リプレイ
ワーズ・ディアハルト
湖の畔で、居眠りをして目を開けた
「ファシア」
普段連れ歩かないのだが、今ここならば平和かと自分のサーヴァントを声を掛ける
記憶喪失で新宿島に漂着した時、初めて目に留めたのがこれだった。最初は戻って来ない恋人の名前も思い出せずに、無意識に彼女の名前をつけていた…そんなサーヴァント
――さて、料理は人並みには出来るが、それではコンテストで気に入ってもらうには難しい
…思い出すのは、遠い昔に『料理とデザートは別腹だと思うわ』そう告げた恋人の言葉…
それならと、森に足を
<情報収集>をしつつ、ファシアに『自身が食べたいと思う花や果物』を聞き、仕草からそれらを集めよう
女性の興味を惹くものは、女性に聞くのが一番、と。
水面を渡る一陣の風が、涼気をはらんで湖岸の野にさやさやと吹きつける。名もなき花を無数に飾る緑の中で、ワーズ・ディアハルト(守護者・g02389)はゆっくりと瞳を開けた。頬をくすぐる青草の先が、まだぼんやりと霞んだ視界の中で踊っている。
「……ファシア」
そこにいるのかと呼び掛ければ、小さな手がぺたりと頬に触れた。眩しいほどの陽射しを遮って顔を覗かせたのは、目隠しをした小さな天使だった。戦場を連れ回すのはどうにも気が引けて、普段は滅多に連れ歩かないのだが、この場所ならばそうそう危険もあるまい。
語らぬ天使は『どうしたの』とでも問うように、主の顔を不思議そうに見つめていた。なんでもないよと笑って上体を起こし、ワーズはぐるりと周囲に視線を廻らせる。静かな湖と緑深い森――幻想竜域キングアーサーは湖水地方の片隅に、彼らはいた。風光明媚なところと聞いてはいたが、なるほど評判に違わぬ美しい場所だ。
さて、と立ち上がって服についた草を払い、ワーズは傍らの天使に呼び掛けた。
「行こうか、ファシア」
花嫁への贈り物を探しに。
みなまで言わずとも彼女はすべて理解しているようで、呼ぶ声ににっこりと笑みを返すと、歩き出す青年の後ろをふわふわとついてくる。
(「……あの時は、まだ知らなかったんだよな」)
記憶を失って新宿島の青い岸辺に流れ着いたその時、彼は彼女に出逢った。そしてそれが誰であるのか、何であるのかもよくは分からないまま、後を追ってくる小さな天使に名前をつけた。それが彼女の――かつて喪い、二度とは戻らなかった彼女の名前だということを、忘れたままで。
「しかし――コンテストか。人並みに料理ができるってだけじゃ、気に入ってもらうのは難しそうだが」
どうすればいいと思う、と語り掛けると、天使は小さく首を傾げる。その様子に、ふと思いだした。
――料理とデザートは別腹だと思うわ?
彼女と同じ名前をした人が、いつかそんな風に言っていたことを。
「……結局、女性の興味を惹くものは、女性に聞くのが一番だな」
何が食べたい、と尋ねれば心なしか笑みを深くして、天使は上機嫌に宙を舞う。向かう先には、豊かな緑の森が広がっている。
大成功🔵🔵🔵
効果1【植物活性】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
アドリブ歓迎
風渡り、輝く湖、春の訪れに咲う花
風景に見入る
長閑な場所だな……
こんなに美しい場所で、花嫁が最期の時を過ごす、という皮肉を思わずにはいられない
……洋上の竜の戦いが幻だった気さえする
……何もかも
両手に刻まれた銃把の胼胝に、首を振る
血と油、石炭に硝煙、火薬……
祖国、かつての仲間達、潰えゆくものを想い
画材は鞄の中
今日は木炭さえ握れずに
今はただ
漫ろ歩き、風を感じ、ただ美しい風景を目に焼きつけていよう
……仕事は仕事
食材探しだな
森の名になるくらいだ
今の頃合いなら、野生の苺が摘めるのだろう
草苺の粒を選り、籠に採集
食用になる花を探し、ルバーブやミントに、他の果実もあれば重畳
森の空気を胸に吸って歩こう
「長閑な場所だな……」
風の行き過ぎる度、さざめく湖面が無数の煌めきを返す花咲みの野。薄らと汗ばむような初夏の日差しに脱いだコートを片腕に掛けて、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は足を止める。こんなにも穏やかなこの場所が、竜の花嫁に選ばれた娘にとっては死地であるという皮肉。それこそは、ここが歪められた歴史の一部であることの証なのだろう。しかしその一方で、広がる世界はどこまでも美しく、ここがクロノヴェーダの支配する世界だということをつい忘れてしまいそうになる――けれど。
(「洋上の竜の戦いが、幻だった気さえする。……何もかも」)
けれど、幻はきっとこちらの方。
開き見つめる指の付け根にできた銃把の胼胝(たこ)は、この先も多分消えることはないだろう。そして重ねた戦いの歴史を、見るたび、触れるたび克明に呼び覚ますのだ。血と油、石炭に硝煙、そして火薬の匂いと共に。
ふるふると緩く首を振ると、青空と同じ色の長い髪が春風を泳いだ。
(「――画材は鞄の中だったな」)
だが今日は、多分、木炭さえ握れない。
祖国とかつての仲間達――時の流れに潰えてゆくものを想って漫ろ歩き、風を感じ、ただこの哀しくも美しい竜域の風景を、目に焼きつけていた方がいいだろう。それに一応、画業とは別口の仕事で来ているのだから、そちらを疎かにするわけにもいかない。
(「森の名になるくらいだ。……今の頃合いなら、野生の苺が摘めるのだろうな」)
甘く熟した草苺に、ルバーブやミントなど、森には食用になる野草も多くある。手にした籠がいっぱいになる頃には、瑞々しい森の空気がこの胸に蟠る想いを融かしてくれるかもしれない。そんなほのかな希望を抱いて、青い天使は木洩れ日の森へ分け入っていく。
大成功🔵🔵🔵
効果1【完全視界】LV1が発生!
効果2【フィニッシュ】LV1が発生!
ナタリア・ピネハス
ユリさま(g05341)と
お料理。わたくし、したことがなかったの
毎日違う献立を考えて家族を笑顔にすることが
こんなにも大変なことだったなんて知らなかった
そんな自分の無知を恥じたわ
いっぱい、いっぱい練習したの!
でも、なかなかおいしくつくれなくて
だからね、だから……
ユリさま。わたくしに、ちからをかしてくれる?
あのね。あのね
花嫁さまには故郷を惜しく思えるような
あたたかいものが好まれるんじゃないかしら
野いちごと香草を籠いっぱいに摘みながら
あなただけに聞こえるように、ひみつのさくせんかいぎ!
わたくしね。大ばばさまが、女中たちに内緒で作ってくれた
とびきりのごちそうがあるのよ!
それはね……
ふふふ!
えい、おー!
犬神・百合
ナタリア(g00014)様と
微笑み大きく頷いて
わたくしも思い返せば
本当にすごい事だったんだって思うわ
無知を恥じた。
そう彼女は云うけれどそんな事思わないの
最近覚えたすまーとふぉんに送られてくる
『彼女の頑張り』知っているんですもの
もちろんよナタリア様。
わたくしでよければいくらでも力になるわ
うふふ。素敵!大賛成!
あたたかいお食事で心に温もりを感じていただければ
きっと伝わるわ
良い香りを籠いっぱいに『さくせんかいぎ』に耳を寄せ
まぁ?なにかしら……
『さくせん』の内容は__
まあ……まあ!
それはね
きっと花嫁様もお気に召してくださるわ
うふふ。やる気でいっぱいだわ楽しみもいっぱいよ!
頑張りましょうね
えいえいおー!
「……わたくし、お料理なんてしたことがなかったの」
真珠の白い泡を飾った爪先が、青々とした草叢をかさりと分ける。黒いワンピースの腕に籐編みのバスケットを一つ提げて、ナタリア・ピネハス(Hitbodedut・g00014)は言った。
「毎日違う献立を考えて、家族を笑顔にする……それがこんなにも大変なことだったなんて、知らなかった。わたくし、とっても無知だったのね」
恥じ入るように苦笑する横顔には、いつか彼女のために手を尽くして食事の支度をしてくれた、誰かへの憧憬が覗いている。うんうんと頬に手を添え頷いて、犬神・百合(ラストダンス・g05341)は応じた。
「わたくしも、思い返せば本当にすごいことだったんだって思うわ。でも――知らなかったことを、恥じる必要はないのよ」
だって彼女は、隣を歩く友人が日々重ねる努力を知っている。
覚えたての『すまーとふぉん』に毎日のように届く報せには、その日一日の彼女の頑張りが余すところなく綴られているのだから。
知らなかったことは、これから知って、覚えていけばそれでいい。でしょう、と首を傾げてみれば、ナタリアは蜂蜜に似た琥珀の瞳を廻らせ、少しだけ自信なさそうに『そうかしら』と微笑った。
「いっぱい、いっぱい練習したの。でもなかなかおいしくつくれなくて……だから、ユリさま、わたくしに力をかしてくれる?」
「もちろんよ、ナタリア様。わたくしでよければ、いくらでも」
重ねた掌でそっと細い指先を包めば、潤みがちな双眸がぱあと春色の輝きを帯びる。じゃあ、と声を弾ませて、ナタリアは百合の手をぎゅっと握り返した。
「あのね、あのね。ずっと考えていたのだけど、花嫁さまには故郷を惜しく思えるような、あたたかいものが好まれるんじゃないかしら」
「うふふ、素敵! あたたかいお食事で心に温もりを感じていただければ、わたくし達の気持ちもきっと伝わるわ――あら」
ふと足下へ視線を落とせば、ルージュを引いた百合の唇と同じ、真っ赤な草苺が視界に飛び込んできた。身体を屈め、小さな棘に気を配りながら摘み取ると、甘酸っぱい匂いがほのかに香る。きれいね、と瞳を細めてその場に屈み込み、二人は目についた苺と香草をせっせと摘んでは、バスケットの中に収めていく。
作業の手は止めぬままに声を潜めて、ナタリアは言った。
「ユリさま、わたくしね。大ばばさまが、女中たちに内緒で作ってくれた、とびきりのごちそうがあるのよ」
「まぁ? それって――」
何かしら、とつられて声を小さくする百合の耳元へ、宵色の娘はこしょこしょと何事か囁きかける。聞くに連れ笑みを深くして、百合はその名に違わぬ白い頬をほんのりと染めた。
「まあ――まあ、それならきっと、花嫁様もお気に召してくださるわ!」
「そう? 本当にそう思ってくださる?」
心の底から嬉しそうに笑って、ナタリアは百合の手を引いた。二人だけの秘密の『さくせんかいぎ』はこれでおしまい――後は、実行に移すのみだ。
「頑張りましょうね、ナタリア様。えいえい、おー!」
「おー!」
くすくすと鈴の転がるような声で笑い合いながら、少女達はふわふわのスカートを翻し、まるで一枚の絵画のように木洩れ日の森を抜けてゆく。街へ帰りつくその頃には、腕に提げた小さな籠も春の森の恵みでいっぱいになっていることだろう。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【口福の伝道者】LV1が発生!
【士気高揚】LV1が発生!
効果2【凌駕率アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
朔・璃央
双子の妹のレオ(g01286)と
料理コンテストかぁ…
花嫁向けの料理って何が良いのかな?
へぇ、オレンジの花かぁ
博識なレオから戻ってきた答えに疑う事もなく頷いて
花嫁とオレンジの因果関係かぁ
なんだろうね
うーん…まぁ、食べたら美味しいからかなぁ
それじゃあオレンジを使った料理が良いね
となるとやっぱりお菓子にしようか
この辺りに生えてたりするのかな、オレンジ
じゃあ探しがてら折角だし散歩してまわろうか
思いつくお菓子をあれやこれやと挙げながら
一緒に使えそうな果実や木の実も集めておこうかな
ジュースより紅茶とかの方が馴染みがあるかもね?
あ、小麦粉も探しておこうかな
見つけたオレンジを一口味見
思わぬ酸味に口がキュッと
朔・麗央
双子の兄リオちゃん(g00493)と
料理コンテストは挑戦してみようと思うから
材料を集めなくちゃね!
何か知っているかとリオちゃんに問われて
花嫁といえば、オレンジの花だよねって答えるよ
そう言えばどうしてオレンジの花が花嫁の花なのかな?
兄の頓珍漢な回答にはちょっと渋い顔になっちゃう
理由は今は分かんないけれど、帰ったら調べてみようね!
そんな話をしたら
もう料理の題材はオレンジを使ったものにするしかないよね
脳裏からオレンジが離れなくなっちゃった!
そんな訳で作るものを考えながら
オレンジを集めよう
オレンジジュースもあった方が良いかな
こっちの世界にゼラチンはあるかな?
味見でオレンジを一口
酸味に口がキュッとなるよ
「料理コンテストかぁ……」
木洩れ日の落ちる黒土の道の左右には、深く、それでいて明るい森の風景が続いていた。青葉の天蓋をぐるりと仰いで、朔・璃央(黄鉄の鴉・g00493)は呟くように口を開く。
「花嫁向けの料理って何がいいのかな?」
「うーん、人によるとは思うけど……何がいいんだろうね」
細い人差し指を唇に当てて、朔・麗央(白鉄の鉤・g01286)も視線を泳がせる。これも仕事のうち、とはいえ花嫁の別荘へ招かれる栄誉を得るためのコンテストだ。やるからには全力で取り組みたいところだが、さりとて具体的な案があるわけではない。
思い巡らせながらしばしサクサクと枯れ葉の積もった地面を踏んで、麗央は言った。
「ヨーロッパで花嫁といえば、オレンジの花なんだよね」
「オレンジ?」
「うん。どうしてなのかはよく分からないんだけど……」
花言葉は、『純粋』。そして、『花嫁の喜び』。なぜそうなったのか、由来までは知らないが、西洋では花嫁の髪飾りにオレンジの花を使うのだという。へぇ、と感嘆の声を洩らして、璃央は首を捻った。
「でも、なんでオレンジなんだろう。食べたら美味しいからかなあ」
「…………」
「それにしても、そんなことまで知ってるなんてレオは博識だね」
微笑う表情にはわずかの疑念もなく、曇りもない。花色の双眸を半目にして、麗央がなんとも言えない表情を浮かべていると、璃央はきょとんとして瞳を瞬かせた。
「? どうかした? ……もしかしてお腹空いた?」
「空いてない。大丈夫」
見た目はどこからどう見ても知的で怜悧な美少年のくせ、存外に――妹の麗央にしてみれば、別に意外でもなんでもないのだが――脳筋な兄は、時々こう真面目に頓珍漢なことを言う。帰ったら調べてみようね、と一旦議論を棚上げして、麗央は言った。
「そんな話してたら、オレンジが頭から離れなくなっちゃったなあ」
「じゃあ、オレンジを使った料理がいいね。となるとやっぱりお菓子かな」
オレンジパイにオレンジタルト。パウンドケーキに、ゼリーもいい。こんなこともあろうかととポシェットの中を探って、麗央は紙の小箱を取り出して見せた。
「ゼラチンはないかもと思って、持ってきました!」
「ぬかりないね、流石レオ」
息をするように賛辞を贈って、璃央は森の奥へ目を配る。ところで――この辺りにオレンジは自生しているのだろうか?
木陰に群れる小さな花達を踏まないように気をつけながら、天使と悪魔の兄妹は二人、穏やかな森を漫ろ歩く。野苺を摘み、まだ色の淡いスグリを採って集めながらしばらく行くと、行く手に黄色く丸い実をつけた低木が見えてきた。あれ、と指差す麗央の声に応じて、璃央は素早くその袂へ歩み寄る。
「これ、もしかしてオレンジかな?」
「どうだろ。オレンジっていうには黄色っぽいけど……」
いわゆる普通のオレンジに比べると、その実は小さく、果皮も黄色っぽいが、一応仲間ではありそうだ。試しに一つもぎ取って皮を剥いてみると、柑橘のような爽やかな匂いがふわりと漂った。まずは自分がとひと房、口に含んだ璃央だったが――。
「……どう?」
訊いてみてから、愚問だったかなと麗央は思う。口に入れたものをひと噛みした瞬間、兄の顔が梅干しのようにキュッと窄まったからである。
「酸っぱかったんだね」
「うん――だいぶ酸っぱい」
取り出したハンカチで丁寧に口許を拭い、璃央は言った。それらしきものを見つけたはよいが、この酸味をどう料理に生かすかが課題になりそうだ。
「とりあえずいくつか採って帰ろう。小麦粉とか、他に必要なものも探しておかないといけないし」
「うん! じゃあ、街へ戻って作戦会議だね!」
森の奥で偶然見つけた、ビターオレンジの迷い種。それがどう化けるのかは、神のみぞ知るところである。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【飛翔】LV2が発生!
