ヴァンパイアノーブルの氷の封土

 吸血ロマノフ王朝の多くの地域は、夏でも氷に閉ざされる永久凍土の大地となっています。
 この永久凍土の大地には、氷壁に閉ざされ、孤立した集落が幾つも存在しています。
 この集落は、クロノヴェーダによる侵略に抵抗したディアボロスのスノウメイジが、【アイスクラフト】で造り出した人類の拠点だったようです。

 クロノヴェーダは歴史の改竄時にディアボロスを存在しなかったことにしましたが、この人類の拠点だった集落はあえて残し、功績を立てたヴァンパイアノーブルに下賜して褒賞としたようです。
 下賜された領地は、他地域との交流が途絶されており、内部の統治は領主となったヴァンパイアノーブルに全て任されています。
 ヴァンパイアノーブル達は、自らの力を高めるため、住民を様々な方法で悲惨な境遇に追いやりつつ、自らへの従属を強いています。

 氷壁に閉ざされたヴァンパイアノーブルの領地に潜入し、悲惨な境遇にある人々を救い、支配者であるヴァンパイアノーブルを撃破してください。

紅蓮の翼、氷空を征く錨(作者 月見月
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#吸血ロマノフ王朝  #ヴァンパイアノーブルの氷の封土  #執筆進捗はMSページにて 


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●其は高見より睥睨せし者
 ひゅうひゅうと、身を切る様な極寒の氷風が吹き荒れてゆく。極北の大地は春の訪れも夏の日差しも知る事なく、常に沈黙の氷雪に覆われていた。そんな荒涼とした世界の一角に、真白い壁に囲われた領地がある。ぐるりと聳え立つそれらは全て分厚い氷。風こそ凌げるだろうが、寒々しい事この上ない。高さ数十メートルにも及ぶ氷壁は内側へ向かって僅かに傾斜しており、見上げる空は非常に狭かった。
 だが、それで良いのだ。何故ならなこれは大自然の脅威より人々を守るのではなく、寧ろその逆。中から外へと出さぬ為の檻なのだから。
「……空とは自由の象徴だ。何者にも囚われず、どこまでも広がりゆくもの。故に我々上に立つ者こそ頭上を眺める権利がある。ただ隷属を強いられる者には過ぎた贅沢だ。そうだろう?」
 領地の中央、氷にて形作られた城。そのテラスに立ち、己が統治の様を眺めるヴァンパイアノーブルが居た。優美な軍装に身を包み、口髭を蓄えた洒脱な男。背に複葉翼の如き血霧を纏いつつ、すぅと目を細めてゆく。その視線の先では背を縮こませた人々と、それを監視する猟兵たちの姿が見える。
 労働に従事する領民たち。彼らはある程度の自由を許されながらも、とある事を許されてはいなかった。それは『空を見上げる』こと。もし迂闊に顔を上げれば、瞬時に傍で睨みを利かせている猟兵たちが痛打を以て頭を垂れさせるだろう。常に地面を、或いは高くとも同じ目線まで。それが人々に許された世界だ。
「隷属を強いつつ、緩慢な拘束により時間を掛けて責め苛む。その上、この純白の大空を私だけのものに出来る。我ながら良い策を思いついたものだ」
 そう自画自賛しながら、男はテラスの欄干へと足を掛ける。そのまま宙空へと身を投げ出すや、赤き翼を持って空へと舞い上がってゆく。その手には赤黒い汚れを纏った錨が、航跡雲の如くたなびくのであった。


「GutenTag、Kamerad! 新宿島は最近どんどん暑くなっているわね。だけど、皆に今回向かって貰う先は夏どころか春すら訪れない改竄世界史……吸血ロマノフ王朝よ」
 新宿グランドターミナルへと集った仲間達へとアーデルハイト・ベールケ(サイボーグの航空突撃兵・g03315)はそう口火を切る。吸血鬼の漂着に端を発し、機械化ドイツ帝国攻略戦において本格的に観測され始めた改竄世界史。永久凍土に覆われたその場所にもパラドクストレインは復讐者を誘い始めていた。今回予知されたのも、氷雪に囚われたとある領地について。
「吸血ロマノフ王朝では功績を立てたヴァンパイアノーブルに対し、高さ数十メートルもの氷壁で覆われた領地が与えられているみたいなの。これらは元々この時代のディアボロスが建てたものなのだけど、どうやら吸血鬼側が利用しているようね」
 これらは厳しい極寒から生存域を確立してくれる一方、人々を閉じ込める檻として利用されてしまっている。人口千人程の住民たちは外部と一切の接触を禁じられ、支配者階級の吸血鬼によって従属と圧政に苛まれているのだ。無論、これを見過ごしてよい道理はない。
「という訳で氷壁を通って領地内部へと潜入し、情報収集とアヴァタール級の撃破を行うのが今回の任務になるわね」

 領地は周囲と隔絶した氷壁に囲まれている為、外周に監視の目はない。そも、通常の生命が生存するのも困難な環境なのだ。外に出る事は死を意味する。だがその固定観念を利用する事で、氷壁の近くまでパラドクスで移動する事が可能だろう。氷壁自体も厚く高い事を除けば普通の氷なので、通常の手段で溶かす事もそう難しくはない。
 なお、飛翔の残留効果によって飛び越える事も可能ではあるが、非常に目立つので推奨は出来ない。かつ理由は後述するが、相手の注意はこと『空』に対して向けられているようだ。敵の居城である氷城も下方を監視しにくい構造である為、素直に氷壁下部に潜入路を作った方が懸命だろう。
「そうして侵入に成功したら、まずは情報収集を行って貰うわ。と言っても、一目見れば住民たちがどういう境遇にあるのかが分かる筈よ。彼らはね、常に俯く事を強制されているの。境遇や心情的な意味だけじゃなく、物理的にね?」
 人々の視線は常に下へと向けられている。この領地を治めるアヴァタール級が、人々に空を見上げさせることを禁じているのだ。集落のあちこちではトループス級が睨みを利かせており、不用意に顔を上げようものならすぐさま制裁を科されてしまう。一見すると地味だが、試しに俯いて一日を過ごしてみればその陰湿さを実感できるかもしれない。
「下ばかり見てると姿勢なり関節なりにも負担が掛かるし、気分だって上がるものじゃないわ。それが一日や二日じゃなく、ずっと……住民たちは『空を眺められるのは死んだ後だけ』なんて言っているみたいね」
 故に、まずはこの状況をどう解決するかが事態を打破する鍵となるだろう。その為にもまずは監視の目を避けつつ、住民から話を聞く必要があるという訳だ。しかし、ここで一つ疑問が生じる。何故、アヴァタール級はそこまで空に拘るのかと。
「このアヴァタール級『アレクサンドル・カザコフ』は元の史実だと、帝政ロシアの戦闘機パイロットだったみたいでね。錨を使った空中戦で戦果を重ねたエースよ。ただ、余り待遇は良くなかったみたい。だからその反動で、空に対して独占欲染みた執着を抱いているみたいなの」
 戦果の過小計測、革命による追放と事故死した最期。そうした大元の記憶がもしかしたら影響しているのかもしれない。もしそう言った性格や気性についても聞ければ、立ち回りの参考になるだろう。
「元々、外部との交流が絶無の場所よ。だからアヴァタール級さえ倒せば、異変を他のクロノヴェーダに知られる事無く平穏を取り戻せるでしょうね」

 氷壁内部は自給自足の体制が築かれており、その後の生活について心配する必要は無い。仮に吸血鬼が異常を知ったとしても、それはかなり後の事になる筈だ。つまり今は、アヴァタール級の打倒にのみ注力すればよい。
「個人的に、空を独占しようとするのは気に食わないわ。だから、思いっきりやっつけちゃって!」
 そう話を締めくくると、アーデルハイトは仲間たちを送り出してゆくのであった。

●鬱々と俯き、死により天を仰ぐ
「うぅ、今日は一段と冷え込むのう。ただでさえ軋む首や背骨が一際痛むわい。せめて、背伸びの一つでも出来れば気持ちがええんじゃが」
「滅多な事を言うなよ、爺さん。猟兵どもに聞かれてみろ、空を仰ぐどころか冷たい地面と顔を合わせる事になるぞ」
「仰向けになれるのは死んだあと、か。世知辛いの」
 頭を垂れた住民たちが、農具を片手にひそひそと囁きを交わし合う。彼らの背は下ばかり向き続けたせいで老いも若きも不自然に曲がり、一目見ただけでも非常に苦しそうだ。かと言ってチラリと脇へ視線を向ければ、不気味な仮面をつけた兵士たちが黙したまま監視の目を光らせている。
 領主の課した法に背いた者を彼らがどう扱うか、住民たちは身に染みて知っていた。だからこそ、出来る事と言えばこうして愚痴を漏らす程度しかない。
「私たち大人はまだ良いわ、割り切れるもの。でも、子供たちがね……」
「空を見上げたミーシャは、不運にも領主を見ちまったせいで片目を潰されたらしい。まだ十にもなってないんだぞ?」
「見せしめだろう。嗚呼、せめて空を見るなんて贅沢はいわん。この節々の痛みを、窮屈な気持ちを少しでも紛らわせられればなぁ」
 ほんの僅かでも良い。気持ちが安らげる時間を、自由を感じられる一瞬を。そんなものは夢幻だと知ってながらも、人々は飄々とした空の下で地面のみを見て日々を過ごすのであった。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【士気高揚】
2
ディアボロスの強い熱意が周囲に伝播しやすくなる。ディアボロスから「効果LV×10m半径内」の一般人が、勇気のある行動を取るようになる。
【飛翔】
6
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。【怪力無双】3LVまで併用可能。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【強運の加護】
1
幸運の加護により、周囲が黄金に輝きだす。運以外の要素が絡まない行動において、ディアボロスに悪い結果が出る可能性が「効果LVごとに半減」する。
【友達催眠】
1
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【エアライド】
2
周囲が、ディアボロスが、空中で効果LV回までジャンプできる世界に変わる。地形に関わらず最適な移動経路を見出す事ができる。
【熱波の支配者】
2
ディアボロスが熱波を自在に操る世界になり、「効果LV×1.4km半径内」の気温を、「効果LV×14度」まで上昇可能になる。解除すると気温は元に戻る。
【モブオーラ】
2
ディアボロスの行動が周囲の耳目を集めないという世界法則を発生させる。注目されたり話しかけられる確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【平穏結界】
1
ディアボロスから「効果LV×30m半径内」の空間が、外から把握されにくい空間に変化する。空間外から中の異常に気付く確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【完全視界】
1
周囲が、ディアボロスの視界が暗闇や霧などで邪魔されない世界に変わる。自分と手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人にも効果を及ぼせる。
【活性治癒】
1
周囲が生命力溢れる世界に変わる。通常の生物の回復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」し、24時間内に回復する負傷は一瞬で完治するようになる。
【落下耐性】
3
周囲のディアボロスと、「効果LV×300m半径内」の通常の生物に、どんな高所から落下しても、落下時の衝撃を2mの高さから落下した程度に軽減する能力を与える。
【ハウスキーパー】
2
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の建物に守護霊を宿らせる。守護霊が宿った建物では、「効果LV日」の間、外部条件に関わらず快適に生活できる。
【パラドクス通信】
1
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【寒冷適応】
2
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」が、クロノヴェーダを除く全ての生物が、摂氏マイナス80度までの寒さならば快適に過ごせる世界に変わる。

効果2

【能力値アップ】LV6 / 【命中アップ】LV4 / 【ダメージアップ】LV4 / 【ガードアップ】LV3 / 【フィニッシュ】LV2 / 【アクティベイト】LV1 / 【リザレクション】LV1 / 【ドレイン】LV1 / 【アヴォイド】LV1 / 【ロストエナジー】LV3 / 【グロリアス】LV1

●マスターより

月見月
 どうも皆様、月見月でございます。
 機械化ドイツ帝国が滅びても、空戦シナリオまでは滅びず……!
 という訳で極寒のロシアを舞台に、氷壁に閉ざされた領地を救って頂きます。
 それでは以下補足です。

●シナリオ成功条件
 アヴァタール級の撃破。

●シナリオ開始状況
 溶かすなり砕くなり削るなりして氷壁に穴を開け、領地内部へと侵入します。その後、住民たちと接触して情報収集を行ってください。そこで人々の境遇や敵についての情報を聞き出したのち、事態の解決に動いて頂きます。人々の心身を癒すもよし、俯かせる実行者である猟兵を駆逐する、或いは領主との一騎打ちを敢行するなど、手段は様々です。
 但し、領民の悲惨な状況を解消せぬままアヴァタール戦に臨んだ場合、敵が大幅に強化された状態での交戦を強いられるでしょう。人々が陥っている現状を好転させることが出来れば、それらの効果は消滅します。

●採用について
 採用数については各選択肢の必要成功数が基準となります。出来る限りの採用に努めますが、ボス戦以外の選択肢で過剰に成功度が出てしまう場合は、恐縮ながら不採用となる場合がある事をご了承頂けますと幸いです。

 それではどうぞよろしくお願い致します。
54

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


エリザベータ・シゲトヴァール
●心情
ここが氷の封土……。寒いのは気候・気象の話じゃない。心が凍てついてしまいそうだわ。
この重苦しさでは、空すらも低く感じてしまう。

●行動
周囲の味方と連携・協力
【熱波の支配者】を発動。10度程度とは言え、氷点下よりはマシでしょう
【偵察】技能を活かして氷壁を見渡し、他より薄い箇所や、脆そうな箇所等、崩し易そうな所から切り崩す
メタリックプロミネンスの炎を併用すれば、多少は作業効率も改善されるかしら

潜入後は隠密行動を旨とし、敵の警戒態勢・巡回ルートや敵の編成等を【偵察】【戦闘知識】を用いて把握
私達が接触した村人が、標的にならない様に留意するわ

必ず貴方たちに空を見せてあげる。だから少しだけ待っていて


ルチルーク・フレンツェン
背いたら即処刑、ではなく生かさず殺さずで従属させ続ける……こんなに酷い境遇から絶対に助け出しましょう

氷壁を【メタリックプロミネンス】で溶かして侵入いたします
ボー、ボー(壁外からの侵入に警戒はされていませんが、大きすぎる異変は防ぐべく、口から放つ炎は繊細に調整です)

侵入したら、そうですね、モーラットのルシグーナを子供に近づけさせて、敵に感知されないように発動範囲に気を付けながら【熱波の支配者】で子供達を暖めてあげて好感度アップを狙います
背の低い当機でも子供達ですと見上げさせてしまうので、より小さいルシグーナを介して仲良しを目指します
君達、ルシグーナにこの村の事を教えてくれないかな?


