リプレイ
鳳・四葉
○心情
・いろいろと悪いことをしていた大貴族様がもっと悪い奴に利用されて殺されようとしている…と。いやぁ、悪いことはするもんじゃありませんね。
・ま、世界再征服を目論む秘密結社の一員が言う事ではないかもしれませんけれど。
・とりあえず、貴重な情報源ですし保護しましょう。さて、何が出てくるか
○保護
・飛翔を使用。空から保護対象を探し、追ってくる敵を蹴散らしながら、保護対象に接近する。
・伊尹に追いついたら、敵の呪いに対していつでも割って入れるように並走をしつつ、「狙われているみたいですけど、何か心辺りはありませんか?」「何か強迫を受けたり、声とか顔の特徴はありませんか?」と尋ねていく。
菅原・小梅
◆心情
あぁ、この気配は斎宮女御様ですね。
クロノヴェーダとは本人の紛い物であると
知ってはおりましたが嘆かわしいものですね。
◆行動
裳着を済ませておらぬ私にまで粉をかける事はないでしょうが
殿方の色好みにも困ったものですね。
複数名のディアボロスの方々が高所から居場所を探しておりますので
私は【パラドクス通信】で情報の中継をして効率的に保護するお手伝いを致しましょう。
おおよそ巧く事が運びましたら私自身も件の方へと合流しましょうか。
三十路にもなるのですからもう分別を着けても良い頃合いではないですか?
私ぐらいの子が居てもおかしくないのですからこの窮地を脱したら少しは己を省みて下さい。
※アドリブ&連携歓迎
●
「あれが噂の伊尹さんですか?」
「いえ、親族の方の様ですけれど……ね。……ふむ」
仲間の言葉に菅原・小梅(紅姫・g00596)が答えていたが、不意に顔を上げて目を綴じた。
「あぁ、この気配は斎宮女御様ですね」
そう言って溜息を吐くと地図やら資料を取り出して、メモを付け加える。
「クロノヴェーダとは本人の紛い物であると知ってはおりましたが嘆かわしいものですね」
クロノス級が過去に現われた時、本人の能力や精神性を食らって分割していくという。
強烈な個性なら概ね同じ正確になるが、複雑な精神性で元が強い個人であると多様性を分割していくらしい。
その点で今回の事件の元になった女性は、強烈な個性を持ちながらあくまでか弱い女性なので皆似たような性格なのだろう。
もっとも、源氏物語においてもっとも恐れられた生霊の原型とされる御方を、か弱いと称するならの話だが。
「何はともあれ、いろいろと悪いことをしていた大貴族様がもっと悪い奴に利用されて殺されようとしている……と。いやぁ、悪いことはするもんじゃありませんね」
そんな彼女の思いを知ってか知らずか、鳳・四葉(アンラッキー・クローバー・g02129)は肩をすくめて苦笑いを浮かべた。
彼からしてみれば源氏物語なんか読まないし、読んでも共感できないだろう。
「ま、世界再征服を目論む秘密結社の一員が言う事ではないかもしれませんけれどね。とりあえず、貴重な情報源ですし空から探してみますか」
むしろ貴公子であるとか、天皇の子息なのに臣下となり、正解を牛耳るフィクサーになる……という人生の方に悪の美学を感じるのではないかと思う。
「でしたら私は皆さんの情報を集めて中継いたしましょう。複数の方が空を飛んで探しておられるようですし、誰かがまとめた方が結果的に早まるはず」
そんな彼に小梅は真顔で建設的な意見を提言した。
十歳の少女でありあがら、家の事を考えねばならない立場であると、中二病には罹患して居られないのである。
「その辺りはお任せしましたよ。速きこと、流星の如く!」
そういって四葉は大悪魔ユーカリプタスの力で空を飛ぶ。
小鳥のような姿に見えるが、真っ白い炎の翼で空高くその姿を押し上げていく。
バビュンと天翔ける様は、まさしく流星のようであったという。
そして暫く後、白き軌跡がある方向へと目指し始めた。
仲間たちの話を総合した結果、問題の貴族が逃げている場所を特定したのである。
「あれですね。では保護しましょう。さて、何が出てくるか」
そうして四葉が先行して確保に回る。
敵の呪いに対していつでも割って入れるように並走をしつつ声を掛けたのだ。
「狙われているみたいですけど、何か心辺りはありませんか?」
「な、何者!?」
四葉はディアボロスですと名乗った後で、少し考えて妖怪を倒せる真の陰陽師ですと自己紹介。
「何か強迫を受けたり、声とか顔の特徴はありませんか?」
「知らぬ! 花のような名前の女など知らぬ、存ぜぬ!」
この青年貴族は四葉とは別の理由で源氏物語を知らなかった。
何しろ世界最古の同人誌であるその書物はまだ影も形も存在して居ないのだ。
知るはずもないし、源氏だと錯覚されて浮気を問い詰められるのも心外でしかない。源氏のモデルとされる数人の貴公子の内、在原業平やら若き源氏たる渡辺綱あたりならばかろうじて知っているかもしれない。
「殿方の色好みにも困ったものですね。三十路にもなるのですからもう分別を着けても良い頃合いではないですか?」
そんな姿に後からやって来た小梅は呆れつつ、ため息交じりに質問では無く忠告を掛けた。
「私ぐらいの子が居てもおかしくないのですからこの窮地を脱したら少しは己を省みて下さい」
根は真面目な彼女の事。
この世界を救うために、上流貴族たちには職務に精励して欲しかったのだろう。
そして通信管制をしていた小梅が駆けつけた……。
それは即ち、ディアボロス達が護衛を開始したという事である。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【飛翔】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
野本・裕樹
これからは民の為になる事をしてくださいとしか言えません。
しかしそれも生きていなければできない事、まずは助けましょう。
飛翔して上空から貴族の姿を探しましょう。
情報共有してまだ確認できてない方角から優先的に確認していきます。
…この期に及んで女性を口説こうとするとは思いませんが、口説ける気力があるならそんなに心配はないでしょうね。
助けは間に合いましたがまだ大丈夫とは言い切れません。
離れないように伝えてすぐに安全な所まで案内しましょう。
この方は上流貴族なら上達部ですかね?
妖怪は貴族を切り捨てに掛かっています、切り捨てる前最後に朝議で決まった事は何でしょうか?
安全になったら聞いておいてもらいましょう。
●
「これからは民の為になる事をしてくださいとしか言えません」
ディアボロスの女性陣にとっては大方こんな認識である。
助ける貴族が女性にだらしないとあっては苦言を呈したくなっても仕方があるまい。
「しかしそれも生きていなければできない事、まずは助けましょう」
野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)は集められた情報の内、まだ捜索して居ないエリアを中心に探していた。
だから比較的に早い段階で見つけたと言えるだろうか。
「助けは間に合いましたがまだ大丈夫とは言い切れません。直ぐに安全な所まで案内しましょう。離れないようにしてください」
「待て待て。なぜ訳も分からぬ所へ私が付いて行かねばならぬのだ。護衛するのであれば我が屋敷にせぬか」
流石にこの状況では口説こうとはしないようだが、彼のストライクゾーンはもう少し上なのかもしれない(何とは言わないが)。
その様子に裕樹は溜息を吐いて、改めて尋ねてみた。
「妖怪は一部の貴族と繋がっていたようですが、その貴族を切り捨てに掛かっています。切り捨てる前最後に朝議で決まった事は何でしょうか? あるいは余人を交えぬ会合でも構いませけれどね」
「ぬ……」
何かしら思う事はあるのだろう。
裕樹の言葉に貴族の男は特に断言こそせぬが、何某かを言い淀んだ。
守秘義務があるとかそういう事では無く、類推できる範囲で何かあったのかもしれない。
もっともエロティックな夜間会合で、他人の奥方から秘密裏に聞き出したよろしくない事情ではないという保証もないのだが。
「今、この場で申せとは言いません。護衛料代わりで良いですので、安全になったら護衛専門の者にお伝えください」
「……考えておこう」
成功報酬で今ではなくとも良い。
そう伝えると即座に頷けるあたり、やはりこの男は上流の貴族である。
もしかしたら上達部であるとか、そうでなくともいずれかの府を統括する少将・中将クラスの立場なのかもしれない。
裕樹は空飛ぶ仲間たちの姿を見つけ、合流しながら護衛を引き継いだのであった。
成功🔵🔵🔴
効果1【飛翔】がLV2になった!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
鳩目・サンダー
貧民の次は貴族かね。あいつらにとって人に貴賤は無く平等って訳だ、涙が出るね。
というわけで巷で噂の妖怪と戦える人間です。
微力ながらお力添えさせていただきます。
手近な廃墟の村への道を教えつつ、クロノヴェーダはエコーチャンバーで撃破。できる限り近くに寄り添い、守護対象を巻き添えにしないようにします。
時先案内人は貴族の有様に呆れているようだけど、豊かで欲深だからって無情に対応したらそれはあたし自身に跳ね返っちまう。貧民だって別に高潔な訳じゃないぜ?同じように救うだけだ。
危ないと思ったら遠慮なく叫んでくださいね、あたしも常に全方位【観察】【偵察】できるわけじゃないんで。
アドリブ・連携歓迎します。
天破星・巴
アドリブ連携歓迎
救助対象はろくでなしのようじゃが
ろくでなしの方がいろいろと情報を持っているかもしれぬ
殺されそれ等の情報が闇に葬られる前に保護しなくてはならぬ
(悪人を助ける事は気が進まなくても計画を阻止する為に屁理屈を付けてやる気を出している)
わらわの見た目で口説いて来ることはないじゃろう
飛翔を使い上空から騒ぎに成っている所を捜索
見つけられたら仲間にも知らせるため予め電車内で伝えていた笛を鳴らす
貴族に聞きたいこと
お主と同じ様に妖怪に狙われた者を保護している場所があるのじゃがそこにいるもの派閥を確認して欲しいのじゃ
派閥の者の人数差で何か分かるかもしれぬのじゃ
狭間・ならく
ひひひ、甲斐性があンのは悪くねェとナラクさんも思うがね。(夜の闇、刀を佩いた狩衣姿のナラクさんは女に見えたかどうかは怪しい)マ、それで妖に襲われてちゃ世話ねェか。悪いが遊興もしばらくお休みだゼ。命が惜しけりゃ我慢しな。
っと、あンましちょろちょろするなよ、守りづらい。(文箱から符を取り出し【結界術】にて守護とする)(灼刀、振るい、箏の音を響かせる)(討ち洩らしがあってもモコモコが受けるだろ、たぶん)
それと、言っとくが本番はこの後だからな。まだ逃げンよ。
行動:原則的に周囲の復讐者と合わせた行動をします
訊きたいこと:
で。
本当に妖に狙われる覚えはねーってか?
