リプレイ
平良・明
桜も満開で、いい季節です
冬は腹が減る季節なので辛かったことでしょう
春も腹が減る季節なので飯は大事です
なるべく普段食べているようなものでありたい
【液体錬成】で増やせるものは増やしましょう
酒とか、お米を炊くときに混ぜれば贅沢な味になります
料理は思いやり、ひと工夫です
せっかく作るなら大鍋でガッツリと
飯をこしらえるのに大きなかまどを作ります
おくどさん。というやつです
薪集めがてら、再利用出来ない壊れた民家の瓦礫を片づけたり、無駄なくいきたい
燃やせるものがたくさんあれば美味しいものもたくさんできます
ごうごうと生活の炎をあげて、一度戦火とはお別れです
守都・幸児
食料を確保するぞーっ
米なら電車で持ち込めるかな
出来るだけ持ち込むぞ
明や紅花のとこに持ってって
鍋でたくさん炊いてもらうぞ
必要なもんが電車に乗るように
器とか現地で調達できるものは現地で集めるぞ
俺の手は料理に向いてねえから
長岡京の廃屋を回って
器を片っ端から集めて使えるようにする
器は水を入れるのにも使えるはずだ
喩嘉の出してくれた水を配るのも手伝うぞ
これまでの復興活動で作られた
畑とかもきっとあるよな
それを片端から回って【植物活性】をかけていくぞ
これで一段と作物が実るがのが早まるはずだ
俺は陰陽師に恩がある
だから役に立ちてえぞ
こうしてると
俺が一緒に暮らしてた陰陽師の皆のことを思い出して
なんだか嬉しくなるんだ
喩・嘉
そうだな。冬も春も夏も腹は減るものなんだよな、不思議なことに。
明とのんびり会話をしながら京の様子を見て、彼らが必要としているものを判断する。
残念ながら俺は料理はできないが、そのほかにできることはあるかな
「青龍水計」の【水源】を使用して飲水を潤沢に確保
体調が悪い者、傷を負っているがいたら、症状を聞いて「犼薬匣」から適切な薬を処方して飲ませ、手当をする。
そうこうしていたら、仲間たちが作った料理の良い匂いがしてきたな
「腹痛が治ったら、炊き出しが行われているところに行っておいで。しっかり食べて体を休めることが、一番大事なのだから」
シャムス・ライラ
仲間と情報共有、連携
疲弊した所に攻め込まれてはひとたまりもない
ともかく出来ることからやっていこう
食料を穀物メインで可能な限り持ち込み
明殿や紅花殿、炊き出しをする仲間にいったん託し
まずは「活性治癒」で少しは体も楽になるだろうか
そして地形の利用で水路等しっかり修繕、補強
煮炊きにも、農耕にも必要になる
準備が整ったら
調理に参加
竈は仲間が用意してくれているようだし
得意という訳ではないが料理はひととおり出来る
もし、幾らかでも元気が出たなら幸い
食べて落ち着いた陰陽師達等から情報収集
長岡京の生活、防御に最低限必要な事を聞き出す
それを元に各方面の修繕がてら
周辺を見周り
異変があればすぐに知らせる
アドリブ等歓迎
杏・紅花
おなかが空いたらかなしい
おなかがいっぱいなら幸せ
花が咲きほこる季節なら、食べられる植物だってきっと大きく育ってゆくための準備してる
ちょっとだけ、パラドクスでお手伝い
蓮が咲けば景色にも色を添えられるかなあ
いい土地になって、たくさんの実りを齎してね
みんなでごはん作り!
あたしも普段からお料理するから、お手伝い
身体が弱わってる人やちっちゃい子には、お粥や重湯がいいかなあ
新宿島から持ち込んだミルク
少し混ぜれば栄養満点元気ハツラツ
子どもの笑い声が響けば
おとなもつられて笑えてくる
元気いっぱい跳ねる姿はなによりのおクスリだよねえ〜
●晴空の下、それぞれの役割を
薄紅色の花弁がひらひらと舞っていた。
惨禍に満ちた世にも草木が生い立つこの季節、風は春の息吹を運び、荒廃した都を吹き過ぎていく。
「桜も満開で、いい季節です」
トレードマークの帽子に手をかけながら、平良・明(時折の旅行者・g03461)は空を滑るような花弁を見上げて言った。顔を撫でる風はまだ些か冷たいが、厳しい冬の寒さを思えば何のことはない。
「冬は腹が減る季節なので辛かったことでしょう。春も腹が減る季節なので飯は大事です」
「そうだな。冬も春も夏も腹は減るものなんだよな、不思議なことに」
元は高貴な者の邸宅だったと思しき廃墟を前にして、喩・嘉(瑞鳳・g01517)は明と語らいながら笑みを含んでいた。荒廃した屋敷はもはや見る影もなく、庭園を囲んでいたであろう塀も、今や僅かにその一部分を残しているばかりだ。
屋敷前に広がるこの庭園跡地は、作業をするにも調理をするにも、適した空間と言えた。
「私は薪集めがてら、瓦礫を片付けるとしましょう」
「ああ、料理以外にもできることはありそうだな」
炊事一つ取っても、火を起こすための薪を集めたり、清潔な水の確保したりする必要がある。
二人がそれぞれに動き出したその後ろで、大きな米袋が地面にどさりと音を立てた。
「食料を確保するぞーっ」
パラドクストレインに乗せてきたそれらを、硬化した鬼の両腕を以って運んできたのは、守都・幸児(迷子鬼・g03876)だ。この世界の空気がそうさせるのか、彼は何処か活き活きとしていて、何だろうと様子を見に来た陰陽師に笑いかけた。
「こちらも使って頂ければと」
シャムス・ライラ(極夜・g04075)もまた、穀物の詰まった袋を地面に降ろした。
シャムスが運んできた袋の中身は、アワ、キビなど、この時代の食文化に合わせた雑穀類であり、粥にすれば庶民にも馴染みの食事となる。米もまた貴族を中心に食されているものであり、庶民には願ってもみない御馳走である。
シャムスが見れば、やはり飢えに苦しんでいるためか、様子をうかがう陰陽師や無頼者たちには生気がなかった。
(「疲弊した所を攻め込まれてはひとたまりもない。ともかく出来ることからやっていこう」)
食は命。
過酷な冬や戦禍を凌いでも、食物が欠けていては助かる命さえ助からない。
「おなかが空いたらかなしい。おなかがいっぱいなら幸せ」
鈴を転がすような声色で歌うように言いながら、杏・紅花(金蚕蠱・g00365)は、くるりと辺りを見回した。
少しでも食料となる作物を実らせようと、この近辺でも土が耕され、畑が作られていた。紅花が長岡京の復興の手伝いに来たのはこれが初めてのことではなく、あちこちの畑にも、作物が芽吹こうとしているのを知っている。
――花が咲きほこる季節なら、食べられる植物だってきっと大きく育ってゆくための準備してる。
厳しい冬は終わりを告げて。
暖かく優しい季節が訪れる。
芽吹く作物に助力が出来ればと、紅花は周りを見て回った。
庭園だったらしいこの辺りにも雨が降ったようで、池の跡と思われる窪地に泥濘が溜まっている。
ふと視線を感じて往来を見れば、住むところを追われてここまで辿り着いたものか――痩せた子とその手を握る母親がこちらを見ていた。
「まずは実りのお手伝い! もうすぐご飯もできるからね!」
空腹は人を不幸にするもの。
災厄に満ち溢れたこの世界であっても、せめて美味しいご飯でお腹を満たしてあげたい――。
ぱちりとウインクしてみせると、紅花は手の中の蓮肉――蓮の種子を、舞うようにして泥に撒いた。ぬかるんだ土に落ちたそれらが急速に成長を遂げ、色とりどりの蓮が花開く。
蓮は泥の中でこそ美しく咲く。
穢れを浄化し、毒素を吸い取って肥沃な土地へと変える蓮の花々は、さながら苦境に飛び込んで理不尽に抗うディアボロスたちそのものの姿を表しているかのようだ。
(「いい土地になって、たくさんの実りを齎してね」)
「おお……」
「これはなんと見事な……」
陰陽師や無法者ばかりではなく、襤褸を纏った人々も集まってきて、美麗な光景に目を輝かせていた。
「皆の頑張りで畑も増えてきたみたいだな。俺も手伝うぞ!」
植物活性の力を用いた幸児が、畑地の作物に力を与えて、健やかな成長を促す。
「明殿の作業も順調な様子。紅花殿、幸児殿、こちらの準備はお任せしても?」
