函谷関破壊作戦

 ディアボロスが制圧した洛陽の調査の結果、洛陽・長安を担当するジェネラル級蟲将『司馬懿』は、既に長安に逃げ去っていたようです。
 攻略旅団の方針である『司馬懿』の撃破を実現する為には、長安へと向かう必要があるでしょう。

 現在、司馬懿は洛陽と長安の間にあった『函谷関』城塞を再建し、ディアボロスの侵入を阻止しようとしているようです。
 函谷関では多数のトループス級が土木工事に従事し、城塞の再建に従事しています。

 この工事中のトループス級を撃破し、再建途中の『函谷関』を破壊、司馬懿の拠点である『長安』への道を確保してください。

智謀軍師の関門(作者 白石小梅
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#大戦乱群蟲三国志  #函谷関破壊作戦  #洛陽  #長安  #函谷関 


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●函谷関再建
『急げ! 図面の通りに仕上げるのだ!』
 魏軍虎衛兵が雄叫びを上げながら土塁を築き上げていく。その隆々たる肉体は、人の如く台車など用いることなく、その背に無数の土嚢を背負い込み、咆哮と共に平原を駆ける。
『しかし、どういうことなのだ? 急に函谷関を再建せよとは』
『わからぬが、司馬懿さまのご指示であろう。前線で何か動きがあったのかもしれん』
『前線とは、あの呂布の護る洛陽ぞ。揺らぐわけがあるまい』
『であろうが……間道を用いて伏兵が入り込んだとも考えられる』
 煉瓦を壁面に貼り付けていた二体が、訝しむように声を交わす。それを、通りかかった一体が見咎めて。
『おい、私語をするな。俺たちは如何なる命にも、全力で応じるが故に虎衛兵なのだ』
 話し込んでいた二体もまた、それに応じて黙々と作業を再開する。
 その前面には、突貫作業で作られているとはとても思えぬ威容を誇る城壁が、蟻塚の如く聳え始めている。

 その関門の名こそ『函谷関(かんこくかん)』。
 かつて秦の時代……五ヵ国合従軍を退け、覇王項羽の足を止め、智将張良を抱えた高祖劉邦をして正面突破を避けたと伝えられる要害の地。
 魏国軍師『司馬懿』の命により、今、その城塞が蘇りつつあった……。

●時先案内人の依頼
 パラドクストレインの前に立ち、ジャン・ジェラールが復讐者たちを迎える。
「今回の依頼は、大戦乱群蟲三国志だ。魏の奥地へと進む道が拓けたようだぞ」
 洛陽の蟲将の巣を破壊したことで、洛陽の制圧はほぼ完了したといってよい。攻略旅団の方針に従えば、目指すはジェネラル級と思われる『司馬懿(しばい)』の撃破。
「だが司馬懿は既に、長安方面に撤退しているようだ。奴は洛陽と長安の間にある『函谷関』を再建し、諸君を長安に近づけまいと画策している。完成すれば函谷関はクロノ・オブジェクトと化し、容易に抜くことの叶わぬ要害となるだろう」
 しかし『函谷関』城塞の再建は、未だ途上。クロノ・オブジェクト化していない再建中ならば、破壊する事が可能というわけだ。
「その通り。かの諸葛亮に匹敵すると言われた智謀の士『司馬懿』に時間を与えれば、何をしでかすかわからない。洛陽の惨状は、諸君も聞いての通りだ。蟲将の巣を生み出す技術も、捨て置くわけにはいかない。兵は神速を貴ぶという。奴の準備が整わぬうちに、一気呵成に函谷関を破壊し、長安への道を切り開いてもらいたいのだ」
 復讐者たちはその依頼に、力強く頷きを返す。

●作戦選択肢
 ジャンが状況を説明する。
「まず再建工事に動員されているのはトループス級の蟲将『魏軍虎衛兵』だ。普段であれば土木工事などには一般人を無理矢理に動員して行うのが常だが、洛陽や長安には恐らく工事に従事できるような一般人が残っていないのだろうな……」
 洛陽の惨状を思い、復讐者たちは僅かに表情を曇らせる。だが、これ以上の惨劇は防がなければならない。
「まずは虎衛兵を排除しつつ、再建途中の『函谷関』を破壊して欲しい。敵の撃破より施設の破壊を目指す闘いとなる。普段とは少々勝手が違うぞ。気を付けてくれ」
 また土木工事に従事している虎衛兵とは別に、アヴァタール級を指揮官とする警備部隊が工事現場を巡回・警備しているという。当然、それらも迎撃する必要がある。
「破壊が不完全である場合、破壊できなかった施設を敵に利用される危険性が高い。工兵隊、警備部隊、現場指揮官の全てを撃破して、確実な破壊が完了できる。よろしく頼む」
 では今回の主力となる警備部隊の陣容は。それを問う声に、ジャンは重々しく頷いた。
「警備の主力部隊は『魏軍硬殻兵』。一般的な魏軍兵だ。だがそれを率いるアヴァタール級は『穎才の謀臣・郭嘉』。史実において、魏王曹操の覇道を補佐した気鋭の智将だ。分体とはいえ、くれぐれも気を付けてくれ」
 頑強な工兵隊に、堅固な槍兵隊、それを率いる稀代の軍師。なるほど。相手にとって不足なし、だ。

「本来、函谷関は三国時代より遥か昔……秦の時代の要塞だ。秦はこの関門で五ヵ国合従軍を撃退し、末期においても破竹の勢いの項羽将軍を足止めせしめたという。そんな時代の象徴をクロノ・オブジェクトとして完成させるわけにはいかない」
 だが洛陽・長安は、見過ごせない。単純な大戦乱を狙う三国の動静とは、僅かに意を異にして動いている気配もする。
 その奥へ隠れた司馬懿を追い、蟲将たちの大戦略を突き崩すのだ……!

●穎才の謀臣
『郭嘉さまの巡回である……!』
 虎衛兵たちが一様に立ち上がり、馬に横乗りになってやって来た細身の男に礼をする。
『ああ、むさくるしい。皆、構わず働きなさい。曹操閣下の御旗の下に、この函谷関を一刻も早く完成させるのです』
 虎衛兵たちは太い一声でそれに応じ、作業を再開する。すでに二本の支柱である櫓部分が完成し、その間を頑強な壁面で覆う作業が始まっていた。
『しかし郭嘉さま……司馬懿さまは一体、何をお考えなのでございましょう』
 軍師と共に巡回する魏軍硬殻兵の一人が、僅かに首を主に向ける。
『ふむ……』
 郭嘉は櫓に上がりながら、鼻を鳴らす。無論、その思案をしなかったわけではない。
(『司馬懿ともあろう者が、何を見誤った? 突貫で迎撃態勢を整えるなど、明らかに後手に回っている』)
 己が見誤ったと悟ったならば、即座に次の一手を打つのが軍師。司馬懿は誤りを認めることも出来ぬほど愚かな男ではない。
『ここに駐屯しているのは、断片の王の戦いに加えるべき精鋭です。些末ないくさで空費すべきものではない。司馬懿ほどの軍師に、それがわからぬはずはありません。となれ、ば……』
 司馬懿の予測さえも超えた何かが起こったのだ。それは恐らく洛陽に配した最強の武……その敗北と見るべきか。
『ま、まさか……呂布が?』
 予測を聞き、俄かに浮足立つ甲殻兵。しかし、それを率いる軍師は薄く嗤う。
『何を怯んでおります。力攻めでは勝てぬ敵にこそ、我ら軍師の鬼謀が輝くというもの。未だ来たらぬ未知なる敵に、教えて差し上げましょう。函谷関に座すは、この郭嘉であることをね……』


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【水源】
3
周囲に、清らかな川の流れを出現させる。この川からは、10秒間に「効果LVトン」の飲用可能な水をくみ上げる事が出来る。
【飛翔】
3
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。【怪力無双】3LVまで併用可能。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【未来予測】
1
周囲が、ディアボロスが通常の視界に加えて「効果LV×1秒」先までの未来を同時に見ることのできる世界に変わる。
【一刀両断】
2
意志が刃として具現化する世界となり、ディアボロスが24時間に「効果LV×1回」だけ、建造物の薄い壁や扉などの斬りやすい部分を、一撃で切断できるようになる。
【腐食】
1
周囲が腐食の霧に包まれる。霧はディアボロスが指定した「効果LV×10kg」の物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)だけを急激に腐食させていく。
【避難勧告】
2
周囲の危険な地域に、赤い光が明滅しサイレンが鳴り響く。範囲内の一般人は、その地域から脱出を始める。効果LVが高い程、避難が素早く完了する。
【友達催眠】
1
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【泥濘の地】
2
周囲の地面または水面が泥濘に変わり、ディアボロスは指定した「飛行できない対象」の移動速度を「効果LV×10%」低下させられるようになる。
【トラップ生成】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の空間を、非殺傷性の罠が隠された罠地帯に変化させる。罠の種類は、自由に指定できる。
【熱波の支配者】
2
ディアボロスが熱波を自在に操る世界になり、「効果LV×1.4km半径内」の気温を、「効果LV×14度」まで上昇可能になる。解除すると気温は元に戻る。
【光学迷彩】
1
隠れたディアボロスは発見困難という世界法則を発生させる。隠れたディアボロスが環境に合った迷彩模様で覆われ、発見される確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【壁歩き】
2
周囲が、ディアボロスが平らな壁や天井を地上と変わらない速度で歩行できる世界に変わる。手をつないだ「効果LV×1人」までの対象にも効果を及ぼせる。
【平穏結界】
1
ディアボロスから「効果LV×30m半径内」の空間が、外から把握されにくい空間に変化する。空間外から中の異常に気付く確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【完全視界】
1
周囲が、ディアボロスの視界が暗闇や霧などで邪魔されない世界に変わる。自分と手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人にも効果を及ぼせる。
【活性治癒】
1
周囲が生命力溢れる世界に変わる。通常の生物の回復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」し、24時間内に回復する負傷は一瞬で完治するようになる。
【植物活性】
1
周囲が、ディアボロスが指定した通常の植物が「効果LV×20倍」の速度で成長し、成長に光や水、栄養を必要としない世界に変わる。
【土壌改良】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の地面を、植物が育ちやすい土壌に変える。この変化はディアボロスが去った後も継続する。
【建造物分解】
1
周囲の建造物が、ディアボロスが望めば1分間に「効果LV×1トン」まで分解され、利用可能な資源に変化するようになる。同意しない人間がいる建造物は分解されない。
【温熱適応】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」が、クロノヴェーダを除く全ての生物が、気温摂氏80度までの暑さなら快適に過ごせる世界に変わる。
【通信障害】
2
ディアボロスから「効果LV×1,800m半径内」が、ディアボロスの望まない通信(送受信)及びアルタン・ウルク個体間の遠距離情報伝達が不可能な世界に変わる。
【アイテムポケット】
1
周囲が、ディアボロスが2m×2m×2mまでの物体を収納できる「小さなポケット」を、「効果LV個」だけ所持できる世界に変わる。

効果2

【能力値アップ】LV1 / 【命中アップ】LV4 / 【ダメージアップ】LV8 / 【ガードアップ】LV2 / 【反撃アップ】LV5(最大) / 【アクティベイト】LV2 / 【ラストリベンジ】LV1 / 【先行率アップ】LV2 / 【ドレイン】LV2 / 【アヴォイド】LV1 / 【ロストエナジー】LV3

●マスターより

白石小梅
●経緯
 皆さんの活躍で洛陽を制圧しました。しかし魏の軍師『司馬懿』はすでに長安へと撤退しており、復讐者の追撃を止めるために、古の城塞『函谷関』の再建に着手しています。これを突き崩し、長安への道を確保しましょう。

●作戦の基本手順
 まずは虎衛兵と闘いながら施設を破壊。その後に駆けつけて来る甲殻兵と郭嘉の部隊を迎撃する形になります。なお、クリア条件は郭嘉の撃破なので、施設破壊をせずにクリア(いきなり郭嘉を強襲する)、護衛兵を残してクリア(敵将を討ち取って即撤退)も可能です。その場合、函谷関が部分的に再建される可能性が残ります。

●選択肢解説
 ①👾護衛するトループス級『魏軍硬殻兵』(👑7)
 一般的な魏軍の歩兵ですが、この地に集められていたのはレベルが高めの個体が多いようです。郭嘉が積極的に指揮を執るため、強めに描写されます。

 ②👾敵施設破壊戦闘(函谷関)『魏軍虎衛兵』(👑9)
 屈強な虎衛兵たちが土木工事を行って函谷関を再建しています。目標が『妨害を掻い潜っての施設破壊』であるため、戦闘だけ、もしくは施設破壊だけのプレイングは評価が下がります。チームワークを駆使したり、個々で工夫するなどして破壊を目指してください。

 ③👿アヴァタール級との決戦『穎才の謀臣・郭嘉』(👑11)
 曹操の覇道を大いに補佐した稀代の智将、郭嘉……その存在を奪ったアヴァタール級分体です。分体ながらその知略を受け継いでおり、滾る智謀は冷酷そのもの。そこに好色な性格が加わってなのか、敵に対しては慇懃無礼かつ挑発的な態度を取ります。彼を撃破することでシナリオクリアとなります。
 なおOPでは馬に乗っていますが、これは歩くのが面倒なので普通の馬に乗ってるだけで、戦闘には使いません。
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このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


孫・リア
司馬懿殿は何を怯えるんだろう?いや怯えてない?これも策……うーん考えてもわからない……とりあえず目の前の函谷関になりかけを壊して建設してる虎衛兵も倒しちゃいましょう!

強そうな闘気ね……だけど流れたらどうなるかな?『江水』でまずは雨を降らして【不意打ち】した後あちらこちらに水流を召喚、建設中の函谷関の脆い部分に鉄砲水のごとく水を押し流してあげる!

勿論私に攻撃してくると思うからそういう敵には水鉄砲を撃ち込んだり濁流に流したりして攻撃してこっちも倒しつくしちゃおう!
ふふっ濡れきったら木材の再利用も出来ないでしょう?

