいしいモノ食べたいっ
光道・翔一
…蟲が衣食住に紛れてるわ、実態の良く見えない禅譲だわ……あらかた想定してたが、見た感じ以上にきな臭い所だったな。
…つっても今回の探索はここまでか。逃げるついでに多少なりともここの戦力削って次に備えるとしますかね。
合流を目指しつつ、人気の無い所で【光学迷彩】を使い潜伏
此方を捜索し巡回中の敵を狙って、使用パラドクスで『不意打ち』で仕留める
(たとえ反撃で捕縛されても亜空間越しに攻撃を通し放題という寸法)
小回りの利き周囲の建造物を損壊するリスクの小さい、ナイフか素手(グローブ装着)を用いた一撃での始末を狙い、そうでなくとも攻撃は『一撃離脱』を心掛け、倒したら速やかにその場から『ダッシュ』して離れる
八栄・玄才
司馬懿はお城にいる、か
城……、この辺りに城……
うん、分からん!
まあ、この時代の歴史に詳しい人もいるし、なんとかなるだろ!
ところで、気になるのは長安の人達が『蟲将を人間だと認識している』ってところだよな
オレらも違和感を消せたりするし、似たようなモンなのかな?
オレらと蟲将が闘り合ってるところは住民にはどう映るやら
一丁、派手にやってみるか!
相手の武器は頭髪の檻
なら、ワード・ブレイカーで手を保護して、その髪を【グラップル】
その状態で遠雷の走りを使用し、頭髪を伝わる【貫通擊】だ
【電撃使い】の技で相手を感電させて、痺れている間に街の外の方へ走る
このまま撤退できればイイが、やっぱり来るか、アヴァタール級!
●
『何をこそこそと探っていらしたのかしら?』
『わたくし達から逃げられると思って?』
八肢を自在に操り、巡回警備のトループス級蟲将『蕩蛛宮妓』は鳴・蛇(不吉な龍蛇・g05934)を追う。
皇居の間近で戦闘など行えば敵の援軍が出る可能性があり、なおかつ市民を巻き込まぬよう行動する必要がある――、差し当たり仲間との合流を急ぐべきだと判断した蛇は、純白の翼を広げた。蛇のような長い体躯に四枚の翼を持つその姿は、さながら山海経に記される鳴蛇だ。
「このような形で女人に追われるとは……鄙人の失策だ」
「失策とは思いませんけどね、様々な角度から調査するには必要な事でしたし。無事で何よりです」
最初に駆け付けた平良・明(ダイヤのK・g03461)は蛇と並走しながら、陰陽符に手を伸ばした。追いかけてくる女達は存外速い。皇居が視認出来ない距離まで来たのだからそろそろ迎え撃っても大丈夫だろうと明が振り返ったその時、警ら隊の最後尾を担っていた三人が真横に吹き飛んだ。突然の事に反撃も出来ず、前を走っていた警ら隊も状況を把握しようと足を止める。
『あの男よ! わたくしが捕まえるわ!』
「捕まえられるものならな」
蕩蛛宮妓の一人が指し示した先には、路地へと消えていく光道・翔一(意気薄弱なりし復讐者・g01646)の姿があった。彼女達は巡回警備という役職上、怪しい者を捕えぬわけにはいかない。そこを上手く活かした陽動だ。
「……こっちだ」
更に御守・樹(諦念の珪化木・g05753)の射撃が別方向から加わり、警ら隊は分散せざるを得ない。残りのディアボロスが合流するまでの時間稼ぎにはなるだろう。
(「オレらと蟲将が闘り合ってるところは、住民にはどう映るやら」)
にわかに普段とは違う騒ぎが起これば、目抜き通りでなくとも耳目を集める。八栄・玄才(井の中の雷魔・g00563)はあえて両の掌から電気を迸らせながら、民衆の間を駆け抜け蕩蛛宮妓の一団へと肉薄する。
「一丁、派手にやってみるか!」
雷が閃いて、住民から悲鳴が上がる。
「この都にあんな狼藉者が……」
「ほら、もう警らの皆さんが追いかけてる。すぐ捕まるだろ」
囁き合う住民達の言葉には、少なからず街の治安を守る者への信頼が感じられる。人間と同じように、或いは彼らが同じ人間であるかのように、蟲将達を受け入れている。その様子を目の当たりにし、守都・幸児(祥雲・g03876)は困惑を滲ませた。
「蟲を蟲だと認識できてねえのか……?」
あらゆる面で虫が密接に関わっている生活が、どうにも信じ難い。
(「南方の森で出会ったヨアケの民は、必要に迫られて昆虫を糧にしていたが。……この都の民はそれとも違う感じがするんだよな」)
「オレらも違和感を消せたりするし、似たようなモンなのかな?」
幸児の疑問に玄才が答えると、到着した喩・嘉(瑞鳳・g01517)が呟いた。
「もしくは……お得意の『改竄』か」
今の状況が当然のものと改竄されているのであれば、無理もない。――全ては推測の域を出ないのだが。
「あたし達が虫人間と戦う姿は、街の人には役人にケンカふっかけてるみたいに見えてるのかあ」
無数の蚕蛾を伴い、杏・紅花(金蚕蠱・g00365)がひらりと着地する。警ら隊を惑わせ駆け抜けたものの、まるで悪人のような扱いに頬を膨らませた。