調理を効率よく進められるよう、米や雑穀の置き場を整えていたシャムスが問うた。
「うん、こっちは任せて!」
「器とか色々用意しておくぜ」
紅花と幸児が応じ、明は、荒れ果てて崩れそうな邸宅に踏み入って、黙々と薪集めや片付けに力を尽くしている。
「やはり水が欲しいですね」
喩嘉が向かった先へ、シャムスは歩みを進めるのだった。
●川の修繕、病人の手当て
長岡京は、水の恩恵を受けた都だったという。
川は都の中にも流れ込み、南に流れる大きな川へと接続する。
けれど荒廃と戦乱の影響だろう、いま市街を流れる川の一部が堰き止められ、水の確保に支障が出ているようだった。
「水は生活の為になくてはならないものだからな。此処を何とかしておきたい」
「ええ、煮炊きや農耕にも必要ですよね。このままでは不便でしょうし、補修が必要かと」
川べりに立った喩嘉の隣に立ったシャムスが言った。
陰陽師や無法者たちには、既に喩嘉が協力を取り付けていた。
戦禍や空腹で今までそれどころではなかったのだろうが、人々もまた、この状況をなんとかしようと考えているようだ。
「この川を直すんですな」
「あっしらも手伝わせてくだせぇ」
「なんだかいつもより体の調子もいいんで」
輝ける光の隼が空を旋回し、人々が小手をかざしてそれを振り仰いだ。シャムスが呼び出した輝ける隼が、周囲を生命力溢れる世界に変え、傷ついた人々を癒やして活力を与えていたのだ。
「運び出した土はこちらへ。埋まっている井戸も使えるようにしたいですね」
「ああ、それが出来れば尚いいだろう」
水の恩沢を受けた土地とあって、井戸もあちこちに見ることができた。
地形を利用し、使えるものは存分に使う――シャムスが無法者たちとともに川や井戸の補修に尽力し、喩嘉もまた集まってきた陰陽師たちの指揮を取って、効率よく作業を進めていった。疲弊していた人々も、まさか自分たちがここまでやれるとは思いもしなかっただろう。
「頃合いだな。少し離れていてくれ」
喩嘉は言うと、川べりに立って、瑞鳳凰扇で虚空を凪いだ。
青龍水計により、清らかな川の流れが、修繕を終えた水路に見る間に流れ込んでいく。
「これで当分は問題なさそうですね」
シャムスの地形を活かした尽力もあり、人々を潤す水の確保ができた。
「ご苦労さまだ。さぞ疲れたし腹も減ったろう」
喩嘉が頑張ってくれた陰陽師や無法者たちの労をねぎらう。
そうして今度は、あばら家の連なる道端に座り込む人々に、声をかけ始めた。活性治癒の効果も現れ始めているが、空腹のあまり悪いものでも食したか、顔色の悪い者たちが散見されたのだ。
「大丈夫か? 良ければ手当てをしよう」
陰陽師を連れた喩嘉が病人に声をかけ、犼薬匣――種々の薬を収めた小さな薬箱を開いて、症状に適した薬を処方する。
同行する陰陽師もまた喩嘉に深く感謝を述べて、
「かたじけない。……腹を壊している者たちが他にもいるのですが」
「まだ薬にも余裕がある。連れてくるといい」
漢方の類であろうか、薬を調合して人々に飲ませ、手当を施す喩嘉は名医もさながらだった。
乾いた土に慈雨が降るように、その有難さは、人々の心に染み渡ったのである。
まだ若い陰陽師に、喩嘉は温顔を湛えて言った。
「腹痛が治ったら、炊き出しが行われているところに行っておいで。しっかり食べて体を休めることが、一番大事なのだから」
●炊飯の下準備
「薪もこれだけあればいいでしょう」
荒れ果てた邸宅の建材は、薪とするのに好適だった。放置して腐らせてしまうより余程よく、慣れた手付きでそれら木材を割って薪に変えた明は、続いて石材なども運び出して、炊事場を作り始めた。
「おくどさん。というやつです」
それは、かまどの異称だ。石を用いて作業を進めていく彼の傍らに、綺麗に割られた薪が積み上げられている。
「器もこれだけあれば十分だな!」
邸宅の一角から出てきたのは、陰陽師と共に食器などを運ぶ幸児だった。人が放棄してそれなりに日が経っているようで、崩れた屋敷からは、使われなくなった土器の類が多数手に入った。カチャリカチャリと音をさせながら、陰陽師たちが器を運んでくる。そして幸児はと言えば、その両腕で、大きな壺を抱えていた。
――それがしも手伝うとしよう。
――皆のためとなるのであれば。
幸児の話を聞いた陰陽師たちは、そう言って、すすんで協力してくれているのだ。
「水はシャムスと喩嘉が何とかしてくれてるはずだ。ちょっと行って汲んでくるぞ」
理知と機転を以って動くシャムス、そして得意の水計を用いて水源を生じさせる喩嘉の姿を想像しながら、幸児は大きな壺を抱えて彼らの元へと運んでいく。
(「俺は陰陽師に恩がある。だから役に立ちてえ」)
一緒に暮らしていたという陰陽師たちのことを思えば――長岡京の窮状は他人事とは思えない。
在りし日を追懐しながら、幸児は陰陽師たちと一緒になって汗を流すのだった。
●大盤振る舞い!
雲ひとつない晴天の下、明が設えたかまどを活用して、いよいよ炊事が始まった。
薪が火にあぶられてパチパチと爆ぜ、清冽な川の流れから汲み上げてきた水は、大きな壺に満々と湛えられている。
「せっかく作るなら大鍋でガッツリといきましょう」
明はこうした作業に慣れているのか、米を炊くのに不可欠な諸々の手順にぬかりはなかった。
米に対する水の量も、火加減もまた万全である。
「水もいいし、美味しいお米が炊けそうだね」
紅花が明を手伝いながら言う。
良い水に良い米、そして、
「料理は思いやり、ひと工夫です」
隠し味として混ぜ込んだ酒も、炊けた米をより一層、風味豊かなものにする。余ったものは液体錬成の効果をかけて冷暗所で保管してあるので、8時間もすれば、10倍の量に増えることだろう。
去った後を考えるのも、また思いやりというものだ。
「こちらもそろそろ頃合いでしょうか」
料理の腕を披露するシャムスのかき混ぜる大鍋から、白い湯気と食欲をそそる香りが漂ってくる。
雑穀を用いた粥である。
食欲をそそる香りに、集まってきた人々が目を輝かせていた。
「これも少し混ぜれば栄養満点元気ハツラツだよ」
香港カフェで居候しているという紅花も料理はお手の物。培ったその腕前を存分に振るって彼女も粥を作る。
新宿島から持ってきたミルクを混ぜれば、きっと疲れ切った人々を癒やし、子供たちの舌を楽しませるに違いない。
生命力溢れる麗らかな春に、咲き誇る蓮の花々。
凄惨にして過酷な世界が嘘のような、美しい景色が広がっていた。
「料理の良い匂いがしているな」
喩嘉が病んだ人々への処方を終えて戻ってきた。
「ああ、美味そうな匂いだなぁ」
壺に水を汲んで運んできた幸児が嬉しそうな顔をする。
「さあ、並んで並んで!」
紅花に手招きされて、人々がぞろぞろと列を作った。
振る舞われる料理の、美味なことと言ったら……!
苦難続きで落ち込んでいた大人も、美味しいご飯や、それを食べる子供たちの笑顔を見て、相好を崩す。
(「子どもの笑い声が響けば、おとなもつられて笑えてくる」)
守るべき者があるからこそ、人は懸命に戦えるのである。
「元気いっぱい跳ねる姿はなによりのおクスリだよねえ〜」
「元気が出たなら幸いです」
シャムスが、人々が椀を手に舌鼓を打つのを見ながら頷いた。
「では私は辺りの見回りに赴くとしましょう。異変があればすぐに知らせます」
それは人々にとっても、頼もしい言葉であった。
「それがしもお供仕る」
「久方ぶりに腹が満たされたのじゃ、どれ、腹ごなしに」
陰陽師や無頼者が、シャムスと共に周囲を巡回警備することとなった。
シャムスは家屋や道の状態をつぶさに確認しつつ、いざ敵が攻めかけてきたらどういった防御を取るべきなのかを彼らに助言していく。
聞こえてくるさんざめきこそ、人々の蘇生の証であった。
苦しみ多き世の只中で、爛漫の春に笑顔が花咲いたのである。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【液体錬成】LV1が発生!