【アドリブ共闘歓迎】


四方堂・あんな
なるほどー、お急ぎのあまり兵隊を導入してまで要塞作ってるわけねー
こりゃ是非とも邪魔してあげなきゃね

相手は集団、加えて施設にもダメージを与えなきゃいけない
ってなると、爆発物の出番だね
煙玉とは名ばかりの爆薬をつかって、あちこちぶっ壊しちゃうぜ
ほれほれ、逃げないと生き埋めの兵馬俑だよん【避難勧告】
てな具合に現場から兵たちを引き剥がしてみようかね
おっと、反撃のために耐える姿勢だね
立派なもんだ。そんなにまでしてこの砦を守りたいんだね
天晴だよ。いいパンチだ……

まあ、カウンターわかってればそれを誘って残像で食らったフリしつつ、鬼燈震霆で粉微塵隠れ、まとめて吹き飛ばそうっていう、汚い戦術なんだけどね


安藤・優
※アドリブ連携歓迎
洛陽はひとまず片付いたから次は長安にって言いたい所だけど…やっぱり守りは固めてるよね。

うーん、建設中とは言え中々に頑強そうだけれど、でもまだクロノ・オブジェクトじゃないんでしょ?
それならまだパラドクスで破壊できそうだね。

挨拶代わりにまずは一発投擲を、再建途中の壁面に不意打ちの絶空剣を撃ち込むよ。一撃で穴が空けばよし、空かなくても風穴空くまで定期的に壁に向かって絶空剣を投げるだけだよ。

ついでに泥濘の地で動きを鈍らせて、敵が密集して守りを固めてる所にも絶空剣を投げて薙ぎ払ってやる。見え見えのカウンター受けに近付くかバーカ。


守都・幸児
壊しながら戦えばいいんだな
そいつは得意だ、任せとけっ

鉄骨を振り回して【突撃】だ
一気に敵を凪ぎ払う
俺が使う技は「危」
闇の顎を出現させて
敵を喰らわせながらそのまま建造中の関に激突させるぞ
敵が守りを固めるなら
その守りの内側に顎を出現させる

工事現場は新宿島で見慣れてる
皆が広範囲を狙ってくれるなら
俺は支柱や基礎になってる部分を【看破】して
重点的にその周辺で暴れて回る
根本からこの城塞を崩してやるぞ

図面も探してえ
倒した敵の中に図面を持ってる奴がいたら奪い取り【情報収集】
効果的に破壊できる場所を皆に伝えるぞ

仕上げは【泥濘の地】だ
喩嘉の水計の水の力も借りて土地を緩め
工事再開を難しくしてやるぞ

※連携、アドリブ歓迎


喩・嘉
敵兵を倒しながら関の破壊が目標か
守る対象もなし
つまり派手に暴れれば良いということなのだな実に明瞭

まずは後方に陣取り、可能であれば高所から状況を見定める
幸児や仲間たちが基礎など、関の要所部分を破壊したのを見計らい
羽扇を振るい「青龍水計」を使用。
敵を薙ぎ倒しながら、放たれる激流でまとめて関の破壊をも目指す

続けて土木工事をしようなどという気も起きないほど、更地にしてしまおう

※連携、アドリブ歓迎


伏見・萬
(連携アドリブ歓迎)
(過去の記憶がない、幽鬼じみた男)
なんだ。此処、何か凄い砦なのか?
…まあいいか。何モンだろうが、潰す事に変わりはねぇ

周囲のディアボロスと協力
動き回って敵を【撹乱】しつつ、戦況を把握し情報を共有

【神蝕呪刃】を使用、作りかけの柱や壁を【腐食】させる
効率よく崩せそうな部分を見極めて、崩壊に敵を巻き込んで撹乱に利用

どちらかといえば破壊活動をメインに動くが、以下の場合は敵を攻撃
・建設中の部分の破壊が粗方完了している
・攻撃可能な範囲内に、撃破可能な敵個体がいる
・付近のディアボロスが敵に狙われている、敵が陣形を整えにかかっている等、フォローが必要と判断

…大人しくもう一度眠っとけ、函谷関



 ……その城塞の名は函谷関。いにしえの時代である大戦乱群蟲三国志に在って、なお遠き歴史の地。そこへゆらりと、幽鬼染みた一人の男が足を運ぶ。
(「なんだ。此処、何か凄い砦なのか? ……まあいいか。何モンだろうが、潰す事に変わりはねぇ」)
 遠目に見るのは伏見・萬(錆びた鉄格子・g07071)。関の前では、魏軍虎衛兵が雄叫びを上げながら、土嚢を積み上げている。その勢いは人間も重機も超え、巨大な関門は圧倒的な速度で出来上がりつつある。
「司馬懿殿は何を怯えるんだろう? いや、怯えてない? それともこれも策……? うーん考えてもわからない……」
 関門の大地を覆うような影の下、孫・リア(勇武と炎を胸に秘めて・g03550)は茂みに隠れながら目を細めた。四方堂・あんな(気ままな忍者・g00300)が、その隣から首を出して。
「なるほどー、お急ぎのあまり兵隊を導入してまで要塞作ってるわけねー。こりゃ是非とも邪魔してあげなきゃね」
 建設現場を遠目に見つめる復讐者たち。この部分は組んだ土嚢を加工した岩石や煉瓦で覆う程度の仕組みであるが、完成の暁には函谷関はその全てがクロノ・オブジェクトと化す。そうなれば、たとえパラドクスを用いようとも破壊は容易ではなくなり、その向こうにパラドクストレインを走らせることも不可能な大結界となるだろう。
 しかし。
「うーん、建設中とは言え中々に頑強そうだけれど、でもまだクロノ・オブジェクトじゃないんでしょ?」
 安藤・優(名も無き誰かの代表者・g00472)が呟いた通り。今はまだ、不動の関門は未完成。ならば復讐者がすべきことは一つだけ。
「目標は敵兵を倒しながら、関を破壊すること。守る対象もなし。派手に暴れれば良いということだ。実に明瞭」
 喩・嘉(瑞鳳・g01517)が、その言葉の終わりを続ける。
 ぱん、という軽快な音を立てて、守都・幸児(祥雲・g03876)が拳を掌に叩きつけた。
「壊しながら闘えばいいんだな。そいつは得意だ、任せとけっ」
 その前向きさに、ふっと唇を緩める面々。
 狙うは、壁の両端に聳え立つ二本の櫓塔。まずはその片方だ。
 蘇らんとしている関門を再び眠らせるために、復讐者たちは立ち上がる。


 作業をしている虎衛兵たちの身に、はらはらと雫が降り始める。
『む、雨か?』
 おかしい。そのような気配は……。と、訝しむ間もなく、すさまじい轟音が関を撃ち抜いた。砲弾が直撃したような音と共に、壁面に積み重ねていた土嚢の上部が弾け飛ぶ。
『何ッ!』
 咄嗟に振り返った虎衛兵たちの視線の遥か先には、重力の鎖をまとった剣を持つ優の姿。柄を握った手を大きく引いて、すでに二射目の投擲の構えを取っている。
「よし。やっぱり今ならパラドクスで破壊できそうだね。洛陽はひとまず片付いたから、次は長安に行くために……守りを固めきる前に、崩させてもらうよ」
 渾身で放った二射目。絶空剣は、空を切り裂く音と共に飛翔する。虎衛兵たちがそうはさせじとその前に飛び出した。爆炎が弾け飛び、敵の群れが砕けて散る。しかし敵は弾き飛ばされた勢いを利用して、優へ向けて飛び込んできた。
『ディアボロスどもか! 函谷関再建の邪魔はさせぬ!』
「おっと。見え見えのカウンターなんて、まともに受けるかバーカ」
 生成した絶空剣と虎衛兵の肘うちが激突する。火花を散らして弾き合い、多数の敵兵が吹き飛んだ。それでも敵は数の上では優位。後ろから次々と飛び込んで来る敵兵が優に殺到する。
 しかし。
「咄嗟に反撃に出るのは、いい反応だけどな。させねえよ」
 飛び込んできた幸児が振るうのは、単純な鉄骨。パラドクスでさえない薙ぎ払いが甲殻と激突し、喉の奥から気合を吐いて虎衛兵の拳を押し戻す。幸児はわずかに優を振り返って。
「投擲を続けてくれ。俺は、このままいくぜ。さあ……怪し危うし、危ねえぞ」
 二人が頷き合った時、敵と押し合う幸児の腕が闇の顎に変質する。それは巨獣の如く鉄骨をくわえ込んで振り回し、吹き飛ばした虎衛兵を一飲みで嚙み砕く。
『くっ……! いかん、関に近づけるな!』
「とどめてみろよ。工事現場は新宿島で見慣れてんだぜ? 支柱になってやがんのは……その辺だなっ」
 群がる敵兵の打撃を闇の顎で弾きながら、幸児の投げた鉄骨が櫓の根元に突き刺さった。朱の鉄骨はそのまま目印だ。それを狙って優が投擲を再開したのを確認して、幸児はそのまま敵兵の群れの中で暴れ回る。
 雄叫びと共に幸児に集る敵群。その隣を駆ける人影は。
「相手は集団、加えて施設にもダメージを与えなきゃいけない……ってなると、爆発物の出番だね」
『おい、そちらにもいるぞ!』
 あんなは悪戯でもするかのように、施設に向けて爆薬を放り投げた。それは空中で派手に爆散して破片を飛ばすが、破片式の爆弾は建造物の破壊には向いていない。一撃では、表面の外装を剥ぐのが精いっぱいだ。
『火薬を持っている! 止めろ!』
「ほれほれ、次弾いくよー? 逃げないと生き埋めの兵馬俑だよん……っと、おやあ?」
 あんなの前で、敵兵たちは組体操のように味方の肩に乗って跳躍し、立ちはだかる壁のように彼女に迫った。この状態で爆弾を放られても、誰かがそれを確保して爆死する代わりに、他の全員があんなのことを叩きのめす……そんな構えだ。これでは砲丸投げの姿勢のまま、あんなも爆弾を投げられない。
『我ら捨て身の虎衛堅牢陣! 喰らえい!』
「まさか反撃のためにここまでやるとは……立派なもんだ。天晴だよ。いいパンチだ……」
 相手の忠義と挺身を褒め称えつつ、あんなの姿が拳の乱打の中に沈む。仲間の敗北に、復讐者たちがハッとそちらに向き直った……その時。
「なーんちゃって! 狙いは元から、敵兵ちゃんたちさ! さあ、地獄まで付き合ってもらうぜ!」
『何ッ!』
 虎衛兵が振り返った頭上。あんなが、無数の拳打の中を跳躍し、敵の頭上を取っていた。彼女はそのままダンクシュートの如き構えで、山なりに折り重なった敵兵たちの中へ爆薬を叩き込む。閃光が敵群の中で弾けて、敵兵たちが悲鳴と共に飛び散った。
「今だっ、大暴れだぜ」
 幸児が別の鉄骨を振り回して突っ込んでいく。その彼が敵を集めたところに、あんなが飛び込んで。
「各個撃破は任せたよー!」
 顎が敵を喰らい、爆薬が群れを吹き飛ばす大乱闘。
 そのただ中を、一人駆け抜ける男の影は。
「攪乱、助かる」
 それは萬。二体の虎衛兵がその姿に気付いて、前へ出た。
『抜かせるかッ!』
「……遅い」
 ひらひらと強まる雨の中、放たれた拳と、鈍色の刃が交差する。萬の肩と、装甲の如き甲殻の隙間から血が飛んだ。一見して、互角。だが敵兵は「ぐっ」と呻いて膝を突く。萬の刃から染みた呪いが、敵兵の関節を腐食させて、その腕が溶けて落ちる。血を吐いて倒れる敵兵を尻目に、萬は呪詛を含んだナイフを振り被った。
「……大人しくもう一度眠っとけ、函谷関」
 降り注ぐ雨の中、目印の鉄骨の上を走り、櫓塔へとナイフを突き立てる。呪いが瞬く間に侵食し、塔の基礎を溶かし始めて。
『おのれえ!』
『これ以上させるな!』
 だが流石にこの巨大建造物を溶かし崩すには、間に合わない。幸児とあんなが彼を護るように立ちふさがる中、敵兵たちが殺到してくる。
 だが萬は、ナイフ一本で壁面に張り付いたまま、遠くを見た。関から離れた、丘の上を。
「よし。これだけやれば準備完了だろう……?」


「幸児と仲間たちが、関の要所部分を上手く突いたようだ。そちらは?」
「ええ。こちらも雨脚は最高潮よ。強そうな闘気だったけど、流れたらどうなるかな?」
 丘の上で、嘉とリアが視線を交わす。優が遠方から敵の目を引き付け、幸児、あんなが敵兵を押さえ、萬が支柱に楔を打った……今こそ、最後の策を打つべき時。
「孫子曰く、水を以て攻を佐くる者は強なり。さて、吉と出るか、凶と出るか」
「攻を佐くるって言葉、今回の場合には当てはまらないと思うけど?」
 二人は、ふっと笑みを交わして構えに入る。
『あそこにまだ二人いるぞ!』
『潰せ! 一斉に行くぞ!』
 一部の敵兵が二人に気付き、雄叫びを上げて大地を引っぺがすように抉り取る。それは巨大な土石の塊となって宙に舞い、隕石のように二人へ向かって来た。リアがそれに向かって手を構え、嘉は羽扇を刀のように振りかぶる。
「見つかったわね……! 飛んでくる岩は任せて! そのまま援護するわ!」
「では俺が関への主攻を担おう。さあ、解き放つぞ……水よ。我らが敵を押し流せ」
 裂帛の気合を呼気に変え、二人は手を振り下ろす。満を持して放たれるのは、嘉の青龍水計と、リアの江水。轟音と共に、濁流が絡み合った龍と化して、その背後から迸る。
『な……うおおおっ!』
 濁流は一気に丘を滑り降り、咆哮を上げる虎衛兵を呑み込んだ。同時に、降り注ぐ岩が嘉とリアの周囲を圧し潰す。だが、一度放たれた流れは止まらない。櫓塔の前で慌てる敵陣を押し流しながら、乱闘する幸児とあんなに迫る。
「二人とも、俺を足場にしろ……!」
「おう、頼むぜっ」
 二人はナイフでぶら下がった萬の足に飛びついて、壁面にへばり付いた。激流が関門に激突すると、根元が腐りかけていた櫓塔は、ぶら下がる三人を圧し潰す方向にゆっくりと傾いていく。それを見つめて、腕を振りかぶるのは、優。
「結構、固く出来てたのが、却って幸運だったね……! さあ、走って!」
 放たれた絶空剣が塔の先端に激突し、傾く方向が変わる。三人は傾いていく櫓塔の上を駆け抜けて、その先端から濁流の外へ向けて跳躍した。坂の上に向かって身を転がして、後ろを振り返るのは、あんな。
「あー……敵兵ちゃんたち、本当に生き埋めになっちゃったね」
 ふうっと息を吐く彼女の前では、崩れ去った櫓塔に城壁の煉瓦が降り注いで崩れていく。二本の櫓塔の間に通された城壁は、片方の支柱が押し流されたことで、その半分が瓦解したのだ。
 一方。丘の上では、降り注いだ岩の隙間から嘉が顔を出していた。
「……濁流を飛ばして岩の直撃を防いでくれて助かった。皆も無事のようだ。水計は成ったな」
「ふふっ。濡れきったら木材の再利用も出来ないでしょうしね? さあ、残る櫓塔はもう一本よ!」
「ああ。工事を継続する気も起きないほど、更地にしてしまおう」
 作戦を成功させた仲間たちが、丘の上に向けて手を振る。復讐者たちは集結し、未だ残るもう一方の支柱を睨んだ。あの櫓塔を突き崩した時、この地に蘇りつつあった関門は崩れ去るだろう。
 復讐者たちは走る。いにしえの城塞を、もう一度打ち崩すために。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【水源】LV2が発生!
【避難勧告】LV1が発生!
【泥濘の地】LV2が発生!
【腐食】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV2が発生!
【アクティベイト】LV2が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!