効果2【ガードアップ】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV2になった!
マティアス・シュトローマー
ラト(g00020)と
命を捧げなくてもベラを必要としている人はすぐ近くにいるのに。それに彼女が少しだけ大切な人に重なって見えて……助けたいな
料理コンテストならもう優勝したも同然!こっちにはラトがいるからね
草苺も良いけど綺麗な花もたくさん
料理に使える?なんて聞きながら集めていく
ふと目に止まった青いビオラを悪戯と称してラトの髪に
可愛い、似合う!茶化して言ってみたけどまあ本心
湖畔に着いたら思わず寝転んで大きく伸びを
こんな風にゆっくりするのは久しぶり
……へ、
思わぬ提案にはぐるぐる思考を巡らせて
お願いしたはいいけど、この状況で眠るなんて無理!
(寝たふりがバレませんように)
ラト・ラ
マティアス(g00097)と
彼女の信念が心からのものなのか…
今の段階ではわからないけれど
そういうものを変えるのは難しい
だけど、想ってくれる人もいるのだし
何とか思い留まってくれれば
料理コンテスト…腕の見せ所ね
優秀な弟子も一緒です
ベリーの中には葉に毒を持つ種があるから気を付けてね
持ち得る知識を駆使して素材集め
不意に髪へ飾られたビオラには、ぱたりと瞬き
びっくりした、と照れたようにはにかむ
湖畔に着いたらひと休み
そよぐ草原の中に腰を下ろし
眠たいなら膝枕はいかが?
悪戯なトーンを含む声
膝元をぽんと柔くたたいて招く
寝たふりには気付かずに
風が揺らす鮮やかな橙色を
愛おしげに眺めてにこにこと微笑んでいたとか
「料理コンテストならもう優勝したも同然だね!」
獣道を意気揚々と歩きながら、マティアス・シュトローマー(ザ・フール・g00097)は来た道を振り返る。少し遅れて歩くラト・ラ(*☽・g00020)は草の茂みを掻き分けながら首を傾げ、どことなく得意げな少年の顔を覗き込んだ。
「どうして?」
「だって、こっちにはラトがいるからね。料理の腕は俺のお墨付き」
でしょ、と笑う少年の、無根拠な自信と全幅の信頼が眩しい。くすりと思わず吹き出して、ラトは言った。
「そう言われたら、腕の見せどころね。優秀な弟子も一緒だし」
「それって俺のこと?」
「ええ、勿論。だから、しっかり手を動かして頂戴ね? あ――葉に毒を持っているものもあるから、気をつけて」
すいと指差した白い腕の下、木陰に群れる草の茂みには、赤や紫の宝石のようなベリー達が顔を覗かせていた。分かってるよと心なしか唇を尖らせながら、マティアスは草の茂みに手を伸ばす。
黙々と手を動かせば、鳥と風の鳴く声の他に何も聞こえない森はどこまでも穏やかだった。この地に眠る竜の花嫁も、最期はきっとこんな静寂を聞くのだろう。真っ赤に熟した草苺をぷちんと一つ摘み取れば、木洩れ日を照り返す艶やかな実の表面に、顔のない花嫁の幻影を見たような気がした。
「命なんか捧げなくたって、必要としている人はすぐ近くにいるんだろうに――なんで、それが分からないんだろうな」
「どうなのかしらね。彼女の信念が心からのものなのかどうか、今の段階ではわからないけれど……」
呟く声にやるせなさを滲ませる少年へ、ラトは慣れた仕種でベリーを摘みながら応じる。
「ただ、そういうものを変えるのはとても難しい。なんとか思い留まってくれれば、いいわね」
「…………」
ぷちり、ぷち。白い指先に摘まれ途切れる、か細い茎の微かな音が妙に耳につく。それきり口を噤んだ竜翼の背を見つめて、マティアスは少しだけ複雑そうに眉を寄せた。
(「……そういうとこなんだよな」)
助けたい、と思うのは、多分単なる同情や正義感などではなくて――自分を顧みないその姿勢が、どこか目の前の彼女に似ているから。
伸ばした手の先にふと、一輪の青いビオラを見つけて、マティアスは女を振り返った。手際のよい彼女は辺りのベリーを摘み取って、どんどん木立の奥へと進んでいく。
「ねえ、ラト。この辺の花も持って帰ったら、料理に使える?」
集中しているのか、それとも木々の葉擦れに掻き消されたのか、返事はない。ぷう、と頬を膨らせてビオラの一輪を摘み取ると、マティアスは小走りにラトを追いかける。そして――。
「?」
風の撫でるような感覚を覚えて、ラトは長い三つ編みを手繰った。見ればアッシュブロンドの金髪にいつの間にか、ビオラの鮮やかな青が飾られている。面食らったように瞳を瞬かせていると、からかうような少年の声が響いた。
「思った通り! 似合うね、ラト」
「……やったわね」
びっくりした、とはにかんで、ラトは髪に挿されたビオラはそのまま立ち上がる。長いスカートの裾を翻してすたすたと先を往く姿に、機嫌を損ねたかと一瞬、心臓が跳ねたマティアスであったが――。
「そういう悪戯っ子には、後で膝枕でもしてあげましょうか」
「……膝枕?」
へ、と惚けた声を上げて、今度はマティアスが面食らう番だった。行く路は次第に開け、木立の向こうには水の煌きが覗いていた。湖畔の陽だまりに寝転んで、のんびり昼寝――というのは魅力的な提案に違いないけれど。
(「その状況で眠るなんて、無理じゃね!?」)
青くなったり赤くなったり、百面相の少年を見つめて愛おしげに微笑い、ラトは言った。
「さあ、行きましょう」
風そよぐ草原はきっと、森歩きに疲れた身体を癒してくれるはず。まったく悪戯好きはどちらなのだか――羽のように軽やかに歩みゆく竜の後姿を追いながら、マティアスはがしがしと蜜柑色の頭を掻くのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【強運の加護】LV1が発生!
【悲劇感知】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!
オズワルド・ヴァレンティ
竜の花嫁か
この世界に於いてはどの地域でも
存在を尊ばれているようだな
……感傷はさて置いて
先ずは現地調査にあたる事としよう
豊かな水と緑が広がる景色
初めて足を運んだ
知らない土地ではあるが
懐かしむ気持ちも僅かにはある
嘗ては森で野草の採集をしたことも
共に湖で魚釣りをする相手が居たことも
今は独りで歩む小道の途中で
……失われていい命なんて
ひとりもいないだろうにな
置き去りにして過ぎゆく
爛漫の春が少しだけ、眩しく想える
アドリブ歓迎
「……竜の花嫁か」
青々とした草原に銀色の波を立て、風が大地を渡っていく。その只中で遥かな湖を望み、オズワルド・ヴァレンティ(砂塵の・g06743)は足を止めた。
原風景、とでも言うべきだろうか? 豊かな水と緑が広がる景色は初めて足を運んだ土地であるにもかかわらず、竜人の胸の片隅に郷愁にも似た想いを呼び覚ます。昨日と同じ今日が、今日と同じ明日が、連綿と繰り返されていくだけの平和で凡庸な世界――こんな穏やかな景色の中で、竜の花嫁達は生き、そして若くして死んでいくのだ。
(「この世界に於いては、どの地域でも存在を尊ばれているようだな」)
儀式の仔細も含めて、竜の花嫁の実態は依然として不明だ。しかしその辺りの事情を探るためにも、まずはやるべきことをやらねばなるまい。じわじわと滲む感傷には一旦蓋をして、オズワルドは草の小道を歩き出す。
(「――いつか、こんな風に歩いたことがあったかな」)
木の実や野草を探して、深い森を歩いた。
そして湖で魚を釣り、茜差す空の下で家路を急いだ。
ただ、あの時と今で違うのは――隣を歩く誰かが、もうどこにもいないということだ。
さくりと落ち葉の地面を踏む音は、やけに大きく耳についた。置き去りにされたのは爛漫の春か――それとも、彼の方なのか。
一つ、小さな溜息をついて立ち止まり、竜は光溢れる草原を振り返る。
(「……失われていい命なんて、ひとりもいないだろうにな」)
少しだけ眩げに目を細めて、青年は独り、木立の中へと姿を消した。揺れる長い竜の尾はほんの少し寂しげに、落ちる陽射しを照り返している。
大成功🔵🔵🔵
効果1【土壌改良】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】がLV2になった!
四葩・ショウ
【猫星】
はーい、わかりました!
きりりとやる気一杯に
店長さん(※黑猫さん)、
この籠くらいあれば足りますか?
しっかり"観察"して草苺を採取
陽当たりの良い所の方が甘いのかな?
……これ、すっごくつやつやしてる
なんだか宝石みたい!
ルルさんの苺、大きくて美味しそうです!
荷物持ちも有難うございます
……わ、ノスリさんすごいです!
飾りの花、か
草苺の赤に合わせるなら
緑の葉と、白い野花はどうだろ……?
星に似た形のものがあればいいな
わたしたちみたいに、集う小花なら尚更
これだ、と思うものを摘み取って
萱さんが見立てた場所なら
きっとすてきですね!
わたしも摘みたてをひとつ、味見して
どんな料理になるんだろう
とっても楽しみです!
ノスリ・アスターゼイン
【猫星】
はーい、とショウに倣って良い返事
黑猫サンの説明を聞きつつ
周囲の景観に魅入る
鳥の羽搏きに視線を上げれば
紅い実を咥えているのが見えたから
飛び立った方へ探しに行ってみようか
のんびり散策のつもりでいたものの
ルルが見つけた苺は宝石のようだし
かき分けた叢の中に蜥蜴や蛙、小動物を見つけ
つい追い掛けてみたりと
わくわく冒険気分
でも
ほら――、
草苺の穴場や
秋に落ちた胡桃などのナッツ類も発見!
鳥や動物達の餌場でもあるのだろう
お裾分けしてね、と笑んで告げる
ぴょんこ
足元で跳ねる蛙が可愛い
シバネが持つ籠に苺を放り込み
一杯になったら休憩タイム
味見用にもう一籠欲しいなぁ
だってこんなに美味いのだもの
そっと手を伸ばす二粒目
狗尾・黑猫
【猫星】
この度は食材集めのバイトにお集まりいただき、ありがとうございます
とは言いましたが、食材集めはついで位にして、各々お好きなようにお過ごしいただければと
料理コンテストではデザートを作りたいと思っているので、皆様は散策がてら草苺や果物を集めてくださいますか
ルル様は甘い果実を見分けてくださりそうですし、ノスリ様も良い目を持っておられそうですから、期待しておりますよ
草苺は小さいですから、たくさんあると嬉しいですが…どうぞ程々に
ああ、ショウ様、飾り付け用の花などあっても良いかも知れませんね
良い景色でも見つけましたか、萱様
ある程度集まったら、そこで休憩して少しだけ味見するのも良いですねえ
標葉・萱
【猫星】
狗尾さんのお手伝いなら何時でも、喜んで
……貴方の作る祝いの品を、知りたくて
ルルさんは草苺を探すのがお得意?
なら目星をお伺いしてから辿ろうか
もしくは、そう、荷物持ちの手は如何
四葩さんの手にした花は一緒にしては
潰れてしまいそうだから
空も自然も、絵本のように広いこと
小鳥の分を残しても十二分にありそうで
ふと手伸べる先の木の実は――食べられるやら
成果が並べば豪勢で
飾る先も気になるところ
一仕事の後に休憩するならばぜひ
独り占めするには勿体ない場所へとお誘いしましょう
けれど、確かにノスリさんが召し上がる分も用意しないと
それぞれのびる指の先は微笑ましくも
あっという間にからっぽになってしまいそう
ルル・ムル
【猫星】
料理コンテストですね。
ルルもおやくにたてるよう、がんばりますよ。
ところでそざいを集めるのであれば草苺をたくさんとってきてもよいですか?