【植物活性】LV1が発生!
【水源】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
【土壌改良】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV2が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
【ドレイン】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
ノイン・クリーガー
腹が減っては戦はできんか。
その通り。兵站がなくてはどうにもならん。
今日は補給部隊となろう。
しかしどうしたもんかねぇ…。
とりあえずジャガイモとウィンナーを持てるだけ持っていってジャーマンポテトでも作ろう。
この時代の日本人の口に合うかはわからんが、物珍しくはあるだろう。
大戦中は補給が滞り俺もひもじい思いをした。
あれは誰にとっても辛いものだ。
阿良々木・蘭
アドリブ、連携、大歓迎
長岡京の復興のお手伝い
食は人の天なりってくらい食料は人間にとって何より大切な事だからね
研究と試食を繰り返し分析した最高の味のエキスを使って調理
限られた素材で美味しいものをシンプルイズベストでその素材を最大限に生かし下手に手を加えず美味しい料理を作り上げる
最後に隠し味のエキスを妖獣の越幾斯を使って加える
『おいしくなあれ おいしくなあれ えぃっ』
笑顔で食事を配膳
みんなを活性化かさせ元気にするよ
美味しい料理を食べると笑顔になれるよね
笑顔になった人たちをみると心癒されるよね
そんな姿の人たちを見れる事は何よりも報酬だね
天城・美結
アドリブ・絡み歓迎。
腹が減っては戦はできぬ、というしね。
いっぱい作るよ!
せっかくだし温かいものを食べさせたいので、ご飯を炊いて塩おにぎりを作るよ。
一応この時代にも白米や塩はあるらしい(貴族階級限定だったらしいが)し、抵抗なく食べてもらえるかなとか。
炊飯器なんて使えないだろうし、水の分量や炊く際の火加減は出発前に調べておくよ!
あと直火で炊いたほうがおいしい気もするし。
炊けたら手を濡らして塩をつけてどんどん握っていくよ。
私の手はそこまで大きくないから、大きさの代わりに数を作って満足してもらう構え!
どんどん召し上がれ、と言いながら手を動かしていく。
●腹が減っては戦はできぬ!
荒れ果てた都の上に広がる空は、地上の惨禍をよそに澄み渡っていた。
薄紅色の花弁が風に舞って、開けた場所に荷物を降ろしたディアボロスたちにひらりひらりと降ってくる。
貴族の庭園であったと思われるその場所は、もはや見る影もないが、大勢に料理を振る舞うには最適だった。
「さてと、いっぱい作るよ!」
パラドクストレインから炊事のための道具を運んできた天城・美結(ワン・ガール・アーミー・g00169)は、それらを広げてさっそく炊飯に取りかかる。
(「一応この時代にも白米や塩はあるらしいし、抵抗なく食べてもらえるかな……」)
この時代の庶民の主食といえば、アワやヒエ、ムギなどの雑穀類であったようだが、貴族階級には強飯と呼ばれる白米も供されていたそうである。ともあれ、庶民にとって白い米は、願ってもみない大変な御馳走に違いない。
「せっかくだから温かいものを食べてもらいたいな。腹が減っては戦はできぬ、というしね」
「その通り。兵站がなくてはどうにもならん」
美結の言葉にノイン・クリーガー(ゴースト・g00915)が渋みのある声で言って頷いた。
補給、給養は戦闘と比べて目立たぬようだが、必要欠くべからざる戦いの要である。
ひとたびそれが滞れば兵の士気は見る間に下がり、そのため無惨な敗軍と化した例は歴史上、枚挙にいとまがない。ヤマタノオロチの軍勢が侵攻しようとしている今、まず必要なのは腹ごしらえだ。
大変なときこそ、食事は心身を支える。
温かな料理であれば、尚のことである。
「食は人の天なり、ってくらい、人間にとって何より大切な事だからね」
二人のやり取りに、阿良々木・蘭(エデンズイノベイター・g02198)も同意する。
食べることは、人間にとって天の如く重要であるという箴言だ。
ゆえに、ただ腹を満たせば良いというわけではない。
より美味しく、より魅力的に――滋養に富んで美味なる料理は、人々の心を包み込み、生きる希望を抱かせるものだ。
「火を起こすのは任せてもらおう」
幸い、他のディアボロスが運んできた薪もふんだんにあり、調理に必要な火を手に入れるのは容易だった。清潔な水も壺に満々と湛えられており、料理を作る準備は万端整っている。
ノインは持ち込まれた道具や石材でかまどをこしらえ、手際よく火起こし始めた。
「直火で炊いたら美味しいよね」
炊飯器なんて便利なものは使えなくても、問題ない。美結は土鍋や釜で米を炊く方法を調査済みだ。
「米があるとすれば、もう一品加えても良さそうか」
食料確保を、との案内人の要請に「どうしたもんかねぇ……」と顎を撫でていたノインだったが、一計を案じて、軍用らしい鞄に道具や食材を満載してきていた。中身はジャガイモやウインナー、そして調味料の類であり、それを組み合わせて作られるのは、
「ジャーマンポテト?」
「ああ、当たりだ」
蘭の問いをノインは肯定して、
「どれ、腕を振るうとするか」
ナイフでジャガイモの芽を取り、下処理をして手ごろな大きさに切る。ウインナーをもまた食べやすい大きさに切り分ける。
戦場において敵を瞬時に仕留めるノインのナイフ捌きは、料理をするに当たっても驚くほど無駄がない。
持ってきたフライパンの上にオイルを引き、ウインナーを炒め、頃合いを見てジャガイモを投入。
美味しそうな匂いが辺りに漂ってきた。
(「この時代の日本人の口に合うかはわからんが、物珍しくはあるだろう」)
手際よく料理を作るノインのすぐ近くで、美結が釜とにらめっこしていた。
「水の量とか火加減は気をつけないといけないけど」
事前に調べ上げてきた美結に隙はない。
米と水の分量、米の浸水時間、火加減、蒸らし時間も把握済み。
ここぞと蓋を取れば、やがて食欲をそそる温かな湯気が露天に広がった。
「さあ、ここからが本番だよ!」
綺麗に洗った平皿の上に次々と乗せられていくのは……もちろん、美味しそうな握り飯!
あちち、と炊きあがった米の熱さを感じながらも、つやのある米を掬って、美結は上手に握っていく。
塩おにぎりである。
(「私の手はそこまで大きくないから、大きさの代わりに数を作って満足してもらおうかな!」)
長岡京を守るため、汗水垂らして働いている陰陽師や無法者にとっては、塩分補給の意味でもうってつけだ。
「シンプルイズベストだよね」
蘭が言いながら、木の匙で掻き回していたのは、栄養のある山菜類が盛り込まれた粥だった。これならば、体調を崩した者も食することができ、何より、人々の心と体を温めるだろう。
そして美結の手で並べられた握り飯の美味しそうなことと言ったら!