秋津島・光希
※連携、アドリブOK

一般人がいねえのは
不幸中の幸いっつーか何つーか
この世界のヒトの無念も連れて
存分に暴れてぶち壊してやる

技能[戦闘知識、誘導弾]

常に【飛翔】

上空から接敵
これみよがしに爆撃槌を構え襲撃…するかに見せかける

「来やがれ、虫ケラ!粉砕してやる!」

守りを固めに出て来てくれりゃ僥倖
ぶん殴りに…行かねえよ!

空中で軌道を変え
距離を取りパラドクス発動
本命の攻撃は槌じゃねえ、砲撃だ!

さあ、どうする?
弾を受け止めて死ぬか
捌いて建造物まで通すか

俺を見逃して好き勝手させるか
或いは抑えに来るか?
陣形が崩れると仲間が通って行っちまうぞ?

どう足掻こうが函谷関への被害は免れねえよ
言っただろ?
「粉砕してやる」って


杏・紅花
壁を壊して、邪魔してきた奴らもぶっ飛ばす。
おっけー!全部壊すってことね!

急いで作った函谷関なんて、怖くないもん
邪魔してくる奴らは素早くお迎え
欢迎、残像できる速さのあたしの舞は、見てられるかな?

足さばきで敵の視界を翻弄しつつ
敵も壁も効率よくぶっ壊すために、あたしは壁にヒビを入れとこう
【壁歩き】で駆け上がって、功夫で強化した白四肢で蹴りながら壁に穴を開けてく
おりゃっおりゃっおりゃあ〜っ!

あとは仲間のド派手な攻撃が、作りかけの土屑を吹き飛ばしたり洗い流したりしてくれるかなっ!

それじゃ、壁を駆け上がった勢いで、敵にも蹴りをお見舞いだあっ!!

アドリブ、連携歓迎っ


ソラ・フルーリア
※連携アドリブ歓迎します

んー、おっきな要塞ね!アタシも大きなハコが欲しくなるわ!
まだクロノ・オブジェクト化してなくてよかったわね!
司馬懿を取り逃さないためにも、此処は壊しておかなくちゃ!

それじゃ、ゲリラライブin函谷関と行きましょ!
【飛翔】で飛び立って、要塞と兵に攻撃していくわ!
要塞は真っ向から攻めると面倒かもだから、完成してる櫓の柱を狙って行くわね!
【誘導弾】で櫓だけ狙えば壊しやすいんじゃないかしら!

兵の方も【誘導弾】と【連続魔法】で視界の外から敵に打ち込んでいくわよ!
反撃は【飛翔】の速度で【ダンス】を踊るように回避!
これで相手の気を引いて、皆の攻撃を援護するわ!


吉水・翡翠
アドリブ連携歓迎

壊しながら戦う。
難しいですがやってみましょう。

敵や建物の様子を観察や偵察。弱いところに向かって前へ進みます。
≪陰陽鉄扇≫を使用し、魔力で刃を作って敵に向かって斬撃。
フェイントも交えながら機をうかがいます。
機を見て敵を吹き飛ばして壁にぶつけて壁に傷をおわせたりとかもしましょう。
また、敵と壁を巻き込むようにして【陰陽遊戯・焔舞風刃】を使用。
火であぶられればその部分が脆くなる。
風で煽れば火で敵を倒しつつ被害を拡大させられる。

さあ、敵も壁もどちらも崩してみせましょう。


菱神・桐梧
アドリブ連携大好き
戦闘中は適度に煽って【挑発】

壊し放題暴れ放題ってか。
さぞ気分が良いだろうな?

遠慮なくぶち壊しに行くか!
まずはハンマーで手当たり次第に【破壊】
なるべく派手に動いて虎衛兵が寄ってくるよう立ち回るぞ
奴らが来たら群れへ【突撃】しパラドクスで一匹取っ捕まえる
そうすりゃ後はやりたい放題だ

捕まえた虎衛兵を振り回し、叩きつけ敵群ごと土塁や壁を薙ぎ倒す
反撃は勿論、虎衛兵で防ぐ
振り回した虎衛兵は適当な所で壁にでも投げつけてトドメを刺しておくか

一応、味方に群がってる奴を優先して取っ捕まえるか
そうすりゃ少しは動きやすくなるだろ

さあ次はどいつだ?
死ぬまでこき使ってやるからよ、どんどんかかって来な!



 函谷関に、闘いの歓声が響き始めている。支柱となっている二本の櫓塔の片方に、復讐者たちが攻め掛かったのだ。
「んー、おっきな要塞ね! アタシも大きなハコが欲しくなるわ! まあ、司馬懿を取り逃さないためにも、壊しておかなくちゃならないんだけど!」
 その戦場から反対の位置で、支柱の櫓塔を見つめているのはソラ・フルーリア(歌って踊れる銀の星・g00896)。
 秋津島・光希(Dragonfly・g01409)が耳をすませば、丘一つ向こうから攻め掛かる仲間たちの激闘の様子が聞こえて来る。
「……一般人がいねえのは不幸中の幸いっつーか、何つーかだ。この世界のヒトの無念も連れて、存分に暴れてぶち壊してやる」
 こちら側の櫓塔を担当していると思しき敵陣は、もう一方が奇襲を受けたことでたじろいでいた。杏・紅花(金蚕蠱・g00365)がそれを見つめて、関と敵兵のどちらを優先すべきか首をひねる。その肩を叩いたのは、吉水・翡翠(道求める陰陽師・g01824)。
「壊しながら闘う……難しいですがやってみましょう。最後には敵も壁も、どちらも崩してしまえばよいのですよ」
「壁を壊して、邪魔してきた奴らもぶっ飛ばす……おっけー! とにかく全部壊すってことね! それならわかる!」
 敵は決して無能な部隊ではないが、現在は土木工事が主任務。哨戒を掻い潜っての奇襲に、浮足立っているようだ。
「壊し放題暴れ放題ってか。さぞ気分が良いだろうな? んじゃ、遠慮なくぶち壊しに行くか!」
 菱神・桐梧(喧嘩屋・g05613)が、喧嘩屋の二つ名の通り、手を打ち付けて立ち上がる。敵が浮足立っているこの機を、逃すわけにはいかない。
 そして五人の復讐者は、大地を蹴って丘を駆け下る。関門にとどめを刺すために。


『奇襲とは! 哨戒部隊は何をしていたのだ!』
『おい! 反対の丘からも敵だ!』
 丘を駆け降りて来る復讐者たちに気付き、虎衛兵の布陣が向きを変える。それぞれに身構えながら走って来るのは、紅花、翡翠、桐梧……。
『三人だけか! すぐに押し包んで……』
『違う! 上を見ろ!』
 ハッと敵兵が顔を上げた時、彼らの顔上を二つの影が飛翔する。
「まだクロノ・オブジェクト化してなくてよかったわね! それじゃ、ゲリラライブin函谷関と行きましょ!」
 瞬間、ソラの解き放った双翼魔弾が空中に弧を描いた。それは櫓部分を派手に撃ち抜いて粉砕し、敵陣に岩石と材木の破片を降らせる。
『くう! しまった! 関が!』
『投げろ! 資材でもなんでもいい! これ以上させるな!』
 飛んでくる無数の瓦礫や木材を、ソラは身を回して躱していく。彼女が施設へのヒットアンドアウェイに入るのに対し、投擲の中を敵陣に向けてまっしぐらに急降下していくのは、光希。
「来やがれ、虫ケラ! 粉砕してやる!」
『迎え討て!』
(「守りを固めに出て来やがったな。さあ、ぶん殴って……」)
 振りかぶられた爆撃槌。咄嗟に陣を組んで身構えた敵兵と、振りかぶった一撃が激突する……寸前、光希は敵兵の顔面を蹴るようにして急旋回した。
「やらねえよ! 引っかかったな! 本命の攻撃は……!」
 掴みかかってくる腕の先をすり抜けて、光希はほとんど逆さになったままの姿勢で腰の砲塔を敵に向けた。完全に敵を自分に注目させ、その鼻先を掠めた効果は大きい。敵兵たちは身を乗り出したまま、受けにも回れない。
「こっちだぜッ!」
 爆炎が砲口から噴き出して、砲弾が敵陣を貫通する。それは支柱になっていた櫓塔に突き刺さり、盛大に黒煙を吹き出させた。ヒュウ、と音を立てて口笛を吹いた光希の隣を、槌を構えた桐梧が駆け抜ける。
「おぉらァア! 怯んでないで掛かって来いよ、お前ら!」
 道中に積んであった資材や作りかけの馬防柵と思しきものを叩き崩しながら、桐梧は切り裂かれた敵陣へと突進する。周辺の敵が憤怒の叫びと共に殺到するのを受けて、桐梧はにやりと笑って巨大なハンマーを背負い直した。
「いいぜ! 腕自慢なんだろ? こっちも素手で受けて立ってやるよ」
『舐めるな、ディアボロス風情が!』
 交錯する拳。敵兵の一撃がカウンター気味に桐梧の頬に入る。しかしにっと笑った彼の手は、すでに虎衛兵の首を掴んでいた。桐梧は雄叫びと共にその体を軽々と持ち上げて。
『うおぉお! な、何を……!』
「何をって? やりたい放題やってやるに、決まってんだろ!」
 他から殴り掛かって来た敵兵に向けて、桐梧は捕まえた敵兵を得物代わりに振り回す。堅牢な甲殻はそのまま盾になり、更に屈強な肉体は破壊的な重さを持つ打撃武器へと変わる。敵兵同士が激突して火花を散らし、桐梧はそのまま持ち手を足首に変えると、敵兵を鉄球のごとく振り降ろしては持ち上げて。
『おっ! ごぉ! ふぐ……! おぉおお、放せ! 放せぇええ!』
 叩きつけられるたび、仲間と重なった悲鳴をあげる敵兵。振り回される勢いに暴れることもままならない。桐梧はそのまま敵の包囲が僅かに遠巻きになったのを見計らい、肩に力を込めた。
「ああ! お前のことは今、放してやるよ!」
 渾身で放り投げた敵兵が、味方と激突して吹き飛んでいく。それを見ながら、桐梧はぱんぱんと手をはたいた。
「さあ次はどいつだ? 死ぬまでこき使ってやるからよ、どんどんかかって来な!」
 一方、飛んで行った敵兵の先に待ち構えていたのは。
「おや、さっそく良い機会が来たようです。敵も壁もどちらも崩してみせましょう」
 翡翠が振るった鉄扇が、爆炎を吹き出して飛んでくる敵兵を弾き飛ばした。関へと激突した敵兵はそのまま燃え盛り、焔がゆっくりと建物に燃え移り始める。
『火を用いるか! まずい、関に火をつけさせるな!』
 敵は炎を関門へ近づけさせじとばかりに向かって来るが、すでに翡翠の周囲には陰陽の符が舞っている。
「そうです。火であぶられれば、その部分は脆くなる。さらにそこを風で煽れば、被害を拡大させられる。ならば止めるしかありませんよね。目立つのは得意ではないのですが……この際、仕方ありません」
 一斉に向かって来る敵兵たち。繰り出して来る拳撃を待って、翡翠は鉄扇を舞わせた。
「五行の木。五行の火。青龍の風。朱雀の火。風と火と共に、舞いましょう」
 瞬間、彼を巻き込むように爆炎が竜巻となって吹き上がる。大いに広がった炎は敵を巻き込み、関を焙り、そして……。
「さあ、今です」
「まっかせてー!」
 桐梧と翡翠によって敵陣が混沌に陥った隙を走り抜けるのは紅花。陣を維持できていない敵の隙間を駆け抜けて、関へ向けてひた走る。
『通すな! 止めろォ!』
「やってみなよー。残像が出来る速さのあたしの舞に、ついてこられるならね。急いで作った函谷関なんて、怖くないもん」
 繰り出される拳を掻い潜り、僅かに掠める一撃を意にも介さず、紅花は揺らぐ軌道を後ろに伸ばしながら跳躍する。その細足を渾身で突き出し、己が身を弾丸の如く関門の壁へと突き刺して……脚が刺さったまま、動きが止まった。
『馬鹿め! そんな細身で蹴り込んだところで何ができる!』
「ん~? この壁を効率よくぶっ壊すために、ヒビを入れとくんだよー」
 ふっと気迫の息を吐き、紅花は足の白四肢を持ち上げた。そのまま、一歩、二歩……壁に足をめり込ませながら、彼女は下から伸びてきた敵の手をすり抜けて壁を走り上る。
『なっ! ま、待て!』
「おりゃっおりゃっ、おりゃあ~っ! 後はド派手に、まっかせたよー! ……で、敵さんたちには、こいつをお見舞いだあっ!」
 櫓塔を駆けのぼった紅花は、そのまま壁を蹴りつけた。鋭角に折れ曲がった跳躍で、そのまま敵兵に足蹴りを突き刺して吹き飛ばす。
 空からは光希、地では桐梧、翡翠、紅花に暴れまわられ、敵陣はすでに混乱の極みに堕ちている。関門はと言えば、焔に焙られ、ひびが走り、すでにいつ頽れてもおかしくはない。そこに向けて、落ちるように飛び込んでいくのは。
「敵はみんなに釘付けね。さて、じゃあ……」
 まっしぐらに降りて来るソラに敵が気付いた時には、もう遅かった。その身から魔弾を放ち、ソラは櫓の上部からひび割れた関門の内側へと滑り込む。櫓に上るために存在した内部空間に飛び込むと、彼女は渾身の力をその翼に込めて。
「これでとどめよ! 函谷関!」
 全周に迸った魔弾が、内側から関門を打ち破った。支柱を失い、支えを無くした巨大な壁は、燃え盛りながらゆらりと崩れ始める。
「おっと、暴れ放題な時間はここまでか!」
「このままここにいてはこちらも生き埋めですね」
「にゃー! それはいやー! 逃げるよー!」
 伸びて来る巨大な影の下を、復讐者たちは駆ける。ぎりぎりのところで跳躍した復讐者たちの背後で、壁は土石の雨となって降り注ぎ、悲鳴をあげる敵兵たちを呑み込んでいった……。

 濛々と立ち込める土煙の中で、復讐者たちがせき込みながら立ち上がる。
「……はは。言っただろ? “粉砕してやる”ってな」
 光希が顔を上げた時、そこには燻る炎とむき出しの土塊が残るだけ。
 威容を誇った壁は、跡形もなく崩れ落ちていた。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【飛翔】LV2が発生!
【壁歩き】LV1が発生!
【一刀両断】LV1が発生!
【通信障害】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
【命中アップ】LV2が発生!
【反撃アップ】がLV3になった!