「どういう反応するかわかった事だし、街の人達は遠ざけるよ。特にその辺りの無警戒で近付いてくる野次馬。巻き込む自信しか無いし」
「えっ、ちょっと何よその自信。一般人には被害がでないようにね?!」
にこやかに言う安藤・優(名も無き誰かの代表者・g00472)の様子から冗談かどうかの判別が出来ず、孫・リア(勇武と炎を胸に秘めて・g03550)が狼狽える。そんなリアの様子を気にも留めず、優は【避難勧告】を発動した。聞き慣れぬサイレンの音に驚いた住民が、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
●
艶やかな黒髪が鞭のように撓り、翔一に迫る。
『よくも殴ってくれたわね』
怒髪天を衝くとはよく言ったものだと肩を竦め、翔一は蕩蛛宮妓をちらりと見る。ヒトからかけ離れた体躯の、異形。
(「蟲が衣食住に紛れてるわ、実態の良く見えない禅譲だわ……あらかた想定してたが、見た感じ以上にきな臭い所だったな」)
異形が守る全貌は未だ明らかにならないが、住民が現状を当然のものとして認識している以上、聞き込みで得られる情報には限度があるだろう。
「……つっても今回の探索はここまでか。逃げるついでに多少なりともここの戦力削って次に備えるとしますかね」
『わたくしから逃げられるとお思いかしら?!』
蕩蛛宮妓の髪が伸び、翔一を囲うように大地に突き刺さる。行く手を遮られ立ち止まった翔一の首に、しゅるりと黒髪が巻き付いた。女の唇から、恍惚とした吐息が漏れる。
「――捕縛したからといって、気を抜くものじゃない」
『ぐ、あ』
翔一が口を開くと同時、蕩蛛宮妓の首元から刃が生えた。亜空間を通した、彼のナイフだ。翔一に絡む髪の締め付けが強まったが、長くは持たずにくたりと大地に横たわる。
「周りも見とけ。……もう聞いてないか」
「洛陽から流れてきた人は特に無し、か……まあ想像はしてた」
あれだけの死体が転がってたんだから、と。逃げていく住民の背を見つめたのも束の間、優は蕩蛛宮妓の群れへと視線を戻した。
(「人は居なくとも、今は建物もあまり巻き込みたくないから……考え無しに爆焔を放つ事はできないけど」)
この地に巣食う蟲将に喧嘩は売れど、住まう者達をおびやかすつもりは更々無いのだ。優の左手に指を搦めるように炎の幻精が憑依し、利き腕を覆う籠手が顕現する。
力強く石畳を蹴った優を、蟲将が見逃すはずもない。年端も行かぬ少年が向かってくる様に蠱惑的な笑みを浮かべ、蕩蛛宮妓は肢体を見せつけるように舞う。尖った手足が振り上げられる度に優の腕を掠め、ちりちりとした痛みが走る。
「そういういかがわしいのは遠慮しとくよ。僕、いたいけな普通の青少年なんで」
鋭い刺突を掻い潜り、敵の懐に飛び込んだ優は迷わずアッパーカットを繰り出した。腕に宿した火焔は的確に蕩蛛宮妓達だけを焼き、生じた爆風は何もない空へと消えていく。
『このガキ……っ』
炎に巻き込んだものの倒し切れなかった敵の反撃に加え、近くに居た蕩蛛宮妓の意識が優へと向いた。柳眉を逆立てる女を見やり、明は静かにたなごころを合わせる。『折り紙』で作られた蝙蝠が、明の周囲でぱたぱたと踊る。
(「その口の悪いのが本性ですか。随分と箱の中の住人には信頼されているようですが」)
秘符の蝙蝠は一羽、また一羽と増え続け、小さな羽音が大きなざわめきへと変わっていく。蕩蛛宮妓達が明のパラドクスに気付いた時には式神が彼女らの包囲を終えていて、惜しげもなく晒されている肢体を覆うように喰らい付いた。
『きゃああっ』
「毒……ですね」
女の悲鳴が上がるのと、明が強烈な妖力を感じたのはほぼ同時だった。反射的に顔を背けようとしたものの、明の視線は蕩蛛宮妓の――千切れ飛んだ肢へと引き寄せられる。
「虫の肢……美味しいならちょっと気になるような」
「明やめろ、得体の知れないものに興味を示すな」
魅了の妖力が食欲方面に作用するなど、流石に喩嘉も想定外だ。
「巨大昆虫なら昆虫食と言い張れなくもないけど、それ蟲将だしね。食べないほうがいいよ明殿」
二槍を振るいながらも心配そうにするリアに、明は「冗談ですよ」と人好きのする笑みを浮かべた。
「でも、ばらばらになれば、市場の食材とも見分けがつかなくなりそうです」
「……明」
少し遠い目をした喩嘉に、幸児はくすりと笑みを零した。敵に追われている最中だというのに、全く頼もしい仲間達だ。
「お腹減ってるなら、あとでおいしいごはん食べに行かなくちゃねえ」
明の冗談を真に受けたのか、紅花がからりと笑った。種族を鑑みれば、彼女自身がエネルギーを欲している頃合いかもしれない。幸児は目を細め、頷いた。
「そうだな。じゃあ……早く帰らねえと」
――パァンッ!