「おお……」
「なんと美味そうな……」
飢えきった人々にとって、きらきらと光って湯気を放つそれらは、どんな宝物より魅力的に見えた。
「こっちももうすぐだからね。この最高の味エキスを使えば、美味しいお粥ができるはず」
とろとろとした粥を木の匙ですくい、小さな皿に移して味や食感を確かめる蘭。
彼はそれを終えると、おもむろに隠し味の瓶を取り出した。
「これこそ妖獣の越幾斯(エキス)!」
……なにやらとんでもない単語が含まれていたような気がしたが、気のせいだろうか。人々はと言えば、目の前の美味しそうな料理に気を取られていて、気にした気配もない。
「おいしくなあれ、おいしくなあれ、えぃっ」
モーラット・コミュ『わっふる』とともに、特製のエキスを振りかけながら、おまじないも一緒にかける蘭。
歌うような言葉に合わせ、エキスが粥の中にぽとりぽとりと落ちては溶けていく。
その効果はてきめんで、ただでさえ上手く作られた粥は、人々が味わったこともないほどの美味となった。残留効果の力は大きく、蘭の握り飯や、ノインのジャーマンポテトの味もまた、輪をかけて向上する。
食材の味を存分に活かした温かな料理の数々は、苦境に陥った人々にとって、どれほど有り難いものか知れない。
「こりゃ不思議な料理だな」
「うめぇ! うめぇぞこれ!」
物珍しげにジャガイモやウインナーを口にして驚く無頼者たち。
陰陽師たちも握り飯や粥を次々に平らげ、病人や怪我人も、温かく美味なる粥に生きる気力を取り戻していた。
(「大戦中は補給が滞り俺もひもじい思いをした。あれは誰にとっても辛いものだ」)
飢えは、人々の生きようとする意志を挫く。
実に食事こそ、災難に見舞われた人々にとって、心の闇を照らす光明そのものだ。
「どんどん召し上がれ」
美結が言いながら手を動かして、おにぎりを次から次へとこしらえる。
「このような佳味がこの世にあろうとは」
「ありがたや、ありがたや……」
「感謝してもしきれませぬ……」
恭しく捧げ持つようにして、感謝の言葉を口にする陰陽師たち。
「おかわりもあるからね」
土器の椀に、蘭が湯気のたつ粥を盛る。それを両手で包み込むようにした人々が仏菩薩でも拝むように頭を下げた。
「美味しい料理を食べると笑顔になれる。笑顔になった人たちをみると心癒されるよね」
わっふるが蘭の傍らで、やりきった感を顔に漂わせていた。
「そんな姿の人たちを見れる事は何よりも報酬だね」
飢えと戦いに憔悴していた人々の顔に活力が戻り、爛漫たる春さながらに、笑顔が花を咲かせたのであった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【光学迷彩】LV1が発生!
【おいしくなあれ】LV1が発生!
【建造物分解】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
【リザレクション】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
「さあさ、もう一杯」
「たんとお上がりくださいませ」
長岡京にほど近い村は、惨禍に見舞われていた。
爛漫と咲き誇る花に囲まれて、妖怪どもが酒宴を開いているのだ。
酌をするのは大江山の巫女たち。
それに囲まれてやに下がっているのは、神騙る蟒蛇『夜刀』である。
「うむ、酒宴もまた一興」
略奪され、怯える人々を肴に、妖怪どもは宴に興じているのだ。
宴会は始まったばかり。
やがてそれが無辜の村人の血で彩られるのは、火を見るより明らかである。
その凶行を止めねばならないが――もしディアボロスの戦力・人数が充分に足りているのであれば、戦う相手を分担して攻めかかった方が効果的だろう。
大江山の巫女と神騙る蟒蛇『夜刀』、双方に適切な戦力を裂くことができれば、両者を一挙に圧倒することもできるかも知れない。
桜舞い散る村で、ディアボロスと妖怪との戦いが幕を開ける。
ノイン・クリーガー
おやおや、随分と飲んだくれているようだな。
せいぜい浮かれていろ。
殺りやすくて助かる。
まずは存在を悟られないように【地形の利用】と【光学迷彩】で姿を隠しながら【忍び足】で妖怪の酒宴に接近する。
そしてある程度まで接近したら手榴弾を宴席に投げ入れ、【爆破】すると同時にMK45/Sで【制圧射撃】を行う。
喩・嘉
京の人々と触れ合って、俺も元気をもらった気がする
彼らに平穏を贈ろう
花見に酒宴とは呑気なものだ
村へ向かったら、姿を表す前に先手必勝で攻撃させてもらおうか
羽扇を振るい、雲を呼ぶ「雲行雨計」を使用。敵群に向け
雨の弾丸を降らせる
なぜこの技なのかと言えば、奴らの酒宴をぶち壊したかった。という意地の悪い理由だが
それに
雨は仲間の接近をいっそう隠してくれるからな
※アドリブ・連携歓迎
守都・幸児
日々の暮らしが大変なのは、この辺のどの村も同じはずだ
そんなとこで略奪なんざさせねえぞ
連中がもう村人を襲い始めてるてんなら
俺はその巫女どもを止めてやる
俺が使う技は「除」
村人を巻き込まねえように
略奪を行ってる巫女どもを狙って、紙符の花弁を放つ
花弁は土地の花になるから、ここではきっと桜になる
本物の桜吹雪に混ざっちまえば、どれか本物でどれがパラドクスかわからねえだろ
さあ、避けれるもんなら避けてみろ
接近するときは【光学迷彩】を使って【不意打ち】してみるか
喩嘉の雨にも紛れさせてもらうぞ
桜に攻撃されたら、敵も酒宴どころじゃなくなるだろうよ
桜もてめえらに見られたくねえらしいぞ
って笑ってやる
※アドリブ・連携歓迎
シャムス・ライラ
仲間と情報共有、連携
花の宴には血なまぐさい連中だ
人の恐怖を酒の肴になど…
不埒者どもには、本当の「粋」というものを教えてやらねばなるまいよ
地形の利用、情報収集し、戦場の概要を把握
まずは、村人の避難を最優先に
仲間が攻撃で敵を引き付けている内に
安全な場所へ避難を促す
その後、遠距離攻撃に適した位置取り
戦場を覆うように音色を響かせて
「日と月の四行詩」にて
敵を精神攻撃し、捕縛
村人の追撃や夜刀の援軍に向かえぬように分断
且つ敵をこの場に縫いとめる事で仲間の攻撃に繋げる
舞狂う雨と桜の花の伴奏にでもなれば幸い
ヤマタノオロチの幻影はジャンプと未来予測、一撃離脱で距離を取り
可能な限り損害を減らす
アドリブ等歓迎
●花に風
「さあさ、もう一献」
「うむ……村人どもめ、怯えておるわ」
鎌首をもたげて口に運ばれた酒をごくりと呑み下した夜刀は、黒々とした妖気を発散しながら震える村人たちを睨んだ。
取り巻く大江山の巫女たちは妖美な笑い声をたてながら、無辜の人々が怯えるのを見て愉しんでいる様子。
宴の狂騒に浸り切っている妖怪どもは、すぐ其処まで迫っている死神の存在にも気付くことはない。
(「おやおや、随分と飲んだくれているようだな」)
妖怪どもの背後に広がる林の中に分け入ったノイン・クリーガー(ゴースト・g00915)は、心中で冷笑しつつ、足音も立てずに宴の場へと接近した。豊かな自然に囲まれた村とあって、林や叢など遮蔽物として使えそうな地形には不自由しない。
(「せいぜい浮かれていろ。殺りやすくて助かる」)
危機が迫っているとも知らずに、大江山の巫女たちが一人二人と立ち上がる。
「さあ、お代わりを奪(と)ってくると致しましょう」
「酒の肴に、鮮やかな血の華を」
怯える村人から酒ばかりでなく命さえ奪おうとしたその時、雷鳴がゴウと空に轟いた。ぽつりぽつりと降り出した雨滴がすぐさま沛然たる驟雨となり、掌で雨を受け止めるような仕草をした巫女たちの顔にサッと緊張の色が差した。
「雨……?」
「いえ、これは……!」
術中に陥ったと気付いた時にはもう手遅れだ。
雨脚は明確な害意を帯びて急速に強まり、豪雨と呼ぶも愚かな文字通りの弾雨と化したのである。
悲鳴を上げて頭に両手を翳してみたところでどうなろう。一滴一滴が弾丸と化した雨滴は機銃掃射よりなお烈しく巫女たちの五体を穿ち、縫い付けるように地に倒れさせた。
「花見に酒宴とは呑気なもの」
反撃の舞いどころではない。