●軍師襲来
 その関の名は、函谷関……しかし今やそこに残るのは、大水に押し流されてぬかるんだ泥土と、燻る炎に舐められる瓦礫の山だ。生き埋めになった虎衛兵はまだ生きているだろうが、脱出には相応の時間を要するだろう。
 二手に分かれて櫓塔を攻めた復讐者たちは、互いの姿を確認して無事を確かめ合う。
 その時だった。ぱちぱちと手を叩く、乾いた音が響いたのは。
『……こちらが駆け付けるより早く、あの関門を突き崩すとは。如何なるディヴィジョンの手の者かは存じませぬが、司馬懿どのを走らせるだけある。流石と申しましょう』
 関があった向こう。舞う砂塵の中から姿を現すのは、敵の軍勢。その先頭に立つ、細足の蜘蛛を思わせる男が、馬上から微笑みかけて。
『おっと、ご挨拶が遅れましたな? わたくし、姓は郭、名は嘉。魏国に仕える、しがない文官にございます』
 男は甲殻兵たちに護られながら馬を降り、貴人に拝謁するかのように拱手の礼を取った。
『関一つ守れぬ不肖の身なれど、皆さまにお尋ねしたいことが山ほどございます。うふふ、ちょうどわたくし好みの見目麗しいおなごもいらっしゃるご様子。一献、語りあかしませぬか?』
 優男はまるで宴に旧知の者を誘うように、品の良い声音で語る。盃を持ち上げつつ女の細腰を撫でさする、下卑た仕草を見せながら。
 周囲を囲む甲殻兵どもは翅を震わせて一糸乱れぬ陣を組み、掛け声とともに槍を構えた。
『さても軍師とはいくさと謀にて語るもの。まずは痴れ言と刃の遊興に耽るといたしましょう。いにしえの、鴻門の会が如くにね……』
 男が指を鳴らすと同時に、甲殻兵は雪崩を打って丘を駆け下ってきた。
 不快な羽音と共に迫り来る蟲将の群れ。その背後にて、不敵に嗤う神算軍師。
 いずれから迎え撃つか。
 函谷関を巡る闘いは、ここからが本番だ……!
吉水・翡翠
アドリブ・連携歓迎

……敵の精鋭ですか。
ですが、こちらも退くつもりも負けるつもりもありません。
お覚悟を。

相手の動きを観察やし、その隙を見極めます。
時に護符や結界術を砲撃の様に飛ばしてフェイントや牽制。
隙を見つけたら一気に行きます。
陰陽遊戯・水鏡射。
地より出でし水鏡。その光を照射せん。
金行の力を強めてその光を発射します。光とは集めれば集める程熱く、燃えるもの。
さあ、何処まで耐えられますか?

敵の反撃は吹き飛ばしや結界術で耐えます。
味方と協力して一体ずつ倒していきましょう。


守都・幸児
※連携、アドリブ歓迎

お、あいつが敵将か
なんか…うまく言えねえが、気に入らねえなあ
早いとここの兵ども倒して殴りに行くか

敵は丘の上か、高所をとって有利に動くつもりだろうが、そうはいかねえぞ
勢いつけて下ってきてるんだ、急には曲がれねえよな
俺の使う技は「閉」
雪崩れ下りてくる敵兵どもの足元に
闇の落とし穴を開けてやる
陣形が乱れねえならその足元は狙いやすい
落とし穴の位置は次々変えて
敵陣形のそこかしこに出現させてやる
敵兵を落とすのはもちろんだが、避けようとさせ陣形を崩すのも狙いだ

武器は藍鬼拐に持ち替える
近接したら敵を殴って
闇の落とし穴に直接叩き落すぞ
飛んで避けようとする敵も【飛翔】で追いかけ叩き落す
逃がすかよ


喩・嘉
※アドリブ、連携歓迎

ここからは単純な戦というわけだ
同じ名を持つ軍師として、受けて立とう

羽扇を振るい、「幻鶴翼陣」を使用
幻影の兵士たちを召喚
兵たちを指揮し自在に動かす

槍兵の猛攻を正面から受けるな
左右に分かれ敵軍の横腹から食い破れ
戦闘中において、一秒先を読めることはかなりの有利を取れる
【未来予測】で敵全体の動きを読み、的確に指揮をしていく

自分自身への攻撃をくらいそうになったら
【飛翔】し回避しながら、自ら己を囮として
その隙を幻影の兵士に攻撃させる


ゼキ・レヴニ
おー、見事にブッ壊したもんだね
あの軍師とは気持が違うが、おれも拍手を送りたい気分だぜ
関より立派な鼻っ柱をへし折る戦い、ぜひ手を貸したいとこだ

【通信障害】や【避難勧告】のサイレン音で
厄介な郭嘉の指示を妨害できんかね

【トラップ生成】で丘斜面の土中に躓く程度の穴やパンジスティックをランダムに仕込み
【水源】で発生した川で敵を分断(地形の利用)
飛ぶなり対策されるだろうが、初っ端駆け下ってくる隊列を乱せれば重畳
「躯」を大盾に変じて展開
敵勢の勢いを利用し、突出して来る奴を『看破』盾で『強打』して押し込む

味方が敵を叩きやすい様に、『忍耐力』を以て守りを固め
敵を地上に引きつけつつ、不利な味方を援護する様に動くか


ソラ・フルーリア
※連携アドリブ歓迎します

見事な迄に胡散臭い奴が出てきたわね!
悪いけどアナタの質問に答える義理はないわ!
アナタもすぐに倒しちゃう訳だし!
(ネメシス化で四肢に紅い呪紋が現れる!)

アタシは【飛翔】して、「レゾネイト」(マイク兼杖)からの【誘導弾】を連射して敵に浴びせていきましょ!
ダメージは与えられないけど、牽制にはなるかしら!

敵の攻撃は空中で【ダンス】するように回避して、敵の視線を集めるの!
【空中戦】は任せてちょうだい!
皆の攻撃が通り易くなれば幸いね!

視線を集めた所で【羨望と幻惑の最大光量!】を放つわよ!
幾ら軍師の策でも、見たこと無い光はどうかしら!
魔力弾で【吹き飛ばし】て陣形を崩してやるんだから!



 紫煙を食んだゼキ・レヴニ(Debaser・g04279)が、崩れ落ちた関門を見てふっと笑う。
「おー、見事にブッ壊したもんだね。あの軍師とは気持が違うが、おれも拍手を送りたい気分だぜ。ところで、関より立派なあの鼻っ柱をへし折るんだろう? ぜひ手を貸したいとこだ」
 遅れてきた男が煙に紛れた皮肉を吐く間に、ソラ・フルーリア(歌って踊れる銀の星・g00896)は軍師の痴れ言に眉をひそめて。
「ええ。見事な迄に胡散臭い奴が出てきたわね! 悪いけどアナタの質問に答える義理はないわ! アナタもすぐに倒しちゃう訳だし!」
「あいつが敵将か。なんか……うまく言えねえが、俺も気に入らねえなあ。早いとここの兵ども倒して、殴りに行くか」
 涼やかな顔で見下ろしてくる軍師を睨み、守都・幸児(祥雲・g03876)と、喩・嘉(瑞鳳・g01517)が肩を並べて立つ。
「うむ。ここからは単純な戦というわけだ。同じ名を持つ軍師として、受けて立とう」
 歓声を上げて突撃してくる魏兵の群れ。吉水・翡翠(道求める陰陽師・g01824)は、その実力を見極めて呪符を構える。
「……敵の精鋭、ですか。ですが、こちらも退くつもりも負けるつもりもありません。お覚悟を」
 敵の軍師は淑女のように袂で口元を隠して、くすりと嗤った。
『では……そのお言葉に足るだけの力を、見せていただきましょう』
 指の鳴る音が響き、魏兵たちは突撃をしながら扇状に広がって両翼を作り出す。今度の敵は、すでに臨戦態勢。奇襲の利はない。
 ならば堂々、迎え討つのみだ……!

●右翼の闘い
 復讐者たちは二手に分かれ、押し包んで来る敵の両翼へ挑みかかる。とはいえ。
『凡そ軍は高きを好みて下きを悪む……嵩にかかって圧し潰しなさい』
 敵軍師の語る通り。この勢いをまともに受ければこちらが不利。
「なるほど、丘の上か。高所をとって有利に動くつもりだろうが、そうはいかねえぞ」
 先陣を切って走る幸児が、敵を前に拐を振るう。だがその豪打が狙うのは、敵兵でも槍の穂先でもない。拳ごと突き刺さったのは、大地だった。
「勢いつけて下ってきてるんだ、急には曲がれねえよな」
 鬼の腕が纏っていた闇が大地を伝い、雲影のように敵集団の足元を流れていく。構わず突撃した敵兵は、鬨の声と共に無数の穂先を突き出した。幸児の胸を貫く勢いで、槍が突き刺さる……その切っ先の、僅かな部分だけ。
『何!? な、なんだ!』
 泥土に足を突っ込んだように、敵兵の足が闇に絡め取られ、沈むように呑み込まれていく。敵兵が、あがくように振り下ろした槍を拐で弾いて、幸児は立ち上がる。
「来いよ。其処の底へ墜ちるのが、怖くないっていうならだけどな」
 大地に無数に走った闇に墜ちた兵は全身が闇に呑まれて沈んでいく。後続が慌てて避けても、そこには待ち構えている幸児がいる。
「さあ、打ち合おうぜ。命綱の上でなっ」
『ふん、たかが落とし穴よ!』
 だが敵も、それだけで足を止められる数と勢いではない。後続は沈み行く仲間の頭を踏み付け、拐を振り回す幸児に槍を向けて来る。
「いいじゃねえか……! 対策されるにせよ、初っ端に駆け下ってくる隊列を乱せれば、十分ってヤツだぜ」
 突き出された槍を横から掴み、敵兵を殴り倒したのは、ゼキ。「助かるぜ」と笑顔で叫ぶ幸児に「いいってことよ」と返す間にも、ゼキは蹴りで大地を抉って敵兵を転ばせて闇へと突き落とす。
「先陣切った奴を敵陣に独りに出来るかよ。仲間が敵を叩きやすい様に、守りを固めるのがおれの……こいつの役割だぜ」
 敵を引きつけつつ、ゼキはかつての闘いを呼び起こす。自らの命を擲って仲間を守った戦士の記憶。それは、ゼキの両腕を大盾の形へ展開させていく。
「……奴が守りきれなかったのは、ただ一つだけだった。今度は、全て守ってみせるぜ」
 焼き付いた記憶を力に変えて、鋼の要塞と化したゼキが突進する。地形の不利など構うものか。この盾の後ろに仲間がいる限り、全ての切っ先を徹しはしない。
 拐を振るう幸児を突き刺そうとしていた敵集団へと突っ込んで、ゼキの盾が槍の穂先をへし折った。重撃と化して先頭の首を盾でへし折りながら、ゼキはそのまま敵群を闇へと押し込んでいく。
「敵勢の勢いはおれが殺す。突出して来る奴ァ、任せな……!」
 暴れまわる幸児。ねじ伏せるゼキ。二人の活躍で敵陣の勢いが止まり、滞るように陣形が崩れる。
 その後方で。
「頃合いだな」
 嘉の羽扇が振るわれ、呼び出されるのは幻影の兵士たち。
『右翼。そのまま前へ。多少の犠牲など、厭わず突き進むのです』
「槍兵の猛攻を正面から受けるな。左右に分かれ敵軍の横腹から食い破れ」
 前線の動きを見る軍師の指示は、皮肉にも同時だった。
 見下す視線は敵を嗤い、見上げる視線は敵を射抜く。互いに、嘉と嘉。奇しくも、同じ名を持つ軍師が兵の指揮を執る。
(「敵の名に惑うな。兵を一塊と見定め、先を読むのみ」)
 鶴翼に広がった幻兵たちが、雄叫びを上げて幸児とゼキの脇を駆ける。駆け下る敵敵兵の勢いと士気を汲み取り、嘉の目は秒の先を見抜く。
(「なるほど。無謀にも思える突貫で兵がいくら死のうとも、踏み越えて突き進みさえすれば、幸児たちを後続で呑み込める。そうして我らも抜き、背後で両翼を合流させる気か」)
 そして両翼の合流を許せば、すでに突撃で傷を受けた自分たちに抗う術はもうないというわけだ。ならばと、嘉の羽扇が振るわれる。
「右翼は前へ。左翼はその場にて敵を受けよ」
 激突する幻兵と甲殻兵。僅かな間の激突を経て、勢いを得ている敵兵が陣を抜けてくる。
『奴が幻の術者か! 撃て!』
 敵の穂先から迸る雷電。それに右肩を射抜かれ、続くスパークを羽扇で弾きながら、嘉は飛翔してその場から下がった。
『飛んで逃げたぞ!』
『追うぞ! 首級を挙げるのだ!』
 陣を喰い破った敵兵を、己一人で受け止められるわけもない。この場は、戦場から逸れるように下がるしかなかった……。
 そう、見えるように。
『む? 右翼前衛、誰が追えと指示しましたか!』
 敵軍師の叫びに、嘉がふっと笑みを浮かべた時。
 敵の稲妻を消し飛ばすような閃光と共に、飛翔して来た敵兵の横腹を魔力の弾丸が撃ち抜いた。
『!?』
「完璧な舞台にお客さんを連れて来てくれてありがと! 幾ら軍師の策が正しくても、兵隊さんは大手柄には抗えないものよね! さあ、注目してもらうわよ!」
 ぎらついた光と共に、ソラが中空を舞う。敵の軍師は戻れと喚くが、もはや彼らに見えるのは、目を覆うような七色の光と、その中で踊るソラの姿だけだ。
『ま、眩しい! 本隊は何処だ!』
「誰もが憧れる眩いステージライトよ! 一緒に浴びて踊りましょ? アタシに勝てるなら、あなたがスターになっちゃうかも? この首、挙げるんでしょ?」
『こ、この! 舐めた口を! 投擲開始! 撃ち落とせ!』
 甲殻兵たちは一斉にソラへ向けて槍を投げる。マイクであり杖でもある“レゾネイト”を構えながら、ソラは矢雨の如く放たれる槍の中を滑空し、その四肢に紅い呪紋を浮かび上がらせた。復讐神の力を得て、彼女のショーは佳境に入る。
「てんで駄目ね。羨望と幻惑の最大光量の中で舞うのは……アタシだけみたい! それじゃあ一曲、ご披露するわよ!」
 球状の魔弾が、鏡球のように明滅した。閃光が瞬く度に黒く焦げた敵兵たちが滑落し、目が眩めば地面へと墜落して幻兵たちに刈り取られるのみ。
『ちっ……お馬鹿さんたちですねえ』
 そう舌を打ったのは、敵の軍師であったろうか。絢爛な空中ショーの合間に、ソラが叫ぶ。
「陣形を崩したわよ! 空中戦は、任せてちょうだい!」
「ええ、空はお任せしました」
 無数の護符を浮かべた結界の中から応じるのは、翡翠。功を焦らず、地を走って猛攻を抜け出た敵兵の前に独り佇んで。敵兵たちは空と後ろで次々と仲間が討たれていくことに動揺しながらも、果敢に突っ込んで来る。
「初速を抑え込まれ、突進する先を誘導され、空と地に分断を許していながら、なお走りますか。軍師の指示は常に団結していろ、という意味だと思いますが」
『お前を殺して仲間と合流するとも! 稲妻よ、迸れ!』
 槍の穂先から放たれた雷が、結界を打って翡翠の身を裂く。だが、紡がれる陰陽術はもう止まりはしない。
「ならば仕方がありません。あなたたちがここに到達するまで、自分には十分に仕込みの時間がありました。頭を潰すくらいはしないと、申し訳が立ちませんから」
 敵の陣は上下に口を開けた長蛇の如く伸びた。今やその尾をゼキと幸児が、胴体を嘉が、上顎をソラが切り崩している。
 翡翠の手の内に、魔祓の水鏡が呼び出される。それが水晶の如き輝きを放ち始めると、敵は嘲笑った。
『目晦ましか! 無駄なことを!』
「目晦まし? いいえ。光とは集めれば集める程熱く、燃えるもの。さあ、何処まで耐えられますか?」
 眩い輝きが集まり始め、敵が放つ稲妻がそれに呑み込まれるように消失する。更に光は収束して、太い光線となって突っ込んで来る敵群を照らし……。
「地より出でし水鏡。その光を照射せん」
『……ッ』
 静かな宣言と共に、地鳴りを発するほどの光が、敵陣を貫いた。蛇の頭を銃で撃ち抜いたように、悲鳴さえ呑み込んで先頭の敵兵が消失する。まだ生きている敵兵たちが、慌てて避けようとして転び、後続と将棋倒しになっていく。
『……功を焦りましたか。使えない方々です』
 敵勢は、すでに勢いを失っていた。敵軍師は、もう右翼に指示を飛ばそうとはしていない。
「よし、敵が散り始めたな……!」
「任せろっ。逃しやしないぜ」
 伸びきってしまった敵の布陣の最後尾で、二人が背中を合わせる。
「勝負あったな。残軍を片付けるとしよう」
「ええ! 最後まできっちり締めるよ!」
 敵の右翼は引き裂かれ、それぞれに討たれ始める。
 翡翠もまた、散発的に襲って来る敵兵を閃光で射抜き、ちらりと左翼を見た。
(「さて……あちらの戦場はどうなっているでしょうか」)
 右翼の趨勢は決した。
 果たして、左翼の戦場は……。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【建造物分解】LV1が発生!
【通信障害】がLV2になった!
【未来予測】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
【友達催眠】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV3になった!
【反撃アップ】がLV4になった!
【ダメージアップ】がLV5になった!
【ガードアップ】LV1が発生!