蕩蛛宮妓が路地を通り抜ける瞬間、何かが破裂するような、爆竹に似た音が響いた。幸児が仕掛けたのは至極単純な音が鳴るだけの罠で、敵も音がする方向を向いたのはほんの一瞬だった。
だが、その一秒にも満たない僅かな隙を、針孔に糸を通すように幸児は突いた。かいなに光を通さぬ靄を纏わせて、『藍鬼拐』で殴りつける。
「一般人が避難したなら、遠慮はいらねえな」
反撃の刺突すらも弾き、重い打突は蕩蛛宮妓の腹へ。強かに打たれ、仰向けに倒れた蕩蛛宮妓が起き上がる様子は無い。
「おー、イイ一撃だね。オレも負けてられないな……っと!」
雷を籠手の形に留めたように、玄才の拳が光を放つ。
『調子に乗るのもそのくらいになさい!』
見るからに臨戦態勢の彼を抑えつけようと、硬化した髪が玄才を囲繞する。絡みついてくる黒髪を藻掻くように掴んだ玄才は――笑った。
「――捕まえた」
蕩蛛宮妓が玄才を拘束する力は強まる一方だったが、締め付けられる痛みも厭わずに彼は前進した。捕えたのはこちらだと言わんばかりに黒髪を握り締め、繰り出した掌底は雷を伴っていた。弾けるような音が響いて、蕩蛛宮妓が仰け反るように倒れる。
「いずれ司馬懿とも手合わせしたいもんだ」
その為には、まず居場所を突き止めなければならないのだが。そんな玄才のぼやきに、蛇が反応する。
「……郿塢」
「びう?」
「然様。史実通りならば、長安の西に董卓の築いた『郿城』があるかと」
憶測ではあるが、位置関係を考えれば可能性が高いと言える。
「……と、こんな事を考えている場合ではありませんな」
こうして話している間にも、蕩蛛宮妓はその身をくねらせ蛇へと迫る。嫋やかに、けれど繰り出す刺突は鋭く。節足動物特有の手が、蛇の鱗を斬りつけた。
「漢高祖は白蛇に変じた白帝の子を斬ったと言うが」
言葉と共に、蛇の口元から火の粉が散る。水中に在りながら旱を齎すとされる妖が、鳴いた。
「汝らが彼に倣うとでも? ――身の程知れ!」
怒声の余韻は鐘の音に似て、吐息は業火を孕み、羽ばたきは颶風を生んだ。蛇の気炎に焼かれた蕩蛛宮妓が、熱風に吹き飛んだ。
「おっと」
進路上にこんがりと焼けた蕩蛛宮妓が飛んできて、樹はひょいと飛び越えた。
(「イナゴの佃煮とかハチノコとか。イナゴは足が引っかかりやすいのが難点だがパリパリでうまいし。でも」)
昆虫食自体にはさほど忌避感が無い樹だったが、長安の住民が喜んで売り買いしている巨大昆虫の部位はどうにも受け入れ難い。
「……ここで食うのは黄泉戸喫っぽくてやだな」
帰れなくなりそうだ。そう呟いた樹を追う蕩蛛宮妓は、「帰すものか」と激昂した。
『そうやって、わたくしからいつまでも逃げられるとお思いで?!』
「皆の方も片が付きそうだし、ここいらで――」
走り続けていた樹は蕩蛛宮妓が髪を伸ばしたタイミングで敵に向き直り、地面を蹴った。狙うは伸びきった黒髪の中央、蕩蛛宮妓の身体。対する蕩蛛宮妓は急な方向転換に目測を誤り、黒髪の檻は樹にかすり傷を負わせるに留まった。籠手に覆われた樹の拳が、白い身体を穿つ。
「……長安は、死んでないだけ『まだ』『比較的』マシなだけ、なんだなぁ……」
●
この長安に不審者の侵入を許したばかりか未だ誰一人捕まえられていないという状況に、余裕を失った蕩蛛宮妓は獲物を搦め捕ろうと黒髪を振り乱す。
「……こわあっ」
まるでホラー映画だ。だが紅花は怯える素振りとは裏腹に、何処か楽しげな声色だ。
「ひかる蚕蛾喰らえーっ」
両手を広げた紅花がくるりと回れば、たくさんの蚕蛾がきらきらと鱗粉を散らしながら舞った。
『こんな目くらましに騙されるわけないでしょうッ』
蚕蛾は飛べない。つまりはまぼろし。撓う髪束で群がる虫を振り払い、蕩蛛宮妓は紅花を捕えて締め上げる。
『尋問は不要! 縊り殺して……』
「やっぱりこわーい」
頭上に掲げたはずの紅花の声が、足下からした。蕩蛛宮妓がその事実を認識するより先に、『切裂花』が彼女の意識を刈り取った。
「あたしも尋問は要ーらない。だって、もう用はないもーん。気味の悪いものより、あたしはおいしいモノ食べたいっ」
「ああ、そうだな。……ここのものを口にする気にはなれない」
何が入っているかわかったものではないと、喩嘉は眉根を寄せた。明の好奇心はさておき、やや潔癖のきらいがある喩嘉でなくとも正体のわかっているおいしいモノを選ぶだろう。