文月・雪人
※アドリブ連携歓迎
仲間と手分けして上空から貴族を探し
見つけ次第急降下
素早く抱えてクダ吉の背に乗せて
空駆け鬼妖達から距離を取る
いやホント女性でなくて申し訳ないけど
まあ暫くは我慢して欲しい所
後で聞きたい事もあるので
万葉集から『道は広けむ』の言葉を借り歌を詠みかけ文を託す
『行きなずむ 逢魔が時の 鬼道も 共に向かはば 道は広けむ』
鬼妖を倒すが我らの役目なら
人々を導くは政治の役目
この窮地を脱した暁には
どうか貴殿らのお力もお貸し下さい
ここで出会うも天命と
文に託す質問は
帝の所在と守りについて
陰陽寮を指揮する上層部の顔ぶれや権限について
藤原伊尹様が地獄変の巻物を手にした経緯について
知る所あれば教えて頂きたい
●
「茜色と言おうか逢魔が時と言おうか、血のような黄昏じゃ」
ディアボロスたちは空を飛び、仲間が見つけたという貴族の元へと翔けつけていた。
夕日は陰り赤く挿して目に痛く、遠目では姿を輪郭の様にしか分からない。
「これを風流と呼ぶか気味が悪いと称するかは人それぞれだな。マっ、血の池地獄よかよっぽど洒落てら。口説きに行きたがる気分も判らなくねえよ。……ナラクさんに女を口説く趣味はねーがな」
今回気分が乗らないのは要救助者が女っ垂らしということであった。
女の方が財産に目に眩んで……というならまだ放置しても良いのだが。
「救助対象はろくでなしのようじゃが、ろくでなしの方がいろいろと情報を持っているかもしれぬ」
「ひひひ、甲斐性があンのは悪くねェとナラクさんも思うがね」
天破星・巴(反逆鬼・g01709)の言葉に狭間・ならく(【嘘】・g03437)は笑った。
女に養ってもらうグランド・ロクデナシならともかく、この時代の貴族は口説いた段階で男が面倒を見る時代である(女の実家に後見人にはなってもらうが)。まだまだ貴族が金持ちで幅を利かせた時代だ、同じ貴族でも砂漠あたりだとちゃんと面倒を見るなら未亡人辺りを一ダースくらい確保しても文句を言われまい。
「気乗りはせぬ、せぬが……。殺されることでソレ等の情報が闇に葬られる前に保護しなくてはならぬ。わらわの見た目で口説いて来ることはないじゃろう」
「ナラクさんもその辺は問題ねーしな。パパっと言って片付けてこようぜ」
巴は見た目はロリで中身はお婆ちゃんのお知恵袋、ナラクの方は男装と貴公子に口説かれる心配はない。
なお古神道だと中世を表すために逆装束で狩衣だと女性用だが、あの男が知っているとは思えないので無問題だ。面倒な事が起きる前に護衛を済ませて、他の者に引き継ぐとしよう。
ちなみに二人はこの時代の人間ではあるが、新宿基準の倫理で動くことにしてるということもある。
仮に口説かれたとしても応じるわけにはいかないのだけどね(年齢には黙っておこう)。
「また童か? 真の陰陽師とやらはみな早熟よなあ」
「追っても彼岸を渡っておるよ。……ここからはわらわ達が引き継ごう。今のところ道半ばじゃが順調のようじゃ。もそっと我慢するが良い」
巴は途中で仲間と合流し、護衛を交代すると貴族に声を掛けた。
ろくでなしの相手は疲れるので最低限の接触で留め、後で聞きたいことを可能な範囲で尋ねる構えである。ここでは聞けない為、伝言するしかないという縛りがむしろありがたいというのは皮肉ではあるが。
「鄙な所へ行くと聞いたが、麗しき方はおらぬか? いや別に歌会を催せとは言わぬが」
「遊びがねえと文化は育たねえって言うけどな。マ、それで妖に襲われてちゃ世話ねェか。悪いが遊興もしばらくお休みだゼ。命が惜しけりゃ我慢しな」
ナラクの方は表面上だけは友好的に話しかける。
全く信用してないし友誼も抱いてはいないが、言いたいことは言うスタイルであった。
「っと、あンましちょろちょろするなよ、守りづらい。こいつでも持ってな、ナラクさんが作ってねえから安心はできる」
ナラクは手元の文箱を開くと、中に入れておいた札を渡した。
時分でも作れるが面倒なので友人たちに作らせたお札であり、一枚一ドックという手間賃であったそうな。
そして箏の音が響く刀を抜いて構え、いつアヤカシが来ても良いように備えたのである。
「それと、言っとくが本番はこの後だからな。まだ逃げンなよ」
ナラクはモーラットのモコモコ野郎の案内で、次の仲間の位置を特定すると、そう声を掛ける。
「お主と同じ様に妖怪に狙われた者を保護している場所があるのじゃがそこにいるもの派閥を確認して欲しいのじゃ」
「そうそう。本当に妖に狙われる覚えはねーってか?」
そして派閥の人数差で状況を知ろうとする巴に相乗りし……質問と言うか意地の悪い言葉を掛けて、けけけ。と笑うのであった。
最後の一組に護衛を引き継ぎつつ、自らはアヤカシの元へ討ち入りを行うためである。
●
「クダ吉の乗り心地はどうですか?」
「悪くはないな。宙に浮くという経験をした者もあまりおるまいて」
文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)は最初、管狐のクダ吉を巨大化・飛行させようとしたが……。
飛翔能力は本人が抱えて飛べるレベル、仲間に剛力無双仲間が居ればその力を借りて他の人間を飛ばせられるというものだ。
そこでクダ吉に載せてホバリングのような形で高速移動し、あるいはジャンプで飛べる範囲の屋根を伝ってショートカット移動していた。
「行きなずむ 逢魔が時の 鬼道も 共に向かはば 道は広けむ。と申します。暫くはご寛恕を」
「うむうむ。頼んだぞ」
雪人は貴族に馴染のある万葉集から一部を引用して貴族を励ました。
鬼ばかり多い道を逃げまどい、人の往来が少ない道へと逃れて行く。
しかし共にある者が居れば、きっと道(未来)が拓けていますよ。という意訳になるだろうか? そしてこの歌は女が男を励ます歌なので、ディアボロスの仲間にも美女が居ますって……と言う付帯にも読めなくはない。
「というわけで巷で噂の妖怪と戦える人間です。真の陰陽師とこちらでは呼ばれておりますね。微力ながらお力添えさせていただきます」
「うむ。是非に頼むぞ。麿が失われればこの世に大いなる損失ゆえな」
鳩目・サンダー(ハッカーインターナショナル同人絵描き・g05441)の豊かな胸を眺め、貴族は雅な顔をしていた。
礼節を持って目をそむけるわけでもなく、凝視する訳でもなく、ありがたく拝見するテクニックである。
この男に対してサンダーは目潰しをするべきか、それとも笑い掛けるべきか心底悩んだ。その結果、ネタ帳に放り込んでネタとして使い倒す事で帳尻を合わせた。
「鬼妖を倒すが我らの役目なら、人々を導くは政治の役目。この窮地を脱した暁にはどうか貴殿らのお力もお貸し下さい。ここで出会うも天命であったのでしょう」
「麿は貴き身のゆえな。無事に済まさば考えておこうぞ」
そんな風に雪人と貴族が会話する光景を眺めながらサンダーは幾つかの事を思っていた。
(「貧民の次は貴族かね。あいつらにとって人に貴賤は無く平等って訳だ、涙が出るね」)
サンダーはそんな事を思いつつ、脳内ではどんなネタに使おうか迷う。
彼女にとってあまり恨みは持続しない。今の体になる前の年齢もあるし、ジロジロみられるとムカっと来るが、あまり気にしてはいないのだ。なおサンダーは絵描きであるが、この段階ではどんな趣味か分からないシュレイディンガーのサンダーである。貴腐人ではないことを祈るとしよう。むしろこれから来る戦いの予感に、スカっと戦えるのではないかという期待感の方が強い。
(「時先案内人は貴族の有様に呆れているようだけど、豊かで欲深だからって無情に対応したらそれはあたし自身に跳ね返っちまう。貧民だって別に高潔な訳じゃないぜ? 同じように救うだけだ」)
どちらかと言えばサンダーは精神年齢故か純真であり、同時に大人に関して俯瞰している。
大人が汚い奴ばかりか? 子供が善人ばかりか? 金持ちが金を使わないと困るし、適当に社会はバランス取れていると思っている。
(「しかし守り……か。検非違使の噂を聞かないし、陰陽師の権限が強そうに見えるし、都の防衛権限とか指令順位とかどうなってるのかな」)
ちなみに雪人の方はそんな真面目な事を考えており……。
この間の追儺の儀式とか、そういったことを通し操る為なのかと思案していた。
それゆえにお尋ねしたい事と文に書き記して貴族に持たせており、その答えが出るのではないかと期待していた。上流貴族だからといって何もかも知っているわけでもないし、護衛料として情報を出すにしても全てを答える必要もない。しかし、この程度の事は権力機構の一部なので、気安く話せるのではないかと思っていたのである。
「……む。鬼妖の気配が強くなったかな?」
「危ないと思ったら遠慮なく叫んでくださいね、あたしも常に全方位を観察出来ているわけでもないので」
「お、おおう。任せたぞ」
雪人が物音や気配を察して注意を促すと、サンダーはクダ吉の傍によって貴族によりそう形で守りに入った。
クダ吉はモフモフしているし、貴族に抱きつくような形でも我慢しよう。そしてクダ吉に乗ってる貴族の方も嬉しそうなので、まあ良しである。
そして……俄に怪しげな気配が満ち始めた。
それは刃の訪れか、それとも井戸を伝って現れるという妖怪変化の来襲だろうか?
