リプレイ
野本・裕樹
ここがルール炭鉱…相当な激戦地だったと聞いています。
この地のクロノヴェーダが目立った動きをしていないのは先人達の奮闘があったからこそなのでしょうね。
それに続けるように頑張りましょう。
此度は前哨戦、深追いは禁物。
展開されている兵でも数の少ない場所を狙って仕掛けましょう。
彼らを元の人間に戻す事はきっと不可能なのでしょうね、そして立ち塞がる以上は障害でしかない。
《鉄仙》…せめてこれ以上苦しまないように終わらせる事しか私にはできません。
【光学迷彩】を利用した攻撃で混乱を誘いつつ、いつでも撤退できるようにしておきます。
撤退は周囲と合わせて。
今はここまで、次来る時は引き籠っている将とも決着をつけましょう。
咲初・るる
出来損ない…失敗作…
そんな風に呼ばれ虐げられた挙句
痛みに苦しんでるなんて
ボクだったらきっと…
悲痛な叫びに身体強張らせる
こんな人達を二度と生み出す訳にはいかないから
此処に来た
そしてこれまで戦ってきたんだ
震えは収まらないけれど
勇気振り絞り、立ち続けよう
敵からは距離を取りながら行動
仲間が確実に留め刺せるよう
戦力を削ぐことに集中する
そして、敵の数を減らしたら撤退は忘れずに
引き籠りを引っ張り出す一手となれば良いのだけど
痛みが続くのはあと少し
絶望と苦しみ、血に塗られたそんな景色が
最期になることをどうか許してほしい
ベル鳴らし春告げの花を散らす
この花がキミ達への手向けだ
さあ、目を閉じて
どうか安らかにおやすみ
●
「ここがルール炭鉱……」
切り崩された山肌に突き立つ鉱業設備の間を、欧州の乾いた風が抜けていく。亜麻色の長い髪をはたはたと靡かせて、野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)は灰色の山を見渡した。
「相当な激戦地だったと聞いています。それなのにこの地のクロノヴェーダが目立った動きをしていないのは、先人達の奮闘があったからこそなのでしょうね」
第二次ルール炭鉱破壊作戦が成功裏に終わったのは、つい先日のことだ。作戦完了に至るまで足かけ数ヶ月の間には、多くのディアボロス達の並々ならぬ努力と献身があった。それが頼もしくて、少女は唇に淡い笑みを浮かべる。
「私達も、それに続けるように頑張りましょう」
駆け上がる坂道の先には、鉄屑と呼ばれた兵士達が何をするでもなく並んでいる。ただそこに存在するだけで辛いのか、きれぎれに掠れる苦悶の声は聞いているだけで痛ましい。白いフリルの胸元をぎゅっと掻いて、咲初・るる(春ノ境・g00894)は唇を噛んだ。
(「でき損ない……失敗作……」)
そんな言葉を投げつけられ、理不尽に虐げられるのは、どんな気分だろう。そのうえ消えない痛みに苦しんでいるなんて、想像するだけでも震えがくる。
(「ボクだったら、きっと……」)
耐えられない、と言いたくはないけれど、きっとあんな風に立ってはいられない。知らず強張る身体に鞭を打って、るるは編み上げブーツの爪先を一歩前へと踏み出した。
(「――しっかりするんだ、サキソメ」)
こんな人達を二度と生み出さないように、そのために今日まで戦ってきたのだろう。そのために、今日この場所にきたのだろう? そう自分に言い聞かせ、少女は勇気を振り絞る。
「此度は前哨戦、深追いは禁物です」
六尺にも及ぶ長い太刀を勢いに乗せ引き抜いて、裕樹は周囲の気配を探るように狐耳を動かし、言った。
「数の少ない場所を狙って仕掛けましょう」
「……任されよう」