(「実際ああして民に蟲を食わせて何をしようとしているのか……」)
今回の探索で長安の情報は得たが、このような都市を作るに至った目的は不明だ。長安の謎を解き明かすのか、いっそ漢中方面を視野に入れるか――、考えるべき事は多々あれど、まずは帰らねばと喩嘉は『瑞鳳凰扇』を手にした。
「この雲の形も中秋節らしくて良いが、今は生憎と季節を愉しむ時間が無いからな」
その一振りで大軍を動かすように、喩嘉は頭上の雲を掃う。天から降り注いだ光芒が、蕩蛛宮妓の目を灼いた。
「……隠密潜入よりかはこの方が楽かも知れないな」
「知謀をめぐらす軍師殿が何言ってんの」
喩嘉の作り出した隙に、リアが駆ける。一般的な武具よりやや短く創られた『千紫』と『万紅』の二槍を一つの長槍に纏め上げ、自身の背丈より遥かに長いそれを軽々と振るう。
「……その道をっ、開けて貰うわよ!」
速度の乗った刺突が、蕩蛛宮妓を貫いた。苦し紛れに伸ばした黒髪がリアの腕を取ったが、その締め付けは長くは保たなかった。
「さて、あとは逃げるだけ! みんなで逃げるわよー……と、言いたかったんだけどね」
腕に絡んだ黒髪を投げ捨て、リアは振り返る。涼やかな顔をした一人の男が、じっとディアボロス達を見つめていた。
『私の宮妓達が誰一人帰ってこないので、様子を見に来てみれば……随分と奔放なお客様がいらしてたようで』
漢服の下から覗く足は硬殻に覆われ、複数対の歩脚が垂れ下がっている。新たな蟲将の出現に、玄才が獰猛に笑う。
「ま、そう簡単に帰しちゃくれないか。……やっぱり来るか、アヴァタール級!」
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
効果1【熱波の支配者】LV1が発生!
【断末魔動画】LV1が発生!
【避難勧告】LV1が発生!
【照明】LV1が発生!
【光学迷彩】がLV3になった!
【トラップ生成】LV1が発生!
【水中適応】LV1が発生!
【士気高揚】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
【パラドクス通信】がLV3になった!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV3になった!
【アクティベイト】がLV2になった!
【反撃アップ】LV1が発生!
【アヴォイド】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV5になった!
【ガードアップ】がLV6になった!
【先行率アップ】LV1が発生!
【ダブル】がLV2になった!
平良・明
賢そうな敵は、先手を打って殴るのが吉
なんて、私の辞書には書いてあります
旅歩きも今日は終わり、これから帰るところです
行きはよいよい、帰り道の方が怖いのはいつもの事
「旅歩き」の歩みはゆっくり確かに、一歩を越えて一歩
鬼が出てきても蛇が出てきても、歩いていって殴りとばします
見れば見るほどわからなくなるのは、どうでしょう
拳も先見も、的外れかどうかは、振ってから分かるものです
喩・嘉
諸悪根源ではないが、
ひとまずの大将格が出てきたか
早々に仕留めて逃げるぞ
ネメシス形態へと変化すると、インセクティアの種族特徴がなくなり、人と変わりない姿になる
羽扇を振るい、周囲の地面から闇の水を湧出させあたりを闇で包むと、
間者の幻影を放つ
仲間が気をひいてくれている間に背後に幻影の兵士を進ませ、闇討ちさせる
光が強ければ、闇もまた深くなる
先ほどあたりを眩く照らしたのも、この布石というわけだ
何を企んでいるにせよ、
俺たちは必ず、それを阻止してみせる
孫・リア
出てきたわね郭嘉殿!悪いけど皆で逃げ出すからそこどいて!
その糸は厄介なのよね、操られたりなんてしないから!
相手の手の動きを見つつ接近、距離を縮めたら『乱舞』を繰り出すわよ!
糸は燃える、燃えにくくても絶対にね私や他のみんなに糸が行かないように念入りに炎を呼び出して糸もそして郭嘉殿も燃やして偃月刀と槍で薙ぎ払うわよ!
司馬懿殿達がなんの為にこんな偽りの平和の都を作ってるのか知らないけど……いずれ全部暴いてやるんだから!