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【ハウスキーパー】LV1が発生!
【飛翔】がLV4になった!
【植物活性】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【反撃アップ】がLV3になった!
【ガードアップ】LV1が発生!
鳩目・サンダー
まず、これから起こることを貴族に説明する。
奴らの使う呪詛の中身が分かっています。いきなり刃が現れて心臓を貫く、という防ぎ難い呪詛。
いつ襲われるかはあたし達にもわからない。ので、体を密着させて心臓を守る、という手段が有効と結論しました。
……この体にしがみ付けるのなら否やもあるまい。自分でいうのも何だけど。
あたしも人にしがみ付かれる機会ってないしね今のところ天涯孤独で……。おっと寂しくなってしまった。
ねえ、誰かもう一人背中側か胸側にも密着してやってよ。心臓めがけてとは聴いたが、どの角度から来るかまではわかんねえからさ。
アドリブ、連携歓迎します。
野本・裕樹
さて、ここからがある意味で本番です。
妖怪と繋がっていると言われて否定もせずこの反応…
攻略旅団では上の大臣は妖怪に無関心と聞いていたので反応は期待していなかったのですが、演技?或いは朝議の方に気を取られたか。
何かありそうな反応がこの場で得られただけでも、私としては十分です。
護衛料の先払いを貰ったと思って、ここは真剣に護りますよ。
【エイティーン】を使用、身体を少しでも大きくして貴族には絶対に刃を届かせないつもりで。
…まさか「鐵喰」を全力で使う以外の目的で【エイティーン】を使う事になるとは思いませんでした。
思う所はあれど、助けたいのは本心です。絶対に死なせませんから。繰り返しますけど離れないで。
●
「さて、ここからがある意味で本番です」
野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)は上流貴族の姿を眺めた。
相変わらず仲間の豊かなオッパイを見ているのを確認し、放置して良いかなと二十三秒くらい思った。
とりあえずクロノヴェーダの邪知暴虐は許せないと思った。
(「妖怪と繋がっていると言われて否定もせずこの反応……。攻略旅団では上は大臣から下は民草まで妖怪に無関心と聞いていたので反応は期待していなかったのですが」)
ここで考えられるのは2パターン。
本当に知っているか藤原伊尹から聴いている成り、妖怪自体に便宜を図れと言われたパターン。
もう1つは都人が不自然に襲われない光景をおかしいと思ったが、利益になると放置したパタ-ン。……ああ何か知ってる素振りを見せ守らせようとしたブラフもあるか?
(「それとも演技? 或いは朝議の方に気を取られたか。何かありそうな反応がこの場で得られただけでも、私としては十分です」)
何かを知っている、または類推できるだけのキー情報を有している。
今のところはそれだけで十分だろう。事件を起こしていると言われる幹部のジェネラル級の居場所か、今だに姿を見せない断片の王につながる情報の一つに繋がるなら良しとしておこう。確信が得られるならば次回、攻略旅団なり仲間内での合議を測れば良いのだ。
「ひとまずこれから起きることを説明するね。奴らの使う呪詛の中身自体は分かっています。いきなり刃が現れて心臓を貫く、という防ぎ難い呪詛。ここまではいいですかね?」
「な、なんだと。何と怖ろしい……そのような呪詛、防ぎようがあるのか?」
鳩目・サンダー(ハッカーインターナショナル同人絵描き・g05441)は貴族の目線が自分のオッパイに向いている事に釈然としないながらも、ひとまず慌ててない様なので無視することにした。
どうして命の危険よりもオッパイの大きさに気を取られるのか分からない。
いや『命よりもオッパイだ!』という感じなのだろうか? むしろ感心するべきところだろうか? と精神年齢一桁の少女は思った。
「いつ襲われるかはあたし達にもわからない。ので、体を密着させて心臓を守る、という手段が有効と結論しました」
「おお! なるほど! 寺の加持祈祷ではかような方法は思い付くまいな。さすがは真の陰陽師よ」
どうしてそんなに嬉しそうなんですかね?
……この体にしがみ付けるのなら否やもあるまい。サンダーはそう思って提案したのだ、自分でいうのも何だけどオッパイスキーには効くだろうと思ったのだ。クリーンヒットしましたね。
(「まあいいか。あたしも人にしがみ付かれる機会ってないしね今のところ天涯孤独で……」)
おっと寂しくなってしまった。
これはいけない。涙腺がもろくなって目から水が飛び出るところでした。
泣くのは新宿のワンコとニャンコが死んだ時と、名作劇場でヒロインが悲しい目にあった時だけと決めたのです(結構多いな)。
「ねえ、誰かもう一人背中側か胸側にも密着してやってよ。心臓めがけてとは聴いたが、どの角度から来るかまでは判かんねえからさ」
「……ソーデスネ」
サンダーの言葉に裕樹は珍しくジト目で答えた。
何故にオッパイの大きさを比べられるような状態で、しかも閨でやったらハーレムにしか見えないことをせねばならないのか? 帰っていいかな? と真剣に五十七秒くらい悩んだ。と言っても、もう少しで一分に達しそうなので止めただけだが。
「判りました。いろいろ得るモノもありましたし……護衛料の先払いを貰ったと思って、ここは真剣に護りますよ」
裕樹は必要もないのに舞うような仕草でパラドクスで手足を伸ばした。
シャランと音が鳴りそうなステップ決めて、体を十七歳の段階まで急成長させる。
少しでも胸の大きさをサンダーに負けまいと……ではなく、身体を少しでも大きくして貴族には絶対に刃を届かせないつもりで!!
「…まさか『鐵喰』を全力で使う以外の目的で『エイティーン』を使う事になるとは思いませんでした。思う所はあれど、助けたいのは本心です。絶対に死なせませんから。繰り返しますけど離れないで」
「うむ! 余計な事はしないとも! したいとしたら別の事だ!」
むしろ自分が殺してしまおうかな、と一瞬だけ思った事は秘密です。
そんなことをしたら話が続きませんからね。残念ですが割愛しましょう。
そして彼女のそんな葛藤も、余り続かないのでした。
何故ならば……。
「ゥぐ……」
「どうしたのだ?」
「あー。さっき言った呪詛ですね。いいですか? 絶対に離れたら駄目なんで。これは離れろと言うフリじゃないですからね?」
仲間が痛みを訴え、貴族が首を傾げたことで抱えて移動中のサンダーは教えてあげた。
おっつけ自分にも食らうかもな~とか思いつつ、仲間が態勢を立て直し次第に移動する手はずを整える。
怪しげな妖気はますます強くなっている。
攻撃が続くことはあっても、暫く止むことはないだろう。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【クリーニング】LV1が発生!
【エイティーン】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
【リザレクション】LV1が発生!
狭間・ならく
オイ、誰かいるかー?(散歩でもするように、ひょっとしたら迷い込んでいるかもしれない家人たちを探す)(地図作成はモコモコ野郎頼りだし、家人たちを見つけたらそれもモコモコに先導させて逃がす心算)(【パラドクス通信】で他の復讐者とも連携しよう)
井戸の底に鬼か。ひひ、別に驚くこともねェか。古来日本のあの世は地下から地続き、比良坂の向こうだもンな?
(……とは言っても)(勝手な審判を行うソレは気に食わない。心底気に食わないのだ)(はりついた笑みのまま、灼刀を向ける)
サテ、悪とはなんぞ、と。
(偽りの会話)(神速の刀を振るう)(箏の音が響く)
はん、テメェに聞いちゃいねェさ。目障りだ。疾く去ねや。
鳳・四葉
○心境
・護衛は任せて先に井戸の方を見に行ってきますか。ネメシスモードのボクならば、足に掴まってもらえば簡単に救出できますしね。体が白く燃えているから光源も不要
‥‥妖怪と勘違いされそうですね…。いやまあ、デーモンなので否定しようがないんですけど…。えーっと、聖なる鳥の鳳凰です。神の使いっぽい何かです。助けに来ましたよーっと
○井戸探索
・ネメシスモードで【飛翔】と【エアライド】を駆使して素早く井戸まで移動し、急降下して奥まで移動
・炎を周囲で照らしつつ、要救助者である牛飼い童や護衛を捜索
・敵は炎を変化させた魔法陣から呼び出したユーカリプタスの炎爪襲撃と、不死鳥モードでのかぎ爪を活かした蹴りで蹴散らす
●
「護衛は任せて先に井戸の方を見に行ってきますか」
呪詛に対応している仲間を見て、鳳・四葉(アンラッキー・クローバー・g02129)は近くにあった井戸に飛び込んだ。
地面に落ちる前にフワリと浮かび、白い燐光を放ってゆらゆらと飛ぶ。
専用のパラドクスではないので万全ではないが、このレベルの光があれば通常できるこ事くらいはディアボロスには何でもない。流石に隠し扉とかがあるなら別だが、今回はそういう物を探しに来たのではないので問題はなかった。
「ネメシスモードは強いし便利なんですが……妖怪と勘違いされそうですね……。いやまあ、デーモンなので否定しようがないんですけど……。えーっと、聖なる鳥の鳳凰です。神の使いっぽい何かです。助けに来ましたよーっと」
とか信じてもらえませんかね?