雲行雨計――燃えるような朱を帯びた瑞鳳凰扇を天高く掲げていた喩・嘉(瑞鳳・g01517)は、目の前にそれを構え直すと、両の瞳に慌てふためく妖怪どもの姿を映した。
「あなたが……!」
「やってくれますね……!」
「お前たちの酒宴をぶち壊したかったのでな」
言葉とは裏腹、飽くまで冷静な声色なのが却って恐ろしい。
(「京の人々と触れ合って、俺も元気をもらった気がする。彼らに平穏を贈ろう」)
陰陽師、無法者、そして懸命に生きようとする民との関わりが、彼に――ディアボロスたちに力を与えていた。
想いだけではない。蓄積した残留効果の力が、その能力を後押ししているのだ。
笑みさえ含んだ喩嘉は羽扇で口元を隠しながら、もう一つの狙いを口にしていた。
「それに――雨は仲間の接近をいっそう隠してくれるからな」
一つの計略に幾つもの狙いを籠めるのが軍師というものだ。
敵の戦力を減らすのはもとよりのこと、先制攻撃を奏功させて敵の機先を制した喩嘉は、機を窺っていた味方の攻撃を支援してさえいた。
「……頃合いか。援護、感謝する」
雨音に紛れ、機械化された両脚――ライゼパンターを活かして忍びやかに接近していくノインの姿は、狩猟動物が獲物に近づくさまを彷彿とさせた。茂みに隠れこんで息を潜めれば、その隠密用戦闘服が森林仕様の迷彩服さながらとなり、目を凝らしても見えぬほど辺りの空間に溶け込んでしまう。
絶好の場所に位置取ると、ノインはMk45/Sを抱えたまま手榴弾のピンを抜き、スナップを効かせて投擲した。
巫女たちの足元に、放物線を描いて放たれた『それ』が転がってくる。
「……?」
逃れる暇もあらばこそ、首を傾げた巫女たちの足下で手榴弾が爆発した。
刹那、台無しにされた宴の代わりに幕を開けたのは、凄腕の暗殺者により演出される鏖殺の狂宴だ。
恐るべき奇襲攻撃(サプライズアタック)が敵を蹂躙する。
抑えられた銃声が連続し、叢を貫いた無数の弾丸が巫女たちの四肢を瞬時に吹き飛ばした。自らの血で宴を染め上げることとなった大江山の女どもは、口の端から血を流して目を開けたまま絶命する。
「油断大敵とはこのことだ」
叢からゆっくりと歩み出て挟撃の形を取るノイン。
「もう逃れられねえぞ!」
眦を決した守都・幸児(迷子鬼・g03876)が睨みをきかせれば、三方を阻まれた巫女たちが背中合わせになりながら後ずさる。と、足元に横倒しになっていた酒瓶が、巫女の踵に蹴られてごろりと転がった。
(「日々の暮らしが大変なのは、この辺のどの村も同じはずだ。そんなとこでこれ以上略奪なんざさせねえ」)
宴が始まったばかりであったのは不幸中の幸いだ。失われた酒瓶はここにあるきりで、転がったのが人の首でないのは、駆けつけたディアボロスたちのお陰だろう。
窮乏する人々がものを奪われることが、どれほど辛いかを幸児は知っている。
後で残留効果を用いれば充分に補填は出来ようが――日々の糧を取り上げて己の快楽に供する妖怪どもの暴虐に、幸児は総身から怒りを発して炯々たる眼を向けた。
身の丈6尺をゆうに超える鬼人に威圧されれば、巫女たちも息を呑まずにはおれない。だが彼女たちとて大江山の名を冠する妖異。幸児の気迫に一旦は気圧されたものの、すぐ口の端を吊り上げてせせら笑った。
「弱き者を虐げて何が悪いのです」
「宴の邪魔をする者ども、残らず血祭りに上げましょう」
挑発的な言辞に、幸児は笑いを返した。
「桜もてめえらに見られたくねえらしいぞ。もう好き勝手はさせねえ!」
●歌舞音曲に花嵐
「花の宴には血なまぐさい連中だ。人の恐怖を酒の肴になど……」
戦場に驟雨が降り、弾雨が空と叢の奥から巫女を射抜く。
味方のその戦い振りと、傍若無人な巫女が倒れていくさまを、シャムス・ライラ(極夜・g04075)は見た。
「不埒者どもには、本当の『粋』というものを教えてやらねばなるまいよ」
京の都が栄華を誇っていたとしても、そこを離れれば、その日を食いつなぐのがやっとな村人の暮らしがある。懸命に生き延びようとする人々から、なけなしの糧を収奪し、命までをも奪おうとする凶行を赦すわけにはいかない。
その村人たちは妖異を圧倒する力に目を見張り、突然のことに言葉を失ってもいた。
「ここは私たちにお任せを。暫くの間、離れたところに避難していて下さい」
戦闘中とて出来ることには限りがあるが、落ち着いた声音で丁寧に伝えるシャムスの言葉に村人たちが震えながらも頷いた。その中の頭立った壮年を見出すと、シャムスは目配せをして避難を促す。
「こっちだ。動けない者はおぶってやれ」
頷いて動き出した彼にその場を任せてしまうと、シャムスは戦場に視線を向けた。
降り止んだ雨は草葉を輝かせ、妖怪どもの放つ酒気や邪気さえ洗い流してしまったかのようだ。狐の嫁入りでも通り過ぎた後のような、瑞々しい空気が辺りに満ちている。
「花見がしたいのならば存分にするがいい。生憎、これで見納めとなるだろうが」
喩嘉が羽扇を手に言い、つと横目に幸児を見た。
アヴァタール級たる夜刀は、機先を制して攻撃を仕掛けた隙に、明や紅花が引きつけている。
戦いながらも戦況の把握に努める喩嘉は、敵の動揺も見て取っていた。
巫女たちは気圧されまいとするように口の端を吊り上げて、
「随分と乱暴なこと。それも嫌いではないですけれど」
「ご存知でしょう、弱きものが強きものに喰われることこそ、自然の道理」
自然を騙る巫女の物言いに、幸児は片方の拳を震えるばかりに握り締める。
否――怒りは怒りだが。
その内心は至って冷静だ。
(「村人はシャムスが逃してくれたな。蟒蛇の心配もねぇ。一気に片付けるぞ!」)
目の前に掲げた拳――強く握りしめたその拳を開くや否や、ふわりと紙片が溢れ出た。
驟雨が駆け抜けた大気に、千々と裂かれたそれらが舞い、瞬く間に目にも鮮やかな桜吹雪と化す。
花の嵐に取り巻かれた大江山の巫女たちは一瞬、周囲を見回しながら呆然とした。
見惚れるのも束の間。
万朶の桜から溢れ散ったかのような花弁が鋭利な刃と化し、巫女の肌を裂いてその装束を鮮やかな朱に染め上げる。
描き出された絶景を、その時、穏やかな音色が彩った。
弾かれる弦の音は大気を震わせ、息を呑むような美景を引き立てる。
(「夜刀は明殿や紅花殿が引きつけている……となれば」)
残る巫女を援軍に向かわせるわけにはいかない。ここで討ち果たす。
妖気さえ清浄たる響きに掻き消す破邪の音曲。その奏者こそ、五弦琵琶【シストルム】を奏でるシャムス・ライラ。
緋袴を乱しながら鬼神楽を舞う巫女――その殺伐たる舞踊を包み込んで、郷愁に満ちた響きが邪気を薄めていく。
(「舞狂う桜の花の伴奏にでもなれば幸い」)
その音色は村に響き渡って、避難した人々さえ包んで心の緊張を解きほぐし、討つべき敵には容赦ない束縛を与える。
「そんな、どうして……」
「あ、あぁ……」
魔の尖兵たる大江山の巫女たちは、シャムスの奏でる音色に包まれていつしか殺意満々たる瞳の光を失っていた。酔ったような表情を浮かべたまま、攻撃すべき対象さえ見失って、巫女は知らず足を止めていた。
こうなれば巫女の背から這い出た入れ墨の蛇――八岐大蛇の似姿も酒に酔わされたようにうねくり、滅多矢鱈に振るわれる鞭さながらに空を切るだけだ。
飛蛇の如き鞭の用法に熟達したシャムスが、どうして打たれることがあろうか。
軽量なギミックブーツで地を蹴り、後ろへ跳んで回避するシャムス。
その目の前で、残る巫女たちが遂に昏倒するように地に倒れ伏した。
相当な数を誇っていた取り巻きはみな倒れて。
残るは、ディアボロスたちに引き付けられ、怒りに呪詛と妖気を燃え上がらせた夜刀のみとなった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【完全視界】LV2が発生!
【植物活性】がLV2になった!
【未来予測】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!
【ガードアップ】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV2になった!