●冷たき心に安らぎの熱を
 凍てついた大地の上へパラドクストレインがゆっくりと停車する。一歩外に出た瞬間、全身へ襲い来る冷気に思わずエリザベータ・シゲトヴァール(聖イシュトヴァンの剣・g00490)は眉根を顰めた。
「ここが氷の封土……寒いのは気候や気象だけの話じゃない。心が凍てついてしまいそうだわ。見上げる程の壁が領土全体を囲っているだなんて。この重苦しさでは、空すらも低く感じてしまうわね」
 眼前に聳え立つ氷で出来た壁。陽の差さぬ曇天も相まって、息苦しさを感じさせる。そうした印象は共にやって来たルチルーク・フレンツェン(均衡を破りし逆襲機械・g02461)も同じなのだろう。彼女も壁の向こう側で行われているであろう暴虐に懸念を示す。
「背いたら即処刑、ではなく生かさず殺さずで従属させ続ける……飽くまでも長期的にエネルギーを回収する狙いだと思われます。こんなに酷い境遇から絶対に助け出しましょう」
 一般の人々が生存できるのは氷壁の内部のみ。である以上、彼らが圧政より脱するにはアヴァタール級の排除が絶対条件だ。その為にもまずは内部へと踏み込まねばなるまい。
「壁の厚さについては外側からだと把握が難しいわね。相手の警戒が薄いとはいえ、出来る限り崩し易そうな場所を選びたいところだけれど」
「この氷壁はディアボロスとクロノヴェーダの戦闘で使用されたものの筈。相手がわざわざ修復するとは思えませんし、その際の損傷が残っている可能性があります」
 一先ず、二人は氷壁外周を巡り少しでも壊しやすい部分を探し始める。読み通り、程なくして大きな亀裂の入った部分を見つける事が出来た。該当部の様子を確かめてやや距離を取るや、復讐者たちは内部動力炉から灼熱を解き放ってゆく。
「ボー、ボー……」
 口から放つ熱量を注意深く調整しつつ、ルチルークは人ひとりが屈んで通れるだけの穴を貫通させた。先陣を切って潜り抜けるエリザベータは、おやと眉を上げる。
「向こう側から流れ込んで来る空気が心なしか暖かいわね。壁に囲まれているお陰かしら」
 何であれ、暖かいに越したことは無い。ルチルークも仲間に続き、斯くして二人は氷壁内部へと足を踏み入れた。
 侵入地点は耕された畑が広がり、その中へ疎らに民家が点在している。目を凝らせば俯く村人たちや監視のトループス級の姿も見えた。到着早々、敵の目に見つかるのは避けたいところだ。
「どう動くにも相手の動きが分からないと方針が立てられないわね。それに私達と接触した村人が敵の標的になったら元も子もないし、まずは警戒態勢や巡回ルート、編成を調べましょうか」
「ではそれと並行して、モーラットのルシグーナも先行させましょう。大きさ的に見つかりにくい上、住人の方々にも警戒感を抱かれ難いはず。最初は子供たちと接触して糸口を探るのが良さそうですね」
 身を低くして物陰に隠れながら敵情を窺うエリザベータの傍らでは、ルチルークの懐より小さな毛玉が飛び出す。モーラットはふるりと一瞬だけ寒気に身を震わせた後、てちとてと走り出してゆく。
 不審な人間が居れば自ずと注目を集めてしまうが、こうした小動物であれば走り回っても不自然ではない。モーラットはエリザベータの身振り手振りを見てトループス級と遭遇しないよう注意しつつ、畑で農具を振るっていた子供たちの元へと走り寄る。
「あれ、なんだいお前は? どっから来たのかな?」
「見たことの無い動物だね。くれぐれも畑を荒らさないでおくれよ」
 時代的に子供も重要な労働力なのだろう。真っ赤にした手を擦りながら、彼らは何だ何だと毛玉を見下ろす。モーラットはそんな相手の手元へと飛び込むと、ふわふわとした毛並みで指先を暖めていった。
「ははは、なんだこいつ! くすぐったいな!」
「やぁ、君達。私のルシグーナがお邪魔してしまったみたいだね?」
 相手の気が緩んだところを見計らい、ルチルークは物陰より出て声を掛ける。上を見ぬ様に膝を折って目線を合わせる仲間の横では、エリザベータが周辺を警戒してゆく。幸い、この近くに敵の姿はなさそうだ。
「実は私たち、この辺に来たのは初めてでね。ルシグーナにこの村の事を教えてくれないかな?」
「この村について?」
 質問に対し、小首を傾げる子供たち。その表情には先程と打って変わって陰が差す。
「きっと、同じだよ。みんな、下ばっかり見させられて」
「大人はね、いつも首や背中が痛いって言ってるよ。何だか、ずっと辛そう……」
 それは周囲が訴える苦しみに加え、いずれ自分たちもそうなるのかと言う不安によるものだろう。それを見かねたエリザベータは、子供たちとまっすぐ視線を合わせながら言葉を紡ぐ。
「……必ず貴方たちに空を見せてあげる。だから、少しだけ待っていて」
「ほんとうに?」
 問い返される言葉に力強く頷く復讐者たち。彼女らはトループス級に見つかる前に、一先ずその場から離脱してゆくのであった。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【熱波の支配者】LV2が発生!
効果2【ロストエナジー】LV2が発生!

レイラ・イグラーナ
この地にもヴァンパイアノーブル達の手が……
私たちの同志が作り上げた氷の砦、かつての戦いで倒れていった同志たちのためにも、人民の皆様を虐げるものとして残しては置けません。

内部ではトループス級が睨みを利かせているというお話でしたね。
侵入を見咎められないよう、氷を透かして内側の様子を伺う、耳をそばだてるなどで『情報収集』、トループス級が近くにいない場所を探します。

トループス級が近くにいない場所を見つけ出したなら「銀の針」で比較的壁が薄そうな場所を削り、内部へと侵入します。

内部に侵入したなら【モブオーラ】で目立たないように行動し、トループス級の目がないところで町の方に接触、お話を伺います。


●銀の針、氷塊を縫いて
「この地にもヴァンパイアノーブル達の手が……全く、忌々しいですね」
 靴裏が雪を踏み締める感触を覚えながら、レイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)は周囲を一瞥する。かつてこの地で戦った者の一人として、今の状況は許しがたいのだろう。彼女はそっと、手袋に包まれた指先で氷壁をなぞる。
「これらは私たちの同志が作り上げた氷の砦。それが今では外へ逃さぬ為の檻と化している……かつての戦いで倒れていった同志たちのためにも、人民の皆様を虐げるものとして残しては置けません」
 レイラはすぅと、氷の向こうを見透かすように目を細めてゆく。氷は相応の厚みを持っている一方、アイスメイジによって作られた純度の高いものだ。ガラス程とまではいかないが、それなりの透明度がある。
(内部ではトループス級が睨みを利かせているというお話でしたね。壁を壊した際の音は勿論、内部へ踏み込んだ途端に鉢合わせなど間抜けにも程がありますから)
 侍女はそうして向こう側の様子を窺いつつ、同時に耳もそばだててゆく。注意して聞けば人の話し声と言うものは存外響くものだ。
(ただこの状況下ですと、音の発信者が村人なのかトループス級なのかを見極めるのは至難の業。取り敢えず、音のしない場所を選ぶべきでしょうか)
 そうしてレイラは人気のない箇所を見定めるや、長い銀針を幾本も取り出す。彼女はそれをアイスピックの如く壁面へと突き立て、楔代わりとして氷塊を割り砕いてゆく。
 同様の作業を数度繰り返した果てに、無事抜け穴が貫通。それを潜り抜けた先は民家の立ち並ぶ一角であった。だが、人気は感じられない。恐らく畑仕事などで出払っているのだろう。
 一般人を装いつつどうすべきかとレイラが思案していると、不意にある家屋の扉が開く。
「ごほっ、ごほっ……おや、どうしたんだいアンタ。お客さんかね? 済まないね、今はみんな仕事に出ていてね」
「いえ、こちらこそタイミングが悪く……所で、そちらは?」
 出て来たのは背の曲がった老人。時折咳き込んでおり、顔色も良くはない。問いかけに対し、老爺は目を伏せつつ苦笑を浮かべる。
「なに、前から体調を崩していてね。呼吸もそうだが、物を食べるのにも一苦労だ。医者の話じゃ、姿勢が悪いって話だけれど……まぁ、こればかりはどうしようもない。ごほっ!?」
「どうかご無理をなさらずに。水でも汲んで参りましょう」
 これが領主による責め苦の結果なのだろう。再び咳き込む老爺を気遣いつつ、更なる話を聞き出すべくレイラは交流を進めてゆくのであった。
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【モブオーラ】LV1が発生!
効果2【フィニッシュ】LV1が発生!

エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎
残留効果は相互活用
防寒装備を着込む

怪しからん事をしているな……
今度の相手のやり方も実に厭らしい
……空を奪うのは、見過ごせないな

氷壁の下方を観察
目立たず脆そうな箇所を見定め
味方と協力しあって穴をあける
火炎放射器Feuerwerkerで的を絞り、一人が通れるサイズに氷壁を解かす
火炎使いの操作と貫通撃

侵入後は行く手を偵察
警備の目を忍んで移動、【友達催眠】で村人達と接触
情報収集に努める

俺達はディアボロス
そして空を愛する者……
あなた方を理不尽から解放しに来た
幼子にすら空と自由を奪う統治者を倒す

まずは話を聞かせてほしい
どんな事に困っているだろう?
警備や領主の事も教えてほしい
確かに力になろう


●見下ろす事は耐えがたく
「隔絶した領地で何やら怪しからん事をしているな……聞く限り、今度の相手のやり方も実に厭らしい。何より、空を奪うと言うのは見過ごせないな」
 防寒着に身を包んでもなおこの世界の寒さは厳しいものだと、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は目を細めゆく。飛翔の残留効果であれば、この程度の壁など容易く飛び越せる。だが、今それをすれば強化状態のアヴァタール級が文字通りすっ飛んでくるだろう。いずれは衝突するだろうが、まだその時ではない。
「一先ず、目立たない箇所を破壊して侵入路を確保するのが先決か。幸い、他の仲間たちも別方向から内部へ潜入しているらしい。なら、場所が被らない方が良いだろう」
 ちらりと周囲を一瞥しつつ、エトヴァは未だ手つかずであろう部分を調べてゆく。そうして彼は深雪の原野を歩き回り、程なくして壁が薄そうな箇所を見つけた。持参した火炎放射器のノズルを向けるや、引き金を絞る。
(余り大きな穴を開けては今後に差し支えるからな。人ひとり分が通れるサイズで十分だ)
 蒼炎を帯びた液化燃料が張り付くや、みるみる氷が溶け落ちる。そう時間も経たずに円形の抜け道が開通すると、エトヴァは身を屈めてそこを通り抜けていった。
 出た先は青々とした芽が生え始めた麦畑。腰を曲げて作業している人々を見るに、どうやら農場区画の様だ。案の定、周りには監視役のトループス級も立って居る。まずはあれらの眼から逃れる必要があるだろう。
(死角が無い訳ではない。一般人の振りをし、無駄な騒ぎを起こさねば問題は無い筈だ)
 エトヴァは農作業する一団へと目を付けるや、隙を突いてその中へと紛れ込む。見慣れぬ人物に農夫たちは一瞬ぎょっとするが、残留効果によりすぐに部外者を受け入れてくれた。
「見ない顔だ、どちらさんだい?」
「俺はディアボロス。そして、空を愛する者だ。あなた方を理不尽から解放しに来た。幼子にすら空と自由を奪う統治者を倒す為にな」
 告げる単語にピンとは来ていない様だが、残留効果のお陰で不審がられてはいないらしい。なればと、復讐者は先を続けてゆく。
「まずは話を聞かせてほしい。領主の為人など、分かる範囲で問題ない。確かに力になろう」
「領主様は誰かが空を見るのは勿論、見下ろされるのが何よりも嫌いみてぇだよ。前にどっかから渡り鳥が来た時なんて、激昂してわざわざ撃ち殺しに行ったって話さね」
 どうやら、アヴァタール級の空に対する執着は筋金入りらしい。だが、その気質も上手く利用できるかもしれない。エトヴァは礼を述べて話を切り上げると、異変を悟られる前にその場から立ち去るのであった。
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【友達催眠】LV1が発生!
効果2【アクティベイト】LV1が発生!

括毘・漸
ほうほう、空を牛耳る輩ですか……自分は空を舞い、他を地に向かせる、気にくわないですね。ならば、空という舞台から引き釣り落としましょう。

その為にも、侵入、潜入です。
【忍び足】で壁に近づいて、
装備の【伸縮式銀杭】で、文字通りの【貫通撃】の楔撃ちです。さっ、穴は空きますかな?