孫・リア
この郭嘉殿は司馬懿殿が曹操殿に長安にいるって言ってないって知ってるのかな?……まぁ関係ないか、貴殿も函谷関も倒すし壊すだけだからね!

こんな戦法を逆落しって言うんだよね確か……んーなら飛べばいいかなー?『天馬』で星星と共に【飛翔】してまずは上空から阿黒の鴉の幻影達からのビームを【連射】ある程度敵が減ったりしたら【騎乗】したまま偃月刀と槍、更には星星の蹄とかで空から攻撃を仕掛けていくわよ!

【アドリブ共闘歓迎】


秋津島・光希
※連携、アドリブOK

再建されちまう可能性を考えると
兵士の殲滅もした方が確実だよな
敵将は正直、鬱陶しいが…後回しだ!

[技能:戦闘知識、一撃離脱、観察、早業、空中戦]

常に【飛翔】

軍師の指揮の下に兵が連携取ってくるとなると
真っ向勝負は危険だな

ある程度の距離を取った上で
爆撃槌での防御や回避に徹しつつ
少しずつ敵を誘導するか
俺が敵の下に来る位置取りになるようにな

上から畳み掛ければ落とせる…と思うだろ?
落ちるのはテメェらだよ

パラドクス発動
俺がわざと下に行って気を引いてやれば
敵の頭上は無防備になるはずだ
幻影食らって、攻撃の手が止まった奴から
槌で殴って、また次の奴へとヒットアンドアウェイ
敵の陣形を乱してやる!


伏見・萬
(連携アドリブ歓迎)
(ネメシスモードで、胸の傷跡から黒い靄が漏れているが自覚は薄い)
あァ?…別に何ともねぇよ。むしろ普段より調子がいいぐれぇだ
今なら、あいつらいくらでも喰えそうだぜ(敵を見遣り)
メインディッシュはまだ先だ、こんなとこで寝くたばったりしねぇよ

周囲のディアボロスと協力して動く
残留効果も必要に応じ利用
基本は敵の間を駆け回っての撹乱と遊撃

【魔骸連刃】使用
刃は、他の戦場で倒して喰らった蟲将から生成したもの
「てめぇも喰われて、同じになれよ」

逃げようとする個体>撃破可能な個体>他のディアボロスを攻撃しようとしている個体>その他、の順で優先し攻撃
【ドレイン】で体力を補い、負傷は気にせず暴れ回る


安藤・優
※アドリブ連携歓迎
まずは甲殻兵達を片付ける事からかな。僕も少し聞きたい事があるけれどあんな胡散臭い奴に聞いた所で欲しい情報なんて得られないだろうし、そもそもアイツどうせ答える気はないんだろうし!

新武装のイロンノを手に反撃の構え…をしながら敵に突撃!
お前ら空飛ぶんでしょ?だから僕も飛翔で空中戦に持ち込むよ。

飛び道具に接近戦は無謀に見えるだろうけど、その気になれば距離に関係無く反撃だってできるんだ。

やられたらやり返す…もちろん倍返しだよ!


四方堂・あんな
おやおや、敵の頭がもう顔だしてるじゃない
まあでも、精鋭を片付けないことには手が足せないみたいだけど
悪いねー、まだ酒飲める歳じゃないからさ
あの世でお友達とやるといいよ
たくさん送ったげるから。んふふ

空を飛ばれちゃ、手が出せない
なーんて思うかもしれんけど、こっちにゃ手裏剣も爆弾もあんのよ
まーパラドクスを伴わない攻撃は効果薄いだろうから目くらましにしかならないだろうさ
でもそれこそが狙いさ
幸いここは壊れたて、粉塵撒き散らすには丁度いい
植物活性で足場を育てる時間を稼ぐよ
育った木は矢避けにもなれば、砦を拵えるにも邪魔だろう?
さあ、反撃開始だ
この技は、近付かないと当たんないからな!



 敵が、丘の上から駆け降りて来る。
「おやおや、敵の頭がもう顔だしてるじゃない……まあでも、この精鋭を片付けないことには手が足せないみたいだけど」
(「この郭嘉殿は司馬懿殿が曹操殿に長安にいるって言ってないって知ってるのかな?」)
 四方堂・あんな(気ままな忍者・g00300)の言葉に、孫・リア(勇武と炎を胸に秘めて・g03550)は思案を巡らせる。
 敵軍師の目には、じっとりとした色が浮かぶのみだ。
「……まぁ関係ないか。貴殿も函谷関も、倒すし壊すだけだからね!」
「そそ。悪いねー、まだ酒飲める歳じゃないからさ。あの世でお友達とやるといいよ。たくさん送ったげるから。んふふ」
『では……その言葉に足るだけの力を、見せていただきましょう』
 軍師が指を鳴らすと、丘を駆け降りる敵兵団が両翼を組み、押し包むように迫って来る。
「うん。まずはあの兵達を片付ける事からかな。みんな、行ける? 特に……えっと」
 安藤・優(名も無き誰かの代表者・g00472)が振り返るのは、伏見・萬(錆びた鉄格子・g07071)。その胸の傷跡からは、黒い靄が血のように漏れていた。
「あァ? ……別に何ともねぇよ。むしろ普段より調子がいいぐれぇだ。今ならあいつら、いくらでも喰えそうだぜ」
 恐らく先の闘いで負った傷から復讐神の力が溢れているのだろう。秋津島・光希(Dragonfly・g01409)は「無理はすんなよ」と語りながら、敵を見上げる。
「再建されちまう可能性を考えるときっちりと兵士も殲滅しないとな。あの敵将は正直、鬱陶しいが……後回しだ! さあ行くぜ!」
 五人はそれぞれに武装を構える。
 背後ではすでに敵右翼との闘いが始まっている。
 こちらが迎え討つは、敵左翼だ……!