【アドリブ共闘歓迎】
鳴・蛇
アドリブと連携はご自由に
引き続きネメシス形態で
「《十胜十败》の論を作った贞侯殿の名前を奪った虫豸か、堂々と我らの前に立つとはな…有用の身を持って、我らを逃がすの方が得策と思うけど。」
「知人者智,人贵在自知。残念だが、貴様は自知之明はないのう。謀臣の名を捨て、学生としてやり直そうか、来生で。」
糸、兵そして攻城兵器。何もかも全部炎で焼き尽くす。
【戦後】
「いずれ禅譲の儀を阻止するため、まだここに帰るだろう…長安。
しかし、禅譲と言っても、誰がその皇位を受けるだろう…
魏王も蜀王も吴王も今長安に来る事は出来ないと思うな。
つまり、皇帝になるのはやはり司馬懿か…」
と言いながら撤退
守都・幸児
あいつが警らの大将だな
さっさと倒して皆で帰るとするか
無自覚のネメシス形態化で腕の硬化が体の他の部位、頬や胴にも広がってる
敵の糸でも簡単には切断できねえ程度には硬くなってるはずだ
敵はあの目で先読みしてくるんだな
ならどんな攻撃もそっくりそのまま返してやるぞ
俺が使う技は「建」
前に立ち、闇の盾を皆を守るように展開する
喩嘉の闇と混ざっちまえば
盾の存在は敵に気付かれにくくなるはずだ
さあ、俺目掛けて仕掛けてこい
どんなに敵に有利な攻撃でも、そのまま反射されたら効くだろう
これで受ける攻撃は同じ
あとは俺とてめえの我慢比べだ
その間に皆がとどめを刺してくれるだろうよ
じゃあな
また来るぞ、長安
蟲将どもの企みをぶち壊しにな
安藤・優
あー……なんだか色々考えるのも段々面倒になってきたや。
無駄な抵抗とかせずさっさと死んでほしい。
…って言ってもクロノヴェーダに素直に聞くような奴は居ないし、聞く奴を信用しちゃいけない。油断せず確実にぶっ殺す。
鉄塊剣に焔を纏わせ煉獄の刃を構える。
ついでにモブオーラと光学迷彩を使って気配を消して身を隠してみるよ。
仲間が糸切りしてくれるなら攻撃に専念できるし、気を引いてくれるなら渾身の一撃を叩き込む隙も生まれるからね。
だから僕は渾身の一撃を放つ事だけを考える事にする。
遊びは終わりだよ、灰燼すら残さん――灼滅せよ、煉獄の刃!!
…さて、次ここ来る時は一体何するんだろうね?
面倒事じゃなければ良いんだけども
御守・樹
クロノヴェーダってある意味分身してるよいうなもんだからここにもいてもおかしくないんだけど、でも洛陽とか許昌で見た姿をここでも見かけるとなんか変な感じだ。
複数の同じ姿同じ名前の奴がいる事にも違和感って覚えないようになってんのかなぁ。
同じ場所に同時にいたらどう見分けてんだろ?
忍び足や緩急をつけた動きで捉えられないようにする。あとは敵の隙をついて不意打ちでパラドクス破軍衝を叩き込む。
召喚されても諸共叩き込んで衝撃波で吹き飛ばす。
どうせ後は帰るだけだし思いっきりぶち込んでしまえばいい。
建物やエアライドでの空中を足場にすれば上からの攻撃もできるかも。
右利き。左手の籠手は咄嗟に弾いたりするための防御用。
杏・紅花
お客じゃないぞお、曲者だぞお〜っ!
アタマよいひとは、なんか、いっぱい考えてんだよねえ
あたしは考えんの苦手だから正面突破で鉤爪構えて突撃だ〜っ
どんな兵団や兵器が出てくるか分からないけど、突っ込む姿はそのままに
それに、砕かれても、いいの
だって、それ
ニセモノだもんっ!
ホンモノのあたしはちょっと離れたところから、ワイヤーソーで敵の糸や脚を切断
みんなの動きを止めさせたりしないぞお
引き止められてもお断り、今日はサヨナラ
次来るときは秘密を暴くときっ!
光道・翔一
…さて、最後の関門が湧いて出てきたか。
…滞りなくずらかる為にも、さっさと片付けるぞ。
先に何かしら武器を構えとけば、俺の戦法が「近接打撃主体」とでも誤認するだろうかね
どの道、敵の召喚物は『不意打ち』で亜空間に巻きこんで攻撃するか
暫くは亜空間を高速収縮しての絞め殺しで対応
恐らく機動力強化辺りで対応するだろうから、そっからは瞬間的な亜空間の発生・消失による切断攻撃で無力化していく
正直、どう強化されようと座標で捉えて亜空間の瞬間生成・消失に巻き込めば済む話なんだが
この手の敵は自分の策が何度も外れんのにこたえるクチだろ
こうして敵が動揺した隙を突き、敵本体を亜空間に巻き込んで『両断』する
アドリブ、連携歓迎
八栄・玄才
調査もできたし、武功って土産までくれるんだから、気前がイイな、長安は
お前のことだよ
オレの武功になってもらうぜ、蟲軍師
『勇心雄歩』の心得に従い【勇気】をもって【突撃】
超至近戦に持ち込めば、"武"以外の余計なモノが介在する余地は減らせるだろう
オレの突撃を読んだなら、後ろに退がるか? 距離を置くか?
そうでもないと策を挟む余裕もないんじゃないか?
なら俺はさらに前へ! 前へ!
逃がすかよ、ヒョロ野郎
なにか仕掛けてきたとしてもワード・ブレイカーを纏った拳で【粉砕】して、追いついたら寸勁を叩き込でやる
……さて、司馬懿の居場所の候補は分かったが、また追っかけて行っても逃げちまいそうだし、どうしたもんかな~~?