などと供述しており、四葉くんの言動は十分にアレであった。
まあ地獄に仏と言うか、鬼に引きずり込まれたらそんなことを気にする余裕はないので最初から無問題である。
「オイ、誰かいるかー?」
そん時、向こうの方から狭間・ならく(【嘘】・g03437)がやって来た。
光でも見えたので、家人が火でも熾したのかと思ったのだろう。
やがて状況を確認すると、散歩でもするかのようにモーラットに端末を弄らせながら歩いていた。
「なんだ、んな事で悩んでたのかよ。井戸の底に鬼か。ひひ、別に驚くこともねェか。古来日本のあの世は地下から地続き、比良坂の向こうだもンな? しかも土地も人間も知ってる話が当てにならねえと来た。気にするだけ無駄さ。しってっか? ヤマタイ国ってのは今だに二か所のうちどっち判んねえらしいぞ。鬼退治の話を読み直したら、大江山の位置もリアルと全然違うしよ」
「あー。そういえばそーですね」
この時代に来て当てにならないことでいっぱいだ。
もともとこの時代の人間にとっても、改竄される前の話なのか、改竄されてる途中で死んだのかで情報が異なる。では新宿に伝わってる話を調べたとして、リアルと物語と歌舞伎と神社の伝承がまるで違ったりするのだ。
「とりあえず頭をぶつけないように気を付けて、移動力に任せて捜索しますか」
「んだな。別れて通信だけしてりゃ効率いいだろ。……あいつら始末したらな」
四葉が飛行しながらの捜索を提案すると、ナラクは頷いて判ったことがあれば通信すると伝えた。
情報を相互に確認して居れば少しずつ調べ物も出来るだろう。
そして二人が別れる前に、彼方に居たナニカを見つけて即座に戦闘態勢に入ったのだ。
「行きますよユーカリプタス!」
四葉は即席の魔法陣を幾つか描き、大悪魔ユーカリプタスを召喚する。
無数の魔法陣はそれぞれが召喚陣と送還陣を兼ねており、少ないコストで何処か好きな陣から出入りできるという特性があった。下手に高速で動いてもぶつからないというのが良い。
『オーン!』
炎の鳥と雄たけびを上げてカッ飛ぶ生首がぶつかり合い、狭い横穴を灼熱に染めていく。
真横に飛ぶ稲光というものがるとしたら、こんな光景かもしれない。
「鬼が居ても気にすんなとは言ったが、気に入らねえ。気に入らねえもんは気に入らねえんだよ!」
ナラクは張り付いた笑みのまま刀を抜いた。
箏の音が鳴る刃をひっさげ、横穴にぶつからないように最小限の動きで斬りつけた。
なに、後の世の刀ほど『物理的に切る』得物じゃない。あんまり気にすんなよとつき込むように神速の刃を振るった。
「サテ、悪とはなんぞ、と。はん、テメェに聞いちゃいねェさ。目障りだ。疾く去ねや」
自ら発した言葉。
それを何かが確定する前に、突き刺した刃を抜いて顔面にもう一発。
トドメを刺しながら仲間に向けると、向こうも蹴り飛ばして勝利を納めていた。
「とりあえずこの辺にゃ居なさそうだな。マっ、何かあったら呼んでくれや」
「了解です。この後は情報を確認しながらですね」
そしてある程度進んだ後、二人は別れて別方向の道を捜索するのであった。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【神速反応】LV1が発生!
【エアライド】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV3になった!
瀧夜盛・五月姫
きたね、この気配。
幾度、身を貫かれても、慣れない。
寧ろ嫌悪感、そればかりが、増していく。
ふ、呪詛に侵されてるだけ、かも、ね。
時先案内人さんの、言っていた通り、体を……特に、心臓に近い側に、寄せて密着、させる、よ。
ひんそー、で、ちんちくりん、それは申し訳、ない、けれど、我慢して、ね。
護る間に、戯言を一つ。
貴方は、ちちう……将門公を知っている、かな。
もちろん、知っていようが、知っていまいが、或いは、答えなくとも、構わない。
だけど、わざわざクロノヴェーダ……悪鬼羅刹、魑魅魍魎が、将門公の呪いとする、くらい。
さぞかし、貴方たちには、後ろめたい事、在りそう……ふふ。
構わない、構わない、けれど、ね。
文月・雪人
隠しもしないこの妖気
惨殺にしろ暗殺にしろ
やはり生かしておく気はないらしい
内心溜息を吐きつつも
貴族に声をかけ、仲間と共に状況説明
巨大化したままのクダ吉と共に貴族を挟んで密着ガードする
呪詛の刃を受けるのは二度目だけど
やっぱり慣れるものではないね
それでも何とか耐えてみせるさ
怨霊だろうが何だろうが
これ以上鬼妖共に好き勝手されてなるものか
そして刃をこの身に受けてこそ
貴族達に聞きたい事がもう一つ
この呪詛の刃の出所は『将門公の大怨霊』、それで間違いないのですね?
もし怨霊本体の姿は見えずとも
皆様そう認識して恐れを抱くなら
実際に刃を受ける我々にも
その理由ぐらいは教えて頂きたいものですが
さて、いかがでしょうかね
菅原・小梅
◆心情
明らかに気配が変わりましたね。とは言うものの、私の体躯で背負う訳にも参りませんし…
◆行動
ならば片腕に抱き着きながら話掛けてその歩みを乱し……否、正しましょうか。
業平様を気取るのならもう少し武芸に身を入れても良いかと思いますけどね。私程度に身を寄せられて体幹が振れてしまう様では些か心許ないかと。
・
・
・
ふむ、試み通りに呪詛は私へと来ましたね。
気付きませんでしたか?
貴方の歩みが古き王の歩みを真似た…魔を除け道中の安全を祈念する禹歩となっていた事に。
【抱朴子(でんしょうちしき)】に通じる私にとっては此の様な技も容易いこと。
とは言え、最も近い場所に居る私へと呪は逸れる訳ですが。
※アドリブ&連携歓迎
●
「隠しもしないこの妖気……」
文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)は黄昏時の空を猫の様に見上げた。
何もない空に、ナニカが居やしないかと疑うかのように。
「惨殺にしろ暗殺にしろ、やはり生かしておく気はないらしい。ここからは交代で我々が対応します」
「う、うむ」
雪人は貴族に声を掛けて密着し、反対側を管狐のクダ吉で挟んで対応することにした。
しかしどうして命がけで防御しようとするのに不満なのだろうか?
人は上を知ると下も知るものなのだ。オッパイwサンドという天国を味わった後だと、好青年とモフモフであっても落差しか感じない。
「明らかに気配が変わりましたね。とは言うものの、私の体躯で背負う訳にも参りませんし……」
「それを言うと、姫も、だよ。……きたね、この気配」
その時、天使が舞い降りた。現れたのは菅原・小梅(紅姫・g00596)と瀧夜盛・五月姫(無自覚な復讐鬼・g00544)でアイドルではない。
しかし比喩表現だが上級貴族の視点から言えば、男とモフモフの落差もあって天使と呼んで間違いがない。
出来るならばサイズ(何処とは言わないが)が二倍くらいあれば良かったのかもしれない。合体とか融合して二人で一人のスーパーヒロインになったり……菅原正一位瀧夜叉姫? うん、やめておこうか。何か危険なものが爆誕しそうな気がする。混ぜるな危険は伊達ではない。
そんな馬鹿な事を何処かのディアボロスが考えて居た時……。
一人の男が血を吐くような痛みに耐えていた。
「こふっ……。いや、失礼。丁度良かった。二人とも、後お願い。呪詛の刃を受けるのは二度目だけど……やっぱり慣れるものではないね」
雪人は口元を布で押さえ、血というよりは悲鳴をこそ漏らさぬようにした。
耐えざる傷みに耐えてこそ、それでも乗り越えてこそディボロスだろう。
「うん。幾度、身を貫かれても、慣れない。よね。
代わりに貴族の手を取る五月姫に浮かぶのは、寧ろ嫌悪感……だろうか?