●左翼の闘い
「僕から行くよ。あの敵将には、少し聞きたい事があるんだよね」
 走り出した優の合図を受けて、仲間たちは後ろに下がる。
『いくさ遊びの最中に、痴れ言遊びですか? うふふ、愉しそうですね』
 敵の軍師は、品の良い声音でそれに応える。走り出した優は、敵の前に身を晒しながら、首を振った。
「……やっぱいいや。こんな胡散臭い奴に聞いた所で欲しい情報なんて得られないだろうし。そもそもアイツ、どうせ答える気はないんだろうし!」
『おやおや、よくお分かりで』
 敵の先陣が、一斉に槍を投じた。射かけられる槍の群れが、放物線を描いて落ちて来る。優は膝を折り、月を思わせる大鎌イロンノを構えて……。
「反撃の構え……と、見せかけて、突撃!」
『なッ……』
 優は弾かれたように跳躍し、周辺に突き立つ槍の中を駆ける。頬や膝に霞める刃が紅い筋を刻むことも厭わず、その鎌に焔を宿らせて。優が受け身とばかり思っていた敵陣が、慌てて槍を持ち直す。
『穂先を上げろ! 迎え討……』
 持ち上がる穂先の間を、殺意を秘めた焔が一閃する。先頭を走っていた敵の首が、飛んだ。
「さて……お前ら、空飛ぶんでしょ? だったら、僕も……!」
 優はそのまま敵陣を裂きながら、突き出される槍の上を跳ねた。敵兵の一部が、舌を打って翅を震わせる。
『空へ逃げたぞ、追え!』
 飛翔した敵兵と鎌で打ち合う間にも、下方から槍が投擲される。一体や二体など問題ではないが、無数の兵に囲まれれば危険だ。
『馬鹿め、単独で飛び込むとは! 死ね!』
「おっと! 一見、無謀に見えるだろうけど、逆説連鎖戦はその気になれば距離なんて関係ない。やられたらやり返す……もちろん、倍返しだよ!」
 背後から優の首を狙う甲殻兵を、下から手裏剣が打ち据えた。敵が煩わし気にそれを弾くと、今度はその背後に爆弾が舞う。
『ちっ……こいつの仲間か!』
「空を飛ばれちゃ、手が出せない。なーんて思うかもしれんけど、こっちにゃ手裏剣も爆弾もあんのよ。舐めないでよね」
 そう挑発するのは、あんな。とはいえこれらの攻撃は、パラドクスではない。言うなれば牽制や崩しに当たる攻撃だ。効き目は薄い。
 だが。
『ふん! この程度か! 始末してくれる!』
(「そうそう。それが狙いさ。追っかけてきなよ。幸いここは壊れたてだし……」)
 追い立てて来る地上の敵兵から逃れながら、あんなは崩れた函谷関の上へと駆ける。右翼に指示を出していた敵軍師が、ハッとそれに気が付いて。
『左翼まで……! 敵を深追いしてはなりません!』
 敵兵はあんなに向けて槍を投げながら、草の茂った場所に突っ込んだ。予めあんなが種を撒き植物活性で育てていたものだが、流石にまだ芽が出た程度。
 しかし、踏み込んだ瞬間、敵兵の足首が沈み込む。
『うっ、足場が……!』
「ヤソマガツヒに奉ること贄なるを、穢れをこそ恵まれたし……ってね。腐らせた足場を隠すなら、覆う程度の草で十分だよ。再建もしにくくなるだろうし」
 つんのめった敵兵に向けて、あんなが一気に跳躍する。その口に含んだ麦を腐食の呪いを纏った灰に変え、煙のように敵に吹きかけた。
『……ッ、ギャアアアッ!』
 悲鳴と共に腐食していく敵兵。それを見た後続が慌てて退こうとするが、あんなはすでにその背後に跳んでいた。
「粉塵撒き散らすには丁度いい頃合いだね。この技は、近付かないと当たんないからな。さあ、反撃開始だ!」
 枉津日煙の前に、突出した敵集団は文字通り煙に巻かれながら腐れ落ちる。
『困った兵たちです。やすやすと誘いに乗って。常にまとまって闘いなさい』
 突出した集団を切り崩され始めたことに焦った敵は、慌てて本隊と合流しようとする。
 だが空中で優と争っていた者たちが地上へ戻ろうとしたとき、その横腹を槍が貫いた。
「させないよ! えーっと、確か逆落としって言うんだよね、さっきの戦法……とにかく、そんなのを真っ向から受けて立つ義理なんかないしね!」
 槍と偃月刀を振り回すのは、リア。跨る無双馬“星星”には黒い翼が生え、天馬の如く飛翔して敵の合流を阻む。
「さあ、星星! それと阿黒! 全力で行くよ!」
 現れた無数の鴉の幻影が、闇色の閃光を放って地上を走る敵集団を爆撃する。敵から投擲される無数の槍を弾きながら、リアは飛び回る敵兵と切り結んだ。
「仲間たちがせっかく分断してくれたんだしね! 合流なんかさせるもんか!」
『ちっ! ならば俺たちの方から飛翔するまでだ!』
 地上を走る本隊から敵兵が次々と飛び立ち、リアの偃月刀と激突する。投げられた槍を弾いて、リアは敵群へ向けて急降下して。
「率先して闘い、仲間も見捨てない……士気の高い、いい兵じゃない! いいわ、来なさい!」
『ああ、挑発に乗った小勢は切り捨てて、まとまれというに……!』
 敵軍師の嘆息を気にする余裕のある兵は、もういない。空で巻き起こる、閃光の嵐、飛び交う槍雨。リアと優の刃が敵を切り裂く、壮絶な空中戦。その最中、爆撃槌が仲間の背を狙った甲殻兵の背を叩き抜いた。
「はっ! 軍師の指揮の下に兵が連携取ってくるとなると、真っ向勝負は危険だからな! 徹底的に乱してやるぜ!」
 それは、光希。蜻蛉の翅で空を舞い、下から突き上げるように敵を叩く。攪乱に攪乱を重ねられれば、指揮官の命に従う余裕も持ちにくいだろう。
『くそ! 煩わしい奴らめ!』
『蜻蛉が下に潜り込んだぞ! 射貫け!』
 降り注ぐ槍嵐の下をジグザグに飛び抜け、光希はにやりと口の端を上げる。
「上から畳み掛ければ落とせる……と、思ったんだろ? 残念だったな。ハッカーの専門、見せてやるよ」
 光希はぎゅっとブレーキをかけて槍を弾き落とすが、無数に飛んで来る刃の全てを防ぐのは難しい。身を捻っても躱しきれない投擲で、僅かずつ身は削げる。
『強がりを! 墜ちろ!』
「素直にこっちを注目しやがって……墜ちるのは、テメェらだよ」
 瞬間、生成された岩や瓦礫の幻影が、頭上から敵を打ち据えた。全く意識していなかった方角から噴石でも当たったような衝撃に、敵兵たちが悲鳴をあげる。
『うぐっ! な、なんだ!』
「Hack and trick……ちょっとしたイタズラってヤツだ。ところで、余所見してる暇はねえぜ!」
 その声に振り返った敵の視界に、槌を振り上げた光希が映る。空気と甲殻を潰す轟きを響かせて、敵兵の首が弾け飛ぶ。
「よし! 次に行くぜ!」
「僕も負けてられないね」
「私もよ! このまま落とし切る!」
 光希、優、リア……激戦の空から、敵兵の骸が次々に墜ちる。
 その血を浴びながら、大地に独り立つのは萬。地上に残る、敵部隊の眼前に。
「大丈夫? そっち手伝おっか?」
 腐敗の煙を撒くあんなの呼び掛けに、萬は長く息を吐いた。
「いや、いい。メインディッシュはまだ先だ、こんなとこで寝くたばったりしねぇよ」
 血塗れの甲殻兵を投げ捨てて、萬は生成した刃を構える。取り巻く敵は穂先を彼に向けながらも、圧されたように半歩退いた。
「どうした? もう掛かってこねぇのか?」
『こ、この! 掛かれぇ!』
 無数の槍と共に突っ込んで来る甲殻兵の群れ。萬は無造作に跳び込むと、滑り込むようにして刃を振るった。悲鳴を上げて倒れた敵兵。足だけが、突き刺さったように場に残る。
『ひいっ!』
「……こいつは、別な場所でお前らの同類を喰らって作ったもんだ」
 文字通り、足のもげた蟲になってじたばたする甲殻兵を踏みつけ、萬は刃を持ち上げる。
「てめぇも喰われて、同じになれよ」
『や、やめ』
 振り下ろされた刃が、湿った音を立てた。血管のような紋が刃に浮かび、血を啜るように紅く脈打つ。別の一体が、萬の肩に槍を突き立てた。だが刃が血を啜るごとにその傷もじくじくと塞がっていく。
『こ、こいつ! さ、刺せ! 刺し殺……ッ』
 瞬間、萬の刃が敵の顔面を割った。治癒していく肩から槍が押し出されるのも構わず、萬は敵兵の中へ飛び込む。胸倉から黒い霞を、刃を振るう度に血煙を舞わせる鬼気迫る攻めに、敵兵たちは悲鳴を残して崩れ落ちる。
『……これは完全に気勢に呑まれましたねぇ。ここまで、ですか』
 敵軍師は嘆息した。すでに両翼とも、指揮を執れる状態ではない。
 敵兵は、空で裂かれては滑落し、地上では稲穂のように刈り取られている。
 闘いの趨勢は、決したのだった。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【飛翔】がLV3になった!
【アイテムポケット】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
【熱波の支配者】LV1が発生!
【植物活性】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV6になった!
【先行率アップ】LV1が発生!
【ドレイン】LV2が発生!
【反撃アップ】がLV5(最大)になった!

 
●死軍
 風が吹く。
 土埃が晴れると、丘の上に甲殻兵たちの無残な骸が晒されるばかり。
 ゆらりと立ち上がった血塗れの男が振り返る。
「あとは、メインディッシュか……」
「ああ。一番胡散臭ぇのが残ってる」
 着地して、傷を払い、息を吐いて、復讐者たちは丘の上を睨む。正確には、そこで長い裾を風に棚引かせる、男のことを。
『ふむ。予想以上のお力……いえ、機転と連携と言うべきですか。我が兵をいとも容易く片付けるとは。呂布が敗れたというのも、頷けます』
「なーんか呑気に構えてるけど」
「次はてめえだぜ。忘れてねえよな」
「覚悟は良い? 郭嘉殿!」
「あの世で部下と酒宴するお時間だよ」
 にじり寄る復讐者たちに対し、男は肩を竦める。
『これは剣呑な。どうでしょう? 皆さまもお疲れのご様子。今回はお帰りいただき、ここでお開きといたしませぬか。次の宴をご用意いたしますゆえ。ねえ?』
「戦場で策を誤れば、その責を負うのが軍師というもの」
「そうそう。あなたのためのステージはここからよ!」
「ああ。その鼻っ柱に一発、ぶち込むためにきたんだからよ」
 長く嘆息して、敵の軍師はくいっと指を持ち上げる。
『まあ、我が術策は途切れておりませんので、私は構いませぬが……』
「術策、ですか。この状況から、何を……と、これは」
 ハッと復讐者たちが異様な気配に振り返った時。倒れていた虎衛兵や甲殻兵たちがゆらりと立ち上がり始める。その躰から立ち上って見えるのは、傀儡の糸。
『使えない者どもでしたが、我が兵は私がいる限り不滅なのです。函谷関とて、すぐに建て直してみせましょう。対して皆さまはその傷で、いつまでもちますかな?』
 くつくつと嗤う敵の軍師。なるほど。途中から指揮を放棄したのは、復讐者たちを消耗させて戦術を見極めるため。更には部下の死骸を用いるためか。
『皆さまの骸にも手伝っていただきますよ。ああ。おなごにはお酌をお願いしましょうか……ま、骸が腐るまでですが。うふふ』
 虚ろな死兵の群れが隊列を組む。その中心に座すは仲間さえ駒と用いる死軍の師。
『では郭嘉の軍略、とくとご覧あれ!』
 突進してくる死兵たち。復讐者たちは身構えて、その背後の敵将を睨む。
 函谷関を、この地に沈める時だ……!
 
伏見・萬
(連携アドリブ歓迎・残留効果は可能な限り利用)
(ネメシスモード:漏れ出す黒い靄が、負傷と時間経過で増える
萬の姿も理性も靄に沈み、「中に萬の身体が漂う黒い靄の塊」と化す)

…骸を引っ張り出して使うか…つくづく胸糞悪ぃ
元々骸のこの身体…使エるもンなら、使っテミろ
(なんだか、酷く眠い。視界が暗い。あいつを喰えば、頭も冴えるだろうか?)

周囲の仲間とは可能な限り連携
【捕食者の追跡】使用、敵を喰らう
軍師も兵団も兵器も、「敵」という事しかわからない
だが、喰いつくせば、全部同じだ。二度と使えないぐらい粉々に
自分の負傷がどうとかは完全に吹き飛んでいる
(【捨て身の一撃】【解体】)

(戦闘後はしばらくぼんやりしている)


ゼキ・レヴニ
生きてる兵より死体の方が扱いやすいってか
ますます趣味の悪い野郎だぜ
折っても折れねえ鼻っ柱より、首ごとへし折った方が手っ取り早えわ

金属塊「躯」を盾から槍に変じる
一番槍は戦の誉ってなァ
基本は先と同様、味方が動き易い様に兵を引きつけつつ道を開くぜ
【泥濘の地】で屍兵の足を鈍らせ『突撃』
『ダッシュ』や【飛翔】の速度で出来る限り多くの敵を串刺して回し薙ぎ
回りの敵を糸ごと絡げ取り纏めてぶん投げてやる

郭嘉の攻撃には此方も【未来予測】で次手を『看破』し先回り
操り糸は【腐食】させ断ち切ってく
味方に続き連撃、策を練る間なんて与えてやらん

いいか
最後の最後は策じゃねえ
どんだけ生き残りたいかって気力がモノを言うんだよ…!


秋津島・光希
※連携、アドリブOK

うわぁ…部下を使えない扱いとか
嫌な上司のテンプレかよ
倒してきたヤツらが可哀想になってきたわ

いろんな意味でテメェを生かしとく理由ねーな
ここで死んどけ

・ネメシス形態
黒と金を基調とした
特撮ヒーロー的なスーツを纏った姿

[技能:戦闘知識、観察、看破]

常に【飛翔】

先の兵との戦闘時と同様
爆撃槌での一撃を狙っているように見せかけ
敵の出方を伺う

なるほどな、軍師ってだけはある
先の先でも後の先でも対処されちまうか

まあ、俺一人ならの話だけどな
…沙羅、頼むぞ!

パラドクス発動
妖怪鼬へ呼び掛け、解き放ち
敵へけしかける

沙羅は人じゃねえ上に
俺の言う通り動いてくれるタマじゃねえ
さあ、読みきれるか?軍師さんよ!


ソラ・フルーリア
※連携アドリブ歓迎します

アナタがいる限り軍は不滅、でも逆を言えばアナタさえ倒せば終わりってことよね!
ふふん、簡単な理屈じゃない!アナタを倒して先に進ませて貰うわ!

とは言ってもあの操り人形達は厄介ね!
「レゾネイト」を剣形態の「レゾネイト・エッジ」に変化させて、糸を斬っていくわ!
斬れなくても斬撃で【吹き飛ばし】て、計算を狂わせてやるんだから!

相手の攻撃は【未来予測】で相手の攻撃を読んで【飛翔】で回避!
行動の先読みが出来るのがアナタだけとは思わないことね!

最後は【熱狂と湧然の四元光芒!】でフィニッシュよ!
此処がアナタのラストステージ!
操る体も残さないほど、人形達諸共消し飛ばしてあげるわ!


孫・リア
死体の兵士ね…そう言う戦術あるのは知ってるけど、やっぱり蟲将とはいえ、死者を冒涜するのはよくないと思うわ……だから貴殿ごと弔ってあげる!(ネメシス姿に変わる)

その操ってる糸、いくら頑丈でも糸である限り燃えるでしょう?
『指定PD』で炎の蝶々を召喚、まずは郭嘉殿と兵士の死体を繋ぐ糸を燃やすしましょう
最適な勝利の為の兵団や兵器?そうね、それなら炎の蝶々を防げるかもしれないけど……覆うほどの炎はどうかしら?
兵団や兵器ごと郭嘉殿を覆い尽くす炎を呼んで燃やしていくわよ!

【ネメシス:妖狐ではなく、人間の30代くらいの普通の武家の貴婦人】
【アドリブ共闘歓迎】



 秋津島・光希(Dragonfly・g01409)は、槌を握りしめて襲い来る死兵の群れを睨む。
「うわぁ……部下を使えない扱いとか。嫌な上司のテンプレかよ。倒してきたヤツらが可哀想になってきたわ」
「死体の兵士ね……そう言う戦術あるのは知ってるけど、やっぱり蟲将とはいえ、死者を冒涜するのはよくないと思うわ……」
 意志もなくただ軍師の殺気を宿して迫る兵団を見て、孫・リア(勇武と炎を胸に秘めて・g03550)は眉を寄せる。
「骸を……引っ張り出して使うか……つくづく胸糞悪ぃ」
「……生きてる兵より死体の方が扱いやすいってことか。ますます趣味の悪い野郎だぜ」
 伏見・萬(錆びた鉄格子・g07071)とゼキ・レヴニ(Debaser・g04279)が並び立って。血の混じった唾を吐いた。
 身構える復讐者たちに、敵軍師は嗤って語り掛ける。
『見解の相違ですな。任務に失敗した者たちに再戦の機会を与えているのですから、きっと彼らは感謝しますよ』
「そうね。アナタがいる限り軍は不滅、でも逆を言えばアナタさえ倒せば終わりってことよ! ふふん、簡単な理屈じゃない!」
 ソラ・フルーリア(歌って踊れる銀の星・g00896)は安い挑発を鼻で笑って、死軍の裏に潜む軍師を指した。
「なら、アナタを倒して先に進ませて貰うわ!」
『どうぞ……やれるものなら』
 そして、復讐者たちは死兵の群れを蹴散らして軍師へと突撃する。
 この地の闘いに、決着をつけるために。