平良・明
山の神が平地に降りてきて、咲かすのが桜と言われていますが
見た感じ、この蛇はそういうものでは無いようです
粋もわからぬ大酒飲みに、「礼」というのを教えてやりましょう
一陣に飛び、細長い貧相な身をおろす「折り紙」の手裏剣
もしくは、酒臭い大口を閉ざす渾身の「鍋」の一投
呪いの刀は刀で受けます
やおら懐から、妖刀「時空の歪み」を取り出し、しっかり弾いて迎撃
この刀の正体は何なのか、私にもわかりません
よもや、酒に酔いしれて、花の色まで見えていないのではありませんか
なんともったいない、山に帰れとはいいません、ここで首塚になって頂きます
杏・紅花
この蛇はなんでも丸呑みしそうなかんじ
お酒のおいしさはまだ分からないけど、酒の肴が人の苦しむ姿なのは、まず間違いなく、趣味わるいっ
酔っ払いはきらぁい
ゆうるり、構えてから不意に動きだす
その目で追えるかなっ!?
酔い覚ましに蹴りでもどうぞっ
胴体蹴りまくったら転がるかなっ
まだ酔っ払ってるか確かめるために、目玉狙ってもいいかも
腫れぼったい目は、酔っぱらいのショーコ
目ぇ覚まさないと終わるぞおっ!
花を愛でるなら
お酒も肴もいらない
ただそのまま見れば、いいんだぞお
阿良々木・蘭
アドリブ、連携、大歓迎
蛇って鶏肉みたいで美味しいと聞くし
酒で肉質も軟らかくなってそうだし
捕食したっていいよね
左手に宿る悪魔の力を解放
なんとか相手の攻撃を掻い潜り接近を試みるが
上手く接近できなので肉を切らせて骨を断つ覚悟で
壊滅の尻尾の攻撃をくらい左手で尻尾を捕まえ
パラドクスの悪魔の左手で生命力を吸収し活性治療
酒気にあてられる
対称の力をドレインして血肉となって左手に宿らせようとする
食料にどうかなと考えてみたけど
呪いとか毒とかありそうだし向いてないよね
ノイン・クリーガー
さて、そろそろこの蟒蛇も酔いがさめた頃かね。
『こんな所でドンチャン騒ぎするもんじゃないねぇ。
近隣住民の迷惑になってるぞ』
夜刀の攻撃は尾と角と噛みつきか。
シンプルだが強力だな。
【フェイント】と【未来予測】を活用して避けるようにしよう。
『どうした、まだ酔ってるのか?』
挑発も交えて苛立ちと疲労を募らせるる。
そして頃合いを見て発煙弾で煙幕を張り、【撹乱】しつつこちらは【完全視界】を使用。
煙に紛れながら【モブオーラ】と【光学迷彩】で気配を消しつつ【忍び足】で接近し、石か何かを投げて音を立て注意を引き、カランビットの【不意打ち】で喉を裂いて【暗殺】する。
喩・嘉
夜刀の分離、助かった。思う存分巫女と戦えたぞ。
残るは大将だけだ。
こうなってしまえばただでかいだけの蛇。速やかに消えてもらおうか。
敵が己に噛みつこうと口を開けたところで
桜に混じり蓮の花弁を舞い散らせ時を操作
夜刀の目に、牙に、口の中に。弱点へ目掛け
「蓮弁散華脚」を撃ち込む
雨の上がった後の空気は澄んでいる
最後に少し、美しい花を見上げてから帰ろう
※アドリブ、連携歓迎
シャムス・ライラ
仲間と情報共有、連携
さて、いよいよ大蛇との闘い
取り巻きはいなくなったが、さてどう出るか
地形の利用、情報収集で戦場の概要を把握
仲間達は近距離攻撃が多いだろうか?
ならば少しでも有利になるよう援護を
トラップ生成で桜吹雪と煙幕
視界を覆って敵攻撃の命中を下げ
掻い潜って接敵しやすく
仲間には罠について密かに伝えておく
我らは完全視界があるので問題はないはず
自らは忍び足も駆使し
仲間の攻撃に気を取られている時を、未来予測で見計らい
その隙をついてピラミッドコンバット
敵の尾の攻撃はジャンプと一撃離脱で可能な限り損害を減らす
そろそろ酔いも醒めたろう
お前は倒され、地に這いつくばる
それが現実というものだ
アドリブ等歓迎
守都・幸児
酔いどれ蛇の相手をありがとうよ
さあ、俺も後始末を手伝わせてもらうぞ
てめえは呪詛を使うんだったな
なら俺はその呪詛を返してやる
俺が使う技は「建」
両腕を闇の障壁に変えて
夜刀の攻撃を受け止めたら
そのまま同じ形の闇を返してやるよ
てめえの攻撃をそのままくらいやがれ
盾越しに衝撃は来るだろうが耐えてやる
特に牙の攻撃は俺の技と同質みてえだな
なら、力比べといこうじゃねえか
桜の木が巻き込まれねえように気をつけながら戦いてえ
村の民にとっても大事な木のはずだ
この先も、何度でも咲いてほしいからよ
無事に終わったら、俺もちょいとだけ桜を見てから帰ろうかな
酒も宴もなくったって
皆と見る桜ってのは、綺麗なもんだ
※アドリブ、連携歓迎
●連携の妙
「呪わしい、憤ろしい……我が宴を邪魔した者ども、みな丸呑みにしてくれようぞ!」
相当な数を誇っていた大江山の巫女たちが殲滅の憂き目に遭っていた、まさにその頃。
強大な力を誇る妖異――神騙る蟒蛇『夜刀』は、戦力を分けたディアボロスたちにうかと誘い込まれていた。
村祭りの中心にでもなりそうな広々とした空地に、である。
「山の神が平地に降りてきて、咲かすのが桜と言われていますが」
神の依代と見なされてきた桜の木々も、眼前の怪異などは願い下げだろう。帽子を被り直しながら、平良・明(時折の旅行者・g03461)は呪詛を炎のように滾らせる巨体を見据えて言った。
「見た感じ、この蛇はそういうものでは無いようです」
蛇体に角と言えばその名が示す通り、名高き夜刀神を写し取ったかのような敵の姿だ。ところが自然神を名乗る威厳は何処へやら、酒宴を妨害され手勢を蹴散らされるという窮状に、大蛇は怒り狂っている。
「酔っ払いはきらぁい」
ここまで飛ぶように駆け、禍ツ大蛇を引きつけた杏・紅花(金蚕蠱・g00365)は、近寄るなとばかりに長い袖を振って見せた。
(「この蛇はなんでも丸呑みしそうなかんじ」)
酒の味はまだ分からない紅花だけれど、目の前の敵はどう考えても赦してはおけぬ酔漢である。
「酒の肴が人の苦しむ姿なんて、趣味わるいっ」
蛾眉をひそめる紅花の言葉に頷いて、共に敵と対峙する明が拳を握り締めながら言った。
「粋もわからぬ大酒飲みに、『礼』というのを教えてやりましょう」
「よくもほざいたな! その余裕も今だけのこと、すぐ絶望と苦痛に塗れさせてやる!」
鎌首をもたげた夜刀は、両者を赤き眼で交互に見ると、遂に攻撃に打って出た。
すぐさま別方向に散開する二人。
「まずはその華奢な体を八つ裂きにしてくれようぞ!」
頭頂の角に呪いを漲らせて、夜刀が真っ先に狙い定めたのは紅花だった。
飛ぶように疾駆する少女の敏捷さは常人のそれを遥かに超え、並みの敵であれば捉えることも困難であろうが、猛き妖怪の写身である夜刀も流石のもの。宙を舞う美しき蟲を捕えるかの如くに追いすがり、その角で斬撃した。
余りに呆気ない手応えに夜刀は笑い声をたて。
あわれ泣き別れとなった体が、物言わぬまま地面に転がった。
「ぐはははは! 脆い、脆いものだ! どうだ、仲間が無惨に殺されるのを見るのは!」
哄笑し、勝ち誇る黒き大蛇。
しかし次の瞬間、その聴覚に届いたのは驚くべきことに――たったいま斬殺したばかりの少女の声であった。
「やっぱり酔っ払いだねぇ。ユメでも見てるんじゃない?」
絹糸が千切れ飛んで、ほつれた糸が風に舞う。
「何だと!?」
綾の綻(ニィエンスー)――紅花がパラドクスを以って紡ぎ上げた絹糸の身代わりが斬り裂かれたまでのこと。しかして紅花自身は軽やかに跳び、驚愕する大蛇の顔面に迫っていた。
「腫れぼったい目は、酔っぱらいのショーコ。目ぇ覚まさないと終わるぞおっ!」
その美しき甲殻の足先がぐざりと夜刀の赤き片目に突き刺さり、蛇の頭が衝撃にぐらりとかしいで、
「グギャアァァァァァァァッ!」
絶叫しながら夜刀が後ずさり、ブンブンと顔を振った。
「花を愛でるならお酒も肴もいらない。ただそのまま見れば、いいんだぞお」
ふわりと着地して紅花が言う。
「おのれ、おのれおのれおのれ小娘が! 切り刻んで喰らってやる!!」
その隙を逃す明ではない。
死角を取りながら、叫ぶ夜刀めがけて手裏剣を投擲。風を切って回転するその鋭利な切っ先が黒々とした蛇身を斬り裂いて飛んだ。身を裂かれた夜刀は投擲武器の軌跡から明の位置を判断、潰れていない片目で捉えつつ怒号する。
「貴様ッ、もう逃さ……グガッ!?」