こくりと小さく喉を鳴らして、るるは応じる。身体の震えは収まらないけれど、それがなんだ――彼らは、あの兵士達は、今この瞬間も消せない炎をその身に宿し続けているではないか。
「では、参ります!」
タンと軽やかに砂地を蹴って、裕樹は段差を飛び越えると鉄屑兵達の眼前に躍り出る。悲鳴を上げて後退するその姿はゾルダートというにはあまりにも痛々しく、みすぼらしくて、妖狐の娘は悼むように眉を寄せた。
(「彼らを元の人間に戻すことは、きっと不可能なのでしょうね――この世界が、この世界である限り」)
同情の余地は多々あれど、行く手を阻む障害物は除かねばならない。きゅっと唇を引き結んで、裕樹は妖刀を振り被った。鋭く息を吐いて斬り下ろし、払う若草色の剣閃は、瞬きの間に二体の兵士を結界の中に閉じ込める。
「私には、あなた方がこれ以上苦しまないように、終わらせることしかできません」
結界断・鉄仙――押し返すような放射熱に顔をしかめながらも退くことはなく、裕樹は刀を振り下ろす。その刃は耀く光条の結界ごと、兵士達を斬り飛ばした。鉱山の岩肌に叩きつけられた兵士達を遠巻きに見つめて、意を決したようにるるは告げる。
「その痛みは、ずっとは続かない」
細い指先に摘まんだハンドベルをちりんと鳴らせば、白い花弁が宙を舞った。絶望と苦しみに喘ぎながら見る最期の景色が、血に塗れた殺風景な坑道では、あまりに哀し過ぎるから。
「この花がキミ達への手向けだ。さあ――目を閉じて」
どうか安らかに、おやすみ。
囁く声に誘われて、兵士達は微睡むようにその動きを鈍らせていく。季節外れの雪にも似た花吹雪の中、泣き出しそうな微笑みを向けた少女の姿は、死にゆく彼らの瞳には本物の天使のように映ったことだろう。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【光学迷彩】LV1が発生!
【未来予測】LV1が発生!
効果2【ダブル】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
アンゼリカ・レンブラント
みんなで沢山頑張って断片の王を倒し
ドイツ奪還寸前まで来たんだ
戦争も必ず勝とう!
星形状のパラドクスを広域に放出、
敵をなぎ倒していくよ
共に作戦に臨む仲間と即興の連携をして
効率的に闘えると尚いいね
敵は多数、弱っている相手、
仲間が狙っている相手を集中して叩く!
反撃は培った戦闘知識と鍛えた体に装備、
そして勇気で耐える!
痛いけど、1発1発なら大丈夫だよ!
狙いを集中されないように駆け回り
囲まれないよう注意して立ち回るよ
ピンチに陥った仲間がいれば救助に入るね
こんな姿にされた敵の姿には複雑な気持ちも沸くけど……
ドイツは私達が取り戻す!今は、眠って。
全力の《天輪輝星》で吹き飛ばすっ!
撤退は皆とタイミング合わせるね
サアシャ・マルガリタ
実はディヴィジョン的にはドイツ出身のサアシャですよ。故郷は砂の国ですが。
……ドイツを取り戻したら、またマルガリタを探しに行けるでしょーか……。
さて。流れる前にお世話になった人たちを取り戻すためにも、今は戦わなきゃですね!
悲痛な声ですけど……サアシャの耳を塞いでもあの人達の苦しみがなくなるわけじゃないですもんね。
群れからはぐれている個体を狙って、
小さな砂嵐で足元を掬ってよろめかせた隙に【サンドストーム】で覆うですよ!
もう叫ばなくていいですよ、敵の姿を探さなくていいですよ。
どうか、その苦しみが終わりますように!
交戦状況と頃合いを見て引き上げるです。
サアシャに出来るのはここまでですね! 退散退散ー!