 襲い掛かって来る死兵の槍を、光希の爆撃槌が受け止める。先ほどまでと違い、肉体の限界を考えない無謀な攻めだ。
「この手応え……いろんな意味でテメェを生かしとく理由はねーな。ここで死んどけ」
 光希が軍師を睨む隣で、ソラが己の杖を剣へと変形させる。敵の頭上に見える糸に斬撃を叩き込むが、べとついた糸に絡まれて途中で押し留まる。
「近づくにもこの操り人形達、意外に厄介ね! それなら、こうよ! さあ行って!」
 攻め掛かって来る死兵たちを、二人が突き飛ばすように押しのける。包囲に出来た僅かな間隙へ跳び込むのは、大柄な二人の影。刺突を弾いて、ゼキと萬が突進する。
「行こうぜ。折っても折れねえ鼻っ柱より、首ごとへし折った方が手っ取り早え」
「ああ……」
 ゼキは金属塊「躯」を盾から槍へと変じさせ、守るように前へ出る。泥濘を踏みしだき大地を割るが如く、向かうは正面。全ての雑兵を己が引き受ける覚悟で。
「一番槍は戦の誉ってなァ。道を示すぜ、真っ直ぐにな……!」
 先陣を決して譲らなかった少年兵の記憶を纏い、背に風を呼んで男は穂先を打ち合わす。火花が散り、槍が肩口を裂いてもゼキの突進は止まらない。死兵を串刺しにして、敵陣に突っ込む。
「この程度か? 策を練る間なんて与えてやらんぜ……!」
 だが、袂の裏でニヤリと敵の口元が笑んだ時、湿った音と共に一発の石弾がゼキの脛を打った。足元、倒れ伏した虎衛兵の一体が、いつの間にか弩の引き金を引いていた。
「……っ!」
『見事な先駆けですな。です、が……』
 微笑んだ軍師が指を鳴らせば、その周辺に倒れていた虎衛兵の死体ががばっと起き上がる。その手に握るは、関の木材を糸で組み合わせた粗雑な弩。飛ばすのは、瓦礫の石弾だ。ゼキが抉られた片膝をついた瞬間、一斉射がその身を捉える。二発、三発と石弾がその身を打ち据え、額への一射がゼキの頭を揺らした。
「ゼキ……!」
『策はすでにありますとも。うふふ、猛将型は扱いやすい……さて、次は』
 無数に襲い掛かる石弾は、後ろを走る萬も打ち据える。だが、萬が打たれながらもゼキの身を支えようとした瞬間、ゼキは強引に頭を引き戻して、次の一歩を踏み進んだ。勢いを、止めないまま。
『むっ?』
「教えてやるよ……最後の最後は策じゃねえ。どんだけ生き残りたいかって気力がモノを言うんだってな……ッ!」
 血泥に塗れても、ついた片膝で大地を蹴り、ゼキは渾身で跳躍する。前に出てきた虎衛兵を刺し貫き、背後の軍師に向けて穂先が舞った。舌を打った軍師が身を捻った時、そのわき腹が切り裂かれる。
 更に、敵の頭上を、暗雲のような霞が覆う。
「扱イやすい、か。元々骸のこの身体……使エるもンなら、使っテミろ」
『!?』
 その暗い霞の塊が誰なのか。頭上を取られたはずの敵軍師さえ、一瞬、困惑した。理性を感じさせない虚ろさの中に、滲む不吉の気配がある。萬は霞の中に揺蕩い、酷い眠気と暗い視界に包まれながら、敵と視線を合わせた。
(「ああ……こいつを喰えば、頭も冴えるか?」)
 喰らうべき獲物を認識した瞬間、凄まじい殺気が迸る。斬撃は閃光となり、咄嗟に糸を舞わせた軍師を切り裂き、甲殻を纏う細足を一本、斬り飛ばした。
(『っ、もう一人の先駆け……! 身体変化を伴う捨て身のパラドクスか?』)
 空中で火花を散らして転がり合う二人。受け身を取って立ち上がる軍師に対し、暗い霞に包まれた萬は黒い獣のように咆哮する。闇に包まれた視界には、ただただ“敵”が映るのみ。
『猛将というより獣でしたか……打ち据えなさい!』
(「何か飛んでくる。なんだ……わからない。だが、喰いつくせば、全部同じだ。二度と使えないぐらい……立ち上がらないくらい……粉々に」)
 無数に飛ぶ石弾。だが萬は捨て身でそれらを弾きながら、短刀を爪牙の如く振るい、血に飢えた捕食者の執念で死兵たちを裂き、砕き、蹴散らしていく。
 それはさながら、黒い獅子。さらに、血に塗れたゼキが並んで。
「まさか、あれで倒れたとは思わねェよな……!」
『ちっ、面倒ですね。相手をしなさい、我が兵よ。私はこちらのご婦人と……』
 軍師が、振り返る。そこに待ち構えるのは、紅い髪をした三十路ごろの貴婦人。
『……女遊びとしゃれ込みましょう』
「あら。私が誰か、わかったの?」
『あの黒い霞の男といい、皆さま面白い技を使いなさる。その姿の方が好みですよ……衣を剥くのを眺めるのが、愉しそうで』
 目で嗤う軍師を、リアは微笑で受け流す。復讐神の力を纏い、妖狐の少女から人の女へ姿を変えて。
「これから始まるのは、弔いよ。貴殿が弄ぶ死者たちと、この歪んだ歴史のね……貴殿ごと、だけれど!」
 指を振るう軍師とリア。周囲から飛び出すのは、槍を持つ死兵と紅い蝶々の群れ。翅を揺らめかせる蝶は燃え上がる炎と化して死兵へ向かい、死兵は正面から炎を受けながらリアへ迫る。
(「一切怯まず駆け込んで来る。糸が背中側に靡いて、火がつかない……!」)
『対策は単純。さあ。柔肌も衣も、撫ぜるように裂いてあげます』
「なるほど……でもね!」
 ふっと笑みをこぼして、リアは衣の裾を舞わせて突きの中を駆け抜けた。刺突が頬を掠め、腿の衣を裂き、殴打が肩を打つ。しかし致命打を避け、リアは紅い蝶の軌跡を引きながら敵陣を舞う。
「先の二人が兵の大半を押し留めてくれているもの! この程度の数、問題ないわ!」
 敵軍師は陣内を舞うリアを見て、仕方ないと手を上げた。周囲の兵たちが瓦礫を装填した弩を持ち上げる。
『諦めなさい。糸も粘液に濡らしてありますから、多少の火では燃えません。石打になって、醜く顔を腫らせたくはないでしょう』
「そうね、それなら炎の蝶々を防げるかもしれないけど……」
 軍師が指を鳴らすと、つぶてが一斉にリアに襲い掛かる。跳んで避けたリアに向けて、二射目の射線が持ち上がった。空中に、逃げ場はない。しかし。
「私が待っていたのも、この機会よ!」
 リアが舞った軌跡に撒き続けた炎の蝶。それは、集るように軍師の周辺を覆っていた。
『……!』
「さあ、周囲を覆い尽くすほどの炎はどう避けるのかしらね? いくわよ、郭嘉殿!」
 瞬間、爆音と共に劫火が燃え広がった。槍や弩を振り回す死兵たちを一瞬で呑み込み、吹き飛ばす。咄嗟の跳躍でそこから飛び出した軍師も、無傷では済まない。軍師は舌を打って空に糸を放ち、風に乗るように延焼範囲から脱しようとする。
『情熱的ですね……少々、侮りましたか。おや?』
 ふわりと着地しようとした軍師の鼻先を、横合いから剣の一撃が掠めた。それは、上空へ飛び抜けるソラ。その軌跡に続く、黒と金を基調とした蜻蛉……いや、蜻蛉の形を身に纏った光希が、槌を振るう。
「空に来るのを、待ってたわよ!」
「もう逃がさねえぜ」
 即座に空中で襲い掛かる二人だが、しゅるしゅると敵の周囲を舞う糸が打撃も斬撃も受け流す。きらりと光った眼が二人の動きを見通して、下から無数の弩が構えられた。
『お二人の空中雑技は先ほど見ました。次は墜ちるところを見せてくださいよ』
 無数の弾幕が発射され、石つぶての中で二人が翻弄される中、軍師は余裕を以て着地の姿勢を取る。その時……。
「なるほどな、軍師ってだけはある。先の先でも後の先でも対処してくるってか。だがここに新手が加わったら、どうだよ?」
『……?』
「沙羅、頼むぞ!」
 光希がつぶてを受ける中、投げるのは砂時計。それは砕けるように光り、中の白砂が鼬の形を取って解き放たれる。白い軌跡を描く尾の先から、巻き起こるのは竜巻。その中心に敵軍師を捉えてその肌を切り刻む。
「はっ! 沙羅のことは見られてねえ上に、コイツは俺の言う通り動いてくれるようなタマじゃねえ。さあ、読みきれたか? 軍師さんよ!」
『確かに厄介……脱する術がなくば、先を読もうが意味もなし。しかし、それならば独りでしばらく耐えるだけのことです』
 無傷で脱する術はなくとも、周囲の復讐者からも内の様子は見えず、攻撃する術もない。そう読んだ軍師が己の周囲を糸で囲い始めた時だった。竜巻の上方……ただ一つ、攻撃を通せる死角に、魔法陣が煌めいたのは。
「馬鹿ね、二人よ! 先読みが出来るのがアナタだけとは思わないことね!」
『何ッ!』
 竜巻の中心でソラが描くは、“熱狂と湧然の四元光芒”。暴風はすでにリアの焔を巻き上げ、筒のように敵を覆っている。直線になった竜巻の中での一対一。先を読もうが周囲を見渡そうが、逃げ場はない。
『し、しまっ……!』
「此処がアナタのラストステージ! 人形たち諸共消し飛ばしてあげる! これで……フィニッシュよ!」
 四大元素の力が魔法陣へと集約し、魔力が竜巻を貫いた。四色の閃光が砂の隙間から輝いて、内側から爆発する。周囲に群がっていた死兵が焔と共に弾け飛ぶ。
 そして、視界が光に包まれる……。

 ……飛んだ音が戻って来た時。
 ソラは打ち付けられるように大地を転がり、光希は全身を引きずられるように跡を残しながら着地した。
「い、たたッ。やりすぎた、かしらね。皆は無事?」
 その腕に、砂時計に戻った鼬を戻して。
「ああ。沙羅も少しは気が晴れたようだぜ。奴は?」
 瓦礫をどける音と共にむくりと土の中から起き上がるのは、ゼキと萬。
「ヒュウ。こりゃ、鼻っ柱くらいは折れたんじゃねえか?」
(「首は……まだ、だ。臭う」)
 ぐるりと振り返って、萬が唸る。駆けよって来たリアがそれを見て、肩を竦めて。
「糸で辛うじて防いだのね……追いましょう!」
 復讐者たちは身を翻して、敵を追う。
 相手は手負い。最後のとどめを刺さねばならない。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【完全視界】LV1が発生!
【壁歩き】がLV2になった!
【土壌改良】LV1が発生!
【水源】がLV3になった!
【温熱適応】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV7になった!
【先行率アップ】がLV2になった!
【ロストエナジー】LV2が発生!
【ラストリベンジ】LV1が発生!

喩・嘉
軍師にとって最も嫌なことは情報が手に入らないことだ
郭嘉は骸を失った配下の代わりに使うようだが
その操り人形は偵察をして情報を入れ、各々で行動の判断ができる配下とは全くの別物だ
その違いがわからぬということは、貴様の実力はその程度だということだな

羽扇を振るい「五里霧計」を使用
辺りに霧を漂わせ、視界を封じる
仲間と連携し
気配を消し死角に身を隠すと接近
不意をついて毒を纏わせた鳳凰爪を首に突き立てる

※アドリブ、連携歓迎


守都・幸児
あ、わかった
俺あいつが喩嘉と同じ名前だってのが気に入らねえんだ
別にあいつのせいじゃねえが、やっぱりなんか気に入らねえ
よし、とっとと倒してやるぞ

俺の使う技は「執」
紙符を白い鳥の姿をした式に変える
静かに飛ぶ鳥がいい
白い鳥は喩嘉の霧によく紛れるはずだ

武器は鉄骨に持ち替えて
ぶん回しながら敵の糸を絡めて千切ってやる
同時に式の鳥を飛び交わせて
敵を【撹乱】しながら攻撃するぞ
俺自身の位置は敵に知れても問題ねえ
万一操られそうになっても攻撃と糸切りは式がやってくれる
派手に暴れて敵の情報収集を妨害してやるんだ
皆が攻撃しやすいようにな

てめえも軍師らしいが
残念だったな
喩嘉のほうがずっとすごい軍師だぞ

※アドリブ、連携歓迎


吉水・翡翠
アドリブ/連携歓迎
使用出来る残留効果1・2は全て使用。

さてと……曹操が失った事を嘆いたと言われる郭奉孝。
……あなたは失われる事を嘆きながら逝くといいです。

敵の様子を観察、隙を見つけます。
また、隙に関しては陰陽鉄扇を使用し、刃を作って敵に対して斬りこみます。斬撃で切りつけていきますよ。
時には結界術や陰陽符を砲撃の様に発射して牽制、敵の動きを制限したりする事も試みましょう。

そして、機を見て陰陽遊戯・焔舞風刃を使用。
五行の木。五行の火。青龍の風。朱雀の火。風と火と共に舞いましょう。
相手の身も武器も全部。……全部。焼き尽くしてあげますから。

簡単に防げると思わないでくださいね。


安藤・優
うーむ、ところでお前呂布見なかった?4体ぐらい。あ、やっぱり答えなくてもいいよ、司馬懿が何考えてるのか想像もできない屑の知能しか持ち合わせてない軍師(笑)が知ってる訳ないもんね。
(敵の発言は全スルー)

糸を切ってもどうせすぐ繋ぎ直すんでしょ?だからまぁ糸が切れた隙にその亡骸を灰燼すら残さず焼き払うよ。
敵の糸には未来予測で対応、即座にサーヴァントのアウロラを呼び出して糸を切らせて退去させるよ。

亡骸がなければまともに戦えないとか流石軍師(笑)だね。
さあ、遊びは終わりだ 灼滅せよ、煉獄の刃!