そればかりが、増していく。あまり気持ちの良いモノではない。
「ふ、呪詛に侵されてるだけ、かも、ね」
「影響を受けているのかもしれませんね。まあ、どちらにせよ気分の良いモノであろうはずがありませぬが」
五月姫が貴族の背中に飛び乗ったので、小梅はその姿勢を正すように支えながら手を取る。
もう片方の手を胸に添え、腰に傷みを与えぬように立ち上がらせた。そして立ち直ったところで抱き着くように支える。
「ひんそー、で、ちんちくりん、それは申し訳、ない、けれど、我慢して、ね」
「いやいや。そうでもないぞ。女性にはみな未来がある。みな違っているのも良いではないか……」
心臓に近い位置を守るために密着するのだが、紳士である貴族は胸を張った。
当ててんのよ……な態勢にも関わらず感触を感じないにも関わらず、未来は誰にでもあると微笑んだのである。なお姫は十三歳、小梅は十歳。身長は同じ……うむ。
「それよりも……少々重く成って来たのだが……」
「業平様を気取るのならもう少し武芸に身を入れても良いかと思いますけどね。私たち程度に身を寄せられて体幹が振れてしまう様では些か心許ないかと」
在原業平は少将・中将を歴任した、武芸闊達でありながら詩文に長けた貴族である。
伊勢物語のモデルとされた割りには真面目で藤原氏にも近く、むしろ後の源氏や平氏の先駆けのような中央護持の立ち位置にあった。色男であり詩文の才に長けてはいるが、この貴族とは比べれまい。まあこっちの男の方が身分だけならば上に行きそうではあるが。
「しかしな、何事にもこうも重心が傾いては歩き難くての」
「気付きませんでしたか? 貴方の歩みが古き王の歩みを真似た……魔を除け道中の安全を祈念する禹歩となっていた事に。身固めとも言いますけれどね」
この守護法は様々な呪術に使用できる。
かつての聖君が全国を回って足を痛めた故事に則るのだが、片足だけを挙げ、片足を常に地面につけて歩く。
これは継続と発展を意味し、術が続き続け強化されていくという意味で結界などに流用し易いのだ。もちろん術力を高めて呪うことも出来るのだが。小梅は二つの意味で利用した。この貴族と少女たちの姿が一続きになるという術、もう一つは移動経路の不規則性である。まっすぐ歩くのと曲がりくねるのでは心臓の位置が違おうほどに。
「おお流石は陰陽師よな。しかし顔色が悪いが?」
「抱朴子……に通じる私にとっては此の様な技も容易いこと。呪いを引き受けた代償と言うやつですね」
小梅は暫くして腕を離した。
脂汗を拭い取るように小袖で顔を拭う。
また一本の刃を受けたのだが、瞬時に姿を消すので判らない。
いやいや、何よりも怖ろしいのは、何時飛んで来たかも検討が付かない事である。
「やはり面妖な」
「それでも何とか耐えてみせるさ。怨霊だろうが何だろうが、これ以上鬼妖共に好き勝手されてなるものか」
小梅に真新しい布と水を差し出しながら、雪人は思案を固めていた。
色々と考えられるが、不思議な事がある。
「そういえば貴方は、ちちう……将門公を知っている、かな」
「はっはは。何を言うか。知らねば幼童か下国に赴いて連絡の取れぬ国司と変わらぬよ。確か有名な武将を何処かの国の帝の故事に倣って出迎えたら、裏目に出たという話が無かったかな」
知っているという割りに、その話は曖昧だ。
劉邦の故事を知っている割に名前を知らず、そもそも出迎えた武将の名前も出てこない。
面白いエピソードとして伝え聞いた話を寝物語の為に覚えて居たのだろう。
しかし、この話に全てが体現されていた。
おおよそ無関心で、この貴族もあくまで面白いエピソードのみを殊更に覚えて居るに過ぎない。
突っ込んで聞けば当時の藤原氏の長者であり、藤原忠平と将門が仲が良かった話でも聞くことはできるだろう。しかし如実に覚えて居ることは少なく、そんな中でどうして……。
「呪詛を引き受けた代償と言っては何ですがお聞きしたいことが。……この呪詛の刃の出所は『将門公の大怨霊』、それで間違いないのですね? 見たところ怨霊本体の姿も見えません。なのに皆さまがそう認識して恐れを抱くなら、実際に刃を受ける我々にもその理由ぐらいは教えて頂きたいものですが」
さて、いかがでしょうかね。と雪人は首を傾げる。
その仕草は疑問に思って居るのもあるが確認でもある。
どうして相手の姿もないのに断定できるのか? 近しいエピソードも、晒し首が空を翔けて関東まで戻ったということくらいなのだ。
「わざわざクロノヴェーダ……悪鬼羅刹、魑魅魍魎が、将門公の呪いとする、くらい。さぞかし、貴方たちには、後ろめたい事、在りそう……ふふ」
その姿を眺めながら姫は静かに見つめていた。
どんな理由で怨霊の仕業とするのか、どのような所以でソレを認識したのか? そうして怯えるのか……興味は尽きないのだ。
「名残惜しい、というのも何ですがそろそろですね。安全地帯に辿り着ければ何かしら教えていただければ助かります」
小梅は郊外に辿り着き、次の護衛を見かけたところで交代だと告げた。
ひとまずはこの件も終了。いずれ何かを聞けるだろうと期待を馳せるのであった。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
効果1【怪力無双】LV1が発生!
【飛翔】がLV5になった!
【プラチナチケット】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV2が発生!
【反撃アップ】がLV4になった!
十野・樞
お付きの者か
助けに行かねえと寝覚めが悪ぃな
呑む酒が不味くならねえ為に
ちっとばかり骨折りするか
残留効果利用
仲間と情報共有・手分け
地図作成・捜索
【看破】【観察】【情報収集】駆使
己の歩幅を一定にする事を意識
しマッピング
【風使い】で音を拾い牛飼い童や護衛を探す
発見→
【光使い】で陽光に近い明かりを灯し【友達催眠】で信用させ安心させる
敵に襲われている→
上記に加え【浄化】【結界術】で浄化系結界展開し防御
割って入り下がらせ戦闘
䰠鳴り――神鳴り
飛頭蛮如きが神を僭称するなんざ片腹痛え
田に落ちて硝酸塩生成に貢献しとけ!
【連続魔法】で浄化系結界を多重展開し敵攻撃威力を削ぎ反らし
パラドクス展開
全方位から魔導礫射出し殲滅
文月・雪人
余りゆっくりもしてられないか
お付きの人達も助けないとだね
【パラドクス通信】で仲間と情報共有しながら井戸底探索
方位磁針と歩数で方角と距離を把握
これまでの地図に書き足す形で分かる範囲の全体像を確認する
叫び声や光など人の気配を[観察・情報収集]し行方を[看破]
可能なら[不意打ち]狙いたいが
灯りで此方も見つかり易いかな
クダ吉の狐火と[火炎使い・光使い]で影の位置を調整して
敵を影へと誘き寄せ
喰われる前に破邪治癒符で妖気を[ドレイン]
傷を癒しつつ敵を滅する
一般人は庇い保護して安全確保
破邪治癒符と【活性治癒】で傷を癒す
可能なら壁に拳を打ちつけ傷の付き具合を確かめて
通路がクロノオブジェクトかどうかも確認したい
野本・裕樹
地図を完成させたいと言い出したのは私ですから、少しは貢献したいですが…。
牛飼い童や護衛の方が居る方向が地図の空白部分だったら幸運だ、くらいに思った方がいいですね。
彼らは貴族と違って見せしめの対象ではない、いつまでも無事な保証はないです。急がなくては。
まずは救出に注力します、進んだ道順は【フライトドローン】に覚えてもらいます。
助けた後の帰り道は【フライトドローン】に覚えた道順で案内もらいましょう、戻るついでにマッピングをするつもりでいきます。
[風使い][精神集中]で声や気配を探して感知できた先へ急ぎます。
【蒼炎爆】は使う場所を考えないと危険ですね。
通路を破壊しないように気を付けましょう。
●
「地図を完成させたいと言い出したのは私ですから、少しは貢献したいですが……」
野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)は仲間達と共に井戸の横穴に挑んだ。
各自が別々の井戸の中に入り、連絡を取り合って出来るだけ別方向に移動していくのだ。
「余りゆっくりもしてられないか。お付きの人達も助けないとだね」
「助けに行かねえと寝覚めが悪ぃな。呑む酒が不味くならねえ為にちっとばかり骨折りするか」
通信越しだからだろうか、文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)の言葉に笑みを感じる。
十野・樞(division by zero・g03155)の言葉はいつも酒の事ばかりだ。
しかし酒が無くとも彼が一般人を犠牲にしたことは一度もない。要するに理由付けなのだろう、なら後で飲みに誘おうかと思う。
「牛飼い童や護衛の方が居る方向が地図の空白部分だったら幸運だ、くらいに思った方がいいですね。彼らの生存が最優先ですね」
彼らは貴族と違って見せしめの対象ではない。
いつまでも無事な保証はないのだ。今は貴族を驚かす為に攫ったが、いつ始末されてもおかしくはない。急がなくては彼らの命が危険だろう。
「っ! こちら雪人……ええと、あれから定歩で真っすぐ二十と三、右に三十と五歩かな? 掠れた血を発見したよ」
「裕樹です。私の方は少し遠いですね。そこから離れている物として、回り込んでいく感じになります」
ディアボロス達は歩幅を一定にして周辺を計測していた。
雪人に余裕があり裕樹で普通、樞でかなり余裕があるというレベルである。
これで何が判るかと言うと、同じ歩幅なので距離が測り易いのだ。コンパスも持ち込んでいるので包囲もばっちりである。なお、何処かの国では王様のサイズで尺度が決まり、それがフィートの語源なのだという。
「樞だ。声が聞こえたぞ。風を操ってるから叫び声が拾えたらしい。おそらくだが発見地点から俺の先に向かってる。歩幅は適当で済ませて急行してくれ」
「「了解」」
ここまでは丁寧にやっていたが、被害が出るか出ないかが関わると違ってくる。
正確な歩幅は無視して急ぎ、道順だけ覚えながらみんな走り始めた。あえていうならば樞だけは敵の動向に注意して居る位だ。
「これ位置的にアレかな? 俺の位置からの灯を見て助けを呼ぶと同時に、妖怪が離れ始めたとか」
「あり得る話だがだとしたら危険だな。見つけ次第に一気にやるぞ」
「そうですね。もはや一刻の猶予もありません」
雪人は二人と相談しながら僅かに思案した。
横穴という特性上、どうしても光で反応しやすくなるのであれば……。
「クダ吉、ちょっとお使いを頼んだよ。上手く行ったら今日は油揚げを二枚だ」
そう言って雪人は自らの明かりを消すと、代わりに管狐のクダ吉の狐火の明かりを調整した。
これで自分が持っていた明かりがなくなり、後方に居るクダ吉の位置に見えるのではないかと言う算段だ。
「しかしこちらの方面だけでもこれだけあるとは、思いのほか広いですね。今季を入れて捜索する必要があるでしょうが……ドローンに覚えさせられると良いのですが」
裕樹が注目しているのはフライトドローンの存在である。
これはディアボロスが指示しないと何もできないが、指示したことは出来るという特性だ。
基本的には人間一人の移動用で荷物は難しいが、紐を結べば簡単にできるし、移動もさせられる。覚えたマップの『最初の基点に戻れ』くらいは可能なのではないかと思った。マップを覚えさせるのと同時に出来ないような気もするが、何らかの方法が思いつくならばギリシアで言うアリアドネの糸の様にダンジョンを脱出するキーになってくれるかもしれない。
そして暫くして、最初に敵を発見したのはやはり樞が居る道であった。
「見つけた! 引きずり回して遊んでやがる! まずは攻撃じゃなくて……」
樞は一目見るや敵周辺に結界を張った。
周囲を確認もせずに攻撃しては巻き込むのが危険だし、そのまま食いつかれて殺されても困る。
「た、助け、お助けええ!!!!」
「判ったから下がってな! 飛頭蛮如きが神を僭称するなんざ片腹痛え」
『キーぃぃ! オーン!』
敵は食い付いていた牛飼いらしき男の足を離し、邪魔者である樞の元へ飛来する!