●
空には自爆要塞、地には無数の敵、敵、敵。歴史の奪還戦と銘打っても、状況は決して楽観できるものではない――だからこそ勝利の可能性をわずかでも高められるのなら、そのための労は厭わない。白い拳を胸の前でパシッと打ち合わせ、アンゼリカ・レンブラント(黄金誓姫・g02672)は挑むような笑みを浮かべた。
「みんなで頑張って、やっとここまで来たんだ。この戦い、必ず勝とう!」
「おうなのですっ!」
元気いっぱいアサルトライフルを掲げて応じるサアシャ・マルガリタ(えいえいお!・g05223)も、気合は十分――皇帝を倒した復讐者達は今、ドイツ奪還という大望にかつてなく近づいていた。行くぞと勇ましく声を上げて、鉄砲玉娘達は敵の戦列へ飛び込んでいく。
(「こんな姿にされたのは、可哀想だと思わなくもないけど……」)
居並ぶ敵を見据えるアンゼリカの金の瞳は、揺るぎない正義と闘志に燃えていた。同情はしても、手加減はしない――彼女達がこの国を取り戻さなければ、彼らとて永遠に救われないのだ。
「ドイツは私達が取り戻す! 全力でいくよ――!」
掲げた掌に集めるのは、裁きの光。どうか眠ってと祈りを込めて、少女は黄金の星彩を放つ。散弾の如く敵を貫く光の結晶は、尽きることのない彼女の勇気そのものだ。
「ああああつい、あついい――!」
煌々と燃える光は灼熱の刃となって鉄屑兵達を斬り裂いた。瞬間、強烈な熱線が放射状に迸り、アンゼリカは表情を歪める。けれど――。
(「熱いし、痛いけど――一発一発なら、大丈夫だよ!」)
これくらい、耐えてみせる。皇帝の一撃に比べたらこの程度、鍛えた肉体と怯まぬ勇気をもってすれば造作もないことだ。
「っ――」
耐えがたい熱と痛みに慟哭する兵士達の声は、しかし、あまりにも凄惨であった。大きな狐耳を反射的に伏せて耐えながら、サアシャはなんとかその場に踏み止まる。
(「サアシャが耳を塞いでも……」)
彼らの苦しみが消えてなくなるわけではない。ぐぐ、と覚悟を以て伏せた耳を立て、少女は悶え苦しむ敵の姿を追った。狙うのは、攻撃に驚いて群から飛び出した一体――すいと伸ばした手の先で渦を巻く砂は、リボンのようにしなやかに地面を這って兵士の脚を絡め取る。
「もう、叫ばなくていいですよ」
敵の姿を探さなくても、いいんですよ――壊れかけたその耳に届くかどうかは分からないけれど、それでもサアシャは呼び掛ける。
「どうか、その苦しみが終わりますように!」
呻く声は砂に巻かれて、次第に小さく掠れてゆき、そして聞こえなくなった。つきんと疼くような胸の痛みには気づかなかったふりをして、少女は次の敵へと向き直る。
(「ドイツを取り戻したら、またマルガリタを探しに行けるでしょーか……」)
今は遥かな砂の国。できることなら今すぐにだって、離れ離れになった母を探しに行きたい。けれどそのためには未だ、取り返さなければならないものが多過ぎる。痛みに呻く彼らのためにも、そして彼女自身のためにも、立ち止まっている暇などありはしないのだ。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【照明】LV1が発生!
【土壌改良】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!
クーガ・ゾハル
エン/g05162 と
おまえ、イガイといろいろ知ってるんだな
うまいものなら、おれもはやくたべてみたい
たぶん、元いたヒトたちも、そうだよな
おう、じゃあいくぞ
おまえたち、いたそうだな
ん、わかるぞ
ドレイなんだな、おまえたちも
うまいものも、しらないまま
デキソコナイやシッパイだなんて、よばれたくないし
つらいこと、やらされるのイヤだろ
自由だって、むずかしいけど
もう――やらなくていいぞ
すこしぐらい、こげたってかまわない
体をひくくしてダッシュ
あいつらの足元たくさん、まきこんで
こわしながら<泥濘>もつかう
うまく、うごけなくしたらエンの番
…なんかセッキョー、されてるな
あいつらのヌシ、…ほんとうに、よくないやつだ
エンジュ・アルティオ
同行:クー(g05079)
そういや昔一度だけ勉強で行ったドイツ
僕あれ好きでさ、シュパーゲルって料理
も一度だけ本場で食べたいもんだ
君が知らなさすぎなんだけども
そん時は食いしん坊の古代人にも教えてやろう
オッケー、そンじゃ腹ペコ君
ちょっくら気の毒な連中を自由にしてやんな
…とはいえもうちょい安全重視にやってくんないもんか
覚えとけ、火傷の手当ては結構痛いんだよ
体勢崩してるとこにパラドクス叩き込んで