ルルは草苺のかわいらしい色とあまいかおりがとてもきになったのです。
ぷちぷちとていねいに摘んでゆきますよ。
草苺をつかったりょうりとはどのようなものがあるのでしょう。
目星はまかせてください。ルルの目にくるいはありません。
みてください。
こちらの苺はあちらのいちごよりもおおきいですね。
とても赤くて美味しそうです。
みなさまの集めた素材も大変おいしそうです。
ナッツにおはなに、あとはコンテストにむけて頑張りましょう。
味見をしてもよいですか。では
碧く煌めく湖を遠目に望む森の裾。木立の中へ吸い込まれていく土の小道の入り口に、数人のディアボロス達が輪を作っていた。ぺこりと恭しく腰を折って、狗尾・黑猫(シルバーナイフ・g00645)は言った。
「この度は食材集めのバイトにお集まりいただき、ありがとうございます」
共にこの地を訪れたのはいずれも、黑猫が新宿島の片隅で営む小さなカフェの常連客だ。その彼らに『バイト』を頼んだのには理由がある――言うまでもなく、竜の花嫁にお目見えするための料理コンテストがそれである。
さて、と四人の仲間達を見渡して、黑猫は言った。
「今回はデザートを作りたいと思っているので、皆様は散策がてら草苺や果物を集めてくださいますか」
「はーい」
「わかりました!」
しゅば、と行儀よく右手を挙げて、ノスリ・アスターゼイン(共喰い・g01118)と四葩・ショウ(Leaden heart・g00878)が声を重ねる。頼もしい返事に宜しくお願いしますと笑って、黑猫は続けた。
「とはいえ、食材集めはついでくらいで結構ですよ。折角の陽気ですし、各々お好きなようにお過ごしいただければと……」
「いえ、狗尾さんのお手伝いならいつでも、喜んで」
そう言って、標葉・萱(儘言・g01730)は微笑む。平素世話になっている店長の頼みとあらば、というのも素直な気持ちだが、彼の作る『祝いの品』がどんな形をしているのかは、純粋に興味深い。
やる気十分、バスケットボール大の編み籠を胸に抱えて、ショウはきりりと表情を引き締める。
「店長さん、苺はこの籠いっぱいあれば足りますか?」
「草苺は小さいですから、たくさんあると嬉しいですが……」
「そういうことなら、ルルもおやくにたてるよう、がんばりますよ」
むん、と花色の両手に力を込めて、ルル・ムル(花頭蓋・g02918)が応じた。紅く艶めく草苺の味は、想像するだけで胸をときめかせる。すん、と鼻先を鳴らして少女は続けた。
「くさいちご。どんな色と、かおりをしているのでしょうか……」
サァと緑の梢を揺らして、一陣の風が吹き抜ける。葉擦れに混じる鳥の羽音にノスリが視線を上げると、紅い実を咥えた小鳥が何処かへと飛び立っていくのが見えた。
「あの辺、何かありそうだね」
行ってみようかと森の一角を指さして、猛禽は悪戯っぽく口角を上げた。動物達は物知りだ――彼らの寄るところ、発つところには、きっと何かがあるに決まっている。しゅっぱつ、と片手を突き上げるルルを先頭にして、五人のディアボロス達は光差す木立へ歩き出した。
「のんびり散策もいいけれど、わくわく冒険気分もたまには悪くないね」
青葉の天蓋をぐるりと仰ぎ見て、ノスリが言った。改竄世界史の中ではあるが、少なくとも今ここには、人々を脅かすクロノヴェーダの影はない。後ろに続く仲間達を振り返って歩きながら、青年は続けた。
「だって、宝探しみたいじゃない?」
草陰から這い出したトカゲを横目に、足元で跳ねる可愛いカエルを追い掛けて往く森の宝探し。動物達が多いということは、彼らの食料もまた多いということで――つまりこの辺りを探していれば、きっとお目当ての食材に巡り合えるはず。
「ほら、やっぱり」
見て、と指差すノスリの手の先には、草苺の茂みがあった。それを狙っているのだろうか、頭上に差し掛かる木々の梢をよくよく見てみると、リスや小鳥などの動物達がこそこそとこちらを窺っているのが垣間見える。
さすがの嗅覚と感心しきりの仲間達へ悪戯っぽく片目を瞑ってみせ、ノスリは木の上の動物達に向かって呼び掛けた。
「悪いけど、ちょっとだけお裾分けしてね」
彼らの上前をはねるのは少々申しわけない気もしたが、いざ周囲を見渡してみると、そんな心配は無用だとすぐに分かった。茂みには草苺の他にも、食べられそうなベリー類が数えきれないほど実っており、またその周りには秋に落ちた胡桃などもあちらこちらに転がっている。
「これは……食べられるのですかね?」
「陽当たりの良いところに生ってる方が甘いのかな?」
口々に言って首を傾げつつ、萱とショウは草叢を覗き込む。若草色の瑞々しい葉の間に顔を覗かせる草苺はどれも艶々として、鮮やかな赤が美しい。そこへひょっこりと顔を出して、ルルが言った。
「こちらのいちごは、あちらのいちごよりもおおきいですね。とても赤くて美味しそうです」
つまり、正解。胸を張るルルの掌に載った草苺は大粒できらきらと耀き、まるで本物の宝石のようだ。普段は大人びて見える双眸を今日ばかりは年相応に輝かせて、ショウは言った。
「ルルさんの苺、大きくて美味しそうですごいです!」
「ルルさんは、草苺を探すのがお得意?」
「まかせてください。ルルの目にくるいはありません」
尋ねる萱に胸を張って、ルルは草叢にしゃがみ込むと、紅く熟した草苺に手を伸ばす。ぷちぷちと手際よく、けれどもちゃんと丁寧に摘み取っていく後姿を見て、ショウはきょろきょろと当たりを見回した。葉陰には名もなき野草が色とりどりの花を咲かせている。
「ああ――飾りつけ用の花などがあっても良いかもしれませんね」
花を見る少女の意図を察したのか、呟くように黑猫が言った。そういうことならと頷いて、ショウは花群に歩み寄る。春の森というのは実に賑やかで、花達は知っているものもそうでないものも、競い合うように咲き誇っている。
「飾りの花、か……」
草苺の赤に合わせるなら、緑の葉と白い野花はどうだろう。何かないかと視線を廻らせてみて、ふと目に留まったのは星の形をした白い花だった。
(「――なんだか、わたしたちみたい」)
群れ咲く小花を一目で気に入って、ショウは無意識に口角を上げた。花を散らさないよう丁寧に摘み取っていくと、背後で萱の呼ぶ声がする。
「四葩さん、こちらへどうぞ。他のものと一緒にしては、潰れてしまいそうだから」
柔らかに微笑む青年の腕の籠は、集めた木の実やベリーで既に大層賑わっていた。受け取った白い花を籠の中にそっと横たえて、萱は青い木立の先を見やる。その視線の先を追って、黑猫もまた紅い瞳を和らげた。
「良い景色でも見つけましたか」
「ええ。空も自然も、絵本のように広いこと……」
森は緑深く豊かで、方々に実る木の実は小鳥の食べる分を残しても多過ぎる。本当に、ここが改竄世界史の中でなかったならどれほど良かったか分からないが――今はそれを嘆いても、詮ないことだ。
「では、そろそろ参りましょうか」
すっかり重たくなった籠を抱えた萱の先導で、一行は来た道を引き返し、陽当たりのよい丘へと戻る。宝石箱にも似た編み籠の中身をひとしきり覗き込んで、ルルはくい、と黑猫の袖を引いた。
「いちごも、きのみも、大変おいしそうです。味見をしてもよいですか?」
「構いませんよ。ここで少し休憩にしましょうか」
ね、と呼び掛ける黑猫の声に異を唱える者は勿論いない。では、と早速、摘みたての一粒を摘まみ上げ、ルルは唇に押し込んだ。よく熟れた草苺は甘く、口の中でぷちぷちと弾けて、爽やかな香を広げていく。
うんうんと満足げに頷いて、ノスリもまた、二粒目の草苺に手を伸ばした。
「味見用にもう一籠欲しいなぁ」
「この調子では、あっという間にからっぽになってしまいそうですね」
そう言って、萱は困ったように笑った。けれど口の周りを赤くして、子どものようにベリーを摘まむ仲間達の姿が今はただただ微笑ましい。
こくんと喉を鳴らして何粒目かの草苺を飲み込み、ルルははてと首を傾げた。
「ところで――『くさいちご』をつかったりょうりとは、どのようなものがあるのでしょう?」
ちらりと視線を向けた先では、黑猫が『味見』に興じる面々をにこにこと見つめていた。はてさて悪魔憑きの店長は、どんな料理を作るつもりなのだろうか。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【動物の友】LV1が発生!
【土壌改良】がLV2になった!
【使い魔使役】LV1が発生!
【建物復元】LV1が発生!
【落下耐性】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【ロストエナジー】がLV3になった!
【能力値アップ】LV2が発生!
【ダメージアップ】がLV3になった!
シル・ウィンディア
遊里さん(g00512)と一緒に
お料理の材料かぁ…
まぁ、なんとかなるかな?
でも…
不謹慎だけど、ちょっとしたデートみたいでうれしいなっ♪
籠を手に、わたしは森に野草や山菜、苺を求めていくね。
ん-、これはちがう、これはいけるかな?
気になったものはちょこちょこ入れて、後で調べようっと
あ、この苺、おいしそー。小さいから、飾りとかにも使えそうだね。
一通り集めたら、遊里さんの元に戻るよ
ただいまー。みてみて、結構一杯取れたよー
ここから選別だけどね
ん?左手?
言われたままに左手を出してみるけど
わぁ、綺麗なお花の指輪
手作りっていうのが嬉しいの
約束…
…それじゃ、一つ約束だよ
わたしを貰ってね?
そして、幸せにしてねっ♪
飛鳥・遊里
シル・ウィンディア(g01415)と共に
というわけで、俺達は新鮮な食材を求めて湖畔に来たわけだ
俺は新鮮な魚を手に入れるために釣りをしようか。実は釣りはしたことないんだけど、まあなんとかなるだろ
…釣竿を竿掛けに立てて待ってるだけってのも退屈だな…
ん…これ、シロツメクサか?
…そうだ
ああ、シル、成果はどんな感じだ?
なあ、ちょっとこっち来てくれるか?でさ、左手ちょっと出してくれる?
…これ、シロツメクサで指輪作ってみた。ちょっと不格好だけどな
ええと…左手の薬指…でいいかな
シロツメクサの花言葉は、【幸運】、【約束】、【私を想って】…らしい
はは、我ながら似合わないことしたかな?
湖畔のチャペル…って感じかな
春の陽射しに煌くような木立の中を、一陣の青い風が吹き抜ける。小刻みに息を弾ませながら、シル・ウィンディア(虹色の精霊術士・g01415)は駆けていた。深くも明るい森の中を散策すること小一時間、集めた野草や山菜、野苺を一杯に詰めたバスケットを腕に提げ、目指すのは碧い湖の畔だ。木々の切れ間を目掛けて走るスピードを一段上げると、身体はあっという間に緑の天蓋を抜け、シロツメクサの群れ咲くなだらかな下り坂へと飛び出していた。
「遊里さーん! みてみてー!」
「うん? ああ――お帰り、シル」
目当ての人物は、水際にほど近い岩の上で湖面に釣り糸を垂れていた。駆け下る勢いに任せて飛びついてきそうな少女の姿に笑って、飛鳥・遊里(リサイクラー・g00512)は釣竿を傍らの竿掛けに戻す。その傍らに腰を下ろすや『ただいま』と春爛漫の笑顔を見せて、シルは野草やベリーの入ったバスケットを差し出した。
「ほら、結構いっぱい採れたよ!」
「へえ、凄いな。これ、全部食べられるのか?」
「ううん、これから選別。後で調べようと思って、気になったものは取ってきちゃった。ほら、この苺おいしそうでしょ?」
野草の採取も魚釣りもそれほど経験に差はない二人だが、だからといってお互いに尻込みするような性分ではない。やる前からあれこれ考え悩むよりも、トライ&エラーでぶつかっていけば大体のことはなんとかなるものだ。そして実際のところ、二人はそれで上手くやっている。
えへへ、とはにかむように笑って、シルはバスケットを抱き締めた。
「どうした?」
「ううん、なんでもないっ」
振り返れば、このところは激しい戦いの連続だった。勿論、ここへ来たのも任務の内ではあるけれども、こんな風にゆったりと過ごせるのは久しぶりだ。だから――遊びに来たのではないと分かってはいても、つい考えてしまうのだ。
(「ちょっとしたデートみたいで、うれしいなっ♪」)
ふんふんと鼻歌交じりに色の違うベリーを分けていくシルを、遊里は微笑ましげに見つめていた。そして思い出したように洋服のポケットを探ると、白く小さなものを掌に載せる。
「なあ、シル。左手ちょっと出してくれる?」
「ん? 左手?」
きょとんと瞳を瞬かせるや野苺を選る手を止め、シルは言われるがままに左手を差し出した。微笑みと共にその白い指先を取って、遊里はシロツメクサで編んだ指環を薬指に添える。
「……遊里さん。これ――」
「あー……ちょっと不格好だけどな」
ただ当たりを待つだけなのも退屈だったから、と、照れ隠しに笑って、青年は微かに染めた頬を掻いた。不格好、と言いつつもそこは流石の手際の良さで、小さな白い花を飾った緑の環はシルの指にぴったりと合った。
「シロツメクサの花言葉は、『幸運』、『約束』、それから『私を想って』なんていうのもあるらしいぞ」
「幸運……約束……」
柄じゃないかなと苦笑する恋人を、シルは至って真剣に見つめていた。太陽に翳す左手に咲いた花は真珠とも宝石とも違うけれど、他のどんなプレゼントよりも胸を温めてくれる。
「……それじゃ、一つ約束だよ」
「え?」
きょとんとして瞳を瞬かせる青年へ、指環をはめた左手を突きつけて、青い少女は悪戯っぽく――けれど夢見るような声色で、言った。
「わたしを貰って、幸せにしてね?」
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【エアライド】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV3になった!
エンジュ・アルティオ
同行:クー(g05079)
水は澄んで緑さやめく湖水地方、麗しきかな癒しの地
待った、何してる
いきなり入水しようとする古代人は襟首掴んで止め
止めたと思ったらどっか行ったよ
子供か?
ははぁ、羊ね
白服顔黒でお仲間っぽい
なだらかな緑の上でのんびり草食む姿は
穏やかな地方によく似合ってる
見て好し、編んでよし、食べて旨しの三ツ星
クセはあるけど中々いけるよ
まァ一人暮らし長いから最低限はね
…クーちゃん僕のこと相当駄目な感じに見てんのな?
おっと本人(?)の前で旨いなんて
地面掻いてるけど怒ったかな、まさか
頭こっちに向けて、おい
逃げるぞクー
いや見捨てるのかよ!
命からがら湖の畔
…本人に交渉はよくないな
お裾分けを狙ってみよう
クーガ・ゾハル
エン/g05162 と
すごいぞ
島よりもたくさんの木、足もとがふかふかする
それに、カガミみたいな水が、いっぱいだ
手でサカナとれそうだ――ダメなのか
…!あ、あれ
エジプトでも、そっくりなやつ見たことあるぞ
すごくふかふかの毛と、うねったツノ
カオがくろくて、おもしろい
うまいのか、おれの口には、入ったことないが
エン、うまいもの作れるのか
…おまえ、ほんとはすごかったんだな…
ん、そうだった
おこると、けっこうキョーボーなケモノだったな
とくいワザは、たいあたりだ
ええー…
おれは、何もしてないから
うまそうな実、とってくる
いってらっしゃい、がんばれエン
タイヘンだよな、あいつ
この実、うまいかな
メー、しかきこえてこないけど
絹糸の滑るようなそよ風の中、澄み渡る湖面は鏡のように新緑の木々を映し出す。聞きしに勝る湖水地方の絶景を岸辺より見渡して、エンジュ・アルティオ(イロナシ・g05162)は白過ぎる額に掌を翳した。四月も既に半ばを過ぎた頃、とはいえ晩春の陽射しは思いの外に強く、眩しいくらいである。
「いやあ実に麗しいね。これぞ正に癒しの地……って、ちょっと待った」
黒褐色の三つ編みを引いた後姿が、淀みない足取りで視界の端を抜けていく。そのままざぶざぶと水辺に踏み込もうとするクーガ・ゾハル(墓守・g05079)襟首を反射的にとっ捕まえて、エンジュは訝るように言った。
「いや、何してんの?」
「? 手でサカナとれそうだから……ダメなのか?」
駄目とかそういう問題じゃない――揃えた二本指で眉間の皴を揉み、盛大な溜息と共にエンジュは言った。
「湖は不用意に入ると危ないんだよ。大体魚だって逃げるだろ。いきなり入水とかこれだから古代人は……って聞けよ」
子どもか、と咎める声が聞こえているのかいないのか、クーガはふらふらと興味の赴くまま、鏡のような湖面を覗き込んでは手を突っ込み、思い立ったように突然その場にしゃがみ込んでは草の絨毯を意味もなくわしわしと掻き回す。
「……すごいな」
彼が生まれた砂の国とも、新宿島とも違う緑と水の世界は、朴訥な青年を瞬く間に魅了していた。琥珀の片目をきらりと光らせて、クーガは次なる出逢いを求め立ち上がる。そして広々とした丘の上に群れる何かを見つけ、ぱちりと瞬きした。
「……あれ」
「勝手にどっか行くなよ」
「エジプトでも、そっくりなやつ見たことあるぞ」
「ねえ聞いてる?」
立ち止まった青年の隣へずかずかと大股に歩み寄り、エンジュは口を尖らせる。けれどもすぐに彼が何を見ているのかに気づいて、ははぁ、と唸った。
「羊ね」
巻いた角にふかふかの毛が特徴的な、丸々とした生き物。なだらかな丘の上では何十頭もの羊達が、安閑と草を食んでいた。白い体毛に反して黒い膚は、どことなく目の前の古代人に似ていなくもない。お仲間っぽい、と冗談めかせば、意味が分かっていないらしいクーガはただ首を傾げるばかりだけれど。
「クセはあるけどなかなか旨いんだよね」
「え、あれ、うまいのか?」
さらりと応じるエンジュを、クーガはまじまじと――というよりも、不思議そうに見つめていた。段々と居心地悪くなって、エンジュは唇をへの字にする。
「……何か言いたいことがあるなら言えば」
「おまえ、ほんとはすごかったんだな……」
「クーちゃん、僕のこと相当駄目な感じに見てんのな?」
一人暮らしでも最低限の自炊くらいするよ、と拗ねたように口にしてみるが、その頃にはもう、クーガの興味はそこにない。あれ、と羊の一頭を指さして、青年は言った。
「なにしてるんだろう」
ひょっとして、旨いとか旨くないとか言っていたのが伝わってしまったのだろうか。いやまさか、とは思いつつも、何かしら機嫌を損ねたことには違いないらしい。ガリガリと前足で土を蹴ったかと思うと、一頭の羊が角を突き出し、こちらに向かって走り出した。
「そうか。おこると、けっこうキョーボーなケモノだったな」
「言ってる場合か!?」
普段は大人しい草食獣とはいえ、あの勢いで体当たりは結構痛い。逃げるぞ、とエンジュが手を引くと、しかし何が不満なのだか、クーガはえぇと眉根を寄せた。
「おれは、何もしてないから。うまそうな実、とってくる」
「いや、僕も何もしてないんだけど!?」
見捨てるのかよ、と恨めしげに叫ぶその手をするりと抜け出して、クーガは飄々と森を目指す。めえめえという羊達の合唱と混じる悲鳴の響く草原は、実に長閑である。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【飛翔】がLV3になった!
【託されし願い】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV5になった!
鬼歯・骰
【KB】
誰かのために命を投げ出すってなら
俺も分からなくはねぇんだが
本心がどうなのか、周りがどう思ってるのか
きっちり話し合ってからのが良いようには思う
死ぬのは一度しか無理なんだから
…別に良いけど材料調達は手伝えよ
ほらと釣り竿渡し、湖畔でのんびり釣りといこう
しかし馬鹿みたいに長閑だなと欠伸混じりに呟いて
魚が釣れるのをじっと待つ
ツリガネは釣りしたことあんの?