●
『穎才の謀臣・郭嘉』は宙を蹴り、音も無くディアボロス達の前に降り立った。
「出てきたわね郭嘉殿! 悪いけど、皆で逃げ出すからそこどいて!」
『これは異な事を仰るお嬢さんですね。私の大切な部下を斃しておきながら、道を開けろとは……』
勿体付けたような話し方はただただ胡散臭く、嘆くような大仰な身振りは――、真っ向から突撃するかに見えた孫・リア(勇武と炎を胸に秘めて・g03550)は急に足を止め、郭嘉の手の動きに注視する。彼の名を騙る蟲将のやり口は、既に知っていた。
「その糸は厄介なのよね。簡単に操られたりなんてしないから!」
『……おや、ご存知とは』
仰々しい振る舞いは、糸を操っているのを悟られない為。言い当てられてなお、郭嘉は飄然とした態度を崩さない。
「……アヴァタール級がそういうものだってわかってはいるけど、洛陽とか許昌で見た姿をここでも見かけるとなんか変な感じだ」
同じく御守・樹(諦念の珪化木・g05753)も郭嘉を名乗る個体と相対するのは初めてではない。姿かたちも自称する名も同じ個体が同じ場所に存在したら見分けが付くのだろうか――、彼らの生態には疑問が尽きない。
「あいつが警らの大将だな」
「ああ。諸悪の根源ではないが、ひとまずの大将格が出てきたか」
じわじわと体表が金青の鎧に覆われていく守都・幸児(祥雲・g03876)とは逆に、喩・嘉(瑞鳳・g01517)は異形の部位が失せていく。ムスクを纏い、夜空の色をした翅は消え、人間らしいしなやかさを取り戻した手に羽扇を取った。
「あー……なんだか色々考えるのも段々面倒になってきたや」
「行きはよいよい、帰り道の方が怖いのはいつもの事……でしょう?」
辟易とした様子の安藤・優(名も無き誰かの代表者・g00472)を宥める平良・明(ダイヤのK・g03461)は、何処か楽しそうですらあった。家に帰るまでが旅だ。明の言に、光道・翔一(意気薄弱なりし復讐者・g01646)が同意する。
「滞りなくずらかる為にも、さっさと片付けるぞ」
『随分とつれない事を仰るお客様だ。もう少しゆっくりしていかれては?』
「お客じゃないぞお、曲者だぞお〜っ!」
がおー、と両手を上げて見せた杏・紅花(金蚕蠱・g00365)に郭嘉は『愉快なお嬢さんですね』と微笑を向け、リアは溜息を吐いた。この含みのある表情も、先程から向けられる視線も覚えがある。この個体も品行に難があるようだ。
「十勝十敗の論を説いた貞侯殿の名を奪った蟲将か。堂々と我らの前に立つとは……配下も斃された今、我らを逃す方が得策では?」
『我が身可愛さにあなた方を見逃せば、後々困った事になりそうですから……ねえ?』
鎌首を擡げた鳴・蛇(不吉な龍蛇・g05934)に睨まれても、郭嘉に退く気配は無い。
「調査もできたし、武功って土産までくれるんだから。気前がイイな、長安は」
回避出来ない障害があるのならば、ぶち破れば良い。八栄・玄才(井の中の雷魔・g00563)は挑発的に口の端を上げた。
「お前のことだよ。オレの武功になってもらうぜ、蟲軍師」
●
郭嘉と一定の距離を保ったまま、翔一は『大剣』を構えた。足の運び、重心の移動、集中力を研ぎ澄まし、小さな一つ一つの動きで自分が剣士であると印象付ける。
(「これで俺の戦法が『近接打撃主体』とでも誤認してくれれば重畳」)
要はフェイントだ。翔一を瞥見した郭嘉が床子弩を組み上げた事で、その効果は伺えた。攻城兵器を扱う為の兵団まで召喚されている。
「数の有利をいとも簡単に覆してくる、か」
全く以て逆説連鎖戦とは理不尽なものだ。そう嘯いた翔一は、敵の持つ距離の優位を覆す。大剣の切っ先は微動だにせず、ただ敵兵団の間近で『穴』が生じた。
「床弩なんて、対人戦に持ち出すには些か大袈裟ってもんだろ」
ぽかりと空いた亜空間が、急速に収縮する。その穴は床子弩を圧し固め、巻き取り器に手を掛けていた兵を締め上げる。亜空間に巻き込まれる寸前、弩から放たれた巨大な矢は翔一から逸れ、石畳を抉った。足元に出来た亀裂を見やり、樹は何とも言えない気持ちになる。
「折角俺たちが気ぃ遣ってたのに、クロノヴェーダが街破壊してるって……」
仮初の平穏であろうと、住民達の『マシ』な生活を害する事のないよう振る舞っていたというのに。樹は拳を固く握り、一気に距離を詰める。
「それなら思いっきりぶち込んでも良いよな。どうせ後は帰るだけだし」
樹が前に出た事で、攻城兵器の射出に喚び出された兵の装備が短兵の物へと変わる。白兵達は郭嘉と隔てるように樹へと群がった。
「――届かせる」
白刃に斬りつけられながら、樹は拳を繰り出した。咆哮にも似た音が空気を震わせて、衝撃波が兵士を吹き飛ばし、強かに郭嘉を撃つ。
『この力は……生き残りが居ましたか、復讐者。やはり逃がすと厄介な事になりそうです」