唐突に、鍋。
なぜか追い打ちの鍋がスコーン! と頭側に直撃していい音をさせた。
夜刀は首を振ると、その赤き眼で明を睨んで牙を剥き出しにした。ここまで虚仮にされて黙っていられようか。頭部から生えた禍々しい角に怨念が集結し、燃え上がる炎もかくやと呪詛を滾らせながら、夜刀は眼前の敵に襲いかかった。
地に立った明が、真っ向からそれを迎え撃つ。
その懐から取り出したるは、妖刀――そう、それはまさしく刃物たるクロノオブジェクトに他ならない。『時空の歪み』と呼ばれるそれは捉えどころがなく、しかし縦に構えれば、襲い来る夜刀の象徴たる角を弾いて確かにそらしていた。呪詛の余波と衝撃を受けながらも地に転がって受け身を取る明。
「やはりこの程度ですか」
必殺の攻撃を、かく平然と受け流されてしまえば、夜刀もその怒りをいっそう滾らせるほかない。
「よもや、酒に酔い痴れて、花の色まで見えていないのではありませんか」
そして明の挑発の言葉は、夜刀の怒りの火に油を注いだ。
「なんともったいない、山に帰れとはいいません、ここで首塚になって頂きます」
●捕食する者、される者
「蛇って鶏肉みたいで美味しいと聞くし、酒で肉質も軟らかくなってそうだし」
特有の威嚇音を鳴らして牙を剥き出しにした隻眼の夜刀は、潰れていない方の眼で少年の姿を捉えた。
少女と見紛うばかりな美少年である。
禍々しい蟒蛇に睨まれても、彼――阿良々木・蘭(エデンズイノベイター・g02198)は涼やかな表情を変えることなく、澄んだ声でさらりと言ってのけた。
「捕食したっていいよね」
小首を傾げて見せる蘭の言葉はその外見とは裏腹に恐ろしく、意表を突かれた夜刀は一瞬の絶句の後に哄笑した。
「ぐははははは! 何を言うかと思えば、我を喰らうだと! 面白い、どうやるのか見せてもらおうではないか!」
蘭を睨んでガラガラヘビのように尾を持ち上げる夜刀。
対する蘭は、左手を蛇に向けて伸ばすと、毅然として解放の詞を口にしていた。
「パラス・ヴェーダーズィー」
瞬間、恐るべき力が左手よりほとばしった。
「叩き潰してくれる!」
夜刀は尾を鞭のようにして横薙ぎに振るい、また叩きつけ始めた。その威力、風圧の凄まじさはまるで嵐のようだ。
「やっぱり、そう簡単に近づけさせてはくれないね」
悪魔の左手で捉えるため、蘭は夜刀の振り回す尻尾の動きを慎重に見極める。距離を取っているだけでは埒が明かず、このままでは黒き猛威がいずれ華奢な体を捉えるだろう。故に蘭は、敢えて尾を振り回す夜刀の懐に飛び込んだ。
――肉を切らせて骨を断つ、その言葉通りに。
なんという勇気であろうか、尾の動きを見極め、左手に悪魔の力を纏わせたまま凛とした面持ちで敵に接近しゆく蘭。
「馬鹿め、死にに来たか!」
夜刀が勝利を確信し、振り上げた尻尾を強く強く叩きつけた。
凄まじい衝撃にクレーターができる。
その中心で無惨な屍を晒すかと思われた蘭はしかし、両足で立ったまま――掲げた左手の力を発揮していた。
ダメージはある。衝撃だけでも凄まじいものであったはずだ。
しかし悪魔の左手はもはや巨大な夜刀の尻尾を受け止め、その生命力さえも吸収していた。
タッとバックステップした蘭は、酔ったようにふらつきながら、
「とと、酒気まで奪ったかな」
「き、貴様ッ……何をした!?」
「何をって、ちょっと味見をしただけだよ。でも」
生命力を吸収した悪魔の左手――その手を開いたり閉じたりして見せながら、首を横に振る蘭。
「食料にどうかなと考えてみたけど、呪いとか毒とかありそうだし。向いてないね」
●合流、そして
呪詛を発散する強大なる黒蛇は、ディアボロスたちの攻撃を受けて猛り狂う。
紅花、明、そして蘭が奮闘して戦闘を有利に進め、夜刀は傷を負うほどに殺意を増幅させていく。
「おのれ小癪なる者ども! 我が呪詛で悶死させてやる!」
威嚇音を響かせて牙を剥き、夜刀が攻撃に打って出た。
その時だ。
不意に吹き荒んだ風に桜の花弁が舞い散る中、飛蛇の如き鞭の音が響き渡った。それを合図にして地面から煙幕が噴き上がり、夜刀の視界を覆い尽くす。
完全視界の恩恵を受けた三人のディアボロスには勿論、見えていた。
広がる煙幕の中に踏み込んできた、四人の味方の姿が。
「夜刀の分離、助かった。思う存分巫女と戦えたぞ。……残るは大将だけだ」
瑞応龍袍を翻し、喩・嘉(瑞鳳・g01517)が麒麟蹄――甲殻化した足を支える金色に輝く沓で地面を踏み締める。
「酔いどれ蛇の相手をありがとうよ。さあ、俺も後始末を手伝わせてもらうぞ」
ガンッと硬化した拳と拳を打ち合わせて、守都・幸児(迷子鬼・g03876)は不敵に笑った。
「なるほど、此処であれば存分に戦うことができそうです」
煙幕の罠を仕掛け、鞭を以て起動したシャムス・ライラ(極夜・g04075)は、集ったディアボロスたちが夜刀を包囲したのを見た。合流の支援を果たした彼は素早く彼我の状況を確認し、呪いの言葉を発する敵の動きを窺う。
「さて、そろそろこの蟒蛇も酔いがさめた頃かね」
煙幕の中に揺らめく人影――夜刀の目にはそう見えたであろう。
ノイン・クリーガー(ゴースト・g00915)は、間合いをはかりつつ、敢えて挑発的な言葉をぶつけた。
「こんな所でドンチャン騒ぎするもんじゃないねぇ。近隣住民の迷惑になってるぞ」
「貴様……! 噛み殺される覚悟はできているんだろうな!」
「そんなものはない」
短く返して、ファイティングカランビット――三日月状に湾曲したブレードが目を引く愛用のナイフを構える。
(「夜刀の攻撃は尾と角と噛みつきか。シンプルだが強力だな」)
少し腰を落とし、いつでも敵の攻撃に対応できるよう、手に持てるナイフの切っ先さながらに精神を研ぎ澄ませる。
(「さて、いよいよ大詰め……手負ってはいるようだが、どう出るか」)
シャムスが守護者の鞭を手に、夜刀の出方を見る。
対峙は一瞬。
「恨めしい、憎らしい……我が呪いを受けて悶え死ぬがいい!」
怒り、憎しみ――負の想念を牙に宿らせた夜刀が狙いを定めたのは、硬化した腕を持つ鬼人だった。
「てめえは呪詛を使うんだったな。ならそいつをそっくりそのまま返してやる」
隻眼となった夜刀を見据えた幸児は、不敵な笑みを湛えたまま、両腕を体の前で交差するように組んで迎え撃つ。
「笑止! この一撃を耐え切れると思うたかッ!」
避ける素振りもない。
受け止めるつもりなのだ。
そう見て取った夜刀は、まじろぎする間もないほどの速さで噛みついてきた。
――断ちて、絶ちて、立ち昇れ。
刹那、パリンと。
鬼の両腕が割れ砕ける。
そこから立ち昇った闇は、瞬時に凝集して幸児の前に展開した。闇が凝ったかのような昏き壁は、揺らぎ、不定形に見えながらも確かに盾となり、夜刀の呪いを帯びた毒牙を食い止める。
突進の勢いさえ合わせた噛みつきの威力に、幸児が地面に轍めいた跡を残しながらザザザザッと後退した。
あやかしの大蛇と、鬼人の壮絶な力比べである。
「ガアァァァァァァァァ!!」
(「流石に衝撃までは殺せねえが
……!」)
夜刀はこのまま障壁ごと幸児を噛み砕こうとするつもりだ。
しかし盾と化した闇は、ただの闇ではなく、ただ頑強なだけの壁でもない。
ふわりと分離した黒き蛍火のような闇が、夜刀の大口に吸い込まれていく。ごくりと喉を蠕動させた夜刀は、次の瞬間、驚愕に目を見開き、幸児をその頭部で強かに吹き飛ばして暴れ狂った。
受け身を取った幸児が口元の血を拭いつつ、笑う。
呪いの反射。すなわち呪詛返し。
夜刀の怨念が跳ね返って、自家中毒を引き起こさせたのである。
「こうなってしまえばただでかいだけの蛇。速やかに消えてもらおうか」
喩嘉の挑発の言に、言葉を返すこともせず、ただ牙を剥き出しにして叫びをあげる大蛇。
「なに、俺だけでやろうというのではない。この状況でも戦い続けるというその意気は大したものだが」
余計な力を抜き、構えを取る。
「最早、檻の中の獣も同然だと知るがいい」
言いながら、頼もしき味方が死角を取るのを喩嘉は見た。
全力を傾けた幸児の防御と反撃の間に、シャムスが夜刀の隙を衝いて接近していたのだ。
「何処を見ている」
夜の闇が昼を侵食するように。
禍ツ大蛇に落陽の時が迫る――!