俺あんまりした事ねぇんだよな
近くを泳ぐ魚影を見ていれば
潜って捕まえたほうが早そうにも思える
…アンタは顔面いっつも緩み過ぎじゃねぇの
あ? うわ
糸が引かれれば慌てて釣り竿あげて
美味そうな魚が釣れてりゃいいんだが
ってちゃんと釣りをしろ負けず嫌い!
鐘堂・棕櫚
【KB】
自分の死すら厭わなくなるのですから、信仰って怖いですよね
俺も大事な子の為なら死ねますし、幸せの形は人それぞれですが
クロノヴェータが関わってるなら妨害一択
花嫁さんには美味しい料理で里心を付けて貰いましょう
調理のメインは骰さんに頑張ってもらいますね
俺はアシスタントです
釣り、見たことはあっても俺も経験はあんまりないんですよねえ
隣に並んで大人しく湖面に釣糸垂らしますが
浮きは見事にぴくりともしないですね
まあ、復讐者やってると精神逼迫しがちですし
しっかり緩めて耐用年数増やしときましょうね
掛け値なしに綺麗な景色の中でなら
例え釣果が芳しくなくても楽しく…あ、骰さん釣れてる
ちょっと網で直接魚掬ってきます
「自分の死すら厭わなくなるのですから、信仰って怖いですよね」
湖面に突き出した桟橋に足を投げ出して、鐘堂・棕櫚(七十五日後・g00541)はぽつりと言った。落とした釣り糸の先、丸い浮きの周りには穏やかな波紋が同心円状に広がっている。
「まあ、俺も大事な子のためなら死ねますし、幸せの形は人それぞれですけど」
「そうだな……誰かのために命を投げ出すってんなら、俺も分からなくはねぇんだが」
歯切れ悪く応じて、鬼歯・骰(狂乱索餌・g00299)は眉間の皺を深くした。他者の文化や信仰を否定しよう、という気は更々ない――だがそこにクロノヴェーダの影があるならば、話は別だ。彼らの成すことは例外なく、関わった人々を不幸にする。
つまり今回は妨害一択ですね、とこともなげに笑って、棕櫚は言った。
「花嫁さんには美味しい料理で里心を付けてもらいましょう」
「だな。……死ぬにしたって、その前に本音で話し合った方がいい」
幸いにも、話し合う時間は残っているのだ。ならば花嫁自身、そして周囲の人間のためにも、考えはすべて吐き出してぶつけ合っておくに越したことはない。人間、死ねるのは後にも先にも一度きりなのだから。
難しい顔で黙り込んだ悪友の表情を横目に窺って、それはそれとして、と棕櫚は一段、声のトーンを上げた。
「料理コンテスト、どんな風になるのか楽しみですね。まあ、作るのはほとんど骰さんですけど」
「任されんのは別にいいが、材料調達は手伝えよ」
「手伝ってるじゃないですか、今まさに」
しかしふよふよと漂うばかりの浮きは、先程からまるで動く気配がない。降る陽射しは初夏特有の煌めきに溢れて温かく、穏やかな風と鳥の鳴き声と相まって眠気を誘う。
くぁ、と大きく欠伸をして、骰は言った。
「しかし……馬鹿みたいに長閑だな」
「たまにはいいんじゃないですか? 復讐者やってると精神逼迫しがちですし、しっかり緩めて耐用年数増やしときましょう」
「……アンタは顔面いっつも緩み過ぎじゃねぇの」
「いやあ、締め過ぎても元に戻らなくなっちゃいますからね」
そう言って、棕櫚はあまりに動かない浮きを一旦引き上げると、餌を付け替え、先程よりも遠くの湖面へ投げ直す。その仕種は一見すると手慣れて見えて、骰は首を捻った。
「アンタは釣りしたことあんの?」
「うーん、見たことはあっても経験はあんまりないんですよねえ」
「そうか。俺もだな」
底の砂地まで見通せそうな澄んだ湖面に釣り糸を垂らし、後はじっと待つだけ。時折すいすいと魚影が通り過ぎていくのを見ていると、潜って捕まえた方が早いようにさえ思える。
欠伸が伝染った口許を大きな手で覆って、棕櫚は言った。
「でもまあ、いいんじゃないですか? 掛け値なしに綺麗な景色の中でなら、例え釣果が芳しくなくても、楽しく和やかに――」
「あ? ……うわ!?」
珍しく上ずった骰の声が、続く言葉を遮った。最初は気のせいかと思う程度の反応であったのが、バシャバシャと激しい水音を伴い明確な引きに変わる。意外なほどの力強さで枝ごと持っていかれそうになり、骰は慌てて釣竿を握り直した。そのまま重心を背中側へ傾けて、一、二の、三――勢いをつけて引き上げると、盛大な水飛沫と共に何かが桟橋の上に落ちてくる。見ればなかなかに立派な魚が一匹、濡れた踏み板の上でびちびちと跳ねていた。
「へえ、こんな竿でも釣れるもんなんだな」
「…………」
予め水を汲んでおいた木製のバケツに魚を放り込み、骰はまじまじと覗き込む。心なしか満足げなその横顔を、一歩離れて眺めていた棕櫚であったが――。
「ん? どこ行くんだツリガネ」
「ちょっと網で直接魚掬ってきます」
「!? いや、ちゃんと釣れよ!」
まったくいい年をして負けず嫌いな男だ――立ち上がりかけた白いシャツの首根っこを捕まえて、溜息を零す骰であった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【怪力無双】LV1が発生!
【友達催眠】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!
【アクティベイト】LV1が発生!
永辿・ヤコウ
ラヴィデさん(g00694)
光る湖
跳ねる魚影
あなたの朗らかな声にも心弾む
腕捲りのやんちゃさが可愛らしくて
よーし僕も!と
お揃いの格好
スターゲイザーパイが気になりますね
今にも宙に飛んでいきそうな
活きの良いパイが良いな
半ば本気で
半ば冗談
アドバイスに従って
あっちを覗きこっちを覗き
いつの間にか
初挑戦への緊張も消え去っていたり
そよぐ風にリラックス
待ち時間を楽しむ余裕が出たところで
呼び声に手元を見れば、
えっ
あれっ
……重い!?
バトンタッチで竿を渡し
網を手に連携プレー
ビギナーズラックの大成果
なかなかの大物!
お陰で盛大に飛沫も浴びたけれど
序でにバケツの水も、だなんて
堪え切れず吹き出す笑みは
耀く水面と同じく
きらきら
ラヴィデ・ローズ
ヤコウくん(g04118)と
袖捲り、濡れてもいい格好で
わんぱくに魚釣り
え~っ今ので糸切れないんだ~!
新宿島製竿の頑丈さに頬擦りしちゃうよ
これならお伽噺みたく尻尾で釣らずに済むな
なんて
釣り餌の虫だけ食べて逃げた強者がいるらしく
ここ、いるよ……ヤコウくん……!
雰囲気を出してみつつ岩裏から次の虫を捕獲、
ところでそっちはどう?
……それ引いてるんじゃ?
あっ糸噛んでる、いいや貸してキミは網を!
く、強っ
だがオレたちの前には敵じゃない、ってことで
半ば力技で引きずり出され、網に収まる大きめの淡水魚
浴びる飛沫も誇らしい
やったねぇ!
思わず振る尾でバケツを跳ね上げ
一層ずぶ濡れになるのも、二人なら笑い合えちゃうよね
針に掛かった魚のばしゃばしゃと暴れるに連れて、撥ねる水飛沫が千の煌めきを返す昼下がり。水面下の何かに負けじと足を踏み締めて、ラヴィデ・ローズ(la-tta-ta・g00694)は今にも持っていかれそうな釣竿を握り締める。が、リールを巻き上げようと試みた、その時であった。
「あっ」
ぷつんと寂しい手応えと共に、糸を引っ張る力が消えた。反動で跳ね上がった糸の先を見てみると、括ってあった餌が綺麗になくなっている。あちゃーと額に手を当てて天を仰ぎつつ、ラヴィデはそれでも楽しそうに笑った。
「惜しかったなあー。でも、今ので糸が切れないなんて、新宿島の釣竿は頑丈だね! これぞ文明の利器ってやつかな」
これならお伽噺のように、尻尾で釣りをする必要はなさそうだ――そう冗談めかして、竜人はラバーグリップに頬擦りする。大袈裟な、と眉を下げて笑いながら、永辿・ヤコウ(繕い屋・g04118)は岩場に座る友人の隣に腰を下ろした。
光る湖に、踊る魚影。爽やかな春風に、朗らかな声。どれを取っても、ここは心の弾むことばかりだ。やんちゃな子どもに戻ったかのようにはしゃぐ青年に当てられて、ヤコウは袖口のボタンを外した。
「よーし、僕も!」
ちょっとくらい水に濡れたって構いはしない。シャツの袖もズボンの裾も捲り上げて、ヤコウは意気揚々と釣り針の先に餌を取り付ける。
(「そういえば――スターゲイジーパイ、なんていうのもありましたっけ」)
パイ生地から魚の頭が飛び出した、世にも奇怪な見た目の料理も、確かこの地方の伝統だったはず。どうせならただ星を仰ぐのではなく、本当に宇宙まで飛んで行ってしまいそうなくらい、活きのいい一匹を釣り上げたいものだ。
握り締めた竿を一振り、ヤコウが釣り針を遠くの湖面へ投げ入れるのを見やり、ラヴィデはいつもよりも少し低い声を作って、その耳元に囁いた。
「ヤコウくん、気をつけて。ここ、何かいるよ……」
散々竿を引っ張り回した挙句に、餌の虫だけ食い千切って消えてしまった『何か』。しかしそうやって脅かしてみても、穏やかな風に身を任せ、ゆったりと構える黒狐は『そうですね』と微笑むばかりで、言葉ほどには緊張した様子もない。つれないなぁと笑いながら、餌になる虫を探して岩場の石をひっくり返していると――。
「あれ?」
一条の波が湖面に跡を引いていた。ぱちりと銀色の瞳を瞬かせて、ラヴィデはヤコウの隣へ歩み寄る。
「ヤコウくん、それ引いてるんじゃ?」
「えっ? あ――」
重い。
引き上げようと力を込めた釣竿の先に、ずしりと重い感触があった。しかし何分、釣りは初挑戦だ――いざ獲物が掛かってもどうすればよいか分からずに、ヤコウはあわあわと竿を握り締める。
「あっ、糸噛んでる」
「え――糸? どうすれば……」
「いいや貸して、キミは網を!」
受け渡しの瞬間に持っていかれないよう、素早く、けれども慎重に釣竿を引き受けて、ラヴィデは糸を巻き取っていく。
「く、強っ……でも、負けないからね!」
二人で力を合わせれば、たとえ湖の主だって敵ではない。えいやと水から引きずり出した『それ』をヤコウが差し出す網の中にやっとのことで放り込み、竜は額に滲んだ汗を拭った。しかし、ほっと気が抜けたのは一瞬――網の中に収まったものを確かめると、その表情はみるみる喜色ばんでいく。
「やったねぇ、ヤコウくん!」
「なかなかの大物ですね!」
釣り上げたのは、青みがかった鱗が美しい大振りの魚だった。ビギナーズラックという言葉があるが、初めての釣果としては申し分ないだろう。
はしゃぎ振りたくる尾でうっかり倒したバケツの水が盛大に降りかかれば、それさえも楽しくて、可笑しくて。降り注ぐ爛漫の陽射しの中、少年のように笑い転げる二人を、光る風は柔らかに包み、そして何処かへと吹き抜けていく。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【傀儡】LV1が発生!
【浮遊】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV4になった!
月下部・小雪
お姉ちゃん(g00960:義姉)と一緒にお仕事前のヴァ、ヴァカンス、です。
お料理コンテストのためにお魚さんをゲット、ですね。
虫の餌は怖かったので練り練りしたお団子の餌をくっつけてを釣り針につけてえいっと投げ込んでみます。
ドキドキ、お魚さん、う、うまく釣れるでしょうか?
モーラットのコダマが水辺でパシャパシャと遊びだしたのでお膝に乗せて撫でててあげますね。
そのままウトウトしていたら、お姉ちゃんが糸引いてると教えてくれました!?
あわあわしながら、引っ張ると小さなお魚さんだけど無事ゲットです!
※アドリブや連携も大歓迎
月下部・鐶
妹の小雪ちゃん(g00930)とお誘い合わせで、料理コンテストにきたよ!
お仕事のことも気になるけどー……まずは、めったにない、ゆっくりこちらの世界の緑満喫できる時間
素敵な景色を楽しみながらお魚を釣ろう!
というわけで、魚釣りのセットを持ち込んで、釣りにきました!
料理コンテストの材料ももちこむね
釣り餌にするのは、お姉ちゃんでも虫はやっぱりムリ!と、もってきたのは練り餌!
粉に水を加えて、ダンゴをいっしょに作ったら、釣り開始!
あんまり当たりが来ないから、そっとお絵かきも同時進行
釣りをしている小雪ちゃんの横顔と澄んだ湖、うんうん、絵になるー……あれ、小雪ちゃん、糸引いてない?
アドリブ、連携、大歓迎!
「と、いうわけで――」
空に白雲、森に風。絶景を前に気候までよしとくれば、ここで何もせずにはいられない。新宿島から持ってきた魚釣りセットを頭の上に高々と掲げて、月下部・鐶(さいつよのお姉ちゃん・g00960)は言った。
「素敵な景色を楽しみながらお魚を釣ろう~!」
「わ~、ぱちぱちっ!」
歓声とともに小さな両手を打ち合わせて、月下部・小雪(おどおどサマナーところころコダマ・g00930)も声を弾ませた。日頃は内気な彼女だが、今日は気のおけない義姉と二人だけということもあり、その表情は幾分かリラックスしているように見える。
「お料理コンテストのためのお魚さんをゲット、ですね」
「そう! おいしい魚を釣って、花嫁さんに喜んでもらおう!」
これも仕事のうち、とはいえ、こうしてクロノヴェーダと交戦することもなく改竄世界史の中を散策する機会は滅多にない。荷物を片手に、もう一方の手をつないでとてとて駆け寄った湖面は清く、春の陽射しを燦々と照り返している。覗き込めば透き通った水底には、水草の茂みを縫って泳ぐ大小の魚の姿が見えた。
「でも、お姉ちゃん……釣りってどう、やるんですか?」
「えーっとねえ、まずはこの餌を釣り針につけて……」
「え、餌って虫ですか!?」
ビクン! と肩を跳ね上げて、小雪は途端に声を震わせる。分かりやすいなあと苦笑して、鐶は言った。
「さすがのお姉ちゃんでも虫はやっぱムリ! だから練り餌を持って来たよ」
粉末状の餌に水を加えて団子を作り、一つまみして釣り針の先にくっつければ、準備は万端。いざ、と水際に肩を並べて、姉妹は釣り竿を握り締める。えい、と勢いをつけて竿を振ると、小さな水音と共に餌をつけた針の先が見えなくなった。
「お魚さん……う、うまく釣れるでしょうか?」
「こればっかりは運だからねー」
まあなんとかなるでしょと、楽観的に鐶は笑う。後は運を天に任せるのみであるが――。
「…………」
「…………」
遠く小鳥の鳴く声が、ただただ長閑に澄み渡る。湖面を撫でる柔らかな風は音もなく、葦の葉擦れだけがさやさやと耳をくすぐるようだ。
そうして十分経ったか、二十分経ったか――当たりは、まだ来ない。
「コダマ、あんまりそっちに行くと危ないですよ」
退屈したのか小さな手でぺちぺちと水面を叩き始めたモーラットを膝の上に載せて、小雪は小さく欠伸する。隣を見遣れば姉はさっさと釣竿を竿掛けに置いて、スケッチブックを広げていた。
「お姉ちゃん、何かいてるの、ですか?」
「ふふー、秘密! ほら、集中集中」
「ええ……わたしも、何か持ってくればよかったです……」
まるで動く気配のない浮きを見つめて、小雪は小さな手を口に当て、もう一度大きく欠伸した。春の陽射しは温かく、とにもかくにも眠気を誘う。そんな妹の横顔を、鐶は微笑ましく見つめていた。
(「小雪ちゃんの横顔と澄んだ湖。うんうん、絵になるー……ん?」)
水面の浮きが蠢いたのは、その時だった。それは微かな揺れから次第に波を引くような動きとなって、ぱしゃぱしゃと飛沫を散らし始める。慌ててその場に立ち上がり、鐶は妹の肩を掴んだ。
「小雪ちゃん、糸引いてる!」
「えっ? ひゃあ!?」
心地よい春の微睡から、一瞬の覚醒。無我夢中で引き上げた糸の先には、やや小ぶりながらも活きのよい魚がしっかりと掛かっていた。後はこれを持ち帰って、美味しい料理を作るだけだ。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【パラドクス通信】がLV2になった!