中に入れましたら、【モブオーラ】を使い、猟兵に気づかれないように【情報収集】です。
外から来た旅人を装って住民に話を聞きましょう。その際、持ち込んだ軟膏等を渡しましょう。少しは身体の痛みを和らげればいいのですが。

人々には優しくです。なあに、もう少しの辛抱です。


ライモント・マルロー
【心情】
空を見上げることを固く禁ず、か。
いや、本当に頭のいい方策だよ。
緩やかに希望を奪い、緩やかに苦痛を与える。
いつしか領民は抵抗の気力も体力もなくし、ただ支配を受けいれるしかない、と。反吐が出るね。

【行動】
氷の壁は素直に『破軍衝』で破壊して侵入しよう。
領民に対してはフレンドリーに、新宿島から持ってきた湿布でも配りながら話しかけるよ。足腰、辛いだろうから。少しは楽になるよ。

俺たちは、キミたちの空を取り戻しに来た。
写真でも、絵でも、あるいは手鏡でも、空を見せるだけなら簡単だけど……本物を取り戻した時のお楽しみにした方がいいね、これは。
大丈夫。すぐに野原に寝転がって、空を仰げるようになるさ。


●ただ一時でも、その痛みを
「ほうほう、空を牛耳る輩ですか……自分は空を舞い、他を地に向かせるなんて、何とも気にくわないですね。ならばいっそ、空という舞台から引き釣り落としましょう」
 雪交じりの風が吹き荒ぶ空はうっすらと白く煙っている。だが、そんな空でも清々しいものである事に違いはない。それを独占しようとしている圧政者に対し、括毘・漸(影歩き・g07394)は飄々とした口調に不快感を滲ませていた。
 それは共にこの地へ降り立ったライモント・マルロー(貸しランタン・g07415)も同じらしい。トレンチコートの襟元から白い息を吐きつつ、ジッと聳え立つ氷壁へと視線を投げかけている。
「空を見上げることを固く禁ず、か。いや、本当に頭のいい方策だよ。緩やかに希望を奪い、緩やかに苦痛を与える。いつしか領民は抵抗の気力も体力もなくし、ただ支配を受けいれるしかない。それを眺めて、領主は一人ご満悦か」
 ――反吐が出るね。
 それは真綿で首を絞めるようなものだ。徐々に負荷を掛け、気付いた時にはもう手遅れ。ある意味、最も質の悪い手合いである。そうした統治状態を打破する為にも、まずは村人と接触して情報を集めねばなるまい。
「という訳で、兎にも角にも侵入、潜入ですね」
「壁自体はただの氷だ。破壊自体はそう手間も掛からないだろうさ」
 二人は比較的壊し易い所へ目星を付けると、潜入口の確保に取り掛かってゆく。まずは漸が杭打機によって銀杭を楔代わりに打ち込む。そうして半円状に亀裂を入れるや、その中央部目掛けてライモントが正拳突きを繰り出す。
「さっ、穴は空きますかな?」
「問題ない、手応えは十分だよ」
 果たして、氷壁は粉々に粉砕され内部への道が開いた。警戒しつつ道を潜り抜けると、幾つかの煙が立ち上っている事に気付く。風に乗って鼻腔を擽る温かな香り。物陰から様子を窺えば、女性を中心とした人々が包丁やら食材やらを手に作業をしている。
(察するに、共同で煮炊きする炊事場かな? 薪やらなにやら、物が豊富だとも思えないしね)
 幸いにも周囲にトループス級の姿はない。だが、老若問わず背や腰の折れ曲がった姿は見ていて非常に痛々しかった。漸は思わず顔を顰めかけるものの、警戒させては元も子もないと笑みを形作る。
「やぁやぁ、皆さんこんにちは。僕たち、外から来た旅人でして。少しばかり、お話を聞かせて頂いても宜しいですか?」
 そうして親し気に声を掛けると、村人たちは目を丸くして復讐者たちを出迎えた。壁に囲まれた土地柄なのだ、外から人が来ると言うだけでも驚きなのだろう。
「旅人さん? あんれまぁ、珍しい事もあるもんだねぇ」
「でも、気を付けなぁよ。此処じゃ頭を上げちゃいかんけんの」
 先に潜入した仲間たちが残してくれた残留効果により、掴みはまずまずといった所か。住民たちは二人を歓迎しつつも、ひそひそと忠告をしてくれる。その親切心に感謝しながら、ライモントは丁度良い話題になったと懐からある物を取り出した。
「だから、そんな無理な姿勢を取っているんだね。なら、お近づきの印にどうぞこれを。足腰、辛いだろうから。少しは楽になるよ」
「ああ、それならボクも持ち合わせがあります。こうも寒いと、関節の負担もより重いでしょう。せめて、身体の痛みが和らげればいいのですが」
 それは幾枚もの湿布だった。使い方を教えつつ膝や腰に貼ってあげる一方、その横では漸が持参した軟膏を重労働で赤く罅割れた身体へと塗布してゆく。苦痛を感じさせる為、碌な医薬品が出回っていないのだろう。彼女らは目を細めてそれを喜んでくれる。
「ひんやりして気持ちが良えねぇ。ここらで膝や腰が弱っても、お湯で暖めるくらいしか出来ないのよ」
「前に訴え出た人も居ったけんど、みぃんな土の下で天を仰いでしまってるかんね」
 その口振りから、やはりアヴァタール級は意図して住民たちに苦痛を強いているようだ。つまりそれらを解消すれば敵のエネルギー供給を断ち、強化状態を解除する事が出来る。
(試しに何枚か配ってみたけれど、効果は予想以上ですね。明らかに村人の顔から緊張が消え、笑顔が生まれた。今は一部の方だけですが、もしこれを手分けして行えれば……)
 無論、医薬品を配る以外にも彼らの境遇を改善する方法はあるだろう。辛く厳しい状況から脱する事が出来れば、敵も弱体化を余儀なくされるはずだ。ちらりと探偵が仲間へ目配せすれば、同じ結論に達したのか探偵も小さく頷きを返してくれた。
「……実を言うと、俺たちはただの旅人じゃない。圧政を打破し、キミたちの空を取り戻しに来たんだ。写真でも、絵でも、あるいは手鏡でも、空を見せるだけなら簡単だけど……本物を取り戻した時のお楽しみにした方がいいね、これは」
「空、を……」
 ある者は目を伏せ、ある者は期待を籠め、ある者は疑問符を浮かべる。彼らにとって、空は憧憬と畏怖の入り混じった存在になってしまっているのだ。だが、そんな状態が健全であるはずが無い。
「大丈夫。すぐに野原に寝転がって、空を仰げるようになるさ」
「人々には優しくです。なあに、きっともう少しの辛抱ですから」
 そうして二人は領内の大まかな地形や位置関係を聞き取ると、次なる行動へと移るべくその場を後にするのであった。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【モブオーラ】がLV2になった!
【エアライド】LV1が発生!
効果2【フィニッシュ】がLV2になった!
【ガードアップ】LV1が発生!

エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎

仲間と情報共有し、効果的な連携を取る
通信があれば活用

住民の安全確保を最優先に
村の様子を偵察、人気のない外れなどの場所を戦場に選び
先に接触した村人には、友達催眠で誰も近づかないように言い含める

血影猟兵達へ、上を見上げて見せ、後を追わせ戦場へ誘導
但しカザコフの気配あれば、単に姿を見せて挑発
寒冷適応使用

危険があれば人々の避難とディフェンス優先

戦闘は味方と連携
敵味方の配置を観察、死角を取りつつ
パラドクス使用、ライフルで狙撃し味方の援護
近づけば両手の銃で応戦
フリーの相手を牽制しつつ各個撃破

反撃には魔力障壁を展開し、Eis-Spiegelで猟犬の動きを阻害
エアライド併用で回避しつつ撃ち払う


ライモント・マルロー
■心情
さて、領民のフォローをしたいところだけど……監視の目が邪魔だな。
幸いにして領主の目は空の方に向いてる。先に監視のトループス級を始末しちゃおう。
人々から希望を奪ったツケを、その身で払ってもらわないとね。

■行動
仲間と情報共有しつつ、領民は巻き込まれないよう家なんかの安全な場所に避難してもらうようお願いしよう。
で、俺自身は[偵察][地形の利用]、それから【モブオーラ】[忍び足]で敵に見つからないように行動し……『鷲爪(アドラー)』で一体ずつ、確実に速攻を仕掛けて行くよ。
派手にやってくれる仲間もいるしね。俺は遊撃だ。

塵は塵に、灰は灰に、闇は闇に。
キミたちにランタンはいらないな。お帰り願おうか。


●地を狙い撃ち、空にて掻き砕く
 情報収集の結果、これから為すべき事はおおよそ復讐者の間で共有できた。だがそれと同時に、行動を妨げる要因もまた浮き彫りとなる。人目を避ける様に物陰に身を潜めながら、ライモント・マルロー(貸しランタン・g07415)は忌々しそうに呟きを零す。
「さて、この後の事も考えて領民のフォローをしたいところだけど……監視の目が邪魔だな」
 彼の視線の先には領土内を巡回する血影猟兵たちの姿があった。常に二人以上の集団で行動しており、その数も多い。人々に手を差し伸べようにも、気付かれる事無く目的を達するのは至難の業だろう。加えて危惧すべき点は他にもあるとエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は眉根を顰める。
「領民へ不用意に接触し万が一それが露見すれば、十中八九彼らも制裁の対象となるだろう。最悪、戦闘に巻き込んでしまいかねない。そうなってしまえば本末転倒だ」
 迂闊な真似をすれば得をするのはアヴァタール級のみ。何事も急がば回れである。故にこそ、復讐者たちは一先ず行動の自由を確保すべく動き始めていた。
「幸いにして領主の目は空の方に向いてる。という訳で、先に監視のトループス級を始末しちゃおう。人々から希望を奪ったツケを、その身で払ってもらわないとね」
「予めこの近辺の住民には退避するよう言い含めてある。万が一、カザコフが姿を見せたとしても巻き添えを喰らう心配は無い筈だ。猟兵の注意を惹く手も考えあるし、釣り出しは俺が引き受けよう」
「済まないね。その分、遊撃役は任せてくれよ?」
 ちらりと視線を向ければ、折よくトループス級の一団がこちらへと向かって来ている。それを見た二人は手短に段取りを打ち合わせると、まずはエトヴァが動いた。彼はおもむろに敵集団の前へ姿を晒すや、これ見よがしに空を仰いで見せたのだ。
「……ッ!」
 当然、トループス級からすればこれ以上ない挑発行為である。俄かに殺気が膨れ上がると同時に、猛然と愚か者目掛けて疾駆し始めた。危惧していた領主の気配もなく、取り敢えず第一関門はクリアといった所か。
(さて、後は手筈通り注意を惹きつつ数を減らすだけだな)
 エトヴァは後退して相手をおびき寄せつつ、長大な銃身を誇るライフルを構えゆく。風は決して弱くは無いが、残留効果のお陰で手指が悴むことは無い。一方、相手も本能的に異変を感じ取ったのだろう。手にした刃で身体に傷を刻むや、ボタリと滴り落ちた鮮血が猟犬となって襲い掛かって来る。
 厄介な相手だ。しかし、先に行った調査で情報は十分に得る事が出来た。天候、地形、そして能力。それらに裏打ちされた技量は、彼を単なる獲物ではなく狩る側へと昇華させていた。
「――“其処”だ」
 絞られた引き金によって弾丸が撃ち出される。銃声を聞いた獣たちも瞬時に反応するが、それすらも想定の範囲内。果たして、頭部を貫かれた猟犬が形を維持できず、元の血溜まりと化して白雪を汚す。
 だが、それで猟兵が動揺することは無い。寧ろ、猟犬は盾代わりだとばかりにそのまま距離を詰めるや、黒血を纏わせ刀身を伸長させた得物をエトヴァ目掛けて振り被る……。
「そう言えば、キミたちの上司は渡り鳥にすら嫉妬するらしいね? なら、猛禽なんて見たらいったいどうなる事やら、少しばかり気になるよ」
 直前、真横からライモントが飛び出すと強烈な回し蹴りが叩き込まれた。それはまるで、頭上より獲物へと襲い掛かる鷲の爪が如し。余りの威力に仮面は粉々に砕け散り、猟兵はそのまま地面へと崩れ落ちてゆく。
 画家が敵の意識を己へ集め、その隙に探偵が仕留める。それこそが彼らの選んだ戦術だった。シンプルではあるが、効果の程は御覧の通りだ。
「……ッ!?」
 新たな敵の奇襲に、さしものトループス級たちも一瞬面食らう。しかし仮にも兵士を名乗る物、すぐに冷静さを取り戻すとライモントへと狙いを変えた。着地の瞬間を狙い、獲物を振り被る。
「俺が居る事も忘れないで貰おう」
 だが、そうはさせないとすかさずエトヴァがフォローに動く。彼は瞬時に得物を二挺の拳銃へ持ち変えるや、立て続けに弾丸を叩き込んで猟兵を無力化。探偵もまたエアライドによって再跳躍すると、再び蹴撃を繰り出してゆく。
「塵は塵に、灰は灰に、闇は闇に。そして血は血へと。キミたちにランタンはいらないな。まだまだやるべき事が山積みなんだ、さっさとお帰り願おうか」
 決してトループス級も弱くはなかったが、準備万全で迎え撃った復讐者が相手では流石に分が悪すぎた。一体、また一体と各個撃破されてゆき、程なくして逃走を試みた最後の一体も討ち果たされる。
「……殲滅完了、と。上手くいったね」
「ああ。だが、今のはまだごく一部だ。異変を悟られる前に場所を変えるべきだろう」
 戦闘はまだ始まったばかり。斯くして探偵と画家は勝利に慢心する事無く、速やかにその場から離れてゆくのであった。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【寒冷適応】LV1が発生!
【落下耐性】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!