「グヌゥ……妙な真似を!」
首を巡らせるよりも早く巨大な尻尾による迎撃を試みた夜刀の反応速度は、流石にトループス級とはまるで違う。
一瞬、シャムスの脳裏に映像が浮かぶ。
大蛇に吹き飛ばされ全身の骨を砕かれる自身。
回避を誤って無惨に潰される自身。
だが凄惨な未来へと続く可能性の尽くを否定する軽捷な身のこなしを以て、シャムスは敵の攻撃を避けきっていた。
「なんだと……!」
怒りに赤熱する夜刀の瞳が、視界の端、地面に煌々と輝きを放つ小さな金字塔(ピラミッド)を目にする。
ピラミッドコンバット。
その光輝を身に纏ったシャムスに、体勢を崩された尾の攻撃が当たるはずもない。
しなやかで強靭な彼の鞭に夜刀は打たれ、圧倒されたところへ下顎めがけた強烈な蹴り上げを喰らうこととなった。
ガグと上下の顎が無理矢理に閉じられ、その衝撃に頭を逸らす夜刀。
「そろそろ酔いも醒めたろう。お前は倒され、地に這いつくばる」
ふわりと着地したシャムスは、鋭い視線で敵を射抜きながら予言する。
「それが現実というものだ」
「生命力、いい感じに奪えてるね」
悪魔を宿した左手を軽く握りながら、蘭は夜刀を見て言った。
生命力を奪う効果が、敵の活力を収奪し、ディアボロスの傷を癒やしているのだ。
「グヌゥゥゥッ……こうなれば一人でも多く道連れにしてくれる!」
大顎を開いた夜刀が、その恐ろしく鋭利な牙に紫の霧めいた呪いを纏わせた。ひとたび噛みつけば傷口から侵入した呪詛は蛇の猛毒もさながらに獲物を苛み、悶死へと至らしめるだろう。
「生憎だが、そうはさせない」
喩嘉が構え、強い風に桜が舞い散る。
――花の色まで見えていないのではありませんか。
奇しくも最前、明は戦いながらそう言った。
怒りと呪いに『酔った』夜刀は色にも形にも気付くことはなかったのだ。
景色を塗り替えるような花吹雪――その中に、いつか美しき蓮の花弁が舞い散っていることに。
蛇という生き物は、その俊敏な動きで瞬時に獲物を仕留める迅疾の狩猟者。
呪いを纏わせた必殺の噛みつきは、文字通り目にも留まらぬ疾さで喩嘉の体に食い込むかと思われた。
しかし。
時空を歪める戦いにおいて、速度だけを以て大蛇の攻撃が奏功するとは限らない。
まるで全てがゆっくりと――否、時間が止まったかのように見える世界の中で、喩嘉は襲い来る敵の顔面を捉えていた。
――随分と傷だらけだな。
紅花が潰した夜刀の片目は、とうに使い物にならなくなっている。
皆の奮闘によるダメージが夜刀を確かに苛んでいる。
「終わらせるぞ」
それはまさに虚空を蹴る麒麟の疾駆。至近距離から繰り出される『蓮弁散華脚』の連撃が、夜刀の頭部を蹴り砕く!
「ガアァァァァァァッ!?」
夜刀が天を仰いで絶叫したかと思うと、地面に這い出た蚯蚓のように巨体をのたくらせた。
「殺してやる、殺してやる、殺してやるぞ貴様……!
「どうした、同じ言葉を繰り返すとは。この期に及んでまだ酔ってるのか?」
ノインが落ち着き払った語調で言った。
戦場では冷静さを失った者から死んでいくものだ。
怒りに染まった目を光らせて、夜刀がノインに殺意を向けた。
蛇の頭に生えた角――そこに恐るべき呪詛の力が凝集する。
「死ね、死ぬがいい!」
せめて一人でも道連れにと突っ込んだ夜刀は、その瞬間、予期していたノインが放った発煙弾に包まれて妨害されていた。煙幕を切り裂くような一撃はなにものも捉えることなく、こつりと小石の音を耳にした大蛇は直後、黒き死神の声を聞いた。
「獲ったぞ」
煙の中、足音も立てずに。
ノインは電光の如きカランビットで一閃。蛇の喉を深々と、鮮やかに斬撃する。
「ガ、ァ
……!?」
どさりと横たわって砂にまみれながら、漏れ出す呼気と共に苦しげに呻く夜刀。
「まさか……我が敗れることになるとは……」
その赤き瞳が急速に生気を失い、物言わぬ屍と化したのだった。
●戦いを終えて
「雨上がりの空気は澄んでいるな」
満開の桜が春風にひらひらと花弁を散らして、見事な花嵐となる。
喩嘉は新鮮な春の息吹を感じながら爛漫たる桜花を見上げ、それから振り向いた。
「最後に少し、美しい花を眺めてから帰ろう」
「ああ、ちょいとだけ見ていきてえな!」
幸児も横に立って言い、守り抜いた木々や花々を嬉しそうにその瞳に映していた。
「酒も宴もなくったって皆と見る桜ってのは、綺麗なもんだ」
咲き誇る花もまた感謝か祝福か、風に見事な花吹雪を見せている。
「無事に仕留められたか」
ノインが周囲を見回し、村人の無事を確認すると武器を収めて一息ついた。
「人々にも怪我がなくて何より。被害も僅少と言えるでしょう」
遠くで深々と頭を下げる村人たちに頷きを返して、シャムスが言う。
「キレイだねー」
戦いながら紅花も言った通り、花見に必ずしも美酒佳肴を揃える必要はない。
仲間と共に見る桜――このひとときが、かけがえのないものなのだから。
「こうして眺めるのもいいものです」
紅花の言葉に明が頷いて、
「お花見だよ、わっふる」
モーラット・コミュのわっふるを抱いて、蘭も満開の花を眺めていた。
かくしてヤマタノオロチが誇る一隊は討ち果たされ、この村にも平穏が訪れた。
長岡京の人々もまた、活力を取り戻し、元気に働いていることだろう。
大きな戦果を得て。
満開の桜の下、激闘を制したディアボロスたちの和やかな声が連なった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【傀儡】LV1が発生!
【光学迷彩】がLV2になった!
【活性治癒】がLV2になった!
【モブオーラ】LV1が発生!
【修復加速】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
【悲劇感知】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】がLV3になった!
【アヴォイド】がLV2になった!
【ドレイン】がLV2になった!
【フィニッシュ】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV4になった!
【ガードアップ】がLV3になった!
【ロストエナジー】LV1が発生!