それに対して結界を斜めに張って受け流し、背中側にも張って吹っ飛ばされつつ傷が増えるのを軽減する。
ちなみに飛頭蛮の目撃例は三国志の時代まで遡り、呉の南方に飛頭民という民衆が居たとか言うそうな。そこまで考えて『そういや欲し首は何処の呪術だったっけな』とか考え始めるのが魔術スキーな樞である。
「Belua fera est avaritia。魔術の宰には下僕あり、下僕は上か宰が上かは契約次第。いでよグレイマルキン、遊べや遊べ! つーか田に落ちて硝酸塩生成に貢献しとけ!」
樞ハモフモフの化身であるお猫様を召喚した。
正確には猫型の悪魔であり、魔術師が契約する有翼猫型悪魔である。
魔力の塊をぶつけながら攻撃し、この猫様の遊び道具である金盥をぶつけて攻撃していくのだ。
「ごめん、ちょっと時間が掛かるかも。こっちにも一体と一人! 治療してから戦うからごめんね!」
雪人は少し遅れて戦いに参加するつもりであったが、もう一体いたことで状況が変わった。
仕方なくというか、無事に見つけられたこと喜びつつ、刀ごと腕に噛みつかれた男を符で治療する。
『しゃっ!』
「祓へ給ひ、清め給へ……怨敵退散!」
呪術と言う物は白と黒の両方で行使できるという。
怨敵とは邪悪な敵の干渉であり、同時に憎らしい敵の命である。
雪人は護衛の治療に当てていた符をそのままスライドあせて、逆連鎖戦に持ち込み邪悪を滅する術へと変えた。影より来る悪鬼に恐れる心は無し!
「あ痛たた。吹っ飛ばされた分だけ擦り傷は増えたけど、少なくともこの辺はクロノオブジェクトじゃないみたいだね」
雪人は心こそ食われなかったが、突撃を受けた分だけ打撲は生じている。
その中で判ったことは、特にクロノオブジェクトではないということだ。
もちろん主要部は別物であり、クロノオブジェクトである可能性は否定できないのだが……。逆に言えば外延部であれば十分に何らかの作用はさせられるという事だろう。
「こちら裕樹、援護します! って、この場合は助けに入る方も必要ですね、すみません。ええとクダ吉くんと雪人さんの方です。アー忙しい!」
奔って合流した裕樹は呪刀を突き出し、その周囲に行燈を呼び寄せた。
そして次々に突入させ、攻撃していく。
「クロノオブジェクトではないなら、破壊する訳にもいきません。そのまま突撃です!」
ギューンギューンギューン! と唸りを立てて飛ぶ行灯たちの行列。
それに対するは鬼の首が飛来し、あるいは睨みつけるその視線!
「あ、いや。ちゃんと爆破はいけないと思いましたよ。まあ、あの助平貴族さんだったら少しくらい巻き込まれても薬が効くかなーとか思わなくもないですけどね」
そんな感じで裕樹は敵の視線に耐えながら、雪人と共に飛頭蛮を倒した。
次いで牛飼いを守りながら苦戦を続ける樞を救援に向かい、これを助けたという。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
効果1【友達催眠】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
【フライトドローン】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
【ドレイン】がLV2になった!
【命中アップ】がLV4になった!
狭間・ならく
ハァ〜〜〜〜〜〜〜〜(クソ深ため息)
面倒臭ェ……。
またおまえか。
いや気にしねェよ、別に。何度でも繰り返して構わねェともさ。
繰り返す度にナラクさんが抜いて、繰り返す度にお前を斬る、それだけだ。
(同情もしない、これ以上いちいちキレたりもしない)(気に食わないのは妖が歌仙を称するただそれだけのことで)(正直戦いにはなんの関係もないのだ)
チッ(……スゥ)
(舌打ちののち、吐いた分のため息を吸う)(いつも通り、灼刀を構える)
(【妖気の香】にて妖気すら纏い、強く【呪詛】を帯びた刃)(振るえば邪気払いの音が響く)
──裂け、地獄花
●
『おんな、オンナ、女。また女ばかり』
井戸より出でて感じるは炎の様にひりつくような視線。
体を一瞥する瞳は男が持つしっとりとした視線とは違う、火の気配はすれど炎には非ず。
『身に通う香りも知らぬは傲岸な事。なんと煩わしい』
その名は悋気、怒り、すなわち嫉妬。
幽鬼が持つ燐気とは一味違う炎の意思がそこにあった。
「ハァ?????」
首を傾げるのを通り越して一回転しそうになる。
男と乳繰り合う様な、睦事を交わして後朝別れを名残惜しむ様に見えるのか。
「面倒臭ェ……。またおまえか」
狭間・ならく(【嘘】・g03437)は巨大な溜息を吐いた。
額を抑え、その仕草で心をプリセットして張り付いた笑顔に変える。
「いや気にしねェよ、別に。何度でも繰り返して構わねェともさ。繰り返す度にナラクさんが抜いて、繰り返す度にお前を斬る、それだけだ」
この敵は女の狂人である。
ナラクは読み合い相手の思考を解いて喰らい、相反させたり素通りさせてぶつける言の葉を得意とするが……。
この女の様に狂人に対しては苦労が大きい。因子として編み込まれた怒り、嘆き、悲劇、紐解けばツライだけだ。
(「何が面倒かって話も通じんのよな。同情もしない、これ以上いちいちキレたりもせん。妖が歌仙を称するのも気に入らねえが。マッ正直戦いにはなんの関係もないしな」)
相手を読み解こうとして、思わず感情移入しそうになった心の淀みを消し去る。
敵は敵なのだ、余計な事は考えぬ限る。
『その身、その姿、その幸せが我ならなくば……朽ちよ、葵』
女が扇子をピシャリと投じれば、足元を覆う髪の毛が並の様に揺蕩った。
ピンと水面に波が立つように、飛沫を上げそうな勢いで……。
否、鎌口を掲げる蛇の様に襲い掛かって来る!
「チッ。まーだ誰も来てねえな? んじゃ偶には本気でやってやんよ。だから……お前も余計な事しゃべんじゃねーぞ!」
ナラクは舌打ちの後、スゥと息を吸うと刀を迸らせる。
香りが周囲に満ちるが、女が衣装に焚き染める香りでは無く、男の袖に移る残り香に非ず。
「鬼門の向こうを振り返れば裏鬼門ってな!」
刃は箏の様な音がして周辺に妖気を蔓延らせた。
妖気を持って妖気を斬る、斬ればアヤカシの縁を切る!
「──裂け、地獄花」
『咲かせはせぬ。葵の花は咲きはせぬ!』
ナラクは蛇を斬り女の髪に戻して妖気を食らい、首や体を蝕む髪より脱出しながら、手にした妖気をさかしまに叩き込んで呪いを返した。
成功🔵🔵🔴
効果1【腐食】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!
鳳・四葉
○心情
・ボクは理系なので、全然歴史とか詳しくないんですよね。ま、悪魔化してから理系が得意になったというだけで、本来は体育会系なんですが。
・なのでぶっちゃけ、何を恨んでいるのか、さっぱりなのですが、まあ敵だし焼いちゃっていいでしょう。
・では、浄化の炎で火葬してあげます。
○戦闘
・【飛翔】と【エアライド】を使いネメシスモードで空を飛び周りながら、空中戦技能で怨霊を躱しつつ、全力魔法の呪文を詠唱する。
・圧倒的な火力を以て、向かってくる悪霊ごと敵を焼くとしましょうかね。あんなに厚着をしているんだ。炎を消すのはさぞ、大変でしょう。
・では、さようなら。不死鳥の炎で荼毘に付すといい
鳩目・サンダー
ネメシスモード発動。
あんたが今回の騒ぎの元締めか。
言いたい事はこの場で全部吐き出すがいい。どうせその恨みも喜びも、あんたの上役の劣化した複製に過ぎない。
誰もが誰かの代理人。あんたもあたしも情を交わせる立場にはない。そう、立場だ。
お互いに、立場で動いている代理人に過ぎない。
リアライズペイント。あたしが見たあんたはお前自身にはどう見える?