[衝撃波]も使ってなぎ倒してやるよ
[結界術]でクーの被害も多少は軽減できるかね
さァもう奴隷なんてやめちゃいな
他人の人生なんて支配するもんじゃないしされるもんじゃない
――…生き方も、死に方も
●
「そういや昔、一度だけ勉強でドイツに行ったんだけどさ」
「うん?」
取り出した呪符を口許に添えて、エンジュ・アルティオ(イロナシ・g05162)は言った。手首の力だけで投げつけた黒い札は宙を裂き、呻き悶える鉄屑兵の眼前で爆ぜる。衝撃波をまともに受けて吹き飛ばされた敵が岩盤に打ちつけられ、崩れるのを確かめてから、クーガ・ゾハル(墓守・g05079)はちらりと視線を振り向けた。
「僕、あれ好きでさ――シュパーゲル。も一度だけ、本場で食べたいもんだ」
「……おまえ、イガイといろいろ知ってるんだな」
「……君が知らなさすぎなんだけども」
相変わらず失敬なと口にして、エンジュは白いコートの裏側を探り、新たな呪符を取り出した。戦闘開始よりしばらく経つが、倒した敵の残骸は着実に積み重なっているにもかかわらず、鉄屑兵達の数は一向に減る気配がない。
機械化された右目にそっと手を触れて、クーガは言った。
「うまいものなら、おれもはやくたべてみたい」
きっと、この国に暮らしていた人々も、その日の訪れを待ち望んでいるはず。眠たげな瞳を伏しがちにして呟く青年へ、だろうねと軽く返してエンジュは続けた。
「オッケー、そンじゃ腹ペコ君。ちょっくら気の毒な連中を自由にしてやんな」
無事に世界を取り戻せたらその時は、とっておきの春の味覚を教えてあげるから。すると、おおと瞳を瞬かせてクーガは言った。
「オゴリか?」
「奢るとは言ってない」
「じゃあ、オゴリだな」
時々、分かっていてすっとぼけているのではないかと思うことがあるが、彼はいつだって真剣だ。言ってないというのにと顔をしかめるエンジュを背に置いて、クーガは身のこなしも軽く兵士達の元へと跳躍する。
「おまえたち、いたそうだな……」
彼らの様子には、奇妙な既視感があった。なんだろうと思い巡らせてみれば、黒琥珀の瞳が微かに揺れる。そうか、と呟いて、青年は兵士達を見た。
「――ドレイなんだな、おまえたちも」
美味しいものも、綺麗なものも、楽しいことも知らないまま。壊された挙句に、でき損ないだ、失敗だと、勝手な言葉で罵られる。クーガからすればそれは、かつての彼と同じ――奴隷にしか見えなかった。ひょんなことから手に入れた自由は時に残酷で、難しい選択を迫られることもあるけれど、それでも選べるということに価値があるのだとクーガは思う。
「つらいこと、やらされるのイヤだろ」
もう、やらなくていいぞ――ぽつりと告げて、青年は機械の右目を光らせる。刹那、迸る熱線は樹木の枝のように地を這い、足下の地面を融かしながら兵士達の身体にまとわりつく。
「あつい――あつい、あつい、あつい!」
熱いのは身体の外なのか、中なのか。そんな単純なことすらも、彼らにはもう分からない。叫びと共に放出される熱波は浅黒い肌を焦がしたが、しかしクーガは気にも留めなかった。構わずに立ち続ける姿を見かねて、エンジュはその背に呼び掛ける。
「勇敢なのはいいけども! もうちょい安全重視にやってくんない!?」
「……なんかセッキョー、されてる」
じとりと敵を見据えたまま振り返る青年に、反省の色はなかった。はあと溜息を深くして、エンジュは額に手を当てる。
「覚えとけよ、火傷の手当ては結構痛いんだからな」
もっとも、彼の向こう見ずは今に始まったことでもない。気を取り直して両手に開いた呪符をまとめて放ち、エンジュは泥濘に足を取られた兵士達に呼び掛ける。
「さァ。もう奴隷なんてやめちゃいな」
他人の人生なんて支配するものではないし、勿論、されるものでもない。生き方も、死に方も――決めるのは、自分だ。
ぐるぐると廻る呪符の中心で、衝撃が弾ける。ばらばらになって崩れ落ちる兵士達の残骸を見下ろして、クーガは眉間に深い溝を穿った。
「こいつらのヌシ、……ほんとうに、よくないやつだ」
奴隷は物だ。人ではない。けれど、まともに働くこともできない彼らをこんな風に使う理由がどこにあろう。沸々と湧き上がる静かな怒りをぶつけるべき相手は、今もこの炭鉱のどこかに身を潜めたままだ。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【泥濘の地】LV1が発生!
【ハウスキーパー】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV2が発生!