括毘・漸
(味方の方々と情報交換しつつ)
確かに、監視の目があると、住民の方と交流するのは難しそうですね。

住民の方には、空を見ることが可能であることを信じさせるように説得ましょう。この際に[モブオーラ]、[忍び足]を使い、猟兵に気づかれないように移動します。
 
他の方々が、猟兵の注意をひいてくれるそうなので、ボクは身を潜めて、住民の方々に危害を加えられないように注意を払っておきましょう。
誘き出された猟兵の死角から[暗殺]です。
猟兵が移動しそうになったら、[闇使い]で妨害です。

邪魔者には、退場してもらいましょう。


●影にて伏せしは
「まずはトループス級の排除から、と……確かに監視の目があると、住民の方と交流するのは難しそうですね」
 画家と探偵が敵軍を殲滅したのとほぼ同じ頃。別の場所では括毘・漸(影歩き・g07394)が単独行動を取っていた。彼は先ほど仲間たちと交わした会話を胸中で反芻してゆく。
 領民たちが活気づけば、猟兵たちは必ず異変を嗅ぎ付けるだろう。そうなってしまえば流血は必至。防げたとしても人々を守りながらの防戦を余儀なくされてしまう。ならばいっそ、先手を打つのも悪くはない。
「住民の方には、空を見ることが可能であると信じて貰えるように説得しましょう。一先ずは言葉ではなく、行動でですがね」
 そうして彼が足を向けたのは領民たちが暮らす集落の一つであった。復讐者たちが予め警告を発していた為、みな戦闘に巻き込まれぬよう屋内へと退避済みだ。しかし、だからこその懸念と言うのもまた存在する。
(幸い、他の方々が猟兵の注意を惹いてくれるそうですが……仲間の死臭を感じ取れぬ程、相手も平和ボケしているとは思えませんから)
 此処の立地が立地だ。もしも領地で異変が起こったら、当然ながら猟兵は領民の中に下手人が居ると考えるはず。そしてその手段が穏当な物であるはずがない。果たして漸の読み通り、トループス級の一団が集落内へと飛び込んで来る。その全身からは怒気が滲み出ていた。
「……手段は問わん。探し、殺せ」
 相手が真面目に犯人捜しをする気が無い事は一目見て分かった。正誤に意味はない。ただ、後に続く愚か者が出ないよう見せしめを作る。理由を問える者など、この領地には居ないのだから。そう――。
「ボクたちを除けば、ね?」
「ッ!?」
 相手が反応するよりも早く、死角より忍び寄った漸が小型拳銃を相手の背へと宛がう。躊躇なく引き金を絞った瞬間、赤黒い飛沫が降雪を汚してゆく。致命にまでは至らぬが、戦闘能力の低下は免れない。
 だが、敵も然るもの。零れ落ちた鮮血に得物を浸すや、振り向きざまに剣閃を放ってきた。しかし一方で漸も深追いする様な真似はしない。瞬時に飛び退くや、闇に紛れて姿を晦ませる。数の差では不利だが、これで単なる集落は獲物を狩る為の戦場と化す。
「さぁ……邪魔者には、退場してもらいましょう」
 斯くして暫しの間、集落に剣撃と銃声が響き渡る。だがそれも不意に止み、再びの静寂が降り。
 村の外へと出た足跡は、深雪に残された一つだけであった。
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【寒冷適応】がLV2になった!
効果2【ロストエナジー】がLV3になった!

ルチルーク・フレンツェン
子供達や親御さん、ご隣人を元気付けてあげたいですが、
トループス級が近くにいては村人達を危険に晒してしまうでしょう
幸いにもディアボロスの皆様も先に戦うようなので、当機も助太刀いたします

何よりも情報が多い方が戦闘に有利
【パラドクス通信】の通信機を出現させて、
ディアボロス同士が遠く離れていても情報共有がすぐ出来る様にいたしましょう
村人様方にも、これから敵の数を減らすので、敵に目を付けられない様に【友達催眠】でお願いします

後でまた来ますので、その時は短時間ですが一緒に遊びましょう、と元気付ける約束もします

応援に駆け付ける猟兵達にルシグーナの【ワイファイスパーク】での電撃で炭の様に粉砕してやります


●知る為に、教える為に
「子供達や親御さん、ご隣人を元気付けてあげたいですが、トループス級が近くにいては村人達を危険に晒してしまうでしょう……幸いにもディアボロスの皆様も先に戦うようなので、当機も助太刀いたします」
 徐々にだが空気に剣呑さが増しつつある頃。ルチルーク・フレンツェン(均衡を破りし逆襲機械・g02461)の姿は、仲間が向かったのとはまた別の集落に在った。彼女は不安げな領民たちを落ち着かせつつ、ちらりと周囲を一瞥してゆく。
 まずは敵の数を減らし安全を確保すべき。そう意見を一致させた復讐者たちは、既に各所へ散って戦端を開きつつある。だが氷壁に囲まれているとは言え、千人規模の人間を擁する土地だ。互いの状況を把握するのは容易な事ではない。
「……何よりも情報が多い方が戦闘に有利。ただでさえ、数と地の利は相手に有ります。ならばせめて、連携面で対抗すべきでしょう」
 故にこそ、少女は情報の取り纏め役を買って出ていた。手元には小型の通信機が握り締められ、肩に乗った小動物がみょんみょんと頭部のアンテナを旋回させてゆく。
 有効範囲は半径1キロ。氷壁内全土をカバーするには心許ないが、それでも有ると無しとでは効率が段違いだ。そうしてルチルークは情報の共有に努めてゆくのだが、ふと視線を感じて傍らを見やる。
「お姉ちゃん……」
 それは十を超えたかどうかと言った年頃の幼子だった。此方を見上げる相貌、その片目には薄汚れた包帯が巻かれている。固く禁じられている筈の『上を見る』と言う行為。敢えてそれを為す彼の心境はいったい如何ばかりか。
 少女は一瞬だけ眼を閉じると、小さな頭を優しくそっと撫ぜてゆく。
「大丈夫……後でまた来ますので、その時は短時間ですが一緒に遊びましょう。だから、此処で待っていて下さいね?」
 自らへ注がれ続ける視線を感じながら、ルチルークは踵を返す。ついさっきまでの穏やかさが嘘のように、彼女の表情は冷たく怜悧なものへと変じていた。向き直った先に見えたのは、こちらへ猛然と迫り来る赤黒き集団。
 だが、問題はない。トループス級の接近は仲間からの連絡によって既に把握済みだ。主の戦意に応ずるかの如く、肩に乗ったモーラットも毛を逆立ててゆく。
「行きましょう、ルシグーナ。手加減は無用、炭の様に粉砕してやります」
 斯くして相棒と共に復讐者は駆け出すや、電撃と血刃が激しく乱れ舞い始めるのであった。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV2になった!

東間・惣治郎
連携アドリブ可

ふうむ。この寒さは老体には堪えます
苦役と支配に捕われている方々の為にも、手早く、されど確実に事を進めなければなりませんね

【モブオーラ】を頼り、風景に溶け込みながら周囲を●観察
目立たぬよう猟兵達の視界の外で結界の起点を構築しつつ、地形と猟兵の警邏のパターンを頭に入れておきます
住民の方々には、家の中に密かに退避するよう促しましょう。巻き込みたくはありませんからね

退避が終わる頃には、此方の結界の起点も構築し終えているでしょう
堂々と空を見上げ、猟兵達を集めたら起点を起動し、結界の中に彼らを捕縛
パラドクスで以て彼らを一網打尽と致しましょう

……いやはや。強力ですが、恐ろしい威力ですね


●老いてなお鋭く
 復讐者たちの奇襲により、敵方も異変を悟りつつあった頃。氷壁に開けられた穴を通り、東間・惣治郎(揺らめくイカリ・g01783)が戦場へと姿を見せる。彼は白い息を吐きつつ、年季の入ったT字杖で雪を突く。
「ふうむ。外より大分マシとは言え、この寒さは老体には堪えます。苦役と支配に捕われている方々の為にも、手早く、されど確実に事を進めなければなりませんね」
 惣治郎は周囲を警戒しつつ、そっと物陰へと身を潜めゆく。相手も此度の騒動が単なる領民の暴動でないと気付く頃合いだろう。となれば必然、その要因を内ではなく外へと求めるはず。
(……ふむ。やはり、ですね。念のため、住民の方々には家の中へ密かに退避するよう促しましょう。巻き込みたくはありませんからね)
 見れば、周囲にはちらほらと血影猟兵の姿が増え始めていた。この様子では、壁に開けた穴が発見されるまで時間は掛かるまい。そうなれば侵入者の手掛かりを得るべく、トループス級が人々へ狼藉を働くのは火を見るより明らかだ。
 その様な事態を防ぐべく、老爺は周辺地形や相手の配置を観察しながら近くの集落へと先回りし、外へと出ぬ様に言い含めてゆく。と同時に、周囲へ己の魔力を楔として打ち込んでいった。
(さて、退避と下準備を終えるのが先か、それとも相手の鼻がこちらを嗅ぎ付けるのが先か……っ!)
 そんな最中、雪を踏み鳴らす足音が耳朶を打つ。素早く視線を走らせれば、疾駆する幾つもの赤い影。血で形作られた猟犬たちは、獲物を見つけるや猛然と襲い掛かって来る。
(いまこの場を離れてしまえば、折角の準備が水の泡。ならば精々、この老骨で足掻いて見せましょう)
 老爺は動作加速術式を起動させ、杖を手に牙を剥く獣と渡り合う。しかし、身体能力の差は如何ともし難く、どうしても防戦を強いられる。更には猟兵までもが到着し、劣勢は決定的となった、が。
「頃合いですね。それでは一網打尽といきましょうか」
 それこそが惣治郎の狙いだった。彼は追撃を振り切って飛び退くや、術式を起動させた。刹那、形成された結界が敵群を捕縛した瞬間、内部の時間が荒れ狂ってゆく。果たして、結界が解除された後にはただ血濡れた雪痕のみが残される。
「……いやはや。強力ですが、恐ろしい威力ですね」
 パラドクスと言う、己が手にした異能。その力に改めて畏怖を覚えながらも、老爺は自らの責務を全うすべく次なる行動へと移るのであった.
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【ハウスキーパー】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!

エリザベータ・シゲトヴァール
●心情
(味方の得た情報も共有して貰う)

凡その状況は理解したけど……渡り鳥にまで逆上したですって?これは相当ね。
準備が整うまでは下手に高度を取らない方が良さそうだわ。

●行動
周囲の味方と連携・協力。

【地形の利用】で領主の屋敷から見て死角になる位置取りを念頭に、敵トループス級を無力化する。
【偵察】【戦闘知識】で得た敵の行動パターン(巡回ルートや時間等)から【追跡】。
先手を打って【不意打ち】からの【制圧射撃】で敵の足を止め、【一撃離脱】での反復攻撃で敵を【撹乱】する。
二次元的な戦闘は少し勝手が違うけど、敵陣の分断で味方の各個撃破の布石を作りつつ、射弾観測で味方を支援するのは同じよ。やってみせるわ。


レイラ・イグラーナ
下らない妄執で人民を苦しめるなど……!
私たちが来たから上を向いてももう大丈夫と言ったところで、従うのは中々難しいでしょうね。
何より、住民の方々がそれをやっては見回りのトループス級に目を付けられることになります。

ならば……まずは、彼らから排除いたしましょうか。
堂々と顔を上げて街を歩き、トループス級を町の住民が少ないところまで誘い出します。

トループス級たちに目を付けられ伸びる刀身による攻撃を仕掛けてきたなら、敵の攻撃の隙間を縫うように走り、攻撃を回避しつつ敵集団の中へ。
【手製奉仕・舞】による「銀の針」の『投擲』で攻撃を行います。

町に蔓延る領主の目……まずは貴方がたから潰させて頂きます。


●弾丸の雨、針の舞
「各地で敵の各個撃破に成功。領主に関しては未だ動きは見えず、と。凡その状況は理解したけど……渡り鳥にまで逆上したですって? これは相当ね。準備が整うまでは下手に高度を取らない方が良さそうだわ」
 共有される情報に耳を傾けていたエリザベータ・シゲトヴァール(聖イシュトヴァンの剣・g00490)は半ば呆れたように息を吐く。戦況自体は順調に推移している。しかし領主に関する前評判は聞こえども、未だに動きが見られないのは非常に不気味であった。
「下らない妄執で人民を苦しめるなど……! しかし、それだけあって統治に組み込まれた恐怖は筋金入り。私たちが来たから上を向いてももう大丈夫と言ったところで、従うのは中々難しいでしょうね」
 だが、入ってくる情報から領主の為人は嫌と言うほど分かってしまう。レイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)が嫌悪と苛立ちを露わにするのも無理はない。彼女らに出来ることは、一刻も早くこの圧政を終わらせる事だけだ。
「何より、無理に促してもトループス級の矛先が向けられてしまいます。だからこそ、どれだけ早く血影猟兵を排除出来るかが重要となるでしょう」
「幸い、頭数自体はだいぶ減っている様ね。討ち漏らしが無いよう、出来れば一か所に集められれば最上なのだけれど」
「然らばその役目、どうか私にお任せを」
 余り時間を掛け過ぎてはアヴァタール級まで出張って来る可能性が出て来てしまう。そろそろ一区切りつけたいと思案するエリザベータに対し、なればとレイラが囮役を買って出る。
 彼女らは領主の居城からは死角となり、かつ出来る限り敵の目につく場所を剪定。航空兵が身を潜めた事を確認すると、侍女は挑発的なまでに堂々と顔を上げ、敵をおびき寄せるべくこれ見よがしに歩き始めた。
「……あれが元凶か」
「油断するな。ただの反乱者ではないぞ」
 果たして、狙い通りと言うべきか。禁忌を犯した愚か者を処すべく猟兵の一団が姿を見せる。一見、劣勢になってまで拘る事かと思うかもしれない。だが、恐怖や威厳を失った統治者はあっという間に瓦解するものだ。それを理解しているが故に、わざわざこうして潰しに来たのだろう。
(文字通り、権力の犬という訳ですか。忌々しいことこの上ございませんね)
 ぞわりと、刀身に鮮血を纏わせながら猛然と殺到して来るトループス級たち。次々と放たれる血の斬撃に対し、レイラは牽制代わりに銀の針を投擲しながら一定の距離を保ちつつ後退してゆく。
 この場で始めてしまっても良かったが、万が一にも取り逃したら後々面倒な事になる。そう判断した侍女は、予め仲間と示し合わせておいた場所まで敵を誘導し、そして。
「……距離150、方位037、025。風位、北北西。諸元入力、完了。効力射、撃てッ!」
 エリザベータの構えし雷雲の名を冠する航空機銃が火を噴いた。仲間が身を挺しておびき寄せた敵集団を、物陰に身を潜めていた航空兵が狙い撃ったのである。ばら撒かれた弾丸は猟兵を貫き、相手の機先を潰してゆく。
「立体的な航空戦とは違って、二次元的な戦闘は少し勝手が違うけれど。敵陣の分断で味方の各個撃破の布石を作りつつ、射弾観測で味方を支援するのは同じよ。やってみせるわ」
 本来は砲兵隊等と協同した射弾観測が主目的だが、直接的な火力支援にも応用は効く。据え置かれた機関銃の猛威は、例え歴史が変わろうとも色褪せることは無い。
「っ、射撃手か……!?」
 だが、相手も然るものである。咄嗟に得物を最大まで伸ばすと、足りぬ距離は投擲で稼ぐ事により、航空兵へと攻撃を届かせてきた。頬を裂いて交錯する一撃。チリと血が滲むのを感じながらも、しかして動ずることなく火力支援を継続してゆく。
「この程度の傷は掠り傷よ。此方を気にせずに動いて貰って構わないわ」
「ええ、それでは……町に蔓延る領主の目、まずは貴方がたから潰させて頂きます」
 仲間の攻撃によって足並みが乱れた所を見計らい、レイラは身を翻して攻撃へと転ずる。そのまま敵集団の真っ只中へと飛び込むや、足を止める事無く疾駆してゆく。次々と繰り出される剣撃をいなし、受け止め、流すと同時に、返礼として銀の針を急所へ的確に叩き込む。
「……弾む律動、焦がす熱情。揺蕩う瞳が心意を射貫く。もう、何処へも逃れられない。皆須らく、この場へと縫い留めると致しましょう」
「こうなっては最早……せめて、カザコフ様へお伝えをッ!」
 次々と倒れる仲間を見て、勝ち目がないと悟った猟兵は堪らず撤退を選択。無論、復讐者がそれをみすみす許す道理もない。逃げる背中へ銀針と鉛玉を叩き込むと、最後の一体を討ち取った。
「これにてトループス級の殲滅は完了かしら」
「その様ですね。後は住民の皆様の救出と……領主の討伐を残すのみです」
 領主が異変に気付く前に人々の心身へ安寧を齎し、万全の体制を以てアヴァタール級との決戦に臨む。その為にも、少女たちは次なる行動へと移ってゆくのであった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【完全視界】LV1が発生!
【士気高揚】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!
【ダメージアップ】LV1が発生!