どうぞ素直な感想をおくれ。
胸にしまう意味などないぞ、あたしらは皆、この場であんたを滅ぼす為に来ているのだから。
叫べ、謡え。さもなくば語り伝えられることもなく、なかったことになる。
歌人を気取るあんたならよくご存じの筈だろう。
アドリブ、連携歓迎します。
●
「既に戦闘が始まって居ます! 囲みますよ」
鳳・四葉(アンラッキー・クローバー・g02129)は井戸から飛び出すと天を滑るように飛行。
まるで箒星の様に白い光を放ちながら戦闘に参加した。
敵は既に味方と接敵し妖気をまきながら戦っている。
「あんたが今回の騒ぎの元締めか」
『紫め。何も知らぬフリして既に男の残り香をさせおるか』
貴族を護衛した帰り、周辺を探索していた鳩目・サンダー(ハッカーインターナショナル同人絵描き・g05441)を敵は睨んだ。
「言いたい事はこの場で全部吐き出すがいい。どうせその恨みも喜びも、あんたの上役の劣化した複製に過ぎない」
サンダーは敵の言葉に上滑りしていく感覚を感じた。
まるで漫画雑誌を呼んだ時、興味のない作品を流して読んだ時の様だ。
泣かせる台詞もあろう、怒りもあろう、しかしその内容は興味がない作品だけに身に入らない。こいつの言葉も同じだ。
「誰もが誰かの代理人。あんたもあたしも情を交わせる立場にはない。そう、立場だ。お互いに、立場で動いている代理人に過ぎない」
所詮、アヴァタール級はクロノス級のコピーに過ぎない。
いや、さらに言えば元の存在を食らったに過ぎぬ。どうして心が揺れようか?
「そういえばモデルは居るけど物語の存在だっけ? ならコピーの子コピーで孫コピーだ」
「ただのリコピーでいいんじゃないかな。どっちにせよボクは理系なので、全然歴史とか詳しくないんですよね。ま、悪魔化してから理系が得意になったというだけで、本来は体育会系なんですが」
サンダーの言葉を四葉が拾って首をひねる。
この敵は有名な物語の登場人物で、その因子とモデルになった人物の存在を取り込んで混ぜ合わせた存在だ。今どきクローン物の漫画でもまだマシな設定を作るのではないかとは思う。色々覚え得てきたが、クロノヴェ-ダのせいで右往左往した四葉にとっては世界最古の同人誌など読む気も無い。
「なのでぶっちゃけ、何を恨んでいるのか、さっぱりなのですが、まあ敵だし焼いちゃっていいでしょう。行きますよユーカリプタス!」
結局のところ、敵は戦うだけ燃やすだけ。
四葉はそういうと大悪魔ユーカリプタスの力を解放する。
これまでは井戸の中を焼いて熱かったり空気を減らしたかもしれないが、外ならば問題ないと全力を解放したのだ。え、井戸の中でも全力だったって? ボスと雑魚とでは気合が違うよ!
いずれにせよ戦いが始まる。
女の髪の毛は海の様であり闇の様であり、その中から泡のようにナニカが浮き出て来る!
『いずれ来る老いも知らず背のびることを望むは、先に立たぬ後悔。我が身に降りかかる事を思えば煩わし……絶えよ、紫』
泡のように出てきたのは怨霊たちだ。
くびり殺され怨霊の仲間入りをさせられたのか?
「怨霊ですか。では、浄化の炎で火葬してあげます。圧倒的な火力を以て、向かってくる悪霊ごと敵を焼くとしましょうかね。あんなに厚着をしているんだ。炎を消すのはさぞ、大変でしょう!」
四葉は浄化の炎を放ち周辺を焼き払いながら空から敵に迫った。
怨霊は撃ち落とし焼き払い、邪魔する髪の毛やら十二単を燃やさんとする。
『貴様もいずれは色を知りて女を泣かせよう。ならばここで……絵巻?』
「リアライズペイント。あたしが見たあんたはお前自身にはどう見える? どうぞ素直な感想をおくれ」
サンダーは世界を画布に絵を描き始めた。
そこに意味はない。なぜならばサンダーは色彩に形を作らず相手の解釈に委ねたからだ。
ゆえにソレはエネルギーの塊に過ぎず、何にもならないという事はないが、何かに見える筈はない。
「胸にしまう意味などないぞ、あたしらは皆、この場であんたを滅ぼす為に来ているのだから」
『何を馬鹿な事を。絵巻は絵巻に過ぎぬ。それ以上の何であろうか! 三日夜の餅をくろうて何を嘆くか紫!』
しかし敵はそこに意味を見出した。
白紙の絵巻物であるとみなし、サンダーを登場人物の様に解釈する。
光源氏と言う言葉の語源である光源氏は、大学生並の年齢で小学生並みの少女に手を出したアレな人である。しかし下野し臣籍を賜ったとはいえ元皇族の光君に愛されるのは名誉な事だが、そんなことを紫は知らずに泣いていたという。さて、ここで何も知らぬ女童は誰の事か? あるいはその事を羨ましがったのは誰の事か? 絵巻と思い込んだのは誰か?
「ソレは最初から何もない。……叫べ、謡え。さもなくば語り伝えられることもなく、なかったことになる。歌人を気取るあんたならよくご存じの筈だろう」
サンダーは物書きだ。
何の意味も無い作品も良く知っている。
世界に足痕を残し、爪痕を刻むのであれば掛かってこいと怨霊たちを色彩の中に閉じめた!
「反論はない? では、さようなら。不死鳥の炎で荼毘に付すといい」
『愚か。色も香りも我が身世にこそあれ。若き者には渡さぬ!』
身動きせぬ敵に対し四葉がトドメを刺そうとしたが、敵は沸き立つ怨霊を喰らい現れたのである。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【クリーニング】がLV2になった!
【液体錬成】LV1が発生!
効果2【ドレイン】がLV3になった!
【反撃アップ】がLV5(最大)になった!
十野・樞
矜持も教養も何の役にも立たねえどころか、かえって己を追い詰めいっそう狂わせる
かくも情とは、ひとのこころとは恐ろしい
…厄介で、面倒で、かなしい
【結界術】【浄化】で浄化系結界展開し仲間と己を防御
呪詛と使役された怨霊に対抗・浄化し、その攻撃をいなし阻む
また【観察】【看破】【伝承知識】でその性質・弱点を探り仲間と情報共有
【伝承知識】【魔術知識】駆使
言霊を弱体化させる
たえよ、ときたか
なら耐えてみせるさ
むらさきは群咲き、【連続魔法】でパラドクスを次々と『咲かせる』
……妄執の果てから、己と言う地獄から、解放されんことを
野本・裕樹
形は違えど大事な人が側にいない「寂しさ」はわかるつもりですよ。
貴族としての立場、誇りが柵(しがらみ)となって「寂しさ」を表へ出せなくしたのでしょうか。
あの助平貴族までとは言いませんがもう少し素直になっても良かったのでは?(アレはもっと自重すべき)
その答えが今の貴女…クロノヴェーダ化だというなら救いの無い話です。
全部私の勝手な想像ですけれども。
話は通じないかな、今の貴女には私も大切な男性を誑かす女狐に見えてますかね。
【無窮自在】、貴女の気が済むまでとはいきませんがお付き合いしましょう。
愛故に…ですか。
どこまでが本当の貴女なのかもわかりませんけれど。
私には終わらせてあげる事しかできません。
●
「やれやれ。穴倉から出て来れば厄介なことになって居るな」
十野・樞(division by zero・g03155)は連れ去られた一般人を救助しながら戦っていた。
井戸の調査もしようと仲間たちと分散していたこともあり、こともあり苦戦していたのだが……。
外へ出てみれば炎熱の向こうで、身分ありそうな女性が黄昏に燃えていた。
「元になったお人も、描かれた御方もそれあると言われた方だったんだがな……」
樞はその人物の変遷を知るがゆえに苦笑せざるを得ない。
これまでの仲間達はどちらかと言えば背景を知らないか、あるいは気にしない者が多かった。
しかし彼は書を愛し、文学を親しみ、時にソレを力へと変えるタイプだ。ゆえに思いが苦くなる。
「矜持も教養も何の役にも立たねえどころか、かえって己を追い詰めいっそう狂わせる」
それはある種の自戒でもある。
樞は背景を知り、利用された哀れな魂を知るがゆえに苦心している。
ただの敵であると断じる事が出来れば、どれほど楽だろうか? アヴァタール級はコピーではないのかと聞かれれば、近しい性質の人物が妖怪にされたのだと思えばどうして笑う事が出来ようか。
「形は違えど大事な人が側にいない『寂しさ』はわかるつもりですよ」
野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)はその姿、在り様をまとめてこう捉えた。
「貴族としての立場、誇りが柵(しがらみ)となって『寂しさ』を表へ出せなくしたのでしょうか」
元になった女性であれ、登場人物であれ、妖怪とされた犠牲者であれ。
なにがしかの我慢がストレスを呼び、怒りと憎しみと……愛が歪な結果を招き寄せたのではないかと思う。
「あの助平貴族までとは言いませんがもう少し素直になっても良かったのでは?」
さすがにアレを見習えとはいわない、やったらビッチ一直線だし。彼は自重すべきだろう。
エイティーンの派生形でオッパイーンとかボイーンという術が無いかと、三十秒くらいは自問自答しそうになった。
「……かくも情とは、ひとのこころとは恐ろしい。……厄介で、面倒で、かなしい。ってか?」
「その答えが今の貴女……クロノヴェーダ化だというなら救いの無い話です。全部私の勝手な想像ですけれども」
樞は裕樹の内心の葛藤を知らぬこともあり、その話を自分の思いと縒り合わせて解釈した。
全ては心の痛み、心の傷、さりとて心という業が無かりせば人に非ず。
いや、人を止めても苦しみ怒りに悶える姿は、いっそ哀れであるとすら思えた。
だからこの戦いは、むしろ針の筵であるこの世から解放する為の物だろう。
渡る世間が地獄であるとするならば、攻めて未来に救いを見出すしかあるまい。
『口にせよと申しますか? ならば捧げましょう! 思いを捧げましょう! あの方が振り向いてくださるならば……我が身も誰も彼も、命を捧げましょうほどに!』
「説得は……無理でしょうね。貴女の気が済むまでとはいきませんがお付き合いしましょう」
彼女の心は憎しみで固定されている。
今の彼女には自分もまた大切な男性を誑かす女狐に見えているだろうと裕樹は思う。
出なければ先ほどの助平貴族などを光君など誤解しようがあるまい。
「……妄執の果てから、己と言う地獄から、解放されんことを」
樞は頷いて戦いに赴くことを了承した。
この上は可能な限り速やかに苦痛から解放するほかないのだから。
『命は絶えよ、思いは絶えよ! あの方が微笑まぬならば世界も絶えよ! 耐えよ紫ぃぃ!!』
「たえよ、ときたか。なら耐えてみせるさ。そしてむらさきは群咲きってな」
湧き出る怨霊に樞は口笛を吹いた。
囃すという意味では無く、終局を呼ぶ笛の音だ。
黄泉になる鐘の音は、死者を迎え入れる音だという。
「鳴れよ死来音。呼ばわるはイザナミのミコトかペルセフォネか。ああ、その前に渡し守のカロンを呼ばねえとな。何もかも忘れる前に一言捧げよう。どんなに醜い妄執でも……あんたはその姿が一等美しいさ」
樞は彼岸の彼方に住まう聖霊たちを呼び寄せた。
老いる前に妄執で死ぬ哀れな女。
しかして物語としては美しく完結する、ひどく醜いがゆえに美しい物語の終わりが一つ。
樞はひどく悲しい美しさで終局する女への思いを代償に、彼女を黄泉へ送ろうとした。
『何が美しい物か。かように苦しいのであれば! 我が身も要らぬ、かの君への愛以外は全て要らぬ!』
「愛故に……ですか。どこまでが本当の貴女なのかもわかりませんけれど。私には終わらせてあげる事しかできません」
裕樹は刀を抜いて鞘を構える二刀流、いやさ尻尾も含めた三刀流で女と相対した。
怨霊たちの宴が始まり、情熱を捧げ命を捧げるお祭りに、剣の舞にて奉納しよう。
ただし捧げるのは己の命ではない、斬撃を持って悪霊どもを斬り捨てようと、胸の痛みを乗り終えて弔い花の舞を踊る。
眼前には哀れな女が血煙の中で泣いている様に思えた。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【クリーニング】がLV3になった!