都の外には他にも生き残りが居るのだろうかと郭嘉は思案するが、最終人類史から来ているなどとは夢にも思わないらしい。考え込む郭嘉に、紅花は見せつけるように鉤爪を構えた。
「アタマよいひとは、なんか、いっぱい考えてんだよねえ。あたしは考えんの苦手だから、正面突破で突撃だ〜っ」
長い鉤爪を持つ紅花に対し、郭嘉は筒袖鎧を身に着けた兵団を召喚した。斬り裂く事に特化した武器に対し、上腕部まで覆う頑強な鎧で対抗する。兵達は攻めあぐねる紅花を取り囲み、長槍を突き出した。
ぶつり。紅花の白い肌が裂ける。――もしも郭嘉本人が槍を振るっていたのならば、それが肉を裂く感触でない事に気付けただろう。紅花の姿が解け、艶やかな糸が風に舞った。
「砕かれてもいいの。だって……それ、ニセモノだもんっ!」
軍師を守るべき兵達は、重武装であるが故に紅花の速度に追いつけない。紅花の『搦』が、郭嘉に届く。白く垂れ下がる蟲の脚が一本斬り飛ばされ、かつんと軽い音を立てて落ちた。
『……復讐者。嗚呼、危険ですね。ここで始末せねば……』
「その予見はきっと正解です。ですが、始末出来るかどうかは――どうでしょうね?」
明の言葉に、挑発する意図は全く無かっただろう。だが、泰然とした彼の雰囲気は郭嘉の癇に障ったらしい。ついと指先を動かした郭嘉から微かに滲む、殺気。
『私、先を見通す能力には少々自信がありましてね』
「拳も、先見も。的外れかどうかは、振ってから分かるものです」
郭嘉の瞳が怪しく輝き、細く、それでいて硬い糸が、細雨のように明の周囲に降り注ぐ。明の動きを全て知っているとばかりに、的確に明の歩みが向く先へと飛来する。糸が明を幾度も掠め、小さな傷を刻んでいく。
なるほど先見の明があるというのも頷けると感心する明とは裏腹に、郭嘉の表情に焦りが浮かんだ。何せ、糸は当たりはしても切断するに至っていない。鬼が出るか蛇が出るか、酷く気ままな歩法で、明は間合いを詰める。
糸雨の向こうで明の輪郭が揺らぎ、そこで初めて距離感を狂わされていたという事実に郭嘉は気付くが、手遅れだ。鳩尾に重い一撃が捩じり込まれ、郭嘉が呻いた。
「賢そうな敵は、先手を打って殴るのが吉。……なんて、私の辞書には書いてあります」
「僕はいいと思うな、その辞書。賢そうな敵に限らずクロノヴェーダは無駄な抵抗とかせずさっさと死んでほしい」
今日も今日とて優はクロノヴェーダに対して辛辣である。それとも人の身に過ぎた怒りを滾らせた復讐者の言としては、生易しい部類だろうか。優の『鉄塊剣』が宿した焦熱が、周囲に熱風を生む。
(「……なんてね。クロノヴェーダに素直に聞くような奴は居ないし、仮に聞いたとしたら……そんなの、罠を疑う案件だ。油断せず、確実に――」)
絶えず思考していた優は、ふいに強烈な違和感に襲われた。次いで、郭嘉と繋がった、奇妙な感覚。ぐずぐずと脳髄を侵す存在に気付き、不快感に顔を顰めた。これが、支配。優は抗い、仲間へと視線で訴える。
「所詮は糸よ。糸は燃える、たとえ燃えにくくても……絶対にね!」
いち早く気付いたリアが、炎を纏う。まるで火で出来たドレスだ。火の粉で彩られた羽衣を翻し、二槍を円を描くように振り回す。優の頭上で視認出来ぬ糸が燃え上がり、虚空に消えた。
「あー、気持ちわる。絶対燃やす」
「その意気よ! 糸も郭嘉殿も、焼き尽くしちゃいましょう!」
怨讐を形にしたような苛烈な炎。罪人を祓い清める忌火。優の焔は郭嘉を両断するように振り下ろされ、リアの勇武の炎は古典舞踊を舞うように真一文字に振るわれた。自身に纏わりつく二つの炎から逃れようと後方へ跳んだ郭嘉の下に、玄才が飛び込んだ。
「オレの突撃を読んだなら、後ろに退がるか? 距離を置くか? そうでもないと――策を挟む余裕もないんじゃないか?」
玄才は目も眩むような雷で拳を覆い、郭嘉に迫る。狙うは懐、超が付く程の近接戦闘。軍事に謀は付き物だが、一対一で対峙するこの瞬間、玄才の望む純然たる『武』以外が介在するのを避けたかった。間に幻影の魏兵が割り込もうが、郭嘉の操る糸に肌を裂かれようが、玄才は敵が退いた分だけ前へと踏み出していく。
「逃がすかよ、ヒョロ野郎!」
石畳に亀裂が入るほど強く踏み込んで、伸ばした腕は郭嘉に触れた。寸勁。十分に勢いの乗った打撃が、郭嘉を打ち据える。
吹き飛ばされた郭嘉は建物の壁に叩きつけられる寸前で体勢を立て直し、ふわりと――空中に着地した。
「は? 浮遊し――」
「いや、足下に……糸が張られているようですぞ。器用なものだ、この貞侯殿は雑伎の方が向いているように思える」
郭嘉を見据え、蛇が答えた。トリックを見破られた郭嘉が次に指し示したのは、蛇。支配下に置くべく、糸が伸びる。
「みんなの動きを止めさせたりしないぞお」
「人を知る者は智なり、自らを知る者は明なり……残念だが、貴様に自知之明があるようには思えんのう。――その名を捨てよ!」
紅花が糸を断ち、蛇が吠える。熱風が郭嘉の足場となっていた糸を崩し、炎が彼の衣に燃え移る。