ライモント・マルロー
◆心情◆
さて、監視の兵隊たちは片付いたから、この隙に領民のケアをしないとだ。
領主がこっちに気付くまでそう時間はかからないだろうけど……ここはしっかりやっておかないとね。

◆行動◆
【熱波の支配者】で、気温を10~20度程度のラインまで引き上げるよ。
これは氷の壁に干渉しないように気を付ける。壁が融けるとマズいし。
……ここは寒いからね。少しでもあったかくした方がいいでしょ。
で、そうやって人を集めて、最初と同じく湿布なんかの医薬品を領民に配る。
あと、【ハウスキーパー】で民家の快適性も確保しようか。

空を飛ぶ姿を見せる、とかは他の人に任せよう。
俺は地道に、今この場の肉体の苦しみをケアする方に回るよ。


●仰ぐ為にも背筋を伸ばして
「さて、監視の兵隊たちは片付いたから、この隙に領民のケアをしないとだ。領主がこっちに気付くまでそう時間はかからないだろうけど……ここは出来る限りの事をしっかりやっておかないとね」
 トループス級との戦闘を終えた復讐者たちは、次の行動へと移り始めていた。ちらりと氷の居城を見やりながら、ライモント・マルロー(貸しランタン・g07415)は一先ず手近な集落へと足を向ける。
 仲間たちが合流するまで、今暫しの時間を要するだろう。幸い、彼らが何を人々に見せようとしているのかは凡そ予想がついている。ならばと、ライモントはその為の下準備を進めてしまおうと考えていた。
「まずはここら一帯の気温を引き上げようか。とは言え壁が融けるとマズいし、氷の壁に干渉しないように気を付けよう……ここは寒いからね。少しでもあったかくした方がいいでしょ」
 やはりネックはこの寒さだ。氷壁のお陰でマシとは言え、それも外側と比べればの話である。故にまずはそれを解消すべく、探偵は周囲に程よい暖かさを齎してゆく。それでも寒い事は寒いが、20℃の差は極めて大きい。
「戦いは終わったのかい……?」
「何だ、やけに暖かいな。今日は色々と珍しい事が起こるもんじゃわい」
 そんな微かな変化を感じ取ったのだろうか。家々に籠り災禍から逃れていた領民たちがちらほらと顔を覗かせ始めてゆく。彼らは猟兵の眼が無くなった事にも気付いておらず、未だに背を丸め俯いている。
(まずは心身ともに余裕を持って貰った方が良さそうだね)
 それを見たライモントは潜入した際の交流を思い起こす。新宿島から持ち込んだ湿布や軟膏を、彼らは殊更に喜んでくれた。あの時は騒ぎを起こらぬよう少量しか配れなかったが、今ならば大手を振って行動できるというものだ。
「領主の手下はやっつけたから、もう心配しなくて大丈夫。怪我をしたり体調が悪い人は居るかな。医薬品を持って来たんだ、どこか痛ければ遠慮なく使っておくれよ?」
「おお、ありがたいこってす……!」
 探偵は先程と同じように人々へ湿布を貼り、軟膏を塗ってゆく。顔を綻ばせるその表情を見れば、効果の程は一目瞭然である。
(空を飛ぶ姿を見せる、とかは他の人に任せよう。俺は地道に、今この場の肉体の苦しみをケアする方に回るよ)
 空を仰ぐにも、背筋や首が凝り固まっていては喜びを十全に感じられぬ。そうしてライモントは人々を癒しつつ、ついでに家々の修繕にも手を付けてゆくのであった。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【エアライド】がLV2になった!
効果2【ガードアップ】がLV2になった!

エリザベータ・シゲトヴァール
●心情
敵の監視の目は取り除いた。
約束した通りよ。貴方達に、空を見させてあげる。

●行動
【飛翔】し領民の目の前を飛びながら残留効果【士気高揚】を発動。
最初は建物よりも低く【地形の利用】で領主の館から見えない高度と角度から。
領民達の目が空中の自分に向く様になれば、少しずつ高度を上げて行く。

折角だもの【空中戦】【戦闘知識】【一撃離脱】を活かして、ちょっとしたエアショーの真似事でもしてみましょうか。
アイテムのチャフ/フレアグレネードでフレアを焚いたり、航跡雲を曳いたりしながら、バレルロールや4ポイントロールで人々の目を楽しませる。

これは同時に、カザコフへの挑発でもある。
さあ出て来なさい。吸血鬼のエース。


括毘・漸
邪魔者はいなくなりましたね。
住民の方々との約束を果たしましょう。

『完全視界』で空の状況を逐次確認し、『パラドクス通信』で他の方々に報告しましょう。
アヴァタール級には、警戒を払っておきましょう。
他の方々が住民を勇気付けたり、元気にさせるため行動してるので、住民の方々に宣伝しますか。
迷っている住民の方々がいれば、『寒冷適応』をかけつつ、手を繋ぎ『完全視界』を使います。
何にも遮られていない空を見せましょう。

さて、領主を空から降ろし、悪政の幕を降ろすこととしましょう。


●生ある者よ、空を仰げ
(現時点でアヴァタール級の姿は見えず、と……取り急ぎ、邪魔者はいなくなりましたね。であれば、今の内に住民の方々との約束を果たしましょう)
 ちらりと横目で氷の城を窺うも、そこから領主が飛び出してくる気配は感じられない。空を眺めるばかりで、地上の監視はほぼ部下任せなのか。何はともあれこの貴重な時間を無駄にはすまいと、括毘・漸(影歩き・g07394)は通信機へと呼びかけてゆく。
「鬼の居ぬ間になんとやら。そろそろ始めたいのですが、どなたかいらっしゃいますか?」
「……ええ、聞こえているわ。こちらも準備完了よ」
 果たして、それに応えたのはエリザベータ・シゲトヴァール(聖イシュトヴァンの剣・g00490)だった。彼女は銀地に朱が目を惹くフライトレッグの調子を確認しつつ、頭上を見上げる。
(敵の監視の目は取り除いた……約束した通りよ。やっと貴方達に、自由な空を見せてあげられるわね)
 現状は落ち着いているものの、復讐者に許された時間はそう多くないはず。ならば今必要な事は、短時間でより多くの人々へ圧政の終わりを知らしめることだ。そして幸いにも、その為の手段は彼女の得意分野でもある。
 エリザベータは飛行脚の主機動力へ火を点すや、ゆっくりと加速。十分な揚力を得て地面から爪先が離れると、そのまま人々の住まう集落へと進路を取ってゆく。
(飛行開始早々に水を差されるのも避けたいところだし、まずは低高度で様子を見つつかしら)
 人々の目に付きやすいよう、民家の軒先を擦らんばかりの低空飛行。しかし、鳴り響くエンジン音と風を裂く唸りに、領民たちはすわ領主の到来かと怯え身を竦ませてしまう。これまで空を飛ぶ存在とアヴァタール級がイコールだったのだ、それも無理はない。
「りょ、領主様が来なさったんだ!?」
「きっとお怒りになられとるぞ。どんな仕打ちをされるのか……」
 とは言え空を仰ぐどころか、這い蹲る様に平伏されては折角の飛翔も意味がなくなってしまう。だが、そうした反応も想定の範囲内だ。漸は恐れ戦く人々の手を取り、心配ないと声を掛けてゆく。
「大丈夫、彼女は領主ではなくボクの仲間です……もう、皆さんを虐げてきた猟兵は居なくなりました。俯く必要も、縮こまる理由も有りません」
 植え付けられた恐怖による心理的抵抗感があるだろう。長年に渡って酷使した首や背は上手く動いてくれないだろう。だが青年は無為に急かすことなく、一人一人に語り掛ける。それはゆっくりとだが人々の体に、そして心へと熱を与えてくれた。
 そうして彼らの心を縛めていた蟠りが解きほぐされたのを確かめつつ、漸は頭上を指し示す。
「だから……何にも遮られていない空を見せましょう。この空は誰の物でもなく、だからこそ誰もが自由に仰ぐことが出来るのだと思い出す為にね?」
「お、おお……っ」
 復讐者に促され、恐る恐る見上げた視線の先。其処に広がっていたのは寒風が吹き荒び、氷晶に薄く煙る蒼穹。この世界ではありふれた光景だ。だがある者にとっては幾年月振りの、またある者にとって初めての空であった。
「…………」
 呆然と眺め、目尻に雫を溜め、或いは果て無き群青に目を輝かせる。十人十色の反応だが、それらの意味するところはただ一つのみ。未だ予断を許さぬ状況だが、自分たちの成し遂げた成果を目の当たりにし、漸の口元には知らず知らずの内に誇らしげな笑みが浮かびゆく。
(空を奪われる、か。私だったら数日とて耐えられぬ日々を何年も……その辛苦は察するに余りあるわ。だからせめて、この記念すべき瞬間に華を添えるのも一興よね)
 そんな気持ちはエリザベータも同じであった。空を見上げる、ただそれだけの行為が彼らにとってどれほど遠いものだったのか。その心情を想えばあのような反応も当然だろう。
 これだけでも十分に喜ばしい事である。しかしどうせならば、祝い事はより華々しくいくべきだ。航空兵は祝砲代わりにフレアを煌々と焚き撒くや、くるりと宙空で身を翻す。
(編隊を組めるほど人数が居ないけれど、それでも出来ることはあるわ。という訳で、ちょっとしたエアショーの真似事でもしてみましょうか)
 機首を上げつつ横転を行い、まるで樽の胴を撫でるかの如きバレルロール。上下左右、きっちり九十度ごとに身体を回転させる4ポイントロール。更にはプガチョフズ・コブラにハンマーヘッド。
 見事なアクロバット飛行に人々は思わず感嘆の声を漏らしてゆく。しかし、それらは単に人々を楽しませるだけのものではない。
(……これは同時に、カザコフへの挑発でもある。さあ出て来なさい、吸血鬼のエース)
(残す演目はただ一つ。さて、領主を空から降ろし、悪政の幕を降ろすこととしましょう)
 復讐者が見据えしは未だ沈黙を保つ氷の城、その奥に座すであろう紅蓮の翼。斯くして人々の歓喜と共に、決着の時は刻一刻と迫りゆくのであった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】LV2が発生!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
【命中アップ】がLV3になった!

ルチルーク・フレンツェン
クロノヴェーダのように感情を力には出来ませんが、
人々の元気と勇気があればより頼もしい限りです
支配者の恐怖と従属を拭わせます

住民様方にアヴァタール級が近づかないかを警戒しながらも、
ロシアの民謡について教えて貰いながら【勝利への電脳演奏】をロシアの民謡風にアレンジして即興で演奏いたします
モーラットのルシグーナも演奏に合わせて楽しく踊って貰います

まだ支配者が残っていますが、私達は時を超える力、何より皆の笑顔や未来を望む心で戦います
辛かった限りでしょうけれど、皆が未来を諦めなかったからこそ間に合う事が出来ました
受け継がれた民謡のように、今この楽しい時間を未来に繋げよう!


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携、アドリブ歓迎

寒冷適応を使用、寒さを和らげ
熱波の支配者で、快適な気温上げに協力
友達催眠で緊張や警戒を緩和

飛翔があれば借り
俺はフルートの音を奏で、【活性治癒】の効果を届けて回る
村人達の痛みや症状を観察、臨機応変に
メディックポーチで薬の配布と手当て、症状の治癒を
幼子……ミーシャの目も治れば良いのだが……古い傷だろうか?