【未来予測】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV4になった!
【ダメージアップ】がLV6になった!
●栄冠は誰の手に
ワイルドベリー・ウッズの森と湖を間近に望む別荘地は、その日、いつも以上に大勢の人々で賑わっていた。彼らの関心の的は勿論、今度の竜の花嫁のために開かれる盛大な料理コンテストである。このコンテストで優秀な成績を収めた数名のみが、栄えある料理人として竜の花嫁の滞在する別荘へ招かれるのだ。
「コンテストにご参加の皆様は、どうぞこちらへ」
案内役の村娘に連れられて、やってきたのは街で一番大きな食堂だった。調理から審査まで、コンテストはすべてこの会場で執り行われる。厨房には石のかまどと水場があるが、水道が通っているわけではないため、水は外の井戸から汲んでくる必要があるだろう。また鍋や包丁、木べらなど、最低限の調理器具は必要なだけ用意されているようだ。
では、と腕をまくって復讐者達が調理台に向き合ったその時、会場の入り口で何やら話す声がした。
「あの――すみません、ちょっとお尋ねしたいことが……」
現地の人間だろうか。見るからに人の好さそうな青年が一人、案内係の娘に話しかけていた。彼は何ごとか迷っていたようだったが、しばし逡巡した後、こう続けた。
「竜の花嫁に逢えるのは、この料理コンテストで勝った人だけなんですか? 他に何か、方法は……」
ないのでしょうか、と、次第に窄まるその声は、本当は例外などないのだということを理解しているようだった。勿論、竜の花嫁への面会が許されるのは、コンテストを勝ち抜いた一握りの人間のみだ。やがて道はないと悟ったのか、青年はがっくりと肩を落として人混みの中へ消えて行った。
鐘堂・棕櫚
【KB】
アレンさんとの接触は
内緒話のできそうな物陰に誘ってから
俺とこの怖い顔の人は料理コンテストの参加者ですと
骰さんを指さしながらギリ嘘じゃない自己紹介を
あなたのその浮かない顔は
花嫁さんと親しい間柄だからじゃないですか?
問いは柔らかく、気遣うように
【友達催眠】も用いて極力警戒されないよう会話を試みます
表向きは嫁入りという慶事ですが、要は死別でしょう
…近しい人を亡くした経験がある身として忠告しますが
滅茶苦茶後悔しますよ、できなかった事を残したまま死なれると
彼女に思い残す事はもう無いんですか
もしあるのなら、伝言でも手紙でも預かりますよ
俺らは、ベスさんに死んでほしくないので
それを伝えに行くつもりです
鬼歯・骰
【KB】
…料理人に見えねぇ面で悪いな
こいつは助手だよとツリガネを指し返し
慣れない笑顔浮かべるほうが警戒されそうだ
仏頂面のままアレンから話を聞こう
アンタさっき案内係の子に話しかけてたな
今回の花嫁の知り合いか?
なんだ暗い顔して、祝ってはやらねぇのか
…俺は命を落とす結婚なんて馬鹿馬鹿しいと思ってるよ
何の悔いもないって言われんのも
残される側としちゃ悔しいもんがあるだろ?
その子が踏みとどまらせる何か心当たりがあるなら教えてほしい
んで、言いたい事があるなら代わりに伝えてきてやる
アンタはどうしたい?
花嫁になるって決めた奴のが腹座っててどうすんだ
根性出してくれよ、まだ完全に手遅れって訳じゃねぇんだから
標葉・萱
集めた料理の材料たちとは一旦お別れ
店長さんの応援もひそやかに
案内の娘へ先の男性がどちらに向かったかをお尋ねできれば
追いつけたなら、花嫁に会いたかった方ですよね、と
呼び止めて少しだけ、名乗りを
貴方と同じように、花嫁に会いに行きたいのです
お祝いではなく、……引き止めたくて、と言ったら信じてくださる?
竜には聞かせられないと潜めた声で
花嫁姿は、もっとしあわせなものでしょう
おしまいではなくて、新しい門出へと漕ぎ出す、ものでしょう
引き留めるに足る想いがあるなら
どうぞ今一度だけ聞かせてはいただけませんか
きっと伝えに、ゆくからと
もう手が届かなくなる、
声さえ届かなくなるその前に
「では店長さん、頑張って――失礼」
木の実、草の実をいっぱいに詰めた籐の籠を知人に手渡して、標葉・萱(儘言・g01730)は咄嗟に反転した。そして人混みを掻き分け食堂の入り口へ駆けつけるや、案内係の娘を捕まえる。
「すみませんが、今の方はどちらへ?」
「えっ?」
「今、お話をされていた方です。背の高い、ブロンドの男性で……」
説明をしながら素早く視線を巡らせると、群衆から頭一つ飛び出した長身の後姿が、建物の角を曲がっていくのが見えた。もう大丈夫ですと言い置いてから、萱はその背を見失うまいと走り出す。その様を横目に見て、鐘堂・棕櫚(七十五日後・g00541)は鬼歯・骰(狂乱索餌・g00299)へ目配せした。
「俺らも行きましょうか」
「ああ、とにかく話を聞かねえとな」
一口に説得と言っても、花嫁の人となりを理解しないままただ正論を並べても、それが響くとは考えにくい。彼女がどんな人間であったのか、知っているのは彼だけなのだ。
コンテスト会場へと向かう人の流れに逆らって、復讐者達は石畳の路地を縫っていく。辿り着いたのは、狭く薄暗い袋小路――その突き当たりで、一人の青年が壁に手を突き、項垂れていた。
漏れ聞こえる嗚咽に眉を寄せながら、萱は一歩前へ踏み出した。
「あの――すみません」
「っ!?」
誰かに見られているなんて思ってもみなかったのだろう。弾かれたように振り返って、青年は慌てた様子で目元を拭った。
「先程の会話が聞こえてしまいまして。……竜の花嫁に会う方法を探しておいでのようですね」
「いえ、あの――すいません。俺、別に悪気は……!」
「ああ、いえ、責めているわけでは」
咎められると思ったのかいっそう慌てふためく青年を宥めるように、務めてゆっくりと萱は言った。
「私達も貴方と同じように、花嫁に会いに行きたいのです。祝うためではなく、……引き止めたくて」
「……え」
思いがけない言葉に、青年は硬直した。安堵と当惑の混在する眼差しにすみませんねと笑いかけて、棕櫚が言った。
「脅かすつもりはなかったんです。ただ、そういうわけでちょっとお話が聞きたかったんですよ。あ、ちなみに俺と、この怖い顔の人はただのコンテストの参加者ですのでご心配なく」
「指を差すな、指を。……俺が料理人で、こいつが助手な」
「指を差すなって自分で言ったばっかりなのに」
指し返せば相変わらず口の減らない悪友をじろりと睨んで、まあいいと骰は黒髪を撫でつけた。慣れない作り笑顔では、がたいの割に気の弱そうな青年を警戒させるだけだろう――ここは率直、かつ単刀直入にだ。
「アンタ、今回の花嫁の知り合いなんだろ?」
「…………」
「暗い顔して、祝ってはやらねぇのか」
否定するわけでも、肯定するわけでもなく俯いた青年の横顔には、しきたりに従順であろうとする敬虔な村人としての想いと、それだけでは抑えきれない一人の人間としての感情が同居している。できるだけ柔らかな声を作って、気遣うように棕櫚は言った。
「あなたのその浮かない顔は、花嫁さんと親しい間柄だからなんでしょう。表向きは嫁入りという慶事ですが、要は死別ですからね――手放しに喜べないのは、無理もないです」
「…………」
しばし目を瞑って沈黙し、しかし黙っているのも苦しくなったのか。身体中の空気を吐き出すように長く重苦しい息をつき、青年はやっとのことで応じた。
「……本当に、そうでしょうか。素直に祝ってやれない俺が、おかしいのかと――」
「いや、そんなわきゃねえだろ。命を落とす結婚なんて、馬鹿馬鹿しいと思ってるよ。俺達もな」
ちらりと視線を横に流せば、棕櫚がうんうんと肯いた。その向こうで、萱もまた言葉を重ねる。
「花嫁姿は、もっとしあわせなものでしょう。……おしまいではなくて、新しい門出へと漕ぎ出すもの」
花嫁衣装が死装束になるなんて、そんな結婚は歪んでいる――。続ければ苦しそうに表情を歪める青年に、諭すように萱は続けた。
「引き留めたい、という想いがあるなら、私達が必ずお伝えします。
どうぞ今一度だけ聞かせてはいただけませんか」
「…………でも、こんなことを話したところで……」
彼女の旅立ちに水を差すだけかもしれないと、青年は俯いた。良くも悪くも芯が強いのか、この期に及んでも尚、彼は自分で自分を納得させようとしているように見える。伏しがちにした双眸に少しだけ素顔を覗かせて、棕櫚は言った。
「これは近しい人を亡くした経験から言うんですけど。滅茶苦茶後悔しますよ? できなかったことを残したまま死なれると」
大事なのは行動の結果ではなく、行動そのものなのだ。たとえ何も変えられなかったとしても、変えようとしたという事実だけで心が軽くなることもある。
青年はじっと俯いたまま復讐者達の言葉を聞いていたが、やがて片手で顔を覆い、そしてぽつぽつと話し出した。
「……親しい、というほどの間柄じゃないんです」
子どもの頃は一緒に過ごすことも多くあったけれど、成長するに連れて疎遠になっていった――よくある昔馴染み。ただ接する機会は少なくても、気にはしていたのだと青年は言った。
「彼女は昔から身体が弱くて。仕事も思うようにできないから、村では孤立していたんです。そのうち、自分は誰の役にも立てないんだ……なんて、やけっぱちなことを言うようになって」
両親を早くに亡くして、親戚とも疎遠。村では冷や飯喰いと陰口を叩かれるうちに、生きていることそのものに疑問を感じ始めたのかもしれない。だから、と絞り出すような声で青年は続けた。
「だから、竜の花嫁に選ばれたって聞いた時の彼女は、本当に嬉しそうでした。あんな笑顔……もう、何年も見たことがなかった」
誰にも求められることのなかった彼女にとって、竜の花嫁という役割を与えられたことは、至上の喜びだっただろう。これで自分にも生まれた意味ができる、と、そう思ったのかもしれない。
「別荘地へ発つ前に、彼女の家に行きました。話がしたくて、でも――彼女、俺に言ったんです」
『誰の、何の役にも立てない私が、竜の花嫁なんて!』
心の底から嬉しそうに、彼女は言った。そうしたらもう、それ以上は何も言えなくなって――旅立つ彼女を見送ることしかできなかったのだと、青年は声を震わせる。
「自分でもどうして、こんな気持ちになるのかは分かりません。彼女が花嫁に選ばれる前は、何ヶ月も口を聞かないのだって普通だった。なのに、今更――でも、どうしてと――なんで彼女がと、思ってしまって」
語る言葉は次第に涙に紛れ、切れ切れになって文を成さなくなる。堪え切れずに嗚咽するその肩を叩いて、分かるよと骰は言った。
「なんの悔いもないって言われんのも、残される側としちゃ悔しいもんがあるよな」
村は彼女にとって決して居心地のよい場所ではなく、この世もまた同じだった。その状況を『そういうものだ』と見過ごしてきた彼に、彼女を引き留める資格はないのかもしれない。けれど彼女の死を目の前にして――それでも。
「で……アンタはどうしたい?」
問う声は厳しくも、気遣わしげに響く。しばし息を詰めて沈黙し、一粒の涙と共に青年は応じた。
「……もし、あなた達が彼女に逢うことができたら、伝えてもらえませんか。俺が――アレンが、こう言っていたと」
誰の役にも立てないなんて、そんなことはないと。
そんな風に思わせてしまったことを、謝りたいと。
君が生きてそこに居てくれるだけで――俺にとっては、大きな意味があるのだ、と。
すみませんと声を震わせて、青年は再び目元を拭う。安心させるようにその肩へ手を添えて、棕櫚は一言礼を述べ、そして言った。
「その言葉、お預かりしますよ」
今ならばまだ、この手も声も届くはず。懺悔にも似た告白を胸にしまって、復讐者達は来た道を引き返していく。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【友達催眠】がLV2になった!
【強運の加護】がLV2になった!
【建物復元】がLV2になった!
効果2【アクティベイト】がLV2になった!
【アヴォイド】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV7になった!
狗尾・黑猫
皆様のおかげで、良い物が沢山得られました
自然を歩く心地よさ、仲間と遊ぶ宝探し、まるで童心に帰ったよう
きっと、地元で育った花嫁様も同じように野を歩んだこともあったでしょう
そんな気持ちを思い出す品にしたいですね
草苺をメインに
砂糖と煮詰めたフルーツソース
きらきらの宝石のようなジュレ
胡桃を混ぜたクリームチーズに、甘酸っぱいソルベ
切ったベリーの断面を器の外から見えるように飾り付け
甘さ控えめのクリームには、木の実を練り込んで焼いたパイ生地を隠して
真っ先に匙で掬う冠には、大きな草苺をたっぷりと飾り付け
導に星の花を添えましょう
草苺が生る森を冒険する気持ちになっていただけたらと作りました
ワイルドベリーパフェです
「皆様のおかげで、良い物がたくさん得られました」
各地から集まった料理人達でごった返す食堂の中、受け取ったバスケットを腕に抱えて、狗尾・黑猫(シルバーナイフ・g00645)は上機嫌に調理台へ向かう。清涼感溢れる緑の中の宝探しにも似た木の実採集は、思い返しても実に楽しい時間だった。このところは大きな戦いが続いていたこともあり、束の間ながらも心が洗われたような気がする。
(「地元で育った花嫁様も、……きっと同じように、野を歩んだことがあったでしょうね」)
明日はどこへ行こうか、何をしようか。そんな風にただ無邪気に、時が巡るのを楽しみにしていた頃――明日は今日と同じように楽しくて明るいと、疑いもしなかった頃。そんな時代が、『彼女』にも確かにあったはずだ。
さて、と調理台の上に材料を並べ、黑猫は袖を捲った。
(「そんな気持ちを思い出せるような品にいたしましょう」)
限られた時間の中で調理をするにあたって重要なのは段取りだ。草苺をメインに、採れたてのベリー類をたっぷりの砂糖と共に火にかけたら、挽いた木の実の粉を加えた小麦粉でパイ生地を作る。最初はぼそぼそとしていた生地がまとまったら、それを寝かせている間に次は――その次は。
見ている方の目が回りそうな入り組んだ工程も、黑猫にとってはお手の物。そうして忙しなく厨房を行き来すること約二時間と少し、慣れた手つきでエプロンを外して、青年は硝子の器に盛りつけた一杯のパフェを審査員の前に差し出した。
「花嫁様に、草苺の森を冒険する気持ちになっていただけたらと作りました。ワイルドベリーパフェです」
きらきらと耀く宝石のようなシロップのジュレに、カットした断面が見えるよう飾りつけたベリーと、その間を埋める胡桃入りの滑らかなクリームチーズ。保冷バッグで持ち込んだ甘酸っぱいソルベを重ねたその上には、一口大のパイ生地を隠した甘さ控えめの生クリームが載っている。たっぷりの草苺と飾りの白い花を添えた見目にも甘美なデザートは、きっと花嫁の目をも惹きつけることだろう。
大成功🔵🔵🔵
効果1【口福の伝道者】がLV2になった!
効果2【ガードアップ】がLV3になった!