ラルム・グリシーヌ
【白花】
この国で彼と共に紡いだ
優しい音溢れる想い出だけでなく
確かに其処に在る
人の営みを愛おしく思う
戦場を見据えてた視線を
隣に遣り勿論と頷く
うん、往こうニイナ
一人でも多く。後に、繋げる為に
それに、奪われっぱなしは性に合わないからね
彼が呉れる言葉
その音に鼓舞される侭に
竪琴に指先を絡め
汎ゆる叫声を包み込める様に
祷り聲に籠め紅葩を響かせる
…失敗作、か
彼らを蝕む痛みも熱も
望んで得たものではなくて
だからこそ逝く魂が迷わぬよう
黄泉路を彩る餞の唄を
ニイナが齎す螺旋の如く
舞い上がる焔に伴う燈の花を咲かせ
せめて最期は優しい夢をと心密かに願う
連携重視
回避には飛翔
弱った敵を狙い確実に数を減らし
撤退の機は周囲と合わせる
篝・ニイナ
【白花】
ドイツ帝国の命運がかかってる
そんな戦いへの先駆け
この地で重ねた記憶はどれも大事なもので
その記憶の中で隣の彼の瞳が輝いているのを
瞼を閉じれば思い出す
目を開けて、彼を見れば
その眼差しは今は鋭さを増して標的へ
さあ行こうかラルムクン
どっちが多く倒せるか、競争だな
彼の奏でる竪琴が聞こえるだけで
こんなにも刀は軽く、心の臓が熱くなる
愉しいと、思ってしまう自分がいる
あついか?くるしいか?
哀れみや同情を手向けるよりも先に
刃をもってその首を落とそう
お前の身を焼く熱よりも苛烈な怨みの炎で
今、楽にしてやるよ
連携を取れるように動く
飛翔等残留効果を利用して移動や回避を行い
引き際を違えず、戦況をみて撤退
●
思い返せば今日まで、この国でどれだけのものを見てきただろう。
感傷に浸っている暇などないことは重々承知しているけれど、ドイツという国の命運がかかった大きな戦いを前にして、どうしようもなく思い出してしまう。光を受けてきらきらと輝く白葡萄のレーマーグラス、艶々とした赤いグミベルヒェン――ここを訪れなければ出逢えなかった数々の記憶と、その一つ一つに、隣り合う彼の屈託のない笑顔があったことを。
「ニイナ?」
不意に名を呼ばれて、篝・ニイナ(篝火・g01085)はぱちりと目を開けた。隣へ視線を流してみれば、ラルム・グリシーヌ(ラメント・g01224)が訝るようにこちらを見つめている。どうかした、と問われれば緩く首を振って、鬼人は応じた。
「いや。短い間だったけど――色々あったなあって、思ってただけ」
「……そうだね」
本当にと頷いて、少年は柔らかく瞳を細める。
この国で二人、優しい音に包まれて紡いだ想い出だけでなく、その一瞬一瞬に確かに存在した人の営みを、愛おしく思う。たとえ書き替えられた歴史の中であっても、そこには必死に日々を生きる人々がいて、当たり前のように明日を信じていた。
だからこそ――これから起きようとしていることを、見過ごすわけにはいかない。
すっと開いた橄欖の瞳はもう、微笑ってはいなかった。鋭さを増して兵士達の群を見るその眼差しに頼もしげに頷いて、ニイナは少年の肩を叩く。
「さあ、行こうかラルムクン。……どっちが多く倒せるか、競争だな」
「うん――行こう」
ここで一人でも多く敵の戦力を削れれば、それが後につながっていく。それに、と付け加えて少年は言った。
「奪われっぱなしは性に合わないからね」
戦うことが、血を流すことが、決して好きなわけではない。けれど彼が迷い立ち竦む時はいつだって、掛け替えのない友の声が勇気をくれる。白藤の零れる竪琴に添えた指を弦に絡めてつま弾けば、春の雨の踊るようなその音色が焔の花を連れてくる。
(「……失敗作、か」)
その身を蝕む熱も、痛みも、彼らが望んで得たものではないのだろう。ならば彼にできることは、いずれ散り逝く魂が迷うことのないように、黄泉路を彩る餞の唄を送るだけ。
(「せめて最期は、優しい夢を見られますように――」)
歌い上げる古い哀歌と共に次第に烈しく渦を巻く紅葩は、暁色に白く耀き、触れたものを灼き尽くす。助けを求める兵士達の絶叫を柔らかく包んでいく滑らかな歌声を背に、ニイナはふっと口角を上げた。
(「参ったね、どうも」)
心地よく耳朶を打つ歌声には、壊れかけた兵士達の安寧を願う切なる想いが込められている。だというのに――自分はどうだ?