村人達へ
俺も空が好きだ……
青さに惹かれ、雲の流れに惹かれ
雪が降る曇天でさえ、仰ぎ見る
刻一刻と表情を変える……空は誰にも平等
恐れずに、見上げてみないか

治療と寒さの緩和ができたら
天使の翼を打ち、空へ……
俺も、空を舞う者だから

少しでも、希望になるといい

通信で連携を取り、演習飛行はいかが


●旋律よ、空まで響け
「おお! 空を飛べる者が、領主様以外におったのか!」
「もう腰も首も上手くは曲がらんが……ああ、でも。空はこんなに広かったのか。漸く、思い出せたわい」
 圧政の終わりを知らしめるべく空を舞う復讐者の姿は、氷壁内の多くの集落から見る事が出来た。今まででは到底考えられぬ光景。それを目の当たりにし、人々は口々に感嘆や歓びを漏らす。
(……クロノヴェーダのように感情を力には出来ませんが、人々の元気と勇気があればより頼もしい限りです。支配者の恐怖と従属を拭い去る事は、結果的に領主の力を削ぐ事にも繋がりますから)
 そんな領民たちを見て、ルチルーク・フレンツェン(均衡を破りし逆襲機械・g02461)もまた心なしか満足げに胸中でそう独り言ちる。彼らが悲惨な状況から脱すれば、その分だけアヴァタール級も弱体化するはずだ。しかしそれ以上に、こうして暖かな光景こそが何よりも復讐者の追い風となるのだろう。
「少しばかり早いが、まるでお祭りの様な騒ぎだな。いや、彼らからすれば実際に祝うべき慶事に違いない。そんな瞬間に、音楽の一つも無いのは些か寂しいとは思わないか?」
 いつの間にか仲間の傍らへ姿を見せていたエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)もどうやら同じ気持ちらしい。それとなく残留効果を駆使して領民たちを寒さから遠ざけつつ、彼が取り出したのは花模様が施された硝子製の横笛だった。
「フルートですか。察するには演奏を?」
「ああ、そちらも全く心得が無い訳じゃなさそうに見えたのだが。という訳で、一曲どうだろう」
「そうですね……っと、あれは」
 画家の意図を察し、半機人はふむと思案を巡らせる。提案自体には大賛成だ。だが、問題は選曲をどうするかについて。出来れば人々の慣れ親しんだ曲をチョイスすべきだが、生憎とこの時代の文化を完全に網羅出来ている訳ではない。
 さてどうしたものかと周囲を見渡していると、此方に近づいてくる人影を見つけた。それは先程のトループス級戦で言葉を交わした幼子。包帯に覆われていない方の瞳を輝かせながら、嬉し気に走り寄って来る。
「お姉ちゃん!」
「……ええ、先ほど約束しましたからね。一緒に遊びましょうか。それじゃあ先ずは、知っている民謡を教えてくれませんか?」
「うん!」
 ルチルークの問い掛けに幼子は満面の笑みを浮かべて頷く。そうして楽し気に言葉を交わし合う二人の姿を眺めながら、エトヴァはスッと目を細める。
(察するに、あの子供がミーシャか。見た所、傷を負ったのはそう昔ではなさそうだ。であれば完治は難しいだろうが、残留効果と合わせて手当を行えば一定の回復は見込めるだろう)
 予知に出ていた、領主を見てしまったが為に片目を潰されてしまった幼子。それこそが彼なのだろう。受けた傷は決して浅いとは言い難い。しかし負傷からそう時間が経っていなければ、ある程度の治癒を促す事は出来るはずだ。
 そうして幼子から彼らに馴染み深い民謡を教えて貰うと、二人はそれぞれの得物を手に旋律を奏で始めてゆく。素朴な、しかして力強く陽気な調べ。それは豊穣を願い、恵みを言祝ぐ実りの歌であった。
「あ、あれはさっきの……!」
「見て、一生懸命に踊っているわ。なんて可愛らしいのかしら!」
 横笛の優美な音色と電子的なメロディー。それらに合わせてモーラットも小さな手足を振ってちょこちょこと踊って見せる。そんな愛らしい仕草へ釣られる様に、子供たちもまた輪へと加わっていった。
 正に祝祭と言った光景は領民たちの心のみならず、身体の不調さえも癒し痛みを和らげてゆく。そうして頃合いを見計らうと、エトヴァは翼を一打ちしてふわりと飛び上がる。
「君たちと同じように、俺も空が好きだ。青さに惹かれ、雲の流れに惹かれ。雪が降る曇天でさえ、天を仰ぎ見る。刻一刻と表情を変える、気紛れで雄大な存在。そんな空は誰にも平等だ。だから……恐れずに、見上げてみないか」
 問い掛けに対する答えなぞ、確かめるまでも無かった。画家へと投げ掛けられる人々の視線が何よりも雄弁に彼らの心境を物語っている。そんな人々の信頼に応えるよう、半機人もまた言葉を紡ぎゆく。
「……まだ支配者が残っていますが、私達は時を超える力、何より皆の笑顔や未来を望む心で戦います。辛かった限りでしょうけれど、皆が未来を諦めなかったからこそ間に合う事が出来ました。だから、この受け継がれた民謡のように」
 ――今この楽しい時間を未来に繋げよう!
 それは0と1で演算された人間らしさかもしれない。だが、ルチルークの言葉は確かに聞く者の心を震わせたのだ。拳を空へと突き上げ、歓喜を口にする領民たち。その姿からは諦念に縛られた隷属など微塵も感じられない。
 そんな湧きあがる熱量に後押しされるかの如く、少女も空へと舞い上がる。斯くして復讐者たちは暫しの間、自由の象徴として人々の頭上を飛び翔けてゆくのであった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【強運の加護】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
効果2【リザレクション】LV1が発生!
【ドレイン】LV1が発生!

レイラ・イグラーナ
領主を館より誘き出す前に、人民の皆様が一歩を踏み出せるようにいたしましょう。

空を舞う姿をお見せするのは他の方々へお任せいたします。
私はどこかの広場へ集落の人々を集めて演説を。
私たちが各地でトループス級と戦う姿は眼にしているでしょうし、うまく集まって頂けると思うのですが。

集落の方々を集めたら【パラドクス通信】で飛翔してみせる方々と連絡を取り、【士気高揚】と合わせて前を向いて演説を始めます。

私たちは、皆様を解放に参りました。
皆様を監視していた兵たちはもういません。
もう下を向く必要はございません。

はい、まだ領主は健在です。
ですので、これより……私たちが領主を討つところを、空と一緒にご覧ください。


東間・惣治郎
連ア可

成程。パラドクスというのは、こういう使い方もあると
……いやはや。やはり不思議な力だ

【寒冷適応】と【パラドクス通信】をお借りし、情報を共有しつつ動きましょう
集落を周り、【ハウスキーパー】を兼ねた薄い結界を家々に張って回ります
開放される実感を得るのも大切ですが、間近で戦闘が起きた住民の方々にはまず落ち着いて心や体を休められる場所も必要でしょう
快適な家というのはその助けになります故

そうそう。家々を回りながら、演説や飛行ショーについての宣伝もして参ります
すぐには動けなくとも、落ち着いてからならば……という方々もいらっしゃるでしょうからね


●全ての者へ、遍く自由を
(成程。パラドクスというのは、こういう使い方もあると……いやはや、やはり不思議な力だ。しかし、人々を救えると言うのは悪くありませんね)
 傷を癒し、気候を整え、空を自在に飛び回る。復讐者として目覚めてから日の浅い東間・惣治郎(揺らめくイカリ・g01783)にとって、どれも驚くべき異能なのだろう。だが生来の生業故か、人々を守れる力と言うのは決して悪いものでは無かった。
 ともあれ、今は感慨に耽る余裕はない。仲間たちが華々しく飛び舞う事で領民を勇気づける一方、今この瞬間にもアヴァタール級が飛び出してこないとも限らないのだ。
「領主を館より誘き出す前に、まずは人民の皆様が一歩を踏み出せるようにいたしましょう。空を舞う姿は他の方々が十全に披露しておりますし……そうですね、私は一つ演説でも行ってみましょうか」
 となれば同じことをするよりも、別方向からアプローチを仕掛けるのも一手である。故にレイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)が選んだのは、人々に対する語り掛け。空を飛ぶと言う行為を見せる事で、視覚的なインパクトは十分に与えられた。ならば続けて言葉を重ねる事で、より人々に自由の認識を強めて貰おうと言う狙いなのだろう。
「私たちが各地でトループス級と戦う姿は眼にしているでしょうし、うまく集まって頂けると思うのですが。少なくとも、全く耳を傾けて頂けないと言う事は無い筈です」
「ふむ、悪くは無いですな。しかし……『老いて益々盛んなり』と行けばよいのですが、齢を重ねるという事はそう儘ならぬもの。移動に不自由し、未だこの状況についていけぬ方々もおられるでしょう。私はそちらのケアへと回りましょうか」
 侍女の提案に頷きつつ、老爺はであればとそう言葉を継ぐ。残留効果が機能しているとは言え、すぐさま快癒するほど蓄積された圧政の傷跡は浅くない。そんな最も被害を被った人々が取り残されるのは忍びないと、この場の最年長でもある惣治郎は考えていた。
「ええ、お願い致します。絶望より救われる人民が多ければ多い程、圧政者の力が弱まりますし……それを抜きにしても、喜びを分かち合いたいものですから」
 その申し出はレイラにとっても有難いものだ。演説の下準備として仲間へ連絡を取り始めた少女から離れ、惣治郎は家々を巡り動けぬ者が居ないか声を掛けてゆく。
(物は次いでです。開放された実感を得るのも大切ですが、間近で戦闘が起きた住民の方々にはまず落ち着いて心や体を休められる場所も必要でしょう。快適な家というのはその助けになります故)
 彼は家々に結界を張り、快適に過ごせるよう加護を付与する。その過程で身動きの取れない人を見つければ、外で何が起こりどうなったのかを聞かせていった。
「随分とまぁ外が騒がしいと思ったけんど、そういうこってすか。めでたいでがんすなぁ」
「体調の問題もありますし、どうかご無理はなさらぬようご自愛を。窓からでも眺める事は出来ますからね」
「いんや、ここで拝まんと次があるかも分からん。一目だけでものう」
 そうして希望する者には手を貸し、転ばぬよう支えながら外へと誘導してゆく。見れば集落の広場には既に少なくない数の老若男女が集まり、空を征く復讐者たちの姿に目を奪われている。彼らの意識が自分たちへ向けられ切ったことを確認すると、頃合いを見計らってレイラは口を開いた。
「先刻の戦いをご覧になられ既にご承知の方も多いと思いますが、改めて名乗らせて頂きます。私たちはディアボロス、皆様を解放に参りました。皆様を監視していた兵たちはもういません……故にもう、下を向く必要もございません」
 その言葉に派手さはない。人々の煽る様な熱狂も、意図した感情を抱かせんとする作為もない。寧ろ逆に淡々とした、ややもすれば地味なものに見えるだろう。しかし下手に飾らぬ言葉の方が、時として強く聴衆に響くのだと彼女は知っていた。
「ですが、現時点で討ち果たせたのは猟兵のみ。領主は未だに健在です。無論、我々もこのまま手を引くつもりはありません」
 幾つもの視線を一身に受けてなお、侍女が臆することない。彼らの希望を裏切らぬ様、自らへの誓いも兼ねてレイラは断言する。
「ですので、どうか。これより……私たちが領主を討つところを、空と一緒にご覧ください」
 そうして演説は締めくくられ、シンとした沈黙が周囲に降りる。だが不意に、パチパチと手を打つ音が響く。チラと視線を向ければ、その源は老人に寄り添っていた惣治郎。老爺の拍手を皮切りとして、人々もまた喝采と共に復讐者の宣誓を受け入れてくれた。
「やれやれ、増々負けられなくなりましたね」
「はい。元より、退くつもりはありません」
 そうして人々の声援を一身に受けながら、惣治郎とレイラは領主が座す氷の居城を見上げ――そして、決戦の時はやって来た。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【士気高揚】がLV2になった!
【ハウスキーパー】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV4になった!

●紅蓮の翼、氷空を征く錨
 トループス級を撃破し、思い思いの方法で人々の心身に救いを齎した復讐者たち。束の間の穏やかな交流を楽しんでいた一行であったが、不意に悍ましい程の怒気を孕んだ叫びが氷壁内へと響き渡った。
「なんだ……なんだこれはッ!? 貴様ら、いったい誰の許しを得て『私の』空を見ているのだ! 猟兵たちは何をやっているッ!」
 俄かに緊張が走る中、領民たちがさっと視線を走らせるのは領主が座す氷の居城。果たして、大きくせり出したテラスより一陣の紅が空高く飛翔してゆく。あれが何者であるかなど、今さら確かめるまでもない。
 洗練された高級そうな軍装、整えられた口髭。背には複葉を思わせる紅蓮の翼が血で形作られ、手にするはそんな印象とそぐわぬ武骨な錨。そして何よりも、嚇怒に歪んだ相貌が視線を惹く。
 あれこそ正にこの地を収めるアヴァタール級の領主にして、史実では帝政ロシアにおける数少ない戦闘機エースの一人、『アレクサンドル・カザコフ』に違いなかった。
「我が身へ注がれるエネルギーすらも途絶えている、だと……? この短時間でいったい何があったと言うのだ。否、そんな事はどうでも良い。いま問題なのは領民共が『私の』空へ不躾な視線を注ぐばかりか、醜い翼で踏み込む者まで出てきていると言う事だ!」
 周囲全てを睥睨しながら、耐えがたい様に身悶えするカザコフ。どうやら事前の情報通り、空に対する執着が尋常ではないらしい。それは脅威であると同時に、付け入る隙にもなるだろう。
 血走った瞳を爛々と輝かせながら、領主は憎々し気に叫ぶ。
「……見せしめだ。この前代未聞の愚挙を、今後一切許さぬ為にも。貴様ら一人残らず恐怖を刻み込んでくれる。この空が一体、誰の物であるかをな!」
 ヒュンと、風を切って錨を振るうアヴァタール級。
 ならば、こちらも教えてやらねばなるまい。
 空とは本来、万民にとってどの様な存在であるかを。
 さぁ、復讐者たちよ。いまこそ圧政を終わらせる時だ。
レイラ・イグラーナ
ここまでは予測通り。
あとは領主を討ち果たすのみです。

こちらも【飛翔】を用いた『空中戦』でカザコフと相対します。
こうしていれば地上の住民の方々が戦闘に巻き込まれることはないでしょう。
【手製奉仕・飛】を使用、鎖付き錨の間合いよりも遠距離を飛び回り「銀の針」の『投擲』で攻撃を行います。
錨の威力を最大に発揮できる中距離での戦闘ではあちらが上、ですが……!
相手が距離を詰めようとしたところで反転、鎖付き錨の間合いより更に近距離まで一気に近寄り、鎖で防げぬ至近距離から針の投擲を。

わざわざご教授頂かなくとも心得ております、領主様。
この空はこの地に暮らす人民全てのもの。貴方が占有していいものではありません!