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎
草苺とルバーブを甘く煮詰めてジャムに
苺の甘味とルバーブの酸味、風味は相乗効果
バターに小麦粉、卵に塩、できるだけ地元や地域のものを使って
タルト生地を作り
慎重に火加減を見つつ、焼き上げる
素朴でサクサクした触感だ
明るく優しい赤のジャムを敷いたタルトに、草苺を並べてナパージュを
複雑な味ではないが
果実本来の甘味と滋味がたっぷり、素朴で懐かしみのある味だろう
たとえば子供の頃、草苺を摘んで歩いた森を思うような
ベラさんの心を解す一助になればいいが………
……誰かの何かになれること
……自分自身を誇れることは
幸いなことだな……
彼女にもどうか、そんな日々を過ごしてほしいと祈り
ミントの葉と野の花を飾ろう
(「できるだけ、地元や地域のものを使いたいな」)
バターに小麦粉、卵に塩。市場で揃えた食材を調理台の上に並べて、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)は青い長髪を首の後ろで無造作に括った。挑戦するのは採れたての草苺とルバーブをふんだんに使った、甘酸っぱいタルト作りだ。
(「まずは、生地だ」)
卵黄と砂糖にバターを加えて練り、粉を入れて全体が馴染むまでよく混ぜ合わせたら、黄金色になった生地を一つにまとめて寝かせておく。その間約一時間は、休憩――となるはずもなく、まとめた生地に布巾をかけると、エトヴァは息をつく間もなくジャム作りに取り掛かる。
(「草苺は粗く潰して――」)
予め刻んで砂糖を振っておいたルバーブと潰した草苺を合わせて火にかけ、弱火でじっくりと煮詰めていく。苺の甘味をルバーブの酸味が引き立てる爽やかなジャムは、甘めに作ったタルト生地によく合うはずだ。
そうこうするうちに生地の準備が整ったら、厚みが均等になるよう金型に生地を敷き、かまどの火加減を確認しながら慎重に焼き上げていく。限られた時間の中、手際がものを言う製菓においては、休んでいる暇などほんの一時もありはしないのだ。
「うん――思ったより、上出来だな」
こんがりと焼き上がったタルト型をかまどから取り出して、エトヴァはほっと安堵の笑みを零した。ここまで来れば後はもう一息――優しい赤色が明るく、どこか懐かしいジャムをタルト型に敷き、その上に半分にカットした草苺を丁寧に並べて、水と砂糖で拵えたナパージュを被せていく。決して複雑な味ではないが、果実本来の甘味と滋味が詰まった、素朴で懐かしい味になるだろう。それは例えば――幼い日に森で草苺を摘み歩いた日々を、胸に呼び覚ますような。
(「これが、ベラさんの心を解す一助になればいいが……」)
誰かの何かになれること、自分自身を誇れること。簡単なようでいてそれが存外難しいのだということを、まだ見ぬ花嫁は教えてくれる。願わくは彼女にも、そんな日々が訪れますように――そう、心密かに祈りながら、エトヴァは艶めくタルトの上に仕上げのミントと野の花を飾った。
大成功🔵🔵🔵
効果1【液体錬成】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】がLV2になった!
オズワルド・ヴァレンティ
心情:
料理の腕に特別自信があるという訳でもないが
……ただ、そうだな
日常というのは明日も
続いていくからあるのだと
少しでも伝えられる手助けになれば
行動:
湖で釣れた白身魚をメインに
根菜やタマネギとクリームで煮込み料理を作る
魚のスープだけでは物足りないだろうからパンも添えて
故郷の味…と呼べるかは定かでないが
物珍しさや華やかさよりも慣れ親しんだものの方が
僕は好ましいと思える、というだけのこと
口に合えば良いのだが
(「さて――どうしようか」)
湖で釣れたばかりの新鮮な魚に、市場で仕入れた根菜、そして玉葱。調理台に並べた食材を見つめて、オズワルド・ヴァレンティ(砂塵の・g06743)は大きな角を傾け思案する。正直に言えば、料理の腕に特別自信があるというわけではないのだ。それでも今、ここにこうして立っているのは一時の気まぐれか、それとも――孤独の内に消え往かんとする命を黙って見ていることができなかったからか。
(「……やれるだけ、やってみよう」)
物珍しさや華やかさよりも、慣れ親しんだものの方がきっといい。故郷の味と呼べるかどうかは定かでないが、この地に生まれ育った者ならばきっと誰もが、豊かな水と緑の恩恵を受けてきたはずだ。
魚を捌いて丁寧に骨を取り除き、軽く炒めた玉葱と、一口大に切った根菜と一緒にコトコト煮込んでいく。そうして具材がほろほろに崩れるほど柔らかくなったなら、濃厚な生クリームを加えてさらにひと煮立ち――出来上がったのは、白身魚のクリームスープだ。
上澄みを木製の匙で掬って小皿に取り、オズワルドは確かめるように口に含んだ。
(「……うん」)
淡水魚の出汁と野菜の甘みが染み出たスープは思ったよりもあっさりとしているが、その分、素朴で味わい深い。大きめのスープ皿に具材をたっぷり取り分けて汁を注ぎ、小さな木のトレーにはオーツ麦のパンを添える。シンプルなパンは温かく優しい味のスープによく合うだろう。
(「彼女の口にも合えばいいのだが――」)
昨日から今日、今日から明日。人が営み、連ねる一日一日が寄り集まって日常になる。彼女一人がそれを奪われていい理由は、どこにもない。逆に言えば、彼女は彼女の日常をもっと大切にするべきなのだろう。自分を無価値と思い込んだ人間には、それはなかなか容易でないのかもしれないけれど。
平たい木の盆にスープとパンの皿を載せ、オズワルドは調理台を後にする。叶うならこの温かな料理が、ここにある日常に彼女の心をつなぎ止めてくれればいい――そう、誰にともなく願いながら。
大成功🔵🔵🔵
効果1【土壌改良】がLV3になった!
効果2【ロストエナジー】がLV4になった!
朔・璃央
双子の妹のレオ(g01286)と
折角出会えたビターオレンジ
有効活用しないとね
ぎゅっと絞った果汁はレオに預けて
俺は残った皮でマーマレード作り
母さんが作っていた記憶を頼りに煮込んでいこう
野苺とスグリもジャムにだね
煮込んでる間にシフォンケーキ作りも並行して
メレンゲのが大事だって話を思い返して
ツノが立つまで頑張って泡立てよう
出来た生地に井戸水で冷ましたマーマレードを加えて
鍋に入れたら蓋をして弱火でじわじわと焼いていくよ
上手に膨らんでくれるかな
味見してくれたレオのお墨付きも頂いたところで
切り分けたケーキにベリーのジャムを添えて
レオのゼリーと合わせてオレンジ尽くしプレートの完成だ
朔・麗央
双子の兄リオちゃん(g00493)と
そうだね、このビターオレンジ達との出会いを大切にしないとね
私は果汁とちょっとの実を使ってゼリーを作るよ
もちろんただのゼリーにするんじゃつまらないよね
カクテルグラスに果汁とつぶつぶ程度の実を入れ
ハチミツで甘味を足して味のバランスを取って
持ってきたゼラチンで固めるよ
そうするとオレンジのカクテルみたい
「オレンジブロッサム」っていうカクテルが花嫁さんや
結婚式でよく振る舞われるんだって
だから本物のお酒じゃないけれどそれをイメージして
リオちゃん、そっちは良い感じ?と尋ねて
良い香りに間違いないって確信するよ
ママのと同じ味!
両方完成したら合わせてオレンジ尽くしプレートだね
「せっかく出会えたビターオレンジなんだ、有効活用しないとね」
「そうだね、出会いは大切にしなくっちゃ!」
口々に言い交わして、朔・璃央(黄鉄の鴉・g00493)と朔・麗央(白鉄の鉤・g01286)の兄妹は小ぶりなオレンジの入った籠を調理台の上に載せる。少し黄色っぽいビターオレンジは、今思い出しても口が窄まるような酸っぱさであったが、香りが強く、菓子作りにはうってつけだ。長い髪を無造作に一つに括って三角巾を巻き、璃央はオレンジを取り上げた。
「じゃあ俺がどんどん切って搾ってくから、レオはゼリー作りをお願い」
「オッケー、任せて!」
エプロンの胸を叩いた妹を頼もしげに見つめて、璃央はビターオレンジにナイフを入れた。瞬間、立ち昇る香りはどこまでも爽やかで心地よい清涼感に溢れている。
(「残った皮はマーマレードにするんだ」)
拳大の果実を半分に切っては搾り、切っては搾り。残った果皮も無駄にはしない――いつか台所に立っていた母の背中を思いだしながら、皮を潰して真鍮の小さな鍋に放り込み、砂糖を加えて煮詰めていく。勿論、それとは別の鍋で野苺とスグリをジャムにするのも忘れてはいけない。
「リオちゃん、お鍋を火にかけたらシフォンケーキづくりだよ!」
「大丈夫、分かってるって。……でも思ったより忙しいな」
コンテストでの調理は時間と手際が勝負だ。ジャムが焦げつかないように気を配りながら、卵黄を潰し、砂糖と油と粉を加えてよく混ぜたら、卵白をツノが立つまでしっかりと泡立てていく。
そんな兄の姿を横目に、麗央は搾りたてのオレンジジュースを鍋に移し、にっこりと口角を上げた。
(「ただのゼリーにするんじゃつまらないよね」)
残しておいた果肉を適度にほぐして加えたら、甘みづけに蜂蜜を足して混ぜ、あらかじめふやかしておいた粉ゼラチンを加えて、溶けるまでとろ火で加熱する。そうして出来上がったゼリー液を三角形のグラスに注げば、それはゼリーというよりもカクテルのように見えた。
マーマレードの鍋を火から下ろして冷たい井戸水に浸けながら、璃央は妹の手元を覗き込む。
「綺麗だね、それ」
「うん。あのね、結婚式では『オレンジブロッサム』っていうカクテルがよく振る舞われるんだって。だから、それをイメージしてみたの」
そっちはどうと尋ねれば、璃央はうーんと唸って首を傾げた。
「多分、大丈夫だと思うんだけど……上手に膨らんでくれるといいな」
レンジもない、オーブンもない。かまどでケーキを焼く日が来るなんて思ってもみなかったけれど、何事も挑戦あるのみだ。冷ましたマーマレードを生地に加えてさっくりと混ぜたら深めの鍋に流し込み、石窯の中でじわじわと焼き上げていく。どんなものかと肩を並べて覗き込んでみると、甘いケーキと爽やかな柑橘の香りが絶妙に混じり合い、双子の鼻先をくすぐった。
「割といい匂いがしてきたね」
「うん――これは期待できそう!」
焼き上がりを今か今かと待つことおよそ二十分。鍋から零れんばかりに膨らんだ生地を取り出して、型からはみ出た部分を切り取り、麗央はぱくりと口に含む。すると次の瞬間、白い頬にはぱっと淡い紅が差した。
「おいしい! ママのとおんなじ味!」
「本当に?」
焼き上がったシフォンケーキは、最愛の妹からのお墨付き。心からの安堵を覗かせる璃央の表情は、いつもよりも少し幼く見えた。焦げついた部分を綺麗に削いで形を整え、野苺とスグリの二種類のジャムを添えれば見た目も完璧――きらきらと輝くカクテル風のゼリーと合わせて、渾身のオレンジプレートの完成だ。思った以上の仕上がりに顔を見合わせて、兄妹は瞳を輝かせる。
「花嫁さん、気に入ってくれるかな?」
「絶対、気に入ってくれるよ」
だってレオの手作りだものと、自信たっぷりに璃央は笑った。後は、完成品を審査員の元へ届けるだけだ。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【悲劇感知】がLV2になった!
【飛翔】がLV4になった!
効果2【ロストエナジー】がLV5になった!
【ダメージアップ】がLV8になった!
ナタリア・ピネハス
ユリさま(g05341)と
あたたかく、なつかしい
記憶の中に残っているそれを紐解いて
『おいしい』と笑ってくれる顔を思い浮かべながら
ユリさま、おさかなを捌けるの?すごいわ!
わたくしはお野菜の準備をするわ
……こうして……こう……ねこのて!
包丁を持つ手つき、ハーブの種類もさじ加減も危なげなわたくしを
ユリさまが導いてくれるから、こわくないし不安もない
パンを捏ねるのも竃の前でふたりでじっと待つのも
楽しくってたまらない!
たっぷりのトマトと玉ねぎで煮込んだお魚
手捏ねのふわふわパン、甘酸っぱい草苺のジャム
ひと匙の味見に顔見合わせて、にっこり!
花嫁さまのこころに、あたたかなものを齎せますように
――さ、召し上がれ!
犬神・百合
ナタリア様(g00014)と
お料理の邪魔にならないように髪を纏めて
エプロンも着ければ気合十分
わたくしはお手伝い、おてつだ……
あわわ
ちょっと危なっかしい手つきにハラハラしてしまうけれど
ナタリア様の頑張っている横顔
今を楽しんでいるその顔ソレは見ていてとっても安心するの
お魚の下処理なら任せてくださいな
ウロコを取るならスプーンが楽よ?
最初にひれとか危ないところは取ってしまいましょうね
パンを焼くための窯の下準備も大丈夫
あっ調味料はね
少しづつ入れるといいわ
ふふふ、コンテストも大切だけれど
一緒にお料理できることが凄く嬉しくて楽しい
微笑み返し
花嫁様にもこの温かな気持ち
おすそ分けできますよう
__さ、召し上がれ!
「ユリさま、おさかなを捌けるの?」
すごいわと琥珀の瞳を耀かせて、ナタリア・ピネハス(Hitbodedut・g00014)は友人の手元を覗き込む。灰銀色の長い髪が調理の邪魔にならないようしっかりとまとめて、エプロン姿の犬神・百合(ラストダンス・g05341)は実に手際よく、鱒に似た魚を捌いていく。すごいだなんてと謙遜しつつ、百合は銀のスプーンを取り上げて言った。
「ウロコを取るならスプーンが楽よ? ひれとか、危ないところは最初に取ってしまいましょうね」
鱗を剥がして頭を落とし、腹側から開いてはらわたを除く。てきぱきと下処理を済ませる姿に思わず見入っていると、ルージュを引いた唇がくすりと笑んだ。
「こちらは任せて、ナタリア様はどうぞ、続けてくださいな」
「は――そ、そうだったわ」
野菜の準備をしようとしていたのだと思いだして、ナタリアは調理台に置いた籠の中から市場で仕入れた玉葱を取り出し、あたふたと皮を剥き始める。ごろりと転がった玉葱は、丸いままでは切りにくいのだが――。
「こうして……こう…………ねこのて!」
「あわわ」
猫の手にすればいい、というものではない――思わず上ずった声を出して、百合は咄嗟にストップをかけた。そして、きょとんとして見つめ返す少女に緩く首を振り、続ける。
「くし切りにするのでしょ? まず頭とおしりを落としてしまった方が切りやすいわ」
「あ――なるほど」
そうねと嬉しそうに笑む少女には、屈託というものがない。助言を素直に聞き入れて、ナタリアは上機嫌に玉葱にナイフを入れていく。それでも何やら危なっかしい手つきは、見ていると少々ハラハラしてしまうのだが――。
(「でも、そのお顔はとても素敵ね?」)
頑張る少女の横顔は、いつだって美しい。それに何よりその表情からは、彼女が調理を楽しんでいることが伝わってくる。
玉葱はくし切りに、トマトはヘタを取ってざく切りに――おっかなびっくり俎板を叩きながら、ナタリアは野菜を切り分けていく。料理上手な友人が傍で導いてくれるのだから、慣れない作業も不安はなかった。
(「あんなお料理に、できたらいいのだけど……」)
誰かが自分のために手間暇をかけて、料理を作ってくれることの喜び。胸に残る温かな記憶を紐解きながら、ナタリアは切った野菜を鍋の中へ滑らせる。作るのは、トマトと玉葱をたっぷり入れた魚の煮込み――程よい酸味と魚の旨味が絶妙な一品だ。これを口にしたならば、まだ見ぬ竜の花嫁は『おいしい』と笑ってくれるだろうか? それはいつかのあの日、この料理を口にした彼女自身のように。
次第に慣れてきた様子の友人の手元をどれどれと覗き込んで、百合は言った。
「調味料はね、少しずつ入れるといいわ。味を確かめながら……ふふふ、一緒にお料理するのって、楽しいわね」
コンテストを勝ち抜くことが目的ではあるけれど、食べてくれる人のことを想い、楽しんで作ったという事実は、きっと受け手にも伝わるはず。手捏ねパンの種も窯に入れて、そわそわと待つこと三十分弱――魚の煮込みに焼き立てのパンと甘酸っぱい草苺のジャムを添えれば、心のこもったワンプレートの完成だ。
できたわと喜び勇んでトマトのスープをひと匙口に含み、ナタリアと百合は顔を見合わせた。
「ユリさま」
「ナタリア様……」
仕上がりは、向かい合った満面の笑みが教えてくれた。こくりと視線で頷き合って、二人はいそいそと魚の煮込みを深めの木皿によそっていく。まずは審査員、その次は孤独な花嫁に――温かな一皿は、小さな幸せを運んでくれることだろう。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【士気高揚】がLV3になった!