握る刀はこんなにも軽く、心臓はとくとくと跳ねて熱を持つ。憐れみや同情を手向けるより先に、『愉しい』と思ってしまう自分がいる――それはただ、彼の奏でる琴の音が聞こえてくるだけで。
「あついか? ……くるしいか?」
啼き叫ぶ兵士達の身体から、熱波が放射状に迸る。しかしその身に宿した火の烈しさにかけては、こちらだって負けていない。兵士達を蝕むものがその身を滅ぼす自壊の炎なら、彼が身に宿すのは鮮血に染めた斜陽にも似た怨みの炎だ。
「今、楽にしてやるよ」
背中に広げた烈火の翼で素早くその場に飛び上がり、ニイナは刀を振り上げた。ヒュ、と風を鳴かせて斬り下ろせば、研ぎ澄まされたその刃は哀しき兵士の首を断ち落とす。ああ、と吐息交じりに零して、青年は握り締めた刃に目をくれた。
(「今、振り返ったら」)
彼はこの瞳に宿った焔を、どう想うだろう。綺麗だと、美しいと想ってくれるだろうか。それとも――。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【飛翔】LV2が発生!
効果2【ガードアップ】がLV2になった!
【反撃アップ】LV1が発生!
ワーズ・ディアハルト
「…集めた所で何になる。ビスマルクを前にして、隠れた所で何になる。
その程度で防げる力であれば」
―自分の、喪ったものは限りなく最小限で済んだに違いなかったのに。
鉄屑兵の集まりを見ながら、呟く
―だが…俺が過去でして来たことは
きっと客観視すれば、この敵将と何ら変わりはしないのだ。
パラドクス発動、相手を可能な限り一撃で仕留めるよう狙いを定め
反撃に警戒、だが無影響は難しいだろう。
―過去…このような罪なき弱き人まで焚き付けて、戦場に送ったよ
……憎しみだけがあった
奪還しても。勝っても尚許されはしないであろうと、今も思っている
罪滅ぼしにもなりはしない
だが、出来る事は終わらせる事だけ
退き際だけは見極めて、撤退。
標葉・萱
次から次へと随分と
行く路の随分困難なことで
どれほどをこなせばとは…立ち止まらずに、為せるだけ
如何程の理想で捧げたか
理不尽に巻き込まれたか
実際は知りかねるけれど、
確かに終わりにいたしましょう
這い出る前に、手数は減らしておきたいところ
そうしてどうぞ、穴の底から出ていらして
確実に一人ずつ、といきたいところではあるけれど
数が数なので、突破されそうなら先ずはそちらを
囲われてしまっては手も出ないので周囲の数には留意して
全て、と叶わないなら退路を見失う前に退きましょう
あらゆる道を塞ぐのは、今この手であるから
躊躇わず迷わず仕舞まで
眩むほどの白ならば、ほんの一瞬、閉じるときだけでも
その熱さを忘れるように
●
「次から次へと、……数が多いというのは、本当のようですね」
坑道の奥になおもひしめく兵士達の群を見渡して、標葉・萱(儘言・g01730)はふうと大きく吐息した。いったいどれだけ屠り続ければ、終わりに辿り着けるのだろう? そんな考えが一瞬、脳裏を過ったが、立ち止まればきっとそこから動きが鈍ってしまう。
(「たしかに、ここで終わりにいたしましょう」)
どれほどの理想を胸にその身を捧げたのか、あるいは已むにやまれぬ事情ゆえに理不尽にも従うしかなかったのかは量り兼ねる。だが経緯はどうあれ彼らはもう、壊されてしまったのだ。元には戻してやれない以上、ためらいはしない。
暗く深い穴の底より外へと出でてしまう前に――確実に。敵を見据える横顔は無表情ながら、憐憫を封じた青年の怜悧な覚悟を思わせる。
駆けてゆく背中の一歩後ろから戦場を見渡して、ワーズ・ディアハルト(守護者・g02389)は破れんばかりに拳を握った。見据えているのは仲間の背でもなく、その向こうの兵士達でもなく、この坑道の奥に潜んだまだ見ぬ臆病者の顔だ。
「……集めたところで、何になる。あのビスマルクを前にして……」
地の底深くに隠れたところで、いったい何の役に立つ?