四方堂・あんな
オーケイ、害虫は潰しとかなきゃねー
ふーむ、一人きりと見せかけて、このオンボロ砦にまだまだなんか仕掛けてるってのかな?
まあまあ、虫の知らせって言うしね
こっちの浅はかな策なんてのは見抜かれちゃうのかもねー
存分に備えるといいさ
所詮は物陰や死角を利用して不意打ちを仕掛ける技だからね

光学迷彩で身を隠したって、防備を固められちゃ、近付けないね
いや、参ったね
手裏剣をたくさん投げつけて、煙玉で視界を奪って近づこうと試みる
けど、同じ手は何度も通じないだろう
せいぜい自慢の兵団で身の回りを固めるといいさ
人が多いほど気配は紛れ、身を寄せ合うほど影は濃くなる
よう、そいつの後ろはホンモノかい?
その首、貰ったり



 土煙の中、膝を突いた男が咽込んでいる。瀟洒な衣は血と焦げに塗れ、背に生える細足は幾本かが千切れ飛んだ姿で。
『見誤り、ました……』
「ねえねえ。ところでお前、呂布見なかった? 4体ぐらい」
 軽薄ささえ感じさせる問いが響き、敵軍師が顔を上げる。
「あ、やっぱり答えなくてもいいよ。屑の知能しか持ち合わせてない軍師が、司馬懿が何考えてるのかなんて、想像もできる訳ないもんね」
 笑い掛けていたのは、安藤・優(名も無き誰かの代表者・g00472)だった。居並ぶ復讐者たちの影が五つ、男を囲うように焔に伸びている。
「軍師にとって最も嫌なことは情報が手に入らないことだ。骸を使うようだが、その操り人形は各々の判断ができる配下とは全くの別物。その違いもわからぬ貴様の実力は、その程度だということだな」
 喩・嘉(瑞鳳・g01517)は羽扇で口元を隠し、冴え冴えと語る。復讐者たちもまた傷を負ってはいるが、今となっては敵の方が深い。立場は、逆転したのだ。
 守都・幸児(祥雲・g03876)も、ふと思いついたように軽快に手を叩いて。
「……あ、わかった。俺、あいつが喩嘉と同じ名前だってのが気に入らねえんだ。別にあいつのせいじゃねえが、やっぱりなんか気に入らねえ。とっとと倒してやろうぜ」
 四方堂・あんな(気ままな忍者・g00300)が「それは本当にあいつのせいじゃないじゃん」と、くすっと吹き出す。
「ま、いいんだけどさ。オーケイ、このオンボロ砦が建て直されちゃ困るし、害虫は潰しとかなきゃねー」
 吉水・翡翠(道求める陰陽師・g01824)が鉄扇を構え、迎えるように手招いて。
「では……曹操が失った事を嘆いたと言われる郭奉孝。……あなたは失われる事を嘆きながら逝くといいです。お覚悟を」
 敵軍師は肩を押さえつつ、突いた手で大地を握りしめた。その後ろにゆらりと無数の影が伸び上がる。敵兵の死体と共に、敵の軍師は立ち上がった。
『覚悟、ですか。いいでしょう。臥薪嘗胆……失策一つ覆せぬようでは、軍師の名折れ!』
 高い奇声を発し、無尽の糸が伸び上がる。構える五人の前で瞬く間に廃材が組み上がり、いくつもの弓櫓の形を成した。巨大な五本の柱が、死兵を乗せて陣を組む。
『我は軍師! 名は郭嘉! 改めて挑ませていただきます!』
 構える五人の前で、死軍の長が指を鳴らす。
 身を捨てた、手負いの蜘蛛と化して……。

『進めぇい!』
 軋む音を立てて、弓櫓に着いた車輪が回り始める。待ち構えず、攻めに出る気か。
「井蘭車か。糸で廃材を縫い合わせて組み立てるとは。流石の力だな」
「しかしこれは攻城兵器では。野戦で何か意味がありますでしょうか」
「んー、えっとね。僕が思うに多分、飛びづらくしたいんじゃないかな?」
「確かに上からも下からも撃たれちまうもんな。さっきの、相当こたえたんだな」
「あらら。こっちの浅はかな策を見抜かれちゃったかもねー。まあ、存分に備えるといいさ」
 上方から放たれた無数の石弾が、土煙を立てるほどに大地を穿つ。五人はそれぞれ異なる方向に跳躍し、前に出て来る死兵をなぎ倒して駆け抜ける。四方に井蘭車を配した敵陣に挑む様は、身を引きずる甲虫と蟻の闘いにも似て。
『空は封じました……もはやこの目から、逃れられはしませぬ』
 幸児が鉄骨で兵に挑み、翡翠が鉄扇を舞わせて隙を探る。だが石弾が上から無数に降り注ぐ中では、隙を見いだせない。あんなが放った手裏剣に対する反撃を、咄嗟に優が弾いて護る。
「こう防備を固められちゃ、近付けないね。いや、参ったね」
「これ、まともに相手する?」
 あんなと優のボヤきに、嘉が頷いて。
「やりようはある。俺が援護しよう」
 羽扇を振るう嘉が呼び出すは、白雲の如き霧。光を屈折させながら、白き闇が戦場へ流れ込んでいく。
「深き霧の中で、惑うがいい」
『目晦ましですか。受けて立ちましょう!』
 敵軍師は血に濡れた笑みを浮かべ、陣の中央の井蘭車に飛び乗った。深い霧に包まれた戦場の中でも、全てを見下ろせる場所に。
(『もう油断はしませぬ。来ませい、ディアボロス……』)
 霧の中を蠢く復讐者たちの動きを捉え、敵軍師は上方から石弾を放たせる。近づいては蹴散らされる膠着が続いた、その時だった。
 敵の背後の霧から、紅い鉄骨が飛び出したのは。
「後ろ、捉えたぜっ」
 それは幸児。しかし敵はにやりと笑んで、その指を引いた。うっ、という微かな呻きと共に、敵の額を砕く寸前で鉄骨の動きが止まる。
『掛かりましたな……私が糸で張っていた結界に』
 幸児が歯を軋らせて体を動かそうとしても、身に突き刺さった糸の呪縛で、体ごと宙に浮いたまま指先一つ動かない。だが身の自由を奪われてなお、幸児はふっと笑みをこぼして。
『これにてあなたも我がしもべです、が……何を笑っておりますか』
「喩嘉の言った通りだな。“あの敵が全員から見える位置にいるのは誘いだ”って。だから笑ったんだぜ」
『残念ですが私は糸の振動で、あなた方の位置を把握しております。あなたを救いに来られる方は、一人も……』
「ははっ。俺の使った技は“執”って言ってな。紙符を白い鳥の姿をした式に変える技だ。白鷺みてえに、静かに飛ぶ鳥にした。喩嘉の霧によく紛れるし……地面に張ってある糸にも触れねえからな」
 瞬間、霧雲を裂いて紙の鳥が飛び出した。咄嗟に身を捻った軍師の頬を翼で裂いて、式は飛びぬける。
『う……っ!』
 それに合わせて下の霧から飛び出た嘉が、即座に幸児を呪縛する糸を裂き切る。振り下ろされた鉄骨と毒を纏わせた鳳凰爪が閃いて、糸と火花を散らし合った。
「……先ほどより糸の強度も低くなったな。それだけ余裕がなくなったか」
「俺の位置はお前に知られても問題なかったんだ。てめえも軍師らしいが、残念だったな。喩嘉のほうがずっとすごい軍師だぞ」
『見抜かれていたとは……お恥ずかしいことです。が、しかし!』
 ならばとばかりに敵は鋭い糸を振るい、旋風の如く二人を打ち弾いた。力そのものでは、蟲将の方が勝る。二人を井蘭車から振り落とし、敵の軍師はぎゅっと部下を操る糸を握りしめる。敵の背後に立つ死兵たちが、落ちていく二人目掛けて弩を構えた。
『その程度の力では私は討ち果たせませぬ! 撃ち殺せ!』
「嫌だね」
 敵軍師は握りしめた糸に異質な振動を感じて、振り返った。瞬間、小太刀の斬撃が交差する。
「おっとォ……首を貰ったと思ったんだが、残念。流石の反射神経。だがま、自慢の兵団で身の回りを固めても、人影が多いほど気配は紛れ身を寄せ合うほど影は濃くなるってもんだ」
 斬られた軍師の胸倉から、緋が迸った。軍師は手すりに背をぶつけて膝を突くと、あんなは頬に着いた返り血をぬぐって、にやりと笑みをこぼす。
「位置は把握してる……とか言ってなかったかい? 後ろに呼び寄せた兵が、全部ホンモノと思ったかい?」
『刺客ですか……近づくことを許すとは』
 咽込んだ敵が糸を引いた瞬間、死兵の群れが一斉に引き金を引く。あんなは迫る石弾を小太刀で弾くが、手数が足りない。だが彼女が猛打に打たれる直前、弩を構えた死兵たちの躰が、炎に巻かれて弾け飛んだ。
『!?』
「先ほど忠告されていましたが……あなたの配下は危機を報せることができません。いくら部隊が不死身でも、その弱点は目も頭脳もあなた一人分しかいないことです」
 あんなの背後に降り立つのは、翡翠。その周囲に、五行の符を舞わせて。
『まさか……』
 異変に気付いた軍師が下を振り返った時、すでに周囲の霧は晴れて火の海に変わっていた。攻城兵器を構築するため極限まで伸ばした糸は先ほどまでの強度を失い、燃え千切れていく。更に、あんながごろりと甲殻兵の首を転がして。
「所詮は物陰や死角を利用して不意打ちを仕掛ける技だからね。そっちがきちんと警戒してれば通じない。じゃ、警戒が解けた隙を突くのが、当たり前ってこった」
「あなた本人が闘わざるを得なくなっている間なら、操り人形たちなど木偶も同じです。己一人を過信しすぎましたね。こちらは頭の数なら、あなたより多いのです」
『先の二人に、集中しすぎましたか』
 井蘭車の下では優や嘉、幸児が残った死兵を駆逐して、敵軍師の指から操りの手ごたえがするり、するりと抜けていく。更に四方の井蘭車さえも、爆音と共に突き崩され始めた。あんながそれを見て、肩を竦めて。
「先に闘った仲間が、戻って来たね。さて。じゃ、おしゃべりの時間も終わりだ」
「五行の木。五行の火。青龍の風。朱雀の火。風と火と共に舞いましょう。全部、焼き尽くしてさしあげます。簡単に防げると思わないでくださいね」
『っ!』
 軍師が最後の足搔きとばかりに周辺に残していた数体の死兵を突撃させた瞬間、あんながその糸を断ち切り、翡翠の放った五行の符が爆炎と化して軍師の身を打ち付ける。
(「……! 部下と糸を盾にわざと落ちた?」)
(「まだ足掻く気ですか」)
 裂かれ、焼かれ、抉られてなお、軍師は手すりを打ち破り井蘭車から転げ落ちる。その顔に、狂気の笑みを張り付けて。
『まだ、立て直してみせますとも! 私さえ生きていればねえ!』
 敵の軍師は墜ちるがままに渾身で指を捻り、上方より糸の雨を降り注がせた。下で死兵を片付けていた、優に向けて。
「え、いまさら僕?」
 元より軍師は同士討ちをさせることが狙い。糸さえ優に突き刺してしまえば、操りの信号でその身の制御を奪うことが出来る。優は身構えて、墜ちて来る軍師を待ち構える構えを取ったが、糸は雨のように無数に迫り来る。
『ええ! 貴方の躰、いただきます!』
 だが優は、かわそうとも防ごうともしなかった。身に糸が突き刺さり、呪縛が体に流れ込もうとしてくるまで。
『まずは一人! 次は……ッ!』
「操る相手がいないとまともに闘えないとか、流石軍師だね? 糸を切っても、どうせすぐ繋ぎ直すんでしょ? だから……こうするよね。さっき見せてもらったし」
 そう。背に身を重ねて援護してくれる仲間がいることを知っているから。
『……は?』
 優の背に現れたオラトリオのアウロラが、翼を振るわせて糸を引き抜いていた。降り注ぐ糸がアウロラに突き刺さる前に、優は召喚解除して。
「貫かれる痛みは引き受けるよ。操れたと思えば油断するでしょ? 隠し玉は、最後まで取っておくものだよね。さあ、もう遊びは終わりだよ……!」
 墜ちて来る軍師は、ぐっと引かれる優の剣を茫然と見つめる。優を操ったものとばかり思った糸はすでに他の方向を向いていて、敵は自分から向かってきてくれる。外す要素は、欠片もない。
『ひっ!』
「灼滅せよッ! 煉獄の刃!」
 劫火に燃える刃が、敵軍師の胸倉を貫いた。爆音と共に細い肢体が燃え上がり、周囲に撒き散らされた糸が花火の如く火花を散らす。
 絶叫と焔とが軍師の口から迸り、燃え上がる塊と化した躰が黒く染まるまで、火柱は上がり続けた。
 やがて優が剣を振り捨てた時。
 黒い炭と化した塊が、形も残さずに崩れ去った……。

●兵どもの夢
 闘いは終わった。
 関のあった場所には、もう何もない。実際には何もないわけではない、が……。
「ふう。真っ平になって、随分さっぱりしたもんだね」
「えっと。真っ平にはなったけど、さっぱりって……いうかしら。これ」
 あんなが汗を拭う後ろから、リアが苦笑する。
 そこにあるのは、泥土や濁った水たまり、岩や木材の残骸だけ。浮かぶ油には火が燻り、焦げた木材は半ば炭化して、植物活性ですでに緑に覆われ始めた個所もある。
「少なくとも土木工事に向かない地にはなった。目的は達成だ」
 嘉が、羽扇で顔を扇いで告げる。その隣で関門の図面を探していた幸児が、焼け焦げて泥に濡れた紙を見つけて引き上げる。
「これ、かな……何もわかんねえや。まあ、現物の方がもうねえんだけど」
「恐らく、重要である儀式的な部分は書いていないと思いますよ」
「もう見比べることも出来ないし、手に入れる意味はあまりないんじゃないかな」
 翡翠と優が肩を竦めて微笑む。何もわからぬ部下たちに土台を組み上げさせるために郭嘉が授けた程度のものだろう。
「ね。ところで、まだ闘うの? あたしはもう少しならやれるけど」
 と、語るのは紅花。纏っていた黒い霞も晴れてぼうっとしていた萬が、振り向いて。
「ああ……確かに、新手の気配がするな。俺は……やれる」
「ほんとかよ? ガンガン前出てたじゃねえか。無茶するなよ」
 光希がそう言う間にも、遠目には砂塵が近づいて来るのが見える。敵の警備部隊の新手だろう。桐梧がハンマーで肩を叩きながら、後ろを振り返る。
「壊して暴れて、気分爽快なとこだったんだ。邪魔が入る前に帰るか」
 ソラとゼキが、それに続いて立ち上がって。
「賛成! 汗だくだし、衣装直ししないと次のステージには立てないわね」
「となれば。尻に喰いつかれないよう、とっとと帆を掛けて逃げ出そうぜ」
 復讐者たちは頷き合い、いにしえの地を後にする。
 この関門を抜けば、その先は長安。郭嘉を超える軍師、司馬懿の籠る地だ。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【平穏結界】LV1が発生!
【避難勧告】がLV2になった!
【一刀両断】がLV2になった!
【熱波の支配者】がLV2になった!
【光学迷彩】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV8になった!
【命中アップ】がLV4になった!
【ロストエナジー】がLV3になった!
【アヴォイド】LV1が発生!

最終結果:成功

完成日2022年07月21日