効果2【能力値アップ】がLV5になった!
【ダメージアップ】がLV9になった!
その別荘は森の木立の只中にあった。暮れなずむ空の下、白いワンピースに身を包んだ娘が一人、湖を望むウッドデッキから金色に染まりゆく水面を見つめている。
(「……なんだか信じられない」)
誰にも見向きもされなかった自分を、ここでは皆が気にかけてくれる。昨日は、大勢の中から選ばれた芸人達が、色々な芸を見せてくれた。その前の日は職人達が技を競い合い、彼女のための花嫁衣裳を拵えてくれた。竜の花嫁という存在には、それだけの価値があるということなのだろう。一週間後か、一か月後か――その時の訪れがいつになるのかはまだ分からないけれど、竜の花嫁として迎えられる時、彼女は命と引き換えに、この世に生まれた意味を得るのだ。
「花嫁様。夕餉の仕度ができております」
掛かる声に振り向くと、そこには世話役の女が一人、恭しく両手を重ねて立っていた。ありがとうと微笑を向けて、娘は落ちゆく太陽に背を向ける。
(「そういえば、今日は確か……」)
今日の夕餉は、別荘地に招かれた料理人達の手によるものだと聞いた。自慢の料理とともに彼らがどんな話を聞かせてくれるのか、それが少しだけ楽しみだった。
朔・璃央
双子の妹のレオ(g01286)と
花嫁との面会だなんて緊張するね
心なしか背筋もピンと伸びてる気がする
服変じゃないかな
レオはばっちりだと思うけれど
まずは面会が叶った事への一礼を
丁寧に敬う気持ちを持って
こちらも自己紹介を
私たちは幼い頃から一緒の双子ですから
二人で一つの思いを込められたと思います
幸せな未来を掴んで欲しいと
ベラさんのお口に合ったのなら何よりです
古馴染みという言葉が私達に当てはまるかは判らないですが
昔からの縁というのはやはり強いと思いますね
喧嘩をしてもすぐ仲直りして
たとえ疎遠になっても
互いがいる事が何より大切だと思えるような
誰にだって、きっとそんな方がいると思ってます
きっと、ベラさんにも
朔・麗央
双子の兄リオちゃん(g00493)と
緊張するっていうリオちゃんに対してそう?と首を傾げる
服?大丈夫だよと答えつつ
でも会うから緊張するんじゃなくて、これから会う花嫁さんの運命を左右するかもって事実には緊張する……かもしれないね
まず花嫁さんにお名前を聞くよ
伺ってもいいですか
花嫁さんって呼び方じゃちょっと、ね?
可能なら友達催眠も使うね
まずは料理はお口に合いましたか
でもこれはね、花嫁さんだから作ったんじゃなく
1人のベラさんの為に作ったんだ
オレンジの料理ね
貴女の幸せを願ったのは本当
でもそれは別の未来へ進む為
思い出して欲しいんだ
本当に貴女は1人だった?
貴女の事を気にかけて会いに来た人がいるんじゃないの?
オズワルド・ヴァレンティ
料理コンテストで作った魚のスープと共に
許されるのであれば
花嫁のベラと話をしよう
選ばれるというのは喜ばしいものだが
ただ受け入れるのと
自ら選ぶのでは、また別物だ
ベラは竜の花嫁になりたかっただろうか?
今まで何の役にも立つことが出来なかった想いは
哀しかったし寂しかったと思う
これから見つかるやりたいことも
少し後ろに回したやりたかったことも
花嫁になるとは全てを置き去りにするもので
それでも全てを手放せるというのなら
せめて
今までのキミの話を聞きたいな
魔法使いとして少しばかりは
キミの望むことを叶えたい
ナタリア・ピネハス
ユリさま(g05341)と
膝を折って一礼
ごきげんよう、お会いできて光栄です
ベラさま、わたくしたちのおはなし
退屈しのぎに聞いてくださる?
お父さまは、商家の跡取り息子
お母さまは本妻だったけれど、男の子を産めなかった
お兄さまたちは第二夫人の子。だから、ずっと怯えてた
女は道具。それが罷り通る場所だったの
わたくしはピネハスの末娘
家に居場所は、どこにもなかったわ
……ベラさまにはおともだちと聞いて、思い浮かぶ方はいる?
わたくしはね、ユリさま!
お料理もね、ユリさまがいっぱい手伝って下さったのよ
叶うならそっとふたりの手を取って微笑み
ね、ベラさまはほんとうに
あたたかなことばも、思い出も……ぜんぶ、捨ててしまえる?
犬神・百合
ナタリア様(g00014)と
同じ様に膝を折り
先に一歩進んで語り始めた彼女の背中を見守る
語られたのは初めてのお話
少し泣き虫だけど平気よと微笑むようになった
そんな大切な貴女の生い立ち
胸がきゅうと痛む
あ……
お友達という言葉
わたくしを呼んでくれて
大切な思い出
顔を合わせた時の他愛ないお喋り
お料理もナタリア様が頑張って__
溢れそうな涙を堪え花嫁様へ
わたくしも訳あって父と母
家を失いひとりになりました
けれどもわたくしの名を呼んでくれて
大切に思ってくださるナタリア様が居て
心に火が灯り微笑み生きれるのです
ベラ様にもいらっしゃるはず
貴女を必要としてくれている人が
あなたを失ってしまったら
その人は独りになってしまうわ
狗尾・黑猫
この森に生った草苺や木の実をふんだんに使いました
どうぞご賞味ください
お口に合いましたら幸いです
なるべく果実そのものの味を損なわないようにしたんです
収穫の際、少しだけ味見したのですが、そのままでも十分に美味でしたので
ふふ、採れたての新鮮さでしか味わえないものもありますよね
…地元の食材を使用する、とは、貴女の要望だとお伺いしました
好物はございましたでしょうか
慣れ親しんだ味は、恋しいものですよね
味は、記憶と結び付きますし
お好きなものがあるということは…、きっと、素敵な思い出があるのでしょう
ご家族と散歩したり、あるいはお友達と遊んだり
孤独だと感じていても、支えになる記憶はあったのではないでしょうか
鐘堂・棕櫚
【KB】
コンテストの参加者さんに紛れて骰さんと別荘地へ
見咎められそうならモブオーラも用います
ベラさん、アレンさんからの言伝です
誰の役にも立てないと思わせてしまった事を謝りたいこと
ベラさんが生きているだけで、彼に取っては大きな意味があること
彼からの言葉を一言違わず彼女へと
…皆から疎まれながら生き続ける未来より
厄介払いだと薄々解っていて尚、敬われる形の死の方が幸せだと
そう思うのも無理はないと思います
けれど、もう一度だけ花嫁以外の選択肢に目を向けて頂けませんか?
あなたを失いたくないと思っている人は、確実にいるんです
…お返事は、彼に直接伝えてあげて下さい
言うのが遅い!って文句でも全然いいと思いますよ?
鬼歯・骰
【KB】
人生の意味が欲しいってのは分かる
それを利用されんの見るのは胸糞悪ぃけどな
料理人のフリしつつモブオーラでツリガネと別荘地へ
ベラを見つけたならアレンの伝言と
それを別荘地に来る前に言えなかった理由も全部伝えよう
アンタが竜の花嫁でなくとも、大事に思ってくれてるやつはちゃんといる
花嫁なんて肩書きつけて喜ぶんじゃなくて
ただ喪うことを辛いと泣いてここまで追いかけて来るような奴がいる
人生に意味があるとするなら、アンタ個人をちゃんと見てくれる人間が
心から笑顔でおめでとうって祝福してくれる
別の何かの方が良いんじゃないかって俺は思うよ
まぁ本当に今更かよってなりそうだが
でも生きてる限りはまだ、間に合うだろ
標葉・萱
あちらの料理人さんの知り合いで…で、通るでしょうか
ほんの一言のお祝いにでもと、別荘地へお伺い
幸せそうに笑う表情は、嘘ではないのでしょう
思えば少し、かなしいけれど
貴女を案じている方がいるのを
きっと、全く知らぬはずは、ないでしょう
尋ねて眺める姿は少しばかり眩しい心地
受け取った言葉は伝うだろうから
見知らぬ人間に、真摯に託した方がいたことを伝えに
本当になんにも、しあわせなことなど、なかったでしょうか
想い出は触れられないけれど
貴女にはまだ、時間があるでしょう
望むことも望まれることも、まだ出来るのだから
直接、預かったのではない言葉を聞いてほしいと、願うから
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
料理を振る舞いに、花嫁の下へ
友達催眠使用
大事な言葉は仲間に任せ
俺は話と料理で、少しでもベラさんが心解けるように
森の草苺……
幼い頃から、馴染みのある味だろうか?
俺は、遠い国から来た……
元々騎士のようなものだな
人々を苦しめる為政者がいて、挑みゆく者達がいて
命を捧げても、果たせるならば
構わないと思っていた……
そうだな、たった一人
そんな俺を引き留めてくれた人がいた
……それだけで、生きるには十分なんだ
……貴女は、自身の本当の価値をまだ知らない
誰かが貴女を心から想い、笑い、願い、涙する
貴女もまた誰かを想う
それだけで十分なんだ
貴女にも心当たりはないか?
生まれた意味はきっとその時、自然にそこにある
俺はそう思う
●木立の中の夕べ
「花嫁との面会だなんて緊張するね……」
すらりと立つその背中をいつも以上にピンと伸ばし、朔・璃央(黄鉄の鴉・g00493)は言った。そして人形のように整った横顔に一分の緊張を滲ませて、隣に立つ妹へ目を向ける。
「服、変じゃないかな。レオはばっちりだと思うけれど……」
「大丈夫だよ。リオちゃんが緊張って珍しいね」
くすりと小さく笑みを零して、朔・麗央(白鉄の鉤・g01286)は応じた。もっとも、平素は泰然自若と振る舞ってみせる兄が存外普通の男の子なのだということは、妹である彼女が一番よく知っているのだが。
「でも、ちょっと分かるかも。花嫁さんに会うから緊張するんじゃなくて――花嫁さんの運命を左右するかもって思うから、緊張するのかもしれないね」
草を踏んで訪れたのは、湖の傍らに広がる森の裾。幾筋にも射し込む夕暮れの光で輝く木立の中に、竜の花嫁の別荘は静かに佇んでいた。建物はそれほど大きくなく、見た目も特筆すべきことのないログハウスだが、前庭には夕食会のための大きなテーブルが用意されている。白いクロスを点々と飾るオイルランプの周りには、復讐者達――もとい、各地より集った料理人達が腕によりを掛けて作った料理の数々が並んでいる。
不意に軋んだ蝶番の鳴る方へ一同が振り返ると、そこには白いワンピースを身にまとった娘が一人、立っていた。長いブルネットを肩の辺りで一つに結び、菫色の瞳をした娘。いかにも人目を引く美女と言う雰囲気ではないが、一見して悪い印象も与えない――どこにでもいるような若い娘だ。
「ごきげんよう、お会いできて光栄です」
自然な仕種でスカートを摘まんで、ナタリア・ピネハス(Hitbodedut・g00014)が恭しく膝を折り、犬神・百合(ラストダンス・g05341)が後に倣う。それに続いて、璃央もまた一礼した。
「本日はお招きいただきありがとうございます。私達は、料理を生業としておりまして……」
「ええと――花嫁さんのお名前は?」
両手を膝の上に重ねて、麗央が尋ねる。すると賑やかな宴席の様子に花嫁は少しだけ表情を和らげて、口を開いた。
「ベラよ。こちらこそ、今日は本当にありがとう」
あまり畏まらないでとはにかむ彼女は、人に傅かれることに慣れてはいないようだった。対照的に手慣れた仕種で椅子を引き、狗尾・黑猫(シルバーナイフ・g00645)はこちらへどうぞと花嫁に呼び掛ける。
「この森に生った草苺や木の実、湖の魚などをふんだんに使いました。どうぞご賞味ください」
お口に合いましたら幸いですと、伸べた手の先にはトマトとクリーム二種類の魚の煮込みと、手捏ねのパン、草苺やビターオレンジを使ったデザートが並んでいる。そろそろと椅子に座った花嫁にブランケットを勧めながら、標葉・萱(儘言・g01730)は言った。
「この度は、ご結婚おめでとうございます」
「ありがとう。みんなに祝ってもらえて、嬉しいわ」
気恥ずかしげに微笑うその言葉に、きっと嘘はないのだろう。それが少し哀しくて、青年は俄かに眉を寄せた。
(「貴女を案じている方がいるのを、まったく知らぬはずは……ないでしょうに」)
それでもこんな風に笑えるものかと思えば複雑な気持ちは禁じ得ないが――今はまだ、それを語るべき時にない。想いは裡に秘めたまま、萱は給仕のふりでカトラリーを並べていく。その様子を、オズワルド・ヴァレンティ(砂塵の・g06743)は一歩後ろで見つめていた。
(「これは、一筋縄ではいかなそうだな……」)
選ばれるということは、喜ばしい。なぜなら選ばれるということは、必要とされるということだからだ。しかしその事実をただ受け入れるのと、自ら選ぶことにはまた大きな隔たりがある。
「彼女は――」
花嫁には聞こえぬほどの小さな声で、竜の青年は言った。
「本当に、竜の花嫁になりたかっただろうか」
「さあ、まだなんとも。……この夕餉で、少しでもベラさんの心が解けるといいんだが……」
思案する青年の傍らで自らもまた思考に耽りながら、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)が応じた。
明日を憂う素振りのない花嫁の心に、どう翻意を訴えかけるべきか。それぞれの思惑が交錯する中で、夕映えの森の奇妙な晩餐会は幕を開けた。
●晩餐
「――これ、おいしい」
背の高いグラスの縁に乗った草苺の一粒を口に含んで、ベラは言った。続いてもう一口、今度はクリームと一緒にパフェのひと匙を口に運ぶと、白い頬がほんのりと紅を帯びる。
「凄くおいしいわ。この辺りの森で採ったの?」
「ええ、そうです。なるべく果実そのものの味を損なわないようにしました。収穫の際に少しだけ味見したのですが、そのままでも十分に美味でしたので……」
問う声ににこやかに応じて、黑猫は言った。採れたての新鮮な果実は、ある意味でこの土地ならではの食材だ。そしてさりげなく窺うように、青年は続ける。
「地元の食材を使用する、とは、貴女の要望だとお伺いしましたが……何か、お好きな物はございましたでしょうか」
「好き嫌いは特にないけど……草苺は好きなの」
「でしたら、よかった。森に分け入って採ってきた甲斐があるというものです」
時間を掛けて慣れ親しんだ味というものは、その間の記憶とも密接に結びついている。好きだと彼女が言うからには、この森の草苺は彼女にとって思い出深い存在なのだろう。
何気ない会話の延長を装い、エトヴァが続けた。
「俺も昼間、食材を探して入ったが、豊かな森だな。やはりその草苺は、幼い頃から馴染みのある味なのだろうか?」
すると彼の作ったタルトをフォークで切り分け、花嫁は応じた。
「そうね……昔はよく、父や母と一緒に採りにいったものだから。この料理は、でも――母さんが作ってくれたのと比べると、ちょっと美味しすぎるけど」
木洩れ日の落ちる道なき道を、父母の手につながれて歩いた日のことは忘れない。艶めくタルトのひとかけらを口に含んでゆっくりと咀嚼してから、ベラは言った。
「籠に摘んだ草苺を食べちゃって、叱られたりなんかもしたわね」
遠い日を手繰り寄せるように語る彼女にとって、森の袂に家族と過ごした日々は春の陽射しのように眩しく、温かい時間であったに違いない。素敵な思い出ですねと微笑む萱にどことなく知的な菫色の瞳を巡らせて、ベラは言った。
「でも、森のことならなんでも知ってるつもりでいたけど、そんな果物は初めてよ」
「お口に合いませんでしたか?」
見つめる視線がビターオレンジのゼリーに向いていることに気づいて、璃央がおずおずと聞き返す。するとすぐさま首を横に振り、花嫁は否定した。
「ううん、とっても美味しかったわ。それだけじゃなくて……魚もスープも、パンも……全部、すごく美味しかった」
竜の花嫁になるって、本当に凄いことなのね――。