ワーズには分からない。分かりたいとも思わない。この地を時空ごと消し飛ばすというあの要塞の特攻を、ちゃちな悪足掻きでやり過ごせると思えるなど、これを愚かと言わずしてなんと言おう。かの皇帝の置土産が身を隠した程度で防げるような代物だったならば、彼はこんなにも多くのものを喪ってはいないだろう。手下のくせにそんなことも分からないのかと思えば、その無能には嫌悪感さえ催すけれど。
(「――だが」)
褐色の翼で宙を打ち、ワーズは無数の光環を放つ。廻る刃は不規則な円弧を描きながら敵を裂き、悲鳴がいっそう激しさを増した。耳を塞ぎたくなるような苦悶の叫びに眉をひそめながら、青年の胸を満たしたのは悔悟の念だった。
(「俺が過去でしてきたことも、きっと大差ないのだろうな」)
罪もない、弱い人々を焚きつけて、戦場に送った。国を憂えてと言えば聞こえはいいが、結果が出せなければそれは単なる自己満足に過ぎない。一時の憎しみに身を任せ、行動の結果を考えもしなかった――その結果が『あれ』だ。この戦いに勝利し、すべてを奪還したとしても、彼の犯した罪は赦されるものではないだろう。少なくともワーズ自身は、そう思っている。
(「罪滅ぼしにもなりはしないが」)
苦しみに喘ぐ兵士達の姿は、無力を知って後悔と怨嗟の中に力尽きていったかつての同胞達によく似ていた。今の彼にできることはただ、これ以上その苦痛を長引かせないことだけだ。
撫で斬る光環に重ねて、硝子の小鳥が羽ばたいていく。萱の手を飛び立った透明な翼は、薄い羽の擦れ合う度にしゃらしゃらと澄んだ音を奏でながら白い花弁を散らしていく。それは穢れのない雪のように、消えない炎に身を焦がす兵士の身体を包み込んだ。
(「ほんの一瞬、だけでもいい」)
目も眩むような白の中で、どうか今だけは――その熱を、忘れて。
動きを止めた兵士の身体はぐらりと傾ぎ、倒れ込んだ衝撃だけで儚くもばらばらに砕け散った。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【飛翔】がLV3になった!
【建物復元】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】がLV3になった!
【ダメージアップ】がLV2になった!
鬼歯・骰
【KB】
馬鹿馬鹿しい自爆の置き土産も気に入らねぇが
いざとなったら逃げて隠れて
他者を盾にする奴も気に入らねぇな
そっちの上がやらかしたことだ
きっちり責任は取ってもらおう
ツリガネ、今日はちゃんと自分で帰れよ
深呼吸する背に軽口投げて鱶構え
アンタに面倒見られるのは高くつきそうで遠慮しとくわ
呻く敵にも怯まず、目を逸らさず
なるべく一撃でその命を終わらせてやれるようにしたい
…どうにも、倒したところでスッキリしねぇ相手だな
望まず使い捨てられる兵士たちの熱波は
炭鉱の地形を利用して物陰に隠れてやり過ごし
なるべく相手の数を減らしていくことを目標にする
撤退は他の奴らともタイミング合わせて
孤立しないように気をつけとく
鐘堂・棕櫚
【KB】
自分のものにならないなら壊してやるって
流石に駄々っ子が過ぎませんか
そんなのに付き合うほど人類は暇じゃないんですけども
落とし前だけは確り付けに行きませんとね
復讐の刃で大振りのナイフを呼び出しながら
頭に血が上り過ぎないように深呼吸
ふは、今日は俺が骰さんの回収役でもいいですよ
決戦に向けて血路を開くべく
一体を徹底的に叩くのではなく
より多くの敵にダメージを分散させていきましょう
爪による反撃は極力武器で受け止めて被害を減らせるよう試みます
死ねないまま兵として使われるのもお辛いでしょう
正しい歴史が迎えに来るまで、暫しお休みください
撤退は味方とタイミングを合わせます
俺らはまだ、死兵になるには早いので
●
「自分のものにならないなら壊してやるって、皇帝陛下ともあろう人がさすがに駄々っ子に過ぎませんかねえ。そんなのに付き合うほど人類は暇じゃないんですけども」