括毘・漸
残るは、悪政を敷く領主を空から地に墜とすのみです。

さて、空という舞台に皆さんをあげる前に露払いをしますか。振り回される錨があっては空を翔ぶのに邪魔ですからね。

【エアライド】を使い、地を駆け、空を駆け住民の方々に被害が及ばぬよう移動しつつ、『弾牢封罰』で弾丸の牢を作り注意をひき【時間稼ぎ】です。空で動きを制限されるとなれば気をひけるでしょう。
注意を向けさせるためにも【完全視界】でカザコフを視界に収めつつ【挑発】です。

我が物顔で空を飛んでいた領主が、まるで籠に囚われの鳥のようだ!これは滑稽ですなぁ!

ここまで、言えば十分でしょう。あとは、空を駆る皆さんにお任せです。地に降る火の粉は此方で払います。


●地より放たれ、天を射貫く
(残るは、悪政を敷く領主を空から地に墜とすのみです。とは言え大口を叩くだけあって、パッと見ただけでも空戦技術は中々の物。勢いだけで相手の土俵に踏み込むのは悪手でしょうね)
 射殺さんばかりの禍々しさを以て、地上を睥睨する領主カザコフ。その姿を臆することなく見上げながら、括毘・漸(影歩き・g07394)はスゥと瞳を細めゆく。先刻からの宣言通り、飛翔を活用しての空中戦も悪くはない。
 だが、相手とて何の裏打ちも無しに大言壮語を吐いている訳ではなかった。元が戦闘機エースと言うだけあって、その実力は侮って良いものでは無い。故にこそ、漸はまず場を整えるべきだと判断する。
「さて、空という舞台に皆さんをあげる前に露払いをしますか。振り回される錨があっては空を翔ぶのに邪魔ですからね」
「……世迷い事が聞こえたな。空を翔ぶ、だと? 今の私はそれが妄言だろうと捨て置くつもりは無いッ!」
 復讐者の独白を耳聡く聞き取ったアヴァタール級。相手は怒気を滲ませながら、グンと身を翻して降下体勢を取る。まるで獣の尾が如くたなびく錨を曳きながら、頭上より落下速度と重量を破壊力に変えて振り下ろして来た。
「空を翔びたいのだろう? その願いを叶えてやろうではないか。そして身の程を知り、哀れに地へと墜ちるが良い!」
「お気遣い痛み入りますが、謹んで辞退させて貰いましょう。空を翔ぶのは別の方々の役目なのでね!」
 直撃時のダメージは勿論、一度アレに絡め取られれば死ぬまで空中を引きずり回されかねない。漸は虚空を蹴り、鋭角的な軌道を以て回避を試みる。だが、相手も手慣れたもの。巧みに鎖を手繰って軌道を修正するや、強かに復讐者を打ち据えてゆく。
(ッ!? 捕縛は免れましたが、何という威力……このまま好きに動き回られては、住民の方々にも危険が及びかねません。ならば!)
 痛みを堪え何とか体勢を立て直すと、青年は懐より取り出した何かを宙空へとばら撒いた。それは大量の拳銃弾。彼はそれらが落下するよりも早く、尾底部を叩き雷管を作動させる。
「悪政に鉄槌を、悪逆に茨を、悪事に鞭を、悪意に戒めを。そして悪しき者を、弾丸の牢にて封じ、その罪を罰する! さぁ、大盤振る舞いです!」
 瞬間、炸薬によって押し出された無数の銃弾が乱れ狂う。直線的な射線は勿論、弾丸同士の衝突による跳弾が複雑な軌道を描き、空を縦横無尽に覆い尽くす。これには堪らず、カザコフも防御に徹するほかない。
「我が物顔で空を飛んでいた領主が、まるで籠に囚われの鳥のようだ! あれだけ偉そうにしておきながら、これは滑稽ですなぁ!」
「地を這う凡愚風情が、図に乗りおって……!」
 だが、手数は多くとも一発の威力はたかが知れている。妨害にはなるだろうが、決定打には些か足りぬ。しかし、漸にとってはそれで十分だ。
「さて、ここまで言えば十分でしょう。地に降る火の粉は此方で払います。あとは……」
 ――空を駆る皆さんにお任せです。
 そう言い終わるや否や、身動きを封じられたカザコフの背後へ不意に影が差す。不穏な気配を感じて振り返った領主が見たのは、殺意を宿したレイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)の赤き瞳だった。
「追い込み、感謝致します。ええ、ここまでは予測通り。あとはただ、貴方を討ち果たすのみです」
「私と、同じ目線に立つだとぉ……ッ!?」
 今まで見下して来た相手が同じ高みへと踏み込んで来るなど、アヴァタール級にとっては許しがたい暴挙なのだろう。苛立ちのままに振るわれた錨を飛び退って避けつつ、お返しとばかりにレイラは幾本もの銀針を引き抜き投擲してゆく。
「針、か? 文字通り吹けば飛ぶような裁縫道具なぞ、ものの数ではないわ!」
「っ!? 錨の威力を最大に発揮できる中距離での戦闘ではあちらが上、ですが……!」
 しかし、攻撃の悉くが鎖錨に叩き落されてしまう。ある程度の距離を開けたミドルレンジでは、どうやら相手に分がある様だ。まるで鎌首を擡げた蛇の如く錨が放たれ、侍女服を食い破ってゆく。
 このままだとジリ貧になるのは確実。だが、勝機が無い訳ではない。それを見出すのに必要なのはリスクを飲み込めるだけの胆力。
「どうした、防戦一方ではないか! これで身に染みて分かっただろう、この空が誰の物であるかをな!」
(慢心、増長、油断。このまま続けたとしても此方の不利ですが、勢いづいた者ほど脇が甘くなるもの。必ずどこかで隙が生じるはずです)
 果たして、領主はこのまま一気に押し切るべく錨を振り被る。強烈な一撃を繰り出す前の、刹那の溜め。その僅かばかりの間隙を見出すや、レイラは躊躇う事無く距離を詰める。虚を突かれて目を剥くカザコフを見据えながら、侍女は慇懃無礼に口を開く。
「わざわざご教授頂かなくとも心得ております、領主様……この空はこの地に暮らす人民全てのもの。決して、貴方が占有して良いものではありません!」
「な、にぉ!?」
 必中の軌道を以て放たれた銀針と咄嗟に叩きつけられる錨。両者の一撃が氷空で交錯し、そして。
「沖する鳳翼、巻き上ぐ飛竜。櫛比の烏が万里を征す……まずは一針、ですね」
「ぐ、ぉお……ッ」
 全身を強かに打ち据える衝撃と引き換えに、圧政者の顔面へと銀針を剣山の如く突き立ててゆくのであった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】がLV4になった!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
【命中アップ】がLV4になった!

ライモント・マルロー
◆心情◆
さぁて大将戦だ。
色々と下準備はしたけど、相手は空戦で歴史に名を残したエース。油断はできないな。

◆行動◆
まともに空戦を挑むのは、流石に無謀だろうね。
だから後の先を取る。
【飛翔】で空中に静止し、迎撃態勢。
領主の性格上、空にいる敵は許せないだろう。
散々挑発してきたし、怒り心頭で襲い掛かってくるはず。
そうして向かって来たところに【エアライド】のジャンプで緊急回避を行い、『鷲爪』でカウンターを狙う。
相手が戦闘機による空戦のプロだからこそ、空中でのジャンプという鋭角の機動は虚を突けるはずだ。

ヘル・カザコフ。あんたはできた圧制者様だ。
でも、この空はあんたの両腕に収めるには大きすぎる。ご退場願おうか。


東間・惣治郎
連ア可

独裁、圧政は何時か潰えるもの
老いに追いつかれるが如く、終わる時が来たという事です

……などと、大口を叩きましたが。私に出来る事は高が知れている
ならば、出来る事に全力を注ぐと致しましょう

空を飛ぶ、という感覚がどうにも分かりませんので。地上からの対空射撃に徹すると致します
傍らに盾・遮蔽代わりに結界を厚めに展開し、領主の動きを注意深く観察。機動のクセを掴む事を優先し、防御を重視
最高速度、加速力、方向転換の際の慣性、回避時の咄嗟の動き。なるべく多く収集してから事を起こします

狙うはあの鉄鎖。防御と攻撃、双方に用いられる鎖付き錨を「飛ぶ斬撃」での『呪詛返し・斬弾』ので以て失わせてみせますとも


●年季に劣り、高度で及ばず
「がッ!? 高みへ踏み込むどころか、あまつえさえ我が身に傷をつけるとは……! これまででは考えられん、なんたる事態だ!」
 顔面に突き立った針を乱暴に引き抜く領主。シュウシュウと音を立てて傷口が塞がりゆくが、ダメージ自体は確かに蓄積されているはずだ。そんな苛立たし気に鎖錨を握り締める相手へ向け、静かに声が響く。
「独裁、圧政は何時か潰えるもの。そも、他人を受け入れられぬ者が、どうして他者に存続を認められましょう。老いに追いつかれるが如く、終わる時が来たという事です」
 相手と対照的なまでに落ち着き払った声音の主は東間・惣治郎(揺らめくイカリ・g01783)。齢八十を超える人生の中で、暴力によって己が主張を叶えんとした者らが台頭した時代もあった。だがその末路はどうなったかなど、今さら語るべくも無し。故にこそ、惣治郎からすればこれも歴史の必然と言う物である。
「……などと、大口を叩きましたが。私の様な老骨に出来るなど高が知れています。空を飛ぶと言う感覚も今一つ分かりませんので、地上から出来る事に全力を注ぐと致しましょう」
「確かに、空は相手の領域だ。まともに空戦を挑むのは流石に無謀だろうね。とは言え、踏み込まなきゃ勝機を見出せないのも事実だ」
 杖を握り直し、油断なく構えを取る老翁。その横より空目掛けて上昇していったのはライモント・マルロー(貸しランタン・g07415)だった。彼とて仲間と同じように、空中戦が得意とは言い難い。だが、故にこその戦い方と言う物もまたある。
「だから、上の抑えは俺が担おう。代わりに援護は頼んだよ?」
「ええ、承知致しました。対空援護はどうかお任せを」
 仲間へ支援を依頼しつつ、敵と同じ高度で静止する探偵。先の交戦で手痛い一撃を受けたせいだろうか。相手は嚇怒を滲ませた視線を向けながらも、復讐者を中心として一定の距離を保ちながら旋回している。
(さぁて、大将戦だ。色々と下準備はしたけど、相手は空戦で歴史に名を残したエース。油断はできないな。空での戦いなら一枚も二枚も上手のはず。だから、後の先を狙おうか)
 弱体化したとはいえ、それでもなお強敵である事に変わりはない。故にこそ、ライモントは敢えて相手に先手を譲る。攻撃後に隙が生じるのは空だろうと地上だろうと同じだ。ならば、そこを突かぬ道理は無し。
(領主の性格上、空にいる敵は許せないだろう。これまでも散々挑発してきたし、いずれは痺れを切らして怒りのまま襲い掛かってくるはず)
 果たして、読み通りと言うべきか。様子見の時間はそう長くは続かなかった。不意に相手が軌道を変えたかと思うや、遠心力を利用して錨を投じて来たのだ。
「ただ浮かぶだけとは随分と無様なものだ。的となりに来たのであれば、お望みどおりに叩き落してくれるッ!」
(来た……!)
 前述の通り、探偵は飛ぶと言う行為に縁遠い。しかし、跳躍であれば話は別だ。彼は虚空を思い切り蹴るや、鋭角的な軌道を以て回避せんと試みる。空戦機動は得てして弧を描きがちだ。だからこそ、定石外の動きで虚を突かんしたのだが……。
「伊達や酔狂でこの様な武器を使っていると思ったのかね?」
「ッ!?」
 それは如何なる手妻か、虚空で鎖が曲がったと思うや錨がライモントの動きを追従。次の瞬間には、脇腹から全身へと鈍痛が駆け抜けた。めり込む錨を払い除けるも、間髪入れずに次撃が襲い来る。
「……最高速度や運動性に関しては、上を探せば幾らでもおりましょう。げに恐ろしきはそれをカバーする技量。名を借りた偽物とは言え、航空機発展の黎明期に錨で撃墜を成し遂げたエースといった所ですかな?」
 だが、それは着弾の直前にあらぬ方向へと曲がってしまう。ハッと領主が地上へ目を向ければ、視線の先には杖を振り抜いた惣治郎の姿が在った。錨による攻撃は強力だが、威力の大半は先端部に集中しており、手元と錨を繋ぐ鎖部分は存外脆い。それを見抜いた老翁は、呪詛を乗せた斬撃を以て軌道を狂わせたのだ。
「探偵殿のお陰で、短時間とは言え動きの癖を収集出来ましたからね。となれば畢竟、こうした芸当も狙えるという訳です」
「おのれ、老いさらばえた遺物風情が……ッ!」
 身を翻し、急降下軌道を以て地上へと狙いを変えるカザコフ。高速回転する錨が、まるでプロペラの如く叛逆者を牽き潰さんと唸りを上げる。しかし、この程度の修羅場なぞとうの昔に経験済みだ。
「あの時代のゲバ棒や投石を思えば、今さら錨を持ち出された程度では驚けませんね」
 ――霞み、揺らぎて。千切れ、流れよ。其の身、其の時。嘗てか、果てへ。
 朗々と吟ぜられる祝詞と共に、絶え間なく呪詛の斬閃がアヴァタール級へと浴びせかけられてゆく。異能の代償として肉体に尋常ならざる負荷が掛かるものの、惣治郎は飽くまでも泰然さを崩さない。
 回転と掃射。彼我の距離が詰まるに比例し、攻撃の密度は高まりゆく。果たして、両者の間隔が零へ至り……。
「ぐ……ッ!」
「ちぃっ、おのれ!」
 遠心力を乗せた錨が老翁を打ち据えるも、鎖部へ叩き込まれた呪詛により軌道が変化。くるりと半円軌道を描いた鉄塊が、使い手自身へと牙を剥いた。正に因果応報である。
 ぐらりと身を傾がせる惣治郎を尻目に、カザコフも追撃ではなく離脱を優先させた。上昇して失った高度を取り戻そうとする領主だったが、ふっとその頭上に影が差す。それは一見すれば翼を広げた猛禽にも見える。しかし、その正体はより猛々しき者。
「……ヘル・カザコフ。あんたはできた圧制者様だ。敵ながら、良く考えられた責め苦だと思うよ。だけどね?」
「ッ!」
 大地無き虚空を踏み抜いて、翼の如く広げられしはライモントの両足。繰り出される蹴撃は天空より獲物を狩る狩猟者の爪に他ならない。高度と速度を手放していたカザコフに、それを避けるだけの余裕などあるはずもなく。
「この空はあんたの両腕に収めるには大きすぎる。さぁ、ご退場願おうか!」
 強烈な一撃が、相手を地上目掛けて叩き落すのであった。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【落下耐性】がLV2になった!
【平穏結界】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV5になった!
【ガードアップ】がLV3になった!