穏やかに瞳を閉じてデザートフォークをテーブルに戻し、ベラは言った。少し前の彼女なら、この時間は湖の畔の小さな家で乾きかけたパンを食んでいただろう。けれど花嫁に選ばれたあの日から、彼女の日常は一変した。村人は誰もが彼女に祝福の言葉を寄せたし、この別荘地に移ってからは、世話係が日々欠かさず、清潔な衣服と温かい食事を用意してくれる。お姫様のように扱われたいなどと思っていたわけではないけれど、誰かに求められ、重用されるという感覚は久しぶりで、悪い気もしなかったのは確かだ。
語られた言葉は決して多くないが、その中には、彼女の抱えた深い孤独と懐旧が見て取れた。
「ベラさん」
どう会話を続けるべきか。誰もが考えあぐねている中で、最初に口を開いたのは麗央だった。なにと首を傾げる娘を前に穏やかな、けれど真剣な表情で少女は言葉を選ぶ。
「これはね、ベラさんが花嫁さんだから作ったんじゃなくて……一人の、ベラさんのために作ったんだよ」
「……私のため?」
聞き返す声にそうと力強く頷いて、麗央は続けた。
「オレンジの料理で、貴女の幸せを願ったのは本当だけど……でも、それは、別の未来へ進むため」
「…………それって」
どういう意味、と返す表情が俄かに曇った。当然と言えば当然だろう――竜の花嫁になることを喜び、誇らしく思っている彼女にとって、少女の言葉は不穏以外の何物でもなかった。けれど誰かが口火を切らなければ、話は前に進まない。
緊張の面持ちで唇を結んだ妹の肩にそっと手を添えて、璃央が後を継いだ。
「私達は双子です。幼い頃から一緒なので、麗央の考えは私にも分かります。貴女には、幸せな未来を掴んで欲しいと」
「……だったらどうして、そんなことを?」
訝るように、娘は言った。
「竜の花嫁に選ばれて、私はとっても幸せよ。明日食べるものの心配をしなくていいし、それにみんなが私を必要としてくれるんだもの。あのまま村にいたって、私のことなんて誰も――」
「本当にそう?」
気づけばいつの間にか、スカートの裾を皺が寄るほど握り締めていた。続く言葉を遮って、麗央は語気を強める。
「本当に貴女は村で一人ぼっちだった?」
「そうよ。だって私、まともに働くこともできないし……みんな……」
『みんな』と、そう口にして、娘ははたと言葉を切った。その瞬間、その胸中には、『みんな』とは違う誰かの面影が過ったのかもしれない。
●純白の疑念
決して軽くはない沈黙がその場を浸していた。会食の席についた一同の横顔を、燃えるランプの灯がちらちらと照らしている。一つ呼吸を調えてから、麗央は言った。
「貴女のことを気にかけて、会いに来た人がいるんじゃないの?」
「……一人、いたけど……」
どうして、そんなこと知っているの。
そして、もしそうなら――どうだと言うの。
聞き返すような眼差しには気づかなかったふりをして、そうなのですねと黑猫が言った。
「それは、どんな方だったんです?」
「え……と……」
なんと説明したものか分からない、と彼女は言った。家族ではない。恋人でもない。友達と呼べるかどうかも怪しいような古馴染み。強いて言葉にすれば、そんなところだろうか。
なるほどと頷いて、璃央が続けた。
「昔からの縁というのはやはり強いですね。喧嘩をしてもすぐ仲直りして、たとえ疎遠になっても、次に顔を合わせた時はまるで昨日会っていたみたいに話せるような――そんな方なんでしょう」
「そんな、大した関係じゃ……どっちかっていうと、昨日会っても今日会っても、同じ会話しかしないだろうな……っていうくらいの人で……」
「でも、いらしたのは間違いないのでしょう?」
にこりと唇の端を上げて、黑猫が口を挟んだ。
「孤独だと感じていても、支えになる記憶はあったのではないでしょうか。……せっかくこうしてお話する機会をいただけたのですから、少し、ゆっくりと思いだしてみませんか」
「……皆さんは、私が花嫁になることを祝いにきてくださったのよね?」
「勿論そうだ。けれど、そこに後悔があっては欲しくない」
だから確かめたいのだと、訝る娘をじろりと見つめてオズワルドが言った。
「今までなんの役にも立つことができなかった、というのは――キミがそう言うのなら、実際、そうなのかもしれない。きっと哀しかったし、寂しかっただろうと思う。だが花嫁になるということは……すべてを置き去りにする、ということでもある」
これから見つかるかもしれない、やりたいことも。
少し後ろに回してしまった、やりたかったことも。
死の前にはすべてが等しく、無に変わってしまう。そう前置いて、オズワルドは続けた。
「そういうもののすべてを手放せるというのなら、僕にキミを引き留める権利はないが……せめて、今までのキミの話を聞きたいな」
そして願わくは一人の魔法使いとして。その胸に秘めたささやかな望みを、少しばかりは叶えたい。
淡々と告げる言葉に、娘はいっそう困惑した表情で視線を落とした。ともすればこんな風に、誰かに自分の意見や気持ちを求められる機会も、彼女にはほとんどなかったのかもしれない。
黙りこくった娘の表情をちらりと覗き込んで、ナタリアが言った。
「ベラさまが話したくなかったり、考えたくないことなら、ご無理にとは言わないわ。でも――もしよろしかったら、わたくしたちのおはなし、退屈しのぎに聞いてくださる?」
幸い、夜はまだ長い。
沈黙を肯定と受け取って、宵色の娘はゆっくりと話し出した。
●ある復讐者達の話
「わたくしは、ピネハスの末娘として生まれたの」
茫洋とした琥珀の瞳に燃えるランプの灯を映して、ナタリアは話し出す。その言葉に、花嫁と席上の仲間達はただ静かに耳を傾けていた。
「お父さまは、商家の跡取り息子。お母さまは本妻だったけれど、男の子を産めなかった。お兄さまたちは第二夫人の子で――」
女は道具。そんな考えが罷り通るような場所だった。当然家に居場所などなく、『不要』と斬り捨てられることにいつだって怯えていたと娘は語る。
するとその話に興味を引かれたのか、俯いていた花嫁はわずかに視線を上げた。
「あなたが? ……とてもそんな風には見えないけど……」
目の前の少女は、愛らしく、誰もが思わず手を差し伸べたくなるような――そんな娘に見える。けれども。
「でも、そうなの」
微笑む彼女はしかし、辛い過去を語っているようでいて悲壮感を感じさせない。淀みなく言葉を紡いでいく友人の横顔を、百合は隣の席からじっと見つめていた。
(「それって、初めてのお話ね
……?」)
出逢ったばかりの頃は何かと泣いてばかりいたのに、いつの間にこんなに強くなったのだろう。辛い過去を振り返って、『平気よ』と微笑えるようになった彼女の強さと、その裏に重ねてきたのだろう痛みを思えば、自分のことでもないのに胸が痛んだ。けれども隣で見守る友の心境は露知らず、当のナタリアはいたって朗らかに話し続ける。
「ね、ベラさまにはおともだちと聞いて思い浮かぶ方はいる? わたくしはね、ユリさま!」
「え?」
それはある種の不意打ちだった。絡めた腕でぐいと引き寄せられ、百合は眸を瞬かせる。白いパフスリーブの腕を嬉しそうに抱き締めて、ナタリアは言った。
「今夜のお料理もね、ユリさまがいっぱい手伝って下さったのよ。わたくし一人だったら、こんな風においしくはできなかったわ」
「そんな。ナタリア様だって頑張って――……」
腕に重ねる指先が細く、小さく、そしてとても温かい。鈴の音にも似たその声に『友達』と呼ばれることが堪らなく嬉しくて、百合は思わず涙ぐみそうになるのを堪え、言った。
「わたくしも、訳あってかつて父と母、家を失い、ひとりになりました。……けれどもわたくしの名を呼んでくれて、大切に思ってくださるナタリア様がいらっしゃるから、今はこうして心に火を灯していられます」
仲睦まじく腕を組んだ二人の少女を、花嫁はじっと見つめていた。困惑と動揺と、そして微かな羨望――そんな視線だった。なんと返したものかまだ迷っているようなその様子に、エトヴァが代わって語り出す。
「俺の話も聞いてもらえるかな。俺は――遠い国から来た、元々は騎士のようなものなのだが」
彼の国には人々を苦しめる為政者がいた。けれどそんな横暴に挑みゆく者達もいて、彼もそんな反抗者の一人だった。故国の現状を変えることができるのならば、命を捧げても構わない――そんな信念の下に戦い続ける彼は体制側からすれば脅威であっただろうが、同時に味方から見ればひどく危うくも見えただろう。
「だが、そんな俺を引き留めてくれた人がいた。たった一人だったが……それだけで、生きるには十分なんだ」
一度言葉を切って深く呼吸し、天使は努めてゆっくりと続けた。
「俺が思うに貴女は、貴女自身の本当の価値をまだ知らない」
「私の、価値?」
「ああ。誰かが貴女を心から想い、笑い……願い、涙する。そして貴女もまた、誰かを想う。人間というのはそれだけで十分なんだ、と、俺は思うよ」
想い、想われるただそれだけで、存在の意味は自然とそこに生じるもの。自らの生に意味をくれる誰かがいるということに、彼女はもう気づいているはずだ。
心当たりはないかと問えば俯くばかりの花嫁の手を取って、百合が言った。
「ベラ様にもいらっしゃるはずよ。貴女を必要としてくれている人が……もし貴女を失ってしまったら、その人はきっと独りになってしまうわ」
「貴女にはまだ、時間があるでしょう。望むことも望まれることも、まだできます」
ただ命さえあるのならと、静かながらに力強く萱も重ねる。
「本当になんにも、しあわせなことなどなかったのかどうか。少しだけ、考えてみてはいただけませんか。見も知らぬ人間に真摯に言葉を託した……そんな方が、もしかしたらいらっしゃったかもしれませんよ」
そう言って、青年は前庭から森の中へと伸びる土の小道の先を見やった。まだ姿は見えないが、『預かった言葉』を携えて、ほどなく彼らもここへやって来るだろう。
「さっきから……いったい……」
何が言いたいのと尋ねる竜の花嫁には緩く笑むだけで、復讐者達は席を立つ。もう、随分と夜も更けた――晩餐の時間は、終わりだ。
「ね、ベラさま」
次々に席を立つ客人達を前に戸惑う様子の花嫁を覗き込み、ナタリアは問う。
「ベラさまは、ほんとうに――」
………………。
…………。
……。
●伝言
賑やかな夕餉の灯も今は消え、湖畔の夜は穏やかに深まっていく。ウッドデッキから夜の湖を見つめて、竜の花嫁は深く長い息をついた。
『ベラさまはほんとうに、あたたかなことばも、思い出も……ぜんぶ、捨ててしまえる?』
問う声に、彼女は結局何も答えることはできなかった。晩餐会は終わり、客人達は帰っていったはずなのに、残された問いは今もずっと、胸に蟠ったままだ。
がさがさと草を分ける足音が聞こえてきたのは、その時だった。
「まったくもう、皆さんのアシスタントとして潜り込むはずだったのに……骰さんが苺のタルトにうつつを抜かしたりするから」
「人聞きの悪いこと言うな。大体、森に入ってから迷ったのは半分アンタのせいだろ」
何やら言い合う声に気づいて、娘ははっと息を詰める。晩餐や余興の招待客以外に、ここを訪れる者はいないはずであるのだが――がさがさと枝葉のずれる気配に短い悲鳴を上げて室内へ続く扉に手を掛けると、背後から慌てたような声が掛かった。
「ああ、ちょっとすみません、待っていただけませんか」
思ったよりも柔らかいその声に、敵意や悪意は感じられなかった。足を止め恐々と振り返って見ると、ウッドデッキの下から長身の男が二人――その名を鐘堂・棕櫚(七十五日後・g00541)と鬼歯・骰(狂乱索餌・g00299)と云うのだが、彼女には知る由もない――彼女を見上げている。
「あなたがベラさんですよね?」
「え……ええ。そうだけど……」
戸惑いながらも娘が頷くと、円い眼鏡を掛けた男は人の好さそうな笑顔で言った。
「お会いできてよかった。実は、アレンさんから言伝があるんです」
「!?」
飛び出したのは、会食の最中からずっと頭の片隅に引っかかっていた名前だった。思わず手すりの傍まで歩み寄って身を乗り出し、ベラは来訪者達を覗き込む。
「誰の役にも立てない……と、あなたにそう思わせてしまったことを、謝りたいと仰っていました」
「……アレンが? 私に?」
「ええ。あなたが生きているだけで、彼にとっては大きな意味があるのだとも」
そう言って、眼鏡の男は笑みを深くした。抑えきれない動揺を胸に、しかし何を言っていいものかも分からずただ言葉に詰まっていると、彼は努めて静かな口調で続けた。
「皆から疎まれながら生き続ける未来より、敬われる形で死ぬ方が幸せだと……そう思うあなたの気持ちも、理解はできます」
向けられる感情が単なる祝福ではなく、体のいい厄介払いだと薄々分かっていても、それでも針の筵に暮らすような日々よりはましだと思ってしまう。これまでの境遇を思えば、彼女がそう感じるのは無理もないことかもしれない。
けれど、と続けて男は言った。
「もう一度だけ、花嫁以外の選択肢にも目を向けていただけませんか? あなたを失いたくないと思っている人は、確実にいるんです」
語り掛ける青年の言葉をもう一人――黒髪の男はじっと黙って聞いていた。しかし何も答えられない彼女を見かねたのか、ようやく重たげな口を開く。
「アンタが竜の花嫁でなくとも、大事に思ってくれてるやつはちゃんといる。花嫁なんて肩書きつけて喜ぶんじゃなくて、喪うことが辛いって泣いて……こんなとこまで追いかけて来るような奴がな」
「えっ!」
まさか来ているのかと驚いて、ベラは上ずった声を上げた。すると誤解を招いたと気づいたのか、違う違うと黒ずんだ両手を振って男は補足する。
「さすがにここには連れて来られねえが、街ん中で会ってな」
「あ……そ、そう」
今ここに、彼はいない。そう聞いてほっとしたような残念なような気持ちが、ちくりと胸を刺した。それ以上は何も言えずにウッドデッキの隙間を覗いていると、強面の方ががしがしと髪を掻きながら後を継ぐ。
「自分の人生に意味が欲しいってのは分かる。だが、どうせなら別の何かの方が良いんじゃないか? アンタ個人をちゃんと見てくれる人間が、心から祝福してくれるような――な」
誰かの、何かになりたい。
ここに居た証を、残したい。
そういう想いは多かれ少なかれ誰にでもあるだろう。ただ、それをいいように利用されるさまは、見ていて気持ちのいいものではないと男は言う。
ぎゅっと木の手すりに爪を立て、娘はやっとのことで口を開いた。
「私は……」
「ああ、お返事は彼に直接伝えてあげて下さい。言うのが遅い! って、文句でも全然いいと思いますよ?」
悪戯っぽく片目を瞑った丸眼鏡の男を一瞥して、違いないともう一人の男は笑った。
「アンタは生きてる。だったら、まだ間に合うだろ」
次の言葉を継げずに立ち竦む娘へ片手を挙げて、奇妙な来訪者達は再び夜の木立へ消えていく。なぜだか急に力が抜けてその場にへなへなと座りこみ、ベラは呟くように言った。
「……まだ、間に合う?」
正直に言って、もう一度会ったところで何を話せばいいのかは分からない。自分の境遇や過去、感情が変わるわけでもない。実際に会ってみなくたって、そんなことは当然分かる。……ただ。
(「あの日、どうしてうちへ来たのかしら」)
ここへ発つ前の、あの日。彼女の家を訪れた彼は、本当は何を話したかったのだろう。もしもう一度会えたなら、あるいはその真意を確かめることができるだろうか?
月光さざめく名もなき夜、花嫁の胸には確かな楔が打ち込まれた。それによって運命がどのように変転するのかは――今はまだ、誰も知らない。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【建造物分解】LV1が発生!
【友達催眠】がLV4になった!
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