やれやれと目一杯の皮肉を込めて、鐘堂・棕櫚(七十五日後・g00541)は肩を竦めた。その隣で苦々しげに鼻を鳴らし、鬼歯・骰(狂乱索餌・g00299)も同意する。
「まったく馬鹿馬鹿しいもいいとこだ。……しかし置き土産も気に入らねえが、自分だけ逃げて隠れて他人を盾にする奴も気に入らねぇな」
暗く深い地の底で、臆病者の指揮官は今頃何を思っているのやら。そういう上に従ったのは自己責任だろうに、そんな輩が将官だなどと笑わせる。
坑道を塞ぐ夥しい数の鉄屑兵達をじろりと見据えて、骰は手に馴染む鋸刃を構え、そして言った。
「助けに来た――なんて、綺麗ごと言う気はねえぞ」
彼らは復讐者だ。クロノヴェーダは倒すだけ――しかし言葉とは裏腹に、鋭く細めた金眼には殺し切れない感情が滲む。ち、と誰にともなく舌打ちして、骰は言った。
「ツリガネ、今日はちゃんと自分で帰れよ」
「いつの話してるんです? 今日は俺が骰さんの回収役でもいいですよ」
「いや、遠慮しとく」
「そんな即答しなくても」
アンタに面倒見られるのは高くつきそうだからな――相変わらずの減らず口に苦笑して、棕櫚は握る拳に力を込めた。人類史の断片を取り戻せるか否かの瀬戸際、張り詰めた空気は否応なしに、十二月の東京を思い起こさせる。空色の瞳を一瞬伏せて、棕櫚は大きく息を吸い込んだ。
(「ええ、大丈夫」)
昂り過ぎて、同じ轍は踏まない。無茶をして決戦の当日に動けないなどということになったら、笑い話にもなりはしないから。
「落とし前だけは、しっかり付けに行きませんとね」
「ああ、必ず付けさせる」
そのためにも――決戦の日の、血路を開く。
壊れた世界で偶然出逢った、腐れ縁の悪友二人。つかず離れずの距離を保って敵の只中へ飛び込むと、背中合わせに得物を構える。苦痛に啼き咽ぶ兵士達の姿はおどろおどろしいけれど、そこから目を逸らさずにいられないほど、綺麗なものばかり見てきたわけではない――だから今更、怯みはしない。鬼神の如く敵を斬り裂いていく姿は、二振りの刃そのものだ。
失礼しますよと軽い調子で敵の射線へ割り入って、棕櫚は言った。
「死ぬに死ねないまま、兵として使われるのもお辛いでしょう」
汚れた包帯の下に覗いた、見えているのかいないのかもよく分からない小さな目。覗き込めば、冷やかに光る空色の瞳に一分の憐憫が光った。
「正しい歴史が迎えに来るまで、しばしお休みください――ね?」
右手をひと振り、目にも留まらぬ速さで投げつけた刃は、並んだ兵士の胸に一本、二本と突き刺さる。しかし相手は腐ってもクロノヴェーダ――それだけで倒し切れるとは思っていない。だから、とどめを刺すのは骰の役目だ。
死に物狂いで振り回す爪をナイフの腹で受け止めて、棕櫚は短く友の名を呼んだ。
「骰さん」
「ああ」
任せろと言外に含めて、骰は一切の躊躇なく敵の懐へ潜り込む。できるだけ一撃で、苦しまぬよう――慈しい鬼の無骨な刃は、壊れかけた兵士の身体を叩きつけるように斬り飛ばした。放出される高温の熱波はじりじりと肌を焦がしたが、焼ける皮膚の痛みよりも、胸に蟠る感情の方が不快だった。
「……どうにも、倒したところでスッキリしねぇ相手だな」
「そうですね。あんまり何度も戦いたくはないです」
でも、多分また来てしまうんでしょうね――と、微かな自嘲を込めて棕櫚は苦笑した。復讐者達の手を借りなければ眠ることもできない兵士達は、この坑道の奥底に今もなお、何百何千とひしめいているのだから。
決戦は、四月十七日。来たるべきその日に向けて、ディアボロス達は復讐の刃を研ぎ澄ます。次にこの地を訪れる時はすべての兵士を解放し、地の底深くに潜り込んだ卑怯者を討ち取る時である。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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