『まさか、この私が押されるなど――!』
ディアボロス達と隔てるように、幻影の魏兵が召喚される。幻影の兵士達は郭嘉の指揮の下で突撃を繰り出すが、幸児に阻まれすぐに陣形が瓦解した。
「どんな攻撃も、そっくりそのまま返してやるぞ……!」
幸児の腕は深い闇に包まれていた。或いは、本来腕があった場所が闇そのものに変じたと言うべきか。幻影の兵士が斬りつけようが、矢を射ようが、幸児の前に展開された闇は霧散するどころか深みを増していく。
(「さあ、俺目掛けて仕掛けてこい」)
恐らく普段の郭嘉であれば、盾の存在も看破したのだろう。だが追い詰められつつある今、焦燥が彼の目を曇らせている。手を変え品を変え闇へと挑んだ所で、郭嘉も無事では済まない。
「あとは俺とてめえの我慢比べだ」
ただし、幸児には仲間が居る。闇は足下から広がりを見せ、今や幸児の腕と周囲の闇との区別がつかなくなっていた。――幸児の背後に控えていた、喩嘉のパラドクスと混じり合っていた。
「光が強ければ、闇もまた深くなる。先ほどあたりを眩く照らしたのも、この布石というわけだ」
大地から滾々と湧き出る闇は、辺りを夜闇に包むまで広がり続けた。郭嘉が暗闇の底に沈むのを見届けて、喩嘉は号令を掛けた。
「……夜が来た。やれ」
幻影の兵士を指揮する郭嘉に対し、喩嘉が差し向けたのは間者の幻影。端的な指示をたった一つ下しただけで、喩嘉が召喚した間者達は、敵の背後へと回り込んだ。闇の中で自在に動く幻影が、郭嘉を急襲する。
●
夜の帳が下りた戦場で、糸が舞い、兵器が猛威を振るい、兵士の一団が動く。その尽くをディアボロス達は粉砕し、郭嘉を追い詰めていく。
「根比べは苦手か?」
仲間達を守るように立ち塞がった幸児に、郭嘉は苦々し気に吐き捨てる。
『こんな、滅びたはずの。死にぞこないの復讐者などに、この私が』
「……死にぞこない、ね。その言葉、そっくり返すよ」
虚空を軽く蹴り、樹が高く跳んだ。衝撃波を伴う拳が、郭嘉の真上から叩きつけられる。郭嘉は這う這うの体で自身を守る為に大盾の兵器である木慢を召喚するが、翔一の作り出した亜空間は盾の向こう側に展開した。
「この手の敵は、自分の策が何度も外れんのにこたえるクチだろ」
収縮ではなく、完全なる消滅。ごそりと削り取るように郭嘉の右腕が切断され、悲鳴が上がる。
『私を! 私を守りなさい!』
大盾をかなぐり捨てた彼が次に掲げたのは、蕩蛛宮妓の骸だった。糸を括り付け、操り人形のように部下の遺体を扱う軍師に、優は嫌悪感を滲ませた。
「死んだ後もこき使う上司とか最悪じゃない? ……灰燼すら残さん――灼滅せよ、煉獄の刃!!」
焔に触れ、郭嘉が燃え上がる。炎の中に浮かび上がる人影は藻掻くように天を仰ぎ、そのまま動かなくなった。
喩嘉が創り出した夜闇に紛れ、ディアボロス達は長安を脱する。
「……さて、司馬懿の居場所の候補は分かったが、また追っかけて行っても逃げちまいそうだし。どうしたもんかな~?」
虎牢関を越えてから司馬に関する情報をいくつか耳にしてきたが、未だ邂逅には至っていない。ぼやく玄才に、蛇は考える。
「司馬懿……か。孫権、曹操、劉備の三英傑を全て倒した後であれば、禅譲で皇位を受けるのは司馬懿かもしれぬ」
現段階では断片の王の資格を持つとされているのはこの三体だが――、あくまでも推測だ。蛇は小さくかぶりを振った。
「司馬懿殿達がなんの為にこんな偽りの平和の都を作ってるのか知らないけど……いずれ全部暴いてやるんだから!」
「次来るときは秘密を暴くときっ!」
意気込むリアに、おー、と紅花が拳を掲げて応えた。喩嘉も頷き、力強く宣言する。
「何を企んでいるにせよ――俺たちは必ず、それを阻止してみせる」
今回情報を持ち帰れた事で、新たな動きがあるだろう。探索は成功だと、明は胸を撫で下ろした。
「旅歩きも今日は終わり。……帰るとしましょうか」
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【狐変身】がLV2になった!
【液体錬成】LV1が発生!
【士気高揚】がLV2になった!
【熱波の支配者】がLV3になった!
【悲劇感知】LV1が発生!
【エアライド】LV1が発生!
【光学迷彩】がLV4になった!
【一刀両断】LV1が発生!
【口福の伝道者】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV6になった!
【反撃アップ】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV4になった!
【ロストエナジー】がLV4になった!
【ガードアップ】がLV7になった!
【アヴォイド】がLV3になった!
【命中アップ】がLV4になった!
【凌駕率アップ】LV1が発生!