エリザベータ・シゲトヴァール
●心情
やはり貴官はクロノヴェーダね。エースの名を冠しても、その本人ではない。
カザコフ大尉はボリシェビキどもに屈する事なく戦った立派な英雄。貴様の様に妄執に囚われた小物では無かった筈だ。
彼の名誉の為、堕とさせて貰うわよ。

●行動
【飛翔】し【戦闘知識】【空中戦】をフル活用して真っ向勝負。

あの鎖はロシア軍パイロットが好んだタラーン戦術の応用と聞き及んでいる。
こういう変則型に通常の空戦の常識は通じない。
なら、主導権を握られるのは下策ね。

V-EXTRAを発動してこちらから仕掛ける。
下手に鎖の軌道を読むのではなく、【残像】で敵の目測を見誤らせ、インメルマンターンで敵上方に占位してから【一撃離脱】で仕留める。


ルチルーク・フレンツェン
『私の』『私の』と空への妄執が本当に凄まじい
空は誰の物でもない、その現実を今こそ突きつけましょう

ルシグーナと共に鎖付き錨の届くギリギリの距離感を【飛翔】します
多少傷付こうとも火炎放射器とニードルガンを交互に放ち時間稼ぎし、予測困難だろうと敵の軌道を早業で情報収集していきます
ルシグーナ、まだ待っててね、貴方の出番はすぐだから

導き出した敵の航路をスマホからルシグーナに送信し、当機がやられた振りをして敵の視線を下に向かせて、【エアライド】でのジャンプも込めたルシグーナの【もちもちメテオ】で敵の頭上を狙い撃ってもらいます

当機は【落下耐性】で安全に着地しておきます
みんな安心してね、もう圧政は終わるよ


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携、アドリブ歓迎
ネメシス化、青い光纏う天使の姿

――独り占めするには、空は広すぎるだろう?

寒冷適応、完全視界で動きやすさを確保
通信で仲間と連携し、挟撃や死角のサポートを行う

【飛翔】し空中戦
戦場を偵察、観察し情報収集、敵味方の配置と敵の動きを把握
不規則軌道で的を絞らせず
死角を取りに行き、仲間と包囲挟撃の形へ
接近すれば、銃撃で牽制しつつ確実にダメージを与え
仲間と一体一に持ち込ませず、援護

振り回す錨の軌道上に、Eis-Spiegelをばらまいて撹乱
銃弾の雨を浴びせ攻撃を通そう
反撃には魔力障壁を展開し、突撃は最高速度で回避に集中

蒼穹の翼広げて、自由自在に飛び回ってみせよう
この空は、どこまでも果てしない


●斯くて空は今日も広がりて
「ご、がはッ!? なんだ、なんなのだこれは……私が、空を仰ぎ見ているだと? こんな馬鹿な話が合ってたまるものかッ!」
 蒼空より叩き落され、無様に地面へと倒れ込むカザコフ。高みより見下ろす側のはずだった自分が、今は虐げていた領民たちと同じ地平から頭上を見上げている。その現実を認識した瞬間、アヴァタール級の相貌が瞬く間に憤怒へ染まりゆく。
「この空は私の物だ、私だけの物だ! 凡愚共には空を飛ぶ事は愚か、見上げる事すら許してはいないッ! だと、言うのに……!」
 屈辱の余り受けた傷の痛みすら忘れ、跳ねる様に身を起こすや再度上昇。僅かでも高度を取り戻さんと遮二無二に上を目指す。未だ戦闘中だと言うのに、その脳裏を支配しているのは空に対する独占欲のみ。
「……事此処に至っても、未だに『私の』『私の』、と。空への妄執が本当に凄まじいですね。であれば、何度でも断言します。空は誰の物でもない、その現実を今一度突きつけてやるとしましょう」
「ッ!?」
 だがそれも、不意に進路上へと立ち塞がった人影により断ち切られる。咄嗟に急制動を掛けつつ距離を取った領主が見たのは、肩に毛玉を乗せたルチルーク・フレンツェン(均衡を破りし逆襲機械・g02461)の姿。前髪に隠された瞳は無機質でありながら、呆れた様な感情がありありと窺えた。
 しかし、待ち受けていたのは半機人一人だけでは無い。その傍らには佇むは紅と蒼の復讐者。エリザベータ・シゲトヴァール(聖イシュトヴァンの剣・g00490)とエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)の二人は、まるで傾きつつある戦況を言外に示すかの如く、高度優勢を保ちながら鋭く視線を向けてゆく。
「やはり、貴官はクロノヴェーダね。如何に優れた技量を持ち、エースの名を冠したとしても、その本人では決してない。カザコフ大尉はボリシェビキどもに屈する事なく戦った立派な英雄……貴様の様に妄執に囚われた小物では無かった筈だ」
 確かに、史実の人物が最終的に敗北したのは事実だ。しかし、それでも彼は戦い続ける意志を示し続けた。眼前の狭量さとは似ても似つかないと言っても良い。
「だから、その在り様は認められない。彼の名誉の為、此処で確実に堕とさせて貰うわよ」
「ああ。そも、件の人物は他国の戦友と共に空を駆け抜けたと聞く。真逆の思想を持った偽物が圧政を強いるなど、本人の生き様とは真逆と言って良いだろう」
 エトヴァも同意を示しつつ、全身に蒼き燐光を纏ってゆく。見た目こそ然して変わっていないが、滲み出る威はこれまでの比ではない。それは彼もまた全力で戦いに臨んでいる事の証左であった。
「故に今一度、紛い物に教えてやろう。貴様だけで独り占めするには……」
 ――この空は広すぎるだろう?
 その言葉を契機としたかの如く、復讐者たちは散開しそれぞれ戦闘を開始する。

「航空戦の武器と言えば、専ら機銃やら爆弾と言う印象が強いですけれど……」
「確かに、空で錨と言うのも奇妙な話ではある。しかしどうやら、伊達や酔狂でそんな得物を駆っている訳ではないらしい。あの不規則な軌道は非常に厄介だな」
 そうして一先ず、ルチルークやエトヴァは敵の攻撃圏外へと逃れて見に徹してゆく。本来は海に関する道具である錨を航空戦用武器として用いる。確かにある種おかしな光景だが、それが単なるハッタリでない事は戦い振りを見れば一目瞭然だ。
(となれば、まずは様子見ですか……ルシグーナ、まだ待っててね。貴方の出番もすぐに来るから)
 半機人の放つ電離弾や火炎放射、画家による弾丸と鏃の掃射をプロペラの如く高速回転させた鎖で蹴散らしつつ、領主は逆端の錨を投じて反撃すらして見せる。空戦において重量の増加は機動力の低下を齎すはずだが、相手からそんな様子は微塵も伺えなかった。
(……あの鎖はロシア軍パイロットが好んだタラーン戦術の応用と聞き及んでいる。こういう変則型に通常の空戦の常識は通じない。なら、主導権を握られるのは下策ね)
 なればこそ、エリザベータは多少の不利を呑んででも機先を制すべきだと彼女は判断した。航空兵は各種兵装のリミッターをカット。稼働時間と引き換えに莫大な推力を得るや、一気呵成に攻め掛かってゆく。
 対するカザコフも錨を巧みに操って迎撃を試みるが、下手に鎖の軌道を読むのではなく卓越した運動性能による回避を選択。被弾を掠り傷レベルにまで抑え込むことに成功する。
「この程度の数的劣勢など、すぐに覆してくれる……! そも、貴様らはこの空を誰の物だと心得る? 空戦で私が敗れる道理などないッ!」
 しかし、相手の技量も然るもの。三対一にも関わらず、復讐者と一歩も退かずに渡り合う。しかし、連戦に次ぐ連戦である。疲労が蓄積しつつあるのか、徐々にだが空戦機動の精彩を欠き始めた。
「……そろそろ仕掛け時だな。援護は必要か?」
「ええ。技量で劣るつもりは無いけれど、此処は万全を期すべきね」
 時間を掛け過ぎて冷静になられても厄介だ。視野狭窄となっている今の内に趨勢を決すべく、画家と航空兵が動き出す。斯くして、まず先に仕掛けたのは紅の復讐者だった。
「空戦で敗れる道理はないですって? その大言壮語が真実かどうか、確かめてあげるわ!」
「同じ高みに立ったからといって、図に乗り過ぎだ。上から目線も甚だしいぞッ!」
 顔を突き合わせた文字通りの真っ向勝負。お互いに相手を攻撃圏内へと捉えた瞬間、両者共に電光石火の早業で攻撃を繰り出す。
「甘いわッ!」
 だが、火力面ではカザコフ側に分があった。勢いをつけて錨を投擲するや、機銃弾を跳ね返しながら鉄塊がエリザベータ目掛けて吸い込まれてゆく。速度が速度だ、直撃すれば撃墜は免れない、が。
「なんだ、手応えが……!?」
「空が常に晴れとは限るまい。そもそも、この寒さだ。雪や雹が降るのは当たり前。だから、『こんな事』が起こっても不思議じゃない。そうだろう?」
 パリン、と。虚空に亀裂が走ったかと思うや、幾つもの煌めく破片が撒き散らされた。何事かと目を剥く領主だったが、不意に響いたエトヴァの言葉によって状況を理解する。鏡の如く薄く張られた氷が、目算を誤らせたのだ。
 しまったと思った時には、もう航空兵の姿は視界より掻き消えている。何処に消えたのかと視線を走らせた次の瞬間、領主の頭上へフッと影が差す。
「……蒼穹の翼を広げて、自由自在に飛び回ってみせよう。この空は、どこまでも果てしない。限られた視界だけで、その全てを捉えられると思わない事だ」
 何時の間に移動したのか。咄嗟に頭上を見上げた先に居たのは紅と蒼、二人の復讐者。交錯した敵機の背後を取る高等技術、インメルマンターン。氷晶によって生まれた隙を突き、エリザベータは既に方向転換を終え、仲間と共に攻撃位置へと着いていたのだ。
「一次大戦の時にはもうあったはずだけれど、実際に見たのは初めてかしら?」
「な、ぁ……!?」
 次の瞬間、強烈な弾幕がアヴァタール級目掛けて放たれた。雨霰と降り注ぐそれらを全身で浴び、瞬く間に無惨な姿へと変じてゆくカザコフ。その体はガクンと揚力を失い、ゆっくりと高度を落とし始める。だが、相手もまだ意識を完全に手放した訳ではない。
「これなら……行きましょう、ルシグーナ!」
 なればと、間髪入れずに動いたのは趨勢を見守っていたルチルーク。体勢を立て直される前にトドメの一撃を叩き込まんと、彼女は降下しゆく領主へと追撃を敢行する。その判断自体は間違っていなかった、のだが。
「敢えて墜落を演ずるなど、欺瞞とは言え屈辱極まる選択だ。しかし、こうも嵌れば悪くはない!」
 トドメを刺そうとした直前、アヴァタール級はくるりと身体を反転させるや、半機人を鎖錨で絡め取ったのである。窮鼠の一手だが、効果の程は御覧の通り。ぐいと引き寄せられたルチルークの体は沈み落ち、その反動を利用してカザコフは高度を取り戻しゆく。
「ははははっ、ようやく一機撃墜か! やはり貴様らは地を這いずり回っているのがお似合いだ、そのまま落ちるが良いッ!」
「……ええ、当機が飛行状態を維持するのは困難でしょう。しかし、それがそちらの勝利とイコールにはなり得ません」
「減らず口を……いや、待て。貴様が連れていたネズミはどこへ消えた?」
 逆転を確信し、ほくそ笑むカザコフ。だが、これまで復讐者の肩に乗っていた小動物の姿がいつの間にか見当たらない事に気付く。本能が警告を鳴らす中、もきゅうを甲高い声が蒼空に響き渡った。
 それが聞こえた方向は領主の背後……即ち、直上から。振り返った先に居たのは、もちもちと身体を丸めたモーラットの姿。半機人は拘束される直前、サーヴァントだけは逃れさせていたのだ。
「ま、さか……っ」
 高度も、思考も、戦術も。全てにおいて上をいかれ、絶句するカザコフ。一方、ルチルークは薄っすらと微笑を浮かべていた。
「みんな安心してね……ずっと苦しみ続けてきたけど、それも今日までだから」
 ――もう、圧政は終わるよ。
 斯くして、毛玉は弾丸の如くアヴァタール級へと全身を叩きつける。強烈な弾性を秘めた身体は最後の一押しには十分すぎる威力で。そのままゆっくりと、紅の翼を失った領主の体は自由落下してゆき、そして。
「この空は、私の……もの、で……――」
 末期の言葉さえも、妄執に塗れたまま。アヴァタール級は地上へ激突し、今度こそ絶命するのであった。

 此処に、長きに渡り氷壁内部で繰り広げられた圧政は幕を閉じた。
 人々はもう俯く事無く、空を見上げて自由と解放を言祝いでいる。
 湧きあがる歓声にはもう、絶望の色など微塵も混じってはいない。
 そうして、復讐者たちは己が戦いの果てに勝ち取った平穏を目に焼き付けながら、新宿島へと帰還を果たすのであった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】がLV6になった!
【落下耐性】がLV3になった!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!
【能力値アップ】がLV6になった!
【グロリアス】LV1が発生!

最終結果:成功

完成日2022年06月19日