【狐変身】LV1が発生!
効果2【ドレイン】がLV4になった!
【ダメージアップ】がLV5になった!
菅原・小梅
◆心情
徽子女王様……いえ此方の斎宮女御には私の記憶はなさそうですね。
最後にお会いしてから5年は経ちますし化身だからでしょうか?
◆行動
とは言え、礼を軽んじる心算はありません。
情が強く悋気を起こす様などある意味お変わり御座いませんしね。
お久し振りで御座います、菅原の娘、小梅です。
『風吹けば、梅にわかるる、春告鳥(うぐいす)か。色をも香をも、ただ君ぞ知る。』
先ずは一首披露致します。
この様な形ですが、才ある御方と競い合うのは些か心ときめきすものですね。
続けて菅公の歌を詠み、【飛梅奇譚『白糸』】を発動させ、蘭陵王の演目を再現しましょう。
やはり私に荒事は不向きですかね。
たった此だけで息が上がっております。
文月・雪人
※アドリブ連携歓迎
斎宮女御、戦うのはこれで二度目だけど
あの時は排斥力の強さに随分と悩まされたっけ
勿論別の個体だし
此度は呪いの連歌でもないけれど
歌の師に俺もまた歌を一首
古人(ふるひと)を 探し彷徨う 六つの花 春告げ鳥よ 行くへや知るらむ
さて、時を超え彷徨う季節外れの六つの花は
貴女だろうか私だろうか(やや自嘲気味に笑みながら
歌詠む声を使った[結界術]で『共鳴結界』発動
言霊の[呪詛]を相殺し
死してもなお使役されている怨霊達の魂を[浄化]し解放しつつ
斎宮女御の妖力と執念を【ダメージアップ】な【ドレイン】で吸い上げる
それほどまでに貴女の心を狂わせて
相手はどんな男なのやら
黄泉の国で会える事を祈りましょう
●
「徽子女王様……いえ此方の斎宮女御には私の記憶はなさそうですね」
菅原・小梅(紅姫・g00596)はどこか懐かしそうな、あるいは何度目かになる思いを抱いた。
「最後にお会いしてから5年は経ちますし化身だからでしょうか?」
かつて見知りたる人の影法師。
あるいは妖怪変化たるアヴァタール級クロノヴェーダ。
見知った本人ではなくその因子を持つ誰か、妖怪へと替えられた誰かであって本人ではないのだろう。だからこんなにも遠い気がするのだろうか?
「斎宮女御。戦うのはこれで二度目だけど……あの時は排斥力の強さに随分と悩まされたっけ」
文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)はかつて戦った時の事を思い浮かべる。
今日は井戸で戦い誰かをその底で人を救いと戦ってきたが……。
以前は歌を読み込んでこの相手と出逢い、殺されそうな人物を救おうとしたものだ。
「勿論別の個体だし此度は呪いの連歌でもないけれど……何となく憎めないんだよね」
「私としても本人では無くアヴァタール級だからと言って、礼を軽んじる心算はありません。ちとご挨拶を申し上げて来ましょう」
雪人はこの時代の人間故に、同じ時を過ごしたであろう小梅の顔色を伺う。
怒って一気に飛び出して戦うというならば、悠長に声を掛ける暇などない。
だが安心するが良い、彼女とてそのつもりだったのだ。既知の相手でなくとも、見知った相手の影法師をただ殴って済ませる心つもりはない。
「情が強く悋気を起こす様などある意味お変わり御座いませんしね。お久し振りで御座います、菅原の娘、小梅です」
『菅公の?』
女はチラリと視線を這わせる。
まるで信じておらぬが、菅原道真と言えばそのネームバリューは強烈である。
チクリと痛みが小さな胸を打つが、信じておらねど続く言葉は変わらない。
「風吹けば、梅にわかるる、春告鳥(うぐいす)か。色をも香をも、ただ君ぞ知る」
小梅は風吹く梅の香りや色彩、あるいは鳥さえもがその全てで春を指し示すと語った。
もちろんそんなものは表訳に過ぎない。
意訳すれば……梅の香りは女の情愛を示す。貴女の事を私は、以前は幼かった小梅は知って居ますよと紹介したのである。
「旧交の挨拶はいいかな? では俺も一首」
彼女に先を譲った上で雪人は言葉を重ねた。
彼女が挨拶を歌で読んだ段階で、彼もかつての日々からの成長を歌で示すことにする。
このアヴァタール級とは別の存在ながら、おなじ形をした女に歌を習ったのだから。
「古人(ふるひと)を 探し彷徨う 六つの花 春告げ鳥よ 行くへや知るらむ」
雪人は『ふる』を『六つの花(雪)』の縁語としつつ、『古人(ふるひと、いにしへびと)』で嘗ての大切な人を表した。
また『六つの花』と『春告げ鳥』という季節外れの言葉を敢えて並べる事で、アヴァタール級として、或はディアボロスとして、時を超えて探し彷徨う様子を表したのである。
春告げ鳥への、行くへを知っていますかとの問いかけは、反語でもある。未だ本懐を遂げられぬ、自嘲の意味も含んでいた。
さて、時を超え彷徨う季節外れの六つの花は誰だろうか?
これに対して女、応えていわく。
『あしびきの 山にさかしく おほ苺。つみたて見れば 梅はつぼみか』
山に分け入り苺を一杯取って来たが、梅はまだ花咲いておらぬと返した。
意訳すれば苺を山ほど食べたいという様な童だ。長く長く積み重ねた年も、まだ少女のようなモノである……という訳になるだろうか?
季節の物である苺と梅を同時に重ねるのはよろしくないが、初春から遅春への移り変わりを示しているのだろう。実が盛るを賢しきと掛けることで、雪人の言葉へ不機嫌さを表すと同時に、自分では無いと返した物と思われた。
「おや、これはつれない」
「この様な形ですが、才ある御方と競い合うのは些か心ときめきすものですね」
二人は顔を見合わせると、才女である敵との戦いに移行する。
これ以上は言葉を交わしても無駄であろうと悟ったのだ。
「では今度はお先に。援護に変えてくれても良いね。……古人よ」
雪人は先ほどの歌を呼び起こし、捧し音魂をもって敵を打ち据える。
不可視の障壁を結界と無し、動きを阻害しつつ浄化を果たすことで打ち据える。
更にに言うなれば、かつての心を取り戻させることで、今の邪心を討ち据える!
「水ひきの、白糸延へて織る機は……。埋もれし偉業も白糸の様に織りなせば確かな力となるのですよ」
そして小梅は伝承の中にある動きをプログラムとして己を動かした。
管楽に名高い美貌の蘭陵王は、仮面をつけて神刀を抜いて舞い踊る。
『若紫は不要なり。絶えよその路、絶えよその出逢い! 絶えよむら……先』
放たれる無数の怨霊たち。
笛を小太刀の代わりに抜き神刀を振るい、回避しながら女を切り伏せたのだ。
「やはり私に荒事は不向きですかね。たった此だけで息が上がっております」
「おつかれさま。急ぐことはないんじゃないかな。蘭陵王は厳島でしょちゅうやってたそうだし、安芸を取り返す頃には体力も上がってるさ」
小梅の言葉に雪人は頷きつつ、こう連ねて将来の展望に変えたのである。
歌で詠まないのかって? 今宵はこれまでにしとうございますからね。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【勝利の凱歌】LV1が発生!
【クリーニング】がLV4になった!
効果2【ガードアップ】がLV2になった!
【ドレイン】がLV5(最大)になった!